TOPIC No.3-25 有明海ノリ不作問題/諌早干拓問題

01.ISAHAYA HIGATA NET
02.有明海生態系異変関連地元紙記事一覧 by笹山登生資料
03.諫早湾と防災 by長崎自然史仮想博物館
04.諌早湾・干拓事業 公式資料集 by諌早湾干拓事業公式資料ページ
05.諌早湾干拓事業
06.諌早干拓問題関連ページ by渡辺雅俊のホームページ
07.ムツゴロウ裁判【諫早湾自然の権利訴訟】やっています
08.諌早湾干拓問題 by日本科学者会議(水門の即時開放を求めるby日本科学者会議第32回定期大会1997年5月25日)

有明海でノリ養殖始まる 漁協は豊作期待

2008年10月15日 中国新聞ニュ−ス

 佐賀、熊本、長崎各県の有明海で15日、養殖ノリの種付けが解禁となり、一斉にノリ網を張る作業が始まった。福岡県では17日に解禁。

 佐賀県では、養殖業者が暗いうちから沖合7キロの漁場に出て、「角船」と呼ばれる小型の作業船に乗り込み、ノリ網を支柱に取り付けていった。朝日が照り付けキラキラと光る海面に、赤や緑のカラフルな網が揺れた。

 佐賀県有明海漁協によると、水温の上昇の影響で今年の種付けは例年より10日遅いが、水温は午前7時で22・9度と最適。海況も良く豊作が期待できるという。5年連続でノリ生産量日本一を誇る佐賀県では、今期は昨年の23億円以上の販売を目標にしている。

 同漁協の川崎守組合長は「昨年は特別に暑かったが、今年は天気が良く北風も吹き、いいノリができそうだ」と笑顔で話した。初摘みは11月中旬ごろに行われる。

諫早干拓訴訟で政府が控訴 防災面の不安無視できず

2008/07/10 中国新聞ニュ−ス

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)で建設された潮受け堤防の排水門を五年間開門するよう国に命じた佐賀地裁の判決に対し、政府は十日夜、干拓地の入植農家や地元住民の防災面に対する不安を無視できず、開門は困難として福岡高裁へ控訴した。これを受け、原告側の馬奈木昭雄まなぎ・あきお弁護団長も佐賀市内で記者会見し「十一日午後に控訴する」と述べた。

 一方で、政府は堤防建設による漁業被害を訴えている地元関係者らに配慮し、(1)農林水産、環境両省が調整した上で開門調査のための環境アセスメントを行う(2)その後の開門調査を含めた今後の方策については関係者の同意を得ながら検討する(3)有明海の再生に向けた取り組みを強化し、特産魚類の生息調査や貝類も含めた増・養殖技術開発も検討する―との若林正俊農相談話を発表した。

 判決への対応をめぐる政府内の調整では、控訴を求める農相と、開門を主張する鳩山邦夫法相や佐賀県選出の今村雅弘、岩永浩美の両農水副大臣との対立から難航していたが、十日午前に控訴する方針を決定していた。

 六月二十七日の佐賀地裁判決は、干拓事業と諫早湾の漁業被害との因果関係を認め、(1)排水門を五年間開く(2)堤防の防災機能を代替するための工事に要する三年間は開門を猶予する―ことなどを国に命じ、周辺海域への影響を調査するよう付言していた。

諫早湾「開門」判決 漁業への影響解明急げ

2008/06/28 中国新聞ニュ−ス

 漁業被害の訴えに耳を貸さず、実態を把握する努力を怠ってきた国の姿勢が断罪された。長崎や佐賀県など有明海沿岸の漁業者らが諫早湾干拓事業の潮受け堤防撤去などを国に求めた訴訟で、佐賀地裁はきのう、南北の排水門を五年間、常時開放するよう命じる判決を下した。

 国は、開門している間に漁業被害について詳しく調べなさい―。判決の内容を分かりやすく言えば、こうなるだろう。適切な施策を講じる前提となるからだ。

 諫早湾と、その近くでは、養殖ノリの色あせや貝の漁獲量減少など、漁業は深刻なダメージを受けている。判決は、干拓事業で堤防を閉め切ったため、潮流が弱まったなどと因果関係を認定。これまでは原告である漁業者側に求められてきた詳細な調査は、国にしかできないとして、中・長期の開門調査を命じた。

 さらに、漁業者らが要望しているのに、そうした調査を国がしていなかったことについて、被害の立証を妨害するといっても過言ではない、と厳しく批判した。

 漁業への影響については、司法の場などで再三指摘されてきた。干拓事業との関連が認められたこともある。例えば、漁業者らが干拓工事の差し止めを求めた仮処分申請での二〇〇四年の佐賀地裁の判断。「漁業被害の唯一の原因とはいえないが、一定程度の因果関係は認められる」として差し止めを命令した。

 それを取り消す決定を出した福岡高裁でも、「因果関係が証明されたとはいえないが、関連性は否定できない」とした。さらに、国は漁業環境が悪化した原因を今後も調査する責務があるとして、誠実な対応を促している。となると、何より求められるのは、詳細な科学的調査のはずだ。

 ところが、国は〇四年に中・長期開門調査の見送りを表明してからずっと、かたくなに実施を拒んできた。「長い歳月を要するが、成果が明らかでない」などを理由として挙げているが、責任ある対応とは到底思えない。

 今からでも遅くはない。国は、じっくり調査するべきだろう。防災対策のため、三年間の猶予が与えられたが、速やかに取り組む必要がある。干拓地では今年春から営農が始まっている。農業用水に海水が混じらないなどの配慮も欠かせない。

 一度スタートさせた公共事業を方向転換するのは容易ではあるまい。しかし、島根、鳥取両県にまたがる中海の干拓・淡水化事業の例がある。農業や水産、環境など多角的に干拓の影響を調べて、〇二年に中止することを決めた。結果はともかく、きちんと調査した上で判断する方法は参考になるのではないか。

 環境悪化など想定していない事態が起きたり、疑問点が生じたりすれば、すぐ立ち止まって対応するのが行政の本来の姿だろう。責任をきちんと果たすよう注文を付けた今回の判決の重みを国は肝に銘じるべきである。

諫早湾干拓事業訴訟:佐賀地裁判決(要旨)

2008年06月28日 毎日新聞 東京朝刊 Mainichi INTERACTIVE

 有明海沿岸4県の漁業者ら約2500人が国を相手取り国営諫早湾干拓事業(諫干)による潮受け堤防排水門の常時開門などを求めた諫干開門訴訟で佐賀地裁が27日言い渡した判決の要旨は次の通り。

 1 漁業権または漁業を営む権利に基づく妨害予防及び妨害排除請求の可否について

 (1)現行漁業法のもとにおける漁業権においては、組合員の地位は、いわば社員権的権利にすぎないから、漁業権自体が個々の組合員に帰属すると解することは困難である。

 (2)漁業法8条1項の定める漁業行使権は、物権的性格を有し、第三者がその権利の存在を争いまたは権利行使の円満な状態を侵害したときには、組合員はその第三者に対し妨害予防請求権や妨害排除請求権を行使することができる。

 2 人格権、環境権及び自然享有権に基づく請求の可否について

 略

 3 有明海における環境変化と本件事業との因果関係の有無について

 (1)本件潮受け堤防の閉め切りの前後で明らかに変化が認められる環境要因としては、諫早湾、有明海湾奥部及び熊本県海域における赤潮の年間発生期間等の増大があるものの、赤潮の増大については、消去法によりその原因を特定できるほどに科学的知見の集成が行われていない。

 その余の点についても、結局のところ、全体として潮受け堤防の閉め切り前のデータが不足しており、閉め切りによる環境因子に対する暴露(閉め切り後)群と非暴露(閉め切り前)群の統計的有意差及び相対的危険度・寄与危険割合を確証する方法がなく、量と効果の条件や消去の条件を定量的に示すことはできないから、本件潮受け堤防の閉め切りと有明海の環境変化について因果関係を認めることは困難であり、高度の蓋然(がいぜん)性をもって認定するのは困難といわざるを得ない。

 もっとも潮受け堤防の閉め切りと諫早湾内及びその近傍場の環境変化との間の因果関係は、相当程度の蓋然性の立証はされているというべきである。

 (2)現状において、中・長期開門調査を除いて、本件潮受け堤防による影響を軽減した状況における観測結果及びこれに基づく科学的知見を得る手段は見いだし難いにもかかわらず、漁民原告らにとって、被告管理にかかわる本件各排水門の操作を行うことができないのは明らかである上、多大な人員費用の負担を必要とする有明海の海況に関する詳細な調査を漁民原告らに要求することも酷に過ぎるから漁民原告らにこれ以上の立証を求めることは、もはや不可能を強いるものといわざるを得ない。

 これに対し被告は、本件各排水門を管理している上、信頼性の高い観測を行うための人員や費用を負担し得ることは明らかであり、また中・長期開門調査は、諫早湾内の流動を回復させるなどして本件事業と有明海における環境変化との因果関係に関する知見を得るための調査として有用性が一応認められており、その実施についても不可能を強いるものではない。

 加えて、第1次仮処分決定における抗告審や公調委からも、中・長期開門調査等の実施を求められていることに照らせば、とりわけ、原告らにより、相当程度の蓋然性の立証がされている、諫早湾内及びその近傍場の環境変化に関する限りは、被告が中・長期開門調査を実施して上記因果関係の立証に有益な観測結果及びこれに基づく知見を得ることにつき協力しないことは、もはや立証妨害と同視できると言っても過言ではなく、訴訟上の信義則に反するものといわざるを得ない。したがって、被告において、信義則上、中・長期の開門調査を実施して、因果関係がないことについて反証する義務を負担しており、これが行われていない現状においては、諫早湾内及びその近傍場の環境変化と本件事業との間に因果関係を推認することが許されるというべきである。

 もっとも、上記推認は、現時点での科学的知見及び被告が中・長期開門調査を実施していない現状を前提とするものであり、上記推認の基礎とした事情が今後変化する可能性があることは当然に予測されるところである。

 そして、中・長期開門調査による観測・現地調査については、予備的請求のうち、上記推認の基礎とした事情が継続することが予測される5年間に限り本件各排水門を開放する限度で認容できる。

 4 漁業被害と本件事業との間の因果関係の有無について

 (1)略

 (2)本件事業は、諫早湾内及びその近傍場においては、魚類の漁船漁業並びにアサリ採取または養殖漁業の漁業環境を悪化させていると認められる。

 その余の漁業については、本件事業により漁業環境の悪化が生じているとは認められない。

 5 本件潮受け堤防の閉め切りの公共性の有無について

 潮受け堤防が発揮している防災機能等については新たな工事を施工すれば代替しうる。農業生産についても、漁業行使権の侵害に対して、優越する公共性ないし公益上の必要性があるとは言い難い。

 防災機能等を代替するための工事には短くとも3年間の工期を必要とすることも考慮すれば、原告らは本判決確定の日から3年間は本件各排水門の開放を求めることはできない。

 6 原告らの中・長期開門調査に対する期待権侵害の有無について

 略

 7 結論

 (1)よって、主文のとおり判決する。

 (2)なお、本件訴訟は、中・長期の開門調査自体を求めるものではなく、もとより本判決もこれを直接的に命じるものではないが、当裁判所としては、本判決を契機に、すみやかに中・長期の開門調査が実施されて、その結果に基づき適切な施策が講じられることを願ってやまない。

宝の海再生に光、諫早干拓訴訟判決に原告「勝った」

2008年06月27日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 閉ざされていた排水門が開く――。国営諫早湾干拓事業について佐賀地裁は27日、潮受け堤防の排水門を5年間開門することを国に命じ、「環境への影響を十分に調査すべきだ」と指摘した。

 「ギロチン」と呼ばれた潮受け堤防の閉め切りから11年余。かつて豊富な資源を誇った海で生計をたてる漁業者たちや、環境問題に関心を寄せる人たちは「これで有明海が生き返れば」と“宝の海”の再生に光を見いだした。

 午前10時2分、3階の1号法廷で神山隆一裁判長が主文を読み上げると、傍聴席に詰めかけた漁業者らの間にどよめきがわき上がり、「よし」とうなずく人もいた。

 神山裁判長は約10分にわたり、判決理由などを述べた。開門しない国の姿勢を「もはや立証妨害としか言えない」と断じた時には、「おー」という声が上がり、涙ぐむ女性も。「速やかに中・長期の開門を行い、施策に生かしてほしい」と締めくくると、漁業者らは大きくうなずいた。閉廷後には拍手が起こり、握手する姿があちらこちらで見られた。

 地裁前では、正面玄関から原告の代理人弁護士らが「勝訴」「農水省断罪」などと書いた紙を掲げて走り出てくると、待ち受けた約40人が拍手で出迎え、口々に「やった」「勝った」と声を上げ、万歳を三唱した。

 原告の一人、長崎県諫早市の無職荒木英雄さん(73)は、「信じてはいたけれど、これまでだいぶ裏切られていたので不安だった。感激でいっぱいです」と、興奮気味に語った。

 一方、諫早湾の中央干拓地で有機栽培のカボチャやショウガを作っている長崎県雲仙市の長谷川征七郎さん(65)は「環境に手を加えることには私も基本的には反対。だから漁業者の気持ちもよくわかる。しかし、今になって開門したら農地がどうなるのか想像もつかない」と不安を訴えた。

諫早干拓訴訟、排水門5年間開放を命じる…佐賀地裁

2008年06月27日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)で有明海の環境が変化し漁業被害が発生するなどしたとして、福岡、佐賀、長崎、熊本の沿岸4県の漁業者ら約2500人が国を相手取り、潮受け堤防撤去や堤防の排水門の常時開放などを求めた訴訟の判決が27日、佐賀地裁であった。

 神山隆一裁判長は、干拓事業と一部海域の環境変化の因果関係を認めたうえで、「中・長期の開門調査を実施すべきだ」として、国に対し南北2か所の排水門を少なくとも5年間継続して開放するよう命じた。潮受け堤防撤去は認めず、漁業者への慰謝料の支払いについては棄却した。国は控訴する方向で検討中。

 提訴は2002年11月。原告は最終的に漁業者約1200人、市民約1300人となった。原告側は、1997年に諫早湾の3分の1が潮受け堤防により閉め切られた後、諫早湾内や有明海全域で高級二枚貝のタイラギやアサリが取れなくなり、有明海全体で00年度にノリが凶作になるなど漁業被害が生じたと主張。

 国側は、堤防閉め切りで漁業環境は悪化しておらず、漁獲量の変化などは見られないと反論していた。

 判決では、堤防閉め切りにより潮流速が低下し、干拓地の調整池から諫早湾内への排水で海底に有機物が堆積(たいせき)して泥の質が悪化したと認定。魚介類の生息が困難になるほど水中の酸素濃度が低下する「貧酸素水塊」が頻発する事態を招いたとした。また、干拓工事で海底の泥が拡散し、毒性の強い赤潮の増加につながったり、干潟消失により稚魚の生育に影響が出たりした可能性を指摘。これらの影響で、諫早湾内や近隣海域で養殖アサリや漁船漁業に被害が出たと認定した。

 因果関係の立証に関しては、原告側について「相当程度のがい然性の立証がされている」とし、有明海の全体的な環境変化との因果関係については「これ以上の調査を求めるのは酷」とした。一方、国に対しては「中・長期の開門調査をして事業と環境変化の因果関係がないことを反証する義務があるのに、協力しないことは立証妨害と言っても過言ではなく、訴訟上の信義則に反する」と批判した。

 そのうえで、国に対し、判決確定後、代替の防災工事などに要する3年間の猶予を経て5年間は常時開門することを命じた。排水門の開放で調整池に海水が入り、池から農業用水を得ている干拓地の営農に影響が出る可能性もあるが、判決は「農業への支障は、漁業行使権(の侵害の有無)を上回る公益性があるとは言い難い」とした。排水門の即時開放を求める仮処分は却下した。


常時開門求め仮処分申請 諫早湾干拓、沿岸の17人

2005/10/31 The Sankei Shimbun

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)による漁業被害を訴える有明海沿岸4県の漁業者17人が31日、事業と被害の関係を調べるため、干拓用堤防の排水門を常時開放するよう国に求める仮処分を佐賀地裁に申請した。被害との因果関係が明らかになるまで、干拓事業を凍結することも求めた。

 申し立てによると、干拓事業が赤潮の大規模化や水質悪化を招き、ノリ不作など深刻な被害を引き起こしたとしている。

 沿岸の漁業者は2002年、工事差し止めを求め提訴。同時に求めた工事差し止め仮処分について04年8月、佐賀地裁が差し止めをいったんは決定した。しかし今年5月に福岡高裁が決定を取り消し、9月には最高裁が漁業者の抗告を退けた。

 農水省は「排水門を常時開けると、海底状態の変化などで、逆に漁業被害を引き起こしかねない」と、開門調査に否定的な姿勢を堅持している。同省によると、1986年に始まった干拓事業は現在94%まで進展、07年度中の完成を目指しているという。(共同)

計画通り諫早事業進める 最高裁決定で農水次官

2005/10/03 The Sankei Shimbun

 最高裁が国営諫早湾干拓事業(長崎県)の工事続行を認めたことを受け、農水省の石原葵事務次官は3日の記者会見で「計画通り事業を進めたい。有明海の再生事業も関係省庁と引き続き取り組みたい」と述べた。完成予定は2007年度で、農地整備などが残っている。

 干拓事業をめぐっては佐賀地裁が04年8月、事業と有明海の漁業不振の因果関係を一部認め工事差し止めを命じる仮処分を決定、福岡高裁が05年5月に工事差し止めを取り消した。一方、漁業者側はこれを不服として抗告したが、最高裁は9月30日に棄却した。(共同)

工事差し止めを取り消し 諫早湾干拓事業で福岡高裁

2005/05/16 中国新聞ニュース

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)と有明海の漁場悪化の因果関係を認め工事を差し止めた佐賀地裁の仮処分決定をめぐり、福岡高裁(中山弘幸裁判長)は十六日、決定を不服として国側が申し立てた保全抗告を認め、工事差し止めを取り消す決定をした。

 中山裁判長は「事業により漁業行使権が侵害されたという証明はない」と述べた。

 総工費約二千五百億円の国の巨大プロジェクトを完成直前で止めた地裁決定を、上級審がどう判断するか注目されていた。

 漁業者側は二○○二年、湾を閉め切る潮受け堤防などの影響で有明海の漁場が悪化したとして、国を相手に工事差し止めを求める訴えを佐賀地裁に起こし、同時に仮処分も申請した。地裁は昨年八月、漁業被害と干拓事業に一定の関係があるとして、一審判決が出るまで工事を中止するよう命じた。

 国は地裁に異議を申し立てたが今年一月、却下されたため「地裁は干拓事業と漁業不振の因果関係を客観的に立証していない」などとして福岡高裁に保全抗告した。

 裁判と別に、因果関係を調査していた国の公害等調整委員会は三月に結審している。

諌早湾干拓抗告審が終結 漁業者が漁場悪化訴え

2005/04/25 The Sankei Shimbun

 国営諌早湾干拓事業(長崎県)と有明海の漁場悪化の因果関係を認め、工事差し止めを命じた佐賀地裁の仮処分決定を不服として、国側が申し立てた保全抗告審の第1回審尋が25日、福岡高裁(中山弘幸裁判長)で開かれ、即日、審理を終結した。審尋は非公開で行われた。

 漁業者側代理人によると、福岡、長崎両県の漁業者3人が意見陳述。タイラギ漁の男性は「堤防閉め切り後、不漁が続き、今は土木の仕事をしている。陸に上がることは漁師の誇りを傷つけ、苦しみはどんどん大きくなっている」と訴えた。

 有明海沿岸の漁業者が求めた工事差し止め仮処分で、佐賀地裁は昨年8月、並行して審理中の差し止め訴訟の一審判決が出るまで工事をやめるよう命令。国側は異議を申し立てたが、却下されたため高裁に抗告した。

 国は抗告理由を「仮処分決定は事業と漁業不振の因果関係を立証していない。残る工事が漁業へ与える影響を検討していない」などとしている。

 裁判とは別に因果関係を審理している国の公害等調整委員会は3月末に結審。裁定は5−6月になる見通し。

 干拓工事は9割以上が終わり、国は2006年度完成を目指している。(共同)

諌早湾干拓で国が26日抗告

2005/01/25 The Sankei Shimbun

 島村宜伸農相は25日の閣議後の記者会見で、国営諌早湾干拓事業(長崎県)で佐賀地裁が今月、工事差し止めの仮処分命令に対する国の異議申し立てを退けたことについて、政府が決定を不服として26日、福岡高裁に抗告することを明らかにした。

 抗告理由については(1)既に完成している潮受け堤防と漁業被害の因果関係について、地裁は適切な根拠を示さず認めている(2)差し止め対象である、残る干拓地内の工事が漁業へ与える影響を全く検討していない−などを挙げた。

 同干拓事業をめぐっては同地裁が昨年8月、事業と漁業被害の因果関係を認めた上で工事差し止めを仮処分命令。国の異議申し立てに対し同地裁は今月12日、仮処分は妥当とあらためて判断。申し立て却下を決定した。

 事業と漁業被害と因果関係の有無は裁判とは別に、国の公害紛争処理の専門機関である公害等調整委員会が審理しており、3月28日結審予定。(共同)

農水省が異議申し立て 諌早干拓工事差し止めで

2004/08/31 The Sankei Shimbun
 国営諌早湾干拓事業(長崎県)をめぐり、佐賀地裁が沿岸漁業者の仮処分申請を認めて工事の差し止めを命じた決定を不服として、農水省は31日、同地裁に異議を申し立てた。

 亀井善之農相は、同日の記者会見で「事業の進め方に変わりはない。有明海の環境変化の科学的調査を行い、再生への道筋を明らかにしたい」と述べ、2006年度完成を目指す計画に変更がないことを強調した。

 漁業者らが事業と漁業不振の因果関係究明のためとして、要求している潮受け堤防排水門の中・長期開門調査についても「(実施しても原因を特定できないという)今までの考えと変わらない」と述べた。

 亀井農相は異議申し立ての理由として、福岡県有明海漁連による工事差し止めの仮処分申請を、福岡地裁が今年1月に却下したことや工事は潮受け堤防内で行われ、堤防外の漁場とは直接関係ないことを挙げた。また、漁業被害と干拓工事に因果関係を認める科学的根拠はないと主張した。

 異議申し立てを受け、同地裁はあらためて決定の正否を審理する。農水省は仮処分決定後、工事を中断している。

 佐賀地裁は26日、事業と漁業被害の因果関係を一定程度認め「工事が進めば事業全体の再検討が難しくなる」として、同地裁で審理中の本訴の一審判決まで工事を差し止める仮処分を決定した。

政府は直ちに工事中止を 諌早湾干拓で民主政調会長

2004/08/26 The Sankei Shimbun
 民主党の仙谷由人政調会長は26日午前、諌早湾干拓事業差し止めの仮処分申請を認めた佐賀地裁決定について次の談話を発表した。

 干拓事業が有明海における漁業被害と環境異変の最大の原因となっていることを認めるもので、極めて妥当で画期的な決定と高く評価する。政府は、決定を厳粛に受け止め直ちに工事を中止し、漁民や周辺住民の声に真摯(しんし)に耳を傾け、中・長期開門調査の実施をはじめとする今後の事業の見直しを行うべきだ。

政府、異議申し立てへ 干拓工事の差し止め決定は「遺憾」

2004/08/26 The Sankei Shimbun
 細田博之官房長官は26日午前の会見で、佐賀地裁が国営諌早湾干拓事業の工事差し止めを認める仮処分を決定したことに対し、政府として異議申し立てをする意向を表明した。記者団が異議を申し立てるかと質問したのに対し「そうだ」と答えた。

 細田氏は、仮処分決定に関し「詳細な理由を承知していないが、国の主張が認められなかったことは誠に遺憾だ」と指摘。今後の具体的な対応は農水省で決定の理由を詳細に検討した上で、決定する方針を示した。

諫早湾干拓を差し止め 佐賀地裁、異例の仮処分

2004/08/26 中国新聞ニュース
 有明海異変による漁業被害は国営諫早湾干拓事業(長崎県)の影響だとして沿岸四県の漁業者百六人が申し立てた工事差し止めの仮処分申請に対し、佐賀地裁の榎下義康裁判長は二十六日「一審判決にいたるまで、工事を続行してはならない」と命じる決定を出した。

 進行中の国営事業を直接差し止める決定は極めて異例。

 漁業者や市民が原告となり二○○二年十一月、国に対し損害賠償と干拓地と調整池を仕切る前面堤防の工事差し止めを求めて提訴。同時に漁業者が仮処分を申請した。

 決定で榎下裁判長は「現段階においては、工事と有明海の漁業被害には因果関係がある」とした上で、「事業全体を再検討し必要な修正をほどこすことが肝要だ」と指摘した。

 漁業者側は仮処分申請の審尋で「事業で諫早湾干潟の浄化機能が失われた。潮受け堤防の閉め切りで有明海の潮流が弱まり、甚大な漁業被害が生じた」などと主張。

 国側は「工事と漁業被害に因果関係はない。仮処分が認められると地域農業の振興が阻害される」などと反論した。

 漁業者や市民約八百六十人が原告となっている本訴の審理は、同地裁で継続している。また、漁業者約二十人と福岡県有明海漁連は公害等調整委員会に有明海異変と同事業との原因裁定を求め、審理中。

 諫早湾干拓事業は、諫早湾の奥部を潮受け堤防で閉め切り、内側に干拓農地約七百ヘクタールを造成する。総工費は約二千五百億円。二○○ 六年度中の完成に向け、既に九割以上の工事が終了している。

泡瀬干潟でまた貴重な貝類発見

2004/08/23 The Sankei Shimbun
 日本自然保護協会など環境保護3団体は23日、政府が埋め立て・開発事業を進める沖縄県中城湾の泡瀬干潟で貴重な貝類5種を新たに発見した、と発表した。

 見つかったのは、南西諸島で今回初めて生息が確認されたという二枚貝ヤマホトトギス、分布地域や生息場所が不明だった同コバコガイなど。

 今年6月に始めた3団体の潜水調査によって、政府が本年度に海上工事を計画している区域内で、水深3−6メートル地点の泥の中から見つかったという。

 3団体は「貴重な生物が見つかったことで政府の環境影響評価がずさんだったことが証明できた。この地区には特殊で貴重な生態系が成立しており、工事計画の見直しを求めたい」としている。

諌早干拓:開門調査見送りで亀井農相に抗議文 3県漁連

毎日新聞 2004年5月17日 Mainichi INTERACTIVE
 国営諌早湾干拓事業(長崎県)をめぐる潮受け堤防排水門の中・長期開門調査の見送り決定を受け、佐賀、福岡、熊本の3県漁連の代表者は17日、東京都千代田区の農林水産省に亀井善之農相を訪ね、「(決定は)漁業者の信頼を裏切るものだ」とする抗議文を手渡した。改めて開門調査の実施を求めたが、亀井農相から明確な回答は得られなかった。

 漁連側は「判断に強い不信と不満を覚える」などと批判したうえで、「実態を現場で直接見てほしい」と要請した。亀井農相は「十分に分かっています」などと答えた。漁連側はその後、太田信介・農村振興局長ら省幹部に1時間以上にわたり抗議した。

 抗議後、山崎龍馬・佐賀県有明海魚連会長は「中長期調査の問題はケリがついた。今日は新たな気持ちで、中長期にこだわらない開門調査をお願いした。調査するかどうかは分からないが、気持ちは伝わったと思う」と厳しい表情で話していた。【望月靖祥】

諌早干潟の価値は6400億円

2003年03月31日 The Sankei Shimbun
 渡り鳥の中継地や希少な魚介類の宝庫として知られていたが、国営諌早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防閉め切りで消滅した諌早干潟について、金額に換算すると約6400億円の価値があるとする試算結果を、長崎大の姫野順一教授(環境経済学)らのグループが31日、発表した。

 この額は、諌早湾干拓総事業費の約2・6倍。同じ試算方法では、四万十川(高知県)は6150億円、屋久島(鹿児島県)は2480億円で、いずれも諌早干潟を下回った。

 試算には仮想評価法(CVM)と呼ばれる調査手法を用いた。潮受け堤防の排水門を拡張した上で常時開放し、かつての干潟約2900ヘクタールのうち1500ヘクタールを復元するとのシナリオを設定。福岡市や地元住民など1400人を対象に、干潟復元のためにいくらなら税金を支払うかについて、調査票を郵送した。

 回収率は37・5%。結果は、事業推進派の多い諌早市の干拓地住民で1世帯当たり平均約6560円だったのに対し、長崎市は1万1500円、福岡市で1万3600円。福岡市の数字を全国の総世帯数と掛け合わせると、約6400億円になった。

 姫野教授は「意見対立が激しい事業なので(数字の扱いは)注意する必要がある。しかし、これだけの金を払ってでも、干潟を復元すると考える人がいることを、施策に反映させるべきだ」と話している。

諫早干拓:因果関係解明求め 公害等調整委に申請 沿岸漁民が

2003年04月16日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 長崎県の国営諌早湾干拓事業(諌干)によって漁獲量減少などの被害を受けたと主張する有明海沿岸4県の漁民19人が16日、諌干と漁業被害との因果関係を明らかにすることを求めて総務省公害等調整委員会に原因裁定を申請した。

 申立人は福岡、佐賀、長崎、熊本4県のノリ養殖やタイラギ漁などを営む漁民。現在諌干の工事差し止めを求め佐賀、長崎両地裁で係争中の「ムツゴロウ裁判」など三つの裁判の原告団と弁護団が連携して実施した。

 申請書によると、97年の諌早湾の潮受け堤防閉め切りにより、有明海の潮流の勢いが減少。干潟も失われ、有明海の水質浄化メカニズムに異変が生じた結果、年間平均漁獲量は約30%減少。ノリ養殖も00、02年度に、深刻な不作となるなど「諌干が漁業被害の原因であることは明らかである」と主張している。

 代理人の河西龍太郎弁護士は「一刻も早く法律的な因果関係を明らかにし係争中の裁判の勝訴につなげたい。『有明海が死につつある』という窮状を訴え、全国の世論を喚起できれば」と話している。 【山下託史】

工事差し止め仮処分申請へ 有明海漁連

2002年08月26日 The Sankei shimbun
 福岡県有明海漁連(26漁協、荒牧巧会長)は26日、同県三橋町で臨時総会を開き、国営諌早湾干拓事業(長崎県)で始まった前面堤防工事の差し止めを求める仮処分を申請することを全員一致で決めた。漁連と国が法廷で争うことになり、双方の対立はさらに深まりそうだ。

 総会には荒牧会長を含め26人の組合長全員が出席。挙手で賛否を問い、全員一致で仮処分申請を決定した。

 前面堤防は、潮受け堤防(全長約7キロ)の内部にできた干拓地と調整池を仕切るもので全長約4・3キロ。工期は4年半で、今月12日、工事車両の出入り口の封鎖を漁業者が一時解いたすきに着工された。
 前面堤防内側の干拓地約600ヘクタールは、かつて国内一級の干潟とされた諌早干潟の中心部。堤防が完成すると、有明海異変の原因解明のため潮受け堤防の中長期開門調査を実施しても、海水は干拓地内に入らず、干潟の再生は望めなくなる。

 このため同漁連は「農水省は中長期開門調査を行うべきで、調査の障害になる工事は問題だ」と反発、仮処分を申し立てることを決めた。

         ◇

 国営諌早湾干拓事業で、福岡県有明海漁連が前面堤防工事の差し止めを求める仮処分申請を行うと決めたことについて、農水省農村振興局は二十六日、「何も聞いていないので、コメントのしようがない」と話した。

前面堤防を8月上旬着工と説明 諌早湾干拓事業

2002年07月08日 The Sankei Shimbun
 九州農政局(熊本市)は8日、長崎県での国営諌早湾干拓事業のうち、調整池と干拓地を仕切る前面堤防工事について、8月上旬までに取り掛かりたいと、福岡、佐賀、熊本の3県漁連代表に説明、理解を求めた。農政局が着工時期を明示したのは初めて。

 前面堤防は全長約4・3キロ。農政局は地盤強化や盛り土など全体的な手順を説明、本年度分は網や砂を敷くなどの基礎工事で、今月15日に指名競争入札を実施する予定。

 また、潮受け堤防水門の短期開放調査の実施状況も説明した。

 これに対し、福岡県有明海漁連の荒牧巧会長は「中長期開門調査や調整池の浄化対策が示されない限り前面堤防工事には反対だ」と表明。佐賀県有明海漁連の山崎龍馬会長も「中長期開門調査をできるだけ早く実施してほしい」と求めた。

 工事計画に対し3県漁連側はそれぞれ持ち帰って協議し、できるだけ早く回答したいとしている。

 説明会場の熊本市内のホテルと九州農政局には、長崎も含めた4県の漁業者約150人が結集。前面堤防ができると、中長期開門調査を実施しても、導入した海水が堤防の内側には入らず、干潟が再生できなくなると抗議、農政局と漁連代表の協議の成り行きを見守った。

 8日午後には合同で1000人規模の抗議集会を開く。

諫早湾干拓事業、水門開放と工事中止の結論は持ち越し

2001.03.03(19:19)asahi.com
 九州・有明海のノリ不作原因の究明と対策を話し合う農水省の第三者委員会が3日、東京都内で開かれ、ノリ不作の一因とされる諫早湾干拓事業の潮受け堤防の水門開放と工事の中止について、結論を次回(13日)の会合以降に持ち越した。谷津義男農水相は2日に、「(委員の)1人でも(開放が必要と)言えば開けざるをえない」と発言していたが、委員長清水誠・東大名誉教授(水産資源学)は、「検討する時間が欲しい」として、結論を出さなかった。

 第三者委員会は、有明海に接する九州4県の漁業者代表4人と学識経験者11人の構成。3日の初会合で、荒牧巧・福岡県有明海漁連会長らが、干拓事業の水門開放と工事中止を強く求めたほか、複数の学識経験者から、原因究明のために「水門を開放して調査が必要」との見解が出た。

 一方で、「水門を開けた場合の環境アセスメントをまず実施すべきだ」「新たな漁業被害が起きかねず十分な調整が必要だ」と慎重な意見も出た。

 このため、清水委員長は、「もう少し(結論を出すための)情報と、検討する時間が欲しい。水門を開けたら何がわかるのか、どんな影響が出るのかを把握しないと、責任ある回答を委員会として出せない」と締めくくった。

 ただ、委員の大半は、水門を開放して、調査をすることには賛成で、月内に2回ある委員会で水門開放の方向性を打ち出すことになりそうだ。一部の委員から出た「工事のみの一時中断」の要望について、清水委員長は、「強い意見があった」ことを谷津農水相に伝えるとした。委員会はテレビモニターを通じて完全に公開された。

諌早湾干拓事業の水門開放へ 古賀自民幹事長が明言

2001.03.01(21:45)asahi.com
 九州・有明海でのノリ不作の一因とされる諌早湾干拓事業について、自民党の古賀誠幹事長は1日、陳情に訪れた福岡県有明海漁連のノリ漁業者らに対し、工事を一時中断して、潮受け堤防の水門を開放する方針を明らかにした。ノリ不作の原因究明策を話し合う第三者委員会が早ければ3日にも決める見通し。事業推進の立場の農水省も、第三者委員会での決定に従う方針だ。

 古賀幹事長は1日、干拓事業の中止と水門開放を求めて上京した福岡県有明海漁連の約270人の組合員に対し、「3日の委員会で水門開放と工事中断を了承してもらう」との見解を示した。ただ、こうした決定は、もともと地元の漁業者と学識経験者で組織する第三者委員会が判断することになっているため、3日の協議の内容次第では、決定を2回目以降の協議に持ち越す可能性もある。

 また、水門開放に反対している長崎県の了承も必要で、開放を決めた場合、谷津義男農水相が長崎県に説明に赴くことになる。

 農水省はこれまで、干拓事業とノリ不作との因果関係を否定し、排水専用の水門を開放して海水を堤防内に入れることも、「技術的に困難」との立場だった。

 しかし、谷津農水相が1月下旬に水門開放の可能性を打ち出したほか、2月下旬からは、同漁連組合員らが干拓工事の現場に座り込み、工事を阻止する実力行使に出ている。

 谷津農水相は、委員会が原因究明のために水門開放や工事の一時中断を求めた場合は、その方針に従うことを繰り返しており、農水省も委員会の決定に従う方針。今年4月から、有明海での本格的な原因究明の調査を始め、9月までに中間とりまとめを公表する。

 有明海のノリ不作をめぐっては、諌早湾干拓事業との因果関係に加え、有明海に流入する河川水量の減少、潮流の変化など様々な原因が指摘されている。

ノリ落札価格、5割も上昇 有明海不作で品薄続く

2001.02.26(16:20)asahi.com
 有明海の養殖ノリの深刻な不作が続く中、2月前半のノリの落札価格が前年同期に比べ全国平均で約47%高騰したことが、全国漁業協同組合連合会(東京)の調査で分かった。1月後半の約32%高からさらに値上がり幅が拡大し、産地によっては2倍以上になった所も。全国の生産量の約40%を占める有明産の激減が品不足を招き、例年なら価格が下がる時期にもかかわらず、逆に上昇する異例の事態となっている。ただ、卸商社などに在庫があり、すぐに小売価格にはね返る事態にはならない見通しだ。

 全国24漁連の2月1日から同15日までの実績を集計した。1枚当たりの平均単価は12.68円で前年同期比4.07円高。有明海以外の主な産地は、宮城が約46%、三重が約74%、兵庫が約50%、香川が約46%と軒並み高騰している。

 ノリが黄色っぽくなる色落ち被害で品質低下が目立つ有明海産も、佐賀が約44%、熊本が約29%の上昇。販売量は少ないものの、和歌山、広島、鹿児島では2倍を超えた。

 1月後半と2月前半の価格の推移を見ると、前年が9.44円から8.61円へ下落したのに対し、今年は12.44円から12.68円へ上がっている。

 一方、福岡の有明海側の大和高田、大牟田、柳川大川の3漁連は2月前半の入札がなく、実績はゼロ。1月後半の価格も、他の産地とは対照的に前年を大きく割り込み、不振ぶりが際立つ。ノリ漁場のほぼ全域に被害が広がり、品質低下が著しいためとみられる。

 2月前半の全国の販売量は、計8億815万7000枚で前年同期比34%減。東日本産が2億978万5000枚で17%減、瀬戸内海産が3億6468万2000枚で10%減に対し、有明海中心の九州産は2億3369万枚で58%減と極端に落ち込み、全国的な品不足をもたらしている。

 昨年11月1日からの累計では、全国販売量が計46億1935万枚で26%減、平均単価は12.86円で約18%高となっている。

 高騰の影響や今後の動向について、全漁連海苔海藻部は「卸商社などに在庫があるので、落札価格の高騰がすぐ小売価格にはね返る可能性は少ないだろう。例年なら落札価格は徐々に落ちてくる時期だが、今シーズンは過去に例のない有明海の不作のため、予想がつかない」と話している。

「工事の強行はしない」有明海干拓の抗議で農水事務次官

2001.02.26(17:59)asahi.com
 福岡県有明海漁連の漁業者が、有明海のノリ不作の一因とされる諫早湾干拓事業の工事現場で座り込みによる抗議行動を続けていることについて、熊沢英昭事務次官は26日の記者会見で、「国として干拓工事を継続する意思は変えていないが、工事は物理的に不可能な状態にあり、強行することは考えていない」として、現時点で強制排除などは考えていないことを明らかにした。

 熊沢次官は座り込みについて、「実力行使のような混乱した状態は残念だ」としながらも、混乱を大きくしないよう現地の工事関係者らに指示したという。この問題について、谷津義男農水相は同日午前の記者会見で、「漁業者のせっぱつまった気持ちは、良しとはしないが、理解はできる」と発言していた。

 谷津農水相と地元漁業者との会談が3月1日に農水省内で予定されており、農水省としては、その場で抗議の座り込みの解決策をまとめたい考えだ。干拓工事の現場への工事車両や作業員の立ち入りを阻止する座り込みは、24日に始まり、26日には約1100人が集まった。

農水相に諌早湾干拓中止を要請へ 佐賀県有明海漁連

2001.02.25(06:42)asahi.com
 有明海のノリ不作の原因について、長崎県・諫早湾干拓事業が指摘されている問題で、佐賀県有明海漁連(山崎龍馬会長)は24日、山崎会長ら幹部と漁業者代表が3月上旬にも上京し、谷津義男農水相に事業中止を直接、要請することを決めた。また、福岡の漁業者が始めた干拓工事現場の出入り口封鎖には加わらないことも申し合わせた。

 同日夕、山崎会長とノリ主力産地の県東部7漁協の組合長、若手漁業者の代表らが協議。福岡の漁業者からの「封鎖」参加要請への対応を話し合った。出席者によると、漁連幹部は若手漁業者に自重するよう求め、対案として、上京して事業中止を要請することを決めたという。

 若手漁業者のリーダーで東部地区漁協青年部の田村和之会長(39)は「福岡の仲間が体を張って行動している姿を見ると断腸の思いだ。佐賀独自の運動を展開し、徹底的に闘う」と話した。

有明海漁民の初日座り込み10時間 「当分続ける」

2001.02.24(21:23)asahi.com
 有明海のノリ不作問題で、福岡県有明海漁連の組合員ら約300人が24日、不作の一因と指摘される長崎県・諫早湾干拓工事の中止を求めて現場の出入り口などを車で封鎖、約10時間座り込みを続けた。同漁連は同日午後、緊急の組合長会議を開き、26日から当分の間、約1100人態勢で座り込みを続け、工事車両や作業員の立ち入りを阻止する方針を固めた。

 3月1日には同漁連の幹部ら約300人が上京し、谷津義男農水相や自民党幹部に干拓工事の中止を陳情、農水省の周辺で抗議行動をする予定だ。

「ダンプ通さぬ」諫早湾干拓中止求め道路封鎖 漁民

2001.02.24(11:49)asahi.com
 有明海のノリ不作問題で、福岡県有明海漁連の「有志」約500人が24日早朝、不作の一因と指摘されている長崎県・諫早湾干拓事業の工事出入り口など7カ所を乗用車などで封鎖した。同県高来町の潮受け堤防付近に集まり、関係車両や事業関係者の出入りを実力で阻止している。同漁連会長や各組合長も「座り込み」を容認しているという。

 漁業者は、23日に熊本市の九州農政局で抗議行動したメンバーが中心。午前5時に佐賀県鹿島市内に集合し、諫早湾には同6時過ぎに着いた。南北2つの水門付近や、造成中の干拓地への工事車両出入り口など計7カ所に車を並べて座り込み、重機などの工事車両や堤防管理事務所の職員らに入らせなかった。

 漁業者らによると、23日の九州農政局での交渉が決裂した後、「座り込み」の機運が高まった。同漁連幹部や組合長らも同席したという。同漁連は3月1日に250人規模で上京し、農水相と直接交渉を予定しており、同日まで座り込みを続け工事を阻止したい、としている。

 潮受け堤防北部排水門前のゲートには約70人が集結。午前9時ごろ、堤防管理事務所の当番職員3人が夜勤者3人との交代のため出勤してきた。職員が「夜勤者は寝ていないので交代させてほしい」と申し出たところ、漁業者は「我々も寝ていないのでお互い様だ」「こちらも必死。帰ってほしい」と訴えたため、職員は「わかりました」と言って引き揚げた。

ノリ不作で潮流調査 有明海

2001.02.17 The Sankei Shimbun
 有明海でのノリ不作問題で、福岡県は十七日、原因を究明するため、同県沿岸のノリ漁場付近で潮の流れをみる調査を実施した。

 漁業者などから「諌早湾が堤防で閉め切られて以来、有明海の潮流が変わった」との指摘が出ているためで、調査には同県の調査取締船「げんかい」や漁船計約三十隻が参加。

 船から「潮流板」を流し、潮流の方向や速さを計測した。結果を過去のデータと比較、潮流が変化したかどうかをみるほか、不作の原因である大量のプランクトンの移動状況を調べる。

 この問題では、水産庁と福岡など沿岸四県が大潮に当たる二十三日に有明海全域で潮流調査を実施することになっている。福岡県は潮の流れが異なる小潮の十七日にも調査、総合的に把握することにした。

23日に有明海2次調査 水産庁と関係4県

2001.02.16(17:40)asahi.com
 有明海のノリの不作原因を調べている水産庁は16日、福岡、佐賀、長崎、熊本4県と共同で23日に第2次現地調査を実施すると発表した。有明海全域の46カ所の海水面で、水温、塩分、流速、海流の方向を一斉に調べて有明海の実態を解明する。また、23日前後に、水産庁が漁業調査船を使って単独の漁場環境モニタリング調査を実施し、海中の動植物プランクトンや栄養塩類の量などを調査する。

ノリ入札値が高騰

2001.02.04 The Sankei Shimbun
 全国のノリ生産の約四割を占める有明ノリが黒く色付かず凶作となっている影響で、各地の入札値が高騰し、一月末までの平均で一枚(縦二一センチ、横一九センチ)当たり一割以上も高くなっていることが四日、全漁連の調べで分かった。

 中には、昨年より六割以上跳ね上がったケースもあり、商社や食品業者らがノリを求め全国の入札会を東奔西走している。

 調査は、全漁連のり事業推進協議会が全国の計二十五カ所で、昨年十一月一日から一月末までの入札結果を比較した。

 それによると、二十五カ所のうち二十一カ所で昨年の実績を上回っている。とりわけ和歌山県では、昨年まで平均五円八四銭だった入札値が九円四五銭となり、六一・八%の大幅な値上がりとなっている。

 三重、兵庫両県でも三円余り上昇したほか、全国平均は一円四○銭高の一二円八七銭となっている。

 こうした入札値の高騰について、名古屋市のある大手ノリ商社の幹部は「コンビニのおにぎりなどは販売価格に占めるノリの割合が小さい。消費者物価も落ち着いている」と指摘。

 その上で、「現在の入札値がすぐ消費者物価にはね返るとは思わない」と述べ、メーカーなどの努力で商品への価格転嫁は当面ないだろうと予測する。

 ただ、問屋筋の手持ちがなくなる夏以降については「全く不透明」としており、三月までのシーズン中は順調な生産が続く瀬戸内海周辺や愛知、千葉両県などで在庫の確保を目指す。

中村敦夫参院議員が干拓現場視察

2001.02.04 The Sankei Shimbun
 有明海の養殖ノリ不作問題で中村敦夫参院議員は四日午前、長崎県・諌早湾の干拓事業現場を視察した。

 有明海奥部の同湾は、一九九七年に干拓事業の一環として潮受け堤防で閉め切られた。福岡、佐賀、熊本各県などの有明海沿岸のノリ養殖業者は、ノリ不作の原因は同湾閉め切りにあるとして、堤防の排水門の常時開放と干拓事業の中止を求めている。

 中村議員は四日午後には佐賀県の漁業者と懇談、船に乗り海上から排水門を視察。その後は、長崎県諌早市で講演する予定だが、有明海でノリ不作問題が表面化したことで、干拓事業の見直しを訴えるとみられる。

 この問題では、谷津義男農相が一月二十九日、諌早湾の干拓事業現場を視察し、ノリ不作の原因を究明する総合調査を四月から実施し、必要な場合は排水門を開放して調査することもある、と示唆している。

自民が支援策など決定 有明海ノリ不作問題

2001.02.03(13:45)asahi.com
 自民党は2日昼、「有明海ノリ等被害調査対策本部」(本部長・古賀誠幹事長)を開き、「色落ち」が深刻化している有明海のノリ被害に対する緊急対策を決めた。原因究明については専門家らによる第三者委員会を今年3月に設置し、9月をめどに中間まとめをすることにした。支援策では、農林漁業金融公庫の沿岸漁業経営安定資金について、現在1.8%の貸付利率を無利子とするとともに、貸し付け限度額を200万円から500万円に引き上げ、貸し付け対象者の所得制限も撤廃することにした。

 緊急対策にはこのほか、関係4県との共同緊急調査を行い、今年3月をめどに暫定的に調査結果をとりまとめる▽国土交通、環境両省などと有明海海域の環境調査をする▽漁業共済組合による迅速な損失査定と仮払いによる共済金の早期支払いを進める、などが含まれている。

ノリ不作問題で首相が調査と救済策の検討指示

2001.02.03(12:25)asahi.com
 森喜朗首相は2日午前、九州・有明海の養殖ノリが記録的な不作となっている問題で、熊沢英昭農水事務次官を首相官邸に呼んだ。首相は「大変重要な問題なので、原因を徹底的に調査して欲しい」と指示したうえで、「被害を受けた人への救済に万全を期してもらいたい」と漁業関係者への救済策の検討を求めた。熊沢次官は「被害を受けた漁業者の要望にこたえるよう、調整している」とこたえた、という。

 ただ、森首相は漁業関係者が求めている諫早湾干拓事業の水門の開放については言及しなかった。熊沢次官が、谷津義男農水相から「水門を開ける可能性は排除しない。予見を持たず調査して欲しい」という指示を受けていることを説明したのに対し、首相は「大臣の指示に従って欲しい」と述べるにとどめた。

7日までにノリ網全面撤去 有明海の不作問題

2001.02.01 The Sankei Shimbun
 有明海のノリ不作問題で、福岡県有明海漁連(福岡県三橋町、二十六漁協)は一日までに、漁場に残っているノリ網を七日までにすべて撤去することを決めた。

 例年なら二月初めはノリの成長は鈍るものの、まだ漁期の最中で、この時期のノリ網の全面撤去はかつてないという。

 福岡県沖のノリ漁場では、昨年十二月からプランクトンの増殖による栄養分の不足でノリが黄色く変色し商品にならない「色落ち」がひどく、一月中旬までにすでに全体の約八割の網を撤去していた。

 同漁連は、1残った二割弱の網のノリも色落ちが起きている2網を撤去した方が潮の流れがよくなり、栄養分の回復が期待できる−ことなどから全面撤去を決定した。

 プランクトンなどの今後の状況は予測が立っていないが、栄養分が回復すればまた養殖網を入れる場合もあるとしている。

農水省、有明海ノリ問題で3月に調査委発足

2001.01.30(20:24)asahi.com
 記録的な不作となっている九州・有明海のノリ養殖問題で、農林水産省は30日、原因究明のための調査委員会を3月中に立ち上げ、4月から始まる本格調査の内容をこの委員会で決める方針を明らかにした。不作との因果関係が指摘されている諫早湾干拓事業について、委員会で「潮受け堤防の水門を開放しての調査も必要」との方向が出れば、ノリ養殖のシーズンが始まる秋までの間に、水門が開放されることになる。

 調査委員会は農水省のほか、関係する環境省、国土交通省、有明海に接する九州4県などと有識者で構成する。中立性を保つため、運営は第三者に委託する方針だ。人選はこれからだが、谷津義男農水相は同日の記者会見で、「(干拓事業に反対する学者も含めて)予断を持たずに人選しなさい、と指示してある」と述べた。

 また、調査項目に「水門開放」が盛り込まれなくても、谷津農水相は、「4月からの本格調査のなかで因果関係が疑われるデータが出てきた場合、水門を開けて調査することは必要だ」として、従来の姿勢を改めて強調した。

1400隻が抗議の海上デモ 有明海の養殖ノリ不作で

2001.01.28(12:15)asahi.com
 九州・有明海のノリが「色落ち」によって記録的な不作になっている問題で、福岡、佐賀、長崎、熊本の沿岸4県の漁民らが28日、総勢約1400隻、約6000人が参加して大規模な海上デモをした。

 整然と船団を組んで長崎県・諫早湾の潮受け堤防前に集まった漁船からは、「宝の海を帰せ」といった声がわき起こった。福岡県有明海漁連の荒牧巧会長が「色落ち被害は諫早湾の堤防閉め切りが原因」などとする抗議書を朗読し、干拓事業の中止などを訴えた。

 この日の海上デモには、諫早湾の干拓事業の地元となる長崎県からは島原半島の漁協などから145隻、約360人が参加した。

 潮受け堤防前に集まった漁船のうち、長崎を除く3県の漁船からは「水門を開放しろ」「干拓工事を中止しろ」といったシュプレヒコールがあがった。佐賀、熊本の県漁連会長が福岡の代表船に乗り移り、諫早湾干拓工事の中止や水門の開放、干拓事業に関する総合的な漁場影響調査の実施を求める抗議書を朗読した後、九州農政局諌早湾干拓事務所の職員に手渡した。

民主・菅幹事長ら、有明海のノリ被害を視察

2001.01.27(13:52)asahi.com
 民主党の菅直人幹事長ら「有明海のり被害環境調査団」が27日午前、ノリ養殖に「色落ち」の被害がでている九州・有明海を訪れ、佐賀県内のノリ漁場を視察した。菅氏は視察後、記者団に「相当な被害だ。干拓事業は無駄な公共事業であるだけでなく、水質も悪くなるということで、3年前から水門を開けて水を戻せと言ってきた」と語り、堤防の水門を開けるべきだと強調した。さらに、「農水相は水門を開けるといったん言ったのに、役人がダメだと言ったら黙る。だれが大臣だ。予算委員会の最大のテーマの1つだ」と述べ、谷津義男農水相の対応を批判した。

 民主党は、政府・与党の対応の誤りが被害拡大を招いたとして、31日召集の通常国会では、「ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団」(KSD)をめぐる汚職事件や官房機密費横領疑惑とともに厳しく追及する方針だ。

民主・菅幹事長ら、有明海のノリ被害を視察

2001.01.27(12:13)asahi.com
 民主党の菅直人幹事長ら「有明海のり被害環境調査団」が27日午前、ノリ養殖に「色落ち」の被害がでている九州・有明海を訪れ、佐賀県内のノリ漁場を視察した。民主党は農水省が進める諌早湾干拓事業の中止を求めており、調査団は午後には地元との対話集会に臨んで実情を聴く。

 民主党は諌早湾干拓事業を「無駄な公共事業の典型」と批判。政府・与党の対応の誤りが被害拡大を招いたとして、31日召集の通常国会では、「ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団」(KSD)をめぐる汚職事件や官房機密費横領疑惑とともに厳しく追及する方針だ。

3月中の判定否定 有明海のノリ凶作問題で農水省幹部

2001.01.26(23:42)asahi.com
 九州・有明海のノリ養殖の凶作問題で、谷津義男農水相が26日午前に、諌早湾干拓事業との因果関係について、今年度内の調査報告で潮受け堤防との因果関係が出れば、堤防の水門を開放して再調査すると発言したことについて、農林水産省の担当幹部は26日夕方に会見し、「3月末までに因果関係を判断できる材料は出ない」として、大臣発言を事実上、否定した。この問題をめぐっては「水門は開けられない」との慎重姿勢を貫いてきた農水省に対し、谷津農水相は政治主導による事態打開を模索しており、政官の「駆け引き」が続いている。

 年度末までの緊急調査を担当している井貫晴介・水産庁栽培養殖課長が夕方に会見し、3月末までに調査の暫定取りまとめは公表するが、「調査の内容は有明海の水温とかプランクトンなど漁場の現象面のデータ集めがねらい」と述べ、ノリの凶作と干拓事業の因果関係を判断できるようなデータは出てこないことを強調した。

 そのうえで、この基礎データを基に4月から本格調査を始め、今秋をめどに中間報告を出す予定とし、谷津農水相が意欲を示した秋までに水門を開放して調査することについては、「可能性は少ない」と述べた。

環境保護5団体が農水省・環境省に諌早湾問題で緊急要請

2001.01.26(18:13)asahi.com
 九州・有明海のノリ養殖が例年にない不作となっている問題で、諌早干潟緊急救済本部や世界自然保護基金ジャパンなど5つの環境保護団体は26日、諌早湾干拓事業見直しと諌早湾干潟の再生を求める緊急要請を、農林水産省と環境省に提出した。谷津義男農水相がノリ凶作と潮受け堤防の因果関係について、「水門が関係しているとなれば、水門を開けて再調査することも検討する」と言及したのを受けて、急きょ要望することにした。

 要請書は、農水省による調査の十分な情報開示や水門の開放、調整池の水質悪化の要因とされる内部堤防工事の中止などを求めている。

 ノリ凶作の原因については、堤防内から排出される富栄養化した汚水が原因との指摘が出ている。

谷津農水相が初めて水門開放に言及 有明海ノリ不作問題

2001.01.26(14:35)asahi.com
 九州・有明海のノリ養殖が黒く色づかずに「色落ち」し、例年にない不作となっている問題で、谷津義男農水相は26日の閣議後会見で、諫早湾干拓事業の潮受け堤防との因果関係について、「今年度末までに緊急調査の中間報告を出してもらう。その結果、水門が関係しているならば、水門を開けてもう一度調査してもらう」として、ノリの網入れの準備が始まる9月末までに、水門を開放する可能性に初めて言及した。

 地元では一部から被害の拡大を心配して、「水門を開けてほしくない」との声も出ているが、谷津大臣は「もし調査で因果関係が出ているのに、水門を開けないとなると、いつまでたってもこの問題が尾を引くことになる」として、水門を開放してでも、今秋までに一定の結論を出すことに強い意向を示した。

 この問題で谷津大臣は23日に、「水門が関係しているとなれば、水門を開けて再調査することも検討する」と言及。当初は9月をめどに調査の中間報告を受ける意向だったが、ノリ養殖は秋からシーズン入りするため、報告の前倒しを事務方に求めた。

 農水省はすでに「ノリ不作対策本部」を設置し、調査船を有明海に派遣して水質などの緊急調査を始めている。さらに、今年4月からは、環境省や地元自治体などとも協力して本格調査に入る予定だった。

 谷津大臣は29日に現地入りし、諫早湾干拓やノリ養殖漁場などを視察する予定。ノリの「色落ち」について、地元の漁業者からは、堤防内から排出される富栄養化した汚水が原因との指摘が出ている。

有明海ノリ不作で与党3党幹事長が現地視察

2001.01.26(12:57)asahi.com
 自民党の古賀誠、公明党の冬柴鉄三、保守党の野田毅の与党3幹事長は26日、国内最大のノリ産地である有明海の養殖ノリの色が落ち、不作となっている問題で現地の視察に訪れた。ノリ不作は出荷が昨年の7割減になるなど深刻さを増しているが、諫早湾の干拓事業との関連が指摘されている。同干拓事業については、民主党の菅直人幹事長らが反対を唱え続けており、今月末に召集される通常国会でも焦点の1つになりそうだ。与党の取り組みは、参院選に向けての危機感の表れの1つでもある。

 古賀幹事長らはまず、佐賀県の南川副漁協に到着。同県の井本勇知事から「有明海が死の海に近くなっている。1日も早い対応を」と要望を受けた。古賀幹事長は「財政支援を含め、抜本的な原因究明を政府・与党一体となって全力で取り組みたい」と応じた。3幹事長は戸ケ里漁港から漁船に分乗して出発し、佐賀、福岡、熊本3県にまたがる有明海のノリ漁場を視察する。午後には福岡県大牟田市内で漁業関係者らと意見を交わす。

 与党3党は既に幹事長を本部長とする対策本部を設置している。与党が積極的な取り組みを見せている背景には、古賀氏や野田氏の選挙区が有明海沿岸であるという事情に加え、ノリ不作が国会や参院選での「火種」になる可能性もあるからだ。ノリ不作との関連が指摘されている諫早湾干拓事業は、湾の排水門を閉め切った時から民主党が反対し続けてきた。「農水省構造改善局の大失態。参院選はこれだけでも勝てるような話。ひどい公共事業の典型だ」(幹部)と同党は勢いづいており、菅氏は27日に現地を訪れる予定だ。与党側には、素早い取り組みを示すことで火種を消し、地元の理解を得たい思惑もあるようだ。

ノリ不作を現地視察 松岡副大臣

2001.01.24(22:18)asahi.com
 農水省の松岡利勝副大臣は24日、現地視察のため福岡県大牟田市と熊本県荒尾市を訪れ、沿岸の漁協組合長らからノリ被害の実情を聴き、船でノリ漁場を視察した。福岡県有明海漁連(荒牧巧会長、26漁協)との意見交換で、松岡副大臣は「次の漁期前の9月ごろには、中間的に原因究明の成果を出したい。諫早湾干拓の可能性を含め、みなさんが納得できるよう責任を持って調査を進める」と述べた。

 漁業者の生活支援については、「突発的な災害として、特別融資の枠拡大とできるだけ無利子に近い融資を考えたい」とも述べた。

 荒尾漁協では、組合長らが「タイラギ、アサリが取れなくなったうえ、ノリまで不作。このままでは漁民は姿を消してしまう。有明海の赤潮発生の原因究明を徹底的にやって欲しい」と陳情した。

有明海ノリ問題「水門開けることも検討」 谷津農水相

2001.01.23(14:29)asahi.com
 九州・有明海のノリ養殖が黒く色づかずに「色落ち」し、例年にない不作となっている問題で、谷津義男農水相は23日の記者会見で、諫早湾干拓事業の潮受け堤防との因果関係に言及し、「原因についての調査を進めているが、その結果、(堤防の)水門が関係しているとなれば、水門を開けて再調査することも検討する」として、今後の堤防のあり方について柔軟に対応する考えを明らかにした。

 谷津農水相は「調査の対象には、堤防の閉め切りが(ノリ不作の)原因かどうかも含む」と明言し、調査を急ぐ考えを示した。ノリの「色落ち」について、地元の漁業者からは、堤防の2つの水門から排出される富栄養化した汚水が原因との指摘が上がっていた。

 このため、農水省は18日に「ノリ不作対策本部」を設置。担当者が現地入りしたほか、調査船を有明海に派遣して水質調査などを実施している。また、松岡利勝副大臣が24日に現地入りするほか、谷津農水相も近く、現地に出向く予定だ。

 諫早湾干拓事業では1997年、環境団体などの激しい反対を押し切る形で潮受け堤防が閉め切られた。しかし、その後有明海では赤潮が多発。有明産のノリは国内生産の4割近くを占めるが、今期の生産量は半減しかねない情勢という。

 16日には井本勇佐賀県知事が「諫早湾干拓もノリ凶作の一因と思われる」と因果関係について発言している。

九州・有明海のノリ養殖漁民が諫早湾干拓中止訴えデモ

2001.01.13(19:04)asahi.com
 国内産ノリの4割近くを占める有明海で沿岸の佐賀、福岡、熊本、長崎4県のノリ養殖漁民が「不作は長崎県・諫早湾の国営干拓事業の影響」として13日午前、同干拓事業の潮受け堤防前で、大規模な海上デモをした。デモを呼びかけた漁民らによると、約1200人が約300隻の漁船で参加したという。ノリの色落ちを起こすプランクトンの大量発生で記録的な不作に見舞われており、漁民らは干拓事業の中止と排水門の常時開放を求め、九州農政局諫早湾干拓事務所に局長あての抗議文を提出した。

 沿岸各県の調べでは、昨年12月上旬にノリの色落ちを起こす植物プランクトンが大量発生し、赤潮になって有明海全域を覆った。年明け後も赤潮は消えず、養殖ノリは黄土色にまで色落ちして、出荷量は激減。福岡県内の入札では、出荷量が昨年同期の約半分に落ち込んだ。過去最悪の凶作になる見込みだ。

 全国漁業協同組合連合会によると、養殖ノリは、有明海沿岸の4県で昨季の全国の出荷実績の4割近くを占めた。有明海の凶作は今季の需給にも大きな影響を与えそうだ。

 この日のデモは、元日の福岡、佐賀両県漁民らの海上デモに続くもの。今回は養殖ノリ生産高日本一を続ける佐賀県の若手漁民らが先頭に立ち、各地の有志に結集を呼び掛けた。漁民らはノリに被害を与えているプランクトンの大量発生について、「堤防内の調整池から時折排水される汚れた水が原因」と訴えている。

 一方、熊本県で12日に開かれたノリ被害に関する各県担当者による緊急会議では、諫早湾の閉め切りと赤潮発生との関連を「現時点では不明」とした。

農水省が「諌早湾」議事録を改ざん 委員ら抗議

2000.06.11(06:19)asahi.com
 長崎県・諫早湾干潟の埋め立て事業に伴う調整池の水質汚濁問題を審議した農水省の委員会が、水質の予測のやり直しを求めることでまとまったにもかかわらず、同省が作成した議事録で、委員の発言が削られたり、「再予測はしない」との結論が勝手に書き加えられたりしていたことがわかった。委員らは「委員会の総意とは全く逆の結論になっている」と全面的な書き直しを申し入れ、農水省も「議事録は作成途中のものだが、誤解を招きかねない部分もあり、申し入れを受けて手直しをしている」と認めた。

 調整池は潮受け堤防と干拓地の間の1710ヘクタール。洪水防止が目的だ。湾は1997年に閉め切られたが、その後調整池の水質が悪化。汚れを示す化学的酸素要求量(COD)や窒素、リンなどは、農水省が環境アセスメントで予測した目標値を1.5―2倍上回っている。このため同省は専門家による「諫早湾干拓調整池等水質委員会」(委員長・戸原義男九大名誉教授)を設置、審議していた。

 委員らによると、1月の委員会で同省が「2000年度から事業を再評価するが、水質の予測は難しいので、川から流れてくる汚濁物の測定などにとどめる」と説明。これに対し委員らから「早く水質予測をして対策をとるべきだ」などの反論が続出した。

 水質予測を求めたのは委員11人のうち5人。同省に同調する委員はいなかった。このため委員長が「これらの意見を踏まえ、事務局で十分検討してほしい」と、会をまとめた。

 ところが、4月に農水省が作成した議事録(要旨)では、委員長の発言は削除され、複数の委員の意見があちこち削られていた。最後に「水質予測は事業が完了してから行う。今回は(汚濁物の)排出量の予測を行う」との方針も書き加えられ、委員会がそれを受け入れたような体裁が整えられていた。

 委員らは「この内容では委員会がお墨付きを与えたことになる」と反発、5人の委員が同省に書き直しを求めた。委員の1人は「再アセスを強く求めたのに、表現が弱められたり、削られたりしていた。予測で悪い数値が出ると事業に影響すると心配してのことだろう」と話す。

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