TOPIC No.6-14 すばる望遠鏡

01. すばる望遠鏡 by国立天文台(文部科学省)
02. すばる望遠鏡
03. すばる望遠鏡 神秘の大宇宙へ誘い
04. 日本の望遠鏡の歩みは -すばる以前の大望遠鏡-
05. 国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡/大型光学赤外線望遠鏡 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
06. 超新星は丸くない:すばる望遠鏡で爆発する星の内部を探る(2008年02月01日) by東京大学 数物連携宇宙研究機構
07. すばる望遠鏡などの運営経費削減の危機に対するアピール(2009年12月13日) by平松の活動記録 on tenpla.net


最も遠い銀河団を発見 地球から96億光年

2010/05/10 中国新聞ニュ−ス

 東京大と京都大などの国際研究チームは10日、米ハワイ島のすばる望遠鏡と欧州の天文衛星の観測データから、これまでで最も遠い、地球から96億光年離れた銀河団を発見したと発表した。これまで観測された最も遠いものは92億光年だった。

 チームはまず、すばる望遠鏡の観測で、くじら座の方角に遠い銀河団候補があるのを発見。同じ領域を観測した欧州宇宙機関のエックス線天文衛星「ニュートン」のデータで銀河団であることを確かめた。さらに、個々の銀河をすばるの近赤外線装置で観測した結果、96億光年かなたにあることが分かったという。

 研究チームの田中賢幸たなか・まさゆき・東京大特任研究員によると、宇宙では青く見える銀河の多くは単独で存在し、赤く見える銀河は銀河団に含まれることが多い。赤い銀河では、新しい星が生まれて銀河が成長する活動は止まっているという。

 今回発見された銀河団には赤い銀河が多いことから、観測した光が銀河から放たれた96億年前には、既に銀河の成長が止まっていたとみられる。

 田中氏は「137億年前の宇宙誕生後、いつ、どのように銀河の成長が止まったのか調べるため、もっと遠い銀河団を探したい」と話している。

宇宙の神秘探れ 三菱電機が電波望遠鏡プロジェクト参加

2010年04月29日 asahi.com

直径7メートルのALMAのアンテナ=兵庫県高砂市

 三菱電機が、世界最大の電波望遠鏡群「ALMA(アルマ)」の一部となるパラボラアンテナの建造を兵庫県高砂市で進めている。日米欧が共同で66台の電波望遠鏡をチリの高地に並べ、直径18.5キロの超巨大望遠鏡に相当する観測能力を持たせる国際プロジェクトで、日本分16台を同社が受注した。

 ALMAはチリ・アンデス山脈のアタカマ砂漠(標高5千メートル)に作られ、2012年の本格運用が目標。大阪に落ちている1円玉を東京から見分けられる解像力がある。「第2の太陽系」の探索などへの応用が期待されている。

 三菱は高砂市の港に近い工場を借り切り、過酷な自然環境にも耐えられる外装の組み立てや、電磁石を利用した可動部の調整を約10人の工員が続けている。製造中の望遠鏡はアンテナの直径が7メートルで重さ90トン、高さ12メートル。すでに直径12メートルのアンテナを持つ望遠鏡4台を船便で送り出した。

 三菱は99年の完成時に世界最大だった「すばる望遠鏡」の製造も担当した。(榊原謙)

暗黒物質、銀河団に扁平分布 すばる望遠鏡の画像解析

2010/04/27 47News【共同通信】

 国立天文台、台湾中央研究院などの国際研究チームは26日、米ハワイ島のすばる望遠鏡で銀河団を撮影した画像を解析し、正体不明の暗黒物質が銀河団の中で扁平な形で分布している証拠を確認したと発表した。

 従来の理論では、約千個の銀河からなる銀河団は太陽の1千兆倍の質量の暗黒物質を伴っているが、一様に広がってはいないとされてきた。今回の観測はこの理論と一致するものだという。

 天文台などは、地球から約30億光年離れた25個の銀河団を観測。地球からさらに遠く約80億光年かなたの銀河から放たれた光が、これらの銀河団の近くを通るとき、重力によってどう曲げられるかを調べた。

 それらのパターンを分析した結果、うち18個で分布が判明。銀河団中の暗黒物質はおおむね、縦横がほぼ1対2の楕円状に分布していることが判明したという。

 国立天文台の大栗真宗研究員は「今後の観測で、さらに詳細な分布を調べたい」としている。

すばる望遠鏡、暗黒物質のゆがんだ分布を明らかに

【2010年4月27日 すばる望遠鏡】AstroArts

すばる望遠鏡がとらえた複数の銀河団の画像から、正体不明の「暗黒物質」の分布が精密に測定された。その結果、暗黒物質が密集した領域では、分布は球状ではなく、ゆがんだ扁平な楕円状であることが明らかになった。この「ゆがみ」から暗黒物質の正体に迫ることが可能になるかもしれない。

解析に使われた銀河団Abell 2390。紫色は重力レンズ効果の解析から得られた銀河団内の暗黒物質分布で、右上−左下方向にそって伸びた形状をしている。クリックで拡大(提供:国立天文台)

重力レンズ効果による暗黒物質分布の形状測定の模式図。赤は暗黒物質の密度が高く、青は低い。黒線は密度分布に対応した背景銀河のゆがみで、(左)丸い球状の暗黒物質分布の場合、(右)ゆがんだ扁平な暗黒物質分布の場合。クリックで拡大(提供:国立天文台)

 銀河団とは1,000個ほどの銀河の集まりで、そこには太陽の1,000兆倍にもおよぶ大量の暗黒物質が付随していることが知られている。暗黒物質の正体は依然として不明であり、現代天文学および物理学におけるもっとも重要な未解決問題のひとつとされている。暗黒物質は光を発しないため、詳細な空間分布を調べることはひじょうに難しい。

 国立天文台の大栗真宗研究員、東京大学の高田昌広特任准教授を中心とする研究チームは、すばる望遠鏡の主焦点カメラが撮影した18個の銀河団の画像を詳細に分析し、画像中に見られる重力レンズ効果から銀河団内の暗黒物質の空間分布を明らかにした。

 重力レンズ効果とは、天体の重力により光の経路が曲げられる現象で、アインシュタインの一般相対性理論によって予測されている。例えば暗黒物質が集中した場所があると、その重力場がちょうど凸レンズのように働いて、背後にある遠方の銀河が発する光の経路が曲げられ、結果として銀河の姿が変形して観測される。

 背景の銀河の形が重力レンズ効果によってどのように変化しているかを測定すると、銀河の手前にある暗黒物質の分布を直接的に推定することができる。この効果は重力レンズを引き起こす天体が普通の天体か暗黒物質かにはまったくよらないため、目に見えない暗黒物質を探る上でひじょうに強力な手法となる。

 研究チームが明らかにした分布は、球状ではなく大幅に「ゆがんだ」扁平な楕円状であった。平均的なゆがみの度合いは、楕円の長軸と短軸の比でおよそ2対1と大きなもので、「ほぼ球形」をしている太陽などの恒星とは対照的である。重力レンズ効果を用いた暗黒物質分布のゆがみが、これほど高い信頼度で検出されたのは、今回が初めてのことだ。

 標準的な暗黒物質理論の予測と今回の測定結果を詳細に比較したところ、暗黒物質分布のゆがみの度合いを含めて良く一致することがわかった。今回の研究結果は、暗黒物質の性質に対する標準的な考え方を強く支持する新しい証拠であり、暗黒物質分布の「ゆがみ」から、その正体にせまる可能性を初めて示した点で重要な成果となった。

天体観測、南極が熱い 天文台開設へ調査 筑波大など

2010年04月13日 東京新聞

大気中の水蒸気を測る機器を調整する瀬田講師(後ろは基地で使う燃料を保管するドラム缶)=南極のドームふじ基地で

 南極大陸に天文台をつくる計画を筑波大や東北大などのグループが進めている。極寒で乾燥した南極は天文観測に適し「宇宙に開かれた最後の窓」ともいわれる。三月に帰国した五十一次南極観測隊にグループの研究者が同行し、初めて事前調査をした。十一月に出発する五十二次隊にも研究者が参加し、小型望遠鏡を使って試験観測を始める。将来は大型の赤外線望遠鏡や電波望遠鏡をつくる方針だ。 (榊原智康)

 地上から星を観測するとき問題になるのが地球の大気だ。光を吸収したり乱したりして、天体を暗くぼやけた姿にしてしまう。

 このため天文観測に適した場所として、すばる望遠鏡があるハワイのマウナケア山(標高約四、二〇〇メートル)や世界最大の電波望遠鏡をつくる「アルマ計画」が進むチリのアタカマ高地(標高約五、〇〇〇メートル)など、大気の薄い高地が選ばれてきた。ともに世界各国の巨大な望遠鏡が集まり、成果を競い合っている。

 今、新たな観測地として南極が注目されている。沿岸の昭和基地より約千キロ内陸にある日本の観測拠点「ドームふじ」基地。標高が三、八一〇メートルと高いうえ、平均気温が氷点下五五度と低いのが大きなポイントだ。

 気温が下がれば空気中の水蒸気量が減って乾燥する。乾燥した空気は電波や赤外線を吸収しにくい。このドームふじに、筑波大は電波望遠鏡を、東北大は赤外線望遠鏡をそれぞれつくる計画だ。

 さらに一年の七割以上が晴れ。大気も安定しているため星の瞬きも少ない。

 好条件がそろうドームふじに天文台をつくろうと呼び掛けたのは筑波大の中井直正教授。二〇〇五年に結成した「南極天文コンソーシアム」には東北大や国立天文台、名古屋大の研究者が加わる。

 〇六年には四十八次南極観測隊に、電波がどれぐらい大気に吸収されずに透過するかなどの観測を委託。その結果、ドームふじはアタカマ高地より観測環境が良いことが分かった。

 三月までの五十一次隊に同行したのは、筑波大講師の瀬田益道さん(42)。七人の隊員とともに昭和基地から雪上車で約三週間かけてドームふじへ。約二週間滞在し、電波の大気透過率や大気の水蒸気量を測ったほか、魚眼レンズを付けた「全天カメラ」で雲の発生状況を記録した。

 「電波の大気透過率は以前の調査とほぼ同等の結果が得られるなど観測環境の良さを確認できた」と瀬田さん。「望遠鏡を運ぶルートを自分の目で確かめられたことも大きな成果」という。

 筑波大が開発しているのは、アンテナの口径が三十センチで重さ六百キロの電波望遠鏡。ドームふじ付近の年最低気温は氷点下八〇度で、この気温でも正常に機能することが求められる。

 低温に強い部品を選んで用いたうえ、アンテナを回すモーター部分などにはヒーターを設置。持ち運びを考え、本体は十数個の部品に分割できるよう工夫した。この望遠鏡で観測経験を積み、口径十メートル級の電波望遠鏡につなげる。

 一方、赤外線を観測する東北大は最初に口径四十センチ、続いて二メートル級へと望遠鏡を発展させる構想を描く。南極では二メートル級でも、すばる望遠鏡(口径八・二メートル)と同程度の性能を実現できる可能性があるという。

 試験観測は赤外線望遠鏡から始め、一一年度に電波望遠鏡を持ち込む方向で調整中。大型望遠鏡の設置は五年後を目標としており、日本から遠隔操作してデータを集める。

 赤外線や電波は、遠くの天体や宇宙空間にあるちりやガスを調べるのに向いている。星はチリやガスから誕生すると考えられており、瀬田さんは「南極での観測で、生まれたての銀河の姿が見えてくる可能性がある」と期待する。

 南極ではすでに、ドームふじより約千メートル標高が低い極点付近に米国が電波望遠鏡を建設し、〇七年に観測を開始。中国や欧州も標高三千メートル以上の高地で天文台の開設を目指しており、南極での天体観測は熱い国際競争が繰り広げられることになりそうだ。

●記者のつぶやき

 ドームふじは越冬隊が滞在した時期もあるが、現在は無人。基地の電源を入れる作業などに時間を要すため、今回はベッドを備えた雪上車で寝泊まりしたという。天文学と南極観測の双方に新しい展開をもたらすことができるのか。「南極天文台」の今後の進展に期待したい。

すばる望遠鏡、太陽型星を周回する惑星候補天体を直接撮像により発見

2009/12/04 マイコミジャ−ナル

 国立天文台、ドイツ・マックスプランク研究所などの研究者からなる研究チームは、すばる望遠鏡に搭載された新コロナグラフ撮像装置「HiCIAO」を用いて、太陽型星を周回する惑星候補天体を直接撮像により発見したことを明らかにした。

 系外惑星の直接撮像観測へのアプローチは近年競争が激化していたが、太陽のようなG型星の近傍(太陽系の大きさ程度)を周回する惑星候補天体の撮像の報告はこれまでなかった。

 今回、国立天文台を中心とする日本チームは、独・米の国際チームとともに、こと座の方向、地球から50光年離れたG型星(GJ758)を周回する惑星候補「GJ758B」を直接撮像観測により発見した。温度は絶対温度600K(約330℃)程度と推定され、これまでに撮像されたG型星の伴星天体の温度としては最低記録となる。

 GJ758Bの主星からの距離は29AUで、ほぼ海王星の軌道半径と同じ、すなわち、太陽系とほぼ同じサイズの惑星系となる。惑星の質量は明るさと年齢から推定されるが、主星であるGJ758の年齢がはっきり決まらないため、推定される質量にも幅があり、年齢が7億年の場合には木星質量の約10倍となり、巨大惑星候補と呼ぶことができる。また、誤差の範囲で最も高い年齢(87億年)をとった場合には40木星質量程度となる。

 また研究チームは、もう1つ、GJ758Bとほぼ同じ質量で、さらに内側(18AU:ほぼ天王星の軌道)にある「GJ758C」も発見している。このため、同惑星候補は固有運動のチェックが必要とするが、(少なくとも)2惑星から成る惑星系である可能性があると研究チームではしている。

 すばる望遠鏡では、HiCIAOと補償光学装置を用いた戦略的観測プログラム「SEEDS(シーズ)」が2009年10月より開始されており、今回の成果にも威力を発揮している。同プログラムにより、今後5年間にわたって約500個の(主に太陽型の)恒星を周回する惑星や円盤が探査される計画。

 同研究チームでは、"直接観測"により数多くの惑星候補天体を発見することで、「太陽系に似た惑星系は普遍的かどうか」を解明することにつながるとしているほか、惑星の誕生現場である原始惑星系円盤から惑星が誕生する過程も解明することができると期待している。なお、同プロジェクトは、日米独英の多国間国際協力により進められている。

遠方宇宙研究、世界をリード…すばる望遠鏡10年

2009年09月07日 読売新聞 Yomiuri On-Line

レーザー光を照射する「すばる望遠鏡」=左端=(2009年6月、布施哲治・国立天文台ハワイ観測所研究員撮影)

 ハワイ・マウナケア山頂(標高4205メートル)に建設された国立天文台の「すばる望遠鏡」が、星の光を初めてとらえた1999年の「ファーストライト」から、10年がすぎた。

 宇宙の謎に迫るいくつかの発見を成し遂げ、観測装置の高度化を進めるスーパー・テレスコープは、次の10年で、何を探ろうとしているのか。

 すばる望遠鏡は口径8・2メートルの一枚鏡を持つ反射式光学望遠鏡だ。恒星や銀河など可視光領域の天体と、より波長が長く、肉眼で見えない赤外線を放つ天体を観測する。

 宇宙から飛来する強力なガンマ線(ガンマ線バースト)の正体が、ある種の超新星爆発だと明らかにしたり、惑星の元となるガスとちりの円盤の構造を明らかにしたりと、多くの成果を収めてきた。

 最も広く知られた実績は、3年前に発表した最遠の銀河「IOK―1」の発見。128億8000万光年離れたこの銀河は、宇宙誕生(約137億年前)の約8億年後という太古の姿を見せている。

 すばる望遠鏡は、ほかにも128億光年以上離れた銀河を数多く発見、観測された遠方銀河の上位10傑を独占している。128億年前の宇宙は、水素分子の雲などに覆われた「暗黒時代」が終わる直前だったと考えられており、柏川(かしかわ)伸成・同天文台准教授は「暗黒時代の秘密を解く手がかりを得られた」と話す。

 遠方銀河探索でトップを走るのはなぜか。最大の貢献をしているのが、満月1個分の広さを一度に撮影できる主焦点カメラだ。反射鏡の上約15メートルに据えた巨大デジタルカメラで、ハッブル宇宙望遠鏡だと100晩かかる範囲を一夜で撮ることができる。ほかの8〜10メートル級望遠鏡には、これほど高い位置に大きな装置を取り付ける構造がない。

 IOK―1の発見は、4万1533個の天体を写した1枚の画像から始まった。候補を絞り、特殊な装置を使って距離を調べた。結局、この画像にあった128億光年以遠の銀河はIOK―1のほかに一つだけ。視野の狭い望遠鏡だと、発見は困難だった。

 観測機器も更新中。2006年に大気で天体の光がぼやけるのを補正する装置のセンサーを増やし、解像度を10倍にした。レーザー光を大気に照射し、光のゆらぎの補正を助ける装置も来夏稼働する。

 反射鏡の性能を最大限に引き出し、視野をさらに10倍に広げる新たな主焦点カメラも、12年に設置される予定。家(いえ)正則・同天文台教授は「遠方宇宙の研究で世界をリードしたい」と意気込み、129億光年先の銀河の発見に挑む。

 太陽系外惑星の研究に向けて導入された新装置は、恒星の光を隠し、周囲の惑星を検出、撮影する機能を持つ。

 太陽系外惑星は約350個が確認されたが、惑星の重力による中心星のふらつきで確かめた例がほとんど。直接撮影した例は少ない。今後5年間に惑星のありそうな500の恒星を調べる予定で、田村元秀・同天文台准教授は「5個〜数十個の惑星を撮影できるのでは」と期待する。(滝田恭子)

 広視野観測に重点…観山正見・国立天文台長

 すばる望遠鏡のおかげで、日本の研究者は、遠く古い宇宙、宇宙を加速膨張させるダークエネルギー、太陽系外惑星といった現代天文学の主流となるテーマに取り組めるようになった。

 対象とする波長域が異なる電波望遠鏡やエックス線衛星の研究にも刺激を与えた。いろいろな波長のデータがそろうと、観測する天体を選ぶのに役立つからだ。

 望遠鏡は建設したら終わりでなく、研究目的に合わせて付設の観測装置を開発する。開発には大学生や院生も参加しており、人材育成にも貢献している。

 8〜10メートル級望遠鏡は、世界に10台以上ある。国際分業の流れの中、すばる望遠鏡は広視野が求められる観測に重点を置くことになるだろう。マウナケア山頂に30メートル級望遠鏡を国際協力で建設する構想がある。参加の可能性を検討しつつ、すばる望遠鏡と連携させたい。

すばる望遠鏡、128億光年彼方に巨大ブラックホールを中心とした銀河を発見

2009/09/04 マイコミジャ−ナル

 米ハワイ大学の後藤友嗣研究員を中心とした日本人研究チームは、国立天文台のすばる望遠鏡(米ハワイ島)を用いて地球から128億光年先にある超巨大ブラックホール「CFHQSJ 2329-0301」の周囲に、これを取り巻く巨大銀河(ホスト銀河)が存在することを突き止めた。

 発見された銀河の大きさは地球の属する天の川銀河と同程度(7万2,000光年)ながら、その中心には太陽の10億倍の質量を有する巨大ブラックホールが存在する。

 通常のブラックホールは星が死ぬときに発生するが、そうして発生するものは小型のもので、今回のような巨大ブラックホールの起源はまだ明らかにされていない。現在の有力な理論では、いくつかの中間質量ブラックホールが合体することで、巨大ブラックホールへと成長すると考えられており、今回発見されたホスト銀河は、中間質量ブラックホールが存在する場所であると考えられる。

 また、巨大ブラックホールでは、周囲の物質をその巨大な重力により飲み込みながら成長を続けるため、その過程において、ガスなどの物質が重力エネルギー(位置エネルギー)を失い、高速運動を行うようになり、ガスどうしの衝突、摩擦などの結果、超高温となったガスから紫外線から可視光線にかけた光が放射されることとなり、明るく輝くため、周囲の光を発しない暗いホスト銀河を発見、研究することが難しかった。

 今回は、同ブラックホールの周辺観測のために、すばるの焦点カメラに高感度CCDが取り付けられ(z'(λe=911nm)バンド帯で1.3倍、zγ(λe=988nm)バンド帯で1.9倍の改善)、全体の光からブラックホールからの光を差し引くことで、ホスト銀河の存在を確認した。

 カラーによる解析により、9100Å付近の光は、40%がホスト銀河からであり、60%がホストを取り巻く電離ガス雲からであることも判明した。このガス雲は、巨大ブラックホールにより電離されたものと考えられるという。

 後藤氏は、「宇宙の年齢がわずか現在の1/16だった時代に巨大銀河が存在し、太陽の10億倍の質量の巨大ブラックホールを持っていたことは驚くべき事実。巨大銀河とブラックホールは宇宙初期に急激に進化したに違いない」と話しており、巨大ブラックホールを詳しく調査することで、長年の課題でありブラックホール-銀河共進化の理解が進み、宇宙初期における巨大ブラックホールとホスト銀河の進化解明の糸口になるとする

115億光年の彼方に"モンスター銀河"の集団 - 国立天文台らが発見

2009/05/08 マイコミジャ−ナル

 国立天文台の田村陽一氏と東京大学の河野孝太郎氏らが率いる日米メキシコ国際共同研究チームは、地球から約115億光年彼方に、恒星の材料(ガスや塵)に深く埋もれた爆発的な星形成活動を通して成長し、やがて非常に重い巨大銀河へと進化する銀河種族であると考えられている「モンスター銀河」が群れ集まっている様子を捉えることに成功したことを明らかにした。

 モンスター銀河は地球がある銀河系(天の川銀河)の1000倍に迫る勢いで星を形成しており、これまでも単独での発見はあるが、30個のモンスター銀河を1つの領域で発見したのは初めてという。

 発見された場所は、みずがめ座の方向に位置する原始銀河団領域「SSA22」で、すばる望遠鏡などの観測によりライマンアルファ輝線銀河と呼ばれる若く小さい銀河が密集し、原始銀河団を形成していることが知られていた。

 今回、研究チームはチリ北部、標高4800mのアタカマ高地に設置されたサブミリ波電波望遠鏡を用いて観測するプロジェクト「ASTE(Atacama Submillimeter Telescope Experiment:アタカマサブミリ波望遠鏡実験)」の新しいミリ波カメラ「アステック」を活用。これにより、0.1平方度を超す広域画像を取得することに成功し、ライマンアルファ輝線銀河の過密地帯が存在する場所にモンスター銀河群を発見したという。

 銀河の密度が高いということは、暗黒物質の密度も高いことを意味しており、現代の銀河形成理論では、暗黒物質の密度が高いところで巨大銀河が誕生することが予想されている。そのため、同研究結果は、この銀河形成の理論予想に一致していることになる。

 なお、研究チームは他の天域に対しても大規模な観測を同様に行っており、こうした観測結果を基に、爆発的星形成を行うこれらモンスター銀河が普遍的に銀河の過密地帯に分布しているのか、どの程度の時代からモンスター銀河が誕生しており、どのようにして現在の大質量銀河へと進化するのか、などを明らかにしたいとしている。

計り知れない古代宇宙の神秘 - 129億光年の彼方の巨大ガス雲「ヒミコ」

2009/04/23 マイコミジャ−ナル

 現在、最遠銀河であるIOK-1は地球からおよそ129億光年の彼方に存在していることが知られているが、これとほぼ同等となる129億光年の彼方にある巨大なガス雲(天体)を日米英の国際研究チームにより「ヒミコ」と名付けられたことが明らかになった。ヒミコの存在は国立天文台のすばる望遠鏡などの観測データから判明した。

 ヒミコの名前は、邪馬台国の女王である卑弥呼に由来する。ヒミコも卑弥呼も多くの謎が存在しており、正体が未だはっきりとしていない点が共通することから名付けられたという。

 ヒミコの大きさは5万5,000光年で、この大きさは天の川銀河の円盤の半径に匹敵するという。

 合同研究チームを率いたカーネギー研究所の特別研究員である大内正己氏は、「宇宙の歴史の最初の段階に、これほど大きな天体があったとは想像していなかった。ビッグバンの約8億年後、つまり現在の宇宙年齢のわずか6%の時代に、ヒミコは現在の平均的な銀河と同じくらいの大きさになっていた」と語る。

 研究チームは、くじら座の「すばるXMMニュートンディープフィールド」にあるすばる望遠鏡の可視画像から207個の遠方銀河候補を選出、その内の1つがヒミコだったが、遠方銀河候補の中にありながらも、ヒミコの明るさと大きさは他を圧倒しており、大内氏は「遠方銀河にしてはどう見てもおかしかった。たぶん、測定エラーのためにサンプルに紛れ込んだ手前の銀河だろうと思ったが、万一これが本物の遠方天体だったら、と思い留まり分光観測を行った。結果、得られたスペクトルには非常に遠い天体にしか見られない水素輝線があり、これによりヒミコが並外れて遠い距離にあることが判明した」とその発見の経緯を語る。

 このほか、スピッツァー宇宙望遠鏡と英国赤外線望遠鏡から得られた赤外線データに加え、超大型干渉電波望遠鏡群による電波データ、XMMニュートン衛星のX線データを使用し、ヒミコの星形成率と星質量を算出したほか、超大質量ブラックホールによる活動銀河核が含まれているかどうかの調査も行われた。

 結果としては、同時代に見つかっている他の銀河と比べると、星質量は一桁大きいことが判明。ただし、ヒミコの中心部に活動的で成長を続けるブラックホールがあるかどうかまでは判別できなかったという。

 なお、研究チームでは、ヒミコは非常に例外的な天体としている。現在のところ、この種の天体はヒミコが唯一の存在となるため、銀河形成の一般的モデルで説明するのは非常に難しいためである。ただし、その一方で、この事が研究者にとって新たな可能性を導き出す可能性が出てきたとしている。

若い恒星周囲の円盤表面に氷を発見 - すばる望遠鏡のコロナグラフが確認

2009/02/19 マイコミジャ−ナル

 国立天文台などの研究者チームは、すばる望遠鏡に搭載された補償光学つきコロナグラフ撮像装置 (CIAO) により、太陽系から650光年離れたおおかみ座の「HD142527」と呼ばれる若い恒星の周囲にあるガスと塵の円盤(原始惑星系円盤)の表面に、固体の水である氷が存在していることを直感的に確認したことを明らかにした。

 これまで、300個以上の太陽系外の惑星が発見されているが、地球同様、表面に海を持つ惑星は発見されてこなかった。その一方で、原始惑星系円盤とその周辺の領域には、氷が存在する兆候が見つかっていた。

 ただし、氷が円盤にあるのか円盤を取り巻く構造 (エンベロープ) にあるのかは良く分かっておらず、今回、中心にある恒星から発せられた光が円盤の表面で散乱されて生じる散乱光に刻まれた光の兆候を調べることで、氷の存在の確認を行った。

 具体的には、氷の分子が、赤外線の波長3.1μmの光を特に吸収することに着目。円盤表面にある氷が光を散乱する場合、散乱光の内、波長3.1μmの光だけが吸収され、他の波長の散乱光に比べて暗くなることが理論的に予想される。また、その一方で、氷を含まない塵による散乱光は、そのような吸収は起きないため、それを比較することで、円盤表面に氷があるかどうかの見分けが付くようになるという。

 HD142527の質量は太陽の2倍弱程度、年齢は約200万年程度と推定されている。今回、波長3.1μmと3.8μmでの同恒星周囲の円盤の画像を取得。各散乱光の強さを、以前の観測で確認していた波長2μm当たりの散乱光の強さと比較し、波長3.1μmの散乱光のみが暗くなっていることを確認した。これにより、円盤表面に氷が存在することが確認されたという。

 今回、氷が発見された場所は、中心の恒星から100AU(地球-太陽間の距離が1AU)以上離れた場所で、実際に惑星が生まれるのは、中心の恒星にもっと近いところと考えられていることから、今回の氷は、惑星の材料よりも彗星の材料となる可能性が高いとしている。

 なお、恒星に近い部分については、今回撮影された画像からは、恒星の光の影響のため、様子が良く分かっていないという。理論的には、恒星からの光に加熱されてしまうことから、氷が蒸発してしまうことが考えられている。氷が存在できる境界線を「スノーライン(雪線)」と呼ぶが、その位置が、惑星の誕生する様子や、どのように惑星に水をもたらすのかに影響を及ぼすと考えられており、今後の観測では、同ラインの位置の特定を目指すとしている。


ちりも積もれば重い星…証拠となる「円盤」を発見

2005年09月05日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 星のもとになるガスやちりでできた円盤を、国立天文台と中国、英国の研究チームが、米ハワイ島のすばる望遠鏡を使い、太陽の7倍もの質量がある星の周囲で発見した。

 太陽質量の3倍以下の軽い星は、周囲の円盤からガスやちりが降着して誕生することが従来知られていたが、重い星は軽い星が合体してできるのか、円盤からの降着で誕生するのか、論争があった。今回の発見は円盤説を裏付ける世界初の観測証拠になり、英科学誌ネイチャー最新号で発表した。

 研究チームは2003年1月、オリオン大星雲の方角にあり、地球から1500万光年離れた「BN天体」を赤外線カメラで観測。その結果、誕生から数万年〜数十万年の若い星の周囲に、太陽と地球の距離の約200倍の半径の円盤が存在することがわかった。

 国立天文台の田村元秀・助教授は「軽い星の合体では円盤構造はできない。太陽の7倍の重さの星にも、ガスとちりがその重みで収縮して星を形成、周囲に星の回転の影響で円盤ができる仕組みがあることがわかった。もっと重い星にも同じメカニズムがあるのか今後調べる」と話している。

「すばる望遠鏡」でハワイ大、土星の12衛星を発見

2005/05/07 読売新聞 Yomiuri On-Line

 日本のすばる望遠鏡で土星の衛星を新たに12個発見したと、米ハワイ大の研究チームが発表した。

 土星の衛星は、米航空宇宙局(NASA)の探査機カッシーニが昨年発見した2個を含め、これまで34個が見つかっている。今回の発見で計46個になり、太陽系最多の61衛星を持つ木星に迫ってきた。

 研究チームは昨年12月、米ハワイ島マウナケア山頂にあるすばる望遠鏡で土星の周辺を撮影。今年3月まで同山頂のほかの2望遠鏡でも確認した。

 衛星は直径3〜7キロで、土星から1700万〜2200万キロ離れている。直径5150キロ、土星からの距離120万キロの土星最大の衛星タイタンに比べ、極めて小さく、遠い。

 12個のうち11個は土星の自転方向とは逆に回っている。このような“逆行衛星”はかつては「フェーベ」1個だけだったが、2000年に12個、2001年に1個が見つかった。今回の発見と合わせ、計25個が確認されたことから、研究チームは「逆行衛星の起源が分かるのではないか」としている。

恒星とペアの褐色矮星を発見 地球から460光年

2005/02/25 The Sankei Shimbun

 地球から約460光年離れた恒星のそばに、星になり損ねた「褐色矮星(わいせい)」と呼ばれる天体があるのを国立天文台と東京大、神戸大の共同チームがハワイにある同天文台のすばる望遠鏡で発見し、25日発表した。

 褐色矮星はおうし座にある「DH」という恒星の周りを約6000年かけて1周するとみられる。重さは木星の40倍で太陽の4%。約100万年前、重さが太陽の67%あるDH星とともに生まれた双子の星で、2つの星は地球から太陽までの距離の330倍離れている。これほど若い恒星を回る褐色矮星は珍しいという。

 重さが太陽の約8%あると中心で水素の核融合が起き、普通の星になる。褐色矮星はそこまで重くないため水素の核融合は起きず、赤外線を放つだけの暗い天体。恒星のそばにあると、その輝きにかき消されて見えにくかった。

 チームは若い星のそばにある生まれたばかりの惑星を探索するため、コロナグラフという装置でDH星を隠して観測するうちに偶然、褐色矮星の存在を突き止めた。(共同)

超新星発見、14個目 日本タイ記録、板垣さん

2005/02/08 The Sankei Shimbun

 国立天文台は8日、山形市のアマチュア天文家、板垣公一さん(57)=自営業=が6日に、くじら座の渦巻銀河NGC941の中に超新星を発見したと発表した。

 板垣さんが見つけた超新星は14個となり、山梨県にある八ケ岳南麓天文台のアマチュア天文家串田麗樹さんの日本記録と並んだ。海外には30個以上発見している人もいる。

 板垣さんは1999年から超新星探しを始めた。今回は、冬に晴れる日が少ない山形市を離れ、栃木県高根沢町で観測したのが功を奏した。「次は地球から数百万光年程度の、近い場所で発見したい」と話している。

 板垣さんは同じ6日に、りょうけん座で別の超新星を発見、既に認定されている。アマチュア天文家でつくる日本変光星観測者連盟によると、日本人が同じ日に2つの超新星を発見するのは約8年ぶり、3人目という。

 今回の超新星は16・6等級で数億光年の距離にあり、国際天文学連合から「超新星2005ad」として認定された。超新星は恒星が一生の最後に爆発し明るく輝く現象。(共同)

127億年以上前に形成、最古の「銀河団」を発見

2005/02/17 読売新聞 Yomiuri On-Line

 137億年前の宇宙誕生から10億年後までの間に形成された銀河の集合体である最古の「銀河団」を東京大、国立天文台などの研究チームが米ハワイ州にあるすばる望遠鏡で発見、17日発表した。

 これまでの観測記録を5億年さかのぼる。宇宙最大の天体である銀河団が、宇宙開びゃく後早い時期から存在していたことを示す成果という。

 研究チームは2002年から03年にかけて南天のくじら座の方角を観測し、銀河が発する光の波長のずれをもとに地球からの距離を測定した。その結果、127億光年離れた位置に、6個の銀河が差し渡し300万光年の範囲に固まって存在することを確認した。天体は遠くにあるほど古く、127億年以上前にできた銀河団ということになる。

 この最古の銀河団は、ふつうの銀河団より銀河の数が少なく、全体の質量も100分の1以下だが、一帯では星が活発に誕生しているとみられる。

 銀河団は、離れている銀河同士が重力で引き合って作られていくという考えが主流だった。だが、研究チームの代表者である米宇宙望遠鏡科学研究所の大内正己研究員は、今回の発見を元に「特定の領域で銀河がかたまって誕生したため、初期の銀河団ができた」と推定、従来の理論の修正につながると話している。

 ◆銀河団=直径約1000万光年の範囲に数十個から数百個の銀河が集まったもの。太陽の1000兆倍もの質量があり、宇宙で最も大きい天体。地球に最も近いのは、約5000万光年離れたところにある「おとめ座銀河団」だ。

死にゆく星、雲を輝かす すばる望遠鏡が撮影

2004/12/17 The Sankei Shimbun
 一生を終えようとする星の周りに放出されたガスやちりの雲が、星の輝きに照らし出される様子を、ハワイにある国立天文台のすばる望遠鏡が赤外線でとらえ、17日までに画像が公開された。放出の過程は約900年前に始まったとみられる。

 天体ははくちょう座の方向、地球から約5000光年の、こと座環状星雲の一つ。中心温度は約4万2000度で、太陽の5万倍の明るさで輝いている。

 大きな天体は死ぬ際に超新星爆発を起こすが、この天体は太陽程度と小さいため、寿命が尽きる際には周囲に放出したガスやちりの“殻”ができる。現在の殻の大きさは太陽系の100倍ほどという。

 同天文台は同様の天体を多く観測することで、このような現象がなぜ起こるのか、メカニズムの解明を進めている。(共同)

ハワイのすばる望遠鏡、見学会人気で観測活動PR効果

2004/12/03 読売新聞 Yomiuri On-Line
 ハワイ島マウナケア山(4205メートル)の山頂部に設置されている国立天文台の「すばる望遠鏡」で、今年10月に始まった見学会が人気を呼んでいる。

 日本人以外の来訪が大半で、日本の観測活動を国際的にPRする効果も上がっているようだ。

 ただ、4000メートルを超える地点だけに怖いのが高山病。積極的な広報活動が研究機関にも求められている時代だが、「事故が心配」という声も漏れる。

 本格的な見学会は、マウナケア山頂部で天空を見つめる11か国・13の観測施設の中で初の試み。世界最大級の口径8・2メートルの主鏡をもつ望遠鏡本体を3階の通路から見下ろせるというのが最大の売りものだ。

 「すばる」という名称に、訪れた米国人見学者からは「運営費は自動車会社が出しているのか?」といった珍問が飛び出し、職員が「日本車の『スバル』と同じ名前だけど、作ったのは日本政府」と説明することもある。

 気圧は低地の約60%。館内の随所に酸素ボンベが置かれ、慣れた職員ですら時々、気分が悪くなって酸素吸入が必要だ。それだけに、見学者は、1か月以上前から申し込みが必要で保険加入等も求められているが、この2か月間で17日間あった公開日に詰めかけた見学者は計185人。今のところ無事故が続いている。

 天文台では「ふもとの医療機関までは1時間半以上かかる。体調が悪ければあきらめる勇気を持って欲しい」と、現地で呼びかけているという。

小惑星に「西公園」 仙台市が命名へ

2004/11/24 The Sankei Shimbun

 仙台市は24日までに、同市天文台が発見した小惑星を「Nishi−koen(西公園)」と命名することを国際天文学連合に申請した。同市の西公園にある天文台が来年2月に50周年を迎えるのを記念したもので、来年1月に正式承認される見込み。

 小惑星は番号10500で、市天文台の観測所が1987年に発見。直径約10キロで、木星と火星の間の軌道を約4.4年で公転している。

 市天文台は老朽化などを理由に2008年に移転される予定。市は「市天文台発祥の地である西公園を星の名として長く残すことにした」としている。同市はこれまでも、発見した小惑星を「伊達政宗」「(支倉)常長」などと命名している。

すばる望遠鏡:128億光年先の最も遠い銀河を発見

2003年11月05日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE

 国立天文台などの研究グループは、ハワイ・マウナケア山頂にある同天文台の「すばる望遠鏡」を使い、これまで観測された中で最も遠い、約128億4000万光年のかなたにある銀河を発見した。今年3月に同望遠鏡が最遠方記録を更新したが、今回はこれを約360万光年上回った。

 研究グループは、遠方銀河専用の特殊フィルターを望遠鏡に取り付け、今年4月から、かみのけ座方向を観測した。その結果、最遠方の銀河を含め、計7個の遠方銀河を見つけた。今年3月に発表した2個の遠方銀河と合わせると、世界で見つかった遠方銀河上位10位のうち、5位以外はすべてすばる望遠鏡が占めることになるという。

 宇宙誕生の「ビッグバン」は約137億年前にあったとの説が有力で、今回見つかった銀河は、宇宙誕生から約9億年後の姿が観測されたことになる。研究グループの柏川伸成・同天文台助手(銀河物理学)は「遠方銀河は宇宙初期の様子を探る手がかりになる」と話している。【河内敏康】

太陽望遠鏡:京都大の飛騨天文台に完成

2003年10月10日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 京都大の飛騨天文台(岐阜県上宝村)に、太陽観測用の最新型望遠鏡「太陽磁場活動望遠鏡(SMART)」が完成し、15日に現地で記念式典がある。世界最高水準の画像分解能力を持ち、太陽全体の姿を一度にCCD(電荷結合素子)カメラでとらえることできる。総工費は約5億円。太陽表面の爆発現象で、無線通信の障害などをもたらす「太陽フレア」の解明などに役立つと期待される。

 高さ16メートルの鉄塔上に計4本の望遠鏡(口径25〜20センチ)を設置。爆発を起こす磁場の変化や爆発光をとらえることが出来るという。

 太陽フレアは、黒点部分に蓄積した磁場エネルギーが一気に放出される爆発現象。オーロラの原因として知られるが、発生の仕組みは謎。【野上哲】

すばる望遠鏡が火星を観測 白い南極冠くっきり

2003年08月25日 The Sankei Shimbun
 約6万年ぶりに地球に超大接近中の火星を、ハワイ島マウナケア山頂にある国立天文台のすばる望遠鏡が観測、25日画像を公開した。

 ドライアイスでできた白い南極冠や北極の青みがかった極雲の姿をくっきりとらえている。

 同天文台によると、観測したのは、23日午前1時50分(日本時間同日午後8時50分)で、天候は晴れ。

 画像の上側にあるのが南極冠。火星が真夏に近づいているため溶けて小さくなっている様子が分かる。下側の北極にある青みがかかった極雲をとらえているほか、左側の縁には、山岳地方に夕方現れる雲が、円形状に写っている。

 火星は日本時間の27日午後6時51分、地球に最接近する。

ハワイのすばる望遠鏡、超新星を一度に18個も発見

2003/05/29 asahi.co
 すばる望遠鏡が1枚の画像で発見した12個の超新星。写真内の数字は、超新星につけられた識別番号。この画像の範囲は、満月がほぼすっぽりと入る大きさに相当する=田中壱+SXDSチーム提供

 ハワイにある国立天文台のすばる望遠鏡が、数十億光年先にある超新星18個を発見した。土居守・東京大助教授(観測的宇宙論)らのグループが29日に発表した。宇宙が膨張する様子の分析に適した距離にあり、これらの超新星を今後、何度か観測すれば、「宇宙が加速膨張しているか」という宇宙の運命をめぐる議論が決着できると期待されている。

 超新星は、星が最後に起こす大爆発。今回の18個は、いずれも南天のくじら座の周辺で昨年11月にみつけた。推定距離は40億〜70億光年。うち12個は1枚の画像に写っていた。口径8メートル級の大望遠鏡のなかでも最大の視野を生かした形で、これほど多数の超新星を一度に発見したのは世界で初めてという。

 膨張を続ける宇宙の将来は、膨張の仕方で決まる。その速度が減速している場合、膨張が止まって収縮に転じ、やがて宇宙がつぶれてしまう可能性もある。宇宙年齢を137億歳とした米航空宇宙局(NASA)の今年2月の発表は加速説を支持したが、試算は間接的な推計にとどまっていた。

 膨張速度の変化をより直接的に求めるには、数十億光年以上遠方で、距離も明確な超新星の明るさの変化を調べればいい。しかし、こうした超新星は暗くて観測が難しく、これまで数個しか見つかっていなかった。

 今回の超新星を今後、何度か観測することで、宇宙が現在の半分の大きさだったころの膨張の様子をみることができるとみられる。

 土居助教授は「同じ超新星を今秋以降にも観測する予定で、それによって宇宙の膨張について明確な結論が得られるだろう」と話している。

128億光年、最も遠い銀河発見 すばる望遠鏡

2003年03月20日 asahi.com
 国立天文台は20日、ハワイに設置している望遠鏡すばるが、これまでで最も遠い銀河を発見したと発表した。地球からの距離は128億2760万光年。米国の望遠鏡が持っていた記録を300万光年上回った。

 かみのけ座の中の満月ほどの広さの領域を集中観測。128億光年を超える銀河2つを発見したうちの一つ。大きさは、地球がある銀河の3分の1程度とみられる。

 遠方からの光が地球に届くには時間がかかるので、この銀河は、現在137億歳の宇宙が、まだ9億歳だったころの姿を見せていることになる。

 「すばる深宇宙計画」の成果で、代表者の小平桂一・総合研究大学院大学長は「宇宙の果てまで見通して私たちの起源を探るのに、すばるが大きく貢献できることがはっきりした」と話した。

125億年前、宇宙には既に銀河の群れ

2003年03月14日 The Sankei Shimbun
 125億年前の宇宙が既に現在の宇宙と同様に、銀河が群れをなして分布する構造であったことを、岡村定矩東京大教授らの研究チームがハワイのすばる望遠鏡で確認、14日発表した。これは、生まれてから約12億年の若い宇宙の姿で、宇宙や銀河の形成の解明につながるという。

 研究チームは一昨年から昨年にかけて、すばる望遠鏡でかみのけ座付近を撮影。地球から125億光年離れた銀河43個を発見した。光は125億年かけて届いているため、それだけ昔を観測したことになる。

 銀河は長さ1・8億光年、幅0・6億光年の帯状に集まり、それ以外の領域には分布していなかった。

 現在の銀河も一様に分布しているのではなく、差し渡しが1億光年以上の、泡のような群れを形成しており「泡構造」などと呼ばれる。

 研究チームの島作一大・同大助手は「泡構造は徐々にではなく、宇宙が始まってすぐの段階に一気にできたのだろう。正体不明の宇宙の暗黒物質の分布を考えるのにも役立つ成果だ」と話している。

<宇宙>最も遠く古い153億年前の銀河発見 ハワイ大学チーム

2002年05月11日(毎日新聞)YAHOO!ニュース
 宇宙誕生から間もない153億年前の銀河を、米ハワイのすばる望遠鏡とケック望遠鏡を使って、ハワイ大学の研究チームが発見した。これまで確認された中では最も遠く古い銀河だという。宇宙は百数十億年前のビッグバンで誕生し、ガスの霧に覆われていた暗黒時代を経て星が次々と生まれたとされる。研究チームは「この銀河は、暗黒時代の終わりを告げる光だ」としている。

 ハワイ大のエスター・フー教授らは、生まれつつある星だけが放つ、限られた波長の光線に注目。特殊なフィルターを使い、米国のケック望遠鏡で観測する中で、地球から60億光年の位置にある銀河団「Abell370」の背後に、この銀河を見つけた。

 遠くからの光ほど、宇宙の膨張によって波長が引き伸ばされるため、その伸び具合から距離を計算した。その結果、宇宙の誕生を約160億年前とすると、この銀河は153億光年先にあると推定された。宇宙誕生から約7億年後に既に存在したと考えられ、これまで観測された最も古い銀河より約5000万年古いという。

 チームはさらにすばる望遠鏡を使い、銀河を赤外線で詳しく調べた。銀河では星の生成活動が盛んで、太陽40個分もの星たちが毎年誕生していたことが分かった。

 研究に参加した本原顕太郎・東大大学院理学系研究科助手は「宇宙誕生後の早い時期から、これほど活発に星を生み出す銀河があったことは驚きだ。現在の観測技術ではぎりぎりの成果だが、ほかにも見つけられれば、宇宙の起源にもっと迫れる」と話している。(元村有希子)

褐色矮星の連星を観測 すばる望遠鏡

(2002/01/17) 河北新報
 これまで地上から判別が難しかった極めて近距離にある2つの暗い褐色矮(わい)星からなる連星を、ハワイにある国立天文台のすばる望遠鏡が、大気の揺らぎを打ち消す装置を使って観測することに成功し、17日、ホームページで観測結果を公開した。

 褐色矮星の連星と確認されたのは、地球から約58光年離れたHD130948Aという明るい恒星から、地球から見た角度にして約1万分の7度離れた同Bと同C。この2つの星同士は10万分の4度以下しか離れていないため、従来の地上の望遠鏡では詳しい観測は困難だった。

すばる望遠鏡、宇宙を見通す

宇宙の果てまでの銀河光の90%を個々の銀河としてとらえる2001年04月30日 byすばる望遠鏡プレスリリース
 ハワイ・マウナケア山頂に設置された日本が誇る口径8.2メートル「すばる望遠鏡」。そのファーストライト (初観測) の直後に撮影された「すばるディープフィールド」のデータを、国立天文台、東大、京大の合同チームが解析した結果、この画像には宇宙の果てまでに存在している銀河起源の近赤外光の90%以上が、個々の銀河として写っていることが判明した。これはハッブル宇宙望遠鏡 (HST) で撮影された「ハッブル・ディープフィールド」の結果を凌ぐもので、「すばるディープフィールド」が宇宙を最も奥深くまで見通した画像であることを示しており、銀河からの光についていえば、すばるはまさに「宇宙をほとんど見通した」といえる。 (全文

星のゆりかご、大型望遠鏡「すばる」がとらえた (2001.02.13) asahi.com

海外設置の国内大学望遠鏡、運営費は寄付頼み (2000.12.09) asahi.com

リニアすい星の「頭」、大型望遠鏡すばるがとらえた (2000.07.26) asahi.com

「すばる」故障の原因は「2000年対策」にあり (2000.06.25) asahi.com

すばる望遠鏡が一部破損 共同観測2カ月延期へ

2000年5月12日 (共同)信濃毎日新聞
 国立天文台がハワイ・マウナケア山頂直下に建設した世界最大級の天体望遠鏡「すばる」の直径八・二メートルの主鏡を支える支持装置が今春、破損し観測が約二カ月間できなくなっていたことが十二日、分かった。

 当面は一部の修理で観測は可能だが、今年十月に予定していた各国の天文学者との共同観測は早くとも年末まで延期し、いったん主鏡を外して本格的に修理する。天文台では修理後はすばるが誇る観測機能を発揮できるとしている。

 すばるは厚さ三十センチという、直径に比べると異例に薄い主鏡の鏡面を、裏側から支持装置三本と駆動装置二百六十一本で精密に制御するのが最大の特長。

 同天文台によると、昨年九月に三本の支持装置のうち一本が外れたため、補修。しかし、今年三月には別の一本が今度は主鏡のガラスを厚さ二―三ミリはぎ取る形で外れた。

 原因は支持装置と主鏡のガラスの接着不良に加えて、本来ならば異常な力が加わったときに働くはずの安全装置が解除されていたことで、支持部分に想定の十二倍の力がかかったためだという。

 今年十月からの共同観測では初めて天文台以外の研究グループがすばるを使った観測を実施する予定だった。

大型望遠鏡「すばる」、銀河が噴き出すガスをとらえた(March 26, 2000)asahi.com

 すばる望遠鏡プロジェクトとは、ハワイのマウナケア頂上に建設中の口径8.3メートルの光学・ 赤外線一枚反射鏡を備えた望遠鏡のことです。もともと「大型光学赤外線望遠鏡計画」と呼ば れていました。すばる計画は、観測装置の開発や、データー処理や運用のための施設等も含ん でいます。1980年代の始めから国立天文台(NAO)は、日本の天文研究者との協力のもと立 案・推進してきました。開始から8年が経過したすばる望遠鏡は、1999年の始めにすばるプロジェクトのファースト ライトを迎えます。

 マウナケア山頂一帯は、ハワイ大学がホストとなって世界各国の大型望遠鏡を受け入れている 科学保護地区です。国立天文台とハワイ大学との間には”運用及び用地開発協定”が結ばれ、 協力開発の基本が定めてあります。山頂には、アメリカ、イギリス、フランス、カナダ、オランダなどが参加する大望遠鏡が立ち並んでいます。 マウナケアは、天文学最大の国際センター として急速に発展しています。

すばる望遠鏡の映像見た ハワイと日本で遠隔授業

1999.02.22 Kyoto Shimbun
 世界最大級の光学赤外線望遠鏡を持つ国立天文台ハワイ観測所と、日本の学校約一千校をテレビ会議システムなどで結んだ遠隔授業「すばる天文教室」が十九日、行われた。府内では、京都市上京区の二条城北小の児童が対話に参加、主鏡が大きい長所などについて調べたことを発表したり、質問をした。

 国立天文台(東京)は、ハワイのマウナケア山(四、二〇五メートル)山頂付近に日本待望の超大型望遠鏡「すばる」(直径八・二メートル)を据え付けて先月下旬に初観測に成功、百四十億光年かなたまでの画像を映し出した。二〇〇〇年四月から本格観測をする予定だ。

 この日は午後三時から四時までの一時間、ふもとのハワイ観測所にいる海部宣男所長が、「すばる」の特徴や宇宙を解明する期待について、撮影した天体の映像をまじえて話した。

 二条城北小では、科学クラブとコンピュータークラブの約五十人の児童が参加した。六年の永井洸二君(11)と五年の松尾勉君(11)の二人が、運動場に直径八・二メートルの円を描いて、「すばる」望遠鏡の大きさを確かめたり、主鏡が大きい長所について多くの光を集めて遠くを見られる半面、ゆがみを修正する難しさを発表し、海部所長に見てもらった。

 最後に、海部所長が「約四百年前のガリレオ・ガリレイ以来、望遠鏡は多くの人の努力で発達してきた。みなさんが大人になるころは、惑星に他の生き物を見ることができるかもしれない。宇宙への関心を育ててほしい」と締めくくった。

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