TOPIC No.3-30 エチゼンクラゲ大量発生

01.エチゼンクラゲ大量発生 YAHOO! NEWS
02.エチゼンクラゲ
03.エチゼンクラゲ byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
04.我が国周辺海域における大型クラゲ(Nemopilema nomurai)目撃情報 by独立行政法人 水産総合研究センター
05.エチゼンクラゲの『コラーゲン』で美肌効果サプリメント(2005年04月) byマルトモ/楽天
06.エチゼンクラゲには困ったものです-@ 2002/09/17 京都府
07.エチゼンクラゲ、大量発生に立ち向かう!(週間エキサイト!2003/04/15 Vol.93)


消えたエチゼンクラゲ 春の低水温が影響か

2010年09月27日 中国新聞ニュ−ス

 2009年10月、日本海に大量発生し、定置網に入り込んだエチゼンクラゲ=福井県越前町沖

 日本海に大量に発生し、底引き網や定置網漁に深刻な被害をもたらす大型のエチゼンクラゲ。今年はぱったり姿を消し、ブリやサワラ漁を控えた漁業関係者がほっと胸をなで下ろしている。識者は「繁殖する春の水温が低かった」と指摘する。

 水産総合研究センター(横浜市)などによると、昨シーズンは9月には日本海一帯に現れ、若狭湾では1日当たり1万件を超す出現情報も寄せられた。漁網を破ったり、触手の毒で魚の鮮度が落ちたりし、全国で5万5千件以上の漁業被害が報告された。

 2002年以降、毎年のように日本海に出現するが、今シーズンは8月に岩手、島根両県で確認された3個体のみ。同研究センターが4〜7月、中国近海を調査したが生息数はわずかだった。

 水産大学校の上野俊士郎教授(浮遊生物学)は「大型クラゲの大量発生は、繁殖する春の気候の影響を受ける。今夏の猛暑による海水温上昇と関連は薄い」と説明。黄海や東シナ海で3〜4月、海面水温が平年より1〜2度低く、クラゲの発生が抑えられた可能性を指摘する。前線や低気圧の影響で日照り時間が短かった。

庄内沖の巨大クラゲどこへ… 今年の被害ゼロ、猛暑との関係「不明」

2010年09月16日 山形新聞

 大量発生して漁業に深刻な影響をもたらす巨大なエチゼンクラゲ(大型クラゲ)。昨年は9月1日の底引き網漁の解禁とともに被害が確認されたが、今年は15日現在、庄内沖での被害がまったく報告されていない。エチゼンクラゲの出現動向を調査する水産総合研究センター(横浜市)によると、全国では同日現在、島根県沖と対馬海峡で計9匹が確認されたにとどまっている。同センターは「猛暑との因果関係は分からないが、今年の来遊状況から判断すれば、大量発生の可能性は低い」と予測している。

 エチゼンクラゲは中国の長江(揚子江)下流域や朝鮮半島沿岸などで発生し、対馬海流に乗って日本海域に北上する。漁獲物の鮮度の低下や、網の損傷などを引き起こす“厄介者”だ。クラゲの餌となるプランクトンの繁殖状況や気象条件などにより個体数は毎年変化するとみられるが、同センターは「エチゼンクラゲの発生場所が日本海域でないため、エチゼンクラゲの発生状況にかかわる直接的な要因は分かっていない」と説明する。

 同センターによれば、今年は8月23日に島根県沖で傘径60センチのクラゲ1匹、9月14日に対馬海峡で傘径20〜50センチのクラゲ8匹の計9匹を確認しただけ。県庄内総合支庁水産課のまとめでは、昨年度の県内での被害件数は4588件(推定値)で過去最多だったが、同課が今月2日に県漁業監視調査船「月峯(げっぽう)」で庄内沖を調べた際も確認されず、県水産試験場(鶴岡市)にも15日現在、被害の報告は寄せられていない。

 底引き網漁を行っている第二十一輝修丸船長の石塚修さん(41)=同市三瀬=は「去年は、エチゼンクラゲが大量に網に引っ掛かり、水揚げ高は2割ほど減った。今年は“天敵”が出現していないので、警戒せず思い切り漁に出られる」と話している。

エチゼン減ってもタコ異常発生 クラゲの話です 網代

2010年09月12日 asahi.com

網代漁港で見つかったタコクラゲ

 今年は漁業に影響を与えるエチゼンクラゲが激減している半面、沖縄などに生息する「タコクラゲ」が岩美町の網代(あじろ)漁港内で異常発生し、漁業関係者を驚かせている。漁業に直接の影響はないが、例年より高い海水温が続いているのが発生の原因。海水の高温は、アジの卸値の高騰などにつながっている。

 県水産試験場によると、タコクラゲは主に日本の南方に生息し、大きいもので20センチ近く。白や黄色い斑点がある傘に、口腕(こうわん)と呼ばれる長い腕が8本ぶら下がった形がタコに似ているのが名前の由来という。ごく弱い毒を持つ。

 県漁業協同組合網代港支所の話では、タコクラゲは2〜3年前にもわずかに見られたが、今夏は3週間ほど前から急増。網代漁港内で大きく育っているのが肉眼でわかるほど目立つという。

 県水試の調査で、境港市竹原団地沿岸の水深1メートルの水温は今月1日、30.3度と、この1、2年に比べて4〜5度高かった。隠岐海峡や湯梨浜町沿岸でも平年より約1.5度上回っている。「今夏の日本海沿岸の海水温は夏までは平年より低く、夏に一気に上がった。クラゲも増殖に適した環境が異なり、今年はエチゼンクラゲよりタコクラゲに合ったのではないか」と県水試。

 一方、網代港支所の定置網漁は、海水の高温の影響で不漁が続く。

 特に中型のアジは、昨年8月には約6千キロの水揚げだったが、今年8月は46キロに激減し、「平年は1箱6千円の卸値が8千円と、近年にない高値になっている」と網代港支所の浜納栄治指導課長。これから旬を迎えるハマチやサワラについても「海水の高温が続くと回遊に影響が出るかもしれない」と心配している。(中田和宏)

エチゼンクラゲ激減、昨年の千分の一に 東シナ海で調査

2010年09月06日 asahi.com

海中を漂うエチゼンクラゲ。触手には毒がある=昨年9月、島根県・隠岐諸島沖

 日本の沿岸に押し寄せて漁業被害を起こす「エチゼンクラゲ」の発生量が、今年は極めて少ないことが、水産総合研究センターの調査で分かった。同センターは6〜8月に東シナ海で行った目視調査や網による調査のデータを分析した。広島大の上(うえ)真一教授らが日中を結ぶフェリーを使って7月に行った中国沖の目視調査でも、生息密度が昨年の千分の1以下だった。

 同センターは「個体数の多い海域でさえ生息密度は昨年の10分の1から100分の1程度。今年は日本の沿岸で大量に漁網に入ることはないだろう」としている。

 エチゼンクラゲは最大で傘の直径2メートル、重さ200キロに達する。中国大陸の近海で生まれ、主に日本海の沿岸に流れ着く。大発生は2005〜07年に3年連続し、09年にも起きた。特に被害が大きかった05年には、対馬海峡から1日あたり最大で推計3億〜5億匹が日本海に流入。青森県だけで約20億円の被害が出るなど、全国で延べ10万件を超す漁業被害が報告された。

 また、09年は、津軽海峡を越えた群れが太平洋側を大量に南下する異例のパターンで押し寄せ、10月に静岡、11月には愛知や三重にも現れた。各地で定置網漁が休止に追い込まれるなどの漁業被害が発生。作業中の漁業者が毒のある触手で刺されたり、せっかく網に入った魚が死んだりした。千葉県沖では、クラゲの重みが原因とみられる漁船の転覆事故も起きた。

 ところが今年は一転して発生量が減少。7月に広島大がフェリーの船上から行った目視調査では、中国沖の個体数が平均で100平方メートルあたり1万分の6匹と、昨年同時期の千分の1以下のレベルだった。岩手県・久慈市漁協では「昨年はクラゲが襲来したせいで、定置網のサケの水揚げ量が3割ダウンした。やっかいものが今年は少ないと聞いて、ほっとした」としている。

 エチゼンクラゲの大発生は02年以降、ほぼ毎年のように起きている。原因として、地球温暖化による海水温の上昇や海の富栄養化などの影響が指摘されている。

 エチゼンクラゲが生まれる時期は例年4〜5月が中心で、この夏の猛暑は発生量に影響していないと専門家はみている。むしろ、中国大陸沖で春先の水温が例年より1度ほど低かったためクラゲの発生が抑えられたとの見方がある。

 エチゼンクラゲの親が生きられる期間は1年弱だが、細胞の塊である「ポドシスト」という状態では、海底で何年間も休眠できることが、近年の研究で分かってきた。今年は何らかの原因で、ポドシストの多くが休眠状態を続け、クラゲの発生に至らなかった可能性がある。

 ただ、上教授は「今年のように発生量が極端に少ない年がなぜあるのかは、科学的に解明できていない」と話している。(山本智之)

エチゼンクラゲを美容や薬に 関電、発電所対策兼ね

2010.09.06 MSN産経新聞

 関西電力は6日、大量発生で漁業被害や原子力発電所の取水口の目詰まりなどの問題を引き起こす“海の厄介者”のエチゼンクラゲを利用して、医薬品や化粧品を開発するプロジェクトに乗り出したことを明らかにした。クラゲから有効成分のコラーゲンを取り出し、原料のハイドロゲル材(ゼリー状物質)に加工。けがの患部にはり付ける創傷被覆材やにきび予防の美容マスクなどの材料とする計画で、エチゼンクラゲの有効活用を目指す。

 エチゼンクラゲは日本海で大量発生し、漁網を破るなど深刻な被害を及ぼしている。平成11年6月には高浜原子力発電所2号機(福井県高浜町)の取水口に大量に来襲。取水口の防塵(ぼうじん)装置4台のうち2台が停止し、出力を低下させるなどの原発への悪影響も出ている。

 今回のプロジェクトは関西電力子会社の関西電子ビーム(大阪市北区)、日華化学(福井市)、福井県立大学海洋生物資源学部(小浜市)などが共同で行う。

 関西電子ビームの電子線照射施設(福井県美浜町)を活用し、エチゼンクラゲから抽出したコラーゲンと、越前ガニの殻からとれるキトサンを混ぜ合わせた物質に電子線を照射することで、ハイドロゲル材を生成する。

 コラーゲンの保湿効果とキトサンの抗菌効果を併せ持つハイドロゲル材が開発できれば、創傷被覆材や美容マスクなどの商品化も可能となる。22年度に基礎研究を進め、23年度以降に実用化研究へ移行する。

 関電は17年3月に福井県が策定した「エネルギー研究開発拠点化計画」に参画。同県敦賀市や美浜町、小浜市などで研究開発機能の強化や産業創出・育成などを推進している。

 8月30日に関西電子ビームが電子線照射施設の運用を始めたのを機に、同施設を活用した地域貢献活動として、今回のプロジェクトに着手した。関西電力の酒井和夫原子燃料サイクル室長は「地元のためにも実用化につなげたい」と話している。

 大量発生したエチゼンクラゲは、処分法が課題となっており、福井県小浜市で地元の水産高校と企業が粉末化し、羽二重餅(はぶたえもち)として商品化するなど活用法が模索されていた。

 今年のエチゼンクラゲの動向について、水産総合研究センター日本海区水産研究所(新潟市)は「昨年は大量発生したが、今はまだ兆しはない。日本沿岸に近づくのはこれから」としている。

      ◇

 【用語解説】エチゼンクラゲ

 日本近海では最大級のクラゲで、大型のものでは傘の直径が2メートル、重さが150キロになる。中国・黄海などで発生し、夏から冬にかけ海流に乗って日本沿岸に出現する。近年、日本海で大量発生しており、巨大な群が漁網に入る漁業被害が大きな問題になっている。大量発生の要因としては、地球温暖化による海水温上昇などが考えられる。


エチゼンクラゲが過去最高の大発生 漁船転覆、漁業被害も

2009.11.03 MSN産経新聞

巨大な体でゆらゆらと海中を漂い、漁網を破るなど漁業に甚大な被害をもたらすエチゼンクラゲ

 漁業に深刻な影響を与えるエチゼンクラゲが今年は日本海だけではなく太平洋側でも大量に発生している。千葉県銚子沖では、網に大量にかかり漁船が転覆するという事故も起きた。さらに、東京湾ではミズクラゲも近年になく大発生している。海の富栄養化や汚染などが共通の理由として考えられるという。漁業などへの被害も懸念されており生態の解明が急務になっている。

 エチゼンクラゲは大きいものでは傘が2メートル、重さ200キロにも及ぶ。中国・黄海沿岸などで発生、海流に乗って日本沿岸に大量出現するようになったのは平成14年のことだ。

 17年には空前の大発生となり、漁業に大きな被害を与えた。昨年はほとんど現れなかったが、今年は6月末に対馬沖で確認、10月には太平洋側の静岡県沖でも確認された。独立行政法人水産総合研究センターは「日本海から太平洋側に現れるのが例年より1カ月は早い。大襲来となった17年を上回る規模になっている」と指摘する。

 広島大学の上真一教授(生物海洋学)は「エチゼンクラゲの幼生の分身である細胞の塊『ポドシスト』は、海底で何年も生きることができる。昨年はこれが休眠した状態だったが、今年は大量に幼生となって成長した」と語る。

 一方、東京湾ではミズクラゲ(15〜20センチ)も大量に発生している。東京海洋大学の石井晴人助教によると、今年は例年より約1カ月早い4月には出現、通常8月には観測されないが10月末になっても群れが観測されている。過去5年間でもっとも多かった17年規模の発生になりそうという。

 ミズクラゲの大群は昭和30年〜40年代から増え始めた。東京湾の護岸化がすすみ幼生が付着できる場所が増加したことや、エサを取るうえでライバルとなる魚が乱獲により減少したことなどが原因という。エチゼンクラゲも、経済成長を遂げている中国沖で大発生。やはり海の汚染が進んだことや魚の乱獲が大量発生の原因と考えられるという。

 千葉県銚子沖では10月30日、漁船の網に大量のエチゼンクラゲがかかり漁船が転覆。3人が海に投げ出されるという事故が起きた。他に、定置網などに大量にかかり漁業に深刻な影響を与えているという報告も各地から相次いでいる。

 石井助教は「クラゲは環境悪化の指標になる。生態を解明するとともに水質浄化に努める必要がある」と話している。(杉浦美香)

エチゼンクラゲ退治、期待の「天敵」 隠岐で海中実験

2009年09月22日 asahi.com

漁業被害を起こすエチゼンクラゲを「天敵」で退治する実験

エチゼンクラゲを魚礁に固定し、ウマヅラハギに捕食させる実験=島根県隠岐の島町沖、伊藤恵里奈撮影

 日本の沿岸に押し寄せて漁業被害を起こすエチゼンクラゲを「天敵」によって退治する実験が、島根県・隠岐諸島で始まった。民間研究機関の海中景観研究所(新井章吾所長)が挑戦している。

 「天敵」として期待されているのは食用魚でカワハギの仲間のウマヅラハギ。同諸島沖で傘の直径が約90センチのエチゼンクラゲを捕らえ、水深11メートルの魚礁にロープで固定したら、全長10〜30センチのウマヅラハギが400匹近く集まり、一斉にクラゲをかじり取った。

 エチゼンクラゲの触手には魚を刺す毒針があるが、ウマヅラハギは1時間程度でこの毒針を含む触手と傘の大部分を食べあさった。新井所長は「エチゼンクラゲの発生源の中国近海にカワハギ類が好む魚礁を多数設置すれば、エチゼンクラゲが巨大化する前に駆除できるかもしれない。カワハギも増えるし、一石二鳥です」と話す。

 今年はエチゼンクラゲの群れがすでに津軽海峡を抜け、宮城県沖など太平洋側にも回り込んでいる。隠岐諸島では直径1メートル程度の大型のクラゲも多数現れ、定置網に密集して操業が妨げられる例が相次いで報告されている。広島大の上(うえ)真一教授は「襲来のピークは例年11月ごろだが、今年は10月になりそうだ。大きな被害があった05年と同様か、それをしのぐ量が押し寄せる可能性がある」という。(山本智之)

エチゼンクラゲを餌に 県漁協西海支所 カワハギ漁に「うってつけ」

2009/09/21 北國新聞

富来漁港に水揚げされたカワハギ。厄介者のエチゼンクラゲを餌に活用している=志賀町内

 志賀町の富来漁港沖で、県漁協西海支所の一部の組合員が日本海に大量に押し寄せているエチゼンクラゲを餌に使い、カワハギを次々と水揚げしている。エチゼンクラゲは海の厄介者として知られるが、カワハギの餌には「うってつけ」(同支所)。クラゲ襲来に頭を悩ませる多くの漁師を横目に、漁が盛んに行われている。

 県漁協西海支所でカワハギ漁に取り組む漁船は約10隻。クラゲは傘の部分を取り除いてかご網に入れ、カワハギを水揚げしている。

 のとじま臨海公園水族館(七尾市)によると、エチゼンクラゲはほかのクラゲに比べて堅く崩れにくいため、カワハギ漁の餌に使いやすく、食いつきも良いという。

 富来漁港沖には8月下旬ごろからエチゼンクラゲが現れ、9月に入って大量に襲来した。昨年はまったく来遊が確認されず、カワハギ漁をする組合員は別のクラゲを捕るため、羽咋市沖などにわざわざ船を出していた。エチゼンクラゲを苦もなく調達できる今季は、多い日に1隻で200〜300キロのカワハギを水揚げしているという。

 カワハギ漁に取り組む久木喜久彦さん(56)は「昨年は餌の確保に半日ほどかかり、燃料費も掛かった。カワハギを捕らない漁師には本当に申し訳ないが、助かる」と話し、漁に精を出している。カワハギ漁は12月まで続けられる。

大型クラゲ、対馬で確認 水産庁、大量発生に警戒

2009/07/03 中国新聞ニュ−ス

 水産庁は2日、毎年、秋から冬にかけ深刻な漁業被害をもたらしているエチゼンクラゲの群れが、6月30日に長崎県・対馬の浅茅湾あそうわんで確認されたと発表した。

 水産総合研究センター(横浜市)の調査船が、6月21〜22日に東シナ海中央部で確認した群れが流れ着いたとみられ、水産庁は3日に関係団体を集めて協議会を開き、対策を検討する。

 クラゲはかさの直径が15〜30センチで、浅茅湾の入り口にあった定置網に約200個体が掛かっていた。網は破損していなかった。

 同センターの秋山秀樹あきやま・ひでき・東シナ海海洋環境部長は「2005年度の大量発生の時と出現状況が似ている。注意が必要だ」と話している。

 調査船は、6月19〜25日、東シナ海を航行し観測と採集をした。クラゲは、かさの直径が10〜60センチで、10メートル四方に2〜3個体の群れを成していた。23日には韓国・済州島北側の東シナ海でも目視で確認した。

 エチゼンクラゲは成長するとかさの部分が直径1〜2メートルにもなり、重さ100キロを超す世界最大級のクラゲ。最も発生の多かったとされる05年度は、定置網の破損や漁獲量の減少など10万件を超す漁業被害が報告された。

エチゼンクラゲ:3年ぶり大発生の兆し 日本近海

2009年07月02日 毎日新聞

 ズワイガニとともに大量に水揚げされるエチゼンクラゲ=兵庫県豊岡市の津居山港沖で2006年11月撮影

 水産庁は2日、長崎県対馬市で6月30日、深刻な漁業被害をもたらす大型クラゲ「エチゼンクラゲ」が定置網に混入したと発表した。東シナ海で実施した調査でも大群を確認。同庁は「3年ぶりに大発生する可能性がある」と警戒を強め、クラゲの混入を防ぐための漁具の改良に助成金を出すなどして被害を最小限に食い止める考えだ。

 エチゼンクラゲは最大で直径1メートル以上になり、05、06年に日本近海で大発生した。中国の経済発展を背景に工場や家庭からの排水で東シナ海の富栄養化が進んだため、個体数が増加。海流に乗って北上するが、地球温暖化で水温が上昇したため日本海でも生き残るようになったとみられる。【太田圭介】

エチゼンクラゲ、大襲来の恐れ 広島大教授ら調査

2009年06月30日 asahi.com

定置網にかかったエチゼンクラゲの群れ=07年、石川県輪島市沖、伊藤恵里奈撮影

 重さ200キロにもなり、漁業に多大な被害を与えるエチゼンクラゲが今年、大発生する恐れが高いことが、中国沖の調査で分かった。成長途中の個体が例年になく多いという。今後の増え方や海流の状況によっては、太平洋側の沿岸域にも侵入して史上最大級の被害を出した05年に匹敵する大量のクラゲが、日本に押し寄せる可能性がある。

 調査したのは、上(うえ)真一・広島大教授(生物海洋学)らのグループ。上教授は、国が進める「クラゲ類の大発生予測・制御技術開発研究」のリーダーを務める。結果は、独立行政法人・水産総合研究センターに報告され、クラゲの発生予測に使われる。

 06年から日中を結ぶフェリー上からエチゼンクラゲの発生量を観測。黄海南部、東シナ海北部で海面10メートル四方当たりの個体数を調べてきた。

 20〜24日の調査によると、傘の直径が10〜50センチ大のエチゼンクラゲが平均2.14匹観測された。同じ6月のデータでみると08年(平均0.01匹)の約200倍。日本海側の定置網などに大きな被害を与えた07年(0.77匹)と比べても約2.8倍にのぼる。

 07年の事前調査では、クラゲの群れがやや韓国寄りで観測された。一方、今年はクラゲの群れが日本側に張り出して分布し、太平洋側を含めた日本沿岸に流れ着きやすい状況になっているという。

 上教授は「被害が大きかった05年のような規模になる可能性がある」と警戒を呼びかける。

 エチゼンクラゲは、春に中国近海で発生し、成長しながら海流に乗って北上。日本には夏から冬にかけて押し寄せる。例年7月ごろに先頭の群れが対馬に到達する。大型になると5〜10匹程度でも網が破れて使えなくなる。網の中の魚を毒針で刺して品質を低下させるなどの被害を生む。

 日本海側から津軽海峡を抜けて岩手などにも回り込む。特に量が多かった05年には、高知や和歌山、千葉県の房総半島沖など、太平洋側の広い海域にも押し寄せた。この年は青森県だけで約20億円の損失が出るなど、全国で延べ10万件を超す被害が報告された。05年のピーク時には、対馬海峡から1日に3億〜5億匹が日本海に流入したと推計されている。(山本智之)

海の厄介者、化粧品化にめど ミズクラゲからコラーゲン抽出

2009年06月20日 中日新聞

日本各地に生息するミズクラゲ。コラーゲン抽出を大規模に行う工業化技術が開発できた(県立大提供)

 ミズクラゲからコラーゲンを簡単に抽出する方法を確立した県立大と日本原子力発電(原電)は、大阪市の化粧品原料メーカーによってこの技術の実用化にめどが付いた、と発表した。県立大の研究成果が工業利用されるのは初めて。海の“厄介者”とされるミズクラゲが、医療品や化粧品に生まれ変わる日が近づいた。

 ミズクラゲからのコラーゲン抽出に実用化の道を開いたのは、テクノーブル(大阪市)。県立大と原電から、特許出願中の抽出技術を利用する了解を得て約3年前から実用化の研究に着手していた。高品質のコラーゲンを量産化するための「抽出設備と手法を整えた」(同社小椋規子研究員)という。

 県立大などが開発したコラーゲン抽出法は、冷凍保存したミズクラゲを解凍し、水に溶け出た組織に塩を加えてコラーゲンを沈殿回収するという手順を踏む。同社の抽出法も、この方式をベースに改良を加えたという。

 コラーゲンはタンパク質の一種で、美容効果などの面で注目を集めている。含有量0・1%というミズクラゲのコラーゲンについて、小椋研究員は「牛や豚、魚のコラーゲンとはまったく違う手触り。新しい化粧品ができるのでは」と期待しており、今後、化粧品メーカーに新原料として提案していく。

 ミズクラゲの研究を2003年度から続けていた県立大の吉中礼二名誉教授(72)は「もともとは大量発生するミズクラゲを何か有効活用できないか、と始めた研究。(クラゲを)新しい資源として、世に送り出せうれしい」と歓迎していた。 (尾嶋隆宏)

 【ミズクラゲ】 全国の海に生息し、成体はかさの大きさ15〜30センチ。県近海では4月〜11月ごろまで見られ、夏場に大量発生する。食用には向かず、ほとんどが利用されていない。漁業や原発への影響が報告されている。


エチゼンクラゲ:粉末で混ぜ、名物「羽二重餅」に 小浜水産高生が共同開発 /福井

2008年08月20日 毎日新聞 地方版

クラゲ粉末入りの「えくらちゃん 潮羽二重餅」と小浜水産高のクラゲ・ガールズのみなさん=県庁で

 粉末状にしたエチゼンクラゲを、福井名物「羽二重餅」の中に入れた新商品「えくらちゃん 潮羽二重餅」(12個入り、630円)が県内のスーパーで発売された。商品を共同開発した県立小浜水産高の生徒たちは「漁業に影響を与えるエチゼンクラゲのイメージ・チェンジを図りたい」と、売れ行きに期待を寄せている。【大久保陽一】

 同校水産経済科はマーケティングの授業を通して、エチゼンクラゲの粉末を使った商品開発に取り組んでおり、06年にも「えくらちゃん さくさくクッキー」を京福商事(福井市)と共同開発し、大ヒットさせた。今回は「福井になじみがあり、手軽に食べられるお菓子」ということから羽二重餅を選んだという。

 商品開発に携わった女子生徒4人は「クラゲ・ガールズ」としてPR活動を展開する。県水産課によると、9月以降に県庁前で開かれる見込みの「漁業者直販さかな市」でもPRする予定。

 ◇甘さの中に塩辛さ

 商品化の報告のため、県庁に吉田優一郎農林水産部長を訪ねたクラゲ・ガールズの上見久実さん(16)=同校2年=は「甘さの中に塩辛さが引き立っておいしい。福井の新たな名物にしたい」と意気込んでいる。

 問い合わせは京福商事(0776・27・1765)。


韓国沿岸にクラゲ襲来! 昨年の40倍以上か

2007/07/28 朝鮮日報/朝鮮日報JNS パク・チュヨン記者 クォン・ギョンフン記者

 韓半島(朝鮮半島)を囲む海で、「クラゲの襲撃」に対する警戒が高まっている。

 国立水産科学院が27日発表したところによると、ヒトを刺すエチゼンクラゲなどの有毒種が先週、韓半島の西海岸、南海岸に出現した後、今週は東海岸にも姿を現したという。韓国沿岸に現れた有毒クラゲはエチゼンクラゲのほか、カツオノエボシ、ハチクラゲ、ユウレイクラゲなどだ。

 同科学院海洋研究チームのユン・ウォンドゥク博士は「水温上昇、海洋汚染などで今年は例年よりもクラゲが増えそうだ」と指摘した。海面1平方キロ当たりのクラゲの個体数は、昨年8月の2万5000匹から今年は最高で40倍の100万匹以上にまで膨らむ見通しだ。

 済州市は管内にある梨湖、咸徳、挟才などの海水浴場6カ所のうち毎日1カ所に漁船と漁業指導船を計12隻投入し、クラゲの捕獲に乗り出した。今年はクラゲ捕獲専用の網も開発した。

エチゼンクラゲに医薬品・化粧品の原料成分…理研など発見

2007年06月02日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 日本海沿岸に大量に押し寄せて深刻な漁業被害の原因となっている厄介物のエチゼンクラゲに、医薬品や化粧品などの原料となるたんぱく質が大量に含まれていることを、理化学研究所などの研究グループが発見、精製に成功した。

 1日付の米専門誌ジャーナル・オブ・ナチュラル・プロダクツ(電子版)に発表した。

 このたんぱく質は「ムチン」と呼ばれ、オクラやキクラゲに含まれるヌルヌルした粘液の主成分。人間では胃などの消化器や粘膜に存在する。臓器や組織の表面を保護したり、異物をとらえて体外に排出する効果があり、保湿成分として化粧品にも使われる。

 研究グループは2年前に、エチゼンクラゲからムチンの抽出に成功、「クニウムチン」と名付けた。人間のムチンと構造が非常によく似ており、医薬品などの原料として利用可能だという。

 3トンのエチゼンクラゲから約1キロ・グラムのクニウムチンが抽出できる。研究グループは「工業化も比較的簡単。付加価値の高い資源に転換する道となるだろう」と話している。

クラゲ考える国際シンポ開幕

2007/05/30 中国新聞地域ニュース

 地球温暖化に伴い、世界各地で報告されているプランクトンやクラゲの異変を考える学会「動物プランクトンの生産に関する国際シンポジウム」が29日、広島市中区の広島国際会議場で、4日間の日程で開幕した。 同シンポはアジアでは初で、60カ国の450人が参加。 クラゲ研究者の上真一広島大副学長が開会宣言で、エチゼンクラゲ大発生など懸案を抱えながら、研究体制の遅れたアジア開催の意義をアピールした。

ミズクラゲ対策網の開発へ

2007/05/30 中国新聞地域ニュース

 山口県漁協と県は、水産大学校(下関市)に委託して、瀬戸内海で漁業被害が問題化しているミズクラゲと魚を分別する対策網の開発を始めた。 クラゲの水流に流されやすい性質を利用し、網の上部にクラゲだけが集まるよう、仕切り網を設けるなどの検討をする。 同校では、通常の底引き網でクラゲがどう動くかを確かめるため、水中ビデオで撮影を始めた。8月にも試作品で試験に入り、来年度の実用化を目指す。

【萬物相】韓国の廃棄物で汚された西海

2007/03/09 朝鮮日報/朝鮮日報JNS ハン・サムヒ論説委員

 九州の小さな漁村・水俣では、網をかじるネズミを退治するため、古くからネコが飼われてきた。ところが1950年代の初めから、よだれを垂らしながら奇妙な動きを見せ、けいれんして死亡するネコが観察され始めた。人々は「ネコのてんかん」と呼んだ。

 1956年からは手や足が麻ひし、目がよく見えず、言葉もおぼつかない子どもたちが現れた。さらには奇形児まで報告されるようになった。

 当初は風土病ではないかと考えられたが、後になって新日本窒素肥料(現在のチッソ)の工場から出た廃水が原因であることがわかった。廃水の中に、神経を冒す成分である水銀が含まれていたのだ。

 当時、海水中の水銀濃度はせいぜい0.0006PPM(PPMは100万分の1を表す単位)にしかならなかった。しかし汚染されたプランクトンを小さな魚が食べ、その魚を食べた大きな魚が人間の口に入ることで、水銀は濃縮されていった。

 やがてこの地域の魚の体内には10−50PPMの水銀が蓄積し、人の場合には最高で700PPMにまで濃縮された。これは海水中の濃度の数万から数十万倍にあたる。海には有害物質を濃縮する働きがあるのだ。

 7日に仁川近海で環境団体と漁民たちが海でのゴミ投棄反対を訴え、海上デモを行った。

 昨年1年間に群山・蔚山・浦項側の3カ所の海に捨てられた廃棄物の量は、計881万トンにもなる。これには畜産廃水、残飯廃水、下水に含まれる沈殿物などが含まれる。あらゆる汚物をまとめて海に捨ててきたことになる。これら汚物運搬船の3分の1が仁川港から出航しているという。

 10年以上も前の話だ。中国青島海洋大の教授が西海(黄海)上空を航空観測していた際に大型の赤潮を発見し、海洋学の国際学術誌に報告した。報告書は「赤潮は陸地に近い海で発生するものだ。実に奇妙だ。ひょっとして黄砂と共に運ばれた有機物質が海に落ちたのだろうか。」とあった。

 この論文を見た韓国の海洋学者は「身の縮む思いだった」と語った。なぜなら、赤潮が観測されたところは韓国がゴミを捨てている水域だったからだ。

 西海の平均水深は44メートルで、同1361メートルの東海(日本海)の30分の1にも満たない。海水の動きも緩慢で、海流の速度を測るのも難しいほどだ。そんなため池のような海に、毎年数百万トンもの汚物を運んできては投棄したことになる。中国の大気汚染に文句を言えるような立場ではない。

 環境汚染はガンが健康な体をむさぼるのに似ている。目につかないところでゆっくりと進行するからだ。海に捨てられた廃棄物は薄められ、浄化されたように見えても、結局は「生物濃縮」を経て、わたしたちの身に降りかかってくるのだ。

韓国の海は廃棄物だらけ!?

2007/03/08 朝鮮日報/朝鮮日報JNS 仁川=許允僖(ホ・ユンヒ)記者
年間1000万トンのゴミを海洋に投棄

 韓国の海に1年間で1000万トン近くの陸上廃棄物が捨てられ、海を汚染していることが分かった。これと関連し、仁川地域の漁民と仁川環境運動連合の会員30人余りは7日、仁川港沿岸ふ頭前の海上で海洋投棄の中断と関連法改正を要求するデモを行った。

 海洋水産部によれば、陸上で発生した廃棄物を合法的に海洋に投棄できるよう定めた1988年以降、海洋廃棄の量は年々増え続け、90年の107万トンから2005年には993万トンにまで増加しているという。

 特に05年の投棄量の3分の1が仁川港を通じて投棄されており、海洋投棄されるのは主にふん尿、畜産廃水、食品廃水、下水汚泥などだ。これらの廃棄物はコンテナに積み込まれ、船から投棄される。

 現在、海洋水産部は東海(日本海)の2カ所と西海(黄海)の1カ所を廃棄場に指定・運用している。各廃棄場は、「東海丙」(浦項東方125キロ沖合、水深200から2000メートル)、「東海丁」(蔚山南東方63キロ沖合、水深150メートル)、「西海丙」(群山西方200キロ沖合、水深80メートル)などの海域に位置している(なお、ここでの「丙」や「丁」とは、干支の十干〈甲乙丙丁…〉から来ており、海の一定地域を指定する際に便宜上つけたもの)。このうち、東海丙、西海丙の海域は既に飽和状態を超え、重金属汚染が深刻な状態にある。

 廃棄物の海洋投棄が激増した理由は単純で、リサイクルや焼却など、陸上での処理に比べて費用が4倍から15倍も安いためだ。しかし、海洋汚染の深刻化を懸念し、海洋水産部では毎年100万トンずつ廃棄物の排出量を減らし、11年までに海洋投棄される陸上廃棄物の量を現在の半分以下に減らす計画を発表している。

 仁川環境連合のチョ・ガンヒ事務処長は「西海は水深が浅く、湾状になっているため、東海よりもはるかに環境の変化にぜい弱だ。近い将来、中国が膨大な量の海洋を投棄することが予想され、韓国が直ちに海洋投棄を中断しない場合、中国側に中断を要請する名分がなくなる」との懸念を示した。

 一方、米国や欧州連合(EU)など先進国では、10数年前から下水汚泥や畜産廃水の海洋投棄を禁止しており、焼却処分をするか、レンガやたい肥などにリサイクルしているという。

エチゼンクラゲ、海の恵みに「変身」

2007/01/08 The Sankei Shimbun Web site

 日本海沿岸に大量に流れ着き、漁業に被害を与えるエチゼンクラゲ。その栄養成分に着目し、家庭料理の食材として普及させるための研究会が今月中に発足する。体内に含まれる糖タンパク質を病気の診断薬向けに精製する研究も本格化。大量廃棄される「海の厄介者」を有効活用する試みが模索されている。

月内に研究会、活用を模索

 エチゼンクラゲは傘の直径が約1メートルにもなる巨大クラゲ。近年、夏から秋にかけ、本州の日本海沿岸を中心に大量に漂着するようになった。定置網が破られたり、流されたりと深刻な被害が相次ぎ、漁業関係者を悩ませている。食用に加工するにも大きな設備投資がかかり、これまで相手にされていなかった。

 こうした中、独立行政法人「水産大学校」(山口県下関市)の上野俊士郎教授(浮遊生物学)は「大量に家庭で消費され、資源生物になれば、駆除の問題は解決し、漁業関係者が利益を生み出すことも可能」と考え、研究会を設立して新たな食材としての可能性を探ることにした。

 研究会にはクラゲの飼育種類数で世界一を誇り、エチゼンクラゲ料理をすでにレストランで提供している加茂水族館(山形県鶴岡市)や、京都府立海洋センター(京都府宮津市)などが参加。全国各地のクラゲ研究団体が家庭料理への利用策を検討する。

健康食材、病気の診断薬

 上野教授によると、エチゼンクラゲは水分が多く、においが強いが、低カロリーで美肌効果があるとされるコラーゲンを含む。血圧を下げる効果もあるため、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策にも有効で、「まさに現代人向けの健康食材」という。

 日本に漂着するのは年間約5億匹といわれ、加工すれば食用部分の総量は約100万トン。中国料理の食材として輸入されているクラゲ加工品の約100倍の量という。

 研究会では今後3年間かけ、一般家庭の食卓にどんなクラゲ料理が並んでいるかをマーケティング調査。日本人向けの料理法や流通経路の研究を進める。

 上野教授は「将来的には消費者にも研究会に入ってもらい、アイデアを出し合ってエチゼンクラゲのマイナスイメージを払拭(ふっしょく)したい」と話す。

                   ◇

 一方、福井県立大食品化学研究室の吉中礼二教授らのグループは、病気の診断薬などに使われる糖タンパク質の一種「レクチン」を、エチゼンクラゲから精製する方法を開発した。

 レクチンは、がんや白血病などの診断薬や研究用試薬として医療、化学分野で用いられる。多くの動植物から精製されるが、生物によって性質に違いがあり、同研究室によると、大豆由来で1ミリグラム当たり3000円、カブトガニ由来で同4万3000円という高価格で販売される。

 同研究室は、エチゼンクラゲの抽出物から独自の方法でレクチンを取り出し精製。他の生物由来のレクチンと比べて独特の構造と分かり、試薬としての価値も期待できるという。

 エチゼンクラゲは1キロ当たりレクチン約30ミリグラムを含むといい、単純計算だと50キロの小型クラゲ1匹でも450万円相当の試薬を生む。ただ、商品化するには、精製するレクチンの純度を高める必要があり、この課題を3月までに解決して特許出願を目指す考えだ。

エチゼンクラゲは宝の山? 福井県立大、レクチン精製法開発

2007/01/05 FujiSankei Business i.

 漁網に大量に引っ掛かる厄介者が宝の山になる?

 福井県立大食品化学研究室の吉中礼二教授らのグループは、病気の診断薬などに使われる糖タンパク質の一種「レクチン」を、大型クラゲ「エチゼンクラゲ」から精製する方法を開発した。

 レクチンは、がんや白血病などの診断薬や研究用試薬として、医療、化学分野で用いられる。多くの動植物から精製されるが、生物によって性質に違いがあり、同研究室によると、大豆由来で1ミリグラム当たり3000円、カブトガニ由来で同4万3000円という高価格で販売される。

 同研究室は、エチゼンクラゲからの抽出物を独自に調整した「カラム」という筒に通過させるなどしてレクチンを取り出し、精製することに成功した。他の生物由来のレクチンと比べて独特の構造と分かり、試薬としての価値も期待できるという。

 エチゼンクラゲは、最大で傘の直径が1メートルを超え、重さ150キロにも達する。1キロ当たりでレクチン約30ミリグラムが含まれているといい、単純計算だと、50キロの小型クラゲ1匹でも450万円相当の試薬を生む。

 ただ、商品化するためには、精製されるレクチンの純度を高める必要がある。同研究室は、この課題を3月に開催される日本水産学会までに解決し、学会発表後に特許出願を目指す考えだ。

 秋から冬に大量発生するエチゼンクラゲ被害に各地の漁業関係者が頭を悩ませる中、同研究室の横山芳博・助教授は「柔らかい海のダイヤとして、発生を喜べるようにしたい」と研究に意欲を見せている。

大型クラゲ来遊収束へ/本県沿岸

2006年12月29日 東奥日報/center>

 本県沿岸のエチゼンクラゲは、今月から次第に数が減り、来遊は収束に向かいつつある。これまでに日本海、津軽海峡、太平洋を中心に、多いところで一万匹近くの目撃情報が県に報告されていたが、今月中旬には一カ統の網に千匹を超すクラゲが入ることはほとんどなくなった。県水産振興課は「操業に支障が出ない程度にまでクラゲが減ったのでは。昨年度は二月まで来遊していたが、本年度は早く収束しそうだ」とみている。

 本県へのクラゲ来遊は九月十五日に三沢市沖で一匹が見つかったのを皮切りに、十月上旬には日本海の定置網などに大量に入り始め、太平洋側でも千匹を超えるクラゲが入網するようになった。それに伴い、各地では作業の遅れや網の破損などの被害が出た。今月に入ってからも千匹を超える目撃があったが、下旬以降は百匹未満にとどまっている。

 クラゲの出現情報を収集・公開している「漁業情報サービスセンター」(東京)のまとめでは、今も一部の日本海や岩手県、宮城県などで出現しているものの、数はピーク時より激減している。

新江ノ島水族館世界初の試み エチゼンクラゲ 人工繁殖成功

2006/12/28 中日新聞

 クラゲ飼育に定評のある新江ノ島水族館=藤沢市片瀬海岸=が、世界で初めてエチゼンクラゲの人工繁殖に成功し、二十六日から子クラゲの展示を始めた。

 さまざまな種を集めた「クラゲファンタジーホール」の一角に展示された子クラゲは、かさの直径が約三センチ。クラゲ独特の拍動を始めると一回り大きくなる。透き通った外皮の中に、褐色や薄桃色の内臓などがかいま見えた。

 エチゼンクラゲは日本近海に生息するクラゲとしては最大で、かさの直径は一メートル以上、体重は二〇〇キロにまで成長する。巨体からは想像がつかないほど繊細な一面もあり、かすり傷がもとで溶けてしまうことも珍しくない。飼育自体が大変困難な種として知られている。

 近年は北陸地方などの沿岸で大発生を繰り返し、底曵(そこび)き網や定置網といったクラゲ漁を目的としない漁業を著しく妨害。その毒により、一緒に捕らえられた魚介類の商品価値を下げてしまう被害も報告されている。

 同館では「被害を未然に防ぐには、生活環境をよく知る必要がある。今後、いろいろな機関との共同研究を視野に入れ、全容を解明していきたい」と話している。 (加藤木信夫)

嫌われ者エチゼンクラゲは健康食

2006年12月18日 スポニチ

 日本海側を中心に大量発生、深刻な漁業被害をもたらしているエチゼンクラゲを食材とし、問題を解決しようという研究グループが来年1月に発足する。“海の厄介者”とも言われているが、実は栄養豊富な健康食。新たな食材としてもてはやされる日が来る?

 研究グループのメンバーは水産大学校(山口県下関市)生物生産学科の上野俊士郎教授(57)ら研究者約10人、青森県などの地方自治体、クラゲ飼育展示数世界一を誇る加茂水族館(山形県鶴岡市)など。エチゼンクラゲの料理法だけでなく、大量消費を前提とした漁獲方法から流通経路までの研究が目的。上野教授は「現状はほとんど廃棄物扱いだが、大量消費されて資源生物となれば駆除の問題も解決し、逆に利益を生み出せる」と話す。

 エチゼンクラゲは夏から秋にかけて日本海側を中心に大量発生。定置網が流されたり、破れるなどの被害を起こしている。巨大でグロテスクな外観、水分が多く臭みが強いことなどから食品への加工が難しいが、上野教授は「まさに現代人向けの健康食材」と指摘。低カロリーで中性脂肪や血圧を下げる作用があり、メタボリック症候群に悩む人にお勧めという。

 実際、京都府京丹後市のアイスクリーム店「ミルク工房そら」はエチゼンクラゲ入りのアイスクリームを販売。冬だけの限定商品で、1個300円(120ミリリットル)。牛乳やラム酒に1晩つけて臭みを取り、細かく切ったものが、ふんだんに入っている。ナタデココのような食感とコラーゲンの美肌効果が女性を中心に人気を呼び、昨年はネット販売だけで約3000個を売ったという。担当者は「漁業関係者の方が本当に困っているので、何とか力になりたかった。クラゲ撃退の一助になれば」と話す。

 また、現在、エチゼンクラゲ料理を食べられるのが山形県鶴岡市立加茂水族館のレストラン。1番人気は「クラゲ定食」(750円)。生春巻きの皮の代わりに薄切りのエチゼンクラゲを使った春巻きで、コリコリとした食感が特徴。定食以外にも「クラゲあんかけごま豆腐」「クラゲかまぼこ」といった1品料理や「クラゲコーヒーゼリー」などがを楽しめる。

海の厄介者・エチゼンクラゲ、大三島と桜島で肥料化実験へ…愛媛大とマルトモ 砂漠救う? 保水力と栄養分着目

2006年12月12日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 日本海などで深刻な漁業被害をもたらしているエチゼンクラゲを、砂漠の緑化に役立てようと、愛媛大(松山市)と伊予市の食品製造会社が共同研究を進めている。保水性が高く栄養分が豊富なクラゲを乾燥し、肥料にする技術で、大型のエチゼンクラゲを使えば、大量に安価な肥料が調達できるというアイデア。同社は肥料化技術の特許を出願しており、漁業関係者は「海の厄介者が砂漠の救世主になる日が来るかも」と期待している。

 愛媛大農学部の江崎次夫教授(環境緑化工学)のグループと食品製造会社「マルトモ」(伊予市)。エチゼンクラゲによる漁業被害を受け、昨年6月から実験を行っている。

 江崎教授によると、クラゲの体は99%が水と塩分で、残り1%は窒素、リン酸、コラーゲンなどの栄養分。細胞一つひとつが大きい「高分子細胞構造」により、大量の水を吸収できる特徴がある。

 実験では、マルトモが持つクラゲの乾燥技術を使って2〜3センチ大の乾燥片をつくり、ブナ科のアラカシの苗に与えて5か月間、屋外の植木鉢で育成。その結果、乾燥片を与えた鉢は15〜18センチに成長し、与えなかった鉢(8〜9センチ)と比べて、2倍近い差があった。

 江崎教授は、雨水を吸収した乾燥片が適度に鉢を潤したほか、クラゲの栄養分がアラカシの成長に効果を表したと結論。来年春には大規模な山林火災に遭った今治市の大三島や、山灰性の土地が広がる鹿児島市の桜島で、実際に日本海のエチゼンクラゲを使い、植物を根付かせる実証実験を行う計画という。

 江崎教授は「将来は、アフリカや中国など特に砂漠化が心配される土地での実用化を目指したい」と話している。

エチゼンクラゲ、予想外の大量出現 海流影響か

2006年10月22日 asahi.com

 巨大なエチゼンクラゲが9、10月と日本海沿岸に大量出現し、定置網漁を打ち切る漁協が相次いでいる。中国沿岸の今夏の調査では分布密度が低かったことなどから、日本への影響は小規模とみられていたが、出現数は大量発生した昨年を上回る地域もある。沖合よりも沿岸に集中しており、関係府県は、クラゲを運ぶ対馬海流が平年よりも列島寄りに流れる変化があり、影響したのではないかとみている。

 福井県南越前町の河野村漁協は定置網漁を4カ所で実施。この時期はハマチやサワラなどが取れるが、9月以降、多い時で約5000匹のエチゼンクラゲがかかるようになった。大きさは50センチ〜1メートルほど。網への被害を防ぐため今月19、20日に平年より1カ月早く漁を打ち切った。同漁協は「かかるのはクラゲばかり。今年は少ないと聞いていたのに」と嘆く。

 同県内では9月下旬から出現数が急増。県定置網漁協などによると、県内26カ所のうち10カ所が漁を打ち切った。

 京都府でも9月上旬ごろから、多い時には4000匹が網にかかるようになった。定置網漁34カ所のうち、京丹後市など8カ所が休漁中だ。石川、鳥取両県でも漁打ち切りの被害が出ている。

 エチゼンクラゲは中国大陸沿岸で発生しているとされる。中国の水産研究機関が6月に実施した調査では分布密度は昨年比10分の1程度だった。日本国内でも8月までの出現数は少なかったため、水産総合研究センター日本海区水産研究所(新潟市)は昨年に比べ小規模との見通しを示していた。

 京都府立海洋センター(京都府宮津市)は「府内では昨年より出現数が増えた個所が多い。日本海のエチゼンクラゲの総量自体は少ないかもしれないが、対馬海流が平年と比べ府の沿岸寄りに流れてきているのでは」と推測する。日本海区水産研究所によると、海流全体が沿岸に寄ったとのデータはないが、局所的に起きている可能性はあるという。

エチゼンクラゲ1日数千匹

2006/10/21 中日新聞
嘆く漁師「網上げられん」

 大型クラゲ(エチゼンクラゲ)の被害が県内各地の漁場で続いている。沖合では昨年より数が少ないものの、沿岸部の定置網には1日で数千匹が入る日もあり、漁を打ち切る組合が増えてきた。20日未明から、記者は漁船に同乗した。

 午前4時前、越前町の小樟漁港を出た定置網漁船「恵比須丸」の船頭榎太喜男さん(59)は、クラゲの重みで海中深く沈んだ網を見て嘆息した。「これじゃ網を上げられん」。海面を漂うクラゲの群れを恨めしげに眺めながら港へ引き返すと、ダイバーを乗せて再び出港。包丁で網を切り、たまったクラゲを流すためだ。

 網を切ると、3日間たまったクラゲ数万匹が一斉に流れ出した。「これほど多いのは経験がない」。夕方、網の点検に向かい、再度クラゲ群を目にした榎さんは漁の打ち切りを決断した。「とても漁にならん」

 県定置網漁業協同組合によると、加盟する21組合のうち、すでに9組合が網を引き上げて漁を終えた。理由は、春夏の豊漁で無理して漁を続ける必要がなくなったことや魚の数自体が減ってきたこともあり、クラゲの被害だけではないが、その影響は明らかだ。気まぐれな“厄介者”に、漁師たちの悩みは尽きない。 (字井章人)

巨大クラゲで定置網に被害 福井県越前町沖

2006/10/12 中国新聞ニュース

 最盛期を迎えた定置網漁に深刻な被害をもたらすエチゼンクラゲが今年も日本海側に押し寄せるようになり、福井県越前町沖では12日、漁師らが定置網の手入れに追われた。

 同日早朝、米ノ定置網組合(同町)は沖合数キロに設置した定置網を引き上げようとしたが、かさの直径1−2メートルの赤みを帯びた約600匹のエチゼンクラゲが入っていたため、水揚げを断念。約20人の漁師が2時間がかりで除去してから、網を仕掛け直した。

 漁師生活54年目の山本明男さん(72)は「本来ならサワラが多くとれる時期やけど、今年はもう商売にならん」と肩を落とした。

 水産庁によると、エチゼンクラゲの漂着は来年2月ごろまで続く。昨年より少ないが定置網に入る量には大差はなく、定置網がクラゲの重さで破れるといった被害が日本海側で相次いで報告されているという。

エチゼンクラゲの食用化指導

2006/10/12 中国新聞地域ニュース

 漁業被害をもたらす大型のエチゼンクラゲの食用化を紹介する公開講座が14日午後1時から、下関市の水産大学校で開かれる。 低カロリーな食材として活用しようと企画。 クラゲまんじゅう、アイスなどの試食もある。無料。 研究を続ける上野俊士郎教授らが大学祭に合わせて計画。謎の多い生態や中国料理の食材となっている中国の状況を講演する。 試食用に、まんじゅうやアイスなど4種類の加工品を取り寄せる。

大型クラゲ駆除技術開発へ 水産庁

2006/06/29 The Sankei Shimbun

 水産庁は、エチゼンクラゲの大量発生が続いている日本海で、駆除専用の漁網の効果や魚群探知機を使ったクラゲの分布などの調査に11月から着手する。1カ月間データを収集し、効率的にクラゲを駆除する技術開発につなげたい考えだ。

 調査は、同庁の漁業調査船で実施。船で引きながらクラゲを裁断できる大型の漁網に水中カメラを取り付け、船の速度を変えるなどして駆除効果を検証する。

 目撃情報や漁網にかかった数などで判断するしかなかったクラゲの量や分布範囲を魚群探知機でどれだけ把握できるかも調べる。

 水産庁によると、大型クラゲの問題は平成14年ごろから深刻化。漁網が重みで破られたり、水揚げに混入して魚の鮮度を落とすなどの被害が出ている。

 今年は9月中旬以降、島根沖から福井沖にかけて部分的な大量発生が確認されており、福井県では7つの定置網漁業組合が早めに操業を終えるなど影響が出ている。

「今年もまたクラゲか…」 山陰沖に大量の「ミズ」と「アカ」

2006/06/26 The Sankei Shimbun大阪夕刊から

≪魚に傷、漁師大弱り≫

 「今年もまたクラゲか…」。昨年夏、エチゼンクラゲが被害を及ぼした山陰沿岸に、今年はミズクラゲとアカクラゲが大量に発生し、漁業関係者を悩ませている。島根・浜田沖では1日で約20トン以上が定置網などにかかることもあり、魚に傷をつけるなどの被害がすでに出始めているという。

 ミズクラゲは傘の大きさが10〜30センチ。白色で無毒だが、同10〜20センチのアカクラゲは傘に赤いしま模様があり、触手の毒で漁師が刺されることもあるという。ともに食用にはならない。漁網にかかったものは漁港まで運び処理しているが、網から取り除くのに2〜3時間もかかるという。

 島根県水産技術センターによると、クラゲは4月下旬から網にかかり始め、5月下旬には県西部から島根半島沖、隠岐諸島沖の広い海域で1日4〜5トンかかっている。ミズクラゲを中心にその後も増え続け、21日にも浜田沖の漁網に15〜20トン混入しているのが確認された。

 山口県沖でも4月以降、アカクラゲが大量に確認され、県と水産大学校が調査に乗り出した。各県ともエチゼンクラゲのように網が破れるような被害は出ていないが、「取った魚に傷をつけて価格を下げる原因になる」という。

 ミズクラゲは平成9、11、12年と山陰沿岸で大量発生したことがある。同センターは「沿岸で繁殖・成長したのが主体と思われる。海水温の条件やえさとなるプランクトンの増加が(大量発生の)原因と考えられるが、はっきりとは分からない」と話している。

エチゼンクラゲの来遊は最大級

2006/04/13 中国新聞地域ニュース

▽島根県水産センター、2月中旬まで確認

 島根県内に昨年押し寄せたエチゼンクラゲの数(来遊量)が過去最大級だったことが県水産技術センター(旧水産試験場)の調べで分かった。来遊期間も長く、漁業への被害も深刻だ。

 定置網へ数百匹以上入ったと漁協から県へ報告された件数は、二〇〇六年度はゼロだったが昨年度は八月から報告され始め九月下旬は十五件。例年だと冬までに見られなくなるのに昨年度は年明けまで続き二月中旬ようやく止まった。ただし十日ごとの聞き取りによる報告で、同じ網だと連日入った場合も一件と数えるため実際はこれよりかなり多いとみられる。底引き網などへも同じように入った。九月、十二〜一月は台風やしけのため出漁そのものが少なかった。

 被害額は、来遊ピークの九〜十一月を前年と比較した漁獲減が定置網四千万円以上、底引き網同一億七千万円以上と同センターは試算。それ以外にもクラゲをより分ける手間など操業停止や効率悪化、網が破られる被害があった。

 エチゼンクラゲ大発生の記録は一九三八年前後、五八年、九五年、二〇〇〇年、〇二年、〇三年、〇五年。近年の急増は温暖化や中国沿岸の富栄養化などが原因に挙げられるが解明されていない。

 同センターは対策漁具としてクラゲと魚を分けるフィルターのような網を開発。江津市や大田市の漁協で昨年実験し「一定の成果」があったため今年も試行するとしている。(田中伸武)

 エチゼンクラゲ 大きなものは、かさの直径が1メートル以上、重さ200キロ以上になる。中国や韓国の沿岸で発生し、海流に乗って成長しながら日本海を北上。夏から秋にかけて山陰に来遊する。エサはプランクトン。寿命は1年。

エチゼンクラゲ食品化の苦悩

2006年03月07日 エキサイト

 漁師の方々にとって最大の厄介者と言えば、エチゼンクラゲ。よくテレビニュースなどでも漁業被害の原因として取り上げられているので、皆さんも一度は見た事があるでしょう。そんなエチゼンクラゲを有効利用する為に、食品化の開発をする企業はたくさんあります。そこには、あの厄介者のさらなる厄介ぶりとの戦いがあるそうなんですが……。ということで今回は、昨年12月に「くらげポンチ」なる新くらげデザートを発売した水産加工食品メーカー『かね徳』さんにその開発秘話を伺ってみました。

 エチゼンクラゲと食品化しようと思ったきっかけは、やはり漁師の方々のため。2002年に京都府漁業協同組合連合会からの相談を受け、現地での被害状況を目の当たりにして「なんとかしなければ」という思いが強まったそう。

 早速、食品化に向けて研究を進めるも、そこでエチゼンクラゲの厄介ぶりに直面。体のサイズが大きすぎる為、くらげ食品に欠かせないコリコリとした食感が出せない。さらに特有の渋みや臭みが食品化の邪魔をしました。

 しかし、昨年から発生したエチゼンクラゲは、サイズも小さく渋みや臭みもなかった為、食品加工に踏み切ったそうです。そして度重なる試行錯誤の結果、生まれたのが「くらげポンチ」。ラム酒とシロップで味付けされ、ナタデココのような食感を楽しむ事が出来る新感覚デザートだそうです。

 果たしてこの「くらげポンチ」は売れているのか? 失礼だとは思いつつ伺ってみると「そこまで売れていない」との返答。といっても12月に発売されたばかり、さらにネットのみの販売なのでまだまだこれからの商品。皆さんも機会があれば是非食べてみて下さいね。

 ちなみにこの「くらげポンチ」の売り上げの一部は、エチゼンクラゲが水揚げされる漁港の伊根漁業協同組合に還元しているそうです。昔から「困った時はお互い様」とはいいますが、まさに漁港と水産加工メーカーの強い絆を感じるお話でした。 (木南広明)

エチゼンクラゲ

2006年01月13日asahi.com MY TOWN福島

 エチゼンクラゲの来襲で越前(福井県)の国の方々は複雑な心境に違いない。大型クラゲは古来食用にされてきた。近縁のビゼン(備前―岡山)クラゲについては、延喜式や魚鑑にも記述がある。

 クラゲ、海月または水母は古典文学にも現れる。古事記の天地創造神話では、「次に国稚く浮きし脂の如くして、久羅下(くらげ)なす漂える時」とあり、国土の固定以前を水中に浮遊する海月に例えている。

 分類は刺胞動物門、鉢クラゲ綱、ビゼンクラゲ科、エチゼンクラゲ属となる。イソギンチャクやサンゴのような原始的な腔腸(こうちょう)動物である。

 本種はクラゲ類中最大、傘の直径60―70センチ、ときに1メートルを越え、重量150キロになる。半透明ベージュ色、表面は鮫肌(さめはだ)状でザラザラしている。触手の全長は5メートルにもなり、無数の刺胞を備え、プランクトンを捕らえ、傘のポンプで胃に送り込む。

 鉢クラゲ類の生活には、固着生活し無性的に分裂して増えるポリプ世代と、ポリプから泳ぎだし、雌雄の別のあるクラゲ世代がある。

 近年の大発生源は富栄養化した東シナ海、黄海と推定されている。クラゲ群は対馬海流に乗って日本海沿岸を北上し越前(福井県)を経て津軽海峡から三陸、茨城、房総まで南下している。黒潮本流に乗って南回りで房総まで到達するものもいるらしい。日本列島にクラゲ包囲網が完成してしまった。

 漁業被害も甚大であり、火力発電所などの冷却水取水口にも集まる心配がある。中国、韓国を加えた国際的な対策会議が立ち上げられている。人の活動に対する原始生物の反乱でもある。

 中華風料理の大切な食材だが、にわかに土壌改良やアイスクリームなどへの利用の研究も始まった。 (絵と文・アクアマリン館長 安部義孝)

中国近海、垂れ流しで汚染深刻 2005年調査

2006/01/10 The Sankei Shimbun

 中国の華僑向け通信社、中国新聞社によると、国家海洋局は9日、2005年の中国の海洋環境調査結果を発表し、中国近海の汚染は依然深刻で、陸上からの汚染物質の垂れ流しが主因と指摘した。

 調査結果によると、汚染が深刻なのは遼東湾、渤海湾、長江河口、杭州湾、江蘇省近海、珠江河口など。汚染海域は計約14万平方キロに及んだ。

 昨年、陸上から流された廃水の総量は317億トンに達し、その84%は汚染物質の除去レベルが基準以下だったとしている。

 同局報道官は長期間にわたる大量の汚染物質の垂れ流しにより、生態系に「多大な悪影響を及ぼしている」と指摘した。(共同)

エチゼンクラゲをコンニャクに!?

2005年12月30日 東奥日報

 海の嫌われ者をコンニャクや調味料に−。深刻な漁業被害を与えているエチゼンクラゲを有効利用しようと、県ふるさと食品研究センター(八戸市)と下北ブランド研究開発センター(むつ市)が技術開発に取り組んでいる。

 クラゲは97%が水分のため、まず水処理技術が必要で、塩抜き技術なども求められる。県ふるさと食研は、主に無毒のかさの部分だけを扱っているが、ワカメを原料にした海藻めん「つるつるわかめ」の加工技術などを利用してめん状にしたり方形のコンニャク状などに成形加工している。

 もう一つの利用技術は調味料としての粉末化で、タンパクの苦み成分を抑制して、うまみ成分を取り出すという。

 クラゲは中華料理の塩クラゲなどに利用されている。県ふるさと食研の山日達道・水産食品化学部長は「エチゼンクラゲを邪魔者にするだけでなく、資源として有効利用する際の技術開発をしておくことが大切」と話す。

エチゼンクラゲ、年内にも駆除試験

2005年12月05日 asahi.com MyTown青森

■有効利用も視野に 県水産総合研究センター次長・小田切譲二さん

 日本沿岸に大量に発生したエチゼンクラゲが、県内の漁業に深刻な被害を与えている。今年の被害額は、大発生した03年の23億円を上回る可能性もあり、県は対策として1600万円の補正予算案を県議会の11月定例会に提出した。早ければ今月中旬に、試験船を使った洋上駆除試験も行う予定だ。県水産総合研究センターの小田切譲二次長(57)に、被害状況と対策について聞いた。(聞き手・田村剛)

 ――県ではどのような対応をしていますか。

 「『ウオダス』という漁海速報を各漁協に流すことで、エチゼンクラゲの発生情報を事前に提供したり、網にかからないようにする対策マニュアルを配布したりしています。試験船を使った洋上での駆除試験も、早ければ今月中旬に行う予定です」

 ――試験船を使った駆除試験の内容は。

 「奥に行くにつれて先が細くなっている、長さ25メートルの筒状の網を船で引いてまわるというものです。一番奥には格子状にワイヤが張ってあって、中に入ったエチゼンクラゲがバラバラに切り刻まれる仕組みです。独立行政法人・水産総合研究センターが10月に試験を実施しており、効率的な駆除が可能になることはすでに実証済みです」

 「ただ、エチゼンクラゲの死骸(しがい)が海底に積もることで、カレイやヒラメ、エビなどに悪影響を及ぼすのではないかと心配する声もあります。水中カメラでしっかりチェックする予定です」

■太平洋側も被害

 ――今年の被害は過去最悪になるとの見方もありますが。

 「まだ正確な数字はわかりませんが、被害が大きかった03年の額を上回るのは間違いないでしょう。すでに漁をやめてしまった漁業者もいる。一口に被害といっても、網が破れるなどの漁具の被害から水揚げ量の減少、漁をやめたことによる収益減などさまざま。いくらくらいになるかまだ検討もつきません」

 ――被害が拡大している原因は。

 「エチゼンクラゲが津軽海峡を通って、太平洋側にまで出現している。03年には太平洋側の被害はほとんどなかった。今回はサケの水揚げに大きな被害が出ています。日本海側でも、12、1月は寒ブリ漁、ヤリイカ漁は3月まで続くので、今後の影響が心配です。太平洋側と日本海側の両方で大発生していることが、今回の深刻さでしょう」

 ――有効利用する方法はないのですか。

 「昨年から国の研究事業に参画して、県のふるさと食品研究センターで食品としての利用を検討しています。まだ試作品の段階ですが、酢の物やつくだ煮、ココナツミルクを使ったデザートなどにすることを考えています。コストをいかに安く抑えられるかが課題です」

■隣国と協力必要

 ――大発生は来年以降も続くのでしょうか。

 「これまでも40年前後の周期で大発生してきました。ただ最近は、95年に発生して以降、02、03年にも大発生しています。近年の海水温の上昇や、同じえさを食べる魚の乱獲による減少、河川からの栄養分の流入などが主な原因と考えられています。大発生の周期は確実に短くなるでしょう」

 ――根本的な解決策はあるのでしょうか。

 「エチゼンクラゲは対馬暖流に乗って、県沿岸まで北上してきます。長崎県では30センチ程度のものが、青森では1メートル50センチにまで成長している。網にかからないようにしたり、かかったものを洋上で逃がしたりするだけでは、最後に青森県までやってきてしまう」

 「中国や韓国とも協力して発生原因を究明すると共に、まだ小さいうちに一斉に駆除する方法を考えることが、根本的な解決につながるのではないかと思います」

クラゲ共同調査費が復活 大量発生の原因究明へ

2005/10/22 The Sankei Shimbun

 2006年度予算案の閣僚折衝で22日、漁業被害が深刻化しているエチゼンクラゲ対策で水産庁が要望していた、日本と中国、韓国の共同調査事業費3億円が復活した。

 中国の上海市で今月開かれた3カ国の合同対策会議で、日本側が、発生源とされる韓国沿岸の黄海や中国沿岸の東シナ海で大量発生の原因や日本に移動する詳しい経路を調査することを提案。

 両国の正式合意は得ていないが、外交ルートを通じ、来春からの実施に向け調整中。

 エチゼンクラゲは近年大量発生を繰り返し、今年は全国ほとんどの海域に出現、重みで漁網を破るなどの被害が出ている。海水温度の上昇や富栄養化によるプランクトンの増殖などが原因との見方がある。(共同)

異変!?小型のエチゼンクラゲ増加

2005年12月18日 東奥日報

 全国の漁業者に深刻な被害を与えているエチゼンクラゲの出現状況に、異変が起きている。本県では十一月下旬ごろから、かさの直径二〇―四〇センチほどの小さな個体が太平洋沿岸で多く網に入るようになった。研究機関は大量発生による餌不足が原因と推測しているが、漁業者からは「環境に適応して、日本の近海で繁殖しているのではないか」と不安の声も上がっている。

 六ケ所村沖では一メートルを超えるエチゼンクラゲの勢力は衰え、かさと本体が分離し、死んだ状態で網に入るものも多いという。一方、小型のものは依然勢力を保っており、約六割を占めることも。下北半島や、三沢沖でも小型のものが交じり、入網量に違いはあるが、二〇〇二、〇三年の大量発生時にはなかった現象だ。

 漁業関係者は「小型のものは、突然わいたような印象。水温が一五度まで下がれば死滅するといわれていたが、一二度台でも生きており、適応力を増しているようだ。発生場所が確認されていないだけに不安」と表情を曇らせる。

 水産総合研究センター(横浜市)によると、小型のものも各地から報告があるという。同センター日本海区水産研究所(新潟市)は「日本沿岸では二〇センチ以下のクラゲは発見されておらず、近海で繁殖しないというのが定説。大量発生により、餌が足りなくなり、大きくなれないのではないか」と推測する。その一方で「生態変化が起きてもおかしくはない。(日本沿岸での繁殖が)今後もないとは言えない」と含みを持たせる。

巨大クラゲでも日中間に深い溝 中国の沿岸汚染原因/発生源は日本海の可能性

平成17(2005)年12月17日 The Sankei Shimbun

 【上海=野口東秀】日本各地の沖合に大量に流れ着き、漁業被害が深刻化しているエチゼンクラゲなど巨大クラゲをめぐる日中韓合同対策会議が十五、十六の両日、上海で開かれた。日本は有効な対策を講じるため、三国による共同調査を来年五月から実施するよう提案したが、大量発生源を「中国沿岸の東シナ海と韓国沿岸の黄海」とする日本側に対し、中国側は「あいまいな説。発生源はまだ確定していない」と疑義を呈すなど日中間の溝は鮮明であり、中国沿岸の共同調査は難しそうだ。

 会議参加者によると、今年、日本沿海にはエチゼンクラゲが大量に流れ着いており、「最も多かった〇三年の十倍から百倍」(日本側参加者)と推測されている。

 大量発生の原因については、広島大学大学院の上真一教授ら日本側は調査結果を基に、海水の温度上昇▽東シナ海に流れ込む長江が(工業排水などで)汚染され、窒素濃度が上昇するなど海が富栄養化▽動物プランクトンを餌とする魚の乱獲でプランクトンが繁殖−などの点を挙げた。その一方で、日本海ではエチゼンクラゲの子供が発見されていないことを指摘、発生源は「中国沿岸の東シナ海、朝鮮半島沿岸の黄海」と位置づけた。

 上教授は、瀬戸内海で別のクラゲが大量発生した原因と類似している点などを踏まえ、大量の若いエチゼンクラゲは海流に乗り成長しつつ七月には九州西部、対馬海峡を抜け、日本海を北上(一部は太平洋側から瀬戸内海へ)、十月には津軽海峡を抜け、三陸沿岸、房総半島に達しているとした。

 上教授は産経新聞に対し、「大量発生は中国の汚染と大いに関係する可能性がある」と話すが、中国水産科学研究院東海水産研究所の程家●主任研究員は「発生源が(成熟したクラゲのいる)日本海という可能性は大いにある」と反論した。

 程研究員は報告で、日本側の主張を全面否定はしないものの、環境汚染との因果関係は不明であり、発生源の中心は「(汚染されていない)黄海の深い場所」と言及。若狭湾の原発の影響も否定できず、漁業資源衰退との関係も分析が難しい−などと疑問を呈した。ほかにも、「調査では浙江省の沿岸などにエチゼンクラゲの親はおらず産卵場ではない」(浙江省海洋水産研究所の徐漢祥所長)などと反論が相次いだ。

 複数の中国側参加者は中国領海内での共同調査には消極的。日本側からは「発生源が特定されるのを避けたいからだろうか」との声も出た。

 対策会議には、日本から水産庁と水産総合研究センターの職員、大学研究者、中韓からは国の研究機関の専門家ら計五十人が出席した。

                  ◇

【用語解説】エチゼンクラゲ

 傘の直径は20センチから1メートル。大きいものは2メートルに及び、体重が200キロに達するものもある。長崎県沖から北海道沖の日本海、太平洋側の三陸沖を中心に出現している。独立行政法人水産総合研究センター(横浜市)によると、昭和33年に大量発生が報告されたあと、平成7年まで報告されなかったが、14年、15年と連続して大量発生が確認された。今年も北陸や東北地方を中心に全国の沖合で出現が報告されているという。エチゼンクラゲは底引き網や定置網を破るほか、クラゲの毒に魚が触れると魚の色が変色し商品価値が下がることから、漁業関係者を悩ませている。福井県や京都府の一部の漁場では操業を休止しているところもあるという。 ●=馬へんに華

エチゼンクラゲ入りアイスをネット販売

2005/12/02 IT mediaニュース

 京都府京丹後市が運営するECサイト「京の丹後屋」はこのほど、クラゲ入りバニラアイス「丹後エチゼンクラゲアイス」の受注受け付けを始めた。12月3日から3月末までの限定販売で、6個セットで2700円(税込み、送料別)

 エチゼンクラゲを細かくカットし、濃厚なアイスクリームに混ぜ込んだ。地元産の牛乳につけ込んで生臭さを解消したといい、クラゲのコリコリした食感が楽しめるとしている。

 エチゼンクラゲは今年、日本海沿岸に大量発生しており、漁の網を破ったり、漁師を刺胞で刺したりして漁業関係者を悩ませている。低カロリーで美容にもいい食材として売り出すことで、“厄介者”を有効利用する狙いだ。

 発案したのは京都府唯一の水族館「丹後魚っ知館」(うおっちかん)学芸員で、京都府立海洋高校と共同で企画した。学芸員は「エチゼンクラゲを通して全国の皆様にも丹後の海を知っていただくきっかけになれば幸いです」などとコメントしている。

エチゼンの発生数過去最悪

2005年11月23日 読売新聞 Yomiuri On-Line

定置網埋めるクラゲ 漁師怒りやり場なく

 日本海を中心に大量発生しているエチゼンクラゲの目撃数は、県のまとめで7万個を超え、漁業関係者は「過去最多の出現で、漁への影響は深刻」と頭を痛めている。魚津市の漁港から漁船に乗り、クラゲが最も多く発生している魚津沖に向かうと、網はクラゲで茶色に染まり、漁師のため息ばかりが聞こえてきた。 (文・福島利之、写真・佐々木紀明)

 街が寝静まった午前1時54分。魚津市の経田漁港に止まった藤吉水産所属の「第八藤吉丸」(19トン)をはじめとする3隻は、ライトを照らして夜の海に滑り出した。「そろそろ魚が入ってくれないと、大変なことになる」。3隻に分乗した漁師37人は、祈るような気持ちで沖合に向かった。

 10分もすると、沖合約2キロに仕掛けてある縦300メートル、横60メートルの定置網に到着。波は穏やかだが、吐く息は白い。船のかじ、網の巻き上げ、ロープのたぐりよせ……。それぞれが自分の役割を黙々とこなしていく。

 20分ぐらいすると、網が上がってきた。同時に、海の底から姿を現したのは茶色い大きなキノコのような形をした物体だった。

 傘の直径は、1メートルはあるだろうか。「ほらクラゲばかりだ」。若い漁師が憎らしげに棒でつついた。クラゲは漁師をばかにするかのようにゆらゆらと波に揺れ続ける。

 3隻の漁船は「コ」の字型を取りながら、巻き上げた網をいけすのようにして魚を追い込む。しかし、水面を覆うのは茶色い物体ばかり。この日のクラゲはやや少なめというが、目算で800個に上るという。

 本来、定置網はすべて巻き上げられるが、大きなクラゲが入ったまま上げるとその重みで網が破れてしまう。

 そこで、長さ2・5メートルほどの棒の先端についた丸網で、クラゲの間を縫うように泳ぐ魚を金魚すくいのように捕る。「クラゲのせいで網に入る魚も少ないのに、仕事が増えるばかり。いつまで続くのか」と船頭の朝野悦朗さん(68)は頭を抱える。

 網の魚をほぼ捕り終わったところで、今度はクレーンと結びつけた大きなかごでクラゲをすくう。魚がいっぱい入るはずの船底の水槽は茶色く染まり、ぬるぬるのクラゲでいっぱいになった。

 午前3時。巻き上げた網を再び、海の中に戻し、帰途に着く。港に戻る途中、漁師たちは水槽に入ったクラゲをスコップを使って海に掃き出す。茶色いクラゲの死骸(しがい)は深緑色の海に広がって泡となって消えた。漁師は黙ったままだ。

 この日の漁獲量はサワラやカマス、アオリイカなど200キロ程度。市場に出しても、せいぜい30万円の売り上げ。今は漁の最盛期だが、漁獲量は例年の4分の1もおぼつかないという。

 市場が開かれていない昼ごろにも、漁船はクラゲを駆除するだけのために沖合に向かう。「おれたちはクラゲを捕るために、漁師をやっているんじゃないよ」。ベテランの漁師が吐き出すように語った。

 船が沖に行くだけで、多額の燃料費と人件費がかかる。藤吉水産の長谷川清一社長(74)は「一番大事な時期にどうすりゃいいんだ。これじゃあ、漁師たちの給料も払えない」。どこにもぶつけようのない怒りが街を覆っていた。

【エチゼンクラゲ】 日本近海最大のクラゲ。傘の直径は20センチから1メートルで、傘の下の触手に毒を持つ。東シナ海から黄海にかけての中国沿岸や、朝鮮半島の南西部沿岸で発生するとみられ、海流に乗って日本近海に流れ着く。大量発生の原因や生態は解明されていない。

クラゲ大量発生

「海が変化している証し」漁業関係者国挙げて生態調査を

■県東部に集中

 県水産漁港課によると、富山湾では今年、9月6日に魚津市沖の網にかかったのが最初。今月14日現在のまとめでは、魚津の3万6000個を筆頭に富山の2万5000個、入善の2万4000個と続く。海流の関係で、氷見沖など県西部では少なく、魚津や黒部沖では1日に1000個以上のクラゲが網にかかる。

 水産総合研究センター(横浜市)によると、エチゼンクラゲの出現は11月末ごろまで続くという。

■被  害

 大量のクラゲが入ったまま網を引き揚げると、網が破れてしまう。県漁連によると、富山湾に仕掛けられている約50の定置網のうち、仕切り網を付けるなど網を改良したのは8つ程度。数百万円から数千万円もかかる網の改良に、漁師は二の足を踏む。

 クラゲは魚や漁師にも悪影響を与える。クラゲの毒に魚が触れると、魚は変色する。9月中旬、水揚げされたフクラギがクラゲの毒で白く変色してしまった。中身は変わらないが、価格は極端に安くなる。

 毒で皮膚が赤くかぶれた漁師も目立つ。鈍い痛みが伴ったかゆみは1週間ほど続くという。毒を含んだ水しぶきが目に入った富山市の漁師は10月下旬、目が真っ赤になり数回、通院した。今では水中メガネをして漁をする。

■発生の要因

 水産総合研究センターなどによると、クラゲの大量発生は、〈1〉海の富栄養化〈2〉海水温の上昇〈3〉“天敵”の魚が乱獲で減少――が複合的にかかわり合ったのが要因とみられている。つまり、海洋環境の変化が原因となっている可能性が高い。

 富山市漁協の浦上秀雄組合長(61)の網には16日、日本海では珍しい1メートル30ぐらいのスギという魚がかかった。沖縄で養殖されている南洋の魚だ。浦上組合長は「海水の温度が上がっている証拠」と感じている。

 県漁連の谷宣之・総務部次長は「クラゲの大量発生はもはや、根元を絶たないと対処できない。国を挙げて生態を調査する必要がある」と訴えている。

"厄介者"エチゼンクラゲ人気…福井・三国の水族館

2005年11月21日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 三国町の越前松島水族館で、海の“厄介者”のエチゼンクラゲが展示され、水槽で泳ぐグロテスクな巨体の迫力が来館者らの人気を集めている。しかし、その生態は謎に包まれたままで、プランクトンを与えても1週間前後で死んでしまい、意外にデリケートなエチゼンクラゲに「どうすれば長生きするのか」と飼育担当者の苦戦が続いている。

 同水族館では、半透明のミズクラゲなどと同様、細かく砕いたアミエビや冷凍のプランクトンを与えると補食するものの、4、5日で弱ってしまい、これまでに20匹以上を入れ替えた。ミズクラゲなどは1年以上も飼育できるといい、飼育担当者は「何の餌を与えていいか、さっぱりわからない」と悩む。

 水槽のサイズの問題もあるとの指摘もある。小型でも30〜60センチと大きなエチゼンクラゲが、泳ぎ回る専用の水槽を用意できる水族館は少ない。クラゲに詳しい元県栽培漁業センター所長の安田徹さんは「狭い水槽では活発に動けず、酸素や餌の取り入れがうまくいかないのでは」と話している。

エチゼンクラゲが漂流、漁業に深刻な影響

2005年11月09日 読売新聞 Yomiuri On-Line

ハタハタ、サケ水揚げ激減?

 東シナ海で大量発生したエチゼンクラゲが東日本沿岸の沖合にまで漂流し、漁業に深刻な影響が出ている。

 直径1メートルを超える巨大なクラゲが定置網を破損させたり、毒を持つ触手で魚を傷めたりしているもので、水産庁も対策に本腰を入れ始めた。冬の味覚の寒ブリやサケ、ハタハタ漁の最盛期を控えた漁師たちは頭を抱えている。

 新潟県佐渡市黒姫沖。十数人の漁師たちが寒ブリ用の定置網を引き揚げると、中は大量のエチゼンクラゲでぎっしり。魚の姿はまばらだ。魚だけをより分けてクラゲは刃物で裂いて海に放り出す。約2時間半の操業中、漁師たちはクラゲを捨てる作業に追われた。

 同市の稲鯨(いなくじら)定置組合の10月の定置網による漁獲収入は平年の約半分の200〜300万円に落ち込み、しかも、クラゲの重みで傷んだ定置網の補修に約400万円かかったという。

 ハタハタ漁を控える秋田県男鹿市戸賀湾沖の漁場でも10月下旬に約5000体が出現。県漁協北浦総括支所によると、漁船1隻の1か月の漁獲収入は平年の5分の1以下の100万円を割り込むケースもある。

 大型クラゲは津軽海峡を越えて太平洋側にも出没。岩手県普代村漁協ではサケ漁が本格化した10月24日、定置網の一部がクラゲの重みで切れ、1週間ほど操業をストップ。前年の同じ時期に比べ、約400万円の損失だという。

 県内各漁協は、一昨年の大来襲の際、サケがクラゲの重みで圧迫死するなどした反省から、洋上で網からいったんクラゲを取り除いた後、サケを揚げる二度手間を強いられている。

 水産庁によると、今年、大型クラゲが確認されたのは33道府県。現在も島根県から青森県、北海道南部や岩手県で、定置網に数百から数千体のクラゲが入っているという。漁具の破損、漁獲量減少など、同庁に報告された漁業被害は396件(10月11日現在)に上る。

 東シナ海で発生する大型クラゲは対馬暖流に乗って日本海を北上。最近では2002、03年にも大量発生している。広島大学の上真一教授(生物海洋学)によると、揚子江からの生活排水で東シナ海が富栄養化し、クラゲのエサになる動物プランクトンが増加していることや、温暖化による水温上昇で成長が早まっていることが原因とみられる。

 事態を重視した水産庁は「大型クラゲ対策推進本部」を設置。日本海沖合で改良トロール網に装着したワイヤでクラゲを切断する駆除試験をスタートさせた。

 エチゼンクラゲ 日本近海で見られる最大のクラゲで本来は温暖な海域に生息する。傘の直径は最大2メートル、大きいものは重さ約200キロにもなる。傘の下には毒のある触手がある。

エチゼンクラゲ大量発生

2005年11月04日 読売新聞 Yomiuri On-Line

漁業への影響深刻 いまだ打つ手なし

 エチゼンクラゲが日本海を中心に大量発生し、漁業に深刻な影響を与えている。本県沖合でも大きさが1メートルを超えるクラゲが大量に浮遊し、漁業網が破損したり、駆除作業に携わる負担が漁業者に覆いかぶさったりするなど被害は甚大だ。3日、石川とぎ漁協(志賀町)所属の定置網漁船西海丸(19トン)に同乗し、クラゲに悩まされる漁の実態を追った。(文・川嶋 路大、写真・佐々木紀明)

 14人の漁師を乗せた西海丸が午前3時20分、志賀町の富来漁港を出港した。2キロ沖合の漁場まで疾走する船の甲板から、船員たちが電灯に照らされた海面をのぞき込む。「ほれ、今日も」。船員の指さす先に目をやると、大きさが1メートルはあるだろうか、無数の薄赤い巨大なクラゲが海面すれすれに揺らいでいるのが目に飛び込んできた。西海丸の船頭佐藤由之さん(40)は「クラゲだけはいっぱいいるさ、魚は少ねえけど」と苦笑いした。

 15分後、定置網に到着。約2000平方メートルの網の中は、水中までびっしりとクラゲで埋まっていた。「今じゃ定置網漁は、魚獲りっていうより、クラゲ出しだ」と佐藤さん。漁師たちからも「今日は多いな」とため息が漏れた。

 作業は、船を移動させながら定置網の底にあたる部分の網を機械や手作業で巻き上げ、約70メートル先の金庫網と呼ばれる箱状の網に向けて魚を追い込む。その間、巻き上げる網にクラゲがかからないよう、若い漁師がカギの付いた竹竿(約4メートル)で、クラゲを先に先にと押していく。宝田俊也さん(21)は「クラゲの重さに水圧も加わって、腕がパンパンになる。クラゲを見るだけで嫌になる」と吐き捨てる。

 西海丸の定置網は、金庫網の手前に15センチ四方と網目の小さい仕切り網を取り付け、クラゲの流入を防ぐ。金庫網に魚を追い込んでしまえば、仕切り網に引っかかったクラゲを2隻の船がプロペラで作り出す水流で網の外に追い出す作業が残っているが、完全に追い出すことは難しい。この日も、1回目の除去作業の後に、仕切り網を船のクレーンで高く持ち上げたが、いぜん数千のクラゲが網の中に残ったまま。「だめだ、もう一回やろう」。佐藤さんの一言で、船は70メートル手前まで戻り、再び網をたぐり始めた。

 作業が終わったのは、通常の倍にあたる約2時間半後だった。年配の漁師は「相手は自然、仕方ない」とあきらめ顔を見せる。

 午前6時過ぎ、アジ、タイ、フクラギなど約1トン、金額にして約20万円を港に水揚げした。漁師たちが仕切り網をすり抜けたクラゲを切り刻み、魚を選別していく作業を横目に佐藤さんが嘆いた。「本当ならこの3倍はとれる時期なんだ。クラゲがいると魚は寄らないし、打つ手なしだよ」。

水揚げ高例年の5分の1

 県水産総合センター(能登町)によると、エチゼンクラゲは東シナ海で発生するとされ、対馬海流に乗り日本の沖合全域に出現する。本県では、8月中旬、白山市沖合の定置網に約50センチのクラゲ3個体が確認されて以降、急激にその数を増やしている。

 「石川とぎ漁協」(志賀町)によると、9月には定置網1基に最大で2万個体のクラゲがかかった。同漁協の木下弥一郎参事は、「クラゲだけが原因と特定はできないが、例年約3億円ある10月の水揚げ高が、今年は約6000万円まで落ち込んでいる」と嘆く。

 また、9月に解禁となった底引き網漁でも被害は深刻だ。県水産課は、クラゲの重さで網が破れる被害を、これまでに少なくとも9回確認。漁業者は、クラゲの少ない水域での操業や、クラゲを網から出す作業のためだけの出漁を余儀なくされており、「体力の限界」という声も聞こえ始めているという。

 また、今月末から始まる寒ブリ漁を前に、「すずし漁協」(珠洲市)では近く、6基の定置網の設置を完了させる。クラゲのためいつ破網してもおかしくない状況というが、「水揚げ高が落ち込む中、この時期に網を入れなければ生活が成り立たない」(同漁協)という。

結局、漁業者の自助努力?

 こうした被害や不安が広がる中、独立行政法人・水産総合研究センター(神奈川県)は、9〜10月にかけ、40センチ間隔で格子状に張ったステンレスワイヤを取り付けた網で、大型クラゲを切断、駆除する実験に成功した。しかし、「実用性が高いことが確認された」とする同センターに対し、県は「実用化できるか決められる段階ではない。今は網の改良や操業方法の工夫で、被害を減らす方法を漁業者に考えてもらうしかない」としている。

 同センターが10月18日に発表したエチゼンクラゲの来遊予測によると、こうしたクラゲの大量発生は今月中旬まで続く見込みだ。

巨大クラゲ300匹を駆除 改良の漁網、実用化にめど

2005/10/26 The Sankei Shimbun

 水産総合研究センターは26日、大量発生している巨大なエチゼンクラゲの洋上駆除実験で、入ったクラゲを切断するため40センチ間隔のワイヤの格子を中に組み込んだトロール網を使い、300匹以上の駆除に成功した―とする最終的な実験結果を発表した。

 この改良トロール網は、切断したクラゲを海中で網の外に出せるように工夫してあり、6回の実験で約8時間網を引いたが、クラゲが詰まったり、網が破損したりする被害はなかったという。

 同センターは、水中カメラで、クラゲの群れが主に水面から水深40メートル付近までを漂っていることを確認。「日常的に使うトロール網を改良すればクラゲを駆除できる。実用化のめどは付いた」と話している。

 ただ、今回の実験で使った船は500トン級。沿岸漁業では数十トン級の小型漁船も多く、1000匹単位で網に入る大量のクラゲに対応ができるかどうかが今後の課題となる。

 エチゼンクラゲは直径が1メートル以上になり、各地で漁業被害が発生。今年はほぼ全国で目撃され、例年以上の大量発生となっている。(共同)

エチゼンクラゲの有効活用、鳥取県内で模索

2005/10/20 山陰中央新報

 近年、日本海に大量発生し、漁業者を悩ませているエチゼンクラゲの有効活用を探る試みが、鳥取県内で始まった。クラゲがかかりにくい漁網など、全国的に対策が模索されているが、当面は大量発生が治まりそうにないため価値を見いだし、逆に積極活用しようという発想。境港市の農家は土壌改良材、県は調味料への活用を探っており、成果が注目される。

 境港市渡町の岡野農場は県や山陰旋網漁協の協力で、9月から土壌改良材としての活用実験を始めた。同市内の中海干拓地にある畑にクラゲをまいてすき込み、大根や白ネギの生育を調べている。

 弓浜部で戦後、海藻を肥料に使っていたことから、同じ海産物のクラゲが含むマグネシウム、カルシウムなどのミネラル分に着目した。

 クラゲは野菜が嫌う塩分も含むが、10月上旬に種まきした大根は順調に芽を出しており、「心配した塩害もなく、第一関門は突破した」と同農場の岡野修治社長は手ごたえを実感。野菜の食味向上効果も見込んでいる。

 クラゲは96%が水分で、一匹が含むミネラルの割合はマグネシウムで0・94%と決して多くはないが、大量に捕れるだけにミネラル分が確保できる。また、窒素やリンなどの肥料分も含まれ、県西部総合事務所農林局農業振興課の小西耕一課長補佐は「有望な活用策」と期待する。

 一方、県産業技術センター食品開発研究所は、魚醤(しょう)の消費が伸びていることから、クラゲを使った調味料の開発を発案。本年度から2年かけて取り組む。

 しょうゆや魚醤の原料になる大豆や魚と比べ、クラゲが含むタンパク質の割合は0・5%と低いため、調味料製造処理前に濃度を高める工夫が必要。ミキサーで砕いたり、脱水機にかけて脱水すれば、5−10倍まで濃度を高められることが分かったが、巨大で大量のクラゲが処理でき、漁業者が導入しやすい安価な装置が開発できるかが課題だ。

 脱水方法の開発だけでも、廃棄や他の利用時の処理効率化に役立つ研究であり、同研究所食品技術科の小谷幸敏科長は「ハードルは高いが、なんとか成果を出したい」と意気込む。

 エチゼンクラゲはかさの直径が1メートル以上、重さは150−200キロあり、日本近海では最大のクラゲ。県境港水産事務所によると、本年度は来年1月ごろまでに境港に2000トンが揚がり、03年度の1400トンを上回ると予測。県や国の補助対象の廃棄処理費は1400万円に上る見通しという。

大群が佐渡、能登沖へ エチゼンクラゲの移動予測

2005/10/18 The Sankei Shimbun

 日本沿岸で大量発生し漁業被害をもたらしている巨大なエチゼンクラゲについて、水産総合研究センターは18日、島根県と福井県の沖にいる大群が、11月中旬までに、石川県の能登半島や新潟県の佐渡島付近に達するとの移動予測を公表した。

 クラゲが強風の影響で接岸すると定置網に被害が出る恐れがあり、水産庁は漁業関係者に注意を呼び掛けている。

 同センターによると、定置網に一度に数千匹以上掛かるような濃密な群れは現在、島根県の出雲地方沿岸や、福井県の若狭地方沿岸に集中。

 海流の動きなどから今後の動向を予測した結果、福井県沖の群れは10月下旬までに能登半島を過ぎて佐渡海峡に達するとみられる。島根県沖の群れの大半は11月中旬には能登半島沖から東北方面に拡大するが、大半は能登半島の西方沖にとどまるという。

 さらに北西の季節風が吹くと、クラゲの接岸量が増える恐れがある。

 石川県などによると、日本海側ではこれからブリ漁が盛んになり、被害が懸念される。

 エチゼンクラゲの一部は既に日本海側から津軽海峡を通って岩手県沖の太平洋側に移動。東シナ海付近で発生したとみられるクラゲは黒潮に乗り、高知県沖や和歌山県沖でも見つかっている。(共同)

逃げるエチゼンクラゲ…福井・若狭湾

2005年10月15日 読売新聞 Yomiuri On-Line

魚がついばむ

 日本海を中心に秋から冬にかけて大量発生するエチゼンクラゲに、カワハギやイボダイなどの稚魚が群がる様子がダイバーらに確認されている。魚網を壊すなど、漁業者から目の敵にされているエチゼンクラゲだが、関係者らからは養殖魚の餌などとして有効利用を期待する声もある。

 福井県高浜町沖の若狭湾では、今年は8月ごろから出現。クラゲの傘の下にウマヅラハギなどが群がり、ついばむ光景がダイバーらによって観察された。

 京都大舞鶴水産実験所(京都府舞鶴市)によると、魚はエチゼンクラゲ本体のほか、傘の下に集まったプランクトンも食べているという。同実験所は4年前からクラゲと魚類の関係を研究、クラゲとアジを同じ水槽に入れると、アジの成長が早いとの結果が出た。

 元福井県栽培漁業センター所長の安田徹さんは「日本海では古くからクラゲを集めてカワハギをとる漁法がある」といい、クラゲと魚類の関係を科学的に解明すれば、エチゼンクラゲが魚の餌として利用できる可能性がある。

エチゼンクラゲを追え!漁業被害対策で行動調査

2005年10月04日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 日本海に大量漂流し、沿岸漁業に深刻な被害を与えているエチゼンクラゲ対策のため、独立行政法人・水産総合研究センター(横浜市)の行動調査が進んでいる。

 4日は、石川県小松市沖で、傘の直径が1〜1・5メートルのクラゲ4匹に水深や水温などを調べるセンサーを取り付けた。センサーは3〜4週間後、自動的に離れ浮上する。センサーは蓄積したデータを発信、人工衛星を通じてそのデータを回収し、行動を分析する。

 同時に行われている駆除実験の結果と合わせて、有効性が認められれば、漁業関係者らにデータを提供して、駆除に役立てたいとしている。

ダイコン畑がエチゼンクラゲでグッチャグチャ

2005.09.28 デーリー東北新聞:FLASH24

 日本海で大発生しているエチゼンクラゲの処分先として、鳥取県が肥料にする実験を始めている。同県の境漁港では今年400t以上のエチゼンクラゲが水揚げされ、来年1月中旬までにさらに2,000tの水揚げが予測されている。当面塩分に強いダイコン畑で実験を行っているとのことだが、画像を見るとダイコン畑ったらクラゲでグッチャグチャ。

巨大クラゲ、山口近海で大発生

2005/09/22 中国新聞地域ニュース

 傘が直径一メートル以上になる巨大なエチゼンクラゲが、山口県の日本海一帯で大発生している。今年は瀬戸内海でも初めて確認され、漁業被害の拡大が懸念されている。

 県水産研究センター外海研究部(長門市)によると、八月一日に萩市見島周辺で今年初めて見つかった。長門市、下関市、阿武町といった日本海一帯に広がり、確認の個数も増えた。大量に網にかかるため、魚が傷んだり、網が切れたり、網が重くなって揚げられない被害も出ている。

 長門市青海島の沿岸で今月十六日、直径一メートル前後の数百個が帯状となって浮遊しているのが確認された。周防大島町油宇沖で八月二十九日から今月四日までの間、二個が網にかかるなど瀬戸内海でも三例が報告された。

 東シナ海から日本海を北上するエチゼンクラゲは、最近では一九九五年と二〇〇二、〇三年に発生が確認されている。〇四年は県内で目撃はなかった。

 生態に詳しい水産大学校(下関市)の上野俊士郎教授(浮遊生物学)は「瀬戸内海での発見は異例。例年よりも時期の早い広がりも含め、大きな変化が起きている可能性がある」と指摘している。

厄介者食えるかも・・・ エチゼンクラゲ食品化へ

2005/09/21 日本海新聞

 鳥取県産業技術センター食品開発研究所(境港市中野町)は、日本海で大量発生し、漁業に深刻な被害が出ているエチゼンクラゲの食品化に向けた技術開発研究を始めた。2年間かけてクラゲから抽出したタンパク質をエキス化してコラーゲン入りの「クラゲしょう油」を作る試みで、厄介者の有効利用につながるとして関係者は商品化に期待を寄せている。

 エチゼンクラゲは一昨年、日本海で大量発生し、各地で深刻な被害が相次いだ。境港水産試験場などによると、今年も七月に境港で巻き網に混獲があったのを皮切りに、恒常的に水揚げされ、特に盆以降は急激に増加。今後も大量の来遊が懸念されるという。

 巻き網の場合は、混獲されたクラゲを船上で魚と分けることができないため、クラゲの陸揚げ後の処理に関係者は苦慮している。

 このため、独立行政法人・水産総合研究センターはクラゲを駆除するだけではなく、陸揚げされたクラゲを有効利用するための研究を鳥取、青森、福井の各県などに委託。今年から二年間で、それぞれが食品化に向けて研究を進めることになった。

 鳥取県では、委託を受けた県産業技術センターがクラゲをエキス化して調味料(しょう油)にする研究を開始。クラゲからタンパク質のみを取り出してエキス化、酵素分解などをし、さらに微生物や他魚種を加えた発酵タイプのしょう油など、クラゲのコラーゲン入り「クラゲしょう油」を開発したい考え。

 エキス化する過程で必要な脱水装置を企業に開発委託しているほか、汚水については、境港水産汚水処理公社で処理することにしている。

 同センターでは、「コストの問題などもあり、実用化への判断は現段階ではできないが、海水と同じ成分なので視点を変えれば別の素材として活用できる可能性もある」としている。

 エチゼンクラゲの食品化の研究では、青森県がクラゲを直接ゼリーなどにする方法、福井県が塩クラゲ作りなどに取り組んでいる。

大型クラゲ:海の厄介者 ワイヤで切断し駆除 水産工学研

2005年09月18日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 日本海沿岸で大量漂流し、漁業に被害を与える大型クラゲ(エチゼンクラゲ)を海上で駆除するため、独立行政法人・水産総合研究センターの水産工学研究所(茨城県神栖町)が今月下旬、新技術の試験に乗り出す。漁網の奥でクラゲを切断処理し、排出する方法で、早期の実用化を目指す。

 クラゲは東シナ海で発生し、対馬海流に乗り成長しながら北上。最大で傘の直径2メートル、重さ150キロまで巨大化する。今年は昨年より1カ月以上早い7月初めに長崎県対馬沖で最初の来遊を確認。既に青森県沿岸に達し、福井県の8月中旬からの集計では同県沿岸で2万個体以上を数えた。

 新技術は、大型の引き網の後方に筒状部(長さ約10メートル)を作り、内側に約2メートル間隔で細いワイヤやピアノ線を格子状に張りめぐらせる。網にかかったクラゲは筒状部で少しずつ切断されて死に、網の外に出る仕組み。実験は29日から来月16日、同センターの調査船が日本海で実施する。

 出現状況の速報や、混入したクラゲを生きたまま排出する改良網の導入は進んでいるが、駆除を目指す手法は初めて。今年もクラゲによる操業中止や網の破損などの報告が相次いでおり、渡部俊広・漁法研究室長は「効率的な駆除を実現し、被害を軽減したい。新たな漁具の開発にもつなげたい」と話している。【田辺一城】

エチゼンクラゲを土壌改良に転用 まき網の敵

2005/09/17 The Sankei Shimbun 大阪夕刊から

≪肥料と同じ成分に着目、鳥取県が実験≫

 日本海で大発生し、まき網や定置網漁に多大な被害をもたらしているエチゼンクラゲを、土壌改良に利用する試みを鳥取県などが進めている。クラゲには窒素やリンなど、肥料と同じ成分が含まれていることに着目。農家にも協力を求め、陸揚げされたエチゼンクラゲを畑に鋤(す)き込む作業を実験的に始めた。漁業、農業が基幹産業となっている鳥取ならではの発想として、注目を集めそうだ。

 鳥取県内の水産業で、特にエチゼンクラゲの被害を受けているのは、同県境港市の境港を母港とするまき網漁船。まき網の場合、魚と一緒に網に入ってくるクラゲは船上で分離することが不可能で、仕方なくそのまま港に持ち帰っている。境港では、今年は1カ月ほど早い7月下旬から被害が出始め、8月中は多い日で50トン程度のエチゼンクラゲが陸揚げされた。

 いったん陸揚げされたクラゲは海に捨てることができず、陸上で処理するしかないが、90%が水分のため焼却や埋め立て地への投棄もできず、関係者の悩みの種となっている。

 エチゼンクラゲは、東シナ海で発生し、夏から秋にかけて海流に乗って日本沿岸に漂ってくるが、生態についてはまだよく分かっていない。一体で150キロから200キロにも達するうえ、大量に網に入るケースが多く、重さで網が破れたり、一緒の網にかかった魚が傷ついたりといった被害が出ている。

 毎年のように被害を受けている日本海沿岸の各地では、食用としての利用など、さまざまな対策を試しているが、これまでのところ、決定打は出ていないのが実情。鳥取県でのエチゼンクラゲの陸上処理は、境港市の「山陰まき網漁業協同組合」が主体となって実施。処理費用の4分の3は国と県から助成されるが、クラゲの陸揚げが2000トン程度としても、同漁協の負担は500万円を超すとみられる。

 しかし、クラゲを土壌改良に利用する試みに効果がみられれば、処理費用は畑地までの運搬費だけですむ。クラゲを鋤き込む畑は、塩分を含んだ土壌でも育つ大根やトマトを栽培する計画を立てている。

≪「1カ月早く北上」 水産庁が対策本部≫

 日本海側を中心に巨大なエチゼンクラゲが大量発生している問題で、水産庁は16日、漁業被害の拡大を防止しクラゲの駆除作業などを円滑に進めるため、小林芳雄水産庁長官を本部長とする「大型クラゲ対策推進本部」を設置した。

 水産庁によると、エチゼンクラゲは昨年より約1カ月早く日本海側を北上し、青森県の津軽海峡を経て岩手県沖まで移動。多いときには1つの定置網や底引き網に1000匹以上が入り、魚が傷ついたり漁具が壊れたりする被害が出ている。

 今年は太平洋側の高知、静岡、千葉の各県の沖などでも見つかった。

 このため水産庁はクラゲの移動状況を漁業関係者に情報提供し、中に入ったクラゲを外に逃がすよう漁具を改良するなどの対策を実施。

 水産総合研究センターもクラゲを海上で分解、駆除する装置の開発を進め、今月下旬から実験を始める。

エチゼンクラゲ、洋上で一網打尽 水産庁が駆除実験へ

2005年09月04日 asahi.com

 水産庁は、日本海などで大発生し、沿岸漁業に深刻な被害を招いている巨大なエチゼンクラゲを洋上で駆除する実験を10月に行う。刃物やピアノ線などが付いた大型の漁網を船で引っ張り、網に入った大型クラゲを切断処理できるか調べる。エチゼンクラゲは重さ200キロにもなる巨体だが、再生能力が弱く、切断されるとそのまま死ぬ確率が高い点に着目した。

 エチゼンクラゲの大発生で、漁網が破られたり、漁獲した魚が傷ついたりするなどの被害が相次いでいる。このため水産庁は、外郭団体の水産総合研究センターが持つ実験船に新たに工夫した漁網を付け、日本海で洋上を泳ぐクラゲの群れに実際に仕掛け、効果的な駆除方法を探る。

 同庁によれば、エチゼンクラゲは再生能力が乏しく、半分に切断すれば死ぬ可能性が高い。クラゲがうまく網にかかるかや、網の底の出口部分に仕込んだ刃物やピアノ線でクラゲの体が実際に切断できるかどうかを確かめる。

底引き網解禁 初日からいきなりクラゲ大量 加賀、輪島 1隻に100匹

2005年09月02日 北國新聞社

 漁網や捕れた魚に被害を与えるエチゼンクラゲが一日、底引き網漁が解禁された石川沿岸に早くも多数姿を現し、秋の幸を求めて出漁した漁船の操業に影響を与えた。加賀、輪島市の各漁港から出漁した漁船には一隻あたり約百匹のエチゼンクラゲが掛かり、網が破れる被害も。今年は日本海沿岸で大量発生が予測されており、漁業関係者は「解禁早々にこれだけ多いとは」と、海の厄介者の動向に警戒を強めている。

 「まったく商売にならない」。操業を終え、加賀市橋立漁港に帰港した同市漁協の底引き網船十隻の乗組員の表情は一様にさえなかった。加賀市沖や福井県沖の漁場では、傘の直径約七十センチ、大きいもので直径一メートル近くあるエチゼンクラゲが、数十から百匹近く網に掛かったという。

 ほとんどの漁船が、重みで網が破れる被害を受けた。捕れた魚もクラゲの毒で変色したり重みでつぶれるなどし、商品価値がないため捕れた魚の三分の一を沖で捨てたという船もあった。「目の粗い網を使うなど対策はとったが、対応できる量を超えていた」と乗組員もお手上げ。加賀市漁協の山口俊治販売課長は「解禁初日としては、大発生した一昨年以上の被害。水揚げもかなり少ない」と今後を気に掛けた。

 輪島港では、輪島市漁協の底引き網船約四十隻が、同市沖や門前町猿山岬沖に出漁。同漁協によると、体長約一メートルのエチゼンクラゲが一隻に約百匹掛かったという。クラゲが多いため漁を早めに切り上げる漁船もあり、水揚げを終えた組合員の一人は「昨年はこんな時期にクラゲはいなかった」と、うんざりした表情で話した。

 金沢港から出漁した漁船には被害はなかった。

 エチゼンクラゲは今年、「過去最悪の恐れがある」と水産庁が大発生を警告。石川沿岸では昨年より約半月早く、八月十七日ごろ、白山市美川沖と輪島市曽々木沖の定置網に掛かっているのが確認された。

 県水産総合センター(能登町)によると、エチゼンクラゲはさらに北上中とみられ、八月三十一日に珠洲市蛸島漁港の定置網で約三十匹が捕獲された。同センターは、引き続き目撃情報を集め「大型クラゲ情報」を県内各漁協などに送付して注意を呼び掛ける。

エチゼンクラゲ、県沿岸で初確認 漁業関係者 警戒強める

2005年09月01日 徳島新聞

 漁業被害を引き起こすエチゼンクラゲが太平洋側の紀伊水道で大量発生し、徳島県沿岸でも初めて確認されたことが、三十一日分かった。現在、県内で被害は出ていないが、漁業関係者は「これ以上、数が増えなければいいのだが」と警戒を強めている。

 阿南市椿泊町の椿泊漁協(久米俊組合長)によると、八月中旬から底引き網漁の際、網に二、三匹の大型クラゲが交じり始めた。県水産研究所(日和佐町)が阿南市内の底引き網業者が引き揚げたクラゲを調査したところ、エチゼンクラゲであることを確認した。

 紀伊水道一帯で発見されたエチゼンクラゲは、かさの直径が一−一・五メートル、重さは約七〇−八〇キロ。同研究所はエチゼンクラゲの発生場所が例年より東シナ海の南方に移動したため、太平洋側を流れる黒潮に乗って紀伊水道に流れ込んだとみている。

 椿泊漁協によると、徳島沖ではクラゲを網から捨てるだけで、大きな被害は出ていないという。県水産課は「今のところ被害報告はないが、さらに増えるようだと被害が出る可能性もある」と注意を呼び掛けている。

 大量発生はこれまで散発的だった。しかし、日本海側では二〇〇二年から毎年続いていて、底引き網漁の網を破ったり、網にかかった魚を圧死させたりするなど深刻な被害をもたらしている。

エチゼンクラゲ駆除へ 底引き網使い水産庁

2005年8月31日(共同通信社)東奥日報

 日本海側を中心に巨大なエチゼンクラゲが大量発生している問題で、水産庁は31日、漁業被害を防ぐため、海上でのクラゲ駆除に乗り出すことを決めた。10月ごろまでに「駆除装置」を完成させて海上実験し、早期実用化を目指す。

 駆除装置は底引き網の後方にクラゲを追い込むスペースを設置し、クラゲをピアノ線や刃物などで解体して外に排出する仕組み。

 エチゼンクラゲはかさが最大直径1メートルにもなるが、一度解体すれば蘇生(そせい)しないという。水産庁は実験に成功すれば、各自治体や漁協にこの技術を伝える。

 エチゼンクラゲの大量発生はこれまで散発的だったが、2002年から毎年続いている。

 今年のエチゼンクラゲは昨年よりも北上のスピードが速く、秋田県沖で確認されている。9月中旬には青森の津軽海峡を通過する見通しで、水産庁は注意を呼び掛けている。

エチゼンクラゲ、県沿岸で初確認 現在、漁業被害の報告なし

2005年08月31日 徳島新聞

 日本海沿岸の漁業に大きな被害を及ぼしているエチゼンクラゲが徳島県沿岸で初めて確認されたことが、31日分かった。県水産研究所(日和佐町)は、クラゲが例年よりも南方の東シナ海で発生し、黒潮に乗って紀伊水道に流れ込んできたのが原因とみている。現在、漁業関係者からの被害報告はない。

 阿南市椿泊町の椿泊漁協によると、8月中旬から底引き網漁の際、網に2、3匹の大型クラゲが交じり始めた。県水産研究所が8月29日、阿南市内の底引き網業者が引き揚げたクラゲを調査したところ、エチゼンクラゲであることが分かった。

エチゼンクラゲ和歌山沖で発生 黒潮で太平洋側へ?

2005年08月31日 asahi.com

 日本海で大量に発生しているエチゼンクラゲが今月に入って、和歌山県沖の紀伊水道でも発生し、漁業被害が出ていることが県の調べで分かった。県が、沿岸で大量のエチゼンクラゲを確認したのは初めてという。

 県によると10日ごろから、同県美浜町から和歌山市の紀伊水道で、タチウオなどの底引き網漁にかかるようになった。直径1〜1.5メートル、重さ70〜80キロ。多いときで網に10匹ほどがかかり、重さで網が破れるなどの被害が出ているという。

 独立行政法人水産総合研究センター日本海区水産研究所(新潟市)によると、最大で傘の直径は2メートル、重さ200キロにまで成長する。東シナ海で発生するが、今年はその位置が南にずれたため、黒潮に乗って太平洋側にも運ばれたらしい。

 同県有田市の箕島町漁協の嶋田栄人組合長(52)は「底引き網に10〜15匹も入ってくる。直径が2メートル近くあり、引き上げるクレーンが変形することもある。非常に困っている」と話している。

漁網改良で大型クラゲ退治 水産センター

2005年08月26日 (Kyodo News) Goo News

 日本海側を中心に巨大なエチゼンクラゲが大量発生し、漁業被害が相次いでいるため、独立行政法人水産総合研究センターは26日、大型クラゲの侵入を防ぐ工夫を紹介した「漁具改良マニュアル」を作成、各都道府県や漁協に配布した。

 エチゼンクラゲはかさの直径が約1メートルにもなり、船の後ろで漁網を引いて魚を捕る底引き網のほか定置網などで一度に数トン単位で掛かるため、タイやスズキ、ズワイガニなどの漁獲量が減る被害が報告されている。

 マニュアルでは、底引き網の場合、魚が集まる網の後方部分の手前に1マスの幅が約20センチの格子を設置。魚は格子をくぐり抜けて後方に集まり、クラゲだけが格子に引っ掛かって網の外に排出される仕組みを紹介し、実験では漁獲対象の魚が約2割減ったが、クラゲの約9割を排出できたという。

エチゼンクラゲ対策、網の改善や食材利用で 水産庁

2005年08月25日(asahi.com) Goo News

 沿岸漁業に大きな被害を及ぼす巨大な「エチゼンクラゲ」が大発生していることを受け、水産庁が対策に乗り出す。全国の研究機関が開発した、クラゲ被害を受けにくい漁具の作り方などの被害防止技術を集約してマニュアルを作成。26日から全国の漁協などに配布する。また、エチゼンクラゲを食材として利用する可能性も探る。

 2年ぶりに大量発生したエチゼンクラゲは最大で傘の直径2メートル、重さ200キロまで成長する。大型クラゲが漁網に入ると網を破ったり、引き揚げることが難しくなったりする。毒があるので網から取り出す手間もかかり、魚も傷つける。

 対馬海流に乗って日本海を北上しており、今週は新潟県沖に出現した。秋以降は津軽海峡を通って、太平洋岸にも押し寄せる見通しだ。

 水産庁のマニュアルは、底引き網や定置網に大型クラゲが入らない仕組み作りに力点を置き、一定の大きさまでしか通らない仕切りを網に設け、魚やカニだけを漁獲できる方法を説明している。いずれも1万〜20万円の予算で作れるという。

 エチゼンクラゲを食材として積極的に利用することも対策の柱に据えている。「エチゼンクラゲは料理の材料としては二級品。安値でしか売れず、手間を掛ける普通の加工法では採算割れしてしまう」(研究指導課)ため、従来より低コストで食材に加工できる技術開発を進める。

エチゼンクラゲ処理費を一部補助 鳥取県

2005年08月23日 日本海新聞

 鳥取県は二十二日、二〇〇二年と〇三年に大量発生し、漁獲量の減少や漁具の破損など大きな被害を引き起こしたエチゼンクラゲの処理費用の一部を補助することを明らかにした。今月上旬、鳥取県沖の日本海で観測されるなど、例年に比べて半月以上も早い出現で、〇三年を上回る大量発生が心配されるため、漁業関係者に警戒を呼び掛けている。

 鳥取県水産試験場によるとエチゼンクラゲは先月上旬、長崎県対馬付近で確認された。例年、鳥取県沖で確認されるのは海水温が上がり始める八月二十日前後からだが、今月上旬には鳥取県西部の沖合からも報告があり、現在では石川県沖にまで到達しているという。

 また、鳥取県漁協境港支所は今月上旬、島根半島沖で操業していた小型底引き網漁船からカサの直径が八十センチ程度のエチゼンクラゲ数匹が網に入ったとの報告を受けた。

 一方、水産庁によると、エチゼンクラゲの北上は例年より十日から十五日も早く、今年は〇三年を上回る大量発生の可能性があるという。

 このため、県はクラゲ処理の補助を決めたもので、処理費として九月県議会に補正予算として約五百三十万円を提案する方針。補正予算が可決される前の処理については、補正予算と同額の予備費で対応する。補正予算分と予備費分を合わせると、〇三年に境港に揚がった一五〇〇トンから二〇〇〇トンの二倍程度を処理できる見通し。

 県漁協境港支所の高見信悟参事は「発生や被害は操業場所によってばらつきがあるが、今後も引き続き注意する必要がある」と大量発生を警戒しており、県水産振興室も「大量発生が心配されることから処理費の助成を決めたが、漁をする際は十分注意してほしい」としている。

エチゼンクラゲ:大量漂着の恐れ 益田沖で昨年より1カ月早く目撃 /島根

2005年08月20日(毎日新聞)livedoorニュース

 日本近海では最大のクラゲで、深刻な漁業被害をもたらすエチゼンクラゲ(ビゼンクラゲ科)が大量に流れ着く兆しを見せている。益田市の定置網周辺でも昨年より約1カ月早く目撃されたことなどを受け、県と県漁連はこのほど、合同の対策・報告会を松江市内で開いた。

 エチゼンクラゲは最大で傘の直径が2メートル、重さ150キロに達する。発生元の東シナ海では今年、例年になく大量に発生したと推測され、海流の影響で日本海側に運ばれやすい状況という。巻き網漁では魚と一緒に網の中に入り、持っている毒で魚体を損ねるなどの被害を与えるため、水産庁は日本海沿岸の自治体に注意を呼びかけている。

 会ではエチゼンクラゲ対策用の底引き網など、漁業被害除去技術の事例が紹介された。また、漁業関係者からはクラゲの処理費用について、県からの支援を求める声が相次いだ。県水産課は「エチゼンクラゲが連続して出現することも考えられ、東シナ海を注視する必要がある」と話している。【小坂剛志】

エチゼンクラゲを追って〜対馬 萩〜

2005年08月19日放送 TV Asahi報道Station

 対馬の海底を水中撮影しリポートする中川隆氏は「すごいなこれは。網がびっちり埋まっています。全部クラゲだ。クラゲの壁ですよ」。

 小さいもので30cmほど。網の中の魚も異変を感じて逃げ惑っていた。

 エチゼンクラゲは日本近海で最も大きなクラゲ。最大で傘の直径2m、重さは200sに達する。一昨年、日本海沿岸で異常発生し、漁業に甚大な被害をもたらした。

 そして今年、そのクラゲが長崎県対馬に現れた。ここで目にするのが傘の直径が30cmから70cm程度のもの。それほど大きくはないが島の人たち「数が以上に多い」と口を揃える。

 ダイバーの阿比留寛典さんは「7月半ばから急に増え始めいつの間にか至るところに…」。

 広島大大学院生物圏科学研究科・上真一教授は対馬近海で実態調査を行った。そして今回の異常発生は深刻な事態につながると警告する。「定置網の中に2003年は平均数匹。今年は数十から数百匹。2003年の10倍から100倍の出現数。これは一昨年をはるかに凌ぐ大発生」。

 定置網にかかるのはほとんどがクラゲ。対馬の漁業被害は深刻。

 漁の様子を水中カメラで見てみると網にはクラゲだらけ。

 「これでは網がまったく水を通さなくなってしまいます。ものすごい抵抗ですね」と水中の中川氏。網の外から見てみると、クラゲと網の間に魚が入り込んでいた。「せっかく捕れた魚が、これでは傷ついてしまいます」。

 引き上げられた網は、クラゲの合間を他の魚やイカが泳いでいた。

 甲板での作業はまず大量のクラゲをより分け、魚を選別することから始めなければならない。通常は1時間ほどで済む仕分けに2倍から3倍もの時間を要する。「手間はかかりますね」と漁師の作元政志さん。

 残ったクラゲは海に捨てることになる。クラゲの毒に触れると皮膚が痒くなったり腫れ上がったりする。漁師たちは顔を背けながら作業する。「人間と一緒で魚もクラゲに刺されちゃう」と作元さん。

 魚だけでなく網も傷めてしまう。魚網がクラゲと網の重みで破れてしまう。「損害は200〜300万円」だという。

 ここ数年、毎年のように起きている異常発生。その原因はエチゼンクラゲの故郷、中国沿岸の社会や環境の変化にあると上教授は考えている。「重要なのは魚が少なくなっていること。中国沿岸で魚を乱獲しているため魚の餌だった動物プランクトンが余る。それをクラゲが利用できるという状態になる」。

 また、暖かい海水を好むエチゼンクラゲにとっては地球温暖化もプラスに働いたようだ。上教授の研究によると、中国沿岸で生まれたエチゼンクラゲは東シナ海から対馬海流に乗って急速に成長しながら日本海を北上。さらには津軽海峡を通って太平洋側を南下する。

 対馬の次にクラゲの影響が出ると思われる山陰地方で底引き網漁を取材した。山口県萩市の沖合い40キロの海上。まさにエチゼンクラゲの通り道。

 山口県では8月1日に底引き網漁が解禁になったばかり。しかし、ここにもクラゲの姿があった。対馬に比べると数は少ないように見えるが、それでも被害は大きいのだという。

 漁師の吉浦久人さんは「例年お盆までに700〜800万円の水揚げがあるが、今年は400万円と少し」。

 エチゼンクラゲの勢力はさらに拡大しつつある。

 水産総合研究センターに寄せられた漁業関係者などの情報によると、一部はすでに能登半島の近くにまで到達しているようだ。

 「10月〜11月の季節風によってクラゲが日本側に吹き寄せられる。その時には1mほどに成長したクラゲが大量に吹き寄せられ、漁業被害をもたらす、ということが考えられます」と上教授。

 今年、史上最大の被害は確実だ。しかし、有効なエチゼンクラゲ対策はまだない。

今年初、エチゼンクラゲ  白山・美川沖と輪島沖でで4匹確認

2005年8月18日 北國新聞社

 定置網や底引き網を破る被害を与えるエチゼンクラゲが十七日までに、白山市と輪島市沖合の定置網に合わせて四匹掛かっていたことが分かった。石川県沿岸で確認されたのは今年初めて。今年は日本海沿岸で大量発生が予測されており、県は県内各漁協に情報を提供する文書を送付し、注意を呼び掛けた。

 エチゼンクラゲは白山市の美川沖で三匹、輪島市の曽々木沖では一匹が定置網で捕獲された。傘部分の直径は四十―五十センチメートルで、どちらも漁業被害はなかった。県によると、県沿岸での確認は昨年より半月ほど早いという。

アクアスでエチゼンクラゲ展示

2005/08/14 山陰中央新報

 浜田市と江津市にまたがる水族館アクアスは、大量発生が懸念されるエチゼンクラゲの展示を始めた。職員が江津市和木町沖一・五キロの日本海で採取した。水槽の中で、無数の触手をたゆらせながらゆっくりと泳ぐグロテスクな姿に、来館者は驚きの表情。

 エチゼンクラゲは東シナ海などで発生し、日本海を北上して来るとみられ、成長するとかさは直系一メートルを超す。島根沖では、異常発生した一昨年より二週間ほど早く出現が確認され、今後の漁業被害が心配されている。

 職員が九日から連日、定置網漁船に同乗して採取。十三日現在、かさの直系三十−四十センチの八匹を展示している。クラゲの飼育は難しいとされ、触手に刺されながら採取した展示課技師の梶谷圭一さん(30)は「いつまで展示できるか分からないが、海の嫌われ者の実物を見に来て」とPR。同館は夏休み中は無休。

エチゼンクラゲ:日本海沿岸で大発生!? 水産庁「警告」

2005年08月07日 毎日新聞 東京朝刊 Mainichi INTERACTIVE

 最大で傘の直径2メートル、重さ150キロに達する巨大な「エチゼンクラゲ」が、今年も日本海沿岸で大発生しそうだ。発生元の東シナ海で、例年になく大量に発生したと推定されるためだ。網を破るなど漁業に深刻な被害を与えるため、水産庁は「過去最悪の大発生となる恐れがある」として、日本海沿岸の自治体に注意を呼びかけている。

 エチゼンクラゲは東シナ海で発生した後、夏ごろに日本に接近。秋から冬にかけ、成長しながら日本海を北上する。津軽海峡を越えて太平洋側に流れ込むこともある。以前は数十年ごとに大発生していたが、最近は02年から毎年、大発生を続けている。

 水産庁によると、今年は韓国から「7月の調査で、韓国海域では去年より多く出現した」との情報が入った。また、山陰沖では、例年より1〜2カ月近く早い7月中旬から目撃され始めたという。

 これらの情報を基に、水産庁は「まだ直径40センチ以下の小型が多いが、個体数は昨年より多い」と判断。日本海側の府県や漁業団体などに対し、目撃情報の早期提供と、漁業者への注意喚起を求めている。【望月靖祥】

エチゼンクラゲ:「過去最悪の大発生の恐れ」水産庁が警告

2005年8月6日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 最大で傘の直径2メートル、重さ150キロに達する巨大な「エチゼンクラゲ」が、今年も日本海沿岸で大発生しそうだ。発生元の東シナ海で、例年になく大量に発生したと推定されるためだ。網を破るなど漁業に深刻な被害を与えるため、水産庁は「過去最悪の大発生となる恐れがある」として、日本海沿岸の自治体に注意を呼びかけている。

 エチゼンクラゲは東シナ海で発生した後、夏ごろに日本に接近。秋から冬にかけ、成長しながら日本海を北上する。津軽海峡を越えて太平洋側に流れ込むこともある。以前は数十年ごとに大発生していたが、最近は02年から毎年、大発生を続けている。

 水産庁によると、今年は韓国から「7月の調査で、韓国海域では去年より多く出現した」との情報が入った。また、山陰沖では、例年より1〜2カ月近く早い7月中旬から目撃され始めたという。

 これらの情報を基に、水産庁は「まだ直径40センチ以下の小型が多いが、個体数は昨年より多い」と判断。日本海側の府県や漁業団体などに対し、目撃情報の早期提供と、漁業者への注意喚起を求めている。【望月靖祥】

今年も巨大クラゲ大量発生 日本海、水産庁が対策提案

2005年08月05日 (KYODO NEWS) Goo News

 九州北部から山陰地方沖の日本海に、直径1メートル前後の巨大なかさで知られるエチゼンクラゲが今年も大量発生していることが5日、水産庁の調べで分かった。同庁は、クラゲが網に入り漁獲量が減少するなどの被害が出る恐れがあるとして、自治体の担当者を集めた同日の対策会議で、漁網を工夫するなどの対策を提案した。

 同庁によると、エチゼンクラゲの大量発生は2002年以降、毎年起きている。今年は7月10日、対馬(長崎県)近海で見つかって以来、長崎、山口、島根3県沖の日本海で約40件の目撃情報が行政機関に寄せられた。

 今後対馬海流に乗り日本海を北上し、通過海域でクラゲが魚の定置網や底引き網に入り、タイやズワイガニの漁獲量が減る被害が予想されるという。

エチゼンクラゲはや北上、島根県沖にも

2005/08/05 山陰中央新報

 直径一メートルを超える巨大なかさで知られるエチゼンクラゲが例年より一カ月早いペースで日本海を北上中で、七月末には島根県沖でも確認された。異常発生した二〇〇三年を上回る被害が出るとの予測もあり、県水産試験場は警戒する一方、開発したクラゲ対策用の網に期待している。

 エチゼンクラゲは東シナ海などで発生し、暖流に乗って日本海を北上。日本海区水産研究所(新潟市)によると、今年は例年より一カ月早い七月初旬に対馬沖の定置網に掛かり、網が破れたり、クラゲの毒で魚が傷つく被害が出始めた。

 島根県沖でも二十六日に浜田市沖の巻き網に四トン掛かり、二十九日には出雲市沖の定置網に五十−八十センチの個体十−二十匹を確認した。

 島根県水産試験場(浜田市瀬戸ケ島町)の村山達朗海洋資源グループ科長は「このペースで行けば、異常発生した〇三年を上回る数、被害になる可能性もある」と危惧(きぐ)。異常発生の原因は不明だが、同研究所日本海海洋環境部の飯泉仁部長は「海流や水温など因果関係があるかもしれない」とし、調査を進めている。

 「バッターアウトだ」と、沖合底引き網漁を手掛ける福宝水産(同市)の浜村尚登社長は浮かない表情。「原油価格高騰で燃料費がかさむ中、クラゲにもやられると死活問題」とし、十五日の漁解禁日を前に不安が広がる。

 一方、同試験場では昨年、県漁連などとの共同研究でクラゲ対策用の底引き網を開発。網に入ったクラゲだけを排出する仕組みで、村山科長は「実験では網に入ったクラゲの七割を排出できた。被害を軽減できれば」と力を込めた。

今年も巨大クラゲ大量発生 日本海

2005/08/05 The Sankei Shimbun

 九州北部から山陰地方沖の日本海に、直径1メートル前後の巨大なかさで知られるエチゼンクラゲが今年も大量発生していることが5日、水産庁の調べで分かった。同庁は、クラゲが網に入り漁獲量が減少するなどの被害が出る恐れがあるとして、自治体の担当者を集めた同日の対策会議で、漁網を工夫するなどの対策を提案した。

 同庁によると、エチゼンクラゲの大量発生は2002年以降、毎年起きている。今年は7月10日、対馬(長崎県)近海で見つかって以来、長崎、山口、島根三県沖の日本海で約40件の目撃情報が行政機関に寄せられた。

 今後対馬海流に乗り日本海を北上し、通過海域でクラゲが魚の定置網や底引き網に入り、タイやズワイガニの漁獲量が減る被害が予想されるという。

 水産庁などは会議で、(1)自治体と漁業者が緊密に連絡を取り、発生情報を共有する(2)漁網の入り口にクラゲが通れない網を取り付け、魚だけ網に入るようにする−などの具体策を示した。(共同)

エチゼンクラゲ:コラーゲンで美肌効果サプリ 愛媛の企業

2005年04月10日(毎日新聞)

 産学共同で、迷惑クラゲが美肌効果サプリに−−。 水産加工大手のマルトモ(本社・愛媛県伊予市)が、日本海沿岸で大量発生し、漁業被害をもたらしている巨大クラゲ「エチゼンクラゲ」から抽出したコラーゲンを使って美肌効果が期待できる

サプリメント(栄養補助食品)を開発、近く発売する。 愛媛大と共同研究を進める同社によると、クラゲを原料にしたサプリは全国初という。


美容にいいエチゼンクラゲ

2004年02月09日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 クラゲのしゃぶしゃぶ、クラゲの握りずし、クラゲの粕(かす)漬け、クラゲヨーグルト、ナタデココ風クラゲココ……。

 エチゼンクラゲを使った珍メニューが計10品、次々テーブルに並んだ。山形県鶴岡市の加茂水族館で行われた「クラゲを食べる会」でのこと。

 「いや、反応も上々でしたよ。クラゲ自体は無味ですから味付けでバリエーションが楽しめるし、食感も塩抜きの加減で調整がききますから」。会を準備した職員の奥泉和也さんも鼻高々の様子。

 東シナ海が本来の生息域であるエチゼンクラゲ、とかく海の嫌われ者だ。重さ200キロ、傘の直径2メートル級のものもあり、定置網に入ると漁は台無し。今シーズンも日本海側や三陸沿岸に大量漂着、外房でも2年連続で姿が確認された。

 だがこの巨大生物、実は全身コラーゲンの塊。しかもカロリーがゼロに近いため、元福井県栽培漁業センター所長で『クラゲ博士』の異名を取る安田徹さんも「美容食品としてはうってつけでしょう」と太鼓判を押すほどなのだ。

 コラーゲンはたんぱく質の一種で、人の骨や軟骨の主成分。不足すると肌荒れや抜け毛、動脈硬化を招くなど老化の原因になる。コラーゲン配合をうたう化粧品や健康食品、即席ラーメンまで登場しているのはご承知の通り。

 ならばあえて嫌われ者を水族館オリジナルのコラーゲン料理としてアピールできないか。「食べる会」の狙いはそこだった。

 「クラゲをしゃぶしゃぶや寿司(すし)になんて、暗い話題ばかりの今の世を健康的に笑い飛ばす、実に格好の会じゃないですか」とは、館長の村上龍男さん。来月にはクラゲアイスクリームが満を持して商品化される。(宇佐美 伸) (2004年2月9日 読売新聞)

エチゼンクラゲ

2003年11月19日 読売新聞 Yomiuri On-Line

魚とれないし網破れる地球環境悪化が関係?

 エチゼンクラゲが、2年続けて日本海で大量に発生しています。新聞やテレビで茶褐色(かっしょく)の大きなクラゲが海を漂(ただよ)っている様子を見たことがある人も多いでしょう。漁場では、大量のクラゲが網(あみ)の中に入り、とれる魚の量が減(へ)るばかりか、クラゲの重みで網が破(やぶ)れてしまうなど、大きな被害(ひがい)を受けています。

重さ200キロにも

 エチゼンクラゲは、おわんのような形をした傘(かさ)の直径が1メートルを超(こ)す、日本最大のクラゲです。大きなものでは重さ200キロにもなります。体は茶褐色や灰(はい)色などで、傘の下に多数の触手(しょくしゅ)がのびています。触手には毒があり、魚が触(ふ)れると死んでしまったりします。

 主に東(ひがし)シナ海(かい)、朝鮮(ちょうせん)半島沿岸(えんがん)に生息していますが、夏には対馬(つしま)海流に乗って日本海を北上。時には、津軽(つがる)海峡(かいきょう)をぬけて太平洋側でも見られることがあり、昨年12月には千葉(ちば)県勝浦(かつうら)市の外房(そとぼう)沖でも見つかっています。

 加工すれば、中華料理の食材になりますが、大変な手間がかかるのに価格が安いため、ほとんどの漁師(し)さんはクラゲを海に捨(す)ててしまいます。

漁への影響

 今年は、八月下旬ごろから日本海側の各地でクラゲが発生し始め、6月の終わりころにはクラゲばかりが網にかかるようになり、漁師さんたちは「仕事にならない」と頭を痛(いた)めています。

 加賀(かが)市・橋立(はしだて)漁港から漁に出る「金城丸(きんじょうまる)」(9トン)の酒井久則(さかいひさのり)さん(50)もクラゲに悩(なや)まされている1人です。酒井さんの話では例年、10月はサヨリ漁の最盛(さいせい)期で、沖にしかけてある定置網には、1日1トン近くの魚がかかるそうです。

 ところが、今年はクラゲのせいでサヨリはほとんど網に寄(よ)りつかず、朝早くから漁に出ても、フクラギ、イシダイ、アオリイカなどわずか150キロほどしかかからない日が続いたそうです。

発生の原因

 漁に大きな影響が出ているクラゲの大発生はどうして起こったのでしょうか?

 実は、1920年、58年、95年にも、日本海でクラゲが大量に発生した記録が残っています。「クラゲ博士」として知られる福井(ふくい)県の安田徹(やすだとおる)さん(65)に説明してもらいました。安田さんは大学で水産学を学び、福井県水産試験場職員(しょくいん)や栽培(さいばい)漁業センター所長を務(つと)めてきたクラゲの専門(せんもん)家です。

 安田さんは「はっきりしたことは分かっていないけれど」としたうえで、クラゲの大量発生について考えられる次の4点を挙げました。

 〈1〉昨年発生したクラゲによる2次的な発生。今年のクラゲは、昨年発生したクラゲが日本海で生んだ卵(たまご)がかえり、そのまま生息していると考えられます。クラゲの卵は水温が2―3度でも育つことができるので、冬を越(こ)すことができたのでしょう。

 〈2〉水温の上昇(じょうしょう)と降水(こうすい)量の減少(げんしょう)。この20年間の統計(とうけい)をみると、日本海の水温は年々上がっているといえます。そのことが、クラゲの生育を助ける環境(かんきょう)になってきたと考えられます。クラゲが大量発生した年は、雨の少ない空梅雨だったことが多いという報告(ほうこく)もあり、降水量との関係もあるようです。

 〈3〉発生地域(ちいき)の海水汚染(おせん)。クラゲの発生地と考えられている東シナ海では、周りの国の工業化にともなって工場排水や生活排水が海に流れ込み、海水の汚染が進んでいます。エチゼンクラゲは、どんなものでもエサにすることができるため、汚染された海はクラゲの生育には、この上なくよい環境なのです。

 〈4〉海の護岸(ごがん)工事や埋(う)め立て工事の拡大(かくだい)。日本を始め世界各地でリゾート施設(しせつ)や商業施設の建設のため、埋め立て工事が進んでいますが、それも大量発生の一因(いちいん)と考えられます。クラゲの卵は、どこかに付着して生育するため、工事によって卵がくっついて育つ場所が増(ふ)えることで、卵がかえる数がさらに多くなり、クラゲが増えるもととなるのです。

 このように、クラゲの大量発生には、いくつもの理由が重なっていると考えられます。しかし、そのいずれもが地球環境の悪化に関係しているようです。

対 策

 クラゲの問題を解決(かいけつ)するために、エチゼンクラゲの被害が大きい日本海側を中心に、各県が力を合わせて取り組もうという試みも始まっています。

 石川、富山(とやま)、福井、新潟(にいがた)、島根、京都、兵庫(ひょうご)、鳥取(とっとり)など11府県は「日本海大型クラゲフォーラム」をきょう19日、福井県で開きます。初めてとなる会合では、各府県のくわしい被害の様子などを報告(ほうこく)し合うなどして話し合います。11府県は今後も話し合いを重ね、共通の対応策(たいおうさく)を考えていくそうです。

 エチゼンクラゲの大量発生は、環境悪化への危険(きけん)信号だとも考えられます。私たちに、もう一度、身の回りを見つめ、生活の仕方や様式を見直す必要があることを教えてくれているのかもしれません。

日本海でエチゼンクラゲが異常発生

2002年10月30日 The Sankei Shimbun
 島根県沖から福井県沖の日本海で8月ごろから、巨大なかさで知られるエチゼンクラゲが異常発生し、漁業が大きな被害を受けている。今後沿岸流に乗って新潟、山形県沖などへ北上する可能性も高いという。

 島根町漁協などによると、エチゼンクラゲは成長すると、かさの直径が2メートル、重さは200キロにもなるとされ、引きあげた定置網がエチゼンクラゲの重さで破れたり、底引き網が目詰まりしたりする。

 またクラゲが中にいるため、魚が網に入らず、一緒に網に入った魚もクラゲの触手の毒や粘液で弱り、商品価値が下がるという。

 島根県美保関町の定置網漁業の会社は「毎日クラゲを網から出すことで精いっぱい。すでに1000万円以上の損失がでている」。同県鹿島町の漁業関係者も「漁船員に給料を払うのが難しいほど、水揚げが減った漁業組合もある」と嘆く。

 異常発生の原因について元福井県栽培漁業センター所長の安田徹さん(64)は(1)梅雨の雨量が少なく、海への土砂流入が減ったため、クラゲの生存率が高くなった(2)例年に比べて水温が高いため、早く成長して活発に動いている−などと指摘している。

 安田さんは「自然現象なので被害の予防は難しい。クラゲと同じ網に入った魚はすぐに水洗いをし、弱らないようにしてほしい」と話している。


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