TOPIC No.3−4 ラムサール条約

01. ラムサール条約 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
02. ラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約:Convention on Wetlands of International Importance especially as Waterfowl Habitat )平成18年2月 外務省
03. ラムサール条約登録湿地
04. ラムサール条約登録湿地関係市町村会議
05. 日本で01番目登録「釧路湿原」 (1980年) 
06.  02番目登録「伊豆沼・内沼」(1985年) 宮城県仙北平野
07. 日本最大のコハクチョウの中継地「クッチャロ湖」(1989年) 北海道北部オホーツク海沿岸
08. 04番目登録「ウトナイ湖」(1991年) 北海道苫小牧市
07. 「霧多布湿原(きりたっぷしつげん)」 (1993年) 北海道厚岸郡浜中町
08. 「厚岸湖(あつけしこ)・別寒辺牛湿原(べかんべうししつげん)」 (1993年) 北海道厚岸町
09. 「谷津干潟(やつひがた)」 (1993年) 千葉県習志野市
10. 「片野鴨池(かたのかもいけ)」 (1993年) 石川県加賀市/越前加賀海岸国定公園
11. 「琵琶湖」 (1993年) 滋賀県
12. 「佐潟(さかた)」(1996年) 新潟市西区赤塚
13.  「漫湖(まんこ)」(1999年) 沖縄県那覇市と豊見城市
14.  13番目登録「宮島沼(みやじまぬま)」(2002年) 北海道美唄市(びばいし)
09. 「藤前干潟(ふじまえひがた)」(2002年) 名古屋市/国指定藤前干潟鳥獣保護区(集団渡来地)
10. 伝説の湿原「雨竜沼湿原(うりゅうぬましつげん)」(2005年) 北海道空知支庁雨竜町 暑寒別火山の東中腹/暑寒別天売焼尻国定公園
11. 日本一の高層湿原「サロベツ原野」(2005年) 北海道留萌支庁/「利尻礼文サロベツ国立公園」
12. 「濤沸湖(とうふつこ)」(2005年) 北海道網走市/網走国定公園
13. 「阿寒湖(あかんこ))」(2005年) 北海道釧路市(旧阿寒町)/阿寒国立公園
14. 砂嘴「野付半島(のつけはんとう)・野付湾」(2005年) 北海道標津町〜別海町/国指定野付半島・野付湾鳥獣保護区(集団渡来地)
15. 「風蓮湖(ふうれんこ)・春国岱(しゅんくにたい) 」(2005年) 北海道根室支庁/野付風蓮道立自然公園(のつけふうれんどうりつしぜんこうえん)
16. 低層湿地「仏沼(ほとけぬま)」(2005年) 青森県三沢市
17. 「蕪栗沼(かぶくりぬま)・周辺水田」(2005年) 宮城県大崎市(旧田尻町)/国指定蕪栗沼・周辺水田鳥獣保護区(集団渡来地)
18. 高層湿原「尾瀬(おぜ)」(2005年) 尾瀬国立公園
19. 「奥日光の湿原」(2005年) 栃木県日光市/日本の秘境100選
20. 「三方五湖(みかたごこ)」(2005年) 福井県三方上中郡若狭町
21. 世界最北の大サンゴ群生域「串本(くしもと)沿岸海域(串本海中公園周辺)」(2005年) 和歌山県串本町/錆浦(さびうら)地区、潮岬西岸地区、通夜島地区の3つの海域
22. 「宍道湖・中海」(2005年) 鳥取県・島根県
23. 「秋吉台地下水系」(2005年)  山口県美祢市秋芳町 、美東町
24. 中間湿原 「くじゅう坊ガツル・タデ原湿原」 (2005年) 大分県
25. ベッコウトンボの生息地保護区「藺牟田池(いむたいけ)」(2005年)  鹿児島県薩摩川内市 泥炭形成植物群落
26. 砂浜海岸「屋久島永田浜(やくしまながたはま)」(2005年) 鹿児島県熊毛郡屋久島町/霧島屋久国立公園特別地域
27. サンゴ礁「慶良間諸島(けらましょとう)海域」(2005年) 沖縄県渡嘉敷村、座間味村/国定公園海中公園
28. マングローブ林、干潟「名蔵アンパル(なぐらあんぱる、名蔵網張)」(2005年) 沖縄県石垣市/西表石垣国立公園

ラムサール条約

西日本新聞

 「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」として1971年、イランのカスピ海湖畔のラムサールで採択された。湿地の保全・再生、持続的な活用、そのための情報交換や教育・普及啓発などを目指す。水鳥の生息環境を守るイメージが強かったが、99年の第7回会議で湿地の概念を拡大し、生物の多様性を重視する方向に視点を広げた。このことが、「秋吉台地下水系」の登録に結び付いた。日本は80年に加入し、国内で33カ所を登録。締約国数は147カ国、登録地は1639カ所(2005年11月現在)。


瓢湖や久米島など計4か所、ラムサール条約の登録湿地に

2008年10月03日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 水鳥の生息地などを保護するラムサール条約の登録湿地に、新潟県阿賀野市の瓢湖(ひょうこ)や沖縄県の久米島など計4か所が加わる見込みとなった。

 瓢湖はハクチョウ約5000羽が越冬することで知られ、久米島は絶滅危惧(きぐ)種のキクザトサワヘビの生息地。

バイオ燃料開発で湿地破壊 ラムサール条約決議案

2008/09/22 中国新聞ニュ−ス

 世界各国で急速に進むバイオ燃料の開発が、貴重な湿地の生態系破壊を招いていると警告し、各国政府に環境影響評価(アセスメント)の実施など慎重な対応を求めるラムサール条約締約国会議の決議案が二十一日、明らかになった。十月二十八日から韓国で開く会議で採択を目指す。

 地球温暖化対策や原油高騰を背景にバイオ燃料の原料になる植物の栽培は拡大している。決議案はこれによる環境破壊への懸念の高まりを示したもので、条約に加盟する約百六十の国の政策にも影響を与えそうだ。

 条約の科学技術評価委員会がまとめた決議案は、東南アジアなどの湿地の天然林が破壊され、バイオ燃料に使われるアブラヤシの林に転用された結果、土壌中の温室効果ガスが大量に大気中に放出されるなど、さまざまな悪影響が既に報告されている、と指摘。

 自然の湿地を改変してバイオ燃料関連植物を栽培する際には、計画段階からアセスメントを行い、災害防止機能、食料生産や水資源確保への貢献など、湿地が持つさまざまな機能に配慮することを条約締約国に求めた。

 また、バイオ燃料の原料として検討されている植物には大量の水が必要な種があるとして、栽培が湿地の周辺である場合でも、湿地への水の供給などに悪影響を与えないよう対策を取るべきだとした。

 決議案には、評価委の下で湿地保全に配慮した原料作物栽培の指針をつくることも盛り込まれた。

宮城と山形の湿地も登録へ ラムサール条約で環境省

2008年09月17日 中国新聞ニュ−ス

 水鳥の生息地として国際的に重要な湿地を保全するラムサール条約の登録湿地として、宮城県大崎市の化女沼と、山形県鶴岡市の大山上池・下池が新たに登録されることが17日までにほぼ固まった。既に登録されている琵琶湖の区域の拡大もほぼ決まった。10月に韓国で開く同条約締約国会議に合わせ、正式決定される見通し。

 このほか沖縄県・久米島の白瀬川源流域の一部などを登録することについても、環境省と地元との協議が進んでいる。

 環境省によると、化女沼は農業用のため池として維持されてきたが、現在はダム湖。ヒシクイやマガン、オオハクチョウなど渡り鳥の重要な越冬地となり、オジロワシなどの猛禽類も確認されている。

 大山上池・下池も農業用のため池で、ガンカモ類などの重要な越冬地。特に多数のマガモやコハクチョウが飛来するほか、猛禽類も多く生息している。

 琵琶湖は1993年に登録されているが、今回は琵琶湖とつながる長命寺川と「西の湖」まで拡大される方向。

ベッコウトンボ:希少動植物種、市民ら73人が観察会−−薩摩川内 /鹿児島

2008年04月27日 毎日新聞 地方版 Mainichi INTERACTIVE

 国内希少野生動植物種に指定されているべッコウトンボの観察会が26日、薩摩川内市祁答院町の藺牟田(いむた)池であり、市内の小学生や市民ら73人が観察と池の清掃活動をした。

 ベッコウトンボは体長約4センチ。羽化後間もない体や羽の斑点がべっ甲色に見えることから名が付いた。1994年に指定を受け、捕獲が禁止されている。国内で数カ所しかない生息地として知られる同池は、国際的に重要な湿地として2005年、ラムサール条約に登録された。

 観察会では、ベッコウトンボを保護する会の永野萌子(はえこ)・代表世話人(84)らが、生息の状況や観察方法を説明。全員で池の周囲をトンボを探しながら歩いた。同会によると過去2年間は1万匹を超えたが、今年は池の水位と温度が低く、少なめと予想される。5月から羽化が本格化し、6月初めまで観察できるという。【馬場茂】

目指せ!ラムサール登録

2008年04月26日 京都新聞 Kyoto Shimbun

東近江市、伊庭内湖を調査へ

 滋賀県東近江市は滋賀県立大と提携し、今夏にも市内の伊庭内湖の動植物や水質の調査に乗り出す。調査結果を基に伊庭内湖の保全や、環境と調和したまちづくりを進め、将来のラムサール条約登録を目指す。

 伊庭内湖は約49ヘクタール。近江八幡市から安土町にまたがる西の湖に次いで大きい琵琶湖2番目の内湖。江戸時代には湖上交通の要所として知られた。現在はヨシ群落が広がり、水鳥や魚の格好のすみかになっている。

 伊庭内湖の本格調査は市としては初めてで、水質のほか魚など動植物の種類を調べる。湖底の泥を一定の深さまで採取し、中に含まれる種の種類から植物の変遷も探る。

 同市は、本年度から伊庭内湖を核に自然との共生を進める「伊庭の里湖(さとうみ)づくり」事業を進めており、調査もこの一環として実施し、結果を今後の保全に生かす。  市生活環境課は「将来は伊庭内湖のラムサール条約登録を目指したい。住民と内湖のかかわりを通じ、環境を守るシステムもつくれれば」と話している。

仏沼保全へ活用ガイド作製  三沢市教委

2008年04月24日 河北新聞

 青森県三沢市のラムサール条約登録湿地「仏沼」の生態系保全につなげようと、三沢市教委は、仏沼のガイド冊子「活用の手引」を作製。市内の全小中学校と高校に配布し、自然観察会や授業の教材として使ってもらう。

 ガイドはA4判で102ページ。1500部作製した。仏沼の生態系や歴史、地形や地質など11項目を収録。2005年11月にラムサール条約に登録されるまでの経緯や、生息する動植物のリストを盛り込んだ。

 生態系の項目では、絶滅危惧(きぐ)種に指定されているオオセッカやコジュリンなどの鳥類のほか、ジョウロウスゲやハマカキランの植物、ゴマシジミやカラカネイトトンボといった昆虫類を紹介している。

 三沢市教委は「地域の財産である仏沼のことを理解してもらい、素晴らしい自然を後世に伝えてほしい」と話している。

絶滅危惧種の“宝湖”…福井・三方五湖周辺に16種類

2008年04月22日 読売新聞 Yomiuri On-Line

カワヤツメやホトケドジョウ 福井県、初の本格調査

 ラムサール条約に登録された「三方五湖」(福井県若狭、美浜両町)と、周辺の河川を対象に県が初めて行った本格的な調査で、魚類計67種類が生息していることが確認された。このうち16種類は国や県のレッドデータブックに「絶滅危惧(きぐ)種」などとして掲載されており、県自然保護課は「淡水魚や回遊魚など多様な魚類をはぐくむ貴重な湖だと改めてわかった」としている。

 淡水と海水が混ざり合う三方五湖は、湖によって塩分濃度が異なり、国内でも珍しい環境として知られる。しかし、最近は生活排水の流入などにより、水質が悪化。魚類の生息数の減少といった影響が心配されており、県は実態を把握するために2006年から2年間、調査を進めてきた。

 対象は、塩水湖のため固有種が生息しないとされる日向湖を除く、三方湖(淡水湖)、水月湖、菅湖、久々子湖(いずれも汽水湖)。それぞれの湖で毎月、生息している魚の種類や体長などについて調べたほか、5〜10月は、湖に流れ込む川も対象にして、産卵のために遡上(そじょう)する魚を調査した。

 同課によると、湖ではコイやマアジなど計53種類、河川ではギンブナやボラなど計54種類をそれぞれ確認。国や県のレッドデータブックに掲載されている魚類は、湖では絶滅の危険が増大しているとされる「絶滅危惧2種」のヤツメウナギ科のカワヤツメや、「準絶滅危惧種」のサヨリ科のクルメサヨリなど10種類で、河川では絶滅の危機にひんしている「絶滅危惧1種」のドジョウ科のホトケドジョウなど15種類だった。

 ただ、ウロコの数が他の水域に生息する種と異なるなど三方五湖特有の生態を持ち、ラムサール条約登録時に注目されたコイ科のハスは、今回の調査では確認できなかった。ハスは1993年を最後に見つかっておらず、同課は「湖にハスの姿を取り戻せるよう、水質の改善や環境保全活動に力を入れたい」としている。

追跡やまがた:ラムサール条約登録目指す「上池・下池」 入り込み客増に懸念 /山形

2008年04月13日 毎日新聞 地方版 Mainichi INTERACTIVE

 ◇住民意識高め保全対策を

 4月14日は「干潟を守る日」。失われつつある干潟や湿地の保全活動が各地で盛り上がる中、環境省は鶴岡市大山の上池(かみいけ)と下池(しもいけ)の「ラムサール条約」登録を目指している。多様な生態系をどう賢明に利用し、持続的な管理を実現していくのか、住民の声などから課題を探った。【長南里香】

 「ガハハハーン」。朝もやの湖面を切り裂き野太い鳴き声が響く。ひと冬で約2800羽が飛来する国天然記念物オオヒシクイの群れが飛び立った。上池と下池は、水鳥の聖地だ。17〜18種類ものカモが訪れ、中でもマガモは約6万羽飛来し国内一。白鳥も2000羽以上集まる。

 江戸時代に農業用のため池として造られた池は上池が14・9ヘクタール、下池が24・8ヘクタール。池の自然は、周りを囲む高館山(標高274メートル)の豊かな生態系に支えられている。カモが飛来すれば、傷つき弱ったものを狙いオジロワシやクマタカなど猛きん類が集まる。低地ながらブナが繁茂する森には、キツネやムササビが生息し、ギフチョウやオニヤンマが舞う。

 ラムサール条約登録への動きを地域住民は歓迎する。大山自治会の中浜裕会長が「大山の活性化に結びつく期待が大きい」と話す。

 一方、一帯を40年以上調査する「尾浦の自然を守る会」代表の同市大山の写真家、太田威さん(64)は心配を募らせる。カタクリやキクザキイチゲが一斉に花を咲かせる春先は盗掘が後を絶たないからだ。6日には宮城県の男性が鶴岡署に検挙された。

 太田さんは「登録後にさらに人が入れば、深刻な状況に陥る。マナー啓発や入り込み客制限など対策を立てなければ、自然環境が失われる本末転倒の結末になりかねない」と危惧(きぐ)する。

 1985年に国内で2番目に登録された「伊豆沼・内沼」(宮城県)サンクチュアリセンターの嶋田哲郎・主任研究員は「登録をゴールではなくスタートととらえ、まず地域住民が登録地の価値を認め、環境意識を高めることが必要。どう保全していくのか、十分に議論した上で受け皿となる団体を作るなど、地元が一体化しないとうまくいかない」と助言を寄せている。

 温暖化が進む中、環境の影響を特に受けやすい湿地一帯の生態系を将来にわたり守るのはたやすくない。住民は国際的評価に値する池の価値を共有し、現状を踏まえた対策を練ることが急務ではないか。

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 ■ことば

 ◇ラムサール条約

 1971年にイラン・ラムサールで採択された条約で正式名称「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。消失しつつある湿地の(1)保全(2)賢明な利用(3)交流と学習−−を目指す。日本は1980年に加盟し釧路湿原(北海道)が第1号。現在33カ所が登録され、東北は▽仏沼(青森県)▽伊豆沼・内沼(宮城県)▽蕪栗沼と周辺水田(宮城県)−−の3カ所。上池・下池が登録されれば県内初。

県:ラムサール条約登録湿地、「西之湖」「長命寺川」も 環境省に拡大申し出 /滋賀

2008年04月12日 毎日新聞 地方版 Mainichi INTERACTIVE

 ◇今秋の承認目指す

 県は11日、琵琶湖最大の内湖「西之湖」(西の湖)と下流の長命寺川をラムサール条約の登録湿地に指定するよう環境省に申し出た。琵琶湖本体は93年に登録されており、西之湖と同川を含めた拡大登録を申請する。10〜11月に韓国・昌原(チャンウォン)市で開かれる第10回条約締約国会議での承認を目指す。

 西之湖は近江八幡市と安土町にまたがる最大の内湖で、約220ヘクタール。長さ約3キロの長命寺川を通じて琵琶湖に注ぐ。西之湖のヨシ群落は全国有数で、絶滅危惧種のヌマゼミ、ヒメシオンなど貴重な動植物が多い。

 県は1月末、両市町から申し入れを受け、環境省と調整。登録済みの琵琶湖に加え、西之湖と長命寺川と、その流域計約382ヘクタールを含めるよう申請した。

 県自然環境保全課は「随分前に登録された琵琶湖を改めて重要な湿地と知ってもらうきっかけになれば」としている。【近藤希実】

西之湖、長命寺川をラムサール条約登録へ 琵琶湖含め範囲拡大

2008年04月11日 中日新聞

 近江八幡市と安土町にまたがる「西之湖」と、琵琶湖につながる「長命寺川」をラムサール条約の登録湿地にするため、県は11日に環境省を通じて条約事務局(スイス)に申請する。10月から韓国で開かれる第10回締約国会議に合わせ、登録を目指す。

 ラムサール条約は、国際的に重要な湿地と生息する動植物の保全、適性な活用を図るのが目的。締約国数は現在158に上り、国内の登録湿地数は33カ所。1993年に登録された琵琶湖も含まれている。

 西之湖は、琵琶湖につながる29の内湖のうち最大で約220ヘクタール。ヨシ群落の面積は約109ヘクタールあり、近畿地方では最大級となっている。全長約3キロの長命寺川を流下し、琵琶湖に注ぐ。今回は琵琶湖と合わせた登録範囲の拡大を目指している。

 1月に近江八幡、安土両市町から県に申し出があり、これを受けて知事が環境省に申し出ることになった。 (本安幸則)

宍道湖の自然守りたい/出雲市園町かいわい

2008年04月07日 asahi.com

 宍道湖西岸には、県立宍道湖自然館ゴビウスや宍道湖グリーンパークなど、動植物をはじめとする自然環境について学ぶことができる施設が集まる。鳥、虫、魚をよく知る研究員らが常駐、一般の人を対象に観察会を開くなど、環境保全の取り組みをすすめている。

 「望遠鏡をのぞいてみてください」。宍道湖グリーンパーク内にある野鳥観察舎で、ホシザキ野生生物研究所の森茂晃さん(38)に促された。レンズをのぞき込むと、宍道湖に突き刺さるくいの上で魚をついばむミサゴの姿が見えた。

 観察舎には火曜を除く午前9時半から午後4時の間、誰でも自由に出入りできる。8台の望遠鏡が備え付けられ、常駐する自然観察指導員の説明も聞くことができる。

 宍道湖は05年、水鳥の訪れる湿地の生態系の保護を目的としたラムサール条約に登録された。観察舎には、条約を解説するパネルも展示してある。「子どもにもわかりやすく伝えることができればと、設置しました」と森さんは話す。

 外には、水生植物や昆虫の住むビオトープ池が広がる。「自然のまま、他から生き物をいれることはしてません」と森さん。月1回、観察会を開いている。

 グリーンパークの周りに広がる田んぼには、地主の許可を得て、冬の間も水を張っている。湿った草を好むコハクチョウを呼び寄せるためだ。「鳥にえさを与えるのではなく、鳥が自然にやってくる環境づくりをしている。そこを私たちは観察させてもらっているんです」

■水生甲虫を研究

 同研究所の研究員林成多(まさ・かず)さん(35)は、主としてゲンゴロウなどの水生甲虫を研究している。県内の川に出向いて虫を捕まえ、虫の種類から川の水質を調べている。「カワゲラの仲間がいる川の水質はいい。アメリカザリガニやイトミミズのいる川は、あまりよくありません」

 水生昆虫の観察会では、講師役を務める。自身も田んぼやビオトープ池に入り、大勢の子どもたちと一緒に昆虫を探す。自然の大切さを教える啓発活動の一環だ。「僕らがここにはいないだろうなと考える場所で、子どもたちは思わぬ虫を見つけてくる。新たな発見は尽きません」

■シラウオ観察会

 隣にある宍道湖自然館ゴビウスは、県内に生息する生きものを展示している。入り口近くにある筒形の水槽では宍道湖七珍の一つでもあるシラウオが泳ぐ。「昨年度は十数匹捕れたが、今年度は数匹」と飼育員の山口勝秀さん(38)は減少を嘆く。

 イトヨ、イシドジョウなど希少種を増やすことに取り組んでいる。シラウオの長期飼育もその一つ。2年前から「1年を通してシラウオを見てもらいたい」と人工飼育を始めたが、成熟せず、まだ産卵までには至っていない。

 現在、生き残っているシラウオの成魚は宍道湖で捕獲した2匹。ゴビウスで採卵し飼育している稚魚を、今年から公開している。2月には子どもたちを対象に、観察会も開いた。山口さんは言う。「今の子どもたちは生きものに触れる場が少ない。もっと触れ合ってほしい」(文・写真 宮沢 賢一)

☆★笑顔に会いました★☆

☆「ようこそ」笑顔で出迎え☆

 ゴビウスで、入場者を出迎えるのは受付の山岡仁美さん(24)と岩成茜さん(20)笑顔と親しみやすさを大切にお客さんと接する。魚の生態に詳しい熱心なお客さんから、いろいろ教えてもらうことも。「ドジョウのオスメスの見分け方も教えてもらいました」

☆ワカサギ保護、漁協と連携☆

 「今季の漁獲量はゼロに等しい」。県水産技術センター内水面浅海部の研究員松本洋典さん(43)は、宍道湖のワカサギが危機にあることを訴える。保護のため、宍道湖漁協と連携した取り組みをすすめている。「時間はかかると思うけど、ワカサギを増やし守っていきたい」

☆スケートは素人だけど…☆

 湖遊館でスケートリンクを整備し、ヨットやカヌーの乗り方も教えるのは小川貴久さん(27)。氷の厚さ、穴や凹凸がないかなど細心の注意を払い、昨年12月、荒川静香さんらが出演したアイスショーでもリンク整備をした。そんな小川さんだが「実はスケートは全くすべれません」と苦笑い。

☆間近での野鳥観察に感激☆

 2泊3日で旅行にやってきた神戸市須磨区の宮崎修さん(74)=写真右=、広子さん(68)夫妻。宍道湖を車で1周し、宍道湖グリーンパークに立ち寄り、望遠鏡で野鳥を観察した。修さんは「こんなに間近に野鳥が見られるなんて初めてです」。

◇◆よりみち わきみち まわりみち◆◇

◆ホシザキグリーン財団◆

 製氷器や業務用冷蔵庫などの大手メーカー、ホシザキ電機(本社・名古屋市)の坂本薫俊・初代社長が「故郷の自然を守りたい」と90年、故郷・島根の野生動植物の保護、繁殖などを目的に設立した。宍道湖グリーンパークや、坂本さんの故郷・雲南市木次町にオープンした自然公園「ふるさと尺の内公園」を運営している。

◆湖遊館◆

 10月上旬から5月上旬までスケートリンクとなり、多くの人が氷上のスポーツを楽しむ。夏はテニスやバレー、展示会などを開くことのできる多目的施設として利用されている。天候のいい日には、ボートやカヌーなどの水上スポーツも体験できる。営業時間は午前10時〜午後7時。一般1100円、中学生以下600円。問い合わせは(0853・62・5600)へ。


セマングム防潮堤:着工から15年ぶり完成 韓国全羅北道

2006年04月21日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 【ソウル中島哲夫】環境保護か開発優先かで日本でも注目を集めた韓国全羅北道・セマングム干拓事業のうち、世界最長となる33キロの防潮堤で約4万ヘクタールの干潟と海を閉め切る工事が21日、着工から15年ぶりに完成した。事業面積は日本の諌早湾干拓の11倍。農地を造成し実際に耕作できるまでには、さらに15年程度を要するという。

 同事業については、全羅北道の干潟の9割が失われ、生態系の破壊と深刻な環境汚染を引き起こすといった懸念から、地元住民や環境保護団体が反対運動を展開。一時、工事差し止めを命じる判決が出たこともあるが、結局は韓国史上最大の干拓事業として推進されてきた。しかし環境破壊をめぐる批判は消えていない。米余りを背景に、干拓地の用途転換の論議も起きている。

ラムサール条約登録 喜びに沸く

2005/11/09 中国新聞地域ニュース

 ▽秋吉台地下水系、中海・宍道湖 観光振興探る

 山口県の秋吉台地下水系、島根、鳥取両県にまたがる中海・宍道湖がラムサール条約に正式登録された八日、地元は喜びに沸いた。登録を機に自然遺産を再認識し、農漁業振興や観光客誘致などを見据えた、新たな地域づくりへの取り組みが始まる。(有岡英俊、村島健輔)

 秋吉台地下水系は、カルスト地形を伝って地下水が流れ、秋芳(あきよし)洞や景清(かげきよ)洞など特異な自然環境を形成する。今年は秋吉台国定公園の指定五十年。地元秋芳(しゅうほう)町の上利礼昭(あがり・れいしょう)町長は「条約の意義を住民に知らせ、秋吉台の素晴らしさを再確認したい」と喜ぶ。

 秋芳洞の入洞者数は一九七五年度の約百九十八万人をピークに、九八年度に百万人を切り、昨年度も約六十四万人と減少に歯止めがかからない。

 町観光協会は昨年二月、商店街の後継者ら約二十人に呼び掛け、「秋芳の郷 観光活性化委員会」を発足し、観光ビジョン作成を模索している。伊豆田正利副委員長は「登録は追い風。観光客が地下水に触れる催しなど、仕掛け作りを進めたい」と意気込む。

 中海・宍道湖は干拓淡水化事業の中止を経て登録となった。干拓などの反対運動に取り組んだ保母武彦島根大副学長は「住民運動で公共事業が止まった日本でも珍しい湖。登録は意義深い」。シジミ漁など盛んな漁業などへの波及効果も期待し、「登録を二つの湖のブランド確立の機会に」と未来を描く。

 条約登録により、住民を含めた環境保全活動がこれまで以上に求められる。登録に向けガイドブックを作った宍道湖・中海汽水湖研究所の竹下幹夫事務局長は「国内外への啓発活動の拠点となる環境省設置の水鳥・湿地センター建設を」と訴えた。

 中海・宍道湖がラムサール条約の登録湿地となり、自然を活用しながら人間と共存する「ワイズユース」(賢明な利用)に向けた新たなステップが始まった。

 澄田信義知事は「登録は両湖がその価値を認められたことであり、喜ばしい」。鳥取県の片山善博知事は「過去の干拓、淡水化事業は中止され、美しい景観を生かした広域観光など両県の連携のシンボルになりつつある」とし、いずれも環境の保全を誓った。

 干拓淡水化反対運動を続けた一人、宍道湖・中海汽水湖研究所の竹下幹夫事務局長は「住民運動の一つの到達点」と位置づける。かつて中海の名産だったアカガイ(サルボウ)の復活などを自然再生のシンボルとし、力を注ぐ。

 干拓淡水化事業や急傾斜の護岸の建設により、二つの湖の自然環境は大きく変わった。湖にかかわる人たちの連携が、ワイズユースには欠かせない。宍道湖・中海汽水湖研究所は九日午後六時から、ワイズユースの具体像を参加者からの提案も交えて考える「ラムサール条約が照らす湖の未来」を県民会館で開く。

観光客へのマナー徹底必要 屋久島、ラムサール登録で

2005/11/07 The Sankei Shimbun

 アカウミガメの産卵地として有名な鹿児島県・屋久島の永田浜(上屋久町)が、国際的に重要な湿地の保全を目的とするラムサール条約の登録地となる。ただ、卵が踏み荒らされるなどの問題が既に出ており、地元にとっては増加する観光客へマナーを徹底させることが緊急の課題となる。

 約10ヘクタールの永田浜は北太平洋で最大のアカウミガメ産卵地。国立公園に指定されており、8日からウガンダで開かれるラムサール条約締約国会議で正式登録される予定。

 ウミガメは県と町の条例で保護されており、上陸回数は年々増加。感動的な産卵シーンやふ化を見ようと5―8月は多くの人が訪れる。保護に取り組むNPO法人屋久島うみがめ館によると、2000年は約5300人だったが今年は1万人を超えた。

 地元では「ラムサール条約登録で国際的にも知名度が上がり、観光客がさらに増えるのでは」(上屋久町商工観光課)と期待の声も出ている。

 ウミガメ保護のため、産卵シーズンには同町などが砂浜に監視員を配置。また地区の住民らで協議会をつくり、夜に観察会を開いて、見学者がウミガメを怖がらせたりしないよう案内している。

 しかし、同館の大牟田一美代表は、一部の見学者が産卵した巣の上を歩いて踏み固めたり、勝手に巣を掘ったりしてふ化した子ガメが脱出できなくなるなどの被害が出ていると懸念。

 協議会の松田幸夫会長も「観光客が増えれば、保護活動に必要な人手も増え、高齢化が進む地元の負担も大きくなる」と早くも頭を悩ませている。(共同)

静狩湿原:国の天然記念物指定に向け 北海道・長万部町

2005年10月22日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 戦後の開墾のため、国の天然記念物指定が解除された北海道長万部町の静狩湿原について、町教委は新たに道の指定に向け、地権者の同意を得る作業を続けている。ところが、原野商法で細かく分筆された地権者のほとんどが道外におり、半数以上と連絡が取れていない。作業は難航しており、町教委は同意を得た部分だけでも指定にこぎつけたい考えだ。

 静狩湿原はミズゴケを代表種とする道内最南端の高層湿原。1922年に600ヘクタールが国の天然記念物に指定されたが、51年に食糧増産を目的に解除され、大部分が畑や牧草地に変わった。

 現在も残る約42ヘクタールには道の絶滅危ぐ種のサワランやトキソウなど多くの植物が自生しており、町は再指定を目指す。しかし、高度経済成長期に「新幹線が通るので地価が上がる」などと購入を持ちかける原野商法に荒らされ、91に分筆された。国有地と町有地を除いた84筆の地権者は65の家族か個人で、一つを除いてすべて愛知県や千葉県などの不在地主だ。

 町教委は02年、町への寄付か売却に応じるか、土地を手放さないが指定に承諾するか−−を65地権者にはがきで問い合わせた。返事が来たのは半数に満たない26。いずれかに同意したのは20にとどまった。

 未回答は19、あて先不明ではがきが戻ってきたのは20あった。購入者の死後も土地が相続されず、登記簿がそのままになっているらしい。土地があることを知らない遺族も多いとみられる。

 今年9月現在、寄付された土地と国有地、町有地、今後購入が見込める土地を合わせても全体の48%の約20ヘクタール。しかも、分筆の影響で細切れだ。町教委は道に対し、ある程度まとまった場所から指定を求めるなどの対応を検討している。

 町の太田黒唯志教育長は「指定されれば保護策も取りやすい。原野商法の弊害がこんなところにも現れ、残念だ」と話す。町に住む元高校教諭、薩川益明さん(80)は「有名になって大勢の人が来れば湿原が荒れる心配もあり、指定には賛成しない。そっとしておくのが一番いい」と話している。【去石信一】

20湿地を官報に掲載 来月ラムサール条約登録へ

2005/10/21 The Sankei Shimbun

 環境省は21日、国際的に重要な湿地を保全するラムサール条約の新たな登録湿地となるサロベツ原野(北海道)や尾瀬(福島・群馬・新潟県)など20カ所を、登録に先立つ国内手続きとして官報に掲載した。

 11月にウガンダで開かれる条約締約国会議で正式に登録、関係自治体に登録認定証が授与される予定。これで国内の登録湿地は既に登録済みの13カ所を加え、合計33カ所になる。

 その他の新規登録湿地は次の通り。

 雨竜沼湿原(北海道)▽濤沸湖(同)▽阿寒湖(同)▽野付半島・野付湾(同)▽風蓮湖・春国岱(同)▽仏沼(青森県)▽蕪栗沼・周辺水田(宮城県)▽奥日光の湿原(栃木県)▽三方5湖(福井県)▽串本沿岸海域(和歌山県)▽中海(鳥取・島根県)▽宍道湖(島根県)▽秋吉台地下水系(山口県)▽くじゅう坊ガツル・タデ原湿原(大分県)▽藺牟田池(鹿児島県)▽屋久島永田浜(同)▽慶良間諸島海域(沖縄県)▽名蔵アンパル(同)(共同)

「奥日光の湿原」全面禁煙へ…ラムサール登録を機に

2005年10月18日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 栃木県日光市は18日、「奥日光の湿原」が11月、国際的に重要な湿地と水鳥などの保全を目的としたラムサール条約に登録されるのに合わせて、登録地域全域を全面禁煙とする方針を明らかにした。

 環境省野生生物課は「ラムサール条約登録地はすでに国内13か所あるが、禁煙を義務づける例は聞いたことがない」と話している。

 条約に登録されるのは、戦場ヶ原、小田代ヶ原の両湿原と、湯の湖など約260ヘクタール。

 日光市は2003年に環境美化都市条例を施行。市内全域でたばこのポイ捨てを禁止しているが、今回は日光東照宮などと同様、「重点区域」に指定し、全面禁煙とした。

宍道湖をラムサール条約登録指定

2005/09/28 中国新聞地域ニュース

 環境省は二十七日、国際的に重要な湿地を保全するラムサール条約の新たな登録湿地として、宍道湖(島根県)、阿寒湖(北海道)など六カ所を指定すると、専門家による検討会に報告した。既に指定を報告された十四カ所を含めた二十カ所は、十一月にウガンダで開かれる条約締約国会議で新規登録される見通し。

 この日、ほかに報告されたのは、野付半島・野付湾、風蓮湖・春国岱(しゅんくにたい)(ともに北海道)、仏沼(青森県)、蕪栗沼(かぶくりぬま)・周辺水田(宮城県)で地元自治体と指定について合意した。

 宍道湖は面積約八十二平方キロメートルの汽水湖。このうち、約七十六平方キロメートルが登録予定。水産資源に恵まれ、シジミ漁などが盛んで、冬には希少種のマガンなど渡り鳥も多く飛来する。

 島根県の澄田信義知事が二〇〇三年七月、宍道湖と島根、鳥取両県にまたがる中海のラムサール条約登録を目指す方針を表明していた。中海については、今年六月に指定が決まった。

 このほか、指定が決まっているのは山口県秋芳、美東両町にまたがる秋吉台地下水系や福井県の三方五湖(みかたごこ)など。ラムサール条約は一九七一年、イランのラムサールであった国際会議で採択された。日本国内では釧路湿原(北海道)など十三カ所が登録されている。

<「賢明な利用」に努力 >

 澄田・島根県知事の話 十一月の締約国会議での宍道湖・中海の同時登録が事実上決まったと喜んでいる。条約の基本理念である「賢明な利用」の実現に向け、地域住民、関係団体などと一体になり取り組んでいく。

 宍道湖のラムサール条約登録について環境省が二十七日、登録湿地への指定を専門家の検討会に報告し、十一月にウガンダで開かれる締約国会議での中海との同時登録が事実上決まった。豊かな生態系をはぐくむ汽水域の登録は、より良い水環境を取り戻すための一歩とすべきだ。(村島健輔)

 宍道湖はスズキやコイなどの魚介類が生息し、冬にはコハクチョウやカモ類などが飛来する。

 二〇〇三年七月、澄田信義知事が中海・宍道湖の登録を目指す方針を表明。環境省は登録の条件となる、国指定鳥獣保護区特別保護地区への指定や、県や松江市など地元自治体の同意を得るため協議を進めてきた。

 今年三月、特別保護地区指定の素案を示し、登録への協議が始まった。鳥による漁業活動への影響や、「水質保全や漁業振興より、登録という言葉が先行している」と国や県の姿勢に懸念を持った宍道湖漁協との事前協議が難航した時期もあったが、八月三十一日に松江市で開かれた、国指定鳥獣保護区などの指定についての公聴会では、宍道湖漁協を含むすべての利害関係人が賛成していた。

 設立当初の「水鳥のための条約」との印象が強かったラムサール条約だが、最も重要な理念は「賢明な利用」。公聴会で宍道湖漁協の坂本清組合長が語った「豊かな自然を後世に残すための努力」が、行政だけでなく、湖に携わるすべての人に求められる。

中海・宍道湖 ラムサール条約登録へ

2005/01/05 中国新聞地域ニュース

 <命はぐくむ湿地 次代に>

 鳥の楽園 260種以上生息

 中海・宍道湖は今年、重要な湿地を守るラムサール条約登録に大きく歩みだす。両湖は国の天然記念物マガンや、コハクチョウなど西日本最大の渡り鳥の飛来地として知られ、資格は十分という。条約が掲げる目標は、ワイズユース(賢明な利用)。命をはぐくむ湿地を保全し、持続的な利用を促す。

 汽水湖としても有名な両湖は食物連鎖の頂点部分にいる鳥類はもちろん、シジミやマハゼなどの魚介類、水生植物など多くの生態系を支えている。県が登録に名乗りを上げ一年半弱。十一月にウガンダで開催される国際会議での登録へ向けカウントダウンに入り、人と自然との共存をあらためて見つめ直す機運も高まってきた。

   水辺の恵み

 五、六羽のコハクチョウが軽やかに羽ばたき、水面から飛び立った。途中、西から南へ方向を変え白い隊列を空に描いていく。群れは次々にほかの餌場へと向かっていった。斐伊川水系が流れ込む宍道湖西側の湿地帯にある、平田市の宍道湖グリーンパークそば。シベリアなどから渡ってきた冬鳥の楽園である。

 たくさんの群れで泳ぐカモの仲間キンクロハジロは、岸から見ると湖面に黒い帯ができたよう。水中に潜りシジミをついばむ。空には留鳥のミサゴ。ゆっくりと弧を描き、水面下の魚を狙う。

 ラムサール条約登録へのガイドブックをまとめた宍道湖・中海汽水湖研究所によると、両湖に生息する鳥は二百六十種以上。冬季には中海で約七万五千羽、宍道湖に約四万六千羽が飛来する。

 中海と宍道湖は塩分濃度が異なる汽水湖で、鳥たちの餌となる魚介類も豊富だからだ。

 それは湖周辺に暮らす人々にも恵みをもたらす。宍道湖は日本一のヤマトシジミの産地だ。年間を通じ、ジョレンという用具を動かす漁船が湖面に浮かぶ。網を上げればシロウオやアマサギ、ウナギなども躍る。「宍道湖七珍」といわれる食材の数々は、地元をはじめ関西方面などへも送られる。

   観察会

 自然との共存学ぶ

 「冬に宍道湖に訪れる渡り鳥の種類はどれくらいでしょう」

 ボランティアの竹下一郎さん(62)=出雲市芦渡町=はこう切り出した。宍道湖グリーンパークであった観察会。会はまず、ボランティアによる宍道湖や渡り鳥の説明から始まる。この日のテーマはシジミなどを使った貝細工。子どもたちは宍道湖に面した野鳥観察舎から、貝細工のモデルにする鳥を探すなど思い思いに楽しんでいた。

 竹下さんは公園整備や観察会の企画にも携わる。以前は国土交通省出雲河川事務所に勤務し、同公園周辺の多自然型湖岸堤の設計も担当した。

 中海や宍道湖かいわいにはグリーンパークのほか、米子水鳥公園(米子市彦名新田)など野鳥と触れ合えるスポットが少なくない。「自然と人間の共存を考えるきっかけになれば」。竹下さんはラムサール条約登録へ期待を込めた。

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 ◇環境保全 身近なことから

 島根大汽水域研究センター長 國井秀伸氏

 ラムサール条約登録は地域住民にどんな意味をもたらすのか。中海・宍道湖の自然としての価値は。島根大汽水域研究センター長の國井秀伸氏(53)は、個々人が自覚を持って足元の自然を再評価し、小さくてもいいから保全の取り組みを起こすことだと主張する。

 中海・宍道湖は鳥類だけでなく、魚介類、水生植物などでも登録の基準を満たしている。シジミ漁も経済的利益だけでなく、窒素やリンなどの有機物を湖の外へ出すという効果もあり、賢明な利用の代表例といえる。

 中海でも、現在では、護岸整備や生活排水の影響で激減してしまったが、一九五五年ごろまでは、アマモやオゴノリなどの大型植物が生い茂り肥料などに使われ、水質も守っていた。

 今、両湖の湖岸では、垂直護岸が目立つ。護岸の傾斜を緩めて浅場の再生を進めれば、生態系の復活につながる。また、緩傾斜の護岸を生かし、もっと自然とふれあう場があってもいいのではないかと思う。

 ラムサール条約は登録が目標でなく、あくまでスタート。豊かな自然を未来の世代に残し、漁業などが継続できるよう地域住民が責任をもって行動する必要がある。

 何かが目に見えて変わるわけではない。重要なのは「自分が何をできるか」という意識を持つことだ。大げさにとらえるのでなく、水を汚さないといった身近な問題から取り組むことが重要だ。

 《ラムサール条約登録への課題》 登録条件は、2万羽以上の水鳥を支えるなどの条約で定められた基準のほか、国指定鳥獣保護区特別保護地区の指定や地元自治体などからの賛意が必要となる。

 中海は昨年10月、国指定鳥獣保護区特別保護地区に指定されたが、宍道湖は現在、県指定鳥獣保護区のため、国は指定特別保護地区へ変更する。その登録変更は、地元自治体や漁業、農業団体など利害関係人への意見照会や公聴会などの手続きを経て、国の審議会に諮る。

 島根、鳥取両県知事が2003年7月にそれぞれ、登録に前向きな考えを示している。環境省山陰地区自然保護事務所鳥取支所(鳥取県岩美町)は今後、地元自治体や利害関係者との協議に入る。

イラク戦争…湿地に危機 鳥類保護団体が警告

2003年03月24日 The Sankei Shimbun

 国際的な鳥類保護団体、バード・ライフ・インターナショナル(BLI)は24日までに、イラク国内には干潟や湿地など重要な鳥類生息地が点在、固有種もいるとの調査結果を公表。「戦争により、野鳥をはじめとする自然環境に大きな影響が出る」と警告した。

 国連環境計画(UNEP)もメソポタミア大湿地の危機的な状況を警告。「戦争を終わらせ、人間と野生生物のために、湿地の再生を含めた戦後の復興を進めるべきだ」との声明を発表した。

 BLIによると、イラクには渡り鳥にとって重要な湿原や干潟が42カ所存在。チグリス・ユーフラテス川の合流地域に広がるメソポタミア大湿地の多くもイラク領内で、毎年数十万羽の水鳥や渡り鳥が越冬したり、休息地としている。

 一帯にはイラクチメドリなどイラク固有の鳥が3種類生息。カオジロオタテガモなど国際的に絶滅の恐れが高いとされる渡り鳥も確認される。

 メソポタミア大湿地は農地開発などの影響で過去10年間で10分の1に縮小。湾岸戦争での環境破壊もあって、生息環境は既に悪化している。

 BLIのマイケル・ランズ博士は「戦争での車両の通行や爆撃、原油流出などの環境汚染で、生息地破壊がさらに進む危険がある。これは周辺に住む人間にとっても望ましいことではないはずだ」と指摘している。(共同)

藤前干潟:施設建設地、折り合わず 環境省と守る会

2003年03月12日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE

 ラムサール条約に登録された藤前干潟(名古屋港)近くで12日、環境省と名古屋市、「藤前干潟を守る会」メンバー、地元自治会代表ら約30人が集まり、同干潟の保全・活用施設の建設地について協議した。しかし、干潟東側の稲永公園(同市港区)に主要施設を建設する方針の同省と、干潟北側の藤前地区(同)に建設を求める守る会側などが譲らず、折り合わぬまま終了した。

 施設の候補地とされているのは、市営グラウンドと、隣接する市のごみ焼却工場「南陽工場」の敷地内。同省は、着工時期や交通の便などの条件から、主要施設を稲永公園に、小規模施設を市営グラウンドに建設する方針を説明。同市は、法的制約などを理由に、工場敷地は提供できないとの見解を示した。

 同会は「市のごみ埋め立てを免れた干潟の目の前で、工場の敷地内に建ててこそ保全の意味がある」と主張。地元自治会は、市営グラウンドに建設する場合、整備予算の7割〜全額を充てるよう求めた。

 同会は市に対し、工場敷地の利用ができないか再検討を求めた。協議後、同省は「工場敷地が使えるとしても、敷地内にある旧工場建物の取り壊し費用を考えると、施設建設は難しいだろう」と話した。 【五味香織】

名古屋市が記念日創設へ ラムサール登録受け

2002年11月28日 The Sankei Shimbun

 名古屋市は28日、日本最大級の渡り鳥の飛来地・藤前干潟(同市港区)が、ラムサール条約に登録されたことを受け、“登録記念日”の創設を検討することを明らかにした。

 藤前干潟は今月18日、大都市にある干潟としては初めて国際的に重要な湿地を保護する同条約に登録された。干潟を保全するために市はごみ処分場計画を断念。その後、ごみ削減に取り組むなど名古屋市民の生活が変わる大きなきっかけにもなった。

 松原武久市長らが28日の市議会で「2005年日本国際博覧会などで広くアピールしたい」「世界に誇るべき干潟として記念日を設けることは意義がある」などと述べ、記念日創設への意欲を示した。

藤前干潟と宮島沼、重要湿地としてラムサール条約登録

2002年11月18日 Yomiuri On-Line

 水鳥の生息地として世界的に貴重な湿地を保全する「ラムサール条約第8回締約国会議」が18日、スペイン・バレンシアで開幕し、愛知県の藤前干潟と北海道の宮島沼が「国際的に重要な湿地」として新たに条約に登録された。

 国内登録地は、1980年に第一号として登録された釧路湿原や、琵琶湖(93年登録)などに続き、これで計13か所になった。

 藤前干潟は、シベリアとオセアニアを行き来するシギ・チドリ類の中継地として、わが国最大規模の干潟。宮島沼は、シベリアと日本を往復するガンカモ類とハクチョウ類の中継地。特にマガンの渡来数は5万羽を越える。

 同条約は71年に採択され、開発によって脅かされがちな湿地や湖沼の生態系を保全することがねらい。今回は約120か国の政府代表、国際機関、環境団体の約600人が参加した。26日までの会期中、「破壊された湿原復元の原則とガイドライン」、「湿地の持つ文化的側面の認識」などの議題を協議する。

干潟、湿地の再生事業提言 政府の新生物国家戦略案(2002/01/27)山陽新聞社

白神ブナ原生林脅かす植物

2002年09月07日 The Sankei Shimbun

 青森、秋田両県にまたがる世界遺産・白神山地の核心地域(約1万140ヘクタール)で、本来、平地や里山に自生するオオバコやシロツメクサが生えていることが、東北森林管理局の調査でわかった。

 世界最大級のブナの原生林が広がる白神山地の生態系を脅かす可能性があるといい、同局で注意深く観察を続けている。

 同局によると、オオバコやシロツメクサは、白神岳の避難小屋周辺など核心地域内の9か所で今年5月に確認された。入山者が沢登りをする際に足をかける所では点状に、登山ルート脇では線状に、キャンプ場跡地では面状に生えていた。入山者の靴や靴下に付着して運ばれ、繁殖したらしい。

 1993年に白神山地が世界遺産に指定された直後の、同局による巡視員らへの聞き取り調査では、オオバコは核心地域から北へ約1・5キロ離れた地点で見つかっていた。シロツメクサは調査例がない。

 白神山地を覆うブナの原生林は、ブナの下に低層のシダ植物、中層のオオバクロモジなどが自生しているが、これらの植物への影響が懸念されている。弘前大農学生命科学部の牧田肇教授(植生地理学)も「すぐにブナ原生林の生態系に深刻な影響を与えることはないが、注意深く見守る必要がある」としている。

 核心地域は、白神山地の標高300メートル―1243メートルの地域で、傾斜が急しゅんなため、人為的な影響をほとんど受けていないブナの原生林が残っている

自然保護の原点に…尾瀬サミットが21世紀宣言

2002年09月06日 Yomiuri On-Line

 日光国立公園・尾瀬の自然保護について話し合う「尾瀬サミット」(尾瀬保護財団主催)が6日午前、群馬県片品村の尾瀬ロッジで開かれ、「21世紀の尾瀬の宣言」を採択した。宣言の採択は初めて。

 尾瀬は、山小屋の廃材不法投棄や携帯電話基地局の設置問題で揺れており、宣言は「自然保護の原点に立ち帰って、尾瀬を守ることの重要性を再認識する必要がある」と訴えた。

ラムサール条約の登録湿地数を倍増へ…環境省方針

2002年07月15日 Yomiuri On-Line

 環境省は15日、干潟や湖沼などの生態系保全を目的とする「ラムサール条約」の国内の登録湿地数を、2005年までに22か所にほぼ倍増させる方針を明らかにした。世界規模では同年までに2000か所に倍増させる目標があり、11月にスペインで開かれる第8回締約国会議に向けてすでに提出した「各国別報告書」に明記した。

 国内には、釧路湿原や琵琶湖など11か所の登録地があるが、登録準備を進めている宮島沼(北海道美唄市)や藤前干潟(名古屋市)などの指定を目指す。

 同報告書にはこのほか、千葉県の3番瀬や島根県の中海での干拓事業中止に加え、釧路川での湿原再生事業の取り組みを、日本政府の姿勢として書き込んだ。

 同条約は1971年にイランのラムサールで採択され、133か国の計1179の湿地が登録されている。日本は1980年に加盟した。

世界の湿地、今世紀半減

2000年03月18日

 世界中の湿地の50%が消え、淡水魚の35%が絶滅の危機に陥るなど、今世紀の水資源の大量利用などで淡水域の生態系が大きな打撃を受けたとする報告書を、国際自然保護連合(IUCN)がまとめた。オランダのハーグで始まった世界水フォーラムで19日に発表する。IUCNは「人口急増が予想される来世紀に向け、淡水域の生態系とのかかわり方を抜本的に変える必要がある」と指摘している。

湖沼水質保全計画を決定

2000年02月24日

 政府は24日の公害対策会議(会長・小渕恵三首相)の幹事会で、鳥取、島根両県にまたがる中海や島根県の宍道湖、長野県の野尻湖について、水質保全事業などを定めた新たな湖沼水質保全計画(計画期間1999〜2003年度)を決めた。

 計画には、下水道施設や家畜のふん尿処理施設整備、水生植物による浄化施設設置や、排水を出す工場への立ち入り検査の強化などを盛り込んでいる。

干潟湿地の保全と再生を

1999年09月25日 共同通信社

 世界的に失われつつある干潟や湿地の保全と再生を―。米国など海外の専門家と日本の市民団体が話し合う国際シンポジウムが25日、埋め立て計画が出ている東京湾・三番瀬がある千葉県市川市で開かれた。日本湿地ネットワークなどの主催。10月3日にかけて、同様のシンポジウムを藤前干潟がある名古屋市や中池見湿地でLNG基地計画のある福井県敦賀市などで相次いで開く予定。

沖縄・漫湖をラムサール条約登録

May 16, 1999

水辺の環境保全を目指すラムサール条約の登録地として、沖縄県の漫湖(まんこ)が新たに認定され、コスタリカのサンホセのホテルで15日、同条約のデルマー・ブラスコ事務局長から那覇市の玉城正一助役に対し認定書が授与された。漫湖は日本で11番目、干潟としては千葉県の谷津干潟に次いで2カ所目の登録地となった。

 漫湖は那覇市と豊見城村(とみぐすくそん)にまたがる地域に広がる約58ヘクタールの干潟で、シギ、チドリなどの渡り鳥の飛来地として知られる。この日、認定書を受け取った玉城助役は「漫湖に水鳥が飛来して休めるように、力を合わせて水質の浄化と周辺の環境整備に努めていきたい」などと誓いの言葉を述べた。(時事)

ガン・カモ類ネットが発足

1999年05月15日 共同通信社
 アジア太平洋地域のガン・カモ類の保護を目指す『東アジア地域ガンカモ類重要生息地ネットワーク』の発足式が、中米コスタリカで15日(現地時間14日)、国際的に重要な湿地保全のためのラムサール条約の第7回締約国会議に合わせて行われた。

 参加国は日本、ロシア、モンゴル、中国、韓国、フィリピンの6カ国で、保全対象地は25カ所。この中には日本のクッチャロ湖(北海道浜頓別町)、白石川(宮城県大河原町)など14カ所が含まれる。

藤前干潟の保全を報告

1999年05月13日 共同通信社
 国際的に重要な湿地の保全を目指して、中米・コスタリカで開かれているラムサール条約の第7回締約国会議で、環境庁は12日、名古屋港の藤前干潟へのごみ処分場計画が中止された経過などを報告した。

環境庁の鹿野久男審議官は渡り鳥の渡来地として有名な藤前干潟について『20年前から処分場計画があったが、環境影響評価の結果を踏まえ、干潟の保全を優先するため計画の取りやめが決まった』と報告し、この決定を『地元名古屋市の英断』と評価した。

ラムサール条約 に関する情報

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