TOPIC No.3-10-1 原子力プラント

01. 低炭素社会を実現する技術を探る(第3回)原子力・海外進出を目指す国産技術 小型化で途上国にも広がる原子力(2008年09月05日)
02.
 エネルギーの部屋 〜東北通商産業局管内原子力情報〜
03.
 原子力 by YAHOOH!ニュース


韓国、トルコ原発受注合意できず 日本逆転も

2010.11.13 21:47 MSN産経新聞

 韓国の李明博大統領は13日、トルコのエルドアン首相とソウルで会談し、日韓両国が受注を競うトルコ北部の黒海沿岸シノップでの原発建設計画について話し合ったが、価格問題などで意見の差が埋まらず合意できなかった。韓国政府が発表した。

 同計画をめぐっては、今年6月にトルコ側と原発建設事業に関する協力覚書を締結した韓国が優勢とみられていたが、日本勢が逆転受注できる可能性も出てきた。

 韓国とトルコの協議は継続されるが、トルコのアナトリア通信によると、ユルドゥズ・エネルギー・天然資源相は「近く(計画に参加の意向を示している)東芝と話し合いたい」と表明。日本や欧米企業との交渉も活発化させる考えを強調した。(共同)

原電、越FS実施体制整備 11年にも開始

2010/11/11 電気新聞

 日本原子力発電はベトナム電力公社(EVN)から請け負う原子力発電所建設の事業可能性調査(FS)に向けて、社内体制を整える。これまで国際協力技術開発チームが担当してきたが、新たに開発計画室も加わりベトナムのFS実施体制を強化する考えだ。原電は現在、EVNとの間でFSの調査内容について協議中。内容が固まり次第契約を結び、11年内にもFS作業が開始される見通しだ。ベトナムは原子力発電所建設事業の第2サイトで日本をパートナーに選定済み。FSを通じて日本がプラント建設まで受注すれば、日本政府が掲げる原子力輸出戦略の大きな弾みとなる。

 原電がEVNと協議している案件は、ベトナム南東部ニントゥアン省で計画される原子力発電所第2サイトのFS事業。EVNは21年の運転開始を計画しており、建設や試運転などの工程を考慮すると11年内にFSを開始する必要がある。 (この続きは本紙1面でご覧ください)

仏トタル会長「韓国の原発技術に注目している」(1)

2010.11.10 15:53:33 中央日報/中央日報日本語版

「中国のような新興開発国のエネルギー需要が増加しており、原油価格の上昇は避けられない」。

フランス最大で世界5位のエネルギー企業トタル(TOTAL)のクリストファー・ドマルジェリー会長(59)は国際原油価格の上昇を予想した。 「ソウルG20(主要20カ国・地域)ビジネスサミット」(10−11日)を控えた8日、中央日報との電子メールインタビューでだ。

ドマルジェリー会長は「イランはエネルギー産業で重要な役割をする国であり、イランに対する制裁は国際市場の需給に影響を与えるだろう」と述べた。 続いて「問題は原油価格がどれほど速く、どの水準まで上がるかだ。 グローバル金融危機から抜け出そうと努力するすべての国のために、こうした状況がゆっくりと進むことが重要だ」と強調した。

ドマルジェリー会長は韓国の原子力技術を評価し、大きな関心を表した。 ドマルジェリー会長は「トタルは未来エネルギー源として原子力に大きな関心を抱いている」とし「トタルは韓国の国際原発市場進出を非常に関心を持って(with great interest)眺めている」と述べた。

トタルは昨年、韓国が受注したアラブ首長国連邦(UAE)原子力発電所建設事業で韓国企業と激しく競争した。 ドマルジェリー会長は「韓国は原子力技術をよく発展させてきた。 今はその技術を国際市場に提供できる位置に立っている。 昨年12月に韓国電力コンソーシアムがUAEの原発建設を受注したのがその証拠だ」と付け加えた。

仏トタル会長「韓国の原発技術に注目している」(2)

2010.11.10 15:53:52 中央日報/中央日報日本語版

グローバルエネルギー会社のCEOらしく、ドマルジェリー会長は未来の関心は「化石燃料以後」だった。 「化石燃料では未来のエネルギー需要を満たせないという点に注目している」と述べた。

ドマルジェリー会長は「トタルは太陽光・バイオ燃料・原子力など低炭素エネルギーの開発に力を注いでおり、特に太陽エネルギーに集中している」とし「スペインのアベンゴア(Abengoa)グループとアブダビに世界最大規模の太陽熱発電所を建設するのがその例だ」と紹介した。

世界経済のダブルディップ(二番底)は避けられる、と答えた。ドマルジェリー会長は「先進国は高い失業率が伴い、非常に遅いペースで景気回復に向かっているが、新興国は危機を克服し、速やかに成長の軌道に入った」とし「新興国の躍動性がダブルディップ現象を避けるのに寄与するだろう」と述べた。 また「金融危機を発生させた多くの要因は相変わらず存在し、こうした要因はまだ国際社会を通して解決されていない」とし「市場で危険が発生した時、企業をうまく運営するためには、一定水準の‘安全性’が必要であり、安全性の核心は金融システムの規制だ」と主張した。

トタルは03年、三星(サムスン)との合弁で三星トタルを設立するなど、エスオイル・SKエネルギーなど複数の国内企業と提携し、国内外に石油化学・潤滑油・エネルギー事業を展開している。 ドマルジェリー会長は「韓国はさまざまな分野の合弁会社がある重要な市場」と評価した。

特に国内企業との合弁と協力に満足感を表した。 ドマルジェリー会長は「すべて信頼できる会社であり、韓国の造船・海洋プラントは世界最高レベル」と評価した。また「韓国ガス公社とは液化天然ガス(LNG)部門で良いパートナーシップを結んでいる」と述べた。

【コラム】派兵と国益

2010/11/08 15:52:03 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 ユ・ヨンウォン軍事専門記者

 「あれで本当にけがをしたらどうするんだ」

 今年5月末に訪韓したアラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド皇太子を案内し、京畿道特殊戦司令部訓練場を訪れた金泰栄(キム・テヨン)国防長官は、対テロ訓練のデモンストレーションを見ながら、内心ヒヤヒヤしていたという。特殊戦司令部は実戦的な訓練場面を見せるため、建物の屋上からロープを伝い降下し、窓から侵入するという設定の訓練の際、実際にガラスをはめ込み、これを破って中に入るよう演出していたからだ。通常は、割れたガラスでけがをする恐れがあるため、ガラスをはめ込まずに訓練をする。

 この時、特殊戦司令部の最精鋭部隊である707部隊の隊員たちは、観覧席の前に防弾ガラスを事前に設置、モハマド皇太子や金長官の目の前で空砲でなく実弾を撃ち、テロ鎮圧訓練を行ったほか、テロの犯人を想定した人形の内部には赤い塗料を入れ、リアルさを出した。

 UAEの副総司令官を兼任している皇太子は、デモンストレーションが終わり移動する車中で、金長官に「韓国の特殊戦部隊は世界一」と称賛した。そして、8月にはUAEを訪れた金長官に「われわれも特殊戦部隊を韓国軍のようにしたい」と特殊戦司令部の派兵を要請した。

 UAEが関心を持っている軍事分野は、これだけではない。6月に訪韓したUAE地上軍司令官は、ハイテク技術を活用した陸軍科学化訓練場(KCTC)を視察、「訓練場全体を持ち帰りたい」と言ったという。KCTCはレーザー光線を利用し、実弾を撃たなくても同様の訓練効果が得られる最新訓練施設だ。韓国がUAEの原子力発電所契約を受注して以来、UAE軍関係者はこれまで14回も韓国を訪問し、情報・軍需・科学技術・防衛産業協力など、さまざまな分野で了解覚書(MOU)を締結した。

 UAEだけでなく、アフリカ・東南アジア・南米諸国も、従来の平和維持軍とは違った性格の軍事協力を求めているという。リビア・タンザニア・コンゴ民主共和国・マレーシアなどでは戦力増強のため中期計画書の立案・作成支援を要請してきた。アルジェリア国防省は2008年、韓国軍の武器導入計画方法を学ぼうと、将校十数人の派遣を提案してきた。こうした国々の中には、韓国が資源確保のため力を入れている国も少なくない。

 一部には「UAE派兵は原子力発電所輸出の見返り」と反対する声もある。そうした見方もできないことはないだろう。しかし、どの先進国も時に目に見えるところで、時に目に見えないところで軍事協力を国益増進の方法として実践している。昨年、軍事マニアの韓国民間人がカタールに軍事訓練を輸出し話題になったほか、予備役兵士たちが中心になり韓国型民間軍事企業(PMC)を作ろうという案も出ている。それほど韓国の立ち位置は変化しているのだ。

 これらは、「適切な海外派兵は、韓国軍がマンネリズムに陥らないよう刺激を受け、視野を広げるのにも役に立つ」という考え方だ。批判は結構だが、あまりにも一方に偏りすぎてはいないか振り返ってみてほしい。

オバマ大統領アジア歴訪 インドに100億ドル輸出

2010年11月07日 東京新聞 朝刊

 【ワシントン=岩田仲弘】オバマ米大統領は六日、九日間にわたるアジア四カ国歴訪(インド、インドネシア、韓国、日本)の最初の訪問地、インドのムンバイに到着した。景気と雇用の回復を争点とした二日の中間選挙で、歴史的な大敗を喫した直後の外遊となる。AP通信によると、大統領は六日、インドに対する軍用輸送機など総額約百億ドル(約八千百億円)の新たな輸出で合意したと発表し、米国内で五万人以上の新規雇用を生み出す可能性があることを明らかにした。外遊には大勢の米企業トップらも同行し、「経済外交」に徹する姿勢を鮮明にしている。

 オバマ大統領が最も重視しているのは、就任後初めて訪問するインドだ。訪問最長の四日を充て、経済協力を中心にテロ対策、宇宙開発などさまざまな分野の協議をする。世界最大規模の民主主義国との連携強化には、アジアで影響力を拡大する中国を強くけん制する狙いがある。

 米印両国は原子力分野の協力を重視。二〇〇八年十月、米国から民生用核燃料・機器輸出や技術移転を例外的に認める原子力協力協定に署名し、発効した。インドでは原子力発電の需要が高まり、米国は原発受注の拡大を目指している。

 大統領が幼少時代を過ごしたインドネシアでは、同国最大のイスティクラル・モスク(イスラム教礼拝所)を訪れ、インドネシア大学で演説。世界最大のイスラム教徒を抱える民主主義国の同国からイスラム社会との融和を訴える。

 続いての日韓訪問はソウルでの二十カ国・地域(G20)首脳会合と、横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するのが主要目的だ。滞在中に日本、中国、韓国、オーストラリア、ロシア各国の首脳と個別会談に臨む。

 ソウルでは十一日、中国の胡錦濤国家主席と会談。大統領は人民元切り上げや貿易の不均衡問題、人権などについて協議する方針だ。

日韓、原子力協定に実質合意 原発共同輸出の可能性も

2010年11月05日9時40分 asahi.com

 核関連物質や技術を平和利用する原子力協定に、日本と韓国が実質的に合意したことがわかった。年内にも署名する見通しだ。両国は新興国での原子力発電所の建設受注で競合関係にあるが、協定の発効によって、連携して第三国に原発輸出する選択肢も生まれる。

 日韓の政府関係者によると、合意では核物質、設備、技術の相互移転や共同研究を、平和・産業目的に厳しく限って可能にする。移転した核関連物質などは原則として、濃縮や再処理をしないことにした。交渉で日本側は、再処理物質の軍事転用を懸念し、韓国に対して使用済み燃料からプルトニウムを取り出す核燃料サイクルを導入しないことの確認を求めていた。

 これまで日韓の民間企業は、平和利用のルールを議論する原子力供給国グループ(NSG)の指針に沿い、例えば韓国が原子炉の部品などを輸入する際、軍事使用はしないと個別に確認していた。

 しかし、こうしたやり方は「あくまでも例外措置」(関係者)で、輸出入の手続きを円滑にするためには協定の締結が必要とされていた。また、協定を結べば北朝鮮の核問題を抱える東アジアで、核不拡散の強化につながるとの見解でも一致。2009年1月の日韓首脳会談で交渉開始を決め、協議を続けていた。

 協定締結について、韓国政府関係者は、「技術協力や共同研究だけでなく、第三国への共同進出も活発に模索できるようになる」と期待する。日本側関係者も「技術力のある日本と、途上国でのインフラ受注に積極的な韓国の組み合わせは、ともに利益を上げられる関係になり得る」と話している。(中野晃)

核燃20か国、国際管理合意へ…日本提唱

2010年11月04日03時04分 読売新聞 Yomiuri On-Line

 新興国の原子力発電所へのウラン燃料の安定供給や使用済み燃料の処分などの核燃料管理に関して、国際的な協調体制の整備を目指すことが3日、明らかになった。

 日本が提唱し、米国をはじめ20か国以上が参加する。軍事転用できるウラン濃縮技術の移転防止の効果が期待されるほか、原発建設を検討している新興国に対し、燃料の安定供給を保証することで導入を促し、日本など先進国の原発受注につなげる狙いもある。

 ヨルダンで4日開かれる原子力関連の国際機関「原子力エネルギー協力フレームワーク(IFNEC)」で合意する見通しで、作業部会で具体化に向けた検討を進める。

 新興国が原発導入するには、ウラン燃料の確保が課題となる。安定確保に向け、先進国が備蓄するウラン燃料を新興国の求めに応じて融通する仕組みを検討するほか、使用済み燃料の処分策などについても、国際的な協力体制作りを進める。

韓国型原発導入のUAE、特戦部隊130人派遣を要請

2010.11.04 11:30:42 中央日報/中央日報日本語版

国防部は3日、韓国型原子力発電所を導入するアラブ首長国連邦(UAE)の要請を受け、特戦部隊130余人を国会の同意を受けて年末までに派兵する計画だと明らかにした。

国防部の当局者は「原発受注過程でUAEが韓国軍の派兵など、さまざまな形式の軍事協力を要請したため、履行が容易な部分は施行した。部隊の派兵はその後に議論することにした」とし「さまざまな地域での特戦部隊の任務遂行能力向上と国益を考慮し、派兵を決めた」と説明した。

派遣部隊の任務はUAE軍の特殊戦部隊に対する教育訓練支援と連合訓練および練習、有事の際の韓国国民の保護など。駐留期間は今年12月から2012年12月までの2年間で、兵力は4−6カ月ごとに交代する。駐屯地はUAE軍特殊戦学校領内で、現地の宿営施設と訓練場を無償で使用する。

今回の部隊派遣地は国連平和維持軍(PKO)または多国籍軍の派遣とは異なり、戦闘の危険がない安全な非紛争地域で軍事協力を強化し、国益を創出するのに寄与する新しい概念の部隊派遣だと、国防部は明らかにした。

国防部は今回の派兵を契機にUAEに対する防衛産業輸出を拡大する方針だ。軍当局はUAEにバルカン砲、装甲車、K−11複合小銃、港湾防御体系の輸出を検討している。部隊派兵同意案は9日、国務会議の審議・議決を経て国会に提出される。

アジア進出に弾み―日鋼室蘭がベトナム原発受注を歓迎

2010年11月02日(火)室蘭民報 朝刊

 日本がベトナムの原子力発電所建設を受注することが事実上決まったのを受け、原子炉大型圧力容器部材の国内シェア100%を誇る日本製鋼所室蘭製作所(室蘭市茶津町、早川保所長)は歓迎の意向を示し、「インドなどのアジア進出へ大きな弾みになる」としている。

 同製作所は原発の心臓部である原子炉圧力容器の胴体、底ぶた、上ぶたなどの部材を600トン鋼塊から製造する技術を世界で唯一持つ。同製作所製の部材は現在、国内の約60プラントすべて、海外では中国、米国、フランスなど20カ国の約170プラントで使用されている。

 ベトナム発注事業の受け皿となる官民合同の「国際原子力開発」を構成する原発メーカーは日立製作所、東芝、三菱重工業の3社。今後、原子炉受注をめぐって激しい争奪戦が予想されるが、「どこの社に決まってもすべて日鋼の部材を使っている」(同製作所)。

 同製作所にとっては、今年に入ってからリーマンショック余波で欧米の原発建設計画が減速しているのが懸念されていた。それが今回のベトナム事業の受注方針決定で「現在、交渉が進められているインドをはじめ、アジアの途上国の原発受注へ呼び水となるのでは」(同製作所)と期待を膨らませる。

 同製作所は平成23年度末までに総額800億円の大型設備投資を終え、現行の原発部材製造態勢を5・5基から12基に倍増させる。欧州、韓国などと比べて立ち遅れていた官民合同のセールスが今回初めて実を結んだことで、「全世界の市場を視野に、どこよりも安全な部材製造にまい進したい」と語っている。(山田晃司)

ベトナム原発 受注の成功を次につなげよ

2010年11月01日01時25分 読売新聞 社説 Yomiuri On-Line

 ベトナム政府が建設計画を進めている原子力発電所について、日本勢の受注が確実になった。

 原発を新たに造る新興国で、日本勢が建設を手がける初のケースとなる。

 世界的な原発の受注競争で、これまで後れを取っていた日本が、官民挙げた活動により、巻き返しに成功した形だ。

 原発や高速鉄道など、世界のインフラ(社会基盤)需要は、2030年までに41兆ドルに達すると推計されている。

 少子高齢化が進む日本では、将来的に国内需要の縮小が避けられない。それだけに、海外市場の開拓が重要であり、今回の受注成功の意義は大きい。

 これをバネに、今後も日本勢が様々な分野におけるインフラ整備事業を受注できるよう、官民の協調体制を、さらに強化していくべきである。

 ハノイで31日に行われた菅首相と、ベトナムのグエン・タン・ズン首相の会談で、日本勢の受注が事実上、内定した。

 ベトナム南部のニントゥアン省に建設される原発2基で、2014年の着工、20年の運転開始を目指している。

 ベトナムの原発計画では、今年初め、ロシアが、同じ省内に予定されている第1期の2基分の建設を受注している。

 日本勢は昨年末、アラブ首長国連邦(UAE)の原発計画でも韓国勢に敗れた。

 いずれも、ロシア、韓国の大統領が先頭となってトップセールスを強力に繰り広げ、それが受注につながったとされる。

 これに対し、日本側は企業が個別に対応したため、最終段階で競り負けたようだ。

 新興国における巨大プロジェクトでは、政府の発言力が強い。日本勢は技術力などで勝るものの、政府の後押しが足りず、それが敗因になったのは明らかだろう。

 こうした事態を反省材料に、日本は先月、電力会社や官民共同の投資ファンドなどが出資し、海外での原発受注を目指す企業、「国際原子力開発」を設立した。

 菅内閣の閣僚も、各地で相手政府関係者に積極的に働きかけるようになった。こうした活動が、功を奏したといってよい。

 アジアでは、インドネシアやタイ、マレーシアにも原発建設の計画がある。ベトナムでは原発以外に、ハノイとホーチミン間を結ぶ高速鉄道も計画されている。日本の官民挙げた体制の真価が問われるのはこれからである。

日越首脳会談:原発受注合意 官民売り込み成果 人材育成訴え、商機拡大に弾み

2010年11月01日 毎日新聞 東京朝刊

 ベトナムの原発2基の建設を日本が受注すると両国首脳が合意したことについて、官民一体で受注を働きかけてきた政府、経済界は「人材育成など地道だが確実な協力を訴える『日本方式』の提案が受け入れられた」と、海外での原発受注拡大に自信を深めている。

 政府は新成長戦略でインフラ・システム輸出の核に原発を据え、官民一体で売り込みを図ってきた。2020年の原発の市場規模は日本が受注拡大を狙う東南アジアで約9兆円、インドは約17兆円、中東は約12兆円に達する見通しだ。ベトナムの原発は1基数千億円規模とみられ、周辺整備なども受注できれば2基で1兆円規模に達する可能性もある。

 しかし、昨年のアラブ首長国連邦(UAE)やベトナム第1期工事の原発受注では韓国、ロシアに敗れた。強い危機感から8月末に直嶋正行経済産業相(当時)と電力会社や原発メーカーの各トップがベトナムを訪問した。

 日本は今回、原発に関する技術や実績、人材育成などを売り込んで評価を得た。日本の交渉筋は「他国への売り込みのモデルになる意義がある」と話す。

 ただ、原発は建設期間が長期にわたり、運転開始までの資金面の不安がつきまとう。事故時の補償問題など、民間企業では負いきれないリスクがあるため今後も政府の支援体制は欠かせない。【立山清也、宮崎泰宏】

アジアで原発受注合戦加速へ

2010.10.31 18:34 MSN産経新聞

 【ハノイ=宮野弘之】ベトナムが建設を進める新たな原発2基について、10月31日の日越首脳会談で、日本の受注が決まった。東南アジア地域では、ベトナム以外にもタイやインドネシアが原発建設計画を進め、マレーシアやフィリピンも検討を急いでいる。いずれも経済成長に伴う電力不足の解消が目的だが、同時に原発保有で国の発展を印象づける狙いもある。日本が原発受注を決めたことで、今後は日米韓に中国、ロシアが加わった、アジアでの受注合戦が加速しそうだ。

 ベトナムでは、ホーチミン北東のニントゥアン省の2カ所に2基ずつ計4基の原発を建設し、2020年から順次、稼働するのを皮切りに、30年までに全国で計14基を建設する計画だ。同国が原発建設を急ぐ背景には、急速な経済成長に伴い国内での電力需要が急増し、慢性的な電力不足に直面していることがある。今後も毎年14%近い需要の伸びが予想され、経済成長の足を引っ張りかねないとの懸念があった。同時に環境問題に対応するには、原発建設が最適な選択だった。

 こうした事情は、他の東南アジア諸国も同様だ。タイは21年までに4000メガワットの原発稼働を計画。インドネシアも25年の商業炉稼働を目標にしている。マレーシアも原子力関連の人材育成を進めるなど、原発建設に前向きだ。

 フィリピンのアキノ大統領は今年7月、マルコス政権時代に完成しながら一度も運転されていないバターン原発を稼働しないことを決めたが、原発そのものの必要性は認めている。すでに新たな原発建設用地の選定も行っているとされ、受けて、日米両国や韓国などの原子力プラントメーカーや、電力会社が売り込みをかけている。

 ただ、いずれの国も原発建設には莫大(ばくだい)な予算が必要なうえ、使用済み燃料の処理など安全面での対策が不可欠。今回、日本は受注のため、低利の資金提供、原子力技術移転と人材育成、プロジェクトの全期間における廃棄物処理と燃料供給など、ベトナムが求める条件のすべてを満たしたという。

ロシア、インドネシア向け浮遊型原発受注へ準備

30.10.2010, 20:56 The Voice of Rossia

ロシアのアレクセイ・ボロダフキン外務次官は記者団に対し、ロシアがインドネシア向けに海上浮遊型原子力発電所の受注を受ける準備のあることを明らかにした。

 これはイノベーション・プロジェクトで、船の上に原発を建設する手法には、ロシアの研究者らが考案した技術が下敷きとして用いられている。こうした浮遊型原発の利点は、必要に応じて自由な移動が可能な点。

 ロシアは現在、インドネシア以外のアジア諸国とも浮遊型原発建設の交渉中を行っている。

電力9社と機器メーカー3社など、「国際原子力開発」を設立し海外向け包括提案

2010年10月19日 ECO JAPAN TOPIC

 東京電力をはじめ電力9社、東芝など原子力発電設備メーカー3社と産業革新機構の計13社は、原子力発電を新たに導入する国を対象に原発プロジェクトに関して包括的に提案する新会社「国際原子力開発(JINED=ジーネッド)」を10月22日に設立する。まずベトナムで計画中の原発プロジェクトの受注に向けて活動していく。

 設立には、東京、関西、中部、北海道、東北、北陸、中国、四国、九州の電力会社9社、東芝、日立製作所、三菱重工業の設備メーカー3社と、官民が出資する投資ファンドの産業革新機構の合計13社が参加する。資本金1億円、資本準備金1億円で、出資比率は東電が20%、関電15%、中電10%、産業革新機構10%と、残り9社が5%ずつとなる。社長には、東電の武黒一郎フェローが就任する予定。

 国際原子力開発は、新規に原発を導入する国の要望を受け、電力各社や設備メーカーなどと協議して提案を取りまとめたうえで、それぞれの国に合った原発プロジェクトを提示する。参加各社のこれまでの経験を生かしながら発電所の建設や運転保守の技術、人材育成のノウハウなどを包括的に提案し、受注につなげる。

 当面は、経済産業省をはじめとした関係機関とベトナム・ニントゥアン省の原発の建設、人材育成の計画提案を進める。日本政府は、原発導入国を支援するとともに新規案件を提示し、国際原子力開発を窓口に官民が一体となった受注体制を構築していく。インフラ輸出を成長戦略に掲げる日本政府は、国際原子力開発によって原発関連の競争力を高め、海外展開を促進する。(日経BP環境経営フォーラム)

トルコ原発計画に参加も 東芝、韓国勢と受注争い

2010.10.08 01:21 MSN産経新聞

 トルコメディアによると、同国のユルドゥズ・エネルギー天然資源相は7日、原子力発電所建設計画に、日本政府と東芝が参加の意向を示したことを明らかにした。北部の黒海沿岸シノップでの原発計画が対象とみられる。ただ、シノップでの計画では韓国がトルコ側と基礎調査で合意しており、日本と韓国が受注を争う可能性がある。

 半国営のアナトリア通信によると、7日、首都アンカラで在トルコ日本大使館と東芝の関係者がユルドゥズ氏と面会し、参加の意向を伝えた。同氏は「韓国側との話し合いを終えるまで明確な返答はできない」と述べたという。

 トルコは電力需要の増大に対応するため、2017年にも原発第1号機の商業運転を開始したい考えで、地中海沿岸のメルシンでもロシアと基礎調査を進めている。(共同)

原発の重要性を再確認 STSフォーラム、エネルギー需要増背景

2010.10.5 19:52 MSN産経新聞

STSフォーラムの年次総会で基調演説を行う尾身幸次理事長(同フォーラム提供)

 科学技術をめぐる諸問題を分野や国境の垣根を越えて話し合う日本の団体「サイエンス・アンド・テクノロジー・イン・ソサエティー(STS)フォーラム」の年次総会が3日から、国立京都国際会館で開かれ、最終日の5日、原発の重要性など参加者の認識を取りまとめた声明を発表した。

 7回目となった今総会には、104の国・地域・機関から科学者、政治家、官僚、実業家ら過去最多の約千人が参加した。

 冒頭の基調演説で、創設者の尾身幸次理事長(元財務相)は「科学技術は気候変動や核拡散など地球規模の問題ももたらした」と、その“影”の部分を指摘。ノーベル物理学賞受賞者のジェローム・フリードマン米マサチューセッツ工科大学教授が「人類への巨大な挑戦」と、そうした問題の解決への努力を訴えた。

 今総会は、中でも新興諸国などによる消費の急増で逼迫感が出ているエネルギーの問題に力点が置かれたのが特徴。声明は、安全性の確保などを条件として、原子力エネルギーを「持続性の点で死活的に重要な選択肢」と位置付ける一方、「核拡散防止への断固たる措置」を求めた。分科会では、太陽光発電など再生可能エネルギーにはコスト面の問題があるとされた。

 情報通信技術の分科会では、インターネットの普及に伴う読者、広告減で新聞など既存メディアの経営が苦しくなり、新たなビジネス・モデルも見えてこないという問題も提起され、活発な議論が交わされた。

欧州で加速する原発回帰 日本企業、中東欧を足場に市場参入目指す

2010.09.16 00:50 MSN産経新聞

 【ロンドン=木村正人】ドイツが原子力発電所の稼働年数を延長する方針を決めるなど、欧州で「原発回帰」の動きが加速する中、日本企業が欧州の原発市場への参入を目指している。旧ソ連製原発の建て替えが進む中東欧で実績をつくり、欧州進出の足場を築く戦略だ。かつて環境破壊の元凶とされた原発は地球温暖化でクリーンエネルギーとして見直され、英国や北欧でも建設計画が進められている。

 メルケル独政権は5日、2020年ごろまでの原発全廃を義務づけた「脱原発法」を改正し、国内に17基ある原発の稼働年数を平均で12年間延長する方針を決めた。設置年数が新しい原発は14年間延長し、1980年以前に建設された原発は8年間延長する。

 80年の国民投票で原発の新設を認めない脱原発政策を定めたスウェーデンも今年6月の議会で、現在稼働する原発10基の建て替えを認める法案を2票差で可決した。来年1月から施行されるため、三菱重工が食い込みを図っている。フィンランドでは5基目の原発が建設中だ。

 老朽化した原発の閉鎖で2015年に深刻な電力不足が懸念される英国では、原発4基の建設計画が進んでおり、東芝ウェスティングハウスが受注を狙う。イタリアも脱原発政策から原発推進に転換している。

 世界では原発52基(欧州は4基)が建設中で、143基(同9基)が建設計画中だ。さらに344基(同37基)が構想段階にある。欧州ではフランス企業のアレバが幅を利かせ、受注実績がゼロの日本企業は欧州の安全基準に精通しておらず、新規参入の壁は厚い。

 89年のベルリンの壁崩壊後、経済発展を遂げる中東欧諸国はエネルギー需要が旺盛な上、旧ソ連製原発の建て替えが迫っている。このため、日本企業はロシア国営原子力企業などと激しくしのぎを削る。

 国際協力銀行(JBIC)フランクフルト事務所によると、日本政府は今年4月、ポーランド政府と原子力エネルギー協力協定に調印。そして日立と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の企業連合がポーランド国営電力会社PGEと協力協定に、東芝ウェスティングハウスもPGEと協力覚書に、それぞれ調印している。

 チェコでは東芝ウェスティングハウスが原発建設への入札参加を表明。ハンガリーでも東芝ウェスティングハウスや、三菱重工とアレバの企業連合が原発建設の事前協議に関心を示している。

 ブルガリアの場合、ボリソフ首相がロシア国営原子力企業に代わり東芝ウェスティングハウスとの提携を打診するなど、天然ガスの供給元であるロシアへのエネルギー依存度を下げる動きも目立ち、日本企業にとって追い風となっている。

ドイツ連立与党、原発稼働12年延長で合意 野党は反対

2010.09.06 09:50 MSN産経新聞

 ドイツの連立与党は5日、2020年ごろまでに全原発の運転を停止することを義務づけた「脱原発法」を改正し、国内に17基ある原発の稼働年数を平均で12年間延長する方針で合意した。DPA通信などが伝えた。

 メルケル政権は、連立与党が連邦参議院(上院)で過半数に達していないため、連邦議会(下院)だけの可決で済む手続きを検討。これに対して、脱原発推進を図る野党は同日、同政権がこうした強硬策をとった場合には憲法裁判所に提訴するなど強く反対する考えを明らかにした。

 同政権は、昨秋の連立発足時に風力など再生可能エネルギーの普及が十分に進むまで原発の稼働年数を延長することで一致。しかし、その期間をめぐり対立、与党内での取りまとめを先送りしていた。(共同)

マレーシアの原発受注に名乗り 経産省が協力文書に署名

2010.09.03 13:30 MSN産経新聞

 経済産業省は3日、マレーシアとの間で、同国の原子力発電計画のための基盤整備に関する協力文書に署名したと発表した。原発にかかわる人材育成や広報活動、法制度整備などに協力する。

 日本が原発の協力文書に署名したのは9カ国目。日本は成長戦略の重要項目に、原発や高速鉄道などのインフラ輸出の強化を掲げており、原発の輸出を可能にする原子力協力協定の締結につなげる。

 マレーシアは今年5月に、2021年に原発の初号機の運転を開始すると公表した。原発受注を狙って韓国、仏、中国などがすでに売り込みを始めており、日本も名乗りを上げた。

原発をトップセールス 経産相の官民訪問団、ベトナム首相に

2010.08.25 19:51 MSN産経新聞

 ベトナム訪問中の直嶋正行経済産業相は25日午後、同国が計画する原子力発電所の建設を日本企業へ発注するよう働き掛けるため、グエン・タン・ズン首相と会談した。

 会談には東京電力など電力会社と日立製作所など原発メーカーのトップらが同行。10月にも想定される菅直人首相、ズン首相との首脳会談に向け、前向きな発言を引き出したい考えだ。直嶋氏は同日午前、ボー・ホン・フック計画投資相とも会談した。

 自民党政権時代に当時の安倍晋三首相が、経団連会長らとベトナムを訪問して経済交流拡大について意見交換したなどの例はあるが、原発輸出という具体的案件に絞って閣僚と民間トップがそろって訪問するのは初めて。(共同)

イラン・ブシェール原発、10月以降稼働へ

2010.08.23 19:26 MSN産経新聞

 ロシアの協力で稼働態勢に入ったイラン南部のブシェール原子力発電所(出力100万キロワット)の責任者ジャファリ氏は、同原発の稼働開始時期について10月以降になると述べた。国営イラン通信が23日、報じた。

 イラン原子力庁のサレヒ長官らはこれまで、9月に同原発の原子炉に燃料を装てん、稼働すると説明。これに対しジャファリ氏は、160本以上ある燃料棒と原子炉の検査や試験が必要と指摘した上で、9月22日ごろに装てん作業を始め、作業完了までに約1カ月かかると話した。(共同)

プレ次世代原発 2025年実用化の方針 海外展開へ技術蓄積

2010.08.21 01:30 MSN産経新聞

 世界最高水準の性能を持つ原子力発電施設として、2030(平成42)年の稼働を目指して官民一体で計画している次世代原発をめぐり、経済産業省は20日、主要機能を盛り込んだ上で、稼働時期を5年程度早めた「プレ次世代原発」を25年に実用化する方針を明らかにした。次世代型は国内の電力需要を賄うだけでなく、海外にも売り込みを図る国家的な戦略インフラ。プレ原発で技術を蓄積し、“真打ち”の世界的な普及を目指す。

 現在、国内で動いている最大規模の原発の出力は130万キロワット程度。日本や欧米の原発は30年ごろから運転年数が60年を超え、50年までに270基の代替需要が生まれると予測されている。ただ、国内では地元の反発などで新規立地が難しく、電力を安定的に供給するためには、既存設備の建て替えで出力の高い原発を導入することが不可欠とされる。

このため、経産省は180万キロワット級の次世代型開発を2年前に開始。すでに基本仕様を固め、今後は設計に入る段階だが、蒸気発生器や免震装置といった主要な技術は15年前後に開発できる見通しだ。

 経産省はこれらの技術を早期に実用化するため、次世代型に先駆けてプレ原発を開発することにした。基本設計が同じなので、規格や材料などの標準化で、その後のコスト削減が図れるメリットもある。

 プレ原発は出力が既存原発と同等の130万キロワットレベルにとどまるが、残りの主要技術が確立されれば次世代型に容易に改良できるという。16年から重電各社が詳細な設計などに着手。22年中にも建設を始め、25年の稼働を目指す。

 一方、次世代型については、ウラン濃縮度の高い燃料や、腐食耐性の高い材料などの技術開発に時間がかかるため、運転開始時期は当初の予定通り、20年先の30年を目標にしている。

 経産省は、中国やインドなど今後の電力需要の拡大が見込める新興国への輸出も期待しており、プレ原発の開発で海外展開を加速させたい考えだ。

スウェーデン、脱原発政策を30年ぶりに転換 議会が小差で可決

2010.06.18 09:12 MSN産経新聞

 スウェーデン議会は17日、世界に先駆けて打ち出した同国の脱原発政策を30年ぶりに転換し、来年以降、既存の原発の原子炉建て替えを認める法案を賛成174、反対172の小差で可決した。ロイター通信などが伝えた。

 地球温暖化問題などを背景に、ラインフェルト首相率いる中道右派政権は昨年2月、温室効果ガスを出さない原発の建設を推進する政策を発表。その是非をめぐり国民的議論が続いていた。

 カールグレン環境相は英石油大手BPが米メキシコ湾で起こした原油流出事故も挙げ「石油や化石燃料への依存度は低めなければならない」と強調。一方、9月の総選挙で政権奪還を目指す中道左派の社会民主労働党は同法廃止を主張しており、原子炉が実際に建設されるかどうかは不透明だ。(共同)

【海を渡る技術】(中) 原発 もう通じない「紳士協定」

2010.06.11 20:03 MSN産経新聞

 「ワーテルローの戦いに匹敵する」。昨年12月末、アラブ首長国連邦(UAE)の原子力発電所建設をめぐって、海外で受注実績のなかった韓国に敗れたフランスのメディアは、ナポレオン軍の敗戦にたとえ、衝撃の大きさを報じた。

 UAEのアブダビ首長国の4基の原発商戦に挑むため、韓国は政府、メーカー、ゼネコン、電力公社がスクラムを組み、総力戦で臨んだ。初めて原発を導入するUAEにとって、建設だけでなく運転や保守、点検までサポートしてくれる電力業界の存在は大きい。李明博大統領のリーダーシップもあり、韓国は60年間、人員を派遣し、丸抱えで運転する超長期保証契約を結んだ。

 同様に受注を逃した日本は米国勢と組んだが、東京電力は米電力会社への協力にとどまるなど、消極的な立場だった。「韓国勝利」の情勢になっても、動揺したのは政府や原発メーカー関係者のみ。東電首脳には情報すら上がらず、経済産業省の幹部は「危機感が共有されなかった。巻き返しのできる態勢ではなかった」と悔しがる。

 もっとも、東電は新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原発の復旧という大仕事を抱えていた。UAEなどに「手を出しづらい状況だった」(関係者)点は否めない。

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 今年4月17日、東電の武藤栄常務と高橋明男発電所長は、柏崎刈羽原発の見学者施設に到着した大型バスを出迎えた。訪れたのはベトナムのフック計画投資相ら約20人の視察団。フック氏は「技術、人材育成の面で協力をお願いしたい」と切り出した。

 ベトナム政府は、出力百万キロワット級の4基の原発建設を計画中だ。原発は1基約5千億円という巨大プロジェクト。1、2号機は軍事協力を背景とするロシアの受注が確実視され、日本は残る3、4号機に期待をかける。視察は「ベトナム側の強い要望で急遽(きゆうきよ)実現した」(経産省)という。大地震が起きても致命的な損傷の出ない日本の原発の安全性の高さが「高く評価された」と経産省は説明する。

 「うちが中心になってやっていきたい」。東電の清水正孝社長は4月下旬、東電と中部電力、関西電力、日立製作所、三菱重工業、東芝に国も加わり、原発輸出を担う新会社設立にあたって宣言した。

 地球温暖化対策を追い風に、世界では今後15年間に500基の原発稼働が見込まれる。原発メーカーである日立の中西宏明社長も、「国がかかわってくれるのはありがたい」と話す。原発輸出をめぐる日本の“企業連合”はようやく姿が見え始めた。

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 しかし、韓国政府の計画は今後20年で原発80基を輸出するなど、日本のペースを上回る。韓国の強みは、政府が先頭に立つがむしゃらな売り込みだけではない。

 「韓国企業は中東のプラント建設で実績がある。現地で外国人労働者を確保するノウハウを持つ」。松江市で4月に開かれた日本原子力産業協会の年次大会で韓国原子力産業会議副会長の姜昌淳ソウル大名誉教授はこう指摘し、自信を示した。技術力や「工期を守って作ること」(日立の中西社長)を強みとする日本に対し、韓国は現地のビジネス事情に精通し、建設コストを日本やフランスより2〜3割削減して低価格を実現しているからだ。

 3月にパリで開かれた原子力に関する国際会議で、フランスのサルコジ大統領は「原発導入を目指す、すべての国に協力する」と語った。もはや民間企業同士で競争する先進国の紳士協定など「通用しない」(日本経団連)という。

 貿易保険の活用、原子力協定の締約国拡大、日系企業が不利な扱いを受けないための政府間対話…。やるべきことの多い日本には、挑戦者としての態勢づくりが何よりも求められる。

露がトルコで原発初受注 露大統領中東歴訪

2010.05.13 20:57 MSN産経新聞

 【モスクワ=佐藤貴生】ロシアのメドベージェフ大統領は12日までの3日間、トルコとシリアを訪問した。トルコでは同国初の原発建設を受注したほか、シリアでも原発建設を支援すると述べ、中東の原発市場へ進出する意欲を示した。ただ、シリアについては核兵器製造に転用する恐れがあるとして米国がただちに懸念を表明、利益追求を優先するロシアの姿勢に批判が強まる可能性もある。

 ロイター通信によると、メドベージェフ大統領は12日、トルコの首都アンカラでギュル大統領らと会談、同国の地中海沿岸アックユでの原子炉4基の建設を総工費200億ドル(約1兆9000億円)で受注した。

 トルコは天然ガス需要の6割をロシアに依存しており、自前のエネルギー供給源確保を急いでいる。ロシアにすれば、3月にインドで原子炉16基の大型受注に成功、今回は中東市場に本格的に進出する足がかりをつかんだ形だ。

 また、メドベージェフ大統領は10、11日、ソ連建国以来初めて国家元首としてシリアを訪問し、「原子力エネルギー分野での協力は(両国関係進展の)新たな息吹になる」と述べ、シリアにおける原発建設を支援する方針を示した。

 シリアをめぐっては2007年9月、イスラエル空軍機が東部の軍事施設を空爆、北朝鮮が協力する核開発施設との観測が出た。国際原子力機関(IAEA)の調査にも非協力的な姿勢を示しているとされる。

 ロシア版の週刊誌ニューズウィークが10日、スクープとしてネット上に公表した露外務省の外交方針によると、ロシアが原発を建設中のイランについても、「核開発問題の外交的解決」を指摘した上で、「原子力エネルギーの平和利用における協力の継続」を掲げている。

 中東・湾岸地域では昨年12月、アラブ首長国連邦(UAE)で韓国企業が日米仏の企業との競合の末に原発建設を受注するなど、原発推進の機運が高まっている。対米関係の改善が進む裏側で、原発輸出ビジネスは着々と進めるロシアの意図がうかがえる。

韓国に続き、原子力ビジネスの海外展開をねらう中国

2010/04/08(木) Searchina

 中国は、「走出去」(海外進出)戦略を原子力ビジネスまで拡大することをねらっている。韓国の企業連合が昨年末、欧米や日本の原子力プラントメーカーを押しのけて、アラブ首長国連邦(UAE)が計画している同国初の原子力発電所の建設を受注したことに衝撃を受けた人物が中国にいる。第3世代原子力発電技術の導入、吸収、再イノベーションの役目を担っている国家核電技術公司の王炳華・董事長だ。

 中国では1970年2月8日、同国初の原子力発電所(「728プロジェクト」)の設計作業がスタートした。74年には周恩来首相が主宰した中央専門委員会で30万キロワット級の加圧水型炉(PWR)による原子力発電計画が承認され、科学技術開発プロジェクトとして国家計画に組み込まれた。

 「728プロジェクト」(秦山発電所)は83年に研究開発と工事設計がほぼ終了し、85年3月に正式に着工した。同発電所は中国の自主設計であるが、圧力容器やポンプなどのコンポーネント・機器については外国から輸入した。国産化率は、金額ベースで70%程度とみられている。秦山発電所は、中国初の原子力発電所として91年12月15日に送電を開始した(商業運転開始は94年4月)。

 これに対して、韓国の原子力発電開発は70年、最初の原子力発電所である古里1号機を米ウェスチングハウス社に発注することによってスタートした。同機は、秦山発電所より16年早い78年4月に商業運転を開始した。

 韓国はその後、ABBコンバッション・エンジニアリング社(ウェスチングハウス社に吸収・統合)の「システム80」(100万キロワット級PWR)をベースに国産化を進めた。また、米国原子力規制委員会(NRC)から99年に設計認証を取得した「システム80+」(130万キロワット級PWR)をベースに「APR1400」(PWR、140万キロワット)を開発した。「APR1400」は韓国が知的財産権を所有しており、国内では新古里3号機・4号機(建設中)、新蔚珍1・2号機(計画中)に採用が予定されている。UAEに輸出されるのも、この炉型だ。

 韓国知識経済部は1月、大統領主催の非常経済対応会議で「原子力発電輸出産業化戦略」を報告し、原子力産業を新たな輸出産業として本格的に育成する方針を打ち出した。同部は、仏AREVAの「EPR」や日本の「ABWR」の建設単価が2900米ドルであるのに対して「APR1400」は2300米ドルでありコスト競争力が高いと指摘している。経済協力開発機構(OECD)の国際エネルギー機関(IEA)と原子力機関(NEA)が最近公表した発電コスト予測「Projected Costs of Generating Electricity:2010 Edition」でも、韓国の原子力発電所の平準化発電コストがOECD加盟国の中で最も低いことが明らかにされている。

 韓国は、政府主導のもと韓国水力・原子力や韓国原子力研究所、韓国電力技術、斗山重工業など、産・学・研が協力して「APR1400」の開発にあたった。また韓国科学技術部(省)は2006年7月、原子力技術の輸出支援を業務とする「原子力技術輸出支援チーム」を立ち上げた。

 国家核電技術公司の王炳華・董事長は、韓国が原子力先進国を差し置いてUAEの原子力発電所を受注できたのは、挙国体制で臨んだためだと指摘している。一方で王董事長は、三菱(重工)と東芝が競争しているような状況では、日本の原子力発電産業を強固なものにすることはできないとも語っている。

 国家核電技術公司は、ウェスチングハウス社が開発した「AP1000」の国内導入に加えて、同型炉をベースにした国産炉「CAP1400」の開発を進めている。「AP1000」の初号機となる三門1号機は昨年4月に着工し、2013年に運転を開始する予定になっている。また、2011年末に初期設計が完成することになっている「CAP1400」の実証炉と位置付けられている山東省の栄成石島湾発電所は、同13年4月に着工し17年12月に送電を開始することが見込まれている。

 中国は、秦山発電所の改良型30万キロワット・PWRをパキスタンに2基輸出した実績を持つほか、さらに2基を輸出することで合意しているが、本命は「CAP1400」だ。同型炉は中国が知的財産権を保有し、韓国の「APR1400」と同じく、中国が世界の原子力発電市場に売り込みをかける主力製品になると期待されている。

 韓国に比べればだいぶ遅れてしまったものの、中国は韓国にない強みを持っている。中国は核燃料サイクルの完結を目指しており、このうち濃縮(役務)については1000トンSWU(分離作業単位)の能力を保有しているほか、さらに500トンSWUの拡張が計画されている。

 中国の核燃料サイクル事業を担う中国核工業集団公司(CNNC)の邱建剛・副総経理は、国内の濃縮能力を飛躍的に拡大したうえで余剰能力を外国のユーザーに対して提供し、中国がアジアのウラン濃縮センターになることを目指すとの考えを明らかにしている。そうしたなかで、CNNC傘下の国際貿易会社、中国原子能工業有限公司は3月5日、関西電力との間で濃縮ウランの販売契約を同1日に結んだことを明らかにした。詳細は明らかにされていないが、契約期間は2012年から19年という。

 プラントメーカーレベルでの輸出も話題にのぼってきている。東方電気集団等が出資している東方電気(広州)重型機器有限公司の王宏・総経理は3月11日、原子力発電設備の輸出を検討していることを明らかにした。王総経理は、フランスと日本の原子力発電企業と提携交渉を開始しており、年内にも最初の注文を受けたいとの期待を表明した。

 筆者の調査によると、今年1月末現在、中国では213基、合計設備容量では2億キロワットを超える原子力発電所が計画されている。かつての日本がそうであったように、中国の原子力産業は国内市場だけで十分にやっていける。しかし、中国の狙いは、原子力発電所の輸出による国際的なプレゼンセンスの向上に加えて、先進技術の輸出という目標を達成することにある。

 中国の現行の原子力国家計画である「原子力発電中長期発展規画(2005〜2020年)」や「原子力産業『第11次5カ年』発展規画」では、原子力発電技術の輸出については言及されていない。しかし、まもなく公表されるとみられる「原子力発電中長期発展規画」の改訂版や次の「第12次5カ年規画」、「原子力発電条例」等では、原子力技術の輸出が明確に打ち出されることはほぼ間違いないだろう。(執筆者:窪田秀雄 日本テピア・テピア総合研究所副所長 編集担当:サーチナ・メディア事業部)

東欧、南アにも売り込み 原発輸出大国目指す韓国

2010/03/19 中国新聞ニュ−ス

 【ソウル共同】アラブ首長国連邦(UAE)初の原発建設を受注した韓国は、中東周辺地域に加え、東欧や南アフリカにも韓国型原発の売り込みを図るなど、政府高官や有力政治家が先頭に立ち、官民一体で市場拡大に全力を挙げる方針だ。

 李明博イ・ミョンバク大統領は大手財閥企業、現代建設の社長、会長時代に韓国の原発建設を主導。地球温暖化対策として世界的に高まる原発推進機運を好機とみて、将来の「原発輸出大国」を狙う。

 外交通商省などによると、17〜19日には李容濬イ・ヨンジュン外交通商次官補が国交樹立20年となるルーマニアを訪問し、同国政府高官と原発やインフラ事業に関する協力拡大などを協議した。18日には李大統領の実兄の李相得イ・サンドク議員が大統領特使として南アフリカを訪問。韓国メディアによると、ズマ大統領と会談し、南アが計画中の原発建設への韓国企業参加を要請した。

 韓国政府によると、ポーランドやベトナムも韓国の原発導入への関心を表明。ヨルダン、インド、トルコでは進出の足掛かりをつけ、インドネシアでも日本企業と激戦を繰り広げている。

 韓国の原発は日米欧に比べ高い稼働率を誇り、建設費が割安で工期も短いのが利点。UAEの場合、李大統領が決定権を持つ王族に6回、電話で交渉するトップ外交を展開。アフターサービス充実に加え、軍事協力拡大も事実上セットにして受注を獲得した。韓国は今後も「相手国のニーズに応じた取り組み」(政府当局者)を続ける構えだ。

原発の海外受注2連敗 日本巻き返しに官民連携

2010/03/18 Jcastニュ−ス

日本企業の海外向け原子力発電の受注が苦戦していることを受けて、政府は官民が一体となった「ALL JAPAN」の新会社の設立に、本格的に乗り出した。

これまでは日立製作所や東芝などのメーカー主導で受注競争に参戦してきたが、2009年12月のアラブ首長国連邦(UAE)、10年2月のベトナムの第1期工事の受注競争に立て続けに敗れた。フランスや韓国、ロシアが国を挙げての受注体制を敷いており、激しさを増す国家間競争に、日本も巻き返しを図る。

原子力発電「ルネサンス」といわれるほど再評価

発電過程でCO2を排出しない原子力発電は、地球温暖化防止策として欧米を中心に「原子力ルネサンス」といわれるほど再評価されている。さらに、経済成長が著しい中国やインドなどの新興国では電力不足に対応するため、発電所の建設が活発になってきた。

経済産業省によると、計画中の原発は約30にも上り、なかでも東南アジアや中東では具体的に進展している。受注額にすると、UAEのケースで約3兆6000億円、ベトナムの第1期工事で約7500億円規模の一大プロジェクトということもあって、国際的な受注競争が激しくなっている。

そうした中で、日本の原子炉メーカーは東芝が米ウエスティングハウスを買収。日立製作所が米ゼネラル・エレクトロニック(GE)と原子力分野で合弁会社を設立、三菱重工業がフランスのアレバと業務提携するなどで競争力を高めてきた。

ところが、09年12月のUAEの原発プロジェクトでは、李明博大統領の強力な「後押し」もあって、日立・GEの日米連合が韓国電力公社を中心とする韓国連合に敗れた。

韓国は2030年までに80基の原発を輸出目標とする国家戦略を策定。国を挙げてのバックアップ体制を敷いていて、UAEに続き、ヨルダンやトルコなどの受注獲得も狙っている。

経産省は「フランスもEDF(電力公社)やアレバ(原子力産業企業の持ち株会社)が取りまとめ役を務めるなど、国の関与は大きい。日本も国が前面に立ってリーダーシップを発揮することが求められている」という。 ロシアはベトナムに軍事協力約束して受注?

UAEで韓国に敗れた日立製作所は、「原発プロジェクトは、発電所の建設以外にもより広範囲での協力を求められる。メーカー同士の連携は必要になる」と、反省の弁を口にする。

このように、原発を新規導入する国では、発電所の建設から安全運転や保守・管理のノウハウ、人材育成など、メーカー単体では応えられない要求も少なくない。場合によっては外交がらみの、政府ベースで幅広く協力を求めてくるケースもある。

たとえば、ロシアの国営原子力企業のロスアトムに敗れたベトナムの第1期工事では、ロシアがベトナムに対して軍事協力を約束したことが受注に結びついたとも伝えられている。

ベトナムの第2期工事をめぐっては現在、フランスと激しい争いを繰り広げていて、鳩山首相がグエン・タン・ズン首相に親書を送ることを明らかにするなどトップセールスに乗り出したところ。

新会社について経産省は、「UAEの教訓を生かしたい」と話し、原発の運転や保守・管理のノウハウをもつ東京電力や関西電力など電力事業者を中心に協力を求める考え。「出資者や資本規模など、まだ決まっていないが、国際的な受注競争が激しくなる中でゆっくり構えているわけにはいかない。できるだけ早くに発足したい」と意欲をみせる。

原発:導入進むアジア 中国の検査官ら耐震研修に参加

2010年03月16日 毎日新聞 東京朝刊

 原子力発電所導入の動きが進むアジア各国の政府担当者を招き、地震対策で日本が持つノウハウを伝授する「アジア耐震安全研修」が2月、東京都内などで開かれた。独立行政法人「原子力安全基盤機構」の主催による初の試みで、東南アジア5カ国と中国の検査官ら25人が参加。07年の新潟県中越沖地震で被災した東京電力柏崎刈羽原発などで実習を行った。

 研修は2週間。柏崎原発では運転員に被災当時の生々しい体験や復旧作業の経過を聞いたほか、95年の阪神大震災で動いた淡路島の野島断層では活断層の評価方法を習得。国内地震観測網の拠点施設なども見学した。

 原発の被害状況を中央政府や自治体に素早く伝える情報システムや、放射能漏れと地震や津波が重なった最悪の事態下で住民が避難可能な経路を瞬時に割り出す予測システムも実習した。費用を心配する国もあったが、日本側は「システムの中身はすべて無償提供する。十分なマンパワーさえあれば、われわれと同じシステムがつくれる」と励ました。

 中国政府も最近、安全規制を強化しつつあるという。参加した中国環境保護省核安全センターの潘蓉研究員は「中国では原発建設が急ピッチで進む。規制行政も遅滞なく進める必要がある。耐震評価などの研修はとても役に立つ」と話した。【山田大輔】

露、旧ソ連友好国に商機 欧米日との“原発商戦”激化へ

2010.03.15 MSN産経新聞

 【モスクワ=佐藤貴生】ロシアはプーチン首相のインド訪問で、原子力発電所建設の受注獲得に成功した。インドは経済成長を支える電力需要を確保するためエネルギー供給源の分散化を急いでおり、海外で原子力ビジネスを拡大したい双方の思惑が一致した形だ。ベトナムやタイ、フィリピンなど東南アジア諸国でも原発建設の機運が高まっており、欧米や日本、韓国にロシアを巻き込んだ争奪戦は激化しそうだ。

 プーチン首相は12日、ニューデリーでシン首相と会談。同行したイワノフ露副首相は記者団に、「インド国内の3カ所で16の原子炉をロシアが建設することで合意した」と述べた。

 ロシアは以前、インド南部タミルナド州のクダンクラム原発の原子炉建設を受注しており、うち1基は年内にも稼働する見通し。今回は同原発で最大6基の原子炉を増設する事業に加え、東部・西ベンガル州ハリプールでの原子炉6基の建設事業などを受注した。

 インドの原子力市場は2005年、米国が平和利用協力に舵を切って国際競争が本格化した。ロイター通信によると、今年、7%の経済成長が見込まれるインドは、エネルギー需要に占める原子力の割合を倍増させる長期計画を打ち出しており、市場規模は1500億ドルともいわれる。

 ロシアは今回、インドの市場争奪戦で一歩リードした形だが、楽観はできない。インタファクス通信によると、仏国営原子力企業アレバも原子炉6基の建設を受注したとみられるほか、東芝傘下の米ウェスチングハウスと日立製作所・GE(ゼネラル・エレクトリック)の連合に加え、カナダや韓国の企業もインド側と協議している。

 半面、インドでの受注増でロシアの東南アジア進出に弾みがつく可能性もある。2月には日本やフランスと争う中、ベトナム中部ニントゥアン省の原発建設(2基)の受注も得たとされている。

 ベトナムは同時に、中印などと並ぶロシアの兵器売却先の「5指に入る」(国営ロシア通信)という。ロシアが旧ソ連時代の友好国に、兵器売却をからめて原発の“商談”を進める手法はインドと共通している。

 東南アジアでは、ベトナムのほかにも、タイやインドネシア、フィリピンなどで、不足するエネルギー対策と地球温暖化対策の一環として、原発の稼働が検討・計画されている。

 ロシアにとって、原子力ビジネスは石油・天然ガスと並ぶエネルギー輸出の中核だ。プーチン首相の訪印中には、1986年のチェルノブイリ原発事故を引き合いに原発の安全性を問う声が記者団から上がったが、首相は「ロシアの原子炉は世界で最も安全だ。中規模の旅客機が墜落しても耐えられる」と豪語し、国を挙げてセールス活動を続ける姿勢を示した。

原発:新興国新設計画 受注、劣勢日本 UAEは韓国、ベトナムはロシアへ

2010年03月11日 毎日新聞 東京朝刊

 地球温暖化対策や新興国のエネルギー需要急増を背景に、原発新設計画が世界的に増加し、受注競争が過熱している。日本企業は、アラブ首長国連邦(UAE)やベトナムが新設する原発の受注を狙っていたが、UAEの案件は、韓国がフランスや日本を退けて受注。ベトナムの第1期工事もロシアの受注が確実な情勢だ。劣勢の日本は巻き返しを図るべく、次の目標であるベトナムの第2期工事の受注獲得へ向け、官民一体の体制作りを模索している。

 ◇ライバル国はトップセールス 対抗するメーカー

 「原子力導入を目指す国を支援する」。8日、パリで開かれた原子力利用に関する国際会議で、フランスのサルコジ大統領は参加した新興国にこう呼びかけ、UAEでの敗退にめげず、新興国から受注獲得を目指す姿勢を鮮明にした。日本から参加した松下忠洋副経済産業相も国内メーカーや電力会社の高い技術力やノウハウをアピール。会議は、原発製造国の閣僚らのPR合戦の場となった。

 原発が脚光を浴びるのは、発電時にほとんど二酸化炭素を排出しない特性があるためで、1979年のスリーマイル島原発事故以来、原発新設を凍結してきた米国は今年2月、ジョージア州での原発2基の建設計画に83億ドル(約7500億円)の政府保証を付ける方針を表明、約30年ぶりの新設にかじを切った。増加する電力需要の受け皿としても注目されており、経産省によると、新規導入を計画する国は約20カ国に上っている。

 UAEやベトナムとの交渉では、自国産業振興の好機とみた韓国、ロシア、フランスとも首脳がトップセールスを繰り広げた。韓国の李明博大統領は関係者に電話や親書で攻勢をかけ、原発では異例と言える60年間の運転保証や破格の入札額を提示したという。ロシアのプーチン首相も昨年末、ロシアを訪問したベトナムのグエン・タン・ズン首相に潜水艦提供などの軍事協力を約束し、第1期工事の受注を取り付けたとみられている。

 「技術力とは関係のないところで受注先が決まる」(経産省幹部)現状に、政府は危機感を強めている。鳩山由紀夫首相は3日の参院予算委員会で「国を挙げてのトップセールスが十分でなかったと反省している。これからは頑張っていきたい」と表明した。

 日本経団連も約720兆円に上るアジアの社会基盤(インフラ)整備市場に参入するため、トップセールスが不可欠との提言をまとめた。鳩山首相はベトナム政府へ親書を送り、2期工事の受注実現を目指す方針だ。【柳原美砂子】

 ◇官民一体、急務 共同出資、新会社設立を検討

 日本の原発輸出の大きな課題が、建設から運転までのサービスを一体で提供する体制作りだ。

 韓国やロシア、フランスは国営電力会社が交渉の先頭に立っているのに対し、日本は日立製作所、三菱重工業、東芝の原発メーカー3社が主体となってきた。しかし、ノウハウのない新興国は設備の建設に加え、運転や保守、人材協力まで幅広いサービスを求めている。日本はこうした要望に応えられなかった。

 UAEでの受注失敗後、政府内外からは、原発売り込みに当たっては「電力会社が前面に立つべきだ」(経産省幹部)との声が高まった。しかし指名を受けた形の電力業界は「日本の原発運転の歴史は40年程度。韓国のような60年間の運転保証や破格の事業費はリスクが大き過ぎる。株主代表訴訟の恐れもある」(電力幹部)と不満を漏らす。

 日本のメーカー同士の競争も、オールジャパン体制構築の妨げとなっている。UAEの案件は、日立など日本勢を破って受注した韓国勢が、東芝傘下の米原発メーカー、ウェスチングハウスの技術支援を受ける。東芝は入札に参加しなかったが「うちは韓国と組んでいる」(関係者)と余裕を見せていた。

 一体感に欠ける現状を改善しようと、経産省は、国と電力会社などが共同出資し、“日の丸原発”を売り込む新会社の設立を検討している。しかし「どこまで有効か疑問。天下り先を増やすだけではないか」(電力業界)と冷ややかな指摘もある。【後藤逸郎、高橋昌紀、和田憲二】

韓国電力公社、トルコで原発共同研究 受注へ前進

2010年03月10日 NIKKEI NeT

 【ソウル=尾島島雄】韓国の韓国電力公社は10日、トルコに韓国型原子力発電所を導入する可能性について、トルコ国営電力会社(EUAS)との共同研究に乗り出すと発表した。韓国電力は昨年末、アラブ首長国連邦(UAE)で原発の一貫建設を受注したのを弾みに、新興国での商談獲得を狙っている。共同研究により、トルコでの受注に向けて一歩前進した形だ。

 両社が「原発事業協力・共同宣言文」に署名した。新設計画があるのは黒海側のシノップ県。UAEが採用し、韓国内でも営業運転している出力140万キロワットの原子炉を導入する場合の事業性を両社で検証する。韓国電力は同日、「(トルコ政府が)韓国電力の技術と経済性を高く評価した結果だ」とコメントした。

 建設事業者の決定では改めて入札が実施されるとみられ、韓国電力が最終的に受注できるかは不透明。トルコの別の地域での原発計画にはロシアが意欲を示している。

原発「新重商主義」の台頭に官民で挑む日本

2010.03.05 MSN産経新聞

 ベトナムが計画している原子力発電所建設事業をめぐる国際商戦が大詰めの段階に突入し、日本でもようやく“官民一体”の態勢に向けた協議が熱を帯び始めた。地球温暖化対策として世界の原発市場が成長することは間違いなく、各国の関連企業がそれぞれの政府を巻き込んで、国の威信をかけて競り合っているためだ。    (粂博之)

             ◇

 ベトナムの原発の第1期事業は2月、ロシア国営のロスアトムが受注した。同時期にロシアとベトナムは軍事交流協定を締結し、関係の強さを誇示するなど、ロシアのプーチン首相によるトップセールスが奏功したとの見方が強い。

 日本も「ベトナムへの売り込みは『官民あげてやる』ということ」(東京電力の清水正孝社長)で態勢を立て直す。鳩山由紀夫首相がベトナムのグエン・タン・ズン首相に親書を送るなどして巻き返しを図りたい考えだ。

 政府内で「受け皿作りが必要だ」(経済産業省幹部)との声があるほか、民間企業側も「政府側に要望を項目にして出している状況」(清水社長)という。

 具体的には、官民出資の新たな事業会社設立や官民で出資したファンド「産業革新機構」の活用、日本貿易保険(NEXI)、国際協力銀行(JBIC)による支援枠組みの構築が有力視されている。

          ◇

 政府や民間企業を駆り立てる背景には、世界的な原発商戦で日本が劣勢を強いられていることへの焦りがある。「原発先進国」を自負しながらも昨年末、アラブ首長国連邦(UAE)の原発建設・運転の受注で韓国勢に敗退したことは、関係者に衝撃を与えた。韓国の李明博大統領が自ら乗り出して受注価格を引き下げる一方、60年間の原発運転を保証するなど「民間で負いきれないリスク」(エネルギー業界関係者)を引き受けたのが勝因だった。

 途上国や新興国に自国の技術を展開することは、国際社会での地位向上はもちろん資源や労働力、新市場の確保にもつながる。ビジネスと国益が直結する「新・重商主義」の台頭ともいえる現象だ。

         ◇

 新・重商主義のターゲットは、原発をはじめとするインフラ整備事業。都市への人口流入が進む新興国や途上国では電力や公共交通機関などに対する需要が伸びていることが大きい。

 ただ、こうした国々では軍事衝突から政権交代、制度の改正、工期の遅れまでさまざまな不確定要素が潜む。とりわけ原発に関しては、核物質や関連技術を軍事目的に使わないことを約束する「原子力協定」の有無やその交渉もからんで、「民間でできることに限度がある」(エネルギー会社幹部)。韓国やロシアが商談に強い理由がここにあるわけだ。

 「きれいごとでは勝てない」(政府関係者)世界にいかに挑むか。トップセールスに乗り出した鳩山首相にも、覚悟が求められている。

米政府が30年ぶり原発新設計画、融資保証83億ドル

2010.02.17 MSN産経新聞

 【ワシントン=渡辺浩生】オバマ大統領は16日、約30年ぶりとなる米国内での原子力発電所の新設計画で、総額83億3000万ドル(約7500億円)の融資保証を実施すると発表した。1979年のスリーマイル島原発事故で新規着工を凍結して以来、初めての建設計画で、今後、米国で原発建設の動きが本格化するとみられる。東芝や日立製作所など、日本の原発メーカーの商機が広がる可能性もありそうだ。

 オバマ大統領はメリーランド州の演説で「増加するエネルギー需要を満たし、気候変動の最悪の被害を防ぐために、原子力発電の供給を増やす必要がある。今日の発表はわれわれをそうした道へ進ませるものだ」と述べた。原発を含むクリーンエネルギー分野への投資を促し、雇用拡大と地球温暖化対策を後押しする意向だ。

 米政府が融資保証を実施するのは、電力大手サザン・カンパニーがジョージア州で計画しているボクトル原発の2基の原子炉。建設に伴い3500人、完成後は800人の雇用が創出されるとしている。原子炉の稼働は2016年、17年に開始する見通し。

 オバマ大統領は就任以来、原発政策での積極的な発言を控えてきたが、先月末の一般教書演説で、原発建設の再開に踏み切る考えを示していた。積極姿勢に転じたのは、原発推進派の共和党に歩み寄ることで、議会の審議が遅れている温暖化対策法案の進展を促す思惑もあるとみられる。

 原発建設には多額の費用が必要となるため、政府の融資保証は、電力会社にとって計画を実現に移す重要なステップとなる。

ベトナム原発受注で日本勢敗退、首脳外交含め戦略見直しも

2010.02.09 20:22 MSN産経新聞

 日本が官民をあげて受注を目指していたベトナム中部ニントゥアン省の原子力発電所建設の第1期工事(原発2基)をめぐり、ベトナム政府がロシア国営の原子力企業ロスアトムに発注する方針を固めたことが9日までに明らかになった。軍事や資源協力を武器にしたロシアのプーチン首相のトップセールスで、フランス勢と日本勢を含めた三つどもえの争奪戦に競り勝った。日本勢は、韓国勢に敗れたアラブ首長国連邦(UAE)原発に続き、痛い“連敗”を喫した。

 重電メーカーは「2期工事の受注につなげたい」(三菱重工業)と巻き返しを図るが、各国の首脳外交に比べ日本の力不足は歴然で、「オールジャパン」の戦略見直しを迫られそうだ。

 日本やフランスの優勢が逆転したのは、昨年12月。ロシアを訪問したベトナムのズン首相とプーチン首相との間の原発建設の覚書の調印がきっかけだ。プーチン首相が原油・天然ガスや潜水艦販売を含めた包括提携を打ち出し、「これを機に流れが変わった」(電力関係者)。

 一方、日本側は、日本原子力発電やメーカーや電力会社などが参加する日本原子力産業協会を通じた数百人規模の原子力技術の人材育成支援や政府開発援助(ODA)で攻勢をかけたが、及ばなかった。

 環境規制強化で、世界的に原発が見直され、商機自体は拡大している。日本は、日立製作所・GE(ゼネラル・エレクトリック)連合、東芝・米ウェスチングハウス、三菱重工・仏アレバ連合、東京電力などが参加、官民一体の受注競争に参戦しているが、旗色は悪い。

 日本勢は昨年12月末にも、アラブ首長国連邦(UAE)の原発受注で、韓国に敗退した。李明博大統領は直轄チームを率い、ムハンマド皇太子に電話攻勢をかける力の入れようで、再生エネルギー、造船、人材の政府間協定も締結した。

 日本の武器は原発技術に加え運転管理ノウハウによる安全神話にあるだけに、電力会社の参加や首脳外交など総力戦が事態打開のカギになりそうだ。

日本が原発建設意欲と報道 イラン副大統領が発言

2010.01.10 MSN産経新聞

 国営イラン放送によると、同国のサレヒ副大統領兼原子力庁長官は10日、「日本がイランでの原子力発電所建設に意欲を示している」と述べた。同氏の発言は、核問題で欧米が新たな経済制裁を検討しイランの国際的孤立が深まる中、外国との友好関係を国内に印象付けるのが狙いとみられる。

 サレヒ氏は「日本は核問題については慎重なだけに、興味深いことだ」と発言、両政府で協力のあり方について話し合っていると語った。

 しかし、岡田克也外相は昨年末、訪日した核交渉責任者のジャリリ最高安全保障委員会事務局長に核開発への強い懸念を表明。核開発問題が解決していない現状では、日本がイランでの原発建設に協力する可能性は低いとみられる。(共同)

日本の新型原発導入へ カザフ、18年完成目指す

2009/06/21 中国新聞ニュース

 【セメイ(カザフスタン北東部)20日共同=佐々木健】カザフスタン北東部にある旧ソ連のセミパラチンスク核実験場に接する、かつての軍事閉鎖都市クルチャトフに、日本の技術を導入して発電効率の高い原子炉「高温ガス炉」による新型原子力発電所の1号機の建設が計画されていることが分かった。カザフスタン国立原子力センターのカディルジャノフ総裁が19日、共同通信に明らかにした。

 1号機は2018年に完成、22年ごろ稼働する計画。核兵器の被ばく問題を抱える両国が、原子力の平和利用で協力を深める象徴的な共同事業になりそうだ。

 総裁によると、茨城県大洗町に研究用の高温ガス炉を持ち、世界最先端の実証試験を行ってきた日本原子力研究開発機構の技術を基礎に、東芝やカザフ国営原子力企業カザトムプロムなどと合弁企業の創設を協議中。日本側は半分程度を出資する方向で、ロシアとスロバキアも参加の意向を示しているという。

 高温ガス炉は、カザフ政府が見直しを進めている国家原子力計画に盛り込まれる見通しで、大統領が最終的に承認すれば、カザフの他地域への事業調査にも着手する。

 1号機の発電能力は5万キロワットで、暖房用の温熱も供給する方針。予算は5億ドル(約480億円)以上で、カザフ側は日本の国際協力銀行(JBIC)に資金協力を要請しているという。

 総裁は高温ガス炉を「将来性のある事業」と高く評価。核実験による被ばくで健康被害が相次いだだけに「周辺住民の多くは原子力という言葉に拒否反応を示すが、問題は克服できると思う」と強調した。


低炭素社会を実現する技術を探る(第3回)原子力/海外進出を目指す国産技術 小型化で途上国にも広がる

2008/09/05 ECO JAPAN

 中断していた高速増殖炉の性能試験が再開され、商用化に踏み出したのと並行して、メーカーによる中小型炉の開発も進む。それぞれ、日本にとっては原子力ビジネスを進める上で重要なカードの1つになるだろう。

 早ければ今年10月に、福井県の若狭湾のほとりにある高速増殖炉「もんじゅ」の性能試験が始まる予定だ。高速増殖炉は、発電しながら核分裂しにくいウラン238を燃料になるプルトニウムに変えられる。そのため、ウラン資源を有効活用でき、核燃料サイクルの要となる。

 ウラン価格が安い1990年代には、その存在意義を問う声もあった。だが、2006年に政府は必要性を再確認し、2050年までに商用化する目標を立てた。うまくいけば、世界で初めて商用の高速増殖炉が日本で生まれる。

 とはいえ、現状の経営環境では電力会社が高速増殖炉を採用する気運はない。新型炉で注目を集めているのは、現在主流の大型軽水炉の効率を上げたタイプのほか、途上国や小都市向けを想定した中小型炉だ。

 その1つが、電力中央研究所と東芝が共同開発した小型高速炉「4s」。4sは、1万kW程度の小規模な発電出力で、燃料を交換せずに30年間運転できるメリットを持っている。

 ●小型のナトリウム冷却高速炉 電力中央研究所と東芝は小型炉「4s」を共同開発中。全体で縦に30m程度と小さく、中小規模の都市に向く。水素製造設備とも組み合わせられる中断していた高速増殖炉の性能試験が再開され、商用化に踏み出したのと並行して、メーカーによる中小型炉の開発も進む。それぞれ、日本にとっては原子力ビジネスを進める上で重要なカードの1つになるだろう。

 燃料を交換しなくて済むのは、2.5mの中性子反射体が1週間に約1mmずつ徐々に上に移動し、反射体部分だけを核分裂させることで反応を30年間続けさせる仕組みだからだ。軽水炉より中性子が高速で動き、出力密度が高い高速炉は小型化するのに好都合である。

 電中研と東芝は、夏期しか燃料物資を運べないアラスカにこの4sを設置するため、米国原子力規制委員会の審査を受ける予定だ。

 三菱重工業も、フランスの原子力発電大手のアレバと中型炉の共同開発に取り組んでいる。送電網の整備が遅れている地域や、大規模より中小規模の発電を必要とする都市での需要を狙っている。

 2050年に商用炉に至ると予想されている高温ガス炉も、軽水炉に比べると中小型炉に向いている。

 日本原子力研究開発機構(茨城県那珂郡)が研究している高温ガス炉は、冷却材としてヘリウムガスを充てんしている。既に、原子炉出口の温度は最高950℃を達成しており、200℃程度から950℃まで幅広い熱利用が可能な点が特色だ。

 その高温を利用して、水素製造を併設することが高温ガス炉の目的の1つといえる。水素製造には、「ISプロセス」が最も実用化に近い。ISプロセスとは、まずヨウ素と二酸化硫黄と水を反応させ、ヨウ化水素と硫酸を作る。そして高温ガス炉から、硫酸に900℃、ヨウ化水素に400℃の熱を与えてそれぞれ酸素と水素を取り出す。すると硫黄とヨウ素が残るので、再度同じプロセスで循環利用する。現在は高温ガス炉に接続するための材料開発などが課題だ。

 高温ガス炉はコストなどで軽水炉に比べて大きな優位性を打ち出せないものの、大規模な水素社会が実現すれば、大量の水素製造インフラとして注目を集めるだろう。

 また、運転にさほど水を使わないという利点から、カザフスタンなど水資源の少ない国で導入を検討しており、実証炉は海外が先になるかもしれない。日本にとっては、カザフスタンに高温ガス炉などのインフラを提供することで、資源を得る外交手段になるという見方もある。

 中小型炉や高温ガス炉は、原子力の需要が先進国から途上国に広がった場合、評価が今よりも高まる可能性があるだろう。

最新技術を集積した核融合炉

ここまでの核分裂炉なら社会情勢をにらみながら、将来の展望も描ける。しかし、社会に最も大きなパラダイム転換を生む可能性を持ちながら、100年後が全く予測のつかない核融合という技術がある。

核融合反応は、軽い原子核同士を融合させて、重い元素に変化させる反応のこと。核融合炉はその変化から生じる質量の差分だけのエネルギーを取り出せる。炉はドーナツ形状の電磁石コイルに囲まれており、炉心は物質が気体よりもさらに小さく、電荷を持った粒子として飛び回るプラズマになっている。プラズマでは、重水素や三重水素(トリチウム)といった軽い元素の燃料が電磁石コイルによる磁力線に沿って高速で運動し、核融合反応を起こす。茨城県那珂市にある核融合炉JT-60は、放射能汚染を避けるためにトリチウムを使わずに実験を行い、96年には最高5.2億℃の世界記録を達成した。ちなみに放射能を出さない重水素同士の反応には10億℃が必要で、技術的ハードルはさらに高い。

核融合炉については膨大な実験コストがかかるため、日本や米国、ロシアなど6カ国とEUが共同開発を進める、ITER(イーター)計画が進行中だ。昨年ようやく、フランスのカダラッシュで核融合炉の建設が始まった。

日本は、それまでの実績と知見を基に技術協力するほか、2割近くの機材を納入する役割がある。JT-60は今夏に解体し、7年かけて超電導コイルなどさらに改造を重ねた上、次の実験の準備を進める予定だ。

日本は青森県六ヶ所村にもITERの遠隔実験設備を設置し、ITER計画の中心的な役割を占める。そのために日本の技術や技術者は茨城県青森県、フランスと3分されてしまう。後継者不足の中で日本の核融合研究に支障も出かねないとの心配の声もある。

とはいえ、既に超電導コイルなどの発注も始まり、国際共同でいよいよ本格的な実験がスタートした。国内メーカーも対応を始めた。

原子力発電の開発は、政策や社会的受容性に左右される面が大きい。ここにきて、原子力の再評価が進む国際社会で、様々な原子力技術を生かすチャンスが出てきた。

東芝:韓国大手と関係強化 原発事業で覚書締結

2008年08月27日 毎日新聞 東京朝刊 Mainichi INTERACTIVE

 東芝と韓国の重工大手、ドゥーサン(斗山重工業)が、原子力発電事業で、関係強化に向けた検討を進めていることが26日わかった。東芝傘下の米原発大手、ウェスチングハウス(WH)が手がける加圧水(PWR)型原発の蒸気発生器の生産をドゥーサンに発注することなどを検討しているほか、関連技術の共同研究も模索している模様だ。原油高や地球温暖化を背景に、世界各国で原発の建設計画が進んでいるため、国際的な分業体制を構築し、競争力を高めるのが狙い。

 ドゥーサンはWH社と取引実績があり、東芝がこれを受け継ぐ形。すでに、関係強化に向けた覚書を締結した。東芝・WH連合が米国や中国で受注したPWR型原発の基幹部品の一部を、ドゥーサンに発注する方向だ。

 東芝は06年にWHを買収し、原発事業で世界3大陣営の一角に躍り出た。しかし、東芝はWHのPWR型と異なる「沸騰水(BWR)型」を採用。東芝はBWR型では親密な関係にある重工大手、IHIに主要機器を発注している。技術的な違いが大きいPWR型はドゥーサンを協力相手に選び、生産体制を整える。【宮島寛、宇都宮裕一】

東芝、原発受注39基計画 2015年まで 欧州にABWR販社検討

2008/06/18 FujiSankei Business i.

 東芝は17日、2015年までに39基の原子力発電所の受注を計画していることを明らかにした。20年までに世界で約150基の原発の新設が見込まれているが、東芝は「30%以上のシェア確保を目指す」(岡村潔原子力事業部長)方針だ。

 傘下の米原発メーカー、ウエスチングハウス(WH)が手がける次世代加圧水型軽水炉(PWR)「AP1000」で33基、東芝本体で手がける改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)で6基の受注をそれぞれ見込む。5月の経営方針説明会では、AP1000の受注計画しか明らかにしていなかった。

 ABWR拡販に向け、3月に米バージニア州に販売・サービスを手がける現地法人を設立。米法人が軌道に乗った段階で、欧州にもABWRの現法を設立する考えだ。

 東芝は2006年に約5000億円を投じてWHを買収。沸騰水型軽水炉(BWR)とともに、WHの加圧水型軽水炉(PWR)も手に入れ、2方式の軽水炉を持つ唯一の原発メーカーになった。

 買収後は市場の要望に応じて2方式の原発が供給できる強みを生かし、積極的な受注活動を展開。現在までにAP1000は世界最大市場の米国、中国で合計10基の受注を獲得した。17年間を予定していたWHの投資回収期間を13年間に短縮した。

 原発需要は、原油価格の高騰や地球温暖化問題を追い風に世界的に拡大傾向にある。東芝は原発を含む社会インフラ事業を、半導体事業とともに柱に据えており、原発事業の売上高を20年度に1兆円(現在約5000億円)に引き上げる計画を立てている。

日立とGE 米で次世代原子炉受注へ

2008/06/18 FujiSankei Business i.

 日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の日本法人は17日、米電力会社デトロイト・エジソンが米国内で進めている原子炉建設計画で、日立とGEの米合弁会社が次世代沸騰水型軽水炉(ESBWR)を受注する見通しになった、と発表した。

 受注額は公表していないが、2000億〜4000億円程度となる見込み。

 日立とGEの合弁会社「GE日立ニュークリア・エナジー」のESBWRを採用する米電力会社は、デトロイト・エジソンが4社目となる。

 日立とGEは、原発市場拡大が見込まれる米国市場で高出力のESBWRの売り込みを強化しており、米原発メーカーのウエスチングハウスを買収した東芝などとの競争が激化している。

大型軽水炉本格開発へ総額600億、2025年導入目指す

2007年07月13日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 経済産業省資源エネルギー庁は、電力会社や原発メーカーと共同で、現在の大型原発の約1・3倍の出力となる180万キロ・ワット規模の大型軽水炉を本格開発する方針を固めた。

 官民折半で来年度以降、総額600億円の研究開発費で基本設計を行い、2025年ごろからの導入を目指す。

 国は次世代の高速増殖炉を50年ごろから実用化する考えだが、20年代後半からは、老朽化した現行原発の建て替えが相次ぐと予想される。このため、高速炉導入までの間をつなぐ大型軽水炉について基礎的な調査を進めていた。高速炉が、熱効率の高いナトリウムを冷却材に使用し、全く新しい設計となるのに対し、大型軽水炉は、取り扱いが容易な水を利用する現行炉の延長となる。

 出力を大幅に上げるほか、核燃料のウラン濃度を高めて長期間燃焼させることで、使用済み核燃料の発生量を4割少なくすることを目指す。国内では、使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定が難航し、廃棄物問題に道筋をつけることが最優先課題の一つになっている。

 また、原子力安全委員会の新指針で認められた免震構造も積極的に取り入れる。開発には、東京電力や東芝、日立製作所、三菱重工業などが参加する。国内では、55基の原発が稼働しているが、このうち20基は1970年代に建設された。現在の安全規制は、原発の運転期間を60年としている。

ブラジル、核プログラムを再開

2007年07月11日 AFP BB News

【7月11日 AFP】ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)大統領は10日、同国が20年ぶりに核プログラムを再開する予定だと述べた。原子力潜水艦と国内3基目となる原子力発電所の完成を目指し、資金が投入されるという。

 原子力潜水艦と原子力発電所の建設は、20年前に中止されていた。

 サンパウロ(Sao Paulo)のブラジル海軍技術センターを訪れたダシルバ大統領は、記者団の質問に答え「以前と異なり、現在は資金が十分にある。このプログラムを完遂するために、必要な資金を投入することを約束する」と語った。

 ルラ大統領はまた、同国のエネルギー政策審議会(National Committee on Energy Policy)が2週間前にこのプロジェクトを承認したことを受け、リオデジャネイロ州(Rio de Janeiro)に原子力発電所アングラ3号機の建設再開を確認した。

 ルラ大統領は「われわれはアングラ3号機を完成させる。必要があれば、(原子力発電所を)さらに建設する。現在では、原子力はクリーンで安全であると証明されている」と語った。(c)AFP

欧米でも3回の臨界事故 志賀原発と同じ沸騰水型

2007年03月30日 中国新聞ニュース

 【ワシントン29日共同】欧米の原発で、試験中の誤操作による軽微な臨界事故が1987年までに3回起き、米原子力規制委員会(NRC)が88年に米原発事業者向けに警告書を出していたことが29日分かった。

 いずれも、99年に臨界事故を起こした北陸電力志賀原発1号機のように制御棒を下から炉心に入れる沸騰水型原子炉だった。

 88年5月9日付のNRCの文書によると、73年11月、米バーモント州のバーモントヤンキー原発で、検査のため抜いた状態だった制御棒の隣の制御棒を誤って抜き、炉心の一部が臨界状態になった。圧力容器と格納容器のふたは開いたままだった。

 76年11月には米コネティカット州ミルストン原発1号機でも同様の誤操作で臨界状態に。この2事例では制御棒が自動的に挿入される緊急停止で、臨界は止まった。

 スウェーデンのオスカーシャム原発3号機では87年7月、制御棒の効果を調べる試験中に制御棒を抜いていたところ想定外の臨界状態になったが、運転員が気付くのが遅れ、しばらく臨界状態が続いた。

米原発建設に貿易保険 日本企業参入を後押し

2007/01/08 中国新聞ニュース

 【ワシントン7日共同】米国での原子力発電所建設に対し、貿易保険の仕組みを適用して日本が支援することで日米両政府が基本合意したことが7日、分かった。訪米中の甘利明経済産業相とボドマン・エネルギー長官が9日に会談して正式に決める。

 最近の原油高を背景に米国では原発の新規建設計画が相次いでいる。1基あたり数千億円とされる巨額の建設費用の一部に日本の公的制度を適用することで、日本企業の事業参入を後押しする狙いがある。

 貿易保険は、貿易や海外投資に伴って日本企業が受けた損害を補償する制度。東芝や日立製作所など国内メーカーが米国の建設プロジェクトに参加した場合に適用することを想定している。

 米国での原発建設には安全性などをめぐって認可が大幅に遅れるといったリスクが指摘されており、米政府も債務保証などで支援していく方針という。

25年までに実証炉、国の「原子力立国計画」まとまる

2006年06月16日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 経済産業省資源エネルギー庁は16日、今後の原子力推進施策の基本となる「原子力立国計画」をまとめた。

 エネルギーの安定供給や温暖化対策などから原子力発電の重要性を再確認し、民間の主体性に任せてきた姿勢を転換、国が積極的に原子力事業を主導する方針を明確にした。

 具体的には、電力会社の投資環境を整備して原発の新増設や建て替えを促し、2030年以降も原発が総発電量の3〜4割以上を供給できるようにする。当面の対策として、電力会社の経営上の懸念となっている新規原発や第2再処理工場の建設資金の事前積み立て制度を今年度決算から導入する。

 核燃料サイクルの要となる高速増殖炉については、実用化の一歩手前である実証炉を2025年までに建設することを目指し、国家予算の重点配分を求めていく。

 同省と文部科学省、日本原子力研究開発機構、電力業界、原発メーカーの5者が参加する研究会をこの秋までに発足させ、官民あげての開発体制を早急に整備する。

官民あげて高速炉開発へ…原子力立国の計画骨子

2006年05月30日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 経済産業省資源エネルギー庁は30日、中長期的に原子力利用を推進し、エネルギーの安定確保を目指す「原子力立国計画」の骨子をまとめた。

 電力自由化の影響で経営環境が厳しくなっている電力会社に任せるだけでは、将来の原子力利用が後退しかねないと判断、国が原子力推進を主導する姿勢を打ち出した。

 計画の中核となる高速増殖炉については、同省と文部科学省、日本原子力研究開発機構、電力業界、原子炉メーカーの5者が参加する研究会をこの秋までに発足させ、官民あげての開発体制を整える。実用化の一歩手前となる実証炉を2025年までに建設することを目指し、国の予算上も重点的な配慮を求めていく。

 一方、30年以降も原子力発電が総発電電力量の3〜4割以上を供給するとの目標を達成するため、電力会社が新設炉や第2再処理工場の建設資金を積み立てる制度を今年度決算から導入する。現在の原発(軽水炉)の多くは、高速炉の実用化前に建て替えが必要となることから“つなぎ役”となる次世代型軽水炉の研究開発にも今年度から入る。

高速増殖炉、2025年稼働へ 自民党「総合エネルギー戦略」で中間報告

2006/05/24 FujiSankei Business i.

 自民党は二十三日、高速増殖炉(FBR)実証炉の建設・運転開始時期を従来計画より五年前倒しの二〇二五年とし、原油輸入量に占める自主開発比率を現在の15%から三〇年に40%に引き上げるなどの数値目標を盛り込んだ「総合エネルギー戦略」中間報告をまとめた。エネルギー戦略を「国家戦略」として明確に位置づけるとともに、目標を実現するための具体的な手法も明記したのが特徴で、日本のエネルギー戦略の基本的な方向を示した。

 ≪国の計画に反映≫

 自民党はこの戦略を経済産業省・資源エネルギー庁が六月にまとめる「新・国家エネルギー戦略」や、秋に国が策定する「新・エネルギー基本計画」に反映させる。

 同戦略の中で、FBRについては、発電しながら消費した燃料以上の燃料を生産でき、日本のエネルギー安定供給に大きく貢献する国家基幹技術として強力に開発するとした。二五年に実証炉建設・運転開始、商業炉運転も五〇年より五年前倒しすることをめざし、開発ペースを加速させるため、電源開発促進対策特別会計の積極活用を含めた予算確保などが必要としている。

 また、高レベル廃棄物の最終処分場確保問題は、今後一、二年が正念場との認識を示した。処分場を受け入れる地区への応募の獲得策として、電源立地地域対策交付金の拡充を盛り込んだ。

 ≪日の丸メジャーを≫

 一方、原油の自主開発比率の引き上げ、資源確保では、「日の丸メジャー(国際石油資本)」の育成強化が不可欠。このため、石油天然ガス・金属鉱物資源機構や国際協力銀行、日本貿易保険のリスクマネー供給などを求めた。

 自民党は(1)原油価格の高騰でメジャーに中国、インドも加わった資源開発競争が激化(2)地球温暖化の進行(3)日本のエネルギー自給率は4%(原子力を含めても19%)にすぎず、原油の自主開発比率も15%で、エネルギー安全保障が懸念されている−などから、エネルギー問題についての総合的な戦略が必要と判断。今年一月に「エネルギー戦略合同部会」を設け、資源開発、原子力推進、新エネルギー推進の三つの分科会で検討を進め、総合エネルギー戦略をまとめた。

 二十三日、国会内で記者会見した合同部会の尾身幸次会長は「これまでマーケットメカニズムが中心だった資源確保を国家戦略とし、資源外交を展開する。科学技術協力により資源国と関係強化を図る」とし、資源確保の重要性を強調した。また、加納時男・合同部会事務局長は「原子力は環境適合とエネルギーセキュリティーの両立の切り札。FBR開発を進めるとともに、現行の軽水炉の稼働率向上と二〇三〇年以降のリプレース(建て替え)で発電に占める原子力の比率を大幅に高めたい」と語った。

                   ◇

 【自民党・総合エネルギー戦略のポイント】

〈戦略目標〉

 ▽地球レベルでの持続的社会の実現

 ・CO2濃度の安定化

 ・先端省エネ技術の世界への普及

 ・エネルギー供給の脱炭素化

 ▽日本のエネルギー安全保障の確立

 ・エネルギー自給率、自主開発比率の向上

 ・水素の活用、バイオマスニッポンの実現

 ・FBRサイクルでフロントランナーに

〈目標達成に向けた個別戦略〉

 ▽資源確保戦略の構築

 ・科学技術協力で資源国と関係強化

 ・「日の丸メジャー」育成し、自主開発比率を現行の15%から2030年に40%

 ▽原子力利用の抜本的強化

 ・原子力比率を大幅に高める

 ▽エネルギー安全保障、安全確保

 ▽原子力平和利用と核不拡散の両立

 ▽ポスト京都議定書で米中が参加する枠組み

〈脱炭素化への技術開発戦略〉

 ▽原子燃料サイクルの推進

 ・FBR実証炉建設・運転開始を5年前倒しの2025年、商業化も2050年より前に

 ・高レベル廃棄物の処分で国の役割強化

 ▽省エネ技術の開発・普及

 ▽再生可能エネルギーの活用

 ・バイオマスエタノールの輸入・国産の検討推進

 ▽化石燃料のクリーン・効率的利用

 ・当面は自動車用燃料の効率化と多様化

 ・中期的にはメタンハイドレートなど

 ・CO2回収貯留の研究開発

原子力依存11%から20%に エネ研の長期エネルギー需給展望

2006/04/25 The Sankei Shimbun

 日本エネルギー経済研究所は25日、平成42年までのわが国の長期エネルギー需給展望をまとめた。原油価格が歴史的な高値となる中で、1次エネルギーに占める石油依存度は16年の47%から37%に低下すると予測。これに代わって、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原子力は11%から20%に、燃焼時のCO2排出量が石油よりも少ない天然ガスも14%から18%にそれぞれ上昇するとし、エネルギーの低炭素化が進むとしている。

 CO2排出量も現在をピークに減少し、42年には16年比で14%減少するとした。42年の水準は2年の排出量も下回るが、22年時点では2年に比べて8.5%増えるとみている。

 京都議定書によって、日本はCO2など温室効果ガスを、基準となる2年に比べ、20−24年で6%の削減が義務付けられている。

 政府はエネルギー起源のCO2排出量を2年比0.6%増にとどめる目標を掲げているが、エネ研では「あらゆる手段を講じても京都議定書の達成は難しい」(森田裕二研究理事)と指摘している。

独の原発廃止2年延長決定、環境団体が猛反発

2002年10月15日 Yomiuri On-Line
 【ベルリン15日=宮明敬】稼働から32年で順次廃止するとした2000年6月のドイツの原発廃止合意に基づき、今年末に廃止原発第1号になるはずだったオーブリッヒハイム原発(独南西部バーデン・ビュルテンベルク州)の稼働期間が14日、さらに2年延長されることが決まった。同原発経営者から5年半の稼働延長要請を受けたシュレーダー首相(社民党)が、連立与党の緑の党に「2年延長」をのませた結果で、環境保護団体や緑の党の内部から、「原発廃止合意を骨抜きにするもの」との批判が出ている。

 原発廃止合意では、全19基の原発の1基ごとの総電力生産量が決められ、総量を生産し終えると廃止されるのが原則。ただ、古い原発を早めに廃止すれば、残った許容生産量を新しい原発に上積みして、その稼働期間を延ばせる「柔軟措置」も盛り込まれていた。

 だが、今回は、比較的新しい原発の発電総量を減らして、オーブリッヒハイム原発の寿命を延ばした。しかも、同原発は、原子炉の緊急冷却システムの不備を10年間隠して運転を続けるなど、安全性にも疑問が投げかけられている。

 トリッティン環境相ら緑の党の幹部がこの例外措置を認めたのは、社民党から「反対すれば、(保守政党、キリスト教民主・社会同盟との)大連立も考える」と迫られたためと伝えられる。

建設中の原子力発電所を廃止へ 台湾

2000.09.29(22:24)asahi.com
 台湾・行政院(内閣)の林信義・経済部長(通産相)は30日、唐飛・行政院長(首相)に台湾電力が台湾北部で建設中の第4原子力発電所の「即時工事中止」を進言する。29日付の台湾各紙が報じたもので、行政院は10月末にも結論を出す。「原発の新設反対、代替エネルギー開発で既存原発も廃止」を党綱領でうたう民主進歩党(民進党)の陳水扁総統は、廃止に持ち込みたい構えだ。

 今年5月の陳政権の発足後、経済部は専門家による再評価委員会で、代替エネルギー案も含め検討してきた。陳総統は今月16日の記者会見で、原発建設は「エネルギー政策や安全問題だけではなく、(子孫に対する)良心と道徳の問題」と訴えた。だが、立法院(国会)で多数を占める国民党は建設推進の立場で、折衝は難航しそうだ。

 台北市から40キロの台北県貢寮に建設中の第4原発は、国民党時代に建設が承認され、1号機は2004年、2号機は2005年完成を目指す。米ゼネラル・エレクトリック社が受注、原子炉関連機器は日立製作所など、発電機は三菱重工業が請け負う。工事と発注の約3割が済んでおり、国民党は「発注済み事業の廃止は国際信用を失う」と訴える。

 台湾にとって着工中の大型プロジェクトの廃止は初めてで、今後の法的対応も未整備だ。特別立法や憲法改正が必要とする見解もある。民進党内からは、台湾初の「住民投票で決すべきだ」との意見も出てきた。

 台湾電力によると、台湾では1978年に第1原発が完成。第3原発まで建設され計6基が稼働している。全発電量の25.3%を占める。

原発の新設・増設目標示さず 原子力長計の素案

2000.07.24(15:49)asahi.com
 政府の原子力委員会(委員長、大島理森・科学技術庁長官)の「長期計画(長計)策定会議」は24日、2001年度以降の原子力政策の基本方針を示す報告書の素案を固めた。度重なる原子力事故やトラブルで、原子力発電や核燃料サイクル政策を推進することに懸念を抱く国民が多くなったことなど情勢変化を認め、各計画の達成目標時期を示すのをやめた。研究開発以外の原子力利用は民間の意欲や自主性によって推進することを強調、国策としての枠組みを緩めた。

 素案は、原子力利用での国の役割について、基本方針や安全ルールづくり、基礎的・基盤的な研究開発などに責任を持つとした。

 また、使用済み核燃料を再処理する核燃料サイクルの推進をこれまで通り国の基本的考えとし、高速増殖炉を中心とするサイクル技術の研究開発を着実に進め、原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)をその中核とすることを求めた。

 しかし、基幹電源である原発の今後の新設・増設目標は示さず、「電源構成に占める原発の割合を適切なレベルに維持する」とし、高速増殖炉の実用化計画についても「時期を含め柔軟に対応していく」と述べるにとどまった。

 長計は、5―6年ごとに改定され、前回は1994年に策定された。その後、「もんじゅ」の事故や、茨城県東海村の民間ウラン加工施設で臨界事故が起きるなど、原子力施設での事故が相次ぎ、長計を柱とする国の原子力政策が大きく揺らいでいた。

 同会議はこの素案をたたき台にして8月の会合で報告書案をまとめる予定だが、委員からは「具体的な政策提言が足りない」との声も上がっている。

ドイツの緑の党、政府の脱原発合意を承認

2000.06.24(12:05)asahi.com
 ドイツ・シュレーダー連立政権の与党、90年連合・緑の党は23日、同国西部のミュンスターで開いた党大会で、政府と電力業界が先に合意した国内19基の全原発の段階的廃棄について、賛成多数で承認した。原子力産業寄りの合意だとして、党内からは「連立から離脱すべきだ」とする強い反対意見も出ていたが、党執行部は歴史的成果を強調して切り抜けた。

 連立政権内がまとまったことで、政府は新規の原発建設を禁止し、使用済み燃料の再処理をやめ、2005年夏以降は最終処分場に直接持ち込むことに限定することなどを骨子とする原子力法の改正案づくりを本格化させる。

 党大会では、同党に所属するトリッティン環境相が政府と電力業界の合意を90年連合・緑の党が政権入りしたから勝ち得た「緑の成果」と強調。「承認しなければCDU・CSU(野党のキリスト教民主・社会同盟)を喜ばせるだけ」と述べ、承認を訴えた。投票の結果、賛成433票、反対227票だった。

 電力業界との合意は、原発が今後発電できる電力量を90年連合・緑の党の要求よりも多めに算定し、最後の原発がいつ廃棄されるかという具体的な廃棄計画がないなど、党内から強い批判があった。しかし、この日は、過激な発言や目立つ抗議行動もなく、反原発の市民運動から誕生した90年連合・緑の党が、政権を担う政党へと脱皮した姿を印象づけた。

ドイツ政府、原発の順次廃棄で電力会社と合意

2000.06.15(15:06) asahi.com
 原子力発電からの撤退を目指すドイツのシュレーダー首相は15日未明(日本時間同早朝)、原発の平均寿命を運転開始から約32年とし、国内19基の原発を順次廃棄していくことで電力4社と合意した、と発表した。電力供給の約3割を担う原発を、国全体で廃棄しようという画期的な試みだ。今後は原発新規建設の禁止や廃棄の道筋を示した法規定を整え、代替エネルギーの開発を急ぐ。

 シュレーダー首相によると、電力側との合意は、原発の平均運転期間を約32年とし、現在停止中の1基を含む国内20基の原発による今後の総発電量を約2.6兆キロワット時と算定した。効率などを考えて今後の発電量を各原発に割り振り、割り当てが済んだ原発から順次廃棄していく、という内容で、個々の原発をいつ止めるかについては明示しなかった。

 また、使用済み核燃料の再処理についても、遅くとも2005年夏まででやめ、今後の使用済み燃料の扱いは、最終処分に限定する。

 政府と電力側との協議は昨年初めから開始され、電力側は採算の面などから平均運転期間35年を主張してきた。政権内でも30年を提案する社会民主党(SPD)に対し、連立パートナーの90年連合・緑の党は出来るだけ早い廃棄を求め、足並みがそろわなかった。

 今回の合意では、全体の発電量を個々の原発に割り振る方法をとるため、古くて効率の悪い原発には少ない発電量を割り振り、運転期間を短くすることが出来る。1972年に運転を開始した最も古い原発は、平均よりも早く2年以内に停止させることも可能になり、緑の党も歩み寄った。

 その代わり、効率の良い原発には多くの発電量を割り振り、32年よりも長く発電を続けるものも出てくる。最も新しい原発は89年に運転を開始したため、平均をとれば2021年ごろの廃棄となるが、実際には数年遅れる可能性が出てきた。90年連合・緑の党などの反発も予想される。

 この合意に基づいて政府は、現行の原子力法に再処理の禁止や、新規原発の建設禁止を盛り込んで改正した脱原発法案をつくり、議会に提出する方針。稼働中の原発の多くは減価償却が進んで発電単価が安くなっており、残りの運転期間中に生じる利益などが代替・再生エネルギーの開発に向けられることになる。

高速増殖炉「将来計画は柔軟に」原子力長計分科会が提言

2000.05.29(20:46) asahi.com
 高速増殖炉を軸とする今後の核燃料サイクル(FBRサイクル)技術の研究開発について、国の原子力委員会長期計画策定会議の第3分科会は29日、報告書をまとめた。炉の規模や形式、再処理技術などについて幅広く検討し、将来計画を柔軟に進めるべきだ、と提言している。

 一方、ナトリウム漏れ事故で停止している高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)は研究開発の場の中核として早期に再開し、運転実績を積み重ねることが必要と指摘した。

 FBRサイクルの研究開発は、ロシアや中国など熱心な国がある一方で、欧米の原子力先進国のほとんどは開発を中止したり方向転換を図ったりしている。

 「(日本は)先進国追従型ではなく、先導的な役割を担う立場に置かれた」と現状を認識。長期的な状況変化に対応するために、高速増殖炉や使用済み核燃料の再処理の方式を幅広く研究していくことを強調する。もんじゅの運転経験は、選択肢を探るときの重要な基盤になるとしている。

 また、研究開発であっても経済効率の追求は不可欠とし、競争原理を導入し、権限と責任のけじめをつけることを求めている。

2020年めどに原発全廃

2000年05月16日 17時35分【ストックホルム共同】
 スウェーデンのペーション首相はこのほど共同通信と単独会見し、同国が進めている原子力発電所全廃政策に関連し、2020年をめどに全11基の閉鎖を考えていることを明らかにした。スウェーデンは1980年に原発全廃を国民投票で決め、昨年11月にはバーシェベック原発を閉鎖した。しかし産業競争力への影響などから当初2010年とした全廃時期の設定は97年に撤廃していた。

エネルギー政策の抜本的見直しへ 10年ぶりに調査部会

7:09p.m. JST April 24, 2000
 通産相の諮問機関、総合エネルギー調査会の総合部会(部会長・茅陽一東京大名誉教授)が24日、通産省で開かれ、21世紀に向けた国のエネルギー政策の抜本的見直し作業がスタートした。調査会の最高機関ともいえる総合部会が開かれるのは1990年以来約10年ぶりで、脱原発を訴えて活動している非政府組織のメンバーも初めて委員に加わった。今後約1年かけて議論を進め、長期的な視野に立ったエネルギー需給見通しを改定する。

 総合部会は学識経験者など約30人の委員で構成。最も大きな焦点になりそうなのが、原子力発電所の増設目標削減を含めた長期的な原子力政策のあり方で、相次ぐ原発関連の事故で新規立地の環境は格段に厳しくなっている状況にどう対応するか注目されている。

 一方、二酸化炭素(CO2)削減に向けて、太陽や風力など自然エネルギーなど新エネルギーの活用やいっそうの省エネ推進もテーマになる。アラビア石油の権益失効でエネルギー調達戦略のほころびも目立っており、原油や天然ガスの安定供給に向けた新たな方策の確立も重要課題だ。

 初会合で茅部会長は「実現性がある政策を考えると同時に、はっきりと根拠を示していきたい」との方針を示した。一部の委員からは「『まず原発ありき』ではなく、新エネルギー導入の可能性を真剣に探るべきだ」といった指摘があった。

自民の「原発地域振興法案」原案が判明

03:10a.m. JST April 15, 2000
 自民党が検討してきた、原子力施設のある地域への新たな振興策を盛り込んだ法案の原案が14日、明らかになった。今国会への提出を予定している。原発などのある自治体にはすでに特別財源から交付金などが支給されているが、道路、鉄道など大型の公共事業のために一般財源からの支出を可能としているのが特徴で、将来の原発新設を促す狙いもある。だが、今国会では、自民を含む超党派の国会議員が風力など自然エネルギー発電の促進法案の提出も計画しており、エネルギー政策のあり方ともからみ、対立も生まれつつある。

 自民党の電源立地等推進に関する調査会(桜井新会長)は来週中にも「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法案」(仮称)を党内に示す予定だ。原案によると、首相を座長に蔵相、通産相など関係閣僚と学識経験者から成る原子力立地会議が、地元の知事の提案に基づいて、公共事業などを盛り込んだ振興計画を審議する。計画達成のためには一般財源からの支出や自治体による地方債の起債も可能とする内容だ。

 原子力施設を抱える自治体にはすでに、電気料金に上乗せされている電源開発促進税(電促税)を集めた特別会計から、年間に1600億円を超える交付金が支給されている。だが、昨秋の茨城県東海村の臨界事故を機に、自治体から「見返り」拡大を求める声が強まった。

 一方、自然エネルギー促進法に関しては共産党を除く各党の国会議員約250人による自然エネルギー促進議員連盟(愛知和男会長)が、風力や太陽光などで発電した電力の買い取りを電力会社に義務づけ、電促税を財源とする支援を内容とする法案を練っており、今国会での提案を目指している。ところが、自民党内では「自然エネルギーの買い取り義務化は電力自由化の流れに逆行する」とする声が強まり、「原発振興の新法は選挙対策のばらまき」と批判する「自然エネルギー派」との摩擦が生じている。

オランダ行政裁判所が政府の脱原発決定無効の判決

00:59a.m. JST February 27, 2000
 オランダの行政裁判所は24日、唯一の原子力発電所であるボルセラ原発を2003年末に閉鎖する政府決定を無効とする判決を下した。

 オランダ政府は1994年に国内の原発2基の閉鎖を決定、97年にドーデワルト原発を閉鎖。南部ゼーラント地方のボルセラ原発が残っていた。判決は、同原発を所有する南オランダ電力会社の従業員らとの協議が十分尽くされていないとしている。

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