TOPIC No. 2-68-2 自衛隊の機密漏えい事件

01.読売新聞記者に機密漏洩、自衛隊警務隊が1等空佐を聴取
02.中国潜水艦事故報道問題
03.秘密電子計算機情報流出等再発防止に係る抜本的対策について(平成18年3月28日)
04.本誌記事に見る“Winny流出”by Internet Watch
05.機密漏洩:日本の甘さ・中国の極刑!(2006.08.16.)京都政経調査会
06.潜水艦資料、中国に漏洩か 警視庁、防衛庁元幹部宅を捜索(2005-04-03) by不確かな軍事情報-ミリタリーブログ-

私物PCに大量データ 調査後に逃走の1等海尉

2008/03/08 中国新聞ニュース

 イージス艦中枢情報の資料が海上自衛隊内で流出した事件に絡み、「特別防衛秘密」(特防秘)を含む資料を私物パソコンに保存していたとして海自の内部調査を受け、直後に一時逃走した舞鶴地方総監部(京都府舞鶴市)警備隊の一等海尉(34)が、ほかにも大量の業務用資料やファイル交換ソフトを隠し持っていたことが七日分かった。

 データは秘密指定の資料を多数含む可能性があり、確認を急いでいる。海自のずさんな機密情報管理の実態が、また一つ明らかになった。

 一尉はデータを私物パソコンから記憶媒体を使い職場のパソコンに移しており、発覚したのは、舞鶴システム通信隊がウイルスを検知したのがきっかけだったことも判明。

 防衛省は私物パソコンから業務用データやファイル交換ソフトを削除するよう再三指示していたが、一尉は従わず、内部調査もすり抜けていた。海自は処分を検討する。

 関係者によると、一尉は約十年前から業務用データを私物パソコンに保存し始め、さまざまな配置先でデータを蓄積。特防秘を含む資料は、海自第一術科学校(広島県)を中心に拡散したイージス艦の中枢情報とみられる。一尉は過去に同校に入校していたことがあるという。  一尉は自宅にパソコンを五、六台所有。うち一台にファイル交換ソフトが入っていたが、業務用データが入ったパソコンとは別だった。海自はハードディスクなどの中身を調べ、外部流出がなかったか確認している。  一尉は二月二十三日に東京・市谷の防衛省で事情聴取され、上官とともに舞鶴地方総監部に戻る途中のJR京都駅で「たばこを吸う」と言い残し逃走。三月五日夜、舞鶴市内の弁当店から出てきたところを発見された。

秘密保全協定に署名、発効 麻生外相と駐日米大使

2007/08/11 中国新聞ニュース

 麻生太郎外相とシーファー駐日米大使は十日、軍事秘密の保全に関する規則を網羅的に定めた「日米軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)に外務省で署名、発効した。米軍と自衛隊によるミサイル防衛(MD)システムの導入など日米軍事一体化の加速を反映した動きだ。協定の国会承認は必要としない。

 政府は協定に連動して新たな罰則法令を定めないとしているが、将来的には守秘義務の拡大などで国民の「知る権利」が大きく制約される懸念もある。

 GSOMIAは、米国が同盟国や友好国との二国間で秘密軍事情報を提供し合う際、第三国への漏えい防止を目的として、これまで四十カ国以上と締結。新たに米軍や自衛隊の作戦・訓練情報、日米共同研究・開発に関する技術情報も対象とし、政府関係者や関連企業に対し広範囲に守秘義務を課す。

 これまで日米間では「日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法」などで、米国から提供された船舶、航空機、武器に関する秘密保全を義務付け、違反者には罰則を科してきた。

 協定は秘密軍事情報の定義について、情報を提供する側の国家安全保障のために保護を必要とする情報と明記。その形態に関しては口頭、映像、電子、磁気、文書、装備、技術と幅広く規定している。MDやイージス艦の戦術データや暗号情報、有事の際の共同作戦に必要な情報などが網羅的に含まれる見通しだ。

 具体的な措置として、秘密軍事情報にアクセスできる者を制限し、厳重な取り扱いと保管などを規定。政府が装備品などの研究・開発のため契約した企業と厳格な守秘義務契約を交わし、定期的な保安検査を実施することも盛り込んだ。

防衛省 情報保全隊本部設置へ 漏洩防止、機能を強化

2007/07/29 The Sankei Shimbun WEB-site

 防衛省は28日、海上自衛隊のイージス艦中枢情報流出事件を受け、防衛相の下に各自衛隊の統合部隊として、来年4月にも「情報保全隊本部」を設置する方針を固めた。同省で相次いでいる情報流出に米国が懸念を示していることを踏まえ、情報収集・保全体制を整える狙いで、8月に小池百合子防衛相が訪米してこの構想を米側に伝える。

 情報保全隊本部は、防衛相直轄の部隊としておかれ、主に秘密保護を担当。全国に5つの地方方面隊も作る。また、防衛相の下に事務次官を委員長とし、各幕僚長らをメンバーとするカウンターインテリジェンス(対諜報(ちょうほう))委員会も設置する。

 イージス艦中枢情報流出事件では、事情聴取を受けた2等海曹の妻が中国人だったことから、米側は日本に繰り返し「情報が中国に流れていないことの証明を求めてきている」(海自幹部)。米側に情報保全隊本部の設置を伝えることで、日本の取り組みをアピールしたい考えもある。

 防衛省にはインテリジェンス(情報・諜報)機関として情報本部がすでに設置されており、同本部と情報保全隊本部がそれぞれ得た情報を基に、防衛省全体の情報収集、保全機能を強化する。陸上、海上、航空各自衛隊内部に置かれ、それぞれの組織内で司法警察機能を果たしている警務隊を、統幕の下に一元化し、その機能を強化することも検討している。

 米下院歳出委員会は25日、最新鋭ステルス戦闘機「F22Aラプター」の技術が日本を通じて中国など第3国に移転する懸念から、禁輸措置を継続することを決定。日本政府は来年夏までに決定する次期主力戦闘機(FX)の最有力候補にF22を据えていたが、禁輸措置の継続で来年9月末まではF22の情報を得られなくなった。

 情報保全隊本部の設置は、イージス艦中枢情報流出事件がFX選定問題に波及し、日米同盟に実害を生じたことの教訓によるものでもある。

海自イージス情報漏えい 関与幹部は数人 週明け一斉捜査

2007/06/02 中国新聞ニュース

 「特別防衛秘密」に該当するイージス艦中枢情報の資料が海上自衛隊内に流出、拡散した事件を捜査している神奈川県警と海自警務隊は一日までに、資料の流出や拡散に中心的に関与した可能性が高い海自の幹部隊員を数人に絞り込んだ。

 週明けにも、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法違反容疑で、この数人の自宅や関係先などを一斉に家宅捜索、関係者からさらに事情聴取を進め、同法違反容疑での立件に向けて詰めの捜査を急ぐ。

 県警などが中心的に関与した可能性が高いとみている幹部隊員は、資料を作成したプログラム業務隊(現開発隊群、神奈川県横須賀市)の勤務経験者や、拡散の舞台とされる第一術科学校(広島県江田島市)砲術科の教官経験者ら数人。

 関係者によると、業務隊に勤務した経験があり「よかれと思って資料を(同学校に)渡した」と供述しているとされる三等海佐や、同校元教官で「勝手に別の教官が持っていた資料をコピー、学生に渡した」と供述しているという一等海尉らが含まれるとみられる。

 ほかにも関与をほのめかす幹部がいるが、供述に食い違いや変遷があるため、県警などは全容の解明には個人宅などに対する強制捜査が必要と判断した。

 これまでの調べでは、資料はイージス艦で高度な防空システムを扱う幹部隊員の教育用に一九九八年以降に作成。その後、持ち出されて同校に渡り、ミサイルなどによる射撃を教育・訓練する砲術科の教官の記憶媒体に保存されたとみられる。

 県警などは、業務隊や同校の教官、学生だった隊員ら約三百人から事情を聴くとともに、五月十九日には、同法違反容疑で第一術科学校を家宅捜索。砲術科の教官室などからパソコンや記憶媒体、管理台帳などを押収し、解析を進めている。

 また警務隊などは、同校の元教官でテロ対策特別措置法に基づきインド洋で任務中の護衛艦艦長についても、任意で聴取する方針を既に決めている。

インド洋派遣艦長も聴取へ 任務中、警務隊員を派遣

2007年05月25日 中国新聞ニュース

 イージス艦中枢情報の資料が海上自衛隊内に流出、拡散した事件を捜査している海自警務隊は24日までに、テロ対策特別措置法に基づいてインド洋で活動している護衛艦艦長の2等海佐(47)から事情聴取するため、隊員を派遣する方針を固めた。

 海外任務中の幹部に対する聴取は極めて異例。艦長は、資料が拡散した舞台とされる海自第1術科学校(広島県江田島市)の元教官で、拡散への関与の有無を検討する上で、聴取が不可欠と判断したとみられる。

 同校については、神奈川県警と警務隊が既に、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法違反容疑で家宅捜索している。

 これまでの県警などの調べでは、資料は海自横須賀基地(神奈川県)にあったプログラム業務隊で1998年以降に作成され、同学校を舞台に教官らから学生らに拡散したとみられている。

江田島の海自第1術科学校を捜索 イージス艦の機密情報漏えいで

2007/05/19 中国新聞ニュース

 海上自衛隊護衛艦「しらね」の二等海曹(33)が「特別防衛秘密」を含むイージス艦中枢情報の資料を隠し持っていた事件で、神奈川県警と海自警務隊は十九日、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法違反容疑で海自第一術科学校(江田島市)を家宅捜索した。

 自衛隊施設に対する同法違反容疑での強制捜査は一九五四年の法施行後、初めて。資料は第一術科学校を舞台に多数の隊員の間に拡散した疑いが強く、県警などは立件を視野に押収資料の分析を進め、漏えいルートなどの徹底的な解明を進める。

 県警と海自警務隊はこれまでに、同校の教官や学生だった隊員数百人から事情聴取したが、供述に食い違いや変遷が目立つため、家宅捜索が不可欠と判断した。

 捜索は午前八時ごろから計約四十人態勢で行われ、ミサイルなどによる射撃を教育・訓練する砲術科の教官室などからパソコンや記憶媒体、管理台帳などを押収した。

 これまでの調べでは、資料は、米国が開発したイージス艦で高度な防空システムを扱う幹部隊員の教育用に、横須賀基地(神奈川県)にあった「プログラム業務隊」が作成。これが何らかの形で持ち出されたとみられ、第一術科学校・砲術科の主任教官の光磁気ディスク(MO)に保存されていた。

 同校の教官だった一尉(48)が学生だった海曹クラスの隊員にコピーさせるなどして拡散し、最終的に二曹に渡った疑いが強いことが分かっている。

 一尉は、主任教官だった三佐(43)から入手し、授業で使ったという趣旨の説明をしたが、三佐はこれを否定。一方、三佐は「教官らの間で資料が引き継がれていた」と説明したが、前任や後任の主任教官らは「引き継ぎ」を否定するなど食い違っている。

 この事件は、二曹の中国人妻(33)に対する入管難民法違反事件(実刑確定)で、県警が二曹の神奈川県横須賀市内の自宅を家宅捜索した際、イージス艦資料などが記録された外付けハードディスクを押収し、発覚。

 先月末、ワシントンで開かれた久間章生防衛相とゲーツ米国防長官の日米防衛相会談でも事件に関する言及があり、ゲーツ長官が軍事機密の漏えいに強い警戒感を表明した。

イージス艦情報流出、日米が再発防止確認へ あす防衛相会談

2007/04/29 中国新聞ニュース

 久間章生防衛相とゲーツ米国防長官が三十日にワシントンで開く日米防衛相会談で、海上自衛隊の二等海曹がイージス艦中枢情報の資料を隠し持っていた事件を主要議題の一つとして取り上げ、再発防止に全力を挙げる方針を確認することが分かった。複数の日米関係筋が二十八日、明らかにした。

 日米安保体制の最高機密とされるイージス艦の情報を保全できない日本の情報管理の不徹底ぶりを米側が深刻視していることの表れといえる。久間氏は自らを議長とする「情報流出対策会議」を発足させて原因究明と再発防止に取り組んでいると説明、米側の理解を得たい意向だ。

 日米関係筋によると、防衛当局間の事前調整で、米軍再編やミサイル防衛(MD)システム構築の推進、「軍事情報に関する一般的保全協定」(GSOMIA)の締結合意と合わせ、イージス艦情報の流出に関して突っ込んで協議することで一致。議題の中で情報流出事件の優先度は、北朝鮮や中国情勢よりも高く位置付けられている。

 米軍再編やMDシステムで同盟強化を目指す中、情報管理の甘さを放置すれば両国の信頼関係が揺らぎかねない。早期に問題解決と再発防止の方針を確認して、強固な日米関係を対外的に示す必要性があるとの判断も働いたようだ。

 二曹が隠し持っていた資料には極めて秘匿度が高い「特別防衛秘密」に該当する「イージスシステム」のデータが含まれていたことが判明。同システムはMDの中核を担っており、漏えいの事実を把握した米海軍が海自に厳重に抗議した。

 関係筋によれば、米側は三月の事件発覚直後、流出データと米イージス艦の関連を点検。警察当局が押収したデータがコピーなどで拡散しないよう海上自衛隊警務隊に移管させるなど神経をとがらせている。

江田島の術科学校内で引き継ぎ イージス情報漏えいで元海自教官説明

2007/04/28 中国新聞ニュース

 海上自衛隊の護衛艦「しらね」の二等海曹がイージス艦中枢情報の資料を隠し持っていた事件で、資料が拡散した舞台とみられる海自第一術科学校(江田島)の元教官だった三等海佐が、神奈川県警と海自警務隊の調べに「教官らの間で資料が引き継がれていた」と説明していることが二十八日、分かった。

 県警や海自警務隊は、イージス艦の防空・迎撃能力を示す秘匿度の高いデータを含む資料が同学校で拡散したとみて、教官や学生だった隊員らから詳しく事情を聴き、漏えいルートの特定を急いでいる。

 調べでは、資料はイージス艦で防空システムを扱う幹部隊員の教育用に「プログラム業務隊」に所属していた三佐が一九九八年ごろに作成した。

 これまでの捜査で、同学校の教官だった一尉や学生だった三曹らが資料を持っていたとみられることが判明。教官や学生だった隊員らから一斉に事情を聴いたところ、元教官だった三佐が「砲術科の佐官クラスの主任教官らが資料を引き継いでいた」という趣旨の説明をしたという。

 県警などは、教官らが学生だった海曹クラスの隊員らに資料を渡し、コピーが繰り返されるなどして拡散し、最終的に二曹に渡った可能性があるとみている。

海自第1術科学校で拡散か イージス艦情報漏えい

2007/04/25 中国新聞ニュース

 海上自衛隊の護衛艦「しらね」の二等海曹がイージス艦中枢情報の資料を隠し持っていた事件で、海自第一術科学校(江田島市)の教官だった一尉と学生だった隊員らが同じイージスの資料を所持していたことが二十五日、神奈川県警と海自警務隊の調べで分かった。

 県警などは、一尉が何らかの方法で入手した資料を学生だった海曹クラスの隊員らに渡し、コピーが繰り返されて拡散、最終的に二曹に渡った可能性が高いとみて、漏えいルートの特定を急いでいる。

 資料はイージス艦で高度な防空システムを扱う幹部隊員の教育向けに「プログラム業務隊」に所属していた三佐が作成したことが分かっている。

 県警などは、三佐が作成した資料を一尉が入手した経緯について調べている。

 第一術科学校は、海自の護衛艦などに乗り組む隊員に、射撃、魚雷、掃海、潜水などを教育・訓練する中級幹部養成機関で、砲術科などでイージス艦の運用についても教育している。

 二曹が隠し持っていた資料には、イージス艦の防空・迎撃能力を示す「特別防衛秘密」に該当する極めて秘匿度が高い数値データなどが含まれていた。

イージス情報、1尉元教官から拡散 教材…30人以上複製

2007/04/25 Iza

 海上自衛隊第1護衛隊群(神奈川県横須賀市)の2等海曹(33)がイージス艦の中枢情報などを持ち出していた事件で、流出した情報は海自第1術科学校(広島・江田島)元教官の1尉(48)が、学生ら30人以上に内容をコピーさせたことで拡散し、最終的に2曹に渡っていたことが24日、神奈川県警と海自警務隊の調べで分かった。流出情報には「特別防衛秘密」に該当するものが含まれ、海自の秘匿性への認識の甘さと、ずさんな情報管理が改めて浮き彫りになった。

 調べでは、流出したイージス艦中枢情報は、海自艦艇のコンピューターシステムの保守・管理を担当する「プログラム業務隊」(既に解散)に所属していた3佐(43)が作成。幹部教育用の資料としてパソコンのファイルに保存していた。

 このファイルのコピーが繰り返され、横須賀地方隊の護衛艦「しらゆき」に勤務する3曹(30)に渡り、2曹は3曹からファイルごとコピーしていた。2人は護衛艦「はつゆき」での勤務で接点があった。

 その後の調べで、第1術科学校の教官だった1尉がプログラム業務隊の3佐が作成したファイルと同一のファイルを所持していることが判明。1尉は捜査当局の聴取に「指導した学生に教材の一種として複製させた」と供述しており、学生ら30人以上が同じファイルをコピーしていたことが新たに分かった。

 3曹は術科学校とは無関係で、学生らに流れたファイルを何らかの形で入手したとみられる。

 1尉はファイルの入手元について「覚えていない」としているが、術科学校の同僚教官だった別の3佐(43)も同じファイルを所持しており、この3佐が着任するまでは1尉がファイルを入手していなかったことなどから、捜査当局はまず、作成者の3佐から術科学校の元教官の3佐へファイルがコピーされたとみて調べている。

 第1術科学校は主に艦艇に乗り組む幹部に砲術、水雷、掃海、航海、通信などの専門知識や技能を習得させる幹部養成機関。イージス艦についての教育も行われていた。

 一方、防衛省は24日、第1回目の「情報流出対策会議」を開催、再発防止策を徹底させる「特別行動チーム」の編成などを決めた。

資料作成の海自3佐聴取 イージス艦情報漏えい

2007年04月20日 西日本新聞

 海上自衛隊の護衛艦「しらね」の2等海曹(33)がイージス艦中枢情報の資料を隠し持っていた事件で、海自警務隊などは16日までに、イージス艦で高度な防空システムを扱う幹部隊員の教育用にこの資料を作成した3等海佐から参考人として事情聴取した。

 2曹がハードディスクに記録していた資料には、イージスシステムの防空・迎撃能力を示す「特別防衛秘密」に該当する極めて秘匿度の高い数値データなどが明記されていたが、3佐は「(作成した資料には)書き込んでいなかった」という趣旨の説明をし、漏えいへの関与も否定した。

 警務隊などは、作成当時に3佐が所属していた「プログラム業務隊」から資料が持ち出された後、数値データが書き込まれた可能性があるとみて、慎重に捜査を進めている。

 これまでの調べなどでは、問題の教育資料は、1998年ごろ、イージス艦のシステムが更新された後、装備のシステム管理などを担当するプログラム業務隊に所属していた3佐が、幹部隊員の教育用に作成。

海自情報持ち出し:イージス艦情報流出、海自幹部ら聴取

2007年04月17日 毎日新聞 東京夕刊 Mainichi INTERACTIVE

 海上自衛隊第1護衛隊群(神奈川県横須賀市)の2等海曹(33)がイージス艦情報の入ったファイルを持ち出していた事件で、神奈川県警と海自警務隊は、ファイルを作成したプログラム業務隊(当時)の3等海佐を含む幹部自衛官ら約10人から任意で事情聴取を始めた。いずれも情報流出への関与を否定しているという。2曹周辺の下士官にも順次事情を聴き、流出経路の特定を進める。

 県警は、イージス艦の中枢情報であるイージスシステムの保守管理をしていた同隊所属の3佐や佐官・尉官クラスの幹部自衛官らからファイルの取り扱い実態などの事情聴取を進めている。3佐はファイル作成者として名前が記録され、幹部はファイルを管理・複写できる立場にあった。

 ファイルは幹部自衛官の教育用に98年ごろ作成され、約800ページのうち十数ページにイージスシステムの能力数値などが含まれていた。日米相互防衛援助協定に伴う秘密保護法が他人に漏らすことを禁じている「特別防衛秘密」(特防秘)にあたる。

 一方、2曹にファイルを渡した可能性があるとして同法違反容疑で自宅を家宅捜索した3等海曹(30)は、2曹と横須賀地方隊の護衛艦「はつゆき」で一緒に勤務していた。当時の同僚下士官からも事情聴取を進めている。

海自3曹宅を家宅捜索/イージス艦中枢情報漏えい

2007/04/16 四国新聞

 海上自衛隊の護衛艦「しらね」の2等海曹(33)がイージス艦の中枢情報を隠し持っていた事件で、神奈川県警が日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法違反容疑で、2曹が情報の入手先として挙げた護衛艦「しらゆき」の3等海曹(30)宅を家宅捜索、任意提出されなかったパソコン関連機器などを押収していたことが16日、分かった。

 同法違反容疑での強制捜査は異例。2人とも、極めて秘匿度が高い「特別防衛秘密」に該当する情報に職務上接する権限はないとみられ、県警はさらに別の幹部隊員が関与したとみて漏えいルートを捜査している。

 県警などによると、家宅捜索は13日、神奈川県横須賀市内の3曹宅で行われた。

 2曹と3曹は2003年9月まで、護衛艦「はつゆき」で一緒に勤務。2曹は3曹宅に居候していた時期があったという。

武器庫の見取り図など流出 陸自、また「ウィニー」

2007年04月09日 中国新聞ニュース

 小銃、拳銃の保管場所を明記した陸上自衛隊松戸駐屯地(千葉県松戸市)の武器庫見取り図などの内部情報が、同駐屯地での勤務歴がある2等陸曹の私物パソコンからファイル交換ソフト「ウィニー」を通じて3月末にインターネット上に流出していたことが9日、分かった。

 秘密情報は含まれていなかったが、同省は処分する方針。自衛隊では同ソフトによる情報流出が相次ぎ、防衛省は昨年2月、自衛官を含む全職員に業務用データの私物パソコンへの保存禁止と過去の保存データ削除などを指示したが、2等陸曹は従っていなかった。

 海上自衛隊の2等海曹がイージス艦の中枢情報を隠し持っていた問題でも、指示に従っていなかったことが明らかになっており、隊員の情報管理意識の低さがあらためて浮き彫りになった。

 2等陸曹は現在、陸自下志津駐屯地(千葉市)に所属し、防空を担う高射部隊の後方支援を担当。

中国新鋭艦に「イージス頭脳」 米でも軍事情報流出

2007/04/07 Iza

 海上自衛隊第1護衛隊群の男性2曹(33)がイージス艦の中枢情報などを持ち出していた事件が日本政府を揺るがしている中、海の向こうの米国でもイージスシステムの仕様などが含まれていたとみられる情報が中国に流出していた。太平洋をまたいで安全保障上の深刻な問題が鮮明になっている。

 米カリフォルニア州サンタアナの連邦地裁で、米海軍の技術情報を約20年間にわたり中国に提供していた中国系グループの公判が始まった。中国側に渡った情報には、米海軍艦に搭載されたイージスシステムの仕様なども含まれていたとみられる。中国は2004年からこのシステムを搭載した国産の新型駆逐艦2隻をすでに就役させており、米捜査当局は中国の軍備近代化を支えた米国内での情報活動を公判で立証する構えだ。

 起訴されたのは、米海軍の技術開発などを受注するパワー・パラゴン社(カリフォルニア州アナハイム)の技術主任、チー・マック(麦大智)被告(66)と実弟、妻らいずれも中国系の計4人。国防情報を不法に対外提供した罪など15の罪状で起訴され、3月28日から公判が始まった。

 米司法省の発表では、マック被告らは2005年10月、米海軍艦船の先端技術情報を記録したCD−ROM(読み出し専用メモリー)を中国に持ち出そうとした。連邦捜査局(Federal Bureau of Investigation=FBI)は、本に隠したこのCDを持って香港に出国しようとしたマック被告の実弟夫婦をロサンゼルス空港内で逮捕、マック被告夫婦も自宅内で逮捕していた。

 調べに対して、マック被告は「中国を助けたかった」と認める半面、情報はいずれも機密には当たらない、として無罪を主張している。マック被告らは、1980年代前半に米国に移り住んでいた。

 捜査当局が立件した情報は、潜水艦の推進機関に関する技術だったが、マック被告の自宅からは開発中の次世代駆逐艦(DDX)に関する機密文書も見つかるなど、被告らは83年から米国で軍事技術に関する情報を収集していたとみられる。

 軍事情報に詳しいワシントン・タイムズ紙のビル・ガーツ記者は、中国の対米情報活動を描いた著書「エネミーズ(敵)」でこの事件を取り上げ、米当局者の話として、マック被告がイージスシステムに関する技術情報を盗み出していたと指摘。中国が2004年に就役させた「ルーヤン(旅洋)2型」ミサイル駆逐艦に「このイージス技術が組み込まれた」(米当局者)としている。(ワシントン 山本秀也)

               ◇

 ■ルーヤン(旅洋)2型ミサイル駆逐艦 2004年に中国海軍に就役が確認されたランチョウ(蘭州)級駆逐艦を指す欧米での名称。排水量6500トン。同時に複数の対空目標を捕らえるフェーズドアイ・レーダーを搭載していることから、「中国版イージス艦」とも呼ばれる。中国が空母を就役させた場合、戦闘群の防空を担うとみられている。05年には2番艦のハイコウ(海口)が就役した。

               ◇

 ■イージス艦情報持ちだし事件 神奈川県警が今年1月、海自2曹(33)の中国籍の妻を入管難民法違反容疑で逮捕したことで発覚した。2曹の自宅を家宅捜索した際、護衛艦のレーダーのデータや通信関係の周波数などを記録したフロッピーディスクなどを押収した。

2曹の中国籍妻、ハニートラップ? イージス情報持ち出し

2007/04/07 The Sankei Shimbun WEB-site

 海上自衛隊の護衛艦「しらね」乗組員の2等海曹(33)がイージス艦の秘密情報を持ち出した問題で、大宅賞ジャーナリストの加藤昭氏は7日付の夕刊紙「夕刊フジ」で、2曹の中国籍の妻(33)が、男性を誘惑して情報を入手する「ハニートラップ」を仕掛けていた可能性を指摘した。

 加藤氏のリポートによると、福建省出身の「陳」と称する2曹の妻は、昨年12月に自らオーバーステイだとして入国管理局に出頭した際、「すべて終わった」と語った。防衛省幹部はこの言葉の意味を、「日本の機密情報管理の甘さをあざ笑い、『イージス艦情報はもらった』と任務完了を宣言したのではないか」と推測している。

 2曹の妻は3年前、東京都内で窃盗容疑で逮捕され、強制退去処分を受けた。間もなく日本に再入国し、横浜中華街で働いていた。知人の紹介で2曹と知り合い、昨年10月に結婚したが、防衛省幹部は「中国の秘密組織が仕掛けたハニートラップの可能性も高い」としている。

 また、同幹部は「イージス艦の機密情報に関するデータにアクセスできるのは『特定管理責任』が問われる限られた人間だけ」と述べ、本紙既報の佐官級の関与を示唆。持ち出された機密データの内容として、イージス艦の運用システム(操船技術)や構造図面、レーダーの周波数などの中枢情報を挙げている。

 加藤氏は「日本の安全保障の最前線ではこの種の話がゴロゴロ転がっている。安倍内閣は機密保全を高めるため、外国のスパイや協力者を処罰する法律を早急に整備すべきだろう」と提言し、リポートを結んでいる。

イージス艦問題 中枢情報漏えい 海自二曹立件へ 米が厳重抗議

2007年04月04日 西日本新聞朝刊
 

 海上自衛隊第一護衛隊群(神奈川県横須賀市)の護衛艦「しらね」乗組員の男性二等海曹(33)がイージス艦などに関する情報を隠し持っていた問題で、情報の中に極めて秘匿度が高い「イージスシステム」の中枢情報が含まれていたことが3日、神奈川県警などの調べで分かった。

 県警は、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法が規定する「特別防衛秘密」に該当すると判断、同法違反(探知、収集、漏えい)容疑での立件に向け関係機関と協議を始めた。

 イージスシステムは世界最高水準の防空、迎撃システムで、ミサイル防衛(MD)でも中心的な役割を果たしており、漏えいの事実を把握した米海軍は海自に厳重に抗議。日米安保体制に影響を与える可能性も出てきた。

 二曹はこれまでの県警の任意聴取に対し、外部への情報提供は否定しているが、米国は、同盟国のうちごく一部にだけ供与しているイージス艦の“心臓部”の情報が持ち出されたことに衝撃を受けている。

 県警などのこれまでの調べでは、イージス艦に関する情報を記録したハードディスク(HD)は、県警が今年1月に二曹の妻=中国籍=に対する入管難民法違反容疑で二曹の自宅を家宅捜索した際に、護衛艦のレーダーのデータや通信関係の周波数などを記録したフロッピーディスクなどとともに発見、押収した。

 県警などが、HDに記録された情報を詳しく分析した結果、イージス艦の中枢システムの概要が把握できるデータなどが含まれているのが分かり、防衛省も確認した。

 二曹は、しらねとは別の艦艇に乗り組む海曹クラスの同僚隊員から入手したとされるが、二曹も同僚もこうした情報に職務上接する権限がないため、県警はさらに別の幹部隊員がかかわっている疑いが強いとみて入手経路や目的を調べている。

■日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法

 1954年施行。日米相互防衛援助協定に基づき米国から供与された船舶、航空機などの構造、性能を「特別防衛秘密」とし、(1)日本の安全を害する用途に供する目的で秘密を探知・収集(2)秘密を取り扱うことを業務とする者が業務上知った秘密を漏えい‐するなどした場合の法定刑は10年以下の懲役。

秘密保護法違反で立件へ/イージス中枢情報漏えい

2007/04/04 四国新聞

 海上自衛隊第1護衛隊群(神奈川県横須賀市)の護衛艦「しらね」乗組員の男性2等海曹(33)がイージス艦などに関する情報を隠し持っていた問題で、情報の中に極めて秘匿度が高い「イージスシステム」の中枢情報が含まれていたことが3日、神奈川県警などの調べで分かった。

 イージスシステムは世界最高水準の防空、迎撃システムで、ミサイル防衛(MD)でも中心的な役割を果たしており、漏えいの事実を把握した米海軍は海自に厳重に抗議。日米安保体制に影響を与える可能性も出てきた。

 県警は、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法が規定する「特別防衛秘密」に該当すると判断、同法違反(探知、収集、漏えい)容疑での立件に向け関係機関と協議を始めた。

 2曹はこれまでの県警の任意聴取に対し、外部への情報提供は否定しているが、米国は、同盟国のうちごく一部にだけ供与しているイージス艦の“心臓部”の情報が持ち出されたことに衝撃を受けている。

漏洩の2曹、イージスシステム中枢情報も持ち出し

2007/04/04 The Sankei Shimbun WEN-site

 海上自衛隊第1護衛隊群(神奈川県横須賀市)の男性2曹(33)がイージス艦の情報を持ち出していた事件で、漏洩(ろうえい)したイージス艦に関する情報は約800ページに及び、極めて秘匿度が高い「イージスシステム」の中枢情報が含まれていたことが3日、警察当局の調べで分かった。こうした情報は日米相互防衛援助協定に基づく秘密保護法に規定された「特別防衛秘密」にあたり、警察当局は秘密保護法違反(収集など)容疑での立件を視野に、海自など関係機関と協議を始めた。

 神奈川県警が、2曹の自宅から押収したハードディスクやフロッピーディスクを分析した結果、イージス艦に関する膨大な情報の中に「指定前機密」「極秘」「秘」などと記載された資料があることが判明。いずれもイージス艦の機能などを項目ごとに解説したもので、イージスシステムの情報も含まれていた。

 イージスシステムは世界最高水準の対空レーダーシステムで、高性能レーダーとミサイルをコンピューターで制御し、敵の航空機やミサイルを迎撃する。

 特に、イージス艦の最大の特徴である「SPY−1D」と呼ばれる米海軍が開発した高性能レーダーの能力に関するデータは「ほとんどが『秘』以上にあたる」(防衛省幹部)という。

 レーダーは常に360度の監視が可能で、100以上の目標を同時に探知、追尾できる迎撃システム。秘匿性が高いため、米政府は当初、日本への提供に難色を示していたとされる。日本側の情報管理の甘さが露呈すれば、米側の反発を買うのは必至だ。

 県警と警務隊は2曹が持ち出したイージスシステムの情報について、米軍側にも照会し、慎重に調べを進めている。

 2曹は県警の調べに対し、かつて同じ護衛艦で勤務した複数の同僚隊員のパソコンからデータをコピーし入手したなどと供述。県警と警務隊は名指しされた隊員に事情を聴くなど調べを進めているが、いずれも秘密情報に接触できる役職・階級になく、情報の流出源と断定できないため、別の隊員がかかわった疑いが強いとみて調べている。

 秘密保護法では、米国から供与された武器などの構造や性能などの特別防衛機密を、不当な方法で探知、収集したり、業務で扱うものが漏洩した場合、10年以下の懲役としている。

■イージス艦情報持ちだし事件 神奈川県警が今年1月、2曹の中国籍の妻を入管難民法違反容疑(不法残留)で逮捕したことで発覚した。県警は2曹の自宅を家宅捜索し、護衛艦のレーダーのデータや通信関係の周波数などを記録したフロッピーディスクなどを押収した。2曹は平成7年から11年にイージス艦「きりしま」に乗っていた。

イージス艦情報も隠し持つ 海自2曹、入手経路を捜査

2007年03月30日 中国新聞ニュース

 海上自衛隊第1護衛隊群(神奈川県横須賀市)の護衛艦「しらね」乗組員の男性2等海曹(33)が、護衛艦の秘密情報を隠し持っていた問題で、情報の中にイージス艦に関するものが含まれていることが30日、神奈川県警の調べで分かった。

 日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法は、米国から供与された防衛装備の性能などに関するものなど秘匿度が高い情報は「特別防衛秘密」と規定。県警はイージス艦に関する情報がこの特別防衛秘密に該当する可能性もあるとみている。

 また、2曹は職務上、イージス艦に関する情報には接触できないことから、県警は別の隊員が情報を持ち出し、2曹に渡したとみて、入手経路などを調べている。

 今年1月、県警が入管難民法違反容疑で2曹の妻=中国籍=を逮捕し、2曹の自宅を家宅捜索した際に、護衛艦のレーダーのデータや通信関係の周波数などを記録したフロッピーディスク(FD)などとともに発見、押収した。

1等空佐、書類送検へ 防衛秘密漏洩の疑い

2007年03月02日 Gooニュース(asahi.com)

 中国海軍の潜水艦が事故のため南シナ海で航行不能と報じた05年5月の読売新聞記事をめぐり、機密情報の漏洩(ろうえい)ルートを捜査してきた防衛省・自衛隊内の警察組織である警務隊は、同省情報本部の1等空佐(49)が読売新聞記者に情報を提供したとして、自衛隊法違反(防衛秘密の漏洩)の容疑で「起訴相当」の意見を付けて東京地検に書類送検する方針を固め、検察当局と詰めの調整に入った。01年の自衛隊法改正で新設された「防衛秘密」の漏洩容疑で自衛官が書類送検されるのは初めて。

 1佐は記者への情報提供を認めているという。同改正では防衛秘密漏洩の教唆の罪も新設され、取材記者も教唆罪の対象となったが、現時点では「通常の取材活動であり、教唆犯には当たらない」とみている模様だ。

 この記事は05年5月31日付朝刊に掲載された。潜水艦を中国海軍所属の「明」級のディーゼル式攻撃型潜水艦と特定し、「300番台の艦番号がつけられている」ことなどを日米両国の防衛筋が確認したと報じた。

 記事中には米側から提供された極秘情報も含まれていたことから、日本側は米側から情報管理の徹底について強い要請を受けた。記事掲載直後、防衛庁調査課(当時)は被疑者不詳のまま自衛隊法違反容疑で警務隊に刑事告発していた。

 警務隊の調べでは、1佐は知人を介して知り合った読売新聞記者に対し、記事掲載の直前、中国の潜水艦に関する情報を漏洩した疑い。1佐の供述と、記事に掲載された事実を照らし合わせた結果、1佐の漏洩の容疑が固まったと判断した。

 防衛省によると、記者の取材の手段・方法が(1)贈賄や脅迫など刑罰法令に触れる場合(2)情を通じるなど社会通念上是認できない態様である場合――には教唆犯が成立するとされる。警務隊は1佐の事情聴取の結果、(1)や(2)に該当する行為はないと判断している模様だ。

 報道機関への情報提供者をめぐる異例の捜査は、「秘密保持の徹底」を隊員に強く意識させ、日本からの情報漏れに神経をとがらせる米国側に「情報保全」への取り組み姿勢を示す狙いがあった。ただ、取材を受ける側やメディア側が必要以上に萎縮(いしゅく)する可能性も指摘されている。

秘密漏洩容疑事件、取材は適正…滝鼻・編集主幹見解

2007年02月21日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 自衛隊の警務隊が、2005年5月31日本紙朝刊の中国潜水艦事故の記事に関する秘密漏洩(ろうえい)(自衛隊法違反)の疑いで防衛省情報本部の1等空佐から事情聴取し、自宅などを捜索したことが今月15日、明らかになりました。

 本社は、問題とされた記事の取材過程について、取材記者らから事情を聞き、その裏づけとなる客観事実を検証するなど社内調査を行いました。取材源にかかわるので、取材過程を明らかにすることはできませんが、調査の結果、取材が適正に行われていたことを確認しました。

 この件では、一部週刊誌が「第2の『西山事件』か」などの見出しで、「西山事件」と呼ばれた外務省秘密漏洩事件(1971年)同様、本紙記者があたかも女性を利用して情報を入手したように思わせる記事を掲載しましたが、取材過程に女性がかかわった事実はありません。また、取材先への脅迫など不当な行為もありませんでした。

 最高裁は、外務省秘密漏洩事件の決定で公務員の守秘義務と報道の自由の関係について、「国政に関する取材行為は、国家秘密の探知という点で公務員の守秘義務と対立する」としたうえで、「報道機関が公務員に秘密を漏らすよう、そそのかしたからといって、ただちに違法とはならない。真に報道目的から出たものであり、取材の手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当で、社会通念上是認されるものである限りは正当な業務行為である」との判断を示しました。

 この最高裁判例に照らしても、本紙記者の取材に法令違反や社会通念を逸脱する点はありませんでした。  警務隊などの捜査機関が、報道に関連して捜査を行うことは極めて異例なことです。公務員を対象とした捜査が行われること自体、取材に対する萎縮(いしゅく)を招き、取材・報道活動の妨げにつながる恐れがあり、報道機関として重大な懸念を抱かざるを得ません。今回の捜査が今後どう展開するにせよ、当然のことながら本社は取材源を秘匿します。

 前述の最高裁決定は、「国政に関する報道は、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものである」と指摘しました。本社は、知る権利に奉仕する者として今後も適正な取材・報道を行っていきます。

防衛情報の提供 真の「公益性」考えたい

2007/02/17 中国新聞ニュース

 国民にとって「知る」方が利益か、「知らない」方が利益か。そこの精査を抜きにして、法をしゃくし定規に運用しているのではないかと強い危惧(きぐ)を覚える。

 新聞記者に内部情報を漏らしたとして、自衛隊の警察に当たる警務隊が防衛省一等空佐から事情を聴いている。容疑は自衛隊法違反(秘密漏えい)。メディアへの情報提供をめぐる強制捜査は極めて異例である。今のところ新聞社側は捜査対象になっていない。

 記事は二〇〇五年五月に読売新聞に掲載された。南シナ海での中国海軍潜水艦の火災を報じた。記事には米軍の衛星情報も含まれていたとされ、当時の防衛庁が被疑者不詳のまま告発していた。

 背景には米国の強い要請がある。漏らしたとされる中国潜水艦の動向に関する情報には、他国が米軍の情報収集能力を推察できる内容が含まれていたという。

 昨年は海上自衛隊の秘密データがネット上に流出した。周辺事態での米軍への後方支援内容が盛り込まれていたことから、米国は暗号を変えるよう求めたとされる。

 ミサイル防衛計画で地対空誘導弾パトリオットの配備が始まるなど、日米の軍事情報の共有化は進む一方だ。今回の情報提供について久間章生防衛相や自民党の中川秀直幹事長は、日米同盟の信頼を揺るがすことは国益に反すると、米への配慮を強くにじませる。

 しかし本当にそうだろうか。

 火災現場は日本に近く、日本の安全保障にもかかわる可能性があった。情報の中身や報道の影響について検討や議論をした形跡はない。秘密保持と、国民が知ることのどちらに公益性があるかの考察がないまま、米国の顔色をうかがっているとも受け取れる。

 秘密漏えい罪は、海自隊員がロシア大使館員に秘密を漏らした事件をきっかけに新設された。今回のケースとは背景は異なる。安易な法解釈、運用は、防衛情報をすべて隠してしまいかねない。

 沖縄返還をめぐる外務省機密漏えい事件では、後に米国と密約があったことが判明。報道は真実で、政府がウソをついていた。時の権力は都合よく情報を隠したり、世論誘導のために漏らしたりする。米など他の先進国のように、後に公文書の公開もしない。

 だからこそ「知る権利」を侵しかねない法の運用には慎重であるべきだ。NHKや捏造(ねつぞう)が次々発覚する民放に、政府が介入姿勢を強めているだけに気がかりである。

米国絡めば 『機密』に昇格

2007/02/17 東京新聞

秘密漏えい 防衛省なぜ躍起

 南シナ海で中国海軍の潜水艦が事故を起こしているという読売新聞のスクープが、防衛庁(現防衛省)幹部のリークだったとして同省が幹部宅などを家宅捜索していたことが明らかになった。当局からの内々の情報提供はいろいろあるが、防衛省にとっての“不都合な秘密”って何?

 防衛省幹部が新聞記者へのリークが原因で捜索されるというショッキングなニュースが朝刊各紙に載った十六日朝、閣議後に記者団に囲まれた久間章生防衛相は複雑な表情でこう明かした。

 「非常に大事なこと、機微に触れることは漏らしてはいけないという一般論としてきちんとしようということだ。そうでないと日本に機微に触れる資材を提供できないとか、情報は漏らせないとなったら国益に反する」

 「資材を提供できない」「情報は漏らせない」という“相手国”はもちろん米国。今回の強制捜査も米国から提供された情報の保全と密接に関連しているようだ。

 問題になったのは、読売新聞が二〇〇五年五月三十一日朝刊に掲載した記事。中国の潜水艦が同月二十六日ごろ、南シナ海を潜航中に火災とみられる事故で航行不能になり中国・海南島に向けえい航されていることを「日米両国の防衛筋が確認した」と報じた。記事には米軍から提供された衛星情報も含まれているとみられている。

■識者懸念『重要な情報こそ開示を』

 記事の情報源と疑われているのは、防衛省情報本部所属の課長級職員だった一等空佐(49)。自衛隊の警務隊が同一佐の自宅などを家宅捜索し書類送検する方針で捜査を進めている。読売新聞記者の事情聴取は行っていないという。

 自衛隊法は「隊員は職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」と規定。違反した場合には、一年以下の懲役または三万円以下の罰金に処すると定めている。警務隊は自衛隊内部の刑事事件を担当する捜査機関で、警察と同様の捜査権限を持っている。

 自衛隊員の守秘義務については、〇一年の自衛隊法改正で防衛庁長官(現・防衛相)が指定する「防衛秘密」が新設され、漏えいした場合には懲役五年以下という厳しい罰則が規定された。直接のきっかけは、二〇〇〇年に海上自衛隊三佐が駐日ロシア武官に秘密を漏えいした事件だった。

 当時の中谷元・防衛庁長官は国会審議で「機密」「極秘」「秘」が計約十三万五千件あると明かし、「この中から防衛上特に秘匿することが必要なものを選び、防衛秘密に指定する」と説明した。今回の事案が防衛秘密なのかどうかについては、防衛省広報課は「捜査段階なのでコメントできない」と話している。

 防衛秘密をめぐっては、自衛隊と取引関係のある民間企業も処罰対象になりうることや、報道関係者が漏えい教唆の疑いを持たれる可能性のあることが、国会で議論になった。

 防衛秘密の新設を審議した参院外交防衛委員会の公聴会で意見陳述した吉田健一弁護士は「取材・報道の自由を制約し、国民の知る権利を侵害する恐れがあると反対した」と強調する。その上で今回の強制捜査についてこう懸念する。

 「当時の心配が現実のものになった。重要な情報であるならば国民に知らせオープンに議論することが大事。それとまったく逆行してしまっている」

 では、今回の秘密漏えい事件の舞台となっている中国潜水艦事故には、防衛省が躍起になって捜査するほどの“秘密”が含まれていたのか。

 「今回の件は、秘密そのものより、非常に政治的なにおいがする。『米側が危惧(きぐ)している』の表現が出た時は要注意で、背景には外務省と防衛省との情報をめぐるつばぜりあいがあるのではないか」とみるのは元自衛隊員で軍事評論家の神浦元彰氏。

 防衛庁が省に昇格したことで、米国防総省の直接の相手は防衛省に。対米関係を一手に仕切っていた外務省は活躍の場が減り、ひいては影響力が低下する可能性はある。その勢力争いが影響している−という説だ。

 神浦氏は「情報衛星にしても、実際に運用しているのは防衛省。海外の日本大使館から入ってくる防衛関連情報も直接、防衛省に入るようになった。日米安保政策も防衛省がやることになる。当然、外務省はおもしろくない」と解説する。

 軍事評論家の稲垣治氏も重大な「秘密」が漏れたとされる点については懐疑的で、「マスコミも含め、外部の人間は軍事情報には近づくな、自衛隊内部に対しては、微罪でもやるぞ、との意思表示」とみる。

 事故は二年も前に起き、火災を起こした潜水艦も一九七〇年代建造のディーゼル型で、原子力潜水艦のようなデリケートな問題には発展しにくい。

 確かに、事故のあった南シナ海周辺は緊張が高まることが多い海域で、その状況を日米が衛星や電波傍受を通じて監視していたことは未公開情報。それが漏れたことが、問題といえなくもない。

 稲垣氏は「大切なのは、その秘密がだれにとって重要なのかだ。中国にとっては国の威信にかかわることでもあり、事故が明るみに出た後、中国海軍の幹部が解任された。しかし、日本や米国にとっては、事故が表に出て痛手を被ったと言えるのかは疑問だ」と指摘する。その上で「戦前には軍港の近くで泳いだだけでも罰せられたが、その状況に近づいているのではないか」と防衛省を取り巻く雰囲気がきな臭くなっていることを懸念する。

 一方、元航空ジャーナル編集長の青木謙知(よしとも)氏は「家宅捜索するからには、潜水艦事故のほかにも(漏えいしたものが)もっとあるはず。それを説明してしまうと、秘密が秘密でなくなるから説明できないだけ」と、防衛省の対応に一定の理解を示す。

■『米追従の現実映した』

 青木氏は八三年に大韓航空機が旧ソ連の戦闘機に撃墜された事件を引き合いに「この時も機密の扱いが論議を呼んだ。戦闘機と陸上基地の通信を自衛隊が傍受しており、米国は撃墜を認めないソ連に証拠として突きつけた。機密というのは国が指定するもので、その解除も国の基準で行うものだ」と解説する。

 七二年の外務省機密漏えい事件で毎日新聞記者として当事者だった西山太吉氏は「潜水艦の火災は、報道した方は知らせるべしと書き、情報を出した方も重大な国家機密を漏らした感覚はないだろう。かつて政府高官からの情報で、米原潜の日本初入港をスクープした。機密度はずっと上だが、罰せられた記憶はないね」。

 その上で、今回の事件をこう皮肉る。

 「大した秘密でもないのに、米国とともに潜水艦の事故を察知したというだけで、日本はがらっと対応が変わる。米軍にびくびくしてそうせざるを得ないような状況に日米の軍事同盟はある。図らずも、今回の件は日米関係の現実を映し出したね」

<デスクメモ> ハワイで米原潜とえひめ丸の事故を取材して感じたのは米メディアのペンタゴンへの食い込みのすさまじさ。原潜に民間人が乗っていたことや操舵(そうだ)状況まで抜かれ日本メディアは完敗だった。そこに「真実を伝える」意思を感じた。“国益”を守るため、われわれも秘密に立ち向かわねばならない。(蒲)

機密漏えい:「秘密」にすべき情報だった? 識者は批判

2007年02月17日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 読売新聞記者に軍事情報を伝えたとして、防衛省情報本部所属の航空自衛隊1等空佐(49)が自衛隊法違反(秘密漏えい)容疑で強制捜査を受けた問題は16日、メディア関係者や政府内に波紋を広げた。01年の米同時多発テロ事件をきっかけに改正された自衛隊法には秘密漏えい罪への罰則強化などが含まれており、当時から「取材の自由を侵害する恐れがある」との指摘が出ていた。法の運用を巡り今後も議論を呼ぶとみられる。

 ■潜水艦火災…公表必要な「安全」関連情報だったのでは

 今回の事件は国民の「知る権利」や「報道の自由」を制約するという点で大きな課題を残した。さらに、中国潜水艦の火災事故という日本国民の安全に密接に関連する情報を、読売新聞が報道するまで明らかにしなかった防衛庁(当時)の秘密体質への批判も識者から相次いだ。

 「潜水艦が事故を起こした周辺海域で日本の漁船が航行していたら被害に巻き込まれる恐れがあり、生命にかかわる問題だった。本来であれば防衛庁自身が一刻も早く公開すべき情報だった」。大石泰彦・青山学院大教授(メディア倫理法制)はそう指摘する。大石教授は「1等空佐が読売記者に教えた行為は情報漏えいではなく、公益性のある情報提供だと言える」と話す。

 また大石教授は「改正案が提出された時の懸念が現実になったといえ、こういう防衛省の情報開示の姿勢では、拡大解釈されたのかさえウオッチできない」と述べた。

 服部孝章・立教大教授(メディア法)も「生命にかかわる緊急情報さえ開示されないのでは何が秘密に当たるのかの議論もできない」と厳しく批判する。その上で「このような事案が秘密漏えいとして処罰の対象となるのでは記者への情報提供についての萎縮(いしゅく)効果は計り知れない。内部告発者を保護する公益通報者保護法があるが、防衛省内ではうまく機能しないだろう」と述べる。

 一方、軍事評論家の小川和久氏は、今回の強制捜査について「防衛省はファイル交換ソフトを介した情報流出があったため、秘密保全に対する危機感が高まっていた」と背景を解説した。さらに「米軍再編などで同盟国との関係が一層緊密化する中で、米国に対しても情報管理を徹底するという意思を示す象徴的なことであり、一罰百戒の要素が強いのではないか。報道機関はその中でもいろいろな角度から情報収集を続け、国民に伝えていくべきだ」と話した。

 ■政府・自民党 統制強める動き

 政府は昨年12月にカウンターインテリジェンス推進会議(議長・的場順三官房副長官)を設置し、秘密保全を強化するための政府全体の仕組み作りに着手している。そこでは報道機関への情報提供のあり方も検討対象となる見通しだ。菅義偉総務相も放送法などの関連法を見直す考えを示すなど、政府・自民党内で情報統制を強める動きが出ている。

 塩崎恭久官房長官は16日の記者会見で、1等空佐の情報漏えい問題に関連し、推進会議について「当然、情報の管理ということで幅広い議論をしないといけない」と述べ、報道機関への情報漏えい問題も検討対象との認識を示唆した。

 推進会議は、省庁ごとに設けられている秘密保全の規則について、来年度中に政府内で統一基準を設けることを検討中。背景には、在上海総領事館の男性職員が04年5月に中国当局から機密情報の提供を強要されて自殺したとされる問題などがあり、外国の秘密情報活動などを念頭に、報道機関との接し方も含めた職員の行動基準を策定する意向だ。基準策定後に罰則強化などの法改正の必要性を唱える声もある。

 メディアへの国の関与を強める動きも目立ち始めている。関西テレビ(大阪市北区)のねつ造問題発覚を受け、菅総務相は「報道の自由は当然だが、事実と異なったことを報道する自由はない」と、再発防止のための条項を盛り込んだ放送法など関連法改正案を今国会に提出する意向を重ねて主張した。菅総務相は昨年11月にもNHKの短波ラジオ国際放送で拉致問題を重点的に放送するよう命じ、論議を呼んだ。

 一方、自民党の中川秀直幹事長も16日の会見で情報漏えい問題について「一部に知る権利との関係の指摘があるが、公務員が機密を漏えいすることはあってはならない」と厳しい対応が必要だとの認識を示した。

 ■ことば 自衛隊法改正 防衛秘密を新たに定めて秘密漏えいの罰則を強化し、報道関係者を含む民間人も処罰対象に加えた改正自衛隊法は01年10月、わずか1カ月足らずの審議で成立。秘密漏えいの場合は5年以下の懲役で、教唆・共謀は3年以下の懲役と規定された。同年9月の米同時多発テロを受けたテロ対策特別措置法とのセットだった。

 当時の法案審議でも、秘密漏えいを教唆、扇動するなどした民間人の処罰規定について、「報道・取材の自由」「表現の自由」を侵す恐れがあるとの指摘が専門家から出ていた。防衛庁側は記者の取材が教唆に当たる例として、贈賄や脅迫などの犯罪行為のほか「(男女の)情を通じる」といった社会通念上許されない行為を挙げていた。

 防衛秘密の10項目は、防衛に関して収集した電波情報・画像情報▽防衛用施設の設計など抽象的で幅広い。

 また改正法は、民間人を処罰対象とした点などで「表現の自由を侵す」などと批判され、85年に廃案になった国家秘密法案(スパイ防止法案)との類似性も指摘されていた。

首相「個別捜査にコメントせず」 自衛隊漏えい

2007/02/16 Iza

 安倍晋三首相は16日、中国潜水艦事故に関する内部情報を記者に漏らしたとして自衛隊警務隊が自衛隊法違反容疑で一等空佐の自宅などを家宅捜索したことに関し「捜査中なので個別の事件についてコメントは控えたい」と述べた。官邸で記者団の質問に答えた。

 一方、自民党の中川秀直幹事長は記者会見で「防衛省の機密漏えいはあってはならず、情報管理と服務規律の徹底が求められる。同盟国との信頼関係に水を差せば、安全保障の根幹にかかわり、調査して再発を防止していくべきだ」と強調。

 国民の知る権利への影響について「(漏えいの)結果、不利益をこうむるのは国民であり、次元の違う問題だ」と述べた。党として防衛省に報告を求める考えも示した。

「通常の取材、問題ない」 記者への情報提供で防衛相

2007/02/16 中国新聞ニュース

 新聞記者に内部情報を提供したとして、自衛隊の警務隊が防衛省の一等空佐(49)宅などを家宅捜索した自衛隊法違反事件で、久間章生防衛相は十六日の閣議後の記者会見で、警務隊が捜査中であることを認めた上で「漏らした側を罰するのが今の仕組み。情報を受けた側は、通常の取材であれば問題ない」と強調した。

 久間防衛相は「相手が誰であろうと、機微に触れることについては漏らしてはいけない。そうしないと(米軍などが)『日本には機材や情報を提供できない』となり、国益に反する」と指摘。

 ただ、報道機関の取材活動については「特殊な策をろうして無理やり情報を引き出せば問題だが、(自衛隊法は)通常の取材について罰する法律ではない」と述べた。

 公務員に対する取材と情報提供をめぐっては、外務省機密漏えい事件の最高裁決定(一九七八年)が「国政取材は公務員の守秘義務と対立するものだが、真に報道目的で手段が社会通念上相当なら正当な業務行為に当たる」として、違法性を否定する司法判断を示している。

防衛技官、潜水艦資料の窃盗で書類送検へ

2007/02/06 Iza

 ■中国大使館出入り業者に渡す

 防衛省(旧防衛庁)技術研究本部(技本)の元主任研究官(64)=技官=が在任中、潜水艦関連の技術資料を持ち出し、知人でさいたま市の貿易業者(55)に渡していた事件で、警視庁公安部は6日にも、窃盗容疑で元研究官を書類送検する方針を固めた。

 調べでは、元研究官は平成12年2月から3月にかけ、勤務していた技本第1研究所(東京都目黒区)から潜水艦の船体鋼材に関する論文をコピーし、持ち出した疑い。

 公安部は17年3月に元研究官と貿易業者の関係先を捜索。貿易業者は中国大使館に出入りしていたため、情報が中国に流れた可能性もあるとみて捜査したが、窃盗罪の公訴時効(7年)が迫っていた。

 任意の事情聴取に、元研究官は論文のコピーを貿易業者に渡したことを認めている。論文は内規で持ち出しが禁じられていたが、秘密保全が必要な情報は含まれていなかったという。

窃盗容疑:防衛庁元技官を送検 潜水艦資料持ち出す

2007年02月06日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 防衛庁(現防衛省)技術研究本部(東京都新宿区)の元技官(64)が、在職中に潜水艦に関する資料を持ち出した事件で、警視庁公安部は6日、窃盗容疑で元技官を書類送検した。

 調べでは、元技官は技術研究本部に勤務していた00年3月下旬、潜水艦の船体に使われる特殊鋼材について自分が作成した報告書をコピーし、持ち出した疑い。元技官は、中国大使館の武官らと付き合いのあった貿易会社の元社長(55)の要求に応じてコピーを渡したと供述。しかし元社長は資料の受け取りを否定しており、コピーが中国側に渡ったかどうかは確認できていないという。

 元技官は71年入庁。技術研究本部で潜水艦を造る鉄鋼材料の強度向上の研究などにかかわり、02年3月同本部第1研究所の主任研究官で定年退職した。


諜報・謀略対策の専門家育成 陸自が情報科新設を検討

2007/01/22 Iza

 防衛省発足に伴って自衛隊の海外活動が本来任務化されたのを受け、陸上自衛隊はインテリジェンス機能の強化のため普通科(歩兵)、施設科(工兵)などと並ぶ職種として、情報収集や分析を担当する「情報科」を新設する方向で検討に入った。海外派遣では隊員の安全確保のため人的情報(ヒューミント)の収集・分析がより重要になるため、体系的に情報の専門家を育てることが必要と判断したためだ。

 具体的には、中国や北朝鮮による弾道ミサイル発射の兆候や部隊配置の状況を把握するため、偵察衛星や偵察機からの画像情報を分析する高度な能力を備えた人材や、アジアをはじめ日本ではなじみの薄い中東各国やアフリカ諸国などの言語の使い手を「情報科」に配属する。

 情報科に所属する人材養成のため、陸自小平学校(東京都小平市)の機能を強化することも検討。専門部隊の創設も視野に入れている。

 一方、航空自衛隊は、北海道を中心にレーダーサイトを置き、電子情報や通信情報を収集する活動を行ってきたため、情報職種を作り、インテリジェンス活動の専門家を養成してきた。また、米軍艦船との間で活発に情報のやりとりを行う海上自衛隊にも情報職種があるが「幹部ポストが少なく、層が薄い」(幹部)のが現状。

 防衛省関係者は、陸上自衛隊に情報科を新設する狙いについて「冷戦時代には米国から情報をもらい、主に旧ソ連の脅威に備えればよかったが、冷戦後に北東アジア情勢が不安定化したことで独自の情報収集・分析や関係国とのこまめな情報交換が求められているため」としている。

 ただ、省内には専門の職種を作らず、普通科などすべての職種の情報機能を充実させた方が得策だとの意見も根強い。「戦前の旧陸軍では一部の情報将校が謀略活動に従事し、暴走した」(陸自幹部)との反省もあり、発足まで曲折も予想される。


陸自の内部資料、ウィニー通じて流出

2007年02月03日 NIKKEI NeT

 陸上自衛隊の訓練などに関する内部資料が、陸自第一四旅団(香川県善通寺市)に所属する三等陸曹の私物パソコンから、ファイル交換ソフト「ウィニー」を通じてインターネット上に流出していたことが3日、分かった。秘密情報は含まれていないが、防衛省は近く三曹や上司を処分する。

 防衛省によると、三曹は許可を得ないまま部隊内で私物パソコンを使用して業務用データを扱っていた。このパソコンから取り出した内蔵ハードディスクを使い、自宅で新たに別のパソコンを自作。ウィニーを入れて使っていて、昨年8月に資料が流出したという。ウイルスに感染したとみられる。

 同省では昨年2月、海上自衛隊の「秘密」情報流出が発覚。職場から私物パソコンを一掃するなどの対策を進めていたが、昨年11月には航空自衛隊員の私物パソコンからイラクに展開する米軍の情報が流出するなどしている。

 防衛省は「内部資料が流出したのは遺憾。再発防止策を打ち出しているが、しっかりと守られるよう隊員1人1人に浸透させていくしかない」としている。(共同)

陸自で情報流出27件…ウィニー被害、新たに判明

2007年01月09日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 陸上自衛隊で2002年度から昨年10月末までの間に、隊員の私有パソコンから、「Winny(ウィニー)」などのファイル交換ソフトを介して情報が流出したケースは、すでに判明している4件以外に、27件あることがわかった。防衛庁は、いずれの件数、内容とも公表していない。このうち4件は、防衛庁が昨年4月、再発防止策を発表した以降のものだった。

 9日に防衛省に昇格する同庁だが、情報管理の甘さを、改めて浮き彫りにしている。

 関係者によると、陸自でファイル交換ソフトを介して情報が流出したのは、02年度が1件、03年度3件、04年度3件だったが、05年度に20件と急増。06年度もすでに4件の流出が確認されているという。

 流出した情報の中には、秘密文書はなかったが、「業務の遂行に支障を与える恐れがある」として「注意扱い」の教育訓練計画などの文書が計8件あった。このほか、一般の業務用データや、個人で作成・使用していた隊員や関係団体の名簿、写真といった私的な情報なども含まれていた。

 防衛庁は、昨年2月に発覚した海上自衛隊護衛艦の情報流出問題を機に、約5万6000台のパソコンを緊急調達し、職場から私有パソコンを一掃、私有パソコンでの業務用データの取り扱い禁止などの抜本的対策を講じていた。

 しかし、その後も流出が相次いだことで、陸自内部でも「ゆゆしき問題」と受け止められているという。

 防衛庁は、「(件数を公表するだけでも)資料の検索を誘発し、流出範囲を拡大させ、ダメージを増幅する恐れがある」などとして、今回判明分についても一切公表していない。

 陸自を巡っては、02年11月以降、第1師団の教育訓練データ流出や、北海道補給処、第4化学防護隊などの業務用データ流出の計4件が明らかになっている。

【解説】甘い情報管理、強い秘密主義

 陸上自衛隊で新たに判明した、ファイル交換ソフトによる情報流出は、防衛庁が昨年4月、「抜本的対策」を打ち出した以降も流出が続いていたことで、対策徹底の甘さを示している。

 防衛庁・自衛隊は、約26万人を抱える巨大組織とはいえ、パソコンからの情報流出は、隊員の犯罪や非行と違い、個々の私有パソコンの点検をすれば防ぐことができるものだ。

 そもそも、防衛庁の省移行にあたっては、当時の官邸サイドから、情報流出の再発防止を徹底するよう注文がついた。だが、関連法案の審議中にも流出が続き、しかも防衛庁はそれを公表してこなかった。

 昨年11月、空自隊員の私有パソコンから基地警備訓練や米軍の情報などが流出した際も、防衛庁は、報道されるまで公表を拒んだ。軍事上、悪影響を及ぼす恐れから、詳細な流出内容まで公表できないのは分かる。だが、新たな流出が起きた事実や処分すら公表しないため、隊員への警鐘にならず、流出を食い止められなかったのではないか。

 防衛庁は防衛省になる。国民の信頼を得るには、現場の一隊員までパソコンの情報管理を徹底する一方、不祥事が起きたら、その事実と処分はきちんと公表し、部内外に対し、毅然(きぜん)とした姿勢を示す必要がある。(高野光一郎)

空自情報、自宅から流出

2006年12月01日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 航空自衛隊那覇基地所属の2等空尉の私有パソコンから、警備訓練などのデータがファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を介し、ネット上に流出した問題で、この隊員は、私有パソコンの業務利用を厳しく制限した今年2月の次官通達後も、無許可で職場にパソコンを持ち込み、業務用データを保存していたことが分かった。防衛庁は規則違反に該当するとみて、「厳正に処分する」としている。

 防衛庁と空自によると、この隊員は今年3〜8月、イラクの復興支援活動部隊の一員として中東・カタールに派遣された際、居住区で使用するために私有パソコンを持参したが、実際には職場に持ち込んでいた。次官通達後、私有パソコンの職場への持ち込みは許可が必要だった。この派遣期間中、隊員は、米軍から提供された中東で活動する米軍の輸送業務態勢の文書を、私有パソコンに保存。今回、他の情報と一緒に流出した。

 空自の調査では、ネット上に文書が流出したのは、11月24日。帰国後、外付けのハードディスクにデータを移していたが、音楽を聴くために自宅の別のパソコンにハードディスクを接続した際、ウィニーを介して流出したという。

空自またデータ流出、私物パソコンから

2006年11月30日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 航空自衛隊那覇基地の警備訓練に関するデータが、隊員の私物のパソコンから「Winny(ウィニー)」とみられるファイル交換ソフトを介し、インターネット上に流出していることが分かった。

 防衛庁では今年2月に、護衛艦の秘密情報を含む情報の流出が発覚。全隊員に対し、私物のパソコンから業務用データを直ちに削除するよう次官通達を出していた。

 同庁と空自は、流出させた隊員を特定し、漏えい時期の特定などを急いでいるが、流出時期が通達後だった場合には、対策の不徹底ぶりが問題になりそうだ。

 防衛庁関係者によると、流出したデータには、那覇基地内の建物の配置図や、2005年10月ごろに行った基地警備訓練のシナリオ(事案想定)などの説明用資料などが含まれていた。また、米軍から提供された中東で活動している多国籍軍の関連情報も流出しているという。

 これらの中には、訓練前には「秘密」とされていた文書もあるが、いずれも訓練終了後には秘密指定は解除されており、現時点で秘密情報はないという。

 データが流出したパソコンの所有者は那覇基地所属の2等空尉。防衛庁などは、この隊員からパソコンの提出を受け、ウイルスに感染して情報が流出した時期を調べている。今回の情報流出がネットの掲示板上で話題になり始めたのは今月24日ごろで、同庁も25日には書き込みを把握し、調査を進めていた。

 防衛庁は、2月に発覚した護衛艦「あさゆき」の流出問題を機に、約40億円をかけて約5万6000台のパソコンを緊急調達。職場からの私物パソコンの一掃を図るとともに、私物パソコンから業務用データを削除したり、職務上使用したことのある私物パソコンからファイル交換ソフトを削除したりするよう通達を出していた。6月には、新聞などで報じられた陸海空自の6件の流出を認め、防衛次官や陸海空3幕僚長を含む47人の処分を公表していた。

三沢、陸自もウィニーで防衛情報が流出 省昇格控え隠蔽か

2006/11/30 Iza

 航空自衛隊北部航空方面隊(青森県三沢市)管内の北海道の部隊と陸上自衛隊中部方面隊第10師団(名古屋市)の隊員の私物パソコンから自衛隊の内部情報が「ウィニー」とみられるファイル交換ソフトを通じてインターネット上に流出、閲覧できる状態になっていたことが30日分かった。

 防衛庁は事実を把握しながら公表していなかった。同庁はいずれの情報流出でも「秘」に該当する情報はなかったとしている。

 自衛隊では空自那覇基地(那覇市)で隊員の私用パソコンからイラクの米軍情報や同基地の警備訓練の内部情報が流出していたことが明らかになったばかり。

               ◇

 ファイル交換ソフトを通じた自衛隊内部情報の流出がまた明らかになった。防衛庁が事実を把握しながらも一切公表を控えてきた背景に、衆院での防衛庁の省昇格法案審議が大詰めを迎えているという政治的配慮があったものとみられ、省昇格を目指して「開かれた防衛庁・自衛隊」とのPRとは裏腹の隠蔽(いんぺい)体質が改めて浮き彫りとなっている。

 自衛隊関係者によると、防衛庁は職員、自衛官に対し不祥事や事件などを起こさないよう内部指示を出すとともに、「不祥事などの報道に神経を使うように」と関係部署に注意を喚起、航空自衛隊北部航空方面隊や陸上自衛隊第10師団での情報流出に関しても、内部で確認しているにもかかわらず、「そういう事実があったかどうかも含めて、現時点では一切申し上げられない」と公表を拒んできた。

 こうした防衛庁の姿勢について、自衛隊幹部は「省昇格という長年の念願を不祥事でつぶすわけにはいかないという幹部の極度の警戒心からだが、果たしてそれがいいのか疑問を抱いていた」との見解を示し、内局の上層部からの指示があったことを示唆している。(大塚智彦)

3自衛隊トップら47人処分 防衛庁「ウィニー」で

2006/06/20 中国新聞ニュース

 自衛隊員の私物パソコンからファイル交換ソフト「ウィニー」で秘密扱いを含むデータがインターネット上に公開された六件の情報流出で、防衛庁は二十日、守屋武昌事務次官や陸海空三自衛隊トップの各幕僚長ら計四十七人を処分した。

 六件は既に表面化しているもので、防衛庁はほかにも情報流出があり、関係者を処分したと発表したが「ファイル交換ソフトの特性で、内容を公表すると漏えいが拡大する可能性がある」として事案などは一切、明らかにしなかった。

 処分の内容は、守屋次官と森勉陸上幕僚長、吉田正航空幕僚長が訓戒、斎藤隆海上幕僚長が戒告で、いずれも監督責任を問われた。

 残る四十三人(海自二十九人、陸自八人、空自六人)は停職−口頭注意で、このうち六人(海自三人、空自二人、陸自一人)が情報を流出させた責任を問われた。

 防衛庁によると、この六人は海自護衛艦「あさゆき」のコールサインや戦闘訓練の内容、陸自が管理する自衛隊病院で受診した約六十人の個人情報などをネット上に流出させた。

ネット流出、海自文書計3千点 有事演習計画も

2006年05月17日asahi.com

 海上自衛隊の内部資料がインターネット上に流出した問題で、防衛庁は03年に行われた海自最大の実動演習「海上自衛隊演習(海演)」の作戦計画を含む大量の文書が流出していたことを確認した。総数は約3000点にのぼる。同作戦計画は事実上、朝鮮半島有事を想定したものだが、秘匿性の高い海演のシナリオが公になるのは初めて。流出文書は通信や暗号の分野にも及び、海自は共通するものも使っている米海軍と協議し、暗号については全名称を、通信については周波数の一部を変更した。

演習の概要図

 03年11月に行われた海演(10日間)には、艦艇約80隻、航空機約170機、人員約2万5000人が参加した。

 その内容を周辺事態と防衛出動事態に分けて詳述した3点の資料は、九州・沖縄を管轄する海自の佐世保地方隊が、主力部隊の自衛艦隊や米海軍とともに事態に応じて実施する作戦を列挙。いずれも防衛庁が定める3段階の秘密区分のうち、3番目にあたる「秘」に指定されていたが、流出時には解除されていた。

 海演のシナリオは、周辺事態で日本周辺の2カ国が、日本に対しても弾道ミサイルを発射する準備に入ったり、南西諸島の「S諸島」の領有権を主張したりするという筋書きになっている。

 佐世保地方隊は、対馬海峡から九州西方にかけての海域で、警戒監視活動や船舶検査活動、邦人輸送、機雷掃海などを行う。

 日本有事に移行すると、海自の主力部隊の自衛艦隊は、作戦海域に向かう空母部隊などの米海軍部隊を護衛、S諸島に陸上自衛隊の部隊を揚陸させるために艦船による海上輸送作戦を行う。また、米海軍は、朝鮮半島を中心に作戦行動を展開する一方、日本海でも海上阻止行動(MIO)などを行うとしている。

 このほか流出が確認された資料には、有事の際にも使う通信や暗号に関するものが多数確認された。有事に九州の沿岸部に派遣される移動通信部隊の周波数や通信可能範囲などを図示した「秘」指定文書もあった。

 一方、海上幕僚監部の調査で、佐世保基地所属の護衛艦に勤務していた隊員が資料を流出させた時期は、今年1月21日とわかった。04年から自宅のパソコンでファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を使い始め、05年から業務用データを勝手に自宅に持ち帰り私物パソコンに保存していた。

 海自がネット上に秘密文書が流出しているのに気づいたのは2月16日。5日後の同21日、ようやく流出元を突き止めた。

 再発防止策として、防衛庁は(1)ファイル交換ソフトの削除(2)私物パソコンからの秘密文書の削除などを定めた通達を出す一方、パソコン約5万6000台(約40億円)を購入。今年9月末までにパソコンが必要な全隊員に行き渡るようにした。

 同庁は流出元の隊員を含め処分を検討中だ。

陸自情報がネット流出、教育用のミサイル資料

2006年05月12日 NIKKEI NeT

 陸上自衛隊が保有する地対艦誘導ミサイル(SSM―1)の教育用資料が、インターネット上に流出していたことが12日、分かった。ファイル交換用ソフト「Share(シェア)」を介して流出したという。防衛庁陸上幕僚監部は「安全保障に問題が及ぶ内容は含まれていない」としている。

 陸幕監部によると、教育用資料は陸自久里浜駐屯地(神奈川県)の通信学校で使用されていたSSM―1に新たに携わる隊員向けのもの。同学校所属の陸自隊員が、個人用のパソコンに入れていた。同隊員は2002年に死亡し、その後遺族がパソコンにシェアをインストール。ウイルスに感染したため流出したとみられる。

 教育用資料には、SSM―1のシステム概要、射撃準備に関する情報、配備部隊の所在地などが含まれていた。射程など安全保障に影響のある情報はなかったという。

 防衛庁は4月、ファイル交換ソフト「ウィニー」などを介した秘密情報の流出が相次いだことを受け、再発防止策をまとめていた。防止策は現役隊員向けで、死亡した隊員やOB・OGのパソコンのチェックまでは想定されていない。

ウィニー関連で防衛庁がデル製PC5万台を調達

2006/04/13 The Sankei Shimbun
 

 米国のコンピューター大手デルの日本法人は13日、防衛庁に約5万6000台の業務用パソコンを納入すると発表した。公共機関や企業などが5万台を超えるパソコンを一括調達するのは異例で、デル日本法人は同社の業務用パソコン受注として過去最大の案件だとしている。

 防衛庁によると、今回の調達は3月27日に一般競争入札を実施。ソフトウエアや保守管理業務なども含め、日本ユニシスグループの情報システムサービス会社ユニアデックス(東京)が約40億円で落札した。ユニアデックスがデルからパソコンを購入し、防衛庁に納める形になる。

 入札にはNECや富士通、日立製作所などの国内大手各社も参加したが、米国系企業に商機を奪われた格好だ。

 防衛庁は外資系企業から業務用パソコンを調達することについて「一般競争入札の結果であり、問題があるとは考えていない」としている。

 同庁は、自衛隊員の私物パソコンからファイル交換ソフト「ウィニー」などを通じ秘密情報がインターネット上に流出した問題を受け、職場から私物パソコンを一掃するため調達を決定、年内に配備を完了する予定だ。

情報漏えい 防衛庁捜査 知る権利 規制の恐れ 背景に米の秘密保全要求

2006年3月25日 西日本新聞

 報道機関への情報提供をめぐる防衛庁の刑事告発は、過去の言論弾圧のように目に見える形ではなく、官庁側の内部統制によって、報道を通じて確保される国民の「知る権利」が緩やかに規制されていく危険をはらんでいる。

 背景には日米同盟強化の中で繰り返される米側の秘密保全要求がある。自民党国防族や防衛庁の一部には「日本には外交機密や軍事転用できる民間技術保護の法制もなく諸外国に比べ穴だらけ。現行法制の枠内で引き締めを図るしかない」との危機感が強い。

 自衛隊法改正による防衛秘密新設に際して政府側は「知る権利」をめぐる批判に対し、「教唆」の罪と報道機関の関係を説明。

 元毎日新聞記者西山太吉氏が国家公務員法違反の漏えい教唆罪で有罪となった外務省機密漏えい事件の最高裁決定を引用し「取材方法が一般の刑罰法令違反や社会観念上是認できない行為でない限り教唆に該当しない」と力説した。

 防衛や外交で、交渉相手との関係などからある程度の秘密保持の必要性は認めるとしても、後に指定解除され検証されることが大前提だ。

 ところが、西山氏が入手した外務省極秘公電にあった「沖縄密約」が米公文書で裏付けられ、同省OBが共同通信などの取材にその存在を認めても、政府は「密約はない」と言い続ける。

 知る権利を置き去りにして秘密主義を膨張させようとする動きはあらゆる機会にチェックしなければならない。

ウィニーの利用者増加で相次ぐ個人情報流出

2006年03月13日 読売新聞 Yomiuri On-Line

捜査・防衛機密、患者情報…ネット漂流

 ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を介した国家情報、個人情報の大規模流出が相次いでいる。警察の捜査情報、刑務所の受刑者情報、病院の患者情報などに加え、海上自衛隊の護衛艦からは防衛上の秘密文書がネット上に流出するなど、事態は深刻だ。なぜ情報流出はここまで拡大したのか。被害を食い止めることは出来ないのか。(情報流出問題取材班)

■止まらぬ流出

 2月に発覚した海上自衛隊の護衛艦「あさゆき」からの情報流出は防衛庁に衝撃を与えた。流出した情報の中には、自衛艦のコールサインなど「秘」文書も含まれ、海自は乱数表などの変更を余儀なくされた。

 本来ならネット犯罪などを取り締まる立場にある警察からも、捜査情報の流出が相次いだ。

 このほか2月以降、▽刑務所の受刑者情報▽東京地裁の引き継ぎ文書▽愛媛県警の捜査情報▽富山市内の病院の患者情報――などの流出が次々と発覚した。

 被害拡大の背景にあるのは、ウィニー利用者の多さと、暴露ウイルスの蔓延(まんえん)だ。ウイルス対策ソフト会社「トレンドマイクロ」社によると、ウィニーの利用者は推計30〜60万人。駆除済みのものを含むと、約30万台のパソコンが暴露ウイルスに感染したと見られるという。

 ウィニーはどういう目的で使われているのか。同社は「ほとんどが、著作権法に抵触する疑いのある映画や音楽などの収集や、わいせつ画像などの入手」と話す。

 2004年5月、ウィニー開発者の元東大助手が京都府警により著作権法違反ほう助容疑で逮捕(公判中)され、ウィニーの公式配布は中止された。だが現在も書店には、ウィニーの入手法や使用法を詳しく説明する解説書が何種類も並ぶ。

■決め手なし

 相次ぐ情報流出に政府は危機感を強めている。

 海自の流出判明後の2月24日、内閣官房副長官補名で情報管理の徹底を求める注意文書を各省庁に配布。27日には二橋官房副長官が次官会議で情報管理の徹底を指示。さらに今月9日にも安倍官房長官が同会議で異例の指示を繰り返すなど、約半月の間に3度の注意を行った。

 政府は昨年12月、政府機関が保有する情報の管理を徹底する最低限の基準として「政府機関統一基準」を策定。にもかかわらず流出が相次いでいることに、内閣官房幹部は、「システムや制度の問題というよりも、個人個人の情報管理に対する意識が低いからだ」と指摘する。

 一方、警察庁によると、現在の法体系では、ウィニーによる情報流出の取り締まりは事実上、不可能だという。ウイルスで業務用コンピューターを破壊するなど大きな障害を与えた場合などは、刑法の器物損壊罪、電子計算機損壊等業務妨害罪などが適用できる可能性がある。だが個人パソコンから情報を流出させただけでは難しい。また窃盗罪や横領罪も対象をモノに限定しており、形のない「情報」は対象外だ。コンピューターへの不正侵入を規制する不正アクセス禁止法も、個人のパソコンなどへの侵入は想定していない。

 ウィニー使用に対する新たな法規制も難しい。「ファイル交換ソフトは合法的な使い方も可能なので、ソフト自体を規制するのは無理」(政府筋)という。

 情報流出防止策は、ウィニーを使わないことに尽きる。知らないうちに家族がパソコンでウィニーを使用した結果、情報流出が起きたケースもあり、家族にも使わせないことが必要だ。

情報回収は不可能

 ネット上で音楽ファイルなどを交換するファイル交換ソフトは1990年代後半に登場。99年に米国で登場した「ナップスター」は、音楽ファイルを無料で入手でき、米国の大学生らの間で爆発的に流行した。

 国内でまず普及したのは、画像ファイルも交換できる「WinMX(ウィン・エム・エックス)」だが、2001年には、WinMXを通じ高価な画像編集ソフトを配布した利用者2人が著作権法違反で逮捕されるなど、社会問題化した。

 この事件後、利用者を特定しにくい交換ソフトとして登場したのがウィニーだ。後に逮捕された元東大助手が02年5月、WinMXの後継という形で発表し、ネット上で配布した。

 ナップスターやWinMXは、ファイルを検索するため、ホストとなる中央コンピューターが必要で、そこに利用者の記録が残った。一方、ウィニーは、無数のパソコン間をバケツリレーのように情報を転送し合う仕組みで、中央コンピューターは不要。発信者を特定しにくい上、通信内容やファイルも暗号化される。

 暴露ウイルス感染で流出した情報も、この仕組みでネット上を漂い続け、回収は事実上、不可能とされている。

暴露ウイルス

 ファイル交換ソフトに感染、パソコン内の情報をネットを通じて流出させるプログラム。ウィニーに感染するアンティニーが有名。ウィニーでやり取りされているファイルに潜んでいることが多いが、メールで送りつけられる新種もある。 (以下略)

情報流出防止、防衛庁が官費でパソコン7万台支給へ

2006年03月08日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 額賀防衛長官は8日の参院予算委員会で、海上自衛隊の秘密情報流出の再発防止策として、自衛隊員が職場に持ち込んでいる私有パソコンを一掃するため、パソコン約7万台を官費で購入し、隊員に配布する方針を明らかにした。

 2005年度予算の通信機器購入費などを工面して約40億円を支出し、3月中に契約する予定だ。

 額賀長官は「陸上自衛隊で6万台、海上自衛隊、航空自衛隊で計1万台近くは全部、防衛庁の方で供給する」と述べた。

 海自の情報流出は、秘密情報を取り込み、ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を介して、隊員の私有パソコンから外部に流出したとされる。

 自衛隊の部隊では官品のパソコンが不足しており、私有パソコンを持ち込むケースが多い。防衛庁によると、昨年11月現在、許可を受けて職場に持ち込まれたパソコンは、陸自で約6万台、海自で約2000台、空自で約5000台に上る。

防衛庁HP、流出データが一時閲覧可能に

2006/03/04 The Sankei Shimbun
 

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)傘下団体に陸上自衛隊の地対空ミサイル(SAM)の資料が流出した問題で、防衛庁がホームページ(HP)で調査結果を公表した際、ミサイルの迎撃率に関するデータが一時閲覧可能な状態になっていたことが4日、分かった。

 データは流出資料に書き込まれていたもので、調査結果報告の添付ファイル作成の過程でミスがあったとみられる。

 防衛庁は「開発前のデータで現在は秘密指定されていない。SAMの性能を推定できるものではない」としているが、調査結果の報道発表時には黒塗りで隠されていた。

 データが閲覧可能だったのは調査結果報告がHPに掲載された2日夜。庁内から「画面を操作する間、一瞬数字が見える」と指摘があり、数時間後に削除した。

 防衛庁は「詳しい原因やデータが閲覧可能だった時間帯のアクセス数を調べている」としている。

陸自入札でも情報漏えい 防衛庁内部調査で判明

2006/03/01 The Sankei Shimbun

 陸上自衛隊が発注した通信機用の乾電池納入をめぐる入札で、防衛庁と陸自の担当者が入札予定価格の情報や関連資料を落札メーカーなどに事前に漏らしていたことが1日、防衛庁の内部調査で分かった。

 メーカー側は談合があったとして、公正取引委員会の排除勧告を受けている。防衛庁は「担当者に談合の意図はなかった」としているが、防衛施設庁では元技術審議官らによる官製談合事件が発覚しており、あらためて発注者側の姿勢が問われそうだ。

 内部調査によると、1996―99年に防衛庁の担当事務官や陸自の担当自衛官が、数回にわたって電池単価や納期などが分かる予算執行に関する資料を複数の業者に渡したり、口頭で「予定価格は昨年並み」と漏らしたりしていた。担当者は認めているという。

 防衛庁は一昨年11月、談合で不当な利得を得たとしてメーカー3社に計7億円の返還を求める訴訟を東京地裁に起こしたが、訴訟の中でメーカー側が「談合を主導したのは防衛庁」と反論し、担当者から受け取ったものとして予算執行に関する資料を裁判所に提出。このため防衛庁が調査していた。

 防衛庁は「あくまで求めに応じて情報を漏らしただけで、談合を主導したとはいえない」としており、訴訟は継続する方針。

海自情報流出 「秘」扱い文書も

2006年03月01日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 海上自衛隊の護衛艦「あさゆき」の通信員に続き、4隊員の私用パソコンから内部資料などがインターネットに流出していた問題で、4隊員の流出資料の中には、自衛艦のコールサインや外部秘の電報など、「秘」扱い文書が含まれていたことが明らかになった。

 斎藤隆海上幕僚長が28日の記者会見で明らかにした。海自によると、秘密情報には当たらないものの、艦艇の行動予定や作業内容、備品リストや画像のファイルなどの流出も確認されているという。

 流出元は若手幹部や海士、海曹。いずれも、業務用データを持ち出して自宅のパソコンで作業した結果、ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を介して流出していた。現在、流出元の隊員らの処分手続きを進めているという。

 流出した秘密情報については、流出の判明直後にコールサインを変更するなどしたといい、「日本の防衛に与える影響は最小限に抑えた」(斎藤海幕長)としている

海自、過去にも「秘」流出数件 「断腸の思い」海幕長陳謝

2006/02/28 The Sankei Shimbun

 海上自衛隊の「秘密」情報がインターネット上に流出した問題に関連し、斎藤隆(さいとう・たかし)海上幕僚長は28日の定例記者会見で「残念ながら過去にも数件ある。(自衛艦の)コールサインや電報などで、やはり『秘』が含まれていた」と述べ、自衛隊法が定める防衛秘密の流出がほかにもあったことを明らかにした。

 海幕長は「国民の信頼を著しく失墜させ、誠に申し訳なく、断腸の思い」と陳謝した。「秘」より重要度の高い「機密」や「極秘」に該当する情報流出は確認していないという。

 会見での説明によると、2月23日に私物パソコンからの情報流出が表面化した佐世保基地(長崎県佐世保市)の護衛艦「あさゆき」の海曹長(41)は調査に対し「官用パソコンはほかの隊員と共有することもあり、不便だと感じたため、昨年1月以降、私物パソコンに秘密データを入力していた」と説明。

 海曹長は部隊内の教育で、情報流出の原因となったファイル交換ソフト「ウィニー」に注意するよう指導されていたが「(自分は)情報セキュリティーに精通しているので心配ない」と思い込み、私物パソコン内のソフトを削除せずに放置していたという。

 斎藤海幕長は「現在までの調べで、今回ネット上に流出したものはおおむね把握し、内容を変更するなど影響を最小限に抑える努力をした」と強調した。(共同)

海自情報流出、さらに4件を確認

2006年02月28日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 護衛艦の秘密文書も含む情報がインターネット上に流出した海上自衛隊で、昨年秋以降、少なくとも全国の4人の隊員から4件のネット流出が新たに確認されていることが、28日までの海自の調査で明らかになった。

 昨年11月に自衛隊中央病院(東京・世田谷)の医官の自宅のパソコンから患者の個人情報が流出した問題をきっかけに、ネット上の監視を強化した中で判明した。いずれも流出したデータの中に秘密情報が含まれていなかったか、慎重に調べている。

 防衛庁・自衛隊では、業務用データの無許可持ち出しを禁止し、ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」などの危険性も厳しく指導しているが、情報管理に対する意識の甘さが、自衛隊員に深く広がっていることが露呈した形だ。

 関係者によると、データ流出は、今回の護衛艦のケースと同様、いずれもウィニーを入れた私用パソコンがウイルスに感染して起きたとみられる。ネット上で流出を指摘する書き込みを見つけても、流出元や流出データの全容を特定するには、数か月間かかるという。

 海自は、今回の流出問題を受けた緊急対策として、現在、許可制で認めている私用パソコンの業務利用や、私物の記憶媒体の職場への持ち込みも全面禁止する。

海自データ流出 「ウイルスソフトで慢心」

2006年02月28日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 海上自衛隊の護衛艦の秘密文書も含む業務用データがインターネット上に流出していた問題で、自宅の私用パソコンが流出元となった海曹長(41)が、海自の事情聴取に対し、「自分のパソコンはウイルス対策ソフトを常に更新しており、自分は絶対にウイルスに感染しないと思っていた。慢心があった」と話していることが分かった。

 海曹長は、海自が実施したパソコンの情報保全に関する研修にも過去3回参加しており、ファイル交換ソフト「Winny」(ウィニー)がウイルスに感染した場合のデータ流出の危険性も認識していたという。

 ウィニーを私用パソコンに入れていた動機について、海曹長は、「音楽や映画のデータ交換のため」と話し、「自分の仕事の資料収集のために、安易な気持ちで業務用データを自宅に持ち帰った。保全意識が欠如していた」と深く反省しているという。

 海曹長は艦内ではベテラン格で、同じ分隊に所属する若手乗員の指導や教育などを担当する役割も担っていた。このため、自衛艦のコールサインなどの秘密情報のほかに、一部の乗員名簿や緊急連絡網などの個人情報も流出した。

ウィニー 省庁侵食…情報流出次々

2006年02月27日 読売新聞 Yomiuri On-Line

自衛隊書類、受刑者名簿、原発資料…

 自衛隊の秘密書類から裁判所の競売情報、受刑者名簿、原発の検査資料まで――。国や自治体が管理する情報が、ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を通じ流出する事態が次々と明るみに出ている。ほとんどは、情報を私用パソコンに入れる単純な過失が原因。背景には、瞬時かつ大量に情報が拡散しかねないコンピューター情報の管理意識への甘さがありそうだ。

 24日には東京地裁から競売に関する個人情報が流出したことが新たに判明、13日には法務省の刑務所などの受刑者情報などの流出も明るみに出た。23日に資料の大量流出が分かった自衛隊では、過去にも3件の情報流出が判明している。

 警察関係情報の流出も深刻だ。警察庁によると、これまでに北海道警や京都府警など5道府県警で、犯罪被害者名などの捜査情報の漏えい5件が判明した。経済産業省原子力安全・保安院では昨年7月、原発の検査資料などの流出が発覚、関係者に衝撃が走った。

 これらは、いずれもWinnyが原因。各省庁は流出防止に躍起で、いずれも〈1〉私用パソコンでの業務データ利用禁止〈2〉重要情報の持ち出し禁止〈3〉業務パソコンの安全管理強化――を打ち出している。国土交通省の場合、省内の端末に新たにソフトを入れることを禁止するとともに、最新のウイルス対策ソフトを導入。農林水産省では、私用パソコンを省内の情報通信網(LAN)に接続できないようにし、内部データや文書ファイルのコピーを内規で許可制にした。

 ただ、官庁の業務用パソコンの台数は予算不足もあり、慢性的に足りないという。警察幹部は「仕事でどうしても私用パソコンを使わざるを得ない。上司に許可を得るようにしているが、管理にスキは出てしまう」と打ち明ける。

 Winnyの機能は欧米の類似ソフトより優れ、出回っている情報を探すことが容易という。このため米国などに比べ、日本での情報流出が目立つと指摘する専門家は少なくない。

 情報保安会社「インターネット・セキュリティ・システムズ」の徳田敏文・最高情報セキュリティ責任者は「最大の問題は私用パソコンで公的データを扱うこと。情報管理教育や規則も大事だが、誰が情報を複写したかを自動記録したり、ファイルを複写できないシステムを作るなど、技術的な防止策も欠かせない」と語り、「公私の区別」をつける大切さを指摘する。

Winny(ウィニー)

 文書や映像、音楽などをインターネットを通じてやりとりするファイル交換ソフト。個人のパソコンで使用すると、ウイルス感染による情報漏えいが起きやすい。開発したのは日本人で、ソフトの公開について、著作権法違反ほう助の罪に問われている。

防衛庁、海上自衛隊のWinnyによる情報漏洩を受けて対策を公表

2006/02/27 Internet Watch ( 三柳英樹 )

 防衛庁は24日、海上自衛隊の護衛艦の情報が含まれる資料がファイル交換ソフト「Winny」を通じて流出した問題について、再発防止に向けた対策に関する検討会を開催するとともに、私有PCによる業務用データ取り扱いへの対策を公表した。

 この問題は、海上自衛隊の佐世保基地に配備されている護衛艦「あさゆき」の電信室所属の通信員(曹長)が所有していたと思われるファイルが、同通信員の私用PCがウイルスに感染したことにより、Winnyを通じて流出したというもの。

 防衛庁では事件を受けて、秘密保全および情報保証の確保等に関する抜本的な対策の検討を行なうため、「秘密電子計算機情報流出等再発防止に係る抜本的対策に関する検討会」を開催した。検討会は、高木毅防衛庁長官政務官を委員長として、事務次官のほか、官房長、各局長、陸・空・海・統幕等の各機関の長などが委員として参加。24日に第1回の会議を行なった。

 また、私有PCによる業務用データ取り扱いへの対策については、データ流出を防止するため緊急の対策として、職務上使用する私用PCについてファイル交換ソフトの削除を確認するとともに、私有PCに保存されている業務用データについて秘密の情報および必要のないデータの削除を実施する。また、現在は許可を得れば職場において私有PCによる秘密の情報の取り扱いが認められているが、これを全面禁止するとしている。

CDで持ち出し…海自「秘」情報流出

2006年02月24日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 海上自衛隊の護衛艦「あさゆき」から多量の資料がインターネット上に流出していた問題で、流出させた通信員の海曹長(41)は、艦内の電信室内にあるパソコンのデータを無許可でCD―R(書き込み可能CD)などに移し、艦外に持ち出していたことが分かった。電信室は多くの秘密情報を扱うことから、立ち入りが認められている通信員は通常の隊員以上に機密保持を求められており、海自のずさんな防衛情報管理が露呈した形だ。

 防衛庁によると、流出が判明しているデータのうち自衛隊法上の「秘」に該当するのは、自衛艦のコールサインの一覧のほか、砲撃の着弾地点を読み替える暗号表の一種「側方観測換字表」など。防衛庁は「換字表」などは月ごとや訓練ごとに変えており、安全保障上問題はないとしている。

 流出元は、2001年から「あさゆき」に乗艦している海曹長の自宅の私用パソコン。同艦では、電信室は戦闘情報指揮所(作戦室)より秘密度が高い場所と位置づけられている。海曹長など通信員は、許可を得て「極秘」までの秘密文書を取り扱う権限を持つ。

 防衛庁では秘密文書の扱いについて訓令で厳しく管理。秘密文書以外の業務用データを自宅に持ち帰ることも通達で禁止している。だが昨年11月、自衛隊病院の患者の個人情報が、医官の私用パソコンからWinnyを介して流出していたことが判明、通達の再徹底を図ったばかりだった。資料を持ち出したことに関し、海曹長は「自分のパソコンで仕事をするため」などと説明しているという。

海自「秘」情報ネット流出

2006年02月23日 読売新聞 Yomiuri On-Line

私用パソコンウィニー介し

 海上自衛隊の護衛艦の暗号や訓練関係の文書など、秘密文書も含まれる多数の資料が、インターネット上に流出していたことが分かり、防衛庁が調査を始めた。

 防衛庁などによると、流出した資料は、海自佐世保基地(長崎県)に配備されている護衛艦「あさゆき」の電信室所属の通信員が所有するファイルとみられ、私用パソコンからファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を介して流出したらしい。

 護衛艦内のパソコンはメールなどを除き、ネット通信をすることがないため、同庁は、護衛艦内で使用しているデータを、この通信員が上司の許可なく記録媒体に保存して私用パソコンに移し、そのパソコンがウイルスに感染していたとみている。

 流出したデータには、自衛艦を識別するためのコールサインの一覧など、自衛隊法上の「秘」文書があるという。「あさゆき」の隊員数十人分の住所録や電話番号のリストなど個人情報もあった。流出した情報量について、同庁は「印字すると、厚手のファイル10冊分ほど」としている。

 「秘」よりも機密性が高い「極秘」と記された非常用暗号書や乱数表などの文書名一覧表も流出していたが、文書そのものは流出しておらず、他にも「極秘」の資料流出は確認されていない。

 Winnyを介して流出した場合、事実上、データをネット上から消去することが出来ないため、海自は22日からコールサインや乱数表などを変更した。

 ネット上の掲示板では、今週に入り、「海自の情報が流出している」と指摘する書き込みが相次いでいた。

 海上幕僚監部広報室は「データが流出した範囲や内容などの詳細を調査中」とし、海自は今後、通信員を規律違反で処分する方針。

海自機密データ 「極秘」暗号書類などネット上に流出

2006年02月23日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 海上自衛隊の「極秘」と書かれた暗号関係の書類や、戦闘訓練の計画表とその評価書など、多数の機密データがネット上に流出していることが、22日分かった。流出した海自情報はフロッピーディスク約290枚分に相当する膨大なもの。約130の自衛艦船舶電話番号や顔写真付きの隊員名簿、非常時連絡網なども含まれており、防衛庁は事実関係について調査を始めた。軍事専門家は「トップシークレットの情報が含まれている」と警告。過去最大級の軍事情報漏えい問題に発展する可能性も出てきた。【サイバーテロ取材班】

 関係者によると、情報は、ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」のネットワークに今月中旬に流出した。ファイルの内容などから、護衛艦「あさゆき」の関係者のパソコンが「暴露ウイルス」に感染したことが原因とみられる。

 注目されるのは「暗号関係」というフォルダ。この中には、暗号の解読機とみられる「符号変更装置」の操作手順の詳細な記述があった。また、「極秘」と記された、非常用暗号書や乱数表などの書類の名称と整理番号をまとめた「暗号書表一覧表」があった。数字を羅列した「側方観測換字表」や、自衛艦のコールサインをまとめた表は「秘」となっていた。

 一方、「ドリルパッケージ」というフォルダ内には「監視経過概要」のタイトルで、「本艦の258度、38マイルに探知(監視ラインの外1600yds)」「情報収集A法発動」「目標との距離を1000ヤードつめる」など、何らかの船舶を追跡したとみられる記録がある。訓練かどうかは不明だが、専門家は海自の作戦能力を知られる危険性を指摘する。

 「電話番号一覧」という名のファイルには、090で始まる電話、ファクスなどの「船舶電話番号」や、「衛星電話番号」などのデータが並び、「昨年3月現在」と上部に表記されていた。大量の電話番号が出たことで、より大切な情報にアクセスされる恐れもある。

 隊員名簿は、昨年4月現在の護衛艦「あさゆき」の約40人分の隊員リストとみられる。本籍地や住所地、家族構成のほか最終学歴や宗教の項目もある。このほか、「あさゆき」関係の文書として、「非常呼集連絡網」「艦内作業予定」「個人配置表」「勤務表」など多岐にわたるデータが収容されている。

 「あさゆき」は、海自佐世保基地配備の護衛艦。基準排水量は約3000トン。全長130メートルで乗員は約200人。魚雷や速射砲、機関砲などの装備がある。

 数日前からネット掲示板に「海自情報が流出している」などの書き込みが相次いでいる。

 防衛庁広報課は、「(掲示板に)書き込みがあったことは承知している。詳細については現在調査中」と話している。

 ▽軍事アナリストの小川和久さんの話 ここまでまとまった資料はトップシークレットと言える。他国の情報機関やテロ組織にとっては宝の山の資料だ。内通者をつくったり、なりすましを許しかねない。特に船舶追跡記録は、作戦能力が分かる可能性もあり、まずいのではないか。海自は直ちに対応しなければならない。

陸上自衛隊の内部資料、2002年11月に「Winny」で流出

2004/04/30 Internet Watch( 鷹木 創 )

〜利用したのはWinnyβ版か

 防衛庁は、陸上自衛隊第1普通科連隊(東京都練馬区)の内部資料がファイル交換ソフト「Winny」経由でインターネット上に流出していたことを明らかにした。流出した時期が2002年11月だったことから、Winnyを介して感染するウイルス「Antinny」による可能性はないとみられる。

 防衛庁によると、「当時同連隊の2尉が、職場で利用していた私物のPCを自宅に持ち帰り、Winnyを使用した際に、内部資料のデータを誤って“提供可能な状態”にしてしまった」という。流出したデータは第1普通科連隊の一部部隊に関する「教育訓練実施計画」「総員名簿」「精神教育の書式」など約30種類のファイル。隊員の名前や住所など個人情報が含まれていたが、「秘」指定の文書はなかったとしている。

 防衛庁では、2003年1月に私有PCの管理徹底を通達。2月には2尉に対して減給15分の1(1カ月)の処分を下した。2004年4月に公表したことについては、「流出したファイルは回収できず、報道されると多くのユーザーがファイルを探し始めるなど二次被害が予想されたため」だという。

 なお、Winnyは2002年5月6日にβ版が公開され、正式版のリリースは12月30日だったことから、2尉の利用していたのはβ版とみられる。


潜水艦資料、中国に漏洩か 警視庁、防衛庁元幹部宅を捜索

2005/04/03 The Sankei Shimbun

 防衛庁の元幹部職員が在任中、同庁の研究施設から重要書類を盗み出していたとして、警視庁公安部が窃盗容疑で元職員の自宅や勤務先などを家宅捜索していたことが二日、分かった。書類は潜水艦に関する防衛秘密という。警視庁は、書類が中国大使館の関係者に渡っていた可能性もあるとみて慎重に捜査し、防衛資料漏洩(ろうえい)疑惑の全容解明を進めている。

 窃盗の疑いが持たれているのは、神奈川県相模原市に住む防衛庁技術研究本部の第一研究所(東京都目黒区)の元主任研究官(63)。

 調べでは、元研究官は平成十二年二月から三月にかけ、さいたま市の貿易業者(53)の依頼を受け、勤務していた第一研究所から重要書類をコピーして盗み出した疑いが持たれている。

 警視庁は先月十二日、元研究官と貿易業者の関係先を捜索。事情聴取に元研究官は、書類を貿易業者に渡したことを認め、貿易業者も受け取りを認めているという。

 警視庁では、この貿易業者が元研究官と頻繁に飲食する関係にあるほか、中国大使館への出入りや中国への頻繁な渡航を確認しており、書類は貿易業者を通じて中国側に渡った疑いもあるとみている。

 元研究官は研究所在任中、「高張力鋼」と呼ばれる潜水艦の船体の鋼材とその溶接技術について研究していたが、盗んだ書類は高張力鋼と潜水艦に関する論文だった。

 十四年三月に退職して、現在は総合重機メーカーに嘱託扱いで勤務、鋼材の強度向上に関する技術指導などをしている。

 産経新聞の取材に、元研究官は「(警視庁に口止めされていて)話ができない」、メーカー側は「元研究官のことで警視庁の捜索を受けた」、貿易業者は「警視庁の事情聴取を受けた」などと話している。

 防衛庁は、秘密情報を訓令で「機密」「極秘」「秘」の三段階に定めており、「秘」以上を漏洩した職員や自衛官は、自衛隊法(守秘義務)違反の罪に問われる。流出した論文は「秘」以上にあたるが、同法違反は時効が成立しており、同法違反の立件は見送られるとみられる。

 防衛資料をめぐっては、十二年九月に防衛庁防衛研究所の幹部自衛官が「秘」文書のコピーを在日ロシア大使館の駐在武官で「GRU」(軍参謀本部情報総局)のスパイだったビクトル・ボガチョンコフ海軍大佐に渡したとして、同法違反容疑で警視庁などに逮捕されている。

                  ◇

 ≪防衛庁技術研究本部≫ 防衛庁の特別機関。昭和27年、保安庁法に基づき保安庁技術研究所として発足。29年に防衛庁設置法の施行で防衛庁技術研究所となり、33年の改正で現名称に。陸海空の自衛隊と統幕会議が使用する車両、船舶、航空機をはじめ、各種装備品など幅広い研究開発を一元的に行う。平成16年度の予算規模は約1845億円にのぼる。東京と神奈川に計5カ所の研究所があるほか、各地に試験場などをもつ。

防衛資料漏洩疑惑 「秘」以上の論文 元主任研究官、20年近く交流

2005/04/03 The Sankei Shimbun

 防衛庁の潜水艦に関する技術資料が持ち出された疑惑が二日、明らかになった。疑いが持たれている同庁研究施設の元主任研究官(63)と、持ち出しをそそのかしたとされる貿易業者(53)の交流は、二十年近くに及ぶとされる。持ち出された論文は、元研究官自身が作成に関与。防衛庁内で「秘」ランク以上にあたるこの秘密書類は貿易業者に渡ったとされるが、二人の間に金銭の授受はなかったとみられ、警視庁公安部は資料流出の全容解明を急いでいる。

 関係者によると、元研究官は「高張力鋼」と呼ばれる潜水艦の船体の鋼材とその溶接技術などについて防衛庁技術研究本部の研究施設で研究していた。平成十三年七月に研究施設の主任研究官となり、十四年三月、退職した。その後、総合重機メーカーに勤務し、鋼材の強度向上についての技術的な指導や、客である防衛庁に対する窓口を担当しているという。

 資料を受け取ったとされる貿易業者は、「食品雑貨の輸入の仕事」(貿易業者)で中国に頻繁に渡航しており、中国大使館にも出入り。防衛庁直営の売店にも物品を納入しており、「以前は鉄鋼関係の仕事をしていた」(警察幹部)関係もあって、元研究官と知り合ったとみられる。きっかけは「人づての紹介」(貿易業者)とされ、都内や神奈川県内のなじみの店で、多いときは毎週のように飲食を共にしていたという。

 こうした交友の中で防衛資料持ち出しの“算段”は行われたとみられる。十二年に発覚した幹部自衛官によるロシアスパイへの秘密漏洩(ろうえい)事件では、スパイ側は十数回の接触を重ねる中で、当初は警戒感を抱かせないよう市販の書籍類をもらうことで満足したそぶりを見せ、徐々に内部資料を求めていた。半年以上たってからは一回に十万−十五万円の現金を渡すようになったとされる。

 貿易業者の周囲には、物品納入の経験から自衛隊関係者が多く、警察幹部は、「ロシアの職業スパイとは比較できないが、貿易業者は時間をかけて自衛隊関係者から資料を得ようとしていた節があり、行動はスパイ的。その目的の解明が今後の捜査の重要課題」と話している。

                  ◇

 【過去の主な防衛資料漏洩事件】

 ■昭和55年1月 コズロフ事件

  元陸将補が現職自衛官から軍事情報月報などを得てソ連(現ロシア)の情報機関「GRU」(軍参謀本部情報総局)所属のコズロフらソ連大使館付武官に交付。自衛隊関係の3人が自衛隊法違反容疑で逮捕されたが、コズロフ本人は発覚後に帰国

 ■平成12年9月 ボガチョンコフ事件

  防衛庁防衛研究所に勤める海自三佐が、GRU所属の在日ロシア大使館付武官で海軍大佐のビクトル・ボガチョンコフに、防衛庁の戦術概説などの秘密資料を渡したとして、警視庁と神奈川県警が自衛隊法違反容疑で逮捕。ボガチョンコフは出頭要請を拒否し帰国

 ■平成14年3月 シェルコノゴフ事件

  GRU所属のロシア通商代表部部員、アレクセイ・シェルコノゴフが、空自OBの技術コンサルタント会社社長に対し、防衛秘密にあたる米国製戦闘機用ミサイルの関連資料を要求していたことが判明。既に帰国していたので、警視庁は日米秘密保護法違反容疑で書類送検した

                  ◇

 《高張力鋼》引っ張りにも圧縮にも強い鋼で変形しにくい。引っ張る強さが50キログラム以上に耐えるものを指し、それ以下は「軟鋼」と呼ばれる。軽量さが特徴で、水圧にも強く、潜水艦の船体などに使用される。鋼の結晶にマンガンやシリコンなどの元素を添加して熱処理するのが一般的製法とされる。


秘密文書を紛失、航空自衛隊幹部ら10人処分

2000.11.20(12:23)asahi.com

 航空機の開発に関する部署から秘密文書2件が紛失したとして航空自衛隊は20日、幹部自衛官ら10人を秘密保全義務違反などで戒告などの処分にした。文書は過って捨てられたというが、詳細は明らかにされていない。

 処分は、航空幕僚監部技術部技術第2課長の1等空佐と航空開発実験集団司令部(埼玉県)の研究開発部長で1等空佐の2人が注意を受けるなど、10人が戒告や訓戒、口頭注意を受けた。

 空自によると、文書が紛失したのは7月末から8月上旬にかけて。当該部署は航空機やミサイルなどの兵器を開発する重要な部署とされる。

 防衛庁が調査した結果、防衛庁の移転に伴う引っ越しの作業中に紛失したとし、「外部へ流出した可能性は低いと考えている」という。(15:33)

萩崎被告を懲戒免/機密漏えい 防衛庁、事務次官ら52人処分

2000.10.27 The Sankei Shimbun

 防衛庁は二十七日、海上自衛隊三佐による防衛機密漏えい事件に関連し、機密保全体制を強化するための情報保全警務隊の新設などを柱とする再発防止策を決定するとともに、機密漏えい罪で東京地裁に起訴された萩崎繁博被告(三等海佐)の懲戒免職など五十二人に対する処分と事件調査報告書を発表した。これに関連し、虎島和夫防衛庁長官も自らの給与一月分のうち五分の一を減給する。

 再発防止策では(1)機密保全に係る罰則を強化するため自衛隊法改正を検討(2)機密保全に万全を期す組織を目指すため情報収集を行う調査隊を改組、情報保全隊を新設し、情報保全隊と警務隊の本部機能を統合した情報保全警務隊を設置(3)長官の下に事務次官を長とする庁情報保全委員会を新設−などが柱になっている。

 とくに罰則強化のための自衛隊法改正については、機密漏えいの重大性からみて現在の一年以下の懲役または三万円以下の罰金では軽すぎるとして、機密の範囲や他の漏えい罪とのバランスなど法的な問題点について、関係省庁と密接に協議しつつ所要の検討を進めていくことにした。

 このほか、捜査段階の防衛庁と警察の協力については、連携強化を図るために協議を進める必要性について指摘するとともに、地方レベルでも緊密な連携体制の確立を目指すことも盛り込んだ。自衛隊法施行令の改正などは盛り込まれなかった。

 海上自衛隊の情報漏えい事件で、防衛庁が二十七日付で発表した処分者五十二人は次の通り。

 【懲戒免職】萩崎繁博海自東京業務隊付(三等海佐)

 【減給一カ月十分の一】佐藤謙事務次官、藤田幸生海上幕僚長(海将)、竹村訓舞鶴地方総監(同、元海幕調査部長)

 【戒告】首藤新悟防衛局長、泉徹海幕調査部長(海将補)ほか五人

 【訓戒】柳沢協二人事教育局長、新貝正勝防衛研究所長、山田道雄海幕副長(海将)、道家一成海幕人事教育部長(海将補)ほか十八人

 【減給一カ月三十分の一】元海幕調査二課長(海将)ほか二人

 【注意】第二師団長(陸将、前防衛研究所副所長)ほか十二人

 【口頭注意】防衛研究所第二研究部第二研究室長ほか二人

自衛隊秘密漏えい事件で自民が緊急提言

2000.10.12(18:01)asahi.com

 海上自衛隊三佐による在日ロシア大使館武官への秘密漏えい事件を受けて、自民党国防部会の「自衛隊と秘密保全に関するプロジェクトチーム」は12日、罰則強化に向けた自衛隊法改正などを盛り込んだ緊急提言をまとめた。これを受けて防衛庁は自衛隊法の改正案づくりに着手する。

 現行の自衛隊法では、秘密を漏らした場合、公務員の守秘義務違反と同じ1年以下の懲役とされている。一方、米国に関係する防衛秘密の漏えいは「日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法」で、10年以下の懲役とされる。

 提言は「国の安全を脅かす秘密が漏えいされた場合」という構成要件を設けたうえで、自衛隊法の罰則を強化すべきだとした。国家公務員法などの守秘義務についての罰則も「政府全体の問題」として検討すべきだとしている。

 また、陸海空の各自衛隊内で秘密保全や情報収集などにあたる調査隊と、隊内の犯罪捜査を行う警務隊のあり方について「今回の事件では、その能力を十分効果的に発揮できなかった」と指摘。「統合を含めた抜本的な組織改編」をして、秘密保全組織を早急に構築すべきだとした。

 各国駐在武官との接触について、防衛交流は着実に進めるべきとしながらも、「接触要領」をつくって指導を徹底することが重要だと指摘した。

自衛官訪ロ延期、ロシア側「遺憾」の見解

2000.09.16(01:00)asahi.com

 18日から予定されていた自衛官らのロシア訪問と、ロシア軍のブクレーエフ地上軍総局長の訪日を防衛庁が延期したことについて、ロシュコフ外務次官(対日政策担当)は15日、「日本側の決定は遺憾であり当惑している」との見解を述べた。「プーチン大統領の訪日で両国関係発展の重要な一歩が踏み出された中で、在日ロシア大使館員に対してとった日本側の行動(海上自衛隊三佐による情報漏えい事件)や今回の延期決定は注目に値する」と語った。

 国防省高官も同日、インタファクス通信に対し、「ロ日の軍事分野のダイナミックな発展が、日本側のせいで減速することは極めて遺憾だ」と述べた。

 ロシア側は、今回の延期決定は先の海上自衛隊三佐による在日ロシア大使館駐在武官への機密漏えい事件の影響とみている。

河野外相、スパイ事件で遺憾表明 日ロ外相会談

2000.09.15(01:40)asahi.com

 河野洋平外相は14日午前(日本時間15日未明)、ロシアのイワノフ外相とニューヨークのロシア国連代表部で約50分間、会談した。河野外相は、海上自衛隊幹部が在日ロシア大使館の駐在武官に機密情報を漏えいしたとされる事件について、「外交官としてふさわしくない行動だ。極めて遺憾で、事件が繰り返されてはならない」と語り、懸念を表明した。

 イワノフ外相は、「こういう問題は2国間で静かに解決することが重要だ。2国間の良好な関係に否定的な影響があってはならない」と述べた。

 また、懸案の平和条約交渉について、両外相は「2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くす」としたクラスノヤルスク合意の目標達成に向け、全力を挙げることを確認し、10月中旬に東京で次官級の国境画定委員会を開催することで合意した。

スパイ容疑の元海軍大佐に無罪判決 ロシア最高裁

2000.09.15(00:27)asahi.com

 ロシア海軍北方艦隊の原子力潜水艦に関する機密情報を西側の環境保護団体に漏らしたとして国家反逆罪に問われたニキーチン元海軍大佐について、ロシア最高裁は13日、元大佐を無罪とした一審判決を不服とする最高検察庁の上訴を退け、無罪判決を支持する決定を出した。今年8月の原潜クルスク沈没事故で今後の放射能漏れなどの影響も懸念されている中、今回の決定は、国際的な環境評価への情報開示の必要性に一定の理解を示したものといえる。

秘密保全で検討委設置へ 情報漏えい事件で防衛庁

2000.09.13(14:49)asahi.com

 訪米中の虎島和夫防衛庁長官は12日午後(日本時間13日午前)、海上自衛隊三佐による情報漏えい事件を受け、秘密保全策を検討する委員会を今月中にも防衛庁内に設ける方針を明らかにした。ワシントンで記者団に語った。佐藤謙事務次官のもとで、秘密文書の取り扱いや外国武官との接触などについて新たな基準作りを進める。自衛隊法の罰則部分の改正も検討される見通しだ。

 虎島長官は事件の再発防止策について「新しい情報管理システムを作りたい。秘密文書を自宅に持ち帰らせないとか、職場で相互にけん制する態勢など具体的な検討を進めたい」と述べた。秘密文書は即日返納させ、コピーは許可制にするなど、新たな規定を設ける方向だ。

 さらに、外国武官とは複数で会うよう義務づけることや、自衛隊内で捜査権を持つ陸海空の警務隊同士の連絡態勢を見直すことなども検討する。

 これに関連し、防衛庁幹部は同日、重大な機密漏えいをしても自衛隊法では懲役1年とされていることについて、罰則を重くするなど法改正の検討が庁内で始まっていることを明らかにした。

自衛艦建造計画も標的 機密漏えい/駐日武官、露に帰国 大統領ら対応協議

2000.09.10【モスクワ9日=斎藤勉】The Sankei Shimbun

 海上自衛隊の三佐から機密防衛情報を入手していた駐日ロシア大使館のビクトル・ボガチョンコフ武官(四四)が属すロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の日本での任務に、米海軍第七艦隊や日本の自衛艦建造計画などに関する情報入手が含まれていることが九日、明らかになった。また、プーチン大統領は同日、大統領府や政府の幹部らをクレムリンに招集し、事件での日本側への対応などを協議したもようだ。

 九日の「独立新聞」は、GRUの日本での主な収集情報について(1)海上自衛隊の組織と戦闘任務の実態(2)海自の動員・部隊展開計画(3)米第七艦隊との共同作戦体制(4)重要ポストの海自幹部のデータ(5)日本の軍艦建造計画と達成度(6)通信や戦闘指揮システム−などを列挙。そのうえで、「海自の三佐はその標的となった」と指摘している。

 同紙によると、ボガチョンコフ武官は七日夜、レストランで一緒に食事をしていた三佐が逮捕された後、自分は外交特権をたてに逮捕を免れ大使館に戻った。同僚武官にてん末を報告した後、モスクワに暗号電報を打ち、それからパノフ大使に報告したという。

 また、国連ミレニアムサミットから戻ったプーチン大統領は九日、イワノフ書記やカシヤノフ首相、ボローシン大統領府長官、セルゲーエフ国防相、ルシャイロ内相らをクレムリンに招集した。顔ぶれから、今回の事件の対応策が議題に含まれているのは確実だ。

 ロシュコフ外務次官は同日、「対抗措置として日本の外交官を退去させるか否か不明だが、あらゆる情勢を検討し、バランスのとれた決定をとる」とコメント。同紙は日本大使館員を監視している連邦保安局(FSB)がすでに「退去者候補」をリストアップし、退去決定があれば、政治部門の責任者が標的になる可能性が高いと伝えている。

 一方、この日午後に日本を出国したボガチョンコフ武官は同日夕、モスクワに到着した。ロシア外務省は「事件とは無関係に、任期を終えて帰国することになっていた」としている。

スパイ事件で帰国したロシア大佐の書類送検を検討

2000.09.10(03:00)asahi.com

 自衛隊の秘密情報漏えい事件で、警視庁公安部などの合同捜査本部は9日、情報提供を受けていたとされ、同日帰国した在日ロシア大使館武官のビクトル・ボガテンコフ海軍大佐(44)について、自衛隊法違反の教唆の疑いで書類送検する方向で検討を始めた。帰国によって大佐からの事情聴取が困難になったが、捜査本部は今後、大佐の事件への積極関与を視野に入れて、押収資料の分析など裏付け捜査を進める。

 調べによると、ボガテンコフ大佐は海上自衛隊三佐の萩崎繁博容疑者(38)に対し、自衛隊の情報が秘密資料であることを知りながら、必要な情報を具体的に指示するなどして持ち出させていた疑いがあるとされる。

 大佐は少なくとも昨年9月から今年8月にかけて約10回、萩崎三佐と接触し、情報提供を受けていた。情報の対価として、少なくとも総額数十万円以上の現金を萩崎三佐に提供したとみられる。

 しかし、大佐は捜査本部の聴取したいという要請に応じず帰国した。日ロ友好の進展の兆しもある中で、大佐が今後再入国する可能性もある。捜査本部は、書類送検の検討によって再入国が好ましくない人物であることを関係当局に示す必要があると判断している模様だ。

 1980年の元陸将補による自衛隊情報漏えい事件では、事件発覚後に帰国したソ連(当時)の駐日武官は書類送検されなかった。

 しかし今年3月、イランへの対戦車砲部品の不正輸出事件では、警視庁公安部が、事件に関与したとして当時の駐日イラン大使を書類送検している。

 この事件でも大使館員らに対する事情聴取は、外交特権の壁で出来なかったが、警視庁は資料の分析などから物証を固め、書類送検に踏み切った。今回の事件でも、捜査本部は萩崎三佐の自宅などから約800点を押収しており、分析を進めている。

 日本の司法当局がスパイ行為に対して、以前にもまして強い姿勢を示す傾向を強めていることを示しているともみられる。

海軍大佐の出国で外務省幹部、ロシア大使に遺憾の意

2000.09.10(00:03)asahi.com

 自衛隊の機密情報が漏えいしたとされる事件で、情報提供を受けていたとされる在日ロシア大使館武官のボガテンコフ海軍大佐が9日出国したため、外務省の東郷和彦欧亜局長は同日午後、パノフ駐日ロシア大使に対して遺憾の意を伝えた。同時に、関連情報を提供するように改めて求め、再発防止の措置をとるように申し入れた。

 東郷局長は事件について「武官は外交官としてふさわしくない行動をとったと認識するに至っている。こうしたことはきわめて遺憾だ」と表明。さらに「協力要請を行ったにもかかわらず、ロシア側より協力が得られず、捜査が継続しているのに武官が出国したことは遺憾だ」と抗議した。

自衛隊機密漏えい事件 ロシア大佐が帰国

2000.09.09(15:12)asahi.com

 自衛隊の機密情報が漏えいしたとされる事件で、海上自衛隊三佐の萩崎繁博容疑者(38)から情報提供を受けていたとされる在日ロシア大使館武官のビクトル・ボガテンコフ海軍大佐(44)が9日、成田空港で正午発のアエロフロート機に乗り込み、帰国の途に就いた。大佐の帰国で、漏えい情報の機密性の確認やロシア側の目的などの捜査に今後支障が出る恐れもある。

 警視庁公安部と神奈川県警の合同捜査本部は、7日夜、萩崎三佐とボガテンコフ大佐が密会している現場を押さえた際、同大佐にも任意同行を求めた。しかし大佐は外交特権を理由に拒否した。

 捜査本部はその後も外交ルートなどで再三出頭するように要請していたが、出頭には応じていない。

 大佐の帰国でどのような資料や情報が流出したのかの裏付け捜査が難しくなる。合同捜査本部では、三佐の自宅などで押収した資料の中には、ボガテンコフ大佐に提供した資料のコピーとみられる文書もあり、分析を進めている。

 萩崎三佐の勤務していた防衛研究所の課長クラスの幹部に対しても、流出したとみられる文書が秘密扱いの文書であるかを確認するため、合同捜査本部が参考人として事情を聴いている。

 これまでのスパイ容疑事件でも、関与したとされる外国政府の大使館員らは、事件の発覚直後に本国に帰国するケースが多い。

 1980年の元陸将補による情報漏えい事件では、事件発覚の翌日に、ロシア大使館の駐日武官だったコズロフ大佐が帰国した。

自衛隊機密漏えい事件 大佐は8月の親善式典に出席

2000.09.09(15:13)asahi.com

 海上自衛隊の萩崎繁博容疑者から機密情報提供を受けていたとされる在日ロシア大使館駐在武官のビクトル・ボガテンコフ海軍大佐は、プーチン・ロシア大統領訪日前の先月25日、同大使館で行われた日ロの親善行事に出席していた。

 この行事では、日ロ両国の国境線を初めて画定した1855年の日露和親条約の締結交渉をした帝政ロシアの軍人、プチャーチン提督に関するロシアの外交史料を、パノフ大使が提督ゆかりの静岡県戸田村に贈呈した。この際、提督が海軍軍人であることや、史料に海軍文書庫からのものも含まれていたため、ボガテンコフ大佐はこの式典に同席した。大佐は、資料館の展示品として村から寄贈を求められていたロシア海軍の旗「アンドレイ旗」を両国親善のあかしとして村の代表に手渡した。

 大佐は海軍旗を広げて戸田村の代表らに見せた後、旗をていねいにたたんで箱に入れ、手渡した。式典開始前、軍服姿の大佐は、取材に訪れた記者たち一人一人と名刺を交換し、「どうぞよろしく」と軽く会釈しながら応対していた。

露武官、米海軍情報要求か 機密漏えい事件/海自三佐宅 潜水艦資料など押収

2000.09.09 Yhe Sankei Shimbun

 海上自衛隊の三佐が在日ロシア大使館の駐在武官に日本の防衛機密を流していた事件で、自衛隊法(守秘義務)違反容疑で逮捕された萩崎繁博容疑者(三八)の自宅から、極東に展開する米海軍関係の資料が多数押収されていたことが八日、分かった。特に潜水艦に関する情報が目立ち、警視庁公安部と神奈川県警の合同捜査本部は、ロシア側が萩崎容疑者にこれらの情報の提供を強く要求していたとみて、流された情報の分析を急いでいる。

 捜査本部は、これまでに萩崎容疑者が勤務していた防衛庁防衛研究所や自宅など四カ所から、文書のコピーや防衛情報をまとめた手製の資料集など五百点以上を押収した。

 分析を進めた結果、この中に極東地域に展開する米海軍に関する情報が多数含まれていた。潜水艦に関するものが多く、萩崎容疑者が幕僚を務めていた第一潜水隊群司令部の展開状況のほか、米第七艦隊に所属する潜水艦の深度や攻撃能力などが示された資料もあった。

 米海軍と海上自衛隊は、合同演習を行うなど防衛協力上も密接な関連をもっており、海自は陸、空の自衛隊に比べ多くの軍事情報を入手しやすい環境にあるとされる。

 捜査本部は、在日ロシア大使館のビクトル・ボガチョンコフ武官(四四)が対米情報に的を絞って情報収集にあたっていた可能性が高いとみている。

 自衛隊の部内文書には重要度の順に訓令で秘密文書とされる「機密」「極秘」「秘」の三段階と、通達で定める「部内限り」「注意」の計五段階がある。

 防衛庁などでは、萩崎容疑者の経歴から、潜水艦部隊の幕僚や艦艇の作戦責任者をしていた当時には、機密性の高い資料、情報に近づけた可能性があった、とするが、現在勤務する防衛研究所では「秘」以上の文書は金庫で保管され、萩崎容疑者の立場では入手するのは困難と説明している。

防衛庁幹部名簿渡す、三佐供述 機密漏えい事件

2000.09.09(03:08)asahi.com

 自衛隊の機密情報が漏えいしたとされる事件で、海上自衛隊三佐の萩崎繁博容疑者(38)が警視庁と神奈川県警の合同捜査本部の調べに対し、「防衛庁幹部の名簿も提供した」と供述していたことが8日、分かった。防衛庁幹部への接近を図る目的で在日ロシア大使館駐在武官のビクトール・ユーリー・ボガテンコフ海軍大佐(44)が要求したとみられる。また捜査本部は、萩崎三佐の自衛隊内の役割などから、ロシア側の目的は米軍関係情報だったとの見方を強めている模様だ。

 萩崎三佐は調べに対し、約10回にわたる同大佐との接触で提供した情報について、詳細に話しているという。三佐が提供したとしている名簿には公表されていない幹部の住所、電話番号などが記載されているという。住所などが分かれば、スパイ工作活動が容易になるため、ロシア側が要求したとみられるという。

 防衛庁関係者は、三佐という階級では機密性の高い文書に接触する機会は少ないが、艦隊勤務の中では通信、暗号など米軍と共有する機密の一部に触れることがあったとみている。

 萩崎三佐は、「いわせ」「たちかぜ」などの護衛艦の乗艦勤務を経験。米軍と海上自衛隊は共同訓練が行われるうえ、海自の通常業務のなかでも暗号などの一部共有が考えられるといい、萩崎三佐が米軍関連の機密情報の一部を知っていた可能性が高いという。

 自衛隊が持つ秘密情報には、米軍と共有しているものが少なくない。海自には、米海軍の太平洋艦隊を補佐する役割もある。

 冷戦期には、日本を根拠地とする米軍の空母機動部隊を護衛するため、約100機の対潜哨戒機を保有し、旧ソ連の潜水艦を探索した。日米共同訓練や新しい日米防衛協力のための指針(ガイドライン)策定で、協力関係はさらに緊密になった。また自衛隊の兵器や装備品は、米国で開発されたものが多く、その性能などは秘密指定されている。

 萩崎三佐は潜水隊群の幕僚の経験もあり、そうした情報を知りうる立場だったと見られる。

機密漏えい事件で防衛庁長官がおわび

2000.09.08(16:24)asahi.com

 海上自衛隊三佐によるロシア側への機密漏えい容疑事件について、虎島和夫防衛庁長官は8日の閣僚懇談会で「国民の自衛隊に対する信頼に背き、我が国の防衛に対する内外の不信を招きかねない誠に遺憾な不祥事だ」と述べた。その後の記者会見で「国民に向かって深くおわび申し上げたい」と陳謝した。

 虎島長官は、8日付で三佐を防衛研究所付とし、捜査の進展を待って管理責任を含めて厳正に対応する考えを示した。また、警察と協力しながら、海上自衛隊の警務隊司令を長として調査を進めたいとした。

情報漏えい容疑で海自三佐逮捕 見返りに現金授受か

2000.09.08(19:41)asahi.com

 防衛上の機密情報が在日ロシア大使館に駐在するロシア海軍武官に漏れていたとされる事件で、警視庁公安部と神奈川県警の合同捜査本部は8日午前4時すぎ、東京都世田谷区池尻1丁目、海上自衛隊三佐で防衛研究所に勤める萩崎繁博容疑者(38)を自衛隊法違反(情報漏えい)の疑いで逮捕した。捜査本部はこれまでの内偵捜査で、萩崎容疑者が現金を受け取った現場を確認しているといい、情報提供の見返りだったとみて調べている。調べに対し、萩崎容疑者は容疑をほぼ認めているという。情報提供を受けたとされるロシア海軍武官についても、外交ルートを通じて事情聴取を申し入れている。

 捜査本部は、ロシアの諜報(ちょうほう)機関がかかわったスパイ事件とみて、萩崎容疑者の自宅や目黒区にある防衛研究所などを家宅捜索、押収した資料数百点を分析し、漏らしたとされる情報の内容を調べる。一方、防衛庁は8日、海上自衛隊警務隊司令を責任者にした捜査チームを作り、捜査当局と協力していく方針を決めた。

 調べでは、萩崎容疑者は少なくとも昨年暮れから今年8月にかけて、約10回にわたってロシア大使館駐在海軍武官のビクトール・ユーリー・ボガテンコフ海軍大佐(44)と毎月下旬に東京・渋谷などの繁華街にある居酒屋やすし店で接触し、その度に防衛庁が持ち出し禁止と指定している機密情報を提供していた、とされる。

 2人は昨年9月ごろ、日ロ軍事関係者などが出席して神奈川県内で開かれた交流行事で知り合ったとされる。7日は、午後7時ごろに港区内の飲食店でボガテンコフ大佐と落ち合い、防衛情報が書かれた書類を提供しようとした現場を捜査員に見つかり、任意同行を求められた。萩崎容疑者は応じたが、武官は「外交特権がある」として拒んだという。

 これまでの捜査で、萩崎容疑者が大佐と会った際、大佐から現金とみられるものを受け取っていたのを捜査員が目撃している。捜査本部は情報を提供した見返りとみて、裏付け捜査を進めている。

 捜査本部によると、萩崎容疑者は1986年3月に防衛大学校を卒業。護衛艦などに乗船した後、防衛大学校の大学院にあたる総合安全保障研究科で、旧ソ連の海軍政策などを研究していた。専門は情報分野で、ロシア語を学んでいた。今年3月から、防衛研究所に勤めていた。

 ボガテンコフ大佐は旧ソ連崩壊後のロシア最大の諜報機関とされるロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の出身で、97年9月に在日海軍武官として来日した。これ以前の90年から4年間、武官補佐官としてロシア大使館にいた。

海自幹部を事情聴取 ロ大使館関係者に機密情報提供か

2000.09.08(03:02)asahi.com

 海上自衛隊の三佐(38)が、防衛上の機密情報を在日ロシア大使館(東京都港区)の関係者に漏らしていた疑いが強まったとして、警視庁公安部などは7日、自衛隊法違反(情報漏えい)の疑いで、この三佐らから事情聴取を始めた。容疑が固まれば逮捕する。関係先の家宅捜索も始めた模様だ。調べに対し、三佐は漏えいについて大筋で認める供述をしているといい、警視庁は逮捕状を請求する。情報提供の見返りに金銭を受けとっていた疑いもあるとして調べを進める。警視庁は、ロシアの情報機関もかかわったスパイ事件とみて、ロシア大使館関係者からも事情を聴く方針だ。自衛隊幹部らが関与したとされるスパイ事件は、1980年に自衛隊元陸将補が旧ソ連大使館関係者に情報を漏えいして逮捕、起訴されて以来のことになる。

 警視庁などは、東西間の冷戦がなくなった後もロシア軍参謀本部情報総局(GRU)などのロシア軍諜報(ちょうほう)機関が日本や米国、中国などの軍事情報を収集するために、日本で継続的にスパイ活動を続けていたとみて、三佐が漏らしたとされる情報内容を分析するなど、慎重に調べている。

 これまでの調べによると、この三佐は、東京都目黒区にある「防衛研究所」に籍を置く。少なくとも約半年前から、ロシア大使館関係者の求めに応じて、機密情報を数回以上にわたって提供していたとされる。警視庁は、この三佐が提供した情報が機密情報であるかどうかを防衛庁側に確認中で、確認できれば逮捕に踏み切る。

 情報を受け取っていたとみられるロシア大使館関係者は軍事担当の武官とみられる。GRU出身の現役の軍幹部との情報もあり、警視庁が確認を進めている。

 80年に警視庁が摘発した情報漏えい事件は、陸上自衛隊を退職した元陸将補が、部下だった現職自衛官幹部2人と共謀。2人から受け取った軍事情報を、在日ソ連大使館の武官だったGRU出身のソ連軍大佐に提供していたとされる。元陸将補は懲役1年の実刑判決を受け、確定している。摘発した警視庁はソ連大使館武官の聴取を外交ルートで要請したが、武官は事件が摘発された翌日に帰国した。

 <自衛隊法とスパイ事件> 自衛隊法は第59条1項で、自衛隊員は職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない、としている。この条項は自衛隊を辞めた隊員にも適用される。違反した場合は、1年以下の懲役または3万円以下の罰金が科せられる。

HOME政治・経済・社会BACK