TOPIC No.4-31 ICタグ/RFIDタグ



01. ICタグ YAHOO! NEWS
02. 今から分かるICタグ 基礎編 (2003/9/11)@IT
03. RFIDテクノロジ by IT Pro
04. 消費者に理解されていない「ICタグ」[2003/08/07] by IT Pro
05. 「あなたの知らないICタグの(本当の)話」(2004/10/18) CNET Japan

ICタグ+PHSで次世代POP

2007/04/15 The Sankei Shimbun

 大日本印刷は、ICタグの技術を用い、好みの商品のPR映像を液晶画面に映すことができる次世代電子POP(店頭広告)の販売に乗り出す。無線LANやウィルコムのPHS通信と組み合わせ、商品情報を一斉に更新できるのが特徴。広告を見た客のうち、どの程度が購入したのかも知ることができる。店舗数の多いスーパーやドラッグストアなどの需要を見込み、初年度は1万台の販売を目指す。

 情報更新にPHSなどの無線網を採用することで、更新の手間や経費を大幅に削減できる。大日本印刷では「従来は商品入れ替え時に電子POPも取り外して情報更新したが、新システムではPOP本体を常設できる」とアピール。同社の配信サーバーから一括更新するサービスも提供する。

日立、世界最小ICチップ・縦横0.05ミリメートル

2007/02/13 NIKKEI NeT

 日立製作所は13日、世界最小のICチップを開発したと発表した。日立が実用化済みのICチップ「ミューチップ」と同じ記憶容量や通信性能を持ちながら大きさを約75分の1にした。薄い紙に埋め込むことが可能で、有価証券などに応用すれば偽造防止に役立つという。2009年の実用化を目指す。

 ICチップは商品などの識別に使うICタグ(荷札)の中核部品。チップに記録した識別番号を無線で読み取る。新チップは縦横0.05ミリメートルで厚さ5マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル。現在のミューチップと同様、外部アンテナで受信した電波をエネルギーに変え、記録した128ビットの情報(38ケタの数)を送信する。

 日立は半導体製造技術を、従来よりも高密度に作り込める線幅90ナノ(ナノは10億分の1)メートルのタイプに変更するなどして小型化を実現した。パルプから紙をすいて作る際にチップを混ぜ込むことが可能という。小さくするとシリコンウエハー1枚から切り出せるチップ数を増やせるので価格低減につながる。

体内にICタグ埋め込みますか? 防犯・管理に一役

2007/02/07 The Sankei Shimbun WEB-site

 ICチップ(これを組み込んだものをICタグとか呼ぶことが多いです)は、電波によってデータの書き込みや読み取りができる小さなチップですが、最近は、行方不明になったペットを探し出したり、家畜の管理をしたりするために、動物の体内に埋め込むICチップも実用化されてきました。

 メキシコでは、過去5年間で13万人以上の子供が誘拐されており、その対策として子供の体にICチップを埋め込み、追跡するサービスを行っている企業もあります。この体内埋め込みICチップを提供している米国の企業には、埋め込みを希望するティーンエージャーからの電子メールが殺到しているそうです。

 実際、2002年にICチップの体内移植手術を両親と一緒に受けたアメリカの青年は、昨年、オートバイで走行中にガードレールに激突する事故で死亡しました。このときは、さすがのICチップも彼の命を守ることはできませんでした。

 しかし、人間に固定した番号を割り振り、それを何らかの装置で読み取ってデータベースの情報とマッチングしたり、個人を管理できたりするということは、プライバシー上の大問題でもあります。

 パソコンの地図上に、自分の動きがリアルタイムに表示され、クリックするとすべての個人の情報が見えるという姿は、考えただけども恐ろしいものです。

 しかしながら、自分自身の行動が確実に記録されるということは、悪事を行った人の追跡や逮捕、裁判にものすごい効果がありますし、善人にとっては悪事を働いていないというアリバイ証明にもなります。

 そのため、体内ICチップは、少なくとも自分でコントロール可能なアクティブな仕掛けが必要です。あくまで本人の意思で埋め込み、どのような働きを許すかの選択権が本人にあり、いつでもスイッチが切れるものでなくてはならないでしょう。

 国家や組織や家族にコントロールされる恐れを感じる人はICチップを埋め込まないに越したことはありません。もちろん、ケータイやICOCAカードのような発信位置を特定できるものを持ったり、メールでココロの中まで見透かされたりする危険は避けましょう。さらに、素顔をさらして街を歩いたりせずに、できるだけブルカをかぶるなどの対応を考えましょう。 私は、どちらかといえば性善説を信じ組織に比較的従順なほうだと思いますので、本当に便利な環境が整えばICチップを埋め込んでもらってもいいです。その代わり臨終の折には、お骨と一緒にICチップもお墓に埋めてください。あの世から、子孫が墓参りにちゃんと来たかどうかを確認します。もし、素直でいい子であると確認できれば、ICチップを通して私の隠し財産のありかを掲載したホームページを子供に教えてあげましょう。(臼井義美)

シャープ、電子値札に本格参入 価格や文字情報を液晶に表示

2007/01/18 FujiSankei Business i.

 シャープは17日、同社は電子値札事業に本格参入すると発表した。スーパーの食品売り場などで、商品価格を小型の液晶ディスプレーで表示する電子値札システムを25日に発売する。

 画面には商品価格のほか、業界で初めて生鮮品の原産地やセール期間などの文字情報、イラストも表示できるようにした。表示価格はパソコンから無線操作で変更する。閉店間際に特価販売する商品のみの価格も変えられ、将来、消費税率が引き上げられた場合の一括変更も簡単にできる。

 また、電気を流さなくても内容を保持できる「メモリー性液晶」を搭載。従来の電子値札より消費電力を少なくできることから、1日2回の価格変更を行った場合、最長5年間は電池交換しなくても使える。

 電子値札単品の価格は画面サイズが2インチタイプが2000円程度、3インチが2300円程度。これに無線通信用のコントローラーとパソコン用のソフトが必要。値札1万2000個を導入した場合、保守費用などを含めて3000万〜3500万円。同社は2007年度に100億円の売り上げを目指す。

韓国はRFIDの開発基地、主要メーカーから脚光

2006/10/05 Yonhap News

【ソウル5日聯合】韓国が電子タグ(RFID)ソリューションの研究開発拠点として脚光を浴びている。

 業界筋によると、国内に研究開発センターを運営していたり、設立を推進しているソフトウェアメーカーなどが、RFIDソリューション開発を核心事業に確定している。

 韓国IBMは最近、国内の研究開発センターで1年かけて開発したRFID開発ツールを世界市場に供給している。この製品はRFIDシステムの模擬実験用グラフィックツールとともに、RFIDアプリケーション開発方法などを盛り込んだIBMの戦略的製品だ。

 また、オラクルは今月中にオープンする韓国の研究開発センターの核心課題としてRFIDソリューションを選定した。このほかマイクロソフト、ヒューレット・パッカード、サン・マイクロシステムズなども韓国企業などと共同でRFID開発に着手するなど、韓国のインフラを活用した開発の動きが活発化している。

ICタグで商品管理 三越、好調でジーンズでも

2006/10/03 The Sankei Shimbun

 百貨店大手の三越が、ICタグを使った商品管理の取り組みを強化している。昨年から婦人靴売り場にシステムを導入していたが、「在庫管理の効率化で売り上げが1割以上伸びた」ことから、今月初めまでに9店舗のジーンズ売り場でも採り入れることにした。

 新たにICタグ管理の対象とするのは、高級ジーンズの19ブランド約5万着。店頭の携帯電話型端末で、商品に取り付けたICタグを読み取る仕組みだ。

 端末では売り上げや在庫数量などが調べることができ、本格運用した婦人靴では、店頭で在庫の即時検索や商品の補充発注の作業が効率的にできるようになった。

 また、試着情報を全国9店舗で集計し、商品調達を担当するバイヤーがその情報を共有することで、「売れ筋」を探る需要予測にも活用できたという。三越は「設備投資は3年内に回収が可能。今後も対象商品を拡大したい」としている。

ICタグがすぐ作れる技術を開発 ブラザー工業と大日本印刷

2006/06/21 The Sankei Shimbun

 ブラザー工業と大日本印刷は21日、ICタグを簡単に作れるオンデマンドICタグラベルシステムを開発した、と発表した。今後、用途に合わせたソフトウエア開発を進め、平成20年までに製品化を目指す。

 ICタグは現在、印刷会社などに大量に発注して製品などに張り付け、商品管理などに利用している。新システムはICタグをテープにはり付けたラベルを小型の機械で瞬時に作成し、それを張り付けるだけで業務用ICタグと同じように物品管理ができるため、少量の物品管理にも用途が広がるという。

 たとえば、企業内で共同利用しているカメラや資料にICタグ内蔵のラベルをはり付けておくと、借りたい人はタグを読み取り装置にかざすだけで連動したパソコンに記録が残る。一度に多くのものを借りても同時処理が可能だ。

 社員証や入館証などにはり付けて来場者の入出管理に使用したり、図書館での蔵書管理、家庭での食材の保存管理などにも利用できる。

 現在業務用に使われているICタグの作成機は1台が50万〜100万円だが、両社は小口利用装置として価格を抑えて発売する計画。

鍵代わり体内チップ、社員に埋め込み 米の警備会社

2006年02月15日 asahi.com

 米オハイオ州にあるセキュリティー会社シティーウオッチャー・ドットコムが、会社の特定の部屋に入る従業員2人の体内に米粒大のID(認証)チップを埋め込んだ。専用装置がチップの発するラジオ周波数を読み取り、部屋の鍵が解除される。チップをつくっているフロリダ州の会社ベリチップによると、意識不明で救急搬入される可能性のある患者の識別対策として、近く病院にも導入される。

 2人とともにチップを埋め込んだショーン・ダークス社長によると、前腕部の皮下に注射のように挿入され、外からは見えない。同社は顧客の監視カメラのビデオを保存しており、部屋に入室する必要のある従業員2人が埋め込みに同意した。「カードを忘れて入れないという事態は起きない。追跡装置ではないので居場所がわかる心配はない。副作用もないと聞いている。不安や気持ち悪さはない」とダークスさんは話した。

 ベリチップのジョン・プロクター広報担当によると、米食品医薬品局(FDA)の承認を受けている。今後、ニュージャージー州の病院をはじめ、米国内68の病院に導入される予定だ。

 病院では意識不明で運ばれた患者の名前、血液型、病歴を調べるために時間がかかることもある。かかりつけの病院で患者の同意を得てチップを埋め込んでおけば、こうした情報がすぐに得られるという。入力されるのは16けたのコードで、医師のパスワードと合わせて医療記録にアクセスする。今後、追跡装置との一体化は可能とみられ、使用方法によっては問題が生じることも考えられる。

0・15ミリ角、世界最小チップを開発…偽札防止に力

2006年02月06日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 世界最小の無線通信用IC(集積回路)チップを日立製作所が開発した。

 0・15ミリ角で厚さが0・0075ミリと、大きさは従来の半分以下だ。薄い紙に組み込むことも可能で、紙幣や重要書類などの偽造防止に力を発揮しそうだ。

 無線通信用のICチップは非接触型ICと呼ばれ、電子マネーやIC乗車券などに応用が広がっている。

 超小型チップには、38ケタの通し番号しか書き込めないが、商品に電子荷札として取り付けることで、偽造防止や物流管理などに役立つ。昨年の愛知万博の入場券には、一回り大きいICチップが埋め込まれ、偽造券の流通を防いだ。

 原材料のシリコン板1枚から切り出せるICチップの数が、従来の4倍以上になるため、価格を従来品の半値以下の1個5円にできるという。

電子タグ&電子マネー活用実験、ファミリーマートで

2006年01月22日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 伊藤忠商事とファミリーマート、東芝テックは、電子タグ(荷札)と電子マネーを活用したコンビニエンスストアでの決済システムの実証実験を実施する。

 30日から2月24日までの約1か月間で、東京都港区の伊藤忠本社ビル地下にあるファミリーマートで行う。

 約500商品に約2センチ四方の電子タグを付けた専用コーナーを設ける。商品を専用レジに載せると、タグの情報を読み取って商品名や合計金額がレジに表示される。普通のレジでの支払いには、20秒程度かかるが、このシステムだと半分以下の時間で済むという。

ICタグ搭載の乗船券 NEC、アジアで初

2006/01/19 The Sankei Shimbun

 NECは19日、ICタグ(電子荷札)を埋め込んだ乗船券を使った乗客管理システムをシンガポールの大手フェリーターミナル運営会社シンガポールクルーズセンターから受注、来年3月までに稼働させると発表した。

 予約時に乗客の名前や船名といった情報を読み込ませたチケットを発行。乗船する際、電波を発する検知機器が情報を瞬時に読み取り、乗船手続きを簡素化できるメリットがある。

 乗船券はクレジットカードとほぼ同じ大きさで、500回再利用できる。今回100万枚を受注、システム全体の受注額は約1億7000万円。NECは航空券へのICタグ搭載も目指す、としている。(共同)

周波数という見えない論点

2005年04月30日 seiron/ ニュースで追跡!マニフェスト:射場本 健彦

 最近5年で電話の主役は固定電話から携帯電話へと大きくシフトしました。このことによって私たちは、一台しかない家庭内の黒電話に並ぶことなく通話したり、正確な待ち合わせ場所を決めなくても携帯電話で連絡を取り合って解決したり出来るようになりました。このような携帯電話の便利さの大きな要因は、無線で通信していることです。このように、有線の無線化というのは非常に大きな意味を持ちます。今回はこの無線を巡る問題を考えていきましょう。

 ■電波はつかいほーだい?

 インターネットなどを用いた経済発展政策が自民党の「ここまで進んだ小泉改革宣言」(参考文献1)に唄われています。そのインターネットに繋ぐための手段はいろいろあります。光ファイバー・ADSL・携帯電話・公衆無線LAN(注1)などです。このような接続手段は、大別すると有線と無線にわけられます。この中でいうと携帯電話と公衆無線LANが無線に当たります。無線というのは電波を使って通信します。電波というのは目に見えず、しかも空中を飛んでいく物なので、自由にいくらでも使えそうな気がします。しかし実際には、近い周波数帯の電波同士は衝突・混信してしまい正常に伝わりません。小学生の時、理科で波の衝突を習いましたがその原理と同じです。以下のリンクでその原理が見られます。 "http://www.kamikawas.com/physics/javascript/interact/interact.htm"(参考文献2) このような実験が示すように、電波というのは有限な資源なのです。

 ■電波配分の現状

 そこで、電波は適切に管理され配分される必要があります。その役目を日本では総務省が担っています。最近、ソフトバンクが総務省を訴えた(その後取り下げた)事件がありましたが、これは、既存の携帯電話会社2社(NTT Docomo・KDDI)に電波を割り当てて、ソフトバンクに電波が割り当てなかったのは総務省の不公正な配分であるとしたものです。この事件のように電波の配分は様々な利害関係が絡み合う重大な問題なのです。

 なぜ電波の割り当てが最近大きな問題になってきたのでしょうか?それは無線を利用した、携帯電話・RFID(注2)・トレーサビリティ(注3)といった新産業(の種)が生まれてきたことと、その日本の新産業が国際競争力を失わないように電波の周波数帯割り当てを世界標準に合わせる必要が出てきたからです。RFIDを例にとると、RFIDの普及には大量に使用されることによる価格低下が必要です。しかし利用できる周波数帯に関して、ヨーロッパのRFIDで利用されている868Mhzは日本では携帯電話関連に使われています。そのため、ヨーロッパより人口の少ない日本が独自の周波数帯用の製品を必要とすると、コスト的に不利になってしまい、日本の新産業創造の妨げになる可能性があります。

 ■電波配分を巡る議論

 ではどういう手法で電波を割り当てるべきか?電波政策はどうあるべきか?が問題になります。この問いに答えは出ていませんが、最先端・最喫緊の話題として、いろいろな論者が様々な意見を述べています。世界との調和や日本特有の地形や都市構造などの要因が複雑に絡み合い単純な最適解がないと共に、日本の産業競争力・新産業創造の鍵を握る非常に重要な論点なので2007年の衆議院議員選挙の争点になる可能性があります。今から議論を追っていくと、非常にエキサイティグに選挙を楽しむことが出来るかもしれません。

 以下に議論の一例・参考サイトを挙げますので、参考にしてください。

 ●泉田裕彦:「空いている」電波資源を有効に使えない地方都市(参考文献3) [ http://www.policyspace.com/archives/200404/post_182.php ]

 ●RIETI:電波の有効利用に対する施策について(参考文献4) [ http://www.rieti.go.jp/users/it/dempa/resources/mano-position-paper.htm ]

 ●総務省:情報通信(IT政策)Webページ [ http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/joho_tsusin.html ]

 電波行政は、電波という目に見えないものを扱っているだけに私たちの生活から遠いように感じられます。しかし、非常に重要な資源であり大きな論点を含む問題であります。 今後、電波が重要だという視点をもって新聞やニュースを見てください。いろいろな意見・利害対立があって非常に面白いことが分かると思います。

 ●参考資料 ・自由民主党. "ここまで進んだ小泉改革宣言". 自由民主党 [ http://www.jimin.jp/jimin/main/seisaku.html] (2005年04月30日アクセス) ・神川 定久,天良 和男."波の干渉". Sadahisa Kamiyama 高校物理 Page [ http://www.kamikawas.com/physics/javascript/interact/interact.htm ] (2005年04月30日アクセス) ・泉田裕彦. "「空いている」電波資源を有効に使えない地方都市". 政策空間 [ http://www.policyspace.com/archives/200404/post_182.php ] (2005年04月30日アクセス) ・独立行政法人 経済産業研究所(RIETI). "「空いている」電波資源を有効に使えない地方都市".IT@RIETI [ http://www.rieti.go.jp/users/it/dempa/resources/mano-position-paper.htm ] (2005年04月30日アクセス)

 注1:LANと呼ばれるネットワーク接続方式の無線版を街中に設置してインターネット接続を提供すること。Hotspot・ホットスポットと呼ばれることもある。

 注2:本Blogの2004年12月06日「RFID 〜u-Japan戦略を実現する技術〜」を参照のこと

 注3:ある製品の素性が分かること。例えば食品ならこの魚肉ソーセージはどんな魚がどの程度含まれていて、その魚はどんな餌を食べてきたのだろうか、アレルギー原因物質は含まれていないか、というのが分かること。

ICタグで受刑者把握 山口・美祢刑務所

2005/04/23 中国新聞地域ニュース

 法務省が美祢市豊田前町に建設を予定する刑務所「美祢社会復帰促進センター」の入札が二十二日、あった。ICタグを使って受刑者の位置を確認するなど情報技術を駆使したシステムを提案した、警備会社セコムや清水建設など十二社でつくる「美祢セコムグループ」が落札した。建設から運営までの事業期間二十年が対象。

 入札には三グループが参加。学識経験者や法務省職員らによる事業者選定委員が入札額や事業計画を「維持管理」「運営」など四項目の総合点で選んだ。落札額は四百九十二億七千万円。

 美祢セコムグループと法務省矯正局によると、同刑務所は「地域との共生」を目指し、生け垣に似せたフェンスを設けるなど開かれた外観にする。

 特に受刑者の管理については、着衣に付けたICタグが発する微弱電波を利用し、中央監視室で位置や動きを把握。赤外線センサーや遠隔操作できる電子錠と組み合わせて、効率的な警備を目指す。約百二十人の雇用も見込んでいる。

 今年十一月にも着工。二〇〇七年四月に運営を始め、男女五百人ずつ計千人の初犯受刑者を収容する予定である。刑務所では初の民間資金活用による社会資本整備(PFI)方式を採用し、事業期間の終了後は施設を国に無償譲渡する。

東アジアの物流、ネットで把握…経産省がシステム構築

2005/04/10 読売新聞 yomiuri On-Line

 東アジア5か国で製造される家電製品や自動車などの生産・物流の効率化を目指し、経済産業省が国際的な物流管理システムの構築に乗り出すことが9日、明らかになった。同省は、近く発表する「情報経済・産業ビジョン」に盛り込む。

 新システムは、日本や中国、韓国、シンガポール、マレーシアで製造される製品や部品に、製品名や製造工場などの情報を記録した「電子タグ」を付け、製造、流通、在庫の状況をインターネット経由で瞬時に把握できるのが特徴だ。

 在庫状況などがひと目で分かるため、部品不足にならないほか、製造や在庫の無駄も減らすことができる。

 アジア各国では、日本の電機、自動車メーカー各社が多く進出し、日本企業との取引がある現地資本の部品メーカーなども増えている。経産省としては、まだ国際標準がない電子タグや記録読み取り装置の仕様を統一し、日本企業以外の企業も、少ない投資で参加できる仕組みを計画している。

 アジア域内の物流システムで、日本が主導的な立場を確保する狙いもある。

 新システムは、必要な部品を必要な時に必要な数だけつくるトヨタ自動車の「かんばん方式」がヒントになっており、経産省は、名前を「アジア版電子カンバンシステム」とする考えだ。

 4月中にも、各国政府を通じて運送会社、メーカーなどに参加を呼びかける。実証実験に参加する国内企業には、システム開発や電子タグにかかる費用を補助する方針だ。

「着うた」4社が勧告拒否 違反ないと公取委に回答

2005/04/04 The Sankei Shimbun

 携帯電話の着信音に歌手の歌声を設定できる「着うた」サービスをめぐり新規参入を妨害したとして、公正取引委員会から独禁法違反(不公正な取引方法)で排除勧告を受けたソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)など東京の4社は4日までに、勧告の受け入れを拒否すると公取委に回答した。

 ほかに拒否の回答をしたのは、ユニバーサルミュージック、ビクターエンタテインメント、エイベックスネットワーク。近く公取委で裁判の一審に当たる審判が始まる見通し。

 SMEは「公取委が認定するような事実はない」とコメントした。

 4社とともに勧告を受けた東芝EMI(東京)は、公取委に2週間の回答期限延長を申し出て認められた。

 公取委は3月、5社は着うたの音源となるCDの原盤権の使用許可を与える立場にあり、配信会社レーベルモバイル(東京)に業務委託をして2002年12月から配信する一方、使用許可を希望するほかの配信会社には共同して許可を出さず、参入を妨害したとして、排除勧告を出した。(共同)

ICタグ用アンテナ「ミリ」まで小型化 日立が新技術

2005年04月02日 asahi.com

 日立製作所は、同社の無線ICタグ「ミューチップ」用のアンテナを、従来より大幅に小型化する技術を開発した。ミューチップは0・4ミリ角と世界最小のチップだが、離れたところで情報を読みとるためには無線アンテナをつける必要があった。新技術で縦3ミリ、横4ミリにまで小型化し、1円玉の10分の1ほどの大きさのものへの取り付けが可能になる。

 日立は医療向けの実用例として、医薬品の小瓶にミューチップとアンテナを取り付けることを想定。出荷時にミューチップの識別番号をデータベースに記録しておけば、臨床現場で医師や看護師が瓶を読み取り機に近づけるだけで、中身の薬品名や履歴が分かるようになるという。

 愛知万博(愛・地球博)の入場券にも採用されている従来のアンテナは長さが約5センチあった。

個人のICタグに反応、公共施設で情報案内 富士通開発

2005/02/27 asahi.com

 街頭や駅、空港などの公共機関のディスプレーが、通りかかった人の携帯電話やカードなどに付けられた無線ICタグに反応して、その人のためだけの有用情報を細やかに表示するシステムを、富士通が開発した。05年度内の製品化をめざす。

 「ユビウォール(ユビキタスの壁)」と名付けたシステムは、プラズマパネルによる表示画面の下に、無線ICタグの読み取り機8個を備える。その人の属性を記録したタグつきのものを持って近づくと、読み取り機が反応。パネルに接続されたサーバーからその人のためになる情報を取り出して表示する。

 たとえば空港の案内表示板だと、近づいてきた人の航空券にタグがついていれば、行き先を読み取り、搭乗口への道案内が表れる。百貨店内の店舗案内板であれば、携帯電話のタグから読み取った年齢や性別にふさわしい売り場を紹介する、といった利用が考えられている。複数の人が近づいても対応可能だという。

 公共用のディスプレーはプラズマや液晶の薄型パネルの低価格化で急速に普及中だ。ただ、一般情報を流すだけで、サーバーを通じて簡単に画像を変えられる仕組みを十分に生かしていない。富士通はそこに着目した。

07年にICタグ海外展開 NEC、世界標準狙う

2005/02/25 The Sankei Shimbun

 NECの金杉明信社長は25日、シンガポールで記者会見し、集積回路(IC)を使った電子荷札「ICタグ」事業を2007年をめどに、東南アジアなど海外で本格的に展開する方針を明らかにした。NECによると、日本の大手電機メーカーで同事業の海外戦略の具体策を示したのは初めて。

 ハイテク分野で将来有望とされる同事業を、日本との経済関係が緊密な東南アジアを軸に海外展開することにより、NECの規格を「世界標準」とすることを狙う。

 海外での事業拠点として、シンガポールの高等専門学校リパブリック・ポリテクニック内に技術センターを設立、エンジニアを育成する。ICタグを搭載した農畜産物や工業製品の流通管理システムの開発、販売など、現在100億円に満たない同事業の年間売上高を10年までに2000億円に増やすことを目指す。

 金杉社長はシンガポールを拠点に選んだ理由を「事業展開に必要なソフトウエアなどのインフラが整っているため」と説明した。(共同)

10メートル先まで電子情報、来春にも新タグ登場

2004/12/18 asahi.com
 5〜10メートルほど離れた場所にも情報が飛ばせる電子タグが、来春から使えるようになる。今ある電子タグは、乗車券「スイカ」などのように、読み取り機に近づけなければ反応しない。この中距離電子タグなら、タグを道路や電柱などに埋め込んで、読み取り機のついた携帯電話に現在地を知らせる観光案内や、読み取り機を搭載した車がセンターラインからはみ出した場合に警告を発する、などの使い道がある、という。

 中距離電子タグは、総務省が、UHF帯周波数の開放を決めたことで、実現する道が開かれた。実際に開放するのは、これまで携帯電話用に使われてきた、電波が飛びやすい952〜954メガヘルツの周波数で、05年4月前後から事業者に割り当てられるよう準備中だ。欧米では電子タグ向けにも普及が進む帯域で、国際標準にそろえる狙いもある。

 観光案内や交通安全以外にも広い用途が見込まれ、例えば、電子タグをつけた荷物を複数個、車に載せて、すべて同時にゲートでチェックすることもできる。電波の干渉は、出力を抑えることで防げるという。

 現在の電子タグは、数センチ〜数十センチしか電波が飛ばない周波数しか用意されていない。スイカなどの決済システムのほか、食料品の生産履歴をたどるシステム、企業の物流管理にも利用されている。読み取り機を荷物に近づける手間がかかるのが難点となっていた。

500円玉大の無線ネット端末開発 微弱電波で接続

2004/12/16 asahi.com
 産業技術総合研究所(茨城県つくば市)は、500円硬貨よりやや大きい程度の「世界最小級」の超小型ネットワーク無線端末を開発し、15日発表した。小さいが一つの独立したコンピューターで、最長60年程度動作可能という。様々なものにコンピューターが組み込まれてネットにつながり、生活が便利になるという「ユビキタス社会」に一歩近づく技術だ。

 この端末は、縦3.6センチ、横2.8センチ、厚さ6ミリ。それぞれが固有の識別番号(ID)を持ち、微弱な電波を出してネットに接続する。センサーや電化製品と組み合わせると、温度、湿度、明るさや、人が近くにいるかどうかなどに応じて、きめ細かに生活環境を制御できるようになる。

 これまで米国などで開発された超小型ネット端末は、必要以上に性能が高く高価であるなどの問題があったが、今回は実用的な水準の仕様とし、小型・省電力化に成功した。ネットとの通信頻度が5分に1回ならば、理論的にはボタン電池一つで60年間動作可能で、建物に埋め込むことも考えられるという。

 産総研発のベンチャー企業ワイマチック(本社・大阪市)との共同開発で、同社が今年度中に発売する。価格は1個1000円程度になる見込み。ユビキタス時代をにらむこの分野は、11月末に日立製作所などが同様の技術を発表するなど、競争が激化している。

電子タグと携帯で迷子捜し テーマパークで公開実験

2004/12/11 The Sankei Shimbun
 電子タグで迷子捜しを−。総務省九州総合通信局(熊本市)は11日、北九州市八幡東区のテーマパーク「スペースワールド」で電子タグ(荷札)と携帯電話を使った情報提供システムの公開実験を行った。

 同システムでは、微弱な電波を発信する電子タグを入場者に配布し、場内各所に設置した受信機で入場者の居場所を把握。あらかじめ登録してもらった入場者の携帯電話のメールアドレスに、近くのアトラクションなどの情報をメールで送る。

 迷子などを捜す場合には、携帯電話でシステムに接続、捜したい人の電子タグのIDを入力すれば現在位置の地図が携帯画面に表示される仕組み。同システムのカメラが近くにあれば、携帯で映像を見ることもできる。

 この日の実験にはスペースワールドの携帯メール会員から募集した約200人が参加。ショーの予定や近くの飲食店のメニューなどの情報を携帯で受信したり、あらかじめ設定したエリアに特定の時間に訪れると景品がもらえるゲームなどを楽しんでいた。

 子どもと参加した北九州市の主婦(35)は「子どもが迷子になったことがあるので実用化されればうれしい」と話していた。(共同)

RFID 〜u-Japan戦略を実現する技術〜

2004年12月06日 seiron/ ニュースで追跡!マニフェスト:射場本 健彦

 ■u-Japan戦略を実現するための技術

 u-Japanを実現するために必要なテクノロジーとして“RFID”があります。今回はそのRFIDについて解説します。RFIDとは“ Radio Frequency IDentification”の略。微細なメモリーとアンテナの組み合わせで、短距離でデータを発信することが出来るモジュール(部品)のことをいいます。

 ■RFIDの成長ストーリー

 その誕生初期は、主にバーコードの進化したものとして扱われてきました。つまり配送所などでデータの書き込みが可能であるためデータの読み出しがしやすく、生産履歴書き込みなどに対応できるバーコードとして扱われました。そのため、最近まで流通業界の効率を上げるための道具だと思われていました。

 余談ですが、小売世界最大手のウォルマートがいち早くRFIDに興味を持ったのはアメリカでは商品が出荷されてから店頭に並ぶまでの間に約3割の商品が従業員によって盗まれるからだ、という笑えない事情もあったりします。

 ■JRの「suica・icoca」 も

 さてこのように流通業界から始まったRFIDは、ネットワークと繋がることで利便性を増し、私たちの身近に表れました。その代表的なものに、JR東日本の「suica」・JR西日本の「icoca」があります。

 suica・icocaは、改札通過時に読み出し・書き込みを行い、そのデータをネットワーク経由でJRに保管しています。そのため、正しい個人情報が保存されているsuica定期券・icoca定期券では、紛失時にJRに申請することで、紛失時点のデータの新規のsuica定期券・icoca定期券が再発行されます。ちなみに、suica・icocaは2枚の張り合わされた堅い板で出来ていて、剥がすとRFIDの本体であるメモリとアンテナが確認できます。(suica・icocaにおけるデータの流れは筆者の予想である)

 ■RFIDの新たな脅威(副作用)

 このように身近なところに進出し生活の利便性を増すRFIDですが、これは同時に新たな脅威ももたらしました。個人情報保護の問題です。たとえば前述のsuica・icoca定期券が他人の手に渡った時、適切なセキュリティ対策をしていなければ、個人情報は危機にさらされてしまいます(JRは適切な対策を施しています)。このように定期券が磁気カードだった時代にはない危険が存在するのです。

 そのため、政府は個人情報保護法を施行したり、総務省・経産省でRFIDに関するセキュリティガイドラインを公表したり、という風に行政では各種の対策を進めています。これからの日本の生活・産業を考える上で、技術による副作用を制度で押さえるというのは大切なことです。みなさんもそういった目線でマニフェストを見てはいかがでしょうか?

 注:説明の分かりやすさを重視し、RFIDの帯域別の違いといった詳細な点は割愛しました。ご了承ください。

NTT Com、倉敷市で IC タグに関する実証実験を実施

2004/10/25 japan.internet.com 編集部

 NTT コミュニケーションズ(NTT Com)は2004年11月17日、総務省が2004年度に実施する「IC タグの高度利活用技術に関する研究開発」事業に基づき、岡山県倉敷市において「IC タグ高度利活用に関する実証実験」を行う、と発表した。

 同実験は、倉敷市光ネットワーク「かわせみネット」を実証フィールドとし、IC タグと IPv6の次世代インターネット網を用いたもの。

 具体的には、かわせみネットに接続されている倉敷科学センターや、倉敷市立中央図書館などの市内公共施設内において、市内の児童・生徒に IC タグを活用してもらい、情報流通の実証実験の場を構築するなど。

 今回の実証実験で得た成果は総務省や学会、標準活動機関などに報告し、広く標準化を進める予定。

 NTT Com は、「IPv6移行実証実験」業務についても総務省からの委託を受け、トレンドマイクロと共同で実施する。

NEC、パソコン生産管理に無線ICタグ 国内初

2004/10/25 Asahi.com
 NECは25日、山形県米沢市にある同社のパソコン工場で、生産工程に無線ICタグを使った管理システムを導入したと発表した。パソコンの生産管理では国内初めての試みといい、生産性が1割以上向上すると見込んでいる。

 少人数の作業員がいくつもの工程を担当するセル生産方式を強化する。

 これまでは、製品に添付された「指示書」のバーコードに従業員が読みとり機を近づけ、手元にあるモニターに表示する仕組みだった。新システムはバーコードの代わりに無線ICタグから電波が発信され、作業内容が自動的にモニターに表示される。NECによると、工場全体で1日8万回分の読みとり作業が不要になるという。

豪のICチップ付きパスポート、シャープの技術を採用

2004/10/25 Asahi.com
 シャープは25日、オーストラリア政府が10月から始めた「ICチップ付きパスポート」の実証実験で、同社のICカード技術が採用され、1万冊分の納入を開始したと発表した。ICチップ付きパスポートは、入国審査の時間を短縮し、偽造防止に役立つことから、米国なども導入の意向を表明している。

 オーストラリアが試験的に導入するパスポートでは、従来は印刷されていた氏名や国籍、顔写真などのデータがICチップに入力され、入国手続きの際、読みとり装置にかざして本人かどうかを確認する。来年5月まで実験を続ける。

 シャープが納入するICカードは、数ミリ角のICチップに細い金属製のアンテナを組み込んでシート状にしてある。ICの容量は512キロバイトあり、指紋や目の虹彩(こうさい)などのデータも入力可能という。

 実証実験に踏み切ったのはオーストラリアが初めてだが、米国も来秋からの本格導入を決めている。先進諸国で今後、導入が広がると期待されており、シャープは今回の実績を背景にICの大容量化をさらに進め、売り込みを図る方針だ。

「あなたの知らないICタグの(本当の)話」

2004/10/18 CNET JAPAN:澁川修一

 今回は、実際の利活用に向けての戦略としてe-Japanでも推進されている「電子タグ」(ICタグ)について、経済産業省の新原浩明製造産業局紙業生活文化用品課長に話を伺った。新原課長はこの7月まで、商務情報政策局情報経済課長を務め、経済産業省のみならず、政府の電子タグ政策に深く関与していた、「Mr.タグ」との異名を取る人物である。(なお、インタビューは異動間もない8月中旬に行われた)

 ちなみに新原課長は、経済産業研究所にも在籍(コンサルティングフェロー)していた際に「日本の優秀企業」(日本経済新聞社)を出版し大きな話題をさらった、企業戦略のエキスパートとしても知られており、今回は、ICタグ政策全般についてもさることながら、ICタグがもたらす企業戦略の変化にまで話が及ぶ、内容の濃いインタビューとなった。

 新原浩朗 氏(経済産業省 製造産業局 紙業生活文化用品課長)

  1984年東京大学経済学部卒業、通商産業省入省。同省にて産業政策関係の多くの法案作成などに携わる。米国ミシガン大学大学院経済学博士課程留学。経済産業研究所上席研究員を経て、経済産業省商務情報政策局情報経済課長及び経済産業研究所コンサルティングフェロー(併任)。2004年8月より、製造産業局紙業生活文化用品課長。

 1.ICタグはもう「使われている」という事実

 ICタグ活用は日本が先頭を走っている

 --今日はよろしくお願いいたします。ICタグについては、国際標準や周波数の問題など、本格的な導入に向けては、摺り合わせを行っていく必要がよく指摘されます。e-Japan重点計画2004の中でもICタグについては、強調して記されていましたが・・・

 新原: まず最初に、ICタグに関してよく誤解されていて、それで混乱を招いている点について、認識を正しておきたいんですが、ICタグは、もう既に実用化されているんです。新聞報道では、まさに「実証」という認識で捉えられているし、取材をするときも、実証実験(※注1)の所に行きたいというわけです。でも、私はその認識はまったく間違いだと思っています。既にユーザーが(補助金ではなく)投資してICタグを実際に使って、投資を回収している例が山ほどある。だから、僕は「使う」というフェーズに関して言えば日本が先端を走ってると思っています。なぜならサプライヤーの技術は別にしてユーザ側の問題は、生産管理、サプライチェーンマネジメントなんです。こういう現場の使い方の技術はもともと日本企業は得意としている強いところですから。それから作り込み。普通のIT技術とICタグが違うポイントは、パソコンみたいに完成品がドンと出てきて、さあ何でもお使いください、という世界ではなくて、ICタグはできあがったシステムをドンと導入するのではなくて、現場で何が問題になっているのか、ICタグで何が解決されるのかをよく考えて、システムを設計していくスタイルになっている点です。こういう時に、現場のニーズに合うように物事を設計していくノウハウは日本がとても強い部分なのです。

 例えば昨年(ICタグの実例として)小泉首相を回転寿司に連れてったんですが、回転寿司店を選んだ理由というのは、先行導入例ということに加えて、作り込みの好例だったからです。いま、回転寿司店が抱えている問題に、外食産業の価値の分化への対応というのがあります。一方で高付加価値を目指す流れ、もう一方で安く大量に売るという流れがあって、現在回転寿司業界は、高付加価値の方向にどんどんシフトしてるんですけど、そうなると必然的にお皿の数も10種類以上出てくるわけで、それぞれの色も微妙になってきて数えるのも大変、間違いも起きるし人件費は高くなるという、回転寿司業界特有の問題が発生してきます。そこを解決したいというニーズからICタグ導入の議論が出発しているんですね。そこの部分の人件費を削れるなら(ICタグに)投資してもいいよね、という話になり、結局は双方のコストの比較になって十分釣り合ってるということがわかり、回転寿司の機器ベンダも共同開発する形でICタグを使った精算システムを作って売っています。この開発手法も、ベンダの技術者が現場に入っていって、実際の職人の手さばきやお客さんの流れ、店員のレジでのカウント方法などを観察して、一番コストがかからないやり方を勉強してから開発したのです。その結果、(裏面にICタグを貼り付けた)お皿を積んで、5枚なら上からパっと読み、10枚なら横から読むように設計して、それをカードに転写してお客さんはそれをレジに持っていけば精算が完了するという仕組みになりました。

 アパレル業界もICタグ実証実験に関連して騒がれる業界ではありますが、もう導入している所はあります。例えば、渋谷109のカリスマ店員が居るようなブティック。ここでは、在庫管理にICタグを使っています。値札の紙タグの部分をさわると、固い部分があるはずですが、そこにICタグが埋め込まれています。(商品が複雑なので)店員が在庫管理をすべて行うのはかなり厳しい作業です。ですから、圧倒的に在庫管理の部分のコストは減らせるのでタグを導入しているというわけです。個人的には、タグを使っているのであれば、しっかりそう表示してほしいと思ってるんですけどね。

 大きなブランドでも、利用している例があります。ワールドとか、オンワードは実証段階ですが、「ルスーク」というブランドを展開しているフランドルでは、ルスークの44店舗に、ICタグを自費で導入しています。(※注2)

 なぜ彼らがタグを導入したかというと、「棚卸し」です。棚卸しの作業を開店中にするわけにはいかないですから、残業代を払って閉店後に在庫をチェックします。このコストがバカにならない。タグのリーダを持って店員さんがすーっと棚を移動していけば、時間内に棚卸しの作業が出来るから、残業代を払う必要がなくなった。これで投資コストがバランスしているわけです。

 物流でもこれから実証段階だ、とよくいわれます。確かに大規模なシステムについてはそうだと思いますが、単純なシステムについてはもう使われているのです。例えば、佐川急便なんかは長距離輸送のハブから小口輸送への積み替えにタグを使っています。彼らも、漠然と物流を合理化したいというような話ではなくて、やっぱり具体的に困っていることがあるから、そのソリューションとしてタグに行き着いたということなんですね。で、何に困っているかというと、宅配便業界は同じ構造ですからすべて似たような問題を抱えているはずですが、小物があるんです。サイズの制限がないですからね。そのまま積んだらつぶれちゃいますから、プラスチックのコンテナの中に入れて運んでくるわけですが、当たり前ですけどそのコンテナから行き先別に整理する必要がある。以前はトラックが着いてから20個から1個くらい出てくるプラスチックのコンテナをバイトさんが手作業で分けていました。それを挟むために、全体のコンベアラインの処理速度が遅くなってしまうわけです。それをなんとかしたいと。タグの話をしていると、いかにも小物の荷物一つ一つにタグが着いているようなイメージをもたれますが、彼らはもっと単純な使い方をしています。箱形の、RFIDの化け物みたいな大きなタグを、小物コンテナに投げ込んで、そのままラインに流してしまうんです。ラインの出口の方に読みとり機があって、コンテナだけを専用の仕分け場所に流してそこに小数の仕分けバイトさんを配置しているのです。こうすれば、全体の処理速度は落ちないわけです。

 いま申し上げたいくつかの例は、いずれもきっちり利益が出てるんです。だけど、あまり一般には知られていませんよね。なぜかというとそれは業務ノウハウだから。一生懸命説明するインセンティブは彼らにはないです。実証試験は、業界で応援しているものだから、説明しても大丈夫ですけど、実際にベンダとユーザが一対一でやっている事例では、詳細は全く出てこない。やっぱり企業の収益の直結するノウハウだから。ベンダの方も喋ると売り上げが上がるから喋りたいけど、ユーザから止められている状況です。だから、実際どれほどICタグの導入が進んでいるのかが見えにくい。

 政府はICタグのどこを政策ターゲットにしているか

 --なるほど、確かにこの辺りは一般の人はほとんど知らないでしょうね。となると、政府の役割はどのようなものになるんでしょうか。既にある導入時例を基に、標準化を進めていく、ということなのでしょうか。

 新原:  時々誤解されるのは、あるいは誤解させるようにプレゼンテーションする人がいますけど、なんでもこういうICタグの標準化を経済産業省が旗を振っていると問題視する議論があります。「経済省は標準化を進めている。だから日本発のノウハウがつぶれてしまう」とか、「アメリカのやり方にすべて従うのか」という種の議論ですが、これはまったく間違いです。これまで紹介してきたような事例のノウハウは、まったく企業のもので、ベンダとユーザが独力で頑張って作り上げてきたのです。こういうことはどんどんやっていただきたい。また、そのような流れに政府が介入すべきでもないと思います。

  ただし、政府の役割は何かということを考えると、彼らが今後ビジネスを展開していく際に困る話があります。現在、ICタグを導入した企業がが収益を上がるビジネスモデルを組めている理由は2つあって、1つ目はよくいわれるタグのコストの問題です。いまひとつ50円と言われていますが、彼らにとっては、多少チップのコストが高くても問題になりません。彼らの利用モデルでは、「タグは再利用する」ということが前提になっていますから。回転寿司の皿も、佐川急便の箱型タグにしてもそうです。たとえ(そんなに高くないですが)5万円したとしても、1000回使えば50円、10000回使えば5円です。ここはあまり理解されてないところで、例えば社長会とかに呼ばれてタグの話をすると、どんな業界に呼ばれても、「ICタグを知っている」という方は9割以上です。「誰から聞きましたか?」と続けると、「社員から」という人が8割くらいいます。その社員は、「『値段が高くて使えません』と言ってませんでしたか?」と聞くと、やっぱり8割くらいの社長さんが「そうです」と答える。それで、私は「あなた方は、社員にだまされてませんか?」と言うんです。つまり、本当に使えないのかどうか。つまり、一定のサークルの中でリユースされているものだったら全く問題ないわけで、目先の利く企業は既にばんばん入れているのです。こういう賢い使い方をしているのは、おそらく日本だけだと思います。アメリカでも、例えばプラダのニューヨークの店舗でICタグ使ってます、といっても、あれはアンテナショップで、全然彼らの収益に役立つこと、つまり在庫管理への活用とかはせずに、単に未来の店舗です、ということで商品の詳細情報提供をしている程度です。このような場合は商品に固有のタグで、リユースしませんからペイしないかもしれない。でも、リユースすれば全然問題にはならないわけです。

 2つ目の問題は、1つ目の問題とつながってますが、タグが使えるのは一定のクローズドな世界だと言うことです。だからこれまで紹介してきたような事例の場合は、互換性は問題にならないですのですが、ここでいう互換性の問題というのは、作り込み、ビジネスモデルの互換性と言うことではなくて、商品のプロトコル(商品毎の番号付けのコード体系)をきちんと整備する事と、エア・インターフェイスですね。日立のタグが流れてきても、富士通のリーダ・ライタで読めるという話です。一つの企業内で使うなら、ベンダにお願いすればそのベンダの製品だけが流れるので問題ないですが、問題は企業間取引に使う場合です。ベンダ毎にリーダ・ライタをすべて揃えるなんてバカバカしいですよね。

 従って、政策的なターゲットとしては、「企業間」でサプライチェーンやトレーサビリティの手段としてタグを運用していく場合におけるエア・インターフェイスの互換性の問題、及び商品コードの体系の整備、という2点になってきます。しかも、あくまで「企業間」だけ。企業内部の話は政府が介入する必要はないです。例えば日立が開発したミューチップ。これは非常に小さいチップですが、これをサプライチェーンで共通して使っていくものにはたぶんならないと思います。しかし、例えばミューチップにしかできないマーケットとして、有価証券やお札での活用が考えられていますが、こういうニッチなマーケットでの取り組みはどんどん進めて頂いてかまわないと思います。それを標準で弾こうとは全く思ってない。私がISOとかEPCでの議論の中で言っているのは、企業間で転々流通する場合について、しかも商品コードとエア・インターフェイス「だけ」を標準化しましょう、ということです。それ以上やったら企業努力を圧殺してしまいます。

 2.タグを巡る二つの政策課題と「響プロジェクト」

 --政策的なねらいはよく分かったのですが、実際にどのような政策的な取り組みが行われているのでしょうか?

 標準化にむけての取り組み

 新原: 現在、経済産業省では企業間取引におけるコード体系とエアインタフェースの標準化ともう一つ、タグの価格低減という政策課題に取り組んでいます。これらの政策ニーズは、タグのリユースを前提とせず、企業間を転々流通する、ということを前提にすると初めて浮上するのです。リユースしない場合はせいぜい5円。それ以上だと話にならないですね、多量に流通するなら、コードとエア・インターフェイスは共通化しないといけないですね、ということです。

 実際問題、既に我々は海外に大量に様々な製品を輸出しています。例えばウォルマートが取引先上位100社から300社にタグの採用対象が拡大された場合、日本の家電メーカーなどはほとんど含まれることになります。ソニー、日立、東芝、シャープ、サンヨーあたりは確実に入りますね。そうなると輸出向け製品にタグを貼り付けていかなければならないわけで、海外に輸出するときに国内と規格が違う、その逆で輸入品が入ってきた場合に読めないと困るので、だからそこだけは国際標準にしましょうと。この辺も誤解される所なんですが、「アメリカとか国際標準を採用するとノウハウが流出して、国内企業の利益が削がれるじゃないか」と言う人がいます。これもまったくの嘘で、我々が言っているのは、そういったノウハウとか、カネが取れるところは標準化する必要がないということなんです。商品コードの入れ方なんて、カネが取れるところではないですよね。管理費とかは取れるかもしれませんが。無線の通信プロトコルにしても、商品コードにしても、様式、ビデオのサイズのようなもので、それが固まった上で、その上のレイヤで競争が起こる。逆にそれが出来なければ、全体のマーケットがなくなってしまうことになります。

 商品コードの標準化については、現在日本がISOに提案をしていて、本来今年の夏に標準化されるはずだったんですが、ちょっとISOの事務手続きで遅れが生じているのですが、来年春には標準化されます。中身については日米欧で合意しているので、変更はないと思います。具体的なコード体系は、「企業コード」、「品目番号」、「シリアル番号」といった順序で、例えば、トヨタ・プリウス・車台番号… というように、上位概念から下に降りていくようになっています。下にいくつでも付加情報は添付できるのですが、あまり煩雑にならないように、少なくともバーコードの商品コード体系からは大きく逸脱しないようにしています。簡単に言うと、最初の発番コードをルール化するのです。これは市外局番みたいなものですが、例えばバーコードに関する世界標準であるJANと日本情報処理開発センターと電子商取引推進センターが定める国内の標準企業コードであるCIIが違ったコード体系ならば、それぞれが何のコードかわかるように、JANなら「45とか49」、CIIなら「LA」と表示すれば、既存のバーコード体系をそのまま利用できます。コードの問題はこのような形で問題解決が図られているところです。

 通信プロトコルの方は、もうちょっと複雑で、エア・インターフェイスについても最低限の標準化を進めようという趣旨でやっているんですが、ご存じのように現在、ISOとEPCグローバル(※注3)協会とアメリカの流通コード機関であるUCCが共同で設立したもので、EPC(Electronic Product Code)の管理と運営を行っている団体。RFIDについても、Auto-IDセンターの開発成果を受け継ぐ形で標準化作業を進めている。)がそれぞれ標準化作業を進めていますが、それぞれの中で規格が複数あるという状況です。EPCグローバルにおいては、UHF帯EPC標準を巡ってエイリアン・テクノロジを中心としたグループとマトリックスを中心としたグループの2つが提起されていて互換性がない。また、ISOでもタイプAとタイプBというものがあって、これも相互互換性がない。これらについて一本化しようよというのが、私たちが動いてきたことで、報道で言われるところの「経済省の規格統一への動き」というやつです。具体的には、小さいので動きが早いEPCの方で案を作り、それをISOに提案し、規格化するという方針で根回しをしました。そしてEPCグローバルにおいては、6月28日に「シカゴ・プロトコル」という基本合意が出来て、これが先頃、ISOの提案手続きが行われました。ここで注意して頂きたいのは、この規格案(タイプC)には「企業間取引用」と位置づけられるわけです。なんでも標準化する訳じゃない。企業間取引だけを国際標準にしようと。

 遅くとも、今年度内くらいには、ISOを通るでしょうが、実際にはISOの人もEPCグローバルに入ってもらって作業を進めてもらっているので、事実上、このシカゴ・プロトコルがデファクトになるでしょう。このプロトコルの詳細は間もなく公開されるはずです。ちなみに、海外では既にウォルマートが有名ですが、ドイツのメトロ等、大きな小売りチェーンが上位取引先にタグ貼付を納入の条件としたいとしていますが、そこで言っているタグとは、このタイプCになります。これ以外のタグ規格の採用を決めている小売りチェーンはないという状況です。

響プロジェクト

 もう一つの課題である「タグの値段を下げる」ですが、さっきも言ったように、企業間取引に使うタグは使い切りなので、国際標準に準拠したタグを一つ3〜5円で作ろうと。これが「響プロジェクト」です。それで2年後に実際に5円以下で販売できなければ、私が逆立ちして霞ヶ関中を回る、というのがコミットメントになっているわけです。村井純さんは「裸でやる」とか脚色してますが、そこまではやりませんよ。(笑)とりあえず業界の中には、何らかの形でその目標は達成されるだろう、と見ている人が多いですね。

 それで研究開発のためのお金を18億円ほど用意したわけですが、いままでこういう話だと、業界がわーっと数十社集まってコンソーシアムを作る、いわゆるナショナル・プロジェクト方式となるのですが、僕はあのやり方が、とても嫌いです。なぜかというと、そういう連合だと、誰が責任を取るのかが不明確だから。うまくいかなかったときに、誰の責任なの?と言うときに、きまって「あの会社が悪かったんだ」とか責任のなすりつけあいが始まって、結局「みんな悪かった」という頭の悪いガバナンスを露呈してしまう。だから僕はとても嫌い。

 この目標、とても厳しいんですよ。MITも「5セントタグ」を標榜していまだに成功してないわけですから…。MITのトップと話をした時には、一言「グッドラック」と言われましたよ(苦笑)。そういうチャレンジなので、こちらとしても要求仕様をかなりハードルを高くしました。つまり、2年間開発したら、3ヶ月以内に「実際に5円で販売しろ」という条件を付けたのです。これは契約の条件です。このハードルを越えられる人に責任を持ってやってもらうことにしました。(※注4)

 例えばアメリカのベンチャー企業は、EPCの立ち上げなどについては大きな貢献があったかもしれないけど、これからは量産の時代にはいるわけで、どんな業態でもそうですが、最初にイノベートする時と、それを展開する段階ではアクターが違うわけです。それを両方持っている会社は、僕が思うにフィリップスぐらいだと思いますが、この状況はちょっとまずいと思っています。やはり一社独占になると分野は全然違いますが、マイクロソフトのような状況にもなりかねないでしょう。

 日本企業の人に話を聞くと私たちはソリューションに集中したい。タグは外から買ってきます、新原さん紹介してください、と日本企業はほとんどそう言ってくる。彼らはソリューションに特化しているのは自分たちだけだろう、と思ってるんですが、実は全社そういう戦略なんです。それで、最初にアメリカのベンチャーの所に行くのですが彼らはウハウハですよね。必ず彼らはタグを買うのですから。ハードがなけりゃソリューションできないんだから当然ですが、それで今度はフィリップス社にいく。こういうのは、とてもまずいと思っていて、それを解決するためには、量産できる力を持つ会社に開発をやってもらわないといけない、ということで、量産も含めた研究開発契約にしたのです。このような問題意識は欧米のユーザ企業も持っていて、彼らは日本製のタグを「買う」と言ってます。実際に調達交渉にトップが来日する事もありますよ。1社独占だと、競争がないので交渉が出来ません。だから、彼らも日本で量産されるタグに関心があるわけです。この局面に関する限り、日立とかNECとかは価格低減の技術、量産能力ともに十分持っていると思っています。ですから、タグは日本が「輸出」出来る商品だと思うのです。

 こういう形で「響プロジェクト」として公募したところ、日立製作所が手を挙げてくれて、さっき紹介した「2年で開発完了、3ヶ月以内で5円で売る」ことをコミットメントしました。また開発をサポートする協力会社として、NEC、大日本印刷、凸版印刷が決まりました。責任は日立が負うので、協力会社との関係も日立が整理することになります。

 響プロジェクトの技術的な課題としては、印刷と実装技術、チップの低価格化と極小化技術等になります。ユーザ側も、今年度の実証実験に参加しているユーザ7業界(出版、家電、アパレル、建設機器、医薬品、運送、CD/DVDレンタル)が協力しています。他のメーカーも、松下、三菱電機とかは、できあがったものを使っていくと言っています。あと、フレンド響ということで、関心のある企業には進捗状況などを報告したり、情報交換をする場を作ることにしています。

 響プロジェクトに係る知的財産権についてですが、響では日立に対して、強い制限をかけていて、バイドール条項で日立の所有となるIPについて、RANDライセンス(※注5)で提供しろと書いてあります。しかも、根っこの技術についても響の基礎である限りRANDで公開しろと書いてあります。これはかなり厳しい条件で、よくある根っこの技術を離さないので結局ライセンス料を払わないと使えない、という状況を回避するためです。これらの条件を日立は受け入れた上で引き受けたわけですが、これはバーコードにおけるIBMがそうであったように、公開することでマーケットシェアを取っていくという戦略を明確に打ち出したという点が重要だと思っています。

 3.周波数とタグを巡る課題

 --タグが実際に普及して行くには、周波数の開放がきちんと行われることが重要だと考えています。現在利用可能な帯域は2Ghzオーバーでかなり特性が厳しいという話もあります。国際的に使われているUHF帯の開放が課題だと思うのですがその辺りの取り組みはいかがでしょうか。

 新原: ICタグと周波数の問題については、総務省がUHF帯を空ける作業をしていますが、まだ不十分だと思っています。國領先生、村井先生、総務省、さらには携帯電話キャリアともお話をしているのですが、UHF帯のメリットを最大限に引き出すためにはどのような環境で使えるのかがとても重要です。「スプリアス規制」という言葉があります。いわゆる「電波干渉を避けるための出力規制」ですね。隣の帯域に漏れ出す電波(スプリアス)による影響が出ないように干渉レベルを定めて、出力の規制をするというものです。

  いくら回り込み特性に優れる900MHz帯といっても、電力が弱すぎては電波が飛びません。去年タグの実証実験をしたときは、干渉相手の「言い値」で実験をしてみたのですが、在来帯域と比べても相当に効果が悪いことがわかりました、また、ドコモの基地局に近い場合には影響が出ないように遮蔽(シールド)する必要があるなど、実用にはとうてい使えない条件であったので、今年の実験に際して総務省電波部やドコモと交渉しました。米国企業からも不満があることを伝えたり、KDDIがそれまで使っていた時と比べて何百倍もスプリアス規制が厳しいなんておかしいじゃないか、と。それでもドコモは難色を示したのですが、素人目で考えても、携帯電話よりタグの方が距離は出ないと分かります。だいぶ総務省も善処していますが、まだまだ不十分だと考えています。電波の問題は各国毎の事情が複雑に絡む問題だとは思いますが、少なくとも米欧と同じ条件で使えるようにして欲しい、と思っています。この議論はまだ決着していなくて、ちょうど6月にUHF帯における電子タグについて、情報通信審議会に諮られているところで、年内に議論を取りまとめて、来年の通常国会で(技術企画を定める)政令の改正、つまり年度内の実用化を目指すというスケジュールになっています。ただし、実用化が可能になった、という事と、実際に使われるようになったというのは全然意味が違いますから、そこはしっかりやってくれ、と注文を付けています。

 プライバシー問題への対処

 --実際にタグが使われるようになった場合の課題として、プライバシーの問題がありますよね。実際に活用が進む中で、無防備にプライバシーに係る情報がタグ経由で読みとられてしまうことについては、根強い懸念がありますが。

 新原: ICタグについてのプライバシーの問題はまだ問題は顕在化していません。リーダ/ライターがそこら中で売っているわけではないですから。ただし、消費者が不安に思う点があっただけで売れなくなるのがマーケティング的な鉄則なので、ここは予め不安を封じなければなりません。一般的には役所は問題が起こってから対処するという事後対応が多いのですが、このようなルールメイキングの局面においては、もし不安があることが想定されるなら、もう先に作ってしまえば良いだろうと。実際に運用して、まずいところが有ればフィックスしていけばいいだろうという発想で対応しました。行政法の言葉で「公定力」という、役所は絶対に間違っちゃいけない、役所の決めたことは絶対正しいという議論がありますが、米国のようにルールを作って、うまくいかなければどんどん直せばいいのです。将来的な課題ではありますが、そのような方針でプライバシーとICタグに関するルールを作りました。ただし、霞ヶ関の中での統一が重要なので、経済省と総務省で政府としての統一ガイドラインとして公表しました。(※注6)

  このガイドラインの中身ですが、消費者が何を不安がっているかといえば、例えばタグ付きの本を持ち歩いているときに、自分が何の本を読んでるかを誰かに読みとられてしまうのではないか、という類の話ですね。つまり、気づかないうちに読みとられる不安です。これに対応するために、電子タグを装着したまま売るときは、その旨を告知しなければならず、そのタグの中にはどのような情報が格納されているのかも知らせなければなりません。これは消費者の知る権利の確保という趣旨です。

  その上で、リサイクルや安全性確保のためにタグをつけている場合であっても、消費者がイヤと言った場合は、その機能を停止させなければならないと定めています。つまり、最終的な選択権を消費者の手に委ねる、この2点が根幹になっています。

 今年度の実証実験

 --今年の実証実験についてはどのような展開を考えられているでしょうか。今年は、昨年よりも拡大した形で実施されるというお話を聞いているのですが。

 新原: 今年の実証実験については(※注7)、家電業界、電子機器、産業機械、書籍、業務用の医薬品、陸海運、CD/DVDレンタルの7業界に参加してもらいます。

  中でも書籍は、ブックオフが入りましたから、中古書店業界も含めた形での参加になります。医薬品ですが、これは病院向けの生物由来医薬が対象で、薬事法で定められたロット番号や卸先などをしっかりと管理するために利用します。百貨店関係は、衣類とか靴ですね。物流業界はとても大きな実験規模になります。全国で東京・横浜・名古屋・大阪・神戸などの各地の物流拠点を指定して、国内はもちろん、海外から実際にタグ付きのものを通関させるというものです。

  この実証実験に当たっての基本的なポリシーは、「ユーザ省庁の協力・承認を取り付けてからじゃないとやらない」というものです。要するに、僕たちは単なるイベントをやろうと思ってるんじゃない。実際に業界に導入されていくプロトタイプを作りたいわけです。そうなると、経済産業省だけで出来ることには限界があるし、それぞれの業界の所管官庁の支援がないと絶対にいいものは出来ない。だから、業界団体で足並みを揃えて(所管官庁の承認を含めて万全の体制で)出てきてもらわないとダメだし、業界の一部の会社だけとか、シンクタンク等からの申請は申し訳ないですけれど、お断りさせて頂いたのです。例えば、医薬品の実証実験は厚生労働省と、物流は国土交通省と完全にジョイントプロジェクトになっていて、それぞれの役所の中に、実証実験を担当するオフィスを作ってもらいました。

 まとめ

 新原: 経済産業省のICタグに関する政策については、インフラ周りの課題、すなわちコード体系の標準化、及びエア・インタフェースの互換性という国際標準化という政策、および価格低減という政策課題の二点に集中して、民間企業の邪魔はしないというのが基本的な方針です。

  やや詳しくその理由を申し上げれば、この図を見て頂きたいんですが、(図は略)

 この図で赤で示したインフラ周り、すなわち周波数とか通信コードはレントがない分野だと言えます。使ってもらわないと話にならないから標準化を進めますし、そこで開発した技術についてのライセンスもフリーかRANDしかないでしょうね。そういう考え方で、「5円タグ」を推進しているわけです。一方でこの図で言うところの上の青い部分、ソフトウェアとかノウハウの部分についてはレントが出るので、それはビジネスモデルとしてどんどんやっていただいて、そこを政府が口出しするべきではない。むしろそれは発展を阻害します。このように、赤と青の部分をしっかり切り分けていくことがとても大切です。

  このような、経済産業省の進めている政策について、よく言われるのが、この赤と青、全部経済省がやろうとしているんじゃないか、という批判です。つまり、政府は何もするな、ということですかね。また、インフラだけじゃなくて、ソフト・ノウハウ部分も標準化するべきじゃないか?という、全く逆の方面からの批判もあります。

  しかし、我々としては、このようなレントが出る部分、出ない部分をきちんと分けて、政策対応を進めていくことこそが、ICタグの普及促進政策にあたって、一番重要なことではないかと考えているところなのです。

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 ※注1:経済産業省の電子タグ実証実験。16年度事業の詳細はhttp://www.meti.go.jp/information/data/c40329bj.htmlにある

 ※注2:Le souk((株)先端情報工学研究所のウェブサイトに取材記事あり)

 ※注3:EPC globalは国際EAN(European Article Number

 ※注4:響プロジェクトの公募条件

 ※注5:Reasonable And Non-Discriminatory:「妥当な価格かつ非差別的に」という意味。

 ※注6:「電子タグに関するプライバシー保護ガイドライン」の公表について

 ※注7:平成16年度の採択結果

富士通:ICタグで児童らの安全確保

2004年09月27日 Mainichi INTERACTIVE
 富士通は無線ICタグ(RFID、無線自動認証)で児童・生徒の登下校を把握できる学校向けの安全対策システムを開発し、27日から東京都豊島区の立教小学校(田中司校長、児童数718人)で試験導入した。ランドセルに小型のICタグを入れて校門を通過すると自動的に認識する仕組みで、児童一人一人の安全確認ができる。

 またタグを持たない部外者が無断で学校に入った場合には、アラームで異常を知らせる。システムの価格は1500万円程度で、富士通は他校にも広く売り込む考えだ。

 無線ICタグは10メートル四方程度に微弱な電波を発信。児童が校門を出入りするたびに受信機が感知し、保護者の携帯電話などに時刻をメール配信する。監視カメラと連動させれば全児童の登下校を映像と時刻で確認できる。タグは学校関係者にも配布され、持たない人が入ろうとすると警報が鳴り侵入を知らせる。

 立教小はまず4、6年生のうちの80人に試験導入。同小の石井輝義・情報科主任は「登校した児童にタイムカードを押してもらうわけにもいかない。無線タグの導入で、児童の動きを規制することなく安全を確保できるようになる」と話している。【野原大輔】

無線ICタグで医療廃棄物追跡 日本IBMなど実証実験

2004/08/21 asahi.com
 日本IBMと産業廃棄物処理の呉羽環境(福島県)は、超小型無線ICタグ(荷札)を使った医療廃棄物処理の追跡システムを構築して、大規模な実証実験をスタートさせた。医療廃棄物処理の流れを確実につかみ、不法投棄の防止に役立てるねらい。

 実験では、タグの張り付け方やタグ情報の読みとり方法などに関するデータを収集する。05年には福島県内の呉羽総合病院で、実際に医療廃棄物を詰め込んだ箱にタグを付けて、病院から運び出された廃棄物が、目的地の処理場に確実に運ばれたかどうかなどを調査して、所在地情報もネットで一括管理する。

 医療廃棄物については、悪質な運搬業者が不法に投棄する事件が目立つ。一方で、廃棄物処理法の改正で不法投棄への規制強化が進み、投棄をした運搬業者だけではなく、捨てられた医療廃棄物を出した病院なども処罰の対象となる。このためこうしたシステムに関心が高まっている。

 日本IBMは、今回の実験がうまくいけば、本格的な医療廃棄物の処理システムを構築し、全国各地の病院にシステムの導入を勧めていく方針。

 無線ICタグは、弱い電波を介してIC(集積回路)チップに情報を読み書きできる電子荷札。最近は、商品に付けて流通経路を記録する実験が進むなど各方面で活用方法が模索されている。

電子荷札「ICタグ」、日中韓で規格統一

2004/07/18 読売新聞 Yomiuri On-Line
 日本、中国、韓国の3か国が、商品に取り付ける電子荷札「ICタグ」の規格を2006年度に統一することを目指し、技術の共同開発に乗り出すことで合意する見通しになったことが、17日明らかになった。

 3か国の政府や民間企業が来年度に共同で実証実験に取り組む。アジアのハイテク先進国である3か国が標準化に取り組むことで、国際標準づくりの主導権を握りたい考えだ。

 麻生総務相がこうした方針を、26日に札幌市内で開かれる3か国の情報通信相会合で提唱する。総務省は3か国での合意を踏まえ、来年度予算の概算要求に実証実験の費用を盛り込む方針だ。

 ICタグは、1辺1ミリ以下の微細なIC(集積回路)チップに商品情報などを書き込み、アンテナから発信される電波で情報を読み取り機に送信する。在庫や流通管理に利用でき、いつでもどこでもコンピューターネットワークにつながった「ユビキタス」社会を実現する技術として注目されている。

 例えば、スーパーマーケットでICタグが埋め込まれた農産物を、店頭の端末にかざすと、生産地や添加物、使われた農薬や肥料の履歴などが細かく表示され、消費者が必要な情報を知ることができる。買い物かごに入れた多数の商品の代金の精算をレジで一瞬に済ますことも可能になる。

 しかし、ICタグに入力するデータの形式や、読み書きに用いる方式(規格)などを国際的に共通化しなければ、国境を越えて取引される多様な商品に対応できないという課題が残っていた。このため、地理的にも近く、農産物や家電製品などの相互取引も多い日中韓の3か国が、標準規格の技術を共同開発し、ICタグを幅広い分野で活用できるようにすることにした。

 この分野では、すでに、米国や欧州がそれぞれ規格の標準化に取り組み始めている。アジアの主要3国が連携することで、欧米に対抗し、国際標準づくりをリードする狙いがある。3か国は、これまでにも、インターネットの次世代技術や第4世代携帯電話の開発で共同歩調をとっている。

 3か国は作業部会を早急に設置し、実証実験の具体的な項目などを早急に詰める方針だ。

 ◆ICタグ=小さな集積回路(IC)にアンテナを付けて、電波で情報を送受信するタグ(荷札)。商品情報管理で使われてきたバーコードに比べ、はるかに多い記憶容量を持つので、詳細な情報を記録できる。

NECら4社、RFIDタグを利用した駐輪場管理システムを開発

2004/2/26 PC Web

 NECとNECシステム建設、凸版印刷、ワイイーシーソリューションズの4社は、RFIDタグ(無線タグ)を利用した駐輪場・自転車管理システムを共同開発、全国の自治体向けに販売していくと発表した。対象となるのは全国自治体などで、来年度の販売開始が予定されている。価格は1,000万円からの予定となっている。

 また、同社らは同事業の推進にあたって「e-自転車対策事業化コンソーシアム」を設立、NTTドコモの協力と共に、実証実験並びに効果測定などを行っていく。

 このシステムは自転車に所有者IDを示すRFIDタグを取り付け、駐輪場入り口に設置した読み取りゲートでその情報を読み取ることにより、自転車管理の効率化を図るもの。ゲート通過時には管理者のモニタ上に情報が表示されるほか、その情報を自治体などのセンターで管理することにより、RFIDタグを貼り付けられた自転車が盗難されたり、長期間放置されている場合には所有者にメールなどで連絡を取ることなども可能になる。

 RFIDタグの読み取りに関してはゲートだけではなく係員が持ち運ぶための携帯型RFIDリーダーも用意され、駐輪場以外の場所に放置されている自転車にRFIDタグが取り付けられていた場合、その情報をセンターと照会し、所有者の特定を行い、連絡をとる仕組みも用意される。

 RFIDタグにはユーザーIDのみが記録され、所有者の氏名や連絡先などはセンター側で管理する。また、RFIDタグがシール状などでははがれてしまう可能性があるため、自転車に埋め込むなどの方法も検討されている。

 「e-自転車対策事業化コンソーシアム」では、NECがシステム企画・開発・販売およびとりまとめを、NECシステム建設がシステム設計・構築、監視カメラおよびゲートの提供を行い、凸版印刷がシステム販売とRFIDの提供、ワイイーシーソリューションズがASPサービスの提供と駐輪場管理ソフトの開発を行う。また、NTTドコモはRFIDリーダー付き携帯端末などの提供を行う。

 「地方自治体では、放置自転車の管理に非常に大きなコストがかかっている」(NEC)とのことで、同社らとしては、同システムの導入により、駐輪場管理の簡便さはもちろん、駐輪場内での放置自転車減少や、放置自転車の移動や処理に関する費用節減が見込めるとしている。

【レポート】坂村教授、「RFID普及のカギがチップコストというのはあまりに短絡的」

2004/01/21 PC Web 日高彰

 情報処理推進機構(IPA)は、開発成果発表などを行う「IPAX Winter 2004」を21日から2日間の日程で開幕した。初日にはT-Engineフォーラム会長・ユビキタスIDセンター代表で東京大学教授の坂村健氏が、RFIDなどユビキタスコンピューティング環境を実現するためのインフラをテーマに基調講演を行った。

 「これから何が起こるかわからない激動の時代に、どういうディシジョンをとるかによって、産業構造が決まる。PCが可能性のある製品だと十数年前に言われていて、いろいろな試みが行われた結果出てきた部品がいま使われている。同じことがユビキタスコンピューティングにも起こる。国際標準でもう決まっているからこの規格、というような安易な議論は絶対にいけない。国際協調はもちろん重要だが、やはり日本の中でどういうポジションを得て、どういうものに従って展開していくかを決めるのが非常に大事」と文字通り声を大にして強調する坂村氏。今年から独立行政法人となったIPAに期待することとしても、日本におけるユビキタス社会の将来像を明確に描くこと、そして先進的なアプリケーションを実際に開発していくことが重要だと訴える。

 今月から横須賀などで始まった青果物トレーサビリティシステムの実証実験については「野菜を作るところから食べるところまで一貫して情報システムが支援するということ」が最大の意義であると説明する。「誰が作ったのか、どんな農薬・肥料をいつどれだけ使ったか、いつ収穫したか、どこにどう運ばれたかなど、1本のダイコンにまつわるストーリーを全部知ることができる。農薬の名前を見てわからなければ、リンクしてある資料を見ることもできる。食品の安全性は命にかかわることであり、誰もが知りたい情報。一見同じに見えるダイコンも、これからはより情報が公開されているものが売れるようになる。このようにダイレクトに消費者の役に立つアプリケーションがユビキタスには求められるのであって、もちろん流通コスト削減にもなるが、流通コストを下げることだけを目的としたバーコードとは違うものだ」。

 商品1個1個すべてにICチップを添付する必要があるので、そのコストが店頭の商品価格に跳ね返ってくることを懸念する声もある。しかし坂村氏は「生産者、流通にかかわるいくつかの業者、そして消費者をあわせると、1個の商品には5者くらいのプレイヤーが関係している。単純計算だが、チップが1個10円だったとしても5で割れば2円。チップを付けることによって2円以上の価値を生めばいい。あらゆる食物の情報が1個2円でわかるなら私は払いたいと思う。何だかわからないものを食べて死ぬのはいやだ。そして、チップをつけることで当然流通コストは下がる。コンピューターはそもそも生産性を上げるために導入するものだ。そう考えると、『普及のカギはチップコストの低減』などというのはあまりに短絡的すぎる。100円の商品に10円のチップは付けられない、なんてのはウソ」と一蹴する。

 坂村氏は「アプリケーション、RFID、ユビキタス・コミュニケータと作っていくのはけっこう大変なことだ。チップだけを作って終わりではなくトータルシステムなので、この分野に日本人は弱かった」と話し、多くの領域にまたがるサービスの開発はこれまで日本が苦手とした分野だったと指摘する。しかし、組み込みコンピューターの開発基盤「T-Engine」が立ち上がり、技術が広く流通する環境が整いつつある。「いまTRONは強い。なぜなら1回ひどい目に遭った経験があるからで、ずっとうまくいっていたら逆に、もし何か起こったときに弱いのだろう。ユビキタスに関しては『そう簡単にはやられないぞ』という自負がある」。

 最後に坂村氏は、いつも講演で強調している「技術による国際貢献」を繰り返し訴えた。「世界が争うのではなく、私たちが技術を発信し、世界の人たちがそれを使うことによって、日本が技術貢献をしたことになる。私たちから情報を、新しいものを出さなければいけない。先進的な実証実験も私たちがリスクを負ってやらなければいけない。その結果は、失敗も成功もすべてオープンにする。あらゆる情報を外に出すことで世界が、日本はよくやっている、貢献しているとわかってくれる。それは10年後にわかることであり、いますぐにわかることではない」。

2010年度には83倍の需要も見込まれるRFID、鍵を握るのは宅配便での採用か?

2004/01/14 PC Web

 矢野経済研究所は「RFID(無線ICタグ)市場に関する調査結果」と題したレポートを発表した。同社はその需要について、数量ベースでは2010年度で現在の83倍以上を予測しており、RFID市場の未来は明るいようだ。特に物流分野については2010年度にRFID全体の90%近くの需要を占めると予測されており、既に導入が進んでいる製造分野に加えて、今後は宅配便や航空手荷物の管理など物流分野での普及が期待されている。

 レポートによれば、2003年度の国内市場規模は、見込みにおいて1,450万枚で前年度比137%となっている。この中で最も多いのは製造(FA関連)分野で41.4%となった。製造分野では従来からRFIDの導入が進んでおり、同社は「 製品が完成するまでのところで利用されることが多く、 部品ひとつひとつに付けられ、加工や組み立てに伴って記憶データも追加訂正が行われる」としており、既に製造業では無くてなならないものとなっているようだ。

 レポートでは2005年度において2003年度比で数量ベースでは197%、金額ベースでも113%、2010年度では2005年度比で同4,260%、568%の需要を予測、その中で物流分野での需要が89.8%(2010年度)を占めると予測している。つまり、今後のRFIDの普及の鍵を握るのは宅配便や航空手荷物の管理などの物流分野というわけだ。導入の要因として、同社はこの業界のコスト意識の高さからRFIDの単価の低下が必要とし、タグの価格次第では2006〜2008年あたりに大手宅配便メーカーが導入していることも考えられるとしている。既に宅配便の電子伝票や配送ラベルに利用することも可能な1枚数十円のRFIDも開発されており、今後の展開が期待される。また、航空手荷物の分野では空港内の手荷物搬送装置の認識率向上のためタグベンダなどによる実証実験が行われており、米国でのテロ事件以降のセキュリティ意識の向上と相まっての普及が予測されている。

バーコードで商品の属性情報取得できるPHSが登場 T-Engineフォーラムが発表

2003/12/03 PC Web

 T-EngineフォーラムとユビキタスIDセンターは、ucode仕様のRFIDと1次元バーコードの読み書き機能を搭載したPHS「UC-Phone」と、このPHSを利用して、商品などの属性情報をやり取りできるシステムを開発した。実際の運用は来年になる。またこれにともない、サトーと凸版印刷をucode仕様バーコードを発行できる企業として認定した。

 ucodeは、同センターが規格を定めた標準IDタグで、これに準拠したバーコードを読み取ると、そのバーコードのついた「モノ」の属性などさまざまな関連情報を取得し、識別することができる。

 「UC-Phone」は、商品などに付されたバーコードを非接触で読み取り、その商品の情報を問うメッセージがインターネット経由でユビキタスIDセンターに送られ、「解決サーバー」が処理、WAN/LANを介し、個々の商品情報をもつサーバーと交信、生産履歴など、商品の属性情報が「UC-Phone」に送信される。解決サーバーとWAN/LANの間は、eTRONを利用して、認証暗号通信ができる「eTP(entity transfer protocol)」と呼ばれるプロトコルを用い、安全性を高めている。

 ucodeを読み取る機器としては、PDA型の端末「ユビキタス・コミュニケータ(UC)」がすでに開発されているが、今回、端末としてPHSを採用したのは、基地局の費用が安く、導入へのハードルが低く、屋内外を問わず使用しやすいためで、バーコードをはじめ、既存のシステムを活用しながら、ユビキタスコンピューティングを徐々に普及させることを目指す。「UC-Phone」の製品化は、各メーカーが担当する見込みで、価格は約4万円になる模様だ。

 T-Engineフォーラム会長とユビキタスIDセンター代表を兼任する坂村健 東京大学教授は「ucodeは、流通や大手企業だけでなく、小規模企業や個人までを視野に入れている。ユビキタスID関連の市場規模は3年後には全体で1,000億円程度になるとみている。我々の目指すものはバーコードに完全に取って代わるものではなく、バーコードでできる領域は残していく。でなければ、かえってユビキタスは社会に浸透しない」と述べた。

ハイテクウォーカー:第93回 RFIDのプライバシー問題はどうなっている?

2003/11/11 PC Web 佐藤晃洋

 世間ではここのところ、RFID関連の話題が盛んだ。ただ、RFIDが使われることで便利になる分野がある一方で、プライバシー問題に関して神経質になっている読者の方も多いのではないだろうか。そんな中、先週土曜日に桐蔭横浜大学において開催された情報ネットワーク法学会 第3回研究大会でもRFIDとプライバシーの問題が主要な議題のひとつとして取り上げられ、数多くの研究者からこの問題に関する意見が相次いだ。今回はそれらの意見をご紹介しつつ、この問題について改めて考えてみたい。

 ○EPC globalのプライバシーガイドラインの中身は?

 RFIDといえば、先月末にRFIDの2大推進組織のひとつであるAuto-ID Centerが「EPC global」へと移行したことはご存知の方も多いだろうが、その移行に伴い各種プロトコルの仕様を始めとした多くの文書が発表されていることはあまり知られていないと思われる。その中に実は、EPC global準拠のRFID(以下「EPCタグ」)の使用に関するプライバシーガイドラインを定めた「Guidelines on EPC for Consumer Products」という文書が含まれているのだが、今回の学会ではこの文書について、実際にEPC globalのIndependent Policy Advisory Councilメンバーとして同文書の策定に関わった、Alex Allan氏(元英国政府e-envoy担当官)が基調講演にて説明を行った。

 Allan氏は、同ガイドラインの主要な要素として「Notice」「Choice」「Education」「Data Collection」の4要素を挙げた。このうち「Notice」は「EPCタグが付属している物には必ずロゴが記載されること」、「Choice」は「消費者はEPCタグを取り外すなどの方法で無効化するための情報を得ることができること」ということで、改めて説明するほどのものでもないだろう。

 ひとつ飛ばして「Data Collection」については、「(EPCタグを利用する)企業は、全ての準拠法を遵守するほか、自らのプライバシーポリシーを公表することが求められる」と述べた。また、同氏はこの点に関連して「EPCタグと個人情報をリンクさせる場合は、EUのデータ保護ディレクティブに基づき(消費者の)明示的な同意が必要になると思われるほか、利用目的も正当なものに制限されるだろう」と述べ、「オーストラリアのプライバシーコミッショナーからも同じようなコメントを受けている」と補足した。

 Allan氏が最も重要視しているのは「Education」のようだ。同氏は「プライバシーの問題は確かに重要だが、一部ではそれが過大評価されている部分があり、正しい認識を持ってもらうためには(今回策定した)EPCのガイドラインを消費者に周知していかないといけない」と述べたほか、「(適切な周知が行われないと)消費者のボイコットだけではなく、政府による過度の規制を招く可能性もある」「リスクを必要以上に恐れるべきではなく、正しく評価していく姿勢が必要だ」と述べ、EPCタグに対する正しい知識を広めていく必要性を訴えた。

 なお今回のガイドラインはあくまでファーストステップということで、実際の技術開発が進むにつれ順次アップデートが行われていく予定となっている。関係者の話では、「このガイドラインではクラスアクションによる訴訟が提起された場合に勝てない」との指摘が既に一部の弁護士から出ているということで、今後、基準の厳格化や運用体制の整備が急務となる見込みだ。

 ○RFIDと個人情報保護法との関係など問題が山積

 このようにRFIDを推進する組織側でもプライバシーに関するガイドラインが定められるなどの動きが出てきているが、一方で、既存の関連法との関係を考えると、まだまだ問題は山積している。その点についても今回の大会では複数の研究者が指摘や提案を行った。 <

 まず午前中の個別報告に立った藤村明子氏(NTT情報流通プラットフォーム研究所)は、RFIDが犯罪捜査に利用される可能性を指摘した上で「RFIDを利用した犯罪捜査での証拠収集が適法と言えるかどうかが、近い将来裁判において争点となる可能性が高い」との見解を示した。また同氏は個人情報保護法が今日のようにRFID技術が現実味を帯びる前に書かれた法律であるために、RFIDを利用する局面では同法との関係が問題になる可能性が高いことも指摘し、その具体例として「RFIDに関連付けられたデータベース情報の訂正を求める権利」や「RFIDが読み取られた履歴を知る権利」などを挙げた。

 午後のパネルディスカッションに登場した佐々木良一氏(東京電機大学)は「個人情報を保護しようとすると、一方で不正者の追跡を困難にするケースや、個人情報の流出を見逃すケースなども考えられる」として、個人情報保護とその他のセキュリティ対策との利害が対立するケースもありうるとの意見を表明した。そこで同氏はそれらの相反する概念を定式化した上でシミュレーションにより最適化を行う「多重リスクコミュニケータ」モデルを提案し、「このようなシミュレーションの結果をユーザに提示した上で議論を行っていくことが重要ではないか」と述べた。

 この後、話はRFIDという枠を離れ、ネットワーク上におけるプライバシー保護全般の話題に移っていくことになる。そこで次回は引き続き同大会からそれらプライバシー関連の議論の模様を、そして余裕があればそれ以外の話題もあわせてお伝えすることにしたい。

RFIDのグローバルな運営に向けた現状 - EPC globalを中心に国際標準確立へ

2003/10/27 PC Web

 全世界共通のRFIDを使い、物流管理などを国境を越えてシームレスに行うことができる。このような世界の実現に向けてAuto-ID CenterやEPC(Electronic Product Code)globalが中心となり「EPC System」と呼ばれるRFIDの世界標準を定めようとしている。この現状を紹介し、今後の展開などを説明する説明会が開かれた。

 説明会において、慶應義塾大学環境情報学部教授でAuto-ID Center Japan Laboratory のResearch Directorでもある村井純氏は「現実的な(システム)」という言葉を繰り返し用い、RFIDの世界規模の運用実現に向けて確実に進歩があることを強調した。同氏は「大学を中心とした組織がグローバルな組織となり、実際に番号を割り当てての運用というロールが行われる段階になった」という。ここで言う「グローバルな組織」とはEPC globalのことだ。

 EPC globalは国際EAN協会とアメリカの流通コード機関であるUCCが共同で所有する非営利法人で、EPCシステムの管理・運用を行っている。国際EAN協会のHenri Barthel氏によれば研究に基づく標準の確立、確立した標準の運用テスト、研究の3つが主な役割という。また、Auto-ID Centerに関してはその開発成果をEPC globalに移管するが、Auto-ID Center Executive DirectorのKevin Ashton氏は「(Auto-ID Centerは)無くなるわけではなくさらに次世代を視野に入れた研究・開発を続ける」とした。Auto-ID Centerが技術開発を担当し、EPCグローバルはそれを実際の流通やビジネスへ適用するというのが両者の関係となる。

 日本におけるEPCシステムの窓口となる流通システム開発センター専務理事の坂井宏氏は、EPCシステムについて「EPCシステムとは、RFIDとネットワーク技術を組み合わせたもの」と述べ、「無線タグに書き込まれた商品のEPCコードをキーとしてインターネット経由で関連データベースにアクセスし、その商品の属性情報を即時に取得することができる」とそのメリットを語った。同氏は「2005年からの流通標準となる」とし、「現行のバーコードのようなシステムと個体ごとのシリアルナンバーを組み合わせたもの」と、バーコードシステムの延長上にある非常に実現性の高いものであることを語った。

 説明会には経済産業省商務情報政策局の新原浩朗氏も参加し「国際標準でなければ標準たり得ない」と、どの国・企業のものであるかにかかわらずEPCシステムの利用が可能なことの重要性を強調した。同氏はバーコードが国際標準の確立により普及した例をあげ、EPCシステムも早期の国際標準確立が必要であることを説いた。同氏は「この1、2年が勝負」とする。また、EPCシステムはサプライマネージメントや商品のトレーサビリティを市場にもたらすものであり、「IT1分野の問題ではない。経済全体の問題」(同氏)とし、企業/国際間での調整のため国家が関与する必要があるとの認識を示した。

 さて、東京大学教授の坂村健氏もYRPユビキタス・ネットワーキング研究所でRFIDの普及を目指している。これにより規格の1本化が妨げられないのかという質問に対しては「坂村氏とはお互いにいい補完関係」(村井氏)「坂村氏もこの(EPCシステムの)コードを採用するという話を聞いている。1本化は可能」(新原氏)とあくまで競合関係ではなく協力してRFIDの普及を進めていくと解答された。Auto-ID Centerの活動に関して外部から意見を募る顧問会議には坂村氏も名を連ねている。村井氏は「坂村氏がTRONの上に構築したシステムは強固なもの」と評価し、将来的にその技術がEPCシステムにとっても有益なものとなるという考えを述べた。「坂村氏とはお互いがビークル(のりもの)」(村井氏)

 村井氏はRFID/EPCシステムのここまでの歩みについて「グローバルな議論ができる段階にまで来たことに意味を感じる」とし、現実的な運用に向けての確かな手応えを感じているようだ。

手の平端末でダイコンの産地もわかる - 坂村氏、新型ユビキタス端末を発表

2003/10/24 PC Web

 YRPユビキタス・ネットワーキング研究所とT-Engineフォーラムは24日、ユビキタスIDの読み取りに対応したコミュニケーションツール「ユビキタス・コミュニケータ(UC)」を開発したと発表した。一般向けには12月に開催される「TRONSHOW2004」で公開される。

 UCは、ユビキタスIDセンターの発行する標準タグ「ucode」の読み取りと、外部との通信機能を備えた情報端末。UCのプロトタイプは従来から各所でデモンストレーション公開されていたが、今回は画像処理、暗号処理、ビデオコントローラ、eTRON(セキュリティ基板)インタフェースの機能を、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所が新規開発したASICに統合し、本体を手の平サイズに小型化した。

 今回発表された端末ではCPUに日立製作所のSH-3を採用しているが、UCはT-Engineプラットフォーム上で開発されているので、ソフトウェアは再コンパイルするだけでARMやMIPSアーキテクチャのCPUにも対応できる。マルチメディア機能としては、最大VGA(640×480)サイズのMPEG-4動画を毎秒30フレーム圧縮伸張できる動画機能、UXGA(1600×1200)サイズのJPEG画像を1秒以内に伸張できるJPEGアクセラレータ、2次元バーコードの読み取りなどが行えるCMOSカメラ、デジタル放送チューナーなどとの接続が可能なデジタルビデオインタフェースなどを備えている。

 本体には320×320ドット表示タッチパネル液晶、SDメモリーカードスロット(2スロット)、eTRON SIMカードスロット、スウィープ型指紋センサー、USBポート(ホスト・クライアント各1)、赤外線通信インタフェース、ハンズフリーマイク、スピーカなどを備える。無線LAN機能を内蔵しているが、必要に応じてBluetoothやPHSの機能を持たせることも可能。外形寸法は120×75×17.2mmで、重量は約175g。

 YRPユビキタス研究所所長・T-Engineフォーラム会長の坂村健氏は記者会見で、ucodeタグを付けた食品や衣料、薬などを前にしてUCのデモンストレーションを行った。品物に付いているタグにUCを近づけると、野菜では産地や生産者、薬では使用期限などの情報が画面に表示される。品物に関する全情報がタグ内に記録されている場合はその情報を即座に表示する。全情報がタグの容量に収まりきらない場合は、まずユビキタスID解決サーバーに対して品物のucodeに対応する情報がどのサーバーにあるかを問い合わせ、その後しかるべきサーバーとの間で通信を行い情報を取得する。

 また、ucodeの読み取り機能だけでなく、デジタル放送の受信機やポータブルビデオプレイヤー、携帯電話などとしても使える可能性を持っているほか、店舗など特定地点を訪れたユーザーに対して情報を配信するという使い方も可能。

 ucodeが付いていることは必ず明示するのが運用ポリシーだという。「ICタグ付きの商品を買うと追跡されるのでは?」と考える消費者のために、購入後タグを破棄できるよう切り取り線まで用意されている 坂村氏は「小さいチップができただけではユビキタス環境は立ち上がらないが、これだけ(多用途で)楽しめるものができたことで、ユビキタス・コミュニケータというマーケットができると確信している。今回端末を実用的なサイズにできたことで、当初考えられていたよりもかなり早くユビキタスコンピューティング社会が到来するのではないか」と述べ、単にタグリーダーとして開発することもできたが、あえて動画機能など楽しみの要素を多く盛り込むことで、UCを普及させるきっかけにしていきたいと説明する。

 今回のUCはあくまでリファレンスモデルの役割を果たすものとして発表されており、機器メーカーがこのアーキテクチャを利用して製品化したものが、実際に市場に出回る端末となる。YRPユビキタス・ネットワーキング研究所が製品を作るわけではないため、坂村氏は価格については明言しなかったが、イメージとしては「いくら機能を盛り込んだからといって数十万円になることはあり得ない。しかし1万円以下になることもあり得ない。PDA並、デジタルカメラ並の数万円で手に入るのではないか」と話している。

ICタグ、2006年〜2007年頃にはバーコードの代替へと - 野村総研

2003/09/08 PC Web

 野村総合研究所は、近い将来、物品管理をはじめとした広い分野へ普及が見込まれる「ICタグ」についての報告を行った。

 同研究所 情報技術調査室の藤吉栄二氏は今回取り上げるICタグの定義を行った。藤吉氏によれば、本質としては「RFID(Radio Frequency IDentification)」、つまり、"電波を用いて情報を伝達する個体識別のためのタグ"と定義されるもので、機能としては「個体識別」と「無線による読み取りが可能」の2点が挙げられるという。

 個別識別の手段としてはすでにバーコードが広く用いられているが、従来型のバーコードでは蓄積できる情報量に限りがあるほか、リーダーを近くまで接近させる必要性があったが、ICタグでは数Kバイトまでの情報を蓄積することが可能なほか、無線の方式によっては数十メートル離れていても情報の読み取りが可能になるなどのメリットがある。

 情報伝達に用いられる無線周波数という観点から大きく分類すると、125KHz(300KHz以下)、13.56MHz、830-930MHz(UHF帯)、2.45GHzに分けることができ、最近の動向としては「13.56MHzの利用拡大とUHF帯の国内利用解放議論が盛ん」であるという。もちろん、標準化の動きも進んでおり、今年末から来年にかけて、各種の周波数帯がISOによる標準化がなされる見込みであるという。

 既に英国ではICタグを利用した店頭における盗難防止システムがジレットによって実験されているほか、ドイツではエクストラ・フューチャー・ストアがICタグをはじめとした様々なIT関連技術を取り入れたスーパーマーケットの実験を行っている。もちろん、同研究所でも各種ICタグの評価実験を行っているが、実験の結果、現在のところ「認識できない死角の存在(タグの向きによってリーダーが読み取れない場合がある)」「一括読み取りの不確実性(タグ同士の間隔が狭いと読み取りに失敗するケースが増える)」などの問題が明らかになっており、さらなる技術的実績の積み上げと利用者(消費者・企業)の立場に立った価値創造が不可欠であるという結論に達している。

 ICタグの普及について、情報・通信コンサルティング部 上級コンサルタントの渡辺秀介氏は「物流・店頭での利用拡大が普及のトリガーになるだろう」と指摘、まずは倉庫や工場・店舗内など限られた空間での利用が主となるものの、普及が進めば業界・業態全体での採用が進み、2006年〜2007年頃にはバーコードの代替品としての需要が立ち上がるだろうとした。

 単価については、工程管理やケース単位・高額商品の物流管理においては数百円レベルでも採用が進む可能性があるものの、バーコードの代替品として利用されるためにはさらなる低価格が求められる。渡辺氏によれば、「日立製作所のミューチップは現在のところ、20円〜10円の価格を実現する可能性の一番高い製品で、それら以外ももちろん開発が進められているものの、1円以下の実現にはまだまだ時間がかかる。リーダーはまだまだ低価格化が進んでいないが、各社とも優先度の高い課題として捉えている」とのことで、普及の大きなポイントになる低価格化については開発各社とも注力していることが伺える。

 日本自動認識システム協会によれば、日本国内におけるICタグ市場規模(カード型形状のものやリーダー、使用するためのシステムを含む)は2002年度が156億円、2003年度には269億円に達すると見込まれており、近い将来大きな発展が見込まれている。しかし、こうした発展を実現する為には課題も多い。渡辺氏は当面の課題として、「運用面」(標準化や相互接続性の確保)、「制度面」(事業者がICタグを導入しやすくする)、「技術面」(コスト面も含め、スムーズに運用できるようにする)、「社会的運用面」(プライバシー保護なを確立し、社会的不安を取り除く)の4つを挙げ、技術的な問題以外にも、本格普及させるための課題は大きいと指摘した。

究極の狂牛病対策へ - 無線ICタグを牛に埋め込む管理技術が向上

2003/09/05 PC Web

 カナダのAdvanced IDは、無線通信による非接触認識技術「RFID(Radio Frequency Identification)」を用いた牛などの家畜管理システムの研究開発を手がけている。同社は、新たに無線ICタグのデータ読み取り距離を延長し、性能の向上を図る実験に成功したとの発表を行った。

 RFIDは、カードもしくはタグ状の媒体に超小型のICチップを搭載し、電波によってデータの書き込み/読み取りを実行、アンテナを利用したデータ通信で自動認識する技術。製品管理には、一般的にバーコードが広く用いられているものの、RFIDの無線ICタグには数Kバイトに及ぶ情報を格納することができ、非接触で複数一括の読み取りが行えるため、管理業務の高速化が実現する。また、バーコードと比較して、汚れやほこりの影響を受けにくく、容易には複製や偽造ができないといったメリットがある。

 Advanced IDは、カナダのBallco Feeders Custom Feedlotにおいてフィールド実験を進めており、68頭の牛に対して、同社が独自に開発した無線ICタグを埋め込み、専用スキャナによる認識精度のテストが実施された。最大5フィート(約1.5メートル)離れた距離でもデータの読み取りが可能で、これは従来製品のスキャニング性能より約5倍の性能アップに値するという。

 現在、カナダではCanadian Cattle Identification Agency(CCIA)が中心となって、いわゆる狂牛病と呼ばれるBSE対策に、RFIDなどを用いた家畜の追跡管理プログラム「Canadian Cattle Identification Program」の整備が行われている。今回の実験は、CCIAの基準をクリアするための第一歩と位置付けられており、実用化が進めば、より短時間で個別認識できる管理システムが完成するため、同社は今後も、新製品の正式認定を目指した努力を続けていく。

 RFIDを含むユビキタスIDによる製品管理は、日本でも農産物の安全性をチェックするシステムとして研究開発が進められており、物流業界において各種の利用サービス導入が検討されている。

日本ユニシス、日本航空と共同で航空貨物対象に無線ICタグ適用実験

2003/06/20 PC Web

 日本ユニシスは、日本航空と共同で今年2月から実施してきた、国際航空貨物業務への無線ICタグ適用実証実験を5月末に終了した。その結果、実用化すれば、期待すべき効果があることを確認できた、として、近々第2段階として貨物倉庫内での実業務への適用可能性を検証する実験を開始、9月頃までに完了する予定だ。

 両社は、国際航空貨物業務でのICタグ活用の可能性検証を目的として、輸入貨物倉庫内の貨物管理に焦点をあてて検証した。今回の実験では、JAL成田貨物支店内に10m四方の擬似貨物倉庫を設置、貨物、柱に無線ICタグを付け、フォークリフトに搭載したセンサーで、貨物の位置を自動認識させた。今後は、貨物倉庫内全般で、実用面での貨物位置管理の検証を中心に、フォークリフトの動態管理などへの適用可能性について検証していく意向だ。

 無線ICタグは、最近注目されている自動認識技術のひとつだ。無線通信、データ書き込み/読取機能を備えた超小型のICチップとアンテナを用い、データ交信する。従来のバーコードと比べ、複数一括読み取りが可能であるとともに、汚れやほこりの影響が小なく、容易には複製や偽造ができない、といった点が優れているとされる。

 また、ICタグに集約された膨大な情報をネットワークを介して収集することにより、新たなサービスや事業の創出、業務効率化、商品、機器の管理など幅広い応用範囲が想定されている。

「手ぶら旅行」実現へ、成田空港公団など共同研究

2003/04/18 PC Web

 新東京国際空港公団(NAA)は、「次世代空港システム技術研究組合」を設立する、と発表した。自宅で宅配会社に手荷物を預け、渡航先空港のターンテーブルで手荷物を受け取ることを可能とする、「手ぶら旅行」の実現と、セキュリティの向上、効率的な空と陸の運輸連携システムの開発を目的とする。この組合には当初、日本航空、全日本空輸、富士通、松下電器産業、NTTデータなど16社が参加する。

 「手ぶら旅行」は、無線通信による非接触認識技術「RFID(Radio Frequency Identification)」を用いた「e-タグ」を利用する。旅客は、航空券をインターネットで予約・購入する際、ICチップ内蔵の携帯端末などに本人確認、認証のための情報を書き込み、自宅から宅配便で、荷物を空港に送る。荷物にはこの旅客情報が書き込まれた「e-タグ」が付けられ、目的地の空港まで運ばれ、e-タグから認証情報を読みとり、手渡される。旅客はこの間、手ぶらですみ、チェックインや出国手続きも、携帯端末でできるようになる、というものだ。

 同組合では、低廉なe-タグ、高精度の読み取り書き込み機器、システム運用技術の開発を進め、成田空港第2旅客ターミナルで、日本航空、全日空便により、サンフランシスコ、香港、ホノルルなど世界6空港とネットワークを組み、12月から約半年間、「手ぶら旅行」の試行運用を実施する。

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