TOPIC No.3-36 宇宙ごみ(Space debris、スペースデブリ)

01. 2.宇宙ごみ/ ごみ問題は狭い日本だけに留まらず−南極、宇宙まで−
02. 宇宙のごみ(Space debris、スペースデブリ)byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
03. 宇宙ごみ回収の基礎実験に成功
04. 宇宙のごみ――スペースデブリ(space debris) 1999年02月21日版

【主張】衛星衝突 宇宙ゴミの環境対策急げ

2009.02.14 MSN産経新聞

 米国とロシアの通信衛星同士が地上800キロの高度で衝突した。両衛星の重さは約550キロと1トンというから、かなり大きな衛星だ。機体は壊れて600個ほどの破片が宇宙空間に飛散した。

 衛星と衛星がぶつかる事故は、広大な宇宙空間での出来事だけに、きわめて珍しい。宇宙航空研究開発機構(JAXA)でも初耳と言っている。

 今回のようにして生じた多数の破片類は、宇宙ゴミ(スペースデブリ)と呼ばれる。問題が大きいのは、宇宙ゴミが他の人工衛星などにぶつかって起きる二次災害の方である。

 日本人宇宙飛行士、若田光一さんが間もなくスペースシャトルで高度400キロの国際宇宙ステーション(ISS)に行き、長期滞在をする予定なので気になる宇宙事故だった。幸い今回の破片がシャトルの飛行やISSに影響を及ぼす可能性は低いようだ。

 しかし、宇宙ゴミの脅威は年々増している。約半世紀に及ぶ宇宙開発で、これまでに約6000基の衛星が打ち上げられており、地球の周りには1万3000個もの人工物が飛び交っているという。寿命が尽きた廃衛星やロケット最終段の残骸(ざんがい)などである。直径数センチのゴミを含めるとケタ違いの数量になるはずだ。

 ISSの先頭部分には、日本の宇宙実験棟「きぼう」が位置している。きぼうの表面の金属板の下には防弾チョッキにも使われる繊維が詰められていて、小規模な衝突に備えているほどだ。

 宇宙ゴミは、秒速8キロ前後の猛烈なスピードで飛んでいるので運動エネルギーは、ものすごい。直径1センチのゴミでも人工衛星を貫通してしまう。地球環境のモニタリングに欠かせない観測衛星が壊れたりすることも考えられる。

 ISSは、危険な宇宙ゴミが地上のレーダーで発見されると高度や姿勢を変えて回避することになっているが、ゴミの直径が10センチ未満だと事前の検知が難しい。

 地球を取り巻く宇宙空間を安全に利用し続けるためには、宇宙ゴミ問題の解決が必要だ。衛星数や打ち上げ国も今後、増えていく。軍事機密の壁もあるが、可能な限り、軌道要素などの情報を継続的に公開することが望まれる。

 通信や放送、交通など、現代社会の機能の多くが宇宙に拠点を置いている。地球環境だけでなく宇宙環境の保全も急ぎたい。

【社説】人工衛星衝突 宇宙を廃棄場にするな

2009年02月13日 中日新聞

 ロシアのシベリア上空で起きた米ロの人工衛星の衝突は、これまでほとんど無視されてきた宇宙ごみ(スペースデブリ)の怖さを見せつけた。各国とも宇宙ごみ対策に真剣に取り組む必要がある。

 事故は、日本時間の十一日未明に起きた。米国が一九九七年に打ち上げて運用中の通信衛星と、ロシアが九三年に打ち上げて既に機能停止したとみられる通信衛星が衝突し、数百個の破片が宇宙空間に散らばった。

 五七年に旧ソ連が人工衛星スプートニクを打ち上げて以来、半世紀以上に及ぶ宇宙開発史上、初めての事態だが、起こるべくして起きたといってもいい。

 これまでに米ロをはじめとして世界で四千回を超す衛星などの打ち上げが行われ、多数の宇宙ごみが生じた。宇宙ごみは多様で、今回のように寿命が尽きた衛星のほか、打ち上げに使ったロケット本体や、その部品、これらの衝突で生じた微細ごみ、宇宙飛行士の落とした工具、手袋まである。

 多くは大気圏に突入後、燃え尽きるが、現在もなお数千トンが地球を回っているとみられる。一ミリ以下の微細な破片まで含めるとその数は数千万個ともいわれるが、米国の宇宙監視システムがレーダーで追跡・監視しているのは十センチ角以上の一万三千個にすぎない。

 広い宇宙空間ゆえに衝突する確率が低いとはいえ、九六年にフランスの衛星が破片と衝突したのをはじめ、米国のスペースシャトルの窓ガラスにも破片が衝突したことが分かっている。数ミリの破片でも弾丸の十倍以上の猛スピードで飛んでいるため、当たれば大砲並みの破壊力となる。宇宙開発はロマンを秘めている一方、危険と隣り合わせでもあるのだ。

 人類の宇宙活動が今後、盛んになる以上、宇宙ごみを新たな環境問題ととらえなければならない。

 各国とも寿命が尽きた衛星を速やかに大気圏に突入させたり、運用中の他の衛星のじゃまにならないように低高度に移動させることを徹底すべきだ。大気圏突入後、完全に燃え尽きる材料の開発にも力を入れるべきである。

 中国が二〇〇七年一月に行った弾道ミサイルによる人工衛星の破壊実験では、大量の破片が宇宙空間にまき散らされた。最大の宇宙ごみの投棄である、このような暴挙を二度と許してはならない。

 宇宙空間は人類共通のフロンティアである。宇宙ごみのために宇宙活動が制約されるような事態は避けなければならない。

宇宙空間はゴミだらけ、人工衛星の破片など1万個

2009年02月13日 読売新聞 Yomiuri ON-LINE

 米イリジウム社の通信衛星とロシアの使用済み衛星がシベリア上空800キロ・メートルで衝突した事故は、宇宙空間が不要なごみで満ちている現実を、改めて浮かび上がらせた。

 過去には、宇宙ごみが米スペースシャトルの貨物室に当たって穴が開いたし、小石のような小さなごみでも、船外活動中の飛行士に当たれば、宇宙服が破損して大事故になりかねない。国際宇宙ステーション(ISS)に飛行士が常駐するようになったいま、宇宙ごみは人命にもかかわる切実な問題だ。

 米航空宇宙局(NASA)によると、人工衛星の破片など、大きさが10センチ・メートル以上の宇宙ごみは約1万個に及ぶ。現役の衛星は約800基なので、宇宙に漂う人工物の大半はごみということになる。花田俊也・九州大准教授によると、10センチ・メートル以上のごみが絡む衝突は、5年に1回程度は起きる計算だという。

 衛星同士の衝突は今回が初めてだが、1996年にはフランスの偵察衛星も破損したし、宇宙ごみ同士の衝突も2例報告されている。「衝突は新たな破片を作り出し、その結果、さらに衝突の確率が増す悪循環に陥る恐れがある」と花田さんは指摘する。

 宇宙ごみは、人工衛星の打ち上げが本格化した1960年代から増え続けている。おもに、寿命が尽きた衛星がそのまま長く宇宙空間に漂うからだ。大気圏に落ちてくれば燃え尽きて消滅するが、高度1000キロ・メートルの衛星なら2000年もかかる。

 国連は2007年2月、寿命を迎えた衛星は、燃料があるうちに大気圏に向けて軌道を変更し、ごみとして宇宙に残さないよう求めた。

 10センチ・メートル以上の宇宙ごみは、地上観測で軌道を予測できる。それをもとに、米スペースシャトルは1〜2年に1回の割合で実際に回避しているし、若田光一さんが近く長期滞在するISSも、「史上最も強固な宇宙船」(NASA)とはいえ、エンジンを噴射して避難する。だが、それ以下の大きさのごみは把握できず、いわば運任せ。ISSでは、もし穴が開いたら隣の部屋に避難することになっている。

 国内では日本スペースガード協会が、日本の衛星に近づいてくる宇宙ごみや、日本の衛星の残骸(ざんがい)の行方を監視している。同協会の高橋典嗣(のりつぐ)理事長は「今回の事故をきっかけに、宇宙ごみに真剣に取り組む機運を高めていく必要がある」と話している。(増満浩志、三井誠)

宇宙ごみ「数十年回避操作必要」 衛星衝突で米国防総省

2009/02/13 【共同通信】

 【ワシントン12日共同】米ロの人工衛星が衝突し宇宙ごみが大量に発生した問題で、米国防総省のカートライト統合参謀本部副議長は12日、宇宙ごみへの衝突を避けるため、ほかの衛星が軌道変更するなどの操作が数十年必要になるとの懸念を表明した。ロイター通信が伝えた。

 安全保障に関する会合で、副議長は「心配なのは破片がしばらく宇宙にとどまることだ。今後数十年にわたってドッジボールのようなことをしないといけないだろう」と述べた。

 AP通信によると、2つの衛星は高度約800キロで衝突、大量の破片が高度500−1300キロの範囲に散乱した。この高度は多くの通信衛星や地球観測衛星がある“宇宙銀座”。米航空宇宙局のハッブル宇宙望遠鏡も周回し、5月にはスペースシャトルによる修理延命飛行が予定されているが、宇宙ごみの影響を懸念する米メディア報道もある。

原子炉衛星と衝突の恐れも 宇宙ごみの大量発生で

2009/02/12 【共同通信】

 【モスクワ12日共同】インタファクス通信によると、ロシアの宇宙ロケット分野の専門家は12日、米ロの人工衛星の衝突で発生した大量の宇宙ごみが、原子炉を積んだ旧ソ連の人工衛星と衝突し、放射能汚染を引き起こす恐れがあると警告した。

 今回の衝突は高度約800キロの宇宙空間で起きたが、この高さには原子炉を積んだ旧ソ連の衛星が廃棄されたままになっているという。

 ロシア軍によると、衝突したロシアの衛星「コスモス2251号」は1993年に打ち上げられた軍事衛星で、約2年後に機能を停止し、使われなくなっていた。宇宙ごみは高度500−1300キロの範囲に飛散したという。

 78年には、原子炉を積んだ旧ソ連の軍事衛星「コスモス954号」がカナダに落下。放射能を帯びた破片が散乱し、周囲が汚染される事故が起きている。

イリジウム衛星衝突で一部通信に影響も、日本デジコムが報告

2009/02/11 Internet Watch

 海外利用を目的とした衛星携帯電話の販売・レンタルを手がける日本デジコムは、2月10日にシベリア上空790kmで発生したイリジウム衛星電話用通信衛星の衝突事故により、一部で通信しづらくなる事態が想定されると発表した。

 今回の事故は、ロシアの通信衛星「Cosmos2251」と米国のイリジウム衛星が2月10日16時55分(世界標準時)に衝突。これにより両衛星が壊れ、数百もの破片が軌道上に散乱した。米航空宇宙局(NASA)によれば、現時点では国際宇宙ステーション(ISS)に対する障害の恐れはほとんどないとしている。

 米イリジウム社では、今後30日以内に壊れた衛星の軌道上にスペアとなる衛星を再配置する予定。ユーザーに対する影響は軽微にとどまるとしているが、衛星1機分が機能を喪失したことにより、一部地域ないしは時間帯において通信しづらい事態が想定されるという。

 なお、イリジウム衛星は移動衛星システムであり、稼動中の衛星全66機が地球の周囲を高速で周回している。そのため、局部地域が半永久的に通信が不能となるわけではないとしている。

米ロの通信衛星が衝突 大量の宇宙ごみ発生

2009/02/12 【共同通信】

 【ワシントン11日共同】米航空宇宙局(NASA)は11日、シベリア北部の上空約800キロの宇宙空間で、米国の商業通信衛星とロシアの通信衛星が10日に衝突、大量の宇宙ごみが発生したことを明らかにした。米メディアが伝えた。人工衛星同士の衝突は初という。 NASAによると、ほかの人工衛星などへの宇宙ごみの影響は数週間後にならないと分からないが、約400キロの高度を周回している国際宇宙ステーションや、22日以降に予定されている若田光一さんが搭乗する米スペースシャトルの飛行に影響する可能性は低いとしている。

 衝突したのは、1997年に打ち上げられた米衛星携帯電話会社「イリジウムサテライト」の通信衛星と、93年にロシアが打ち上げ、現在は機能停止しているとみられる通信衛星。それぞれ約560キロと約1トンの重さの大型衛星という。

 CBSテレビによると、破片はこれまでに約600個が確認され、さらに増える見込み。NASAの科学者は「偶然ぶつかった。どちらかに通行優先権があるわけではない」と話したという。

 イリジウム社の衛星携帯電話ネットワークは66基の人工衛星と複数の予備で構成されている。同社は衝突の事実を確認、「サービスへの影響は、短時間の通信停止にとどまり極めて小さい。30日以内に、衛星を動かしてネットワークを修復する」としている。

 AP通信によると、打ち上げたロケットの部品や衛星の破片が偶然衝突したことは過去に少なくとも4回ある。


宇宙ごみ低減で指針採択 衛星の意図的破壊禁止

2007/02/22 【共同通信】

 【ウィーン22日共同】ウィーンで開かれている国連宇宙空間平和利用委員会の科学技術小委員会は21日、人工衛星を軌道上で意図的に破壊しないことなどを盛り込んだスペースデブリ(宇宙ごみ)低減に関する指針を採択した。6月の本委員会を経て、国連総会で承認される。

 指針は法的強制力を持たないが、同委員会には弾道ミサイルによる人工衛星破壊実験を1月に実施して大量のデブリを発生させた中国も参加しており、国際規範としての抑制効果が期待される。

 指針は7項目で、人工衛星などについて、意図的破壊禁止のほか、運用中にデブリが出ないように設計することや衝突事故防止対策などを求めている。

 同委員会は日本や欧米諸国、ロシア、中国など計67カ国で構成している。

破片とISS、軌道が交差 中国の衛星破壊実験で

2007/02/01 中国新聞ニュース

 【ワシントン31日共同】中国の人工衛星破壊実験でできた破片は10センチ以上のものだけで500個余りあり、これらの軌道群が国際宇宙ステーション(ISS)の軌道と南半球で交差することが米民間調査機関の解析で31日までに分かった。

 衝突の恐れが具体的に示されたのは初めて。2月上旬まではISSから5キロ以内に近づくデブリはないが、将来にわたり有人宇宙活動に影響が出そうだ。

 航空宇宙分野の調査分析を手掛けるアナリティカル・グラフィックス社のトーマス・ケルソー博士によると、核兵器を統括する米戦略軍の宇宙監視ネットワークが破壊実験で生じた破片517個を追跡している。破片は雲のような塊になって、地球の北極と南極の上を通る高度200−3500キロの軌道を秒速5・8−8・0キロで周回中。低い軌道をとる南半球で、高度約400キロのISSの軌道と交差する。

宇宙に巨大な「破片の雲」

2007年01月23日 nikkansports.com

 中国の弾道ミサイルによる人工衛星破壊実験を受けて、米政府当局者らは22日、宇宙空間に破壊された衛星の破片によるスペースデブリ(宇宙ごみ)が大規模な「雲」を形成しており、各国の衛星のほか、国際宇宙ステーションにも衝突する恐れがあると警告した。ロイター通信が伝えた。

 また、専門家はデブリが高度約400キロから約3000キロの広い宇宙空間にわたり観測され、この軌道上にある120個以上の衛星が危険にさらされていると強調。軍事衛星のほか、民間衛星へ衝突すれば日常生活に影響が出かねず、国際的にも懸念が広がっている。

 ロイター通信によると、米国防総省関係者は「今回の実験が国際宇宙ステーションも含めて(衛星とデブリによる)衝突の危険性を高めたことは間違いない」と批判した。同ステーションは日本などが参加し高度約400キロの軌道上に建設中。

 さらに、民間の専門家はこれらのデブリが人工衛星の軌道上からなくなるまで数十年かかる可能性があると指摘。今回の実験では1〜10センチ大のデブリ約4万個が発生したとの推測もある。

 中国は日本時間の12日、高度約850キロの宇宙空間で衛星を破壊。米側に「宇宙の軍拡競争を引き起こす意図はない」と説明している。

中国、衛星攻撃を公式確認 宇宙に雲状デブリ漂う

2007/01/23 The Sankei Shimbun WEB-site

 【北京=野口東秀】中国外務省の劉建超報道官は23日、定例記者会見で、中国が人工衛星を弾道ミサイルで破壊する衛星攻撃兵器実験を実施したことを公式に確認した。劉報道官は、「中国は一貫して宇宙の平和利用を主張、宇宙空間の軍事化と軍備競争に反対するとの立場に変化はない」と強調。さらに「いかなる国にも脅威にならない」と述べ、日米両国などに通報したことを説明。また、現時点で「2度目の実験実施は聞いていない」と語った。

 ロイター通信が23日、米専門家の話として伝えたところでは、破壊された衛星の破片は高度約400キロから同約3000キロの範囲で雲のように集まって漂っている。このため、各国の衛星だけでなく高度約400キロの軌道上で建設中の国際宇宙ステーションに衝突する可能性がある。

 しかし、会見で同報道官は、破片が他の衛星に衝突する可能性などについては回答を避けた。

 中国は日本時間12日午前7時28分、四川省の上空、高度約850キロにあった老朽化した自国の気象衛星を、地上から発射したミサイルに搭載した弾頭で破壊した。


宇宙ごみ処分 高強度網を開発

2005/07/20 中国新聞地域ニュース

 <福山のメーカー、JAXAと共同>

 世界的な課題である使用済みロケットなどの宇宙ごみ(スペースデブリ)を処分するため、宇宙航空研究開発機構(JAXA、東京)と漁網メーカー国内最大手の日東製網福山工場(福山市)が細長い特殊な網を共同開発した。ひも状の網に電気を流すことで地球を周回するデブリにブレーキをかけ、地球側に落下させる仕組み。二〇一〇年までの実用化を目指す。

 新開発の特殊網が処分の対象にしているのは、問題の大きい使用済みロケットや役割を終えた衛星、その部品などメートル単位のデブリ。

 特殊網は軽量化を図り、宇宙での高温に耐えられるようにするため、アルミと高強度繊維を素材に使った。「導電性テザー(ひも)」と呼ばれ、長さ五〜十キロ、幅は数ミリのひも状で使用する見込みだ。

 デブリ除去衛星のアームでデブリを「捕獲」した後、テザーを取り付け、リールを緩めて伸ばす。導電性のあるテザーに宇宙空間を浮遊する電子を取り込んで電気を流し、地球の持つ磁場との干渉でデブリを大気圏に再突入させ、テザーごと「焼却処理」する。日米欧各国が開発競争を繰り広げている。

 課題の一つが軽量化と巻き取り時の大きさ。より軽く小さくしないと、宇宙まで運ぶロケットが大型化する。さらに使用時はひも状だが、一本だとデブリの衝突でテザーは数日しかもたない。網状にして高強度にすることが必要と判断した。

 この条件をすべてクリアしたのが、潮目や海流のある場所で漁網として活躍する結び目のない無結節網。JAXAが世界規模で探した結果、日東製網を選んだ。

  <宇宙ごみ>
 大きさは最小でナノ(10億分の1)単位、最大では役割を終えた人工衛星などがあり、地球の周回軌道を漂っている。地上から光学望遠鏡やレーダーなどで観測可能な大きさのもので、静止軌道と低軌道上に計9500個が確認されている。センチ単位以上になると衝突で稼働中の衛星を壊すほか、デブリ同士がぶつかると微細なデブリを無数に生む。除去しなければ将来宇宙が使えなくなるため、解決が急がれている。

ロボットと宇宙活動 宇宙機構が日本独自の長期ビジョン

2005年04月02日 asahi.com

 ロボットと宇宙飛行士が協力して日本独自の有人宇宙活動を進めることなどを柱に据えた、宇宙航空研究開発機構の長期ビジョンがまとまった。6日の宇宙開発委員会に報告する。実現には技術面だけでなく、財政面でも課題が多く、宇宙機構は今後、市民集会などでビジョンを示し、広く理解、協力を求めていくとしている。

 有人宇宙活動では、10年後に、人が乗れる安全なロケットを実現させる。20年後には、宇宙を行き来できる再利用型宇宙船の開発着手を目指す。宇宙船開発は、国際宇宙ステーションに物資を運ぶために08年度に打ち上げる無人補給機(HTV)を基にする。

 宇宙では、日本が得意とするロボットや人工知能技術を使い、人間とロボットが役割分担・協力する「日本ならでは」の活動を展開。資源探査や宇宙からの授業などを想定している。月面に長期滞在できる国際基地ができていれば、太陽エネルギーを利用した発電システムの開発も探る。

 国の総合科学技術会議は昨年9月の「宇宙開発利用の基本戦略」で「20〜30年後、独自の有人宇宙活動を準備」と盛り込んでおり、これを補強した形だ。

 また、現在、ジェット機で10時間かかっている東京と米ロサンゼルスとの間を2時間で結ぶマッハ5クラスの極超音速機の技術開発にも挑む。液体水素を燃料に、二酸化炭素を出さない構想だ。

 ただ、課題は山積している。宇宙機構は実現に今後10年間で年平均2500億〜2800億円が必要と試算したが、現在の予算は1800億円。宇宙関連産業の従業員も95年度の約1万人から03年度は約6000人まで減った。

 宇宙機構は「長期ビジョンは宇宙開発に対する希望であり、危機感の表れでもある。これをきっかけに内外で広い議論を始めたい」(報告書)としている。

「宇宙ごみ」の被害防げ 安全管理へ国際指針

2005/01/23 asahi.com

 寿命が尽きた人工衛星やロケットの残骸(ざんがい)、破片からできた「宇宙ごみ(スペースデブリ)」による被害を防ぐため、日本など67カ国が加盟する国連の宇宙空間平和利用委員会で、ごみの削減策や安全な管理法を定めた国際指針を作ることになった。地球の周囲では、数百万個の宇宙ごみが猛スピードで回っており、人工衛星に衝突したり、地上に落下したりする危険がある。各国は2月にウィーンで会合を開き、指針案の合意を目指す。

 米航空宇宙局(NASA)の観測データなどによると、地球を回る宇宙ごみは、10センチ以上のものだけで1万個以上ある。小さいものを含めると数百万個以上とみられ、平均で時速3万6000キロの猛スピードで周回している。小さなごみでも衝突の衝撃は非常に大きい。

 78年には旧ソ連の軍事衛星の残骸がカナダに落下し、燃料の放射性物質が飛散した。96年にはフランスの小型偵察衛星がロケットの破片と衝突して破損。97年には米国のロケットの燃料タンクが米国の民家に落下した。01年にはロシアの宇宙ステーション「ミール」の部品(計約20トン)が大気圏で燃え尽きずに南太平洋に落ちた。

 このため、国連は01年から宇宙空間平和利用委員会で、05年の合意を目標に対策を検討。これまでの交渉で、指針作りの方向が決まった。ごみの削減策や寿命を迎えた衛星の管理、運用のルールを盛り込む見通しだ。

 NASAや日本の宇宙航空研究開発機構など11の宇宙機関が作成したたたき台によると、人工衛星などは設計段階から材料や部品を厳選してごみを出さない工夫をする▽寿命を終えた衛星が高度2000キロ以下の軌道にあれば、制御して安全に海洋などへ落下させる▽使用済みの衛星が静止軌道にあれば、他の衛星に衝突しないよう、軌道を変更する▽衛星は運用終了後に爆発・分解しないように燃料を使い切る――などの案がある。

 指針ができれば、宇宙ごみを監視して、衝突を予測・警告する枠組み作りを議論する。ロシアなど規制に慎重な国も一部にあるが、各国は2月下旬の会合で指針案の採択を目指す方針だ。

 文部科学省は「宇宙ごみ対策はもはや放置できない緊急課題。廃棄する衛星を太平洋に落とす場合、日本上空を通ることが多く、ごみを出さない対策は国益にとっても重要だ」(宇宙政策課調査国際室)という。

「宇宙ごみ」現在の地球の回りはゴミだらけ

2005年01月23日 知って得する!トリビアの泉

 数知れないロケットの打上により、たまった宇宙のゴミが、漂っているのが、現実です。
それもものすごいスピードで地球の周りを回っているのです(時速3万6000キロ)。
それが日本に落下してくる可能性もあるのです。とてつもない大きな隕石でも地球に到達するためには、成層圏、大気圏を通り抜けてこなくてはなりません。
ほとんどの隕石は、燃え尽きてしまいます。宇宙のゴミも地球にたどり着く前に、燃え尽きるのではないかと考えました。ところが

 78年には旧ソ連の軍事衛星の残骸がカナダに落下して、燃料の放射性物質が飛散しました。
96年にはフランスの小型偵察衛星がロケットの破片と衝突して破損しました。
97年には米国のロケットの燃料タンクが米国の民家に落下しました。
01年にはロシアの宇宙ステーション「ミール」の部品(計約20トン)が大気圏で燃え尽きずに南太平洋に落ちました。
こういうことから、考えると 空からゴミに当たって即死されました。なんて ニュースが流れる日も近いのでは! 物騒な世の中ですねえ。皆さんどう思われますか?

宇宙ステーション「ミール」2001年03月11日(日) 東奥日報

 中国故事の「杞憂(きゆう)」は、ある日突然、天が落ちると恐れた男の話。物知りに「日や月や星も気でできており、落ちてきてもケガはしない」と諭され安心する。哲学めく寓話(ぐうわ)の本題はさておき、安心の論拠がこれでは現代科学に一笑に付される。

 地上に達した星のかけら・隕石(いんせき)のもたらす災害は知っての通り。加えて、今や人間の作った構造物が遠慮なく落ちてくる時代だ。最新版がロシアの宇宙ステーション「ミール」。近々、地球に落ちる破片は約千五百個、重さ二十−二十五トンというから、危険極まりない。

 遠隔操作で南太平洋上に落下させる計画だが、コンピューターの故障や火災、交信の一時途絶…と、トラブル騒ぎの続いた老兵。何が起きるか、落下直前に上空を通過する日本列島も気を許せない。もっとも、被害の発生確率は一億分の一以下とか。心配が杞憂なら幸い。  ミールは「平和」を意味するという。過去百人を超す宇宙飛行士が滞在、多くの研究データを残した。それが建設中の国際宇宙ステーションにも生かされている。けれど、お役ご免となれば「平和」な末路といかないのが、宇宙構造物の宿命。本質は厄介な廃棄物だろう。  軍事や産業、気象用と多様な衛星や宇宙船、用済みロケットの部品やらの宇宙ごみが、地球の上を回っている。微小なごみでも衝突の破壊力はすさまじく、障害発生も聞かれる。大物は地上に危険を及ぼす。増大する宇宙のごみが人に何をもたらすのか。杞憂で済みそうにない。

3月に爆発した中国製ロングマーチ-4ロケットの残骸が検出された

【2000年08月30日 シカゴ大学ニュース】 Astro Arts

 1999年2月に打ち上げられたアメリカ空軍の先端研究および地球観測衛星(Advanced Research and Global Observation Satellite; ARGOS)に搭載された宇宙ごみ観測装置(SPADUS)が、2000年3月に爆発を起こした中国製ロングマーチ-4ロケットの残骸を検出することに成功した。残骸は、無数のひじょうに小さな破片の群れとなって広い範囲に漂っている。SPADUSは、シカゴ大学が制作した観測機器だ。

 問題のロングマーチ-4ロケットは、1999年に成功のうちに打ち上げられたものだが、2000年3月11日、役目を終えてから5か月の間、人工衛星として宇宙を漂っていたロケットの上段ユニットが爆発を起こした。この爆発はアメリカ宇宙軍により即座に検出され、宇宙軍では爆発により生じた300個以上の破片を確認した。しかし、宇宙軍で検出・追跡が可能なのは、直径およそ4インチ(10cm)程度の大きさの破片までであり、それ以下の小さなものは検出できない。衛星の爆発により生じた細かな破片が検出されたのは今回が初めてだ。

 爆発を起こした上段ユニットは、残存していた燃料が原因で爆発を起こしたと考えられる。同様の問題はおよそ20年前より知られており、アメリカ製のロケットの上段ユニットも同様の爆発を起こした例がある。多くのロケットの上段ユニットは、衛星を軌道投入後はそのまま宇宙空間を漂うようになっており、これが爆発を起こすと多数の宇宙ごみが広い範囲にまきちらされることになる。しかし、今では対策が進んだため、このような爆発は少なくなっている。ロングマーチ-4ロケットは、1990年に打ち上げられたときも、その後宇宙を漂っていた上段ユニットが爆発を起こした。中国ではその後同様の爆発が起こらないよう対策を行なっていたが、対策はうまくいっていなかったようだ。

 地球軌道上の宇宙空間で人工衛星が、高速で漂う人工の宇宙ごみや自然の小片と衝突することは珍しいことではない。このような衝突は多くの場合大事にはいたらないが、常時、衛星に小さなダメージを与え続けている。NASAのジョンソン宇宙センターの宇宙ごみ研究チームのチーフ科学者であるNicholas Johnson氏によると、こういった衝突によるキズから、平均してスペースシャトルのフライト1回ごとに1枚の窓ガラスを交換しているという。またSPADUSプロジェクトのリーダーであるAnthony Tuzzolino氏によると、SPADUSは打ち上げから1年間のうちに195回のそのような衝突を検出している。しかも、そういった衝突のほとんどが自然の小片ではなく人工の宇宙ごみによるものだそうだ。このような衝突は、宇宙遊泳中の宇宙飛行士にとっては脅威であることもあり、NASAは宇宙軍が追跡できない小さな破片の分布を知りたがっている。

 SPADUSのチームとジョンソン宇宙センターの合同研究から、ロングマーチ-4ロケットの上段ユニットとARGOS衛星の軌道が近づくときに衝突が多く検出されることが判明した。特に、2000年3月25日から4月1日の間には、およそ40回もの衝突が検出されていた。上段ユニットはARGOS衛星より約60マイル(97km)下方の軌道を漂っていたが、このような爆発現象においては高い軌道まで破片がまきちらされることがよく知られている。このことから、これらの衝突がロングマーチ-4ロケットの上段ユニットの残骸に起因するものであると結論された。なお、SPASUSは1mmよりずっと小さな破片との衝突まで検出可能。

宇宙ごみ処分衛星が開発された

【2000年06月21日 BBC News (2000/6/19)】 Astro Arts

 イギリス・イングランドのSurrey Satellite Technology(SST)社が、宇宙ごみ(space junk)の処分に使える超小型衛星(nanosatellite)を開発した。この衛星は「Snap」と呼ばれ、質量はわずか6kg。

 SST社の代表であるCraig Underwood博士はBBCニュースにこう語っている。「Snapの最大のポイントは、信じがたいほどに廉価であることだ。Snap1号はごく小規模の開発チームにより、9か月で設計・製作された。1回のミッション全体に必要な資金は、わずか100万ドル以下で済む。したがって、多数の衛星が必要かつ衛星を使い捨てにしなければならないような任務に道を与える。」

 宇宙が開かれてから40年が経過したが、今では莫大な量の宇宙ごみが地球の周りをめぐっており、問題になっている。宇宙ごみは、大きいものは使用済みの打ち上げロケットから、小さいものははがれた塗装の小片まで、さまざま。時速30,000kmに近い速度で運動しているため、金属の小片の衝突であっても、時速100kmのトラックの衝突と同等のエネルギーをもつ。これは衛星や宇宙ステーションにとって脅威だ。

 Snapは4基のカメラにより宇宙ごみを捕捉し、それに取り付いて減速させる。そうして地球大気圏に突入させ、燃やしてしまう。このとき当然Snapの方もいっしょに燃えてしまうが、Snapは1基あたりわずか100,000ポンド(約150,000ドル)だ。これは一般的な衛星に比べてはるかに廉価。

 Snapはまだ買い手が見つかっていないが、Underwood博士は、保険会社――特に、国際宇宙ステーション計画などの大規模計画の責任を負うような――の強い興味を得ることができると考えている。

 Snap1号は最初のテスト・ミッションのため、6月28日、ロシアのプレセツク宇宙基地からコスモス・ロケットにより打ち上げ予定。中国の小型衛星Tsinghua-1およびロシアの軍事衛星がいっしょに打ち上げられる。

 Snap1号はまずTsinghua-1とのランデブーを試みる。そして成功したら、次は宇宙ごみへの接近を試みる。

HOME環境