TOPIC No.6-35 カーボンナノチューブ(Carbon nanotube)

01. カーボンナノチューブ(carbon nanotube、略称CNT)
 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
02. カーボンナノチューブってなんだろう by富士通研究所
03. 驚異の新素材、単層カーボンナノチューブ 世界初の量産工場が稼働  
 byNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)
04. 世界初 スーパーグロース・カーボンナノチューブの量産工場が稼働
 (2015年11月4日) by日本ゼオン株式会社/国立研究開発法人産業技術総合研究所/国立
 研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
05. 夢の筒状炭素分子「カーボンナノベルト」の合成に成功 
 〜単一構造のカーボンナノチューブの実現に道を拓く〜  平成29年4月14日 
 by科学技術振興機構(JST)/ 名古屋大学

スーパーグロース単層カーボンナノチューブの生分解性を確認

2017年09月28日 MONOist

 産業技術総合研究所は2017年9月12日、日本ゼオンと共同で、近赤外光吸収測定法を用いてカーボンナノチューブ(CNT)の細胞への取り込み量を測定する技術を開発したと発表した。さらに、免疫細胞内でスーパーグロース法により作成した単層CNT(SGCNT)が生分解されることを明らかにした。

 生体関連物質が近赤外領域に吸収帯を持たないことを利用し、近赤外光を吸収するCNTを免疫細胞内に取り込ませ、CNT量を測定する方法を開発。培養液にSGCNTを含ませ、免疫細胞内にSGCNTを取り込み、細胞内のCNT量の経時変化を測定した。

 実験では、培養マウスの免疫細胞(Raw264.7)、ヒト白血病細胞株(THP−1)、初代細胞(マウス肝臓のクッパー細胞)という3種類の細胞を用い、いずれも20〜50%のSGCNTが細胞内で分解されることが分かった。

 また、活性酸素の発生量を測定し、細胞内SGCNTの残存量と活性酸素の発生量の減少傾向が一致したことから、活性酸素によってSGCNTが生分解されると分析している。さらにSGCNTを取り込んだ免疫細胞とそうでない免疫細胞を比較して、活性酸素発生量が同じで総タンパク質量もほぼ同量であったことから、SGCNTの分解残さ物は細胞への毒性が低い可能性があることも分かった。

単層カーボンナノチューブ 世界初の量産工場

2016/1/25 日本経済新聞

 強度などの高さから「21世紀の黒いダイヤ」とも呼ばれる炭素系新素材、カーボンナノチューブ(CNT)。日本ゼオンはこのほど、その高級品に位置づけられる「単層CNT」の量産を世界で初めて徳山工場(山口県周南市)で始めた。日本発の技術革新を起こそうと計画をスタートさせてから約10年。いくつもの難局を乗り切った末の実現だ。

■強度は鋼の20倍、流せる電気は銅の1000倍

 「これは化けるかもしれない、とあの…

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ナノチューブを大量生産、産業技術総合研が技術開発

2007年02月10日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 次世代の新素材として注目される超微細の炭素素材「カーボンナノチューブ」を従来の数百分の1のコストで大量生産できる基礎的な技術を、産業技術総合研究所ナノカーボン研究センター(茨城県つくば市)が開発した。

 化学メーカーの日本ゼオン(東京都千代田区)と協力して、2010年までに大量生産を実現し、寿命の長い高性能電池の電極などに応用する。

 同センター研究チームの畠賢治チーム長らは、750度に熱したガス状の炭素を、金属基板に吹き付けてナノチューブを合成。基板に使う合金や反応中の炉内の水分濃度を工夫することで、A4版の基板の上に長さ0・5ミリのカーボンナノチューブを99・98%という高純度で作ることに成功した。コストは1グラム数百円以下に抑えられ、産業応用に道が開けるという。

 カーボンナノチューブは、薄型ディスプレーや半導体素子などへの応用が期待されながらも、製造コストが高いうえ、均質に量産する手法もなく、実用化が遅れていた。畠チーム長は「大量生産が可能になれば、新たな用途開発にも弾みがつく」と話している。

産総研と日本ゼオン ナノチューブ大量合成の新手法開発

2007/02/08 FujiSankei Business i.

 産業技術総合研究所(産総研)と日本ゼオンは7日、幅広い産業分野での利用が期待される単層カーボンナノチューブ(SWNT)を大量に合成できる手法を開発したと発表した。従来はシリコン基板を使って合成しているが、新手法ではロール紙状のニッケル合金を使って連続的に作ることが可能なため、製造コストを数分の1に下げられるという。

 カーボンナノチューブは炭素原子だけで作られる直径1ナノ(1ナノは10億分の1)メートル程度の管状物質で、黒鉛、ダイヤモンド、フラーレン(炭素のサッカーボール)に次ぐ第4の炭素同素体と呼ばれる。導電性や異方性などで従来の物質にない特性を期待されているが、単価が1グラム当たり1万円程度と高く、産業利用のネックとなっている。

 産総研は、シリコン基板上にSWNTを垂直方向に成長させるスーパーグロース法を2004年度に開発。今回、800度近い水素ガス中で、水分などへの耐久性がある基板材料を探索した結果、特定のニッケル合金でシリコン基板と同程度にナノチューブが成長することを発見した。

 日本ゼオンと共同で設計・試作した合成炉を用い、A4サイズの金属板の全面に均一なSWNT構造体を合成できた。合成したSWNTは長さが1ミリ、炭素純度99・9%以上、1グラム当たりの表面積は1000平方メートル以上と世界最高レベルで、放電性能に優れるスーパーキャパシタ(エネルギー蓄積・供給装置)をはじめ、医療分野など広範な分野で応用できることから、4年後の実用化を目指す。

産総研、単層カーボンナノチューブの安価な大量合成法を開発

2007/02/07 NIKKEI NeT

単層カーボンナノチューブの安価な大量合成法を開発

−高純度の単層カーボンナノチューブの量産に弾み−

●ポイント

 ・大面積金属板(A4サイズ)上に垂直に配向した単層カーボンナノチューブを高速成長。
 ・世界最高レベルの高純度、高比表面積、長尺を達成。
 ・産業用の単層カーボンナノチューブの安価な大量生産を可能に。

【 概 要 】

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)ナノカーボン研究センター【センター長 飯島 澄男】ナノカーボンチーム 畠 賢治 チーム長、平岡 樹 産総研特別研究員および日本ゼオン 株式会社【代表取締役社長 古河 直純】(以下「日本ゼオン」という)は、共同で単層カーボンナノチューブの合成手法の一つであるスーパーグロース法を用いて、初めて大面積金属板上に直接大量の単層カーボンナノチューブを合成する技術を開発した。

 これまでスーパーグロース法は高価なシリコン基板を用いて単層カーボンナノチューブを合成していたが、今回、安価なニッケル合金基板上での合成に成功した。さらに、日本ゼオンと共同で、今回開発した技術を適用できる合成炉を設計・試作し、A4サイズの金属板の全面に均一な単層カーボンナノチューブ構造体を合成することに成功した。これは成長面積として従来の100倍のスケールアップであり、生産量はグラム単位である。合成された単層カーボンナノチューブは、金属板フォイル上で、垂直に起立した形で成長し、高さ1ミリメートルの構造体をわずか10分で形成する。構造体中の単層カーボンナノチューブは、シリコン基板上で合成されたものと同程度、すなわち世界最高レベルの高純度、高比表面積、長尺といった優れた特性を示し、スーパーキャパシタ、アクチュエータなど様々な用途において非常に有用と考えられる。今回の成果は、基板コストを従来の100分の1に抑えることができるもので、カーボンナノチューブの大面積・連続生産技術を開発する上でのキー技術であり、単層カーボンナノチューブの工業的量産への大きな礎となる。本研究成果の一部は、米国化学会誌(Journal of the American Chemical Society, Vol.128, p13338, 2006年)に掲載された。

*図1、2は添付資料をご参照ください。

【 開発の社会的背景 】

 単層カーボンナノチューブは、高導電性、柔軟性、異方性、低次元性等の新しい機能を持つ炭素材料である。そのため、次世代のナノデバイス材料として大きな注目を集めており、21世紀におけるナノテクノロジーの中核となる基盤材料として期待されている。単層カーボンナノチューブの応用研究開発は世界中でしのぎを削る激しい競争状態にあるが、単層カーボンナノチューブ合成技術が未成熟なために非常に高価であり、未だ産業的材料としての使用の目処がたってない。単層カーボンナノチューブの優れた可能性を最大限に活用するためには、単層カーボンナノチューブに高配向性、高密度、高比表面積、長尺、高純度といった性質を持たせる合成法の開発が不可欠である。しかもこのような高次構造制御された単層カーボンナノチューブを産業的材料として用いるために、成長効率を大幅に向上させ、安価な基板の上で大面積かつ連続に製造する大量生産技術を開発することが必要とされている。

【 研究の経緯 】

 産総研は、2004年度に発表した世界最高の成長効率を誇る、スーパーグロース法をもとに、単層カーボンナノチューブの安価な大量合成技術の開発に精力的に取り組んできた。畠賢治チーム長、平岡樹産総研特別研究員らは、従来、高価なシリコン基板上で行われていたスーパーグロース単層カーボンナノチューブ合成法を、より安価な金属板上で合成できるよう改良に取り組んできた。また、日本ゼオンと共同で大面積かつ連続に製造する大量生産技術に取り組んでいる。  なお、本研究は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という)の委託事業、ナノテクノロジープログラム「カーボンナノチューブキャパシタ開発プロジェクト」(平成18〜22年度)」の支援を得て実施されたものである。

【 研究の内容 】

 触媒を担持させて、カーボンナノチューブを成長させる基板として、従来のシリコンウェハのような高価な基板ではなく、比較的安価な材料よりなる基板を用いて、品質に優れたカーボンナノチューブを大量に製造する技術について検討を重ねた。CVD(化学気相成長)技術として、産総研ナノカーボンチームが開発したスーパーグロース法を適用した。スーパーグロース法は、基板上で単層カーボンナノチューブを合成する方法であり、世界最高の成長効率を誇る。本手法では、800℃近くの温度条件下で、水素還元雰囲気、水分添加、酸化雰囲気に対して高い耐久性を示し、かつカーボンナノチューブの合成を阻害しない基板が必要となる。検討を重ねた結果、特定のニッケル合金が要件を満たしていることを発見した。特にこれらの合金の板状あるいはリボン状のものを用いることにより、目的とする性質を持つ単層カーボンナノチューブの配向構造体が得られることを確認した。ここで用いたニッケル合金上では、単層カーボンナノチューブの品質、収量、選択性はシリコン基板上と同等であった。すなわち、大きさの制限が少なく、シリコン基板よりもはるかに安価なニッケル合金基板で大量の単層カーボンナノチューブを合成することが可能となった。

 日本ゼオンと共同で、今回開発した技術を適用できる大面積スーパーグロース合成炉を設計・試作し、A4サイズの金属板の全面に均一な単層カーボンナノチューブ構造体を合成することに成功した。合成された単層カーボンナノチューブは、世界最高レベルの高純度(炭素純度99.9%以上)、高比表面積(非開口状態で1000m2/g以上)、長さを持ち、かつ配向しており、スーパーキャパシタ、アクチュエータなど様々な用途において非常に有用なものと考えている。

*図3は添付資料をご参照ください。

【 今後の予定 】

 今後、今回開発された、スーパーグロース金属基板カーボンナノチューブ合成技術をコア技術とし、これまで小型基板バッチ処理で行われてきた合成反応を、スケールアップ・連続化・高効率化することにより、従来の数百分の一という大幅な単層カーボンナノチューブの製造コストダウンを図る。今回の成果により、従来の小型バッチ、シリコン基板上での数ミリグラム単位の生産量から、一気にグラム単位の生産が可能となり、キャパシタなどの応用開発に弾みがつくと期待される。NEDOの委託事業「カーボンナノチューブキャパシタ開発プロジェクト」の支援を得て、数年以内に、配向、長尺、高純度、高比表面積のバルク単層カーボンナノチューブの工業的量産化を目指す。また、本法によって合成された単層カーボンナノチューブは、比表面積あたりの電気容量が活性炭より大きく、高エネルギー密度かつハイパワーのキャパシタ材料となる可能性を持つ。こういった特性を利用し、キャパシタの需要に求められる高出力、高エネルギー密度、長寿命の電気二重層キャパシタを開発する。

*図4は添付資料をご参照ください。

【 用語の説明 】

◆単層カーボンナノチューブ(SWNT:Single−Walled Carbon Nanotube)

 カーボンナノチューブは炭素原子のみからなり、直径が0.4〜50nm(1ナノメートル:10億分の1メートル)、長さがおよそ1〜数10μmの一次元性のナノ材料である。その化学構造はグラファイト層を丸めてつなぎ合わせたもので表され、層の数が1枚だけのものを単層カーボンナノチューブと呼び、グラファイト層の巻き方(らせん度)に依存して電子構造が金属的になったり半導体的になったりする。

◆スーパーグロース法

 単層カーボンナノチューブの合成手法の一つであるCVD法において、水分を極微量添加することにより、触媒の活性時間及び活性度を大幅に改善し、ナノテクノロジーの中核素材として期待される単層カーボンナノチューブの合成において、従来の500倍の長さに達する超高効率成長、不純物が従来の1/2000の超高純度単層カーボンナノチューブを合成する技術。さらに、配向性も極めて高く、マクロ構造体も作製できる。

◆CVD法(化学気相成長法:Chemical Vapor Deposition)

 ナノサイズの遷移金属の触媒下、メタン(CH4)やアセチレン(C2H2)などのガスを反応させて、カーボンナノチューブを得る方法。CVD法は炭化水素を原料に用いるのと、500〜1200℃の比較的低温で反応を行うのが特徴である。

【 問い合わせ 】

 独立行政法人 産業技術総合研究所 広報部  広報業務室 〒305−8568 茨城県つくば市梅園1−1−1 中央第2  つくば本部・情報技術共同研究棟8階  TEL:029−862−6216 FAX:029−862−6212 E−maiL:presec@m.aist.go.jp

ガス分子選別に道 カーボンナノチューブ「交換転移」を発見

2007/01/22 FujiSankei Business i.

 首都大学東京の真庭豊・助教授らと産業技術総合研究所(産総研)のグループは、単層構造のカーボンナノチューブ(CNT=炭素原子の微細管状物質)内の空間にある水分子が、CNTの周辺にあるガス分子と入れ替わる現象を発見した。「交換転移」と呼ぶ現象で、目的の分子を交換転移できるため、分子選別フィルターやガスセンサーなどへの応用が期待できるという。

 これまで、1ミリの100万分の1というナノ(ナノは10億分の1)メートルサイズの微細な空間で、水やガスなどの分子がどのような挙動を起こすかは明らかにされていない。

 研究グループは、直径1・35ナノメートルのCNTを使い、水素、酸素、メタンなど10種類のガスの挙動を調べた。その結果、低温や高圧力になると、CNT内の空間にある水分子がCNT周辺のガス分子と交換する現象が起きることが分かった。

 交換転移が起きる温度は、ガスの種類や圧力に強く依存し、例えば1気圧のメタンの場合はマイナス約30度以下になるとCNT内の水分子が追い出されるとともにメタンが進入した。

 一方、ヘリウム、水素、ネオンの場合は、マイナス約170度まで水分子がCNT内にとどまった。

 研究グループでは、水を吸着したCNTを用いると、特定のガスだけを通過する分子選択的バルブ(弁)として応用できる可能性があるという。また、交換転移に合わせて電気抵抗を計測したところ抵抗値が急激に変化したため、ガスセンサーとしての応用も見込めるという。

 この研究成果は、英科学誌ネイチャー・マテリアルズのオンライン版に現地時間の21日に掲載される。

半導体メーカーのソナック、高知テクノパークに進出

2007/01/17 NIKKEI NeT

 半導体関連メーカーのソナック(大阪市、青木勝詔会長)は16日、高知県が整備した工業団地、高知テクノパーク(香美市)に進出すると発表した。

 テクノパーク内にカーボンナノチューブの製造・研究拠点を建設し、2009年度には17人の従業員規模になる見通し。テクノパークへの進出は4社目で、7区画のうち残るのは3区画となった。

 テクノパークの6号区画(約7900平方メートル)に、高知工場を建設する。3月に工事を始め、12月1日の操業開始を目指す。初期投資額は5億1000万円。

 立ち上げ時の従業員数は県内新規雇用10人を含む13人、09年度には同14人を含む21人となる見通し。

 高知工場はカーボンナノチューブの製造拠点とするほか、テクノパークに隣接する高知工科大学の平尾孝教授らと共同で研究開発を進める。

カーボンナノチューブの基本特許のライセンスを北米で提供開始

2006年08月03日 日本電気株式会社

 NECはこのたび、米国のサウスウェスト・ナノテクノロジーズ社(注1)と、当社が保有するカーボンナノチューブの基本特許について、特許ライセンス契約を締結しました。

 カーボンナノチューブは、カーボン(炭素)でできた、直径がナノメートルサイズ(注2)の超微細な円筒状の細長い材料で、1991年に当社の飯島澄男特別主席研究員によって発見されたものです。カーボンナノチューブは、その特異な形状と、高強度性、高電気伝導性、高熱伝導性など、従来の材料にはなかった優れた特性を持つため、現在、ナノテクノロジーを支える中心的な素材として世界的な注目を集めており、高分解能プローブ探針、高効率電子放出源、フラットパネルディスプレイ、超高強度材料、高性能トランジスタ、配線材料、放熱材料、燃料電池、触媒・吸着材料等、多様な製品への応用が期待されています。

 サウスウェスト・ナノテクノロジーズ社は、米国オクラホマ大学が開発したカーボンナノチューブの製造技術「CoMoCAT製法」(注3)を実用化しており、今後は広範囲な応用分野において需要の急増が見込まれるカーボンナノチューブ材料を全世界に供給していく計画です。その計画を遂行していくにあたり、当社が保有する基本特許の提供を受けることが必要不可欠と判断し、ライセンス契約を締結したものです。

 NECでは、カーボンナノチューブの優れた電気的特性から、今後はカーボンナノチューブを大量合成する製造技術の確立とともに、その応用研究が加速され、将来の電子部品や電子機器、さらにはバイオ分野などにも新しい技術革新がもたらされるものと考えています。当社が保有する単層、および多層のカーボンナノチューブに関する基本特許は、カーボンナノチューブの製造・販売に不可欠なものと認識しています。そこで、カーボンナノチューブの製造技術開発の進展やその応用市場の発展を支えるため、当社では現在、カーボンナノチューブ関連ビジネスを検討している世界各国の様々な企業に対して、合理的な契約条件でライセンス供与していくための交渉を進めており、このたび、まず米国のサウスウェスト・ナノテクノロジーズ社と契約締結したものです。

 さらにNECでは、基本特許をライセンス供与するだけでなく、ライセンシーや商社、応用製品メーカー等、カーボンナノチューブ市場における様々な企業間のバリューチェーン構築を支援することも通じて、市場拡大をサポートしていきます。

 なお、日本市場においては、NECが運営する新規事業創出のための会員組織「イノベーション創発工房」(注4)を通じて、カーボンナノチューブの市場探索や、応用技術の共同開発などの各種アライアンスやバリューチェーン構築等の検討を実施しています。以上

次世代炭素素材、生産効率100倍以上に向上

2006年05月11日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 次世代の新素材として注目される炭素素材「カーボンナノチューブ」を、従来の約2倍の高純度で大量生産することに、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の研究グループが成功、11日発表した。

 直径1ミリでも100キロ・グラム以上の重さに耐えられる、軽くて丈夫な糸やシート(薄膜)の作製が可能となり、航空機材料など産業材料に応用できると期待される。12日に都内で開かれるシンポジウムで発表される。

 研究グループは、高温の加熱炉に原料の炭素と触媒を噴霧する従来の方法を改良。原料の温度や反応状態を精密に制御することで純度を97・5%以上に高めたカーボンナノチューブを作ることに成功。生産効率も従来の100倍以上に向上した。

 従来の方法では量産はできたが、不純物が50%以上混ざるため、糸やシートを作る際に壊れやすいという欠点があった。

 今回の量産されたものは直径がナノ(ナノは10億分の1)メートルサイズのカーボンナノチューブがいくつも重なり、スポンジ状の膜を形成。これを引っ張りながら撚(よ)って糸にし、押しつぶすことでシートを作ったという。

 カーボンナノチューブは日本人が発見した。ノーベル賞も期待されている。

富士通、カーボンナノチューブを利用した半導体チップの放熱基板を開発

2005年12月05日 ASCU

 富士通(株)と(株)富士通研究所は5日、カーボンナノチューブを利用した半導体チップの放熱基板を開発したと発表した。

開発したのは、携帯電話基地局などで利用される高周波の高出力増幅器用の放熱基板で、これまでは高出力トランジスターチップをパッケージに直接接合して熱を逃がす“フェイスアップ構造”が採用されていたもの。フェイスアップ構造では、トランジスターチップの電極とパッケージの電極を接続する金属ワイヤーのインダクタンスの影響で、周波数を上げようとすると増幅率が低下するという問題がある。それを解決するものとして、トランジスターチップを裏返してチップ電極とパッケージ電極を短い金属バンプ(突起電極)で接続する“フリップチップ構造”があるが、高出力増幅器では従来の金属バンプでは十分な放熱を行なうのが難しい。そこで高い熱伝導率を持つカーボンナノチューブをバンプに採用したという。

  カーボンナノチューブ(CNT)バンプ 開発した技術は、触媒にFe(鉄)膜を用いることで、基板に垂直に15μm以上のカーボンナノチューブを成長させる“カーボンナノチューブ成長技術”と、カーボンナノチューブの微細加工性を用いて、高出力トランジスターの微細電極パターン(幅10μm以下)に合わせた微細カーボンナノチューブバンプを形成し、バンプとフリップチップを接合できるようにする“カーボンナノチューブバンプとフリップチップの接合技術”の2つ。カーボンナノチューブ1本あたり1400W/mK(ワット毎メートル毎ケルビン)の熱伝導率を持つため、フリップチップの高増幅率を持ちながら、フェイスアップ構造と同等の放熱製を確保できたとしており、従来のフェイスアップ構造に比べて、インダクタンスを半分以下に低減でき、5GHz以上の高周波での増幅率を2dB以上に向上できたとしている。

 今後、バンプ中のカーボンナノチューブを高密度化することで、放熱性を向上させ、3年後くらいをめどに第3世代以降の携帯電話基地局への適用を目指すという。

カーボンナノチューブ採用テレビ、25インチの試作機が登場

2005/09/08 Michael Kanellos(CNET News.com)

 Applied Nanotech(本社;テキサス州オースチン)が、日本の電子機器メーカー6社と協力し、カーボンナノチューブの採用によって、現在市販されているものよりも明るく鮮明な映像を実現できる、25インチ型テレビの試作機を作り上げた。

 この25インチ型テレビは22インチの表示領域を持つ。初期の14インチ型試作機と同様に、このテレビの画面には、デジタルテレビで散見される「ゴースト」が発生しない。

 キヤノン、東芝、Samsungなどの家電メーカーは、液晶テレビやプラズマテレビと同等の薄さで、従来のブラウン管テレビの画質を実現できるテレビを開発しようと、カーボンナノチューブやダイヤモンド粉などの素材を使った実験を進めている。

 Applied NanotechのCEO(最高経営責任者)Zvi Yanivによると、何年か後には、大型テレビ(50インチ以上)の市場では、これらの技術をベースにしたテレビが、リアプロジェクションテレビやプラズマテレビに対抗するようになるという。

 従来のブラウン管テレビでは、細かく分割され、螢光体が塗布されたガラスに電子銃で電子を照射して画像を描く。しかし、電子を真空の広い空間で分散させる必要があることから、ブラウン管は大きくかさばる形状となっている。

 だが、いわゆる電界放出ディスプレイ(FED)テレビでは、幅わずか数ナノメートルの尖った数千のチップに電子を振り分け、ここから電子を発射して画面に照射する。その結果、これらのテレビは液晶やプラズマのような薄型化が可能になる。

 FEDテレビは製造コストの点でも有利だ。ナノチューブ、ダイヤモンド、あるいはほかの素材でも、FEDではこれらのチップがディスプレイのガラスにプリントされている。対照的に、液晶パネルやプラズマの場合は、もっと手の込んだ製造プロセスが要求される。数十年に及ぶ液晶のノウハウと、電子機器製造の経済的側面を合わせて考えれば、FEDテレビはマスマーケットでは液晶ディスプレイに太刀打ちできそうもない。しかし、FEDの優位性は大画面でこそ発揮されると、Yanivは述べている。

 Applied Nanotechによると、このテレビの製造に利用されているプリント技術は、対角60インチの次世代テレビや対角80インチのHDテレビと互換性があるものだという。

 キヤノンと東芝は1999年から共同で表面電界ディスプレイ(SED)と呼ぶ似たタイプのディスプレイの研究を進めている。両社はSEDテレビを2006年に発売する計画だ。

 一方、Samsungはこのタイプのテレビに関して、リリース時期こそ明言していないものの、すでにプロトタイプを発表している。Samsung Electronicsの元社長で、現在は韓国の情報技術担当大臣を務めるDaeje Chinは、韓国が2006年にはカーボンナノチューブを使ったテレビを輸出できるようになると発言したことがあった。

ナノテク実用化時代、環境・健康への影響調査

2005/01/30 読売新聞 Yomiuri On-Line

 政府は、21世紀の基盤技術となるナノテクノロジー(超微細加工技術)の安全評価に乗り出すことを決めた。

 ナノテク素材が健康や環境に及ぼす影響などを調べ、安全基準や法規制を検討する。

 安全性検証が後手に回り消費者の反発を招いた遺伝子組み換え技術などを教訓に、新技術の安全評価を前倒しすることにした。ナノテク研究は日本が世界をリードしており、国際的な実用化の時代を迎え、社会的な受け入れ体制を整えるのが狙い。

 評価対象となるのは、日本人が発見した「カーボンナノチューブ」や、サッカーボール状の炭素分子「フラーレン」など、「ナノ粒子」と呼ばれるナノ(ナノは10億分の1)サイズのハイテク素材。

 日本はこの領域では世界の第一線を走っており、すでに塗料や化粧品などへの実用化も始まっているが、欧米の環境団体などでは、これらの物質の安全性を懸念する声も出てきている。

 たとえばナノチューブは極細の針状物質で、肺線維症などの原因となるアスベストと似ており、大量に吸い込むと肺を傷つけるとの実験結果がある。

 また、ほかの分子を吸着しやすく、汚染物質を吸着すると環境に拡散しやすいとの懸念も指摘されている。このため米国や英国政府は、ナノテクが社会に及ぼす影響について調査を進めている。

 こうした動きを受け、総合科学技術会議(議長・小泉首相)は昨年末、大学や経済産業、文部科学、環境、厚生労働省などの研究機関を対象に、ナノテクの社会的影響についての調査・研究の公募を始めた。

 安全面での研究が進んでいる欧米と協調し、ナノテク素材の製造から商品化、廃棄までの過程で、工場従業員や消費者、生態系にどのような危険を及ぼす可能性があるかを検証する。併せて社会に対する情報提供の手法なども検討する。

 経産省では、今月設置した「ナノテクノロジー政策研究会」(会長=岸輝雄・物質・材料研究機構理事長)の下部部会で評価の手法や手続きを議論し、3月末までに中間報告をまとめる。

 国はナノテクを科学技術の4大重点テーマの一つに指定し、今年度は、940億円の研究開発資金を投じた。

 官民あげて産業化を進め、ナノテク用の新素材開発では、米国や韓国などと世界トップを競っており、日本経団連は2010年には世界のナノテク市場は130兆円に達すると予測している。

炭素素材内なら室温27度で氷、産業技術研などが確認

2004/12/20 読売新聞 Yomiuri On-Line

 次世代の新素材として注目される超極細の炭素素材「カーボンナノチューブ」内部に水を入れると、27度以下の室温で氷になることが20日、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)と東京都立大(東京都八王子市)などの研究グループの実験で分かった。

 室温では、1万気圧をかけると氷ができることは知られていたが、大気圧以下で確かめられたのは世界で初めてという。

 ナノチューブは、炭素原子でできた六角形の網目のシートを丸めた筒状で、直径が毛髪の数千分の一。研究グループは、単層カーボンナノチューブを、湿度の高い状態に置いて内部に水を封じ込め、水がどのように変化するかをエックス線を使って観察した。その結果、27度で水が凍り、5個の水分子が輪状につながって極細の氷柱が出来ることが確認された。ナノサイズ(1ナノ・メートルは10億分の1メートル)の半導体技術への応用が期待できるという。

 研究グループは、ナノサイズの機械の実用化に向けて、ナノ空間に閉じ込められた水の動きを確かめる実験の過程で、たまたま氷結現象を確認した。

 思わぬ発見に、産総研の片浦弘道主任研究員は「今後、さらにナノチューブ内の水の性質などを詳しく研究し、応用につなげていきたい」と話している。

水ちょっと加え、カーボンナノチューブ画期的新製法

2004/11/21 読売新聞 Yomiuri On-Line

 次世代の新素材として注目される超極細の炭素素材「カーボンナノチューブ」を、従来の約500倍の長さ、2000倍の高純度で合成する技術を、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の畠賢治・主任研究員らのグループが開発した。

 従来の製造法に水を微量加えるだけの簡単な方法で、長さ2・5ミリ・メートルの単層チューブを作ることに成功。さらに、低コストで円筒形やフィルム状など形を自在に変えられるのが特徴という。プラズマディスプレーやエネルギー貯蔵用電源など、幅広い応用が期待されている。

 ナノチューブは、700度以上に熱したガス状の炭素を、金属を含んだ基盤上に吹き付けて合成する。同グループはガス中に微量の水を注入。チューブの合成を阻む不純物を燃やし、10分間という短時間に効率良く高純度チューブ(99・98%)を作ることに成功した。製造コストも従来の数百分の1に圧縮することが可能。

 カーボンナノチューブは高価で大量生産が難しく、実用化が遅れていた。同グループには、米航空宇宙局(NASA)などを始め研究室や企業から、サンプル提供の申し込みが相次いでいる。

 カーボンナノチューブの発見者である同研究所の飯島澄男ナノカーボン研究センター長は「待ちに待った成果。研究が活気づくのではないか」と話している。

 ◆カーボンナノチューブ=炭素原子が網目状に並び、円筒形のチューブの形になった物質。構造は竹カゴに酷似している。毛髪の数千分の1の直径でも、鉄の約20倍の強度があり、大量の電気を蓄えることができる。半導体、次世代プラズマ画面の素材、触媒など、応用範囲は極めて広い。

世界初! 均一な長さの短繊維カーボンナノチューブを開発

2004年07月16日東北大学多元物質科学研究所/株式会社富士通研究所
〜カーボンナノチューブ内への磁性金属充填にも成功〜

 東北大学多元物質科学研究所(所長:中西八郎)の京谷隆教授グループと株式会社富士通研究所(注1)は共同で、世界で初めて、均一な長さの短繊維カーボンナノチューブの作製とチューブ内への磁性金属の充填に成功しました。カーボンナノチューブの磁性応用への道を拓くものです。

 今回開発した技術は、カーボンナノチューブの応用の可能性を広げる新素材の開発に関する基礎研究の一環です。長さの揃った50ナノメートル(以下、単位についてはnm)までの短いカーボンナノチューブを実現し、しかも磁性も持たせることにより、特定のDNAやタンパク質の磁気分離やドラッグデリバリなどのナノバイオ応用、あるいは高密度磁気記録媒体への応用を目指すものです。

本技術の詳細は、7月11日から米国ロードアイランド州で開催された国際会議Carbon2004で発表しています。(以下略)

米IBM、カーボンナノチューブを用いたトランジスター技術を開発

2001年05月01日 ASCU24

 日本アイ・ビー・エム(株)の27日付けの報道資料によると、米IBM社は27日(現地時間)、カーボンナノチューブ(炭素原子で作られた直径数nmのチューブ)を用いたトランジスター技術を開発したと発表した。

 同技術は、シリコントランジスターに比べ大きさが500分の1程度のカーボンナノチューブを、半導体素子(トランジスター)として利用するというもの。カーボンナノチューブは炭素原子で構成される円筒状の物質で、サイズや構造の違いにより金属性と半導性のどちらかの電気的性質を持つという。カーボンナノチューブを合成する際に、金属性のものと、半導性のものとが混在してしまうので、チップ素材としての利用に限界があった。

 同社は、“建設的破壊(Construcive Destruction)”と呼ばれる製造手法を開発し、半導性ナノチューブのみの高密度配列の作成に成功した。同手法は、合成したカーボンナノチューブをシリコンウエハー上に置くことで半導性ナノチューブを絶縁し、金属性ナノチューブだけに電圧を加えて破壊するというもの。個々のナノチューブを操作することなく、コンピューターで利用可能な論理回路を作成できるとしている。今回の開発に携わった同社のT・J・ワトソン研究所のフェードン・アブリス(Phaedon Avouris)ナノスケールリサーチ部門マネージャーは、「この技術は、分子規模の電子デバイス作成を前進させるもの。カーボンナノチューブは性能面でシリコンに匹敵し、トランジスターを大幅に小型化できるため、将来のナノエレクトロニックテクノロジーの有望な候補である」とコメントした。

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