TOPIC No.6-28 スーパーコンピューター/スパコン

01 「スーパーコンピュータ」関連の最新 ニュース・レビュー・解説 記事 まとめ by ITmedia
02 スーパーコンピュータ 日本経済新聞
03 「スーパーコンピューター(スパコン)」って何がすごいの? (2012年5月21日)
 by nikkei4946.com (日本経済新聞)
04 京 (スーパーコンピュータ) byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
05 【レポート】Cool Chips 16 - 分散メモリとなるNECの次世代ベクトルスパコン(前編) 
 [2013/04/24]マイコミジャ−ナル
06 超並列スパーコンピューター  by理化学研究所 次世代スパーコンピューター
 開発実施本部
07日本が誇るスーパーコンピュータ「京」が、国際的なランキング「HPCG」で世界第1位に
 2016年11月28日 FUJITSU JOURNAL
08 HPCI(High Performance Computing Infrastructure) by一般財団法人 高度情報科学
 技術研究機構
09 FOCUS スパコン 利用料金 (FOCUSは、スーパーコンピュータ「京」の産業利用推進活
 動を行なっています!) by FOCUS(公益財団法人 計算科学振興財団)
10 ポスト「京」について by理化学研究所 計算科学研究センタ−
11 スパコン詐欺事件「異例の捜査」で検察は誰を追い詰めたいのか 政界関係者の関与は?
 2017.12.08 河野 正一郎 現代ビジネス プレミアム 講談社
12 スパコン「TSUBAME」が世界の最前線を走り続ける理由 ― 松岡聡 東京工業大学


スーパーコンピュータTOP500、すべてLinuxが動作

2018年6月29日 マイナビニュース

 スーパーコンピュータランキングの最新版となる「TOP500 List - June 2018」が発表された。1位は米国オークリッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory)のSummitで、IBM Power System AC922、IBM POWER9 22C 3.07GHz、NVIDIA Volta GV100、Dual-rail Mellanox EDR Infinibandなどで構成されている。コア数は2,282,544個、Rpeak値は187,659.3テラフロップス。2位に中国、3位に米国、4位に中国と続き、5位に産業技術総合研究所(産総研)のABCI(AI Bridging Cloud Infrastructure)がつけている。

 2018年6月のランキングでは日本の組織が保有するスーパーコンピュータは5位、12位、16位、19位、25位、26位、32位、50位、54位、56位、61位、62位、77位、83位、89位、93位、134位、143位、171位、180位、254位、271位、275位、276位、287位、359位、362位、385位、397位、411位、414位、419位、436位、440位、468位、475位にランクイン。500中36が日本の組織保有のスパコンとなり、数の上で7.2%を占めた。

 今回のランキングでもオペレーティングシステムはすべてLinuxが占めた。

 スーパーコンピュータを利用するためのオペレーティングシステムとしてLinuxは不動のポジションを確保している。

 今回のランキングではGPUによる計算能力の向上が目立っており、今後も同様の傾向が続くものと見られる。従来のハイパフォーマンスコンピューティングの要望に加えて、人工知能(AI)や機械学習への要望が伸びており、さらに高い性能のGPUの搭載が進むことが予想される。

産総研のAIスパコン「ABCI」がスパコンランキング「TOP500」で5位、性能は19.88ペタFLOPS

2018年6月26日(火)日川 佳三(IT Leaders編集部)IT Leaders

富士通は2018年6月26日、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)から受注したAI向けスーパーコンピュータ「人工知能処理向け大規模・省電力クラウド基盤(AI Bridging Cloud Infrastructure、以下ABCI)」が、スーパーコンピュータの性能ランキングの1つである「TOP500」(2018年6月の最新ランキング)において世界5位を獲得したと発表した。LINPACKベンチマークで19.88ペタFLOPS(毎秒1京9880兆回)を達成した。

 スーパーコンピュータの性能ランキングの1つで、LINPACKベンチマークのTOP500を競う「TOP500」の最新版(2018年6月25日発表)において、ABCIは、世界第5位となる19.88ペタFLOPS(毎秒1京9880兆回)を達成した。国内では1位となる。さらに、消費電力性能を示す「Green500」においても世界8位を獲得した。

 ABCIは、富士通のPCサーバー「FUJITSU Server PRIMERGY CX2570 M4」×1088台で構成する、AI用途向けの大規模クラウド基盤である。サーバー1台につき、CPUとしてXeonプロセッサー・スケーラブル・ファミリー×2基と、浮動小数点演算を高速に処理するためのGPUカード「NVIDIA Tesla V100アクセラレーター」×4基を搭載している。

 今回のベンチマークテストにあたっては、性能バランスの最適化や、計算処理と通信処理のオーバーラップ最適化といった技術を用いた、としている。GPUの演算効率の向上だけでなく、サーバー間通信処理を最適化し、ハードウェアの性能を最大限に引き出した、としている。

 また、消費電力性能を競う「Green500」においては、1ワットあたりの性能値で12.05G FLOPSを達成した。

 産総研は、2018年8月からABCIの本格稼働を予定している。

ポスト「京」の次世代スパコン 試作チップが完成

2018/6/25 日本経済新聞

 富士通と理化学研究所(理研)が共同で開発を進めている次世代スーパーコンピューターである、ポスト「京」のCPUの試作チップが完成した。両機関が2018年6月21日に発表した。両機関は、この試作チップを使っての機能試験を始めた。

 ポスト「京」は科学技術のみならず様々な社会課題の解決に向け、幅広いアプリケーションの性能を引き出す世界最高水準のスーパーコンピューターを目指している。そのCPUチップのISA(Instruction Set Architecture)には、512ビットのArmv8-A SVE(Scalable Vector Extension)を採用した。コア数は計算ノードが48コア+2アシスタントコア。I/O兼計算ノードは48コア+4アシスタントコア。Tofu型のインターコネクトを内蔵している。

 現世代のスーパーコンピューターである「京」のメモリーバンド幅と倍精度演算性能を強化するとともに、AIなどの分野で重要となる半精度演算にも対応した。今回、このように設計したCPUの試作チップにおいて初期動作を確認したことで、システム開発における重要なマイルストーンを順調にクリアできたとする。ポスト「京」では、「京」の最大100倍のアプリケーション性能を、「京」の2.36〜3.15倍の消費電力で実現することを目指している。

 ポスト「京」の試作機は、ドイツ・フランクフルトで2018年6月24〜28日に開催の、ハイパフォーマンスコンピューティングに関する国際会議・展示会「ISC HIGH PERFORMANCE 2018(ISC 2018)」に出展している。(日経 xTECH 小島郁太郎 2018年6月22日掲載)

スパコン「京」、実用性能ランクで3位に後退

2018年06月25日 YOMIURI ONLINE

 スーパーコンピューターの実用性能を評価する国際ランキング「HPCG」が25日発表され、3期連続で世界トップだった理化学研究所のスパコン「京」が3位に後退した。1、2位は共に米国のスパコンだった。

 HPCGは、建物の構造解析やエンジンの熱伝導分析など、産業で使う計算速度を競う。約半年ごとに発表され、京は2016年下半期から首位だった。

 スパコンの単純な計算速度を競う国際ランキング「TOP500」も同日発表され、産業技術総合研究所の「ABCI」が国内最高の5位に入った。ABCIは人工知能(AI)の研究開発用スパコン。省エネ性能を評価する「グリーン500」では、日本の新興企業「ペジーコンピューティング」などが開発したスパコンが1〜3位を占めた。

米製スパコン、最速に返り咲き IBMが中国製抜く

2018/6/9 日本経済新聞

 【シリコンバレー=佐藤浩実】米IBMは8日、米エネルギー省(DOE)のオークリッジ国立研究所に設置しているスーパーコンピューター「サミット」が1秒あたり20京(京は1兆の1万倍)回の計算速度を達成したと発表した。直近までスパコンの計算速度ランキングで世界首位だった中国製の「神威太湖之光」を抜いて、世界最速となる。米国のスパコンが計算速度で1位になるのは2012年以来だ。

 IBMはDOEからスパコンを受注し、画像処理半導体(GPU)メーカーのエヌビディアなどと共同で開発に取り組んできた。サミットは心臓部に「パワー9」と呼ぶIBM製のCPU(中央演算処理装置)を9216個使い、計算能力を高めるために2万7648個のGPUも採用した。記憶装置も250ペタ(ペタは1千兆)バイトを備える。

 サミットの大きさは5600平方フィートで、テニスコート2つ分にあたるという。DOEはがんの研究などに利用していく計画だ。サミットの速度は日本製スパコン「京」と比べると約20倍にあたる。

 スパコンの計算速度ランキングでは16年以降、1位と2位を中国製が占めていた。今回サミットに抜かれた神威太湖之光の計算速度は1秒あたり9.3京回。IBMのジョン・ケリー上級副社長が声明で「スパコンはコンピューターのF1だ」と述べたように、スパコン開発は企業や国の技術力を示す手段にもなっている。

国立天文台、新スパコン「アテルイII」の本格運用開始

2018年06月01日 ITmedia

 国立天文台は6月1日、天文学専用のスーパーコンピュータシステム「アテルイII」の本格運用を始めた。米Crayの「XC50」システムを導入し、従来の「アテルイ」に比べて約3倍となる3.087 PFLOPS(ペタフロップス)の理論演算性能を実現したという。

 アテルイIIは、国立天文台天文シミュレーションプロジェクト(CfCA)が水沢キャンパス(岩手県奥州市)で運用する。同プロジェクトではスパコンを共同利用できるようにして国内外の天文学者のシミュレーション研究をサポートしており、18年度には約150人の研究者が利用する予定。

 約4万のコアを搭載したアテルイIIの演算性能は3.087ペタフロップス。アテルイでは計算できなかったシミュレーションも可能になり、例えばこれまで実際より少ない星の数でしか行えなかった天の川銀河のシミュレーションが、数千億個の星全てで行えるようになるという。

 利用者の1人で星の誕生の研究をしている法政大学の松本倫明教授は「前システムの約半分の時間でモデルの計算が可能になった。われわれのように観測との比較を視野に入れた研究にとって重要なことだ」とコメント。CfCAのプロジェクト長である小久保英一郎教授は「現代天文学におけるシミュレーションの役割はますます大きくなってきている。アテルイIIが超新星爆発の機構や、銀河の形成と進化、恒星と惑星系の起源などの問題を解き明かすことを期待する」としている。

北大、4PFLOPSのスパコンシステムを構築--2018年12月に稼働予定

2018年05月29日 ZDNet Japan

 北海道大学情報基盤センターは、最大4.0ペタフロップス(PFLOS)の理論演算性能を実現する学際大規模計算機システムを構築する。2018年12月の稼働開始を予定。プロジェクトを受注した富士通が5月24日に発表した。

 現在、同センターでは、スーパーコンピュータシステムとクラウドシステムから成る学際大規模計算機システム、およびペタバイト級データサイエンス統合クラウドストレージを「北海道大学アカデミッククラウド」として運用している。新システムが「北海道大学ハイパフォーマンスインタークラウド」として稼働すれば、現行の20倍以上の処理能力を持つことになる。

 これにより、従来の科学技術シミュレーション、人工知能(AI)、ビッグデータ、データサイエンスなどの活用・研究をさらに促進し、大規模計算機システムを画期的な研究に活用するための人材育成なども見据えた、より幅広いニーズに対応できる環境が整う。

 PFLOSとは毎秒1000兆回の浮動小数点演算ができることを表す。新システムは、スーパーコンピュータシステムとクラウドシステムから構成され、富士通のx86サーバ「FUJITSU Server PRIMERGY CX2550 M4」(PRIMERGY CX2550 M4)など約1300台で構成される。

 クラウドシステムは、北海道大学内に加え、今回新たに北海道から九州に至る複数の遠隔拠点にサーバを設置する。学術情報ネットワーク「SINET5」でつなげることで、全国規模の広域分散クラウドシステムとして、ネットワークやモノのインターネット(IoT)などの分散システムに関する研究に活用できる。

 新スーパーコンピュータシステムは、Xeon Scalable Processor Familyを搭載した「PRIMERGY CX2550 M4」(1004台)で構成されるサブシステムAと、Xeon Phiを搭載した「PRIMERGY CX1640 M1」(288台)で構成されるサブシステムBを備えた、超並列型の計算機システム。

 新クラウドシステムは、Tesla V100を搭載した「PRIMERGY RX2540 M4」をはじめとした64台のサーバを北海道大学内に設置するのに加え、関東、関西、九州の遠隔サイトにも計7台を設置。これらをSINET5で相互接続する。クラウド基盤には、OpenStackやKubernetes、Cephなどを統合した「Mirantis Cloud Platform」を採用する。

 システム管理やジョブ運用管理には、HPCミドルウェア「FUJITSU Software Technical Computing Suite」を活用。ジョブ制御の最適化やノード占有など、さまざまな運用を想定し、利便性を向上させるとしている。

日立、気象庁の新スーパーコンピュータシステムを構築

〜天気予報の精度向上や5日先までの台風の強度予測が可能に 2018年5月16日 佐藤 岳大

 株式会社日立製作所は、気象庁の新しいスーパーコンピュータシステムを構築し、6月5日から稼働開始することを発表した。

 新システムの中核を担うスーパーコンピュータは、米Crayの「XC50モデル」。XC50は、XeonスケーラブルプロセッサやARMアーキテクチャのCavium ThunderX2などのCPU、Xeon Phi、Tesla K40/P100といったアクセラレータなど複数の構成があり、今回日立が選定した仕様は不明だが、気象庁に導入されるシステムの総理論演算性能は、従来システム比の約21倍となる約18PFLOPSを有するとしている。

 システムはスーパーコンピュータのほか、10.6PBの高速ストレージ、大容量の長期保存用ストレージ、衛星機器などからなり、衛星観測データをはじめ、世界中から収集される気圧や気温、風などの観測データをもとに、数値計算で大気の状態を予測する「数値予報」に活用される。

 天気予報や季節予報の精度向上、中心気圧や最大風速といった台風の強度予報の予報期間が、現在の3日先から5日先まで延長が予定されるなど、防災気象情報の高度化が見込まれているという。

 日立では、気象観測の技術発展にともない飛躍的に増加している観測データを、気象庁が開発した「数値予報モデル」で高速かつ最適に計算できるシステム環境を提供するとしている。

「スパコンを使いこなす! 〜スパコン利用技術の重要性とその課題〜」

2018年04月16日 東北大・サイバーサイエンスセンター 滝沢寛之教授
知の拠点セミナ− YOMIURI ONLINE

 スーパーコンピューター(スパコン)は高速計算を得意とするが、その性能をフルに発揮できるかはプログラミングがカギを握る。

 大規模で複雑な計算を分割して行う「並列処理」などを駆使するスパコン向けのプログラミングは、コンピューターを使って自動化するには複雑過ぎ、熟練プログラマーの経験や勘が頼りとされている。この現状を打開するため、数式化が難しい分野で威力を発揮している「機械学習」を使って、熟練者の「職人技」をコンピューターに習得させる研究を進めている。

スパコンで8億年かかる計算を1秒で解く富士通の「デジタルアニーラ」

2018年3月23日 森山 和道 PC Watch

 富士通株式会社は23日、「デジタルアニーラ」に関する技術説明会を開催した。デジタルアニーラは量子現象に着想を得てイジング模型を解くことに特化したデジタル回路で、組み合わせ最適化問題を高速に解くことができるハードウェア。あくまで従来型コンピュータの技術を使ったもので、量子コンピュータではない。だが、新しいアーキテクチャのコンピュータであり、規模・結合数・精度のバランスと安定動作で実社会の問題に適用できるものだとしている。

 解説したのは富士通株式会社 AI基盤事業本部 本部長代理(4月以降はAIサービス事業本部本部長)の東圭三氏と、株式会社富士通研究所コンピュータシステム研究所次世代コンピュータシステムプロジェクト主任研究員の竹本一矢氏。

 東氏は最初に「毎週のようにアニーリング技術、量子コンピュータ技術に関する発表が行なわれている」と紹介し、各社による量子ゲート方式やアニーリングマシンによる発表をざっと振り返った。富士通は2017年11月に量子コンピュータのアプリ開発で、Accenture、Allianzと共同で1Qbit(1QB Information Technologies Inc.)に出資している。

 脳型や量子コンピュータなど新しいコンピュータアーキテクチャが模索されている背景には、ムーアの法則と微細化の限界が想定されていることがある。デジタルアニーラはその1つで、既存のデジタル回路技術を使って量子コンピューティングマシンのような振る舞いを模擬することで、組み合わせ最適化問題など従来型アプローチでは難しい問題を解こうという試みだ。

デジタル回路で量子過程の利点を活かす発想

 量子コンピューティングには「量子ゲート方式(量子回路方式)」と「イジングマシン方式」の2種類がある。量子ゲート方式はIBMやGoogleなどが研究開発中で、暗号解読などへの適用が期待されている。後者のうちアニーリング方式の量子コンピュータとしてはいち早く商用化したD-waveのサービスが有名だ。

 いっぽう、富士通のデジタルアニーラは「量子ではなく従来のデジタル回路でアニーリングマシンがやっていることを実現したもの」(東氏)。産業界への適用が進んでいるのはアニーリング方式だとし、量子ゲート方式のコンピュータが実産業、企業に適用されるには、まだまだ時間がかかるとの見方を示した。

 アニーリングとは「焼きなまし」のことだ。材料をゆっくり冷却する過程で、内部のひずみが取り除かれ、安定した状態に落ち着いていく過程のことだ。時間はかかるが最終的にはエネルギー的に安定な状態に落ち着く。アニーリングアプローチはその物理過程をコンピューティングに活用しようとしている。

 たとえば従来手法でパズルを解こうと思ったら総当たりでやっていたのに対し、アニーリングは、それとは違い、確率探索を行ない、コスト関数の評価値が最小あるいは最大にする方式で問題を解く。

 本物の量子コンピュータは量子ビットを用いて、1と0の重ね合わせを表現する。デジタルアニーラはデジタル回路なので、1と0の状態を重ね合わせで表現することはできない。そこで、乱数発生器を使って1と0の揺らぎのような状態を表現する。

 また最適解ではないがコスト関数がある程度低いところに落ち着きそうになっても、ある確率で高いところへの移動も許すような仕組みをアーキテクチャに組み込んでいる。こういった工夫によって、デジタル回路を用いながらも、量子過程ならではの並列化や高速化の仕組みを実現しているところが特徴だ。

 なおこれらはあくまで厳密な制御によって成り立っている。とにかくイジング模型のかたちに問題を定式化できれば、デジタルアニーラで高速に解くことができる。

 東氏は、四角い箱にピースを入れていくパズルにたとえて強みを解説した。通常のやり方では四角い箱にピースを逐次入れていき、ダメならまた全部やりなおす。いっぽうデジタルアニーラの場合は、パズルのピースを全部入れてしまい、揺らしながらだんだん落ち着かせ、納まるかたちを見つける。変なかたちに納まってしまったら、また大きく揺らしてやりなおす。本当の最適解は見つからないかもしれないが、近似解は見つかる。そういうやり方をとることで、とりあえず高速で答えを見つける場合に有用だと述べた。

 量子コンピューティングについてさまざまなリサーチをしていくなかで、顧客目線で見ると、顧客は必ずしも量子コンピューティング自体を求めているのではなく、あくまで組み合わせ最適化問題を高速に解くこと自体を求めていることが多いことがわかり、このような発想のアーキテクチャが生まれたという。

用途は創薬、投資ポートフォリオ、物流、パーソナライズ広告など

 組み合わせ最適化問題の代表例が、セールスマンが都市を訪問して巡回するときの最短ルートを見つける「巡回セールスマン問題」だ。5都市程度なら120通り程度なので簡単だが、20都市だと234京通り、30都市だと1京×1京通りと、総当たりだとスパコンでも8億年かかる。これがデジタルアニーラ、アニーリングアプローチだと最適に近いルートを1秒以内に見つけることができる。

 具体的には、まず問題を0と1の状態をとる格子点からなるイジングモデルで表現する。丸と丸のあいだは都市間の距離を与える。各行、各列に1は1つだけの状態をとるように計算させる。

 ほかにも組み合わせ最適化問題には、分子構造を比較しなければならない創薬、投資先を組み合わせる投資ポートフォリオ、物流、パーソナライズ広告などのアプリケーションがある。何をどう組み合わせて配分すればいいかという課題に用いることができる。

 創薬においては、従来手法では高速化のために分子の部分的特徴を抽出して比較検索していたが、分子全体をまるごと検索できるという。たとえば新薬候補のスクリーニングなどに用いることができる。

 金融については、Quantum-inspired hierarchical risk parity(QHRP)という方式があり、シャープレシオが60%向上したという。投資先の相関関係をグループ化して、ツリーを作成。安定して収益が上げられる組み合わせを選び出すことができる。1,000社程度の組み合わせを一気に選びだすことができるとのことだ。

 倉庫物流に関しては、富士通の関連会社で、サーバーなど富士通の主力製品を製造している株式会社富士通ITプロダクツの倉庫で実際に使われている例を示した。ピックアップ手順の最短ルートを見出し、最大30%歩行距離を縮め、また3,000種類の部品間の相関関係を見出し、レイアウトを最適化すると、月あたりの移動距離を45%短縮することができた。

 人員配置(シフト)の最適化にも用いることができる。モデルケースで試算すると、作業員5名分の工数を確保することができた。たとえば「AさんとBさんは一緒にならないように」といった人間関係を配慮した例外的な処理を入れたりするようなケースでも、デジタルアニーラは力を発揮するという。

富士通デジタルアニーラの優位性

 東氏は「富士通デジタルアニーラは1,024bit規模でビット間全結合。ビット間結合精度は65,536階調。デジタル回路なので常温で動作可能、2018年度には規模、精度ともに拡張予定で、デジタル回路なので拡張は比較的容易だ」と実社会で適用するうえでの優位性をアピールした。制約が少ないためアプリケーションが組んだ問題をそのまま適用することもでき、他社の量子コンピューティング技術に比べても現実的な問題を解くには強みがあるという見方を示した。

 たとえば巡回セールスマン問題、ナップザック問題、数独など、それぞれ2次元、1次元、3次元にマッピングして解いていく問題であっても、ビット数が何ビットあるか、お互いにビットがつながっているか、結合精度などが、実問題に適用する上では重要であり、「大きな実際の問題も解きやすい」という。

正式提供は2018年度春から

 デジタルアニーラは正式提供開始は2018年度の春を予定。1QBitによるミドルウェアと組み合わせたかたちで、クラウドサービスとして提供される。演算させるために諸問題をイジングモデルに定式化する部分が1QBitのミドルウェアの役割。利用金額は公開されなかったが、金額にも十分見合うものだという。現時点で一番引き合いが多いのは新素材と創薬。ついで金融系とのこと。

 また経済産業省の「未踏プロジェクト」の、2018年度からはじまる次世代計算機をテーマにした「未踏ターゲット」では、アニーリングマシンを活用する人材を育成しようとしている。富士通はそこに参画し、開発環境としてデジタルアニーラを提供する。カナダのトロント大学にも新しい研究拠点を開設し、スマート交通、ネットワーク、医療、金融と4つの共同研究を進める。

 富士通はデジタルアニーラ、スパコン京などのHPC、ディープラーニング向けの専用プロセッサ「DLU」の3つで顧客の事業拡大に貢献していきたいと述べた。この3つはハードウェア的には川崎工場の一角で固まって開発されており、知見、人材、ノウハウなどが互いにシェアされて、一緒になってハードウェアを開発しているという。ただ、ソフトウェア的にはまだまだ融合していないが、東氏は「今後、融合、相互利用が期待できる。われわれもそこに注力していきたい」と語った。

 今後のビジネスについては、顧客の問題のなかに「イジング模型に適用可能な領域が見つかりはじめている」と述べた。ただし「顧客の課題から組み合わせ最適化問題を抽出するところが一番難しい」が、「それをうまく引き出せれば、あとは数式かできるエンジニアがいる。チューニングして、デジタルアニーラに投げるためのノウハウは蓄積しはじめているので、そこはカバーできる」と自信を見せた。

スパコン、純中国製が初の世界1位 速さ「京」の10倍

2016/6/20 日本経済新聞社

 米国の専門家らからなる国際チームは20日、世界のスーパーコンピューターの計算速度ランキング「TOP500」を発表した。中国が国産技術で独自に開発した新型機が初の1位で、日本の「京」より約10倍速かった。2位にも中国が入った。3位と4位は米、京は5位となり、日米欧が上位を占めてきたスパコンの勢力図は大きく変わった。

 中国の新型機「神威太湖之光」は1秒間に9.3京(京は1兆の1万倍)回の計算速度を達成、2位の「天河2号」より約3倍速かった。

 トップの新型機は、心臓部となるCPU(中央演算処理装置)は中国製だった。中国は2000年以降にCPUの独自開発に着手し、米国留学組などの貢献もあり技術力を磨いてきた。世界最速スパコンの開発は国威発揚の手段でもあり、研究投資も大きいとみられる。

 東京工業大学の松岡聡教授は「ハードやソフトとすべての技術が大きく進歩し、日米に肩を並べた。今後、技術を海外に輸出する可能性も十分ある」と評価している。

 スパコンは国家の科学技術水準や企業の競争力、軍事力にも大きく影響する。米国は18年にも中国の新型機に並ぶ新型機を3台稼働する予定だが、中国は20年にもさらに10倍速いマシンを計画中という。専門家からは「中国は明らかに我々よりも優勢だ」(米テネシー大学のジャック・ドンガラ名誉教授)との指摘もある。

 日本は20年の稼働をめざす京の後継機を開発中だが、世界ランキングの1位は目指していない。日本の進むべき道は「幅広い分野での使い勝手の良さだ」と松岡教授は話す。


「2位じゃ駄目」な理由 科学技術こそ日本の生きる力

2013年04月30日07:38 MSN産経新聞

[先端技術]

 「2位じゃ、駄目なんでしょうか」−。

 民主党政権が誕生した2009年、無駄遣いカットの切り札として鳴り物入りで始まった「事業仕分け」。蓮舫参院議員が放ったこの一言で、一躍クローズアップされたのが、昨年本格稼働した神戸市のスーパーコンピューター「京」だった。(フジサンケイビジネスアイ

 この発言を受け、予算は「凍結」されたが、これにノーベル賞学者らが猛反発。最終的にゴーサインが出た結果、毎秒1京(京は1兆の1万倍)回の計算速度を達成し、11年6月のスパコン性能ランキングで世界一に輝く。

 “偉業”ゆえに、国民は拍手喝采し、報道合戦も盛り上がったのだ。新幹線、東京タワー、瀬戸大橋…。戦後、資源小国の日本が奇跡的な高度成長を成し遂げたのは「世界一」「世界初」に挑んだ科学技術の賜物(たまもの)だ。最初から2位を目指すのであれば、研究者の意気は上がらず、世界を驚かせる技術革新も生まれなかっただろう。京は、人工島「ポートアイランド」に作られた神戸医療産業都市の一角にある。柱が1本もない50×60メートルの広々とした部屋には、電話ボックスほどの計算機864台が整然と並び、それぞれの計算機をつなぐ約20万本のケーブルを1本につなぐと、東京から博多までの距離(約1000キロ)に及ぶという。

 地球上の全人口70億人が24時間不眠不休で毎秒1回計算して17日間かかる計算量をたった1秒でやってのける怪物マシンだ。

 「蓮舫議員の迷セリフのおかげで、国民の関心が高まったのは否めない」。関西財界の幹部は苦笑混じりにこう漏らしていた。富士通と共同開発した理化学研究所の野依良治理事長は「科学技術こそ日本の生きる力。世界一の京は国際的に優れた人材の吸引力になる」と発言。安倍晋三首相も就任直後に京を見学し、「やはり世界一を目指さないと駄目だ」と強調した。

 ただ、京が「世界一」の座を保ったのはわずか1年。昨年11月のランキングでは3位まで転落した。1位を獲得したスパコンの性能は、数年後には500位レベルになるというデータもあり、当初から2位を狙うと実用化段階では時代遅れになっているかもしれない。

 「864台をフル稼働すれば高性能だが、中枢部品であるCPU(中央演算処理装置)一つ一つの計算速度は汎用(はんよう)機並み」。国内大手メーカーからは、早くも不満の声が上がっている。

 産業界の期待に応えられなければ、工場だけでなく、“頭脳”である研究開発拠点の海外流出も懸念されてくる。

 SMAPの人気曲で歌われた「ナンバーワンにならなくてもいい」との歌詞は多くの共感を呼んだが、科学技術の世界はトップを狙うべきではないだろうか。アベノミクスの成否は、国の科学技術への力の入れ具合にあるのかもしれない。(産経新聞大阪経済部 藤原章裕)

水処理の「水ing」 神戸にスパコン研究拠点

2013年04月25日21:44 神戸新聞 NEXT

 神戸市は25日、水処理施設建設・運営大手「水ing」(東京)が神戸・ポートアイランド2期に研究、営業拠点を設けたと発表した。産業界向けの「FOCUSスパコン」があるビル内に、社員3人が勤務する。

 同社はフォーカスを用いた上下水道分野のシミュレーション開発を、神戸大と進めている。神戸市とも下水汚泥からリンを効率的に回収する実証実験を進めており、拠点開設を決めた。

 同社はポンプ総合メーカー荏原製作所の水処理事業を母体に、三菱商事などが出資。上下水道の管理や工場排水の処理を手掛ける。神戸市によると、スパコン関連の進出企業は20社となった。(高見雄樹)

北陸先端科学技術大学院大学、スパコンCray XC30本格運用開始

2013年04月09日 読売新聞

 スーパーコンピュータの世界的な企業であるCrayは北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)が、アジア初の導入事例であるCray XC 30スーパーコンピュータの本格運用を開始したことを発表した。

 JAISTは、超並列プログラミングをはじめとする幅広い科学分野の研究に、新しいCray XC 30スーパーコンピュータを使用している。

 スーパーコンピュータのCrayは北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)が、アジア初の導入事例である「Cray XC 30」スーパーコンピュータの本格運用を開始したことを発表した。JAISTは、超並列プログラミングをはじめとする幅広い科学分野の研究に、新しいCray XC 30スーパーコンピュータを使用している。

 JAISTに導入された2キャビネット構成のCray XC 30スーパーコンピュータは、118テラフロップス超のピークパフォーマンスで、これまで同大学のハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)施設でメインシステムとして使用されてきた「Cray XT5」スーパーコンピュータの後継機種に当たる。(インターネットコム)

「2009年の世界最速スパコン」引退で粉砕処理 保管できない理由

2013年04月09日08:53 MSN産経新聞

 世界で初めてペタFLOPSの壁を破り、2009年まで世界最速だったスーパーコンビューター「Roadrunner」が引退した。2012年時点でも世界22位のスパコンだったが、一部を除いて粉砕処理されるという。

Roadrunnerは、1億3,300万ドル(2009年末の相場換算で118億円程度)をかけて構築された。約557平方メートルの面積を占める296台のサーヴァーラックから成り、122,400個のプロセッサーコアと104TBのメモリーを有する。2008年の稼働開始時のストレージは2PBだった。2009年11月のランキングで、「Jaguar」に抜かれて2位となった。Image:Los Alamos National Laboratory

 毎秒1,000兆回の浮動小数点演算が可能な、世界初のペタスケール・スーパーコンピューターだったIBM製の「Roadrunner」が、3月31日(米国時間)をもって現役を退いた。

 ニューメキシコ州にある、米エネルギー省のロスアラモス国立研究所に設置されていたRoadrunnerは、4月1日にオフライン化され、より高速でエネルギー効率のよいマシンと交換されることになっている。

 Roadrunnerは、2009年までは世界最速のスーパーコンピューターだったし、オフラインになるまではスーパーコンピューターの世界ランキング「Top500」で22位に入っていた。

 ロスアラモス国立研究所の広報担当は2日、Arstechnicaの取材に対して、「Roadrunnerの一部は歴史的目的のために保管される」が、ハードウェアの大部分は、研究が行われた後は「粉砕して破壊される」と語った。核兵器のシミュレーションなど、機密データを扱ってきたからだ。

 スーパーコンピューティングの研究者たちはいま、ペタフロップス(PFLOPS)より1,000倍速いエクサスケールに向けた取り組みを進めている。その実現には、エネルギー効率と価格性能比における大きな進歩が必要だ。

 2012年11月の時点で、Roadrunnerの世界ランクは22位だったが、1.042PFLOPSを達成するのに、2,345kWのエネルギーが必要だった。これに対して、21位にランクインしたスーパーコンピューターの消費エネルギーはたったの1,177kW、そして23位のものは(1.035PFLOPSで)493kWしか消費していなかった。

 なお、重要なデータを大量に保有するグーグルもまた、使用しなくなったハードディスクを粉砕処理している。下の動画はグーグルが2011年に公開したもので、古いコンピューターのハードウェアが破壊されている証拠を提供するものだ(破砕処理の様子は3:43頃から見ることができる)。

 ※この翻訳は抄訳で、別の英文記事の内容を統合しています。

富士通、チリの大型電波望遠鏡計画にスパコンや特注システム納入

2013年03月14日18:44 MSN産経新聞

 富士通は14日、チリで稼働した大型電波望遠鏡「アルマ」のプロジェクトにスーパーコンピューターを納入したと発表した。スパコンは同プロジェクトに参加する国立天文台と共同でシステムを開発。電波望遠鏡のアンテナが受信するデータを毎秒120兆回の計算速度で解析するなど、世界最高峰の天体観測プロジェクトの一翼を担う。

 富士通が納めたのは、同社のサーバー「PRIMERGY」35台と専用計算機からなるスパコンの「ACA相関器システム」。アルマプロジェクトで使用される全66台のパラボラアンテナのうち、16台分のアンテナが受信する毎秒5120億個(200ギガバイト相当)のデータを超高速計算し、処理する。納入金額は明らかにしていない。

 スパコンは標高5000メートルの高原で使用され、0・5気圧という過酷な環境に対応するため発生熱量を偏在させるなど独自の冷却システムも採用した。

動き出した世界最高級の頭脳〜スパコン「京」の今

2013年02月28日7:00 ITトレンド(日経産業新聞)

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 理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピューター(スパコン)「京(けい)」の利用が本格的に始まった。1秒間に1京(京は1兆の1万倍)回の計算が可能な処理能力を生かし、研究機関を中心に地震予測のシミュレーションや宇宙誕生の謎の解析が進められている。一方、企業や個人の研究者による一般利用も可能になり、創薬や素材開発などの分野で「世界最高級の頭脳」がフル回転を始めている。

 神戸空港から電車で5分。昨年7月に「京コンピュータ前」に改名した駅を下りると、京を運営する理化学研究所計算科学研究機構(神戸市)の建物が目の前に現れる。

 京は2012年9月に本格稼働した。計算をするCPU(中央演算処理装置)の総数は8万8128個。全人類が17日間、1秒に1度計算する量を、京は1秒間で計算できる能力がある。CPU同士を結びつける約20万本のケーブルを1本につなげれば、東京から博多までの距離(約1000キロメートル)に相当する。

 建物の3階にあるスクリーンルームの裏手に、柱が1本もない約50メートル×約60メートルの部屋が広がる。部屋には96個のCPUを内蔵した高さ約2.5メートルのボックス864台が整然と並んでいる。このボックス群が京の頭脳の本体だ。

 案内してくれた理化学研究所計算科学研究機構コーディネーターの伊藤聡氏は「スクリーンルームで京の歴史や性能をVTR上映した後に、スクリーンが自動的に収納され、目の前に京が現れる仕組みになっている。粋な計らいでしょ」と笑う。

 京の消費電力量は約15メガワット。1世代前のスパコン「地球シミュレータ」の約300倍の計算処理能力があるが、電力量は半分近くに抑えることに成功した。ただそれでも膨大な電力を消費するため、発熱を抑える工夫を随所に凝らしている。

 ボックスが並ぶ3階のすぐ下の階に巨大な空調機を設置。24時間体制で温度を一定に保っている。CPUを内蔵したシステムボードはボックスに斜めに差し込まれており、冷たい空気が効率良く全体に流れるようにしている。さらにボックスには冷たい水が流れるパイプを張り巡らせており、「二重体制で温度管理を徹底している」(伊藤氏)。

 京の利用枠のうち50%は国が指定する「戦略プログラム」に充てられる。プログラムには、震災や集中豪雨などの災害を予測し、被害軽減につなげる超高解像度の気象予測システムの構築や、宇宙の起源解明など5つの分野がある。

 一般利用は全体の30%で、企業が京を活用できる産業利用枠は同5%。割り当てはノード(CPUの数)×時間で計算する。1ノード時間当たり12.68円を支払う「有償利用」と、無償だが成果の公開義務がある「一般利用」に分かれている。

 利用企業は年に一度の公募で決める。初回は227件の応募があり、25件の産業利用が決まった。最多は大日本住友製薬の503万8080ノード時間で、京の最大能力を約57時間使える計算になる。

 少し京を試してみたいという場合には「トライアルユース」が便利だ。3カ月間で5万ノード時間×2回を限度に京を利用できる。公募と異なり、随時受け付けており、現在は東洋ゴム工業や半導体理工学研究センターなどが利用している。

 京は東大、京大や情報学研究所(東京・千代田)など国内研究機関をつなぐ超高速ネットワークでつながっており、企業は自社内からインターネット経由で京にアクセスできる。また高度情報科学技術研究機構(東京・品川)と高度計算科学研究支援センター(神戸市)の2カ所に京のアクセスポイントを設置。情報管理を徹底したい企業が利用できるようにも工夫した。

 京では一般利用の促進に力を入れている。原則として利用者は自前でソフトウエアを調達する必要があるが、ナノ統合や生命体統合シミュレーションなど一部の研究領域では専門のソフトウエアを開発。誰でも利用できるようにした。

 高度情報科学技術研究機構では相談員の派遣など利用者の支援業務を展開。京を利用する住友ゴム工業主査の岸本浩通氏は「京で採用された新しい計算方式であるスカラ型への対応など、企業側だけでは対処が難しい問題を機構と共同で早期に解決することができた」と振り返る。

 開発当初、計算能力の世界ランキングで1位だった京は12年6月に2位に、同11月に3位に転落した。文部科学省は現在、1秒間に京の100倍にあたる1エクサ(100京)の計算が可能な次世代機の開発を検討している。20年の完成が目標で、今夏をめどに開発の是非を最終判断する見通しだ。

 伊藤氏は「CPUの微細化に成功し、消費電力をある程度まで抑えることができるなら利点は大きい」と指摘する。京の活用で大きな成果が次々と生まれていけば、次世代機開発を歓迎する声が高まるに違いない。(産業部 林英樹)

気象庁のスパコン復旧 不具合12時間、予報精度に影響の可能性も 気象庁

2013年02月05日11:40 MSN産経新聞

 気象庁は5日、天気予報で使うスーパーコンピューターに4日夜から約12時間にわたって不具合が生じて、予報を出す際の基礎資料「数値予報天気図」などが作成できない状態になったと発表した。冷却システムのトラブルが原因で、5日午前9時ごろに復旧した。

 気象庁は「一般向けの天気予報に大きな影響はなかったとみられる」としているが、民間の気象事業者や気象予報士向けに配信されている予報基礎資料の更新ができなくなったという。

 同庁によると、不具合は4日午後8時50分ごろ発生。スパコンで大気の状態を計算して作成する「数値予報天気図」が作成できなくなった。その場合も一般向けの警報や注意報、天気予報は発表可能だが、障害発生前の古いデータなどに基づいて予想せざるを得ず、精度が低下した恐れがあるという。

 気象庁は、5日から6日にかけ、低気圧が日本列島南岸を発達しながら通るため、西日本から東日本の太平洋側で大雪の恐れがあるとして、警戒を呼び掛ける気象情報を発表していた。同庁は今後の予想に影響がないかなどについても確認する。

 ただ、地震や津波の観測や警報には別のシステムが使われており、影響はないという。

 スパコンは東京都清瀬市の計算機用庁舎に設置されており、冷却水の給水が停止し、温度が上昇したため、自動的に停止したという。昨年6月に新型が導入されたばかりだった。

 同庁業務課の梶原靖司課長補佐は「台風がなかったことは幸いだった。国民の皆さまにご迷惑をおかけしたことをおわびします」と陳謝した。

首相「世界一でなきゃ…」 先端技術の重視を強調 スパコン「京」など視察

2013年01月11日20:00 日本経済新聞

 安倍晋三首相は11日、神戸市の理化学研究所を訪れ、iPS細胞の研究施設やスーパーコンピューター「京」などを視察した。首相の強い希望で実現し、成長戦略の柱の一つに据える先端技術の開発を重視する姿勢をアピールする狙いがある。

 首相はiPS細胞の開発でノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥京都大教授らとも懇談。首相がiPSなどの再生医療研究に今後10年間で約1100億円を支援する考えを伝えると、山中教授は「非常に大きな支援を頂いた。貴重な国税を1円も無駄にすることなく、さらに力を合わせてまい進したい」と応じた。

 首相は視察後、記者団に「経済再生に向けた成長戦略の柱はイノベーションだ。やはり世界一を目指さなければダメだ」と強調。総合科学技術会議を復活させるほか、中小・零細企業による試作品開発などに計1千億円を支援する補助金を設ける考えも示した。

【目覚めよ 日本力】〈次世代技術〉実用性“世界一”のスパコン「京」 本領発揮はこれから

2013年01月04日12:00 MSN産経新聞

 神戸市中央区の理化学研究所の計算科学研究機構で昨年9月、スーパーコンピューター「京(けい)」が本格運用を始めた。世界で初めて毎秒1京(京は1兆の1万倍)回超の計算速度を達成し、スパコン性能で世界1位に輝いた頭脳だが、その後は順位を下げて昨年11月には3位に転落した。だが、開発に携わった研究者は「もともと多くの分野の実用性を念頭に作られた」としており、科学や産業の発展に本領を発揮するのはこれからだ。

 1秒間に1京510兆回の計算速度−。たとえるなら、地球上の人類約70億人が毎秒1回、17日かけて行う計算を1秒でやってのける能力を誇る京は、理研と富士通が約1100億円かけて開発した。平成23年6月のスパコン世界ランキングでは、日本勢として7年ぶりにトップに立った。現在も同時並行で複数課題を処理する速度などのランキングでは4部門中3部門で首位をキープしている。

 完成までには紆余(うよ)曲折もあった。21年11月の事業仕分けで、蓮舫行政刷新担当相(当時)から「2位では駄目なのか」と事実上の凍結判定を受けたことで一躍有名に。「科学技術こそが日本の生きる力だ」と科学者らの猛反発もあり、後に予算が認められた。

 50×60メートルの計算機室には864台のラック(筐体)が整然と並び、驚くほど静かに稼働している。ラックには中枢部品のCPU(中央演算処理装置)を4個ずつ搭載したボードが計24枚、ぎっしり詰め込まれている。

 この最先端の頭脳が活躍する場は多岐にわたる。京の活用分野について、文部科学省は、生命科学・医療▽新物質・エネルギー▽防災・減災のための地球変動予測−など戦略5分野を指定する。地震や津波、台風など地球科学に関するシミュレーション(模擬実験)に活用すれば、効果的な災害の予知・予測や被害軽減につなげられる。

 産業面でも期待は大きい。たとえば医療分野では心臓の動きを模擬実験して診断につなげ、タンパク質の立体構造を精密に再現して製薬の参考にする。ものづくりでは、自動車や航空機に対する空気抵抗などを計測し、より効率的な走行・飛行を追求する手がかりにする。

 スパコンを運用する理研計算科学研究機構の平尾公彦機構長は「高い目標を掲げて、決して妥協しなかった結果だ。日本のものづくりの潜在力を示した」と胸を張る。活用次第で、日本の科学力や産業の競争力を向上させると期待されているだけに、具体的な成果が待たれている。(秋山紀浩)

【ベテラン記者のデイリーコラム・坂口至徳の科学の現場を歩く】スパコン「京」続々と成果 創薬コストが大幅削減

2012年12月03日16:30 MSN産経新聞

[坂口至徳の【科学の現場を歩く】]

 理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピューター「京(けい)」(神戸市)の本格運用が始まって2カ月が過ぎ、創薬などさまざまな分野の研究がスタートし成果を上げている。

現在は3位…主要3部門で1位

 京はスパコン性能ランキングで昨年6月から1年間世界一だったが、今年6月に米IBM社の「セコイア」(ローレンス・リバモア国立研究所)に抜かれ、11月には米クレイ社の「タイタン」(オークリッジ国立研究所)がトップに立ったため、現在は3位。しかし、同月に発表されたスパコンの総合的な性能を多角的に評価するHPC(高性能計算技術)チャレンジ賞の「大規模な連立一次方程式を解く演算速度」など主要4部門のうち3部門で1位を獲得し、汎用(はんよう)性があるスパコンとしてトップクラスであることを実証した。

 このような京の能力を活用するため、文部科学省は「生命科学・医療・創薬基盤」「新物質・エネルギー創成」「地球変動予測」「次世代ものづくり」「物質と宇宙の起源と構造」の5つの分野で戦略プログラムを掲げ、具体的なテーマのうち、画期的な成果が期待されるものなどには優先課題として重点的に使用できる枠を設けている。

計算に2カ月…一転し2〜3日に短縮

 そのひとつで、高い効果があり、副作用が少ない抗がん剤づくりをめざす「創薬応用シミュレーション」(代表、藤谷秀章東京大特任教授)の研究が進んでいる。スパコンの高精度の計算力を生かし、物質の性質を予測するシミュレーションの手法を開発し、薬の候補となる2種類の物質を見つけることができた。この手法だと、創薬の過程で物質の効果を確かめる生物実験の回数が格段に少なくなるうえ、これまでのスパコンで約2カ月かかった計算が2、3日で終了し、大幅なコスト削減になる、という。

 創薬では、がんなど病気の発生メカニズムの研究から、発症の引き金となるタンパク質を見つけ、これに強固に結合して働かないようにする分子標的薬を開発することが盛んになっている。特定のタンパク質にピンポイントで作用するので、副作用が少ないからだ。

 方法としては、標的のタンパク質の結晶構造から、それにぴったり結合して働きを抑える可能性があるいくつかの物質の分子構造を設計する。これらの候補物質にどれだけの効果があるか、結合強度などを計算上で調べて候補を絞り込む。そのあと、実際に物質を合成し、培養細胞や動物を使った実験を経て、臨床試験を行い、実際の効果や副作用を確かめる。

 京がかかわるのは、候補物質を絞り込む段階だ。これまでのスパコンでは、計算を簡略化するため、水の中で柔らかくなって揺らぐ性質があるタンパク質を硬く動かないものと想定し、水の影響も無視して結合強度を予測していたため、実際の動きと合わず候補が絞り切れなかった。

 ところが、京は超大規模な計算ができ、一度に多くの計算を並列して処理する能力も格段に高い。今回の研究では、結合の強度(結合自由エネルギー)を計算するソフトの開発などにより、現実に近いタンパク質が揺らいでいる状態での予測を行い、58種類の候補から、医薬品として使える可能性がある結合強度を持つ2種類を選びだすことに成功した。

 この計算は気候変動などを予測する「地球シミュレータ」クラスのスパコンで約2カ月、普通のパソコンだと100年以上かかる、という。

 研究グループの山下雄史・東京大学特任准教授は「候補物質を合成し、生体内での効果や副作用を調べる研究に入っています。効率的に創薬できる可能性が示されたので、開発が困難だった難病の治療法にも結び付けたい」という。創薬には巨額の開発費がかかり、製薬会社の経営を圧迫しているが「日本の医薬品開発の国際競争力の強化に貢献したい」と意欲をみせた。

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坂口至徳(さかぐち・よしのり)

 昭和50年、産経新聞社入社。社会部記者、文化部次長などを経て編集局編集委員兼論説委員。この間、科学記者として医学医療を中心に科学一般を取材。

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スパコンの街PR、神戸市が海外企業誘致へ

2012年11月13日 読売新聞

 神戸市は12日、人工島・ポートアイランド(中央区)の海外企業誘致に本格的に乗り出した。

 島には理化学研究所の「京(けい)」など最先端のスーパーコンピューターがそろい、日本法人を置いていない海外企業や研究所などに「スパコンの街・KOBE」をアピールする。

 市によると、米・ユタ州で12〜15日に開催される国際会議「SC12」にPRブースを出展。同会議は、毎年スパコンの計算速度を発表しており、世界中から研究者や関連企業など300の個人・団体が参加。日本からは、京を開発した富士通も出すが、自治体として神戸市が初めて参加した。

 ポーアイには、一時、世界最速の計算速度を記録した京のほか、計算科学振興財団の産業界専用のスパコン「FOCUS(フォーカス)」も立地。その環境を生かし、市は「スパコンの街」をアピールする考えだ。

 市はこれまでにもスパコンを売りに誘致を試みてきたが、担当者が国内外100社以上に営業しても「京は大阪にあると思っていた」など、半数が京の場所を知らなかった。

 市はSC12を売り込みの好機と捉え、〈1〉スパコンが近くにあり、迅速なデータ処理や利用サポート態勢が充実〈2〉進出する研究機関や企業との情報交換のほか、ビジネスチャンスがある〈3〉交通の利便性が高い――などをPR。世界的な企業・研究の集積拠点として神戸の売り込みを図る。

 経済産業省によると、企業の県内での工場用地取得数は、神戸空港や高速道路の充実など環境立地が評価され、今年上半期(1〜6月)は国内トップの34件(前年同期27件)。ポーアイには大手製薬関連会社や日本初の小児がん専門病院など、医療系企業・施設の誘致は進むが、海外法人は1社だけにとどまっている。(東田陽介)

スパコン京、世界3位に 計算速度ランキング

2012年11月13日2時5分 朝日新聞DIGITAL

 【小宮山亮磨】スーパーコンピューターの計算速度を競う世界ランキングの最新版が12日発表され、前回6月に2位だった理化学研究所の「京(けい)」は3位に順位を落とした。首位は、米オークリッジ国立研究所の「タイタン」。

 タイタンは1秒間に1京7590兆回(1京は1兆の1万倍)の計算速度を記録した。「京」は同1京510兆回。2位は前回首位だった米ローレンス・リバモア国立研究所の「セコイア」で、同1京6325兆回だった。

 「京」は、理化学研究所と富士通が共同開発し、9月末に本格稼働を始めた。開発途中の2009年にあった国の事業仕分けでは、「2位じゃだめなんでしょうか」と言われて話題になった。

スパコン「京」世界3位に転落 1、2位は米国

2012年11月12日23:44 MSN産経新聞

 世界のスーパーコンピューターの性能ランキング「TOP500」が12日、米国で開催中の国際会議で発表され、前回(6月)2位だった理化学研究所の「京(けい)」は3位に転落した。1位は米オークリッジ国立研究所の「タイタン」、2位は前回1位の米ローレンス・リバモア国立研究所の「セコイア」だった。

 京は昨年6月、毎秒8162兆回の計算速度で日本勢として7年ぶりに世界一を達成。昨年11月、同1京510兆回(京は1兆の1万倍)に性能を高め連覇したが、米国勢の激しい追い上げで順位を下げた。

 タイタンは同1京7590兆回、セコイアは同1京6325兆回。4位も米国で5位はドイツだった。

 京は理研と富士通が共同開発。理研計算科学研究機構(神戸市)に設置され、今年9月に運用を開始した。総事業費は今年度までの7年間で1111億円。

暗黒物質2兆個で初期宇宙 スパコン「京」成功

2012年11月09日19:22 MSN産経新聞

 筑波大計算科学研究センターのグループは9日、スーパーコンピューター「京」を利用し、銀河形成に関わるとされる暗黒物質(ダークマター)粒子約2兆個が、初期の宇宙空間でどう動くかを見るシミュレーションに成功したと発表した。2兆個もの粒子を使ったシミュレーションは世界初という。

 グループの石山智明研究員によると、京の計算能力の約98%を使って実現。暗黒物質は宇宙を満たし銀河を生み出したとされるが、正体は明らかになっていない。シミュレーションでは、約2兆個の粒子が相互に働く重力によって集まり、構造物ができる過程を示した。重力による構造物の成長を見ることで暗黒物質の性質や宇宙誕生の解明につながるという。

 研究成果は米国のゴードン・ベル賞の最終選考に残っており、結果は11月中旬に発表される。

連載[スパコン・京始動](下)

2012年10月08日 サイエンス 読売新聞

「ミニ京」で腕慣らし

 ◆「ミニ京(けい)」で腕慣らし 4大学導入 人材育成へ 

 心臓を細胞レベルまで精密にコンピューター上に作り上げ、健常者と心臓病患者のモデルで拍動などを比較する――理化学研究所のスーパーコンピューター「京(けい)」(神戸市)では、こんな研究も行われている。

 構造が複雑で、非常に巧妙なポンプ機能を持つ心臓を、京なら“本物そっくり”に再現できる。「将来、研究で使うのが楽しみだ」。不整脈が起こる仕組みをコンピューター実験で調べたいという京都大病院の研修医、川平直史さん(26)が目を輝かせた。

 ◆医師もスパコン利用

 川平さんは8月、理研が主催するサマースクールに参加した。最新のスパコン設計に合わせたプログラミングの基礎を学び、実際に京と同種のスパコンを使ったり、京を見学したりした。

 スパコンで不整脈の模擬実験を行うには、心臓を動かす電気信号の異常といった現象を計測して数値化し、計算式へと変換しなければならない。計算式を作った後も、もっと細かい要素を組み込んで精度を上げたり、対象を細胞レベルから組織レベルに拡大したりしようとすると、計算量が大幅に増える。

 こうした課題を克服していくには、計算科学の知識が必要だ。医学系の研究者や医師らも、スパコンを使いこなす時代が訪れようとしている。

 「医学部出身者は、生物実験や臨床経験から生体現象については詳しいが、計算や模擬実験の手法を身につけている人は少ない。将来は、生体現象とコンピューター実験をつなぐ橋渡し役になりたい」

 ◆すそ野広がる

 計算科学にかかわる人材を育てる取り組みは広がっている。

 神戸大は京の整備に合わせて2011年、京のすぐ近くに統合研究拠点を開設した。10年度には大学院で、計算科学専攻を含むシステム情報学研究科を設け、今年5月には理研と人材育成の連携協定を締結。産業界や若手研究者向けに京を利用するための相談に応じ、中高生向けのイベントも企画中だ。賀谷(かや)信幸・同研究科長は「スパコンでこんな面白いことができるということを、幅広い世代に見せたい」と話す。

 今夏には、「ミニ京」と呼ばれる富士通製の新型スパコンを導入。ミニ京で調整したソフトはすぐに京でも使えるため、腕慣らしには“もってこい”の商用機だ。全国共同利用のスパコン施設である情報基盤センターと物性研究所に計54台を設置した東京大を始め、近畿大、九州大も導入している。いずれも京を利用する人材の育成に活用される。

 ◆「2言語」教育を

 「京ができて、人材層は確実に厚くなった。これからは大学教育が非常に重要になる」と強調するのは、次世代スパコンにかかわる文部科学省の委員会に参加する小柳(おやなぎ)義夫・神戸大特命教授だ。

 「これまで、物理や化学など専門の研究者と、計算科学の研究者は“言葉”が違うため、うまくコミュニケーションができなかった。今後は各自の専門と計算科学の2分野をしっかり学べるカリキュラムを大学で導入すべきだ」と提案する。

 世界一に輝いた京も、技術の進歩によっていずれ利用価値が薄れる時が来る。だが、最先端のスパコンを研究開発で使うという意識は広がっており、得られた成果は次世代へ受け継がれていくだろう。京は、様々な分野の人々をスパコンの“知”に巻き込むきっかけを作った。(新井清美)

 ◆本家しのぐ“計算能力” 

 スパコンは、ラックと呼ばれる大型冷蔵庫ほどの大きさの設備をつなげて構成される。ラック内に演算装置や通信設備などが搭載され、台数が増えるほど計算能力が上がる。京はラックを864台並べている。

 ミニ京は2011年11月に発売。様々なタイプがあり、1台だけの「シングルラックモデル」で、毎秒20兆2000億回〜2兆5000億回の計算能力を持つ。京と、最高性能のミニ京でラック1台当たりの能力を比べると、京の後で開発されたミニ京の方が1.6倍高い。

 ◆全国共同利用ネットワーク 

 国は京の稼働に合わせ、「HPCI」と呼ぶ体制を整備した。「ハイ・パフォーマンス・コンピューティング・インフラストラクチャー(High Performance Computing infrastructure)」の略で、京と、国立9大学(北海道、東北、筑波、東京、東京工業、名古屋、京都、大阪、九州)の計算機施設など、全国共同利用のスパコンを結ぶネットワークを指す。各地のスパコンを効率よく使えるようにするのが狙いだ。

 従来は研究者や企業がこうしたスパコンを使う際、各大学などで個別に手続きをしていたが、現在は財団法人「高度情報科学技術研究機構」が一括して窓口を担う。いったん認証手続きをすませた利用者は、HPCI内のスパコンを同じ認証番号で使える。(新井清美)

連載[スパコン・京始動](中)

2012年10月01日 サイエンス 読売新聞

宇宙の成長過程 再現 高性能ソフトが鍵

137億年前のビッグバンで誕生した宇宙。その後、正体不明の暗黒物質(ダークマター)が集まり、合体や成長を繰り返して星や銀河が生まれたとされる。その過程の多くは謎に包まれているが、理化学研究所のスーパーコンピューター「京(けい)」(神戸市)は、こうした初期の宇宙の様子さえも解明しようとしている。

 写真=銀河の衝突過程をコンピューター上で再現した映像(武田隆顕・国立天文台特任助教提供)

 ◆時間の望遠鏡

 牧野淳一郎・東京工業大教授らは国立天文台などと共同で、宇宙空間に漂う1兆個ほどの粒子が集まって天体へ成長する過程を再現する京専用のソフトウエアを開発した。従来のスパコンの100倍もの規模で計算できる。

 「まるで時間の望遠鏡だね」。牧野教授らが8月に神戸市で開いた宇宙物理学の勉強会で、招待された米プリンストン高等研究所のピート・ハット教授がこう表現した。

 たとえば、二つの銀河が衝突するには何億年もかかり、その過程を観測することは不可能だ。だが、京なら大量の演算処理によって、その現象を見せることができる。天体観測で使う望遠鏡と異なり、距離を縮めるのでなく、時間を縮める望遠鏡というわけだ。

 ハット教授は、天文学などで使われる重要な計算手法の考案者として世界的に知られる。牧野教授らのソフトは全く別の計算手法を用いており、ハット教授は「非常に面白い手法で、パワフルだ」と評価した。

 ◆能力引き出せ

 牧野教授らのソフトを使った成果は、11月に発表される「ゴードン・ベル賞」の最終候補になっている。〈スパコンのノーベル賞〉とも言われるこの賞で、評価の鍵を握るのは、ソフトの性能だ。

 「毎秒1京回(京は1兆の1万倍)以上の計算能力」が注目される京だが、これは計算速度の世界ランキング「TOP500」で使われる単純な方程式を解く速度を指す。実際のソフトではもっと複雑な計算式を使うので、計算速度は必然的に遅くなる。

 牧野教授らのソフトは、毎秒4450兆回の計算速度を達成。これは京の性能を40%以上引き出すことになり、ソフトとして非常に優れているという。

 昨年も、半導体の新素材として期待される化合物「シリコンナノワイヤ」内部の電子の動きを、京を試験利用して計算した東京大などのチームが同賞を受賞した。

 牧野教授は「スパコンの性能は年々向上するため、どうしても寿命がある。だが、いいソフトは何十年も使われる。ソフト開発は難しいが、とても重要だ」と強調する。

 ただ、日本製ソフトが優れている分野は限られている。ものづくりや医療などの産業界で一般的に使われているソフトは、ほとんどが欧米製だ。

 ◆失われた10年

 日本のスパコン開発史において、1990年代後半以降は「失われた10年」とされる。経済不況で、巨額投資が必要なスパコン開発が敬遠されたからだ。

 2002〜04年にTOP500で首位を獲得した「地球シミュレータ」は、高性能の専用演算装置を載せたスパコンだ。だが、世界ではこの時期、一般のパソコンに使われる演算装置を並列搭載した新しいスパコン設計手法の開発が進んだ。日本はこの波に乗り遅れ、対応するソフト開発でも出遅れた。

 京は、この新しい設計を採用している。その反面、国内でこれまでに開発されたスパコン用ソフトを京で使うには、プログラムを大幅に書き換えなければならない。

 京に内蔵された8万個以上の演算装置がなるべく同時に動くように計算式を工夫したり、個々の演算装置を効率よく働かせるためにデータを循環させる仕組みを開発したりすることも必要だ。

 理研は、国内の研究者が開発した23種のソフトを京仕様に調整中。うち10種では、京の演算装置全てを動かせる準備ができた。今後、商業用ソフトの調整を希望する民間企業への技術支援も行う。

 ソフト開発支援を担当する南一生・チームリーダーは言う。「京がどれだけ優れたハードでも、その上で動くソフトがなければ、ただの箱だ。宝の持ち腐れになる。様々な分野で使える京の強みを生かすためには、ソフトを充実させる努力が欠かせない」(新井清美)

連載[スパコン・京始動](上)

2012年09月24日 サイエンス 読売新聞

超性能、産業界に新風

 ◆企業間 異例のタッグ 

 理化学研究所のスーパーコンピューター「京(けい)」(神戸市)が28日から本格稼働する。スパコン計算速度の世界ランキングで首位を獲得したことで、日本中から熱い視線が注がれてきたが、これからは一転して、投じられた巨額の国費に見合う成果を上げられるのかが問われる。「利用の時代」を迎える京の課題を追う。(新井清美)

写真=横風にあおられた自動車の周辺の空気の流れや車体表面の風圧の変化を、スパコンで詳しく再現した映像(富士重工業、北海道大提供)

 ■熱気あふれる製薬業 

 「京を中心に集結し、日本の“創薬力”向上を目指そう」

 大阪市内で13日に開かれた会合。京を使った「コンピューター創薬」の研究課題の代表を務める奥野恭史・京都大教授が強い口調で呼びかけた。「得られた成果はすぐに自社で使えるのか」「京を使うための訓練はどう行うのか」――。出席者約20人が次々と質問し、会合は熱気に包まれた。

 研究課題には、塩野義製薬や大日本住友製薬などの製薬9社、IT系2社が参加。京の「一般利用枠」に共同で応募し、採択された。秘密主義が徹底した製薬業界で、こうした企業間連携は異例だ。

 「社内では実現不可能な研究開発環境が試せる。最先端の計算機でどこまでできるのかがわかれば、自社の今後の戦略が立てられる」

 研究課題に参加する塩野義製薬の服部一成・計算化学グループリーダーが意気込む。

 ■開発費用、大幅に減 

 新薬開発は、他のものづくり分野と比べ、コンピューターによる模擬実験の導入が遅れているとされる。理由の一つは、「実験精度が低い」という不信感だ。

 病気に関わるたんぱく質の働きを抑えたり、促進したりするには、たんぱく質の特定部分にぴったりと強く結合する化合物を探さなければならない。そのための膨大な組み合わせをコンピューターに計算させ、薬の候補物質を探す。こうした模擬実験の結果が、従来は細胞レベルの実験結果と合わないことが多かった。

 だが、超大規模計算が可能な京で精度の高い模擬実験を行えば、実際の実験にかかる費用も開発期間も、大幅に削減できる。このメリットをきっかけに、製薬業界がタッグを組んだ。

 計画では、生活習慣病やがんなどの薬の標的となるたんぱく質350種と、薬の候補物質3000万種で計105億通りの組み合わせを計算。この中から結合するペアを探し、さらに組み合わせを絞り込んで結合の強さを調べる。

 ■自動車業界でも 

 自動車メーカーも、京という「旗印」のもとに結集する。国の「戦略プログラム」で自動車の車体設計に関する研究を行う坪倉誠・北海道大准教授らのグループには13社が参加。スパコン利用の先駆けとされる業界だが、大手メーカー幹部は「(企業間連携は)遅すぎたくらいだ」と漏らした。

 大衆車では、コンピューター実験に思い切った投資をする韓国やインドに猛烈に追い上げられ、高級車は、高速で安定走行する設計技術を持つドイツにかなわない。「コストは半分で、魅力は2倍ある車を作らなければ生き残れない」という強い危機感があった。

 京なら、自動車の車体周辺に生じる空気の渦を、1ミリ以下の精度で再現できる。実際の車を使った風洞実験ですらつかめないような空気抵抗の仕組みを解明し、設計に生かせる可能性がある。

 「会社のルールが変わった」と大手メーカー幹部は振り返る。「従来の設計の延長では通用しない。京なら、この現状を突破できる」

 ■「差別化すべきは製品」 

 京の性能は、産業界で使われるスパコンの約1000倍だ。大手電機メーカー出身の伊藤聡・理研コーディネーターは「差別化すべきなのは製品。自社のスパコンよりはるかに高性能な京を使って、共通する技術を短期間で一緒に習得できるのなら、合理的だ。企業間協力が、日本の産業競争力の向上に資するところは大きい」と分析する。

 企業が、プライドも競争心もかなぐり捨てて手を取り合い、知恵を絞る。京は日本のものづくりに変革をもたらそうとしている。

 ◆利用枠 国戦略5分野に50% 

 京の利用枠は、「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」に基づき、計算量が配分されている。

 50%を占めるのは、国が進める戦略プログラム。医療、物質、防災、ものづくり、宇宙の5分野で31件が選ばれた。このうち7件は、科学的な成果や社会問題の解決が期待され、京を重点的に利用できる「優先課題」に指定された。

 一般利用枠(30%)は公募により62件採択。この枠の5%ずつが産業利用(25件)と、39歳以下の若手人材育成(8件)にあてられる。

 京調整高度化枠(15%)は、京のシステム調整などで理研が使う。成果創出・加速枠(5%)は、成果が見込まれる課題への追加配分用に確保されている。

〈京〉

 理化学研究所計算科学研究機構(神戸市)と富士通が共同開発したスーパーコンピューター。毎秒1京回(京は1兆の1万倍)以上の計算能力を持つ。開発費は1120億円。半年に1回発表されるスパコンの計算速度の世界ランキング「TOP500」で2011年、2回連続で首位に輝いたが、今年6月には2位に陥落した。

再生医療にスパコン「京」…臓器作製を迅速化

2012年09月24日 YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 世界最高レベルの計算能力を持ち、28日から本格稼働するスーパーコンピューター「京(けい)」(神戸市)活用の目玉として、様々な種類の細胞に変化できるES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(新型万能細胞)から臓器を作り出す研究を、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターなどが計画していることがわかった。

 最適な臓器作製の方法を見つけ出すのに、数か月〜数年かかっていたものが、京ならわずか数時間でできる。日本発の技術であるiPS細胞などによる再生医療の早期実現を図りたい考えだ。

 計画するのは、人のES細胞から眼球のもとになる「眼杯」を世界で初めて育てた同センターの笹井芳樹・グループディレクターら。眼杯を培養するには約半年かかるが、その手法を確立するまで約3年の試行錯誤を繰り返した。(2012年9月24日 読売新聞)

スパコン「京」利用、一般枠に製薬共同研究など

2012年09月05日 YOMIURI ONLINE(読売新聞)

画像 - 研究課題が決まったスーパーコンピューター「京」

 文部科学省と高度情報科学技術研究機構は3日、世界最高水準の計算能力を持つスーパーコンピューター「京(けい)」を利用する研究課題の採択結果を初めて発表した。

 京の全計算能力の30%を割り振る「一般利用枠」では、産業界から、塩野義製薬やエーザイなど製薬7社、IT企業2社が共同参加する創薬研究が選ばれた。製薬業界での企業間協力はまれだという。

 薬の候補になる物質が起こす化学反応を京で計算し、実際にその物質を使った実験結果と照らし合わせて、「コンピューター創薬」の信頼性を確かめる。創薬にかかる時間やコストの大幅な削減が狙い。

 研究課題の選定は同機構が行い、一般枠は応募した227件から医療や材料化学など62件を採択した。

 一方、京の能力の50%を割り当てる「戦略5分野」では31件を採択。このうち東京大の心疾患研究や、国立天文台の超新星爆発の研究など7件が「優先課題」に選ばれた。

 神戸市の理化学研究所で稼働する京は毎秒1京回(京は1兆の1万倍)以上という世界最高水準の計算能力を持ち、多分野で精密な模擬実験が可能になる。(2012年9月5日 読売新聞)


富士通、次世代スパコン輸出へ…世界市場再参入

2010年12月26日03時04分 読売新聞

 富士通が2011年度から、約10年ぶりに最先端スーパーコンピューターの輸出を再開することが25日、わかった。

 現在世界で最速のスパコンよりも5〜6倍も演算速度が速い次世代スパコンで、海外からの評価も高いためだ。日本のスパコンは、00年代前半までは米国などを脅かす存在だったが、開発競争に敗れて輸出市場から事実上撤退していた。輸出再開が日本のスパコンが復権する足がかりになることが期待される。

 富士通が輸出するのは、独立行政法人・理化学研究所と共同開発中の次世代スパコン「京」の同型機だ。800台以上の小型コンピューターを組み合わせ、毎秒1京回(1兆の1万倍)の計算ができる。一般的パソコンの約20万倍の性能で、演算速度は世界最速クラスのスパコンはもちろん、各国が開発中の次世代機の中でも最高水準という。日米欧など7か国・地域の国際共同による熱核融合実験炉(ITER)のフランスにある運営機構への輸出に向けた協議に入っている。

スパコンランクで計算違い 国立天文台が世界2位

2010年12月23日06時21分 asahi.com

グリーン500で世界2位になったスパコン「GRAPE−DR」=国立天文台提供

 スーパーコンピューターの省エネ性能を競う世界ランキング「グリーン500」で集計ミスがあり、修正の結果、国立天文台の「GRAPE―DR」が世界2位になった。電力1ワット当たりの計算速度は毎秒14億4800万回で、1位の米IBM社(開発中)の16億回に迫る速さ。

 主催者は、11月の発表で2位とした東京工業大の「ツバメ2.0」の順位は動かさず、GRAPEを「2位+」としてその上位に入れた。

 今秋のランキングは、この3機の三つどもえと見られていたが、GRAPEが集計から落ちていた。再集計を求めた国立天文台に主催者は「データ集計にミスがあった」と回答した。(東山正宜)

スパコン省エネ順位、東工大の「ツバメ」が世界2位

2010年11月19日15時0分 asahi.com

 スーパーコンピューターの省エネ性能を競う世界ランキングが18日に発表され、東京工業大の「ツバメ2.0」が2位、理化学研究所が神戸に建設している「京(けい)」が4位になった。1位は米IBMが開発中の「ブルージーンQ」、3位は米国立スーパーコンピューター応用研究所の試験機。すでに運用されているスパコンとしてはツバメが世界一だった。

 ランキングは「グリーン500」で消費電力当たりの計算速度を競う。1ワット当たりの計算速度は、ブルージーンが毎秒16億8400万回、ツバメが9億5800万回。ツバメは、計算速度を競う世界ランキング「TOP500」では4位だった。京は現在、全体の0.5%しかできていないが、高性能が示された。

 スパコンは、消費電力の問題で大型化が限界に近づいている。ブルージーンやツバメは従来の演算装置だけに頼らない新世代のスパコンだ。

 グリーン500は、TOP500に入った500台で競う。TOP500に入っていないスパコンも参加できる「リトルグリーン500」では今年6月、日本の国立天文台の「GRAPE―DR」が世界一になっていた。(東山正宜、ニューオーリンズ=小宮山亮磨)

スパコン 中国1位、日本4位…性能ランキング

2010年11月15日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ワシントン=山田哲朗】スーパーコンピューターの性能ランキングを半年ごとにまとめている国際プロジェクト「TOP500」は14日、最新のリストを発表した。

 中国の国防科学技術大が開発した天津スパコンセンターの「天河1A」が1位を獲得し、中国のスパコンが初めて首位となった。

 「天河」の計算能力は1秒当たり2566兆回。前回6月にトップだった米オークリッジ国立研究所の「ジャガー」は2位に下がった。3位にも中国の深センスパコンセンターの「星雲」が入るなど、中国は500位までに計41台が入り、米国(275台)に次ぐ第2のスパコン大国となった。

 一方、日本は東京工業大の「TSUBAME2・0」が4位に食い込むなど計26台が入り、国別ではフランス、ドイツと並んで3位だった。日本勢は2002年にNEC製「地球シミュレータ」で首位を奪ったが、04年以降は米国が盛り返し首位を守ってきた。

中国製が世界最速、スパコン「TOP500」に42機

2010.11.15 18:09 MSN産経新聞

 【ニューヨーク=松尾理也】米国のマンハイム大学などの研究者らによって、毎年2回発表されるスーパーコンピューター世界最速ランキング「TOP500」の最新調査結果が14日、発表され、中国が開発した「天河1号」が初めて首位に立った。同ランキングで、米国以外の国がトップを奪ったのは日本に続き2カ国目。中国はトップ500に42機を送り込み、前回(6月発表)の24機から急増した。スパコン世界一を中国に奪われた米国では、首位奪還を促す世論が高まっている。

 天河1号は毎秒2570兆回の演算処理速度を達成。米オークリッジ国立研究所のスパコン「ジャガー」を抜いて世界一の座に就いた。

 3位も中国製が占め、4位には東京工業大のスパコン「TSUBAME(つばめ)2・0」が入った。

 500位以内にランクインした数をみると、米国は依然、スパコン大国の座を堅持しているものの、前回の282機から275機に減少。欧州勢も144機から124機に減った。

 一方、中国の躍進ぶりには及ばないものの、日本も18機から26機に数を増やし健闘した。

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は、2002年に日本製スパコン「地球シミュレータ」に首位を奪われた後、米国が国策として開発に力を入れ、トップを奪い返した経緯に触れながら、「技術がさらに高度化する一方で、財政難に見舞われている米国の首位奪還は、前回より格段に困難だろう」との見通しを示している。

中国スパコン 初めて世界一に

2010年11月01日 読売新聞 Yomiuri On-Line

最速、1秒に2507兆回計算

 【ワシントン=山田哲朗】世界のスーパーコンピューターの性能を競うランキングで、中国が初めて1位を獲得する見通しとなった。米紙ニューヨーク・タイムズなどが報じた。来月正式発表される。

 このスパコンは、中国の国防科学技術大が開発した「天河1A」。1秒当たり2507兆回の計算能力を誇る。現在トップの米オークリッジ国立研究所のスパコン「ジャガー」の1・4倍の速度となる。

 ランキングは米国の大学などが調べ、半年ごとに発表している。日本が2002年にNEC製「地球シミュレータ」で首位を奪い、衝撃を受けた米国はスパコン投資を増強。04年以降は首位を守ってきた。

 日本勢では現在、日本原子力研究開発機構のスパコンの22位が最高。

 昨年の事業仕分けでは、次世代スパコンの開発が削減対象になり、仕分け人だった蓮舫行政刷新相の「2位じゃだめなんですか」の発言に、科学界が猛反発した。

中国スパコン「天河1号」が米国抜き世界一に 演算速度は毎秒2507兆回

2010.10.29 07:48 MSN産経新聞

 新華社電によると、中国の国防科学技術大が開発したスーパーコンピューター「天河1号」が28日、中国の最新ランキングで計算速度が中国最速と認定された。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、天河1号は来月発表される世界ランキングで、米国のスパコンを抜いて世界最速になる見込みという。

 天河1号は、米半導体大手インテルなどの演算処理装置を搭載し、演算速度が毎秒2507兆回に達している。スパコンの分野でも中国の存在感が増しそうだ。(共同)

米国、「中国スパコン世界一」に警戒論噴出

2010.10.29 18:14 MSN産経新聞

 【ニューヨーク=松尾理也】ニューヨーク・タイムズなど複数の米有力紙は28日、中国のスーパーコンピューター「天河1号」が、来月発表される世界ランキングで、米国のスパコンを抜き世界最速と認定されるとの見通しを伝えている。同時に、「米国の競争力と安全保障を脅かしかねない」と警鐘を鳴らし、国家を挙げて対応する必要性を強調した。

 ニューヨーク・タイムズ紙は「世界最速のスパコンを作る競争は、国家の誇りの源ともなってきた」としたうえで、中国は2000年前後から、着実に順位を上げてきた、と指摘。「超高性能コンピューターの分野での米国の優越が失われようとしていることに、危機感をもたなくてはならない」とするバージニア工科大教授の談話を伝えた。

 ウォールストリート・ジャーナル紙は「明らかに先端技術市場の流れを変えるできごとだ」とし、「経済的競争力が西洋から東洋へ移動していることを示すものだ」との専門家のコメントを紹介した。

 両紙とも触れているのが、02年にNECなどが開発した国産スパコン「地球シミュレータ」が、米国製以外で初めて世界最速の座を獲得した経緯だ。衝撃を受けた米政府は直ちに開発チームを組み、潤沢な国家予算をつぎ込んで04年に世界一を奪還した。

 地球シミュレータがほとんど国産のハードウエアから成り立っていたのに対し、天河1号は米インテルなどから調達したプロセッサを使用しているという。だが、多数のプロセッサを結合し高速で動作させる技術は中国独自のもので、そのレベルは極めて高いとみられる。

 「日本のシステム(地球シミュレータ)が単独のプロジェクトだったのに対し、天河1号は、軍事と商業の両面で支配的地位を築こうという長期的な中国の国家戦略の一環。その意味で、天河1号は地球シミュレータよりはるかに重大な意味をもっている」。米エネルギー省の研究機関ローレンス・バークリー国立研究所のホースト・サイモン副所長は、ウォールストリート・ジャーナル紙にこう述べている。

 ニューヨーク・タイムズ紙は「スパコン世界一をめぐる競争は未来の繁栄の土台とさえいえる」と重要性を強調。「中国はスパコン開発を極めて重視し、努力を続けてきた」と国家戦略である点を指摘している。

NECと日本HP、スパコン事業で提携

2010年10月07日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 NECと日本ヒューレット・パッカード(HP)は6日、スーパーコンピューター事業で提携すると発表した。

 NECがシステム構築や販売を、日本HPがサーバーの製造を担当する。画像処理装置(GPU)を大量につなぎ合わせることで、世界最高レベルの計算速度を持つスパコンを販売する。

理研、次世代スパコンを初公開 神戸で記念式典

2010年10月01日 中国新聞ニュ−ス

 計算科学研究機構の設立記念式典であいさつする理研の野依良治理事長=1日午前、神戸市中央区

 理化学研究所は1日、次世代スーパーコンピューター「京(けい)」の研究拠点となる計算科学研究機構の設立記念式典を神戸市内で開いた。スパコンを構成する約800台のコンピューターのうち8台を初めて公開。全体は2012年秋をめどに企業や研究機関への供用開始を目指す。

 初公開されたスパコンは、1台が高さ約2メートル。約800台が並ぶ予定の縦約60メートル、横約50メートルの柱のない空間の隅に8台が置かれた。

 京は1秒で1京回(1兆の1万倍)の計算ができる世界最高水準を目指すスパコンで、気候変動の予測などへの貢献が期待されている。

 昨年の行政刷新会議の事業仕分けで事実上の計画凍結判定を受けた際、ノーベル賞学者らが強く反発して注目を集めた。文部科学省の主導で理研と富士通が共同開発。理研によると、開発には全体で約1120億円かかる見込み。

2番じゃダメ…これが次世代スパコン「京」 計算科学研究機構が式典

2010.10.01 11:46 MSN産経新聞

公開されたスーパーコンピューター「京」=1日午前、神戸市中央区

 富士通と理化学研究所が共同開発していた次世代スーパーコンピューター「京速コンピューター『京』」の搬入が進む計算科学研究機構(神戸市中央区)で1日、機構の設立記念式典が開かれ、理研の野依良治理事長が「スパコンは日本の産業基盤整備に不可欠」とあいさつした。

 「京」は、政府の行政刷新会議による事業仕分けでいったん「事実上の凍結」となったものの“復活”し、予算がつけられることになった次世代スパコン。超高性能中央演算処理装置(CPU)を搭載したコンピューター800台以上をつなぎ、1秒間に1京回(1兆の1万倍)の計算速度を目指す。9月29日からコンピューターの搬入が始まっており、現在は計算機棟に8台が設置されている。今後、約2年間かけて800台以上を搬入。平成24年秋に運用開始する。

 地内にはスパコンが搬入される計算機棟のほか、12団体の研究チームが入居予定の研究棟などもあり、今秋から1チームが入居して研究を開始するという。

「世界最速」も米中の追い上げ急 次世代スパコン競争激烈

2010.09.28 22:47 MSN産経新聞

 富士通が理化学研究所と共同開発している次世代スーパーコンピューター「京(けい)」で使用するサーバーの製造作業=28日、石川県かほく市の富士通ITプロダクツ

  政府の行政刷新会議による事業仕分けで「2位じゃ駄目なんでしょうか」と皮肉られ、物議を醸した次世代スーパーコンピューター「京(けい)」の一部が完成し、石川県かほく市にある富士通グループの工場から28日、初出荷された。来秋の稼働時には計算速度で世界トップとなる見込みだが、その座は堅牢ではない。スパコン全体では優位に立つ米国勢を中国が追い上げる構図となっており、日本は遅れをとっている。国家の威信にもかかわるスパコン開発のあり方は、いまだ不透明だ。

  出荷が始まったのは、富士通と独立行政法人の理化学研究所が共同開発しているスパコンを構成するサーバー。神戸市の理研施設内に計800台超を設置してつなぎ、稼働時に「世界トップの性能」(富士通の佐相秀幸副社長)を目指す。計算速度は、現在の最速機種の5倍超に当たる1秒間に1京回(1京は1兆の1万倍)の実現を目標に掲げている。

  現・行政刷新担当相の蓮舫氏が事業仕分けで「世界一になる理由は何があるんでしょうか?」などと詰め寄り、事実上凍結の判定を受けたものの、後に予算が認められた経緯がある。費用は施設なども含め1千億円程度が見込まれている。

  次世代スパコンはゲリラ豪雨のように短時間で変化する気象状況の予測や、最先端となる半導体材料や安価なバイオ燃料の開発など幅広い分野で活用される計画で、理研は「日本の科学技術や産業の底上げにつながる」としている。

 もっとも、5月末に発表された最新のスパコン性能ランキングでは、日本勢の影は薄い。トップ10のうち8機種を米国勢が占める中、中国勢の躍進が目覚ましい。専業メーカー「曙光」のスパコンが初登場で2位に付けたほか、7位にも中国製品が入った。

 日本勢は3月に富士通が日本原子力研究開発機構に納めた機種の22位が最上位で、NECが海洋研究開発機構に納めた「地球シミュレータ」の37位が続く。中国は高性能スパコンの開発を国家戦略と位置づけ、相当額の予算を割いているとみられ、佐相副社長は「今後も性能向上を図るのは間違いなく、動向を注視している」と危機感を強める。

 スパコンは「優劣は国力そのもの」(大手電機メーカー幹部)とされ、ミサイルの軌道解析など軍事分野でも欠かせない。野村総合研究所の池沢直樹チーフインダストリースペシャリストは「日本ではスパコンの必要性が社会的に認知されていないことが最大の問題。国やメーカーは開発意義を周知する努力が欠かせない」と指摘している。

次世代スパコン「京」初出荷 事業仕分けで話題に

2010/09/28 神戸新聞News

 初出荷の次世代スーパーコンピューター「京」を積んで製造工場を出発するトラック=28日午後、石川県かほく市

 富士通と理化学研究所が共同開発していた次世代スーパーコンピューター「京」の初出荷セレモニーが28日、石川県かほく市の富士通系列の製造工場で開かれた。

 「京」は文部科学省が開発を主導し、世界トップクラスを目指している次世代スパコン。昨年の行政刷新会議の事業仕分けで、蓮舫参院議員が「世界一でなければならない理由は何なのか。2位ではだめなのか」と指摘、事実上の計画凍結判定を受けた。しかし完成時期を先延ばしするなどして予算を減額、開発継続が認められた。

 「京」は、超高性能中央演算処理装置(CPU)を搭載したコンピューター800台以上をつないだネットワークから構成され、1秒間に1京回(1兆の1万倍)の計算速度を目指す。

 セレモニーには、かほく市の小学生12人も参加。全員でくす玉を割ると、「めざせ!世界一」の垂れ幕が現れた。その後、梱包された冷蔵庫1個程度の大きさのコンピューター計8台がトラックに積み込まれ出荷した。

 10月1日に神戸市中央区の人工島ポートアイランドにある理研の計算機棟に納入される。今後は毎週8台ずつ出荷し、2012年秋までに計算機棟に800台以上を設置、供用開始するという。

京大基礎物理研に西日本最速スパコン導入へ印刷用画面を開く

2010年09月08日 京都新聞

 京都大基礎物理学研究所(京都市左京区)は8日、最新鋭のスーパーコンピューターシステムを同研究所に導入し、来年1月に運用を始めると発表した。開始時で西日本最速になるという。

 日立製作所の大型コンピューター108台で構成する並列システムで、理論値で演算(浮動小数点演算)を1秒間に90・3兆回(TFLOPS)できる。現在の日本最速は、日本原子力研究開発機構(茨城県)の200TFLOPS。

 原子や分子、素粒子の挙動計算をはじめ、宇宙、物性など基礎物理学におけるさまざまな数値計算に活用する。神戸市で2012年に稼働予定の次世代スーパーコンピューターとの連携も図る。費用は5年間で約7億円。

 運用に携わる長瀧重博准教授(宇宙物理学)は「遠隔地から複数の計算を同時にできるので、若い研究者も使えるオープンな運用をしたい」と話している。

毎秒“1兆の1万倍”次世代スパコン「京」 理研

2010.07.06 MSN産経新聞

愛称が「京」に決まったスーパーコンピューターが入る施設=神戸市中央区

 神戸市中央区、ポートアイランドで開発が進む次世代スーパーコンピューターのシステムに親しみを持ってもらおうと、開発元の理化学研究所(理研)が公募していた愛称が5日、「京(けい)」に決まり、理研が発表した。開発目標性能とする、計算速度毎秒1京回(1兆の1万倍)にちなんでいる。

 理研は4月〜5月にかけて愛称を公募。全国から寄せられた約2千件の案の中から、兵庫県の仲西孝弘さんら7人の案が選ばれた。

 開発目標性能の単位「京」に由来しており、「大きな門」という意味も持つ「京」という漢字から「計算科学の新たな門になってほしい」という願いが込められているという。また、英語表記した際に「K computer」となることから、外国人も発音しやすい▽漢字1文字とシンプルでわかりやすく、ロゴデザインもしやすい−などの点も考慮された。

 理研は「今後は京速コンピューター『京』と呼び、多くの人になじみのあるコンピューターになってほしい」としており、イメージに合うロゴマークを作成するなど、浸透を図っていくという。

現在の「日本最速」より12倍速いスパコン 東工大が導入

2010.06.17 MSN産経新聞

 東京工業大は16日、運用開始時点では国内最高性能となるスーパーコンピューター「TSUBAME2・0」を、11月に本格稼働させると発表した。1秒間に約2400兆回の演算が可能で、日本原子力研究開発機構が運用する現在の国内最高性能スパコンに比べ、処理速度は約12倍という。

 行政刷新会議の事業仕分けでいったんは事実上凍結の判定を受け、その後予算が認められた理化学研究所の次世代スパコンが平成24年に運用開始されると、国内最速の座を明け渡すことになる。

 東工大によると、TSUBAME2・0は演算処理装置としてGPU(画像処理用の集積回路)を約4200個搭載。大学構内の約200平方メートルのスペースに設置される。11月に本格運用がスタートする。

 スパコン本体やソフトウエアの費用は約32億円。このほか年間の電気代が約1億円、保守管理費が数千万円かかる。同大の学生や研究室のほか、外部の企業や研究機関にも開放する予定。

スパコン向けMPU開発 米インテル、1秒で数兆回の演算

2010.06.01 MSN産経新聞

 米インテルは5月31日、スーパーコンピューター向けの超小型演算処理装置(MPU)「ナイツ・コーナー」の開発を進めていると発表した。1秒間に数兆回に達する演算処理が可能という。

 世界の最先端のスパコンは現在、パソコン向けのMPUなどを数千個組み合わせることで、超高速の演算処理を可能としているが、インテルは専用MPUで飛躍的な性能向上を目指す。

 これまでのMPUは演算を行う「コア」を1個から複数個持っていたが、インテルはこれを50個以上とする。回路線幅を22ナノメートルとした次世代の半導体製造技術を活用し、集積度を向上させた。(共同)

完成しても「世界一」逃す 次世代スパコン、事業仕分けで出遅れ

2010.02.03 MSN産経新聞

次世代スパコン開発に向け、富士通がつくった試作機(富士通提供)

 政府の行政刷新会議による事業仕分けでいったん「事実上の凍結」とされながら、“復活”して予算がつけられることになった理化学研究所(埼玉県)の次世代スーパーコンピューター施設(神戸市中央区)の本格稼働が、予算削減騒動の影響で約半年遅れ、その間に米国のスパコンが完成するために「世界一」を逃す見通しであることが3日、関係者の話で分かった。

 事業仕分けの際、参加した国会議員の「世界一になる理由は何でしょうか」という質問がテレビなどで流れ、大きな騒動になったが、結局「世界一の処理速度を実現するのは難しい」(同研究所)形に終わりそうだ。

 同研究所によると、事業仕分けの影響を受けるのはシステム開発部門。現在米国にある世界最速コンピューターより50倍速い毎秒1京(1兆の1万倍)回の演算を行うシステムを開発し、世界最速の奪還を目指していたが、事業仕分けで40億円の予算削減が決定。このためハードウエアの導入時期が予定していた平成23年11月から半年遅れの24年6月になる。この間に、日本のスパコンの性能をしのぐ米国製が完成してしまう可能性が高いという。

次世代スパコン、富士通1社と共同開発 文科省が正式発表

2009年07月17日 NIKKEI NeT

 文部科学省は17日、官民共同で実施している次世代スーパーコンピューターの開発計画について、富士通1社と進めると発表した。NECと日立製作所が5月に撤退を表明したため計画を見直し、富士通だけとの共同開発が可能かを検討してきた同省の専門委員会が同日、了承した。

 世界最速の10ペタ(ペタは千兆)フロップス(1秒当たりの浮動小数点演算の回数)の計算性能を狙う目標は変更しない。2010年度末に一部稼働させ、当初予定の12年に完成させる計画だ。

 政府は次世代スパコン開発に計1150億円を投じる計画で、民間から3社が参加。NECと日立が専用MPU(超小型演算処理装置)を使い気候変動予測などに強い「ベクトル型」、富士通が汎用MPUを大量に並べ遺伝子解析などに向く「スカラー型」をそれぞれ理化学研究所と開発して組み合わせる予定だった。専門委員会は「スカラー型単独でも世界最速の性能が出せる」とした。

理化学研究所の次世代スパコン開発計画、NECの撤退表明で計画見直し

2009/05/15 Technoban

 理化学研究所は14日、文部科学省の支援の元で進めてきた次世代スーパーコンピューター開発の構成を見直すことを発表した。

 次世代スーパーコンピュータはる最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発を目指して富士通がスカラー演算ユニットを、NECがベクター演算ユニットの基本設計を担当することで開発が進められてきたものとなる。しかし、同日付けでNECが計画から離脱することを表明したことを受けて計画推進の大前提が崩れてしまったことが今回の発表につながった。

 理化学研究所では「今回のNECからの申入れを受け、評価過程で得た技術的な意見を踏まえながら、今後、速やかにシステム構成の見直しを行います」と述べているが、スーパーコンピューターの中核はNECが担当してきたベクター演算ユニットにあることもあり、計画の実現性が危ぶまれている。

 画像は600億円の費用が投じられて2002年に運用が開始されたNECが開発を担当した海洋研究開発機構の「地球シミュレータ」。運用開始当初は世界最高速を誇り、米国に「スプートニク・ショック」に匹敵する科学上の衝撃「コンピュートニク(Computonic)」を与えたとされている。

次世代スパコン:NEC、日立が開発から離脱 負担回避で

2009年05月14日 毎日JP

 NECは14日、文部科学省が進めている次世代スーパーコンピューター(スパコン)の共同開発計画から離脱すると発表した。NECの09年3月期連結決算は2966億円の最終(当期)赤字に陥っており、固定費削減などのリストラが急務となっている。今後は製造段階を迎えるスパコンの費用負担は同社だけで100億円を超える見通しで、継続を断念した。また、開発の民間側の主体であるNECの離脱に伴い、日立製作所も離脱する。

 次世代スパコンは1秒間に1京(1兆の1万倍)回の演算ができる世界最高性能を目指し、独立行政法人・理化学研究所の主導の国家基幹技術として06年から開発が始まった。NECは富士通、日立製作所とともに官民共同開発に参加。計画は設計・開発段階がほぼ終わり、製造段階に移りつつある。

 NECは経営立て直しが迫られる中、足元の収益回復につながらない事業の見直しを急いでおり、その一環としてスパコン製造からの離脱を決めた。ただし、スパコン事業自体は今後も続けるとし、製造には加わらないものの、開発段階の技術提供など可能な範囲で「計画への協力は継続していく」という。

 また、開発主体の理化学研究所は14日、スパコンのシステム構成を抜本的に見直すことを明らかにした。設計最終段階での大幅な計画見直しにより施設建設や応用ソフトの開発もいったんストップすることになるが、富士通が担当している別方式の開発計画は進められており、理研は「当初計画通り、今年度中の試作開始、12年の完成を目指す」と言う。【高橋昌紀、西川拓】

NEC、スパコン撤退を正式発表

2009年05月14日 読売新聞Yomiuri On-Line

 NECは14日、政府主導の次世代スーパーコンピューター(スパコン)開発計画から事実上、撤退すると正式に発表した。

 業績の急激な悪化で、多大な開発費負担に耐えられなくなった。NECとともに参加していた日立製作所も撤退する。共同で開発にあたってきた独立行政法人の理化学研究所は同日、スパコンのシステム構成を一部見直した上で、予定通り2010年度の稼働を目指し、計画を進める方針を発表した。

NEC、次世代スパコン計画撤退…巨額の開発費削減

2009年05月14日 読売新聞Yomiuri On-Line

 NECは13日、政府主導の次世代スーパーコンピューター(スパコン)開発計画から、事実上、撤退する方針を明らかにした。

 巨額の開発費負担を削減するためで、週内にも発表する。ただ、最先端の開発から手を引くことで、スパコン事業全体の展開に大きな影響を及ぼすのは必至とみられ、将来的には事業の大幅縮小や完全撤退につながる可能性がある。

 政府は約1150億円を投じ、毎秒1京(1兆の1万倍)回という世界最速の計算速度を持つ次世代機を開発する計画だ。独立行政法人・理化学研究所とNEC、富士通、日立製作所が官民共同で開発、2010年度末の稼働を目指している。

 計画は現在、設計・開発にめどがつき、製造段階に移りつつある。製造段階では、NECの費用負担が100億円を超える見込みとなっていた。NECは、景気の悪化で業績が落ち込む中、短期の利益に結びつきにくい事業を縮小する必要に迫られていた。

 スパコンは各国政府が威信をかけて開発競争にしのぎを削っている。日本政府は「技術立国・日本」を世界に示す象徴的な事業と位置づけており、NECの離脱後も計画を進める方針だ。

 NECのスパコンは、1990年代後半に日米通商摩擦の象徴的な存在となるほどの国際競争力を持っていた。海洋研究開発機構が保有する同社製スパコン「地球シミュレータ」は02〜04年の間、世界最速の座を保ち、地球温暖化の予測などに威力を発揮した。

富士通、世界最速CPU開発…10年ぶりトップ奪還

2009年05月13日 読売新聞Yomiuri On-Line

世界最速CPUのチップが敷き詰められた基板

 富士通は13日、1秒間に1280億回もの計算ができる世界最速の中央演算処理装置(CPU)の開発に成功したことを明らかにした。

 CPU開発は世界最大手の米インテルや米IBMが先行しており、日本メーカーが世界最速を達成するのはやはり富士通がトップとなった1999年以来10年ぶりという。

 新型CPU「ビーナス」は微細化技術によって約2センチ角のチップ上に集積する中枢回路の数を従来の4個から8個に増やすことで高速化を実現した。計算速度は現行の最速モデルであるインテル製の約2・5倍。設計の工夫で消費電力も3分の1に抑え、省エネ性能も高めた。

 使い道は、2010年度末の稼働を目指す理化学研究所の次世代スーパーコンピューターが有力だ。心臓部に数万個が搭載され、新薬開発や地震予知、ロケットエンジンの設計などに威力を発揮すると見られる。一方、パソコンやデジタル家電などへの応用が実現すれば、携帯型の同時通訳装置や自動車の自動運転装置などの開発につながる可能性もあるという。

CPU

 入力されたデータを演算・加工して出力するコンピューターの中枢部分。「Central Processing Unit」(中央演算処理装置)の略。1回の命令で同時処理できるデータ量や1秒間に実行できる命令の回数などが多いほど性能が高い。

スパコン性能2倍に向上 地球シミュレータ更新へ

2008年05月12日 中国新聞ニュ−ス

 海洋研究開発機構は12日、地球温暖化など複雑な自然現象のシミュレーションに利用しているスーパーコンピューター「地球シミュレータ」を、現在の約2倍の計算性能を持つ新型システムに更新すると発表した。10月から作業を開始し、来年3月に稼働させる。

 同日、新システムの一般競争入札を実施し、NECが約190億円(税抜き)で落札した。更新後の性能は、現在のスパコンの世界ランクで5位に相当するという。

 海洋機構によると、現システムが2002年の運用開始から6年を経過し、老朽化したための措置。新システムは、最高で1秒間に131兆回の計算ができる。機器の小型化で必要なスペースは半分となり、電気代も2−3割削減できる見込み。より精密な気候のシミュレーションなどが可能になる。

スパコン漫遊日記 次世代スーパーコンピュータは国家機密 ?

2008/03/28 CNET japan

 本ブログでは昨年7月から文科省の次世代スーパーコンピュータ・プロジェクトの問題点を指摘してきた。そしてこの間に日本のスパコンに関連する2つの大きなニュースがあった。一つは地球シミュレータの停止と後継機選定のニュース、他は筑波大、東大、京大によるT2Kというオープン・スパコン仕様に基づく国際調達のニュースである。

 筆者は本ブログ開始時点から次世代スパコン設計に関連し、地球シミュレータの問題点を指摘してきたが、昨年11月の運用停止に関するNHKニュースの威力は絶大で、多くの人々がその問題点を認識されたことと思う。同時に筆者が声を大にして指摘してきたのが内外価格差の問題で、この問題もT2Kの落札公示により、現実の問題として認識されるに到っていると思う。

 一方、昨年末から今年初にかけ、次世代スパコンの成否を占う国産の新型機が発表された。NECのSX-9と富士通のFX1(SPARC64-VII)である。どちらもラック単位の性能や消費電力においてT2K仕様のオープン・スパコンに劣っていることが判明した。次世代スパコンの目標を達成するためには、どちらも、現在の8倍程度の性能向上では達成は難しく、16-32倍程度の向上が必要と推定される。価格的にもSX-9は、スパコンのパソコン化の流れの中で、旧メインフレームのトレンド上にあるのではないかと思うほど高額であり、FX1もSX-9ほどではないにしろ、T2K仕様の国際調達に比べ2-3倍であることも判明した。

 昨今の米国でのスパコン動向を眺めていると、低価格で量販を志向した「スパコンのパソコン化」が急速に進んでいるように思え、この「スパコンのパソコン化」に対応出来ない企業は完璧にマーケットから振るい落とされてしまうであろうことも見えてきたように思う。

 こうした新事実・状況が積み重なって行く中で、次世代スパコン・プロジェクトの規模は、開発費の1154億に留まらず、運営費年80億で6年間で480億、全国の主要機関への下方展開1000億、の合計で約2,600億円程度と考えられ、この巨額税金の使途である「次世代スパコンがどうなるのか」ということに関しては、改めて再検討する必要があると思う。

<次世代スパコンの問題点>

 税金納税者から見た文科省の次世代スパコン・プロジェクトの今時点での最大の問題は、

@文科省が情報を非公開とし秘匿していることで、納税者に対する説明責任を忌避している点である。

 この問題は次世代スパコンの本質的問題ではないが、納税者が税金支出の是非を判断するための情報をすら隠蔽秘匿するという姑息な手段をとっているわけで、極めて問題と考えているのである。

 次世代スパコンの概要は2006年3月のCSTP(総合科学技術政策会議)で、ベクタ機0.5Pflops、スカラ機1.0Pflops、専用機20.0Pflopsとし、Linpack実行10Pflopsは専用機で達成するとしていたが、2007年9月のCSTPでは、システム構成が変更され、専用機が削除された案が報告され、当初計画には無かったベクタ機かスカラ機、あるいは「2つを合わせた単体イメージ」、のどれかでLinpack実行10Pflopsを達成しなければならなくなった点である。

 専用機の削除は、専用機やFPUアクセラレータなどではLinpack以外の数値目標のHPCC主要4項目のうち、FFT(高速フーリエ変換)演算やSTREAM(データ移動)、メモリのランダム・アクセスに全く貢献できないことや、HPL(Linpack)に関しても性能目標達成に極めて疑問の多い代物であることなどから、妥当な決定であったことは確かであるが、削除後の案には、ベクター機が何Pflopsを目標とし、スカラ機が何Pflopsを目標とするか、という最重要な数値目標や変更後の消費電力や設置面積などが全く記述されていないという不可解な案となっており、目標達成に多大な疑義を惹起させるものなのである。

 つまり、次世代スパコン・システムの技術的な基本問題は、

A ベクタ機、スカラ機のそれぞれの性能目標の明確化と、その目標の達成可能性という極めて初歩的な問題であり、最近発表されたSX-9やFX1といった国産機の性能から予測すると目標達成には多大な疑問が残るからである。

 そして2007年の変更後の情報は公開されていないため、2006年3月の公開資料を基に問題点を付け加えるなら、以下のような「システム完成後の取り扱い」の問題が浮かびあがってくるのである。

B 運営経費が毎年80億円と巨額なこと

C 下方展開と称して、全国15の主要機関に2011年以降に縮小版を設置するとしているのであるが、そのTflops単価は2500万円で、既に現在のT2Kスパコンの輸入単価より高くなっており、3-4年後を予測すると全く競争力のない価格想定になっていること

等である。

 要するに、文科省は@で情報を遮断することで、ABCといった問題点を封印したとしか思えないのである。

<次世代スパコンは国家機密なのか?>

 一部の方は先刻ご承知のことと思うが、実は、文科省の次世代スパコン・プロジェクトは昨年(2007年)3月12日に「秘密」に指定されているのである。

前述のとおり、次世代スパコンは2006年3月のCSTPを経て閣議決定され、2007年6月に文科省の評価委員会が「概念設計評価報告書」を公表し、CSTPの評価専門調査会での検討を経て、9月の「総合科学技術会議(第69回)(持ち回り開催)」で「総合科学技術会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用について(案)」として付帯条件付きで承認され、本格的開発が開始されたものである。

 この「概念設計評価報告」は、当時から、隔靴掻痒、内容のないものとして識者の間では不満の声が多かったものであり、また、CSTPの評価専門調査会が発した多数の質問事項に対する回答も国民には公開されることが無かったのである。

 というのは、文科省は、同年3月には既に、次世代スパコン・プロジェクトを「秘密」に指定しており、はなから、開発費1154億円、運営費年80億円で6年総額480億円、下方展開のリース料金年額260億円で買取換算1000億円程度、の合計約2,600億円にも及ぶ税金支出の説明責任を果たす気は無かったからである。

 筆者は文科省の文書管理規定がどのようなもので、どのような秘密レベルがあって、次世代スパコンはその中のどのレベルの秘密なのか知らないが、具体的指定は以下のようになっている。

・情報科学技術委員会 次世代スーパーコンピュータ概念設計評価作業部会(第1回)

(A)次世代スーパーコンピュータ概念設計評価作業部会における秘密情報の取扱い及び会議の公開・非公開について(案) 

(B)秘密情報の取り扱いについて(案)

 詳細は、上記リンク先を参照いただくとして、骨子は以下のようなものであろう。

     *===*===*===*

(1) 科学技術・学術審議会の委員、臨時委員、専門委員の守秘義務

 これに反し秘密を漏らした場合は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金刑が課される(国家公務員法第百九条)。

(2) 理研により提示される秘密情報

理研は、次世代スーパーコンピュータのシステム構成案を検討するに当たり、日本電気株式会社・株式会社日立製作所によるグループ及び富士通株式会社に対し、システムの概念設計に関する業務委託を行っている。当該業務委託に関して理研とそれらの委託先企業との間に締結された契約では、当該業務に係る秘密を保持することとしている。

 本作業部会は、理研が概念設計の結果作成するシステム構成案の評価を行う際に、理研から秘密情報を含む技術情報の提示を求める見込みである。理研は、委託先企業との契約に基づき、本作業部会において秘密保持に必要な措置が講じられることを条件として、その求めに応じて必要な情報の提示を行うこととする。

(3) 我が国の国家的な目標と長期戦略を実現するための機密

 次世代スーパーコンピュータは、科学技術創造立国を国是とする我が国の基盤を支えるものとして、国家的な目標を掲げて取り組む「国家基幹技術」の位置づけにおいて開発するものである。このため、国家的な目標の実現に係る具体的な開発戦略や機密とされる技術情報が明らかとなることで我が国の科学技術の発展を損ね、ひいては国益に反することのないよう、情報については、我が国における科学技術の振興の観点から機密として扱う必要がある。

    *===*===*===*

 細かくいうと、企業側秘密には、本プロジェクト受注以前から保持していた固有の秘密と、受注作業過程で発生した秘密があり、前者は企業側に属することは明らかであるが、後者は特許申請を含めて企業側のみが勝手に指定できるのか、あるいは、発注側(国側)が権利を留保しているのか、等々の論議は必要であろう。また、国の政策として技術情報を機密に指定し囲い込んでおいて、どの様にして我が国における公平な科学技術振興を推進することができるのか、という点に関しても大変興味がある。

 しかし、とにかく、次世代スパコン・プロジェクトには、受注側の秘密と、国家的目標や国家戦略上の機密(国家機密)があり、漏洩した者は国家公務員法で訴追される、ということなのである。

 公務員法の罰則は怖い話で、この平成のお触れ書以後、文科省やCSTPを含めて公務員の関係者は全員貝になってしまって現在に至っているのである。

 ただし、受注側非公務員の機密漏洩に関してはどのような刑事罰規定が適用されるのかは不明であり、ザルのような気がしないではない。

<情報公開法>

 行政側の機密指定・情報秘匿に対し国民の権利を守る法律としては情報公開法がある。国民は行政に対し「知る権利」があり、この「知る権利」の観点から、次世代スパコンの機密指定で問題になるのは、特許等の詳細技術情報ではなく、国家機密とされる部分である。我が国には機密保持法の類は無い筈で、原則公開である。国家機密になり得るのは、情報公開法に例外事項として非公開の対象が定められているに過ぎない。その例外事項は、個人情報などのほかに、いわゆる外交、国防、公安などに関係した情報である。それらは常識的にも「国家機密」であろうと思える範囲のものであるが、これらには含まれない「原則公開の科学技術政策」のなかのスパコンの性能目標、開発費、運用経費、下方展開経費などといったものが国家機密などとは常識的に考えられないのである。

 つまり、情報公開法の観点からは、文科省が「科学技術の振興のため」として「機密指定」を行うことは法的に有効なのかということであり、「機密指定」そのものに多大な疑義があり、法的な議論が必要ということになるのである。

 これらの法的議論は次世代スパコンに関する本質的議論とは思えないが、これがバリアとなって、多額の税金支出に関する本質的議論が行えなくなっていのであるから、ぜひとも行政法の専門の方々の、機密指定承認のプロセスをも含めた、有効・無効のご意見を伺いたいし、文科省の根拠や主張も聞いてみたいと思っている。

<機密の理由?>

 この機密指定に関しては、一部に「次世代スパコンの情報が漏れると、米国に対応策を打たれて、政策数値目標である2011年6月にTop500で第1位奪還が難しくなる」といった話がある。

 これはおかしな議論で、そもそも、科学技術といった分野で、こうした他国との順位競争を政策目標として導入していること自体がおかしいのであって、その目標の妥当性・合理性・インプリケーションなどは公開で議論されるべきであり、また、検証されるべきなのである。

 国家政策は国民のために遂行するのであり、国民への説明責任を忌避し、国民が巨額政策予算執行の是非を判断するための必要情報すら秘匿しなければ、政策目標が達成できないないなどということ自体が、国民のための政策として、奇奇怪怪、本末転倒といわざるを得ないのである。

 科学技術の政策目標に他国との直接的順位競争を取り込んで「世界一になるためには情報を秘匿することが必要である」などといわざるを得ない羽目に陥ってしまっていることが馬鹿げているということである。

 本当に科学技術政策として10Pflopsが必要であるのなら、政策数値目標としては「2011年6月までにLinpack実行10PflopsとHPCC主要4項目の性能目標XXXを実現する」ということだけで十分なのである。勿論、その結果として世界一になることは喜ばしい事ではあるが、そのために、情報を秘匿し、国民に対する説明責任を忌避しなければならないというのなら、それは本末転倒だといっているのである。世界で1番でなく2番であったとしても、本当に10Pflopsが日本の科学技術上の要請であるとするなら、科学技術政策上10Pflops達成だけで何の問題も無いことであり、国民に情報を開示し、オープンに、侃侃諤諤、議論したほうが遥かに政策としての意味があるであろう。

<転ばぬ先の杖>

 誤解を避けるため付言すると、筆者はスパコンの開発や設置に反対なわけではなく、むしろ、自分自身は促進派と考えているが、税金の使い方を問題にしている訳で、財政難の折、貴重な税金は本来の税金の価値どうりに有効に使用されるべきと考えているだけである。

 従って、筆者は民間企業の民間における企業活動を問題にしているわけではなく、あくまで、税金での開発や税金での調達での問題を提起しているわけで、税金による発注側、調達側の問題を指摘しているだけである。

 少なくとも、1000億円、2000億円といった巨額な税金が、どこかの銀行のように、ドブに捨てられるような事態を起さないためには、納税者も厳しく税金の使途を監視することが必要であろうと思っているからである。

 なお、筆者の誤解、思い違い、転記ミス、計算違い、あるいは不適切な表現等がございましたら、ぜひ、コメント欄にてご指摘いただけますと幸いです。

スパコン性能ランキング 米国勢トップ10独占

2007/11/15 FujiSankei Business i.

 ■IBM首位維持 日本勢16位最高

 米国ネバダ州で開かれている「国際スーパーコンピューティング学会」が12日(現地時間)に発表したスーパーコンピューター(スパコン)の世界ランキング「TOP500」によると、前回の発表(今年6月)に引き続き、トップ10すべてを米国勢が独占した。

 1位は米エネルギー省に設置されたIBM製「ブルージーンL」。2004年11月の発表でNEC製「地球シミュレータ」を抜いて以来、首位をキープしている。

 日本メーカー製は、100位までにNEC2機、日立製作所と富士通が1機ずつの合計4機がランクイン。NECがサンとAMDのハードウエアを使って製造した東京工業大学にある「TSUBAME」が16位。今回、富士通が九州大学情報基盤センターに納入したパソコンサーバーベースのシステム(79位)が初登場した。

 CPU(中央演算処理装置)でみても米国勢が圧倒的に優位で、日本メーカーがかかわるスパコンでも「地球シミュレータ」を除き、CPUはインテル、AMD、IBMとすべて米国製だ。

 また、トップ10のスパコン導入国では米国以外にドイツ、インド、スウェーデンがランクイン。100億円規模の高額なコンピューターは、各国とも政府系研究所しか導入できないのが現状だが、4位となったスパコンの所有者はインド・タタ財閥の基幹会社タタ・サンズ。同国政府系の科学研究所が新規導入したIBM製ブルージーン(58位)の性能を6倍超上回り、財力をみせつけた形だ。

印タタ、アジア最速のスパコン開発 世界4位

2007年11月14日 AFPBB News/ 発信地:バンガロール/インド 関連写真 1枚

【11月14日 AFP】インドの大手財閥タタグループ(Tata Group)と米コンピューター大手ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard、HP)は13日、アジア太平洋圏で最速のスーパーコンピューターを開発したと発表した。スーパーコンピューターは科学研究に役立てられるという。

「Eka(サンスクリット語で『1』)」と名付けられたこのスーパーコンピューターは、タタグループ傘下の電子計算研究所(Computational Research Laboratories、CRL)がHPの高性能ビルディング・ブロックを使用して開発。

 最高170兆回(秒)の浮動小数点演算が可能で、日本を含むアジア最速の計算性能を持ち、世界で4位。

 HPとCRLはインドのハイテク中心都市バンガロール(Bangalore)で、同スーパーコンピューターが世界のスーパーコンピューターの性能ランキング「Top500」に入ったことを明らかにした。

 このスーパーコンピューターには米半導体大手インテル(Intel)製の最速プロセッサが使われ、科学分野や産業分野の研究を「前人未踏の限界」まで押し進めるという。(c)AFP

NEC、世界最高速のスパコン「SX-9」発売へ

2007年10月26日 AFP BB News/ 発信地:東京

【10月26日 AFP】NECは25日、世界最高速のスーパーコンピューター「SX-9」を発売したと発表した。最大で839テラフロップス(1秒間に839兆回の浮動小数点演算性能)の演算処理能力があり、気象予報や宇宙開発など、先端研究分野での活用を想定している。

 NECによると、SXシリーズはこれまでに1000台以上の販売実績を達成している。シリーズ最新となるSX-9は、来月米ネバダ(Nevada)州リノ(Reno)で開催されるスパコンの展示会「SCO7(supercomputing2007)」に出展される予定だ。(c)AFP

「地球シミュレータ」部品交換で能力2倍に 海洋機構

2007年11月14日 asahi.com

 かつてスーパーコンピューター世界一に輝いた海洋研究開発機構のスパコン「地球シミュレータ」が来年度、演算装置などの心臓部を最新のものに置き換えることになった。計算能力を現在の1秒間に約40兆回から80兆〜100兆回に上げることを目指す。

 計画では概算要求中の来年度予算で維持費とは別に5億円を計上し、640台ある演算装置(計算ノード)の半数など主要部品をレンタルで更新する。残り半分はその時点で運用を終える。完成した02年以降の技術進歩で、半数の演算装置でも現在の2倍以上の計算速度が期待できる。電気代も現在の7〜8割程度になり、維持費は現在と同程度ですむという。

 性能向上で、従来同様、温暖化予測などに貢献できるとしている。

 02年〜04年に計算能力世界一だった地球シミュレータも、今月発表のランキングでは30位。国内でも東京工業大のTSUBAME(16位)を下回る。1秒間に100兆回の計算能力なら同ランキングで8位に当たる。文部科学省は世界一奪還に向けて、1秒間に1京(けい)回(1兆の1万倍)の計算能力を持つ次世代スパコンを神戸市に建設、10年度に稼働させる計画だ。

NECが最速スパコン IBM上回る 首位奪取へ

2007/10/26 FujiSankei Business i.

 NECは25日、気象予測など大規模データを超高速で計算するスーパーコンピューターで世界最高性能の新製品「SX−9」を発売した。前モデルに比べて1台当たり最大13倍高速化しつつ、消費電力を大幅に削減した。今後3年間で700システムの販売を見込み、世界シェアを現在の20%から50%超に引き上げ、首位奪取を目指したい考えだ。

 SX−9は、同社が新開発した102・4ギガ(1ギガは10億)フロップス(1秒当たりの浮動小数点演算性能)という世界最速のCPU(中央演算処理装置)を搭載。1台に16個のCPUを搭載することで演算性能は最大1・6テラ(1テラは1兆)フロップスとなり、従来モデル「SX−8」の13倍となる。

 最大で512台を連結して並列処理可能で、その場合の演算性能は839テラフロップスとなる。現在、実際に運用されている世界最速のスパコンは米IBMの「ブルージーン」で281テラフロップス。SX−9がフルシステムで運用した場合、ブルージーンのスピードを大幅に上回り、世界最速となる。

 また、設置面積と消費電力を従来の4分の1程度に抑えており、設置しやすく、運用コストの低減を図れる。

 スーパーコンピューターは、台風の進路などの気象予測やナノテクノロジー分野、環境シミュレーションなどに活用されている。SX−9を利用することで従来以上に素早く正確な予測が可能になるという。

 価格はCPUを4個搭載した最小構成モデルで1台当たり約1億5000万円。レンタルの場合は月額298万円となる。

【用語解説】FLOPS(フロップス)

 科学技術計算など誤差のある数値を扱うコンピューターでは、9800という整数は「9・8×10の3乗」という浮動小数点数に置き換えて計算する。この浮動小数点数の演算が1秒間に何回できるかを表す単位で、コンピューターの性能指標の一つ。従来は1秒間に実行できる命令数を単位としたMIPS(1秒当たり100万回)などが使用されていたが、最近は主にFLOPSが使われている。

日の丸スパコン、開発競争で劣勢 世界一奪回へ官民全力

2007/07/29 The Sankei Shimbun WEB-site

 3年前まで世界首位だったスーパーコンピューターの開発競争で、日本の劣勢が目立ってきた。調査団体による最新性能ランキングでは、NECの「地球シミュレータ」が20位に後退。日本勢は10位内から姿を消した。

 「新技術開発のインフラ」といわれるスパコンは生命科学や温暖化の解析など幅広く使われており、その開発は国家プロジェクトの色合いが濃い。劣勢を巻き返そうと、国とメーカーは次世代機の開発に乗り出したが、国産CPU(中央演算処理装置)の開発など、“日の丸スパコン”の世界一奪回は、越えるべきハードルが高い。

日本のスパコン性能ランキング、世界トップ10漏れ

2007年07月04日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 世界のスーパーコンピューターの最新性能ランキングで、日本メーカーが構築に携わった計算機が8年半ぶりにトップ10から漏れたことがわかった。

 国産が首位だった数年前とうって変わり、今回は上位10台を米国勢に独占された。

 学術研究や産業発展を支えるスパコンの開発には先端の技術力の結集が必要で、日本勢のトップ10陥落は、この分野での競争の激しさを物語っている。

 米テネシー大などの研究者は半年に1回、世界のスパコンの性能を調べて上位500台を公表している。日本勢のスパコンは1999年6月からこれまで、10位以内に入り続けてきた。独立行政法人海洋研究開発機構の「地球シミュレータ」(NEC製)は2002年6月から2年半にわたり1位に輝いた。

 先月末の最新ランキングでは、毎秒48・8兆回の計算能力で国内最速を誇る東京工業大学の「TSUBAME」(NECなど製造)は14位となり、前回(昨年11月)の9位から後退した。現在、国内2位にあたる地球シミュレータは毎秒35・8兆回で20位だった。

 1位は、毎秒280・6兆回の計算能力を持つ米エネルギー省ローレンスリバモア国立研究所の「ブルージーン/L」(IBM製)で、米デル社製スパコンなどが新たにトップ10入りした。

 文部科学省は毎秒1京(1兆の1万倍)回の計算能力を持つスパコンを開発し、10年度後半の稼働をめざしており、世界最速の座の奪還を狙っている。

IBM、最新スーパーコンピュータ「Blue Gene/P」でペタフロップスを実現へ

2007/06/26 [CNET Japan]IT+PLUS

 ついにペタフロップスの時代が始まった。

 IBMが、スーパーコンピュータ「Blue Gene」の最新モデル「Blue Gene/P」を開発した。Blue Gene/Pは、3ペタフロップス(毎秒3000兆回の浮動小数点演算を実行)以上の処理速度を実現する予定だという。同機種は、実働状況で、1ペタフロップ以上の処理速度で連続使用できるように設計されている。

 Blue Gene/Pは、コンピューティング分野において重大なマイルストーンとなる。2006年11月には、「Blue Gene/L」が世界のスーパーコンピュータランキングで第1位にランクされた。Blue Gene/Lの連続使用時の最高処理速度は、280テラフロップ(1テラフロップは毎秒1兆回の浮動小数点演算を実行)を超える。

 Blue Gene/Pの開発により、ドイツのドレスデンで今週開催のInternational Supercomputing Conference(ISC)で発表されるTop 500 Supercomputer(世界のスーパーコンピュータトップ500ランキング)で、IBMが最上位にランクされるのは確実のようだ。2006年11月に発表された前回のランキングでは、93機種のIBM製コンピュータがランク入りし、そのうちの4機種がトップ10入りを果たした。

 米エネルギー省のアルゴンヌ国立研究所(ANL)が2007年中に、Blue Gene/Pを最初に導入することを予定している。またドイツでも、研究機関であるMax Planck SocietyやForschungszentrum Julich研究センターが2007年後半にBlue Gene/Pの導入を開始する予定。Blue Gene/Pの導入を予定するそのほかの機関としては、ストニーブルック大学、ブルックヘブン国立研究所(ニューヨーク北部にある研究機関で、過去に他のプロジェクトでIBMと提携した)、英国チェシャー州にある科学技術施設研究会議が挙げられる。

 大半の最新スーパーコンピュータと同様、Blue Gene/Pもクラスタで構成された数ラックのサーバで構成されており、全世界の天候パターンのグラフィックシミュレーションが可能なプログラムの実行といった大規模なコンピューティングタスクの実行が可能。

 こうしたスーパーコンピュータ向けに設計されたテクノロジは、メインストリームに活用されるようになり、一方で従来型の技術やコンポーネントはスーパーコンピュータを構築するコストを削減するために使用される。

 Blue Gene/Pに採用されるチップは、それぞれが850MHzで稼働する「PowerPC 450」のコアを4個搭載している。2×2フィートの基盤に32個のBlue Gene/Pチップが搭載され、処理能力は435BOPSとなっている。この個盤を高さ6フィート(約1.8m)のラックに32枚搭載する。

 Blue Gene/Lに採用されているチップには、700MHzで稼働するPowerPCコアが搭載されている。

 IBMによると、Blue Gene/Pで1ペタフロップスを実現するには、合計で29万4912個のプロセッサと72個のラックが必要になるという。3ペタフロップスに達するためには、216個のラッククラスタに88万4736個のプロセッサが必要になるという。チップとそのほかのコンポーネントとは、高速光ネットワークで接続されている。

 IBMのほかにも複数の企業が今週ドレスデンで、スーパーコンピュータの完成を大々的に発表する見通しだ。Sun MicrosystemsはISCで、同社のスーパーコンピュータ「Constellation System」を披露する予定となっている。Constellation Systemは大幅な性能向上を可能にするスイッチングアーキテクチャを採用するという。最初のConstellation Systemは10月までに完成する計画で、ピーク性能で500テラフロップスを実現する予定だという。

世界最速の次世代スパコン、神戸に建設…理化学研究所

2007年03月29日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 世界最速の計算能力を持つ次世代スーパーコンピューター施設の建設計画で、理化学研究所は28日、建設地を神戸市のポートアイランド地区に決定したと発表した。

 次世代スパコンの開発は総額1150億円をかけた国家プロジェクトで、東京工業大の国内最速スパコンが持つ毎秒85兆回の計算能力を100倍以上も上回る、毎秒1京回の計算能力を目指している。来年度中に着工し、2010年度中の稼働を目指す。

 15自治体が建設誘致を表明し、理研が昨年夏に部会を設けて立地条件を比較してきた。電力供給や災害対策など施設整備の確実さや、交通の便などの研究環境、自治体からの財政的支援といった観点を総合的に考慮し、神戸市に最終決定した。用地は約4ヘクタール程度になる見込みという。

[次世代スーパーコンピューター]

 長期的な国家戦略として取り組む基幹技術として、2006年に開発計画がスタートした。本体と並行し、性能を最大限に活用できるソフトウエアの研究も始まっている。完成すれば、科学や産業、医療など広範な分野で役立つと期待される。

次世代スパコン、県内への誘致要望 県が国に提案

2006/12/05 神戸新聞ニュース

 二〇〇七年度の国の予算編成に向け、井戸敏三知事は四日の記者会見で、政府が進める次世代スーパーコンピューターを県内の二カ所の候補地へ誘致するよう要望するなど、新規七項目を含む百四十一項目の国への提案を発表した。

 次世代スパコンは国が第三期科学技術基本計画で国家基幹技術の一つに位置づけ、開発・整備する世界最先端・高性能汎用コンピューター。二〇一二年度までに約千百億円の総事業費が見込まれている。全国で十五カ所が誘致に乗り出しており、県内では播磨科学公園都市と神戸市のポートアイランド2期が名乗りを上げている。

 理化学研究所が本年度中に建設地を選定する予定。井戸知事は立地のメリットとして播磨科学公園都市が「大型放射光施設スプリング8などとの相乗効果が期待できる」、ポーアイ2期は「医療産業都市として新産業の集積し、交通の利便も高い」ことを挙げて「県内どちらかへの誘致を実現したい」と話した。

 また、障害者自立支援法での利用者負担軽減を拡大させるなどの見直しや、生活保護制度の改善、防災教育の学習指導要領への位置づけなども提案している。八日に井戸知事が関係省庁や国会議員などに要望する。(畑野士朗)

最速スーパーコンピュータ、上位陣に変動あり

2006年11月15日 Japan.Internet.com 著者: Clint Boulton

フロリダ州タンパで開催中の高性能コンピューティング (HPC) イベント『Supercomputing 2006』で14日、世界最速スーパーコンピュータの上位500リスト『TOP500』第28版が発表となった。トップの座は変わることなく、IBM (NYSE:IBM) の『BlueGene/L』システムだった。

 BlueGene/L は、米エネルギー省が核兵器の安全性試験目的で運用しているシステムで、多数のサーバーからなる。同システムは、280.6テラフロップ (1テラフロップスは1秒間に1兆回の浮動小数点演算を実行する能力) という最速記録で、TOP500 リストの首位を守った。

 だが、トップ10の顔ぶれには、いくつかの興味深い変化が見られる。ランクインした各スーパーコンピュータは、兵器のシミュレーションからバイオテクノロジや製薬プロジェクトの計算まで、さまざまな用途で使われている。

 IBM が研究施設で運用している『BGW』(BlueGene/L と同じ Blue Gene Solution のシステム) は、前回6月発表の2位から今回3位に陥落し、代わって Cray (NASDAQ:CRAY) の『Red Storm』が2位に飛び込んだ。今回 Red Storm は、BlueGene/L に続いて100テラフロップスの壁を破った2つ目のシステムとなった。

 Red Storm は、米エネルギー省のサンディア国立研究所が核兵器や国家防衛に関する研究に用いており、今回101.4テラフロップスを記録した。最初の Red Storm システムは、6月の TOP500 リストで9位 (36.19テラフロップス) だった。

 3位から5位までは、IBM のシステムが占めている。前回4位だった SGI の『Columbia』(NASA が運用) は今回8位に落ち、NEC と Sun Microsystems が手がけた『TSUBAME Grid Cluster』(東京工業大学が運用) も前回7位から9位に落ちた。また一時期上位にあった NEC の『地球シミュレータ』(日本の海洋開発研究機構が運用) は前回10位だったが、今回トップ10から漏れ、14位まで順位を落とした。

 そのほかに注目すべき傾向として、AMD 製プロセッサ『Opteron』搭載システムが、Intel 製プロセッサ搭載システムを脅かしつつあることが挙げられる。Intel 製プロセッサ搭載システムは、前年の TOP500 リストで333システムを占めていたが、今回は263システムにまで減少した。

 Opteron プロセッサ搭載システムは、前年の56システムから113システムに増加し、IBM 製の『POWER』プロセッサ搭載システム数を追い抜いて、2番目に搭載するシステムの多いプロセッサとなった。IBM POWER プロセッサ搭載システムは、前年の72システムから91システムに増加している。

理研と情報研、次世代スパコンの開発利用で基本協定を締結

2006/10/23 ZD Net Japan 吉澤亨史

 独立行政法人理化学研究所(理研)と大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所は10月19日、次世代スーパーコンピュータの利用および先端的な情報基盤の構築で連携するという基本協定を締結したと発表した。協定期間は2006年10月19日から2011年3月31日まで。

 この基本協定締結は、文部科学省の「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクトを推進するためのもの。協力内容は、「次世代スーパーコンピュータを利活用するため、情報基盤に関する情報交換、共同研究の実施、人材交流、人材養成、産業界及び他機関との連携・協力を実施するために必要な事項等を実施。さらに具体的な内容についてはその都度個別契約等を締結する」となっている。

 理研は、2005年10月に文部科学省より「次世代スーパーコンピュータ」の開発主体として選定されたことから、2006年1月1日に「次世代スーパーコンピュータ開発実施本部」を設置している。また情報研は、全国の大学・研究機関等を結ぶ学術情報ネットワーク(SINET・スーパーSINET)の運用、広域分散型の大規模コンピュータ環境を実現するためのグリッドミドルウェアの研究開発(NAREGIプログラム)をはじめとした、次世代の学術情報基盤としてのサイバー・サイエンス・インフラストラクチャの構築に取り組んでいる。

 次世代スーパーコンピュータは完成後、グリッドミドルウェアを使用し、日本全国から高速ネットワークを介して利活用できるように計画してる。このため、開発段階からネットワーク上での利用を考慮することで、次世代スーパーコンピュータの効率的な利用環境の構築を目指す計画だ。なお、理研が次世代スーパーコンピュータに関して協定を結ぶのは、独立行政法人海洋研究開発機構、国立大学法人筑波大学に続き3件目となる。

次世代スーパーコンピュータ・システムの概念設計を開始

平成18年09月19日 独立行政法人 理化学研究所

−世界最高性能のスパコン開発に挑む−

◇ポイント◇

理化学研究所は次世代スーパーコンピュータ・システムの概念設計を開始

概念設計は2案を同時に実施

1案は富士通株式会社、もう1案は日本電気株式会社と株式会社日立製作所

 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、次世代スーパーコンピュータ・システムの概念設計を開始します。

 次世代スーパーコンピュータ・システムは、文部科学省が推進する「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクト※1(次世代スーパーコンピュータ・プロジェクト)の一環として、理研の次世代スーパーコンピュータ開発実施本部(本部長:野依理事長)が中心となって、世界最高性能の達成を目指して開発を進めている計算機です。

 理研では、今年4月より国内の産業界、大学、及び研究機関と共同研究契約を締結し、次世代スーパーコンピュータ・システムに関する研究を実施してきました。概念設計では、これらの研究の成果をさらに発展させ、システムの具体的な仕様を検討します。具体的には、2つのシステム構成案について、1案を富士通株式会社、別の1案を日本電気株式会社と株式会社日立製作所が協力して実施します。

 これらの概念設計で得られた成果は、次世代スーパーコンピュータ・システムの最適構成を検討する資料とします。

1. 背 景

 文部科学省が進める「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」(以下、「次世代スーパーコンピュータ・プロジェクト」)では、スーパーコンピュータを活用した計算科学、スーパーコンピューティングなどの分野で世界をリードし続ける基盤技術の確立を目指し、大規模な次世代スーパーコンピュータ・システムを開発しています。理研は、次世代スーパーコンピュータ・プロジェクトで、次世代スーパーコンピュータの開発、運用主体と位置づけられ、平成18年1月に次世代スーパーコンピュータ開発実施本部(本部長:野依理事長)を設置し、LINPACK※2性能10ペタフロップスを目標として、次世代スーパーコンピュータの開発を開始しました。

 理研は、これまで国内外のスーパーコンピュータセンター調査や国内外の技術調査を実施するとともに、今年4月に公募した「次世代スーパーコンピュータ:概念構築に関する共同研究」に対し、8者と共同研究契約を締結し、次世代スーパーコンピュータ・システムのアーキテクチャを検討して参りました。

2. 概念設計の概要

 概念設計では、次世代スーパーコンピュータ・システムが目標とする性能を達成するために、プロセッサ構成、メモリ構成、システム内のネットワーク構成などのハードウェア構成、さらに、それに必要なソフトウェア構成について、具体的な仕様を検討します。また、これらの構成は、理研のアプリケーション検討部会で選択された複数のベンチマークテストを用いて、その性能を予測します。

 今回の概念設計作業は、理研との共同研究の成果をベースに、さらに発展させるものです。共同研究の結果得られた4案を検討し、有望な2つの案について更に詳細に検討することとなったものです。理研の主導のもと、1案を富士通株式会社、もう1案を日本電気株式会社と株式会社日立製作所が協力して概念設計を実施します。

3. 今後の開発予定

 今回の概念設計で得られる成果は、次世代スーパーコンピュータ・システムの最適構成を考える資料とし、今年度中に次世代スーパーコンピュータ・システムの仕様を決定する予定です。来年度以降は、引き続きより具体的な詳細設計を開始することにしています。

4. その他

 2006年9月19日、20日の両日に、次世代スーパーコンピュータ・プロジェクトに関するシンポジウム「次世代スーパーコンピューティング・シンポジウム2006」を開催しています。

 参考Webページ http://www.nsc.riken.jp/symposium2006.html

計算能力は2番目、でも割安…純国産スパコン稼働へ

2006年06月27日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 筑波大は27日、純国産としては国内2番目の計算能力を持つスーパーコンピューター「PACS―CS」が、来月1日から稼働すると発表した。

 最高で1秒間に14兆3400億回の計算能力は、2002年に稼働した海洋研究開発機構保有のスパコン「地球シミュレータ」(40兆回)に次ぐ。

 価格は約22億円で、国産のフリーソフトや既存の部品などを使い、これまで考えられていた価格の3分の2から半分に抑えた。筑波大では、このスパコンを使い、初期宇宙がどんな状態だったのかなどの謎を解明したいとしている。

 PACS―CSは、経済産業省のプロジェクトで開発した国産フリーソフトを使用。日立製作所がシステムを、計算を行う回路(プロセッサー)同士をつなぐ通信ソフトを富士通が、それぞれ担当して作成した。

 高さ2メートル、幅3メートル、奥行き1メートルの10個の箱の中に入った計2560個の計算回路をつなぎ、設置面積は100平方メートルほど。

世界最速スパコン『BG/L』、自己記録を更新

2006年06月23日 Japan.Internet.com 著者: David Needle

 高速なコンピュータは多くあるが、その上を行くのが IBM のスーパーコンピュータ『Blue Gene/L』(BG/L) だ。

 米エネルギー省の国家核安全保障庁 (NNSA) と IBM (NYSE:IBM) は22日、世界最速スーパーコンピュータ BG/L が自己記録を更新したと発表した。IBM によると、BG/L は最新実験において、207.3テラフロップス (1秒間に浮動小数点演算を207兆3000億回) という持続的性能を達成したという。これは持続的な浮動小数点演算性能の新記録だ。

 この記録を達成できた理由について IBM は、BG/L が搭載した『PowerPC 440』プロセッサのデュアルアーキテクチャ浮動小数点演算ユニット (FPU) の長所をより活かすことのできる新しい数値計算ライブラリを、ソフトウェア研究者が開発できたためだと説明している。1年前には、BG/L の持続的な浮動小数点演算性能は100テラフロップスに届いていなかった。

 BG/L はすでに、最速スーパーコンピュータ上位500リスト『Top500』によって、ピーク性能367テラフロップスを達成した世界最速のスーパーコンピュータと認知されている。Top500 リストは中立的な組織が年2回発表しており、最新版が今月発表される予定だ。今回207.3テラフロップスという持続的性能を達成した BG/L は、13万1072個の PowerPC 440 プロセッサを使っていた。

 BG/L は、NNSA のローレンス リバモア国立研究所に設置されている。今回の新記録は、国家安全保障に重要な物質科学シミュレーションを行なうためのコンピュータコード『Qbox』上で達成した。Qbox は、第一原理分子動力学 (FPMD) に基づくコードの1種で、温度や圧力が極端に高い/低い条件下における金属の特性を予測するために設計されたものだ。こうした金属の特性予測については、物質科学や高エネルギー密度物理学の研究者たちが、かなり前から取り組んでいる。FPMD に基づくコードは、原子レベルの複雑なシミュレーション用として、冶金学、固体物理学、化学、生物学、ナノテクなどを含むさまざまな科学分野で使われている。

Sun、東工大に AMD Opteron 搭載スーパーコンピュータ「TSUBAME」を

2006年05月25日 Japan.Internet.com

 業績不振に悩む米国 Sun Microsystems だが、 2006年5月15日に、米国外では世界最高速のスーパーコンピュータを東京工業大学に設置した、と発表した。

 同社にとっては過去最大の HPC 案件。

 TSUBAME と命名されたこのスーパーコンピュータは、デュアルコア AMD Opteron プロセッサ搭載の Sun Fire x64(x86、64bit)サーバーで構成。

 メモリ容量 21TB 以上、ハードディスク容量は 1.1PB。システム本体には AMD Opteron プロセッサコアを1万480個搭載した Sun Fire x64 サーバーとサンのストレージ装置を使用した。 Solaris 10 と Linux のどちらにも対応できる。

 NEC のシステムインテグレーション技術とノウハウ、 Sun の Solaris 10 対応 N1 管理ソフトウェアを採用で、システム導入を短期間で終えた、とのこと。ベンチマークテストも終了しており、 6月に発表の今年の世界スーパーコンピュータトップ500ランキングでも10位以内に入ると予想されている。

Cray、「適応型」スーパーコンピュータを開発へ

2006年03月22日 Japan.Internet.com 著者: David Needle

 スーパーコンピュータ大手の Cray (NASDAQ:CRAY) が、高性能コンピューティングを新たなレベルに引き上げる計画を明らかにした。

 Cray は20日、多様な処理技術を単一プラットフォームに統合したスーパーコンピュータを開発すると発表した。同社が「アダプティブ (適応型) スーパーコンピューティング」と呼ぶこうしたシステムは、科学や工学上の問題をより迅速に解決でき、各アプリケーションの要件に適応することで、プログラマおよびエンドユーザーにより大きな生産性をもたらすという。

 Cray は現在、ベクトル処理や超並列処理といった技術の最大活用に特化した4種類のシステムを提供しているが、これらを1つのシステムに統合し、異なる用途に合わせて最適化するため、ブレード形式や、最終的には複数のプロセッサを備えたプロセッサボードシステムに移行することを目指している。

 同社の企業戦略担当副社長 Jan Silverman 氏は、取材に対し次のように語った。「単一システムで全てに対応できない現状を踏まえ、当社としては、様々なアプリケーションに適応できるマシンを開発したい。アプリケーションが、その要件に最も適したプロセッサを自動的に選択できるようなものを想定している。各アプリケーションに用いるプロセッサを最適化できれば、5倍から10倍、場合によっては100倍もの性能向上が可能だ」

 Cray は、コンパイラやその他のソフトウェア開発で蓄えた知識を活用し、アプリケーションを最も適したプロセッサブレードと自動的に組み合わせる技術の実現を目指すという。

 Cray の計画はまた、プロセッサ大手 AMD (NYSE:AMD) のロードマップにとっても心強いものだ。両社は昨年11月、少なくとも2010年まで提携関係を延長すると発表している。Cray はすでに、AMD 製『Opteron』プロセッサを搭載した『Cray XT3』スーパーコンピュータ、および『Cray XD1』ミニスーパーコンピュータを販売している。

 両社の提携延長は、Cray が高性能コンピューティング市場に投入する次世代スーパーコンピュータ製品に、AMD の技術を採用することを約束するものだと AMD は述べている。一方で Cray は、自社製のベクトルプロセッサを搭載した『Cray X1E』スーパーコンピュータの開発も続けていく意向だ。

日立が気象庁に21.5テラFLOPSのスーパーコン納入

2006/03/03 ITPro

 気象庁は2006年3月1日,気象観測データを解析し大気の状態を予測するシステム「COSMETS」の演算ピーク性能を従来機の28倍に相当する21.5T(テラ)FLOPS(1秒間に21兆5000億回の浮動小数点演算)に高めた。同システムにスカラー型スーパー・コンピュータ「SR11000モデルK1」を納入した日立製作所が明らかにした。2001年3月に納入した781G(ギガ)FLOPSの「SR8000モデルB」を置き換えた。

 SR11000は,米IBMが開発したスカラー型のCPU「POWER 5+」(2.1GHz)を搭載した並列処理型コンピュータ。2005年10月に出荷を開始した。1ノードあたり16CPUのSMP(対称型マルチプロセッシング)構成を採り,最小4ノードから最大512ノードまでを,帯域16Gバイト/秒のクロスバー・スイッチ経由で接続する。512ノード接続時の理論ピーク性能は68.8TFLOPSに達する。価格は2億7720万円から。

 従来,科学技術計算用途のプロセッサは,ベクトル(配列)を単位として演算するベクトル型が主流だった。浮動小数点計算に強いという特徴がある。また,専用プロセッサを用いるベクトル型は,プロセッサとメモリー間のデータ転送バンド幅を広く取れるため,大容量のデータを複数ノード間で同時に処理する用途に適する。

 一方,SR11000が採用するスカラー型のプロセッサは,データを単位として演算する汎用プロセッサであり,パソコン向けの既存OSの移植などが比較的容易である。プロセッサとメモリー間の帯域バンド幅が比較的狭いため,例えばサーバー・グリッドを用いた暗号解読などのように,データを分割して個々の独立したノードに演算させる分散処理の用途に向く。

 SR11000はスカラー型でありながら,米ペンシルバニア州立大学と米国大気研究センターNCAR(National Center for Atmospheric Research)が共同開発した気象予測プログラムMM5(Mesoscale Model 5)においてベクトル型と同等の処理性能を示したという。(日川 佳三=ITpro)

演算能力50倍、新スパコン公開 高エネ加速器研

2006/02/28 The Sankei Shimbun

 高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)が、素粒子物理のシミュレーションに使うスーパーコンピューターを6年ぶりに更新し28日、報道陣に公開した。

 演算能力はこれまでの50倍で1秒間に約59兆回の演算ができる約59テラフロップス。3月1日の運用開始時には、海洋研究開発機構の「地球シミュレーター」の40テラフロップスを抜いて国内最速だが、3月中にも東京工業大のスパコンに抜かれる見込み。

 日立製作所と日本IBMが製作し、設置面積は約146平方メートル、リース料は5年間で約35億円。物質の基本粒子「クォーク」が結合して質量が生まれる過程をシミュレーションすることで、陽子や中性子の質量を精密に計算することが期待できるという。

 高エネ研の川端節弥(かわばた・せつや)計算科学センター長は「限られた予算の中で最善のシステムを選んだ。より良い結果を出したい」と話している。(共同)

東京工業大、日本最速のスパコン導入へ

2005/11/29 The Sankei Shimbun

 東京工業大(東京都目黒区)は29日、日本最高性能のスーパーコンピューターを来春に導入すると発表した。来年中に、計算速度で世界5位以内にランク入りすることが見込めるという。

 導入するのは複数のコンピューターを連結させた分散並列型というスパコンで、米AMD社の中央演算装置など、米国、イスラエル、英国の企業のシステムをNECが統合する。

 来年4月には、最大演算速度が現在国内1位の「地球シミュレーター」の約3倍に相当する110テラフロップス(1秒間に110兆回)に達するとしている。

 同大は、生命科学や流体力学、天文学などの分野で利用を検討しており、導入を主導した松岡聡(まつおか・さとし)教授(数理・計算科学)は「学生も日常的にスーパーコンピューターを使えるようになる」と話している。

 現在の世界最速スパコンは米ローレンスリバモア国立研究所のIBM製「ブルージーン」で、1秒間に280兆回の計算ができる約280テラフロップス。次世代機としては、10ペタフロップス(1秒間に1京(けい)回=1兆の1万倍)をにらむ開発競争となっている。(共同)

京速計算機システム、平成18年度から開始へ

2005/11/20(日) 知財情報局

〜最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用PJ〜

  研究振興局情報課は10月26日、平成18年度から開始予定の『最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用』プロジェクトに関し、中核の京速計算機システムの開発主体に理化学研究所を選定した。世界最高の高性能・汎用スーパーコンピュータ(スパコン)を平成22年度に完成させ、先端計算科学技術センター(仮称)を発足させる予定。これによりスーパーコンピューティングに関する研究開発・利用で世界を牽引し続けるという。

  このプロジェクトは、世界最高性能の汎用スパコンを開発し、計算科学の学術とともに産業分野でも世界を牽引する目的がある。来年度予算要求額で40億円、総事業費では1154億円をかけ、同コンピュータに特化したソフトウエアをはじめ、10ペタフロップス級の京速計算機システムおよびこれの利用を進める研究教育拠点を開発、整備する。地球シミュレータの能力を200倍向上させる計画で世界で類を見ない。開発主体の選定では、複合型汎用スパコン「RSSC」の開発・利用実績や研究環境、アプリケーションの利用実績など6項目の評価でいずれも一位になった理化学研究所に決まった。

  なお汎用スパコンの性能評価では現在、米国ローレンスバリモア研究所の『BlueGene/L』が世界第一位。日本の地球シミュレーターは同7位にランクされる。また米エネルギー省の国家プロジェクトでは2009年、1ペタフロップス級のスパコンが完成する予定になっている。

最新スパコン世界ランキング発表--米国勢が他を圧倒

2005/11/15 YAHOO! NEWS(CNET JAPAN)

 米政府関係者は2年半前、スーパーコンピュータ分野における米国の競争力に不安を感じていた。スーパーコンピュータは、世界中の気象モデリング、分子の相互作用、あるいは核爆発のシミュレーションなどに対応する。

 しかし、この不安は大げさ過ぎたかもしれない。

 新たに公表されたスーパーコンピュータのTop500ランキングでは、米国に設置されているマシンの台数が、6カ月前の277台から305台へと増加した。一方で、欧州、中国、および日本に設置されたマシンの台数は減少した。上位35台中34台は米国のメーカーもしくは大学のマシンだった。

 スーパーコンピュータでは、IBMが引き続き圧倒的なシェアを誇っている。半年ごとに公表されるこのTop500ランキングでは、IBMがトップ3を独占したほか、上位10台中5台までを占めた。全体的に見ると、ランキング入りしたマシンの43.8%を同社が占めた。この数値は、ほかのどのメーカーや大学よりも高い。

 同社の「BlueGene/L」は、2004年11月にNECの「地球シミュレータ」をトップの座から引きずり下ろすと、その後は3期連続でスーパーコンピュータ世界トップの座を維持している。Lawrence Livermore National Labsに設置されている同コンピュータは、ここ6カ月の間に規模を倍増させ、現在では13万1076個のプロセッサを搭載するまでになった。しかも、同コンピュータは今後も拡張を続ける予定だ。

 IBMのDeep Computing担当バイスプレジデントDave Turekは、「アーキテクチャの特性として、その限界よりも、むしろ顧客が何を求めるかの方が問題だ」と語っている。

 BlueGene/Lは現在、1秒におよそ281兆回の計算を処理する280.6テラフロップスをたたき出す。同マシンは、処理能力が100テラフロップスを越える唯一のコンピュータでもある。

 Top500をまとめる組織はランキングの概要のなかに、「このシステムは、今後数回はTop500ランキングでスーパーコンピュータの世界トップの座を維持し続けるものと思われる」と書いている。

 ほかの米国系企業の成績も良好だった。Hewlett-Packard(HP)は全体の33.8%を占め、6月の131台から169台へと盛り返した。Dellも「Thunderbird」で5位に付け、トップ10に食い込んだ。Sandia National Laboratoriesに設置されているThunderbirdは、8000個のプロセッサを搭載するスーパーコンピュータ。

 ランクインしたマシンの3分の2である333台がIntel製マイクロプロセッサを搭載していた。「Intel Itanium」チップ搭載のスーパーコンピュータの台数が激減する一方で、「Intel Xeon」や、Advanced Micro Devices(AMD)の「Opteron」などの64ビットプロセッサを搭載した機種が増加している。

スパコン、日米が開発合戦

2005年10月31日 読売新聞 Yomiuri On-LIne

 米エネルギー省の核安全保障局が、最高で毎秒280兆6000億回の計算処理が可能な世界最速のスーパーコンピューターなど2台を、同省傘下のローレンスリバモア国立研究所に導入し、近く実運用に入ると発表した。これに対し、日本の文部科学省は、毎秒1京(けい)(1兆の1万倍)回の計算速度を持つ次世代機を来年度から開発する計画で、担当機関を理化学研究所に決定。スパコンの「最速王座」をめぐる日米の争いが、新たな局面を迎える。

 米国で稼働するのは、ともにIBM製で、世界最速の「ブルージーン」と、毎秒100兆回の計算処理ができる「パープル」の2台。核実験全面禁止条約の禁止対象となる地下核実験の代わりとして、精密な核実験シミュレーションを行うのに使われるほか、近年、国防上の課題となっている備蓄核兵器の経年劣化の計算にも力を発揮する。

 スパコンの計算速度は、昨年6月まで日本の海洋研究開発機構が保有するNEC製の「地球シミュレータ」(毎秒36兆回)が世界一だったが、現在は4位に後退した。これを抜いたブルージーンは、その後も段階的に性能を向上、自己記録を更新していた。(ワシントン 笹沢教一)

 一方、日本が王座奪還を目指す次世代機「京速計算機システム」の開発機関は、大型プロジェクトの実績がある同機構など5機関の中から、理化学研究所に決まった。2010年度の完成を目標に、国が1000億円を投じる巨大プロジェクトが動き出す。

スーパーコンピューター

 膨大な計算を素早く精密に処理できる、高性能のコンピューター。大規模で正確な模擬実験(シミュレーション)に欠かせず、物理学や天文学のような基礎科学から、宇宙工学やハイテク兵器、医薬品の分子設計といった実用分野まで、最先端の研究開発に幅広く使われる。

自己記録を塗り替えたIBMの「Blue Gene/L」--280.6テラフロップスに

2005/10/28(CNET News.com)Stephen Shankland

 米ローレンス・リバモア国立研究所とIBMは米国時間27日、「Blue Gene/L」スーパーコンピュータを公開し、このマシンが過去の自己記録を塗り替えて、再び世界最速のスーパーコンピュータになったと発表した。

 IBMは27日、この6万5536個のプロセッサを搭載するマシンが、1秒あたり280.6兆回の計算を処理できる280.6テラフロップスの処理能力を持つことを明かした。この数値はIBMが予想した範囲の上限で、同マシンが半分のプロセッサしかインストールされていない状態で達成した136.8テラフロップスという前回の記録を2倍以上上回っている。

 さらに同研究所は、Blue Gene/Lに比べて知名度では劣るものの、最大100テラフロップスと同等の処理能力を持つマシンも公開した。この「ASC Purple」は、より一般的なIBMサーバ製品を使って構築されている。ASC PurpleとBlue Gene/Lを合わせると、その費用は総額2億9000万ドルとなる。どちらのマシンも、核兵器のシミュレーションなど、負荷の高い計算処理が求められる各種作業に利用されることになる。

 どちらのマシンも、その構築には、高性能なネットワークで大量のプロセッサを接続するアプローチが採られている。しかし、両者の間には違いもいくつかある。ASC Purpleに搭載される1万2544個のPower5プロセッサは、個別ではBlue Gene/Lが搭載する特殊なPowerチップより性能で勝る。また、ASC Purpleプロセッサのほうが大量のメモリにアクセスできるため、複雑なシミュレーションを行うことができる。しかし、消費電力はBlue Gene/Lのほうが少なく、またプロセッサの接続には、大規模かつ複雑な集中スイッチではなく、5つの独立したネットワークを集めて使っている。

 スーパーコンピュータの分野は、かつてはCray、Hewlett-Packard(HP)、Silicon Graphicsなど、研究プログラムの整った企業が独占していた。しかし、主流のプロセッサやネットワークの機能が着実に向上してきたため、大規模な開発プログラムを持たないDellなどの企業もこの市場に参入してきた。

 Blue Gene/Lは1年前に70.7テラフロップスを達成し、初めてTop500スーパーコンピュータランキングのトップの座に就いた。この速度はLinpackという数理テストによって測定されているが、Top500の主催者は、Linpackによるコンピュータの性能測定に不備があったことを認めている(Blue Gene/LがLinpackを動かすと、各プロセッサが数理計算を行うが、多くのジョブでは、システムのプロセッサの半分がネットワーク処理に割り当てられてしまう)

次期国策スパコン、開発主体に理研を選定

[2005/10/18]日経コンピュータ

 2010年度に稼動予定の国策スーパー・コンピュータ「京速計算機システム」を、理化学研究所(理研)が開発することが事実上決まった。10月11日、文部科学省の情報科学技術委員会 計算科学技術推進ワーキンググループで、約20人の委員が投票を実施。同18日にその結果がまとまり、理研が最高点を獲得したことが分かった。

 開発主体として立候補していた研究機関は、理研と、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、日本原子力研究開発機構(JAEA)、物質・材料研究機構(NIMS)の5つ。理研は、スパコンの開発実績や、300億円以上の大型プロジェクトの実施実績など、6つの評価指標でいずれも1位を獲得した。

 今回の結果を受け、同ワーキンググループは10月24日に「京速計算機システムの開発主体に関する提言書」をまとめる予定。文部科学省は、これを受けて年内に理研への開発委託を正式決定する。

 京速計算機システムは、「地球シミュレータ」の250倍超の処理速度を持つスーパー・コンピュータ。文部科学省はその開発に5年間で約1000億円を投じる計画である。 (本間 純=日経コンピュータ)

「汎用京速計算機」は人体シミュレーションを目指す

2005/09/28 ITmedia

 文部科学省が計画している10P(ペタ)FLOPSの世界最速コンピュータ「汎用京速計算機」は、人体丸ごとのシミュレーション解析といったグランドチャレンジに挑む。

 文部科学省の清水潔・研究振興局長は9月28日、超高速スーパーコンピュータ計画について、都内で開かれたシンポジウムで説明した。ハード、ソフトの両面で要素技術の開発を進め、10P(ペタ)FLOPS=1秒間に1京回の演算が可能な世界最速の「汎用京速計算機」を2010年度に実現するのが目標だ。

京速計算機プロジェクト

 計画は2006年度から2012年度まで7カ年。ソフト、ハードの研究開発を産官学共同で進め、2010年度、TOP500に使われるLinpackベンチマークで、「地球シミュレータ」(35.9TFLOPS)の250倍以上となる10PFLOPSの達成を目指す。10P=1京にちなんで「汎用京速計算機」と呼んでいる。

 総事業費は、地球シミュレータ(約600億円)の2倍近い1154億円を見込む。文科省は来年度予算案の概算要求に40億5100万円を盛り込む予定だ。来年度はまず、京速計算機システム全般の設計や研究開発に着手。計算科学技術を国家の基幹技術として推進する「先端計算科学技術センター」(仮称)の設立準備調査も行う。

ハード開発スケジュール

 ハードウェア開発は、2006〜2007年度に要求性能調査と仕様検討、性能見積もりを行い、2008年度から回路設計・実装をスタート。2009〜2010年度で京速計算機のシステム全体を製作し、10PFLOPSを達成した上でシステム強化を続けるというスケジュールだ。

 ハードは各方式を組み合わせた複合型とする案が有力。ベクター型、スカラー型、東京大学の「GRAPE」のような専門計算機型を有機的に組み合わせて使用したり、用途に応じて独立して使うといったアプローチだ。

ソフト開発計画

 ソフト開発ではOSや、グリッドミドルウェア、異機種統合ソフトといったベース部分に加え、京速計算機が挑むグランドチャレンジのターゲットとして、ライフサイエンスとナノテクノロジーの2分野を設定する。

 ライフサイエンス分野の「次世代生命体統合シミュレーション」では、遺伝子レベルから細胞、器官、骨格、血流など人体を丸ごとシミュレートして解析可能な基盤ソフトの開発を目指す。テーラーメード医療の実現や新規創薬などがねらいだ。

 ナノ分野の「次世代ナノ統合シミュレーション」では、電子・原子・分子から分子複合デバイスに至るまで、ナノ材料を丸ごと解析できる環境を実現する。グリッドミドルウェアととナノシミュレーションソフトの開発を進めている「NAREGI」プロジェクトの成果をベースに開発する。

 現状の技術でペタスケールのスーパーコンピュータを建造する場合、プロセッサ−メモリ間やノード間の接続速度(インターコネクト)のボトルネック問題、小型発電所が必要になるほどの莫大な消費電力、ビル1棟分に相当する設置面積──などが解決できない。光接続や低消費電力化といったハード面の要素技術開発に加え、欧米に比べ弱いと指摘される優れたソフトの開発など、京速計算機の実現に向けた課題は山積みだ。

 国立情報学研究所と文部科学省が共催した「計算科学技術シンポジウム」で講演した清水局長は「ハードルは極めて多いが、国を挙げたオールジャパンでの支援をお願いしたい」と話した。

再び頂点を目指せ 科学立国・日本のスーパーコンピュータ

2005/09/27 ITmedia

 地球シミュレータの約250倍となる「汎用京速計算機」を2010年度に実現する国家プロジェクトが動き出そうとしている。巨費を投じて日本が再び最速スーパーコンピュータを目指すのはなぜか。

 次世代スーパーコンピュータについて議論する「計算科学技術シンポジウム」が9月26日から都内で開かれている。いま、地球シミュレータの約250倍となる超高速計算機を2010年度に実現する国家プロジェクトが動き出そうとしている。1000億円を超える巨費を投じ、日本が再び最速スーパーコンピュータを目指すのはなぜか。最速スーパーコンピュータで目指すのは何か。どう目指すか。研究者や技術者が知恵を絞る。

「汎用京速計算機」

 地球シミュレータの“次”となるスーパーコンピュータ国家プロジェクトが動き始めている。

 文部科学省は2006年度予算の概算請求に、次世代汎用スーパーコンピュータの設計開発費を盛り込む予定だ。計画では2010年度、地球シミュレータの約250倍となる10P(ペタ)FLOPSの性能実現を目指す。10PFLOPS──1秒間に1京回の演算を行う「汎用京速計算機」だ。

 米エネルギー省と国防総省が掲げた目標は同時期までに1PFLOPS超。京速計算機はこれをさらに10倍上回る。

 シンポジウムは国立情報学研究所が主催し、産官学から計算機技術分野の研究者や技術者が出席。28日まで、次世代スーパーコンピュータに必要な要素技術や、科学シミュレーションなどの応用について話し合う。

 初日には自民党スーパーコンピュータ推進議連の会長を務める尾身幸次・元科学技術制作担当大臣(衆議)も駆け付け、さながら次世代スーパーコンピュータ実現に向けた「総決起集会」(情報学研の坂内正夫所長)となった。

技術立国の必須の基礎

 文科省計画では、新プロジェクトの総事業費は2012年度まで7カ年で1154億円。時に「大艦巨砲主義の戦艦大和」と評されることもある地球シミュレータに投じられた国費は約600億円だ。シンポジウムでは、地球シミュレータの倍近い巨費を投じ、日本が地球最速のスーパーコンピュータを再び目指す理由について議論が交わされた。

 シンポジウムを主催した国立情報学研究所の坂内正夫所長は「資源のない日本は人と知恵しかなく、科学立国につきる。スーパーコンピュータはIT分野で知恵の結晶すべきターゲットであり、日本がよって立つべき科学技術の基礎となる」と話し、日本が技術立国を目指す以上、スーパーコンピューティング技術は必須だと指摘した。

 基調講演した筑波大学の岩崎洋一学長も「大きな壁を突き抜けた段階でぶっちぎりトップになるのが真のブレイクスルー。国によるスーパーコンピュータ開発の目的は、科学技術のブレイクスルーの実現だ」と応じた。

「知性のあり方」を示すために <

 スーパーコンピュータが日米貿易摩擦の舞台となった1980年代であっても、スーパーコンピュータ自体は企業が利益が出せるものではなく、そこで培った技術をメインフレームに投じることで成り立っていたのが実態だ。だがオープン化の進展でメインフレーム市場にも逆風が吹く中、用途が限られたスーパーコンピュータに惜しみなく研究開発費を投じるのは難しい。日立製作所と富士通はベクター方式から撤退し、いまや「SX」のNECが孤高を保つのみだ。

 こんな状況の中、欧州のように自前のスーパーコンピュータ開発を事実上放棄し、アプリケーションに力を注ぐべきだという考え方もある。

 だが文科省の藤田明博・大臣官房審議官は「米国の国家主導スーパーコンピュータは軍事目的だ。米国から買う際、最先端のコンピュータを売ってくれるかというと疑問だ。少なくとも数年は遅れてしまうのでは」と話し、科学や産業の基幹技術を米国に依存する危うさについて指摘した。

 東芝の有信睦弘・執行役常務は「ハイパフォーマンスコンピューティング環境を作っていくプロセッサやOSなどは、その国の知性のあり方を示すものだ。議論をわい小化しないほうがいい」と述べ、スーパーコンピューティングそのものが日本の知性と技術マインドを示すものだとし、単なる効率やコストの論議に陥るべきではないとした。

持続的な開発・利用を

 では日本の次世代旗艦スーパーコンピュータはどうあるべきか。素粒子物理学者として筑波大の「CP-PACS」開発にも関わった岩崎学長は基調講演で、自らの経験をもとに提言をまとめた。

 地球シミュレータをはるかに上回るペタクラスのコンピューティングは、科学上の「グランドチャレンジ」を解決するための最重要ツールであり、それ自体がグランドチャレンジでもある。実現には(1)解決すべきグランドチャレンジ目標の設定、(2)原点に返った問題のモデル化と計算アルゴリズムの再定式化──などが必要だとした。応用プログラムのゼロからの開発し直しも必要なら敢行すべきだとし、「国民の多額の税金を投入するのならば、それくらいの覚悟は必要だ」と鼓舞した。

 スーパーコンピュータの規模や配備については「一点豪華主義」を避け、最高速システムに複数の中規模システムを組み合わせていく重層的な配備が重要だとした。最速システムの集中利用による計算効率向上に加え、多様な分野が中規模システムを利用していくことで、計算科学技術全体が持続的に発展していけるという考えだ。

 「持続的」はスーパーコンピュータ自体の開発でも同様だ。1回限りの国策マシンでは技術に断絶が生じてしまう懸念があるため、ロードマップに基づく継続的な開発が必要だとの指摘だ。ただ、メーカーが多額のコストをカバーするには限界がある。このため、スーパーコンピュータ技術の民生技術への移転、またはその逆──という技術の相互乗り入れを視野に入れていく必要があるのでは、とした。

 岩崎学長は、国産マイクロプロセッサの開発も提言する。「ITなど、国の根幹をなす技術が米国におさえられていると、本当の意味の独立性は保てない」とし、「困難であってもオールジャパンで追求する価値がある」と話した。米IBMのBlueGene/LはPowerPCがベースであるように、日本が得意な組み込みプロセッサ技術の活用可能性も示唆した。

激烈! 最速スパコン開発競争

2005年09月18日号 YomiuriWeekly

驚異的な速さで科学計算を行う「スーパーコンピューター」の国際的な開発競争が、熾烈(しれつ)を極めている。計算速度のトップ争いでは目下、アメリカがリード。日本は首位奪還を目指し、ケタ違いの新型製品の開発を急いでいる。他方、後発の中国がじりじりと順位を上げ、日米双方を脅かす存在になろうとしている。(本誌 松浦一樹/撮影 明田和也)

 横浜市金沢区の一角に、異様な建造物がある。幅50メートル、奥行き65メートル、高さ17メートルの鉄骨構造。一見すると、大きな体育館のようだが、窓が一つも見当たらない。近づいても、ブーンと低いうなりのような機械音が聞こえるだけ。外からは、何の施設なのか分からない。

 実はここに、独立行政法人の海洋研究開発機構(旧海洋科学技術センター)が誇るスパコン「地球シミュレータ」(NEC製)が収納されているのだが、近くの住民も、その存在をほとんど知らないらしい。

 内部はSF映画のセットさながらだ。人の背丈をはるかに上回る640台の大型計算機と関連機器が整然と並べられ、見学者デッキから見下ろすと、巨大な迷路のようでもある。日常からかけ離れたこの空間に、日本のコンピューター技術の粋が集められているのだ。

 スパコンの計算速度は現在、単位として「テラフロップス」の領域にある。1テラフロップスなら1秒間に1兆回の演算を処理する。地球温暖化、異常気象、地殻変動といった地球規模の現象を、模擬実験(シミュレーション)で解析するために開発された地球シミュレータの性能は、35テラフロップス。1秒間に35兆回という計算速度は、ダントツの世界一……だった。

軍主導で進化する米技術

 スパコンの“優秀さ”を測る尺度はいくつかあるが、計算速度もその一つで、比較が簡単だ。

 米独の研究者グループが年2回発表する「トップ500」のランキングは、計算速度の世界一を競うが、地球シミュレータの名が登場したのは、3年前。それまで頂点にあった「ASCIホワイト」(IBM社製)の5倍の速さに達し、トップに躍り出たのだ。

 スパコン開発で常に日本に一歩先んじてきたアメリカにとって、地球シミュレータの登場は青天の霹靂だったようだ。

 「米国では当時、真珠湾攻撃になぞらえる報道もありました」(日本の業界関係者)

 もちろん、それで引き下がるアメリカではない。地球シミュレータは昨年6月まで、5期連続でトップの座を守ったのだが、今年6月には4位に転落した。136テラフロップスに達した米ローレンスリバモア国立研究所の「ブルージーン/L」(IBM社製)が首位を奪い返し、2、3位もアメリカ社製が占めたのだ。

 この日米の首位争奪戦、なぜ、ここまで熾烈にと思えるが、

 「現在のスパコンの速さが、10年後のデスクトップの速さ」

 というのが、業界の常識。日米の先端争いがあるからこそ、コンピューターは着実に進化を遂げているのだ。

 ただ、NECの古井利幸HPC販売推進本部長は、こう言う。

 「米国では、国防省やエネルギー省がスポンサーになってスパコンの研究開発を行っています。日本に抜かれても、すぐに抜き返すだけの力を持っています」

 だから、日本のメーカーは不利だというのだ。

 スパコンの応用範囲は広い。環境の変化を解析する地球シミュレータは、ほんの一例に過ぎない。宇宙開発、油田探査、遺伝子解析、核融合、自動車設計、創薬と、高度な科学計算を必要とするあらゆる分野で利用されている。アメリカにはポテトチップスの形を“デザイン”するのに用いる食品メーカーもあるというから、驚く。

 問題は、アメリカが「軍事利用」に重点を置いていること。世界一のブルージーン/Lも、模擬実験によって核兵器の威力を確かめたり、ミサイル弾道を計算したりするための“軍用”だから、国の資金援助が手厚い。

 軍事目的のスパコン開発は「日本ではあり得ないこと」(古井氏)なのだが、ある業界関係者によると、こういう事情もあるらしい。

 「日本政府は投資もせずに、『すごいスパコンが出来上がったら、それを買ってやる』という姿勢でこれまでやってきた。利の薄い分野だから、政府の後ろ盾がない日本のメーカーは、開発に消極的になったんです」

 しかし、そんなメーカーの苦衷を察したのか、日本政府も、その重い腰を上げ始めている。

 文部科学省は今年に入って、1秒間に1兆の1万倍、1の隣にゼロを16個並べる1京回の計算ができる世界最速のスパコン「京速計算機システム」の開発に乗り出すことにした。1000億円を投じ、2010年度の完成を目指すという。

 日米のスパコンはこれまで、年147%の割合で計算速度を増してきており、テラフロップス級から「ペタフロップス」(1秒間に1兆の1000倍回)級に進化するのは「09年ごろ」というのが、大方の予想。それを、一気に10ペタフロップス(1京回)に引き上げようというのだから、日本のプロジェクトも、なかなか大胆なものだ。

 この「夢のスパコン」が完成すると、アジア地域に限られていた1平方キロ単位の気象予測が地球全体で可能になるほか、自動車衝突模擬実験のデータ解析に要する時間も数か月から1日に短縮されるという。

猛追する中国、しかし…

 日米がしのぎを削るなか、目立つ存在になり始めているのが、中国だ。

 現在、中国国内の最速スパコンは、中国気象局が気象予測などに利用しているものだが、これはIBM社製。独自開発のスパコンとしては、上海超級計算センターに設置されている「曙光4000A」(曙光信息産業有限公司製、10テラフロップス)が最速で、運用が開始された04年の時点では、「トップ500」の10位にランクイン。現在は31位にまで落ちている。

 日米の最高水準には遠く及ばないが、テラフロップス級のスパコンの開発に成功したのは、中国が日米に次いで3番目だ。

 これに気を良くした中国は、「08年に世界3位」の目標を掲げ、100テラフロップス級のスパコンの開発に着手。10年には1ペタフロップスを実現したい、という。

 海洋研究開発機構・地球シミュレータセンターの佐藤哲也センター長は、

 「中国が上位に食い込むのは、もう時間の問題でしょう」

 としたうえで、こう言う。

 「中国は、すでに知られている技術を利用しているだけ。まだ、取るに足りません」

 中国は目下、コンピューターの心臓部である中央演算処理装置(CPU)に国産の「龍芯」を導入して上位を目指す方針。しかし、日本の業界関係者も、

 「まだ、とても無理でしょう」

 と、すげない。

 とはいえ、中国がスパコン開発競争に本格参入したことで、日米に心配が広がっているのも確か。中国製の性能が高まれば高まるほど、軍事、産業開発、科学研究と、日米がこれまでリードしてきた分野に、中国の“脅威”が拡散するからだ。

 米ニューヨーク・タイムズ紙(8月19日付)は、日米中のスパコン開発競争を「軍備競争」になぞらえ、ある米スパコン開発業者の話として、

 「(この競争は)各国のプライドの問題になりつつある。プライドにかかわるから、日本はここまでやってこられたのだし、今は中国がトップクラス入りを目指しているのだ」

 と伝えている。三つどもえの覇権争いは、まだ始まったばかりだ。

世界最速スパコン開発へ、1秒間に1京回の計算

2005年08月07日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 文部科学省は、1秒間に1京(けい)(1兆の1万倍)回の計算ができる世界最高速のスーパーコンピューター「京速計算機システム」を開発する方針を決めた。

 来年度予算の概算要求に研究開発費や設計費として30億〜40億円を盛り込む。2010年度完成を目標とし、スパコンを置く研究拠点として「先端計算科学技術センター」を新設する。総事業費は1000億円規模に上る見通し。立地は未定で、今後、大学や研究機関の間で誘致合戦が起きそうだ。

 独立行政法人・海洋研究開発機構が持つスパコン「地球シミュレータ」は約600億円をかけて開発され、2002年に運用が始まった。昨年まで計算速度世界一の座を保ったが、危機感を抱いた米国政府がてこ入れした結果、IBMなどが高速機を開発、現在、単純計算能力の比較では世界4位に転落している。

 日本は、京速計算機で、単純計算能力で世界1位を奪還するとともに、実際の研究で求められる複雑な計算をこなす実効性能でも世界最高を目指す。

 実際、地球シミュレータなどの現機種と比べると、処理速度はけた違いに速くなる。アジア地域が限界だった1キロ・メートル四方の気象予測が、地球全体で可能になり、集中豪雨や津波の予測も、100倍の精度にあがる。数分でマグマの動きを計算できるため、火山溶岩流による被害を軽減できる可能性も出てくる。数か月かかっていた自動車衝突模擬実験のデータ分析を、1日でできるという。

地球シミュレータ後継機の計画、発表

2005年07月29日 Slashdot

 Anonymous Coward曰く、" NewsScientist の記事は、 地球シミュレータの後継として史上初のペタフロップスーパーコンピュータが、 NEC、日立、東大、九州大、理化学研究所により共同開発されることを報じている。地球シミュレータ同様、気候や宇宙生成のシミュレーション、そして新薬開発が主目的となる。発注元は文部科学省で、性能は 10PFlops (=10,000TFlops、 現行の地球シミュレータは約36TFlops) 、費用は最大 900 億円程度の見込み。

 現在最速のスーパーコンピュータは IBM、米政府共同開発の Blue Gene/L (137 TFlops)で、読者周知の通り、地球シミュレータの首位に危機感を抱いた米国が首位奪還を目指して核兵器開発用に発注したもの。このペタフロップ機の計画発表により再度の首位争いが活発化すると考えられている"

次世代スパコン、目指すは最速「1秒1京回」 文科省

2005/07/25 The Sankei Shimbun

 文部科学省は25日までに、最大演算速度が10ペタフロップス(1秒間に1京回=1京は1兆の1万倍)の次世代スーパーコンピューター「京速計算機システム」の設計、開発に着手することを決めた。

 2006年度概算要求に研究費数10億円を盛り込む。総事業費は800億−1000億円に上る見込み。10年完成を目指し、米国のスパコンが持つ世界最速のタイトル奪還に挑む。

 また、京速計算機システムの運用を担う「先端計算科学技術センター(仮称)」の設立方法や建設場所について調査研究も始める。

 現在の世界最速スパコンは、米ローレンスリバモア国立研究所のスパコン「ブルージーン」で、136・8テラフロップス(1秒間に約136兆8000億回)。京速計算機が完成すれば、この約73倍の処理速度を持つことになる。

 日本が02年から運用を開始した「地球シミュレータ」は、04年までの2年半、35・9テラフロップスで世界最速を誇っていたが、05年6月現在で世界第4位に後退している。

 高速のコンピューターによるシミュレーションは、再現が困難だったり、時間がかかりすぎたりする実験の代わりとして、現代の研究活動には不可欠。新薬開発のための模擬実験や、銀河系形成のシミュレーション、台風進路や集中豪雨の詳細な予想などが期待される。

 米国も10年をめどに数ペタフロップスのスパコン開発を目指しており、競争は激化している。(共同)

中国、次世代スパコン開発へ 世界3強入り目指し

2005年07月14日 2005年07月14日「人民網日本語版」

国家智能計算機研究開発センターと曙光信息産業公司は12日、演算速度100テラフロップス級(毎秒100兆回)の次世代高性能コンピューターの開発プロジェクト始動を発表した。双方は、国産CPU「竜芯」を部分的に採用し、2008年ごろに世界ベスト3に入る高性能コンピューターの開発を目指す。2010年ごろには演算速度1千テラフロップス級のコンピューター開発をスタートする計画だ。

中国が開発した演算能力10テラフロップス級のスーパーコンピューター「曙光4000A」は一時、世界ベスト10にランクされたが、最近は31位まで後退している。(編集SN)

最新のスパコン最速ランキング発表--トップ10の半数を新システムが占める

2005/06/23 (CNET News.com) Stephen Shankland

 世界で10本の指に入る最速スーパーコンピュータを開発するのはたいへんな作業だが、それによって得られる名誉はさらに長続きしなくなっている。

 ドイツのハイデルベルグで開かれた国際スーパーコンピュータ会議(International Supercomputing Conference:以下ISC)で、現地時間22日にスパコン世界最速ランキングの最新版が公表された。それによるとトップ10に入ったシステムの半数は、今回初めてランクインしたものだという。またトップ10のうち、6つのシステムがIBM製で、このうちの5つはBlue Geneの設計を利用したものだった。Blue Geneでは6フィートの高さのキャビネット1台につき1024基のプロセッサを搭載できる。

 このスパコン最速ランキングは1年に2回更新されているもので、独マンハイム大学、テネシー大学、米エネルギー省のローレンス・バークレー国立研究所の研究者らが上位500のシステムを選んでいる。同ランキングでは、Linpackというテストでシステムの処理速度を計測する。

 スーパーコンピュータは自動車の設計や医薬品の研究開発などに使われる。スーパーマシンの研究が一般のマシンに影響を与えることもよくある。数多くのローエンドマシンで構成されたクラスタ型のマシンが上位にランクインするケースが増えているからだ。

 同ランキングに登場するシステムの入れ替わりも激しい。今日もっとも遅い500位のマシンでさえ、最初に同ランキングが発表された1993年6月当時の上位500のシステム全体を合わせた処理能力を上回る。また1998年11月のランキングでは、処理性能が1テラフロップスを超えるシステムは1つしかなかったが、いまでは500位までのすべてのシステムが、1テラフロップスを超える性能を持っている。さらに、今回トップになったIBMのBlue Gene/Lの性能は、2001年11月のランキングに入った全システムの合計処理能力を上回っている。

 IBMのBlue Gene/Lは、3月に135.5テラフロップスを記録した後さらに136.8テラフロップスまで記録を伸ばした。IBMでは、同システムの納入先であるローレンス・リバモア国立研究所がBlue Gene/Lの規模を2倍に強化する予定であることから、2005年11月のランキングでも同システムが首位を維持すると予想している。

 「われわれは、Blue Gene/Lの性能が270〜280テラフロップスまで伸びると見込んでいる」と、IBMのDave Turek(高性能コンピューティング担当バイスプレジデント)は述べている。

 Blue Gene/Lよりも小型のWatson Blue Gene (BGW)というシステムは、91.3テラフロップスで第2位にランクインした。このほか、今回のランキングには、合わせて16のBlue Geneシステムがランクインした。

 Blue Geneシステムの価格は1ラックあたり約200万ドルだが、IBMはラックの部分売りもしているとTurekは述べている。同社は現在「Cyclops」(開発コード名)というライフサイエンス分野に向けた別のBlue Geneシステムも設計している。だが、Turekによると「Cyclopsを商用化する計画はない」という。

 今回のランキングでは、IBMのシステムが259と全体の半数を上回っている。なお前回のランキングでは216のシステムがランクインしていた。

 IBMがリードを広げる一方、Hewlett-Packard(HP)のシステムは前回の173から今回は131へと数を減らしている。しかし、高性能コンピューティング分野全体の売上については、HPの方がIBMを上回っている。

 調査会社のIDCによると、2005年第1四半期には、19億ドル規模のこの市場でHPは34%のシェアを占め、IBMの28.2%を上回ったという。また3位以下は、Sun Microsystems(12.3%)、Dell(11.9%)、SGI(2.6%)の順になっている。

 チップメーカーのインテルも今回のランキングで大きな節目を迎えた。トップ500の半数を超える254のシステムが同社のXeonプロセッサを搭載したシステムだった。ただし、ハイエンド向けのItaniumプロセッサ搭載システムは前回の84から79へと数を減らしている。

IBMの「Blue Gene/L」スパコンが記録更新、135.5テラフロップを達成

2005/03/24 (CNET News.com) Stephen Shankland

 IBMのスーパーコンピュータBlue Gene/Lの規模を倍に拡張したところ、その処理性能も2倍となった。米エネルギー省は米国時間23日、同システムが135.5テラフロップ(1秒間に135兆5000億回の計算が可能)の性能を記録したと発表した。

 同システムは2004年11月に、スーパーコンピュータのTop500リストでトップの座に輝いている。Top500リストとは、世界最速のスーパーコンピュータをランキングしたもので、Blue Gene/Lの当時の性能は70.7テラフロップだった。同システムは現在、ローレンス・リバモア国立研究所への移管作業が行われている。

 Blue Gene/Lのパフォーマンス強化は、システムを構成するラックの数を倍の32へと増やしたことで実現した。計画通りにいけば、最終的に同システムは64個のラックで構成されることになり、2005年末には約270テラフロップの性能を実現することになる。

 個々のラックには、1024個のプロセッサが搭載されている。個々のプロセッサには、IBMのPowerプロセッサの特別仕様のものが用いられ、この内部では「コア」と呼ばれる処理エンジンが二重化されている。Top 500 Listのランク付けに利用されるLinpackという基本パフォーマンスのテストプログラムを走らせるために、個々のコアは計算処理に対応できるようになっている。しかし、たいていのタスクを実行する場合、これらのうちの1つは通信処理をつかさどる。

 Blue Geneは、1秒間に1000兆回の計算が可能なペタフロップ級の性能を持つシステムを構築するという研究プロジェクトとして、2000年にスタートしたものだ。IBMは今では、このシステムをビジネスに活用しようとしている。同社は、Blue Gene/Lをラックあたり約200万ドルで販売開始したほか、同システムの処理能力を顧客へレンタルするプログラムを提供している。

 Blue Gene/Lは、IBMが現在力を入れている高性能コンピューティング技術から生み出された製品の1つである。IBMでは、同市場におけるトップの地位をHewlett-Packardから、そしてTop500リストにおけるトップの地位をSilicon Graphics Inc.やNECから守ろうと、躍起になっている。

 IBMでは、フル構成のシステムを今年5月までに導入する予定だと述べており、リバモア研究所広報のDon Johnstonは7月にシステムが立ち上がって稼働を開始するとコメントしている。

 リバモア研究所は当初、Blue Gene/Lの機密プロジェクトでの利用を想定していなかった。しかし、Johnstonによると、その有用性を認識したことから、同研究所では、兵器の研究プロジェクトなどへと用途を拡大することに決定したという。


NEC:スパコンSX-7で世界最高速を達成 東北大に納入

2004/12/22 Mainichi INTERACTIVE
 NECは21日、東北大学情報シナジーセンター(根元義章センター長)に納入したスーパーコンピューター「SX-7」が、HPC(高性能計算)分野の性能テスト「HPCチャレンジベンチマーク」で、28項目中16項目で世界最高速を達成したと発表した。

 HPCチャレンジベンチマークは今年10月初旬から11月初旬にかけて実施された。SX-7シングルノード・CPU数32個で実行した結果、28項目のうち、シングル環境と多重負荷時のメモリ性能で全8項目、プロセス間の転送性能で4項目、シングル環境及び多重負荷時の行列積の演算性能で2項目、FFTの演算性能の2項目の計16項目で世界最高速を達成した。

 HPCチャレンジベンチマークは、米テネシー大学のJ.ドンガラ博士を中心に米国や日本のHPC関係者が参画し作成された性能テスト。高性能計算機の性能を多面的な観点から評価する目的で開発されたもので、演算性能を評価する「連立一次方程式」やネットワーク転送性能を評価「行列の転置」など、7カテゴリー28項目で構成している。

 「SX-7」は、科学技術計算専用のベクトルプロセッサーを搭載し、1つのベクトル命令で配列要素を一括処理できる「ベクトル型」のスーパーコンピューター。東北大学情報シナジーセンターでは03年1月から稼動している。【高木 健一郎】

IBM奪還 NECスパコン、3位転落

2004/11/09 The Sankei Shimbun
 米国とドイツの研究家グループが8日発表したスーパーコンピューターの演算処理速度ランキングによると、2002年6月から首位だったNEC製の「地球シミュレーター」が3位に転落した。首位は米IBM製の「ブルージーン/L」で、IBMはメーカーとして2年半ぶりに世界最速のタイトルを奪還した。

 「ブルージーン/L」は今月4日、1秒間に70兆7200億回の演算処理が可能なことが確認され、「地球シミュレーター」の35兆8600億回を大きく上回った。2位は米コンピューター大手SGIが米航空宇宙局(NASA)に納入した「コロンビア」(毎秒51兆8700億回)が獲得した。

 スパコンは、危険を伴う実験をしなくても核爆発などのシミュレーションが可能なほか、気象変動や遺伝子解析など膨大な計算を必要とする研究分野に貢献している。

 科学者グループは、年2回上位500モデルの演算処理速度をテストして比較、ランキングを発表している。(共同)

IBMの「Blue Gene/L」スパコン、世界最速記録を発表へ

2004/11/05 (CNET News.com)Stephen Shankland

 米エネルギー省は米国時間4日にもIBMの「Blue Gene/L」が世界最速のスーパーコンピュータであることを示すテスト結果を発表する計画であることが、CNET News.comの調べで分かった。

 同省では、IBMのBlue Gene/Lが70テラフロップ(1秒間に70兆回の計算が可能)以上のパフォーマンスを記録したと発表する予定だと、テストに詳しい関係筋が述べている。この数値は、ミネソタ州ロチェスターにあるIBMの研究所で計測された。現在IBMの研究所に設置されている同システムは、来年カリフォルニア州のローレンス・リバモア国立研究所に移管される予定だ。

 スーパーコンピュータのTop500リストは8日に発表される予定だが、Blue Gene/Lのテスト結果はその数日前のタイミングにあわせて発表される。Top500リストとは、世界最速のスーパーコンピュータをランキングしたものである。米政府当局の関係者らは2002年6月以来、35.9テラフロップを記録したNECの「地球シミュレータ」のような日本製マシンが、Top500リストのトップに載り続けていることに関して、しばしばいら立ちを覚えていた。

 他のライバルが現れない限り、今回はBlue Gene/Lがリストのトップに輝きそうだ。IBMでは、この件に関するコメントを控えている。リバモア研究所のある関係者は、この発表が4日に行われる予定であることを認めているが、詳細に関するコメントは断っている。

 このパフォーマンス競争には、自慢のしあいや国家威信の顕示以上の意味がある。米エネルギー庁長官のSpenser Abrahamは今年2004年、米国が科学分野で突出した地位を維持するためには最先端のスーパーコンピュータが必要だと述べている。

 Blue Gene/Lのパフォーマンスは、先週Silicon Graphics Inc.(SGI)が「Columbia」で出したと主張する記録を余裕で上回る。スーパーコンピュータColumbiaはNASAのために構築され、42.7テラフロップのパフォーマンスを誇る。同システムは、フル構成で行った別のテストで51.9テラフロップの記録を出しているが、その結果は一般には発表されていない。

 このことから、ColumbiaがTop500リストの第2位につけることが予測される。Columbiaのパフォーマンスのおかげで、NASAでは5日間分の天気予報の的中率が78%から90%へと向上するほか、さらなる詳細情報を得ることができるようになり、結果伝達の迅速化も図られると、NASAのミッションディレクターでColumbiaにおける科学研究を統括するGhassem Asrarは述べている。

実はもっと速かった--SGIのスパコン、わずか1日で2度の記録更新か

2004/10/28 (CNET News.com)Stephen Shankland

 カリフォルニア州モフェットフィールド発--Silicon Graphics Inc.(SGI)は米国時間26日、NASA向けに構築したColumbiaというスーパーコンピュータが最速記録を更新したと発表したが、実は同日ひそかにこれを上回る記録を残していたことが明らかになった。CNET News.comの入手した情報では、同システムは51.9テラフロップという記録を叩きだしたという。

 SGIはColumbiaを発表した際、同システムの処理速度を42.7テラフロップ(秒間42兆7000億回の演算処理が可能)としていた。これは、世界最速を誇るNECの地球シミュレータ(35.9テラフロップ)や、挑戦者の最有力候補であるIBMのBlue Gene/L(36テラフロップ)を優に上回るスピードだ。

  Columbiaが42.7テラフロップという新記録を叩きだした時には、同システムを構成する20台のサーバのうち、16台しか稼働していなかった。つまり、同システムに搭載される1万240基のItaniumプロセッサのうち、2048基は動いていなかったということになる。しかも、この遊んでいたItaniumは同チップの最新世代に当たるもので、1基につき9Mバイトの高速キャッシュを積んでいると、SGIのCEO(最高経営責任者)であるBob Bishopは説明した。

 Columbiaのテストに詳しい情報筋によると、サーバ20台をフル稼働の状態にした同システムは、51.9テラフロップという速度で一定時間動作したという。また瞬間最高速度は61テラフロップを記録したが、これはIntel社長のPaul Otelliniが9月の時点で予想していた60テラフロップという速度をわずかに上回るものだ。

 世界最速のスパコン開発を目指す各社の競争には各方面から注目があつまっているが、この結果は毎年6月と11月に開かれるスーパーコンピュータ関連のカンファレンスで公表される。主催者のJack Dongrraによれば、最新のTop500ランキングは11月8日に発表されるという。

SGIのLinuxスパコン、世界最速を宣言--公式ランキングは2週間後に

2004/10/27(CNET News.com)Stephen Shankland

 Silicon Graphics(SGI)は、世界最速のスーパーコンピュータを目指す競争で自社のマシンが首位に立ったと主張している。9月にはIBMが同様の主張をしているが、正式な勝者が決定するのは2週間後になる。

 SGIが今年7月にNASAに納入した「Columbia」というこのシステムは、5000万ドルもするLinuxベースのマシンだが、同社はこのシステムが42.7テラフロップ(1秒間に42兆7000億回の演算が可能)という計算処理速度を記録したと26日(米国時間)に発表した。しかし、このスピードもまだ最終的なものではない。NASAのAmes Research Center(カリフォルニア州モフェットフィールド)にあるこのマシンは、搭載されているItanium 2プロセッサ1万240基のうち、まだ5分の4ほどしか使用していないからだ。

 42.7テラフロップという計算処理速度は、IBMが9月に宣言したBlue Gene/Lシステムの36.1テラフロップよりも一段と高速だ。Blue Gene/Lの記録は、2002年以来世界最速スーパーコンピュータのランキングで首位に君臨しているNECの地球シミュレータのそれをわずかに上回っている。

 スーパーコンピュータのTop500ランキングは年2回更新され、次のランキングは11月6日からピッツバーグで開催される「SC2004」というイベントで発表される。

 SGIはスピード競争の王位に居続けられるとは考えていないようだ。「複数のシステムが首位の座を目指して競争しているのは間違いない」と、SGIのDave Parry(サーバおよびプラットフォームグループ担当シニアバイスプレジデント)は述べている。「IBMはもう少し調整を加えて、性能を若干上げてくるかもしれない」(Parry)

 SGIはここしばらくの間、1990年代に手にしていた素晴らしい性能と名声を取り戻そうと躍起になっている。当時同社のハイエンドコンピュータは、映画「ジュラシックパーク」のデジタルアニメーションなど、負荷の大きな画像処理で卓越した性能を誇っていた。しかし、Intel製プロセッサを採用したおかげで同社マシンの性能は向上したと、NASAのAdvanced Supercomputing Centerの部門長、Walt Brooksは述べ、Itaniumマシンは同等のSGIモデルより6倍高速だと付け加えた。

 現在大半のスーパーコンピュータは、多数のローエンドマシンを使って構築したクラスタとなっているが、SGIのシステムはそうではない。ColumbiaはInfiniBandという高速ネットワーク技術で接続された20台のマシンで構成されており、個々のマシンがそれぞれ512基のプロセッサを搭載している。そして、1台ごとに1つのオペレーティングシステム(OS)が動作する仕組みになっている。

 この「シングルシステムイメージ」というアプローチは、スペースシャトルの空気動力学をシミュレーションするタスクなどに適しているとBrooksは言う。クラスタでも流体力学のシミュレーションを行うことは可能だが、ただし「こうしたシステムでは非常に効率が悪く、プログラミングも非常に難しい」と同氏は説明している。

NEC、世界最速スパコン製品化 米IBMと最速争い

2004/10/20 The Sankei Shimbun
 NECは20日、演算性能が最大で65テラフロップス(1秒間に65兆回)と、世界最高速となるスーパーコンピューター「SXシリーズ モデルSX−8」を製品化したと発表した。

 大規模な計算に適したスパコンは、同社の「地球シミュレーター」が35・86テラフロップスで最速だったが、9月には米IBMが36・01テラフロップスの動作を確認し、「最速争い」が繰り広げられている。

 SX−8の速度は、512台のスパコンをつなぎ合わせたと仮定した場合の理論上の数字だが、NECは、理論値に比べて若干劣る実効性能で55テラフロップス程度の速度は確保できるとしている。

 既にスパコンが活躍している気候変動予測のほか、自動車の衝突シミュレーション、新素材開発への導入が見込まれ、商品の開発期間の短縮などの効果が期待できる。

IBMのスパコン、世界最速記録を更新--NECの地球シミュレータを上回る

2004/09/29 (CNET Japan編集部)坂和敏

 The New York Times紙が28日(米国時間)に伝えたところによると、IBMが「世界最速のスーパーコンピュータ」のタイトルを奪還したという。これまで最速とされていた日本の「地球シミュレータ」(NEC製)が2002年に新記録を叩き出した際には、米政府当局の関係者の間に激震が走ったが、今回のIBMによる更新で、再び米国側に王座が渡ったことになる。

 今回のテストに使われたのはIBMの「Blue Gene/L」というマシンで、1秒間に36.01テラフロップ(36兆100億回の演算処理)を記録し、これまで地球シミュレータの持っていた35.86テラフロップをわずかに上回った。なおベンチマークにはLinpackが使われたという。

 Blue Gene/Lはもともとバイオテクノロジー等の分野での利用を目的に開発されたもので、カリフォルニア州にあるローレンス・リバモア国立研究所には来年この大規模版が納入されることになっている。このマシンには合わせて13万基のプロセッサが搭載される予定だが、それに対して今回記録を更新したマシンは、1万3000基しかプロセッサを積まないプロトタイプだったという。

ベクトル型スーパーコンピューターの将来は?(上)

2004/08/30 Wired News/ Nancy Gohring

 科学技術用の数値計算などに適したベクトル・プロセッサーを使用して、大量のデータを処理するために作られた初期のスーパーコンピューターが、再び米国で広範に販売されるようになった。だが需要がどのくらい続くかは不透明だ。

 現在は、市販のコンピューターをつないで構成された比較的安価なクラスター型が、スパコンの大部分を占める。しかし、ベクトル型コンピューターを敬遠するこのような傾向が、今後の研究活動に損失を与えるのではないかと懸念する研究者もいる。多くの研究者は、ベクトル型コンピューターがきわめて複雑な問題を処理する能力で勝ると考えている。

 クラスター型スパコンの概念は、1990年代半ばに米クレイ社――最初のスパコンを開発した会社とされることが多い――が米SGI社に買収されたときに登場した。主に資金と特許が目的でクレイ社を買収したSGI社は、即座にベクトル型スパコンの開発を打ち切り、独自のスパコン技術に力を注いだ。それ以降、米国でベクトル型スパコンを購入するのはほぼ不可能となった。

 オークリッジ国立研究所の計算科学センターで科学アプリケーション・サポート・グループの技術リーダーを務めるトレイ・ホワイト氏は、「われわれはここ数年、足踏み状態だった」と語る。同研究所では、研究の大部分をベクトル型スパコンに依存している。

 クレイ社がスパコンの開発を停止していたのと同じ時期、取引規制により、残る唯一のベクトル型スパコン開発企業だった日本のNECから輸入される製品に454%の関税が課されることになった。これによりベクトル型スパコンの価格は非常に高くなったため、米国での購入は実質的に不可能になった。この関税をかける原因になったのは、不当な低価格にまで製品をダンピングしているとして、クレイ社がNECを訴えた裁判だった。さらに、クレイ社の最大の顧客だった米国政府は、兵器など国家機密にかかわる研究に使用されることの多いスパコンを外国企業から購入することに乗り気でなかった。

 米国はこの間にスパコン技術における世界のリーダーとしての地位を失い、一方の日本は世界最速・最強のスパコン『地球シミュレータ(日本語版記事)』の構築に取り組んだ。それでも米国は、完全に活動を停止していたわけではなかった。米国の企業や研究者たちは、市販のコンポーネントをつなぎ合わせることにより、巨大なコンピューターを構築してベクトル型スパコンの代わりに利用するという構想を発展させた。

 「米国がクラスター型に集中したことは、低価格帯には劇的に貢献したが、高価格帯を弱体化させることになった」とホワイト氏は述べる。

 現在ではクラスター型がスパコンの大部分を占めており、開発企業各社はクラスター型にできないことはないと主張している。

 ベクトル型スパコンの市場は、NECとクレイ社だけが取り扱う狭い市場に縮小してしまった。SGI社は2000年、クレイ部門を米テラ・コンピューター社(ワシントン州シアトル)に売却したが、テラ・コンピューター社はその際に社名をクレイ社に変更している。だが、ベクトル型スパコンの一部ユーザーは、特定の種類の問題はベクトル型でなければ解決できないと述べている。ベクトル型スパコンの市場が過度に縮小した場合、メーカーが存続できなくなるのではないかとの懸念を口にすることもある。

 ホワイト氏は次のように述べている。「クレイ社が試みているのは、ベクトル型コンピューティングの相対コストを劇的に下げることだ。それがどうなるかは、成り行きを見守るしかない。もちろん私は、実現を願っている。同社の技術はわれわれがなすべき作業にうってつけだからだ」

 クレイ社は、生き残るにはいい状況にあると述べている。同社のピーター・ウンガロ副社長(販売・マーケティング担当)によると、ベクトル型スパコンの市場は、スパコンの市場全体に比べると縮小しているものの、クレイ社のような規模の企業にとってベクトル型の市場は「巨大」だという。小さな企業は小さな市場に向けた特注マシンの製造に集中できるが、米IBM社や米ヒューレット・パッカード(HP)社といった大企業は、大きな市場に向けてすでに製造した市販のコンポーネントを活用しようとする傾向が強いというのだ。

 それでもクレイ社は最近、925人の従業員のうち100人近くをレイオフし、第2四半期の売上は約65%減少した。同社ではこの後退を、政府の発注の遅れと、来年に新製品を市場に出すための準備期間が原因だと説明している。[日本語版:平井眞弓/高森郁哉]

ベクトル型スーパーコンピューターの将来は?(下)

2004/08/30 Wired News/ Nancy Gohring

 停滞期にあるとはいえ、クレイ社は市場のニーズに合わせる努力を続けている。新製品の中には、市販の部品を自社の特注コンポーネントに組み合わせるものもある。完全な特注マシンよりも多少価格が安くなるこのようなコンピューターを販売することにより、クレイ社は経営を維持できるかもしれない。

 「ベクトル型コンピューターがこれまで同様の高値に留まった場合、市場が支えてくれるとは思わない」と、ホワイト氏は述べる。現在、クレイ社のベクトル型スパコンの価格は、低価格帯で400万ドル、高価格帯だと数千万ドルだ。

 それでも、市販のコンポーネントを集めた価格の安いクラスター型がスパコンの大部分という状況が今後も続くという見方で、大半の専門家は一致している。意見が分かれるのは、それが問題になるかどうかという点だ。

 HP社のハイパフォーマンス・テクニカル・コンピューティング部門の製品・技術マーケティング担当責任者、エド・ターケル氏は次のように語る。「クラスター型の普及が原因で研究に悪影響が出ると言う人々がいる。この中には見解の相違に過ぎないものもある」

 たとえば、オークリッジ国立研究所ではベクトル型スパコンを、大量のデータを扱うだけでなく複雑なシミュレーションも伴う気候モデリングなどの問題に利用している。ホワイト氏によると、このような問題はクラスター型コンピューターでは効果的に処理できないという。

 「クラスターをどれだけ巨大にしても同じことだ。アプリケーションの速度は落ち、同期や通信にばかり時間を費やすことになる」とホワイト氏。

 ホワイト氏は、クラスターを構築できる規模には限界があると考えている。IBM社の『ブルー・ジーン/L』――現在構築が進められている巨大なスパコンで、13万個のプロセッサーを搭載し、ローレンス・リバモア国立研究所に納入される予定――でさえ、ある種の用途では計算できない可能性があるとホワイト氏は言う。

 一方、安価なクラスター型スパコンの各メーカーは、ベクトル型コンピューターができることなら何でもできる――あるいはすぐにできるようになる――と話している。

 特注部品と市販部品を組み合わせてコンピューターを製造しているSGI社のサーバー・マーケティング担当責任者、ジェフ・グリーンウォルド氏は、「数年後に登場する次世代のスーパーコンピューティングは、ベクトル型が処理する作業負荷をさらに効率的に、費用効果の高い方法で迅速に処理できるようになる」と話す。

 HP社も、クラスター型コンピューターはベクトル型コンピューターが現在処理している問題のほぼすべてを処理できると考えている。クレイ社のウンガロ副社長でさえ、クラスター型コンピューターはベクトル型コンピューターの代わりに使えると話すが、1つ問題があるという。

 「ベクトル型の代わりにクラスター型を使うことは可能だ。問題は、それがどれだけ効率的かだ」とウンガロ副社長。

 ベクトル型スパコンは、森林火災がどのくらい広がるかを予測するなど、処理にかかる時間が問題になる場合に使用されることが多い。コンピューターが十分な速度で計算できなければ、どこまで延焼するかをコンピューターが予測する前に燃え広がってしまう。

 「2時間ではなく6時間かかるとすると、3倍の速度で処理できることの価値がどのくらいあるかが問題になる。人々を避難させ、命を救うことができるか、ということだ」とウンガロ副社長は言う。

 業界がベクトル型スパコンを不要だと判断するかどうかにかかわらず、最も重要な要素は、豊富な予算を使える米国政府の判断ということになるのかもしれない。政府機関はベクトル型スパコンを使って、兵器の効果のシミュレーションを行なっている。

 米フォレスターリサーチ社の主席アナリスト、フランク・ジレット氏は、「どんな値段でも政府がベクトル型スパコンを購入するのであれば、完全に姿を消すことはありえない」と語った。[日本語版:平井眞弓/高森郁哉]

米海軍、IBMから複数のスパコンを購入

2004/07/28 (CNET News.com)Stephen Shankland

 米国防省は、海軍シミュレーション用として、IBMから20テラフロップの処理性能を持つスーパーコンピュータなどを購入する契約を交わした。IBMが27日(米国時間)に明らかにした。

 「Kraken」というこのシステムは、秒間約20兆回の計算を処理できる性能になると見られている。これは海軍海洋学局(Naval Oceanographic Office)が購入する2つのシステムの片方にあたる。IBMの話ではこの契約の金額は数千万ドルに上るという。

 フラッグシップとなるこのシステムは、プロセッサを8基搭載したp655マシンを386台つないだクラスタで、チップにはIBMのPower4+プロセッサ、またOSにはIBM版のUnixであるAIXが採用される。これにはまた55テラバイトのディスク容量をもつFastTストレージシステムも含まれる。もうひとつの、より小型なスーパーコンピュータのほうは、プロセッサ8基搭載のp655を64台つないだシステムで、処理速度は3.5テラフロップとなっている。

 海軍の同局では、これまでもいくつかのスーパーコンピュータを導入したことがあり、たとえば2001年にはCrayからSV1exを、また2002年にはIBMのBlue Oceanというシステムを購入した経緯がある。

中国、スパコン開発トップ10に登場 日米の競争に参入

2004/07/26 asahi.com

 世界最速の計算能力をめぐり日米がしのぎを削ってきたスーパーコンピューターの開発競争に、中国も名乗りを上げた。スパコンの能力比較で権威ある「TOP500」コンテスト(米テネシー大など主催)の今年上半期版で、中国・曙光社製のスパコン「曙光4000A」が10位に入った。日本を除くアジアでは初めてで、三つどもえの激戦も予想されている。

 コンテストでは、決められた巨大な連立方程式を解く能力が競われる。1位は横浜市にあるNEC製の「地球シミュレータ」が、02年から5回連続で維持。35.86テラフロップス(毎秒約35兆回浮動小数点計算ができる性能)で、2位の米ローレンス・リバモア国立研究所の19.94テラフロップスに水をあけた。上海の曙光4000Aは8.06テラフロップス。

 日本勢は理化学研究所のスパコン(富士通)も初参加で7位に。富士通でスパコン開発を手がけた三浦謙一・国立情報学研究所教授は「6位に英国も入り、地球シミュレータ以外は米国勢だけだった昨年下半期と大きく様変わりした」と話す。

 米国政府が来年までに地球シミュレータを上回るスパコンを開発すると宣言。IBMなどが別に180テラフロップスを目標に開発を進めている。日本でも新たな開発の必要性を指摘する声があり、中国の登場で競争はますます激化しそうだ。

 三浦さんは「曙光の情報は少ないが、米国製半導体を使ったと聞いている。中国が今後、どのような分野にスパコンを活用していくのかも注視したい」と話している。

〈スパコンテストのトップ10〉

(1)地球シミュレータセンター(日)

(2)ローレンス・リバモア国立研究所(米)

(3)ロスアラモス国立研究所(米)

(4)IBM−ロチェスター(米)

(5)NCSA(米)

(6)ECMWF(英)

(7)理化学研究所(日)

(8)IBM−トマス・ワトソン研究所(米)

(9)パシフィック・ノースウエスト国立研究所(米)

(10)上海スーパーコンピューターセンター(中)

世界最速スパコンを国産車開発に活用

2004/06/18 読売新聞 Yomiuri On-Line
 大気や海水の循環など地球環境を丸ごと再現できる世界最速のスーパーコンピューター「地球シミュレータ」(横浜市)を、国産自動車の開発に活用するプロジェクトがスタートした。

 文部科学省所管の独立行政法人海洋研究開発機構は17日、自動車メーカーでつくる日本自動車工業会と共同研究契約を締結したと発表した。今月から約2年間、自動車の空力特性や騒音、車体の振動、エンジン内の燃焼などのシミュレーション(計算機による模擬実験)に使用する。

 自動車メーカーはこれまでも、市販のスーパーコンピューターで模擬実験を行ってきたが、車体の振動など限られた項目を大ざっぱに計算するだけでも数時間かかることがあり、不便だった。地球シミュレータなら、自動車1台丸ごと模擬実験したとしても、瞬時に結果を出力できるという。

 衝突事故など複雑な計算が必要な模擬実験ができるようになれば、試作車を製造する手間が省ける可能性もある。

 共同研究は、同機構がシミュレーション科学の普及と実用化を目指し、自工会側に呼び掛けて実現した。

 ◆地球シミュレータ=1秒間に40兆回の計算能力を持つスーパーコンピューター。大気や海水の循環を地球規模で予測したり、地球内部のマントル対流を計算する目的で、海洋研究開発機構と宇宙航空研究開発機構、日本原子力研究所が共同開発。2002年2月、横浜市の海洋機構横浜研究所に完成した。

世界最速の仲間入りを果たす、中国製スーパーコンピュータ

2004/06/04 (CNET News.com)Stephen Shankland

 中国製の「Dawning 4000A」というスーパーコンピュータが、間もなく更新される最速コンピュータ・ランキングで上位に登場すると見られているが、これは高性能コンピューティングに対する新しいアプローチの持つ地政学的な影響を浮き彫りにしたものだ。

 Dawning Information Industryという、PCからスーパーコンピュータまであらゆる製品を手がける中国のメーカーが、中国の研究機関や企業向けに、このDawning 4000Aを構築している。同システムには、Advanced Micro Devices(AMD)のOpteronプロセッサが2000基以上使われている。世界のスーパーコンピュータをランク付けしたトップ500のリストは、6月22日に最新版が発表されるが、Dawning 4000Aはこのリストで上位にランクインしそうだ。

 「Dawningでは同システムが上位15位以内に食い込むと予想している」と、AMDの高性能コンピューティング部門でマーケティング担当マネージャーを務めるGuy Luddenは述べている。

 AMDが2003年にDawning 4000Aを発表した際、その動作速度は10テラフロップ(1秒間に10兆の計算が可能)を上回るとしていた。最新のTop500スパコンリストによれば、10テラフロップ以上の性能を持つシステムは現在3台しかない。ただし、今月更新される同リストでは、10テラフロップ超のシステムがさらに増えると見られている。

 優れたスーパーコンピュータ技術を持つ米国のような国々では、核兵器設計や通信用暗号解読へ転用されることをおそれて、高性能計算技術の輸出を長い間制限し続けてきた。だが、新しいアプローチ--数多くのローエンドのLinuxシステムを高速ネットワークで接続した、高性能コンピュータクラスタが登場したことにより、広く普及するごく普通の技術を使って、スーパーコンピュータをつくれるようになってしまった。

 この新しいアプローチが、Top500リストのランキングに大きな変化をもたらしている。このリストは年2回更新されているが、6月22日から始まるInternational Supercomputer Conference(ISC2004)に合わせて発表予定の次のランキングでは、大幅な順位の変更があると見られている。

 35.8テラフロップの速度を持つNECのEarth Simulatorは、2002年6月以来、同ランキングで首位を守ってきている。しかし、今年11月の同リスト更新時には、サンディア国立研究所で稼働するCrayの「Red Storm」がその座を奪うことになるかもしれない。Crayのこのシステムは、40テラプロップの動作速度になると見られている。

 6月更新のリストで上位に入りそうなのは、California Digitalがローレンス・リバモア国立研究所に納入した「Thunder」で、Itanium 2プロセッサを4000基以上を使用したこのシステムは、すでに19.9テラフロップの速度を叩き出している。

 また、ロスアラモス国立研究所にあるLinux Networx製の「Lightning」というクラスタシステムも、10テラフロップを超えると見られている。

 オークリッジ国立研究所では、従来型の設計手法を用いたCray製のシステムが構築される予定だが、こちらは50テラフロップに達すると見られている。さらに、ローレンス・リバモア研究所で導入を予定しているIBMの Blue Gene/Lを使ったクラスタは、2005年に360テラフロップの速度に達するという。製造元のIBMでは、このシステムが必ず世界最速になると自信を示している。

IBMがスーパーコンピュータに賭ける理由

2004/01/08 (CNET News.com)Michael Kanellos

 米IBMのT.J. Watson Research Centerのシステム担当バイスプレジデント、Tilak Agerwalaはスーパーコンピュータが抱える問題の解決に取り組んでいる。

 様々な大学や国立研究所とのプロジェクトを通じて、Agerwalaはスーパーコンピュータや高性能クラスタの設置コストと、利用コストを軽減する方法を模索中だ。

 例えばPERCS(Productive、Easy-to-use、Reliable Computing System)プログラムは、様々なアプリケーションに合わせ自らを最適化できるマシンを作ろうという発想で生まれた。複雑な研究プロジェクトに必要なプログラムの開発時間を短縮し、毎秒1000兆回の計算処理(ぺタフロップ)を可能にするものだ。

 TRIPS (Tera-op Reliable Intelligently Adaptive Processing System)では、IBMとテキサス大学が、毎秒1兆のアプリケーションを動かせる「チップ上のスーパーコンピュータ」を研究中だ。

 Agerwalaは、システム設計者が直面する問題と次に現れる大きな課題について、CNET News.comに語った。

---業務の概要を教えてください。

 サーバ、スーパーコンピュータ、組み込みシステムに関する、高度のハードウェア及びソフトウェア技術を開発する責任を負っています。非常に広範囲に及ぶもので、回路から、自動制御ツール、マイクロプロセッサのアーキテクチャ、OS、そしてオンデマンドの作業環境まで、全てを見ています。

---システムアーキテクチャに関する動きが、特にハードウェア側で、通常より活発な気がします。実際にそうなのでしょうか、それとも単なる私の気のせいでしょうか。

 私は、今は非常に面白い時期だと思っています。高性能コンピュータに今、特に注目する必要があります。それは、現代科学技術において高性能コンピュータが中心的役割を果たしているからです。

 急激な性能改善がこのことを牽引しています。我々は、以前より複雑な問題をより多く、しかも低コストで堅実に解決できるようになりました。これにより、3つの異なるインパクトを与えることができます。複雑な問題を解決して経済成長を可能にする、産業や科学を進展させる、コンピュータに関連するミッションクリティカルな国家的問題に取り組む、の3つです。

 物事には集束するポイントがあると思います。つまり、高パフォーマンスのコミュニティが、国防に関する課題に取り組みながら、経済成長を加速させることは実際に可能だと思います。

---IBMのスーパーコンピュータの研究にはどのように関連していますか。

 ここでも、我々の目標は確かに3つあります。経済成長を促進するために複雑な問題を解決したい、科学技術を発展させたい、そしてコンピュータに関連するミッションクリティカルな問題を解決したいと考えています。これは、様々な要素に置き換えられます。低コストで複雑な問題を解決する、非常に広範な一連のアプリケーションに関する問題を解決する、そして政府機関や学究機関と共同作業を行うといったことです。

 我々の戦略はまず、パワーに重点を置いた高性能コンピュータ商品ラインを積極的に改善することから始まります。この方法は、既存のモデルや技術を最大限に活用できるという利点があります。ムーアの法則を利用し、ソフトウェア標準を利用するようなものです。ASCI Purpleが、この分野における我々の旗艦商品です。

 戦略の2番目の部分は、大容量、低コストのビルディングブロックで構成される高性能クラスタを開発することです。これは標準プロセッサや相互接続などを基盤とします。3番目は、高度な研究開発を行い、斬新なアプローチや設計を実施することです。

---Blue Gene/Lのようなものですか。

 はい、Blue Gene/L、TRIPS、そしてPERCSです。

 Blue Gene/Lは、本来は次世代クラスタの部類に入るものです。ただ、Blue Gene/Lは大量の並列処理の限界点を押し上げます。新しいプロセッサ設計と革新的なネットワークを組み合わせ、性能と処理密度と消費エネルギーを最適化するのです。これは、本当にコスト効率の良い処理方法で、そういった意味では(NECの)地球シミュレータと大きく異なります。

---PERCSはどうですか。

  PERCSでは、2010年という時間軸で当社の主要商用システムに必要となる、高度なハードウェア、ソフトウェア技術を開発中です。Blue Geneでは2004年末、Lawrence Livermore National Laboratoryに3分の1ペタフロップを提供する予定ですが、PERCSはずっと先の話です。ここでも、商用化が目標です。

 PERCSでは、アプリケーションの要求に合わせてハードウェアとソフトウェアのコンポーネントを設定するような適応性の高いシステムを模索中です。この適応性により、システムの技術効率と使いやすさが向上します。

---それはどう考えればよいのでしょう。複数のプロセッサが、異なるOSやアプリケーションに合わせてほぼ瞬時に切り替わるシステムということですか。

 プロセッサだけではありません。キャッシュ構造をいかに適合させるか、アプリケーションの動的要求に応えるために、変化をチップ上にいかに再構成するかなど、多くの異なる課題に開発陣は取り組まねばなりません。そして2004年中か近年中には、正しい手法について何らかの結論を出さねばなりません。

---究極的には、どんな種類の問題を解決するのですか。

 (アプリケーションを)見つける時間を短縮します。PERCSには、非常に高度なコンパイラやミドルウェアが含まれます。これによりプログラム開発プロセスの多くの段階が自動化されるでしょう。

 HPCSのPは生産性(productivity)で、性能(performance)ではありません(HPCSはHigh Productivity Computing Systemsの略で、米国防総省高度研究計画局(DARPA)が新世代スーパーコンピュータアーキテクチャを2010年までに開発するために始めた1億4600万ドルのプロジェクト)。ですから、我々のここでの目標は、異なる種類のアプリケーション要件に自ら適合する能力のあるコンピュータを作り出すことです。

 ただし強調したいのは、次の段階は研究段階である点です。IBMはこれらの技術の開発を進め、その技術が与えるインパクトについてより理知的に話ができるようになるでしょう。全体的な青写真はありますが、目標にどこまで近づけるかが見えるまでには、依然として研究課題が山積しています。取り組まねばならない基礎的な課題もいくつかあります。

---御社のシステムで解決したい大きな科学的課題はありますか。すでに遺伝子情報は解析されています。次の大きな課題は。

 私はこの分野に長い間取り組んできました。その理由のひとつは、進化を生む大きな潜在的可能性があるからです。月並みかもしれませんが、IBMはこの種のインパクトを与えることができますし、また実際にインパクトを与えています。天気予報もそのうちのひとつです。生命科学にも非常に興味があります。Blue Geneのプログラムは、たんぱく質の構造という壮大な課題を解くためのひとつの手法として始まりました。また、核処理プログラムのための問題解決にも取り組んでおり、これにより兵器実験をせずに貯蔵されている核の安全性を確認できます。


環境予測:スパコンで地球温暖化を分析 海洋科学技術センター

2002年06月14日 Mainichi INTERACTIVE

 文部科学省の海洋科学技術センターは14日、世界最高速の計算能力を持つスーパーコンピューター「地球シミュレータ」を使って7月以降、地球温暖化の分析など本格的な環境予測に取り組む考えを明らかにした。地震発生メカニズムや、海水温が異常に上がるエルニーニョの研究などにも取り組む予定で、自然災害の予測や防止にシミュレータを役立てる。

 シミュレータは、NECが製造。これまで世界最高速だったスパコンの約5倍の計算能力があり、1秒間に約35兆回の計算ができる。雲の形成など局所的な気象予測から、地球規模での海洋、大気循環などさまざまな観測が可能だ。

 地球表面を約10キロ四方に区切ったデータ分析ができ、1週間分の海面温度のシミュレーションを約4分で計算するという。 【熊谷泰】

人類の持続的な発展に貢献――地球シミュレータが稼働

2002年03月15日 IT media
地球温暖化,異常気象,地殻変動,大気汚染。「地球変動予測を実現することは,人類の持続的な発展につながる」――宇宙開発事業団などが運用を開始した「地球シミュレータ」には大きな期待がかけられている。

 3月11日,宇宙開発事業団,日本原子力研究所,海洋科学技術センターは,多目的スパコン「地球シミュレータ」(ES:Earth Simulator)の運用を開始した。ESは,当時の科学技術庁が1998年度にスタートした同名の計画の一環で,“バーチャル地球”を作り出すことで地球温暖化やエルニーニョ現象など,地球規模の環境変動を解明・予測するのが目的。NECが,3法人と協力,システム開発部隊から半導体開発部隊まで,延べ1000人を動員して5年がかりで開発・納入した。総費用は400億円にのぼる。

 ESは,海洋科学技術センター横浜研究所内のシミュレータ棟(3250平方メートル)に設置。NEC製の1CPU当たり8GFLOPSのベクタープロセッサ8個を1ノードとし,640ノードを接続。プロセッサは0.15μメートルの銅配線プロセスで製造され,約6000万トランジスタを集積している。動作周波数は500MHz/1GHz。

 計算ノード内のメモリは16Gバイト,システム全体では10Tバイトを装備する。NEC製ベクタースパコン「SX」シリーズ用に開発されたUNIXベースOS「SUPER-UX」を超大規模システム向けに強化・拡張して使用する。プログラム開発環境として,自動ベクター化・自動並列化を行うFortran90/HPF/C/C++コンパイラなどが利用できる。

全球的な高解像度シミュレーション

 海洋技術センターでは現在,ESを使って,「高解像度海洋テストシミュレーション」ならびに「超高解像度全球大気循環モデルによる大気シミュレーション」のテスト行っている。

 また,175ノードを使えば,10年間の海洋変動のシミュレーションが約1.6日で実行できるという。「全球規模でこのような微細構造の特徴が出るのは画期的なこと」(地球シミュレータセンター長の佐藤哲也氏)。

 「今までの計算機では,全球的なシミュレーションでこうした渦を高精度で表現することはできなかった。海洋変動のシミュレーションにおける中規模渦の解像は専門家の間でシミュレーションの向上に大きなインパクトを与えるだろう」(同氏)。

 ESに,海洋大循環の解明に向けた成果を期待する佐藤氏だが,ESが本領を発揮するのは,全球大気大循環モデルを用いたシミュレーションでだという。テストシミュレーションでは,全体の半分の320ノードを使って実行性能14.0TFLOPSを記録した。ちなみに,海洋技術センターでは「世界最速」としてESを紹介したが,その後,すぐに東京大学の天文シミュレータ用スパコンがピーク値でESを2割上回る性能を記録した。しかしながらこれについては,「GRAPE-6は天文シミュレーションに特化して重力計算を効率的に行うために設計されているので,ピーク性能に近い性能を出すことができる。ESとは性格をことにするものだ。ただ,汎用的なスパコンについては,ピーク性能ではなく,実行性能で比べたほうがいい」(地球シミュレータセンター利用支援グループの新宮哲氏)と話す。

 佐藤センター長は,このシミュレーション結果について「あくまでも現実に起きているような現象を高解像度・高速で再現できる可能性を探る試験的な実験である」と控えめな見解を示しながらも,「それでも,現象がかなり現実的に再現されており,今後,異常気象や気候変動にかかわるさまざまな大気現象のメカニズム解明や予測可能性の研究に役立つだろう」と意気込みを語った。

 また佐藤氏は,ESのターゲットとして,長期気候変動予測の高精度化,気象災害予測の高信頼化,日本付近の地殻/マントル挙動の解明,地震発生過程の解明などを挙げた。

シミュレート結果をどうする?

 見てきたように,ESの特徴は圧倒的な性能を背景に,高解像度のシミュレーションが行える点である。ただ,高解像度であるがゆえの問題もあるようだ。

 利用支援グループの新宮氏は,ストレージの容量不足を指摘する。「大気のシミュレーションをデータ処理しようとすると,1日分でも数十Gバイト級のデータになってしまう」(同氏)。

 ESのストレージには,キャッシュとして使用するシステムディスクが450Tバイト,データ保存用のユーザーディスクが225Tバイト,ならびにバックアップ用のカートリッジテープライブラリ(CTL)が1.5P(ペタ)バイトがある。「速度の問題から,CLTではなくディスクのほうを増やしたい」(同氏)。

 ただ,新宮氏によれば,単純にディスクの絶対量を増やせばいいというわけでもないようだ。「これだけ高解像度のデータを全部そのままとっておくのは現実的ではない。どんなデータがどういった形で必要なのか。また,どういった形のデータにニーズがあるのかなど,保存方法だけでなく,活用方法も含めてアイデアを出していかなければならない。今後の検討課題だ」(同氏)。

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