TOPIC No.3-0 環境Topic

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No.3-0-2 2001年- 環境未整理情報


住民の毛髪水銀量、日本人の3〜7倍…南米の仏領ギアナ

2008年04月17日 読売新聞 Yomiuri On-Line

水俣病総合研究センターが世界の水銀汚染地調査

 国立水俣病総合研究センター(水俣市)は、世界8か国の水銀汚染地などの住民への影響調査をまとめた。毛髪の水銀量は、金の採掘が盛んな南米・フランス領ギアナの男性から日本人の平均の約3倍、女性から約7倍の濃度を検出する一方で、同様に金採掘を行っている他の地域での濃度は低かった。ギアナでは魚を食べるが、他地域ではあまり食べないことから「魚食の習慣の有無が関係しているのでは」と分析している。

 同センターはこれまで、世界各地の水銀汚染地で河川や土壌などの水銀濃度を調査してきた。水銀は金鉱山で精錬用に使われ、河川などの汚染が問題になっているが、健康被害の全容は判明していない。このため、地球規模での被害状況を把握しようと2003年に調査を始めた。

 各国の研究者や環境団体などに、被害が懸念される地域の住民の毛髪を送るよう協力を依頼。金を採掘する地域を抱えるギアナ、コロンビア、インドネシア、ベネズエラや、工場からの水銀汚染が懸念されるカザフスタン、魚食が盛んな中国、韓国、ベナンから計約2100人の毛髪が集まった。

 ギアナでは、計269人の水銀濃度を調査。男性の平均は7・8ppm、女性は9・5ppmで、日本人(男性2・7ppm、女性1・5ppm)より大幅に高かった。しかし、水銀中毒の発症可能性があるとされる世界保健機関(WHO)の基準値50ppmに達した人はおらず、明らかな健康被害も確認されていないという。

 ギアナでは魚を食べる習慣があり、メチル水銀の割合も高かったことから、魚食による水銀摂取の可能性があるとみている。その他の地域は男女とも、0・4〜2・6ppmだった。

 同センターの藤村成剛・病理室長は「金採掘や工場排出などによる水銀汚染は世界各地で問題になっており、住民への汚染が危惧(きぐ)されている。汚染が疑われる地域の住民の水銀量を測定し、注意喚起に貢献したい」と話している。


個人や地域の取り組みの重要さを指摘 15年版の環境白書

2003年05月30日 The Sankei Shimbun
 政府は30日の閣議で、15年版の環境白書を決定した。温暖化など地球規模の環境問題解決に向け、個人や地域レベルでの取り組みが重要だと指摘している。

 3月に閣議決定した循環型社会形成推進基本計画を、具体的な実例を挙げ解説した15年版の循環型社会白書も決めた。

 環境白書は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(Co2)の家庭からの排出量が日本の場合、12年度までの10年間で20・4%増えたことなどを例に挙げ、個人の日常生活が産業活動と同様、環境に対する負荷を増大させる要因になっていると分析。

 その上で、家庭用洗剤の詰め替え製品が短期間で普及したように、個人の環境保全意識の高まりが企業の技術開発や行政の施策を促し、持続可能な社会構築に向けた変革の大きな原動力になる可能性を指摘した。

 また住民、自治体、企業などが地域全体で環境問題に取り組む意識や能力を「地域環境力」と名付け、それを向上させることが地域の環境悪化を食い止めるだけでなく、地域の社会経済活動を活性化する効果を強調。

 豊かな自然と景観の保全に配慮したまちづくりで観光振興に成功した大分県湯布院町や、休耕田で栽培した菜の花を食用のほか燃料、肥料などにも活用する滋賀県での資源循環型ビジネスの例を紹介している。

川辺川訴訟で国が上告断念

2003年05月19日 The Sankei Shimbun
 熊本県に国が建設計画中の川辺川ダムを利用する利水事業計画の是非が争われた「川辺川利水訴訟」で、福岡高裁が16日に反対派農家逆転勝訴の判決を言い渡したのを受け、亀井善之農相は19日夜、記者会見し、上告を断念する方針を発表した。

 亀井農相は上告断念の理由について、受益農家の3分の2以上の同意がないという高裁判決の事実認定を覆すことはできないと判断した、と説明。

 一方で「地域の農業者がダムの水を利用することは重要だと思う。土地改良事業は進めていく。関係者と協議して決める」とし、利水事業自体は進める意向を示した。

 原告の農家側は、農水省が1984年に決めた利水事業計画を一部変更した94年の手続きについて、異議を申し立てたのに農相に棄却されたため、棄却決定を取り消すよう求めていた。

 福岡高裁判決は、土地改良法で必要とされる、事業対象農家(最大約4000人)の3分の2以上の同意が得られたかについて「関連3事業のうち農業用用排水と区画整理の2事業で3分の2に達しておらず違法」と認定。この部分の農相決定を取り消した。

 亀井農相は、上告を断念した時期について「本日(19日)、推進側、原告側双方の話を聞き、法務省とも協議し、夕刻決断した」と説明。

 農家側の梅山究団長らは同日、亀井農相に会い「3分の2に達しないという事実認定を重く受け止め、上告するべきではない。大臣が上告を断念しなければふるさとに帰れない」などと訴えていた。

 一方、川辺川流域で土地改良事業を推進する1市5町村の首長らも、これとは別に亀井農相と会談し「地域にとって利水事業は不可欠。事業は継続してほしい」と要請していた。

琵琶湖の7カ所で赤潮

2003年05月19日 The Sankei Shimbun
 滋賀県は19日、琵琶湖の同県彦根市沖など7カ所で淡水赤潮が発生しているのを確認したと発表した。規模は最大で長さ5キロ、幅4キロ。1日に見つかった個所数としては1981年5月の14カ所以来、最多という。

 同課によると、今のところ漁業や水道水に影響はない。植物プランクトンの「ウログレナ・アメリカーナ」の異常増殖によるもので、同課は「5月に入って水温が上昇し、発生条件が整ったためではないか」としている。

マイカー規制し課税開始 乗鞍スカイライン

2003年05月15日 The Sankei Shimbun
 中部山岳国立公園内の北アルプス・乗鞍岳の山岳道路「乗鞍スカイライン」が15日、マイカーなど一般車両の乗り入れを禁止して、半年ぶりに開通。岐阜県は通行を認めたバスやタクシーを対象に、全国の国立公園で初めて環境保護のための法定外目的税「乗鞍環境保全税」の徴収を始めた。

 冬季の間、閉鎖していたふもとの平湯峠ゲートは午前7時にオープン。心配された雨も上がり、バスやタクシーが次々と山頂に向けて出発した。

 環境保全税は山頂に近い駐車場に入った際に駐車代と合わせて支払う仕組み。税額は乗客30人以上の観光バス1台3000円、シャトルバス同2000円、タクシー同300円。

 乗鞍スカイラインは1973年に有料道路として開設。道路建設費の償還を終え今年から無料になるのを機に、自然環境を守るため通行をバスやタクシーに限定し、課税する条例が昨年10月、県議会で成立した。

 徴収した税金は、国の特別天然記念物ライチョウの生息調査や環境パトロール員の配置費用に使われる。

プランクトンの死がい? 有明海に謎の浮遊物

2003年05月07日 The Sankei Shimbun
 長崎県の有明海沿岸部で、ドロドロとした正体不明の浮遊物が広範囲に見つかり、漁網に付着するなど被害が出始めたため、長崎県と三池海上保安部が7日、対応策の検討を始めた。海藻類、プランクトンの死がい、ヘドロなど諸説が噴出。県総合水産試験場がサンプルを採取し調べている。

 三池海上保安部などによると、浮遊物は黄土色の繊維状で、においや粘着性はないという。巡視艇の調査で、諌早湾の開口部から対岸の三池港方向に約13キロにわたって点在しているのを確認。

 このほか、島原半島の深江町や西有家町などの各漁協からも被害の報告が相次いでおり、諌早湾開口部にある小長井町から、島原半島南部の南有馬町まで約50キロの広い海域に広がっているとみられる。

 島原漁協(長崎県島原市)の漁業男性(54)は「長年漁をしているが、初めて見るものだ。網目がなくなるほど付着して魚がかからず、仕事にならない」と困惑している。

成長促進「効果なし」 家畜飼料用の抗生物質12種

2003/05/05 中国新聞ニュース
 家畜の成長促進用の飼料添加物として使われてきた抗生物質と合成抗菌剤計十二種類について、ブロイラーを対象に「添加物使用」と「無添加」に分けて投与した実験で「成長に差は見られなかった」との結果が出ていたことが四日、農水省の一九九一年当時の内部報告書で分かった。

 家畜への多用が抗生物質の効かない薬剤耐性菌を生んだ一因とされ、人体への影響も懸念されている中で、農水省は報告書を公表せず、投与を放置する形になっていた。同省は「報告書の目的は抗生物質の効果を調査することではない。他のデータで効果は証明されている」としている。

 内部報告書のタイトルは「抗菌性飼料添加物の食肉等への残留調査報告書」で、まとめられた日付は九一年三月。

 調査は農水省が国内の試験機関に実験を委託。飼料安全法で飼料添加物に指定している抗生物質と合成抗菌剤計二十九種類のうち、既に指定を取り消された一種類を含む十二種類を調べた。

 実験対象は豚計約百六十匹とブロイラー計約二百七十羽。九〇年五月から十月まで豚は四週間、ブロイラーは八週間飼育し、これらの抗生物質を「使用した場合」(量は四段階)と「無添加の場合」に分けて体重の推移のデータを集めた。

 内部報告書は、ブロイラーについて「抗生物質の無添加と添加に著しい差は認められず、いずれも順調な発育を示した」と結論。豚の方は「発育にやや差が見られたが、一定の方向は認められない」としている。

 食肉への残留に関しては一種類がブロイラーの肝臓への残留を検出。残りの十一種類は「可食部位への移行は認められなかった」と報告された。

 報告書は試験機関から農水省衛生課に届けられたが、未公表のまま死蔵する形で保管された。

 家畜への抗生物質使用をめぐっては、大量投与された鶏がバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の出現に深くかかわったとされ、食肉を通して抗生物質が人体に蓄積する問題も指摘されている。

マグロ漁獲:米がEUに削減求める書簡 乱獲で減少

2003年05月03日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 エバンズ米商務長官はこのほど、大西洋でのクロマグロとカジキマグロの一種であるニシマカジキの資源量が、欧州連合(EU)加盟国による乱獲が原因で減少しているとして、漁獲量の削減を強く求める書簡をラミー欧州委員(通商担当)に送った。

 長官は「EUとの貿易関係への重大な摩擦に結び付く可能性がある」と警告。今後の交渉次第では米欧間の亀裂が深刻化する恐れがある。

 高級「すしネタ」となるクロマグロは、EU加盟国が操業する東部大西洋での漁獲量の約半分を日本が消費。水産庁は「漁獲量が大幅に削減されると、輸入量が減り日本での価格が上昇する可能性もある」としている。

 長官は、漁獲量を決める大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT)が、東部大西洋でのクロマグロの年間漁獲枠を、EUからの提案に沿う形で、科学的調査に基づく水準より約6000トン多い3万2000トンに設定しようとしていると指摘。EUに対し漁獲枠の削減に同意するよう求めている。(ワシントン共同)

キルギスでウラン処分場崩壊の恐れ

2003年05月02日 The Sankei Shimbun
 キルギス政府は2日までに、放射性物質ウランの廃棄物処分場が地滑りで崩壊する危険性が高まっているとして、国連などに緊急支援を求めた。最悪の場合、周辺国を含め中央アジアに広範な放射能汚染が起き、300万人以上が被ばくの危険にさらされるという。

 同国南部の山岳地帯では4月20日、大雨で大規模な地滑りが発生し、住民38人が死亡した。ウランのくず鉱を廃棄した処分場が23カ所ある周辺のマイルウスウ地区でも今後地滑りの危険があるとされる。

 キルギス環境保護・非常事態省によると、地滑りで処分場が崩壊し、放射性廃棄物が周辺に流出した場合、シルダリヤ川を経由してアラル海を汚染、さらに隣国ウズベキスタンやカザフスタンにも深刻な放射能被害をもたらす恐れがある。

 このためキルギス外務省は、住民の避難先確保と地滑り防止工事が急務として、国連や各国政府、非政府組織(NGO)などに財政支援や技術支援を求めた。

 キルギスはウラン生産国で、旧ソ連時代には核兵器の原料としてウラン鉱山がフル稼働していた。しかしソ連崩壊後は廃鉱や廃棄物処分場の安全対策がおざなりにされ、地震などによって放射能汚染が起きる危険性が指摘されていた。(共同)

魚粉飼料にカドミウム 最高で基準の3倍

2002/12/15 中国新聞ニュース
 魚とその内臓物を原料として製造する家畜や養殖魚の魚粉飼料の中に、長期間摂取すると腎障害を引き起こす重金属の有害物質カドミウムが、最高で基準の三倍近くの濃度で含まれていたことが農水省の調べで十四日、分かった。同省は飼料安全法違反の疑いで、業者七社に対して始末書の提出を求めるなど改善指導した。

 こうした飼料を食べた家畜や魚を介しての人体への影響について農水省は「直ちに危険があるとはいえない」としているが、専門家は「カドミウムは体内に蓄積しやすく、安全性の認識が甘い」と指摘している。

 牛海綿状脳症(BSE)問題や無登録農薬事件、牛肉偽装事件など食品の安全性への信頼が揺らぐ中、飼料の有害物質対策も早急に求められそうだ。

 農水省は昨年十月から今年三月まで、全国の約四百の飼料製造業者の工場などを立ち入り調査した。

 飼料には魚とその内臓を使う魚粉と、魚粉にトウモロコシなどを入れて使う配合飼料がある。農水省が定めた飼料の有害物質の指導基準によると、魚粉のカドミウムの含有量の基準は二・五ppmで、配合飼料は一・〇ppm。

 基準を超えるカドミウムを検出したのは千葉県、愛知県、富山県、兵庫県、広島県、鳥取県、島根県の各業者。いずれも魚粉から二・八四―七・一三ppmのカドミウムを検出した。兵庫県の業者は昨年十月、他の業者は同十二月に製造した魚粉から基準超過のカドミウムが見つかった。

 農水省から改善指導を受けた広島県内の業者は基準を超えたカドミウムを検出したことについて「びっくりした。今後は自主的に飼料の重金属含有量を調査したい」と話している。

 農水省は「トウモロコシなどを入れて配合飼料として使用すれば、濃度も低くなる」と安全性を強調。同省はカドミウムが混入した原因として海水の汚染で魚に残留していた可能性が高いとしている。

タイ工場製ビーフンの箱から蛍光染料、9トン回収へ

2002年12月07日 Yomiri On-Line
 神戸市中央区の食品販売業「ケンミン食品」が製造、販売した「ケンミンビーフン(ショートタイプ)150g」の紙トレーから食品衛生法で禁止されている蛍光染料が検出され、同市保健所は6日、3340ケース(計9・3トン)の回収命令を出した。健康への影響はないという。

 問題の商品はタイ工場で製造。同じトレーを使った商品を毎月26トン輸入、出荷しているといい、同社はこのトレーを使った商品をすべて自主回収する。

タイ産香草から基準超える農薬検出

2002年12月06日 Yomiri On-Line
 タイ料理などに使われるタイ産の輸入香草「カミメボウキ」から残留基準を超える農薬「クロルピリホス」が検出され、厚生労働省は6日までに、各輸入業者に対し、食品衛生法違反(残留基準違反)に基づく検査命令を出した。名古屋検疫所名古屋空港検疫所支所の抜き取り調査で今月3日、基準値(0・01ppm)を超える0・02ppmが検出された。

茨城の牛1頭はBSE陰性

2002年12月06日 The Sankei Shimbun
 茨城県は6日、牛海綿状脳症(BSE)のスクリーニング検査で疑陽性とされた153カ月の雌牛について、国立感染症研究所(東京)の確認検査の結果、陰性だったと発表した。

 この牛は、4、5日に同県内の食肉衛生検査所で行われた検査で疑陽性とされた。

茨城で1頭がBSE疑陽性

2002年12月05日 The Sankei Shimbun
 茨城県は5日、同県内の食肉衛生検査所で実施した牛海綿状脳症(BSE)のスクリーニング検査で、138頭のうち1頭が疑陽性だったと発表した。

 疑陽性だったのは153カ月の雌の黒毛和種で、同県は確認検査のため、検体を国立感染症研究所(東京)に送った。

伊豆大島の座礁船、撤去も補償も出漁も見通し立たず

2002年11月30日 yomiuri On-Line
 伊豆諸島・大島(東京都大島町)の波浮港沖で座礁したバハマ船籍の自動車運搬船「ファル・ヨーロッパ」(5万6835トン)の火災は出火から3日後の29日、ようやく鎮火した。

 今後の焦点は撤去と漁業補償に移るが、油による汚染などで、当分の間、出漁の見込みはなく、補償交渉のメドも立っていない。座礁して30日で2か月。漁の最盛期に事故の直撃を受けた漁師たちは、厳しい表情のまま、岩場に付いた、どす黒い重油を洗う作業を続けている。

 事故は「時期」「場所」ともに最悪だった――と地元の漁業関係者は口をそろえる。現場一帯は、アワビ、サザエ、トコブシなどの貝類のほか、伊勢エビや海藻類も豊富な好漁場で、この一帯を漁場にしていた波浮港漁協は年間約4億円の漁獲高を誇っていた。

 サザエは9月1日、伊勢エビは10月25日、トコブシは11月1日が漁の解禁日。年末に向け、商品価格が最も高くなる時期で、組合員の中には、この期間に年収の半分以上を稼ぐ人も少なくなかった。

 座礁事故が起きたのは、かき入れ時のさなかの10月1日。すべての漁がストップし、特に、解禁日前に事故に遭った伊勢エビとトコブシは、これまで1度も出漁できないままだ。

 さらに、現場は漁協が「栽培区」として、普段は禁漁にし、アワビやトコブシの稚貝を放流している場所のど真ん中だった。

 火災が起きる前の10月17日に漁協が実施した潜水調査では、伊勢エビや貝類のすみかになっている海底の岩場が破壊され、破損した船体の一部も散乱している様子も確認された。大島町総務課によると、今月29日に開かれた町の対策本部の会議で、座礁船が加入する保険会社の担当者は「船の撤去や重油の除去のほか、漁業補償もしっかりと行う」と約束したという。

 しかし、今回のケースは撤去作業にとって、悪条件が重なっている。

 船主に代わって現地入りしている損害調査会社の担当者と、国内のサルベージ業者によると、現場海域はしけが多く、11―3月の5か月間しか満足に作業ができないうえ、浅瀬で陸・海双方からのアクセスも難しい。ファル号がすでに浮力を失っており、えい航もできず、船体を細かく切断して運ばなければならない。大型の重機を運び込むことも難しいため、バーナーで人間による手作業が避けられそうもないという。

 このため、損害調査会社などによると、撤去作業の完了までに3年以上、費用も数十億円かかる見通しで、北朝鮮の不審船を引き揚げた実績を持つ国内のあるサルベージ業者は「こんな悪条件が重なったケースは記憶にない」と話している。

 同漁協の山口健専務(46)は「今季の水揚げは絶望的。これから先、元通りの漁場に再生できるかも心配だ。補償交渉も、厳しい展開になりそう」と話している。

 ファル号は、横浜港で中古車などを積み込んだ直後の10月1日、台風の接近による強風などで流され、座礁した。船主の海運会社は事故後、撤去準備に取りかかり、船内に残っていた重油の抜き取り作業をしていたが、11月26日に火災が発生。4日間にわたり燃え続けた。強風で船体が揺れることで起きる摩擦熱や作業に伴う失火などが原因として浮上している。

 ◆油まみれの小さな岩、ひとつずつ手洗い◆

 くの字に折れ曲がった巨大な船体、海岸線にこびりついた重油――。波浮港に近い切り立つがけから、10メートルも離れていない至近距離にファル号の巨体が横たわる。船体は赤さびに覆われ、進水から間もない新造船とは思えない無残な姿だ。がけの上まで、油臭が漂う。

 現場近くの三ツ磯海岸では、仕事を奪われた漁師たちの重油を洗い落とす作業が続く。50人ほどの男性が、油まみれの小さな岩を1つずつ運ぶ。灯油、洗剤、水の順に手洗いしていく気の遠くなるような作業だ。日当は1万5000円で、ノルウェーの船主が加入する保険でまかなわれている。

 差木地地区の漁師(55)は、「この時期は、1日3、4万円稼いでいたはず。いまだに船会社や船長の謝罪がないのが納得できない。海岸がここまで汚されるなんて」。3人の小学生がいる別の漁師(38)は、「収入の道が絶たれた。子供たちに、絵画教室をやめろなんて言えないし……。このままじゃ年を越せない」と不安げな表情で話していた。(赤池 泰斗)

有機スズの細菌分解発表へ 呉の産技総研

2002/11/23 中国新聞
 産業技術総合研究所中国センター(呉市)の海洋生態機能開発グループが、細菌の分泌する酵素を使い、生殖異常をもたらす内分泌かく乱物質(環境ホルモン)の有機スズ化合物を分解する研究に取り組んでいる。二十五、二十六の両日、呉市のビュー・ポートくれである海洋環境産業シンポジウムで紹介する。

 有機スズは難溶性だが、細菌などの作用で分解するのは知られていた。グループは、二百種近い細菌を候補に実験を重ね、一九九九年に初めて、シュードモナスという細菌が分解しているのを突き止めた。

 分解するのは、シュードモナスが分泌する、アミノ酸が多重に結合したペプチド化合物のピオベルディン。本来は、シュードモナスが海水中の鉄分を摂取する際に鳥もちのような役目を果たす物質で、有機スズとも反応することが分かった。

 汚染された海底の浄化などに実用化するには、効率が課題。細菌をばらまくだけでは、海中に拡散してしまうため、海藻から取れるアルギン酸を混ぜるなどして固形化。直径約三ミリのビーズを作って実験している。

 有機スズの一つ、トリフェニルスズの溶液にビーズを混ぜると、 10ppmの濃度が二日後には約十分の一に低減。毒性が大幅に低いジフェニルスズなどに分解した。

 有機スズは、船底や網に貝などが付着するのを防ぐため、塗料として普及。国内では九〇年に使用が禁止されたが、過去に堆積した泥や規制のない外国船から、現在も海に溶け出している。

 山岡到保グループ長(55)は「泥をしゅんせつするのはコストが掛かる。細菌を活用する方が有効」と説明。今後は、ビーズの粘性や大きさなどを変えて実験を進め、二年後を目標に実用化を目指す。

公害苦情、9万件を突破

2002年11月21日 The Sankei Shimbun
 全国の市町村や保健所に寄せられた公害に関する苦情が2001年度に初めて9万件を超え、過去最高になったことが21日、国の公害等調整委員会のまとめで分かった。

 粗大ごみの不法投棄やダイオキシンによる大気汚染に関する苦情が増えているのが特徴で、委員会は「市民の環境問題についての意識が高まっている表れ」と分析している。

 01年度の苦情件数は、前年度比13%増の9万4767件で、高度経済成長期の大気汚染や水質汚濁が社会問題となり、これまで最多だった1972年度(8万7764件)を上回った。

 内訳では、ごみの不法投棄が前年度から73%増の1万2397件。家電リサイクル法の施行で処分が有料になったため、テレビなどを捨てる例が目立つという。

 大気汚染に関するものが2万8456件、騒音が1万4114件など、従来型の「典型7公害」が全体の71%を占めた。

三重の伊勢路川ダム中止へ

2002年10月29日 The Sankei Shimbun
 三重県公共事業再評価審査委員会(木本凱夫委員長)は29日、同県が南勢町の伊勢路川に計画していた多目的ダムの伊勢路川ダム(総貯水量370万立方メートル)について建設中止の方針を決めた。同県で本格的な規模のダム中止は初めてという。

 同委員会によると、地質調査の結果、基礎工事費などが当初計画よりかさみ、総事業費が当初計画の95億円から136億円に増えることが判明。費用対効果を分析した結果、洪水被害を少なくするなどの利益に比べ事業費の方が大きくなり、投資効果が低いと判断した。

 洪水対策も堤防のかさ上げなどダムによらない方法を取る方が安上がりとしている。

 同ダムは1991年に建設計画が持ち上がり、94年に国の補助事業として決まった。しかし流域で計画のあったリゾート施設がバブル崩壊後中止され、水需要が減少したことなどから、県が学識者らによる同委員会に再検討を求めていた。これまでの事業費は、地質調査などに4億円を支出するにとどまっている。

尼崎公害訴訟の原告団があっせん申請

2002年10月15日 Yomiuri On-Line
 2000年12月に大阪高裁で和解が成立した兵庫県の「尼崎公害訴訟」の原告団のうち21人が、和解条項で合意した国道43号線の大型車規制が守られていないとして、15日、国(国土交通省)への働きかけの仲介を公害等調整委員会(公調委)に求める「あっせん」を申請した。和解成立後に、紛争が第三者機関に持ち込まれるのは全国の公害訴訟で初めて。

 申請書で原告側は「われわれが神戸地裁の差し止め判決と賠償請求を(控訴審で)放棄したのは、国が大気汚染の元凶である大型車規制を約束したからだ」とし、和解後の国の対応について「当初から和解を履行するつもりがなかったと判断せざるをえない」と批判。大型車規制に関する国の約束事項履行のあっせんを公調委に求めた。

BSE1頭目前に感染牛存在か

2002年09月24日 The Sankei Shimbun
 農水省のBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)に関する技術検討会は24日、同省で会合を開き、昨年9月に確認された国内初のBSE感染牛より先に、別の感染牛がおり、その牛でできた餌を食べた「二巡目感染」の可能性や、感染源が複数である可能性などを排除できないと指摘した。

 同省はいまだに感染経路を絞り込めていないため、今回の指摘を受けて感染経路の調査範囲を拡大する必要があるのか、あらためて専門家の意見を聴いて評価、分析する方針だ。

 同検討会はBSEの病原体について、これまでと同様にオランダ産の動物性油脂やイタリア産の肉骨粉を通じて国内に侵入した疑いがあると指摘。

 その上で、最初の感染牛が、既に国内で発生していた別の感染牛を原料とした肉骨粉を食べていた可能性についても「考慮する必要がある」としている。

 このほか、検討会は農場でBSE感染の疑いがある牛が発見された際に、動物衛生研究所(茨城県つくば市)で実施している確認のための2次検査について、都道府県で行えるよう検討することも了承した。

群馬県が無登録農薬の使用を規制する条例制定へ

2002年09月03日 Yomiuri On-Line
 発がん性などが指摘されている無登録農薬が流通していた問題で、群馬県は3日までに、農家による無登録農薬の使用を禁止するとともに、販売した業者名を公表する条項を盛り込んだ条例を、全国で初めて制定する方針を決めた。19日に開会する県議会9月定例会に条例案を提案し、可決されればすぐに施行する方針。国が秋の臨時国会への提出を検討している農薬取締法の改正に先立ち、県独自に規制を強化する。

 農薬取締法では、無登録農薬の販売を禁止しているものの、農家の使用は事実上、規制の対象になっていない。

 群馬県では、ヤマトイモやナシなどの生産者ら農家160戸が、2種類の無登録農薬を使用したことがわかり、これらが使われた農作物が回収されている。このうち65戸は、JA新田郡尾島支所から購入していたことも判明した。

 同県農政部は「消費者の信頼を取り戻すため、早急に取り組まなければならない」と、国より一足先に規制強化を図ることにした。

 条例案の具体的内容は検討中だが、農家による使用の禁止と販売した業者名の公表が柱となる。条例に違反した場合の罰則規定についても「必要があれば検討したい」(農政部)としている。

 また、改正農薬取締法と内容が重複した場合について、同部は「条例改正などで対応したい」としている。

無登録農薬:ナシ6トンを焼却処分 新潟・白根市と農協

2002年08月23日Mainichi INTERACTIVE
 発がん性が指摘されている無登録農薬が大量に販売された問題で、新潟県白根市と同市農協は26日、この農薬を使った農家などから回収した幸水ナシ約12トンのうち約6トンを焼却処分した。

 県が21、22日に実施した立ち入り検査で、白根市の2農家がこの農薬を購入し、二十世紀種に使用したことが判明。その後の聞き取り調査で別の22農家が幸水種に使っていたことが分かったため、同時に回収した、別の農家の幸水とともに処分した。全農県本部は24日から県内のナシの出荷を停止している。 【柴田真理子、作田総輝】

室内汚染で200万人が死亡 環境汚で貧困悪化

2002年08月22日 The Sankei Shimbun
 質の悪い燃料による室内汚染で発展途上国では毎年200万人が死亡するなど、環境汚染が原因の病気が貧困を悪化させ、その結果、さらなる環境汚染を招く悪循環に陥っていると指摘した国連の専門家による「健康と環境」に関する報告書が22日、明らかになった。

 報告書は有害化学物質によるがん発生などの問題も指摘。ヨハネスブルクでの「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(環境・開発サミット)で、有害な農薬や化学物質の削減、途上国の健康、環境汚染対策への資金や技術援助の拡大に合意するよう勧告した。

 国連によると、途上国では毎日、2万8000人の子供が感染症で死亡。がんや呼吸器疾患など感染症以外の病気も増えている。

 報告書は、鉛や水銀、ヒ素による水質汚染や、質の悪い燃料の使用による室内大気汚染、不適切な農業用水の管理でマラリアなどの感染症を媒介する害虫が増えたことなどを挙げ「これらの病気の増加は途上国の環境汚染の深刻化と深く関連している」と分析。

 「環境汚染が原因の病気の急増が途上国の経済的、社会的な発展を妨げ、これが環境汚染対策の遅れの原因になっている」と、悪循環の存在を指摘した。

 報告書は途上国での医療の充実と同時に、生態系の保全や排水処理の充実、進んだエネルギー関連技術の移転の促進など、環境保全と健康対策の関連に配慮した国際援助を充実させることを提言した。(共同)

東京湾沿岸で大規模な青潮

2002年08月20日 Yomiuri On-Line
 東京湾に発生した青潮。今年発生した青潮では最大級(奥は千葉市・幕張新都心、本社ヘリから)

 千葉県市川市沖から千葉市沖にかけての東京湾沿岸で20日、約11キロに渡って青潮が発生した。県によると、同沿岸では先月下旬にも青潮が発生したが、これほど大規模なものは今年に入って初めて。

 青潮は、海底近くの酸素が少ない海水に含まれる硫化物イオンが、内陸から海に向かって吹く強風で海面付近に上昇、大気に触れて硫黄に変化し、太陽光が当たって青く見える現象で、今回は台風13号による強風が発生原因とみられる。

 魚貝類の酸欠死などの被害は、今のところ確認されていないという。

瀬戸内海の水質、HPで紹介 中国整備局

2002/08/19 中国新聞
 中国地方整備局は、一九八二年度から二〇〇〇年度までに瀬戸内海で実施した水質調査の結果をインターネットで紹介する「瀬戸内海総合水質調査ホームページ(HP)」を開設した。

 調査は、環境対策の基礎資料として役立てるのが狙い。広島県内のほか、山口、岡山、愛媛、香川、徳島、兵庫、大阪、和歌山の各府県の計百八十二地点で年四回実施している。

 ホームページでは、広島湾、伊予灘、安芸灘、備讃瀬戸など八海域を設定。透明度、水温、塩分、溶存酸素、化学的酸素要求量など十二項目について海域ごとに調査地点の平均値を算出、数値の変化をグラフで示している。

 同局は今後も最新データを追加したり、九州地方整備局との協力で対象海域を広げるなどして充実を図る。アドレスはhttp://www.pa.cgr.mlit.go.jp/gicyo.suishitu.index.htm

「エコツーリズム」国立公園に導入へ 環境省

2002年08月14日 The Sankei Shimbun
 環境省は14日、国立公園を中心とした自然が豊かに残る地域を、環境保全と観光の両立を目指すエコツーリズムに積極的に活用する方針を決めた。2003年度にエコツーリズム普及地域の選定や、ルールづくりなどを研究調査する。

 知識を持つガイドが案内するエコツアーは環境学習の機会にもなることから、同省は国立公園を生かす施策の目玉にしたい考え。来年度予算の概算要求に調査費1100万円を盛り込む。

 環境省はツアーの実施地域として、屋久島(鹿児島)などの離島や、北海道・知床半島といった奥深い山を想定。実施を決めた地域では、具体的なコースやどのような環境学習が可能かを、地元自治体などと協議する。

 環境保全のため、自治体や民間業者ら主催者に自主的ルールを設けさせ、参加人数や足を踏み入れる場所を制限することなどを検討する。

 エコツーリズムは環境を損なわず自然や動植物を楽しむ新たな旅行として、海外では1980年代から注目を集め、日本でも90年代から沖縄県・西表島や東京都・小笠原諸島で取り組みが始まっている。

環境省がベンチャー支援

2002年08月11日 Yomiuri On-Line
  環境省は、環境関連のベンチャー企業などが開発した新技術について、都道府県の環境研究所など第三者機関で実証試験を行うのを支援するモデル事業を、来年度からスタートさせる。これまでベンチャー企業は、新技術の効果を自ら証明するしかなく、公的機関などが客観的に評価する仕組みを求める声が上がっていた。

 事業は5年間を予定。同省は試験条件などを定めるとともに、数県をモデル地域に指定し、経費を補助する。

 モデル地域では、排ガス浄化や汚染物質測定、温暖化防止、山岳用トイレなど、企業が開発した環境関連の新技術について、都道府県を通じて環境研究所などに持ち込み、実証試験を受けられる。企業は試験結果を営業活動でアピールでき、都道府県にとっても、地元に環境産業を育成できるメリットがある。

 米国には環境保護局が運営する「環境技術実証プログラム」と呼ばれる同様の制度があり、企業は同プログラムで認証されたデータを自らの技術の有効性の根拠としてPRに使っている。

納豆の糸で砂漠緑化!?九州大が保水力高い樹脂を開発

2002年08月10日 Yomiuri On-Line
 納豆の糸を原料にした新素材「納豆樹脂」を、九州大学大学院の原敏夫助教授が開発した。この樹脂は、環境中で自然分解する無公害素材であるうえ、最大で樹脂の重さの5000倍もの水を吸う。原助教授は、すぐれた保水力を活用し、砂漠緑化の構想を練っている。

 納豆の糸の主成分は、ポリグルタミン酸。これに放射線を当てると、分子同士でハチの巣状の3次元構造を作ってつながり、納豆樹脂になる。

 この立体構造の中に水分子が閉じこめられるため、強い吸水力がある。水を含ませてゼリー状にしたり、加工して普通のトレー容器などにもできる。

 ただし、納豆の糸は採取できる量がわずか。そこで原助教授は、納豆そのものを使わず、納豆菌自体を培養して樹脂を作る方法も考案した。

 原助教授が提案する納豆樹脂の活用法は、ヘドロや家畜ふん尿などの処理も兼ねた砂漠緑化だ。具体的には、納豆樹脂にヘドロやふん尿を混ぜて肥料とし、その中に植物の種子を混ぜた団子を作る。これを砂漠や乾燥地に埋めれば、納豆樹脂が水分を長く保持するため、種子の発芽や成長を助ける。実際に国内では、霞ヶ浦のヘドロを使い、牧草の栽培実験に成功している。

 原助教授は「コストや安全性も考え、放射線を使わない方法も考案した。技術的には実用化のめどはついてきたので、3年後くらいには中国で砂漠緑化に挑戦したい」と話している。

生態系破壊:損失は年2500億ドル 米英研究者が試算

2002年08月09日 Mainichi INTERACTIVE
 【ワシントン斗ケ沢秀俊】世界の生態系破壊の損失額は1年間で約2500億ドル(約30兆円)に上るとの試算結果を、英米の研究グループが9日発行の米科学誌「サイエンス」に発表した。効果的な生態系保護によって自然界から得られる利益は年間4兆4000億〜5兆2000億ドルに達し、保護に必要なコスト(年間約450億ドル)の100倍以上になると指摘し、保護活動の強化を訴えている。

 発表したのは英ケンブリッジ大、米メリーランド大などの経済学者、生物学者ら19人。

 マレーシアの熱帯林、カナダの湿地、フィリピンのサンゴ礁など約300件の具体的事例について、生態系を破壊する開発と、生態系を保護しながら持続可能な開発・利用をした場合の、それぞれの利益を算出した。大半の事例で、持続可能型の利益が破壊型を上回った。破壊型の開発による損失額は年間約2500億ドルと見積もられた。

 また、効果的な生態系保護に要するコストを世界の陸地と海洋を合わせて年間約450億ドルと推定した。現在の保護に投じられている同約65億ドルの7倍の金額になる。

世界の地下水位が急低下 米研究所が警告

2002年08月07日 The Sankei Shimbun
 
 中東やアジア、米国などで過剰な地下水資源の利用が続き、世界各地で地下水位が急激に低下していると警告する報告書を6日、米シンクタンクのアースポリシー研究所(レスター・ブラウン代表)が発表した。

 ブラウン所長は「この傾向が続けば、近い将来に水資源不足が深刻化、世界の食料生産に大きな悪影響が出る」と指摘。「ただ同然で利用されている地下水の価格を高くして、水の無駄遣いを減らすことが重要だ」と提言した。

 同研究所によると、過剰な地下水のくみ上げによって、イエメンでは年間2メートル、イランでは同2・8メートルのペースで地下水位が低下。両国では、同6−8メートルもの水位低下が報告されている場所もある。

 地下水位の低下は中国やインド、パキスタンなど人口増加が著しいアジア諸国でも顕著。中国の平野の大部分では年間2−3メートルのペースで水位が下がり、水をくみ上げる費用の高騰に耐えられなくなった農民が、農業を放棄する事態も起こっているという。

 同研究所は「地下水をはじめとする農業用水の価格が、補助金などによって故意に低く設定されていることが、地下水の乱用を招いている」と指摘。貧困層への特例措置を設けた上で、地下水の価格を適正なレベルまで高くすることなどを提言した。(共同)

農薬分解:太陽光だけで有害を処理 法人研究グループが開発

2002年08月01日 Mainichi INTERACTIVE
 財団法人神奈川科学技術アカデミーなどの研究グループは1日、「光触媒」と呼ばれる酸化チタンを使い、太陽の光だけで有害な農薬を処理する方法を開発したと発表した。農薬は最終的に二酸化炭素や水、微量のリン酸などに分解されるといい、環境に配慮した農業につながる技術として注目される。

 酸化チタンは紫外線を受けると、表面に強い酸化作用が生まれ、有機物の分解や殺菌効果を発揮する。この能力を使い、汚れを自然に分解するタイルなどがすでに市販されている。

 研究グループは、酸化チタンをコーティングした板を敷き詰めた浅い水槽を作製。これにイネの種もみを農薬で消毒した時に発生する廃液を入れ、屋外に放置して様子を観察した。その結果、農薬の有害成分は4〜5日で分解されることが確認できたという。

 開発に参加した東京大先端科学技術研究センターの橋本和仁教授は「光触媒を使えば産業廃棄物を生み出すことなく、不要になった農薬を処分することができる」と話している。 【金田健】

冷房1度上げ、東京ドーム3杯分の原油節約に

2002年07月10日The Sankei Shimbun
 
 夏場に冷房の設定温度を1度上げて使うと、東京ドーム約2・9杯分に当たる約36万トンの原油を節約できます−財団法人の省エネルギーセンター(東京)が10日、こんな試算を発表した。家庭で最も電力を使うエアコンで省エネ行動を促したい考えだ。

 同センターの実験によると、冷房時にエアコンの設定温度を1度上げるごとに、1時間当たり約36ワットの電力を節約できる。全国の家庭で夏場に1日9時間冷房を使った場合、総計で36万トンの原油を節約できる効果があるという。

 また節約効果を、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量に換算すると53万5000トンになり、二酸化炭素を吸収するユーカリの木約2億本に相当する。

 同センターは「断熱効果のあるカーテンを使ったり、こまめに消したりすることでも相当な省エネになる」と呼び掛けている。

岡山県知事が核燃を批判 ウラン残土問題

2002年07月08日 The Sankei Shimbun
 岡山県の石井正弘知事は8日の記者会見で、鳥取県東郷町のウラン残土問題で、核燃料サイクル開発機構(核燃)が人形峠環境技術センター(岡山県上斎原村)への搬入が現実的としていることについて「現地処理が現実的だ。むしろ鳥取県側で処理されるよう強く働き掛けるべきだ」と搬入拒否の方針をあらためて示した。

 石井知事は岡山県に残土を持ってくるのは論外とした上で、「場当たり的な核燃の取り組みは問題だ。原子力行政全体に対する国民の不信につながっていく」と核燃の対応を批判した。

ナメクジ駆除にカフェイン、農作物被害抑止手段に

2002年06月30日Yomiuri On-Line
 農作物や園芸植物を食い荒らすナメクジやカタツムリの駆除に、カフェインの水溶液が有効なことを、米農務省農業調査局の研究グループが発見した。普通のコーヒーと同じ濃度で十分な効果があり、植物への悪影響もないという。

 同局の研究グループは、毒性のある農薬に代わる新たな駆除剤として、カフェインに注目。ナメクジにカフェインの水溶液を塗った白菜を食べさせたところ、インスタントコーヒーの5分の1にあたる0・01%の濃度でも、食べられる葉の量を抑制でき、0・5%では、全く食べられなかった。

 さらに、0・1%の濃度のカフェイン水溶液が入った皿にカタツムリを入れたところ、カタツムリの心拍が弱く不規則になり、濃度を0・5%から2%に上げると、4日の間にすべてのカタツムリが死んだ。

日本、ロシア核物質の拡散防止に数億ドル拠出へ

2002年06月23日Yomiuri On-Line
 26日に始まる主要国首脳会議(カナナスキス・サミット)で焦点になるテロ対策として、ロシアなどの核物質がテロ組織に流出・拡散するのを防ぐため、アメリカが提案した総額200億ドル(約2兆4000億円)の資金拠出計画に対し、日本政府が数億ドル(数百億円)規模の拠出に応じる方向で最終調整に入った。政府筋が22日明らかにした。

 200億ドルはG7(先進7か国)が分担し、ロシアの核兵器解体などで生じるプルトニウムの処理や、旧ソ連諸国が保有する核関連施設の管理強化などに充てる構想だ。旧ソ連諸国の核物質の防護システム対策も支援対象に検討されている。

大原川ダム建設を中止

2002年06月10日 The Sankei Shimbun
 岡山県は10日、同県美作町に計画していた大原川ダム建設を中止し、国土交通省が同県船穂町で計画を進めている柳井原堰(ぜき)についても、中止を求めることを明らかにした。

 県が水道需要を見直した結果、建設を進めている他のダムが完成すれば、いずれも必要なくなると判断した。

 大原川ダムは利水、治水目的のダムとして1997年、総事業費約70億円で調査を始めたが、本体工事にはかかっていなかった。

 柳井原堰は高梁川支流の小田川に利水目的で97年に事業着手。総事業費約600億円。

ヘドロ分解:海底に光ファイバーで太陽光 高知県で実地試験

2002年06月01日 Mainichi INTERACTIVE
 高知大農学部の深見公雄教授(47)=海洋微生物生態学=が、海底に光ファイバーで太陽光を注ぎ、光合成の働きでヘドロの分解を促す装置を考案。4日から高知県須崎市の浦ノ内湾で実地試験を始める。養殖漁業に適した湾は各地でヘドロ化が進んでおり、電力や燃料不要のこの装置が実用化されると、海底の環境浄化に画期的な解決策となりそう。

製薬会社の工場跡地が土壌汚染 東京・北区

2001.02.28(21:53)asahi.com
 持田製薬は28日、東京都北区神谷1丁目の王子工場跡地から発がん性の疑いのある高濃度のトリクロロエチレンが検出された、と発表した。同社は「空中への飛散はなく、今のところ周辺住民の健康被害はない」としている。跡地の半分はマンション分譲会社へ譲渡されていたが、汚染が発覚したことで譲渡契約も解除された。

 トリクロロエチレンが検出されたのは深さ5―23メートルの地中で、最高濃度は環境基準値の3万3000倍。このほか基準値を超える水銀やヒ素などが見つかっており、持田製薬は再調査や汚染処理を実施する予定だ。

江戸川の巨大魚、名は「エディー」 正体はアオウオ

2001.02.28(18:24)asahi.com
 巨大な魚が尾びれを水面から出し、目の前を悠然と通り過ぎた――。昨年秋、江戸川の流域で偶然目撃された魚が、地元の自然観察クラブの間で「怪物エディー」と名付けられた。ネス湖の「ネッシー」にちなみ、「えどがわ」から命名したのだが、一体この巨大魚は何なのか? 今月発行された同グループの機関誌で報告された。 「幻の魚といわれるアオウオ(青魚)ではないですかね。淡水魚としては日本で最大級の大きさです」

 魚の生態に詳しい「県営さいたま水族館」(埼玉県羽生市)の関根正館長は驚く。河川での生息比率は0.02%。魚が1万匹いるうち2匹ぐらいしかいないためだ。

 1943年ごろ、食糧増産のため、中国大陸から持ち込まれたコイ科の巨大魚。体の色は青黒く、精かんな感じがする。全国の河川に放流されたが、利根川水系や霞ケ浦などだけで自然繁殖した。中国の河川と似て、ゆったりと流れていることが産卵や生息に適していたらしい。だが、生息数が少ないので、水族館以外で見ることは極めて難しいと言われている。

 体長は一般に50―100センチ。釣りマニアの間では大物釣りの対象としてひそかに人気がある。江戸川の下流では9年前、釣り仲間が五人がかりで体長1.8メートル、胴回り80センチと超大物を捕獲した例もある。

 今回報告したのは「江戸川自然観察クラブ」。昨年暮れに発行した機関誌「セイタカシギ」の中で紹介した。会員の1人が千葉県市川市側から野鳥観察をしていた際に目撃した。

 目撃の1カ月後、昨年12月には、京葉道路南側の江戸川水門近くで、釣り人がアオウオを実際に釣り上げた。

 野鳥観察をしていた江戸川区立南葛西中学校教諭で、江戸川自然観察クラブのメンバーでもある田久保晴孝さん(51)が、体長1.2メートルほどのアオウオを写真撮影した。「これが怪物エディーの正体です。でも、数年に1回ぐらいしか釣れないそうです。こんな巨大魚が江戸川にいるなんてびっくりしました」と話している。

苛性ソーダ流出で魚死ぬ 大阪市のサントリー工場

2001.02.28 The Sankei Shimbun
 群馬県河川課などは二十八日、飲料メーカー、サントリー(大阪市)の榛名工場=同県渋川市半田=から、浄化装置を洗浄する際に使われるカセイソーダ液が約五百メートル離れた吉岡川に流出したと発表した。

 同工場などによると、同日午前六時半ごろ、浄化装置と苛性ソーダの貯蔵タンクを結ぶ配管が破損。濃度約二五%のカセイソーダ液約八百三十リットルが道路側溝を通じて川に流れた。川では大量の魚が死んでいるのが確認されたが、約三時間後に保健所が水質調査したところ、異常はなかった。

 工場側は塩化ビニール製の配管に何らかの原因で亀裂が入り破損したのではないかと説明している。

熊本の川辺川ダム計画 球磨川漁協が補償受け入れ否決

2001.02.28(21:56)asahi.com
 国土交通省が熊本県相良、五木両村で進める川辺川ダム計画で、水系に漁業権を持つ球磨川漁協(組合員1848人)は28日、同県人吉市で総代会を開き、同省が提示した約16億5000万円の漁業補償契約の受け入れを否決した。漁業補償はダム本体着工に向けて残された最後の法的手続き。漁協が土壇場でダム建設に反対したことで、今年度内の本体着工は不可能になった。同省は今後、漁業権の強制収用を検討するが、漁協などの反発は必至。計画発表から35年がたつ同ダム問題はさらに混迷の度を深めそうだ。

 総代会は、各地区を代表する100人の総代で構成。この日は、委任状提出者を含めて全員が出席した。

 補償契約の締結議案をめぐって、ダム容認、反対両派が激しく対立し、議事は再三紛糾した。結局、投票による採決の結果、賛成59、反対40となり、漁協の定款などで必要とされる3分の2以上の同意を得ることはできなかった。

 今年度内の本体着工をめざしてきた国土交通省は昨年9月、漁業権などの収用に向けて土地収用法に基づく事業認定を申請し、認められた。その後、同漁協に補償内容を提示し、漁協の出す結論を待ってきた。

 漁協が補償契約を否決したことを受け、記者会見した同省川辺川工事事務所の金尾健司所長は「残念に思う。今後の対応はこれから検討する」と話した。漁業権の収用に向けて熊本県収用委員会に裁決を申請する「強権発動」に入るかどうか、慎重に検討を進めるとみられる。

 川辺川は、旧環境庁が「日本一の清流」と認めた水質を誇る。同ダムは治水、利水などを目的とし、九州有数の規模。1966年の計画発表以来、同漁協は「アユなどに悪影響が出る」として「絶対反対」を唱えてきた。だが、中心部が水没する五木村がダム受け入れに転じ、関連工事が進むなか、「条件闘争に移るべきだ」との声が出始めた。昨年9月の臨時総代会では漁業補償交渉委員会の設置を決め、ダム容認に向けた動きを強めていた。

漁業規制を53種に拡大 水産庁、新制度導入へ

2001.02.25(11:53)asahi.com
 日本周辺水域での水産資源の減少に歯止めをかけようと、水産庁は2002年度から、漁船の隻数や操業日数を制限する漁獲努力量管理(TAE)制度を導入する。年間漁獲量に上限を設ける現在の漁業規制では対象が7種にとどまっているが、新制度はイシガレイやトラフグなど53種にまで拡大する。漁業者側に減船や休漁を強いることになるため、調整が難航する可能性もある。

 これまで、漁業団体が自主的に禁漁期間を設けることはあったが、国がこうした規制をかけるのは初めて。今国会で法律の改正案を提出し、今年後半から漁業団体との調整を始める。

 日本の周辺水域での年間漁獲高は80種で約500万トン。そのうち、資源状態が悪化していて新たに規制対象に加わるのは、伊豆諸島周辺のキンメダイ、東北地方沿岸のイシガレイやキチジ、東海や九州周辺のトラフグなど計53種で、漁獲高は約70万トンある。

 1997年から始めた漁獲量の上限を定める漁獲可能量(TAC)制度では、サンマやマイワシ、スケトウダラなど七魚種が対象になっている。規制対象とするには、資源量などの詳細な調査情報が必要なため、対象の拡大は難しかった。

 新制度では、手続きを簡素化し、水揚げの実績などから資源量が減少していると判断すれば、操業を規制できるようにした。

 新制度では、漁業者に対し、漁船の操業時間や日数のほか所有する漁船数を制限することで、資源の回復を図る。このため、減船や休漁に伴う所得補償などの経営安定策を、制度導入に合わせて実施する。

 国内の漁業就労者は約25万人で20年前からほぼ半減した。一方で、資源量の減少と出荷価格の低迷は続いており、多くの漁業経営者が不振に悩んでいる。新しい漁業規制は、漁獲能力自体を削減することで、残った漁業者の経営を安定させよう、というねらいもある。

原告の敗訴確定 水俣病認定待たせ賃訴訟

2001.02.13 The Sankei Shimbun
最高裁上告棄却 行政不作為認めず

 水俣病認定業務の遅れで精神的苦痛を受けたとして、認定申請者ら三十八人が国と熊本県に損害賠償を求めた「水俣病待たせ賃訴訟」の差し戻し後の上告審判決で、最高裁第三小法廷(元原利文裁判長)は十三日、行政側の賠償責任を否定して請求を退けた差し戻し控訴審判決を「正当として是認できる」と支持、原告側の上告を棄却した。

 裁判では「水俣病認定の遅れに、『行政の不作為』は認められるか」が争点となったが、昭和五十三年の提訴から二十二年を経て原告側の敗訴が確定した。

 控訴審判決などによると、水俣病の補償を受けるために必要な認定業務が昭和四十年代後半から遅れ、申請患者が熊本県知事を相手に業務遅滞(不作為)の違法確認を求めて提訴。五十一年、熊本地裁で勝訴が確定したが、その後も遅滞が改善されず、申請患者の一部が、損害賠償(待たせ賃)を求めて提訴した。待たされた期間は最長九年。

 一、二審は「行政の認定遅れは違法」と認め、国と県に賠償を命じたが、最高裁は平成三年四月、「当時の申請件数、検診・審査機関の能力などの諸事情について審理を尽くしていない」として二審判決を破棄。差し戻し控訴審で福岡高裁は八年九月、「知事は処分の遅れを回避するため努力を尽くした」と患者側全面敗訴の判決を言い渡した。

 水俣病をめぐる訴訟は、最大の患者団体「水俣病被害者・弁護団全国連絡会議」(全国連)が平成八年五月、未認定患者救済の政府解決策に沿って訴訟を終息させており、待たせ賃訴訟などを残すだけだった。

2500以上の言語が絶滅危機「自然の教科書」失う恐れ

2001.02.12(11:28) asahi.com
 グローバリゼーションによって、2500以上の言語が「絶滅」の危機にさらされていることが、ナイロビで9日まで開かれた国連環境計画(UNEP)の閣僚級環境フォーラムで報告された。人を取り巻く環境や文化と密接にかかわる言語を失うことは、自然の教科書を失うことだとUNEPは警鐘を鳴らしている。

 言語の数については、分類の仕方によって様々なとらえ方があるとされるが、この報告は世界中の言語を5000から7000とみている。この中で、2500以上が「絶滅」の危機にさらされているという。

 1500以上の言語が、1000人以下の担い手しかいない状況。553言語については、話し手が100人以下になっている。報告は、すでに234の言語が失われたとしている。

 グローバリゼーションによって人々が画一的な、西欧化された生活を営むようになったことが、自然や伝統文化とのつながりを希薄にし、これらと密接につながっていた言語を危機に陥れているとUNEPはみている。

 テプファー事務局長は「固有の言語を持つ人たちの暮らしの中には、人間が自然と共存して暮らしていける知恵がしみこんでいる。その伝統、文化の継承を支えてきた言葉を失うことは、自然の貴重な教科書を失うことに等しい」と語った。

ブラックバス容認案にNO、魚類学会など4団体

2001.02.09(20:14)asahi.com
 日本魚類学会など4団体は9日、水産庁を訪れ、同庁が昨年末に提案した「ブラックバス部分容認案」に反対する要望書を提出した。北米産のブラックバスを巡っては、「駆除」を訴える学者や自然保護団体と、「利用」を求める釣り愛好家や業界団体との対立が続いている。水産庁の案は、両方の言い分に配慮して、「駆除水域」と「容認水域」に分離するものだが、4団体は「密放流をさらに助長する」などとして批判している。

 要望したのは、日本魚類学会、水生昆虫などを扱う日本鞘翅(しょうし)学会、日本蜻蛉(とんぼ)学会の3学会と、環境NGO(非政府組織)の生物多様性研究会の計4団体。生物関連の学会が、ブラックバスに関して国に要望するのは初めて。

 4団体は会見で、ゲンゴロウやミズスマシ、トンボなど水辺の生物がブラックバスによって食べられている事実を明らかにした。滋賀県立琵琶湖博物館の中井克樹・主任学芸員は「外国からの移入生物を駆除するというと『国粋思想』だとも言われるが、日本に歴史的に存在したことのない生物が入ってくると、在来の生態系を乱すことを理解してほしい」と話した。

ブラックバス駆除派と擁護派が初討論会 24日都内で

2001.02.04(12:48)asahi.com
 「アユやタナゴなどを食い荒らす害魚」か「地域活性化の有用魚」か――。北米産の魚ブラックバスを巡り、駆除派と擁護派が24日、東京都内で初の「直接対決」に臨む。駆除を訴える市民団体「生物多様性研究会」(生多研)が釣りの業界団体に公開討論会を申し入れて実現した。

 パネリストは、駆除派から秋月岩魚・生多研代表ら3人、擁護派の日本釣振興会(日釣振)側からタレントの清水国明さんら3人。コーディネーターは一本化できず、神奈川県立生命の星・地球博物館の瀬能宏主任研究員(生多研推薦)と、アウトドアライターの天野礼子さん(日釣振推薦)の2人が務める。

 ブラックバスを巡っては、在来魚を食い荒らし、希少種の絶滅を招く恐れもあるとして「駆除」を訴える自然保護団体や学者らと、今やバス釣り愛好家は250万人程度おり、釣り場周辺の活性化をもたらすとして「擁護」を主張する業界や釣り人たちとの対立が続いている。昨年末にはバス密放流を摘発した富山県警に少年が「バスを殺したら爆破する」というメールを送る事件があった。

 討論会では、(1)在来生態系の保護と、レジャーとしての釣り(2)バスを利用する水域と駆除する水域に分離する「すみ分け」案――などが論点になりそうだ。

 公開討論は、24日午後1時―4時半、東京都豊島区の立教大池袋キャンパス8号館8101教室で開かれる。入場無料。

外来魚の駆除、半額負担 水産庁が2001年度から

2001.02.04(03:04)asahi.com
 44都府県に広がった外来魚のブラックバス、ブルーギル退治に水産庁が2001年度から5年計画で乗り出す。新年度予算案に駆除費9000万円を計上した。「湖のギャング」と呼ばれるブラックバスなどに魚を食い荒らされるなどし、琵琶湖特産のホンモロコは最盛期の9割も減っている。希少種の保護のため、自治体や漁業者が負担した駆除費の半額を負担する。

 全国内水面漁業協同組合連合会の調査によると、ブラックバスなどの外来魚は1960年代から急速に生息域を広げ、70年代後半には40都府県に拡大。昨年9月現在で北海道と大阪府、沖縄県を除く44都府県で生息が確認されている。

 霞ケ浦と北浦を抱える茨城県では、76年にブラックバスが確認されて以来、ワカサギやハゼ、シラウオなどの漁獲量が78年の1万7500トンをピークに減り続け、98年に2998トンと最盛期の17%にまで落ち込んだ。

 琵琶湖では、80年代後半に年間2、300トンも取れた固有種のホンモロコが99年には24トンと9割以上も減った。6、700トンの水揚げがあったスジエビも99年は142トンに。

 このため、滋賀県は85年度から本格的な駆除をはじめ、漁業協同組合が捕獲した外来魚を1キロ150円で買い取る。捕獲量は増え、調査や駆除に県がつぎこんだ費用は、今年度までに計2億1000万円、捕獲量も99年度までに計1110トンにのぼる。

 水産庁栽培養殖課は「外来魚の深刻な被害が問題になっており、早急に手を打たなければならないと判断した」と話している。

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