TOPIC No.3-21 中海干拓中止/島根県


宍道湖・中海淡水化中止を正式発表

2002年12月14日 The Sankei Shimbun
 大島理森農相は13日の記者会見で、島根、鳥取両県にまたがる宍道湖・中海の淡水化事業を中止することを正式に表明した。両県の中止要請を受け判断した。関連事業費が約851億円に上る大規模な公共事業は、1963年の着手から39年を経て終結する。

 事業中止に伴い、淡水化のために建設された水門や堤防の扱い、施設で働く従業員の雇用問題、代替水源の安定的な確保が今後の課題となる。大島農相は「終結後の諸課題(の解決)を両県と連携し、しっかりやっていくのがわれわれの責務だ」と述べた。

 淡水化事業は、農地造成を目的に計画された中海干拓地や沿岸耕地に農業用水を供給するため、1963年から始まり、海水の流入を防ぐ水門や堤防などの施設が完成した。

 しかし、環境悪化を懸念する反対運動の高まりから88年、中海干拓とともに凍結され、2000年の国の公共事業見直しで、干拓事業は正式に中止が決定。淡水化事業は「無駄な公共事業」の象徴となっていた。

宍道湖中海の淡水化中止、島根県知事が県議会で表明

2002年12月02日 Yomiuri On-Line
 澄田信義・島根県知事は2日の県議会で、宍道湖・中海の淡水化事業について、「中止が適当」と正式に表明した。鳥取県側も中止を前提に関係団体と協議を進めており、農水省は両県の意思を最終確認したうえで、1963年に着手した事業の中止を決定、代替水源確保対策や日本海と中海を隔てる水門の取り扱いなどの事後処理に入る。

 淡水化は両県間にある中浦水門を開閉して淡水化して農業用水を確保する事業。2800ヘクタール(その後、2541ヘクタールに変更)の農地を造成する干拓事業(中止決定済み)と併せて計画された。しかし、水門や干拓堤防などが完成後、環境への懸念から反対の機運が高まって1988年に凍結されていた。

未完の決着 中海干拓

2000.8.12〜2000.8.16by 中国新聞

中海干拓中止で地方負担金、未償還77億円国が肩代わり

2000.10.06(07:30)asahi.com
 国営中海干拓事業・本庄工区の中止にともなう措置として、農水省は5日、事業費の地方負担金のうち、償還が終わっていない77億円について国が肩代わりすることを決め、2000年度の国の補正予算案に盛り込む方針を固めた。農水省が干拓中止を正式に決めた際、島根県は「未償還分の77億円を国で負担してほしい」と求めていた。

 本庄工区干拓事業に使われた事業費は、国、県、干拓農地を購入する農家の3者が負担することになっている。干拓が中止となった結果、宙に浮いた農家負担分の154億円について、国と県がどう分担するかが焦点になっていた。

 本庄工区干拓の事業費は、工事が中断された1988年までの時点で利子を含め508億円。うち国が268億円を負担、残る240億円を地方負担金として、県が86億円を持ち、農家負担は154億円となっていた。

 地方負担金は県が一括して財政投融資資金から年6.5%の利率で借り入れていたが、年々利子負担がかさむため、県は99年度までに163億円を繰り上げて償還し、77億円が残っていた。

農水省、淡水化を中止へ 中海・宍道湖

2000.10.03(09:00)asahi.com
 1988年から延期されている島根県の宍道湖と、島根、鳥取の両県にまたがる中海の淡水化事業について、事業主体である農水省は、淡水化に代わる水源確保の見通しが立った時点で中止する意向であることが2日、わかった。同省の幹部が明らかにした。淡水化で得られる農業用水を送る予定だった中海の干拓地のうち、最大の本庄工区(1689ヘクタール)の中止が正式決定し、国の対応が焦点になっていた。

 農水省幹部は「(延期を決めた)88年当時と情勢は変わっていない。現実問題として淡水化できないということは、はっきりしている」と言明した。しかし「代替水源が示せないままでは、国営事業の責任が果たせず、(中止という)ピリオドは打てない」と、正式な中止決定は、淡水化に代わる水源が確保された時点になる考えを示した。

 島根県の澄田信義知事は淡水化を中止するかどうかについて態度を明らかにしていないが、鳥取県の片山善博知事と、代替水源の確保に向けた調査に入ることで合意している。

 淡水化事業は、中海の5工区計2540ヘクタールの干拓事業とセットで63年に開始された。これまで約850億円がつぎ込まれ、水門や干拓堤防、排水機場などの施設がほぼ完成。本庄工区以外の4工区は干拓され、約8割は農地として分譲されている。

 淡水化事業で干拓地と沿岸農地約7300ヘクタールへ農業用水を供給する計画だったが、淡水化によって塩分濃度が下がると、アオコが発生しやすくなるなど、水質悪化の懸念から住民の反対運動が起き、88年に島根、鳥取両県知事が「当分の間、延期することが望ましい」と表明。12年間凍結されたままになっている。

中海干拓事業、7日に中止を正式決定へ

2000.09.04(19:31)asahi.com
 農水省が中止の方針を固めていた島根県の国営中海干拓事業・本庄工区について、事業中止が7日に正式決定することになった。同日、谷洋一農水相と澄田信義知事が会談し、谷農水相が本庄工区の中止の方針を正式に澄田知事に伝える。同知事も中止には基本的に同意する見通しで、その後の地域振興策を求めるとみられる。

 4日の定例記者会見で高木勇樹・農水事務次官は「会談では、農水省としての判断を(大臣が)伝え、知事の話も聞くことになる」としたうえで、「双方が多忙であることを考えれば、双方とも会談が1つの節目と認識されていると思う」と述べ、会談での決着の見通しを強く示唆した。

中海干拓「効果があるのか」 現地視察で亀井静香氏

2000.08.22(22:47)asahi.com
 自民、公明、保守の与党3党の政策責任者は22日、吉野川可動堰(ぜき)とともに公共事業見直しの焦点の一つとなっている国営中海干拓事業(島根県)の現地を視察した。この後、自民党の亀井静香政調会長は松江市で記者会見し、「時が経過する中で、当初方針通り事業を進めていいのか、地域振興のためにも別な展開を考えなければいけないのか。膨大な国民の税金をつぎこんで、それに見合う効果があるのか」と述べ、事業の中止を求める方針を改めて示した。

 一方で亀井氏は、農業用水や工業用水の確保をめざして始められながら環境保全の観点から「凍結」されている中海・宍道湖の淡水化事業について、「干拓とは切り離した形で検討する」と述べた。淡水化事業の中止に強い難色を示している地元の農家や自治体に配慮した発言だ。

 これに先立ち、亀井氏らは澄田信義知事や地元の3市町長らと相次いで会談。知事が、堤防などすでに完成している施設の維持管理と不要施設の処分を国費でまかなうことや、干拓事業に代わる地域振興策を求めたのに対し、亀井氏は「地域振興のために、あらゆる具体的な努力をする」と応じた。

中海干拓中止受け入れもやむなし 島根・澄田知事

2000.08.22(22:46)asahi.com
 農水省が中止の方針を固めている島根県の国営中海干拓事業・本庄工区について、同県の澄田信義知事は22日、「(国が事業の中止を決めた場合)従うと言わざるを得ない」と述べ、同干拓事業の中止を受け入れる考えを初めて示した。この日現地を視察した自民党の亀井静香政調会長ら与党3党の政策責任者と会談した後、記者会見して明らかにした。事業開始以来37年が経過し、中止か再開かで揺れた中海干拓は、知事の中止容認で、最終決着へ向け大詰めを迎えた。

 中海干拓については、農水省のほか、自民党の公共事業抜本見直し検討会も中止を勧告する方針を打ち出している。こうした動きに対し、澄田知事はこれまで事業再開の可能性を将来に残す「凍結」を求めていた。

 会見で澄田知事は「凍結を求める考えに変わりはないが、国営事業であり最終的には国が判断することだ。国が中止と判断すればやむを得ない」などと述べた。そのうえで、事業費のうち地元が負担することになっていた77億円の肩代わりや、松江市など地元の1市2町が要望する地域振興策などを、中止の「見返り策」として国の責任で実現するよう強く求めていく考えを示した。知事発言について亀井氏は「地域振興のためあらゆる具体的な努力をする」と述べた。

島根県知事が中海干拓の「凍結」を農水相に要請

2000.08.09(21:10)asahi.com
 農水省が中止の方針を固めた島根県の国営中海干拓事業・本庄工区をめぐり、澄田信義・同県知事が9日夕、谷洋一農水相と会談した。澄田知事は「事業を中止すればこれまでの投資が無駄になる。地元の意向を十分に尊重してほしい」と述べ、事業の「凍結」(休止)を求めたが、谷農水相は「今日は意見をうかがうだけにしておく。今後の地域振興策については、県でまとめて欲しい」などと述べるにとどまった。

 今月28日には自民党の「公共事業抜本見直し検討会」が、中海干拓の中止を勧告することにしており、農水省はそれを受けて中止の最終決定をする。

島根県知事、中海干拓の「中止も視野に」と発言

2000.08.11(22:45)asahi.com
 自民党の「公共事業抜本見直し検討会」の座長、谷津義男政調会長代理は11日午前、島根県の国営中海干拓事業・本庄工区を視察した。その後、島根県庁で澄田信義知事と意見交換。谷津氏は「中海干拓は、完成予定を20年以上超過しているという中止すべき公共事業の基準に入っている」と指摘し、澄田知事は「地域の事情や思いを尊重してほしい」と中止でなく、事業再開の可能性を残すよう求めた。

 澄田知事は事業の「凍結」を表明しているが、自民党の検討会は「中止」を勧告する構えで、事業主体の農水省も中止の方針を固めている。谷津氏と会談後記者会見した澄田知事は「中止も視野に入れ、対応を検討しなければならない」との認識を示し、初めて干拓事業が中止される可能性について言及した。

 谷津氏は前日の10日、徳島県・吉野川可動堰(ぜき)事業予定地周辺を視察した。21、22両日には亀井静香政調会長ら与党3党の政策責任者が吉野川と中海を視察し、28日にも可動堰の白紙撤回と中海干拓の中止を正式に表明する予定。

2000.08.03(22:01)asahi.com
 1988年以来工事が中断している島根県の国営中海干拓事業・本庄工区について、同県の澄田信義知事は3日、県議会全員協議会で、「追加事業費が大幅に増えたこと、農地の担い手確保が困難との見通しや県財政の状況悪化などから、事業再開は当分の間、延期することが適当である」と発言した。96年の国への事業再開要請を撤回し、事業を凍結する方針を正式に表明した。一方、自民党の亀井静香政調会長の直属機関「公共事業抜本見直し検討会」は、事業主体の農水省に中止を求める方向で検討中で、事業開始以来37年間が経過した中海干拓は、凍結か中止かをめぐって島根県と国は最終決着に向け協議することになる。

 澄田知事はこの日、「全面干拓が最も適当だが、事業再開を要請した4年前と社会経済情勢が変化し、直ちに工事を再開するのは困難な状況にある」と説明した。県議会最大会派の自民党議員連盟も同日、議員総会を開いて澄田知事の方針に理解を示した。

 澄田知事は事業の清算のために新たな負担を強いられる中止よりも現状維持の凍結を選んだ。また、たとえ中止されたとしても、あくまでも事業の延期を主張することで、最大300億円とも見込まれる清算の責任を国に求める方針だ。

 これまで干拓に反対してきた地元の住民団体などは「凍結では解決にならない」として、干拓中止を求めている。「豊かな汽水域を後世に活(い)かす市民会議」などは、「凍結では、水質改善など干拓が残した課題を解決できす、新たな地域振興策の実施にも支障が出てくる」と主張している。

 澄田知事は最近まで、凍結の方針を9月議会で表明する方向で、「8月末の来年度予算案の概算要求に間に合わせるのは難しい」という見通しを示していた。

中海干拓を凍結へ 島根県知事、地元合意へ努力

2000.07.20(21:16)asahi.com
 島根県の国営中海干拓事業・本庄工区(1689ヘクタール)の事業再開問題で、島根県の澄田信義知事は20日までに、事業を凍結する意向を固めた。同日、知事は、地元3市町のうち6月に市長が交代した松江市を除く美保関、八束両町長や同県議会関係者に、凍結の方向を打診していることを明らかにした。事業主体の農水省は、「県の意向を尊重する」との見解を示しており、着工から37年たった「中海干拓」は、決着に向け動き出した。

 中海干拓事業は63年、宍道湖・中海淡水化とセットで始まった。淡水化は水質悪化の懸念などから88年に凍結、本庄工区の干拓も中断されたが、澄田知事は96年、事業再開を農水省に要請。農水省の検討委は今年4月、「全面干拓」「干拓中止」「部分干拓」の三論併記の報告書を提出、これに基づいて同省と同県が協議していたが、知事の政治決断にゆだねられていた。

 関係者によると、澄田知事は2町長に対して、「着手の時期を検討する必要がある。延期するという方向はどうか」などと打診、自民党の有力県議にも「凍結の方向でどうか」と相談しているという。

 「再開」でも「中止」でもない「凍結」の場合、今後は干拓予定地を取り囲む堤防など干拓施設を残すのかどうかが問題となる。漁協や地元住民らは、水質改善のため、堤防を削って潮の流れを回復することを求めている。さらに干拓に代わる地域振興策などが新たな課題となる。

 中海干拓をめぐっては、全面干拓する場合の追加事業費が、当初の2倍近い約520億円となり、これまでの投資額とあわせ1000億円を超える見通しとなった。また「食糧増産」の国策としてスタートした1963年当時と時代が変わり、大量の農地を造成しても今は農地の担い手確保が見込めないことなどから、「むだな公共事業」の象徴として、民主党などに先の衆院選でも批判されていた。

3案併記を島根知事に説明

2000年4月5日18時06分
 農水省中国四国農政局、(岡山市)の松浦良和局長は5日、島根県庁に澄田信義知事を訪ね、住民の反対運動などで工事が中断している島根県の中海・本庄工区の国営干拓事業で、同省の「本庄工区検討委員会」(委員長・山田一郎島根大名誉教授)がまとめた全面干拓、干拓中止、部分干拓の3案を併記した最終報告書について説明した。

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