TOPIC No.3-41 バイオガソリン(バイオETBE)

01. 日本のバイオガソリンの動き(2007年01月08日)
02. バイオガソリンについて by石油連盟
03. エチル ターシャリー ブチルエーテル(Ethyl Tertiary-Butyl Ether, 略称 ETBE)byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
04. バイオマス・ニッポン by農林水産省
05. バイオガソリン取り扱サービスステーション JOMO(ジャパンエナジー)

バイオガソリン原料生産 新日石 来年度から国内初、道産エタノール活用

2008/04/29 北海道新聞

 道産バイオエタノールの活用に向けて、石油元売り最大手の新日本石油は二十八日、バイオガソリンの原料となる「ETBE」を二〇〇九年度から国内で初めて製造する方針を明らかにした。〇九年十二月をめどに新日石精製根岸製油所(横浜市)に製造設備を建設し、年間十万キロリットルを生産する計画だ。

 道内では苫小牧東部地域で清酒・焼酎製造のオエノンホールディングスが、十勝管内清水町でもJA北海道中央会などが出資する「北海道バイオエタノール」が、規格外の小麦やコメ、余剰ビートなどを使うバイオエタノールの工場を建設中。いずれも〇九年度に一万五千キロリットルの供給を計画している。

 新日石はETBEの原料として、石油連盟を通じて両工場で生産するバイオエタノール全量の受け入れを検討している。それだけに国産ETBEの製造は「道産エタノールの生産に追い風になる」(北海道バイオエタノール)と期待される。

 根岸製油所では現在、海外から輸入したETBEを、ガソリンに7%混ぜてバイオガソリンを製造。昨年四月から元売り各社を通じて首都圏などで販売している。

 〇七年度は七千−八千キロリットルの輸入ETBEを使ったが、バイオガソリンを全国販売する一〇年度には国産、輸入分を合わせて八十四万キロリットルのETBE(バイオエタノール換算で三十六万キロリットル)をガソリンに混ぜて販売する計画だ。

 国産ETBEの原料で、道産のバイオエタノールで不足する分は引き続き輸入などで賄う予定。

 石油連盟によると、昨年度輸入したETBEは一リットル当たり百円程度で、道産エタノールについてはいかに安く供給できるかが課題となる。

「バイオガソリン」原料、新日石が量産化へ

2008年04月28日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 新日本石油は28日、2009年末から初めて「バイオガソリン」の原料を国内量産化する方針を明らかにした。

 規格外の小麦やテンサイなどをもとにしたバイオエタノールから燃料添加剤「ETBE」を化学合成する。同社子会社の根岸製油所(横浜市)で年間10万キロ・リットル生産する計画だ。

 ガソリンに7%分混ぜるもので、生産量は新日石が年間に販売するガソリンの約1割に混ぜる量に相当する。

 バイオエタノールは北海道のホクレン農業協同組合連合会などから調達するほか、ブラジルなどからの輸入でもまかなう方針だ。

山根一眞:地産地消のバイオエタノール

2008年04月25日 NIKKEI BP News

「地域のためだから…」石連・渡会長の理解

 宮古島でサトウキビから砂糖を得た後に出る副産物、糖蜜を使い自動車用のエタノールを作る。この計画は、りゅうせき(沖縄県浦添市)の奥島憲二さんが、環境省の地球温暖化対策室を訪ねたことから始まる。

 「会社は油を売っているだけだが、何か新しい分野を開発せないかんと考え、この次はバイオエネルギーだと思いついたんです。そこで、いくつかの研究所などを回わっているうちに、環境省を紹介されたのがきっかけとなりました」

 2002年、その環境省で思いがけないことを言われた。

 「奥島さん、宮古島の糖蜜からエタノールを作りませんか」

 「それで何をするんですか?」

 「ガソリンに混入する燃料を作る温暖化対策ですよ」

 環境省は、温暖化対策のためにガソリンにエタノールを3%、5%、10%加える「E3」「E5」「E10」計画を打ち出したものの思うようにいかなかった経験から、実際にバイオエタノールを製造し、ガソリンに混ぜて自動車を走らせる実証試験を行い、内外への関心高めたいという思いがあったのだとされる。

 温暖化対策では省庁間の足並みはなかなか揃わなかったが、りゅうせきという民間企業が主体となれば、実証試験は進めやすい。

 奥島さんは、りゅうせきの宮古支店長として宮古島に2年赴任していた経験があり、宮古は故郷にも等しい。サトウキビ産業を何とか活性化しなければならないという思いも強かった。糖蜜でエタノールを製造するという事業は、サトウキビ産業を間違いなく支援するものになる。サトウキビ産業の副産物を島内の全自動車が燃料に使い、温暖化対策に貢献できればすばらしい地域密着事業になる。この提案に乗った。

 だが石油連盟は、欧州で普及し始めたバイオエタノールに石油から作る添加剤を混ぜた燃料、「ETBE」の全国展開を計画していた。

石油連盟、バイオETBEをブラジルから初輸入

2008年04月25日 The Chemical Daily

 石油連盟は24日、バイオETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)を積載した3船目のタンカーが新日本石油精製根岸製油所に着桟したと発表した。輸入量は約6700キロリットルで、ブラジルから初の輸入となる。

石油連盟が導入を推進している「バイオガソリン」の販売給油所が今年度から倍増するのにともない、今後は、バイオETBEの輸入量も増加する見込みとなっている。

バイオETBEはバイオエタノールとイソブテンを合成して製造。石油連盟はバイオETBEをレギュラーガソリンに混合した「バイオガソリン」の導入を推進、石油元売企業10社で構成するバイオマス燃料供給有限責任事業組合がバイオETBEの輸入業務を担っている。

バイオETBEガソリン、健康被害の懸念なし

2008年04月14日 The Chemical Daily

 石油産業活性化センター(PEC)はこのほど、バイオエタノールを原料としたETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)をガソリンに混合した場合のリスク評価をまとめた。ハザード評価や暴露評価の結果から、大気経由の吸入が健康に与える影響を「懸念されるレベルではない」と結論。石油連盟は先月、10年のバイオエタノールの導入目標を倍以上に引き上げることを表明しており、ETBE方式のガソリン普及に弾みがつきそうだ。

ブラジル産バイオETBEの初の本格的な対日輸入について

2008年01月24日 丸紅株式会社 ニュースリリース

 丸紅株式会社(以下「丸紅」)はこの度、ブラジルの大手石油化学メーカーであるコペスル(Copesul)社から、ガソリンへのブレンド用エタノール化合燃料であるバイオETBE6,500klを調達し、日本の石油元売各社の共同事業組織であるバイオマス燃料供給有限責任事業組合(JBSL)向けに供給します。2008年2月に現地出荷予定です。

 日本の石油業界は、京都議定書に基づく日本政府のCO2削減計画に従って、2010年から年間84万klのバイオETBEをガソリンに7%混合する計画で、このバイオETBEの大半を、当面海外からの輸入で賄う予定です。石油業界は、昨年1月に元売各社の共同事業組合組織としてJBSLを立ち上げ、2007年度から08年度の2ヵ年は本格利用に先立つ実証事業として、これまで欧州から2度にわたり約14,000klのバイオETBEを輸入していますが、ブラジルからの輸入は初めてです。

 ブラジルはその広大な国土を背景に、世界で最も生産コストが低く、またCO2排出量削減に貢献する、砂糖キビを原料としたエタノールやバイオETBEを生産しており、燃料用途での対日輸出を強く望んでおりました。今回輸入されるブラジル製バイオETBEの品質や経済性が確認されれば、 2009年度以降、JBSL向けに長期契約ベースでの安定的な供給が可能になります。

 丸紅はブラジルでは、欧州系穀物商社アグレンコ(Agrenco)グループと共同で、大豆等の油糧植物や動物油を使って、軽油代替となる年産40万klのバイオディーゼル・プラントを建設中であり、また国内外で、月島機械株式会社と共同でバイオエタノール製造プラントを供給するなど、地球環境に配慮したバイオ燃料ビジネスに積極的に取り組んでいます。  以 上

 <参考>

 * Copesul 社: ブラジル南部、リオグランデ・ド・スル州に本社工場を有する石油化学メーカー。年間売り上げ48億USドル(2006年度)、基礎化学品年産290 万トン、ETBE年産20万kl。同社は、同じ石油化学メーカーのブラスケム(Braskem)社との統合が決まっており、統合後、石油化学企業として、米州でダウケミカル、エクソンモービルケミカルに次ぐ3番目の規模の企業となる予定。

 * 京都議定書により、日本はCO2を1990年度比6%の削減する義務があり、日本政府の削減計画では、輸送部門で輸送用燃料を原油熱量換算50万kl/年についてバイオ燃料に代替することになっている。政府と石油業界では、このうち、原油熱量換算21万kl/ 年分をバイオETBE84万kl(エタノール36万kl相当)で代替することで合意している。

 * エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル(ETBE): 石油化学派生品のイソブチレン(約57%)、エタノール(約43%)を化合した製品(84万klのETBEには、36万klのエタノールが含有されている)で、ガソリンに7%添加されて、バイオガソリンの名前で販売されている。含水性のエタノールをガソリンに直接混合するのに比べて、設備や使用する車両に特別な手当てが不必要で、取り扱いが簡単であり、欧州で実用化されている。

バイオガソリンはほんとうに環境にいいの?

2007/07/04 マイコミジャ−ナル:丸山誠のカーライフあれこれ

 今回は、最近ニュースで多く取り上げられることが多くなった「バイオガソリン」について。バイオと聞くと何か先進的な感じがするが、この場合は「植物などから作った燃料」をバイオ燃料と呼び、それをガソリンと混合しているためバイオガソリンなどと言う立派な名前になっている。ガソリンそのものを植物から作るわけではなく、今までのガソリンに植物から作った燃料を混ぜているわけだ。

 バイオ燃料というとちょっと難しく聞こえるが、正体は「お酒」。とうもろこしやさとうきびなど、穀類などを醸造してアルコールを作っているわけだ。昔理科の実験で使ったアルコールランプでわかるように、アルコールはよく燃えるから内燃機であるエンジンの燃料としても使える。また、バイオ燃料が環境に優しいというのは、原料に植物などを使うためだ。光合成で空気中の二酸化炭素を取り込んで成長するため、その植物を原料とした燃料を燃やしても空気中の二酸化炭素濃度を高めない。二酸化炭素は温室効果ガスの1つだからそれを抑制することで温暖化防止に役立つ、というわけだ。

 そのバイオ燃料を混ぜたバイオガソリンが、環境問題の特効薬のように言われているがそれは間違いだ。植物から作るバイオ燃料だけでクルマを動かすのならば地球温暖化防止の効果も高いが、4月下旬から首都圏で販売が開始されたバイオガソリンはバイオ燃料であるアルコール分はたった3%。もちろん社会実験的な意味がある販売だから意味がないとは言わないが、現状のバイオガソリンでは温暖化防止という面から見ると効果は少ない。では、もっとたくさん混ぜれば良いではないかというと、これがそうはいかない。現在ガソリンに混ぜることのできるアルコール分は3%までと決められているのだ。これは、以前高濃度アルコール燃料が市場に出回った際に、脱税行為にもなるということで3%が上限と決められたのだ。効果が見込めるほど混合しようにも、そもそもできないという、なんとも複雑な事情があったのだ。

 さて、このバイオガソリン、経済産業省が推進しているもので、石油連盟が経済産業省の補助事業として4月27日から首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の50カ所のガソリンスタンドで市販している。ただし、今販売されているのは「バイオETBE(エチル・ターシャリー、ブチル・エーテル)」を配合したレギュラーガソリンで、純粋なエタノール(アルコール)をガソリンに添加しているのではなく、植物由来(バイオ)の合成されたエタノールを添加したものだ。バイオガソリンのETBEは約7%添加されているが、そのうちのアルコール分が3%ということで認められているわけだ。

 ここで、なぜ純粋なアルコールでなくのバイオETBEを混合するかという疑問がわくだろう。温暖化防止の旗振り役の環境省は、ガソリンに直接純粋なアルコールを混ぜる方式を検討している。コストがかかるETBEとは違いそのままガソリンに混ぜるため、燃料そのもののコストは安いというメリットがあるからだ。だが、エタノールは水に溶解しやすいため空気中の水分などを吸収しやすい。そのため保存状態によっては燃料の品質を保つことが難しいとされている。また、ETBEに比べ揮発性が高いため大気中へ蒸散しやすいというデメリットもあるのだ。

 では、現在発売されているバイオガソリンのETBEがいいのかというと、それも疑問なのだ。ETBEに似た名前を過去に聞いたことはないだろうか。 80年代後半にプレミアムガソリンが導入されたとき、一部の石油元売りがアンチノック性が高く、酸素分子を持っているためよく燃えるガソリンということで発売したプレミアムガソリンに添加されていたMTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)だ。MTBEはその後アメリカで発ガン性が指摘され現在は使われなくなったが、今回のETBEはメチルアルコールがエチルに変わっているものの、その毒性が心配だ。環境省が以前、ETBEの毒性について調べたところアメリカ、ドイツ、カナダ、EU、WHOなどの国際機関の有害性評価情報や健康毒性情報で評価されたことが少ないという。ETBEの安全性のデータ不足というのが心配のひとつだ。また燃焼させたときに排ガスに含まれる有害物質のアセドアルデヒドも気になる。 ところで今乗っているクルマにアルコール燃料を入れても大丈夫なの?

 今回市販されたバイオガソリンはETBEが約7%、そのアルコール分が3%といわれているから石油連盟ではエンジンに影響を与えないとしている。四輪、ニ輪メーカーなどが加盟している自動車工業会もバイオガソリンを問題視していない。ただし今後アルコール濃度が高いガソリンが流通するようになると、今までのエンジンでは困ったことが発生する。それはゴム類の劣化だ。燃料ホースやシール類などにはゴムが使われていることがあるが、高濃度アルコールに長時間さらされるとふくらんでブヨブヨして弱くなってしまう。こうした状態を「膨潤」というのだが、膨潤が起こると燃料漏れを起こす可能性が高まる。万一漏れれば、車両火災という最悪の事態も考えられるわけだ。

 高濃度アルコール燃料の使用は、ゴムだけではなく金属腐食も心配されている。ピストンやバルブ、ベアリングなどに腐食が起こり、磨耗が進みやすい。アルコールの吸水性がいいため金属をさびさせやすいのだ。劣化したアルコールが酸化すること、燃焼後のアルデヒドでも酸による腐食が起こる。これらは高濃度アルコール燃料でなければ心配はないが、今後アルコール濃度の高い燃料を普及させるためにはクルマ側の対策が必要不可欠だ。

 では自動車メーカーはそうした燃料に対応できているのだろうか? すでにブラジルなどアルコール燃料を使うエリアでクルマを販売しているメーカーはノウハウを確立している。もちろん日本のメーカーもアルコール燃料に対応したクルマを販売している。例えばトヨタは現在全世界で生産しているガソリンエンジンで、10%アルコールを添加した(E10と呼ぶ)ガソリンに対応している。最近ではブラジル投入用としてガソリンでもアルコール燃料でも使えるFFV(フレックス・フューエル・ビークル)をホンダやトヨタ、三菱が相次いで発表している。

 アルコール燃料のデメリット

 エンジン技術ではアルコール燃料を使うことはできるが、植物を使ってエタノールを作ることのデメリットもよく考えたい。アメリカがクルマの燃料としてエタノールの生産を推進したことから、原材料となる穀物の価格が急騰している。食料自給率40%の日本で穀物からアルコールを作れるのだろうか? 地球規模で見れば穀物からアルコールを作るために、今以上に飢餓に苦しむ地域を広げてしまう可能性があるのだ。

 温暖化防止やエネルギー問題は重要だが、「食料」はそれ以上に大切な問題。脱化石燃料で「バイオ燃料」に一気に突き進むのは危険すぎる。

 トヨタはカローラのFFV仕様を今年の5月からブラジルに投入。生産はブラジルトヨタでバイオエタノール混合率100%燃料にも対応する

 カローラFlexとそのワゴン版のカローラフィールダーFlexは、既存の1.8Lガソリンエンジンをベースに、燃料系やエンジン本体の仕様を変更してアルコール燃料に対応させた。パワーはベースエンジンと同等以上だという

 シビックもブラジル用にFFVを用意している。排ガス濃度センサーによって燃料性状を推定して、ガソリン車と同等の動力性能と優れた燃費性能を発揮するようにエンジンコントロール

 コンパクトカーのフィットにもFFVを設定。外気温が低いと高濃度アルコール燃料は始動性が悪化するため、ホンダでは少量のガソリンサブタンクを用いたコールドスタートシステムを採用している

 三菱もブラジル用にパジェロをベースにしたパジェロ TR4 Flexを7月から販売。ブラジルでは初の本格的4WDのFFVだという --------------------------------------------------------------------------------

  丸山 誠(まるやま まこと):日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員/ RJCカー・オブ・ザ・イヤー選考委員

 自動車専門誌での試乗インプレッションや新車解説のほかに燃料電池車など環境関連の取材も行っている。愛車は現行型プリウスでキャンピングトレーラーをトーイングしている。

【バイオETBE】CO2の6%削減には欠かせないものだが…

2007年06月12日 Response

 バイオETBEは今後どうなるのだろうか。導入を主導する石油連盟によると、京都議定書で定められた温室効果ガスの削減の第1約束期間に入る2008年度には販売拠点を首都圏の100店舗に拡大。その後も2010年の本格導入を目指し、全国へ拡大したいとする。

 バイオETBEは植物由来であり、原料となる植物が成長する過程で二酸化炭素(CO2)を吸収するために“大気中のCO2総量は増加しない”という、いわゆる「カーボンニュートラル」の考え方に則っている。植物由来のバイオETBE燃焼によって排出されたCO2については「温室効果ガス排出量として計上しない」というルールがあり、日本が京都議定書で約束する目標値「1990年比でCO2を6%削減」を達成するためには欠かせない材料となる。

 だが、カーボンニュートラルには「植物を成長させるために必要なコストが含まれていない」という指摘もある。エタノール燃料先進国のブラジルのように、原料となる植物(サトウキビ)を自国で育て、バイオマス燃料に精製して自国で消費できるのならともかく、日本のように海外から買い付けてタンカーで輸送する場合、吸収するCO2の量を超えてしまうのでは…という考え方だ。

 加えて「食糧を燃やして良いのか」という問題もある。バイオETBEはフランスで生産されているが、その原料は小麦とされている。言うまでもなく、それはパンや麺類の原材料とまったく同じものだ。フランスでは余剰・規格外農作物の活用法としてバイオETBEへの転用が始まったという経緯があるが、農作物が不作になった場合には食糧向けに優先され、バイオETBEの生産に影響が出ることも考えられる。

 こうした事情も考えれば「非食糧の植物でバイオETBEを生産すること」が今後の課題となることは間違いない。そして日本国内で原材料を調達することも目標のひとつとなるはずだ。《石田真一》

バイオ燃料、日本はETBE方式を採用

2007年04月25日 夕刊フジBLOG

CO2削減に向けて「バイオ燃料」―石油業界最新事情

 穀物の大生産国では、バイオエタノールを自動車用燃料として活用する動きが進んでいる。

 米国で注目を集めるのが、従来のガソリンとエタノール85%を混合した「E85」燃料の両方を利用できるフレキシブル燃料自動車(FFV)。ゼネラルモーターズ(GM)などビッグスリーが、拡販計画を打ち出している。ブラジルではガソリンにエタノール25%を混合した「E25」車とエタノール100%車、FFVの3車種が走る。

消費者の安心考え…

 しかし、直接混合タイプの実用化が進むのに伴い課題も明らかになってきた。光化学スモッグの原因物質である燃料蒸発ガスが増加するのだ。米国で最も厳しい規制を敷くカリフォルニア州も、この問題は最大の関心事。今後、どういった対策を講じるかが大きな課題として浮上している。

 また、エタノールは水分と結びつきやすいという特性を持つ。このため水分を含んだエタノールとガソリンが分離し揮発性などが低下。自動車部品の腐食や劣化が進行する恐れがある。こうした事象を踏まえて日本の石油業界は、バイオETBE方式の採用を決めた。最大の理由は消費者が安心して利用できる点だ。

 日本では1996年の石油製品の輸入自由化に伴い、品質確保法という世界的にも厳格な品質保証制度が導入された。品質の優劣が環境問題に大きな影響を及ぼすことを考慮したもので、一定の規格に適合しない製品は販売を禁止。ガソリンには定期的な品質分析が義務づけられている。

 だが、直接混入だと、品質保証体制を揺るがす可能性もある。エタノールが空気中の水分を吸収する可能性が高く、サービスステーション(SS)へガソリンを配送する直前にタンクローリーに混入する必要があり、最終製品の品質確認が困難となるからだ。

品質保証&脱税への対処が容易

 これに対しバイオETBE方式の場合は、製油所でブレンドし消費者へ届けられるので、品質保証を行いやすい。一方、直接混入は流通・末端段階で容易に混合できるため安価なエタノールによって脱税行為が発生。市況の混乱要因となるが、こうした問題も未然に防止できるようになる。

 東京に初雪が舞ったのは3月16日。観測史上、最も遅かった。暖冬現象に見舞われたのは東京だけではない。日本全体、いや世界各地が同様の問題に遭遇した。地球温暖化は年々深刻さを増しており、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの削減は喫緊の課題だ。

 課題の解決に向け温室効果ガスの排出量削減を義務づけたのが京都議定書。その中では「バイオ燃料はCO2排出量をゼロとみなす」と決めている。原料である植物は育つ過程でCO2を吸収するため、差し引きゼロと考えられるからだ。

 石油連盟に加盟する元売り各社は、バイオエタノールの利用に積極的に取り組むことで京都議定書を順守する。目標はガソリン需要量の20%相当分をETBEとして導入すること。その量はバイオエタノール換算で年間36万キロg。原油換算では21万キロgだ。

バイオ燃料「ETBE方式」のカギは国内生産

2007年04月26日 夕刊フジBLOG

CO2削減に向けて「バイオ燃料」―石油業界最新事情

 今月6日、新日本石油の根岸製油所(横浜市磯子区)にタンカー「ギンガランナー」が到着した。搭載していたのは、主に小麦を原料としたエチル・ターシャリー・ブチル・エーテル(バイオETBE)。石油元売り10社が共同出資して1月に設立したバイオマス燃料有限責任事業組合(JBSL)が、フランスで調達したものだ。

27日から首都圏50拠点で販売開始

 日本に初上陸した7800キロリットルのバイオETBEは約30時間をかけてタンクへの入荷を終えた。製油所ではバイオETBE7%分をガソリンに混入。元売り各社は27日から、首都圏の50拠点で試験販売を開始する。

 販売拠点数は、09年度には1000カ所まで拡大。10年度からは全国のサービスステーション(SS)で展開する。その時点でのバイオETBEの利用量は84万キロリットル。初年度のざっと70倍に相当する数値だ。

 ETBEについては当面の間、輸入で対応する。だが、これだけの量を海外から調達するのは難しい。このため08年末からETBEの国内生産が順次スタートする予定。最大の課題は「供給の安定性」(JBSLの平井茂雄代表職務執行者=新日本石油常務)だ。

 安定供給を実現する上では、国産エタノールをいかに調達できるかが重要なカギを握る。

 国内各地ではバイオエタノールの実証事業が順次進む。北海道十勝地区では規格外の小麦やトウモロコシ、堺市は建築廃木材、沖縄県宮古島ではサトウキビを主原料としている。これらのエタノールはバイオETBE方式とは異なり、3%分をガソリンに直接混合した「E3」向けが中心。だが、石油連盟はバイオETBE化して厳格な品質確保法をクリアするのであれば、国産エタノールも原料とする方針だ。 

 政府も国産バイオ燃料を大幅に増やす「工程表」を策定した。目標は2030年までに年間600万キロリットルへ引き上げること。現在の20万倍という天文学的数値だ。

稲わら、廃材有効活用へ技術開発進む

 しかし、この目標を達成するには高いハードルが待ち受けている。例えばコメや麦などの農産物で600万キロリットルのエタノールを生産するには、国内の耕地面積(休耕田を含む)に比べ100万f多い、360万fの土地が必要とされる。現実的には不可能だ。また、世界で約8億人が栄養不足の状態にあるため、食料に全面的に依存するのは賢明でない。

 必然的に稲わらや木材などセルロース系原料や資源作物全体から、効率よくバイオエタノールを生産する必要がある。とくに捨てられていた廃木材をいかに有効に活用できるかが課題。石油連盟の渡文明会長は「技術開発を進めながら全力を挙げて木質系をピックアップしたい」と語る。

 バイオETBEの登場でバイオ燃料“元年”を迎えた日本。しかし、量をいかに拡大できるかに話題が集中する印象が強い。消費者のためにも、これまで通り品質の高い製品をいかに供給できるかが最大の課題。こうした「地に足のついた考え方」(渡会長)が強く求められている。(おわり)

環境にやさしい「バイオガソリン(バイオETBE配合)」の販売について

2007年04月23日 太陽石油株式会社

 石油業界は、経済産業省の「平成19年度バイオマス由来燃料導入事業」の補助事業として、2007年4月27日から首都圏50箇所の給油所において、バイオETBEを配合したレギュラーガソリン「バイオガソリン」の販売(流通実証事業)を開始いたします。

 当社においては 、下記の給油所にて「バイオガソリン」を販売致します。

             【記】

■取り扱いSS:サンセルフ鎌が谷(千葉県鎌ケ谷市)

※「バイオガソリン」に関する詳しい情報は石油連盟ホームページをご覧ください。

直接混合のバイオエタノールガソリン、水が入ると濁って水量増加

2007年02月06日 Response

 新日本石油は5日、横浜市中区の中央技術研究所で報道陣を招いて自動車用バイオマス燃料についての技術説明会を行った。そこでは、エタノール直接混合とETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)の違いなどの実験デモが行われた。

 その実験デモでは、机の上に通常ガソリン、ETBEガソリン、エタノール直接混合ガソリンがそれぞれ1リットル入ったフラスコが用意された。そこにそれぞれ10ccの水を入れて、その違いを見るものだったが、通常ガソリンとETBEガソリンは変化がなかったものの、エタノール直接混合ガソリンは透明さがなくなり、少し白っぽく濁ってきた。

 しかも、フラスコの下に沈んだ水を下から抜き取ってみると、その量は10ccではなく、なんと18ccに増えていた。これは、エタノールが水分と融合しやすいためで、ガソリン中のエタノールが水に溶け、水量が増してしまったわけだ。このように、エタノール直接混合ガソリンは水分が混入すると品質劣化を起こしやすい。

 さらに、バイオエタノールをガソリンに直接混合すると、蒸気圧の上昇とパーミエーション(部材からの漏れ出し)によって、蒸気ガスが増加し、光化学スモッグの原因物質である光化学オキシダントが多く発生するという。

 一方、エタノールとイソブチレンを合成したETBEはそんな心配もない。そのため、石油業界ではETBEガソリンを4月から試験的に販売を開始することにした。価格についてはまだ未定だが、「レギュラーガソリンと同じようにすべての車に入れて大丈夫」(新日本石油の研究者)だという。

 ただ、ETBEガソリンも環境リスクへの対応が必要とのことで、バイオマス燃料導入にはまだまだ課題も多い。《山田清志》

石油連盟の渡会長、今年はバイオガソリンに本格的取り組み

2007年01月06日 Response

 石油連盟は5日、東京・大手町の経団連会館で新年賀詞交歓会を行った。冒頭挨拶に立った渡文明会長は、今年注力するテーマの一つとして、バイオガソリンに向けた本格的な取り組みをあげた。

 石油業界では、今年4月から関東地区50カ所のガソリンスタンドでイソブチレンと合成した「ETBE」(エチルターシャリーブチルエーテル)を混入したガソリンの試験販売を開始する。また、バイオエタノールの安定供給を行うため、石油連盟加盟各社による共同調達組織を1月26日に発足させる。

 ただ、このバイオ燃料に関して、渡会長は「最近、安心、安全を無視した単純拡大、あるいは直接混入といった安易な動きが出てきている」と述べ、その先行きに心配の念を示した。

 そのため、燃料を供給する立場からバイオ燃料について正しい認識を持ってもらう必要があり、今年の重要テーマとしたわけだ。「2010年からのバイオガソリンの本格導入に向けて、国民生活に支障のないように石油業界として万全を期す」と渡会長は強調した。 《山田清志》

バイオマス燃料、普及の気運盛り上がらず

2005年07月07日 Response

 国のバイオマス(生物由来)自動車燃料政策が足踏みしている。

 旗振り役の環境省は、E3(混合率3%)、E10(同10%)と2段階に分け、ガソリンにサトウキビなどから採れるバイオマスエタノールを混ぜて環境対策としたい考えだが、石油業界が「コストがかかり過ぎる」と難色を示し、エタノールを含酸素系添加剤、ETBEに代えて混合するよう求めている。

 バイオマス燃料は京都議定書のルール上、「二酸化炭素の排出にカウントしない」という規定があり、ガソリンに混ぜて全体の消費量を減らせば、それだけ二酸化炭素の排出削減に貢献する。

すでに経済産業省は関係法令を改正し、3%までの混合を認めているが、バイオマス燃料を積極的に使おうとする動きは見られないままだ。《編集部》

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