TOPIC No.6-17 遺伝情報解析/ゲノム解読

01. ヒトゲノム 完全解読へ 2000年06月27日
02. ヒトとゲノム 少し分かりやすく 2000年06月26日 CNN.co.jp
03. ゲノムネット(GenomeNet WWW server)
04. ヒューマンゲノム計画とニューバイオフィジックスby京都大学化学研究所金久 實 
05. ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針
06. ヒトゲノム解読結果公式発表 by裳華房
07. The Desginer of Lives Genome
08. 2002 ヒトゲノム toWer 2002
09. ヒトゲノムリンク by山口大学医学部微生物学
10. 人とチンパンジー

韓国で世界最大規模の「ゲノム」分析が完了

2010/03/26 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 趙虎鎮(チョ・ホジン)記者

GMI・朝鮮日報「アジアン・ゲノム・ロード・プロジェクト」

韓国人10人を対象に研究

 ソウル大学医学部の遺伝体医学研究所(Genomic Medicine Institute=GMI、所長:ソ・ジョンソン教授)は、韓国人男女各5人ずつ、計10人のゲノム分析を完了したことを25日、発表した。これは、今まで世界で行われたゲノム分析でも最大規模となる。2003年以降、米国など先進国を中心に各国が競い合ってゲノム分析を進めているが、どの研究も分析対象が一人のため、研究結果を標準化するには無理があった。

 GMIが今回、大規模なゲノム分析に成功したことで、韓国人の遺伝的特性に合わせた医学的研究や難治性遺伝疾患の治療に画期的な転機が訪れるものと思われる。また、韓国人の韓半島(朝鮮半島)伝来経路に関する研究にも急速な進展が期待される。

 今回のゲノム分析は、今年初めに発足したGMIと朝鮮日報の共同プロジェクト「アジアン・ゲノム・ロード」の一環として実施された。アジアン・ゲノム・ロードは、アジア9カ国の男女のゲノムを分析することにより、アジア系人類の移動経路や文化人類学的な変遷過程を確認し、将来的には、アジア人の特徴に合わせた医学の時代を切り開くことを目的とする、世界初の国際科学技術プロジェクトだ。プロジェクトチームは1年間にトルコ・カザフスタン・ベトナムなど9カ国、計918人のゲノムを抽出・分析することになる。これに先立ち、GMIと朝鮮日報は24日、朝鮮日報本社でアジアン・ゲノム・ロード共同遂行のための相互了解覚書(MOU)を締結した。

ゲノム分析:アジア民族のルーツを解明へ(上)

2010/03/26 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 趙虎鎮(チョ・ホジン)記者

GMI・朝鮮日報「アジアン・ゲノム・ロード・プロジェクト」

「民族の移動経路・相違」を解明し、韓国人のルーツ特定の足掛かりに

 ソウル大学医学部の遺伝体医学研究所(Genomic Medicine Institute=GMI)と朝鮮日報が共同で推進する「アジアン・ゲノム・ロード」プロジェクトは、韓国を含むアジア及び隣接国9カ国が協力し、男女計918人のゲノム(全遺伝情報)を約1年かけて分析する大規模な科学技術プロジェクトだ。

 この研究を通じ、アジア民族の移動経路を追跡し、遺伝的・文化的な同質性と相違を解明することを目指す。また、韓国とアジア各国が医療サービスや遺伝工学、情報技術(IT)分野で新たな協力関係を築く契機にもなる見通しだ。

■ DNAで韓国人のルーツを探る

 ヒトのDNA(遺伝物質)は約30億の塩基対で構成されており、これをゲノムと呼ぶ。その中には、人体を構成するのに非常に重要な情報もあれば、あまり意味のない情報もある。このうち約2万5000個の重要なDNA遺伝子が、科学者たちによってすでに発見されている。

 ヒトを家に例えると、ゲノムは設計図のようなものだ。ゲノムを分析することによって、ヒトという家の設計図が見えてくる。歴史的建造物の様式を分析すれば、建造された時期や当時の文化的な傾向が分かるように、ゲノムの分析によって、民族の変遷や移動経路を把握することが可能になる。「アジアン・ゲノム・ロード」は、アジアの主要民族のゲノムを分析し、民族の移動経路と相違点を解明することを目的とする事業だこれまでアジア南方系の移動経路を把握したことはあったが、アジアの南方・北方のゲノム分析を同時に、しかも約1000人を対象とした大規模な研究を実施したことはなかった。アジアン・ゲノム・ロードは、アジア民族の起源と相違点をゲノムで明確に示す初の事例となるだろう。

ゲノム分析:アジア民族のルーツを解明へ(下)

 「アジアン・ゲノム・ロード」プロジェクトには、北方系からはトルコ、カザフスタン、モンゴル、ロシア、中国、韓国が、南方系からはインド(南部)、タイ、ベトナムが参加する。アジア民族の移動経路は、トルコをスタートし、カザフスタン、モンゴル、シベリア、中国東北部を経て韓半島(朝鮮半島)にたどり着いた北方系と、インド、タイ、ベトナムを経由した南方系に分類される。韓半島は北方系と南方系の人種の合流地点だ。韓半島で合流した北方系と南方系の人種は、その後日本に渡ったとの見方が、学会では有力だ。今回の研究が完了すれば、これまで多くの推測や仮説が混在してきたアジア民族の移動経路と変遷が科学的に確認される。

■韓国がゲノム分析のトップランナーに

 「アジアン・ゲノム・ロード」プロジェクトを通じて韓国が得るものは大きい。1000人に達する大規模なゲノム分析で蓄積されるノウハウと情報により、韓国は医学・バイオ分野の先進国として、世界的な地位が向上すると期待される。

 身体、臓器、骨、筋肉の構造や機能を取り扱う解剖学が発展していなければ、外科手術で可能な各種の疾病治療は困難だっただろう。今回はゲノム分析によって、東洋人の瞳が黒い理由や、髪の毛が人によって直毛であったりクセ毛であったりする理由などが明らかになる。ヒトの設計図であるゲノムを解析することは、遺伝子疾患のような各種の難病治療に新たな突破口を開くことを意味する。

 ヒトゲノムの分析については、2003年に米国が初めて成功した。現在は、米国、日本、中国、英国などの医科大学や遺伝工学の研究チームが、ゲノム分析に力を注いでいる。最近では生命工学の研究チームだけでなく、グーグルのようなIT企業までもがゲノム分析に乗り出している。30億対の莫大(ばくだい)な遺伝子情報から重要なものを選び出すという作業において、検索技術は欠かせないからだ。

 コンピューターのデータサービスを提供するサムスンSDSが24日、サムソン医療院と共同でDNA分析に乗り出すと発表したが、これも同じ理由からだ。ゲノム分析は、ITと遺伝工学の各分野で優秀な人材を誇る韓国にとって、非常に有望な複合分野であると評価されている。GMIのソ・ジョンソン所長は、「韓国のITと生命工学によって、アジア民族特有の遺伝子疾患を治療する土台づくりが可能になる。アジアン・ゲノム・ロード事業は『科学の韓流』のスタートとなるはず」と語った。

ゲノム分析:「韓国が研究の主導権を握るべき」(上)

2010/03/26 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 イ・ジェウォン記者(朝鮮経済i)

韓国人10人のゲノムを分析、標準ゲノムを作成

「アジア・ゲノム・ロード・プロジェクト」を主導するソ・ジョンソン・ソウル大教授。/写真=全基炳(チョン・ギビョン)記者 「“生老病死”という人類の永遠の宿題を、これまでの医学的な知識だけで解決することはできない。最も効率的な解決方法は、遺伝情報を基にした、個人に合った医学だ。これを実現するために、アジアでは韓国が主導権を握るべきだ」

 「アジア・ゲノム・ロード・プロジェクト」を主導する、ソウル大医学部のソ・ジョンソン教授は25日、「最近、韓国人10人の遺伝子の分析を通じ、韓国人の標準ゲノム(DNAで構成される遺伝情報)を作成した」として、その意味について、冒頭のように説明した。一人ではなく、複数の人のゲノムを分析し標準化するという試みは、世界でも初めてだ。今回の研究は、韓国人に共通して存在する遺伝特性を見つけ出し、すでに発表されているアフリカ人、欧州人のゲノムと比較できる資料を提示したという点で意義がある。また、遺伝子を分析した10人のうち5人が女性であるという点も注目に値する。これまで、世界各国で遺伝子分析が行われた15人のうち、女性は一人しかいなかった。「アジア・ゲノム・ロード・プロジェクト」は、人類のゲノムに関する研究を、アジアに広めようとするものだ。

 人間の体は、ゲノムという設計図が指示した通りに合成されたたんぱく質を通じ、生体活動を行う。ゲノムの遺伝子に損傷があれば、人体は完全な形のたんぱく質を形成することができず、病気を引き起こす。ゲノムの分析を通じ、こうした可能性を予想して、診断や治療に適用していくのが遺伝子医学だ。

 この分野では最近、世界的に激しい競争が繰り広げられている。米国は2003年、初めてゲノム地図が完成し、この分野で主導権を握るかと思われたが、その後、情報技術(IT)の発達により、分析を行うための優れた設備が普及し、新たな分析技術も次々と登場したため、各国が研究に取り組むようになった。米国は、自国が作成したゲノム地図が、世界のすべての人類に普遍的に適用できる標準だ、と主張してきたが、今回の韓国人10人のゲノムの分析で、民族ごとにゲノムの違いがあるということが立証された。

ゲノム分析:「韓国が研究の主導権を握るべき」(下)

韓国人10人のゲノムを分析、標準ゲノムを作成

 ソ教授は、「アジア人と米国人のゲノムには相当な違いがある。薬物に対する反応もそれぞれ異なるだけに、各国や地域は自分たちのゲノムについて知る必要がある」と説明した。

 「中国の研究者たちも2008年、科学雑誌『ネイチャー』に、中国人一人のゲノムを公開し、“アジア人のゲノムの標準だ”と発表した。これは、東北工程(中国が高句麗・渤海の歴史を自国の歴史に編入しようとする企図)の遺伝子医学版だ。だが、われわれが昨年、韓国人一人のゲノムを解読し、『ネイチャー』誌で公開したことで、“(韓国人は)北方系のアジア人”という事実を示し、中国とは一線を画した。さらに今回、中国よりも早く、10人のゲノムの解読に成功した」とソ教授はいう。

 アジア人のゲノムの標準についての研究で主導権を握ろうとするのは、ゲノムがアジア人に適合する薬物を開発するためのカギになるというのが主な理由だ。こうした状況について、ソ教授は「アジア人のゲノム戦争」と表現する。中国が現在、「アジアの標準」と主張する自国民99人のゲノムの分析を進めており、あと3年もすれば、米国もアジアに目を向けることが予想されるためだ。

 ソ教授は、今回作成した韓国人の標準ゲノムを、韓国生命工学研究院の国家生物資源情報管理センターへ提供し、研究者たちが自由に活用できるようにする方針だ。昨年死去した緑十字社の許永燮(ホ・ヨンソプ)前会長が、ゲノムの研究の必要性を理解し、30億ウォン(約2億4400万円)の研究費の援助を快諾したとき、「研究成果を公表し、誰もがメリットを享受できるようにする」と約束したが、これを守った形だ。ソ教授はまた、「ゲノムの研究が、人種間の序列や優劣を付け、対立をあおるようなことはあってはならない。むしろ、貧しい人たちも等しく医療の恩恵を受けられるよう手助けする手段として活用していくべきだ」と付け加えた。


遺伝子数、人によって違っていた…体質に関与か

2006年11月23日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 父母からそれぞれ受け継ぎ、2個1組の遺伝子が、人によっては三つ以上あるなど、ゲノム(全遺伝情報)の12%の領域で個人差が見られることが、東京大先端科学技術研究センターなどの国際共同研究でわかった。23日付の英科学誌ネイチャーに発表した。

 この個人差は従来の遺伝子配列の違いと同様、病気のなりやすさ、薬の副作用の出やすさなどに関与しているとみられ、医療応用へ研究の進展が期待される。

 研究チームは、白人、アフリカ人、アジア人(日本人を含む)270人のゲノムを詳細に調べた。その結果、1447種の遺伝子で数に個人差があることがわかった。

 人によって0〜10個と幅があり、多いほどたんぱく質が多く作られる。免疫機能や薬の代謝にかかわる遺伝子が多く、個人の体質に関与しているとみられる。研究チームの油谷浩幸教授、石川俊平助手によると、CCL3L1遺伝子が作るたんぱく質が少ないとエイズウイルスに感染しやすくなり、FCGR3B遺伝子の数が少ないと糸球体腎炎が起こりやすくなる。

 これまで、遺伝子を形作る物質のわずかな違い(SNP)が、体質などの個人差を決定すると注目されていた。油谷教授は「SNPと遺伝子数の個人差を組み合わせることで、個人の体質と病気の関係がより精密にわかる」と話している。

「ヒトゲノム地図」完成、オーダーメード医療実現へ道

2006年10月27日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 人が生まれつき持っている体質が全遺伝情報(ヒトゲノム)のどの部分で決まっているのか、その所在地を示す遺伝情報の“地図”を、日米など5か国の国際研究チームが完成させた。

 糖尿病や高血圧などの個別の病気のなりやすさと、地図内のどの場所が関連しているかの解明は、今後の課題だが、遺伝レベルも含め、その人の体質に合わせた「オーダーメード医療」の実現に近づく成果として期待される。

 27日付の英科学誌ネイチャーで発表される。

 ヒトゲノムは99・9%までは誰でも同じとされるが、残り0・1%の中に、遺伝情報を記す化学物質(塩基)の配列の1か所が異なる部分(SNP)が散在し、それが体質などの個人差を決定すると注目されていた。

 このSNPは、数も1000万個にも上り、病気との関連の解明には、膨大な時間と費用がかかるとされてきた。

 日本からは理化学研究所遺伝子多型研究センター(中村祐輔センター長)が参加した研究チームは、ゲノム内に散在しているとみられていたSNPが複数で「ブロック」(ハプロタイプ)をつくり、ブロック単位で連動して遺伝していくことに着目。

 ブロック内の一部のSNPを調べれば、ブロック内の残りのSNPの機能も推測できることを突き止めた。例えば、日本人、中国人の場合、約25万個のSNPを調べるだけで、98・5%の精度で個人差を識別できることがわかった。

 研究チームは、日本、中国、米国など計270人から採取した血液サンプルをコンピューターを駆使して分析。個人の体質につながるとみられる110万個のSNPの位置に基づいて、ブロック内の重要なSNPの所在地を、ゲノム上に地図のように描いた。

“がらくた”遺伝子、実は胎盤形成関与…東京医歯大など

2005年12月23日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 哺乳(ほにゅう)類のゲノム(全遺伝情報)の中で、かつて“がらくた”と思われていた部分に、種の存続に欠かせない遺伝子があることを、科学技術振興機構と東京医科歯科大の研究チームが突き止めた。

 母体と胎児をつなぐ胎盤が作られる際に必要な遺伝子で、12日付の米科学誌ネイチャー・ジェネティクス電子版に発表された。

 哺乳類のゲノムの3分の1以上は、細胞内を動き回り突然変異などを起こす遺伝子(レトロトランスポゾン)が元になっている。その大部分はたんぱく質を作らず、ゲノム中のがらくたとみなされていた。

 同チームは、こうした遺伝子の一つ「Peg10」を、多くの哺乳類が共通してもつことを発見。その機能を調べるため、Peg10を壊した受精卵を雌マウスの体内に入れて妊娠させたところ、子供は妊娠約10日目ですべて死んだ。胎盤の形成に異常が起きていた。同大の石野史敏教授は「この遺伝子は、哺乳類の祖先のゲノムへウイルスなどの形で侵入した後、進化に伴って変化し、妊娠形態を発達させたのではないか」と推測している。

生命に役立つ機能、ゲノムの7割も…定説は2%

2005年09月02日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 DNA(デオキシリボ核酸)の二重らせん構造で知られる生物の全遺伝情報(ゲノム)について、その大部分に隠れた機能が備わっていることを理化学研究所などの国際研究チームが突き止めた。

 従来、生命活動に役立つ部分はゲノムの2%程度とされていたが、大幅に増え、約70%で機能を持つ可能性があるという。

 生物が遺伝情報を予想以上に複雑に使いこなしていることを示し、旧来の生命活動の考え方に修正を迫る成果だ。2日付の米科学誌サイエンスで発表する。

 ゲノム上には、体内の様々な生理機能の実行役である「たんぱく質」を作る遺伝子と、たんぱく質を作らない部分が混在する。研究チームは、DNAを高速・大量に処理する技術で、マウスやヒトのゲノムで今までにない大規模な解析を行い、ゲノム上の情報が実際に利用されている部分を調べた。

 設計図であるDNAの情報からたんぱく質が作られる過程では、DNAが仲介役のRNA(リボ核酸)にいったん写し取られる。解析の結果、ゲノムの70%以上でDNAがRNAを作り、大半が何らかの機能を果たしていると判明。DNAが作った全RNAのうち、53%(約2万3000個)は、たんぱく質を作らないこともわかった。

 このようなRNAは、自分自身で直接、決まった遺伝子やたんぱく質と結びつき、その働きを抑えるなどの役割を持つとみられ、研究チームは、単なる“伝令役”から、たんぱく質と並ぶ生命活動の“主役”に格上げできるとしている。

遺伝子制御などRNAが調整役 理化学研チーム解明

2005/09/02 The Sankei Shimbun東京朝刊から

 マウスの全遺伝情報(ゲノム)から情報を写し取るRNA(リボ核酸)は、ゲノム全体の70%から生命維持にかかわる情報をコピーし、タンパク質の合成以外にも遺伝子の制御などの重要な役割を担っていることがわかった。ゲノムの大部分は意味のない「ジャンク(がらくた)」としてきた従来の常識を明確に覆す成果。がんや糖尿病など多くの病気の治療法開発にも結びつきそうだ。理化学研究所を主体とする国際研究チームが、2日発行の米科学誌「サイエンス」に発表した。

 ゲノムは、染色体のDNAに4種類の塩基の配列で記された「生命の設計図」。マウスゲノムはヒトゲノムとほぼ同じの約30億個の塩基配列からなる。ヒトゲノムではタンパク質の設計情報が書かれている領域は全体の2%程度とされ、RNAはこの部分の塩基配列をコピーして、タンパク質合成のための情報伝達や材料運搬が主要な役割と考えられていた。

 研究チームは新たに開発した技術で、約450万個のマウスのRNA分子を解析した。その結果、塩基配列のなかで何らかの意味を持つ遺伝子は4万4147個にのぼり、7割の領域を占めていた。このうち約2万3200個はタンパク質の合成に関与せず、転写したRNAが遺伝子の働きを制御するなど調整役として生命活動を支えているとみられる。

 また、RNAの72%は、DNAと同じ2本鎖の構造を持つことも分かった。2本鎖RNAには遺伝子の発現を阻害する働きがあることが最近の研究で確認され、病気に関連する多くの遺伝子が2本鎖RNAを形成することもわかっている。

 研究チームの林崎良英・理研プロジェクトディレクターは「2本鎖RNAを作る遺伝子を突き止めれば、その遺伝子の制御方法が見つかったのと同じ。新たな治療法の開発につながる」と話す。

 医療応用が期待される疾患は、がん、アルツハイマー病、動脈硬化、鬱(うつ)病、心筋梗塞(こうそく)、高脂血症など多岐にわたる。

イネゲノムを完全解読 日本など10カ国・地域共同

2004/12/13 The Sankei Shimbun
 日本など10カ国・地域が共同で進めていたイネのゲノム(全遺伝情報)の完全解読が完了したと、国際チームに参加する農業生物資源研究所(茨城県つくば市)の佐々木卓治ゲノム研究グループ長らが13日、島村宜伸農相に報告した。

 遺伝情報を記録した約3億9000万対の全塩基配列のうち、現在の技術で解読可能な約3億7000万対(95%)を、99.99%の高精度で読み解いた。遺伝子は約4万個あると推定されるという。

 精密な設計図が明らかになったことで、有用な遺伝子の所在や機能の解明が容易になり、おいしかったり病気に強かったりする新品種の開発が本格化する。

 対象にしたのは、日本の稲作でコシヒカリが主役になる前に主流だった「日本晴」。12本ある染色体のうち、日本は最多の6本を担当しチームを主導した。

 解読は1998年に開始。2002年12月に全体の約92%をおおまかに読んだ段階で、いったん終了宣言を出し、その後さらに難解部分の解読を続けていた。

 遺伝子の場所が明確になると、遺伝子組み換え技術が利用できる。また、経験や偶然が頼りだった交配による品種改良でも、目指す品種を早く見つけて育てることが可能になる。共通の配列が多いトウモロコシ、コムギなどの新品種育成にも役立つと期待される。

 佐々木グループ長は「2年前に比べ、正確で切れ目のほとんどない塩基配列が分かった。200万画素だったデジタルカメラが500万画素になったようなもので、情報の信頼性が飛躍的に向上した」と話している。(共同)

イネの全遺伝情報、年内に完全解読へ…国際チーム

2004/11/30 読売新聞 Yomiuri On-Line
 日米中仏など10か国・地域の国際チームによるイネの全遺伝情報(イネゲノム)の解読が、12月中旬にもほぼ完了する見通しとなった。

 主要メンバーの農業生物資源研究所などが30日、発表した。現在の技術で解読が可能な部分(全体の95%)を、約99・99%の高精度で解読したという。チームは年内に解散し、今後は解読成果をもとにした品種改良などの開発競争が本格化する。

 遺伝情報は、細胞核内のデオキシリボ核酸(DNA)に並んだ4種類の化学物質(塩基)の配列で示され、イネの塩基配列は約3億9000万対。国際チームは、「日本晴」という品種の解読を進め、2002年12月までに約90%を解読していた。今回、2年前には不可能だった部分も含め、計約3億7000万対の解読が終了。イネの遺伝子数は、2年前の推測より少なく、約4万個とみられている。

 同研究所の佐々木卓治ゲノム研究グループ長は「味の差を決定する細かい遺伝配列の違いなどを見つける下地がようやく整った」と話している。農水省は来年度、寒さや病気に強い性質、味にかかわる遺伝子の探索などに力を入れ、解読成果の活用を目指す。

性フェロモン感じる遺伝子、ガで初発見…京大グループ

2004/11/16 読売新聞 Yomiuri On-Line
 カイコガの雄の性フェロモン受容体の遺伝子を、京都大大学院農学研究科の西岡孝明教授(応用生命科学)らのグループが世界で初めて発見した。

 成果は16日、「米国科学アカデミー紀要」オンライン版に掲載された。今年はフランスの昆虫学者ファーブルが「昆虫記」にガの雄が雌に引き寄せられる様子を記録し、フェロモンの存在を予測してから100年に当たる。

 性フェロモンは異性を引き寄せる物質。昆虫でしか確認されておらず、感知する受容体の研究も進んでいなかった。西岡教授らは、受容体がある触角に注目。他の部位との比較で触角にしかない遺伝子を特定し、本来は反応しない雌にその遺伝子を組み込んだ結果、雄と同じ反応を見せ、受容体遺伝子と確認した。

 西岡教授は、性フェロモンが他種との交雑を防ぐと考えられることから、昆虫の種の分化の機構解明の手がかりになるほか、新たな害虫駆除剤の開発につながるとしている。

ゲノムもとに有用なウイルス合成に成功…米研究チーム

2003/11/14 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【ワシントン=笹沢教一】米エネルギー省は13日、同省の研究資金を受けた民間研究所の研究チームが、生物の設計図であるゲノム(全遺伝情報)をもとに、細菌に感染するファージというウイルスの人工合成に成功したと発表した。

 同省のスペンサー・エイブラハム長官は記者会見で「この合成手法を応用すれば、二酸化炭素を減らしたり、水素を合成する有用生物を作り出すことが将来、期待できる」としている。

 合成に成功したのは、人間のゲノムを独自解読したベンチャー企業セレラ社のクレイグ・ベンター元社長が設立した「バイオロジカル・エナジー・オルタナティブズ研究所」(メリーランド州)のチーム。大腸菌に感染する「ファイX174」という直径100万分の25ミリの小粒状のファージを合成した。ゲノムを構成する4種類の化学物質(塩基)約5400個を14日間かけ、人工的につなぎ合わせた。

 研究チームは、合成した人工ファージが細菌に感染する能力も実験で確認した。ゲノムから人工合成した生物としては、米ニューヨーク大のチームが昨年成功した、小児まひを起こすポリオウイルスがある。

細胞研究の米2氏にノーベル化学賞

2003年10月08日 The Sankei Shimbun
 スウェーデンの王立科学アカデミーは8日、2003年のノーベル化学賞を、生命維持に不可欠なイオンや水が細胞を出入りする際に通る細胞膜の「チャンネル」(通路)を発見したピーター・アグレ米ジョンズ・ホプキンズ大教授(54)とロデリック・マキノン米ロックフェラー大教授(47)の2氏に授与すると発表した。

 授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金1000万クローナ(約1億4000万円)は2氏に半分ずつ贈られる。自然科学系のノーベル賞で日本人の4年連続受賞はならなかった。

 授賞理由はアグレ教授が「水チャンネルの発見」、マキノン教授は「イオンチャンネルの構造と仕組みの解明」。

 水とイオンが細胞膜のチャンネルを出入りすることで細胞内の濃度が調節され、腎臓など臓器や神経の機能が保たれる。

 アグレ教授は1988年、赤血球の細胞膜で水チャンネルとして働くタンパク質を発見。水は細胞膜を透過するとされていた常識を覆す発見で、腎臓などの病気の解明に手掛かりを与えた。

 マキノン教授は98年、細菌の細胞膜でイオンチャンネルとして働くタンパク質の立体構造を解明。チャンネルが特定のイオンだけを通す仕組みを原子レベルで明らかにした。イオンチャンネルは脳や心臓、筋肉などの病気に関連している。(共同)

 ■ピーター・アグレ氏 1949年、米ミネソタ州生まれ。74年ジョンズ・ホプキンズ大で医学博士号を取得。93年からジョンズ・ホプキンズ大教授。

 ■ロデリック・マキノン氏 米マサチューセッツ州出身。82年タフツ大で医学博士号を取得。96年からロックフェラー大教授。99年ラスカー賞受賞。(共同)

「ドリー」誕生させた英バイオ企業、身売りへ

2003/09/16 asahi.com
 
 世界初のクローン羊ドリー=今年2月安楽死=を英ロスリン研究所と共同で誕生させた英国のバイオテクノロジー会社「PPLセラピューティクス」が、経営難から売りに出されたことが明らかになった。

 同社の03年1〜6月期の税引き前損失が1348万ポンド(約25億円)に上り、リストラによる経営再建案が株主に受け入れられなかったため。16日付の英紙タイムズは「科学の進歩をビジネスにすることの難しさを示した」と論評している。

「生物時計」、細胞分裂にも関与 神戸大教授ら解明

2003/08/22 asahi.com
 睡眠や目覚めといった一日のリズムを作る生物時計は、細胞の分裂の仕組みにもかかわっていることが神戸大医学系研究科の山口瞬・助教授、岡村均教授らの研究で分かった。米科学誌サイエンス電子版に発表した。

 口の粘膜や骨髄といった細胞は、特定の時間帯に活発に増殖するとされているが、理由はよく分かっていない。

 山口さんらはマウスの肝臓の一部を切り取り、再生の様子を調べた。切除された肝細胞は盛んに分裂するが、生物時計の遺伝子の一部を働かなくしたマウスでは再生の速度が遅くなっていた。

 原因を調べると、時計遺伝子の異常の影響を、細胞の分裂を制御する働きがある別の遺伝子が受け、細胞増殖が邪魔されていることが分かった。

 岡村さんは「生物時計と細胞分裂の関係が詳しく分かれば、副作用の少ない時間帯に抗がん剤を投与する治療法が進むだろう」と話す。

ヒトの赤ちゃんは右脳から発達?京大グループの研究

2003/07/02 読売新聞 Yomiuri On-Line
 赤ちゃんの泣き顔を分析すると、表情は、顔の右半分より、左半分に強く出ることが、京都大学霊長類研究所と科学技術振興事業団の研究で分かった。

 人間は誕生直後の段階で「右脳」特有の働きを発揮していることを裏付ける実験で、ほかの霊長類でも同じ現象が見られるのか――研究者はチンパンジーなどでの検証にも取りかかっている。

 人間の運動神経のネットワークは、左右の脳と、左右の半身が交差しており、右半身の動きは左脳、左半身は右脳が支配している。論理思考は主に左脳が担い、右脳は主に「感情」を制御するとされる。こうした脳の働きの左右差は、特に人間で明りょうに見られるが、いつから左右差ができるのかは不明だった。

 研究グループの中村徳子・科学技術振興事業団研究員らは、生後1か月以内の乳児12人分の泣き顔を撮影。その写真を中心線から左右に分割し、中心線の両面にそれぞれ左側だけ、あるいは右側だけを展開した合成写真を作った。

 これを、子育て経験がある大人10人に見せ、表情が強いと感じた方を選んでもらった。その結果、乳児4人分の写真では、大人全員が「左顔の合成写真」を選択。ほかの乳児5人分の写真も、半数以上の大人が「左合成写真」を選んだ。サンプル数は少ないが、このデータを統計的に評価した結果、赤ちゃんの「左顔」に、より強く表情が出ていることが裏付けられた。また、残り3人の赤ちゃんについては、左右の評価に差は出なかった。

 同グループの中村克樹・元京大霊長研助教授は「人間は生まれたとき、すでに左右差があり、右脳特有の働きも備わっていることが分かった。高度に発達した人間の脳の謎を解くかぎになる」と説明している。

 また研究グループでは、赤ちゃんの笑い顔でも、同様に合成写真を作り、左右の顔の表情の分析をしたが、笑い顔では左右の差は確認できなかった。これについて、中村元助教授は「新生児の微笑は顔の筋肉のけいれん現象と考えられ、泣き顔のような感情の表出とは違うため、差が出なかったようだ」と話している。

 ◆京都大学霊長類研究所=文字や数字を理解する天才チンパンジー「アイ」と、その息子「アユム」がいることで知られる。アイの子育てやアユムの学習の様子を通じて、人間の知性・感情の仕組みなどを探る研究を続けている。愛知県犬山市にある。

遺伝子:チンパンジーの22番染色体解読 理研など発表

2003年07月01日 [毎日新聞]MAINICHI INTERACTIVE
 人に最も近い種とされるチンパンジーの全遺伝情報(ゲノム)を調べている理化学研究所など5カ国の研究グループは1日、22番染色体の全塩基配列を解読したと発表した。既に解読されているヒトのゲノムと比較したところ、遺伝子の約15%で働きに違いがあることが分かった。人以外の霊長類で染色体の全塩基配列が解読されたのは初めて。研究チームは「ヒトがチンパンジーから進化したメカニズムを解明するうえで重要な成果だ」と話している。

 チンパンジーは、人より1組多い23組の染色体とX、Yの性染色体を持つ。解読されたチンパンジーの22番染色体は人の21番染色体に相当する。

 研究グループは99.99%以上の精度で染色体の塩基配列を解読した。同研究所はこれまでの研究で、ヒトとチンパンジーの全塩基配列の違いは1.23%としてきた。今回も、両者の塩基配列を比較したところ、その違いは1.69%だった。

 ところが、この染色体にある約300遺伝子のうち235個をヒトと比較したところ、36個の遺伝子では余計な塩基が挿入されるなどしていた。塩基の配列が違うと、遺伝子が作り出すたんぱく質に違いが出る可能性が高い。

 同研究所の榊佳之プロジェクトディレクター(分子生物学)は「ヒトとチンパンジーとの比較から、人らしさを生み出す遺伝子を突き止めたい」と話している。

再生科学の最先端を初公開 神戸

2003年05月31日 The Sankei Shimbun
 再生医療の基礎研究を行う理化学研究所の「発生・再生科学総合研究センター」(神戸市中央区)が31日、初めて一般公開され、地元の子どもや専門学校生らが最先端の研究に触れた。

 センターは2000年4月に発足。昨年4月から本格始動し、約240人の専門家が細胞分化や神経回路発生など30のグループに分かれ研究を進めている。

 施設では、体を切断されても一つ一つの断片がそれぞれ個体に再生するプラナリアや、透明な卵の中での細胞分裂の様子が観察できるゼブラフィッシュなど実験動物を展示。子どもたちも興味深そうに見学した。

 さまざまな細胞に成長する能力を秘めた胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を研究している丹羽仁史さんは「失われた体の一部を取り戻す再生医学を分かりやすく説明したい」としている。

本当の「遺伝子本」を開発 理化学研究所

2003年04月16日 The Sankei Shimbun
 理化学研究所の研究グループは16日、生物の細胞から抽出した遺伝子を送付、保管する新しい技術として、遺伝子そのものを紙に吸着させて製本した「DNAブック」を開発したと発表した。

 従来はマイナス80度で保存。研究者間でのやりとりも、ドライアイスを詰めた凍結保存容器で輸送していた。これからは、送られた本を保管し、必要な時に必要なページを水に溶かせば、2時間ほどで遺伝子が手に入るという。文字通りの遺伝子ライブラリーができることになる。

 開発した林崎良英グループディレクターによると、遺伝子が入った溶液を水溶紙に針で吸着させ、乾燥させる。摩擦や温度変化など、通常の書籍の取り扱いに耐え、3カ月間保存しても、95%以上の確度で取り出すことができたという。

 理研が昨年解読した約6万個のマウスの全遺伝子を、1ページに約400個ずつ“印刷”したところ、厚さ約2センチの本に収まった。現在、紙への吸着は手作業だが、自動化を検討中。どのくらい保存可能かも調べている。

 林崎さんは「遺伝子の情報でなく、遺伝子そのものが入っている全く新しい書籍。学術雑誌や教材などに遺伝子を添付することも可能だ」と話している。

ヒトゲノムを完全解読

2003年04月14日 The Sankei Shimbun
 人間の生命の設計図といえるゲノム(全遺伝情報)をすべて解読しヒトゲノム計画が完了したとして、米国、英国、日本、フランス、ドイツ、中国の6カ国の首脳が14日、「すべての人々がより健康でいられる未来に向けて重要な第一歩を踏み出した」と共同宣言を発表した。

 1953年のDNAの二重らせん構造の発見からちょうど50年。1990年の解読着手以来、約12年半をかけ、4種類の塩基が織りなす約30億文字の遺伝暗号を読み切った。今後は遺伝子が作るタンパク質の機能の解明や、人の遺伝体質に応じた薬の開発に役立つと期待される。

 解明された内容によると、特定または予測された遺伝子の数は約3万2000個。この結果、約30億の塩基が連なるヒトのDNAのうち約2・6%が遺伝子で、残りはタンパク質の種類を指定していない領域であることが分かった。

 解読には6カ国の24機関が参加。日本では理化学研究所、慶応大、東海大などが当たり、全体の6%の解読を担った。米国の59%、英国の31%に続いて3位の貢献となった。

 解読されたゲノムは、24枚のCD−ROMに収められたほか、インターネット上でも公開され、誰でも自由に利用できる。

 ヒトゲノム解読をめぐっては2000年、約95%を解読した段階で当時のクリントン大統領らが「ほぼ解読終了」を発表した。今回の完全解読で、遺伝子を機能させたり制御したりする塩基配列の発見が今後、可能になるとしている。

生ゴミ分解する放線菌の遺伝子を解読 北里研など

2003年04月07日 asahi.com
 生ゴミを分解する土壌細菌・放線菌のゲノム(全遺伝情報)の解読に成功したと、北里研究所や独立行政法人製品評価技術基盤機構などのチームが7日、発表した。

 池田治生・北里大教授によると、放線菌は、生ゴミの成分を水と二酸化炭素に分解するため、環境浄化技術に利用できる。寄生虫を殺す抗生物質をつくるので、医薬品開発につながることも期待されている。

ヒトゲノム解読、ベンター財団が非営利団体設立へ

2002年08月16日 Yomiuri On-Line
 【ワシントン15日=館林牧子】人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)解読計画で、ベンチャー企業を指揮して国際共同チームと成果を競い合ったグレイグ・ベンター氏が15日、ゲノム解読のための非営利団体を起こすと発表した。

 ベンター氏は、1998年にベンチャー企業「セレラ・ジェノミックス」社を設立し、独自に開発したショットガン法で次々とゲノムを解読。日米英などが国際協力で進めていたヒトゲノム解読事業に乗り出し、世界を相手に競争を繰り広げて有名になった。

 ヒトゲノム解読は2年前に一段落。以降、同社は新薬開発に力を入れることになり、今年1月、同氏は社長を辞任していた。

 発表によると、新組織にはベンター氏の財団が資金提供し、既存のゲノム研究所などと協力して、より速く、より安いゲノム解読法を開発。様々な生物のゲノム解読に取り組み、来年1年間で年間4000万対という米国最大規模のゲノム解読を目指すという。

遺伝子スパイ:芹沢被告の公訴取り消しへ 司法取引に応じる

2002年05月01日Mainichi INTERACTIVE
 【アクロン(米オハイオ州)斗ケ沢秀俊】日本人研究者2人がオハイオ州のクリーブランド・クリニック財団研究所からDNA試料を盗み、日本に持ち込んだとされる遺伝子スパイ事件で、経済スパイ法違反の罪に問われたカンザス大医療センター助教授、芹沢宏明被告(40)に対する審理が1日午前(日本時間同日夜)、アクロンの連邦地裁で開かれる。芹沢被告は検察側との司法取引に応じ、新たに訴追された偽証罪を認める代わりに、本件の同法違反は公訴が取り消される見通しになった。

イネゲノム解読終了…スイス社と米中チーム

[2002年04月05日]【ワシントン4日=館林牧子】YAHOO!ニュースゲノム研究
 イネの全遺伝情報(イネゲノム)の解読に、スイスの農業会社「シンジェンタ」と、米中の合同研究チームがそれぞれ成功し、5日発行の米科学誌「サイエンス」に発表する。イネゲノム解読の取り組みは日本が先べんをつけ、日米英など国際チームが今年末までに終了させる予定で進めているが、シンジェンタ社らに一歩先んじられた格好となった。

ゲノム:ポプラ使い、樹木で初の解読へ

2002年02月05日(ワシントン共同)Mainichi INTERACTIVE
 米エネルギー省のオークリッジ国立研究所は4日、樹木のポプラの全遺伝情報(ゲノム)を解読する国際プロジェクトをスタートさせると発表した。  植物では日米欧のグループが、アブラナ科の植物、シロイヌナズナのゲノムの塩基配列を解読しているが、樹木としてはポプラが最初になるという。  ポプラは成長速度が速い。このため各国で、遺伝子組み換えの手法を用いて、大気中の二酸化炭素や環境中の汚染物質を吸収する能力が高いポプラをつくる試みが進められている。  ポプラゲノムの解読ができれば、有用なポプラの開発や、植物の成長速度に関する遺伝子の研究などを、さらに加速させることができるという。約1年半をかけて、ポプラの遺伝子の全塩基配列を解読する。

ゲノム解読で功績の米セレラ社ベンター社長が退任

2002年01月23日 ODN News(YOMIURI ON-LINE)【シリコンバレー22日=京屋哲郎】
 米バイオ・ベンチャー企業、セレラ・ジェノミクスは22日、人の全遺伝情報(ヒトゲノム)解読で大きな功績を残した創業者のクレイグ・ベンター社長が退任すると発表した。

 同社は、ベンター氏が解読作業の中心となり、ヒトゲノムの解読で日米欧などの国際共同チームと激しく競い、2000年6月、独自に解読をほぼ終えた。

 その後、バイオ業界は、解析データを元に新薬の開発に事業の中核をシフトさせており、今回の人事は、製薬ビジネスの経験の乏しいベンター氏に変わる新たなトップを招へいし、事業基盤の強化を図るのが狙いと見られる。

 ベンター氏は同社の科学技術顧問会議の議長にとどまり、引き続きゲノム関連の研究・開発面でアドバイスを行う。

 また、後任の社長が決定するまで、親会社であるアプレラ社のトニー・ホワイト会長兼最高経営責任者(CEO)がセレラ社の社長を兼務する。

社説=ヒトゲノム 成果を人類のために

2001年02月16日 信濃毎日新聞
 米企業などが公表した人間の遺伝情報の分析結果は、ヒトゲノム研究の急速な進展を再認識させる。医療分野での応用をはじめ、今後に期待は大きい。人類全体のために役立てられるよう、データの扱いについてルールを整えたい。

 人間の体は遺伝子に書き込まれた情報によって成り立っている。一人の人間の全遺伝情報を指すヒトゲノムは、いわば人体の設計図だ。書物に例えれば、約三十億もの文字からなる。この解読を米国のベンチャー企業と、日本も加わる国際研究チームがそれぞれ進めている。

 文字がどう並んでいるかの解読は昨年六月の時点でほぼ終わったと発表されていた。ここから意味のある配列、つまり遺伝子を探し出した結果が新たに示されている。遺伝子の数が従来の推測を下回るなど、両者の分析は大筋一致した。

 ヒトゲノムを読み解き、詳細を明らかにしていく意義は大きい。研究の成果は生命の仕組みを解明する重要な手がかりになる。がんや糖尿病、高血圧などにかかわる遺伝子の働きがつかめれば、医療技術の開発にもつながる。一人ひとりの生活に直結する問題である。

 新しい薬や治療法は巨額の利益をもたらす。遺伝子研究を応用した「ゲノム創薬」などの動きは、既に世界中で活発だ。今回の公表を受け、研究開発の一段の加速が見込まれる。人間社会全体のプラスになる形で進める必要がある。

 詰めなくてはならないポイントの一つは、データの公開の在り方だ。今回、米企業はデータの利用を研究目的に限定するなど、制限を設けて発表した。こうした形での掲載を認めた米科学誌に対し、日本学術会議が昨年末、会長名の書簡で再考を求めたいきさつがある。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)が採択した国際倫理指針「ヒトゲノムと人権に関する世界宣言」は、ヒトゲノムを「そのまま経済的利益の対象としてはならない」とうたっている。ヒトゲノムは人類の共有財産である。

 一部の企業が基本的なデータを囲い込めば、科学や産業の発展を妨げる要因にもなりかねない。広く共有し、役立てることを原則に、情報公開や特許制度について合意づくりを急ぎたい。

 もう一つ、個人情報をどう扱っていくかも大きな課題だ。これから先、遺伝子の個人差について研究が進むことを踏まえ、しっかり検討しないといけない。

 一人ひとりの体質に合った「オーダーメード医療」などメリットを期待できる半面、新たな障害、差別を生じる心配がある。例えば、先々病気になる可能性が分かるかもしれない。就職や結婚などで利用されれば、深刻な事態を招く。

 国内では昨年十一月、関係省庁の検討委員会が遺伝子解析研究についての指針の最終案をまとめている。個人情報保護の徹底などを盛っており、近く正式に決める。プライバシーが侵害されることがあってはならない。法律による対応、規制なども含め、議論を深めるときだ。

ヒトゲノム、全体像解析 予測より少数

2001.02.12 CNN.co.jp
ワシントン――人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)の解析に取り組んでいた2つの研究組織が、このほど解析を終え、その研究成果が明らかになった。治療が困難なガンなどの病気に対し、遺伝子レベルでの有効な対策が取れるとされることなどから、解析には大きな期待が寄せられていた。解析にともない、ヒトの遺伝子が当初の予測よりはるかに少ないこともわかった。

ヒト遺伝子は予想より少ない3―4万個 ゲノム解析発表 (2001.02.11) asahi.com
 ヒトゲノム(人の遺伝情報全体)の解読を進めてきた日米欧などの国際研究チームと、米遺伝情報解析会社セレラ・ジェノミクスそれぞれの解析結果が11日、明らかになった。遺伝子の数は2万6000―4万個と、これまで考えられていた10万個の半分に満たなかった。成果は病気の解明や新薬の開発などにつながると期待される。

ヒトゲノム論文でライバル科学誌が火花

2001.02.11【ワシントン11日=共同】The Sankei Shimbun
 ヒトゲノム解読結果を公表した米ベンチャー企業セレーラ・ジェノミクス社と公的国際プロジェクトの国際ヒトゲノム計画は、解読に関する論文をそれぞれ、ライバル関係にある米科学誌サイエンスと英科学誌ネイチャーに発表する。

 科学誌にとっては影響力を持つ優れた論文を掲載することが、商業的にも名声の上からも重要。セレーラ社の論文を今月十六日号に掲載するサイエンスは「最も完全な解読結果」と強調、同十五日号にヒトゲノム計画の論文を載せるネイチャーは「鳥肌が立つ大論文」と火花を散らしている。

 解読の中身については、公開されているヒトゲノム計画側のデータも一部利用しながら解読を進めたセレーラ社が勝るとの見方が多い。しかし、ヒトゲノム計画の方が読み取った遺伝暗号文字数が多いとされ「競争に敗者はいなかった」とセレーラ社のクレイグ・ベンター社長は話した。

 同社は論文内容をほかの科学者が検証できるようにするために、従来は契約企業などにしか見せてこなかった解読データを、インターネットで公開する。

ゲノム創薬で産学協同、理化学研と製薬業界 (2001.02.11) asahi.com
 理化学研究所(埼玉県和光市)と製薬業界は10日、人の遺伝子研究に基づいて新薬を開発する「ゲノム創薬」の基礎研究を来年度から共同で進める方針を明らかにした。文部科学省傘下の理研は遺伝子研究の拠点として国の予算が最も多くつぎこまれているが、産業界との連携がほとんどなかった。欧米の研究所や製薬会社はヒトゲノム(人の全遺伝情報)の解読に続く「ポストゲノム」の研究を加速しており、国内でも産学協同による本格的な研究が必要と判断した。

イネゲノム概要版、年内にも国際チームが公表へ (2001.02.09) asahi.com
 イネのゲノム(全遺伝情報)の解読計画で、日本、欧米、アジア各国の国際プロジェクトチームは、ゲノムの概要版を年内にも完成させて公表する新方針を決めた。欧米の民間企業2社がイネゲノムの解読を完了したと先月末に発表したが、データは未公開のため、国際チームは概要版をまず公開することで、両社の情報独占を防ぐことにした。公的グループが民間に対抗するため概要版の作成・公表を迫られたヒトゲノムと似た展開になった。

ゲノム解読のイネは「日本晴」 遺伝子5万個を米社解析 (2001.01.27) asahi.com
 スイスに本拠を置く農業化学会社シンジェンタと、米国の遺伝子解析会社ミリアッド・ジェネティクスは26日、ゲノム(全遺伝情報)を完全解読したイネは短粒種(ジャポニカ)米の「日本晴」だったことを明らかにした。

イネのゲノム完全解読を発表 欧米企業連合 (2001.01.27) asahi.com
 スイスに本拠を置く農業化学会社シンジェンタ社と、米国の遺伝子解析会社ミリアッド・ジェネティクス社は26日、共同でイネのゲノム(全遺伝情報)を完全に解読したと発表した。穀物での完全解読は初めて。内容は明らかにしていないが、もし精度が高ければ、穀物改良をめざして日本の農水省が力を入れてきたイネゲノム解読で、両社に先を越されたことになる。

O157の全ゲノムを解読 大阪大などのグループ発表 (2001.01.23) asahi.com
 大阪大などの研究グループは23日、病原性大腸菌O(オー)157の全遺伝情報(ゲノム)を解読した、と発表した。2月発行の専門誌に掲載される。O157のゲノムは、非病原性大腸菌に比べサイズが約2割大きく、その部分に特有の病原性を示すと考えられる遺伝子が集まっていることが分かった。チームは今後、これらの遺伝子の機能を調べる予定で、判明すれば病原性の解明と治療法の確立につながる。

ゲノム分析のスパコン開発で、米エネ省とセレラ社連携 (2001.01.20) asahi.com
 米エネルギー省は19日、米ベンチャー企業セレラ・ジェノミクス社などと共同で、ヒトゲノム(人の全遺伝情報)解読データを分析するスーパーコンピューターを開発すると発表した。

日本学術会議がゲノムのデータ公開方法で米科学誌を批判 (2001.01.19) asahi.com
 米科学誌サイエンスがヒトゲノム(人の全遺伝情報)論文の掲載にあたり、米遺伝情報解析会社セレラ・ジェノミクス社に特別に認めたデータ公開方法について、日本学術会議(吉川弘之会長)はこれを批判し、論文掲載の再考を求める書簡を同誌に送ったと、発表した。

遺伝子組み換えサル誕生/米大学チーム 霊長類で初

2001.01.12 【ワシントン11日=時事】The Sankei Shimbun
 十二日発行の米科学誌サイエンスによると、米オレゴン健康科学大学の研究チームがこのほど、クラゲの遺伝子を組み込んだ遺伝子組み換えサルを誕生させることに成功した。霊長類では初めてで、がんやアルツハイマー病などの治療法開発に大きく役立つとみられている。

 同大学のジェラルド・シャテン博士らは、クラゲから抽出した緑色蛍光たんぱく質を作る遺伝子をアカゲザルの卵子に注入し、これを体外受精させてから、代理母の雌の子宮に移植した。二十匹の代理母から五匹の小ザルが生まれたが、二匹は死産。健康な三匹のうち一匹が、緑色蛍光たんぱく質を形成する遺伝子を有していることが確認された。

 アンディと名付けられたこのアカゲザルが誕生したのは昨年十月二日。活発で、ほかの二匹の小ザルとよく遊んでいるという。シャテン博士は「この方法で、アルツハイマー病に関係する遺伝子を容易に組み入れることが可能なので、ワクチン開発を促進できる」と述べている。

 当地の医療関係筋も「これまでは、例えば糖尿病治療研究のためにマウスが使われているが、サルは人間に近いので、難病の治療法を開発するには適している」と語った。

 シャテン博士のグループは昨年一月、初のクローンサルを誕生させることに成功したと発表している。

IBMのスーパーコンピュータ,ヒトゲノムの深淵に迫る

2000年12月19日【米国記事】ZDNN
 ヒトゲノム解析のアルゴリズム研究を専門とするNuTec Sciencesが,IBMのスーパーコンピュータを購入し,バイオ企業がネット経由で利用できるようにすると発表した。

ヒトゲノム解析専用施設建設へ 兵庫県に製薬協/欧米のタンパク質研究に対抗

2000.11.27
 日本製薬工業協会(製薬協)は二十七日までに、ヒトの全遺伝子(ヒトゲノム)情報を基盤とした新薬開発を進めるため、タンパク質の構造を解析する専用施設を「高輝度光化学研究センター」(兵庫県三日月町)の大型放射光施設内に建設し、平成十四年七月にも稼働させる計画を明らかにした。

 病気に関係する遺伝子が体内で作りだすタンパク質の立体構造を、同施設で分析するのが目的。タンパク質の働きを阻むような構造の化学物質をデザインすれば、画期的な新薬の開発が可能になると期待されており、共同の新施設で研究・開発に力を入れる。

 製薬業界によると、ヒトゲノムの解読はほぼ完了し、新薬の開発競争の焦点は疾患関連遺伝子の探索、遺伝子が作り出すタンパク質研究に移りつつある。豊富な資金力を持つ欧米の製薬会社がリードしているが、製薬協では国内企業が協力して高度な研究施設を共有すれば対抗できると判断。世界最高水準の性能とされる大型放射光施設「SPring−8」内に、構造解析施設を建設することにした。

 計画によると、製薬協は製薬会社二十−三十社で建設費五億円を出し合い「蛋白質構造解析コンソーシアム」を設立。この資金で放射光施設内に、SPring−8の放射光を発生させる加速器施設に接続する施設「ビームライン」を建設する。年間一億円の維持費も参加企業が均等に負担。

チンパンジーのゲノム解析で提携 宝酒造と三和化研 (2000.11.23) asahi.com
 宝酒造と大手医薬品卸スズケンの製薬子会社、三和化学研究所(名古屋市)は22日、チンパンジーのゲノム(全遺伝情報)解析で提携に合意した、と発表した。三和化研は、飼育しているチンパンジー約100匹の血液サンプルを宝酒造に提供する。宝酒造は、チンパンジーとヒトのゲノムを比較することで、新薬に結びつく遺伝子の解明につなげる方針で、機能の分かった遺伝子の特許化や、データベースの構築を目指す。

ポスト・ゲノムに挑戦するベンチャー誕生

2000.11.03日経バイオテクby Biztech
 ポスト・ゲノムの重要課題である蛋白機能解析に必須のヒト蛋白の生産技術開発に的を絞ったベンチャー企業、プロテイン・エクスプレス(PEX、千葉県銚子市)が設立されたことが明らかとなった。

たんぱく質を共同解析、製薬業界が「ゲノム創薬」協力へ (2000.10.22) asahi.com
 日本製薬工業協会は21日、来年から人の生命活動を支える「たんぱく質」の構造解析に国内の製薬業界が共同で乗り出す方針を明らかにした。大手製薬会社を中心に20―30社が参加する見通し。ヒトゲノム(人の全遺伝情報)の解読や遺伝子研究の成果をもとに治療効果の高い薬を作る「ゲノム創薬」は、遺伝子がつくるたんぱく質の構造解析がかぎを握るとされる。製薬業界は協力してたんぱく質研究の基盤をつくり、日本発のゲノム創薬を加速させる。

 来年前半に製薬会社で「たんぱく質構造解析コンソーシアム(連合体)」をつくる。

新規産業創出型産業科学技術研究開発制度平成12年度事業/「生体高分子構造情報利用技術開発」プロジェクトを開始

2000/10/19 by新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO:New Energy andIndustrial Technology Development Organaization)

製薬協が科学技術会議提出の要望を公表

2000/10/19 by薬事日報

国家の生命科学技術政策に対する製薬産業の要望

 日本製薬工業協会は18日に都内で理事会を開催。この中で5日付で井村裕夫科学技術会議議員に提出した「国家の生命科学技術政策に対する製薬産業からの要望」の内容が公表された。

 これは今年からスタートしたミレニアム・プロジェクトに、製薬業界もさまざまな形で具体的なプロジェクトに参画していることを踏まえ、製薬産業の視点からの要望をまとめたものである。産官学連携による一体的推進と産業側意見の反映するよう要望しているほか、今後の生命科学技術政策に対する要望事項も盛り込まれている。

 ミレニアム・プロジェクトにおける要望事項では、研究成果の産業化を意図した生命科学国家プロジェクトであるものの、製薬産業からみた場合、省庁間や研究機関の役割分担、連携体制が複雑なため、全体像や現況、方向性が把握しにくいと指摘。企画、運営などの各段階において、産業側の意見が十分反映されるよう要望している。

 また、ミレニアム・プロジェクト成果の活用に関する要望では、膨大なゲノム関連情報の創出が期待されるとし、その最終成果の情報を効果的に産業競争力の強化するには研究成果の公開方法、権利の帰属方法を産業側の参画のもと、検討していくことが必要だとしている。

 そしてデータ・フォーマットの統一やネットワークの構築を産官学連携のもとで、一元的に推進すること、研究者が活用しやすいデータベースの姿を早急に描くことが重要だとしているほか、産業化の鍵となる特許出願を成果の1つとして数えることで、より明確な客観的評価方法になるとしている。

 今後の生命科学技術政策に対する要望事項では、@ポストゲノムに向けた生命科学の一元的推進、A技術革新に対応しうる臨床研究体制の整備、B研究資源の供給体制の整備、C国立研究所の産業側への開放、D生命研究倫理の確立と生命科学の啓蒙、E研究者の育成、F特許制度の国際提携(特許戦略施設、制度整備、特許担当者の育成)などについて要望している。

「ゲノム創薬」でイメージアップキャンペーン

 また、この日の理事会では平成12年度イメージアップキャンペーン案が了承された。今回はエポックメイキングな話題である「ゲノム創薬」を焦点にあてる。“人体の謎を解くカギ。ゲノム創薬への扉が開きます”をキャッチコピーに製薬協として、ゲノム創薬にかける志と意気込みを広く国民に訴えかけていく。監修は清水信義慶応大医学部教授。全国紙などの日刊紙、薬業専門紙誌等に11月中旬から12月にかけて掲載する予定。

BBS、シーエムシー 「ゲノム創薬の新潮流」刊行


マウスのゲノム95%の読み取り完了 米セレラ社が発表 (2000.10.15) asahi.com
 米国の遺伝情報解析会社セレラ・ジェノミクスは14日までに実験動物のマウスのゲノム(遺伝情報全体)の約95%に相当する読み取りを終えたと発表した。有料で契約している製薬会社などにこの情報を提供する。マウスは実験によって機能がよく分かっている遺伝子も多く、高血圧や糖尿病など病気に関連する人の遺伝子を解き明かすカギとして重視されている。米国立保健研究所(NIH)など公的研究機関も情報公開を前提にマウスゲノム読み取りに取り組んでいて、ヒトゲノムと同様に民間との先陣争いになっている。

マウスのゲノムも解読

2000.10.14【ワシントン13日=共同】 The Sankei Shimbun
 米バイオテクノロジー関連ベンチャー企業のセレーラジェノミクス社は十三日までに、公的解読計画に先駆けてマウスのゲノム(全遺伝情報)の解読をほぼ終えたと発表した。

 同社が解読したのは、医学や生物の実験によく用いる三系統のマウスのゲノム。既に解読が終わっている人間のゲノムのDNA配列と比較することで、今後、人の遺伝子機能解明が大きく進展すると期待される。

 同社は、ヒトゲノム解読結果とあわせ、今回解読したマウスのゲノム情報を有料で製薬会社や研究機関に提供する。

 セレーラ社がマウスのゲノム解読に着手したのは、今年四月。DNAを短い断片に分断して、多数の解読装置で一気に配列を読み取る方法で、わずか半年でゲノム解読を達成した。

田中田辺製薬社長が「ブリッジ21」の目標語る

2000/10/13 by薬事日報
画期的新薬で存在感を持った企業に

 田辺製薬の田中登志於社長は11日、都内で記者会見し、同社の現状と今後の経営方針を語った。田中社長は今期からスタートした中期経営3か年計画「ブリッジ21」については初めて数字に触れ「当面の目標は、医療用医薬品で売上高2000億円以上、営業利益300億円以上」とすることを明らかにした。また「日本を基盤とした画期的新薬の創出拠点として存在感を持った企業をめざす」との目標を示し、資源の徹底した重点化を図る考えを述べた。

 田中社長は医薬品企業の取り巻く環境について、 @医薬品市場の縮小、 Aゲノム創薬とICHの進展を背景とした研究開発のあり方の変化、 B欧米大手製薬企業の国内シェア拡大、 C医療保険制度の抜本改革 D新たな会計基準の導入、 EIT(情報技術)革命―といった要因をあげながら、 「日本の製薬企業は変革期にある」と指摘した。

 同社が今期からスタートさせた中期計画「ブリッジ21」は”選択”と”集中”をキーワードに経営体制の強化、充実を目的に社内体制の整備や意志決定スピードと質の向上、さらには成果主義の徹底等を盛り込んでいる。

 田中社長はこうした点を踏まえつつ、年俸制の適用者の拡大、組織のフラット化や執行役員制度の導入、成果主義制度の導入など、改革に取り組んでいる現状を明らかにした。

 開発面について、田中社長はジョンソン・エンド・ジョンソンに糖尿病治療薬を導出したが、年内にも2品目の導出する計画があることを明らかにするとともに、「今後はいろいろな会社と戦略的提携を進めていきたい」との考えを示した。また、田中社長は、創薬・開発拠点の集中化や、ゲノム創薬のためのバイオベンチャーへの投資に積極的に取り組む方針を示して、独創的な新薬の上市に向け、研究開発体制の基盤強化を進める意向を表明した。

 今期の業績について、田中社長は退職給付債務の積立不足350億円を一括償却するため「純利益はほとんど出てこないだろう」としながらも、次期業績見込みについて「過去最高の純利益を確保することに挑戦する」と強調。21世紀の最初となる次期には”負の遺産”を持ち込まない方針。数字的には「医療用医薬品の売上高2000億円超、営業利益300億円」の達成を当面の目標にするとし、中期計画の中で初めて数字を示した。

 海外展開については、中国、台湾、インドネシアといったアジア地域の生産拠点の拡充してきた現状と中国では来春にも大規模な工場を竣工する予定であることなどを紹介。さらに田中社長は、タナトリルがフィリピンでトップ商品なった実績を示しながら、アジア市場拡大に期待感を表明した。

人のたんぱく質を解析、官民協力でライブラリーに (2000.10.12) asahi.com

 通産省は民間企業と協力して、来年度から4年間で、人の生命活動を支える「たんぱく質」が体内のどこで働き、どのような役割を持つかを解析するプロジェクトに乗り出す。10万個前後と言われる人の遺伝子のうち、約3万個からつくられる様々なたんぱく質を世界に先駆けて解析して「たんぱく質ライブラリー」をつくり、病気の解明や新薬の開発に役立てる。日本はヒトゲノム(人の全遺伝情報)の解読など遺伝子研究で欧米に出遅れたが、たんぱく質の基礎研究に力を入れ、「ポストゲノム」で巻き返しを図る。

 通産省のほか民間企業が集まるバイオ産業情報化コンソーシアム(JBIC:Japan Baiological Informatics Consortium)や国内の大学が参加。費用は約50億円を見込む。

住友化学と住友製薬がゲノム科学研究所を設立

2000/09/30 by薬事日報
医薬品や診断システムの研究開発を推進

 住友化学と住友製薬は29日、医薬品事業の一層の発展を図るためゲノミクスなどの先端技術を活用した医薬品創製や診断薬、診断システムの研究開発を共同で推進する新たな研究組織として10月2日付けで、住友製薬研究本部にゲノム科学研究所を設立することを明らかにした。

 同研究所の陣容は、今年4月に住友製薬研究本部に設立したゲノム科学研究グループに、住友化学生命工学研究所でゲノム創薬を含む医薬品関連研究を担当していた研究員を加えてスタートする。両社のゲノム創薬にかかわる人員、技術、情報等を集約し、初期段階スクリーニングから医薬品の創製までの一連の創薬研究を一体運営管理することにより、研究の強化、効率化を図る。

 同研究所の運営は両社共同で行い、それぞれが研究費を負担する方針。今後同研究分野における人員をさらに拡大強化するとともに、外部との提携も含め積極的な展開を図る計画。

 住友化学グループは医薬品事業を重要な事業の1つとして位置づけており、同事業を強化するために、昨年8月と10月には安全性研究、工業的合成法の研究開発を住友化学に集約。今年4月にはゲノム創薬研究の基盤整備のため、住友製薬にゲノム科学研究グループを作り、両社の研究組織の再編成を行ってきた。

ゲノム解読でバイオブーム 展示会に約180社が出展 (2000.09.26) asahi.com
 人の遺伝子研究や植物の遺伝子組み換え技術の開発などバイオテクノロジー(生命工学)の現状を紹介する「バイオジャパン2000」(バイオインダストリー協会など主催)が26日から東京・新宿の京王プラザホテルで始まった。ヒトゲノム(人の全遺伝情報)の解読がほぼ完了するなどバイオブームの中、国内外の企業約180社が出展し、研究成果を競っている。28日まで。一般参加者は入場料1000円。

バイオ関連に見直し契機――「バイオジャパン2000」が開幕、産業化推進に重点、179社が参加

byホットな話題/株式新聞社
 アジア最大規模の国際総合バイオイベント「バイオジャパン2000」(主催・財団法人バイオインダストリー協会ほか)が26日、東京・新宿の京王プラザホテルで28日までの予定で幕を明けた。

 「バイオジャパン」はバイオ産業を発展させるため、世界のバイオ関係者(企業・団体)が一堂に会し、最先端技術やその事業化を巡るグローバルな課題を議論するほか、ビジネス交流の場の提供や市民向け企画などを通し国民の理解を深めることが主な内容。

 4年に1度開催され、今回で5回目。

 とくに今回は「技術から産業へ」をテーマとし、産業化推進に重点が置かれているのが特徴。参加国数は20カ国強、参加予想人員は3万人。展示会ではゲノム創薬、テーラーメイド医療、機能性食品、環境バイオにつながる関連技術、蛋白質機能解析技術などが紹介されており、展示会参加企業数も前回(96年)の65社から179社に増加している。 ゲノムを中心としたバイオ関連は株式市場においてもIT(情報技術)関連と並ぶ大きなテーマ。10〜11月は”秋の学会シーズン”にも当たるため、薬品株をはじめとした関連銘柄の見直しにつながる公算もある。

 今回、日本から参加している主な企業(グループ)は旭化成、旭硝子、味の素、SRL、花王、鐘化、キッコマン、協発酵、三洋電機、CTC、シグマ光機、島津製、住友化、第一薬、大成建、宝酒造、中外薬、東洋紡、東レ、日触媒、日立、富士通、三井化学、三菱化、明治菓、メルシャン、ダイキンなど。

高血圧遺伝子の解析承認 国立循環器病センター倫理委 (2000.09.19) asahi.com
 国立循環器病センター(大阪府吹田市)の倫理委員会(委員長=武部啓・近畿大学教授)は18日、政府のミレニアム・プロジェクトの一環で高血圧関係の遺伝子を解析する研究を承認した。同センターは今年2月に同市の住民約5000人分の遺伝子を無断解析していたことが表面化したが、今回は同意の得られた血液検体のみを使い、個人情報の保護を厳しくするという。

がん細胞の「自殺」促す遺伝子発見 東大研など (2000.09.15) asahi.com
 大腸がんや肺がんなど多くのがんに関連するがん抑制遺伝子「p53」と協調し、がん化を防ぐのに密接にかかわっている遺伝子が新しく見つかった。正常な細胞ががん細胞に暴走するのを止めるため、細胞を「自殺」させる。この遺伝子を使った動物実験ではがんの増殖を抑える効果も確認できた。将来、治療に結びつく成果として注目されている。

シロイヌナズナのゲノム解読完了 日米欧の研究チーム (2000.09.13) asahi.com
 米国のゲノム研究所(TIGR)は12日、植物の遺伝子研究のモデルとなっているシロイヌナズナのゲノム(全遺伝情報)を99%解読したことを、マイアミで開催中のゲノム解読の国際会議で明らかにした。高等植物のゲノムをほぼ解読したのは初めてで、食糧増産にもつながる成果として期待されている。

 かずさDNA研究所(千葉県木更津市、所長=大石道夫・東大名誉教授)を含む日米欧の6つの研究組織が分担して解読にあたっていた。

ゲノム競争追い上げめざしマウス遺伝子公表へ 理研 (2000.09.03) asahi.com
 理化学研究所(理研)は、世界に先駆けて解析を進めてきたマウスの遺伝子情報を来年初めに公開する。マウスの遺伝子は人と似ており、概要が読み取られたヒトゲノム(人の遺伝情報全体)から遺伝子情報を取り出し、医薬の開発に役立てる上で貴重な手がかりになる。ヒトゲノム研究で後れを取っている日本にとって切り札ともなる情報だが、これまでは非公開で、十分に生かされてこなかった。米国が追い上げてきたことなどから、公開によってマウス研究の主導権を握り、遺伝子特許による権利の囲い込みを防ぐことにした。約10万個あるとされる遺伝子のうち、約2万個分をまず公開する。

NEC、ゲノム創薬などを研究開発へ 電機大手初 (2000.09.02) asahi.com
 NECは1日、情報技術(IT)を生かし、ヒトの遺伝子研究や製品開発・設計などを手がけるバイオ事業に参入する方針を明らかにした。個人の遺伝情報の違いを考慮して設計する医薬品「ゲノム創薬」などの共同研究・開発を目指す。ヒトの遺伝子情報であるヒトゲノムの解明が進んだのを機に、日立製作所や富士通などハイテクを利用し遺伝子の解析ビジネスなどに乗り出す大手電機メーカーが相次ぐ中、製品そのものの研究開発を手がけるのはNECが初めて。遺伝子研究に欠かせないITとバイオ技術の融合を図る。

人の「万能細胞」研究、米政府が容認 (2000.08.24) asahi.com
 米政府は23日、人体のあらゆる組織や臓器に育つ可能性がある人の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)の研究を条件付きで認め、政府資金も投入すると発表した。秘めた能力から「万能細胞」と形容され、移植への利用をめざして、日本や欧州でも研究を認める動きが相次いでいる。生命倫理上の課題を抱えながら、世界的な競争が激しくなりそうだ。

IBMが遺伝子情報処理のIT事業を本格化 (2000.08.17) asahi.com
 コンピューター最大手の米IBMは16日、人間の遺伝子情報を解析するヒトゲノム計画などの今後の急進展を期待して、遺伝子情報の処理能力を高める情報技術(IT)事業を本格的に強化する方針を発表した。生命科学分野でのIT産業の規模は、現在の35億ドル(約3800億円)が、3年後には3倍近い90億ドル(約9700億円)に急成長し、米ハイテク業界の大きなドル箱になるとの見通しだ。 。

ゲノム研究の四省庁共通指針づくりで委員会設置 (2000.08.10) asahi.com
 ヒトゲノム(人の遺伝情報全体)の解析研究を進める大学や民間の研究者が守るべき指針を文部、厚生、通産、科学技術の四省庁が共同で作る検討委員会が設置される。四省庁が10日、発表した。14日に東京で初会合を開く。9月中にも原案を公表し、国民の意見を聞いた上で年度内に共通指針をまとめる予定。

ヒトゲノム解読データ公開を 沖縄サミット表明へ

2000.07.16 The Sankei Shimbun
 人体の設計図といわれる人間の遺伝情報の全体図・ヒトゲノムを構成する塩基配列の「国際ヒトゲノム計画」の解読データについて、二十一日から開催される沖縄サミットで、主要八カ国首脳は、世界共通の財産として公開して今後の機能解明などに役立てるよう表明する見通しになった。

 将来の医療などに役立つヒトゲノムの解読は、国際的なプロジェクト「国際ヒトゲノム計画」で米国立衛生研究所の研究者を中心に、日欧の研究者も交えて行われ、六月には解読をほぼ完了した。

 米英両政府は三月にヒトゲノムについて解読された基本的な生データは公開すべきだとする共同声明を発表。日本や独、仏などもこの声明を支持する立場を表明している。

 また日米欧の特許庁は、遺伝子の持つ機能を特定することを特許の条件とすることで合意しており、たんに遺伝子断片の塩基配列を解読しただけでは特許としない方針を示している。

 しかし、この分野に独自に参入してきた民間のバイオベンチャー企業には、解読したデータを一定の期間、非公開とすることを主張したり、他の製薬会社に有料で公開するなどの動きも出ている。さらに、遺伝子の解明に対しては、国によっては宗教上の理由で疑念を示したり、一部の非政府組織(NGO)にも反対する動きもある。

 このため、ヒトゲノムの遺伝子を特定し、その機能を解明して医薬品の開発や治療に応用する“ポストゲノム”時代の研究に向け、解読されたデータを公開し、人類全体の財産として有効に利用することが「世界の方向性と示されている」(通産省首脳)として、沖縄サミットの場で、首脳らが一致して、公開の必要性を訴える見通しだ。

ゲノムベンチャー、日本でも芽生え (2000.07.03) asahi.com
「人間の設計図」といわれるヒトゲノム(人の遺伝情報の全体)をほぼ読み取った「概要版」の完成が6月下旬に発表され、米国では、遺伝子特許や新薬開発を目指す「ゲノムビジネス」が一段と活発になっている。ゲノム時代への「立ち遅れ」が指摘されていた日本でもようやく、大手製薬会社とベンチャー企業の提携が進みはじめた。世界を舞台に展開される新しいビジネス競争を生き抜くことができるだろうか。

 東京都中央区にある「ファルマデザイン」は、新しい医薬品を開発する「ゲノム創薬」をめざすベンチャー企業だ。ゲノムの読み取り結果をもとに、コンピューターを駆使してたんぱく質を分析する。

ヒトゲノム解読は「有害」 米世論調査 (2000.06.28) asahi.com
 人間のすべての遺伝情報であるヒトゲノムの解読について、米国では「有益」とみる人より、「有害」と考える人が多い。米CNNテレビとタイム誌の共同世論調査で、こんな結果が明らかになった。日米欧の国際研究グループと米セレラ・ジェノミクス社がそれぞれ読みとり、クリントン米大統領が「概要の完了」を宣言したばかり。「月着陸にも匹敵する偉業」などと称賛される成果だが、市民は、遺伝情報の漏えいなどに大きな不安を感じているようだ。

 調査は、宣言に先立つ今月14、15の両日、米国内の成人1218人を対象に電話で行われた。

ヒトゲノム解読「特許基準の調整急務」 G8が提起へ (2000.06.28) asahi.com
 人の遺伝情報である「ヒトゲノム」のうち解読のすんだ分に特許を認める基準について、国際的な調整を急ぐべきだと、主要8カ国(G8)が九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)の首脳宣言で提起する方針を固めた。外務省幹部が27日、明らかにした。ヒトゲノムについては、日米欧の研究グループや企業が解読競争を演じ、クリントン米大統領が概要の読み取りが終わったと宣言した。G8は、特許としての認定基準があいまいなままだと、一部の企業や組織が解読情報を特許として独占しかねず、医薬開発などへの応用に影響が出ると判断した。

ヒトゲノム解析 新時代の幕開けか

2000.06.27 By キャロル・クラーク (Carol Clarke) CNN.co.jp
 ヒトゲノムの解読は、医療革命をもたらすと言われている。26日に公的国際プロジェクト「ヒトゲノム計画」と、米企業のセレラ・ジェノミクス社が合同で、解読完了を発表し、人類は自分たちの身体の設計図を手に入れた。人間の身体を構成するDNAの総体であるヒトゲノムを読み解くことで、革新的な遺伝子治療が可能になるかもしれないのだ。

米英首脳らヒトゲノムの「概要読み取り完了」を宣言

2000.06.27 CNN.co.jp
人間の全遺伝情報(ゲノム)を解読する国際プロジェクト「ヒトゲノム計画」について、クリントン米大統領が26日、ホワイトハウスで記者会見し、「概要の読み取り完了」を宣言した。会見には、読み取りを進めた官民の研究者が招かれたほか、イギリスのブレア首相も衛星中継で参加。両首脳と研究者らは、研究の成果を正しく生かすことが重要だと強調した。

ヒトゲノム完全解析 研究チーム発表

2000.06.26 CNN.co.jp
ロンドン(CNN) ヒトの全遺伝情報(ゲノム)の解析を進めていた2つのグループのうち、国際プロジェクト「ヒトゲノム計画」の関係者が26日朝ロンドンで会見し、ヒトゲノム全容図の「下書き」を完成した、と発表した。会見した研究者たちによると、「ヒトゲノム計画」は人間のDNAの9割について、塩基配列を解読したという。

ヒトゲノム解読、日米欧グループが「概要版」公表 (2000.06.26) asahi.com
 「人間の設計図」にあたる人の全遺伝情報ヒトゲノムの解読を進めてきた日米欧の公的研究機関グループは26日、全体の85%にあたる「概要版」を公表した。独自に解読を進める米国の遺伝情報解析会社セレラ・ジェノミクス社も同日、ワシントンで解読結果を発表する。ヒトゲノムを読み解く競争で先陣争いを演じてきた官民は今後、「協調への話し合いを始める」といい、病気に結びつく遺伝子の研究や医薬業界を軸にした遺伝子ビジネスも加速しそうだ。

ヒトゲノム解読、官民の先陣争い雪解けの兆し (2000.06.21) asahi.com
 日米欧などの公的研究機関が国際協力で進めてきたヒトゲノム(人の遺伝情報全体)解読計画で、全体の約9割にあたる概要版が26日にも発表される見通しになった。研究機関と各国政府が最終調整を進めている。米経済紙ウォールストリート・ジャーナルは20日、ライバル関係にある米遺伝情報解析会社セレラ・ジェノミクスと共同発表式典が計画されていると報じた。解読の先陣争いを演じる同社と公的研究機関陣営の協調の動きとみられ、実現すればゲノム研究は加速しそうだ。

ヒトゲノム研究の「憲法」案まとまる (2000.06.07) asahi.com
 人の全遺伝情報であるヒトゲノム研究の「憲法」となる基本原則の案を、首相の諮問機関、科学技術会議のヒトゲノム研究小委員会(委員長・高久史麿自治医科大学長)が7日、まとめた。研究用に血液などの提供を受けるには、提供者に十分説明し、自由意思にもとづいて文書で同意を得ることが必要とした。提供者が、研究で明らかになった自分の遺伝情報を「知る権利」と「知らないでいる権利」の両方を認めている。

 14日に開く同会議生命倫理委員会で正式に決まる。ヒトゲノムにかかわる国内の全研究を対象に原則を決めるのは初めて。

東北大・学際センター/ホヤゲノム解読に挑戦/免疫機能など解明

[河北新報 2000年06月02日]
 東北大の学際科学研究センター(仙台市青葉区)は本年度から5年計画で、三陸特産の「ホヤ」の全遺伝情報(ゲノム)解読に取り組む。ホヤは生物学でヒトと同じ「脊索(せきさく)動物門」に分類され、ホヤ研究はヒトの生命科学を追究するカギとされる。研究グループは解読したホヤゲノムをデータベース化し、ヒトの免疫機能解明やDNAコンピューターの開発など、さまざまな分野の研究に応用させる考えだ。

 ホヤゲノム計画は、東北大金属材料研究所の川添良幸教授(材料情報学)と、東北大加齢医学研究所の佐竹正延教授(分子生物学)が中心となり、ホヤの発生学などに詳しい京都大、それに国立遺伝学研究所との共同研究で実施する。

 ホヤ類は地球上のほとんどの海に生息し、食用である「マボヤ」をはじめ、これまで約3000種類が確認されている。脊椎(せきつい)動物の祖先の脊索動物で、幼生はヒトと同じオタマジャクシ型をしている。成体のイボイボ状の突起はセルロース(繊維素)でできており、動物で唯一セルロースを形成することでも知られる。

 人間の生命の設計図とも言えるヒトゲノムをめぐっては、日米英などの共同研究プロジェクトや米国のベンチャー企業が解読にしのぎを削っており、2003年(平成15年)に完了する予定。近く全体の9割が公開される見通しだが、ヒト以外のゲノム解読は今のところ、多細胞生物の線虫までしか終わっていない。

 ヒトゲノムが10万個の遺伝子からなるのに対し、線虫の遺伝子は1万個、ホヤはその中間の約2万個とされる。ホヤには、線虫にない神経や脳の組織形成があり、ヒトゲノムとホヤゲノムを比較することで、ヒトの生命現象をより理解することが可能だという。

 東北大の研究グループはホヤゲノム解読が医療、資源、環境などの問題に貢献するとしており、川添教授は「最先端科学の成果を東北の地から発信し、地域に根差した21世紀型の産業を興したい」と話している。

遺伝子解析研究で統一指針策定へ=民間も対象−厚生、科技など関係省庁

[時事通信社 2000年 5月30日 16:44 ]
 ヒトの遺伝子解析研究で起きる可能性がある倫理的問題に対応するため、科学技術、文部、厚生などの関係省庁は30日までに、民間も含めすべての研究者・機関を対象とした指針を年内にも策定することを決めた。

 遺伝子解析研究は痴ほうやがんなどに関連する遺伝子の解明と、それに基づく個人の体質などに応じたオーダーメード医療などにつながるとして、今年度から始まる政府のミレニアムプロジェクトの中心テーマにもなっている。しかし、プライバシーの保護や、重い遺伝病になることが分かった場合の心のケアなどの問題が指摘されている。 

ゼリア新薬、100%出資のゲノム創薬ベンチャーを設立

00/06/01日経バイオテック
 ゼリア新薬工業は5月31日、ゲノム創薬研究体制構築の一環として、6月1日付で100%出資のベンチャー企業ジーエスプラッツを設立すると発表した。

ヒト遺伝子の特許に国際基準導入を提案

2000 年 5 月 27 日 YOMIURI ON LINE
 通産省・特許庁は二十七日、米政府に対して、ヒトの遺伝子の特許審査について、国際的な統一基準を導入するよう呼びかける方針を明らかにした。東京で六月十四―十六日に開く日米欧特許庁専門家会合で提案する。日本の審査基準をベースに、約十万個と推定されるヒト遺伝子のうち、どの遺伝子がどんな体質や病気の原因になるかなど、個々の遺伝子が持つ機能を明確に証明することを特許権成立の条件にする考えだ。新薬開発や遺伝子治療などの遺伝子ビジネスは急拡大が見込まれ、米企業などが特許権収入の獲得を狙って特許出願を乱発している。このため、日本主導による国際ルールの確立で特許取得競争に公正さを確保することを目指している。

 日本が提案する基準は、個々の遺伝子が持つ機能を、実験などで証明した場合に限って、特許を認める方式だ。この基準に沿って、抗がん剤のインターフェロンや、貧血治療薬のエリスロポエチンを作り出す遺伝子などについて特許を取得した例がある。

 遺伝子関連の特許については、海外の特許当局も機能が解明されなければ特許として認めてこなかった。

 しかし、九八年にアメリカの特許商標庁が、ベンチャー企業が遺伝子の機能を十分に実証しないままに出願した案件を遺伝子特許として認めたため、波紋を呼んでいる。その後も、バイオ関連の米企業がコンピューターで遺伝子機能を推測しただけで、十分な実証実験がないままに、特許出願をする、などの例が増えている。

 日本などは、この出願がそのまま特許として認められる事態になれば、米企業が遺伝子特許をほぼ独占することになりかねないと警戒を強めている。

 日本製薬工業協会も昨年七月、遺伝子特許の審査を厳しくするよう求める意見書を日本の特許庁に提出するなど、各国の関係者の間で、統一的な審査基準を確認し合うことを求める声が強まっていた。

 遺伝子に関する特許権獲得を狙う企業にとっては、特許が取得できれば、他の製薬会社などが類似薬を販売するたびに特許使用料が入るため、特許が「金の卵」を産むニワトリになる。

 特許庁によると、国内で九六年の一年間に公開された遺伝子工学関連特許の出願件数は約千八百件に上ったほか、九八年までにアメリカで登録された遺伝子工学関連特許の総数は約一万件に達した。こうした状況から、日本政府も国内の二〇一〇年の遺伝子関連産業の市場が九八年の約二十五倍に当たる二十五兆円規模に拡大すると予測している。

日立がヒトタンパク解明へ

2000年5月16日 19時23分共同
 日立製作所は16日、米国の生命工学分野のベンチャー企業「ミリアド・ジェネティクス」(ユタ州)と提携、がんや心臓病など難病の治療薬開発に向け、ヒトの病気に関連したタンパク質の機能を解析、製薬会社に提供する事業に乗り出すと発表した。

製薬十数社が共同で遺伝子研究のコンソーシアム設立へ( May 14, 2000) asahi.com
 日本製薬工業協会は13日、国内の主な製薬会社が、次世代の医薬品開発につながる遺伝子の基礎研究を共同で進める連合体(コンソーシアム)を年内につくる方針を明らかにした。日本人の体質に特徴的な遺伝情報に焦点を絞り、体質の違いによって異なる薬の副作用や効果を研究する。武田薬品工業や三共、山之内製薬など十数社が参加し、総額10億円規模の研究になる見通し。国内の遺伝子研究で、業界主導の共同研究は初めてになる。ヒトの全遺伝情報(ヒトゲノム)の解読や遺伝子研究で先行する欧米企業を追う。

日独研究チーム、ヒト21番染色体の遺伝暗号を解読

00年5月9日 15時4分[ロンドン 8日 ロイター]
 ダウン症やアルツハイマー病などの原因解明の鍵となるヒトの21番染色体の遺伝暗号が、日本とドイツの共同研究で完全に解読され、18日発行の英科学誌ネイチャーでその成果が発表される。

 21番染色体は、23対あるヒト染色体のうち最も短く、完全に解読された染色体としてはこれで2番目。

 解読は日本の理化学研究所ゲノム科学総合研究センターなどを中心に行われた。

 今回の遺伝暗号の解読は、てんかんの一部や白血病など、遺伝子が原因とされる疾病について、より精度の高い検査法や新治療法の開発に道を開くものとみられている。

遺伝子6万5000個を確認

2000年5月9日 10時57分【ワシントン共同】
 米国のバイオテクノロジー関連ベンチャー企業、ダブルツイスト社は8日、国際プロジェクトのヒトゲノム計画が解読したDNAの塩基配列情報を分析し、約6万5000個の遺伝子の存在を確認した、と発表した。

  同社は確認した遺伝子の特許申請はせず、製薬会社などに遺伝子情報のデータベースを販売する事業を展開する、という。

加齢の原因となる新たな遺伝子見つかる=米研究チーム

2000年4月11日 14時54分[ワシントン 10日 ロイター]
 
 加齢や関節炎、アルツハイマー病などに関係するとみられる新たな遺伝子が発見されたことが、米イリノイ大シカゴ校のイゴール・ロニンソン氏らの研究チームの報告で分かった。

 Proceedings of the National Academy of Sciences に掲載された報告によると、遺伝子は「p21」と呼ばれ、細胞に直接作用するだけでなく、加齢や病気に関わる他の遺伝子の一部にも影響を及ぼすようだという。  同チームは報告で、この遺伝子を操作することでさまざまな加齢プロセスを司る可能性のあることを指摘している。

米企業、ヒトゲノムの配列読み取りほぼ完了

01:15a.m. JST April 07, 2000
 ヒトゲノム(全遺伝情報)の解読を進めている米国の遺伝情報解析会社セレラ・ジェノミクス社は6日、DNA塩基配列の99%の読み取りを終えたと発表した。DNAをばらばらにし、細かな断片ごとに調べた。断片をコンピューターで元通りに並べる編集作業は残っているが、全遺伝情報の解読に大きく近づいたことになる。

 同日、米下院科学委員会の公聴会で、同社のクレイグ・ベンター社長は「3―6週間で残りの編集作業を終える予定」と述べた。

 遺伝情報は、4種の塩基が鎖状に連なったDNAに記録されている。同社は当初、2001年までに完全解読するとしていたが、予想を上回る速さで作業が進んでいることになる。

同社は昨年9月からヒトゲノム解読を本格的に始め、今年1月、約31億8000万塩基の約90%を読み終えたとしていた。この中には公的研究機関が発表したものも含まれる。

人の全遺伝情報を初解読

2000年4月7日 19時48分【ワシントン共同】
米バイオテクノロジー・ベンチャー企業のセレーラ・ジェノミクスは6日、人間の全遺伝情報(ゲノム)の読み取りを完了した、と発表した。人の約30億の塩基対(遺伝暗号文字)のうち99%に当たる配列を明らかにしたという。同社のクレイグ・ベンター社長は「ゲノムの完全解読後、データを無料で公開する」と述べ、独占の意図はないことを強調した。

米社がイネゲノム情報を無償提供 解読スピード進む?

7:20p.m. JST April 05, 2000
 米国の化学大手モンサントが、イネの全遺伝子を解読する「イネゲノム研究」でこれまでに得た研究データを、日本などで作る国際研究組織に無償で提供することになった。農水省によると、モンサントのデータは精度でやや劣るものの、解析を終えた量自体は多いといい、日本側の解読スピードが増すことが期待されている。

 イネゲノム研究は、イネのDNAの塩基配列を明らかにすることで塩基配列がイネのどんな機能に対応しているかを解明し、収量が多い、病気に強い、アレルギー源を持たない、などのイネの開発に役立てることを狙っている。世界的には、農水省農業生物資源研究所が中心になって欧米、アジアの10の国・地域の公的機関で作る「国際コンソーシアム」や欧米の化学メーカーが研究を続けている。

 モンサントが提供するのはイネゲノムの塩基配列を解読したデータ。コンソーシアムのデータは、解読した塩基配列の正確度が99.99%なのに比べ、モンサントのデータは95%程度と低いが、約6割の塩基配列が明らかになっている。同省では「モンサントのデータを基礎にすれば、解読の速度は速まる」としている。

高速でゲノム解析へ

2000年4月3日 19時41分
宝酒造(京都市)は3日、高速ゲノム解析センター「ドラゴンジェノミクス」を設立すると発表した。同社のバイオテクノロジー関連の遺伝子を解析するとともに、内外の製薬会社などからゲノム解析を受託する。「生命の設計図」と呼ばれるゲノムの解析は欧米が先行しているが、同社は「外部から請け負う企業は欧米にも存在しない。初年度に約30億円の受注ができると思う」としている。

科学者ら、人間の遺伝情報の公開要求を支持

00年3月23日 16時47分[ロンドン 22日 ロイター]
科学者らは、クリントン米大統領とブレア英首相が先週発表した、人間の遺伝情報(ゲノム)の公開を求める共同声明を、全面的に支持する意向を明らかにした。
米科学アカデミーのBruce Alberts、英国国立協会のAaron Klug両代表が、英科学誌「ネイチャー」で共同声明を発表したもの。
両代表は声明で、人間の遺伝情報は、無料かつ障害なしに入手可能であるべきだと主張。
「できるだけ早く、効果的に解読作業を進め、広い恩恵をもたらすため、全ての研究者が遺伝情報を利用することは極めて重要だ」と語った。

「ヒトゲノムの解析情報は公開すべき」 米英が共同声明

11:36a.m. JST March 15, 2000
クリントン米大統領とブレア英首相は14日、人の遺伝情報全体であるヒトゲノムの解読情報は、世界中の科学者に公開されるべきだとする共同声明を発表した。米英を中心に日本も参加して進められている国際的な解読計画では研究機関同士の協定で公開が原則になっているが、独自に解読した情報を有料で販売している会社がある。共同声明は、こうした動きに歯止めをかけるため、国レベルの合意を示したものとみられる。声明発表を受け、遺伝子解析関連会社の株価が暴落した。
声明は、「ヒトゲノム解読は、病気の原因解明や新しい治療法の開発に大きく貢献する」とし、今後の発展のためには「ヒトゲノムの基本データは自由に利用できなければならない」とした。一方で、この情報に基づく民間企業での研究開発を促進するためには、知的所有権の保護が重要だ、とした。
米英両政府はゲノム解読を生物学・医学の基盤整備としてとらえ、公的研究機関に予算を使ってきた。日本もこれに加わっている。
解読した情報を公開することは日米欧の公的研究機関の間で合意され、解読を終えた順にインターネットを通じて24時間以内に公開している。これまでの成果をまとめ、4月にも全体の9割に当たる概要が公表される予定だ。
一方、米国の遺伝情報解析会社のセレラ・ジェノミクス社は昨年から、独自に解読した情報を有料で一部製薬会社に提供し始めている。公的研究機関とセレラ社の協力交渉が今月上旬まで行われたが、同社側は独自に解読した情報を一時独占的に利用することを求め、決裂した。

遺伝子研究の基本原則固まる 遺伝による差別を禁止

11:06p.m. JST March 06, 2000
人の遺伝情報全体であるヒトゲノムの研究を進める上で、研究者が守らなければならない基本原則について、首相の諮問機関、科学技術会議のヒトゲノム研究小委員会が6日、素案を固めた。研究は、個人や家族の遺伝情報の解明につながる。素案には、血液などを提供した人の人権を守ることを大前提に、提供者は遺伝的特徴で差別されず、研究で損害をこうむった場合は補償を受ける権利をもつことなどが盛り込まれた。法的措置も今後検討する。
ヒトゲノムを解読し、病気のメカニズムの解明や新薬の開発などに役立てようと各国の研究機関や企業などが競って研究している。基本原則は、日本におけるゲノム研究の「憲法的文書」と位置付けられる。
素案は、(1)ヒトゲノムとその研究(2)研究試料提供者の権利(3)ヒトゲノム研究活動(4)社会との関係――の4章から成り、提供者とその血縁者、家族の尊厳と人権を尊重することを求めた。研究には十分な説明を受けた上で、自由意思に基づく提供者の同意が必要で、提供者は自分の遺伝情報を知る権利や知らないでいる権利があるとした。
ヒトゲノム研究が進むことで糖尿病や高血圧などの病気の原因解明や新薬の開発が進むとみられる。病気の人と健康な人の遺伝子の特徴の違いを比較するなどの研究が欠かせない。研究者が個人の病気のなりやすさなどの遺伝情報を扱うことになるが、この情報が外部に漏れれば、就職などで差別を受ける可能性があるため、研究のルール作りが求められている。

遺伝に基づく差別禁止

2000年03月06日
 遺伝的な特徴に基づく差別の禁止などを内容とした、人間の遺伝子研究に関する基本原則の素案が、6日開かれた科学技術会議(首相の諮問機関)のヒトゲノム研究小委員会(委員長、高久史麿・自治医大学長)で公表された。遺伝子研究が人の尊厳や基本的人権を損なわずに実施されることを目指した、研究全般の“憲法“としての位置付け。

「ヒトゲノム研究での異邦人・日本」

(2000/02/03)by団藤保晴の「インターネットで読み解く!」

キッセイ、米シナプティック社と新規受容体の共同研究開発契約を締結

2000年01月25日[東京 25日 ロイター]
 
 キッセイ薬品工業は、米バイオベンチャー企業のシナプティック社と、新しいGタンパク質共役型受容体遺伝子の発見とその受容体の機能を解析するための共同研究を実施する契約を締結した、と発表した。

 今回の提携の主要目的は、新規遺伝子の探索により、新薬の標的となる新規受容体を見出し、その機能を解析すること。これにより、新薬創製の初期ステージの重要な標的探索研究の効率化が図られ、創製品研究開発力がさらに強化されることが期待される、としている。

 

 また、キッセイは、共同研究から得られる成果を全世界で企業化する権利を取得した、という。  キッセイによると、Gタンパク質共役型受容体とは、細胞膜上に存在する受容体であり、これに種々の神経伝達物質やペプチドホルモン、または未解明の生体内物質などが特異的に結合すると、結合した物質からの情報を受動態に共役しているGタンパク質を介して細胞内に伝達し、生理作用を発現するタイプの受容体。この受容体の存在は多様であって、臓器特異性もあることから、種々の生体内酵素とともに新薬の標的分子として、最も注目されているという。 

欧州特許局、誤ってヒトの胚抽出に特許 独が抗議へ

February 23, 2000(時事)
 ドイツのミュンヘンに本部を置く欧州特許局が、職員の「うっかりミス」から遺伝子操作を前提としたヒトの胚(はい)の抽出に特許を与えていたことが発覚、環境保護団体などから抗議の声が強まっている。22日付の独紙ウェルトが報じたもので、人為的に遺伝子操作された人間の誕生につながりかねない「重大ミス」に独政府は抗議する方針だ。

 問題の特許は、英エディンバラ大学に対して認められた。ヒトの胚からは、条件次第であらゆる細胞や器官に分化できる胚性幹細胞(ES細胞)を作ることができる。ES細胞は器官などに加え、人間という個体そのものに育てることも技術的に可能。

 欧州連合(EU)のガイドラインではヒトの遺伝子操作は禁じられており、環境保護団体グリーンピースは、今回の特許が欧州特許基準などに違反するとして同局に強く抗議、同局側もミスを認めた。

ウニから確実に機能する遺伝子を発見 広島大のグループ

07:48a.m. JST December 30, 1999
 遺伝子組み換え生物をつくるとき、新たに組み込む遺伝子と一緒に入れると新遺伝子が確実に働く。こんな機能をもったDNAの塩基配列を、赤坂甲治・広島大助教授(分子発生学)らの研究グループがウニから発見した。従来は、遺伝子の導入に成功しても、働くかどうかは偶然まかせだったが、この配列を使うとほぼ間違いなく働くという。動物でも植物でもその働きは変わらない。遺伝子工学など幅広い分野への応用が期待されている。

 この配列は、「インスレーター」(絶縁体、遮断物)と呼ばれる。いわば、遺伝子の「仕切り」のようなものだ。

 細胞には、侵入してきた遺伝子が働かないようにする機能があると考えられている。しかし、「仕切り」には、この機能をも遮る能力があるようだ。

 こうしたものは数種類が報告されていたが、赤坂さんらが見つけた約600塩基対の配列は、動物でも植物でも同じような働きを示した。動植物の区別なく働くものは初めてという。

 赤坂さんらは、培養したヒトの細胞の遺伝子組み換え実験に、この配列を使ってみた。遺伝子をこの配列で挟んだ場合と挟まない場合を比較。組み込んだ遺伝子が機能した割合は、挟んだ方が約5倍も高かった。

 熊本大医学部の山村研一教授(発生遺伝学)らは肝炎ウイルスの遺伝子をマウスに組み込んだ。従来の方法では働かなかった遺伝子が、この配列を使うと働くことが確認された。

 奈良先端科学技術大学院大の吉田和哉助教授(細胞生物学)らはタバコの培養細胞の遺伝子組み換えに応用した。組み入れた全細胞で遺伝子が働いていた。

 導入した遺伝子が機能する仕組みに詳しい金田安史・大阪大医学部教授(遺伝子治療学)は「遺伝子治療への応用が可能かもしれない。ただし、なぜこうした効果があるか、そのメカニズムは不明な点が多い。まず、こうしたなぞの解明が大切だ」と話している。

通産、一文字違いDNAの解析に乗り出す

1999年12月29日 (水) 8時10分 日刊工業新聞
 通産省は、個人間のデオキシリボ核酸(DNA)配列上の微妙な違いであるSNPS(DNA配列上の一文字の違い)の解析に乗り出す。

 SNPSをヒトの配列上の遺伝子部分に焦点を当てて探索し、解析するとともに、SNPSがどの程度の頻度で違い得るかを解析する。

 2万―3万個の標準SNPSを解析することにより、蓄積されたSNPS情報を広く一般に提供するためのデータベースを提供する。

 医薬品の開発や病気の原因遺伝子など今後のバイオ産業の発展につながると期待される。

生命構成に300の遺伝子

1999年12月15日 12時57分 【ワシントン共同】
 生命体を作るためには、最低限300前後の遺伝子が必要であると、米バイオ企業セレーラ・ジェノミクス社のクレイグ・ベンター社長らが突き止め、14日までに米科学誌サイエンス最新号に発表した。ベンダー社長らは、この成果を受け、DNAをつないで遺伝子を作り生命を人工合成する研究を計画。外部の学者に委託し倫理的な問題がないか検討を進めている。

糖尿病など関連の遺伝情報を解読 日米英チーム

01:57a.m. JST November 01, 1999
 人の全遺伝情報のうち、白血球の型(HLA)を決める遺伝子を含む領域の解読に、東海大学など日米英の共同研究チームが成功した。この領域には糖尿病やリウマチなどの病気に関連する遺伝子があるとみられ、病気の原因解明や治療法の開発が加速すると期待されている。英科学誌ネイチャーの最新号に発表された。

 解読したのは東海大医学部の猪子英俊教授らと、英サンガーセンター、米フレッド・ハッチンソンがん研究センターなどの研究者。

 人の細胞にある全遺伝情報(ゲノム)は塩基の連なりによって形作られているが、1対の塩基を1文字とすると約30億文字分になる。今回、HLAの遺伝子を含む領域に的をしぼり、全体の約0.1%に当たる約360万文字分を日米英が分担して解読した。その結果をさらに分析し、なんらかの働きを持つ塩基の連なりである遺伝子が224個あることを突き止めた。約4割の93個はこれまでに見つかっていないものだ。

 これらの遺伝子がそれぞれどんな働きをするのかはまだ確定していないが、この中には糖尿病やリウマチに関連する遺伝子があると予測される。猪子教授らは遺伝情報の個人差を調べ、病気の解明をめざす。

 人間の全遺伝情報を解読するヒトゲノム解読計画は米国立保健研究所(NIH)などを中心に急速に進んでおり、来年春には全体の9割ほどが解読され、概要が発表される見通しだ。

生活習慣病の遺伝子を探れ

1999年10月18日 19時02分 共同通信社
 国立循環器病センター(大阪府吹田市)の倫理委員会は18日、同センターで健康診断を受けている人から採取した血液の遺伝子を解析し、生活習慣病を引き起こす原因を調べる研究の開始を承認した。

 国立がんセンターのがん遺伝子研究など、厚生省が計画している大規模な遺伝子解析研究の一環。早ければ年明けから実施する予定で、5000人規模の調査を目標にする。

日立製作所、遺伝子解析などバイオ関連事業に本格参入

8:01p.m. JST September 27, 1999
 日立製作所は27日、遺伝子解析などバイオテクノロジー関連事業に本格的に参入する、と発表した。これまで蓄積してきたDNA解析などの研究と情報処理を合わせ、医療、食品、農業分野でスーパーコンピューターを使った大規模な解析サービスを提供する。2002年には年間150億円の売り上げを目指し、日立グループの中核事業の一つとして位置づける。

 日立は10月からバイオ関連事業を担当するライフサイエンス推進事業部を新設する。事業部長を同事業のCEO(最高経営責任者)とし、投資の権限を与え、経営責任を負わせる。3年間で合計約60億円の投資を予定し、人員は当初の約60人から3年後には約200人に増やす。

 事業は、製薬会社や食品会社などから遺伝子の解析を請け負い、新薬開発や品種改良のための基本情報を提供する。また、遺伝子情報を蓄積したデータベースをつくり、研究に必要な情報を提供する。

 バイオ関連事業は国内では2010年に25兆円の市場になるという予測がある。一方、DNA配列など膨大な遺伝子情報の解析には巨額の投資が必要なため、日立は製薬会社などからのサービスの受託を見込んでいる。

遺伝子操作しハエを小型化

1999年9月25日 10時38分【ベルリン共同通信社】
 24日付のドイツ紙ウェルトによると、スイスの研究チームが遺伝子工学を使って、通常の半分の大きさのショウジョウバエをつくり出すことに成功した。ハエは、個々の細胞が小さくなり、細胞の成長も遅くなったが、細胞の数は通常のハエと同じだった。ほ乳類への応用の可能性はまだ不明だが、特定の細胞の成長を遅らせることができれば、がんの治療に役立つ可能性もある。

ショウジョウバエの遺伝情報ほぼ解読 米セレラ社

2:09p.m. JST September 20, 1999 asahi.com
 米国の遺伝情報解析会社セレラ・ジェノミクスは19日、マイアミビーチで開催中の第11回国際ゲノム解読学会で、ショウジョウバエの遺伝情報のほぼ全容を解読した、と発表した。生物の全遺伝情報(ゲノム)解読では、これまでに細菌など単細胞生物での成功例があるが、多細胞生物では去年、ほぼ全容解読を済ませた線虫に次ぐ成果だ。同社は今後、人間の全遺伝情報「ヒトゲノム」の解読に全力を注ぐとしており、ハエでの成功は、これにはずみをつけそうだ。

 遺伝情報は、細胞のDNAがもつ塩基の配列が暗号文となって保たれている。セレラ社のマーク・アダムズ博士とジーン・マイヤーズ博士らは、ショウジョウバエのDNAを細かな断片にし、それぞれの塩基配列を機械で読みとった。断片情報をコンピューターでつなぎ合わせ、解読対象となっている遺伝情報の約97%を復元した、という。

 その結果、ヒトの病気に関連する遺伝子の「ハエ版」ともいえる遺伝子がこれまでに110個見つかった。これは、ハエのゲノム研究が病気の解明にも役立つことを示している。

 今回調べたのはキイロショウジョウバエで、世界中の遺伝学者が長年実験用に使ってきて遺伝的な性質がよくわかっている。ヒトゲノムが約30億個の塩基で表されるのに対し、このハエでは約1億8000万個。この中には、解析が不要な部分も含まれる。

 セレラ社は一方でヒトゲノムの解読も独自に進め、2001年の全容解読を目標にしている。製薬会社と提携し、解析したデータを薬品開発などに結びつけようとしている。ショウジョウバエのゲノム解読は始めてから約4カ月という短期間で終わっており、ヒトゲノムの迅速な解読も現実味を帯びてきた。

ヒト遺伝子機能を解析、三菱化学などベンチャー設立

9:12p.m. JST September 03, 1999
 三菱化学と吉富製薬、協和発酵工業は3日、ヒトの遺伝子の機能を解析する研究開発型のベンチャー企業「ジェンコム」(本社・東京)を設立したと発表した。ヒトの細胞の中に含まれている遺伝情報(ヒトゲノム)を解読する競争は世界で激化しており、21世紀初めには全容が解明されるといわれる。ジェンコムは、解明された遺伝情報をさらに解析する「ポスト・ゲノム」事業を主要なビジネスとするベンチャー企業で、日本では初めて。

 ヒトゲノムの解明、解析は、将来のバイオ産業発展のカギを握る研究とされ、政府も支援態勢を整えつつある。3社は今月中旬、通産省と郵政省が民間の基盤技術を高めるために設立した基盤技術研究促進センターに対しても、新会社への出資を今月中旬に申請する。

 新会社は特に、病気を起こす遺伝子の機能を分析に力を入れる。実験動物を使って解析したヒト遺伝子の機能のデータや、ヒト遺伝子を組み込んだ「ヒト型モデルマウス」を医薬品メーカーや研究機関に提供し、新薬開発や新たな診断・治療の確立に結びつける戦略だ。2005年度の売上高は30億円と見込む。

 ヒトゲノムは米国を中心に15%程度まで解読されたといわれるが、三菱化学は「ヒト遺伝子の配列からさらに踏み込み、遺伝子の機能そのものを明らかにすることで、初めて産業界への波及効果が出る」とみており、新会社の研究開発を強く支援する方針だ。

 通産、文部など五省庁は、小渕恵三首相が提唱するミレニアム(1000年紀)プロジェクトの枠内で、米国に差をつけられたヒトゲノムの解析に約980億円の予算を要求している。

有用細菌の全遺伝情報解読

1999年8月10日 17時22分 共同通信社
 家庭用洗剤に広く使われている酵素を生産する細菌の全遺伝情報(ゲノム)を解読することに、海洋科学技術センター(神奈川県横須賀市)深海環境フロンティア(堀越弘毅フロンティア長)の高見英人(takamih@jamstec.go.jp) ・ゲノム解析研究チーム研究員(39)らが成功し、10日発表した。同チームによると、工業利用されている微生物の全ゲノムが解読されたのは世界で初めて。

人間とラットの染色体比較地図できる 成人病の解明に道

03:02a.m. JST April 30, 1999
 実験動物として使われるネズミであるラットと人間の染色体を比べ、遺伝子の並び方が似ている部分を対応させた「比較地図」を日英米の研究グループが作った。遺伝子の異常が関与するとみられている人間の高血圧や糖尿病などの原因解明、治療薬の開発につながる成果といえる。

 地図を作ったのは、大塚製薬大塚GEN研究所(徳島市)、英オックスフォード大、東京大学医科学研究所、米リサーチジェネティクス社などの研究チーム。5月1日発行の米科学誌ネイチャー・ジェネティクス5月号に発表する。

 細胞の核の中にある染色体数はラットが21対、人間が23対で、それぞれひとつながりのDNAからなる。DNAは4種類の塩基が様々な配列でつながっており、塩基配列が遺伝子として特定のたんぱく質を作る設計図になる。

 研究グループは、まずラットの全染色体で、約5000カ所の塩基配列を目印にし、地図を作った。この地図に、人間の塩基配列が似ている部分を対応させ、比較地図を完成させた。

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