TOPIC No.6-25-1 韓国/胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究論文捏造(ねつぞう)事件


01. 幹細胞研究 YAHOO! NEWS

ES細胞論文捏造 韓国検察、黄元教授を起訴へ

2006/04/14 The Sankei Shimbun

 韓国の聯合ニュースは14日、黄禹錫元ソウル大教授の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)捏造(ねつぞう)事件を捜査している検察当局が黄元教授を起訴する方針を固めたと報じた。

 同ニュースによると、検察関係者は「起訴しなくてはならない。ただし、論文捏造を立件できるのかどうかをめぐって捜査チームは腐心している」と述べた。

 同ニュースによると、検察当局は、黄元教授がES細胞の研究過程で卵子を違法採取した事実を一部確認しており、生命倫理法違反で処罰することにしたとした。

 また、黄元教授には研究支援のために巨額の資金が寄せられたが、既に使用した246億ウォン(約30億3300万円)の用途について捜査を続けている。(共同)

論文捏造指示、初めて一部認める 黄教授、検察聴取に

2006/03/06 The Sankei Shimbun

 韓国の聯合ニュースは6日、ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授が同日、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)論文捏造(ねつぞう)事件をめぐり、韓国検察当局の事情聴取に対し、捏造指示を一部認めたと報じた。

 黄教授は論文に掲載された写真の間違いは既に認めているものの、検察に捏造を認めるのは初めて。

 検察関係者によると、黄教授は患者の皮膚細胞からES細胞11個をつくったとした2005年5月の米科学誌サイエンス論文について、研究員にDNA分析の捏造を指示したと供述。しかし世界で初めてヒトクローン胚から胚性幹細胞をつくったとする04年論文の捏造は否認しているという。

 検察当局は研究費をめぐる横領や詐欺容疑のほか、研究用の卵子提供者に金銭を渡していたとする生命倫理法違反容疑を視野に捜査中。黄教授は在宅起訴にとどまるとの見方も出ている。(共同)

韓国検察当局、論文捏造で黄教授を聴取 研究費の横領視野に

2006/03/02 The Sankei Shimbun

 ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授による胚(はい)性幹細胞(ES細胞)論文の捏造(ねつぞう)事件で、政府支援の研究費をめぐる横領容疑などを視野に捜査している韓国検察当局は2日、同教授から初めて事情聴取した。

 聯合ニュースによると、検察は同日、黄教授のほか研究の中心的役割を果たした3人の研究者も聴取。検察関係者はそのうち1―2人の逮捕状を近く請求する可能性を示唆した。

 検察はこれまで共同研究者や研究員の事情聴取を進め、黄教授の自宅や研究室を家宅捜索している。黄教授の聴取で捜査は新たな段階に入った。

 聴取では、ヒトクローン胚からのES細胞分離に世界で初めて成功したとする2004年の米科学誌サイエンス論文の捏造に黄教授がどこまで関与していたかを集中的に追及しているもようだ。(共同)

「ES細胞捏造」黄前教授 “愛国熱狂”続く 抗議の自殺、支持デモ活発

2006/02/08 The Sankei Shimbun【東京朝刊から】

 【ソウル=黒田勝弘】夢の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)は捏造(ねつぞう)と判定され、検察当局によって詐欺容疑などの捜査が進められている黄禹錫・前ソウル大教授に対し、韓国では依然、熱狂的な支持運動が続いている。すでに支持者2人が抗議の焼身・服毒自殺を図ったほか、ソウルの都心では週末に数千人が「黄教授を守れ」とデモを繰り返している。

 支持団体は若者層を中心に全国で50以上もあり、インターネットを舞台にした最大組織「アイ・ラブ・黄禹錫」の会員は10万人以上におよぶ。黄教授支持運動の特徴は強烈な愛国ムードで、デモや集会では参加者が国旗で体を包み、国旗の小旗を打ち振りながら「ああ、大韓民国!」など愛国ソングを歌うといった風景になっている。

 一般のマスコミはソウル大調査委員会が捏造と結論付けた後は黄教授批判に落ち着き、検察捜査や監査院調査による予算流用問題などの報道がもっぱらだが、ネット世界では依然、支持・批判の大論争が続いている。とくに支持派の動きが活発で「黄教授追い落としは陰謀」とする主張が盛んに流されている。

 陰謀論はさまざまで、黄教授の研究成果には米国が嫉妬(しっと)し妨害しているという“米国陰謀論”や黄教授に対する批判・告発グループの宗教色に注目した“カトリック陰謀論”、さらに黄教授が北朝鮮との共同研究を拒否したため親北勢力に政治的に抹殺されたとする保守派サイドからの“北朝鮮陰謀論”もある。

 黄教授支持派は親政府派と反政府派、左派と右派、親北派と反北派といった違いはなく、政治的には幅広い。このため支持団体の間で「黄教授支持運動から手を引け」とお互い非難、攻撃し合う場面もある。

 熱狂的な黄教授支持に対しては「“黄禹錫教”の信者」とか「偏狭な愛国主義」といった批判の声も出ているが、こうした熱狂を生んだ背景には、黄教授のカリスマ的な愛国発言があるといわれている。黄教授はこれまで「科学には国境はないが科学者には祖国が必要だ」とか「大韓民国は技術のみならず精神においても世界にそびえ立つだろう」など愛国心を刺激する発言をしてきた。

 また若者をはじめネット世界では、政府やソウル大の公式発表や既成のマスコミ報道を信用しない反権威ムードが根強い。こうした“愛国熱狂”の政治的影響に注目する向きもあるが、今のところ政権や与野党とも得失を判断しかねており静観の立場だ。

黄教授、7億6000万円流用

2006/02/06 The Sankei Shimbun
韓国監査院 支援金を個人口座に

 【ソウル=久保田るり子】韓国ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授による胚(はい)性幹細胞(ES細胞)論文の捏造(ねつぞう)問題で、韓国監査院は六日、政府と民間支援の研究費のうち六十二億ウォン(約七億六千万円)を黄教授が個人口座で管理、不正流用していたとする中間調査結果を発表した。監査院は検察当局に資料を提出、検察は横領容疑で捜査を開始した。

 監査院は政府による研究支援金百八十六億ウォンと民間による六十億ウォンのうち最近五年間の百六十四億ウォンについて会計監査を実施した。黄教授は不正使用が判明した六十二億ウォンの一部に関して研究材料費、人件費などと説明したが証拠は確認できなかったという。使途のなかには論文捏造に関する関係者への「口止め金」なども含まれているもようだ。

黄教授、62億ウォン不正使用か 韓国監査院が発表

2006/02/06 The Sankei Shimbun

 韓国ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授による胚(はい)性幹細胞(ES細胞)論文の捏造(ねつぞう)問題をめぐり、同国監査院は6日、黄教授が政府や民間の研究支援金約62億ウォン(約7億6000万円)を管理、不正に使用していたとする中間調査結果を発表した。

 使途の解明はできなかった。聯合ニュースによると、黄教授は監査院の事情聴取に対し、研究員らの人件費と説明したが証拠資料はなかった。監査院は検察に関連資料を提出、検察は横領容疑での立件を視野に全容解明を進める。

 監査院は政府研究費186億ウォン、民間後援金60億ウォンの中で、最近5年間に支給された164億ウォンについて会計監査を実施。黄教授が不正使用していたのはこのうち62億ウォンで、内訳は政府支援が約10億ウォン、民間後援金が約52億ウォンだった。(共同)

黄教授、卵子提供の66人に金銭 国家倫理委が中間調査結果

2006/02/02 The Sankei Shimbun

 韓国の国家生命倫理審議委員会は2日、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)論文の捏造(ねつぞう)が発覚したソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授が、研究用に119人から2221個の卵子の提供を受け、半数以上の66人に金銭を渡していたなど倫理違反の可能性があるとする中間調査結果を発表した。聯合ニュースが伝えた。

 調査結果はさらに黄教授が「自主的行為」としていた女性研究員の卵子提供についても黄教授による強制があったと判断した。同委員会は3月23日に最終調査報告書を発表する予定で、黄教授の卵子入手過程で違法性が確定すれば、告発や行政処分などの措置を取る方針。

 金銭提供は昨年施行された生命倫理法で禁止されており、金銭の支払いが施行後であれば違法となる。ソウル大倫理委員会の調査では医療機関の一部は卵子提供者に「補償金」名目で1人当たり平均約150万ウォン(約18万円)を渡していた。(共同)

研究員7人を聴取 論文捏造で韓国検察

2006/01/16 The Sankei Shimbun

 韓国ソウル大学の黄禹錫(ファン・ウソク)教授による胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究論文捏造(ねつぞう)事件を捜査している検察当局は16日、論文に関係した同大学の研究員ら7人に参考人として出頭を求め、事情聴取した。ニュース専門テレビYTNが伝えた。

 検察当局は黄教授の周辺から事情聴取を行った上で、教授本人を聴取する方針。

 聴取を受けたのは2004年と05年の米科学誌サイエンスに発表された「ES細胞」のDNA分析を行ったソウル大の2人と、研究に協力したミズメディ病院の研究員5人。

 検察は17日以降も研究に直接携わった研究員らから事情を聴き、来週以降に黄教授を含む研究で中核的役割を果たした人物への聴取を始める見通し。(共同)

黄教授に共同研究呼び掛け クローンエイド社

2006/01/16 The Sankei Shimbun

 世界初のクローン人間を誕生させたと主張しているクローンエイド社は15日、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)をめぐる論文捏造(ねつぞう)が明らかになったソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授に対し、共同研究を呼び掛ける書簡を送ったと発表した。

 発表によると、同社のボワセリエ代表は黄教授について「(研究の成果は)本物だと確信するが、研究反対派によってデータを改ざんされ、おとしめられた」と擁護。

 代表自身も同様の攻撃にさらされたとして、クローン人間や老化防止などを研究している同社に迎えたいとの意向を示した。黄教授側の対応は不明。

 同社は新興宗教団体ラエリアンの教祖ラエル氏らが1997年に設立した。(共同)

ソウル大、黄教授ら7人を懲戒へ 罷免など必至

2006/01/13 The Sankei Shimbun

 韓国のソウル大学は13日、人クローン技術を使った胚(はい)性幹細胞(ES細胞)論文捏造(ねつぞう)をめぐる同大調査委の最終調査結果が出たことを受け、黄禹錫(ファン・ウソク)教授らを対象に懲戒委員会を開くことを決めた。韓国メディアによると、結論は2月中に出る見通しで、黄教授ら論文執筆の中心メンバーは罷免か解任処分になるのは必至とみられる。

 対象は黄氏ら7人の同大教授。黄氏を除く6人は、いずれも捏造と結論付けられた2004年と05年の米科学誌サイエンスの論文で黄教授との共同執筆者になっていた人物。今月26日に懲戒委の初会合を開く予定。

 罷免となれば5年間は公職への任用が禁止される。論文の共同執筆者でも大学院生などの場合は別の形で対応を検討するという。(共同)

ヒトES細胞すべて捏造 ソウル大が最終結果発表

2006/01/10 中国新聞ニュース

▽黄教授に作成技術なし、クローン犬は本物

 【ソウル10日共同=引地達也】韓国ソウル大の黄禹錫(ファンウソク)教授の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究疑惑を調べていた同大調査委員会は十日、最終調査結果を発表、世界で初めてヒトクローン胚からES細胞作成に成功したとする二○○四年二月の米科学誌サイエンスの論文を「捏造(ねつぞう)」と断定、クローン技術によるES細胞作成は立証できないとした。作成技術自体がないと事実上結論づけたといえる。ただ、○五年八月の英科学誌ネイチャー論文で発表した世界初のクローン犬は本物と確認した。

 教授のES細胞研究の「業績」は完全な捏造とされ、「究極の再生医療」につながると期待された技術自体が虚偽となり、韓国の科学技術に対する国際的な信頼は地に落ち、教授の研究を全面支援してきた韓国政府の打撃はさらに深まった。

 調査委は、○四年二月の論文について、ES細胞と体細胞を提供した患者のDNAが一致せず、ES細胞が突然変異によってできた可能性に言及。黄教授がES細胞作成の立証資料を持っていないとした。

 また、教授が研究で○二年十一月から○五年十一月まで百二十九人から二千六十一個の卵子提供を受けていたことを明らかにした。

 クローン犬とされる「スナッピー」と、体細胞を提供した犬のDNAは一致したという。

 調査委はこれまでに、黄教授がクローン技術で患者の皮膚細胞からES細胞十一個をつくったとした○五年五月のサイエンス論文を完全な「捏造」と断定していた。

 一方、黄教授はES細胞が人為的に「すり替えられた」と主張、検察に捜査を求めており、検察はこの日の発表を受けて捜査に着手する方針とみられる。

▽最終調査結果要旨

 【ソウル10日共同】韓国ソウル大の黄禹錫教授の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究に関する同大調査委員会の最終調査結果の要旨は次の通り。

 一、世界で初めてヒトクローン胚からES細胞をつくったと発表した二○○四年二月の米科学誌サイエンス論文は捏造(ねつぞう)。

 一、○四年論文のES細胞は体細胞の提供者とDNAが一致せず、突然変異によってできた可能性が高い。

 一、クローン技術によるES細胞作成は立証できず、黄教授チームが作成技術を確立したとは言えない。

 一、○五年八月に英科学誌ネイチャーで発表した世界初のクローン犬「スナッピー」は、体細胞を提供した犬とDNAが一致、本物と確認した。

 一、研究には百二十九人が計二千六十一個の卵子を提供。

「神話」崩壊に失望と怒り 韓国

2006/01/10 中国新聞ニュース

 【ソウル10日共同=青木理】何もかも最初からウソだった。難病患者に希望を与え、ノーベル賞も夢でないと韓国民の期待を一身に集めていた黄禹錫ソウル大教授の「業績」は十日、捏造(ねつぞう)と結論付けられた。「希代の詐欺師だ」「信じられない」。世界の科学界にも衝撃を広げる大スキャンダル。韓国は「黄教授神話」の崩壊にあらためて失望と怒りに包まれた。

 同日午前、ソウル大で開かれた同大調査委員会の記者会見には会場に入りきれないほどの報道陣が詰め掛け、テレビ各局が会見を生中継した。通信社の聯合ニュースは「論文捏造で積み上げた『神話』」「国際社会の信頼失墜」と伝えた。

 だが、一部には今も黄教授を支持する声も。同大前で「黄教授は生命工学の未来」と書いたプラカードを掲げた支持者は「技術の有無を証明する機会を黄教授に与えるべきだ」と訴えた。

 黄教授は昨年十二月二十三日の調査委の中間結果発表直後に謝罪して以降、姿を消したまま。韓国メディアによると、ソウル近郊で十日の調査委発表を見守ったというが、会見などは予定されていないという。

韓国大統領、黄教授の責任「明確に追及」 論文捏造断定後、初の見解

2006/01/05 The Sankei Shimbun

 韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は5日、ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授による胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究に関する論文捏造(ねつぞう)問題について「責任ある人には明確に責任を追及する」と指摘し、黄教授は責任を負う必要があるとの考えを示した。

 黄教授のES細胞に関する論文がソウル大調査委員会で捏造と断定されて以降、盧大統領が公の場で同問題への見解を示すのは初めて。ソウルでの科学技術者の新年行事で述べた。

 同委員会は来週にも最終調査結果を報告する予定。盧大統領は、捏造に関し「(国家に)大きな損失があった」とし、責任については「一つ一つの事実を根拠」に慎重に認定しなければならないとの考えを強調した。

 さらに「政府としては、責任がない研究者には研究に集中できる雰囲気をつくりたい」とし「今回の恥ずかしい出来事も積極的に受け入れれば科学技術発達のきっかけとなる」と呼び掛けた。(共同)

動物成分ゼロのES細胞 米が成功、医療応用へ前進

2006/01/02 The Sankei Shimbun

 有害な病原体が潜んでいる恐れがあるマウスなどの動物成分を全く使わずに人間の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を新たに培養することに、ジェームズ・トムソン米ウィスコンシン大教授らのチームが初めて成功し、1日付の米科学誌ネイチャーバイオテクノロジー(電子版)に発表した。

 従来、培養にはマウスの細胞や牛の血清が必要だったが、人の体内に入った場合の安全性が不明で、除去が重要な課題だった。今回の成功でES細胞の再生医療への応用に向け一歩前進したといえる。

 トムソン教授らは1998年、人の体外受精卵からのES細胞の分離に世界で初めて成功。以来、培養液の改良にも取り組み、動物の成分を徐々に減らしてきた。

 今回、血清アルブミンや複数の増殖因子など人の体内にある成分と、ビタミンなど素性がはっきりした物質だけの培養液を開発。不妊治療で使われなかった体外受精卵をその中で培養した結果、新たに2個のES細胞を取り出せたとしている。

 米国ではブッシュ大統領が人の受精卵を壊す研究への連邦資金の使用を禁じているため、チームは研究を民間資金だけで実施。論文で、既存の少数のES細胞を使う研究しか容認しない現在の米国の政策を批判した。(共同)

黄教授が部下に卵子提供を強制、韓国テレビが報道

2006年01月02日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ソウル=中村勇一郎】胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を巡る論文のねつ造が明らかになった韓国の黄禹錫(ファン・ウソク)ソウル大教授について、同国のテレビ局・MBCが先月31日、部下の女性研究員に研究用卵子の提供を強制していたと報道、大きな波紋を呼んでいる。

 「提供強制」は、世界で初めてヒトクローン胚からES細胞を作ったと発表した2004年2月の論文を作成する際、行われたという。

 MBCによると、03年3月、部下の独身女性研究員(当時26歳)が実験中に誤って容器に入った卵子をこぼし、代わりに自分の卵子を提供せざるを得なくなったという。女性研究員は周囲に、「先生に抵抗できなかった」と語り、提供を強制されたことを示唆していた。

 昨年5月の論文作成の際にも、部下の女性研究員に卵子を提供させたことが判明しているが、黄教授は「自発的な提供だった」と釈明していた。

 国家生命倫理委員会の調査によると、黄教授は一昨年と昨年の論文作成の際、計1656個の卵子を使用していた。同委は卵子売買や提供強制がなかったか、詳しい経緯を調べている。

ES細胞「作成技術は確かにある」 黄教授、捏造疑惑に反論

2005/12/31 The Sankei Shimbun

 ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授がヒトクローン胚(はい)を使って胚性幹細胞(ES細胞)をつくったとする論文が捏造(ねつぞう)だったと認定された問題で、黄教授は31日発売の韓国の仏教系ポブボ新聞が掲載したインタビューで、DNA検査で不一致とされた細胞が「すり替えられたのは確実」とし、ES細胞の作成技術は保持していると反論した。

 ソウル大の調査委員会が、2005年5月の米科学誌サイエンスに発表された論文に関してES細胞は存在しないと発表したのに対し、黄教授が見解を示すのは初めて。

 黄教授は「綿密な計画の下ですり替えが行われた」とし、検察に捜査を要請したと強調。「捜査を始めれば2日で真相が明らかになる。専門家でなければすり替えはできない」と述べ、研究チーム関係者による「犯行」だと主張した。

 ES細胞の作成技術自体を保有していないとする指摘に関しては「技術は確かに存在しており、必ず明らかにする」と言明。技術保持を証明するとの意欲を見せたが、新たなES細胞を作るには「6カ月必要」と説明した。

 ただ、ソウル大の辞職を表明している立場では「研究室が使用できない問題がある」と述べ、作成の見通しは立っていないことを示唆した。

 黄教授は熱心な仏教徒。インタビューは30日に京畿道で、黄教授を支持する著名な僧侶との間で行われた。(共同)

ソウル大、論文の完全な捏造確認 ES細胞は存在せず

2005/12/29 The Sankei Shimbun

 韓国ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授による胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究疑惑を調査中の同大調査委員会は29日、ことし5月に黄教授が「患者の体細胞を基にしたヒトクローン胚から11個のES細胞をつくった」とする論文を米科学誌サイエンスに発表した時点で、ヒトクローン胚からつくったES細胞は存在しなかったと発表した。論文は完全な捏造(ねつぞう)であることが確認された。

 これにより研究チームが世界で初めて成功したとされるヒトクローン胚からのES細胞作成の技術自体も疑問視されるのは必至となった。

 同委員会によると、冷凍保存していた5個の同細胞をDNA分析した結果、もとの患者の細胞と一致せず、さらに研究チームが11個の細胞を作成したと虚偽記載した5月の論文のもとになった2個についてもDNAが一致しなかった。(共同)

論文「完全でっち上げ」か ES細胞でソウル大調査委結論へ

2005/12/26 The Sankei Shimbun

 韓国ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究をめぐる疑惑で同大調査委員会は、ヒトクローン胚からES細胞11個をつくったとする5月の米科学誌サイエンス論文の執筆時点で当該のES細胞は一つもなかった、との結論に達した。聯合ニュースが同委関係者の話として26日伝えた。

 調査委は先に発表した中間調査結果で、11個のうち9個は存在せず、論文は2個のデータを水増ししたでっち上げだったとしていた。29日に2回目の中間調査結果、来年1月初旬に最終調査結果をそれぞれ発表する見通しだが、2個も当該のES細胞でなかったとすれば論文は完全なでっち上げとなり、黄教授チームが世界で初めて成功したとされるヒトクローン胚からのES細胞作成の技術自体に疑問符がつくのは必至だ。

 調査委は、2個のES細胞をDNA検査した結果、2個ともヒトクローン胚ではなく、受精卵からつくった別のES細胞だったことが分かったという。

 ただ黄教授側は既に、2個は研究チームのメンバーら何者かによって入れ替えられたと主張、検察当局に業務妨害容疑などで捜査要請している。

 調査委はまた、黄教授チームが論文執筆に前後して追加作成し、冷凍保管していた5個のES細胞に関しても外部機関でDNA検査を実施しているが、いずれも初期段階で、仮にDNA検査が一致してもES細胞とみることはできないと判断しているという。(共同)

週明けにもDNA結果発表へ ES細胞問題でソウル大調査委

2005/12/25 The Sankei Shimbun

 韓国の聯合ニュースは24日、黄禹錫(ファン・ウソク)ソウル大教授チームの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究疑惑を調査している同大調査委員会が26日からの週の初めにもES細胞のDNA分析結果を発表する見通しだと報じた。

 調査委は22日に黄教授が患者の皮膚細胞からつくったとするES細胞などのDNA分析を外部機関に依頼。分析結果によって、黄教授が本当にクローン技術でES細胞をつくり出す技術を持っていたかどうか判断するとみられる。

 一方、黄教授が、研究チームのES細胞を別の病院のES細胞と入れ替えたとして、検察当局に捜査を要請している米ピッツバーグ大の金ソンジョン研究員が24日夜、韓国に帰国した。

 金研究員は研究チームの中核メンバーだった。YTNテレビは金研究員はソウル市内で調査委の調査を受けているとみられると報じた。(共同)

米サイエンス誌、独自判断で論文削除も ES細胞問題

2005/12/24 The Sankei Shimbun

 韓国ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究疑惑で、同大調査委員会がでっち上げと結論付けた論文を5月に掲載した米科学誌サイエンスは23日、黄教授や調査委から立場の表明がない場合は、独自の判断で論文を取り消す方針だと発表した。

 この論文について黄教授は16日に、細胞の写真に人為的な誤りがあったとして撤回を表明。同誌は「著者全員の合意があれば認める」としていた。しかし、調査委は23日、論文は細胞の個数を水増しした故意のでっち上げとの中間報告を発表。同誌にも通知した。

 韓国の聯合ニュースによると、同誌は30日までに論文取り消しに関するソウル大の立場を明らかにするよう要請した。

 同誌は、世界で初めてヒトクローン胚からES細胞を作ったとする昨年2月の黄教授の論文についても、調査委とともに調べるとしている。(共同)

ソウル大調査委「5月のES細胞論文は虚偽」

2005/12/23 The Sankei Shimbun

 韓国ソウル大の黄禹錫(ファンウソク)教授による胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究疑惑を調べている同大調査委員会は23日、黄教授が11個のES細胞をつくったとして今年5月に米科学誌サイエンスに発表した論文は細胞の個数を水増しした「でっち上げ」だったとの中間調査結果を発表した。調査委は「科学の基盤を傷つける重大な行為」と批判、同教授は「国民に謝罪する」と述べ、辞意を表明した。

 最先端の再生医療の進展につながると世界的に注目された研究論文の信頼性を調査委が否定したことで、同分野の研究に大きな影響が出るのは避けられない。韓国政府や社会は大きな衝撃を受けており、同教授を全面支援してきた政府の姿勢が問われるのは必至だ。

 同調査委は今後、黄教授がヒトクローン胚を使って世界で初めてES細胞をつくったとした2004年のサイエンス誌の論文や、体細胞クローン技術を使ってクローン犬を誕生させたとした今年8月の英科学誌ネイチャーの論文についても調査、検証するとしている。

 黄教授は5月19日にサイエンス誌(電子版)に論文を発表、クローン技術を使い未受精卵と病気の患者の皮膚細胞を融合させたヒトクローン胚から11個のES細胞をつくったとしたが、調査委は論文を提出した3月にはES細胞が2個しか存在せず、この2個のデータで11個の実験データを作成したと結論付けた。

 さらに、存在した2個がクローン胚からつくったものかどうかはDNA分析などで確認する必要があるとしており、結果によってはクローン胚からES細胞をつくる技術の存在自体が否定される可能性もある。

 同調査委は、2個を11個と偽ったことに黄教授の関与があったとするしかないとした上で「黄教授が重大な責任を逃れるのは難しい」と厳しく批判した。

≪ソウル大調査委の発表骨子≫

 一、11個の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)に関する実験データはすべて二個の細胞のデータから作成しており、でっち上げ

 一、科学の基盤を傷つける重大な行為で、黄禹錫(ファン・ウソク)教授は責任を逃れられない

 一、2個のES細胞についても本当に患者の皮膚細胞からつくったものかどうかDNA分析で確認する

 一、2004年2月の論文とクローン犬についても検証する  (共同)

 「すっかり信じていたのに」「詐欺だ」。韓国ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授チームの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究をめぐる疑惑。今年5月の米科学誌サイエンスに発表された論文を「でっち上げ」と断じた同大調査委員会の中間調査結果が23日発表されると、黄氏を英雄視してきた韓国民は失望と怒りに包まれた。

 ソウル大で行われた調査委の記者会見場は報道陣であふれ、同委の盧貞恵(ノ・ジョンヘ)教授は「でっち上げ」とした調査結果を淡々と読み上げた。

 直後に記者団の前に現れた黄教授はスーツにネクタイ姿。硬い表情で「国民におわびする」「教授を辞任する」と述べる一方、皮膚細胞からES細胞をつくる技術は「韓国の技術だ」と強調。研究員らのすすり泣きが漏れる中、手を振って車に乗り込んだ。

 だが、同大教授会幹部は「学問的でっち上げと詐欺だ。絶対許せない」。韓国初の科学分野でのノーベル賞への期待などから黄教授を熱狂的に支持してきた国民のショックは大きい。

 「信じてきた黄教授が国民をだましていたなんて、本当にがっかりした」と主婦(50)。大学生(27)は「教授への国民の期待が行き過ぎていた。『国益』について冷静に考える契機にすべきだ」と話した。(共同)

 韓国ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授の研究をめぐる主な動きは次の通り。

 2004年02月11日 ヒトクローン胚(はい)から胚性幹細胞(ES細胞)を世界で初めてつくったと米科学誌サイエンスで発表

 2004年05月06日 英科学誌ネイチャーが研究チームの女性研究員2人が卵子を提供した疑いを指摘

 2005年01月01日 韓国で生命倫理法施行

 2005年05月19日 クローン技術で患者11人の皮膚細胞からES細胞をつくることに成功したとする論文をサイエンス誌に発表

 2005年08月04日 世界初のクローン犬を誕生させたとする論文をネイチャー誌に発表

 2005年10月19日 ソウル大にES細胞バンク設立

 2005年11月21日 研究協力者の病院理事長が卵子提供者への金銭提供認める

 2005年11月24日 韓国保健福祉省が女性研究員の卵子提供や別の卵子提供者への金銭支払いがあったとする同大調査結果を発表、倫理的に問題ないと結論

 2005年12月15日 病院理事長が、5月の論文のES細胞は「存在しない」と発言

 2005年12月16日 黄教授が会見で論文の添付写真に一部誤りがあったと説明、論文撤回を表明

 2005年12月23日 ソウル大調査委員会が5月の論文は「でっち上げ」と発表。黄教授が国民に謝罪し辞意表明  (共同)

韓国MBC報道にネットで批判沸騰 クローン胚研究問題

2005/11/28 The Sankei Shimbun

 人のクローン胚(はい)分野で世界の注目を集める韓国ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授の研究をめぐり、問題点を報じたMBCテレビの番組に対し「国益に反する報道」との批判がインターネットを中心に沸騰。番組スポンサー12社のほとんどが広告打ち切りなどの意向を示し、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が“仲裁”に乗り出す騒ぎに発展している。

 MBCは22日、調査報道が売り物の時事番組で黄教授チームの研究過程で卵子を提供した女性に金銭が支払われていたことなどを伝え、倫理的問題があると指摘。疑惑は以前から伝えられていたが、24日に黄教授が事実を認め、細胞バンク責任者を辞任すると表明すると批判の矛先がMBCに集中した。

 黄教授が韓国で「スター」となっていたこともあって、ネットでは「民族の反逆者」とMBC攻撃が過激化し、番組スポンサーへの抗議も展開。26日にはソウルのMBC本社前で抗議集会も開かれた。

 しかし盧大統領は27日、青瓦台(大統領官邸)ホームページに異例の談話を掲載し「私もMBC報道に腹が立った」としつつも「広告取り消しは度を越している」と批判をいさめた。

 28日付の韓国各紙も「国益だけを掲げて報道を否定するのは非理性的」(京郷新聞)、「報道を売国行為と責めるのは望ましくない」(韓国日報)と報道、冷静な対応を呼び掛ける声も出始めている。(共同)

研究員2人が卵子提供 ソウル大のクローン技術

2005/11/24 The Sankei Shimbun

 人間のクローン胚(はい)から世界で初めて胚性幹細胞(ES細胞)をつくることに成功した韓国ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授の研究について、韓国保健福祉省は24日、研究チームの女性研究員2人が卵子を提供していたほか、別の卵子提供者の女性に対し、金銭が支払われていたとする同大倫理委員会の調査結果を発表した。

 倫理委は卵子の入手過程について「法的にも倫理的にも問題はなかった」と結論付けたが、同省は細胞提供の透明性や倫理面での監督を強化する方針を示した。韓国では1月に施行された生命倫理法で卵子提供に伴う金銭授受を禁じているが、当時は施行前だった。

 研究チームはこれまで研究に用いた卵子の詳しい入手経緯について明らかにしていなかった。クローン技術による再生医療実現に向けて先月、黄教授を所長に開設された世界初のES細胞バンク「世界幹細胞ハブ」(本部・同大)の活動にも影響を与えそうだ。

 倫理委の調査結果によると、研究員2人は自発的に卵子を提供。黄教授は提供後にこの事実を把握したが、プライバシー問題を勘案し、対外的に公表しなかったという。さらに研究に協力した病院が、別の卵子提供者の女性らに「補償金」名目で1人当たり平均約150万ウォン(約15万円)の金銭を渡していたことも確認された。

 同大の研究をめぐっては、共同研究者の米ピッツバーグ大のジェラルド・シャッテン教授が最近になり卵子入手過程の倫理的問題を指摘し協力関係を解消している。(共同)

[解説]揺れるソウル大ES細胞研究

2005年11月16日 読売新聞 Yomiuri On-Line

卵子提供巡る疑惑 韓国側に説明責任

 胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究で世界をリードする韓国ソウル大のチームが、卵子提供をめぐる疑惑で揺れている。(ワシントン支局・笹沢教一)

 京都大で15日に始まったES細胞の国際シンポジウム。世界で初めて人のクローン胚からES細胞を作ったソウル大のファン・ウソク教授が参加するはずが、開催直前に突然、欠席になった。ファン教授は、その研究倫理をめぐり、疑惑の渦中にあったのだ。

 様々な臓器・組織に育つES細胞の中でも、ファン教授が研究しているクローンES細胞は、患者本人の遺伝情報を持つため、拒絶反応のない究極の臓器移植が実現すると、特に期待が高い。

 生命倫理の観点で慎重になった日本や米国を横目に、ファン教授は成果を上げた。先月には米英の科学者の協力で世界初のES細胞バンクを設立、この分野をけん引する存在になろうとしていた。

 だが、バンク組織の代表に就任する予定だった米ピッツバーグ大のジェラルド・シャッテン教授は今月中旬、ファン教授との協力関係を断つと表明した。AP通信によると、カリフォルニア州の不妊治療機関も関係断絶を示唆、米民間医療財団もバンクへの補助金支出を見合わせている。

 問題の発端は昨年5月、英科学誌が「研究チームの女子学生が卵子を提供した」と報じたことだった。女性の身体に負担をかける卵子提供は自発的でなければならない。教授と学生という、一方の立場が弱い関係で提供があったとすると、本人の同意が適正かどうかが疑問となる。

 ファン教授側は、女子学生の卵子提供自体を否定、「女子学生が英語力不足で科学誌の質問を誤解した」と釈明した。しかしシャッテン教授は今月中旬、「この問題で虚偽の事実が判明した」との声明を発表。再度釈明したファン教授は「韓国の倫理基準は満たした」と話したが、詳しい説明はなく、シャッテン教授に直接の反論はしなかった。

 仮に釈明にうそがあったとすると、研究者間の信頼関係だけでなく、世界初とされる成果自体も、妥当性を根底から揺るがしかねない問題だ。中辻憲夫・京都大再生医科学研究所長は「大きな問題になってしまい科学にとっては残念なことだ」と話す。

 米国では別のバンクを設立して、韓国依存をけん制する動きもあり、ブッシュ大統領がES細胞研究を厳しく規制する中、様々な政治的思惑が働いた可能性は否めない。韓国側からすればES細胞の世界戦略がつまずいた形だ。韓国は「疑惑」に対し、すみやかに説明する責任がある。

 日本でも文部科学省が、クローン胚研究指針を策定中。将来、同様の疑惑を持たれることのないよう、しっかりした仕組みを作ってほしい。

米教授が韓国との協力解消 幹細胞研究、倫理面に疑念

2005/11/14 The Sankei Shimbun

 人間のクローン胚(はい)から世界で初めて胚性幹細胞(ES細胞)をつくるのに成功した韓国・ソウル大と共同研究を続けてきた米ピッツバーグ大のジェラルド・シャッテン教授が13日までに、協力関係に終止符を打つと発表した。

 クローン胚づくりに使われた女性の卵子入手過程に、倫理的な問題があった恐れが判明したためとしている。

 同教授は、韓国が先月設立を発表し、米英にも拠点を置くとした世界初のクローンES細胞バンクの評議会議長を務める予定だったため、同バンクの運営にも何らかの影響が出そうだ。

 ピッツバーグ大によると、同教授が問題と指摘したのは、ソウル大が2004年に最初にクローンES細胞づくりに成功した際の卵子入手法。英科学誌ネイチャーが同年、チームの一員の大学院生が卵子を提供していた疑いなどを指摘したが、韓国側は否定。しかしシャッテン教授が最近得た情報によると、ソウル大の説明に偽りがあった可能性が明らかになったという。(共同)

ES細胞提供の研究施設、難病患者の登録開始…韓国

2005年11月02日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 病気やけがで失われた神経や筋肉などを治す再生医療への応用が期待されているヒト胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を世界に提供する目的で、韓国政府が開設したセンター「世界幹細胞ハブ」は1日、研究への参加を希望する難病患者の登録を開始した。

 今後、脊髄(せきずい)損傷やパーキンソン病などの難病患者から採取した体細胞を使い、クローン技術で患者と同じ遺伝情報を持つES細胞を作製、世界の研究機関にも提供する。

 同センターは先月19日、ソウル大の敷地内に開設。ヒトクローン胚からES細胞を作り出すことに世界で初めて成功した同大のファン・ウソク教授が所長に就任した。難病患者の登録は、現時点では治療に結びつくものではなく、体細胞の提供にとどまるという。

[解説]韓国のクローン研究

2005年08月18日 読売新聞 Yomiuri On-Line

国挙げて支援 世界最先端に

 韓国は昨年来、クローン技術を生命科学に応用した研究で次々と成果を上げ、この分野で世界の最先端を走る。国を挙げての取り組みが日本との大きな違いだ。(科学部 木村達矢)

 ソウル大学の黄禹錫(ファンウソク)教授らは昨年2月、クローン技術を人間の細胞に応用したヒトクローン胚(はい)から、様々な臓器・組織の細胞に育つ胚性幹細胞(ES細胞)を世界で初めて作製したと発表。今年5月には、脊髄(せきずい)損傷などの患者と同一の遺伝子を持つクローン胚からのES細胞作製を報告した。一連の研究は、傷んだ臓器や組織をよみがえらせる再生医療の実現を期待させた。

 そして今月、同じチームが今度は世界で初めてクローン犬を作った。

 クローン胚1095個のうち出産は2頭と確率はまだ低いが、研究チームの技術は高い。クローンマウスを研究する理化学研究所の若山照彦チームリーダーは「排卵の仕方など犬の繁殖を詳しく調べた結果だろう」と評価する。

 欧米や日本に先駆けて、韓国のクローン研究が進むのは、国を挙げた支援体制があるためだ。今年1月には、幹細胞研究や遺伝子治療など先端医学を包括的に規制するアジア初の生命倫理法を施行した。同法に基づき大統領令で定めた17の難病治療の目的なら、ヒトクローン胚研究が可能だ。「科学技術推進派の主張をかなり取り入れた法律だ」と、科学技術文明研究所の洪賢秀(ホンヒョンスウ)研究員は語る。

 韓国の市民団体や宗教団体は、胚の研究は倫理面で懸念があると指摘するが、洪研究員によれば、黄教授を英雄視する国民の熱狂的な支援の声にかき消されがちだという。

 一方、日本では生命倫理の議論は低調で、クローン人間作りを禁止する規制法が目につく程度。昨年、総合科学技術会議がヒトクローン胚について「基礎研究に限り作製容認」とする報告を出したが、研究の推進・規制を倫理面も踏まえてどう体系的に整理するのか深い議論はなかった。

 文部科学省の作業部会はヒトクローン胚の指針を策定中だが、人間の尊厳にかかわる先端医学に対し、国として包括法を作るのか、個別の指針なのか。韓国の熱狂にあおられることはないが、将来を見据え議論を積み重ねたい。

クローン技術応用、患者のES細胞作製…米韓チーム

2005年05月20日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 患者自身の遺伝情報(DNA)を持ち、様々な細胞や臓器に成長できる「胚性幹(はいせいかん)細胞(ES細胞)」という特殊な細胞をクローン技術を使って作製することに、韓国ソウル大や米ピッツバーグ大などのチームが世界で初めて成功した。

 糖尿病や脊髄(せきずい)損傷などの患者の細胞や臓器をよみがえらせ、移植しても拒絶反応を起こさない“究極の再生治療”実現に大きな一歩となる。一方で、クローン人間誕生にもつながる技術のため、生命倫理の問題が改めて浮上しそうだ。研究は19日付の米科学誌サイエンス電子版に掲載される。

 研究チームはまず、ボランティアの女性18人が提供した、卵子のもとになる卵母細胞185個から女性のDNAが入った核を除去。その細胞に、脊髄損傷や若年性糖尿病など実際の患者の皮膚細胞(体細胞)から採取した核を移植した「クローン胚」を作製した。31個のクローン胚が胚盤胞(はいばんほう)と呼ばれる段階まで成長し、うち11個からES細胞を取り出すことに成功。結果的に、皮膚細胞を提供した患者11人中9人は、移植しても拒絶反応の起きない自分のDNAが入ったES細胞を合計11個、1人当たり1〜2個作ることができた。

 このES細胞の染色体に異常は見られず、皮膚、網膜、筋肉など様々な細胞への分化能力が確認できた。

 研究チームのメンバーは昨年2月、世界で初めてヒトクローン胚からのES細胞作製に成功した。その際は、体細胞提供者と卵母細胞提供者が同一人物で、242個の卵母細胞からできたES細胞も一つだけだった。今回は実際の患者の体細胞を使った上で、ES細胞作製効率を10倍以上に高めた。研究チームは「拒絶反応が本当に起きないかなど、安全性をさらに調べる必要がある」としている。

 中辻憲夫・京都大再生医科学研究所長の話「卵子提供者が1人か2人いれば患者のクローンES細胞が手に入る効率を達成しており、実用化に十分なレベルとなった」

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