TOPIC No.6-6 素粒子/タウニュートリノ


01.
 なぜなに素粒子
02.
 タウ・ニュートリノ(ντ)発見 (サイエンスモニター)
03.
 素粒子事典
04.
 素粒子について by国府田(こうだ) 和幸のページ
05.
 スーパーカミオカンデ (SUPER-KAMIOKANDE)
06.
 素粒子関係のリンク by小松 雅宏
07.
 日本の高エネルギー物理学関連の研究施設
08.
 理論物理学仮想研究所
09.
 素粒子物理学 入門講座


Sカミオカンデの復旧完了、6月末にも観測再開

2006/04/07 (読売新聞)YAHOO!ニュース

 宇宙から飛来する素粒子ニュートリノを観測する巨大施設「スーパーカミオカンデ」(岐阜県飛騨市)で、破損した多数の電球を交換する復旧作業がほぼ完了し、7日、報道陣に公開された。

 スーパーカミオカンデは、地下1000メートルに設置された直径39メートル、高さ42メートルの巨大な水槽で、ニュートリノをキャッチして分析する。2001年11月に、センサーの役割を果たす電球(光電子増倍管)約1万1000個のうち、約7000個が破損する事故が発生。昨年10月から、約6000個を付け直す作業を続けていた。

 施設を管理する東京大学宇宙線研究所は、4月中旬に5万トンの純水の注入を開始し、6月末ごろ本格的な観測を再開する予定だ。

スーパー宇宙線、日米共同観測へ 相対性理論にも影響?

2006年02月15日 asahi.com

 宇宙から地球に降り注ぐ宇宙線の中に、けた違いにエネルギーが高い「スーパー宇宙線」があるとの説をめぐり、真っ向から意見が対立する日米の研究チームが手を組み、米国ユタ州の荒野で壮大な観測を始めることになった。日本チームの主張通り「スーパー宇宙線がある」となれば、アインシュタインの打ち立てた相対性理論にほころびが見つかる可能性もある物理学の一大事だ。

 スーパー宇宙線の解明は、現代物理学の大きなテーマとされてきた。まず東京大が90年から始めた観測の結果、「13年かけて11個見つけた」と発表し、注目を集めた。ところが、その後、米ユタ大が「自分のところの観測装置で調べたけれど、なかった」と発表。行方が混沌(こんとん)としてきた。

 白黒はっきりさせるには、とにかく大量の宇宙線を精度よく観測するしかない。対立する双方が異例のチームを組み、共同で進める新プロジェクトが、米国に建設中のテレスコープアレイ(TA)だ。琵琶湖に匹敵する広さの荒野に粒子検出器を約600台並べ、巨大な無線LANで結ぶという、これまた異例の観測体制で検証に臨む。

 来春から数年の観測で、あるかないか決着がつくという。「呉越同舟みたいなものです。意見が異なるのは厳しいが、とても面白い」と、日本側の福島正己・東大宇宙線研究所教授は話している。

 米ユタ州の州都ソルトレークシティーから南西へ約200キロ。低木がまばらに生える荒野に、スーパー宇宙線を観測するためのテレスコープアレイ(TA)の建設が進んでいる。

 宇宙線が大気の成分である窒素や酸素などの原子核に当たって出る粒子のシャワーを、地上で検出する機器が1.2キロ間隔で576カ所に並ぶ。シャワーから出る弱い蛍光を観測する反射望遠鏡も3カ所に計36台。装置全体の「面積」は約760平方キロになる。日本最大の湖・琵琶湖(670平方キロ)よりも大きい。

 こんな仕掛けで狙うのは、エネルギーが一般的な宇宙線の数兆倍にもあたる「10の20乗・電子ボルト」を超えるスーパー宇宙線。地上で観測されるシャワーのエネルギーは低いが、逆算して求めるスーパー宇宙線自体のエネルギーは、1キロの重りを1.6メートル以上の高さから落とした時に匹敵する。テニスボールでいえば、強力サーブ並み。目に見えない微細な粒子が持つエネルギーとしては、けた違いに大きい。

 宇宙線の数はエネルギーが大きくなるほど少なくなるが、これほどの高エネルギーになると1平方キロあたり1世紀に1個ぐらいしか来ない。短期間で観測するには、どうしても装置の面積を広くする必要がある。

 スーパー宇宙線は、あったとしても、宇宙誕生の大爆発(ビッグバン)の名残である電波にじゃまされて、1億5000万光年より遠くまで進めないことが60年代、特殊相対性理論をもとに予測された。発生源と思わしきものが近くになく、地球では観測されないというのが定説になっていた。

 ところが、東京大宇宙線研究所が山梨県明野村(現・北杜市)に90年に造った面積100平方キロの観測装置「AGASA」が、13年かけて11個も観測したと発表し、定説に疑問符がついた。一方、ユタ大は観測される宇宙線のエネルギーには理論通りに上限があるという結果を発表。「スーパー宇宙線はない」との立場を明らかにした。

 実は、これらの結果の発表前から東大とユタ大は協力して観測する計画を練っており、「日米同舟」が始まった。装置の工費は約12億円で、日本が大半を出す。本格的な観測は来春から。年15個以上のスーパー宇宙線観測を目指し、数年以内に結論が出る見通しだ。

 「どちらかが間違っていたことになるから、もめるかもしれない。でも、それだけしっかりした結論になるはずだ」と東大の福島正己教授。

 米シカゴ大と英国などのチームも、アルゼンチンの荒野で同じ目的の観測装置を建設中だ。こちらは、面積が3000平方キロもある。

 スーパー宇宙線の存在が確実になれば、定説のよりどころである相対性理論が、極めて高いエネルギー領域で通用しない可能性が出てくる。相対論にほころびがあるとなれば、物理学では大きな事件だ。スーパー宇宙線の発生源も謎だが、ビッグバン直後に生まれた未知の粒子のかけらと考える専門家もいる。

 約30年前、スーパー宇宙線が相対性理論の検証に使えることを示した佐藤文隆・京都大名誉教授は「東大の観測は数が少なく決定的ではなかったが、これが次の大型観測を生み出した。新しい装置による結果を待ちたい」と、日本発の報告がきっかけとなった検証を心待ちにしている。

南極の氷を観測装置に

2006/02/15 中日新聞

8カ国共同でニュートリノ研究

 南極点近くの氷を深さ二千五百メートルまで掘り、周囲の膨大な氷を観測装置として利用、宇宙から飛来する高エネルギーの素粒子ニュートリノの発見を目指す八カ国共同プロジェクト「アイスキューブ」が始まった。

 日本から唯一参加している千葉大の吉田滋・助教授(宇宙線物理学)によると、ニュートリノが氷に衝突して生じる微弱な光を、四千八百個の検出器でとらえる計画。これまでに五百四十個を設置し観測を始めた。

 二〇〇九−一〇年にはスーパーカミオカンデ(岐阜県飛騨市)の約二万倍の規模となる約一立方キロの観測装置が完成する予定だが、現段階でも世界最大のニュートリノ検出装置という。

 ニュートリノは物質とほとんど反応せず、すり抜けてしまうため観測は難しい。スーパーカミオカンデでは、五万トンの純水を満たした地下タンク(直径、高さ各約四十メートル)で、ニュートリノが水の分子と反応して出る光を検出している。

 高エネルギーニュートリノはブラックホールなどから放出され極めてわずかしか存在しないと考えられており、発見にはより大規模な装置が必要。透明で豊富な南極の氷に目を付けた。

 氷の表面から垂直に穴を掘り、深さ千四百−二千五百メートルの位置に、十七メートル間隔で六十個の検出器をつけたケーブルを下ろす。六角形の広大な敷地に、このような穴を百二十五メートル間隔で八十本配置。主に北極方向から地球を貫通してくるニュートリノを観測する。費用は約三百億円で八割を米国、二割を日本など七カ国が負担。検出器には浜松ホトニクスの光電子増倍管が使われている。

南極でニュートリノ発見を 膨大な氷が観測装置

2006/02/15 中国新聞

 南極点近くの氷を深さ2500メートルまで掘り、周囲の膨大な氷を観測装置として利用、宇宙から飛来する高エネルギーの素粒子ニュートリノの発見を目指す8カ国共同プロジェクト「アイスキューブ」が、15日までに始まった。

 高エネルギーニュートリノをとらえれば、従来観測が困難だったはるか遠くの宇宙で起きている高エネルギー現象を探ることができ、宇宙の謎解明の手掛かりになる。

 日本から唯一参加している千葉大の吉田滋・助教授(宇宙線物理学)によると、ニュートリノが氷に衝突して生じる微弱な光を、4800個の検出器でとらえる計画。これまでに540個を設置し、観測を始めた。

 2009−10年にはスーパーカミオカンデ(岐阜県飛騨市)の約2万倍の規模となる約1立方キロの観測装置が完成する予定だが、現段階でも世界最大のニュートリノ検出装置という。

丸い原子核が棒状や板状に 高密度での変形を解明

2005/02/20 The Sankei Shimbun

 普通は丸い原子核が高密度で集まると、スパゲティのような細い棒状になったり、板状になったりすることを、北欧理論物理学研究所(デンマーク)の渡辺元太郎研究員、佐藤勝彦東京大教授らが20日までにコンピューターシミュレーションで突き止め、米物理学誌フィジカル・レビュー・レターズに発表した。

 星が燃え尽き、残った鉄の核がつぶれて爆発する、重力崩壊型超新星爆発の前や、その後にできる中性子星では原子核がそんな状態になっているとみられる。謎の多い超新星爆発のメカニズムや中性子星の実態の解明につながる成果として注目される。

 原子は普通、原子核の周りの電子が反発しあうため密度が低く、原子核は丸い。だが、重力崩壊型超新星爆発の前や1立方センチで1億トンもあるとされる中性子星では高密度になって原子核も変形すると考えられている。

 ただ変形の様子は長年の謎だった。渡辺さんらは理化学研究所が開発した高速コンピューターMDGRAPEで、原子核をつくる陽子や中性子約1万6000個が密度が高まるにつれてどう変わるかを調べた。

 すると最初は球形だった原子核が変形、合体してスパゲティ状になり、次に板状に変身。その後は原子核が合体した固まりに長細い穴が開いたレンコンのような構造を経て、球形の穴が開いたスポンジのような構造へと変わった。

 大学院生だった1970年代からこの問題を追究してきた佐藤さんは「きちんと解くという夢が実現した。原子核が一様な構造だと、超新星爆発の仕組みを説明できない。今回分かった原子核の構造を取り入れ、星がつぶれて爆発して中性子星ができるまでを説明できるかどうかを調べたい」と話している。(共同)

≪異常構造の存在裏付けた≫

 約20年前、原子核が高密度で棒状や板状に変わることを予言したクリス・ペシック北欧理論物理学研究所教授の話 棒状や板状の原子核でできた物質の性質は普通の物質とは違うと考えられ、超新星爆発や中性子星の研究ではその違いが重要になる。ただ本当にそんな異常な構造ができるかどうか、はっきりしなかった。渡辺さんらはそうした構造ができることを初めて示した。中性子星がどんなふうにできるのかを説明する現実的理論を作る上で、重要なステップといえる。(共同)

 ■重力崩壊型超新星爆発 太陽質量の8倍よりも重い星が一生の最後に起こす爆発。解放された重力エネルギーのうち、物質や光が噴き飛ぶエネルギーは1%にすぎず、99%は素粒子ニュートリノに変わると考えられている。岐阜県飛騨市にあったニュートリノ観測装置カミオカンデは1987年、重力崩壊型超新星爆発で放出されたニュートリノを初めて観測。理論的予測を確認し、小柴昌俊東京大名誉教授のノーベル物理学賞受賞(2002年)につながった。(共同)

「クオーク」4個集まった新粒子、高エネ研が発見

2003/11/14 読売新聞 Yomiuri On-Line
 物質の基本粒子クオークが4個集まった新粒子を、高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)の国際共同実験グループが発見し、14日発表した。

 物質の大半はクオークが2個か3個集まった粒子がもとになっており、4個以上から成る粒子は長年確認されていなかった。大阪大などが今年7月、クオーク5個の新粒子を発見したばかりで、物質の起源を探る研究が新たな領域に入るものと期待される。

 新粒子は、同機構の大型加速器で、2種類の素粒子を正面衝突させる実験で観測された。衝突によって、クオーク2個ずつからできた中間子が一時的に発生して崩壊し、クオークの種類や組み合わせが変わった別の粒子ができる。1億5000万回の衝突について詳しく解析した結果、36個の新粒子が検出され、クオーク4個分の重さと判明した。未知を意味するXと、重さの数値からX(3872)と命名された。

 新粒子は、中間子2個が弱く結合した状態らしく、約30年前から一部の理論家が予言していた性質と一致しているという。

「ヒッグス粒子」の存在示すデータ得たと発表 CERN

2000.11.03(22:16)asahi.com
 物質に重さを与える未知の「ヒッグス粒子」探しを続けているスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機関(CERN)は、加速器LEPを使い、同粒子の存在を示すこれまでで最も信頼度の高い実験データを得た。3日、CERN内での研究会で明らかにされた。

 さらに実験を続ける意義が高まり、解体が予定されているLEPの延命の可能性も出てきた。

 LEPの当初計画では、9月末で運転を終え、同じ場所に、2005年の運転開始を目指す新型加速器LHCを設置することになっていた。ところが、今年になってヒッグス粒子の存在を示唆する現象が観測されたため、今月2日まで運転を延長していた。最新のデータでも、存在を確認したと言いきることはできないが、存在の可能性はさらに高まった。

 実験に加わっている東大素粒子物理国際研究センターの山下了助手は「あと半年ぐらい運転できれば、必ず科学的に決着が着けられると思う」と話す。

 物理学の標準理論からいえば質量がないはずの粒子に、実際には質量がある。その「矛盾」を解決するため、英国の物理学者ヒッグスが1960年代に未知の粒子の存在を提唱した。のちにヒッグス粒子と呼ばれるようになった

大型陽子加速器建設に着手へ、文部・科技が予算要求

2000.10.20(18:56)asahi.com
 生命科学や素粒子物理学など幅広い研究に利用できる世界最高レベルの大型陽子加速器を建設するため、文部省と科学技術庁は20日、第1期(6カ年)の建設費1350億円のうち42億円を来年度予算に要求することを決めた。

 茨城県東海村にある日本原子力研究所東海研究所の敷地に、3つの加速器を新たに建設。陽子を加速して金属などに衝突させ、生じる中性子ビームや素粒子を研究する。次世代の磁気記録素子の開発や高温超伝導、たんぱく質の働きの解明などに結びつくという。

最後の基本粒子

2000年9月15日 東奥日報
 物質を細かく分割していったとき、それ以上分割できない最小の構成要素を基本粒子という。基本粒子は陽子などをつくる「クォーク」と電子などの「レプトン」に大別される。各六種類ずつ、計十二種類あり、このうち唯一未確認だったレプトンの一種、タウニュートリノの存在が日米などの共同チームによってこのほど確認された。

 確認の決め手になったのは、丹羽公雄教授ら名古屋大チームの原子核乾板技術。陽子をタングステンの標的に当て出てきたタウニュートリノの反応をとらえることに成功した。自然界にはほかに、力を伝える粒子と基本粒子の質量の基になるヒグス粒子があると考えられており、ヒグス粒子だけが未確認だ。

日本の論文「スーパーカミオカンデ」 引用数でトップに

2000.08.15(08:10)asahi.com
 岐阜県・神岡鉱山地下の巨大水槽「スーパーカミオカンデ」で得たデータを基に、素粒子のニュートリノに質量があることの有力な証拠を示した東京大学宇宙線研究所の戸塚洋二教授らの論文が、高エネルギー物理学の実験分野での引用件数でトップになった。日本の論文が1位になったのは初めてだ。ほかの研究論文に引用される件数が多いのは、それだけ重要度が高いことを示している。

 高エネルギー物理学分野の論文の引用件数は、米スタンフォード線形加速器センター(SLAC)がデータベースに収められた1974年以降の論文について集計している。

 99年末までの累積では、米国を中心とするグループが95年に発表したトップクオーク発見に関する論文の引用が801件でトップ。98年に発表されたカミオカンデ論文は644件で3位だった。ところが、今月14日現在(日本時間)では、トップクオーク論文が819件に対し、カミオカンデ論文が822件と逆転している。

 スーパーカミオカンデは、大量の水に飛び込んできた素粒子のニュートリノを高性能の検出装置によって捕らえることができる。カミオカンデ論文の引用数の増加について、戸塚教授は「我々の論文の重要性が認識されつつあるのだと思う」という。

 一方、実験だけでなく理論も含む高エネルギー物理学全体のランキングでは、小林誠博士と益川敏英博士の「CP対称性の破れ」に関する論文の引用が第2位。日本がこの分野で世界をリードする成果を上げているといえそうだ。

世界最高級の陽子加速器計画にゴーサイン 評価専門部会

2000.06.22(20:41)asahi.com
 世界最高級の陽子加速器をつくって、生命科学、物質科学や原子核物理や素粒子物理などさまざまな分野の研究に生かす「大強度陽子加速器計画」の評価専門部会(部会長=末松安晴・高知工科大学長)は22日、早期着手を求める報告書をまとめた。いまの計画通り進めると全施設の建設費は計1890億円にのぼることから、施設に優先順位をつけて工期を分けるよう注文をつけている。

 同計画は、日本原子力研究所東海研究所の敷地に新設する3つの加速器で陽子を加速し、金属などに衝突させたときにできる中性子ビームやさまざまな素粒子を利用する。

 原研の「中性子科学研究計画」と、高エネルギー加速器研究機構の「大型ハドロン計画」の旧プロジェクト案を融合し、総予算を圧縮した。両機関でつくる共同推進チームは来年度に着工し、2006年度に利用を始めることを希望している。

ビッグバン直後の宇宙再現に成功

2000年02月10日【ジュネーブ支局11日】byYomiuri On-Line
 欧州原子核研究所(CERN)は十日、重イオン加速器「スーパー陽子シンクロトロン(SPS)」による実験で、陽子や中性子を構成する究極の素粒子「クオーク」がバラバラに存在する状態の再現に、世界で初めて成功したと発表した。「クオーク・グルーオン・プラズマ」と呼ばれる宇宙誕生(ビッグバン)直後の状態で、理論の上では予測されていたが、これまで実験による裏付けはできなかった。素粒子物理学だけでなく、宇宙誕生についての研究を進展させることになりそうだ。

 CERNは一九九四年から、鉛や金などの金属の原子核同士をSPSで加速して高速で衝突させ、太陽の中心の十万倍という超高温下で、原子核が爆発を起こすような状態をつくる実験を重ねていた。

 これらのデータを集計した結果、ビッグバン発生から百万分の一秒というごく短時間に起きたとされる、「クオーク・グルーオン・プラズマ」現象が確認できたという。この研究には世界二十か国、三百五十人の研究者が加わり、日本からは広島大と筑波大が参加している。

 宇宙は、百五十億年前に起こった大爆発「ビッグバン」によって物質の基が作られ、現在の宇宙が誕生したとされる。

 物質の基となる原子核は陽子と中性子が集まって出来ており、さらに、陽子と中性子はそれぞれ三個のクオークで構成されている。

 クオーク・グルーオン・プラズマの再現実験は、SPSよりも高いエネルギーでの衝突実験が可能な、米国立ブルックヘブン研究所の加速器「RHIC」でも間もなく始まる予定になっている。

 【クオーク】物質を構成する素粒子クオークは、「アップ」「ダウン」「ストレンジ」など六種類がある。今回の加速器実験で衝突させた原子核は陽子と中性子で構成されるが、このうち陽子は二個の「アップ」と一個の「ダウン」、中性子は一個の「アップ」と二個の「ダウン」から構成。それぞれ「グルーオン」という“にかわ役”の粒子で強固に結び付けられており、通常の状態ではそれらがばらばらに分離する「クオーク・グルーオン・プラズマ」の状態になることは決してなかった。

ビッグバン直後の状態を再現=CERNの重イオン加速器

2000年02月10日【ジュネーブ10日時事】
 欧州原子核研究所(CERN)は10日、重イオン加速器「スーパー陽子シンクロトロン(SPS)」の実験で、陽子や中性子を構成する究極の素粒子クオークがバラバラで存在した、ビッグバン直後の状態が再現できたことを示す有力な証拠をつかんだと発表した。この状態は「クオーク・グルーオン・プラズマ」と呼ばれ、理論的には予測されていたが、実験によって裏付けられたのは初めて。素粒子物理学だけでなく、宇宙誕生のなぞの解明にも大きな一歩とな る。

基本粒子クオーク、ついにばらばら 欧州の研究機関発表

February 10, 2000
 素粒子物理学の世界で、物質を形づくる究極の基本粒子といわれながら、1個ずつ引き離すのは難しいとされてきたクオークを、ばらばらにすることに成功した、と欧州合同原子核研究機関(CERN)の国際チームが10日、発表した。宇宙創造の大爆発ビッグバンから約10万分の1秒後の、陽子や中性子などができる前に存在したとされる「混とんの時代」を初めて垣間見たことになる。クオークの理論が提唱されてから36年、根源物質の探究は新しい局面を迎えた。

 実験では、CERNの加速器SPSで鉛のイオンを飛ばして標的に衝突させ、太陽の中心の10万倍以上の高温状態をつくりだして、衝突の様子を7種類の実験装置で調べた。

 L・マイアーニCERN所長の説明では、すべてのデータをつなぎ合わせて考えると、クオークと、それらをくっつける「のり」の役をするグルーオンがばらばらになっていたとみるのが妥当、としている。

 この状態は百数十億年前のビッグバンから約10万分の1秒後の世界に相当し、宇宙では、この原始の「高温スープ」が少しずつ冷え、今のような物質世界が生まれたとみられている。

 今回の実験計画は1994年に始まった。チームには20カ国以上の研究者が加わり、日本の広島大や筑波大などからも参加した。

 クオークの存在は64年に理論的に提唱され、その後、さまざまな実験で確かめられた。だが、クオークは3つ集まって陽子や中性子などを形づくったり、2つで中間子を構成したりしており、1つひとつに引き離すことはできなかった。

原子核解明する新しい「光」開発 大阪大グループ

11:37a.m. JST July 18, 1999
 大阪大核物理研究センターを中心とした研究グループは、世界最高のエネルギーを持つレーザー電子光をつくることに播磨科学公園都市(兵庫県)の大型放射光施設「スプリング8」を使って成功したと発表した。エネルギーが高いほど、原子核の細かい様子が観測しやすいことから、同グループは「物質の成り立ちが1段階細かいレベルで理解できるようになる」と話している。

 レーザーを電子に衝突させてつくられるレーザー電子光はガンマ線の一種。これまで、フランスの施設でつくられた光が15億電子ボルトで世界最高のエネルギーをもっていたが、大阪大グループの光は今月1日に24億電子ボルトを記録した。同グループは3年後までに35億電子ボルトまで高めることを目指すとしている。

 原子核は核子(陽子と中性子)と呼ばれる粒子で構成されており、核子の中には自然界を構成する基本粒子であるクオークが3個存在することは知られているが、クオーク同士が結びつく様子などについてはあまり知られていない。この電子光を使えば、クオークが原子核の中でふるまう様子を調べることが可能になるという。

 同センターの中野貴志・助教授は「これまでの原子核物理学は核子などを基礎にしてきたが、これからはクオークから解明していきたい」と話している。

ニュートリノ 地中250キロを貫く

1999年6月28日 共同通信社
 茨城県つくば市の文部省高エネルギー加速器研究機構(高エネ研)から発射された素粒子のニュートリノが、地中 250キロ離れた岐阜県神岡町の東大宇宙線研究所の地下検出タンク『スーパーカミオカンデ』で初めて観測された。日米韓の国際共同実験グループ(約 100人)が28日、文部省で記者会見して発表した。       
 素粒子の加速器実験では、1キロ先での観測がこれまでで最も遠く、今回ほど長距離を飛ばして実際にとらえたのは世界で初めて。

物質形成最後の基本粒子タウニュートリノの存在確実に

 物質を形づくる基本粒子の中で唯一確認されていなかったタウニュートリノの存在がほぼ確実になった。昨年、その証拠の一端をつかんだ名古屋大学のグループがさらに分析を進めた結果、わかった。28日から広島県東広島市で開かれる日本物理学会で29日発表する。

 現在の物理学の理論では、どんな物質でもすべて12種の基本的な粒子の組み合わせでできているとされる。その中で3種類あると考えられているニュートリノのうちタウニュートリノだけは存在が確かめられていなかった。

 名古屋大の丹羽公雄教授らは一昨年、米フェルミ国立加速器研究所の巨大粒子加速器テバトロンでつくったニュートリノのビームを写真乾板にあてる実験をした。自動分析装置を使い、ビームの中に数%含まれるはずのタウニュートリノが起こす反応の跡を写真乾板の中から探し出す作業を進めていた。

 グループは昨年6月、タウニュートリノであることがほぼ確実な反応が1個初めて見つかったと発表した。 その後の分析で、さらに同様の反応が2個見つかった。反応が1個だけだとタウニュートリノ以外の反応が偶然そっくりに見える可能性がわずかながらあるが、複数の反応がすべてタウニュートリノ以外であることはまずありえないという。

 昨年、東京大学などのグループがニュートリノに重さがある証拠を見つけたと発表、現在、海外ではフェルミ研と欧州合同原子核研究機関(CERN)が別々に、東大グループの結果を確認する実験を計画している。 その実験では、タウニュートリノをとらえることが望まれており、名古屋大の技術がないと成功は極めて困難とみられている。

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