TOPIC No.3-10 原子力発電所

01. 低炭素社会を実現する技術を探る(第3回)原子力・海外進出を目指す国産技術 小型化で途上国にも広がる原子力(2008年09月05日)
02. アトムワールド byとうかい
03.
 エネルギーの部屋 〜東北通商産業局管内原子力情報〜
04.
 原子力 by YAHOOH!ニュース
05.
 原発損傷隠ぺい問題 by YAHOOH!ニュース
06.
 TOPIC No.3-10-1 原子力プラント
07.
 TOPICNo.3-42 高温ガス炉(原子力発電)


高速増殖炉もんじゅ原子炉停止 計画通り、来年度まで

2010年07月17日 中国新聞ニュ−ス

 日本原子力研究開発機構は17日、高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の原子炉を午後11時に停止したと発表した。実施中の「炉心確認試験」を22日に終え、来年度まで長期停止する。当初の計画通り。

 試験で計画する20項目のうち、原子炉の反応度や制御棒の効力の測定など16項目が17日までに終了。原子炉を止めた後も、残る試験を22日まで続ける。

 5月に14年5カ月ぶりに運転を再開したもんじゅは、3段階の試験を経て2013年春にも本格運転に移る。来年度の第2段階の試験では出力を40%まで上げ、タービンや発電機も作動させ約6カ月間運転し、12年度の第3段階での100%出力試験につなげる。

 また、もんじゅの排ガスの放射性濃度を監視する設備で17日、ガス配管の温度が異常に低い値を示した。温度計や関連機器の異常とみられ、運転や環境に影響はないという。

もんじゅ再始動 長い眠りを経て<6> かさむ管理費 年200億円

2010年05月29日 読売新聞 Yomiuri On-Line

高速増殖炉の実用化

原子力機構が公開した「もんじゅ」の電気料金請求書 「1億1738万3008円 ただし平成21年8月分料金 上記金額をご請求申し上げます 北陸電力」

 日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(敦賀市白木)に対する地元電力会社の請求書には毎月、巨額の電気料金が記載されている。

 読売新聞が今年2月、機構に対して情報公開請求を行った結果、1999年3月から2010年1月までの月々の請求書が開示された。運転停止中にもかかわらず、約11年間で総額約88億円に上っており、月平均では約6700万円。北陸電力が想定する標準モデル世帯の電気料金月額(今年5月時点で6271円)に換算すると、約1万700世帯分に相当する。

 空調設備など、施設の維持管理に必要な設備や機器を動かす必要があり、中でも、配管内の液体ナトリウムが冷えて固化しないように電気ヒーターで加熱し続けなければならなかったためという。研究段階とはいえ、本来は電気を生み出す原発なのに、14年5か月に及ぶ停止中はひたすら大量の電力消費を続けていたわけだ。

 しかし、年平均約8億円という電気代でさえ、全体の管理費から見ればごく一部に過ぎない。年間で200億円前後に達する年が多く、95年のナトリウム漏れ事故後の最も少ない年でも97億円。もんじゅはナトリウムを扱うがゆえに、軽水炉よりも配管が長く、冷却系統も多くなっているため、保守点検や補修の費用も余計にかかるのだ。

 高速増殖炉を中心とした核燃料サイクルの確立を目指す国や機構は、〈1〉2015年頃に実証炉【クリップ】の大まかな設計と開発計画を決定〈2〉25年頃に実証炉を開発し、運転開始〈3〉50年頃に実用炉(商業炉)を導入〈4〉2110年頃までに商業用高速増殖炉と既存の軽水炉を順次置き換える――という遠大な計画を掲げる。実現に向けた最大の課題とみられているのは、経済性だ。

 もんじゅは昨年度までで、建設費5887億円を含めて9035億円も費やしている。福井大国際原子力工学研究所長の竹田敏一(64)は「ナトリウムを冷却材に使う以上、高速増殖炉の管理費はどうしても割高になる。安全性を損なわずに経済性も確立するには、よほどの工夫が必要だ」と指摘する。

 もんじゅの次段階となる実証炉では、建設費や運転管理費を抑えるために、冷却系統数の削減、配管の短縮、大型機器の一体化といった、もんじゅとは異なるコンパクトな設計も検討されている。だが、現状では実証炉の運営主体は決まっておらず、建設候補地の選定はさらにその後になる。

 高速増殖炉実用化への道のりは遠い。その成否を握るもんじゅの正念場は、これからも続く。(敬称略)

 (おわり 木下聡、冨山優介が担当しました)

 【クリップ】実証炉 実用規模の出力と経済性を兼ね備えた研究用原発。原発の開発は通常、〈1〉発電設備がない実験炉〈2〉発電設備を有する原型炉〈3〉実証炉〈4〉実用炉(商業炉)――という段階を経ることになっており、もんじゅは原型炉にあたる。実証炉の出力は、もんじゅの28万キロ・ワットに対し、50万〜75万キロ・ワットと想定されている。

もんじゅ再始動<5>保安院の検査官、安全規制“手探り”

2010年05月27日 読売新聞 YOMIURUI ON-Line

増員で監視強化、全国から応援も

運転再開直前の立ち入り検査で、機器の点検状況を確認する原山室長(4日、敦賀市の「もんじゅ」で)

 連日、原子炉内の状態を調べる試験が昼夜を通して行われている日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市白木)。中央制御室では、運転員が制御盤の計器などを確認したり操作したりする傍らで、経済産業省原子力安全・保安院の原子力保安検査官も2交代制で常に監視の目を光らせている。

 保安院はもんじゅの運転再開に際し、応援の検査官を全国から集め、特別な態勢を組んだ。14年5か月ぶりに原子炉を再起動した6日には、商業用原発の原子炉起動時と比べて3倍も多い7人を中央制御室に配置。もんじゅ所内に詰めた検査官の延べ人数は3〜25日で約110人に上った。

 保安院審議官の根井寿規(51)は、1995年のナトリウム漏れ事故時に旧動力炉・核燃料開発事業団が現場撮影ビデオを一部改ざんするなど隠蔽(いんぺい)をはかったことに触れ、「国際的にも注目される中、不正な行為が絶対に行われることがないよう、監視を強化する必要があると考えた」と明かした。

 国内唯一のナトリウム冷却型の原発で、事故によって試験運転段階のまま長期停止したという特殊事情から、保安院はもんじゅの安全規制に苦心してきた。

 保安院は全国の原発に対し、安全管理体制を確認するための法定検査「保安検査」を原子炉の起動と停止のたびに実施している。だが、これは通常、試験運転を経て本格運転に入った原発が対象であり、現在も試験運転中であるもんじゅは対象外だ。

 このため保安院は、重大な事故や悪質な不正が起きた原発が適用対象となる「立ち入り検査」を、直嶋経産相の命令を受けて特別に実施することにした。保安検査とは枠組みの異なる立ち入り検査によって、機器の点検や運転管理体制の監視を念入りに行うという方法を取ったのだ。

 試行錯誤は、現在も続いている。

 保安院は運転再開前、トラブルについては大小にかかわらず速やかに公表するよう機構へ要請した。しかし、研究炉であるもんじゅには商業用原発よりもはるかに多い4400個もの警報装置が設置されており、連日頻繁に作動。機構の公表内容には、作業に伴ってあらかじめ鳴ることがわかっていた警報なども含まれていたため、保安院としても、トラブルの軽重を区別して公表する方針に転換せざるを得なかった。

 出力がゼロに近い状態で実施している現在の「炉心確認試験」は7月下旬に終わる予定。保安院はその時点で今回の対応について検証し、規制方針を改めて検討することにしている。保安院新型炉規制室長の原山正明(44)は「他に実例がないだけに、手探りの規制になっているのは事実。だが、安全確保の基本は通常の原発と変わらない。しっかりやっていく」と強調した。(敬称略)

 原子力保安検査官 経済産業相から任命され、原子力施設における事業者の安全管理を確認し、指導も行う専門職員。1999年9月に起きた茨城県東海村のJCO臨界事故を受けて2000年4月、安全規制の強化を目的に制度が創設された。今年5月現在で全国16道県の21検査官事務所に124人が、うち県内4事務所には25人が配属されている。

高速増殖炉「もんじゅ」タンク水位が一時上昇

2010年05月27日 読売新聞 YOMIURUI ON-Line

 日本原子力研究開発機構は27日、試験運転中の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で同日午前10時25分頃、タービン建物の屋外に設置されている補給水タンク(直径8メートル、高さ13メートル)の水位が一時上昇し、警報が作動したと発表した。

 タンクの水位調整弁を点検中に、作業員が弁の開閉手順を誤ったため、水が設定水位以上に流れ込んだのが原因。周辺環境や試験工程への影響はないとしている。

 補給水タンクは、発電タービンを回す蒸気になる水を供給する設備で、現在の試験では使用していない。28日には試験計画に沿って、運転再開後2回目となる原子炉の停止を行う予定。

もんじゅ再始動<4>ナトリウム対策、火災訓練や研修強化

2010年05月25日 読売新聞 YOMIURUI ON-Line

実験炉「常陽」でもトラブル

耐火服を着て、ナトリウム火災への対応を訓練する職員(敦賀市白木のナトリウム取扱研修棟で)=原子力機構提供

 約450度まで加熱された直径1メートルほどのステンレス製の器の中で、固形のナトリウムが炎を上げる。「消火を始めて下さい」。講師の指示で、耐火服を身に着けた研修生が、消火器具から炭酸ナトリウムの粉末を噴射し、燃焼反応の原因となる空気を遮断して消火する――。

 日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市白木)に近い国際原子力情報・研修センターのナトリウム取扱研修棟では、もんじゅ所員や協力会社員らが年1回、ナトリウム火災訓練を受講する。また、もんじゅに新規配属された運転員には、ナトリウムの性質に関する研修や、小型の配管やタンクを使ったナトリウムの充填(じゅうてん)・抜き取り操作の訓練も行われる。

 同研修棟は、1995年のナトリウム漏れ事故時の対応が不十分だった反省から、2000年10月に開所。国内唯一のナトリウム総合研修施設として、これまでに機構職員や県内外の消防職員ら約2900人が研修を受けた。

 同センター研修課長の佐々木和一(55)は「ナトリウム漏れは起きてほしくないが、いざという時には必ず研修が役に立つ。ナトリウムについて習熟しておけば、検出器でもとらえられないような微少な漏れやその兆候を察知できる場合もある」と強調する。

 もんじゅでは事故後、配管などからのナトリウム漏れ対策工事も徹底的に行い、漏れた場合でも早期発見できるように、煙感知器や熱感知器、監視カメラなどを組み合わせたシステムも導入している。

 だが、軽水炉原発で冷却材としての使用実績が豊富な水とは違い、ナトリウムの取り扱いにおける課題は尽きない。思わぬところに“落とし穴”もある。

 もんじゅの前身とも言える機構の高速実験炉「常陽」(茨城県大洗町)で、定期検査中の07年6月に起きた核燃料交換機の破損トラブル。棒状の照射試験用装置を原子炉内から抜き取った際、装置の一部の切り離しがうまくいかないまま交換機を動かしたためだが、その原因は、銀色で不透明な液体ナトリウムで満たされた原子炉内での作業ゆえに、切り離しの失敗に気付かなかったことだった。

 ナトリウムと空気の燃焼反応を防ぐために原子炉容器のふたを開けて作業することができず、内部に残った破損部の回収や補修のための装置も新たに開発しなければならなくなっている。トラブルから3年近くたった今も、運転再開の見通しは立っていない状況だ。

 元京都大原子炉実験所講師の小林圭二(71)(原子炉工学)は「同様のトラブルがもんじゅで起きれば、補修に要する時間は常陽の比ではない。冷却材にナトリウムを使う以上、根本的な危険性は何も変わっていない」と懸念する。(敬称略)

ナトリウム 100〜880度で液体状態となる金属の一種。中性子の速度を落とさないことから、燃料のプルトニウムを効率良く燃やし、燃えないウランを燃えるプルトニウムに変えるために高速中性子を利用する高速増殖炉の冷却材に使われる。高温状態では酸素や水と激しく反応し、燃焼する。

「もんじゅ」またトラブルで核燃料移送作業中断

2010年05月25日 読売新聞 YOMIURUI ON-Line

 日本原子力研究開発機構は25日、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の核燃料移送設備で自動制御の作業システムが同日午後3時43分に停止し、移送作業を中断したと発表した。

 もんじゅでは、22日にも同じトラブルがあったばかり。

 また、使用していない発電タービンの系統でも24日、ステンレス製弁(外径98ミリ)の点検作業の際、弁の組み立て時に工具をあてる突起部分(長さ19ミリ、幅、高さ各6ミリ)2か所が折れたことを明らかにした。いずれも周辺環境や試験工程への影響はないとしている。

もんじゅ再始動<3>制御棒操作ミス

2010年05月22日 読売新聞 YOMIURUI ON-Line

技術継承 懸念表面化…「実地で覚えていくしか・・・」

中央制御室で原子炉の起動操作を行う運転員ら。制御棒の操作ミスにより、運転員の教育体制も早急に見直しを迫られている(6日、敦賀市の「もんじゅ」で)=原子力機構提供

 6日に14年5か月ぶりとなる運転再開を果たした日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市白木)。出力をゼロ近くに抑えて原子炉内の状態を調べる試験に入っており、16日には原子炉を停止。機器の点検などを経て、22日にも再起動させる。この2週間、試験運転はほぼ計画通りに進んでいるが、一方では軽微とはいえ、看過できないトラブルも相次いだ。中でも関係者を落胆させたのは、運転員による原子炉の制御棒の操作ミスだ。

 10日午後8時50分頃、運転員が制御棒2本を原子炉内にすべて挿入する操作中に、微調整用の1本が残り3ミリの位置で停止。作業を中断して原因を調べた結果、制御棒は、最後の段階で挿入速度が通常の4分の1の速さに落ちる設定になっているため、挿入ボタンを長押しする必要があったが、運転員が長押ししていなかったことがわかった。

 問題は、担当した運転員が長押しについて知らなかったことだ。一般的な軽水炉原発の運転経験は8年ほどあったが、もんじゅを動かすのも、この操作を行うのも初めてだったという。「原子炉を動かす上では重要な操作で、運転員は当然知っていなければならないはずだが」。事情を聞いたある地元自治体関係者が、いぶかった。

 長期間の運転停止で生じた〈技術の空白〉をどう埋めていくのか。運転再開前から最も懸念されていた課題だったが、早くも表面化してしまったと言える。

 ただし、もんじゅ特有の難しさが背景にあったことも確かだ。

 もんじゅの開発は国家プロジェクトとして進められ、多くのメーカーや電力会社が建設にかかわった。3種類の制御棒はそれぞれ別のメーカーが製造し、操作方法も異なる。

 ある電力関係者は「制御棒に限らず、弁やポンプといった機器の一つひとつに独特の癖がある。運転手順書にすべて記載することは難しく、結局は実地で覚えていくしかない」と漏らす。

 機構は13〜19日、もんじゅの運転資格を持つ職員ら約60人に対し、今回ミスの起きた操作を含む基本操作の再訓練を実施。もんじゅ所長の向和夫(62)は21日に開いた記者会見で、「十数年ぶりにプラントを動かし、停止中にできなかったことをしていくうえで、いろいろな反省点が出てきている。改善すべきことを整理し、しっかり現場を指導していきたい」と強調した。(敬称略)

制御棒 原子炉内の核分裂反応を調整する装置。核分裂反応は核燃料が出す中性子によって連鎖的に引き起こされるため、中性子を吸収する素材を入れた金属管を核燃料集合体の間に挿入し、反応を抑制する。もんじゅの場合、通常調整用10本、微調整用3本、緊急停止用6本の計19本で構成され、長さはいずれも4.2メートル。挿入本数や位置を調節することで、出力をコントロールする。

「もんじゅ」再起動1日延期、誤作動究明長引く

2010年05月22日 読売新聞 YOMIURUI ON-Line

 日本原子力研究開発機構は22日、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で同日に予定していた原子炉の再起動を23日午前11時頃に延期すると発表した。

 原子炉内の放射性物質検出器の誤作動の原因究明作業が長引いたためとしている。

 もんじゅは6日に14年5か月ぶりに運転を再開した後、計画に沿って16日に原子炉を停止し、機器の点検などを行っていた。

 原子力機構は、6日深夜から誤作動が相次いだ検出器について3台のうち2台を使用停止にしたが、原因を特定できず、7月下旬までの試験運転中は3台とも使わないことを決めた。他の検出器で監視できるため、原子炉の運転に支障はないとしている。

もんじゅ再始動<2>相次ぐ情報公開不手際

2010年05月19日 読売新聞 YOMIURUI ON-Line

現場と広報、連携不足…情報公開の専門家育成、長期的な視点必要

記者会見で、もんじゅ運転再開後のトラブルについて説明する瀬戸口室長(右)(7日、敦賀市白木のエムシースクエアで)

 喜びや充実感が満ちあふれていた会見場のムードはたった1日で一変し、沈うつな空気に覆われた。

 日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市白木)が原子炉を再起動した翌日の7日午後0時30分過ぎに、もんじゅ近くの機構の展示施設「エムシースクエア」で急きょ始まった記者会見。もんじゅ運営管理室長の瀬戸口啓一(55)は、運転再開後の〈トラブル第1号〉について説明するとともに謝罪した。「速やかに知らせるべきだった。遅れてしまい、申し訳ない」

 トラブルは、原子炉内の放射性物質検出器の警報が再開当夜の6日午後11時9分に作動後、すぐに復旧したが、7日午前10時1分に再び鳴ったため、故障と判断した――という内容。だが、機構は同日午前10時からの定例会見で、6日深夜の警報には一切触れず、約50分間続いた会見中に起きた再度の警報に関しては機構の会見出席者に連絡がなかった。トラブルの公表会見も、経済産業省原子力安全・保安院から促されて開いたという。

 もんじゅの運転状況に関する情報公開ではこの後も、頻発する各種の警報作動の軽重を区別しないまま発表したり、発表内容の訂正が続いたりといった不手際があった。ナトリウム漏れ事故ではビデオ隠し問題などが起き、現場の技術者と広報担当者間の連携不足やトラブル公表に対する認識の違いが浮き彫りになったが、14年5か月ぶりに運転再開した今も、改善が進んでいるとは言い難い事態が続いている。

 予兆はあった。

 4月30日に機構がもんじゅの原子炉再起動の日程を「5月6日」と公表した際、東京の経産省や文部科学省では午前11時30分に発表したにもかかわらず、県内では4時間半後となった。機構が県と敦賀市に対して事前に十分な説明を行っておらず、さらに県内と東京の広報担当者の間で発表時間を共有していなかったことが原因だった。

 〈地元軽視〉とも受け取れる対応に、ある市幹部は「機構がどの方向を見て仕事をしているのか、よくわかった」と不快感を示した。

 再開前後の混乱を受け、保安院も広報体制の抜本的な強化を求め、機構も改善を約束した。だが、具体策はまだ見えてこない。

 機構の前身である核燃料サイクル開発機構の外部評価委員を務めたこともある関西大社会安全学部教授の土田昭司(53)(安全心理学)は「原子力機構の中では広報部門の位置付けが非常に弱いように思える」と述べた上で、「情報公開の専門家を組織内で育成するなど、長期的な視点での対応が必要だ」と指摘する。(敬称略)

ビデオ隠し問題 1995年12月8日のナトリウム漏れ事故で、当時、もんじゅを運営していた動力炉・核燃料開発事業団が、事故直後の現場を9日午前2時に撮影したビデオの存在を公表せず、同日午後4時に撮影したビデオも「刺激的で、不安をあおるおそれがある」と短く編集して報道陣や関係機関へ提供。結果的に「事故隠し」との激しい批判と不信を招き、もんじゅの長期停止の一因となった。

もんじゅ再始動<1>西田優顕・機構研修センター長

2010年05月18日 読売新聞 YOMIURUI ON-Line

過ち正す勇気持って…苦い記憶越え、後輩へ提言

「情報公開をしっかり進めながら、運転を続けてほしい」と思いを語る西田センター長(敦賀市白木で) 「長かったなあ」

 日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市白木)が14年5か月ぶりに原子炉の臨界を達成した8日、もんじゅの対岸にある機構国際原子力情報・研修センターのセンター長室では、センター長の西田優顕(59)が1人、中央制御室内の様子を伝えるテレビ中継を見詰めていた。

 ほっとした気持ちとともに脳裏に浮かんだのは、長期停止のきっかけとなった1995年12月8日のナトリウム漏れ事故の対応に追われた日々。そして、最終的に虚偽報告による刑事処分まで受けた苦い記憶もよみがえった。

 当時、動力炉・核燃料開発事業団もんじゅ建設所の技術課長だった西田は、国への報告業務を担当しながら、記者会見にも出席して報道陣への説明を行った。

 事故から10日後の18日には、現場からの情報を基に原子炉等規制法に基づく報告書を作成。最初の入室時刻を「9日午前10時」と記載して科学技術庁(当時)へ提出した。しかし、実際の入室時刻は「午前2時」と早く、逆に午前10時には誰も入室していなかった。事故の混乱の中で情報が交錯し、間違いに気付いた建設所幹部も訂正しようとしなかった。

 真実が伝えられないまま、西田と部下1人、さらには法人としての動燃は97年7月、同法違反で福井地検から略式起訴される。敦賀簡裁は2人に罰金各10万円、動燃に罰金20万円の略式命令を出し、それぞれが納付。国内で初めて原発関連法規で刑事処分が確定したケースとなった。

 地検の聴取が始まったのは96年夏。厳しい取り調べに西田は当初、反発を覚えたが、取り調べの終盤に担当になった次席検事の言葉に、気持ちを改めた。次席検事は「もんじゅの必要性は検察の上層部まで皆、理解しています」と切り出し、「運転を再開するには、この問題を解決しなければならないと思います」と穏やかに告げたのだ。

 誰かが責任を取らなければならないのなら、自分が取るしかない――。西田はそう自分に言い聞かせ、納得できる範囲で調書の作成に応じた。「ここでけじめを付けることで、もんじゅは前に進めると思った」と振り返る。

 その後の道のりも険しかったが、もんじゅはようやく運転再開にこぎ着けた。だが、再開直前からトラブルが続き、公表が遅れる失態もあった。「普通は続けて起きるものではない。何かの戒めのように感じた」と話し、「トラブルなどの情報を外に向かって発信していく姿勢や体制は、まだまだ改善の必要がある」と苦言を呈する。

 「我々は過ちを犯し、組織全体としても、その過ちを正せなかった。間違った対応だと思えば立ち止まり、声を上げる勇気を、後輩たちには持ってほしい」(敬称略)

 長い眠りを経て再び動き出したもんじゅだが、トラブルが相次いでおり、技術継承や情報公開のあり方といった多くの問題点が顕在化している。日本の核燃料サイクル政策の中核施設として安定した運転を続けるために、もんじゅが乗り越えなければならない課題を検証する。

機器点検で「もんじゅ」原子炉停止…計画通り

2010年05月16日 読売新聞 YOMIURUI ON-Line

 日本原子力研究開発機構は16日、試験運転中の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の原子炉を停止した。

 計画に沿った操作で、6日の運転再開から初の停止となる。機器を点検した後、22日に再起動する予定。

 もんじゅは出力を1・3%以下に抑え、原子炉内の状態を調べている。同機構によると、7月下旬までの試験運転中に今後5回、原子炉の起動と停止を繰り返す。その後は2011年3月頃まで設備の点検などを実施。出力を40%、100%と段階的に上げた後、13年度の本格運転を目指している。

誤作動?「もんじゅ」で警報6回、放射性物質漏れ検出器

2010年05月07日 読売新聞 YOMIURUI ON-Line

 日本原子力研究開発機構は7日、6日に運転再開した高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で、原子炉内部で核燃料からの放射性物質の漏れを監視する検出器の警報が6回鳴ったと発表した。機構は誤作動とみており、試験運転は続けている。

 検出器は、原子炉に封入されたアルゴンガスの中で放射線の量を測る仕組み。装置は3台あり、うち1台が、6日午後11時9分に鳴った。

 その後、7日午前10時1分から同11時54分にかけ、さらに5回鳴った。他の2台では漏れを示す異常はなかった。もんじゅ運転再開後の機器トラブルは初めて。

不信越え、やっと一歩…もんじゅ運転再開

2010年05月07日 読売新聞 YOMIURUI ON-Line

運転が再開され喜ぶ職員ら=大久保忠司撮影

 日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)が原子炉の運転を再開した6日午前、原子力機構職員らは、安堵(あんど)の表情を浮かべるとともに、気を引き締めた。

 1995年12月のナトリウム漏れ事故以来、14年5か月ぶりの運転。日本のエネルギー政策のカギを握る原発として期待が寄せられる一方、様々な曲折を経てきただけに、地元からは安全確保や情報公開を求める声も上がった。

 もんじゅの原子炉補助建物地下2階にある中央制御室では、運転員が午前10時36分、原子炉内での核分裂反応を調整する「制御棒」を引き抜くボタンをゆっくりと押した。

 全19本の制御棒のうち、最初の1本が動き出したことを示す緑色のランプが制御盤に表示されると、当直長が「制御棒、引き抜きを開始、試運転を再開しました」と原子炉の再起動を宣言。約60人の職員と室内で見守った岡崎俊雄理事長、向和夫・もんじゅ所長ら原子力機構幹部が握手を交わした。

 原子炉補助建物近くの総合管理棟1階の運転管理室では、職員らが中央制御室の中継映像を流すモニターを見つめた。無事に原子炉が動き出したことが確認されると、拍手がわき上がった。山下俊男・同室長代理(55)は涙を浮かべながら「長かったが、あっという間に過ぎた14年だった。ただ、あくまでも第一歩。引き続き安全に試験を進めたい」と話した。

 95年のナトリウム漏れ事故では、放射性物質の外部への漏れはなく、もんじゅの技術者は当初、「運転停止は長くても数年」と、楽観視していた。しかし事故後、旧動力炉・核燃料開発事業団による火災現場のビデオ隠しなど不祥事が発覚。地元の不信感は強く、国の「核燃料サイクルの柱」でありながら、再開のめどが全く立たない状態が続いた。

 事故から10年後の2005年になってようやく改造工事に着手、動燃は2度の改組を経て原子力機構になったが、08年にナトリウム検出器の施工不良が発覚するなどして、再開日は何度も延期。国が今年2月に安全確認をした後も、県は運転再開と引き換えに、国に北陸新幹線の延伸を求めるなど原子力行政と離れた地域振興の「条件闘争」もあり、運転再開は5月までずれこんだ。 「情報公開万全を」 この日、中央制御室で運転再開の瞬間を見届けた河瀬一治・敦賀市長は「人類に役立つ研究ができれば、もんじゅは市民の誇りになる。情報公開に万全を期し、地元と信頼関係を築けるようにしてほしい」と話した。西川一誠・福井県知事も「慎重かつ着実に試験を進めることを期待する」とのコメントを発表した。

 一方、原子力発電に反対する福井県民会議の小木曽美和子事務局長は「長い間、もんじゅを動かさないための戦いを続けてきただけに、運転再開は残念」と語った。

 宮崎慶次・大阪大名誉教授(原子力工学)は「運転再開が安全性の観点を離れて、地元の国への取引材料になった印象がある。日本が、高速増殖炉研究に貢献する役割を果たしてほしい」と話す。

もんじゅ、6日に運転再開…14年5か月ぶり

2010年05月05日 読売新聞 YOMIURUI ON-Line

2013年から本格稼動

 1995年12月のナトリウム漏れ事故以来、停止している日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)が6日、14年5か月ぶりに運転を再開する。

 経済産業省原子力安全・保安院が、安全性を確認する最後の立ち入り検査を5日まで行い、安全運転に支障がないとの判断が出れば、原子力機構は6日午前中にもんじゅを起動する。

 原子炉最大出力の1・3%以下に抑えた試験運転を、7月下旬まで行う予定。その後、出力を上げながら試験運転を3年間続け、2013年から本格運転に入る。

 もんじゅは試験運転中の1995年、冷却材のナトリウムが施設内に漏れて火災を起こし、運転を停止した。原子力機構は05年から、安全性を高める改造工事を実施。国は今年2月に「安全性を確認した」との評価をまとめ、地元の福井県と敦賀市が4月28日、運転再開を了承していた。

福井県、見返りは新幹線延伸

 高速増殖炉「もんじゅ」の再開日程を最後まで左右したのは、地元自治体の意向だった。県は再開了承と引き換えに、北陸新幹線の県内延伸の確約にこだわった。原子力とは畑違いの要求だが、最終的には県と国の双方が妥協する“玉虫色”の決着を見た。原発の新規立地が進まない中、原子力行政における立地自治体の発言力は増す一方で、この流れは再開後も続く。(福井支局 高橋健太郎)

 福井市のJR福井駅に隣接する全長800メートルの高架施設。昨年2月に完成した北陸新幹線のホーム部分だ。しかし、線路の整備はまだ決まっていない。同新幹線は、長野県から石川県までの区間は2014年度末に完成予定だが、それより西の延伸は政権交代で白紙になった。

 国土交通省は今年に入り、北海道、九州を含めた整備新幹線の未着工区間の建設優先順位を検討し始めた。福井県は早期着工を実現させるため、既に完成した福井駅の新幹線ホームをアピールしつつ持ち出したのが、原子力機構との安全協定に基づく、もんじゅ運転再開の事前了承だった。

 3月の県議会では、再開にあたって地域振興策として新幹線整備を認めるべきだとする意見書を可決。県も、新幹線をもんじゅに絡める「最後の機会」ととらえた。

 西川一誠・福井県知事は先月10日、来県した三日月大造・国交政務官と極秘会談。関係者の間では、三日月政務官が北陸新幹線の延伸に前向きな発言をしたとささやかれる。続く26日には西川知事と川端文部科学相、直嶋経済産業相の3者協議が開かれ、川端文科相は「政府全体としてしっかり取り組む」と強調。知事は満足げに「前向きな回答をいただいた」と応じた。

 福井県には、地元振興の綱引きで「前例」がある。もんじゅのナトリウム漏れ事故の対策工事は、02年12月に国が許可したものの、県が了承したのは約2年後。その間に福井駅の新幹線ホーム建設が決まった。

 県は今回、国側の振興策実行を確認していく組織を設け、延伸を含めた進展状況をチェックする強気の姿勢を保っていく。

 NPO法人「原子力資料情報室」の伴英幸・共同代表は「高速増殖炉の研究開発の是非が、地域振興という問題に矮小(わいしょう)化されてしまった」と批判している。

「もんじゅ」6日に運転再開へ

2010年05月04日 読売新聞 YOMIURUI ON-Line

 1995年12月のナトリウム漏れ事故で停止している日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)が、6日、14年5か月ぶりに運転を再開する。

 経済産業省原子力安全・保安院が、安全性を確認する最後の立ち入り検査を5日まで行い、安全運転に支障がないとの判断が出れば、原子力機構は6日午前中にもんじゅを起動する。

 原子炉最大出力の1・3%以下に抑えた試験運転を、7月下旬まで行う予定。その後、出力を上げながら試験運転を3年間続け、2013年から本格運転に入る。

 もんじゅは試験運転中に、原子炉の熱を伝える冷却材のナトリウムが施設内に漏れて火災を起こし、運転を停止した。原子力機構は05年から、安全性を高める改造工事を実施。国は今年2月に安全性を確認したとする評価をまとめ、地元の福井県と敦賀市が4月28日、運転再開を了承していた。

韓国に続き、原子力ビジネスの海外展開をねらう中国

2010/04/08(木) Searchina

 中国は、「走出去」(海外進出)戦略を原子力ビジネスまで拡大することをねらっている。韓国の企業連合が昨年末、欧米や日本の原子力プラントメーカーを押しのけて、アラブ首長国連邦(UAE)が計画している同国初の原子力発電所の建設を受注したことに衝撃を受けた人物が中国にいる。第3世代原子力発電技術の導入、吸収、再イノベーションの役目を担っている国家核電技術公司の王炳華・董事長だ。

 中国では1970年2月8日、同国初の原子力発電所(「728プロジェクト」)の設計作業がスタートした。74年には周恩来首相が主宰した中央専門委員会で30万キロワット級の加圧水型炉(PWR)による原子力発電計画が承認され、科学技術開発プロジェクトとして国家計画に組み込まれた。

 「728プロジェクト」(秦山発電所)は83年に研究開発と工事設計がほぼ終了し、85年3月に正式に着工した。同発電所は中国の自主設計であるが、圧力容器やポンプなどのコンポーネント・機器については外国から輸入した。国産化率は、金額ベースで70%程度とみられている。秦山発電所は、中国初の原子力発電所として91年12月15日に送電を開始した(商業運転開始は94年4月)。

 これに対して、韓国の原子力発電開発は70年、最初の原子力発電所である古里1号機を米ウェスチングハウス社に発注することによってスタートした。同機は、秦山発電所より16年早い78年4月に商業運転を開始した。

 韓国はその後、ABBコンバッション・エンジニアリング社(ウェスチングハウス社に吸収・統合)の「システム80」(100万キロワット級PWR)をベースに国産化を進めた。また、米国原子力規制委員会(NRC)から99年に設計認証を取得した「システム80+」(130万キロワット級PWR)をベースに「APR1400」(PWR、140万キロワット)を開発した。「APR1400」は韓国が知的財産権を所有しており、国内では新古里3号機・4号機(建設中)、新蔚珍1・2号機(計画中)に採用が予定されている。UAEに輸出されるのも、この炉型だ。

 韓国知識経済部は1月、大統領主催の非常経済対応会議で「原子力発電輸出産業化戦略」を報告し、原子力産業を新たな輸出産業として本格的に育成する方針を打ち出した。同部は、仏AREVAの「EPR」や日本の「ABWR」の建設単価が2900米ドルであるのに対して「APR1400」は2300米ドルでありコスト競争力が高いと指摘している。経済協力開発機構(OECD)の国際エネルギー機関(IEA)と原子力機関(NEA)が最近公表した発電コスト予測「Projected Costs of Generating Electricity:2010 Edition」でも、韓国の原子力発電所の平準化発電コストがOECD加盟国の中で最も低いことが明らかにされている。

 韓国は、政府主導のもと韓国水力・原子力や韓国原子力研究所、韓国電力技術、斗山重工業など、産・学・研が協力して「APR1400」の開発にあたった。また韓国科学技術部(省)は2006年7月、原子力技術の輸出支援を業務とする「原子力技術輸出支援チーム」を立ち上げた。

 国家核電技術公司の王炳華・董事長は、韓国が原子力先進国を差し置いてUAEの原子力発電所を受注できたのは、挙国体制で臨んだためだと指摘している。一方で王董事長は、三菱(重工)と東芝が競争しているような状況では、日本の原子力発電産業を強固なものにすることはできないとも語っている。

 国家核電技術公司は、ウェスチングハウス社が開発した「AP1000」の国内導入に加えて、同型炉をベースにした国産炉「CAP1400」の開発を進めている。「AP1000」の初号機となる三門1号機は昨年4月に着工し、2013年に運転を開始する予定になっている。また、2011年末に初期設計が完成することになっている「CAP1400」の実証炉と位置付けられている山東省の栄成石島湾発電所は、同13年4月に着工し17年12月に送電を開始することが見込まれている。

 中国は、秦山発電所の改良型30万キロワット・PWRをパキスタンに2基輸出した実績を持つほか、さらに2基を輸出することで合意しているが、本命は「CAP1400」だ。同型炉は中国が知的財産権を保有し、韓国の「APR1400」と同じく、中国が世界の原子力発電市場に売り込みをかける主力製品になると期待されている。

 韓国に比べればだいぶ遅れてしまったものの、中国は韓国にない強みを持っている。中国は核燃料サイクルの完結を目指しており、このうち濃縮(役務)については1000トンSWU(分離作業単位)の能力を保有しているほか、さらに500トンSWUの拡張が計画されている。

 中国の核燃料サイクル事業を担う中国核工業集団公司(CNNC)の邱建剛・副総経理は、国内の濃縮能力を飛躍的に拡大したうえで余剰能力を外国のユーザーに対して提供し、中国がアジアのウラン濃縮センターになることを目指すとの考えを明らかにしている。そうしたなかで、CNNC傘下の国際貿易会社、中国原子能工業有限公司は3月5日、関西電力との間で濃縮ウランの販売契約を同1日に結んだことを明らかにした。詳細は明らかにされていないが、契約期間は2012年から19年という。

 プラントメーカーレベルでの輸出も話題にのぼってきている。東方電気集団等が出資している東方電気(広州)重型機器有限公司の王宏・総経理は3月11日、原子力発電設備の輸出を検討していることを明らかにした。王総経理は、フランスと日本の原子力発電企業と提携交渉を開始しており、年内にも最初の注文を受けたいとの期待を表明した。

 筆者の調査によると、今年1月末現在、中国では213基、合計設備容量では2億キロワットを超える原子力発電所が計画されている。かつての日本がそうであったように、中国の原子力産業は国内市場だけで十分にやっていける。しかし、中国の狙いは、原子力発電所の輸出による国際的なプレゼンセンスの向上に加えて、先進技術の輸出という目標を達成することにある。

 中国の現行の原子力国家計画である「原子力発電中長期発展規画(2005〜2020年)」や「原子力産業『第11次5カ年』発展規画」では、原子力発電技術の輸出については言及されていない。しかし、まもなく公表されるとみられる「原子力発電中長期発展規画」の改訂版や次の「第12次5カ年規画」、「原子力発電条例」等では、原子力技術の輸出が明確に打ち出されることはほぼ間違いないだろう。(執筆者:窪田秀雄 日本テピア・テピア総合研究所副所長 編集担当:サーチナ・メディア事業部)

原発の海外受注2連敗 日本巻き返しに官民連携

2010/03/18 Jcastニュ−ス

日本企業の海外向け原子力発電の受注が苦戦していることを受けて、政府は官民が一体となった「ALL JAPAN」の新会社の設立に、本格的に乗り出した。

これまでは日立製作所や東芝などのメーカー主導で受注競争に参戦してきたが、2009年12月のアラブ首長国連邦(UAE)、10年2月のベトナムの第1期工事の受注競争に立て続けに敗れた。フランスや韓国、ロシアが国を挙げての受注体制を敷いており、激しさを増す国家間競争に、日本も巻き返しを図る。

原子力発電「ルネサンス」といわれるほど再評価

発電過程でCO2を排出しない原子力発電は、地球温暖化防止策として欧米を中心に「原子力ルネサンス」といわれるほど再評価されている。さらに、経済成長が著しい中国やインドなどの新興国では電力不足に対応するため、発電所の建設が活発になってきた。

経済産業省によると、計画中の原発は約30にも上り、なかでも東南アジアや中東では具体的に進展している。受注額にすると、UAEのケースで約3兆6000億円、ベトナムの第1期工事で約7500億円規模の一大プロジェクトということもあって、国際的な受注競争が激しくなっている。

そうした中で、日本の原子炉メーカーは東芝が米ウエスティングハウスを買収。日立製作所が米ゼネラル・エレクトロニック(GE)と原子力分野で合弁会社を設立、三菱重工業がフランスのアレバと業務提携するなどで競争力を高めてきた。

ところが、09年12月のUAEの原発プロジェクトでは、李明博大統領の強力な「後押し」もあって、日立・GEの日米連合が韓国電力公社を中心とする韓国連合に敗れた。

韓国は2030年までに80基の原発を輸出目標とする国家戦略を策定。国を挙げてのバックアップ体制を敷いていて、UAEに続き、ヨルダンやトルコなどの受注獲得も狙っている。

経産省は「フランスもEDF(電力公社)やアレバ(原子力産業企業の持ち株会社)が取りまとめ役を務めるなど、国の関与は大きい。日本も国が前面に立ってリーダーシップを発揮することが求められている」という。 ロシアはベトナムに軍事協力約束して受注?

UAEで韓国に敗れた日立製作所は、「原発プロジェクトは、発電所の建設以外にもより広範囲での協力を求められる。メーカー同士の連携は必要になる」と、反省の弁を口にする。

このように、原発を新規導入する国では、発電所の建設から安全運転や保守・管理のノウハウ、人材育成など、メーカー単体では応えられない要求も少なくない。場合によっては外交がらみの、政府ベースで幅広く協力を求めてくるケースもある。

たとえば、ロシアの国営原子力企業のロスアトムに敗れたベトナムの第1期工事では、ロシアがベトナムに対して軍事協力を約束したことが受注に結びついたとも伝えられている。

ベトナムの第2期工事をめぐっては現在、フランスと激しい争いを繰り広げていて、鳩山首相がグエン・タン・ズン首相に親書を送ることを明らかにするなどトップセールスに乗り出したところ。

新会社について経産省は、「UAEの教訓を生かしたい」と話し、原発の運転や保守・管理のノウハウをもつ東京電力や関西電力など電力事業者を中心に協力を求める考え。「出資者や資本規模など、まだ決まっていないが、国際的な受注競争が激しくなる中でゆっくり構えているわけにはいかない。できるだけ早くに発足したい」と意欲をみせる。

原発:導入進むアジア 中国の検査官ら耐震研修に参加

2010年03月16日 毎日新聞 東京朝刊

 原子力発電所導入の動きが進むアジア各国の政府担当者を招き、地震対策で日本が持つノウハウを伝授する「アジア耐震安全研修」が2月、東京都内などで開かれた。独立行政法人「原子力安全基盤機構」の主催による初の試みで、東南アジア5カ国と中国の検査官ら25人が参加。07年の新潟県中越沖地震で被災した東京電力柏崎刈羽原発などで実習を行った。

 研修は2週間。柏崎原発では運転員に被災当時の生々しい体験や復旧作業の経過を聞いたほか、95年の阪神大震災で動いた淡路島の野島断層では活断層の評価方法を習得。国内地震観測網の拠点施設なども見学した。

 原発の被害状況を中央政府や自治体に素早く伝える情報システムや、放射能漏れと地震や津波が重なった最悪の事態下で住民が避難可能な経路を瞬時に割り出す予測システムも実習した。費用を心配する国もあったが、日本側は「システムの中身はすべて無償提供する。十分なマンパワーさえあれば、われわれと同じシステムがつくれる」と励ました。

 中国政府も最近、安全規制を強化しつつあるという。参加した中国環境保護省核安全センターの潘蓉研究員は「中国では原発建設が急ピッチで進む。規制行政も遅滞なく進める必要がある。耐震評価などの研修はとても役に立つ」と話した。【山田大輔】

露、旧ソ連友好国に商機 欧米日との“原発商戦”激化へ

2010.03.15 MSN産経新聞

 【モスクワ=佐藤貴生】ロシアはプーチン首相のインド訪問で、原子力発電所建設の受注獲得に成功した。インドは経済成長を支える電力需要を確保するためエネルギー供給源の分散化を急いでおり、海外で原子力ビジネスを拡大したい双方の思惑が一致した形だ。ベトナムやタイ、フィリピンなど東南アジア諸国でも原発建設の機運が高まっており、欧米や日本、韓国にロシアを巻き込んだ争奪戦は激化しそうだ。

 プーチン首相は12日、ニューデリーでシン首相と会談。同行したイワノフ露副首相は記者団に、「インド国内の3カ所で16の原子炉をロシアが建設することで合意した」と述べた。

 ロシアは以前、インド南部タミルナド州のクダンクラム原発の原子炉建設を受注しており、うち1基は年内にも稼働する見通し。今回は同原発で最大6基の原子炉を増設する事業に加え、東部・西ベンガル州ハリプールでの原子炉6基の建設事業などを受注した。

 インドの原子力市場は2005年、米国が平和利用協力に舵を切って国際競争が本格化した。ロイター通信によると、今年、7%の経済成長が見込まれるインドは、エネルギー需要に占める原子力の割合を倍増させる長期計画を打ち出しており、市場規模は1500億ドルともいわれる。

 ロシアは今回、インドの市場争奪戦で一歩リードした形だが、楽観はできない。インタファクス通信によると、仏国営原子力企業アレバも原子炉6基の建設を受注したとみられるほか、東芝傘下の米ウェスチングハウスと日立製作所・GE(ゼネラル・エレクトリック)の連合に加え、カナダや韓国の企業もインド側と協議している。

 半面、インドでの受注増でロシアの東南アジア進出に弾みがつく可能性もある。2月には日本やフランスと争う中、ベトナム中部ニントゥアン省の原発建設(2基)の受注も得たとされている。

 ベトナムは同時に、中印などと並ぶロシアの兵器売却先の「5指に入る」(国営ロシア通信)という。ロシアが旧ソ連時代の友好国に、兵器売却をからめて原発の“商談”を進める手法はインドと共通している。

 東南アジアでは、ベトナムのほかにも、タイやインドネシア、フィリピンなどで、不足するエネルギー対策と地球温暖化対策の一環として、原発の稼働が検討・計画されている。

 ロシアにとって、原子力ビジネスは石油・天然ガスと並ぶエネルギー輸出の中核だ。プーチン首相の訪印中には、1986年のチェルノブイリ原発事故を引き合いに原発の安全性を問う声が記者団から上がったが、首相は「ロシアの原子炉は世界で最も安全だ。中規模の旅客機が墜落しても耐えられる」と豪語し、国を挙げてセールス活動を続ける姿勢を示した。

原発:新興国新設計画 受注、劣勢日本 UAEは韓国、ベトナムはロシアへ

2010年03月11日 毎日新聞 東京朝刊

 地球温暖化対策や新興国のエネルギー需要急増を背景に、原発新設計画が世界的に増加し、受注競争が過熱している。日本企業は、アラブ首長国連邦(UAE)やベトナムが新設する原発の受注を狙っていたが、UAEの案件は、韓国がフランスや日本を退けて受注。ベトナムの第1期工事もロシアの受注が確実な情勢だ。劣勢の日本は巻き返しを図るべく、次の目標であるベトナムの第2期工事の受注獲得へ向け、官民一体の体制作りを模索している。

 ◇ライバル国はトップセールス 対抗するメーカー

 「原子力導入を目指す国を支援する」。8日、パリで開かれた原子力利用に関する国際会議で、フランスのサルコジ大統領は参加した新興国にこう呼びかけ、UAEでの敗退にめげず、新興国から受注獲得を目指す姿勢を鮮明にした。日本から参加した松下忠洋副経済産業相も国内メーカーや電力会社の高い技術力やノウハウをアピール。会議は、原発製造国の閣僚らのPR合戦の場となった。

 原発が脚光を浴びるのは、発電時にほとんど二酸化炭素を排出しない特性があるためで、1979年のスリーマイル島原発事故以来、原発新設を凍結してきた米国は今年2月、ジョージア州での原発2基の建設計画に83億ドル(約7500億円)の政府保証を付ける方針を表明、約30年ぶりの新設にかじを切った。増加する電力需要の受け皿としても注目されており、経産省によると、新規導入を計画する国は約20カ国に上っている。

 UAEやベトナムとの交渉では、自国産業振興の好機とみた韓国、ロシア、フランスとも首脳がトップセールスを繰り広げた。韓国の李明博大統領は関係者に電話や親書で攻勢をかけ、原発では異例と言える60年間の運転保証や破格の入札額を提示したという。ロシアのプーチン首相も昨年末、ロシアを訪問したベトナムのグエン・タン・ズン首相に潜水艦提供などの軍事協力を約束し、第1期工事の受注を取り付けたとみられている。

 「技術力とは関係のないところで受注先が決まる」(経産省幹部)現状に、政府は危機感を強めている。鳩山由紀夫首相は3日の参院予算委員会で「国を挙げてのトップセールスが十分でなかったと反省している。これからは頑張っていきたい」と表明した。

 日本経団連も約720兆円に上るアジアの社会基盤(インフラ)整備市場に参入するため、トップセールスが不可欠との提言をまとめた。鳩山首相はベトナム政府へ親書を送り、2期工事の受注実現を目指す方針だ。【柳原美砂子】

 ◇官民一体、急務 共同出資、新会社設立を検討

 日本の原発輸出の大きな課題が、建設から運転までのサービスを一体で提供する体制作りだ。

 韓国やロシア、フランスは国営電力会社が交渉の先頭に立っているのに対し、日本は日立製作所、三菱重工業、東芝の原発メーカー3社が主体となってきた。しかし、ノウハウのない新興国は設備の建設に加え、運転や保守、人材協力まで幅広いサービスを求めている。日本はこうした要望に応えられなかった。

 UAEでの受注失敗後、政府内外からは、原発売り込みに当たっては「電力会社が前面に立つべきだ」(経産省幹部)との声が高まった。しかし指名を受けた形の電力業界は「日本の原発運転の歴史は40年程度。韓国のような60年間の運転保証や破格の事業費はリスクが大き過ぎる。株主代表訴訟の恐れもある」(電力幹部)と不満を漏らす。

 日本のメーカー同士の競争も、オールジャパン体制構築の妨げとなっている。UAEの案件は、日立など日本勢を破って受注した韓国勢が、東芝傘下の米原発メーカー、ウェスチングハウスの技術支援を受ける。東芝は入札に参加しなかったが「うちは韓国と組んでいる」(関係者)と余裕を見せていた。

 一体感に欠ける現状を改善しようと、経産省は、国と電力会社などが共同出資し、“日の丸原発”を売り込む新会社の設立を検討している。しかし「どこまで有効か疑問。天下り先を増やすだけではないか」(電力業界)と冷ややかな指摘もある。【後藤逸郎、高橋昌紀、和田憲二】

原発「新重商主義」の台頭に官民で挑む日本

2010.03.05 MSN産経新聞

 ベトナムが計画している原子力発電所建設事業をめぐる国際商戦が大詰めの段階に突入し、日本でもようやく“官民一体”の態勢に向けた協議が熱を帯び始めた。地球温暖化対策として世界の原発市場が成長することは間違いなく、各国の関連企業がそれぞれの政府を巻き込んで、国の威信をかけて競り合っているためだ。    (粂博之)

             ◇

 ベトナムの原発の第1期事業は2月、ロシア国営のロスアトムが受注した。同時期にロシアとベトナムは軍事交流協定を締結し、関係の強さを誇示するなど、ロシアのプーチン首相によるトップセールスが奏功したとの見方が強い。

 日本も「ベトナムへの売り込みは『官民あげてやる』ということ」(東京電力の清水正孝社長)で態勢を立て直す。鳩山由紀夫首相がベトナムのグエン・タン・ズン首相に親書を送るなどして巻き返しを図りたい考えだ。

 政府内で「受け皿作りが必要だ」(経済産業省幹部)との声があるほか、民間企業側も「政府側に要望を項目にして出している状況」(清水社長)という。

 具体的には、官民出資の新たな事業会社設立や官民で出資したファンド「産業革新機構」の活用、日本貿易保険(NEXI)、国際協力銀行(JBIC)による支援枠組みの構築が有力視されている。

          ◇

 政府や民間企業を駆り立てる背景には、世界的な原発商戦で日本が劣勢を強いられていることへの焦りがある。「原発先進国」を自負しながらも昨年末、アラブ首長国連邦(UAE)の原発建設・運転の受注で韓国勢に敗退したことは、関係者に衝撃を与えた。韓国の李明博大統領が自ら乗り出して受注価格を引き下げる一方、60年間の原発運転を保証するなど「民間で負いきれないリスク」(エネルギー業界関係者)を引き受けたのが勝因だった。

 途上国や新興国に自国の技術を展開することは、国際社会での地位向上はもちろん資源や労働力、新市場の確保にもつながる。ビジネスと国益が直結する「新・重商主義」の台頭ともいえる現象だ。

         ◇

 新・重商主義のターゲットは、原発をはじめとするインフラ整備事業。都市への人口流入が進む新興国や途上国では電力や公共交通機関などに対する需要が伸びていることが大きい。

 ただ、こうした国々では軍事衝突から政権交代、制度の改正、工期の遅れまでさまざまな不確定要素が潜む。とりわけ原発に関しては、核物質や関連技術を軍事目的に使わないことを約束する「原子力協定」の有無やその交渉もからんで、「民間でできることに限度がある」(エネルギー会社幹部)。韓国やロシアが商談に強い理由がここにあるわけだ。

 「きれいごとでは勝てない」(政府関係者)世界にいかに挑むか。トップセールスに乗り出した鳩山首相にも、覚悟が求められている。

米政府が30年ぶり原発新設計画、融資保証83億ドル

2010.02.17 MSN産経新聞

 【ワシントン=渡辺浩生】オバマ大統領は16日、約30年ぶりとなる米国内での原子力発電所の新設計画で、総額83億3000万ドル(約7500億円)の融資保証を実施すると発表した。1979年のスリーマイル島原発事故で新規着工を凍結して以来、初めての建設計画で、今後、米国で原発建設の動きが本格化するとみられる。東芝や日立製作所など、日本の原発メーカーの商機が広がる可能性もありそうだ。

 オバマ大統領はメリーランド州の演説で「増加するエネルギー需要を満たし、気候変動の最悪の被害を防ぐために、原子力発電の供給を増やす必要がある。今日の発表はわれわれをそうした道へ進ませるものだ」と述べた。原発を含むクリーンエネルギー分野への投資を促し、雇用拡大と地球温暖化対策を後押しする意向だ。

 米政府が融資保証を実施するのは、電力大手サザン・カンパニーがジョージア州で計画しているボクトル原発の2基の原子炉。建設に伴い3500人、完成後は800人の雇用が創出されるとしている。原子炉の稼働は2016年、17年に開始する見通し。

 オバマ大統領は就任以来、原発政策での積極的な発言を控えてきたが、先月末の一般教書演説で、原発建設の再開に踏み切る考えを示していた。積極姿勢に転じたのは、原発推進派の共和党に歩み寄ることで、議会の審議が遅れている温暖化対策法案の進展を促す思惑もあるとみられる。

 原発建設には多額の費用が必要となるため、政府の融資保証は、電力会社にとって計画を実現に移す重要なステップとなる。

日本が原発建設意欲と報道 イラン副大統領が発言

2010.01.10 MSN産経新聞

 国営イラン放送によると、同国のサレヒ副大統領兼原子力庁長官は10日、「日本がイランでの原子力発電所建設に意欲を示している」と述べた。同氏の発言は、核問題で欧米が新たな経済制裁を検討しイランの国際的孤立が深まる中、外国との友好関係を国内に印象付けるのが狙いとみられる。

 サレヒ氏は「日本は核問題については慎重なだけに、興味深いことだ」と発言、両政府で協力のあり方について話し合っていると語った。

 しかし、岡田克也外相は昨年末、訪日した核交渉責任者のジャリリ最高安全保障委員会事務局長に核開発への強い懸念を表明。核開発問題が解決していない現状では、日本がイランでの原発建設に協力する可能性は低いとみられる。(共同)

日本の新型原発導入へ カザフ、18年完成目指す

2009/06/21 中国新聞ニュース

 【セメイ(カザフスタン北東部)20日共同=佐々木健】カザフスタン北東部にある旧ソ連のセミパラチンスク核実験場に接する、かつての軍事閉鎖都市クルチャトフに、日本の技術を導入して発電効率の高い原子炉「高温ガス炉」による新型原子力発電所の1号機の建設が計画されていることが分かった。カザフスタン国立原子力センターのカディルジャノフ総裁が19日、共同通信に明らかにした。

 1号機は2018年に完成、22年ごろ稼働する計画。核兵器の被ばく問題を抱える両国が、原子力の平和利用で協力を深める象徴的な共同事業になりそうだ。

 総裁によると、茨城県大洗町に研究用の高温ガス炉を持ち、世界最先端の実証試験を行ってきた日本原子力研究開発機構の技術を基礎に、東芝やカザフ国営原子力企業カザトムプロムなどと合弁企業の創設を協議中。日本側は半分程度を出資する方向で、ロシアとスロバキアも参加の意向を示しているという。

 高温ガス炉は、カザフ政府が見直しを進めている国家原子力計画に盛り込まれる見通しで、大統領が最終的に承認すれば、カザフの他地域への事業調査にも着手する。

 1号機の発電能力は5万キロワットで、暖房用の温熱も供給する方針。予算は5億ドル(約480億円)以上で、カザフ側は日本の国際協力銀行(JBIC)に資金協力を要請しているという。

 総裁は高温ガス炉を「将来性のある事業」と高く評価。核実験による被ばくで健康被害が相次いだだけに「周辺住民の多くは原子力という言葉に拒否反応を示すが、問題は克服できると思う」と強調した。


核燃工場、ノズルの加熱不足か 日本原燃、国に報告

2008年09月12日 中国新聞ニュース

 試運転中の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)でのガラス固化体製造が不具合のために中断している問題で、日本原燃は12日、高レベル放射性廃液とガラスを混ぜた溶液が流れにくくなったのは、固化体容器に注ぐノズル部分が十分に加熱されていなかったのが主因とみられるとの報告書をまとめ、国に提出した。

 原燃は、溶液が円滑に流れるようノズル部分の温度を修正して確認試験を約2週間後から実施。最終的な原因究明を急ぎ、再発防止策を国に報告する。

 原燃は、ノズル部分を温める高周波加熱コイルの設定が不適切だったことなどから、十分に加熱されなかった溶液が流れにくくなり、ノズルの出口付近などをふさいだとみている。

 固化体製造は7月、約半年ぶりに試験を再開したが、不具合が発生して再び中断するなど難航。原燃は試運転の終了時期を4カ月延期して11月にすると発表し、本格操業は2009年にずれ込む可能性が強まっている。

またも、漏えいの誤警報 高速増殖炉原型炉もんじゅ

2008年09月07日 中国新聞ニュース

 日本原子力研究開発機構は7日、高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)で6日夜に2次冷却材のナトリウムの漏えいを示す警報が誤作動を起こすトラブルがあったと発表した。昨年5月のナトリウム再注入以降、漏えい検出器の誤作動が多発しており、今回で8回目という。

 原子力機構によると、6日午後10時50分ごろ、蒸気発生器周辺の検出器がナトリウムの漏えいを示し、警報が鳴った。作業員が調べたところ、実際に漏えいはなく、約5分後に誤作動だったことが分かった。原因は不明。同検出器は今年4月以降に抜き取り検査をしており、異常はみられなかったという。

 誤作動の多発を受け、原子力機構は敦賀本部の増員など改善計画を取りまとめ、7月末に経済産業省原子力安全・保安院に提出。同計画の実施状況を確認するため、今月4日から保安院の特別保安検査が始まったばかり。

 もんじゅは1995年にナトリウム漏れ事故を起こして以来、長期停止中。施設全体の安全確認試験が遅れていることなどから、10月に予定していた運転再開を来年2月に延期することを8月に決定していた。

低炭素社会を実現する技術を探る(第3回)原子力/海外進出を目指す国産技術 小型化で途上国にも広がる

2008/09/05 ECO JAPAN

 中断していた高速増殖炉の性能試験が再開され、商用化に踏み出したのと並行して、メーカーによる中小型炉の開発も進む。それぞれ、日本にとっては原子力ビジネスを進める上で重要なカードの1つになるだろう。

 早ければ今年10月に、福井県の若狭湾のほとりにある高速増殖炉「もんじゅ」の性能試験が始まる予定だ。高速増殖炉は、発電しながら核分裂しにくいウラン238を燃料になるプルトニウムに変えられる。そのため、ウラン資源を有効活用でき、核燃料サイクルの要となる。

 ウラン価格が安い1990年代には、その存在意義を問う声もあった。だが、2006年に政府は必要性を再確認し、2050年までに商用化する目標を立てた。うまくいけば、世界で初めて商用の高速増殖炉が日本で生まれる。

 とはいえ、現状の経営環境では電力会社が高速増殖炉を採用する気運はない。新型炉で注目を集めているのは、現在主流の大型軽水炉の効率を上げたタイプのほか、途上国や小都市向けを想定した中小型炉だ。

 その1つが、電力中央研究所と東芝が共同開発した小型高速炉「4s」。4sは、1万kW程度の小規模な発電出力で、燃料を交換せずに30年間運転できるメリットを持っている。

 ●小型のナトリウム冷却高速炉 電力中央研究所と東芝は小型炉「4s」を共同開発中。全体で縦に30m程度と小さく、中小規模の都市に向く。水素製造設備とも組み合わせられる中断していた高速増殖炉の性能試験が再開され、商用化に踏み出したのと並行して、メーカーによる中小型炉の開発も進む。それぞれ、日本にとっては原子力ビジネスを進める上で重要なカードの1つになるだろう。

 燃料を交換しなくて済むのは、2.5mの中性子反射体が1週間に約1mmずつ徐々に上に移動し、反射体部分だけを核分裂させることで反応を30年間続けさせる仕組みだからだ。軽水炉より中性子が高速で動き、出力密度が高い高速炉は小型化するのに好都合である。

 電中研と東芝は、夏期しか燃料物資を運べないアラスカにこの4sを設置するため、米国原子力規制委員会の審査を受ける予定だ。

 三菱重工業も、フランスの原子力発電大手のアレバと中型炉の共同開発に取り組んでいる。送電網の整備が遅れている地域や、大規模より中小規模の発電を必要とする都市での需要を狙っている。

 2050年に商用炉に至ると予想されている高温ガス炉も、軽水炉に比べると中小型炉に向いている。

 日本原子力研究開発機構(茨城県那珂郡)が研究している高温ガス炉は、冷却材としてヘリウムガスを充てんしている。既に、原子炉出口の温度は最高950℃を達成しており、200℃程度から950℃まで幅広い熱利用が可能な点が特色だ。

 その高温を利用して、水素製造を併設することが高温ガス炉の目的の1つといえる。水素製造には、「ISプロセス」が最も実用化に近い。ISプロセスとは、まずヨウ素と二酸化硫黄と水を反応させ、ヨウ化水素と硫酸を作る。そして高温ガス炉から、硫酸に900℃、ヨウ化水素に400℃の熱を与えてそれぞれ酸素と水素を取り出す。すると硫黄とヨウ素が残るので、再度同じプロセスで循環利用する。現在は高温ガス炉に接続するための材料開発などが課題だ。

 高温ガス炉はコストなどで軽水炉に比べて大きな優位性を打ち出せないものの、大規模な水素社会が実現すれば、大量の水素製造インフラとして注目を集めるだろう。

 また、運転にさほど水を使わないという利点から、カザフスタンなど水資源の少ない国で導入を検討しており、実証炉は海外が先になるかもしれない。日本にとっては、カザフスタンに高温ガス炉などのインフラを提供することで、資源を得る外交手段になるという見方もある。

 中小型炉や高温ガス炉は、原子力の需要が先進国から途上国に広がった場合、評価が今よりも高まる可能性があるだろう。

最新技術を集積した核融合炉

ここまでの核分裂炉なら社会情勢をにらみながら、将来の展望も描ける。しかし、社会に最も大きなパラダイム転換を生む可能性を持ちながら、100年後が全く予測のつかない核融合という技術がある。

核融合反応は、軽い原子核同士を融合させて、重い元素に変化させる反応のこと。核融合炉はその変化から生じる質量の差分だけのエネルギーを取り出せる。炉はドーナツ形状の電磁石コイルに囲まれており、炉心は物質が気体よりもさらに小さく、電荷を持った粒子として飛び回るプラズマになっている。プラズマでは、重水素や三重水素(トリチウム)といった軽い元素の燃料が電磁石コイルによる磁力線に沿って高速で運動し、核融合反応を起こす。茨城県那珂市にある核融合炉JT-60は、放射能汚染を避けるためにトリチウムを使わずに実験を行い、96年には最高5.2億℃の世界記録を達成した。ちなみに放射能を出さない重水素同士の反応には10億℃が必要で、技術的ハードルはさらに高い。

核融合炉については膨大な実験コストがかかるため、日本や米国、ロシアなど6カ国とEUが共同開発を進める、ITER(イーター)計画が進行中だ。昨年ようやく、フランスのカダラッシュで核融合炉の建設が始まった。

日本は、それまでの実績と知見を基に技術協力するほか、2割近くの機材を納入する役割がある。JT-60は今夏に解体し、7年かけて超電導コイルなどさらに改造を重ねた上、次の実験の準備を進める予定だ。

日本は青森県六ヶ所村にもITERの遠隔実験設備を設置し、ITER計画の中心的な役割を占める。そのために日本の技術や技術者は茨城県青森県、フランスと3分されてしまう。後継者不足の中で日本の核融合研究に支障も出かねないとの心配の声もある。

とはいえ、既に超電導コイルなどの発注も始まり、国際共同でいよいよ本格的な実験がスタートした。国内メーカーも対応を始めた。

原子力発電の開発は、政策や社会的受容性に左右される面が大きい。ここにきて、原子力の再評価が進む国際社会で、様々な原子力技術を生かすチャンスが出てきた。

北海道電の泊原発3号機 来年12月始動へ設備試験運転 4割超を原子力で

2008/09/05 FujiSankei Business i.

 北海道電力は、来年12月に運転開始を予定している泊原子力発電所3号機を公開した。

 北海道の積丹半島の付け根に位置し、道内で3基目になる泊原発3号機(定格電気出力91・2万キロワット)は、1号機(同57・9万キロワット)と2号機(同57・9万キロワット)に隣接する敷地で、2003年に建設工事に着工した。

 3号機の運転開始により1号機、2号機を合わせると、北海道の電力需要の40%超の電力が原子力エネルギーで供給することになる。燃料には原子力発電所の使用済み燃料を再処理するプルサーマル計画も策定。全燃料157体のうち、再処理されたMOX(混合酸化物)燃料を40体以下にするなどの方針を打ち出している。

 泊原子力発電所の汐川哲夫所長は「年内に核燃料を搬入して来年2月に燃料を装着、来年12月に運転開始したい。この泊原発の完成により環境にやさしい電力の安定供給が図れる」と語った。

 3号機は、今年7月末に原子炉格納施設などの建築工事を終了。またタービン発電機や格納施設内への蒸気発生器などの機械・電気設備の据え付けはほぼ終了しており、現在、これらの設備、機器の試験運転を行っている。

【土・日曜日に書く】論説委員・科学部長 長辻象平 再処理工場の完成はまだか

2008.08.30 MSN産経新聞

 ≪新技術に潜む魔物≫

 新技術の開発は難しいものだ。思いがけないところに魔物が潜んでいて牙をむく。原子力や宇宙ロケットの分野を眺めていると、つくづくそう思う。

 日本原燃(青森県六ケ所村)の再処理工場で行われている最終試運転が、最後のガラス固化体の製造で難航している。

 ガラス固化体は、原子力発電所で使い終えた燃料からリサイクル可能なウランとプルトニウムを取り出した後の残りかすの廃液を、熱で溶かしたガラスに混ぜて固めたものだ。直径40センチ、高さ1.3メートルのステンレス製の円筒容器に流し込まれる。

 こう聞いただけなら、町工場でもたやすくできそうな工程だが、現実はそうはいかない。それが技術開発の難しさだ。

 最初のつまずきは昨年12月に起きた。漏斗形をした溶融炉の底に、残りかすに含まれるルテニウムやパラジウムなどの白金族金属が固着して、ガラス固化体製造は約60本でストップしてしまった。

 日本原燃は、溶融炉に固着した金属成分やガラスを除去し、不具合の原因を解析したうえで、加熱法を調整するなどして7月に製造試験を再開した。

 するとどうだ。今度は最初の1本目で失敗してしまった。前回、トラブルが生じた溶融炉は順調に機能したが、その下方の流下ノズルの周辺でガラスが固まり、ステンレス容器に流れ落ちなくなってしまった。この部分の温度が低すぎたことが原因らしい。

 ≪なぜガラス固化で≫

 再処理工場は、巨大な化学工場だ。ここには、国内の電力会社の原子力発電所で利用した使用済み燃料の集合体が搬入される。

 これを専用装置で裁断して硝酸で溶かし、ウランと新たにできたプルトニウムとその他の放射性物質に分離する。全工程は厚い鉄筋コンクリート壁に囲まれたセルの中で進行する。配管の総延長は約1300キロにも達する。

 最初は模擬燃料でスタートし、平成18年3月から本物の燃料を使うアクティブ試験に入っていた。試験は、ほぼ順調に進んでいたが、最後のガラス固化体でつまずいたのだ。

 原因は何か。六ケ所村の再処理工場の大部分には、すでに実績のある仏アレバ社の技術が使われているのだが、ガラス固化体の段階は国産技術によるものだ。

 かつての動燃(動力炉核燃料開発事業団)が開発した方式を採用しているので、商業用の本格使用は今回が初めてのこととなる。ここに魔物が隠れていた。六ケ所村で使われている溶融炉のサイズが大きいことも、加熱条件の差として影響したらしい。

 ガラス固化体には、ウランが分裂して生じた核分裂生成物が封じ込められる。放射能レベルが高くてやっかいな代物だ。

 国内初の商用再処理工場の重要な工程に、どうして実績の乏しい方式を使うことになったのか。技術の魔物を甘く見ていたとしか思えない。重くて沈降しやすく、それ自体が崩壊熱を発している放射性の白金族元素をガラスに均一に溶かし込むには、高度なノウハウが必要だったのだ。

 ≪別系統での実証を≫

 再処理工場の完成には、すでに8年以上の遅れが出ている。今回は、完成のゴールを目前にしてのトラブルだ。日本原燃とメーカーは原因を解析し、成功への自信を持っているようだ。しかし、放射能レベルの高いセル内に人間は入れない。詰まったガラスの除去などは、すべて遠隔操作になるので長い時間がかかってしまう。

 再処理工場の完成がさらに手間取ると、原子力発電所によっては使用済み燃料貯蔵プールの余裕が乏しくなるところが出始める。使用済み燃料を原子力発電所の貯蔵プールから再処理工場へと移す流れを維持しなければ遠くない将来、原子力発電が低下して電力危機に陥りかねない。

 それゆえ、再処理工場の本格操業が急がれる。その実現には唯一の打開策が残されている。再処理の主要工程にはAとBの2系統があり、固化体製造にも未使用のB系統が温存されているので、これを使って技術を証明するという道がある。トラブルは、装置の構造ではなく加熱温度の設定などにありそうなので、打開策としては妥当な選択ではないか。

 高速増殖炉と最終処分場の問題を含め、日本がエネルギー政策の基本としている核燃料サイクルは暗礁に乗り上げている。

 中でも急がなければならないのが再処理工場の完成だ。「遅かりし再処理工場」では困ってしまう。今は、きわめて現実的な判断が非常に強く求められている。国際情勢からも、その操業開始は国益上の急務であろう。(ながつじ しょうへい)

東芝:韓国大手と関係強化 原発事業で覚書締結

2008年08月27日 毎日新聞 東京朝刊 Mainichi INTERACTIVE

 東芝と韓国の重工大手、ドゥーサン(斗山重工業)が、原子力発電事業で、関係強化に向けた検討を進めていることが26日わかった。東芝傘下の米原発大手、ウェスチングハウス(WH)が手がける加圧水(PWR)型原発の蒸気発生器の生産をドゥーサンに発注することなどを検討しているほか、関連技術の共同研究も模索している模様だ。原油高や地球温暖化を背景に、世界各国で原発の建設計画が進んでいるため、国際的な分業体制を構築し、競争力を高めるのが狙い。

 ドゥーサンはWH社と取引実績があり、東芝がこれを受け継ぐ形。すでに、関係強化に向けた覚書を締結した。東芝・WH連合が米国や中国で受注したPWR型原発の基幹部品の一部を、ドゥーサンに発注する方向だ。

 東芝は06年にWHを買収し、原発事業で世界3大陣営の一角に躍り出た。しかし、東芝はWHのPWR型と異なる「沸騰水(BWR)型」を採用。東芝はBWR型では親密な関係にある重工大手、IHIに主要機器を発注している。技術的な違いが大きいPWR型はドゥーサンを協力相手に選び、生産体制を整える。【宮島寛、宇都宮裕一】

東芝、原発受注39基計画 2015年まで 欧州にABWR販社検討

2008/06/18 FujiSankei Business i.

 東芝は17日、2015年までに39基の原子力発電所の受注を計画していることを明らかにした。20年までに世界で約150基の原発の新設が見込まれているが、東芝は「30%以上のシェア確保を目指す」(岡村潔原子力事業部長)方針だ。

 傘下の米原発メーカー、ウエスチングハウス(WH)が手がける次世代加圧水型軽水炉(PWR)「AP1000」で33基、東芝本体で手がける改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)で6基の受注をそれぞれ見込む。5月の経営方針説明会では、AP1000の受注計画しか明らかにしていなかった。

 ABWR拡販に向け、3月に米バージニア州に販売・サービスを手がける現地法人を設立。米法人が軌道に乗った段階で、欧州にもABWRの現法を設立する考えだ。

 東芝は2006年に約5000億円を投じてWHを買収。沸騰水型軽水炉(BWR)とともに、WHの加圧水型軽水炉(PWR)も手に入れ、2方式の軽水炉を持つ唯一の原発メーカーになった。

 買収後は市場の要望に応じて2方式の原発が供給できる強みを生かし、積極的な受注活動を展開。現在までにAP1000は世界最大市場の米国、中国で合計10基の受注を獲得した。17年間を予定していたWHの投資回収期間を13年間に短縮した。

 原発需要は、原油価格の高騰や地球温暖化問題を追い風に世界的に拡大傾向にある。東芝は原発を含む社会インフラ事業を、半導体事業とともに柱に据えており、原発事業の売上高を20年度に1兆円(現在約5000億円)に引き上げる計画を立てている。

日立とGE 米で次世代原子炉受注へ

2008/06/18 FujiSankei Business i.

 日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の日本法人は17日、米電力会社デトロイト・エジソンが米国内で進めている原子炉建設計画で、日立とGEの米合弁会社が次世代沸騰水型軽水炉(ESBWR)を受注する見通しになった、と発表した。

 受注額は公表していないが、2000億〜4000億円程度となる見込み。

 日立とGEの合弁会社「GE日立ニュークリア・エナジー」のESBWRを採用する米電力会社は、デトロイト・エジソンが4社目となる。

 日立とGEは、原発市場拡大が見込まれる米国市場で高出力のESBWRの売り込みを強化しており、米原発メーカーのウエスチングハウスを買収した東芝などとの競争が激化している。


最大4千億円の収支悪化 東電、柏崎刈羽原発停止で

2007/07/31 中国新聞ニュース

 東京電力は三十一日、新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原子力発電所の稼働停止が、直接的には二千八百二十億円の収支悪化要因になり、さらに今後の原油価格上昇による火力発電の費用負担を見込むと最大四千億円程度の影響を受けると発表した。

 東電は他の要因も含め、二○○八年三月期連結決算の経常利益予想を四千億円程度から千三百億円程度に、純利益も三千百億円の予想を六百五十億円に、それぞれ下方修正。人件費やコストの削減で黒字を確保するとしている。

 原発から火力発電に切り替えたことで、燃料費が増加。他電力などから購入する電力の費用も計上する。原発の設備利用率の予想も72%から44%に低下する見通し。

配管損傷で海水24トン流入 震災で柏崎刈羽原発

2007/07/28 中国新聞ニュース

 東京電力柏崎刈羽原発4号機のタービン建屋のゴム製配管が三・五メートルにわたって裂け、海水約二十四トンが同建屋内に流れ込んでいたことが二十八日までの東電の所内検査で分かった。新潟県中越沖地震の揺れの影響とみられる。

 東電は、海水を供給するポンプを止めたため十九日には流入が止まったのを確認した。今後、損傷個所を補修、床などに残った塩分を取り除く。

 建屋内は放射線管理区域だが、流入した海水が放射性物質で汚染されたとしても海に放出されることはなく、外部への影響はないとしている。

 原発では、原子炉でできた高温、高圧の蒸気をタービン建屋に送り、タービンを回して発電する。役目を終えた蒸気は、配管内を海水が流れる復水器という装置で冷やされて水に戻り、ポンプで再び原子炉に送られる仕組み。

 損傷があったのは、復水器に海水を供給する内径二・四メートルの配管で、弁のつなぎ目付近が裂けていたという。

 同原発では、地震によって建屋をパイプが貫通する部分などにすき間が生じ、破損した消火用配管から漏れた水約二千トンが入り込んで原子炉建屋最下層にたまったり、同様のすき間から雨水三十トンが浸水したりする被害が続いている。

管理区域に雨水30トン 柏崎刈羽原発

2007年07月26日 中国新聞ニュース

 東京電力は26日、新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原発の放射性物質を扱う管理区域4カ所で雨水が流入しているのを発見したと発表した。配管が建物内に入る貫通部が地震で損傷するなどし、25日夜から降り続いた雨が入り込んだとみられ、流入した雨水は約30トンに上るという。

 管理区域は外部に比べ圧力が低くなっており、放射性廃棄物が外部に漏れ出す心配はないといい、東電は「損傷個所からの放射能漏れは確認されていない」と説明。現地を視察した原子力安全・保安院の加藤重治審議官は「このような事例は記憶にない。原因を明らかにすべきだ」と述べた。

 東電によると、雨水がたまっていたのは1号機タービン建屋の地下(12トン)、放射性廃棄物が入ったドラム缶が散乱した固体廃棄物貯蔵庫第1棟付近(17トン)、1号機補助建屋の地下(0・47トン)、3号機タービン建屋の地下通路(0・12トン)。

 1号機タービン建屋の地下では、排水溝に流れる水をためる廃液収集槽が雨水であふれ、最大で深さ約20センチの水たまりができていたという。

 東電は今後、たまった水の除去作業を進める方針で「適切に処理したい」としている。

原発の間近に震源断層か 中越沖地震で国土地理院

2007年07月26日 中国新聞ニュース

 新潟県中越沖地震の震源断層について、国土地理院(茨城県つくば市)は26日、これまで各機関が推定していた海側が浅い断層とは逆の、陸側が浅い2つの逆断層が動いたとする解析結果をまとめた。

 解析が正しいとすれば、クレーン破損など大きな被害が出た東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市・刈羽村)から断層までは、わずか数キロ。過去の地震の記録やボーリング調査ではこうした断層を推定できておらず、原発建設に先立つ調査の限界と、事前に断層が見つからない地震に対する想定の甘さがあらためて問われる。

 地理院は、衛星利用測位システム(GPS)や衛星「だいち」による観測結果を基に解析。原発沖で北東−南西方向に走る長さ約12キロ、幅約10キロ、上端の深さ約1・2キロの断層で海側が約1・5メートルせり上がり、さらに、この北側で長さ約10キロ、幅約10キロ、上端の深さ約5・2キロの断層がわずかに横ずれしながら同じく海側が約1・4メートルせり上がったと結論付けた。

日本の原発、信頼性に懸念・海外メディアが批判、中越沖地震

2007/07/18 NIKKEI NeT

 新潟県中越沖地震で放射能を含む水が海水に流れた問題について、海外メディアは日本の原発の信頼性への懸念を一斉に伝えた。英BBC(電子版)は「日本の原子力発電所の安全性には昔から懸念があった」と指摘。18日、東京電力が放射能量を少なく公表したことが判明すると、英ロイター通信、米AP通信は相次ぎ速報し「実際の放射能漏れは1.5倍もの量」(AP)と批判した。

 東電の対応を問題視する報道が多く、米紙ニューヨーク・タイムズは放射能漏れをめぐって発表が二転三転した経緯を詳細に説明。米紙ワシントン・ポスト(電子版)は過去の事故についても触れながら「日本の原発業界には事故もみ消しの歴史がある」と指摘した。

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(同)は昨年政府が改定した原発の耐震指針について「過去25年で初めての改定だったが、それから10カ月もたっていない」と日本政府の監督体制を疑問視。「原発は自然災害だけでなく、テロリストによる破壊工作に対しても弱い」との専門家の見方を紹介した。

柏崎刈羽原発に停止命令 市長、東電社長呼び

2007/07/18 中国新聞ニュース

 新潟県柏崎市の会田洋市長は十八日午前、東京電力の勝俣恒久社長を市役所に呼び、中越沖地震の際に火災が発生した柏崎刈羽原発施設内の地盤に傷みが見つかったとして、消防法に基づき、同原発の安全が確認されるまで運転しないよう停止命令を出した。

 会田市長が勝俣社長に命令書を手渡した。命令の対象は屋内貯蔵庫で、この施設が止まれば原発は実質的に稼働できない。

 新潟県原子力安全対策課などは十七日、安全協定に基づき同原発を立ち入り調査した。会田市長は十八日午前「調査によって施設内の地盤に、かなりの傷みが見つかった」とした上で「このままでは原発の再開はとても認められない」と停止命令の理由を説明した。

 同原発は地震で、全七基のうち停止中の炉を除く四基が緊急停止。3号機ではタービン建屋外にある変圧器で火災が発生した。

 会田市長は、国の考えをただすため経済産業省原子力安全・保安院の加藤重治審議官も呼び面談した。加藤審議官は「火災の責任は事業者にある」と市長に説明した。

原発の耐震性確認は長期化 中越沖の想定外揺れ検知で

2007/07/18 中国新聞ニュース

 新潟県中越沖地震の際、東京電力柏崎刈羽原発で設計時の想定を大きく上回る揺れが検知された問題で、全国の原発で進めている国の新しい指針に基づく耐震性再点検が、当初計画の二〇一〇年まではかかる見通しであることが十八日、各電力会社の取材で分かった。

 このままでは既存の原発多数が柏崎刈羽と同様の被害の危険がないかを検証しないまま、数年間は運転を続けることになり、安全規制が妥当かどうかの議論があらためて高まりそうだ。

 今回の地震では、同原発1号機最下層の床上に置いた地震計で、設計では水平方向の加速度を最大二七三ガルと想定していたのに対し、観測値は最大六八〇ガルと二倍以上を記録。詳細は解析中だが、ほかの原発でも新潟と同様の揺れがあれば、想定を超えるのではないかと懸念されている。

 甘利明経済産業相は十七日、「新指針に基づく安全性再確認をできるだけ急がせたい」と述べたが、既に電力各社はボーリング調査などの日程を決定済み。経産省原子力安全・保安院は「大幅短縮は難しい。大臣の(発言は)メッセージだ」と苦しい説明。各電力会社も、国の具体的指示がない段階では、所定の実施計画に従って進める考えを示している。

 北海道電力泊原発はボーリング調査をほぼ終え、既存の1、2号機については来年中に報告をまとめて国に提出する。同社は「経産相発言は認識しているが、どの程度急ぐのか」と戸惑う。

 玄海、川内両原発で〇九年までに再点検結果を報告する予定で海底のボーリングなど地質調査を進めている九州電力も「拙速にやってずさんになってはいけない。縮めるのは難しいかもしれない」と慎重だ。

 関西電力は福井県の三原発とも〇九年に報告する計画。地質調査などは終えているが「(短縮が)できるかどうか検討が必要。指示があれば取り組みたい」、日本原子力発電も「国の指示があれば急がざるを得ない」、島根原発3号機で、全国で一番遅い一〇年十二月に再点検完了を目指す中国電力も同様に「指示があれば」としている。

 保安院は東電に対し地震データの解析、報告を指示。それを受け、各社の再点検作業で新たに指示が必要かどうか検討する方針。

柏崎刈羽原発トラブルは計50件 排気筒から微量放射能

2007/07/17 中国新聞ニュース

 東京電力は十七日、新潟県中越沖地震後に柏崎刈羽原発で確認されたトラブルが、発生当日の火災、水漏れのほか、排気筒フィルターから微量の放射能の検出、低レベル放射性廃棄物入りのドラム缶の転倒など、原子炉7基で計五十件に達したと発表した。

 経済産業省原子力安全・保安院は同日、審議官ら職員四人を派遣。現地に常駐している保安検査官と協力し、原発所内の事実確認に着手した。

 東電によると、地震で緊急停止した7号機の主排気筒のフィルターで週一回の交換、測定をしたところ、放射性のヨウ素とコバルト、クロムを検出。地震前の七月九日以降の付着とみられるが、燃料集合体の破損などは確認されていない。

 フィルターには主排気筒の排気が通過。排気そのもののモニターでは放射線は検出されず、外部のモニタリングポストの測定値にも変動はなかった。東電は外部への影響はなかったとして、原因を調べている。

 一方、原発構内の固体廃棄物貯蔵庫では、低レベル放射性廃棄物の入ったドラム缶約百本が倒れ、何本かのふたが外れているのが見つかった。ドラム缶には交換したネジや配管、手袋などの廃棄物を袋に入れた上で収納していた。付近の床の一カ所が汚染したが、外部への影響はないという。

 調べたのは二つの貯蔵庫にあるドラム缶二万二千

原発の耐震設計超える揺れ 柏崎刈羽、緊急停止

2007年07月17日 中国新聞ニュース

 東京電力は16日、柏崎刈羽原発(沸騰水型、同県柏崎市・刈羽村)で検知した新潟県中越沖地震の揺れが、機器や施設の安全性が保たれる耐震設計の基準である「限界地震」を大幅に上回り、原子炉が緊急停止、微量の放射性物質を含む水が海に放出されたと発表した。甘利明経済産業相は17日未明、東電の勝俣恒久社長を呼び、安全を確保するまで同原発を運転しないよう指示した。

 緊急停止したのは全7基のうち停止中の炉を除く4基。3号機ではタービン建屋外にある変圧器で火災が発生した。経済産業省原子力安全・保安院によると、地震に伴い原発で火災が起きたのは国内で初めて。地震発生後、間もなく火災が確認されたが、119番が掛かりにくく、消防隊の到着も遅れて鎮火は正午すぎとなった。

 6号機では微量の放射性物質を含む水漏れが見つかり、1・2立方メートルが海に放出されたことが判明。使用済み核燃料貯蔵プールの水とみられるが、国の安全基準を下回るレベルで、東電は環境に影響はないとしている。

 3号機原子炉建屋では圧力を逃がすパネルが外れ、余震後には1、2、3号機で使用済み燃料プールの水位が低下した。

原発の停止、長期化は必至 国の耐震性確認指示で

2007年07月17日 中国新聞ニュース

 新潟県中越沖地震により原子炉が緊急停止し、火災、放射性物質を含む水の漏えいなどトラブルが多発した東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市・刈羽村)では、今回の震源となった海底下の断層の影響を基にした耐震性の再検討に時間がかかることが予想され、運転停止の長期化は必至の情勢だ。

 甘利明経産相は17日未明、勝俣恒久東電社長を呼び、耐震性の確認や消防態勢の点検と報告を指示。「耐震安全性が確認できるまで運転再開を認めない」との方針を示し、全国の電力会社にも同様の指示を出した。

 同日朝の閣議後の会見でも関係閣僚から、原発の耐震安全性を重視する意見や東電の対応の遅れへの批判が相次いだ。

 柏崎刈羽原発の設計では、従来基準の直下型でマグニチュード(M)6・5の地震を想定していたが、今回は震央までわずか9キロとほぼ真下で、規模もM6・8と想定を上回った。

大型軽水炉本格開発へ総額600億、2025年導入目指す

2007年07月13日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 経済産業省資源エネルギー庁は、電力会社や原発メーカーと共同で、現在の大型原発の約1・3倍の出力となる180万キロ・ワット規模の大型軽水炉を本格開発する方針を固めた。

 官民折半で来年度以降、総額600億円の研究開発費で基本設計を行い、2025年ごろからの導入を目指す。

 国は次世代の高速増殖炉を50年ごろから実用化する考えだが、20年代後半からは、老朽化した現行原発の建て替えが相次ぐと予想される。このため、高速炉導入までの間をつなぐ大型軽水炉について基礎的な調査を進めていた。高速炉が、熱効率の高いナトリウムを冷却材に使用し、全く新しい設計となるのに対し、大型軽水炉は、取り扱いが容易な水を利用する現行炉の延長となる。

 出力を大幅に上げるほか、核燃料のウラン濃度を高めて長期間燃焼させることで、使用済み核燃料の発生量を4割少なくすることを目指す。国内では、使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定が難航し、廃棄物問題に道筋をつけることが最優先課題の一つになっている。

 また、原子力安全委員会の新指針で認められた免震構造も積極的に取り入れる。開発には、東京電力や東芝、日立製作所、三菱重工業などが参加する。国内では、55基の原発が稼働しているが、このうち20基は1970年代に建設された。現在の安全規制は、原発の運転期間を60年としている。

ブラジル、核プログラムを再開

2007年07月11日 AFP BB News

【7月11日 AFP】ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)大統領は10日、同国が20年ぶりに核プログラムを再開する予定だと述べた。原子力潜水艦と国内3基目となる原子力発電所の完成を目指し、資金が投入されるという。

 原子力潜水艦と原子力発電所の建設は、20年前に中止されていた。

 サンパウロ(Sao Paulo)のブラジル海軍技術センターを訪れたダシルバ大統領は、記者団の質問に答え「以前と異なり、現在は資金が十分にある。このプログラムを完遂するために、必要な資金を投入することを約束する」と語った。

 ルラ大統領はまた、同国のエネルギー政策審議会(National Committee on Energy Policy)が2週間前にこのプロジェクトを承認したことを受け、リオデジャネイロ州(Rio de Janeiro)に原子力発電所アングラ3号機の建設再開を確認した。

 ルラ大統領は「われわれはアングラ3号機を完成させる。必要があれば、(原子力発電所を)さらに建設する。現在では、原子力はクリーンで安全であると証明されている」と語った。(c)AFP

7原発9基に特別検査 電力不正総点検

2007年4月20日 中国新聞ニュース

 北陸電力志賀原発(石川県志賀町)の臨界事故隠しなど、約1万回分の問題が発覚した電力不正総点検で、甘利明経済産業相は20日午前、各社の行政処分を発表した。志賀1号機の臨界事故隠しに対する、原子炉等規制法による運転停止などの処罰的な厳しい処分は見送られ、保安規定の変更命令などにとどまった。

 原発に関して処分されたのは北陸電、東京電力、中国電力、日本原子力発電の7原発9基。これらについては、直近の定期検査期間を延長して、原子炉停止中の安全装置の作動状態を確認する特別な検査を実施する。

 実質的に過去を不問として今後の安全確保に力点を置いた処分で、電力会社の経営に配慮したものとの批判も出そうだ。

 甘利経産相は記者会見で、志賀原発の運転停止処分見送りの理由として(1)臨界事故発生後の国の定期検査で安全が確認されている(2)行政指導ではあったが、隠ぺいが発覚後、炉を停止させている(3)同社が社会的不利益を十分受けている−などを挙げた。

78年は「臨界」と断定 84年に緊急停止隠しも

2007年03月30日 中国新聞ニュース

 電力不正総点検を進めてきた東京電力は30日、福島第一原発3号機で1978年に起きたトラブルについて「原子炉は臨界状態だった」との見解をまとめた。同原発では84年の緊急停止隠しと98年の制御棒トラブルが、柏崎刈羽原発(新潟県)でも制御棒トラブルが新たに判明、これらを含む調査結果を同日午後、国に報告した。

 原発で臨界事故が起きていたことが確認されたのは北陸電力志賀原発(石川県)に続いて2件目となる。さらに緊急停止の隠ぺいは、東電福島第二原発1号機、同柏崎刈羽原発1号機、東北電力女川原発1号機(宮城県)に続き4件目となった。

 東電によると、緊急停止を隠していたのは福島第一2号機。84年に原子炉の起動準備中に炉内の中性子量が増大し、原子炉が一時的に、核分裂反応が続く臨界状態になったため、緊急停止信号が出たとみられる。周辺環境や作業員に影響はなかったとしている。このトラブルについて、国には報告していなかった。

電力不正総点検で調査終了 電事連会長が謝罪

2007年03月30日 中国新聞ニュース

 国の指示を受けた電力不正総点検で、電気事業連合会の勝俣恒久会長(東京電力社長)は30日午前、甘利明経済産業相を訪れ、全12社の社内調査結果がまとまったことを報告した。この間、北陸電力志賀原発1号機(石川県志賀町)の臨界事故隠しをはじめ、多数の不正やトラブルが判明したことを謝罪した。

 電力12社は同日午後、経産省原子力安全・保安院に報告書を一斉提出し、内容を公表。

 報告するのは北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄の各電力と、日本原子力発電、電源開発。原子力、火力、水力など全発電施設が対象となる。

 今回の電力不正問題の発端は昨年10月末、中国電力土用ダム(岡山県新庄村)で発覚したデータ改ざん。11月には火力や原子力にも飛び火したことから、経産省は11月末、12社に対してデータ改ざんや必要な手続きの不備などを洗い出し、年度内に報告するよう指示していた。

欧米でも3回の臨界事故 志賀原発と同じ沸騰水型

2007年03月30日 中国新聞ニュース

 【ワシントン29日共同】欧米の原発で、試験中の誤操作による軽微な臨界事故が1987年までに3回起き、米原子力規制委員会(NRC)が88年に米原発事業者向けに警告書を出していたことが29日分かった。

 いずれも、99年に臨界事故を起こした北陸電力志賀原発1号機のように制御棒を下から炉心に入れる沸騰水型原子炉だった。

 88年5月9日付のNRCの文書によると、73年11月、米バーモント州のバーモントヤンキー原発で、検査のため抜いた状態だった制御棒の隣の制御棒を誤って抜き、炉心の一部が臨界状態になった。圧力容器と格納容器のふたは開いたままだった。

 76年11月には米コネティカット州ミルストン原発1号機でも同様の誤操作で臨界状態に。この2事例では制御棒が自動的に挿入される緊急停止で、臨界は止まった。

 スウェーデンのオスカーシャム原発3号機では87年7月、制御棒の効果を調べる試験中に制御棒を抜いていたところ想定外の臨界状態になったが、運転員が気付くのが遅れ、しばらく臨界状態が続いた。

事故隠しやデータ改ざん 電事連会長が陳謝

2007年03月23日 asahi.com

 電力各社の原子力発電所で相次いだ事故隠しやデータ改ざん問題で、電気事業連合会の勝俣恒久会長(東京電力社長)は23日の記者会見で改めて陳謝した。ただ、10年度までに全国16〜18基の原発で進める予定のプルサーマル計画については「社会的な約束であり、地元の信頼回復に努めて全力をあげて実現したい」と述べ、目標を見直さない考えだ。

 勝俣会長は「立地地域をはじめ社会の皆様にご心配をおかけし、電力業界に対する信頼を大きく損なった」と陳謝。北陸電力志賀原子力発電所の臨界事故隠しを「隠蔽(いんぺい)を発電所長以下、組織をあげてやった大変重大な案件だ」と認めた。東電で78年に発生した臨界事故についても「(法令の対象外でも)想定外の臨界であれば、社会的な影響を考えて公表すべきだった」との判断を示した。

 今後、電力各社のトップで構成する信頼回復委員会で、再発防止の取り組みを検討する。

電事連会長 「信頼大きく損なった」 原発臨海事故隠蔽で陳謝

2007/03/24 FujiSankei Business i.

 電気事業連合会(電事連)の勝俣恒久会長(東京電力社長)は23日の定例会見で、原子力発電所の臨界事故の隠蔽(いんぺい)など重大に不祥事が相次いでいることについて、「立地地域の皆さまに心配をかけ、電力会社としての信頼を大きく損なったことは重く受け止めている。深くおわび申し上げる」と、陳謝した。

 2002年に発覚した東電の原発トラブル隠しを機に法令順守(コンプライアンス)の強化を進めてきただけに、勝俣会長は、「02年の時点で明らかになり、解決されておくべき事例だった」と反省。その上で、「ルールを作っても、1人1人まで浸透させる難しさを改めて痛感すると同時に、反省させられた」と述べた。

 また、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを使用するプルサーマル計画については、「厳しい状況になりつつあるが、全力で取り組んでいけば不可能なことはない」とし、10年度までに16〜18基の原発で実施する計画を目指す考えを示した。自身の責任問題に関しては、「色々な問題を調査中で、防止対策などをきちんとすることが最大の責務」とした。

 また、同日には電力会社など計13社のトップで組織する「信頼回復委員会」を関西電力の美浜発電所での死傷事故以来約2年半ぶりに開催。安全管理などの徹底を再確認した。

制御棒脱落に報告義務、臨界事故で経産省が省令改正へ

2007年03月23日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 東京電力や北陸電力などの原子力発電所で定期検査中の制御棒の脱落が相次いで明らかになった問題で、経済産業省原子力安全・保安院は23日、早ければ5月にも原子炉等規制法に関する省令を改正し、想定外の制御棒脱落を国への報告義務の対象に加えることを決めた。

 甘利経産相が定例会見で発表した。

 国の指示に基づく電力各社の社内調査で、1978年〜2000年に、4社で計8件の制御棒脱落が起きていたことが判明した。1999年に3本が脱落した北陸電力志賀原発では臨界事故に発展。78年に5本が脱落した東京電力福島第1原発でも臨界事故が起きていた可能性が極めて高い。この2件を含め、8件が国に報告されていなかった。

 現行では、臨界事故や緊急停止は報告対象となっている。だが、定期検査で原子炉停止中の制御棒脱落は対象外。度々繰り返された脱落は、いずれも制御棒を動かす水圧調整弁の誤操作が原因とみられ、国に報告されて情報が共有されていれば、北陸電力の臨界事故は防げた可能性があった。

 原子炉の設計上、制御棒は1本だけなら脱落しても安全を維持できる構造になっているが、省令改正後は、原子炉停止中に、制御棒を操作していないにもかかわらず、1本でも動いた場合は報告対象とする。

東電・福島第1原発でも29年前に臨界事故か

2007年03月23日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 東京電力は22日、福島第1原子力発電所3号機(福島県)で1978年の定期検査中に臨界事故が起きていた可能性が非常に高いと発表した。

 停止中の原子炉から、出力を抑える制御棒137本のうち5本が脱落した。臨界は最長7時間半も続いたとみられている。

 国には報告しておらず、法令違反だった疑いがある。本店への報告の有無は不明だが、運転日誌に記録はなく、隠ぺいした可能性が高い。国内初の臨界事故だったとみられる。

 この後にも、5号機で79年に、2号機で80年に制御棒1本が脱落するトラブルが起きていたことが判明。福島第2原発3号機と柏崎刈羽原発1号機と合わせ、東電の制御棒脱落トラブルは計5件となった。いずれも北陸電力志賀原発1号機の臨界事故を受けた社内調査で判明した。

 3号機の臨界事故があったとされるのは78年11月2日。原子炉圧力容器の耐圧試験の準備中に、制御棒5本が30〜90センチ落下した。4本は隣り合っていた。ほかのトラブル同様、制御棒駆動用の水圧調整弁の操作を誤ったらしい。

 午前3時ごろから中性子が増加し、制御棒を再挿入したのは午前10時半ごろだった。臨界時の出力は運転時の0・01%程度だったとみられる。圧力容器の上ぶたは閉じていたが、格納容器のふたは開いていたと推定される。外部への放射能漏れはなかった。

 東電の小森明生・原子力運営管理部長は「当時の資料が十分に残されておらず、断定はできないが、臨界というレベルだったと考えている」と話している。

「誤信号」で口裏合わせ…志賀原発臨界事故隠し

2007年03月22日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 北陸電力志賀原発1号機(石川県志賀町)の臨界事故隠しで、当時の原発所長が事故直後「緊急会合」を開き、臨界状態となったことを示すモニター記録について、「これは誤信号だった」と結論付け、点検のために故意に異常な信号を流したために記録されたことにすると決め、本店への報告は不要、と指示していたことが21日、関係者らの証言でわかった。

 会合には、所長代理ら原発幹部が同席したが、異論を唱える者はなく、隠ぺいの最初の意思統一がされたとみられる。

 所長は北陸電力の調査に「記憶にない」などと答えている。

 関係者らによると、会合は1999年6月18日午前2時33分に原子炉の臨界状態が収束した直後、事務棟2階の緊急時対策室で開かれた。室内には富山市の本店に会議映像を流すテレビカメラがあったが、スイッチは入れられなかった。

 機器を点検するため、意図的に「誤信号」を流すことは実際に行われることから、所長は試験的に「誤信号」を流すことでモニターが臨界状態を示したと口裏合わせをしたとみられる。

 所長は、北陸電力を退職後、現在は地元原子力関連団体の役員に就いている。

 北陸電力の社内調査では、炉内の中性子量が急激に増えた臨界状態を示す折れ線の脇に「点検」と書き込まれ、事故ではないように装った、別のモニターも見つかっている。また、当直の「引継日誌」でも事故は伏せられており、この緊急会合以降、一連の隠ぺい工作が行われたとみられる。

志賀原発での特別保安検査、23日まで延長

2007年03月21日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 経済産業省原子力安全・保安院は、志賀原発での特別保安検査を、23日まで延長し、北陸電力本店(富山市)でも立ち入り検査を実施することを決めた。

 本店では、実施中の社内調査について説明を求める。

経産相、原発トラブル受け「報告基準の拡大」を検討

2007年03月20日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 甘利経済産業相は20日の閣議後記者会見で、東北電力と中部電力が、原子力発電所で制御棒が抜け落ちたトラブルを発生直後に公表しなかった問題に関連し「事故につながりかねない情報については法定報告を検証し、必要なものは追加をしたい」と述べ、国への事故報告基準の拡大を検討する考えを示した。

 具体的には、原子炉等規制法に基づく省令改正を検討する方向だ。

 両社のトラブルでは臨界状態になっておらず、現行の法令では報告義務はない。ただ、両社がトラブル発生直後に公表していれば、北陸電力志賀原発1号機の臨界事故が防げた可能性もあったため、甘利経産相は報告対象を見直す考えを示したと見られる。

原子力白書、情報公開求める異例の見解添付

2007年03月20日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 原子力委員会は20日、2006年版の原子力白書を公表した。

 世界のエネルギー需要が2030年には現在の約1・5倍に増加することが予想されるなか、原子力発電を地球温暖化対策の中核手段の一つと位置付け、積極的な原子力利用の重要性を強調した。

 一方で、国内で解決を急ぐ課題として、高レベル放射性廃棄物の最終処分場問題などを挙げた。

 同委員会は、北陸電力志賀原子力発電所1号機(石川県志賀町)の臨界事故の隠ぺい問題などを受け、透明性の高い情報公開と法令順守の徹底などを各電力会社に求める異例の見解を急きょまとめ、白書に添付した。

3原発の制御棒脱落、防止装置が機能せず…構造に問題

2007年03月20日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 1999年に北陸電力志賀原子力発電所で臨界事故が起きる前に、東北電力女川原発と中部電力浜岡原発で制御棒の脱落トラブルが起きていた問題で、いずれも制御棒の落下防止装置が機能しなかったことが19日わかった。

 3基は同じ沸騰水型原子炉で、構造に共通の問題がある疑いが強い。

 制御棒が抜けたのは、いずれも制御棒を駆動する水圧の調整弁を開閉操作していた時だった。操作した調整弁は同一で、制御棒を炉心に挿入したまま固定するか、逆に固定状態から可動状態に戻すことが目的だった。しかし、開閉する弁の順番を誤ったため異常な水圧が制御棒の引き抜き方向にかかった。

 制御棒には落下を防ぐため、ツメが溝にはまるような形の落下防止装置が駆動部分にある。ツメは引き抜き方向の水圧を利用して外す構造となっているが、通常は制御棒の自重がかかっており、制御棒を持ち上げる操作を加えないと外せない。しかし、高い水圧がかかったことで、制御棒を持ち上げる操作はなかったにもかかわらず、ツメは強制的に外れたとみられる。

 国内には沸騰水型炉が32基ある。うち4基は改良型炉で制御棒が脱落しない機構になっているが、問題の3基と同構造の炉が25基ある。経済産業省原子力安全・保安院は「設計上の問題とは考えていない」としているが、19日、同型炉を持つ各電力に対し、水圧調整弁の操作手順を確実に守るよう改めて指示した。

         ◇

 東北電力は19日、定期検査中で核燃料が取り出された状態だった女川原発3号機で2003年3月19日、水圧調整弁の操作を誤り、抜けた状態だった制御棒137本のうち5本が突然、炉心に挿入されるトラブルも起きていたと発表した。

志賀原発の特別検査開始・保安院、臨界事故隠ぺいで

2007/03/18 NIKKEI NeT

 北陸電力が志賀原子力発電所1号機(石川県志賀町)で起きた臨界事故を隠ぺいした問題で、経済産業省原子力安全・保安院は19日午前、同機の特別保安検査を開始した。

 2日間の日程で従業員の聞き取り調査や、事故当時の資料分析などにあたる。保安院は同社が4月中旬までにまとめる再発防止策の内容も踏まえた上で、行政処分を検討する。

 保安院は今月5日から同機の定期保安検査を実施中だったが、臨界事故と隠ぺい問題の発覚を受け、原子炉を16日に停止。それまで4人だった検査官に、19日から新たに4人を投入して8人態勢にした。

 保安院は臨界事故発生後、同社が記録を保管していなかった点が、事故のあった1999年当時の原子炉等規制法の保安規定に抵触する可能性が大きいとみており、裏付けを急ぐ。規定には時効がないため、行政処分を科すことが可能。同機は最長1年間の運転停止になる可能性がある。

臨界状態 警報12回 志賀原発事故

2007/03/18 中日新聞

 北陸電力志賀原発1号機(石川県志賀町)の臨界事故隠しで、臨界状態だった約15分間に原子炉内の異常を示す警報が計12回鳴っていたことが分かった。

 志賀原発を視察した社民党の福島瑞穂党首が北陸電力から提供された資料で明らかになった。

 また、同様に提供された事故当日の引き継ぎ日誌の資料には、運転状況の欄に「原子炉停止中」とだけ書かれ「臨界事故」の記載はなかった。事故を交代社員らにも隠していたとみられる。

 資料などによると、臨界事故は定期検査中の1999年6月18日、制御棒の挿入試験で発生。午前2時18分43秒に、原子炉の核分裂反応を計測する装置が反応、最初の警報が鳴り、同32分19秒までに計12回の警報が鳴った。同19分59秒には、4つの警報が同時に鳴っていた。

 臨界状態になったが、緊急停止装置は作動せず、最初の警報から約15分後の同33分に制御棒が戻った。

 北陸電力によると、警報や制御棒の作動などを記録した資料の原本は残されておらず、隠ぺい発覚後、社員を対象にした調査でコピーが見つかったとしている。

 ◇特別検査を前に保安院長が視察

 北陸電力志賀原発1号機の臨界事故隠しを受け、経済産業省原子力安全・保安院の広瀬研吉院長は18日午後、同院が19日から行う特別検査を前に同原発を訪れ、中央制御室や制御棒を作動させるシステムなどを視察した。

 同社の永原功社長らから事故の概要説明を受けた広瀬院長は「臨界事故自体、遺憾に受け止めているが、その後の(会社の)対応に重大な問題があったのではないかと考えている」と指摘し、同社に原因究明と再発防止を徹底するよう求めた。

米原発建設に貿易保険 日本企業参入を後押し

2007/01/08 中国新聞ニュース

 【ワシントン7日共同】米国での原子力発電所建設に対し、貿易保険の仕組みを適用して日本が支援することで日米両政府が基本合意したことが7日、分かった。訪米中の甘利明経済産業相とボドマン・エネルギー長官が9日に会談して正式に決める。

 最近の原油高を背景に米国では原発の新規建設計画が相次いでいる。1基あたり数千億円とされる巨額の建設費用の一部に日本の公的制度を適用することで、日本企業の事業参入を後押しする狙いがある。

 貿易保険は、貿易や海外投資に伴って日本企業が受けた損害を補償する制度。東芝や日立製作所など国内メーカーが米国の建設プロジェクトに参加した場合に適用することを想定している。

 米国での原発建設には安全性などをめぐって認可が大幅に遅れるといったリスクが指摘されており、米政府も債務保証などで支援していく方針という。

タービンの羽根50枚に損傷 浜岡5号機、設計に問題か

2006/07/01 中国新聞ニュース

 中部電力浜岡原発5号機(静岡県御前崎市、百三十八万キロワット)の低圧タービンが異常に振動して原子炉が自動停止し、動翼の羽根一枚が折れていた問題で、タービン二基の計五十枚の羽根の根元に損傷があったことが三十日、同社の調査で分かった。中部電は調査を継続中で、破損個所はさらに増える見通しという。

 タービンを製造した日立製作所は「設計上の問題と考えている」(広報部)として、社内に執行役常務を責任者とする対策本部を設置した。同社は「原因究明には長くかかる」との見通しも明らかにしており、運転停止が長期化する恐れが出てきた。

 経済産業省原子力安全・保安院は同型タービンのある北陸電力志賀原発2号機(石川県志賀町)も点検するよう指示する。週明けにも北陸電に点検計画を提出させ、来週中に停止させる。日立によると、同型タービンを他の原発に導入する具体的な計画はないという。

 浜岡5号機のタービンは、日立製の最新鋭機で、従来の沸騰水型軽水炉(BWR)より蒸気流量が多い改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)に対応し、発電機を動かす動翼を大型化するなどの改良を加えたとしていた。

 中部電によると、これまでに調べたのは三つある低圧タービンのうち二つ。羽根が脱落した動翼を取り外し、羽根の付け根を確認した結果、脱落したのを除く百三十九枚のうち二十八枚で取り付け金具の一部が折れ、十八枚でひびが入っていた。もう一つのタービンは調査中だが既に四枚に折れやひび割れが見つかったという。三つ目についても近く調査する。

 ABWRは、炉心で冷却水が沸騰してできた蒸気を直接、タービン建屋に導き、高圧タービン一機と低圧タービン三機を回して発電する仕組み。タービンを動かす蒸気は放射能を帯びているが、中部電は、タービンには間を真空状態にした二重のカバーがあり、損傷しても蒸気が漏れることはないとしている。

25年までに実証炉、国の「原子力立国計画」まとまる

2006年06月16日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 経済産業省資源エネルギー庁は16日、今後の原子力推進施策の基本となる「原子力立国計画」をまとめた。

 エネルギーの安定供給や温暖化対策などから原子力発電の重要性を再確認し、民間の主体性に任せてきた姿勢を転換、国が積極的に原子力事業を主導する方針を明確にした。

 具体的には、電力会社の投資環境を整備して原発の新増設や建て替えを促し、2030年以降も原発が総発電量の3〜4割以上を供給できるようにする。当面の対策として、電力会社の経営上の懸念となっている新規原発や第2再処理工場の建設資金の事前積み立て制度を今年度決算から導入する。

 核燃料サイクルの要となる高速増殖炉については、実用化の一歩手前である実証炉を2025年までに建設することを目指し、国家予算の重点配分を求めていく。

 同省と文部科学省、日本原子力研究開発機構、電力業界、原発メーカーの5者が参加する研究会をこの秋までに発足させ、官民あげての開発体制を早急に整備する。

官民あげて高速炉開発へ…原子力立国の計画骨子

2006年05月30日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 経済産業省資源エネルギー庁は30日、中長期的に原子力利用を推進し、エネルギーの安定確保を目指す「原子力立国計画」の骨子をまとめた。

 電力自由化の影響で経営環境が厳しくなっている電力会社に任せるだけでは、将来の原子力利用が後退しかねないと判断、国が原子力推進を主導する姿勢を打ち出した。

 計画の中核となる高速増殖炉については、同省と文部科学省、日本原子力研究開発機構、電力業界、原子炉メーカーの5者が参加する研究会をこの秋までに発足させ、官民あげての開発体制を整える。実用化の一歩手前となる実証炉を2025年までに建設することを目指し、国の予算上も重点的な配慮を求めていく。

 一方、30年以降も原子力発電が総発電電力量の3〜4割以上を供給するとの目標を達成するため、電力会社が新設炉や第2再処理工場の建設資金を積み立てる制度を今年度決算から導入する。現在の原発(軽水炉)の多くは、高速炉の実用化前に建て替えが必要となることから“つなぎ役”となる次世代型軽水炉の研究開発にも今年度から入る。

高速増殖炉、2025年稼働へ 自民党「総合エネルギー戦略」で中間報告

2006/05/24 FujiSankei Business i.

 自民党は二十三日、高速増殖炉(FBR)実証炉の建設・運転開始時期を従来計画より五年前倒しの二〇二五年とし、原油輸入量に占める自主開発比率を現在の15%から三〇年に40%に引き上げるなどの数値目標を盛り込んだ「総合エネルギー戦略」中間報告をまとめた。エネルギー戦略を「国家戦略」として明確に位置づけるとともに、目標を実現するための具体的な手法も明記したのが特徴で、日本のエネルギー戦略の基本的な方向を示した。

 ≪国の計画に反映≫

 自民党はこの戦略を経済産業省・資源エネルギー庁が六月にまとめる「新・国家エネルギー戦略」や、秋に国が策定する「新・エネルギー基本計画」に反映させる。

 同戦略の中で、FBRについては、発電しながら消費した燃料以上の燃料を生産でき、日本のエネルギー安定供給に大きく貢献する国家基幹技術として強力に開発するとした。二五年に実証炉建設・運転開始、商業炉運転も五〇年より五年前倒しすることをめざし、開発ペースを加速させるため、電源開発促進対策特別会計の積極活用を含めた予算確保などが必要としている。

 また、高レベル廃棄物の最終処分場確保問題は、今後一、二年が正念場との認識を示した。処分場を受け入れる地区への応募の獲得策として、電源立地地域対策交付金の拡充を盛り込んだ。

 ≪日の丸メジャーを≫

 一方、原油の自主開発比率の引き上げ、資源確保では、「日の丸メジャー(国際石油資本)」の育成強化が不可欠。このため、石油天然ガス・金属鉱物資源機構や国際協力銀行、日本貿易保険のリスクマネー供給などを求めた。

 自民党は(1)原油価格の高騰でメジャーに中国、インドも加わった資源開発競争が激化(2)地球温暖化の進行(3)日本のエネルギー自給率は4%(原子力を含めても19%)にすぎず、原油の自主開発比率も15%で、エネルギー安全保障が懸念されている−などから、エネルギー問題についての総合的な戦略が必要と判断。今年一月に「エネルギー戦略合同部会」を設け、資源開発、原子力推進、新エネルギー推進の三つの分科会で検討を進め、総合エネルギー戦略をまとめた。

 二十三日、国会内で記者会見した合同部会の尾身幸次会長は「これまでマーケットメカニズムが中心だった資源確保を国家戦略とし、資源外交を展開する。科学技術協力により資源国と関係強化を図る」とし、資源確保の重要性を強調した。また、加納時男・合同部会事務局長は「原子力は環境適合とエネルギーセキュリティーの両立の切り札。FBR開発を進めるとともに、現行の軽水炉の稼働率向上と二〇三〇年以降のリプレース(建て替え)で発電に占める原子力の比率を大幅に高めたい」と語った。

                   ◇

 【自民党・総合エネルギー戦略のポイント】

〈戦略目標〉

 ▽地球レベルでの持続的社会の実現

 ・CO2濃度の安定化

 ・先端省エネ技術の世界への普及

 ・エネルギー供給の脱炭素化

 ▽日本のエネルギー安全保障の確立

 ・エネルギー自給率、自主開発比率の向上

 ・水素の活用、バイオマスニッポンの実現

 ・FBRサイクルでフロントランナーに

〈目標達成に向けた個別戦略〉

 ▽資源確保戦略の構築

 ・科学技術協力で資源国と関係強化

 ・「日の丸メジャー」育成し、自主開発比率を現行の15%から2030年に40%

 ▽原子力利用の抜本的強化

 ・原子力比率を大幅に高める

 ▽エネルギー安全保障、安全確保

 ▽原子力平和利用と核不拡散の両立

 ▽ポスト京都議定書で米中が参加する枠組み

〈脱炭素化への技術開発戦略〉

 ▽原子燃料サイクルの推進

 ・FBR実証炉建設・運転開始を5年前倒しの2025年、商業化も2050年より前に

 ・高レベル廃棄物の処分で国の役割強化

 ▽省エネ技術の開発・普及

 ▽再生可能エネルギーの活用

 ・バイオマスエタノールの輸入・国産の検討推進

 ▽化石燃料のクリーン・効率的利用

 ・当面は自動車用燃料の効率化と多様化

 ・中期的にはメタンハイドレートなど

 ・CO2回収貯留の研究開発

原子力依存11%から20%に エネ研の長期エネルギー需給展望

2006/04/25 The Sankei Shimbun

 日本エネルギー経済研究所は25日、平成42年までのわが国の長期エネルギー需給展望をまとめた。原油価格が歴史的な高値となる中で、1次エネルギーに占める石油依存度は16年の47%から37%に低下すると予測。これに代わって、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原子力は11%から20%に、燃焼時のCO2排出量が石油よりも少ない天然ガスも14%から18%にそれぞれ上昇するとし、エネルギーの低炭素化が進むとしている。

 CO2排出量も現在をピークに減少し、42年には16年比で14%減少するとした。42年の水準は2年の排出量も下回るが、22年時点では2年に比べて8.5%増えるとみている。

 京都議定書によって、日本はCO2など温室効果ガスを、基準となる2年に比べ、20−24年で6%の削減が義務付けられている。

 政府はエネルギー起源のCO2排出量を2年比0.6%増にとどめる目標を掲げているが、エネ研では「あらゆる手段を講じても京都議定書の達成は難しい」(森田裕二研究理事)と指摘している。


原発ひびの点検せず「異常なし」、GE子会社が報告

2002年12月17日 Yomiuri On-Line
 東京電力は17日、柏崎刈羽原発2号機(新潟県)の昨年1月の自主点検を請け負ったGE(ゼネラル・エレクトリック)社の子会社GEII社が、実際には点検をせずに「異常なし」と報告していたと発表した。

 2号機では今年、炉心隔壁(シュラウド)の溶接部下側のほぼ全周にひびが見つかったが、昨年1月の定期検査に合わせて行われた自主点検では異常なしとされていた。そのため東電がGEII社に確認したところ、同社は東電の指示書に従わず、シュラウドの溶接部の上部だけしか点検を行わずに「異常なし」と報告したという。

 東電もその結果についてチェックしていなかった。

敦賀原発:2号機で火災、原子炉手動停止

2002年12月12日 Mainichi INTERACTIV
 福井県に入った連絡によると、12日午後7時半ごろ、福井県敦賀市の日本原子力発電敦賀原発2号機(116万キロワット)のタービン建屋で火災があり、いったん消火器で消し止めたが、同8時50分ごろ再び燃え上がったため、同9時、原子炉を手動停止した。この火災による放射能漏れはない模様。

 同県によると、タービン軸から油が漏れ、同軸の保温材が発火。いったん消火したが、再び発火したため、午後9時、原子炉を手動停止した。その後火は出ていないという。

東電、原発16基停止へ

2002年12月12日 The Sankei Shimbun
 東京電力は12日、今年3月末までに全17基のうち16基の原子力発電所を停止する計画をまとめ、経済産業省原子力安全・保安院に提出した。一連のトラブル隠しで早期の安全確認を求める地元の声に配慮し、5月以降の定期検査を前倒すことにした。

 東電の原発は、すでに定期検査などで9基が停止中。3月末までに7基を停止する。4月15日には残る1基(福島第一原発6号機)も停止する。

 先に停止した原発の再稼働が遅れると、東電の予備的な発電能力は3月にはゼロになり、厳しい寒さが続くなど天候次第では綱渡りの電力供給となる。

 緊急時には関西電力に90万キロワットの電力融通を依頼するなどして対応するが、大口需要家を訪問、広告を出すなどして節電を呼び掛ける。

 原発の停止期間が長くなった場合、東電は「4月以降は3月以上に厳しい状況になる。(夏場の)電力安定供給は極めて難しくなる」とみている。

東京電力 柏崎刈羽原発の全号機を停止、点検へ

2002年12月09日 Yomiuri On-Line
 東京電力の原発自主点検記録改ざん問題で、新潟県の平山征夫知事は9日、東電が年度内にも同県の柏崎刈羽原発のすべての原子炉を停止し、点検する方針を県に伝えてきたことを明らかにした。

 7号機まである同原発では、1、3号機が定期検査中で、2号機は再循環系配管のひび割れが判明したことから、緊急点検のため停止している。

不正操作の福島第1原発で再検査に向け本格的作業

2002年12月03日 Yomiuri On-Line
 東京電力福島第1原発1号機(福島県)で原子炉格納容器の気密試験データが不正に操作されていた問題で、東京電力は3日、再試験に向けて容器内に窒素ガスを送り込む作業を開始した。原子力安全委員会の飛岡利明委員(元日本原子力研究所理事)の立ち会いの下、容器内を加圧した上で、内部の気圧の変化を4―5日にかけて計測、容器の密閉性を調べる。

 計画では、3日夕までに容器内の圧力を大気圧の約3倍まで上昇させ、2度にわたり気圧の変化を測定、漏出率が国の判定基準(1日あたり0・348パーセント)を満たしているかを調べる。

 今回の試験は東電が自主的に行うもので、先月上旬の準備段階から原子力安全・保安院の検査官が立ち会い、偽装工作を防ぐため容器を貫く配管のバルブを封印するなど異例の厳戒体制の下で行われている。

 同機では1991、92年の検査で、配管から空気を送り込むなどの方法で漏出率を低く見せかける偽装工作が行われていたことが判明。保安院は先月29日、東電に対し、1年間の運転停止処分を命じた。

核燃、誤記など673件

2002年11月15日 The Sankei Shimbun
 核燃料サイクル開発機構(本社茨城県東海村)は15日、原子力施設の自主点検記録の調査で、記録上のミスが673件に上ることを明らかにした。

 調査対象は高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)、新型転換炉ふげん(同)、再処理施設(東海村)、ウラン濃縮原型プラント(岡山県上斎原村)の4施設。過去3年分の自主点検の記録を調べた結果、不正は見つからなかったが、記録上のミスが見つかった。

 内訳は、誤記が414件、記録修正方法の不良が59件、押印漏れが21件など。

 再処理施設でのミスが600件と最も多く、同機構は「再処理施設の点検項目が多いため、その分ミスも多くなった」としている。

美浜原発3号で冷却水漏れ

2002年11月15日 The Sankei Shimbun
 福井県美浜町の関西電力美浜原発3号機(加圧水型軽水炉、出力82万6000キロワット)で、放射能を含んだ一次冷却水漏れが12日見つかり、量が当初の約7倍に達したため関電は15日朝、原子炉を手動停止し、原因究明作業に入った。放射能濃度は低く、環境への影響はないとしている。

 水漏れの量は15日未明までで約5・6トンで、同日午後も水漏れは継続。漏れた弁付近の配管の水流を遮断し、水漏れが止まるのは16日午後になる見込み。その後、関電は弁付近の溶接不良の可能性も視野に具体的な補修方法の検討を行うが、運転再開のめどは立っていない。

 経済産業省原子力安全・保安院は原子力事故の国際評価尺度で最も軽い「0マイナス」に相当すると評価した。

 関電は12日午前3時前後に国や県などにトラブルを通報。公表が15日になったことに関し、関電や県は「当初の水漏れ量は少なく、保安規定に抵触していない。運転に影響がなく、すぐに発表する対象でないと判断した」としている。

 関電と県によると、12日午前1時40分ごろ、運転員が一次冷却水から不純物を除去する化学体積制御系統にある弁の溶接部付近に小さな穴が開き、1時間当たり約60リットルの漏水を確認。同3時ごろから、漏えい部をポリシートで覆う処置をして監視を強化した。

 14日深夜、漏水量が1時間当たり約400リットルに増大したため、関電は原子炉の手動停止を決定した。漏れた一次冷却水は処理され、放射能濃度は炉心の水の約10分の1に低減されているという。

 美浜原発では1991年2月、2号機で蒸気発生器の伝熱管が損傷、国内で初めて緊急炉心冷却装置が作動する事故が発生。94年10月に蒸気発生器を改良型に取り換え運転を再開した。

柏崎刈羽原発、運転再開は地元了解が前提

2002年11月09日 The Sankei Shimbun
 東京電力の勝俣恒久社長は11日、新潟県の柏崎刈羽原発で記者会見し、運転停止して点検中の同原発1−3号機の運転再開について「点検、修理の結果を受け行政と相談する」などと述べ、地元自治体の了解を運転再開の前提とする考えを明らかにした。

 原発の通常の運転が自治体の判断に委ねられるのは異例。1−3号機はいずれも沸騰水型で、トラブル隠しや通常の定期検査で停止後、炉心隔壁(シュラウド)にひびやひびの兆候が見つかり、運転再開のめどはついていない。

 勝俣社長は、福島第一原発1号機で東電が原子炉格納容器の気密性データを不正操作した問題について、12月上旬に調査が完了するとの見通しを示し「ほかの原子炉でのチェックも間に合えば調査報告に入るのではないか」と述べた。

 勝俣社長は11日、社長就任後初めて西川正純柏崎市長と品田宏夫刈羽村長を訪問し、一連の原発トラブル隠しを謝罪した。

東電3原発を特別検査へ

2002年10月31日 Yomiuri On-Line
 東京電力の原子力発電所点検記録の改ざんをめぐり、経済産業省原子力安全・保安院は31日、福島第1、第2原発(福島県)、柏崎刈羽原発(新潟県)を対象に、5日から約7週間の予定で、特別に厳格な保安検査を実施すると発表した。

 自主点検記録の改ざんに対する東電への行政措置の一環。

 保安院はすでに、点検記録の改ざんの再発防止策として、これまでの検査を見直し、トラブルを防ぐための管理システムや運用体制など品質保証システムが適切に機能しているかを重点的に調べる方式に切り替えることを表明している。

 5日からの保安検査では、この新しい検査方式を本格的に導入し、<1>所内の意思決定体制<2>報告体制<3>補修や運転管理の記録保存――などが適切に行われているかどうかを厳しくチェックする。

 保安検査の実施は原子炉等規制法に基づき年4回。通常は、各原発に常駐する保安検査官事務所の保安検査官が3週間かけて行うが、今回は約7週間とし、東京の保安院本院から5―6人、東電以外の原発の保安検査官事務所から12―13人を応援に派遣し、手厚い体制で臨む。

 同省は10月1日、平沼赳夫経産相が南直哉社長(当時)を呼んで、厳重注意を言い渡すとともに、行政措置として、特別に厳格な保安検査を実施することを伝えていた。

東電不正巡り、原子力安全委が経産省に初勧告へ

2002年10月28日 Yomiuri On-Line
 東京電力の一連の不正をめぐって、国の原子力安全委員会(松浦祥次郎委員長)は28日、原子力への信頼回復に努めるよう求める勧告を経済産業省に行うことを決めた。「原子力委と原子力安全委設置法」に基づくもので、29日に小泉首相を通じて平沼経産相に勧告する。

 勧告を出すのは1978年の同委員会の発足以来、初めて。2人の死者を出した1999年のJCO臨界事故の際にも出しておらず、今回の東電の不正に対する、原子力安全委の強い危機感の表れとも言える。

独の原発廃止2年延長決定、環境団体が猛反発

2002年10月15日 Yomiuri On-Line
 【ベルリン15日=宮明敬】稼働から32年で順次廃止するとした2000年6月のドイツの原発廃止合意に基づき、今年末に廃止原発第1号になるはずだったオーブリッヒハイム原発(独南西部バーデン・ビュルテンベルク州)の稼働期間が14日、さらに2年延長されることが決まった。同原発経営者から5年半の稼働延長要請を受けたシュレーダー首相(社民党)が、連立与党の緑の党に「2年延長」をのませた結果で、環境保護団体や緑の党の内部から、「原発廃止合意を骨抜きにするもの」との批判が出ている。

 原発廃止合意では、全19基の原発の1基ごとの総電力生産量が決められ、総量を生産し終えると廃止されるのが原則。ただ、古い原発を早めに廃止すれば、残った許容生産量を新しい原発に上積みして、その稼働期間を延ばせる「柔軟措置」も盛り込まれていた。

 だが、今回は、比較的新しい原発の発電総量を減らして、オーブリッヒハイム原発の寿命を延ばした。しかも、同原発は、原子炉の緊急冷却システムの不備を10年間隠して運転を続けるなど、安全性にも疑問が投げかけられている。

 トリッティン環境相ら緑の党の幹部がこの例外措置を認めたのは、社民党から「反対すれば、(保守政党、キリスト教民主・社会同盟との)大連立も考える」と迫られたためと伝えられる。

東電トラブル隠し:福島第2原発4号機も停止へ

2002年10月11日 Mainichi INTERACTIVE
 東京電力は11日、トラブル隠し問題を受けて福島第2原発4号機(福島県富岡町、沸騰水型、出力110万キロワット)の運転を13日に停止すると発表した。同基ではシュラウド(炉心隔壁)にひび割れの兆候2カ所が指摘されており、約50日かけてひび割れの有無を調べる予定。これで、柏崎刈羽1号機を含め、GE(ゼネラル・エレクトリック)社がシュラウドのトラブル隠しを指摘した東電の原発5基すべてが検査に入ることになる。 【神崎真一】

ひびの兆候、新たに27カ所

2002年10月09日 The Sankei Shimbun
 東京電力は9日、炉心隔壁(シュラウド)にひびの疑いを指摘され検査中の福島第二原発2号機(楢葉町)で24カ所、同3号機(富岡町)で3カ所、計27カ所のひびの兆候が新たに見つかったことを明らかにした。

 2号機では7カ所、3号機では1カ所が、原発トラブル隠し発覚の発端となった米ゼネラル・エレクトリック社(GE)の指摘部分以外だった。

 東電は今後、ひびの兆候がある場所を1週間程度かけてブラッシングし、ひびかどうかの確認作業を進めるとともに、シュラウドのほかの部分も水中カメラで検査する。

 第二原発ではシュラウドのひびの疑いを隠ぺいしていたことが8月末に発覚し、2号機と3号機で運転を停止して点検を続けていた。これまでに、2号機の5カ所で「ひびの様相」を確認した。

 福島県と福島第一、第二原発が立地する4町は9日、第二原発2号機の検査に立ち会い、書類の点検や検査状況などを確認した。

4号機でひびの疑い発見

2002年09月30日 The Sankei Shimbun
 東京電力は30日、福島第一原発4号機の炉心隔壁(シュラウド)の検査で、ひびの兆候が指摘された以外の場所で、ひびの疑いのある個所を発見したと発表した。ひびの疑いは1カ所で、長さは約8センチ。東電は「深くはなさそうで、安全性に問題はない」としている。

 一連の原発トラブル隠しを受け、東電は24日から、原子炉等規制法などに基づき、水中カメラを使って第一原発4号機のシュラウドの検査を実施。米ゼネラル・エレクトリック(GE)が指摘した1カ所を含む4カ所でひびの兆候を発見した。

 兆候の部分をブラッシングし、再度水中カメラで確認した結果、GEが指摘した場所以外の溶接部分付近で線状のひびの疑いを発見した。

 今後は、超音波などを使って検査を続け、ひびかどうか確認する。

原発点検の調査・報告指示

2002年09月26日 Yomiuri On-Line
 東京電力の点検記録改ざん問題で、原子力安全・保安院は26日、原子炉圧力容器や炉内のシュラウド(炉心隔壁)など重要な機器や設備を対象に、過去3年間に行われた自主点検について、東電と同様の不正がなかったかどうか緊急に社内調査し、11月15日までに報告するよう、原発を保有する電力会社9社と核燃料サイクル開発機構に対して指示した。

 保安院では東電問題を公表したのを受けて、先月30日に、電力会社や核燃料製造会社などに対し、自主点検に不正がなかったかどうか社内調査するよう求め、各社はその実施計画を策定し今月20日までに保安院に提出していた。

 保安院で、実施計画を検討した結果、シュラウドや再循環ポンプなど原発の重要な設備を対象に行われた自主点検での不正の有無については、過去10年間分については今年度中に調査結果をとりまとめるよう要求。このうち過去3年間分については、とりあえず11月に中間報告を提出するよう指示した。

 ただし、東電に対しては、少なくとも1989年から自主点検で不正を行っていたことが明らかになったため、14年前までさかのぼって社内調査するよう指示している。

プルサーマル計画白紙撤回を表明…福島県知事

2002年09月26日 Yomiuri On-Line
 東京電力の原発点検記録改ざん問題を受け、福島県の佐藤栄佐久知事は26日開会した9月定例県議会で、福島第一原発3号機でのプルサーマル計画について、「(国民・県民の理解など)前提となる条件が消滅しており、事前了解は白紙撤回されたものと認識している」と表明した。佐藤知事はこれまで、同計画を柱とする核燃料サイクルそのものの見直しを訴えていたが、事前了解の白紙撤回には直接言及していなかった。

 同県の事前了解は1998年に出された。しかし、その後のJCO臨界事故などを巡り、国の原子力政策に不信を抱いた佐藤知事が昨年2月、同計画の受け入れを当面拒否する方針を打ち出していた。

 プルサーマルを巡っては、新潟県の平山征夫知事も柏崎刈羽原発3号機での計画について、事前了解の取り消しを東電側に通告している。

原発不正の罰則強化、保安院が再発防止案

2002年09月26日 Yomiuri On-Line
 東京電力の原子力発電所自主点検記録改ざん問題で、経済産業省原子力安全・保安院は26日、安全上問題がない損傷であれば運転継続を認める「欠陥評価基準(維持基準)」の導入や自主点検の法定化、罰則の強化を柱とする再発防止策を盛り込んだ中間報告書案を、同省の原子力安全規制法制検討小委員会(委員長・近藤駿介東大教授)に提出した。保安院は、中間報告書案をもとに電気事業法と原子炉等規制法の改正案を作り、来月開会見込みの臨時国会に提出、来年度にも実行に移す。

 東電は、福島第一原発などの原発の原子炉部品に損傷を見つけながら、記録を改ざんする一方、国に報告しないまま、原発の運転を続け、無断で部品を交換していた。

 報告書案では、隠ぺいの背景には、〈1〉運転中でも「新品同様」を求める部品の技術基準しかない〈2〉国に報告すべきトラブルの明確な基準がない――ことがあったと指摘されている。このため、損傷があっても、安全性に影響がないと評価されれば運転の継続を認める欠陥評価基準を2年以内に導入し、その具体的な基準には日本機械学会などが策定した民間規格を活用する。

東京電力:福島原発で配管の9割近くにひび、3本は貫通

2002年09月25日 Mainichi INTERACTIVE
 プルサーマル計画が予定されていた東京電力福島第1原発3号機(福島県大熊町、沸騰水型、出力78万4000キロワット)で制御棒を動かす配管にひび割れが確認された問題で、東京電力は25日、配管282本(予備も含む)中242本にひびが見つかり、うち3本はひびが貫通していたと発表した。貫通部での水漏れは確認されていないという。配管の約86%にひび割れが見つかる異常な事態で、原発への信頼性が一段と揺らぎそうだ。

 東電によると、配管は直径3.4センチで、肉厚が6.4ミリのステンレス製。表面にひび割れが確認された配管のうち、割れの長い10本を調べたところ、貫通していた3本を含む10本すべてが深さ3.4ミリ以上で、残った肉厚が国の技術基準3ミリを下回っていた。貫通部の配管内壁には細かな穴が開いた状態だったが、配管外部に腐食を防止するためのエポキシ樹脂系塗装が3層あり、水漏れを防いでいたという。

 配管には水が通っており、水圧で制御棒を動かし、原子炉の出力を調整する重要な部分。3号機は76年運転開始で、88年に最初に傷を発見したが、国の技術基準はクリアしているとして国へは報告していなかった。溶接時に生じたひずみが腐食につながり、ひびが入る「応力腐食割れ」が原因とみられる。原発建設時に配管に付着した塩分が腐食の原因となった比較的古いひび割れとみて調べている。

 東電は8月22日、定期検査中に調査した61本中36本でひび割れを発見したと発表し、274本の全配管を交換する方針を示した。これに対し、県は、全配管の調査と原因究明を要求していた。 【神崎真一】

67カ所のひび割れ発見 中部電力・浜岡原発

2002年09月24日 The Sankei Shimbun
 中部電力は24日、定期検査中の浜岡原発4号機(沸騰水型、出力113・7万キロワット)で、炉心隔壁(シュラウド)にこれまで確認された3カ所を含め、計67カ所のひび割れが見つかったと発表した。ひび割れは最大で長さ約15センチだが「圧力がかかる部分ではなく安全性に問題はない」と説明している。

 中部電力は20日、原子炉圧力容器内で燃料集合体を覆うシュラウド下部の溶接部分に、3カ所のひび割れが見つかったと発表。その後水中カメラで溶接部分全体を調査した結果、新たに多くのひび割れがあることが分かった。

 発表されていた3カ所のうち最大としていた長さ約45センチのひび割れについては、詳しい調査の結果、6カ所の断続的なひび割れであることが確認された。

 中部電力は「シュラウドへの圧力のかかり方は表面と内側で違いがあり、内側までひび割れが進展する可能性は低い」としている。
 これまで水中カメラで検査をしたのはシュラウドの円周16メートルのうち約7割。見つかったひび割れをすべて合わせた長さは、約2・3メートルに達するという。

 今後は残りの溶接部分を水中カメラで調査し、さらに超音波検査でひび割れの深さを調べる。

 4号機は4日から定期検査に入っていた。

ひび割れ50数カ所 女川原発

2002年09月23日 The Sankei Shimbun
 東北電力は23日、宮城県の女川原発1号機の炉心隔壁(シュラウド)の下部で、最大約13センチのひびが50数カ所見つかったと発表した。

安全の根拠説明を…原発機器の「維持基準」案

2002年09月22日 Yomiuri On-Line
 原発の機器の安全性を評価、問題がなければ運転を続けられる「維持基準(欠陥評価基準)」は、米国では既に30年前から導入されている。

 日本でも電力会社や専門家が当時の通産省資源エネルギー庁に対して維持基準の導入を訴えた。ところが、この十数年間、原子力施設の大事故やトラブル隠しなどが相次いだ。旧通産省のある幹部は、「国民の原子力に対する風当たりが強く、とても維持基準導入を言い出せるような雰囲気ではなかった」と語る。

 どんな物でも、使っていれば傷が出来るし摩耗もする。それは原発の機器でも同じだが、結局、国は現在に至るまで、原発の機器が常に「新品同様」であることを求めてきた。一方で、国に報告して修理や交換をすべき欠陥の定義はあいまいで、どこまでが新品同様なのかがはっきりしない。

 こうしたあいまいさが、東京電力と中部電力、東北電力の再循環系配管ひび割れの兆候隠しの温床になった。

 原子力安全・保安院がまとめた維持基準案は、日本機械学会などが集めた科学的なデータと技術的な知見をもとに、「この部品でこの材料なら、この程度のひび割れまでは大丈夫」と詳細に規定している。

 電力会社や専門家から見れば、これまでの問題点を一気に払しょくする内容に違いない。問題は、一般の国民がこの基準をすんなり受け入れられるかどうかだ。欧米並みの基準だから、というだけでは不十分だ。「原子力は怖い」と漠然とした不安を持つ国民に、ひび割れがあっても安全、という根拠を分かりやすく説明できるかどうか。それができないなら、維持基準の導入は困難と言わざるを得ない。今後、保安院や学者の力量が問われることになる。(科学部 中島 達雄)

電力の安定供給に影 原発隠蔽拡大

2002年09月21日 The Sankei Shimbun
不信根強く停止長期化も

 東京電力、中部電力は二十日明らかになった未公表の原発トラブルで、百万キロワット級の原発各一基が運転停止に追い込まれた。東電はすでに六基、中電は三基の原発を停止している。停止期間の長期化や、新たなトラブル発覚でさらに多くの原発が停止したりすれば、電力の安定供給にも深刻な打撃を与えかねない。

 東電は十六日に福島第一原発(福島県)の4号機、福島第二原発(同)の3号機を停止して原発の機器点検に入った。それまでに定期検査などで四基が停止中。この時点で運転停止のものは六基・約六百万キロワット。

 そこに、二十日から柏崎刈羽原発(新潟県)の2号機が加わり、停止中の原発は七基・約七百十万キロワットに増加した。十月中旬には福島第二・4号機が停止予定で、東電はこれらに代わる別の電源確保を急いでいる。

 長期停止中だった鹿島火力発電所(茨城県)の3、4号機(各六十万キロワット)と5号機(百万キロワット)は運転できるように準備している。数カ月後には、横須賀火力(神奈川県)の1、2号機(各二十六万五千キロワット)、5−8号機(各三十五万キロワット)も加わるという。

 中電は、浜岡原発(静岡県)の1−4号機のすべてが停止し、約三百六十万キロワットの電源を失っている。十月時点で合計二百万キロワット弱の火力発電設備が長期停止中で、例えば西名古屋火力(愛知県)の2号機(二十二万キロワット)などを再稼働させて対処する方針だ。

 こうした代替電源があるうえに、「九−十一月は暑くもなく寒くもなく、電力需要も少ない」(東電幹部)ため、両社とも「電力供給力に支障はない」と言い切る。

 ただ、原発トラブルに対する国民の不信は根強く、いったん止めた原発の再稼働は容易ではない。原発トラブルの未公表事例は、東北電力にも広がっている。電力各社に同様の問題が生じた場合には、「他電力からの電力融通が厳しくなる」との指摘もある。冬場の電力需要期を迎えて供給力の不安は消えない。

 原発を火力発電で代替した場合には、燃料費のコストが百万キロワットで一日一億円増加するとされ、経営への影響も無視できない規模になりそうだ。

≪国の管理体制も不備 検査基準の運用曖昧≫

 東京電力の原発トラブル隠しに続き、中部電力、東北電力でも再循環系配管のひび割れの兆候を国に報告していない事実が発覚した。「安全性に問題がないと判断し、国に報告しなかった」各社の体質も問題だが、一方で、原発推進を業界に丸投げするだけで、実態にあわせて検査基準を見直してこなかった国の安全管理体制の不備も見逃せない。体制整備は急務となっている。

 中部電力の寺沢宏副社長は記者会見で、「ひびは過去の定期点検中に見つかったが、原子力発電所の安全がおびやかされるレベルのものではないと考え、国に報告しなかった」と強調した。

 日本の原発検査は定期検査、自主検査の二つがあるが、経済産業省原子力安全・保安院はいずれも明確な基準を示していない。運用はあいまいで、運転開始後、何年も経た原発にまで、新設時と同水準の安全基準を求めている。

 このため、安全上問題がない小さな損傷も法律違反になりかねず、これが保守・点検を行う原発担当者が国への報告を怠る要因となっている。「実態に合致しない国の基準が現場の大きなプレッシャーになった」と、東京電力の南直哉社長が経済産業省を批判した理由もそこだ。

 これに対し、米国の基準は全く違う。原発稼働後は「維持基準」という新設時とは別の安全基準を適用。

 電力会社自身が安全上問題がないと判断すれば運転を停止する必要はなく、行政側への報告義務もない。

 経済産業省は、東電のトラブル隠しを機に今月十三日、原子力安全規制法制検討小委員会を設置、維持基準導入の準備を始めた。早急に関連法改正案をまとめ次の臨時国会に提出する方針だが、検査対応の見直しは緊急課題として浮上している。(気仙英郎)

「原発隠ぺい」中部電力の寺沢副社長が会見で謝罪

2002年09月20日 Yomiuri On-Line
 中部電力浜岡原発でひび割れの兆候(インディケーション)を隠ぺいしていた問題で、中部電力の寺沢宏副社長は20日午後、名古屋市の本社で会見し、「軽微な傷で、安全性に影響がないため、現場が報告していなかった」と説明した。そのうえで「地元の方に不安を与えたことをおわびしたい」と謝罪した。

 寺沢副社長は、東京電力の自主点検記録改ざん問題を受けて今月3日に発足した、社内の「評価・検討委員会」の委員長を務めている。経産省原子力安全・保安院の指示で20日に内部調査の実施計画書を提出する予定になっており、原発担当役員の伊藤隆彦常務が19日に現地で過去のデータを確認していて、ひび割れの兆候があったことを発見した。

 ひび割れの兆候は、93年から今年1月までに実施された定期検査で見つかり、1号機1か所、3号機8か所の損傷個所のうち、3号機の5か所は、ひび割れを削り取る方法ですでに修理を終えていた。残る4か所は未修理の状態のままだったが、こうした経緯について、本社には一切報告が上がっていなかった。

 配管の肉厚が39ミリなのに対し傷の深さは最大4ミリ程度といい、寺沢副社長は「最低限必要な厚みは21、2ミリとなっており、余裕があった」として、「報告するかしないかは、現場の裁量の範囲内だった」と説明。損傷は記録に残されていたことから、「隠ぺいの意図はない」と強調した。

 しかし、その一方、「将来の危険につながる可能性もあり、原子力に関しては細心の注意が必要だ」と、認識不足を認めた。3号機は20日に停止し、今後、水中カメラによる目視点検を実施する。

中部、東北電力も機器の損傷隠ぺい

2002年09月20日 Yomiuri On-Line
 原子力発電所のトラブル隠し問題で、あらたに中部電力(本社・名古屋市)と東北電力(同・仙台市)の原発でも機器の損傷が隠ぺいされていたことが20日、わかった。

 経済産業省原子力安全・保安院は電気事業法(報告義務)違反などに当たる可能性もあるとして、立ち入り検査など調査に入る。自主点検を巡る隠ぺい・改ざんは、東京電力1社にとどまらない電力業界全体の構造的な不正である可能性が強まった。両社は、いずれの損傷も「安全上問題はない」としているが、同日午後、保安院にこうした事実を伝え、公表する。

 中電浜岡原発(静岡県浜岡町)は1―4号機があり、すべて東電で問題となった原発と同じ沸騰水型炉。トラブル隠しがあったのは再循環系配管の溶接部分で、1号機(出力54万キロ・ワット)が1か所、3号機(同110万キロ・ワット)が8か所。ひび割れの兆候(インディケーション)を見つけたが、国へ報告はしていなかった。この中には無届けですでに修理した損傷もある。

 現在定期検査中で停止している4号機(同113万7000キロ・ワット)でも、炉心隔壁(シュラウド)でひび割れの兆候が見つかり、未報告分と合わせて国に報告する。

 中電は3号機も停止させ、点検に入る。これで浜岡原発の原子炉はすべて停止することになる。

 浜岡原発では昨年11月、1号機で緊急炉心冷却装置(ECCS)系の配管が破断したのに続き、原子炉の心臓部に当たる圧力容器からの冷却水漏れのトラブルが相次いだ。

 東北電力女川原発(宮城県女川町・牡鹿町)でひび割れの兆候があったのは1号機(出力52万4000キロ・ワット、沸騰水型)の再循環系配管。1998年の定期検査で2か所、その後にも2か所見つかったが、国に損傷の報告はしていなかった。

 東北電力では「現在行っている定期検査で詳しく調べ、ひび割れと確認できれば、国に報告する予定だった」としている。

「組織的不正」16件、35人処分…東電社内調査

2002年09月17日 Yomiuri On-Line
 原子力発電所の自主点検記録改ざん問題で、東京電力は17日、改ざんを指摘された29件のうち16件が悪質な改ざんだったとする社内調査結果を発表した。

 「連綿として続けられてきた組織的な不正」として、原子力部門を長く担当した二見常夫常務を降格、取締役3人を含む18人の減給など計35人を処分した。荒木浩会長ら上層部5人は辞任、うち4人は顧問に就任。また「企業倫理委員会」設置などの再発防止策を打ち出した。

 しかし証拠書類の紛失などで、個々の改ざんの実態は未解明のまま。原子力の情報公開にはほど遠い結果となった。

 改ざんを認めたのは、福島第一原発1号機の蒸気乾燥器のひび割れ隠ぺいなど、3原発計11基のトラブル合計16件。

 先に保安院が「問題なし」としたトラブル3件も「不適切だった」と認める一方、保安院に「不適切」と指摘された2件は否定した。

換気系の排水管に接続ミス

2002年09月13日 The Sankei Shimbun
 日本原燃(青森市)は13日、青森県六ケ所村の使用済み核燃料受け入れ貯蔵施設で、低レベル放射性廃液の換気設備の排水管2本に接続ミスがあったと発表した。

 日本原燃は放射能漏れや周辺環境への影響はないとしており、原子力安全・保安院と協議して接続し直す方針。稼働中の核燃料サイクル施設で配管の接続ミスが判明したのは初めて。

 ミスがあったのは、低レベル廃液の貯水槽の気体を放出する際、湿気や放射性物質を除去する設備。

 気体から除去した水分を流す管と、機器を洗浄した後の水を流す管の設置位置が逆になっていたことが、8月からの自主点検で分かった。気体からの水は微量で、機器の洗浄もなく、影響はなかったという。

 設備メーカーが設計の基本の系統図から配管図を作成した時に誤り、日本原燃も図面チェックで見落として施工した。設備は平成8年に完成し、10年から稼働していた。

原子炉内に無認可ボルト 東電、報告怠り部品交換

2002/09/10 中国新聞
 東京電力の原発トラブル隠しで、東電が福島県の福島第一原発5号機の原子炉内にある作業員出入り口のふた(アクセスホールカバー)に、国への報告を怠ったまま認可されていないボルトを使っていたことが十日、東電の社内調査委員会の調べで分かった。

 東電は安全性に問題はないとしているが、無認可ボルトを取り付けたまま運転が続いており、国や東電の今後の調査進展次第では国に運転停止を指示される可能性もある。既に五基の停止を決めた東電は「さらに停止となれば電力の供給計画に支障が出かねない」と苦慮している。

 アクセスホールは、原子炉を建設する際に作業員が原子炉圧力容器の内部に出入りするための穴。マンホール大で、炉心隔壁(シュラウド)の下部に位置し、建設終了後にカバーをかぶせてボルトで固定する。

 福島第一原発5号機のアクセスホールカバーは、不正があったとされる二十九件の一つ。経済産業省原子力安全・保安院の発表では「検査後に締め付け不足のボルトを未報告で修理の疑いあり」とされている。

 関係者によると、自主点検の際、カバーを固定するボルトに締め付け不足があることが判明。ボルトを締めても固定できなかったため、事前に認可された部品とは別のボルトを国に未報告のまま使用したという。

 電気事業法施行規則の規定では、炉心や圧力容器にかかわるものの変更には大臣の認可が必要。保安院は「問題の部品は認可が必要なものだったかどうかは一概に言えないが、基本的には国に連絡すべきで、未報告のまま修理をしたのは法律の趣旨に照らして好ましくない」としている。

 東電は福島、新潟両県に計十七基の原発を保有。シュラウドにひび割れの疑いがあるのに運転を継続している五基を十月下旬までに順次停止し、四、五十日ずつかけ検査する方針で、福島第二2号機と柏崎刈羽1号機はすでに停止した。

 福島第一5号機は今年一月に定期検査を終えたばかりだが、東電幹部は「国から停止、交換を求められたら応じざるを得ない。会社にとっては電力の安定供給に深刻な影響を及ぼすことになる」と話している。

「傷隠し」をルール化 東電原発

2002/09/10 中国新聞
 東京電力の原発トラブル隠しで、原発の自主点検で機器の傷やその兆候が見つかった際、現場の担当者が独自に安全評価を行って安全に問題ないと判断した場合、国には「異常なし」と報告することを、一九八〇年代後半から九〇年代前半にルール化していたことが、九日までの東電社内調査委員会の調べで分かった。

 ルール化していたのは福島第一、第二、柏崎刈羽原発の課長級社員で、その後は傷などが見つかっても、前例に従って報告していなかった。

 関係者によると、八六年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故後、国の電力会社に対する指導が厳しくなり、傷や兆候などを報告すると、原子炉を停止させて対策を講じるよう指導された。

 しかし、機器の傷や兆候の解釈は自主点検を請け負う検査業者の間で違いがあり、欧米や国内の過去の事例に関するデータから安全性に問題なしと判断すれば、国には「異常なし」と報告することが、現場でルール化されたという。

 また、当時はバブル経済期で電力需要が急増し、原発を停止させて稼働率を下げたくないという判断がトラブル隠しの常態化を招いたとみられる。

 炉心隔壁(シュラウド)などで、いったん「異常なし」とした部分については、その後も組織的な隠ぺいが繰り返された可能性があるという。

GEの指摘を3回無視 原発記録改ざんで東電

2002年09月09日 The Sankei Shimbun
 未修理のひび割れの疑いが指摘されている東京電力柏崎刈羽原発1号機の炉心隔壁(シュラウド)について、同原発の武黒一郎所長は9日、1994年、96年、97年の3回の定期検査でゼネラル・エレクトリック(GE)社側からひび割れの兆候を指摘されていながらも国への定期検査報告書には3回とも「異常なし」と記載していたことを明らかにした。

 東電はGE指摘から8年間、修理を行わず運転を続けていたことになる。

 武黒所長は「補修部門などの担当者が『異常なし』と判断したことについて調査している」と話した。

 武黒所長によると、柏崎刈羽原発1号機のシュラウドは94年に初めて自主点検し、98年以降の定期検査では点検していない。97年のGE側からの報告は「2センチ程度の兆候が2カ所にある」と具体的に指摘していたという。

 一方、柏崎市などを謝罪に訪れた東電の榎本聡明副社長は柏崎刈羽原発の所長を務めていた96年、1号機のシュラウドについて「GEがクラック(ひび割れ)かどうか分からないと言っている、と報告を受けた」としながらも「補修部門の担当者が判断してやっていることだと思った」と話し、詳しい検査や指示をしなかったことを明らかにした。

 1号機について東電は予定を約1カ月前倒しし、3日から定期検査に入った。

 また武黒所長は同原発2、5号機で未修理などの疑惑があるジェットポンプのすき間について、GEがそれぞれ0.5ミリ、0.6ミリと指摘していると述べた。

東電トラブル:損傷、シートで覆い隠す 福島第1原発

2002年09月08日 Mainichi INTERACTIVE
 東京電力の原子力発電所のトラブル隠しで、国に報告していない福島第1原発2号機のシュラウド(炉心隔壁)の損傷を、交換後の国の検査の際にシートで覆い隠していたことが、東電の内部調査で分かった。東電側は経済産業省原子力安全・保安院の調べに対しても、事実関係を認めている模様だ。

 同原発について東電は94年6月、2号機の円筒形のシュラウドに国内で初めてひび割れが見つかったと報告・発表した。ひびはシュラウドの全周約14メートルに断続的に見つかり、最長で約2・3メートルとされた。しかし、この際、ひびなどの傷の数を実際より少なく報告していたという。

 2号機のシュラウドはいったん修理した後、より強い材質のものに取り換えるために98年6月、交換工事の認可申請を行い、8月に認可が下りて工事を始めた。

 しかし、取り換え後に国が行う検査の際、取り外したシュラウドをシートで覆い、報告していない傷を隠したという。

 シュラウドの交換をめぐっては同原発1、3、5号機について、ひび割れなどの傷が生じている疑いがありながら国に報告せず、97〜01年に「予防保全」を理由として交換工事を行った疑いも指摘されている。

保安院 東電本社に立ち入り、上層部から事情聴取

2002年09月06日 Yomiuri On-Line
 東京電力の原発自主点検記録改ざん問題で、原子力安全・保安院は6日、原子炉等規制法と電気事業法に基づき、東京・千代田区内幸町の東電本社への立ち入り検査を行った。原子炉の炉心隔壁(シュラウド)のひび割れなどの記録改ざんに、本社がどこまで関与していたのかを調べるため、南直哉社長や榎本聡明副社長・原子力本部長ら役員を含む30人以上の社員から事情を聞き、関係書類の任意提出を受けた。

 一連の立ち入り検査は、福島県の福島第一、同第二、新潟県の柏崎刈羽の3原発で既に実施されており、これで事実上終了する。保安院は収集した情報と資料の分析を急ぎ、今月中をめどに中間報告をまとめる。

 本社への検査では、保安院の薦田康久・核燃料サイクル担当審議官ら16人が、経営陣や原子力本部の幹部が改ざんを知っていたかどうかや、経営や管理の実態、社内組織や監査の状況などを調べた。検査後、薦田審議官は「それぞれの発電所が相当な権限を持っているようだ。本社は細かい事柄をあまり把握していない、という印象を持った」と語った。

福井県知事、敦賀3・4号機増設への了解先送り

2002年09月06日 Yomiuri On-Line
 東京電力の原発自主点検記録改ざん問題を受け、栗田幸雄・福井県知事は6日の記者会見で、同県敦賀市の日本原子力発電(日本原電)敦賀原発3、4号機の増設計画について「原発に対する県民の不信感が増大する時期に事前了解を出すわけにはいかない」と述べ、着手に必要な事前了解手続きを先送りする考えを表明した。了解時期は日本原電の内部調査結果などを踏まえて判断する。

 事前了解は、原発事業者と地元自治体の安全協定に基づく手続き。栗田知事は6月に増設に同意する考えを表明し、県と敦賀市が今月中にも了解する見通しだった。

新潟・柏崎市議会、プルサーマルの白紙撤回求める

2002年09月06日 Yomiuri On-Line
 東京電力による原発の点検記録改ざんを受け、新潟県柏崎市議会は6日、9月定例会の冒頭で、柏崎刈羽原発3号機で計画されていたプルサーマル計画の白紙撤回を求める決議案を賛成多数で可決した。同原発では、今月中にも、わが国初のプルサーマル計画が実施されることが検討されていた。

 可決された「プルサーマル計画の中止を求める決議」は、「原子力にとっての最重要課題である『安全性』についての国や東京電力に対する国民・住民の信頼は一挙に崩れ去った」とした上で、「国及び東京電力に対して、プルサーマル計画中止(白紙撤回)を要求する」「新潟県、柏崎市及び刈羽村は直ちに事前了解を白紙に戻すこと」としている。

 可決後、記者会見した西川正純市長は「(可決は)しごくもっともなこと」と語った。

東電不正の再発防止、経産省が対策委

2002年09月06日 Yomiuri On-Line
 東京電力の原発点検記録改ざん問題で、経済産業省は6日、再発防止策の検討を行う特別小委員会を総合資源エネルギー調査会の原子力安全・保安部会に設置し、12日に初会合を開くことを決めた。今月中にも中間報告をまとめる。

 東京大大学院工学系研究科の近藤駿介教授(原子力工学)を委員長に法律、技術などの専門家を中心に構成。不正に対する抑止策の強化や申告制度などで得た情報の調査の実効性を高める方策などについて検討する。次期国会での電気事業法と原子炉等規制法の改正案の提出も念頭に作業を進める。

東電:福島第2原発2号機で放射能漏れ 周辺への影響はないと

2002年09月02日 Mainichi INTERACTIVE
 東京電力は2日夜、福島第2原発2号機(福島県楢葉町、沸騰水型、出力110万キロワット)のタービン建屋内と排気筒の2カ所で、放射線量測定値が通常値を上回ったため、手動停止した。東電や同県県民安全室によると、排気筒からごく微量の放射性物質を放出したという。原子炉内の燃料集合体に微細な穴が開き、配管を通して放射能を含んだ水蒸気が漏れた可能性があるとみて調べている。原子炉周辺の放射線量に異常はなく、発電所周辺への放射能の影響はないという。

 県と東電によると、同日午後5時49分に「排ガス減衰管入口放射能高」の警報が鳴った。さらに同7時44分、排気筒のモニターなど2カ所で放射線量が異常値を示したという。排気筒の放射線量は通常3・0CPS(1秒間の放射線量)だが、最大で4・4CPSを示した。社内の管理基準(56CPS)は大幅に下回っているという。

 2号機は、原発トラブル隠し問題で、シュラウド(炉心隔壁)にひびが入ったまま運転している疑いが浮上した。このため、東電は2日、10月下旬に運転を停止し総点検すると発表したばかり。

東電:不正13基の原子炉即時停止と総点検求める 原水禁

2002年09月02日 Mainichi INTERACTIVE
 東京電力の原発トラブル隠しで、原水爆禁止日本国民会議(岩松繁俊議長)は2日、不正が行われた13基の原子炉の即時停止と総点検を求める声明を発表した。

 声明では、「原発への信頼を大きく損なうものであり、国民生活の基幹をになう電力業界の組織的不正行為を断じて許すわけにはいかない」と厳重に抗議している。また、プルサーマル計画、使用済み核燃料の再処理計画から完全に撤退するよう要求している。

東電原発:虚偽記載87年から チェルノブイリ事故の翌年

2002年09月01日 Mainichi INTERACTIVE
 東京電力の原子力発電所の点検記録虚偽記載問題で、計29件の虚偽記載は87〜95年に行われていたことが、経済産業省の原子力安全・保安院の調べで分かった。虚偽記載開始の前年の86年にはチェルノブイリ原発事故が起きていた。当時は日本国内でも原発の安全性が論議の的になっており、電力各社は原発の「安全神話」のPRに努めていた。保安院は、こういった当時の状況が東電の虚偽記載につながった可能性があるとみて調べている。

 福島第1(福島県)、第2(同)、柏崎刈羽(新潟県)の3原発で発覚した計29件の虚偽記載は、これまで「80〜90年代」と発表されていたが、保安院の調査で実際には「87〜95年」に行われていたことが分かった。

 旧ソ連のチェルノブイリ原発事故は86年4月に発生。その後、日本国内でも原発の安全性に対して国民の不信が高まっていた。

 保安院の関係者によると、当時はわずかな水漏れが起きても「事故」として騒がれることから、通産省(当時)は「すべての個所から一滴も水が漏れないような指導」を電力各社に対して行っていたという。

 89年1月には福島第2原発3号機で、原子炉の再循環ポンプが損傷、多数のボルトや羽根車などの部品が脱落する事故が発生。東電の対応が批判された。

 29件の不正は、原子炉内の炉心を覆う筒状の隔壁のシュラウドのひび割れ、摩耗など重要なトラブルを報告書に記載しない例も含まれていた。

 シュラウドは90年以降、スイスや米国の原発でひび割れが相次いだことが報告されていた。米原子力規制委員会は93年9月、同国内の沸騰水型原発に対し、調査と点検を通知した。

 日本国内では94年6月、東電の福島第1原発2号機でシュラウドのひび割れが初めて明らかにされた。

 元原子力安全委員会委員の住田健二・大阪大名誉教授は「シュラウドは運転開始から早ければ10年もすれば、ごく軽微なひびが入ったりするのは教科書にも書いてあるようなことで、十分ありうることだ。虚偽記載があったというのは、80年代後半当時、トラブルを小さく見せたいという思いが強かったと考えられる。社内でも上司に報告するかどうかに迷っていたと想像できる」と指摘している。

東電社長・会長、辞任へ

2002年08月31日 Yomiuri On-Line
 東京電力は30日、同社の原子力発電所の自主点検記録が改ざんされていた問題の責任を取る形で、南直哉社長と荒木浩会長が辞任する方向で最終調整に入った。両氏は財界活動からも身を引くほか、那須翔相談役も日本経団連評議員会議長を退任する公算が大きい。

 改ざんが東電側の指示で行われたことが濃厚になったためで、経営陣の退陣によって責任を明らかにする。具体的な退任の時期や後任人事については、9月に社内調査の結果をまとめるのに合わせて詰める方針だ。

 南社長は30日、読売新聞の取材に対し「進退については白紙だが、自分は(改ざんを)知らなかったと言っても、社長としての責任があることは間違いない。私に経営責任がないかと言われれば、あるに決まっている」と述べ、自らの進退を含めて経営責任を取る考えを示した。

 これに対して経済産業省首脳は同日夜、「(南社長が辞任しないのは)国民の考えとして許されないのではないか」と、社長の辞任を強く迫る考えを示した。

 また、東電首脳の1人は同日、「社長の辞任はやむを得ない。荒木会長についても考えなければいけない」として、社長に加えて、会長の辞任も避けられないとの認識を示した。

 東電が社長、会長辞任の方向で最終調整に入ったのは、平沼経済産業相が同日の記者会見で、「東電経営陣は国民の信頼を裏切ったことを重く受け止めるべきだ」と述べるなど、経営責任を問う声が高まっているためだ。新経営陣の下で信頼回復を急ぐ狙いがある。

 ただ、進退問題の決着時期については、南社長は「責任問題は事実関係の究明が終わってから検討する」と述べ、9月に社内調査の結果をまとめた時点でけじめをつける考えを示した。

 南社長は電気事業連合会会長からも退任する。荒木会長も日本経団連の企業行動委員長などの役職から身を引く方向だ。

 南社長の後任については、5人の副社長のうち勝俣恒久副社長を軸に調整が進められる見通しだ。

 ◆東電報告踏まえ行政処分の方針◆

 一方、経済産業省原子力安全・保安院は、東京電力の内部調査とは別に独自に調査を進め、9月中に中間報告をまとめる。東電の調査内容を踏まえてまとめるため、9月末になる見通しだ。法律に抵触する悪質な事実が確認されれば、発電所の運転停止命令など厳しい行政処分を下す方針だ。

東電の不正告発は米GE元社員

2002年08月30日 The Sankei shimbun
 東京電力による原発の検査記録改ざん問題で、経済産業省(旧通産省)に告発文書を送ったのは、沸騰水型軽水炉を開発した米ゼネラル・エレクトリック(GE)社の元社員で、2000年7月と同年暮れの2度にわたって同省に届いていたことが30日分かった。

 関係者によると、1通目の告発文書は、原子炉等規制法を改正して設けた「内部告発奨励制度」が施行された同年7月1日の数日後に郵送で同省に届いた。

 文書には、1989年に実施された福島第一原発1号機の点検作業の記録について「圧力容器上部にある蒸気乾燥器に複数のひび割れが見つかったのに、記録ではひびの数が減らされた」などと改ざんの具体的な内容が記されていた。

 東電は91年、応力腐食割れ(SCC)を理由に、問題の蒸気乾燥器の交換をGE関連会社のゼネラル・エレクトリック・インターナショナル(GEII)に委託。取り外された乾燥器は裁断され、放射性廃棄物として現在も同原発内の施設に保管されている。

 2通目の文書は2000年暮れに届いた。同じ元社員から「福島第一原発3号機で、圧力容器内に置き忘れていたレンチが、炉心隔壁(シュラウド)交換時に回収されていた」との内容だったという。

 東電側は「レンチを置き忘れていた事実は確認されていない」としている。

愛媛・伊方原発2号機の補給水ポンプが停止

2002年07月10日 Yomiuri On-Line
 愛媛県伊方町、四国電力伊方原発2号機(加圧水型軽水炉、出力56万6000キロ・ワット)の原子炉補助建屋で、1次冷却水のホウ素濃度を薄める補給水を送るポンプが9日午後8時30分ごろに停止したと、県が10日、発表した。四国電力は予備ポンプに切り替えて運転し、影響はなかった。

 四国電力によると、ポンプ内の羽根車を主軸に固定するボルトの頭部分が折れており、折れた原因を調べる。

全国の原発20基32か所で配管破断の恐れ

2002年06月13日Yomiuri On-Line
 中部電力の浜岡原発1号機での配管破断事故を受け、電力会社5社が、同じ沸騰水型軽水炉を調べたところ、事故原因となった水素がたまる恐れがある配管が、東京電力福島第1原発1号機など20基で計32か所見つかった。経済産業省原子力安全・保安院が13日、発表した。

国際熱核融合炉の六ケ所村誘致を決定

2002/05/29 中国新聞
 日本や欧州、ロシアなどが共同で計画する国際熱核融合実験炉 (ITER)の建設候補地として、政府は二十九日、青森県六ケ所 村を国際提案する方針を決めた。来月四日にフランスで開かれる公 式政府間協議で誘致表明する。

 立地条件や研究環境などの点で有利とみられていた茨城県那珂町 を破っての逆転劇。日本の核燃料サイクル政策の要を担う青森県の 立場に配慮した形で、小泉純一郎首相と森喜朗前首相らが同日午 前、首相官邸で会談して合意した。

 同日夕開かれる総合科学技術会議の本会議で日本への誘致方針を 決める。

 政府は当初、候補地の絞り込みに苦慮し、青森と茨城を同時提案 する方針だった。ところが直前になって自民党有志でつくる核融合 エネルギー議員連盟(森喜朗会長)が「一本化すべきだ」との立場 を打ち出し、方針転換を迫られた。


青森の東通原発、将来凍結も 東電方針

2001.02.10(03:07)asahi.com
 東京電力は福島第1原子力発電所の7号、8号の運転開始時期について、現行計画より1年ほど延期し、それぞれ2007、08年とし、青森県の東通(ひがしどおり)原発1号、2号については当面「2010年以降」としている現行計画を維持する方針を固めた。来月まとめる設備建設の10年計画に盛り込む。ただ、東通原発は需要地から離れ、送電などのコストがかさむため数年中に凍結する可能性が強い。

 東通について東電は、新規立地で増設に比べて効率が悪く、送電コストもかさむことから、計画の見直しを検討している。だが経済産業省は、温暖化ガス削減の観点から2010年度までに、東通を含めた計13基の原発稼働を見込んでおり、いま延期すると政策上の影響が出ることなどを配慮し、当面は計画を変更しない意向だ。しかし、具体的な建設手続きの開始予定である2002年度までには、計画を凍結する意向が強い。

 一方、福島第1の7号、8号は関東圏に隣接し、すでにある原発の増設にあたることなどから推進する方針だ。しかし、現状の手続きの進み具合が遅れているため、その分の延期を盛り込む。

 東電は8日、電力需要の伸び悩みなどを受けて、原子力発電所以外の発電所新設計画を来年度から3―5年間凍結する方針を発表している。

配管破断は金属疲労が原因 福島第2原発

2001.02.09(19:44)asahi.com
 東京電力福島第2原発1号機(福島県楢葉町、110万キロワット)の原子炉内にあるジェットポンプの流量測定値が高めの値を示し手動停止した問題で、県と東電は9日、ステンレス製の流量計測用配管(直径14ミリ)の振動数と再循環ポンプの回転に伴う水流の振動数がほぼ一致して共振し、配管が金属疲労を起こして破断したとみられると発表した。

 配管の振動数は配管の長さによって決まる。このため、破断した配管と同じ長さの他の3本も、太い配管とリングで固定することにした。東電は1号機を2月中に起動させたい考えだ。

青森の大間原発計画、着工を1年延期 用地買収難で

2001.01.24(21:20)asahi.com
 青森県大間町で進められている大間原子力発電所の計画について、事業者の電源開発(本店・東京)は24日、着工年度を1年先延ばしして2003年3月に変更することを明らかにした。運転開始も1年ずれ込み、2008年7月になるという。一部地権者との用地買収交渉が難航しているためという。電源開発の杉山弘社長が青森県の木村守男知事を訪ね、報告した。

 大間原発(改良型沸騰水型炉=ABWR、出力138万3000キロワット)は2002年3月着工、2007年7月運転開始の予定だった。しかし、炉心部予定地周辺の一部地権者が買収に応じず、交渉が暗礁に乗り上げている。約132ヘクタールの用地のうち、2%弱が未買収のままという。

 大間原発は、使用済み核燃料から製造するウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料だけを燃やす世界で初めてのフルMOX原発として予定されている。

流量計測用配管が切れる 福島第二原発の手動停止

2001.01.21(19:57)asahi.com
 東京電力福島第二原発1号機(福島県楢葉町、110万キロワット)の原子炉内にあるジェットポンプ20台のうち1台の流量測定値が高めの値を示し、手動停止した問題で、東電は22日、ステンレス製の流量計測用配管(直径14ミリ)が上端から1.7メートルの部分で切れたことが原因だったと発表した。国内では初めての事例で、水流の振動に伴う金属疲労か応力腐食割れではないかとみて、破断部分をさらに調べることにしている。

伊方原発1号機の送電再開 四国電力

2000.12.30 The Sankei Shimbun
 四国電力は三十日、定期検査のため九月五日から停止していた伊方原発1号機(愛媛県伊方町、加圧水型軽水炉、出力五十六万六千キロワット)の送電を再開した。

 今回の定期検査では、耐圧試験で水漏れが確認された原子炉格納容器内の一次冷却水系のステンレス製配管や、その後の検査で表面の傷が発見された計九カ所の配管を新しいものと交換。フランスの原発で一九九一年、原子炉容器の上部ふたの管台部分がひび割れし一次冷却水が漏れた事例があったため、上部ふたも取り換えた。

 今後も出力を上げながら残る検査を実施、来年一月上旬ごろに出力一○○%に達する見込み。定期検査は一月下旬ごろ、国の検査を受けて終了する予定。

東海第2発電所、原子炉を手動停止 茨城・東海村

2000.12.27(00:33)asahi.com
 日本原子力発電は26日午前、茨城県東海村の東海第2発電所(沸騰水型、110万キロワット)で冷却水を閉じこめる装置の機能が低下したため、原子炉を手動で停止する作業に入った。同日正午から出力降下を始め、27日午前0時すぎに停止した。周辺環境への影響はないという。

 原電によると、機能が低下したのは、冷却水を閉じこめるために高圧で水を循環させる装置。9月上旬ごろから循環水の流量に異常がみられ監視を続けていたが、同日午前4時半ごろ、規定の値より漏水量が大幅に増えた。放置すると、冷却水が逆流する恐れもあるという。第2発電所は1年間の定期検査を終え、3月から運転を再開していた。


「もんじゅ」運転再開へ 福井県審査受け入れ

2000.11.27(03:20)asahi.com
 ナトリウム漏えい事故を起こして停止したままになっている核燃料サイクル開発機構(核燃機構)の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市、28万キロワット)について、核燃機構は、運転再開につながる国の安全審査の「事前了解願」を月内に福井県と敦賀市に提出することを決めた。福井県などは審査を受け入れる方針を固めた。年内にも栗田幸雄知事が表明する方針。近年、原子力をめぐるトラブルが相次ぎ、欧米各国が高速増殖炉開発からの撤退を進めるなか、「もんじゅ」は1995年12月のナトリウム漏れ事故から5年ぶりに再開に向けて動き出す。

 「もんじゅ」については電力業界などから「役割が薄れてきた」という声も出ている。しかし来年の省庁再編で所管の科学技術庁が文部省に統合され文部科学省となるため、核燃機構などは、年内に運転再開のめどをつけたいとして働きかけていた。

 「もんじゅ」は、一般の原発(軽水炉)でウランを燃やした際に生じるプルトニウムを燃料とし、さらに運転によって使った分以上のプルトニウムを取り出すことができる。日本の将来のエネルギーとして期待される一方、水と反応すると爆発するナトリウムを冷却材として使用し、技術的にも未知の部分が多いため、計画段階から激しい反対運動があった。

 94年4月に臨界し、95年8月、初めて送電したが、同年12月8日、ナトリウム漏れ事故を起こし、運転停止。さらに事故後、当時の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が事故現場を撮影したビデオを隠し、国への虚偽報告を繰り返し、動燃の体質が問題視された。

 福井県や敦賀市は、核燃機構との間で「もんじゅ」について独自に定める「安全協定」で、国の安全審査を受ける前に核燃機構が県と市の了解を取り付けることを義務づけている。

 審査後、「もんじゅ」は早ければ3年余りで運転が再開できるようになるという。

もんじゅの早期運転再開めざす 原子力長期計画を決定

2000.11.24(10:44)asahi.com
 政府の原子力委員会(委員長=大島理森・科学技術庁長官)は24日、2001年度以降の原子力研究開発利用長期計画(長計)を決定した。社会情勢の変化に柔軟に対応するため、主要計画の達成時期を示していないのが特徴だ。しかし、原子力発電を基幹電源とし、使用済み燃料からプルトニウムを取り出して利用する核燃料サイクルを推進する路線は踏襲している。

 ナトリウム漏れ事故を起こして停止している高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を核燃料サイクル技術の研究開発の中核に位置づけ、早期の運転再開を目指すとしている。

 大島長官は26日に福井県を訪れ、知事や敦賀市長に長計でのもんじゅの位置づけを説明して、再開への理解を求める。


女川原発差し止め訴訟で住民側の上告棄却、敗訴が確定

2000.12.19(23:40)asahi.com
 石川県志賀町の北陸電力志賀原子力発電所1号機(沸騰水型炉)と、宮城県女川、牡鹿両町にまたがる東北電力女川原発1、2号機(同)をめぐり、反対派の住民らが、電力会社を相手に人格権の侵害などを理由に運転差し止めを求めた2件の訴訟で、最高裁第三小法廷は19日、住民側の上告を棄却する決定をした。第三小法廷はそれぞれについて「住民側主張は上告理由には該当しない」とした。これにより、「具体的な危険性はない」とした住民側敗訴の判決が確定した。

 原発の安全性をめぐって、設置許可を与えた国を相手に許可処分の取り消しを求めた行政訴訟で最高裁の判断は示されているが、電力会社を相手にした民事訴訟に対する判断は初めて。志賀訴訟は金谷利広裁判官、女川訴訟は元原利文裁判官が、裁判長を務めた。

核廃棄物、仏再処理工場から日本へ返還 19日に出港

2000.12.19(20:14)asahi.com
 日本が使用済み核燃料の再処理を委託しているフランス核燃料会社(COGEMA)は18日、高レベル放射性廃棄物を積んだ日本向けの輸送船を19日に仏北西部シェルブールから出港させると発表した。

 今回の輸送は1995年以来、6回目。ガラス固化体192本を英輸送船パシフィック・スワンが運ぶ予定。輸送ルートは出港の24時間後に公表する。

使用済み核燃料運搬船、福島第2原発に到着

2000.12.16(18:39)asahi.com
 原子力発電所から出る使用済み核燃料を、青森県六ケ所村の日本原燃再処理工場の貯蔵プールに運ぶ運搬専用船「六栄丸」(5、000トン)が16日、東京電力福島第2原発(福島県富岡町、楢葉町)に到着した。茨城県東海村の日本原子力発電東海第2発電所で使用済み核燃料11トンを積み、この日午前に出航。福島第2原発3号機の使用済み核燃料13トンを積み込んで18日朝に出航、6ケ所村に向かう。

 全国の原発でたまり続ける使用済み核燃料を国内の再処理工場へ本格的に搬出するのはこれが初めて。運ばれた使用済み核燃料は、将来、プルサーマル用のプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料の一部となる予定。搬出は11月に、日本原燃と青森県や地元自治体との間で安全協定が締結され実現した。

安全審査に一部誤り 伊方原発増設訴訟

2000.12.15 The Sankei Shimbun
松山地裁判決 許可取り消しは棄却

 愛媛県伊方町の四国電力伊方原子力発電所2号機(加圧水型軽水炉、出力五十六万六千キロワット)をめぐり、地元住民二十一人が国を相手取り、設置許可の取り消しを求めた行政訴訟の判決が十五日、松山地裁であった。豊永多門裁判長は「(活断層の有無について)現時点の知見では国の安全審査の判断に一部誤りがあったことは否定できないが、現在の事故防止対策で重大事故の起こる可能性が高いとまではいえない」として請求を棄却した。昭和五十三年六月の提訴から二十二年余りを経た訴訟は住民敗訴の結果となった。

 判決で豊永裁判長は、最大の争点とされた原発周辺のA級活断層の有無について、原告が主張した伊方沖の瀬戸内海でのA級活断層の存在と最大マグニチュード7・6の地震発生の可能性を示唆した岡村真・高知大理学部教授(地震地理学)の調査結果を認め、「活断層については、現在では安全審査の判断は結果的に誤りだったことは否定できない」とした。

 しかし原発自体の安全性については「阪神大震災を踏まえ、同海域の断層を考慮した解析でも、原子炉には安全性があることが認められる」などとして、「安全審査全体が不合理であり許可処分が違法とはいえない」とした。

 また、航空機の墜落事故の危険性などについては、「原子炉の異常発生、異常防止対策などからみて、安全審査の判断に見過ごせない誤りや欠落があるとはいえない」として退けた。

 豊永裁判長は判決言い渡し後、「原子力災害で重大な被害を受けるのは住民。厳重な安全規制、運転管理が求められる」と付言した。

原発特措法案、12月1日に成立へ

2000.11.30(18:54)asahi.com
 与党3党が議員立法で提出した「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法案」は30日、参院の経済・産業委員会で、法案の目的に「防災に配慮する」との文言を加えるなどの修正をしたうえで、民主、共産、社民の野党3党を除く賛成多数で可決され、その後の参院本会議でも可決された。法案は衆院に回付され、1日の衆院本会議で可決、成立する。

 修正された法案は、防災面を強調したほか、「原発の推進」を目的から削除し、補助金かさ上げの対象となる事業から防災とかかわりのない観光開発や文化振興を除外した。

 民主党は29日夜の修正協議を受けて参院の現場がいったん賛成を決めたが、30日午前になって幹部らが「修正が不十分だ」として、反対することを決めた。

原発立地振興法案、与党などの賛成で衆院通過

2000.11.28(13:46)asahi.com
 原発関連施設のある地域への新たな振興策を盛り込んだ「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法案」が28日正午すぎ、衆院商工委員会で与党3党と自由党などの賛成多数で可決された。12月1日の会期末に成立を間に合わせるため、この日の質疑だけで採決というスピード審議だったが、共産、社民などが強く抗議したものの大きな混乱はなかった。同法案は同日午後からの衆院本会議でも可決され、参院に送られた。

 法案は、原発の地元自治体に対し、これまでの電源三法による交付金に加え、公共事業の補助金の上乗せなど、さらなる財政的支援を図ろうという内容。首相を議長とし、関係閣僚8人で新設される原子力立地会議の承認を経て一般財源からの支出が可能になる点や、道路や鉄道建設から防災、教育、文化振興まで、対象事業が多岐にわたることが大きな特徴だ。与党3党の議員によって提出された。

 法案成立には、日程的にこの日の午後から開かれる衆院本会議で可決させなければならないため、与党側は質問時間の割り当てを放棄、細田博之委員(自民)が法案の趣旨説明をしたあと、民主、自由、共産、社民の順に質疑が行われた。

 衆院の本会議では、古屋圭司委員長(自民)が委員会での可決を報告。本会議でも起立による採決で、自民、公明、保守、自由の各党の賛成で可決された。

原発立地地域の振興法案、駆け込み成立狙う 与党3党

2000.11.26(07:45)asahi.com
 残り1週間を切った今国会で、自民、公明、保守の与党3党が、原発施設のある地域のインフラ整備などを図る「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法案」の駆け込み成立を目指している。臨界事故をきっかけに、原発そのものの是非が問われているなかで、電源3法による従来の交付金に加え、新たな財政的援助を可能にする法案に、共産、社民などは「原発自体の議論を棚上げしたうえ、公共事業のばらまきにつながる」と強く反発。民主も反対の構えだ。28日の衆院商工委員会で法案の趣旨説明から採決まで一気に進め、会期末ぎりぎりでの成立を目指す与党との間で緊張が高まっている。

 法案は、原発関連施設の周辺地域での道路、鉄道、港湾整備や産業、文化振興といった幅広い事業に対し、補助金の上乗せなどを図るのがねらい。都道府県知事が振興計画を立案し、首相を議長とし関係閣僚8人によって新設される原子力立地会議が承認する。

 原発の地元自治体には、すでに電源開発促進税法など、いわゆる電源3法に基づいて年間約1000億円の交付金が計上されている。しかし、支給額や期間が限られており、原発への「逆風」も強まったことから、島根や福井など地元自治体から新たな振興策を要望する声が上がっていた。

 法案は、対象の自治体が広範囲のうえ、対象事業も「何でもあり」の状態。立地会議のメンバーも首相や閣僚に限られ、学識経験者などは加わらない。インフラ整備の必要性より政治的判断が優先される可能性など、運用の透明性を問う声も上がっている。

 また、法案では来年度の経費として33億円を見込んでいるが、財源については明記されていない。脱原発を求める市民団体などは支出に歯止めがなくなる恐れがあると指摘。さらに、法案成立が原発の新規着工の呼び水になることを警戒している。

核燃料再処理施設の再開条件提示へ 茨城県と東海村

2000.11.06(15:14)asahi.com
 1997年3月の火災・爆発事故から止まっている核燃料サイクル開発機構(核燃機構=旧動燃)東海事業所の使用済み核燃料再処理施設(茨城県東海村)の再開について、その是非の判断を求められている茨城県の橋本昌知事と東海村の村上達也村長は6日午前、最終調整のための会談をした。両者とも基本的には再開容認で固まっているものの、安全確保の方策や情報公開を進めるために住民を加えた新たな組織の設置などを求める要望書を近く国と核燃機構に提出し、その回答を検討した上で最終判断することで合意した。

 県などによると、要望書は県と東海村がそれぞれ国と核燃機構あてに出す。地元への財政援助や放射性廃棄物の最終処分に関する方針の提示なども盛り込み、回答を求める。回答がそろった段階で改めて橋本知事と村上村長が会談し、再開問題への結論を出すことにした。

 核燃機構は当初、昨年秋に再処理施設の運転再開を申し入れる予定だったが、9月30日に東海村にある民間のウラン燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所で、臨界事故が起きたため延期。約半年後の今年3月、県と東海村に対して運転再開を申し入れていた。

 県と村はそれぞれ検討を進め、村上村長も委員として加わる県の原子力審議会は10月下旬、再開容認の答申を提出した。しかし、JCOの臨界事故を受け、地元住民の原子力施設に対する不信や不安の声が依然根強いことから、県と東海村は再開を認める「条件」を提示することにした。

3時間半遅れでヒアリング 中国電力

2000.10.31 The Sankei Shimbun
 中国電力(広島市)が山口県上関町で進める原発建設計画で、通産省・資源エネルギー庁は三十一日、地元住民の意見を聴く第一次公開ヒアリングを上関町民体育館で開いた。反対派住民約二百人の激しい抗議で、予定より約三時間半遅れて正午前に始まり、午後六時前に終了した。

 昨年九月の茨城県東海村の臨界事故以来、初の公開ヒアリング開催で、事業着手に向け具体化している唯一の原発新設計画は大きな節目を迎えた。終了後、同庁の藤富正晴審議官は「ヒアリングを無事開催でき、地元の意見を聴くことができた」と評価した。

 これで、今後の焦点は二井関成・山口県知事が計画にどのような判断を下すかに移った。

 この後、知事が同意すれば計画は電源開発調整審議会に上程され、国の電源開発基本計画に組み込まれることになる。

核燃料再処理施設の「運転再開容認」を知事に答申 茨城

2000.10.30(22:31)asahi.com
 1997年3月の火災・爆発事故以来運転を停止している茨城県東海村の核燃料サイクル開発機構(核燃機構=旧動燃)再処理施設の運転再開について、同県原子力審議会(委員長・佐藤守弘常磐大教授)は30日、橋本昌知事に対し、再開容認の答申をした。橋本知事は今後、地元の東海村や国と協議した上で、11月中にも、核燃機構側に運転再開容認を伝える。これを受け、核燃機構は今年中にも運転を再開したい考えだ。

 核燃機構は今年3月、県に運転再開を申し入れていた。県の諮問を受けた同審議会は、学識経験者や県議ら26人の委員が対応を検討。「再処理施設はわが国のエネルギーの安定供給のため重要で、安全性の確保に問題ないことが確認された」との認識でまとまった。答申は再処理施設の運転再開を容認したうえで、「国が安全確保に全責任を持ってあたる」「国は、核燃機構が安全上の問題を定期的に確認し、公表するように指導すること」など、審議過程で村上達也・東海村長ら委員から出された5つの意見を添えた。

 答申を受けた橋本知事は5つの意見なども参考にして対応を判断するが、「審議会の結論を尊重する」と話しており、運転再開容認を前提に、結論を詰めていくことになる。

 また、東海村も核燃機構から運転再開の申し入れを受けているが、村上村長はこれまで「県の決断に矛盾しない形になる」としており、県と同時期に再開容認を核燃機構に伝えるとみられる。

原発事故を想定、初の防災訓練実施 国主体で危機管理

2000.10.28(12:57)asahi.com
 茨城県東海村で起きた臨界事故を受けて制定された原子力災害対策特別措置法に基づき国が中心になって実施する全国初の原子力防災訓練が28日、中国電力島根原子力発電所(島根県鹿島町)で事故が発生したという想定で、東京の首相官邸と現地の島根県が連携して実施された。訓練では、首相を本部長とする原子力災害対策本部を首相官邸に設けるなど、国主体の危機管理を徹底させることを目指す。

 同措置法は、東海村の民間ウラン燃料加工施設「ジェー・シー・オー(JCO)」で昨年9月に国内初の臨界事故が起きた際、情報把握などの初動態勢が不十分だったことを踏まえて制定され、今年6月に施行された。

 午前7時50分、島根原発2号機(沸騰水型、出力82万キロワット)の給水ポンプがすべて止まり、原子炉が緊急停止。その後、非常用炉心冷却装置が故障して炉心が損傷し、格納容器から放射性物質が外部に漏れた――。

 こうした想定で始まった訓練は、1979年の米国・スリーマイル島原発事故を参考にしたうえで、外部への放射性物質の流出量は同事故の約80倍を見込んだ。

 午前10時半からは首相官邸で政府の第1回原子力災害対策本部会議が開かれ、森喜朗首相が訓練の原子力緊急事態宣言を出した。

 今回の訓練ではこのほか、オフサイトセンター設置運営訓練、緊急時モニタリング訓練、医療活動訓練などを行う。

昨年白血病死した原発作業員を労災と認定 8人目

2000.10.25(18:56)asahi.com
 福島県の東京電力福島第1原発(双葉、大熊町)と第2原発(富岡、楢葉町)で11年以上にわたって働き、昨年11月に急性白血病で死亡した3次下請け会社の男性作業員(当時47)について、富岡労働基準監督署は24日、長年にわたる作業中の放射線被ばくが発病の原因と判断し、労災認定した。

 労働省によると、原発や核燃料施設での放射線被ばくで労災認定されたのは8人目。労基署や遺族関係者によると、作業員は溶接工として1988年から死亡直前まで炉心の近くでの作業をしていた。記録によると、作業員の被ばく線量は計74.9ミリシーベルトで、国の認定基準を20ミリシーベルト近く上回っていた。遺族が昨年12月に認定申請していた。

使用済み核燃料移送で安全協定締結へ 青森県知事

2000.10.06(20:11)asahi.com
 青森県の木村守男知事は6日、全国の原子力発電所から出る使用済み核燃料を同県六ケ所村の再処理工場へ本格的に運び込むための安全協定を結ぶことを表明した。来週にも県、六ケ所村と、事業者の日本原燃(本社・青森市)の3者間で結ぶ。

 安全協定は、原子力事故時における地元への連絡、立ち入り調査や住民側への情報公開などを定めたもの。協定締結で、使用済み核燃料の再処理事業開始に向けた地元側の障壁がなくなることになる。

 木村知事は「原子力政策の推進で、政府一体の責任ある取組強化を図ることが確認できた」と記者会見で話した。

 六ケ所再処理工場は2003年の操業開始を目指して工事が進んでいる。再処理能力は年間800トンの予定。すでに、試験用として使用済み核燃料32トンが工場の貯蔵施設に搬入されている。

 一方、日本原燃は同日、六ケ所ウラン濃縮工場へのウラン濃縮用遠心分離機の高度化機導入を断念したと発表した。高度化機は現行の遠心分離機の約3倍の処理性能があるとされたが、腐食や金属材質が割れる危険性が判明した。同社は今後、別の技術を受け継いで開発を続けるが、同工場の年間生産目標の達成時期は、当初予定していた2004年度から2020年度ごろにずれ込む見通しだという。

チェルノブイリ原発、「石棺」の劣化進む

2000.10.03(09:50)asahi.com
 1986年4月、地球規模の放射能汚染をもたらした旧ソ連チェルノブイリ原子力発電所では現在、ウクライナが事故炉以外の3基のうち1基の運転を続けている。12月15日までに完全閉鎖する準備の進む同原発を訪ねた。

 事故を起こした4号炉を封じ込めているコンクリートと鉄板製の「石棺」は、劣化が進行していた。継ぎ目には人が入れるほどのすき間もあり、内部に雨水がたまっている。崩壊すれば、閉じこめた大量の放射性物質が飛散する恐れがある。

 昨年暮れには、壊れそうな支柱2本の補修工事のため、巨大なクレーンが設置された。支柱に穴をあけたときに溶けた燃料の一部が漏れ出るトラブルはあったものの、「当面の危機は去った」と原発幹部。完全閉鎖するには、今後、炉心に残る高レベルの放射性物質を運び出し、安全な場所に保管しなくてはならない。

 石棺に隣接する3号炉は100万キロワットの最大出力で稼働しており、首都キエフの電力の大半を賄っている。しかし、核燃料が足りず、12月12日までしかフル稼働できないという。3号炉を止めて冬を乗り切れるのか、住民は不安を募らせている。

建設中の原子力発電所を廃止へ 台湾

2000.09.29(22:24)asahi.com
 台湾・行政院(内閣)の林信義・経済部長(通産相)は30日、唐飛・行政院長(首相)に台湾電力が台湾北部で建設中の第4原子力発電所の「即時工事中止」を進言する。29日付の台湾各紙が報じたもので、行政院は10月末にも結論を出す。「原発の新設反対、代替エネルギー開発で既存原発も廃止」を党綱領でうたう民主進歩党(民進党)の陳水扁総統は、廃止に持ち込みたい構えだ。

 今年5月の陳政権の発足後、経済部は専門家による再評価委員会で、代替エネルギー案も含め検討してきた。陳総統は今月16日の記者会見で、原発建設は「エネルギー政策や安全問題だけではなく、(子孫に対する)良心と道徳の問題」と訴えた。だが、立法院(国会)で多数を占める国民党は建設推進の立場で、折衝は難航しそうだ。

 台北市から40キロの台北県貢寮に建設中の第4原発は、国民党時代に建設が承認され、1号機は2004年、2号機は2005年完成を目指す。米ゼネラル・エレクトリック社が受注、原子炉関連機器は日立製作所など、発電機は三菱重工業が請け負う。工事と発注の約3割が済んでおり、国民党は「発注済み事業の廃止は国際信用を失う」と訴える。

 台湾にとって着工中の大型プロジェクトの廃止は初めてで、今後の法的対応も未整備だ。特別立法や憲法改正が必要とする見解もある。民進党内からは、台湾初の「住民投票で決すべきだ」との意見も出てきた。

 台湾電力によると、台湾では1978年に第1原発が完成。第3原発まで建設され計6基が稼働している。全発電量の25.3%を占める。

福島原発のタービン定期検査を東電「うっかり失念」

2000.09.29(19:28)asahi.com
 東京電力は29日、福島第二原子力発電所2号機の蒸気タービンについて、定期検査の時期を「うっかり失念」(同社)し、電気事業法の施行規則に定められた手続きを取らずにいた、と発表した。

 これに対し通産省・資源エネルギー庁は同日、「誠に遺憾」として、同社に対して厳重注意した。茨城県東海村の民間ウラン加工施設の臨界事故が起きてからちょうど1年になる微妙な時期だけに、同社は「深く反省するとともに再発防止に万全を期する」とひたすら低姿勢だった。

 蒸気タービンは25カ月を超えない時期ごとの定期検査が義務づけられているが、その間に資源エネルギー庁に申請して認められれば、検査時期を最大1年延期できる。東電によると、1998年8月に前回検査が終わり、9月14日が期限だった。12月中旬に予定している原子炉の定期検査に合わせて、時期の変更を申請する予定だったが忘れていた。29日になって変更届を申請した、という。

 資源エネルギー庁は、検査官を急きょ派遣して申請に関する審査を実施。申請を承認したが、東電に対してうっかりミスが起きた原因の調査と対策を要求した。

原子力災害対策で協力 日米が合意

2000.09.29(18:53)asahi.com
 茨城県東海村の民間ウラン加工施設「ジェー・シー・オー(JCO)」東海事業所で起きた臨界事故への反省から、政府は29日、米エネルギー省と、原子力災害対策の充実・強化を協力して図っていくことで合意した。閣議後の記者会見で、大島理森・科学技術庁長官が明らかにした。

 原子力防災に関する情報交換や専門家交流の推進、新たな防災訓練計画の開発などを進める。

 大島長官はJCO事故から1年になるにあたり、「安全が原子力の大前提だ。原子力関係者すべてに、改めてそのことを強調したい」と述べた。

原子力の安全神話改め情報公開重視 検討委が初の報告書

2000.09.23(14:58)asahi.com
 一方的に国民に政策を説得する姿勢は通用しません――。原子力に関する国の広報のあり方を検討していた「原子力広報評価検討会」(座長・田中靖政学習院大教授)は22日、原子力への信頼回復の処方せんとなる初の報告書をまとめた。「安全神話」を前提とする一方的な説得姿勢を改めて、原子力発電所がもつ潜在的な危険性や、その対策などを含めた情報公開の重要性を指摘した。

 検討会は資源エネルギー庁公益事業部長の私的懇談会で、学識経験者で構成する。1995年の高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故などを受け、98年から検討してきた。

 報告書は、地域住民との対話を重視し、原子力の潜在的な危険性も知らせる「リスク・コミュニケーション」の導入を求めた。また、国の原子力広報の内容を客観的に評価できる第三者機関の常設を提案。教育現場での環境・エネルギー問題への取り組みの強化も訴えた。

 社会経済生産性本部が毎年実施するアンケートでは、「原発は安全」と答えた割合は94年に5割を超えていたのに徐々に低下。昨年は1割程度に落ち込んだ。昨年9月には民間ウラン加工施設で初の臨界事故も起こり、原子力への信頼が揺らいでいる。

 資源エネルギー庁は「電力会社とも話し合って提言を反映させたい」と話している。

堀知事が受け入れ表明 北海道電力の泊原発3号機増設

2000.09.05(23:36)asahi.com
 北海道電力が後志支庁泊村に計画している泊原子力発電所3号機増設に対し、北海道の堀達也知事が5日の臨時道議会本会議で計画受け入れを正式に表明した。堀知事は7月14日の予算特別委員会で容認姿勢を示していたが、地元自治体が条件付きながら同意の意向を示したことで最終的な判断を示した。

 泊原発3号機は出力91万2000キロワットの加圧水型軽水炉。2008年12月の運転開始を目指している。JCOの臨界事故後、原発立地に同意したのは、島根原発3号機増設を認めた島根県に続くことになる。

宮城の女川原発で放射能含む水もれ 外部への影響はなし

2000.09.02(19:39)asahi.com
 東北電力は2日、女川原子力発電所(宮城県女川、牡鹿町)1号機(沸騰水型炉、出力52万4000キロワット)で、蒸気を水に戻したあと不純物を取り除く復水ろ過装置から水漏れがあったと明らかにした。漏れた量は約1リットルで、水には約5000ベクレルの放射能が含まれていた。同社は国が通報を義務づけている放射能量の約750分の1と微量のため、外部への放射能の影響はないと説明している。

 東北電力によると、2日午前10時40分ごろ、巡回中の作業員が床に水がたまっているのを見つけた。ろ過装置に接続された口径2.5センチの配管から水が霧状に噴き出していたという。ろ過装置は6つあるため一つだけ停止し、1号機の運転は止めていない。

福島第2原発の手動停止、原因は燃料棒の亀裂

2000.08.18(20:39)asahi.com
 東京電力福島第2原発4号機(福島県富岡町)で先月25日、燃料棒から冷却水に放射性ガスが漏れ、原子炉を手動停止させたトラブルの原因について、東電は18日、燃料棒1本の表面に亀裂とみられる長さ約19センチの筋ができ、そこからガスが漏れたと見られると発表した。

 トラブルは、この燃料棒の別の場所に開いたピンホールから冷却水が入って水素が発生。被覆管の金属と化学反応を起こし、もろくなって亀裂ができたという。この亀裂から放射性ガスが漏れたらしい。

 4号機は定期検査に入っており、東電は亀裂が入った燃料棒を交換する。

島根原発3号機の着工決まる 臨界事故後初の原発建設へ

2000.08.21(20:52)asahi.com
 政府は21日開いた電源開発調整審議会で、7月に地元自治体の同意が得られた島根原子力発電所3号機(島根県鹿島町、137万キロワット)の増設を認めた。茨城県東海村のウラン燃料加工施設で昨年起きた臨界事故以降、原発の建設着手が決まったのは初めて。島根原発は2003年3月の着工、2010年3月の運転開始を目指す。

 同審議会が決めた2000年度の電源開発基本計画では、2009年度までに運転開始が必要な発電所の規模を5278万キロワットとし、その24%に当たる1263万キロワットを原発10基でまかなう予定。しかし、計画に組み入れ済みの原発は半分の5基(605万キロワット)だけで、不足分を補うためには、島根3号のほかに泊3号(北海道)▽福島第一7、8号(福島県)▽敦賀3号(福井県)の5基の整備が必要、としている。

 このうち泊3号については、堀達也・北海道知事が今年7月、増設容認を表明。国も年内の承認を念頭に置いている。しかし、臨界事故などの影響で世論が厳しさを増しているうえ、電力自由化に伴い、電力会社にもコスト競争力の点で原発建設に慎重な姿勢も出ており、同計画が青写真通り進むかどうかは微妙だ。

原子力長計の中間報告案、プルトニウム需給量明記せず

2000.08.11(23:30)asahi.com
 2001年度以降の原子力研究開発利用長期計画(長計)について、政府の原子力委員会(委員長=大島理森・科学技術庁長官)の長計策定会議は11日、中間報告案をまとめた。社会情勢の変化に柔軟に対応するため、主要計画の達成時期を示さず、軽水炉など実用が進んでいる分野では民間事業者の意思を尊重した。プルトニウム利用も変動を想定、需給量は明記しなかった。

 同会議は原子力委員会に報告したあと、国民から意見を募集したり、全国3カ所で「ご意見をきく会」を開いたりして、年内に最終案をまとめる。

 報告案は、国民や国際社会の理解を前提に、原子力発電を基幹電源として推進する路線を踏襲。使用済み核燃料からプルトニウムやウランを取り出して有効利用する核燃料サイクルを、従来通りに基本方針と位置づけた。

 さらに、国と民間事業者との役割分担をはっきりさせた。国は、国策として堅持すべき理念や政策を示したうえで、「意欲ある民間が自主的な活動として」政策実現に取り組めるように支援策や法律の枠組みを用意する。原発や核燃料サイクル事業の一部など、民間事業として成熟しつつある分野では国の関与を緩め、経済原理にゆだねるのが狙いだ。

 度重なる原子力事故やトラブルで、1994年6月に決定された現在の長計は事実上破たんした。電力自由化などで原子力を取り巻く社会情勢は厳しさを増している。そこで、原発の総発電量や、核燃料サイクルの主軸となる高速増殖炉の実用化などの目標の数字や時期を示さず、柔軟に対応することにした。

 日本が「利用目的のない在庫を持たない」と国際的に約束しているプルトニウム需給見通しの数字もない。プルトニウムを使うのは当面、軽水炉でプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)を燃やすプルサーマルと、高速増殖炉の研究開発だが、ともに不確定要素があるからだ。

 報告書は、国に「透明性の確保を徹底して平和利用する」ことを求めている。

 長計は、日本の原子力研究開発利用を進めるよりどころとして56年に初めて決定され、以後ほぼ5年ごとに策定されてきた。

地震で配管破断の福島第1原発6号機が運転再開

2000.08.05(18:57)asahi.com
 茨城県沖を震源とする地震で配管が破断し、先月21日から手動停止していた東京電力福島第1原発6号機(福島県双葉町)が5日午後、運転を再開した。

 破断した配管は、タービンに送り込まれる蒸気圧に異状があったとき蒸気を逃がす弁に付いていた。加工不良で入ったひびが次第に広がり、地震で破断したとみられる。この配管はなくても安全上支障がないとされ、同原発は6号機の同様の配管をすべて撤去した。

放医研で3人が微量の放射能汚染 千葉市

2000.07.28.(22:28) asahi.com
 千葉市稲毛区にある科学技術庁放射線医学総合研究所(放医研)は28日夜、同日夕に研究所内で微量の放射性物質フッ素18による汚染が検出された、と発表した。3人の汚染が確認されたが、人体への影響はないという。科技庁は現在の汚染程度は小さいとみている。

 同研究所によると、同日午後2時10分ごろ、研究所内の画像診断棟1階の汚染検査室で、退室しようとした放射線業務従事者2人の手から確認された。汚染の原因は、管理区域内で作業していた別の従事者の男性(47)が検査をしないまま区域外に退室し、手の汚染がドアノブなどを通じて、間接的に広がったと見られる。

 最初に汚染したとみられるこの男性は、放射性物質を使ったがんなどの診断薬を製造する作業をしていた。

原発開発、数値目標示さず/原子力委計画案 もんじゅは早期再開

2000.07.24 The Sankei Shimbun
 政府の原子力委員会(委員長・大島理森科学技術庁長官)は二十四日、ナトリウム漏れ事故で停止中の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について「早期に運転を再開する」とする一方、同増殖炉の実用化時期や原子力発電の開発数値目標を示さない「原子力長期計画」案をまとめた。原子力委は今後、同計画案について一般から意見を募集し、年内に計画決定する。

 国の原子力政策の基本方針を示す同計画は、約五年ごとに策定されている。平成六年六月策定の現行計画では、原発開発の数値目標を「二十二年に約七千五十万キロワットの設備容量とし、電力供給に占める割合は約四二%と見込まれる」と明示した上で、高速増殖炉の実用化のめどを四十二年ごろとしていた。

 しかし、新計画案は、茨城県東海村の臨界事故などで原子力の安全性に対する懸念が高まったことや、電気事業の自由化を反映し、理念的な政策目標を掲げるにとどまった。

 一方で「原発を引き続き基幹電源に位置付け、最大限に活用する」姿勢や、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を利用し、高速増殖炉の研究開発を進める方針は維持した。

 また、電力各社が二十二年までに、計十六−十八基で実施する計画のプルサーマル(軽水炉でのプルトニウム利用)については、着実に進めるよう要請。使用済み核燃料問題でも、六ケ所再処理工場(青森県六ケ所村)の十七年の操業開始を求めた。

 具体的な原発政策については、原子力委とは別に、総合エネルギー調査会(通産相の諮問機関)が十年ぶりに審議を再開し、現在の原発新設目標を縮小する方向で議論している。

原発の新設・増設目標示さず 原子力長計の素案

2000.07.24(15:49)asahi.com
 政府の原子力委員会(委員長、大島理森・科学技術庁長官)の「長期計画(長計)策定会議」は24日、2001年度以降の原子力政策の基本方針を示す報告書の素案を固めた。度重なる原子力事故やトラブルで、原子力発電や核燃料サイクル政策を推進することに懸念を抱く国民が多くなったことなど情勢変化を認め、各計画の達成目標時期を示すのをやめた。研究開発以外の原子力利用は民間の意欲や自主性によって推進することを強調、国策としての枠組みを緩めた。

 素案は、原子力利用での国の役割について、基本方針や安全ルールづくり、基礎的・基盤的な研究開発などに責任を持つとした。

 また、使用済み核燃料を再処理する核燃料サイクルの推進をこれまで通り国の基本的考えとし、高速増殖炉を中心とするサイクル技術の研究開発を着実に進め、原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)をその中核とすることを求めた。

 しかし、基幹電源である原発の今後の新設・増設目標は示さず、「電源構成に占める原発の割合を適切なレベルに維持する」とし、高速増殖炉の実用化計画についても「時期を含め柔軟に対応していく」と述べるにとどまった。

 長計は、5―6年ごとに改定され、前回は1994年に策定された。その後、「もんじゅ」の事故や、茨城県東海村の民間ウラン加工施設で臨界事故が起きるなど、原子力施設での事故が相次ぎ、長計を柱とする国の原子力政策が大きく揺らいでいた。

 同会議はこの素案をたたき台にして8月の会合で報告書案をまとめる予定だが、委員からは「具体的な政策提言が足りない」との声も上がっている。

福島第1原発2号機を油漏れのため手動停止

2000.07.24(00:23)asahi.com
 東京電力は23日夜、福島第1原発2号機(福島県大熊町)を手動停止させたと発表した。

 東電によると、午後9時すぎ、タービン制御用の油タンクの油面が低くなって警報が鳴り、調べたところ制御油の漏れが確認されたため、出力降下の操作を始め、同9時17分に原子炉を停止させた。放射能漏れの心配はないという。詳しい原因を調査している。

福島第1原発6号機を手動停止 地震で配管に隙間?

2000.07.21(23:35)asahi.com
 福島第1原発6号機(福島県双葉町)で、21日未明の茨城県沖を震源とする地震の直後、放射性のガスを処理するプラントでガスの流量が通常の4倍以上になる異状が見つかった事故で、東京電力は同日午後、6号機を手動停止したと発表した。流量の異状は午後になっても続き、地震で配管の一部がゆるんで空気が流入しているとみて、原子炉を停止させて調査するという。東電では、震度4程度の揺れで、外部にガスが漏れる恐れはないとしている。

 東電によると、このプラントは原子炉内で生じた蒸気を水に戻す復水器につながっており、放射性のガスをフィルターに通すなどの処理をした後、外部に排出できる状態にしている。

 配管についている流量計2カ所で、ガスの流量が通常の4倍を超える1時間当たり100立方メートル以上になった。

「太陽誘電」工場で瓶詰ウランなど発見 群馬

2000.07.18(22:34)asahi.com
 群馬県榛名町の電子部品メーカー「太陽誘電」(本社・東京)の榛名工場とR&Dセンターで、酸化ウラン粉末が入ったガラス瓶25本と、放射性元素のトリウムを含む円柱形の塊が見つかったことが18日、同社から科学技術庁に入った連絡でわかった。日本原子力研究所の測定では放射線量は少なく、人体や周辺環境に影響はほとんどないという。原研には3月に連絡があったが、科技庁には届いていなかった。

 科技庁によると、瓶には「酸化ウラン」というラベルが張られ、それぞれ約25グラム入っていた。瓶表面の線量は毎時1.2―2.9マイクロシーベルトで、いまは金庫に保管している。

 塊は粉末を成型して焼き固めたもので、ビニール袋入り。同社は18リットル缶に袋を入れ、ポンプ室に移した。缶表面の線量は同28マイクロシーベルト。

 同社は3月上旬に見つけて原研高崎研究所に相談。研究所が線量などを測定したという。酸化ウランなどは原子炉等規制法に基づく管理が必要。科技庁は19日に職員を派遣して保管状況などを確認、連絡が遅れた理由も調べる。

 太陽誘電R&Dセンターの阿部民雄・総務課長は「保管記録はない。25年くらい前に試薬として購入したらしく、当時は届け出の義務はなかった。その後に生まれた規制は、取り扱いや処分について届け出を規定しているが、保管については規定はなく、違反ではない」と話している。

北海道知事、泊原発増設容認へ 東海村臨界事故後初めて

2000.07.13(23:50)asahi.com
 北海道電力が計画している泊原子力発電所3号機の増設について、堀達也・北海道知事は13日、増設を容認する方針を固めた。開会中の道議会の予算特別委員会で表明する。一方、中国電力の島根原発3号機の増設計画について、澄田信義・島根県知事も14日の県議会で増設容認を表明する。昨年9月の茨城県東海村の臨界事故以降、初めての原子力発電所増設のゴーサインとなる。

 堀知事は、2008年以降に90万キロワット程度の電源開発が必要になるとする北海道電力の電力需要の予想を是認。自然エネルギーなど原子力の代替エネルギーの技術的な見通しが立っていないとの判断から、原発の増設に同意することにしたとみられる。

 原発建設・増設の事実上の着手となる電源開発調整審議会(電調審)への計画の上程には、知事の同意が条件となっている。

 知事が判断の参考にするために今年3月に開催した道民意見聴取会では、増設反対の意見陳述が多数を占めた。さらに5月には北大教授が連名で知事判断の3年間の延期を提言したほか、6月には泊原発3号機の増設について道民投票を実施するよう求める78万人分の署名が提出されるなど、増設に対する慎重意見も広がっていた。

 北海道電力の計画によると、泊原発3号機は出力91万2000キロワットの加圧水型軽水炉で、2008年12月の営業運転開始を目指している。

 島根原発3号機では、電調審に提案する前に必要な地元同意が14日に出される。13日までに地元3市町(松江市、鹿島町、島根町)の同意が得られたことを受け、澄田知事が14日の県議会で増設に同意する方針だ。

原研の研究炉が自動停止 茨城県東海村

2000.07.13(22:26)asahi.com
 日本原子力研究所(原研)は13日、茨城県東海村の東海研究所にある研究用原子炉JRR―3(出力2万キロワット)が同日午後6時58分に自動停止した、と発表した。作業員の被ばくや放射能漏れはないとしている。

 原研によると、10日から定期検査のための運転をしていたところ、6本ある制御棒のうち1本が炉心に自動挿入され、原子炉が止まったという。電気系統のトラブルが原因とみて調べている。

高温工学試験研究炉が自動停止 茨城・原研大洗研究所

2000.07.08(23:00)asahi.com
 日本原子力研究所(原研)は8日、茨城県大洗町の大洗研究所で出力上昇試験中の高温工学試験研究炉(HTTR)が同日午後3時7分、自動停止したと発表した。放射性物質の漏れはないとしている。

 原研によると、今月3日から来月3日までの予定で、20メガワットまでの出力上昇試験をしていたが、出力が16.5メガワットまで上昇した時点で、炉を冷却するために循環させるヘリウムの量が少ないことを示す信号が作動し、自動停止したという。

 HTTRは一昨年11月に初臨界に達し、昨年9月末から試験運転をしている。昨年10月にも同じ信号が作動して自動停止したが、このときは、ヘリウムガスの循環器につながる計器の操作ミスが原因だった。今年4月から6月にかけて実施した出力上昇試験は問題なく終了していた。

原発事故対策で仏政府の責任追及したがん患者の訴え棄却

2000.06.19(17:47)asahi.com
 甲状せんがんになったのはチェルノブイリ原発事故による大気汚染にフランス政府が適切な措置を取らなかったためだとする男性の告訴について、フランスの共和国法廷受理委員会はこのほど不受理の決定をした。  理由について同委員会は「原発事故で生じた放射能を含んだ雲と発病との科学的因果関係が認められない」とし、当時の閣僚の行動は刑法違反に相当しないと判断した。実質的な捜査や審議に入る前に同委員会が告訴の妥当性などを検討していた。

岡山の鉄工所倉庫に「ウラニウム」と書かれた金属容器

2000.06.19(22:11)asahi.com
 岡山県から科学技術庁に19日入った連絡によると、表面に「ウラニウム」と書かれた金属容器が同県玉野市にある鉄工所の倉庫から見つかった。

 「ウラニウム」は、ウランの別名。同県の測定では、50センチ離れたところで1時間当たり0.19マイクロシーベルトのガンマ線が検出された。自然界の線量とほぼ同等で周辺への影響は小さいとみられるが、科技庁は同日、現場に職員ら4人を派遣した。また倉庫の周囲にロープを張り、立ち入り禁止にした。

 科技庁によると、倉庫には16、7年前に購入したとみられる金属廃材が山積みされている。倉庫も廃材もいまは使っていないという。先週、その中にとくに重い金属の塊があるのがわかり、表面のさびを落としたところ「ウラニウム」の刻印があったため県に届けた。

原子力災害マニュアルを作成 農水省

2000.06.17(01:34)asahi.com
 農水省は16日、原子力施設での事故に備えて新たに作成した「原子力災害緊急対応マニュアル」と「省防災業務計画原子力災害編」を公表した。昨年起こった茨城県東海村でのウラン加工施設の事故対応の反省を踏まえ、農水省と自治体との情報共有の仕組みや農産物の安全性の確認方法などを具体的に定めた。

 事故発生時には、省内に事務次官をトップとする原子力災害対策本部を置くほか、被災地周辺の農作物などの安全性について都道府県と協力して調査方法の検討をしたり、安全性の分析に農水省の研究機関を積極的に活用したりすることも定めた。風評被害を防ぐため、広報の充実や流通業者、消費者団体に要請、指導をすることも盛り込んだ。

核燃機構が停止中の再処理施設を29日から検査運転へ

2000.06.16(21:31)asahi.com
 核燃料サイクル開発機構(核燃機構)は16日、旧動燃時代の1997年3月に火災・爆発事故を起こして運転を停止している東海事業所再処理施設(茨城県東海村)について、今月29日から、定期検査のため実際に使用済み核燃料を使って稼働させることを明らかにした。周辺自治体への説明会で報告した。約6トンの使用済み核燃料を再処理する予定。同施設が稼働するのは事故後初めてだが、本格的に再稼働するめどはまだ立っていない。

 検査は7月27日まで続けられる。また、ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所から運び込まれている、臨界事故を起こしたウラン溶液も、今回の検査に続いて、早ければ7月下旬にも再処理される予定だ。

ドイツの緑の党、政府の脱原発合意を承認

2000.06.24(12:05)asahi.com
 ドイツ・シュレーダー連立政権の与党、90年連合・緑の党は23日、同国西部のミュンスターで開いた党大会で、政府と電力業界が先に合意した国内19基の全原発の段階的廃棄について、賛成多数で承認した。原子力産業寄りの合意だとして、党内からは「連立から離脱すべきだ」とする強い反対意見も出ていたが、党執行部は歴史的成果を強調して切り抜けた。

 連立政権内がまとまったことで、政府は新規の原発建設を禁止し、使用済み燃料の再処理をやめ、2005年夏以降は最終処分場に直接持ち込むことに限定することなどを骨子とする原子力法の改正案づくりを本格化させる。

 党大会では、同党に所属するトリッティン環境相が政府と電力業界の合意を90年連合・緑の党が政権入りしたから勝ち得た「緑の成果」と強調。「承認しなければCDU・CSU(野党のキリスト教民主・社会同盟)を喜ばせるだけ」と述べ、承認を訴えた。投票の結果、賛成433票、反対227票だった。

 電力業界との合意は、原発が今後発電できる電力量を90年連合・緑の党の要求よりも多めに算定し、最後の原発がいつ廃棄されるかという具体的な廃棄計画がないなど、党内から強い批判があった。しかし、この日は、過激な発言や目立つ抗議行動もなく、反原発の市民運動から誕生した90年連合・緑の党が、政権を担う政党へと脱皮した姿を印象づけた。

ドイツ政府、原発の順次廃棄で電力会社と合意

2000.06.15(15:06) asahi.com
 原子力発電からの撤退を目指すドイツのシュレーダー首相は15日未明(日本時間同早朝)、原発の平均寿命を運転開始から約32年とし、国内19基の原発を順次廃棄していくことで電力4社と合意した、と発表した。電力供給の約3割を担う原発を、国全体で廃棄しようという画期的な試みだ。今後は原発新規建設の禁止や廃棄の道筋を示した法規定を整え、代替エネルギーの開発を急ぐ。

 シュレーダー首相によると、電力側との合意は、原発の平均運転期間を約32年とし、現在停止中の1基を含む国内20基の原発による今後の総発電量を約2.6兆キロワット時と算定した。効率などを考えて今後の発電量を各原発に割り振り、割り当てが済んだ原発から順次廃棄していく、という内容で、個々の原発をいつ止めるかについては明示しなかった。

 また、使用済み核燃料の再処理についても、遅くとも2005年夏まででやめ、今後の使用済み燃料の扱いは、最終処分に限定する。

 政府と電力側との協議は昨年初めから開始され、電力側は採算の面などから平均運転期間35年を主張してきた。政権内でも30年を提案する社会民主党(SPD)に対し、連立パートナーの90年連合・緑の党は出来るだけ早い廃棄を求め、足並みがそろわなかった。

 今回の合意では、全体の発電量を個々の原発に割り振る方法をとるため、古くて効率の悪い原発には少ない発電量を割り振り、運転期間を短くすることが出来る。1972年に運転を開始した最も古い原発は、平均よりも早く2年以内に停止させることも可能になり、緑の党も歩み寄った。

 その代わり、効率の良い原発には多くの発電量を割り振り、32年よりも長く発電を続けるものも出てくる。最も新しい原発は89年に運転を開始したため、平均をとれば2021年ごろの廃棄となるが、実際には数年遅れる可能性が出てきた。90年連合・緑の党などの反発も予想される。

 この合意に基づいて政府は、現行の原子力法に再処理の禁止や、新規原発の建設禁止を盛り込んで改正した脱原発法案をつくり、議会に提出する方針。稼働中の原発の多くは減価償却が進んで発電単価が安くなっており、残りの運転期間中に生じる利益などが代替・再生エネルギーの開発に向けられることになる。

高速増殖炉「将来計画は柔軟に」原子力長計分科会が提言

2000.05.29(20:46) asahi.com
 高速増殖炉を軸とする今後の核燃料サイクル(FBRサイクル)技術の研究開発について、国の原子力委員会長期計画策定会議の第3分科会は29日、報告書をまとめた。炉の規模や形式、再処理技術などについて幅広く検討し、将来計画を柔軟に進めるべきだ、と提言している。

 一方、ナトリウム漏れ事故で停止している高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)は研究開発の場の中核として早期に再開し、運転実績を積み重ねることが必要と指摘した。

 FBRサイクルの研究開発は、ロシアや中国など熱心な国がある一方で、欧米の原子力先進国のほとんどは開発を中止したり方向転換を図ったりしている。

 「(日本は)先進国追従型ではなく、先導的な役割を担う立場に置かれた」と現状を認識。長期的な状況変化に対応するために、高速増殖炉や使用済み核燃料の再処理の方式を幅広く研究していくことを強調する。もんじゅの運転経験は、選択肢を探るときの重要な基盤になるとしている。

 また、研究開発であっても経済効率の追求は不可欠とし、競争原理を導入し、権限と責任のけじめをつけることを求めている。

柏崎刈羽原発6号機を手動停止へ 放射能もれの可能性も 2000.05.28(23:18) asahi.com

 東京電力は28日、新潟県の柏崎刈羽原子力発電所6号機(改良型沸騰水型炉、出力135.6万キロワット)で同日午前6時ごろ、排ガス放射線モニターの数値が通常の約5倍に、原子炉水中のヨウ素濃度も通常の265倍にまで上昇したため、同日午後8時に手動停止の作業を始めた、と発表した。29日午前5時半ごろ停止する見通し。

 柏崎刈羽原発広報部によると、安全上問題のない数値ではあるが、炉内に放射性物質が漏れた可能性もあるため、原子炉停止後、燃料棒の検査をするという。現在のところ外部への放射能漏れはない、としている。

 6号機は1996年11月に営業運転を開始。過去にトラブルによる停止は4回あり、今年になってからは初めて。

2020年めどに原発全廃

2000年5月16日 17時35分【ストックホルム共同】
 スウェーデンのペーション首相はこのほど共同通信と単独会見し、同国が進めている原子力発電所全廃政策に関連し、2020年をめどに全11基の閉鎖を考えていることを明らかにした。スウェーデンは1980年に原発全廃を国民投票で決め、昨年11月にはバーシェベック原発を閉鎖した。しかし産業競争力への影響などから当初2010年とした全廃時期の設定は97年に撤廃していた。

泊原発、3年間の判断延期求める

2000年5月12日 16時27分共同
 北海道電力が計画する泊原発、(北海道泊村)の3号機増設問題で、北海道大の7人の教授グループ(神原勝代表)が12日、堀達也知事に対し、増設を認めるかどうかの判断を3年程度延期するよう求める緊急アピールを提出した。

 7人は同大政治学講座の教授で神原氏のほか山口二郎氏ら。多くが北海道の審議会などのメンバーも務めている。

巻原発予定地めぐり町有地売買「無効」と提訴

8:00p.m. JST May 11, 2000 asahi.com
 新潟県巻町の東北電力巻原発をめぐり、笹口孝明町長が建設反対の住民らに建設予定地内の町有地を売却したのは違法だとして、反町長派の町議らが11日、町長と土地を買った町民23人を相手取り、町有地の状態に戻すよう求める住民訴訟を新潟地裁に起こした。

 訴えたのは、斎藤和伸町議(54)、高井弘・元町議会事務局長(67)ら5人。

 笹口町長は昨年8月、原発の炉心予定地に近い町有地743平方メートルを随意契約で、町民に1500万円で売却した。

 訴状では、町有地の売却は一般競争入札が原則で、随意契約を認めた地方自治法施行令にも該当せず違法で、契約は無効だとしている。

 原告らは売買の無効を求めて住民監査を請求したが、町監査委員は4月、「判断できる実例などがなく、違法、不当と判断するに足り得る積極的な理由が認められなかった」として請求を棄却した。

 笹口町長は「勝訴は間違いなく、提訴を歓迎する。町有地問題に決着がつくことは、巻原発建設問題に決着がつくことだ」と話している。

大飯原発2号で水漏れ

2000年5月9日20時14分 共同
 定期検査中の福井県大飯町の関西電力大飯原発2号機(加圧水型軽水炉、出力117万5000キロワット)で、主給水ポンプなどが使用できない場合に使うタービン動補助給水ポンプから2次冷却水のわずかな漏れが見つかり、関電は9日午後3時に予定していた原子炉起動を延期した。

 関電によると、漏れが見つかったのはポンプ主軸部からの水漏れを防ぐパッキンの周辺とみられる

エネルギー政策の抜本的見直しへ 10年ぶりに調査部会

7:09p.m. JST April 24, 2000
 通産相の諮問機関、総合エネルギー調査会の総合部会(部会長・茅陽一東京大名誉教授)が24日、通産省で開かれ、21世紀に向けた国のエネルギー政策の抜本的見直し作業がスタートした。調査会の最高機関ともいえる総合部会が開かれるのは1990年以来約10年ぶりで、脱原発を訴えて活動している非政府組織のメンバーも初めて委員に加わった。今後約1年かけて議論を進め、長期的な視野に立ったエネルギー需給見通しを改定する。

 総合部会は学識経験者など約30人の委員で構成。最も大きな焦点になりそうなのが、原子力発電所の増設目標削減を含めた長期的な原子力政策のあり方で、相次ぐ原発関連の事故で新規立地の環境は格段に厳しくなっている状況にどう対応するか注目されている。

 一方、二酸化炭素(CO2)削減に向けて、太陽や風力など自然エネルギーなど新エネルギーの活用やいっそうの省エネ推進もテーマになる。アラビア石油の権益失効でエネルギー調達戦略のほころびも目立っており、原油や天然ガスの安定供給に向けた新たな方策の確立も重要課題だ。

 初会合で茅部会長は「実現性がある政策を考えると同時に、はっきりと根拠を示していきたい」との方針を示した。一部の委員からは「『まず原発ありき』ではなく、新エネルギー導入の可能性を真剣に探るべきだ」といった指摘があった。

気泡発生による振動が原因

2000年4月24日19時43分
 関西電力美浜原発2号機(加圧水型軽水炉、出力50万キロワット、福井県美浜町)で原子炉格納容器内の配管に入った小さいひび割れから一次冷却水が漏れたトラブルで、関電は24日、割れが入った配管につながる圧力調整装置(オリフィス)の内部が削られ、気泡が発生、気泡が壊れる時の衝撃で配管が上下に振動を繰り返す「繰り返し疲労」がひび割れの原因と発表した。

原子力施設の安全規制、新設の「保安院」が一手に

03:06a.m. JST April 23, 2000
 原子力の安全を担う政府組織が、来年1月の省庁再編に伴い、これまでより5割も多い480人体制に強化されることが明らかになった。茨城県東海村で昨秋起きた臨界事故で防災対策や日ごろの安全点検の不備が露呈したことを反省。通産省を引き継ぐ経済産業省に新設される「原子力安全・保安院」に全体の6割の約290人を重点的に配置し、原発や高速増殖炉、臨界事故が起きた核燃料加工施設など主な原子力施設の安全規制をほぼ一手に受け持つ。専門的知識を持つ人材を民間から募って増強を前倒しで進める。

 原子力の安全規制は、通産省が電力会社の原発を、科学技術庁が高速増殖炉や研究用原子炉、核燃料関連施設などを担当。両者のお目付け役の原子力安全委員会とその事務局が加わり、計約310人(3月末現在)であたってきた。

 省庁再編後の新体制では、原子力安全・保安院のほか、文部省と科技庁が統合する文部科学省、原子力安全委員会の3者が担当、役割分担が大きく変わる。

 臨界事故が起きた民間のウラン加工施設「ジェー・シー・オー」(JCO)、福井県敦賀市の高速増殖原型炉「もんじゅ」、青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場(建設中)やウラン濃縮工場など、今は科技庁が受け持つ主要な原子力施設もすべて原子力安全・保安院が担当する。

 このため、同院に「新型炉等規制課」「核燃料サイクル規制課」「原子力運転管理防災課」など7つの課を設け、288人を配置することにした。

 原子力安全委員会も、事務局が3月末の21人から100人に増える。日本原子力研究所や大学、医療機関などを担当する文部科学省を含めると、総勢で約480人になる予定だ。

 臨界事故を受けて「原子力災害対策特別措置法」ができ、6月に施行されるなど防災対策の強化が図られた。原子力施設の地元で運転状況などを日常的に検査する「原子力保安検査官」と、地元で防災対策にあたる「原子力防災専門官」が新設された。

 通産省、科技庁は夏までに、民間からも含めて計70人程度を新規採用し、これらのポストを充実させる考えだ。

 事故のたびに事業者側の安全対策の不備に加え、安全規制当局側の対応のまずさなどが指摘されてきた。省庁間の「壁」や人員不足も背景にあるとされた。

 省庁再編後は経済産業省が安全の責任も主として負う。同省は電力会社などの原子力産業界も所管、「推進」と「安全規制」の部局が集結することになる。

 このため、安全規制の中立性が保てるのか、という問題も指摘されている。同省の規制を監督する立場の安全委員会の役割はいっそう重要になってくる。

茨城県警が原子力事故訓練

2000年4月18日 17時05分
 東海村臨界事故の教訓を生かそうと、茨城県警は18日、新たに配備された放射性粉じん用防護服などの機材を使って、原子力施設での放射能漏れ事故を想定した防災訓練を実施した。訓練には、約80人が参加。線量計やサーベイメーターの操作説明などの後、機動隊員10人が実際に防護服と防護マスクを着用、原子力施設を想定した建物に近づき、住民役の隊員を避難誘導した。

自民の「原発地域振興法案」原案が判明

03:10a.m. JST April 15, 2000
 自民党が検討してきた、原子力施設のある地域への新たな振興策を盛り込んだ法案の原案が14日、明らかになった。今国会への提出を予定している。原発などのある自治体にはすでに特別財源から交付金などが支給されているが、道路、鉄道など大型の公共事業のために一般財源からの支出を可能としているのが特徴で、将来の原発新設を促す狙いもある。だが、今国会では、自民を含む超党派の国会議員が風力など自然エネルギー発電の促進法案の提出も計画しており、エネルギー政策のあり方ともからみ、対立も生まれつつある。

 自民党の電源立地等推進に関する調査会(桜井新会長)は来週中にも「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法案」(仮称)を党内に示す予定だ。原案によると、首相を座長に蔵相、通産相など関係閣僚と学識経験者から成る原子力立地会議が、地元の知事の提案に基づいて、公共事業などを盛り込んだ振興計画を審議する。計画達成のためには一般財源からの支出や自治体による地方債の起債も可能とする内容だ。

 原子力施設を抱える自治体にはすでに、電気料金に上乗せされている電源開発促進税(電促税)を集めた特別会計から、年間に1600億円を超える交付金が支給されている。だが、昨秋の茨城県東海村の臨界事故を機に、自治体から「見返り」拡大を求める声が強まった。

 一方、自然エネルギー促進法に関しては共産党を除く各党の国会議員約250人による自然エネルギー促進議員連盟(愛知和男会長)が、風力や太陽光などで発電した電力の買い取りを電力会社に義務づけ、電促税を財源とする支援を内容とする法案を練っており、今国会での提案を目指している。ところが、自民党内では「自然エネルギーの買い取り義務化は電力自由化の流れに逆行する」とする声が強まり、「原発振興の新法は選挙対策のばらまき」と批判する「自然エネルギー派」との摩擦が生じている。

防災指針で臨界事故想定

2000年4月14日 18時57分
 昨年9月の東海村臨界事故を受け、原子力防災指針の見直し作業を進めていた原子力安全委員会の専門部会は14日、新たに核燃料関連施設での臨界事故などを想定に加えた改定案をまとめた。
事故に備えて重点的な防災対策を取るべき地域として、核燃料施設から半径50〜500メートル、試験研究用原子炉から同50〜1500メートルなどの範囲を新設したのがポイント。

もんじゅは研究開発の中核

2000年4月10日 19時33分
 原子力開発の指針となる、原子力開発利用長期計画の改訂作業で、原子力委員会の分科会(座長、鈴木篤之東大教授ら)は10日、1995年のナトリウム漏れ事故後、運転を停止している、高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市、出力28万キロワット)に関し、「早期に運転を再開し、研究開発の中核の場とする」などとする提言の骨格をまとめた。

美浜原発2号機で1次冷却水漏れ 原子炉を手動停止

9:10p.m. JST April 07, 2000
 福井県美浜町の関西電力美浜原発2号機(加圧水型炉、50万キロワット)で7日午前、原子炉格納容器内で放射能を帯びた1次冷却水が漏れているのを巡回中の作業員が見つけた。関電は原因を調べ、補修するため、同日正午から同2号機の手動停止作業を始め、午後7時半すぎ、原子炉を停止した。

 福井県原子力安全対策課などによると、漏れていたのは、冷却水の温度を下げる再生熱交換器から出ている配管の付近。漏れている量は少量で数滴の漏れが続いてるが、周辺への影響はないという。
今回の破損個所は昨年7月、日本原子力発電・敦賀2号機(同県敦賀市)で起きた冷却水漏れ事故の破損個所に近い部分とみられる。美浜2号での1次冷却水漏れは1991年2月、蒸気発生器の細管が破断し、国内で始めて緊急炉心冷却装置が作動して以来。

秋にも安全審査入りを判断

2000年4月5日 19時34分
 核燃料サイクル開発機構が高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の運転再開に向け、安全審査を受けるための事前了解願を福井県に提出する意向を示していることについて、福井県の栗田幸雄知事は5日の記者会見で、9月にまとまる予定の原子力開発利用長期計画(長計)の中間報告の内容を見て受理するかどうかを判断する考えを示した。栗田知事が、判断の時期に言及したのは初めて。

99年度の原発トラブル29件

2000年4月5日 18時34分
 全国で営業運転中の原発51基で1999年度に起きたトラブルは計29件と、前年度に比べ9件増加したことが、資源エネルギー庁が5日発表した九九年度の「原子力発電所のトラブルと設備利用率」で分かった。
認可された発電能力に対する実際の発電量の割合を示す設備利用率は80.1%で、過去最高だった前年度に比べ,4.1ポイントのマイナスだった。

制御棒のトラブルで停止

2000年4月3日 16時22分
 3日午前10時ごろ、茨城県大洗町の核燃料サイクル開発機構(旧動燃)大洗工学センターの高速実験炉「常陽」(熱出力10万キロワット)で、熱出力の微調整のために1ミリ引き抜かれた制御棒が逆に15ミリ挿入されるトラブルがあり、2時間半後に原子炉を手動停止した。周辺環境などへの影響はない。

原子力安全委員会の新体制スタート 科技庁から総理府へ

7:05p.m. JST April 03, 2000
 国の原子力安全委員会(佐藤一男委員長)の事務局が科学技術庁から総理府に移り、3日、新体制での最初の定例会議が開かれた。

 安全委は茨城県東海村の臨界事故でウラン加工施設の違法作業を見抜けなかったことで批判を受け、事務局が原子力推進の役割ももつ科技庁から分離された。1日付で総理府に事務局として原子力安全室(木阪崇司室長)が発足した。

 職員を20人から50人に増やしたほか、民間や研究所の専門家を非常勤の技術参与(定員41人)として新たに採用し、原子力安全規制の機能増強も図った。

茨城県に再開を申し入れ

2000年3月27日 13時52分
 997年の火災・爆発事故以来運転が停止されたままになっている核燃料サイクル開発機構(核燃機構、旧動燃)東海事業所の再処理工場について、核燃機構の都甲泰正理事長は27日午後、茨城県の橋本昌知事を訪れ、早期の運転再開を認めるよう申し入れた。

 一部住民らは「再開絶対反対」として、激しく反発している。

臨界実験装置を解体へ

2000年3月23日 17時09分
 日本原子力研究所は、同研究所東海研究所(茨城県東海村)の臨界実験装置「VHTRC」(熱出力10ワット)を解体することを決め、科学技術庁に解体届を提出、23日の原子力安全委員会に報告された。VHTRCは、1961年に初臨界を達成し、85年からは高温工学試験研究炉の開発試験に使ってきた。98年に高温工学試験研究炉HTTRが完成、臨界に達し、VHTRCは運転を停止していた。

トラブル対策訓練を初公開

2000年3月21日 19時16分
 静岡県浜岡町の中部電力浜岡原子力発電所は21日午後、4号機で外部への放射能漏れの恐れがあるトラブルの発生を想定した「緊急事態対策訓練」を行った。1976年に1号機が営業運転を始めて以来、原子炉等規制法に基づき毎年実施している発電所内の訓練で今回初めて報道陣に公開された。東海村臨界事故などで原子力の安全性が揺らぐ中、原子力の信頼回復に向けた情報公開の流れに沿った形だ。

もんじゅ訴訟22日判決

2000年3月20日 16時07分
 核燃料サイクル開発機構(旧動燃)の高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)をめぐり、地元住民ら34人が国と同機構に、それぞれ設置許可無効確認と運転差し止めなどを求めた訴訟は22日、福井地裁で判決を迎える。

 995年のナトリウム漏れ事故で明らかになった、漏出対策の問題点について、裁判所がどう判断するかがポイントになりそうだ。

中電、芦浜原発断念で地元漁協への補償金の返還要請へ

03:03a.m. JST March 19, 2000
 中部電力は、断念した三重県南部の芦浜原子力発電所計画の中で、海洋調査の実施を前提に1994年に支払った地元二漁協への漁業補償金と協力金計15億円を返還するよう、両漁協に求める方針を固めた。近く正式に表明し、両漁協と協議に入る。原発立地で支払われた資金の返還を求めるのは、極めて異例だ。

 両漁協の組合員の多くがすでに資金の大半を生活費などに使っていることなどから、返還に容易には応じないとみられる。

 古和浦漁協は長年、反対運動の拠点だったが、推進に転じ94年に海洋調査受け入れを決めた。中電は同漁協との間で協定を結び、6億5000万円を提供。同漁協は組合員1人あたり300万円を支払った。前後して海洋調査を受け入れた錦漁協にも8億5000万円を提供、同漁協は同200万円を支払った。しかし、海洋調査は今日まで行われていない。

原発目標縮小やむなし=電事連会長

00年3月17日 18時49分[時事通信社]
 電気事業連合会の太田宏次会長(中部電力社長)は17日の記者会見で、政府が近く着手するエネルギー政策の見直しの中で、原子力発電所(原発)の新規立地計画を縮小する可能性が高いことについて「絵にかいたもちでは計画にならないので、現実性の高いものにした方がいい」と述べ、縮小もやむを得ないとの認識を示した。 

通産省が柏崎刈羽原発3号機でのプルサーマル実施を許可

3:42p.m. JST March 15, 2000
 通産省は15日、東京電力に対し、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマル計画を柏崎刈羽原発3号機(新潟県柏崎市)で実施することを許可する文書を手渡した。同計画の実施は、原子炉等規制法に基づき、原子力安全委員会などの審査を経て各原発ごとに許可しており、今回が4基目となった。

23日に初の原子力防災訓練

2000年3月14日 15時21分
 原子力発電所の重大事故に備えた国と福井県共催の大規模な防災訓練が23日、同県敦賀市で原発関係者や住民ら1900人が参加して実施される。6月に施行する原子力災害対策特別措置法で盛り込まれた緊急事態応急対策拠点の設置など政府の防災対策強化を先取りした内容で国が原子力防災訓練に本格的に取り組むのは初めて。また、福井県では初めて住民が避難・退避訓練に参加する。

希少動物の追加調査求める

2000年3月3日 17時02分
 東京電力福島第1原発7、8号機(福島県双葉町)と、中国電力上関原発1、2号機(山口県上関町)の新増設計画で、両社の環境影響評価(アセスメント)準備書を審査していた通産省は3日、両社にオオタカやスナメリなど計画地周辺で生息が確認された希少動物について追加調査するよう勧告した。

もんじゅ出入り管理に異常

2000年2月29日 18時07分
 核燃料サイクル開発機構の高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)で29日、施設の保全区域への出入り監視システムに異常が発生、保全区域に出入りした人名や日時の記録が同日午前零時以降印字されていないことが分かった。

 核燃機構は、コンピューターが「2月29日」感知できなかったことによって起きたトラブルとみて、コンピューターのプログラムを点検、原因を調べている。

もんじゅ出入り管理に異常

2000年2月29日 18時07分
 核燃料サイクル開発機構の高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)で29日、施設の保全区域への出入り監視システムに異常が発生、保全区域に出入りした人名や日時の記録が同日午前零時以降印字されていないことが分かった。

 核燃機構は、コンピューターが「2月29日」感知できなかったことによって起きたトラブルとみて、コンピューターのプログラムを点検、原因を調べている。

唐津市に原発事故対策拠点

2000年2月29日17時55分
 佐賀県は29日、九州電力玄海原子力発電所(同県玄海町)での事故に備え、緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)を同原発から約13キロ離れた同県唐津市内に2000年度中に建設すると発表した。茨城県東海村の臨界事故を受けた措置で、事業費9億円は全額資源エネルギー庁から交付され、1999年度2月補正予算案に計上した。

原発の立地推進を強調

2000年2月28日 17時55分
 関西電力の石川博志社長は28日の定例記者会見で、中部電力が芦浜原子力発電所(三重県)の建設計画を断念したことに関連して、「将来のエネルギー事情を考えれば原子力に頼らざるを得ないのが現実だ」と述べ、今後も原子力発電所の新規立地に取り組む方針を強調

オランダ行政裁判所が政府の脱原発決定無効の判決

00:59a.m. JST February 27, 2000
 オランダの行政裁判所は24日、唯一の原子力発電所であるボルセラ原発を2003年末に閉鎖する政府決定を無効とする判決を下した。

 オランダ政府は1994年に国内の原発2基の閉鎖を決定、97年にドーデワルト原発を閉鎖。南部ゼーラント地方のボルセラ原発が残っていた。判決は、同原発を所有する南オランダ電力会社の従業員らとの協議が十分尽くされていないとしている。

六ケ所村の核燃料再処理工場タンクに欠陥、設計図にミス

7:45p.m. JST February 25, 2000
 青森県六ケ所村に建設している日本原燃の六ケ所再処理工場で、放射性の廃液をためる2種類のタンクに欠陥が見つかった。製造元の日立製作所が、工場でタンクを造るときに使う設計図に間違いがあったのが原因。原燃は25日、品質保証の徹底をメーカーに指示し、同工場のほかの機器についても総点検することにした。

 欠陥があったのは、使用済み核燃料を硝酸に溶かす工程で出た低レベルの放射性廃液をためるタンクと、再処理で出た高レベル廃液を一時的にためるタンク。

 低レベル用タンクは建設現場の倉庫に保管中で、日立が17日、廃液のサンプルを取るための装置が欠落しているのに気付いた。これを受けて日立が搬入ずみのほかの機器を調べたら、21日、据えつけ作業の途中だった高レベル用タンクにあるべき部品がないこともわかった。

 日立は欠陥品について原燃に報告。両社で調査したところ、どちらの欠陥も工場で使う設計図(機器構造図)の誤りが原因と判明した。機器構造図は、原燃の設計要求に基づいて日立が作成した工程系統図と呼ばれる図面から写したもので、その際に描き間違えたらしい

女川原発の制御棟で火災

2000年2月24日 19時35分
 24日午後3時半ごろ宮城県女川、牡鹿両町にある東北電力女川原子力発電所の1号機(沸騰水型軽水炉、出力52万4000キロワット)の制御棟地下1階から出火、間もなく自然に消え、約30分後に女川消防署が鎮火を確認した。火災によるけが人や、外部への放射能漏れなどはないという。
 1号機は1月17日から定期点検中で、稼働していなかった。

東海原発の伝熱管破断

2000年2月23日 19時02分
 日本原子力発電は23日、定期検査中の東海第二原子力発電所(茨城県東海村)の給水加熱器内で、伝熱管1本の破断が確認されたと発表した。外部への放射能の影響はないという。破断していたのは1本の管のU字部分で、破断の原因を調べている。給水加熱器は、発電後、蒸気から戻した水を原子炉へ送り返す際に温める機能を持っている。1つの給水加熱器の中には約2100本の伝熱管があるという。

敦賀原発3、4号機の増設計画が始動

2:11p.m. JST February 22, 2000
 国内最大級となる敦賀原発3、4号機の増設を計画している日本原子力発電は22日、福井県敦賀市の河瀬一治市長に安全協定に基づく事前了解願を出した。同県の栗田幸雄知事にも提出する。いわゆる「増設願」で、地元自治体の受け入れ手続きの第一歩となる。昨年9月に茨城県東海村で起きた国内初の臨界事故以来、大がかりな原発増設計画が動き出すのは初めて。

 日本原電によると、3、4号機は、国産の最新鋭技術を導入する加圧水型炉で、出力はともに153万キロワットと国内最大級。3号機は2009年から、4号機は2010年からの営業運転をめざす。

 増設計画は、昨年6月に施行された環境影響評価法が初めて適用され、同法に基づく審査手続きも併せて開始される。事前了解願については、栗田知事も受理する方針を表明している。同法による審査期間は約1年半と見込まれ、その後、最終的な地元合意に進むとみられている。

中部電力社長「芦浜原発計画を白紙に戻す」

5:42p.m. JST February 22, 2000
 中部電力の太田宏次社長は22日、名古屋市の本社で行った定例の記者会見で、芦浜原子力発電所(三重県紀勢町と南島町)の建設計画について、「計画を白紙に戻し、原発の立地計画を改めて検討していく」との考えを示した。北川正恭三重県知事が同日の県議会で同原発計画について、「白紙に戻すべきだ」との見解を表明したのを受けての発言。(時事)

ロシア原発が緊急停止、放射能値に異常なし

01:02a.m. JST February 19, 2000
 イタル・タス通信によると、ロシア北西部のレニングラード原発で18日午後、防御装置が自動的に作動し、2号機が緊急停止した。設備の小さな損傷が原因としている。放射能値に異常はないという。

米NY州の原子力発電所で放射能漏れ、原子炉が停止される=電力会社

00年2月17日 7時26分[ニューヨーク 16日 ロイター]
 
 ニューヨーク州の電力供給会社、コンソリデイテッド・エジソンは、ニューヨーク州ブキャナンのインディアン・ポイント原子力発電所から小規模な放射能漏れがあったとし、警戒令を出した。

 同社は声明を発表し、発電所の4基の蒸気発電装置のうち1基から放射能漏れがあったとした。原子炉は、手動により停止された。

 同社は、この放射能漏れを当局に通知しており、漏れ出した放射能の水準は、環境保護局の基準に従えばわずかなものにとどまっているとした。

大飯原発2号機が手動停止

2000年2月19日 18時35分
 発電タービンを回す蒸気を水に戻す復水器への海水漏れのため点検、補修中の関西電力大飯原発2号機,(加圧水型軽水炉、出力117万5000キロワット,福井県大飯町)で運転員が復水器の真空度が低下したと判断、関電は19日午前10時49分、タービンに異常な力がかかる恐れがあるとして原子炉を手動停止した。
周辺環境への放射能の影響はない。

「第3回エネルギー・原子力に関する意識調査」(結果)について 平成11年5月東北通商産業局

原電・東海第2発電所で管にひび割れ

9:49p.m. JST June 11, 1999
 日本原子力発電所(原電)は11日、茨城県東海村の東海第2発電所(沸騰水型、出力110万キロワット)で、原子炉内の中性子量を計測する装置の入ったステンレス製の管から、長さ3ミリのひび割れが見つかった、と発表した。原子炉は定期検査のため停止中で、環境への影響はないという。
 運転開始から20―30年が経過した沸騰水型炉から相次いで「応力腐食割れ」が原因のひび割れが見つかっており、原電は今回も応力腐食割れの可能性があるとみている。

 原電によると、ひび割れがあったのは、原子炉の圧力容器内を貫通する「中性子計測ハウジング」と呼ばれる直径5センチ、厚さ6ミリの管で、ひび割れは管の内側まで達していた。原子炉には計55本の管があり、これまでに29本の検査が済んでいるという。

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