TOPIC No.3-38 マグロ


01.
 マグロ byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
02.
 にっぽんマグロ白書
03.
 マグロ漁業 by外務省
04.
 マグロについて byWWF
05.
 連載「漁場が消える―三陸・マグロ危機」(2009/01/03) 河北新報
06.
 近畿大学21世紀COEプログラム/ クロマグロ等の魚類養殖産業支援型研究拠点
07.
 好適環境水と養殖の未来 by水のひろば
08.
 「好適環境水」水槽 JR岡山駅に設置(2007年) byKAKE Net


太平洋クロマグロ、幼魚の漁獲量抑制で合意

2010年12月12日00時49分 読売新聞

 日本近海を含む西太平洋のマグロやカツオの漁業を管理する資源管理機関「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」は10日(日本時間11日)、米ホノルルでの年次会合で、2011〜12年の太平洋クロマグロの幼魚(3歳以下)について漁獲量を02〜04年の水準に抑えることで合意した。

 幼魚に限った規制だが、太平洋クロマグロについて漁獲量の制限を合意するのは初めてだ。資源の枯渇懸念や国際社会の乱獲批判が強まっていることから、規制強化の必要性で一致した。

 日本は05〜09年の年間平均で約6000トンの幼魚を漁獲していたが、約3割削減して02〜04年の平均約4500トンに抑制する。

 一方、資源の減少が指摘されるカツオを保護するために日本が提案した大型巻き網船の隻数規制は、合意に至らなかったが、来年合意を目指して協議を続ける。

クロマグロの漁獲枠4・4%減 1万2900トン、国際委

2010年11月28日08時55分 中国新聞ニュ−ス

 【パリ共同】パリで開かれていた大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)年次総会は27日、焦点だった大西洋・地中海産クロマグロの2011年の漁獲枠を10年(1万3500トン)比わずか4・4%減の1万2900トンとすることを決め、閉幕した。マグロ類で最高級品のクロマグロの漁獲枠がほぼ現状維持となったことで、最大消費国、日本にとっては輸入量の大幅減少による価格高騰の懸念が後退した。

 新たな漁獲枠は11年から3年間適用される。過去の過剰漁獲が発覚したフランスが今後2年間の漁獲割り当てを一部返上することや、漁獲枠を守らない国の操業を停止させる規制導入も決めた。

 漁獲枠1万2900トンは、枠設定に影響力のある欧州連合(EU)と日本が提案し、賛成多数で採択された。

 日本政府代表団の宮原正典水産庁審議官は閉幕後に記者会見し、来年以降の漁獲枠について、過去の過剰漁獲を返済する分が含まれ、実質的には1万1千トン前後となるとの認識を示した。その上で「マグロ資源の管理プログラムとしては、まあまあのものができた」として一定の成果をあげたと強調した。

マグロ養殖商業化で提携=豊田通商と近大

2010/09/10 時事ドットコム

 豊田通商と近畿大学は10日、クロマグロ(本マグロ)養殖の商業化に向け提携したと発表した。近大が世界で初めて完全養殖に成功した人工ふ化・飼育技術を利用し、豊田通商の子会社が幼魚を育て、養殖業者に販売する。乱獲による絶滅が懸念され、漁獲制限強化の動きもある中、天然資源に頼らないクロマグロの安定供給を目指す。

 近大は水産研究所で確立した養殖技術を使って育てた体長約6センチの人工稚魚を、豊田通商側に提供。同社の100%子会社「ツナドリーム五島」(長崎県五島市)の海上いけすで3〜4カ月をかけ、同約30センチの「ヨコワ」と呼ばれる幼魚まで飼育する。

 豊田通商は既に8月末に稚魚を受け入れ、早ければ11月にも幼魚の出荷を開始する。3年後には黒字化させたい考えだ。

親魚量が減少」と指摘 太平洋クロマグロで科学委

2010/09/04 中国新聞ニュ−ス

 日本が最も多くを漁獲している中西部太平洋のクロマグロは、産卵能力のある親魚の量が1990年代半ば以降、ほぼ一貫して減る傾向にあるなどとする報告書を、国際資源管理機関「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」の国際科学委員会が4日までにまとめた。

 2008年の親魚の推定量が1952〜2007年の平均的な量より低い水準にまで減った一方、漁獲は若い年齢の魚を中心に増加傾向にあることも判明。委員会は、クロマグロを漁獲する漁船の数や操業日数、漁具の数など(漁獲努力量)を減らすよう、WCPFC加盟国に勧告している。

 報告書は7日から福岡市で開かれるWCPFCの北小委員会に提出される。日本をはじめとするWCPFCの加盟国は、厳しい対応を求められることになる。

 国際科学委員会は、04〜06年の漁獲量は02〜04年に比べて、1〜4歳の若いマグロで30%増えるなど増加傾向にあると指摘。04〜06年水準の漁獲が続けば、今後長期間にわたって親魚の量が減り続けるとして、資源保護のために、特に若い魚を漁獲する努力量を02〜04年レベルより少なくすることを勧告している。

 中西部太平洋のクロマグロは近年、日本や韓国などの巻き網漁が急拡大し、成熟前の若い魚が大量に漁獲されていることへの懸念が高まっている。

 WCPFC加盟国は昨年、今年のクロマグロを漁獲する努力量を02〜04年レベルより増やさないことや、若い魚の漁獲の削減を考慮することなどに合意した。だが、韓国の排他的経済水域(EEZ)内の漁獲はこの合意の対象外とされるなど、資源管理の不十分さが指摘されている。

マグロ資源管理で協力=日中農相が会談

2010/08/28 時事ドットコム

 【北京時事】山田正彦農林水産相は27日、北京で中国の韓長賦農業相と会談し、太平洋中西部のマグロ類資源の管理について両国の協力を強化することを確認した。マグロ類を乱獲する大型巻き網漁船の隻数を増やさないよう協力することで一致。中国がメバチマグロの漁獲枠拡大を求めていた問題では、日本側が漁獲枠の移譲を検討することを表明した。

 中国では日本食ブームなどを背景にマグロ消費量が急増している。会談後に記者会見した山田農水相は「(マグロ類の保存管理で)具体的な行動につなげたい」と期待を寄せた。

韓国産クロマグロ輸入急増 水産庁、業者に自粛要請も

2010/07/18 中国新聞ニュ−ス

 韓国漁船が自国周辺の海で漁獲し、日本が輸入した「太平洋クロマグロ」の量が、6月末までに少なくとも980トンと昨年1年間の輸入量を既に上回り、急増したことが水産庁の18日までの調査で分かった。

 太平洋クロマグロは過剰漁獲や若い魚の漁獲が資源に与える悪影響への懸念が高まり、日本など関係国が漁獲能力を増やさないことに合意しているが、韓国の排他的経済水域(EEZ)内での漁獲はこの合意の対象外。

 水産庁は「韓国漁船が漁獲能力を大幅に増やしている可能性が高い」として、今後、関係業者に韓国産クロマグロの輸入自粛を求める行政指導を行うことも検討する。また、今秋の資源管理機関の会合で韓国に、国際的な資源管理策への参加を働き掛ける。

 水産庁によると、韓国産クロマグロの大部分を取り扱う福岡市の卸売市場での韓国産クロマグロの量は6月30日現在約980トン。2009年の同市場の取扱量約880トンを半年で超過した。09年の韓国からの総輸入量約920トンも上回った。

 日本など太平洋のクロマグロ漁業国は昨年、資源管理機関「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」の会合で「10年はクロマグロを漁獲する能力を02〜04年水準よりも増やさない」「0〜3歳の若い魚の漁獲を減らす」などの資源管理策に合意した。だが、韓国はデータ収集態勢の不備などを理由に合意受け入れを拒否。この措置は韓国のEEZには適用されないことになった。

 だが、韓国側には、日本のクロマグロ漁獲量が韓国の10倍以上もあることなどを理由に、規制強化への反対論も根強く、今後の議論は難航も予想される。

極秘リビア説得工作が奏功…クロマグロ禁輸否決

2010年03月20日 読売新聞 YOMIURI On-Line

 大西洋クロマグロの禁輸が最大のテーマとなったワシントン条約の締約国会議は、予想外の大差でモナコや欧州連合(EU)の禁輸提案を否決し、「ドーハの悲劇」は回避された。

 予想外の日本圧勝の裏には、途上国を中心に欧米主導の禁輸案への反発のうねりと、日本政府の周到な準備があった。

 ◆極秘訪問

 否決の流れを作ったのはリビアだった。18日の第1委員会では、リビアの代表が同国の最高指導者カダフィ氏ばりに、「(マグロの国際取引禁止は)先進国による陰謀だ!」と声高に主張し、途上国の反欧米の心情に訴えた。さらに、議論の打ち切りと即時採決を提案し、急転直下、否決へとつながった。

 実は今年2月末、水産庁の宮原正典審議官が極秘裏にリビアを訪問し、締約国会議でのクロマグロ禁輸反対に支持を求めていた。日本の説得工作で、当初関心が低かったリビアから、最終的には「日本支持」の言質を引き出すのに成功した。

 国際会議では途上国と先進国の対立がしばしば表面化する。いつもは途上国と利害を異にする日本が周到な準備を進め、今回はうまく途上国の欧米主導に対する不満をすくい上げ、“反欧米”と言えるうねりを引き出せたことが、大事な局面で奏功した。

 ◆中・韓とも連携

 今回の会議では、サメ類の商業取引を制限する案も提案されている。中国が、漁業規制の波がクロマグロからサメ類などに飛び火し、フカヒレなどの貴重な食材の確保に影響が出ることを懸念し、日本と共同歩調をとった点も大きい。

 委員会採決で、漁業国のアイスランドが秘密投票を求め、認められたことも日本にとっては有利に働いた。禁輸反対派のアイスランドはEUへの加盟交渉中だ。

 新興国や中国、韓国との連携や、欧州内の足並みの乱れを確認し、事前の劣勢との見方が一変。日本政府は次第に否決に自信を深めていた。

 「いまなら勝てそうです」

 赤松農相のもとに、17日、ドーハの町田勝弘水産庁長官から電話報告が入ると、赤松農相は「勝てるなら一気呵成(かせい)にやろう」と、即日採決で否決に持ち込もうとするアラブ諸国に乗る腹を固めた。

 「モナコ大敗」。農林水産省内の対策室に、マグロ禁輸案否決を伝える現地・ドーハから電話が鳴ったのは、マグロ禁輸の議論初日の18日深夜だった。(ドーハ 是枝智、実森出、カイロ 福島利之)

クロマグロ:「資源管理に取り組む」赤松農相

2010年03月19日 毎日新聞

 赤松広隆農相は19日の閣議後会見で、ワシントン条約締約国会議の第1委員会で大西洋(地中海含む)産クロマグロの国際取引禁止案が否決されたことについて「資源の有効利用を考えるいいきっかけになった。太平洋など他の海域でも日本がリーダーシップを取り資源管理をしっかりやらなければいけない。その責任が生まれた」と述べ、今後は大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT)などを通じた資源管理や、違法に漁獲されたマグロの輸入防止に取り組む姿勢を強調した。

 また、赤松農相は「現地からの報告では(25日の全体会合で)再提案はないと聞いている」と述べ、採決結果は覆らないとの見通しを示した。【行友弥】

マルハニチロ:クロマグロ「完全養殖」国内で…次期社長

2010年03月19日 毎日新聞

マルハニチロの久代敏男次期社長=2010年3月19日、窪田淳撮影

 4月1日付でマルハニチロホールディングスの社長に就任する久代敏男副社長は19日、毎日新聞の取材に対し、3年後をめどにマグロを卵から育てる「完全養殖」を国内で実現し、クロマグロ資源保護につなげたい考えを強調した。

 同社は年5000〜6000トンのクロマグロを輸入し、そのうち8割前後を地中海産が占める。久代氏は「禁輸されれば影響は大きかった」と、モナコ、EU提案の否決を評価。さらに「クジラがすでに規制され、マグロまで規制対象にされれば、その次のターゲットはカツオになりかねず、危険な状況だ」と、今後も禁輸に反対する姿勢を示した。

 同社は85年からクロマグロを幼魚から育てる蓄養に取り組み、現在、和歌山県や鹿児島県など全国7カ所で年2000トン前後を生産している。久代氏は蓄養の生産量を増やす一方、産卵・ふ化から取り組む完全養殖マグロを「3年後から国内で生産、出荷できるようにしたい」と語った。【窪田淳】

回転ずし上昇、水産卸下落…マグロ関連銘柄明暗

2010年03月19日 読売新聞 YOMIURI On-Line

 19日の東京株式市場は、大西洋産クロマグロの禁輸提案が否決されたことを受けて「マグロ関連銘柄」の明暗が分かれた。

 回転ずしチェーンを展開するくらコーポレーション(東証1部)は否決が好感され、一時、前日比1万5000円高の33万6000円まで上昇、終値は同1万2000円高の33万3000円だった。

 一方、禁輸が実施されて品薄になればマグロ価格が上昇して収益が上向くとの思惑で値を上げていた水産卸売り大手の東都水産(同)は一時、15円安の158円まで下落。養魚用飼料を販売する林兼産業(同)もマグロ養殖の拡大期待が後退したとして一時、14円安の120円まで売られた。

EU、クロマグロ禁止再提案断念 否決承認の可能性高まる

2010年03月19日 中国新聞ニュ−ス

 【ドーハ共同】カタール・ドーハで開かれているワシントン条約締約国会議の第1委員会で、大西洋・地中海のクロマグロ国際取引全面禁止案が予想以上の大差で否決されたのを受け、欧州連合(EU)は、新たに修正した禁止提案などを25日までの会期中に再提案したり再採決を求めない方針を固めた。EUとEU加盟国の複数の当局者が19日、明らかにした。

 当初の禁止案を提案したモナコの代表も既に再投票の提案をしない方針を示しており、18日にそれぞれの禁止案を否決した委員会の採決結果がそのまま24、25日の本会議で承認される可能性が極めて高くなった。禁止案を推進した欧米諸国には手痛い打撃となる。

 一方、禁止案の支持派の一部から「次善の策」として、新たに政府による輸出許可証の発行を義務付ける「付属書2」への掲載が提案されることへの警戒感が日本には残っている。

 委員会では禁輸賛成の票はモナコの原案に対しては20票とEU加盟国数の27にも届かない。2011年5月まで発効を遅らせるEUの修正案ですら43票と、何とか出席国数の3分の1を確保できた程度。

クローズアップ2010:クロマグロ禁輸案否決 小泉武夫氏、小松正之氏の談話

2010年03月19日 毎日新聞 東京朝刊

 ◇科学的議論の呼びかけを−−小泉武夫・東京農業大名誉教授の話

 今回の大西洋クロマグロをめぐる欧米の議論は科学的根拠に基づいたものではなく、大いに政治的な色彩を帯びていた。

 日本人は稲作民族であると同時に魚食民族でもある。中でもマグロの占める位置は大きく、その食文化を否定されていれば、クジラの問題と同様、大きな文化的損失になっていた。

 欧米人にはマグロやクジラを食べる文化が理解できないかもしれない。しかし、民族には固有の文化があり、他民族が否定することはできない。自分たちは食べないからと言って「可哀そうだ」というのは異文化への無理解に基づいた一方的な感情論と言わざるを得ない。

 ただ、感情論に感情論をもって応じても不毛な対立が繰り返される。日本は粘り強く自国の食文化への理解を訴えるとともに、水産資源の節度ある利用を実践し、科学的根拠に基づいた冷静な議論を呼びかけていくことが必要だろう。

 ◇水産資源の現状啓発必要−−小松正之・政策研究大学院大教授の話

 今回の問題の背景には、地域漁業管理機関である大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT)が本来の役割を果たしてこなかったという事実がある。地中海を含む東大西洋では、ICCATが設けた漁獲枠(09年で2万2000トン)をはるかに超える6万トン以上のクロマグロが取られているという指摘もあり、ICCATによる資源管理が実効性を失っていたことは明らかだ。

 ワシントン条約で付属書1に分類されれば、国際取引という「出口」がふさがれるため、今までのような尻抜けの状態は解消される。欧米諸国のマグロ保護論には科学的事実に基づかない情緒的な部分が目立つが、それを科学的議論に引き戻すためにも、日本はワシントン条約の適用を真剣に検討すべきだった。

 「マグロは日本の食文化」と言うが、マグロの刺し身やすしを食べるようになったのは1950年代以降で、それも「ハレの日」の特別な食材だった。日本の近海にはサンマやゴマサバなど資源量にゆとりのある魚がたくさんいる。消費者も資源の現状を理解し多様な水産物をバランスよく利用するよう、行政も啓発すべきだ。

クロマグロ:安堵、不安、警鐘…禁輸案否決にさまざまな声

2010年03月19日 毎日新聞

すしや刺し身のネタとして人気のクロマグロ=ロイター(写真)

 すしや刺し身のネタとして人気のクロマグロ。カタール・ドーハで開催中の国際会議で18日(日本時間同日夜)、禁輸提案が否決され、大西洋・地中海での国際取引が継続される可能性が出てきた。本マグロとも呼ばれ、国内で低価格のトロとして出回っていることから、消費者や漁業関係者からは安堵(あんど)の声が聞かれた。

 同日夜の東京・新橋のすし店。札幌から出張で来た会社役員、坂根厚司さん(49)は「今回の否決はとりあえず良かった。ただ、今後もマグロを安く食べたいならその仕組みを作るべきだ。それが日本の食文化を守ることにつながる」と言う。

 遠洋マグロ漁船の拠点、宮城県気仙沼市。大西洋にマグロ遠洋はえ縄漁船2隻を出している「勝倉漁業」の勝倉敏夫会長(69)は「何よりもほっとしている。ただし、輸入制限が徹底されない限り、根本的な解決にはならない」と話した。

 ノンフィクションライターで千葉県船橋市でマグロ料理店を営む斎藤健次さん(62)は「今後クロマグロが取引禁止になれば、庶民的なメバチマグロの価格が上がる可能性がある。マグロが庶民の口に入りにくくなってしまう」と不安げに語った。

 海の食文化や環境を考える市民団体「ウーマンズフォーラム魚(さかな)」(東京都)の白石ユリ子代表は「『日本人が過度にマグロを食べている』という国際的な批判が起こっていることを重く受け止めるべきだ」と指摘。「食べられなくなるかもしれない状況が初めて見えたことを教訓にすべきだ」と警鐘を鳴らした。【比嘉洋、青木純、江畑佳明】

三陸の漁業者ひとまず安堵 クロマグロ禁輸否決

2010年03月19日 河北新報社

 カタール・ドーハで開催中のワシントン条約締約国会議の第1委員会で18日深夜、大西洋・地中海クロマグロ(ホンマグロ)の国際取引禁止を求めたモナコ提案が大差で否決された。採決の行方をかたずをのんで見守っていた三陸の港町には19日、安堵(あんど)の表情が広がった。

 「最悪の事態を想定して漁場を移すことも社内で検討していたが、否決され、ひと安心した」

 3隻を大西洋に出漁させている浜幸水産(釜石市)の浜川幸三専務は、劣勢を覆しての否決のニュースに、胸をなで下ろした。

 大西洋に出漁する日本船38隻のうち16隻が三陸の漁業会社の所有だ。全面禁漁になれば1隻当たり1億円以上の水揚げが失われるうえ、ワシントン条約による規制が、大西洋クロマグロからインド洋や太平洋のほかのマグロ類に波及していくことも心配されていた。

 大西洋への出漁船計6隻が母港としている気仙沼市の鈴木昇市長は「マグロを貴重な水産資源と認識していた国が多く驚いた。伝え聞いていた情勢とはだいぶ違っていた」と「うれしい誤算」を喜んだ。

 委員会では大差で否決されたが、24、25日に開かれる本会議で、モナコ提案を支持する国から再投票が提案される可能性も残っている。

 宮城県北部鰹鮪漁業組合の日出英美専務は「日本政府や代表団に感謝するとともに、理解と支持を頂いた国民の皆さんにお礼を言いたい」と話し、「最後の本会議まで政府には気を緩めず、頑張ってほしい」と訴えた。

ワシントン条約締約国会議 大西洋クロマグロ禁輸案を委員会で否決

2010.03.18 MSN産経新聞

カタールのドーハで、ワシントン条約締約国会議に臨む水産庁代表=18日午後(共同)

 【ロンドン=木村正人】カタール・ドーハで開催中のワシントン条約締約国会議は18日、第1委員会で大西洋・地中海産クロマグロの国際商業取引を原則禁止するモナコ提案について協議し、採決の結果、反対多数で同提案は否決された。日本が反対していたクロマグロの禁輸措置はひとまず回避された格好だ。

 採決では、投票国の3分の2以上が賛成すれば可決される規約になっている。投票国のうち賛成は20カ国にとどまり、68カ国が反対、30カ国が棄権に回った。

 ドーハからの情報によると、第1委員会ではこの日、欧米諸国がモナコ提案を支持する中、日本や中東諸国が反対を表明した。リビアがモナコ提案への反対を表明後、採決を求める動議を提出。猶予期間を設けるなど条件付きでの禁輸を求めた欧州連合(EU)の修正案が否決された後、モナコ案も否決された。

 クロマグロの禁輸案をめぐっては、米国やEU(加盟27カ国)、スイスなどが賛成に回り、日本は窮地に立たされていた。ただ、自国漁業への影響を懸念したオーストラリアや韓国、中国などが日本に同調。さらにEU内にも足並みの乱れが出ていたことから、日本をはじめとする禁輸反対側の陣営は早期採決が有利に働くと判断、この日の採決に持ち込んだ。

 クロマグロを漁獲していない地中海の小国モナコは環境団体と連携し、昨年7月、大西洋・地中海産クロマグロは乱獲のため絶滅の恐れが強いとして、国際商業取引を全面禁止するワシントン条約付属書1への掲載を提案していた。

 委員会での決定は、最終日の25日までに開かれる本会議での承認をへて最終決定する。禁輸支持国から再投票を求める動議が出される可能性もある。

「クロマグロ養殖産業化 喫緊の課題」 近畿大がシンポ

2010年03月18日 読売新聞 YOMIURI On-Line

 クロマグロの養殖に取り組む近畿大は17日、大阪府東大阪市の同大学本部で、今年度の研究成果を紹介するシンポジウムを開いた。

 ワシントン条約締約国会議で大西洋クロマグロの国際取引禁止問題が議論される中、同大学水産研究所の熊井英水(ひでみ)教授が「クロマグロを巡る世界情勢は正念場。養殖技術の産業化は喫緊の課題」とあいさつ。養殖に取り組む教授ら5人は、共食いや衝突などによる稚魚の大量死を防ぐ方法などを報告、学生や研究者約150人が聞き入った。

【クロマグロ】日本、島嶼国、アフリカ諸国にも働きかけ 秘密投票の検討提案

2010.03.17 MSN産経新聞

 【ロンドン=木村正人】カタールで開催中のワシントン条約締約国会議は18日、大西洋・地中海産クロマグロは絶滅の恐れがあるとして付属書1に掲載して国際商業取引を原則禁止にするモナコ提案の協議に入る。反対を表明したのは日本とオーストラリアだけだが、中国や韓国も反対の意思を日本に伝えている。環境団体はモナコ提案に賛成するよう参加国に攻勢をかけており、日本にとって厳しい情勢が続いている。

 今回は約150カ国が参加、3分の2の100カ国以上が賛成すれば提案は採択される。記名投票が原則だが、環境団体による反対国への切り崩しを招きかねず、日本の代表団は秘密投票も検討するよう提案。10カ国以上が要求すれば秘密投票に切り替えられる。

 環境団体の圧力が今後、他のマグロ類に及ぶ恐れもあるため、日本はあくまで国際漁業管理機関での規制を主張、モナコ提案が採択された場合、留保して輸入を継続する構えだ。外交ルートで中国や韓国に働きかけ、協力を取り付けた。

 モナコ提案を否決するのに必要な50票を確保するため、日本は国際捕鯨委員会(IWC)で捕鯨を支持する太平洋の島嶼(とうしょ)国、アジアやアフリカの30数カ国にも協力を要請。フランス通信(AFP)によると、地中海沿岸のクロマグロ漁獲国チュニジアはアラブ連盟(21カ国と1機構)に反対に回るよう働きかけている。

「クロマグロ、中国は日本に同調の見通し」と農水相

2010.03.16 MSN産経新聞

 カタールで開かれているワシントン条約締約国会議の議題となっている大西洋・地中海産クロマグロの国際取引禁止について、赤松広隆農水相は16日、「中国は反対するようにほかの国にも働き掛けてくれている」と述べ、中国は取引禁止回避を目指す日本に同調するとの見方を示した。

 閣議後の記者会見で述べた。取引禁止提案の採択阻止のために必要となる50カ国の反対確保について、農相は依然として厳しい状況にあるとの認識を表明。「いろいろな妥協案が出てくると思うが、変な妥協はしない」と述べ、漁業資源管理機関での管理を求める基本方針は譲れないとの考えを強調した。

 クロマグロをめぐって政府は、山田正彦農水副大臣が15日、韓国を訪れ取引禁止提案の採択に反対する方針を確認するなど、各国への働き掛けを強めている。

クロマグロ禁止回避に努力 外相「日本の食文化」

2010.03.16 MSN産経新聞

 岡田克也外相は16日の記者会見で、大西洋と地中海のクロマグロの国際取引禁止が焦点となっていることについて「クロマグロは広く子どもからお年寄りまで親しんでおり、日本の食文化に大きな存在感を示している。農林水産省と協力しながら何とか回避できないかと努力を続けている」と強調した。

 また、地中海でのクロマグロ漁妨害を計画している反捕鯨団体「シー・シェパード」に厳然と対処する考えを表明。日本の調査捕鯨活動を妨害した抗議船の船籍をアフリカのトーゴがはく奪したため、シー・シェパードが新たにオランダ船籍取得を目指していると説明し「船籍を付与しないようオランダ政府に働き掛けている」と述べた。

今度はクロマグロ漁妨害 シー・シェパード地中海へ

2010/03/15 中国新聞ニュ−ス

 【シドニー共同】環境保護を掲げる反捕鯨団体「シー・シェパード」の抗議船「スティーブ・アーウィン号」が15日、地中海でクロマグロ漁を妨害するため、オーストラリア南部タスマニア島のホバートを出港した。

 シー・シェパードのポール・ワトソン代表は同日、「クジラを守るのと同じ手法で、違法なクロマグロ漁をやめさせる」と語り、過激な妨害活動を行うことを示唆。また、妨害の対象として「密漁をしているイタリアやスペイン、フランス、マルタなどの船」を挙げ、これらの船で捕れたクロマグロはほとんどが日本市場へ輸出されていると述べた。

 アーウィン号はニュージーランドやパナマ運河を経由し、5月中旬、地中海に着く予定。ワトソン代表は乗船せず、現地で合流するという。アーウィン号は南極海で日本の調査捕鯨妨害を行っていた船で、今月6日、帰港していた。

 大西洋と地中海のクロマグロをめぐっては、米国や欧州連合(EU)などが国際取引の全面禁止を支持する一方、日本は反対を表明。オーストラリアは、国際取引を禁止してもEU域内での取引は容認されることなどから、資源量回復につながらないと指摘、全面禁止には反対している。

クロマグロ禁輸反対で韓国と協調=農水副大臣

2010/03/15 時事ドットコム

 農林水産省の山田正彦副大臣は15日、ソウルで韓国農林水産食品省の河栄帝第2次官と会談した。山田副大臣は大西洋・地中海産クロマグロの国際取引禁止を回避するため、カタールの首都ドーハで開催中のワシントン条約締約国会議でモナコによる禁輸提案に対し、日本とともに反対するよう要請。日本政府によると、韓国側は理解を示した。

完全養殖のクロマグロ輸出へ、「循環型」供給に期待

2010年03月15日 AFPBBNews発信地:東京

【3月15日 AFP】人工ふ化から育てた成魚がまた卵を産む「循環型」の供給に道を開く「完全養殖」によるクロマグロが、初めて本格的に輸出される。

 輸出を開始した水産加工会社ブリミー(Burimy、熊本県天草市)によると、これまでクロマグロの供給は遠洋漁業か、漁網で捕獲した稚魚からの養殖のどちらかに頼っていたが初めて、人工ふ化させた卵から成魚に育て、その成魚がまた卵を産むという養殖サイクルで可能になった。枯渇の危機にある海洋のクロマグロを保護しながら、市場の高い需要にも応えられると関係者は期待する。

「われわれのマグロは生態系に影響を与えません。海洋資源の枯渇を防ぐ一助になれば」と、ブリミーの浜隆博(Takahiro Hama)取締役は語る。「今年に入って米国への本格的な出荷を始めました。わたしたちの『地球に優しいマグロ』を、活動家たちの抗議を懸念している寿司バーや日本料理店に使ってもらいたい」

 カタールで現在開催中のワシントン条約締約国会議(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora、CITES)では、絶滅の恐れがある野生生物として、大西洋・地中海産クロマグロの国際取引を禁止する動きが強まっている。

 大西洋では遠洋漁業による大量捕獲により、ここ数十年でクロマグロの資源量が激減している。この地域で獲れるクロマグロのほとんどが日本向けだ。

 ブリミーは近畿大学(Kinki University)と提携し、同大が人工ふ化した稚魚1500匹を07年12月に導入。2年間で体長約1.2メートル、重さ約40キロの成魚に育て上げた。クロマグロは動きが激しく、いけすでの養殖は困難だったが、同社は大型いけす5基(40メートル四方、深さ約20メートル)に濁った水をはり、マグロの動きを緩和遅め、互いの衝突を減らすことに成功した。

「近大マグロ」と命名されたこの完全養殖のクロマグロは、今年1月から週に20匹ペースでブリミーから米国に輸出されているほか、国内の百貨店などでも1キロ2000〜4000円前後で販売されている。2年後までに年間7000〜1万匹、約10億円の売り上げを見込んでいる。(c)AFP

ワシントン条約会議が開幕 クロマグロ禁輸焦点

2010/03/13 NIIKEI NeT

 【ドーハ=松尾博文】野生動植物の保護や捕獲・採取の規制を討議するワシントン条約締約国会議が13日、カタールの首都ドーハで開幕した。焦点となる地中海・大西洋産クロマグロ(本マグロ)の国際取引を禁じる提案をめぐっては米国や欧州連合(EU)が支持を表明済み。反対する日本との隔たりは大きく、採決に向け出席国の支持獲得を働きかける双方の動きも活発になっている。

 会議は25日まで。事務局によると、参加国は最終日までに170カ国・機関に達する見込み。14日までの全体会合に続いて、国際取引の禁止や規制対象となる動植物を記載した付属書改定を話し合う委員会を開き、クロマグロ禁輸を求めるモナコの提案など40提案以上を議論する。

 13日演説した条約事務局のウィンステッカー事務局長は「ワシントン条約は経済的に重要な種の保護にも取り組む時に来ている」と述べ、希少種だけでなくクロマグロなど商業性の高い動植物の規制にも踏み込むべきだとの認識を示した。

クロマグロ:大西洋産2300トン輸入差し止め 漁獲証明に不備

2010年03月13日 毎日新聞 東京朝刊

 絶滅の恐れがあるとしてワシントン条約(CITES)による国際取引禁止案が浮上している大西洋産のクロマグロ約2300トンが、日本への輸入を差し止められていることが12日わかった。正当な方法で漁獲されたものであることを示す漁獲証明の書類に不備があったためで、関係国との協議結果次第では、輸出元に返送される可能性もある。

 問題のマグロはフランスやイタリアなどの漁船が地中海で取り、マルタで蓄養されたものが中心。昨秋以降、日本に漁獲証明書が届いたが、漁獲国などによる認証の日付に矛盾があるなど問題が見つかったという。【行友弥】

クロマグロ禁輸で庶民派メバチ、キハダが値上がり? 赤身も高嶺の花に

2010.03.12 MSN産経新聞

東京の築地市場の競り場に並んだ多くのマグロ。日本はクロマグロやミナミマグロなど高級マグロの最大の消費国だ(写真)

 中東のカタールで13日から始まるワシントン条約会議で、大西洋・地中海産のクロマグロの輸出が禁止される可能性が高まっている。この地域で獲れるクロマグロの約8割がマグロ大好きの日本向けで、輸出禁止となれば、クロマグロの国内流通量は半減するともいわれている。現在は消費低迷で、在庫が豊富に余っており、“マグロパニック”は起きないとの見方が大勢だが、中長期的には、供給不足や価格高騰は避けられない。

 「景気低迷に伴う売れ行き鈍化で、ものすごく余っている。禁輸となっても、2年分くらいは十分な在庫があり、すぐになくなることはない」

 大手回転寿司チェーン「あきんどスシロー」の豊崎賢一社長は、こう話し、禁輸措置となっても、当面の影響は軽微とみている。

 大手スーパーでも「クロマグロは基本的に単価が高い高級食材で需要は正月などハレの日に限られることもあり、もともと取扱量が少ない」(イトーヨーカ堂)という。

 クロマグロの取り扱いがマグロ全体の2割のダイエーも「今年度分は在庫を確保しており、当面は影響が出ることはない」と、冷静だ。

 水産庁調べによれば、2008年の日本国内のマグロ消費量は41万トン。うちクロマグロは約1割を占め、禁輸対象の大西洋・地中海産はクロマグロ全体の約46の2万トン2000トンを占めている。

 しかし、太平洋で獲れたクロマグロのほか、ミナミマグロの輸入もあり、ある程度の穴埋めは可能だ。

 また最近の景気低迷で国内のマグロ需要も低迷。2万トン超の冷凍在庫があり、1年分の需要はまかなえる状態だ。このため、「価格がすぐに値上がりする可能性は低い」(大手流通)との見方が多い。

 ただ、中長期的には価格面への影響は避けられそうもない。健康志向の高まりで欧米を中心に「魚食人気」が高まっているほか、中国など新興国の食欲も旺盛だ。

 国内でも景気が回復し消費が戻れば、供給が足りなくなり、価格に跳ね上がるのは確実だ。

 さらに禁輸により、マグロが投機の対象となる懸念もあり、「クロマグロに比べ現状では値段が半分から3分の1のメバチやキハダなどに値上がりが波及するおそれもある」(流通業界の別の関係者)という。

 高級食材のクロマグロとは違い、赤身のメバチやキハダが値上がりすれば、庶民の食卓は大打撃を受ける。1皿当たり数百円の回転寿司チェーンにとっても、死活問題だ。

 大トロや中トロどころか、赤身のお寿司や刺身まで“高嶺の花”になる可能性も否定できない。

クロマグロ:「半減」の危機 完全養殖が日本の食卓救う?

2010年03月11日 毎日新聞

クロマグロの稚魚を海上のいけすに移す近畿大水産研究所員=和歌山県串本町沖で2009年7月

 すしや刺し身の高級ネタとして人気のクロマグロ(本マグロ)が、13日から開かれるワシントン条約締約国会議で国際取引が禁止される恐れが出てきた。一方、日本国内ではクロマグロの完全養殖化が進む。安定供給と種の保護の両立に、マグロ養殖は切り札となるのか。 【小島正美】

 ◇苦節40年

 クロマグロの完全養殖で世界の先頭を走るのは近畿大の水産研究所。本州最南端にある研究所の大島実験場(和歌山県串本町)を訪れた。船で約10分、沖へ進むと円形のいけす(直径約30メートル、深さ約10メートル)が見えてきた。全部で11基。実験場長の澤田好史・同大大学院教授が生サバを放り込むと、体長1.5メートル前後のマグロがすぐにのみ込んだ。どれも、いけす生まれの親から生まれた完全養殖マグロ。100キロを超すものもいる。「冬は脂がのっておいしいよ」と澤田教授。

 研究所は1970年、体長約20〜30センチのヨコワと呼ばれる子マグロを飼い始めたが、約20年間は失敗の連続。共食い防止にマダイの稚魚を与えたり、常夜灯をつけて激突死を防ぐなど技術を向上させ、02年に世界初の完全養殖に成功した。

 04年から「近大マグロ」のブランドで出荷され、07年からは養殖業者にヨコワを販売。仕入れた愛媛、熊本などの養殖業者は今年、マグロを出荷し始めた。昨年のヨコワ生産は日本で捕獲される約1割の約4万匹で、同大理事の熊井英水教授は「日本の海で捕獲されるヨコワの約10分の1に当たる。量産の研究を重ねれば、天然のヨコワに頼らなくても済むようになる」と語る。  企業でも、マルハニチロが87年から奄美諸島で養殖に取り組み、「人工飼料で育てるメドも立った」(同)。昨夏、いけす育ちのマグロが卵を産むまでになり、3年後から出荷予定。えさは生のイワシなどだが、「魚粉や栄養剤を混ぜた配合飼料で育てるメドも立った」(同社広報IR部)と飼育技術は着実に進んでいる。

 ◇年4万トン消費

 日本は国内で消費するクロマグロ約4万3000トン(08年)のうち、約2万トンを大西洋クロマグロに頼る(水産庁統計)。13日からカタールで開かれるワシントン条約締約国会議で、大西洋クロマグロが「絶滅の恐れのある動植物」に指定されると、発効後に日本国内の供給量は半減する。

 太平洋クロマグロやミナミマグロ(インドマグロ)の取引は続き、国内に約2万トンの在庫もあるため、すぐには高騰しないとみられるが、長期的な安定供給に養殖への期待が高まる。

 完全養殖マグロは既に、すし店やスーパーで販売され、関西の「スーパーサンエー」では中トロのさくで100グラム当たり980円。天然マグロより高めかほぼ同じだ。

 課題は子マグロの価格。ふ化した稚魚が5〜6センチに成長するまでの生存率は1割程度と低く、1匹5000〜7000円程度。小野征一郎・近大農学部教授(水産経済学)は「1匹5000円程度で安定供給されれば、消費者が手ごろな値段で食べられるのも夢ではない。日本の技術が世界をリードする局面に来ている」と話す。

【萬物相】マグロ戦争

2010/03/10 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 趙正薫(チョ・ジョンフン)論説委員

 マグロやカツオは味が良く、栄養豊富で高タンパク低カロリーの食品として愛されている。ベネズエラの「美女養成学校」が提供する夕食は、200グラム入りのツナ缶一つだそうだ。世界で毎年約240万トンのマグロ類が捕獲されているが、このうち最高級の刺し身用やすしネタとして主に使われているマグロ類は2.4%、約6万トンにすぎない。脂が乗り、口の中でとろけるような味に、世界中のグルメが魅了されている。大トロのすしは重さで計算した場合、世界で最も高い食べ物でもある。

 マグロを最も消費する国といえば、やはり「すしの宗主国」日本だ。日本は1年間に世界で捕獲されるマグロ類の25%、特にクロマグロ(本マグロ)では80%を消費している。世界のマグロ相場は、東京・築地市場で毎朝行われる「競り」で決まるという話も、こうした理由からだ。

 マグロがすしネタとして人気を呼んだのは1970年代初めからだ。岡崎彬氏という日本航空の若き社員が72年、大西洋産のマグロをニューヨークから東京まで空輸しようというアイデアを出した。カナダなどの北米では、「脂が多くて猫のエサとして放り投げていた魚」というマグロの扱いは、完全に変わった。空輸が成功して以来、米ニューイングランド地域のグロースター港には、マグロ漁で大金を手にしようと狙う漁師たちの「ゴールドラッシュ」が相次いだ。大西洋岸の漁師たちがマグロ漁で稼いだ金は、約20年で100倍にもなった。

 絶滅の恐れがある動植物の保護を目指し、13日からカタール・ドーハで始まるワシントン条約締約国会議では、大西洋・地中海産クロマグロの輸出入禁止案が話し合われるという。漁師たちの乱獲により、同地域のクロマグロが50年前に比べ74%も減ったためだ。禁止案が通過すれば、日本の全消費量の3分1以上が減り、「本マグロ大戦争」が起きる可能性が高い。

 韓国は、日本や台湾と共に世界3大マグロ漁獲国だ。昨年上半期には1億2285万5000ドル(約110億円)、5万1130トンのマグロ類を輸出し、韓国の農林水産分野輸出品で最高額を記録した。マグロ類は10年連続で1位の座を守っている。世界各国が繰り広げている「マグロ戦争」を黙って見ているわけにはいかない。このほど済州島で成功したマグロ養殖技術をさらに高め、一日も早く商用化し、遠洋漁業が被害を受けないよう外交努力を集結すべき時だ。

大西洋産クロマグロ禁輸めぐり日本に非常事態(上)

2010/03/09 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

ワシントン条約加盟国会議、輸出入禁止に向け協議へ

世界のマグロ消費量の3分の1を占める日本、代表団を派遣して説得に

 国際社会でクロマグロ漁業を取り巻く激しい論争が起こりつつある。

 今月13日から25日まで、カタールの首都ドーハに175カ国の代表が集まり、ワシントン条約(CITES)第15回締約国会議が開催される。ワシントン条約は別名「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」とも呼ばれている。同会議では主にホッキョクグマ、アフリカ象、ツノザメ、モモイロサンゴ、ナイルワニなど、絶滅の危機にある動植物42種に対する取引規制案について話し合われる予定だ。

 中でも注目を集めるのは、昨年10月にモナコが提出した、大西洋や地中海沿岸のクロマグロの輸出入禁止案だ。大西洋ではクロマグロの個体数が50年前に比べて74%も減少し、特に大西洋西部では82%も激減しているため、輸出入を全面的に禁止すべきというものだ。

 フランスをはじめとする欧州各国は、この案に賛成の意向を示しており、欧州連合(EU)執行委員会も、27の加盟国に対してクロマグロの輸出禁止案を支持するよう求めた。ただし、クロマグロ漁が盛んなギリシャ、イタリア、スペイン、マルタなど一部の国はこれに反対している、とニューヨーク・タイムズが5日付で報じた。

大西洋産クロマグロ禁輸めぐり日本に非常事態(下)

2010/03/09 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 李仁黙(イ・インムク)記者

 中でも最も強く反発しているのは日本だ。クロマグロは日本人が非常に好んで食べる魚で、世界で獲れるクロマグロの70%から80%を消費する、世界最大のクロマグロ輸入国だ。東京築地の魚市場で行われる競りで、世界のクロマグロ価格が決まると言われるほどだ。

 読売新聞によると、日本の農林水産省はこの規制を阻止するため、水産業に関する数々の国際会議に代表団を派遣し、各国に対する説得に乗り出しているという。しかし、こうした日本の動きは各国からあまり好感の目では見られていない。これまで日本を支持してきたエジプトなども、今では支持しないとの立場だ。

 日本が大西洋のクロマグロ輸入禁止案に強く反発する理由は、日本が世界から輸入するクロマグロのうち、大西洋と地中海沿岸諸国からの量が全体の3分の1を超えているからだ。禁止案が通過して大西洋のクロマグロが輸入できなくなった場合、日本では「マグロ大乱」が起こる可能性もある。そのため日本政府の交渉団は、この輸出入禁止案が通過した場合には、ワシントン条約からの脱退も考慮するとの意向を示している、とウォールストリート・ジャーナルが報じた。

 大西洋産クロマグロの輸出禁止案は、日米関係にも悪影響を及ぼす可能性がある。米国は輸出禁止案に賛成の立場を示しているからだ。60年以上にわたりマグロの競りを行ってきたある日本人は、ワシントン・ポストの取材に対し、「米国がクロマグロの輸出禁止に同意するのは、トヨタ自動車や沖縄米軍基地移転問題に続く、もう一つのジャパン・バッシングだ」と述べた。

クロマグロ 普天間、トヨタに継ぐ日米の火種に

2010.03.07 MSN産経新聞

 【ワシントン=犬塚陽介】6日付の米紙ワシントン・ポスト(電子版)は、大西洋と地中海産クロマグロの国際取引禁止問題が、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題やトヨタ自動車の大規模リコール(回収・無償修理)に続いて日米関係に新たな緊張を生んでいると報じた。

 記事は東京発で、日本政府がクロマグロの保護に十分な対策をしてきたと主張していると伝えており、「マグロ問題は、沖縄やトヨタの延長だと思う。ジャパン・バッシング(日本たたき)だ」との築地市場の卸売業者の声を紹介した。

 米政府は今月13日から開かれるワシントン条約の第15回締約国会議で、大西洋・地中海産のクロマグロの国際取引を禁止するとのモナコの提案を支持すると発表。日本は禁止案が可決されても禁止義務受け入れを拒否する方針を示している。

EU:加盟国の大半がクロマグロ取引禁止を支持

2010年03月06日 毎日新聞

 【ブリュッセル福島良典】欧州連合(EU、加盟27カ国)は5日、国際取引の禁止による大西洋・地中海産クロマグロの保護を求める欧州委員会提案への対応を協議し、大多数の加盟国が取引禁止への支持を表明した。禁輸を迫られる漁業関係者への補償措置などを詰めた上で、10日に取引禁止支持を最終決定する見通し。

 クロマグロの取引禁止は、絶滅の恐れがある動植物の保護を目指して13日からカタール・ドーハで始まるワシントン条約締約国会議で討議される。EUの行政府・欧州委員会は2月22日、取引禁止を支持するよう加盟国に提案していた。

 EU筋によると、5日にブリュッセルで開いた代表者会合で加盟国は乱獲によるクロマグロの個体数減少に懸念を表明し、「締約国会議にEU共通の立場で臨むべきだ」との意見が相次いだ。一方、地中海沿岸などで営まれている伝統的な漁の存続や、漁業関係者への補償が必要との認識でも一致した。

 取引禁止の発効時期については、即時禁止を求める英国やオランダなどの保護優先派と、1年半弱の猶予期間設定を主張するスペインなど一部漁業国で意見対立が残っており、10日までに調整する。

 締約国(175カ国・地域)会議では取引禁止を求めるモナコ提案に投票国の3分の2以上が賛成すれば禁輸が決まる。米国は3日、モナコ案への支持を表明した。

山田副農相:大西洋クロマグロ禁輸 反対姿勢強調

2010年03月04日 毎日新聞

 大西洋(地中海を含む)クロマグロの国際取引を禁止する案に米国が改めて賛意を表明したことについて、山田正彦副農相は4日の定例記者会見で「日本にとって厳しくなったが、大西洋・地中海のクロマグロは(漁業管理の国際機関である)ICCAT(大西洋マグロ類保存国際委員会)で管理すべきだ」と述べ、取引禁止にあくまで反対する姿勢を強調した。

 また、13〜25日にドーハで開かれるワシントン条約締約国会議で、同案が採択された場合は「留保せざるを得ない」との考えを示した。同条約では、採択後90日以内に留保を表明すれば、公海上では漁獲できる。また、相手国も留保している場合に限り、輸入も可能になる。【行友弥】

クロマグロ取引禁止:日本は「留保」主張へ 農水政務官

2010年02月23日 毎日新聞

 【ブリュッセル福島良典】欧州訪問中の佐々木隆博農水政務官は22日、野生生物の国際取引を規制する3月のワシントン条約締約国会議で、大西洋と地中海のクロマグロの輸出入を禁止するモナコ提案が採択される場合、日本として、決定に縛られない「留保」を主張する方針を明らかにした。ブリュッセルで欧州連合(EU、加盟27カ国)議長国スペインのエスピノサ環境・農村・海洋相と会談した際に表明した。

 モナコ提案は個体数が減少している大西洋・地中海産のクロマグロをワシントン条約の「絶滅の恐れがある動植物」に含め、国際取引を禁じる内容。締約国(175カ国)会議で、投票国の3分の2以上が賛成すれば採択される。

 ワシントン条約では特定の動植物について締約国が「留保」を付けることができ、その動植物に関しては非締約国扱いになる。モナコ提案採択の場合、日本は90日以内であれば「留保」を通告することができ、同様に「留保」した国からはクロマグロを輸入できるようになる。

 EUの行政府・欧州委員会が22日に取引禁止の支持を加盟国に再提案したことを踏まえ、佐々木政務官はエスピノサ環境・農村・海洋相に対して、EUとしての立場を再考するよう求めた。欧州委はクロマグロの保護には取引禁止が必要との立場だが、日本は漁獲量の規制で対応が可能と主張している

クロマグロ:大西洋・地中海産は取引禁止 欧州委が再提案

2010年02月22日 毎日新聞

 【ブリュッセル福島良典】欧州連合(EU、加盟27カ国)の行政府・欧州委員会は22日、大西洋と地中海のクロマグロの国際取引を来春から禁止する措置を支持するよう加盟国に再提案した。昨秋の前回提案以降、フランス、イタリアなどの漁業国が反対から支持に回ったため、EUとして取引禁止でまとまる公算が大きい。

 絶滅の恐れのある野生生物の国際取引を規制するワシントン条約の締約国会議開幕(3月13日)前にEUとして取引禁止支持を最終決定する見通しだ。締約国会議では投票国の3分の2が賛成すれば取引禁止を求めるモナコ案が採択される。

 欧州委の提案は昨年9月に続き2回目。欧州委は取引禁止措置の発動について来年3月まで1年間の猶予期間を置くよう提案しており、EU域内市場向けの伝統的漁は存続が認められるとの立場だ。

 EU議長国スペインのエスピノサ環境・農村・海洋相は22日、欧州委提案を尊重する考えを示した。ギリシャ出身のダマナキ欧州委員(漁業・海洋担当)も「ギリシャは支持すると思う」と述べており、「加盟国の賛成多数を得られる」(ポトチュニク欧州委員=環境担当)見通しだ。

 昨年9月時点ではスペイン、フランス、イタリア、ギリシャ、キプロス、マルタの地中海沿岸6カ国が反対し、欧州委提案は拒否された。だが、今年に入ってイタリアとフランスが取引禁止の支持に相次いで転じ、欧州議会も禁止を求める決議を採択した。

 大西洋と地中海で漁獲されるクロマグロの8割は日本向け。取引禁止が決まれば日本への影響は重大で、日本政府は禁止回避を目指し各国への働きかけを強めている。

クロマグロ禁漁の新決議案 個体数回復へ、モナコ提出

2010/01/26 中国新聞ニュ−ス
 

 地中海を含む東部大西洋で、高級トロが取れるクロマグロを一時的に禁漁にする決議案を、3月にカタールで開かれるワシントン条約の締約国会議に向けてモナコが新たに提出したことが分かった。関係者が26日、明らかにした。

 この海域は現在、世界最大のクロマグロ漁場。モナコは既に、この海域を含む大西洋クロマグロの国際取引禁止を提案しており、禁漁措置導入によって、クロマグロの個体数回復を確実にする狙いという。

 投票国の過半数の賛成で採択できる決議に強制力はないが、採択されれば、日本政府も禁漁を受け入れるかどうかの検討を迫られるほか、クロマグロの大幅な供給減につながる可能性がある。

 モナコはまた、この海域の資源管理機関の大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)が昨年決めた漁獲枠削減によっても資源が回復する可能性は低いとの調査結果などを会議に向けて新たに提出。取引禁止措置の決定を強く求めた。取引禁止を決めるには3分の2以上の賛成が必要。

 モナコが提出した決議案は、年間3万トンのクロマグロが違法に漁獲されていると推定されるなど、ICCATによる漁業規制は効果が上がっておらず、資源が急減していると指摘している。

 東部大西洋と地中海での漁を一時的に中止し「各漁業国が、漁獲能力の削減など資源回復のための計画を策定、密漁の監視体制を整えたことが確認されるまで、漁業を再開しない」とする内容。

 モナコは、今年の漁獲枠を昨年から4割減の1万3500トンに削減するなどとしたICCATの合意が完全に実施されたとしても「2023年までに資源が回復する可能性は極めて低い」と主張している。

目指せ森のクロマグロ? 海水使わず養殖 岡山理科大

2009.12.24 MSN産経新聞

 岡山理科大(岡山市)の山本俊政准教授(水産増殖学)が、魚の成長に適した「好適環境水」という特殊な水を使用し、海水を使わずにクロマグロを養殖する研究に取り組んでいる。

 実用化されれば、海から離れた内陸部でも低コストで養殖が可能になる。来年からは新設の大型水槽で本格的な成育実験を開始。乱獲による減少でクロマグロの国際取引禁止が議論される中、山本准教授は「将来的には森にマグロ工場を造り、危機を救いたい」と話している。

 山本准教授は平成17年からの研究で、海水が含む約60種の元素のうち、魚の成長に適した成分だけを真水に加えた好適環境水を開発。ヒラメやトラフグ、マダイは海水より大きく育ち、味も上々との成果を得た。海洋汚染の影響を受けないで養殖できるメリットもあり、実用化に向けて研究を重ねている。

海水使わずクロマグロ養殖へ 岡山理大が実験水槽の建設着工 生物学

2009/10/29 - (*゚∀゚)ゞカガクニュース隊

 岡山理科大の山本俊政工学部准教授(水産増殖)は来年4月から、海水を使わずに140トン級の大型水槽でクロマグロ、ヒラメなどの高級魚を養殖する実験に着手する。クロマグロの世界的な乱獲が問題視されるなど水産資源の枯渇が危惧(きぐ)される中、内陸部でも可能となる養殖技術を確立し新産業創出を目指す。同大によると、海水を使わない海水魚の養殖は例がないという。

 水槽は、同大付属高(岡山市北区理大町)が新たに建設する実習用施設を活用。円形(直径8メートル)1基、楕(だ)円(えん)形(縦10メートル、横3メートル)4基で、28日に着工し、来年3月末完成の予定。アンモニアの浄化装置などを備える。海水の代わりに、真水にカリウムなどをわずかに加えた独自開発の「好適環境水」で魚を育てる。

 同水を使った養殖の研究は2005年に開始。水に溶かす電解質を最低限の種類と量に絞ることで、低コストで海水魚が飼育できるという。同大専門学校(同半田町)にある既存の水槽(約4トン)では、ヒラメ100匹を1年間で出荷可能な重さ1キロ級に育てることに成功している。

近大の完全養殖マグロ、過去最大の出荷数に

2009年10月24日 読売新聞Yomiuri On-Line

 世界で初めてクロマグロ(ホンマグロ)の完全養殖に成功した近畿大水産研究所大島実験場(和歌山県串本町)は23日、幼魚(ヨコワ)の今年度の生産は約4万匹で、昨年度の4倍に増えたと発表した。

 養殖業者への販売数も過去最大の3万2400匹となる見込み。同研究所では「天然資源が減少する中、量産化への大きな一歩」と期待している。

 同実験場で人工孵化(ふか)した稚魚が成長し、交配、産卵、孵化を2巡して誕生した「第3世代」。6月下旬から8月に産卵した約808万粒のうち、約19万匹が陸上施設から海上のいけすに移す「沖出し」サイズに成長。さらに、このうちの約4万匹が体長25〜40センチ、重さ200グラム〜1キロのヨコワに育った。すでに先月から、国内4か所の養殖業者に向けて出荷を始めている。

 生存数の大幅アップについて、生産拠点を同実験場のほか、浦神(那智勝浦町)と奄美(鹿児島県)の両事業場にも広げたほか、独自に開発した配合飼料の品質を向上させたことで稚魚の栄養状態が改善された――などの要因を挙げている。

 同研究所の村田修所長は「今後、品種改良などにも取り組みながら、天然物に勝る『近大マグロ』の量産化につなげたい」と話している。

クロマグロ取引の一時禁止案、EU加盟国が不支持を決定

2009年09月22日 AFP 発信地:ブリュッセル/ベルギー

スペイン南部サアラ・デ・ロス・アトゥネス(Zahara de los Atunes)で、マグロを引き揚げる漁師(2006年5月25日撮影)。(c)AFP/JOSE LUIS ROCA

【9月22日 AFP】欧州連合(EU)加盟国は21日、クロマグロの取引を一時禁止するとしたモナコの提案について、同案に支持を表明していたEUの執行機関である欧州委員会(European Commission)の勧告を否決し、支持しないことを決定した。

 消息筋によると、地中海沿岸のEU加盟国はすべて、クロマグロの取引に関するいかなる禁止条項にも反対する意向を示したという。

 モナコは、クロマグロ取引の2年間の禁止と、絶滅のおそれがある動植物の輸出入を禁止したワシントン条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora、CITES)のリストにクロマグロを含めることを提案していた。

 欧州委員会は今月初め、この提案を支持すると表明していたが、反対する漁業団体などは、来月にも発表される最新の科学的個体数調査の結果を待つべきと主張していた。この結果は11月の大西洋まぐろ類保存国際委員会(International Commission for the Conservation of Atlantic Tunas)総会で細かく検討される予定だ。

 大西洋と地中海で漁獲されるクロマグロの約80%は日本向けとされる。(c)AFP

クロマグロ取引禁止を否決 EU、漁業国が反対

2009/09/22 中国新聞ニュ−ス

 【ブリュッセル共同】欧州連合(EU)欧州委員会は21日、乱獲で急減している大西洋と地中海のクロマグロの国際取引を一時禁止するよう求めた提案が同日のEU加盟27カ国の会合で否決されたことを明らかにした。

 関係者によると、イタリアやスペインなど漁業国が反対した。

 最終結論は来年3月にカタールで開かれる絶滅の恐れのある野生動植物の国際取引を規制する「ワシントン条約」締結国会議で決定。投票国の3分の2の賛成があれば国際取引の禁止が決まる。

クロマグロ稚魚を初捕獲 人工種苗の量産に期待

2009/08/23 中国新聞ニュ−ス

 水産総合研究センター遠洋水産研究所(静岡市)は22日までに、沖縄県の南西諸島近海で行った調査で、マグロ類の稚魚230匹の捕獲に成功した。

 同研究所によると、DNA分析により約3分の1がクロマグロであることが判明した。体長2センチ、体重2〜3グラム前後とごく幼いクロマグロの稚魚を多数捕獲したのは世界で初めてという。10月に盛岡市で開かれる日本水産学会で発表する。

 高級トロが取れるとして日本の市場で高値で取引されるクロマグロは、長年の乱獲で資源が減少、養殖用の人工種苗の量産技術開発が待たれている。

 同研究所生物特性研究室の田辺智唯たなべ・としゆき室長は「稚魚が何を食べているかなどの生態を知ることで養殖用の飼料をつくる参考になり、大量生産につながる」と期待している。

 捕獲した稚魚はふ化後2週間〜1カ月程度と推定される。調査船「俊鷹しゅんよう丸」(887トン)でことし6月10日、目を細かくしたトロール網を使い、沖縄県・久米島の西約70キロで捕獲した。

 日本の2008年のクロマグロ消費量は約4万トンで世界で捕獲されるクロマグロの約8割が日本で消費されているといわれる。

本マグロ:600本水揚げ−−塩釜の魚市場 /宮城

2009年08月22日 毎日新聞 地方版

 塩釜市の魚市場に19日、200キロ級の本マグロが600本以上水揚げされた。昨年はシーズンの夏になっても巻き網船の本マグロ水揚げは皆無だっただけに、「近年にない大漁」と市場は沸いた。

 250キロを超す大物もあり、あまりの大漁に作業員や水揚げスペースが追いつかない状況。入札は夕方まで続けられ、高いもので1キロ当たり2000円前後の値がついた。【渡辺豊】

漁業国との連携強化へ=クロマグロ取引禁止を阻止−水産庁

2009/08/19 時事ドットコム

 モナコなど欧州の一部の国が、大西洋と地中海で取れる高級魚クロマグロ(本マグロ)の全面的な輸出入禁止を目指している問題で、水産庁は、取引を継続できるよう地中海沿岸の漁業国などとの連携を強化する方針だ。日本は既存の漁業管理機関で厳しい漁獲規制を決定し、取引を続けたい考え。このため、規制強化に消極的な地中海諸国などに対し、合意形成に向けて働き掛けを強める。

 同海域のクロマグロは国際的な管理機関「大西洋まぐろ類保存国際委員会」(ICCAT)で各国の漁獲枠を決め、資源の枯渇を招かないよう管理している。ただ、地中海諸国は国内漁業保護の観点から規制強化には消極的。昨年のICCAT年次会合でも、日本や米国が主張した漁獲枠の大幅削減に強く反発した。

ミナミマグロが3割安=豪州養殖物、前倒し出荷−築地市場

2009/08/15 時事ドットコム

 クロマグロに次いで高級とされるミナミマグロの卸値が急落している。主力のオーストラリア産養殖物が日本市場に大量に流入していることが主因。供給増からメバチマグロなど大衆マグロ並みの安値圏内に突入し、スーパーや格安回転すし店向けに、取引が活発化している。

 ミナミマグロはインド洋など南半球で漁獲されることから「インドマグロ」とも呼ばれる。脂の乗ったトロが多く、高級マグロが品薄となる夏場の日本では特に人気があり、近年は高値で取引されていた。

 しかし、昨年のリーマン・ショック以降、高級魚は消費が冷え込んで取引は一気に買い手市場に。危機感を強めた輸入業者は「資金回収に時間がかかる」として歳末商戦向けに流通させるはずだった冷凍物の生産を大幅に縮小。「安くても確実に換金できる」(輸入業者)夏場の生鮮出荷に傾き、空路で続々と魚を日本へ送り込んでいる。

 東京・築地市場(中央区)では7月以降、オーストラリア産の養殖ミナミマグロの入荷が1日平均160匹前後と昨年のおよそ3倍に急増。8月中旬の卸値はキロ当たり1500円前後と昨年より3割以上安い。

 マグロは世界的に資源枯渇化が指摘され、大西洋産クロマグロに国際取引の禁止による厳しい規制を掛けようとする動きが浮上。成り行きによっては、先行き供給量が大幅に減る可能性もあるが、ミナミマグロは「今のところ現地の在庫が豊富」と築地市場卸。当面、お手ごろ価格は続きそうだ。

【社説】クロマグロ禁輸 末永く味わうために

2009年08月14日 中日新聞

 絶滅の恐れがある生物の取引を規制する来年三月のワシントン条約締約国会議で、欧米はクロマグロの全面禁輸を提案する方針だ。漁獲量の約八割を食べる日本。手をこまねいてはいられない。

 日本人は、マグロが大好きだ。だが、その国民的食材が、どこで、どうやって捕獲され、どのような経路で食卓に上るかを、気に留める人は少ない。

 高根の花だった大トロが、“激安価格”で回転ずしのコンベヤーに乗るようになったのは、一九九〇年代の後半だ。地中海沿岸諸国で、沖合にいけすを作って捕らえた若いマグロを放ち、脂身が多くなるよう餌をやって太らせる「蓄養」が盛んになり、日本へ大量に輸出され始めたからだ。

 「青田買い」のようなこの蓄養が、資源の減少に拍車を掛けた。世界的な魚食ブームが、さらに加速させるとみられている。

 回遊魚のマグロは一国だけでの資源管理が難しく、関係国が海域ごとに五つの地域漁業管理機関(RFMO)を組織して取り組んでいる。その一つ、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)は昨秋、漁獲枠の大幅削減を決めたばかりだが、罰則が弱いため、蓄養のための密漁や漁獲量の過少申告、禁漁期間中の違法操業は後を絶たず、RFMO体制への評価は高くない。

 世界自然保護基金(WWF)は「地中海クロマグロは消滅の危機」と警告し、全面禁輸の背中を押している。三分の二の賛成で可決されれば、輸出入だけでなく、遠洋漁もできなくなる。

 日本政府は一昨年、神戸市でRFMOの合同会議を主催して資源回復の行動指針を採択するなど、通常の規制強化には前向きだ。三菱商事は昨年九月、「資源の持続性が確保されねば、マグロビジネスへの関与を見直す」という内容の声明を発表した。禁輸を回避し、“マグロ文化”を守るには、十一月のICCAT年次会合に向け、このように国を挙げて資源管理の徹底を図る意欲を積極的に表明し、具体的方策を率先して提案するしかない。生態系に配慮した漁業を英国の海洋管理協議会(MSC)が認証する「海のエコラベル」の活用なども有力だ。

 消費者の理解も欠かせない。マグロの密漁、さらにはその消滅に、知らないうちに加担してしまわないよう、産地表示に注意しながら食品の流通実態にも目を向けて、消費行動を見直すべきだ。

マグロ活用、先進地に学べ 珠洲会議所、焼津と交流へ

2009年08月11日 富山新聞

 水揚げされたクロマグロ。珠洲商工会議所は焼津商工会議所とマグロを通じた交流に乗り出す=9日、珠洲市の蛸島漁港

 珠洲商工会議所は今秋にも、静岡県焼津市の焼津商工会議所との交流に乗り出す。焼津港は全国有数のマグロの水揚げ基地として知られる。珠洲市沖で始まるクロマグロの蓄養事業に合わせ、珠洲商工会議所は先進地の焼津側からマグロを使った新商品開発や全国発信のノウハウなどを学ぶ。

 カツオの水揚げ量日本一でも有名な焼津港周辺には、水産物加工、海産物販売業者などが集積。焼津商工会議所は、こうした焼津市内の業者が販売する商品を集めた通販サイト「焼津うめぇもん市場」を運営している。

 また、同市内で製造された魅力ある水産関連商品を「焼津水産ブランド」として認定。同サイトで、マグロのハンバーグ、パック詰めした漬け丼の具などを紹介している。地元業者の商品化も積極的に支援している。

 珠洲市では沖合4キロに設置されたいけす網でクロマグロを飼育、出荷する蓄養事業が始まることから、珠洲商工会議所は焼津商工会議所との交流を、マグロの産地化に向けたさまざまな取り組みの参考にする。

 具体的には、会議所メンバーや市内の水産、飲食関係者らが焼津市を訪れ、勉強会の開催、両会議所の女性会同士の交流などを想定しており、今後詳細を詰める。

 珠洲商工会議所は「珠洲でマグロを食べられるという期待が大きく、焼津との交流を生かしたい」としている。

「取引禁止」に反対=大西洋産クロマグロで−政府

2009/08/10 時事ドットコム

 モナコなど欧州の一部の国が、大西洋と地中海で捕獲される高級魚クロマグロ(本マグロ)の国際取引の禁止を目指していることに対し、農水省は10日、日本政府として反対の意向を明らかにした。すしや刺身に使われ、禁止されると影響が大きいため、「(国際機関の)管理の下で、保存・管理を実施すべきだ」(井出道雄農水事務次官)と反発している。

 大西洋・地中海産クロマグロの漁獲量は年3万3000トンで、うち約2万トンが日本で消費されている。モナコは7月、絶滅の恐れがある生物を定めたワシントン条約の対象とするよう各国に呼び掛けており、英国やドイツ、フランスなどが同調する見通しだ。

欧州、大西洋・地中海のクロマグロ禁輸提案へ 10年3月の国際会議で

2009/08/09 NIKKEI NeT

 【ブリュッセル=瀬能繁】大西洋・地中海のクロマグロ(本マグロ)を保護するため、輸出入の全面禁止をめざす動きが欧州で広がってきた。絶滅の恐れがある動植物の取引を規制するワシントン条約の対象として提案する見通し。欧州最大の漁獲国であるフランスが規制を容認する方針に転換、独英オランダも支持を表明した。米国も同様の検討に着手しており、来年3月の国際会議で提案が採択されると、最大の輸入国である日本の食卓や外食産業などに大きな影響を与えそうだ。

 クロマグロはすしや刺し身に使われる高級マグロ。大西洋・地中海のクロマグロの漁獲量は、約3万4千トンで、大半は日本に輸出されている。日本のクロマグロ消費量の約6割が同海域産という。

クロマグロ全取引禁止提案を検討 米、ワシントン条約会議

2009/08/07 47News【共同通信】

 日本で高値で取引されるクロマグロについて、国際取引の全面禁止を求める提案を、米国政府が来年3月のワシントン条約締約国会議に行うことを検討していることが7日、分かった。条約関係者が明らかにした。

 クロマグロについては、モナコが同会議に、大西洋と地中海の個体群の国際取引禁止を提案する方針。既に英国やドイツなどが支持を表明しており、会議の最重要議題となる見通しだ。

 世界中で漁獲されるクロマグロの約8割が日本で消費され、その多くが輸入品。輸入が禁止されれば、すしや刺し身など日本の食卓に大きな影響が出るのは確実で、今後の議論の動向が注目される。

 関係者によると、米国が検討しているのは、太平洋の個体群も含めたクロマグロすべての国際取引を禁止するとの、モナコ案よりさらに厳しい内容。主に日本市場向けに大量に漁獲、輸出された結果、絶滅が心配されるまでに数が減ったことが理由という。

 水産庁などによると、日本の2006年のクロマグロ消費量は約4・4万トン。このうち日本の漁獲量は1・5万トン弱だった。

 これ以外にも、個体数が減っているアメリカウナギ、アオザメやシュモクザメ、軟骨ががんに効くなどとされて乱獲が進んだアブラツノザメなどこれまで規制がなかったサメやエイ約10種の国際取引を新たに規制対象とし、輸出入時に許可証の発行を義務付けるとの提案を検討中。

 また現在は許可証があれば取引できるホッキョクグマと、イルカの仲間のイッカクについては、毛皮や歯などの製品を含め、国際取引を禁止する提案を行うことを検討している。 ---------------------------

クロマグロ(2008年10月28日)大西洋や太平洋など北半球の海に広く分布し、マグロ類の中では最大。高級トロが取れるため日本の市場で高値で取引されるが、乱獲によって資源量が急減している。大西洋クロマグロの2005年の公式の漁獲量は約3万7600トンで、日本の漁獲量はここ数年、年間3200トン程度で推移。太平洋の06年の推定漁獲量は約2万4000トンで、日本は約1万2000トン。ほぼすべてがすしや刺し身に用いられ、日本の消費量は全体の8―9割ともいわれている。

【オランダ】さかなの話 第1話 今が旬の「マグロ」

2009年07月30日 IBTimes

 オランダやベルギーに流通しているマグロは、通常キハダマグロかホンマグロ(大西洋黒鮪)です。キハダマグロの原産国は、スリランカやインドネシア、オマーン、アフリカ諸国などで、ランク順にA〜Dと分けられて入荷します。Aクラスは生食可で、それから加工等向けのDクラスまでにランク付けされ、おおむねおろした状態で真空パックになって空輸されてきます。オランダのオープンマーケットや魚屋で売っているマグロは、大抵このキハダマグロです。

 さて、問題はこれらのお店で扱っているAクラスのマグロなら刺身でも大丈夫かどうかです。プロの鮮魚専門家によれば、触手が動かないものも多々あるため、信頼の置ける魚屋で購入することをおすすめします。

 ホンマグロの原産国は、スペイン、ポルトガル、イタリア、クロアチア、等のヨーロッパ諸国です。最近は、資源の減少等で、各国で漁獲規制がしかれており畜養マグロの取り組みが、なされておりかなり商業ベースにのってきました。畜養マグロとは、ホンマグロが小さいうちに又は、産卵が終わってから、生け捕りにして洋上に浮かぶ大きな生け簀で3ヶ月〜6ヶ月位かけて大きく成長させて大抵頭なし尻尾なし内蔵なし(ドレス状態)で出荷されます。鮮魚・和食専門店「フライング・フィッシュ」では、このマグロを卸売り業者から購入、販売しております。ホンマグロの旬は、やはり冬から春でやはりこの時期は、脂が乗り美味しい中トロ、大トロは、口の中に入れた時さらっととろける、と言う表現がぴっったりです。是非一度お試し下さい。

 (記事提供:鮮魚と和食専門の「フライング・フィッシュ」Flying Fish - Amstelplein 67 3a - 1421 SB Uithoorn, Tel + 31 (0)297 522455 - Mob +31 (6) 10595427)

ミナミマグロ完全養殖に道 近大、種苗生産に初成功

2009/07/29 中国新聞ニュ−ス

 近畿大水産研究所(和歌山県白浜町)は29日、人工ふ化させたミナミマグロを、稚魚サイズまで育てる「種苗生産」に成功した、と発表した。近畿大によると世界初。減少するマグロ資源の回復につながると研究者たちは大きな期待を寄せている。

 ミナミマグロはインドマグロとも呼ばれ、クロマグロ(本マグロ)に次ぐ高級魚。オーストラリアの水産養殖会社、クリーン・シーズ・ツナが施設内での人工ふ化には成功していたが、稚魚サイズの成長にまでは至らなかった。稚魚がさらに成長して産卵すれば完全養殖の実現となる。

 近畿大は2002年、クロマグロの完全養殖に成功しており、同社との共同研究でそのノウハウが応用された。

 同研究所の村田修むらた・おさむ所長(69)は「人工ふ化や養殖の技術など、互いの良いところを存分にぶつけ合えたのが結果につながった」と語った。

 独立行政法人水産総合研究センター(横浜市)は「クロマグロのノウハウの蓄積があって今回の成功につながったのだろう。天然マグロを守っていくために欠かせない研究成果だ」と評価している。

稚魚10万匹を沖だし 完全養殖クロマグロ

2009年07月28日 紀伊民報

 近畿大学水産研究所(本部・和歌山県白浜町)は28日、串本町で、完全養殖クロマグロの稚魚を陸上水槽から海上の大型いけすに移す「沖だし」作業を始めた。人工ふ化第2世代の親魚から生まれた第3世代の稚魚で、沖だし匹数は過去最高だった2008年の約3万2000匹の3倍以上となる10万匹前後になる見通し。同研究所は「完全養殖クロマグロを広く市場へ供給する産業化への大きな一歩」と話している。

 同研究所は2002年、人工ふ化から育てたクロマグロに産卵させ、ふ化させる完全養殖に世界で初めて成功。稚魚を安定して種苗生産し、広く市場へ供給する完全養殖クロマグロの産業化を目指し、年間10万匹の沖だしを目標に掲げてきた。

 大島実験場(串本町)や浦神実験場(那智勝浦町)など4カ所で、6月下旬から7月上旬にかけて卵を採取。ふ化し、全長約6センチに成長した稚魚を、串本町沖の海上いけすに移す。28日は2万匹を沖だしした。8月末までにあと2回沖だしする予定。

 採取した卵からふ化し、沖だしするまで生存する確率(陸上生存率)は05年の4・42%が過去最高だったが、今年は陸上施設での飼育技術が向上し、4・67%に上がった。沖だし匹数も過去最高の10万匹になる見通し。稚魚に与える配合飼料を開発したことで、少ない水槽で多くの稚魚を育てられるようになったという。

 稚魚は種苗として養殖業者に出荷、成魚は大阪や名古屋、東京などのデパートや料理店などに出荷している。稚魚は4、5カ月で500グラムほどの出荷サイズになり、2年ほどで、20キロほどの成魚として出荷できるという。

 近大水産研究所は「種苗として出荷できる段階でどれだけ生存しているかが問題。今後も衝突死や病気への対策を進める必要があるが、このまま順調にいけば、数万匹単位で養殖業者に渡せ、安定供給につながる」としている。

絶滅危惧で価格が高騰するマグロと、養殖技術の現状

2009年07月27日 WIRED NEWS Brandon Keim [日本語版:ガリレオ-緒方亮/合原弘子]

 オーストラリアはポートリンカーンのとある倉庫では、場違いな巨大水槽の中を、60匹のマグロが泳いでいる。生後約4ヵ月で全長約30センチに育ったこのマグロたちは、絶滅が危惧されている雄大な生物の救済策となるかもしれない――解釈がさまざまなな、はっきりしない救済ではあるが。

 このマグロを所有するのは、オーストラリアのClean Seas Tuna社だ、飼育マグロの産卵という困難な課題にこの10年間取り組んできた会社であり、日本や欧州の研究者もわずかな遅れで同社に続いている。完成は遠いものの、以前はまず考えられなかったマグロの養殖が、同社の研究でひとつの可能性となった。[日本語版注:日本の近畿大学は、2002年にクロマグロの完全養殖に世界で初めて成功している。詳しくは(2)へ]

 繁殖成功のニュースが発表されているのは、タイセイヨウクロマグロ、ミナミマグロ、クロマグロという3種のマグロだ。これらのマグロは、19世紀のアメリカバイソン乱獲の海洋版に近い乱獲で絶滅へ向かっており、過去30年間で世界的に数が激減している。

 [マグロでは、卵から成魚まで育てる「養殖」は現時点では難しい。捕獲したマグロの稚魚や若魚を養殖する「蓄養」が中心だ。つまり、]飛行機が探査し、漁船団が捕獲してそのまま海岸のいけすに運び込み、そこで蓄養され、脂がのると処理されている。しかし、捕らえられるマグロはどんどん小さく幼いものになっており、繁殖できるまで成長していないものが含まれている。

 その結果、海は繁殖適齢期のマグロが消滅しかねない状態になった。2009年4月、世界自然保護基金(WWF)が、現在の乱獲が続くと、タイセイヨウクロマグロは3年以内に、種として取り返しがつかないほど崩壊すると主張した。ミナミマグロも絶滅の深刻な危機にあるとされている。クロマグロも、漁獲による圧力がこれ以上高まれば、消滅の軌道に乗るものと考えられている。

 柔らかく脂が入った身が珍重されるマグロは、全世界で72億ドルの産業になっている。1月には東京の市場で、約200キロのマグロに17万3000ドルの値がついた。1996年以来、1本の値段としては最高値だ。これは、健全な統制がないと、絶滅の切迫が、かえって商売上のチャンスとしてこれを生かそうとする動機を大きくすることを示すひとつの実例となった。

 [マグロの価格は、世界的な日本食や寿司ブームによってマグロの消費量が増大していることで高騰している。さらに、原油価格高騰による出漁のコスト増、マグロ減少による漁場の遠距離化などが、価格高騰に拍車を掛けている]

 業界団体『International Commission for the Conservation of Atlantic Tunas』(ICCAT)は乱獲防止のため漁獲量を削減しようとしているが、決定された最大漁獲量は、科学者たちが提案する量よりはるかに多いレベルだ(1万5000トンという提案に対して2万2500トン)。しかも、その取引も守られていない(実際の漁獲量は6万トン)。非常に高価な食品になったため、一部の流通にはイタリア・マフィアが関与し、規制派の学者に圧力をかけているという噂もある。

 世界で消費されるすべてのマグロのうち4分の3を消費し、実質的に世界の取引をコントロールする日本の企業は、推定3万トンのマグロを冷凍貯蔵しており、これは100億ドルから200億ドルに相当する。乱獲はその価格を上昇させるだけだろう。

絶滅危惧で価格が高騰するマグロと、養殖技術の現状(2)

2009年07月27日 WIRED NEWS Brandon Keim [日本語版:ガリレオ-緒方亮/合原弘子]

 フランスやスペイン、英国などは、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(第12回ワシントン条約、CITES)締約国会議においてマグロ漁獲を禁止する方向に動いているが、最も現実的な方策は養殖だろう。

 欧州では、ドイツのハインリヒ・ハイネ大学のChristopher Bridges教授(生理学)など、タイセイヨウクロマグロの繁殖プログラムである『Allotuna』や『Selfdott』に参加する科学者グループ数十人が、沿岸のいけすのなかでマグロに産卵させるホルモン処理の技術を開発した。単純なことに思えるかもしれないが、タイセイヨウクロマグロの生殖習性はいろいろな意味で謎が残っており、この偉業はそれまで実現されていなかった。

 この研究者グループは6月末、(メス20匹から)2億個弱の卵を収集している。その卵は地中海沿岸の孵化場に送られており、生物学者がこれから稚魚へ幼魚へと育てていくことになっている。慎重を要するこの作業は、マグロ養殖漁業の標準になるものと考えられている。

 研究者らは、このタイセイヨウ クロマグロのホルモン処理をクロマグロ向けにも調整して、水温と光と水流が制御された陸上の水槽でマグロを飼っている。3月に、この人工の「マグロの愛の巣」で約5000万個の卵が受精し、最終的に今こうしてポートリンカーンのClean Seas Tuna社の水槽で、約30センチのマグロ60匹が泳ぐことになった。

 一方、日本の研究者も、いけすのなかでマグロを繁殖させる試みを30年以上行なっている。その結果、マグロを生かしておくことはできるようになったが、卵の収穫量数は安定していない。欧州とオーストラリアのチームはこの問題を解決したようだが、やるべきことはまだたくさんある。

 [Wikipeaによると、近畿大学が2002年に世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功し、2004年には市場へと出荷。2007年には、完全養殖稚魚を他の畜養業者に出荷する事業も開始されている。なお、原文記事では、日本の研究が成功したのは「ミナミナグロ」(Southern bluefin)となっているが、Wikipediaの記述に従って修正を行なった] {この翻訳は抄訳です}

マグロの漁獲量、段階制限で合意 東太平洋、09年から

2009年06月13日 NIKKEI NET

 水産庁は13日、東太平洋のマグロを管理する全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)が米国で開いていた年次会合で、メバチ・キハダマグロの漁獲量制限で合意したと発表した。2009年から11年まで段階的に制限する。日本に影響のあるはえ縄漁では、09年の漁獲枠を07年比で9%減らすことになったが、日本の漁獲実績からすると余裕があり、水産庁は「影響は大きくない」としている。

 IATTCの漁獲量削減を巡る交渉では、巻き網漁の禁漁期間の延長などで合意できず、08年は正式な漁獲制限がないままだった。今回の会合では巻き網漁でも禁漁期間の拡大で合意。07年の42日間から73日間に延長された。

クロマグロのゲノム配列、年内の解読にめど 水産総合研究センター

2009年07月01日 WIRED SCIENCE

 独立行政法人、水産総合研究センター(本部:横浜市)は6月30日、クロマグロの全ゲノム配列の解読が年内に完了する見込みになったと発表した。マグロ類の遺伝子情報などの基礎データを把握することで、養殖や資源管理に道を開くという。

 東京大学、九州大学と共同で取り組んでいる研究で、育種技術を通じた革新的なクロマグロ養殖技術の開発を目指している。このほど3者で、世界初となるクロマグロの全ゲノムDNA塩基配列の解読と有用遺伝子の解析に着手した。

 クロマグロは24対の染色体を持ち、そのゲノム全体の大きさは約8億塩基対とみられている。3者は、『次世代型高速シーケンサー』を利用して断片化したクロマグロの全ゲノムの塩基配列を解読。今後、これらの配列が具体的にどの染色体のどこに位置するのかを解析し、全ゲノムDNA塩基配列の完全な解読を目指す。

 全ゲノム配列の解読ができれば、成長がよく病気に強い養殖品種などを作り出すことが容易になる。さらに、世界の海で捕れるマグロの産地や個体が判別可能となって、資源管理やトレーサビリティの確立もできるという。

メバチマグロ漁獲枠を段階的削減、日本には影響なし

2009年06月13日 読売新聞 YOMIURI on-line

 東太平洋地域のマグロ資源を管理する国際機関「全米熱帯まぐろ類委員会」(IATTC)は12日、資源が減少傾向にある「大衆マグロ」のメバチマグロの各国の漁獲枠を、2011年まで段階的に削減することで合意した。

 日本の漁獲枠は、現在の約3・4万トンが、11年には3・1万トンに減る。ただ、日本の07年の漁獲実績は約1・5万トンで、削減による影響はないとみられる。

 米カリフォルニア州ラホヤで開かれていた年次会合では、07年を基準に、09年は4%、10年は5%、11年は9%、それぞれ漁獲枠を減らしていくと決めた。IATTCは08年、漁獲制限について合意できず、規制がない状態が続いていた。

近海マグロ、小型魚が豊漁=全国各地で好調水揚げ

2009/06/13 時事ドットコム

 夏に盛漁期を迎える近海クロマグロの水揚げが本格化してきた。今年は小ぶりな魚が多いが、沿岸の定置網漁が全国的に豊漁。今月8日からは日本海で大型魚を狙った巻き網漁も始まり、各地の魚市場はにぎわいを増している。

 クロマグロは「ホンマグロ」とも呼ばれ、すし店などが使う最高級のマグロ。日本の近海では例年、餌となるスルメイカなどを追って群れが北上する初夏から漁が始まる。

 今年は6月上旬から日本海などの定置網漁が好調。主漁場の能登半島や新潟県佐渡島周辺などのほか、「秋田、青森県沿岸の日本海、五島列島周辺や岩手県沿岸など各海域で漁獲が活発化しているのが特徴」と漁業情報サービスセンター(東京)。定置網より沖合いで操業する巻き網漁船による漁獲も加わり、供給量は6月の2週目から急増している。

 東京・築地市場(中央区)の6月上旬の入荷量はメジやヨコワと呼ばれる4〜5キロの小型魚が、1日当たり約3400匹で昨年より3割も増加。

 卸値はキロ500円前後と昨年より2割近く値下がり。身質は「小さくてもしっかり脂が乗っている」と競り人も太鼓判を押す。一部は首都圏スーパーの店頭にも並んでおり、高級マグロが格安で食べられるチャンス到来だ。

石巻市:水揚げ船減少で奨励金を補助 /宮城

2009年06月13日 毎日新聞 地方版

 マグロはえ縄漁船の国際減船に伴い、石巻市は12日、石巻魚市場への水揚げ船の減少対策として、水揚げ船に水揚げ総額の0・3%を奨励金として補助すると発表した。6月定例会に水産振興対策費として総額4800万円を追加提案する。

 市によると、対象は全漁業種(陸送魚も含む)で、県が検討している漁種のうちマグロはえ縄船の場合は、県の奨励金0・7%に上乗せされ、計10%の補助金が支給される。カツオマグロ巻き網船、サバイワシ巻き網船、サンマ棒受け網船、大目流し網漁業、カツオマグロ一本釣り船の5漁種は0・2%が加算。計0・5%の補助率となる。

 補助期間は7月〜来年3月まで。石巻魚市場の年間水揚げ高は約200億円。今回は過去3年間(7月〜翌年3月)の実績を基に約159億円の水揚げ高と3万7690隻の入港船を見込み予算化した。【石川忠雄】

完全養殖の“近大マグロ”を3種類のどんぶりで提供

2009年06月12日 日経レストラン

6月11〜16日、東京・新宿高島屋「大学は美味しい」フェアで

 クロマグロの完全養殖に成功した近畿大学(大阪府東大阪市)は、新宿高島屋で6月11日(木)〜16日(火)に開催される「小学館『美味サライ』第2回『大学は美味しい』フェア」で、 クロマグロのどんぶり3種を販売する。

 クロマグロの養殖は近畿大学水産研究所が32年の試行錯誤を経て、2002年に世界で初めて成功したもの。現在、人口ふ化から、出荷サイズまでの育成を実現しているのは同研究所のみという。

 すでに「近大マグロ」の商標で、近畿大学関連ベンチャー企業「アーマリン近大」(本社・和歌山県西牟婁郡)を通して、全国へ販売している。

 今回のフェアで販売するのは、「ネギトロ丼」(1155円)、赤身とトロの「二色丼」(1155円)、「マグロづくし丼」(2100円)の3種類(いずれもネギマ汁付き、税込)。初日から3日間は100kg超クラスの完全養殖クロマグロ1尾を使う予定で、会場での調理は「釣船茶屋ざうお新宿店」(新宿区西新宿)料理長が担当する。

 クロマグロのどんぶり以外に、水産研究所が養殖したチョウザメから採取した「近大キャビア」(限定10個、冷凍、1万円)や、理工学部と阪本漢法製薬が製品化したアスリートのコンディション作りをサポートするための「サカンポーエナジードリンク タフゲン」(210円)、薬学部、農学部、生物理工学部、附属農場、東洋医学研究所が連携して研究開発し、温州みかんの有効成分を活かしたサプリメント「ブルーヘルペロンキンダイ」(3600円)なども、近畿大学発のブランド商品として会場で販売する。

 関連企画として、6月13日(土)午後2時からは、隣接する紀伊国屋書店新宿南店3階で、近畿大学水産研究所の村田修所長が、クロマグロ完全養殖成功までの道のり、近大水産研究所の現状、これからの方向性などを、世界の養殖研究最先端の立場から講演する。(稲田 由美子)

ヒスタミン食中毒08年は全国22件

2009年06月12日 読売新聞 YOMIURI on-line

県「家庭でも注意してほしい」

 県生活衛生課によると、ヒスタミンによる食中毒は2008年、全国で22件発生し、462人が発症した。県内では8月、小矢部市内のスーパーで販売されたカジキマグロが原因で発生、44人に発疹(ほっしん)などの症状が出たという。

 ヒスタミンは、マグロやイワシ、カツオなど、赤身の魚に多く含まれるアミノ酸「ヒスチジン」をもとに、不適切な温度管理で増えた生成菌によって蓄積する。20〜25℃以上で菌が増えやすいとされているが、近年、5〜10℃でもヒスタミンを生成する菌がいることが分かってきた。

 一度蓄積すると加熱、冷凍しても分解されないため、県は、〈1〉新鮮な魚を購入する〈2〉速やかに冷蔵・冷凍し、室温で放置しない〈3〉古くなったら食べない――などへの注意を促す。解凍する際は、冷蔵庫のチルドルームを活用したり、容器に入れたりしたうえで、流水にさらしたりすると良い。

 同課では「ヒスタミンはにおいがなく、見た目でも分かりにくいため、食べる前に汚染を見つけるのは困難。予防法について改めて家庭でも注意してほしい」と呼びかけている。

尿酸値低下に効果 マグロ・カツオのアミノ酸

2009/06/12 静岡新聞

 マグロやカツオの筋肉に含まれるアミノ酸の一種「アンセリン」に、血液中の尿酸値を低下させる効果があることが焼津水産化学工業の研究で分かった。

 アンセリンは2種類のアミノ酸が結合したペプチドの一種で、運動時や日常生活での疲労を低減させる機能があることで知られる。尿酸値低下も動物(ラット)実験で明らかになっているが、人間が摂取した実験で初めて効果が確認された。

 研究では、尿酸値が高めの成人男性31人をアンセリン50ミリグラム入りカプセルを1日1回摂取してもらうグループと、偽薬を服用する2グループに分けてそれぞれ4週間調査した。アンセリンを摂取したグループは尿酸値の平均値が低下し、摂取終了後も引き続き低下傾向を示した。

 ラット実験では尿酸値低下の要因として、尿酸を抑制する酵素の発現量が増加したことが挙げられた。今回の研究でも、摂取後の低下は酵素の発現量の増加が持続していたためとみられる。

 血液中の尿酸値が高いと痛風を発症する恐れがあり、50代だった発症のピークが近年は30代と低年齢化しているという。

 同社は高純度のアンセリンを製造する技術を確立し、食品企業向けに機能食品素材として供給している。大手メーカー数社から引き合いがあり、今秋にはアンセリン配合の健康食品など新商品が発売される予定。

大学発うまいもの会…新宿高島屋で

2009年06月11日 読売新聞 YOMIURI on-line

 奈良漬のスイーツ、完全養殖のマグロ丼――。大学が開発した自慢の食品を一堂に集めた食のイベント「『大学は美味しい!!』フェア」が11日から、東京都渋谷区の新宿高島屋などで開かれる。16日まで。

 大学や出版社などが連携して企画した。イベントには、全国27の大学と水産大学校が参加。新宿高島屋の会場では、各大学が開発した食品を紹介するコーナーが設けられ、約300品が展示・販売される。

 世界で初めて完全養殖に成功したクロマグロなどを使った「マグロ丼」(近畿大)や、奈良漬のほのかな塩味が特長のスイーツ「奈良のかすていら」(奈良女子大)、赤い花が咲くソバから日本ミツバチで採取した希少な「高嶺ルビーはちみつ」(信州大)などユニークな食品が並ぶ。

 また、新宿高島屋に隣接する紀伊国屋書店新宿南店では、各大学の教授が食品開発の研究成果などについてわかりやすく解説する特別講座や、食のドキュメンタリー「いのちの食べかた」(2005年、ニコラウス・ゲイハルター監督)の上映会、料理研究家らによる講演会などが開かれる。

 少子化などを背景に大学の学生は将来減少が見込まれ、ここ数年、各大学は生き残りをかけ、それぞれの特色を打ち出そうとしている。食品開発に力を入れるのも、そうした動きの一つ。「今回のイベントで、品質の良さや安全・安心に配慮した大学発のブランド食品への関心を高めてもらえれば」と担当者は話している。

 問い合わせは、紀伊国屋書店新宿南店(03・5361・3301)へ。

焼津水産化学、魚類含有ペプチドの尿酸値降下作用確認

2009年06月10日 化学工業日報

 焼津水産化学工業は、マグロなどに含まれる機能性ペプチド「アンセリン」の新規機能として、尿酸値降下作用のあることを臨床試験で確認した。カプセル状にした同ぺプチドを摂取してもらい、対照群と比較したところ、有意な降下作用を示した。また摂取をやめた後でも作用が持続することがわかったとしている。今回の成果を踏まえ、同社では同ペプチドの素材供給事業を推進し市場拡大を図るとともに、新たに複数の大手企業からの採用も決まり、今秋、同ペプチド配合の機能性食品が市販される予定。

アンセリンで高めの尿酸値が下がった!

2009年06月10日 日経ヘルスオンライン

焼津水産化学工業が研究結果を発表

今秋にも食品メーカー数社が商品化予定

 焼津水産化学工業は6月9日、「アンセリンを1日50mg摂取することで高めの尿酸値が下がった」という研究結果を発表した。アンセリンはマグロ、カツオといった魚や鳥類などの筋肉中に含まれているペプチドで、βアラニンとメチルヒスチジンというアミノ酸からなる。同社では、缶詰を製造する際に出るマグロやカツオの煮汁から、高純度に精製することで、においをなくしたアンセリンを使用しており、今秋には食品メーカー数社が、このアンセリンを採用し、商品を販売する予定だという。

 研究によれば、高めの尿酸値(6.5〜8.0mg/dl)の成人男性31人を2群に分け、アンセリンを1日50mg、もしくは偽サプリを4週間とってもらった。摂取前、摂取2週間目、摂取4週間目、そして摂取終了後2週間目と、2週間ごとに尿酸値を測定した。その結果、アンセリンをとった群で、摂取2週間目で尿酸値が下がる傾向がみられ、摂取終了後2週間目で摂取前と比較して有意に尿酸値が下がったという。偽サプリ群では、統計的に有意な変化はなかったという。

 同社は、動物実験などから、アンセリンが尿酸の産生を抑制する酵素、HPRT(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ)を増やし、さらには尿酸の排泄を促進する酵素、LDH(乳酸脱水素酵素)を増やすことを確認している。そのため、「尿酸が作られ過ぎるのを抑え」「作られ過ぎた尿酸を体外に排泄する」という二つの作用で尿酸値を下げたと考えられるという。同社は、摂取終了後に数値が下がったのは、摂取をやめても、これらの酵素の発現量が増えた状態が続いていたからではと推測している。

 高尿酸血症は、生活習慣病の一つとされているが、特定保健用食品に、「尿酸値が高い人向けの食品」というカテゴリーはない。また、サプリメント成分でも確かな効果が認められているものは海外でもわずか。だが、尿酸値が高いことによって起こる痛風の患者は増えている。そこで、「食事改善による尿酸対策の市場に向けて」(同社)、今秋食品メーカー数社が、同社のアンセリンを配合した商品を販売するという。新商品に先駆けて、アンセリン特設サイトもオープンしている(http://www.yskf.jp/anserine/)。 (日経ヘルス、白澤淳子)

マグロ研究施設の建設へ 陸上水槽で種苗生産

2009年06月10日 紀伊民報

 日本水産(ニッスイ=本社・東京)が、和歌山県串本町大島にマグロ種苗生産の研究施設を建設する。8月初旬には完成させ、研究にかかりたいとしている。

 場所は大島区の土地で、以前、近畿大学の種苗生産施設があった場所。敷地面積は約1500平方メートル。50トンの陸上水槽2基などを設け、マグロの種苗生産の研究をする。

 ニッスイは、奄美(鹿児島県)や対馬(長崎県)などでマグロの養殖を行っている。年間約600トンを出荷しているという。種苗生産の適地をいくつかの候補地から探す中で、水通しが良く、水温も適した串本町を選んだ。

 研究施設には、大分県にある同社の大分海洋研究センターから、研究員が来て研究にあたる。

 大分海洋研究センターの白須邦夫所長は、本年度は試運転の段階で、沖出しできる種苗が数千匹できればと目標を語り「設備の適、不適切も運営しながら考える。研究成果は地元にも還元したいし、持続的にやっていきたい」と話している。

【日本水産がマグロ養殖の研究施設を建設する用地(和歌山県串本町大島で)】

境港でマグロ大量水揚げ 地域間競争時代へ

2009年06月09日 日本海新聞

 鳥取県境港市の境漁港に8日、日本海で捕れたクロマグロ約60トンが水揚げされ、多くが大阪や東京・築地などの市場に送られた。この日は石川県の港にもほぼ同量のクロマグロが水揚げされており、同県への水揚げは今後も増える見通しだ。夏場の日本海のクロマグロを一手に引き受けていた境港の地位が相対的に低下する可能性もあり、突如始まったマグロの産地間競争に境港の水産関係者は「境港の真価が問われる」と危機感を募らせている。

 この日境港市に水揚げしたのは大洋エーアンドエフ(東京)所属の巻き網船団「第21たいよう丸」。平均32キロと小ぶりなものが中心だったが、6日の初水揚げの約1トンを大幅に上回った。

 一方、石川県には同日、計約50トンが珠洲市と七尾市の港に水揚げされた。

 石川県ではこれまで中型の巻き網船団や定置網などでクロマグロが漁獲されていたが、クロマグロ漁の主力である大型巻き網船団は多くを境漁港に水揚げしてきた。しかし、この時期は能登半島沖や佐渡沖が主漁場であるため、地元の産品を地域活性化に生かそうと5月に「能登本マグロブランド化推進協議会」が立ち上がるなどブランド化の動きが本年度から本格化した。

 石川県での水揚げが今後も増えれば境港への水揚げが減少するのは必至で、この日はマグロ水揚げをめぐる地域間競争が本格的に始まった日となった。

 こうした状況を受け、境港の水産業関係者からは危機感を表す声が聞こえる。境港の地位が相対的に低下し、長年にわたって築き上げた「夏のマグロは境港」というイメージが崩れかねないためだ。

 境港の仲買人は長年培った販路や配送の仕組みなどを持ち、漁港では一度に大量のマグロを処理できるなど、多くの点で優位性を保つ。だが、石川県でブランド化が進み、大阪、築地などの市場で幅を利かせ始めれば境港が苦戦する可能性も否定できない。

 鳥取県水産事務所は「石川県で大量のマグロがさばけるのか、販路はどうするのかなどの課題もあるが、境港に水揚げされるマグロが半分になる可能性もある」と指摘する。

 また、境港の仲買業者は「境港が持つ優位性をアピールできるか、総合力が問われている」とし、「境港ブランドを一般の人にも広く知ってもらう一方、一度に大量に水揚げされても値崩れを起こさないよう、冷凍などの取り組みを本格化していかなければならない」と気を引き締めている。

マグロ大漁850匹水揚げ

2009年06月09日 読売新聞 YOMIURI on-line

マグロの大漁で活況に沸く市場(七尾市の市公設地方卸売市場で)

 七尾市公設地方卸売市場で8日、日本海北部の巻き網に掛かった約850匹のクロマグロが運び込まれ、活況に沸いた=写真=。マグロのまとまった水揚げは今季初めて。同市場を運営する七尾魚市場の東度(とうど)久志営業第一部長は「3月頃から、今年はマグロ年になるだろうと漁師たちと話していたんだ」と喜んでいる。

 県水産総合センター(能登町)によると、水揚げされたマグロは、体長は約120センチで平均約30キロ・グラム。今年は、水面温度が15〜16度とマグロ漁にちょうどよく、餌となるスルメイカやイワシも繁殖しており、マグロの群れが餌を追いかけて能登にやってきやすい環境が整っている。

 県内では、珠洲市の蛸島漁港でも、約1200匹のクロマグロが水揚げされた。東度部長は「大漁はこれからまだまだ続く」と笑顔で話していた。

マグロ:異変、値崩れ 景気悪化で需要減 競り残り、卸値2〜3割安に

2009年06月07日 毎日新聞 東京朝刊

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR 生活>

 消費不況を背景に、マグロの価格が値下がりしている。昨年前半は燃料代の高騰を受けた漁船の休漁などで値上がりしたが、昨年秋以降は世界的な景気悪化で反落。国内でも消費者のマグロ離れが顕著になっている。ただ、中長期的にはマグロ資源保護のための漁獲規制強化などで供給減が予想され、景気動向次第では再び高騰に転じる可能性も指摘されている。【大塚卓也、窪田淳、太田圭介】

 4日午前5時半、東京都中央区の築地市場。体育館ほどの広さの競り場に最高級のクロマグロや大衆向けのメバチなど千数百匹の冷凍マグロが並ぶ。競りの開始を告げる鐘とともに競り人の威勢のいい声が響き、仲卸業者が応札額を指のサインで提示。競りは1時間足らずで終了したが、100匹を超えるマグロが売れ残った。

 残ったマグロは相対取引に回る。出荷業者と仲卸業者や大手スーパーなどのバイヤーが個別交渉し値決めする仕組みだ。市場関係者によると、相対取引では競り値より2〜3割安くなることもあるが、最近はこんな光景が目立つという。

 大手スーパー、イトーヨーカ堂を運営するセブン&アイ・ホールディングスの幹部によると、冷凍マグロの売り上げはここ数カ月、前年同月比で1割弱の減少が続いている。店頭での価格は「卸売価格が急騰した昨年前半には利幅を抑えて対応したため、卸売価格が下がった今でもほとんど変わっていない」という。「しかし昨年秋以降、消費者の節約志向が強まり、『高い』というイメージが定着しているマグロから、より低価格の魚にシフトしている」という。

 実際、安いタコ、ホタテ、サケなどの売り上げは前年比2ケタの伸びが続いている。同じマグロでも安いキハダは特売商品として人気があるという。

 価格下落の背景には供給過剰もある。昨年前半までは中国、ロシアなどの新興国や欧州の魚食ブームで、世界的にマグロの価格が上昇。日本の商社や水産会社も海外の業者に対抗してマグロを買い集めた。ところが、昨年9月のリーマン・ショックを機に、高値を支えた欧州などの投機資金が収縮。「不良在庫と化した冷凍マグロを処分する動きが強まっている」(大手水産会社幹部)という。

 ◇規制強化、廃業者増 再び高騰も

 昨年5〜9月のマグロ高騰を招いた直接の原因は、高い燃料代で採算が悪化したマグロ漁船の休漁だ。遠洋マグロ漁業団体「日本かつお・まぐろ漁業協同組合」は同年8月から2年間の部分休漁に踏み切り、中国、韓国、台湾でも休漁の動きが広がった。このため、8月には築地市場でクロマグロの平均取引価格が1キロ=4171円と急騰した。しかし、10月以降は反落し、クロマグロの価格は今年に入って3300〜3600円程度と低迷。昨年5〜11月に1000円を超えていたメバチの価格も5月末に800円台(中心価格)まで落ち込んだ。

 ただ、「大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT)」が東大西洋と地中海で09〜11年のクロマグロ漁獲枠を2割削減するなど、今後の規制強化を考えると、安値が続くとは限らない。水産庁は減船に取り組み、後継者不足による漁業者の廃業も相次いでいる。

 中国や欧米でマグロ消費は定着しており、持続可能なマグロ資源の利用に取り組む国際団体「責任あるまぐろ漁業推進機構」の原田雄一郎専務理事は「景気が回復すればマグロ人気は復活する。長期的には価格が上昇する可能性は高い」と話している。

マグロで肌プリプリ マルイリフードがコラーゲン加工食品

2009.06.07 MSN産経新聞

 天然マグロを中心とした魚卸のマルイリフードサプライ(静岡県焼津市)は、マグロから抽出したコラーゲンを原料としたコラーゲンペプチド加工食品「ラ・ソレルーナ」を開発し、インターネットで販売を始めた。同社の女性スタッフが「ツヤツヤ、プリプリの肌になりたい」という願望と発想でつくりあげたユニークな商品で、卸会社が川下へと本格的に乗り出す戦略的な商品でもあるという。

 「まぐろ由来のコラーゲンの資料を女性スタッフに渡してからはすべてを彼女らに任せ、私の役目はゴーサインを出すことだけでした」。寺岡弘泰社長は、女性スタッフ主導で完成した「ラ・ソレルーナ」の開発ストーリーをこう話す。

 同社は漁港を中心に発展した焼津市で、80年にわたり卸業を営む。マイナス60度以下の巨大冷蔵庫を持ち、切り身加工や製品販売をも自社で一貫して行えるシステムが強みだ。

 看板商品であるマグロからとれたコラーゲンを商品化する計画は、女性スタッフが「私たちの欲しいものをつくりたい」という思いが原動力になったという。

 女性スタッフを中心にプロジェクトチームを立ち上げ、コラーゲンの効果や分子構造を勉強し、市場調査などにも取り組んだ。飲みやすくするために、数多くの試作品をつくり、フルーツの味わいなど味の種類や濃度を試した。最終的に「さくら風味」という彼女らの自信作の商品に仕上がったという。

鳥取ワイド : 境港でマグロ初水揚げ

2009/06/07 山陰中央新報

境漁港に今シーズン初めて水揚げされるクロマグロ=境港市昭和町

 境港市の境漁港に6日、クロマグロが今シーズン初めて水揚げされた。昨年より3日遅い。型が小さく、数もわずかだったが、待ち構えた水産関係者たちで市場は活気づいた。

 初水揚げしたのは地元・共和水産(同市栄町)の第18光洋丸の巻き網船団。佐渡沖の漁場で30〜55キロのクロマグロ(3歳魚)31匹を漁獲した。

 午後1時40分に運搬船が接岸すると、船員たちが船倉からマグロを数匹ずつクレーンで次々と運び出し、市場内で割裁人たちが手際よくえらと内蔵を取り出した。

 腹に氷が詰め込まれたマグロを仲買人など200人ほどが囲み、入札がスタート。市場関係者によると、1キロあたり2480〜3100円で落札された。量が少なく、ご祝儀相場もあって、まずまずの価格という。

 境漁港は生のクロマグロの水揚げ量が昨年まで4年連続日本一を誇る。昨年は8月までに計68回、2229トンの水揚げがあった。境港水産振興協会の和田耕治会長は「昨年や一昨年並みに捕れてほしい」と今後に期待した。

セレブ御用達の高級日本食レストランからクロマグロ消える 環境団体の抗議で

2009.05.30 MSN産経新聞

 【ロンドン=木村正人】マグロの中で最も美味とされ高価で取引されているクロマグロが、乱獲による絶滅の危険性を理由に環境保護団体の抗議を受け、英国の日本食レストランから姿を消し始めた。

 象徴的なターゲットになっているのは、日本人シェフ、松久信幸氏が米俳優ロバート・デ・ニーロ氏らと世界展開している高級日本食レストラン「NOBU(ノブ)」。

 国際環境保護団体グリーンピース(本部・オランダ)の抗議で、ロンドンに展開する2店でクロマグロを使ったメニューに「クロマグロは環境上、種の生存を脅かされています。店員に別のものを頼んでください」との注意書きを載せた。店員は代替魚としてキハダマグロを勧めている。

 ノブは世界10カ国に18店を出しているが、英国以外の店ではまだ注意書きは載せていない。

 これに対し、グリーンピースは「偽善だ。ノブは絶滅寸前の種(クロマグロ)を販売していることを恥ずべきだ」と主張。6月に公開予定の漁業資源保護を訴える映画でも、ノブがやり玉に挙げられている。ノブは米俳優ブラッド・ピットや英モデル、ケイト・モスら常連客に著名人が多いことで知られており、環境保護団体にとって格好の標的になっているようだ。

 グリーンピースは約2年前から英国内のレストランにクロマグロの買い付けや客への提供を止めるよう再三にわたって手紙を送付。同団体によると、英国のカリスマ・シェフ、ゴードン・ラムゼイ氏らのレストランやスシチェーン「itsu(イツ)」がクロマグロの提供を中止している。

 グリーンピースと世界自然保護基金(WWF)は過去20年間の乱獲でクロマグロが8割減少、日本食ブームの影響もあって絶滅する危険性があると指摘。日本も加盟している「大西洋まぐろ類保存国際委員会」は昨年、大西洋と地中海でのクロマグロの漁獲枠を2010年までに3割削減することで合意している。

 環境保護団体がクジラに続き、クロマグロの保護に力を入れ始めていることで、日本の食文化への風当たりがますます厳しくなってきたようだ。

まぐろ市場見学ツアー:境港の観光資源に 参加者募集−−来月から /鳥取

2009年05月28日 毎日新聞 地方版

 水揚げ量日本一を誇る生クロマグロを境港の観光資源にしようという試みが6月1日に始まる。題して「まぐろ市場見学ツアー」。参加費は300円。日本海で獲れたマグロが集まる県営境港水産物地方卸売市場を間近に見て、マグロ観光を満喫してもらう。境港水産振興協会は「妖怪だけでない境港の魅力をぜひ」と参加者を募集している。

 ツアーは7月31日まで。ダイナミックな水揚げ作業、解体・氷詰め作業や競りを含め約1時間。協会が雇った「おさかなガイド」が解説と案内をしてくれる。

 市場2階には県が約300万円をかけて「見学室」を整備。もともと仲買人の休憩室だった66平方メートルの部屋で、床や天井などを張り替えた。眼下に市場全景が見渡せる。

 見学できるのは事前予約した10以上の団体に限定。45人まで。午前9時と同11時の1日2回行う。

 境港の昨年のクロマグロ水揚げは2229トン、金額で30億3336万円。昨年の初水揚げは6月3日で、毎年8月上旬まで水揚げがある。問い合わせや申し込みは境港水産振興協会(0859・44・6668)へ。【小松原弘人】

初水揚げ:初夏の訪れ告げる 石巻でキハダマグロ 塩釜でマグロ、カツオ /宮城

2009年05月21日 毎日新聞 地方版

 石巻市の石巻魚市場に18日、初夏の訪れを告げるキハダマグロが初水揚げされた。水揚げしたのは八戸港所属の近海巻き網漁船団の運搬船「第83惣宝丸」。八丈島近海で漁獲した約32トン(約2000本)を積んで石巻新漁港に約20時間かけて直行してきた。

 魚体は1本20キロ前後の「コキワ」が主体。市場関係者によると脂の乗りは今ひとつだったが、キロ当たり310〜350円とまずまずの高値で取引された。

 ◇塩釜でもマグロ、カツオが約80トン

 一方、塩釜市魚市場でも18日に巻き網漁船が今年初めて入港し、マグロ、カツオ計約80トンが水揚げされた。

 水揚げしたのは静岡県沼津市の第12大師丸で、八丈島沖で捕獲した小キハダマグロ76・8トン、大型カツオ1・2トンなど。小キハダマグロは1キロ350〜200円、大型カツオは900〜600円の値が付いた。【石川忠雄、渡辺豊】

日本海漁業・養殖業生産量:府内08年は1万3273トン 前年比9%減 /京都

2009年05月20日 毎日新聞 地方版

 近畿農政局はこのほど、府内の日本海での08年の漁業・養殖業の生産量は計1万3273トン(前年比9%減)だったと発表した。

 生産量のうち漁業の漁獲量は1万2567トン(同8・8%減)、養殖の収穫量は706トン(同13・2%減)だった。

 同局によると、漁業では、漁獲量の約7割を占める大型定置網でマアジやカタクチイワシが大幅に減少したことが主因という。一方でブリ類は1789トン(同73・2%増)、ハタハタは443トン(同427・4%増)と好調だった。

 養殖では、収穫量の約8割を占めるカキ類が前年比10・5%減少した。業者の高齢化などで経営規模が縮小したことや、海水温の上昇で生育不良になったことが要因という。【太田裕之】

串本、マグロ養殖誘致 いけす位置巡り曲折 /和歌山

2009年04月26日 毎日新聞 地方版

 ◇地元業者計画も諮問−−別図面の提示に反発も

 串本町と和歌山東漁協が進めているマグロ養殖事業誘致問題で、県は大手水産会社「マルハニチロ水産」(本社・東京)の計画に加え、地元業者「南紀串本水産」(本社・同町)の計画も盛り込んだ漁場計画案を、県の海区漁業調整委員会に諮問することを決めた。しかし、いけすの位置などの調整は残っており、「黒いダイヤ」とも呼ばれるクロマグロを巡って、まだ曲折がありそうだ。【山本芳博】

 県や町などによると、同町須江沖のうらみ漁場で両社の養殖いけす計画水域を含む約130ヘクタールの特定区画漁業権を設定する。当初の計画では、両社のいけす位置が一部重なり、南紀串本水産側がマルハニチロ水産誘致に反対する署名を、知事や漁場調整委に提出した。

 県は、南紀串本水産のいけすを東方向へ移動させて重複を解消させる図面を作成、漁場調整委に諮問する方針。ただ移動した同社のいけす位置は、計画水域で操業する地元の棒受け漁業者の漁場計画と重なるため、調整が必要になりそうだ。

 また県が以前、両社のいけすとも移動させた別の図面を南紀串本水産に提示した経緯も、地元の反発を招いている。同社はこの図面には同意していたが、今回の案には「同意した図面と別の図面に基づく漁場計画案を諮問されては困る」としている。

 さらに、堀切正人副町長が今月8日の町政報告会で「近くで養殖をしている近畿大学側から『事前に説明がない』との連絡が入った」と説明。新たな懸案が生じる可能性もある。

 県資源管理課の神田和明課長は「最終的に位置を調整するのは、県ではなく漁協だ」と説明している。

マグロ10年ぶり減船 漁獲量1〜2割減

2009年01月30日 読売新聞 YOMIURI on-line

 水産庁は30日、国内のはえ縄マグロ漁船の数を減らすため、漁業者への支援措置を発動すると発表した。

 国際的にマグロの漁獲枠の削減が進んでいるためで、遠洋と近海合わせて739隻の漁船のうち1〜2割に当たる90〜130隻が減船に応じる見込みという。国内のマグロ船による年間漁獲量約50万トンの1〜2割が減ると予想され、中長期的には流通価格の上昇につながりそうだ。

 国際的な漁獲枠の削減に伴うマグロの減船は、1999年に132隻が行って以来、10年ぶりになる。

 具体的な減船数は、日本かつお・まぐろ漁業協同組合など漁業団体がとりまとめる。減船する漁船の所有者には、船を廃棄する費用や乗組員の退職金の一部などを支援する。

 104隻減船した場合を想定する水産庁のモデルケースでは、100億円弱の交付金が支払われ、日本人乗組員の離職者が1000人程度出る見通しだという。政府は離職者の再雇用先の確保に努める考えだ。

 世界的にマグロの消費量が増えたことで、資源状態が急速に悪化している。昨年11月には、大西洋と地中海の資源管理を行う「大西洋まぐろ類保存国際委員会」がクロマグロの漁獲枠を2009年から3年で35%削減することを決めた。

プロローグ=気仙沼はいま 荒波の先に光を求め/減船、魚価安、沈む港

2009/01/03 河北新報

 気仙沼市唐桑町。海食が生んだ奇岩の岬・巨釜(おおがま)に近い自宅で、小山範浩さん(48)は大みそかの夜、家族5人で神棚に手を合わせた。

 「来年も無事でありますように」。胸の中の幾つもの願いは、うまく言葉にならなかった。

 世界の海でマグロを追って30年。自宅で迎えた正月は数えるほどしかない。船長を務める遠洋船は昨年、漁に恵まれ、年内に帰港できた。

 今春、地元の気仙沼向洋高を卒業する長男涼太君(18)は2年間の同校専攻科に進学する。外航商船の航海士を夢見て海技士資格の取得を目指す。

 「漁船にも魅力は感じるけど...」と涼太君。小山さんも、長年マグロ船の漁労長を務めた祖父重雄さん(74)もマグロ漁は勧めない。「やりたいと言っても、今は『やめろ』としか言えないだろう」(重雄さん)

 2009年、マグロ漁業は存亡の危機を迎える。資源の減少を背景に、東大西洋クロマグロ(ホンマグロ)は今年から2年間、総漁獲枠が2割ずつ削減される。中西部太平洋のメバチマグロも3年間で計3割の漁獲減を迫られる。

 燃油高騰で体力を奪われた漁業会社は今、不況による消費の落ち込みと円高による輸入マグロの値下がりに引きずられた魚価安にあえぐ。出漁できず、港に係留されたままの船も少なくない。

 業界団体は昨年、船主を対象に減船に関する意向を調査した。補償金の目安を示し、減船希望の有無を尋ねる具体的な内容だった。

 10年前の1999年。気仙沼港では国連食糧農業機関(FAO)の政府間合意による減船で60隻以上の遠洋マグロ船が姿を消した。

 漁業会社の倒産、関連産業の縮小も続いた。一部の船員たちは人目をはばかりながら、「商売敵」の台湾船に移った。

 生き延びた漁業会社も急増する輸入物とのせめぎ合いで、ぎりぎりのコスト削減を強いられてきた。世界のマグロ需要が大きく伸びる一方で、日本の漁業は競争力を失っていった。

 国際的な漁獲規制の強化を受け、再び現実味を帯びる減船。地元船主らは「国内マグロ漁業に致命的な打撃になる」と予想する。

 気仙沼の隣、陸前高田市気仙町の長部漁港。元マグロ巻き網船漁労長の熊谷新太郎さん(79)は80年6月、鹿島灘近くで大量のクロマグロを仕留めた。漁獲高は3億5000万円。この年の全国トップだったという。

 長部港では全盛期、巻き網漁業3社が漁獲を競った。「昭和40年代までは、定置網にもマグロがかかっていた」と熊谷さん。それが、漁場は沖に追いやられ、漁獲は低迷。漁船・漁具の設備投資もかさみ、長部のマグロ漁は「昭和」の終わりとともに消滅した。

 沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へと、極限まで規模を拡大した現代のマグロ漁業。漁獲規制、減船の荒波は10年前を上回る勢いで、気仙沼に襲いかかろうとしている。

 マグロ基地を覆うひずみは海外まで広がる。危機の実相もまだ見えない。ただ、長部と同じ道をたどれば、影響は三陸の漁業全体、そして地域にも及ぶ。

 親潮と黒潮がぶつかり合う三陸沖は世界三大漁場の一つに数えられる。その可能性を信じて危機に立ち向かおう。豊かな海を取り戻し、マグロ漁業を再生へと導く針路を見いだしたい。(マグロ危機取材班)

写真:漁と家族の無事を祈る小山さん一家(右上)とメバチマグロの漁獲風景(左上)。国内有数のマグロ基地・気仙沼港(下)を擁する三陸が、かつてないマグロ漁業存亡の危機に直面している(コラージュ)

クロマグロの漁獲枠、3年後に35%減…地中海など

2008年11月25日 読売新聞 YOMIURI on-line

 大西洋・地中海のマグロの資源管理機関「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」は24日、モロッコでの年次会合で、乱獲が続く地中海と東大西洋のクロマグロ(ホンマグロ)について2011年の漁獲枠を08年より35%減らし、1万8500トンとすることを決めた。

 09、10年についても、すでに決まっている漁獲枠を、それぞれ約2割削減することで合意した。この結果、日本の10年の漁獲枠は、08年より約3割減って、1697トンになる。

 クロマグロはマグロのなかで最も高級で、日本の消費量の約6割は地中海でとれる。水産庁は、冷凍クロマグロの国内在庫が豊富なため、急激な値上がりは避けられるとみているが、中期的には価格を押し上げる要因になる。ほかのマグロ類についても漁獲制限を強化する動きが強まっており、日本の消費者の食卓への影響も広がりそうだ。

 合意によると、09年の漁獲枠は、2万7500トンから2万2000トンに、10年は2万5500トンから1万9950トンにそれぞれ減る。

 ICCATの科学委員会は10月、年間の漁獲枠を1万5000トン以下にすることを求める報告書をまとめた。日米は委員会報告に従うべきだと主張したのに対し、欧州連合(EU)や地中海沿岸国が小規模な削減を求めていた。

クロマグロの漁獲量、大幅減へ

2008年11月18日 読売新聞 YOMIURI on-line

回転ずしからトロ消える?

 地中海と東大西洋でとれる高級マグロのクロマグロの漁獲量を協議する、国際的な管理機関「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」の年次会合が17日、モロッコのマラケシュで始まった。

 24日までの会合では漁獲枠を現在の半分以下に抑える案を採択する可能性が高く、日本も同意する方針だ。マグロ資源を守るための選択と言えそうだが、漁獲の削減は価格の上昇につながる公算が大きい。割安な回転ずし店からクロマグロが姿を消す可能性が出てきた。(幸内康)

 ◆乱獲状態

 マグロの中でも高級とされるクロマグロは、日本での消費量の約6割が地中海・東大西洋産だ。ICCATの科学委員会の推計によると、同地域のクロマグロは、2007年の漁獲枠2万9500トンに対し実際は6万1000トンの漁獲量で乱獲状態にある。

 同委員会は今年10月、漁獲量を07年の半分以下に抑え、最大でも年間1万5000トンとするよう求める報告書をまとめた。日本は今回の会合で、報告に従うよう主張する。

 クロマグロはかつて、高級すし店でしか食べられなかった。それが回転ずし店などで一皿数百円で食べられるようになったのは、1990年代後半から地中海で盛んになった「蓄養」のおかげだ。

 蓄養は小さなマグロをとり、いけすで囲んで太らせる。水産庁によると日本の地中海産蓄養クロマグロの輸入量は98年に5700トンだったが、2006年には2万2600トンと約4倍に増えている。

 ◆資源悪化

 蓄養には一方で、資源状態の悪化を加速するとの批判もあり、自然保護団体などには、漁獲禁止を求める声も高まっている。

 水産庁はこのまま乱獲が続けば、「絶滅の恐れがある」としてクロマグロがワシントン条約の対象となり、輸入が一切禁止になる可能性も視野に入れている。

 漁獲量の大幅削減に賛同するのは、年間の流通量が減って価格が上がっても、「輸入できなくなるよりはまし」との判断からだ。ただ、「蓄養」が盛んな地中海沿岸国の中には、急激な規制強化に難色を示す国もあり、会合は難航も予想される。

クロマグロ漁の中止を勧告 大西洋管理機関の外部評価

2008/10/26 中国新聞ニュース

 大西洋のクロマグロなどを管理する国際機関「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」の外部評価委員会が、ICCATによる資源管理が失敗し、乱獲によって個体数が激減しているとして、東部大西洋と地中海のクロマグロ漁中止を勧告する報告書をまとめたことが二十六日、明らかになった。

 十一月にモロッコで開く年次会合に提出される。日本をはじめとする加盟国は改革に向けた厳しい対応を迫られることになる。

 東部大西洋・地中海はクロマグロの最大の漁場で、大半が日本に輸出されており、漁業が制限されれば漁業者だけでなく、日本の食卓にも大きな影響が出る。

 報告書は、加盟国が適切な漁獲データを提出せず、割り当てられた漁獲枠を無視した漁が続いていることや、一部の魚でそもそも過剰な漁獲枠が設定されていることなど問題点を指摘。「資源保護という目的を達成しているとは言えない」と断じた。

 報告書は、資源管理の失敗を「国際的な不名誉だと広く受け止められている」と厳しい調子で批判。「(多くの国が)規制に従っていないことが最も深刻」として、漁業の禁止や多額の罰金など違反国に対する罰則の強化など計七十項目を挙げ、抜本的改革を要請。

 東部大西洋・地中海のクロマグロについて「漁を即座に中止し、関係国や業者がICCATやほかの国際法、勧告を完全に受け入れ、各国が漁業を適切に管理できるまで中止を解除すべきではない」と勧告した。

 評価委は二〇〇七年、神戸市で開かれた国際会議で、マグロ資源の管理機関の業績を評価する重要性が指摘されたのを受けて設置され、林司宣はやし・もりたか早稲田大名誉教授(国際法)らが参加した。

ミナミマグロ乱獲防止で新制度 2010年から導入

2008年10月17日 中国新聞ニュース

 水産庁に17日入った連絡によると、資源減少が深刻なミナミマグロの保存や管理を協議する「みなみまぐろ保存委員会」はニュージーランドで開いた年次会合で、違法操業による捕獲でないことを証明する「漁獲証明制度」を2010年1月に導入することを決めた。乱獲防止が狙いだ。人工衛星を用いた漁船の位置監視制度も17日付で導入した。

 国別の漁獲割当量を守っていることを示す証明書をミナミマグロに添付して流通させることを、日本、オーストラリアなど9カ国・地域の漁業関係者に義務付ける。国別の漁獲割当量は06年に決定済みで、今回は議題にならなかった。

 人工衛星を用いた監視は、漁船が専用機器を積み込み、衛星を通じて現在位置を定期的に本国に報告する仕組み。海上の臨検で、この機器を備えていないことが分かった漁船は違法操業とみなされる。

 マグロ資源を管理する国際機関が漁獲証明制度を導入するのは、クロマグロ保存を協議する「大西洋まぐろ類保存国際委員会」に続き2例目となる。

能登でマグロ蓄養 石川県漁協などが協力協定

2008年09月18日 中国新聞ニュース

 石川県漁協、水産会社「道水」(北海道函館市)と石川県珠洲市は18日、能登半島沖で捕れたクロマグロを珠洲市で蓄養する協力協定に調印した。第1段として、来年6月から7月に漁獲して成長させた上で、10月から翌年3月にかけて出荷する計画だ。

 計画では、能登半島沖で回遊する体重約70キロのマグロ約2500匹を漁獲し、いけすに入れて珠洲市沖までえい航する。蓄養施設は4基あり、いずれも直径約50メートル、深さ約30メートル。イワシなどを与えることで体重が約10キロ増え、天然マグロでは1割程度のトロの部分が3割から4割に増えるという。

 これまで能登半島沖のマグロは主に鳥取県境港市で水揚げされていた。珠洲市はこの事業で4億円以上の経済効果を見込んでいる。

 道水はこれまで地中海などで蓄養事業を行ってきたが「消費者が国内産を好むこともあり、能登のブランド価値は高い」と意気込んでいる。

燃料高騰 漁業ピンチ

2008年07月12日 読売新聞 Yomiuri On-Line

15日一斉休漁

 原油価格の高騰が、県内の漁業にも深刻な影響を与えている。漁船の燃料となる重油価格は、この4年で2倍となり、上昇傾向はなおも止まる気配はない。漁業者が置かれた深刻な現状を訴えるため、15日には県内でも一斉休漁が予定されている。

 県漁連は、全国16の主要漁業団体が一斉休漁を打ち出したことを受け、15日に全魚種で休漁を実施することを決めた。既にスルメイカ漁は先月18〜19日、「全国いか釣漁業協議会」の呼びかけに応じて休漁を実施している。

 県漁連によると、漁船燃料のA重油価格は、2004年7月には1キロ・リットル約4万5000円だったのが、08年1月には約9万円と2倍になっている。今月に入ってからの値上げで12万円を超えるケースも出ているという。

 一方、県内の魚市場に水揚げされた全水産物の1キロあたりの年平均魚価(県水産技術センター調べ)は、04年の122円から、08年は138円へ伸びているが、燃料価格の急騰には追い付かない状態だ。

 「県沿岸漁船漁業組合」(盛岡市)の湊正幸事務局長(48)は「漁業者は釣った魚に燃料代を上乗せできない。一斉休漁は厳しいが、身を切ってでも窮状を知ってもらうしかない」と訴える。

 さらに影響が深刻なのが遠洋漁業。コスト全体に占める燃料費の割合が高いためだ。

 国内有数のマグロ水揚げを誇る釜石市の「浜幸水産」の浜川幸雄社長(63)は「限界はとうに越えている」とため息をつく。同社は遠洋マグロ漁船11隻を保有する。「日本から大西洋まで片道で3000万円近くかかる。3月まで売り上げ全体の2割程度だった燃料代が、今では6割近くになる」とうつむく。

 「日本かつお・まぐろ漁業協同組合」(日かつ漁協)は4日、加盟するマグロはえ縄漁船233隻について、来月から2年をかけて、1隻あたり2か月以上の休漁を実施することを決めた。日かつ漁協に所属する県内の漁船は24隻。帰港した船から順次、休漁を実施する。

 県遠洋まぐろ漁協の藤原修一参事(44)は「これ以上燃料価格が上昇すれば、廃業する漁業者も出てくるだろう」と危機感をあらわにする。

マグロ休漁、今後2年で2か月以上

2008年07月12日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 遠洋マグロ漁の漁業者で作る「日本かつお・まぐろ漁業協同組合」(日かつ漁協)は4日、加盟している漁船233隻の休漁期間を8月からの2年間で2か月以上と決めた。

 燃料高とマグロの資源状態悪化で採算割れが続いているためで、今後、マグロの値上がりにつながる可能性がある。

 最初の1年間で100隻が参加することを目標としており、実際の休漁期間は1隻あたり3か月程度になるという。日かつ漁協は、他団体にも参加を呼びかけており、休漁に参加する漁船数は最大300隻程度になる見込みだ。

 漁獲日数が限られる結果、高級魚のクロマグロとミナミマグロ漁を重視することになれば、大衆マグロのメバチやキハダの供給量が減る可能性がある。

 日かつ漁協の石川賢広組合長は「政府に休漁中の漁船の維持費の支援を求めたい」と話している。日かつ漁協によると、漁船の燃料価格(洋上)は過去2年で約2倍に高騰している。

欧州委員会、漁業者支援で6億ユーロ拠出へ 漁船団の再編促す

2008年07月09日 AFP BB News

【7月9日 AFP】欧州委員会(European Commission)は8日、欧州連合(EU)内の漁業者に、高騰する燃料価格対策として最高6億ユーロ(約1000億円)を拠出する意向を示した。

 欧州委員会によると、この措置はこのところの燃料価格の高騰によって大きな影響を受けた漁船団の再編成を促すための緊急措置の一部だという。(c)AFP

マグロ:大漁、5月は平年の3倍 ブリの不振、挽回期待 佐渡・両津など各港 /新潟

2008年07月04日 毎日新聞 地方版 Mainichi INTERACTIVE

 佐渡市の両津港など県内の漁港で、マグロの大量水揚げが続いている。県水産海洋研究所によると、5月の水揚げは平年の3倍以上。6月も豊漁が続いた。今冬の寒ブリ漁の不振を挽回(ばんかい)しようと、漁業関係者の期待が高まっている。【渡辺暢、磯野保】

 大佐渡の南端部に近い佐渡市・稲鯨漁港。5月初めから、定置網にかかったマグロの水揚げが始まった。1匹あたり40〜50キロと型は小さめながら、この2カ月間で約100匹を記録。2日は1日で20匹以上の水揚げがあり、「今年はここ4、5年で一番だよ。久しぶりにうるおっている。(群れが)佐渡の辺りに入ってきてるんだろう」と漁港の人たちは出荷作業に大忙しだった。

 佐渡漁協の担当者は「(豊漁は)記録的といってもいいのでは」と喜ぶ。今冬の寒ブリは不漁で、県水産課によると、水揚げは例年の2〜3割程度だった。「ブリの方が単価が高いものの、これで少しは補える」と期待を寄せる。

 同研究所によると、5月のマグロの水揚げ(県内主要港)は47・9トンと、前年同月の9トンを大幅に上回る。6月も好調は続き、豊漁で130トンの漁獲があった05年6月並みとなる見通しだ。

 年間で600トンの漁獲量があった60年代以降、県内の水揚げは低下傾向が続いてきた。今年は05年以来の豊漁だが、海流や水温、気象条件などさまざまな要因が絡み合った結果で、決定的な理由は分かっていない。

 県内全般で水揚げの中心となっているのは30キロ台。04年産とみられるが、本来の大きさより成長が遅れているという。マグロは、大量発生すると、型が小さくなるといわれる。

 一方、原油高に伴うコスト高騰は、漁業者を圧迫している。先月は窮状をアピールするため、全国の小型イカ釣り船が一斉休漁し、今月15日にはほぼ全魚種で一斉休漁する。降ってわいたマグロの豊漁にも、漁業関係者は「まだまだ厳しい」と不安を抱えている。

EUのマグロ禁漁前倒し、地中海の養殖業者が危機感

2008年07月03日 AFP BB News 発信地:マルサシュロック/マルタ

【7月3日 AFP】欧州連合(EU)のマグロ禁漁期間の前倒し措置をめぐり、地中海沿岸のマグロ養殖業者の間で危機感が高まっている。

 クロマグロ1200トンの養殖が可能なある養殖場の経営者は、「今年は恐らく500トンの出荷にとどまる」と話す。

「すでに1人の漁師に前金として50万ユーロ(約8400万円)を支払ったが、禁漁期間の前倒しで彼は1匹も取れなかった。今後、廃業に追い込まれる漁師も出てくるだろうし、我が社にとってもいい話ではない」(経営者)

 EUは先に、マグロの漁獲量が年間漁獲枠に達しつつあることを懸念し、商業用マグロの禁漁期間を最盛期半ばの6月16日に前倒しした。(c)AFP/Isabelle Wesselingh

境港のマグロ水揚げ好調 昨年の2倍ペース

2008/07/01 日本海新聞 NeT Nihonkai

 鳥取県境漁港のクロマグロの水揚げが好調を維持している。三十日にも約三十トン(速報値)が水揚げされ、今シーズン初水揚げからの通算は約千五百トン、水揚げ高は約二十一億円と昨年同期のほぼ二倍に達している。特に金額は過去最高だった二〇〇五年の二十六億四千七百万円を上回ることがほぼ確実な情勢だ。

 六月三日の初水揚げ以来のマグロの水揚げ量は二十九日現在で一四七八・九トン、水揚げ高は二十億六千五百万円。同時点での昨年の実績と比べると水揚げ量、水揚げ高ともに約二倍に達し、昨シーズントータルと比較しても水揚げ量で約75%、水揚げ高で約81%に達している。マグロは例年なら八月中旬まで漁獲が続いており、このまま推移すれば過去最高を更新する可能性がある。

 今年の初水揚げは昨年より八日早く、過去二番目に早くなった。その影響もあってシーズン当初は二〇〇五年生まれの三歳魚とみられる三十キロ台が多く漁獲されていたが、海水温の上昇とともに漁獲水域が能登半島沖から若狭湾沖や隠岐諸島東部などへと移るとともに二百キロを上回る大物も目立ち始めた。

 大型化は単価の上昇にもつながっており、いったんは千円を割り込んだキロ当たり単価はここにきて平均千三百から千四百円台を推移。過去十年の平均約千二十三円を上回って過去最高水準を維持している。また、脂の乗りもよく、品質が大幅に低下する「焼け身」も少ないなど、品質面も好調を支えている。

日中韓台がマグロ休漁へ、メバチやキハダ数か月

2008年06月28日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 日本と中国、韓国、台湾の遠洋はえ縄マグロ漁の団体が、連携して数か月間にわたり一部休漁することが28日、明らかになった。

 燃料費の高騰で採算を取りにくくなっていることや、マグロの資源状態が悪化していることが理由だ。主に、刺し身や缶詰の原料になるメバチマグロやキハダマグロの値上がりにつながる可能性がある。

 中国、韓国、台湾の漁船の一部はすでに休漁に入っている。「日本かつお・まぐろ漁業協同組合」(日かつ漁協)は所属する200隻以上のうち2割程度が、早ければ7月にも数か月間の休漁に入る方向で調整している。同漁協は、国内の他団体にも参加を呼びかけている。世界には、遠洋はえ縄漁船が約1200隻あるが、4か国・地域で9割近くを占める。このため、最終的には全体の3割程度の漁船が休漁することになる見通しだ。

 クロマグロやミナミマグロといった高級マグロは、国際機関のもとで、すでに漁獲枠の削減が進められているため、今回はメバチやキハダを主な対象にする。

 今回の休漁で、日本漁船の水揚げが減少するほか、日本のマグロの輸入量のほぼ半分を占める3か国・地域からの供給量の減少が予想される。遠洋マグロ漁船は出港すると1年間は漁を続け、その間、数回の水揚げしかしない。そのため、今回の休漁は中長期的な値上がり要因になりそうだ。

メバチ・キハダ両マグロの国際資源管理強化、4回連続で不合意

2008年06月28日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 東太平洋地域のマグロ資源を管理する国際機関「全米熱帯まぐろ類委員会」(IATTC)は28日、資源が減少傾向にある「大衆マグロ」のメバチマグロとキハダマグロの2008年以降の資源管理強化について合意できず、10月に開く会合で再び協議することを決めた。 C

 結論の先送りは、07年6月以来、4回連続。

 08年は規制がない状態が続くことになるが、日本は07年と同じ年間約3・4万トンのメバチの漁獲枠を自主的に守る方針だ。

食料小国ニッポン:自給率39%の現場/2 安い魚、高すぎる燃料

2008年06月26日 毎日新聞 東京朝刊 Mainichi INTERACTIVE

 ◇操業一日、赤字18万円

 日本一のマグロ水揚げを誇る静岡・清水港。今年4月、3隻のマグロはえ縄漁船が南米ペルー沖へ出港した。魚価低迷と燃料高騰の中、赤字覚悟の出漁だ。船主の三鬼楠好(みきくすよし)さん(71)は「帰港する1年後に、状況が好転していれば」と祈る思いで見送った。

 直前3月の水揚げは、商社の買値が1キロ当たり600円台。スーパーなどの値下げ要求が厳しく、採算ラインの1000円に遠く及ばない。人件費の安い外国人を雇ったが、「黒字化は無理」と話す。

 業界団体の試算では、A重油価格の高騰で遠洋マグロ船は1日当たり18万円の赤字が出る状態。台湾などで休漁の動きが広がり、日本の漁業団体も7月15日に一斉休漁を実施するが、「長期に休漁すれば従業員の給料も払えず、廃業が続出する」(静岡県・焼津漁協の片山啓太郎常務理事)との声もある。

 日本の魚介類の自給率は、1964年の113%から06年には59%に低下。5月発表の07年度水産白書は、旬の魚料理を見直す自給率向上策を訴えた。しかし、三鬼さんは「日本の漁業そのものが危機。このままでは自給率アップも絵に描いた餅」と表情を曇らす。

 自給率低下は、サバやイワシなど大衆魚から、国内業者では賄いきれないマグロなどに人気が移ったのも要因だ。しかし、マグロは国際的な規制による遠洋漁業の衰退に加え、中国や欧州などの需要拡大による「買い負け」も深刻化してきた。

 今年1月、東京・築地市場の初競りで最高級の青森・大間産クロマグロを約600万円で競り落としたのは香港の回転ずし業者。「単なる話題作り」との見方もあるが、関係者は「ご祝儀相場に乗れないのは勢いの差の象徴」と受け止める。日本の独壇場に中国や欧米の業者が参入し、思惑通りの価格では買えなくなってきている。

 安い魚に慣れきった日本の消費者と流通業者。膨らむ漁業コストを仮に価格転嫁できても「魚離れが進んだのでは元も子もない」(三鬼さん)というジレンマが、日本漁業の足元を揺さぶっている。=つづく

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 ■ことば

 ◇日本の漁業

 農水省の統計によると、日本の漁業生産量は06年時点で573万5000トンと、ピーク(84年)の1282万トンから半減。07年時点の漁業就業者数も20万4000人で、48年の79万人から4分の1に落ち込んだ。就業者は、65歳以上が37・4%を占める。消費者の魚離れや後継者不足に加え、排他的経済水域(沿岸から200カイリ)の設定、資源保護のための漁獲制限なども影響し、かつての「水産大国・日本」の面影はない。

メバチマグロ漁獲枠 削減受け入れへ

2008年06月25日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 パナマで開催中の「全米熱帯まぐろ類委員会」(IATTC)年次会合で、日本が「大衆マグロ」のメバチマグロの漁獲枠削減を条件付きで受け入れる方針であることが24日分かった。

 2008年以降の漁獲規制の強化が議題の会合で、日本の柔軟方針が規制強化に難色を示す一部加盟国の妥協を引き出せるかどうかが焦点だ。

 南米諸国を中心に行われている大型の網で魚群を囲む「巻き網」の休漁期間を大幅に延長することを条件に、日本は漁獲枠削減を受け入れる意向だ。日本の漁獲実績(06年)は1・4万トンで、枠の3・4万トンに達していない。削減幅は、マグロ供給に直接的な影響が及ばない程度にとどめる。

済州道、マグロの大量漁獲に挑む

2008.06.24 中央日報 Joins.com

 「じっとしているわけにはいきません。私たちも何かしなくては」−−。

済州道(チェジュド)が“海のロト”と呼ばれるマグロに目を向けた。昨年春に味わった苦い経験による。

3月、西帰浦(ソギィポ)南の海域にはマグロ漁場が造られた。釜山(プサン)の巻き網漁船団は数千匹のマグロを漁獲し、10億ウォン(約1億391万円)の収入を上げた。大当たりしたのだ。

しかし、済州道内の漁船は指をくわえ、ただ見ているだけだった。済州道内の2780隻の漁船は約30トンの小規模船舶のうえ、沿岸漁業が主流だ。海に釣り糸を垂らして漁獲する延縄漁業やイカ釣り漁船で太刀魚や鯛を主に獲っている。自陣でほかの地域の漁船がマグロを漁獲し、大儲けしているのを黙って見ていなければならなかった理由だ。

これに済州道が立ち上がった。済州道は傘下機関の海洋水産資源研究所を通じ、道内漁船もマグロを漁獲できる釣り方の研究に着手した。漁民は漁船を、水産協同組合は餌(イワシやサバなど)を、行政機関は漁具の製作と漁場探索費用をそれぞれ提供し、試験漁業を行う予定だ。網ではない釣りでマグロを漁獲するという点で、商品性も高くなるものと期待している。

これと同時にマグロ養殖の技術開発も推進している。済州の水温が生息環境に適しており、海に養殖網を設け、2〜3年幼魚を放し飼いするのだ。研究所はマグロの養殖が成功すれば、30〜50キロに成長したマグロの場合、1キロ当り3万(約3124円)〜5万ウォン(約5206円)の収益が見込まれるとして期待している。

朴容石(パク・ヨンソク)海洋水産資源研究所研究者は「以前はマグロの遠洋漁業も巻き網漁船が行っていたケースが多かった」とし「このような経験を持つ漁民がいるので、漁獲方法を研究し、済州の新しい魚種の所得事業をつくっていきたい」と話している。

マグロ漁船の乗り入れ禁止〜太平洋の8国、資源保護で

2008年06月23日 U.S. FrontLine

 パプアニューギニアやソロモン諸島など太平洋上の8国はこのほど、数が減少しているマグロの保護を目的に、8国の領海に囲まれた公海2カ所でマグロ漁船の乗り入れを禁止した。

 ブルームバーグ・ニュースによると、対象となる公海は合わせてアラスカ州ほどの広さ。メバチマグロやキハダマグロの絶滅を防ぎ、マグロ漁業が1980年代にカナダ沖の大西洋で起きたタラ漁業崩壊の二の舞いにならないようにするための措置だという。マグロ漁船は今後、保護海域に入らないことに合意しなければ各国の排他的経済海域(EEZ)で漁ができず、各国の領海内で操業する漁船には監視者の配置が義務づけられ、年間3カ月間は幼魚乱獲の原因と非難されているマグロを集めるブイなどの使用も禁止される。

 世界のマグロ漁獲高の約半分は太平洋が占めており、ほとんどは今回の取り決めに参加したミクロネシア連邦、キリバス、マーシャル諸島、ナウル、パラオ、パプアニューギニア、ソロモン諸島、ツバルの周辺に集中している。

 世界的なマグロの数は、40年代に商業規模の漁業が始まって以降、減少し続けている。国連のデータによると、漁獲量は50年から2004年の間に10倍に増加して年間400万トン以上に達し、こうした乱獲で地中海などではマグロが絶滅の危機にひんしているほか、太平洋のキハダマグロの漁獲高も01〜04年に19億ドルから11億ドルに減少している。

 漁獲量の減少は、主要消費国である日本の供給を圧迫する可能性がある。すでに東京ではメバチマグロの卸価格が3年前の1キロ当たり774円から08年4月には930円に、キハダマグロは同538円から700円に高騰している。

マグロで高級珍味カラスミ

2008.06.22 三陸河北新報社

気仙沼のレストランが生産、商品化

「酒のさかな」評判上々

東京の3店と取引/

 気仙沼市上田中の「和Restaurant唐や」がマグロの卵巣を使ったカラスミを開発し、注目を集めている。コース料理のメニューに加えたところ、「酒のさかなに最適」と評判を呼び、今月からは東京の高級イタリアンレストラン3店と取引を開始した。口コミなどで仙台からの問い合わせも殺到しているという。

 気仙沼ふか食普及推進会議のメンバーで、スローフード気仙沼の理事も務める経営者の吉田恵一さん(三九)が、漁船員の賄い料理や煮付けぐらいでしか利用方法がなく、廃棄処分されていたマグロの卵巣に着目。「マグロ漁船の基地である気仙沼の食材を活用して何か新しいものを作りたかった」という。

 卵巣はマグロ漁船の漁労長を務める親類やその人が所属する臼福本店の協力で新鮮なものが手に入り、昨年夏ごろから試作を重ねた。

 船上で急速冷凍した卵巣を解凍した後、血抜きや塩漬けなどを経て、天日干しする。完成まで二カ月かかる。昨年末からコース料理のメニューとしてデビュー。客から「ワインや日本酒、焼酎に合う」との声が相次いだ。

 気仙沼となじみが深いソムリエの木村克己さん、臼福本店を経営する臼井賢志気仙沼商工会議所会頭らの紹介で、東京のイタリアンレストランに商品を提供したところ、高い評価を受けた。

 「マグロのカラスミは昔からあったが、商品としては出ていなかった」と吉田さん。百グラム四千円円の値が付く。現在、製造工程などの特許を申請している。

マグロ、8月中にも値上げへ=燃油高、国内外船の休漁で

2008/06/21 時事ドットコム

 スーパーなどが扱う大衆向けマグロの卸売価格が、じわり上昇してきた。燃油高に伴って外国のマグロ漁船が休漁しており、近く日本船も一部が出漁を見合わせることを検討。「品薄に備えた手当買いが強まっている」(スーパー納入業者)ため、早ければ8月中にも多くの店頭で値上げされそうだ。

函館で「マグロサミット」 津軽海峡はさみ1市3町

2008/06/21 【共同通信】

 津軽海峡に面する北海道と青森県の1市3町の自治体や漁業の関係者らが、マグロのブランド価値を高めようと「つがる海峡マグロサミット」を北海道函館市の東日本フェリー函館ターミナルで21日、開催した。

 北海道と青森県の両知事や函館市長のメッセージが朗読された後、各地域の代表者がマグロの消費拡大や評価を高めるために行っている取り組みを紹介。漁協関係者は「燃油が高いと採算が取れず、漁業者が生活できない」と窮状を訴えた。

 パネルディスカッションでは、東京・築地市場の卸売業者がマグロの競りを披露。青森県外ケ浜町の森内勇町長が「大間などと肩を並べるため本マグロの大釣り世界大会を開催したい」と話すと、約300人の観客から拍手が起きた。

燃料高騰が遠洋マグロ漁業も直撃 漁船の一部休漁を検討中

2008年06月19日 中日新聞

 燃料の高騰は、県内の遠洋マグロ漁業にも影響を与えている。全国屈指の水産都市・焼津市では「漁に出れば出るほど赤字になる」(漁業関係者)といった嘆きが聞かれるほどだ。

 漁業関係者らによると、アフリカのケープ沖や南インド、大西洋などに漁場があるマグロ漁は、1回の航路が長く、多量のA重油を必要とする。

 だが、A重油の価格は2002年春から上昇。05年度に1キロリットルあたり6万1000円だった平均単価が、今年5月には2倍近い11万円に達した。経費に占める燃料費の割合は年々増え、赤字経営に陥っている。

 可能な範囲で船員を賃金の安い外国人に切り替えるなどし、コスト削減に努めてきたが、それも限界に近づいている。

 イカ釣り同様に「休漁」の二文字も視野に入ってきた。「日本かつお・まぐろ漁業協同組合」は、所属する遠洋マグロはえ縄漁船の一部休漁を検討中。魚介類の店頭価格に燃料高騰が反映されない点に疑問を抱く漁業関係者もいる。「スーパーで売られているマグロの値段はほとんど変わらない。生産者泣かせの業界構造になっている」という。

焼津商議所、カツオやマグロの骨や内臓材料に新商品

2008年06月17日 Nikkei NeT

 焼津商工会議所(静岡県焼津市)はカツオやマグロなどの骨や内臓を活用した地元企業の新商品開発を支援する。ごみとして捨てている残渣(ざんさ)を材料にすることで廃棄物を減らし、環境に優しい食品として全国に売り込む。地場産業の水産業が活気を失う中、環境型の新商品で他地域の商品との差異化を進め、地域経済の活性化につなげる。

 地場産品の塩辛やかつお節、黒はんぺんなどの生産過程で発生する残渣を有効利用する。骨などの魚粉は園芸用肥料に使うなど、一部は再利用しているが、ほとんどはごみとして捨てられている。7月の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)などを機に消費者の環境意識が高まる中、残渣のリサイクルをアピールして新商品の拡販を目指す。

 商品開発する中小零細企業を募り、資金面から支援する。7月にも3社程度に絞り込む予定。10月までに試作品を作り、来年1月上旬までに商品を完成させる考えだ。漁業協同組合や市場関係者、学識経験者らで構成する「新商品開発委員会」を立ち上げ、商品内容などを議論する。

原油高・穀物高でマグロ急騰

2008/06/16 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 崔炯碩(チェ・ヒョンソク)記者

 原油高などの影響でマグロの価格が急騰している。穀物の上昇で代替食料として需要が高まっている上、原油高による漁船の操業中断でマグロの供給が減っていることが理由だ。

 ウリ投資証券は15日、穀物の国際価格が上昇し、欧州を中心にサンドイッチ、サラダ用としてマグロの需要が増加しているとのリポートを発表した。中国、ロシアなど新興国も加わり、世界のツナ缶需要は50%(60万トン)増加する見通しという。

 急増する需要に比べ、供給は極めて不足した状態だ。燃料価格の上昇に耐えかねた遠洋漁船が出漁を見合わせているためだ。今月4日のフィナンシャル・タイムズは、燃料価格急騰で全世界のマグロ漁船の3分の1が操業を中断するとの予測を報じた。日本かつお・まぐろ漁業協同組合によると、マグロ漁船に使われる重油価格は1キロリットル当たり1137ドル(約12万3000円)まで上昇した。その上、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)はマグロの絶滅を防ぐため、中西部太平洋で操業権を得ていない会社にはマグロの漁獲を禁じている。

 このため、マグロ価格は取引市場があるタイ・バンコクで2006年末の1トン当たり900ドル(約9万7000円)から今年5月には1800ドル(約19万5000円)まで急騰した。

本マグロ:「数十年ぶりの豊漁だ」 氷見漁港で水揚げ200本 /富山

2008年06月14日 毎日新聞 地方版 Mainichi INTERACTIVE

 氷見市・氷見漁港で12、13日にかけて、富山湾の定置網などで捕れた本マグロ(クロマグロ)200本以上が水揚げされた。中には体長1・5メートル以上、271キロのものを筆頭に、200キロ級が8本も含まれるなど大物ぞろい。身が締まり、大きな弾丸のような形の「海のダイヤ」がズラリと並び、市場は大いに活気づいていた。

 氷見漁協によると、本マグロは氷見市沖や、石川県七尾市沖などに設置した定置網にかかった。セリが13日午前6時に始まると、七尾市沖で捕れた200キロ超えの大物が、氷を敷き詰めた床に並べられた。関係者は「氷見ではこんな巨大なマグロを見たことがない」「数十年ぶりの豊漁だ」と驚きの表情を浮かべていた。セリが始まると、仲買人たちが次々と競り落としていった。【蒔田備憲】

マグロ:大漁40匹 「これからも期待」−−隠岐・西ノ島 /島根

2008年06月14日 毎日新聞 地方版 Mainichi INTERACTIVE

 隠岐・西ノ島町沖の定置網に13日、マグロ約40匹の大群がかかり、同町の浦郷港に水揚げされた。関係者は「これだけの数のマグロが一度にかかるのは珍しい」と話し、離島の港は大漁に沸いた。

 マグロが港に水揚げされたのは、同日午後1時半ごろ。一目見ようと多くの町民や観光客でにぎわった。浦郷水産の小中竹雄社長によると、最も大物は約70キロで平均65キロ程度という。マグロは鳥取県境港市に運ばれた。小中社長は「マグロの季節を迎え、これからも好漁が期待できそう」と話していた。

本マグロ続々 きょうから祭り

2008年06月14日 琉球新報

 14、15日に那覇市泊漁港内の泊いゆまちと泊魚市場直売センターで開かれる「本マグロ祭り」を前に13日、漁港は沖縄近海産の本マグロ(クロマグロ)が次々と水揚げされた。

 沖縄近海では7月上旬ごろまで本マグロが回遊。普段なかなかお目にかかれない生の本マグロを身近に楽しめる解体ショーのほか、模擬セリ即売会、モズクのつかみ取りのほか、旬の魚やモズクのプレゼントもある。

 この日水揚げされたマグロは最大で280キロ。作業に当たった当山清導(きよみち)さん(34)=坂下水産=は「沖縄のマグロを生で食べられる機会。ぜひ地元の人に食べてほしい。父の日に家族で足を運んで」と呼び掛けた。

マグロ危機再び 燃料高騰、世界の3割が休漁…供給不安で庶民派値上がり

2008/06/04 FujiSankei Business i.

 日本人の大好物のマグロが再び危機にさらされている。2年前の危機は、資源保護のための漁獲制限が原因だったが、今回は原油価格の急騰によるものだ。漁船の燃料費が跳ね上がり、国内のはえ縄漁船や日本の輸入量の3分の1を占める台湾漁船の一部が数カ月間の休漁を余儀なくされている。供給不足や値上がりで、今度こそ、家庭の食卓や回転すし店からマグロが消える懸念もぬぐえない。(大塚昌吾)

 ≪2年前は漁獲規制≫

 「燃料費が高くて、船を動かせば動かすほど赤字になる。このまま値上がりが続けば、廃業も避けられない」

 マグロの水揚げ漁港で、漁業者が悲鳴を上げている。

 日本かつお・まぐろ漁業協同組合によると、航行中の海外で給油する燃料用のA重油の価格は1キロリットル約12万円と、ここ数年で2倍以上に上昇したという。一方で、国内のマグロの値段は、売り上げの落ち込みを避けたい流通各社の意向もあり、価格転嫁が進んでおらず、漁業者にとっては死活問題となっている。

 国内のマグロ漁船は、大西洋やインド洋、太平洋を漁場にしており、獲れたマグロは運搬船で水揚げするため、出漁期間は1年半から2年に及ぶ大仕事だ。燃料費で赤字になるくらいなら、出漁しない方がいい。

 このため、農水省などによると、国内のマグロ漁船約380隻のうち、2割程度に相当する約80隻が休漁を検討しているという。さらに台湾漁船は、休業補償が支給されることもあり、日本よりもさらに多い200隻程度が休漁を検討中で、全世界のマグロ漁船の約3割が休漁に追い込まれるとの試算もある。

 これかれの7〜10月にかけては、もともとマグロの漁獲量が少なく、休漁はこの時期に合わせた一時的なものとみられている。

 ただ、このまま燃料価格の高止まりが続いたり、一段と上昇すれば、休漁の長期化に加え、廃業に追い込まれる漁船が相次ぐ可能性は否定できない。

 2年前は、漁獲制限が強化されたクロマグロなどの高級マグロが騒動の対象だったが、今回の休漁は、メバチやキハダ、ビンナガマグロなど価格が安いために赤字も大きくなる庶民派マグロが中心とみられている。それだけに、一般家庭の食卓や安い回転すし店に及ぼす影響は深刻だ。

 ≪食料確保に影響も≫

 超低温流通設備が豊富な日本は、3〜4カ月分の冷凍マグロの流通在庫があり、当面は供給に不安はない。

 ところが、すでに値段はジワジワと上がり始めており、東京・築地の中央卸売市場では4月上旬に1キログラム800円だったメバチが最近は950円に、620円だったキハダも800円と、2〜3割程度も高くなっている。

 まだ店頭価格の値上げには波及していないが、ある食品スーパーでは「刺し身は短冊の扱いを減らして切り身の盛り合わせを増やしたり、他の魚を増やすなどの対応をとっている」(売り場担当者)と明かす。

 高級ネタも扱う回転すしチェーンの担当者も「冷凍マグロは長期買い付けをしており、今は値上げするつもりはないが、卸値が上がり続ければ、当然値上げを検討する」と明言した。

 これまでの値上がりもあり、日本のマグロ消費は減少傾向にある。農林中金総合研究所の出村雅晴・専任研究員によると、家計の食料支出が減っても、マグロの購入には大きな影響がないという「日本人はマグロ好き」を証明する相関データがあった。しかし、03年以降は目に見えてマグロの購入が減り始めているという。

 消費者のマグロ離れが進めば、需要が減退し、さらに漁業者を窮地に追い込む可能性があり、出村氏は「漁業そのものが存続できなくなれば、食料確保に重大な影響が及ぶ」と警告する。

 原油価格の高騰が、日本の食生活を脅かしている。

                 ◇

 ■争奪戦激化、養殖に脚光

 刺し身向けに限定すれば、世界の9割が日本で消費されるマグロだが、中国などの新興国の食生活の向上のほか、先進国の日本食ブームで、世界的に消費が拡大している。2年前には、漁獲制限の強化に加え、争奪戦の激化で、日本の商社が新興国に“買い負ける”ケースが相次ぎ、「日本の食卓からマグロが消える」と大騒動になった。

 実際にはマグロの供給量は確保され、一過性に終わったが、不安感から値上がりし、消費が落ち込む事態を招いた。こうした相次ぐマグロ危機で脚光を集めているのが、養殖マグロだ。

 マグロ養殖は、地中海沿岸諸国やオーストラリア、メキシコで盛んに行われており、2006年には3万4400トンが輸入された。国内でも鹿児島で2000トン、長崎が600トン、三重、沖縄で各300トンなど、計3500トンの養殖マグロが出荷された。

 海外の場合、漁獲された20〜60キログラムの小型マグロを半年程度、いけすに入れて育てる「蓄養」が中心。従来はクロマグロやミナミマグロなどの高級マグロが主体だったが、一部にはメバチやキハダマグロの養殖例もある。

 日本も引き縄で漁獲した体長20〜30センチ、体重100〜500キログラムのクロマグロの幼魚(ヨコワ)を2年で25〜30キログラム、3年で50〜60キログラムに育て出荷している。

 ただ、マグロ保存に取り組む国際機関は、小型マグロや幼魚を捕獲する養殖マグロが資源保護の抜け穴になっていると問題視し、監視を強めている。こうした動きに対し、日本では02年に近畿大学が人工孵化(ふか)による幼魚の育成に成功しており、完全養殖への道も開けてきた。

遠洋マグロが3割休漁へ 燃料高で採算悪化、世界で

2008年05月28日 中国新聞ニュース

 世界の遠洋マグロはえ縄漁船の3割が休漁する見通しであることが28日、業界団体の調査で分かった。燃料代高騰で漁船の採算が悪化しているためで、休漁は日本のほかに台湾や中国などに拡大。メバチマグロやキハダマグロなど大半が日本向けで、スーパーなどで売られる刺し身の小売価格が値上がりする可能性もある。

 調査した業界団体は、遠洋マグロ業の国内外の業界団体が加入する「責任あるまぐろ漁業推進機構」(東京、OPRT)。

 OPRTが各国の業界団体に実施した聞き取り調査によると、日本のはえ縄漁船はまだ組織的には休漁していないものの、台湾約60隻、中国約40隻、韓国約20隻など全世界で約140隻が既に休漁している。

 さらに、日本を含めた各国合計で約260隻が休漁を検討。休漁期間は定まっていないが、休漁する漁船はOPRTに登録する漁船約1200隻のうち約400隻になる。

 日本では、最大の業界団体「日本かつお・まぐろ漁業協同組合」が約380隻のうち最低2割の休漁を検討している。

マグロ禁漁、EUが警告――地中海産乱獲受け加盟国に

2008/05/28 NIKKEI NeT

 地中海産クロマグロの漁獲管理をめぐり、欧州連合(EU)がフランスやイタリアなどの加盟国に対し管理が適切でない場合、禁漁措置に踏み切ることもあると警告したことが明らかになった。漁獲枠を超えるペースでクロマグロが捕獲されており、将来的に資源が枯渇する恐れがあるため。EUはクロマグロ漁獲への監視を強めており、最大の消費市場である日本への供給にも影響を与えそうだ。

 クロマグロの本格的な漁獲時期を控え、EUの欧州委員会は2007年に続いて「漁獲量が割り当てを上回るリスクが高い」と判定。沿岸加盟国に漁獲量の管理や漁船の操業監視を強めるよう求めた。そのうえで各国の漁獲管理が適切でなければ「部分的または全面的に漁獲を禁止する措置を取る」と警告した。(ブリュッセル=下田敏)

本マグロ漁本格化 県内、7月まで

2008年05月27日 琉球新報

 本マグロ(クロマグロ)漁が沖縄近海で本格シーズンに入った。遠くは米国カリフォルニア沖まで回遊する本マグロが沖縄近海で捕れるのは、6月末から7月ごろまで。

 県内最大の水揚げ漁港、那覇市の泊魚市場では26日、市場関係者が200キロ以上の巨大マグロをフォークリフトを使って箱詰めする作業に当たった。県内に水揚げされる本マグロの約8割は東京・築地などの本土市場に送られるが、水揚げ量が増えると県内にも流通し始める。

 泊魚市場有限責任事業組合の平田明則事業部次長は「沖縄では格安で食べられる。カマなど、産地ならではの食べ方も楽しめる」と話した。

冷凍マグロの卸値が上昇・台湾船、休漁の見通し

2008年05月20日 NIKKEI NeT

 メバチマグロやキハダマグロなど、冷凍マグロの卸値が上昇している。漁船燃料の高騰で、漁獲量が最も多い台湾船が休漁するとの見通しや、日本船の廃業が増えるとの懸念が背景だ。夏場の需要期に品不足感が高まる可能性があり、商社などは市場への出荷量を抑えている。小売店は消費の落ち込みを懸念し、値上げに慎重な姿勢だ。

 脂身(トロ)が多く高級品のクロマグロやミナミマグロに対し、メバチやキハダは赤身が主体の普及品。スーパーなどでは、主に刺し身やすしとして販売される。 東京・築地市場の5月第3週の冷凍メバチの卸値(中値)は1キロ983円で、4月第1週に比べて1割値上がりした。冷凍キハダも 750円前後で1割超上昇した。神奈川・三崎や静岡・焼津などの水揚げ港で実施される入札でも値上がりが目立つ。

マグロよりカツオ、近海物食べ自給率アップを…水産白書

2008年05月20日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 日本周辺で取れるカツオなど旬の魚を「毎月1皿」多く食べるよう、政府が20日発表した2007年度の水産白書で呼び掛けている。

 食用魚介類自給率は1998年以降50%台に落ち込んだままだが、これにより60%台に高められると試算している。

 白書では、漁獲量が豊富で価格も比較的安定している国産の魚介類として、春はカツオ、夏はスルメイカ、秋はサンマ、冬はブリを例示。カツオであればたたき1皿、サンマなら塩焼き2匹を、国民一人ひとりが毎月多く食べれば、それぞれ自給率を1ポイント、全体で4ポイント引き上げられる。06年の食用魚介類の自給率は59%のため、60%台に乗る計算だ。

 白書は対策として、サケやマグロなど輸入に多くを依存する魚に消費が偏る現状から脱却し、漁業者、流通業者、消費者が協力して日本周辺の魚介類を消費するサイクルを作り出す必要を訴えている。

台湾マグロ漁船、大規模休漁検討・燃料高で、日本向け減少必至

2008年05月02日 NIKKEI NeT

 キハダマグロやメバチマグロなどの冷凍マグロを主に日本に輸出している台湾の遠洋マグロはえ縄漁船が今夏、燃料重油の価格高騰を理由に大規模な休漁を検討していることが2日わかった。日本船も減っているため、今後、日本向けマグロの大幅な減少は避けられず、価格が上昇する可能性もある。食卓にも影響が及びそうだ。

 休漁を考えているのは台湾区遠洋鮪漁船魚類輸出業同業公会(台湾同業公会)。関係者によると、7月から10月までの4カ月程度、保有する約400隻のうち約70隻の休漁を前提に休漁補償の創設を要望中だ。休漁補償なしに自主的に休漁を考えるところもあり、150隻前後が休漁する可能性もある。

クロマグロ幼魚の漁獲抑制 水産庁、資源保護で報告書

2007年12月18日 中国新聞ニュース

 水産庁のクロマグロ資源に関する検討会は18日、日本近海で2キロ未満のクロマグロの幼魚の漁獲を抑制するよう国内漁業者に求める中間報告書をまとめた。高級トロの材料となるクロマグロの減少が国際的に懸念される中、資源保護の強化を打ち出した。

 2キロ未満のクロマグロは市場で安値で取引されているが、報告書は一度に大量の漁獲ができる大型と中型の沖合巻き網漁業に漁の抑制を呼び掛けた。検討会では、漁獲した場合はほかの漁場に移動して保護すべきだとする意見もあった。

 報告書はまた、漁業の実態把握が不十分なため、2008年度から漁業者にデータを詳しく提出してもらうことも盛り込んだ。

 クロマグロをめぐっては、大西洋で各国の漁獲枠が大幅に削減されるなど、国際的に資源管理が強化されている。水産庁は07年8月、クロマグロに関する検討会を設立した。

【クローズアップ】マグロの“格差問題”

2007.11.23 MSN産経新聞

 マグロが1年で一番売れる年末年始を控え、マグロの価格が二極化している。今年半ばからメバチマグロ、キハダマグロなど小売店で売られている一般的なマグロの価格が低下する一方、高級品のクロマグロの価格は高騰を続けている。メバチやキハダは中国からの輸入品が多く、中国産食品の安全性問題が波及し消費者から敬遠されているためだ。「獲れた漁場は中国産も日本産も同じ」と、“風評被害”を訴える声も届かず、マグロの社会でも“格差問題”が深刻化している。

 「中国産のマグロは、他の中国産食品と同じ目で見られ、在庫が積み上がっている」

 マグロの乱獲防止による持続的な漁業を推進する「責任あるまぐろ漁業推進機構(OPRT)」の原田雄一郎専務理事は、メバチやキハダの価格下落の理由をこう説明する。

 マグロの価格は、昨夏、「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」が、大西洋でのクロマグロの漁獲規制を強化したことで、クロマグロだけでなく、すでのマグロの価格が高騰した。ところが、中国産食品の安全性に関する問題が次々に発覚した今夏以降は、メバチとキハダの価格は一転して下落が続いている。

 日本に輸入される中国産マグロの7割がメバチマグロで2割がキハダマグロだ。

 これに対し、クロマグロは高騰を続けている。今月18日までトルコで開かれていたICCATの年次総会では、米国政府が昨年決めた漁獲枠では不十分として、3〜5年間の「禁漁」を提案した。「禁漁」は否決されたが、EU(欧州連合)が今年、約4440トンを過剰に漁獲したとして、来年からの3年間、毎年約1480トンを減らすことを決めた。

 日本の水産庁は「EUの漁獲量削減が日本にどう影響するかは不明」としているが、総枠の減少で、日本のクロマグロの価格が一段と上昇する可能性は高い。

 もっとも、マグロ社会で、高級なクロマグロだけが手厚く保護されているというわけでもない。

 世界自然保護基金(WWF)は21日、漁獲量の多いメバチマグロの漁獲規制を強化するよう訴える報告書を発表した。

 規制が強化されれば、メバチの価格も上昇に転じる可能性は高いが、中国産の消費が回復するのは難しそうだ。スーパーなどでは、「中国産」という表示だけで消費者が手を出さなくなるため、店頭にすら並ばなくなっているのが実情。

 「中国船籍の漁船が獲ったマグロは中国産になるが、漁場は日本船と同じ。船上で急速冷凍し95%以上が日本の漁港に直接水揚げされる。まったくの風評被害だ」

 OPRTに加盟する中国漁業協会遠洋漁業分会の黄寶善副会長はこう嘆く。

 マグロ卸会社の八洲水産(静岡市清水区)の小岩和雄社長は「中国産マグロのイメージ低下が国産マグロにも影響を及ぼす」と、マグロの消費全体が落ち込むことを懸念している。 (財川典男)

外国人船員の失跡続発、国交省と水産庁が再発防止策発表

2007年11月20日 読売新聞 YOMIURI On-LINE

 入国の許可が簡素化される「マルシップ方式」の近海マグロ船から、外国人船員が相次いで失跡している事態を受け、国土交通省と水産庁は20日、船を所有する会社から事前に提出される書類のチェック強化など、再発防止策を発表した。

 両省庁は今後、船会社に対する聴取や書類審査の際、漁船に乗り込む外国人がどこの会社から派遣されるかも確認。それまでに失跡者を出すなど問題がある会社から派遣された外国人は乗せないよう指導する。

 さらに両省庁は、法務省、警察庁、海上保安庁に対し、失跡者を手引きするブローカーに関する情報を共有化するよう要請。漁業団体にも、寄港地での監視・巡回強化などを求めた。

 マルシップ方式の近海マグロ漁船をめぐっては、2003年以降、国内の寄港地でインドネシア人などの外国人船員計116人が失跡している。

「美味」和牛とマグロの密輸相次ぐ 中国富裕層に人気

2007/11/20 Iza

 【北京=野口東秀】日本産高級牛肉を中国に密輸しようとし、摘発される事例が相次いでいる。「日本の牛肉は上質でうまい」と富裕層に人気があり、高値で販売されるため、利ざやを稼ぐ目的で日本人らが密輸しているようだ。今年6月から今月初旬までに上海浦東国際空港だけでも摘発件数26回で、計3458キロも没収されている。これには1回につき密輸量30キロ未満はカウントされていない。

 中国当局はBSE(牛海綿状脳症)発生国の日本からの牛肉輸入を禁止しているが、北京や上海などではキロ当たり数千元(1元=約15円)から1万元程度でひそかに取引されているという。個人のパーティーで松阪牛を目玉とするケースもある。

 上海紙「解放日報」などによると、今月3日、上海浦東国際空港で大阪から到着した中国人1人と日本人5人が大量の荷物を運びだそうとし、不審に思った税関職員が検査したところ、960キロの牛肉を発見、押収した。8日にも牛肉530キロが押収されたという。

 香港に隣接する深●(=土へんに川)では7月、神戸牛4キロを手荷物として持ち込もうとしたケースがあり、大連の空港でも5月に手荷物に入った17キロの日本産牛肉が摘発されている。国営新華社通信によると、北京の首都国際空港でも昨年4月、神戸牛85キロを持ち込もうとした2人組が摘発されている。

大西洋・地中海のマグロ漁獲枠見直しを検討…保存国際委

2007年11月19日 読売新聞 YOMIURI On-LINE

 東部大西洋・地中海でのマグロ漁を管理する国際機関「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」は、トルコで開いていた年次会合を18日終えた。

 参加国の一部から、各国が漁獲枠を守っていないとの懸念が出されたため、来年11月に予定する次回年次会合で、漁獲枠の見直しを含め点検することを決めた。

 日本は、最高級マグロのクロマグロ(ホンマグロ)の4分の3を、東部大西洋と地中海での漁獲、輸入に頼っている。2010年までに漁獲枠を23%減らすことが決まっており、さらに削減される事態になれば、日本への供給量や価格に影響を与える可能性がある。

 ICCATでは、06年のクロマグロの漁獲総枠を約3万3000トンと定めているが、実際には約5万トンがとられていると推計している。今回の会合では、欧州連合(EU)が07年の漁獲枠を4000トン以上、上回っていることが判明し、09〜11年の漁獲枠を削減することが決まった。

 米国は漁獲枠を超えて漁をしている国を一時的に禁漁措置にすべきだと提案した。各国から支持を得られず、投票にかからなかったものの、次回会合で検討することになった。

クロマグロ、米「3―5年漁獲停止を」・国際委総会で提案へ

2007/11/09 NIKKEI NeT

 米政府はクロマグロの乱獲を防ぐため、東大西洋と地中海で3―5年間、漁獲を停止する「モラトリアム」を提案する。すしや刺し身のトロに使われるクロマグロへの需要は世界的に急伸し、資源の確保には漁獲枠の設定など従来の手法だけでは不十分と判断した。欧州や日本、北アフリカの諸国が反発するのは確実だが、マグロ漁への新たな逆風となる。

 マグロの資源を国際的に管理する機関である「大西洋まぐろ類保存国際委員会」(ICCAT)がトルコで9日から18日まで開く年次総会で表明する。(

冷凍マグロ生産技術開発 解凍後うま味逃げず

2007/11/11 紀伊民報

 那智勝浦町の水産会社が、解凍後に血や肉汁が一切出ず、うま味成分を100%閉じ込める冷凍メバチマグロとビンチョウマグロの生産技術を開発した。地域資源を生かした商品開発として、経済産業省の「地域資源活用事業計画」第1号に認定され、11日から「海桜鮪(かいおうまぐろ)」の名称で販売する。

 商品開発に成功したのは、同町宇久井のヤマサ脇口水産。脇口光太郎社長(40)が8年かけて完成させた。

 製法はマグロの骨や皮などを除いて身だけにして、解凍後に肉汁などが出ない特殊な処理をした後、氷点下30度で冷凍する。その後、出荷に備えて氷点下55度で再冷凍して保存する。クロマグロでの開発もめどがたっているという。

 脇口社長によると、マグロは冷凍すると、水分が膨張して細胞が破壊され、解凍後に血などとともにうま味成分が流れ出してしまう。それを防ぐ解凍方法は、塩を入れた約40度の温水につけてから布に包んで冷蔵庫に約20分入れる必要がある。手間がかかる上、慣れないと水っぽくなったり、ぱさついたりと失敗することが多い。

 海桜鮪は真空パックのまま約10分間、水につければ解凍できる。真空パック詰め(140グラム)で、赤身2本入り(4500円)から、湯浅しょうゆ付きの大トロ、中トロ、赤身計3本入り(1万2000円)までの8種類。家庭の冷凍庫での賞味期限は1カ月。販売は当面、同社と勝浦漁協で行い、全国発送も受け付ける。通販や都市部のデパートなどにも広げていく計画。

 同社は2005年、ビンチョウマグロとクロカワカジキの生ハム作りに成功し、昨年からカジキで作ったものを「海の生ハム」として販売している。脇口社長は「勝浦のマグロを全国に知ってもらいたくて作った。軌道に乗れば町の水産振興にもつながる」と話している。

マグロ保護対策は不十分 「回復望めない」と専門委

2007/11/10 中国新聞ニュース

 乱獲で極端に数が減った大西洋東部のクロマグロの回復を目指し、国際的な資源管理機関「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」の加盟国が昨年合意した漁獲枠削減などの対策について、ICCATの専門委員会が「資源の回復が実現できる可能性は低い」と、不十分さを指摘する報告書をまとめていたことが十日、分かった。

 報告書は、禁漁期間の延長や漁獲枠の大幅削減など追加的な対策の実施を勧告。十二日からトルコで始まるICCAT年次総会に提出される。

 総会に向け米国は、この海域のクロマグロを三―五年間禁漁にすることを求める方針を表明。環境保護団体も「違法なクロマグロ漁が続いている」として禁漁を求めており、最大の消費国で、主要漁業国の一つでもある日本への風当たりも強まっている。

 ICCATの研究・統計に関する専門委は、最新の漁獲データなどを基に、昨年各国が合意した「三万二千トンの漁獲枠を二〇〇七年は二万九千五百トンに削減、一〇年まで徐々に減らす」などとする資源回復策の効果を評価した。

 その結果、規制が不十分で漁獲枠削減の完全な実行が難しい実情や、小さなマグロは漁獲されても捨てられること、今後も産卵能力がある魚が減る可能性があることなどを考慮すれば「二三年までに資源を回復させるとの目標は達成できないだろう」と結論づけた。

 報告書は、禁漁期間を延長し、漁獲枠を一万五千トン程度まで削減するなどの追加対策を取れば、将来は年間四万五千トンまで増やせる可能性があるが「それには十年以上の時間がかかるだろう」とした。

クロマグロの漁獲割当量違反トップ国は伊、仏、日、スペイン

2007年11月01日 AFP/発信地:マルセイユ/フランス

【11月1日 AFP】イタリア、フランス、日本、スペインの各国は、クロマグロ(本マグロ)の漁獲量の国際割当に大幅に違反しているとの調査結果が、10月30日に発表された。

 クロマグロ漁については、大西洋まぐろ類保存国際委員会(International Commission for the Conservation of Atlantic Tunas、ICCAT)が、絶滅防止のため各国に年間漁獲量を割り当てている。

 マグロ養殖コンサルタントのRoberto Mielgo Bregazzi氏が公式データと業界関係者からの情報をまとめた708ページの報告書によると、2006年の割当量違反上位国はイタリア(違反量7500トン)、フランス(同3770トン)、日本(同3550トン)だった。違反第1位のイタリアは「地中海のクロマグロの略奪者」と表現されている。

 2007年の違反上位国は、イタリア、スペイン、フランスの順になっている。

 欧州委員会(European Commission)は今年9月、2007年度分の漁獲量に達したとして、年内の東大西洋と地中海でのクロマグロ漁を禁止している。(c)AFP

神戸市中央卸売市場、7―9月の水産物取引額10%減

2007年10月31日NIKKEI NeT

 神戸市中央卸売市場のまとめで、7―9月の水産物の取引額が180億3000万円と前年同期比10.3%減少したことが分かった。減少は2四半期連続で4―6月(1.6%減)に比べ減少幅が拡大した。欧州など水産物輸出国が資源管理のため輸出を抑制したことや中国の輸入拡大の影響が出た。

 冷凍マグロや冷凍イカなど輸入物が中心の冷凍部門が10.9%減少した。マグロは欧州連合(EU)が地中海産マグロの資源保護を狙って漁獲量や輸出量の規制を段階的に強化している。ロシアはカニ、南米はサケについて資源管理を強めている。

 また「エビやタコなど幅広い魚種で中国の消費量が増え、日本の輸入量が減っている」(大手卸)との指摘も多い。

 冷凍クロマグロ価格が1割強値上がりするなど単価が上昇する品目が目立ったが、数量減の影響が大きく取引額は減少した。アジやサバなど近海で取れる魚の入荷も低調で、国産中心の生鮮部門の取引額も6.5%減少した。

なぜ? 失跡するマグロ漁の外国人船員

2007/10/26 Iza
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 宮城県塩釜市など近海マグロ漁船の寄港地で、上陸した外国人船員が相次ぎ姿を消している。失跡した船員は日本国内で不法就労しているとみられ、その人数は過去5年間で100人を超す。国は「想定外の事態」として管理の徹底を打ち出したが、地元の漁業関係者にとっては「よくあること」らしい。漁港を回ると、日本の漁業の現実が見えてきた。(山口圭介、荒船清太)

 「塩釜港に寄港した漁船のインドネシア人2人が所在不明になった」。今月17日、漁船を受け入れた地元の会社から仙台入国管理局に通報が入った。

 2人と同じ漁船に乗船していたジャワ島出身のハルヤントさん(27)はいう。

 「16日の午前11時ごろに水揚げが終わって休みになった。お風呂に行ってくると言い残して1人が消えた。一緒に買い物に行ったもう1人は、財布を忘れたと言ってコンビニを出たまま戻ってこなかった」。

 外国人船員の乗船を認める「マルシップ方式」が日本の近海マグロ漁船に適用された平成15年以降、国内の寄港地からはこれまでに114人に上る外国人の失跡者が出ている。ほとんどがインドネシア人だ。

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 何が彼らを脱船に走らせるのか。

 「全国近海かつお・まぐろ漁業協会」(東京)は、船内での暴力、月平均4万円とされる低賃金、手引きをする人物の存在−をその原因に挙げる。

 塩釜港にいた別の近海マグロ漁船の船員、スダジさん(23)は「(日本の法律が適用される)実習の時は7万円あった月給が、4万円に減った」。漁業関係の男性(56)が続ける。「(外国人船員が)買い物に行くときは日本人が同行しろだの、夜は早く帰ってこいだの、息が詰まって逃亡を考えるんは当然じゃろ」。

 そんな彼らに、元船員らが脱船を手引きするというのだ。複数の漁港で不法就労をあっせんする現場が目撃されている。

 協会は「その背後には暴力団や仲介組織が介在している可能性が高い」と指摘、失跡者の就労先は全国にまたがるという。

 全国で最も多い42人が失跡した塩釜港の休憩所には日本語とインドネシア語で張り紙があった。

 《儲かる仕事があるなどと、誘いの話があると思いますが、(中略)誘いにのって日本で働けば、日本の法律に違反し、処罰されます》

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 平成15年にわずか1人だった失跡者はその後急増し、今年はすでに47人に達している。

 国土交通省は漁船の所有者に対し、船員管理の徹底や失跡発覚時の速やかな通報を要請、「失跡が続けばマルシップ方式の廃止を検討する」としている。

 協会の八塚明彦業務部長は「廃止されれば多くの漁船が操業できなくなる」と危機感を募らせる。協会によると、近海マグロ漁船に乗船する外国人は約800人に上る一方、日本人だけで操業する漁船は全体の3分の1にも満たないという。すでに外国人なしでは立ち行かないのが実情だ。

 日本人の船員不足に悩む水産業界が、海外からの安価な労働力の確保を狙ったマルシップ方式。生き残りの切り札と期待されたが、相次ぐ失跡で自らの首を絞める事態に直面している。

 再発防止策として、協会は18日、国に対し、外国人船員の給与改善▽寄港地での監視強化▽現地の船員派遣会社の選別−などの緊急対策を提出した。

 ハルヤントさんを乗せた漁船が同日午後、塩釜港を出港した。1カ月ほどで漁を終えると、また国内のどこかの寄港地に戻ってくる。

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 見直しも検討され始めたマルシップ方式は、日本国籍の船で政府が原則的に受け入れていない外国人単純労働者が働くことを認めている。日本の船主が船を外国の会社に貸して、その会社が外国人船員を雇って船に乗せ、日本の船主が船員ごとその船を借り返す仕組みだ。

 全国近海かつお・まぐろ漁業協会所属の近海マグロ漁船約370隻のうち、同方式の船は約180隻。他に約80隻が平成4年に導入された外国人研修・技能実習制度を利用して外国人船員を乗船させており、同方式は研修・実習制度と並んで、安価で豊富な外国人労働力の確保を実質的に支えているといえる。

EU、クロマグロ漁獲で仏伊など7カ国に法的手続き開始

2007/09/27 NIKKEI NeT

 【ブリュッセル=下田敏】地中海や東大西洋でのクロマグロの漁獲を巡って、欧州連合(EU)の欧州委員会は26日、仏伊などの加盟7カ国に対する法的手続きを開始した。欧州委への漁獲量の報告を義務付けたEU法令に違反した疑いがある。EUは乱獲や密漁に直面するクロマグロの資源管理を厳格化しており、法的措置を通じて加盟国に漁獲規制の順守を迫る方針だ。

 欧州委は同日、地中海沿岸の7カ国にEU法令違反を通告。とくに仏伊についてはクロマグロの漁獲の監視や管理も怠ったと指摘している。各国は今後1カ月以内に欧州委への回答を求められ、明確な説明がなければ制裁金の支払いを迫られる可能性がある。

 地中海などでのクロマグロ漁獲は大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)が漁獲割当量を設定。EUはこれに沿って今年6月、漁獲量の報告の義務などを盛り込んだ包括的な漁獲規制を決めた。今月19日には年末までのクロマグロの漁獲禁止を加盟国に通告するなど、資源回復に取り組む姿勢を強めている。

地中海産クロマグロ、年末まで漁獲禁止・EU通告

2007/09/20 NIKKEI NeT

 欧州連合(EU)は19日、地中海や東大西洋でのクロマグロの漁獲を今年末まで禁止する措置を加盟国に通告した。今年のEU全体の漁獲量が大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)が定めた漁獲割当量の上限に達したため。EUは禁止措置で過剰な漁獲を防ぐほか、不法操業の監視などを強め、水産資源の回復を目指す。

 世界的なすしや刺し身の需要拡大で、地中海のクロマグロは乱獲や密漁に直面。EUの欧州委員会は捕獲できるサイズを引き上げるなど漁獲規制を強めている。日本で消費されるクロマグロの約70%は地中海産とされる。(ブリュッセル=下田敏)

完全養殖で孫マグロ誕生 近畿大、量産に向け一歩

2007年08月09日 中国新聞ニュース

 近畿大水産研究所(和歌山県白浜町)は9日、水槽やいけすなどの人工環境でクロマグロを卵から親まで育てる完全養殖を重ね、最初の卵から数えて第3世代となる“孫マグロ”を誕生させるのに成功したと発表した。

 高級魚として人気が高く、乱獲が問題になっているクロマグロの量産に一歩近づく成果。熊井英水所長は「国際資源であるマグロが増えるきっかけになれば」としている。

 7月中旬に誕生した稚魚は、約2万匹が体長約5センチまで成長。マダイやイシダイの稚魚を入れてマグロ同士の共食いを減らすなど養殖技術の向上がかぎになった。今月中旬に水槽から海中のいけすに戻され、成魚まで育てられる。

 同研究所は1970年から養殖の研究を始め、2002年に世界初の完全養殖に成功。成長した親マグロは一部が市場に出荷されている。

針一閃!20キロのマグロが“睡眠” 大分の会社が成功

2007/06/22 The Sankei Shimbun WEB-site

 大分市の活魚流通コンサルタント会社「おさかな企画」は、約20キロのクロマグロを針でまひさせ「眠らせる」ことに成功した。食卓に上るのは解凍されたマグロが多いが、この技術で新鮮な刺し身も気軽に味わえそうだ。良好な状態で運べるかどうかを実験するため、23日に三重県の養殖場から東京に向け輸送車が出発する。

 漁獲後のマグロは暴れて体温が急上昇し、熱で身が酸化するため、氷などで急速冷凍されるのが通常。しかし船上で太さ5ミリ、長さ18センチのステンレス製針を頭部に刺してまひさせ、水槽で海水を口から送り込みえら呼吸をさせると、約3時間で体温が海水温程度まで下がり、最長で約50時間生きたという。

 針まひは、同企画の卜部俊郎代表が約10年前に開発した技術。

 三重県南伊勢町でクロマグロの養殖を手掛ける清洋水産から5月下旬に「魚に高い付加価値をつけたい」と申し入れがあり、挑戦を開始。当初は数十匹で失敗したが今は「成功率100パーセント」という。将来は約50キロのマグロにも挑戦する。

 7月には東京ビッグサイトで開かれる「シーフードショー」で眠った状態のマグロを展示、刺し身も振る舞う。卜部代表は「これまでは死後硬直が避けられなかったが、針処理はこれがない。生きた状態で輸送、血抜きをしたマグロは未知の味だ」と話している。

漁獲量制限の順守確認へ インド洋マグロ会議

2007年05月08日 中国新聞ニュース

 水産庁は8日、インド洋水域でマグロの資源量を管理する「インド洋まぐろ類委員会」(IOTC)の年次会合が13日から18日までの6日間、モーリシャスで開かれると発表した。

 IOTCは、インド洋周辺でマグロ漁をする日本やインド、タイなど25の国・地域が加盟。この水域では、刺し身にされるメバチマグロの資源量が特に悪化している。今回の会合では、メバチマグロやキハダマグロの漁獲量制限を各国が守っているかどうかなどを確認する。

 ただ、漁獲量の制限は、一部加盟国の反対によって具体的な数値を設けておらず「近年と同水準のレベルにとどめる」とされている。IOTCでは具体的な総漁獲量の設定が中期的な課題だが、賛成国と反対国との溝が埋まらず今回は議論されない見通し。

密漁対策の新条約策定へ マグロなど保護狙いFAO

2007/03/18 中国新聞ニュース

 マグロなど公海の貴重な水産資源を減らす元凶になっている密漁に歯止めをかけるため、国連食糧農業機関(FAO)は18日までに、漁船が魚を水揚げする前の臨検や船の経歴チェックなどの摘発強化策を寄港国に義務付ける、新たな国際条約をつくることを決めた。深刻化する違法漁業対策の決め手になると期待される。

 FAOは今年中に各国の専門家による会議を組織して条約の文案の検討に着手。加盟国政府の討議を経て、2009年春の採択を目指すことにしている。日本も水産物の輸入大国として、さまざまな対応を求められることになりそうだ。

 密漁による水産資源の減少は、マグロのほかフカヒレの材料になるサメ、南極周辺の深海にすむメロ(銀ムツ)などで深刻で、資源管理機関による漁獲規制が厳しくなっている。一方で規制を無視したり、漁獲量を報告しなかったりする「違法、無規制、無報告(IUU)漁業」の横行も問題化している。

日本のクロマグロ漁獲枠23%削減 大西洋保存委が決定

2007/01/31 中国新聞ニュース

 高級マグロなどの資源管理機関「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」は三十一日、東大西洋のクロマグロの二○○七−一○年国別漁獲枠を決め、三日間の日程を終え閉幕した。日本の一○年の枠は約二千百七十五トンで○六年に比べ約23%の削減となった。昨年十一月の年次会合で決まった各国全体の漁獲枠の削減幅(約20%)を上回っており、国内の遠洋漁業は船団の規模縮小など厳しい対応を迫られそうだ。

 日本の漁獲枠は○七年が約二千五百十六トンで、○八年約二千四百三十一トン、○九年約二千三百四十五トンと段階的に減少。漁獲量は各国全体の一割弱となっている。

 新たな加盟国に枠を配分するため、日本のほか欧州連合(EU)やモロッコなど現在、漁獲枠を持つ加盟国が多めの削減を受け入れた。

 会合では一○年までに漁獲枠が削減されることについてトルコ、リビアが投票で反対を表明。今後、異議申し立てをする可能性があり、各国は両国に対して漁獲枠を守るよう働き掛ける。

 クロマグロは高級刺し身の食材。若い魚を捕っていけすで太らせる「蓄養」を中心に、日本は地中海を含む東大西洋から、輸入全体の八割に当たる約三万トンを輸入している。脂の乗りがよく人気が高かった地中海産の輸入は減るとみられるが、メキシコなど他地域からの輸入は増えそうだ。

 クロマグロは資源の減少が深刻化しているが、一部の途上国が漁獲枠の拡大を主張し、昨年の年次会合では○七年以降の国別の漁獲枠は持ち越しとなっていた。中間会合には、日本やEU、米国など十四カ国と二地域が参加した。

行動方針採択し閉幕 マグロ管理機関合同会議

2007年01月26日 中国新聞ニュース

 世界の5つのマグロ資源管理機関が集まり神戸市で開かれていた合同会議は26日午後、違法操業漁船の廃絶などに向けた各管理機関の連携強化策を盛り込んだ行動方針を採択、閉幕した。

 5機関が共同歩調を取るための行動方針は初。減少が著しいマグロ資源の保全に向けた国際協力が一歩を踏み出した。

 行動方針は前文で「さらなるマグロ資源の減少を防ぎ、資源を回復させることが緊急に必要だ」と宣言。違法漁船と正規登録漁船のリストや漁獲データの共有、罰則の強化など、各管理機関が優先的に取り組むべき14の課題を明記した。

 方針は、衛星利用測位システム(GPS)を使った漁船監視や監視員の充実などを通じて違法漁業対策を強化することの重要性を強調。海亀や海鳥、サメの混獲を減らす努力や、カツオ漁の際に混獲される若いメバチマグロやキハダマグロの数を減らす技術開発の必要性にも言及した。

このままではマグロ失う WWFが警告

2007/01/22 The Sankei Shimbun WEB-site

 国際的なマグロ資源管理機関の合同会議の開催に際し、世界自然保護基金(WWF)は22日、「マグロ資源は減少しており、適正に管理しなければ失われてしまう」と警告する声明を発表した。

 声明は、大西洋のクロマグロが過剰に捕られたり、インド洋のミナミマグロの産卵能力のある親魚の数が約90%減ったりしたとして「マグロは絶滅の危機が高まっている」と警告。「違法で規制されていないマグロ漁が横行している」と指摘した上で「多くの国は資源の保護や管理に失敗し、違法操業を見逃している」と批判した。

 また、マグロ漁に伴ってサメや海亀、海鳥などが混獲される問題も挙げ、「合同会議はすべての関係国が、マグロやほかの海の生物を保護するための方策を取り入れる機会になる」とした。

進む市場のグローバル化 マグロ合同会議で報告

2007年01月22日 中国新聞ニュース

 世界の5つのマグロ資源管理機関が集まり神戸市で開かれている合同会議は22日午後、世界のマグロ市場の現状を討議。刺し身マグロへの需要が欧米などで増加、缶詰も、欧米での需要増を受けて、生産工場が発展途上国に拡大するなど、市場のグローバル化が進んでいることが報告された。

 刺し身市場について、日本のはえ縄漁業団体などでつくる「責任あるまぐろ漁業推進機構」(東京)が、1995年に日本で消費された刺し身マグロは71万トンだったが、2002年には57万トンに減少したと説明。「日本は人口減が確実な上、家庭内でのマグロ消費も減少の一途をたどっている」と日本の市場は今後も縮小が続くとの見方を示した。

 一方、年間3万−5万トンの刺し身消費があるとみられる米国をはじめ、EUや韓国、台湾、中国などでは刺し身需要が増大している。

原産地証明義務付けを 漁獲抑制が優先課題

2007/01/21 東京新聞

 マグロの資源保護に向け22日から26日まで、神戸市で開かれる合同会議で採択される行動方針の原案が20日、明らかになった。過剰漁獲を防ぎマグロ漁業を将来も続けるため、原産地証明をすべてのマグロに義務付け、違法操業漁船のリストを各資源管理機関が共有化すべきだと指摘。漁獲能力の抑制や管理機関の役割の検証などを優先課題としている。

 会議に参加する5つのマグロの資源管理機関が、統一的な方針を打ち出すのは初めて。乱獲による資源減少が問題となっているマグロ保護に向けた取り組みが本格的に始まる。

 各機関は原産地証明に関する「統計証明書制度」により、マグロの国際取引では漁船名や漁獲海域などの明示を求めている。割り当てを上回る違法漁獲がないかチェックし、乱獲などの抑制につなげる目的がある。(共同)

国際5機関 あすから 漁場ルール統一へ初会合

2007/01/21 東京新聞

 マグロの資源管理をしている五つの国際管理機関による初めての合同会合が、二十二日から二十六日まで神戸市の神戸国際会議場で開かれる。テーマは各機関の協力を通じた資源管理の強化で、日本政府が呼び掛けて実現した。昨年、ミナミマグロの漁獲枠を半減されるなど日本にとって「逆風」といえる状況が続く中、世界一のマグロ消費国として責任ある姿勢を示す会合になる。 (経済部・荒間一弘)

 世界のマグロの漁獲量は二〇〇四年に二百六万トンで、そのうち四分の一を日本が消費している。国際社会の中では「日本が高い値段でマグロを買うから、違法操業がなくならない」との批判もある。そこで五つの機関すべてに参加している日本が、グローバルな管理のため積極的に音頭を取ることにした。

 (1)管理機関に加盟していない違法操業船の増加(2)非加盟国に船籍を移し操業を行う「便宜置籍船」(3)原産地を偽るための第三国を経由した輸出−。これが現在マグロ漁で問題となっている主なテーマだ。管理機関が違法船をいったん閉め出しても、別の海域で操業は再開され、それが繰り返されるという「いたちごっこ」が続いており、マグロ資源の減少に拍車をかけている。

 今回の会合ではこうしたグローバル化しているマグロの問題に対処するため、各機関に参加している七十七カ国・地域や非政府組織(NGO)などの二百人以上が一堂に会する予定だ。

 会合では(1)正規船基準の共通化(2)違法漁船リストの共有化(3)原産地、漁獲証明制度の調整−などを話し合い、各機関が同じルールで活動することで「抜け穴」をなくすことを目指す。

 二十六日の最終日には「行動方針」を採択する予定。個別の事情を持つ機関・国の足並みがそろうかどうかが焦点となる。ただ条約に基づいて設置されている機関ごとの決定と違って、この行動方針には拘束力はない。

 今回の会合にオブザーバーで参加する自然保護NGO「WWFジャパン」の海洋担当・伊沢あらた氏は「数年前まで腰が重かった日本が、資源保全のリーダーシップを取るようになったのは素晴らしいこと」と評価する。さらに「科学的評価に基づいた漁獲量の設定と、それを守る具体的仕組みの導入が示されれば」と期待している。

■努力目標でも有意義 田中栄次(東京海洋大助教授)

 マグロの資源量は年々減少しており、特にクロマグロとミナミマグロが厳しい。日本は世界で捕れるマグロの四分の一を、各国から高い値段で買い取って食べている。それが違法操業の原因にもなっており、責任は非常に大きい。今回、日本が主導してマグロ資源の持続的利用のための合同会合を開くことは当然ともいえる。

 資源管理が必要だということについて反対する機関や国はない。ただそれぞれの国の事情があり、「総論賛成、各論反対」で具体的方法や期限まで踏み込むことは難しいかもしれない。それでも「協力して違法操業に対処する」「輸出入の取り締まりを強化する」といった行動方針ならば合意できるだろう。

 この行動方針は法的に拘束力があるわけではない。しかし、努力目標でもいったん定められれば良識のある機関・国としては無視はできない。意義は大いにあると思う。

 日本も「こういう方針ができたのだから実行しよう」と各機関で主張していくことができる。また、非加盟国や違法操業船・業者に対しても「現在のような操業をいつまでも続けることはできない」という無言の圧力をかけることができる。

 こうした会合は一回開催しただけでは効果はない。二回、三回と続けていくことで各機関は「前回よりこれだけ前進した」と報告する義務が生じる。それによってグローバルな資源管理に向けて、外堀が徐々に埋まっていくことになる。

マグロ乱獲防止へ国際連携、22日から5機関会合

2007/01/20 Nikkei Net

 マグロ資源を管理する5つの国際機関が、初の合同会合を22日から神戸で開く。世界的に需要が増えており、高級なクロマグロなどを中心に資源が悪化。乱獲の防止など資源管理の徹底が急務となる一方で、これまで管理機関同士の連携がなかった。合同会合では違法漁船の情報共有などを進めることや、漁獲能力抑制の重要性について確認する。

 マグロの国際管理機関は海域ごとに資源管理をしている4つの機関とミナミマグロのみを管理対象にしている機関の合計5機関。太平洋の資源を管理する機関が2004年に発足し、世界のすべての海域で資源管理の網がかかるようになった。(

【マグロ戦争 限りある天然資源】はえ縄VS巻き網

2007/01/20 The Sankei Shimbun WEB-site

 江戸時代に千葉・房総半島で始まったとされる「はえ縄漁」は、海中の深部を回遊するクロマグロやメバチマフロなどの大型魚を狙う日本伝統の漁法だ。取った魚の身が崩れにくいため刺し身用のマグロの捕獲に適している。

 これに対し、「巻き網漁」は海中の浅いところを回遊する比較的小さなキハダマグロやカツオを狙う。こちらは主に缶詰用として出荷される。

 漁獲規制をめぐる国際会議では、この2つの漁法がしばしば対立する。

 エサにマグロが食らいつくのを待つはえ縄漁。網で一気にすくい上げる一網打尽の巻き網漁。はえ縄が1日1トンも取れないのに対し、巻き網の漁獲量は多いときには1日200トンにも上る。

 狙うマグロの種類、大きさ、用途が違う2つの漁法。はえ縄側が「巻き網は親になる前の魚を取るので、資源は先細りになる」と批判すれば、巻き網側は「はえ縄は親の魚を取るので、(ターゲットの)子供が生まれない」といった感じで、議論はかみ合わない。

 「刺し身」対「缶詰」の争いは熾烈(しれつ)さを増している。

 「刺し身で使われるクロマグロやメバチマグロも、魚体が小さく若いうちは浅いところを泳ぐ。巻き網漁は集魚装置(FADs)で魚を集めて一気に取るので、クロマグロなども取れてしまう。マグロは成長が早いので大きくしてから取った方が得」

 大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)の元事務局次長、三宅眞氏は、はえ縄側が巻き網漁の規制強化を求める理由をこう説明する。

 巻き網側はそもそも若い魚は自然減少率が高いという科学的データを基に、「若いマグロを大量に取っても資源に与える影響は少ない」と反論。巻き網漁による漁獲量が近年急増していることについても、「刺し身と缶詰で市場規模が違うことが原因」と説明する。

 だが、漁船数を国際的に制限するなどしているはえ縄漁に対し、巻き網漁の漁船は途上国などで急増中だ。世界全体では900隻以上にのぼる。

 資源維持のため、隻数を国として35隻に厳しく制限している日本の巻き網漁従事者からは「外国の船にも何らかの規制が必要だ。彼らは資源のことを真剣に考えていない」(海外まき網漁業協会)との批判が上がっている。

 日本の割当量が年間3万トンある東部太平洋のメバチマグロ。スーパーなどに並ぶ庶民的な価格の刺し身に多く使われる魚種だが、日本は一昨年、1万5000トンほどしか取っていない。資源の悪化に加え、燃料代が高騰し「採算が合わないので操業しない漁業者が増えた」(水産庁遠洋課)からだ。

 「この2年で燃料費が2倍になり、コストに占める割合も30%を超えた。資源が減っているのは確実で、日本のはえ縄漁はほとんど採算に合わなくなっている」。日本かつお・まぐろ漁業協同組合の石川賢廣組合長によると、同組合に加盟していた漁業者の船は「ここ2、3年で数十隻は廃業した」という。

 また、廃業した日本の漁業者の漁業権を外国資本が購入し、名義人だけ日本人にして日本船として操業するケースも増えている。「日本の漁業枠を利用するのが狙いだが、そういう外国資本とはコストで対抗できない」(石川組合長)

 世界のマグロ消費量は、ここ20年で一気に倍増した。健康食ブームに乗り、刺し身市場も欧米や中国にまで広がっている。魚価低迷にあえぐはえ縄漁にとっては、「むしろ市場の拡大が魚価が上がる好機」と見る向きもあるが、マグロはあくまで限りある天然資源だ。2つの漁法、市場のバランスをどうとるか。資源管理をめぐる国際会議は、そんな一面も持っている。(加田智之)

 神戸で22日から、世界に5つあるマグロの地域漁業管理機関が初めて集結する「マグロ類地域漁業管理機関(RFMOs)合同会合」が開催される。29日からは、昨年11月にクロマグロの総漁獲枠の2割削減が決まったICCATの特別会合が東京で開かれ、国別の漁獲枠が決定する。マグロの漁獲規制をめぐる現状をリポートする。

自然保護NGO、マグロ資源管理で緊急提言

2007年01月19日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 世界最大の自然保護NGO(非政府組織)のWWF(世界自然保護基金)は19日、マグロの資源管理に関する緊急提言を発表した。

 神戸で22日から開かれるマグロの地域漁業管理機関合同会合に向けて、加盟各国に、資源保護への取り組み強化を求める狙いだ。

 提言は、漁業国に対し、科学データに基づく資源管理体制の構築を求めたほか、アカウミガメなどの絶滅の危機がある生物と一般のマグロとの混獲を大幅に減らすよう求めている。

 また、一部の国で過剰漁獲が指摘されていることから、漁獲量の正確な報告も要望した。神戸での合同会合は、「大西洋まぐろ類保存国際委員会」や「みなみまぐろ保存委員会」など、世界5地域の漁業管理機関に加盟する計77か国・地域が参加して初めて開かれる。マグロの資源管理に向けて足並みをそろえられるかどうかが焦点になる。

養殖技術進むクロマグロ 大学と企業が陸上で実験

2007年01月17日 中国新聞ニュース

 高級刺し身などで人気が高く、乱獲で資源減少が深刻なクロマグロの国内での養殖技術開発が進んでいる。22日から神戸市で開催されるマグロの資源管理機関による合同会議では、将来もマグロを食べ続けることができるよう資源保護策が重要な議題。安定生産が難しいとされるマグロ養殖の技術開発は今後、一段と注目されそうだ。

 東海大学海洋学部(静岡市)と民間企業のWHA(静岡県焼津市)は、同大学の敷地でクロマグロの陸上養殖に取り組んでいる。実験を昨年9月に始め、当初250グラムほどだった魚体は3カ月で約2キロに成長した。

 水温が17度から21度で安定し、ほぼ無菌状態の地下海水をくみ上げることで陸上養殖を可能にした。東海大海洋学部の秋山信彦教授は「陸上養殖はえさなどで海域を汚さず、台風など自然災害の影響を受けにくい」と利点を説明する。

クロマグロに温暖化も打撃 水温上がり産卵域縮小

2006年12月25日 中国新聞ニュース

 地球温暖化が今のペースで進むと、今世紀末には太平洋のクロマグロの主要な産卵海域で産卵に適した場所が縮小したり北上したりして、マグロの生息に深刻な影響が出る可能性があるとの研究結果を東京大の木村教授らのグループが25日までにまとめた。

 乱獲のため、ただでさえ厳しいクロマグロの資源状態が、温暖化によってさらに悪化することになりかねないという。

 太平洋のクロマグロは東から西まで広い範囲を回遊しながら成長するが、産卵場所は台湾の東部から奄美大島周辺にかけての狭い海域にほぼ限られている。

 グループは温度を変えたクロマグロの稚魚の飼育実験を実施。水温約26度がマグロの成長に最適の温度で、これより6度近く水温が低くなっても生存率は変わらないが、水温が30度近くになると、ほとんどが死んでしまう可能性が高いことが分かった

太平洋中西部の普及マグロの漁獲量維持

2006/12/17 中国新聞ニュース

 スーパーで刺し身などの食材として販売され、広く普及しているメバチマグロやキハダマグロの資源管理策を議論するため、サモアで開かれていた「中西部太平洋まぐろ類委員会」の年次会合が、十五日夜(日本時間十六日夕)閉会した。会合では漁獲量について昨年合意した水準を維持することを確認、新たな資源管理策の具体化は先送りされた。

 水産庁によると、会合ではメバチが主な対象となるはえ縄漁業で、二〇〇六年から三年間の各国の漁獲量を〇一―〇四年の平均に抑えるとした昨年会合での合意を維持することで一致した。同委員会の管理海域での日本の〇一―〇四年のメバチの平均漁獲量は約三万五千トンで、〇七、〇八年はこの水準が維持される。

 小型マグロまで捕り過ぎてしまい、資源管理上の問題が指摘されているメバチとキハダの巻き網漁については、漁獲量を「近年レベル」に抑制するよう努力することで合意。禁漁期間の設定や漁獲データの明確化など規制強化策の導入は見送られた。

 会合では、日本や韓国が巻き網漁業の操業制限を提案する一方、南太平洋諸国などがはえ縄漁業によるメバチの漁獲量削減を主張。最終的に双方の意見が折り合わなかった。水産庁は「現状の資源状況は良好で今回の結果は妥当」としている。

 漁船監視や乗船検査などの制度化は、今後の段階的な導入を目指し協議を続けることとした。会合には日本、台湾、韓国など三十カ国・地域が参加した。

マグロ価格、急騰ない?枠削減も「日本家庭には影響薄い」

2006/11/28 The Sankei Shimbun

 大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)年次会合で、地中海を含む東大西洋海域のクロマグロ漁獲枠が、来年から平成22年まで4年間で段階的に2割削減されることが決まったが、国内のマグロ流通の関係者は、「若干の価格の上昇はやむを得ないが、パニックを起こすほどの価格急騰はなさそう」と比較的冷静に受け止めている。

 日本一のマグロ取扱量の東京・築地市場で、業者287社が加盟している東京築地魚市場大物業会の布施喬会長(64)は「クロマグロはすし店など業務筋へ行くものがほとんど。一般家庭に影響は薄い」と話す。すでに今春から大衆的なメバチマグロなどで1〜2割卸売価格が上昇しているが、「現状は値上がりで逆に在庫を抱えている。年末の需要期を過ぎれば価格は落ち着く」との見通し。

 マグロを扱う総合商社の双日では、「今回の決定で漁獲が減少するのは、地中海周辺諸国で消費される刺し身用に適さない傷みのあるマグロ。日本向けは変わらないとみている」と話す。

 小売り段階では価格への影響はまだ不透明の様子。全国のイトーヨーカドーでの販売について、セブン&アイ・ホールディングスの広報担当者は、「販売の主流はメバチやキハダ。トロ価格がどの程度上がるか把握できない」としている。

 国内や海外で回転ずしチェーンを展開する「元気寿司」は、「影響を分析する状況にはない。動向に注目したい」と話す。築地場外市場のマグロ中心の回転ずし店「築地 蔵まぐろ」では、「地中海の蓄養マグロは冬場がシーズン。仕入れ値が高くなったらその時点で対策を考えたい」と述べた。

中長期的には輸入量減少 蓄養クロマグロも値上がり

2006/11/27 中国新聞ニュース

 「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」の年次会合で高級トロが取れるクロマグロの漁獲枠削減が合意されたことで、世界最大の消費国である日本への中長期的な輸入量の減少が避けられない見通しとなった。いけすで太らせる「蓄養」用の若いクロマグロも規制されるため、値上がりにつながりそうだ。

 年次会合では、地中海を含む東大西洋クロマグロの総漁獲枠を段階的に削減し、2010年は06年比で約2割減とすることが決まった。

 東大西洋で捕れるクロマグロは、日本への供給量の50%以上を占める。市場関係者は「燃油高騰や海外でのマグロ消費増加に、漁獲規制が加わるため3年先、5年先の供給量が減るのは間違いない」と指摘する。

 マグロ輸入の約15%を扱う双日の林弘二水産担当バイスプレジデントは、当面は輸入量に影響ないとするが「品薄感をあおった便乗値上げが心配だ」と警戒する。

 小売価格について、大手スーパーは「来年の価格は値上げ傾向になるのはやむを得ない」。高級すし店などは高値でも調達するとみられる半面、関係者は「割安だった蓄養マグロを使う回転すし店は1皿当たりの価格を高くするしかない。量販店も前ほど脂身のないものを『中トロ』として売るような動きになるかもしれない」と話す。

 ただ、日本を含む各国政府は、減少傾向のクロマグロの資源保護が必要だと認識している。環境保護団体、WWF・ジャパンの伊沢あらたさんは「消費者は購入を控えることが、資源保護のために唯一できること」と強調した。

漁獲枠は2万9500トン 東大西洋のクロマグロ

2006/11/27 中国新聞ニュース

 【ドブロブニク(クロアチア)26日共同=永田正敏】高級トロが取れるクロマグロなどの資源管理機関「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」の年次会合は二十六日の総会で、地中海を含む東大西洋の来年のクロマグロ漁獲量を、現在の三万二千トンから二万九千五百トンに削減することで合意した。枠は年々削減し二○一○年には二万五千五百トンにする。また、西大西洋の枠も減らす。

 大西洋や地中海では、若いクロマグロを捕っていけすで太らせる「蓄養」が一九九○年代から急成長。日本に大量に輸出され、回転ずし店やスーパーなどで売られている。漁獲枠削減で、クロマグロのトロの値上がりにつながりそうだ。

 会合は、乱獲で減少が著しい地中海や東大西洋のクロマグロ保護のため、日米や欧州連合(EU)など加盟四十二カ国・地域が○七年以降の漁獲枠を決めるのが最大の議題だった。

 各国別の漁獲枠は来年初めに会合を開いて決めるが、日本の漁獲枠も○六年の二千八百三十トンより減らされる見通しだ。会合では禁漁期間の拡大や漁獲を認めるサイズの引き上げなどの資源保護措置でも合意した。

 総会で決まった漁獲枠は、これに先立つ主要国の非公式協議の合意より五百トン拡大された。

 現在の総漁獲枠は年三万二千トンだが、ICCATの科学委員会は十月、蓄養に回る漁獲が近年急増、どこの国がどれだけ魚を捕り、どこのいけすに運んだのかなどのデータの提供が不十分なため枠を無視した過剰漁獲の温床になっていると指摘。実際の漁獲量は五万トン近くに上り、当面の持続可能な漁獲量は一万五千トンとしていた。

普及品マグロも規制の動き メバチ25%削減を勧告

2006年11月20日 中国新聞ニュース

 日本が毎年大量に漁獲している中西部太平洋のメバチマグロについて、この海域の資源管理機関、中西部太平洋まぐろ類条約(WCPFC)の科学委員会が、総漁獲量を25%削減するよう勧告していることが20日、分かった。委員会は「現在の漁獲は多すぎ、このままでは資源量の減少が深刻化する」と評価した。

 委員会は、この海域のキハダマグロについても漁獲量の10%削減を勧告。クロマグロやミナミマグロなど高級マグロだけでなく、メバチ、キハダといった価格が安く、日本人が大量に食べている「普及品」のマグロでも捕りすぎが続いていることが明らかになった。WCPFCは12月10日からサモアで開く会合で漁獲枠の削減を検討する。

 メバチマグロは、台湾が漁獲量削減のため、はえ縄漁船の大幅な減船を受け入れたこともあり価格が上昇傾向で、WCPFCの決定次第ではこの傾向がさらに強まりそうだ。

 科学委員会によると、2005年の中西部太平洋のメバチマグロの漁獲量は16万3000トン余りで、統計がある1972年以来、最多を記録。97年以来の過剰な漁獲状態に歯止めがかかっておらず、現状の漁獲量が続けば、15年以降に資源状態が急激に悪化する可能性があるとのコンピューターシミュレーション結果が出た。

 委員会はキハダマグロについても同様の評価結果に達し「資源を維持するためには現状の漁獲量を10%削減することを勧告する」とした。

 水産庁によると、この海域での日本漁船によるメバチマグロの漁獲量は3万トンを超え、世界第1位。近年、刺し身やすしの材料として人気が高まり、消費量が増えている。キハダマグロは刺し身のほか、缶詰材料に使われる。

地中海マグロ扱いません 資源保護で西友が表明

2006年11月09日 中国新聞ニュース

 資源状態が極度に悪化している地中海産のクロマグロを商品として扱わないことを、日本の西友など日欧の業者が明らかにしたと、世界自然保護基金(WWF)が9日、発表した。

 地中海マグロなどの資源管理機関「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」の会合が17日からクロアチアで開かれるのに向けた。

 WWFに対し西友は「商品調達プロセスでは生態系への影響を最小限に抑える必要がある」として、資源状態が改善されない限り地中海クロマグロを扱わないことを明らかにしたという。

 また、英国の有名すしレストランチェーンやスペイン・マドリードのレストランも、メニューから地中海マグロを外すことを決めた。

 ICCAT会合では「資源保護のために漁獲枠を大幅に削減する必要がある」との科学委員会の指摘を受け、日米欧などの加盟国が漁獲枠の削減を協議する。

 WWFの伊沢あらたさんは「ICCATが大幅な漁獲枠削減に合意できなければ、業者は地中海などのマグロ資源保全のために、販売をやめざるを得なくなるはずだ」と話している。

人工海底山脈で「アジ・サバ群れる」豊かな漁場を

2006年11月05日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 水産庁は4日、日本の沖合数十キロ・メートルの海底にブロックで作った「人工海底山脈」を築き、アジやサバが群れる豊かな漁場作りに乗り出す方針を明らかにした。

 水産資源の国際争奪戦が激しくなりつつあることから、日本の沖合での積極的な資源育成に乗り出す。

 人工海底山脈は、セメントと、石炭灰を混ぜたブロックを海底に沈め、高さ40メートル、長さ200メートルほど積み上げて築く。

 水深約200メートルのなだらかな大陸棚の外縁部に設置することによって、海底近くにある窒素やリンなどの栄養塩類を、潮の流れで「山脈」伝いに海面近くへと上昇させる仕組みだ。プランクトンが増えて、アジやサバ、カタクチイワシなどの魚類が海面近くで増殖する効果があるという。

 水産庁は2007〜11年度の5か年の重点施策として日本沖合での水産資源育成を掲げており、人工海底山脈は柱となる。来年度予算の概算要求で、人工海底山脈の設置を含む漁場整備事業の調査費などとして約10億円盛り込んでいる。

 水産庁が1997年に長崎・平戸で実施した沿岸でのブロック設置事業では、「漁獲量が設置前の6倍」(漁港漁場整備部計画課)との結果が出たという。

海の幸40年後には消滅? 米科学誌警告

2006/11/04 The Sankei Shimbun

 【ワシントン=渡辺浩生】約40年後には世界中の多くの海産物が絶滅してしまう−。3日発売の米科学誌、サイエンス最新号がこんな研究報告を掲載した。乱獲と環境破壊で、まぐろやカニなど海の幸が食卓に上らなくなる日が来るという。日本人だけでなく、すしや刺し身がブームの欧米人にも衝撃的な警告だ。

 ダルハウジー大(カナダ)のボリス・ワーム教授が率いるグループが4年間調査。1950年以降の全種の魚類データや、過去1000年の歴史的記録をもとに、海洋生物の多様性の衰えが人の食生活・経済に与える影響を分析した。

 その結果、「2003年時点で全体の29%の海洋生物で捕獲量の90%が減少した」ことが判明。乱獲と生態系の破壊が主な原因で、現在のペースが続けば48年までにマグロ、カジキなどの海産物からイルカなどのほ乳類まで、あらゆる種が衰退すると予測した。

 ワーム氏は「われわれの予測を超えた結果にショックを受けた」と語った。種の急減による影響で海が生物を生み出す力のほか、環境汚染や天候変化のショックからの回復力も失われるという。

 「50年までに生息する魚類はほとんどいなくなるということだ」とサイエンス誌のアンドリュー・サグデン編集長もロイター通信に指摘。ただし、「行動するに遅すぎることはない」とも付け加えた。

サンマ豊漁、2年連続で漁獲量制限 資源保護へ水産庁

2006/11/01 The Sankei Shimbun

 水産庁は1日、今年のサンマが豊漁のため、国が決めた漁獲可能量21万3000トンを超える恐れがあると発表した。資源保護のため、漁業団体を通じ漁獲量を制限するよう漁業者に指導する。指導は2年連続。

 同庁によると、国から漁業許可を受けた漁船による10月30日時点の漁獲量は17万6253トンで、可能量の8割を超える。このままのペースで漁獲すれば、今月半ばには可能量を超える見通しだという。

 今年のサンマは捕りすぎで値崩れ気味。価格維持のため、これまでも漁業団体が漁獲量を自主規制してきたが、今回の国の指導を受けて一段の漁獲制限に乗り出す。

 サンマの漁獲は、国以外にも北海道が3万2000トン、岩手県5000トン、それぞれ独自に管理枠を設けて漁船に漁業許可しているが、「現時点ではまだ余裕があるようだ」(水産庁)という。

マグロ全体の価格高に拍車 食卓から遠ざかる恐れも

2006/10/16 中国新聞ニュース

 国際的な資源管理機関「みなみまぐろ保存委員会」で、日本のミナミマグロの漁獲枠が2007年以降5年間、半減されることが16日までに決まったことで、じわじわ進んでいる値上がり傾向に拍車がかかる懸念が出ている。中国など海外の需要増や原油高に加え、新たな不安要素が加わった形で、マグロが食卓から遠ざかる恐れもある。

 マグロの高値傾向は、既に始まっている。漁業情報サービスセンターによれば、2006年の冷凍マグロの月別平均卸売価格は、ほぼすべての月で05年を上回っている。これを受け、小売価格も「昨年と比べて2割程度値上がりしている」(大手スーパー)という。

 ミナミマグロは高級食材として料亭などに出荷されるケースが多く、国内のマグロ供給量に占める割合は約3%と少ない。このため、農水省は一定の値上がりは避けられないとしながら、マグロ全体の価格に与える「影響は限定的」とみる。

 しかし、市場関係者は、不足する国産分を補うため輸入品を求める動きが広がれば、輸入物全体の価格へ波及しかねないと指摘。「現在でも例年より高い輸入価格が一層、上がる」と懸念する声も出ている。

 中でもミナミマグロと同じ価格帯で高級食材として使われるクロマグロは値上がりしそうだ。国内供給量は約3倍あるが、資源状況は同様に厳しい。国際資源管理機関の11月の年次会合で漁獲枠削減が協議される見通しで、供給量増加は期待できないのが実情だ。

ミナミマグロ割り当て半減 漁業者、悲痛な声

2006/10/16 中国新聞ニュース

 二○○七年から日本のミナミマグロ(インドマグロ)漁獲割り当て量が○六年のほぼ半分に当たる三千トンに減らされることが十六日発表され、国内の漁業者らからは「これでは廃業しろと言っているようなものだ」と悲痛な声が上がった。

 約三十隻のミナミマグロ漁船が所属する静岡県焼津市の焼津漁業協同組合。片山啓太郎常任理事(66)は「原油高にも追い打ちをかけられ死活問題。日本の漁業が駄目になってしまう。国には保護を求めたい」。

 三隻が操業する焼津市内の会社の担当者は「水産庁は何もせず、違反操業に目を光らせるだけ。漁業者を追い込むだけの状況が十年以上も続いている」と声を荒らげた。

 有数の遠洋マグロ漁船基地、宮城県気仙沼市では○五年以降、水産会社の経営破たんが相次いだ。漁獲不振などに加え、燃料費の高騰が経営を直撃したからだ。

 宮城県北部鰹鮪漁業組合の勝倉敏夫組合長(65)は「えらいことになった。なぜ日本だけが大幅に減らされるのか」とため息。「資源管理の面でいえば、自国で食べずに日本に輸出だけする国の枠をもっと減らすべきだ」と憤りを隠せない。

 ある水産会社の社員は「本当に決まったのですか」と絶句。宮城県漁業振興課は「高級魚のミナミマグロを追っている船は多い。ただでさえ苦しい宮城県のマグロ漁業に多大な影響を与える可能性があり、今後の動きを注視したい」と話した。

地上産マグロ、水揚げ間近? 地下塩水使い養殖実験成功

2006/10/15 The Sankei Shimbun

 すしや刺し身に欠かせないクロマグロ(本マグロ)を地上の水槽で養殖する実験に東海大と静岡県の民間企業が取り組み、地下塩水を使うことで、ネックとなっている水温管理のコストを抑えることに成功した。より安いエサで育てることが当面の課題だが、富裕層が台頭する中国や欧米での消費の高まりに加え、乱獲による個体数の減少で天然のクロマグロの価格は高騰の兆しをみせており、実用化すれば安価で安定的なマグロの供給が可能になると期待されている。(今泉有美子)

 実験を行っているのは東海大学海洋学部の秋山信彦教授(水産増殖学)とシステム開発会社「WHA」(静岡県焼津市)。9月上旬から、海洋学部のある静岡市清水区で地下約50メートルから地下塩水をくみ上げ、直径5メートルの円形水槽4つでクロマグロの幼魚約100匹を飼育している。

 従来の海での養殖では、エサなどが海底にたまり環境を悪化させるといった問題があった。一方、地上での養殖は、クロマグロの生育に最適といわれる水温21℃前後を保つのに膨大な燃料費がかかるのがネックとなっていたが、秋山教授は水温が一年を通じてほぼ一定の地下塩水に着目。「燃料費の問題をクリアできるだけでなく、地中で濾過(ろか)される地下塩水は無菌状態のため、抗生剤など高額な薬代も必要なくなった」(秋山教授)という。排水は濾過して海に戻すため、環境上の問題もほとんどないという。

 クロマグロは1年間で約60センチ成長し、1年半〜2年でマグロとしてのうまみが出る1メートル(30〜40キロ)ほどに育つが、運動量が多いため1キロ増えるのに22キロのエサが必要。マグロがエサとしているイワシなどに代わり、大豆など安価なエサで育てる技術が地上養殖の課題として残されている。

 クロマグロは、中国をはじめとする海外での消費量増加に加え、原油高にともなう燃料費の高騰で「今年に入って取引価格が1、2割増した」(東京・築地の大手卸業者)。さらに魚の大きさを問わずに捕獲する巻き網漁による乱獲で、脂の乗った大型クロマグロの取引量が減少。この卸業者は「中国の富裕層の数は日本人と同じぐらいになったと聞く。このままでは、良質のクロマグロは中国に全部競り落とされてしまうかもしれない」と不安を口にする。

 「実用化まで少なくとも3年かかる」という秋山教授だが、「陸上での養殖が成功すれば、天候や原油高に左右されず、良質のクロマグロが安定して供給できる。価格の急激な高騰もなくなる」と話す。今後は、より大きな水槽での養殖実験と並行して、地下塩水を取水できる地域の企業や自治体と連携しながら実用化の道を探る。すでに企業からの引き合いもあるという。

漁獲量の大幅削減を勧告 資源危機のクロマグロ

2006/10/14 中国新聞ニュース

 最高級トロの材料として日本で大量に消費される東部大西洋と地中海のクロマグロの資源量が急激に減少、資源維持のためには現在の漁獲枠を半分以下にするべきだとの資源管理機関「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」の科学委員会の報告書案が十四日、明らかになった。十一月にクロアチアで開くICCATの特別会合に提出される。

 科学委は資源回復のため禁漁期を拡大することなども勧告しており、今後、漁獲枠の大幅削減は避けられない情勢。国内のトロの価格にも影響が出る可能性もある。

 報告書案によると、東部大西洋と地中海のクロマグロの産卵能力のある親魚の数は、漁業が本格化する前のわずか6%にまで減少するなど資源状態の悪化が深刻。

 年間三万二千トンという現在の漁獲レベルが続けば「資源が崩壊する可能性が高い」とし「漁獲量を今後数年間一万五千トンにまで減らす必要がある」と勧告した。

 報告書案は、漁獲枠の早急な削減に加え、漁獲可能な魚のサイズを引き上げ、地中海での禁漁期間を現在の一カ月から三カ月に拡大するという措置が「資源回復のための唯一の措置だ」と厳しい調子で資源保護対策の強化を求めた。

 公式な漁獲量は二〇〇三年が三万二千五百七十九トン、〇四年が三万二千五百六十七トンでほぼ枠を守っている。だが、報告書案は「この規制が守られておらず、実際の漁獲量は五万トンにもなると推定される」と、違法な漁獲が横行していることに言及。「実際の漁獲量は資源維持上適当なレベルの三倍を超える」と指摘した。

 クロマグロは体長三メートル超にもなる最大のマグロで、日本で高級トロとして高価で取引されるため各国が漁獲している。

マグロ養殖王国・クロアチア、「乱獲だ」批判に動揺

2006年07月25日 読売新聞 Yomiuri On-Line

日本向けトロにも影響?

 日本市場向けに急成長した地中海地方のクロマグロ養殖が、世界自然保護基金(WWF)が今月発表した報告で、マグロ資源乱獲を引き起こしている元凶としてやり玉に挙げられた。

 養殖をドル箱にするクロアチアでは、動揺が広がる。 (クロアチア・スプリトで 石黒穣、写真も)

 大手「ドルベニクツナ」の養殖場はクロアチア第2の都市スプリト近くの静かな海にある。島々に囲まれた紺碧(こんぺき)のアドリア海に、直径50メートル程の巨大ないけすが並ぶさまは壮観だ。

 「外海を曳航(えいこう)中のいけすがこれから続々と着く。冬の出荷シーズンまで息を抜けないよ」と、現場監督のゴラン・ブルスチロさん(39)は言う。

 最高級のトロが取れるクロマグロ養殖は、1996年にクロアチアで始まり、スペイン、イタリアやトルコに広がった。クロアチア産養殖マグロは地中海産全体の約2割。対日輸出は昨年2500トン(3600万ドル)で、同国の対日輸出総額の3分の2を占めた。

 養殖では、6〜7月に産卵のため群がるリビア沖などで10キロから200キロ以上の成魚を巻き網で生け捕りにし、いけすに移して沿岸部に曳航、数か月から2年かけて太らせる。日本人好みの脂ののった肉質になるよう、餌のイワシ、サバやイカの混合も工夫する。

 ドルベニクツナの経営者ムラデン・ミラコビッチさん(51)は、「マグロは以前、缶詰工場に直行したが、養殖で付加価値が高まった。雇用も増え、漁村の暮らしは一変した」と言う。それだけにWWFの報告には、「養殖のせいで資源が減っているなんてありえない」と語気を強めた。

 報告は、地中海のクロマグロが違法乱獲の結果、絶滅の危機にひんしているとした上、「養殖向けの過剰な需要」を原因に挙げ、養殖事業の大幅縮小を求めた。

 大西洋・地中海を回遊するクロマグロの資源管理は政府間の大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT)が担う。クロマグロの年間漁獲枠は現在3万2000トン。

 民間団体WWFの勧告に法的拘束力はないが、今年のICCAT年次会合(11月にクロアチアで開催)が向こう4年間の漁獲枠を決める際に、一定の影響力を持つのは間違いない。

 現行の漁獲枠自体が、ICCATの科学部会が示した持続可能な漁獲上限を2割余も上回って設定された。WWFは、違法操業の横行で、実際の漁獲はこの漁獲枠よりさらに5割も多いと指摘する。

 WWFのセルジ・トゥデラ氏は〈1〉漁獲削減計画の策定〈2〉漁獲量の報告体制を作り、不正漁獲を監視――を提案した上、「消費国の日本は、由来のあいまいな魚を買わない仕組みを作るべきだ」と注文をつける。

 クロアチア農林水産省のイバン・カタビッチ次官は「WWFの主張は不正確」とするものの、漁獲管理体制強化の必要性は認めている。関係者の間でも、「養殖規模の1割程度の削減は避けられないのでは」との見方があり、日本人にとっては、トロが遠い存在になる気配も漂っている。

特売から消える?…マグロ値上げ 原油高で漁船操業停止

2006/07/03 The Sankei Shimbun
  

≪台湾漁獲制限で供給減≫

 メバチマグロなど刺し身用のマグロの供給量が減少し、価格が上がっている。水産庁遠洋課は台湾のマグロ漁船の減船と、原油高に伴う国内のマグロはえ縄漁船の操業停止が要因と分析。今後も安値となる材料は見つからず「もうスーパーの特売の目玉となることはないだろう」と漁業関係者は話している。

 水産庁のマグロの需給見通しによると、輸入を含めた供給量は前年比11−20%の「減少」。卸売価格は前年に比べて11−20%上昇する「強含み」になると予想。「高値水準」が続いている。

 メバチの一大供給地の台湾は、乱獲の批判もあり「大西洋まぐろ類保存国際委員会」(ICCAT)の指示に従い、今年から大幅な漁獲制限を実施。メバチ漁獲枠は17年に1万4900トン(98隻)から、18年は4600トン(15隻)に制限された。

 一方で、輸入品に押され、日本の遠洋マグロはえ縄漁船は、17年8月現在で491隻。前年に比べ14隻減少した。さらに昨年から燃料のA重油の高騰が追い打ちをかけ、経営に行き詰まり操業停止した漁船は、ここ1年で70−80隻になるという。

 「日本かつお・まぐろ漁業協同組合」の佐藤安男常務理事は「輸入品の増加で生産者価格が下がり、国内の漁業者も、資材費を削ったり、外国人の導入などでコストを半分にまで落とす努力を続けてきたが、もう限界」と話している。

 一方、小売り段階では危機感が急速に高まってきている。スーパーなどでの小売価格は現在のところ、まだ大幅には上がっていないが、今春あたりから納品されるマグロの質が悪くなっているという。

 東京都内の約1000店の鮮魚店が加盟する東京魚商業協同組合の能城孝事務局長は「ここ数カ月、同じ値段でも入ってくる物が悪くなった。築地市場の仲卸業者さんも危機感を持っているようだ」という。

 このため、各小売店では、刺し身を小さめのパックで販売したり、他の魚と一緒に工夫して盛るなどノウハウを駆使して販売するなどの対策をとっている。

 マグロは約3年半の間、マイナス60度で冷凍保存が可能。「これまでにも、品薄の危機感をあおって商社などによるマグロの買い占めが横行、高値続きの末、漁獲量が増えていないのに賞味期限切れ直前に安値となることがあった。関係者は冷静に対処してほしい」と水産庁遠洋課では買い占めによる価格高騰を懸念している。

生活費…東京は世界3位に後退 モスクワ首位

2006/06/27 The Sankei Shimbun
  

 世界で最も生活費が高い都市として3年連続1位だった東京が3位に後退、前年4位のモスクワが首位、同5位のソウルが2位に浮上した。米経営コンサルタント会社マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティングが26日発表した今年の世界主要都市ランキングで分かった。

 ランキングは世界144都市の住宅費や交通費、食費など200以上の項目を調べ、ニューヨークを基準の100として指数化した。

 03年から05年まで1位だった東京は06年は119.1で、不動産価格が上昇したモスクワ(123.9)と、ソウル(121.7)を下回った。前年2位の大阪は108.3で6位。

 また香港が4位となったほか、人民元の対ドル相場上昇の影響で北京が14位(前年19位)、上海が20位(同30位)になった。

 調査都市中、生活費が最も安いのは南米パラグアイの首都アスンシオン(指数43.5)で、モスクワのほぼ3分の1。(共同)

マグロやタラの減少が深刻 過剰な漁獲で

2006/06/03 The Sankei Shimbun

 大西洋のクロマグロなど16種類のマグロ資源のうち5種類で、サメ類は20種中11種で、現在の漁獲量が多すぎる状態にあり、タラなど一部は枯渇状態にあるとする回遊性の魚に関する資源評価報告書案を国連食糧農業機関(FAO)が、3日までにまとめた。

 各国の排他的経済水域をまたいで、広範囲を泳ぎ回る「高度回遊性魚種」と呼ばれる漁業資源約200種に関する初の総合的な資源評価で、FAOは漁獲量削減や国際協力による資源管理の徹底などの対策強化を求めた。

 FAOによると、高度回遊性のサメ類の中でデータがそろっている20種類のうち、ウバザメや日本も漁獲しているオナガザメの仲間など11種で過剰な漁獲が続いている。

 マグロの中で、現在の漁獲量が資源の維持に適切なレベルを超えているとされたのは、データがそろっている16種類のうち、東部大西洋・地中海のクロマグロ、西部大西洋のクロマグロ、ミナミマグロなど5種類。ミナミマグロと西部大西洋のクロマグロは資源状態が非常に悪く「枯渇状態」にあるとされた。

 またFAOは、マグロ類やサメ類以外でも、タイセイヨウサバやメロ(銀ムツ)など66%の魚種で漁獲量が多すぎ、大西洋のタラなどが枯渇状態にあると評価した。

 報告書案でFAOは「すべての国が参入できる公海漁業では、漁獲能力が資源維持に適したレベルを超えやすい」と指摘。漁獲量の削減や高度回遊性魚種の資源管理を行う国際機関の権限強化などの対策を取ることを勧告している。

マグロ不漁、価格は上昇の見通し

2006年05月30日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 水産庁は30日、4〜6月期のマグロの需給見通しを発表した。

 マグロ漁が不漁のため、今年1〜3月期に比べてマグロの供給量(国内生産量と輸入量の合算)は3〜10%減少し、卸売り価格は3〜10%上昇する見通しだ。

 水産庁は「不漁で価格が上昇するのはよくあることで、気候変動の影響が出たとはいえない」としている。

 今年1〜3月期も不漁で、マグロの生産量は3万6045トンと前年同期比14%減、輸入量は5万4897トンで同16%減。マグロ類(冷凍)の卸売り価格は1キロ当たり1051円で、前年同期比3%上昇した。

 国内需要の低迷から、マグロ供給量は1998年の50万7000トンをピークに年々減り続け、2005年には45万8000トンまで落ち込み、価格も低下傾向が続いていた。

妊婦はマグロ週1―2回に 胎児へのメチル水銀影響で

2005/08/12 The Sankei Shimbun

 魚介類に微量に含まれるメチル水銀が胎児に悪影響を与える恐れがあるとして、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の専門部会(部会長・熊谷進東京大教授)は12日、妊婦が食べてもよい量の目安を16種でまとめた。1回約80グラム(刺し身1人前または切り身1切れ)として、マグロは種類により週に1―2回まで、キンメダイは1回までなど。

 厚労省は「乳幼児も含む一般の人では、悪影響が心配される状況ではない。魚介類は一般に健康に有益なのでバランス良く摂取を」としている。

 同省は2003年6月に同様の注意を呼び掛けたが、国際専門家会議が水銀の耐容摂取量を引き下げたため見直し、マグロも対象に加えた。

 週2回(1週間当たり160グラム程度)までとしたのはキダイ、クロムツ、ミナミマグロ(インドマグロ)など7種類。週1回(同80グラム程度)まではキンメダイ、メカジキ、クロマグロ(ホンマグロ)など7種類。イルカ類2種は2週間―2カ月に1回(同40―10グラム程度)までとした。

 食べ過ぎた場合は翌週の量を減らし、2種類以上を食べるときはそれぞれの量を抑えるなどの工夫を求めた。

 一方、キハダマグロ、ビンナガ(ビンチョウマグロ)、メジマグロ、ツナ缶は「通常の摂食で差し支えない」とした。

 自然界のメチル水銀は、魚介類に蓄積され人の体内に取り込まれると、大人には問題ない量でも胎児に悪影響を与えることがある。しかし同省は「胎児への影響は、例えば音への反応が1000分の1秒以下のレベルで遅れるようになるようなもので、将来の社会生活に支障があるような重篤なものではない」としている。

 限度量は、魚介類に含まれる平均メチル水銀量と、内閣府食品安全委員会がリスク評価して示した妊婦の耐容摂取量(1週間に体重1キロ当たり2マイクログラム=マイクロは100万分の1)から定めた。(共同)

 薬事・食品衛生審議会の専門部会がまとめた「妊婦が注意すべき魚介類の種類と摂取量の目安」は次の通り。1回約80グラム食べるとした場合の頻度で、カッコ内は1週間当たりの重量。

 ▽2カ月に1回(10グラム程度)まで バンドウイルカ

 ▽2週間に1回(40グラム程度)まで コビレゴンドウ

 ▽週に1回(80グラム程度)まで キンメダイ、メカジキ、クロマグロ(ホンマグロ)、メバチ(メバチマグロ)、エッチュウバイガイ、ツチクジラ、マッコウクジラ

 ▽週に2回(160グラム程度)まで キダイ、クロムツ、マカジキ、ユメカサゴ、ミナミマグロ(インドマグロ)、ヨシキリザメ(筋肉)、イシイルカ

 ▽通常の摂食で差し支えない キハダマグロ、ビンナガ(ビンチョウマグロ)、メジマグロ、ツナ缶(共同)

 <メチル水銀> 有機水銀の一つ。天然に存在する無機水銀が微生物の働きでメチル水銀に変化し、食物連鎖を通じて魚介類に取り込まれる。食物連鎖の上位にある大型魚や深海魚は、比較的多く含有。体内に大量に入ると、中枢神経に障害などを起こす恐れがある。水俣病の原因物質でもあるが、今回の胎児への影響評価の対象は、水俣病のような重い健康被害につながるレベルの汚染とは違う。(共同)

クロマグロ漁獲量増やすな 国際専門委が勧告

2005/03/07 The Sankei Shimbun

 最高級トロの材料として日本が大量に漁獲、輸入している太平洋のクロマグロの資源量が減り続けていることを理由に、国際的な専門委員会が「現在以上に漁獲量を増やすべきではない」との勧告をまとめていたことが7日分かった。

 メキシコが日本向けに若いマグロを育てて売る「蓄養マグロ」のため太平洋クロマグロの漁獲を大幅に拡大。日本も蓄養のため稚魚の漁獲を増やしているとされるが、正確な漁獲データはほとんどないのが実情だ。今後、漁獲規制や資源管理の強化を求める声が強まれば、日本の食卓にも影響が出そうだ。

 勧告をまとめたのは、資源管理のため日本など各国の専門家でつくる「北太平洋マグロ類暫定科学委員会」(ISC)の作業部会。

 同部会はまず太平洋のクロマグロ資源の現状について「漁業によって死ぬ数は資源を維持できる水準を超えている。特に若い魚の状況は、持続可能な漁業にとって懸念材料だ」と指摘した。

 その上、こうした状況が続けば、1995年以降減っている産卵可能な親魚がさらに少なくなるとして「どんな操業方式であっても、少なくとも漁獲量を増やすべきではない」と勧告した。

 日本の水産庁によると、メキシコの漁獲量は2003年の3200トンから、04年には9000トン近くに急増する見通し。大部分は日本市場向けの蓄養に使われる。

 日本の漁獲量も03年の8600トンが、04年には1万トンに達するとみられる。このためすべての国による総漁獲量も1万6000トンから2万トン以上に増えると推定される。

 ここ数年、メキシコなどから大量の蓄養マグロが日本に輸出され、マグロの価格は低下傾向にある。

 <蓄養マグロ> 若いうちに捕まえ、いけすの中で餌を与えて大きくしたマグロ。卵から成魚に育てる完全養殖が難しいために普及した。市場では養殖マグロと呼ばれることが多い。トロの多いマグロが安く生産できる半面、施設が周辺の海を汚すほか、どれだけの若い魚を漁獲したのか分からないなど、資源保護上の問題が指摘されている。(共同)

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