TOPIC No.6-32 統合国際深海掘削計画(IODP)

01. なぜ深海を掘るのか?(2004年9月26日) by 深海温泉 西村屋 本館
02. 地球を掘る-統合国際深海掘削計画(IODP)の紹介
03. Integrated Ocean Drilling Program
04. CHIKYU HAKKEN
05. 地球深部探査船「ちきゅう」見学記
06. 高知大学海洋コア総合研究センター
07. 独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)
08. インタープリター深海掘削船生活
09. メタンハイドレート byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
10. メタンハイドレート(2005/10/29)
11. メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(MH21研究コンソーシアム)
12. “燃える氷”を獲得せよ 〜メタンハイドレート研究最前線〜(2003/10/08)NHK
13. Methane Hydrateの回収利用に関する研究 by北海道大学大学院工学研究科・工学部 資源システム工学研究室
14. 燃える氷「メタンハイドレート」開発への取り組み 2016年以降に商用実用化を目指す

9月から海底を本格掘削 探査船「ちきゅう」、南海トラフで

2007年07月18日 中国新聞ニュース

 海洋研究開発機構は18日、地球深部探査船「ちきゅう」が海外での試験掘削を終え、9月から紀伊半島沖の南海トラフで本格掘削を始めると発表した。当面3年間の予定で、大規模な被害が予想される東南海地震などのプレート(岩板)境界の地震がどのように発生するかの解明を目指す。

 ちきゅうは2006年に青森県・下北半島沖で最初の試験掘削を実施。その後アフリカ沖やオーストラリア沖で乗組員の訓練を兼ねて石油の探査をするなど、性能を確認していた。

 今年5月にオーストラリア沖での掘削中、海底まで降ろしたパイプを支える装置で被膜がはげる不具合が発生。原因究明と修復に約半年かかる見通しだが、南海トラフでは当初はこの装置を使わないため、影響はないという。

 ちきゅうは9月21日に支援拠点の和歌山県の港を出発予定。南海トラフでプレート境界のサンプルを採取し、岩石の組成や含まれる水の量、圧力などを調べ、地震発生の仕組みを探る。

掘削船ちきゅうにトラブル 下北沖、作業中断の恐れも

2006/10/10 中国新聞ニュース

 海洋研究開発機構は10日、下北半島沖で海底下の地層の掘削作業を行っている地球深部探査船「ちきゅう」の掘削装置の一部が破損したと発表した。同機構は掘削作業を続けるか、作業を中断して修理を行うか検討を始めた。12日をめどに判断する。

 ちきゅうは掘削用ドリルを海流などから守るため、ドリルを通す管を船上から下ろし、掘削時に海底から水などが噴出するのを防ぐ「噴出防止装置」とつなぐ方式を採用している。風や波が強い場合は、噴出防止装置を上下2つに切り離して、船が避難できるようになっている。

 ちきゅうは6−8日に接近した低気圧の影響を避けるため、7日夕に装置を切り離して避難。その後、10日午前に再接続を試みた際、接続部分が破損しているのを発見した。切り離し作業などの際に大きな力がかかって破損した可能性がある。

 破損したのは噴出防止装置の上下をつなぐ「油圧勘合部」と呼ばれる部分。破損したのは2つあるうちの片方で、正常なもう片方だけでも接続は可能だという。

5500万年前 北極の海面は23度「亜熱帯」

2006年06月01日 asahi.com

 約5500万年前の北極の海面温度は23度もあり、亜熱帯レベルの暖かさだったが、約4500万年前から氷におおわれ始めた――北極の激しい気候変動の歴史が、日米が始めた研究プロジェクト「統合国際深海掘削計画(IODP)」の調査によって明らかになった。1日発行の英科学誌ネイチャーに発表する。

 IODPの参加国は現在、20カ国。調査グループは、04年夏、北極海のロモノソフ海嶺(かいれい)と呼ばれる海底山脈を掘削、地下430メートルまでの堆積(たいせき)物を採取した。北極周辺は海氷が動き、船の位置を固定することが難しかった。「掘削船のほかに2隻の砕氷船を使い、初の北極海の調査掘削に成功した」と参加した北海道大学の山本正伸・助教授(古海洋学)。

 約5500万年前は大気中の二酸化炭素濃度が上がり、温暖だったことが知られていた。グループは、微生物がつくる有機物が、温度によって変化することに注目。堆積物を詳細に解析し、海面温度は23度だったと推定した。現在の0度以下の海面より20度以上も上回っていたことになる。

 約4900万年前には淡水で生きる浮草が北極海をおおっていたこともわかった。亜熱帯の暖かさから気温が下がり、現在の氷の時代が始まるタイミングは、氷が運んだと思われる石が見つかった約4500万年前と推定された。これまで見つかっていた証拠より約3500万年もさかのぼる結果だった。

 氷は太陽光を海水より多く反射し、地球全体の気候に影響を与える。氷がない時代の様子を知ることは、「温暖化の将来予測にも役立つ」と調査に参加した高橋孝三・九州大学教授(古環境学)は言う。

メタンハイドレート−期待される工業的採掘

2006-05-08 BIGLOBメールマガジン

 メタンハイドレートはシャーベット状の物質で火を付けると燃えることから、別名は「燃える氷」と呼ばれる。日本近海にも豊富なことから、次世代のエネルギー源になるのでは期待されている。

 メタンハイドレートは低温で高圧な場所程、安定して存在出来る。陸上ではシベリアやアラスカ、カナダ等永久凍土地帯に集中するが、圧倒的に多いのは海底だ。世界の分布を見ると、陸に近い大陸棚海底に集中しているのが分かる。日本周辺は世界的にみても埋蔵量が豊富で、天然ガス消費量の50〜250年分が眠っていると試算されている。

 ただ、水深が500mより深い海底下に形成されているので、採掘法が問題となる。現状有望とされるのはハイドレートを分解した上で発生したメタンをパイプで回収する方法と言われている。その他の採掘法についても種々の手法が検討されているが、何れもコスト面で問題があり研究者や技術者の試行錯誤が続いている。

 世界的なエネルギー資源の不足から、原油・天然ガスの市場価格が高騰して来て経済的にも問題となり、代替燃料の開発が焦眉の急となって来ました。 原油に関しては、1980年代にはカナダに埋蔵される「タールサンド(砂に原油が付着したもの)」、アメリカ中部の「オイルシェール(岩石中に原油が封入されたもの)」、1990年代には南米オリゴノ河の「オリゴノオイル(半固形の原油)」も検討されましたが、工業的採掘が困難として中断されたままとなっています。 近年ではバイオマス燃料からエタノール製造する「持続可能なエネルギー供給」が検討され、工業的にも稼働を開始しました。

 しかし、エタノール燃料は補助的なもので、従来から圧倒的なエネルギー源である「原油・天然ガス」の代替が必要で、メタンハイドレート(MH)又は天然ガスハイドレート(NGH)の工業的採掘確立が強く期待されています。

統合国際深海掘削計画:海底から1.5キロ掘削、深成岩採取に成功−−国際チーム

2006年04月21日 毎日新聞 東京朝刊

 米カリフォルニア大などの国際プロジェクト「統合国際深海掘削計画(IODP)」が、東太平洋の中米コスタリカ沖で、海底を深さ約1・5キロまで掘り抜き、地殻の最下層の深成岩を採取することに初めて成功した。20日付の米科学誌「サイエンス」電子版で発表した。

 深成岩は「マグマだまりの化石」とも呼ばれ、地殻形成のメカニズムを知る上で重要。40年以上に及ぶ海底掘削の歴史で、深成岩まで到達した例はなかった。

 プロジェクトには、海野進・静岡大教授や宮下純夫・新潟大教授ら日本人11人も参加。02〜05年の3回にわたり、地殻が薄いと推定されるコスタリカ沖で掘削船「ジョイデス・レゾリューション」を使ってボーリングした。海底から約1407メートルの地点で深成岩層に到達。さらに約100メートル掘り進め岩石を採取した。海野教授は「1500万年前に地殻が形成された当時、マグマだまりが活発に活動していたとみられることなど、初めて分かることも多かった」と話している。【須田桃子】

東シナ海の日本側、中国が「環境目的」掘削計画

2006年04月14日 読売新聞

 中国が環境調査を目的に、東シナ海で海底掘削を計画していることが13日、明らかになった。

 日米欧と中国が参加する国際研究プロジェクト「統合国際深海掘削計画」(IODP)の事業として申請している。

 東シナ海では、ガス田開発をめぐって日中が対立しており、中国側の今回の計画も資源確保につながるとする見方もあることから、日本政府は中国側との共同調査などの対応を検討する方針だ。

 IODPは2003年10月に始まった国際プロジェクトで、日本が建造した地球深部探査船「ちきゅう」と米国の掘削船を主に使い、地震発生のメカニズムや地球環境、生命誕生の謎などの解明を目指す。04年に欧州各国と中国が参加した。運営費は、参加国が分担して拠出している。

 中国側の掘削申請は昨年9月、上海市の大学の教授名で提出された。

 申請によると、中国側は東シナ海の5か所で海底掘削調査を行い、海底の堆積(たいせき)物や地層の形状についてのデータを収集して、数百万年前から現在までの東アジア地域の気候変動を研究するとしている。調査地点はいずれも公海上で、4か所は日中中間線より中国側、1か所は中間線より200キロ程度、日本側に位置している。

 日中両国の有識者らが作る「新日中友好21世紀委員会」は3月に京都市で開いた会合で、東シナ海の環境調査を共同で実施するよう両政府に求めることを決めた。しかし、決定を受けて委員会メンバーの松井孝典東大教授がIODPなどに問い合わせたところ、中国側がすでに単独で掘削計画を申請していることがわかった。申請が認められれば、中国の研究者だけで「ちきゅう」などを使い、調査を進めることになる。

 政府内では、中国の今回の計画について、「海底資源の把握が本当の目的ではないか」との見方もある。

 松井教授は13日、首相官邸に安倍官房長官を訪ね、中国側に共同調査を働きかけるとともに、掘削の前提となる事前調査に日本も着手するよう求めた。安倍長官は「事実関係を調べ、対応を検討する」と答えた。これに関連し、政府筋は13日、「小泉首相は『東シナ海を協力の海に』と主張しており、中国側が単独で調査するのは認められない。何らかの手立てを考えたい」と述べた。」

新潟県上越市沖の海底にメタンハイドレートを確認

2006/03/14(共同通信)科学新聞社

 東大と海洋研究開発機構、(株)独立総合研究所、産業技術総合研究所らの研究グループは、新潟県上越市沖の水深約800〜1000mの海底に柱状に分布する熱分解起源のメタンハイドレートを確認し、採取に成功したと発表した。

 メタンハイドレートは海底下数100mの堆積物中に広く分布し、メタン分子が水分子の籠構造に取り込まれた化合物。その性質から「燃える氷」と呼ばれる。大量のメタンを蓄え、石油や天然ガスに代わる新しいエネルギー資源として注目されている。また、温度や圧力の変化で簡単に分解し大量の温室効果ガスでもあるメタンを放出するため、地球環境の変動要因の可能性が疑われている。

 研究グループは、04年7月から、研究調査船で調査を開始。海底にステンレス製のチューブを打ち込んで底泥を採取するピストンコアラや採水、魚群探知機による気泡のイメージング、無人潜水艇による海底の観察を行った。調査の結果、海底から放出された大量のメタンによるガスの柱や、海底に露出するメタンハイドレートを発見、回収に成功した。メタンハイドレートの炭素同位体比や海底の生物群の特徴から、これらが海底下数kmの深部に由来する熱分解起源ガスであることを明らかにした。付近の海水のメタン濃度も通常の10〜数千倍だった。

 海洋のメタンハイドレートの多くは微生物分解起源が一般的で、海底にまで露出するのは珍しい。有機物は地層中で分解しガスを生成するが、海底から数100mより浅い地層中では微生物による分解が、地球深部の高温環境では非生物的に分解する。熱分解起源ガスの方が埋蔵量は多いと考えられている。

 また研究グループは、メタンハイドレートの海底下の分布を明らかにするため海底曳航式探査で電気探査を行った。カメラ観察とピストンコアリングを行った地域で、無人探査システムから海底に微弱な電流を流し、電気抵抗を調べたところ、通常の堆積物と比べて非常に高い電気抵抗を示す物質が海底下100mまで柱状に分布している事が示された。メタンハイドレートは非常に電気抵抗の高い物質として知られていることから、この物質はメタンハイドレートであると結論付けた。

 研究グループは深部で生成されたガスが、海底まで上がってくる過程で柱状のメタンハイドレートを形成した可能性があるとしている。今後はこの海域のメタンハイドレートの生成過程や環境に与える影響、よりくわしい分布や量を調べる予定。

メタンハイドレートは環境に安全か?

2006年02月21日 EICネット

海底下に大量の燃える氷 メタンハイドレート

2006年02月21日(共同通信)YAHOO!ニュース

 海洋研究開発機構と東京大のグループは20日、「燃える氷」と呼ばれ次世代エネルギー資源と注目されるメタンハイドレートが、新潟県上越市沖の海底2カ所で幅約100−200メートルにわたって露出し、柱状に少なくとも海底下100メートルの深さまで続いていることが分かったと発表した。

 メタンハイドレートは、メタンが水と結合しシャーベット状に固まったもの。長さ約4キロの調査範囲内に、ほかにも幅50メートル以内のメタンハイドレートとみられる物質が同様に数本あり、より深部に巨大なメタンガス層が存在する可能性もあるとしている。

 上越市沖約30キロ、水深約800−1000メートルのこの付近では、2004年にメタンガスが噴出しているのが見つかり、グループが海底下の電気抵抗を調べる新開発の方法も使い探査していた。

「燃える氷」の実用化へ前進 深海資源「メタンハイドレート」

2006年02月20日 i-letter

 日本近海に100年分の埋蔵量があり、石油代替エネルギーとして期待される「メタンハイドレート」の実用化に向け、経済産業省が本腰を入れ始めました。1月には初めて生産コストの試算をまとめ、今年末にはカナダで抽出実験に乗り出し、採掘技術を確立したうえで、10年後の実用化を目指します。これまでは、生産コストが高いことがネックだったのですが、原油価格の急騰で採算ラインに乗る可能性が出てきたのです。

 メタンハイドレートは、メタン分子を水の分子が取り囲んでシャーベット状に固まったもの。氷に似ているが、火を付けると燃えるため、「燃える氷」とも呼ばれています。

 穴を掘れば地上に噴き出してくる石油と異なり、固体で深海底に眠るメタンハイドレートは採掘に膨大な費用がかかるため、これまでは商業ベースには乗らないとされていました。

 しかし、採掘技術も進んでいて、01年のカナダでの実験では氷塊を掘り出すのではなく、掘った穴に温水を注入して解かし、分離したメタンガスを吸い取る「加熱法」による採掘に成功。今年末のカナダでの実験では、加熱法よりもコストが低い新たな「減圧法」を試す予定です。

世界で初めて微生物によるメタンハイドレート形成過程の解明に糸口

平成18年02月06日 独立行政法人海洋研究開発機構

[概要]

 海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)・極限環境生物圏研究センター(センター長 掘越弘毅)・地殻内微生物研究プログラムの稲垣史生サブリーダーを中心とする日独米の国際プロジェクトチームは、南米ペルー沖、ガラパゴス諸島近傍の東太平洋赤道域及び北米オレゴン沖の海底から数百メートルの深さまで堆積物を掘削し、海底下に棲む微生物の系統学的多様性を環境中から直接抽出した遺伝子解析などによって解明した。本研究によって、海底下深部に存在する微生物の多くがこれまでに分離されたことのない未知の微生物種であることが詳細に解明されたこと及び太平洋沿岸のメタンハイドレートが存在する海底下に特有の未知微生物群集が存在していることが世界で初めて示された。

 本研究結果は、2月6日付け(予定)の「米国科学アカデミー紀要(Proceedings of National Academy of Science U.S.A)」のonline版に掲載される。

【中国】来年にも南シナ海でメタンハイドレートのボーリング調査を行う予定

2005/11/13(新華社広州11月13日電) 2チャンネル

 中国の科学者は、すでに南シナ海北部においてメタンハイドレートの分布する範囲を選定しており、さらにこれらの基礎となるボーリング調査の範囲を選定した。 来年にもボーリング調査は実施されると見込まれ、メタンハイドレート資源の調査は実質的に山を越えたと言える。

 これは、最近広州で開催された中国海域メタンハイドレート調査専門会議の席上で明らかにされたものだ。

 メタンハイドレートは、この20年のあいだに海洋や凍土地帯で発見された新しいクリーンエネルギーで、天然ガスと水が一定の温度と圧力の条件の下で相互作用によって形勢された、一見して氷のように見える可燃の固体である。 従来の石油のような化石燃料のように使え、石炭の代替となる。

 メタンハイドレートの埋蔵量は巨大だ。 試算によれば、地球上に存在するメタンハイドレートは、地球上で今知られている石炭、石油、天然ガスの埋蔵量の2倍に匹敵するという。

 計画に基づき、中国では今後2年を用いてボーリング調査の対象となる個所を 地質、経済的側面、リスクなどを勘案して目標となる海域を選定し、有利な場所を対象にボーリング調査を行う。

 ボーリング調査を行うにあたり、国土資源部の広州海洋地質調査局は今年、すでに南シナ海北部の目標地域においていくつかの調査を行っている。 現在、関係各所は大急ぎで資料処理と説明を行っており、できるだけ早期に有望な場所の提案を行う予定だ。また関係専門家は技術的検証を充分に行ったうえでボーリングの個所を確定させるという。

地球深部探査船「ちきゅう」

2005年11月01日 あかり博物館

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」が2005年9月11日(日)と12日(月)に横須賀新港で一般公開されました。私はインターネットで申込をし、12日午後1時40分からの見学の連絡を受けてその時間に乗船しました。「ちきゅう」は最大稼動水深2,500mで海底下7,000mまでを掘削することが出来、巨大地震発生の謎を解くことが期待されています。

 公開場所はアッパーデッキのビデオ・シネマルームから始まり1人部屋(居室)を覗き、階段を登って研究区画(A,B,C,D Deck)のコア切断、コアLabなどでコアサンプル(ジョイデス・レゾリューション号で採取)と最新鋭の観測装置類を見学しました。研究者50名。

 操舵室では船を定位置に停泊させる船位保持システムほかを見学し、後方のやぐら(Derrick)周辺でライザーパイプ(外形1.2m、全長27m)やドリルビットなどについて説明を受けました。掘削を担当するのはノルウェー人だそうです。乗組員100名。

 一般公開はこれまでに横浜、横須賀、名古屋、八戸で行われました。

 「ちきゅう」の主な仕様  全長: 約210 m  型幅 : 38 m  型深さ: 16.2 m  デリック高さ: 70.1 m  総トン数: 約57,087 トン  最大速力: 12 ノット

タヒチ島のサンゴ礁掘削により南太平洋の過去2万年間の海洋環境の復元の試み

2005-09-22 [Tahitian News ]by Le Parfum de Tiare

 地球シュミレーターなどで知られている独立行政法人海洋研究開発機構の事業の一つ統合国際深海掘削計画(IODP).pdfにより、タヒチ沖の珊瑚礁を採掘して南太平洋における過去20000年間の海洋環境を調査することになり2005年10月から海洋調査が始まるとのこと。

 "統合国際深海掘削計画(IODP)における研究航海の開始について ‐タヒチ島のサンゴ礁掘削試料に基づく南太平洋の過去2万年間の海洋環境の復元"(プレスリリース)によるとタヒチ島のFaa国際空港の沖合と北東部、南西部の3カ所において採掘が行われるようだ。

 海洋調査には日本からは4名の研究者が、陸上における研究には、8名が参加とのこと。

 統合国際深海掘削計画(IODP)とは海洋科学掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動の解明、地震発生メカニズムの解明及び地殻内生命の探求等を目的として研究を行う国際研究協力プロジェクト。

海底下7,000mまで掘削できる地球深部探査船が竣工

2005年08月01日 design japan news

 三菱重工業は、海底の地質サンプルを採取できる地球深部探査船「ちきゅう」を竣工し、7月29日に海洋研究開発機構に引き渡した。今後は試験運用を経て、統合国際深海掘削計画などの国際協力プロジェクトに参加する。ライザー掘削方式の科学調査船であり、水深2,500mの海域で海底下7,000mまで連続した地質サンプル(コア)を採取できる。全長210m、全幅38m、総トン数5万7,087トン。水面上高さ120m、重量約1,000トンの掘削やぐらを搭載している。

 ライザー掘削方式とは、深部探査船と海底下の掘削孔の間を、ライザーパイプと噴出防止装置で繋ぎ、この間で泥水を循環させながら地層の圧力を制御して深い地層を掘削する方式。掘削孔が崩れにくいのがメリットである。

 これまでの科学調査目的の最大掘削記録は、米国の深部探査船による海底下2,111mだが、ちきゅう号はこの記録の更新を狙う。さらに、最終的には水深4,000mの海域で海底下7,000mの掘削を実現させ、マントルへの到達を目指す。

 ちきゅう号の建造は、海洋研究開発機構から同社が2000年に全体を取りまとめて受注し、長崎造船所で掘削関連部分を製作した。船体部は三井造船の玉野事業所で製作した。10月以降、下北半島東方沖で、今後のライザー掘削の実施に向けた噴出防止装置の試験を実施する。

「燃える氷」メタンハイドレート 日本近海に夢の資源

2005/06/15 FujiSankei Business i.

 未来のエネルギー資源「メタンハイドレート」の注目度が高まっている。愛・地球博(愛知万博)で一般の人にも公開されているためだ。原油高が続くなか、日本近海には天然ガスに換算して約100年分が埋まっているといわれ、万博をきっかけに実用化への期待は増すばかりだ。

 日本ガス協会が長久手会場内(愛知県長久手町)に出展しているパビリオン「ガスパビリオン 炎のマジックシアター」の展示ホールでは1日約30回、メタンハイドレートの燃焼実験が行われている。

 ここでは直径約2センチの小さな球状の氷(メタンハイドレート)が5つ登場。アテンダントが火を近づけると、20センチ以上の火柱を上げ、勢いよく燃え上がる。

 「火をつける前に、入館者に凍った状態のメタンハイドレートを触ってもらい、その後、火をつけると燃え上がるので驚かれますよね。氷が燃えるわけですから…」と企画・広報担当の伊藤達広リーダーは言う。

 エネルギー関係者を別にすると、まだまだメタンハイドレートは知られていない。現在、国内で一般の人がメタンハイドレートを見ることができる施設はなく、185日間という長期間にわたって公開されるのは初の試みでもある。

 メタンハイドレートは、マイナス162度に冷やさなければいけない液化天然ガス(LNG)とは異なり、マイナス30度前後で固体となるため、運搬や貯蔵コストを大幅に引き下げることができる。

 そして何よりも日本近海の海底には天然ガスにして約100年分が眠っているといわれ、エネルギーの自給自足を目指す日本にとっては“夢の資源”なのだ。

 また、海底深くに埋蔵されているメタンハイドレートとは別に、最近では人工的に作り出す技術開発も進んでおり、万博で紹介されているのも人工メタンハイドレートである。

 メタンハイドレートの研究は米国やカナダ、ドイツなどでも行われており、日本では産学官の研究機関が「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム」を結成し、2016年の商業化を目指している。

 「近い将来、メタンハイドレートは実用化される。当パビリオンで有望さを感じてもらえれば…」と伊藤氏は期待する。原油高によるガソリンの値上がりもあり、一般消費者のエネルギー問題に対する関心は高く、メタンハイドレートの燃焼実験を見た入館者からは「早く実用化されればよいのに」といった声もあがっている。(島田耕)

最終氷河期に海底下メタンハイドレート層が崩壊した形跡を十勝沖で発見(お知らせ)

平成17(2005)年04月18日独立行政法人海洋研究開発機構/独立行政法人国立環境研究所/国立大学法人茨城大学

概 要

 独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)地球環境観測研究センターの内田昌男研究員、独立行政法人国立環境研究所(理事長 大塚柳太郎)化学環境研究領域の柴田康行領域長、 国立大学法人茨城大学(学長 菊池龍三郎)の大串健一博士の共同研究グループは十勝沖の水深1066mから採取された海底柱状堆積物コア(長さ7m)の解析から、最終氷河期最寒期(2万3千年前)から氷床融解期(1万7千年前)に掛けて、 海底下に存在するメタンハイドレート層(注1)の不安定化に伴うメタン放出があった形跡を多数発見した。

 この成果は、米国地球物理学連合発行の雑誌Geochemistry, Geophysics, Geosystems(4月12日発行、米国時間)に掲載された。

統合国際深海掘削計画(IODP)における研究航海の開始について

平成17(2005)年04月13日 海洋研究開発機構

 このたび、統合国際深海掘削計画(IODP)において、下記のとおり、米国の提供するジョイデスレゾリューション号が、北大西洋において掘削を行うこととなりましたのでご案内いたします。この航海には、欧米の参加者に加え我が国から7名の研究者が参加する予定です。独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)からは、地球内部変動研究センターの坂井三郎が参加することとなりましたのでご案内いたします。

 IODPは、海洋科学掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動の解明、地震発生メカニズムの解明及び地殻内生命の探求等を目的として研究を行う国際研究協力プロジェクトであり、2003年10月1日より我が国と米国によって開始されました。その後、欧州12カ国で構成される欧州海洋研究掘削コンソーシアム(ECORD)、中国が参加し、国際的な推進体制が構築されています。IODPでは、現在我が国で建造している地球深部探査船「ちきゅう」のほか、米国が提供する科学掘削船、欧州が提供する特定任務掘削船(MSP)の複数の掘削船を用い、科学目標を達成するため戦略的かつ効果的に研究を行うこととしています。

「独島海域にガスハイドレート150兆ウォン相当埋蔵」

2005/03/17 朝鮮日報 朴英哲(パク・ヨンチョル)記者 ycpark@chosun.com

 独島(ドクト)の南西海域に150兆ウォンに上る次世代エネルギー源「ガスハイドレート」が眠っているようだと韓国ガス公社が17日、明らかにした。日本が独島領有権を主張するのもこれと無関係ではないとの分析だ。

 ガスハイドレートとは、低温高圧下で氷のように固体化した天然ガスで、シベリア凍土や水深500メートル以上の深海に埋蔵されているとされるエネルギー源だ。

 韓国ガス公社によると、政府は2000年から昨年12月まで、東海の全海域にわたり広域探査を行った。

 その結果、東海の鬱陵(ウルルン)盆地の海域にLNG(液化天然ガス)に換算して約6億トンのガスハイドレートが埋蔵されていることが分かった。正確な埋蔵量と埋蔵位置は今後の精密探査およびボーリングを通じて確認される。

 ガス公社のペク・ヨンスンLNG技術研究センター長は「LNGに換算しての6億トンは、昨年1年間の韓国のLNG輸入量(2000万トン)の約30倍で、約150兆ウォン分に相当する」と語った。

 ペク・センター長は「現在、ガスハイドレートは技術開発面で大きな問題はないが、開発費用が石油やガスより20〜30%高く、原油価格が55〜60ドル以上になれば経済性がある」とした。

 独島の南西海域は、日本が独島とともに日本海域だと主張する部分とかなり重なっていることが分かった。ペク・センター長は「日本が独島の領有権を主張するのは、莫大なガスハイドレートとも無関係ではない」と話した。

 産業資源部はガスハイドレートに対するボーリング作業と商業生産に向け、2007年まで667億ウォンを投入する計画だ。また、2014年にはガスハイドレートの試験生産が始まる見込みだ。

凍った天然ガス「メタンハイドレート」:米で採掘調査開始

2005年03月17日 Hot Wired Japan Stephen Leahy

 海底には凍結した天然ガスが眠っており、この資源が持つエネルギー量は全世界の埋蔵原油を凌ぐというそして、研究者たちは最近、この資源の利用に向けて一歩前進した。

 膨大な埋蔵量のメタンハイドレート(メタン水和物)天然ガスの一形態が今後数十年にわたり、全世界にエネルギーを供給するかもしれない。しかし深海で凍結したこの埋蔵物の採掘には、技術的な課題が山積している。

 約5700兆立方メートルのメタンハイドレートが海底に存在すると推定されており、米エネルギー省では2015年までに商業生産を目指す、本格的な調査のための『国家メタンハイドレート・プログラム』を進めている。

 ブルックヘブン国立研究所の研究者らは13日(米国時間)、海底での高圧・低温という状態を再現する卓上の研究装置の完成を発表した。これにより、科学者たちは不安定な凍結ガスを海面まで運ぶ方法を研究できるようになる。

 数百万年という長い年月にわたって、海底の堆積物の中で微生物が有機物を分解し、メタンを生成している。水深300メートルを超える低温・高圧の環境では、個々のメタン分子は凍った水が形成する「かご」の中に閉じ込められるこれがメタンハイドレートだ。

 海底から引き上げると、この氷のかごは音を立てて融け、閉じ込めていたメタンを放出する。マッチの火を近づけるとこのガスが燃える文字通り「燃える氷」なのだ。

 ブルックヘブン国立研究所の化学者、デビンダー・マハジャン氏(PDFファイル)は、新しい装置でハイドレートの「調理」に成功したそのレシピは簡単なもので、マハジャン氏によると、「容器に氷と堆積物を入れ、メタンガスを注入し、高圧下(約100気圧)で冷却する。数時間するとハイドレートが形成される。摂氏4度で安定する」という。

 天然の堆積物のサンプルについては、ハイドレート形成に関するこうしたデータがほとんどない。さまざまなサンプルを使って研究を行ない、どういった圧力と温度の組み合わせでメタンを固定できるかがわかれば、メタンガスの放出を最小限に抑えながらハイドレートを海面まで引き上げる実用的な方法が見つかるかもしれない。

 ブルックヘブン国立研究所の実験装置は最初の一歩に過ぎない。肝心の採取作業を進めるためには、メタンハイドレートの埋蔵場所や組成を特定する信頼性の高い方法が必要だ。

 マハジャン氏によると、埋蔵された原油やガスを見つけるための地震探査法は、ハイドレートの場合は使い物にならないという誤検知が発生しやすいためだ。

 マハジャン氏などエネルギー省の国家メタンハイドレート・プログラムに関わる人々は、誤検知をなくすべく地震探査法の精緻化に取り組んでいる。また、埋蔵されたメタンハイドレートが深さによって組成や密度、性質が変わるかどうかも、解明したい考えだ。

 今月出航する『アンクル・ジョン』号によって、それらの答えの一部がもたらされるかもしれない。アンクル・ジョン号は半潜水型海洋採掘を行なう探査船で、メキシコ湾を35日かけて航行し、水深約1300メートルに堆積しているメタンハイドレートのサンプルを収集するという史上初の試みを行なう。

 エネルギー省国立エネルギー技術研究所(ウェストバージニア州モーガンタウン)の技術マネージャー、レイ・ボズウェル氏は、「直径約9センチの棒状の堆積物サンプルを引き上げ、海底と同じ状態で保存する」と説明する。

 この探査は、エネルギー省と米シェブロンテキサコ社が2300万ドルの費用と4年の歳月をかけて、海洋からサンプルを採取・分析するという取り組みの一環だ。マハジャン氏らは、海底でのメタンハイドレートの性質を調べ、埋蔵量を見積もる方法を確立するためにサンプルを調査する予定だ。

 「研究所の試験室では、温度を上げたり下げたりして、何度ぐらいになるとメタンガスが放出されるかを調べられる」とボズウェル氏。

 ボズウェル氏は、切望されているメタンハイドレートの性質に関する基礎研究を進めることで、メタンハイドレートの安全性、エネルギー生産、環境における役割近年この問題はとくに重要になっているに関する疑問への解答が浮かび上がってくることを期待している。

 たとえば、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の海洋地質学者、ジェイムズ・ケネット氏によると、約5500万年前に海洋から膨大な量のメタンガスが放出された(日本語版記事)という。

 メタンは強力な温室効果ガスで、海洋からのメタンガス放出は、突然の地球温暖化によって生じた海水温上昇の結果だと考えられている。「人の寿命ぐらいの期間に平均温度が7度上昇したようだ」とケネット氏。

 海底の凍った泥からメタンガスが放出されるほど海水の温度が上昇した理由は解明されていない。その時期に激しい火山活動が起こったという説もある。しかし、こうした過程がいったん始まると、海洋の温度上昇とメタンガスの放出という循環が続くことになった。

 ケネット氏によると、大量のメタンハイドレートが不安定になることはまずありえないが、北極地方の急速な温暖化が問題を引き起こす可能性はあるという。北極海や凍土地帯のメタンハイドレートの埋蔵量は少ないが、この地域でメタンハイドレートが維持されているのは、圧力が高いせいではなく温度が非常に低いせいだ。

 「この地域で今後何が起こるか監視が必要だ」とケネット氏。

 注意深く管理し、運がよければ、メタンハイドレートは将来重要なエネルギー源になる可能性があると、ボズウェル氏は語る。

 日本とカナダが北極地方で行なった調査で、沿岸部のハイドレートから得られるメタンガスの量で十分に採算が取れることが明らかになったと、ボズウェル氏は述べている。アラスカの北極地方の陸上にあるメタンハイドレートは限られているのに対し、アラスカなどの沖合にあるハイドレートの量ははるかに多い。

 「遠い将来、これ(海洋ハイドレート)が重要な米国のエネルギー源になることを大いに期待している」と、ボズウェル氏は語った。[日本語版:高橋達男/高森郁哉]

IODP 北大西洋で掘削調査へ−日本から7機関8人参加−

平成17(2005)年03月04日号 科学新聞

氷山と気候変動の関係探る

  アメリカのジョイデスレゾリューション号は3月3日、ポルトガル領アゾレス諸島のポンタデルガダから出港した。統合国際深海掘削計画(IODP)の一環として、グリーンランド南東沖合などで、氷山由来の堆積物が分布する海域を掘削する。日本からは、海洋研究開発機構や熊本大学など7機関から8人が参加。4月26日にはアイルランドのダブリンに帰港する予定。

 北大西洋海域は、氷山からの融解水の流入が引き起こす急激な寒冷化など、氷床・海洋・大気の相互作用による気候変動について重要な役割を果たしてきた。これまでもこの海域の研究は行われてきたが、その多くはおよそ7万〜1万年前の最終氷期を対象としたものだった。過去数百万年間という長期間を対象に、千年単位の短周期変動を調査することで、氷床・海洋・大気がどのように影響しあい気候変動に関わってきたかを初めて明らかにできるという。

 今回の航海は昨年に引き続き2度目で、前回よりも古い時代の地層を採取して、それを数百〜数千年単位で調査する。グリーンランド南東沖合および北大西洋中央部のそれぞれ異なった氷山を由来とする堆積物が分布する海域で、海底下約300bの地点まで掘削を行う。各地層で連続的に試料を採取し、堆積物の年代や組成、その推移などを分析する。得られたデータをもとに短周期・長周期の気候変動を詳細に解析し、北大西洋海域で氷床・海洋・大気のそれぞれがどの様に関わりあって地球の気候変動に影響を及ぼしてきたのかを解明する。

 また、ノルウェー西沖合に地層内の水温を計測する機器を設置し、その観測から氷床融解水を起源とする深層流がどのように変動したかを解明する。

地球深部探査船「ちきゅう」の公式試運転開始と統合国際深海掘削計画の動向

2005/03/02 科学技術トピックス

 人間の皮膚に当たる地殻を通り抜けると、地球の体内ともいうべきマントルの最も外側部分に達する。地殻の厚さは陸地では標高が高いところほど厚く、50〜60kmにもなるが、海底では7kmにも満たない場所があると考えられている。

 海底下では比較的短距離の掘削によりマントルの物質を試料として直接入手できる可能性があることから、我が国では海洋研究開発機構(JAMSTEC)が地球深部探査船「ちきゅう」を建造し、2007年からの国際運用開始を目指している。「ちきゅう」は2002年1月に進水し(2002年2月号トピックス参照)、長崎でデリック(掘削用やぐら)の取り付けを行い、2004年12月に公式試運転を行った。「ちきゅう」は全長約210m(注1)、総トン数(注2)57,500トン、搭乗人員150名の大型船舶で、深海底から前人未到の7,000mの掘削能力を有するライザー付き掘削装置を装備していることが大きな特徴である。ライザーとは、中心を通るドリルパイプの外側に設けるもう1つのパイプのことで、これにより掘削に必要な泥水(でいすい)を二重になった管内で循環使用することができ、ガスや油田などを含む地層でも掘削が可能になる。

 深海底掘削を行うプロジェクトは国際的な協力の下で行われており、2003年まで米国主導で実施された国際深海掘削計画(ODP)や、「ちきゅう」の建造を目的とした我が国のOD21計画などを統合して、統合国際深海掘削計画(IODP)(2002年10月号トピックス参照)に進展している。IODPは日本(文部科学省)と米国(全米科学財団)が覚書を締結して研究人員や資金面などで対等に運営を行うものであるが、欧州海洋研究掘削コンソーシアム(ECORD)や中国なども参加国覚書により資金分担に見合った研究機会を得られることになっている。

 2004年6月に、IODPの最初の研究航海として、米国の深海掘削研究船「ジョイデス・レゾリューション(JR)号」により北東太平洋のファン・デ・フーカ海嶺の掘削を行った。乗船した24名の研究者中日本人は8名であった。なお、JR号の掘削装置にはライザーは設けられていない。

 この後、8月には史上初めて北極点近くのロモノソフ海嶺において、ECORDが中心となって掘削船「Vidar Viking号」と砕氷船2隻の船団により海底の試料を採取し、ドイツのブレーメンで試料解析を行った。続いて9月から11月にはJR号が過去数百万年の気候変動を千年単位で調査する目的で北大西洋の研究航海を行った。さらに11月から2005年3月にかけて大西洋中央海嶺でマントル物質採取をめざす研究航海を行った。これらの航海には日本人研究者がそれぞれ数名ずつ参加している。

 今後も次々に研究航海が行われる予定であり、JR号以上の掘削能力を有する「ちきゅう」が2007年以降IODPの主要な担い手として成果を得ることが大いに期待される。

《略 語》  JAMSTEC:Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology  ODP:Ocean Drilling Program  IODP:Integrated Ocean Drilling Program

海底下7000m 地球深部を探る

2005/01/29 On air サイエンスZero NHK

 今年4月、最新鋭の深海探査船「ちきゅう」が完成する。「ちきゅう」は世界15カ国が参加する統合国際深海掘削計画で海底下7000メートルを掘削し、海底から地下のマントルまでの間の地層を調査する。

 このプロジェクトのねらいは3つ。ひとつは、海底の堆積物を調べて過去の地球環境を明らかにすることだ。すでに先行している北極海の調査では、地中に堆積したプランクトンの調査から、氷河期がはじまった時期が従来の説より4千万年近く早かったことが明らかになっている。また海底の岩盤層を調べることによって、地震や津波のメカニズムを詳しく分析し、さらには予知にもつなげることも計画されている。そしてもう一つが地殻内生命の探索だ。海底下の地殻内部にいる微生物は、硫黄などを食べ物とする原始的な生物で、地球にはじめて登場した生物と共通点が多いともいわれる。

 番組では、完成間近にせまった探査船「ちきゅう」が担う国際プロジェクト「深海掘削計画」の全貌に迫る。

金大大学院、大西洋で深海掘削 国際計画に参加、マントル起源の岩石採取

2004年12月29日 北国新聞

 文部科学省と金大は二十八日、同大大学院自然科学研究科の荒井章司教授(岩石学)が指導する研究グループが一月九日から、約二カ月にわたる統合国際深海掘削計画(IODP)の研究航海に参加すると発表した。

 IODPは日米主導で進める年間百六十億円の巨大プロジェクトで、海洋底から採取した堆積(たいせき)物や岩石を分析することで地球環境の変動を探る。

 金大関係者で航海に参加するのは博士後期課程一年の石丸聡子さん=新湊市出身=、同三年のエリック・アンダルさん、研究員の田村明弘さん、金大出身で海洋研究開発機構地球内部変動研究センター研究員の阿部なつ江さんの四人。

 米国のジョイデスレゾリューション号に欧米の研究者と一緒に乗り込み、一月九日にポルトガル領アゾレス諸島のポンタデルガダを出港、大西洋の水深約二千メートル地点で海底を約千百メートルと約五百メートルの二カ所掘削する。

 荒井教授によると、この地点は海洋底が地下から生まれる大西洋中央海嶺という場所に当たり、地殻変動でマントル起源の岩石が比較的浅い地下で採取できるという。地球深部の構造を調べることで、スマトラ沖地震のような巨大地震の発生メカニズムを知ることも可能になるという。

 県庁で会見した荒井教授は「マントル物質をはじめ、一つ一つの事象を調べていくことで、究極的には地球システム全体を説明できる」と述べ、石丸さんは「貴重な機会を足掛かりに研究者を目指したい」と話した。

IODP 日本から13人参加 大西洋掘削航海始まる

平成16(2004)年11月19日号 科学新聞

  統合国際深海掘削計画(IODP)において、米国提供の掘削船『ジョイデスレゾリューション号』を用い、大西洋中央海嶺での掘削航海を11月17日から来年の3月にかけ行われる。この航海は、同海嶺の海洋コアコンプレックスの形成過程および海洋リソスフェアの進化過程(変形、変成、マグマの生成)の解明が主目的で、約2ヶ月間ずつ2回に分けて実施される。欧米の研究者に加え、日本からは小原泰彦・海上保安庁海洋情報部主任研究官ら13名の研究者が参加する。

 海洋コアコンプレックス (OCC)とは、海底が拡大する際に断層下部(下盤ブロック)が相対的に上昇し、断層上部(上盤ブロック)が相対的に下降する正断層が発生し、上昇した下盤ブロックがマントル物質であるカンラン岩を伴って露出したもの。OCCを直接掘削することで、OCC自体の形成過程ばかりでなく、海洋リソスフェア(リソスフェア:地球表面を覆っている堅い殻。地殻とマントルの上層部から成る)の進化過程の解明が期待される。また、比較的新鮮なマントルカンラン岩を採取することで、”地殻とマントルの境界面−モホロビチッチの不連続面とは何か”という問題の解決に迫れるものと期待されている。

 計画では、主に玄武岩からなる上盤ブロックと主にマントルカンラン岩からなる下盤ブロックをそれぞれ一孔ずつ掘削する。上盤ブロックは約500b、下盤ブロックは1,100b掘削する予定。

 一方で、IODPでは8月8日から9月12日にかけ世界初の北極海掘削航海を実施し、のべ約900bのコア(柱状の地質資料)を採取することに成功しているが、いよいよ11月8日からドイツ・ブレーメンの施設で陸上研究が始まった。これにより、地球が温暖期から寒冷期に移行した時期の特定や移行原因の本格的な解明が期待される。

最終氷河期に海底下メタンハイドレート層が崩壊した形跡を

平成16(2004)年09月16日 独立行政法人海洋研究開発機構/独立行政法人国立環境研究所

下北半島沖で発見−地球規模の気候変動への影響− (環境省記者クラブ・文部科学省記者会・筑波学園都市記者会同時発表)

概 要

 独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)むつ研究所の内田昌男研究員、阿波根直一研究員、独立行政法人国立環境研究所(理事長 合志陽一)化学環境研究領域の柴田康行領域長らの共同研究グループは下北半島沖の水深1366mから採取された海底柱状堆積物コア(長さ13m)の解析から、今から2万5千4百年前(暦年代)に海底下に存在するメタンハイドレート(注1)が不安定化して、大量のメタンが放出したとされる形跡を発見した。この成果は、アメリカ地球物理学連合発行の雑誌Geochemistry, Geophysics, Geosystems(8月19日発行)に掲載された。また国際地質学会議(8月27日、イタリア)、並びに国際古海洋学会議(9月6日、フランス)にて発表された。

秋田大など研究者、深海掘削の国際プロジェクトに参加

2004/09/11 NIKKEI NeT

 日米欧と中国の15カ国で進める統合国際深海掘削計画(IODP)に、秋田大学と東北大学の研究者3人が参加する。11月中旬まで北大西洋海域で地下300メートルまでボーリングし、過去200万年の堆積(たいせき)物を採取する。各地層の化石を分析し、1000年単位での気候変動の周期を解明する。

 IODPは深海掘削により、地球の環境変化や地震の発生メカニズムを研究する国際協力プロジェクト。今年6―8月の初航海では東太平洋の地殻変動を調査した。

 2回目の今回は海流の変化など地球環境の長期変動がテーマ。米国の提供するジョイデス・レゾリューション号(18、600トン)で22日にカナダ東部のニューファンドランド島を出港。地質サンプルを採取後、11月14日にポルトガル領アゾレス諸島に帰港する。

 研究員30人は日米欧がほぼ3分の1ずつの構成。秋田大工学資源学部の佐藤時幸助教授が航海全体の首席研究員として参加。同大助手と東北大大学院生も加わる。北大西洋の水深2000―3000メートルの地点5カ所を掘り進み、堆積したプランクトンの種類や量などから海洋の環境変化を調べる。

北極が語る5000万年の地球環境

2004/08/23 swissinfo

 北極海の掘削航海へ向かうノルウェーの掘削船。船体に掘削リグを掲載している。

氷に刻まれた地球の「記憶」を解明するため、スイスや日本、米国を含む共同探査チームが8日、北極海へ向かった。

 今回の航海では、北極海から約250キロ離れたロモノソフ海嶺で深海底を掘削し、海洋変動を記録した堆積物を採取する。この調査の結果、およそ5000万年前まで遡れるとしている。北極海の深海底を掘削するのは世界で初めて。

 プロジェクト名は「北極掘削航海(ACEX)」。今回の航海に参加した科学者の数は19人で、予算総額は900万ユーロ(約12億円)となっている。掘削作業は9月16日まで行われる予定だ。

 激動する地球

 今回の航海は、「統合国際深海掘削計画(IODP)」という名が付いた国際的な科学プロジェクトの一環で、最初の実地探査となる。IODPは当初、日米を中心に始まった計画だが、その後、スイスを含む欧州と中国が参加して進められている。

 IODPのメンバーで、欧州海洋研究掘削コンソーシアム(ECORD)のスイス代表を務めるジュディス・マッケンジー教授は、「掘削される堆積物は地球史の教科書そのもの」と話す。

 同教授によると、5000万年ほど前の北極には氷がなく、気候も温暖でワニが生息していたと考えられているが、なぜ北極が氷河化したのか理由はわかっていないという。また、北極海は全世界の海洋循環に関係しているとも指摘されているが、実態は謎に包まれたままだ。

 マッケンジー教授は「北極の海氷がいつ頃から形成されたのかなど、気候変動における北極海の役割を解明したい」と今回の航海に期待を寄せる。 

 掘削航海終了後、採取された堆積物はドイツのブレーメン大学で分析される予定となっている。 <スイス国際放送  モルヴェン・マクレーン   安達聡子(あだちさとこ) >

南中国海のメタンハイドレート 規模は世界最大

2004年07月26日「人民網日本語版」

中国とドイツの科学者が南中国海北部で進めていた、メタンハイドレートに関する初の合同調査が終了した。調査の結果、南中国海北部にメタンハイドレートの噴出で形成された、面積約430万平方メートルの巨大な炭酸塩岩が見つかった。天然の炭酸塩岩としては世界最大と考えられている。

 中国は1999年からメタンハイドレートの実質的な調査と研究を行っており、5年間にわたる調査で南中国海北部の大陸棚境界の斜面、南沙諸島付近の海底盆地、東中国海の大陸棚境界の斜面の3カ所でメタンハイドレートが存在する確証が得られている。(編集MM)

統合国際深海掘削計画(IODP)における研究航海の開始について

2004/06/14 京都大学

 このたび、統合国際深海掘削計画(IODP)における最初の研究航海として、以下のとおり、米国の提供するジョイデスレゾリューション号が、東太平洋のファン・デ・フーカ海域において掘削・調査を行うこととなりました。この航海には、IODP参加各国から24名の研究者が参加することとなっており、我が国からは8名の研究者が参加する予定です。京都大学からは、左子芳彦教授(農学研究科応用生物科学専攻海洋分子微生物学分野)の研究室の大学院生(博士課程3年)中川聡が参加することとなりましたのでご案内いたします。

 IODPは、海洋科学掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動の解明、地震発生メカニズムの解明及び地殻内生命の探求等を目的として研究を行う国際研究協力プロジェクトであり、2003年10月1日より我が国と米国によって開始されました。その後、欧州12カ国で構成される欧州海洋研究掘削コンソーシアム(ECORD)、中国が参加し、国際的な推進体制が構築されています。IODPでは、現在我が国で建造している地球深部探査船「ちきゅう」のほか、米国が提供する科学掘削船、欧州が提供する特定任務掘削船(MSP)の複数の掘削船を用い、科学目標を達成するため戦略的かつ効果的に研究を行うこととしています。

「燃える氷」開発着手 南シナ海で埋蔵量調査

2004/06/01 2チャンネル

 【北京=福島香織】「燃える氷」と呼ばれる新エネルギー資源・メタンハイドレードの開発をめざす中国が、二日からドイツの科学者チームと協力し、南シナ海域で海底にもぐり埋蔵状況などの合同調査を開始する。中国はこのほど初の研究所・中国科学院広州メタンハイドレード研究センターを設立し、二〇二〇年までの商業採掘の開始を目標にあげているが、南沙(スプラトリー)諸島など領有権争いが続く海域での大陸棚開発だけあって国際社会の懸念と関心をよびそうだ。 

 華僑向け通信社・中国新聞によると、海底調査は広州海洋地質調査局の約十人の科学者とドイツの科学者が合同で実施。二日に香港からドイツの科学調査船「太陽号」にのりこみ、南シナ海北部の大陸棚でメタンハイドレードの分布および形成、採掘による環境への影響を調べるという。

 二年以内に、メタンハイドレードのサンプルを採取するのが当面の目標だ。

 合同調査の中国側首席科学者、黄永様氏は「海底からメタンハイドレードを採取するのは非常に難しい。できるだけ急いで海底探査を行い、メタンハイドレードの最も信頼できる、有効な開発法を調べたい」としている。

 中国は約十年前から南シナ海のメタンハイドレードに注目。今回の調査は「同海域北部」としているが、西沙(パラセル)諸島やスプラトリー諸島、沖縄トラフといった領有権をめぐる紛争が存在する地域の資源にも関心をよせている。(略)

統合国際深海掘削計画(IODP)推進のための基本合意を締結

2004/05/14 北海道大学/(創成科学研究機構)

 日米が中心となって展開している統合国際深海掘削計画(IODP)を一層推進するため,4月1日付けで,「統合国際深海掘削計画科学計画策定支援等機能業務に関する基本合意」を締結しました。

 統合国際深海掘削計画(IODP)への協力については,平成15年4月22日に文部科学省と全米科学財団(NSF)が既に覚書を取り交わしていました。

 統合国際深海掘削計画(IODP)は,文部科学省が過去30年間に渡り推進してきた国際深海掘削計画(ODP)を欧米諸国が参加する形で世界規模の研究に発展させたものであり,「地球環境変動」,「地殻変動過程と地球内の物質循環の解明」,「地下生物圏と地殻内流体の解明」を3大テーマとして重点的に研究を進めるものです。

 計画を実施するに当たり,総括管理事務局として米国に中央管理機構を置き,計画管理・運営等を行うと共に,関係機関との調整や技術開発を行っておりますが,科学技術計画の立案支援,教育・啓発については日本に設置するオフィスが実施することとなっています。

 日本でのオフィスは,創成科学研究機構が受け入れについて名乗りを上げ,現在「中央管理機構札幌オフィス」として創成科学研究棟5階にオフィスが設置されています。

 この札幌オフィスの管理運営等は,米国の中央管理機構から業務の委託を受けている財団法人地球科学技術総合振興機構が行っていることから,このたびの基本合意書への署名においても,中村睦男総長と坂田俊文(財)地球科学技術総合振興機構理事長により行われたものです。

 札幌オフィスには,ハンス クリスチャン ラーセン氏をトップとし,複数の国内外からの研究員により,具体的な活動が既に展開されおり,今後も更に数多くの研究員等が参画する予定となっています。

中国海域の石油・天然ガス資源は400億トン以上

2004/02/26 人民日報社

国土資源部の寿嘉華副部長は25日、中国海域に埋蔵されている石油・天然ガス資源量が、石油エネルギー換算で400億トン以上に達する可能性があると明らかにした。現在進められる海底石油・天然ガスの戦略的資源探査で新たに発見された地域から油田候補地を選出し、過去の探査結果と合わせ概算数値を割り出した。特に南中国海の深海部に厚さ1万メートル以上の巨大な中生代地層が初めて発見されたことは、今後の深海部資源探査の方向性を定めるものになったという。

中国地質調査局によると、今回の海洋地質調査と過去の探査結果を総合すると、中国海域とその周辺には38の堆積盆地が存在し、埋蔵されている石油・天然ガス資源は、石油エネルギー換算で計351億〜404億トンに達すると見られる。うち近海部の堆積盆地11カ所の埋蔵量は同213億〜245億トン。

今回の調査では、重要な地球物理学的データが確認され、南中国海の北部に横たわる大陸斜面に大量の天然ガスハイドレート(NGH)が存在するという大きな証拠を得ることができた。これは中国の将来のエネルギー開発と持続可能な経済の発展にとって、大きな意味を持つことになるだろう。また、西蔵(チベット)北部の羌塘盆地の調査も行われている。羌塘盆地は資源探査が最も進んでいない盆地。青蔵高原はかつて「テチス海」と呼ばれる海だったため、海洋性の堆積層が広がっており、中でも羌塘盆地の一帯は石油・天然ガスの埋蔵が最も有望視される。(編集NA)

若き人材の確保が鍵

2003年07月22日 高知新聞

 四国沖に眠るメタンハイドレートは、近未来のエネルギー源として注目されながら、実はこれまで本格的な調査が実施されてこなかった。

 しかし、ここになって動きが出てきた。資源エネルギー庁は半年後、四国沖のメタンハイドレートを目標にした掘削を計画しているという。どのような性質のメタンハイドレートが、どれくらい存在するのか。10月からは統合国際深海掘削計画も始まり、四国沖の掘削から目が離せない。

 ■米国先行

 ところが、日本のこの分野の研究者は大きな不安を抱いている。人材不足だ。

 愛媛大沿岸環境科学研究センターの鈴木聡教授は「地下圏微生物の研究者は日本では非常に少ない。メタンを作る微生物の研究も日本ではまだ本格的ではありません。米国の方が進んでいます」。

 南海トラフの海洋コアからメタンを作る細菌を取り出し、培養することに最近成功したのも米国の研究者だ。

 地球深部探査船「ちきゅう」を建造している文部科学省の認可法人、海洋科学技術センター(JAMSTEC)の関係者はこうぼやく。

 「『ちきゅう』の具体的な掘削計画は、研究者からの申し込みを基に作られます。ところが、肝心の日本人からの申し込みが非常に少ない。もっと出してほしいと呼び掛けている状況です」

 世界に誇る研究環境を持ちながら、肝心の研究熱が国内で高まらなければ、成果は外国に持っていかれてしまう。

 ■刺激的な場所

 地球の秘密が詰まった海洋コア。「ちきゅう」が深部の海洋コアを採取するようになれば、高知大海洋コア総合研究センターは、世界から熱い注目を浴びる地球科学の最前線。研究者の育成、未来の科学者たちへの啓もうにもふさわしい場所となる。

 安田尚登センター長は「コアセンターは大学の施設。研究以外にも人材育成という重要な任務を持っています。世界の研究者が集まる刺激的な場所だし、県内外の大学院生や若手研究者を積極的に受け入れるつもりです」と話す。

 現在、高知大は大学院理学研究科でJAMSTECと連携して教育に当たるシステムを導入。コアセンターは高知女子大の学生も受け入れ、卒業研究を指導している。

 人材不足に危機感を募らせるJAMSTECは最近、中高校生を対象にした催しにも力を入れている。「子どもたちは地球を探る貴重な科学者の卵。もっともっと興味を持たせたい」―。担当者のまなざしは真剣そのもの。

 壮大な海洋コア研究の旅は始まったばかりだ。   (社会部・高橋 誠)

メタン食べる菌発見

2003年07月21日 高知新聞

 「南海トラフの海底下にはメタンを作る菌だけでなく、分解する菌もいるんですよ。それも複数の種類が」

 松山市にある愛媛大沿岸環境科学研究センターの鈴木聡教授は熱っぽく、自身の研究成果を語り始めた。

 ■真正細菌

 約2年前、フランスの調査船によって、四国沖の南海トラフの海底下から海洋コアが採取された。鈴木教授は高知大の海洋コア研究センター(現海洋コア総合研究センター)と共同で、そのコアのうち海底表層から約27メートル下までの試料を分析した。

 多くの微生物のDNA(デオキシリボ核酸)が検出され、現在までに真正細菌19種、古細菌3種が分類できている。「古細菌」「真正細菌」「真核生物」の3種類に大別できる生物のうち、メタンを作るのは古細菌だ。

 残念ながらコアの中の古細菌がメタンを作る細菌かどうかは不明という。しかし、鈴木教授は北海道十勝沖で採取したコアからメタンを作る古細菌を見つけており、「四国沖にもいるはず」と力説する。

 それより、四国沖の海洋コアで鈴木教授らが驚いたのは真正細菌の方だった。DNAの塩基配列から、硫化水素を分解する細菌やメタンを分解する細菌が多数含まれていることが分かった。特にメタン分解菌とみられる細菌は3種検出され、いずれも新種だった。

 ■収支の謎

 「現在の分析技術には限界があるので、古細菌も見つからないだけで、本当はもっと多く潜んでいるのではないかと考えています。いずれにしても、海底下にはメタンを作る細菌とそのメタンを食べてしまう細菌が共存しているということです」

 海底下には膨大な量のメタンハイドレート(メタンガスが氷状の水分子に閉じ込められた層)が存在するが、決してメタンは作られる一方ではなく、別の生物によって消費もされている。

 鈴木教授は言う。

 「酸素も光も届かない海底下も、生物がいる以上、生態系は存在し、物質が循環しているのです」

 海底下では細菌の働きで有機物が二酸化炭素となり、やがてメタンになる。そのメタンを別の細菌がまた分解して二酸化炭素に戻してしまうが、それでもメタンハイドレートが存在する。

 「やはり問題はメタンの“収支決算”がどうなっているかです」と鈴木教授。メタンがどのような収支バランスを保ち、それが地球環境にどう影響しているのか。そもそもなぜメタンハイドレートが存在するのか。コアに詰まった未知の世界に興味は尽きない。

謎多いメタン生成菌

2003年07月20日 高知新聞

 メタンは私たちの身近に多く存在している。どぶの中でわく泡、牛のげっぷ、人間のおならにも含まれる。共通するのは微生物の働きということ。微生物が有機物を分解してメタンが発生する。

 とすれば、四国沖に眠る海底下のメタンも、微生物が作り出している可能性が高い。四国沖の海底は黒潮の恵みによって有機物が豊かだ。

 ■“住民票”作り

 愛媛大沿岸環境科学研究センター(松山市)の鈴木聡教授は、高知大海洋コア総合研究センターとも協力しながら、海底下でメタンを作る微生物を調査している。

 2年余り前まで高知大農学部に所属。海中の微生物や魚介類のウイルスを専門にしていたが、愛媛大に移る少し前から、海底下の微生物もターゲットにするようになった。

 「平朝彦先生(海洋科学技術センター内の地球深部探査センター長)から『地球は微生物がつくった』と聞かされて、地球の変遷と微生物の関係に興味を持ったんです。その秘密が海底下を探ればあるのです」

 鈴木教授はメタンハイドレートが豊富な南海トラフや北海道十勝沖で海底下にどのような微生物がいるか、“住民票”作りを進めている。微生物本体を探すのではなく、海底下を掘削して採取した試料(海洋コア)から、微生物のDNA(デオキシリボ核酸)を取り出して、その遺伝子配列で分類していく。

 メタンを作る微生物のDNAは見つかっているのだろうか。「恐らくメタン生成菌であろう微生物のDNAが見つかっています。ただ、海底下の微生物は多くが酸素のないところで生きる嫌気性。深い海底下から生きたまま採取することは非常に難しく、実際にメタンを作っているかどうかも確かめることができません」

 ■米国で培養成功

 生物は「古細菌」「真正細菌」「真核生物」に大別される。人間は真核生物、メタンを作る微生物はすべて古細菌だ。古細菌は、海や大気に酸素がほとんどなかった太古の地球で繁殖してきた。酸素の濃度が増えるに従って酸素が届かない海底下に潜り込んだと考えられている。

 つい最近、米国から注目すべき論文が発表された。南海トラフで掘り取った海洋コアから、ある古細菌を生きたまま採取。培養に成功し、メタンを生産することも確認したという。鈴木教授によると、これが事実なら、現在唯一、メタンを作ると立証された海底下の微生物になるという。

 やはり海底下はメタンを作る微生物が支配しているのか―。そう思ってしまうが、鈴木教授の調査結果には、まだその先があった。

眠る膨大なメタン層

2003年07月18日 高知新聞

 「これが水深1、100―1、200メートルの四国沖の土佐海盆で採取されたコアです」。高知大学海洋コア総合研究センターの安田尚登センター長が、一枚の海洋コアのCTスキャン画像を示した。

 「黒く見える層がメタンガスが存在したと思われる空洞で、海底下15、6メートルほどの層。海底下の圧力条件からすれば、この海域は海底下50メートルくらいからメタンハイドレートがあると考えられます」

 ■ 注目の新資源

 「メタンハイドレート」。海底下の温度と圧力で、メタンガスが氷状の水分子に閉じ込められている層だ。

 日本近海には膨大な量のメタンハイドレートが眠っており、近未来のエネルギー源として注目されている。埋蔵量は日本の天然ガス消費量の約100年分に当たる7・4兆立方メートルという試算もあるほどだ。

 音波探査の結果では、特に四国沖など南海トラフの陸側海域に多い。黒潮がもたらす豊富な有機物が時間をかけてメタンとなり、海底下に蓄積するためと考えられている。千島海流も有機物の生産性が高いが、房総半島沖はメタンハイドレートが非常に少ない。有機物が深い日本海溝に落ちてしまうからだ。

 ただ、四国沖を掘削しても、メタンハイドレートは簡単には見ることができないという。掘削した海洋コアにメタンハイドレートが含まれていても、引き揚げる途中やコアを分割する際に噴き出てしまい、消えてしまうからだ。「実際、過去に日本近海でメタンハイドレートが塊で採れたことはほとんどありません」と安田センター長。

 ■ サーモスタット

 結局、日本近海のメタンハイドレートの実態は詳しくつかめておらず、どのように形成されるのかも含め謎だらけという。このため統合国際深海掘削計画では、メタンハイドレートの研究は重要テーマの一つになっている。

 メタンは地球温暖化物質としても知られる。炭素と水素でできており、常時、海底下から海中にわき出している。海洋コアから地球の環境変動を解析している安田センター長は、メタンハイドレートが地球の炭素の貯蔵や排出に大きな役割を果たしていると考えている。

 「地球は氷河期になると、氷が増えて海面が下がります。すると海底にかかる圧力も弱まり、海底下からわき出すメタンの量が増え、地球の温暖化に寄与する。逆に温暖化になるとメタンが抑えられる。つまり、メタンハイドレートは地球のサーモスタットの役目を果たしているのではないでしょうか」

 四国沖の掘削からは、こうしたスケールの大きな研究成果が期待される。

7000メートル掘削には2年も

2003年07月17日 高知新聞

 海洋科学技術センター(JAMSTEC、神奈川県横須賀市)が建造中の地球深部探査船「ちきゅう」と、高知大学海洋コア総合研究センターが進める統合国際深海掘削計画(IODP)。スタートは今年10月からだ。

 「ちきゅう」は年内にほぼ完成。試験航海、試掘を経て18年秋から正式運用になる。今春完成した高知大のコアセンターも、それまでに掘削試料(海洋コア)の受け入れや、試料を分析できる若手研究者の育成など、万全の態勢を整えなければならない。

 ■ マントル目指す

 IODPの日本側の大きな目的は、マントル上部までの掘削▽地震発生の解明と予測▽地下生物圏とメタンハイドレートの謎や地球環境の変動の解明―などだ。

 特に「ちきゅう」は深部の海洋コアの採取に威力を発揮する。掘削で生じる泥水を効率的に吸い上げたり、ガスの噴出を防ぐ装置を導入。最終目標は水深4、000メートルの深海底から、地球深部に向け7000メートルの掘削を目指す。

 もちろん、これは人類未踏のマントルの領域。過去の海底掘削の最深記録は中米の太平洋側沖の2111メートル。四国沖の南海トラフでもこれまでに9本が掘削されたが、最深は1300メートルでしかない。

 もちろん、洋上の船から、地球深部まで真っすぐ掘り続けることは容易ではない。JAMSTEC地球深部探査センターの倉本真一博士は「『ちきゅう』も5000メートルを1本掘るのに順調でも1年はかかります。7000メートルだと2年は覚悟しなければならない」。IODPの構想がいかに壮大なものかが分かる。

 ■ まず熊野灘沖

 「ちきゅう」の掘削第1弾は、日本で実施される方向で進んでいる。四国沖がその候補地になる可能性はあるのだろうか。

 「IODPの掘削計画はすべて、研究者グループからの提案制で、現在、南海トラフの南海地震の発生帯を掘る計画が提案されています。これが掘削第1弾になりそう。候補地は幾つか挙がっていますが、室戸沖の発生帯はかなり深く、今のところ熊野灘沖(紀伊半島南東沖)が有力です」と倉本博士は説明する。

 室戸沖の可能性が低いのは残念だが、高知大のコアセンターの安田尚登センター長は四国沖は、別の掘削計画が展開される可能性を力説する。

 「四国沖はメタンハイドレートや、フィリピン海プレートが沈み込む際に、堆積(たいせき)物を陸側に押し付けてできる付加体が注目されています。これらは比較的浅いので、『ちきゅう』ではなく、米国が提供する従来型の掘削船で掘る可能性が高いと思います」

「ちきゅう」と一心同体

2003年07月16日 高知新聞

 5月のコアセンター完成披露式典。そこには海洋科学技術センター(JAMSTEC)の平朝彦博士の姿もあった。日本の海洋地質学の第一人者は、高知大関係者らにこうエールを送った。

 「これほどの設備を持った海洋コア(海底下を掘削して採取した試料)の研究施設は世界にほかにない。高知大学海洋コア総合研究センターは世界の『オンリーワン』であり、世界の『ナンバーワン』にならなければならない」

 ■ 分析機器も同じ

 その「オンリーワン」のセンターは大きく分けて、「保管エリア」と「研究エリア」で構成されている。

 保管エリアは、平屋で6部屋。計約2000平方メートルの規模を誇る巨大な冷蔵・冷凍庫で、「ちきゅう」で掘削する試料を10年分保管できる。研究エリアは2階建て。レーザーやエックス線、磁気などを使った最新の分析機器、電子顕微鏡などがふんだんに装備された。

 コアセンターは各機器を2台ずつ所有。1つはセンター内に置き、もう1つは日本が建造中の地球深部探査船「ちきゅう」に貸し出す。

 「コアセンターと『ちきゅう』の分析機器が同じであれば、双方を行き来する研究者にとって使い勝手もよく、メンテナンスも楽」と安田尚登センター長は言う。

 「ちきゅう」とコアセンターは一心同体。統合国際深海掘削計画(IODP)の両翼といえる。しかしなぜ、こんな重要施設が地方の高知大に設置されたのだろうか。

 ■ 棚ぼた?

 コアセンターはもともと、同大が将来の深海底掘削をにらみ、「海洋コア研究センター」として平成12年4月、高知市曙町2丁目の同大朝倉キャンパスに開設。当時は施設建設費が獲得できず、同大の旧情報処理センター跡の小さな施設に入っていた。

 13年秋、文科省はIODPを15年秋にスタートさせるべく、13年度補正予算で海洋コアの大型保管・分析施設を建設する計画を打ち出した。当初はJAMSTECが建設する案が有力だったが、小泉首相が特殊法人に大型の新規事業を認めない方針を打ち出し、計画は頓挫した。

 そこで文科省は海洋研究所を持つ東大に打診。しかし、東大は同研究所本体の移転問題もあり、あっさり断る。次に話が回ってきたのが、海洋地質学に実績のある北海道大と高知大だった。高知大は受け入れを即答。一方、所帯が大きい北大は学内論議に手間取り、期限内に返答できなかった。高知大に決まった。

 安田センター長は言う。「棚ぼた、という人もいます。しかしそれを引き受ける環境と能力が整った大学は結局、高知大しかなかった」

地球の新たな扉開く

2003年07月15日 高知新聞

 海洋研究の新しい国際拠点が今春、高知に誕生した。

 「高知大学海洋コア総合研究センター」。高知空港のほど近く、南国市の同大物部キャンパスに設けられたこのセンターは、簡単にいえば南海トラフなどの海底下を円筒状に掘り抜いた試料(海洋コア)を保管、分析する施設だ。「ただそれだけ?」との声も聞こえてきそうだが、この試料に地球の秘密が隠されているとしたら…。

 「南海トラフ―室戸沖深海底を探る」第2部「コアセンターの挑戦」は、コアセンターが担う役割と、南海トラフの海底下に潜む未知の世界に焦点を当てる。

 ■ 最深7キロの試料

 「コアセンターが世界の海洋研究の拠点として発展し、フロントランナーとして走ることを誓います」

 5月24日、各界の代表約150人が出席したコアセンターの完成披露式典。同大の山本晋平学長はこう高らかに宣言した。

 コアセンターは鉄筋コンクリート2階建て(一部平屋)。総工費約50億円。延べ床面積約6600平方メートルと、単体の研究施設としては同大の中でも群を抜いて大きい。

 一地方大の施設でありながら、全国の研究者が活用する文部科学省の「全国共同利用施設」。運営費は同大と文科省の認可法人、海洋科学技術センター(JAMSTEC、神奈川県横須賀市)が共同負担することからも、並の大学施設でないことが分かる。

 「ここで保管、分析するのは、間もなくスタートする統合国際深海掘削計画(IODP)で掘削する最深7キロにも達する地球深部の試料。そこから一体何が見つかるか、私たちも想像できません」とコアセンターの安田尚登センター長は語る。

 ■ 威信懸けた計画

 IODPは日米主導で行われ、欧州やアジアも含め20カ国以上が参画を表明している。この計画の日本側の中核機関がJAMSTEC。現在、約567億円をかけて地球深部探査船「ちきゅう」も建造している。

 同船は全長210メートル、57500トンという巨大な掘削船。年内にはほぼ完成し、来年から試験航海に入り、3年後には就航して、世界中の海を駆け巡る計画だ。維持費も巨額で、試算では運航に要する経費は一日当たり何と数千万円。まさに国家の威信を懸けた取り組みといえる。

 IODPでは米国も掘削船を提供するが、これらの船で海底下を大掛かりに掘削していけば、当然、試料を分散させることなく効率的に保管し、分析していく施設が必要になる。それこそが高知大のコアセンター。太平洋を望む拠点から、地球科学の新たな扉が開こうとしている。(社会部・高橋 誠)

統合国際深海掘削計画

2002年03月04日 東奥日報

 地球深部の地層を直接採取し、地震のメカニズムや気候変動の解明、地下深くの微生物の発見を目指し2003年から始まる日米主導の国際計画で略称はIODP。米国の深海掘削船ジョイデス・レゾリューション号を使って小惑星衝突の証拠発見や、将来のエネルギー源と期待されるメタンハイドレードの初採取などの成果を挙げた国際深海掘削計画の後継に当たる。

 08年からは、海洋科学技術センター(神奈川県横須賀市)が建造している最新鋭の深海掘削船「ちきゅう」が計画の主力船として活動を始める予定。深さ4千メートルの海底にパイプを降ろし、海底下7千メートルまで掘り抜く「ちきゅう」の能力は従来船を大幅に上回り、活躍が期待されている。

ジョイデス・レゾリューション号

2001年10月1日 あかり博物館

深海掘削研究船 「ジョイデス・レゾリューション号」

1999年08月01日 あかり博物館

 深海掘削研究船「ジョイデス・レゾリューション号」が1999年6月17日横浜の大黒埠頭で一般公開されましたので見学しました。

 「ジョイデス・レゾリューション号」はもともとは石油開発用の船であったものを深海掘削研究船に改造、1985年に就航して国際深海掘削計画(ODP)がスタートしています。現在の参加国は22カ国を超えているそうです。日本では東京大学海洋研究所が窓口になり約40の大学、諸研究機関が参加・乗船して研究に当たっています。

 この見学記は甲板部、一般居住部と研究室の3ページにより構成しています。まず、甲板では船の中央にある高さ62mのやぐらが目立ちます。海底下、数千mの地層サンプル(コア)を採集するために30mのドリルパイプをつなぎその先端に特殊鋼のついた掘削機(ビット)をつけ、やぐらの上の強力なモーター(トップドライブ)により回転するのだそうです。風や潮の流れがあっても定位置を確保(自動船位確保装置)し、波で船が上下しても問題がないように特殊な装備(ヒーブコンペンセーター)を設備しています。

 備考:

 ジョイデス・レゾリューション号の主な要目:全長143m、幅21m、総トン数18,600トン やぐらの高さ62m、パイプ長9,150m。1985年 深海掘削研究船に改造。

 ODP: Ocean Drilling Program

HOME宇宙・科学