TOPIC No.6-37 国産旅客機/ 日の丸ジェット


01. MRJ - Mitsubishi Aircraft Corporation
02. 日本では航空機を作らないの? by教えて!Goo
03 国産旅客機 離陸なるか 日の丸ジェット機
04. MRJ(Mitsubishi Regional Jet) byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
05. 【捕らぬ狸の皮算用】三菱重工、国産ジェット機受注に異例の大サービス
 (2006/11/24)
06. HondaJet(ホンダジェット) byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
07. ホンダジェットの価格と性能の特徴|トイレや海外の反応!2018年2月26日 
 byガジェスマ
08. 「ホンダジェット」新型機で旋風拡大できるか 航続距離を17%改善、念願の国内販売も開始
 2018年06月10日 森川 郁子 : 東洋経済 記者  by東洋経済 ONLINE

開発遅れる「MRJ」が迎える正念場の夏

三菱重工主導で財務・開発・生産基盤強化へ 
2018年06月07日 ニュ−スイッチ:日刊工業新聞2018年6月5日

 三菱航空機(愛知県豊山町、水谷久和社長、0568・39・2100)の資本増強をめぐり、親会社の三菱重工業が債務の株式化と増資を組み合わせた資本増強を検討する。今後、三菱重工本体が手がける米ボーイング向けの機体製造事業と購買などの業務を一部共通化し、効率を高める。2020年半ばのMRJの初号機納入に向け、三菱重工主導で財務・開発・生産基盤を強化する。

 三菱航空機は国産初ジェット旅客機「MRJ」の開発の遅れで納期を5度延期し、開発費用は当初想定の約3倍の累計6000億円に膨らんだ。18年3月末の債務超過額は1000億円規模。資本増強に向けて三菱重工はステークホルダーとの協議を本格化する。

 第三者割当増資に踏み切る場合、ステークホルダーからは「メリットがあれば応じる」との声があり、各社とも是々非々で対応する見通し。一方、三菱重工からの借入金を株式に振り替える「債務の株式化」では、三菱重工の出資比率が現状の64%から高まり、トヨタ自動車や三菱商事などの出資比率が相対的に低下する見込み。

 三菱重工の宮永俊一社長は「18年度内の資本増強と債務超過解消はコミットメント。(事業化までの)レールを敷くところまでは、どんな形であれ責任を持つ」と断言しており、協議は夏以降に本格化する模様だ。

 だが課題は多い。一つは航空当局からの型式証明(TC)取得だ。設計変更を反映した試験機2機を米国で19年に試験飛行する計画。追加試験機での作業を順調にこなし、実際の取得作業であるTCフライトに入ることを目指す。量産初号機納入に向けた最大のハードルとなる。

 営業面では受注の半分以上を占める北米で、航空会社とパイロット組合の労使協定条項「スコープクローズ」の緩和が実現するかが焦点。緩和されれば座席数88のMRJ90を販売できる。だが交渉は難航し、座席数76のMRJ70を北米の主力製品に位置付けた。

 MRJ70の市場投入は20年半ばを目指すMRJ90の1年遅れを見込むが、前倒しを視野に入れる。競合のブラジル・エンブラエルには70席級の新型機の開発計画がない。

 ただ、エンブラエルはボーイングと提携交渉中。三菱重工はボーイングの機体部品を長年開発し、MRJの保守サポートを受ける予定。長年の盟友が競合を全面支援すれば、MRJの受注への影響も懸念される。ただ、三菱重工首脳のもとにはボーイング関係者から「我々の友好関係は変わらない」との連絡があったという。

 開発スケジュールには変数が多く、正確な納期を伝えられぬ中、受注交渉を重ねながらも新規契約は見送っている状況。三菱航空機は7月に英国で開かれる航空宇宙産業展「ファンボロー国際航空ショー」でMRJの初の飛行展示を実施する計画で、アピールできなければ航空会社からの信頼を失いかねない。  日刊工業新聞2018年6月5日

MRJ、未完のまま撤退の可能性…三菱重工、凄まじい凋落

2018.05.05 文=小川裕夫/フリーランスライター Business Journal

 三菱グループのなかでも多大なる影響力を誇る三菱重工業・三菱UFJ銀行・三菱商事の3社は、三菱御三家とも称される。その影響力は絶大だ。三菱グループは、三井・住友といった財閥系では新興でありながら、“組織の三菱”とされ、結束力が堅いことでも知られる。

 三菱グループの中核をなすのは、三菱金曜会と呼ばれる三菱系列企業の会長・社長による懇親会に参加している主要27社だ。その金曜会のなかでも、三菱重工は絶対的な存在として権勢を振るってきた。三菱重工は祖業の造船業を軸にして、軍事産業や原発・火力発電などの事業を展開してきた。その規模もさることながら、三菱重工の“仕事”は、国家に欠かせない事業、というよりも国家そのものだった。

 三菱グループ内では「三菱は国家なり」という言葉がある。これは「三菱は私利私欲ではなく、国家のために働く」という企業理念を表しているが、その半面で「三菱が国家を支えている」という強い自負の表れでもある。こうした言葉からも三菱の独尊ぶりは窺える。しかし、この言葉は正確ではない。「三菱は国家なり」なのではなく、実体は「三菱重工は国家なり」なのだ。

「三菱重工は、グループ内では絶対的な権力を握る“長男”という扱い。それだけにプライドは高い。2000年代までグループのリーダーたる実力を備えていた。最近は、プライドばかり高い“扱いづらい長男坊”と揶揄されている状態です」(経済誌記者)

 そんな国家を裏で支える巨大な力を持つ大企業が今、大きく揺れている。三菱重工が手掛けている事業が、軒並み不振に喘いでいるのだ。

三菱重工本体にも不振の影

 三菱重工は1970年に絶頂期を迎え、その後も長期にわたって我が世の春を謳歌していた。しかし、2016年に子会社の三菱自動車で燃費データ不正が発覚。三菱自はたびたび不祥事を起こし、そのたびに三菱重工は尻拭いをさせられてきた。そこには三菱の長男坊であるがゆえの責任感もあっただろうが、なによりも三菱自は三菱重工が1970年に一部門を分離独立させた会社だという側面も影響している。

 三菱重工の“直系子孫”でもある三菱自の親会社は、当然ながら三菱重工。三菱自の凋落は、三菱重工の凋落でもある。

 三菱重工を揺るがしているのは、三菱自動車だけではない。三菱航空機もだ。YS−11以来途絶えていた国産旅客機の開発製造を期待されて2008年に設立した子会社・三菱航空機は、三菱リージョナルジェット(MRJ)を同年にロールアウト(報道公開)した。それまでにもMRJは長い雌伏の期間があった。それを経済誌ではたびたび揶揄されている。

 それらの批判に負けず、MRJはようやくロールアウトした。しかし、その後もパッとしない。MRJは「もうすぐ」「間もなく」と期待をもたせながら、延期に次ぐ延期を繰り返している。その様子は、「まるで、ソバ屋の出前」(前出・経済誌記者)。そのためマスコミの間では「MRJは、このまま飛ばない可能性が高い」「単なる金食い虫」との認識が強まる一方だ。

 三菱重工が事業化のために設立した子会社は、揃いも揃って不振に喘ぐ。子会社だけなら、三菱重工の傷は浅い。だが、ついに三菱重工本体にも不振が忍び寄っている。

 今年に入って、三菱重工は祖業である造船事業を、横浜に本社を構える三菱造船と長崎に本社を構える三菱重工海洋鉄構の2社に分社し、子会社化した。三菱重工が造船業を分社・子会社化したことを「祖業を捨てた」と判断する関係者も少なくない。今後、2社がどのような成長戦略を描くのかは不明だが、造船業界はM&A(合併・買収)を加速させており、他社に飲み込まれる可能性も指摘されている。

 また、三菱重工はエネルギー事業でも苦しい立場にある。三菱重工は日立製作所と共同で火力発電を手がける三菱日立パワーシステムズを14年に設立。火力発電では世界3位の規模を誇る同社だが、18年3月期の営業利益見通しは大幅に下方修正した。東芝がコケた原発事業でも、三菱は同じ轍を踏もうとしている。

 御三家の長男である三菱重工が醜態を晒しているなか、次男坊の三菱UFJ銀行もマイナス金利で苦しんでいる最中だ。

三菱財閥内の政権交代

 そんな沈滞ムードがはびこる三菱御三家のなかで、ひとり気を吐くのが三男坊の三菱商事だ。

 三菱自は不祥事を起こして日産グループ傘下になったが、それでも三菱重工が一定の株式を保有していた。このほど、三菱重工は保有する株式を三菱商事に売却する。業界内では総合商社は7大商社と言われるが、現在のトップは伊藤忠商事。しかし、伊藤忠は非財閥系であり、歴史や組織力を勘案すると「総合力は三菱商事が格段に上。組織力は段違い」とライバルの総合商社社員は口にする。

 三菱商事は食料ビジネスも絶好調。ノルウェーのサーモン養殖業者に傘下におさめ、コンビニ大手・ローソンも完全子会社化した。さらに、中国でも食料分野を拡大させている。従来から三菱商事が得意としている海外におけるガスや石炭などの資源の権益確保にも余念がない。

 また、資源の権益確保のみならず三菱重工の領域であるエネルギー事業にも積極的に進出して、勢力の拡大を図っている。

 三菱重工の不振によって、三菱グループ内のパワーバランスが変化を見せている。三菱重工から三菱商事へ――。三菱グループ内での政権交代が、現実味を帯びてきた。 (文=小川裕夫/フリーランスライター)

MRJ開発子会社へ今期中に資本増強、債務超過解消=三菱重社長

2018年5月8日 REUTERS

 [東京 8日 ロイター] - 三菱重工業(7011.T)の宮永俊一社長は8日の決算会見で、債務超過に陥っているジェット旅客機「三菱リージョナルジェット(MRJ)」の開発子会社、三菱航空機(愛知県豊山町)の資本増強を検討しており、2018年度(今期)中に債務超過を解消する意向を明らかにした。

 MRJは量産初号機の納入延期が度重なり、開発費が膨張。三菱航空機は債務超過に陥っている。現在計画している2020年半ばの初号機納入の厳守に向けて、資本増強により財務基盤を強化する。

 宮永社長は、債務超過額が「現時点で約1000億円」と明かした。具体的な資本増強の方法については「関係者と協議中」として言及を控えたが、「債務超過をなるべく早く解消したい」と述べ、「今年度中に全部(資本増強などの対応を)終わらせる予定」と語った。また、長期的に事業を進める体制を整え、「来年の春くらいから新しい形が進んでいく」との見通しを示した。

 三菱航空機は資本金1000億円で設立され、2008年4月に営業を開始。出資企業には三菱重工(出資比率は64%)のほか、三菱商事(8058.T)やトヨタ自動車(7203.T)(同、各10%)、住友商事(8053.T)や三井物産(8031.T)(同、各5%)などが名を連ねる。

MRJ、顧客の不安払拭へ初の「飛行展示」へ

2018/4/18 日本経済新聞

 国産ジェット機「三菱リージョナルジェット(MRJ)」を開発している三菱航空機は18日、7月に英ファンボローで開く国際航空ショーでMRJの機体を実際に飛ばす「フライングディスプレー(飛行展示)」を初めて実施する方針を明らかにした。2017年のパリ航空ショーは実機の展示のみだった。顧客の目の前で実機を飛ばし、開発遅れに伴う不安の払拭につなげる。

 18日、愛知県豊山町で日本経済新聞などの取材に応じた三菱航空機の水谷久和社長が「MRJが実際にファンボローの空を舞う姿を世界に示し、MRJへの認識を深めてもらいたい」と述べた。飛行展示する機体は、米国で試験飛行している4機の中から選ぶ。

 MRJは当初計画では13年後半に初号機を納入する予定だったが、設計や仕様変更などの影響で納期の延長を5回繰り返している。世界最大の航空ショーで17年の実機展示に続き、18年は飛行展示へと展示手法を「進化」させる。これでリージョナルジェット機の購入を検討している潜在顧客が抱えるMRJへの不安感を鎮める考えだ。

 現在の開発状況について水谷社長は「年明けに開発状況を棚卸しした結果、昨年から掲げている『20年半ば』までという納期のスケジュールは、ぎりぎり守れる」との認識を改めて示した。18日朝の段階で米国で実施しているテスト飛行の時間は累計1900時間を超えたという。

 17年1月に5回目の延期の理由となった電気配線と計器室配置の見直しについては「設計作業をほぼ終えた」と説明した。設計変更を反映した機体の製造にも着手しており「18年中に設計変更を反映した機体を完成させ、次のステップに入りたい」と強調した。

 ただ、国の「型式証明(TC)」の取得に必要なTC飛行試験については「現在はTC飛行には入っていない」と明らかにした。TC取得に向けて国土交通省や米連邦航空局(FAA)などとは日々、綿密な連携をしており「FAAからは開発作業全体のレベルが上がっていると評価の感触を得ている」という。TC飛行試験の実施時期については言及を避けた。

 三菱航空機は戦後初の民間旅客機「YS―11」以来、約半世紀ぶりとなる国産旅客機の開発を目指して08年4月に設立され、18年で設立10年を迎えた。過去10年の感想について水谷社長は「開発遅れで様々なステークホルダーに迷惑をかけた」としたうえで「文字通り白紙からのスタートで、手探りでここまできた。ようやく、やっと開発状況が見えるようになってきた」と述べた。

 今後については「三菱重工業グループはMRJを長く続けていくことに違いはない」と、グループを挙げて取り組む姿勢を強調した。さらに「まずは20年半ばに向けて、TC取得が最優先だ。その後に量産や機体の改良と、やるべきことは十分にある」という。MRJは事業化当初の計画から、納期が約7年遅れている。「七転び八起き」で航空機事業の離陸を目指す考えだ。

 (星正道、角田康祐)

MRJ、360機発注キャンセルの可能性も…販売できぬまま撤退の最悪シナリオの恐れも

2018.03.08 Business Journal

 三菱重工業傘下の三菱航空機が開発中の国産初ジェット旅客機「MRJ」でキャンセルが出た。

 キャンセルされたのは、米イースタン航空が発注していた40機(オプション分を含む)。イースタン航空は米スウィフト航空に買収され、MRJの購入計画は引き継がれなかった。イースタン航空は4年前にMRJを発注し、2019年に納入が始まる予定だった。この間、三菱航空機の開発が遅れ、イースタン航空への納入のメドは立っていなかった。

 MRJは、初号機をANAホールディングスへ2013年に納入を予定していたが、当初から7年遅れの20年へとずれ込んだ。納入遅れは1回でも致命的なのに、それが5回も続いた。

 MRJはこれまでに計447機(オプション契約を含む)を受注してきたが、とうとうキャンセルが出た。今後は計200機を発注した米スカイウェスト航空をはじめ、大口の注文をつなぎとめられるかが焦点となる。日本航空機開発協会調べでは、18年1月末現在の受注実績は正式契約(確定分)が213機、オプション174機の計387機となっている。オプション分がまずキャンセルの対象になる。

 米国のローカル航空会社からの受注の内訳は、スカイウェスト航空が200機、トランス・ステイツ航空が100機、イースタン航空が40機、航空機リース会社のエアロリースが20機。米国からの受注360機は、最悪の場合、残りの320機もキャンセルになる恐れがあるといわれている。

 航空専門家は、MRJの開発費を回収するには最低でも800機以上売る必要があると指摘している。

 三菱航空機は17年3月期決算で、負債が資産を上回る債務超過に陥った。債務超過は同年6月30日の決算公告で開示された。開発の遅れにより費用が膨らんだためで、債務超過額は510億円。累積赤字は1510億円に達した。18年3月期は債務超過、累積赤字ともにさらに膨らむ見込みだ。

 MRJの開発コストは、当初予定の1500億円から3倍超の5000億円以上になると想定されている。三菱重工は開発資金に充当するため、三菱自動車株式の大半を手放す。三菱重工から分離して発足した三菱自動車は不祥事を繰り返し、今は日産自動車の傘下で再建中だ。

 現在は日産が34%を出資する筆頭株主で、三菱重工は子会社などを含めて10%出資している。株式の売却先は三菱商事で、売却額は500億円超とみられている。

 三菱自動車株式の売却によって得た資金で三菱航空機の立て直しを急ぐことになるが、MRJの見通しは暗い。

 ちなみに三菱重工はこれまでも、不動産事業を手掛ける非上場の完全子会社、菱重プロパティーズの株式の70%をJR西日本に970億円で売却している。

ボーイング=エンブラエル、エアバス=ボンバルディアの2強体制へ

 衝撃的なニュースが報じられ、話題になっている。MRJのライバルが相次いで大手航空機メーカーの傘下に入ることになったのだ。

 世界の民間航空機産業は長年、米ボーイングがリードし、欧州航空機メーカーはボーイングに対抗してエアバス・グループを設立した。その後はボーイングとエアバスが激しい受注競争を繰り広げてきた。

 小型機(リージョナル・ジェット)の市場では、カナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルが市場を分け合ってきた。事実上、この2社がMRJのライバルだ。

 ボンバルディアは座席数100〜150程度の「Cシリーズ」の開発につまずき、17年10月にエアバスと提携した。Cシリーズは、現行機種に続く新型機の開発構想がない。そのため、格安航空会社(LCC)などで運航している機種が退役時期を迎えれば、ブラジルのエンブラエルに乗り換えることになるとみられていた。

 これは新規参入するMRJにとって、千載一遇のチャンスだった。こうした流れのなかで、ボーイングのエンブラエル買収プランが浮上したのだ。

 ボーイングはブラジル政府が懸念するエンブラエルの防衛部門に関して、ブラジル政府と協議する方針だという。

 一方、エアバスはボンバルディアの小型機事業に出資することを決めた。

 リージョナル・ジェット市場は今後、エアバス=ボンバルディア、ボーイング=エンブラエルの2強に集約される。この結果、MRJは巨大メーカー2社に挟撃される格好になる。2社に勝てる可能性は限りなくゼロに近いとみる専門家もある。

 かつて三菱重工はビジネスジェット機「MU-300」を開発して新規参入したが、1800億円の累積赤字を出して撤退した苦い経験を持つ。MRJが危機に立たされ、MU-300の悪夢がよみがえってくる。

 三菱重工の宮永俊一社長は2月6日、4月以降の続投を表明した。「今は大きな問題に会社全体で取り組む戦闘状態。(略)戦闘状態のなかで急にリーダーが代わるのはどうか」と話し、MRJの事業化に全力を注ぐ考えを示した。だが、航空機市場の寡占化が進むなか、MRJからの撤退を選択しなければ、傷が大きくなることは避けられないだろう。 (文=編集部)

三菱航空のMRJ初のキャンセル、米航空会社と合意−40機分

2018年1月26日 Bloomberg

三菱重工業傘下の三菱航空機と米イースタン航空は、開発中の国産初のジェット旅客機、三菱リージョナルジェット(MRJ)の購入契約40機(オプション契約含む)をキャンセルすることで合意した。イースタン航空が買収されたことに伴い航空事業から撤退するための措置で、MRJの契約キャンセルは初めて。

 イースタン航空は2014年9月に40機のMRJ購入契約を締結。しかし同社は経営難に陥り、米スウィフト航空が一部事業を買収していた。三菱重工の広報担当者、家近玲子氏は、MRJの契約履行についてはスウィフトではなく引き続きイースタンと協議していたが今回、正式に契約をキャンセルすることで合意に達したと語った。

 その上で家近氏は「イースタン航空側の経営方針変更がキャンセル理由であり、MRJの開発遅延などが要因ではない。現在進めているMRJビジネスや開発や製造に大きなインパクトはない」とコメントした。また、具体的な契約解除の日付など詳細は開示していないと付け加えた。

 MRJの契約数は、最新のロックトン社との購入基本合意分も合わせて合計受注機数は447機(確定243機、オプション180機、購入権24機)だったが、今回のキャンセルで407機となる。

 三菱重工の大宮英明会長はスイスで開催中の世界経済フォーラムのダボス会議で現地時間25日、ブルームバーグ・ニュースの取材に対し、MRJの開発状況の遅れ性能に起因するものではなく、イースタン航空側の経営判断からキャンセルとなる可能性もあるとの見通しを示していた。また、大宮会長は、開発は順調で初号機の納期には間に合うだろうと強調した。

 三菱航空は当初は13年の初号機引き渡しを目指していたが、これまでに納入時期を5回延期。最初の納入先であるANAホールディングスへの20年半ばの納入を最優先し開発を進めている。現在は商用運航に必要な型式証明取得のため米国で飛行試験に取り組んでいる。三菱航空はMRJの新たな契約確保のため2月に開催されるシンガポール航空ショーにも出展予定。

追跡2010:未来背負うMRJ 来月にも生産開始 先端技術を結集 /愛知

2010年08月01日 毎日新聞 地方版

 ◇37年ぶり国産旅客機

 三菱重工業の子会社、三菱航空機(名古屋市)が開発を進める国産初のジェット旅客機「三菱リージョナルジェット(MRJ)」の生産が9月にも始まる。国産旅客機の生産はYS11(プロペラ機)以来37年ぶりで、開発費だけで約1800億円という巨大プロジェクト。新興国の追い上げなどで日本の産業競争力が陰る中、先端技術を結集した航空機開発プロジェクトの成否には、日本と中部地方の未来がかかっている。【宮島寛】

 ■半世紀の悲願■

 三菱重工名古屋航空宇宙システム製作所(名古屋市港区)大江工場にある古めかしい時計台。戦前は零式艦上戦闘機(ゼロ戦)の設計拠点だったこの建物で、三菱航空機によるMRJの開発作業が行われている。

 08年に約200人で発足した三菱航空機には、航空機にあこがれる人々が全国から集結。現在は約1000人に膨れ上がった。技術者は最後の追い込みのため設計端末とにらめっこし、営業担当者は世界各地の航空会社を飛び回っている。

 「みんな、良い飛行機を造り大空に飛び立たせようという夢を持って頑張っている」と三菱航空機の江川豪雄社長は言う。自前の旅客機開発は三菱重工と日本の航空機産業にとって悲願だった。

 戦前、戦中にゼロ戦、紫電改などの名機を送り出し航空機大国だった日本は戦後7年間、GHQ(連合国軍総司令部)に航空機開発を禁止された。62年、三菱重工が川崎重工業などとともにYS11を開発したが、より高速飛行が可能なジェット機化の流れに乗り遅れたうえ高コストも障害になり、73年に生産を終えた。YS11の後に三菱重工が開発したビジネス機(小型機)「MU2」「MU300」も大赤字を出し、旅客機開発は封印された。

 ■世界レベルに■

 再び動き出したのは、中部地方を中心とした国内航空機産業の技術が欧米のライバルに肩を並べる水準に達したためだ。

 三菱重工などの日本勢は、米ボーイングなどの旅客機開発に参画しながら技術を磨き、徐々に分担比率を引き上げてきた。ボーイング機における日本勢の生産比率(機体重量比)はB767で15%、B777で21%、B787で31%に高まっている。特に機体の重量を飛躍的に軽量化できる炭素繊維複合材は、世界首位の東レをはじめとする日本の素材メーカーが先陣を切って開発を進め、世界のメーカーに供給している。

 平地が多く日本の中心に位置する中部圏は、戦前から国内航空機産業の中心地であり続けている。東レが08年に名古屋市に研究拠点を設けるなど関連産業のすそ野も広がってきている。MRJは三菱重工大江工場と飛島工場(愛知県飛島村)で部品を生産。小牧南工場(豊山町)で最終的に組み立て、隣接する県営名古屋空港から世界へ飛び立つ。

 ■他産業も注目■

 MRJの生産開始が及ぼす波及効果にも経済界の期待は大きい。7月2日、名古屋市で開かれた大垣共立銀行の航空機産業セミナーには、自動車部品メーカーの幹部など、募集枠の2・5倍の約250人が会場に詰め掛け「参入条件は何なのか」などの積極的な質問が飛んだ。

 世界のジェット旅客機の運航機数は今後20年で現在の2倍の3万機超に増える見通し。特にMRJのような定員100人弱の中小型機の伸びが大きく、約5000機とされる新規需要のうち、MRJは1000機の受注を目指している。自動車国内生産の先細りが確実な中、新たな部品供給先としての魅力は大きい。

 大量生産による徹底したコスト削減が至上命令の自動車と、部品点数が膨大で生産量は少ない航空機では求められる技術が異なるとされるが、「カイゼンで鍛えられた中部の自動車産業は不良品の抑制率などで航空機産業を上回る」(三菱重工)との指摘もある。MRJの生産開始は、自動車市場の動向に左右されてきた中部経済圏が再浮上のきっかけをつかめるかどうかの試金石にもなっている。

 ◇最大の売りは低燃費

 MRJの最大のセールスポイントは経済性の高さだ。機体価格は30億〜40億円とライバル機と同程度だが、燃費は2割以上よくする計画だ。東レの炭素繊維複合材を尾翼などに使い軽量化を図るほか、米プラット・アンド・ホイットニー製の新型エンジンを採用。世界の航空会社への売り込みを最優先するため、実際の部品国産比率は金額ベースで3〜4割にとどまっている。

 国産部品の代表選手といえる炭素繊維複合材は、重さがアルミの半分で、中小型機ではMRJが初の本格採用になる。座席は自動車大手マツダ系の部品メーカー、デルタ工業(広島県府中町)製。厚みを抑えながらハンモックのように体を包み込む形状が特徴で、中小型機の欠点だった足元の狭さ改善にもつながるという。ナブテスコ(東京)も航空機の姿勢制御システムを請け負っている。

 ただ、航空機の心臓部であるコックピットなどの主要部品は米メーカーへの発注も多く、電源は米ハミルトン・サンドストランド製、油圧システムは米パーカー・エアロスペース製。3〜4割という国産部品比率は三菱重工などが共同開発に参画した米ボーイングのB787とほぼ同水準だ。

 業界の一部にはMRJについて「純粋な国産機とは言えない」との指摘もあるが、三菱航空機の江川社長は「国産化比率を高めるより、生産機数を増やすことで国内産業に貢献できる」と説明する。

 MRJの現在の受注数は125機で、採算ラインとされる350機を下回っている。ただ、急成長が続くアジアなどの新興国では、MRJと同クラスの中小型機が主力となる国内路線の拡充が続く見込みで、景気持ち直しに合わせて問い合わせも増えているという。同社は受注が順調に積み上がれば、量産に向けて国内の取引企業を増やす意向を示している。

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 ■MRJとB747の性能■

 MRJ            B747

 92席       座席数  450席

 35.8メートル  長さ   76.3メートル

 29.7メートル  幅    68.5メートル

 10.4メートル  高さ   19.4メートル

 3370キロ    航続距離 1万4815キロ

 955キロ     最大時速 1047キロ

 2012年(予定) 初飛行  1969年

 ※B747は最新モデルのデータで、初飛行のみ初代機、MRJは90席クラスのデータ

航空業界 民需に順風、軍需は逆風 成長市場アジアで契約争奪戦

2010.07.29 SankeiBiz

BAEシステムズのユーロファイター・タイフーン。民間向けとは裏腹に、軍用機部門は冬の時代を迎えそうだ=21日、英ファンボローで開かれた国際航空ショー(ブルームバーグ)

 航空業界や航空機産業がリセッション(景気後退)から力強く復活しつつある。22日に発表された米航空大手のコンチネンタル航空の4〜6月期の決算は2億3300万ドル(約205億円)の黒字で、前年同期の2億1300万ドルの赤字から回復した。航空機大手の米ボーイングと欧州航空防衛宇宙会社(EADS)傘下のエアバスの受注数はともに上向き、19〜25日に英国で開催されたファンボロー国際航空ショーは活況を呈した。しかし防衛部門は、とくに欧州市場を中心に悪化している。

                ◇

 ≪分析≫

 世界の民間航空部門はリセッションから回復しつつあり、ボーイングとエアバスの2010年1〜6月期の売り上げは大きく改善した。同期の両社の最終受注数は合計268機で、前年同期の199機から急増した。とくにボーイングは力強い復活を遂げている。受注数は188機と前期比で倍増し、キャンセル数が劇的に減少したため最終受注数も151機を確保した。

 エアバスの手持ち受注数は3355機で、ボーイングの3304機に対し若干の優位を保っている。半面、ボーイングは、利益率の高い広胴型航空機の分野に大きな強みを持っている。

 ◆通路1本の小型有望

 またカナダのボンバルディアは、座席数100〜145のCシリーズでボーイングやエアバスとの競争を制し、米リパブリック航空や独ルフトハンザ航空、アイルランドのリース会社LCIからの注文を獲得。今ではブラジルのエンブラエルとともに、利益率の低い狭胴型航空機の分野でボーイングとエアバスの大きな脅威になっている。

 航空機各社は、今後20年で通路が1本の小型航空機の需要が増えるとの見通しから、全体的な需要予測を上方修正している。たとえばボーイングの10〜29年の長期予測では、民間航空機の新規需要を3万900機(3兆6000億ドル相当)としており、09年時点の2万9000機から引き上げた。06年の長期予測と比べると、需要予測は1兆ドル拡大している。新規需要の大部分はアジア・太平洋地域で生まれる見通しだ。

 一方、リセッション期に航空産業の利益を支えた防衛部門は、今では回復の足手まといになっている。

 欧州の航空防衛部門の見通しはきわめて暗い。たとえば英国政府は、歳出見直しで国防予算を20〜25%削減する可能性を示唆している。さらに「戦略的防衛・安全保障見直し」では高速ジェット戦闘機や戦闘ヘリコプターの一部が優先項目から外され、タイフーンやF35などの戦闘機が大幅に削減されるかもしれない。

 フランス政府はラファール戦闘機やA400M軍事輸送機の配備計画の維持を約束しているが、その他の航空機の製造は削減されそうだ。すでに68億ドル相当の契約が延期され、空中給油機の調達やミラージュ2000Dの更新に影響が出ている。

 欧州各国は、自国の防衛産業を守るために、アジアへの輸出契約を勝ち取ろうと激しく競っている。主なものでは、インドの新型戦闘機の供給契約(110億ドル相当)について、欧州の3社(ユーロファイター、ダッソー、サーブ)、米国のボーイングとロッキード、ロシア航空機製造会社ミグ(RACミグ)が競争入札を行っている。

 ◆米も国防費削減へ

 米国の国防予算はほぼ横ばいを維持しているが、01年以降の右肩上がりの時代は終わり、削減が始まっている。一部の調達計画は先行きが不透明だ。

 全体的にみて、欧州勢ではすでに米国で大きな実績を上げている英BAEシステムズやロールスロイス、伊フィンメカニカなどがよいポジションにつけている。逆に言えば、EADSは米国での存在感を高めるために重点的な投資が必要だ。

 米空軍の次期空中給油機選定計画では、EADSは米議会で「部外者」との位置づけに甘んじている。

                ◇

 ≪結論≫

 世界の民間航空部門が力強い成長を始めている。とくに長期的な成長の見通しは明るく、航空機メーカーは活気づいている。しかし防衛部門は、欧州を中心に需要が落ち込んでいる。欧州各国の政府が国防費の削減を検討するなか、BAEやフィンメカニカなど一部の欧州企業は、比較的安定した規模を保つ米国の防衛市場を活用することで打撃を吸収できるだろう。しかしEADSの立場は不安定になるかもしれない。(オックスフォード・アナリティカ)

国産ジェット「MRJ」苦戦か、ファンボロー航空ショーの小型機受注合戦

2010年07月22日 AFP BPNews(発信地:ファンボロー/英国)

英南部ハンプシャー(Hampshire)で開催されたファンボロー国際航空ショー(Farnborough International Airshow)で、デモ飛行するロシア航空機、スホイ(Sukhoi)の新型旅客機「スーパージェット100(Superjet 100)」(2010年7月21日撮影)。(c)AFP/BEN STANSALL

【7月22日 AFP】英国で開催中のファンボロー国際航空ショー(Farnborough International Airshow)で、小型ジェット機の受注競争が激しさを増している。ブラジルやロシアのメーカーが21日、相次いで大量受注を取り付けるなか、国産初の小型ジェット旅客機「三菱リージョナルジェット(Mitsubishi Regional Jet、MRJ)」は苦戦を強いられている模様だ。

 航空機市場では近年、アジアを中心とした新興国のめざましい経済発展や欧米での経済回復基調を背景に、短距離路線向け航空機の需要が急増している。ファンボローでも、MRJのほかロシア・スホイ(Sukhoi)の「スーパージェット100(Superjet 100)」、ブラジル・エンブラエル(Embraer)の、カナダ・ボンバルディア(Bombardier)の「Cシリーズ(CSerie)」などがしのぎを削っている。

 スホイは21日、航空機リース会社パール・エアクラフト(Pearl Aircraft)から「スーパージェット100」30機と追加購入オプション15機の受注を取り付けたと発表。また、インドネシア国内航空のカルティカ航空(Kartika Airlines)とも同型機30機の仮契約を結んだことを明らかにした。

 これまでに大きな成果を手にしたのはエンブラエルで、20日までに英格安航空フライビー(Flybe)と米リパブリック航空(Republic Airlines)から小型ジェット機「E175」「E190」を最大140機、総額約50億ドル(約4300億円)相当を受注したと発表した。 

 対照的なのが三菱航空機(Mitsubishi Aircraft)で、MRJはいまだに1機も新規受注できていない。三菱航空機の営業担当者は「積極的に売り込み努力はしているが、今のところ成果はない。航空ショーの期間はまだあるので、受注までこぎつけたい」と語った。

 ボンバルディアの成果も低調で、現在、カタール航空(Qatar Airways)とCシリーズの受注を交渉している段階だ。

 今後は中国メーカーの参入も予想されることから、小型ジェット機市場における受注合戦は一層、過熱しそうだ。(c)AFP/Ben Perry

「ホンダジェット」空へ…米で11月に初のフライトテスト

2010/05/25 Iza

 ホンダは24日、開発中の小型航空機「ホンダジェット」の量産機の初フライトテストを、今年11月に米国で行う方針を明らかにした。顧客への引き渡しは2012年8月ごろから始める。参入を発表した06年当初の予定よりは遅れたが、自社開発のエンジンと機体を組み合わせた、世界的にも珍しい新型機が、まもなく“離陸”する。

 ホンダは自動車で培ったエンジンなどの技術を活用して航空機を製造するため、06年に米子会社を設立して態勢を整えてきた。同年から米国で、08年からは欧州で受注を開始。当初は10年中に引き渡しを始める予定だったが、「主要部品の納入予定時期の変更」(ホンダ)などにより量産が遅れていた。

 ホンダの研究開発子会社、本田技術研究所の川鍋智彦社長は「エンジンと機体の両方を新規で投入するという新しいチャレンジだけに課題も多かったが、ようやくスケジュールが固まってきた」と話す。

 ホンダジェットは7〜8人乗りで、主翼の上にエンジンを配置し、空気抵抗を抑えて飛行効率を高めたのが特徴。価格は約390万ドル(約3億5千万円)。ホンダにとって航空機への参入は、創業者の故本田宗一郎氏が夢見た“悲願”だ。

国産初の旅客ジェット 部品調達、世界市場での「売りやすさ」優先

2010/03/25 Iza

 ■MRJ 将来見据え決断

 日本の繊維技術は、航空機の素材革命を起こしたが、エンジンでも日本は、世界の3強に迫る技術力を備えている。

 ◆3強に迫るエンジン

 東京都昭島市のIHI史料館に、日本で最初に開発されたジェットエンジンが展示されている。「ネ20」。海軍と現在のIHIが一体で開発し、特殊攻撃機「橘花」に搭載された。史料館館長の宮本謙三さんは「ドイツから、たった1枚のBMW003Aの断面図を入手し、短期間で製造した。日本の技術水準の高さを証明した」と話す。

 日本は敗戦で航空機開発を禁止され、空白の7年間を余儀なくされた。IHIは、他社に先駆けて開発を再開したが、世界の技術はずっと先にいた。それでも、「欧米メーカーの力も借りながら、失われた年月を着実に埋めてきた」(宮本さん)。

 史料館から車で20分、IHI航空宇宙事業本部の瑞穂工場では、来年就航するボーイング787の国際共同開発エンジン「GEnx」が生産されている。開発は米ゼネラル・エレクトリック(GE)主導とはいえ、エンジンの主要部分を担当し、ノウハウも積んだ。

 OBには宇宙飛行士の野口聡一さんもいる。「ここで働くのはジェットエンジンをやりたくて集まってきた者ばかり」(佐藤亮一工場長)と、「国産」にかける意気込みは十分だ。

 航空機エンジン市場は、米GE、英ロールス・ロイス、米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)が6割以上のシェアを握る。ただ、「コストや環境対応で、航空会社の注目は省エネエンジンに集まっている」(丸紅の遠矢源太郎・民間航空機部長)として、ここでも日本の出番がめぐってきた。

 ◆「総合力つける」

 しかし、国産初の旅客ジェット機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」の開発にあたって、三菱航空機はひとつの決断をした。

 技術担当の藤本隆史常務は、採用した機材について、「われわれの要求を満たす製品を国内外に広く求めた」と説明する。純国産にこだわらず、知名度のあるメーカーを使い、世界市場での「売りやすさ」を優先させた。結果的に、海外調達比率は7割に達し、「これで国産機と呼べるのか」といった声も、関係者から上がった。

 MRJを国家プロジェクトとして支援する政府が目指すのも、目先の国産比率の引き上げではない。「ボーイングの下請けを脱却し、基本設計から部材調達、販売までを手がける航空機メーカーとしての総合力をつける」(経済産業省航空機武器宇宙産業課の広瀬直課長)ことだ。

 ボーイングのような大手になれば、部品やシステムの選定まですべてを決められる。今は、力が及ばなくても、「国産技術を搭載できるときがくる」(同)という将来像がある。

 ■市場広い中距離型で勝負

 国産プロペラ旅客機のYS11は、技術力はあったが営業面で失敗した。海外にも売り込んだが、相手の言い値で妥協し、採算割れが続いた。民間6社が参画した日本航空機製造は「経営責任が明確でなく、売れば売るほど赤字に陥る体質を国会で追及され、YS11は182機で生産を終えた」(市場関係者)。

 中距離型のリージョナルジェット機市場は、米ボーイングや欧州エアバスの2強と競合しない期待の市場だ。

 ブラジルのエンブラエルは、1994年の民営化後、地方航空だけでなく大手のコスト削減ニーズを取り込み、ジェット機で世界第3位の航空機メーカーに躍進した。急成長の背景にあったのは「中距離専用の設計や、整備のしやすさへのこだわりだ」と、日本でエンブラエル機を販売する丸紅の遠矢源太郎・民間航空機部長はアピールする。

 国内でも、日本航空がエンブラエル機を6機導入し、2010年度内に10機まで増やす。MRJの開発がもっと早ければ、新興のエンブラエルの需要を取り込めたかもしれない」と国産ジェット機開発に奔走したことのある政府関係者は悔しがる。

 三菱航空機の江川豪雄社長は、座席数が100席未満のリージョナルジェット機市場について、「今後20年で5000機以上になる。後発の日本が食い込む余地は十分あり、15年程度で1000機を販売したい」と語る。360機といわれる採算分岐点を大きく上回る計画だ。

 MRJは全日本空輸の25機に加え、昨年10月には米中西部の地方航空、トランス・ステイツ・ホールディングス社から100機を大量受注した。最大市場の米国での受注をきっかけに、ようやく世界販売の視界も開けてきた。

 経営再建中の日本航空も、保有機を大型機からリージョナルジェット機にシフトすることから、ビジネスチャンスは広がる。

 とはいえ、競合相手はエンブラエルだけではない。中国は、経済協力と一体で、ラオスに「ARJ21」の販売攻勢をかける。ロシア勢も低価格機で本格参入し、戦国時代を迎える。

 YS11の苦い経験をもとに、純国産への執着を捨ててまで世界に売り込む勝負に出たMRJ。環境に優しい省エネ機が日本の航空機産業の将来を担う。

ブリヂストン、国産ジェット MRJ にタイヤを供給

2010年01月12日 response

ブリヂストンは、同社製の航空機用ラジアルタイヤが三菱航空機が開発を進めている国産ジェット機である次世代リージョナルジェット機Mitsubishi Regional Jet(MRJ)に装着されることが決定したと発表した。タイヤは、MRJの降着装置システムを担当する住友精密工業へ納入する。

ブリヂストンの航空機用タイヤはこれまで100席以上の大型航空機向けに供給してきたが、今回新たに70 - 90席クラスのリージョナルジェット機であるMRJにも供給、事業領域を拡大する。

今回MRJに装着される主脚用タイヤは、軽量化と耐久性能向上の両立を実現した最新ラジアル構造「RRR(トリプルアール)」を採用している。このRRRを採用したタイヤは、エアバス「A380」やボーイング「777-300ER」に採用されているほか、ボーイング「787」やエアバス「A350XWB」への採用も決まっている。《編集部

日の丸ジェット“空中戦” 大量受注で上昇気流

2009/11/14 Iza

【ドラマ・企業攻防】

 国産初のジェット旅客機「MRJ(ミツビシ・リージョナルジェット)」が、米地域航空会社から100機の大量受注を獲得して上昇気流に乗り、猛烈な売り込み攻勢をかけている。開発途中で実物も実績もないうえ、未曾有の航空不況の逆風が吹き付ける。目標の1千機の受注は容易ではないが、低燃費の高い戦闘力で、カナダのボンバルディアなどライバルとの“空中戦”を制す構えだ。

 ■実機なしの不利

 「実機がない中で戦うのは、どう考えても不利。ライバル機で運航している航空会社から受注を獲得できた意味は大きい」

 三菱重工業の子会社で開発を手がける三菱航空機の滝川洋輔営業部長は、こう力を込める。

 同社は10月2日に米地域航空会社大手トランス・ステーツ・ホールディングス(TSH)と100機の受注契約を結んだと発表した。それまでは全日本空輸からの25機だけにとどまっており、初の海外受注だ。

 TSHが大量発注に踏み切ったニュースは世界の航空業界に伝わり、「スタッフを送り込むと、格段に話を聞いてもらえるようになった」(滝川部長)という。営業部隊の意気は上がっている。

 ■“戦闘力”は低燃費

 TSHからの受注は、MRJの“戦闘力”を証明すると同時に、6年間流し続けた汗の結晶でもある。

 TSHのリチャード・リーチ社長は10月2日の会見で、「これほどの規模の発注を今の経済情勢で決定するのは容易ではなかった」と心情を吐露した。

 MRJは1機30億〜40億円とされる。開発中に発注する“ローンチカスタマー”の特典で、かなりディスカウントされているもようだが安い買い物ではない。決断の最大の理由は、三菱航空機の江川豪雄(ひでお)社長が「他機より20%は改善される」と胸を張る燃費性能だ。

 米プラット&ホイットニー製エンジンの採用に加え、独自の空力設計やアルミ材を主翼に用いた軽量化など、最新技術により実現した。

 TSHとの関係構築は、まだ事業化を決断する以前の6年前にさかのぼる。航空機リース事業でTSHと付き合いのあった三井物産から紹介してもらい、それ以降、絶やさず情報交換を続けてきた。

 平成19年のパリ航空ショーに初めてMRJの客席のモックアップ(模型)を展示した際には、ブースを訪れたリーチ社長が「検討材料にしたい」と依頼。設計メンバーがミズーリ州セントルイスの本社まで苦労して運び込むなどの熱意で口説き落とした。

 ■誤算はJAL

 昨秋の米国発の金融危機と新型インフルエンザのダブルパンチで、世界の航空会社の業績は軒並み悪化している。その中でも、運行効率を格段にアップできる50〜100席クラスのリージョナルジェットへの需要は旺盛だ。

 今年9月末時点の受注機数は、予約金などにより仮押さえする「オプション契約」を含め約5500機に上る。内訳は、がブラジルのエンブラエルが2772機、カナダのボンバルディアが2248機と、“2強”が独走している。

 さらに中国の官民メーカー、COMACが開発を進める「ARJ21」が来年にも就航する。「2強はMRJよりARJ21をライバル視している」(業界関係者)という強敵だ。

 三菱航空機では、今後20年間で約5千機の需要があるとみており、江川社長は「1千機は取りたい」と意気込む。

 「これまでの研究開発費などを考えると、採算ラインは500機」(松本康宏・新生証券アナリスト)といわれており、何としても、その半分はクリアする必要がある。

 誤算は、経営危機に陥っている日本航空だ。「日本のエアラインに買ってもらえないのは、海外に売り込む際に大きなハンデになる」(滝川部長)というのが三菱航空機の本音だ。

 だが、再建計画は迷走気味で、高効率の最新機種の導入が再建にも不可欠とはいえ、発注を決められるような状況ではない。

 業界では「国内の受注は100〜200機にとどまる」(松本氏)との見方がもっぱらだ。

 それだけに、ライバルがひしめく海外市場の開拓が重要になる。

 「YS−11」以来40年ぶりの国産旅客機であるMRJは、敗戦で開発を制限されてきた日本の航空産業全体の悲願だ。初号機の納入が予定されている26年1〜3月まで残すところ約4年。営業部隊の奮闘は続く。(那須慎一)

国産ジェット 初海外受注、米社から100機超 三菱重工

2009年10月02日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 三菱重工業が、2012年の初飛行を目指して開発中の国産初のジェット旅客機「三菱リージョナルジェット」(MRJ)について、海外の航空会社から初めて受注したことが2日わかった。受注は米トランス・ステート航空からで、全日本空輸に続いて2社目。100機を超える大量受注で、国産ジェット機事業の成功に弾みがつくとみられる。

 三菱重工の子会社「三菱航空機」が2日午後、発表する。

 MRJは中距離用の小型ジェット機で、燃費の良さが特徴とされる。採算に乗せるには300機以上の受注が必要とされているが、これまでは、08年に全日空から25機の受注を得たのにとどまっていた。

三菱の国産ジェット、納入3か月遅れに

2009年09月10日 AFP BBNews(発信地:東京)

都内の三菱重工本社で公開された、国産初の小型ジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット、Mitsubishi Regional Jet)」の模型(2007年10月9日撮影)。(c)AFP/TOSHIFUMI KITAMURA

【9月10日 AFP】三菱重工業(Mitsubishi Heavy Industries)の子会社、三菱航空機の江川豪雄(Hideo Egawa)社長は9日、開発中の国産初の小型ジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット、Mitsubishi Regional Jet)」について、納入が当初予定から3か月遅れて2014年初頭にずれ込むと発表した。

 客室および貨物室のスペースを拡大するための設計変更と、主翼の材料変更が理由。主翼には当初、軽量化をめざし炭素繊維複合材の使用を予定していたが、期待したほどの効果が得られないことが判明したため、アルミ材に変更する。

 MRJについてはこれまでに全日空(ANA)向けに25機を受注しているが、江川社長は、他航空会社からの発注も「間違いなくある」と発言。現在開発中の70〜90人乗りの機体に加え、欧州向けに100人乗りの機体を開発する計画も明らかにした。 (c)AFP

国産ジェットMRJ「世界の評価高い」 航空宇宙展で模型公開

2008.10.01 MSN産経新聞

 国産初の小型ジェット旅客機「MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)」の事業化を担う三菱航空機(名古屋市港区)は、1日から横浜市西区みなとみらいのパシフィコ横浜で開幕した「2008年国際航空宇宙展」で、MRJの実物大の室内模型(モックアップ)を公開した。

 新規に開発した客席は背もたれを大幅に薄くして足元に広い空間を確保し、快適性を高めた。同型機と比べて2、3割向上する燃費性能と合わせ、内外の航空会社にアピールする。

 三菱航空機は平成23年の初飛行、25年の就航を目指しているが、現在の受注実績は全日本空輸(ANA)からの25機だけ。ただ、三菱航空機の戸田信雄社長は同日、会場で記者団に対し、「燃料高はMRJの追い風になる。航空会社からの評価は高い」と述べ、今後の受注拡大に自信を示した。

“非常識”なヒコーキ ホンダジェットの勝算

2008/09/26 東洋経済

 「まるでパンケーキのように売れていくじゃないか」。2006年10月の全米ビジネス航空機協会ショー。初日から3日間で100機を超える受注を獲得する史上初の出来事に、周囲は一様に驚いた。

 熱烈な歓迎を受けたホンダジェット。本田技研工業が100%出資するホンダエアクラフトカンパニー(米国ノースカロライナ州)の藤野道格(みちまさ)社長はこの日を一生忘れない。「図面段階では99%の人がアグリーだ、こんな飛行機売れないと言った。でもあの日、『こんな美しい飛行機は見たことがない』というのがいちばんうれしい賛辞だった」。

 完成までには足掛け20年の歳月を要した。1986年、本田技術研究所が埼玉に基礎研究センター(F研)を設立したのがすべての始まり。のちに二足歩行ロボット「アシモ」やバイオエタノール技術等を生み出すことになる、いわば「何でも研」に、当時入社3年目だった藤野氏はじめ若者たちが集められた。

 当時はまったくの白紙。さっそく米国ミシシッピ州立大学へ“出稽古”に出される。当時いちばん年下だった藤野氏は、最初の1年間、前掛け姿で型のヤスリがけばかりしていた。だから、今では部品を見ただけで重さがわかる。飛行試験では副操縦席で、気持ち悪さと戦いながらデータを紙に書き込んだ。スピードや高度は体にたたき込まれている。「僕は自分でコンセプトを考えて、自分で造って、できれば自分で売りたい性格」。大学の航空学科は出たが、日本の航空機メーカーでは機体の一部分を下請けで設計するような仕事しかできない。それならクルマをやろうとホンダに入った青年が、航空機でそれをやってのけた。幸運な巡り合わせというのは実在するのだ。

 米国でも技術が細分化しすぎて、全体がわかる技術者は減りつつある。だからこそ、自らの手で一から十まで造り上げたホンダジェットが米国人にはまぶしい。

 ホンダは92年に初号機MH02を完成させたが、商品化には至らなかった。一時は撤退かと思われたが、藤野氏らが当時の川本信彦社長らに掛け合い、事なきを得た。それからさらに10年余。ホンダジェットはどこにも比べるもののない、斬新な飛行機に仕上がった。

 今年5月からはヨーロッパでも受注を開始した。「米国と欧州の市場規模は7対3か8対2と見ていたが、実際は同じくらい」(藤野社長)とうれしい誤算。数字はまだ未公表だが、滑り出しは好調のようだ。

 10年後半の初号機納入まで800日。この小さな飛行機が大空に飛び立つ日を、世界中が待っている。

競争激化の小型旅客機市場 日の丸ジェット、これから正念場

2008/03/29 FujiSankei Business i.

 三菱重工業が国産初の小型ジェット旅客機「MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)」の事業化を決めたことで、約40年ぶりに国産旅客機プロジェクトが始動する。欧米航空機メーカーの「下請け」にとどまっていた日本勢にとり、技術革新を促すジェット旅客機への参入は官民の悲願だった。ただ、事業化を決めたとはいえ、軌道に乗せるには海外市場の開拓など数々の難問が待ち受ける。「日の丸ジェット」の正念場はむしろこれからだ。

 「わが国の基幹産業の一端を担えると信じている」。佃和夫社長は28日の記者会見でこう言って胸を張った。

 ただ、高成長が期待されている小型ジェット機市場は、カナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルの「2強」のほか、08年以降にロシアと中国が参戦。今後世界で受注競争が激化する見通しにあり、そこに割って入る格好になる。今回全日空が購入を決定、日航や一部アジアの航空会社も購入に動くとみられるが、機数は100機に届かず採算ラインとされる350機のメドは立っていない。

 また、三菱重工は旅客機分野の経験、ノウハウが乏しい。「欧米の航空機メーカーと比べると、こちらの要求の理解度など意思疎通のスピードが異なる」(全日空関係者)との指摘もある。

 三菱重工も事業に参画した「YS−11」は、販売サービス態勢の確立が遅れ、巨額の赤字を抱えて1973年に生産終了に追い込まれた。同じ轍を踏まないためにも、航空会社のニーズに機敏に応じる態勢の構築が求められる。

 一方、航空機のエンジン選定は、リスクを回避するためni実績を積んだエンジンの改良版を採用するケースが多い。これに対し、MRJはまだ搭載実績がない米プラット&ホイットニー(P&W)社が開発するエンジン「GTF」を搭載する。燃費性能は優れるものの開発リスクは既存エンジンに比べて少なくない。

 日の丸を背負って発進するMRJだが、世界の航空各社の見方はまだ厳しいのが現状だ。MRJを成功させるには米ユナイテッド、独ルフトハンザなど海外のメジャー航空会社から受注を早期に確保して信認を得ることが不可欠だ。「10年間は赤字覚悟」(三菱重工幹部)に位置づけるMRJだが、まずはスタートダッシュがカギを握りそうだ。(小熊敦郎)

国産ジェット機が始動 三菱重工が事業化決定

2008/03/28 中国新聞ニュース

 三菱重工業は二十八日、初めての国産ジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」の事業化を決定したと発表した。約四十年前に開発されたプロペラ機「YS11」以来の国産旅客機計画が本格始動した。

 三菱重工は航空機事業のための新会社「三菱航空機」を四月一日付で設立する。トヨタ自動車、三菱商事、三井物産、住友商事、日本政策投資銀行などに出資を要請したという。

 三菱重工は昨年、受注活動を開始。全日本空輸が二十五機購入することを決め、日本航空も検討中。海外ではアジアなどの航空会社が購入に前向きな姿勢を示している。三菱重工は今後も着実な受注が見込めると判断し、事業化に踏み切った。

 MRJは七十―九十人乗りの小型ジェット旅客機で、価格は一機三十億―四十億円。開発費約千五百億円のうち、政府が五百億円を拠出する。米航空機エンジンメーカー「プラット・アンド・ホイットニー」の最新エンジンを採用した。

ベトナム、中東と購入交渉 国産ジェット機が海外へ

2008年03月25日 中国新聞ニュース

 三菱重工業が開発を進めているジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」について、国営ベトナム航空やアラブ首長国連邦(UAE)のエミレーツ航空などが、三菱重工との間で購入に向けた交渉をしていることが25日、明らかになった。全日本空輸や日本航空に加え海外からの受注にもめどが立ったことから、三菱重工は月内にもMRJの事業化を発表し、2012年の就航を目指す。

 政府も貿易保険などを活用して資金面で支援。プロペラ機の「YS11」以来、約40年ぶりとなる国産旅客機の世界進出を後押しする。

 MRJは、70−90人乗りの小型旅客機で、国内では全日空などが計70機程度を購入する方向。利益を得るには約350機の受注が必要とされ、三菱重工は各国の航空会社に購入を打診している。

国産ジェット事業化目指す 三菱重工の大宮次期社長

2008年01月29日 中国新聞ニュース

 三菱重工業は29日、大宮英明副社長(61)が4月1日付で社長に昇格する人事を発表した。佃和夫社長(64)は代表権のある会長に、西岡喬会長(71)は取締役相談役に就く。大宮氏は29日、都内で記者会見し、受注活動を展開している国産小型ジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」の事業化について「国産機実現の悲願に向けて、何とかこぎつけたい。必ずや活路はある」と自信を見せた。また、「国内を重視しながらも、海外にかなり軸足を移した事業運営をしたい」と抱負を述べた。

 大宮氏は航空宇宙部門で約30年の経歴を持ち、佃氏は大宮氏を後任に選んだ理由について「三菱重工は航空機分野で世界に攻めていかねばならない。(大宮氏は)航空機の長い経験があり、的確な判断が期待できる」と説明した。

国産機実現に向け支援強化 国交省、技術基準策定へ

2008年01月13日 中国新聞ニュース

 国土交通省は13日までに、機体の安全性を審査するために必要な「技術基準」を策定する「航空機技術基準企画室」を新設し、三菱重工業(東京)が開発を進めている国産の小型ジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」への技術面での支援を本格化させることを決めた。

 1973年に生産終了したプロペラ機「YS11」以来、国内では30年以上旅客機が生産されておらず、MRJ実現には新たな技術基準の策定が課題。経済産業省が開発費の3割程度を支援する方針で、国交省の態勢も強化されることで、日本の航空界にとって「悲願」と言われてきた国産旅客機の生産再開実現に一歩近づくことになりそうだ。

 MRJは70−90人乗りの双発ジェット機。実現には、総額で約1500億円とされる開発費の調達や、同タイプの競合機が多数ある中で、導入する航空会社をいかに増やせるかが今後の大きな課題。

“悲願”日の丸ジェット受注へ…三菱重工が旅客機仕様を決定

2007/10/10 FujiSankei Business i.

事業化は来春判断

 三菱重工業は9日、2012年就航を目指す国産ジェット旅客機「MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)」の仕様を決定し、受注活動を始めると発表した。心臓部のエンジンには燃費性能の優れた米プラット&ホイットニー(P&W)社製を採用した。受注状況をみながら、来春に事業化の最終判断を下す。悲願の“日の丸ジェット”の離陸がいよいよ最終段階に入った。

 三菱重工の佃和夫社長は同日の会見で、「課題を克服できる見通しがたった。長く欧米企業のパートナーにとどまってきた国内航空機産業の宿願達成に挑戦する」と述べ、事業化に強い自信を示した。価格は「30億から40億円程度」という。

 エンジンの選定ではメーカー3社と協議していたが、P&Wが新開発したエンジン「GTF」を選んだ。燃費を従来比2〜3割向上させたほか、騒音が小さく、整備コストを低減できるなどの強みを持っている。

 すでに骨格部分の開発を終えており、エンジンが正式決定したことで、航空会社への正式な販売提案に乗り出す。事業化が可能と判断すれば、来春にも開発や製造、販売を行う新会社を設立し、正式に民間航空機事業に参入する計画だ。

 MRJは隣国など比較的短い距離を飛ぶリージョナル・ジェットと呼ばれる小型機で、座席数が70〜90席。原油高による燃料費の高騰を背景に燃費性能に優れた中小型機への切り替えが進んでおり、リージョナルジェットも今後20年間で5000機の需要が見込まれている。

 三菱重工は「燃費を中心とした圧倒的な性能」(戸田信雄・航空宇宙事業本部長)を前面に打ち出し、先行するカナダのボンバルディアなどのライバル機に対抗する考えだ。最終的に「少なくとも1000機」(佃社長)の受注を目指す。

 国産旅客機の開発は、1962年に初飛行したプロペラ機「YS−11」以来、ほぼ半世紀ぶりとなる。三菱重工業のほかにも、川崎重工業やホンダも計画を進めている。

「民間」が「防衛」上回る 06年度、航空機共同開発で

2007/08/05 中国新聞ニュース

 二○○六年度の日本の民間航空機関連の生産額が、五千九百六十三億円と初めて防衛関連(五千四百二十五億円)を上回ったことが、業界団体の日本航空宇宙工業会の四日までの調査で分かった。民間航空機の国際共同開発が進んだことなどが背景にある。

 生産額は機体や部品生産、修理を含んでいる。国内の航空機産業は戦後、防衛関連がけん引する形で発達、生産額は一貫して民間を上回ってきた。同工業会は、国際的な共同開発のほかに、防衛予算の低い伸びを逆転の理由に挙げている。

 調査によると、民間と防衛を合わせた航空機生産額は、○六年度に過去最高を記録。民間航空機関連が前年度比25%増と大きく伸びたのに対し、防衛省向けが大半の防衛関連は5%減。生産額の比率は民間52%、防衛48%に逆転した。

 ボーイング777に日本企業が21%の部品を供給しているほか、エンジンメーカーへ部品供与していることも、民間関連の生産額の伸びに寄与した。

 次世代中型旅客機ボーイング787に三菱重工業が主翼を納入するなど、同機には日本の企業が全体の35%の部品を納入している。今後も民間が防衛を上回り、日本の航空関連産業をけん引しそうだ。

「日の丸ジェット旅客機」 「離陸」できるのか

2007/06/28 J-CAST

 三菱重工業などが進めてきた初の国産ジェット旅客機「MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)」の開発計画がいよいよ「離陸態勢」に入った。三菱重工は2007年6月18日から1週間、パリで開かれたパリ国際航空ショーで機体のモックアップ(実物大模型)を公開した。2012年の就航を目指して、機体の具体的な仕様や価格を決めて世界の航空各社に本格的に売り込みをかける。

 事業として採算を合わせるためには、航空各社から最低350機の受注を確保する必要があり、商業化までのハードルは高い。これから半年ほどの間が、機体の開発に着手するかどうかの判断を下す正念場となる。悲願の「日の丸ジェット旅客機」は、はたして飛ぶか。

「国産化はこれが最後のチャンス」と経済産業省

 MRJは03年に三菱重工が独立行政法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から助成事業者に選定され、研究・開発を進めてきた小型ジェット旅客機。座席数が70前後と90前後の2種類があり、1、2時間程度から4時間程度までの飛行距離を想定している。

パリでお披露目されたMRJの模型では、主翼など機体の約30%に炭素繊維複合材を採用して軽量化し、機体のフォルムも空気抵抗を減らすなどして、燃料消費量を従来機比で2割削減できるとPRした。また、客室の座席には薄型シートを採用することで乗客の足元空間を広げ、大型旅客機並みの快適さを追求した。

「関係先の反応は上々」(同社)と、まずまずの手ごたえだったようだ。

商業化にこぎつければ、販路を拡大できずに73年に製造中止に追い込まれた唯一の国産旅客機「YS−11」以来の「日の丸旅客機」の復活になる。経済産業省は「国産化はこれが最後のチャンス」と、機体開発事業費全体の3分の1に相当する計400億円を08度からの4年間で支援する方向を示すなど、支援姿勢を強調している。

中国、ロシアも参入狙う小型機市場

MRJを商業化すれば総事業費は4,000億円になるともいわれるだけに、三菱重工が単独で負担するのにはリスクが大きすぎる。商社や銀行などにも資金拠出を要請する予定だが、現段階では実際の需要が読みきれないことから、事業のスキームがまだ固まっていない状況だ。

「採算ラインは350機以上、事業として利益を出すためには600機以上確保したい」(三菱重工幹部) としている。受注の先行状況をみて、進むか止めるかを判断することになる。

国内の航空機市場を見れば、2010年の羽田空港の再拡張にMRJの機材引渡しが間に合わなくなってしまったことが懸念材料だ。この時期に小型機を使う国内地方路線の機体更新が進む見通しだ。だが、MRJは当初30〜50人乗りだった計画をアジアの需要予測などを踏まえて改め、座席数を増やす仕様変更を行ったため、デビュー時期が遅れてしまったのだ。

アジアで航空需要の急成長が見込めるなど、小型旅客機の市場は今後大きく伸びるとされる分野だ。それだけに、現在はカナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルの2社がほぼ市場を独占しているが、中国、ロシアの航空機メーカーも新規参入を計画しており、熾烈な競争が避けられない。

新規参入メーカーである三菱重工にとっては、この分野で知名度が低く、航空機営業の経験もない。価格競争やメンテナンスへの対応も試される。

事業化の可否のリミットは来年春だ。関係者はかたずをのんで注目している。

「三菱ジェット」正念場

2007年06月20日 NB online

エアショーで航空会社に必死のアピール

三菱重工業が手がける国産初のジェット旅客機「MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)」の開発プロジェクトが正念場を迎えている。

立ちはだかる「3つの壁」

 三菱重工は6月18日にパリで開幕する国際航空ショー(エアショー)にMRJの客席の実物大模型を出展する。世界の航空関連メーカーが技術や製品をアピールするエアショーで、MRJに対するエアライン各社の反応を探り、今年度末をメドに事業化の可否を決定する。エアショーでの評価いかんによってはプロジェクトを中止する可能性もある。

 国産プロペラ機「YS-11」が昨年秋に引退したことで、「日の丸ジェット」の実現は官民を挙げた悲願となっている。航空畑出身の西岡喬・三菱重工会長がこの4月、「2期4年」という在任期間の不文律を破って留任したことにも、MRJに対する同社の強い思い入れがにじむ。ただ、MRJの開発費は約1200億円にも上り、350〜400機が売れなければ元が取れないと予測されるだけに、事業化の決断は慎重にならざるを得ない。

 三菱重工のある首脳は「事業化には3つの大きな課題がある」と打ち明ける。その3つの課題とは「国内での数十機から100機程度の先行受注の確保」「機体保険料の負担削減」と「国による支援獲得」。これらは航空機の新規開発にほぼ共通する課題だが、三菱重工にとっては、中でも先行受注の確保が頭の痛い問題となっている。

三菱重工の国産ジェット機計画、欧米大手が開発参加に意欲

2007年02月15日 NIKKEI NeT

 三菱重工業が2012年の運航開始を目指す日本初のジェット旅客機「MJ」の開発計画に海外の航空関連大手が参加へ本格的に動き出した。すでにエンジンでは英ロールス・ロイスが名乗りを上げているが、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が対抗案を提示。航空機電子機器大手の米ハネウエルも参加を打診した。欧米大手の参加はMJの国際的な評価の向上につながり、計画実現に向け一歩前進する。

 GEは昨年末、ライバルの英ロールス・ロイスに競り勝つため、燃費を従来よりも10%改善する次世代エンジン案を三菱重工に提案した。当初は既存エンジンの転用を提案したが、昨年9月の佃和夫三菱重工社長とジェフリー・イメルトGE最高経営責任者(CEO)の会談を踏まえ、本格参入に方針を転換した。

三菱重工の国産ジェット機計画、欧米大手が開発参加に意欲

2007年02月15日 NIKKEI NeT

 三菱重工業が2012年の運航開始を目指す日本初のジェット旅客機「MJ」の開発計画に海外の航空関連大手が参加へ本格的に動き出した。すでにエンジンでは英ロールス・ロイスが名乗りを上げているが、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が対抗案を提示。航空機電子機器大手の米ハネウエルも参加を打診した。欧米大手の参加はMJの国際的な評価の向上につながり、計画実現に向け一歩前進する。

 GEは昨年末、ライバルの英ロールス・ロイスに競り勝つため、燃費を従来よりも10%改善する次世代エンジン案を三菱重工に提案した。当初は既存エンジンの転用を提案したが、昨年9月の佃和夫三菱重工社長とジェフリー・イメルトGE最高経営責任者(CEO)の会談を踏まえ、本格参入に方針を転換した。

ホンダジェット工場建設 米ノースカロライナに

2007年02月13日 Response

 ホンダは13日、航空機事業の「ホンダエアクラフトカンパニー」が米国ノースカロライナ州グリーンズボロ市に新本社と小型ビジネスジェット『ホンダ・ジェット』の生産工場を建設すると発表した。

 本社屋や格納庫などの投資額は約71億円で、今年11月に完成の予定。工場は本社の隣接地に建設する計画であり、別途投資する。

 ホンダ・ジェットは、すでに100機を超える受注を獲得しており、2010年から米国内の顧客に引き渡しが始まる。ホンダエアクラフトは、フル生産時に製造部門も含めて300人強の人員を計画している。《池原照雄》

重工各社 旅客機受注伸びる 悲願の国産機、節目の年

2007/01/28 Iza

 重工業各社の航空機事業の受注が伸びている。各社が開発に参加した米ボーイング社の大型ジェット旅客機「777」が好調なうえ、平成19年に初飛行を予定する中型旅客機「787」の受注も順調だ。三菱重工業が開発中の「三菱ジェット」(MJ)、川崎重工業や石川島播磨重工業が中心となる防衛省向けの新型機開発も節目を迎える。世界経済の成長を背景に航空機需要が増すなか、今年は航空機事業の将来を占う年といえそうだ。(小雲規生)

               ◇

  ≪需要回復と敵失≫

  重工各社は、18年9月中間決算の航空・宇宙事業の受注高が軒並み大幅増だった。三菱重工は前年同期比39・9%増の1722億円。石川島播磨は48・8%増の1069億円、川崎重工業も42・2%増の701億円だ。

  好業績の要因の一つは、各社が開発に加わったボーイング社の350席クラス機「777」が好調なことだ。2001(平成13)年の米中枢同時テロ以降落ち込んできた航空機需要が回復しているうえ、ライバルであるエアバスの550席クラス機「A380」の、生産遅れという敵失も追い風となった。

  1995年に就航した777は「開発投資を回収する段階」(川崎重工)に入っており、収益面での貢献は大きい。

  777同様に各社が開発に参加している250席クラス機「787」の受注もすでに460件を突破。「民間航空機史上最も順調に受注数を増やしている」(ボーイング社)という状況で、各社は新工場稼働などで生産体制を整えている。

  ≪新領域への挑戦≫

  各社は好調な受注で基盤を固めながら、新領域にも挑戦する。三菱重工は19年中に70〜90人クラス機「MJ」の正式な仕様を決め、航空会社への売り込みを本格化させる。20年3月末までに十分な機数の受注が集まらなければ、事業化は見送らざるを得なくなるため、今年はYS−11以来の「国産旅客機」という悲願に向けた正念場だ。

  さらに、川崎重工が中心となって機体開発を進める防衛省向けの次期固定翼哨戒機(PX)、次期輸送機(CX)はいずれも今年、初飛行を行い、20年に量産を始める計画だ。このうちPXのエンジンは石川島播磨の担当。機体を120人乗りクラスの旅客機に転用する構想もあり、こちらから国産ジェット旅客機が実現する可能性もある。

  ≪慎重な判断≫

  日本の航空業界では、21年の羽田空港拡張で国内機の需要が増えるとみられている。ただ、MJやPXの民間転用が実現しても、この機体クラスで実績があるブラジルのエンブラエル社、カナダのボンバルディア社との受注競争になることは確実。民間企業である以上、黒字化は絶対条件で、航空機事業のかじ取りには慎重な判断が求められる。

「大和の翼」よ 永遠に

2007/01/19 Iza

 国産航空機YS−11型機が昨年、民間と国土交通省から相次いで退役した。航空無線標識や空港の着陸装置の点検など空の安全を支える飛行検査機だった国交省航空局2機が12月22日、東京・羽田空港に着陸、最後のフライトを終えた。機体に「おつかれさま YS−11」の文字が施されていた。

 飛行検査機は離着陸する進入路を指示する電波などが正しく出ているかをチェックするため、空港周辺を検査飛行していた。

 YSは40年以上にわたって空の安全を見守り続け、もっとも多いときには飛行検査機6機が羽田空港を拠点に活躍していた。

 退役した2機は1機が自衛隊に、もう1機は宇宙航空研究開発機構に引き取られる。後継機はカナダのボンバルディア社「DHC−8型機」の予定。

 ■空にかけた「5人のサムライ」

 名古屋空港。1962(昭和37)年8月30日。200人以上の報道陣の前に白と青のYS11試作機が姿を現した。

 管制からの飛行許可が下り、2400メートルの滑走路を走り出した。午前7時21分、ふわりと離陸。

 「日本で初めての国産旅客機がいま飛び立ちました」

 絶叫する生中継のアナウンサー。戦前、数々の名機を開発した航空大国。連合国軍総司令部(GHQ)から航空機開発を禁止されてから17年。空を見上げていただれもが復活を確信した。

 1957年から開発が始まったYSは世界一厳格な疲労強度試験を実施。予測された3万時間の6倍、18万時間の試験を18カ月かけて行われた。

 「無名の日本の旅客機が世界市場で信頼を得るためには必要な試験だった。安全な飛行機を作ることが設計者」

 園田寛治さんは機体に氷がつかないようにする防氷や空調の設計を担当した。軍用機は厚い雲は避ければいい。だが、定期航路を飛ぶ民間機はルート変更が難しい。

 軍用機しか開発したことがない日本では手付かずの分野だった。

 「5人のサムライ」といわれた設計者が中心になって開発が進められた。

 「零戦」の堀越二郎氏、「飛燕」の土井武夫氏、「隼」の太田稔氏、「紫電改」の菊原静雄氏、長距離航続飛行の世界記録を出した「航研機」の木村秀政氏。

 いずれも戦前、世界一流の名機を設計した錚錚(そうそう)たる顔ぶれ。その下に飛行機に乗ったことがないような40人の若手設計者が集まった。

 川崎航空機から派遣された園田さんもそのひとりだった。

 「冗談でよく大将と兵隊だけで戦争しているようなもんだなといわれましたよ。戦前、国の存亡をかけて航空機を開発した5人の情熱はすさまじかった。決して妥協はしなかった」

 園田さんら若手技術者は5人にひきづられるように国産旅客機開発にのめりこんだ。

 トタン屋根の設計室で、計算尺と手で回す機械式計算機、鉛筆と製図機で図面を描いた。

 「汗が図面の上に落ちないように気をつけて、飛行機の設計をするなんて考えられないでしょう」。5年間、設計、試作、飛行試験を繰り返した。

 合言葉は「日本の空を日本の翼で」だった。

 「操縦しやすく故障も少ない」と評判だったが、「いい飛行機」というだけで売れるほど政商が暗躍する航空機市場は甘くなかった。赤字を垂れ流した。73年、ついに製造中止に追い込まれた。

 「自動操縦もなく離陸から着陸までパイロットの腕がそのまま飛行に出る。本当のアナログ機。操縦しておもしろいが、その分気も使う」

 YSを操縦したパイロットはこう評する。

 こうもいう。「だが、故障も少なく頑丈に作ってある。40年以上が経っている飛行機とは思えない」

 民間でも日本エアコミューター(JAC)が6機所有していたが、昨年9月30日ですべての運行を終えた。

 JAC所有の最後の2機を含め、退役後のYSはタイ・プーケット航空など海外に売却されている。

 これからも日本の翼は世界の空を飛ぶ。そして、日本の航空技術の高さを証明する。(文・将口泰浩 写真・大山文兄)

空を見ろ! 鳥だ! ホンダジェットだ! …宇宙×イノベーション

2006年12月13日 Response

 ホンダの新事業推進室 室長の山田清実氏は、「宇宙×イノベーション」シンポジウム(7日、主催:JAXA)の中で、米国で『ホンダジェット』の宣伝に用いている広告は、映画『スーパーマン』を参考にして製作したという。

 同氏によると、注目点は、ホンダジェットの「UP! Up and Away!」と題したポスターの、下の吹き出しにある。

 「It's not a car.」「It's not a motorcycle.」「It's the Honda Jet, ...」とあるのは、スーパーマンのキャッチフレーズ、「空を見ろ!」「鳥だ!」「飛行機だ!」「いや、スーパーマンだ!」からヒントを得たという。

 この言葉を『アシモ』が発言している様に技巧を凝らすなど、随所にホンダらしい演出が施されている。《小池済夫》

ホンダは夢でジェット機も作る…宇宙×イノベーション

2006年12月12日 Response

 ホンダの新事業推進室 室長の山田清実氏は、「宇宙×イノベーション」シンポジウム(7日、主催:JAXA)の中で、『ホンダジェット』は本田宗一郎の夢ということで開発が正式決定したことを明かした。

 講演の中で山田氏は、夢を重要視する社風を説明する中で、ホンダジェットの開発が決定した経緯について触れた。社内の経営会議で、誰かが「本田宗一郎の夢でありました航空機事業の件でありますが」と切り出すと、誰も文句が言えなくなり、すんなり企画が通ってしまったという。

 ホンダジェットは、1機365万ドル(約4億3800万円)する小型のビジネスジェットだ。19年間かけて技術開発を行い、2010年の量産を目指している。搭載する新型のジェットエンジン「HF120」は、米GE社と共同開発した。

 現在、米国で年間量産計画の70機をはるかに上回る100機以上の予約が入り、受注を一時停止しているという。《小池済夫》

三菱重工国産初ジェット機

2006年12月06日 東京新聞

悲願 視界やや不良

 プロペラ機並みの低騒音と低燃費−。三菱重工が来年から欧米市場で売り込みをかける、初の国産ジェット旅客機「MJ」の特徴だ。だが海外メーカーとの競争は激しく、十分な受注が得られなければ、計画は頓挫しかねない。「日の丸旅客機」“離陸”に向けた課題を点検した。 (経済部・川上義則)

■回答

 「プロペラ機並みの低騒音は、余裕を持って実現できる」。三菱重工がMJ用エンジンの発注を検討する欧州のエンジンメーカーは、こう回答した。

 低騒音が実現すれば、騒音を理由にジェット機の新規乗り入れを制限する、大阪国際空港(兵庫県伊丹市など)での乗り入れが可能だ。低騒音ほど発着枠が広がる欧州の大都市近郊の空港でも優位に立てる。ただし、この低騒音エンジンは他の航空機メーカーも購入できるため、競合機が同じエンジンを導入する可能性は残る。

 MJは、日本メーカーが得意とするアルミより軽くて丈夫な炭素繊維複合材を、胴体や主翼の素材に使用する。この結果、ライバル機に比べて20%以上の燃費向上と、維持管理費の軽減を見込むほか、高い居住性も実現できる見通しだ。

■決断

 三菱重工はMJの事業化を二〇〇八年三月に最終決断する。これに先立ち、〇七年九月に航空会社に対する正式提案を行うかどうか判断する。しかし、採算が合うには最低三百五十機の受注が必要とされる。三菱重工は来年に入り、MJの高い性能を前面に出して欧米や日本の航空会社に売り込み、ある程度の内諾を得たい考えだ。

 売り込みにあたり、国内の航空会社や航空機の販売を手がける総合商社から人材派遣を受けてチームをつくり、情報やノウハウを生かす。三菱重工幹部は「事業化するなら、ベストセラーといえる千機を(十−二十年で)売りたい」と意気込む。

 地域間移動の世界的な需要の高まりで、MJが参入を目指す七十−百人乗りの小型旅客機の需要は、現在運航される約千機(〇五年)から二五年には四倍以上に跳ね上がると予測される。

 だが現在は、カナダ・ボンバルディア社製とブラジル・エンブラエル社製でほぼ占められる。ロシアと中国の航空機メーカーも〇七−〇九年の参入を表明しており、受注競争は厳しくなっている。

■負担

 MJ実現の課題の一つが、千二百億円と目される開発資金。世界貿易機関(WTO)は政府支援を三分の一以下に抑えるように求め、残りは民間負担になる。

 三菱重工は単独負担は荷が重いとして、特別目的会社(SPC)を設立し、銀行や商社などに出資を提案しているが、今のところ明確な返答はない。

 航空機の場合、購入価格の八割以上が長期の分割払いになるため、少なくとも五、六年は事業の赤字が続く。販売先の経営状況によって資金回収が難しくなれば、三菱重工の経営そのものにも影響する。

 MJの運航開始は一二年を想定する。国内航空会社を中心とした、航空機需要の高まる〇九年の羽田空港の再拡張に間に合わない。三菱重工幹部は「国内の航空会社には配慮をお願いしたい」とするが、絶好の販売機会を逃す可能性もある。

 航空機の部品点数は、自動車の百倍の数百万点。航空機産業は広いすそ野を持つ。政府は経済成長のけん引力として期待しており、「(MJ実現が)日本勢が旅客機事業に参入できる最後のチャンスだ。三菱重工がやるのなら応援する」(経済産業省幹部)との立場だ。実現には官民を挙げた協力態勢の構築が不可欠といえそうだ。

 MJ 三菱重工と経済産業省などが実現を目指す国産ジェット旅客機。東京−香港間や東京−上海間程度の距離を移動するリージョナルジェット(地域間ジェット機)を想定。72人乗りと92人乗りの2型が計画される。

 国産唯一の旅客機「YS−11」の製造・販売を手がけた官民の特殊会社は182機を製造したが、360億円の累積赤字を計上し1982年に解散。MJでは責任を明確化するため、三菱重工が開発の中核を担い、販売リスクを負う。

三菱重工、国産ジェット機受注に異例の大サービス

2006年11月21日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 官民が共同開発している初の国産ジェット旅客機「MJ(三菱ジェット)」の販売交渉で、三菱重工業が日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)に異例の好条件を提案していることが21日、明らかになった。MJを注文すれば、機体を引き渡す2012年までの代替機のリース代などを三菱重工が一部肩代わりするという内容だ。JAL、ANAへの販売に失敗すれば“悲願”のMJ計画そのものが頓挫するおそれもあるため、三菱重工は“大サービス”を提示し、海外勢との受注合戦で必死に巻き返しを図っている。

 MJは70〜90人乗りの国産ジェット機で、商業化が実現すればプロペラ旅客機「YS―11」以来、約40年ぶりの「日の丸旅客機」となる。開発の中核を担い販売責任を持つ三菱重工や、これを支援する経済産業省は、09年の羽田空港拡張で国内機の需要が増えるJAL、ANAの大量購入に期待している。

 ただ、MJは仕様変更などの影響で引き渡しが12年に遅れる。JAL、ANAとの販売交渉では09年に納入可能なブラジル・エンブラエルやカナダ・ボンバルディアなど海外の航空機メーカーが先行している。

 出遅れを挽回(ばんかい)するために三菱重工がJAL、ANAに提示した契約条件が「リース代金一部肩代わり」案だ。2社がMJの購入を予約してくれれば、09年から12年までの3年間にわたって、両社が使用する他メーカー製航空機のリース代や、購入した代替機の売却損などを一部補償する。三菱重工の負担は数十億円にのぼるとみられる。

 三菱重工が異例の提案をしたのは、総事業費が約7000億円にのぼるMJの事業を採算に乗せるには最低でも350機の販売が必要で、国内ではJAL、ANAのまとまった契約がぜひとも欲しいからだ。

 三菱重工は国内だけでMJを百数十機販売する計画で、大口契約を獲得して、他の航空会社への売り込みにも弾みをつけたい考えだ。

三菱重工の国産ジェット機「MJ」、受注すれば異例の大サービス

2006年10月02日 (読売新聞)JDNニュ-ス

 官民が共同開発している初の国産ジェット旅客機「MJ(三菱ジェット)」の販売交渉で、三菱重工業がJALとANAに異例の好条件を提案していることが11/21、明らかになった。MJを注文すれば、機体を引き渡す2012年までの代替機のリース代などを三菱重工が一部肩代わりするというもので、海外勢との受注合戦で巻き返しを図る。MJは70〜90人乗りの国産ジェット機で、商業化が実現すれば「YS-11」以来、約40年ぶりの「日の丸旅客機」となる。

YS11引退 日の丸旅客機をもう一度

2006年10月02日 山陽新聞社説

 戦後に開発された唯一の国産旅客機だったYS11が、惜しまれつつ日本の定期航空路線から引退した。四十一年間飛び続けた「日本の翼」との別れは寂しい限りだ。

 YS11は戦後の空白期を経た後、航空機産業の復活を目指して一九五〇年代後半から官民共同で開発され、六五年に就航した。初期にはトラブルに悩まされたものの、六十四人を乗せて短い滑走路で使えるのが強み。耐久性や安全性の面でも定評があった。名機といってよかろう。

 機体はまだ飛行に耐えられるが、民間機に義務付けられる衝突防止装置の設置費用がネックとなって引退した。海外では日本の空を退いた機体も当分は飛び続ける。

 後を継ぐ国産旅客機が見当たらない点が残念だ。YS11は機体単価の高さや販売戦略の未熟さから海外であまり売れなかった。巨額の赤字を残して七〇年代前半に百八十二機で生産を終了、技術的には成功、営業面では失敗といわれた。産業界には旅客機開発へのためらいが生まれ、何度か浮上した後継機開発構想はどれも実らなかった。

 しかし、現在再び官民で次世代の国産ジェット旅客機を開発する計画が動き出しつつある。YS11よりやや乗客数が多いクラスの機体の更新需要を見込んでいる。

 多額の開発費用をどう賄うか、採算に見合う販売見通しが十分でないといった点が課題で、開発はまだ本格始動に至っていない。だが、先端技術を集約する次世代旅客機は日本の技術力のシンボルになり、産業界への技術的な波及効果も大きい。開発企業と支援する国はひるむことなく課題に挑戦し、今度こそYS11の後輩を国内外の空に羽ばたかせてもらいたい。

【コラム】「日の丸旅客機」の本気度

2006年10月10日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 使い込まれた座席が左右に2列ずつ並び、荷物棚は旅行バッグを置けないほど狭い。動き始めると、足元からガタガタと振動が響いてくる――。5年前、屋久島への出張で鹿児島空港から搭乗したYS―11は、田舎道を走るバスのような懐かしいにおいがした。

 先月末に国内の定期便から退いたYS―11。機体は頑丈で、短距離でも離着陸できる傑作とされるが、開発した半官半民のメーカーは約360億円の赤字を抱えて解散した。「売れてなんぼ」のビジネスの尺度で測れば名機とは言えない。

 YS―11の後継として、都はアジア産中小型ジェット旅客機の開発を提唱している。インドやインドネシアのメーカーには高い技術力があり、石原知事は「やろうと思えば、すぐにできるんだ」と鼻息が荒い。

 しかし、「アジア大都市ネットワーク21」の共同事業に盛り込まれて5年がたつが、具体像は見えてこない。かたや、経済産業省の肝いりで三菱重工業などが開発に乗り出している国産ジェット旅客機「MJ」も先行きは不透明。採算ラインに乗る受注の見通しがつかないことが、一番のネックになっているという。

 航空機開発に伴う技術波及効果は、自動車の4倍という試算もある。国際共同開発と「純国産」指向、売り込み先もアジアと欧米、という違いはあるものの、「日本の空に『日の丸旅客機』を」という目標は同じだ。

 YS―11に41年も「唯一の国産旅客機」の名前を背負わせてきたのは、開発に二の足を踏んできた行政の責任でもある。歩み寄って次の一手を出せるのか。国と都のやる気が問われている。(8日、梅)

[YS―11引退]「次世代国産機が飛ぶ日は来るか」

2006年10月09 読売新聞社説 Yomiuri On-Line

 唯一の国産旅客機「YS―11」が、国内定期便から引退した。次世代の“日の丸旅客機”が飛ぶ日は来るだろうか。

 日本は戦前、零戦など、世界的な名航空機を開発したが、戦後7年間は航空機の製造を禁止されていた。解禁後、官民が協力して開発したのが、近距離航空機のYS―11だった。

 初飛行は1962年で、65年に定期便に就航した。計182機が製造され、国内だけでなく、北米、中東、アフリカなどの海外でも販売された。

 だが、航空機の大型化やハイテク化の流れに取り残され、航空会社は相次ぎ、新機材に替えた。国内では、日本エアコミューターが、九州などでYS―11を運航していたが、先月末に定期便から姿を消した。一つの時代の終わりである。

 YS―11の教訓は大きい。性能は良かったが、営業が弱く、目標まで売れなかった。製造会社は360億円の累積赤字を残し、73年に製造を中止した。以後、日本企業は下請けにとどまっている。

 現在、世界では、100座席以上の大型機は、米ボーイングと欧エアバスが2強となり、100席以下は、カナダとブラジル企業が勢力を伸ばしている。

 再チャレンジしようと、政府と三菱重工業など民間企業は、次世代の国産旅客機の製造を検討中だ。政府の新経済成長戦略にも、その構想を盛り込んだ。

 計画では、市場の急成長が期待できる座席数70〜90クラスに狙いを絞り、環境に配慮した低燃費小型機を製造する。

 総開発費用は1200億円を見込み、来年度末までに商業化のメドが立てば、本格的な開発に着手して、2012年度の運航開始を目指す、としている。

 羽田空港が09年度に拡張されると、発着枠が増え、国内航空会社の中小型機の需要は拡大する。アジアなど海外での航空機の需要拡大も有望だ。

 ビジネス機会を生かそうと、チャレンジ精神を持つのは悪くない。

 だが、事業化に向け、課題は多い。

 財政難の中で、国は巨額の開発資金を支出できない。民間企業だけで、リスクを負うことも難しい。国費のほか、多数の企業から出資を募り、特別目的会社方式で開発資金を調達する案がある。真剣に検討し、実現できないか。

 開発に成功したとしても、なお問題は残る。採算ベースに乗る販売機数は約350機とされ、国内外でそれを売り切る営業力が重要になる。

 関連企業が多い航空機産業が成長すれば、日本の製造業全体の競争力を底上げできる。YS―11の教訓を生かして、開発促進に知恵を絞ってほしい。

日の丸旅客機YS−11ラストフライト 比で第2の人生

2006/09/30 Iza

 唯一の国産旅客機として戦後開発された中型機YS−11が30日、日本エアコミューター(JAC)の鹿児島県・沖永良部―鹿児島間の記念フライトを最後に、41年に及ぶ国内の定期旅客輸送から引退した。両空港では式典が行われ、関係者や大勢の航空ファンが「日本の翼」に別れを告げた。

 YS−11は官民共同で設立された製造会社が開発した双発のプロペラ(ターボプロップ)機。昭和37年の初飛行後、39年の東京オリンピックでは聖火を空輸した。

 国内の空輸がジェット機中心になった後も、短い滑走路で離着陸できる利点を生かし地方や離島路線を中心に飛び続けたが、航空法改正で民間機に義務付けられる空中衝突防止装置の設置に多額の費用がかかるため、最後まで運航を続けたJACも交代を決めた。

 午後4時7分に沖永良部空港を離陸した3806便(本村栄一機長)は同5時42分に鹿児島空港に到着。消防車2台が放水するアーチの下をくぐり、待ち構えた関係者らの出迎えを受けた。

 沖永良部―鹿児島間は、JACとして初のYS運航が88年に始まった路線。現在は別の機種が飛んでいるが、最終フライトの舞台として設定された。JACが最後まで使用した2機のYSは、商社を通じてフィリピンに輸出され、引き続き活躍する予定。

技術の証し41年…YS11引退「再び国産機を」

2006/09/29 Iza

 デビューから41年にわたり飛び続けてきた唯一の国産旅客機「YS−11」が、今月いっぱいで日本の航空路線から姿を消す。戦後、航空分野の研究・開発を禁じられた7年間の空白を経て、日本が総力を結集した旅客機の開発。その基本計画にあたった東大名誉教授の近藤次郎さん(89)は、「頑丈すぎるくらい頑丈で、41年もよく飛んでくれた」と感慨深げだ。(溝上健良)

 近藤さんは京大数学科を卒業後、東大航空学科に学士入学した。「軍用機の設計」という夢を描いていたが、敗戦で総理府統計局などで仕事をすることに。聖心女子大では数学教授を務め、後の皇后陛下にも教えた。

 昭和27年、航空研究が解禁され、応用数学科と名前を変えていた東大の航空学科も復活した。出身学科の助教授となった近藤さんは、空気力学の研究に没頭した。

 いずれは旅客機の設計をしたいと考えていたところ昭和32年、国産旅客機開発を目指していた「輸送機設計研究協会」から声がかかった。

 ゼロ戦、隼、飛燕…。戦時中の名機を手がけた技術者が協会に結集して設計を始めたが、一家言を持つ人たちだけに意見がまとまらない。そこに呼び出され「どんな旅客機をつくれば商業的に最適か」を検討することになった。

 フィリピンなどへの輸出を考え、離島の空港で使えるよう1200メートルの滑走路で離着陸できる大きさに決めた。乗客を一度に多く運ぶため、70人乗り程度の機体を提案。「小さい飛行機を2回飛ばせばいいじゃないか」と主張する先輩の技術者を、理詰めで説得した。座席は日本人を念頭に、体重85キログラムの人を想定した大きさにした。計画策定にかかわっていたころは「毎晩のように夢の中に飛行機が出てきた」という。

 完成したYS−11に初めて乗ったのは一般の乗客として、それも米国の東海岸でだった。「ああこんなところにも飛んでいるんだと、懐かしくてうれしかった」。離陸して脚を格納する音や揺れの具合などをじっくりと座席で味わった。

 空中衝突防止装置の設置義務付けで、改修には1機1億円かかるとされるYS−11は、国内定期便からの引退を余儀なくされた。「まだまだ飛べる。もったいない」というが、それ以上に心残りなのは182機を生産したYS−11の後、一回り大きい国産ジェット機「YX」を検討したものの日の目をみなかったことだ。

 「YSが元気で評判がよく故障も少なく世界中で歓迎された。そのときにこそ次の飛行機をつくるべきだった。返す返すも残念だ」

 再び国産旅客機が日本の空を飛ぶ日の来ることを願っている。

三菱重のジェットエンジン、米GEが開発に名乗り

2006/09/29 NIKKEI NeT

 三菱重工業が経済産業省と進める日本初の国産ジェット旅客機計画で、 米ゼネラル・エレクトリック(GE)がエンジン開発に名乗りを上げた。 すでに英ロールス・ロイスも名乗りを上げており、三菱重工は今年度中にどちらか1社を選定する方針。航空機エンジンの世界2大メーカーが 競り合うことで開発に弾みがつき、事業化の可否を判断する上でも 影響がありそうだ。

 三菱重工はGEからエンジン開発計画への参加について打診を受けた。 今年度中にエンジンの仕様を決める予定で、今後はGE、ロールスのそれぞれと個別に協議するとみられる。

【特別編】日の丸ジェット、航空各社が導入慎重

2006年09月28日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 2012年の就航を目指して、国と三菱重工業などが官民共同で開発を進めている国産初のジェット旅客機「MJ」の前途が“視界不良”だ。「日の丸旅客機」の実現は、今月30日で国内定期便から姿を消す戦後初の国産旅客機「YS―11」以来となるだけに、日本の航空産業の悲願だ。しかし、開発費が膨らむ中で、十分な受注は確保できるのか。商業化へのハードルは高い。(水上嘉久)

同クラス、世界と競合…商業化へ販売の壁

 ◆温度差

 「MJ」とは「三菱ジェット」の略称だ。三菱重工の佃(つくだ)和夫社長は8月末の経済産業省の審議会で、MJのエンジンについて、英ロールス・ロイスと共同で検討作業に入ったことを明かし、準備が順調に進んでいることを強調した。

 経産省は来年度予算の概算要求で、MJの開発助成に今年度予算の4倍となる20億円を計上し、支援強化の姿勢を見せている。

 しかし、国内航空会社はMJの導入について、「多面的な角度からの検討が必要で、まだ言及できない」(全日本空輸)、「運航の経済性と客室の快適性が両立されるか、状況を注視している」(日本航空)など慎重で、三菱重工・経産省側との温度差が目立つ。

 昨年来、大阪(伊丹)空港でジェット機発着枠が削減される動きもあり、MJが国内では使い勝手が悪くなるのではないかと懸念する声も出ている。

 ◆ライバル

 MJは、三菱重工が主契約先となり、製造と販売の責任を1社で負う。100席を超える中・大型機は開発費がかさむため、当初は小都 市間を結ぶ30〜50席程度の旅客機として07年の就航を目指した。

 しかし、昨年になって、市場の拡大が見込まれる70〜90席クラスに仕様が変更され、12年の就航を目指す計画に延期された。このクラス機の需要は「今後20年間で4200機に上る」(日本航空機開発協会)と予測されているためだ。

 課題は旅客機セールスの経験がない三菱重工が、どうやって受注を取るかだ。この市場には、カナダのボンバルディア社やブラジルのエンブラエル社などライバルがひしめいている。

 三菱重工は、他社製より20%向上させた燃費など性能面をアピールして参入の遅れを挽回(ばんかい)し、海外の航空会社には商社と連携してリース販売する考えだが、楽観はできない。

 ◆コスト

 日本の航空産業は、防衛庁向けを除けば、米ボーイングや欧州エアバスなど海外メーカーの下請けに甘んじてきただけに、YS―11以来の市場参入を望む声は官民に根強い。このため、MJには、国の開発助成など、これまでに約90億円の国費が投じられてきた。

 1965年に就航したプロペラ機のYS―11は、官民出資の特殊法人「日本航空機製造」が182機を生産し、日本の航空産業の優秀さを内外にアピールした名機だった。しかし、73年の生産中止までの累積赤字は約360億円に上り、採算面は問題が多かった。

 「同じ失敗は許されない」(経産省)だけに、MJの商業化は、採算に乗せることが必須条件だ。採算に乗せるには少なくとも350機、十分な利益を確保するには600機の生産が必要とされている。事業を進めるか判断するのは07年度中だ。それまでに必要な受注が見込めなければ、計画の撤回もありうる。

 膨らむ開発資金をどう工面するかも難題だ。当初600億円とされた開発資金は、2倍の1200億円に上る見通し。三菱重工は「国と当社だけではリスクを分担しきれない」ため、機体開発の特別目的会社を設立する考えで、商社や銀行に出資を求めている。しかし、出資交渉は進展しておらず、特別目的会社設立のメドは立っていない。

国産ジェットエンジン、三菱重工が英ロールス軸に選定

2006/08/30 NIKKEI NeT

 三菱重工業は29日、2012年度の運航開始を目指す国産初のジェット旅客機「MJ」のエンジンについて、英ロールス・ロイスを軸に選定する方針を明らかにした。 エンジンのサイズや性能、運航後のメンテナンス体制などについて検討に着手。 三菱重工はMJの基本仕様を早急に固め、来年度末に事業化に踏み切るかどうかを最終判断する。

 ロールスとの間でエンジンの開発に向けた協議に入ることで合意した。 MJは同型機に比べて燃費を20%改善するのが目標で、エンジンも低燃費・低騒音を目指す。

今年度中にエンジンの仕様を固めて、ロールス製エンジンを正式に選定するとみられる。

ホンダジェット、事業化

2006年07月26日 Response

 ホンダは25日、米ウィスコンシン州オシュコシュ市にて開催されている「Air Venture 2006」に自社開発の小型ビジネスジェット機『ホンダジェット』を出品、今後同機を量産し航空機市場に新規参入すると発表した。

ホンダ、HondaJetの事業化を本格化

2006年07月26日 carview.co.jp

 ホンダは、ウィスコンシン州オシュコシュ市で開催されている世界最大の飛行機の祭典“Air Venture 2006”に、自社開発の小型ビジネスジェット機であるHondaJetを出品、今後同機を量産し航空機市場に新規参入すると発表した。

 HondaJetは、エンジンを主翼上面に配置する、新規開発のOTWEM(Over-the-Wing-Engine-Mount)という革新的なレイアウトが採用され、この特許取得技術によって高速飛行時の造波抵抗を低減させ、燃費向上を実現している。また、乱流発生を抑える自然層流といわれる形状を、翼や機首デザインに取り入れ、空気抵抗を大幅に低減させる先進的空力設計も特徴のひとつ。また、エンジンを主翼上面に配置することで、胴体後端のスペースを客コや荷物室として有効活用することを可能とし、6〜7人乗りの同クラスの従来型機体に比べ、燃費とキャビンの広さを格段に向上させることに成功しているという。

 2003年12月3日の初飛行以来、HondaJetプロトタイプはすでに累計240時間以上の試験飛行を行い、4万3千フィート(約1万3千m)の最高高度、412ノット(約763km/h)の最高速度を記録、ねらいどおりの性能を実証している。

 今後は、米国に飛行機事業を行う新会社を設立し、2006年秋頃から量産型HondaJetの受注を開始。3〜4年で量産機の認定を取得し、米国にて量産開始、2010年中の第一号機の引渡しを目指すという。また、小型ビジネスジェットの顧客ニーズに高いレベルで応える販売網とサービス網を構築すべく、米国の飛行機メーカー、パイパー・エアクラフト社(Piper Aircraft, Inc.)と業務提携する予定。

日の丸ジェット開発加速 小型で“すきま”狙う/燃費向上で存在感

平成18(2006)年01月04日 The Sankei Shimbun

 国産の旅客機開発が今春以降、熱を帯びそうだ。米国のボーイングと欧州のエアバスの二大勢力に席巻されてきたが、アジアを中心に世界的に航空機需要の高まりが予想され、三菱重工業などが「日の丸ジェット」の開発に本格的に着手するためだ。(比嘉一隆)

 三菱重工が進める試作機「ミツビシ・ジェット(MJ)」。当初の客席数は「三十−五十」と控えめだったが、昨年秋に「七十−九十」へと中型機に転換した。平成二十一年末の羽田空港再拡張に伴う発着枠拡大で「百席以下」の地方航空路線が拡大するなど、今後二十年間にこのクラスだけで四千七百機もの世界需要があると見込まれるからだ。計画変更にあわせ、十八年度は財務・技術面を含めた概念設計も見直す。ライバル機より最大で21%燃費を向上させる点もポイントとなる。

 川崎重工も、十九年度に飛行予定の次期固定翼哨戒機(PX)・輸送機(CX)を量産化する過程で培ったノウハウを転用、百二十五席サイズの旅客機開発に乗り出す。いずれの計画も、ボーイングとエアバスが二分する「二百席以上」の水準をあえて避けたのがミソだ。

 また、富士重工業は小型航空事業を拡大、十八年から米エクリプス社向けの主翼量産を開始するなど、将来的に「スバル・ジェット」の実現につなげたい考えだ。ホンダも独自開発の定員六人の「ホンダ・ジェット」の実験飛行に成功済みで、市場投入の時機をうかがっている。

 日本航空機開発協会の調べによると、ジェット旅客機の運航機数(二十席未満除く)は、経済成長の続くアジアが牽引(けんいん)し、二〇二四年に現在の二倍の三万機を上回る見通し。燃料価格の高騰が航空会社の経営を圧迫する中、丈夫で軽く燃費向上につながる日本企業の技術の存在感は高まっており、二〇〇八年に納入が始まるボーイングの新型旅客機「787」では三菱重工が主翼、川崎重工が前部胴体、富士重工が中央翼とそれぞれ主要部分の製造を担う。

 戦後、GHQにより航空機の研究・生産を禁止された時期もある日本メーカーだが、技術面では海外勢と肩を並べるレベルになっているわけだ。

 昭和四十年以降、百八十二機が製造された戦後初の国産旅客機「YS−11」は平成十八年にすべて引退。日本の空から「日の丸旅客機」は消えるだけに、相前後してスタートする国産ジェット旅客機開発に寄せられる期待は大きい。

 ただ、国産旅客機を産業として確立するには政府の支援が必要となる。補助が手厚過ぎれば「市場の競争を乱す」との批判が海外からあがり、新たな貿易摩擦の火種になりかねない。政策金融を担う政府系金融機関の統廃合が決まった中、「航空会社の長期資金の手立てが不透明」(航空アナリスト)との指摘も克服する必要がありそうだ。

純国産旅客機”を開発へ、三菱重工が意思表示

2005年04月13日 WING DAILY

 今年度から4列席50席クラス相当の実証機試作へ 

 「国産旅客機は4列席50席クラスで実証機を試作、販売向けにはより大型を」-産業構造審議会航空機 宇宙産業分科会航空機委員会の第7回小型旅客機開発事業推進専門委員会(座長・久保田弘敏東海 大教授)が、4月11日に経済産業省で開催され、三菱重工業は同社が製作する実証機の仕様を明らか にした。

 三菱重工業の説明によると「平成17年度より4列席50席クラスを念頭に置いた実証機の概念設計 作業に着手する」方針。航空機設計の基本となる胴体の太さを横4列と、既存のリージョナルジェット機 (既存は3列)よりやや太くすることを決めた。機体規模は、計画当初の30席クラスよりは大きい50席クラス で、実証機を設計・試作するが、「航空機ビジネスではファミリー化が不可欠であることを踏まえ、 派生型機展開についても併せて検討を実施する」と述べており、量産段階では50席より胴体延長により 大型化することなども初めから考慮する。

ホンダとGE、小型ジェットエンジン合弁設立合意

2004年10月13日 Response

 ホンダと米GE(ゼネラル・エレクトリック)は12日、小型ジェット機用エンジンの事業化交渉で最終合意し、販売やアフターサービスを手掛ける合弁会社を設立すると発表した。両社はラスベガスで調印式を行い、ホンダは福井威夫社長が出席した。

 合弁会社は11月中に設立する予定の「GEホンダ・エアロ・エンジンズ」で、オハイオ州シンシナティに本社を置く。ホンダの航空エンジン事業統括会社のホンダ・エアロ(バージニア州)とGEの輸送機部門、GEトランスポーテーションが折半出資する。

 社長にはGEトランスポーテーションのゼネラルマネジャーであるゲーリー・レナード氏が就任する。新会社はホンダが開発したターボファンエンジン「HF118」の型式認定取得や機体メーカー向け営業、アフターサービスなどを行う。

 新会社は年内にも受注活動を始める見通しで、ホンダの「空」への進出が具体化する。 《池原照雄》

「環境適応型小型航空機用エンジン研究開発」(第2期)に係る助成金交付先の決定について

平成16(2004)年05月26日 NEDO

 NEDO技術開発機構は、課題設定型産業技術開発費助成事業「環境適応型小型航空機用エンジン研究開発」(第2期)について応募のあった1件の申請を対象として、厳正な評価及び審査を経て、助成金交付先を決定しました。

 本事業は、今後市場の増加が予想されている小型航空機及びエンジンの分野において、エネルギー使用効率を大幅に向上し、かつ低コストで環境対策にも優れた次世代小型航空機用エンジンの実用化に向けた技術を開発することを目的とします。

 1.助成金交付先

 石川島播磨重工業株式会社、川崎重工業株式会社、三菱重工業株式会社、財団法人日本航空機エンジン協会及び超音速輸送機用推進システム技術研究組合の5者による共同事業。また、独立行政法人宇宙航空研究開発機構及び独立行政法人物質・材料研究機構が共同研究先として参画。

 2.概要

 NEDO技術開発機構は、課題設定型産業技術開発費助成事業「環境適応型小型航空機用エンジン研究開発」(第2期)について、平成16年3月18日から平成16年4月16日に助成事業者の公募を行ったところ、1件の申請がありました。学識経験者等からなる技術審査委員会(委員名簿【PDF】)による厳正な評価及び審査を経て、助成金交付先を決定しました。

  本事業では、エネルギー使用効率を大幅に向上し、かつ低コストで環境対策にも優れた次世代小型航空機用エンジンの実用化に向けた技術を開発することを目的として、以下の要素技術開発を実施します。

 (1) 直接運航費低減技術

 ア.シンプル化構造設計技術

 イ.高性能化技術

 ウ.インテリジェント化技術

 (2) 環境適応技術

  開発された技術をエンジンシステムとして統合することにより、直接運航費(エンジン寄与分)の15%削減、規制値に対して−20dBの騒音低減、−50%の低NOx化を満足することが見込めるような目標エンジンの基本設計完了を目標としています。(以下略)

経済産業省/NEDO「環境適応型小型航空機用エンジン研究開発」への参加決定

2004/05/26物質・材料研究機構 超耐熱材料センター/ロールス・ロイス航空宇宙材料センター

 低コストで環境対策にも優れた次世代小型航空機用エンジンの開発を目的とした本プロジェクト(第2期:平成16-18年度)に物材機構が参加することが、平成16年5月26日決定しました。

 物材機構は、新世紀耐熱材料プロジェクトにてIHIと共同開発したタービン翼用単結晶超合金の上記小型エンジンへの実用化研究を行います。耐用温度の高い開発合金の実用化は、エンジンの高性能化、高効率化、シンプル化などに寄与するものと期待されています。

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