TOPIC No.3-34 アスベスト(石綿)

01. 石綿 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
02. アスベスト肺
03. 中皮腫・スベスト疾患・患者と家族の会
04. アスベストについて考える
05. アスベスト根絶ネットワーク(略称:アスネット)
06. アスベストセンター
07. アスベスト対策情報
08. アスベスト健康被害 YAHOO! News
09. アスベスト問題 byYomiuri On-Line(読売新聞)
10. Yellow Hiro's Topic No.3-5 じん肺訴訟
11. 天然鉱物原料に含まれる石綿について  by社団法人 日本石綿協会
12. タルクへの石綿含有可能性調査結果について平成18年10月16日 厚生労働省発表
13. 石綿を含有する粉状のタルクの製造、輸入、譲渡、提供又は使用の禁止の徹底について<平成18(2006)年10月16日>厚生労働省
14. 石綿(アスベスト)測定(計数法)について 2005年07月13日 EICネット
15. アスベスト分析法 2007年07月19日 EICネット
16. 石綿分析(アスベスト分析) を行っています by住友金属テクノロジー株式会社鹿島事業部
17. 石綿(アスベスト)の分析のご案内(建材及び天然鉱物中の石綿含有率分析について) by北九州環境測定センター
18. 天然鉱物中の石綿含有率分析を開始!(2006年11月)株式会社環境ラボ゙
19. 天然鉱物中の石綿含有率の分析方法の検討結果 報告書
20. < 石 綿 > bymomijidi's Page(安全衛生をライフワークとする現場屋のページ)

赤外線でアスベスト無害化 産総研が技術開発

2008年01月23日 中国新聞ニュ−ス

 産業技術総合研究所(茨城県つくば市)は23日、壁や天井に吹き付けられた飛散性のアスベスト(石綿)を含んだ断熱材を、赤外線を使ってはがさずに現場で簡単に無害化する技術を開発したと発表した。

 アスベストは細い針のような繊維状で、吸い込むと中皮腫や肺がんを起こす恐れがある。従来は完全防備した作業員が手作業ではがし、特別管理産業廃棄物として処分していた。

 今回開発した技術は、その場で熱するだけでアスベストが黒く溶け無害になるので、簡便な上、処理コストも数分の1になるという。池田伸一主任研究員は「処理速度を上げ、大きな面積を無害化できる技術を3年程度で実用化したい」と話している。

大腸がん新薬、中皮腫に効果 金大病院・矢野教授 アスベスト被害治療に光明

2007年07月19日 北国新聞

 金大附属病院がん高度先進治療センター長の矢野聖二教授は十八日までに、アスベスト(石綿)の吸引が原因で発症するがんの一種、悪性胸膜中皮腫の治療に、大腸がん用に承認された新薬が有効であることを突き止めた。胸膜中皮腫に効く抗がん剤は現在、国内に一種類しかないが、マウスを使った実験で大腸がん新薬をこの抗がん剤と併用すると、延命効果が一層高まった。新薬単独でも治療効果が見られ、困難だった胸膜中皮腫の治療に大きく役立つと期待される。

 研究成果は米がん学会誌「クリニカルキャンサーリサーチ」に掲載されるほか、二十八日に金大医学部十全講堂で開かれる「第一回北陸オンコロジーフォーラム」で発表される。

 胸膜中皮腫に治療効果が確認されたのは「アバスチン」という新薬。がんが正常細胞から栄養や酸素を取り込むためにつくる血管の組成を防ぐ薬で、国内では大腸がんの治療薬として今年四月、厚生労働省に承認された。

 胸膜中皮腫の治療薬としては今年一月に「アリムタ」という抗がん剤が初めて承認された。臨床試験では、がんが半分以下の大きさに縮小する効果が患者の三割以上に現れたが、効き目が弱い患者やまったく効かない患者もおり、薬の有効性をより高める工夫や他の治療薬の開発が求められていた。

 マウスに人工的に胸膜中皮腫をつくると、通常は約三十五日で死亡する。矢野教授らがこのマウスにアバスチンを投与したところ、寿命は四十五日前後に延びた。これはアリムタを単独投与した場合とほぼ同じ効果だった。

 さらに、アバスチンとアリムタを合わせて与えると、マウスは六十五日前後まで生存した。胸膜中皮腫の血管は、腫れ上がったような状態になって腫瘍内部の圧力を高めているため、外部から抗がん剤が届きにくかったが、矢野教授によると、アバスチンを投与することで血管の腫れが引き、腫瘍内部の圧力も正常に戻ったため、アリムタが効率良く到達したと考えられるという。

 矢野教授は、将来的には全国規模でアバスチンの臨床試験を行い、胸膜中皮腫への効果を確認したいとし、「今後はどの患者にどの薬が効くかを投与前に確かめる方法を研究し、治療の効果を高めたい」と話している。

◆悪性胸膜中皮腫 肺の表面などを覆う胸膜の中皮細胞から発生する悪性腫瘍。ほとんどの場合アスベスト(石綿)の吸入が原因とされ、被ばくしてから30―40年で発症する。国内では年間1000人ほどが発症している。患者は世界的に増加しているといわれているが、発症のメカニズムや効果的な治療法は分かっていない。

ユニチカがビニロン繊維を値上げ 原燃料コストを価格転嫁

2007/07/18 The Sankei Shimbun WEB-site

 ユニチカは18日、ビニロン繊維を8月1日出荷分から1キロ当たり50円値上げする、と発表した。原油高に伴い原燃料コストが上昇しているため、価格転嫁する。値上げは昨年10月以来。

 ビニロンはアスベスト(石綿)の代替品として、セメントの補強などに使われる。最大手のクラレも値上げを表明している。

ATC「アスベストセミナー」

2007/07/14 EIC ネット

ATCグリーンエコプラザ「アスベストセミナー」のご案内

 今後、建物の解体等によるアスベスト廃棄物の発生量は、4000万tに上るとされ、これから毎年100万t程度の大量の廃棄物が排出されると予想されています。

 これらのアスベストを安全、適正に処理するためには、どのような取り組みが必要なのか、その方向性を提示するとともに、調査・測定・処理等の現場の状況、土壌中アスベストの測定・評価の話題等の処理・測定に関する技術評価を紹介します。

日時 : 平成19年9月20日(木) 午後

場所 : おおさかATCグリーンエコプラザ内ビオトーププラザ(ITM棟11F)     http://www.ecoplaza.gr.jp/access.html

主催 : おおさかATCグリーンエコプラザビジネス交流会      水・土壌汚染対策研究部会     http://www.ecoplaza.gr.jp/business/ws_research.html    廃棄物・リサイクル・ゼロエミッション研究部会     http://www.ecoplaza.gr.jp/business/wrz_research.html

アスベスト無害化の新溶剤 道内皮切りに拡販へ 開発の「エコ・24」

2007/07/14 北海道新聞

 建物や船舶などの塗装を手がけるエコ・24(東京)は十三日、独自開発したアスベスト(石綿)を無害化する溶剤が、国土交通省の材料認可を取得したことを明らかにした。産学共同研究で医学的・工学的性能の立証も終えたことから今後大きな需要が見込めると判断、道内の公共施設を皮切りに全国で拡販する。

 この溶剤は「エコベスト」。特殊な溶液で溶かしたシリコーンを建物の壁や天井に吹き付けて浸透させアスベストの繊維一本一本を固化し、空気中への浮遊を防ぐ。

 東京医科歯科大大学院の小野繁教授が行ったマウス実験によると、固化したアスベスト繊維の太さは元の数十倍になり、人体に入っても肺胞に突き刺さらず痰(たん)として排出される。また、東北大大学院の藤巻宏和教授と共同で「エコベストがアスベストの粉じん化や飛散をほぼ無限に近い期間にわたって防ぐ」(藤巻教授)ことを実証した。

 エコ・24はこれまで、無害化工事を全国で十五件実施。十七日からは初の公共施設案件として網走管内の公立中学校体育館で施工する。エコベストの共同開発者で同社営業部長の古川達夫氏(上川管内上川町出身)がまず道内の学校や病院などを重点的に開拓する。

 一平方メートル当たり三万−五万円と比較的低コストで済むことなどから、保有建築物にアスベストが使われている大手ビル管理会社や電力会社、石油元売り会社などからの引き合いが既に急増しているという。

 国内には四千万トンのアスベスト含有建材があると推定されている。建物の解体などによるアスベスト排出量は二○一五年ごろにピークを迎えるとみられている。

 アスベスト無害化技術には高温溶融法や化学分解法などがあるが《1》含有材を建物から除去する大掛かりな工事が必要《2》溶融炉など特別な処理施設が普及していない−という難点がある。

クラレ、PVA繊維とポリエステル短繊維を2007年8月1日出荷分から値上げ

2007年07月13日 NIKKEI BP NeT

 クラレは,ポリビニルアルコール(PVA)繊維のビニロン「クラロンK-II」の価格を,2007年8月1日出荷分から一律50円/kg値上げする。この製品は,アスベスト代替用の繊維としてセメント製品の補強材のほか,紙や不織布・ゴム資材の補強繊維として産業資材用途を中心に使用されている。さらに,ポリエステル短繊維の価格も同時期出荷分から一律40円/kg値上げする。

 値上げの理由は,原油・ナフサの高騰による原燃料価格の上昇。自助努力によるコスト削減の範囲を超えており,事業収益が悪化していることから2006年10月以来の値上げを決めたとしている。

県内の石綿対策、民間は4割以上未実施 県、月内に意向調査へ

2007/07/08さきがけon the Web

 アスベスト(石綿)を使った県内の民間施設のうち、除去や囲い込みなどの対策を取っていない施設が4割以上に上ることが7日、県の調査で分かった。県や市町村の管理施設は8割が対策を実施済み。県は高額な除去費用を低利融資する制度を設けているが、利用は低調だ。制度は本年度末で終了予定のため、県は対策を取っていない民間施設に対し、月内に意向調査を行う。

 健康被害が社会問題化した平成17年7月から今年6月までの2年間で、県環境管理室が確認した県内のアスベスト使用施設は269施設。このうち民間の64施設で、除去、囲い込み、薬品による固定化のいずれかの対策を取ったのは36施設、56・3%にとどまっている。

 一方で、病院や公民館など県や市町村が管理する205施設は79%に当たる162施設が対策を実施済み。残る43施設では立ち入り禁止や閉鎖などの措置を取り、対策工事や解体も順次計画されている。

アスベスト使用 公表せず プラネタリウム投影機『現場混乱する』

2007年07月07日 東京新聞

 横浜こども科学館(横浜市磯子区)にあるプラネタリウム投影機の本体に、断熱材としてアスベスト(石綿)が使われていることが六日、分かった。飛散はなく、人体への影響もないというが、同型機を使用する二自治体は五月末に製造業者からの報告を受けて速やかに公表、横浜市だけが公表していなかった。「積極的な情報公開」を打ち出している市だが、多くの市民が使用する施設情報への対応は鈍かった。 (木村留美)

 投影機は、五藤光学研究所(本社・東京都)が製造した「スーパーヘリオス」で、二〇〇一年から同科学館で使用されている。同社によると、同型機のうち〇二年までに製造されたものに、断熱材として白石綿を使用していた。ただし、使用場所が密閉部分で、同社が実施した環境調査でも空気中への飛散は見られなかった。

 同社が〇二年までに製造した投影機は三台。横浜市のほかに、徳島県の「あすたむらんど徳島」と、福島県の「郡山市ふれあい科学館」に同型機がある。同社は五月二十四日に、市こども青少年局にアスベストを使用していることを報告するなど、管理する各自治体に伝えた。

 報告を受け、徳島県では六月四日の知事定例会見で発表。同県総務グループは「健康に害を及ぼすものではないが、安全安心が第一。疑わしきものは除去しようと考え、使用部分を交換することにした」として、約一カ月半にわたってプラネタリウムを休館して、交換修理に出した。

 また、郡山市でも同じ日に公表。同市教育委員会文化課では「撤去しなければならないものではないが、アスベストがこれだけ話題になっている中で、行政として説明責任がある。公表せず別のところから情報が出ればかえって市民は不安になる」と公表の理由を説明している。同市では交換はしないが今後は年に二回、飛散状況を調べ、飛散が見られれば、ただちに対応を取るという。

 一方、横浜市の市こども青少年局では「検査の結果、飛散の可能性はなく安全性に問題はない。公表すれば現場が混乱することも考えられ、コマーシャルする必要はないと判断した」としている。

2009年からアスベスト製造輸入禁止

2007/07/03 Innolife.net(韓国情報発信基地)

 2009年からすべてのアスベスト製品の輸入と製造、そして使用が禁止される。政府は今日「アスベスト管理総合対策」を発表し、今年から2011年まで6百3億ウォンを投資し、アスベストの使用を基本的に遮断し、学校と多重利用施設のアスベスト使用実態を調査する事にした。

 政府はまた、2009年から段階的に建築物を撤去する際に、アスベスト専門機関が発給する「アスベスト調査結果書」の提出を義務化させ、アスベスト除去業社の資格基準も強化する事にした。

 政府は、70年から80年代にかけて集中的に輸入されたアスベストが、人体に流入してから発病まで最高30年の潜伏期間を経るため、これからアスベストが国民の健康に大きな脅威となることがあるため、このような総合対策を準備したと明らかにした。

アスベストホットライン、7月2・3日に開設

2007年06月30日 asahi.com

 アスベスト(石綿)による健康被害などについての相談を受けるホットラインが2、3日の午前10時〜午後5時、開設される。電話は0120・00・2385。

 全日本造船機械労働組合やNPO法人じん肺アスベスト被災者救済基金などが主催。石綿の粉じんで中皮腫、肺がん、じん肺といった健康被害を受けた人やその家族を対象に、労災補償や企業からの補償の受け方などについて相談にのる。

中皮腫の死亡率最大69倍 兵庫・尼崎のクボタ周辺

2007年05月28日 中国新聞ニュース

 アスベスト(石綿)による健康被害が問題となった大手機械メーカー・クボタの旧神崎工場があった兵庫県尼崎市で、中皮腫死亡率が全国平均の最大約69倍に上ることが28日、環境省の検討会で報告された。

 報告によると、2002−04年に尼崎市で中皮腫で死亡した人の割合を地区別に、居住期間ごとに調査。その結果、工場の周辺地区では男性が全国平均の最大約21倍、女性が最大約69倍となった。

 中皮腫の多くは石綿を扱う職業に起因すると考えられており、全国的には男性の中皮腫死亡率が高いが、今回の周辺地区の調査では女性の死亡率が男性より高かった。

 このため、職場とは関係ない一般環境での石綿吸引が原因の可能性も出ているが、報告は「調査対象者数が限られており、今回の数値で直ちに一般環境経由の発症リスクが高いとは言えない」としている。

石綿被害で見舞金制度 日通、遺族は一方的と反発

2007年02月06日 中国新聞ニュース

 日本通運(東京都港区)は6日までに、業務でアスベスト(石綿)を原因とする中皮腫や肺がんになった元従業員の患者らに200万円の見舞金、遺族に400万円の弔慰金を支払うことを決めた。既にホームページに公表している。

 上積み補償を求め6日、日通と話し合った旧日通尼崎港支店(兵庫県尼崎市)の遺族らは「一方的に制度を決めて公表した」と反発。経緯の説明や被害実態についての情報開示を求める要求書を渡した。

 日通によると、見舞金などの対象は、勤務歴1年以上の従業員や元従業員の患者と遺族。労災認定されているか、石綿健康被害救済新法で特別遺族給付金の支給が決まっていることが条件。

 日通広報部は「現在これ以上の補償は考えていないが、誠意ある対応をしていきたい。制度については以前から検討を進めていた」としている。

下請けにも社員並み補償 石綿被害でクボタ

2006年11月27日 中国新聞ニュース

 大手機械メーカー、クボタ(大阪市)は27日、兵庫県尼崎市にあった旧神崎工場のアスベスト(石綿)被害により、中皮腫などで死亡した下請け会社の元社員5人の遺族に対し、クボタ社員と同等の2500万−3000万円の補償金を支払うことを決めた。クボタは下請け会社と分担して支払う。

 遺族と支援団体「尼崎労働者安全衛生センター」が同日記者会見し、明らかにした。センターによると、石綿関連企業が下請け会社の従業員に補償するのは異例。同様の被害を出したほかの企業にも影響を与えそうだ。

 5人は、毒性の強い青石綿が使われていた1957−75年に管などを作る作業をしていた。全員、労災補償は受けているが、クボタの社員並みに上積みする形で補償金が支払われる。

 遺族の1人は「危険な作業は下請けに回されていた。社員と同等に扱ってもらえたのは意義がある。こうした補償が全国に広がってほしい」と話した。

 クボタは「当時の状況や遺族の要望を踏まえて、従業員と同等の補償が必要と判断した」とのコメントを出した。

発がん性強い青石綿、元年にも使用? 公式見解と矛盾

2006/11/24 The Sankei Shimbun

 アスベスト(石綿)による健康被害問題で、厚生労働省は24日、特に発がん性が強いことで知られるクロシドライト(青石綿)の使用実績について、これまでの公式見解と矛盾する公文書が岸和田労働基準監督署(大阪府岸和田市)で見つかったと発表した。

 見つかった文書は平成元年度の石綿製品製造事業場に対する調査的監督について、当時の大阪労働基準局(現・大阪労働局)が管内労基署の調査結果をまとめたもの。管内事業場のクロシドライト使用量が「122トン」と記載されていた。

 これまで厚労省は、「元年実施の調査的監督でクロシドライトを使用する事業場は存在しないことを確認している」としていた。全国359の石綿製品製造事業場を対象に実施した、調査的監督の全国まとめ(2年2月)の報告書に、クロシドライトの使用事業場がゼロ、使用量がゼロと記載されていることを根拠としていた。

 新たに大阪で見つかった文書と、全国まとめの文書は、労基署が事業場ごとに作った調査個票を、大阪労基局と本省がそれぞれ集約したとみられている。厚労省は当時の担当者に聞き取りしたが、食い違いの原因は分からなかったという。

 厚労省化学物質対策課は「個票は破棄されたとみられ、なぜ数字が食い違うか分からない。裏付けられる文書があるか全国を対象に調べる」としている。

 当時アスベストをめぐっては、昭和61年に国際労働機関(ILO)がクロシドライトの使用を禁止する石綿条約を採択し、国内的にもアスベスト粉塵の防止を目的とする大気汚染防止法の改正(平成元年)が行われた。とりわけクロシドライトに対する危機意識が高まっている時期だった。

住友重に2億円賠償命令 石綿じん肺2次訴訟で判決

2006年10月30日 中国新聞ニュース

 住友重機械工業の浦賀、追浜両造船所(神奈川県横須賀市)で勤務中、アスベスト(石綿)を含む粉じんを吸いじん肺になったとして、元従業員らが計約4億円の損害賠償を求めた第2次訴訟の判決で、横浜地裁横須賀支部(高柳輝雄裁判長)は30日、同社に計約2億1000万円を支払うよう命じた。

 原告側代理人によると、造船所でのじん肺被害をめぐる集団訴訟で司法判断が出るのは初めて。

 原告は70−86歳の元従業員9人と、死亡した元従業員3人(うち2人は提訴後に死亡)の遺族7人の計16人。

 訴状によると、元従業員は1939−96年、両造船所で溶接工などとして働き、じん肺を発症。原告側は「会社は、防じんマスクの支給や作業時間の短縮など従業員のじん肺への罹患や症状の悪化を防ぐ措置を長年怠り、労働契約上の安全配慮義務を果たさなかった」と主張。会社側は「必要な安全対策を講じていた」と反論していた。

 同社造船所のじん肺被害をめぐっては、別の元従業員8人による第1次訴訟で97年3月、会社側が総額1億円余りを支払うことで和解が成立。第2次訴訟は昨年7月、会社側が「元従業員の症状などに疑問があり、安全対策を取っていたことが考慮されていない」として和解案を拒否した。

中皮腫をウイルスで破壊

2006/09/17 神戸新聞

 アスベスト(石綿)が原因のがん、中皮腫の細胞を移植したマウスにがん細胞だけを破壊するウイルスを投与し中皮腫が減少したとの実験結果を、岡山大病院遺伝子・細胞治療センターの藤原俊義助教授と関連のベンチャー企業オンコリスバイオファーマの渡辺雄一研究員らがまとめた。

 28日から横浜市で開かれる日本癌学会で発表する。

 藤原助教授らは、風邪の原因になるアデノウイルスに遺伝子の一部を組み込み、がん細胞に感染したときだけ増殖の“スイッチ”が入るよう改良。ウイルスが増えてがん細胞を破壊するようにした。

 マウスの胸に、ヒトの胸膜中皮腫細胞を移植し、このウイルスを28日目に投与した。中皮腫は平均約150ミリグラムになっていたが、43日目に約50ミリグラムに減少。投与しなかったマウスは約200ミリグラムに増えた。

 中皮腫を移植した翌日にウイルスを投与すると、細胞は増殖しなかった。

 藤原助教授は「抗がん剤と違い、正常な細胞には影響がない。副作用が少ないことも期待できる」と話している。

 このウイルスは、ほかのがんにも効くと期待でき、オンコリス社が近く米国で頭頸部がんなどについて臨床試験をする。

「クロム採掘で石綿被害」 遺族が労災申請

2006/06/29 The Sankei Shimbun

 北海道むかわ町のクロム鉱山で働いていた女性が中皮腫で死亡したのは採掘中にアスベスト(石綿)を吸い込んだのが原因として、苫小牧市に住む女性の二女(57)が29日までに、苫小牧労働基準監督署に労災を申請した。

 支援した「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」は「クロム鉱山の関係者が石綿被害で労災申請するのは全国で初めてではないか」としている。

 同会などによると、女性は昭和33年から37年ごろまで、むかわ町の八幡鉱山(閉山)で蛇紋岩からクロムを採取する作業に従事していた。平成16年11月に84歳で悪性胸膜中皮腫により死亡した。

 蛇紋岩に詳しい産業技術総合研究所北海道センターの中川充主任研究員は「蛇紋岩には石綿が含まれており、作業中に粉塵(ふんじん)を吸い込んだ可能性はある」と話している。

アスベスト製造、9月に全面禁止…厚労省

2006年06月26日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 厚生労働省は26日、アスベスト(石綿)の製造や輸入について、一部の例外を除き、9月から全面的に禁止することを決めた。

 化学工場や製鉄工場での配管部分、潜水艦、ミサイルなど代替困難なもの以外は、石綿を含む製品の製造などを全面的に禁止する。

 また、作業記録や健康診断の結果について、石綿疾患の潜伏期間が長いため、石綿に接し始めてから30年間としていた保存期限を、接し終えてから40年間と改める。

石綿被害で国に2億4000万円賠償請求 8人が初の集団提訴

2006/05/26 The Sankei Shimbun

 紡績工場などが集中していた大阪府南部の泉南地域でアスベスト(石綿)にさらされ、石綿肺や肺がんなどを発症した元工場従業員や周辺住民ら8人が26日、「石綿の危険性を知っていたのに規制措置などを怠った」として、国に計約2億4000万円の賠償を求めて大阪地裁に提訴した。

 石綿被害をめぐる国家賠償請求で初の集団提訴。昨年6月に大手機械メーカー「クボタ」の旧神崎工場(兵庫県尼崎市)周辺で健康被害が明らかになって以来、社会問題化した石綿をめぐり、国の対策に不備があったのかが法廷で問われる。

 原告側弁護団は「司法の場で国の責任を明確化し、新法の見直しも含めた全面的な被害救済を求めたい」と話している。

 原告は、同府阪南市の看護師岡田陽子さん(49)ら、同市や泉南市の工場に勤務していた元従業員と家族、周辺住民で、既に亡くなった3人の遺族も含まれる。

 原告側は「戦前から泉南地域などで行った研究や健康調査の報告で、国は石綿被害の発生や法規制の必要性を認識していた」と指摘。昭和22年制定の旧労働基準法などに基づく (1)工場での石綿粉じんの飛散を抑制する (2)粉じんの暴露を防止する (3)家族や周辺住民への危険性を告知する ―などの規制・監督措置を怠り、原告らの生命や健康を侵害したと主張している。

 3月施行の救済新法は、労災申請の時効(死後5年)を過ぎた元従業員の遺族と、中皮腫か肺がんを発症した周辺住民や元従業員の家族らが対象。岡田さんらは疾患が石綿肺であることなどが理由で対象から外れた。死亡者を含む元従業員3人は労災認定されている。

石綿被害で国賠提訴へ 大阪の従業員ら

2006/04/17 The Sankei Shimbun

 アスベスト(石綿)関連産業の集積地だった大阪府の泉南地域で健康被害を受けた元工場従業員や近隣住民の支援にあたる「大阪じん肺アスベスト弁護団」は、国の責任を追及する国家賠償請求訴訟を、5月下旬に大阪地裁に起こすことを決めた。弁護団によると、最終的に10人前後が訴訟に参加する見通し。

 提訴の意向を示しているのは、泉南地域で肺疾患などで死亡した3人の遺族と、石綿工場の元従業員3人、近隣住民2人の計8人。石綿工場の出入り業者だった人や、アスベスト新法の救済対象にならない人も含まれているほか、訴訟参加を検討中の人もいるという。

住友じん肺第2次訴訟:会社側の証人申請を却下、次回結審 /神奈川

2006年03月07日毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 住友重機械工業(本社・東京)の元従業員が同社を相手取った「住友じん肺第2次訴訟」の第3回口頭弁論が6日、横浜地裁横須賀支部で開かれた。高柳輝雄裁判長は会社側の証人申請を却下し、6月12日に最終弁論と決め、今秋にも判決の流れとなった。

 弁論では原告2人とその上司2人(会社側証人)が約6時間証言した。審理後、高柳裁判長は会社側が申請した医師の証人申請を却下し、次回に結審と決めた。

 裁判所が示した和解案を会社側が昨夏に拒否したため、弁論再開となっていた。高柳裁判長が証拠調べを打ち切った訴訟指揮から、「ほぼ原告の主張に沿った判決」が9月ごろにも出る可能性が高まった。

 原告弁護団は「弁論再開は会社側の時間稼ぎであり、次回結審は早期解決を願う我々の主張に沿ったもの」と期待を込めた。

 原告は「艦船部門で作業し、アスベストの粉じんによりじん肺禍に陥った」と訴える横須賀市の元従業員ら17人。03年7月に3億9600万円の損害賠償を求め、提訴した。【網谷利一郎】

アスベスト「近隣暴露」原因?造船所周辺で2人死亡

2006/02/11 The Sankei Shimbun

 広島県内の造船所周辺に住んでいた男性と女性が、アスベスト(石綿)が主な原因とされる中皮腫で死亡していたことが11日、岡山労災病院(岡山市)の岸本卓巳(きしもと・たくみ)副院長らの調査で分かった。

 死亡したのは広島県呉市の主婦=当時(87)=と、尾道市の郵便局職員男性=当時(38)。

 岸本副院長によると、呉市の主婦は、石綿が使用されていた旧海軍工廠や造船工場の近隣に住んでおり、1988年に死亡。解剖で腫瘍(しゅよう)の組織から石綿小体の破片が見つかった。本人や家族が職業で石綿を吸った可能性がないことから、近隣暴露の事例となるという。

 尾道市の男性は、造船所周辺で生まれ育ち、2003年に死亡。造船所でよく釣りなどをしていたという。

 岸本副院長は「造船所ではかつて毒性の強い青石綿などが使用されていた。造船所周辺の症例を細かく検討し、場合によっては疫学調査が必要」としている。(共同)

アスベスト新法 7カ月のスピード成立 給付申請、年度内受け付け

平成18(2006)年02月04日 The Sankei Shimbun

 アスベスト(石綿)によって被害を受けた人を救済する「石綿による健康被害の救済に関する法律」案と関連改正法案が三日、参院本会議で可決、成立した。政府は年度内に給付金の申請受け付けを始める方針。周辺住民への被害が明らかになって七カ月というスピード成立となった。

 新法は、労災補償を受けられない周辺住民などの患者に療養手当などを給付するもの。アスベストを原因とする中皮腫や肺がんが対象で、石綿肺や良性石綿胸水などは今後検討していく方針。

 独立法人環境再生保全機構が認定や給付にあたる。給付財源は国と都道府県のほか、労災保険適用雇用主ら約二百六十万社から徴収し、アスベスト関連企業には追加費用を求める。

 産業界からは「アスベストとは無関係」と異論も出たが、環境省などは「アスベストはインフラで使われ、多くの企業が恩恵を享受した。原因社がどこかということではない」との理由で「広く薄く」徴収する方針を決め、主要な業界団体の理解を得た。

 国は十七年度補正予算から拠出。都道府県は予算措置が間に合わないため十九年度からになる方向。企業からの徴収も十九年度に開始される。

 給付額は政令で定めるが、現在治療中の患者には医療費の自己負担分と月十万円の療養手当、被害者遺族には特別遺族弔慰金二百八十万円と葬祭料二十万円の計三百万円が支払われる。施行後五年以内に必要な見直しを行うことも明記された。

                  ◇

 ■アスベスト新法の骨子

 (1)周辺住民など労災補償を受けられない患者と遺族が対象

 (2)認定患者には医療費の自己負担分と療養手当(月10万円)など、遺族には特別遺族弔慰金と葬祭料(計300万円)

 (3)認定や給付は独立法人環境再生保全機構が行う

 (4)救済給付の財源は国と都道府県のほか労災保険適用事業主から徴収。石綿関連企業から特別拠出金を徴収。徴収は19年4月から開始

 (5)時効で労災補償を受けられない遺族に特別遺族年金か特別遺族一時金を支給

石綿被害 国家賠償提訴へ

2006/01/23 The Sankei Shimbun

大阪の弁護団 救済法案「不十分」

 アスベスト(石綿)による健康被害問題に取り組む「大阪じん肺アスベスト弁護団」(三十七人)は、対策の遅れや被害拡大に関する国の責任を明確にすることなどを目的に、三月末から四月ごろをめどに国家賠償訴訟を起こす方針を決めた。今国会に提案され三月中にも施行予定の救済法案を「不十分」とみた上での判断。かつて石綿関連工場が密集していた大阪・泉南地区で健康被害を受けた人を中心に、今後、原告を集めるという。

 救済法案は、労災の対象外となる工場周辺住民や従業員家族らに療養手当や弔慰金などを支給する内容だが、弁護団は、労災の対象である石綿肺が救済対象でなかったり、労災の遺族補償などにくらべて支給額が少なくなることなどを問題視している。

 泉南地区では、弁護団などが石綿関連工場の元従業員らを対象に昨年行った健康被害調査で、エックス線検査を受けた八十三人のうち約六割に石綿肺などの健康被害がみられた。これまでに、十人程度が訴訟に関心を示しているという。

 同弁護団ではすでに、所属弁護士約十人で国賠訴訟に向けた専属チームを結成。今後、同チームを中心に対応を進めていくという。

石綿被害でクボタ社長、住民に謝罪 新たな補償制度表明

2005/12/25 The Sankei Shimbun

 兵庫県尼崎市にあった大手機械メーカー、クボタの旧神崎工場の周辺住民にアスベスト(石綿)による健康被害が出ている問題で、同社の幡掛大輔(はたかけ・だいすけ)社長は25日、尼崎市内で中皮腫になった患者や遺族と初めて面会。「道義的責任を感じおわびする」と謝罪し、社員と差別しないような補償制度を新たにつくることを明らかにした。

 石綿関連企業が住民の補償に乗り出すのは初とみられ、ほかの企業にも影響を与えそうだ。

 面会は非公開で、クボタの幹部5人と患者や遺族ら約70人が出席。約1時間にわたって行われ、終了後、住民側が会見し明らかにした。

 住民側によると、幡掛社長は、工場から周辺に石綿が飛散した可能性を「否定できない」としたが、中皮腫発症との因果関係は「根拠を見いだすには至っていない」と明確には認めなかった。

 だが「危険性を認識していなかった。事業者として道義的責任を感じる」と頭を下げた。具体的な補償内容は示さなかったが「社員との差別はしない」と明言。今後どのような制度にするか住民側からも意見を聞き、来年4月をめどに実施する予定という。

 同社は中皮腫の患者や遺族に200万円の見舞金や弔慰金を支払う制度を定めており、22日までに申請は70件、うち46件に支払った。

 政府は石綿被害対策として来年1月の通常国会に新法を提出する方針で、療養中の住民や従業員家族には医療費自己負担分と毎月約10万円、遺族には葬祭料と弔慰金計300万円を給付。労災申請の時効を越えている遺族には毎年240万円の年金が支払われる。(共同)

被害遺族に300万円で決定 石綿新法の合意内容公表

2005/12/06 The Sankei Shimbun

 アスベスト(石綿)被害対策で、自民、公明両党の国会議員でつくる「与党アスベスト対策プロジェクトチーム」(佐田玄一郎座長)の会合が6日、開かれ、労災補償対象外の被害者遺族に対し、特別遺族弔慰金280万円、葬祭料20万円の計300万円を支給するなどとした与党の合意内容を公表した。

 政府もこの合意を受け入れる方針で、石綿新法で最後まで課題として残っていた給付額がすべて決定した。

 佐田衆院議員(自民)は会合後「すき間のない被害者救済のため、補正予算の案とともに1日も早く法案を国会に提出してほしい」と政府に要望した。

 会合では、経済界に対して、石綿に関係のない企業はほとんどないことから「広く薄く」負担を求めるとともに、石綿の製造や加工にかかわった企業には上積みを求めるなどとする政府の大綱が了承された。

 給付額は、11月末の政府の石綿新法大綱には盛り込まれなかったが、その後の与党プロジェクトチームの会合で、政府が弔慰金260万円、葬祭料20万円の計280万円という案を提示。この案に公明党は「労災との格差が大きすぎる」として納得せず、与党トップレベルで折衝が続いていた。

 労災制度でカバーされない住民や従業員の家族で療養中の被害者に対しては、医療費の自己負担分と療養手当として月額約10万円が支給される。

 労災補償の対象でありながら時効の壁で認定を受けられなかった従業員の遺族については、過去の労災制度での給付実績を参考に、休業補償、医療費の自己負担分など、年金の形で毎年240万円が支給される。(共同)

アスベスト:元社員も被害 1人死亡、37人「不調」−−神戸港・荷役作業経験者調査

2005年12月04日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE 東京朝刊

 全国有数のアスベスト(石綿)輸入港だった神戸港で、荷役作業に従事していた海運・倉庫会社の元社員を対象に、神戸港年金者組合連絡会がアンケート調査した結果、1人が石綿が原因とみられる肺がんで死亡し、37人が肺がんや中皮腫などで入院中だったり、「胸が痛い」などと体調不良を訴えていることが分かった。神戸港の荷役作業では登録日雇い労働者8人が石綿関連疾患で死亡したことが既に判明しているが、社員にも健康被害が広がっている実態が明らかになった。

 今年9月、60〜75歳の組合員534人に石綿の健康被害などを尋ね、253人が回答。石綿の荷役に携わったと答えた130人のうち、兵庫県内の男性は今年6月、74歳で肺がんで亡くなったと遺族が回答した。連絡会が代理人になり神戸東労働基準監督署へ労災手続きをしている。

 連絡会や妻(71)によると、男性は約30年間、石綿入りの袋の積み下ろし作業に従事。袋が破れ、日常的に白い粉末が舞い上がっていたという。

 また「何らかの症状で悩んでいる」と答えた37人は肺がん、中皮腫、肺気腫で入院中だったり、「肺がはれて薬を飲み続けている」「息苦しく、酸素ボンベを使っている」などと訴えた。【桜井由紀治】

アスベスト:仏で損害賠償裁判 「人災」認識高まる

2005年12月03日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 【パリ福井聡】旧ミッテラン時代に社会党政権と関連業界が一体となってアスベスト輸入を続けたフランスで11月30日、アスベストを死因と認める損害賠償の2審判決があった。裁判の進展と共に、政権と業界の癒着の実態も知られるようになり、仏でもようやく「アスベスト禍は人災」との認識が確定しつつある。

 「ついに裁判所も会社の全面的責任を認めてくれた」。パリ13区に住むスザンヌ・ディアヌーさん(78)は、そう言って笑みを浮かべた。スザンヌさんの夫のマークさんは40年近くボイラー製造会社で設備技師として働き、99年に71歳で病死した。90年代初めに突然呼吸困難に襲われ、医者に診断してもらった結果、肺からアスベストが検出された。しかし、職人気質だったマークさんは、診断結果を見ても病気がアスベストと関係あるとは死ぬまで一言も口にしなかった。

 夫の死後、パリ大学ジョシュア校で建築資材にアスベストが使われていたことが問題となり、同校の学生だった長男の主張などで会社側に損害賠償を提訴。1審勝訴後、会社側が控訴した2審でも「会社側に全責任がある」との判決を勝ち取り、勝訴が確定した。

 他の欧州諸国がアスベストの防火材などとしての輸入を次々と禁止したのに対し、フランスは97年1月の全面禁止まで動きが非常に鈍かった。

 「アスベスト 今後数千人の死が」の著者、フランソワ・メリー氏によると、ミッテラン政権時代の83〜95年、「パーマネント・アスベスト委員会」という業界団体がアスベスト輸入に関する政府政策を大きく左右。91年、他の欧州諸国がアスベスト輸入を禁じた中、仏は拒否していた。

 反アスベスト団体によると、労働組合も政府と同一歩調を取り「ミッテラン左派政権を困惑させたくなかった」上に「労働者の健康より失業対策を優先させたかった」などと言われている。

石綿救済で費用負担義務付け 260万社に270億円

2005/11/29 The Sankei Shimbun

 政府は29日、アスベスト(石綿)の健康被害対策で4回目の関係閣僚会合を開き、労災補償の対象とならない住民や従業員の家族らを救済するため「石綿による健康被害の救済に関する法律(仮称)案」の大綱を決定した。救済のため国や自治体からの公費支出に加え、石綿被害を出したかどうかにかかわらず全企業に費用負担を義務付け、基金を創設することを盛り込んだ。

 二階俊博経済産業相は記者会見で、企業負担は約260万事業所で総額約270億円になるとの見通しを示した。

 政府内では、過去に亡くなった被害者の遺族に260万円の特別遺族弔慰金を支払う方針で検討してきたが、大綱には金額は明記されず先送りされた。上積みには政治決断が求められる。額は年内に決定、来年の通常国会に法案を提出する。

 一方、厚生労働、文部科学省など5省は所管施設の中で、石綿飛散の恐れがある病院や学校などの施設名や数を公表。一部重複の可能性もあるが、約8200施設に上った。川崎二郎厚労相は病院や社会福祉施設の石綿除去に関し「約600施設が対象で予算措置を求めていきたい」と語った。

 大綱によると、労災以外の被害者に医療費や療養手当、新法施行前に亡くなった人も含め被害者の遺族に葬祭料や特別遺族弔慰金を支給する。財源は「幅広い企業が石綿で利益を得た」との観点から、業種を問わず労働者を雇用する全企業に救済費用の納付を義務付け、基金を創設する。

 徴収は労働保険徴収システムなどを活用。被害と関係の深い特定企業には負担上積みを求める2階建て方式にした。経済産業省が調整に当たる。

 自治体負担は、調整が終わっていないことなどから義務ではなく「予算の範囲内で拠出できる」と緩やかな表現にとどめた。政府は被害者が多く住む自治体により多くの負担を依頼する方針。

 救済対象となる「指定疾病」を定める。現在、環境、厚労両省の検討会が中皮腫や肺がんなど関連疾病の認定基準策定を進めている。認定や支給処分に対する不服審査請求の仕組みも設ける。

 労災補償を受けずに亡くなり、時効で受給申請できない労働者の遺族に対しては時効を撤廃し、労災保険の積立金から労災と同程度の内容で補償するとした。(共同)

全企業に費用負担義務 アスベスト新法大綱

2005/11/29 中国新聞ニュース

 政府は二十九日、アスベスト(石綿)の健康被害対策で四回目の関係閣僚会合を開き、労災補償の対象とならない住民や従業員の家族らを救済するため「石綿による健康被害の救済に関する法律(仮称)案」の大綱を決定した。救済のため国や自治体からの公費支出に加え、全企業に費用負担を義務付け、基金を創設することを盛り込んだ。

 給付額や企業の負担割合の最終結論は先送りされた。政府内では諸制度を参考に二百六十万円の特別遺族弔慰金を支払う方針で検討してきたが、上積みのためには政治決断が求められる。弔慰金の額は年内に決定し、来年の通常国会に法案を提出する。

 一方、厚生労働、文部科学省などは所管施設の中で、石綿飛散の恐れがある病院や学校などの施設名や数を公表。一部重複の可能性もあるが、約八千二百施設に上った。川崎二郎厚労相は病院や社会福祉施設の石綿除去について「約六百施設が対象で、予算措置を求めていきたい」と語った。

 大綱によると、労災以外の被害者や遺族に対し、医療費や療養手当、葬祭料、特別遺族弔慰金を支給する。

 これまで財源は公費のほか、被害の原因となった企業負担としてきたが、大綱では「幅広い企業が石綿で利益を得た」との観点から、業種を問わず全ての企業に救済費用の納付を義務付け、基金を創設する。徴収は労働保険徴収システムなどを活用。その上で、被害と関係の深い特定企業には負担上積みを求める「二階建て方式」にした。

 救済の対象については「指定疾病」を定める。現在、環境、厚労両省が設置した医師らによる検討会が中皮腫や肺がんなど石綿関連疾病の認定基準策定を進めている。認定や支給処分に対し、不服審査を請求できる仕組みも設ける。

 労災補償を受けずに亡くなり、時効で受給申請できない労働者の遺族に対しては時効を撤廃し、労災保険の積立金から労災と同程度の内容で補償するとした。

8200施設で石綿飛散の恐れ 病院や学校、公民館でも

2005/11/29 The Sankei Shimbun

 厚生労働など5省は29日、アスベスト(石綿)が飛散する恐れのある施設が全国で8200カ所余りに上ると発表した。厚労省は施設名も明らかにした。都道府県などを通じて集計したが、一部重複している可能性もある。残る未調査施設の調査を急ぐ。

 厚労省は所管の病院324施設、保育所や老人ホームなど社会福祉関連245施設、公共職業能力開発関連17施設の計586施設を公表。

 一般利用者が出入りする病室や食堂などは計73施設で、うち17施設では既に飛散防止の措置が取られている。残り513施設はボイラー室や倉庫など業者や職員が立ち入る場所だった。

 文部科学省の調査では、公立小中学校など303校を含む計771施設でアスベストの露出を確認。全施設で使用禁止、立ち入り制限の措置や応急対策を実施した。除去などの対策を都道府県知事や教育長らにあらためて求める。

 また自治体が管理する施設対象の総務省調査では、学校や公民館など計6617の建物でアスベストが使われながら除去など対策がとられていなかった。速やかな対策を要請する。

 環境省も関連施設の調査結果を公表。同省が所管する地方自治体設置の自然公園など215施設でアスベスト封じ込めの措置が取られていなかった。農林水産業関係の民間集会所など農水省所管の36施設でもアスベストが露出していた。(共同)

「石綿」口実の住宅リフォームに注意 国民生活センター

2005年11月08日 asahi.com

 健康被害が問題化しているアスベスト(石綿)に関する相談件数が、今年7月以降、急増していることが7日、国民生活センターのまとめで分かった。昨年度は計75件だった相談件数が、今年度は10月末までで1031件。相談者の8割は50歳以上だった。アスベストの訪問販売リフォーム業者に関するものもあり、同センターは「不審に思ったら早めに相談を」と呼びかけている。

 04年度以降の相談のうち、断熱材など「商品」に関するものが856件、修理や補修など「役務」に関するものが185件だった。健康などに関するものは65件だった。

 住宅関連が525件と一番多く、冷暖房器具や台所用品なども178件と多かった。リフォーム工事に関する相談は73件。うち訪問販売が34件で、「多くはアスベストが口実に使われていた」(同センター)という。

 比較的年齢の高い層に相談が集中している点について、同センターは「アスベストが多く使われた時期に家を建てた人が多いことも影響しているのでは」としている。

アスベストの大気環境基準設定を 全国知事会が要請

2005/10/28 The Sankei Shimbun

 全国知事会は27日、アスベスト(石綿)による健康被害を防ぐため、大気中の濃度を規制する環境基準を設定することなど国の対策強化を求める緊急提言をまとめた。橋本昌(はしもと・まさる)茨城県知事が政府、与党に要請した。

 提言ではこのほか、(1)縦割り行政のため対応が遅れたとの批判に応えるため、政府内で対策を調整する専門部署の設置(2)アスベストを使っていた工場周辺などでの健康被害の実態調査や住民の健診、医療費補助―なども求めた。(共同)

建物解体時に届け出義務 石綿の飛散防止で環境省

2005/10/25 The Sankei Shimbun

 環境省の検討会は25日、アスベスト(石綿)が大気中に飛散するのを防止するため、アスベストを使用するすべての建築物について、解体や補修の際に都道府県への届け出を義務付ける報告書の骨子案をまとめた。

 自治体側が解体作業の実態を詳細に把握し、チェックできるようにするのが狙いで、環境省は来年2月までに大気汚染防止法に基づく政省令を改正する。

 現行の届け出制度は、延べ床面積500平方メートル以上で、吹き付け石綿の使用面積が50平方メートル以上の耐火、準耐火建築物に限定していたが、この要件を撤廃。また届け出が必要な建築材料についても、現行の「吹き付け石綿」だけでなく、石綿を1%以上含む保温材や断熱材も対象にした。

 現行制度に基づく届け出件数は2004年度で1614件。制度改正により3倍程度に増加するとみられる。

 骨子案では、このほか東京都や大阪府などが義務付けている解体作業を監視するための石綿濃度の測定について、他の自治体も実施を検討することや作業マニュアルの整備などを求めた。(共同)

「アスベスト専門外来」相次ぎ開設 健康不安対応 各地で自主的に

平成17(2005)年10月23日 The Sankei Shimbun

 アスベスト(石綿)による健康被害が相次ぐ中、全国の総合病院などで「アスベスト専門外来」を開設する動きが広がっている。専門医が特定の日時に患者らを集め、診察や相談に応じる。厚生労働省は「各病院が地域住民のアスベストに対する健康不安にこたえようとする動き」と評価している。(柳原一哉)

 アスベスト専門外来の先駆けとなったのは、順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京都文京区)。中皮腫を見分ける検査キットが開発されたのを機に、八月二十五日に「アスベスト・中皮腫外来」を開設した。患者からの問い合わせが殺到するなど大きな反響を呼んでいる。

 専門外来開設の動きは全国に波及。神奈川県では、県立循環器呼吸器病センター(横浜市)▽横浜市立大学付属病院▽横須賀市立うわまち病院−の各病院が九月下旬から十月上旬にかけて、相次いでアスべスト専門外来を開設した。いずれも中皮腫や肺がんなどアスベストが原因とみられる疾患の診断や治療が主で、受け付けは毎週一回。

 専門外来開設について、「もともと呼吸器の専門医がおり、アスベストによる健康不安に対応しなければならないと考えた」(県立循環器呼吸器病センター)、「アスベスト健康被害は社会問題。研究成果を地域に還元するのは当然」(横浜市立大学付属病院)としている。

 元従業員らの健康被害が報告されているニチアス王寺工場がある奈良県も県立三室病院(三郷町)が年末までの期限つきで臨時の呼吸器専門外来を設置。今後、地域住民の不安解消や具体的な治療に対応していく考えだ。このほか、千葉県がんセンターや日本大学医学部付属板橋病院、山口県立総合医療センター、大分県立病院などでも開設された。

 厚労省によると、内科など診療科目の設置は医療法施行令で都道府県知事に届け出なければならないが、専門外来は広告できない制約があるだけで、各病院の判断で自由に開設可能。「禁煙外来」や「女性専門外来」などのように社会情勢に応じて全国的に開設されたケースは少なくない。

 厚労省は「(アスベスト専門外来は)国として設置を指導しておらず開設数などの統計はない。各病院が自発的に地域のニーズに応じようとしている結果」と歓迎している。

アスベスト:”危険”施設が187に 九州・山口で

2005年10月23日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 九州・山口でアスベスト(石綿)が使用され、施設の一部使用禁止や封じ込めなどの措置が必要とされる施設が、計187に上ることが毎日新聞の調べで分かった。国は省庁別に各県を通じて市町村を含む実態調査を進めているが、結果がまとまるのは11月のため、現時点で「調査中」と回答した自治体も多く、こうした施設はさらに増えるとみられる。

 ◇居住者、一時転居も…自治体が対策

 各県と全市を対象に、管理する学校や病院、庁舎などで、石綿の使用施設数と、それに伴う除去や飛散防止などの措置が必要な施設数をたずね、22日までに沖縄県を除く8県と66市から実数回答を得た。それによると、石綿を使用または使用の可能性がある施設は計1076施設。うち187施設が、飛散の可能性を調べるなどの理由で施設の一部を封鎖・使用禁止にしたり、給食の献立変更するなどの措置(除去作業後、業務を再開した施設も含む)が必要とされた。残る889施設については、各自治体は危険性はないと判断している。

 県別では、福岡の338を筆頭に長崎190▽熊本182▽鹿児島168▽山口94−−などの順。

 実例を見ると、給食センターのガス回転釜などの調理機器での使用は影響が大きく、熊本市は煮物など火を使うメニューを極力減らすなどでしのいでいた。

 鹿児島県鹿屋市では、市内の小中高校6校の教室の天井などで石綿が見つかり、使用禁止措置を取った。87年の調査では当時の基準値を超えなかったため、除去などの対策がとられなかったという。宮崎県小林市では、小学校2校の音楽室天井で石綿が見つかり、使用を禁じ特別教室で代用し、来年の夏休みに除去作業をする予定だ。

 山口県防府市の市営住宅では、市が87年と今年8月の2度、設計図検査で使用を見落としたことがわかり、居住者に一時転居したうえでの除去工事実施を予定している。

 一方、社会福祉施設や病院では、該当個所の立ち入り禁止や封鎖など部分的な措置で済むケースが多かった。【まとめ・上野央絵】

アスベスト:労災認定基準見直し 厚労相が正式表明

2005年10月18日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 尾辻秀久厚生労働相は18日の閣議後会見で、アスベスト(石綿)関連病に関する労災補償の認定基準を変更し、中皮腫を発症した労働者は原則として労災認定する方針を正式に表明した。基準変更のため、専門家による検討会を近く設置する。【大石雅康】

厚労相:中皮腫診断の患者 全員救済で検討

2005年10月16日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 尾辻秀久厚生労働相は16日、大阪市内で、アスベスト(石綿)関連がんの中皮腫患者らと初めて面談し、中皮腫と診断された患者は、石綿暴露の厳密な証拠を求めずに救済し、不支給だった遠距離の通院費も出す方向で本格的に検討すると約束した。政府が検討中の石綿関連病患者の救済法案だけでなく、従来の労災認定基準の改善も含めて対応を検討すると明言。治験中の中皮腫治療薬も多くの患者が使えるように弾力的に検討するとした。

 患者が労災認定された場合、最寄りの病院への通院費は支給される。だが、中皮腫は患者の自宅近くに専門医がおらず、遠方まで自費で通うケースが多い。

 また、現在の中皮腫患者の労災認定基準は、石綿暴露歴があっても石綿小体か石綿特有の病変「胸膜肥厚斑(ひこうはん)」の発見が原則で、衰弱した患者が切開手術を受けたり、死後に解剖されたりしている。認定基準について、厚労相は「中皮腫患者の8割は石綿が原因。疑わしくは救済にという気持ち」と述べた。【大島秀利、田中龍士】

増改築の石綿除去義務付け マンション、戸建ても規制

2005/10/13 The Sankei Shimbun

 国土交通省の社会資本整備審議会アスベスト対策部会(部会長・村上周三慶大教授)は12日の会合で、アスベスト(石綿)を断熱材として吹き付けた建築物を登録する台帳を都道府県などが整備、増改築時に石綿の除去などを所有者に義務付ける包括的な石綿対策を固めた。

 これを受け国交省は、来年の通常国会に建築基準法改正案を提出する方針だ。労働安全衛生法では事務所や工場での新規の使用禁止や飛散防止を定めている。建築基準法の改正により、マンションや一戸建て住宅も規制できるようになる。

 国交省はこれまで、石綿について建築労働者の安全対策の対象と考えてきたため、建築基準法では耐火構造の使用例から外しただけだった。石綿が吹き付けられたままになっているボイラー室や駐車場、住宅などの利用や解体作業を念頭に置いた対策は抜け落ちていた。

 今回決まった対策により、建築物の吹き付けに使われた石綿については、増改築時の除去や封じ込めなどを義務付ける。また石綿が露出し飛散する恐れがある建築物の所有者には飛散防止措置を自治体が勧告や命令をし、従わない場合は建築物の名前などを公表できるようにする。

 台帳に載せた建築物の所有者に定期的に報告を求め、内容を公表することも可能にする。

 このほか除去費用の財政的な支援や、マンションや住宅の入居者ら石綿被害を心配する人向けの相談マニュアルを整備する。(共同)

中皮腫で死亡 IHI責任認める

2005/10/12 中国新聞地域ニュース

 <呉の元工員遺族に 労災申請は「時効」 新法で救済の可能性も>

 石川島播磨重工業(IHI)呉事業所(呉市)の元工員で、十九年半前に悪性胸膜中皮腫で亡くなった呉市焼山政畝二丁目の平見和彦さん=当時(54)=は、遺族が保存していた病理解剖診断書などから、アスベスト(石綿)が発症原因の可能性が極めて高いことが十一日、分かった。労災申請期間の時効五年は経過しているが、会社側は責任を認めて謝罪した。

 平見さんは一九六一年から、旧呉造船所やIHI旧呉第一工場などに勤務し、新造船の電気の艤装(ぎそう)などに従事した。八六年、国立病院機構呉医療センターに入院。約一年後に死亡し、病理解剖で悪性胸膜中皮腫と診断された。

 石綿による健康被害がクローズアップされ、妻千鶴子さん(65)ら遺族は保存していた従業員履歴カードや病理解剖診断書を同事業所に初めて持参。当時の就業状況などを聞いたところ、石綿粉じんが舞う場所で作業をしていたという。加藤雅典総務部長(51)は「会社の責任である可能性が極めて高く、申し訳ない」と話した。

 また、遺族は同センターにも出向き、カルテ開示を求めた。その結果、職場環境や病理診断報告書などを総合的に判断して、石綿が原因で発症した可能性が高いとの見解を得た。

 労災補償を受けずに死亡し、労災申請期間から漏れた被害者遺族らは、来年の通常国会に提出される新規特別立法で救済される見込み。広島労働局労災補償課は「新法で時効が取り払われれば、救済できる可能性が高い」としている。

 千鶴子さんは「胸のつかえが下りた気持ち。主人以外にも、石綿被害を受けた人がいるはず。会社側から連絡を取って、救済に乗り出してほしい」と要望している。

日産車にアスベスト、95―99年製の16万台

2005年10月11日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 日産自動車は11日、1995年から99年にかけて生産した車の一部の部品にアスベスト(石綿)が含まれていたと発表した。

 同社はこれまで、国内向け車両へのアスベスト含有部品の使用を94年末に中止したと発表していたが、部品メーカー側の報告で95年以降の使用が明らかになった。

 アスベストが含まれていたのは、部品メーカー「マーレテネックス」(東京都豊島区)製で、エンジンが吸い込む空気を浄化する「エアクリーナー」の部品など。国内市場向けに国内工場で同期間中に生産された「ADバン」「キャラバン」「アトラス 10」など16万5804台に使用されていた。

中皮腫による死者953人 厚労省の04年人口動態統計

2005/10/08 The Sankei Shimbun

 アスベスト(石綿)と関連が深いとされる中皮腫で2004年に死亡したのは全国で953人だったことが7日、厚生労働省の人口動態統計(確定数)で分かった。

 03年と比べ75人(8.5%)の増加となり、統計を取り始めた1995年の500人からほぼ倍増した。

 中皮腫はアスベストへの暴露から30―40年たって発症するとされ、過去のアスベスト大量使用の影響で今後、死者の増加も懸念される。

 統計によると、04年に中皮腫で死亡した男性は729人、女性は224人。男性は前年より74人(11.2%)、女性は1人(0.4%)増えた。

 都道府県別では、大阪が99人で最多。次いで兵庫75人、神奈川69人、東京68人、北海道55人などの順になっている。

 23道府県で前年から増加し、広島では24人から48人に倍増。大手機械メーカー、クボタの工場や周辺で健康被害が判明した兵庫は前年と同じだった。

 95年から10年間の総計は7013人で、男性は5244人、女性は1769人。都道府県別では大阪が714人で最も多く、兵庫の609人、東京の545人、神奈川の519人が続いている。(共同)

民間の大規模建物、アスベストむき出し6838棟

2005年09月29日 読売新聞 yomiuri on-line

 国土交通省は29日、吹き付けアスベスト(石綿)がむき出しのままとなっている民間の大規模建物が6838棟に上るとする中間調査結果を公表した。

 調査対象は、1956〜80年に建築されたオフィスビルやマンションなど1000平方メートル以上の14万2929棟。9月15日現在で報告があったのは、半数の7万6747棟にとどまったが、約10%に当たる7883棟で吹き付けアスベストの露出を確認。このうち、1045棟で、調査を受けて除去などが行われた。

 都道府県別では、大阪府が642棟で最も多く、福岡県の433棟など。

4分の1が死亡 石綿使用工場で10年以上勤務の作業員

2005/09/22 The Sankei Shimbun

 大手機械メーカー、クボタの旧神崎工場(兵庫県尼崎市)で、アスベスト(石綿)を使った水道用パイプの製造に10年以上携わった作業員のうち約半数が中皮腫などを発症、4分の1が死亡したことが22日、分かった。

 同工場は1954年から75年まで、セメントなどに強度を増すため石綿を混ぜたパイプを製造。輸送のために圧縮された石綿を機械でほぐしていた。

 同社によると、製造に10年以上従事したのは251人で、うち約半数の120人が中皮腫や肺がんなどの石綿関連疾患を発症、うち61人が死亡した。

 このほか、作業従事が10年未満の13人が石綿関連疾患で死亡しており、同工場での死者は計74人。

 同社は「労災申請するなど会社としてできる限りの対応は取っている」としている。(共同)

アスベスト:接着剤の原料に使用 セメダインが自主回収へ

2005年09月20日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 接着剤メーカーのセメダインは20日、同社の接着剤4種類の原料にアスベスト(石綿)が含まれていたと経済産業省に報告し、製品を自主回収する方針を明らかにした。「粉じんは発生せず、健康被害を引き起こすことはない」としている。

 同社などによると、回収する製品はいずれも建築現場などで使われる4種類の業務用接着剤。粘度を増すために加えた粉末にアスベストが含まれていた。年間約380トンを出荷しているという。

 労働安全衛生法では、接着剤にアスベストは使用できない。経産省と厚生労働省は、他のメーカーでもこの粉末が使われていないかどうか、業界団体を通じて調べる。【西川拓】

アスベスト:町営住宅の全世帯移転を検討 神奈川・湯河原

2005年09月20日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 神奈川県湯河原町は20日、同町宮上の町営孫込住宅(3棟、計47世帯97人入居)でアスベスト(石綿)の使用が判明したため、全世帯の移転を検討していると発表した。今のところ、住民から健康被害の訴えはないという。以前住んでいた住人に対しても可能な範囲で健康調査する。

 同町によると、同住宅は1971〜75年に建設。いずれも鉄筋コンクリート4階建て、各棟に3DKの部屋が16戸(計48戸)ある。今夏の調査で、各棟1〜3階の計22戸で、居室や台所の天井に吹き付けた石綿が露出した状態だった。3棟とも4階の計12戸では当初から石綿は使われていない。残り14戸は過去の修繕でボードを張るなどしたため、飛散の恐れがない状態だった。

 同町は「目視した限り、石綿が毛羽立った状態ではないが、使用が判明した以上、住み続けてもらうわけにはいかない。他の部屋も同じ建物」との理由で、全世帯移転を打ち出した。

 移転先の候補は同住宅から約7キロ離れた県住宅供給公社の共同住宅。同町は引っ越し費用、町営住宅との家賃の差額を負担する方針だが、住み慣れた場所から離れたくないという住民もいる。家賃滞納などと違い、移転は任意になるという。同町は来週中にも住民に詳細な計画を示し、移転時期も含めて同意を取り付けたい意向だ。【大西康裕】

世界で毎年10万人が死亡 アスベスト、ILO報告

2005/09/19 The Sankei Shimbun

 国際労働機関(ILO)は18日、世界の労災の実態に関する報告書を発表、この中でアスベスト(石綿)が原因で死亡した労働者は毎年約10万人に上っていると推計した。

 報告によると、職場での事故や職業病による死者は毎年220万人に達し、このうち約2割にあたる44万人がアスベストを含む有害物質が原因で死亡した。2001年の各国の公式統計を基にしているが、報告漏れなどのため実際の死者数ははるかに多いと推測している。

 有害物質による死者のうち、肺がんやアスベストが原因の中皮腫による死者は世界で約16万6050人であることから、ILOはアスベストによる死者数を推計したとみられる。

 国別でみると、有害物質による死者は中国が10万2606人、インドが6万4894人と多く、日本は1万278人。アスベスト被害だけを取り上げた国別集計はない。

 現在ブラジルがアスベスト使用禁止に動いており、使用が禁止または制限される国は34カ国になる見通し。

 報告書は19日に米フロリダ州オーランドで開催される職場の安全と健康に関する国際会議に提出される。(共同)

石綿被害救済、企業負担求める 厚労相と環境相

2005/09/16 The Sankei Shimbun

 アスベスト(石綿)健康被害の救済制度をめぐる財源負担について、小池百合子(こいけ・ゆりこ)環境相は16日の閣議後会見で「クボタやニチアスのように明確な企業には入ってもらわないと、ほかが入れない」と述べ、既に多くの従業員に健康被害が出ている企業を中心に負担金の拠出を求める考えを示した。

 尾辻秀久(おつじ・ひでひさ)厚労相も閣議後会見で同様の意向を明らかにした。

 小池環境相は救済対策の基本的な考えとして「原因者に責任を問うことがベース」としたが、アスベスト製品の輸入業者など他の業種については「責任を問えるのか、今後仕分けをしないといけない」と明言を避けた。

 尾辻厚労相は「財源は現在議論中だが、アスベストを扱った事業所と国が出すことになろうかと思う」とし、産業界に一定の拠出を求める見通しを明らかにした。政府は今月中に新法の骨格を公表、年内にも細部を固めて来年の通常国会に提出することを決めている。(共同)

アスベスト、124社521品目の家庭用品で使用

2005/09/12 The Sankei Shimbun

 経済産業省は12日、アスベスト(石綿)を含有する家庭用品について、約2万4000社を対象に実施した調査で、124社521製品について、石綿を使用していたか現在も使用しているとの調査結果を公表した。過去に販売された5社5製品については再調査を指示していることなどを明らかにした。

 調査結果の詳細や問い合わせ先は同省のホームページで公表するとしている。

 調査は8月5日から業界団体などを通じ、同月末までに回答のあったものを集約。

 調査結果によると、現在製造中の製品で石綿が含まれていると報告があったのは14社19製品。ブリヂストンサイクルの自転車(1995年から販売)のブレーキ部については同社が再調査中。残りの13社18製品は外部へ放出される可能性はないとした。これらの19製品については経済産業省で代替化を指示しており、企業側は今年10月末までに代替化が可能と回答している。

 過去に製造された製品で、石綿含有の報告があったのは118社502製品。このうち、ノリタケカンパニーリミテドが58―65年に販売した電気火鉢と、大阪ガスが56―66年に販売したガス火鉢で使用時に外部放出の可能性があると報告があった。いずれも火鉢とともに販売していた灰の中に石綿が混入していた。

 過去分について再調査中の報告があったのは、ブリヂストンサイクルの別の自転車ブレーキ部品を含め5社5製品。これらを除く114社495製品は、外部への放出の可能性はないとしている。

 経産省のホームページはhttp://www.meti.go.jp/ (共同)

 経産省が12日、公表したアスベスト使用の家庭用品は次の通り。

 【現在製造中で、通常使用時に放出の可能性を調査中の用品】自転車ブレーキ部品(ブリヂストンサイクル)

 【現在製造中で、通常使用時に放出の可能性がない用品】電気温水器3種(タカラスタンダード)▽電気スタンド(日立ライティング)▽電気冷蔵庫(日立ホーム&ライフソリューション)▽冷蔵庫(三菱電機)自転車内拡ブレーキ(ブリヂストンサイクル)▽電動自転車ドライブユニット内の部品(ヤマハ発動機)▽LPガス用ガス栓(大洋技研工業)▽LPガス高圧集合配管(宮入バルブ製作所)▽LPガス用燃焼器接続用継手付けホース(高橋産業)▽LPガス用燃焼器接続用継手付けホース(マツイ機器工業)▽石油小型給湯機石油給湯機付風呂釜(タカラスタンダード)▽温水機器(ハーマン)▽ガス温水器(世田谷製作所)▽LPガス用圧力調整器(矢崎計器)▽ガス漏れ警報遮断装置(矢崎計器)▽LPガス用集合装置(矢崎計器)▽写真用引き伸ばし機(藤本写真工業)

 【過去に製造し、通常使用時に放出の可能性がある用品】電気火鉢用の灰(ノリタケカンパニーリミテド。1965年まで)ガス火鉢用の灰(大阪ガス。66年まで)

 【過去に製造し、通常使用時に放出の可能性を調査中の用品】ヘアドライヤー(東芝ホームテクノ。63―65年)▽換気扇のシステム部材(東芝キヤリア。77―99年)▽電気ストーブ用ヒーターの保持材(大健赤外線株式会社。60年ごろ―70年ごろ)▽電気ストーブ用ヒーターの保持材(大健電器。60年ごろ―70年ごろ)▽幼児用自転車のブレーキ(ブリヂストンサイクル。77―2001年)(共同)

代々木競技場にアスベスト 年間137万人が入場

2005/09/09 The Sankei Shimbun

 東京五輪の水泳会場となり、現在はバレーボールなどのスポーツ大会やコンサートの会場として使われている国立代々木競技場(東京都渋谷区)と、隣接する代々木第2体育館(同)の天井裏に、断熱材としてアスベスト(石綿)が用いられていることが分かり、その除去工事のため来年夏以降長期間利用できなくなることが9日、明らかになった。毎年主要大会を開催している競技団体は代替会場確保を余儀なくされている。

 両施設は、1964年の東京五輪開催に際して故丹下健三氏が設計、斬新なデザインの競技場として知られた。昨年度の入場者数は約137万人にのぼった。

 管理する日本スポーツ振興センターによると、老朽化で天井裏に吹き付けられた石綿が劣化して一部がはく離している。同センターは97年から定期的に空気中の石綿を測定しており、室内空気1リットル当たり0.3―0.4本で推移し、大気汚染防止法の基準(同10本)は下回っている。しかし、「アスベストはあってはいけない」(同センター)と、工事費用約30億円の予算措置を取るように求めている。

 これが認められれば代々木第2体育館は来年8月から約8カ月間、国立代々木競技場は2007年4月から約1年間、工事で使用できなくなる見通し。定期的に使用している競技団体などには8月に通知された。

 国立代々木競技場ではバレーボールの国際大会や全国高校選抜優勝大会、代々木第2体育館ではバスケットボールの全日本総合選手権、バドミントンのヨネックスオープンジャパンなどが例年開催されている。(共同)

アスベスト禍、ニチアスも見舞・弔慰金 工場周辺住民に

2005/09/09 The Sankei Shimbun 大阪夕刊から

≪一律200万円≫

 アスベスト(石綿)による健康被害が広がっている問題で、建材メーカーのニチアスは9日、新たに王寺工場(奈良県王寺町)の周辺住民の女性1人が中皮腫で死亡していたと発表した。同社は新たに周辺住民を対象にした見舞金・弔慰金制度を設け、この女性に初適用、遺族に200万円を支払うことを決めた。

 同社によると、この女性は工場周辺に27年間居住し、平成12年に胸膜中皮腫のため67歳で死亡した。

 同社が新設した見舞金・弔慰金制度は、アスベストと関連のある中皮腫で死亡したり療養中の場合、一律に200万円を支払う。工場から400メートル以内で、昭和46年以前に1年以上居住しているのが条件。他社でアスベストを扱う仕事に従事していた場合などは対象外となる。

 同工場周辺ではすでに、39年間在住した男性が、平成12年に胸膜中皮腫のため64歳で死亡したことが判明している。

 同社はこの男性についても現在、過去の職歴などを調査中で、制度の条件に合えば見舞金を支払う方針。

≪新たに5人死亡発表 川崎重工と川崎造船≫

 川崎重工業と川崎造船は9日、アスベスト製品を扱っていた工場で、新たに元従業員計7人が石綿が原因とみられる中皮腫と肺がんを発症し、うち5人が死亡していたと発表した。いずれも労災認定を申請中という。

 両社は7月、元従業員ら計18人が中皮腫や胸膜炎などを発症し、うち計13人が死亡したことを公表。引き続き社内調査を進めていた。

 両社によると、川崎重工の兵庫工場(神戸市兵庫区)の2人と神戸工場(同市中央区)の2人が中皮腫で死亡。兵庫工場の1人が中皮腫で療養中という。いずれも船舶用エンジンの製造や鉄道車両の内装に携わっていたという。

 川崎造船神戸工場(同市中央区)で船内の配管作業に従事していた1人が肺がんで死亡し、1人が中皮腫で治療を受けている。

自転車部品にアスベスト ブリヂストン2万台交換へ

2005/09/07 The Sankei Shimbun

 ブリヂストンサイクルは7日、中国から輸入して販売した一部の幼児用自転車の後部ブレーキに、アスベスト(石綿)を含む部品を使用していることが分かったため、9日から約1万9500台のブレーキを無償交換すると発表した。

 経済産業省と厚生労働省は7日、他の企業も同様の製品を中国から輸入している可能性があるとして、自転車協会などに実態把握を急ぐよう指示した。

 ブリヂストンで対象となる自転車は「エコキッズ」(約3900台)、「ワンパク」(約6500台)、「シティレディ」(約4300台)、「KIX」(約800台)、「キティ」(約4000台)。2004年10月から05年8月にかけて同社が中国から完成車で輸入し、販売していた。

 同社は、部品がケースに覆われていることなどから、アスベストの飛散の恐れや健康への影響は少ないとしている。

 問い合わせは同社フリーダイヤル(0120)721911。(共同)

アスベスト、15施設で確認 因島

2005/09/07 中国新聞地域ニュース

 因島市が、百二十三の公共施設でアスベスト(石綿)使用状況を調べたところ、十五施設で使用が確認され、さらに十施設で使用の可能性が高いことが六日、分かった。市は「いずれも現段階で飛散の恐れはない」とするが、専門家に調査を依頼するため十六日開会予定の市議会定例会に、約五百万円の補正予算案を提案する予定だ。

 市は七月中旬から各課が管理する施設の図面を調べ、職員が目で確認した。小学校二校、中学校二校で、音楽室の天井にアスベストを含む建材が使われたり、階段裏に吹き付けられたりしていた。市教委はサンプルを採取し、専門機関に分析を依頼した。

 ほかにも、因島水軍城や市福祉会館の階段裏の吹き付け材、三地区の市営住宅の屋根建材にアスベストが使われているのを確認。水道課が管理する変電室や自家発電室などでも使用の可能性がうかがえた。

 市健康対策課は「古い施設は図面がなく、調査の精度は低い」として、「精密な調査を予算案可決後すぐに始め、十一月中旬には報告書をまとめたい」と強調。飛散防止などの具体策は二〇〇

アスベスト:中皮腫患者、30年で100倍 女性は2割

2005年09月03日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 石綿(アスベスト)で生じるがん「中皮腫」の患者が、1970年前後に比べ、現在は100倍以上に増えていることが、神奈川県、千葉県、長崎県、大阪府の4府県が実施している「地域がん登録」のデータで分かった。70年代からの患者の急増ぶりが分かったのは初めてで、2日に国立がんセンター(東京都中央区)で開かれた「地域がん登録全国協議会」総会研究会で発表された。

 がん登録は、府県などが医療機関の協力で、がんと診断された患者を登録し統計をとる制度。全国で34自治体が実施している。厚生労働省の統計には94年以前は、調査項目に中皮腫がないうえ、同省が調べているのは死者数だけで、患者数のデータはない。

 千葉県がんセンター(千葉市中央区)の三上春夫・疫学研究部長らは、34自治体のうち過去30年以上のデータがあり、アスベストを使う工場があったなど中皮腫の患者が出やすいとみられる4府県を対象に、69年から01年までのデータを3年ごとにまとめた。

 その結果、69〜71年には、患者は神奈川県の4人だけだった。しかし15年後の84〜86年には4府県すべてで患者が発生し、合計は76人に達した。その後も93〜95年に284人、99〜01年は492人と増えている。女性は99人で約2割を占める。

 一方、増え方には地域差があり、大阪、神奈川、千葉は急増している。99〜01年の患者は、大阪256人、神奈川153人。長崎は96〜98年の51人がピークで、99〜01年は38人に減っている。

 三上部長は「女性の割合が高いのが気になる。職場でアスベストにさらされた人だけに起きるなら、女性は1割程度と推定されるが実際は2割だ。職場でなく生活の中で被害を受けたおそれもあり、さらに詳しい調査が必要だ」と話している。【高木昭午】

中皮腫による死亡、3年で50人…尼崎

2005年09月03日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 兵庫県尼崎市内で2002〜04年の3年間で計50人がアスベスト(石綿)が原因とされるがん「中皮腫(ちゅうひしゅ)」で死亡し、全国平均値の5倍以上にのぼったことが2日、厚生労働省の人口動態統計死亡票を使った同市の調査でわかった。

 大手機械メーカー「クボタ」(本社・大阪市)の旧神崎工場(尼崎市)周辺住民に発症が相次いでおり、同市での集中的なアスベスト禍が改めて裏付けられた。

 中皮腫死亡者は全国で03年に878人で、10万人あたり0・69人、02年は0・64人。これに対し、約46万人を抱える同市での3年間の死者数50人の、02〜04年の平均値は10万人あたり3・60人。全国比で、03年は5・2倍、02年は5・6倍の高率だった。

 同市によると、死亡者はクボタ旧神崎工場を含む市南部から東部にかけての工場と住宅の混在地域に集中。クボタ元従業員や、遺族がクボタに弔慰金を求めている死亡者も一部、含まれている可能性がある。

 統計は、死亡時の住所のため、市外転出後に亡くなった「元市民」は記載されておらず、市は「元市民を含めると、死亡者率が高まるのは確実」としている。

アスベスト:早大教授が現行法の欠陥指摘 都内シンポで

2005年08月28日毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 住民のアスベスト(石綿)被害を巡る緊急シンポジウム「石綿と環境曝露(ばくろ)」が28日、東京都千代田区で開かれた。村山武彦・早稲田大教授(リスク管理論)は、一般環境や建物解体現場周辺の石綿濃度基準がないという現行法の欠陥を指摘し、十分な安全性が保てない可能性があるとして、早急に濃度基準を設けるよう提言した。

 シンポは民間団体「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」の主催。

 濃度規制は、89年の大気汚染防止法改正によって、石綿関連工場と隣接地の敷地境界で「空気1リットル当たり10繊維」と定められた。工場直近の濃度を規制しただけで、一般環境にまで石綿が達する可能性があるのに一般環境の基準はないまま。

 学識者による国の中央環境審議会は96年、生涯暴露した場合10万人に1人が死亡するリスクレベル「実質安全容量」(VSD)という考え方を示し、危険な物質の環境基準を検討する必要があると答申した。ところが、石綿は「大気汚染防止法で規制済み」などの理由で対象外とされた。

 シンポで村山教授はVSDの考え方に基づいて、石綿の一般環境基準を当面、敷地境界規制の100分の1にあたる「空気1リットル当たり0.1繊維」にすべきだとの見解を示した。

 さらに、工場以外の各地の一般環境で測定した各種データを分析。一般環境の濃度の現状は「同約0.1繊維」でVSDとほぼ同じか、やや高いレベルと報告した。

 一方、約10年前の一般環境濃度は「同約1繊維」で、VSDの約10倍の危険度だったとした。

 村山教授は「中央環境審議会の96年答申の立場から、(国は)現行基準が妥当かどうか検討すべきだった。石綿を使った建物の解体もピークを迎える。解体建物の周辺を含めて、基準を設定すべきだ」と話している。【大島秀利、河内敏康】

中皮腫死亡率は9・5倍、クボタ旧工場周辺でのリスク

2005年08月28日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 大手機械メーカー「クボタ」(本社・大阪市)の旧神崎工場(兵庫県尼崎市)周辺住民のアスベスト(石綿)による健康被害問題で、工場から半径500メートル圏内での中皮腫(ちゅうひしゅ)による死亡者発生のリスクが、職業暴露を含めた全国の平均値より、少なくとも9・5倍の高率を示したことが、車谷典男・奈良県立医大教授(産業疫学)の調査で27日わかった。

 患者支援団体の関西労働者安全センターに相談があった中皮腫死亡者・患者計46人が対象。

 工場から500メートル以上離れた地域の死亡率は低下しており、車谷教授は「クボタ旧工場を発生源として、住民がアスベストに暴露した可能性が高いことがうかがえる」としている。

石綿入り瓦、5軒に1軒 500万戸で今も使用

2005/08/27 中国新聞ニュース
 アスベスト(石綿)を含有する屋根瓦が全国の一戸建て住宅で約五百万戸

、五軒に一軒程度で現在も使用されていることが二十七日、メーカーの調べで分かった。発売から四十年を超え、破損や解体時に石綿が飛散して健康被害が及ぶ恐れがある。工場やその周辺だけではなく、身近な生活の場にも石綿が広がっていたことで、政府や関係業界は抜本的な被害防止策を迫られる。

 瓦のほか、外壁などの石綿入り建材の過去の生産数量について経済産業省は「調査中」としており、住宅関連の全容が明らかになるには時間がかかりそうだ。

 問題の瓦は、クボタが一九六一年から二○○一年にかけて製造した「カラーベスト」や松下電工グループが七一年から○三年まで製造していた「フルベスト」など。

 瓦はセメント製で、補強材として最大約25%の石綿を混ぜていた。日本瓦に比べ薄くて軽いことから、洋風住宅などで普及したが、現在製造中の瓦には石綿は使っていない。

 両社の建材事業を受け継ぎ、約九割の市場シェアを占めるクボタ松下電工外装(大阪市)によると、合計で約六億平方メートル分の石綿入りの瓦を販売した。一戸建て住宅に換算すれば約六百万戸に相当し、既に家屋が解体されたと見込まれる分を差し引いても四百万〜五百万戸で使われているという。

 このほか大建工業(大阪市)や大和スレート(高松市)もかつて販売や製造を手掛けていた。

 これらの瓦はセメントで固化されており、国やメーカー側は「通常の使用状況で石綿が飛散する可能性は低い」(クボタ松下電工外装)と説明する。

 ただ、学校などの公共施設と比べ、住宅は解体時の石綿対策が極めて不十分とみられ、解体業者や周辺住民への被害防止策の徹底が急務となっている。

「アスベスト補償基金」10年で財政難…米議会が予測

2005年08月27日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ニューヨーク=北山文裕】米議会予算局は、米上院に法案が提出されているアスベスト(石綿)による健康被害者を救済するための補償基金が、発足後の当初10年間で深刻な財源不足に陥る可能性があるとの試算をまとめた。

 補償基金は、30年間で企業や保険会社の拠出により総額1400億ドル(約15兆4000億円)の資金を集め、被害者救済にあてる構想だ。補償財源を確保するほか、個別の損害賠償請求訴訟を抑えることで、企業や保険会社が個別に負担する巨額の賠償金や訴訟費用を軽減する狙いもある。

 試算では、被害者からの請求が集中すると見られる当初10年間で、補償金などの支出は700億ドル(約7兆7000億円)に達するとの見方を示す一方で、企業からの拠出金などによる収入は630億ドル(約6兆9300億円)にとどまるとしている。

 このため、財源不足を補うための借り入れが必要となり、金利負担なども加わって基金財政を一段と圧迫する可能性も指摘している。

 この法案は、米国でも広がりを見せるアスベスト被害の補償対策の柱と位置付けられているが、当初段階で行き詰まる可能性が浮上したことで法案審議の行方が混沌としてきた。

中皮腫早期診断へプロジェクト発足 文科省

2005/08/26 The Sankei Shimbun

 アスベスト(石綿)の健康被害対策で文部科学省は26日、中皮腫を早期に発見、治療につなげる新手法の開発に向けたプロジェクトをスタートさせた。

 順天堂大などが開発した、中皮腫が血液中に出すタンパク質をとらえる診断キットを1次診断とし、疑わしいケースは放射線医学総合研究所(放医研、千葉市)の陽電子放射断層撮影装置(PET)でさらに診断する。

 臨床応用が始まったばかりの診断キットの精度を見極め、必要があれば改良を加える。またPETではがん細胞に取り付いて精度良く中皮腫をとらえられる薬剤を模索する。最終的に1ミリ大のがんの発見を目指す。

 現在の診断は、呼吸困難など自覚症状のある人を中心に、エックス線CT(コンピューター断層撮影装置)で検査を行っているが、この手法で発見できる中皮腫は、既に進行しているケースが多いという。(共同)

住民・家族の被害補償へ アスベスト対策で政府

2005/08/26 中国新聞ニュース

 政府は二十六日、アスベスト(石綿)の健康被害対策で二回目の閣僚会合を開き、労災補償制度や公害健康被害補償法の対象とならない工場周辺住民や従業員家族の被害補償を目的とする特別法を策定することを決めた。九月中に法案の骨格を決め、来年の通常国会提出を目指す。

 六月末に大手機械メーカー「クボタ」で多数の被害者が出ていたことが発覚して以来、石綿工場の周辺住民らの被害が次々と判明。被害者や遺族から新規立法を求める声が高まっていた。

 また過去の石綿規制について政府は「関係省庁の連携が十分だったとは言えず反省の余地がある」とし、さらに検証を続け九月中に結論を出す。

 特別法が対象とするのは、住民、家族、労災補償を受けずに死亡した労働者。労災保険法は死後五年を申請の時効と定めているが、時効になった労働者遺族の補償も必要と判断した。給付内容は被害者本人の医療費と遺族に対する一時金の二本柱を想定。財源には石綿の製造、加工に関係する業界や労災保険の一部などを充てることを検討している。

 過去の施策の検証では「旧環境庁が総合的に石綿問題をとらえる視点に欠け、所管の範囲でしか対策を取っていなかった」と指摘。小池百合子環境相も閣議後の記者会見で「率直に反省すべき点がある。縄張り意識、縦割り意識の問題があったんだと思う」と述べた。

 厚労省の対策も諸外国に比べて遅れていたかどうか、さらに検証が必要とした。

 また厚労省と環境省は二十六日、新たに計五百六十五カ所の事業所名を公表。内訳は厚労省が労災認定に関係した百八十一カ所、環境省は石綿取り扱いを自治体に届け出ている三百八十四カ所。労災申請を促すとともに、国民の不安解消と自治体の対策への資料提供が目的という。

リフトに石綿 益田市陳謝

2005/08/26 中国新聞地域ニュース

 ▽高津小給食搬入 点検の「死角」

 益田市は二十五日、アスベスト(石綿)使用の表面化により、使用禁止とした高津小学校の給食搬入リフト施設で実施した粉じん濃度調査を公表した。市は空気中に含まれるアスベスト繊維の濃度が大気汚染防止法などに定められた基準を大幅に下回っていたとして、「緊急に問題になるレベルでないと考えられる」とした。

 この日、市がまとめた粉じん濃度測定調査では一〜三階の配膳室で、空気一リットル中に含まれるアスベスト繊維の本数は二・一〜一・一。大気汚染防止法・同施行規則で示されている基準値一〇を大幅に下回った。陶山勝教育長は「給食は密閉状態にしたボックスに入っており、飛散を防げる。被害はないと思う」と話している。他の学校の給食リフトも調査し、アスベストは発見されなかった。

 これまで市は国・島根県の指導で、市内三十五小中学校でアスベストの有無を調査していたが、給食リフト施設は、その指導による目視や図面での調査法で発見できなかった「死角」。この日の市議会文教厚生委員会でも、陶山教育長が「隠れた場所で見つかった。申し訳ない」と陳謝。あらためて対策の難しさを浮き彫りにした。

 給食搬入リフトは、校舎に隣接して一九七一年増設した三階建て配膳(はいぜん)棟にある。アスベストは、昇降路内の三階天井と、壁のはり部分など計約五平方メートル。校舎と同じ耐火構造にするため、断熱材として使われた可能性が強い、という。改修工事による点検で判明した。

 市担当者は「通常、内部は見ない。点検がなかったら、ずっと放置されていたかもしれない」と対応の困難さを語る。

 また市内では東陽中管理棟一階天井でもアスベスト使用が見つかり、市は除去工事をほぼ終えた。

アスベスト禍、解体現場で飛散調査 兵庫・尼崎市

2005/08/25 The Sankei Shimbun

 アスベスト(石綿)による健康被害問題で、兵庫県尼崎市は25日、石綿を使用した建築物を解体する際にどの程度飛散するのか実態を把握するため、同市内の解体工事現場で石綿濃度を測定した。

 大気汚染防止法上の規制基準を参考に、空気1リットル中の石綿繊維が10本を超えていないか確認。超えていれば、工事方法の変更を指導するという。

 午前11時から、市職員が尼崎市潮江にある解体中の塗装工場現場で測定装置を2カ所に設置。平均的な人の鼻の高さに当たる地上約1・5メートルで、空気を試験用フィルターでろ過した。

 市は今後も、石綿を使った床面積1000平方メートル以上の建築物の解体工事には立ち入り検査し、石綿濃度を測定する方針。

 巴貞行(ともえ・さだゆき)公害対策課長は「これからは建築物の解体工事が石綿飛散の発生源となる。国には解体現場での石綿濃度について法的な規制を求めたい」と話している。(共同)

石綿対策 労災病院が診療窓口

2005/08/24 中国新聞地域ニュース

 <中国・山口・岡山 専門医が連携>

 アスベスト(石綿)の健康被害対策で、全国二十二カ所の労災病院が九月一日から、専門医が診療科の枠を超えて連携する「アスベスト疾患センター」を設置する。中国地方では、中国労災(呉市)山口労災(山陽小野田市)岡山労災(岡山市)の各病院に設ける。七月末に政府がまとめた対応策の一環。

 胸痛や呼吸困難などのアスベスト疾患の症状を訴える患者の窓口を、センターに一本化。呼吸器科や内科、外科などアスベスト疾患にかかわる医師が所属し、連携して診療・治療に当たる。自覚症状がない人が健診を受ける際の窓口にもなる。

 アスベスト対策の中核的な医療機関として、症例収集を進めるほか、アスベスト疾患の診断技術を向上させるため、地域の開業医らを対象にした講習会なども開く。

 山陰労災病院(米子市)は当面、センターを設けないが、相談や診断などには応じる。

来月から石綿専門外来 吉島病院

2005/08/23 中国新聞地域ニュース

 広島市中区の国家公務員共済組合連合会吉島病院(倉岡敏彦院長)は、アスベストによる肺の疾患を診断する専門外来を、九月七日から開設する。

 専門外来は呼吸器科に設け、倉岡院長ら呼吸器の専門医が毎週水曜午後から診察(要予約)。問診と胸部エックス線、CT(コンピューター断層撮影)検査を実施、その日のうちに結果を伝える。胸膜や腹膜にできるがんである「中皮腫」や、じん肺の一種の「石綿肺」の疑いがある場合は、入院治療する。

 同病院は約二十年前から年間一〜十一人の中皮腫患者を呼吸器科で治療してきた。最近、アスベストを扱う労働者の家族や、工場の周辺住民の被害が相次いで発覚。一般の人たちに不安が広がっているため、相談、受診しやすいように、専門の外来を設けることにした。

 倉岡院長は「自覚症状がなくても、アスベストの影響を受けているかどうかはCT検査でかなり分かる。新たに吸い込む危険性のある内装・解体業者などに対しては、防じんマスク着用など正しい予防法を広めたい」と話している。

体内から壁材と同じ石綿 被害約20件の賠償請求検討

2005/08/22 The Sankei Shimbun

 壁にアスベスト(石綿)を吹き付けた文具店で30年以上働き、悪性の中皮腫で死亡した大阪府内の男性店主=死亡当時(70)=の体内から、吹き付け材と同じ青石綿が検出されていたことが22日分かった。調査した「ひらの亀戸ひまわり診療所」(東京都江東区)の名取雄司(なとり・ゆうじ)医師によると、産業現場でなく生活空間の石綿に由来する発症例は国内で初めて。

 男性の遺族の代理人が同日、大阪市内で記者会見し、店舗を管理していた会社に対し損害賠償を求める方針を明らかにした。名取医師は「大規模な建物の環境調査が実施されているが、小さな建物の調査も急ぐべきだ」としている。

 調査によると、男性は1969年から私鉄の高架下にある文具店を経営。建物2階の倉庫の壁には青石綿を約25%含む吹き付け材が使われていた。

 2002年に悪性胸膜中皮腫と診断され、04年に死亡。解剖の結果、男性の体内からは、肺の乾燥重量1グラム当たり平均で、石綿小体(石綿繊維にタンパク質が付着したもの)72本が見つかった。一般人の約2倍のレベルに相当する。

 電子顕微鏡でさらに詳しく調べると、吹き付け材に使われているものと同じ青石綿であることが分かった。

 男性は通常は1階で勤務していたが、客からの注文に応じ、商品を捜すため2階の倉庫に出入りしていた。倉庫にいたのは1日に1時間から1時間半ほどだったという。(共同)

≪被害約20件の訴訟検討 遺族「なぜむき出しに」≫

 アスベスト(石綿)による健康被害者らを支援する関西労働者安全センターは22日、大阪市で記者会見し、約20件の被害について賠償請求を検討、訴訟のため弁護団を結成したことを明らかにした。

 弁護団の奥山泰行(おくやま・やすゆき)弁護士によると、これまでに寄せられた相談で、賠償請求する可能性があるのが約20件。今回の文具店男性店主のケースも「店舗管理会社の対応次第で訴訟も辞さない」としている。

 店主の遺族は「なぜこんな危険なものがむき出しになっていたのか。アスベスト被害は限られた人の特別な被害ではない」と話したという。

 片岡明彦(かたおか・あきひこ)同センター事務局次長は、日常生活の環境と中皮腫の因果関係が明確になることはほとんどないと指摘し、肺の中の石綿繊維分析などをした今回のケースは「極めて貴重な報告例。行政はしっかりした吹き付け石綿対策をしてほしい」と述べた。(共同)

石綿規制条例制定へ 鳥取県

2005/08/18 中国新聞地域ニュース

 ▽すべての建物解体対象

 鳥取県は十七日、アスベスト(石綿)による健康被害防止のため、アスベスト解体作業の規制強化を柱とした条例を制定すると発表した。九月の県議会定例会への提案を目指す。

 大気汚染防止法では、延べ床面積五百平方メートル以上で、吹きつけ石綿の使用面積五十平方メートル以上の耐火、準耐火建築物を解体する場合、知事への届け出を義務付けている。しかし、面積がそれ以下の建物は対象外で、県はこの面積要件を撤廃し、石綿を使ったすべての建物を対象にする方針。

 解体業者が基準の順守命令や停止命令に違反した場合に二十万円以下の罰金を科すことや、建物所有者に石綿の使用有無を把握するよう義務付けることも検討している。

 片山善博知事は記者会見で「現行法の体系では住民の不安感を解消し切れず、県として補完する対策を取る」と説明。「国も法改正を考えているようだが、今の政治情勢では時間がかかりそうなため、県でできることは早急にやっておきたい」と述べた。

 県によると、福井県でも同様の条例制定の動きがあるという。

石綿か 中皮腫で呉の女性死亡

2005/08/17 中国新聞地域ニュース

 <造船所近くに長年居住 担当医が関連性を指摘>

 幼少時から造船所近くに住んでいた呉市の女性=当時(84)=が一九八八年に、アスベスト(石綿)が原因とみられる中皮腫で死亡していたことが、十六日分かった。アスベストを大量に使用していた海軍工廠(こうしょう)や造船所の近隣に長年居住していたことが、発症要因となった可能性が高い。

 当時、呉共済病院(呉市)で女性を治療した岸本卓巳医師(現・岡山労災病院副院長)が、「環境暴露により発症したと思われる症例」として、九一年に医学雑誌「日本胸部臨床」に報告していた。

 女性は八八年三月、呼吸困難を訴えて受診。胸膜中皮腫と診断され、約二週間後に死亡した。石綿暴露に関連した「びまん性胸膜肥厚」が認められ、肺内から多数の石綿破片も検出された。しかし、職業暴露の目安とされる石綿小体の数は、肺組織五グラム当たり十六本と少なかった。

 家族らからの聞き取り調査では、女性は生後から死亡時まで、同市海岸部に居住。出生地近くには海軍工廠があり、戦後は大小の造船所があった。女性は二十歳ごろから二十年間養蚕に従事し、夫も商店を経営。家族を含め、海軍工廠や造船所など石綿を扱う職業歴はなかったという。

 呉地区では、戦前から戦後にかけて海軍工廠や民間の造船所で働いていた従業員の間に、中皮腫が多発。呉共済病院の調査でも、七八〜八八年に中皮腫で死亡した十六人のうち十三人(81%)を造船関係者が占めていた。

 厚生労働省の専門家会議メンバーも務める岸本医師は「女性の場合、具体的な石綿暴露の状況は不明だが、職業暴露ではなく、環境暴露が考えられる」と指摘。「呉市に限らず、造船が盛んだった地域では従業員の家族や周辺住民に潜在患者が出ている可能性があり、追跡調査が必要だ」としている。

アスベストで死亡、クボタが遺族に弔慰金200万円

2005年08月12日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 クボタは12日、旧神崎工場周辺で中皮腫を発症した患者への見舞金に次いで、死亡した患者の遺族に対して一律200万円の弔慰金を支払うことを決め、ホームページで公表した。

 見舞金・弔慰金の支給基準を明示し、<1>同工場がアスベストを扱っていた1954〜95年に周辺に居住、勤務、または工場に出入りしていた<2>仕事でアスベストを扱ったことがない――などの条件を満たすこととしている。

アスベスト含む建材、メーカーに使用状況の公開要請

2005年08月12日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 厚生労働省は12日、建材メーカーの業界団体などに対し、アスベスト(石綿)を含む建材について、商品名や販売期間、使用場所などの情報を公開するよう要請した。

 アスベストを含む建材を使用した建築物の解体工事が増加することが今後予想され、解体作業者や周辺住民に健康被害が及ばないようにするには、建材メーカーの情報公開が不可欠と判断した。同省はまた、監督官庁である経済産業、国土交通の両省と都道府県にも協力を要請した。

アスベスト除去を義務付け 増改築時に、国交省検討

2005/08/12 The Sankei Shimbun

 国土交通省は12日、アスベスト(石綿)による健康被害を防ぐため、建築物の増改築時にアスベストを含んだ断熱材など建材の除去を義務付ける方針を固めた。

 建築基準法改正も視野に入れ社会資本整備審議会の建築分科会にアスベスト対策部会を19日に設置する。改正が必要なら、秋にも開かれる臨時国会に改正案を提出する考えだ。

 建築基準法では、新築の際のアスベストを含んだ建材の使用は禁止している。ただ、既に使っている建築物には、規制はない。

 このため部会では、既存建築物でも使用禁止の対象とすることで、リフォーム時の除去に加え、断熱材などが劣化してアスベストが飛散する恐れがある場合などには、自治体が改善命令を出せるかも検討する。

 このほか部会では、建材を除去する方法を調査・研究、消費者からの相談体制の在り方も検討する。

 12日の閣議後の記者会見で北側一雄(きたがわ・かずお)国土交通相は「今後の被害拡大防止の観点から既存建築物の規制を強化することが重要だ。早急に対策を取りまとめ必要な措置をとる」と強調した。(共同)

石綿含む汚泥7000立方メートル 佐賀・鳥栖市の工場跡

2005/08/11 The Sankei Shimbun

 佐賀県は11日、中皮腫で元従業員や周辺住民が死亡した同県鳥栖市の旧・日本エタニットパイプ(現ミサワリゾート)工場跡地の地中から、アスベスト(石綿)を含んだ汚泥が見つかったと発表した。汚泥は計約6700立方メートルで、アスベストの含有率などは不明。

 県は「土中のため飛散の可能性は低い」としているが、周辺環境への影響を確認するため、大気を採取してアスベスト濃度を測定する。

 県環境課によると、工場跡地を所有する福岡市のコンクリート会社が5月から行っていた整地作業中に、アスベストを含んだ汚泥が地中で層状に広がっているのを発見した。

 コンクリート会社は1992年6月、アスベスト製品などを製造していた日本エタニットパイプから建物と土地を取得。建物などをそのまま利用して操業しており、操業前からアスベストが埋まっていた可能性が高いという。

 同工場をめぐっては、アスベストとの関係が深いとされる中皮腫が原因で、元従業員4人と周辺住民1人の死亡が確認されている。(共同)

アスベスト ばらつく自治体対応 国の統一指針急務

2005/08/07 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 アスベスト(石綿)による健康被害が全国に拡大している問題で、自治体の対応や今後の方針には、かなりのばらつきがあることが、産経新聞が全国の都道府県、政令市を対象に行ったアンケート調査でわかった。

 大手機械メーカー「クボタ」(大阪市)で従業員や周辺住民に大量の死者がいたことが発覚して1カ月余り。各自治体は住民の不安を解消しようと何らかの対策をとっているが、「各省庁が出す通達に対応するので手いっぱい」という声もあった。アスベスト問題に対する省庁の指導が統一されていない現状を浮き彫りにした格好で、専門家は早急な国のガイドライン作りを求めている。

 調査は7月25日から8月4日にかけて、全国47都道府県と14政令市に対して実施。クボタの問題が表面化した6月30日以降の対応や今後の方針、アスベストを使った公共建築物の把握状況などを聞いた。

 その結果、すべての自治体がアスベスト関連の相談窓口や対策連絡協議会を設け、対応策を取っていた。

 また、クボタの旧神崎工場の所在地である兵庫県の「今後、アスベスト濃度の測定個所を6から25へ増やす。遺族への聞き取り調査を実施する」、長野県の「建築面積にかかわらず、吹きつけアスベスト解体現場への職員派遣の実施」など、独自の対応策をとっている自治体もある一方、具体的な方策について無回答や「未定」としたところも少なくなかった。

 アスベスト対策は、健康被害の調査や健康診断などから、アスベストを使用する事業所の実態調査、アスベストを使用した建物の把握と処置、解体現場での飛散防止措置など多岐にわたる。管轄する省庁も厚生労働省、環境省、経済産業省、国土交通省などに分かれている。政府は先月29日、当面の対応策をまとめたが、具体策は先送りされた。

 ある県の担当者は「国の指針がはっきりしておらず、それぞれの担当部署が、それぞれの省庁が5月雨式に出す通達や要請に従って対応しているのが現状」と話す。

 米国では1970年代後半にアスベストに対する安全管理マニュアルができたという。

 アスベスト問題に詳しい東京女子大の広瀬弘忠教授は、「アスベストはもちろん危険だが、存在が即、危険とはいえない。対応が進むのは結構だが、正しい方向に進まないといけない」と指摘。「アスベストは除去ひとつとっても、中途半端だと余計に飛散する。現状のままの方が安全な場合もある。解体現場にしても、住民の健康被害対策にしても、国が早急に統一したガイドラインをつくって徹底することが必要だ」としている。

石綿条約19年目の締結 政府やっと手続き入り

2005/08/05 The Sankei Shimbun

 政府は5日の閣議で、アスベスト(石綿)による健康被害から労働者を保護するための石綿安全使用条約の批准手続きに入ることを決定した。

 同条約は1986年に国際労働機関(ILO)が採択、89年に発効した。青石綿の使用禁止や白石綿の規制のほか、代替化の促進、建築物解体作業時の飛散防止措置の徹底などを義務付けている。

 日本では条約上の義務を果たすための国内法整備が遅れていたため、これまで批准されていなかったが、昨年10月に労働安全衛生法施行令などの法整備が整ったのを受け、7月に衆参両院で承認手続きが行われた。(共同)

南海、京阪7駅で石綿露出 撤去や飛散防止検討

2005/08/02 The Sankei Shimbun

 関西大手私鉄の南海、京阪両電鉄の計7駅で、アスベスト(石綿)が天井の鉄骨などに吹き付けられたまま露出していることが2日、分かった。両社とも「健康被害の報告はない」としているが、撤去や飛散防止などを検討している。

 南海電鉄は116駅中、住吉大社(大阪市住吉区)や北野田(大阪府堺市)など6駅でアスベストが露出。北野田駅は実施中の改修工事に合わせ撤去するという。

 ほかに7駅でもアスベストが吹き付けられていたが、密閉などの措置を取っていた。波形スレート板なども含めるとアスベスト使用は80駅に上った。

 京阪電鉄は4駅で吹き付けを確認。うち村野駅(大阪府枚方市)はむき出し状態だった。吹き付け以外の使用状況は調査中という。

 関西のほかの大手私鉄は阪急電鉄が84駅のうち76駅、近畿日本鉄道は330駅中5駅で、阪神電鉄は41駅中38駅でアスベストを使っていたが、いずれも露出はしておらず「安全上問題ない」としている。(共同)

アスベスト専門委の座長、業界顧問だった…辞任へ

2005年08月01日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 環境省が7月26日に発足させたアスベスト(石綿)に関する専門家委員会で、座長に就任した桜井治彦・労働衛生調査分析センター所長(70)が1985年から97年にかけ、アスベスト業界団体「日本石綿協会」(東京都港区)の顧問を務めていたことが1日わかった。桜井氏は「委員会の中立性に不信感を抱かせかねない」として、同日、同省に辞意を伝えた。

 専門委は、アスベストによる健康影響などについて検討する委員会で、労働衛生や環境疫学などが専門の大学教授や医師ら6人で構成。座長には、産業医学が専門で、慶応大名誉教授の桜井氏が就任した。桜井氏は今年1月から中央環境審議会の環境保健部会長も務めている。

 一方、同省などによると、桜井氏は85年〜97年、日本石綿協会の顧問を務めていた。その経緯について、桜井氏は「石綿協会から、安全衛生について積極的な対応を行いたいとの要請を受け、前任者から引き継いだ」とし、「顧問時には石綿製品の代替化の促進や含有量の低減などを指導した」としている。

 座長就任の経緯については「環境省から打診があった時、顧問をしていたことを忘れていた」と説明している。

 同省は座長の人選について「労働衛生分野でのこれまでの業績などから適任と判断した」(保健業務室)としているものの、同協会の元顧問だったことについては「桜井座長からの連絡で初めて知った」としている。座長の後任については「現在検討中」としている。

JR西、94%の駅で石綿使用 ホーム屋根や駅舎内装

2005年07月31日 asahi.com

 JR西日本の管内計1216駅のうち、約94%にあたる1147駅のホームや駅舎で、アスベスト(石綿)を屋根材や断熱材などとして使用していることが30日、わかった。同社は飛散防止措置をしており問題はないというが、使用状況の詳細な調査を進めている。

 JR西日本によると、1147駅には博多や新神戸など山陽新幹線の全19駅なども含まれている。石綿の使用面積は約171万平方メートル。内訳は、駅舎やホーム上の屋根の波形スレート板が約110万平方メートル▽内装仕上げ材などのボード類が約55万平方メートル▽鉄骨梁(はり)などへの吹き付けが約6万平方メートル、となっている。

 駅舎の多くは旧国鉄時代の60〜70年代に建築されており、石綿を使用した建材が多く使用されたらしい。毒性の強い青石綿は95年に使用が禁止されたが、駅舎の吹き付けの一部には青石綿が残っているという。

 同社によると、石綿が練り込まれた波形スレート板やボード類は固形化されており、破損しない限り飛散する恐れはない。吹き付け石綿も建材で周囲を覆って密閉したり、薬品で固化したりして封じ込め措置をしているため、乗客への影響はないとしている。

 JR新大阪駅(大阪市)で毒性の強い青石綿を吹き付けた鉄骨梁が約40年間むき出しになっていたことが明らかになったこともあり、各駅の状況について詳しく調査している。

 JR西日本広報室は「新大阪駅以外の駅はすべて密閉などで封じ込めているが、今後、駅改修に合わせて除去を進める」と話している。

 JR旅客6社では、JR九州が全554駅のうち、234駅の屋根や外壁材で波形スレート板として石綿を使用していることを公表している。北海道は全472駅のうち、9駅で使用の可能性があるという。東日本と東海、四国は調査中だが、むき出し状態の駅はないとしている。

アスベストQ&A作成、HPで公開 関係省庁

2005/07/29 The Sankei Shimbun

 「工場の周りに住んでいますが大丈夫?」。アスベスト(石綿)健康被害対策の一環として、厚生労働省や環境省などは29日、こんな質問に答える「Q&A」をまとめた。

 アスベストへの不安を解消するため、健康被害や環境への排出、除去方法などについて、労働者や住民、事業所向けに基本的な質問に答えるのが目的。関係省庁が合同で作成し各省庁のホームページで公開する。

 Q&Aは質問が23項目。アスベストの特性に始まり、中皮腫、肺がんなど関連疾患や健康診断、使用状況、学校での対策、労災の仕組み、解体作業まで幅広く解説。

 住民被害の設問では「現在は基準の順守が義務付けられており、大気環境は健康への影響を及ぼすとは考えられない」「住民の中皮腫の発症は実態が明らかでなく、国は(対策の一環として)住民へのリスクを検討する」と説明している。(共同)

アスベスト対策で新法検討 自民、公明両党が対策チーム設置

2005/07/25 The Sankei Shimbun大阪夕刊から

 自民、公明両党は25日の政策責任者会議で、与党アスベスト(石綿)対策プロジェクトチーム(座長・田浦直自民党内閣部会長)を設置し、被害者に対する補償など議員立法で新たな救済措置を検討することで合意した。ただアスベストは吸引から発症までの潜伏期間が数10年と長く、家族や周辺住民も含めた被害の実態が十分に把握できていないことから、今国会中の新規立法は困難な情勢だ。

 プロジェクトチームには自公両党の厚生労働、経済産業など関係部会長が参加し、今週中に初会合を開く。

 自民党の与謝野馨政調会長は同日の役員会後、党本部で記者団に対し「(今国会の)会期中に法案を出すところまで作業が進むことは予想できないが、一番早い時期に政治的にも対応しなくてはいけない」と述べ、秋にも想定される臨時国会での法案提出を示唆した。

 一方、公明党の冬柴鉄三幹事長らは同日、首相官邸で細田博之官房長官と会い、アスベスト問題の実態調査と被害者救済を要望。細田氏は「政府として本格的に取り組んでいく」と答えた。(共同)

石綿、公立校14%で使用

2005/07/25 中国新聞地域ニュース

 ■中国5県・広島市 公営住宅も1637戸

<アスベストの使用が確認された中国5県の県立と広島市立の施設数>
()内は各施設全体の中の割合

学校・幼稚園 住宅戸数 その他施設

広島県 10( 9.5%) 837(4.9%) 4

山口県 16(18.6%) 0 27

岡山県 9(11.0%) 0 不明

島根県 0 0 22

鳥取県 0 0 22

広島市 47(19.7%) 800(5.3%) 未把握

計 82(13.9%) 1637(2.7%) 68

 健康被害が社会問題化しているアスベスト(石綿)が、中国地方五県と広島市立の全学校・幼稚園の13・9%に当たる八十二校・園、五県・広島市営住宅は2・7%の千六百三十七戸で使用されていることが二十四日、中国新聞の調べで分かった。学校、住宅以外でも六十八施設での使用が判明。各県と広島市は全容把握のため、再調査や点検などに乗り出す方針でいる。

 五県や広島市などによると、幼稚園を含む学校施設でアスベストの吹き付けが判明したのは、広島市立が四十七校で全体の19・7%、山口県立が十六校で18・6%、岡山県立が九校で11・0%、広島県立が十校で9・5%だった。島根、鳥取県立の学校ではなかった。

 学校では、階段の裏側への防音用吹き付け▽教室の梁(はり)や体育館の天井裏への耐火用吹き付け―が主な形態となっている。

 県・市営住宅で使用が確認されたのは、広島県と広島市。広島県営は広島市中区の三棟八百三十七戸で、県営全戸の4・9%、広島市営が中区の一棟八百戸で市営全戸の5・3%となった。

 学校、住宅以外では、山口県は県の出先機関など二十七施設▽島根県は県営住宅隣接の機械室など二十二施設▽鳥取県は県や県警などの十五施設▽広島県は県庁北館など四施設―でそれぞれ使用が判明した。

 一部では飛散防止策が講じられておらず、現段階での使用形態が資料の散逸などで不明なケースもある。そのため広島、山口、鳥取県と広島市は二十日以降、アスベスト問題の対策会議を開き、対応の検討に入った。岡山、島根県も二十五日、初の会議を開く。五県、広島市とも現時点では健康被害の報告はないが今後、飛散防止策や建物の解体などの対応に迫られる。

     ◇

 飛散防止、未処置も

 ■専門家、早期対応求める声

 中国地方五県と広島市が管理する多くの施設で使用が判明したアスベスト(石綿)。一九八七年に政府が都道府県などに調査を指示して以降、ほとんどの施設で除去や樹脂の吹き付けなどが施されているものの、一部には未処置の施設も残る。関係県や市は「当面、飛散の恐れはない」とするが、専門家には早期対応の必要性を指摘する声がある。

 天井などへのアスベストの吹き付け使用が判明しながら、飛散防止策などが講じられていないのは、広島県庁北館地下の機械室(広島市中区)▽広島市営住宅の一部(同)▽山口県管理の下関漁港ビル(下関市)―の三カ所だった。

 吹き付けのアスベストが問題化した一九八〇年代の後半から九〇年代前半にかけて、各県などは実態調査を実施。使用個所のほとんどは樹脂で覆ったり、除去したりする中、「密封空間で飛散の恐れはない」などとして、三カ所は取り残された形だ。

 広島市営住宅について市は本年度、大規模改修に合わせてアスベストを除去する方針に転換した。樹脂などによる緊急対応を施さなかった理由について「天井板で仕切られ室内への飛散の危険性は低く、定期的な濃度測定でも国より厳しい独自基準を下回っている」(都市計画局)と強調している。

 広島県財産管理室は「地下の機械室には点検の作業員が年に一、二回入る程度。空気中のアスベストも大気汚染防止法の基準を下回っている」として、被覆などの対策は考えていない。

 下関漁港ビルについて、山口県漁政課は「天井裏にあり、飛散の恐れはない」と、アスベストが囲い込まれている状況にあると説明する。

 しかし、健康被害の相談活動を展開している民間非営利団体(NPO)の「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」(東京都江東区)の植草和則相談員は「密封空間こそアスベストは滞留する」と指摘。「人が入る頻度の関係もあるが、解体時のコストを先に負担するつもりで除去することも必要ではないか」と提起している。

石綿肺の元船員に労災認定 じん肺法の対象外、全国初

2005/07/24 中国新聞ニュース

 船内の補修作業でアスベスト(石綿)を吸い、石綿じん肺(石綿肺)を発症した香川県の元船員の男性(75)が六月に大阪社会保険事務局から労災認定されていたことが二十四日、分かった。

 男性を支援したNPO法人「愛媛労働安全衛生センター」(愛媛県新居浜市)によると、じん肺法の対象外の船員が石綿じん肺で労災認定を受けるのは初めてという。

 同センターによると、男性は一九四四年に旧大光商船(大阪市)に入社。別の海運会社での勤務も含め定年退職した八四年まで貨物船やタンカーなど延べ約五十隻に乗り、ボイラーの炉内で石綿セメントを使った補修作業などを行った。

 二○○○年ごろから息苦しくなり、複数の病院を受診。石綿肺と続発性気管支炎の併発と診断された。同センターが支援し、今年二月に船員保険法に基づき労災認定を申請した。

 じん肺法は、溶接や採掘、石綿加工などの作業を「粉じん作業」とし、事業者に従業員の健康管理などを義務付けているが、船員は対象とされていない。

 同センターの白石昭夫事務局長は「船員の石綿肺の問題は、当事者にもあまり認識されていない。救済の対象になることを知らしめる意味でも今回の認定は意味がある」と話している。

アスベスト110番:相談500件以上 全建総連

2005年7月24日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 アスベスト(石綿)による健康被害の判明が相次ぐ中、全国建設労働組合総連合(全建総連、約70万人)は24日、「建設労働110番」を22都府県で開き、石綿による健康被害の相談が500件以上寄せられた。昨年の「110番」では石綿に関する相談はゼロで、建設関連業界で石綿被害への関心が急激に高まっていることを示した。

 22都府県連に寄せられた全相談544件のうち、石綿の健康被害に関する相談は500件を超えた。県別では東京約200件、兵庫約125件、大阪約100件など。昨年は110件の相談中、石綿関連はゼロだった。

 内容は▽「長年、石綿建材を使い、最近呼吸が苦しい。石綿の影響ではないか」(静岡県、建設業、70代男性)▽「昔、石綿袋をよく運んだ。肺がんになり、労災は受けられるか」(三重県、運送業、60代男性)−−など。全建総連の宮本一・労働対策部長は「石綿被害の不安が深刻化している。国は責任と対策をしっかりとってほしい」と話している。【宍戸護】

中皮腫・死者数、7県市が把握せず…国の説明不足?

2005年07月24日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 アスベスト(石綿)が原因とされるがんの一種「中皮腫(ちゅうひしゅ)」による都道府県別の死者数を、一部の自治体では把握していないことが、読売新聞の全国調査で明らかになった。

 中皮腫による死者数は、厚生労働省が1995年に人口動態統計の死因分類に加え、アスベストによる健康被害の実態把握の基本になるとされる。

 厚労省は毎年、都道府県にデータを送付しているが、専門家は「国はデータ提供の際に、その数字が持つ意味をきちんと説明するべきだ」と指摘している。

 人口動態統計では、各市町村が住民の死亡データを集約し、都道府県を通じて厚労省に送付。死因の分類は同省が一元的に行い、その結果を都道府県ごとに送り返す仕組みだ。

 読売新聞が、各都道府県と政令市の保健衛生部局に、95年〜2003年の中皮腫による死者数を問い合わせたところ、22日現在、すべての年の人数を把握していたのは北海道、東京都、愛知県、大阪府など33の都道府県と政令市だった。20の府県・市は一部の把握にとどまり、残る5県2市は全く把握していなかった。

 死者数を把握していない理由について、岩手県や京都市など7自治体は「県では独自に中皮腫を分類していないため」と回答。厚労省から送り返される死因別データの存在自体を都道府県側が知らない実態がうかがえる。

 また、青森県、秋田県、宮城県、神戸市、福岡市など9県市は、当初「把握していない」と回答したが、その後、「把握」「一部把握」と再回答した。

 今回のアスベスト問題の発端となった兵庫県では、被害が企業から公表された翌日の6月30日、厚労省から死者数のデータ提供を受けていた。

80年代に石綿被害を除外 損保大手が賠償免責通知

2005/07/21 中国新聞ニュース

 深刻な健康被害が拡大しているアスベスト(石綿)が原因で、企業が付近の住民や従業員の家族から請求される賠償金について、大手損害保険会社が一九八○年代半ばから保険金の支払い対象外とする免責契約に切り替えていたことが二十一日、分かった。

 東京海上火災(現東京海上日動火災)、三井海上火災(現三井住友海上火災)など損保大手は免責契約に変更する時点で「被害急増の可能性」(大手)を民間各社にも通知しており、当時アスベストを使用してた大手各社は事実上、危険性を認識していたことになる。海外の被害事例を早くから認識していた国とともに、リスクの大きさを知りながら使用を続けた民間企業各社の責任も問われそうだ。

 損保各社は、七○年代に米国など海外でアスベストによる健康被害が相次いだため、八○年代に入って日本での被害拡大を予想。保険金支払いが急増する事態を回避するため、旧大蔵省(現金融庁)に免責を求め、認可を受けた。

 損保各社は、企業が周辺住民やほかの第三者から損害賠償を求められた場合に備え賠償責任保険を販売。工場など施設が原因で所有者が賠償責任を負った時に保険金を支払うが、危険性が高いと認識する場合には免責条項を設定。アスベスト以外では天災やテロ、故意による損害なども免責にしている。

 追加的に免責条項を設ける場合には、契約先の企業に通知する義務があり、企業側はこの時点でアスベストが損保のリスク負担に耐えられないほどの危険性があることを伝えられていたことになる。

 重機、化学などアスベストによる従業員などの被害が明らかになった各社が本格的にアスベスト使用を取り止めたのは九○年代半ば以降とされている。

石綿被害 政府の落ち度認める 官房長官「反省点多い」

2005/07/21 The Sankei Shimbun

 アスベスト(石綿)による健康被害が相次いでいる問題で、細田博之官房長官は二十一日午前の記者会見で、アスベストによる健康被害を旧労働省が昭和五十一年時点で認識していたことに関し、「今となってみれば、被害者がたくさん出ておられるので、もっときちんと対応できればよかったと思う」とした上で、「(各省庁の)態勢についても反省すべき点は多い」と述べ、政府の対応に落ち度があったことを認めた。

 小泉純一郎首相も同日昼、首相官邸で記者団に対し、「過去の問題を踏まえて関係省庁が連携しながら対応していかなければならない」との姿勢を示した。

 一方、厚生労働省と経済産業省は同日午前、業界団体を集めた緊急会議を開き、現在も一部で製造・使用されているアスベストを平成二十年までに全面禁止する方針を伝えるとともに、代替が可能なものは速やかに禁止するよう要請した。

 会議には石油連盟や日本ガス協会、電気事業連合会など二十団体が参加。厚労省の小田清一・安全衛生部長は「平成二十年を待たずに、可能であれば禁止措置を速やかに講じていきたい」と予定を前倒しして対応する考えを強調。経産省の塚本修・製造産業局次長も「健康被害の状況から企業へのアスベスト代替化への一層の取り組みをお願いしたい」と述べた。ただ一部の団体からは代替化が困難との意見も出た。  アスベストは平成七年に毒性が強いアモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)の使用が禁止され、昨年に原則全面禁止となった。しかし、代替品がない電気の絶縁板、化学プラントのシール材など一部の製品は例外として製造が認められている。

危険性把握、76年に通達 アスベスト周辺被害

2005/07/21 The Sankei Shimbun

 アスベスト(石綿)による健康被害が工場などの従業員だけでなく家族や周辺住民にまで及ぶ危険性を、国は遅くとも1976年に把握していたことが20日、衆院厚生労働委員会の集中審議の質疑で明らかになった。

 旧労働省は76年、英国での被害例を挙げ、危険性を指摘する通達を出していたが、その後、家族や周辺住民に関する有効な具体策を講じていなかった。

 また労災認定者が2004年度は186人に上り、認定基準ができた78年以降最多となったことが同日、厚生労働省の集計で判明。03年度は認定基準が緩和され認定者も121人と大幅に増えたが、さらに約1.5倍に急増した。

 厚生労働省によると、この通達は76年5月、旧労働省が全国の労働基準局に出した「石綿粉じんによる健康障害予防対策の推進について」。

 通達は、ロンドンの病院の調査結果を関係資料として引用し、65年までの50年間に中皮腫と診断された83人中、アスベストとの因果関係があったのは51人で、うち9人が石綿を扱う工場従業員らの家族や親類、11人が工場周辺住民とするデータを明示。

 本文で「石綿業務に従事する労働者だけでなく作業衣を家庭に持ち込むことで家族に被害が及ぶ恐れが指摘されている」として、洗濯による粉じん除去や工場からの持ち出しを避けるなどの指導を求めていた。

 衆院厚労委で質問した社民党の阿部知子議員は「通達を出しながら30年間放置し、家族らの悲劇が起きた。行政の不作為が原因」と批判。厚労省の西博義副大臣は「(通達は)初めて知った。(被害を)労災という狭い枠に限定し(通達を)フォローできなかったのは取り返しのつかない問題だ」と答弁した。

 一方、労災認定について厚労省は「患者全体が増え、認定される人も増加した。発症までの潜伏期間(30−40年)を考えると、当分の間、認定者は増加する」とみている。工場周辺での健康被害を訴える人の公害認定については、環境省は同日の国会審議で慎重な姿勢を示した。

 内訳は肺がんが59人、中皮腫が127人。都道府県別では大阪が最多の26人、次いで神奈川24人、兵庫20人、東京18人の順。認定は申請者の居住地ではなく、事業所の所在地でされるため、工業地帯が集中する地域の認定者が多くなっている。

 99年度から04年度までの6年間の業種別では窯業・土石製品製造業の117人が最多。次いで建築事業97人、船舶製造81人だった。(共同)

石綿使用車両は650両 「影響なし」とJR各社

2005/07/20 The Sankei Shimbun

 JR各社が現在運行している列車のうち、アスベスト(石綿)を断熱材などに使用している車両が約650両あることが20日、各社のまとめで分かった。

 いずれも1970年代半ばまでに製造された旧型車両。各社は「飛散防止などの措置を講じており、乗客や環境に影響はない」としている。

 アスベスト使用車両は、東日本が約250両、西日本が約200両、九州が161両、四国が22両、北海道が21両、東海が2両。貨物は現在調査中という。

 車体の外板と内装の間に密閉された状態で、断熱材として使用しているケースが大半。東日本は90両、九州は30両を、2005年度中に廃車にする計画で、解体作業は専門業者に委託する予定。

 国土交通省は14日、鉄道、自動車、航空などの事業者に、アスベストの使用状況や被害実態などを調査し、早急に報告するよう指示していた。(共同)

04年度186人、過去最多 アスベストの労災認定

2005/07/20 中国新聞ニュース

 アスベスト(石綿)を吸い込んだことによる労災認定者が、二○○四年度は全国で百八十六人に上り、認定基準ができた一九七八年以降最多となったことが二十日、厚生労働省の集計で分かった。○三年度は認定基準が緩和され、認定者も百二十一人と大幅に増えたが、さらに約一・五倍に急増した。

 厚労省は「患者数全体が増え、認定される人も増加した。発症までの潜伏期間(三十〜四十年)を考えると、当分の間は認定者は増加する」とみている。環境省は工場周辺での健康被害を訴える人の公害認定には慎重な姿勢を示した。

 内訳は肺がんが五十九人、アスベスト特有のがんの一種である中皮腫が百二十七人。都道府県別では大阪が最も多く二十六人、次いで神奈川二十四人、兵庫二十人、東京十八人の順だった。

 認定は申請者の居住地ではなく、事業所(会社)の所在地でされるため、造船業や工業地帯が集中する地域の認定者が多くなっている。

 九九年度から二○○四年度までの六年間をみると、業種別では「窯業・土石製品製造業」の百十七人が最多。次いで「建築事業」九十七人、「船舶製造」八十一人。

 この日開かれた衆院厚生労働委員会のアスベストの健康被害に関する集中審議では、厚労省の西博義副大臣が、○四年度までに労災認定された人は計八百四十九人に上ると答弁した。

 工場周辺住民らの健康被害を公害として認定するかどうかについては、環境省の高野博師副大臣が「現在、都道府県を通じて情報収集している。調査結果を分析することが必要で、その上で公害健康被害補償法の趣旨に合致するか見極めたい」と述べるにとどまった。

アスベストでクボタに相談、工場周辺住民34人が死亡

2005年07月18日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 大手機械メーカー「クボタ」旧神崎工場(兵庫県尼崎市)で多数の社員らが、アスベスト(石綿)が原因とみられるがん「中皮腫」などで死亡し、周辺住民の発症も確認された問題で、同社に相談があったアスベストに関連する病気での死亡例が51件あることが17日、わかった。

 そのうち周辺住民らの死亡例は34人に上り、31人が中皮腫だった。また15件持ち込まれた療養中の相談の3分の2は周辺からのものだった。

広島県内の中皮腫患者106人

2005/07/17 中国新聞地域ニュース

 アスベスト(石綿)が主原因とされるがんの一種の中皮腫と確定診断された患者の数は、一九七〇年代以降、広島県内で計百人以上に達し、八〇年代半ばから急増していることが分かった。患者の七人に一人は、石綿を直接、扱う機会が少ないとみられる女性だった。

 県内の主な病院で病理診断されたがんなどの組織標本を収集・登録している県組織腫瘍(しゅよう)登録報告によると、登録を開始した七三年から二〇〇〇年までの間に、生体検査で中皮腫と診断された患者は計百六人(うち女性は十五人)に上った。

 七六年から八〇年までの五年間の患者数は、平均〇・八人。一方、九六〜二〇〇〇年は年平均七・二人と九倍に達した。この間、登録病院数も増えているので、単純比較はできないが、「患者は増える傾向にある」(広島赤十字・原爆病院の有田健一呼吸器科部長)とする専門医師の見方とも一致する。

 患者の年代は、三十歳代から八十歳代までに及んでいる。とりわけ多いのは五十〜七十歳代。八〇年代後半以降は、女性患者もほぼ毎年一、二人が見つかっている。

 県内では、六〇年代以前は、ほとんど中皮腫の発生はなかったとされる。中皮腫に詳しい井内康輝・広島大大学院教授(病理学)は「女性や若年者の発症は、職業とは別の環境で石綿を吸い込んだ可能性が考えられる。きちんと検討すべきだ」と指摘している。

県施設のアスベスト使用点検へ

2005/07/16 中国新聞地域ニュース

 広島県と県教委は十五日、アスベスト(石綿)を使用し、過去に飛散防止対策を施した県立施設、県立学校の再点検に乗り出す方針を決めた。

 県環境対策室によると、一九八七年以降の調査によって広島市中区の県営住宅「長寿園高層住宅」の三棟八百三十七戸と、県立高校、養護学校計十一校でのアスベスト使用が判明。飛散を防ぐため、長寿園高層住宅は九一年度、県立学校は八八―九二年度、内装材で覆うなどの補修工事をした。

 しかし県などは、年月の経過で天井や壁にすき間ができるなど劣化の可能性もあるとして、再点検を決めた。今後、政府から通達がある予定の調査依頼などを踏まえ、手法や対象施設の範囲を検討する。

 藤田雄山知事は「健康被害の防止のため至急再点検し、解体をどうするかも検討しなければならない」としている。

横浜市、市立校からアスベスト吹きつけ材を全面撤去へ

2005年07月16日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 横浜市教育委員会は、市立校の校舎に使われているアスベスト(石綿)の吹きつけ材を独自に全面撤去する方針を固めた。

 小中高など全520校を今年度中をめどに緊急調査し、現行規則で使用が容認されている含有量1%以下のものも含めてすべて取り除く工事を始める。  撤去対象は少なくとも数十校に上るとみられ、億単位の費用が必要になるが、市で負担する考えだ。全面撤去の方針について、市教委は「児童・生徒が長時間を過ごす学校の特殊性を考えた」と話す。

 文部省(当時)は1987年、労働安全衛生法に基づく特定化学物質等障害予防規則で75年から禁止されていたアスベスト含有率が5%を超える吹きつけ材の使用実態調査を全国の学校で実施。同市教委も規制前に建てられた336校を調べ、使用が判明した14校で撤去などの対策を講じた。

 95年に規則が改正され、1%超のアスベスト含有材の吹きつけが禁止されたが、すでに使用されているものは規制の対象とならず、含有率5%以下の吹きつけ材が残されたままの学校は多い。

 文部科学省は、今月下旬に全国の学校施設の調査を行う予定だが、その後の対応策は決めていない。同市の方針を「理想的な方法」(施設企画課)としている。

86年にILO採択の石綿安全条約、衆院が承認

2005年07月16日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 衆院は15日の本会議で、石綿(アスベスト)にさらされる労働者を保護するための措置を定めた「石綿の使用における安全に関する条約」を全会一致で承認した。参院はすでに承認している。

 政府は国会で承認されたことを受け、批准の手続きに入る。

 同条約は1986年に国際労働機関(ILO)で採択され、この条約の締結により<1>石綿の代替化の促進<2>石綿の吹きつけ作業の禁止<3>石綿にさらされている労働者の健康診断<4>クロシドライト製品の使用禁止<5>建物からの石綿の除去作業を、資格のある業者に限定する――などが義務づけられる。

中皮腫を血液診断 石綿被害 順天堂大など開発

2005/07/15 The Sankei Shimbun 大阪夕刊から

≪早期発見に可能性≫

 アスベスト(石綿)を吸い込むことで胸膜や腹膜にできるがんの一種、中皮腫を血液で診断するキットを、順天堂大の樋野興夫教授(病理学)と株式会社免疫生物研究所(群馬県)が15日までに開発した。中皮腫が出すタンパク質だけにくっつく抗体を利用した手法で、早期診断につながる可能性がある。患者への応用を同大倫理委員会に申請しており、承認が得られ次第、実施したいとしている。

 現在の診断は麻酔をかけて患部の組織を採取したり、コンピューター断層撮影をしたりする必要があり、見つかったときには進行していることが多いのが難点になっている。

 樋野教授らはラットの腎臓がんで活発に働く遺伝子「Erc」を発見、Erc遺伝子がつくるタンパク質の量は、がんの進行に応じ2−5倍に増えることを突き止めた。

 Ercの遺伝子とタンパク質は、人でも胸膜や腹膜などの中皮に通常あることが分かり、中皮腫になると増えると判断。このタンパク質に特異的に結合する独自の抗体を開発、患者から摘出した組織を染色検査したところ、病変部が正確に染まり、診断に有効なことを確認した。

 同様の研究は米国のグループが別の抗体で進め、発症前にタンパク質が血中に出たと報告している。

 このキットは膵臓(すいぞう)がんや卵巣がんを検出することもあるが、樋野教授は「アスベスト被害の危険がある人を対象にした検診で、ふるい分けに使える。中皮腫がどれぐらいの大きさで検出できるのかなど、患者で詳しく評価したい」としている。

アスベストで374人死亡 経産省、調査結果公表

2005/07/15 The Sankei Shimbun

 アスベスト(石綿)による健康被害問題で経済産業省は15日、アスベストを使用していた企業の被害実態調査の結果を公表、これまでに89社から回答を得て27社で従業員ら374人が死亡、12社で88人が療養中であることを明らかにした。

 同省が企業のアスベスト被害を調査したのは初めてで「有害性の認識は過去からあった。調査にもう少し早く取り組んでおけばよかった」としている。今月中に業界団体を集め、代替化を急ぐよう要請する。

 経産省によると、調査は13日までに企業が回答した結果をまとめた。374人の死因は中皮腫114人、じん肺154人―など。療養中の88人の内訳は中皮腫13人、じん肺53人―などだった。全員が労災認定を受けているという。

 このうちニチアスが141人と最も多く、次いでクボタ79人、エーアンドエーマテリアル27人などとなっている。

 従業員家族の健康被害については、まだ企業の7割程度しか回答がないため、今回の結果には含まれていない。

 同省は業界6団体を通じてアスベストを使った製品の製造企業65社について情報提供を求め、業界団体加盟企業以外にもアスベストを使用した製品の製造企業が24社判明したため追加して集約した。

 廃業したり、連絡がつかない企業がほかに33社あり、引き続き調査を進める。(共同)

大阪府、アスベスト対策本部を設置 測定結果公表へ

2005/07/14 The Sankei Shimbun

 アスベスト(石綿)による健康被害問題で、大阪府は14日、「アスベスト対策推進本部」を設置。府内で操業している14のアスベスト製品製造工場を近く立ち入り調査し、大気中のアスベスト含有量の測定結果を公表すると発表した。府によると、アスベストについての対策本部設置は都道府県で初めて。

 調査する工場は豊中市の「平田パッキン工業」など。現在は廃業しているが、以前アスベストを扱っていた50以上の工場の位置や工場が実施した測定データについても判明次第、公表するという。

 また、アスベストについての総合的な府民相談窓口を19日以降、府健康づくり感染症課内に設置。府所有施設でのアスベスト使用状況や、施設を解体する際のアスベストを含む建材撤去方法なども早急に検討するとしている。(共同)

アスベスト被害の調査を 知事会議が緊急要望採択

2005/07/14 The Sankei Shimbun

 全国知事会議は14日、アスベスト(石綿)による健康被害問題の広がりを受け、アスベストに関連する事業所の周辺住民などを対象に、健康被害の実態を調査、被害者には医療費を補助するよう国に求める緊急要望を採択した。

 要望はこのほか、国が持っているアスベストを製造したり取り扱う事業所がどこにあるかなどの情報開示を要請。アスベストを利用した建築物の解体が今後増えるのに備え、アスベストが大気中に飛散するのを防止するための大気汚染防止法の拡充や監視体制の強化も求めた。緊急要望は兵庫県が提案した。(共同)

元国鉄職員の死亡者5人 アスベスト被害で労災認定

2005/07/14 The Sankei Shimbun

 戦後から1980年代の旧国鉄時代に、アスベスト(石綿)が原因とみられる中皮腫で死亡した元職員は5人で、療養中の1人を含めた計6人が労災認定されていたことが国鉄清算事業本部のまとめで14日、分かった。

 5人は旧大船工場(神奈川県)の2人、旧品川電車区(東京都)、旧向日町運転所(京都府)、旧鷹取工場(兵庫県)の各1人。石綿製の断熱材を使った車両の解体作業などに従事していた。

 いずれも2003年10月―04年12月に死亡しており、このうち、旧向日町運転所と旧鷹取工場の2人の労災認定は既に明らかになっている。

 苗穂(なえぼ)工場(北海道)で勤務した札幌市の70代の元職員は現在療養中で今年1月に労災認定された。

 このほかJR東日本は、長野総合車両センターで働いていた社員=当時(41)=が1998年に中皮腫で死亡し、2000年に労災認定したことを既に明らかにしている。

 アスベストは断熱効果が高いため、電車の断熱材や機関車の配管、消音装置などに使用され、解体、補修中に吸い込んだとみられる。(共同)

女性5人死亡、石綿影響か 長野の自動車部品製造会社

2005/07/14 The Sankei Shimbun

 自動車部品製造会社「日本機材」(長野市)は14日、アスベスト(石綿)を扱っていた女性従業員6人が退職後にじん肺で労災認定をうけ、5人が死亡していたことを明らかにした。同社は「石綿の影響も否定できない。退職者のケアに努めたい」としている。

 6人は工場に勤務。自動車のクラッチ用素材を製造するため、石綿を紡ぐ作業などをした。退職後、じん肺で労災認定を受けたが、うち5人が1990年から今年にかけて62−84歳で死亡した。同社は死因を確認していない。

 90年以降、同社は材料を石綿からグラスファイバーに切り替えたという。(共同)

造船3社で死亡者51人 石綿被害で元従業員

2005/07/13 中国新聞ニュース

 石川島播磨重工業、三菱重工業、三井造船の三社は十三日、造船所などの元従業員計五十一人がアスベスト(石綿)が原因とみられる中皮腫などで死亡していたと発表した。

 船舶は石綿製品の断熱材などを使っており、従業員らは船舶の建造や補修の際に吸い込んだとみられる。五十一人はいずれも労災認定を受けている。

 石播では旧呉第一工場(広島県呉市)十三人、旧東京第一工場(東京都江東区)六人、相生工場(兵庫県相生市)一人の計二十人が死亡。うち十九人が中皮腫で、一人が肺がんだった。

 三菱の死亡者は、神戸造船所(神戸市)九人、下関造船所(山口県下関市)と横浜製作所(横浜市)各三人、長崎造船所(長崎市)と高砂製作所(兵庫県高砂市)各一人の計十七人。このうち十四人が中皮腫で、肺がんと肺線維症、じん肺がそれぞれ一人。このほか労災申請中の療養者が六人いるという。

 三井では玉野事業所(岡山県玉野市)の十二人、千葉事業所(千葉県市原市)と旧大阪事業所(大阪市住之江区)各一人の計十四人が死亡。中皮腫と肺がんが七人ずつだった。

アスベスト:運送業者も死亡 クボタ旧神崎工場

2005年7月10日毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 大手機械メーカー「クボタ」の旧神崎工場(兵庫県尼崎市)に出入りし、アスベスト(石綿)を運搬していた元日本通運社員、古嶋(こじま)美代司さん(当時68歳)が4月末、石綿特有のがんの中皮腫で死亡していたことが9日、分かった。古嶋さんは生前、尼崎労働基準監督署に労災を申請していた。認定されれば、元日通社員の石綿労災では3人目となる。

 遺族によると、古嶋さんは1956〜62年、日通尼崎支店に勤務。神戸港から旧神崎工場に大型トラックで石綿原料を運んだ。古嶋さんは「アスベストが鼻に入り、顔が真っ白になった。トラックの荷台も粉じんだらけ。しかし、会社や工場からは危険だとは知らされなかった」と話していたという。

 初めて体の異変に気付いたのは昨年12月だった。腹部がはれ、調べると腹水がたまっていた。今年2月末、医師から「腹膜中皮腫」と診断された。労災補償の時効は治療や休業の日から起算して2年以内、遺族補償は死亡日の翌日から5年で、働いていた時期は関係ない。3月に労災申請したが、結果が出る前に死亡した。

 元日通社員の石綿労災では「ニチアス」の王寺工場(奈良県王寺町)の構内で働いていた男性が中皮腫にかかり、04年に労災認定され、その後死亡した例などがある。【大島秀利】

    ◇

 NPO法人じん肺アスベスト被災者救済基金は11、13両日の午前10時〜午後5時、「アスベスト(石綿)じん肺健康被害ホットライン」(046・865・2960)を開設する。中皮腫や肺がん患者らの相談に無料で応じる。

アスベスト問題:国の対応後手に 2次被害激増の可能性

2005年7月10日毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 建材や保温材など、さまざまな用途に使われたアスベスト(石綿)による健康被害が全国各地で顕在化してきた。被害は周辺住民や家族へも広がり、「公害」の様相も呈してきている。国はメディアで大きく報道されてから重い腰を上げ、ようやくアスベスト含有製品を08年までに全面禁止とする方針を打ち出した。専門家からは早急な患者支援システムの確立を求める声が上がっている。【大島秀利、宇城昇、松田栄二郎】

 一連のアスベスト被害の中で、大手機械メーカー「クボタ」(本社・大阪市)の元社員の妻と、神奈川県横須賀市の造船会社従業員の妻3人が、がんの一種の中皮腫で死亡したことが明らかになった。いずれも夫の作業着を洗濯した際に石綿を吸い込んだ“2次被害”とみられている。

 米国では78年、造船所従業員の家族5人のうち、3人が石綿関連病で死亡した悲劇が報告された。夫は絶縁工事の際に石綿を吸って肺がんで死亡。さらに着衣などを通じて石綿を吸い込んだとみられる妻と長女が中皮腫で相次いで亡くなった。海外では80人以上が家庭で何らかの形で石綿を吸って中皮腫になったとの報告がある。

 周辺住民の症例も多い。英国では65年、石綿工場周辺で11人が中皮腫になったとの報告があった。米国では67年、石綿を使った紡織、摩擦材、断熱材の各工場周辺で、住民計8人の中皮腫患者が確認された。同様の周辺被害は少なくとも200例近く判明し、どこでも十分起こり得ることを示している。

 日本の石綿輸入のピークは74年と88年。これに対し、欧米では戦前から大量に使われており、専門家は、中皮腫や肺がんなども欧米の前例を再現するように激増すると予想している。

 クボタ旧神崎工場(兵庫県尼崎市)では周辺住民5人が中皮腫になり、うち2人の死亡が明らかになった。同社は治療中の3人に見舞金を支払ったが、企業では初めての措置だった。

 同社は「(毒性が一番強い)青石綿を使っていた時代は石綿について危険性の認識も、濃度規制もなかった」と説明する。しかし厚生労働省によると、石綿に関する一切の規制がなかった70年以前でも、じん肺法によって、企業には石綿を含む粉じんの量を低く抑える義務があった。

 一方、公害認定では、国が原因物質の排出者から費用を徴収し、医療などの補償費を支払う仕組みだ。通常は企業側が損害賠償責任を認めることが前提で、認定対象は、指定を受けた地域の特定の疾患に限られる。木野茂・立命館大大学教育開発・支援センター教授(環境学)は「企業のアスベスト排出量や拡散範囲、発症者の居住歴などのデータをもとに自治体が積極的に調査すべきだ。関係があれば公害認定し、補償交渉の仲介など救済措置を取らなければならない」と指摘する。

 ◆被害意識が低く、国内規制は71年

 石綿関連病を巡っては、55年に英国で、吸引した石綿と肺がんの因果関係が疫学的に立証された。しかし、日本で規制が始まったのは71年。「特定化学物質等障害予防規則」(特化則)が施行され、石綿粉じんの排気装置の性能基準を定めた。

 75年の特化則改正で、ようやく発がん物質と指定したが、石綿の使用自体は、空気1立方センチ当たり5繊維とする「管理濃度」を定めて容認した。

 ところが欧州各国で濃度基準が次々厳しくなったことから、旧労働省は76年、空気1立方センチ当たり白石綿は2繊維、青石綿は0.2繊維とする通達を出した。クボタは「厳しすぎる」として青石綿の使用を中止した。

 一方、工場外への排出基準は、89年の大気汚染防止法改正で初めて、敷地境界で1リットル当たり10繊維と規制された。

 日本で石綿が原則使用禁止になったのは昨年10月。これに対し主な国の全面禁止年は、アイスランド83年、ドイツ93年、フランス96年、英国99年。今年4月の参院外交防衛委員会で、沢雄二委員(公明)が規制の適用除外としたシール材など3製品について理由をただしたのに対し、小田清一・厚労省労働基準局安全衛生部長は「代替品の開発が十分でないから」と答弁、健康被害への意識の低さをうかがわせた。

石綿治療の基金創設を検討 クボタ、業界団体と連携も

2005/07/06 The Sankei Shimbun

 大手機械メーカーのクボタは6日、アスベスト(石綿)被害の治療法確立などを支援する基金の創設を検討していることを明らかにした。

 石綿関連製品の工場に勤務した社員ら多数が石綿が原因とみられる病気で死亡した責任を取り、被害救済に資金援助すべきと判断した。他の石綿メーカーや業界団体との連携も視野に入れているという。

 石綿との因果関係が指摘されるがんの一種「中皮腫」は治療法が確立されていない。このため基金を通じて医療機関に助成し、治療法研究に役立ちたい考えだ。

 クボタは、石綿を使った建物の解体の際に、石綿の飛散を防ぐ製品開発も検討しており、被害救済のため総合的な対策を講じる考えだ。(共同)

新たに5社で31人死亡 石綿製品の工場従業員ら

2005/07/06 中国新聞ニュース

 アスベスト(石綿)による健康被害問題で、太平洋セメント(東京)や三菱マテリアル建材(東京)など五社の工場従業員ら計三十一人が中皮腫や肺がん、じん肺などで死亡していることが六日、分かった。既に判明したクボタやニチアスなどを含めると、死亡者は九社で計二百八十人に上る。

 太平洋セメントでは、旧秩父セメントの二工場(埼玉県秩父市)従業員のうち、一九七三年から二○○四年にかけて計十六人が中皮腫などで死亡。現在も七人が療養中。石綿を使った建材などの製造に携わり、労災認定を受けている。

 三菱マテリアル建材では名古屋工場(愛知県大治町)で石綿を扱っていた従業員一人が○一年、肺腫瘍(しゅよう)で死亡。旧千葉幕張工場(千葉市)の一人は九三年にじん肺で死亡した。同社はじん肺になったのは石綿が原因としている。

 旭硝子(東京)では旧船橋工場(千葉県船橋市)の一人が、ブラウン管製造工程で石綿の入った保護具を使い、中皮腫で死亡。同社は死亡との因果関係は不明とした。

 神戸市の建材メーカー「ノザワ」と大阪市の建材メーカー「日本インシュレーション」は、従業員計七人がじん肺になった後に死亡。因果関係は不明としている。

 日本インシュレーションの製品を施工した別会社の作業員五人もじん肺になった後、死亡した。

アスベスト被害、死者公表相次ぐ 日本バルカーは20人

2005年07月06日 asahi.com

 アスベスト(石綿)を使ってきたメーカーの間で、石綿が原因でおきるがん「中皮腫」や肺がんで死亡した従業員数の公表が6日も続いた。一方、石綿問題に取り組む団体からは「さらなる情報開示」を求める声も出ている。

 工業用パッキン製造大手の日本バルカー工業(東京)は同日、75年以降、神奈川県厚木市と大阪府八尾市にあった旧工場で従業員8人が中皮腫や肺がんなどで死亡、子会社でも12人が死亡したことを明らかにした。太平洋セメント(東京)は、埼玉県秩父市の工場の従業員16人が中皮腫などで死亡したことを公表し、曙ブレーキ工業(東京)も、下請け会社の従業員1人の死亡を発表した。

 また、建材メーカーのノザワ(神戸市)は、石綿による旧門司工場(北九州市)の従業員の死者数を従来より1人多い3人とした。フラノ事業所(北海道富良野市)でも2人が死亡しており、同社の死者は計5人。いずれも周辺住民の健康問題はない、としている。

 石綿による健康被害については、経済産業省が日本石綿協会などを通じ、メーカーに報告を求めている。だが、退会や会社の統廃合で、90年に約120社あった同協会の会員は現在、約30社。退会企業には当時の名簿を元に経産省が直接、問い合わせているが「連絡のつかない所も多く、難航している」という。

 また、消費者団体や労働組合でつくる石綿対策全国連絡会議(富山洋子代表委員)は6日、日本石綿協会に対し、廃業や退会した企業名の公表を求める要請書を出した。

 同会議は、「死者数などの公表だけでは情報が不十分」としており、石綿の種類別の使用量や製造期間など、一層の情報開示を求めた。

死者、8社195人に アスベスト被害、朝日新聞社集計

2005年07月06日 asahi.com

 アスベスト(石綿)製品を製造していた企業で、胸膜などにできるがんの「中皮腫(ちゅうひしゅ)」や肺がんなどで死亡した従業員は、5日に86人と公表したニチアス(東京都港区)を含め関連業種8社、計195人にのぼることが同日までの朝日新聞の調べでわかった。

 日本石綿協会、せんい強化セメント板協会、日本窯業外装材協会の会員会社など51社に健康被害の有無を問い合わせたところ、5日夕方までに35社から回答があった。

 ニチアス、79人と発表していたクボタ(大阪市)のほかに従業員が死亡していたのは6社30人。2人と公表していたエーアンドエーマテリアル(横浜市)は追加調査で9人に増えた。三菱マテリアル建材(東京都中野区)では肺線維症などで2人が死亡していた。1社は療養中が1人と回答、26社は健康被害は「ない」と答えた。

 このほか、石綿との因果関係ははっきりしないが、ニチアスは55人、エーアンドエーマテリアルは14人の従業員がじん肺で死亡したとしている。

 工場周辺の住民が死亡したとの報告例はクボタ旧神崎工場(兵庫県尼崎市)の2人だけだった。

 ただし、無回答も含め「不明」「調査中」とする社もあり、数は増える可能性もある。統廃合を繰り返したり、石綿使用をすでにやめていたりなど、調査には障壁がある。大阪石綿紡織工業会は「零細業者も多く、現状の把握が難しい」としている。

 石綿については、厚生労働省が昨年10月、原則的に使用を禁止したが、中皮腫による死者は39年までに10万人とも予想されている。

石綿被害?141人死亡 ニチアス、肺がんなどで

2005/07/05 中国新聞ニュース

 建材メーカー「ニチアス」(東京)は五日、一九七六年から昨年までに、アスベスト(石綿)が原因とみられる肺がん、中皮腫で従業員や作業員らが八十六人死亡したと発表した。アスベストが原因となり得るじん肺での死亡も五十五人おり、合計は百四十一人に上る。

 現在も療養中の二十四人を含め計百六十五人が労災認定され、全員に見舞金が支払われた。アスベスト製品は五工場で製造されていたが、これまでに周辺住民からの被害報告はないという。

 五工場は、結城(茨城県千代川村)、鶴見(横浜市)、袋井(静岡県袋井市)、羽島(岐阜県羽島市)、王寺(奈良県王寺町)。操業期間は王寺工場が最も長く、一九三七年から昨年までアスベスト製品を製造していた。死亡者らは三十年以上前にアスベストを吸い込むなどしたらしい。

 同社によると、工場従業員の死亡者は六十一人、療養中が五人。操業開始が一番遅い結城工場では死亡者、療養者は出ていない。四工場の死者の内訳は鶴見五人、袋井四人、羽島二十一人、王寺三十一人。

 ほかに研究者や製品を建築現場で使っていた作業員ら二十五人が死亡し、一人が療養している。また、じん肺の死亡者は工場従業員三十九人、工場以外が十六人で、療養中は双方合わせて十八人。いずれも同社の社員。

 ニチアスは建材、耐火材などのメーカー。資本金約九十三億円で連結従業員数は約三千八百人。

 アスベスト被害では、大阪市の大手機械メーカー「クボタ」でも、七八〜二○○四年度に退職者や従業員ら七十九人が死亡していたことが判明。工場の周辺住民も中皮腫を発症した。環境省が被害の実態について調査を始めたほか、厚生労働省もアスベストの使用状況を調べるとしている。

アスベスト、業界団体が被害開示へ 経産省も情報収集

2005年07月02日 asahi.com

 大手機械メーカー「クボタ」(大阪市)の旧神崎工場(兵庫県尼崎市)の従業員や周辺住民が、アスベスト(石綿)が原因で起きるがん「中皮腫」で死亡していた問題で、業界団体「日本石綿協会」(東京都港区、31社)は、従業員の健康被害の状況について近く情報開示する方針を固めた。8日に大手3社の社長らによる幹部会を開き、公開の時期や方法を決める。

 また、経済産業省は1日、同協会をはじめ石綿製品の製造にかかわる7つの業界団体に対し、過去の生産実績と健康被害の状況について情報を提供するよう要請した。回答期限は8日とし、4日には各団体の代表を同省に集め、具体的な方法などについて協議する。

 これまで、一般に公開されることのなかった石綿製品を製造していた企業の従業員による健康被害が、明らかになってきそうだ。また、従業員に被害のあった工場の所在地が公表されることで、周辺住民の間で、見逃されてきた被害がみつかる可能性もある。

 業界最大手で、同協会の会長会社でもあるニチアス(東京都港区)は1日、「社員にクボタと同様な健康被害があったのは事実だ」と認め「情報は公開する方針だが、協会の対応に合わせたい」と述べた。

 また、エーアンドエーマテリアル(横浜市)は、89年に52歳、02年に55歳の男性従業員が中皮腫で死亡したと明らかにした。三菱マテリアル建材(東京都中野区)は「現職で報告はなく、退職者について調査中」としている。3社とも「周辺住民から健康被害の訴えはない」としている。

がん発症の住民3人に見舞金200万円 クボタ

2005/06/30 The Sankei Shimbun

 大手機械メーカー、クボタのアスベスト(石綿)被害問題で、民間団体の「関西労働者安全センター」は30日、旧神崎工場(兵庫県尼崎市)の周辺住民の患者3人がクボタから見舞金として1人200万円ずつを受け取ったことを明らかにした。

 同センターによると、同日午後2時ごろ、尼崎市立労働福祉会館でクボタ側の社員と会い、受け取った。クボタ側は3人の症状との因果関係を認めたわけではなく、謝罪もなかったが、3人は「クボタの誠意を見ることができた」と記者会見で話した。

 クボタは29日、1978−2004年度にかけ、退職者や出入り業者、従業員ら79人が石綿が原因とみられる疾病で死亡したと発表。うち78人が旧神崎工場関係者だった。同工場の周辺住民も、がんの一種「中皮腫」を発病しており、同社は治療中の3人に見舞金を支払う方針を明らかにしていた。(共同)

尼崎市が相談窓口 クボタ石綿疾患 旧工場地元 健康被害調査も検討

2005/06/30 The Sankei Shimbun 大阪夕刊から

 大手機械メーカー「クボタ」(大阪市浪速区)で社員(退職者を含む)と協力業者の社員計79人が、発がん性物質「アスベスト(石綿)」が原因とみられるがんの一種「中皮腫」や肺がんにかかり死亡していた問題で30日、クボタの担当者が兵庫県尼崎市を訪れ、これまでの経緯を説明した。

 かつて尼崎市に神崎工場があり、同工場で死亡者が出ているため実施した。

 クボタは昭和28年から平成17年までの石綿を扱った製品の製造状況や石綿が関係するとみられる疾患で亡くなった社員数などについて尼崎市に説明。市側は石綿と疾患との因果関係などについて説明を求めた。

 尼崎市は、旧神崎工場周辺の住民の不安を解消するため、同市公害対策課に相談窓口を緊急に設置。今後はクボタの説明を保健所と検討したうえで、必要に応じて健康被害調査に乗り出す。

環境省、クボタから聴取 アスベストの健康被害

2005/06/30 中国新聞ニュース

 大手機械メーカー、クボタ(大阪市)の工場でアスベスト(石綿)によるとみられるがんなどで多数の従業員が死亡し、住民にも健康被害が出た問題で、環境省は三十日、クボタから住民や従業員の被害状況などを電話で事情聴取した。厚生労働省も兵庫労働局を通じ、同社から過去の職場環境やアスベストの使用状況を聴取する方針。

 環境省環境保健部によると、同社からは二十九日の記者発表の事前連絡はなく「まず、報道されているような事実を確認するのが精いっぱいの状況」としている。当時の状況や、ほかの住民の調査は今後検討する。

 一九八九年以降、大気汚染防止法で工場などのアスベスト発生施設から施設外への排出が厳しく制限されたが、今回、住民がアスベストを吸い込んだとみられる時期に法規制はなく、工場も現在はないため、行政指導などはできないという。

 一方、厚労省は、健康被害が集中している旧神崎工場(兵庫県尼崎市)以外にもアスベストを使っていた工場があり、こうした工場での実態も説明を求める。ただ、環境省と同様に行政指導などはできない。

 アスベストは昨年十月から、製造、輸入などが原則、全面禁止となった。七月一日には、過去の建物の解体作業でのアスベスト飛散を防ぐため、作業着の持ち出し禁止や粉じん除去、囲い込みなどの措置を事業者に義務付けた石綿障害予防規則が施行され、クボタがアスベストを使って製造した水道管なども解体時にはこの規則に従って取り扱われることになるという。

クボタ工場で石綿原因?26年間で79人死亡 兵庫・尼崎

2005/06/30 The Sankei Shimbun

≪近隣住民3人がん発病≫

 大阪市の大手機械メーカー「クボタ」は29日、アスベスト(石綿)関連製品を製造していた旧神崎工場(兵庫県尼崎市)の近隣住民らが、がんの一種「中皮腫」を発病、治療中の3人に見舞金を支払うと発表した。1978−2004年度に、他の工場の1人を含め退職者や出入り業者、従業員ら79人も石綿が原因とみられる疾病で死亡したという。

 石綿を大量吸入すると中皮腫や肺がんを引き起こすとされ、同社は見舞金について「因果関係は不明だが社会的責任を明確にする」としている。石綿問題に取り組む民間団体によると、ほかに住民2人が死亡しており、弔慰金支払いを検討中。

 環境省は「石綿の関連工場周辺で住民に健康被害が出たのは聞いたことがない」と話している。

 同社によると、旧神崎工場は1954年から操業を停止した95年まで石綿を使った水道管や建材を製造。死亡した79人のうち74人が同工場従業員、4人が出入り業者だった。ほかの1人は小田原工場(神奈川県小田原市)の従業員で、両工場の退職者計18人が療養中という。

 今年4月26日現在で、死者69人と療養中の退職者14人が労災認定され、10人が申請中。同社は補償金を支払っている。

 治療中の住民3人は工場の半径1キロ以内に住み、うち2人は20年近く暮らし転居した。1人は現在も住んでいる。

 支援する尼崎市議が今年4月、クボタに相談。同社が3人と面会し、多額の治療費を負担していることから救済措置を決めた。金額は公表しておらず「因果関係は不明」として謝罪していない。

 石綿関連製品を製造していた他の工場近隣住民が被害を訴えた場合も、同様に見舞金を支給する方針。会見した伊藤太一安全衛生推進部長は「法令は順守したが、住民に健康被害が出たのは非常に残念」と話した。

 石綿をめぐっては、厚生労働省が昨年10月、労働安全衛生法施行令の一部を改正。石綿が重量の1%を超えるセメント板やスレートの製造や使用を禁止した。(共同)

じん肺訴訟:住友重機の元従業員らが損害賠償求める 横須賀

2003年07月08日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 住友重機械工業(本社・東京都)の元従業員ら14人が8日、「造船部門の作業で石綿(アスベスト)などを吸い、じん肺禍になった」として同社を相手取り、3億9600万円の損害賠償訴訟を横浜地裁横須賀支部に起こした。原告は67〜84歳の患者11人と遺族3人。

 訴状によると、原告患者らは同社追浜工場(神奈川県横須賀市)などの造船部門に、27〜40年間従事。断熱材に使われていた石綿などの粉じんを吸い込み、じん肺禍に陥った。会社は対策を怠り、健康被害を拡大させたとしている。

 88年に同社の元従業員8人による「住友じん肺訴訟」が同支部に提訴され、8年余り後に和解。今回は第2次集団訴訟。

 原告団は「昨年6月、三菱重工業はじん肺訴訟の原告との和解を決め、企業責任を明確化した。住友重機もこれにならい、高齢患者の早期救済を」と訴えた。

 住友重機側は「訴状を読んでいないのでコメントできない」としている。

 また、「じん肺ホットライン」(じん肺・アスベスト被災者救援基金など主催)が9、10の両日(いずれも午前9時〜午後5時、電話046・865・2960)に開設される。【網谷利一郎】

アスベスト労災:心膜でも初認定 大阪の男性

2003年05月26日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 アスベスト(石綿)が原因とみられる心膜中皮腫になった会社員が、死亡後に労災認定を受けていたことが26日、分かった。これまで胸膜、腹膜中皮腫で認定されたケースはあったが、心膜中皮腫の認定は初めて。厚生労働省は昨年10月からアスベストに関する労災認定基準の見直しを進めており、今回の申請がきっかけになったとみられる。

 労災認定されたのは、00年3月に心膜中皮腫を発症し、約4カ月後に亡くなった大阪市淀川区の山根昭二さん(当時53歳)。山根さんは約25年間鉄工所に勤務し、アスベストを含む石筆をサンドペーパーで削って鉄板に線を引く作業などを行っていた。その際、アスベストを吸い込んでいたのが原因とみられる。今年3月28日に認定された。

 中皮腫は胸膜や腹膜、心膜など臓器を包む膜の表面を覆っている「中皮」から発生した腫瘍(しゅよう)で、ほとんどがアスベストが原因と言われている。中皮腫による死亡数は01年で772件あったが、労災認定件数は33件。心膜はケースが少ないことなどから、これまで申請がなかったようだ。

 アスベストによる健康被害は潜伏期間が長く、高度経済成長期に使われた影響が今後出てくるとみられる。日本産業衛生学会は昨年4月、今後40年間に胸膜中皮腫だけで死亡数が10万件を超す可能性があるとの予測を出している。ヨーロッパなどではアスベスト使用は全面禁止になっているが、日本ではまだ全面的には禁止されていない。

 石綿対策全国連絡会議の古谷杉郎事務局長は「アスベストによる健康被害が労災の対象になるとは知らず泣き寝入りしている被災者や家族は多い。中皮腫は有効な治療法も確立されておらず、治療や補償など総合的な被害対策が求められている」と話している。 【東海林智】

アスベスト、すべて輸入・製造・販売禁止へ

2003/04/04 読売新聞 Yomiuri On-Line
 厚生労働省は4日、発がん性がある石綿(アスベスト)を含む建材などの使用を禁止するため、今年中にも労働安全衛生法施行令を改正する方針を固めた。

 国内で使用されている石綿の9割以上が建材として利用されており、石綿以外の素材で代替することが難しい一部の製品以外は、輸入や製造、販売が禁じられる。

 国内で使用されてきた石綿には3種類あり、このうち発がん性が高い2種類は1995年に使用が禁じられた。今回の改正で、すべての石綿が原則使用禁止となる。

 厚労省の石綿代替化検討委員会はこの日、原発などに使われる耐熱・電気絶縁板や、化学工場の配管などに使われるシートやシールを除き、石綿以外のガラス繊維などの素材で代替可能とする報告書を同省へ提出した。

 石綿は、耐熱性や耐久性が高く、比較的安価なため、屋根や壁などの材料として広く利用されている。しかし、解体時などに粉じんを吸うと健康への被害が懸念されるため、使用禁止が検討されてきた。

アスベスト被害の支払いは最大619億円…損保大手

2002年11月23日 Yomiuri On-Line
 損害保険大手各社は22日、米国のアスベスト(石綿)被害に対する将来の支払い見通し額を発表した。大手5社・グループの合計で、最大で619億円に上るが、「必要な手当ては済んでおり、経営に影響はない」(東京海上火災保険)としている。米国ではアスベスト被害に対する訴訟が頻発、補償費用が重荷になり倒産する企業も出ている。

アスベスト原則全面禁止へ

2002年06月28日The Sankei Shimbun
 坂口力厚生労働相は28日の閣議後会見で、限定的に使用が認められているアスベスト(石綿)のうち、白石綿の輸入や使用について「代替品の開発が進んでおり、原則として使用を禁止する方向で検討する」との方針を明らかにした。禁止の時期は、代替品などを調査した上で決めるとしている。

 アスベストは、青石綿や茶石綿、白石綿など主に3種類が国内で断熱材などの原料として使用され、青、茶の2種類は1995年に禁止されたが、白石綿だけは、マスク着用などの安全策を講じた上で、使用が認められてきた。これで計3種類が全面的に使用禁止になる。

 ただ、白石綿は化学プラントの接合部への使用など代替品の確保が困難な使用分野も残されており、厚労省は今後、経済産業省や国土交通省、環境省とともに、224種類ある製品の用途ごとに代替品の有無を調査し、やむを得ないもの以外は労働安全衛生法の政令改正で禁止する方針。

 厚労省によると、今回禁止対象となる白石綿は、ほとんどが輸入品で、74年の35万トンを最高に90年代から年々減少。代替品への転換もあって2001年は、7万9000トンになっている。

 白石綿の9割以上が主に断熱材として建造物の屋根や壁などに使用されている。白石綿を原料とした製品を製造、使用する工場や建設現場では、作業員が吸い込まないようにマスクの着用や排気装置の設置などが義務付けられている。

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