TOPIC No.6−12 量子コンピューター

01.
 量子コンピュータ byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
02.
 量子コンピューターと量子アルゴリズム
03.
 量子コンピューターの開発進む(日経2001/01/19付)
04.
 量子力学がひらく衝撃に満ちた未来(2001年08月14日)goo IT
054.
 量子コンピューターと量子通信 by 玉川大学 学術研究所 量子通信
 研究部門
06.
 量子コンピュータの歴史
07. 新聞記事
08. 量子情報に関するリンク集(日本)

光信号の取り込みを制御 量子コンピューターに前進

2007年09月03日 中国新聞ニュース

 光を閉じ込める働きを持つフォトニック結晶と呼ばれる特殊な物質を使い、光信号を取り込むタイミングを自由に制御することに京都大の野田進教授らのチームが世界で初めて成功し、2日付の英科学誌ネイチャーマテリアルズ(電子版)に発表した。

 この原理を応用すれば、光信号を取り出すタイミングを変えることも可能。野田教授は「光の性質を利用してけた外れの計算を行う量子コンピューターの実現に向け大きな前進だ」としている。

 チームは、結晶内の光の通り道に横から別の種類の光を当てることで、取り込みのタイミングを変化させることに成功。チームはすでに、世界最長となる約1・7ナノ秒間(ナノは10億分の1)の光閉じ込めに成功しており、これらを組み合わせれば、任意のタイミングで光を出し入れすることが可能になる。

 野田教授は「光信号を一定時間保存しておく光メモリーや、量子演算素子の開発につながる」と話している。

超小型化・省電力化が可能な「原子スイッチ」開発

2005/01/06 読売新聞 Yomiuri On-Line

 コンピューターの超小型化、省電力化を可能にする「原子スイッチ」を、物質・材料研究機構と理化学研究所などのグループが開発した。

 この技術を応用して、パソコン並みの高性能携帯電話などの開発も企業と進められており、現在のコンピューターに使われている半導体スイッチにかわるものになる可能性が期待されている。この成果は6日発行の英科学誌「ネイチャー」に掲載される。

 開発した原子スイッチは、硫化銀で覆った銀電極と、白金の電極を使って、簡単に作製できる。室温で電流を流すと、硫化銀の表面に銀原子が現れ、100万分の1ミリ(1ナノ・メートル)離れた白金電極に接触、電流が流れる。逆方向の電流を流すと銀原子は硫化銀の中に戻り、スイッチが切れる仕組みだ。

 コンピューターは、「オン」「オフ」のスイッチを組み合わせた集合体で、スイッチの品質が性能を支配する。原子スイッチを使えば、従来の半導体を使った場合の10分の1以下に小型化でき、消費電力も100万分の1にできる。また、同じ面積で従来の5―10倍の量の情報が記憶ができるという。

 同機構の長谷川剛アソシエートディレクターは「製造が簡単で実用化しやすい。5―10年後には、GPSやテレビ、パソコン機能などを持つ高性能携帯電話などの製品化を目指したい」としている。

「量子コンピューター」へ第一歩 光子で情報を瞬間移動

2004/09/23 asahi.com
 
 情報を瞬間移動させる「量子テレポーテーション」を三つの光子の間で成立させることに、古澤明・東京大助教授らが世界で初めて成功した。現在のコンピューターの限界を超える超高速演算が可能な「量子コンピューター」作りへの突破口となる成果だ。23日付の英科学誌ネイチャーに発表する。

 量子テレポーテーションは、極微の世界で現れる「量子もつれ」という不思議な性質を利用して、光子などが持つ物理的な状態の情報を離れた場所へそっくり瞬時に転送する技術。2者間ではすでに実現しており、原理的に盗聴不可能な暗号への応用が目指されている。実用的な量子コンピューターを作るには多者間での実現が欠かせないとされ、各国で開発競争が激化していた。

 古澤さんらは、量子もつれの関係にある三つの光子を作り、離れた場所でそれぞれの状態を測定し、二つの光子を測定すると残りの光子に正確に情報が伝わることを確かめた。

 古澤さんは「この技術は、次世代の情報処理の中核になる。今後、さらに大きく複雑な回路を作りたい」と話す。

量子コンピューター実用化へ一歩 米IBMなど

2001.12.22 CNN.co.jp
 米IBMとスタンフォード大学のチームは、実用化されれば現在のコンピューターよりはるかに高性能になると考えられている「量子コンピューター」に実際の計算をさせることに成功し、20日発行の英科学誌ネイチャーに発表した。量子コンピューターは、暗号解読などに威力を発揮するとみられている。

チームは、フッ素原子5つと炭素原子2つからなる特別な分子を合成して試験管に入れ、量子コンピューター向けの特別な計算法「ショアの因数分解法」を実行させることを試みた。

その結果、この量子コンピューターは、整数15を「3×5」と正しく素因数分解した。計算の制御は、核磁気共鳴(NMR)と呼ばれる方法で行われた。

IBMのネビル・アマーさんは「当たり前の結果と思われるかもしれませんが、これまでで、最も複雑な量子計算が行うことができたことになります」と話している。

現在よく使われている暗号技術は、非常に大きな数の素因数分解はスーパーコンピューターでも事実上不可能、という性質を利用している。量子コンピューターはこの種の計算が得意で、実用化されれば、暗号技術は根本から見直さなければならなくなる。

量子コンピューターは、原子や原子核にコンピューターのMPU(超小型演算処理装置)やメモリーを役目をさせる。素因数分解などの用途で、極めて高速に計算できることが原理的にわかっているが、制御が難しく雑音に弱いなどの難点があり、実験段階だ。

米IBM、試験管内で量子コンピューター実験に成功

2001年12月20日 ASCU24
 日本アイ・ビー・エム(株)の20日付けの発表によると、米IBM社は現地時間の20日、同社のアルマデン研究所が、7キュービットの量子コンピューターによる計算に成功したと発表した。

 量子コンピューターは、量子論的性質を利用することで、原子や原子核を“量子ビット(キュービット:qubit)”として動作させ、コンピューターのプロセッサーやメモリーとしての機能を実現させるもの。外部環境の影響を受けない状態で、キュービット間を相互作用させると、因数分解など特定の種類の計算速度が従来型コンピューターより指数関数的に速くなる。1994年に米AT&T社の科学者であるピーター・ショア(Peter Shor)氏が開発した因数分解用のアルゴリズム“ショアのアルゴリズム”により、多くの公開鍵暗号システムのセキュリティーを打ち破るほど高速に動作する可能性があるが、実用化には多くの年月が必要であるという。

 このショアのアルゴリズムで意義があるとされる15の因数を求めるためには、7キュービットの量子コンピューターが必要である。IBMでは、5つのフッ素原子と2つの炭素原子から、7つの核スピンを持つ新しい分子を合成し、高周波パルスにより10の18乗(100京)個の分子を試験管内で制御し、ショアのアルゴリズムを実行して、整数15の因子が3と5であることを確認した。このキュービットの内容は一般の核磁気共鳴(NMR)機器と類似した機器で検出できる。

 同研究のチームリーダーでマサチューセッツ工科大学の助教授であるアイザック・ツァン(Isaac Chuang)氏は「この計算を、何千というキュービット数で行なえれば、暗号化の方法に根本的な変更が必要になるだろう。今回の実験で重要だったのは、意図されない量子状態の変化によって発生する信号出力の低下“デコヒーレンス”を予測する方法で、それによるエラーを最小限に抑えられた」と述べた。

 しかし、NMRベースの量子コンピュータにおいて、7キュービットを超える分子を開発して合成するのは非常に困難であるとし、今後の課題はキュービット数を容易に拡張できる新しい物理システムの開発であるという。

HPとMIT、量子情報システムを共同開発

2001-08-09 Mainichi INTERACTIVE
 米ヒューレット・パッカード(HP)と米マサチューセッツ工科大学(MIT)は8日(米国時間)、量子情報システムの構築を目指す共同研究プロジェクトを開始すると発表した。量子コンピューターは現在のコンピューター技術の限界をはるかに超える超小型・超高速のコンピューターに道を拓く技術として世界中の研究者の注目を集めている。  共同研究プロジェクトは、昨年6月にスタートした多方面にわたる共同研究の一環で、4年半の期間と250万ドルの予算をあてる計画。量子情報システムには、量子コンピューター技術と分子エレクトロニクス技術が含まれる。プロジェクトでは、MITが得意とする量子コンピューティング技術と、HPが実績を誇る分子エレクトロニクス技術を活用していく。

 量子コンピューターは、ミクロの世界では物質が「粒子」と「波動」の2つの性格を併せ持つことに着目したもの。現在の半導体コンピューターは、各素子が「0」と「1」の2つの状態を持つことを基本単位として演算を行うが、量子コンピューターは1素子で両方の状態を作り出せる。

 これによって従来必要とされた演算ステップを大幅に減らし、超高速の計算を可能にする。理論的には、現在のスーパーコンピューターで10兆年かかる素因数分解計算を、数10分で行うことも可能という。

米国の科学者が新しいタイプのスパコン実現に一歩前進

By Reuters/日本語版 喜多智栄子 Wed 15 Mar 2000 13:55 PT C NET Japan
 ロンドン発――米国の科学者たちは、人間の目には見えない量子を研究する物理学の1つの部門に注目して、スーパー・コンピューターの開発実現に一歩近づいた。

 「私たちは量子情報科学で言うところの、4キュービット(qbit:quantum-bit)の論理ゲートを実現した。このシステムは、量子情報技術の今後の発展に寄与するだろう」と科学者たちは『ネイチャー』誌に書いている。

 従来のコンピューターは、バイナリの「スイッチ」、つまりビットに基づいており、オンかオフのどちらかに切り換えられる。コンピューターはこれらのスイッチを利用して計算を行なう。

 量子理論では、原子のような存在は計測されるか、何かとの相互作用が働くかしない限り、オンとオフのどちらの状態にも属さないと考えられている。

 相互作用が生じていないときは、原子は同時にこの両方の状態で存在すると米国の国立標準技術研究所(NIST)の研究者、クリストファー・モンローは説明している。

 このため、量子物理学の考え方を取り入れたコンピューターでは、同時にオンとオフの両方の状態で存在するスイッチ、あるいは「キュービット」を持つことができるはずなのだ。

 このような一連のキュービットは、究極的には考え得るすべてのオンとオフの組み合わせを実現し、コンピューターに必要なあらゆる計算を同時に実行することができるはずだ。これによってコンピューターの性能とメモリが飛躍的に向上する。

 しかし何重もの重ね合わせ――からみ合い――を維持するのは困難だ。NISTの研究者たちが4個のキュービットのからみ合いを達成するまでは、システムで2個から3個のキュービットを維持するのがやっとだった、とインスブルック大学のライナー・ブラットは『ネイチャー』誌の記事で述べている。  量子コンピューターを実現するには、もっと数多くの素粒子を「からみ合わせ」なければならなないが、研究者たちは今回発明した技術が、もっと大きな重ね合わせの集合体を作り出すのに応用できると確信している。  「われわれの技術は、もっと大量の原子に規模を拡大することができる。そのレベルに到達すれば、量子構造の最も奇妙な特徴を巨視の世界(裸眼で見ることのできる世界)に近づけることができるだけでなく、量子コンピューターも実現できるかもしれない」とモンローは声明で述べた。  この新たな米国の技術によって、大量の素粒子が「比較的少ない労力で」からみ合うことが可能になり、将来の量子状態技術にとって非常に重要なものになるだろう、とブラットは述べた。

NEC、固体電子素子で量子コンピューターの回路を開発

1999年4月29日 (木) 8時10分 日刊工業新聞
科学技術振興事業団とNECは28日、世界で初めて集積化が可能な固体電子デバイスで飛躍的な計算能力の向上をもたらす量子コンピューターの基本原理動作に成功したと発表した。

これまで量子計算は自然界の分子などを使った原理確認の段階だったが、シリコン基板上にアルミニウム薄膜で作った超電導デバイスで、電子の波の性質を利用し、0と1の両方の状態を持った新たな重ね合わせ状態を作り出し確認した。

4月29日発行の英科学誌「ネイチャー」に掲載された。

試作した基本回路はシリコン基板上に長さ0・7マイクロメートル、幅0・05マイクロメートルの超電導電子対箱を持つ超電導単一電子対トンネル素子を応用した。

アルミの超電導電子対箱には10億個程度の電子対が蓄えられ、ゲート電圧の制御により電子対が1組ずつ電子対箱に出入りする仕組みを作った。

超高速の量子コンピューター実現へ素子を開発

03:19a.m. JST April 29, 1999
 今のスーパーコンピューターで10兆年もかかる暗号解読を1時間でやってのけるとされる量子コンピューターの実現につながる素子を、科学技術振興事業団とNECが開発した。量子コンピューターは、ミクロ世界を支配する量子力学の原理を使って超高速の並列計算をする。そのもとになる素子づくりは世界で研究されているが、今回の成果は、日本企業が得意とする半導体加工技術を生かしたもので、素子を並べて集積回路にすることもできそうだ。これは、29日発行の英科学誌ネイチャーで報告される。

 普通のコンピューターは、情報処理を一つひとつこなしていく。1回にできる計算は1通りだ。

 これに対して、量子コンピューターは、ミクロ世界で、物理状態が重なり合うことがある、という量子力学の原理を基礎に置いている。1つの素子で、2つの状態の重ね合わせをつくって、その両方の状態を計算に使う。このため、もし素子が10個あれば、1回にできる計算が2の10乗(1024)通りまで増える。素子を多くすれば、急激に能力が上がる。

 今回の素子の特徴は、超伝導の回路を使ったことだ。回路の中に電子をため込む領域をつくった。素子を零下約272度に冷やして、瞬間的な電圧を繰り返しかけると、この領域に2個の電子(電子対)がある状態と、電子対がない状態が重ね合わさった信号が得られた。

 電圧のかけ方を工夫することで、さまざまな重ね合わせを予測通りにつくることができた。これによって素子がうまく働くことが証明された。

 重ね合わせの状態を保てる時間は10億分の2秒。まだ量子コンピューターには遠いが、この能力を上げ、複数の素子をつなげて制御する技術を開発するという。

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