2006年06月23日 Japan.Internet.com 著者: David Needle
高速なコンピュータは多くあるが、その上を行くのが IBM のスーパーコンピュータ『Blue Gene/L』(BG/L) だ。
|
米エネルギー省の国家核安全保障庁 (NNSA) と IBM (NYSE:IBM) は22日、世界最速スーパーコンピュータ BG/L が自己記録を更新したと発表した。IBM によると、BG/L は最新実験において、207.3テラフロップス (1秒間に浮動小数点演算を207兆3000億回) という持続的性能を達成したという。これは持続的な浮動小数点演算性能の新記録だ。
|
この記録を達成できた理由について IBM は、BG/L が搭載した『PowerPC 440』プロセッサのデュアルアーキテクチャ浮動小数点演算ユニット (FPU) の長所をより活かすことのできる新しい数値計算ライブラリを、ソフトウェア研究者が開発できたためだと説明している。1年前には、BG/L の持続的な浮動小数点演算性能は100テラフロップスに届いていなかった。
|
BG/L はすでに、最速スーパーコンピュータ上位500リスト『Top500』によって、ピーク性能367テラフロップスを達成した世界最速のスーパーコンピュータと認知されている。Top500 リストは中立的な組織が年2回発表しており、最新版が今月発表される予定だ。今回207.3テラフロップスという持続的性能を達成した BG/L は、13万1072個の PowerPC 440 プロセッサを使っていた。
|
BG/L は、NNSA のローレンス リバモア国立研究所に設置されている。今回の新記録は、国家安全保障に重要な物質科学シミュレーションを行なうためのコンピュータコード『Qbox』上で達成した。Qbox は、第一原理分子動力学 (FPMD) に基づくコードの1種で、温度や圧力が極端に高い/低い条件下における金属の特性を予測するために設計されたものだ。こうした金属の特性予測については、物質科学や高エネルギー密度物理学の研究者たちが、かなり前から取り組んでいる。FPMD に基づくコードは、原子レベルの複雑なシミュレーション用として、冶金学、固体物理学、化学、生物学、ナノテクなどを含むさまざまな科学分野で使われている。
|
|
2006年05月25日 Japan.Internet.com
|
業績不振に悩む米国 Sun Microsystems だが、 2006年5月15日に、米国外では世界最高速のスーパーコンピュータを東京工業大学に設置した、と発表した。
|
同社にとっては過去最大の HPC 案件。
|
TSUBAME と命名されたこのスーパーコンピュータは、デュアルコア AMD Opteron プロセッサ搭載の Sun Fire x64(x86、64bit)サーバーで構成。
|
メモリ容量 21TB 以上、ハードディスク容量は 1.1PB。システム本体には AMD Opteron プロセッサコアを1万480個搭載した Sun Fire x64 サーバーとサンのストレージ装置を使用した。 Solaris 10 と Linux のどちらにも対応できる。
|
NEC のシステムインテグレーション技術とノウハウ、 Sun の Solaris 10 対応 N1 管理ソフトウェアを採用で、システム導入を短期間で終えた、とのこと。ベンチマークテストも終了しており、 6月に発表の今年の世界スーパーコンピュータトップ500ランキングでも10位以内に入ると予想されている。
|
|
2006年03月22日 Japan.Internet.com 著者: David Needle
|
スーパーコンピュータ大手の Cray (NASDAQ:CRAY) が、高性能コンピューティングを新たなレベルに引き上げる計画を明らかにした。
|
Cray は20日、多様な処理技術を単一プラットフォームに統合したスーパーコンピュータを開発すると発表した。同社が「アダプティブ (適応型) スーパーコンピューティング」と呼ぶこうしたシステムは、科学や工学上の問題をより迅速に解決でき、各アプリケーションの要件に適応することで、プログラマおよびエンドユーザーにより大きな生産性をもたらすという。
|
Cray は現在、ベクトル処理や超並列処理といった技術の最大活用に特化した4種類のシステムを提供しているが、これらを1つのシステムに統合し、異なる用途に合わせて最適化するため、ブレード形式や、最終的には複数のプロセッサを備えたプロセッサボードシステムに移行することを目指している。
|
同社の企業戦略担当副社長 Jan Silverman 氏は、取材に対し次のように語った。「単一システムで全てに対応できない現状を踏まえ、当社としては、様々なアプリケーションに適応できるマシンを開発したい。アプリケーションが、その要件に最も適したプロセッサを自動的に選択できるようなものを想定している。各アプリケーションに用いるプロセッサを最適化できれば、5倍から10倍、場合によっては100倍もの性能向上が可能だ」
|
Cray は、コンパイラやその他のソフトウェア開発で蓄えた知識を活用し、アプリケーションを最も適したプロセッサブレードと自動的に組み合わせる技術の実現を目指すという。
|
Cray の計画はまた、プロセッサ大手 AMD (NYSE:AMD) のロードマップにとっても心強いものだ。両社は昨年11月、少なくとも2010年まで提携関係を延長すると発表している。Cray はすでに、AMD 製『Opteron』プロセッサを搭載した『Cray XT3』スーパーコンピュータ、および『Cray XD1』ミニスーパーコンピュータを販売している。
|
両社の提携延長は、Cray が高性能コンピューティング市場に投入する次世代スーパーコンピュータ製品に、AMD の技術を採用することを約束するものだと AMD は述べている。一方で Cray は、自社製のベクトルプロセッサを搭載した『Cray X1E』スーパーコンピュータの開発も続けていく意向だ。
|
|
2006/03/03 ITPro
|
気象庁は2006年3月1日,気象観測データを解析し大気の状態を予測するシステム「COSMETS」の演算ピーク性能を従来機の28倍に相当する21.5T(テラ)FLOPS(1秒間に21兆5000億回の浮動小数点演算)に高めた。同システムにスカラー型スーパー・コンピュータ「SR11000モデルK1」を納入した日立製作所が明らかにした。2001年3月に納入した781G(ギガ)FLOPSの「SR8000モデルB」を置き換えた。
|
SR11000は,米IBMが開発したスカラー型のCPU「POWER 5+」(2.1GHz)を搭載した並列処理型コンピュータ。2005年10月に出荷を開始した。1ノードあたり16CPUのSMP(対称型マルチプロセッシング)構成を採り,最小4ノードから最大512ノードまでを,帯域16Gバイト/秒のクロスバー・スイッチ経由で接続する。512ノード接続時の理論ピーク性能は68.8TFLOPSに達する。価格は2億7720万円から。
|
従来,科学技術計算用途のプロセッサは,ベクトル(配列)を単位として演算するベクトル型が主流だった。浮動小数点計算に強いという特徴がある。また,専用プロセッサを用いるベクトル型は,プロセッサとメモリー間のデータ転送バンド幅を広く取れるため,大容量のデータを複数ノード間で同時に処理する用途に適する。
|
一方,SR11000が採用するスカラー型のプロセッサは,データを単位として演算する汎用プロセッサであり,パソコン向けの既存OSの移植などが比較的容易である。プロセッサとメモリー間の帯域バンド幅が比較的狭いため,例えばサーバー・グリッドを用いた暗号解読などのように,データを分割して個々の独立したノードに演算させる分散処理の用途に向く。
|
SR11000はスカラー型でありながら,米ペンシルバニア州立大学と米国大気研究センターNCAR(National Center for Atmospheric Research)が共同開発した気象予測プログラムMM5(Mesoscale Model 5)においてベクトル型と同等の処理性能を示したという。(日川 佳三=ITpro)
|
|
2006/02/28 The Sankei Shimbun
|
高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)が、素粒子物理のシミュレーションに使うスーパーコンピューターを6年ぶりに更新し28日、報道陣に公開した。
|
演算能力はこれまでの50倍で1秒間に約59兆回の演算ができる約59テラフロップス。3月1日の運用開始時には、海洋研究開発機構の「地球シミュレーター」の40テラフロップスを抜いて国内最速だが、3月中にも東京工業大のスパコンに抜かれる見込み。
|
日立製作所と日本IBMが製作し、設置面積は約146平方メートル、リース料は5年間で約35億円。物質の基本粒子「クォーク」が結合して質量が生まれる過程をシミュレーションすることで、陽子や中性子の質量を精密に計算することが期待できるという。
|
高エネ研の川端節弥(かわばた・せつや)計算科学センター長は「限られた予算の中で最善のシステムを選んだ。より良い結果を出したい」と話している。(共同)
|
|
2005/11/29 The Sankei Shimbun
|
東京工業大(東京都目黒区)は29日、日本最高性能のスーパーコンピューターを来春に導入すると発表した。来年中に、計算速度で世界5位以内にランク入りすることが見込めるという。
|
導入するのは複数のコンピューターを連結させた分散並列型というスパコンで、米AMD社の中央演算装置など、米国、イスラエル、英国の企業のシステムをNECが統合する。
|
来年4月には、最大演算速度が現在国内1位の「地球シミュレーター」の約3倍に相当する110テラフロップス(1秒間に110兆回)に達するとしている。
|
同大は、生命科学や流体力学、天文学などの分野で利用を検討しており、導入を主導した松岡聡(まつおか・さとし)教授(数理・計算科学)は「学生も日常的にスーパーコンピューターを使えるようになる」と話している。
|
現在の世界最速スパコンは米ローレンスリバモア国立研究所のIBM製「ブルージーン」で、1秒間に280兆回の計算ができる約280テラフロップス。次世代機としては、10ペタフロップス(1秒間に1京(けい)回=1兆の1万倍)をにらむ開発競争となっている。(共同)
|
|
2005/11/20(日) 知財情報局
|
〜最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用PJ〜
|
研究振興局情報課は10月26日、平成18年度から開始予定の『最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用』プロジェクトに関し、中核の京速計算機システムの開発主体に理化学研究所を選定した。世界最高の高性能・汎用スーパーコンピュータ(スパコン)を平成22年度に完成させ、先端計算科学技術センター(仮称)を発足させる予定。これによりスーパーコンピューティングに関する研究開発・利用で世界を牽引し続けるという。
|
このプロジェクトは、世界最高性能の汎用スパコンを開発し、計算科学の学術とともに産業分野でも世界を牽引する目的がある。来年度予算要求額で40億円、総事業費では1154億円をかけ、同コンピュータに特化したソフトウエアをはじめ、10ペタフロップス級の京速計算機システムおよびこれの利用を進める研究教育拠点を開発、整備する。地球シミュレータの能力を200倍向上させる計画で世界で類を見ない。開発主体の選定では、複合型汎用スパコン「RSSC」の開発・利用実績や研究環境、アプリケーションの利用実績など6項目の評価でいずれも一位になった理化学研究所に決まった。
|
なお汎用スパコンの性能評価では現在、米国ローレンスバリモア研究所の『BlueGene/L』が世界第一位。日本の地球シミュレーターは同7位にランクされる。また米エネルギー省の国家プロジェクトでは2009年、1ペタフロップス級のスパコンが完成する予定になっている。
|
|
2005/11/15 YAHOO! NEWS(CNET JAPAN)
|
米政府関係者は2年半前、スーパーコンピュータ分野における米国の競争力に不安を感じていた。スーパーコンピュータは、世界中の気象モデリング、分子の相互作用、あるいは核爆発のシミュレーションなどに対応する。
|
しかし、この不安は大げさ過ぎたかもしれない。
|
新たに公表されたスーパーコンピュータのTop500ランキングでは、米国に設置されているマシンの台数が、6カ月前の277台から305台へと増加した。一方で、欧州、中国、および日本に設置されたマシンの台数は減少した。上位35台中34台は米国のメーカーもしくは大学のマシンだった。
|
スーパーコンピュータでは、IBMが引き続き圧倒的なシェアを誇っている。半年ごとに公表されるこのTop500ランキングでは、IBMがトップ3を独占したほか、上位10台中5台までを占めた。全体的に見ると、ランキング入りしたマシンの43.8%を同社が占めた。この数値は、ほかのどのメーカーや大学よりも高い。
|
同社の「BlueGene/L」は、2004年11月にNECの「地球シミュレータ」をトップの座から引きずり下ろすと、その後は3期連続でスーパーコンピュータ世界トップの座を維持している。Lawrence Livermore National Labsに設置されている同コンピュータは、ここ6カ月の間に規模を倍増させ、現在では13万1076個のプロセッサを搭載するまでになった。しかも、同コンピュータは今後も拡張を続ける予定だ。
|
IBMのDeep Computing担当バイスプレジデントDave Turekは、「アーキテクチャの特性として、その限界よりも、むしろ顧客が何を求めるかの方が問題だ」と語っている。
|
BlueGene/Lは現在、1秒におよそ281兆回の計算を処理する280.6テラフロップスをたたき出す。同マシンは、処理能力が100テラフロップスを越える唯一のコンピュータでもある。
|
Top500をまとめる組織はランキングの概要のなかに、「このシステムは、今後数回はTop500ランキングでスーパーコンピュータの世界トップの座を維持し続けるものと思われる」と書いている。
|
ほかの米国系企業の成績も良好だった。Hewlett-Packard(HP)は全体の33.8%を占め、6月の131台から169台へと盛り返した。Dellも「Thunderbird」で5位に付け、トップ10に食い込んだ。Sandia National Laboratoriesに設置されているThunderbirdは、8000個のプロセッサを搭載するスーパーコンピュータ。
|
ランクインしたマシンの3分の2である333台がIntel製マイクロプロセッサを搭載していた。「Intel Itanium」チップ搭載のスーパーコンピュータの台数が激減する一方で、「Intel Xeon」や、Advanced Micro Devices(AMD)の「Opteron」などの64ビットプロセッサを搭載した機種が増加している。
|
|
2005年10月31日 読売新聞 Yomiuri On-LIne
|
米エネルギー省の核安全保障局が、最高で毎秒280兆6000億回の計算処理が可能な世界最速のスーパーコンピューターなど2台を、同省傘下のローレンスリバモア国立研究所に導入し、近く実運用に入ると発表した。これに対し、日本の文部科学省は、毎秒1京(けい)(1兆の1万倍)回の計算速度を持つ次世代機を来年度から開発する計画で、担当機関を理化学研究所に決定。スパコンの「最速王座」をめぐる日米の争いが、新たな局面を迎える。
|
米国で稼働するのは、ともにIBM製で、世界最速の「ブルージーン」と、毎秒100兆回の計算処理ができる「パープル」の2台。核実験全面禁止条約の禁止対象となる地下核実験の代わりとして、精密な核実験シミュレーションを行うのに使われるほか、近年、国防上の課題となっている備蓄核兵器の経年劣化の計算にも力を発揮する。
|
スパコンの計算速度は、昨年6月まで日本の海洋研究開発機構が保有するNEC製の「地球シミュレータ」(毎秒36兆回)が世界一だったが、現在は4位に後退した。これを抜いたブルージーンは、その後も段階的に性能を向上、自己記録を更新していた。(ワシントン 笹沢教一)
|
◇
|
一方、日本が王座奪還を目指す次世代機「京速計算機システム」の開発機関は、大型プロジェクトの実績がある同機構など5機関の中から、理化学研究所に決まった。2010年度の完成を目標に、国が1000億円を投じる巨大プロジェクトが動き出す。
|
スーパーコンピューター
|
膨大な計算を素早く精密に処理できる、高性能のコンピューター。大規模で正確な模擬実験(シミュレーション)に欠かせず、物理学や天文学のような基礎科学から、宇宙工学やハイテク兵器、医薬品の分子設計といった実用分野まで、最先端の研究開発に幅広く使われる。
|
|
2005/10/28(CNET News.com)Stephen Shankland
|
米ローレンス・リバモア国立研究所とIBMは米国時間27日、「Blue Gene/L」スーパーコンピュータを公開し、このマシンが過去の自己記録を塗り替えて、再び世界最速のスーパーコンピュータになったと発表した。
|
IBMは27日、この6万5536個のプロセッサを搭載するマシンが、1秒あたり280.6兆回の計算を処理できる280.6テラフロップスの処理能力を持つことを明かした。この数値はIBMが予想した範囲の上限で、同マシンが半分のプロセッサしかインストールされていない状態で達成した136.8テラフロップスという前回の記録を2倍以上上回っている。
|
さらに同研究所は、Blue Gene/Lに比べて知名度では劣るものの、最大100テラフロップスと同等の処理能力を持つマシンも公開した。この「ASC Purple」は、より一般的なIBMサーバ製品を使って構築されている。ASC PurpleとBlue Gene/Lを合わせると、その費用は総額2億9000万ドルとなる。どちらのマシンも、核兵器のシミュレーションなど、負荷の高い計算処理が求められる各種作業に利用されることになる。
|
どちらのマシンも、その構築には、高性能なネットワークで大量のプロセッサを接続するアプローチが採られている。しかし、両者の間には違いもいくつかある。ASC Purpleに搭載される1万2544個のPower5プロセッサは、個別ではBlue Gene/Lが搭載する特殊なPowerチップより性能で勝る。また、ASC Purpleプロセッサのほうが大量のメモリにアクセスできるため、複雑なシミュレーションを行うことができる。しかし、消費電力はBlue Gene/Lのほうが少なく、またプロセッサの接続には、大規模かつ複雑な集中スイッチではなく、5つの独立したネットワークを集めて使っている。
|
スーパーコンピュータの分野は、かつてはCray、Hewlett-Packard(HP)、Silicon Graphicsなど、研究プログラムの整った企業が独占していた。しかし、主流のプロセッサやネットワークの機能が着実に向上してきたため、大規模な開発プログラムを持たないDellなどの企業もこの市場に参入してきた。
|
Blue Gene/Lは1年前に70.7テラフロップスを達成し、初めてTop500スーパーコンピュータランキングのトップの座に就いた。この速度はLinpackという数理テストによって測定されているが、Top500の主催者は、Linpackによるコンピュータの性能測定に不備があったことを認めている(Blue Gene/LがLinpackを動かすと、各プロセッサが数理計算を行うが、多くのジョブでは、システムのプロセッサの半分がネットワーク処理に割り当てられてしまう)
|
|
[2005/10/18]日経コンピュータ
|
2010年度に稼動予定の国策スーパー・コンピュータ「京速計算機システム」を、理化学研究所(理研)が開発することが事実上決まった。10月11日、文部科学省の情報科学技術委員会 計算科学技術推進ワーキンググループで、約20人の委員が投票を実施。同18日にその結果がまとまり、理研が最高点を獲得したことが分かった。
|
開発主体として立候補していた研究機関は、理研と、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、日本原子力研究開発機構(JAEA)、物質・材料研究機構(NIMS)の5つ。理研は、スパコンの開発実績や、300億円以上の大型プロジェクトの実施実績など、6つの評価指標でいずれも1位を獲得した。
|
今回の結果を受け、同ワーキンググループは10月24日に「京速計算機システムの開発主体に関する提言書」をまとめる予定。文部科学省は、これを受けて年内に理研への開発委託を正式決定する。
|
京速計算機システムは、「地球シミュレータ」の250倍超の処理速度を持つスーパー・コンピュータ。文部科学省はその開発に5年間で約1000億円を投じる計画である。 (本間 純=日経コンピュータ)
|
|
2005/09/28 ITmedia
|
文部科学省が計画している10P(ペタ)FLOPSの世界最速コンピュータ「汎用京速計算機」は、人体丸ごとのシミュレーション解析といったグランドチャレンジに挑む。
|
文部科学省の清水潔・研究振興局長は9月28日、超高速スーパーコンピュータ計画について、都内で開かれたシンポジウムで説明した。ハード、ソフトの両面で要素技術の開発を進め、10P(ペタ)FLOPS=1秒間に1京回の演算が可能な世界最速の「汎用京速計算機」を2010年度に実現するのが目標だ。
|
京速計算機プロジェクト
|
計画は2006年度から2012年度まで7カ年。ソフト、ハードの研究開発を産官学共同で進め、2010年度、TOP500に使われるLinpackベンチマークで、「地球シミュレータ」(35.9TFLOPS)の250倍以上となる10PFLOPSの達成を目指す。10P=1京にちなんで「汎用京速計算機」と呼んでいる。
|
総事業費は、地球シミュレータ(約600億円)の2倍近い1154億円を見込む。文科省は来年度予算案の概算要求に40億5100万円を盛り込む予定だ。来年度はまず、京速計算機システム全般の設計や研究開発に着手。計算科学技術を国家の基幹技術として推進する「先端計算科学技術センター」(仮称)の設立準備調査も行う。
|
ハード開発スケジュール
|
ハードウェア開発は、2006〜2007年度に要求性能調査と仕様検討、性能見積もりを行い、2008年度から回路設計・実装をスタート。2009〜2010年度で京速計算機のシステム全体を製作し、10PFLOPSを達成した上でシステム強化を続けるというスケジュールだ。
|
ハードは各方式を組み合わせた複合型とする案が有力。ベクター型、スカラー型、東京大学の「GRAPE」のような専門計算機型を有機的に組み合わせて使用したり、用途に応じて独立して使うといったアプローチだ。
|
ソフト開発計画
|
ソフト開発ではOSや、グリッドミドルウェア、異機種統合ソフトといったベース部分に加え、京速計算機が挑むグランドチャレンジのターゲットとして、ライフサイエンスとナノテクノロジーの2分野を設定する。
|
ライフサイエンス分野の「次世代生命体統合シミュレーション」では、遺伝子レベルから細胞、器官、骨格、血流など人体を丸ごとシミュレートして解析可能な基盤ソフトの開発を目指す。テーラーメード医療の実現や新規創薬などがねらいだ。
|
ナノ分野の「次世代ナノ統合シミュレーション」では、電子・原子・分子から分子複合デバイスに至るまで、ナノ材料を丸ごと解析できる環境を実現する。グリッドミドルウェアととナノシミュレーションソフトの開発を進めている「NAREGI」プロジェクトの成果をベースに開発する。
|
現状の技術でペタスケールのスーパーコンピュータを建造する場合、プロセッサ−メモリ間やノード間の接続速度(インターコネクト)のボトルネック問題、小型発電所が必要になるほどの莫大な消費電力、ビル1棟分に相当する設置面積──などが解決できない。光接続や低消費電力化といったハード面の要素技術開発に加え、欧米に比べ弱いと指摘される優れたソフトの開発など、京速計算機の実現に向けた課題は山積みだ。
|
国立情報学研究所と文部科学省が共催した「計算科学技術シンポジウム」で講演した清水局長は「ハードルは極めて多いが、国を挙げたオールジャパンでの支援をお願いしたい」と話した。
|
|
2005/09/27 ITmedia
|
地球シミュレータの約250倍となる「汎用京速計算機」を2010年度に実現する国家プロジェクトが動き出そうとしている。巨費を投じて日本が再び最速スーパーコンピュータを目指すのはなぜか。
|
次世代スーパーコンピュータについて議論する「計算科学技術シンポジウム」が9月26日から都内で開かれている。いま、地球シミュレータの約250倍となる超高速計算機を2010年度に実現する国家プロジェクトが動き出そうとしている。1000億円を超える巨費を投じ、日本が再び最速スーパーコンピュータを目指すのはなぜか。最速スーパーコンピュータで目指すのは何か。どう目指すか。研究者や技術者が知恵を絞る。
|
「汎用京速計算機」
|
地球シミュレータの“次”となるスーパーコンピュータ国家プロジェクトが動き始めている。
|
文部科学省は2006年度予算の概算請求に、次世代汎用スーパーコンピュータの設計開発費を盛り込む予定だ。計画では2010年度、地球シミュレータの約250倍となる10P(ペタ)FLOPSの性能実現を目指す。10PFLOPS──1秒間に1京回の演算を行う「汎用京速計算機」だ。
|
米エネルギー省と国防総省が掲げた目標は同時期までに1PFLOPS超。京速計算機はこれをさらに10倍上回る。
|
シンポジウムは国立情報学研究所が主催し、産官学から計算機技術分野の研究者や技術者が出席。28日まで、次世代スーパーコンピュータに必要な要素技術や、科学シミュレーションなどの応用について話し合う。
|
初日には自民党スーパーコンピュータ推進議連の会長を務める尾身幸次・元科学技術制作担当大臣(衆議)も駆け付け、さながら次世代スーパーコンピュータ実現に向けた「総決起集会」(情報学研の坂内正夫所長)となった。
|
技術立国の必須の基礎
|
文科省計画では、新プロジェクトの総事業費は2012年度まで7カ年で1154億円。時に「大艦巨砲主義の戦艦大和」と評されることもある地球シミュレータに投じられた国費は約600億円だ。シンポジウムでは、地球シミュレータの倍近い巨費を投じ、日本が地球最速のスーパーコンピュータを再び目指す理由について議論が交わされた。
|
シンポジウムを主催した国立情報学研究所の坂内正夫所長は「資源のない日本は人と知恵しかなく、科学立国につきる。スーパーコンピュータはIT分野で知恵の結晶すべきターゲットであり、日本がよって立つべき科学技術の基礎となる」と話し、日本が技術立国を目指す以上、スーパーコンピューティング技術は必須だと指摘した。
|
基調講演した筑波大学の岩崎洋一学長も「大きな壁を突き抜けた段階でぶっちぎりトップになるのが真のブレイクスルー。国によるスーパーコンピュータ開発の目的は、科学技術のブレイクスルーの実現だ」と応じた。
|
「知性のあり方」を示すために
<
|
スーパーコンピュータが日米貿易摩擦の舞台となった1980年代であっても、スーパーコンピュータ自体は企業が利益が出せるものではなく、そこで培った技術をメインフレームに投じることで成り立っていたのが実態だ。だがオープン化の進展でメインフレーム市場にも逆風が吹く中、用途が限られたスーパーコンピュータに惜しみなく研究開発費を投じるのは難しい。日立製作所と富士通はベクター方式から撤退し、いまや「SX」のNECが孤高を保つのみだ。
|
こんな状況の中、欧州のように自前のスーパーコンピュータ開発を事実上放棄し、アプリケーションに力を注ぐべきだという考え方もある。
|
だが文科省の藤田明博・大臣官房審議官は「米国の国家主導スーパーコンピュータは軍事目的だ。米国から買う際、最先端のコンピュータを売ってくれるかというと疑問だ。少なくとも数年は遅れてしまうのでは」と話し、科学や産業の基幹技術を米国に依存する危うさについて指摘した。
|
東芝の有信睦弘・執行役常務は「ハイパフォーマンスコンピューティング環境を作っていくプロセッサやOSなどは、その国の知性のあり方を示すものだ。議論をわい小化しないほうがいい」と述べ、スーパーコンピューティングそのものが日本の知性と技術マインドを示すものだとし、単なる効率やコストの論議に陥るべきではないとした。
|
持続的な開発・利用を
|
では日本の次世代旗艦スーパーコンピュータはどうあるべきか。素粒子物理学者として筑波大の「CP-PACS」開発にも関わった岩崎学長は基調講演で、自らの経験をもとに提言をまとめた。
|
地球シミュレータをはるかに上回るペタクラスのコンピューティングは、科学上の「グランドチャレンジ」を解決するための最重要ツールであり、それ自体がグランドチャレンジでもある。実現には(1)解決すべきグランドチャレンジ目標の設定、(2)原点に返った問題のモデル化と計算アルゴリズムの再定式化──などが必要だとした。応用プログラムのゼロからの開発し直しも必要なら敢行すべきだとし、「国民の多額の税金を投入するのならば、それくらいの覚悟は必要だ」と鼓舞した。
|
スーパーコンピュータの規模や配備については「一点豪華主義」を避け、最高速システムに複数の中規模システムを組み合わせていく重層的な配備が重要だとした。最速システムの集中利用による計算効率向上に加え、多様な分野が中規模システムを利用していくことで、計算科学技術全体が持続的に発展していけるという考えだ。
|
「持続的」はスーパーコンピュータ自体の開発でも同様だ。1回限りの国策マシンでは技術に断絶が生じてしまう懸念があるため、ロードマップに基づく継続的な開発が必要だとの指摘だ。ただ、メーカーが多額のコストをカバーするには限界がある。このため、スーパーコンピュータ技術の民生技術への移転、またはその逆──という技術の相互乗り入れを視野に入れていく必要があるのでは、とした。
|
岩崎学長は、国産マイクロプロセッサの開発も提言する。「ITなど、国の根幹をなす技術が米国におさえられていると、本当の意味の独立性は保てない」とし、「困難であってもオールジャパンで追求する価値がある」と話した。米IBMのBlueGene/LはPowerPCがベースであるように、日本が得意な組み込みプロセッサ技術の活用可能性も示唆した。
|
|
2005年09月18日号 YomiuriWeekly
|
驚異的な速さで科学計算を行う「スーパーコンピューター」の国際的な開発競争が、熾烈(しれつ)を極めている。計算速度のトップ争いでは目下、アメリカがリード。日本は首位奪還を目指し、ケタ違いの新型製品の開発を急いでいる。他方、後発の中国がじりじりと順位を上げ、日米双方を脅かす存在になろうとしている。(本誌 松浦一樹/撮影 明田和也)
|
横浜市金沢区の一角に、異様な建造物がある。幅50メートル、奥行き65メートル、高さ17メートルの鉄骨構造。一見すると、大きな体育館のようだが、窓が一つも見当たらない。近づいても、ブーンと低いうなりのような機械音が聞こえるだけ。外からは、何の施設なのか分からない。
|
実はここに、独立行政法人の海洋研究開発機構(旧海洋科学技術センター)が誇るスパコン「地球シミュレータ」(NEC製)が収納されているのだが、近くの住民も、その存在をほとんど知らないらしい。
|
内部はSF映画のセットさながらだ。人の背丈をはるかに上回る640台の大型計算機と関連機器が整然と並べられ、見学者デッキから見下ろすと、巨大な迷路のようでもある。日常からかけ離れたこの空間に、日本のコンピューター技術の粋が集められているのだ。
|
スパコンの計算速度は現在、単位として「テラフロップス」の領域にある。1テラフロップスなら1秒間に1兆回の演算を処理する。地球温暖化、異常気象、地殻変動といった地球規模の現象を、模擬実験(シミュレーション)で解析するために開発された地球シミュレータの性能は、35テラフロップス。1秒間に35兆回という計算速度は、ダントツの世界一……だった。
|
軍主導で進化する米技術
|
スパコンの“優秀さ”を測る尺度はいくつかあるが、計算速度もその一つで、比較が簡単だ。
|
米独の研究者グループが年2回発表する「トップ500」のランキングは、計算速度の世界一を競うが、地球シミュレータの名が登場したのは、3年前。それまで頂点にあった「ASCIホワイト」(IBM社製)の5倍の速さに達し、トップに躍り出たのだ。
|
スパコン開発で常に日本に一歩先んじてきたアメリカにとって、地球シミュレータの登場は青天の霹靂だったようだ。
|
「米国では当時、真珠湾攻撃になぞらえる報道もありました」(日本の業界関係者)
|
もちろん、それで引き下がるアメリカではない。地球シミュレータは昨年6月まで、5期連続でトップの座を守ったのだが、今年6月には4位に転落した。136テラフロップスに達した米ローレンスリバモア国立研究所の「ブルージーン/L」(IBM社製)が首位を奪い返し、2、3位もアメリカ社製が占めたのだ。
|
この日米の首位争奪戦、なぜ、ここまで熾烈にと思えるが、
|
「現在のスパコンの速さが、10年後のデスクトップの速さ」
|
というのが、業界の常識。日米の先端争いがあるからこそ、コンピューターは着実に進化を遂げているのだ。
|
ただ、NECの古井利幸HPC販売推進本部長は、こう言う。
|
「米国では、国防省やエネルギー省がスポンサーになってスパコンの研究開発を行っています。日本に抜かれても、すぐに抜き返すだけの力を持っています」
|
だから、日本のメーカーは不利だというのだ。
|
スパコンの応用範囲は広い。環境の変化を解析する地球シミュレータは、ほんの一例に過ぎない。宇宙開発、油田探査、遺伝子解析、核融合、自動車設計、創薬と、高度な科学計算を必要とするあらゆる分野で利用されている。アメリカにはポテトチップスの形を“デザイン”するのに用いる食品メーカーもあるというから、驚く。
|
問題は、アメリカが「軍事利用」に重点を置いていること。世界一のブルージーン/Lも、模擬実験によって核兵器の威力を確かめたり、ミサイル弾道を計算したりするための“軍用”だから、国の資金援助が手厚い。
|
軍事目的のスパコン開発は「日本ではあり得ないこと」(古井氏)なのだが、ある業界関係者によると、こういう事情もあるらしい。
|
「日本政府は投資もせずに、『すごいスパコンが出来上がったら、それを買ってやる』という姿勢でこれまでやってきた。利の薄い分野だから、政府の後ろ盾がない日本のメーカーは、開発に消極的になったんです」
|
しかし、そんなメーカーの苦衷を察したのか、日本政府も、その重い腰を上げ始めている。
|
文部科学省は今年に入って、1秒間に1兆の1万倍、1の隣にゼロを16個並べる1京回の計算ができる世界最速のスパコン「京速計算機システム」の開発に乗り出すことにした。1000億円を投じ、2010年度の完成を目指すという。
|
日米のスパコンはこれまで、年147%の割合で計算速度を増してきており、テラフロップス級から「ペタフロップス」(1秒間に1兆の1000倍回)級に進化するのは「09年ごろ」というのが、大方の予想。それを、一気に10ペタフロップス(1京回)に引き上げようというのだから、日本のプロジェクトも、なかなか大胆なものだ。
|
この「夢のスパコン」が完成すると、アジア地域に限られていた1平方キロ単位の気象予測が地球全体で可能になるほか、自動車衝突模擬実験のデータ解析に要する時間も数か月から1日に短縮されるという。
|
猛追する中国、しかし…
|
日米がしのぎを削るなか、目立つ存在になり始めているのが、中国だ。
|
現在、中国国内の最速スパコンは、中国気象局が気象予測などに利用しているものだが、これはIBM社製。独自開発のスパコンとしては、上海超級計算センターに設置されている「曙光4000A」(曙光信息産業有限公司製、10テラフロップス)が最速で、運用が開始された04年の時点では、「トップ500」の10位にランクイン。現在は31位にまで落ちている。
|
日米の最高水準には遠く及ばないが、テラフロップス級のスパコンの開発に成功したのは、中国が日米に次いで3番目だ。
|
これに気を良くした中国は、「08年に世界3位」の目標を掲げ、100テラフロップス級のスパコンの開発に着手。10年には1ペタフロップスを実現したい、という。
|
海洋研究開発機構・地球シミュレータセンターの佐藤哲也センター長は、
|
「中国が上位に食い込むのは、もう時間の問題でしょう」
|
としたうえで、こう言う。
|
「中国は、すでに知られている技術を利用しているだけ。まだ、取るに足りません」
|
中国は目下、コンピューターの心臓部である中央演算処理装置(CPU)に国産の「龍芯」を導入して上位を目指す方針。しかし、日本の業界関係者も、
|
「まだ、とても無理でしょう」
|
と、すげない。
|
とはいえ、中国がスパコン開発競争に本格参入したことで、日米に心配が広がっているのも確か。中国製の性能が高まれば高まるほど、軍事、産業開発、科学研究と、日米がこれまでリードしてきた分野に、中国の“脅威”が拡散するからだ。
|
米ニューヨーク・タイムズ紙(8月19日付)は、日米中のスパコン開発競争を「軍備競争」になぞらえ、ある米スパコン開発業者の話として、
|
「(この競争は)各国のプライドの問題になりつつある。プライドにかかわるから、日本はここまでやってこられたのだし、今は中国がトップクラス入りを目指しているのだ」
|
と伝えている。三つどもえの覇権争いは、まだ始まったばかりだ。
|
|
2005年08月07日 読売新聞 Yomiuri On-Line
|
文部科学省は、1秒間に1京(けい)(1兆の1万倍)回の計算ができる世界最高速のスーパーコンピューター「京速計算機システム」を開発する方針を決めた。
|
来年度予算の概算要求に研究開発費や設計費として30億〜40億円を盛り込む。2010年度完成を目標とし、スパコンを置く研究拠点として「先端計算科学技術センター」を新設する。総事業費は1000億円規模に上る見通し。立地は未定で、今後、大学や研究機関の間で誘致合戦が起きそうだ。
|
独立行政法人・海洋研究開発機構が持つスパコン「地球シミュレータ」は約600億円をかけて開発され、2002年に運用が始まった。昨年まで計算速度世界一の座を保ったが、危機感を抱いた米国政府がてこ入れした結果、IBMなどが高速機を開発、現在、単純計算能力の比較では世界4位に転落している。
|
日本は、京速計算機で、単純計算能力で世界1位を奪還するとともに、実際の研究で求められる複雑な計算をこなす実効性能でも世界最高を目指す。
|
実際、地球シミュレータなどの現機種と比べると、処理速度はけた違いに速くなる。アジア地域が限界だった1キロ・メートル四方の気象予測が、地球全体で可能になり、集中豪雨や津波の予測も、100倍の精度にあがる。数分でマグマの動きを計算できるため、火山溶岩流による被害を軽減できる可能性も出てくる。数か月かかっていた自動車衝突模擬実験のデータ分析を、1日でできるという。
|
|
2005年07月29日 Slashdot
|
Anonymous Coward曰く、" NewsScientist の記事は、 地球シミュレータの後継として史上初のペタフロップスーパーコンピュータが、 NEC、日立、東大、九州大、理化学研究所により共同開発されることを報じている。地球シミュレータ同様、気候や宇宙生成のシミュレーション、そして新薬開発が主目的となる。発注元は文部科学省で、性能は 10PFlops (=10,000TFlops、 現行の地球シミュレータは約36TFlops) 、費用は最大 900 億円程度の見込み。
|
現在最速のスーパーコンピュータは IBM、米政府共同開発の Blue Gene/L (137 TFlops)で、読者周知の通り、地球シミュレータの首位に危機感を抱いた米国が首位奪還を目指して核兵器開発用に発注したもの。このペタフロップ機の計画発表により再度の首位争いが活発化すると考えられている"
|
|
2005/07/25 The Sankei Shimbun
|
文部科学省は25日までに、最大演算速度が10ペタフロップス(1秒間に1京回=1京は1兆の1万倍)の次世代スーパーコンピューター「京速計算機システム」の設計、開発に着手することを決めた。
|
2006年度概算要求に研究費数10億円を盛り込む。総事業費は800億−1000億円に上る見込み。10年完成を目指し、米国のスパコンが持つ世界最速のタイトル奪還に挑む。
|
また、京速計算機システムの運用を担う「先端計算科学技術センター(仮称)」の設立方法や建設場所について調査研究も始める。
|
現在の世界最速スパコンは、米ローレンスリバモア国立研究所のスパコン「ブルージーン」で、136・8テラフロップス(1秒間に約136兆8000億回)。京速計算機が完成すれば、この約73倍の処理速度を持つことになる。
|
日本が02年から運用を開始した「地球シミュレータ」は、04年までの2年半、35・9テラフロップスで世界最速を誇っていたが、05年6月現在で世界第4位に後退している。
|
高速のコンピューターによるシミュレーションは、再現が困難だったり、時間がかかりすぎたりする実験の代わりとして、現代の研究活動には不可欠。新薬開発のための模擬実験や、銀河系形成のシミュレーション、台風進路や集中豪雨の詳細な予想などが期待される。
|
米国も10年をめどに数ペタフロップスのスパコン開発を目指しており、競争は激化している。(共同)
|
|
2005年07月14日 2005年07月14日「人民網日本語版」
|
国家智能計算機研究開発センターと曙光信息産業公司は12日、演算速度100テラフロップス級(毎秒100兆回)の次世代高性能コンピューターの開発プロジェクト始動を発表した。双方は、国産CPU「竜芯」を部分的に採用し、2008年ごろに世界ベスト3に入る高性能コンピューターの開発を目指す。2010年ごろには演算速度1千テラフロップス級のコンピューター開発をスタートする計画だ。
|
中国が開発した演算能力10テラフロップス級のスーパーコンピューター「曙光4000A」は一時、世界ベスト10にランクされたが、最近は31位まで後退している。(編集SN)
|
|
2005/06/23 (CNET News.com) Stephen Shankland
|
世界で10本の指に入る最速スーパーコンピュータを開発するのはたいへんな作業だが、それによって得られる名誉はさらに長続きしなくなっている。
|
ドイツのハイデルベルグで開かれた国際スーパーコンピュータ会議(International Supercomputing Conference:以下ISC)で、現地時間22日にスパコン世界最速ランキングの最新版が公表された。それによるとトップ10に入ったシステムの半数は、今回初めてランクインしたものだという。またトップ10のうち、6つのシステムがIBM製で、このうちの5つはBlue Geneの設計を利用したものだった。Blue Geneでは6フィートの高さのキャビネット1台につき1024基のプロセッサを搭載できる。
|
このスパコン最速ランキングは1年に2回更新されているもので、独マンハイム大学、テネシー大学、米エネルギー省のローレンス・バークレー国立研究所の研究者らが上位500のシステムを選んでいる。同ランキングでは、Linpackというテストでシステムの処理速度を計測する。
|
スーパーコンピュータは自動車の設計や医薬品の研究開発などに使われる。スーパーマシンの研究が一般のマシンに影響を与えることもよくある。数多くのローエンドマシンで構成されたクラスタ型のマシンが上位にランクインするケースが増えているからだ。
|
同ランキングに登場するシステムの入れ替わりも激しい。今日もっとも遅い500位のマシンでさえ、最初に同ランキングが発表された1993年6月当時の上位500のシステム全体を合わせた処理能力を上回る。また1998年11月のランキングでは、処理性能が1テラフロップスを超えるシステムは1つしかなかったが、いまでは500位までのすべてのシステムが、1テラフロップスを超える性能を持っている。さらに、今回トップになったIBMのBlue Gene/Lの性能は、2001年11月のランキングに入った全システムの合計処理能力を上回っている。
|
IBMのBlue Gene/Lは、3月に135.5テラフロップスを記録した後さらに136.8テラフロップスまで記録を伸ばした。IBMでは、同システムの納入先であるローレンス・リバモア国立研究所がBlue Gene/Lの規模を2倍に強化する予定であることから、2005年11月のランキングでも同システムが首位を維持すると予想している。
|
「われわれは、Blue Gene/Lの性能が270〜280テラフロップスまで伸びると見込んでいる」と、IBMのDave Turek(高性能コンピューティング担当バイスプレジデント)は述べている。
|
Blue Gene/Lよりも小型のWatson Blue Gene (BGW)というシステムは、91.3テラフロップスで第2位にランクインした。このほか、今回のランキングには、合わせて16のBlue Geneシステムがランクインした。
|
Blue Geneシステムの価格は1ラックあたり約200万ドルだが、IBMはラックの部分売りもしているとTurekは述べている。同社は現在「Cyclops」(開発コード名)というライフサイエンス分野に向けた別のBlue Geneシステムも設計している。だが、Turekによると「Cyclopsを商用化する計画はない」という。
|
今回のランキングでは、IBMのシステムが259と全体の半数を上回っている。なお前回のランキングでは216のシステムがランクインしていた。
|
IBMがリードを広げる一方、Hewlett-Packard(HP)のシステムは前回の173から今回は131へと数を減らしている。しかし、高性能コンピューティング分野全体の売上については、HPの方がIBMを上回っている。
|
調査会社のIDCによると、2005年第1四半期には、19億ドル規模のこの市場でHPは34%のシェアを占め、IBMの28.2%を上回ったという。また3位以下は、Sun Microsystems(12.3%)、Dell(11.9%)、SGI(2.6%)の順になっている。
|
チップメーカーのインテルも今回のランキングで大きな節目を迎えた。トップ500の半数を超える254のシステムが同社のXeonプロセッサを搭載したシステムだった。ただし、ハイエンド向けのItaniumプロセッサ搭載システムは前回の84から79へと数を減らしている。
|
|
2005/03/24 (CNET News.com) Stephen Shankland
|
IBMのスーパーコンピュータBlue Gene/Lの規模を倍に拡張したところ、その処理性能も2倍となった。米エネルギー省は米国時間23日、同システムが135.5テラフロップ(1秒間に135兆5000億回の計算が可能)の性能を記録したと発表した。
|
同システムは2004年11月に、スーパーコンピュータのTop500リストでトップの座に輝いている。Top500リストとは、世界最速のスーパーコンピュータをランキングしたもので、Blue Gene/Lの当時の性能は70.7テラフロップだった。同システムは現在、ローレンス・リバモア国立研究所への移管作業が行われている。
|
Blue Gene/Lのパフォーマンス強化は、システムを構成するラックの数を倍の32へと増やしたことで実現した。計画通りにいけば、最終的に同システムは64個のラックで構成されることになり、2005年末には約270テラフロップの性能を実現することになる。
|
個々のラックには、1024個のプロセッサが搭載されている。個々のプロセッサには、IBMのPowerプロセッサの特別仕様のものが用いられ、この内部では「コア」と呼ばれる処理エンジンが二重化されている。Top 500 Listのランク付けに利用されるLinpackという基本パフォーマンスのテストプログラムを走らせるために、個々のコアは計算処理に対応できるようになっている。しかし、たいていのタスクを実行する場合、これらのうちの1つは通信処理をつかさどる。
|
Blue Geneは、1秒間に1000兆回の計算が可能なペタフロップ級の性能を持つシステムを構築するという研究プロジェクトとして、2000年にスタートしたものだ。IBMは今では、このシステムをビジネスに活用しようとしている。同社は、Blue Gene/Lをラックあたり約200万ドルで販売開始したほか、同システムの処理能力を顧客へレンタルするプログラムを提供している。
|
Blue Gene/Lは、IBMが現在力を入れている高性能コンピューティング技術から生み出された製品の1つである。IBMでは、同市場におけるトップの地位をHewlett-Packardから、そしてTop500リストにおけるトップの地位をSilicon Graphics Inc.やNECから守ろうと、躍起になっている。
|
IBMでは、フル構成のシステムを今年5月までに導入する予定だと述べており、リバモア研究所広報のDon Johnstonは7月にシステムが立ち上がって稼働を開始するとコメントしている。
|
リバモア研究所は当初、Blue Gene/Lの機密プロジェクトでの利用を想定していなかった。しかし、Johnstonによると、その有用性を認識したことから、同研究所では、兵器の研究プロジェクトなどへと用途を拡大することに決定したという。
|
|
|
NEC:スパコンSX-7で世界最高速を達成 東北大に納入2004/12/22 Mainichi INTERACTIVE
|
NECは21日、東北大学情報シナジーセンター(根元義章センター長)に納入したスーパーコンピューター「SX-7」が、HPC(高性能計算)分野の性能テスト「HPCチャレンジベンチマーク」で、28項目中16項目で世界最高速を達成したと発表した。
|
HPCチャレンジベンチマークは今年10月初旬から11月初旬にかけて実施された。SX-7シングルノード・CPU数32個で実行した結果、28項目のうち、シングル環境と多重負荷時のメモリ性能で全8項目、プロセス間の転送性能で4項目、シングル環境及び多重負荷時の行列積の演算性能で2項目、FFTの演算性能の2項目の計16項目で世界最高速を達成した。
|
HPCチャレンジベンチマークは、米テネシー大学のJ.ドンガラ博士を中心に米国や日本のHPC関係者が参画し作成された性能テスト。高性能計算機の性能を多面的な観点から評価する目的で開発されたもので、演算性能を評価する「連立一次方程式」やネットワーク転送性能を評価「行列の転置」など、7カテゴリー28項目で構成している。
|
「SX-7」は、科学技術計算専用のベクトルプロセッサーを搭載し、1つのベクトル命令で配列要素を一括処理できる「ベクトル型」のスーパーコンピューター。東北大学情報シナジーセンターでは03年1月から稼動している。【高木 健一郎】
|
|
2004/11/09 The Sankei Shimbun
|
米国とドイツの研究家グループが8日発表したスーパーコンピューターの演算処理速度ランキングによると、2002年6月から首位だったNEC製の「地球シミュレーター」が3位に転落した。首位は米IBM製の「ブルージーン/L」で、IBMはメーカーとして2年半ぶりに世界最速のタイトルを奪還した。
|
「ブルージーン/L」は今月4日、1秒間に70兆7200億回の演算処理が可能なことが確認され、「地球シミュレーター」の35兆8600億回を大きく上回った。2位は米コンピューター大手SGIが米航空宇宙局(NASA)に納入した「コロンビア」(毎秒51兆8700億回)が獲得した。
|
スパコンは、危険を伴う実験をしなくても核爆発などのシミュレーションが可能なほか、気象変動や遺伝子解析など膨大な計算を必要とする研究分野に貢献している。
|
科学者グループは、年2回上位500モデルの演算処理速度をテストして比較、ランキングを発表している。(共同)
|
|
2004/11/05 (CNET News.com)Stephen Shankland
|
米エネルギー省は米国時間4日にもIBMの「Blue Gene/L」が世界最速のスーパーコンピュータであることを示すテスト結果を発表する計画であることが、CNET News.comの調べで分かった。
|
同省では、IBMのBlue Gene/Lが70テラフロップ(1秒間に70兆回の計算が可能)以上のパフォーマンスを記録したと発表する予定だと、テストに詳しい関係筋が述べている。この数値は、ミネソタ州ロチェスターにあるIBMの研究所で計測された。現在IBMの研究所に設置されている同システムは、来年カリフォルニア州のローレンス・リバモア国立研究所に移管される予定だ。
|
スーパーコンピュータのTop500リストは8日に発表される予定だが、Blue Gene/Lのテスト結果はその数日前のタイミングにあわせて発表される。Top500リストとは、世界最速のスーパーコンピュータをランキングしたものである。米政府当局の関係者らは2002年6月以来、35.9テラフロップを記録したNECの「地球シミュレータ」のような日本製マシンが、Top500リストのトップに載り続けていることに関して、しばしばいら立ちを覚えていた。
|
他のライバルが現れない限り、今回はBlue Gene/Lがリストのトップに輝きそうだ。IBMでは、この件に関するコメントを控えている。リバモア研究所のある関係者は、この発表が4日に行われる予定であることを認めているが、詳細に関するコメントは断っている。
|
このパフォーマンス競争には、自慢のしあいや国家威信の顕示以上の意味がある。米エネルギー庁長官のSpenser Abrahamは今年2004年、米国が科学分野で突出した地位を維持するためには最先端のスーパーコンピュータが必要だと述べている。
|
Blue Gene/Lのパフォーマンスは、先週Silicon Graphics Inc.(SGI)が「Columbia」で出したと主張する記録を余裕で上回る。スーパーコンピュータColumbiaはNASAのために構築され、42.7テラフロップのパフォーマンスを誇る。同システムは、フル構成で行った別のテストで51.9テラフロップの記録を出しているが、その結果は一般には発表されていない。
|
このことから、ColumbiaがTop500リストの第2位につけることが予測される。Columbiaのパフォーマンスのおかげで、NASAでは5日間分の天気予報の的中率が78%から90%へと向上するほか、さらなる詳細情報を得ることができるようになり、結果伝達の迅速化も図られると、NASAのミッションディレクターでColumbiaにおける科学研究を統括するGhassem Asrarは述べている。
|
|
2004/10/28 (CNET News.com)Stephen Shankland
|
カリフォルニア州モフェットフィールド発--Silicon Graphics Inc.(SGI)は米国時間26日、NASA向けに構築したColumbiaというスーパーコンピュータが最速記録を更新したと発表したが、実は同日ひそかにこれを上回る記録を残していたことが明らかになった。CNET News.comの入手した情報では、同システムは51.9テラフロップという記録を叩きだしたという。
|
SGIはColumbiaを発表した際、同システムの処理速度を42.7テラフロップ(秒間42兆7000億回の演算処理が可能)としていた。これは、世界最速を誇るNECの地球シミュレータ(35.9テラフロップ)や、挑戦者の最有力候補であるIBMのBlue Gene/L(36テラフロップ)を優に上回るスピードだ。
|
Columbiaが42.7テラフロップという新記録を叩きだした時には、同システムを構成する20台のサーバのうち、16台しか稼働していなかった。つまり、同システムに搭載される1万240基のItaniumプロセッサのうち、2048基は動いていなかったということになる。しかも、この遊んでいたItaniumは同チップの最新世代に当たるもので、1基につき9Mバイトの高速キャッシュを積んでいると、SGIのCEO(最高経営責任者)であるBob Bishopは説明した。
|
Columbiaのテストに詳しい情報筋によると、サーバ20台をフル稼働の状態にした同システムは、51.9テラフロップという速度で一定時間動作したという。また瞬間最高速度は61テラフロップを記録したが、これはIntel社長のPaul Otelliniが9月の時点で予想していた60テラフロップという速度をわずかに上回るものだ。
|
世界最速のスパコン開発を目指す各社の競争には各方面から注目があつまっているが、この結果は毎年6月と11月に開かれるスーパーコンピュータ関連のカンファレンスで公表される。主催者のJack Dongrraによれば、最新のTop500ランキングは11月8日に発表されるという。
|
|
2004/10/27(CNET News.com)Stephen Shankland
|
Silicon Graphics(SGI)は、世界最速のスーパーコンピュータを目指す競争で自社のマシンが首位に立ったと主張している。9月にはIBMが同様の主張をしているが、正式な勝者が決定するのは2週間後になる。
|
SGIが今年7月にNASAに納入した「Columbia」というこのシステムは、5000万ドルもするLinuxベースのマシンだが、同社はこのシステムが42.7テラフロップ(1秒間に42兆7000億回の演算が可能)という計算処理速度を記録したと26日(米国時間)に発表した。しかし、このスピードもまだ最終的なものではない。NASAのAmes Research Center(カリフォルニア州モフェットフィールド)にあるこのマシンは、搭載されているItanium 2プロセッサ1万240基のうち、まだ5分の4ほどしか使用していないからだ。
|
42.7テラフロップという計算処理速度は、IBMが9月に宣言したBlue Gene/Lシステムの36.1テラフロップよりも一段と高速だ。Blue Gene/Lの記録は、2002年以来世界最速スーパーコンピュータのランキングで首位に君臨しているNECの地球シミュレータのそれをわずかに上回っている。
|
スーパーコンピュータのTop500ランキングは年2回更新され、次のランキングは11月6日からピッツバーグで開催される「SC2004」というイベントで発表される。
|
SGIはスピード競争の王位に居続けられるとは考えていないようだ。「複数のシステムが首位の座を目指して競争しているのは間違いない」と、SGIのDave Parry(サーバおよびプラットフォームグループ担当シニアバイスプレジデント)は述べている。「IBMはもう少し調整を加えて、性能を若干上げてくるかもしれない」(Parry)
|
SGIはここしばらくの間、1990年代に手にしていた素晴らしい性能と名声を取り戻そうと躍起になっている。当時同社のハイエンドコンピュータは、映画「ジュラシックパーク」のデジタルアニメーションなど、負荷の大きな画像処理で卓越した性能を誇っていた。しかし、Intel製プロセッサを採用したおかげで同社マシンの性能は向上したと、NASAのAdvanced Supercomputing Centerの部門長、Walt Brooksは述べ、Itaniumマシンは同等のSGIモデルより6倍高速だと付け加えた。
|
現在大半のスーパーコンピュータは、多数のローエンドマシンを使って構築したクラスタとなっているが、SGIのシステムはそうではない。ColumbiaはInfiniBandという高速ネットワーク技術で接続された20台のマシンで構成されており、個々のマシンがそれぞれ512基のプロセッサを搭載している。そして、1台ごとに1つのオペレーティングシステム(OS)が動作する仕組みになっている。
|
この「シングルシステムイメージ」というアプローチは、スペースシャトルの空気動力学をシミュレーションするタスクなどに適しているとBrooksは言う。クラスタでも流体力学のシミュレーションを行うことは可能だが、ただし「こうしたシステムでは非常に効率が悪く、プログラミングも非常に難しい」と同氏は説明している。
|
|
2004/10/20 The Sankei Shimbun
|
NECは20日、演算性能が最大で65テラフロップス(1秒間に65兆回)と、世界最高速となるスーパーコンピューター「SXシリーズ モデルSX−8」を製品化したと発表した。
|
大規模な計算に適したスパコンは、同社の「地球シミュレーター」が35・86テラフロップスで最速だったが、9月には米IBMが36・01テラフロップスの動作を確認し、「最速争い」が繰り広げられている。
|
SX−8の速度は、512台のスパコンをつなぎ合わせたと仮定した場合の理論上の数字だが、NECは、理論値に比べて若干劣る実効性能で55テラフロップス程度の速度は確保できるとしている。
|
既にスパコンが活躍している気候変動予測のほか、自動車の衝突シミュレーション、新素材開発への導入が見込まれ、商品の開発期間の短縮などの効果が期待できる。 |
|
2004/09/29 (CNET Japan編集部)坂和敏
|
The New York Times紙が28日(米国時間)に伝えたところによると、IBMが「世界最速のスーパーコンピュータ」のタイトルを奪還したという。これまで最速とされていた日本の「地球シミュレータ」(NEC製)が2002年に新記録を叩き出した際には、米政府当局の関係者の間に激震が走ったが、今回のIBMによる更新で、再び米国側に王座が渡ったことになる。
|
今回のテストに使われたのはIBMの「Blue Gene/L」というマシンで、1秒間に36.01テラフロップ(36兆100億回の演算処理)を記録し、これまで地球シミュレータの持っていた35.86テラフロップをわずかに上回った。なおベンチマークにはLinpackが使われたという。
|
Blue Gene/Lはもともとバイオテクノロジー等の分野での利用を目的に開発されたもので、カリフォルニア州にあるローレンス・リバモア国立研究所には来年この大規模版が納入されることになっている。このマシンには合わせて13万基のプロセッサが搭載される予定だが、それに対して今回記録を更新したマシンは、1万3000基しかプロセッサを積まないプロトタイプだったという。
|
|
2004/08/30 Wired News/ Nancy Gohring
|
科学技術用の数値計算などに適したベクトル・プロセッサーを使用して、大量のデータを処理するために作られた初期のスーパーコンピューターが、再び米国で広範に販売されるようになった。だが需要がどのくらい続くかは不透明だ。
|
現在は、市販のコンピューターをつないで構成された比較的安価なクラスター型が、スパコンの大部分を占める。しかし、ベクトル型コンピューターを敬遠するこのような傾向が、今後の研究活動に損失を与えるのではないかと懸念する研究者もいる。多くの研究者は、ベクトル型コンピューターがきわめて複雑な問題を処理する能力で勝ると考えている。
|
クラスター型スパコンの概念は、1990年代半ばに米クレイ社――最初のスパコンを開発した会社とされることが多い――が米SGI社に買収されたときに登場した。主に資金と特許が目的でクレイ社を買収したSGI社は、即座にベクトル型スパコンの開発を打ち切り、独自のスパコン技術に力を注いだ。それ以降、米国でベクトル型スパコンを購入するのはほぼ不可能となった。
|
オークリッジ国立研究所の計算科学センターで科学アプリケーション・サポート・グループの技術リーダーを務めるトレイ・ホワイト氏は、「われわれはここ数年、足踏み状態だった」と語る。同研究所では、研究の大部分をベクトル型スパコンに依存している。
|
クレイ社がスパコンの開発を停止していたのと同じ時期、取引規制により、残る唯一のベクトル型スパコン開発企業だった日本のNECから輸入される製品に454%の関税が課されることになった。これによりベクトル型スパコンの価格は非常に高くなったため、米国での購入は実質的に不可能になった。この関税をかける原因になったのは、不当な低価格にまで製品をダンピングしているとして、クレイ社がNECを訴えた裁判だった。さらに、クレイ社の最大の顧客だった米国政府は、兵器など国家機密にかかわる研究に使用されることの多いスパコンを外国企業から購入することに乗り気でなかった。
|
米国はこの間にスパコン技術における世界のリーダーとしての地位を失い、一方の日本は世界最速・最強のスパコン『地球シミュレータ(日本語版記事)』の構築に取り組んだ。それでも米国は、完全に活動を停止していたわけではなかった。米国の企業や研究者たちは、市販のコンポーネントをつなぎ合わせることにより、巨大なコンピューターを構築してベクトル型スパコンの代わりに利用するという構想を発展させた。
|
「米国がクラスター型に集中したことは、低価格帯には劇的に貢献したが、高価格帯を弱体化させることになった」とホワイト氏は述べる。
|
現在ではクラスター型がスパコンの大部分を占めており、開発企業各社はクラスター型にできないことはないと主張している。
|
ベクトル型スパコンの市場は、NECとクレイ社だけが取り扱う狭い市場に縮小してしまった。SGI社は2000年、クレイ部門を米テラ・コンピューター社(ワシントン州シアトル)に売却したが、テラ・コンピューター社はその際に社名をクレイ社に変更している。だが、ベクトル型スパコンの一部ユーザーは、特定の種類の問題はベクトル型でなければ解決できないと述べている。ベクトル型スパコンの市場が過度に縮小した場合、メーカーが存続できなくなるのではないかとの懸念を口にすることもある。
|
ホワイト氏は次のように述べている。「クレイ社が試みているのは、ベクトル型コンピューティングの相対コストを劇的に下げることだ。それがどうなるかは、成り行きを見守るしかない。もちろん私は、実現を願っている。同社の技術はわれわれがなすべき作業にうってつけだからだ」
|
クレイ社は、生き残るにはいい状況にあると述べている。同社のピーター・ウンガロ副社長(販売・マーケティング担当)によると、ベクトル型スパコンの市場は、スパコンの市場全体に比べると縮小しているものの、クレイ社のような規模の企業にとってベクトル型の市場は「巨大」だという。小さな企業は小さな市場に向けた特注マシンの製造に集中できるが、米IBM社や米ヒューレット・パッカード(HP)社といった大企業は、大きな市場に向けてすでに製造した市販のコンポーネントを活用しようとする傾向が強いというのだ。
|
それでもクレイ社は最近、925人の従業員のうち100人近くをレイオフし、第2四半期の売上は約65%減少した。同社ではこの後退を、政府の発注の遅れと、来年に新製品を市場に出すための準備期間が原因だと説明している。[日本語版:平井眞弓/高森郁哉]
|
|
2004/08/30 Wired News/ Nancy Gohring
|
停滞期にあるとはいえ、クレイ社は市場のニーズに合わせる努力を続けている。新製品の中には、市販の部品を自社の特注コンポーネントに組み合わせるものもある。完全な特注マシンよりも多少価格が安くなるこのようなコンピューターを販売することにより、クレイ社は経営を維持できるかもしれない。
|
「ベクトル型コンピューターがこれまで同様の高値に留まった場合、市場が支えてくれるとは思わない」と、ホワイト氏は述べる。現在、クレイ社のベクトル型スパコンの価格は、低価格帯で400万ドル、高価格帯だと数千万ドルだ。
|
それでも、市販のコンポーネントを集めた価格の安いクラスター型がスパコンの大部分という状況が今後も続くという見方で、大半の専門家は一致している。意見が分かれるのは、それが問題になるかどうかという点だ。
|
HP社のハイパフォーマンス・テクニカル・コンピューティング部門の製品・技術マーケティング担当責任者、エド・ターケル氏は次のように語る。「クラスター型の普及が原因で研究に悪影響が出ると言う人々がいる。この中には見解の相違に過ぎないものもある」
|
たとえば、オークリッジ国立研究所ではベクトル型スパコンを、大量のデータを扱うだけでなく複雑なシミュレーションも伴う気候モデリングなどの問題に利用している。ホワイト氏によると、このような問題はクラスター型コンピューターでは効果的に処理できないという。
|
「クラスターをどれだけ巨大にしても同じことだ。アプリケーションの速度は落ち、同期や通信にばかり時間を費やすことになる」とホワイト氏。
|
ホワイト氏は、クラスターを構築できる規模には限界があると考えている。IBM社の『ブルー・ジーン/L』――現在構築が進められている巨大なスパコンで、13万個のプロセッサーを搭載し、ローレンス・リバモア国立研究所に納入される予定――でさえ、ある種の用途では計算できない可能性があるとホワイト氏は言う。
|
一方、安価なクラスター型スパコンの各メーカーは、ベクトル型コンピューターができることなら何でもできる――あるいはすぐにできるようになる――と話している。
|
特注部品と市販部品を組み合わせてコンピューターを製造しているSGI社のサーバー・マーケティング担当責任者、ジェフ・グリーンウォルド氏は、「数年後に登場する次世代のスーパーコンピューティングは、ベクトル型が処理する作業負荷をさらに効率的に、費用効果の高い方法で迅速に処理できるようになる」と話す。
|
HP社も、クラスター型コンピューターはベクトル型コンピューターが現在処理している問題のほぼすべてを処理できると考えている。クレイ社のウンガロ副社長でさえ、クラスター型コンピューターはベクトル型コンピューターの代わりに使えると話すが、1つ問題があるという。
|
「ベクトル型の代わりにクラスター型を使うことは可能だ。問題は、それがどれだけ効率的かだ」とウンガロ副社長。
|
ベクトル型スパコンは、森林火災がどのくらい広がるかを予測するなど、処理にかかる時間が問題になる場合に使用されることが多い。コンピューターが十分な速度で計算できなければ、どこまで延焼するかをコンピューターが予測する前に燃え広がってしまう。
|
「2時間ではなく6時間かかるとすると、3倍の速度で処理できることの価値がどのくらいあるかが問題になる。人々を避難させ、命を救うことができるか、ということだ」とウンガロ副社長は言う。
|
業界がベクトル型スパコンを不要だと判断するかどうかにかかわらず、最も重要な要素は、豊富な予算を使える米国政府の判断ということになるのかもしれない。政府機関はベクトル型スパコンを使って、兵器の効果のシミュレーションを行なっている。
|
米フォレスターリサーチ社の主席アナリスト、フランク・ジレット氏は、「どんな値段でも政府がベクトル型スパコンを購入するのであれば、完全に姿を消すことはありえない」と語った。[日本語版:平井眞弓/高森郁哉]
|
|
2004/07/28 (CNET News.com)Stephen Shankland
|
米国防省は、海軍シミュレーション用として、IBMから20テラフロップの処理性能を持つスーパーコンピュータなどを購入する契約を交わした。IBMが27日(米国時間)に明らかにした。
|
「Kraken」というこのシステムは、秒間約20兆回の計算を処理できる性能になると見られている。これは海軍海洋学局(Naval Oceanographic Office)が購入する2つのシステムの片方にあたる。IBMの話ではこの契約の金額は数千万ドルに上るという。
|
フラッグシップとなるこのシステムは、プロセッサを8基搭載したp655マシンを386台つないだクラスタで、チップにはIBMのPower4+プロセッサ、またOSにはIBM版のUnixであるAIXが採用される。これにはまた55テラバイトのディスク容量をもつFastTストレージシステムも含まれる。もうひとつの、より小型なスーパーコンピュータのほうは、プロセッサ8基搭載のp655を64台つないだシステムで、処理速度は3.5テラフロップとなっている。
|
海軍の同局では、これまでもいくつかのスーパーコンピュータを導入したことがあり、たとえば2001年にはCrayからSV1exを、また2002年にはIBMのBlue Oceanというシステムを購入した経緯がある。
|
|
2004/07/26 asahi.com
|
世界最速の計算能力をめぐり日米がしのぎを削ってきたスーパーコンピューターの開発競争に、中国も名乗りを上げた。スパコンの能力比較で権威ある「TOP500」コンテスト(米テネシー大など主催)の今年上半期版で、中国・曙光社製のスパコン「曙光4000A」が10位に入った。日本を除くアジアでは初めてで、三つどもえの激戦も予想されている。
|
コンテストでは、決められた巨大な連立方程式を解く能力が競われる。1位は横浜市にあるNEC製の「地球シミュレータ」が、02年から5回連続で維持。35.86テラフロップス(毎秒約35兆回浮動小数点計算ができる性能)で、2位の米ローレンス・リバモア国立研究所の19.94テラフロップスに水をあけた。上海の曙光4000Aは8.06テラフロップス。
|
日本勢は理化学研究所のスパコン(富士通)も初参加で7位に。富士通でスパコン開発を手がけた三浦謙一・国立情報学研究所教授は「6位に英国も入り、地球シミュレータ以外は米国勢だけだった昨年下半期と大きく様変わりした」と話す。
|
米国政府が来年までに地球シミュレータを上回るスパコンを開発すると宣言。IBMなどが別に180テラフロップスを目標に開発を進めている。日本でも新たな開発の必要性を指摘する声があり、中国の登場で競争はますます激化しそうだ。
|
三浦さんは「曙光の情報は少ないが、米国製半導体を使ったと聞いている。中国が今後、どのような分野にスパコンを活用していくのかも注視したい」と話している。
|
〈スパコンテストのトップ10〉
|
(1)地球シミュレータセンター(日)
|
(2)ローレンス・リバモア国立研究所(米)
|
(3)ロスアラモス国立研究所(米)
|
(4)IBM−ロチェスター(米)
|
(5)NCSA(米)
|
(6)ECMWF(英)
|
(7)理化学研究所(日)
|
(8)IBM−トマス・ワトソン研究所(米)
|
(9)パシフィック・ノースウエスト国立研究所(米)
|
(10)上海スーパーコンピューターセンター(中)
|
|
2004/06/18 読売新聞 Yomiuri On-Line
|
大気や海水の循環など地球環境を丸ごと再現できる世界最速のスーパーコンピューター「地球シミュレータ」(横浜市)を、国産自動車の開発に活用するプロジェクトがスタートした。
|
文部科学省所管の独立行政法人海洋研究開発機構は17日、自動車メーカーでつくる日本自動車工業会と共同研究契約を締結したと発表した。今月から約2年間、自動車の空力特性や騒音、車体の振動、エンジン内の燃焼などのシミュレーション(計算機による模擬実験)に使用する。
|
自動車メーカーはこれまでも、市販のスーパーコンピューターで模擬実験を行ってきたが、車体の振動など限られた項目を大ざっぱに計算するだけでも数時間かかることがあり、不便だった。地球シミュレータなら、自動車1台丸ごと模擬実験したとしても、瞬時に結果を出力できるという。
|
衝突事故など複雑な計算が必要な模擬実験ができるようになれば、試作車を製造する手間が省ける可能性もある。
|
共同研究は、同機構がシミュレーション科学の普及と実用化を目指し、自工会側に呼び掛けて実現した。
|
◆地球シミュレータ=1秒間に40兆回の計算能力を持つスーパーコンピューター。大気や海水の循環を地球規模で予測したり、地球内部のマントル対流を計算する目的で、海洋研究開発機構と宇宙航空研究開発機構、日本原子力研究所が共同開発。2002年2月、横浜市の海洋機構横浜研究所に完成した。
|
|
2004/06/04 (CNET News.com)Stephen Shankland
|
中国製の「Dawning 4000A」というスーパーコンピュータが、間もなく更新される最速コンピュータ・ランキングで上位に登場すると見られているが、これは高性能コンピューティングに対する新しいアプローチの持つ地政学的な影響を浮き彫りにしたものだ。
|
Dawning Information Industryという、PCからスーパーコンピュータまであらゆる製品を手がける中国のメーカーが、中国の研究機関や企業向けに、このDawning 4000Aを構築している。同システムには、Advanced Micro Devices(AMD)のOpteronプロセッサが2000基以上使われている。世界のスーパーコンピュータをランク付けしたトップ500のリストは、6月22日に最新版が発表されるが、Dawning 4000Aはこのリストで上位にランクインしそうだ。
|
「Dawningでは同システムが上位15位以内に食い込むと予想している」と、AMDの高性能コンピューティング部門でマーケティング担当マネージャーを務めるGuy Luddenは述べている。
|
AMDが2003年にDawning 4000Aを発表した際、その動作速度は10テラフロップ(1秒間に10兆の計算が可能)を上回るとしていた。最新のTop500スパコンリストによれば、10テラフロップ以上の性能を持つシステムは現在3台しかない。ただし、今月更新される同リストでは、10テラフロップ超のシステムがさらに増えると見られている。
|
優れたスーパーコンピュータ技術を持つ米国のような国々では、核兵器設計や通信用暗号解読へ転用されることをおそれて、高性能計算技術の輸出を長い間制限し続けてきた。だが、新しいアプローチ--数多くのローエンドのLinuxシステムを高速ネットワークで接続した、高性能コンピュータクラスタが登場したことにより、広く普及するごく普通の技術を使って、スーパーコンピュータをつくれるようになってしまった。
|
この新しいアプローチが、Top500リストのランキングに大きな変化をもたらしている。このリストは年2回更新されているが、6月22日から始まるInternational Supercomputer Conference(ISC2004)に合わせて発表予定の次のランキングでは、大幅な順位の変更があると見られている。
|
35.8テラフロップの速度を持つNECのEarth Simulatorは、2002年6月以来、同ランキングで首位を守ってきている。しかし、今年11月の同リスト更新時には、サンディア国立研究所で稼働するCrayの「Red Storm」がその座を奪うことになるかもしれない。Crayのこのシステムは、40テラプロップの動作速度になると見られている。
|
6月更新のリストで上位に入りそうなのは、California Digitalがローレンス・リバモア国立研究所に納入した「Thunder」で、Itanium 2プロセッサを4000基以上を使用したこのシステムは、すでに19.9テラフロップの速度を叩き出している。
|
また、ロスアラモス国立研究所にあるLinux Networx製の「Lightning」というクラスタシステムも、10テラフロップを超えると見られている。
|
オークリッジ国立研究所では、従来型の設計手法を用いたCray製のシステムが構築される予定だが、こちらは50テラフロップに達すると見られている。さらに、ローレンス・リバモア研究所で導入を予定しているIBMの Blue Gene/Lを使ったクラスタは、2005年に360テラフロップの速度に達するという。製造元のIBMでは、このシステムが必ず世界最速になると自信を示している。
|
|
2004/01/08 (CNET News.com)Michael Kanellos
|
米IBMのT.J. Watson Research Centerのシステム担当バイスプレジデント、Tilak Agerwalaはスーパーコンピュータが抱える問題の解決に取り組んでいる。
|
様々な大学や国立研究所とのプロジェクトを通じて、Agerwalaはスーパーコンピュータや高性能クラスタの設置コストと、利用コストを軽減する方法を模索中だ。
|
例えばPERCS(Productive、Easy-to-use、Reliable Computing System)プログラムは、様々なアプリケーションに合わせ自らを最適化できるマシンを作ろうという発想で生まれた。複雑な研究プロジェクトに必要なプログラムの開発時間を短縮し、毎秒1000兆回の計算処理(ぺタフロップ)を可能にするものだ。
|
TRIPS (Tera-op Reliable Intelligently Adaptive Processing System)では、IBMとテキサス大学が、毎秒1兆のアプリケーションを動かせる「チップ上のスーパーコンピュータ」を研究中だ。
|
Agerwalaは、システム設計者が直面する問題と次に現れる大きな課題について、CNET News.comに語った。
|
---業務の概要を教えてください。
|
サーバ、スーパーコンピュータ、組み込みシステムに関する、高度のハードウェア及びソフトウェア技術を開発する責任を負っています。非常に広範囲に及ぶもので、回路から、自動制御ツール、マイクロプロセッサのアーキテクチャ、OS、そしてオンデマンドの作業環境まで、全てを見ています。
|
---システムアーキテクチャに関する動きが、特にハードウェア側で、通常より活発な気がします。実際にそうなのでしょうか、それとも単なる私の気のせいでしょうか。
|
私は、今は非常に面白い時期だと思っています。高性能コンピュータに今、特に注目する必要があります。それは、現代科学技術において高性能コンピュータが中心的役割を果たしているからです。
|
急激な性能改善がこのことを牽引しています。我々は、以前より複雑な問題をより多く、しかも低コストで堅実に解決できるようになりました。これにより、3つの異なるインパクトを与えることができます。複雑な問題を解決して経済成長を可能にする、産業や科学を進展させる、コンピュータに関連するミッションクリティカルな国家的問題に取り組む、の3つです。
|
物事には集束するポイントがあると思います。つまり、高パフォーマンスのコミュニティが、国防に関する課題に取り組みながら、経済成長を加速させることは実際に可能だと思います。
|
---IBMのスーパーコンピュータの研究にはどのように関連していますか。
|
ここでも、我々の目標は確かに3つあります。経済成長を促進するために複雑な問題を解決したい、科学技術を発展させたい、そしてコンピュータに関連するミッションクリティカルな問題を解決したいと考えています。これは、様々な要素に置き換えられます。低コストで複雑な問題を解決する、非常に広範な一連のアプリケーションに関する問題を解決する、そして政府機関や学究機関と共同作業を行うといったことです。
|
我々の戦略はまず、パワーに重点を置いた高性能コンピュータ商品ラインを積極的に改善することから始まります。この方法は、既存のモデルや技術を最大限に活用できるという利点があります。ムーアの法則を利用し、ソフトウェア標準を利用するようなものです。ASCI Purpleが、この分野における我々の旗艦商品です。
|
戦略の2番目の部分は、大容量、低コストのビルディングブロックで構成される高性能クラスタを開発することです。これは標準プロセッサや相互接続などを基盤とします。3番目は、高度な研究開発を行い、斬新なアプローチや設計を実施することです。
|
---Blue Gene/Lのようなものですか。
|
はい、Blue Gene/L、TRIPS、そしてPERCSです。
|
Blue Gene/Lは、本来は次世代クラスタの部類に入るものです。ただ、Blue Gene/Lは大量の並列処理の限界点を押し上げます。新しいプロセッサ設計と革新的なネットワークを組み合わせ、性能と処理密度と消費エネルギーを最適化するのです。これは、本当にコスト効率の良い処理方法で、そういった意味では(NECの)地球シミュレータと大きく異なります。
|
---PERCSはどうですか。
|
PERCSでは、2010年という時間軸で当社の主要商用システムに必要となる、高度なハードウェア、ソフトウェア技術を開発中です。Blue Geneでは2004年末、Lawrence Livermore National Laboratoryに3分の1ペタフロップを提供する予定ですが、PERCSはずっと先の話です。ここでも、商用化が目標です。
|
PERCSでは、アプリケーションの要求に合わせてハードウェアとソフトウェアのコンポーネントを設定するような適応性の高いシステムを模索中です。この適応性により、システムの技術効率と使いやすさが向上します。
|
---それはどう考えればよいのでしょう。複数のプロセッサが、異なるOSやアプリケーションに合わせてほぼ瞬時に切り替わるシステムということですか。
|
プロセッサだけではありません。キャッシュ構造をいかに適合させるか、アプリケーションの動的要求に応えるために、変化をチップ上にいかに再構成するかなど、多くの異なる課題に開発陣は取り組まねばなりません。そして2004年中か近年中には、正しい手法について何らかの結論を出さねばなりません。
|
---究極的には、どんな種類の問題を解決するのですか。
|
(アプリケーションを)見つける時間を短縮します。PERCSには、非常に高度なコンパイラやミドルウェアが含まれます。これによりプログラム開発プロセスの多くの段階が自動化されるでしょう。
|
HPCSのPは生産性(productivity)で、性能(performance)ではありません(HPCSはHigh Productivity Computing Systemsの略で、米国防総省高度研究計画局(DARPA)が新世代スーパーコンピュータアーキテクチャを2010年までに開発するために始めた1億4600万ドルのプロジェクト)。ですから、我々のここでの目標は、異なる種類のアプリケーション要件に自ら適合する能力のあるコンピュータを作り出すことです。
|
ただし強調したいのは、次の段階は研究段階である点です。IBMはこれらの技術の開発を進め、その技術が与えるインパクトについてより理知的に話ができるようになるでしょう。全体的な青写真はありますが、目標にどこまで近づけるかが見えるまでには、依然として研究課題が山積しています。取り組まねばならない基礎的な課題もいくつかあります。
|
---御社のシステムで解決したい大きな科学的課題はありますか。すでに遺伝子情報は解析されています。次の大きな課題は。
|
私はこの分野に長い間取り組んできました。その理由のひとつは、進化を生む大きな潜在的可能性があるからです。月並みかもしれませんが、IBMはこの種のインパクトを与えることができますし、また実際にインパクトを与えています。天気予報もそのうちのひとつです。生命科学にも非常に興味があります。Blue Geneのプログラムは、たんぱく質の構造という壮大な課題を解くためのひとつの手法として始まりました。また、核処理プログラムのための問題解決にも取り組んでおり、これにより兵器実験をせずに貯蔵されている核の安全性を確認できます。
|
|
|
環境予測:スパコンで地球温暖化を分析 海洋科学技術センター2002年06月14日 Mainichi INTERACTIVE
|
文部科学省の海洋科学技術センターは14日、世界最高速の計算能力を持つスーパーコンピューター「地球シミュレータ」を使って7月以降、地球温暖化の分析など本格的な環境予測に取り組む考えを明らかにした。地震発生メカニズムや、海水温が異常に上がるエルニーニョの研究などにも取り組む予定で、自然災害の予測や防止にシミュレータを役立てる。
|
シミュレータは、NECが製造。これまで世界最高速だったスパコンの約5倍の計算能力があり、1秒間に約35兆回の計算ができる。雲の形成など局所的な気象予測から、地球規模での海洋、大気循環などさまざまな観測が可能だ。
|
地球表面を約10キロ四方に区切ったデータ分析ができ、1週間分の海面温度のシミュレーションを約4分で計算するという。 【熊谷泰】
|
|
2002年03月15日 IT media
地球温暖化,異常気象,地殻変動,大気汚染。「地球変動予測を実現することは,人類の持続的な発展につながる」――宇宙開発事業団などが運用を開始した「地球シミュレータ」には大きな期待がかけられている。
|
3月11日,宇宙開発事業団,日本原子力研究所,海洋科学技術センターは,多目的スパコン「地球シミュレータ」(ES:Earth Simulator)の運用を開始した。ESは,当時の科学技術庁が1998年度にスタートした同名の計画の一環で,“バーチャル地球”を作り出すことで地球温暖化やエルニーニョ現象など,地球規模の環境変動を解明・予測するのが目的。NECが,3法人と協力,システム開発部隊から半導体開発部隊まで,延べ1000人を動員して5年がかりで開発・納入した。総費用は400億円にのぼる。
|
ESは,海洋科学技術センター横浜研究所内のシミュレータ棟(3250平方メートル)に設置。NEC製の1CPU当たり8GFLOPSのベクタープロセッサ8個を1ノードとし,640ノードを接続。プロセッサは0.15μメートルの銅配線プロセスで製造され,約6000万トランジスタを集積している。動作周波数は500MHz/1GHz。
|
計算ノード内のメモリは16Gバイト,システム全体では10Tバイトを装備する。NEC製ベクタースパコン「SX」シリーズ用に開発されたUNIXベースOS「SUPER-UX」を超大規模システム向けに強化・拡張して使用する。プログラム開発環境として,自動ベクター化・自動並列化を行うFortran90/HPF/C/C++コンパイラなどが利用できる。
|
全球的な高解像度シミュレーション
|
海洋技術センターでは現在,ESを使って,「高解像度海洋テストシミュレーション」ならびに「超高解像度全球大気循環モデルによる大気シミュレーション」のテスト行っている。
|
また,175ノードを使えば,10年間の海洋変動のシミュレーションが約1.6日で実行できるという。「全球規模でこのような微細構造の特徴が出るのは画期的なこと」(地球シミュレータセンター長の佐藤哲也氏)。
|
「今までの計算機では,全球的なシミュレーションでこうした渦を高精度で表現することはできなかった。海洋変動のシミュレーションにおける中規模渦の解像は専門家の間でシミュレーションの向上に大きなインパクトを与えるだろう」(同氏)。
|
ESに,海洋大循環の解明に向けた成果を期待する佐藤氏だが,ESが本領を発揮するのは,全球大気大循環モデルを用いたシミュレーションでだという。テストシミュレーションでは,全体の半分の320ノードを使って実行性能14.0TFLOPSを記録した。ちなみに,海洋技術センターでは「世界最速」としてESを紹介したが,その後,すぐに東京大学の天文シミュレータ用スパコンがピーク値でESを2割上回る性能を記録した。しかしながらこれについては,「GRAPE-6は天文シミュレーションに特化して重力計算を効率的に行うために設計されているので,ピーク性能に近い性能を出すことができる。ESとは性格をことにするものだ。ただ,汎用的なスパコンについては,ピーク性能ではなく,実行性能で比べたほうがいい」(地球シミュレータセンター利用支援グループの新宮哲氏)と話す。
|
佐藤センター長は,このシミュレーション結果について「あくまでも現実に起きているような現象を高解像度・高速で再現できる可能性を探る試験的な実験である」と控えめな見解を示しながらも,「それでも,現象がかなり現実的に再現されており,今後,異常気象や気候変動にかかわるさまざまな大気現象のメカニズム解明や予測可能性の研究に役立つだろう」と意気込みを語った。
|
また佐藤氏は,ESのターゲットとして,長期気候変動予測の高精度化,気象災害予測の高信頼化,日本付近の地殻/マントル挙動の解明,地震発生過程の解明などを挙げた。
|
シミュレート結果をどうする?
|
見てきたように,ESの特徴は圧倒的な性能を背景に,高解像度のシミュレーションが行える点である。ただ,高解像度であるがゆえの問題もあるようだ。
|
利用支援グループの新宮氏は,ストレージの容量不足を指摘する。「大気のシミュレーションをデータ処理しようとすると,1日分でも数十Gバイト級のデータになってしまう」(同氏)。
|
ESのストレージには,キャッシュとして使用するシステムディスクが450Tバイト,データ保存用のユーザーディスクが225Tバイト,ならびにバックアップ用のカートリッジテープライブラリ(CTL)が1.5P(ペタ)バイトがある。「速度の問題から,CLTではなくディスクのほうを増やしたい」(同氏)。
|
ただ,新宮氏によれば,単純にディスクの絶対量を増やせばいいというわけでもないようだ。「これだけ高解像度のデータを全部そのままとっておくのは現実的ではない。どんなデータがどういった形で必要なのか。また,どういった形のデータにニーズがあるのかなど,保存方法だけでなく,活用方法も含めてアイデアを出していかなければならない。今後の検討課題だ」(同氏)。
|