TOPIC No.3-42 高温ガス炉(HTGR/ High Temperature Gas-cooled Reactor)/原子力発電

01.
 日本の「高温ガス炉」に各国の熱い視線 CastTV
02.
 日本で初めて運転する高温ガス炉が初臨界に達しました。(1998年11月)高温工学試験研究炉(HTTR:High Temperature Engineering Test Reactor)/日本原子力研究開発機構
03.
 高温ガス炉の優れた安全特性を実証 by日本原子力研究開発機構
04.
 国外の動向-世界における高温ガス炉の開発計画 byHTTR(高温工学試験研究炉)
05.
 高温ガス炉 by PukiWiki
06.
 高温ガス炉 日本原子力産業協会
07.
 新型炉/温ガス炉
08.
 高温ガス炉 住友商事
09.
 低炭素社会を実現する技術を探る - 2050年、「エコテク」爆発(第3回)原子力/海外進出を目指す国産技術 小型化で途上国にも広がる(2008年09月05日)日経エコロジー(2008年8月号)より


 黒鉛減速ヘリウム冷却型炉を高温ガス炉(HTGR)という。高温ガス炉は、イギリス、アメリカ、西ドイツで開発されてきた。わが国では日本原子力研究開発機構の高温工学試験研究炉(HTTR)が1998年11月に初臨界を達成し、現在は安全性実証試験を実施している。

 一般に原子炉冷却材であるヘリウムガスの温度が700℃〜950℃を達成するHTGRシステムは、炉心構成、(炉心)出力密度、原子炉圧力容器及び一次系主要機器に特徴があり、将来、製鉄用還元ガス生産などの化学プロセス産業用熱源、排熱を利用した蒸気タービン発電、地域暖房など多段階に複数の用途に利用できる可能性を有している。炉心は耐熱性に優れる被覆燃料粒子と黒鉛材料で構成され、ヘリウムガスで冷却され、低出力密度炉心と相まって高度の固有安全性を達成できる。燃料としてウランの他トリウムも実用化されており、平均燃焼度約10万MWd/tが得られる。by原子力防災基礎用語集


Watch Here 日本の「高温ガス炉」に各国の熱い視線

Nov 2, 2010 3:59 Cast TV

 日本の「高温ガス炉」という次世代の原子炉が、発電の際に電気以外のエネルギーも生み出すということで、各国の熱い視線が集まっています。 この高温ガス炉の心臓部にFNNのカメラが初めて入りました。

 茨城・大洗町で、現在整備が進められているのが「高温ガス炉」。この中に、世界をリードする技術が集約されているという。

 原子炉は、全長およそ30メートルの3層構造で、大部分が地下に造られている。階段を下りていくと、高温ガス炉の中心部分である原子炉の真横に到着する。

ここにカメラが入るのは初めてのこと。

普段入ることのできない原子炉の格納容器の内部では、放射線の値が0.1と、自然界と同レベルの安全な値となっている。通常の原子力発電所では、整備中でも放射線が高レベルとなり、原子炉の真横までは入れない。高温ガス炉の特徴は、その安全性だという。

日本原子力研究開発機構の小川益郎センター長は「作業員の被ばく量につきましても、非常に少ないといったようなことがございます」と語った。一般的な原子炉では、炉心を冷やす冷却材に水を使うが、高温ガス炉で使われるのは、ヘリウムガス。ヘリウムガスは1,000度を超えても変化せず、水のように放射性物質に汚染されることがない。そして直径1mmほどの粒が核燃料となるが、セラミックで4重に覆われていて、炉心の爆発を防ぐ構造になっているという。

次の特徴は、エネルギーをさまざまな形で取り出せるということ。日本の高温ガス炉は、ほかの国ではできない900度という高温で稼働する。 900度であるがゆえに、電気だけでなく、大量の熱エネルギーや純粋な水素も精製する。熱エネルギーは製鉄や暖房に、水素は電池自動車やロケットの燃料など、さまざまな分野で生かすことが期待できる。アメリカは、すでに国策として高温ガス炉の開発を進めているが、日本のような高温ガス炉はできていないため、10月に、日本の高温ガス炉の試験運転で得られたデータを6,000万円で買い取った。

また尖閣問題の際注目されたレアアースのとれるカザフスタンとの経済会議でも話題になった。カザフスタン原子力センターのカディル・ジャノフ総裁は「日本の最新技術を持った第4世代の原子炉は、われわれの国にとって、すごく関心のあるテーマです」と語った。しかし日本での実用化は、なかなか進んでいない。その理由について、早稲田大学の岡 芳明教授は「日本の原子炉というのは、国内向けだけでやってたんですね。中国では、日本の研究機関の技術を参考にして、山東省で建設が始まっています。日本で実際に実証していくというあたりが、非常に重要だと思います」と語った。

また、発電の際にとれる水素などのエネルギーを使う顧客や環境づくりも不可欠だという。世界に誇る日本の技術をどうすれば生かせるのか。いまだその戦略図を描けていないのが実情となっている。 (11/02 13:06)

日本連合、カザフ高温ガス炉計画に応札

2010/10/29 電気新聞

 日本の企業連合は、カザフスタンが計画する高温ガス炉建設事業の国際入札に応札する。カザフが入札に掛ける高温ガス炉の事業化可能性調査(FS)に対し、日本原子力研究開発機構、東芝などが連合を組み、原子力機構が開発した高温工学試験研究炉(HTTR)を売り込む方針だ。カザフの国際入札には韓国と中国も意欲を示しており、三つどもえの受注競争が想定されている。カザフはFSの受注国に設計・建設事業も発注する意向であるだけに、日本連合としては是が非でも獲得したいところだ。

 関係者によると、日本連合には東芝のほか丸紅、富士電機、原子力機構、川崎重工業などが参加。カザフのFSに応札するための準備に取り組んでいるという。カザフの計画では、同国東部クルチャトフ市に熱出力5万キロワットの高温ガス炉を建設し、20年までに試験操業を開始する予定。 (この続きは本紙1面でご覧ください)

原子炉「安い・安全・小型」に期待

2010/07/27 aサロン 東京科学医療グループ・小堀龍之
                       

 原子力発電所の原子炉は大きければ大きいほど、発電にかかる費用が割安になるのが「常識」という。ところが、そんな常識から外れ、安く、より安全な「中・小型の新型原子炉」の開発に注目が集まっている。実用化はまだ先だが、日本でも研究が進められている。

 ◇常識外れの新型、現行の軽水炉とは違う用途

 「将来の原子炉のセッションは質疑も活発で、ベンチャー企業の人たちの期待の大きさを感じた」

 内閣府原子力委員の尾本彰さんは6月、米国カリフォルニア州サンディエゴであった新型の原子力発電所に関する国際会議に出席した。

 そこで印象的だったのが、米国で「中小型モジュール炉」と呼ばれる中小型原子炉への期待の高まりだ。

 一般的に原子炉は大きければ大きいほど、同じ電力量を生むのにかかる費用が下がるという「スケールメリット(規模の経済)」がある。最近は、電気出力100万キロワット以上に大型化している。

 数万〜30万キロワット程度の小型炉は、様々なタイプが1980年代ごろから研究されたが、経済性や技術的な課題が十分に解決できず、実用化されなかった。現在主流の「軽水炉」というタイプに比べ、メリットが少なかったことも背景にある。だが、近年再び、軽水炉とは違う用途などが見直されつつある。

 発電網の整備されていない地域や離島、原発の今後の市場とされる開発途上国では、中小型炉のほうが小さな送電網に見合う可能性があると考えられている。

 ◇投資の関心高まる

 また、100万キロワット級の大型原子炉の建設費は、1基約4千億円とされる。米国では70年代の石油危機をきっかけに原発新設が途絶え、投資家も大きい投資には慎重だ。小型炉開発には、ベンチャービジネスによる投資の関心も高いという。

 日本でも軽水炉の製造会社や研究機関が、中小型炉の研究開発も進めている。関係者は「国産技術」として、将来の海外展開も期待する。

 今年3月には、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏がかかわるベンチャー企業が、新型炉開発で、小型炉の研究を進める東芝に協力を求めたことが明らかになった。

 東芝は、電力中央研究所と共同で小型炉「4S」を開発している。小型(small)、単純(simple)、とても安全(super―safe)の「S」から名付けられた次世代炉だ。

 「ナトリウム冷却高速炉」という原子炉で、普通の原発の軽水炉と違い、冷却材に液体ナトリウムを使うのが特徴。燃料を交換せずに30年間運転が可能で、原子炉内のメンテナンスがほとんど要らない単純さや、緊急時には原子炉が自然に停止する安全設計が売りだ。

 東芝は米国の規制当局と設計認可に向けて協議中。出力は1万〜5万キロワットの計画で、今後10年以内の建設を目指す。尾崎章原子力事業部技監は「実用炉を建てることは、現時点でも技術的には可能」という。

 一方、日本原子力研究開発機構は、冷却材にヘリウムガスを使う「高温ガス炉」と呼ばれる小型の原子炉開発にも力を入れる。98年から、茨城県大洗町で実験炉「HTTR」(出力3万キロワット)の試験を続けてきた。

 高温ガス炉は、原子炉から冷却材が無くなるトラブルが起きた場合も、大がかりな装置が要らない設計になっており、安全性が高いうえに建設費用も抑えられるという。

 ◇建設場所を選ばず

 また、普通の原発は冷却に大量の水が必要で海のそばに造るが、高温ガス炉は小さいため空気で冷やすこともでき、建設場所を選ばないのも特徴。「小型でも経済性は高い」。小川益郎原子力水素・熱利用研究センター長は強調する。

 HTTRは、日本の企業4社が協力して作った。そのうち三菱重工業は、原子力機構の協力を得て独自の小型高温ガス炉の研究も進めている。HTTRの実績で、将来的に規制当局の認可手続きにかかる時間や開発費を抑えるのがねらいだ。

 同社原子力技術部の皆月功部長代理は「軽水炉と違い、高温になった熱を発電以外にも広範囲に活用できる」。高温ガス炉のヘリウムガス温度は約750〜950度で、軽水炉の水蒸気の約300度より高い。この高熱を利用して水を分解、水素自動車の燃料などに使う水素を作る研究なども進められている。

 日本など12カ国・1国際機関が参加して次世代の原子炉を研究する「第4世代原子力システム国際フォーラム」(GIF)では、新型炉を6タイプに絞り込んで、2030年代ごろの実用化を目指している。「高温ガス炉」「ナトリウム冷却高速炉」「鉛冷却高速炉」の3タイプの炉は、電気出力が70万〜30万キロワット以下の小型化も検討中という。

 GIFの政策グループ議長を務める佐賀山豊文部科学省参与は「中小型炉自体はすばらしいアイデアだが、実績がない。まず動かしてみることが必要だ」という。

    ◇    ◇  

 《筆者の小堀龍之から》

 今回紹介した「中・小型の新型原子炉」は、現在主流のタイプの原子炉とは性質が違い、とってかわるようなものではありません。また、新型炉が実用化されても、核廃棄物など原子力発電特有の課題がなくなるわけでもありません。

ただ、原子炉の研究開発は多様化し、様々なタイプの原子炉開発が進んでいます。

たとえば、「高温ガス炉」では、中国で2020年までに約40基の高温ガス炉を作る計画があるそうです。アメリカでも2021年までに高温ガス炉の原型炉を建設、発電や水素を製造する計画があります。こうした新型炉開発がどうなっていくのか、今後とも見ていきたいと思います。

加熱する国際原発商戦、日本の勝機は? 〜急浮上する「高温ガス炉」その1

2010年05月10日 井之上ブログ

 こんにちは、井之上喬です。

 5月の連休中に、仙谷由人国家戦略担当相と前原誠司国土交通相はベトナムを訪問し、同国初の原子力発電所建設事業を日本企業に受注させるよう働きかけました。

 「政官民が一体となって取り組もうという意識が今の日本には欠けている」と世論が高まる中で、民主党政権下、日本政府主導の相手国政府との交渉が展開されたことになります。

 昨年12月のアラブ首長国連邦(UAE)の原発建設の国際入札では、後発の韓国が李明博大統領によるトップ・セールスで総額約3兆6千億円のプロジェクトを落札。

 続くベトナムでの原発建設の競争入札(4基のうちの2基)にも、ロシアがほぼ受注を決めるなど、高度技術を有する日本勢は敗退を喫していました。

 今回の仙谷国家戦略相のベトナム訪問で、日本政府の政策転換が見えてきます。また米国(ワシントンDC)やベトナムにこれら日本の担当大臣がトップ・セールスに出向いた記事は主要メディアが連日ニュースで取り上げ、多くのオーディエンスは勇気づけられたはずです。

 そんな中で、今なぜ原子力発電が注目されているのでしょうか?

 それは原子力発電が地球温暖化の大きな原因とされている二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しないからです。

 風力発電や太陽光発電、そして水素などのクリーン・エネルギーは、工業用電力など安定した大量消費の電力源として、その実用化にはまだ数十年の年月を要するとされています。それ故、つなぎ的な利用法として、軽水炉型の原子力発電が重視されているのです。

 CO2の追い風を受け、1979年のスリーマイル島原発事故から新設が途絶えていたアメリカでさえ、オバマ大統領主導のもとで新たな原発建設に乗り出しています。

 日米欧だけでなく原発建設の流れは中国、インドなどの新興国や途上国でも大きなうねりとなって表れています。

 国際原子力機関(IAEA)によると、世界の原発は軽水炉型で、現在の約430基から、2030年には530基から800基に増加すると予想。

 この背景には新興国での新設に加え、日本を含む先進国での建て替え需要が見込まれていることがあります。

 そんな市場拡大を当て込んでか、世界規模で原発商戦が激しさを増しています。

 原発を巡っては米国のGEや東芝、三菱重工、日立製作所、仏アルバなど世界の重電大手を中心に、各国が国家の威信をかけて受注合戦を展開しており国際原発商戦は今後もヒートアップするばかりです。

 その象徴ともいえるのがあのマイクロソフト創業者、ビル・ゲイツ会長です。東芝と組み次世代原子炉を開発するというニュースは大きな衝撃を持って迎えられました。

 5月2日付けの日本経済新聞(朝刊)の日曜版「サンデー・サイエンス」には、次世代原子炉にビル・ゲイツ(Terra Power社)/東芝の共同プロジェクトとともに日本の「高温ガス炉」が紹介されていました。

 現在、実用化されている原子力発電は軽水炉型ですが、次世代原子炉開発で急速にクローズアップされてきたのが、「高温ガス炉」。

 2004年に日本の研究炉で、世界に先駆け、水素製造に必要な温度である950度を実現した高温ガス炉が次世代原発の切り札として期待されているのです。(次号に続く)

加熱する国際原発商戦、日本の勝機は? 〜急浮上する「高温ガス炉」その2

2010年05月17日 井之上ブログ

皆さんこんにちは、井之上喬です。

 先週は、原子力発電の国際商戦で苦戦する日本企業の話をしましたが、このところ原子力発電の中で、「軽水炉」型に対してもう一つのタイプで、安全性がより高い「高温ガス炉」が急速に脚光を浴びています。今回はその高温ガス炉について話します。

 ■日経記事でベールを脱いだ「高温ガス炉」

 日本の高温ガス炉の研究は、独立行政法人日本原子力開発機構によって行われています。先週もご紹介した日本経済新聞(5月2日付け)の記事には、同機構が研究レベルで2004年に世界に先駆けて水素製造に必要な温度である摂氏950度を達成したことが報じられ、新興・途上国などの海外輸出を想定した場合、高温ガス炉を使った小型で安全な原子力発電が有効とされると記されていました。

 高温ガス炉の存在については、日経新聞が取り上げるまではほとんどの日本メディアに知られていませんでした。業界でも一部の専門家の間でしか知られていないことです。

 なぜこれほど歴史的な偉業を成し遂げた研究が、広く知らされなかったのか不思議でなりません(ちなみに950度達成している他国の高温ガス炉はいまだにありません)。

 実用的な原子力発電は大きく2つに分けることができます。一つは従来から使われている「軽水炉」、もうひとつは「高温ガス炉」です。

 これ以外に先日14年ぶりに再開した「高速増殖炉」(「もんじゅ」)がありますが、核燃料が再生産される高速増殖炉の実用化にはまだ40年ほどかかるために、ここでは触れません。

 関係者の話を総合すると、日本の原子力政策では、軽水炉で「電気エネルギー」、高温ガス炉では将来の水素製造を目的にした「熱エネルギー」をつくりだすこととし、それぞれの役割りが固定化されていたようです。

 その結果、水素社会(熱エネルギー)の実現には30−40年もかかるとし、2004年に950度達成後も積極的な水素開発に力を入れてこなかったとしています。

 ■途上国型でテロ攻撃に強い

 しかし近年、途上国の急速な電力需要に応えるために、実用化までに時間がかかる熱エネルギー(水素)開発と並行して、小型発電施設としての高温ガス炉の役割がクローズアップされてきました。

 ここで、上述の2つの原子炉の違いについて少しお話します。私は専門家ではありませんが、これまで得た知識では、高温ガス炉は、炉心構成、原子炉構造等の特性から、軽水炉などの他の形式の原子炉に比べて、「高安全性」、「高熱効率」、そして「高経済性」という3つの特徴を有しています。

 加えて、軽水炉と比べ、小型化された原子炉をもつ高温ガス炉は、送電線などのインフラ設備のない途上国用に最適だとされています。いわゆる地産地消型原子炉といえるわけです。

 まとめると、日本は世界をリードする国産の高温ガス炉技術を有しており、急増する世界のエネルギー需要問題を解決し、2020年までに日本が目標とする、25%炭酸ガスの排出量削減を実現するばかりでなく、新興国、発展途上国への戦略的技術支援を行うことが可能となります。

 高温ガス炉は小型でも高い経済性を有するゆえ、分散エネルギー源として、燃料電池用の水素供給やコンビナートにおける大口自家発電所用など様々なニーズに応えることが可能となります。

 そして高温ガス炉の技術では日本が世界の最先端をリードでき、CO2問題の解決策として最も有望なソリューションを持つ日本にとって大きなビジネス・チャンスであることに疑いの余地はありません。

 途上国向けの原発輸出には、先進国ではこれまで真剣に考えてこなかった、セキュリティ問題にも留意しなければなりません。

 高温ガス炉の他の利点は、地下に埋め込むことにより、施設をテロ集団のミサイル攻撃から守ることができる点です。これ以外にも高温ガス炉は多くの利点を有しています。

 20世紀は石油争奪の世紀といわれるほど、エネルギー問題はいかなる国家にとっても最重要課題です。

 これまで高温ガス炉は、国内利用として熱エネルギーを取り出す目的で考えられていましたが、世界的な急速な電力需要に応えるために発電施設としての役割が期待されているのです。

 こうしたプロジェクトを社会の理解を深めつつ行う上においても、リレーションシップ・マネジメントであるパブリック・リレーションズ(PR)なしに推進することは困難といえます。

 今後も、水が原料の水素製造を可能にする高温ガス炉について取り上げていきたいと思います。

三菱重工業、小型高温ガス炉PBMRの開発でMOUを締結

Tokyo, Feb 10, 2010 - JCN Newswire

三菱重工業(TSE:7011)は、南アフリカ共和国のPBMR社と、ペブルベッドモジュール型高温ガス炉(PBMR:Pebble Bed Modular Reactor、球状燃料要素炉)を共同で開発することを検討していくことで合意し、今後、具体的な協力分野を調整していく。3日、そのための覚書(MOU)を締結した。

当面、同社が開発中のPBMRである20万kWt(サーマル)プラントの設計において協力可能な分野を検討する。また、将来的には、プラントの建設、市場開拓などでも協力を模索していく方針で、これにより、安全性と経済性を両立する小型高温ガス炉が実用化へ向け新たなステップを踏み出すこととなる。

20万kWtプラントは熱出力20万kWtのペブルベッド型炉と750度℃の蒸気を供給する蒸気発生器で構成される小型高温ガス炉。黒鉛球状燃料とヘリウム冷却材を使用して、炉心溶融の心配がなく、安全性が高いのが特徴。また、初期投資が少なくて済み、送電線が本格的に整備されていない地域に適した原子炉でもある。同国の化学メーカー大手であるSasol社のほか、複数の潜在顧客が導入を検討しているもので、運転開始は2020年頃を目標としている。

具体的には、20万kWt プラントの設計における協力分野が決定され次第、当社が当該研究開発の一部を実施する。また、将来的には、20万kWtプラント初号機の建設やPBMRの市場開拓などでも協力の可能性を探っていく。

PBMR社は、PBMR開発プロジェクトを担うため1999年に設立された原子力エンジニアリング会社。当社は2001年にPBMR開発計画に参画して以来、同社と良好な協力関係を保っている。

今回のMOU締結は、当社の原子力プラントの設計能力、製造技術、納入実績などが高く評価されたことによる。当社は今回のMOU締結を機に、PBMR社との協力関係を一層強めつつ、PBMRの研究開発と市場浸透に一層積極的に取り組んでいく。

日本の新型原発導入へ カザフ、18年完成目指す

2009/06/21 中国新聞ニュース

 【セメイ(カザフスタン北東部)20日共同=佐々木健】カザフスタン北東部にある旧ソ連のセミパラチンスク核実験場に接する、かつての軍事閉鎖都市クルチャトフに、日本の技術を導入して発電効率の高い原子炉「高温ガス炉」による新型原子力発電所の1号機の建設が計画されていることが分かった。カザフスタン国立原子力センターのカディルジャノフ総裁が19日、共同通信に明らかにした。

 1号機は2018年に完成、22年ごろ稼働する計画。核兵器の被ばく問題を抱える両国が、原子力の平和利用で協力を深める象徴的な共同事業になりそうだ。

 総裁によると、茨城県大洗町に研究用の高温ガス炉を持ち、世界最先端の実証試験を行ってきた日本原子力研究開発機構の技術を基礎に、東芝やカザフ国営原子力企業カザトムプロムなどと合弁企業の創設を協議中。日本側は半分程度を出資する方向で、ロシアとスロバキアも参加の意向を示しているという。

 高温ガス炉は、カザフ政府が見直しを進めている国家原子力計画に盛り込まれる見通しで、大統領が最終的に承認すれば、カザフの他地域への事業調査にも着手する。

 1号機の発電能力は5万キロワットで、暖房用の温熱も供給する方針。予算は5億ドル(約480億円)以上で、カザフ側は日本の国際協力銀行(JBIC)に資金協力を要請しているという。

 総裁は高温ガス炉を「将来性のある事業」と高く評価。核実験による被ばくで健康被害が相次いだだけに「周辺住民の多くは原子力という言葉に拒否反応を示すが、問題は克服できると思う」と強調した。

東洋炭素(5310) 太陽電池用黒鉛製品。次世代原発向けも。(大和総研)

2009年06月17日 NSJショートライブ 毎日新聞

 大和総研は6月16日に発表した「加速する産業構造のグリーン化戦略」のレポートの中で、東洋炭素(5310)は太陽電池用のウェハーとシリコン原料の製造装置で使用する、坩堝(るつぼ)とヒーターを等方性黒鉛で製造しており、世界市場シェアは50%を上回っている模様と解説。 

 等方性黒鉛は製造期間が6?8ヵ月と長く、技術参入障壁も高いことから、同社と東海カーボン(5301)、独SGL社などによる寡占市場になっていて、営業利益率も25?30%と高いと推測。

 中長期的には次世代原発である高温ガス炉向け黒鉛部材の出荷も期待される。東洋炭素は2008年12月に中国政府から高温ガス炉プロジェクト向けの炉心用黒鉛材を受注しており、2010年半ば頃から出荷が本格化する見通し。

 高温ガス炉は黒鉛を大量に使用すると同時に、参入障壁が極めて高く、現段階では同社と独SGL社以外に製造できる企業は見当たらないと報告。(W)

超高温ガス炉実用化へ前進、燃料粒子用被覆材の製造成功

2008/12/22 週刊科学新聞

 日本原子力研究開発機構(原子力機構)原子力基礎工学研究部門の沢和宏グループリーダーらの研究グループは、水素エネルギー社会の実現に向け、『超高温ガス炉(VHTR)』の研究開発を進めている。その実用化に有用な”高性能被覆燃料粒子用被覆材”準商用(パイロットプラント)規模で製造することに成功、11月から照射試験を世界ではじめて実施した。

 現在の高温ガス炉では、TRISO型(三重被覆)被覆燃料粒子の被覆材料に1600度C(許容設計限界)の炭化ケイ素(SiC)を用いているが、炭化ジルコニウム(ZrC)は、高融点(約3420度C)で耐熱性・化学安定性などに優れ、これを被覆材として導入することで、将来のVHTRの高性能化が図れるとされる。このため、世界各国でZrCを被覆材とした先進燃料の開発、製造を進めている。

 沢グループリーダーによると「高温ガス炉は安全性に優れかつ1000度C℃近い高温の熱を取り出せる原子炉で、水素製造等への利用が期待されています。現在の高温ガス炉の燃料は炭化ケイ素(SiC)被覆燃料粒子で、原子力機構の『高温工学試験研究炉』にも使われており、日本の燃料は世界最高の品質を誇ります。一方、文部科学省の受託事業で開発中の炭化ジルコニウム(ZrC)被覆燃料粒子は、より高温で長期間使用することができ、次世代の超高温ガス炉(VHTR)の性能を飛躍的に向上する革新技術として世界的に期待されています」という。

 そこで、臭化物法(ZrC被覆層の製造技術として原子力機構が開発した化学蒸着法)を用い、均一なZrC被覆層の蒸着に成功した。ZrC被覆燃料の性能を十分に発揮させるには、被覆材の高密度化と高伝導化が条件で、そのためジルコニウム(Zr)と炭素(C)の原子数比1:1にしたZrC被覆層の蒸着が不可欠。ただ物性値の低下や層の均一性を損なう過剰な炭素成分発生の抑制が製造上の技術的ポイントであった。また、炭素とジルコニウムを、100分に1桁の高精度で原子数比を管理でき、高品質のZrC被覆層を製造することができた。これにより中性子の照射試験を、11月からこの製造結果に関心を寄せる米国と共同で実施することになった。

 沢グループリーダーの話「今後は、実際にウラン燃料を使ってZrC被覆技術を商用規模へステップアップし、日本のZrC被覆燃料の開発に関心を寄せる米国と協力して中性子照射データ拡充に力を入れ、VHTRによる原子力水素製造社会の早期実現に向けて全力を尽くしていきたい」

※超高温ガス炉(VHTR)

 約1000℃の原子炉出口温度で運転による高効率発電と熱化学水素製造等高温プロセスが利用可能な高温ガス炉。日・米等10ヶ国が2030年頃に実用化を目指し提唱した次世代の原子炉の一般的な概念第4世代原子力システムの一つとして採用されている。(科学、12月5日号1面)

東洋炭素と住友商事:中国で高温ガス炉用黒鉛を受注

2008/11/06 Searchina

 東洋炭素(大阪市北区、近藤純子社長) <5310>は5日、住友商事(東京都中央区、加藤進社長) <8053>と共同で、中国政府の国家プロジェクトで次世代の原子炉建設計画である山東省栄成市の高温ガス炉プロジェクト向けに、主要部材の炉心用黒鉛材を受注したと発表した。

 同日、北京でプロジェクトの事業主である華能山東石島湾核電有限公司などと売買契約に正式調印した。受注総額は数十億円で、東洋炭素は2010年半ばから11年末の予定で製品千数百トンを納入する。

 東洋炭素によれば高温ガス炉は現在主流の軽水炉に比べ熱効率がよく安全性が高いことから、次世代の原子炉として注目され、世界各国で研究が進められている。

 中国では電力大手の華能集団を中心に清華大学、中国核工業建設集団が合弁事業会社の華能山東石島湾核電を設立。第11次5カ年計画(2006―2010年)の重大プロジェクトとして、世界に先駆けて実証炉を建設する。最終的には同一仕様の商業炉を19基建設する計画だ。(編集担当:恩田有紀)

原子力機構とカザフスタン大学、高温ガス炉の人材育成で協力

2008/10/16 IP NEXT

 日本原子力研究開発機構はこのほど、国立カザフスタン大学と高温ガス炉技術に関する将来の人材育成のための覚書を交わした。原子力機構は同大に専門家を派遣し、原子力工学や高温ガス炉技術に関する講義を行うほか、同大の職員や学生を研修生として受け入れるなど、人材育成に関する支援を行う。

 今回の覚書は、両者が今年6月に交わした「高炉ガス炉の安全性研究の協力に向けた覚書」に基づくもの。両者は高温ガス炉の安全性研究における協力などに向けた協議を進めていた。

中国、2013年に高温ガス炉の運転めざす

2008/10/09(サーチナ・中国情報局)CHiNA SUPERCiTY

中国最大の発電事業者、中国華能集団公司は10月7日、国の重大プロジェクトとして位置付けられている高温ガス炉原型炉の設計・調達・建設(EPC)契約が同日、北京で調印されたことを明らかにした。

 それによると、高温ガス炉原型炉が採用される華能山東石島湾原子力発電所を建設・運転する華能山東石島湾核電有限公司は、中核能源科技有限公司、清華大学核能・新能源技術研究院との間でEPC総請負枠組取決めを、また上海電気集団、ハルビン電站集団を含む国内の原子力発電設備製造業者との間で主要設備発注契約を結んだ。

 石島湾原子力発電所に採用される高温ガス炉は出力20万キロワットで、清華大学が設計した。また、同発電所を建設・運転する華能山東石島湾核電有限公司は、中国華能集団公司、中国核工業建設集団公司、清華控股有限公司が共同で出資し2007年1月に設立されている。

 同発電所では、1期工事として20万キロワットの高温ガス炉が1基建設されることになっている。2009年9月に着工し、2013年に運転を開始する予定。

※この記事は、「日本テピア」による提供です。日本テピアは、日中間の環境保全・電力・エネルギー及び水分野において、投資コンサルタント、市場調査などを行なっています。URL : http://www.tepia.co.jp/

【環境立国ニッポンの挑戦】第3章(6)「次世代炉」

2008.05.26 MSN産経新聞
2008.5.26 21:29

高温ガス炉の中間熱交換機。900度を超える熱を取り出し、水素を製造できる=茨城県大洗町の日本原子力研究開発機構

 高速増殖炉はウランの枯渇を数千年間も延ばせる夢の原子炉だ。だが、原子力政策大綱が定めた高速増殖炉商用化は2050年。経済産業省は原型炉「もんじゅ」の後継となる実証炉の建設時期を2030年ごろと定めているが、それでもまだ先の話だ。現在の原発(軽水炉)はちょうどそのころから寿命を迎え始めるだけに、廃炉ラッシュを見据えた次世代炉の開発が欠かせない。

 経産省や電力業界、原発メーカーなどは開発チームを設け、今年度から開発に乗り出した。2030年の実用化を目指し、8年程度で開発を終える予定だ。

 次世代炉の最大の目標は稼働率の向上だ。現在、原発の稼働率は70〜80%ほど。稼働率が低ければ、その分、石油などの化石燃料を燃やして発電しなければならず、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の排出が増えるが、次世代技術の目標は実に97%。目指すのは究極の軽水炉だ。

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 茨城県大洗町の日本原子力研究開発機構大洗研究開発センター。ここでは高速増殖炉でも次世代軽水炉でもない新しい原子炉の開発が進められている。軽水炉に比べて3倍も高い熱を取り出し、利用できる高温ガス炉だ。

 2階建てのガラス張りの建物はまるで温室のよう。中にあるプラントも、縦横に張り巡らされたパイプに耐熱用の不燃布が巻かれ、いかにも手作りの実験施設にしかみえない。だが、ここはいま、各国の研究者や政府関係者が視察に訪れる最先端の研究施設なのだ。

 この施設が注目されているのは、電力以外に別のエネルギーを作り出せるからだ。燃焼してもCO2を発生せず、化石燃料に代わる次世代エネルギーとして注目される水素だ。

 水素は単独では自然界にほとんど存在しない。このため、大量の水素を製造するには化石燃料から改質と呼ばれる方法で取り出すのが一般的だが、CO2が発生してしまうのが悩みだ。ところが、高温ガス炉の熱を利用して真水を硫酸などとの化学反応で分解すれば、CO2を出さずに水素を作り出せる。

 すでに1週間連続して1時間当たり30リットルの水素を製造することに成功しており、同機構の国富一彦研究主席は「高温ガス炉は水素製造にも最適」と自信を深めている。

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 高温ガス炉が高温の熱を取り出せるのは、炉心構造物に黒鉛を使用するなど耐熱性に優れた素材を用いているからだ。大洗の施設は平成16年に950度の熱を取り出すことに成功している。  高温ガス炉の実用化を進めているのは日本と中国だけだが、中国ではまだ750度程度。日本の技術は間違いなく世界の最先端だ。  原油が1バレル=130ドルを超える水準にまで高騰し、世界のエネルギー事情は再び大きく変わり始めている。そのなかで、原発はエネルギーの安定供給と温暖化対策を両立する技術だ。その技術を将来にわたって維持、発展させることは絶対に欠かせない。環境立国を目指す日本が担わなければならない役割である。第3章おわり (環境立国取材班)

原子力研、水素生産技術を米国へ輸出

2008-05-07おはよう大徳

米国の次世代原子炉事業研究の第1段階を成功裏に完了

 韓国原子力研究院(院長ヤン・ミョンスン)が原子力水素の生産のための超高温ガス炉(VHTR)設計関連技術を米国政府の推進する次世代原子炉事業(NGNP)に輸出したと5月6日に発表した。

 超高温ガス炉は950℃の高温で水を分解して水素を生産する原子炉で、将来必要となる水素を低費用で大量に得ることができる。このため第4世代原子炉開発計画(GEN-W)の中でも最も多くの国家が参加、開発に取り組んでいる。

 原子力研水素生産原子炉技術開発部は▲高温および冷却原子炉圧力容器設計評価 ▲イオンビームコーティング、 ミキシングによる金属材の表面処理技術開発 ▲三重水素輸送解析の研究など昨年12月から始めた超高温ガス炉概念設計研究の第1段階の研究を成功裏に完了した。

 これにともない2006年から米国のGeneral Atomics社(GA)コンソーシアムの一員としてNGNPに参加、2007年にNGNPの予備概念設計研究に技術を輸出したのに続き今回の成果を挙げるのに成功した。今回の技術輸出の成功により原子力研は超高温ガス炉設計関連の技術力を認められたとしている。

 技術の輸出額は約23万ドルで ▲韓国内で製造が可能な加圧軽水炉用原子炉圧力容器に超高温ガス炉を使用するための冷却圧力容器設計技術 ▲950℃の高温と高腐食環境で運転される超高温ガス炉の工程熱交換器の表面にイオンビーム処理を施して耐腐食性を向上させる技術など。

 原子力研では2004年から超高温ガス炉を利用した水素生産技術の開発に着手し、2020年代に原子力を利用した清浄水素生産技術の実証を目標に研究を続けており、原子力水素生産の実証システムの設計、建設および実証に要求される超高温ガス炉および熱化学水素生産の核心技術の開発を主導している。

 原子力研の関係者は「技術の知的所有権を研究院が保有していることから今後のNGNPの建設事業など米国市場進出の橋頭堡を確保したといえる。第1段階の研究に続き超高温ガス炉格納容器に関する研究、複合材の開発技術の研究などNGNPの概念設計第2段階の研究も行なうことでGA社と合意しており近く研究に取り掛かる計画」と述べた。

 米国のNGNP事業は超高温ガス炉を利用して電力と水素を同時に生産するシステムを2018年までに建設するためのプロジェクト。米国政府はGA、ウェスティングハウス、アレバなど世界的な原子力専門会社が主導する3つのコンソーシアムにそれぞれ発注して NGNP事業を進めている。

 米国は2020年代の中ごろに水素経済への進入することを目標に、今年はNGNPなど超高温ガス炉の開発のための予算に昨年より3倍以上増額した1億1600万ドルを当てるなど国家レベルで取り組んでいる。

 (イメージ)▲ 米国政府が2018年までに建設することを目標にしている原子力水素生産用次世代原子炉と 水素生産プラントの概念図

高温ガス炉原型炉の実行可能性研究報告が審査をパス

2008/02/02 Searchina

 山東省に計画中の高温ガス炉原型炉プロジェクトである華能山東石島湾原子力発電所の実行可能性研究報告が国防科学技術工業委員会や国家核安全局、山東省政府、国家電力規劃設計総院などの連合審査をパスした。国防科学技術工業委員会が2月2日、明らかにした。

 山東省の栄成市に建設される同発電所の運営は華能山東石島湾核電有限公司が担当する。同発電所は、高温ガス炉の商業用原型炉と位置付けられており、2006年2月に国家中長期科技発展計画(2006―2020年)の中に特別プロジェクトとして盛り込まれた。

 現在の予定では、2009年9月に正式に着工し、2013年末に送電を開始することが見込まれている。同発電所サイトには、将来的に高温ガス炉380万キロワット、加圧水型炉(PWR)400万キロワットの合計780万キロワットの原子力発電所を建設することが計画されている。

※この記事は、「日本テピア」による提供です。日本テピアは、日中間の環境保全・電力・エネルギー及び水分野において、投資コンサルタント、市場調査などを行なっています。URL : http://www.tepia.co.jp/

原子力機構、東芝と高温ガス炉開発で協業(原子力機構)

2007/12/19 IP NEXT

 日本原子力研究開発機構(原子力機構)と東芝は17日、高温ガス炉並びにそれを用いた水素製造法の開発に関する研究協力協定を締結した。両者は、今後3年間で商用高温ガス炉の事業化調査を共同で実施していく。

 高温ガス炉は、安全性や経済性が高いことなどから、次世代の原子炉として世界各国で研究開発が進められている。日本では現在、原子力機構を中心に試験研究炉での実証試験を実施する一方、実用高温ガス炉発電システムの研究開発を推進。また、水素製造と電力生産を同時に行う水素電力併産プラントとしての研究開発も進められている。

 原子力機構と東芝は今後、双方の研究成果と人材などを活用し、実用高温ガス炉の世界標準化を目指した研究開発を進めていくとしている。


高温ガス冷却炉の原発技術、モデル事業がスタート

2004年12月17日「人民網日本語版」

中国華能集団公司、中国核工業建設集団公司、清華大学は16日北京で、「高温ガス冷却炉の原子力発電所モデル事業に関する投資合意」に調印した。

高温ガス冷却炉を利用した発電は、中国が開発した新世代の核エネルギー発電技術であり、独自の知的財産権を備えている。主な特徴は安全性に優れていることだ。国内の高温ガス冷却実験炉(1万キロワット)で行われた安全テストでは、原子炉が冷却されなかった場合でも、炉心の熔解が起こらず、長時間にわたって安全な状態を維持した。この成果を中国の電力建設分野で広く応用し、中国経済の持続可能な発展やエネルギー構造の改善、電力技術の進歩を確保するために、同3者は共同出資により、20万キロワットの高温ガス冷却炉を採用した商用のモデル原発を建設することを決定した。今年8月17日には国家発展改革委員会の認可を受けた。今回の合意に基づき、同3者は合資会社「核電有限公司」を設立し、モデル原発の建設と運営を行う。出資比率は華能が50%、中核が35%、清華大が5%。残り10%は新たに呼び込んだ投資家が出資する。発電は2010年をめどに開始する計画。(編集KS)

◆原子力の新しい形 -【上】高温ガスで炉で始まる水素製造

2004年10月01日 電気新聞 4面に掲載

『 技術 』 ― 未来への挑戦 ―

 未来を先取りした技術開発がエネルギー産業でも活発になってきた。水素社会の到来をにらんだ原子力による水素製造、電気を蓄える電池技術の高度化など、現在のエネルギー利用に変革をもたらす技術も具体化へ動き始めている。注目を浴びるこれらの技術開発の様子を、それに託す開発者の思いを交えて、紹介していく。

 ― 原研「看板」かけ実証試験 ―

 高速実験炉「常陽」(核燃料サイクル開発機構)、材料試験炉「JMTR」(日本原子力研究所)など、日本の原子力開発を担う研究炉が集まる茨城県大洗町。町は原子力を「重要な資源」と位置づけ、原子力との共存共栄を合言葉に地域振興を図ってきた。

 ただ、地元に唯一、不満があるとすれば、それは原子炉で発生する熱がほとんど未利用のまま、大気中に放出されていること。町にある研究炉はいずれも燃料の燃焼試験や材料実験が目的。発電が目的ではない。原子炉の運転で高温の熱が生まれるのに、それを使ってタービンを回すわけではない。

 「せっかく生まれた熱。発電に使わないなら地域振興や別の研究に使えないものか」。地元の素直な意見だ。

 温水プールの熱源にしたり、農家に供給してメロンの促成栽培に活用するなどの構想が浮かんでは消える中で、日本原子力研究所は原子炉の熱を利用して水素を製造する技術に着目した。

■7年の試行錯誤

 この先10年で一気に拡大すると見られる水素利用。燃料電池自動車の燃料や化学原料として、その需要は高まる一方だ。脚光を浴びる水素。これを製造するのに欠かせないエネルギーとして原子力が認められれば、その株も上がるという訳だ。

 熱源となるのが高温ガス炉HTTR(熱出力3万キロワット)。炉心温度を下げないガス冷却だから、極めて高い熱を取り出すことができる。98年に初臨界を達成し、炉心出口温度は950度に達する。「製鉄さえ可能」な高温だ。ちなみに高速増殖炉「もんじゅ」の出口温度は530度、一般の軽水炉は280度から320度にとどまる。

 水素製造の原理はこうだ。まず、水にヨウ素と硫黄を投入してヨウ化水素と硫酸に分離する。このヨウ化水素と硫酸に対し、原子炉から取り出した熱をそれぞれ加えると、ヨウ化水素はヨウ素と水素、硫酸は酸素と硫黄に分解される。こうして分解された水素を回収する仕組み。原研がこの原理を確立したのは97年のことだった。

 現在、この原理を基に製作した試験プラント(水素生産量0・03立方メートル/時)で工学基礎試験が進んでいる。05年度からは一段とスケールアップしたパイロットプラント(30立方メートル/時)での試験。これが無事終われば、いよいよ水素製造装置(1千立方メートル)をHTTRに接続する実証試験が始まる。

 期待を集めながら進む原研の水素製造研究だが、大洗研究所の小川益郎核熱利用研究部長は「試行錯誤の連続だった」と振り返る。

 「7年前に原理を実証したが、実際のプラントで使えるかどうかはまったくの未知数だった。『工学的にいける』と手ごたえを得たのは、昨年、工学試験プラントで連続水素製造に成功してから。それまでは絵に描いたもちだった」。同プラントも「当初はまったく機能しなかったので、原型が分からなくなるほど改良した」という。

■熱意で壁乗越え

 壁にぶつかっても、乗り越えられたのは研究者の「水素製造にかける熱意」だった。

 原子力開発のトップランナーとして突き進んできた原研だが、来年10月には核燃料サイクル開発機構との統合が待ち受ける。特殊法人改革の一環だ。重複する研究や事業の整理、合理化が行われる中で、看板の高温ガス炉と水素製造は何としても守らねばならない――。使命感にも近い研究者の思いが開発の原動力となった。

◆原子力の新しい形 -【中】低温熱源で水素をつくる

2004年10月01日 電気新聞 4面に掲載

 日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構。時には協調し、時にはライバルとして日本の原子力開発を引っ張ってきた2法人だ。研究者も互いに意識する部分がある。

 「高温ガス炉にできるなら、高速増殖炉(FBR)でもできるはずだ」。一貫して高速炉開発に取り組んできたサイクル機構の研究者は、こう口をそろえる。高温ガス炉に対する対抗心もないわけではない。

 900度以上の高温を取り出せる高温ガス炉に対し、FBRは必ずしも高温利用が目的ではない。ウランやプルトニウムを効率よく燃やすための原子炉で、炉心出口温度は550度ほど。取り出せる熱は高温ガス炉に比べてはるかに低い。水素製造に使えるかどうか、ずっと疑問視された。

 ― FBR、軽水炉も手法模索 ―

■発電電力を活用

 そこで、サイクル機構は新しいシステムを考案した。水を熱分解して水素を取り出すには温度が低いから、これを補うために電気エネルギーを使うことにした。

 原子炉は熱供給と発電を同時に行うことができる。FBRのように低い温度の熱しか取り出せない原子炉でも、発電した電気の一部を水素製造に持ってくれば、分解に必要なエネルギーは確保できるという訳だ。

 開発した大洗工学センター要素技術開発部の中桐俊男さんはこう語る。「まだ原理を実証した段階。装置も手づくりに近いものだが、FBRの温度域でも水素をつくれることが分かった。大きなインパクトになるはず」。将来は高速増殖炉実験炉「常陽」(熱出力14万キロワット)に水素製造装置を接続する構想もある。「2030年ごろには実用化も可能」と中桐さん。水素製造でもFBRの存在感を示したいところだ。

■改質触媒を開発

 高温ガス炉もFBRも、商業発電炉としての実用化はまだ先だ。普及した軽水炉で水素はつくれないのか。

 軽水炉の出口温度は約300度。高速炉よりさらに低いが、この程度の熱源でも機能する水素製造システムを東芝が開発した。

 水蒸気とジメチルエーテル(DME)を新開発の触媒(アルミナ製)に投入し、そこに約300度の熱を加えて、水素を回収する仕組み。水蒸気改質と呼ばれる手法の一つだ。

 従来の触媒は水素回収に350度以上の熱を必要としたが、より高性能の新触媒を開発することで、低温域での回収に成功した。DMEは硫黄分を含まないから、水素製造に使う前の脱硫の手間もかからない。

 軽水炉による水素製造は電力業界にも大きな効果をもたらす。

 軽水炉は昼夜を問わず一定の出力で運転される。電力需要の増加や減少にあわせて出力調整を行うと、かえって経済性が低下するためだ。このため、需要が減る夜間の調整として電力会社は揚水発電所を建設し、夜間電力で揚水作業を行うといった、大がかりな調整を行ってきた。

 だが、水素製造が可能になれば、夜間は発電よりこちらに多くの熱を投入することで、夜間調整ができるようになる。

 東芝電力・社会システム社の尾崎章・原子力開発営業部長は言う。

 「軽水炉で水素製造と発電の両方を行えば、炉から出るエネルギーの利用率が一段と高まる。長いスパンで見た時、原子力エネルギーは大切に使わねばならない。また、水素づくりに役立つとなれば、原子力をやっている人たちの元気にもつながると思う」

■海外勢への対抗

 燃料電池自動車の普及に象徴される水素社会の到来は近い。日本のほか、米国、欧州、中国も原子力による水素製造に本気で取り組み始めた。原子炉を使って良質な水素を大量に供給できれば、水素ビジネスで有利に戦えるというわけだ。

 「海外勢に席巻される前に、日本として独自の技術を確立すべきだ」。尾崎部長はこう話す。開発者の思いはこの言葉に凝縮される。

◆原子力の新しい形 -【下】東芝の原子炉向け熱電モジュール

2004年10月05日 電気新聞 4面に掲載

 原子力発電は原子炉から取り出した熱で蒸気をつくり、これでタービンと発電機を回す。だが、原子炉の熱を直接電気に変換する技術があれば、タービンや発電機は不要になる。

 東芝が開発した熱電変換モジュールは、こんな発想から生まれた。

   ― 排熱利用で「社会変えたい」 ―

■温度差から発電

 原子炉の中心部にある燃料の温度は2千度を超える。これを覆う被覆管の外側は500度前後。つまり被覆管の内と外で温度差が生まれる。温度差で発電するモジュールをここに置けば、極めて効率よく熱エネルギーを電気に変換できるというわけだ。

 しかし、この技術が簡単に実現するかといえば、そうではない。原子炉や核燃料は規制のかたまり。炉心に電池を置くようなことは許されないし、たとえ規制をクリアしても、炉心の超高温に耐えられるモジュールを開発するには相当、時間がかかる。

 開発者の近藤成仁・東芝電力社会システム社事業開発推進統括部課長代理も「炉心に置ければ最高だが、実現するかはまた別の話」と、その辺りは心得ている。

 それでも「この技術で社会を変えてみたい」と夢を膨らませる。「ボイラーや自動車など社会のいたるところに排熱がある。つまり熱が捨てられているわけだが、これを電気に変えていけば、社会全体のエネルギー効率はもっと向上する」

 近藤さんらが開発した熱電モジュールによる発電の仕組みはこうだ。

 モジュールの心臓部である熱電素子の上部を熱し、下部を冷やして温度差をつけると、電位差が生まれる。この時、温度の高い上部から下部に向かって電子が流れ、このエネルギーで発電する。

 モジュールの耐熱温度は500度。上部と下部で温度差が480度ある時、最も効率よく発電する。モジュール面積1平方センチメートルで1ワット以上の発電を行う。モジュールをつなぎ合わせることで、大規模な発電システムの構築も可能だ。東芝にはボイラーや焼却炉を持つ工場などから多数の引き合があるという。

 太陽電池がライバルだが、ライバルより優れたエネルギー変換特質もある。熱で発電するのはもちろん、その逆も可能だ。熱電モジュールに電気を与えると、今度はそれを熱に変換、つまり発熱する。使い方次第で、電気も熱も取り出せるというわけだ。太陽電池は光で発電しても、電気で光をつくることはできない。

■普及への課題も

 さまざまなメリットを持つ熱電モジュールだが、普及には課題もある。耐熱性とコスト、それに知名度がいまひとつだ。500度以上の高温に耐えられるモジュールも出てきたが、数は少ない。太陽電池の価格が1キロワット当たり約70万円まで下がってきたのに対し、量産手前の熱電モジュールにそこまでの競争力はない。開発の歴史が浅いため、太陽電池のように社会や生活の中に溶け込んでいるとはいえない。

 しかし、近藤さんは言う。「どんな技術にも壁がある。でも、あきらめたら終わり。量産や技術開発でコストを下げていけば必ず普及する。数年以内に太陽電池を下回るコストを実現する」

 ボイラーや自動車の排熱発電のほか、冷蔵庫や腕時計など様々な製品の電源として期待される熱電モジュール。

 近藤さんらの開発陣が合言葉にする「一家に1台熱電池」。そんな時代が来る日も遠くはなさそうだ。(この連載は新保新吾が担当しました)

次世代原発開発で日米協力 高温ガス炉や金属燃料

2004/04/21 47News【共同通信】

 日米両政府は22日、水素製造も可能な高温ガス炉や新しい核燃料など、次世代の原子力技術の研究開発を協力して進める方針を決め、日米原子力協定に基づく合意文書を交わした。

 冷却材にヘリウムガスを使う高温ガス炉は、900度を超える高温の熱を取り出せるため、その熱を利用して、温室効果ガスとなる二酸化炭素を出すことなく水素を製造することも可能になる。

 日本では日本原子力研究所が茨城県大洗町の高温工学試験研究炉(HTTR)で研究しており、水素社会実現を目指し2010年ごろに高温ガス炉を建設する計画を持つ米国は、この分野で日本の協力を得たい考えだ。

 また、高速増殖炉で従来のプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料に替えて金属燃料を使う研究を進める。金属燃料は再処理が簡単で経済性が高く、核兵器に転用可能なプルトニウムが取り出しにくいなどの利点がある。

高温ガス炉で950度達成 クリーン水素製造に前進

2004/04/19 47News(共同通信)

 日本原子力研究所(原研)大洗研究所が国内初の高温ガス炉として開発した高温工学試験研究炉(HTTR、熱出力3万キロワット)が19日、原子炉の出口配管で950度を達成した。1974年にドイツの高温ガス炉が炉心そばで950度を記録しているが、原子炉外での計測温度としては世界最高。

 HTTRは発電だけでなく、900度程度の熱が必要な水素製造システム開発を目指しており、原研では「電力以外の分野での利用に可能性が広がった」としている。  水素は従来、化学プラントなどで製造され、天然ガスなどを利用する製造法のため、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)が発生するが、HTTRで開発中のシステムでは、水を直接熱分解し、CO2を出さないクリーンな水素製造が可能になる。同研究所は2010年をめどに水素製造プラント設置に着手する計画。

 HTTRは98年11月に初臨界。原子炉から熱を取り出す冷却材にヘリウムガス、中性子の減速材に黒鉛を使用する。【共同通信】

1. 核開発を放棄 平和利用推進

2004/02/15 中国新聞ニュース 原子力を問う

アジア・アフリカからの報告/ 6. 南アフリカ 次世代原子炉 

 アフリカで唯一、原子力発電所を持つ南アフリカが、世界に先駆けて安全性が高く、経済性にも優れた次世代の新型原子炉、ペブルベッド・モジュール炉(PBMR)の開発を進めている。2009年にも商業化し、世界各国への輸出も目指す。アパルトヘイト(人種隔離政策)時代には国際的に孤立する中で核開発に手を染めていたが、核保有国としては世界で初めて核兵器を廃棄。欧米や日本などの国際的な協力も得て、原子力の平和利用の道を歩んでいる。

 実用化 輸出も視野

 大西洋とインド洋を分けるように突き出したアフリカ南端のケープタウン市。その中心部から北西三十キロにクーバーグ原発がある。周辺の環境保護区域も含め広さ約三千ヘクタール。施設のそばまで野生のシマウマやインパラなどが群れ、人が近づいても恐れる気配はない。

 「ここは野生動物や自然環境との調和を図るため思い切った広さの敷地を確保しており、あと原発十基は楽に建設できる」と、南アフリカ電力公社のカリン・デ・ビリヤーズ政府・広報担当主任。原発の近くでは、新たな送電設備を建設中で「近くPBMRの原型炉が着工される。ここから世界へと普及するようになる」と語った。

 高温ガス炉の一種であるPBMRは、核反応でヘリウムガスを高温に熱し、発電機のタービンを回す仕組み。燃料には、二酸化ウランをシリコンカーバイトなどで三重に被覆した多数の粒子(直径約一ミリ)を、直径六センチの黒鉛のカプセルで包んだタドン状の球(ペブル)を使う。

 「心臓部」である原子炉圧力容器の内面は耐熱性の高い黒鉛のれんがが張られ、燃料を上から入れて自然落下させて燃やす流動式だ。運転中でも燃料が装荷でき、六年間連続運転が可能。出力は一基当たり十二万五千―十六万五千キロワットと小型だが、電力需要に合わせて増設しやすく、八基組み合わせれば百万キロワット級の原発と同じ規模になる。

 こうした高温ガス炉特有の構造が、高い安全性につながっている。ヘリウムは不燃性で炉心を通過しても放射能を帯びない。燃料や炉の特性から異常が発生しても炉心温度の変化が緩やかで、対応措置が取りやすい。

 開発を担当するPBMR社のファムジレ・チェラネ技術戦略マネージャーは「米スリーマイルアイランド原発事故のような燃料損傷やメルトダウン(炉心溶融)の危険性がなく、旧ソ連のチェルノブイリ原発のような暴走反応も起きない。この安全性の高さが、優れた経済性につながる」と説明する。

 一般の軽水炉には欠かせない圧力容器を覆う巨大な原子炉格納容器や緊急炉心冷却装置(ECCS)などが不要で、建設単価は出力一キロワット当たり約千ドルと火力発電所並み。発電単価も一キロワット時当たり二円程度と、世界でもトップクラスに安い南アフリカの石炭火力発電所に負けない水準という。  PBMRの開発に乗り出したのは一九九三年から。そのタイミングは、核開発やアパルトへイトを放棄し、国際社会に復帰した時期と重なる。

 アパルトヘイトによって経済制裁を受け、外交的にも孤立していた南アフリカは、ひそかに核兵器を開発していた。だが、八九年に誕生したデクラーク政権は九一年にアパルトヘイトを放棄し、六発の核爆弾も解体して核拡散防止条約(NPT)に加盟。九四年には初めて全国民参加による選挙を実施してマンデラ大統領が就任し、民主化を実現した。

 チェラネ技術戦略マネージャーは「今では国際的な協力体制で開発が進められ、次世代の新型原子炉の中で最も早く実用化への期待がかけられている」と強調する。

 九八年に設立されたPBMR社には南アフリカ電力公社だけでなく、英国原子燃料公社(BNFL)、米国最大手の原子力発電会社エクセロンが資本参加。開発ではタービン担当の三菱重工業、燃料製造担当の原子燃料工業の日本企業二社も加わり、開発スタッフは世界で約五百人に上る。

 燃料製造装置は、かつて原爆用のウラン濃縮設備があったヨハネスブルク市近郊の原子力研究所構内の跡地に建設される予定である。  クーバーグ原発近くに建設されるPBMRは二〇〇九年ごろに稼働し、商業ベースに乗せる計画である。二〇二〇年までに世界で二百基の受注が見込まれているという。

2. 豊富なウラン資源活用

2004/02/15 中国新聞ニュース 原子力を問う

水素生産に期待高まる

 アフリカ最大の電力設備を持つ南アフリカが原子力発電を手掛けた背景には、アパルトヘイトの下で外交、経済的に孤立してエネルギー資源の輸入が難しく、ウラン資源の活用を図らざるを得なかった事情がある。開発中のPBMRは発電にとどまらず、将来の水素社会の到来に備えて水素製造にも利用できる原子炉として注目されている。

 南アフリカの電力設備の容量は計四千万キロワット。発電電力量のうち石炭火力が92%と大半を占め、原子力は7%。水力は1%で、モザンビークの水力発電からも一部輸入している。

 アフリカ全体では、南アフリカの発電電力量は断然トップで、ほぼ半分を占めている。二位のエジプトと比べても三倍近く、オーストラリアに匹敵する規模である。  石炭火力が中心の中で、一九八〇年代に相次いで二基の原子炉を稼働させたのは、豊富なウラン資源の存在が大きい。南アフリカのバールリーフズ鉱山は世界八番目の産出量で、二〇〇二年には八百二十トンのウランを産出している。

 原発は、電力需要が伸びている南部の沿岸地帯に建設された。北東内陸部の産炭地から遠くて輸送コストがかさむうえ、石炭火力が多いヨハネスブルク市からも千キロ以上離れ、送電網の整備が難しい事情があったからだという。

 原子力開発は、PBMRの実用化に全力を注いでいる。二〇一〇年ごろから電力が不足し始めるとみられる中、PBMRは建設期間が二年程度と電力需要の変化に合わせて建設しやすく、出力は小さいものの、一基約百億円と初期投資も少なくて済むためだ。百万キロワット級の軽水炉の場合は建設に五―六年かかり、一基三千億円前後必要で、期間、費用とも大幅に圧縮できる。

 さらにPBMRのような高温ガス炉は、究極のクリーンエネルギーとして期待される水素の生産にも適している。

 現在の工業的な水素製造法では天然ガスなどの化石資源を水蒸気改質しているが、その過程で地球温暖化を招く二酸化炭素(CO2)が排出される課題がある。高温ガス炉では八百度以上になる冷却材(PBMRではヘリウムガス)を利用し、水を熱化学分解して水素が生産できるという。

 このため、世界各国は次世代の新型原子炉として高温ガス炉の開発に力を入れている。日本原子力研究所の試験研究炉HTTRは九八年に臨界に達した。中国・清華大も同HTR―10を建設している。米国、ロシアも小型モジュール高温ガス炉(GT―MHR)の開発を進めている。

 日本や米国などはさらに、二〇二五年ごろをめどに冷却材が千度以上になる超高温ガス炉(VHTR)を開発する計画である。実用化で先行する南アフリカのPBMRは、水素社会の到来を告げる存在になりそうだ。

3. アジアは重要な市場−鉱山エネルギー省原子力技術部長 ハレシュ・ハリチャルン氏

2004/02/15 中国新聞ニュース 原子力を問う

 PBMRの開発や電力需給見通しなどについて、鉱山エネルギー省原子力技術部長のハレシュ・ハリチャルン氏に聞いた。

 ―現在の電力状況と将来の見通しは。  二〇〇二年から〇三年にかけて、電力需要が4・6%伸びた。現在は足りているが、このペースで伸びると、電力が足りなくなるとみられる。  さらに、電力供給の九割を占める石炭火力発電所が二〇二〇年ごろには老朽化し、十一カ所の発電所のほとんどを建て替えないといけなくなる見通しだ。

 ―だから、新しい原子炉の開発を手掛けているわけですね。  そうだ。二〇二〇年までには少なくともPBMR八基が本格的に稼働している。既存の原発二基の百九十三万キロワットと合わせると、原子力の設備容量は三百万キロワット以上になっているだろう。  ただ、その時に発電に占める原子力の割合がどれぐらいになっているかは分からない。今は発電の6―7%だが、PBMRの開発がどれだけ成功するかで将来、どれだけ増やすか変わる。今後は天然ガスを使った発電も増やす計画で、輸入価格がどう変化するかにもよるからだ。

 ―PBMRの開発には政府も関与しているのでしょうか。  民間ベースの仕事なので政府としては直接は関与せず、あくまで南アフリカ電力公社の業務と考えている。だが、技術関連の調査事業などについては支援している。官と民との間で、バランスの取れたサポートができるよう心掛けている。

 ―二〇〇九年ごろにも商業化されると聞きました。世界各国にも輸出する予定ですね。  世界の原子炉開発の例では、どのケースも最初の原子炉が稼働し始めるころにはたくさんのオーダーが舞い込んでいる。だから、年間十基ぐらいのペースで輸出できると期待している。売り込み先では、特にアジアが重要な市場であり、日本、中国、インドネシアなどが対象だ。  政府としても、輸出に伴う雇用者の増加に非常に魅力を感じている。関連産業も振興できるし、それが社会、教育面の向上にもつながると考えている。

 ―大量の輸出を目指す一方、それが核拡散につながることは避けなければなりません。  輸出相手は、当然のことながら核拡散防止条約(NPT)の加盟国が対象になる。国際原子力機関(IAEA)が認めたような顧客でないといけない。それと、PBMRはプルトニウムを取り出す再処理が難しい。

 ―かつては核開発を進めた経験があります。  確かに、わが国は核兵器を持っていた。だが、それは放棄したし、今では核兵器につながる高濃縮ウランを製造する計画は持っていない。われわれは広島、長崎で起きた悲劇を教訓にして、あくまで原子力の平和利用だけを目指している。

アフリカで建設計画進む新型原子炉PBMRをめぐる論争

2003年11月20日 WIRED NEWS Megan Lindow

 ケープタウン発――南アフリカ共和国という意外な場所で、原子力エネルギー技術における世界的な革命が始まるかもしれない。

 アフリカ大陸唯一の原子力発電所は、ケープタウンの北の荒涼とした海岸にある。しかし大陸南端のこの海岸では、南アの国営電力会社エスコム社が各国の企業と提携し――老朽化しつつある加圧水型原子炉(PWR)の近くに――世界初の商用『ペブルベッド・モジュール炉』(PBMR)を建設する計画を進めている。

 開発に関わる各社にとって、このPBMRの設計は、「アフリカからのルネッサンス」とでも呼ぶべき原子力エネルギーの復活を意味する。計画を進める企業で構成されるPBMRコンソーシアムのトム・フェレイラ氏によると、PBMRは従来の原子力発電所と比べて安全性が高く、汚染が少なく、小型で建設費用も安くなるという。実際に、計画を支持する人々は、「ウォークアウェイ・セーフ」[仮に運転員が持ち場を離れても安全が保たれる]という表現を使い、PBMRは設計上「メルトダウン(炉心溶融)が起こらない」と主張している。

 「PBMRでは、スリーマイル島やチェルノブイリでの事故に匹敵する事故が起こることは物理学的にあり得ない」と、フェレイラ氏は言う。

 しかし、懐疑的な人々にとってPBMRの建設計画は、危険なうえに費用がかかりすぎるとしてとっくの昔に却下されたエネルギー源へ無謀にも回帰しようとしているように感じられる。新しい原子炉の建設は、1986年に起きたチェルノブイリでの大事故の後に高まった反核・反原発の雰囲気の中で行き詰まっている。米国では1970年代以降、新しい原子炉の建設が途絶えており、環境保護派の多くはこの状態が維持されることを望んでいる。

 しかし南ア同様、米国をはじめとする各国ではエネルギー需要が増加を続けており、地球温暖化に対する懸念ともあいまって、原子力発電に対する態度が変わりつつある。フィンランドでは新しい原子炉を建設中だし、日本などアジア各国でも同様の動きが見られる。輸入石油に対する依存率をなんとか下げようとして、ブッシュ政権も原子力エネルギーの復活を訴えている。

 一方、南ア政府は、アパルトヘイトのもとで長い間貧しい暮らしを強いられてきた多くの人々に手ごろな価格のエネルギーを国内で供給するため、緊急の取り組みを行なっている。現在南アの電力の90%を供給している石炭は価格が安くて量も豊富だが、大気汚染も引き起こす。太陽光や風力といったリニューアブル・エネルギー(持続的利用可能エネルギー)には限界がある。水力発電も期待できない。少なくとも現時点で可能な選択肢としては原子力しか残らないのだ。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)原子力工学部のアンドルー・カダック教授によると、PBMRや次世代の原子力技術に対する関心の高まりは、世界規模で原子力が復活する前ぶれだという。「今やらなければならないことは、発電所を建設し、長所を人々に示すことだ」

 PBMRを支持する人々によると、この型の原子炉の大きな長所は、小型で構造が比較的単純であることだという。従来の原子力発電所の建設には少なくとも6年かかっていたのに対し、PBMRは2年で建設できる。また、一般的な1100メガワット規模の原子力発電所とは異なり、PBMRの設計は、地元の電力需要の変化に合わせて変更できる。中核となる165メガワット規模の発電所を建設した後で、さらに発電モジュールを追加できるのだ。

 従来の原子炉と同様に、PBMRも核分裂の連鎖反応で発生する熱を利用して、発電タービンを動かす。両システムの大きな違いは、炉心での濃縮ウランの保持方法と、発電機への熱の伝達方法にある。PBMRでは、これまでの燃料棒の代わりにテニスボール大の黒鉛の球(ペブル)が詰まっていて、それぞれのペブルには数千個の小さな二酸化ウランの粒が入っている。また、通常の炉のように蒸気ではなく、高温のヘリウムガスを利用してタービンを動かす。

 このような燃料保持方法では放射性物質がメルトダウンを起こすほどの高温にはならないため、PBMRは本質的に他のシステムよりも安全だ、とフェレイラ氏は語る。「従来の原子炉では、連鎖反応の暴走を防ぐために、たくさんの作業をする必要があった。PBMRでは[逆に]、連鎖反応を持続させるために多くの作業が必要だ」という。

 システムに異常が起こったときは、原子炉は自ら停止するだけだ、とフェレイラ氏は話す。この場合、熱は放散するが、放射能が漏れることはない。

 PBMRにはすでに成功実績がある。1960年代にドイツで電気出力15メガワットの実験炉が建設され、21年間故障なしで稼動を続けた。しかしドイツ政府はチェルノブイリの惨事の後、このプログラムを中止している。

 1993年にドイツの科学者が、消滅寸前だったこの計画をエスコム社に持ち込んだのがきっかけで、同社はこの技術を商用化するための取り組みを徐々に開始した。現在PBMRコンソーシアムは、10億ドルをかけた今回の計画により、南アがPBMRの利用において世界をリードすることを望んでいる。

 ただしPBMRは政府の承認をまだ受けていないうえ、ほかにも潜在的な障害が残っている。環境保護団体である『アースライフ・アフリカ』が提訴したため、最終的な承認段階に到達する前に、計画がつぶれかねない可能性もある。

 環境保護を訴える人々は、開発企業がPBMRの本質的な安全性を強調するあまり、従来の原子炉に要求されたような炉心格納容器や、入念に構築された緊急時の予備システムの必要がなくなるという点に、とくに警戒を強めている。理屈として、PBMRがPWRなどよりも少ない費用で建設できるというのは、このように構造を単純化できることが理由になっている。

 ワシントンの『核管理研究所(NCI)』で科学研究部門の責任者を務めるエドウィン・S・ライマン氏は、「重大な事故や破壊行為などの攻撃が、非常に高い確率でまずあり得ないと予測できる場合、そういった事態を想定した予防措置を施す正当な理由はなくなるかもしれない。だが、PBMRの場合は、不確実な部分がかなり多く残っている」と指摘する。

 それでもPBMRの第1号機が成功を収めた場合、PBMRコンソーシアムでは2010年までに1000億ドル規模の世界市場に対して新しい発電所の売り込みを開始したいと考えている。さらにフェレイラ氏によると、コンソーシアムでは、核反応によって生じる熱を利用して海水を脱塩し、水素を作って追加のエネルギー源にすることも目指しているという。PBMRコンソーシアムでは来年、米国の資金援助のもと、水素エネルギーの開発に取り組む予定だ。

 原子力エネルギー技術にかける南アの野心が現実になる可能性が限られていることは、フェレイラ氏も認めている。現段階では南アでの計画が最も進んでいるが、中国やマサチューセッツ工科大学でもPBMR技術への取り組みは進んでいるからだ。予測不可能な問題や計画の遅れが原因で、南アが世界の技術先進国と肩を並べるまたとないチャンスが失われるかもしれないと、フェレイラ氏は危惧する。

 「われわれがやる、やらないにかかわらず、ペブルベッド型原子炉は建設されるだろう。非常に多くの事柄がこの計画を支持する方向に向かっているので、実現しないなどということは、私にはほとんど想像もできないくらいだ」とフェレイラ氏は述べた。[日本語版:平井眞弓/長谷 睦]

原子力使い水素を製造、原研が製造実験に成功

2003-08-27 (Bizteck) JSCE

 日本原子力研究所は、水を熱で分解して毎時35Lの水素を製造することに成功した。実験では電気ヒータで熱を供給したが、実用になったときの熱源として原子力を想定している。


小型高温ガス原子炉(PBMR)フィージビリティ・スタディを実施

2001年8月17日発行 第3937号 三菱重工業

南アから 実機受注に照準

 三菱重工業は、南アフリカ共和国のPBMR(Pebble Bed Modular Reactor)社からPBMRのヘリウムタービン発電機に関するフィージビリティ・スタディ(F/S=事前可能性検討)を実施するよう内示を受けた。2001年11月完了を目途に検討を実施、その結果、可能と判断されれば引き続きこの計画に参画、PBMRの実機受注を狙う。

 PBMRは出力10万kW級の原子炉で、黒鉛球型燃料を使い、ヘリウムを冷却材として用いる高温ガス炉。炉出口温度は約900℃で、7%の濃縮ウランを使う。出力を取り出すガスタービン、ならびにコンプレッサー技術の見通しをつけることが今回のF/Sの最大のポイントとなるところで、豊富な実績をもつ当社のガスタービン技術を高く評価、F/Sを依頼してきた。

 送電網の未整備な南アで地域電力需要に合致する小型原子炉として1993年PBMRの開発に着手。プロトタイプは2002年3月着工、2007年1月完成の予定で計画が進められており、ほかに商業炉も10基ほど計画されている。

 一方、アメリカでも建設コストが低いこと、建設期間が短いことなどから注目されており、エクセロン(EXELON)社が電力需要に合わせた小型炉の同一サイトへの複数設置を狙って商業炉20基程度の建設を計画中。

 今回のF/Sの受注はこれまで取り組んできた原子力発電技術の海外展開が実を結んだものであり、PBMRの実用化に力を入れている南アは、当社の優れたガスタービン開発力と原子力技術の両面から開発への参画を求めていた。

 なおPBMR社は南ア国営電力会社ESKOM、南ア政府投資会社IDC、英国原子燃料公社BNFL、米国の電力会社EXELONなどの共同出資により2000年に設立された。

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