TOPIC No.3-15 ディーゼル排ガスと健康影響


01.
 東京大気汚染公害裁判原告団

都心のすす4年で半減 ディーゼル規制の効果か

2007/08/03 中国新聞ニュース

 ディーゼル車の排ガスに含まれ、アレルギー性疾患などを誘発する「ブラックカーボン(すす)」の都心での大気中濃度が、二○○三―○五年に比べ、○七年は半減していることが、三日までの東京大先端科学技術センターの調査で分かった。

 ディーゼル車の排ガスをめぐっては、国の規制のほか、東京都など首都圏の一都三県が○三年十月から、基準を満たさない車両の通行を規制しているが、規制効果がデータで裏付けられたのは初めてという。

 同センターの近藤豊教授(地球大気環境科学)らは、すすに付着した化学成分を取り除き、高精度ですすの濃度を測定できる装置を開発し、東京都目黒区などで観測した。その結果、○三年五月―○五年八月の平均値は大気一立方メートル当たり約二・三マイクログラムだったのに対し、今年一―七月は約一・一マイクログラムと半減していた。

 近藤教授は「規制でディーゼル車からの排出が減ったことを反映している。今後、規制の異なる場所で観測し、長期的効果を調べたい」としている。

解決金支払いに前向き 大気汚染訴訟でトヨタ社長

2007年06月27日 中国新聞ニュース

 トヨタ自動車の渡辺捷昭社長は27日、東京大気汚染訴訟で東京高裁が先週、トヨタなど被告の自動車メーカー7社に示した12億円の解決金支払いについて、「社会的責任という意味でも考えなければならない」と述べ、支払いに前向きな姿勢を示した。

 東京高裁が和解案で示した解決金支払いで、メーカー側のトップが公式の場で前向きな発言をしたのは初めて。渡辺社長は同日都内で開かれた新車発表会の記者会見で答えた。

 メーカー7社は解決金を支払う方向で協議している。渡辺社長は「一日も早くお答えしたいが、他の6社との関係もある。今しばらくお待ちいただきたい」とも述べ、7社すべてが社内で最終決定するのに時間がかかるとの見通しを示した。

東京大気汚染訴訟が和解へ 高裁案を評価、解決金12億

2007年06月26日 中国新聞ニュース

 東京都内のぜんそく患者らが国や都、自動車メーカー7社などに車の排ガス被害による損害賠償などを求めた東京大気汚染訴訟の原告弁護団は26日までに、解決金12億円の支払いをメーカー側に求める東京高裁の和解案をおおむね高く評価する見解をまとめた。メーカー側も高裁案を受け入れる方向で協議。和解成立は確実な情勢となった。

 これまでの和解協議を通じ、原告側が公害対策などでほぼ合意に達していた国と首都高速道路は同日、和解に応じることを東京高裁に文書で回答。都も同様の方針を既に示している。

 弁護団見解は「原告に敬意を払い、それに応えるべく提示したとみられる」などとしており、原告全員に送付した。近く原告団幹部と弁護士らが協議し、受け入れ方針を決める見通し。

 和解協議で最後の争点となっていた解決金について、メーカー側は約5億円とする意向を示し、数十億円を求める原告側と対立していた。

国が和解に向け60億円 東京大気汚染訴訟

2007/05/30 中国新聞ニュース

 東京都内のぜんそく患者らが国や都、自動車メーカー七社などに損害賠償を求めた東京大気汚染訴訟控訴審の和解協議への対応について、安倍晋三首相は三十日、国の公害予防基金から都のぜんそく予防事業に六十億円を拠出する考えを示した。首相官邸で石原慎太郎知事に伝え、知事も了承した。

 官邸で記者団に対し、安倍首相は「早期に解決しなければならないと思う。わたしの判断で決断しますと(石原知事に)申し上げた」と述べ、政治決着を強調した。

 和解に向け都は被告側の資金拠出による医療費助成制度の創設を提案。六十億円は国の負担額(五年分)に相当し、同制度が実現する公算が大きくなった。原告側と都は「和解に向け大きな前進」と評価。原告側が求める解決金支払いにメーカーが応じるかが今後の焦点となる。

 環境省などによると、六十億円の財源は、公害予防事業を実施している独立行政法人「環境再生保全機構」が運用している公害健康被害予防基金約五百十億円から切り崩す。

 基金の使用目的は予防事業に限られており、都は六十億円を直接医療費助成に充てることはできないが、事実上、都が国負担分の原資を賄うことが可能となる。

 控訴審では東京高裁が昨年九月、事実上の和解を勧告。都の示した医療費助成制度の案では年間四十億円を見込み、国と都がそれぞれ三分の一、メーカー七社などが残りを負担するとしていた。

 メーカーは拠出に同意する意向を示していたが、国は「因果関係が認められない」として拠出を拒否していた。

 一方で国は原告側との協議には応じ、原告側の求める公害対策について、ディーゼル車から排出される粒子状物質の規制強化のほか、ぜんそく予防事業費を患者の多い東京二十三区に重点配分することなどを検討している。

東京大気汚染訴訟、国が和解案…ぜんそく対策に年14億円

2007年05月30日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 自動車の排ガスで健康被害を受けたとして、東京都内のぜんそく患者らが、国や都、自動車メーカーなどに損害賠償を求めた東京大気汚染訴訟の控訴審で、環境省が、ぜんそく患者の予防事業費として年間14億円を充てるなどの和解案をまとめ、原告側に提案していたことが分かった。

 この訴訟では、既に都がぜんそく患者の医療費助成制度を柱とする和解案を提案、主要メーカーも原告側への金銭補償に前向きの姿勢を示している。昨年9月に東京高裁で結審した後、水面下で続けられてきた和解協議は大きなヤマ場を迎える。

 同省の和解案の柱は、大気汚染の調査研究など、現在はぜんそく対策に広く充てられている独立行政法人「環境再生保全機構」の基金運用益(今年度約14億円)を、ぜんそく患者に予防事業として振り向けるというもの。運用益による助成は東京23区や川崎、大阪市など法律で定められた指定地域の申請に基づき行われている。ぜんそく児の水泳教室などにも充てられているが、成人のぜんそく患者には使われてこなかった。

 具体的な項目として、ネブライザー(吸入器)の無償貸与や健康診断、生活相談などを想定。同省は、患者が多い東京23区については、重点配分することを検討する。都によると、都内のぜんそく患者は約20万人に上るという。

 同省案はすでに、若林環境相が安倍首相に説明している。

 控訴審結審後の昨年11月、都は、ぜんそく患者の医療費助成のための費用を年間40億円と試算し、国と都が各3分の1、旧首都高速道路公団(現首都高速道路会社)とメーカー7社が各6分の1の資金を負担し、都内に住む患者の入院・治療費を全額負担する救済案を同高裁に提案した。

 メーカー側も都の提案を受け入れる方針で、原告患者への「解決金」についても主要メーカーは前向きの姿勢を示している。これに対し、国側は医療費負担については否定的な姿勢を示してきた。

 今回の同省の提案を原告側がどう評価するか、さらに、都の和解案とどう調整を図るかが、和解成立に向けた課題となりそうだ。

排ガスの微小粒子状物質 規制へ基準作り・環境省が有識者会議

2007/05/14 NIKKEI NeT

 ディーゼル車などの排ガスに含まれる微小粒子状物質「PM2・5」について環境省は14日、健康への影響を評価する有識者会議を初めて設けると発表した。29日に初会合を開き、同物質を規制する環境基準の設定も視野に入れる。PM2・5は東京都のぜんそく患者らが国や都、自動車メーカー7社らを訴えた東京大気汚染訴訟の和解協議で原告側が国に求めており、交渉の進展にも影響しそうだ。

 PM2・5は大きさが2.5マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル以下と微小な粒子。ディーゼル車の排ガスや工場のばい煙などに含まれ、ぜんそくや気管支炎を引き起こすとされる。

東京大気汚染訴訟 和解協議、「譲れぬ」双方に壁

2007年05月05日 (サンケイ新聞社) GOOニュース

 喘息(ぜんそく)になったのはディーゼル車の排ガスが原因として、患者らが国や東京都、自動車メーカー7社などに損害賠償を求めた「東京大気汚染訴訟」控訴審の和解協議が、大詰めを迎えている。現状では原告・被告双方の主張に隔たりが大きいが、和解が成立しないと、都が提案している医療費助成制度創設が瓦解する恐れもある。東京高裁は5月にも和解の成否を探る動きを本格化するとみられる。

 和解に向けての原告の主な要求は(1)医療費助成制度の創設(2)解決金(賠償金)の支払い(3)謝罪−など。特に助成制度と解決金は譲れないという。

 医療費について都は昨年10月、都内の喘息患者全員を対象に全額助成する制度を創設する考えを高裁に伝えた。ただ、都は「うちだけが出さなければならない理由はない」と、他の被告も拠出することを制度創設の条件にしている。

 都の提案に対し、メーカー側は同調する意向を示す一方、国は拒否の姿勢を貫いている。「大気汚染と喘息の因果関係が証明されていない」(環境省)などが理由だ。

 解決金については、国と都は支払いには応じない考え。メーカー側は前向きで、トヨタを中心に各社で合意点を探っているとみられる。

 だが、先行きが明るいともいえない。「4月中にも」との観測もあったメーカー側の回答は、いまだに出ていないとみられる。

 1審判決は「メーカーに大気汚染の賠償責任はない」とした。このため「責任がないとされたのに支払う理由を、株主にどう説明すればいいのか苦慮しているようだ」(関係者)との見方もある。また、「他の地域で同様の訴訟が起きたら、同じ対応を取れるかも考えている」(同)との声もある。

 東京高裁の原田敏章裁判長は昨年9月の結審時に「判決だけでは解決できない問題を含んでいる」として、原告・被告双方に和解の可能性を探るように促した。その一方、判決文の作成も並行して進める考えを示している。

 都幹部は「和解不成立で判決になったら、助成制度創設は白紙」としており、第1次提訴から約10年かかって到達した助成制度創設まで瓦解しかねない。

 結審から7カ月あまりが経過。「通常の例からいって、夏ごろには和解か判決かの結論を出すのではないか」と話す司法関係者もおり、原告・被告双方の今後の対応に注目が集まる。

新型ディーゼル車に税優遇、経産省が取得税下げ検討

2007/04/20 NIKKEI NeT

 経済産業省は、二酸化炭素(CO2)や排ガスを減らした車を購入する個人や企業への税制優遇策を拡充する方針だ。軽油を燃料とし排ガスも少ない「クリーンディーゼル車」の自動車取得税を2009年度にも現行の5%から2%程度引き下げることなどを検討する。価格の高い環境対応車の普及を支援する。

 日本自動車工業会など国内外の自動車業界や石油連盟などと研究会を20日に新設。自動車取得税の所管官庁の総務省とも協力して税制優遇策などを検討する。

東京大気汚染訴訟、和解成立の条件整う

2007年03月17日 asahi.com

 東京都内のぜんそく患者らが国と都、自動車メーカー7社などに約20億円の損害賠償を求めた東京大気汚染公害訴訟の控訴審の和解協議で、日産自動車が和解成立に向けて一時金の支払いを受け入れる用意があることが16日、分かった。一時金について応じる意向を固めたトヨタ自動車に加え、支払いを拒んできた日産が態度を軟化させたことで、提訴から11年ぶりの和解成立の見通しが高まった。一部のメーカーが態度を決めかねているが、トヨタなどは4月までにメーカー7社の方針をまとめたい考えだ。

 主な和解条件のうち、都が提唱する「新たな医療費助成制度の創設」については、メーカー側が拠出に応じる意向を固めている。「環境対策の推進」については、国が排ガスに含まれる有害物質を抑制する装置の開発や研究への支援など、一定の方向性を示している。

 残された条件のうち、今回、「一時金」についてもめどがついたことで、包括的な解決に向けて前提条件が整ったことになる。関係者によると、トヨタと日産は16日、原告側に早期和解に積極的な意向を伝えた。

 原告側は「自動車メーカーが排ガス被害に責任を持つのは当然だ。トヨタや日産が積極姿勢を示したことで、和解協議は大きく前進した」と評価している。

 大気汚染訴訟で、自動車メーカーの一時金拠出は実現すれば初めて。

 四日市公害訴訟に始まる一連の訴訟で、自動車排ガスの影響が問われたのは西淀川、川崎、尼崎、名古屋南部の4訴訟。いずれも工場ばい煙との複合汚染とされ、自動車メーカーの責任は否定された。

 東京訴訟は96年、東京都内の呼吸器疾患患者らが1次提訴。ディーゼル車排ガスによる健康被害が問われた。原告側は、公害対策に優れたガソリンエンジンを選択せず、売り上げ優先のため小型トラックのディーゼル化を飛躍的に高めたメーカー側の責任を追及した。

 工場のような排ガスの「固定発生源」と違い、ユーザーが管理する自動車という「移動発生源」について、メーカーや道路を管理する国や都などの責任の有無が焦点となった。

 一審・東京地裁判決は国と都などの責任は認めたが、メーカーは自動車の走行を管理・支配できないと判断。排ガス被害にメーカーが高度の注意義務を持つとしたが、賠償責任は否定した。

 このため、メーカー側には社会貢献の名目で医療費助成に応じることはできても、一時金支払いは株主の理解が得られないと抵抗が強かった。しかし、支払いを拒否して和解協議が決裂すれば、環境対策に取り組むメーカーの企業イメージに傷がつくとの経営判断が働き、受け入れに傾いたと見られる。

東京大気汚染訴訟、解決金 自動車7社協議

2007年03月17日 読売新聞 読売新聞 Yomiuri On-Line

トヨタ「4月までに合意を」

 自動車の排ガスで健康被害を受けたとして、東京都内のぜんそく患者らが国や都、自動車メーカー7社などに損害賠償を求めた東京大気汚染訴訟で、トヨタ自動車は16日、原告側と和解に向けた交渉を行った。

 関係者によると、この日の協議でトヨタ側は、「メーカー7社間で協議しており、解決金支払いに向け4月までに合意したい」などと原告側に伝えたという。金銭補償に否定的だったメーカーが、トヨタが中心となって「解決金」を支払う方向でまとまる可能性が出てきた。

 トヨタは、これまでの交渉で条件付きで「解決金」の支払いを検討していることを原告側に伝えている。この日の交渉には同社の法務担当の課長などが出席し、原告側に、「7社全部が合意していないが、まとまれば(原告との)話し合いに持って行きたい」などと説明したという。

 一方、原告側は同日、日産自動車とも交渉。関係者によると、日産側は「国が交渉のテーブルに着くなど大きな動きがあり、全面解決のチャンスと理解している」とした上で、「そのような状況を無にしないよう解決の努力をしていきたい。謝罪と賠償がないと解決しないことは理解している」などと、前向きの姿勢を示したという。

 東京大気汚染公害裁判弁護団の西村隆雄副団長は「メーカー側が協議していることは、解決に向けて一歩前進したといえる。メーカー側にも問題がいろいろあると思うが、ねばり強く交渉を続けたい」と話した。

大気汚染東京訴訟、国が和解協議へ 排ガスに新対策

2007年02月03日 asahi.com

 東京都内のぜんそく患者らが国や都、自動車メーカーなどに損害賠償を求めた東京大気汚染公害訴訟で、安倍首相は2日夜、原告との和解協議に積極的に応じる意向を示した。協議では、国として自動車の排ガスなどに対する公害対策を新たに打ち出すとみられる。また、東京都が提案し、国にも資金負担を求めている医療費助成制度についても「検討する」と語った。

 国は一審で賠償を命じられたが控訴。東京高裁での非公式の和解協議でも消極的だった。原告数は1〜6次の提訴で計630人(1月現在)。

 安倍首相はこの日、首相官邸で記者団に対し、「原告とも話し合いをしながら、何ができるのか検討していきたい。(問題が生じてから)ずいぶん時間が経過している。(病気と排ガスの)因果関係など、難しい問題もあるが、あまり時間をかけるべきではない」と語り、和解協議に国として応じる考えを示した。

 環境省は、トラックやバスなどディーゼル車が出す粒子状物質を規制するNOx・PM法改正案を通常国会に提出する準備を進めている。商業施設に対し、排ガス基準不適合車の削減義務付けや汚染のひどい交差点の対策などを検討しており、和解協議ではこうした取り組みを示して、原告側の理解を得たい考えだ。

 環境省幹部は「協議の場で原告の求めていることを見極めたい」と話している。

 一方、国土交通省も、自動車の排ガスに含まれる有害物質を抑制する装置の開発や研究への支援といった自動車への対策に加え、道路構造などを見直し、排出された有害物質が道路上に滞留しにくくする方策を検討することなどを、和解協議の場で提示する考えだ。

 こうした国側の動きについて、石原慎太郎都知事は同日の会見で、「公害対策は裁判とは本来関係なくて、国が当然やらなければいけないことだ」と指摘した。

 都が和解協議に提案した新たな医療費助成制度は、年間経費約40億円を国と都が3分の1ずつ、自動車メーカー7社と首都高速道路公団(現・首都高速道路)が6分の1ずつ負担する内容だ。国は、病気と排ガスの因果関係が明らかでないなどとして、資金負担には否定的な姿勢をとってきた。

トヨタ、解決金も検討…東京大気汚染訴訟

2007年02月03日 読売新聞 読売新聞 Yomiuri On-Line

 自動車の排ガスで健康被害を受けたとして、東京都内のぜんそく患者らが国や都、自動車メーカー7社などに損害賠償を求めた東京大気汚染訴訟の控訴審で、トヨタ自動車が2日、「解決金」の支払いについて和解協議の中で検討していく意向があると原告側に伝えたことが、関係者の話で分かった。

 この日、国が和解協議に応じる方針を打ち出したが、金銭補償に否定的だったメーカー7社のうち最大手のトヨタが歩み寄りの姿勢を示したことで、和解に向けた協議は大きく前進しそうだ。

 これまでメーカー7社は、都が提案した医療費助成制度への資金拠出については前向きに協議を続けてきた。しかし、1審判決でメーカー側の法的責任が否定されたことから、「謝罪や損害賠償には応じられない」とし、解決金の支払いには消極姿勢を貫いていた。

 これに対し、原告側は和解の条件として、〈1〉新しい医療費助成制度の創設〈2〉大気汚染を減らす公害防止対策の実施――に加え、損害賠償に当たる金銭の支払いを要求。特にメーカーには、謝罪と金銭補償を求めており、今月1日から同社東京本社前に原告ら50人以上が座り込んで、交渉に応じるよう求めていた。

 関係者によると、トヨタ側は2日、原告側との交渉に応じ、担当者が「我々も一時金を支払わずに解決できるとは思っていない」などと、解決金の支払いも視野に入れて協議を行う意向を示したという。ただ、金額など具体的な条件については提示されなかった。

 解決金の問題について、トヨタ自動車広報部は、「都が提案している医療費助成制度については協議に応じる用意があると裁判所に伝えてあるが、それ以外の個別の内容についてのコメントは差し控えたい」としている。

東京大気汚染訴訟、自動車7社が和解協議へ

2007年01月13日 読売新聞 読売新聞 Yomiuri On-Line

 東京都内のぜんそく患者らが自動車の排ガスで健康被害を受けたとして、国や都、自動車メーカー7社などに損害賠償を求めた東京大気汚染訴訟の控訴審で、メーカー全社が、都が提案した医療費助成などの救済案について、前向きに協議に応じる意向を東京高裁に伝えたことが12日、関係者の話で分かった。

 都の救済案について国側は難色を示しているが、メーカー側が都の救済案を軸にした和解協議のテーブルにつく方針を打ち出したことで、訴訟は和解に向け大きく動き出す可能性も出てきた。

 被告のメーカー7社は、トヨタ自動車、日産自動車、マツダ、いすゞ自動車、日野自動車、日産ディーゼル工業、三菱自動車。

 控訴審は昨年9月に結審したが、同高裁は「和解の可能性を探りたい」として、各当事者と非公式に和解に向けた協議を続けてきた。

 都は昨年11月、国と都が各3分の1、メーカーと旧首都高速道路公団(現首都高速道路会社)が各6分の1の資金を負担し、都内に住むぜんそく患者の入院・治療費を全額負担する医療費助成制度の創設などの救済案を提案。同高裁は12日までに、メーカー7社から意見を聴取した。

 既に協議に応じる方針を表明していたトヨタ自動車に続き、日産自動車も同日、「(ぜんそく患者を救済するという)社会貢献の観点から、都が示した提案に対し、話し合いを行う用意がある」と回答。マツダなど4社も読売新聞の取材に対し、「他のメーカーが前向きに検討するのであれば」などの条件付きながら、和解協議に応じるとの回答をしたことを認めた。三菱自動車は「コメントは控えたい」としている。

 1審・東京地裁が2002年、国や都などの責任を認め、原告99人のうち7人に対して計7920万円の賠償を命じたが、メーカーの責任は認めなかった。

ぜんそく救済「国費負担無理」…大気汚染訴訟で環境相

2006年12月05日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 東京大気汚染訴訟で、東京都が都内のぜんそく患者全員を救済する制度の創設を柱とした和解案を東京高裁に提出したことについて、若林環境相は5日、閣議後会見で、「ぜんそくと大気汚染の因果関係がはっきりしなければ、国の費用負担は講じられない」と述べ、現時点で都の和解案を受け入れる考えのないことを改めて表明した。

 同高裁には1日に伝えたという。

大気汚染訴訟 国は負担に消極的

2006年11月29日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 東京大気汚染訴訟で、東京都は28日、被告の国と都が3分の1ずつ、旧首都高速道路公団(現首都高速道路会社)とメーカー7社が6分の1ずつを負担して、都内のぜんそく患者全員の医療費を助成する制度の創設を東京高裁に提示した。

 ただ、国などは負担に消極的な姿勢を変えていないほか、慢性気管支炎などの患者が救済されないことに納得していない原告もおり、この枠組みで和解が成立するかどうかは不透明だ。

 都は、新たに必要な医療費助成金を年間約40億円と見込んでいる。また、排ガスと健康被害との因果関係に関する環境省の報告が2010年にまとまることを踏まえ、制度を5年後に見直すとしている。

 石原知事はこの日午後2時から、裁判官3人を前に、約20分間熱弁を振るい、「国は自動車文明のあしき所作に関心がない」と国の姿勢を非難した。

 都は1審判決後、都に勝訴した5人に対しては賠償金を支払っており、「すでに一定の行政的、社会的責任を果たした」との考え方。しかし、判決から4年が経過しても解決への道筋が見えないため、「ぜんそく患者救済を社会全体の課題として位置づけるべきだ」と判断したという。

ぜんそく全患者に医療費

2006年11月28日 読売新聞 Yomiuri On-Line

都、和解へ救済案…東京大気汚染訴訟

 東京都内のぜんそく患者ら96人が国や都、自動車メーカーなどに約20億円の損害賠償を求めている東京大気汚染訴訟で、都は28日、和解に向け、都内在住のぜんそく患者全員を救済する新たな制度の創設を東京高裁に提示する。

 同日午後、石原慎太郎知事が東京高裁を訪れ、裁判所側に説明する。高裁では今後、都の提示を国や原告側に示し、和解を促すことになる。

国、車メーカー対応焦点

 提示される新たな救済制度は、被告の都と国、旧首都高速道路公団(現首都高速道路会社)、メーカー7社がそれぞれ負担金を支出し、国の公害健康被害補償制度で救済の対象外になっている都内の未認定患者全員の医療費を給付するというもの。患者の自己負担はゼロにする。

 都の提案に対して、国、メーカー、首都高速道路会社側の対応が注目される。

 都は現在、18歳未満のぜんそく患者については独自の医療費助成制度を設けているため、新たな救済制度は、18歳以上の未認定患者が対象。都の試算では都内のぜんそく患者は約20万人近くに上り、助成額は年間数十億円になる見通しだ。

 石原知事は9月27日の都議会で「裁判所に任せていても抜本的な解決にはつながらない」として、新たな救済制度を検討していくことを明言していた。

 控訴審は9月に結審したが、東京高裁では現在も原告、被告の双方から意見を聴取しながら、和解を模索している。

 これまでに、国側は「国に責任はなく、排ガスとぜんそくとの因果関係も証明されていない」と主張。一方のメーカー側は、株主代表訴訟の懸念などから「金銭の負担は難しい」としながらも、社会的責任から環境対策への支出には前向きな姿勢を示している。

 東京大気汚染訴訟 都内のぜんそく患者らが1996年5月、国と都、旧首都高速道路公団、自動車メーカー7社を相手取り、約20億円の損害賠償などを求めて提訴した。2002年10月の1審・東京地裁判決は排ガスとぜんそくの因果関係を認め、沿線住民7人について総額7920万円の支払いを命じたが、メーカーの責任は否定した。今年2月までに提訴は6次に及んでいる。

東京大気汚染訴訟 都が「患者救済」提案

2006年09月28日 読売新聞 Yomiuri On-Line

メーカー側に協力金要請へ

 東京都内のぜんそく患者らが排ガスで健康被害を受けたとして、国と都、旧首都高速道路公団(現首都高速道路会社)、自動車メーカー7社に損害賠償を求めた東京大気汚染訴訟で、都が患者救済に向けてメーカー側と協議の場を設けることが27日、わかった。

 メーカー側に協力金の支出を求めて、患者への医療費助成制度の創設などを検討する。同訴訟の控訴審は28日に東京高裁で結審する見通しだが、裁判所の結論を待たずに、新たな患者救済制度ができる可能性が出てきた。

 開会中の都議会で石原慎太郎知事が、来代勝彦都議(自民)の一般質問に対する答弁で明らかにした。

 2002年10月の1審判決では、国と都、公団が損害賠償の支払いを命じられた。ディーゼル車規制などに取り組んでいる都は「被害者救済は行政の使命」として控訴を見送り、国にも控訴取り下げを要請した。

 石原知事はこの日、「(1審判決から)4年が経過した現在も、国の不作為は変わっていない」と国の対応を批判。「裁判所に任せていては、抜本的な解決につながらない。環境対策に前向きな自動車メーカー、日本自動車工業会(会長・張富士夫トヨタ自動車会長)と協議を始めようと思う」と述べた。

 1審で患者側は、汚染物質を排出する車を製造したメーカーの責任を主張したが、判決は「(メーカーは)幹線道路への自動車の集中を回避することはできない」として退けた。患者側が求める新たな補償制度は、メーカー側からの資金提供が不可欠で、都の提案が実現すれば解決に向けた大きな一歩になりそうだ。

 メーカー側は判決後の原告団との交渉で、「行政が新たな救済制度を制定する場合、社会的要請も踏まえて対応を判断する」とする見解を出している。日本自動車工業会は「東京都からの要請があった時点で検討したい」としている。


浮遊粒子状物質:東京で690人死亡回避 EU規制値なら

2005年09月15日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 ぜんそくなど呼吸器疾患の原因となる浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準(規制値)を欧州連合(EU)の基準に合わせた場合、東京都で年間約690人の死亡を防げる可能性があることが岡山大大学院の頼藤貴志医師(環境疫学)らのグループによる疫学研究で分かった。さらに、EUが2010年の実施を目標にしている基準に当てはめると、年間約5930人の死亡を防ぐ可能性がある。

 日本ではEUに比べSPMの規制が甘く、環境省は基準を設定してから30年以上も変更していない。

 疫学研究は、東京都(島部を除く)在住の30歳以上の男女計782万5745人(00年国勢調査)を対象に実施。都が公開している02年の一般大気環境中のSPMの濃度や、人口動態統計にある死亡者数などのデータを基に、統計学的手法を用いて死亡者数を推計した。

 日本の環境基準には、1年間にならしたSPMの平均ばく露量は定められていないが、現在のEUの基準(1立方メートルで0.04ミリグラム)で計算した結果、約690人の死亡を防ぐことが可能とされた。EUの2010年目標値(同0.02ミリグラム)で計算した場合には、年間で約5930人が助かる。

 日本の環境基準にもある、SPMの1日の平均ばく露量(同0.1ミリグラム)をEUの規制値並み(同0.05ミリグラム)に抑えると、年間の推計死亡者数を約220人減らせる。

 旧環境庁(環境省)はSPMの環境基準を73年に設定したが、年間平均のばく露基準は目標値も設定されていない。長期ばく露は、短期に比べて健康への影響が大きいとする研究報告もあり、世界保健機関(WHO)は年間のばく露量も評価するよう指摘している。

 共同研究者の津田敏秀・岡山大大学院教授(環境疫学)は「大気汚染の人体への影響の研究・調査は、日本ではほとんど行われていない。アスベストを取り巻く20年前の状況とよく似ている」と話す。【河内敏康】

欧州委が排ガス規制強化へ 08年半ばの実施目指す

2005/07/16 The Sankei Shimbun

 欧州連合(EU)欧州委員会は15日、「ユーロ4」と呼ばれる現行の自動車排ガス規制を強化した「ユーロ5」を年内にまとめ、2008年半ばまでに実施する方針を発表した。

 欧州委が同日明らかにした素案では、ディーゼル車の粒子状物質(PM)排出量を現行より80%、窒素酸化物(N●(Oの横に小文字のX))は20%削減するほか、ガソリン車についてはN●(Oの横に小文字のX)と炭化水素の25%削減などを目指すとしている。

 「ユーロ5」には業界など利害関係者の意見を反映させるとしているが、素案通り実施されれば、ディーゼル車にはPMを吸引するフィルターの装着が必要になる。

 また、スポーツタイプ多目的車(SUV)など、重量が2.5トンを超える大型乗用車には現在、乗用車向けよりも緩い小型商用車向けの規制が適用されているが、「ユーロ5」では規制を通常の乗用車並みに強化する。

 新規制はEU域内に輸入されるすべての自動車に適用される。(共同)

排ガス→ぜんそく、関係は? 環境省が大規模調査

2005/05/15 The Sankei Shimbun東京朝刊から

 気管支ぜんそくをはじめとする呼吸器疾患と自動車の排ガスとの因果関係を突き止めようと、環境省は小学生約1万6000人を対象に、今年度から5年がかりで大規模な調査に乗り出す。排ガスが健康被害をもたらすとは考えられてきたが、ぜんそくの発症にどのくらい影響するかは明確でなく、環境省は「関係をはっきりさせたい」としている。

 調査は東京、名古屋、大阪などディーゼル排気微粒子(DEP)排出量が一定以上の幹線道路がある地区と、幹線道路から離れた地区の計約60校の小学1−3年、約1万6000人を対象に実施。保護者の同意を得た児童から質問表や血液検査でアレルギーの有無などの基礎データをとり、5年間にわたって毎年1回、健康状態を調べる。幹線道路と住宅の距離や住宅がある高さ、生活パターンなどから個人がさらされている汚染物質量(曝露(ばくろ)量)を算出し、ぜんそく発症と排ガスとの因果関係を探る。

 従来、幹線道路と呼吸器疾患の関係の研究は行われていたが、居住地域ごとに個人の曝露量を細かく算出する調査はしていなかったという。

 環境省は「緻密(ちみつ)に曝露量を算出し、継続して調査することで、汚染物質がどのくらいぜんそく発症の要因になっているのか明確にしたい」と話している。調査は今年秋から実施し、22年度に結果をまとめる予定。

ディーゼル排ガス胎児に影響?マウスは精子生産力低下

2004/08/30 読売新聞 Yomiuri On-Line
 妊娠中にディーゼル排ガスを吸ったマウスから生まれた雄は、成長後の精巣に異常が現れ、精子生産能力も低くなることが、東京理科大薬学部の武田健教授と押尾茂研究員らの実験でわかった。

 同様の症状は、成熟した雄マウスに排ガスを吸わせる実験で確認されていたが、胎児への影響が突き止められたのは初めて。排ガス浄化装置でも除去できない物質が原因の可能性もある。北海道旭川市で開かれる日本不妊学会で9月4日に発表される。

 実験では、ディーゼル排ガスの濃度を環境基準の5倍にした室内で、母マウスを妊娠2日目から2週間飼育。清浄な空気に戻した後、妊娠約20日目で誕生した雄への影響を調べた。

 その結果、1日当たりの精子生産量が生後5週で通常の52%、生後12週で68%しかなかった。精巣を顕微鏡で観察したところ、精子を作る精細管の形に異常が見られ、細胞核の数が異常に多い細胞もあった。

 一方、生後12週では血中の男性ホルモン「テストステロン」の量が、通常の4・67倍にも達した。研究チームは、生殖に関連するホルモンのバランスが崩れ、精子形成の異常を引き起こしたと見ている。

 トラックなどで使われる浄化装置を通した排ガスでも、精子生産量や男性ホルモン量への影響はあまり変わらなかった。押尾研究員は「浄化装置をすり抜ける超微粒子が原因かもしれない。人間にも同様の影響を与える可能性があり、検証が必要だ」と話している。

1都3県でディーゼル車規制開始

2003年10月01日 The Sankei Shimbun
 首都圏の大気汚染改善を目指し、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県が条例に基づき、大気汚染の原因となる粒子状物質(PM)の排出基準を満たさないディーゼル車の走行を禁止する規制が1日、始まった。

 規制は車検の初登録から7年を超えたディーゼルトラックやバスが対象。違反車の運行責任者には運行禁止命令が出され、命令に従わない場合、50万円以下の罰金が科せられる。荷主も基準に適合した車を使う義務を負う。

 規制を前に東京都では30日、小池正臣環境局長が「世界的にも例がない取り組みだが、首都圏の人の健康と生命を守るため頑張ろう」と職員に訓示した。

 基準に対応していない車は4都県の場合、4−2割(推計)だが、首都圏以外から流入する車について、都は4都県より悪い状況とみており、業界団体に基準適合をあらためて要請する。

 対応が済んでいなくても、大気汚染物質減少装置の購入を申し込んでいるなど、準備を進めている業者については、各都県が証明書を発行し、取り締まりの対象から外す。また神奈川県は罰則の適用を半年間猶予する。

 東京都は規制開始の1日午前零時から、違反車の取り締まりを東京都中央区の築地市場で実施。取り締まり権限を持つ自動車公害監察員(自動車Gメン)ら職員約30人が4班に分かれ、全国各地から集まったトラックを一台一台検査した。

 規制開始直後から基準への適合を済ませていない違反車が見つかり、職員は運転手に違反通知書を交付していた。

東京大気汚染訴訟(トウキョウタイキオセンソショウ 【英】Tokyo Action on the Air Pollution

2003.09.12 更新日 | 2007.05.11 EICネット

 1996年5月の第1次提訴にはじまり、2000年11月の第4次提訴までの原告計505名が、国道、都道、首都高速道の管理者である国・都・公団及び自動車メーカー7社を被告として、損害賠償請求、汚染物質の差し止めなどを求めた訴訟である。

 この原告には184人の未認定患者(公害健康被害の補償等に関する法律による認定を受けていない人)が含まれていた。

 平成14年10月の判決では、道路端から約50mまでに居住するなどにより気管支ぜんそくを発症、悪化した7名について被告の国・都・公団に損害賠償責任を認めた。この内の1名については未認定の原告であった。自動車メーカーの責任、差止めについては認めなかった。

 被告の東京都に関係する部分については、東京都と一部の被告の間で判決が確定した。しかし、国、原告が控訴したことにより、高裁に持込まれている。

ヒマワリ油をエコ燃料に! 筑波大教授らシステム開発

2003年08月17日 The Sankei Shimbun
 ヒマワリ油をディーゼルエンジンの燃料として利用するシステムの開発研究が進んでいる。筑波大学バイオシステム研究科の松村正利教授らは、零下30度でも凝固しないバイオディーゼル油の製造技術を開発、国内だけでなく欧米やアジアでの展開をにらんで、大学発ベンチャー企業の設立準備を進めている。植物を原料とするバイオディーゼル油は、硫黄酸化物などの排ガス問題を解消し、地球温暖化防止にも貢献する。

 筑波大学と共同で、ヒマワリ油の燃料化に取り組んでいる島根県斐川町では16日から「ひまわり祭り」が開催され、17日にはヒマワリ油で走るトラクターのデモンストレーションが行われる。同町では、出雲空港周辺の転作田15ヘクタールで約100万本のヒマワリを栽培している。筑波大の協力を得て、種から搾った油を燃料化するほか、ヒマワリの茎や葉は紙の原料となるパルプや肥料として再利用し、農村型の資源循環システムの確立を目指している。

 バイオディーゼル油は、硫黄酸化物を排出しないので、軽油を使った場合の環境や健康への害が大幅に軽減される。燃焼時に出す二酸化炭素は栽培時に吸収するので、トータルでは地球温暖化防止につながる。欧米では、軽油とバイオディーゼル油の混合燃料がすでに利用されているが、100パーセント植物由来のディーゼル油は低い温度では流動性がなくなる難点があった。

 松村教授らは、ヒマワリ油が菜種油などに比べて不飽和脂肪酸の含有率が高いことに着目。オゾンの作用で流動点を零下30度まで下げる添加剤を開発し、特許申請している。この研究はドイツ、タイ、フィリピンと協力して行い、世界展開も視野に入れている。

 松村教授は「現時点ではコストが割高だが、環境保全やエネルギー自給の観点からヒマワリを資源作物と位置付け、国家戦略としてバイオディーゼル油への転換を促進すべきだ」と強調している。

東京大気汚染訴訟、原告側が控訴へ

2002年11月11日 The Sankei Shimbun
 ディーゼル車の排ガスで健康被害を受けたとして、東京都内のぜんそく患者らが国と都、首都高速道路公団、自動車メーカー7社を訴えた「東京大気汚染訴訟」で、原告側は11日、被告4者に対し、東京高裁に控訴することを明らかにした。控訴期限の12日に手続きを取る。ただ、原告99人のうち、1審・東京地裁判決で都の賠償支払いが認められた5人は、都が控訴断念を表明したことを受け、都を控訴対象から外し、国など3者だけを対象に控訴する。これにより、都に対して未認定患者1人を含む5人への賠償を命じた1審判決が確定する。

東京大気汚染訴訟、国と首都高公団が控訴

2002年11月08日 Yomiuri On-Line
 東京都内のぜんそく患者らが国、都、首都高速道路公団、自動車メーカーを訴えた東京大気汚染訴訟で、東京地裁から損害賠償の支払いを命じられた国と公団は8日、東京高裁に控訴した。都の石原慎太郎知事は控訴断念を表明しており、国と都で対応が分かれることになった。

 控訴理由について、扇国交相は同日の閣議後会見で、「(東京地裁)判決は幹線道路の沿道50メートル以内の居住者に排ガスの影響を認めたが、この基準に入る人は全国で120万人おり、これらの人について(排ガスの影響を)予見しながら道路をつくることは現実的には不可能」と説明。鈴木環境相は「判決で大気汚染とぜんそくの因果関係を認めた点が問題」と述べた。

 先月29日の1審・東京地裁判決は、自動車メーカーの責任は認めなかったが、国、都、公団について、道路の設置、管理上の落ち度があったとして、原告のうち7人に総額約7900万円の支払いを命じた。

国側に7900万賠償命令 東京大気汚染訴訟判決

2002/10/29 中国新聞
 自動車の排ガスによる東京の大気汚染でぜんそくや肺気腫などになったとして、患者、遺族計九十九人が国や都、首都高速道路公団とディーゼル車のメーカー七社に、総額二十二億三千八百五十万円の損害賠償と汚染物質の排出差し止めを求めた東京大気汚染訴訟の判決が二十九日、東京地裁であった。

 高橋利文裁判長は、公害健康被害補償法の未認定患者一人を含む七人について排ガスと発症、悪化の因果関係を認め、国、東京都、首都高速道路公団に計七千九百二十万円の支払いを命じた。メーカーに対する請求や、汚染物質の排出差し止めは認めなかったが、未認定患者を救済する判断は初めて。

 大気汚染訴訟で初めて、ディーゼル車などの製造、販売による大気汚染のメーカー責任を問い、一九九六年五月に提訴。公害健康被害補償法や条例に基づく公的認定を一切受けていない未認定患者への補償も初めて求め、東京二十三区内をクモの巣状に走る百四本の道路からの「面的汚染」を訴えた。

 裁判で患者側は、国や都などの道路設置・管理の不備や排ガス規制権限を行使しなかった責任に加え「汚染物質の排出が格段に多いディーゼル車の生産を拡大してきたメーカーは道路公害の元凶」とメーカーの責任を指摘。医療費などが支給されない未認定患者については「認定患者以上に被害は重大」と主張した。

 国などは「自動車排ガスとぜんそくなどの発症、悪化との因果関係は明らかになっていない」と反論。各メーカーも「ディーゼル車を含め、最大限の排ガス低減措置を取ってきた」とした上で「そもそも東京への車の集中はメーカーには制御できない問題」と責任を否定した。

 自動車の排ガスをめぐる大気汚染訴訟では、西淀川二〜四次公害訴訟の判決(九五年)以来、地裁段階で患者側勝訴の判断が相次ぎ、尼崎、名古屋南部両公害訴訟の判決では汚染物質の排出差し止めも認められた。各訴訟は国などが早急な環境対策を講じることなどを条件に、高裁段階で既に和解している。

 東京訴訟は四次訴訟まであり、今回の判決は一次提訴分。九九年十二月の口頭弁論からは裁判官五人の異例の態勢で審理が進められた。

東京大気汚染訴訟あす判決、メーカー責任判断に注目

2002年10月28日 Yomiuri On-Line
 ディーゼル自動車の排ガスによる大気汚染で健康被害を受けたとして、東京都内のぜんそく患者など99人が、国と都、首都高速道路公団、さらに自動車メーカー7社を相手取り、総額約22億円の損害賠償と汚染物質の排出差し止めを求めた「東京大気汚染訴訟」の判決が29日午前10時から、東京地裁(高橋利文裁判長)で言い渡される。大気汚染訴訟で初めて被告となった自動車メーカーの責任について、司法がどのような判断を下すか注目される。

 この訴訟は1996年5月以降、4次にわたって提訴された。今回の判決は1次提訴分。1―4次の原告総数計505人の中には、公害健康被害補償法の対象にならない「未認定患者」が184人おり、1次原告にも12人含まれている。未認定患者の請求が認められれば初のケースで、国の補償制度の見直しにつながる可能性もある。

 裁判で原告側は、メーカーには排ガス対策の不十分な自動車を大量生産・販売した責任があるとし、国などに対しても、交通量抑制などの対策を怠ったことや必要な排ガス規制をしなかった責任がある、と主張した。

 これに対し、被告のメーカー側は「国の規制を守り、排ガスを低減させる努力も続けてきた」と主張。国側は「公共性の高い道路の使用制限は困難」「可能な限り厳しい排ガス規制をしてきた」と反論してきた。

 過去の大気汚染訴訟では判決までに10年以上かかるケースが多かったが、東京訴訟では異例の裁判官5人による合議体制で審理の迅速化を図ったため、提訴から約6年5か月で結論が出されることになった。

大気調査:観測地点の18%で環境基準を超える ベンゼン濃度

2002年10月17日 Mainichi INTERACTIVE
 環境省は17日、全国の自治体が01年度に実施した有害大気汚染物質モニタリング調査結果を発表した。発がん性物質のベンゼンの濃度が観測地点の2割近くで環境基準を超えていた。

 調査は全国の工場周辺や道路沿い、一般の住宅地など368地点で実施。ベンゼン濃度の観測値の平均は1立方メートルあたり、2.2マイクログラム(マイクロは100万分の1)で、00年度の2.4マイクログラムを下回り、やや改善傾向にあるものの、18%に当たる67地点で環境基準の3マイクログラムを超えていた。

 とくに道路沿いでは、94地点のうち39地点で環境基準を超えた。川崎市川崎区、山梨県甲府市、大阪市の西淀川区と北区、岡山県倉敷市の観測地点では1立方メートルあたり5マイクログラムを超えた。 【足立旬子】

大気の浮遊粒子、大幅悪化

2002年09月27日 Yomiuri On-Line
 自動車や工場の排ガスに含まれ、呼吸器障害の原因となる浮遊粒子状物質(SPM)の昨年度の環境基準達成率が、首都圏を中心に、一昨年度に比べ大幅に悪化したことが27日、環境省の調査で分かった。

 SPMの環境基準(1立方メートル当たり0・1ミリ・グラム以下)達成率は、全国の幹線道路沿いにある排ガス測定局で47・3%(一昨年度は66・1%)、一般測定局で66・6%(同84・4%)と、それぞれ一昨年度に比べ約20ポイント低下している。

 自動車NOx・PM法の対策地域である首都圏、愛知・三重、大阪・兵庫の3地域全体の達成率も、排ガス測定局が25・7%、(同54・2%)、一般局が51・2%(同81・1%)と低水準。特に首都圏の排ガス測定局は15・1%(同45・7%)の達成率。

 過去2―3年は首都圏を中心に風の強い日が多く、SPMの環境基準達成率は改善傾向にあったが、昨年は風速の弱い日が多く、浮遊粒子が拡散しなかった。また黄砂の観測が増えていることなどが悪化の原因と、同省では見ている。

 一方、酸性雨の原因となる二酸化窒素(NO2)は、1999年度から昨年度まで3年連続して環境基準(1日の平均値が0・06ppm以下)達成率が高かった。排ガス測定局の79・4%、一般測定局の99%が基準をクリアするなど、3年連続して同水準を保った。

米環境保護局:ディーゼルエンジン排ガスの発がん性認定

2002年09月04日 Mainichi INTERACTIVE
 米環境保護局(EPA)は3日、ディーゼルエンジンからの排ガスに含まれる物質にがんを引き起こす可能性があると認定する報告書を発表した。

 ディーゼルエンジンは、日本を含む全世界で主に大型トラックやバスなどが搭載している。日本でも今年3月、環境省の検討会がディーゼル排ガスに含まれる微粒子(DEP)による肺がん発症の危険性を指摘している。

 EPAによる今回の公式認定は、米国でのディーゼルエンジン規制につながる可能性もある。

 米環境団体は今回のEPAの認定を歓迎。「クリーン・エア・トラスト」は同日「今回の報告書によって、ディーゼル排ガスは健康に有害という認識が確立され、排出規制につながるだろう」との声明を発表した。

 EPAは現在、大型トラック、バスについてディーゼル排ガスの増加抑制策を進めており、今後は建設機械や農機具でも規制を進めたい方針だ。

 DEPは、ディーゼルエンジンでの不完全燃焼によって生成される粒子状の物質で、すすのような炭素粒子の周囲にさまざまな化学物質が付着している。都市部では浮遊粒子状物質の大部分がDEPとされ、肺がんやぜんそくなど呼吸器病の原因となる。(ワシントン共同)

ディーゼル規制後退 環境庁のNOx削減法改正案

2000.12.20(03:07)asahi.com
 環境庁が来年の通常国会に向けて検討していた自動車窒素酸化物(NOx)削減法の改正案の内容が、固まった。目玉だったディーゼル乗用車の規制値は、欧州連合(EU)の要求を受け入れた結果、当初案より大幅に後退し、3倍近く緩まることになった。適用を受ける地域指定も、名古屋市、兵庫県姫路市など一部の拡大にとどまった。また、新しい排ガス規制値の車に買い替えるための猶予期間は、トラックで10年と、東京都の条例に比べ3年長くされている。EUの要求で基準を緩めたことに対し、日本自動車工業会は「外圧で数値を緩めたら国民に説明できない」と当初案に戻すよう求めている。

 環境庁の中央環境審議会の大気・交通合同部会(部会長、池上詢・福井工業大教授)が春から方策を検討、19日、最終報告をまとめ、川口順子環境庁長官に答申した。この最終報告には、規制値などの具体的な数値は盛り込まれていない。同庁が関係団体と答申の内容に沿って調整して具体的な改正案を固めた。

 ディーゼル乗用車に対する規制は、同庁の当初案では、ガソリン乗用車の規制値(窒素酸化物で走行1キロメートル当たり0.08グラム)を適用するはずだった。この値だと、「ディーゼル乗用車は規制地域では事実上、販売できなくなる」(同庁)としていた。

 ところが先月、EUの欧州委員会事務局と欧州自動車工業会から「ディーゼル乗用車が販売できなくなるような厳しい規制値は困る」とする申入書が届いた。欧州のディーゼル乗用車が販売できない場合は、不公平な貿易規制とし世界貿易機関(WTO)へ提訴することも示唆していた。

 このため、同庁はガソリン乗用車の旧基準(同0.25グラム)を規制値として採用することに方針を転換した。

 法律が適用される指定地域については、当初案では、愛知県のほか群馬県など北関東地域、京都市へ拡大する方向だった。しかし、北関東地域は、もともと東京からの排ガスで汚染されているなどの指摘があり、京都市についても、既存の指定地域から距離が離れているなどの理由で断念した。結局、名古屋市、岡崎市など愛知県の南部地域を新たに指定、近畿では、姫路市、高砂市など兵庫県の西南地域まで広げるにとどまった。

ディーゼル車に独自規制 東京都の環境確保条例が成立

2000.12.15(18:37)asahi.com
 ディーゼル車に対する独自の排ガス規制などを盛り込んだ東京都の環境確保条例が15日、都議会本会議で可決、成立した。来年4月から施行される。1969年に制定された公害防止条例を全面改正するもので、2003年10月からは、都の独自基準を満たさないディーゼル車の都内の走行を禁止する。地球温暖化をもたらす冷媒用フロンの排出禁止や、有害化学物質の適正管理、土壌汚染対策の義務づけ、小型焼却炉の原則使用禁止など、国の規制を先取りする内容となっている。

 2003年10月からの走行規制は、都の基準を満たさないトラックやバスなどのディーゼル車の走行を、他県から流入する車も含めて禁止する。新車登録後7年間の猶予期間はあるが、それを過ぎると、基準を満たさない車は買い替えるか、排ガス浄化装置(DPF)を装着しなければならない。また、アイドリング・ストップや大規模事業所への低公害車の導入を義務づけし、重油を混ぜた混和燃料の使用を禁止する。

 全日本トラック協会は同日、「本条例改正案には多くの問題点を含んでいる。無修正のまま可決成立したことは、誠に残念」とする見解を発表した。

「都の大型ディーゼル車税は逆効果」 建設省が試算

2000.11.28(23:15)asahi.com
 環境対策のため首都高速道路を利用する大型ディーゼル車に課税する新税案が東京都税制調査会の答申案に盛り込まれていることに対し、建設省は28日、新税導入がかえって大気汚染につながる可能性があるという首都高速道路公団の試算を公表した。大型ディーゼル車が、首都高速から一般道に流出すると想定したためだが、都税調は「課税することで都心への流入そのものを抑制するのが狙い」としており、早くも論争が熱を帯びてきた。30日に答申を受ける石原慎太郎知事の判断が注目される。

 首都高速公団は、税額を600円と想定して試算。大型ディーゼル車の首都高速利用台数は現在、1日約7万8000台だが、そのうち約1万3000台が一般道に流入する結果、窒素酸化物が年間170トン、浮遊粒子状物質が同14トン増加するとした。

 建設省などによると、首都高速は平均時速が38キロ。これに対し、東京23区内の一般道は18キロ。速度が遅いほど排ガス量が増え、建設省道路局は、新税は逆効果とみる。

 扇千景建設相も28日の記者会見で「600円がもったいないからって下に降りられると、もっと低速になって環境的によくないんじゃないか」と懸念を示した。

 しかし、都税調は、税を課すことで都心への車の進入そのものを抑制するのが狙いだと強調。都心を通らない首都高速湾岸線の通行だけは非課税とし、大型車を同線に誘導する案も検討している。また、大型貨物車などの損益分岐点を平均で4750円とする試算から「600円程度の料金なら一般道には降りない」とも見ている。

 都税調会長の神野直彦・東大経済学部教授は「この税は税収そのものを目的としているのではなく、次世代に負の遺産を残さないための政策。建設省がどういう立場で試算データを出したのか分からないが、大気汚染を減らすという立場なら、むしろアイデアを出してほしい」と話している。


排ガス一部差し止め/名古屋南部大気汚染訴訟 地裁判決

2000.11.27 The Sankei Shimbun
国、企業に賠償命令3億円

 車の排ガスと工場排煙で健康を害したとして名古屋南部の公害病認定患者と遺族計百四十五人が、国道を管理する国と企業十社に約四十二億円の損害賠償と環境基準を超える有害物質の差し止めを求めた名古屋南部公害訴訟判決で、名古屋地裁の北沢章功裁判長は二十七日、「道路の公共性を考慮しても、原告の損害は生命、身体にかかわり回復困難」と述べ、浮遊粒子状物質(SPM)の排出差し止めを命じた。

 国に約千八百万円(対象の原告三人)を、企業に約二億八千九百万円(同百十人)を賠償するよう命じた。

 排ガス差し止めを認めたのは、一月の尼崎訴訟判決に続いて二例目。実効性のあるディーゼル車対策を早期に実現するよう行政側に迫ったといえる。患者側の全面的な勝訴判決で、係争中の東京大気汚染訴訟に弾みを付けそうだ。

 判決理由で北沢裁判長は「国は、昭和四十七年の国道23号の全面開通以来、沿道に膨大な自動車排ガスを蓄積させ、局所的な大気汚染を形成させた。沿道二十メートル以内の原告三人のぜんそくを発病、増悪させた」と認め国に賠償を命じた。

 国に対する請求が認められた三人のうち生存している一人について差し止めの請求権を認め「洗濯物が汚れるといった程度をはるかに超え、生命、身体への危険性にさらされている」と重大な健康被害が現在も続いていると認めた。

 さらに「差し止めを認めても、社会的に回復困難な損失を生じることなく対応はできる」と述べ、千葉大の調査を基に、この原告の居住地を基準とする地域で、排ガス中に含まれるディーゼル排気粒子(DEP)などのSPMの環境基準(一立方メートル当たり〇・一ミリグラム)の一・五九倍を超えてはならないとした。

 国のこれまでの対応については「国は、国道23号を一部立体化するなど努力したが、有効であったとは認められない。提訴から十年余りが経過したが、被害発生を防止する格別の対策を取ってこなかった」と、対応の不十分さを厳しく指摘した。

 国道23号沿線の二酸化窒素については差し止めの対象とは認めなかった。

 企業十社の排出責任については「昭和三十六年から五十三年まで(排煙に含まれる)二酸化硫黄で患者を発病させた」として賠償を命じた。

 国の公害病未認定患者である男性の請求は棄却した。

国の責任どう判断 名古屋南部大気汚染訴訟、27日判決

2000.11.26(10:02)asahi.com
 工場排煙と自動車の排ガスによる大気汚染で健康を害したとして、名古屋市や愛知県東海市の公害病患者らが、中部電力(本店・名古屋市)など企業10社と、被害地域周辺の国道を管理する国を相手取り、計約42億円の損害賠償と汚染物質の排出差し止めを求めた「名古屋南部大気汚染公害訴訟」の判決が27日、名古屋地裁で言い渡される。提訴から11年8カ月が経過。訴訟は3次にわたり、原告の総数は273人にふくらんだ。このうち今回は1次訴訟分の原告145人に対する判決になる。

 1次訴訟は1989年3月に提訴され、昨年11月に結審した。工場排煙と排ガスによる「複合汚染」を問う大型訴訟としては、これまでに大阪・西淀川、川崎、兵庫・尼崎があるが、名古屋訴訟は同じ争点を持つ公害訴訟としては最後のものとなる。

 これまでの訴訟で、企業側の責任を認める司法判断は定着しており、排ガス汚染で国の責任を認めるかどうかが最大の争点だ。

 排ガス汚染をめぐっては、西淀川(2―4次)と川崎(2―4次)の両判決で、窒素酸化物による健康被害を認めている。1月の尼崎判決は浮遊粒子状物質の排出差し止めを命じる画期的な判断を示しており、名古屋地裁がこうした論点にどこまで踏み込むかが注目される。

 また、過去の判例では、企業側と国の責任を同時に認めたことがなく、今回、一度に両者の責任を認めると、公害裁判史上で初のケースとなる。その場合、企業と国の責任割合をどう配分するのかもポイントの1つだ。


「良いことだから批判は無視」ディーゼル車規制で都知事

2000.11.10(09:33)asahi.com
 東京都が2003年度から予定しているディーゼル車の排ガス規制強化に対し、バス業界などの不満が強いことについて、石原慎太郎知事は10日の記者会見で「良いことをやるんだから(批判の)声は無視する」と語った。

 都は12月に改正する予定の公害防止条例で、2003年10月から、走行中のバスやトラックに対する厳しい排ガス規制を始め、規制を満たさない車は、都外からの流入車を含めて罰金や氏名公表の罰則を科すことにしている。新車登録から7年以内の車は適用を猶予されるが、それを過ぎれば新車に買い替えるか、排ガス浄化装置(DPF)を取り付けなければならない。

 石原知事は会見で、業界への対応について「補償や助成はやりだしたらきりがない。どれだけ経済負担があるか、やってみないとわからない。やる前から反対するのは世の常だが、今まで行政はそんなことばかり気にしてきた」と述べた。

「自動車Gメン」を設置へ 排ガス規制で東京都

2000.11.10(00:40)asahi.com
 東京都は9日、都独自のディーゼル車の排ガス規制を盛り込んだ公害防止条例の改正案をまとめた。2003年度から新たな規制を導入し、基準を満たさないバスやトラックの走行を原則として禁止する厳しい内容だが、それに先立って違反者に目を光らせる自動車公害監察員、通称「自動車Gメン」を来年度から新設する方針だ。条例改正案は12月の定例都議会に提出される。

 自動車Gメンは都職員が務め、事業所への立ち入り検査や路上検査、違反車両の摘発などの権限を持つ。来年度は40人を任命する計画で、警視庁などと協力して検問などに当たる。

排ガス規制にディーゼル乗用車も追加 環境審小委

2000.11.06(22:32)asahi.com
 自動車排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)などを減らすため総合的な排ガス対策を検討している中央環境審議会小委員会は6日、最終報告案をまとめた。自動車NOx法の規制対象をディーゼル乗用車にまで拡大することや、粒子状物質(PM)も対象に加えること、総量規制が課せられる特定地域を名古屋市などに拡大すること、などを盛り込んだ。環境庁は年内に答申を受け、次期通常国会に改正案を提案する。

 最終報告案は、従来の貨物車やバスなどに加え、ディーゼル乗用車も規制対象にすることを明記した。乗用車からの粒子状物質や窒素酸化物の排出量が総量として多く、規制の効果も高いと考えられたためだ。地方自治体からの要望にこたえて、PMも規制対象に加えた。

 また、総量規制が課せられている特定地域を、これまでの首都圏、大阪・兵庫圏に加え、名古屋市及び、その周辺地域にまで広げた。

 さらに、一定台数以上を使用する事業者に対し、自動車利用管理計画の策定を求めた。内容は(1)最新規制適合車への代替(2)低公害車、低排出ガス車の導入(3)物流効率化などを通じた走行量の削減(4)適正運転など、環境負荷の少ない自動車の利用管理のための環境保全対策を定める、など。

ディーゼル車排ガス削減、地域限定で低硫黄軽油供給へ

2000.11.04(14:11)asahi.com
 ディーゼル車の排出ガスに含まれる有害な粒子状物質(PM)を除去する装置(DPF)を普及させるため、運輸省は、硫黄濃度を低くした燃料用軽油を地域を限定して優先的に供給する方針を固めた。東京都が装着義務づけ方針を打ち出して以来、ディーゼル車排ガス問題の「救世主」として注目されているDPFだが、現在国内で流通している高硫黄軽油に対応できるタイプは、値段が高いことなどから普及率はゼロに近い。一方の低硫黄軽油用DPFは安価で除去性能が高いが、油が出回っていない。運輸省は、通産省や資源エネルギー庁、石油業界に働きかけ、段階的に低硫黄軽油の販売を進め、DPFを購入する事業者に対して補助金を出す計画だ。対象地域の候補には名古屋市や大阪市などがあがっている。

 運輸省によると、実験的に都バスに装着している東京都以外に、DPFを導入している事業者はほとんどない。

 一方、低硫黄軽油を精製するには、原油から硫黄分を取り除く脱硫装置を新たに設置する必要がある。ディーゼル車の排ガスが社会問題化したことを受けて、石油業界は2003年から2004年にかけて低硫黄軽油の部分供給を始める意向を表明している。

 しかし、運輸省は「実現するまでの4年間、野放しになってしまう」として、脱硫装置導入が進んだ事業者から順次、ディーゼル車対策に取り組む都市に優先的に低硫黄軽油を供給するよう、業界の指導を通産省などに要請する。今月から実験的に都バスの一部で低硫黄軽油を使用する東京都には、昭和シェル石油が供給することになっている。

 運輸省では、低硫黄軽油の優先供給を、自治体がディーゼル車排ガス問題に取り組む際の誘導策の柱にしたい考えだ。

 同省は、DPFと低硫黄軽油の二重効果で、1台あたりのPM排出量を、最大で現在の7%に削減できると試算している。

ディーゼル車規制に排ガス検問車103台導入 警視庁

2000.10.24(20:23)asahi.com
 大気汚染の原因の一つとされるディーゼル車の排ガスを取り締まるため、警視庁交通部は、黒煙の測定器を搭載した「公害取締検問車」を東京都内の各署などに配備し、25日から、都内全域の幹線道路などで一斉に取り締まりを始める。東京都が昨年から、ディーゼル車の使用制限を盛り込んだ規制を検討しており、新車両の配備はその一環。黒煙を測定する検問車の導入は全国で初めてという。

 警視庁交通執行課によると、検問車は一般のワゴン車に黒煙の汚染度を測定する「ディーゼルスモークメーター」を搭載した。測定器に付いたホースを対象の車の排気管内に入れ、2―3分で自動的に黒煙の汚染度を測る仕組みだ。規制値を超えた場合、道路交通法(整備不良の車両の運転の禁止)違反などの容疑に問われ、反則金も科せられる。

 今月初めから、島しょ部をのぞく都内96署と交通機動隊、高速道路交通警察隊に計103台を配備した。リース会社から半年間で4800万円で借り受けた。

 警視庁が今年1月から9月までに行った取り締まりでは、規制値を超える黒煙を排出し、整備通告や指導警告を受けた車両は約540台にのぼった。検問車の導入で機動的な取り締まりが期待され、啓発にもつなげたいという。

 一斉取り締まりは25日午前から、大田区や世田谷区などの幹線道路14カ所で実施する予定。同時に都による軽油抜き取り調査を実施する。今後も月2回程度の取り締まりを予定しているという。

ディーゼル車の排ガス規制 警視庁が検問車を配備/全国初103台 機動性向上、取り締まり効率的に

2000.10.21 The Sankei Shimbun
 東京の大気汚染の大きな要因とされるディーゼル車の排ガスに対する取り締まりを強化するため、警視庁は測定器を搭載した公害取締検問車を一斉配備し、二十五日に出動式を行う。順次、検問を実施し、首都の交通公害対策に本腰を入れて取り組む。ディーゼル車から排出される黒煙を測定する検問車両の導入は全国で初めて。

 公害取締検問車は、ワンボックスカーに自動測定器の「ディーゼルスモークメーター」を搭載したもので、百三台が島部を除く都内九十六署と交通機動隊、高速隊に配備された。

 取り締まりは、測定器のホースをトラックなど車両の排気管に入れ、排出される黒煙の測定を行う。規制値を超えた場合、指導や警告などをして改善を求める。

 警視庁交通執行課によると、整備不良が原因で規制値より多く黒煙を排出し、整備し直すよう通告などを受けた車両は、今年一月から九月末まで、約五百四十台にのぼった。

 排ガス取り締まりは、これまで、測定器を検問所に運んで行っていたが、同課では「車載することで機動性が向上し、効率的な取り締まりが可能になる」と効果を強調する。

 東京の大気汚染はここ十数年、改善されていないのが実情。都のディーゼル車対策係によると、主要な原因は自動車の排ガス。健康への悪影響が指摘される窒素酸化物や粒子状物質の主な発生源は、ディーゼル車とされる。都の調べによると、都内の二酸化窒素濃度の国の環境基準達成率は、住宅地で約九〇%程度で、道路沿いでは四〇%台の低水準にとどまっている。浮遊粒子状物質も基準値に遠く及ばない状況。

 このため、都は昨年から「ディーゼル車NO作戦」を実施し、「国の規制は甘い」として、ディーゼル車の使用制限などを盛り込んだ公害防止条例改正案の十二月議会上程を予定するなど交通公害対策を積極的に進めており、今回の警視庁の取り締まり強化について「交通公害対策の啓発につながる」(ディーゼル車対策係)と期待を寄せている。

ディーゼルエンジン油に新規格「DH―1」 来春導入

2000.10.10(20:55)asahi.com
 日本自動車工業会は10日、エンジンの弁の摩耗が少なくてすむ自動車用ディーゼルエンジン油の新規格「DH―1」を来年4月1日から導入すると発表した。

 現在のディーゼルエンジン油は、米国の規格である「API」規格が一般に用いられているが、日本製エンジンの場合、摩耗が激しい、と指摘されていた。そのため、日本自動車工業会や石油連盟などが協議会を作り、新規格の導入について話し合ってきた。

 製造会社や販売会社は今後、自主的にエンジン油の性能試験を行い、新規格に適合する製品には、来年4月からオイル缶などに「DH―1」の表示をする。

尼崎公害訴訟で国側が弁論再開申し立てへ

2000.09.29(18:20)asahi.com
 兵庫県尼崎市の公害認定病患者らが国と阪神高速道路公団を相手に、大気汚染物質の排出差し止めなどを求めた尼崎公害訴訟の控訴審で、国側は29日までに、来月、大阪高裁に弁論再開を申し立てる方針を固めた。

 同高裁は1回で弁論を終結し、国と公団に強く和解を促したが、国側は「何の立証もさせないままの結審は、手続きの保障を欠く」などとしている。

 一審で国側は、自動車排ガスと健康被害との因果関係を否定した。弁論が再開されれば、一審判決が浮遊粒子状物質(SPM)の排出差し止めを認めた根拠などについて、反証していく考えだ。

ディーゼル車で配送お断り! 追放作戦の一環で東京都

2000.09.26(00:35)asahi.com
 東京都は25日、物品の搬入などのために取引業者が都庁舎を訪れる際に、ディーゼル車の使用を禁止する方針を決めた。都のディーゼル車追放作戦の一環で、2002年4月からの本格実施後は、ディーゼル車で配送した業者を一定期間契約からはずすなどの罰則も検討している。ディーゼル車しか持っていない業者はガソリン車などへの買い替えか、専門の運送業者への委託などを迫られることになるが、都は昨年実施したアンケートで取引業者の約7割がこの方針に賛成したため、実施に踏み切ることにした。

 対象は都と物品納入などの契約を結んでいる業者で、西新宿にある2つの本庁舎を訪れる際に、ディーゼル車を使わないか、都が認める排ガス浄化用のフィルター(DPF)を装着することを求める。

 都環境局によると、大型トラックはディーゼル車以外への代替が難しく、DPFも実用化されていないが、都庁を訪れる車のほとんどは2トントラック以下。都は取引業者で直接影響を受けるのは百数十社程度と見ている。

 来年3月までは広報期間とし、その後1年間は試行期間として、納入時に「使用車報告書」を提出してもらう。本格実施後は、ディーゼル車の不使用を契約に明記し、抜き打ち調査などで監視する。

特殊車も1年前倒し/ディーゼル排ガス低減/中央環境審答申案

2000.09.25 The Sankei Shimbun
 中央環境審議会の大気部会は二十五日、フォークリフトやトラクターなどディーゼル特殊車の排ガス低減実施時期の前倒しを柱にした答申案をまとめた。一般から意見を募集するパブリックコメントにかけた後、再び部会を開いて年内に答申する方針。

 答申案は、車の排ガス全体のうち特殊車から出る割合は窒素酸化物(NOx)で三割、粒子状物質(PM)で一割と高く、当初平成十六年から規制の対象とする予定だったものを一年間前倒しし、十五Nとした。また目標値が決まっていなかった黒煙の排出量を四〇%に設定した。

 既に一般のディーゼル車は排ガスに含まれるNOxとPMを十年比で半分に削減する規制を二年前倒しして十七年からとし、具体的な数値を来年度末に決めることにしている。

都、不正軽油大規模摘発へ/1000カ所で抜き取り調査/製造基地発見に全力

2000.9.22 The Sankei Shimbun
 悪質な脱税の温床となり、大気汚染の原因となっている不正軽油を都内から一掃することを目指している東京都は二十二日までに、神奈川、千葉、埼玉などに協力を要請して不正軽油の製造基地や保管場所を発見し、販売ルートを解明するための本格的な撲滅作戦に乗り出す方針を固めた。都内千カ所にある都発注の工事現場で使用する軽油や、都県境の路上でディーゼル車が使用している軽油から大規模な抜き取り調査を実施して実態解明を進めるほか、悪質な違反者には厳しい罰則を科していくことも決めた。

 都内の不正軽油での脱税額は推定百十億円とみられており、都では「悪質な脱税の排除と環境革命を進めるうえでもやりとげる」としている。

 都によると、不正軽油(混和軽油)をディーゼル車の燃料として使用することは、脱税行為となるとともに、排ガス中のPM(粒子状物質)やNOx(窒素酸化物)を増加させ、環境にも悪影響を与えると位置づけている。

 このため、都が展開する撲滅作戦では、硫酸と混ぜて化学反応で不正発覚を困難にしている「A重油」の油槽所や保税蔵置場の調査に乗り出す。警視庁や消防庁などと協力し、合同捜査を行うことで混和製造業者の特定を急ぎ、不正軽油製造基地の発見に全力を挙げるという。都では独自の内定の末、これまでに数カ所の不正製造基地を発見している。

 また、都内に千カ所ある都発注の工事現場で工事機械などに使用する軽油や都が購入する軽油の抜き取り調査を実施。さらに警視庁交通機動隊、神奈川、千葉、埼玉と協力して都県境幹線道路の三十カ所でディーゼル車などから路上抜き取り調査を行い、違反者から販売元や製造元までの追跡調査を行っていく。

 都では今年七月、軽油引取税約六億八千五百万円を納めなかった神奈川県藤沢市内の石油取引業者に対して地方税法違反の疑いで強制調査に着手。同時に鳥取県と合同で、軽油引取税約四千八百万円を納めなかった町田市内の業者にも強制調査を実施している。

 軽油元売り業者から大量の未課税軽油を仕入れ、販売業者に軽油引取税を上乗せせずに廉価で販売して引取税を納税しないもので、全国的に昨秋ごろから多発。都によると、軽油引取税の不納入額は、都の分だけで十五社分の約四十五億円、全国では三百五十億円以上にのぼるという。

尼崎公害訴訟が結審、国側に和解求める 大阪高裁

2000.09.22(01:01)asahi.com
 自動車の排ガスなどによる大気汚染に苦しむ兵庫県尼崎市の公害病認定患者と遺族らが国と阪神高速道路公団を相手に、大気汚染物質の排出差し止めなどを求めた尼崎公害訴訟で、控訴審の第1回口頭弁論が21日、大阪高裁で開かれ、妹尾圭策裁判長は弁論終了後に審理を打ち切り、結審した。

 「年内に判決を言い渡したい」と述べたうえで、和解勧告を拒否して審理の継続を求めた被告の国・公団側に和解のテーブルに着くようあらためて要望した。妹尾裁判長は「解決方法として和解が最善という考えは現在も変わらない。和解のためのドアはいつでも開けてある」などと述べた。

 今年1月の一審・神戸地裁判決が道路公害裁判で初めて一定水準を上回る大気汚染物質の差し止めを命じた尼崎公害訴訟の控訴審は、今後、国・公団側が和解交渉に臨むかどうかが焦点となる。

 妹尾裁判長は「国・公団側が和解に応じかねるというならば、審理を速やかに終えて判決をするのが当裁判所に与えられた役割だ」との見解を表明した。

 一審の審理に10年以上かかり、控訴後もすでに約8カ月たったことを指摘し、「必要な主張、立証は現在までになされているとみるべきだ」などと述べて、結審するのが相当だとの判断を示した。そのうえで「口頭弁論は終結するが、国・公団側が、和解のテーブルにつくことを検討されることを希望する」と説いた。

 この日の口頭弁論では原告団長の松光子さん(68)らが意見陳述した。松さんは「提訴以来、138人の原告が亡くなった。公害病に苦しむすべての患者が和解を期待している」と訴えた。一方、国・公団側は、一審判決が浮遊粒子状物質(SPM)の排出差し止めの根拠とした千葉大学の調査結果について「浮遊粒子状物質の健康影響を調べることを目的にしたものではなく、差し止め請求は認容される余地がない」などと批判した。

 妹尾裁判長は8月29日に「20世紀に発生した公害事件は今世紀中の解決を目指す」と述べて、和解を勧告。原告側は和解に応じる意向を示したが、被告の国・公団側は勧告を拒否し、来年3月までの審理を希望していた。

東京都バスが低硫黄軽油を導入 国内営業車で初

2000.09.20(01:24)asahi.com
 東京都は19日、硫黄分の濃度を現在の規制値の10分の1に減らした低硫黄軽油を、11月中旬から都バスの一部で使用すると発表した。低硫黄軽油は欧米では普及しているが、国内で営業用に使うのは初めてで、昭和シェル石油(東京都港区)が都に供給する。低硫黄軽油と高性能のフィルター(DPF)を併用すると、ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる粒子状物質(PM)の大部分を取り除くことができるとされる。石油業界が低硫黄軽油の供給を始めるのは早くて2003年前後と見られているが、都バスが前倒しで導入することで普及にはずみがつきそうだ。

 低硫黄軽油を導入するのは都バスの目黒営業所港南分駐所(東京都港区)で、34台のバスがある。同分駐所では年間約700キロリットルの軽油を消費しているが、すべてを低硫黄軽油に替える。昭和シェル石油は試行生産と位置づけ、価格を現在の軽油の市場価格程度に抑える。また、同分駐所のバスのうち2台に英国製のDPFを取り付け、実際の運行で性能を調べる。

ディーゼル排ガス微粒子 大都市圏では米の9倍にも

2000.09.09(14:30)asahi.com
 発がん性があり、ぜんそくを悪化させるディーゼル車からの排ガスに含まれる微粒子(DEP)の大気中の濃度が、東京、神奈川、埼玉、大阪では、米国のロサンゼルス、デンバーなどの大都市より最高で9倍も高くなっていることが、環境庁の報告書でわかった。国内での総排出量は年間約6万トンに及び、単位面積で比べると米国の13倍、欧州連合(EU)の2倍になると推計している。同庁は、首都圏と近畿圏などを対象にした自動車窒素酸化物削減法の改正や排ガス規制の強化を急ぎたいとしている。

 環境庁は今春から、ディーゼル排気微粒子が健康にどんな悪影響を与えるか、リスク評価検討会を設置して調べている。全国の自治体の協力を得たほか、米国やEU諸国で公表されているデータなどと比較対照した。

 大都市圏を中心に、粒径が2.5マイクロメートル以下(マイクロは100万分の1)の微小粒子を測定し、工場の煙など他の物質を除いてDEPのみの濃度を導いた。1立方メートルあたりでみると、東京都(3地点)では最高31.1マイクログラム、埼玉県(9地点)は同33.6マイクログラム、神奈川県(11地点)は同22.6マイクログラム、大阪府(4地点)が同10.1マイクログラムで、平均すると、微粒子中のDEPは3―4割にのぼった。

 これに対し、ロサンゼルスやデンバーの市街地や郊外地域では最高でも3.6マイクログラムで、DEPが微粒子に占める割合は約1割と低かった。ただ、ニューヨーク・マンハッタンでは、最高46.7マイクログラムという高い数値を示した。

 国内のDEPの総排出量は5万8900トン(1994年)で、ディーゼル車の交通量に車速、車種データを加味して推計した。このうち62%が2―4トン積み普通トラックの排出だとしている。

 欧米は、米国が11万1500トン(96年)、EUが24万トン(95年)と多いが、1万平方キロメートルあたりに換算すると、日本の1558トンに対し、米国は13分の1の119トン、EUは半分以下の673トンだった。

 米国では、ディーゼル車はトレーラーなど10トンを上回る超大型車やバスに限られ、トラックのほとんどがディーゼル車の日本と事情が違う。

ディーゼル排ガス対策で自治体バスに補助 環境庁方針

2000.08.16(03:11)asahi.com
 ディーゼル排ガス対策を進めるため、環境庁は来年度から、東京都など自治体がバスにディーゼル排気微粒子(DEP)を除去する後処理装置を装着する際、費用の2分の1を補助する方針を決めた。後処理装置はバスの場合、約200万円かかるため、自治体側から費用負担の支援を要望されていた。来年度予算の概算要求に約2億円を盛り込み、首都圏や近畿圏などから優先的に補助を始めたいとしている。

 DEPはディーゼル排ガスに含まれる1マイクロメートル以下の小さな微粒子で、発がん性があるほか、ぜんそくを起こすことも動物実験などでわかっている。

 環境庁は、首都圏と近畿圏などの大気汚染を改善するため、自動車窒素酸化物(NOx)削減法の改正を検討しており、ディーゼル乗用車の販売禁止、ディーゼルトラックを最新規制車に強制的に代替することなどを柱とする方針だ。しかし、いま走っているディーゼル車は購入時期によって猶予期間が設定され、買い替えるまでの間の対策が急務とされていた。

 後処理装置は、いすゞなどが開発を進め、装置の中で燃やしたりしてDEPの9割以上を除去することができる。東京都が今年、後処理装置の装着義務づけの方針を出すなどの動きがあり、環境庁、運輸省などで作る検討会も先月、「一律の義務づけは技術的に困難」としながらも、車種によっては有効な排ガス対策だと認めた。

 そのうえで、自治体のディーゼル車への装着補助は環境庁が、民間事業者への補助は運輸省が担当することで合意していた。

ディーゼル排ガス対策で運輸省がフィルター購入補助へ

2000.08.11(03:21)asahi.com
 ディーゼル車の排ガス対策のため、大気汚染の原因となる排ガスの粒子状物質(PM)を除去するフィルター(DPF)を取り付けたバスやトラックの事業者に対し、運輸省は、購入費の一部を補助する方針を固めた。DPFをめぐっては、東京都が装着義務化の方針を今年2月に発表。これに対して環境庁などの「ディーゼル車対策技術評価検討会」は、すべての車への一律義務づけは不可能とする中間報告をまとめたが、運輸省では、取り付け可能な車種について、導入を促進する方針で、来年度予算の概算要求に約2億5000万円を盛り込むことにしている。

 PMについては、今年1月の尼崎公害訴訟で、健康に悪影響があると認められ、国などに対して一定以上の排出を差し止める判決が出ている。DPFは、エンジンの排気系に取り付けたフィルターによって、排出ガスのPMを除去する。使用中の車において、PM排出量を8―9割程度低減できるとされる。

 しかし、DPFの価格は、トラックで約50万―80万円、バスで約70万―240万円。東京都の方針に対し、トラック業界などからは、助成策を求める声が上がっていた。

 尼崎訴訟判決や東京都の方針を受けて、環境庁、運輸省、通産省は今年3月、専門家による技術評価検討会を設置し、DPFの性能調査を行った。7月末にまとめた中間報告で、取り付けスペースがないなどの理由から、一律の装着義務化は不可能としたが、適用可能な一部の車種については「装着を促進する方策が有効」と指摘した。

 このため運輸省では、装着可能でPM低減効果が高い車種については、早急に対応できるよう補助制度を新設することにした。補助の対象は、自動車NOX法の指定地域となっている首都圏や近畿圏を走る大型バスや大型トラックで、来年度から、購入する事業者に対し、地方自治体を通じて4分の1までを補助する考えだ。対象となるバスは約9万台、トラックは約17万台にのぼるとみている。

クレーンなどの特殊車もディーゼル規制対象に 検討着手

2000.08.05(15:10)asahi.com
 ディーゼル自動車の排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)削減のため、運輸省と建設省が、現在は規制対象外のクレーンなどの建設機械や産業機械(特殊自動車)について、2002年から規制する方向で検討に着手した。ほとんどがディーゼル車で全自動車が排出するNOxの3割、PMの1割を占めている。しかし、法律上の自動車と見なされないうえ、「所管官庁がはっきりしない」などの理由で規制の網に入っていない。省庁再編で来年から国土交通省になる両省は来月にも検討会を設置して、規制のための基準策定や公共工事での低排出型機械の使用推進などを協議する。そのうえで環境庁や通産省にも働きかける方針だ。

 ディーゼル車は大気汚染の原因となるNOxとPMを排出する。このため、自動車NOx法は首都圏と近畿圏のディーゼルトラックなどについてNOxの排出基準を設け、一定の猶予期間後も基準を満たしていない車両については使用できなくなる規制をかけた。PMは、道路運送車両法で保安基準を設けている。

 クレーンやブルドーザーなどの建設機械、フォークリフトなどの産業機械、農耕トラクターなどの農業機械といった特殊自動車の9割は構内での作業専用。道路を走ることを前提としていないため、道路運送車両法上の自動車の定義から外れており、ナンバープレートもない。この結果、両法の対象外となっていた。

 しかし、こうした特殊自動車は、300万台近くにのぼるとされ、そのほとんどがディーゼル車。都市部でのNOx排出量は自動車全体の約3割を占め、全ガソリン車の倍。PMについても1割を占めている。

 このため、環境庁の中央環境審議会が1997年に行った答申では、特殊自動車について「2004年から排ガス規制の対象に追加する」として、関係省庁の取り組みを求めていた。しかし、自動車と見なされていないため、運輸省は「うちの所管か、はっきりしなかった」という。建設省は建設機械についてだけ排出基準を設け、96年度から同省直轄工事で基準を満たした「排出ガス対策型建設機械」の使用促進を指導している。しかし、産業用機械などは通産省の所管で、縦割り行政の「エアポケット」に入った形で、全体的な規制は、事実上放置されていた。

 今年1月の尼崎公害訴訟判決での汚染物質排出差し止め命令や、東京都がディーゼル微粒子除去装置の装着義務づけを打ち出すなど、ディーゼル規制の動きは進み、NOx法の改正案が次期通常国会に提出される見通しだ。こうした状況から国土交通省の発足にあわせ、運輸省と建設省は特殊自動車全体のNOx、PM規制に取り組むことを決めた。

 具体的には(1)排出規制対象に追加する時期を、中央環境審議会答申の2004年から2年前倒しする(2)排出ガスの少ない特殊自動車の技術開発を支援する(3)公共工事での低排出型機械使用を徹底させるため、義務化の可能性を探る(4)民間工事でも使用を広く呼びかけるためガイドラインを定める――などについて検討を進める。

ディーゼル車の有害物資 除去装置困難/買い替え促進 新たな施策必要

2000.07.26 The Sankei Shimbun
 大型トラックやバスなどのディーゼル車から出る排ガス中の有害物質対策を検討していた運輸省、通産省、環境庁の「ディーゼル車対策技術評価検討委員会」は二十五日までに、ススのような粒子状物質(PM)の除去装置(DPF)を規制の緩い時代に買われたような車にまで一律に義務付けるのは現在の技術で難しいうえ、ユーザーの費用負担が高過ぎるとの見解をまとめた。二十八日、中間まとめとして発表する。すでに走っている車への“後付け”が事実上困難とされ、メーカーなどのDPF開発の促進やトラックで七割、バスで八割の車の新たなディーゼル車への代替施策が必要になる。

 DPFの装着については、すでに東京都が一律義務付けの方針を公表した。今回の見解は、こうした施策が難しいとして、見直しを迫ることにもなる。

 三省庁は合同で今年三月に委員会を設け、国内外のDPFメーカーの技術評価を進めてきた。その結果、海外メーカー製品は一定速度で走行する場合などに効果があったものの、渋滞など日本独特の道路環境だと、PM除去性能に問題が残った。

 また、国産製品は小型車向けでも数十万円と高く、コスト面で装着が困難との見解になった。

 具体的には(1)平成元年排ガス規制車は買い替えが必要(2)六年規制適合車の一部にDPFの装着可能な車があり装着促進策を導入(3)最も厳しい九−十一年規制適合車に対策の必要はない−としている。この結果、メーカーには新たな排ガス浄化装置の開発が求められる一方、規制前に比べ、排ガス中の有害物質を低レベルに抑えることができる新型車への買い替え促進策など、新たな施策が求められることになった。

 ただ、実際に企業や個人へ買い替えを強いるのは難しく、一定期間経過後に使用できなくなるような激変緩和措置が検討されている。

 十一年度末(今年三月末)現在、ディーゼルのトラックは六百三十三万台(うち元年規制適合車六八・七%)、バスは二十三万台(同七八・六%)ある。台数は少ないが、RVなど乗用車系のディーゼル車数千台も規制の対象。

ディーゼル車にLPガス使用 世界初の技術

2000年7月19日The Sankei Shimbun
 ディーゼル車の燃料として軽油の代わりにLPガス(液化石油ガス)を使い、NOx(窒素酸化物)や粒子状物質など排ガス中の汚染物質を大幅に削減する技術を開発したと18日、岩谷産業(本社・大阪市)、通産省工業技術院機械技術研究所などの研究グループが発表した。タクシーなどガソリン車がLPガスを燃料に使うケースはあったが、ディーゼル車でLPガスを利用する技術は世界で初めて。排ガスが汚いことから社会問題化しているディーゼル車対策として注目を集めそうだ。

 ディーゼル車は、シリンダー内の空気をピストンで圧縮し、高温になったところへ燃料を噴射して自然着火させる。燃料と空気を混合してから電気プラグで着火するガソリン車に比べ、大型化しやすく燃費が良いのが特長だが、NOxや粒子状物質(PM)の排出量が多い。

 LPガスは、エンジン内で完全燃焼しやすく、粒子状物質の発生原因にもなる硫黄分を含んでいないため、軽油より排ガスがきれいになる。着火点が低いことからディーゼル車には使われていなかったが、研究グループは硫酸エステルなどの添加剤を加え、軽油並みの着火性能を実現した。

粒子状物質を削減へ ディーゼル車規制/NOx法改正、環境庁方針 対象地域拡大も検討

2000.07.17 The Sankei Shimbun
 トラックなどディーゼル車から出る窒素酸化物(NOx)の量を削減するため自動車NOx法の強化を検討している環境庁は十七日までに、発がん性などの可能性が指摘されるディーゼル車の排ガスに含まれる黒煙の粒子状物質(PM)を新たに削減対象にするとともに、規制対象地域も広げる方針を固めた。

 対象地域での車種ごとの規制は、現行規制よりもNOxやPMの排出量が半分程度になる新長期規制車の販売が平成十七年よりも何年前倒しできるかを見ながら定めるが、三・五トン超のトラックは最新規制車に買い替えるか浄化装置(DPF)を装着するかの選択制にする案が浮上している。

 環境庁は来年の通常国会にNOx法改正案を提出、十四年での施行を目指すが、新長期規制車の前倒し導入状況やPMを取り除くDPFの開発状況に応じて規制を強化するため、十七年での見直し条項も盛り込む。

 NOx法の現行の対象地域は首都圏と大阪・兵庫圏。PM対策を含めることで浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準の達成率が低い群馬県、栃木県の一部地域のほか、名古屋市、京都市、福岡市などを中心とした地域も対象とするかどうかを検討しており、汚染実態や車種規制による排出削減効果を試算しながら政令で定める。

東京都がディーゼル車排ガス規制の具体案まとめる

2000.06.24(06:45)asahi.com
 大気汚染の原因となるディーゼル車の排ガス規制を検討している東京都は23日、2003年度からの規制に向けた具体案をまとめた。これまで新車を対象にしてきた粒子状物質(PM)の国の排出基準を、使用中の車にも広げる。走行を制限したり、PMを除去するフィルター(DPF)などの装着を義務づけたりする。都は26日開かれる国の中央環境審議会にこの案を示し、国による制度化を求める。理解が得られない場合には、都独自の条例化も検討するとしている。

 都は今年2月、都内を走るすべてのディーゼル車へのDPFの装着を2003年度から段階的に実施する案を発表。今回は装着基準を具体的に示した。

 これまで国のPMの排出基準は段階的に強化されているが、今回の都の案によると、国が新しい排出基準を設ける2003年以降は、現行の1998年基準を満たしたディーゼル車に限り引き続き走行を認める。それ以前の車については、1998年基準を満たすようにDPFなどの装着を義務づける。

 2005年に国がさらに新しい基準を設けると、同様に1つ前の2003年の基準を満たした車だけが走行できる。ただし、猶予期間として新車購入から7年間は、新しい基準が出来ても規制の対象にしないという。

 これまでの案に比べ、一部の車については規制への移行期間が緩和されたり、DPFがなくても走行できるようになったりするが、都環境局は「都内の自動車が出すPMの量を、94年度の4200トンから2005年度に1600トンまで減らす当初の目標は達成できる」としている。

低公害車普及へ戦略会議設置 ディーゼル車対策で東京都

2000.06.09(18:54)asahi.com
 大気汚染改善のためにディーゼル車対策に取り組んでいる東京都の石原慎太郎知事は9日、ユーザー、メーカー、燃料業界の3者が低公害車普及の課題を話し合う「新市場創造戦略会議」を設置する考えを明らかにした。3者が普及に向けたそれぞれの目標値を公表することで、「価格が高い」(ユーザー)→「需要がない」(メーカー)→「利用客が少ない」(燃料業界)という低公害車を取り巻く「悪循環」を打破したい考えだ。

 都内の低公害車は「圧縮天然ガス(CNG)車」が約570台、「液化石油ガス(LPG)車」が1800台にとどまっている。CNG車の場合、ディーゼル車より価格が1.6倍から2倍近くすることや、給油施設も都内で20カ所と少ないことが妨げとなっているという。

 戦略会議では、各企業の役員クラスが出席して15日に初会合を開く。運送やバス会社などのユーザーが新たな購入計画を、自動車メーカーが生産計画を、燃料業界がスタンドの増設計画をそれぞれ出し合い、都が仲介して今秋にも3者が合意事項を公表する。目標を公表することで、お互いに約束が確実に守られるようになるという。

ディーゼル車排ガス規制に欠陥 大都市部で低い削減効果

2000.06.01 (14:21)asahi.com
 ディーゼルトラックに対して国が進めている排ガス規制の強化による窒素酸化物(NOx)の削減効果が、大都市部では当初見込まれていた値の半分以下しかなかったことが、環境庁の内部資料や東京都、大阪府の調査結果からわかった。新しい規制を受けた車でも遅い速度で走るとあまりNOxが減らないためだ。国の検査方法は全国一律で、渋滞の激しい大都市圏の走行実態を反映していないと専門家らは指摘している。環境庁は2005年以降のディーゼル車の排ガス規制値のあり方を検討しているが、根本的な見直しを迫られそうだ。

 資料は環境庁の「自動車排出ガス原単位、総量に関する調査報告書」。過去20年以上にわたって国の研究機関や自治体が、ガソリン車やディーゼル車がどの速度の時にどれだけNOxを出しているかを調べた1万1000のデータを、車の種類と年次ごとに分類したものだ。ディーゼル車のデータは3400あった。

 環境基準達成の予測などは、排ガスの規制を2割強化すれば実際の排出量もほぼ同じ割合で減るとの前提で行われてきた。だが今回の調査では、ディーゼル車での削減効果は低速時に小さかった。

 中型トラックの場合、1983年から88年にかけて国の規制値は610ppmから500ppmへと19%厳しくなった。が、排出量を見ると、速度が5―15キロの時は7―9%、15―25キロで13%の削減率しかなかった。速度が30キロ以上だと予想通りの効果だった。

 これとは別に東京都は、普通トラック約20台を交通実態に合わせて測定。90年と95年時点で規制をクリアした車を比べると、時速10キロ―30キロでは新しい車の方がむしろ排出量が多いという結果が出た。これを踏まえて2000年時点での排出量を推計すると、90年から3割減るはずが、1割の削減効果しか見込めなかった。

 都は「規制が厳しくなったのに、大気中濃度が改善しないので変だと思って調べた。大都市部の実態にあった規制値の検査方法にしないと意味がない」(幹部)としている。

 大阪府も数十台のトラックを調べたところ、重量車の規制は89年から94年にかけて17%厳しくなっているのに、排出量は4―9%しか減らなかった。

排ガスの新長期規制 運輸省も前倒し推進

2000年4月27日 13時30分
 運輸省の梅崎寿事務次官は27日の定例会見で、自民党のディーゼル車排気ガス対策プロジェクトチームが、中間報告として排ガスの新長期規制を前倒しして実施するなどの対策をまとめたのに対し「運輸省としても2年程度前倒しの方向で検討を進めていく」という考えを示した。

前倒し実施に対応可能

2000年4月27日 17時14分
 日本自動車工業会の辻義文会長(日産自動車相談役)は27日の定例会見で、自民党がディーゼル車排ガスの新長期規制を前倒し実施するとした中間報告をまとめたことに触れ、「技術的には対応可能」と述べた。ただ対応する装置が高額なため「ユーザーの負担軽減策を要望している」と付け加えた。

ディーゼル車対策で初会合

2000年3月17日14時24分
 自民党は17日昼、党本部で「ディーゼル車排気ガス対策プロジェクトチーム」(座長・亀井善之元運輸相)の初会合を開いた。

 桜井新政調会長代理はあいさつで、東京都の石原慎太郎知事がディーゼル車の都内走行の規制を表明していることを念頭に「1自治体の問題ではなく、国家的課題として取り上げる。2、3週間で現実対応できる結論を出してもらいたい」と述べた。

自民党がディーゼル車の排ガス規制を検討へ

8:02p.m. JST March 07, 2000
 自民党は7日、大気汚染の原因となっているディーゼル車の排ガスについて何らかの規制も含めて対策を検討する方針を固めた。ディーゼル車の排ガスについては、東京都の石原慎太郎知事が、2006年度までにすべてのディーゼル車に排ガス中の有害物質を除去するフィルターの設置を義務づける方針を示しているが、これに呼応して国として取り組む。亀井静香政調会長が同日の役員連絡会で検討を約束、同党環境、交通両部会を中心に議論を進める考えだ。

 役員連絡会では、石原知事と同日朝、この問題などで意見交換した村上正邦参院議員会長が「ディーゼル車が排出する黒煙は大量で、放置しておけない」と問題提起。亀井氏が「この問題は自治体任せではいけない。メーカーへの指導、有害物質を除去する装置への税制上の優遇措置ができるかどうかなど、党として積極的に取り組んでいく」と応じた。

 これに関連して、亀井氏は同日、記者団に「国で取り組む問題だ。石原氏に先制パンチを食らったが、立ち上がってやっていくということだ」と述べた。

ディーゼル排ガス中から新環境ホルモン発見 東京理科大

03:03a.m. JST March 04, 2000
 ディーゼル車の排ガスに、作用メカニズムが従来のものと異なる新タイプの内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)が含まれていることを、東京理科大学薬学部衛生化学教室の武田健教授と吉田成一博士らがつきとめた。31日の日本薬学会で発表される。

 武田さんらはこれまで、交通量の多い大都市部の2―20倍くらいの濃度のディーゼル排ガスを雄のマウスに吸わせ、精子の生産量が減少することなどを明らかにしている。原因物質はわかっていない。
 精子ができるときに精巣内で重要な役割を果たすのは、男性ホルモンを分泌する細胞や、長いパイプ状の精細管の中で精子まで成長するのに必要な物質を供給する細胞。

 今回の実験では、マウスの精巣から取り出した両細胞を培養液の中に入れ、1CC当たり1000万分の3グラムの排ガス微粒子を加えた。すると、両細胞の性ホルモン受容体をつくるときに必要な遺伝情報を伝えるmRNA(伝令RNA)が少なくなった。この結果、受容体が減って、両細胞の働きが妨げられている可能性がある。

 これまで環境ホルモンは、受容体にくっついて本物の性ホルモンの働きを妨害したり、似たように働いたりすることが知られている。武田さんによると、受容体のmRNAを減らす作用があるものを見つけたのは初めて。その物質が何であるかはまだ判明していないが、ダイオキシン類ではないことは確かという。

 武田さんは「物質を特定するとともに、精子生産能力の低下との関係を調べ、その物質の除去法も開発していきたい。さらに、マウスの雌や胎児でどう影響するかも調べたい」と話す。

ディーゼル排ガス対策で東京都がメーカー参加のシンポ

10:22a.m. JST February 26, 2000
 ディーゼル車に微粒子除去フィルター(DPF)の装着を義務づける方針を明らかにしている東京都は、DPFの開発を手がけるメーカーが参加して、開発状況を報告しあうシンポジウムを3月に開く。「DPFを開発中の内外の4社がそろって報告するのは国内では初めて」と都。会場には装置も展示する。

 参加するのはいすゞ自動車、イビデンの国内2社と、海外からエンゲルハード、ジョンソン・マッセイの各社。走行実績が報告されるとともに、エンジンとの組み合わせや燃料との適合、値段など解決すべき課題も議論される。

 「DPFシンポジウム―微粒子除去フィルター開発の最前線」は3月22日午後6時半から都庁都民ホールで。問い合わせは環境保全局環境計画室(03・5388・3517)へ。

石原都知事、ディーゼル車規制でDPF装着を義務づけへ

06:40a.m. JST February 19, 2000
 東京都の石原慎太郎知事は18日、記者会見し、都内を走るすべてのディーゼル車を対象に、排ガス中に含まれる粒子状物質(PM)を取り除くフィルターの装着を義務づける方針を明らかにした。公害防止条例を改正して2003年度から段階的に実施し、2006年度に都内を走る全ディーゼル車に適用する。違反者には罰則も科す考えだ。だが、取り締まり方法やフィルターの価格の点などで未解決の問題も多い。運送業界などは強く反発、運輸省も困惑している。

 条例改正の原案によると、65万台にのぼる都内ナンバーのディーゼル車だけでなく、都外ナンバーでも島部を除く都内を走るすべての車にフィルターの装着を義務づける。都外から流入するディーゼル車は1日約24万台とみられる。

 来年4月に改正条例を施行し、2年間の準備期間を設ける。

 ディーゼル車排ガスの1989年規制以前の車は2003年度から、94年規制車は2004年度から、現行の98年規制車のうち条例施行前の新車登録車は2005年度から、条例後の登録車は2004年度から対象になる。ただし、条例施行前に登録した車は5年間は規制を猶予するため、完全実施は2006年度からになる。

 都は原案を都環境審議会に諮り、3月末に審議会がまとめる公害防止条例改正に向けた最終答申に盛り込まれる。

 一方、フィルター装着の有無をどうやって見分けるかや、都外から流入する車への装着の徹底、取り締まり方法、罰則の内容など、現時点では詰め切れていない課題も多い。さらに、試作段階の現在、200万円するフィルターが、実施までに普及可能な価格まで下がるかどうかも実現の大きなポイントになる。

 運送業界は「大変なコストがかかる」(全日本トラック協会)と反発。運輸省からも「一部の車を条例で規制するのはどうか」と疑問の声が出ている。

 石原知事は会見で「都外の車も対象にし、東京から発信して日本全体に広がれば結構なことだ」と述べた。


尼崎公害訴訟が結審、国側に和解求める 大阪高裁

2000.09.22(01:01)asahi.com
 自動車の排ガスなどによる大気汚染に苦しむ兵庫県尼崎市の公害病認定患者と遺族らが国と阪神高速道路公団を相手に、大気汚染物質の排出差し止めなどを求めた尼崎公害訴訟で、控訴審の第1回口頭弁論が21日、大阪高裁で開かれ、妹尾圭策裁判長は弁論終了後に審理を打ち切り、結審した。

 「年内に判決を言い渡したい」と述べたうえで、和解勧告を拒否して審理の継続を求めた被告の国・公団側に和解のテーブルに着くようあらためて要望した。妹尾裁判長は「解決方法として和解が最善という考えは現在も変わらない。和解のためのドアはいつでも開けてある」などと述べた。

 今年1月の一審・神戸地裁判決が道路公害裁判で初めて一定水準を上回る大気汚染物質の差し止めを命じた尼崎公害訴訟の控訴審は、今後、国・公団側が和解交渉に臨むかどうかが焦点となる。

 妹尾裁判長は「国・公団側が和解に応じかねるというならば、審理を速やかに終えて判決をするのが当裁判所に与えられた役割だ」との見解を表明した。

 一審の審理に10年以上かかり、控訴後もすでに約8カ月たったことを指摘し、「必要な主張、立証は現在までになされているとみるべきだ」などと述べて、結審するのが相当だとの判断を示した。そのうえで「口頭弁論は終結するが、国・公団側が、和解のテーブルにつくことを検討されることを希望する」と説いた。

 この日の口頭弁論では原告団長の松光子さん(68)らが意見陳述した。松さんは「提訴以来、138人の原告が亡くなった。公害病に苦しむすべての患者が和解を期待している」と訴えた。一方、国・公団側は、一審判決が浮遊粒子状物質(SPM)の排出差し止めの根拠とした千葉大学の調査結果について「浮遊粒子状物質の健康影響を調べることを目的にしたものではなく、差し止め請求は認容される余地がない」などと批判した。

 妹尾裁判長は8月29日に「20世紀に発生した公害事件は今世紀中の解決を目指す」と述べて、和解を勧告。原告側は和解に応じる意向を示したが、被告の国・公団側は勧告を拒否し、来年3月までの審理を希望していた。

尼崎訴訟で国など控訴へ

2000年2月7日 17時19分 共同通信社
自動車排ガスによる大気汚染で健康被害を受けたとする尼崎公害訴訟で、1月31日に神戸地裁が国と阪神高速道路公団に排ガスの差し止めと損害賠償を命じた判決について、建設省の小野邦久事務次官は7日の定例記者会見で「控訴する意向を法務省に伝える」と控訴の方針を明らかにした。阪神高速道路公団も同様の方針を決め、法務省に報告した。9日に控訴する予定。

「行政の責任ある」と尼崎公害訴訟の判決受け石原知事

10:39p.m. JST February 04, 2000
 ディーゼル車対策を主な政策に掲げている東京都の石原慎太郎知事は4日、国に大気汚染物質の差し止めを初めて命じた「尼崎公害訴訟」の判決を受け、「東京で起きている裁判も尼崎と本質的には同じ。私は行政の責任は間違いなくあると思う」と述べ、都の責任を認めた。ただし、「補償などの法的な責任は裁判の結果を待つ」とし、裁判での主張とは別に排ガス公害を放置してきた行政の責任に言及した。

 「東京大気汚染公害訴訟」は、ぜんそく患者ら計327人が国と都、首都高速道路公団、自動車メーカー7社を相手取り、総額約69億円の損害賠償と一定水準以上の大気汚染物質の排出差し止めを求めている。

 都はこれまで「道路の設置管理に落ち度はなく、取るべき対策は実行している」などと主張し、現在も争っている。
 石原知事は「従来の都政はきちっとした認識を持たなかった。鈍感であり、怠慢だった」とこれまでの都の姿勢を批判し、「都民の健康を守るという努力をしてこなかった不作為の責任がある。それを認識しないと、口ばかりの対処にしかならない」と述べた。

 さらに、国の環境対策についても、「国政が基準を決めて全国的な問題としてとらえないと、国民を見殺しにするというそしりは免れない。最終的には国が動かないとどうにもならない」と注文をつけた。

 石原知事は、昨年の都知事選でディーゼル車対策を公約の一つに掲げた。就任後も「ディーゼルNO車作戦」を展開し、ディーゼル車のガソリン車への買い替えや、有害物質をとるフィルター(DPF)の装着を条例で義務づけることを表明している。

尼崎公害訴訟判決 国などに有害物質排出差し止め命じる

5:06p.m. JST January 31, 2000
 自動車の排ガスなどによる大気汚染に苦しむ兵庫県尼崎市の公害病認定患者と遺族ら379人が、阪神間をむすぶ国道2号と43号、阪神高速道路を設置・管理する国と阪神高速道路公団を相手に、一定水準を上回る大気汚染物質の排出差し止めと計約92億6000万円の損害賠償を求めた尼崎大気汚染公害訴訟の判決が31日午前、神戸地裁(竹中省吾裁判長)で言い渡された。竹中裁判長は、原告のうち50人について排ガスと現在まで続く健康被害との因果関係を認定し、「従来通りの道路の供用の継続には強い違法性がある」と述べた。こうした判断にもとづき、国と公団に対し、国道43号の沿道50メートルの地域の浮遊粒子状物質(SPM)について、環境基準の1.5倍にあたる1日平均値で1立方メートルあたり0.15ミリグラムを超える排出差し止めを命じるとともに、計約3億3000万円の支払いを命じた。道路公害をめぐる訴訟で、汚染物質の排出差し止めを命じたのは初めて。

 一方で、西淀川、川崎の両公害訴訟では認定された窒素酸化物(NOx)による健康被害については、「呼吸器症状との間の明確かつ一貫性のある関係は観察されない」として退けた。尼崎訴訟と同種の自動車の排ガスによる健康被害への責任を問う裁判は、「名古屋南部」「東京」の両訴訟がそれぞれ名古屋地裁と東京地裁で係争中。

 差し止め請求について判決は、尼崎市内では、浮遊粒子状物質が環境基準を大きく超える状態が最近まで続いていたと認定。幹線道路沿道地区の児童の気管支ぜんそくの発症確率が、田園部の4倍に上るという結果を得た千葉大学の調査結果から、この地区での浮遊粒子状物質の測定値である1立方メートルあたり1日平均値で0.15ミリグラムを差し止めの基準とした。

 さらに、「大気汚染物質を判決が示した数値以内に抑えるためには、供用の全面的禁止など大規模な通行制限をしなくても、浮遊粒子状物質の排出量が大きいディーゼル車の混入率を制御すればよく、差し止めは公益性の妨げにもならない」と述べた。

 判決は尼崎地域の大気汚染をめぐり、過去の疫学調査などの結果を踏まえて「尼崎市レベルの二酸化窒素濃度が健康被害の原因になるとは認められない」と述べる一方、千葉大調査の結果から、浮遊粒子状物質の中でも、とりわけディーゼル排気微粒子による健康被害の可能性を指摘した。

 さらに、通勤者を含めて一定の条件で大気汚染にさらされた患者50人について病気と沿道汚染の因果関係を認め、アレルギーや喫煙などの影響を踏まえて個々の賠償額を算定した。慢性気管支炎と肺気腫については、「証拠が十分ではない」として因果関係を否定した。

 国側の責任については、国道43号と阪神高速が2階建て構造になっていることなどから、国と公団の共同不法行為責任を認め、「沿道住民に重大な損害を与えており、2つの道路にはそれを受忍すべき限度と考えねばならないほどの高度の公共性はない」と述べた。


ディーゼル排ガスの環境報告書、環境庁が修正・削除

03:06a.m. JST January 03, 2000
 国立環境研究所(茨城県つくば市)がディーゼル排ガスが健康に与える影響を調べた特別研究を報告書にまとめる際、環境庁が、自動車からのダイオキシン発生量や、排ガスと健康被害の関係などに関して、延べ約100カ所も削除や修正を求めたうえ、発行を事実上、半年間にわたって遅らせていたことが、わかった。環境庁側はダイオキシン発生量が環境庁の調査と違うため「先に公表されては誤解を与える」と判断したという。

 この報告書は「ディーゼル排気による慢性呼吸器疾患発生機序の解明とリスク評価に関する研究」。ディーゼル排ガスと健康影響の研究で国内第一人者とされる嵯峨井勝・前総合研究官(現・青森県立保健大教授)のチームが、1993年から97年にかけての研究を集大成した。

 報告書は、マウスに排ガスを吸わせ、ディーゼル排気の微粒子がぜんそくを起こしたり、生殖機能に影響を与えたりしていることを明らかにした。さらに、粒子状物質中のダイオキシン量を測定し、全国の自動車からの年間排出量を約17グラムと推定した。

 報告書案は98年11月に提出され、昨春、同庁の担当部局が内容をチェックした。

ディーゼル排ガスで流産多発 大気環境学会で発表

03:19a.m. JST September 15, 1999
 ディーゼル車の排ガスに含まれる微粒子(DEP)を妊娠したマウスに与えると流産が多発することが、国立環境研究所や東京大学などの研究チームの実験で明らかになった。高濃度の排ガス微粒子を皮下注射するという負荷の高い条件下での実験だが、ディーゼル排ガスが妊娠に影響を与えることを初めて示した点で、注目を集めそうだ。28日から津市で始まる大気環境学会で発表される。

 実験では、ふつうのマウスに比べて化学物質に対する感受性が4倍ほど高い種類のマウスを使った。交尾をしたメスを計45匹育て、妊娠していれば中期になったとみられる時期に、排ガス微粒子を溶かした液を1日おきに3回にわたって注射した。

 その結果、与えた微粒子の総量によって妊娠していたマウスの3―7割が流産した。これに対して、微粒子を与えなかったマウスはすべて無事に出産した。ただ、与えた微粒子の量が少ないほど流産の割合が高くなるなど疑問点も残るため、研究チームはさらに実験を続けていく考えだ。

 今回、7割が流産したのは、与えた微粒子の総量が1匹当たり0.6ミリグラムだったとき。これは、マウスの呼吸量を考慮すると、DEPなどの浮遊粒子状物質が環境基準の30倍の濃度で含まれる大気に1日12時間、6カ月間さらした場合に血中と組織に吸収される量にほぼ相当する、という。

ディーゼル排ガスの恐ろしさについて-ディーゼル排ガスよりダイオキシン見つかる-by竹内文弥
ディーゼル車排ガス微粒子(DEP)の健康被害from 森の里津田ホームズ(by津田 尚徳)

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