TOPIC No. 2-68 防衛省・自衛隊/国防

Index
1.国防、2. 自衛隊の機密漏えい事件、3. ミサイル防衛(MD)、
4. 次期主力戦闘機 F-X

01.防衛省・自衛隊
02.防衛省技術研究本部(TRDI)
03.防衛研究所(NIDS)
04.日本軍事情報センター −激動する世界の最新軍事情報を発信−
05.電網将校参謀本部
06.UNITED DEFENCE
07.日本周辺国の軍事兵器 byLivedoor Wiki
08.F-15 (戦闘機) byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


南西諸島方面増強へ 陸自、定員削減決着で

2010/12/13 中国新聞ニュ−ス

 防衛省は、13日までの財務省との調整で、週内にも閣議決定する新たな「防衛計画の大綱」の別表に盛り込む陸上自衛隊の定員削減が千人にとどまったことを受け、南西諸島方面での陸自部隊増強を今後着実に進めていく方針だ。

 南西諸島防衛では、海上自衛隊の潜水艦を16隻から22隻態勢に増強。航空自衛隊については那覇基地の戦闘機を現行の約20機から約30機に増やす方向。陸自に関しては、部隊が常駐していない宮古島以西の「防衛力の空白地域」(北沢俊美防衛相)に新たに部隊配備する方向で、2011年度予算概算要求に調査費を計上している。

 定員をめぐる折衝で陸自は当初、現行の15万5千人を16万8千人に引き上げるよう主張、一方の財務省は、厳しい財政事情を背景に14万8千人とする削減案を提示し、防衛省との折衝は難航。最終的に、沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件をきっかけとした「対中警戒論」の高まりを追い風として、大幅減を回避した。

陸自1万3千人増 防衛省、新防衛大綱で検討

2010/09/20 中国新聞ニュ−ス

 防衛省が流動化する東アジアの安全保障情勢や国際テロ、災害への対処能力を向上させるとして、陸上自衛隊の定員を現在の15万5千人から16万8千人へ1万3千人増やす方向で調整していることが分かった。複数の防衛省、自衛隊関係者が19日、明らかにした。年末に策定する新たな「防衛計画の大綱」に盛り込みたい考えで、来年度から増員すれば1972年度以来、38年ぶりの規模拡大となる。

 ただ主要国では領土侵攻の前に敵を食い止めるため海軍や空軍を重視し、陸上部隊を削減する傾向にある。財政難の中で経費負担の増大も避けられず、政府内の調整は難航しそうだ。

 定員増は陸上幕僚監部の強い意向を踏まえ、防衛省内局で検討。陸幕は日本近海での中国海軍の動きの活発化に伴い、中国沿岸から距離的に近い南西諸島での島しょ防衛強化が特に必要と説明。天然ガスなど東シナ海の資源獲得をめぐる日中摩擦も生じており、政府、与党の理解が得やすいと判断したようだ。

 具体的には、中国が領有権を主張する尖閣諸島(沖縄県石垣市)への対応を視野に、防衛態勢が手薄とされる同県の宮古島以西への部隊配備を検討。沖縄本島の陸自部隊は現在約2千人だが、これを2020年までに南西諸島を含めて2万人規模とする構想も浮上している。

 陸幕は国内の重要施設を狙ったテロやサイバー攻撃が同時発生するような「複合事態」への対処能力向上の必要性も指摘。国連平和維持活動(PKO)への積極的な参加や災害派遣の増加も想定している。

 防衛省によると、増員は前年度比で千人増の18万人とした1972年度が最後。96年度以降は減員傾向が続いているだけに、本年度比で1万3千人増とする今回の措置はこれまでの流れに大きく逆行することになる。

 ただ、想定される「重大な脅威」が本土への着上陸侵攻から、ミサイル攻撃や島しょ部での局地的戦闘などに変わった現在、陸自の定員削減を求める声は根強い。定員に対する充足率も92・7%にとどまり、実数は現在約14万人で、増員方針には強い異論が出ることも予想される。

迎撃ミサイル、第三国輸出容認へ 米要請受け政府

2010年07月25日 中国新聞ニュ−ス

 政府は米国と共同開発しているミサイル防衛(MD)の海上配備型迎撃ミサイル(SM3ブロック2A)について、第三国への供与を認める方向で調整に入った。米側の要請を踏まえた対応で、供与先として欧州などが想定されている。複数の日米外交筋が24日、明らかにした。

 迎撃ミサイルの共同開発・生産で、政府は2005年、武器輸出三原則の適用対象から外して対米供与に限り容認。これに先立つ官房長官談話で、第三国への輸出について(1)日米安保体制の効果的な運用に寄与する(2)日本の安全保障に資する―との観点から「厳格な管理を行う前提で武器輸出三原則によらない」とした。この談話に沿い三原則の例外とする方向だ。

 ただ供与先など厳格な管理の内容がどこまで公表されるか見定めきれず、なし崩しで輸出が拡大する恐れは否めない。

 外交筋によると、米側は最近、18年からの輸出を計画していると日本に説明し、契約への準備を整えたいと伝達。ブロック2Aやその改良型の迎撃ミサイルの第三国輸出を認める方向で年内にも回答するよう日本側に求めてきた。ブロック2Aは海上配備型だが、地上配備型にも転用できる。

海自潜水艦を増強 活発化する中国海軍に対処 防衛大綱改定

2010.07.25 MSN産経新聞

 防衛省は24日、年末に改定する「防衛計画の大綱」で海上自衛隊の潜水艦を増強する方針を固めた。現在の18隻態勢から20隻台に引き上げる。昭和51年に初めて策定した防衛大綱で隻数を定めて以降、増強は初めて。東シナ海と太平洋で中国海軍の動きが活発化し、活動範囲が広がっていることや、北朝鮮潜水艦による魚雷攻撃と断定された韓国哨戒艦撃沈事件を受け、日米の抑止力と情報収集能力を強化する狙いがある。

 海自の潜水艦は51年策定の防衛大綱の「別表」で16隻と定め、その後の大綱改定でもそのままだった。ほぼ毎年、最も老朽化した1隻が退役する代わりに新造艦1隻が就役することで、18隻態勢(教育訓練用の2隻を含む)が維持されてきた。20隻台に増強する際には、新造のペースは変えず、退役時期を延ばす計画だ。船体技術の向上や運用に工夫を凝らすことで使用期間の延長が可能という。

 東西冷戦期には、海自の潜水艦の任務はソ連太平洋艦隊に備えるための宗谷、津軽、対馬の3海峡封鎖に重点が置かれた。しかし、アジア・太平洋地域で中国海軍の存在感が増すにつれて、その任務は中国などを念頭においた南西方面への対応にシフトしている。

 中国海軍は10年以上にわたり潜水艦の保有数を約60隻で維持する一方、近代化を急ピッチで進めた。台湾海峡有事で最大の敵となる米空母の接近を阻止するには、隠密性に優れた潜水艦が切り札になるためだ。

 4月、中国海軍の艦艇10隻が沖縄本島と宮古島の間を通過した際、中国が保有する潜水艦の中で最も静粛性が高く、探知されにくいキロ級潜水艦が潜航せずにあえて浮上航行した。これは、太平洋まで活動範囲を拡大し、「より前方で米空母を足止めできる能力を誇示した」(防衛省幹部)ものとみられている。

 米国防総省が2月に発表した「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)は、中国の接近阻止能力への対応を重点項目に挙げ、米軍の態勢強化と同盟国の能力向上が必要としている。このため、海自の潜水艦態勢の強化は急務となっていた。

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 防衛計画の大綱 日本の国防政策と防衛力整備の基本方針。昭和51年の策定以来、今年で改定は3回目。有識者による「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」が今夏に提出する報告書と防衛省などの計画案を踏まえ、年末に新たな大綱を閣議決定する。

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 海上自衛隊の潜水艦 通常型と呼ばれるディーゼル動力艦だけで原子力潜水艦は保有していないが、静粛性などで世界最高レベルとされる。最新鋭の「そうりゅう型」はAIPという新たな動力装置を搭載し、長時間の潜航が可能。潜水艦の建造費は1隻約500億円。

政府・与党、武器輸出三原則の緩和検討 共同開発・生産を容認

2009年05月24日 NIKKEI NeT

 政府・与党は23日、武器や武器技術の輸出を禁止する武器輸出三原則の緩和を検討する方針を固めた。年末に改定する予定の防衛計画の大綱に、他国との武器の共同開発・生産の容認や、共同開発国への輸出の解禁を盛り込む。欧米諸国が進めている次世代戦闘機など主要装備の共同開発・生産への参加の道を開き、調達コストの抑制と、国内の防衛産業の活性化につなげる狙いだ。

 武器輸出三原則は1967年に佐藤栄作首相が表明した共産国や国際紛争の当事国などへの武器禁輸方針だった。76年に三木武夫首相が事実上の「全面輸出禁止」に転換。現在も米国とのミサイル防衛(MD)システムの共同開発などを除き、禁輸が続いている。

首相「防衛省、動ける組織に」・組織改革、自民提言受け

2008/05/01 NIKKEI NeT

 福田康夫首相は1日、自民党の中谷元・安全保障調査会長、浜田靖一防衛省改革小委員長らと首相官邸で会い、小委がまとめた防衛省の組織再編に関する提言を受け取った。提言は自衛隊の部隊運用を統合幕僚監部に一元化するなど自衛官(制服組)の権限拡充を柱とする内容。首相は「誰が大臣になっても組織として動けるものにしないといけない。首相官邸の防衛省改革会議で参考にしたい」と応じた。

 組織再編を巡っては石破茂防衛相直轄の改革推進チームも具体案を検討中。現時点では部隊運用を制服組の統合幕僚長をトップに据える「作戦局(仮称)」に集約するが、陸海空の3幕僚長は指揮命令系統から切り離して防衛相の補佐役に専念。予算、装備の要求などに関与してきた3幕僚監部は機能を限って大幅に縮小する方向だ。

部隊運用、統幕に一元化・自民小委、防衛省改革で提言

2008/04/24 NIKKEI NeT

 自民党安全保障調査会の防衛省改革小委員会(浜田靖一小委員長)は24日午前、防衛省の組織改革に関する提言をまとめた。背広組(内局)と制服組(自衛官)に分かれる部隊運用の機能を自衛隊の統合幕僚監部に一元化するのが特徴で、制服組の権限を拡充。先のイージス艦の漁船衝突事故で首相官邸への連絡が遅れたのを受け、防衛省・自衛隊から首相秘書官の起用を求める方針も明記した。

 部隊運用を担う統幕は背広組も配置する混合組織とし、緊急時に備えた「統合司令部」を新設。内局の運用企画局は廃止する。制服組トップの統合幕僚長は天皇が認証する役職として陸海空の各幕僚長の上位、事務次官と同格に位置付けた。

 内局幹部が兼務している防衛相の補佐役の「防衛参事官」は廃止し、自衛官OBや民間人の登用を想定した「防衛相補佐官」制度に改める。防衛機密保全のための国会法改正や国家安全保障会議(日本版NSC)新設も盛り込んだ。

中国の台頭に対応、政府が「防衛大綱」抜本改定へ

2008年04月20日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 政府は19日、日本の防衛政策の基本指針となる「防衛計画の大綱」を5年ぶりに抜本的に改定する方針を固めた。

 中国の軍事力の増強が将来、日本の安全保障を脅かしかねないことから、10年後までを視野に入れた新大綱で、中国軍の軍拡に対応した防衛力整備を明記する必要があると判断した。一連の不祥事を受けた防衛省改革も反映させる。政府は年内にも、有識者会議を設け、来年末の閣議決定を目指す。

 防衛大綱は、国際的な軍事情勢や防衛政策の基本方針、防衛力整備の水準などを盛り込んだもので、国際情勢の変化に合わせて改定されてきた。冷戦中の1976年に初めて策定された後、冷戦終了後の95年、弾道ミサイルやテロの脅威が課題となった04年にそれぞれ改定された。

 政府はこれまで現大綱の部分修正を検討してきたが、中国の軍事力増強などに備えた抜本改定の方向となった。

 中国は、最新鋭の戦闘機や新型潜水艦、弾道ミサイルの積極的な配備など、日本が当初想定したペースを上回る軍拡を続けている。新大綱では自衛隊の対潜能力やミサイル防衛の強化などが課題になると見られる。

緊急発進14年ぶりに300回 ロシア機増加、領空侵犯も

2008年04月18日 中国新聞ニュース

 領空侵犯の恐れがある外国機に対して航空自衛隊が緊急発進(スクランブル)した回数は2007年度の1年間で307回と06年度より68回増加し、14年ぶりに300回を超えたことが18日、防衛省統合幕僚監部のまとめでわかった。

 国別内訳ではロシア機が約82%の253回でトップ。今年2月には旧ソ連時代以来、33年ぶりに伊豆諸島南部で領空侵犯するなど動きが目立ち、統幕は「国防費増加に伴うロシア空軍の活性化が背景にあるのではないか」と分析している。

 統幕によると、ロシア機へのスクランブルは05年度が116回、06年度は196回で2年前から連続で増えている。

 次に多いのは中国機で、06年度の22回から43回に増加。統幕は「何らかの情報収集や訓練飛行ではないか」と指摘している。そのほかは米国や韓国機など。

イージス艦を捜索 業務上過失往来危険の疑い

2008年02月19日 中国新聞ニュース

 千葉県・野島崎沖で起きた海上自衛隊の最新鋭イージス護衛艦「あたご」(艦長・船渡健1等海佐、7、750トン)と漁船「清徳丸」(7・3トン)の衝突事故で、横須賀海上保安部は19日夕、業務上過失往来危険容疑で、海上自衛隊横須賀基地に接岸したあたご艦内を家宅捜索した。船渡艦長ら関係者からも事情を聴き、事故原因などの特定を急ぐ。

 日米安保体制の「最高機密」とされるイージス艦への強制捜査は極めて異例。目視やレーダーを使った、あたご側の監視態勢の不備の有無が大きな焦点となる。

 石破茂防衛相は19日夕、自民党の国防合同部会に出席し、事故の状況について「あたごの見張り員が右の方向に灯火を視認、この灯火がスピードを上げたため漁船と確認し全力の後進をかけたが、1分後に衝突した」と説明。清徳丸はあたごの前方約100メートルで大きく右にかじを切ったという。

 横須賀海上保安部などは関係者の聴取と並行し、船体の損傷状況や航路記録などを分析。事故時の両者の位置関係や進路、速度、海上衝突予防法上の回避義務がどちらにあったか、などについて調べる。

イージス艦が漁船と衝突 マグロ漁の2人不明

2008年02月19日 中国新聞ニュース

 19日午前4時7分ごろ、千葉県・野島崎の南南西約40キロの太平洋で、京都府舞鶴市の海上自衛隊第3護衛隊群所属の最新鋭イージス護衛艦「あたご」(艦長・船渡健1等海佐、7700トン)が、マグロ漁に向かっていた千葉県勝浦市の新勝浦市漁業協同組合所属の漁船「清徳丸」(7・3トン)と衝突した。

 清徳丸は船体が2つに割れ、船首と船尾部分がそれぞれ海上に浮いている状態。乗っていた勝浦市川津、吉清治夫さん(58)と息子の哲大さん(23)の2人が行方不明になった。第3管区海上保安本部(横浜)と海自は巡視船や護衛艦、航空機などを現場に派遣し、2人を捜索している。

 自衛艦と民間の船舶との重大事故は1988年7月に起きた潜水艦「なだしお」と釣り船の衝突以来。1993年に導入されたイージス艦の重大事故は初めて。

空自F2戦闘機が緊急着陸 青森・三沢

2008/01/21 中国新聞ニュース

 二十一日午前九時二十分ごろ、青森県三沢市沖の海上を訓練飛行中の航空自衛隊F2支援戦闘機で、操縦かんのグリップ部分が外れるトラブルがあった。F2は約三十分後に三沢飛行場に緊急着陸し、パイロットにけがはなかった。空自は同型機の飛行を見合わせ、詳しい原因を調べている。

 防衛省航空幕僚監部によると、配線などに異常はなく、パイロットはグリップ部分を付け直して操縦かんにつながる根本付近を持ちながら着陸した。地上で調べたところ、操縦かんとグリップ部分とをつなぐ金属部品が破断していた。

 F2は米国製のF16を母体に日米共同で開発され、空自は七十五機を保有している。昨年十月三十一日、愛知県豊山町の県営名古屋空港の滑走路で離陸中に炎上、乗員二人が重軽傷を負う事故があった。機体を点検する三菱重工業の配線ミスが原因と判明した。

動揺せず「任務粛々と」 インド洋補給活動

2007/09/17 The Sankei Shimbun WEB-site

 インド洋やアラビア海で、テロリストによる武器や麻薬の輸送を監視する多国籍軍の活動を支援するため、海上自衛隊が行っている洋上補給活動が岐路に立っている。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が15、16日に行った世論調査では、賛成(48・7%)が反対(39・1%)を上回った。だが、民主党の反対で、少なくとも一時的な撤退が不可避の情勢だ。海自はどういう活動をしているのか。活動継続に向け新しい首相はどう対応するのか。国際貢献のあり方を問う連載初回は、アラビア海を航行する海自補給艦への同乗取材を報告する。

 ■常に“実戦”

 同乗したのは、安倍晋三首相が退陣表明した翌13日。補給艦「ときわ」(基準排水量8150トン)の隊員たちは38度の炎天下、汗だくで黙々と任務をこなしていた。

 午後2時(日本時間午後7時)、アラビア海北部。一面に広がる群青色の大海原。ジリジリと甲板に照りつける日差しがきつい。海面をすべるように、静かに航行していたそのときだ。艦内放送が突如、鳴り響いた。

 「5番ステーション、洋上給油用意!」

 甲板から後方の洋上をみると、灰色の船影が徐々に大きく、こちらに近づいてくるのがはっきり見える。「ときわ」を追って周辺の警戒に当たっている護衛艦「きりさめ」(4550トン)の後方に姿を現したのは、パキスタン海軍の駆逐艦だ。軽油や水の補給を受けるためだ。

 洋上補給を円滑かつ安全に実施するには、約12ノット(時速約22キロ)のスピードを保ち、40メートルの距離を保たねばならない。洋上でのこの距離は思いのほか近く感じる。

 「ときわ」の甲板上では、長袖の作業着にヘルメットと救命胴衣を着用した隊員たちが慌ただしく動き回る。駆逐艦が補給艦の右舷にピタリとつけた。艦橋で操舵(そうだ)する隊員の表情はみるみるこわばり、緊張が頂点に達したのがうかがえる。

 両艦の距離は、駆逐艦の乗組員の顔のひげが確認できるほどに近い。舵(かじ)を誤ればすぐに激突してしまう。燃料を満載しているだけに、危険と隣り合わせの作業だ。

 「海上の無料ガソリンスタンド」(民主党関係者)という牧歌的な批判とはほど遠い、命がけの仕事だ。

 「ときわ」から駆逐艦の甲板めがけ、ロープを発射。パキスタン艦の乗組員たちが素早くそれをたぐり寄せる。その後、両艦をつなぐ太いワイヤが渡され、それを伝って3本の給油・給水ホースがパキスタン艦の給油口に手際よく接続される。

 3時半。この日は100キロリットル余りの軽油を流し込んだ。作業を終えた隊員たちは、甲板上に直立不動の姿勢で整列。パキスタン艦を見つめ続け、高速で去っていく駆逐艦に大きく手を振った。補給艦の艦長、菅原貞真2等海佐(54)は「海自艦船に補給を行うときはこの3分の1の時間で終わる。だが、知らない相手艦とコミュニケーションをとる分だけ作業は難しくなる」と多国籍軍との連携の困難さを語る。これまで補給作業の失敗はゼロ。「常に100%の能力を発揮しなければ成功しない」(菅原艦長)と隊員らの練度の高さに胸を張る。

 ■将来のために

 一報は、家族からの電子メールだった。安倍首相が辞任を表明した12日。衝撃的なニュースは艦内に瞬く間に広がった。甲板作業員長の増田昭夫曹長(48)は「隊員に驚きはあったが、動揺はなかった」と淡々と語る。菅原艦長も、「どなたが最高指揮官になろうとも、われわれは与えられた任務を粛々と実行するだけだ」と語る。

 ただ、「ときわ」と「きりさめ」の2隻を指揮する派遣海上支援部隊指揮官の尾島義貴1等海佐(47)はこう語る。「みなさんのお子さん、お孫さんが将来、笑って暮らせる日本をつくるためにわれわれはここで活動している。そんな国につながるような結論が得られればいい」

 補給活動の延長に「職を賭す」と語っていた安倍首相の言葉が脳裏をよぎったのか。

 ■日常化する派遣

 「暑いからどうしても火を通した揚げ物が多くなるんですよ」

 「ときわ」の士官室。尾島指揮官がこう言って笑顔で昼食会に迎えてくれた。

 弁当のふたを開くと指揮官の言葉通り、フライ、空揚げ、ハンバーグ、スパゲティ、それから昔なつかしい赤いソーセージと、お子様ランチのような食材が並ぶ。

 中年以上の隊員の胃袋にはこたえるだろう。毎週金曜の昼に曜日を忘れないようにと供される辛口カレー。旧海軍時代からの伝統だ。これが「待ち遠しい」という隊員心理がよく分かる。

 インド洋での海自の補給活動は平成13年12月の開始以来5年9カ月に及ぶ。アフガニスタンでのテロ行為を封じ込めるためテロリスト、麻薬、武器の海上移動を防ぐ海上阻止活動を行う多国籍海軍への支援の一環だ。

 13日現在、11カ国に対し計778回、約48万キロリットル(約220億円相当)の給油を行った。日本に5隻しかない補給艦の乗組員にとっては日常業務となり、中には6回の派遣を経験した隊員もいる。

 「家族からは、『頑張って』といわれただけです。家で仕事の話はしませんし、海外派遣といっても特に変わったことはありません」

 こう語るのは、「ときわ」の甲板で給油作業に携わる戸田好美1等海曹(45)。派遣回数は今回で4回目。5カ月程度の派遣をほぼ毎年のように経験している。132人の乗組員のうち2回以上の派遣を経験したのは6割の82人で、戸田氏を含め10人が4回、1人が5回の派遣歴を持つ。

 だが、いかに訓練で慣れていても、2段ベッドを並べた16人部屋での長期の洋上生活はストレスにつながる。

 菅原艦長は隊員の心のケアについて「国内にいるとき以上に隊員のプライバシーを尊重し、衛星携帯電話や電子メールで随時家族と連絡を取れるよう配慮している」という。  (加納宏幸)

【コラム】海自護衛艦「ひゅうが」は空母か否か(上)

2007/08/27 朝鮮日報/朝鮮日報JNS ユ・ヨンウォン記者

 IHIマリンユナイテッド横浜造船所で今月23日、軽空母のような大型の飛行甲板を備えた1隻の艦艇が数百人の参加者の見守る中で進水した。排水量が1万3500トンに達する海上自衛隊の新型ヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」が完成し、雄壮な姿を現したのだ。

 「ひゅうが」という名前は第2次世界大戦に参戦した旧日本海軍の戦艦「日向」にちなんだ。本来航空機を搭載できない戦艦だったが、戦争末期に航空機20機余りを搭載できる「航空戦艦」として改造された特異な経歴を持つ艦船だった。今回進水した「ひゅうが」がヘリ数機を搭載し、敵の潜水艦捕捉を主な任務としていることからも今回の命名は示唆するところが大きい。

 韓国ではそれほど注目を浴びなかったが、「ひゅうが」はいくつかの点で注目に値する。まず、海上自衛隊が戦後保有した戦闘艦で最大規模という点だ。海上自衛隊が排水量1万トンを超える戦闘艦を持ったのは初めてだ。また日本版のミニ・イージス・システムといえる最新型レーダーを装備している。このレーダーは日本が独自開発したもので、イージス艦のように360度を常にカバーできる。

 最も注目されるのは航空母艦に当たるかどうかだ。日本政府は公式にはヘリ搭載護衛艦と呼び、決して軽航空母艦やヘリ搭載航空母艦ではないと主張している。しかし、多くの国内外メディアは、同艦を日本にとって戦後初のヘリ空母または軽空母と報じている。

【コラム】海自護衛艦「ひゅうが」は空母か否か(下)

2007/08/27 朝鮮日報/朝鮮日報JNS ユ・ヨンウォン記者

 ひゅうが型護衛艦は4‐6隻の建造が見込まれ、格納庫と甲板上に最大11機のヘリを搭載可能で、大型飛行甲板ではSH-60対潜ヘリ4機が同時に離陸できる。しかし、垂直離着陸機のような固定翼ジェット戦闘機が発進するための「スキージャンプ」と呼ばれる特殊な甲板は設置されていない。

 このため、専門家らは「ひゅうが」は現時点で軽空母とはいえないが、ヘリ空母としては見劣りしないと指摘している。 「ひゅうが」は、ヘリコプター3機を搭載できた従来のはるな級ヘリコプター搭載駆逐艦に比べ、約4倍のヘリを搭載でき、海上自衛隊のヘリ作戦能力を大きく向上させることができる。軽空母に改造可能だとして論議を呼んだおおすみ型輸送艦(8900トン)に比べてもはるかに大きい。また艦隊を主導する旗艦の役割と災害救護司令部としての機能も持つ。

 「ひゅうが」は「空母保有」という海自の長年の念願を実現する上で、礎となる点にも留意すべきだ。海自は第2次大戦の敗戦後も空母保有の未練を捨てられず、冷戦が深刻化していた1960年代に大型飛行甲板を持った1万トン級の対潜ヘリ空母(CVH)の建造を計画した。当時、米国の軍事顧問団もこれに賛成し、米国が建造費用の一部を負担する方向で計画を推進したが、予算問題と世論の悪化で中止された。その代わりに登場したのがはるな級、しらね級のヘリ搭載護衛艦で、その後継艦となるのが「ひゅうが」だ。

 曲折を経た日本のヘリ空母構想は、「ひゅうが」の進水で40年ぶりで実現したことになり、注目すべき点は多い。

“空母型”新護衛艦が進水 「ひゅうが」と命名

2007/08/23 中国新聞ニュース

 ヘリコプター十一機が搭載可能で海上自衛隊の艦艇では最大級となる新型護衛艦の進水式が二十三日、横浜市の「アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド」横浜工場であり、「ひゅうが」と名付けられた。

 排水量一三、五〇〇トン、全長百九十七メートルで、建造費は約一千億円。艦首から艦尾まで延びる広大な甲板を持つ空母のような外観が特徴で、ヘリ三機が同時に発着できるほか、高度な指揮通信機能を備えている。

 ひゅうがは、これまで護衛艦で最大だったイージス艦「あしがら」(七、七〇〇トン)などを大きく上回り、補給艦「ましゅう」(一三、五〇〇トン)と並び海自最大級。

 英海軍の軽空母にほぼ匹敵する大きさだけに「事実上のヘリ空母で、近隣諸国を刺激しかねない」と懸念する声も上がりそうだが、海上幕僚監部は「攻撃機を搭載する能力はない」と説明。「大規模災害時の輸送など多目的に活用できる」としている。

 今後、対空ミサイルの取り付けなどを行い、二〇〇九年春に就役する予定。

巨大「ヘリ空母」完成間近 災害時にも活躍

2007/07/25 Iza

 海上自衛隊の護衛艦としては最大級となるヘリコプター11機を搭載できる初の「ヘリ空母」の建造が横浜市のIHIマリンユナイテッド横浜工場で進んでいる。

 護衛艦(16DDH)は全長195メートル、全幅33メートル、基準排水量1万3500トン、速力30ノット。乗員は約350人でレーダーに反応しにくい形状になっている。艦首から艦尾まで滑走路上の飛行甲板を備え、艦橋は右舷側に配置されている。ヘリ4機の同時発着が可能で、甲板前後に設けられる大型エレベーター(写真では四角い空洞)でヘリを艦内の格納庫(全長125メートル)に運搬、整備をすることもできる。格納庫には8機収納が可能。

 ヘリ空母は対潜水艦作戦を強化する目的で、対潜ヘリの搭載能力を向上させた護衛艦だが、高度な指揮通信機能も保有しており、洋上での航空作戦指揮能力も持っている万能艦だ。ヘリ甲板が広いことから大規模災害時の洋上ヘリポートとしての運用も可能で、国際緊急援助活動や海外からの邦人輸送任務にも対応できる。

 艦対空誘導弾や高性能20ミリ機関砲、魚雷発射管などで武装するほか、不審船対策として機銃も装備する。

 来月23日に進水式が行われた後、防衛省に引き渡されて武器や精密機器を搭載する艤装(ぎそう)を経て、平成21年3月に就役する予定。

小池防衛相、続投希望せず 情報漏えいで「引責」

2007年08月24日 中国新聞ニュース

 【ニューデリー24日共同】小池百合子防衛相は24日午後(日本時間同)、ニューデリーで同行記者団に対し、27日の内閣改造で続投を希望しない意向を示した。

 小池氏はまずイージス艦中枢情報流出事件に触れ「防衛省内で誰も責任を取っていない。私は責任を取りたい」と述べ、省としてのけじめをつける必要があるとの認識を強調。その上で「人心を一新し、テロ対策特別措置法についてもしっかりと延長を実現してもらえる人にバトンタッチしたい。新しい大臣に任せたい。任せられる人を(安倍晋三首相には)選んでいただきたい」と表明した。

武器使用拡大で大筋合意 海外派遣の自衛隊活動で

2007年08月10日 中国新聞ニュース

 政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)の第4回会合が10日夕、首相官邸で開かれた。国連平和維持活動(PKO)などで海外に派遣された自衛隊が、同じ目的で活動している他国部隊も警護できるよう武器使用権限を拡大すべきだとの意見で大筋一致した。

 他国部隊が攻撃を受けた際、その場に駆け付けて救援のため武器使用する「駆け付け警護」は、PKO協力法など現行法では認められていないが、この日の議論は従来の政府の政策判断見直しを求める内容となった。

 会議では委員から「同じミッションで自分しか守らないというのは常識はずれだ。国際的に通用しない」などの意見が相次いだ。

 安倍晋三首相は冒頭のあいさつで「世界の平和と安全なくして日本の平和と繁栄はない。PKOなど国際的な平和活動にわが国が一層積極的に関与していくことが求められている」と強調した。

自衛隊、徐々に制約除く 米紙報道、周辺国に不安も

2007年07月23日 中国新聞ニュース

 【ニューヨーク23日共同】23日付の米紙ニューヨーク・タイムズは1面の特集記事で自衛隊について、海上自衛隊によるインド洋での米艦船への給油活動など「数年前なら考えられないと思われていた変革を実行に移した」と指摘、軍事的制約が徐々に取り除かれていると報じた。その上で、こうした変化が周辺国の不安を呼び起こしていると伝えた。

 このほかの「変化」の具体例としては(1)イラク南部サマワへの陸上自衛隊派遣や航空自衛隊による同国内での空輸活動(2)防衛庁の「省」昇格(3)攻撃能力を持つ米最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターの調達検討−などを挙げた。

 その背景については、集団的自衛権行使容認派の小泉純一郎前首相や安倍晋三首相の志向に加え、ブッシュ米政権が進めるテロとの戦いに貢献しなければ「米国に見捨てられると彼らは恐れている」(米マサチューセッツ工科大のリチャード・サミュエルズ教授)との見方を紹介。

防衛白書の要旨 2007年版

2007年07月06日 中国新聞ニュース

 2007年版防衛白書の要旨は次の通り。

 【安全保障環境】伝統的な国家間の関係(中国・インドの台頭など)から大量破壊兵器の拡散(北朝鮮の核、ミサイル問題など)、テロなどの新たな脅威(イラク、アフガニスタン情勢など)に至るまでさまざまな課題に直面している。イラクの治安情勢は依然として厳しい。

 ▽北朝鮮 大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発などに努め、大規模な特殊部隊を保持するなど軍事力を維持、強化。わが国を含む東アジア全域の安全保障にとって重大な不安定要因。弾道ミサイルの長射程化や固体燃料化のための研究が進められていると考えられる。2006年7月の弾道ミサイル7発発射、同年10月の核実験発表は重大な脅威。

 ▽中国 急速な軍事力近代化の当面の目標は台湾問題への対応が中心。しかし中国の急速な発展と軍事力の近代化が長年にわたって続いていることや軍事力の透明性の欠如を背景として、中国の軍事力近代化の目標が台湾問題への対応などを超えるものではないかとの議論が引き起こされるなど、近代化の行方に関する懸念が高まっている。国防費の内訳の詳細を明らかにしておらず、1月の対衛星兵器の実験に関する説明が十分されないなど、軍事力の透明性の向上が望まれる。より遠方の海域で作戦を遂行する能力の構築を目指し、空母の保有にも強い関心を持っている。国土の防空能力の向上に加えて、より前方での航空戦闘能力、対地・対艦攻撃能力の構築を目指している。中台の軍事バランスは中国側に有利な状態へと向かって変化しつつある。

 【防衛政策の基本】憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従い、日米安保体制を堅持するとともに文民統制を確保し、非核3原則を守りつつ節度ある防衛力を整備する。

 ▽省移行と国際平和協力活動の本来任務化 防衛省・自衛隊の任務はわが国の防衛のみならず、国内外での災害対応や国際平和協力活動などに拡大。組織を時代にあったものとなるように見直すことが必要。

 【防衛の諸施策】

 ▽ミサイル防衛(MD) 07年3月、航空自衛隊入間基地(埼玉県)に所在する第1高射群第4高射隊にわが国のMDシステムを構成する初の迎撃手段として地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を配備。11年度までに、MD機能を付加したイージス艦4隻とPAC3、警戒管制レーダー(FPS5)を指揮・通信システムで連接したシステムを構築することを当面の目標とする。

 ▽日米安保体制 日米同盟はわが国の防衛や地域の平和と安定、国際的な安全保障環境の改善において重要。

 ▽在日米軍再編 06年5月の最終報告を着実に実施していくために米軍再編推進法を制定。

 ▽国際平和協力活動 イラク復興支援特別措置法により航空自衛隊が国連、多国籍軍への支援、イラクの復興、安定に協力。国際的なテロリズムとの戦いではテロ対策特別措置法に基づき、インド洋上で海上自衛隊が米艦艇などへの給油などを実施。2国間、多国間訓練を含む安全保障対話・防衛協力を推進し、日豪共同宣言の発表、日印防衛政策対話を実施した。

 ▽情報保全 秘密を保全することは国の防衛を全うし、安全を保持する上で不可欠な基盤であり、省を挙げて情報流出の再発防止に取り組む。国民の信頼を損なうような事案が発生したことを反省し、再発防止へ断固たる決意で臨む。

空自派遣を2年間延長 イラク特措法改正

2007/06/20 中国新聞ニュース

 イラクへの航空自衛隊派遣の二年延長を可能にする改正イラク復興支援特別措置法が二十日の参院本会議で、自民、公明の与党などの賛成多数で可決、成立した。民主、共産、社民、国民新の野党四党は反対した。改正により空自派遣の期限は二○○九年七月末となる。政府は同法に基づく基本計画で派遣を○八年七月末まで一年延長する方針を固めており、七月中に閣議決定する。

 ○八年八月以降、さらに延長するかどうかはイラクの治安状況、多国籍軍や国連の動向を見ながら判断する意向で、「出口戦略」の構築が政府の課題となる。

 空自は現在、クウェートを拠点に、陸上自衛隊が活動していたサマワ近郊のタリル、首都バグダッド、北部アルビルとの間で多国籍軍と国連の人員、物資を輸送。延長後も活動内容、範囲は現状通りとする。

 政府は衆参両院での質疑で「潘基文国連事務総長、マリキ・イラク首相から活動継続要請の書簡が寄せられており、現在も二十六カ国が支援を続けている」と空自派遣の必要性を強調。一方、野党は「イラクへの武力行使には正当性がなく、撤退する国も増えている」と反対した。

 イラク特措法は○三年七月、四年間の時限立法として成立した。政府は同法が今年七月末で期限切れとなるのを前に、多国籍軍や国連の支援は当面続くとして二年延長の改正案を国会提出した。民主党はイラク特措法廃止法案を衆院に提出したが、否決された。

 審議時間は衆院安全保障委員会で約十七時間、参院外交防衛委員会で約十二時間だった。

無人の潜水艇・水上艇を開発へ…特殊部隊対策で防衛省

2007年05月14日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 防衛省は、海中から侵入しようとする特殊部隊や艦艇への自爆テロによる攻撃を阻止するため、無人潜水艇(UUV)と無人水上艇(USV)の開発に向け技術研究に着手する。

 2008年度予算の概算要求に約26億円を計上する予定だ。研究期間は6年、研究経費は総額60億円規模となる見通しだ。

 防衛省の構想では、無人水上艇と無人潜水艇をネットワーク化し、武装工作船の追跡、機雷の捜索・除去、海底調査のほか、島しょ部侵略や港湾・沿岸でのゲリラや特殊部隊の侵入監視などに活用したい考えだ。無人化によって危険を回避し、より効果的な任務遂行が期待されている。

 研究対象は、水中通信技術や自立航走制御技術などで、13年度までに運用実証実験を終える予定。その後、海上自衛隊への配備を目指している。

 無人潜水艇に関しては、遠隔操作する機雷処分具「S―7」が海上自衛隊に配備されている。今回の研究では、能力を大きく向上させ、水中で自立航行し、各種センサーにより、目的の識別、判断、攻撃ができる「ロボット」的な能力を備えた開発を目指している。

NLP:ジェット戦闘攻撃機使い行われる 米海軍厚木基地

2007年05月14日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 米海軍厚木基地(神奈川県大和市・綾瀬市)で10日から、ジェット戦闘攻撃機による夜間発着訓練(NLP)が行われている。14日夜も特有の金属音が住宅地に響いた。同基地でNLPをしないと明文化した日米間の取り決めはないが、騒音の大きなジェット戦闘機などのNLPについては、地元の粘り強い反対運動で最近6年間は行われていなかった。7年ぶりの突然の実施に、地元自治体や住民の反発が強まっている。

 神奈川県などによると、同基地では通常、低騒音機種のNLPが実施されているが、米軍は10日、訓練地の硫黄島(東京都)の天候不良を理由に10、14、15日の3日間にわたるジェット戦闘攻撃機の夜間訓練実施を県や地元自治体に通告してきた。

 10日は午後6時ごろから約4時間行われ、「テレビの音声が聞こえない」「電話で会話ができない」といった計151件の苦情が地元自治体などに寄せられた。

 松沢成文・同県知事は14日夜、基地周辺を視察したうえで同基地の厚木航空施設司令官、ジャスティン・クーパー大佐に抗議し、訓練中止を強く申し入れた。【長真一、山下修毅】

ミサイル迎撃:高出力レーザー兵器開発に着手 防衛省方針

2007年05月13日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 防衛省は12日、ミサイル迎撃のための高出力レーザー兵器の研究、開発に来年度から着手する方針を決めた。来年度予算の概算要求に盛り込む方針だ。北朝鮮のミサイル発射や核実験で日本上空の脅威が高まる中、日本の防空機能を強化する狙い。まずは本土防衛に直結する地上配備型レーザーの研究、開発を目指すが、将来的には航空機搭載レーザー(ABL)についても検討する。

 日本は現在、弾道ミサイルの迎撃手段として(1)地上配備型の「PAC3」(2)イージス艦に搭載する海上配備型の「SM3」−−の2本柱で両迎撃ミサイルの配備を進めている。PAC3はミサイルが大気圏に突入後、着弾するまで、SM3はミサイルの大気圏外の飛行中の迎撃を想定している。これに対しABLは、弾道ミサイル発射直後の撃ち落としやすい段階での迎撃手段として米国が開発を進めている。

 ABLについて日本はこれまで、発射国上空の迎撃が領空侵犯につながったり、ミサイルの攻撃目標が日本であることが判明する前に迎撃すれば、憲法解釈が禁じる集団的自衛権の行使となる恐れがあるため、研究や開発には慎重だった。

 しかし、1日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)でミサイル防衛(MD)分野での協力強化がうたわれた。米側からABLの開発に対し協力を求められていることや、北朝鮮の脅威が昨年7月のミサイル発射で顕在化したことから、慎重姿勢を転換させる方針を固めた。【田所柳子】

空自防空情報を米に提供 北朝鮮・中国念頭に

2007/05/13 中国新聞ニュース

 防衛省が航空自衛隊の自動警戒管制組織(バッジシステム)で集めた日本周辺の防空情報について、四月下旬から米軍への提供を開始していたことが分かった。複数の日米関係筋が十二日、明らかにした。北朝鮮や軍事的に台頭する中国をにらみ、高精度の軍事偵察衛星を駆使する米国とバッジシステムの情報を合わせ、防衛態勢を強化するのが狙いだ。

 防空情報の提供は、ミサイル防衛(MD)に関する日米間の情報共有を確認した今月一日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同発表を先取りした形で、米軍と自衛隊の軍事一体化の加速を裏付けている。憲法解釈で禁じている集団的自衛権の行使につながるとの声も出そうだ。

 バッジシステムは航空総隊司令部(東京都)を中核に、全国二十八カ所の航空警戒管制部隊(レーダーサイト)、空中警戒管制機(AWACS)、戦闘機部隊などを連結して情報を一元化する空自のネットワーク。これまで訓練で米側への一時的な情報提供はあったが、今回、バッジシステムを横田基地(東京都)の米第五空軍司令部に恒常的に接続、情報提供を始めた。

 米側はバッジシステムの情報提供を再三求めていたが、日本側は自衛隊の独立性を重視。MDの主体となる海上自衛隊と空自が組織ごとに縦割りで情報を収集、運用する仕組みも障害となり実現しなかった。

 しかし、防衛省は二〇〇六年三月、陸海空三自衛隊の部隊運用を一元化する「統合幕僚監部」を新設し、テロや災害など多様な事態に一体で対応する態勢を整備。米軍と自衛隊が別々に活動している状態では「防空情報の穴」が生じる危険性があるため、情報の共有に踏み切った。

 ただ、政府は米軍に対する防空情報の提供について「日米双方の情報に関することであり、明らかにできない」(大古和雄・防衛省防衛政策局長)と確認を避けている。

日韓、3年半ぶりに安保対話=北朝鮮の核問題など協議

2007/05/10 時事通信社

 日韓両政府は10日午前、外務省で局長級の安全保障・防衛政策担当者による「安保対話」を3年半ぶりに開催した。安保対話は、小泉純一郎前首相の靖国神社参拝などの影響で2003年11月以来途絶えていた。

 会合では北朝鮮の核問題や日本のミサイル防衛(MD)システム、在韓米軍基地の移転問題などについて意見交換。日本側は佐々江賢一郎外務省アジア大洋州局長、金沢博範防衛省防衛政策局次長が、韓国側は金在信外交通商省アジア太平洋局長、金炳基国防省国際協力次長が出席した。

無人偵察機など開発指針・防衛省

2007/04/26 NIKKEI NeT

 防衛省の技術研究本部は26日、今後20年程度の期間に必要となる防衛技術の開発・研究指針を初めてまとめた。大量破壊兵器や弾道ミサイル、テロなど新たな脅威に的確に対処するために必要となる中核的な20の技術分野を指定。危険地域向け地上探査ロボットや偵察用の超小型無人機などの開発を進める。

 同本部は1年かけて20分野の技術を実用化するロードマップを策定。防衛省はこれを参考に今後の防衛力整備を進める計画だ。(

日米同盟を一層強化 首相が防大卒業式で訓示

2007/03/18 The Sankei Shimbun WEB-site

 安倍晋三首相は18日午前、防衛大学校(神奈川県横須賀市)の卒業式で訓示し「国民の生命、身体、財産を守るためには、わが国の安全保障基盤の着実な整備を図るとともに、日米同盟を一層強化していく必要がある」と述べ、日米両国の安全保障協力を拡充する考えを強調した。

 首相はアジア太平洋地域の情勢について「北朝鮮の拉致問題、核開発、弾道ミサイルの発射をはじめ、複雑で多様な要因を背景とした地域紛争、大量破壊兵器の拡散など困難な諸課題が存在している」との認識を表明。今年1月に防衛庁から防衛省に昇格したことを挙げ「国防と国際社会の平和に取り組むわが国の姿勢を明確にすることができた」と指摘した。

 久間章生防衛相は「日米安保体制を発展させていくため、昨年5月の在日米軍再編に関する日米合意の実現に向けて最大限の努力をしている」と述べた。

 卒業生は421人で、うち女性は30人。インドネシア、モンゴル、タイ、ベトナムからの留学生が10人。任官辞退者は10人だった。

鹿児島・馬毛島を艦載機訓練施設に検討 防衛省

2007/02/22 中国新聞ニュース

 米軍厚木基地(神奈川県)の空母艦載機が太平洋上の硫黄島(東京・小笠原村)で実施している夜間離着陸訓練(NLP)など陸上空母離着陸訓練(FCLP)をめぐり、防衛省が恒常的な訓練施設の候補地として鹿児島県・馬毛島(西之表市)を検討していることが分かった。複数の政府関係者が明らかにした。

 今後、馬毛島を軸に調整を進めるが、騒音や安全性の確保に関する西之表市など関係自治体の反発は必至で、難航も予想される。

 馬毛島は種子島の西約十二キロにある広さ約八平方キロの島。平たん地で軽飛行機用の簡易滑走路がある。かつては人が住んでいたが現在は無人島状態で、ほぼ全域を開発会社が所有している。

 日米は昨年五月、空母艦載機部隊を二○一四年までに山口県の米軍岩国基地に移転することで合意。ただ恒常的な訓練施設は「○九年七月以降のできるだけ早い時期の選定を目標とする」と明示しておらず、今年三月までに日本側が複数の候補地を選び、米側に提示する段取りになっていた。

 米側は、艦載機が基地を発進し訓練を終えて戻るまで燃料補給を必要としないことを条件に、岩国基地から百八十キロ以内で選定するよう要求。しかし対象となる瀬戸内海や九州北部での候補地選びは難しく、圏外の馬毛島が浮上した。

久間防衛相と会談せず 副大統領訪日で伝達

2007/02/12 中国新聞ニュース

 二十日からのチェイニー米副大統領訪日に関し、米側がイラク開戦の判断や在日米軍再編問題をめぐる久間章生防衛相のブッシュ政権批判発言に強い不快感を示し、副大統領と久間氏の会談日程を入れないよう日本側に伝えていることが十一日、分かった。日米関係筋が明らかにした。

 久間氏の発言に関しては、米政府が既に外交ルートを通じ日本側に抗議し、一応決着した格好だが、日米間の「溝」として依然尾を引いている。

 関係筋によると、チェイニー副大統領はリン夫人とともに二十日に来日。二十一日に神奈川県横須賀市の米海軍基地を訪れ、在日米軍幹部、自衛隊幹部から米軍と自衛隊の協力態勢などについて説明を受ける。この後、麻生太郎外相、安倍晋三首相と個別に会談するほか、首相公邸での歓迎夕食会に臨む。二十二日には米空母キティホークを視察した後、グアムに向かう予定。

 外国政府要人が自衛隊幹部との会見を予定しながら、防衛省トップの防衛相との会談予定を入れないのは異例。

 ただ日米関係筋は五月の大型連休中にも予想される首相訪米や外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)の日程調整には影響しないとしている。

 副大統領の訪日日程は今月上旬に米ホワイトハウス関係者が先乗りで訪日し、外務省、防衛省・自衛隊など日本側と調整に当たっていた。麻生外相も米国のイラク政策を「非常に幼稚」と指摘したが、副大統領側は麻生氏の発言は特段問題視していないという。

配備期間は90−120日 嘉手納基地のF22戦闘機

2007/02/01 中国新聞ニュース

 【ラングレー米空軍基地31日共同】米軍嘉手納基地に、米国外で初めて一時的に配備される最新鋭のステルス戦闘機「F22Aラプター」について、運用する第27戦闘飛行隊を率いるトリバー中佐は31日、配備期間が「90−120日」になる予定と語った。

 ラングレー基地で記者団の取材に応じた。機体の嘉手納到着は2月10日ごろ。

 トリバー中佐は、F2212機とパイロット約20人を含む約260人が派遣されると述べた。具体的な活動としては、三沢基地(青森県)の在日米空軍部隊や在韓米空軍部隊との訓練などを予定しているという。

 沖縄の地元の懸念については「理解する」とし、離陸時に推力増強装置は使わず、嘉手納に現在配備されているF15戦闘機より騒音が大きくなることはないと述べた。配備目的については「強固な日米同盟と戦略的要衝であるこの地域の重要性を示すこと」と説明した。

日本防衛庁、北朝鮮・中国を見据え無人偵察機の導入へ

2007/01/02 NEWSIS/朝鮮日報JNS

 日本の防衛庁は、北朝鮮や中国など周辺国に対する長時間にわたる広域的な偵察と監視が可能な滞空型無人偵察機の導入に本格的に着手する、と西日本新聞が1日付で報じた。

 同紙によると、防衛庁は無人偵察機の機体導入に先立ち、無人偵察機搭載用レーダーを 2010年までに独自開発することにし、今年度予算に研究開発費15億円を計上する方針だ。

 無人偵察機を導入するのは、北朝鮮のミサイル発射や核実験などを受け、情報収集能力を強化するのが狙いだ、と同紙は指摘した。

 また、高高度を飛行して相手国の領空に接近する偵察機の配備は周辺国との緊張を招く恐れもあり、専守防衛を基本とする日本の国防政策上、議論を呼ぶ可能性があると見通した。

 防衛庁は、無人偵察機の機体開発には時間を要する点を勘案し、当面は米国製グローバルホーク(1台当り57億円)かプレデター(8億円)の購入を検討している。

 また、無人偵察機のレーダー開発経費15億円のほか、米軍による無人偵察機の運用実績や効果などを調査するための予算、約100万円も計上した。

 防衛庁は北朝鮮情勢や中国の軍事力増強に対応し、独自の情報網を構築する方案の一環として、まず無人偵察機を取り入れ、技術研究本部で飛行時間を最大限に伸ばすための技術開発に乗り出すことを決めた。

 米国が実用化している滞空型無人偵察機は、精密な軍事情報の収集を目的に配備され、相手国の領空や防空識別区域付近を飛行している。

 日本で導入する無人偵察機の場合、北朝鮮や中国を見据え、九州に近い東海(日本海)や東シナ海の上空を中心に運用される可能性が高い、と西日本新聞は付け加えた。

 

防衛省法案が衆院通過 海外派遣を本来任務化

2006/11/30 中国新聞ニュース

 防衛庁の「省」昇格関連法案が三十日午後の衆院本会議で自民、公明、民主党などの賛成多数で可決された。参院に送付され、今国会中に成立する見通し。これに先立ち衆院安全保障委員会で可決、シビリアンコントロール(文民統制)の徹底などを盛り込んだ付帯決議が採択された。共産、社民両党は反対。

 関連法案は、来年一月から防衛庁を防衛省、防衛庁長官を防衛相に格上げするほか、自衛隊法で「付随的任務」とされてきた(1)国際緊急援助活動(2)国連平和維持活動(PKO)(3)周辺事態法に基づく後方地域支援−などを「本来任務」に位置付ける。防衛相にはほかの閣僚と同様の権限を持たせ、国の防衛に関する重要案件や法案について閣議の開催を求めたり、予算を直接要求できるようにする。また防衛施設庁を二○○七年度に廃止し、機能を防衛省に統合する。

 防衛庁は一九五四年に発足。省昇格構想は発足直後から関係者の間で持ち上がっていた。九七年に行政改革会議で取り上げられ、○一年には議員立法で「防衛省設置法案」が提出されたが廃案となった。

 省昇格関連法案をめぐっては、民主党をはじめ野党側が防衛施設庁をめぐる談合事件の真相究明が先決と主張し、審議を拒否した経緯もあり、衆院安保委での法案審議時間(別テーマの集中審議を除く)は十四時間余りにとどまった。

防衛「省」昇格法案、30日衆院通過へ

2006/11/28 The Sankei Shimbun

 自民、民主両党は28日、防衛「省」昇格関連法案を30日午前の衆院安全保障委員会で採決し、同日の衆院本会議に緊急上程することで合意した。これにより法案は30日に衆院を通過し、12月1日の参院本会議で趣旨説明が行われる見通しだ。

 与党側は安保委員会の理事懇談会で、いったんは28日中の委員会採決を野党側に通告した。しかし、民主党はその後の協議で、30日に委員会採決を行うとの折衷案を示し、与党が受け入れた。

 また、久間章生防衛庁長官は28日の委員会質疑で、「国際平和協力活動が自衛隊の本来任務とされれば、それに応じた体制づくりをする必要がある」と指摘。海外に派遣される部隊を訓練する「国際活動教育隊」や、先遣隊となる「中央即応連隊」の新設、大型輸送機などによる輸送態勢の充実を挙げた。

核搭載艦の緊急時領海通過容認 久間防衛庁長官

2006年11月24日 中国新聞ニュース

 久間章生防衛庁長官は24日午後の衆院安全保障委員会で、非核3原則で禁じている核搭載艦艇の領海通過について「緊急事態の場合はやむを得ない」と述べ、緊急時には例外的に容認する考えを表明した。

 領海通過は日米安全保障条約の事前協議の対象となり、非核3原則の観点から拒否するのが政府の立場だが、久間氏は「こういう形で通過させてもらいましたということは事後的に報告があるだろう」と述べ、事後報告で可能との認識を示した。共産党の赤嶺政賢氏への答弁。

 久間氏は先にも「日本をかすめるような状態で(核を搭載した)潜水艦が動く分には持ち込みにはならない」と指摘。野党が批判を強めたことから「領海内に核は入れないというのが政府の立場だ。それは私も了解している」と発言を撤回したばかりで、再び論議を呼びそうだ。

 久間氏は24日の答弁で「災害その他が起きた時、海底火山が爆発した時にどうするか。すぐ逃げなければいけない時に、事前協議をするかしないかは、緊急事態の場合はやむを得ない。その後に、実はこういう事情だったから事前協議ができなかったという報告が日米間だからきちんとあると思う」と強調。「現実問題として、緊急事態の時にそこを通るなと言って許されるかどうか」とも述べた。

 政府は1986年12月の衆院予算委員会で「核の持ち込みは、寄港であろうが、領海通過であろうが事前協議の対象となる。事前協議を行った場合、非核3原則が現存するので、常にノーという政策を日本政府は鮮明にしている」(外務省)と答弁している。

「防衛省」昇格法案、審議入り 今国会での成立目指す

2006/10/27 The Sankei Shimbun

 防衛庁を「省」に昇格させる防衛庁設置法改正案など関連法案は27日午後の衆院本会議で、趣旨説明と質疑が行われ、審議入りした。同法案は前通常国会に提出されていたが、防衛施設庁の談合事件の影響などで審議は見送られた。政府・与党は今国会での成立を目指している。

 同法案は行政組織上、内閣府の外局にある防衛庁を省に移行させるとともに、自衛隊法の雑則で「付随的任務」とされている国連平和維持活動(PKO)などを「本来任務」に格上げすることが柱。また、「内閣府の長」としての首相の防衛に関する権限・任務の一部が「防衛相」に移譲され、他の閣僚同様に防衛相が閣議開催や予算執行を求めることを可能とする。

 久間章生防衛庁長官は「正月明けに庁から省に衣替えをするのが普通のやり方だ」としており、法案が今国会で成立すれば来年1月から防衛省が発足する見通し。

「中国軍事費急増に懸念」 平成18年版防衛白書

2006/08/01 The Sankei Shimbun

 額賀福志郎防衛庁長官は1日午前の閣議で、平成18年版防衛白書「日本の防衛」を報告し、了承された。白書は、中国の軍事費の急増に懸念を表明するとともに、中国空軍の日本近海における情報収集活動に警戒感を示している。また、東シナ海での活動を活発化している中国海軍の狙いを「海洋権益の獲得」と指摘するなど、中国軍の「能力」だけでなく、その「意図」の分析を試みているのが特徴だ。

 白書は、中国軍の公表国防費が「過去18年間で名目上、13倍の規模になった」と指摘。「今後、中国が、前年度比15%前後の伸び率で国防費の増額を継続していけば、2008年(平成20年)には、わが国の防衛予算を大きく超える」とし、中国の防衛政策や軍事力の透明化を求めている。

 また、「(中国)軍の近代化の目標が、中国の防衛に必要な範囲を超えるものではないのか慎重に判断されるべきだ」と主張。さらに「情報化戦争に勝利するという軍事戦略に基づいて」、中国版軍事革命(RMA)が進行中だとして、海、空軍の動きの意図を分析している。

 中国海軍の目標としては、(1)中国の領土・領海の防衛(2)台湾の独立を抑止・阻止(3)海洋権益の確保や維持、保護(4)海上輸送路の保護−の4点を列挙。空軍については、「わが国に対する何らかの情報収集活動に従事」と分析し、中国機に対応するための航空自衛隊の緊急発進(スクランブル)が急増していることを示す図表も掲載した。

 一方、イラクで人道復興支援活動を展開してきた陸上自衛隊の実績も踏まえ、「国際平和協力活動を自衛隊の本来任務に位置づけることが必要だ」と初めて明記した。

 日米安保体制に関しては、新たに1章を設けて、在日米軍駐留の意義や再編に関する日米協議の経緯を説明。額賀長官は白書の巻頭言で「日米合意の完全かつ迅速な実施は、日米両国のみならず、アジア太平洋地域の平和と安定にとっても、必要であり、何としてもこれを実現していく」と決意を記した。

 先月5日の北朝鮮による弾道ミサイルの乱射に関しては、「テポドン2号の派生型も含めミサイルの長射程化が一層進展すると予想される」と懸念を示した。

【視点】脅威に現実的な対応を望む

 平成18年版の防衛白書は、軍事費を急増させ、装備の近代化を進める中国軍が、日本にとって現実的な「脅威」となりつつある実態を反映させた内容となっている。

 中国の軍拡路線については、民主党の前原誠司前代表が昨年暮れの訪米と訪中の際に、「現実的脅威」と指摘した。この発言に対しては、中国側が猛反発。小泉純一郎首相も「(中国の)軍事力の膨張について脅威と言ったことはない」と述べるなど賛否両論があった。ただ、いずれが正しいにしても、日本が、軍事的に存在感を高める中国に対し、どう向き合うかという岐路に立たされているのは事実だろう。

 政府は、公式には「『脅威』は、侵略しうる『能力』と侵略しようとする『意図』が結びついて顕在化する。政府として、中国が日本侵略の『意図』を持っているとは考えていない」(1月に閣議決定した答弁書)と表明している。

 しかし、白書によると、中国軍の「能力」向上は著しい。昨年と比べると、海上戦力は艦艇約750隻から約780隻へと30隻増、航空戦力は作戦機約2390機から約3530機へと1140機も増強されている。弾道ミサイルの開発も活発で、核を搭載できるミサイルの開発すら進んでいる。こうしたミサイルは、「わが国を含むアジア地域を射程に収める」(白書)とされる。

 白書は、中国軍の「意図」の1つを、「仮に台湾海峡危機が発生した場合に、外国軍隊の介入を抑止または阻止できることを想定」していると指摘。さらに海洋権益の獲得を狙う「意図」にも言及した。中国の軍事費増大・近代化の動きが、中国の領土や領海を防衛するだけにとどまらないことへの懸念がにじむ。

 民主党の小沢一郎代表は就任直後、「政治家が『脅威』と言った以上、それを取り除かなければならない」と指摘し、言葉の独り歩きを戒めた。だが、中国の軍拡路線動向を「脅威」ととらえるか「懸念」と表現するか、ただ言葉をもてあそんでいれば済む問題ではないはずだ。

 ときしも、実質的に5年半ぶりに次の首相を選ぶ自民党総裁選が事実上、スタートした。ところが、この国民の生命、財産に直結する「脅威」に関する議論は、本格化する様子をみせていない。 (船津寛)

第3次厚木基地騒音訴訟、国に40億円賠償命令 東京高裁

2006/07/13 The Sankei Shimbun

≪救済拡大支持、過去最高に≫

 米軍と海上自衛隊共同使用の神奈川県・厚木基地の周辺住民約4900人が、騒音被害の損害賠償を求めた第3次訴訟の控訴審判決で、東京高裁は13日、国に第1次、第2次訴訟より対象を広げて賠償を命じた1審横浜地裁判決を支持、国の控訴を棄却した。

 国の賠償額は1審の約27億4000万円に控訴審期間分を加算し、約40億4000万円とした。新横田基地訴訟の東京高裁判決(昨年11月)の約32億5000万円を上回り、基地・空港騒音訴訟で過去最高額となった。

 判決理由で、大内俊身裁判長は賠償対象について1審判決を踏襲。「うるささ指数」が住宅専用地域で75以上、それ以外では80以上を「受忍限度を超え、国の基地設置管理に違法がある」と認定。確定した第1次、第2次訴訟の判決は住宅専用地域も含め80以上としていた。

 原告側は過去に加え、将来の賠償も求めたが、大内裁判長は認めなかった。

与党内足並み乱れ 防衛庁長官の「敵地攻撃」発言めぐり

2006/07/10 The Sankei Shimbun

 北朝鮮によるミサイル発射を受け、政府は発射前に敵のミサイル基地をたたく敵地攻撃に関する本格的な検討に入った。日本への侵略意図が明白な場合、「座して自滅を待つのが憲法の趣旨ではない」(鳩山一郎内閣)との政府統一見解に基づくもので、額賀福志郎防衛庁長官は「これから議論していく」と明言した。しかし、現状の自衛隊装備では、敵地攻撃は事実上、不可能で、与党内でもその是非について足並みが乱れている。

50年も棚晒し

 小泉純一郎首相は10日夕、額賀氏が、敵地攻撃の可能性に言及したことについて、記者団に「理論的にいろいろな場合を想定して検討するのはいい」と述べた。ただ、同時に「日本に対しはっきり攻撃する意図があるかどうか(を見極めるのが)なかなか難しい。先制攻撃的な形で(攻撃)するのとは別問題だ」と述べ、慎重に検討していく考えを示した。

 政府は昭和31年の鳩山一郎内閣時、敵地攻撃も可能との政府見解を示している。

 だが、その後は「敵地攻撃」自体が政府内でタブー視され、50年後の現在でも、どの時点で敵地攻撃が可能と判断するか、明確な基準がない。

 石破茂防衛庁長官(当時)は平成15年1月の国会答弁で「明確な侵略の意思」があり、かつ「ミサイルを発射台に立てたり、燃料注入の準備を始めたりした場合」を挙げている。しかし、北朝鮮が攻撃意図を隠し、実験を理由にミサイル発射準備をしている限り、日本はミサイル基地を攻撃できないことになる。

能力はある?

 では、自衛隊に北朝鮮の基地を攻撃する能力はあるのか。

 防衛庁の守屋武昌次官は10日の会見で、「法理的には可能だが、日本は、敵基地を攻撃する機能は米国に期待するという考え方だ」と強調した。平成9年に改定された「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」では、日本にミサイル攻撃が行われた場合、「米軍は、必要に応じ、打撃力を有する部隊の使用を考慮する」とある。

 その理由について、守屋氏は会見で、(1)北朝鮮まで届くミサイルを保有していない(2)敵基地まで飛んで帰還できる航続距離のある攻撃機を保有していない(3)敵の地上レーダー網をかいくぐる能力がない−点を挙げた。

 ただ、本当に敵地攻撃能力がないのかどうかは、防衛庁内でも議論が分かれる。

 大野功統防衛庁長官(当時)は昨年4月、6年に航空自衛隊の戦闘機による北朝鮮のミサイル基地攻撃のシミュレーションを行ったことを明らかにし、空自は「攻撃はやろうと思えばできる」と回答したという。

 しかし、このシミュレーションは、攻撃機が燃料不足に陥った場合、韓国内の米軍基地に着陸することや日本海での緊急脱出などを想定。「現実的な作戦ではない」(幹部)との声が強い。

 戦闘機の航続距離を伸ばすために不可欠な空中給油機導入は決まっている。だが、敵地攻撃を可能にするミサイルの長射程誘導技術の研究は昨年、公明党の反対で中期防衛力整備計画(中期防)から削除され、いまだ実現化のめどは立っていないのが実情だ。

公明、早くも否定的

 額賀発言には、野党のみならず、与党内からも慎重論が出ている。

 自民党の武部勤幹事長は「ミサイルを撃ち込まれるのを分かっていて、黙ってなすすべがないのは許されない。法整備などがあれば積極的に取り組む必要がある」と述べ、評価した。

 しかし、公明党の神崎武法代表は10日、「理論的にはいろいろな考えがあるが、(北朝鮮ミサイル基地を攻撃すれば)全面戦争ということだから慎重に検討すべきだ」と、否定的な考えを示した。別の同党幹部も「いずれは持たなければいけないかもしれないが、一気に(保有に)行ってしまうと危ない。公明党がブレーキ役になる」と述べた。

敵地攻撃能力「法整備あれば積極的に検討」 自民幹事長

2006/07/10 The Sankei Shimbun

 自民党の武部勤幹事長は10日の記者会見で、額賀福志郎防衛庁長官がミサイル発射基地などへの敵基地攻撃能力保有を検討すべきだと発言したことについて「能力を持つにはさまざまな問題がある。国民によく説明責任を果たして、法整備などがあれば積極的に取り組むべきだ」と述べた。

 敵基地攻撃能力に関して「ミサイルを撃ち込まれるのが分かっていて、なすすべがないというのは許されない」と強調する一方、北朝鮮の軍事的な行動には「国際社会が自制を呼び掛ける必要がある」と指摘。「現実問題として日米安保が機能するようにしなければならない」と述べた。

 公明党の神崎武法代表は敵基地攻撃能力の保有について、首相官邸で記者団に「基地を攻撃することになれば、全面戦争になる。慎重に検討すべきだ」と否定的な考えを示した。

防衛「省」昇格法案国会提出 政府・与党、秋の臨時国会で成立目指す

2006/06/09 The Sankei Shimbun

 政府は9日、防衛庁の「省」昇格法案を閣議決定、国会に提出した。政府・与党は今国会では継続審議とし、秋の臨時国会での成立を期す。成立はなお流動的だが、省昇格を悲願としてきた防衛庁は、党内に根強い慎重論があった公明党の了承を得たことで、「大きなヤマを越えた」(幹部)と安堵(あんど)している。  法案では、防衛庁を防衛省、防衛庁長官を防衛相に改称、内閣府の外局から独立させる。諸外国では国防担当はミニストリー(省)が一般的で、エージェンシー(庁)は特異な例だ。

 小泉純一郎首相が9日、記者団に「なんで『庁』である必要があったのか。当然だ」と述べたように、国防を担う組織を常識的な“格付け”に修正する措置といえる。

 実務的には、これまで防衛庁は、閣議にかける必要のある法案提出や予算要求を内閣府を通じて手続きをしなければならなかったが、省になれば直接できる。不審船に対処する「海上警備行動」発令の承認を得るための閣議開催も要求できるようになり、「対処が迅速化する」(防衛庁幹部)メリットもある。

 ただ、自衛隊の最高指揮監督や、武力攻撃事態における防衛出動発令については、従来通り首相の権限で、「防衛相の権限は限定的」(政府筋)といえる。

 また、現行自衛隊法で付随的任務と規定されている国連平和維持活動(PKO)やイラク派遣などの国際平和協力活動は、省昇格に伴う法改正で、防衛出動と並ぶ「本来任務」に格上げされる。

 防衛庁の省昇格問題について、公明党の神崎武法代表は8日、 (1)自衛隊の活動は憲法9条の枠内に限定 (2)集団的自衛権の行使は認めない (3)防衛費の増大を防ぐ −の3原則を条件に容認する考えを示した。同党や支持母体である創価学会の一部に「防衛省」への拒否反応があることに配慮した形だ。公明党としては、統一地方選、参院選が続く来年に法案処理を持ち越すのは避けたいのが本音で、同党の東順治国対委員長は9日、「秋の臨時国会で必ず成立させねばならない」と強調した。

 臨時国会は防衛「省」昇格法案以外にも、教育基本法改正案、国民投票法案、社会保険庁改革法案など多くの重要法案を抱える見通しになっているが、自民党は「新政権発足の勢いで成立させる。防衛軽視といわれないため、小沢民主党は反対できないだろう」(国対幹部)と楽観視している。

「防衛省」昇格法案 公明党も了承

2006/06/07 The Sankei Shimbun

 公明党は7日、防衛「省」昇格関連法案を関係合同部会で了承した。8日の政調全体会議で正式了承する。自民党はすでに総務会で了承しており、9日に閣議決定するが、今国会では継続審議となる見通し。

 公明党は、来年に統一地方選と参院選を控えているため、支持層に慎重論が根強い同法案を、秋に予定される臨時国会で成立させたい考え。党内には「今国会での提出は、臨時国会で成立できるかどうかを見極めてから」(党幹部)との意見もあったが、最終的には提出を求める自民党側に配慮した。

自衛隊・防衛問題に「関心ある」最高の67.4%

2006/04/29 The Sankei Shimbun

 内閣府が29日発表した「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」で、自衛隊や防衛問題について「関心がある」と答えた人が67.4%に上り、湾岸戦争直後に行われた平成3年2月の調査結果を超えて、昭和44年の調査開始以来最高となった。イラク戦争や北朝鮮の核開発疑惑などの軍事的な緊張に加え、新潟県中越地震やインド洋大津波などの被災者救援活動が、国民の目を自衛隊に向ける要因になったとみられる。

 また、「戦争に巻き込まれる危険がある」との回答も過去最高の45.0%となり、「ないことはない」を加えると77.6%に達した。複数回答で理由を尋ねたところ、「国際的な緊張や対立がある」が77.4%。続いて「国連の機能が不十分」が29.8%だった。

 沖縄の在日米軍機能の一部本土移転には「賛成」が51.5%で過半数に達し、「国を守る気持ちを教育の場で取り上げる必要がある」と考える人は、65.7%だった。

 調査は2月16日から26日まで、全国の成人男女3000人が対象。有効回答率は55.2%だった。

中期防見直し、圧縮へ グアム移転負担で政府

2006/04/25 中国新聞ニュース

▽自衛隊装備削減を検討

 政府は二十五日、在沖縄米海兵隊のグアム移転をめぐる日本側負担が六十億九千万ドル(約七千百億円)で決着したことを受け、現行の中期防衛力整備計画(二○○五−○九年度、計二十四兆二千四百億円)を見直し、圧縮する方針を固めた。

 移転経費が巨額であることに加え、在日米軍再編に伴い日本が新たに負担する経費が今後十年間で約二兆円に上ることから、国民の理解を得るには防衛費全体の圧縮が不可欠と判断した。

 政府は (1)戦車、火砲など正面装備の削減 (2)陸海空自衛隊の統合運用に伴う効率化で人員、人件費を削減 (3)一千億円計上されている予備費の見直し −などを柱に中期防圧縮を検討。

 さらに、○六年度予算で二千五百十一億円計上されている在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)のうち、米軍の駐留を受け入れている他国は負担していない光熱水料(二百四十八億円)について、全廃など抜本的な見直しを米側に提起する方向で調整する。

 ○五年度から始まった現行中期防には三年後の見直し規定がある。政府は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設経費や、基地負担が増える関係自治体への新たな交付金など米軍再編関連経費を早期に確定し、中期防見直し作業に着手する方針だ。

 ○六年度予算で防衛費は対前年度比で四年連続マイナスで、抑制傾向が続いている。グアム移転経費負担の見返りに自衛隊の人員、装備の削減圧力がさらに強まることで、防衛、財務当局が対立する可能性がある。

中国軍機の情報収集活発化、空自機スクランブル急増

2006/04/20 The Sankei Shimbun

 自衛隊の統合幕僚監部は20日、平成17年度に日本領空に接近した国籍不明機に対し、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)した結果、中国軍の所属と確認された軍機の数が激増したと発表した。中国軍による活発な情報収集活動の実態を裏付けている。統幕が同日公表した「平成17年度スクランブル実施状況」によると、同年度のスクランブル実施総数は229回で、9年度以降最高となった。対象機の国別内訳は、ロシア機が例年並みの116回(前年度113回)だったが、中国軍機は107回で前年度の13回を大きく上回り、集計を始めて以来過去最高となった。

 統幕の発表や空自などによると、活動を活発化させている中国軍機は主に海上哨戒機Y8Xや電子戦機Y8EWなどで、中国がガス田開発を進めている日中中間線付近から尖閣諸島北東方面の東シナ海空域で活動しており、「周回パターン」や「東西・南北の平行パターン」で飛行、情報収集を強化しているという。

 こうした中国軍機に対するスクランブルは、17年度上半期(4―9月)が30回だったのに対し、下半期(10―3月)は77回と激増している。

 さらに、領空に接近する動きを見せた中国軍機が、沖縄県那覇基地や宮崎県新田原基地からスクランブルした空自戦闘機が当該空域に達してパイロットが中国軍機を視認、識別してビデオ撮影などをする前に転進してしまうケースも増えているという。こうした傾向に空自幹部は「中国側が、これまでの空自機のスクランブルパターンや現場空域到達時間などのデータを収集、分析した結果かもしれない」と警戒を強めている。

 統幕は20日の「スクランブル実施状況」の公表で、スクランブル機が撮影した中国軍機の写真やビデオ、スクランブル対象機の機種、航跡(飛行ルート)などについては「自衛隊の対処能力を明かすことになる」として公表を拒否した。

 先崎一統合幕僚長は「なんらかの情報収集に関連した動きとみている」として今後も中国軍機の動向を注視する姿勢を示した。

初の国産ジェット支援戦闘機F1が引退記念フライト

2006/03/09 The Sankei Shimbun
 

 初の国産ジェット支援戦闘機F1が9日、航空自衛隊築城基地(福岡県築上町)で最後のフライトを行い、約30年間の歴史に幕を下ろした。

 F1の全長は約18メートル、重量は約6.8トンで、最高速度はマッハ1.6に達する。1977年に初めて三沢基地(青森県三沢市)に導入され、最盛期には70機以上が日本の空を守った。

 築城基地に残る7機のF1の飛行時間が、基準の4000時間を間もなく超えるため、現役を引退。同基地には2005年度末までに後継機のF2約20機が導入される予定で、完全に世代交代する。今後F1は、博物館などで展示される予定。

 ラストフライトを終えたパイロットの高部充博(たかべ・みつひろ)さん(47)は「無事にやり遂げてほっとしている。思い出はたくさんありすぎて、一言では述べられない」と感慨深そうに話した。

天下りなど178社を入札・契約除外 防衛長官

2006/03/03 中国新聞ニュース

 額賀福志郎防衛庁長官は三日午前の記者会見で、防衛施設庁の談合事件に関連し、二〇〇五年度予算で未消化の発注工事について、〇二年度以降に施設庁建設部が関与してOBが天下った企業と、談合事件に関係した疑いがある企業の計百七十八社を入札、契約対象から除外すると発表した。

 額賀氏は「透明性を持った工事の取り扱いを検討してきた。今回限りの措置だが、国民から疑いがないように残りの仕事をしていきたい」と述べ、国民の信頼回復に向けた対策の一つとの位置付けを強調した。

 未発注工事の入札、契約手続きは、今回の官製談合事件に深くかかわったとされる施設庁の建設部門から総務部門に移すことも明らかにした。

防衛庁、三菱電機に厳重注意 新規の契約停止

2006/03/03 The Sankei Shimbun【東京朝刊から】

 陸上自衛隊の地対空ミサイル(SAM)データが在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)傘下の団体に流出した問題で、防衛庁は二日、流出元の三菱電機と三菱総合研究所について、再発防止が確認できるまで防衛装備品などの新規契約を停止することを決めた。防衛秘密の流出に対する異例の制裁は、政府が日米同盟の強化策の一環として米国との間で情報保全協定の締結を検討していることを踏まえた措置だ。

 額賀福志郎防衛庁長官は同日夜、三菱電機の野間口有社長と三菱総研の田中将介社長を防衛庁に呼び、「高度の『秘』情報を扱う企業として責任は極めて重大」と厳重注意。(1)情報流出に関する再発防止策の提出(2)再発の恐れがないことが確認できるまで新規契約は停止などの処分も伝えた。

 平成六年から七年にかけ、防衛庁が三菱電機に委託していた「将来SAMの研究試作」と題する報告書の中にあるミサイル性能などを記した図表が朝鮮総連傘下の在日本朝鮮人科学技術協会(科協)に流出した。

 三菱電機は社内報告用の資料作成を三菱総研に発注、それを三菱総研が科協と関連のあるソフトウエア会社に下請け発注に出した過程でミサイルデータが流れた。データは北朝鮮に送られたとみられるが、秘匿性の高い順から「機密」「極秘」「秘」に区分されるうち「秘」に指定されたものが含まれていた。

 防衛庁の調査で、図表ではミサイルの迎撃範囲に関する「秘」の数値が伏せられていたが、三菱電機が三菱総研の求めに応じて数値を教え、三菱総研がソフトウエア会社に秘数値を手書きで加えた図表を渡していたことが判明。契約に違反して第三者に必要以上の情報を漏らしたと断定した。

 防衛庁と三菱電機の契約のうち、平成十七年度予算で予定しながらまだ契約をしていないものは額面で一千億円以上という。自衛隊の運用やミサイル防衛(MD)などに支障が出ないように「やむを得ないものは契約するケースもある」(防衛庁幹部)ものの、今回の厳しい制裁措置の背景には「企業も国家防衛に携わることへの認識を改めるべきだ」(同)として防衛産業への一罰百戒とする意味もありそうだ。

 特に、在日米軍再編に伴い、情報共有を中心にした日米の連携強化を進めるほか、MDでは来年度から日米で次世代迎撃ミサイルの共同開発に入る。共同開発では、防衛産業に情報保全の網をかけることも不可欠だ。これらを念頭に、政府は防衛秘密の漏洩(ろうえい)防止のため米国との間で「軍事情報に関する一般保全協定」を締結する方針だが、今回の情報流出は保全態勢の強化に向けた動きに冷や水を浴びせた格好だ。

日米実施、図上演習 北と中国「仮想敵国」 統合運用へ連絡調整

2006/02/28 The Sankei Shimbun

 自衛隊と在日米軍が二十三日から三月三日までの日程で実施している図上演習「キーン・エッジ」(日米共同統合指揮所演習)で、北朝鮮と中国を事実上の「仮想敵」としていることが二十七日、明らかになった。防衛庁、自衛隊は公式見解で「中国脅威論」を否定しているが、演習では両国の軍事行動を想定し、ミサイル防衛や海上警備行動などの円滑化に主眼を置いている。 

 今回の演習は、三月末からの陸海空自の統合運用に向け、統合任務部隊の命令・情報伝達や在日米軍との連絡調整の円滑化を図るのが主目的。部隊の動きや命令、情報の流れをコンピューター画面上で演習している。

 関係者によると、演習シナリオ上では、日本を「青国」、米国を「緑国」などと国名を色で表している。まず「紫国」(北朝鮮)の弾道ミサイルへの燃料注入の動きを米国が探知した事態を想定。日米が警戒態勢に移行し、日本海で在日米海空軍や海自イージス艦などが監視体制を強化。「茶国」(韓国)でも緊張が高まる中、空自輸送機による韓国からの邦人輸送のため命令、連絡などを演習している。

 さらに、朝鮮半島の動きに合わせ、東シナ海で「橙(だいだい)国」(中国)の海軍艦艇や潜水艦、空軍偵察機などの活動が活発化、日中が領有権を主張している無人島に中国の民間人とみられる一群が不法上陸、周囲に不審船が出現する事態を想定。官邸や海上保安庁、警察への連絡調整を演習する。

 次の段階では、同島周辺で中国の海軍艦艇、潜水艦の活動が報告され、領海侵犯が確認されたと想定。海自は海上警備行動に移行、周辺で警戒中の艦艇や航空機などの部隊が一斉に対処行動に移る。

 陸自も島の侵攻に対処するため西部方面隊の部隊投入を準備、空自も中国の航空侵攻に対し、本土からF15数個飛行隊を那覇基地と宮古島市の下地島空港に移動展開する作戦準備命令を出すことを訓練する。

 陸海空自がそれぞれ有事への対処要領を定めた「平成十七年度防衛警備計画」では、中国、北朝鮮を「脅威対象国」とし、日本への侵攻の可能性について中国は「小さい」、北朝鮮は「ある」と認定している。

 しかし、防衛庁、自衛隊は外交上の影響に配慮し、「中国を脅威とみなしているわけではない」(二月十六日、守屋武昌事務次官)との立場を堅持しており、今月十五日に「中国は沖縄の自衛隊にとって脅威」と発言した空自幹部が口頭注意されている。

 今回の演習で北方有事(赤国=ロシアによる侵攻)は想定外とされ、ロシアの脅威が相対的に低下、中国や北朝鮮の脅威が増しているとの認識を改めて裏付けている。

 今回の演習シナリオについて自衛隊幹部は「一切明らかにできない」としている。

幹部天下り「自粛5年」 防衛庁、談合事件で再発防止策

2006/02/24 The Sankei Shimbun

 防衛庁は24日、防衛施設庁の官製談合事件を受けて、「天下り」規制強化や入札手続きの見直しを盛り込んだ再発防止策を発表した。

 天下りに関しては、建設工事の発注業務に関与した幹部職員について、受注企業への「天下り」自粛期間を退職後5年間とすることを明記。本庁の室長級以上、各地方の防衛施設局では建設部長以上を対象とする方針だ。額賀福志郎防衛庁長官が小泉純一郎首相に報告、了承された。

 施設庁職員と、特に施設庁OBら受注企業社員との接触禁止などの内容を盛り込んだ具体的な対応要領を定めることも盛り込んだ。

 施設庁職員の天下り先となっている財団法人「防衛施設技術協会」への天下りは全面的に自粛。今回の事件や談合に関係した企業への再就職は法令順守体制が確立したと認められるまで自粛と打ち出した。

 天下りを助長する要因との指摘もある「早期勧奨退職」慣行の見直しに向け、現在56歳程度の建設系技官の退職年齢を2歳程度引き上げ、事務官の平均退職年齢と同等の水準にする方針も掲げた。

 自衛隊法は防衛庁、防衛施設庁、制服組を含む職員について、両庁と密接な関係にある企業への再就職を退職後原則2年間禁止している。

 再発防止検討会(委員長・木村太郎防衛副長官)が具体策を検討。今後も施設庁の解体や関連公益法人の見直しなど残された課題について協議を続ける。(共同)

三菱電機などと契約延期 ミサイル資料流出で防衛庁決定

2006/02/20 The Sankei Shimbun

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)傘下団体に陸上自衛隊の地対空ミサイル(SAM)の資料が流出した問題で、防衛庁は20日までに、流出元とみられる三菱電機、三菱総合研究所との随意契約や、2社の入札が予想される一般競争契約の延期を決定した。

 この中にはミサイル防衛で弾道ミサイルを監視する将来警戒管制レーダー(FPS―XX)などが含まれるが、防衛庁は「調査の上で年度内に処分し、影響が出ないようにしたい」としている。

 この問題では警視庁が昨年、薬事法違反容疑で朝鮮総連関連団体を捜索した際にSAMの関連資料を発見。防衛庁の委託でSAMの研究開発を進めていた三菱電機が三菱総研に資料作成を依頼し、同総研が朝鮮総連関連団体に下請け発注していたことが分かっている。(共同)

沖縄の海兵隊移転費を増額、米政府が日本側に提示

2006年01月14日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 米政府は11、12日にワシントンで開いた在日米軍再編に関する外務・防衛当局の審議官級協議で、昨年10月に中間報告としてまとめた再編案の大まかな実施日程や費用を日本側に提示した。

 日本政府関係者によると、沖縄に駐留する第3海兵遠征軍司令部などの海兵隊員約7000人のグアム移転は、2012年までの6年間で完了する計画を示し、費用はこれまで提示していた30億〜35億ドル(3210億〜3745億円、2005年度予算の換算レートである1ドル=107円で換算)を大幅に上方修正したという。増額幅は1000億円以上と見られる。

無人偵察機の導入本格化 機種選定へ、07年度目指す

2006/01/12 The Sankei Shimbun

 英国訪問中の額賀福志郎防衛庁長官は11日夜(日本時間12日朝)、ロンドンで同行記者団と懇談し、長時間飛行による情報収集、監視が可能な滞空型無人偵察機導入に向け、機種選定作業を本格化させる考えを明らかにした。2007年度の導入を目指す。06年度予算案に調査研究費が盛り込まれているが、07年度概算要求でも関連経費を盛り込む方針。国産機の研究開発も進めているが、まずは米国などからの輸入を軸に検討を進める予定だ。

 額賀氏は無人偵察機の具体的な運用構想として(1)弾道ミサイルの発射情報の早期収集(2)離島侵攻事態で敵艦船や航空機の継続的情報収集(3)地震、核・生物・化学(NBC)汚染など大規模災害発生時の広域的画像情報収集―などを想定していると表明。「(昨年10月末の)米軍再編中間報告でも日米の協力活動分野の一つであるとともに、自衛隊の情報収集能力の強化にも資することから重視している」と述べた。

 近く機種選定に必要な情報収集のため、既に開発、保有している米国、ドイツ、イタリアなど関係諸国に調査団を派遣する。

 <滞空型無人偵察機>  長時間の滞空能力を持ち、広域にわたる偵察や監視を可能とするため、1990年代半ばごろ米国を中心として開発された無人機。代表的な機種として、いずれも米国製のグローバルホーク(高高度型)、プレデターB(中高度型)がある。中高度型は滞空時間・高度、航続距離で劣るが、高高度型に比べ大幅に安い。(共同)

空母ジョージ・ワシントン配備を正式発表 米国防総省

2005/12/03 The Sankei Shimbun

≪08年から横須賀≫

 米国防総省は2日、米海軍横須賀基地(神奈川県)を事実上の母港とする通常型空母キティホークの後継艦として、原子力空母ジョージ・ワシントンを2008年から配備すると正式発表した。

 日本に原子力空母が配備されるのは初めてで、後継艦として通常型空母を要請していた地元神奈川県や横須賀市の反発が続くことが予想される。

 国防総省の発表によると、今回の配備は台湾海峡などを念頭に「西太平洋での予測困難な安全保障環境」へ対応する努力の一環。「前方展開する空母として08年に横須賀へ配備する予定」としている。

 ジョージ・ワシントンは1992年就役のニミッツ級原子力空母で、現在の母港は米バージニア州ノーフォーク。米中枢同時テロ以降、ブッシュ政権が進める「対テロ戦争」で、地中海やペルシャ湾にも一時展開したという。艦名が初代米大統領のワシントンにちなんでおり、太平洋戦争に関係ないため選ばれたとの見方もある。

 米メディアは、米海軍当局の話として、後継艦の選択にあたり、被爆国である日本の国民感情から、原爆投下当時の米大統領の名前を取った空母ハリー・トルーマンは候補から外したとしていた。

 <ジョージ・ワシントン> ワシントン初代米大統領にちなんで命名された、米海軍のニミッツ級原子力空母。米海軍の空母全12隻中、ニミッツ級は9隻を占めており、ワシントンは92年7月、同型艦として6番目に就役した。全長約330メートル、排水トンは10万2000トンと、世界最大の軍艦。乗員3200人、航空要員2480人が乗り込み、FA18戦闘攻撃機やSH60対潜哨戒ヘリなど約80機を搭載。加圧水型原子炉が2基あり、出力は26万馬力、最高速度は30ノット(時速約55キロ)を超える。(共同)

高性能ソナー開発 防衛庁方針 日本近海で活発化 中国原潜出没に新兵器

平成17(2005)年11月26日[ The Sankei Shimbun

 東シナ海の日中中間線付近や尖閣諸島周辺海域での中国軍潜水艦の活動が活発化するなか、水深の浅い同海域での潜水艦作戦能力向上のために、防衛庁が高性能の次世代潜水艦用ソナーの研究開発に着手することが二十五日、分かった。従来のソナーより探知能力の向上や省電力化、軽量化を図ることで、さらに音が静かになることが見込まれる中国潜水艦に対する優位性維持を狙う。平成十八年度から研究に入り、二十一年度の完成を目指す。

 防衛庁幹部によると、東シナ海の水深二百メートルまでの浅い海域での中国潜水艦の活動は活発傾向を示しているという。

 東シナ海では昨年十一月、中国海軍の漢(ハン)級原子力潜水艦が日本の領海を潜航したまま侵犯。海上自衛隊の航空機やヘリによる追尾を受けながら潜航して逃走を続ける事件が起こっている。

 防衛庁では、海上自衛隊が十年から就航させている潜水艦「おやしお」型に、艦の側面にもソナーを装備するなどして索敵能力向上を図ってきたが、「浅い海域での目標の探知、追尾、攻撃を効果的、効率的に実施するためにはあらゆる面での対潜戦技術の向上が不可欠」として、ソナーの研究に着手することにした。

 研究は防衛庁技術研究本部が平成十八年度概算要求に盛り込んでいる。主なポイントは、従来の潜水艦に装備されていた円筒形の艦首ソナーをU字形に改良し、能力向上と省電力化を図るほか、側面ソナーも大型化し、「艦全体をソナー化させる」(防衛庁幹部)。これにより、音源探査の死角が解消されることが期待できるという。

 また、浅い海域では音の乱反射によってソナーの索敵能力に影響を与えるという。防衛庁は米軍と共同で浅い海域での音響データベースをつくっており、必要に応じてこのデータをソナー開発に応用していくとしている。ソナーの総開発費は約三十九億円を予定している。

 このほか、防衛庁は浅い海域での攻撃能力向上のために、約百五十五億円をかけて「新対潜用短魚雷」の試作も実施している。現有の97式魚雷は、浅い海域ではソナーによる目標探知が難しかった。十九年度からの技術試験を経て二十一年度の開発完了を目指している。

 実用試験後は、海自の水上艦や航空機への装備をめざし、東シナ海などの浅海域で行動する中国海軍の潜水艦への有効対処に役立てたいとしている。

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 ソナー 相手の音を受けるパッシブソナーと、音を発生して反射によって相手の位置を探知するアクティブソナーの2種類がある。潜水艦では敵に位置を発見されないために、主にパッシブソナーを使用する。通常は自艦のスクリュー音などの影響を受けないように艦首に装備されている。

超高速旅客船の転用浮上 米海兵隊輸送など想定

2005/11/24 中国新聞ニュース

 【ワシントン23日共同=米島雅孝】国土交通省と東京都が計画していた超高速旅客船テクノスーパーライナー(TSL)の小笠原航路(東京−父島)への就航中止が決まったことを受けて、日米両政府が合意した在日米軍再編の中間報告で導入に言及した高速輸送艦(HSV)に、同船を転用する案が日本政府内で浮上していることが分かった。外交筋が二十三日明らかにした。

 在日米軍再編では沖縄の米海兵隊約六千人のグアム移転などで合意。同時に、抑止力維持のため、海兵隊などを迅速に搬送できるHSVの導入を検討しており、日本の造船会社などでつくる民間企業が約百十五億円をかけて建造したTSLの新たな活用先として名が挙がった。

 ただ、HSVが必要とする能力や運用構想が白紙の状態であることから実現可能性は未知数なのが現実。旅客船の転用の是非も含めて今後議論を呼びそうだ。

 TSLは世界最大級のアルミ船で、七百四十人の旅客を乗せて最高速度は時速七十キロ。片道約千キロの小笠原航路を、現在の二十六時間から十七時間に短縮できるが、燃料費の高騰などで就航が中止になった。

 一方、日米両政府は十月二十九日にワシントンで開かれた外交、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で在日米軍再編の中間報告に合意。その中で、日本がHSVなどで輸送支援を実施する方向性を打ち出した。

 米海兵隊トップのハギー司令官(大将)は七日にワシントンで講演、抑止力が維持できる理由にHSVを挙げ、「例えば沖縄から韓国まで大隊を短時間で運ぶことができる」と述べ、導入に期待を示した。

テロ特措法が1年再延長 参院、海自の給油支援継続

2005/10/26 The Sankei Shimbun

 インド洋で米軍などへの給油支援を実施している海上自衛隊艦船の活動を継続するため、11月1日に期限が切れるテロ対策特別措置法を1年間再延長する同法改正案が26日午前の参院本会議で採決され、与党などの賛成多数で可決、成立した。

 これによりインド洋を舞台にした国際社会の「テロとの戦い」に日本が引き続き参加することになる。

 同法は2001年10月に時限立法として成立し、03年10月に期限を2年間延長。支援活動継続に慎重な小泉純一郎首相の意向を受け、今回は延長期間を1年とした。政府は12月に派遣期限を迎えるイラクでの自衛隊活動との兼ね合いを勘案し、1年以内の海自艦船撤収を検討する見通し。

 政府は審議で、延長幅を1年とした理由について「国際社会のテロとの戦いの様相やアフガニスタン内外の情勢には変化が見られ、きめ細かく注視する必要がある」と答弁した。

 民主党は当初、前原誠司代表が賛成を検討する意向を示したが、党内から異論が相次ぎ、反対を決めた。

 海上自衛隊は01年12月から他国艦船に対する給油を開始。今年9月上旬までに米、英、フランスなど11カ国に計545回、約41万キロリットル(約162億円相当)の給油を実施している。航空自衛隊も同特措法に基づき、C130輸送機で主に在日米軍基地間の物資輸送を実施している。(共同)

イラク派遣、1年延長へ 空自、輸送支援継続…視野に

平成17(2005)年10月23日 The Sankei Shimbun
陸自は「5月撤退」検討

 政府・与党は二十二日、十二月十四日に期限が切れるイラクへの自衛隊派遣について、イラク復興支援特別措置法に基づく基本計画を変更し、派遣期間を一年間延長する方針を固めた。陸上自衛隊の撤退は来年五月ごろを視野に検討する考えだが、米側が航空自衛隊によるクウェートからイラクへの輸送支援継続を求めていることなどから延長幅を一年間とした。十二月に正式決定する際、陸自撤退のスケジュールなど「出口戦略」を明確にしたい方針だ。 

 陸自はイラク南部のムサンナ県サマワに約六百人の隊員を派遣し、公共施設の復旧や医療支援など復興支援を行っている。空自は、C130輸送機三機をクウェートに派遣し、比較的治安が良いイラク南部のタリル空港などへ人道支援物資や兵員の輸送を行っている。

 サマワに駐留している陸自の活動に治安維持が含まれていないため、約四百五十人のオーストラリア軍とムサンナ県全体で約六百人を展開しているイギリス軍が治安維持を担当しているが、英豪両軍は、来年五月に撤退することを検討している。

 英豪両軍が撤退すれば、イラクの治安部隊が治安維持活動の任務を引き継ぐことになるが、政府はイラク治安部隊の能力が英豪両軍に比べて劣ることから、米側に対して英豪両軍が撤退すれば、陸自の活動は困難になることを外交ルートで伝えた。

 こうしたなか、日米英豪の四カ国は九月二十九日から十月三日まで英国のロンドンでサマワでの今後の活動について意見交換した。米側は陸自の活動継続を求めたが、空自の活動継続を条件に陸自の撤退を容認する姿勢を打ち出した。

 政府は自衛隊派遣による人的貢献と無償資金協力による経済支援をイラク復興支援の「両輪」としてきたが、陸自撤退後は政府開発援助(ODA)供与に重点を移していく方針で、早ければ年明けに円借款供与を再開したい考えだ。

 陸自の撤退を決めても「現地から完全に撤収するには数カ月はかかる」(外務省筋)との指摘があり、陸自撤退の時期がずれ込む可能性もある。イラクでは年末にも正式政府が発足することになっているが、「国内情勢が安定するのには不確定な要素が多い」(外務省幹部)という。

日本版「動く海上基地」で高速輸送艦を導入 政府、米に伝達

平成17(2005)年10月23日 The Sankei Shimbun

 政府が米軍の変革・再編(トランスフォーメーション)をめぐり、高速輸送艦を導入する方針を米側に伝えていることが二十二日、分かった。米軍が地球規模で進める「シー・ベーシング(海上基地)」構想の日本版。中国による東シナ海の離島侵攻などに対応する戦闘部隊や物資集積の海上基地となり、インド洋大津波のような大規模災害でも機動的に展開できるようになる。

 日米両政府は二十九日にも日米安全保障協議委員会(2プラス2)を開き、米軍再編の中間報告を策定。有事や国際平和協力活動で自衛隊と米軍の輸送協力を拡大する方針を明記するが、高速輸送艦の導入はその具体策と位置づけられる。

 日本が導入する高速輸送艦は、海上自衛隊が保有する最大艦艇の補給艦「ましゅう型」(一三、五〇〇トン)を上回る大型艦を想定。甲板ではヘリコプターのほか、偵察機などの航空機の離着陸も可能にするが、攻撃型の空母とは運用も装備も異なっている。

 政府は早ければ、平成十九年度予算にも研究費を盛り込み、二十年度から建造などに着手したい意向だが、コスト面で新規購入は困難との見方もある。このため、来月に東京−小笠原・父島間で就航を予定しながら、東京都が導入を事実上断念した超高速船「テクノスーパーライナー」(TSL、一四、五〇〇トン)を改造、転用する案も浮上している。

 高速輸送艦を導入する最大の理由は、日本有事や周辺事態の際、自衛隊の部隊や装備を現地に緊急展開させる能力を向上させるためだ。特に昨年十一月の中国原子力潜水艦による先島諸島の領海侵犯など、中国が東シナ海の離島に侵攻する脅威は高まっており、米軍再編でも離島防衛における日米の共同対処は主要なテーマとなった。

 だが、先島諸島には陸上自衛隊が駐屯しておらず、弾薬や燃料なども常備されていない。有事に備え、これらを備蓄しておく「事前集積拠点」の確保も課題とされてきたが、高速輸送艦の導入で集積拠点の機能を代替でき、米軍への後方支援も可能になる。

 昨年十二月のインド洋大津波と今月のパキスタン地震では航続距離の長い輸送機を保有していないため自衛隊派遣が遅れたが、高速輸送艦はこうした欠陥もカバーする。

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≪シー・ベーシング(海上基地)構想≫

 (1)本土防衛の強化(2)同盟国の役割拡大−とともに米軍が進めるトランスフォーメーションの3本柱をなす。

 旧ソ連のように脅威が明確ではなく、いつ、どこで発生するかわからないテロなどに迅速に対応するのが目的だ。10日以内に、軍事作戦を行う陸上部分から25−100マイル(40−160キロ)の沖合に作戦基地を設けることを原則とする。

 2003年のイラク戦争ではトルコが米軍の通過を認めず、作戦に支障を来した。海上基地では作戦地域に近い近隣国政府の承認を得る必要がないというメリットがある。昨年のインド洋大津波では空母を支援活動の前線基地として使用した実績もある。

 シー・ベーシング構想の先駆けが海兵隊の事前集積船だ。海兵隊はすでに、1個海兵遠征旅団(約5000人)の装備と燃料などを搭載した事前集積船を16隻保有し、インド洋やグアム島などに配備。将来はヘリや輸送機が離着陸できる攻撃部隊の発進基地として使用できる艦艇を導入する計画だ。

 在日米軍再編でも、海兵隊装備の備蓄や整備に使われている沖縄の牧港補給地区などの返還も検討されている。「沖縄周辺に装備などを搭載した事前集積船を配備し、機能を代替させるのではないか」(防衛庁幹部)との指摘もある。

テロに備え初の実動訓練 道警と陸自

2005/10/20 中国新聞ニュース

 <武装工作員上陸を想定>

 北海道警と陸上自衛隊北部方面隊(総監部・札幌市)は二十日、武装工作員が上陸し自衛隊が治安出動する事態を想定した共同の実動訓練を陸自真駒内駐屯地(同市)などで実施した。警察庁と防衛庁が結んでいる「治安維持に関する協定」に基づいた警察と自衛隊による初めての実動訓練となった。

 北朝鮮工作船事件など日本を取り巻くテロの脅威が高まる中、役割分担を明確にし、連携を密にするのが目的。

 訓練には道警約百五十人と陸自約二百五十人が参加した。開始式で得田憲司北部方面総監は「全国に先駆けた共同訓練。お互いのノウハウを生かし合う貴重な一歩だ」とあいさつ。樋口建史道警本部長は「テロ情勢は極めて厳しく、今後も連携が必要だ」と強調した。

 訓練は、ロケット砲などで武装した工作員が北海道に上陸し、警察力では対処困難となり、治安出動が発令されたとの想定で実施した。

 公開された部隊輸送訓練では、装甲車など七台とパトカー、白バイが隊列を組んで札幌市内の国道を走行。陸自ヘリ三機から、サブマシンガンを装備した道警機動隊員十五人が展開した。

 現地共同調整所の設置や、共同検問で工作員を発見する訓練、ヘリからの映像を共有する通信訓練は非公開だった。

 警察庁と防衛庁は二○○○年に、それまで国内の暴動を想定していた協定をテロ攻撃に対処できるよう四十六年ぶりに改正、武器の使用基準も緩和された。治安出動命令が出る可能性がある段階から、情報交換を始めるなど対処の迅速化も図った。

 警察と陸自はことし七月までに、治安出動を想定した共同図上訓練を全都道府県で終えた。今後、順次実動訓練を行うことにしている。

C130に空中給油機能を付加、来年度概算要求へ

2005年10月17日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 防衛庁は、C130輸送機に空中給油を受けられる機能を付加する方針を決めた。大野防衛長官が17日の衆院テロ防止特別委員会で表明した。

 航続距離を伸ばし、国際的な大規模災害や人道復興支援活動に、支援部隊を迅速に派遣できるようにするのが狙いだ。

 大野長官は「航続距離を伸ばすため、C130に受油機能を付加する改修に着手する」と述べ、来年度予算の概算要求に27億円の試験改修費を計上していることを明らかにした。

 C130は、航続距離が約4000キロ・メートルと短い。先のパキスタン北部地震で、救援活動のため北海道の千歳基地から出発したC130は、那覇、バンコク、インドのコルカタ、デリーに給油のために立ち寄り、イスラマバードに到着するのに3日間かかった。

 防衛庁は「空中給油機による給油が可能になれば、現地までの時間を大幅に短縮できる」としている。ただ、空中給油機を海外で待機させる必要も出てくる。

 自衛隊機の空中給油については、以前は野党などから「他国の攻撃に使えるようになり、専守防衛に反する」との指摘も出ていた。しかし、自衛隊による国際的な活動の増加に伴い、「戦闘のためではなく、援助のために航続距離の長い輸送機の用意が必要だ」との声が強まっている。

テロ対策:防衛庁と警察庁、初の実動訓練実施へ

2005年10月13日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 防衛庁と警察庁は武装集団の上陸に対する治安出動を想定した実動訓練を20日に北海道で実施すると発表した。両庁はこれまで地図上の訓練はしてきたが、警察官と自衛官による実動訓練は初めて。

 訓練は札幌市の陸上自衛隊真駒内駐屯地を中心に実施。機関銃やロケット砲などで武装した工作員が国内に上陸して警察だけでは対処できない事態が起き、自衛隊法にもとづく治安出動が発動されたと想定する。

 北海道警の約150人は防弾チョッキにヘルメットの姿でサブマシンガンを携帯。陸自北部方面隊の約250人も小銃を持ち、自衛隊の車両をパトカーが先導して札幌市内の公道を走る輸送訓練や、双方のヘリコプターからロープを使って地上に降りる訓練をする。

 防衛庁と警察庁は、95年の地下鉄サリン事件で、陸上自衛隊が化学防護服を警察庁に貸し出したのを機にテロ対策での対策協議を始めた。00年12月、「治安維持に関する協定」が46年ぶりに改定され武装工作員のテロ活動への自衛隊の対処が可能となった。昨年9月には、外国の武装工作員の侵入を想定し、それぞれの役割分担を定めた「共同対処指針」が作成された。防衛庁は「通信、部隊輸送に限ったもので、連携の確認を行う初歩的な訓練」と説明している。【反田昌平】

危険な病原体114施設に 結核入院命令の拒否15件

2005/10/05 The Sankei Shimbun

 薬が効きにくく生物テロに利用される恐れのある多剤耐性結核菌と、米国でテロに使われた炭疽菌を研究・検査用に保有している医療機関や研究所が、全国で少なくとも114施設あり、半数の施設では管理マニュアルが整っていないことが、厚生労働省の初の調査で5日分かった。

 また、2003年に結核予防法に基づく入院命令に従わなかったケースが15件、入院したが命令解除前に自己判断で退院した例が159件あったことも判明した。

 いずれも感染症法改正を検討する5日の厚生科学審議会感染症分科会で報告された。

 病原体調査は9月、8000余りの施設を対象に実施。多剤耐性結核菌を79施設、炭疽菌を27施設、両方を8施設が保有。この114施設のうち58施設では管理マニュアルがなかった。

 入院調査は、都道府県と政令指定都市、中核市が対象。03年に出された入院命令は1万4349件。このうち命令拒否や自己退院を防ぐため、自治体が強制力が必要との印象を持ったケースは88件あった。家族に感染させる恐れがあるのを承知の上で自己退院し5カ月後に死亡した患者や、多剤耐性結核なのに自己退院後に頻繁に飲食店に出入りしていた患者が含まれている。

 結核予防法は、結核を感染させる恐れがある場合に、都道府県知事は患者に入院を命令できると定めているが、命令に強制力はない。

 厚労省は生物テロ対策で感染症法改正案を来年の国会に提出する方針。テロを想定していない結核予防法を廃止し感染症法に統合することで、結核菌を規制対象に加え、強制力のある入院勧告もできるようにする考えだ。(共同)

国際的に警戒「バイオテロ」 無防備日本、対策本腰

2005/09/03 The Sankei Shimbun

農水省…病原体データ蓄積・解析/生産・製造過程を把握へ

 ウイルスなどの病原体や細菌によるバイオテロの脅威が国際的に指摘される中、国内での食品へのバイオテロ発生に対処するため、農林水産省が来年度から、病原体のデータベース化や食品の生産・製造過程におけるバイオテロ対策の脆弱(ぜいじゃく)さの実態把握の調査・研究に乗り出すことが二日、明らかになった。バイオテロへの迅速な対応を講じるための早期対処が狙い。年度内に研究機関を公募し、来年五、六月ごろには本格スタートさせる方針だ。 

 ウイルスや農薬などを空中散布したり食品に混入したりするバイオテロは、テロをすぐに認知できる神経ガスなどの化学テロと違い、被害の発症まで潜伏期間があるため、テロと気付くころには多数の被害者が発生する場合が多いとされる。

 しかし、国内では食品へのバイオテロ対策は進んでいなかったのが実情だった。

 バイオテロ対策をめぐっては、昨年六月に、米ジョージア州で開催された主要国首脳会議(シーアイランド・サミット)で採択された、「大量破壊兵器不拡散に関するG8行動計画」でも重視された。

 バイオテロについては、「バイオテロ攻撃を探知するバイオ監視能力の拡大や開始、予防や対応能力の向上で、国内および国際的な措置を行う」などとした。サミット後に開催された、食品の安全確保やリスク管理当局が集まったG8専門家会合でも、食品へのバイオテロについて先進国として対応していくことで一致した。

 同省の構想では、テロに悪用される恐れもある病原体が平常時にどの程度の割合で存在しているかなどをデータとして蓄積して解析。被害発生時に、短時間で検査結果が判明する技術も構築する。

 生産・製造工程におけるバイオテロへの脆弱性の調査・研究の結果は、テロリストに悪用される恐れがあるため、マル秘扱いになるが、食品業者側などもバイオテロへの対処の準備が必要であることを考慮し、一部を情報提供して注意喚起する方針だ。

 バイオテロが発生した場合、研究データなどをもとに警察庁や防衛庁などと連携を図る具体策も検討していく。

 同省消費・安全政策課は「食品が関係した被害は拡大する前の早期探知が重要で、バイオテロか、あるいは自然発生かによって対応も異なる。研究データに基づき、食品安全とバイオテロの両面に対応できる」と強調している。

中国の軍事増強「重大な脅威」 17年版防衛白書 北の核、懸念

2005/08/02 The Sankei Shimbun

 大野功統防衛庁長官は二日の閣議で、平成十七年版防衛白書「日本の防衛」を報告し、了承された。昨年十一月の中国原子力潜水艦による領海侵犯事件を詳述し、「情報化を核心とした『中国の特色ある軍事変革』」との表現で中国版RMA(軍事革命)に警戒感を表明、急速に増強している中国の軍事力を「重大な脅威」と受け止めたものとなっている。

 白書では、人民解放軍が、装備の近代化やIT(情報技術)を駆使したネットワークシステムの構築に加え、「科学技術に精通した軍人の育成を目指している」と指摘。東シナ海でのガス田開発をはじめ海洋活動を活発化させていることを踏まえ、「海軍は近海の防御作戦空間を拡大」「国土防空型から攻撃・防衛一体型の空軍への転換」と、十六年版より踏み込んだ分析をしている。また米国防総省が先に、中国の軍事力に関する年次報告書の中で「国防支出は公表額の二、三倍」と指摘したことに歩調をあわせ、中国に軍事力の透明性向上を促している。

 北朝鮮に関しては、貧富の差の拡大などで金正日総書記の独裁体制に「一定の揺らぎがみられるとの指摘もある」との見方も示すなか、「核兵器計画が相当に進んでいる可能性も排除できない」と記述。弾道ミサイル開発、配備、拡散について懸念を表明した。

 日本の防衛力整備については、(1)弾道ミサイル(2)ゲリラや特殊部隊(3)離島侵攻(4)武装工作船(5)大規模災害−の対処を取り上げ、陸海空三自衛隊の統合運用の必要性を強調。特に「離島侵攻」の項目を新設したことは、台湾海峡や東シナ海での中国の動向を踏まえたものだ。また、自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法の策定に向けた検討状況を説明し、国際平和協力活動にいっそう主体的に取り組む方針も強調している。

 米軍の変革・再編(トランスフォーメーション)については、日米協議の「現況報告」にとどまり、日本側が明確な基本戦略を見いだせない姿を浮き彫りにしている。

日本、無人偵察機導入へ 域内国の軍事動向監視

JULY 27, 2005 東亜日報

 東京新聞は26日、日本政府が北朝鮮のミサイル基地をはじめ、韓国や中国などの近隣諸国の軍事動向を監視するため、無人偵察機を取り入れることにしたと報じた。日本の防衛庁は弾道ミサイル迎撃のためのミサイル防御(MC)体制の一つとして、無人偵察機を取り入れるという方針を固め、来年度の予算に研究調査費を割り当てることにした。

 無人偵察機の主な任務は、地対空ミサイルの射程外である20km上空を長期間飛行しながら、北朝鮮内陸部のミサイル基地を観測する。実際にミサイルが打ち上げられたなら、赤外線感知器で捕捉し、日本の自衛隊本部に伝達する。また、光学カメラと高性能レーダーなどを搭載して海上の工作船を追跡するとか、韓国や北朝鮮、中国などの近隣諸国の軍事施設を撮影する機能も持つことになる。

3自衛隊を統合運用 改正防衛庁設置法が成立

2005/07/22 The Sankei Shimbun

 陸海空3自衛隊の統合運用を開始するための改正防衛庁設置法などが22日午後の参院本会議で与党の賛成多数で可決、成立した。

 自衛隊の運用に関しては、これまで陸海空各自衛隊の幕僚長が個別に防衛庁長官を補佐していた。今回の改正で各幕僚長とは別に統合幕僚長を新設し、一元的に長官を補佐する体制に改める。防衛庁は2005年度末から統合運用を開始する方針。(共同)

無人偵察2機試作 防衛庁 220億円かけ国産計画

2005/07/19 北海道新聞

 長時間飛行による継続的な情報収集、監視活動が可能で、米国製の輸入を軸に導入の検討が進められている滞空型無人偵察機について、防衛庁技術研究本部が総額約二百二十億円をかけ、二○一二年度までに試作機二機を製作する国産化に向けた研究を計画していることが十九日、分かった。

 技術研究本部は「無人機システムの独自技術は、将来の無人戦闘機などの基盤技術になる」などと国産化の意義を強調、初年度分予算として○六年度概算要求に約一億八千万円を盛り込むよう求めている。

 滞空型無人偵察機は電波センサーや光学センサーなどを搭載して高高度を長時間飛行し、高い遠方監視能力を持つ。不審船対策や島しょ防衛などに有効な上、弾道ミサイルの発射監視などミサイル防衛(MD)システムの一環としての運用も期待される。

 関係者によると、技術研究本部が製作を目指す試作機は、翼幅約二十四メートルで高度約一万五千メートルを十時間以上にわたって飛行する。性能面で米国製より劣り、米軍が既に運用している「グローバルホーク」(一機約五十七億円)は高度約二万メートルを三十五時間以上、「プレデターB」(同約八億円)も高度約一万五千メートルを三十時間以上飛行できる。

 米国製の方が最大搭載量が大きく、各種センサーも高性能といい、防衛庁内には「米国の実用機に劣る試作機に、巨額の経費を投入するなど納税者の理解を得られない」との批判が出ている。

護衛艦1隻減らし態勢縮小 インド洋の給油支援

2005/07/19 The Sankei Shimbun

 防衛庁は19日、テロ対策特別措置法に基づくインド洋での各国艦船への給油活動について、現在の護衛艦2隻、補給艦1隻から護衛艦を1隻減らし、態勢を縮小することを決めた。大野功統防衛庁長官が同日、実施要項を変更、小泉純一郎首相が承認した。今月末の部隊交代から実施する。

 斎藤隆海上幕僚長は19日の記者会見で、縮小の理由について「派遣開始から3年半が過ぎ、海域に慣れてきた。通信系統が整備され、護衛艦を2隻使う必要がなくなってきた」と述べた。

 政府は今年11月1日に2年間の期限が切れるテロ対策特措法について、秋の臨時国会で再改正し、2003年10月以来、2度目の延長をする方向で調整している。(共同)

イラク7次隊に派遣命令 北部九州の陸自第4師団

2005/07/19 The Sankei Shimbun

 北部九州に駐屯する陸上自衛隊第4師団(司令部・福岡県春日市)は19日、今月末にも派遣される第7次イラク復興支援群(約500人)の編成を完了。大野功統防衛庁長官は同日、支援群に派遣命令を出した。

 沢山正一師団長は記者会見し「どのような事態にも対応できる十分な訓練を積んだ。立派に任務を果たしてくれると思っている」と述べた。

 沢山師団長はイラク南部サマワの治安情勢について「宿営地への砲撃などはあったが、大きな危害を心配するような場所ではない。基本的には治安は悪くなっていないと思う」と強調。

 一方で、現地で給水施設の復旧作業が終了したことを理由に「(派遣隊員の編成を)給水から警備などに一部差し替えた」と、現地での警備強化を示唆した。

 第7次支援群の群長には、19日付で第16普通科連隊(長崎県大村市)の岡崎勝司連隊長(47)が就任した。

 第7次支援群は福岡、長崎、佐賀、大分各県の部隊を中心とする約500人で編成。隊旗授与式を行った後、3陣に分かれて空路、現地に向かい、道路や公共施設の補修、医療支援などに当たる。(共同)

米軍再編 相模補給廠返還に同意 敷地の1割 政府、面積拡大求める

2005/07/18 The Sankei Shimbun

 米政府が、米軍の変革・再編(トランスフォーメーション)に伴い、相模総合補給廠(しょう)(神奈川県)の一部返還に同意したことが十七日、分かった。日本政府が国内の負担軽減策の一環として要求していたもので、施設名が判明したのは初めて。ただ、米側は敷地面積の約一割の返還にとどめたい意向で、日本側はそれ以上の拡大を求めている。

 日米両政府は、二月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で「共通戦略目標」に合意した後、外務・防衛当局の審議官級協議で日米の役割分担を協議している。この過程で、基地を抱えている地元の負担を軽減するため、自衛隊と米軍の基地の共同使用と、使用頻度が少ない遊休施設の返還が焦点として浮上した。

 日本側は四月の審議官級協議で、主に米軍が補給やレクリエーション用に使用している遊休施設の具体名を提示。相模総合補給廠のほか、牧港補給地区(沖縄県)や多摩サービス補助施設(東京都)、赤坂プレスセンター(同)、木更津飛行場(千葉県)が含まれている。

 日本側はこの中でも、相模原という東京のベッドタウンに約二百十四ヘクタールもの広大な敷地がある相模総合補給廠の返還を重視。相模原市も、JR相模原駅前の都市整備の妨げになるとして、事実上の空き地になっている野積場と施設が少ない北側部分の計約八十五ヘクタールを、早期に返還するよう求めてきた。

 米側は当初、「相模総合補給廠は有事の際に物資集積や装備の修理を担う重要な戦略拠点だ」として返還を拒否していたが、方針を転換した。

 現時点で米側が打診してきている返還面積は全体の一割程度で、野積場部分が中心。相模総合補給廠の土地の大半は国有地で、国は返還が実現すれば市に譲渡する方針だが、一部を陸上自衛隊が使用する案も浮上している。

 日米両政府は九月に2プラス2を開き、日米の役割分担や個別の基地再編案も盛り込んだ再編協議の「中間報告」を発表し、遊休施設の返還に関する方向性も明記する方針だ。

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 【相模総合補給廠】旧日本陸軍工廠。昭和24年に米陸軍が接収した。約400の建物があり、資材や医療物資の備蓄、装備品の修理などに使用しており、朝鮮戦争とベトナム戦争では米軍の兵站補給の拠点となった。最近では保管物資も減少しているという。

横田の管制権、返還で日米大筋合意…民間機に一部開放

2005年07月17日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 日米両政府が、在日米軍再編協議の焦点の一つである米軍横田基地(東京都福生市など)について、航空管制業務(横田ラプコン)を日本側へ返還することで大筋合意していることが16日、明らかになった。

 複数の政府筋によると、横田ラプコンの対象空域の一部を民間機の飛行ルートに開放することでも合意し、現在、空域の削減幅を調整中だ。航空自衛隊の航空総隊司令部(東京都府中市)を移転させ、空自と在日米軍による「共同使用」とすることでも合意した。合意事項は、9月に予定している日米協議の中間報告に盛り込む方向で調整している。

 1都8県にまたがる横田空域は、民間航空機が飛行ルートを設定する際の障害になっている。現状は、民間機が飛行する場合、米空軍の許可や指示を受ける必要があるため、空域を避けた飛行ルートを設定している。関西方面へ向けて飛ぶ民間機は、横田空域の上を航行するために東京湾上空で旋回して高度を上げており、東京湾上空における航空機の過密化を招いている。

 このため、日本側は、羽田空港に4本目の滑走路が新設される2009年までに、横田ラプコンの返還と空域の削減を実現するよう求め、このほど航空自衛隊が管制業務を行うことで米側と大筋で合意に達したものだ。

「第3国供与あり得る」 大野防衛庁長官が明言

2005/07/14 中国新聞ニュース

 大野功統防衛庁長官は十四日午前の参院外交防衛委員会で、日米両政府が二○○六年度から開発段階に移行する方針を固めているミサイル防衛(MD)に関し「米国から要請があれば、場合によっては第三国への供与があり得る」と述べ、日米が共同開発、生産する迎撃ミサイルを第三国に輸出する可能性を認めた。

 政府は昨年十二月の官房長官談話で、MDの日米共同開発、生産については「厳格な管理を行う」との条件付きで武器輸出三原則の例外とした。大野氏が第三国供与の可能性を明言したことで、談話との整合性をめぐり議論を呼びそうだ。

 大野氏は「米国に提供した武器の第三国移転については、交換公文などで事前に日本の同意を取り付けることは、はっきりさせておきたい」と強調。その上で「現実に米から要請があった場合は、三原則の精神にのっとり慎重に検討する」と述べ、案件ごとに判断する姿勢を示した。

 民主党の白真勲氏への答弁

横田の航空管制権返還へ 日米政府が最終調整

2005/06/26 中国新聞ニュース

 日米両政府は二十五日、在日米軍再編協議で、米空軍横田基地(東京都福生市など)が管轄する航空管制業務(横田ラプコン)について、日本側に返還する方向で最終調整に入った。返還が実現すれば、民間航空機のルート効率化につながる可能性があり、政府は米軍再編に伴う負担軽減の成果として位置付ける考えだ。

 現在、民間機が横田ラプコンの対象空域(一都八県)を飛行する場合、米空軍の誘導を受ける必要がある。このため、ラプコンが日本に返還されれば「横田空域を通過する民間航空機が増え、飛行ルートの効率化を図ることが可能になる」(防衛庁幹部)との期待感がある。

 日米両政府は昨年十二月、在日米軍が管轄する沖縄本島周辺の航空管制業務「嘉手納ラプコン」を二○○七年度末までに返還することで合意。政府内では在日米軍再編を機に、横田ラプコンの返還を求めるべきだとの声が強くなっていた。

 ただ「横田空域は従来過密状態で、管制業務が米軍から日本側に移ったとしても、民間機の大幅な飛行ルートの変更は困難」(政府筋)と、ラプコン返還による利点を疑問視する声がある。防衛庁幹部は「むしろ、管制業務を日本側に戻すという『主権回復』の意味合いが大きい」と指摘している。

 横田基地については、日本側が航空自衛隊の航空総隊司令部(東京都府中市)を同基地に移転し、日米共同使用を進める方針。同時に、東京都などの要望を踏まえ、一日十五便程度の民間機を同基地に乗り入れる「軍民共用化」を図ることで基本合意している。

米国製無人機の導入検討 PSI訓練にも自衛隊派遣

2005/05/01 The Sankei Shimbun

 大野功統防衛庁長官は1日午後(日本時間同)、フィリピンに到着、マニラ市内で同行記者団と懇談し、沿岸防衛や災害時の情報収集のため米国製無人機の導入を検討する考えを示した。同時に8月中旬にシンガポールで開かれる大量破壊兵器の拡散防止構想(PSI)に伴う合同訓練に、初めて自衛隊の艦船や航空機を派遣する考えを明らかにした。

 防衛庁は既に、国産無人機開発を検討しているが、大野氏は「2006年度予算概算要求で調査費を計上し、他国からの購入と国産のコスト面を比較したい」と指摘。「外国には飛ばさない。攻撃的武器の付与も考えていない」と強調した。

 合同訓練参加については「他国での訓練に実動部隊を出さないという姿勢でいいのか。国際法、国内法の範囲内で実施する」と強調。船舶への立ち入り検査訓練にも参加する意向を示した。

 昨年10月に日本で開催された際は、海上自衛隊の護衛艦などが参加。適用法令を明示しない形で海自が立ち入り検査訓練を行った。だが、これまで他国で実施された際は要員派遣にとどめていた。訓練参加を見送っている中国、韓国などが反発する可能性もある。(共同)

潜水艦資料、中国に漏洩か 警視庁、防衛庁元幹部宅を捜索

2005/04/03 The Sankei Shimbun

 防衛庁の元幹部職員が在任中、同庁の研究施設から重要書類を盗み出していたとして、警視庁公安部が窃盗容疑で元職員の自宅や勤務先などを家宅捜索していたことが二日、分かった。書類は潜水艦に関する防衛秘密という。警視庁は、書類が中国大使館の関係者に渡っていた可能性もあるとみて慎重に捜査し、防衛資料漏洩(ろうえい)疑惑の全容解明を進めている。

 窃盗の疑いが持たれているのは、神奈川県相模原市に住む防衛庁技術研究本部の第一研究所(東京都目黒区)の元主任研究官(63)。

 調べでは、元研究官は平成十二年二月から三月にかけ、さいたま市の貿易業者(53)の依頼を受け、勤務していた第一研究所から重要書類をコピーして盗み出した疑いが持たれている。

 警視庁は先月十二日、元研究官と貿易業者の関係先を捜索。事情聴取に元研究官は、書類を貿易業者に渡したことを認め、貿易業者も受け取りを認めているという。

 警視庁では、この貿易業者が元研究官と頻繁に飲食する関係にあるほか、中国大使館への出入りや中国への頻繁な渡航を確認しており、書類は貿易業者を通じて中国側に渡った疑いもあるとみている。

 元研究官は研究所在任中、「高張力鋼」と呼ばれる潜水艦の船体の鋼材とその溶接技術について研究していたが、盗んだ書類は高張力鋼と潜水艦に関する論文だった。

 十四年三月に退職して、現在は総合重機メーカーに嘱託扱いで勤務、鋼材の強度向上に関する技術指導などをしている。

 産経新聞の取材に、元研究官は「(警視庁に口止めされていて)話ができない」、メーカー側は「元研究官のことで警視庁の捜索を受けた」、貿易業者は「警視庁の事情聴取を受けた」などと話している。

 防衛庁は、秘密情報を訓令で「機密」「極秘」「秘」の三段階に定めており、「秘」以上を漏洩した職員や自衛官は、自衛隊法(守秘義務)違反の罪に問われる。流出した論文は「秘」以上にあたるが、同法違反は時効が成立しており、同法違反の立件は見送られるとみられる。

 防衛資料をめぐっては、十二年九月に防衛庁防衛研究所の幹部自衛官が「秘」文書のコピーを在日ロシア大使館の駐在武官で「GRU」(軍参謀本部情報総局)のスパイだったビクトル・ボガチョンコフ海軍大佐に渡したとして、同法違反容疑で警視庁などに逮捕されている。

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 ≪防衛庁技術研究本部≫ 防衛庁の特別機関。昭和27年、保安庁法に基づき保安庁技術研究所として発足。29年に防衛庁設置法の施行で防衛庁技術研究所となり、33年の改正で現名称に。陸海空の自衛隊と統幕会議が使用する車両、船舶、航空機をはじめ、各種装備品など幅広い研究開発を一元的に行う。平成16年度の予算規模は約1845億円にのぼる。東京と神奈川に計5カ所の研究所があるほか、各地に試験場などをもつ。

在日米軍再編 遊休施設返還を要求 審議官級協議 地元負担軽減図る

2005/04/10 The Sankei Shimbun

 米軍の変革・再編(トランスフォーメーション)をめぐり、日米両政府は八日、ハワイ・ホノルルの米太平洋軍施設で外務・防衛当局による審議官級協議を開いた。日本側は在日米軍施設のうち、陸軍施設の相模総合補給廠(神奈川県)など具体名を挙げ、使用頻度が低いなど事実上遊休化している施設の返還を要求した。

 今回の協議では、日米の役割分担に関する意見交換に加え、日本側は米軍が補給やレクリエーション用として使用している施設の使用実態の説明を求めるとともに、遊休施設については土地や管理権の返還を要求。相模総合補給廠のほか、牧港補給地区(沖縄県)、多摩サービス補助施設(東京都)、赤坂プレスセンター(同)、木更津飛行場(千葉県)などを検討対象として提示したとみられる。

 日本政府としては陸軍第一軍団司令部のキャンプ座間(神奈川県)への移転などを受け入れる代わりに、遊休施設を返還させることで、「神奈川や沖縄など県単位での地元負担を軽減させるのが得策」(防衛庁幹部)との判断がある。

 ただ、米側は、武器・弾薬の保管や装備の修理といった兵站(へいたん)施設として使用している相模総合補給廠などを「有事になれば重要な戦略拠点」として返還に難色を示しており、交渉は難航しそうだ。

沖縄司令部のグアム移転浮上 岩国に厚木部隊

2005/04/09 中国新聞ニュース

 在日米軍再編協議で、沖縄などの米海兵隊部隊を統括する第三海兵遠征軍司令部(キャンプ・コートニー=沖縄県うるま市)をグアムに移転させる案が浮上していることが八日、分かった。引き換えに米陸軍第一軍団司令部(ワシントン州フォートルイス)をキャンプ座間(神奈川県)に受け入れ、米海軍厚木基地(同)の空母艦載機部隊を海兵隊岩国基地(山口県岩国市)に移す構想だ。

 政府は海兵隊の司令部移転を沖縄の負担軽減とアピールするが、司令部要員は約三百人で、部隊本隊の移転を伴わない案には批判が予想される。陸軍司令部を座間へ、空母艦載機部隊を岩国へ移転させることにも、地元は反対を表明しており、調整は難航しそうだ。

 政府は米海兵隊について、国内、国外への移転を検討したが、国内移転の場合、地元自治体の理解を得るのは困難と判断。第三海兵遠征軍に属する第三一海兵遠征部隊(31MEU、約二千二百人)の国外移転を求めたものの、米側は抑止力維持の立場から難色を示し、司令部だけの移転案となった。

 政府は第三海兵遠征軍司令部の国外移転を実現するには、陸軍第一軍団司令部の座間移転を受け入れざるを得ないと判断。米側は同司令部の作戦指揮の範囲を「極東地域」に限定する方針を日本政府に伝え、政府は米軍の駐留目的を「日本および極東の平和と安全」とした日米安全保障条約第六条(極東条項)には抵触しないとの解釈を固めた。

 同時に、神奈川県の基地負担軽減を図るため、空母艦載機部隊を岩国に移す方向で検討。空母艦載機の夜間離着陸訓練(NLP)は、引き続き硫黄島主体で実施する方針だ。ただ、米側は硫黄島でのNLPについて、距離や気象条件を理由に移転を希望。岩国基地では現在、滑走路の沖合への移設工事が進み、騒音軽減が期待できることから、実施場所が岩国に変更される可能性もある。

米空軍再編、「横田・グアム統合」白紙に

2005/04/01 読売新聞 Yomiuri On-Line

 在日米軍再編問題で、米国が、横田基地(東京都)の米空軍第5空軍司令部機能をグアムに移転する案を取り下げていたことが1日、明らかになった。

 米空軍が司令部再編計画の一環として、第5空軍司令部と統合する予定だったグアムの第13空軍司令部の一部をハワイに移転させる方針を決めたためだ。

 この結果、横田基地の司令部機能は維持される方向となった。

 米空軍が3月下旬発表した再編案によると、太平洋地域に新たな「戦闘司令部」を創設するため、グアムのアンダーセン基地にある第13空軍司令部の要員77人を5月以降、ハワイのヒッカム基地に移転する。

 「戦闘司令部」は米内外の主要基地に計10創設され、太平洋地域ではハワイと韓国の2か所に置く方針という。

 横田基地をめぐっては、これまでの再編協議で、日本が航空自衛隊の航空総隊司令部(東京都府中市)の移転による基地の共同使用や、民間航空機との「軍民共用化」などを求めている。第5空軍司令部が現状のまま横田に残る方向となったことについて、防衛庁幹部は「自衛隊との共同使用などを進める上で特に問題とはならない」と指摘している。

防衛庁に4月から報道官

2005/03/28 The Sankei Shimbun

 防衛庁は4月から、内局に報道官ポストを新設する。イラク派遣など自衛隊の活動多様化を受け情報発信の円滑化を狙うが、サマワの自衛隊宿営地に対する砲撃の公表が大幅に遅れるなど、不備が指摘される同庁の広報体制改善につながるかどうかは不透明だ。

 報道官は、防衛庁組織令で4人と定められている審議官枠を1つ減らして設置、現在は報道担当審議官の金沢博範氏が就任する。防衛庁は当初、統合幕僚会議と陸、海、空3幕僚監部にもそれぞれ報道官を置く方針だったが、財務省の予算査定で認められなかった。

 報道官の業務は(1)報道機関に対する日常、緊急のブリーフ(説明)(2)防衛庁幹部の記者会見の補佐(3)報道対応の在り方の企画立案−など。このほか、必要に応じ報道官本人が記者会見を行う。

 昨年11月に発生したサマワ宿営地に対する砲撃の公表は、発生から19時間後だったことから批判を浴び、同庁内にも「首相官邸の意向を最優先し、報道機関への対応は後回し」との見方が出ていた。(共同)

スーダンPKO、PKF本体業務は見送り…政府方針

2005/03/26 読売新聞 Yomiuri On-Line

 政府は25日、スーダンで近く展開される国連平和維持活動(PKO)への協力について、停戦監視など国連平和維持隊(PKF)本体業務への自衛隊参加を見送る方針を固めた。

 現地の治安が依然、不安定なため、「隊員の安全確保を図れない」(防衛庁幹部)との判断が強まった。

 政府は、PKO司令部要員としての自衛官派遣や、航空自衛隊輸送機によるスーダンへの物資輸送の可能性を探っており、今後、調整を急ぐ。

ミサイルなど開発から廃棄まで、防衛庁が一元管理へ

2005/03/21 読売新聞 Yomiuri On-Line

 防衛庁は20日、次世代の短距離地対空誘導弾など自衛隊の一部装備品を対象に、研究・開発から廃棄までを一元的に管理する「機能横断チーム」を創設する方針を決めた。

 民間の手法を参考に、各部局に分散している要員を装備品ごとに編成して業務の効率化を進めるのが狙いだ。2005年度は数チームを試験的に編成し、2006年度から組織改編による本格導入を目指す。

 「機能横断チーム」は、日本の自動車メーカーなどが効率的で品質の高い製品を開発するため導入している方式。防衛庁としても、この方式に基づき、研究開発、調達、補給、廃棄をそれぞれ担当する同庁・自衛隊の各部局や民間会社から、装備品ごとに要員を集めて「機能横断チーム」を作ることにした。

 研究・開発といった初期段階から、部品のパターンごとの生産コストを比較したり、実際に修理や整備にあたる自衛隊部隊の意見を反映することで、経費の抑制や、調達時間の短縮などのメリットが見込めるという。

 ◆短距離地対空誘導弾=航空機による攻撃を防ぐため、陸上自衛隊と航空自衛隊に配備されている国産ミサイル。低高度の侵入機を撃墜するための地対空誘導弾「ホーク」より低空域の防空を担当する。81年に完成した81式と、射程の延伸や発射時の発煙抑制などの改善を加えて95年に完成した改良型がある。

スーダンPKOへ自衛隊派遣を検討、PKFも視野に

2005/02/01 読売新聞 Yomiuri On-Lin

 町村外相は1日午前の閣議後の記者会見で、南北内戦が終結したスーダンで展開される見通しの国連平和維持活動(PKO)について、「国連から話は聞いている。(自衛隊派遣について)関係省庁とこれから議論していく」と述べ、自衛隊の派遣を検討していく考えを明らかにした。

 スーダンでのPKOには停戦監視などが含まれる見通しで、政府は、2001年のPKO協力法改正で凍結が解除された停戦監視などの国連平和維持隊(PKF)本体業務を初めて実施することも視野に調整を進める方針だ。

 政府内では、国連安保理の常任理事国入りを目指す日本として、PKOへの積極参加によって国際貢献をアピールすることが望ましいとの意見も出ている。

 これに関し、大野防衛長官は同日の記者会見で、「(国連から)要請があれば自衛隊としてどういうことができるか検討して決定したい。世界的な国際平和の分野での活動が、日本の安全確保、日本のイメージ(向上)につながっていくという意味で、前向きに考えたい」と語った。

 また、細田官房長官は「全体像がどうなるのか、スーダンにおける停戦合意、環境がどうなっているか、よく吟味していかねばならない」と述べ、慎重に検討していく考えを示した。

 スーダンでは、南北内戦と同国西部のダルフールの民族紛争が続いてきたが、南北内戦は今年1月9日(現地時間)に包括和平のための各種協定書署名が行われた。これを受け、国連安全保障理事会は2月中にもスーダンへのPKO派遣決定の決議を行う見通しだ。

 政府としても3月にも現地に調査団を派遣し、治安状況や現地で求められる活動内容について確認する方針だ。

 ただ、ダルフールの民族紛争は依然、続いているため、「自衛隊の安全確保が図られるか見極めた上で、PKO派遣は慎重に判断するべきだ」(政府筋)との意見もある。 ◆国連平和維持隊(PKF)=停戦や兵力引き離しの監視などの平和維持活動(PKO)を行うために、国連が派遣する武装した組織。日本政府は、PKFの活動を停戦監視、武装解除の監視、武器搬入・搬出の検査などの本体業務と、輸送や医療などの後方支援業務に仕分けし、1992年に成立した国連平和維持活動協力法では当初、本体業務への自衛隊参加を凍結していた。

防衛軍創設を明記 中曽根元首相が改憲試案

2005/01/20 The Sankei Shimbun

 中曽根康弘元首相は20日、自衛のための「防衛軍」創設と国会承認があれば海外での武力行使を可能とした憲法改正試案を発表した。現行憲法を全面的に書き直した内容で全116条。前文で「独自の文化と固有の民族生活」を形成してきた日本−という国家像を打ち出し、天皇を「象徴的元首」と規定。家庭を社会の最小構成単位と位置付ける「家庭条項」や国防の責務なども盛り込んだ。

 中曽根氏は自民党の新憲法起草委員会メンバーに内定している。記者会見で「各党は改憲発議に必要な総議員の3分の2以上の獲得を念頭に改憲案を考えるべき段階にきた」と指摘。首相公選制など中曽根氏独自の主張を弱め、各党が歩み寄り可能な内容を目指した点を強調した。

 安全保障分野では、ほかに「戦力不保持」を定めた9条2項を削除、自衛権を認めることで集団的自衛権行使にも道を開いたほか、侵略や災害など国家緊急事態への対応も整備。国会については、首相の指名権を衆院だけに与えるなど「衆院の優越」を強化。特別職公務員の同意人事を参院の権限とし、間接選挙による参院議員選出も可能とするなど参院の独自性発揮に配慮した。

 「内閣総理大臣」という章も新設、行政権は首相に属するなどと明記して首相の指導力を強化。総選挙で各党に首相候補明示を義務付け、首相公選制に近い仕組みの実現を図った。国民の権利、義務に関しては新しい権利として「環境権」「人格権」などを規定。首相と国会が対立した法案の可否を決める国民投票制度を新設するなど国民主権の強化も打ち出した。憲法裁判所の新設、地方自治の強化も盛り込み、改憲発議要件を「2分の1以上」に緩和した。

 試案は中曽根氏が会長を務めるシンクタンク「世界平和研究所」がまとめた。(共同)

 中曽根康弘元首相が20日発表した憲法改正試案要旨は次の通り。

 【前文】自由・民主・人権・平和の尊重を基本に国の体制堅持。教育・文化の重要性、国際平和への貢献を明記。第1条で天皇を元首と明記。

 【第1章国民主権】国民は国会議員と国民投票により主権を行使▽国民に選挙の責務▽政党条項▽国の説明責任。

 【第2章天皇】(略)

 【第3章安全保障と国際協力】戦争放棄の現憲法9条1項は堅持▽「防衛軍」を持ち、国際協力活動にも参加▽首相に指揮監督権▽武力行使は国会承認が必要。

 【第4章国民の権利・義務】国の宗教活動禁止の緩和▽人格権▽家庭を社会の最小単位と位置付ける家庭条項▽環境権▽国の平和と独立を守る責務。

 【第5章国会】衆院議員は国民の直接選挙▽衆院の再可決要件は(現行3分の2から)過半数▽重要な公務員の任命は参院同意必要▽総議員の10分の1以上の要求で国政調査▽弾劾裁判所は参院議員で構成▽訴追委員会は衆院議員で構成。

 【第6章内閣総理大臣】行政権は首相に専属▽総選挙は「議員選出と首相推挙のため」▽総選挙時に首相候補明示を政党に義務付け▽首相は衆院議員から衆院の議決で指名▽不信任案可決で衆院解散を義務付け▽国務大臣は首相の「補佐」▽首相は両院の各総議員の3分の1以上の同意を得て法案を国民投票に付託可、国会は結果に従う▽首相は緊急事態を宣言、自由・権利も制限可能。

 【第7章裁判所】憲法裁判所を創設。

 【第8章財政】(略)

 【第9章地方自治】自治体に課税自主権。

 【第10章改正】憲法改正の発議要件を各議院の総議員の過半数に。

 【第11章最高法規】(略) (共同)

英、サマワ治安任務に600人派遣 自衛隊の安全確保も

2005/01/27 The Sankei Shimbun

 フーン英国防相は27日、イラク南部ムサンナ州に駐留中のオランダ軍約1400人が撤退した後の治安任務に、英軍兵士600人が当たると発表した。国防省スポークスマンは、英軍がイラク軍とともに州都サマワの陸上自衛隊の安全確保にも当たることを明らかにした。

 日本政府の要請を受けた派遣。

 オランダ軍は3月15日に1350人が撤退、残りは4−6週間かけて撤収作業を行う。

 ブレア英首相は今月19日の議会下院で、オランダ軍撤退後に「英国の貢献を拡大する計画はない」と述べ、英軍増派の考えはないと明らかにしていた。(共同)

共産党が自衛隊の海外活動容認…災害救援限定

2005/01/19 The Sankei Shimbun

 共産党の志位和夫委員長は19日の記者会見で、スマトラ沖地震救援のための国際緊急援助隊派遣法などに基づく自衛隊派遣について「大規模な災害の時に、自衛隊が純粋な人道支援に徹して活動することを否定するものではない」と述べ、容認する考えを示した。

 今後の対応については「どんな自然災害にも全部出すということではない。個々のケースの判断になる」と述べ、現地の情勢や自衛隊派遣の必要性などを総合的に勘案して賛否を決めるとした。

 共産党が、災害派遣に限定しているとはいえ自衛隊の海外派遣を容認する考えを表明したのは初めて。同党は2000年9月の第7回中央委員会総会で「自衛隊の活用」を打ち出しており、志位氏は「これまで(ここ数年)の災害派遣にも反対はしていない」と説明した。

 ただ、政府が検討している国際平和協力活動を自衛隊の本来任務に格上げするための自衛隊法改正については、海外派兵につながるとして反対する考えを重ねて強調した。(共同)

自衛隊の国際活動強化 大野防衛庁長官、日本の経験共有を

2005/01/11 The Sankei Shimbun

 大野功統防衛庁長官は11日午後(日本時間同)、マレーシア・クアラルンプールの国防省でナジブ副首相兼国防相と会談した。大野氏は自衛隊の国際平和協力活動を自衛隊法の「本来任務」に位置付け、強化する方針を表明。ナジブ氏は「過去は過去として、日本の大きな役割を期待している」と理解を示した。

 大野氏はスマトラ沖地震に関連し「自衛隊には災害派遣の経験やノウハウがあり、各国で共有すべきだ」と強調、国際会議などを通じ日本のノウハウを各国に伝える意向を示した。

 マラッカ海峡のテロ対策では「日本にとって死活的な地域であり、どんな方法で貢献できるか検討したい」と表明。これに対し、ナジブ氏は「マラッカ海峡危機は少し誇張されている。沿岸国の主権と矛盾しない範囲で協力をお願いしたい」と述べた。

 大野氏が中国の軍事活動への懸念を示したのに対し、ナジブ氏が「軍事的にみれば脅威ではない」と切り返すなど安全保障環境をめぐる認識に食い違いも見られた。(共同)

陸海自に派遣命令 総勢1000人規模に

2005/01/07 The Sankei Shimbun

 大野功統防衛庁長官は7日夜、スマトラ沖地震救援のため、国際緊急援助隊派遣法などに基づき、陸上自衛隊と海上自衛隊に派遣命令を出した。来週半ばに出発し、今月下旬にインドネシアに到着。医療、防疫、輸送業務などに当たる。

 陸自は約220人、海自は護衛艦など3隻(約640人)を派遣する。航空自衛隊は既に派遣したC130輸送機などで約100人態勢を取っているほか、3自衛隊の連絡調整に当たる統合幕僚会議の10−20人も派遣する方針で、自衛隊の派遣は総勢約1000人規模となる。

 医療、防疫部隊はインドネシア・スマトラ島北部のアチェ州西岸で活動する予定。当初、アチェ州の州都バンダアチェでの活動を検討したが、各国の医療部隊が入って態勢が整ったことから変更した。

 空自は米軍が司令部を設置したタイのウタパオ基地を拠点に、バンダアチェや北スマトラ州の州都メダンに物資を空輸する。陸自はヘリコプター5機で、バンダアチェなどからアチェ州西岸などへの輸送を実施する予定だ。(共同)

中国原潜侵犯 離島防衛、日米で強化 共同訓練・拠点を協議

2005/01/03 The Sankei Shimbun
 

 中国原子力潜水艦の領海侵犯を受け東シナ海の離島防衛を強化するため、防衛庁は二日、「離島侵攻」を想定し、離島への共同輸送拠点設置や共同訓練の実施など、陸上自衛隊と米軍の共同対処を強化する方針を固めた。近く本格化する米軍の「変革・再編」をめぐる日米協議でも、軍事力を増す中国が主要テーマとなり、中国が南西諸島に侵攻する危険性を想定した共同対処が議論される見通しだ。

 昨年十二月に決まった次期中期防衛力整備計画(平成十七年度から五年間)で海上・航空自衛隊について空中給油・輸送機、ヘリ搭載護衛艦、P3C哨戒機の後継機などの整備が盛り込まれた。しかし、陸自と米陸軍・海兵隊の将官レベル協議では、中国原潜が領海侵犯した先島諸島(南西諸島の一部)に陸自が駐屯していないことに双方が懸念を示し、「領空・領海侵犯」にとどまらず「離島侵攻」も念頭に陸自と米軍が統合部隊として対応する必要があるとの認識で一致した。

 具体的には、三千人規模の第一五旅団(沖縄県)や離島対処部隊として相浦駐屯地(長崎県)に配置されたレンジャー隊員中心の西部方面普通科連隊(約六百六十人)と、沖縄に駐留する有事即応部隊の米第三一海兵遠征部隊(約二千人)の連携を強化する。

 有事に備え、離島で日米共同訓練を実施することも検討している。当面は災害対処を想定した訓練から開始する方針で、地形が複雑な離島では不具合が生じやすい無線・衛星通信の試験や、中継施設の設営も進める。

 現地に陸上部隊を迅速に派遣するため、先島諸島に輸送機の離着陸が可能な共同輸送拠点も設ける。具体的には、三千メートルの滑走路を持つ下地島空港(伊良部島・下地島)を利用する案が浮上している。

 また、陸自は離島侵攻対処で九州の西方普通科連隊を含め西部方面隊(総監部・熊本市)などから約九千人を投入すると見積もっているが、先島諸島には弾薬や食料、燃料も常備されていない。このため、これらの「事前集積拠点」も設置する方針で、沖縄本島に近い宮古島が候補地に挙がっている。

 離島防衛の対処能力を高めるため、陸自はすでに、有事に緊急展開する「中央即応集団」の新設を決めている。

朝鮮半島有事の日米共同作戦判明 工作員の侵入想定

2004/12/12 asahi.com
 自衛隊と米軍が朝鮮半島有事を想定し、「5055」というコードネームを付けた共同作戦計画を策定、調印していたことが明らかになった。朝鮮半島で戦う米軍への支援と同時に、数百人規模の武装工作員の日本への侵入を想定し、その場合には自衛隊が単独で対処する。10日に閣議決定された新「防衛計画の大綱」も、この作戦計画を前提にしている。ただ、朝鮮半島情勢の急変に備えて早く作成することを優先させたため、警察など関係機関との調整が不十分なままの内容となっている。

 「5055」は、97年の「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を受け、自衛隊の統合幕僚会議事務局長や在日米軍副司令官がメンバーの共同計画検討委員会(BPC)で作成した。新ガイドラインでは共同作戦計画に加え、警察の運用などが対象となる相互協力計画の検討が盛られているが、「5055」に一本化することになり、02年に調印された。

「5055」は、9・11同時多発テロ後初めて、日米の制服組が調印した計画だ。その構成は(1)攻撃を受けて遭難した米軍人の捜索・救難など米軍への直接的な支援(2)米軍が出撃や補給をする拠点となる基地や港湾などの安全を確保する−−などからなっている。

 想定されている一つのケースに、北朝鮮の武装工作員ら数百人による上陸がある。陸上自衛隊は警護対象として、米軍基地や日本海沿いの原発など重要施設135カ所をリストアップした。

 海上自衛隊は原発などの沖合に護衛艦や哨戒機などを待機させ、工作船などを警戒する。また、浮遊機雷の掃海などで朝鮮半島と九州北部とを結ぶ輸送ルートを確保する。航空自衛隊は早期警戒管制機での情報収集や、C130輸送機などで朝鮮半島からの避難民の輸送支援をする。

 「5055」策定をめぐる会合では、自衛隊は数千人の武装工作員の侵攻を想定した。だが、米軍は「こちらの分析では、多くても数百人」と主張。日本側が歩み寄り、基本的に自衛隊単独で対処することになった。

 これをきっかけに、自衛隊は侵略対処の重点を、ゲリラや武装工作員に移した。年ごとに改定される防衛計画でも、今年度から、北海道にある20余りの連隊のうちの半数が首都圏防護のために移動し、重要施設を警護する計画が盛られた。「武装工作員の首都圏侵入」に対応するためだ。

 新防衛計画の大綱策定をめぐり、最大の焦点となったのが陸自の定数削減だった。財務省は4万人削減を主張したが、陸自が強硬に反対した。「5055」で想定されているゲリラ・工作員対処が、「最も人手のかかる作戦」(陸自幹部)という理由が大きかった。

 防衛庁は定数問題の折衝のなかで、96年に韓国で起きた北朝鮮工作員ら二十数人による侵入事件で、韓国軍が最大6万人を動員して対処に約50日間かかった例を挙げた。新大綱には、工作員などが侵入した地域にすみやかに部隊を派遣する「中央即応集団」も新設された。

 一方、「5055」が02年に調印されたのは、「朝鮮半島情勢が急変する可能性は常にある」(米軍関係者)との懸念があった。結果として国内の関係省庁や自治体との調整作業は積み残しとなった。

 陸自は02年から各道府県警と治安出動を前提とした図上演習を行っている。だが、米軍基地や他の重要施設の警護で、どこを優先し、どう任務を分担するという協議は遅れている。米軍支援も、港湾や空港の警備など警察や国土交通省などが管轄する分野は空白で、「穴だらけの計画」(防衛庁幹部)となっており、日米間で改定を続けることになっている。

 新大綱で、陸自の定数は5000人削減されたが、現在の実数と比べれば、やや上回る水準だ。新大綱で示された自衛隊の姿は、マンパワーでみる限り現状維持に近い。

 冷戦後に欧米の軍は、大規模な削減努力を続けてきた。日本とは安全保障環境が異なるとはいえ、90〜03年の間、自衛隊の2%減に対し、欧米の軍は30〜51%も減らしている。

 冷戦時代からの規模にこだわる自衛隊。それを主張する理由の一つに「5055」がある。

自衛隊どう変わる 軍拡中国の抑止力

2004/12/11 The Sankei Shimbun
島嶼部侵略想定、中央即応集団を新設

 政府が十日決定した新たな「防衛計画の大綱」は、米中枢同時テロで厳しさを増した世界の安全保障環境に対応するため「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」の必要性を強調しているが、対中抑止力強化も見逃せない。さらに「新たな脅威」であるミサイルや国際テロに自衛隊はどう対処し、変わろうとしているのか。

 「多機能弾力的な運用」を象徴するのは、テロ・ゲリラ攻撃や南西諸島などの島嶼(とうしょ)部侵略への対応だ。陸上自衛隊が司令部のほかに空挺団、緊急即応連隊、特殊作戦群などで構成する三千人から四千人の「中央即応集団」を新設したのも、北朝鮮対策とともに軍事力増強を続ける中国への抑止力強化も目的だ。

 細田博之官房長官は十日の記者会見で「中国を脅威とみなしているということではない」と述べたが、中国は原子力潜水艦による領海侵犯事件以降も日本の排他的経済水域(EEZ)で海洋調査を繰り返している。

 防衛庁などによると、中国の今年の国防費は約二千億元(約二兆六千億円)で、過去十年間で三倍近くに膨張。新鋭戦闘機の導入も進み、その行動半径は紀伊半島から南西諸島にかけて西日本がおさまる千五百キロメートルにのぼるとされる。

 C1輸送機の後継として航続距離が長い次期輸送機CXを八機配備するのもそのためだ。航続距離をのばすことで、東シナ海に浮かぶ先島諸島などでの侵略事態へ対応能力を強化する。万一、島嶼部が侵略された後、奪還する際のオペレーションも想定、F15が撃墜されるのを防ぐため、敵のミサイルやレーダーの電波を妨害する電子妨害装置の開発にも着手する。

                  ◇

 次期中期防衛力整備計画(次期防)では、ミサイル防衛(MD)システムの整備に五千億円を計上。自衛隊の編成を示す大綱「別表」には、初めてMDに関する主要装備・基幹部隊の項目を設け、迎撃ミサイルSM3搭載のイージス艦を四隻、パトリオット・ミサイル3(PAC3)を保有する地対空誘導弾部隊を三個高射群とすることを盛り込んだ。

 政府は武器輸出三原則も緩和し、米国と共同研究を進めるMDで日本から部品の輸出が可能になり、MDの迎撃手続きを迅速化するよう、安全保障会議や閣議を省略するための自衛隊法などの改正も、「法的措置を含む所要の措置を講じる」(官房長官談話)方針だ。

 半面、旧ソ連による着上陸作戦に備えるため九百両を数えた戦車は約六百両に減らされ、陸上自衛官定数も削減されるなど陸上自衛隊は待ったなしで組織改革を迫られることになった。

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 <防衛計画の大綱> 防衛力の整備、維持、運用に関する基本方針を示す計画。防衛予算の大幅な伸びに対し、具体的な整備目標を明らかにすべきだとの指摘で昭和51年に初めて策定。冷戦終結後の平成7年に改定。両大綱とも「軍事的脅威に直接対抗するよりも、自らが力の空白となって不安定要因とならないよう、必要最小限の基盤的な防衛力を保有する」との基盤的防衛力構想を中核的概念として取り入れた。米中枢同時テロ後の大規模テロなどを踏まえ、16年中に新たな大綱を策定することになった。

対テロへ多機能防衛に転換 新大綱を閣議決定

2004/12/10 中国新聞ニュース
 政府は十日午前の安全保障会議と閣議で、今後十年間の防衛力整備の指針となる新「防衛計画の大綱」と次期中期防衛力整備計画(二○○五〜○九年度)を決定した。テロや大量破壊兵器など新たな脅威に対応するため「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」整備を表明。北朝鮮と中国の動向に警戒感を示すとともに、(1)日米関係の一層の緊密化(2)国際平和協力活動への主体的・積極的取り組み―を盛り込んだ。

 武器輸出三原則の緩和は大綱に入れず、官房長官談話でミサイル防衛(MD)関連部品の米国向け輸出は例外とする方針を表明した。新大綱策定は一九九五年以来。冷戦時代からの着上陸侵攻を想定した基盤的防衛力構想を見直すと同時に、米戦略との一体化を加速、自衛隊活動を拡大する安全保障政策の転換だ。

 次期防は二十四兆二千四百億円(予備費除く)。長官談話は自衛隊の国際平和協力活動の本来任務化とミサイル迎撃での意思決定迅速化の法改正に取り組む考えも表明した。

 新大綱は五年後に見直す方針も明記。自衛隊の人員・装備の整備目標の「別表」では、陸上自衛隊定数十六万人を十五万五千人に削減。戦車や火砲、戦闘機などの大幅削減を打ち出した。

 安保環境については「本格的な侵略事態の可能性は低下」と指摘。「新たな脅威や多様な事態」に対応する必要性を強調し、(1)安保会議の活用による迅速な意思決定(2)即応性、機動性の高い部隊の配置―を盛り込んだ。北朝鮮に関して「軍事的な動きは重大な不安定要因」と指摘。中国について「軍の近代化や海洋活動の範囲拡大には注目する必要がある」と警戒感を明確にした。

陸自定数15万5000人 新防衛大綱

2004/12/09 The Sankei Shimbun
 政府、与党は8日夜、新防衛大綱の焦点である陸上自衛隊の定数について現大綱の16万人から15万5000人に削減、次期中期防衛力整備計画(次期防)は現中期防より約9000億円減の24兆2360億円とすることで合意した。1986年に現行の中期防方式が採用されて以来、前回より減額されるのは初めて。毎年度の平均伸び率はマイナス0・2%となる。政府は9日に与党内の手続きを経た上で、新大綱を10日に閣議決定する。

 陸自定数は常備自衛官14万8000人、予備自衛官7000人。当初、財務省は12万に大幅削減するよう要求、防衛庁側は最終的に15万5000人まで削減する妥協案を示していた。次期防では財務省が現中期防の25兆1600億円から1兆円程度削減するよう主張。次期防を初めて減額することを踏まえ、陸自定数では財務省が譲歩して決着した。

 大野功統防衛庁長官と谷垣禎一財務省は8日夜、財務省で協議し、常備自衛官14万8000人、予備自衛官5000人の計15万3000人で合意した。しかし、与党安全保障プロジェクトチームの額賀福志郎座長が予備自衛官の現員約6100人を上回る7000人の確保を要求、2000人を上積みした。

 大野氏は協議後、記者団に「常備自衛官15万人と思っていたが、財政状況が厳しいのも分かっていた。陸自の現員(約14万7000人)は確保できるので地方への影響はない」と述べ、陸自駐屯地の削減などは回避できるとの認識を示した。

 8日夕の協議では、谷垣氏が若年人口の減少を強調し、陸自の定数削減を主張。大野氏は警察官の人員増を指摘し、テロなどを念頭に「治安と安全保障の境目がなくなっている。陸自定数を減らしていいのか」と反論、協議は深夜にもつれ込んだ。(共同)

常任理入りの意思表明 日本など4カ国 国連

2004/12/08 The Sankei Shimbun
 国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指す日本、ドイツ、ブラジル、インド4カ国の国連大使が7日、国連本部でアナン事務総長と会談、常任理事国入りへの意思を直接伝えた。

 今年9月、首脳級会合で結束強化を打ち出した4カ国の代表が一堂に会して事務総長に決意表明したのは初めて。

 日本の原口幸市国連大使によると、4カ国は、高級諮問委員会が事務総長に提出した国連改革のための報告書で提言した「常任理事国6カ国増案」を支持すると伝達。安保理拡大にとどまらず、テロや紛争など新たな脅威に対応できる国連の改革実現に向けて事務総長の指導力が必要である点を強調した。

 またイラクでの国連人道支援事業をめぐる汚職疑惑に国連高官や長男コジョ・アナン氏が関与したと報じられ、窮地に立つ事務総長を支援する立場を表明した。

 4カ国の常任理事国入り先行に反対するイタリアやパキスタンなど11カ国の国連大使も今月1日に事務総長と会談しており、安保理拡大をめぐる外交戦は激しさを増し始めた。

 原口大使は、常任理事国入り実現を目指し「各国の意見を踏まえながら、一番多くの支持を得られるような枠組みを提案していきたい」と述べた。(共同)

防衛大綱、閣僚折衝物別れ 9日の閣議決定目指す

2004/12/04 The Sankei Shimbun
 大野功統防衛庁長官と谷垣禎一財務相は3日夕、財務省で会談し、新たな防衛大綱に盛り込む人員、装備などをめぐり詰めの協議を行った。焦点の陸上自衛隊定数や次期中期防衛力整備計画(次期防)の総額について意見が折り合わず、決着は週明けに持ち越した。これに関連して与党安全保障プロジェクトチームの額賀福志郎座長は、9日に臨時閣議を開き新大綱決定を目指す考えを記者団に示した。

 小泉純一郎首相は3日夜、首相官邸で記者団に「来年度の予算は本年度よりマイナスにする。中期防も今までにないことだがマイナスにする」と、防衛費抑制の方針をあらためて表明。「増やさなきゃならない方もあるから、そこが難しい。全体でマイナスに(する)」と強調した。

 これまでの事務レベル協議で、防衛庁、財務省は戦車、火砲について現大綱から約3割を削減することでほぼ合意した。だが陸自定数については防衛庁が15万8000人、財務省が14万人を主張。次期防をめぐっても、防衛庁がミサイル防衛(MD)導入分を上乗せした総額25兆4500億円を要求しているのに対し、財務省は現中期防から1兆円程度減額し24兆円程度とするよう求めている。

 大野氏は谷垣氏との会談後、記者団に「陸自定数と次期防の哲学、考え方を述べ合った。残念ながら解決した点はない」と述べた。大野、谷垣両氏は首相官邸で細田博之官房長官に協議内容を報告。額賀氏らも同席した。(共同)

不透明要素に中国と北朝鮮明記、新防衛大綱で政府方針

2004/11/25 読売新聞 Yomiuri On-Line
 政府は25日、年内に策定する新たな「防衛計画の大綱」に、日本の周辺地域の不透明・不確実な要素として「中国」と「北朝鮮」を明記する方針を決めた。

 1995年に策定された現大綱では、個別の国名としてロシアだけを盛り込んだが、今回は中朝両国を挙げることで日本周辺の安全保障環境の変化を明確にする狙いがある。

 同日の与党安全保障プロジェクトチームの会合に提出した新大綱の概要で示したもので、「北朝鮮の動きは、地域の安全保障における重大な不安定要因であるとともに、中国の軍の近代化や海洋における活動範囲の拡大などの動向には注目していく必要あり」と記述した。

新防衛計画大綱骨格 「別表」目的別に仕分け 概念「多機能で弾力的に」

2004/11/14 The Sankei Shimbun

 政府が今月末に取りまとめる新たな「防衛計画の大綱」(防衛大綱)案の骨格が十三日、明らかになった。現大綱で示されている、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を持つとする「基盤的防衛力構想」に代わり、テロなどの新たな脅威に対応するための「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」との概念を打ち出す。また、国連の安全保障活動を強調している「国防の基本方針」(昭和三十二年閣議決定)を再定義し、新たに(1)脅威の防止、排除、被害極小化(2)国際的安全保障環境の改善−の二つの目標を掲げ、日本自身の努力や日米同盟、国際社会との協力の三つの要素を組み合わせる必要性を示している。

 焦点となっている「防衛計画の別表」の扱いについては、従来、陸海空の各自衛隊が人員・装備の目標値を掲げていたものを、(1)新たな脅威(2)本格的な侵略事態(3)国際的な安全保障環境の安定化の三分野に仕分けした形で、目標を掲げる。目標を数値化するかどうかは未定だ。

 武器輸出三原則の見直しについては、まだ盛り込まれておらず、今後の政府・与党内の調整次第では当初、「年末まで」とされていた解禁時期が遅れる可能性もある。大綱の見直し期間は現在の約十年ごとから「五年で見直し」とされた。

 このほか、中国の軍事的脅威についてほとんど言及されていないが、今回の原潜領海侵犯を受けて政府・与党が取り扱いを協議することになりそうだ。

 政府はこの骨格を週明けにも与党側に提示し、新大綱を十一月三十日に閣議決定することを念頭に作業を進める。

                  ◇

【新「防衛計画大綱」案の骨格】

 一、策定趣旨

 二、わが国を取り巻く安全保障環境

 三、わが国の安全保障の基本方針 <1>基本方針(1)脅威の防止、排除、被害極小化(2)国際的安全保障環境の改善 <2>国際社会との協力 <3>日米安保体制 <4>防衛力の在り方 <5>国家としての統合的対応の重要性

 四、多機能で弾力的な実効性のある防衛力 <1>防衛力の役割(1)新たな脅威等への実効的な対応(2)本格的な侵略事態への配慮(3)国際的な安全保障環境の安定化のための主体的・積極的な取り組み <2>新たな防衛力の体制

 五、留意事項 <1>五年ごとの見直し

与党安保チーム、防衛大綱の見直しで意見聴取

2004/11/09 読売新聞 Yomiuri On-Line
 自民、公明両党の「安全保障に関するプロジェクトチーム」(額賀福志郎座長)は9日、「防衛計画の大綱」の見直しに向けた2回目の会合を開き、財務省、防衛庁から意見聴取をした。

 財務省は「昨年12月の閣議決定で、戦車や戦闘機など従来型の装備を減らすことを決めた。それに伴って人員も削減できる」と主張。ただ、陸上自衛隊の定数を4万人削減する案については、「財務省として固めた案ではない」とした。防衛庁は「テロ対応や大規模地震の災害派遣などの新たな任務に対応するためには現状以上の隊員が必要」と説明した。

 同プロジェクトチームでは、「防衛庁の説明は大雑把だ。それだけの装備や人員がどうしても必要だという理由がまだ伝わってこない」(石破茂・前防衛長官)などとして、同庁からさらに詳しい説明を求めたうえで、来週中にも与党としての大綱骨子を作る。

体制、装備抜本的に見直す 首相、陸自観閲式で訓示

2004/11/07 The Sankei Shimbun

 小泉純一郎首相は7日午前、埼玉県の陸上自衛隊朝霞訓練場で行われた陸自観閲式の訓示で「既存の体制、装備等の抜本的な見直し、効率化を図りながら、テロや大量破壊兵器の拡散などの新たな脅威への対応を着実に進める」と述べ、年末の新防衛大綱策定に向け自衛隊の組織、装備を大幅に縮減する考えを示した。

 同時に「わが国は自国の安全と繁栄を確保するためにも、国際社会の平和と安定のために積極的に貢献することが必要だ」と強調。イラクでの自衛隊活動について「日本国民の善意を実行する部隊として高い評価と感謝の言葉が寄せられている」と述べ、12月14日までの派遣期間を延長する考えを示唆した。

 首相は、発足50周年を迎えた自衛隊の歴史に触れ「発足に当たっては旧軍の復活ではないかと中傷を受けた。その後も憲法訴訟で違憲判決が下されるなど、十分な理解や協力を得られない時期が続いたが、ひたむきに職務を遂行し信頼と期待を高めた」と指摘した。

 観閲式には隊員約4200人、戦車など車両約230両、航空機約60機が参加。新潟県中越地震対応のため、ヘリなどの参加を減らした。民主党の岡田克也代表も民主党党首として初めて出席した。

 観閲式は陸海空3自衛隊の持ち回りで毎年実施する。陸自観閲式は2001年が米中枢同時テロの影響で中止されたため、98年以来6年ぶり。

陸自、4万人減に猛反発 財務、防衛の攻防本格化

2004/11/04 The Sankei Shimbun

 政府が11月末に策定する新防衛大綱に盛り込む防衛力の水準をめぐり、財務省と防衛庁の攻防が本格化している。財務省がまとめた「陸上自衛隊の定数4万人減」を柱とする大幅な人員、装備の削減案に対し自衛隊は猛反発。台風や地震の被害に伴う災害派遣での人員確保の必要性を訴えるなど反論に躍起だ。

 財務省は10月上旬、与党幹部らに対し、大綱に明記する人員、装備案を示した。それによると、現大綱で16万人となっている陸自編成定数を10年間で4万人削減し12万人にする。旧ソ連の脅威がなくなったとして北海道の4個師団、1個旅団を1個師団に改編。戦車も現行の900両から425両に削減する。

 昨年導入を決めたミサイル防衛(MD)に巨額の予算をつぎ込むため「MD以外の装備や人員の大幅削減は避けられない」(財務省幹部)との立場だ。

 これに対し防衛庁は、テロなど新たな脅威や大規模災害への対応を理由に、常備自衛官を7000人増員し、16万2000人の定数を要求。「国土防衛に空白があってはならない」(幹部)と、陸上戦力の「頭数」の重要性を強調する。

 財務省案に対して、防衛庁幹部は「人を減らせば戦車も減らせるという財務省『総取り』の都合のいい案だ」と反論。制服組幹部も「予算の視点しかない軍事素人の考え」と憤る。

 ただ、MD導入を決めた閣議決定は同時に主要装備の縮小を盛り込んでおり、今回の大綱論議はもともと防衛庁側に不利な形で進んでいる。特に大幅削減の「標的」にされた陸自の危機感は強い。

 陸自は、財務省の削減案が実現すれば全国に158ある駐屯地のうち3分の1がなくなるとの試算をまとめ、地域の雇用や経済に及ぼす影響を指摘。相次いだ台風や新潟県中越地震での災害派遣実績も強調し、組織防衛に全力を挙げる構えだ。

中期防予算、1兆円超圧縮…財務省方針

2004/11/01 読売新聞 Yomiuri On-Line

 財務省は、来年度から5年間の防衛予算の大枠となる新たな「中期防衛力整備計画(中期防、2005―2009年度)」の期間中、約5兆円の防衛予算を5年連続で前年度以下とする方針を固めた。

 次期中期防期間中の防衛予算の総額を防衛庁の要求する25兆5000億円より1兆円以上圧縮するよう求める。1日の財政制度等審議会の合同部会に防衛予算を毎年度、継続して削減する基本方針を提示する。

 防衛庁は次期中期防期間中の防衛予算の総額を25兆5000億円と見積もっている。これを達成するには、期間中の防衛関係予算を来年度から毎年1・5%ずつ増やす必要がある。

 これに対して財務省は、「歳出全体の見直しを進めるなかで、防衛費も例外視せず削減する必要がある」(主計局)として、期間中の防衛予算を来年度から毎年0―1%ずつ削減する方針だ。

 毎年度の伸びをゼロにした場合、次期中期防の予算総額は防衛庁の要求額より1兆1000億円圧縮できるが、財務省ではさらに切り込み、1兆6000億―1兆8000億円の圧縮を図る方針だ。

 削減は戦車や護衛艦など従来型の正面装備や、自衛官の要員を減らすことで対応し、総額で1兆円規模にのぼるとされるミサイル防衛システムの導入は進める。

 今年度予算の防衛関係費は前年度より1・0%減の4兆9000億円。

総額25兆5千億円を要求へ 中期防衛力整備計画で防衛庁方針

2004/10/21 The Sankei Shimbun

 防衛庁は21日、5年ごとの防衛力整備計画を示す新たな中期防衛力整備計画(次期中期防、2005−09年度)の要求額を、現中期防(01−05年度)から4900億円増額し、25兆5000億円とする方針を固めた。

 ミサイル防衛(MD)関連経費5700億円を初めて盛り込むため、大幅な増額となった。財務省は通常の装備費削減により現中期防よりも1兆円の削減を求めており、年末の中期防決定に向けた調整は難航しそうだ。

 政府は年内に防衛力整備の基本方針を示す新防衛大綱を策定する。これに伴い現中期防を打ち切り、次期中期防に切り替える方針。

国民保護計画、対テロ・ミサイル中心に…政府方針

2004/10/11 読売新聞 Yomiuri On-Line

 政府は10日、国民保護法に基づいて各都道府県が策定する国民保護計画について、ゲリラによるテロや弾道ミサイルという「新たな脅威」に対処する内容とするよう求める方針を固めた。

 今年度中にモデル計画をまとめ、都道府県に示す。併せて、ミサイル攻撃の際の避難手順などを記した一般向けのマニュアルも作成、配布する方針だ。

 モデル計画などの検討は、自治体首長や有識者らで構成する「地方公共団体の国民保護に関する懇談会」(座長=石原信雄・元内閣官房副長官)にゆだね、同懇談会が12日から具体的な議論を開始する予定だ。

 国民保護計画は、有事の際の住民避難の手順などを定めるもので、都道府県がそれぞれの実情に合わせて来年度中に策定することになっている。

 政府は、国民保護が必要となる武力攻撃事態を〈1〉着陸・上陸侵攻〈2〉空軍による攻撃〈3〉弾道ミサイル攻撃〈4〉ゲリラ攻撃――の4類型に分類しており、このうち弾道ミサイル攻撃とゲリラ攻撃を保護計画の主な対処目標とすることにした。旧ソ連を念頭に置いた空襲・侵攻の可能性が薄れる一方、ミサイルやテロなどへの国民の不安が高まっているためだ。

 モデル計画には、弾道ミサイルへの対処として、防災無線に代わる新たな警報発令システムの創設を盛り込むことにしている。ゲリラ攻撃に関しては、自衛隊や警察の対応を円滑にするための住民との協力や、住民を危険に巻き込まないための立ち入り制限のあり方などを示す方針だ。

 こうしたマニュアルの作成・配布は、イスラエルの事例を参考にしたものだ。イスラエルは1991年の湾岸戦争でイラクからミサイル攻撃を受け、約40発被弾した。この際、イスラエルは「家屋内にいる場合は、窓を目張りして外壁から離れた場所にいるようにすればシェルター代わりになる」などと記したマニュアルを国民に配布。この結果、ミサイル攻撃による死者は2人にとどまったとされ、政府としても、避難手順を周知徹底するうえでマニュアルの配布は効果が期待できると判断した。

陸自 サマワ1000人規模に増員 輸送ヘリ配備も検討

2004/10/10 The Sankei Shimbun

 防衛庁は九日、イラク南部サマワで人道復興支援活動を行っている陸上自衛隊「イラク復興支援群」の態勢を強化するため、派遣枠を千人規模に増員するとともに輸送用ヘリコプターや対迫撃砲レーダーを新たに配備する方向で検討に入った。サマワの宿営地周辺の治安維持や空輸部門で自衛隊を支援してきたオランダ軍が来年二月に撤退することが確実視され、人員・装備を見直す必要が出たためだ。

 具体的には、十二月に期限切れとなるイラク復興支援の「基本計画」の延長にあわせて、同計画を変更、隊員の派遣枠を現行の六百人以内から千人程度に拡大し、ヘリコプターと対迫撃砲レーダーを追加配備することを計画に盛り込む方針。

 現在、サマワの自衛隊部隊は約五百九十人。基本計画で定める派遣枠のほぼ限度いっぱいで、「ぎりぎりの人数で活動を行っている」(防衛庁筋)。イラクの治安情勢が不安定な中、オランダ軍が撤退すれば、安全対策のため警備隊員の増強が必要になるほか、ヘリコプターを配備した場合、乗員や整備士ら少なくとも百人程度の要員が必要となる。このため、基本計画の隊員枠を千人程度に増やし、実際の派遣数は状況に応じて決める態勢を整えたい考えだ。

 同時に、防衛庁は、陸上自衛隊の多用途ヘリUH−60JA(通称・ブラックホーク)に砂塵(さじん)対策を施し、数機の配備を検討している。平成十年に導入を開始し、戦術輸送ヘリとして物資輸送などに使用している。

 サマワの陸自部隊は、補給物資を陸上輸送しており、緊急にヘリでの輸送が必要な場合は米英やオランダ軍に依頼し、「厚意に頼っている」(防衛庁幹部)状況。現地の米英軍からは「自衛隊がヘリを配備しないのはなぜか」との声が出ていた。

 また、サマワの陸自部隊は数度にわたって迫撃砲による攻撃を受けているが、迫撃砲の位置を即座に割り出す「対迫レーダー」による情報提供をオランダ軍に頼っているため、「自前」のレーダーを配備する方針。

 基本計画の変更は、国会承認を必要としないものの、野党側は自衛隊の増派に強く反発するとみられ、臨時国会で論議を呼びそうだ。

             ◇

 イラク派遣基本計画 正式名称は「イラク人道復興支援特別措置法に基づく対応措置に関する基本計画」。イラクでの自衛隊の支援活動の種類、派遣期間、隊員数、装備を定めている。内容の変更には閣議決定と国会報告が必要だが、国会承認事項ではない。基本計画の派遣期間は12月14日までだが、小泉純一郎首相は延長方針を示している。

対テロ脅威へ多機能防衛を 新大綱へ懇談会報告書

2004/10/04 中国新聞ニュース

 小泉純一郎首相の諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・荒木浩東京電力顧問)は四日、今後の防衛力整備の在り方に関する報告書をまとめ、首相に提出した。

 テロや弾道ミサイルの多様な脅威に対処するため、冷戦時代からの防衛政策の基本である「基盤的防衛力」構想を転換し、「多機能で弾力的な防衛力」の整備を提言。(1)武器輸出三原則の緩和(2)弾道ミサイル迎撃のため安全保障会議の機動的運用など意思決定の迅速化(3)自衛隊の国際平和協力業務の「本来任務」格上げ―などを盛り込んだ。

 政府は報告書を踏まえ、十一月末に新たな防衛計画大綱を策定。米中枢同時テロ後の安保環境の変化に対応する防衛政策の転換を図る。

 首相は懇談会で報告書を受け取り「さまざまな脅威にどう対応するか、機動的、柔軟に対応できるよう防衛力を整備しなければならない。報告書を参考に新大綱を策定したい」と述べた。

 「未来への安全保障・防衛力ビジョン」と題する報告書は、「国家からの脅威」だけでなく、テロや国際犯罪集団など「非国家主体」による新たな脅威への対処が必要だと指摘。安保戦略の目標に「日本防衛」と「国際的安保環境の改善」を掲げた。

 こうした観点から、日本への着上陸侵攻を想定した戦車を中心とする現行の自衛隊装備の再検討を提唱。自衛隊の国際平和協力を含む外交活動を求め、安全保障理事会常任理事国入りも重要としている。安保戦略の基盤として日米同盟の信頼性の向上も指摘。米軍再編問題には積極的に協議するとともに、対テロでの連携を想定した新たな「日米安保共同宣言」の策定も促した。

 武器輸出三原則は日米が共同技術研究を進める迎撃ミサイル部品を想定し、対米禁輸の緩和を提唱。一九五七年に策定した「国防の基本方針」は安保環境の激変を踏まえ、その考え方の一部を含む新大綱策定を求めた。

 「付記」で集団的自衛権行使に関する憲法論議に触れ、議論を早期に「整理」するよう求めた。

連合会長、「国際貢献」条文追加で憲法9条改正容認

2004/09/07 読売新聞 Yomiuri On-Line
 連合の笹森清会長は7日、都内で開かれた自動車総連の定期大会であいさつし、憲法9条について、「1項の戦争放棄の変更は認めない。(戦力を保持しないとした)2項については戦力を保持している(自衛隊の)現状を容認して(改正し、新たに設ける)3項で国際貢献に寄与するとの(条文を入れる)扱い方にするのがいいのではないか」と述べ、改正に前向きな考えを示した。

テロ、ゲリラ対応に重点  防衛庁予算概算要求

2004/09/01 The Sankei Shimbun
 防衛庁は31日、2005年度予算の概算要求を発表した。総額は4兆9335億円で、04年度比1・2%増。核・生物・化学(NBC)兵器攻撃に対応する新たな偵察車の開発に13億円、ゲリラや特殊部隊の侵入対処に381億円を計上するなど「新たな脅威」とされるテロ、ゲリラ戦への対応の充実を図った。

 昨年末に導入を閣議決定したミサイル防衛(MD)整備経費に1442億円(04年度1068億円)を計上。今年末に策定する新たな「防衛計画の大綱」で重点を置くMD防衛やテロ対応などの防衛力整備を先取りする内容となった。

 これに伴う主要装備削減の方針を踏まえ、海上自衛隊の主力である護衛艦の予算要求を自衛隊創設以来、初めて見送った。財務省は、約1兆円を要するとされるMD導入と引き換えに他の装備について厳しく査定する方針で、年末の予算編成まで防衛庁と財務省の攻防が激化しそうだ。

 戦車、火砲などの正面装備は371億円で、1986年に中期防衛力整備計画(中期防)が始まって以来、最低となった。MD関係では、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)整備のためのイージス艦改修や、06年度以降に実施予定のSM3発射試験の準備などに計315億円。地対空誘導ミサイル(PAC3)取得費など847億円を盛り込んだ。

 05年度末からの陸海空3自衛隊の統合運用に向け、統合幕僚会議に代わる統合幕僚監部(仮称)新設などのため8億円を計上。国際平和協力業務の訓練を行う国際活動教育隊(仮称)新設準備で21億円を盛り込んだ。

[武器輸出]「防衛大綱に明記すべき新原則」

2004/08/30 読売社説(1)Yomiuri On-Line
 新たな防衛計画大綱を検討する小泉首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」で、武器輸出三原則が重要な論点の一つになっている。

 「武器輸出は原則自由とし、特定のケースのみを禁止すべきだ」「米国とミサイル防衛(MD)の技術開発を進めることは、『死の商人』となることとは異なる」などと、三原則の見直しを求める意見が出ているという。

 武器輸出三原則は、一九六七年の佐藤内閣当時、共産圏諸国、国連決議での武器輸出禁止国、国際紛争当事国と、そのおそれのある国を対象に定められた。三木内閣当時の七六年には政府統一見解によって、事実上、全面禁輸となった。

 見直し機運が高まっているのは、日米で進めているMDの共同技術開発に支障をきたすからだ。

 政府は、中曽根内閣当時の八三年、米国への武器技術の供与を、武器輸出三原則の例外扱いとした。だが、今後、MDが研究段階から生産段階に移行する時点で、米国に対して技術だけではなく、部品を輸出する必要が生じる。

 三原則の下では、それが不可能だ。米国から欧州諸国などへMDの輸出もできず、日米共同開発の障害ともなる。

 冷戦後の防衛力整備は、各国が資本や技術を持ち寄る共同開発・生産が世界的な流れになっている。しかも、軍事革命(RMA)といわれるほど、軍事技術が急速に進展している。

 現在の三原則では、他国との連携が制約され、技術の開発で後れを取ってしまう。独自の開発では、過大なコストを強いられる。現状のままでは、日本の安全保障に深刻な事態を招きかねない。

 民主党などには、三原則見直し反対論もある。日本が「平和国家」としての外交力を失う、という理由からだ。

 三原則を見直すに当たって、国際紛争の助長を回避する、という基本理念を堅持するのは、当然だ。見直しはあくまで共同開発が目的だ。「武器輸出大国」や「死の商人」を目指すものではない。

 議論のたたき台はある。

 自民党の国防部会は、三原則の見直しを提言し、「国連決議などによりテロ支援国または人権侵害国とされた国、国際紛争の発生地域などへの武器輸出を認めない」などという新たな原則を掲げている。事実上、佐藤内閣当時の三原則に戻すように求めたもの、と言っていい。

 懇談会は、九月末にも、報告書をまとめ、首相に提出する。年内に策定される新防衛大綱には、三原則に代わる新たな武器輸出原則を盛り込むよう、政府内の調整を急ぐべきだ。

開発・調達を一元化、防衛庁が「装備庁」新設を検討

2004/08/28 読売新聞 Yomiuri On-Line
 防衛庁は27日、武器など装備品の研究開発や調達を一元的に行うため、外局となる「装備庁」(仮称)を新設する方向で検討に入った。

 石破防衛長官が防衛庁の体制見直しを指示したことを受けたものだ。防衛施設庁を廃止して在日米軍基地周辺対策などの機能を防衛庁内局に移し、「施設局」(仮称)などを置くことも計画している。いずれも、2006年度末の実現を目指す。

 装備品調達については、1998年の背任・汚職事件を機に、旧調達実施本部を解体し、契約部門と原価計算部門を分離した。防衛庁内では「かえって効率が悪くなった」との指摘が出ている。

 このため、防衛庁は不祥事の再発防止策を十分に講じた上で、研究開発も含めた一元的な業務ができる組織を目指すことにした。

 「装備庁」では、契約、原価計算両部門の事務に加え、自衛隊の装備品の研究・開発を行っている技術研究本部も統合し、装備品の研究・開発から調達までを一貫して管理することを検討している。

 防衛施設庁は現在、自衛隊や在日米軍基地の土地、施設の管理、基地周辺対策などを行っている。定員は2004年度末で3122人で、防衛庁内局の855人を大幅に上回っている。

 施設庁を廃止して機能を内局などに移すことで、施設庁内に固定されがちだった人材を防衛庁全体で活用することを狙っている。ただ、防衛施設庁内には、「施設庁の業務が縮小されるのではないか」との懸念もある。

 このほか、防衛庁は、〈1〉運用局を廃止し、一部業務を2005年度末に発足する統合幕僚監部(仮称)に移す〈2〉管理局を「計画局」(仮称)に改組し、分散していた予算編成や防衛力整備計画の立案機能を集約する――なども検討している。

 ◆調達実施本部背任・汚職事件=旧調達実施本部の幹部が、過大請求を行った防衛装備品納入業者の返納額を不正に減額し、見返りにわいろを受け取った事件。防衛庁の組織的な証拠隠滅も発覚し、額賀防衛長官(当時)の辞任に発展した。

自衛隊と在日米軍、基地共同使用を拡大…嘉手納や横田

2004/08/22 読売新聞 Yomiuri On-Line
 日米両政府は、米軍の変革・再編(トランスフォーメーション)に伴う在日米軍再編に関連し、自衛隊と在日米軍が共同使用する基地を増やすことを検討している。複数の日米政府筋が21日明らかにした。

 航空自衛隊が米空軍嘉手納基地(沖縄)を使用することや、空自航空総隊司令部(東京・府中市)の米空軍横田基地(東京・福生市など)への移設などが具体的な案として挙がっている。基地の共同使用を強化することで、部隊の相互運用性を高めるのが狙いだ。

 自衛隊と在日米軍の基地共同使用は、三沢基地(青森)を空自と米空軍が共同使用しているほか、米海兵隊が東富士演習場(静岡)や矢臼別演習場(北海道)などで陸上自衛隊と共同訓練を実施している。

 共同使用する基地を増やすことにしたのは、有事の際に日米が迅速に連携して行動するため、平時から連携を強化する必要があると判断したためだ。また、米側にとっては、基地を共同使用することで維持費を日本側にも負担させることが可能となり、在日米軍の駐留経費を軽減することができるとの判断も働いているとみられる。

 米空軍嘉手納基地を空自部隊が使用する案は、空自の那覇基地が民間機と共同使用で運航スケジュールが過密なため、訓練時間が十分とれないことも理由となっている。空自の一部機能を那覇基地から嘉手納基地に移転することも検討している。沖縄は、中国と台湾に近いことから、対空防衛の拠点として比重が高まっており、日米両政府の協議では、宮古諸島の下地島を日米共同訓練場として使う案も出ている。

 空自航空総隊司令部の米空軍横田基地への移設は、司令部施設の老朽化が激しいうえに、横田基地の滑走路を使用できる利点があることから、自衛隊側も移転に前向きだ。

 このほか、陸自の東富士演習場、矢臼別演習場などで米海兵隊、米陸軍の実弾砲撃演習を増やすことも挙がっている。ただ、自衛隊の演習場は、現在でも訓練日程が過密なうえに、基地の共同使用が実現すれば、周辺住民への負担が増加することも予想される。

空自基地テロ対策 防衛専門部隊新設へ 200人体制、軽装甲車装備

2004/08/21 The Sankei Shimbun
 防衛庁は二十一日、テロやゲリラから航空自衛隊の基地を守る専門部隊として、空自に「基地防衛教導隊」(仮称)を新設する方針を固めた。基地や航空機が陸上から攻撃される事態に機動的に派遣し、平時には基地の警備要員を指導して警備能力の向上を図る。

 平成十八年度に新設に向けた準備室を設置、二十年度に部隊を発足させる方針。部隊の規模は約二百人体制になる見通しで、部隊を指揮する隊司令も置く。

 新たな装備として軽装甲機動車、軽機関銃を配備する。軽装甲機動車は陸上自衛隊部隊などに配備され、軽対戦車誘導弾の車上射撃が可能。特殊部隊によるテロ攻撃などの危険性を踏まえ、空自として対処能力を強化する。

 空自の基地は全国に七十二あり、基地防衛では各基地ごとに約四十人の警備小隊を置いている。しかし、「特殊部隊の基地侵入や滑走路が破壊されるようなテロやゲリラの攻撃には、現状では装備、技術の両面で対応できない」(防衛庁幹部)という。

 実際の有事の際の基地防衛の流れは、初動は基地の警備小隊が対処、その後に陸自の支援を受けられるまでの間、基地防衛教導隊が展開して敵の攻撃を阻止する。

 一方、空自はミサイル防衛(MD)で高速飛行の弾道ミサイルを捕捉できる新型警戒管制レーダーの導入を目指しているが、レーダーサイトが攻撃される危険性も高く、基地防衛教導隊はサイトの防衛についても研究に着手する。

 通常のレーダーサイトは攻撃を受けても、E−2CやAWACSといった早期警戒機が代替機能を果たすが、政府が二十年度から四基の配備を目指している地上配備型の新型警戒管制レーダー「FPS−XX」が破壊されれば代替手段がなく、弾道ミサイルに対する迎撃能力が失われてしまうためだ。

 このほか、空自は基地内で爆弾などによる攻撃から航空機を守るシェルターの「掩体(えんたい)」についても、テロやゲリラの攻撃に対応できるものに切り替えるなど、整備計画を見直す方針だ。

陸自、第3次派遣部隊が青森出発 イラクで多国籍軍に参加

2004/08/09 The Sankei Shimbun
 陸上自衛隊の「第3次イラク復興支援群」の第1陣約140人が8日、政府専用機で青森空港からイラクへ向け出発した。戦闘が続く同国で多国籍軍に加わる。

 第3次部隊は、青森、岩手、秋田の3県に駐屯する第9師団(司令部青森市)を中心に約500人で編成、第11師団(同札幌市)を主軸とする第2次部隊から約30人の増員となる。

 陸自関係者によると、第1陣はまず経由地クウェートに入り、約1週間訓練をする。その後、イラク南部サマワの宿営地に向かい、第2次部隊から任務を引き継ぐ。第2陣約230人が15日、3陣約130人が23日に出発する予定。

 出発に先立ち8日、青森駐屯地で隊旗授与式が行われた。石破茂防衛庁長官が訓示で派遣の目的として(1)国益実現(2)国際社会での役割(3)支援の期待に応える(4)日米の信頼向上−を挙げ「達成できる組織は君たちのほかにない」と述べ、第三次部隊を指揮する松村五郎群長(秋田駐屯地司令、1等陸佐)に隊旗を手渡した。先崎一陸上幕僚長(陸将)も隊員らを激励した。

F2戦闘機、調達中止へ…高価で性能不足

2004/08/08 読売新聞 Yomiuri On-Line
 防衛庁は7日、航空自衛隊のF2支援戦闘機の調達を2、3年以内に中止する方針を固めた。

 戦闘機の体制見直しの一環で、今年末までに策定される中期防衛力整備計画に盛り込む。高価格とそれに比べての性能不足があり、早期に別の後継機選定に着手するべきだと判断した。

 F2は、1980年代に「FSX」(次期支援戦闘機)の国産を目指す日本側と米国機の導入を求める米側の間で政治問題に発展した末、日米共同開発されたが、計画の130機を達成しないうちに、配備が中断されることになる。戦闘機のような主要な装備品が、導入計画を大きく下回ったまま調達中止となるのは極めて異例だ。

 防衛庁は、今年末までの新防衛大綱策定に向け、将来の戦闘機体制について、航空機を迎え撃つ迎撃戦闘機、対地・対艦攻撃を行う支援戦闘機の区分をなくし、偵察任務まで含めた多目的戦闘機化を進めるとの方針を固めている。また、現在の3機種体制(F15、F4、F2)から2機種体制に移行することにしている。

 こうした方針に基づき検討を進めた結果、〈1〉F2は開発の遅れなどで1機当たりの価格は当初予定していた約80億円から、主力戦闘機のF15と同等の約120億円に増加した〈2〉F15が近代化改修で性能向上を図っているのに対し、F2は機体が小さく性能向上の余地が少ない〈3〉F2はミサイルなどの装備数にも限界がある――ことなどからF2の調達を中止し、今後除籍が進むF4戦闘機の後継機選定に早期に着手すべきだと判断した。

 F2の導入機数は、95年の安全保障会議で130機に決定し閣議で了解されている。しかし、配備・契約済みの76機に加え、来年度以降、10機から20機程度を新たに契約して調達を終えることになった。

 F2は、国産のF1支援戦闘機の後継機として、1985年に策定された中期防に導入方針が盛り込まれた。機種選定では、国産を目指す日本側と、貿易赤字を理由に米国機の導入を求める米側が衝突。87年に、日本側が折れる形で、米国のF16戦闘機を母体として共同開発することになった。

 こうした経緯から、F2には開発だけでなく生産にも米国企業が関与している。このため、調達中止で米国企業への影響が出ることは避けられず、米国からの反発も予想される。これについて、防衛庁関係者は「F2単独ではなく、他の防衛装備品の導入を含めてトータルで理解を求めていく」と話しており、今後の新戦闘機の機種選定や、無人偵察機の導入なども関連させながら、米国と対応を協議していく方針だ。

 ◆戦闘機体制=航空自衛隊の戦闘機は、航空機を迎え撃つ迎撃(要撃)戦闘機と、地上や海上の目標を攻撃する支援戦闘機に分かれている。今年3月末時点で、迎撃戦闘機としてF15を203機、F4を92機、支援戦闘機としてF2を49機、F1を23機保有している。

新防衛大綱:護衛艦や戦車削減、ミサイル防衛に予算配分

2004年08月02日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 今年末の「防衛計画の大綱」(防衛大綱)改定に向けて、防衛庁に設置された「防衛力のあり方検討会議」は1日、主要装備の削減など防衛力整備の中間案をまとめた。海上自衛隊は護衛艦や固定翼哨戒機などを現行から1割、航空自衛隊も1割の主要整備を削減し、陸上自衛隊は95年の現大綱で示した目標数値(防衛大綱別表)ベースから2〜3割を削減する。これに伴い、同庁は05年度予算概算要求で海自の護衛艦について54年の海自創設以来初めて1隻も予算要求しない方針。テロ、大量破壊兵器、弾道ミサイルなどに対応するため、冷戦対応型装備からの脱却を図り、ミサイル防衛(MD)導入や機動性を重視した防衛力整備を目指している。

 「あり方検討会議」のまとめた中間案は、昨年12月のMD導入の際の閣議決定に沿った形で、陸海空自衛隊の主要整備削減を打ち出している。MDは約1兆円かかると見込まれ、その分を各自衛隊の装備削減で補うことになる。

 中間案によると、海自は護衛艦が現行(04年3月末現在)の54隻から48隻に、固定翼哨戒機は80機から72機に削減し、潜水艦16隻、補給艦5隻は維持する。護衛艦は79年度予算で4隻要求したのが最も多く、99年度からは毎年1隻ずつ要求。03年度はイージス艦1365億円、04年度はヘリ搭載護衛艦1057億円の調達が認められた。

 空自は作戦用航空機(約400機)の1割程度を削減するほか、戦闘機は迎撃、対地攻撃、偵察などの対応できるように多用途化し、F15、F2、F4の3機種を2機種にする。

 陸自は主要装備のうち、戦車が別表ベースの約900両(現行約1000両)から約600両に、火砲は約900門・両(現行約1000門・両)から約700門・両に削減。陸自の編成定数16万人は維持、機動運用部隊や特殊作戦群などを中央で運用し、各地の支援を行う「中央即応集団」創設を検討している。

 「あり方検討会議」は、国連平和維持活動(PKO)や多国籍軍参加を念頭に、国際貢献を自衛隊法の「付随的な任務から本来任務」へ格上げする方向だ。【南恵太】

◆検討状況の骨子

・陸海空自衛隊の主要装備削減

・国際的活動の自衛隊法上の本来任務への格上げ

・陸上自衛隊の編成定数16万人の維持

・「中央即応集団」の創設

・武器輸出三原則の見直し

・大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)への積極参加

新防衛大綱:テロへの即応性に重点 米軍と一体化懸念も

2004年08月02日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE
 「存在する自衛隊から機能する自衛隊」(石破茂防衛庁長官)を目指し、年末の「防衛計画の大綱」(防衛大綱)改定に向けた作業が進んでいる。防衛庁の「防衛力のあり方検討会議」がまとめた中間案は、陸海空自衛隊の冷戦対応型装備を転換し、テロや大量破壊兵器への対処を念頭に即応性・機動性のある防衛力整備を目指している。国際貢献の必要性など日本の安全保障を取り巻く環境の変化に伴うものだが、その一方、日米で共同研究するミサイル防衛(MD)などで米軍と自衛隊の情報一体化が強まる懸念も指摘される。【南恵太】

 「何のために、どういう性能で、どこに置くかを検証し、可能な限り国民に説明しないといけない」。石破防衛庁長官は先月28日、防衛力整備についてこう説明した。「防衛力のあり方検討会議」が設置されたのは01年9月で、防衛庁幹部は「3年近くやってきて、だいぶ時間を使った」と振り返る。「あり方検討会議」では、石破長官が陸海空の各自衛隊に「テロ、ゲリラへの対応の具体策は」など実務的な質問を数多く投げかけ、そのやりとりに時間が多くとられたという。

 防衛大綱は95年に現大綱が策定され、自衛隊の「合理化」「効率化」「コンパクト化」を目指してきた。大綱を改定するのは、01年の米同時多発テロなどが起き、テロ・ゲリラや大量破壊兵器などの「新たな脅威」への対応が必要になってきたためと、冷戦時代に想定された北海道への本格的侵攻のような事態が起こる可能性が低くなってきたためだ。さらに自衛隊のイラク派遣など国際貢献の重要性が増していることや、科学技術の進歩を軍事に取り入れる軍事革命(RMA)を米軍が進めていることも背景にある。

 陸海空3自衛隊は05年度末の統合幕僚長を長とする統合幕僚組織の設置など統合運用への対応を進めている。しかし今後の防衛力は、MD導入などに伴い米軍との情報ネットワーク化は不可避。「憲法で禁じる集団的自衛権行使に踏む可能性が強まる」(民主党議員)との指摘も出ている。

◇MD導入で装備削減やむなし

 「削減ありきで進むのはある程度やむを得ない」。約1兆円にのぼる巨額のMD導入に伴う陸海空自衛隊の主要装備の予算削減について、防衛庁幹部はこう語った。ただ陸自の戦車、火砲の削減について「本格的侵攻に対応するための装備はすぐに整備はできないし、伝統的脅威への対応やゲリラなどへの対応は人数が必要だ」(制服組幹部)との意見もくすぶる。

 各自衛隊内にはそれぞれ装備削減に不満があるものの「統合運用による対応や新たな脅威などへの対応など、優先順位を総合的に考えざるを得ない」(幹部)として「あり方検討会議」の議論は進んできた。

 中間案では国際貢献の本来任務への格上げが示されたが、これは91年にペルシャ湾に掃海艇を派遣して以来、国連平和維持活動(PKO)など自衛隊の海外派遣が増え続けていることを踏まえ、「法的にも位置づけ、予算も配分する必要がある」(幹部)という背景がある。

 「あり方検討会議」では、文官(背広組)による自衛官(制服組)への統制を認めた「防衛参事官制度」をめぐる議論もあった。制服組が廃止を求めたのに対し、背広組が反対するなど背広組と制服組の対立という構図も浮き彫りになり、石破長官が議論を預かる緊迫した場面もあった。

◇武器三原則見直しで一致

 一方、4月に発足した小泉純一郎首相の諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・荒木浩東京電力顧問)は9月中に報告書をまとめる方向で議論を進めている。

 これまでの論議で、武器輸出三原則については「ミサイル防衛を米国との間で進めたり、米国以外の国と共同で装備の開発を進めることは死の商人になることとは異なる」「76年の三木内閣当時の統一見解による全面禁止は不合理だ」などの意見が出され、見直しを求めることで一致した。

 三原則は67年、当時の佐藤栄作首相が表明したもので(1)共産圏(2)国連決議による武器輸出三原則禁止措置の対象国(3)国際紛争の当事国とそのおそれのある国−−への武器輸出を認めないとの内容だったが、76年には三木武夫首相がその他の国や部品などに広げ、全面禁止の措置をとった。この政府統一見解の見直しを求めている。

 防衛力の基本的考え方について、現大綱が採用している「必要最小限度の基盤的な防衛力を保有する」とした「基盤的防衛力構想」について見直しで大筋は一致しているが、同構想の考え方を残しつつ「どういう役割、機能を与えるか」との意見もある。

 これまで7回の議論で(1)安全保障と防衛力の基本的考え方(2)脅威認識(3)自衛隊の任務・体制(4)国際平和協力−−など11項目について論点整理をしている。

◆新旧防衛大綱の要点

 ▽前防衛大綱(76年10月)

・米ソ冷戦構造の下、米中ソの一種の地域的な安定均衡及び日米安全保障体制を前提にして、「軍事的脅威に直接に対抗するよりも、自らが力の空白となってわが国周辺地域における不安定要因とならないよう、必要最小限度の防衛力を保有する」とした「基盤的防衛力」を取り入れて策定。

 ▽現防衛大綱(95年11月)

・基盤的防衛力構想は基本的に引き続き踏襲し、保有すべき防衛力は、合理化・効率化・コンパクト化、必要な機能の充実と質的な向上をはかる。

 ▽新防衛大綱の課題(年末)

・新たな安全保障の環境に対応した防衛構想のあり方

・既存の組織・装備等の抜本的見直し

・国際社会の平和と安定の取り組み(国際的活動の自衛隊法での位置づけ)

・武器輸出三原則の見直し

・危機管理全般における内閣官房と防衛庁の連携強化

自衛隊、国際待機部隊を新設 18年度めど

2004/08/01 The Sankei Shimbun
 自衛隊の海外派遣体制を抜本的に強化する防衛庁の再編構想案が31日、明らかになった。国連平和維持活動(PKO)への参加など自衛隊の海外派遣を迅速化するため、「PKOセンター」と国連平和維持隊(PKF)本体業務を行う「普通科大隊(PKF大隊)」などで構成する「国際任務待機部隊」を平成18年度中にも編成する。再編が実現すれば、1300人規模の部隊を世界の2カ所に同時期に派遣することも可能となり、自衛隊の海外派遣体制は格段に強化される。

 この構想案は、年末にまとめる新防衛大綱策定に伴って自衛隊の国際活動が自衛隊法上の「本来活動」へ格上げされることが確実になったため、まとめられた。国際任務待機部隊は、陸上自衛隊に新設が検討されている防衛庁長官直轄の中央即応集団に置かれる。

 PKF大隊は1個大隊約900人で、治安維持や停戦監視など、これまで自衛隊が手がけてこなかったPKF本体業務を行うための部隊。

 同大隊とは別に、施設建設、給水などを行う「後方支援部隊」を編成、人道復興支援活動への取り組みも強化する。施設(工兵)大隊、衛生隊などのほか、ヘリ飛行隊も保有する方針。

 このほか、国際任務待機部隊に派遣される要員の教育や部隊編成を指導する目的で、「PKOセンター」(緊急展開教育隊)の設置を検討している。同センターは、既存施設を活用するため北富士駐屯地(山梨県)内か周辺に新設する方向だ。

 PKF大隊、後方支援部隊とも、陸上自衛隊の各方面隊が持ち回り方式で要員を派遣するシステムを構築する。

 防衛庁はPKF大隊と後方支援部隊の合同部隊(1300人)も編成し、世界の2カ所へ同時期に派遣することも想定、派遣人員は最大で2600人となる。

 陸上自衛隊が海外派遣の強化へ向けて常設の専門部隊ではなく、各方面隊から要員を派遣する待機部隊を編成することにしたのは、定員増が難しい中で、「ゲリラ対処など新たな国内任務が増える」(防衛庁筋)一方で、「海外派遣は約3カ月での交代が必要で、結局は方面隊の兵力提供が必要」(同)なためだ。

 ただ、国際平和協力法ではPKO派遣要員を「2000人を超えない」(第18条)と規定、PKF参加にも「停戦合意」など5原則を要件としていることから、同構想が実現するには、同法改正か海外派遣恒久法など法的整備が必要になる。

                  ◇

 ≪中央即応集団≫新防衛大綱策定に伴って新設が検討されている防衛庁長官の直轄部隊。司令部を朝霞駐屯地(東京都練馬区)に置き、国際任務待機部隊のほか、テロ・ゲリラなどに迅速に対処する特殊作戦群や緊急即応連隊、空挺(くうてい)団などの機動部隊で編成し、4000−5000人の規模を想定。

 ≪PKF本体業務≫PKO参加国の軍で構成する「平和維持隊」任務のうち、停戦監視、武装解除の履行監視、緩衝地帯の巡回、放棄された武器の処分−などを指す。平成4年成立の国際平和協力法はPKF本体業務の参加を凍結したが、13年の改正で解除。法律上、PKF本体業務に従事できるようになったが、実践例はない。

大量破壊兵器阻止、10月にも日本近海で合同訓練

2004/07/26 読売新聞 Yomiuri On-Line
 政府は今年10月にも、大量破壊兵器拡散阻止構想(PSI)に基づく海上阻止訓練を日本近海で開く方針を固めた。PSIに加盟する米英露豪など15か国に加え、東南アジア諸国連合(ASEAN)などに参加を呼びかける予定だ。

 8月5、6両日、ノルウェーのオスロで開かれるPSI専門家会合で提案する。

 PSIは昨年9月に豪州沖で海上阻止訓練が行われて以来、世界各地で訓練が行われているが、日本での開催は初めて。現在、訓練のシナリオを検討している。訓練には、海上保安庁のほか、従来はオブザーバー参加にとどまっていた海上自衛隊も初めて艦船を参加させる方向で調整している。

 PSIについては、6月に開かれた主要国首脳会議(シーアイランド・サミット)でも、核・生物・化学兵器の拡散防止策の柱として、強化・推進する方針を確認している。

防衛庁、敵基地攻撃能力の保有検討 巡航ミサイルなど

2004/07/26 asahi.com
 今年末に政府が策定する新たな「防衛計画大綱」に向け、防衛庁が他国の弾道ミサイル発射基地などをたたく「敵基地攻撃能力」の保有を検討していることが25日わかった。日本の防衛政策は憲法との整合性から専守防衛を基本理念とし、他国の基地を攻撃する能力のある装備は持たず、攻撃は米軍に委ねる立場を堅持してきた。この方針から逸脱する恐れがあるうえ、政府内にも「アジア各国に脅威を与え、外交上問題となる」(関係者)との慎重論は根強く、今後、波紋を広げそうだ。

 防衛計画大綱は長期的な防衛方針や防衛力整備の全体像を示すもの。敵基地攻撃能力保有の検討は、新大綱策定に向けて防衛庁内に設置された「防衛力のあり方検討会議」(議長・石破防衛庁長官)で進められている。同会議が最近まとめた論点整理では、弾道ミサイルに対処するための敵基地攻撃について「引き続き米軍に委ねつつ、日本も侵略事態の未然防止のため、能力の保有を検討する」とした。

 具体的には、昨年に政府が導入を決めた精密誘導爆弾を敵基地攻撃にも使用するほか、対艦ミサイルを改良して陸上攻撃もできるようにした米軍の「ハープーン2」(射程200キロ超)や、巡航ミサイル「トマホーク」(射程2000キロ前後)、軽空母の導入が検討対象になっている。

 敵基地攻撃能力の保有は、石破防衛庁長官が昨年3月、「検討に値する」と国会で答弁し、従来の政府方針の転換をにじませた。だが、その直後、小泉首相が「政府としてそういう考えはない。日本は専守防衛に徹する」と打ち消した経緯がある。

 憲法との整合性については、「(誘導弾攻撃を)防衛するため、ほかに手段がない場合、敵基地をたたくことは自衛の範囲内で可能」とした56年の政府統一見解があるものの、「他国に攻撃的な脅威を与える兵器を持つのは憲法の趣旨ではない」(59年の伊能防衛庁長官答弁)との考えから、日本は敵地を直接攻撃できる装備を持ってこなかった。

 政府内には「トマホークなどを持てば北東アジアに脅威を与え、外交上の問題を引き起こしかねない」(政府関係者)との懸念があるほか、防衛庁内にも「トマホークや軽空母は、専守防衛というより、敵国を攻撃するための装備。保有する理屈がつかない」などと否定的な見方もある。

 防衛庁側は、この「あり方検討会議」の論点整理を、新大綱策定のたたき台と位置づけている。だが、新大綱に向けてつくられた首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」では敵基地攻撃が大きな焦点になっておらず、この問題がどのように扱われるかは不透明だ。

 〈敵基地攻撃能力〉 弾道ミサイルの発射基地など敵の基地をたたく装備能力のこと。「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)に「米軍は必要に応じ打撃力を有する部隊の使用を考慮する」との取り決めがあり、相手基地への攻撃は原則として米軍に委ねるとしている。日本が独自に攻撃することは専守防衛に照らし、自衛権の範囲内であれば可能というのが政府の見解だが、従来そうした装備は持ってこなかった。敵基地を攻撃するには誘導ミサイルだけでなく、正確な位置情報や、敵の地上レーダーを無力化する装備なども必要とされる。

多国籍軍初参加を閣議決定 政府が基本計画変更

2004/06/18 中国新聞ニュース
 政府は十八日午前の閣議で、イラク主権移譲後に編成される多国籍軍に自衛隊を参加させるため、イラク復興支援特別措置法の施行令改正と、自衛隊派遣の基本計画の変更を決定する。

 同時に自衛隊が多国籍軍の指揮下に入らず主体的に人道復興支援活動を行うことを明確にすることなどを盛り込んだ「政府見解」も閣議了解する予定だ。

 自衛隊が多国籍軍に参加するのは初めて。小泉純一郎首相の説明や、九条との関係などの憲法論議が不十分との批判が出ている中で、「戦時」派遣の自衛隊活動は新たな段階に入った。

 政府は、これまでイラクで行ってきた給水や公共施設の復旧など人道復興支援活動を継続すると強調している。ただ、治安維持に当たる米兵の輸送など「安全確保支援活動」も継続するとしており、多国籍軍内での自衛隊活動の線引きにあいまいさが残っており、今後の課題となりそうだ。

 自衛隊の活動継続について小泉首相は十七日の記者会見で、現行のイラク復興支援特別措置法の枠内で「人道復興支援活動」を継続する考えを表明。@自衛隊は武力行使は行わないA活動は非戦闘地域に限るBイラク特措法の枠内C活動は日本の指揮下にある―との四原則を守り、「日本にふさわしい活動をする」と表明した。

 政府は多国籍軍参加について現行のイラク復興支援特別措置法の改正は必要ないとの立場で、関係政令の改正を行うことにした。

多国籍軍参加は人道支援 首相が記者会見

2004/06/17 中国新聞ニュース
 小泉純一郎首相は十七日午後、通常国会閉幕を受け官邸で記者会見し、イラク主権移譲後に編成される多国籍軍に自衛隊も参加してイラク復興支援特別措置法の枠内で人道復興支援活動を継続する考えを表明した。首相は「人道復興支援に限定する」と述べる一方で、航空自衛隊による米兵輸送などの「安全確保支援活動」も続けることを明らかにした。

 首相は自民、公明、民主の三党合意に基づき、年金、医療など社会保障制度全体の見直しに関する与野党の協議機関を早急にスタートさせたいとの意向を示した。協議で社会保障財源として消費税率引き上げ問題も議論するものの、二○○六年九月までの首相在任中は引き上げる考えのないことを強調した。

 北朝鮮による拉致被害者、曽我ひとみさんの家族再会問題では「できるだけ早く、じっくり話し合える環境をつくっていかなければならない」と早期実現を目指す方針を示した。

 首相は多国籍軍の活動について、人道復興支援が含まれていると指摘。(1)武力行使は行わない(2)非戦闘地域に限る(3)現在のイラク特措法の枠内(4)自衛隊の活動は日本の指揮下―の四点を守り、「日本にふさわしい人道復興支援活動を行う」と述べた。

 社会保障制度の見直しでは、政府として経済界、労働界の代表を加えた協議機関の設置に向け、細田博之官房長官に人選を進めるよう指示していると説明した。

多国籍軍参加に関する見解概要を提出 政府

2004/06/16 The Sankei Shimbun
 政府は16日午前、主権移譲後のイラクで展開する多国籍軍参加に関する見解の概要を衆院イラク復興支援特別委員会の理事会に提示した。

 15日に自民、公明両党に示した概要に、多国籍軍に参加する理由を追記。イラク暫定政権から自衛隊の受け入れ同意や法的地位に関する合意を得ることは、同政権が「発足したばかりであることなど種々の不確実要素から事実上不可能」であるため、「新たな多国籍軍の中で同意を取り付け、法的地位を確保することが必要」と説明した。

 多国籍軍として活動しても「新たな任務は追加されない」との一文も加えた。

 理事会には多国籍軍参加方針を受けて18日に閣議決定するイラク復興支援特別措置法施行令と基本計画の改正案も示された。

 これに関連して細田博之官房長官は16日午前の記者会見で、多国籍軍参加に関する議論が不十分との指摘に対し「国会終了後に党首討論も行われる。その中でよく議論していけばいい」と述べ、参院選に向けた討論会などを通じて理解を求めたい意向を示した。

与党が多国籍軍参加で調整 18日にも閣議決定

2004/06/14 The Sankei Shimbun
 小泉純一郎首相は14日、官邸で開いた政府与党連絡会議で「イラクで引き続き人道復興支援をしたい」と述べ、イラク主権移譲後の多国籍軍に自衛隊を参加させる方針に理解を求めた。

 公明党の神崎武法代表はイラク支援に同調した上で、自衛隊の活動について(1)わが国の指揮権を維持(2)戦闘地域で活動しない(3)イラク復興支援特別措置法の枠内で活動(4)武力行使と一体化しない−と4項目の条件を挙げ、首相もこれを確認した。

 自民、公明両党は15日に幹事長、政調会長会談を開き、細田博之官房長官から多国籍軍への参加について具体的な説明を受ける。政府は両党の党内手続きを踏まえ、18日にも閣議決定する構えだ。

 自民、公明両党の執行部は人道復興支援に限定した活動の継続を前提に多国籍軍参加を容認する見通しだ。しかし、首相が国内論議に先立って主要国首脳会議(シーアイランド・サミット)でブッシュ米大統領に多国籍軍参加を事実上表明したことに批判的な見方のほか「納得のいく法的な措置が必要だ」(古賀誠元自民党幹事長)と慎重論も出ている。

 野党は多国籍軍への参加に強く反対しているが、政府は多国籍軍に参加しても「枠組みの変更であり、活動はこれまでと変わらない」(政府筋)として、イラク復興支援特別措置法の派遣根拠に新たな国連安保理決議1546を政令で加える閣議決定で済ませる方針だ。

有事関連7法が成立

2004/06/14 中国新聞ニュース
 外国から武力攻撃を受けたり、攻撃が予測される際の国や自治体による国民の保護や、自衛隊と米軍との協力の在り方を定めた国民保護法など有事関連七法は十四日午後の参院本会議で、自民、民主、公明三党などの賛成多数で可決、成立した。国際貢献活動を行う自衛隊と米軍の協力を強化した改正日米物品役務相互提供協定(ACSA)など三条約も承認された。昨年成立の武力攻撃事態法などと合わせ、現行の憲法九条を前提とした日本有事に備える基本的な法体系がほぼ整った。国民保護法は、大規模テロにも適用される。

 今回成立したのは、国民保護法のほか、米軍に対する役務、物品提供を行う米軍行動円滑化法と改正自衛隊法、敵国に武器などを輸送している疑いがある船舶への「臨検」や船体射撃を可能とする外国軍用品海上輸送規制法など。

 国民保護法は、住民の避難や救援のため、国、自治体、公共機関の役割を規定。国民の自発的な協力を盛り込み、救援のための民有地や家屋の使用、食品や医薬品などの物資保管について知事の強制権を認め、違反者には罰則も科す。米軍活動円滑化法は、日本有事で活動する米軍に弾薬や民有地を提供することも明記した。

 自民、公明、民主三党は衆院段階で国民保護法案を共同修正。大規模テロなどの「緊急対処事態」を日本有事と同等の扱いとし、認定などに国会の事後承認規定を入れた。有事を想定した国と自治体の共同訓練の費用を原則国の負担とすることなども加えた。

 このほか、空港や港湾、電波の利用に自衛隊や米軍の優先権を認める特定公共施設利用法、国際条約順守のための捕虜取り扱い法、重要文化財破壊や捕虜送還遅延に刑罰を科す非人道的行為処罰法も成立した。

 与党と民主党は来年の通常国会で、緊急事態における(1)適切な国会の関与(2)効果的に対処するための組織整備―などを盛り込んだ「緊急事態基本法」(仮称)を制定させることで合意している。

独自判断で撤退も可能 多国籍軍参加で安倍幹事長

2004/06/13 The Sankei Shimbun
 与野党の幹事長らは十三日、NHKや民放のテレビ討論番組にそろって出演し、イラク主権移譲後の多国籍軍への自衛隊参加をめぐり論戦を交わした。

 自民党の安倍晋三幹事長は、自衛隊の指揮権について「(多国籍軍に参加しても)小泉純一郎首相の指揮命令系統の中に入っている」と述べ、不測の場合は日本独自の判断で撤退できると強調した。

 これに対し、民主党の藤井裕久幹事長は「多国籍軍の統一指揮の下に入るので、(自衛隊が)ここだけやる、やらないというのはあり得ない」として、日本の指揮権は及ばないとの認識を示した。

 安倍氏は、イラク復興支援特別措置法の派遣根拠に、新たな国連安保理決議一五四六を政令で加える閣議決定で多国籍軍への参加は可能との考えを表明。藤井氏は「(現行法の)延長線上でずるずる入っていくことはよくない」と反対の立場を強調した。

 多国籍軍への参加について、公明党の冬柴鉄三幹事長は「武力行使を伴わないとの担保があればいい」と容認する姿勢を示した。共産党の市田忠義書記局長は「イラク特措法自体が憲法違反だ」と述べ、社民党の又市征治幹事長も「国会で堂々と議論して国民に問うべき課題だ」と、政府、与党の対応を批判した。

自衛隊の多国籍軍参加、来週中にも正式決定

2004/06/09 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【サバンナ(米ジョージア州)=五十嵐文】小泉首相が8日の日米首脳会談で、イラクに展開する多国籍軍に自衛隊を参加させる方針を事実上表明したことを踏まえ、政府は来週中にも参加を正式決定する予定だ。

 多国籍軍をめぐる議論を整理し、官房長官談話を発表することなどを検討している。自衛隊の活動の枠組みが変わっても、活動内容は変わらないことなどを説明し、国民の理解を得たい考えだ。

 政府は、多国籍軍への自衛隊の参加について「憲法とイラク復興支援特別措置法の範囲内の活動を継続する限り、法改正や基本計画の変更などは必要ない」(外務省幹部)としている。ただ、新たな国連安全保障理事会決議1546の採択を受け、イラク特措法施行令に新決議を追加することを閣議決定する予定だ。

 政府・与党内には、閣議決定に合わせて「首相や官房長官がきちんと国民に説明すべきだ」(自民党幹部)との意見が少なくない。多国籍軍については、湾岸戦争時のイメージが強く、「自衛隊の海外活動がなし崩し的に拡大するのではないか、との国民の誤解を払しょくする必要がある」(自民党幹部)ためだ。

 国連決議に基づく多国籍軍の編成は、91年の湾岸戦争に始まり、今回のイラクが15回目となる。湾岸戦争の多国籍軍は武力行使による「軍事行動」が目的だったが、その後は、東ティモールやハイチ、今回のイラクのように、武力行使を伴わない「人道復興支援」を含む例や、武力行使を伴う恐れのある「治安維持」を主体とする例が増えている。

 外務省関係者は、「人道復興支援というとソフトなイメージだが、紛争直後の不安定な情勢下では訓練された部隊でないと対応できない。国連平和維持活動(PKO)が展開できるようになるまでの“つなぎ”の役割として、多国籍軍が必要とされる傾向にある」と指摘している。

多国籍軍参加を事実上表明 日米首脳会談

2004/06/09 中国新聞ニュース
 【シーアイランド(米ジョージア州)8日共同=小渕敏郎】主要国首脳会議(シーアイランド・サミット)出席のため訪米した小泉純一郎首相は八日昼すぎ(日本時間九日未明)、シーアイランドのホテルでブッシュ米大統領と会談し、イラク主権移譲後の多国籍軍編成を明記した国連安保理決議の採択を評価し、「イラク暫定政権に歓迎される形で自衛隊派遣を継続する」と述べ、自衛隊の多国籍軍への参加を事実上表明した。米政府高官によると、首相は来週中に新決議に基づく派遣継続を決定する考えを示した。

 拉致被害者曽我ひとみさんの夫で元米兵のジェンキンスさんの訴追問題に関しては「曽我さんは日本で家族と住みたい気持ちを持っている」と米側の善処に期待感を示したが、大統領は軍紀違反の脱走兵で訴追対象になると指摘、扱いは継続協議となった。米側の説明では、大統領は曽我さんの立場に同情を示した。

 首相は安保理の新決議について「米国の大義の勝利だ」と国際協調に向けた外交努力を歓迎。日本として自衛隊派遣と資金協力の両面で「最大限の支援」を行うと強調した。

 会談で両首脳は、世界的な米軍再編に伴う沖縄米軍基地見直しにあたり、抑止力を維持しつつ沖縄の負担軽減を図ることで一致。大統領は日本の国連安保理常任理事国入りを強く支持した。

 北朝鮮の核、拉致問題の包括解決に向けた緊密な連携も確認。首相は先の訪朝で「金正日総書記は米国の政策への不安を強調し、二国間の話し合いを渇望していた」と説明し米朝協議の推進を促したが、大統領は「六カ国協議の中できちんと話していく」と述べるにとどまった。

 牛海綿状脳症(BSE)発生により禁輸となった米国産牛肉の安全対策については、実務者間の協議促進で合意。大統領は日本の景気の回復傾向に歓迎の意向を示した。

有事7法案が衆院通過 自公民3党で共同修正

2004/05/20 中国新聞ニュース
 日本が外国から攻撃を受けた際の、国民の保護や米軍との協力の在り方などを定めた有事関連七法案は二十日午後の衆院本会議で、柱となる国民保護法案などを自民、民主、公明三党で共同修正した上で、賛成多数で一括して可決された。直ちに参院に送付、今国会での成立が確実となり、昨年成立した武力攻撃事態法などと合わせ、日本有事に備える基本的な法体系が整うことになる。

 自公民三党はこれまでの調整で、大規模テロなどの「緊急対処事態」は武力攻撃事態と同等に扱い、認定は国会の事後承認とすることで一致。来年の通常国会での「緊急事態基本法」(仮称)制定に向け、六項目の法案骨子についても合意した。

 国民保護法案の修正は、武力攻撃事態や緊急対処事態で国民保護のため現地対策本部を置くことを可能にするほか、有事を想定して国と自治体が共同で実施する訓練の費用は原則として国の負担とすることなどを盛り込んだ。

 緊急事態基本法は民主党が制定を要求、骨子で合意を図ることが有事関連法案衆院通過の条件だった。骨子は@緊急事態対処での適切な国会の関与A首相の迅速、的確な意思決定のために閣議決定の簡素化B緊急事態に効果的に対処するための組織整備―などとした。

 本会議採決に先立ち、衆院有事法制特別委員会は二十日午前、関連法案を可決する。

 有事関連法案は国民保護法案のほか、米軍に対する役務、物品提供を行う米軍行動円滑化法案と自衛隊法改正案、「臨検」のための船体射撃を可能とする外国軍用品海上輸送規制法案など六法案と、自衛隊の国際貢献の際にも対米協力を可能とする改正日米物品役務相互提供協定(ACSA)など三条約。

「北が侵攻」2週間内に撃退 日米図上演習 2004年03月12日 The Sankei Shimbun
 今年1月下旬から行われた自衛隊と米軍の図上演習の概要が11日、明らかになった。北朝鮮を想定した「某国」による日本への先制攻撃を自衛隊と米軍が共同で反撃し、攻撃を受けてから2週間以内に、某国軍を殲滅(せんめつ)する内容となっている。核開発計画を廃棄しない北朝鮮は北東アジアの不安定要因となっており、日米両国が北朝鮮の武力行使を警戒した準備を入念に進めていることがうかがえる。

 演習は「日米共同方面隊指揮所演習」で、1月21日から2月1日までの12日間、東京都練馬区の朝霞駐屯地で行われた。日米双方で計三千九百人が参加する過去最大の規模。

 参加したのは日本側は陸自東部方面隊の2500人、米側は在日米陸軍司令部(神奈川県座間市)、第9戦域支援コマンド(同)、第3海兵師団(沖縄県)のほか、米本土から陸軍第1軍団(ワシントン州)、陸軍参謀長直属の「戦域指揮訓練計画」(BCTP)の1400人。

 日米軍事関係者によると、演習のシナリオは大きく分けて5段階で、「某国軍内部で大規模な部隊再編が行われ、将校の異動とそれに伴う不穏な動きを同盟国が把握した」という想定で開始。

 次いで、「某国の軍事行動に備えて在ハワイ米軍が在日米軍支援のために増派する」と進み、第3段階では、某国軍がミサイルの発射準備に着手。特殊部隊が日本海沿岸の原子力発電所など重要施設に攻撃を仕掛けるとの情報や日本への攻撃準備を支援する正規軍の動きを日米双方が確認する−という展開だ。

 この後、第4段階で「某国軍が日本本土へ攻撃を開始した」との想定で米軍が日米安保条約を発動、迎え撃つ陸自を米陸軍と海兵隊が支援する内容だ。最終的には兵器の能力と補給・輸送に劣る敵を各所で撃破、2週間以内に殲滅した−という段階で演習を終えたという。

 演習では名指しを避けているものの想定しているのが北朝鮮であることは明白。今回の訓練が過去最大規模となったのは、米情報当局などによる最近の北東アジア情勢を踏まえ、「北朝鮮の経済が末期的状況に陥り、国内情勢がより不安定化し不穏な動きが出る可能性が高い」(関係者)との情勢分析が背景にあるようだ。

 【日米共同方面隊指揮所演習】「YS−45」(ヤマサクラ45)と呼ばれる自衛隊と米軍によるコンピューターを駆使した最新版の図上演習。昭和56年から始まり、毎年ほぼ2回、日米両国でそれぞれ実施。実際の演習は某国軍と日米側に分かれ、事前のシナリオに沿ってコンピューターを使って模擬戦闘を行う。方面隊以下の指揮活動能力の向上を図るのが目的で、航空機や車両など部隊は動かない。

イラク派遣、自衛隊弔慰金3千万円引き上げ 危険に配慮

2003/10/26 asahi.com
 防衛庁は、イラク復興支援特別措置法に基づき派遣される自衛隊員の処遇を改善するため、任務中に死亡または重度障害になった場合に支給される弔慰、見舞金の最高限度額を、現行の6000万円から9000万円に引き上げる方針を決めた。衆院選後の基本計画策定を待って、同庁の「賞恤(しょうじゅつ)金に関する訓令」を改正する。派遣に伴う特別手当も1日あたり1万円引き上げ、3万円とする方向だ。イラクの治安悪化が指摘される中の派遣とあって、「国として処遇への配慮が必要」(防衛庁幹部)と判断した。

 同庁では、訓令を改正してイラク特措法に基づく活動も支給対象に含めるほか、現行の最高額6000万円に、3000万円を上乗せする。既に財務当局との調整も終えた。訓令は防衛庁長官の判断で改正できるが、政府がまだ派遣を正式に表明していないため、基本計画の策定後に改正する方針だ。

 賞恤金引き上げの背景には、「政府の政治的・外交的判断で、非戦闘地域とはいえ、危険な地域に派遣されるのだから、相応の処遇をすべきだ」(同庁幹部)との配慮がある。

 また、賞恤金は警察官が国内で殉職すると、警察庁と自治体の双方から支給されるなど、地方公務員への支給額が国家公務員を上回るケースがあった。そのアンバランス是正も引き上げの理由としている。

 自衛隊員が任務中に死亡した場合には、賞恤金に加え、国家公務員災害補償法により、支払い給与に基づいて算出される補償額と、首相からの特別褒賞金(最高1000万円)も支払われる。

 一方、政府は海外へ派遣される自衛隊員に支給している特別手当も引き上げる方針だ。手当の額は海外派遣の任務ごとに政令で決めている。日当の最高額は、カンボジアPKOなどで1日2万円だったが、イラク特措法による活動には1日3万円を支給する方向で調整している。

   ◇

 <賞恤(しょうじゅつ)金> 国家公務員が公務中に死亡するなどした場合、各省庁が「賞恤金制度」を訓令で設け、遺族などへの弔慰金を支給している。防衛庁では63年に制度を整備。改正を繰り返し、現在では海上警備行動や災害派遣、国連平和維持活動(PKO)、テロ対策特措法に基づく活動で死亡または重度障害となった場合などに限定されている。支給額は功労の度合いによって定められ、「特に抜群の功労があり、一般の模範となると認められる」場合に最高限度額の6000万円が支給される。

自衛隊の専門調査団見送り 年内のイラク派遣を優先

2003/10/20 中国新聞ニュース
 政府は二十日、年内の自衛隊のイラク派遣に向け、事前に現地事情や必要な装備を把握するための自衛隊員による「専門調査団」は送らない方針を固めた。

 これまで国連平和維持活動(PKO)協力法に基づく自衛隊派遣の場合は、専門調査団を送ってきたが、十二月に陸上自衛隊の先遣部隊百五十人を派遣するスケジュールが政府部内で先行して固まったため「専門調査団まで送っている時間的余裕がない」として見送ることになった。

 政府は内閣官房、外務、防衛両省庁で構成する調査団の報告を受けて、治安が比較的安定したイラク南部の都市サマワで浄水、給水活動を行う方向で最終調整している。

 ただ、専門調査団の派遣によって自衛隊の具体的な活動内容が明らかになれば、二十八日公示、十一月九日投票の衆院選に影響が出るとの懸念も踏まえ、判断したとみられる。

 専門調査団派遣は防衛庁・自衛隊が求めていたが、政府関係者は二十日朝、「調査は先遣隊がやればいい」と指摘。同時に「もう日本の調査団は(政党などを含め)十数回になり、米軍、連合軍暫定当局(CPA)は『いい加減にしてほしい』と話している」と述べ、米軍などの要望も踏まえたことを明らかにした。

浄水、燃料補給など列挙 自衛隊支援で米軍司令官

2003/08/04 中国新聞ニュース
 【バグダッド3日共同】イラク駐留米軍のサンチェス司令官は三日、イラク訪問中の衆院イラク復興支援特別委員会の現地調査団(団長・高村正彦同特別委員長)との会談で、自衛隊が支援可能な任務として、浄水活動や燃料補給など具体的な支援例を挙げた。日本政府筋が語った。

 司令官は、浄水・給水のほか医療、燃料補給、輸送分野など工兵や後方支援部隊の活動例を列挙。さらに民生部門でも銀行業務や交通機関などに対する支援を例に挙げた。

 司令官は同時に、任務は自衛隊自身が決めるべきだと話しており、政府筋は「日本に特に期待している任務というわけではなく、支援分野を網羅した」ものととらえている。

 司令官は自衛隊の派遣地域について要望しなかったが、米兵襲撃が多発しているバグダッド北方の一帯以外の地域は治安が改善していると強調。「安全を保証することは難しいが、明らかに安全な所はある」と語った。

 調査団は四日にアラブ首長国連邦のドバイへ向かい、海上自衛隊の補給艦を視察する。

衆院調査団がイラク入り

2003年08月02日 The Sankei Shimbun

 衆院イラク復興支援特別委員会の超党派の現地調査団(団長・高村正彦同特別委員長)が2日、ヨルダンから国連機で、イラクの首都バグダッドに到着した。イラク復興支援特別措置法に基づく自衛隊の派遣などをにらんで、現地の情勢を把握するのが目的。

 一行は同日、市内のバグダッド大学病院などを訪問し、戦争後の混乱で医薬品や医療器具が不足している病院の窮状を視察した。

 高村団長は「戦争に加えて経済制裁の後遺症も大きいようだ。自衛隊派遣の議論も踏まえて、現地の人から幅広く意見を聞きたい」と語った。

 ブッシュ米大統領がイラク戦争の大規模な戦闘終結を宣言してから3カ月がたった今も、イラクでは連日、米兵襲撃事件が発生。水や電気の供給が依然不足するなど、市民生活の正常化にはほど遠い状況だ。

 8人の議員から成る調査団は今回の訪問で、イラク復興支援に何が必要とされているか、自衛隊を派遣する場合どのような活動が期待されているかなどを探る。

 調査団は3日に、イラクを統治する連合軍暫定当局(CPA)のブレマー文民行政官や、国連のイラク復興の責任者であるデメロ事務総長特別代表、イラク人による暫定統治機関「統治評議会」の評議員らと会談する。(共同)

クルド地区への自衛隊派遣を要望 自治政府幹部が安倍氏に

2003年07月30日 The Sankei Shimbun
 安倍晋三官房副長官は30日午前、首相官邸でイラクのクルド人自治政府幹部と会談した。

 安倍氏はイラク復興支援特別措置法が成立し、イラクへの自衛隊派遣が可能になったと説明。クルド側は、自衛隊による人道支援を歓迎するとともに、クルド地区の治安状況が良好であることを強調し、同地区への派遣を要望した。

 クルド側は「イラク中部はバグダッドを含め治安が悪い。反日感情は特にないが、軍服を着ていれば、危険を伴うこともある」と指摘した。

 また、フセイン前政権がクルド地区で化学兵器を約180回使用したとして、日本政府による化学兵器被害者に対する医療援助を強く要望。安倍氏は、日本がエジプトと協力して行っている医療援助について紹介し、前向きに検討する考えを示した。

イラク特措法案成立へ 与党、参院委で採決強行

2003/07/25 中国新聞ニュース
 ▽内閣不信任案は否決

 イラクへの自衛隊派遣を可能とするイラク復興支援特別措置法案は二十六日未明、参院本会議で与党三党の賛成多数で可決、成立する見通しだ。

 これに先立ち衆院は二十五日午後の本会議で、野党四党が提出した小泉内閣の不信任決議案を否決。この後の参院外交防衛委員会で、与党が同法案の採決を強行、混乱の中で可決した。

 政府はイラク特措法案成立を受け、自衛隊派遣の時期や活動地域を慎重に判断していく方針だ。

 参院外交防衛委は二十五日夜、小泉純一郎首相も出席して締めくくり総括質疑を行った。予定された審議の後、松村龍二委員長が「質疑終局」を宣言。与野党議員が委員長席付近で激しくもみ合う中、法案が可決された。

 野党側はこれに反発し、委員会の運営責任を問い松村委員長の解任決議案を提出する方針。参院は深夜から本会議を開き、同決議案の採決に続き、イラク特措法案を採決する見込みだ。

 内閣不信任決議案を否決した衆院本会議では、民主党の菅直人代表が決議案提出の理由説明に立ち、イラク戦争などに対する首相の対応を厳しく批判した。

 イラク特措法案は四年間の時限立法。派遣する自衛隊の活動について(1)現に戦闘が行われておらず、活動中、戦闘が行われないと認められる「非戦闘地域」に限る(2)武力行使あるいは武力による威嚇は行わない―ことを基本原則としている。

 「安全確保支援」「人道・復興支援」の二分野が具体的な活動内容で、駐留国がイラク国内で行う安全・安定回復活動支援のための医療、給水、輸送補給を行う。

C130輸送機出発へ 小牧基地で編成完結式

2003年07月09日 The Sankei Shimbun
 国連平和維持活動(PKO)協力法に基づきイラク向けの支援物資を輸送するため、愛知県の航空自衛隊小牧基地からC130輸送機がヨルダンへ出発するのを前に同基地で9日、空輸隊の編成完結式が開かれた。

 式には、派遣される自衛官や空自関係者ら約300人が参加。防衛庁の小島敏男政務官が「イラク復興支援特別措置法案が成立して、自衛隊をイラクに派遣するようになった場合を想定した活動を検討している。大いに国際社会に貢献してほしい」と激励。

 航空支援集団司令官の香川清治空将は「戦後イラク復興と中東の安定は、日本の国益上の重要な案件だ。愛する家族や友人のためにも、任務を全うしよう」と訓示した。

 今回の派遣は世界食糧計画(WFP)の要請による人道的国際救援活動への協力として実施。C130輸送機2機が10日に出発、14日にヨルダン・アンマンに到着する。

 約一カ月間の予定で、航空自衛隊員90人がアンマンと国際機関の物資集積地があるイタリアの間を往復し、イラク向けの医薬品、食料などの人道支援物資を輸送する。また、隊員の安全確保のため、9ミリ短銃19丁も輸送機に積み込まれる。

自衛隊派遣の必要性を強調 石破防衛庁長官

2003年07月07日 The Sankei Shimbun
 石破茂防衛庁長官は7日、大阪市内で開かれた自民党議員の会合で講演、同日参院で審議入りしたイラク復興支援特措法案に関し「イラクの治安は悪いが、自衛隊は訓練を積み、身を守るために必要な武器と権限を与えられているため立派に仕事ができる」と自衛隊派遣の必要性を強調した。

 石破長官は日本が石油の約9割を中東地域に依存しているとして「イラクの安定は日本の経済にとって極めて重要だ」と理解を求めた。

米英軍の指揮下に入らず

2003年07月07日 The Sankei Shimbun
 参院は7日午後の本会議で、イラク復興支援特別措置法案の趣旨説明と質疑を行い、審議入りした。小泉純一郎首相はイラクに派遣する自衛隊の活動に関連し「米英当局と緊密な連携を図ることとなるが、自衛隊が米英軍の指揮下に入ることは全く想定されていない」と述べ、基本計画に基づき主体的に行動することを重ねて強調した。

 文化、慣習の違いから米英軍と住民の間で衝突が起きている事態を踏まえ、派遣部隊の安全確保のため「派遣前にイスラム文化について教育する必要がある」との考えを表明した。

 また「米英によるイラク攻撃は累次の国連安全保障理事会決議に合致した行動であり、違法なものとは考えていない」などと述べ、米英軍のイラク攻撃と占領統治は合法と指摘した。

 首相は、法案がイラク攻撃の根拠としている国連安保理決議の削除を求める野党の主張に対しては「イラク復興に関する国際社会の取り組みの契機となったのが、米英軍等による武力行使であることを示す必要がある」と拒否した。

 国会の自衛隊派遣の承認を「事前」とする修正要求にも「法案が成立すれば、国会の承認が得られたと考えることができる」と反論。自衛隊の海外派遣の在り方を定める恒久法の整備に関しては「将来の課題として検討すべきだ」と述べた。

 自衛隊派遣の意義については「人道的意義に加え、エネルギーの安定供給に直結する」とし、エネルギー政策上の必要性を挙げた。

 自民党の舛添要一、民主党の千葉景子、共産党の小泉親司各氏らへの答弁。

イラク法案可決 テロ対策法改正は継続審議

2003/07/03中国新聞ニュース
 衆院イラク復興支援特別委員会は三日午後、自衛隊をイラクへ派遣するイラク復興支援特別措置法案を政府案のまま採決、与党三党の賛成で可決した。民主党など野党は反対した。

 政府、与党は、同法案とともに審議してきたテロ対策特措法改正案について、野党が一括処理に強く反対しているため混乱を回避し、採決を先送り。これにより今国会での同改正案の処理は日程上、難しくなり、秋に想定される臨時国会に継続審議となる見通しだ。

 イラク特措法案は四日の衆院本会議で可決の後、参院に送付され今国会で成立する見込み。政府は秋にもイラクへ自衛隊を派遣する構えで、同法案が成立すれば活動内容、実施区域の範囲を規定した基本計画づくりに着手する。

 イラク特措法案は四年間の時限立法。自衛隊の活動に関して(1)現に戦闘が行われておらず、活動中、戦闘が行われないと認められる「非戦闘地域」に限る(2)武力行使あるいは武力による威嚇は行わない―ことを基本原則に掲げている。

与党、4日衆院通過の方針 イラク特措法案審議

2003年07月01日 The Sankei Shimbun
 与党3党は1日午後、イラク復興支援特別措置法案の民主党修正案について、法案の根幹である自衛隊派遣を認めていないことから受け入れないことを決めた。3日の衆院イラク復興支援特別委員会で可決、4日の本会議で政府案の衆院通過を図る方針を確認した。

 与党側はインド洋への自衛隊派遣を11月以降も可能とするテロ対策特別措置法改正案も同時に採決する方針を崩していない。民主党はこの場合、採決への欠席を含め徹底抗戦する構えで、同改正案の扱いが最大の焦点となる。

 民主党は1日午後、特別委理事を通じ、与党側に修正案を提示。これを受け、与党3党は国会内で幹事長、政調会長、国対委員長らによる合同会議を開いた。

 この結果「見解を異にする政党が、この2、3日で妥協点を見いだすのは困難」(保守新党幹部)として、修正には応じないとの認識で一致。ただ(1)2日の特別委は修正案を含めて審議する(2)民主との理事間協議は続ける−ことも確認した。

 理事間協議は同日夜に開き、与党側は修正案の詳しい説明を求める。

 これに先立ち、小泉純一郎首相は、首相官邸を訪れた自民党の山崎拓幹事長に「早く法案を成立させるよう努力してほしい」と重ねて指示した。

 一方、1日夕の特別委理事会では、与党側が3日にテロ対策特別措置法改正案を審議した上で、締めくくり総括審議を行うよう提案したが、野党側は拒否した。

 これに関連し、自民党の青木幹雄参院幹事長は1日の記者会見で「今の状況を見ると、円満に2つの法案(が参院に送付される)というのは難しい」と述べた。

占領下の自衛隊派遣に反対 イラク特措法で民主

2003年07月01日 The Sankei Shimbun
 民主党は1日午前、国会内で外務・安全保障合同部門会議を開き、政府のイラク復興支援特別措置法案について、米軍などによる占領下の自衛隊派遣を認めないことで一致した。

 ただ復興支援のための文民派遣を認めるか、全面的に政府案に反対するかについては結論を見送り、この後の「次の内閣」臨時会合で判断することになった。党執行部としては、政府案から自衛隊の活動部分を削除し文民による復興支援を盛り込んだ修正案を独自に作成、国会提出する構えだが、自衛隊の派遣自体を否定したことで、与党との修正協議入りは困難な情勢だ。

 この日の合同会議では(1)文民の活動は認め、自衛隊の活動は削除(2)イラク国内で安全が確保された地点への輸送機による空輸のみ認める(3)自衛隊の活動は認めるが、連合軍暫定当局(CPA)の指揮下に入らない−の3案を中心に議論したが、「修正に応じるべきでなく明確に反対すべきだ」との意見が相次いだ。

 自衛隊活動を削除する案は「戦闘地域と非戦闘地域、戦闘員と非戦闘員の区別が困難で、海外での武力行使の可能性が生じる」と指摘。CPAの同意で自衛隊が活動するのは交戦権の行使につながる可能性があるとし、将来の暫定統治機構の発足を待つべきだとした。

 同時にイラク攻撃の正当性の根拠として法案に盛り込まれている国連決議を削除、時限立法の期間を4年から2年に短縮することも盛り込んだ。

 与党は、民主党の方針が決まり次第、自民、公明、保守新3党の幹事長、政調会長、国対委員長会談を開き、対応を協議する。

自衛隊海外派遣で地位協定 政府、周辺国と締結検討

2003/06/21 中国新聞ニュース
 政府は二十日までに、イラク復興支援特別措置法案で自衛隊を国外に派遣する場合に、派遣先での隊員の刑事責任の扱いなどを定める「地位協定」を周辺国政府と締結する方向で作業に入った。

 これまで日本では米軍などの駐留受け入れのための「日米地位協定」や「国連軍地位協定」しかなかったが、今回日本側が「駐留軍」側として締結する初めての地位協定となる。イラク特措法案をめぐる国会審議でも論議を呼びそうだ。

 地位協定では、自衛隊員が誤射で民間人を殺傷した場合などの刑事責任の扱いが規定されるほか、自衛隊員が現地で活動する場合の関税の免除などが盛り込まれる方向だ。

 日本はこれまで国連平和維持活動(PKO)協力法やテロ対策特別措置法に基づいて自衛隊を海外に派遣してきた。PKOの場合は、国連と受け入れ国の間で締結された地位協定が適用され、テロ特措法の場合も海上での給油活動が主な活動だったため「地位協定」の締結は必要がなかった。

 しかし今回のイラク特措法案では、PKOとはならず活動地域が陸上となるため、受け入れ国政府が求めた場合には、協定締結が必要となる。

 相手国と口上書を交わすことで済む場合もあるが、派遣先の有力候補であるクウェートは「地位協定締結が必要」(外務省幹部)とみられている。

 イラクに関しては相手側政府が現時点では存在しないため、協定は結ばない見通しだ。

自衛隊派遣の新法検討 イラク復興支援で首相

2003年05月23日 The Sankei Shimbun
 小泉純一郎首相は22日、米国に向かう政府専用機内で同行記者団と懇談し、今国会の大幅な会期延長も視野にイラク復興支援で自衛隊派遣を可能にする復興支援新法(仮称)の整備を検討する考えを表明した。

 ブッシュ米大統領との会談の焦点となる北朝鮮の核開発問題では、平和的解決を強調する一方で、北朝鮮がエスカレートさせれば経済制裁も辞さない強硬姿勢をにじませる意向を示した。

 イラク復興新法の国会審議には1カ月程度を要するとされ、今国会に提出すれば大幅な会期延長が必要。自民党国対幹部は首相の帰国後の来週に新法の取り扱いを協議することを明らかにした。自民党内では9月の総裁選をにらみ大幅延長を見送って内閣改造を求める声が強まっており、首相は今後の政局の動向を見極め最終判断する。

 首相は専用機内で、イラク復興支援の具体策について、日米首脳会談で米国の意向を聞き、各国とも意見交換した上で主体的に判断する考えを強調した。国連での対イラク制裁解除決議採択を受け「現行法で十分でなければ新法が必要かという点も、今後十分検討していきたい」と述べた。

 北朝鮮問題については「平和的、政治的解決を追求するとの認識はブッシュ大統領と共有している」と指摘しながらも、「経済制裁の話が出ると思う」との見通しを示した。さらに、日米韓が、中国、ロシアなどと連携して北朝鮮に姿勢転換を求め、核開発、日本人拉致、ミサイル問題の包括的解決を目指す方針を表明した。

 中東訪問に関しては、イラク復興で協調を呼び掛け「アラブ諸国との対話交流を深める契機にしたい」と述べた。(共同)


海上自衛隊幹部ら、研修先企業から接待 防衛庁調査へ

2001.03.03(23:40)asahi.com
 海上自衛隊鹿屋航空基地(鹿児島県鹿屋市)の2等海佐(52)と部下の海曹数人が、エンジンやプロペラなどの整備を学ぶ研修先の航空機器メーカー2社の社員から酒食の接待を受けていたことがわかった。2社はいずれも防衛庁の取引会社で、二佐は昨春まで納入物品を扱う調達実施本部(現契約本部)大阪支部の主任検査官だった。防衛庁は、取引会社からの供応接待を禁じた自衛隊員倫理法と倫理規程に違反する疑いがあるとして自衛隊員倫理審査会を設け、調査に乗り出した。

 鹿屋航空基地によると、研修は2月21日に兵庫県尼崎市の住友精密工業、22日に京都市の島津製作所であった。接待はいずれも研修後の午後5時半ごろから始まり、21日は二佐と部下の計6人が尼崎市の居酒屋で住友側社員2人と飲食、その後二佐と部下計3人が同社員2人とスナックに行った。22日は京都市の居酒屋で、二佐ら5人と島津側社員2人が会食した。料金は両日とも数万円前後で、いずれも社員が支払った。

 自衛隊員倫理規程では、異動後3年まで、隊員が利害関係者から飲食や供応を受けることを禁止している。同基地監理幕僚は「二佐らは反省しているが、自身の立場について認識が甘いと言わざるをえない。事情はおおむね聞き終えており、あとは倫理審査会の判断を待ちたい」としている。

 住友精密工業の彦惣憲治総務部長は「社として接待をする際は、社員が事前に許可を得ることが必要だが、今回許可は出ていない。食事をした社員2人は個人的に代金を支払ったと聞いている」と話した。

海上自衛隊が潜水艦航行を6年ぶりに報道陣に公開

2001.02.21(22:30)asahi.com
 海上自衛隊は21日、第2潜水隊群(神奈川県横須賀市)所属の潜水艦「はましお」(2、200トン)が航行、潜航する際の内部の様子を6年ぶりに報道陣に公開した。

 相模湾内で1時間余り潜航した後、音波探知装置(ソナー)で周囲に船などがいないことを確認し、潜望鏡が水面に出る深さまで浮上し、安全を確認したうえで水面に出た。同乗した海自幹部は「一気に船体を水面まで出すことは、通常はありえない」と語った。

 1988年に海自の潜水艦「なだしお」が大型釣り船との衝突事故を起こした後、各潜水艦に備え付けられている救命用具も公開された。約180メートルのロープに結んだブイを発射する救命索投射器や、ハッチ近くに置かれた救命ボートなどを乗員らが説明した。

多国間演習への自衛隊の参加を歓迎する意向 米軍司令官

2001.02.14(06:07)asahi.com
 米太平洋軍のデニス・ブレア司令官は12日、朝日新聞記者との会見で、タイやオーストラリア、マレーシア、シンガポールなどとの多国間演習「チームチャレンジ」について、「安全保障面でも地域の協調を築くことは重要」との認識を示し、自衛隊の参加を促した。2国間演習を時期的に重ねる形での多国間の軍事演習を手始めに、将来的には国連の平和維持活動などに備える構想があるだけに、自衛隊への参加呼びかけは集団的自衛権との絡みで波紋を呼びそうだ。

 ブレア司令官は先週、ブッシュ大統領と新政権のアジア太平洋戦略について電話で協議したことを紹介し、大統領が日米同盟の重要性に加え、「地域の同盟国や友好国との関係を重視する戦略を探っている」ことを強調。多国間安保の構築に前向きな姿勢であると述べた。

 チームチャレンジについてブレア司令官は「現在、日本は不参加の方針であることを承知している。参加するかしないかは日本次第だ」としながらも、「日本は安保面でより普通の国になるべきだ」と述べ、国内論議の行方に注目していると述べた。その上で「日本が参加を決めれば、大歓迎だ」とした。

 日本は2カ月後に行われるチームチャレンジにオブザーバーを派遣する方針だ。

 また、1月発表された最新の米国防報告にアジア太平洋10万人体制の維持が盛り込まれなかったことについて、「軍事技術が急速に変化しているときに、兵員の数はさほど重要ではない」と指摘した。

自治体関係者が大砲発射 米海兵隊撃たせる 大分

2001.02.10(23:35)asahi.com
 大分県の日出生台(ひじうだい)演習場で8日から実弾砲撃演習をしている在沖縄米海兵隊が、自治体関係者向けの公開演習で、参加者に155ミリりゅう弾砲の発射操作をさせていたことが10日、わかった。福岡防衛施設局現地対策本部(本部長、広瀬行成・同施設局施設部長)は「日本の社会通念上、一般人に大砲を撃たせるのは不適切」として、米軍側に再発防止を申し入れるとともに、経緯を調べている。同本部は「違法性はまだ判断できない」としているが、軍事問題の専門家からは「銃刀法などに触れる」との指摘も出ている。

 同本部によると、公開演習は9日にあり、同県内外の議員を含む自治体関係者計約70人が参加。3グループに分かれて、演習で使用している大砲やレーダー施設、指揮所などを見学した。このうち、実弾を発射する訓練で、米海兵隊が大砲の角度や方向を調整して安全確認をした上で、参加者に砲弾発射の引き金となる「拉縄(りゅうじょう)」と呼ばれるひもを引かせたという。

 同本部は、演習終了後に参加者らから「だれかが大砲のひもを引いたらしい」との情報を得て、調査していた。だれが拉縄を引いたのかなどについては、「現在確認中」という。

 同本部によると、演習の公開は、同演習場で米海兵隊の実弾砲撃演習が始まった1999年から毎年実施されているが、実弾を撃つ大砲の間近まで見学者を近づけたのは、今回が初めてという。

 米軍側は、同本部の申し入れに対し、「米軍の安全管理規則にのっとっているが、もうやらない」と答えたという。

「有事法制に積極的に取り組む姿勢」 斉藤防衛庁長官

2001.02.08(13:49)asahi.com
 斉藤斗志二防衛庁長官は8日の衆院予算委員会で有事法制について、首相が施政方針演説で検討開始を表明したことを受け「一歩踏み込んでいただいた。国民の生命、財産を守る観点でぜひとも推進したい」と積極的に取り組む姿勢を示した。防衛庁の「省昇格」については「世界のほとんどが庁ではなく省だ。1日も早く省への昇格をお願いしたい」と語った。

 また、集団的自衛権について自民党の亀井静香政調会長が「同盟国の米国が武力攻撃された場合には現憲法下でも行使できるし、すべきだ」と主張したのに対し、斉藤氏は「公海上で米軍が日本を援助しに来る場合は日本の防衛の問題で参画できるが、単純に同盟国を支援に行くのは現憲法上許されない。(亀井氏の主張は)憲法改正の範ちゅうになる」と述べ、現憲法下では認められないとの立場を強調した。

自殺した中島洋次郎元代議士の公訴棄却 最高裁

2001.01.25(20:57)asahi.com
 海上自衛隊の救難飛行艇開発をめぐる汚職事件で受託収賄罪など5つの罪に問われ、一、二審で実刑判決を受け、上告中に自殺した元自民党衆院議員の中島洋次郎被告(死亡時41)について、最高裁第2小法廷(河合伸一裁判長)は25日までに、刑事訴訟法に基づいて公訴(起訴)を棄却する決定をした。これにより、中島元代議士の刑事裁判は終結するが、汚職事件では贈賄側の富士重工業側が無罪を主張し、東京地裁で審理が続いている。

 中島元代議士は今月6日、東京都目黒区の自宅で首をつって死亡しているのが見つかった。

重機関銃の銃身紛失で中隊長ら15人処分 陸上自衛隊

2001.01.09(20:26)asahi.com
 陸上自衛隊は9日、北海道千歳市の北部方面隊東千歳駐屯地内の第一高射特科群本部管理中隊で重機関銃の銃身1本が紛失した事件で、当時の中隊長を停職とするなど関係隊員15人を懲戒処分にした。

 銃身の紛失は昨年1月に分かった。同中隊は別の中隊に貸し出したとしているが、それを裏付ける書類はなかった。また、陸幕長などへの報告も昨年7月まで怠っていた。

 調査の結果、武器管理と報告遅延の責任が明らかになったとして、当時の中隊長を停職7日、中隊の火器・化学陸曹を同5日、前中隊管理小隊長を同4日の懲戒処分とし、群第四科長ら3人を減給1カ月、ほかの幹部ら9人を戒告とした。

 北部方面総監部によると、これまでに全部隊で重機関銃を一斉に点検するなどしたが銃身は見つかっていないという。

「連立の結束」を優先 空中給油機容認に転じた公明党

2000.12.15(23:47)asahi.com
 15日決まった2001―05年度の中期防衛力整備計画(次期防)で、防衛庁が「悲願」(斉藤斗志二長官)としてきた空中給油機の導入が決まった。慎重な姿勢だった公明党が、最終局面で容認する態度に転じたことが決め手になった。方針転換の背景には「中国も東南アジアの国々もほとんどが保有するなど、状況が変わった」(冬柴鉄三幹事長)との大義名分に加え、連立与党内にきしみを生じさせたくないとの政治判断があった。野党第一党の民主党からも憲法9条改正論が出るなど、安全保障論議の環境が様変わりしたことも、導入が決まった背景にありそうだ。

 冬柴氏は、次期防での空中給油機4機の導入を党として認めた14日、記者団に「訓練、領域防衛、国際貢献といった目的をきちんと明記する。専守防衛は公明党が与党である限り死守する」と強調した。

 だが、もともと公明党は空中給油機の導入について、戦闘機などの活動範囲が広がり、「周辺国に脅威を与える」などとして消極的だった。次期防決定の直前に決着した来年度予算案をめぐる与党協議では反対姿勢を崩さず、最終的に自民党、防衛庁に計上を断念させた。だが、次期防では一転、盛り込みに同意した。

 空中給油機をめぐる協議と同じ時期に、自公両党は児童手当の拡充問題で対立していた。自民党が税制改正を含む恒久財源の検討で譲歩して、公明党に「花」を持たせたため、公明党としても次期防で突出して連立にヒビが入る事態を避けたい、との心理が働いたようだ。冬柴氏は「自民党も保守党もあげて必要性を認めている」と、足並みをそろえたことを強調した。

 ただ、こうした方針の転換には、公明党内にも疑問の声がある。14日の党中央幹事会などでは「政策転換ではないか」との意見も出たほか、来年夏の参院選への影響を心配するむきもある。

 5年前に自社さ政権が現・中期防を策定した際には、空中給油機などをめぐって表舞台で激論が見られた。しかし、今回、調整は水面下で進み、安保論議が真正面から交わされる場面はほとんどなかった。「55年体制」が崩れて連立時代に入り、安保政策をめぐる与野党の壁はきわめて低くなっている。政策論議をとばしてもかつてのような野党からの厳しい批判はないだろうとの意識がどこかで働いていたともいえそうだ。

空中給油機導入めぐり野党内に慎重論や批判

2000.12.15(19:10)asahi.com
 民主党の鳩山由紀夫代表は15日の記者会見で、政府が同日決めた中期防衛力整備計画(次期防)に関連し、空中給油機4機の導入が盛り込まれたことについて「私どもの中にもかなり慎重論が強くあるのは事実だ。これから検討していきたいが、早急に結論を出すべき課題だと思っている」と述べた。空中給油機については党内の意見が分かれていることを示唆するとともに、できるだけ早く党の対応をまとめる考えを示した。

 また共産党は同日、次期防に盛り込まれた空中給油機や大型護衛艦の導入決定について「朝鮮半島やアジアでわき起こっている平和の流れに逆行し、新たな緊張をつくり出すものとして断じて容認できない」などと批判する小泉親司・党安保部会長名の談話を発表。社民党も渕上貞雄幹事長が「海外への展開能力が飛躍的に高まることは、我が国の防衛力に対して周辺諸国の不安や疑念が強まることは疑いない」などとする談話を発表した。

中期防を閣議決定 総額抑制の中で空中給油機など盛る

2000.12.15(11:59)asahi.com
 政府は15日、2001年度から5年間の防衛力整備の指針となる中期防衛力整備計画(次期防)を、首相官邸で開いた安全保障会議(議長・森喜朗首相)と閣議で決めた。情報技術(IT)進展への対応、災害派遣能力の強化などを重点に据えながら、防衛力の合理化を進めていく方針を示した。主な正面装備では、大型のヘリコプター搭載護衛艦の建造、新型戦車の開発などのほか、公明党との調整が難航した空中給油機の導入も盛り込んだ。総額は25兆1600億円で、期間中の年平均伸び率は0.7%。厳しい財政事情を反映し、今年度までの現・中期防の当初総額とほぼ同程度に抑制した。

 次期防は、防衛力の合理化、コンパクト化をうたった現在の防衛大綱(95年策定)のもとで、2回目の5カ年計画となる。

 総額のうち通常の予算編成ができる額は、5年間で25兆100億円以内とされた。残りの1500億円は、災害など予測できない事態の際、安保会議の承認で使用できる。現・中期防の当初額は25兆1500億円(97年に24兆2300億円に減額修正)だ。

 戦車や護衛艦など正面装備の契約額では、総額のうち4兆円を計上した。

 海上自衛隊は5,000トン級ヘリコプター搭載護衛艦の退役に伴い、倍以上の規模の13,500トン型の大型ヘリ搭載艦2隻を整備する。船体の前後に飛行甲板を持ち、哨戒ヘリと輸送ヘリ計4機の搭載が可能だ。7,700トン型のミサイル護衛艦2隻も建造する。

 航空自衛隊では、公明党が「専守防衛」の原則を超える恐れがあるとして慎重だった空中給油機の導入が、要望通り4機盛り込まれた。輸送機として国際貢献で利用できることも強調している。ただ、公明党に配慮して、2001年度予算案では購入を見送る。

 陸上自衛隊では、74式戦車が大量に退役するため、現在の主力の90式戦車を小型・軽量化した新型戦車の開発を目指す。空自の輸送機C1と海自の対潜哨戒機P3Cの後継機は、国産開発を視野に研究する。その際、機体の一部を共用化することで経費節減を目指す。

 日米で共同技術研究をする戦域ミサイル防衛(TMD)は「技術的な実現可能性を検討し、必要な措置を講ずる」とした。次期防期間中に開発に移るかどうかの判断を迫られそうだ。

 全体の重点策のうち、IT化への対応では、コンピューターに侵入しようとするサイバーテロ対策や、中央から地方部隊まで情報を共有するシステムの強化などを目指す。ゲリラによる攻撃や、核・生物・化学兵器(NBC)への対処能力の向上も図る。

 災害対策では、初動態勢を重視。災害が起きた場合にすぐに派遣できる即応部隊を指定するほか、予備自衛官も活用するとした。

 一方で部隊の合理化を進め、陸自は第五師団(北海道・帯広)、第二混成団(香川・善通寺)を師団よりやや規模の小さい旅団に改編する。海自は地方隊の一個護衛隊を廃止し、空自も方面隊の一部の警戒群を警戒隊に縮小する。

中期防衛力整備計画の骨子案を自民党に提示 防衛庁

2000.12.14(14:28)asahi.com
 防衛庁は14日、2001年度から5年間にわたる中期防衛力整備計画(次期防)の骨子案を、自民党国防・安保・基地対策合同会議に提示した。情報技術(IT)化への対応や災害派遣能力の充実のほか、ヘリコプター搭載護衛艦の大型化など正面装備の更新・近代化を盛り込んだ。だが、公明党が慎重論を唱えていた空中給油機については「適切に対応」と書くにとどまり、機数を明示せず、次期防全体の総額も示せなかった。来年度予算で空中給油機の計上を断念したことについて、出席議員から公明党との妥協に批判が出た。

 骨子案では、防衛大綱に従って部隊や装備のコンパクト化を進めると同時に、指揮通信システムの整備やゲリラ攻撃への対処、災害派遣態勢の強化に重点を置いた。また正面装備では、ヘリコプターを搭載する13、500トン型の大型護衛艦の導入や、新型戦車の開発を盛り込んだ。

空中給油機導入で与党合意 次期防で4機整備

2000.12.14(14:21)asahi.com
 2001―05年度の中期防衛力整備計画(次期防)で防衛庁が導入を目指している空中給油機について、与党は14日、防衛庁の要望通り4機の導入を認める方針を決めた。来年度予算への計上に反対するなど慎重だった公明党が、同日午前の中央幹事会で、早期警戒管制機(AWACS)への給油や国連平和維持活動(PKO)での利用などに限定するのを条件に、次期防盛り込みを容認した。政府は公明党の意向を入れながら中期防策定の最終作業に入り、15日にも安全保障会議(議長・森喜朗首相)と閣議で決定する。

 公明党の冬柴鉄三幹事長は中央幹事会で、空中給油機について「専守防衛の趣旨には反しない。時代の変化や必要性を認め、次期防の5年間で整備する立場で臨みたい」と述べ、了解された。

 また冬柴氏は使途について「日本の上空でレーダーを装備した警戒機などに限って給油すべきだ。国連平和維持活動にも使える」と述べ、専守防衛や国際協力目的を明確にすべきだとの考えを示した。

スイス政府が日本外務省に抗議、空自の入札で

2000.12.02(00:17)asahi.com
 航空自衛隊の次期初等練習機の導入をめぐり、入札で敗れたスイスの航空機メーカー「ピラタス社」が防衛庁に説明を求めていた問題で、スイス政府が、日本の外務省に対し、在日スイス大使館を通じて抗議の書簡を手渡していたことが1日、分かった。防衛装備品の納入に関して、外国政府が日本政府に抗議するのは異例で、外交問題に発展する可能性もある。

 航空自衛隊の初等練習機T3が老朽化したため防衛庁は、1998年、富士重工業製のT3改を次期初等練習機に決定した。しかし、中島洋次郎元代議士の汚職事件で同社の幹部が逮捕されたため白紙に戻した。今年の再選定では入札方式を採用し、富士重工業とピラタス社が名乗りを上げたが、再び富士重工のT3改が、次期初等練習機に決まった。

 富士重工の提案した機種は、2年前と同機種なのに航空機単体では3000万円、20年間の維持経費などは4割以上の約160億円も価格が下げられていたため、ピラタス側から「不当なダンピングの可能性もある」などとして防衛庁に質問書が提出されていた。

 内容については明らかにされていないが、関係者によると、入札過程での総経費や価格が不当に安くなっている理由など、入札に関する情報の公開を求めているという。

海上自衛隊のミサイル艇に粗悪ホース納入 業者2人逮捕

2000.11.27(23:40)asahi.com
 海上自衛隊のミサイル艇部品として粗悪品を納入したとして、警視庁捜査二課と代々木署は27日、船舶用設備販売会社「三紀興業」(東京都)社長の末永博敏容疑者(65)ら4人を詐欺の疑いで逮捕した。

 調べでは、末永容疑者らは昨年3月と今年2月の2回、海上自衛隊大湊地方総監部(青森県)のミサイル艇(排水量50トン)に使うフレキシブルホース計約300本を納入する契約を結んだが、規格外の粗悪品を大手メーカーの製品と偽って納め、約2000万円をだまし取った疑い。

 三紀興業は大手メーカーの代理店だったが、末永容疑者らは粗悪品のホースにその大手メーカーの銘板をつけていたという。

 フレキシブルホースはゴムに鋼製の網を巻いて強度を上げたもので、冷却水や作動油などの循環に使う。

NBC兵器への対処強化 次期防/核・生物・化学/化学防護隊も拡充

2000.11.04 The Sankei Shimbun
 防衛庁は三日までに、平成十三年度から五年間の「中期防衛力整備計画」(次期防)で、今後拡大が懸念されるNBC(核・生物・化学)兵器への対処能力を強化する方針を固めた。具体的には、十三年度から(1)陸上自衛隊の六個師団の化学防護小隊を化学防護隊に改編し強化(2)十三年三月に発足する陸自研究本部でこれまで実績がなかった生物兵器対処の研究の本格化−などを推進する。

 防衛庁は核兵器をはじめNBC兵器の拡散の危険が増大し、特に七年の地下鉄サリン事件でもみられるように生物、化学兵器は比較的保有が容易なことから、検討中の次期防でNBC対処能力の向上を重点事項の一つに位置づけている。

 化学兵器への対応では、全国の十三の師団、旅団にある化学防護小隊(約二十人)などのうち、十三年度には六個師団の化学防護小隊をそれぞれ約四十−五十人規模の化学防護隊に改編、強化する。また、汚染地域での被害状況調査や汚染除去作業を行える化学防護車についても、十三年度予算案に購入費用三、四億円を計上し、数台を各師団へ配備し、現在約二十台ある防護車の拡充を図る方針だ。

 さらに、陸自化学学校(埼玉県大宮市)に付属する第一〇一化学防護隊(約百四十人)についても、現在は情報小隊、化学小隊で構成されているが、十三年度に洗浄などを行う除染小隊や、敵の攻撃をかく乱する発煙小隊など機能別に小隊を再編、強化する。

 生物兵器対策では、陸自研究本部の部隊医学実験隊が微生物の研究をはじめ防護装備の調査などを開始して研究体制を強化する。防衛庁長官の私的懇談会「生物兵器への対処に関する懇談会」が十三年三月にまとめる報告書も踏まえ研究の充実を図る。

防衛装備品水増し請求でトキメックが156億円を返納

2000.11.03(00:21)asahi.com
 防衛装備品の代金を水増し請求していた航空機器メーカーのトキメック(本社・東京)は2日、延滞金を含め156億8500万円を防衛庁に返納したと発表した。支払い手続きが完了したため、昨年11月末から続いていた防衛庁の同社に対する取引停止処分は約11月ぶりに解除された。

 返納に伴って2001年3月期連結決算で特別損失を計上するため、3000万円の当期赤字の予想が148億円に膨らんだ。返納金は本社ビルの証券化に加え、事業所や賃貸ビルの売却などでねん出し、足りない分は主取引銀行のさくら銀行から融資を受けた。

 トキメックは今後、採算の合わない環境・鉄道事業は撤退または縮小するほか、約1600人いる従業員を約300人削減するリストラに乗り出す。

 勝木英明社長は会見で「業界内のシェアを少しでも上げようと赤字の仕事でも受注してきた。こうした過剰受注の体質は今後改めたい」と語った。

災害派遣、自衛隊の集結地確保へ/都道府県と事前に調整 有事論議にも一石

2000.10.15 The Sankei Shimbun
 防衛庁は十四日、自衛隊の災害派遣部隊の宿泊や駐車場に使用する集結地を確保するため、防災計画を策定する都道府県との事前調整を強化する方針を固めた。

 集結地をあらかじめ確保できれば、大規模災害に対し、一層迅速な活動ができ、被害をより少なく食い止めることができる。また、外国部隊が日本に進攻したときに首相が命令する防衛出動の際の自衛隊の活動を円滑化するための有事法制の論議にも一石を投じることになりそうだ。

 自衛隊員七千百人が参加して九月に行われた東京都の総合防災訓練「ビッグレスキュー東京2000」では、部隊が展開する空き地が住民の避難場所と重なる場合があり、実際の災害の際に、混乱する可能性があることがわかった。

 このため、防衛庁では「自衛隊の十分な集結地があらかじめ決まっている防災計画は全国でも少ない」(幹部)として、都道府県との事前調整を本格化させ、自衛隊の集結地の確保を目指すことにした。

 防衛庁は自衛隊の集結地として、被災地に近い公園、グラウンドが適切な場所と位置づけ、一個連隊(約千人)で約一万五千平方メートル以上、一個師団(約七千人)で約十四万平方メートル以上必要と推定している。

 ただ、防衛庁・自衛隊と都道府県の間で事前調整を進めても大都市部では広い空き地が少なく、家屋が倒壊した場所での自衛隊の展開方法や住民の権利の制限について検討する必要もあり、「どこまで事前に詰め切れるかわからない」(自衛隊幹部)という。

 すでに防衛庁は平成七年の阪神・淡路大震災の教訓から、都道府県知事の災害派遣要請の手順を簡素化したほか、地方公共団体の防災訓練に自衛隊が積極的に参加するなど、自治体との関係を改善し、災害対策基本法改正では土地・建物の一時使用も可能にした。

 しかし、「都道府県によっては、防災マニュアルに災害派遣要請の窓口になる自衛隊の連絡先も書かれていない場合もあり、十分ではない」(防衛庁幹部)とされ、地方公共団体との一層の関係強化を目指す方針だ。

 当面は近く防衛庁がまとめる災害マニュアルを都道府県に提示し、都道府県の防災担当者との意思疎通の拡大に全力をあげる。


海自、韓国の潜水艦乗員を救助 4カ国共同訓練

2000.10.08(20:45)asahi.com
 日本、米国、韓国、シンガポールの4カ国が南シナ海で行っている潜水艦救難訓練が8日、報道陣に公開された。海上自衛隊は潜水艦救難艦「ちよだ」(基準排水量3、650トン)が、海底に沈んだ韓国の潜水艦から韓国人乗員3人を救出してみせた。潜水艦救難の共同訓練はアジア太平洋地域では初めて。自衛隊は東南アジアで初めて多国間の共同訓練に参加した。

 「ちよだ」に搭載された小型深海救難艇がこの日朝、深さ約80メートルの海底へ。韓国の潜水艦のハッチへ救難艇の救出用ハッチを密着させた後、ベ・デソク中佐ら韓国人乗員を乗り移らせた。同日正午前、3人は救難艇で「ちよだ」艦上へ運ばれ、自衛官の出迎えを受けた。救難訓練は7日から6日間行われ、韓国やシンガポールなどの軍艦も海自などの潜水艦と訓練した。

 訓練は米軍主導で企画され、参加国の信頼醸成のほか、米軍が救難活動などを他国と分担し、負担軽減を図る狙いもあると見られる。中国、ロシアなど7カ国がオブザーバーを派遣した。日本の防衛庁は「平時の事故を想定した研究目的なので、集団的自衛権には当たらない」としている。

潜水艦救難訓練始まる シンガポール沖で海自含め4カ国

2000.10.02(20:18)asahi.com
 日本、シンガポールなど4カ国による初の潜水艦救難共同訓練が2日、13日間の日程でシンガポールで始まった。シンガポール沖約360キロの南シナ海で、海底に各国海軍の潜水艦を沈め、内部で事故が起きたとの想定で乗組員を救助する。救助の技術などについて情報交換をすることで、相互の信頼醸成をはかる狙いもある。

 シンガポールの海軍基地で2日あった開幕式典に続き、7日から海域での訓練を行う。海上自衛隊は潜水艦救難母艦「ちよだ」(基準排水量3、650トン)、潜水艦「あきしお」(同2、250トン)が参加。「ちよだ」は米国、韓国、シンガポールの潜水艦と救助訓練に入る。「あきしお」は各国海軍の救難母艦に対し、沈没した潜水艦の役を演じる。8月に原子力潜水艦の沈没事故を起こしたロシアや中国など7カ国もオブザーバーの派遣を予定している。

 海上自衛隊が参加する多国間の演習は米国ハワイ沖の環太平洋合同演習(リムパック)があるが、東南アジアでは初めて。防衛庁は「平時の事故での人命救難を目的としており、集団的自衛権には当たらない」としている。

海自、多国間潜水艦救難訓練に初参加/来月、8カ国がシンガポール沖で

2000.09.16The Sankei Shimbun
各国間の信頼醸成に期待/秘密性高い性能・技術を公表

 十月からシンガポール沖で、八カ国が参加し行われる「西太平洋潜水艦救難訓練」に初参加するために、海上自衛隊の潜水艦「あきしお」(二、二五〇トン)、潜水艦救難母艦「ちよだ」(三、六五〇トン)が十四、十五両日に、相次いで日本を出航した。海上自衛隊が多国間訓練に参加するのは実質的に初めて。訓練の目的は、遭難した潜水艦から人命を救助する参加国の能力を示すことだが、「秘密性の高い潜水艦の能力が参加国に公表されることで、参加国間の信頼醸成も進めることができる」(海上幕僚監部)としている。

 海上自衛隊はこれまで、米国海軍との間で潜水艦救難訓練を行った実績はあるが、多国間の潜水艦救難訓練へは初参加となる。防衛庁は今年四月に、多国間の潜水艦救難訓練への参加を検討していることを明らかにした。

 今年八月にバレンツ海沖でロシア海軍の原潜「クルスク」が沈没、乗組員百十八人が死亡した事故が発生し、潜水艦事故の恐ろしさと潜水艦救難に対する内外の注目が高まったことなどもあり、海上自衛隊も参加することになった。

 訓練は十月二日から十四日まで、南シナ海・シンガポール周辺海域で、日本、韓国、シンガポール、米国の四カ国の潜水艦、深海救難艇(DSRV)を搭載した潜水艦救難母艦などが参加して行われ、海上自衛隊からは約二百人が参加する。また、オーストラリア、チリ、インドネシア、英国の四カ国はオブザーバーを派遣する。

 訓練の内容は、参加国の潜水艦や原子力潜水艦が海中で遭難した場合を想定し、海上自衛隊、韓国海軍のそれぞれの潜水艦救難母艦と、米国海軍のレスキューチャンバー(救命艇)が協力しながら遭難潜水艦からの人命救助を試みるというもの。救難母艦から救難艇を切り離して遭難潜水艦にドッキングさせて、脱出用ハッチを開けて乗員を救出したり、レスキューチャンバーをクレーンとワイヤなどを使って海中に沈め遭難潜水艦に接続させた後、人命救助を行う。

 海上自衛隊の救難艇は一度に十二人を救助でき、水深百三十メートルで活動した実績があるが、さまざまな事態を想定した今回の訓練の結果、参加各国の潜水艦のハッチの形状や性能をはじめ、潜水艦救難の技術などがわかるため、実際に潜水艦遭難事故が起きた場合、参加各国間での迅速な協力を可能とすることが期待されている。

 また、訓練が成功裏に終われば、「海上自衛隊が今後人道的な多国間訓練に参加する機会が増える可能性もある」(海上幕僚監部)としている。

         ◇

 十四日に広島・呉から出発した潜水艦「あきしお」に続き、潜水艦救難母艦「ちよだ」は十五日午前、母港の神奈川・横須賀の海自船越基地から出航した。「ちよだ」の後藤宣治艦長は出航に先立ち「『ちよだ』は完成から十五年で海外派遣は初めてだが、一致団結して頑張りたい」などとあいさつした。


<特報・防衛庁>庁内LAN設置工事業者任せに 情報管理に懸念[毎日新聞8月27日] ( 2000-08-27-00:45 )

 来月1日に稼働予定の防衛庁の庁内LAN(情報通信網)「中央OAネットワークシステム」の設置工事が、民間企業レベルのセキュリティー(安全管理)で進められていることが26日、分かった。同庁装備局は工事がかなり進んだ段階で「職員の立ち会い」の徹底を文書で注意喚起したが、陸、海、空の各幕僚監部は「常に監視しているわけではない」と事実上、業者任せの状態であることを認めている。同庁では今年2月、オウム真理教(アレフと改称)の信者が陸上自衛隊の司令部に作業員として入っていたことが問題化したばかり。情報管理をめぐる危機感のなさを専門家も懸念している。

 同システムは3年前から内局で試行され、今年5月に同庁が港区六本木地区から新宿区市ケ谷の新庁舎に移転したのを機に、事務官1人に1台の計4800台の端末が導入されることになった。内局のほか、各幕僚監部、統合幕僚会議、防衛施設庁、調達実施本部、技術研究本部の8機関を回線でつなぐ。今年度予算は18億3000万円で、来年度もリース代など18億6000万円が計上される予定だ。

 設置工事は外部の業者によって7月下旬から始まったが、セキュリティーの確保については特別な措置は取られず、今月8月10日になって同庁装備局から「設置については(職員は)立ち会いをすること」という注意喚起の文書が初めて出された。しかし、各幕僚監部は「立ち会いはするが、設置作業を常に監視している訳ではない」と目を離す「すき」があることを認めている。

 担当の総務課は「(工事業者の)庁内への立ち入りの際に、門で氏名などをチェックしており問題はない」と説明、業者には身元の明らかな正社員を使うよう要請しているという。しかし、民間のネットワークセキュリティーの専門家は「民間企業も気をつける時代に、国家レベルで狙われる防衛庁の意識は低すぎる。1台でも何か仕掛けられれば全体に波及するネットワークでは、本来なら各端末の細かいチェックまで必要なはず」と指摘している。

 同システムは防衛上の指揮システムとは別系統。事務効率化が目的で、電子メールや掲示板、幹部スケジュールや行事予定などの情報を共有するほか、プロジェクト専用のパスワードで管理する特定会議室機能も備える。運用上は「秘」や「極秘」の内容は入れないことになっているが、現在でも高官の中にはパソコンに重要なメモを残している例もあり、情報漏れが懸念されている。

 哲学なく無駄な投資 軍事アナリストの小川和久さんの話 楽な環境で過ごしてきた今の自衛隊には、即応能力もセキュリティーの能力もない。潜水艦事故のロシア海軍と同じだ。常に安全保障や危機管理の観点で考えて、国民に説明できる思想・哲学がないのが原因で、このままではIT技術を入れても無駄な投資になるだけだろう。

空中給油機導入問題 長期化避けられず

2000.08.26(20:24)asahi.com
概算要求 自民了承も公明先送り

 空中給油機一機分の導入経費二百三十八億円を盛り込んだ防衛庁の平成十三年度予算概算要求は二十五日の自民党国防関係部会で了承された。しかし、この日の公明党外交・安保部会では結論が出ず、年末の政府予算案決定に向けて検討を継続することになった。これにより、防衛庁などが強く期待する来年度の空中給油機導入問題の決着は年末までずれ込む公算が大きくなった。

 空中給油機の導入をめぐっては、自民党内でも野中広務幹事長、亀井静香政調会長らが慎重姿勢を示しており、この日の公明党外交・安保部会では赤松正雄部会長が「政策的には必要とは理解するが、自民党の中でも議論は熟しておらず、公明党として(現段階で)導入に賛成するわけにはいかない」と慎重な姿勢を示した。

 十三年度予算概算要求への導入経費盛り込みは、政府の安全保障会議が十一年十二月に決定した「中期防衛力整備計画」(十三年度から五年間)で、空中給油機を速やかに整備することを決めたことを受けたもの。

 だが、野中、亀井両氏や公明党などの導入慎重論を踏まえ、導入推進派からも「時間をかけて十三年度予算案に盛り込めばいい」(自民党国防部会幹部)との声が出ており、決着先送りは避けられない情勢だ。

哨戒機P3C後継機を国産化へ 防衛庁方針

2000.08.21(22:07)asahi.com
 防衛庁は24日、日本近海の潜水艦などの警戒にあたる海上自衛隊の哨戒機P3Cの後継機を国内開発する方針を明らかにした。これまで米国製を採用していたが、潜水艦探知・識別システムのソフトウエアやエンジンといった主要部分の自主開発が可能になったと判断した。来年度からの中期防衛力整備計画(次期防)に盛り込む方針だ。しかし、航空機開発をめぐっては、1980年代後半、支援戦闘機F1の後継機(FSX)について、米政府の強い要請を受けて国産化方針を転換し、共同開発となった経緯がある。1機が100億円をはるかに超える高額とされるだけに、今後、米政府との調整が難航する可能性もある。

 来年度の防衛関係予算の概算要求を説明した同日の自民党国防関係合同会議で表明した。輸送機C1の後継機の国産化も併せて表明。機体の一部を共有化することで経費を削減するとしている。設計費は哨戒機、輸送機とも約50億円の見通し。

 海上自衛隊は現在、P3Cを約80機配備しているが、飛行速度が遅く、振動が大きいなど旧式化しており、2010年ごろから順次更新する。現中期防は後継機について「検討のうえ、必要な措置を講じる」としている。

 哨戒機をめぐっては、70年代に国産計画が持ち上がったが、潜水艦の探知、識別のソフトウエアを米国に依存しなければならないために断念。米国製を輸入し、その後、国内でライセンス生産していた。

自衛隊に災害救助隊を新設へ 次期防で防衛庁

2000.08.21(03:12)asahi.com
 防衛庁は災害の救助や復旧にあたる専門部隊を自衛隊に設ける方針を固めた。陸上自衛隊の全国5つの方面隊で道路の補修などを担当する「施設団」に、災害対応を新たな任務として与える方向だ。部隊は、(1)大都市(2)山間部(3)離島(4)原子力・化学施設、などの災害を想定し、それぞれに備えた訓練をし、災害発生時に現場に急行する。来年度から5年間の中期防衛力整備計画(次期防)に盛り込み、必要な装備をそろえる方針だ。

 自衛隊の災害派遣は現在、原則として被災地域を担当する近くの部隊が自治体の要請を受けて出動し、必要に応じて周辺の部隊が応援する仕組みになっている。しかし、通常の部隊は救助の専門的な訓練を日常的にしているわけではない。人命救助は迅速さが求められるが、段階的に部隊を投入するのでは後手に回るとの指摘もあった。

 また、通常の部隊が持つ機材はあくまで有事を想定したもので、ブルドーザーのような重機の一部や浄水セットなど災害にもそのまま使える機材が少なくないものの、都市の狭い路地で小回りがきく重機や、原子力事故を想定した装備までは標準的に装備してはいない。

 このため、さまざまな災害時に効果を発揮する機材をそろえ、専門の訓練を受けた部隊を養成し、災害時に一挙に投入して人命救助などの能力を高めることにした。ただ、自衛隊の組織改編はせず、施設団に新たな任務を付け加える形になりそうだ。

 施設団は道路や橋の補修、地雷の敷設・撤去などを主な任務とする組織で、北部、東北、東部、中部、西部各方面隊に配置されている。それぞれの部隊は約2000人。カンボジアの国連平和維持活動(PKO)に派遣されたほか、阪神・淡路大震災の復旧作業などにあたった。

 自衛隊の災害への対応をめぐっては、自民党の野中広務幹事長が6月、方面隊ごとに災害救助隊を設けるべきだとの考えを示したほか、虎島和夫防衛庁長官も都市部や離島などそれぞれの地域特性を考えた災害対策の検討を事務当局に指示していた。

防衛庁、日本新生特別枠で71億円 概算要求

2000.08.07(21:42)asahi.com
 防衛庁は7日開かれた自民、公明、保守3党の安全保障に関するプロジェクトチームの会合で、来年度予算概算要求について説明した。概算要求基準により、情報技術(IT)革命などへの対応のための日本新生特別枠で約71億円が割り当てられ、人件費が前年度より628億円増となることから、要求額は前年度比1.4%増の4兆9917億円となる見通しとしている。

災害救援に専門部隊 防衛庁/来年度にも創設方針

2000.08.05The Sankei Shimbun
 防衛庁は四日、地震や火山噴火、大事故といった大規模災害が発生した際の即応態勢を強化するため、自衛隊内に災害救援活動を担当する専門部隊を創設する方針を固めた。防衛庁首脳が明らかにしたもので、平成十三年度予算に災害対策用の装備品などを購入するための経費を計上、同年度にも部隊編成を行う方針だ。

 専門部隊は陸、海、空各自衛隊の統合部隊とし、平時にはそれぞれの原隊で防衛任務に従事するが、災害発生時には車両や艦艇、航空機などを使って集結、災害救援活動にあたる。被災者や遭難者を緊急搬送したり、治療したりする防衛医官中心の医療専門チームも併せて設置する方向だ。

 自衛隊の災害派遣は自衛隊法八三条に基づき、自治体からの要請を受けて実施されており、これまでは災害が発生した場所の近くにある駐屯地や基地から初動部隊が派遣されてきた。だが、阪神大震災などにおける自衛隊の災害救助活動が国民から高く評価されていることもあり、「専門部隊をつくった方が、迅速、的確な対応が可能だ」(防衛庁幹部)と判断した。すでに、災害が都市部、山間地、離島で発生した場合と、原子力や化学物質など特殊災害の四つのケースを想定、部隊移動を含む対応指針づくりに着手している。

平成十二年版【防衛白書の要旨】 /北朝鮮 引き続き細心の注意/有事法制 平時にこそ

2000.07.28 The Sankei Shimbun
 第一章 国際軍事情勢

 【北朝鮮】金正日国防委員長を中心とする統治体制が名実ともに整備され、国家統治は一定の軌道に乗ってきていると考えられる。昨年来、相次いで西欧諸国などと関係構築に努力しており、十二年六月には分断後、初めての南北首脳会談を開催。体制の透明性向上が期待されるが、その動向は必ずしも明確とはいえず、引き続き細心の注意を払っていく必要がある。

 深刻な経済困難に直面しているにもかかわらず、軍事力の近代化、即応態勢の維持に努力している。弾道ミサイル開発は、ノドンの配備を行っている可能性が高く、日本のほぼ全域が射程内に入る可能性がある。テポドン1号の開発は急速に進展と判断される。さらに、二段式で射程三千五百−六千キロとされるテポドン2号も開発中と考えられ、派生型が造られる可能性も含め、弾道ミサイルの長射程化が一層進展することが予想される。ミサイル開発は、核兵器開発疑惑と相まって国際社会全体に不安定をもたらす要因だ。

 【中国】弾道ミサイルはICBMを若干基保有するほか、新型ICBMおよびSLBMの開発も進めている。中距離弾道ミサイルは、日本を含むアジア地域を射程に収めるミサイルを合計約七十基保有しており、従来の東風3(CSS−2)から、命中精度が向上した新型の東風21(CSS−5)への転換が進みつつある。台湾対岸における新たなミサイル基地建設の動きも伝えられる。

 日本領海を含む海域で、近年、中国の海洋調査船による活動が行われている。また、海軍艦艇の航行も増加しており、十年は二隻だったが、昨年は二十七隻、十二年は六月末時点で十四隻である。海軍艦艇のわが国周辺における活動の活発化については、注目していく必要がある。

 第二章 日本の防衛政策(略)

 第三章 わが国の防衛と日米安全保障体制に関連する諸施策

 【有事法制の研究】有事法制は、わが国への武力攻撃などに際し、自衛隊が文民統制の下で適切に対処し、国民の生命・財産を確保するために必要なもので、平時こそ備えておくべきものだと考える。

 【周辺事態安全確保法に含まれなかった事項】船舶検査活動は国会審議の結果、その在り方をさらに検討する必要があることから、別途立法措置をとるとの前提で法案から削除された。政府としては、早期に新たな立法措置が講じられることを強く期待する。

 第四章 多様化する防衛庁・自衛隊の施策と活動

 【緊急事態への対応】不審船事案や武装工作員による破壊活動など平時における不法行為への対処は、第一義的には警察機関の任務だが、警察機関では対処が不可能または著しく困難と認められる事態が発生した場合は、海上警備行動や治安出動により自衛隊が対処することになる。政府は、自衛隊と警察機関との連携要領の策定など現行法制度の下での対応の強化を進めており、今後とも自衛隊の対応の在り方や関係省庁間の連携について、法的な観点も含め、さらに検討する考えだ。

 【ミサイル発射への対応】政府は、北朝鮮のミサイル発射を契機として、衛星の画像情報の利用方法を検討した結果、十四年度をめどに情報収集衛星を導入することを閣議決定した。防衛庁は日ごろから艦艇、航空機などにより、わが国周辺での情報収集活動を行っているが、必要に応じ現在の態勢に加え、さらに艦艇、航空機を投入することなどにより、情報収集活動を強化する考えだ。

 【さまざまな事態への対応】弾道ミサイル防衛(BMD)が専守防衛を旨とするわが国の防衛政策上の重要な課題だ。政府は、昨年度から海上配備型上層システム(NTWD)を対象として、米国との間で共同技術研究に着手することを決定した。

 生物兵器対処について、自衛隊では本格的な研究を行ったことがなく、生物剤に対する検知、防護などの能力が欠落しているか、未検証だ。このため、この分野における本格的な研究に取り組む。

 防衛庁・自衛隊の各種指揮通信システムへのハッカーの侵入、データ改ざんなどが行われた場合は、わが国の防衛に重大な支障が生じ得るため、十二年度予算で高度セキュリティ・システムの試験的構築などの施策を推進し、関係省庁とともにハッカー対策やサイバーテロ対策といった項目について検討している。

 第五章 身近な自衛隊と諸問題への取り組み(略)

中国海軍の動向注視/防衛白書 サイバーテロ対策強化

2000.07.28 The Sankei Shimbun
 虎島和夫防衛庁長官は二十八日の閣議で、平成十二年版防衛白書の「日本の防衛」を報告し、了承された。白書では、六月の韓国と北朝鮮による南北首脳会談を評価しながらも、朝鮮半島の軍事的対立の状況は基本的に変化はないとの分析を示している。また、五月から六月にかけて日本を一周した中国海軍情報収集艦に詳しく言及し、動向に注目する考えを示している。このほか、有事法制についても整備の必要性を強調しているほか、サイバー(電脳)テロをはじめコンピューター・セキュリティー対策強化も盛り込まれた。

 第一章の「国際軍事情勢」では、南北首脳会談の開催など積極的な外交活動を展開する北朝鮮について「金正日国防委員長の国家の統治が一定の軌道に乗ってきた結果」との見方を示す一方で、北朝鮮の進める弾道ミサイル開発を、「核兵器開発疑惑とあいまってアジア太平洋地域だけでなく、国際社会全体に不安定をもたらす要因だ」とし、警戒をゆるめてはいない。

 中国については日本を一周したヤンビン級砕氷艦兼情報収集艦に関して、「情報収集活動や海洋調査活動を行っていた可能性がある」と分析し、「最近の中国海軍艦艇の我が国周辺の活動の活発化については、その動向について注目していく必要がある」として、平成十一年の白書よりも踏み込んだ表現となった。

茨城・百里飛行場の民間共用を閣議決定

2000.07.24(20:14)asahi.com
 防衛庁が設置・管理している百里飛行場(茨城県)について、政府は24日、空港整備法施行令の一部を改正し、民間航空機も利用可能な「共用飛行場」に指定することを閣議決定した。百里飛行場には現在、自衛隊が使用している2700メートルの滑走路があるが、国は新たに民間用に2700メートルの滑走路を整備する。今年度から調査にとりかかっており、2007年度からの使用を目指している。

次期防策定に向け安保会議始まる

2000.07.24(20:18)asahi.com
 政府は24日、首相官邸で関係閣僚による安全保障会議(議長・森首相)を開き、来年度から5年間の防衛政策を定める中期防衛力整備計画(次期防)の策定作業を始めた。1回目の会議では外務省が国際情勢を報告。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)について、困難のなか経済回復を目指しており、対外関係の改善に積極的に取り組んでいると分析。先月の南北首脳会談をきっかけに、朝鮮半島をめぐる緊張緩和の具体的な進展がみられるかどうか注視していく必要があるとの認識を示した。

 虎島和夫防衛庁長官は会議のなかで「IT(情報技術)をはじめとする科学技術の進歩について、十分検討する必要がある」と述べ、コンピューター網に侵入して打撃を与えるサイバー攻撃や生物化学兵器の使用など、質的に変化しつつある攻撃への対応に重点を置く考えを示した。

 次期防の策定をめぐっては、変化の兆しが見える北東アジア情勢をどう見極め、具体策に反映させるかが焦点になりそう。特に、北朝鮮のミサイルを念頭に日米で共同技術研究を進めている戦域ミサイル防衛(TMD)の扱いが論議を呼びそうだ。

テロ・ゲリラ事件は世界的に増加 公安庁が分析

2000.07.02(14:16)asahi.com
 世界各地でテロやゲリラ事件は増加傾向にあり、昨年1年間で1万3744人が死亡した――。公安調査庁が1日付で発表した「国際テロリズム要覧」で、こうした分析を明らかにした。民族や宗教の対立を背景に、アジア・オセアニア地域での発生が最も多く、世界全体(2597件)の5割近くを占めた。

 要覧は、1993年から2―3年に1度、外国の新聞や資料から拾い上げた情報に分析を加え、テロ対策を考える際の基礎資料としてまとめている。98年から公表しており、他省庁や国会に配るほか、希望があれば民間企業にも提供するという。

中国艦、房総沖でも活動 海自調査 -日本一周、電波情報収集か-

2000.06.10The Sankei Shimbun
 初めて津軽海峡を通過した中国海軍のヤンビン級砕氷艦兼情報収集艦(四、四二〇トン)が五月末、首都圏に近い房総半島沖でも活動していたことが九日までの海上自衛隊の調査でわかった。中国海軍の情報収集艦が房総沖で活動したのは初めて。同艦の動きは中国海軍のプレゼンスが強化されていることを示している。現場は排他的経済水域(EEZ)で、外国艦船の行動は禁止されていないが、日本政府は事前通知しない中国の海洋調査は排他的経済水域での日本の一定の権利を認めた国連海洋法条約に違反するとの立場をとっており、今後日中間で政治問題化する可能性がある。

 海自などによると、このヤンビン級砕氷艦兼情報収集艦は五月十四日から七日間、対馬周辺で活動後、日本海を北上し、二十三日から二十六日にかけて、津軽海峡を一回半往復した。その後、太平洋を南下し、三十日ごろ、房総半島の東方沖の日本の排他的経済水域(三百七十キロ)内を一回往復した。

 さらに、四国南方海域を経て、奄美大島北東海域の日本の排他的経済水域内で活動後、五日午前九時には、奄美大島の西北西三百キロの海域で停泊しているのが確認された後、九日までに日中中間線を越え中国側に入った。

 日本を一周したのも初めてであり、同艦は房総沖などの太平洋側や津軽海峡で、通信電波受信用と思われるアンテナを回転させていたことがわかっている。

 同艦は対馬海域、奄美大島北東海域では、海洋観測用とみられる観測機器を投入し、引き揚げていた。潮流、水温などに関する海洋調査が行われたものとみられ、これらのデータは、中国の潜水艦が活動する際に必要な記録として使うこともできる。また、アンテナの動きから、航空自衛隊のレーダーなどに関する電波情報を収集していた可能性もある。

 これについて、平松茂雄杏林大教授は「房総沖の近くには首都防衛にかかわる航空自衛隊百里基地(茨城県)、峯岡山(千葉県)のレーダーサイトなどもあり、航空に関する電波情報を収集していた可能性が強い。また、津軽海峡の近くには、海上自衛隊の大湊地方総監部(青森県)や竜飛警備所(同)などがあり、これらについても情報収集をしていたものとみられる」と分析する。

 こうした動きに関連し、自民党の野中広務幹事長は九日、中国の趙啓正・国務院新聞弁公室主任と会談した際に、「中国の海洋調査船がわが国の近海、経済水域に入ってくるのは、両国関係にとってよくない」と述べ、日本の排他的経済水域での中国の海洋調査活動に懸念を表明した。

 日本政府は、これまで同艦の行動は国連海洋法条約や法律に違反しない無害通航と判断し、中国に対して抗議などは行っていない。だが、「日本が黙認すれば中国海軍は堂々と繰り返す」(平松教授)とみられるだけに、日本政府の今後の対応が注目される。

野中幹事長、中国の海洋調査船に懸念示す

2000.06.09(19:46)asahi.com
 自民党の野中広務幹事長ら与党3党幹事長は9日、中国国務院(政府)で報道機関を管轄する新聞弁公室の趙啓正主任と東京都内のホテルで会談した。野中氏は「中国の海洋調査船がわが国の経済水域に入ってくるのは両国関係にとって良くない。中国側も友好を考えた対応が必要だ」と述べ、日本側の同意のないまま排他的経済水域での活動を活発化させていることに懸念を示した。趙氏は「管轄が違うので帰国したら伝える」と答えたという。

 また、与党3党幹事長は8日夜に銭其シン・中国副首相とも会談。5月末の3幹事長の訪中と同じ時期に、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正日総書記が訪中したことについて、銭副首相から「皆さんが中国に行っている間に(金正日の訪中を)伝えられず、申し訳なかった。金正日総書記が国に帰るまでは公表できなかった」と釈明の言葉があったという。野田毅・保守党幹事長が記者団に明らかにした。

ゴラン高原PKOの派遣期間を半年間延長

2000.06.20(13:18)asahi.com
 政府は20日の閣議で、中東・ゴラン高原でシリア、イスラエル両軍の停戦を監視する国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)に派遣しているゴラン高原国際平和協力隊の派遣期間について、来年2月末まで半年間延長することを決めた。

 5月の国連安全保障理事会の決議で、UNDOFの活動期間が6カ月間延長されたことに伴うもの。日本は1996年2月から自衛隊を派遣し、輸送などの後方支援を続けている。

有事法制の「必要」を強調 防衛白書案

10:12p.m. JST May 24, 2000 asahi.com
 防衛庁は24日、2000年版の防衛白書の原案を自民党国防部会に提示した。有事法制について、「自衛隊が文民統制の下で適切に対処し、国民の生命・財産を確保するために必要」と強調し、「法制が整備されることが望ましい」としていた昨年より踏み込んで表現している。

 アジア・太平洋地域の情勢では、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)について、金正日国防委員会委員長を中心とする「新たな国家運営が一定の軌道に乗り始めてきている」と分析している。中国に関しては、海軍艦艇の東シナ海における活動増加など、海洋の活動範囲拡大を記述するとしたが、「危機感が感じられない。中国海軍の活動は全く新しい段階に入っており、警戒警備が必要だと、もっと国民に知らせるべきだ」(武見敬三・前外務政務次官)との異論が出て、表現を手直しすることになった。

 冷戦後の世界の平和と安定を確保するための仕組みを記している国際情勢の項目では、北大西洋条約機構(NATO)がユーゴスラビア・コソボ自治州を空爆したことを昨年に引き続いて取りあげ、「国境を越えた新たな安全保障問題の浮上」と意義づけた。

「防衛省」昇格を―瓦長官

2000年5月22日 12時55分共同
 瓦力防衛庁長官は22日午前、視察のため訪れた陸上自衛隊金沢駐屯地で記者会見し、防衛庁の「省」昇格問題について「先進国で相当の防衛力を有する国が、国防組織をエージェンシー(庁)と言っている例はない」と、昇格の必要性をあらためて指摘した。

北京・日本大使館の防衛駐在官が陸・海・空の3人体制に

11:32p.m. JST May 13, 2000 asahi.com
 北京の日本大使館に海上自衛隊の防衛駐在官が新たに配置され、このほど赴任した。これで北京駐在の防衛駐在官は陸、海、空の3人体制が整った。防衛庁からは昨年、内局の書記官も新たに北京に派遣されており、各分野で中国との防衛交流を強める方針だ。

 新たに赴任したのは天野寛雅・一等海佐。北京には以前は陸上自衛隊の駐在官しかおらず、1995年に航空が加わって2人体制になった。日本が海外大使館に3自衛隊の駐在官をそろえているのは、米国、ロシア、韓国だけ。しかし日中間の防衛交流の重要性が高まる一方、中国の軍事力増強に対する懸念も一部にあり、防衛庁などでは「北京の防衛駐在官を増員すべきだ」との指摘が早くから出ていた。

 北京にある他国の大使館では米ロやフランス、パキスタン、韓国、タイなどが陸海空3軍の駐在武官を配置している。

沖縄の米軍基地本土移転、反対が賛成上回る 総理府調査

5:48p.m. JST May 13, 2000 asahi.com
 総理府は、今年1月に実施した「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」の結果を発表した。沖縄県の基地負担を軽減するために米軍機能の一部を本土に移転することについて、「反対」が40%で「賛成」の37%を上回り、1997年の前回調査(賛成42%、反対35%)から賛否が逆転した。沖縄に国内の米軍基地の7割以上が集中しているのを知っている人は88%にのぼるが、前回(91%)よりやや減っており、沖縄の基地問題への関心が低下しつつあることがうかがえる。

 「日本が戦争に巻き込まれる危険性」があるかどうかを聞く質問には、前回より10ポイント高い31%の人が「危険がある」と回答。69年の調査開始以来、最も多くなった。「危険はない」は7ポイント減の23%、「危険がないことはない」は34%で横ばいだった。

 「日本の平和と安全の面から関心を持っていること」は、「朝鮮半島情勢」と答えた人が57%と最も多く、前回より10ポイント増加。「大量破壊兵器やミサイルなど」が6ポイント増の35%で続いている。

 自衛隊の防衛力については「今の程度でよい」が66%で最も多かったが、「増強した方がよい」が14%で前回より6ポイント増え、「縮小」は7ポイント減の9%。国連平和維持活動(PKO)への自衛隊参加についても、80%が「賛成」で前回の64%から大幅に増えた。

 防衛庁は「朝鮮民主主義人民共和国のテポドンミサイル発射(98年8月)や不審船事件(99年3月)で国民の間に危機意識が高まり、その結果、全体的に現行の防衛政策を支持する人が多かったのではないか」と分析している。

 調査は69年から3年ごとに行われ、今年は1月13―23日に全国の20歳以上の5000人に面接調査。回収率は69%だった。

災害救助、PKOに支持

2000年5月13日 17時26分共同
 総理府が13日発表した世論調査によると、自衛隊の災害派遣活動への評価が定着するとともに、海外での災害救援や国連平和維持活動(PKO)など国際貢献への賛成が過去最高となるなど、自衛隊の活動範囲拡大への理解が広がっていることが分かった。「自衛隊が役立ってきたこと」(複数回答)では、災害派遣が87.2%でトップ。次いで国際貢献が35.5%で、前回調査より3ポイント増加した。

次期防、サイバーテロや生物・化学兵器焦点に

8:30p.m. JST May 09, 2000 asahi.com
 防衛庁は9日、次の中期防衛力整備計画(次期防)の本格的な策定作業に入った。次期防は2001年度から5年間にわたる自衛隊の組織、装備などの整備方針を定めるもので、朝鮮半島情勢や中国と台湾の関係などを踏まえながら、日米安保体制の一層の強化を図るとともに、コンピューター網に不正に侵入し、大きな打撃を与えるサイバーテロや生物・化学兵器などの新たな脅威への対策などが焦点になる。同庁では、夏までに骨格をまとめ、年末に正式決定する予定だ。

 瓦力防衛庁長官は同日の幹部による初の検討会議で、「情報関連技術の著しい進展が、防衛戦略に大きな変化をもたらす可能性に的確に対応していくことが重要だ」と述べた。1月に中央省庁のホームページが不正に書き換えられる被害が続発したことなどを受け、防衛庁としても、今後の安全保障政策にとって、コンピューター網への侵入対策を検討する必要があると判断している。また、国連平和維持活動(PKO)への積極的な参加に向け、要員の輸送手段として、中型輸送機を3機以上導入することも盛り込まれる見通しだ。

船舶捜索・救難で協力検討

2000年5月4日 18時34分【ハノイ共同】
 ベトナム訪問中の瓦力防衛庁長官は4日、ハノイの国防省迎賓館でファン・バン・チャー国防相と会談し、防衛交流の一環として、南シナ海を航行する民間船舶が事故に遭った際の捜索・救難活動に関する協力態勢を検討することで一致した。自衛隊はロシア、韓国の海軍と捜索・救難共同訓練を行っておりベトナム海軍との同様の訓練の実施などが検討される見通しだ。

5月から生物兵器対処懇

2000年4月18日 12時57分
 瓦力防衛庁長官は18日午前の衆院安全保障委員会で、「これまで不十分だった(自衛隊の)生物兵器対処能力を向上させる必要がある」と述べ、炭そ菌などを使った生物兵器への対策づくりを早急に進める考えを表明した。

 依田智治政務次官は対策づくりのため防衛庁長官の下に置く「生物兵器対処懇談会」について、部外の有識者8人で構成し5月下旬に発足させることを明らかにした。

米情報分析して対応検討

2000年3月24日 12時55分
 防衛庁は24日午前、パトリオット迎撃ミサイル(PAC2)に欠陥が見つかったことを受けて、米国防総省からの情報を分析するなど、航空自衛隊に配備されているPAC2に改修や取り換えの必要があるかの検討を始めた。

 防衛庁によると、欠陥について米国防総省から22日、日本の在米大使館に連絡があった。

首相、有事法制整備の必要性強調 防衛大卒業式で訓示

0:02p.m. JST March 19, 2000
 小渕恵三首相は19日午前、防衛大学(神奈川県横須賀市)の卒業式で訓示し、有事法制の取り扱いについて「有事法制は、わが国への武力攻撃などに際し、自衛隊が文民統制の下で適切に対処し、国民の生命・財産を守るために必要であり、平時においてこそ備えておくべきものである」と述べた。与党3党の政策責任者が16日、有事法制の立法化の検討開始を政府側に要請したことを受け、有事法制の整備の必要性を改めて強調したものだ。

 これに関連し、瓦力防衛庁長官も「与党3党の考え方を十分受け止めるとともに、国会での議論や国民世論の動向などを注視しながら、適切に対処していく」との考えを示した。

 また、首相は陸上自衛隊の幹部らによる違法射撃事件を念頭に、「昨今、自衛隊への国民の信頼を失墜させる不祥事が生じていることは極めて遺憾であり、残念の極みだ。諸君は国民の信頼と期待にこたえられるよう、精進することを願ってやまない」として、綱紀粛正を求めた。(時事)

防大、任官拒否は22人

2000年3月19日 8時52分
 防衛大学校は卒業式の19日、本科卒業生389人(女子は23人)のうち、女子5人を含む22人が自衛官への任官を拒否したと発表した。女子の拒否者は過去最高となった。拒否の主な理由は「民間会社就職」7人、「大学院進学」3人、「結婚」1人などとなっている。

 任官拒否者は昨年が16人、1998年が10人。91年の94人をピークにその後は、20人前後が続いている。

議員立法で防衛庁の「省」昇格めざす 自民3部会

7:55p.m. JST March 08, 2000
 自民党の国防関係3部会は8日の合同会議で、防衛庁を「国防省」に昇格させるための法案を議員提案で今国会に出し、年内に成立を目指すことを決めた。来年1月からの中央省庁再編で防衛庁は「庁」のままの予定。かねて昇格を後押ししてきた3部会としては、省庁の新体制が動き出してからでは格上げが難しくなると判断。自由、公明両党にも同調を求めたいとしているが、公明党は消極的で提出できるかどうか微妙だ。

 3部会が同日、議員立法を目指す方針を亀井静香政調会長に伝えた際、亀井氏は「提出する限り成立させないといけない。3党連立なので、政策責任者のレベルで問題提起していく」と述べ、公明党に配慮しながら調整を進める考えを示した。

陸上自衛隊に対ゲリラ部隊新設へ 防衛庁方針

07:00a.m. JST February 13, 2000
 防衛庁は、陸上自衛隊に武装ゲリラに対処する部隊を新設する方針を固めた。次の中期防衛力整備計画(次期防、2001―05年度)に盛り込む。原子力発電所などが重武装した勢力の攻撃を受けた場合などを想定し、警察では対応しきれない事態に備えることを目的としている。しかし、部隊を整えても現行の自衛隊法では、大規模な侵攻に対する「防衛出動」が発令されない限り、武器使用などの面で制約がある。防衛庁には、部隊編成の構想を示すことで、自衛隊にゲリラ部隊対応という新たな任務を与える法整備を促す狙いもあるとみられる。

 次期防は1995年に閣議決定された「防衛計画の大綱」のもとでの2期目の中期計画。今年末までに閣議決定する。オウム真理教による地下鉄サリン事件を受け、防衛大綱には、テロ攻撃など警察では対処しきれない事態への対応が、自衛隊の今後の主要な役割として明記された。ゲリラ対処部隊の編成はこの考え方を具体化するもので、防衛庁は2000年度中に訓練施設の整備や米陸軍特殊部隊での研修などを進め、対ゲリラ作戦や装備の研究を進める考えだ。

 少数で奇襲をかける戦法が特徴のゲリラへの対処は、他国からの計画的・組織的な武力攻撃の排除を想定した「防衛出動」の対象にはなりにくい。このため、現行法では治安維持を目的とする「治安出動」の発令が想定されるが、原則的に警察と同程度の武器使用しかできず、ゲリラ対処部隊をつくったとしても、十分に機能しないという見方が自衛隊内には強い。

 そこで浮かんでいるのが、ゲリラ部隊や工作船に自衛隊が即応できるよう「領域警備」という新たな任務を与え、そのための武器使用を認めようという考え方だ。 昨年秋の自自公政策合意では、領域警備について「現行の法制度の下での対応を強化するとともに法整備を図る」としたが、検討は進んでいない。

3自衛隊情報を一元化

2000年2月6日 10時15分 共同通信社
 防衛庁がことし5月に東京・市谷の陸上自衛隊駐屯地跡に移転するのに伴い、新庁舎地下の中央指揮所に導入する新中央指揮システムの整備計画全容が5日、明らかになった。これまで陸海空3自衛隊が個別に運用してきた指揮通信システムをオンラインで統括。日本有事、国連平和維持活動(PKO)などの際の3自衛隊の部隊情報をリアルタイムで集約、統合する初のハイテク防衛ネットワーク。

新防衛中枢、5月に始動

2000年2月2日 20時00分 共同通信社
 防衛庁の新庁舎の全容と移転計画が2日、明らかになった。4月下旬に東京・六本木の現庁舎から、市谷の陸上自衛隊市ケ谷駐屯地跡への引っ越し作業に着手、大型連休明けの5月初めには大規模庁舎群で新しい防衛中枢としての機能を始動させる。新庁舎群中央の防衛庁本館は地上19階(高さ86メートル)、地下4階、延べ床面積9万5000平方メートルと、単独の役所では中央省庁最大級の規模。

ゴラン高原PKO隊が出発

2000年1月28日 11時57分 共同通信社
 中東・ゴラン高原の国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)に参加する陸上自衛隊の国連平和維持活動(PKO)第9次隊(池田和典隊長)の第1陣23人が28日、家族や関係者に見送られて成田空港を出発した。9次隊は第12師団(群馬県)を中心に編成。2月19日までに隊員43人全員が順次現地入りし、第8師団(熊本市)中心の8次隊と交代。

陸上自衛隊の契約ずさん 「随意」が8割超える

1:28p.m. JST January 14, 2000
  陸上自衛隊の地方部隊による物品調達などの契約のうち、入札によらない随意契約が8割を超えるなど不透明な実態が、総務庁の行政監察でわかった。複数業者が順番に落札したり、多くの部隊が防衛庁の外郭団体と随意契約を結んだりするなど、ずさんな契約も目立つ。防衛庁はこれまで正面装備には特殊な技術が必要なことなどから随意契約が多くならざるをえないと説明してきたが、その他の物品でも透明性を欠いていることが浮き彫りになった。総務庁は14日、防衛庁に契約方法を改善するよう勧告するとともに「談合の可能性を否定できないケースもある」として公正取引委員会にも結果を提出した。

 防衛庁の調達実施本部(調本)幹部らの背任事件が発覚した1998年以降、総務庁が実施している行政監察の一環。今回は陸自24部隊の97年度の契約7万4000件余りを中心に調べた。随意契約の割合が84.0%に達する半面、一般競争入札は3.3%にとどまった。

 広島県海田町にある第350会計隊がパック牛乳調達のため行った指名競争入札では、5業者が順番に毎回同額で落札していたうえ、落札価格は予定価格と同じで、競争入札の効果が全く表れていないことが明らかになった。さらに食品洗浄や清掃作業の委託契約では、16部隊のうち15部隊までが防衛庁の外郭団体で、会長を防衛庁OBが務める財団法人・防衛弘済会と随意契約を結んでいた。

瓦防衛庁長官が次期防でハイテク新指揮艦導入の意向示す

6:57p.m. JST January 08, 2000
 訪米中の瓦力防衛庁長官は7日夜(日本時間8日午後)、サンディエゴのホテルで同行記者団の質問に答え、最新の情報通信機能を備え、被災地への援助活動や国連平和維持活動(PKO)などにも使える新型の指揮艦が必要だという考えを示した。年内に閣議決定する次の中期防衛力整備計画(2001―2005年度)に導入を盛る考えも表明した。部隊が活動している現場の沖合に停泊し、政府が導入を進めている情報収集衛星なども活用して指揮にあたるような使い方を想定している。

瓦長官は「自衛隊が使命感をもって役割を担い、堂々と誇りをもてるためには、防衛庁の国防省への昇格をまじめに考えなければならない」と述べ、省昇格を目指す考えも示した。

  来年1月から中央省庁が再編されるが、防衛庁はそのままになることが法律で定まっている。この時期に言及したのは、いったん新体制が始まってからでは、昇格が難しくなると判断したためとみられる。

国連代表部に自衛官を駐在武官として派遣 防衛庁方針

11:23a.m. JST January 08, 2000
  防衛庁は、米ニューヨークにある国連日本政府代表部に2001年度から、自衛官1人を駐在武官として派遣する方針を決めた。国連平和維持活動(PKO)など国連の決定の重要性が増していることに対処すると同時に、各国の防衛関係者との交流を深め安全保障に関する情報を集める狙いもある。
安保理常任理事国の米、英、ロシアなどをはじめ主要国のほとんどは国連に武官を派遣し、情報の交換を行っている。防衛庁では、1994年から同代表部に事務官の「背広組」を派遣していたが、今後、PKO参加への要請が高まるなどの見通しから「制服組」の派遣を決めた。

  海外では現在、約50人の駐在武官が34カ国に派遣されている。ルーマニアの駐在武官枠から振り分ける予定だ。

有事法制「研究にとどまらず整備を」 瓦防衛庁長官

1:08p.m. JST January 04, 2000
 瓦力防衛庁長官は4日午前、防衛庁で年頭のあいさつをし、日本が直接武力攻撃を受けた場合の自衛隊の行動などに関する有事法制について「研究にとどまらず、その結果に基づき法制が整備されることが望ましい」と述べた。これまで防衛庁による検討作業は立法を前提にしてこなかったが、法整備に向けた検討に着手したいとの意向を示した発言だ。

 有事法制をめぐっては、自民、自由、公明の与党安全保障プロジェクトチームが昨年、立法を前提にした検討を始めるよう政府に求めることで一致しており、瓦長官の発言はこうした与党の動向もふまえたものだ。

NEC、防衛装備品の過大請求額返納で約318億円支払い

99年12月24日 17時44分[東京 24日 ロイター]
 
 NECは、同社が防衛庁などに納入した装備品の供給契約における過大請求問題について、防衛庁などにより過大請求額として318億2866万7699円(うち延滞利息が54億6021万4390円)の支払いを求める納入告知書をきょう受領。納入告知に従い、同額を防衛庁などに返納することを決め、返納額の支払い手続きを完了した、と発表した。  返納額は、今2000年3月期の特別損失に計上するものの、有価証券売却益などで特別利益を計上するため、今期の業績予想に変更はない、としている。 

次期防4月までに概要策定

1999年12月29日 16時18分 共同通信社

 防衛庁は29日、次の中期防衛力整備計画(2001〜2005年度)に関する検討作業を年明けから本格化させ、遅くとも4月までに計画の概要を策定する方針を固めた。

 戦闘機などの滞空時間を延ばす空中給油機について「速やかに整備する」との方針を明記。これに沿って、2001年度予算の概算要求に導入経費を盛り込む意向だ。

「思いやり予算」マイナスで決着 大蔵の主張通る

10:38p.m. JST December 20, 1999
 来年度の在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)をめぐる政府内の折衝は20日、今年度より2.8%減の2603億円(契約ベース)とすることで決着した。大蔵原案に対し、防衛庁は復活要求しないことを決めた。施設整備費が5.4%減の809億円となったのが響いた。大蔵省によると施設整備費で概算要求を削り込んだのは初めて。思いやり予算をめぐっては日米の財政事情の逆転を受けて抑制を唱える大蔵省と、日米安保重視の立場から削減に抵抗する外務省・防衛庁の綱引きが繰り広げられたが、まずは大蔵省が主張を通した形だ。日本側の負担内容を定めた現行特別協定の期限を2001年3月に控え、新協定をめぐる交渉にも影響を与えかねない。

 思いやり予算は(1)施設整備(2)基地従業員の労務費(3)光熱水料(4)訓練移転経費――からなる。今回の折衝で削られたのは、日本側の判断で減額できる施設整備費。米軍横田基地など12基地で電気施設の改修などを一部先送りした。それ以外の項目は、大半が米国との特別協定に基づいているため削れなかった。防衛庁は「米側は日本の財政事情に配慮して理解してくれた」とみている。
ただ、思いやり予算をめぐっては批判的な世論が強まっているうえ、政府内にも「光熱費や水道代が実質的に使い放題になっていることに、国民の理解が得られるだろうか」と危惧する声がある。このため、外務省・防衛庁は、特別協定の改定に向け、協定で定めている領域まで大なたが振るわれることを警戒している。

F2開発また3カ月延長

1999年12月20日 13時23分 共同通信社
 垂直尾翼の強度不足とみられる異常振動が新たに明らかになった日米共同開発の次期支援戦闘機F2について、防衛庁は20日までに、補強など必要な改修措置をとるため、来年3月までの予定だった開発期間を3カ月間延長することを決めた。それに伴う飛行試験などを含む経費約6億円が来年度予算案で認められた。F2については、主翼に亀裂が見つかり、開発期間が約1年間延長されてきた。

空中給油機、早ければ再来年度にも導入

00:55a.m. JST December 18, 1999
 政府は17日夜の安全保障会議(議長・小渕恵三首相)で、戦闘機の航続距離・時間を延ばす空中給油機の導入問題について、来年度での発注を見送り、次の中期防衛力整備計画(次期防)の期間中(2001年度から5年間)に「速やかに整備する」方針を決めた。空中給油機の導入は、日本の防衛政策の根幹である専守防衛を揺るがしかねないとして、20年以上見送られてきた。今回の安保会議の方針が維持されれば、早ければ再来年度にも導入されることになる。
政府は、対中関係などを重視して導入に反対を唱える自民党幹部や公明党に配慮して、来年度予算での発注を断念。ただ、小渕首相は「基本的には必要性があると認識している」と防衛庁の方針に理解を示しており、与党側と防衛庁の双方に配慮した決着方法をとった。  

 17日の安保会議では(1)空中給油機については、次期防で速やかに整備を行う(2)来年度予算に必要な経費を計上する――の2点を決定。瓦力防衛庁長官は会議後の記者会見で「次期防で整備すると決まった以上、来年度中に発注することはない」と明言し、「必要な経費」は機種選定のための調査費などにとどめる考えを説明した。

空中給油機を導入

1999年12月10日 11時03分 共同通信社
 政府は10日、空中給油機を導入する方針を固め、与党側との最終調整に入った。14日にも安全保障会議(議長・小渕恵三首相)を開き、防空態勢向上の観点から空中給油機能は必要だとして正式に決定。2000年度予算案に、1機分約200億円を計上する段取りだ。来年の通常国会で予算案審議の焦点になるのは必至で、中国など周辺諸国が反発する可能性もある。

支援戦闘機F2の部隊配備延期に 防衛計画に影響も

08:55a.m. JST December 04, 1999
 航空自衛隊の支援戦闘機として初めて日米で共同開発したF2の部隊配備が、当初予定の来年5月をずれ込む見通しとなった。垂直尾翼の強度不足が明らかになり、技術実用試験の期間を延長する方針を防衛庁が固めたためだ。防空の主力となるだけに、実戦配備にまで影響が出れば、防衛整備計画の大幅な見直しを迫られることになる。

 防衛庁によると、トラブルが起きたのは、10月に実施された飛行試験の時。音速に近い速度で180度左旋回した際、予測を超える力がかかったという。航空機課では「予測値と実測値のずれは数%」と説明する一方で、過去の試験では、ずれはあったもののほとんどが予測値以下だったという。補強するなどの対処策とともに、来年度予算に追加の試験費を盛り込むことも検討中だ。

 防衛庁では、1996年度からすでにF2を36機発注。来年度は1機117億円で9機予算計上する方針だ。来年度内には航空自衛隊三沢基地(青森県)に配備されているF1支援戦闘機に替わり実戦配備が予定されている。
88年度から始まったF2の開発は当初、98年に終えるはずだった。振動や強度など数十カ所で異状が見つかり、たびたび延長され、今年5月には主翼に亀裂が入り、開発期間は来年3月まで延長したばかり。

有事立法化を首相に要請

1999年12月2日 19時43分 共同通信社
 自民、自由、公明3党は2日午後、安全保障プロジェクトチームの会合を開き、日本が直接武力攻撃を受けた際の自衛隊の行動を円滑にする有事法制について、政府として研究段階から法案作成など立法化に踏み出すよう、小渕恵三首相に3党で要請すべきだとの認識で一致した。
政府は既に、来年の通常国会への法案提出を目指して立法化準備に着手する意向を固めている。

海自と海保が共同訓練

1999年11月30日 17時56分 共同通信社
 今年3月の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の工作船事件を踏まえ、海上自衛隊と海上保安庁は30日、護衛艦や巡視船などによる共同対処訓練を能登半島沖の日本海で行った。

 海自と海保は10月に護衛艦や巡視船に搭載された機関銃などによる共同射撃訓練や、不審船対処の机上訓練を実施しているが、実際に部隊を動かす実動訓練は今回が初めて。

幕僚長らに調達入札の緊急監査を指示 瓦防衛庁長官

7:11p.m. JST November 08, 1999
 瓦力防衛庁長官は8日、陸海空各自衛隊の幕僚長と内局幹部に対し、1998年度の防衛装備品の調達について、長年にわたり企業側の受注シェアが固定していないかどうかなどを緊急に監査するよう指示した。防衛庁は調達実施本部を舞台にした背任・汚職事件をきっかけに、調達改革策を4月に打ち出したが、その後も航空燃料をめぐる談合事件や不自然な艦船修理の入札問題などが相次いでいるのを受けた措置だ。競争入札で調達した約3万件のうち千数百件を抜き出し、会計法令などから見て適正かどうか2月初めまでに監査する。

瓦力防衛庁長官「有事法制に向け努力」 部隊視察で訓示

6:19p.m. JST October 25, 1999
 瓦力防衛庁長官は25日、就任後初の部隊視察で訪れた海上自衛隊横須賀地方総監部で訓示し、日本が直接武力攻撃を受けた場合の自衛隊の行動などに関する有事法制について「自衛隊が円滑に対応しうるような体制づくりにこれまで以上に努力する。新たな時代にふさわしい、真に国民から頼りにされる自衛隊を目指していくことが肝要だ」と述べ、法制化に努力する考えを強調した。
瓦長官はまた、昨年8月の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)によるテポドン発射や今年3月の不審船事件に触れ、「防衛庁・自衛隊として、多様な事態に迅速かつ適切に対応できるよう、平素から備えておくことが肝要だ」とも述べた。

米空母停泊地に敦賀港浮上 「周辺事態」での補給拠点に

03:06a.m. JST July 10, 1999
 日本周辺地域の有事に備えて、米空母艦隊などの停泊地として、民間港である福井県敦賀港が浮上し、入港の際の問題点の有無などを日米の実務者レベルで検討していることが、関係者の話で明らかになった。新しい日米防衛協力のための指針(ガイドライン)による米軍支援に向けての作戦行動準備の一環として、日本海側の港から候補を絞り込んだ。朝鮮半島有事を想定していると見られる。これまで米空母が北海道・小樽港以外の民間港に入港したことはない。敦賀周辺には原子力発電所が多く、論議を呼びそうだ。

 政府関係者らによると、周辺事態法などが成立したことで、米軍の作戦行動を想定した検討が日米で続いている。米軍艦艇の燃料や物資の補給、修理などを支援する拠点をどこにするかが焦点の一つとなっている。

 日米で日常的に情報交換している一線の幹部らは、これまで空母が入港したことがほとんどない日本海側を中心に、主要港を網羅的に調査。朝鮮半島有事を想定した場合、地理的に重要な日本海側には空母が接岸できる港湾は少なく、米軍は陸上の補給路なども考慮して、敦賀入港を希望している。敦賀港以外にも複数の民間港が候補に挙がり、日本海では鳥取、島根両県にまたがる境港も検討されている。京都府の海上自衛隊舞鶴基地も検討されたが、港の形状や警備上の問題から当面、空母寄港の対象から外されたという。

 敦賀港で最も深い岸壁は水深12メートル(福井県管理分)で空母の接岸にはぎりぎりだが、2005年までに、5万トン級の大型貨物船が入港可能な水深14メートルの岸壁の建設を福井県などが進めており、予算のつき方次第では完成が早まるという。

 しかし、福井県は「原発銀座」と呼ばれるほど原子力施設が多く、敦賀市内だけでも4基の原子炉がある。新ガイドライン関連法案の審議では、衆院の公聴会が4月に福井市で開かれ、その際、公述人から「(高速増殖原型炉)もんじゅが攻撃されれば、プルトニウムが放出されて、日本の半分が壊滅的被害を受ける」などと懸念する指摘があった。

 周辺有事の際には、米軍の主戦力の一つは、神奈川県の米海軍横須賀基地に拠点を置く、第7艦隊の空母キティホークやミサイル艦などの艦隊になる。横須賀基地や長崎県の佐世保基地、沖縄のホワイトビーチが出撃拠点となると見られる。実際に戦闘が始まると、補給のほか、修理などのために緊急に入港できる複数の港湾が、作戦海域の近くに必要となる、と軍事専門家は指摘している。

F2戦闘機に空中給油装置装備へ 行動域が大幅拡大

03:09a.m. JST July 03, 1999
 航空自衛隊の支援戦闘機として防衛庁が来年3月に配備する予定で実用試験を進めているF2に、空中給油のための給油口が装備される。支援戦闘機は地上攻撃や対艦攻撃が主任務で、諸外国では「戦闘攻撃機」と呼ばれている。防衛庁が検討している空中給油機の導入が実現すれば、連動して運用され、能力的には行動半径が飛躍的に延びる。F2は最終的には130機が配備される構想で、日本が将来、敵基地攻撃の能力を持つ本格的な航空部隊を持つ可能性が浮上した形だ。

 F2は現在使われているF1に代わる支援戦闘機で、米国のF16戦闘機を基にして、空自の支援戦闘機として初めて日米共同で開発された。機体は複合材による一体成形で製造され、1機約117億円。昨年、試験中に主翼に異状が見つかり、試験期間が延長された。今年度中に青森県・三沢基地などに計3機が配備される計画だ。
 防衛庁によると、空中給油口は機体の背面にあり、飛行中に給油機から伸びた給油管を受けて、燃料給油を受ける。すでに強度試験は終了している。

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