TOPIC No.2-5-1 サブプライムローン問題

01.米国のサブプライムローン問題 by YAHOO! News
02.サブプライムローン byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


米シティ、バンカメも黒字 4―6月期、資産売却で

2009/07/18 中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク17日共同】米金融大手シティグループが17日発表した2009年4〜6月期決算は、純利益が42億7900万ドル(約4千億円)となった。黒字は2四半期連続。前年同期は24億9500万ドルの純損失だった。

 バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)が同日発表した4〜6月期決算は、32億2400万ドル(約3千億円)の黒字。前年同期に比べ5%の減益だが、2期連続で黒字を確保した。これまでに同期決算を発表したゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェースと合わせ、米金融大手4社はすべて黒字となった。

 金融危機の影響からの脱却に期待がかかるものの、シティは傘下の証券会社、バンカメは中国建設銀行株の売却が業績を押し上げた。本格的な業績回復を果たすには、まだ時間がかかりそうだ。

富裕層、思わぬサブプラ余波 続く住宅価格下落、デフォルトで差し押さえ急増

2009/05/12 Fuji Sanjei Business-i

売りに出されている中古のプール付き豪邸。富裕層もローン返済に窮するようになった=5日、米テキサス州(ブルームバーグ)

 チャック・デートン氏(43)は、カリフォルニア州ニューポートビーチに家を買った2004年、頭金として購入価額95万ドル(約9340万円)の4分の1を支払った。乾式壁を扱う会社の経営で年間50万ドル稼いでいたデートン氏は、住宅価格は上昇し続けると思っていた。

 しかし住宅市場は崩壊。新規着工が停滞し、もはや建築業者はデートン氏の事業を必要としなくなった。寝室が3部屋あり、太平洋岸から1区画の場所に立つこの家のローンを支払うことができなくなったデートン氏は、4カ月前にデフォルト(債務不履行)に陥った。差し押さえを免れるため、築7年の自宅をローン残高より安く売却することに債権者が同意してくれないだろうか、と考えている。

 デートン氏のように、04年に米国世帯平均のおよそ10倍以上の収入があった住宅ローン債務者が、低所得のサブプライムローン債務者と同じ問題に直面している。不動産価格の下落でローン残高が住宅の評価額を上回り、家を手放すにもローンの借り換えを行うにも赤字を免れない状態となっているのだ。

 ジャンボローン(高額住宅ローン)の適用上限である72万9750ドル以上の価格がついた高級住宅のうち、年初から10週間に差し押さえ手続きに入った住宅の件数は前年同期に比べて27%増加(米不動産仲介会社リアルティトラック調べ)。全差し押さえ住宅に占める割合は2.83%と、昨年同時期の2.21%から増加した。

 ≪救済策の対象外≫

 ジャンボローンは米政府系住宅金融機関(GSE)のファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)やフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)による買い取り・保証対象の上限(約41万7000ドル)より高額の住宅を対象としたローン。FTNフィナンシャルによると、およそ5000億ドルのジャンボローンが証券化されたという。

 オバマ米大統領の住宅対策はGSEによる買い取りが可能な住宅ローンの救済を目的としており、ジャンボローン債務者は救済対象に含まれていない。

 高級住宅の差し押さえの影響が最も大きいのはカリフォルニア州だ。同州の不動産会社フィールド・チェック・グループのマネジング・ディレクター、マーク・ハンソン氏によると、かつて100万ドルの市場価格をつけた住宅のローン債務者1500人以上が、2月にデフォルトとなっている。不動産調査会社MDAデータ・クイックによると、カリフォルニア州全850万世帯の約3%に当たる25万4745世帯が住宅価格100万ドル以上の高級住宅だ。

 昨年、同州の住宅販売は前年比2.5%増となったが、100万ドル以上の高級住宅の販売は前年比43%減となり、03年以来の低水準に落ち込んだ。

 ≪市場崩壊の足音≫

 ハンソン氏はまた、高級住宅の売れ行き悪化の背景としては融資基準の厳格化もあると指摘。「今100万ドルの家を買うには25万ドル以上の年収と購入価格の20%の頭金、そして完璧(かんぺき)に近い信用が必要であり、購入者数は以前ほど多くない」と述べ、「供給を吸収するのに十分な購入者がいない。高級住宅市場の崩壊が起きつつある」と語った。

 デートン氏は、昨年11月に廃止した乾式壁の事業を再開するめどは立っていないと言い、「私の見解では、住宅建築市場はまだ底が見えてもいない。さらに下がり続けるだろう」と話した。(Bob Ivry)

AIGの高額賞与に批判噴出 米政府、矛先回避に必死

2009/03/17 中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク17日共同】米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が、厳しい批判にさらされている。経営破綻はたんの危機に陥り米政府から千七百億ドル(約十六兆八千億円)を超える支援を受けながら、幹部への高額賞与など不適切な資金使途が相次ぎ発覚したからだ。オバマ政権も激しく非難するが、その背景には、事前に資金使途を把握していた政府へ批判の矛先が向くのを避ける狙いがあるとみられる。

 高額ボーナスが問題となったのはAIGのロンドンに本拠を置く資産運用子会社。「クレジット・デフォルト・スワップ」(CDS)と呼ばれる企業の倒産リスクを保証する金融商品に傾斜。二年間で約四百億ドルの損失を出し同社崩壊の主因となったが、四百人の幹部社員に計一億六千五百万ドル(約百六十億円)が先週支払われた。六百五十万ドル(約六億四千万円)を受け取った社員もいた。同社は、契約に定められており支払いを止められなかったと説明している。

 AIGはまた、政府支援の半分を上回る九百億ドル余りを、CDSの保証相手の欧米金融大手に支払っていた。

 同社のCDS取引は二〇〇八年三月末時点で、想定元本が四千七百五十億ドル(約四十七兆円)に達する規模へ膨張。その一方で、金融危機により企業の破綻リスクなどが増大し、金融機関から提供を求められる担保額が増え続けたためだ。

 AIGが破綻すれば巨額の損失を被るはずの欧米金融機関は、米政府による公的資金の投入で資金を受け続けることが可能となった。最大受益者のゴールドマン・サックスは昨年末までに、AIGから総額百二十九億ドルを受領。取引先の金融機関にとりAIGは「政府支援により『打ち出の小づち』のような存在になった」との指摘もある。

 オバマ大統領は十六日、「無神経さと貪欲どんよくさがAIGを危機に追い込んだ。これがどう正当化されるのか」と賞与支給を非難。支払い差し止めと支援内容の見直しをガイトナー財務長官に指示する事態となった。

 しかし米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は「政府当局者は何カ月も前からボーナス問題を認識していた」と指摘。支払われた賞与の回収は事実上不可能なため、最近決めたばかりの三百億ドルの追加資本支援に際して、新たな報酬制限を課すことなどが検討されているという。

米AIG、08年赤字9・7兆円 破綻回避へ増資や債務削減

2009年03月02日  中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク2日共同】米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)は2日、2008年12月期決算を発表、992億8900万ドル(約9兆7000億円)の純損失を計上した。10−12月期は、四半期として史上空前の616億5900万ドル(約6兆円)の純損失となった。同社の経営破綻(はたん)を防ぎ再建を進めるため米政府と連邦準備制度理事会(FRB)は、300億ドル(約2兆9000億円)の資本増強やAIGの重要事業を当局へ譲渡することによる債務削減など追加支援策を公表した。

 AIG同様、政府管理下での再建が先週決まったシティグループの例と合わせて、米金融危機の深刻さがあらためて浮き彫りになった。

 保有する金融商品に多額の損失が発生したAIGは昨年9月、当局が80%近い株式を取得し、政府管理下で再建することが決まった。その後、400億ドル(約3兆9000億円)の資本注入などを重ね、支援は今回で4回目。

 600億ドルの枠が設定された公的資金による融資や資本注入は、高い金利や配当を課せられているため、AIGの重荷となっていた。

 米メディアによると債務圧縮の見返りに同社は、日本を含め世界で生保事業を展開するアリコと香港に本拠を置く保険会社AIAの2社を事実上、政府へ譲渡。さらに100億ドル前後の生保契約を証券化し政府へ与える。政府はこれらの資産を売却することでAIG向け融資などを穴埋めする。

 300億ドルの追加増資はAIGの必要時に実施。配当や融資金利は引き下げる。

 リスクの高い金融商品を多く保有し巨額損失が避けられない同社は、今回の決算結果により格付け会社による評価が引き下げられる可能性があった。格下げされれば契約上、追加の資金負担が生じ破綻する恐れがあったため、金融当局が追加支援策を検討していた。

6兆円に迫る赤字計上へ 米AIG、金融商品で損失

2009/03/02  中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク2日共同】米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)は二日、二〇〇八年十―十二月期決算を発表し、四半期としては史上空前の六百億ドル(約五兆八千五百億円)規模の損失を計上する見通しだ。同社の経営破綻はたんを防ぎ再建を進めるため米政府と連邦準備制度理事会(FRB)は、三百億ドル(約二兆九千億円)の資本増強やAIGの重要事業を当局へ譲渡することによる債務削減など追加支援策を公表する。

 AIG同様、政府管理下での再建が先週決まったシティグループの例と合わせて、米金融危機の深刻さがあらためて浮き彫りになった。

 保有する金融商品に多額の損失が発生したAIGは昨年九月、当局が80%近い株式を取得し、政府管理下で再建することが決まった。その後、四百億ドル(約三兆九千億円)の資本注入などを重ね、支援は今回で四回目。

 六百億ドルの枠が設定された公的資金による融資や資本注入は、高い金利や配当を課せられているため、AIGの重荷となっていた。

 米メディアによると債務圧縮の見返りに同社は、日本を含め世界で生保事業を展開するアリコと香港に本拠を置く保険会社AIAの二社を事実上、政府へ譲渡。さらに百億ドル前後の生保契約を証券化し政府へ与える。政府はこれらの資産を売却することでAIG向け融資などを穴埋めする。

 三百億ドルの追加増資はAIGの必要時に実施。配当や融資金利は引き下げる。

 リスクの高い金融商品を多く保有し巨額損失が避けられない同社は、今回の決算結果により格付け会社による評価が引き下げられる可能性があった。格下げされれば契約上、追加の資金負担が生じ破綻する恐れがあったため、金融当局が追加支援策を検討していた。

シティ、政府管理で再建へ 持ち株比率36%に拡大

2009/02/28  中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク27日共同】米政府と金融大手シティグループは二十七日、政府が保有する優先株を議決権のある普通株へ転換し、約36%のシティ株を政府が握ることで合意した、と発表した。事実上の「政府管理」や「部分国有化」を意味しており、政府の信用を後ろ盾に金融危機で経営難に陥ったシティの再建を図る。

 米政府は昨年、二度にわたり公的資金から計四百五十億ドル(約四兆四千億円)をシティへ資本注入したが、サブプライム住宅ローン問題関連の不良金融資産を大量に抱えての再建は難航、株価は今月に入り一時1ドル台へ急落。三回目の救済が必要になった。

 政府が資本注入に伴い取得した優先株のうち最大二百五十億ドル(約二兆四千億円)相当を普通株へ転換する。優先株でシティへ出資している中東などの政府系投資ファンドなども、同様の転換に応じる。

 政府が株式を転換するのは、銀行の健全性を測る目安として自己資本に占める普通株の割合が重視されているため。優先株に特有の高めの配当が、シティの重荷となっていることも背景にある。

 米メディアによると、米政府の求めに応じ、シティは経営陣を大幅に入れ替え、独立した社外取締役を増やす。ただパンディット最高経営責任者(CEO)は留任する見通し。

 オバマ政権は新たな金融安定化策の下、今週からシティなど大手金融機関の資産査定に着手。必要と判断すれば追加の資本注入へ踏み切る方針。

 シティは二〇〇八年十―十二月期まで五・四半期連続の赤字決算で、再建に向け国際的な銀行業務を柱とする中核事業と、日興コーディアル証券を含む非中核事業の二部門への分割を発表。非中核事業で資産売却を急いでいる。

政府の力で信用補完 底無しの経営悪化

2009/02/28  中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク27日共同=美濃口正】シティグループは二十七日、米政府の事実上の管理下で再建を図ることが決まった。金融市場の混乱と経営悪化により資金調達力が弱まったシティには、政府の力を借りる以外に信用補完の道は残されていなかった。取り付け騒ぎになりかねない危機に直面しており、「部分国有化」はやむを得ない選択だった。

 世界的な景気悪化で住宅ローンをはじめ自動車ローンなどにも貸し倒れが広がり、シティの財務は今後も一段の悪化が見込まれる。自己資本の充実が喫緊の課題だが、サブプライム住宅ローン問題に関連した金融商品を多く抱え底無しに損失が拡大するシティは、機関投資家から相手にされていないのが実情だ。

 そうした手詰まりを見越した投機筋はシティなど体力が弱った金融機関にターゲットを定め、株を売り浴びせている。シティの株価は年初から60%以上急落。このまま放置すれば預金者などの動揺を誘いかねないため、シティ側の求めに応じる形で米政府も株式の四割近くを握り「経営に大きな影響力を持つ」(バーナンキ米連邦準備制度理事会議長)という苦肉の策に出た。


英金利、史上初1%台へ 景気下支えで追加利下げ

2009/01/08  中国新聞ニュ−ス

 【ロンドン8日共同】英中央銀行のイングランド銀行(BOE)は八日、金融政策委員会を開く。悪化が続く国内経済を下支えするため、主要政策金利を現行の年2・0%から0・5〜0・75%程度引き下げるとの観測が金融市場では優勢だ。実現すれば金利水準は、一六九四年の同行設立以来最低となる初の1%台に低下する。

 雇用環境の悪化や住宅価格の下落で個人消費が落ち込む可能性が強いことから、BOEは「ゼロ金利」政策を視野に利下げを継続。三月ごろには、市場への資金供給量を高水準に保つ「量的緩和」に政策の軸足を移すとの見方も広がっている。

 BOEは昨年十二月四日、五十七年ぶりに過去最低の2・0%に政策金利を引き下げた。今回も利下げすれば四カ月連続。十五日には欧州中央銀行(ECB)も追加利下げに踏み切る見通し。

 政府による金融危機対策や金融緩和にもかかわらず英経済は低迷し、通貨ポンドは欧州単一通貨ユーロに対し最安値を更新。原油価格の下落で物価上昇圧力が弱まっていることから、BOEは超低金利で政府の景気刺激策を支援する構えだ。

EU、24兆円超の景気対策発表 加盟国に財政出動促す

2008年11月26日 中国新聞ニュ−ス

 【ブリュッセル26日共同】欧州連合(EU)のバローゾ欧州委員長は26日、金融危機に対応した横断的な景気対策として、域内総生産(GDP)の1・5%に当たる2000億ユーロ(約24兆7000億円)規模の案を発表した。

 日本が26兆9000億円規模の景気刺激策を打ち出したほか、米国では議会多数派の民主党内で最大7000億ドル(約67兆円)規模の追加景気対策が検討されている。各国が世界同時不況の回避へ動いており、欧州委の提案で先進国・地域の景気対策が加速しそうだ。

 日米と異なり、財政主権が統一されていない欧州委は(1)2009−10年について各国の財政赤字を一定程度まで容認(2)付加価値税率の引き下げを勧告(3)欧州投資銀行(EIB)を通じた融資拡大−などにより、加盟各国に景気刺激策を促す。

 EUはこれまで、EIBの貸付枠を300億ユーロに倍増することや、域内の自動車業界に400億ユーロ規模の低利融資を行う方針などを確認。各国に大幅な財政出動の裁量を与えることで「同時期に調和した対策が組まれることを期待する」(欧州委)としているが、加盟国の経済規模の違いなどから効果にばらつきが出ることも懸念される。

ユーロ圏初の景気後退 7―9月のGDPマイナス0・2%

2008/11/15  中国新聞ニュ−ス

 【ベルリン14日共同=高橋秀次】欧州連合(EU)の統計機関ユーロスタットは十四日、ユーロ圏十五カ国の二〇〇八年七―九月期の実質域内総生産(GDP、季節調整済み)の速報値は、前期比で0・2%減となったと発表した。四―六月期の0・2%減に続く二・四半期連続のマイナス成長で、一九九九年のユーロ導入以来、初の景気後退入りが確認された。

 金融危機の深刻化や世界的な景気低迷による輸出不振に、新車販売の急減など内需低迷が重なったのが理由。EU全体の二十七カ国でも0・2%減(四―六月期は0・0%)のマイナス成長だった。

 EUは加盟国向けの金融支援などを検討しているほか、ドイツなど各国も個別に大型の経済対策を計画。欧州中央銀行(ECB)など各中銀は追加利下げを示唆しており、景気がこれ以上悪化するのを阻止する構えだ。

 七―九月期の国別では欧州最大経済規模のドイツと、イタリアがともに0・5%減で、両国とも二期連続のマイナス成長。スペインも0・2%減だったが、フランスは0・1%増とわずかながらプラス成長となった。非ユーロ圏では英国が0・5%減となり、欧州主要国の不況が鮮明化。通貨危機のハンガリーなど東欧諸国も低迷した。

 EU欧州委員会は〇九年のユーロ圏の年間成長率を0・1%、EU全体では0・2%と予測。一段の下振れの可能性もあり、今回の景気後退は長期化するとの見方が強まっている。

AIG、純損失2・4兆円 米政府、14兆円新支援も

2008年11月10日  中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク10日共同】経営危機に陥り、米政府の管理下に置かれた保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が10日、発表した2008年7−9月期決算は、純損失が244億6800万ドル(約2兆4000億円)に達した。政府は損失の急拡大に対応するため、保険会社向けで初の資本注入となる400億ドルを含む1500億ドル(約14兆8500億円)規模の新たな支援策を打ち出した。

 AIGが9月中旬、事実上の政府管理下に置かれてから2カ月足らずで支援規模が膨れ上がることになり、巨額の公的資金を投入し続ける“歯止めなき救済”に批判が高まりそうだ。

 AIGは前年同期は30億8500万ドルの黒字だったが、その後4・四半期連続で赤字となり、損失額は計429億ドルに達した。

 7−9月期決算では、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)と呼ばれる金融派生商品(デリバティブ)関連で約75億8000万ドル、その他のサブプライム住宅ローン関連で183億ドル超の評価損を計上した。

 政府は金融危機対策の緊急経済安定化法に基づき、優先株を購入する形で400億ドルの資本を注入する。さらに、AIGが保有する不良資産の買い取りなどに約500億ドルを投じ、これまでの資金繰り支援を中心とした枠組みから、価格下落が懸念される金融商品の買い取りに踏み込む。

 政府は資金繰り支援のためAIGに600億ドルを融資する。政府は9月に850億ドルの支援枠を設けたが、資本注入を実施する代わりに枠を狭めた。返済期限をこれまでの2年から5年へ延長、金利水準を現在の年10%程度から半分ほど引き下げて負担を軽減するなど、当初の救済条件を大幅に緩和する。

NY株9000ドル台回復 史上2番目の889ドル高

2008年10月29日  中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク28日共同】28日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は、米利下げへの期待感などから3営業日ぶりに急反発し、史上2番目の上げ幅となる前日比889・35ドル高の9065・12ドルで取引を終えた。全面高となり、1週間ぶりに終値で9000ドル台を回復した。

 欧州株も上昇しており、世界的な株価の下落傾向にひとまず歯止めがかかった形となった。

 29日までの米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが決まるとの観測から買い注文が先行。値ごろ感からの買いも膨らんだ。金融危機の深刻化や世界的な景気後退への強い懸念から、ダウは27日までの1カ月間で約3000ドル下落していた。

 過去最大の上げ幅は、金融危機対策をまとめた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)後、初めての取引となった今月13日(936・42ドル)に記録した。

米FRBが追加利下げへ 28、29日に連邦公開市場委

2008/10/26  中国新聞ニュ−ス

 【ワシントン25日共同】米連邦準備制度理事会(FRB)は二十八、二十九の両日、金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。金融危機の深刻化で景気後退入りが確実な米経済を下支えするため、追加利下げを決める公算が大きい。

 今月八日の欧米六カ国・地域の中央銀行による協調利下げに続き、FRBは主要な政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0・5%引き下げ、年1・0%にするとの観測が有力だ。

 討議資料となる全米十二地区連銀の景況報告は「全十二地区で経済活動が悪化した」と明記。雇用統計や企業心理の悪化だけでなく、個人消費や生産など幅広い経済活動の落ち込みを示すデータも相次いでいる。

 バーナンキFRB議長は最近の講演で「行使可能なあらゆる手段を使う」とし、追加利下げを示唆。イエレン・サンフランシスコ地区連銀総裁らFRB幹部も景気後退入りを明言し、景気刺激の必要性を認めている。

 物価動向は、原油価格の下落でインフレ懸念が後退。ただFRBによる単独利下げにはドル下落のリスクがあり、欧州中央銀行(ECB)など各国中央銀行との緊密な連携が不可欠になる。

ワコビア、赤字2・4兆円 7―9月期、金融混乱で

2008/10/23  中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク22日共同=増田和則】米銀大手ワコビアが二十二日に発表した七―九月期決算は、サブプライム住宅ローン問題関連の損失に、合併に伴う損失が特殊要因として加わり、純損失が二百三十八億八千九百万ドル(約二兆四千億円)と巨額の赤字となった。サブプライム問題が深刻化した昨年夏以降、米金融機関が四半期ベースで計上した赤字額としては最大。

 四半期ベースの赤字は三期連続。前年同期は十六億千八百万ドルの純利益だった。

 米金融機関は金融危機や景気減速で七―九月期の業績が軒並み低迷しており、経営悪化に歯止めがかかっていない。

 ワコビアはサブプライム問題関連の評価損が二十五億ドルに達したほか、信用不安による個人向け融資などの貸倒引当金の積み増しが四十八億ドルに膨らんだ。米銀大手ウェルズ・ファーゴへの合併に伴う費用も百八十八億ドルに上った。

 ワコビアは、約二年前の住宅金融会社の買収で住宅ローン事業に本格参入したことが裏目に出た。不良資産が多く、九月の米証券大手リーマン・ブラザーズの破たん後に株価が急落。経営危機に陥り、いったん米銀大手シティグループによる買収に合意したが、より好条件を提示したウェルズに乗り換える形で救済買収されることが決まった。

 西海岸から中西部を中心に展開するウェルズは合併を機に、米有数の巨大金融機関として攻勢をかける構えだが、合併後もワコビアの不良資産は重荷となりそうだ。

来月15日に米で金融サミット G20で国際金融改革議論も

2008/10/23  中国新聞ニュ−ス

 【ワシントン22日共同=杉本一朗】ペリーノ米大統領報道官は二十二日、金融危機対策のための第一回緊急首脳会合(サミット)を、世界二十カ国・地域の首脳を招いて十一月十五日にワシントンで開くと発表した。

 日本を含む主要八カ国(G8)に中国やインドなど新興市場国も参加し、深刻化する金融危機の収束に向けた解決策などを協議する。

 首脳会合は十一月八、九日にブラジルで開かれる二十カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)の後に、G20の一環として開催する。

米銀ワコビア2兆円超の大幅赤字 金融機関4半期で最大級

2008年10月22日 中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク22日共同=増田和則】米銀大手ワコビアが22日に発表した7−9月期決算は、サブプライム住宅ローン問題関連の損失に、合併に伴う費用が特殊要因として加わり、純損失が238億8900万ドル(約2兆4000億円)と大幅な赤字となった。4半期ベースの赤字は3期連続。

 サブプライム問題に伴う金融市場の混乱が深刻化した昨年夏以降、金融機関が4半期ベースで計上した純損失額としては最大級の規模。

 ワコビアは、サブプライム問題関連の不良資産が多く、9月の米証券大手リーマン・ブラザーズの破たん後に株価が急落。経営危機に陥り、いったん米銀大手シティグループによる買収に合意したが、より好条件を提示した同ウェルズ・ファーゴに乗り換える形で救済買収が決まった。

 前年同期は16億1800万ドルの純利益だった。

米、金融サミット開催へ G8+新興国で11月にも

2008/10/20  中国新聞ニュ−ス

 【ワシントン19日共同=杉本一朗】ブッシュ米大統領は十八日、欧州連合(EU)首脳と会談し、金融危機対策のための第一回緊急首脳会合(サミット)を米国で開くことで合意した。主要八カ国(G8)のほか新興市場国も参加、十一月四日の米大統領選後の早期開催に向け調整する。深刻化する金融危機の収束に向け、主要国首脳が異例の協調行動に踏み出す。

 ブッシュ大統領とEU議長国フランスのサルコジ大統領、欧州委員会のバローゾ委員長が十八日、ワシントン郊外のキャンプデービッド大統領山荘で会談。第二回以降のサミットを開催していくことでも一致した。

 会談後の共同声明によると、第一回首脳会合では金融危機への取り組みを点検、再発防止に向けた改革原則で合意を目指す。第二回以降は、原則に沿った具体的な実施計画を策定する。

 北京で二十四、二十五日に開くアジア欧州会議(ASEM)首脳会議でアジア諸国などに参加を求める考えも示した。

 日本政府は十九日、第一回首脳会合に麻生太郎首相が出席する方向で調整に入った。

 大統領は会談前の記者会見で「ともに行動することが必要。近い将来、首脳会合を主催することを楽しみにしている」と述べた。G8議長国である日本の麻生首相とも相談したことを明らかにした。

 サルコジ大統領は「これは世界全体の危機」とし、危機の震源地ニューヨークで首脳会合を開き、解決策を協議することを提案。バローゾ委員長は「国際金融の新たな秩序が必要だ」と述べ、米国中心の国際金融・通貨体制の再構築を目指す意向を示した。

 米国はこれまで首脳会合の早期開催に慎重姿勢を示していたが、国際金融改革に積極的なEUを制し、主導権を握るため会合の主催を表明したとみられる。

 国連の潘基文バン・キムン事務総長も十八日、サルコジ大統領に、遅くとも十二月初めまでにニューヨークの国連本部で首脳会合を開くことを提案した。

欧米の公的支援300兆円 金融危機、一段の負担も

2008/10/19  中国新聞ニュ−ス

 米証券大手リーマン・ブラザーズの九月の破たんから約一カ月間で、欧米各国が打ち出した金融機関への公的支援の総額は十九日までに、三百兆円規模に達した。世界の主要二十二カ国・地域の証券取引所の株式時価総額は昨年十月末の六千三百兆円から三千兆円も減少。実体経済の悪化も深刻化しており、各国が一段の財政出動を迫られる可能性もある。

 公的支援の柱は、六十二兆円超の金融機関への資本注入。市場の不安感を防ぐため銀行間取引を保護する保証枠の設定などがある。

 金融危機の震源地である米国は、緊急経済安定化法で決まった七千億ドル(約七十兆円)のうち二千五百億ドル(約二十五兆円)を資本注入に使う。

 欧州では、ドイツが資本注入を含む五千億ユーロ(約七十兆円)の金融安定化策を用意したほか、英国が五百億ポンド(約九兆円)の資本注入を決めた。

 フランスやスペイン、スイス、オーストリア、ロシアなども公的資金の投入を表明しており、欧州全体では公的支援は二百三十兆円に達する見通しだ。

 日本も予防的に資本注入できる「金融機能強化法」の復活を打ち出しており、資本注入の動きはアジアなど世界各国に広がりつつある。

 ただシティグループが二〇〇八年七―九月期決算で、四半期ベースで四期連続の赤字になるなど、欧米金融機関の経営悪化は深刻。主要八カ国(G8)は新興国を交えた首脳会合を開く方針を示したが、株式市場は依然、不安定だ。

 実体経済の悪化と相まって、危機の根源である米不動産価格の下落が続けば損失の拡大は必至。「公的資金の追加投入が必要になる可能性は高い」(外資系銀行アナリスト)との指摘もある。

サブプライム損失6600億ドル 大手100社“穴埋め”に6200億ドル

2008/10/18 FujiSankei business-i

 世界の大手金融機関約100社における、サブプライムローン問題が表面化した2007年7月から今月16日までの評価損を含めた損失額が総額6600億ドル(約67兆200億円)に上ることがわかった。一方で、そうした損失への対処に総額6196億ドルの資金が調達されている。

 16日には、シティグループが第3四半期(7〜9月)決算で132億ドルの評価損を含めた損失を計上。これにより同社の損失額は681億ドルに達した。

 同日決算を発表したメリルリンチも同期に135億ドルの評価損を計上。これには7月に売却したCDO(債務担保証券)関連の57億ドルのほか、不動産関連資産の損失などが含まれているという。

 損失額のトップは、年内にウェルズ・ファーゴに統合されることが決まっているワコビアで967億ドル。

 地域別では北米が4078億ドルと突出して多く、逆にサブプライムローンの影響が少なかったアジアは247億ドルにとどまっている。

 これら金融機関の損失は、すべて米国のサブプライムローン市場の崩壊に由来するものだが、数字にはサブプライム以外の住宅ローン資産に関連した損失、および07年初頭以降のレバレッジドローンがらみの負債も反映されている。貸し倒れ損失には、住宅ローンの債務不履行の増加を受けた、引当金の上昇分が含まれる。

 一方、資金調達額は世界で6196億ドル。普通株、優先株、劣後債、ハイブリッド証券(中核的自己資本のティア1資本、補助的自己資本のティア2資本としてみなされる)のほか、資本増強目的の株式、子会社の売却が含まれる。ただ、なお損失額が先行。欧米各国が金融機関の株式取得など公的資金による資本注入を進めている。(Yalman Onaran、Dave Pierson)

欧州、アジア株も全面安 NY、東京株急落で

2008年10月16日  中国新聞ニュ−ス

 【ロンドン16日共同】16日の欧州各地の株式市場はニューヨーク、東京株の急落を受け、ロンドン市場のFT100種株価指数が一時、前日比で5%超下落するなど全面安となった。スイスの総合金融最大手UBSの救済策が発表されたが、下落に歯止めはかかっていない。アジア株も軒並み下げた。

 日本時間午後6時45分現在、FT指数は前日比4・03%安、ドイツ・フランクフルトのクセトラDAX指数は3・81%安。

 ソウルは9・44%安で取引を終え、聯合ニュースによると、過去最大の下落幅となった。韓国通貨ウォンは午後3時現在、1ドル=1373・0ウォンをつけ、過去10年10カ月間で最大の暴落。

 シンガポール株は終値で5・25%、香港は4・80%、上海は4・25%それぞれ下げた。

EU、金融危機で結束強調 対ロ、温暖化は紛糾

2008年10月16日  中国新聞ニュ−ス

 【ブリュッセル16日共同】ブリュッセルで開いた欧州連合(EU)の首脳会議は16日、金融危機対策として、加盟27カ国が公的資金による金融機関への資本注入を進めることなどを明記した共同声明を採択し、2日間の日程を終えた。危機対応をめぐるEUの結束を強調する一方、日米を含む国際社会に世界的な金融システムの再構築へ向けた議論を要請。

 一方、ロシアのグルジア侵攻で凍結中の対ロ新包括協定「パートナーシップ協力協定」の交渉再開では、結論を持ち越し。温暖化対策として掲げた「2020年までに二酸化炭素(CO2)排出量を20%削減」との目標は、ポーランドやイタリアが「不況への懸念」を理由に見直しを求め、議論が紛糾した。

 欧州金融市場は、ユーロ圏(15カ国)首脳会議が打ち出した危機対応の行動計画で株価が一時は安定の兆しを見せたが、15日に再び急落。アイスランドやウクライナにも危機が波及した。

UBSを6兆円で公的救済 スイス当局も直接介入

2008年10月16日  中国新聞ニュ−ス

 【ジュネーブ16日共同】スイス政府は16日、同国の総合金融最大手UBSに対し60億スイスフラン(約5250億円)の公的資金による資本注入を実施し、スイス国立銀行(中央銀行)がUBSの不良資産分離のために最大540億ドル(約5兆4000億円)を融資するなどの救済策を発表した。

 UBSはスイス金融システムの柱だが、米サブプライム住宅ローン問題に端を発した金融市場の混乱で、今年4−6月期までに欧州の金融機関では最大規模の約400億ドル超の損失を出した。米国や欧州連合(EU)が公的資金注入による金融安定化策を打ち出す中で、スイス当局も直接介入に乗り出すことになった。

 救済の総額は約6兆円に上り、最近の金融機関への公的支援としては、12兆円の米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に次ぐ規模となる。

 スイス政府は同時に、同国の預金保険制度の強化なども発表。UBSに次ぐ大手行のクレディ・スイスも当局の指導により、カタールの政府系ファンドなどを引受先とする総額100億スイスフランの資本増強を発表した。クレディは今年7−9月期決算は純損失が13億スイスフランとなるとの見通しを明らかにした。

シティ2800億円赤字 メリルも純損失5200億

2008年10月16日  中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク16日共同】米銀大手シティグループが16日発表した2008年7−9月期決算は、金融危機による信用不安の深刻化で純損失が28億1500万ドル(約2800億円)となり、四半期ベースで4期連続の赤字だった。また米証券大手メリルリンチが同日発表した同期決算も純損失が51億5200万ドルと、5期連続の赤字となった。

JPモルガン純利益84%減 4四半期連続で大幅減益

2008年10月15日  中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク15日共同】米銀大手JPモルガン・チェースが15日に発表した2008年7−9月期決算の純利益は、前年同期比84%減の5億2700万ドル(約534億円)だった。サブプライム住宅ローン問題に端を発した金融危機の深刻化で住宅ローン関連の評価損が36億ドルに達するなど損失が拡大し、四半期ベースで4期連続の大幅な減益となった。

 すでに同期決算を発表した同バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)も純利益が68%減と大幅減益に陥っており、米政府が公的資金による資本注入を決めた金融機関の急速な業績悪化が裏付けられた形だ。16日にはサブプライム関連損失が巨額に膨らんでいる同シティグループも決算発表を予定している。

 米メディアによると、JPモルガンには250億ドルが注入される見込み。

米25兆円、英独仏で23兆円 危機打開へ公的資本注入

2008/10/14  中国新聞ニュ−ス

 【ワシントン14日共同】米政府は十四日、国内の大手金融機関に公的資金で一斉に資本注入することを柱とする金融危機対策を発表した。米メディアによると、二千五百億ドル(約二十五兆六千億円)を資金枠とし、半分の千二百五十億ドルを大手九社に注入する見通し。世界の金融市場を揺さぶる危機の打開へ、米政府は大恐慌期以来となる大規模な直接介入で金融機関の救済に踏み切る。

 これに先立ち英国、ドイツ、フランスも金融大手への資本注入(計約二十三兆五千億円)を表明。日本を含めた主要国の金融安定化策が出そろう形となり、政策対応は新たな段階を迎えた。サブプライム住宅ローン問題に端を発した危機が、沈静化へ向かうことが期待される。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、米国の資本注入は事実上の強制注入となる。先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は十日、先週の世界同時株安を受けて公的資本注入を柱とする行動計画を打ち出していた。

 ブッシュ大統領は十四日午前に声明を発表。その後、ポールソン財務長官やバーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長が記者会見し、対策を表明する。

 注入資金は緊急経済安定化法で認められた七千億ドルの一部。対象金融機関はシティグループやバンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックスなどとみられる。政府が議決権のない優先株を取得、対象を順次広げる方針だ。当座預金の全額保護なども対策に盛り込まれる見込み。

 英政府は十三日、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)など英大手金融三グループへの総額三百七十億ポンド(約六兆六千億円)の公的資本注入を発表。ドイツも同日、最大八百億ユーロ(約十一兆二千億円)の資本注入や、銀行間取引への政府保証など総額五千億ユーロの金融安定化策を決定。フランスは資本注入四百億ユーロ(約五兆六千億円)と政府保証三千二百億ユーロを打ち出し、スペインやイタリアも対策を決めた。

金融市場の緊張を緩和 米景気の回復には時間

2008/10/14  中国新聞ニュ−ス

 【ワシントン14日共同=古瀬敬之】米政府が公的資金を使った大手金融機関への資本注入に踏み切る。世界の金融市場は米金融機関の信用リスクへの警戒から資金の出し手が減る極めて緊張した状態にあり、今回の対策にはこれを緩和する効果が期待される。

 しかしサブプライム住宅ローン問題の根底にある米住宅不況に底打ちの兆しはなく、金融機関の不良資産拡大と厳しい経営環境は続く。金融危機の深刻化で急速に悪化した米国の景気が勢いを回復するのにも時間がかかるとみられ、日欧をはじめとする世界経済の暗雲は当面晴れそうにない。

 米政府は当初、今月三日成立した緊急経済安定化法による不良資産の買い取りを危機対策の柱に据えていた。自由主義経済を重んじるブッシュ共和党政権として、政府が民間企業の救済に直接介入する資本注入には消極的だった。

 市場は株価暴落という強烈なメッセージを突きつけて、米政府の背中を押す。ほかの先進七カ国(G7)諸国が資本注入への前向き姿勢で足並みをそろえる中、わずか一週間ほどで政策転換を余儀なくされた。

 日本では、金融危機に陥った一九九九年三月に実施した総額七兆円超の大手銀行への資本注入が最も効果があったとされる。金融監督庁(現金融庁)は当時、各行に対する一斉検査を実施して不良債権処理を促した。

 米国は今回、こうした検査などの手続きを経ずに資本注入へ踏み切る見通しだ。しかし金融機関による保有資産の実態開示には不明な部分が少なくない上、複雑な金融商品の損失予想などは極めて困難なのが現実。企業倒産の増大なども金融機関の資産を劣化させる恐れが強く、近い将来、米政府が再注入を迫られる可能性も指摘される。

6兆円注入、きょう申請か RBSなど英4大手金融

2008/10/13  中国新聞ニュ−ス

 【ロンドン12日共同】ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)など英大手金融四グループが公的資金による資本注入を英政府に十三日に申請する見通しとなった。サンデー・タイムズ紙などが十二日報じた。第一弾となる今回の申請は総額で三百五十億ポンド(約六兆円)になる見込み。週明けの英国の株式市場が開く前に公表する予定という。

 資本注入は原則、議決権のない優先株を引き受ける形で行われるが、一部グループへの注入には普通株も使われるもようで一時国有化の可能性もある。RBSなど一部経営者は引責辞任を迫られるとみられる。

 英政府は八日に包括的金融安定化策を公表、二百五十億ポンドの公的資金を大手八グループに年末までに注入するとしていた。RBSなど銀行株の下落に歯止めがかからないため、市場の信認を得られるだけの額を早期に申請するよう政府が促したもようだ。

 タイムズは、申請額はRBSの百五十億ポンドが最大で、時価総額(約百二十億ポンド)を上回ると伝えた。住宅ローン最大手のHBOSは最大で百億ポンド、HBOSの救済買収を決めたロイズTSBは七十億ポンド、バークレイズは三十億ポンド。

 バークレイズは公的資金による資本増強に加え、カタールなど中東地域の政府系ファンドや三井住友フィナンシャルグループを引受先として総額三十億ポンドを調達する計画もあるという。

モルガン、ビッグ3が火種 米市場の懸念ぬぐえず

2008/10/13  中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク12日共同】米政府は金融機関への資本注入に向けて動きだしたが、金融危機と景気悪化への市場関係者の懸念はぬぐえていない。週明け十三日は日本市場は休場で、米国市場の動向が注目されるが、証券大手モルガン・スタンレーやゼネラル・モーターズ(GM)などビッグスリー(自動車大手三社)の経営深刻化などの火種を抱えたままだ。

 市場はモルガンを「次の標的」(アナリスト)にしているとされ、危機を乗り越えられるかが、米株の底打ちを見極める「重要な試金石」(ウォールストリート・ジャーナル紙)になりそうだ。

 十日のニューヨーク市場では、モルガンの株価が一時、前日終値の半値近い六ドル台まで急落。四〇ドル超だった八月末と比べると、約六分の一の水準まで売り込まれた。

 モルガン株の急落で、三菱UFJフィナンシャル・グループによるモルガンへの出資条件が見直される可能性があるとの憶測が広がり、一段と下げ足を速める悪循環に陥っている。

 先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が十日にまとめた「行動計画」に明記された公的資金注入が、どのタイミングで実施されるかも、モルガンの命運を大きく左右しそうだ。

 金融危機の実体経済への影響も急拡大。GMなど自動車大手は資産売却やほかのメーカーとの合併構想のほか、米政府による低利融資の実現などあらゆる手で、行き詰まり回避に必死だ。

 それでもGMの株価は半世紀以上も前の水準に急落、フォード・モーターも十日に一ドル台をつけた。両社とも「破産の申し立ては選択肢にない」と市場の懸念の火消しに追われている。

G20:新興国含め協調…金融危機解決で 特別会合で声明

2008年10月12日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 【ワシントン斉藤望】日米欧に新興国を加えた主要20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)の特別会合が11日、ワシントンで開かれ、金融危機を克服するため先進国と新興国が協調を強化し、政策を総動員して対応することを盛り込んだ共同声明を発表した。

 米国発の金融危機は世界経済の成長を支えてきた新興国にも波及し、G20を構成するロシアや中国、ブラジルなどの株価が急落した。会合にはブッシュ米大統領も急きょ出席し、「危機に全力で立ち向かう。連携して断固たる行動を取っていきたい」と述べた。

 声明は、経済政策や市場への資金供給、金融機関の強化、預金保護などで国際的な協調の必要性を指摘。「金融市場の安定確保のため、すべての経済的・金融的手段を用いることを約束した」と強い決意を示した。

 G20議長のマンテガ・ブラジル財務相は会見で「我々は世界的な危機に直面しており、各国挙げて対処する必要がある」と述べた。G20は11月8、9日にブラジル・サンパウロで改めて会合を開き、議論を深める。

 今回のG20特別会合は、金融危機の深刻化を受け、米国が開催を呼びかけた。日本からは中川昭一財務・金融担当相が出席した。

GM、フォードに合併提案していた…交渉は物別れ

2008年10月12日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ニューヨーク=池松洋】米ゼネラル・モーターズ(GM)が今夏、フォード・モーターにも合併を持ちかけていたと、米メディアが11日、報じた。

 フォードはこの提案を拒否し、自力再建の資金確保のため傘下のマツダ株放出の検討に入り、GMはクライスラー買収の協議に向かったとしている。

 米ニューヨーク・タイムズ紙によると、GM幹部は今年7月、フォードに合併を持ちかけた。だが、フォードのウィリアム・フォード会長とアラン・ムラリー最高経営責任者(CEO)は「単独での経営再建の方が(回復の)チャンスがある」と判断して提案を拒否、9月に交渉は終わったという。

米自動車業界、金融危機で経営悪化…大再編の可能性

2008年10月12日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 米メディアは10日、ゼネラル・モーターズ(GM)がクライスラーと買収交渉を進めていると一斉に報じ、フォード・モーターが傘下のマツダの株式売却を検討していることも明らかになった。

 金融危機で米自動車大手の経営は一段と悪化しており、日本勢を巻き込んだ大再編に発展する可能性が出てきた。

 再編のカギを握るのは米投資会社サーベラスだ。クライスラー株の80・1%と、GMの旧金融子会社GMAC株の51%を保有する。ひと月以上前からGMに、GMが持つ49%のGMAC株と引き換えにクライスラーの経営権を譲る提案をしているという。

 フォードは33・4%を保有するマツダ株の大半を売却して、経営再建資金の確保を図るとみられる。

 金融危機で販売が落ち込んでいる米自動車大手は、資金繰りが悪化し、株価も急落。再編による大胆な再建を目指さざるを得なくなったとみられる。

 ただ、GMとクライスラーはともに大型車中心なだけに、再編効果には疑問もある。フォードも小型車に強みを持つマツダを手放せば開発力が弱まりかねない。

 日本の自動車メーカーは米自動車大手と競合する一方で、提携関係も結んでおり、米自動車業界が再編に動けば影響は大きい。

 トヨタ自動車は米国でGMと小型車の合弁生産を行っているほか、日産自動車もクライスラーと相互OEM(相手先ブランドによる生産)に合意している。

 GMはスズキや、いすゞ自動車とも提携している。

 米ニューヨーク・タイムズ紙は、GMによるクライスラー買収が成立する可能性を50%とした上で、交渉が決裂すれば、日産・ルノー連合にクライスラー売却を持ちかける可能性が高いとしている。

 フォードが保有するマツダ株の売却先は、マツダ自身が買い取るほかに、国内自動車・商社や、海外の自動車メーカーが関心を寄せる可能性もある。(ニューヨーク 池松洋、小谷野太郎)

NY株、一時8000ドル割れ 乱高下、700ドル下落も

2008/10/11  中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク10日共同=増田和則】十日のニューヨーク株式市場のダウ工業株三十種平均は、金融危機の深刻化を背景にした世界的な景気後退を懸念して急落し、下げ幅は取引開始直後に一時、前日比六九六ドルまで拡大した。二〇〇三年四月以来、約五年半ぶりに八〇〇〇ドルを割り込み、取引時間中では同年三月以来の安値水準となる七八八二ドルまで下落した。

 前日にも終値としては史上三番目となる六七八ドル急落したばかりだが、欧州やアジアの株式市場が急落するなど世界同時株安に歯止めがかからず、パニック的な売りが広がった。東京株も終値が八八一円〇六銭安の八二七六円四三銭で、二〇〇三年五月二十八日以来、約五年四カ月ぶりの安値水準となった。

 ブッシュ米大統領は十日、金融危機対策について演説し、公的資金による資本注入に前向きな姿勢を表明したが、市場の反応は薄かった。

 ダウ平均は、七〇〇ドル近く下げた後は、やや買い戻され、下げ幅を縮小。もみ合いとなって上昇に転じる場面もあり乱高下した。

 午前十時十五分現在は、二二・五四ドル安の八五五六・六五ドル。ハイテク株主体のナスダック総合指数は一一・四六ポイント高の一六五六・五八。

 十月に入ってから下落が続いており、八営業日続落で、この間の下げ幅は一時、計二九六八ドルと三〇〇〇ドルに迫った。急激に資金が流出しており、企業活動や個人消費に悪影響が出ることが懸念される。

 朝方から金融関連株を中心に下げ幅を広げ、一時、ほぼ全面安の展開となった。ただ急落後は、安値を拾う動きが広がり、前日30%強も下げた米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)などが買い戻された。

 市場関係者は「優良株も一時、売り込まれ、市場の疑心暗鬼は歯止めを失っている」(米アナリスト)としている。

英、国内銀に9兆円注入 スペインは最大6・9兆円

2008/10/09 MSN産経新聞

 英国政府は8日、金融機関に対して総額で500 億ポンド(約9兆円)の資金注入を行う緊急支援策を発表した。優先株と引き替えに同国3位の銀行ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)および英銀大手バークレー始め、少なくとも他6行に対して250億ポンド、その他の銀行にも同額の資金注入を行う。

 各金融機関に割り当てられる資金の詳細については明らかにしなかった。また、流動性対策として2000億ポンドの資金供給も行う。

 緊急支援策の発表も、株式相場の回復には奏功せず、FTSE100指数はこの日、7.8%下落。ブラウン首相は、金融機関の再建を目指して、先週7000億ドルの金融安定化策を導入した、米ブッシュ大統領の政策を追随した格好。

 ブラウン首相は「世界の金融市場は機能不全の一歩手前」と8日、ロンドンで行われた記者会見で発言。「銀行システムの健全化が必要。資金注入の何よりの理由」と明かした。

 信用危機が深まるなかで英国も、米国やアイルランド、アイスランド、ベルギー、スペインなどに次ぎ、銀行救済に乗り出した。資金繰りに疑問符の付いたRBSと住宅金融大手HBOSは今週、時価総額の半分以上を失っていた。

 一方、スペイン政府は最大500億ユーロ(約6兆9000億円)を投入し、不良資産の買い取りを準備する。米国型救済策を模倣し、金融の安定化を進めるのは、欧州ではスペインが初めてとなる。

 EU(欧州連合)の指導者たちは、加盟27カ国すべての国に対して有効な金融安定化策を講じることは困難であると判断しており、英国とスペインは、独自の救済策を検討していた。ECB(欧州中央銀行)のトリシェ総裁は、法的な制約があるため、介入することが難しい。

 英政府は既に、住宅金融王手のブラッドフォード・アンド・ビングリーの救済に着手。さらに、経営不安に陥った住宅金融HBOSに対して救済合併を支援した。

 スペインのサパテロ首相は7日、マドリードで、不良資産買い取り基金を設け、同基金はスペインで営業しているすべての銀行の「優良資産」を買い取ると発表。基金は、スペイン中央銀行の09年度予算の約3分の1の金額を準備金として、蓄える。

 アバコ・フィナンシャルズ・ファンドにて、マネジャーを務めるイニゴ・レクバッリ氏は、基金が買い取る「『優良資産』とは何を指すのか不明だ」と首をかしげる。続けて「私の予想では、おそらく不動産担保証券だろう。しかし、重要なことは、スペイン政府がどれだけの額を買い取るのかだ。われわれは、まだその規模を知らない」と述べた。(Simon Kennedy、John Fraher、Ben Livesey

金融機関の損失143兆円 IMF報告、増資69兆必要

2008年10月07日 中国新聞ニュ−ス

 【ワシントン7日共同】国際通貨基金(IMF)は7日、半期に1度の世界金融安定報告を発表し、米サブプライム住宅ローン問題による金融危機の深刻化で、世界の金融機関の損失が1兆4050億ドル(約143兆円)と前回4月の見通し(9450億ドル)の約1・5倍に達する、との推計を示した。

 その上で、金融機関は今後数年間に6750億ドル(約69兆円)の資本増強が必要になると分析。「貸し渋り」による景気悪化を防ぐため、米欧などに公的資金による資本注入を検討するよう促したのが特徴だ。

 報告は10日にワシントンで開かれる先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の議論のたたき台となる。IMFは「包括的かつ時宜を得た」政策対応を求めており、米国の追加対策をはじめ、危機が広がっている欧州の政策決断が次の焦点になる。

 報告はまた、金融機関の資本増強と併せて、公的資金によりサブプライム関連の証券化商品など不良資産を買い取ることで、辛うじて米欧の貸し渋りに歯止めがかけられると分析。前提となる買い取り規模は米欧とも各1兆ドル(約102兆円)との試算を示した。

アイスランドにロシア緊急融資 国家破たんの危機と首相

2008年10月07日 中国新聞ニュ−ス

 【ロンドン7日共同】欧州金融危機の影響で、預金流出にさらされているアイスランドの中央銀行は7日、同国がロシアから40億ユーロ(約5500億円)の緊急融資を受けると発表した。欧州の危機は、国家が他国に支援を仰ぐ異常事態に発展した。

 また、アイスランド政府は7日、経営が悪化した同国2位の銀行ランズバンキを管理下に置いたと発表した。

 アイスランドでは、大手銀行の預金総額が国内総生産(GDP)を大幅に上回っており、多額の預金流出で国家全体の資金繰りが行き詰まる事態となった。ハーデ首相は6日夜、「国家が破たんの危機に直面した」と宣言していた。

 通貨クローナは6日、ユーロに対して30%も下落。ロシアの融資は外貨準備増強とクローナ買い支えに使われる。

米金融対策法が成立 年内に不良資産買い取り

2008年10月04日 中国新聞ニュ−ス

 【ワシントン3日共同】ブッシュ米大統領は3日、金融危機対策として最大7000億ドル(約75兆円)の公的資金で不良資産を買い取るための緊急経済安定化法案に署名、同法は成立した。米政府は45日以内に具体的な指針を策定し、サブプライム住宅ローン関連の証券化商品など不良資産の金融機関からの買い取りを、年内にも始める見通しだ。

 ただ「米経済は依然として重大な試練に直面」(大統領)し、今回の対策の効果が表れるには一定の時間が必要。深刻な金融危機が改善に向かうかどうかは不透明で、米景気と世界経済には正念場が続く。

 ブッシュ大統領は声明で「われわれの経済を脅かしている信用収縮を和らげる断固たる行動となる」と述べ、法律成立による金融不安の解消と景気回復に期待を表明。

 ポールソン財務長官は声明で「新しい権限を迅速に実行に移す」と表明。買い取り価格の決定方法などを早急に決定、早期に公的資金の投入に踏み切る考えだ。預金保険で保護する預金の上限も現行の10万ドルから25万ドル(約2600万円)に引き上げた。

 連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は「与えられたすべての権限を行使する」と強調、金融市場の正常化と深刻な景気後退の回避へ全力を挙げる考えを示した。

米、金融対策法成立へ 下院が修正法案を可決2008年10月04日 中国新聞ニュ−ス

 【ワシントン3日共同】米下院本会議は3日、金融危機対策として最大7000億ドル(約75兆円)の公的資金で不良資産を買い取るための緊急経済安定化法案の修正案を賛成多数で可決した。上院は1日に同修正案を可決済み。ブッシュ大統領は来週にも署名の見込みで、同法成立は確実。サブプライム住宅ローン問題で深刻化する米金融危機は、前例のない巨額の公的資金を使って打開を目指す新たな段階に入る。

 投票結果は賛成263、反対171だった。

 下院は当初法案を9月29日、共和党を中心とした反対で否決。世界的な金融市場動揺の引き金になった。国際的な注目を集める中、一転して今回は修正案を受け入れた。

 前回反対した下院議員の一部は、預金保護の上限引き上げや税制優遇拡充などを盛り込んで金融機関の救済色を薄めたことを評価。金融機関へ適用する時価会計の一部緩和で公的資金を抑制できる可能性も高まり、修正案の支持に回った。

 法案の根幹となる買い取り制度は、不良資産を金融システムから切り離して市場の不安を解消。「長く痛みのある景気後退入り」(ブッシュ大統領)を回避するのが狙い。金融機関を身軽にし、資本増強など経営改善を後押しする。急激な信用収縮で揺れる世界経済にも好影響を与えそうだ。

 法案は最大7000億ドルの公的資金枠のうち、まず2500億ドルを支出し、大統領判断で1000億ドルを追加できる。残り3500億ドルはあらためて議会が承認する。公的資金投入を監視する委員会設置や議会がチェックする仕組みを盛り込んだ。

「ようやく実現」と期待 金融関係者、効果疑う声も

2008年10月04日 中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク3日共同】金融危機対策のための緊急経済安定化法が3日成立し、ウォール街の金融関係者からは「危機対策がようやく実現する」(米エコノミスト)と期待の声が上がった。ただ米景気の後退懸念は強まっており、効果を疑問視する見方も出ている。

 米エコノミストのジョエル・ナロフ氏は「不良資産の買い取りが軌道に乗れば、金融市場はゆっくり回復に向かうだろう」と新たな仕組みを評価。「市場の信頼を取り戻すために必要だった」(格付け会社)と歓迎する声が聞かれた。

 一方、米調査会社代表のマーティン・ワイス氏は「金融危機を終わらせるには、不良資産の買い取り規模が小さすぎるし対応が遅すぎる」と指摘。「金融機関が積極的に参加するかどうかなど、効果が不透明だ」(米投資顧問会社)と懐疑的な意見もあった。

アリコなど生保3社売却へ 金融危機、日本に再編波及

2008年10月04日 中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク3日共同】米政府管理下に入った保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)は3日、日本国内のアリコジャパンを傘下に持つ米アリコ、AIGエジソン生命保険、AIGスター生命保険の生保3社を売却する意向を明らかにした。AIU保険、アメリカンホーム保険の損保2社は売却の予定はないとしている。

 日本で順調に事業を展開し、AIG傘下の“超優良資産”である生保事業を売却、米連邦準備制度理事会(FRB)から受けている巨額融資の返済を優先させる方針とみられる。

 AIGの日本法人は「個々の生保会社の株主が変更されるだけで、契約者に影響はない」としている。

 今後、日本の大手保険会社などが争奪戦を繰り広げることになりそうだ。サブプライム住宅ローン問題に端を発した金融市場の混乱が、日本の保険業界の再編を促すことになった。

 1954年設立のアリコジャパンは、保険料収入が1兆4657億円で業界5位。

 投資家向け説明会で、エドワード・リディ会長兼最高経営責任者(CEO)が損保事業に集中して再建を進める一方で、生保事業売却の意向を示した。リース事業なども売却する。

米新車販売 100万台割れ…米金融危機の影響

2008年10月03日 読売新聞 Yomiuri On-Line

日本勢にも打撃 「低燃費人気」吹き飛ぶ

 1日発表された9月の米新車販売台数は、15年ぶりに単月ベースで100万台を割りこんだ。米金融危機が自動車販売にも影響しており、米メーカーだけでなく、これまで低燃費車人気で持ちこたえてきた日本勢も打撃を受けている。(ワシントン 池松洋、小谷野太郎)

 ◇記録的な減少

 フォード・モーター幹部は1日のアナリスト向け会見で、米金融危機について「(予測不能な)自然災害だ。(車販売の)市場の底が見えなくなった」と沈痛に語った。

 9月の販売台数の前年同月比の減少幅は26・6%減と17年ぶりの大きさだ。このままだと2008年の販売台数は15年ぶりに1300万台に落ち込む。

 アメリカの消費者は、住宅や株式など値上がりした資産を担保に借金をして、車などを購入するケースが多い。しかし、住宅価格の下落はこうした購入パターンを崩壊させた。

 金融危機で、資金調達難に陥った自動車ローン会社はローン審査を厳しくした。この結果、販売不振に見舞われたゼネラル・モーターズ(GM)のシボレーブランド販売最大手のビル・ハード・エンタープライゼズは9月28日に経営破綻した。米調査会社のグラント・ソントンは1日、米国の全ディーラーの2割弱にあたる3800店が09年末までに閉鎖される可能性があるとの予測を発表した。

 ◇資金繰り不安

 29日にGMの株価は54年ぶり、フォードの株価は22年ぶりの安値を付けた。

 経営再建を支援するため、米政府は自動車業界に対する総額250億ドル(約2兆6000億円)の政府融資制度の創設を決めた。だが、融資条件が厳しく、融資が実行されるまで数か月かかることなどから、実効性を疑問視する声は多く、GMなどの販売不振が長期化すれば、資金繰りが悪化する可能性が高まる。

生産体制さらに見直しも

 ◇「客来ない」悲鳴

 「販売店に客が来ない」。トヨタ自動車の米販売担当者には、各地のディーラーから悲鳴が飛び込んできている。低燃費の小型車に強く、ガソリン高では打撃が比較的小さかった日本勢も米金融危機による消費者マインドの冷え込みで、優位性が吹き飛ばされた形だ。

 トヨタ自動車は、不振が続くピックアップトラックの生産を8月上旬から中止するなど米3工場の生産体制見直しを急ぐが、9月の販売減は3割を超えた。08年1〜9月の新車販売総数も179万台と前年実績を約1割下回っている。

 日産自動車は7〜8月に、来年の改良を控えた旧モデルの値引き率を引き上げて販売台数を伸ばしたが、9月は前年実績を36%も下回った。米国向けの高級車ブランド「インフィニティ」を生産する栃木工場で9月から減産を始めた。

 米金融不安がさらに深刻化すれば自動車販売はさらに落ち込み日本メーカーは一段の生産体制の見直しを迫られそうだ。

米下院、金融法案否決 公的資金で救済に批判

2008/09/30  中国新聞ニュ−ス

 【ワシントン30日共同】米下院本会議は二十九日、最大七千億ドル(約七十五兆円)の公的資金で不良資産を買い取る制度を柱とした、金融危機に対応するための緊急経済安定化法案を反対二二八、賛成二〇五の反対多数で否決した。十一月の大統領・議会選挙を控え、巨額公的資金による金融機関救済に議会で強い批判が示された格好だ。

 法案は上院採決を待たずに事実上廃案となる。

 下院は休会を挟み十月二日に再開の予定。対策を主導するポールソン財務長官は二十九日「法案通過の方策を見つけるため議会指導部と努力したい」と表明。議会に修正協議を強く働き掛ける考えを明らかにした。

 しかし十一月の議会選挙を前に、有権者の支持が得にくい公的資金の投入へ議会を説得するのは難航必至で、米国発の金融危機が一段と拡大しそうだ。

 ブッシュ大統領が所属する共和党から三分の二以上の反対票が出ており、政権末期の大統領の指導力のなさも露呈した。

 大統領は法案否決後「非常に失望している」と述べた上で「前進するための方策を考え出す」と強調した。大統領はポールソン財務長官やバーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長らと今後の対応について緊急協議した。議会指導部とも会談する意向だ。

 一方、米下院も選挙前の休会を取りやめ、法案修正などに向けて継続審議する考えを示した。民主党側は「今後も取り組みを続ける」(フランク金融委員長)と表明。共和党も経済への影響を避ける方法を検討する考えを示した。

 ブッシュ大統領は十九日に不良資産買い取りを柱とする抜本的な金融危機対策を表明。政府と議会指導部が二十八日、緊急経済安定化法案で最終合意していた。

NY株、史上最大の下げ幅 777ドル安、金融危機拡大

2008/09/30  中国新聞ニュ−ス

 二十九日のニューヨーク株式市場は、米下院が金融危機対策のための緊急経済安定化法案を否決したことを受けて、金融危機が拡大し、世界経済に深刻な悪影響を及ぼすとの懸念が広がった。ダウ工業株三十種平均の終値が、史上最大の下げ幅となる七七七・六八ドル安の一万〇三六五・四五ドルを記録した。

 三十日の東京株式市場も全面安で始まり、日経平均株価(225種)が一時、前日比五八二円安まで下げた。終値は前日比四八三円七五銭安の一万一二五九円八六銭と、十八日に付けた今年の最安値を下回り、二〇〇五年六月以来、三年三カ月ぶりの安値水準となった。

 この日は、香港、台湾などのアジアの主要株式市場や、オーストラリアの株式市場も一時軒並み下落した。外為市場でもドルが円やユーロに対して売られ、円は二円を上回る円高となって一時一ドル=一〇三円台に急騰した。米サブプライム住宅ローン問題に端を発した金融不安は、米大手金融機関の相次ぐ破たんに続き、欧州の銀行にも飛び火しており、世界の金融市場に動揺が広がった。

 全銘柄の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)も四〇・四六ポイント安の一〇八七・四一と、二〇〇四年十二月以来、三年九カ月ぶりの低水準に下落した。出来高は約二十二億六千八百万株。

 東京市場では、金融危機の拡大で国内景気は一段と悪化、企業業績もさらに落ち込むとの懸念が広がった。午後は、値ごろ感が出たことや、米議会で法案再修正の動きが出るとの思惑を背景にして下げ幅が幾分縮小したが、売り圧力は強く、大幅続落で終わった。

 市場関係者は「米国の金融危機対策の実効性はさらに不透明になった。株式市場は主要各国の政策対応などをにらみながら、不安定な値動きが続きそうだ」(大手証券)と指摘した。

「救済役」も窮地の恐れ 法案否決で戦略に狂い

2008/09/30  中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク30日共同】史上最大の下落幅を記録した二十九日のニューヨーク株式市場は、緊急経済安定化法案の予想外の否決で金融関連株が軒並み急落した。法案成立後の支援を前提に他の金融機関の買収に動いたとされる「救済役」の米銀大手シティグループなども経営戦略に狂いが生じ、窮地に陥る恐れがある。

 「一段と安定した資金流動性を確保できるようになる」。シティのパンディット最高経営責任者(CEO)は二十九日、資産規模で米銀四位のワコビアの銀行業務を救済買収し、誇らしげに声明を発表した。買収を評価して上昇していたシティ株はそれからわずか数時間後、法案否決で急落に転じた。

 ワコビアは個人向けの預金が魅力だがサブプライム住宅ローン問題に関連する不良資産が多く、シティも買収を慎重に検討。週明けまでに政府と議会がまとめた安定化法案を追い風に救済買収を決め、公的資金を活用した不良資産の買い取りを期待しているとされる。

 米証券大手メリルリンチを救済合併した米銀大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)や、住宅金融が主力の米銀ワシントン・ミューチュアルの銀行業務を買収した米銀大手JPモルガン・チェースも経営規模の拡大効果だけでなく、大量の不良資産を抱え込んだ。

 救済役を引き受けた米銀大手三社は、法案成立を熱望する立場にある。二十九日の株価の終値はシティが前週末比約12%安、バンカメが約18%安、JPモルガンが約15%安と大きく沈んだ。

 米証券大手ゴールドマン・サックスが米著名投資家バフェット氏率いる投資会社から巨額出資を受け入れるのも法案成立が前提とされ、シナリオに狂いが生じた。ウォール街の行方は「誰も予想できない展開」(米アナリスト)で、ワコビアの「次の標的」を狙う金融不安の連鎖が続いている。

 オハイオ州クリーブランドが本拠の米銀ナショナルシティが約63%安の一・三六ドル、同州シンシナティが拠点の同フィフス・サード・バンコープが約44%安の九・一一ドルと大幅に下落。米メディアによると、ナショナルシティは「自己資本は十分」と強調するが、今後の法案の扱いがこうした金融機関の命運を左右しそうだ。

米欧勢の資金調達困難に 市場、「相互不信」で凍る

2008/09/30  中国新聞ニュ−ス

 銀行などが当面必要な資金を融通し合う短期金融市場で、米国、欧州勢の資金調達が難しい状態が続いている。米金融危機の深刻化で取引相手が突然破たんする不安が生じ、資金の出し手がいなくなっているためだ。

 日米欧の中央銀行は同市場に大量の資金を供給し、資金繰りを支えているが、相互不信で凍り付いた市場が早期に機能を回復するのは難しそうだ。

 日銀は三十日、計三兆円の円資金を即日供給する緊急の公開市場操作(オペ)を実施したが、外銀の調達金利は0・7%台が中心。0・4%台で調達できた邦銀大手を大きく上回り、0・5%程度の政策金利より高い。

 日本で金融機関の破たんが相次いだ一九九〇年代後半、邦銀が「ジャパン・プレミアム」と呼ばれる上乗せ金利をかけられたのと逆に、「外銀プレミアム」が定着。外銀は高い金利を提示しても資金を調達できないケースもあり、担当者は「まさに金融恐慌の真っただ中」と語る。

 日銀は二十五日のオペで初めてドル資金を供給したが、応募額は供給予定額に達しなかった。外銀側の準備不足が理由とされるが、市場では「担保となる国債の手持ちが少なかったのでは」との疑心暗鬼も出ている。

 米サブプライム住宅ローン問題の傷が比較的浅い邦銀の資金調達には、現時点では目立った混乱は生じていない。ただ市場の動揺が続けば「体力の弱い地方銀行などに影響が出る可能性もある」(市場関係者)という。

痛み共有できぬ格差社会 米金融法案否決

2008/09/30  中国新聞ニュ−ス

 米国発恐慌を防ぐ切り札とされた、金融安定化のための法案があっけなく否決され、ニューヨーク株は史上最大の下げ幅を記録、世界は底無しの経済危機の恐怖にふるえている。まさかと思われた米議会の否決は、無機質なグローバル化と金融に富が集中するゆがみの末に生まれた「格差」に対する米国民の反乱といえる。

 法案は金融界で最も信頼が厚いポールソン財務長官がつくり、敵同士のはずのブッシュ大統領、オバマ民主党大統領候補が足並みをそろえ成立に努めた。いわば米国主流派の挙国一致法案だった。恐慌阻止は米国の誰もが望んでいると見た世界も、「成立」を当然視していた。

 しかし、この米国主流派と世界の圧力をあざ笑うように、米下院の百三十三人の共和党議員と九十五人の民主党議員が反対して葬った。

 金持ちがあふれるウォール街のために、なぜ約七十五兆円もの税金を投入するのか。そんな素朴な疑問。巨額の富を築いた金融企業群を代表とする「格差社会の勝ち組」に、「負け組」と感じる大多数の国民が抱く憤りが背景にある。強い怨嗟えんさが、世界経済のまひという、巨大な危険の到来を読む目を曇らせた。

 十一月初旬の議会選挙を控え、議員が選挙区民の反発を覚悟で税投入に賛成できないのも想像できる。ウォール街が突然感じだした「痛み」を一般国民は共有していない。ウォール街が混乱しても、国民にすれば、普段通りの生活は続けられているし、はるか昔から「所得低下」「生活困窮」という痛みを感じ続けてきたとの思いがある。

 米国の格差は開く一方だ。グローバル化や移民の流入による安価な労働力との競争、情報技術(IT)化への乗り遅れなど、負け組の構造は解決が極めて難しい。ブッシュ政権の進めた富裕層減税も格差に輪をかけた。実質賃金の伸び悩みから、「中流の消滅」が言われて久しい。

 大手四百企業のトップの平均年収は十五億円、一般従業員の四百倍を超える。有名大学の大学院を卒業し初年度二千万円の年収でスタートする少数の若者がいる一方で、共稼ぎで得た五百万円の年収から医療費を出せず、大学に子供を送れないと断念する大多数の家庭―。努力で夢がかなうという「アメリカン・ドリーム」はむなしく聞こえる。

 米国の上位層への富の集中は、一九二〇年代に匹敵するという。米経済は、大恐慌と第二次世界大戦を経て富のより均等な分配で再活性化したが、九〇年代から再び戦前の格差に戻った。

 農業、エネルギー、軍需産業、サービス業など強靱きょうじんな体力を持つ米経済が活発であり続けるのは間違いない。だが、目に見える形で「格差」が是正されなければ、米国は痛みを共有せず、分裂を深めるのだろう。(共同通信ワシントン支局長 杉田弘毅)

【米金融危機】米銀ワコビア、シティが買収 見返りに120億ドル優先株など

2008.09.29 MSN産経新聞

 【ワシントン=渡辺浩生】米連邦預金保険公社(FDIC)は29日、経営難に陥っていた米銀大手ワコビアの資産を米金融最大手シティグループが買収すると発表した。ワコビアは低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)関連損失が膨らみ、株価が急落、FDICと財務省が協議した結果、連鎖破綻(はたん)回避のため、シティによる救済買収を判断した。シティは念願の米国最大の個人向け営業網を築く。

 FDICは、ワコビアの預金は保護され、銀行業務は平常通り維持されるとし、ホワイトハウスや財務省と協議の結果、「例外的な状況下で下された判断」と強調した。ワコビア株は28日午前に1ドルを割り込み90%以上も急落した。

 ポールソン米財務長官も29日の声明で「連鎖破綻につながる危険を食い止める措置」と強調した。米金融安定化法案が28日に発表されたが、米金融システムの脆弱(ぜいじゃく)な状況を浮き彫りにした格好だ。

 FDICによると、シティはワコビアの資産と負債を引き継ぐ。ワコビアの損失についてFDICとシティは共同負担で合意し、シティは420億ドルの損失を受け継ぎ、FDICはそれ以上の額を引き取る。シティはFDICの負うリスクの補償として、120億ドル相当の優先株と新株取得権をFDICに供与した。

 経営不安が続いたワコビアは今月25日に、米貯蓄貸付組合(S&L)最大手ワシントン・ミューチュアルが破綻し、米銀大手JPモルガン・チェースに資産が譲渡されたことを受けて、シティや西海岸最大の銀行ウェルス・ファーゴとの合併協議に着手した。しかし、株価急落は収まらず、米政府が緊急的に介入し、シティによる救済買収にこぎ着けた。

欧州で銀行国有化相次ぐ 金融危機が深刻化

2008年09月29日  中国新聞ニュ−ス

 【ロンドン29日共同】米国発の金融危機は29日、欧州の金融機関が相次ぎ経営破たん、国有化される深刻な事態に発展した。ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの3カ国政府が同日、ベルギー最大の金融グループ、フォルティスを共同で部分国有化すると発表したほか、英政府も中堅銀行ブラッドフォード・アンド・ビングレー(B&B)の一部事業の一時国有化を表明。アイスランドはグリトニル銀行の株式75%を6億ユーロ(約920億円)で取得し、同行を事実上国有化すると発表した。

 いずれも米サブプライム住宅ローン問題の影響で経営が悪化し、動揺が続く金融市場からの資金調達が困難になっていた。米国に続く欧州の危機拡大は、日本をはじめアジアなど世界の市場への影響が必至だ。

 一方、ドイツ政府は29日、資金繰りが悪化していた不動産金融大手ハイポ・リアル・エステートに対し、ドイツ民間銀行団と共同で最大350億ユーロ(約5兆3000億円)の融資枠を中心とする緊急支援を実施、経営破たんを回避したと発表した。

野村が240億円でリーマン・アジア部門買収 米紙報道

2008/09/22  中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク22日共同】米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は二十二日、野村ホールディングスが同日、経営破たんした米証券大手リーマン・ブラザーズのアジア部門を二億二千五百万ドル(約二百四十億円)で買収することで合意したと伝えた。

 英大手金融グループのバークレイズとスタンダード・チャータードなども買収を提案していたもようだが、最高額を提示した野村が獲得することになったとみられる。

 同紙によると、野村が買収するのは、リーマンの日本やオーストラリア投資銀行部門など。

 欧米メディアによると、リーマン・アジア部門をめぐっては、各社が週末返上でリーマン側と協議し資産価値を算定。日本時間の二十一日深夜に正式に買収提案を行った。

米モルガンに最大9000億円出資へ 三菱UFJ

2008/09/22  中国新聞ニュ−ス

 三菱UFJフィナンシャル・グループは二十二日、米証券大手モルガン・スタンレーの第三者割当増資を引き受け、10―20%出資すると発表した。八月末時点の株価を基準にすると、出資額は最大九千億円台になる見通し。出資比率が20%となれば、三菱UFJがモルガンの筆頭株主に躍り出る可能性がある。

 モルガンは米サブプライム住宅ローン関連損失が今後拡大することが予想されるため、三菱UFJの出資を仰ぎ自己資本を増強する。出資に伴い、三菱UFJは取締役を一人以上派遣する。

 モルガンは、ゴールドマン・サックスに続く証券二位。二十一日には米連邦準備制度理事会(FRB)から銀行持ち株会社化を承認された。

75兆円の不良資産買い取り 米政府、議会に要請へ

2008/09/20  中国新聞ニュ−ス

 【ワシントン20日共同】米メディアは二十日、米政府が最大七千億ドル(約七十五兆円)の不良資産を金融機関から買い取る権限を二年間にわたり与えるよう、議会に要請すると伝えた。

 不良資産買い取りのため、連邦政府の債務法定上限を現行の十兆六千億ドルから十一兆三千億ドルに引き上げることも要請する見通しで、サブプライム住宅ローン問題で深刻な経営危機に直面している金融機関救済に全力を挙げる。

 米政府は十九日、公的資金を投じて不良資産の買い取りを進める方針を表明。包括的な金融市場対策を議会に示し、来週中の成立を求めるとしていた。

欧米金融界、危機から再編・淘汰へ リーマン、AIGが導火線

2008.09.18 MSN産経新聞

 【ワシントン=渡辺浩生】欧米の金融大手の間で再編の動きが加速している。米証券大手リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)や、米政府による保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の救済により信用不安が一気に高まり、金融関連の株価が急降下しているからだ。低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題で経営難に陥った金融機関が一挙に再編へと動き出した。

 米メディアは17日、米証券大手モルガン・スタンレーが米銀大手ワコビアとの合併を検討していると報じた。米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)によると、モルガンの株価が24%急落した17日、マック最高経営者(CEO)に、ワコビアCEOのスティール前財務次官から電話が入った。デューク大学の同窓の仲の2人は、合併の可能性について話し合ったという。

 3月に経営危機に陥った証券第5位のベアー・スターンズが米銀大手のJPモルガン・チェースに救済買収された。同4位のリーマンが破綻した今月15日、同3位のメリルリンチが米銀大手のバンク・オブ・アメリカへの身売りで合意。この半年間で、米5大証券の3つが淘汰された。

 残る上位2位のモルガンとゴールドマン・サックスは、サブプライムローン問題で負った傷が比較的軽いウォール街の“優等生”とみられてきた。

 しかし、ライバルたちの破綻や身売りを受けて、単独経営の維持か、商業銀行との合併かの選択を市場から迫られる格好となり、両社の株価は急落した。モルガンはこうした圧力に急遽(きゅうきょ)、銀行との合併による「ユニバーサルバンク(総合金融グループ)」化の検討に入ったとみられる。

 背景には、顧客企業の証券・債券の発行やM&A(企業の合併・買収)の仲介、証券化を手がける米大手証券の「投資銀行」と呼ばれるビジネスモデルが「曲がり角にある」(金融当局者)こともある。サブプライム関連商品の証券化を一手に引き受け、自らも巨費を調達して投資に走った結果、金融市場混乱の引き金となったからだ。

 貯蓄金融機関最大手のワシントン・ミューチュアルも、サブプライムに絡む損失拡大で経営難に陥り、モルガンや米銀大手シティグループや英HSBCなどへの身売りを検討中という。

 住宅金融大手ノーザン・ロックが一時国有化となった英国では、大手金融グループのロイズTSBが17日、同HBOSと合併することで合意したと発表した。ドイツの保険大手アリアンツは先月末、傘下のドレスナー銀行を独銀2位のコメルツバンクに売却することで合意している。

 今後短期間で欧米金融界の勢力図が一変する可能性があるのは、米政府によるAIG救済が、融危機の沈静化どころか、その根深さをかえって露呈させてしまったからだ。ペリノ大統領報道官は18日の定例会見で「他の会社のことも心配している」と口を滑らせた。市場は次の「破綻懸念先」をマークするのに躍起だ。

HBOSとロイズ合併協議 米金融混乱、欧州に波及

2008/09/17  中国新聞ニュ−ス

 【ロンドン17日共同=種村大基】英大手金融グループのロイズTSBと、同HBOSが合併する方向で協議入りした。英BBC放送が十七日報じた。米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破たんをきっかけにHBOSの株価が急落し、信用不安が広がっていた。

 両グループは正式なコメントをしていないが、ロイズによる事実上の救済合併とみられる。米金融界の混乱が欧州に波及、世界的な業界再編の機運が高まりそうだ。

 HBOSは個人向け業務が主力で預金を集めているが、銀行間取引など金融市場からの資金調達の割合がほかの英大手銀行に比べて高いとされ、「資金調達が苦しくなっている」(大手証券アナリスト)との指摘があった。

 また、HBOSは住宅ローンなど不動産融資に強みがあるが、英国では不動産価格の下落で不良債権の増加も懸念材料だった。このため、リーマンが破たんした十五日以降、株価が急落。十六日までの二日間で半分近い時価総額を失った。

 一方、ロイズTSBの株価は底堅く、信用不安の影響が軽微だった。

金融混乱を警戒し伸び悩み 東京株、AIG救済で反発

2008/09/17  中国新聞ニュ−ス

 十七日の東京株式市場は、米政府による米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の救済を好感し、日経平均株価(225種)は反発。午前中は上げ幅が一時二七〇円に達する場面もあったが、金融市場の混乱解消には、時間がかかるとの警戒感が広がり、午後からは伸び悩んだ。

 終値は、前日比一四〇円〇七銭高の一万一七四九円七九銭。全銘柄の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)も三・八六ポイント高の一一二一・四三。出来高は約二十二億五千九百万株だった。

 前日に米証券大手リーマン・ブラザーズの破たんで大幅下落した反動もあり、朝方は金融関連株を中心に幅広い銘柄が上昇。AIG救済策が発表されると一段高となった。ただ、その後は根強い金融不安を背景に売り注文も増え、上げ幅は縮小した。

AIG、国内事業見直しも 高まる経営不安説

2008年09月16日 中国新聞ニュ−ス

 米証券大手リーマン・ブラザーズの破たんに続き、金融市場では米保険最大手AIGグループの経営不安説が高まっている。AIGは国内でも生命保険や損害保険事業などを幅広く展開しており、米本社の状況次第では国内事業の見直しに飛び火する可能性もある。

 AIGグループの国内事業はアリコジャパン、AIGエジソン生命保険、AIGスター生命保険の生保3社に加え、AIU保険、アメリカンホーム保険など主要損保2社を抱え、富士火災海上保険にも出資している。

 米サブプライム住宅ローン問題の深刻化して以降、AIGの経営は厳しさを増してきた。今年3月に米ベアー・スターンズが経営危機に陥った後は、これらの国内企業の一部について、事業縮小を目指すAIGが内外で売却相手を探しているとの見方が生損保業界で急速に広まった。

リーマン向け投融資4000億円 地銀など、債務不履行で損失拡大

2008年09月16日 中国新聞ニュ−ス

 経営破たんした米証券大手リーマン・ブラザーズに対する大手銀行や地方銀行、生損保など日本の金融機関の投融資が開示分だけで4000億円規模に上ることが16日、分かった。地銀などが保有しているケースが多いリーマンが発行した円建て外債(サムライ債)は債務不履行になる恐れもあり、損失計上を迫られる可能性が強い。

 経営を圧迫される金融機関は、中小企業向けの貸し出しなどを絞り込む懸念もある。円高進行も加わって景気低迷の長期化は避けられず、国民生活にも影響が出そうだ。

 北越銀行や伊予銀行など30程度の地銀がリーマンの社債を数億−数十億円保有していると発表したほか、一部生損保や証券会社、リース会社もリーマン向けの債権を保有していることを明らかにした。

米リーマン、経営破たん 破産法11条を申請

2008年09月15日 中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク15日共同】経営危機に陥っていた米証券大手リーマン・ブラザーズは15日、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。同社の救済をめぐる官民協議が14日、不調に終わったため。

 一方、米銀大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)は15日、米証券大手メリルリンチを株式交換により500億ドル(約5兆3000億円)で買収することで合意したと発表。事実上の救済合併で、シティグループを抜き米最大の金融機関となる。

 米国では7日に政府系住宅金融2社への公的資金投入による救済策が発表されたばかりだが、サブプライム住宅ローン問題に端を発した金融市場の混乱は収まらず、経営体力の弱った金融大手の淘汰と大型再編に発展した。

 リーマンは今後も、商業不動産部門や資産運用部門の売却交渉を続けることを明らかにした。

 ニューヨークで12日から、ポールソン財務長官ら政府関係者、シティグループやゴールドマン・サックスなど民間金融機関首脳が出席しリーマンの救済策を官民で協議。リーマンを優良資産と不良資産部門に分割した上で、不良資産の将来の損失に備えて民間金融機関が資金を拠出する案が浮上した。

 バンカメと英銀大手バークレイズは優良資産の買収を検討したが、米政府の公的資金活用などの支援が望めないため断念。バンカメは、リーマン同様にサブプライム関連の損失拡大に苦しむメリルの買収に転じた。

 リーマンは昨夏以降、サブプライム関連の損失を計140億ドル超計上。経営不安の高まりで株価は9日に前日比で約45%も急落。10日には6−8月期の決算見通しを前倒しで発表、資産売却など再建策も明らかにしたが具体的な追加増資策を示せず、株安に歯止めがかからなかった。

米リーマン、清算手続きへ バンカメとメリル合併合意

2008/09/15 中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク14日共同】経営危機に陥った米証券大手リーマン・ブラザーズの救済を目指す官民協議が不調に終わり、リーマンが清算手続きに入る可能性が強まった。十四日に米メディアが伝えた。また米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)によると、米銀大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)が米証券大手メリルリンチを四百四十億ドル(約四兆七千億円)で買収することで合意した。シティグループを抜き、米最大の金融機関となる。

 今月七日に政府系住宅金融二社への公的資金投入による救済策が発表されたばかりだが、米サブプライム住宅ローン問題に端を発する金融市場の混乱は収まらず、経営体力の弱った米金融大手の淘汰とうたと大型再編に発展した。

 十二日からニューヨークで開かれたリーマン救済をめぐる官民協議では、バンカメと英銀大手バークレイズがリーマンの買収を検討したが、米政府の公的資金活用などの支援が望めないため断念。バンカメは、リーマン同様にサブプライム問題関連の損失拡大に苦しむメリルの買収に転じた。

 官民協議では、リーマンの不良資産を分離し、将来の損失に備えて金融機関が資金支援する案が出たが、合意できなかった。リーマンの清算は混乱を防ぐため、営業縮小を銀行団が支援する。

 リーマンは九日に前日比約45%安となるなど株価が急落。十日に六―八月期の決算見通しを前倒しで発表したが、株安に歯止めがかからなかった。

米住宅差し押さえ過去最高 8月、サブプラ1年でも

2008/09/12 47News【共同通信】

 【ニューヨーク12日共同】米民間調査会社リアルティトラックは12日、8月に米国で差し押さえ通告を受けた住宅などの件数は前年同月比27%増の30万3879件に達し、統計を取り始めた2005年1月以降最高となったと発表した。サブプライム住宅ローンによる金融市場混乱が本格化して1年が過ぎたが、ローン焦げ付き拡大に歯止めがかからない実態が明らかとなった。

 米金融機関の経営が圧迫される状況が続きそうだ。

 7月からは12%増え、全米の416世帯に1軒が通告を受けた計算。

 政府などが進める差し押さえ抑制策の効果により一部地域で改善傾向がみられ、増加ペースは鈍化しているが「そうした対策が今後、本格的に効果を発揮していくかはまだ分からない」とした。

 地域別では通告を受けた割合が1番高かったのは、ラスベガスなどでリゾート投資物件が多いネバダ州。カリフォルニア、アリゾナ州が続いた。

サブプラ損失とうとう100兆円超 (ゲンダイネット)

2008年09月10日掲載 日刊ゲンダイ

 サブプライムローンの損失拡大に歯止めがかからない。とうとう世界中の損失が100兆円を超えた。国際通貨基金(IMF)は世界の金融システム全体の損失が約1兆1000億ドル(約118兆円)に上ることを明らかにした。IMFが4月に発表したときには、9450億ドル(96兆円)だったから、5カ月で15%も増えた計算だ。このうちの約6割が米欧銀行の分で、残りが日本や中国などアジア、カナダ、ロシアなどの金融機関である。こうなると、日本の銀行などの損失も、これまで言われてきたような金額ではすまないのではないか。

 茂木金融担当相は救済措置が発動された米政府系住宅金融2社の社債保有について、日本の大手銀行と農林中金が持っているのは約10兆円と発表したが、どう見ても少なすぎる。

「この数字は開示資料を集計しただけで、これがすべてとは到底思えません。欧米の金融アナリストたちも、日本は世界最大の債権国なのだから、サブプライムの損失も世界中を経由して最後は日本に回ってくると分析しています。米欧金融機関以外の損失分の半分としても20兆円を超えます」(金融関係者)

 バブル崩壊のときのように、いずれ「実は……」ということになるのか。そのときは再び金融大パニックである。

世界全体の損失、118兆円=サブプライム発の金融危機で−IMF幹部

2008年09月09日 [時事通信社]

 【ワシントン9日時事】国際通貨基金(IMF)のリプスキー第1副専務理事は9日、フランクフルトで行った講演で、低所得者向け高金利型(サブプライム)住宅ローン問題に端を発した金融危機で、世界の金融システム全体の損失が約1兆1000億ドル(約118兆円)に上るとの試算を明らかにした。このうち米欧銀行の損失は5600億〜6850億ドル、資産の償却は約5000億ドルに上ったという。銀行はこれまで大規模な増資を行ったものの、今後資本調達やバランスシート改善の上で環境は一段と難しくなると分析した。 

それでもサブプラ危機収束は不透明

2008年09月08日掲載 日刊ゲンダイ

●最大で2000億ドル

 サブプライム危機で米政府がついに決断した。米財務省は7日、政府系住宅金融会社の連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)、連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)を政府の管理下に置くと発表。公的資金を注入するため、最大で合計2000億ドル(約21兆6000億円)の優先株購入枠を設定する。

「これまで米政府は、巨額の税金投入には慎重だったが、このままでは世界的な金融危機の連鎖に発展する可能性が避けられない状況にまで悪化した。米国内でも8月の失業率が6%を突破する5年ぶりの高水準となり、不安が高まっていた」(金融関係者)

 両社が政府の管理下に入ることで、金融市場には一定の安心感が広がるとみられている。ただ、米経済が底入れするかどうかは、依然、不透明な状況だ。

米失業率:背景にサブプラ問題 広範囲な実体経済への波及

2008年09月05日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 【ワシントン斉藤信宏】米労働省が5日発表した8月の雇用統計で、失業率が一気に0.4ポイント悪化した背景には、低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題の広範囲にわたる実体経済への波及がある。

 雇用統計の内訳を見ると、就業者数は製造業が6万1000人の大幅減となったほか、これまで雇用を支えてきたサービス部門が全体で2万7000人減と低迷。サービス業のうち小売業は2万人減、企業業務関連も5万3000人減だった。サブプライム問題のあおりを受けている建設の就業者数は8000人減だった。

 サブプライム問題は当初、金融市場の混乱と住宅市場の低迷という形で景気に悪影響を与えてきた。だが、ローンの焦げ付きは住宅から自動車や消費者ローンまで拡大。不動産市場の低迷は商業用不動産にも広がっている。また、米連邦準備制度理事会(FRB)による急激な金融緩和の影響もあり、今年に入ってからエネルギー価格が一段と高騰。米国内総生産(GDP)の約7割を占める個人消費に悪影響を与えるなど、景気を冷え込ませて雇用に深刻な影響を与えてきた。

 雇用悪化の長期化が、新たなローンの焦げ付きを生む恐れもあり、米経済の先行き不透明感はますます強まっている。

サブプライムローン:証券化商品の損失2.5兆円

2008年09月04日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 金融庁は4日、米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題を端緒とする国際金融市場の混乱で、銀行や信用金庫など国内金融機関が計上した証券化商品などの損失額が今年6月末時点で計2兆5740億円になったと発表した。3月末に比べて5.7%増加した。証券化商品などの保有総額は23兆5030億円で、全体の約1割が焦げ付いた形だ。うち、サブプライムローンに直接関連する商品の損失額は約8960億円だった。

 証券化商品全体の損失額を業態別でみると、大手行2兆2120億円▽地銀1480億円▽信用金庫や信用組合など協同組織金融機関2130億円だった。金融庁の集計には、経営が悪化し、米政府が公的支援を検討している米住宅金融会社が発行する債券などは含まれていない。【永井大介】

オークションバブル崩壊 サブプラ余波で不安心理

2008/08/23 FujiSankei Business i.

 ■「金融市場に連動」証明

 数十億円もの高値をつけることもある「コンテンポラリーアート(現代美術)」人気を背景に、拡大を続けてきた国内の美術品オークション市場で、有名作家の作品が値崩れを起こすなど“バブル崩壊”の兆候が出ている。米国のサブプライムショックの余波で不安心理が広がり、コレクターが収集を手控えているためで、「オークションは金融市場に連動する」との説が実証された格好だ。(藤沢志穂子)

               ◇

 ≪入札者減で価格下落≫

 日本を代表する現代美術家、草間彌生氏。カボチャや水玉など独特の画風で知られる作品は、国内外のオークションで高値を付けていた。だが、落札価格は昨年の前半をピークに、米国のサブプライム(高金利型)住宅ローン問題が深刻化した昨秋以降、下落傾向にある。

 「かつて約20万円だった作品が一時は300万円まで値上がりしたが、今は80万円の値しか付かない。オークションの入札者数も最盛期の3分の1まで減った」

 東京・銀座の大手画廊社長はため息をもらす。

 専門誌の月刊美術の金子美樹編集長も「サイズにもよるが、発表時に150万〜350万円をつけた別の作家は一時、数千万円まで上がりしたが、今は20%ほど値下がりした」と話す。

 ≪「投資家」購入手控え≫

 1990年代に根付いた国内のオークション市場は、美術ファンをつかみ右肩上がりで拡大。ここ数年は、海外で村上隆氏ら新進の日本の作家が、日本円で数千万〜数億円もの高値をつけた勢いにあおられ、他の邦人アーティストの作品も軒並み値上がりするなどバブル化していた。

 転機を象徴するのが、“シンワ・ショック”だ。

 業界最大手のシンワアートオークションの2008年5月期決算が、売上高で前期比27%減の約16億2000万円、最終利益は62%減の約9800万円と大幅に悪化。業界に「市場全体が大きく沈む」との不安が駆けめぐった。

 外資系金融機関から美術業界に転じたシンワの倉田陽一郎社長は「オークション市場は株式市場と同じ状態。作品単価、出品数、落札数ともにマイナス成長で、売り手、買い手とも不在」と、“連動説”をとなえる。

 国内のオークション市場は、日本の現代美術に関心の高い中国や香港、台湾などのアジアのコレクターが買い手の中心。美術品は投資の対象としても位置づけられており、投資家としての顔を持つコレクターが、「購入を手控えている」(関係者)という。

 ≪資源マネーで海外活況≫

 これに対し、欧米のオークション市場は依然として活況を呈している。

 世界有数のオークション会社、サザビーズが5月にニューヨークで開いたオークションでは、村上隆氏のエロティックなフィギュア「マイ・ロンサム・カウボーイ」が1516万ドル(約16億6700万円)で落札され、大きな話題を集めた。

 活況の牽引(けんいん)役は、資源高で潤う中東やロシアのほか、インドやトルコなど新興国の「ニューリッチ」と呼ばれる富裕層だ。

 購入対象は現代美術から古美術までと幅広く、現金で買いあさっているという。

 サザビーズ・ジャパンの石坂泰章社長は「新興国は歴史的に美術への造詣が深く、戦前からの美術教育という下地があり、購買力は底堅い」と話す。

 海外では日本とは逆にサブプライムショックが追い風になっている側面もある。月刊美術の金子編集長は「金融商品から逃避した資金がオークション市場に流入している」と分析する。

 もっとも、歴史が浅く、規模が小さい日本市場はショックにもろく、一足早く変調し始めただけともいえる。

 第一生命経済研究所の永濱利廣・主任エコノミストは「インフレ懸念から世界の中央銀行が金融引き締めに動いており、余剰資金が吸収され始めた。新興国マネーにも変調が及び、欧米でも日本と同じことが起こり得る。日本のオークション市場の冷え込みは世界的なバブル崩壊の予兆の可能性がある」と警鐘を鳴らしている。

                ◇

 ■規模も小さく「未成熟」

 シンワアートオークションの倉田陽一郎社長の話

 「オークション市場は株式市場に連動した動きを示す。日本のオークション市場は1990年代以降に成長したが、欧米ほど規模は大きくなく、まだ成熟していない。日本の近代美術に関心をもつ外国人はほとんどおらず、ロシアや中東など新興国の富裕層も日本には入ってきていない。日本で目立つ外国人は、中国や香港、韓国、台湾などのアジア勢で、日本で唯一海外に通用するコンテンポラリーアート(現代美術)を買いに来ている」

                ◇

 ■新興国の富裕層が増加

 サザビーズ ジャパンの石坂泰章社長の話

 「サザビーズの取扱高が上昇しているように、世界のアート市場は拡大している。ロシアなど新興国の富裕層が増加し、現金で購入していることに加え、美術品に対する価値観が多様化してきたことも大きい。コレクターの関心は絵画のみならず、中国美術や陶磁器、イスラム芸術にまで及んでいる。つねに市場に出回らないフレッシュな作品が求められており、世界をまたにかけ、巨額の作品を動かすギャラリーや画商も増えた」

米住宅着工:前月比11%減の大幅落ち込み 7月

2008年08月19日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 【ワシントン斉藤信宏】米商務省は19日、7月の住宅着工件数を発表した。季節調整後の年換算で、前月比11%減の96万5000戸と大幅に落ち込み、91年3月以来17年4カ月ぶりの低水準となった。低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題に伴う住宅市況の落ち込みに歯止めがかかっていないことを裏付けた。ただ、市場予想平均(95万戸)は上回った。

 先行指標となる住宅着工許可件数も同17.7%減の93万7000戸と大幅に減少。住宅市場の先行き不透明感は払しょくされておらず、米景気の先行きへの懸念が再び強まりそうだ。

 地域別に見ると、着工件数は北東部が30.4%、南部が8.2%、西部が8.2%それぞれ減少した。中西部は10.0%増だった。北東部の急減は、6月にニューヨーク市の建築基準変更を控えた駆け込み需要で大幅に増加した反動が出たものと見られる。

シティ、累損5兆円突破 サブプラ損失は世界最大

2008/07/18 中国新聞ニュ−ス

 【ニューヨーク18日共同=増田和則】米銀大手シティグループが十八日発表した二○○八年四〜六月期決算は、サブプライム住宅ローン問題に関する損失が七十億ドル(約七千五百億円)以上に膨らんだことから、純損失が二十四億九千五百万ドルとなり、四半期ベースで三期連続の赤字となった。

 同問題が本格化した昨年夏以降の関連損失は累計で約五百億ドル(約五兆三千億円)を超え、サブプライム関連では世界の金融機関で最大規模の損失となる見込み。

 サブプライム関連では、十七日に米証券大手メリルリンチが約九十七億ドルの巨額の損失を計上しており、長期化する信用収縮による米金融機関の経営悪化への懸念が強まっている。

 シティの赤字額は市場予想を下回ったが、四・四半期連続で巨額のサブプライム関連の損失を計上したことになり、一段の資本増強などに迫られる恐れもありそうだ。

 ほかの金融機関と比べて、サブプライム関連の金融商品などを多く保有しており、長期化する信用収縮の影響でこれらの評価損が膨らんだ。

サブプラ損失、4兆円突破 米メリル、4期連続赤字

2008/07/18 徳島新聞

 【ニューヨーク17日共同】米証券大手メリルリンチが17日に発表した2008年4?6月期決算は、サブプライム住宅ローン問題に関連した損失が約97億ドル(約1兆円)に達し、純損失が46億5400万ドルと四半期ベースで4期連続の赤字となった。サブプライムローン問題が本格化した昨年夏以降、メリルリンチの関連損失は400億ドル(約4兆2400億円)を突破。米証券大手で最大となった。

 内訳はサブプライムローンに絡む金融商品などの評価損が35億ドル、米金融保証保険(モノライン)をめぐる損失が29億ドルなど。

 またメリルリンチは、損失穴埋めの目的で米経済通信社ブルームバーグの持ち株20%を44億2500万ドルで売却したことを明らかにした。経営基盤の悪化を防ぐため、ほかの保有株などの資産売却も急ぐ。人員削減も加速させており、今年前半で予定よりも多い約4200人を減らした。

サブプライム損失額2兆4360億円 3月末の金融機関

2008/06/06 中国新聞ニュ−ス

 金融庁は六日、国内の銀行、信用金庫、信用組合などが保有する米サブプライム住宅ローン関連を含む証券化商品などの損失が、三月末時点で二兆四千三百六十億円に上ったと発表した。

 サブプライムローン関連の損失が八千五百億円と昨年十二月末に比べ二千五百億円増加したほか、サブプライム問題などによる金融市場の混乱によって、その他の証券化商品の損失も膨らんだ。

 金融庁は、国内金融機関の損失処理について、今後も注視する。

 証券化商品などの保有額は全体で二十二兆七千九百三十億円。二○○八年三月期決算で処理した損失(実現損)は一兆四千五百三十億円で、含み損は九千八百三十億円に達した。

 地方銀行、第二地方銀行を合わせた地域銀行の証券化商品などの実現損と含み損の合計は千四百八十億円。信金、信組などの合計は二千百十億円だった。

 このうちサブプライムローン関連の損失は、地域銀行が四百七十億円、信金、信組などが二百九十億円。

UBSの赤字1兆円超 5500人削減へ

2008/05/07 中国新聞ニュ−ス

 【ジュネーブ6日共同】スイスの総合金融大手UBSが六日発表した二〇〇八年一―三月期決算は、米サブプライムローン問題による巨額損失処理が続いたことから純損失百十五億三千五百万スイスフラン(約一兆一千五百億円)と、三・四半期連続の大幅赤字となった。

 サブプライム関連の損失処理額は一―三月期だけで約百九十億ドルに達し、昨年七―九月期以降の累計で、欧州金融機関としては最大規模の四百八億スイスフランに膨らんだ。UBSは「今後も難しい経営環境が続く」としており、〇九年半ばまでに五千五百人の人員削減に踏み切る方針だ。

 UBSは経営再建策として既に二度にわたる総額三兆円を超える資本増強策を発表、これが完了すれば業界最高水準の自己資本比率を維持するとしている。

米、貸し渋り一段と広がる サブプライムでFRB調査

2008年05月06日 中国新聞ニュ−ス

 【ワシントン5日共同】米連邦準備制度理事会(FRB)が5日発表した民間銀行の融資担当者調査で、サブプライム住宅ローン問題による金融混乱や景気悪化の影響で、米国の銀行による貸し渋りが一段と広がっていることが分かった。

 調査対象の銀行53行のうち、15・1%が融資基準を「大幅に厳しくした」とし、前回1月調査の3・8%から11ポイント以上の上昇となった。また「若干引き上げた」との回答も47・2%だった。緩和したとの回答はなかった。

 調査は4月上旬に行われ、同17日までの回答をまとめた。

借り手救済で追加策要請 住宅問題でFRB議長

2008年05月06日 中国新聞ニュ−ス

 【ワシントン5日共同】米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は5日、ニューヨークで講演し、サブプライム住宅ローン問題について「最善の解決策は元本削減や融資条件の恒久的な見直し」と述べ、米政府や議会に対し、借り手救済の追加策を講じるよう求めた。

 議長は今後も住宅ローンの焦げ付きが増える見通しとし、住宅差し押さえの増加は「住宅価格を急落させ金融システムを不安定にし、広く米経済に悪影響を与える」と主張。差し押さえ増加を防ぐ方策を講じることが重要だと強調した。

 また連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)などの政府系住宅金融機関について「大幅な資本増強を実施すべきだ」とし、住宅ローン債権を組み込んだ証券の買い取りを拡大する必要があるとの認識を示した。

米FRB、0・25%追加利下げ

2008/05/02 FujiSankei Business i.

 【ワシントン=渡辺浩生】米連邦準備制度理事会(FRB)は30日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0・25%引き下げ、年2%とすることを決め、即日実施した。FF金利は2004年11月以来の低水準。投票委員10人中2人は据え置きを主張して反対した。次回以降については景気と物価動向の両面を注視しながら、必要な行動を取るとしている。

 低所得者向けサブプライム(高金利型)住宅ローン問題に伴う金融市場の混乱で昨年9月以降、利下げは連続7回。下げ幅は3・25%に達した。

借り手救済で追加策要請 住宅問題でFRB議長

2008年05月05日

 【ワシントン5日共同】米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は5日、ニューヨークで講演し、サブプライム住宅ローン問題について「最善の解決策は元本削減や融資条件の恒久的な見直し」と述べ、米政府や議会に対し、借り手救済の追加策を講じるよう求めた。

 議長は今後も住宅ローンの焦げ付きが増える見通しとし、住宅差し押さえの増加は「住宅価格を急落させ金融システムを不安定にし、広く米経済に悪影響を与える」と主張。差し押さえ増加を防ぐ方策を講じることが重要だと強調した。

 また連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)などの政府系住宅金融機関について「大幅な資本増強を実施すべきだ」とし、住宅ローン債権を組み込んだ証券の買い取りを拡大する必要があるとの認識を示した。

米雇用、2万人減少 景気停滞は長期化も

2008年05月02日

 【ワシントン2日共同】米労働省が2日発表した4月の雇用統計(速報、季節調整済み)によると、景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数は前月に比べ2万人減少、4カ月連続のマイナスとなった。4カ月連続で前月を下回ったのは2003年6月以来約5年ぶり。雇用情勢の悪化が続いており、米国の景気停滞は長引きそうだ。

 米サブプライム住宅ローン問題の影響で金融市場の動揺が続き、企業マインドは冷え込んでおり、民間部門の雇用は引き続き縮小した。1−4月の4カ月間で雇用者数の減少は計26万人に達した。雇用情勢の低迷は個人消費への影響が大きく、米経済は引き続き厳しい局面が続きそうだ。

 雇用拡大の目安となる10万人増を下回ったが、市場の事前予想(7万5000人減)は大きく上回った。2月と3月の就業者数はそれぞれ8万3000人減、8万1000人減と下方修正された。

野村、678億円の赤字 米サブプライム問題で

2008/04/26 中国新聞ニュース

 証券最大手の野村ホールディングスが二十五日発表した二〇〇八年三月期連結決算(米国会計基準)は、純損益が前期の千七百五十八億円の黒字から六百七十八億円の赤字に転落した。赤字決算は一九九九年三月期以来九年ぶり。米サブプライム住宅ローン問題の関連損失が約二千六百億円に拡大したため。国内大手金融グループがサブプライム問題で赤字に転落するのは初めて。

 今年に入って、サブプライム関連の損失などをカバーしている米金融保証保険(モノライン)の経営悪化懸念が、急速に高まったため、保険金が支払われない事態に備え引当金を大幅に積み増した。

 野村の仲田正史なかだ・まさふみ執行役は記者会見で「(今後の損失発生をできる限りなくすよう)今の時点で想定できることはやった」と、思い切った処理だと強調した。

 野村は、海外で債権や債務を組み合わせてつくった証券化商品を手掛けているが、市況は急激に悪化している。

 さらに、株式市場低迷を背景に新規上場を控える動きが強まっていることなどから、国内営業や投資銀行部門などでも利益が減少した。

英、10兆円超の銀行支援策 サブプライム深刻化で中銀

2008年04月21日 中国新聞ニュース

 【ロンドン21日共同】英中央銀行のイングランド銀行は21日、米国の信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題の深刻化に対応し、民間銀行の資金繰り悪化を改善するため、総額500億ポンド(約10兆3900億円)の金融支援策を同日から実施すると発表した。状況に応じ、支援規模の拡大も検討する。

 銀行が保有する住宅ローンを担保とする証券を最長3年間にわたって短期国債と交換する。中銀は昨年12月、住宅ローン証券などを差し入れ担保とした期間3カ月の資金供給を行ったが、今回、長期的な支援に乗り出したことで、英サブプライム対策は公的資金の投入色が強まった。

 サブプライムローン問題の影響で住宅ローン証券は市場で売却が難しくなり、貸し渋りの原因となっていた。

米シティ損失1・2兆円超 1―3月、2期連続赤字

2008/04/18 中国新聞ニュース

 【ニューヨーク18日共同=増田和則】米銀大手シティグループが十八日発表した二○○八年一―三月期決算は、米国の信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題に関する損失百二十億ドル(約一兆二千四百億円)超を計上したことから、純損失が五十一億一千百万ドルとなり、四半期ベースで二期連続の赤字となった。

 同問題が本格化した昨年夏以降の関連損失は累計で四百二十億ドル(約四兆三千四百億円)超に達した。○八年一―三月期までの累計で四百億ドル規模に上る見通しのスイスの総合金融大手UBSを上回り、サブプライム関連では世界の金融機関で最大の損失になる見込み。

 十七日に一―三月期決算を発表した米証券大手メリルリンチも三期連続の赤字となるなど、欧米の金融機関の収益悪化には依然として歯止めがかかっていない。

 シティは○七年十―十二月期にも二百億ドル超の損失を計上しており、二期続けて巨額損失の発生となった。

 ほかの金融機関と比べ、サブプライム関連の金融商品などを多く保有しており、市場環境の悪化で評価損が膨らんだ。

米金融界20万人リストラも サブプライム影響で試算

2008年04月12日 中国新聞ニュース

 【ニューヨーク11日共同】サブプライム住宅ローン問題深刻化の影響を受ける米金融業界で、今後1年から1年半の間に大規模なリストラが行われ、15万−20万人が職を失う可能性があるとの試算を米コンサルティング会社セレントなどが11日までにまとめた。

 米金融機関は2008年に一般企業の売上高に当たる営業収益が2%減少し、300億ドル(約3兆円)に達するコスト削減が見込まれる。

 同社は「金融機関の収益が落ちる一方で経費は上昇しており、利益水準を維持するために近い将来に人員の調整が実施されるのは確実だ」としている。

 ただそうした人員削減はあくまでも“応急処置”で、本格的な業績の回復のためには中長期的な視点に立ったコスト管理計画が求められると指摘した。

サブプライム関連損失、国内金融機関で1兆2000億円に

2008年04月12日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 銀行や保険会社など国内金融機関の米サブプライムローン(低所得者向け住宅融資)に関連した損失が、2008年3月期連結決算で1兆2000億円規模に膨らむことが、11日分かった。

 みずほフィナンシャルグループの損失が国内最大の5650億円に拡大するほか、他の金融機関も損失の増加が見込まれ、欧米金融機関の経営を揺さぶるサブプライム問題の影響が国内でも深刻になってきた。

 みずほが同日発表した08年3月期で3度目の業績予想の下方修正によると、サブプライム関連損などで、08年3月期の連結税引き後利益は、1月時点の予想の4800億円から、3100億円に縮小する。欧米で金融市場の混乱が続き、価格下落がサブプライムローンと直接関係のない証券化商品にまで広がったことや、保有株式の値下がりも業績悪化に影響している。

 三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループもサブプライム関連損失がそれぞれ1000億円前後まで拡大して08年3月期の税引き後利益は4000〜5000億円にとどまり、大手銀行全体の損失額は8000億円を超える見通しだ。

 また、野村ホールディングスは1000億円超の損失が固まっているほか、あいおい損害保険が920億円を計上すると発表済み。地方銀行も350億円超の損失を計上する方針だ。

 欧米金融機関より傷が浅かった邦銀の損失拡大で、金融市場の安定化に向けた先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の議論が注目される。

世界不況の可能性を警告 08年、IMF経済見通し

2008/04/09【共同通信】47 News

 【ワシントン9日共同】国際通貨基金(IMF)は9日、世界経済見通しを発表し、2008年の世界全体の実質経済成長率が前年比1・2ポイント低い3・7%に落ち込むと予想、信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題が一層深刻化すれば3%成長以下となる「世界的な不況が起こる可能性がある」と警告した。

 08年の米成長率は同問題の影響で前年の2・2%から0・5%に大幅減速、1991年以来17年ぶりの低成長となり「緩やかな景気後退入り」を予測した。日本は1・4%成長を見込んだ。

 サブプライム問題に端を発した「大規模な金融危機」の影響で、08年の世界経済は大幅に減速すると予想。今年1月時点の見通しを0・5ポイント下方修正、02年以来6年ぶりの低水準となった。09年も3・8%と低成長を見込む。

 さらにIMFは、こうした見通しには「下振れリスクが残る」ことを認め、金融市場の信用収縮が本格化すれば「08年と09年の成長率が3%以下に落ち込み、世界不況となる可能性は25%ある」と明記した。

損失は最大100兆円に サブプライムでIMF報告

2008年04月08日 中国新聞ニュース

 【ワシントン8日共同】国際通貨基金(IMF)は8日、世界金融安定報告を発表、米国の信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題による世界の金融機関の損失が9450億ドル(約100兆円)に達するとの試算を示した。金融機関の損失計上がさらに膨らみ、自己資本不足に陥る可能性も指摘。不良資産処理に向けた公的資金投入の準備を提言した。

 損失額は、昨年10月の金融安定報告の試算(2000億ドル)の約5倍に膨らみ「1990年代の日本の金融危機に匹敵する規模」になると指摘。サブプライム問題による金融危機の影響が広範囲に及ぶ可能性を明確に示した。ワシントンで11日に開かれる先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は同報告を受け、金融安定策を議論する。

世界の損失40兆円と予測 サブプライムで米証券

2008年04月05日 中国新聞ニュース

 【ニューヨーク5日共同】米証券大手リーマン・ブラザーズは、米サブプライム住宅ローン問題による金融市場の混乱で、世界の金融機関の損失が今年末までに計4000億ドル(約40兆円)に達するとの予測をまとめた。欧米メディアが5日までに報じた。

 世界の金融機関の損失については、別の米証券大手ゴールドマン・サックスが計1兆2000億ドルとの予測を3月にまとめたが、リーマンの予測はこれを大きく下回った。

 リーマンによると、4000億ドルのうち約2900億ドルの損失が既に明らかになっている。金融市場の回復は来年以降にずれ込むとみられるという。

23兆円超の資金供給 欧州中銀、市場混乱に対応

2008年03月29日 中国新聞ニュース

 【ロンドン28日共同】欧州中央銀行(ECB)は28日、米サブプライム住宅ローン問題で揺れる欧州の短期金融市場への対応策として、計1500億ユーロ(約23兆6000億円)の大規模な資金供給に踏み切ると発表した。米連邦準備制度理事会(FRB)も同日、1000億ドル(約10兆円)の追加供給を4月も継続すると発表した。

 ECBの大量の供給は昨年12月中旬に越年対応のため、計約1300億ユーロの実施を決めて以来の規模。今回は4半期決算の期末を控え、金融機関の経営悪化説が飛び交う中、信用不安の沈静化のため追加供給を図る。

 ECBは、6カ月物の資金として250億ユーロを計2回、3カ月物として500億ユーロを計2回、4月上旬から順次実施する。英イングランド銀行(中央銀行)も27日に資金供給を実施した。

米、大幅利下げ決定へ FOMC開始

2008年03月18日 中国新聞ニュース

 【ワシントン18日共同】米連邦準備制度理事会(FRB)は18日、金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)を開いた。サブプライム住宅ローン問題による金融危機が拡大するのを防ぐため、主要な政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を大幅に引き下げるのは確実な情勢だ。

 FOMCの決定が判明するのは日本時間19日未明の見通し。市中銀行への貸出金利である公定歩合も引き下げる公算が大きい。

 FF金利の誘導目標を現行の年3・0%から0・75−1・0%引き下げるとの見方が市場では有力。経営危機に陥っていた証券大手ベアー・スターンズが売却に追い込まれるなど、金融市場の混乱が深まっているためだ。

 FRBは16日、「金融機関の資金調達を容易にするため」(バーナンキFRB議長)に公定歩合を先行して緊急で0・25%引き下げた。

米住宅ローン、大手行の損失5300億円

2008/01/31 中国新聞ニュース

▽4―12月期、みずほが最大 米住宅ローンで業績悪化

 大手銀行六グループの二〇〇七年四―十二月期連結決算が三十一日出そろった。米サブプライム住宅ローン関連の損失額の合計は五千二百九十一億円と、〇七年九月中間期の千百五十億円に比べ約四・六倍に拡大した。今年三月末までにさらに一千億円程度増える見通し。

 みずほフィナンシャルグループは七百億円から三千四百五十億円に大きく膨らみ、国内金融機関で最大の損失となった。

 〇七年四―十二月期の純利益は六グループすべてが減少。利益の合計は前年同期比44・2%減の一兆三千三百九十一億円と振るわず、業績への打撃が鮮明になってきた。

 サブプライム関連の損失を計上したのは、みずほ、三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、住友信託銀行の四グループ。りそなホールディングスと中央三井トラスト・ホールディングスは損失がほとんど出なかった。

 三十一日に〇七年四―十二月期連結決算を発表したみずほグループの純利益は、前年同期比32・2%減の三千九百三十億円。〇八年三月期の純利益予想をこれまでの六千五百億円から四千八百億円に下方修正した。

 三菱UFJグループのサブプライム関連の損失は五百五十億円で、今年三月末までにさらに四百億円膨らむ見通し。〇七年四―十二月期の純利益は54・4%減の三千百四十六億円だった。

 三井住友グループの純利益は19・3%減、住友信託銀行も45・3%減と低迷。りそな、中央三井トラストも会計上の理由などで減益だった。

 大手行以外では、あおぞら銀行が三百六十五億円の損失を計上。新生銀行も二百二十八億円の損失が生じた。

三井住友は損失990億円 4−12月、米住宅ローンで

2008年01月29日 中国新聞ニュース

 三井住友フィナンシャルグループは29日、2007年4−12月期連結決算を発表し、米サブプライム住宅ローン問題に関連した損失を990億円計上したことを明らかにした。

 これまでは08年3月末までに870億円の損失が生じると予想していたが、金融市場の混乱が長期化し損失は膨らんだ。

 損失処理していないサブプライムローン関連の金融商品は150億円程度に縮小し、三井住友グループは「サブプライムローン問題の処理はヤマを越えた」としている。

 これとは別に、米国の地方債や資産担保証券などを保証している保険会社(モノライン)の格付けが引き下げられたことから、モノラインとの間のデリバティブ(金融派生商品)取引に関連した引当金を100億円積んだ。

個人、企業減税柱に最大16兆円 ブッシュ米大統領が緊急経済対策

2008年01月19日 中国新聞ニュース

 【ワシントン18日共同】ブッシュ米大統領は18日、信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題による景気後退の阻止を目指し、総額が最大で1500億ドル規模(約16兆円)となる緊急経済対策の概要を発表した。個人所得税の一部を返す「戻し減税」や企業の設備投資を促す税制優遇の拡充などが柱。大幅な追加利下げを検討する連邦準備制度理事会(FRB)とも連携、政策を総動員し、米大統領として最終年の景気悪化回避へ全力を挙げる。

 ブッシュ大統領は「不安定な住宅と金融市場が経済全体をさらに悪くし、米国の成長や雇用を危機にさらしている」と強調。議会に対し、できるだけ早期に経済対策を取りまとめるよう要請。米議会は独自の追加対策などを加え、早ければ1月中にも決定する。

 対策についてブッシュ大統領は「経済に大きな効果がある規模が望ましい」とし、国内総生産(GDP)の1%規模を表明。ポールソン米財務長官は「1400億−1500億ドル程度になる」と述べた。50万人の雇用創出効果があるという。

低利の越年資金を大量供給 ECB、サブプライム対策

2007年12月18日 中国新聞ニュース

 【ロンドン18日共同】欧州中央銀行(ECB)は18日、無制限のユーロ資金を民間銀行に低利で供給する異例の公開市場操作(オペ)に踏み切った。米国の信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題で揺れる金融市場を大量の越年資金で潤し安定化を図る。12日発表の米欧5カ国・地域の中央銀行による協調行動に上乗せする形で年末の資金需要増に対応、混乱回避を狙う。

 無制限の資金供給を打ち出したのは、サブプライムローン問題による欧州市場の混乱が最初のピークに達した8月9日以来。協調行動でのドル資金供給に続き、今回のオペでユーロ資金の不足にも対処する。

 年末資金の目安となる2週間物のユーロ建てロンドン銀行間取引金利(LIBOR)は資金需給の逼迫により17日、一時4・9%台に上昇。ECBの主要政策金利を1%近く上回り、民間銀行の資金調達が難しくなっていることが鮮明になった。

【主張】サブプライム対策 もう対岸の火事視できぬ

2007.12.15 MSN産経新聞

 米国の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)をめぐる混乱が深刻の度合いを増してきた。

 スイス金融大手UBSは約1・1兆円の損失を追加計上した。欧米では、銀行が資金を融通し合う短期市場で金利が上昇、年越し資金の調達が難しい状況だ。

 これに対し、米政府はサブプライムローン金利を一部凍結した。欧米各国の中央銀行も利下げや、市場への大量資金供給に踏み切った。

 しかし、これらの措置も奏功したとはいえない。信用力が強いとされた商品に損失が広がったUBSをみて、「どこがどの程度の損を抱えているか、誰もわからない」との疑念が広がっているからだ。

 問題の根はサブプライムローンの担保資産、つまり住宅価格の下落だ。米政府が打ち出した金利凍結は、焦げ付き防止に一定の効果はある。それでも、中古住宅価格が下げ止まらない限り、サブプライム禍に終止符を打つのは難しい。最大約33兆円の損失という経済協力開発機構(OECD)の試算さえ、不十分との見方もある。

 そんな中、米国から日本の3メガバンクに、米銀が設置する対策基金への協力要請があった。メガバンクは米側が求めるそれぞれ約5500億円ともいわれる融資枠設定に慎重だ。

 この要請にどこまで応じるかは、経営判断だが、そのさい、考えてほしいのは、サブプライム問題が日本経済にとって、もはや「対岸の火事」視できない状況になっている事実だ。

 大手邦銀のサブプライム関連損失は平成19年度通期で総計3000億円で、欧米金融機関に比べると規模は小さい。とはいえ、保有関連商品の価格下落をどの程度見込むかで各行ばらつきがあり、予断は許されない。

 米国経済の変調は世界経済にマイナスだ。日本も株安、円高、原油高が企業収益に影を落としている。日銀が14日公表した企業短期経済観測調査(短観)では大企業製造業の景況感が悪化、先行き不安感も強まっている。

 短期市場の混乱が続けば、世界的な金融システム不安につながる恐れもある。共同歩調をとらねばならないのは各国の中央銀行だけではない。政府も民間金融機関も、国際協調で臨まねばならない段階に来ている。

株下落、追加対応迫る…米0.25%利下げ、後退懸念拡大

2007/12/13 FujiSankei Business i.

 米連邦準備制度理事会(FRB)は11日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、最も重視する政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0・25%引き下げ、年4・25%にすることを賛成多数で決定、即日実施した。利下げは9、10月に次ぎ3回連続で、下げ幅は計1%に達した。

 FOMC後の声明は「企業や個人の支出が鈍化」し「経済成長は減速している」と明記。信用力の低い人向けサブプライム(高金利型)住宅ローン問題の悪影響が広範囲に及び、景気が減速していることに強い懸念を表明し、次回(来年1月末)以降のFOMCでの追加金融緩和を示唆した。

 ブッシュ政権は今月6日にサブプライムローン問題で包括的な借り手救済策を発表。FRBも利下げで金融政策の面からこれを後押しし、世界経済の景気後退を予防する考えを鮮明にした。

 FRBは市中銀行への貸出金利である公定歩合についても0・25%引き下げ、年4・75%とすることを承認した。

 ただ、11日のニューヨーク株式市場は今回の決定を「不十分」として大幅下落、FRBに追加的な対応を迫る形となった。米経済が来年に「景気後退入りする」との懸念も出始め、少なくとも年初は利下げを継続するとの観測が広がった。

 これまでFRBはFF金利を9月に0・5%、10月には0・25%それぞれ引き下げた。しかし、日米欧の大手金融機関がサブプライムローン関連で巨額の評価損を計上するなど金融市場の混乱が再燃。信用不安の高まりが世界経済の不安要因となっていた。

 米経済有力紙「ブルーチップ」調査でもエコノミストが4割の確率で景気後退すると見ていることが判明。物価上昇圧力が強まる中で、来年もFRBの金融政策が注目を集めそうだ。 (ワシントン 共同)

1兆円超を追加処理へ サブプライム問題でUBS

2007年12月10日 中国新聞ニュース

 【ジュネーブ10日共同】スイスの金融大手UBSは10日、米サブプライム住宅ローン問題に関連し、10−12月期に約100億ドル(1兆1160億円)の損失処理費用が新たに発生する見通しだと発表した。サブプライム問題による世界の主要金融機関の損失処理額としては最大規模となる。

 UBSはこれに伴い、シンガポール政府投資公社(GIC)に対し110億スイスフラン(約1兆880億円)の転換社債を発行するなど、総額2兆円近い緊急の資本増強策を実施する。

 損失処理が膨らんだのはサブプライム関連の市況の悪化を踏まえて、保有有価証券の評価方法を見直した結果としている。UBSは同問題で7−9月期にも多額の損失処理費用を計上していた。

米、3回連続利下げか 11日にFOMC開催

2007年12月08日 中国新聞ニュース

 【ワシントン8日共同】米連邦準備制度理事会(FRB)は11日、金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題による景気や金融市場の先行き懸念を背景に、3回連続で利下げに踏み切るとの見方が強い。

 主要な政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利については誘導目標を0・25%引き下げて年4・25%とするとの観測が有力。緊急時などに市中銀行に貸し出す際の金利である公定歩合では0・5%の大幅利下げを求める声も市場から出ている。

 バーナンキ議長は11月末の講演で、市場の動揺が前回のFOMC後に再燃したことに言及し「格段の警戒と柔軟性」を持って政策判断する意向を表明。危機回避へ利下げをためらわない覚悟を示したと受け止められている。

社説 サブプライム対策 不安拡大食い止めるか

2007/12/08 中国新聞ニュース

 市場原理を最優先する米国では、この程度が精いっぱいなのだろう。信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題で、ブッシュ大統領がおととい発表した包括的な対策である。上昇分の返済金利を五年間凍結して借り手を救済するのが柱だが、公的資金は投入しない。

 それでも、ニューヨークや東京の株式市場は好感。株価が大幅に上昇した。投資家が先行きに抱いていた不安感は、ひとまず除かれたかもしれない。

 この対策が企業活動や個人消費など実体経済の減速懸念を食い止めることができるかどうか、が一番の問題となる。

 金利の凍結は、これまで返済を続けている健全な借り手の自己破産や住宅差し押さえが広がるのを食い止めるのが狙い。債権回収会社などとの合意を前提にしており、公的機関は仲介者の立場という。固定金利への借り換え促進を含め最大百二十万人が対象だが、実際はかなり限定されそうだ。

 対策ではこのほか、住宅ローンの融資基準を厳しくし、金融機関の情報開示を強める。「詐欺的な営業」をしていた住宅金融会社などの刑事責任も厳しく追及。借り換えに対する税法上の優遇措置導入に向け、議会に早期立法化も要請している。

 サブプライム問題の再発を防ぎたいという米政府の熱意はそれなりに理解できる。半面、決め手に欠いた部分的な措置との印象もぬぐえない。金利の凍結を五年間としたため、専門家の間では「問題の先送りにすぎない」と厳しい批判もあると伝えられる。

 しかし、手をこまねいていては、金融市場の不安が広がる一方だろう。ローンの債権を証券化した商品の仕組みが複雑で、実際の損失がつかみにくいからだ。

 今回の対策で少なくとも、取引実態などから借り手の信用度を「契約継続」「破たん」などと正確に判断できるようになる。ひいては、リスクの透明度を高めることにもつながるのではないか。

 すでに、米国の銀行の不良債権処理額は急増して約二十年ぶりの高水準とされる。金利の凍結で高利回りが期待できなくなっても、債権の焦げ付きがこれ以上膨らむよりましだろう。

 直接の打撃がまだ比較的小さい日本には、米国の景気後退に起因した円高・株安が深刻な影響を及ぼす。それだけに不安定要因の拡大は何としても避けたい。

米サブプライムローン担保債券格付け、金利凍結でさらに悪化も=S&P

2007年12月07日 REUTERS

[ニューヨーク 6日 ロイター] 米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は6日、サブプライムローン(信用度の低い借り手への住宅ローン)の返済金利凍結を柱とする米政府の救済策によって、同ローンを裏付けとした債券の格付けが一段と悪化する可能性があるとの見方を示した。

 一方ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、住宅ローンを裏付けとした債券を保有している投資家に対し、救済策が全体としてプラスの影響を与えると分析している。

 ブッシュ米大統領は6日、金利改定でローン返済ができずに住宅が差し押さえられる件数が急増する事態を避けるため、サブプライムローンの返済金利を5年間凍結する救済策を発表した。

 これについてS&Pはリポートで、デフォルト頻度などを実際に相殺する要因に欠けているため、米国の一部の第1抵当サブプライムローンの金利を凍結しただけでは特定の債券格付けにマイナス効果が生じると指摘した。

 ただS&Pも、金利凍結で住宅ローンの借り手が返済を継続できるようになれば、証券保有者の全体的な損失減少につながる可能性はあるとし、差し押さえの減少が経済を支援、住宅供給を安定化させ、住宅価格下落を緩和すると予想している。

 ムーディーズも、不動産を差し押さえて低迷する住宅市場で売却するコストの方が、金利凍結によって返済が減るよりも投資家に与える損害は大きいと指摘している。

ブッシュ米大統領、サブプライムローン利用者の救済策発表

2007年12月07日 REUTERS

[ワシントン 6日 ロイター] ブッシュ米大統領は6日、住宅ローンの返済に苦慮する住宅保有者を救済する対策を発表した。差し押さえ急増が米経済への打撃となることを回避する目的。

 大統領は、米財務省とモーゲージ業界の協議により策定された今回の策について、金融機関や投機筋および、返済が不可能と認識しながら住宅を購入した買い手を対象とした救済策ではないと強調。変動型金利ローンを組んでおり、金利改定により近い将来支払いが大幅に増加する200万人の住宅保有者の多くを救済することが目的とした。ホワイトハウスの推定では120万人が対象となる可能性があるという。

 大統領はまた、借り換えを支援するために、議会は税制改革法を制定するべき、との見方を示した。

 一方、アナリストは、対象者の数はそれほど多くはならない可能性を指摘。ムーディーズ・エコノミー・ドット・コムの首席エコノミスト、マーク・ザンディ氏は「理論上の対象者は最大で75万人。実際には、多くても25万人程度になるだろう」との見方を示した。

 今回の策では、2005年1月1日から2007年7月31日に組成されたサブプライムモーゲージ(信用度の低い借り手向け住宅融資)のうち、今後2年半の間に金利改定を迎えるローンは、5年間現行金利が凍結される。

 投機目的の住宅購入者を対象から外すため、妥当な信用リスクを示すことができ、持ち家に住み、金利が高く再設定された場合持ち家を手放さなければならない借り手が対象となる。

 ユーロ・パシフィック・キャピタルのプレジデント、ピーター・スキフ氏は救済策は、間違ったことを行った人に対する「政府による大きな褒美」のようなもの、と批判。「高い金利でも支払いができる人でも、みな、支払いが不可能なことを証明しようと、できることを全てするだろう」と語った。

 差し押さえ増加の回避で米景気が底上げされる可能性がある一方、救済策により借り手に有利なように変更された条件を強制的に受け入れさせられることへの批判もある。

 サード・ウエーブ・グローバル・インベスターのラリー・スミス最高投資責任者(CIO)は、一度契約した条件が書き換えられるということは、今後資金を提供しようとする投資家の意欲をそぐことになる、と指摘した。

 また、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、サブプライムローンの金利凍結は、住宅ローンを担保とした証券の信用格付けを一段と悪化させる可能性がある、との見方を示した。

米、週内に包括対策発表へ サブプライムローン問題

2007年 12月04日 中国新聞ニュース

 【ワシントン3日共同】ポールソン米財務長官は3日、信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題について「包括的な対策を詰めている」と述べ、金融業界と連携して週内に緊急支援策を打ち出す方針を明らかにした。借り手保護のため、上昇するローン金利の凍結が柱になるとみられる。

 ブッシュ政権内部では最長5−6年程度の凍結が検討されているもようだ。ただ、金融界には多くの借り手を対象とした長期間の金利凍結に慎重な見方もあり、調整が難航する可能性もある。

 ワシントンで講演した長官は支援策について「安定した収入があり(当初の)低い金利は支払えるが、変更後の高い金利は支払えない借り手に焦点を当てる」と述べた。対象者数や支援策の詳細については言及を避けた。公的資金投入は明確に否定した。

 同ローンは変動金利で、返済開始から2−3年後に金利が急上昇する仕組み。金利凍結で借り手を支援、住宅の差し押さえ増加に歯止めをかける狙いがある。

米政府、ローン金利凍結へ サブプライム問題で救済策

2007年11月30日 中国新聞ニュース

 【ニューヨーク30日共同】30日の米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は、サブプライム住宅ローン問題の対策として、米財務省と大手金融機関が同ローン金利を一時凍結する方向で最終調整していると報じた。具体的には、融資開始の一定期間後に金利が急上昇するのを一時的に停止するもので、来週にも発表の見通しという。

 米政府は、サブプライムローンの金利上昇とともに延滞が増加し、持ち家を手放す人が増え、社会問題化していることに対処すべきだと判断、金融界への働き掛けを強めていた。現在、金利凍結の対象者や期間を詰めているという。

 サブプライムローンの債権は細分化された証券となり、他の金融商品と組み合わせた商品として世界中に拡散している。これら商品を保有する投資銀行や投資ファンドにとっては、金利が凍結されれば、高い利回りが期待しにくくなる半面、債権の不良化に歯止めがかかる可能性もある。

農林中金は損失1千億円 10月末、米サブプライムで

2007/11/27 中国新聞ニュース

 農林中央金庫は二十七日、二〇〇七年九月中間決算を発表し、米サブプライム住宅ローン問題による十月末までの損失額は、含み損を含め千五十七億円に上ったと発表した。

 中間期では、このうち三百八十四億円を処理した。サブプライム関連の金融商品は約四千八百億円保有しているという。〇八年三月期決算の損失処理額は、市場動向によって六百億円規模に膨らむ可能性がある。

 サブプライム関連では、野村ホールディングスが千四百五十六億円の損失を処理。〇八年三月期では、みずほフィナンシャルグループが約千七百億円、三井住友フィナンシャルグループは約八百七十億円の損失を見込んでいる。農林中金も野村や大手銀行グループに次ぐ規模の損失を計上することになる。

 農林中金が中間決算を発表するのは今回が初めて。純利益(連結)は前年同期に比べ約10%増の千四百三十五億円。米国債などの運用が好調で、サブプライム関連の損失を補った。〇八年三月期の経常利益(単体)は、前期比3・7%減の三千五百二十億円を見込んでいる。

サブプライム国内保有1兆3000億円 損失5000億円超も

2007.11.22 MSN産経新聞

 金融庁は22日、国内銀行(含む農林中央金庫)と信用金庫、信用組合の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)関連商品の保有、損失状況の調査結果を公表した。9月末時点の保有額は簿価で約1兆3300億円、このうち評価損は約1100億円で、4−9月期の実現損が1200億円あった。ただ、10月以降も損失拡大が続く上、調査に証券会社や生損保は含まれないため、国内金融機関全体の損失は来年3月の通期決算で5000億円規模に膨らむ恐れがある。

 調査はサブプライムローンを原資産とする資産担保証券(ABS)のほか、ヘッジファンドを通じた関連投資などを対象に、9月中間決算の状況をまとめた。このほか、サブプライム関連ビジネスでの損失として約200億円が確認された。

 調査について、渡辺喜美金融担当相が22日の閣僚懇談会で報告。渡辺担当相は、銀行の自己資本(40兆円規模)や業務純益(6兆円規模)と比べ軽微として、「追加損失が出てきても十分対応可能」と指摘。金融システムに深刻な影響を与えることはないと強調した。

 ただ、直接サブプライムと関係ない証券化商品も売却が困難な上、調査は10月以降の追加損失を含まないので、金融庁は「引き続き注視する必要がある」としている。

 通期では、みずほフィナンシャルグループが1700億円の損失見通しを公表したのをはじめ、6大金融グループだけで損失は3000億円強に膨らむ見通し。

 さらに、今回調査に含まれない野村ホールディングスが1456億円、あいおい損害保険が252億円の評価損などを計上しているほか、損害保険ジャパンもサブプライムを含む金融商品の保証保険で最大300億円程度の支払いを見込んでおり、銀行と証券、保険を含む損失は、来年3月期決算で合計5000億円規模に達する見通しだ。

 米住宅市場でのサブプライムローンの発行額は約150兆円で、8割程度が証券化、2次加工されているとみられる。経済協力開発機構(OECD)は世界の金融機関や機関投資家の損失額は最大3000億ドル(約33兆円)に膨らむとの見通しを公表している

ローン借り手の救済を要請 サブプライムで米財務長官

2007.11.22 MSN産経新聞

 ポールソン米財務長官はサブプライム住宅ローン問題を受け、住宅ローンの焦げ付きや差し押さえ増加に歯止めをかけるため、返済開始の2〜3年後に金利が急上昇する同ローンからの借り換えを半ば自動的に認める救済策を金融機関などに要請していることを明らかにした。

 21日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルのインタビューで語った。

 長官はこれまで借り手の事情に応じて返済の相談に乗るよう業界に求めていたが、「個別対応では間に合わない」と方針転換に踏み切った。借り換えを認める場合の基準を設定するよう求めており、一定の返済能力があれば救済の対象になるとみられる。

 長官はサブプライムローン問題について「来年はさらに問題が深刻化する」と述べ、影響が拡大する懸念を強調。返済金利の凍結要請などに踏み込む可能性も否定しなかった。(共同)

大手行の利益9500億円 米住宅ローンで6グループ半減

2007/11/21 中国新聞ニュース

 大手銀行六グループの二○○七年九月中間連結決算が二十一日出そろった。純利益の合計は前年同期に比べ約45%減の約九千五百億円にとどまり、六グループすべてが減益になった。

 米国の信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題に関連した大手行の損失は、○八年三月期決算で二千八百億円程度に膨らむ見通し。証券、保険などを合わせた国内勢全体の損失は五千億円規模となり、米住宅ローン問題の影響が広がってきた。

 大手行傘下の消費者金融、信販会社などノンバンクの業績が悪化したことが、グループ全体の減益要因になった。

 二十一日に中間決算発表した最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループの純利益は、前年同期比49・4%減の二千五百六十七億円。系列の信販会社「三菱UFJニコス」が大幅な赤字に転落したことが響いた。米住宅ローン関連の損失は四十億円にとどまった。

【円ドル人民元】米国より打撃大きい日本 サブプライム危機で

2007.11.18 MSN産経新聞

 「市場が壊れている」(みずほフィナンシャルグループの前田晃伸社長)。同グループなど日本の金融機関の米国の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)関連損失額は日を追うごとに増えている。さらに日本の株価は米国以上に不安定だ。ニューヨークの火災がなぜ世界に広がるのか、類焼の憂き目に遭っている東京の火勢がなぜ火元より強くなるのか。

 根本原因は世界の余剰資金のニューヨーク市場一極集中構造にある。

 米国は基軸通貨ドルの強みを生かして世界から余剰資金を集め、ドル相場や金融市場を安定させてきた。そればかりか世界の余剰資金を全世界に再配分してきた。代表的な機関がヘッジファンドで、日本などの余剰資金を米国や新興国市場に配分してきたが、逃げ足も速い。1997年にはタイから投機資金を引き揚げてアジア通貨危機を引き起こした。危機は広がり、韓国は財閥が破綻(はたん)、インドネシアはスハルト体制が崩壊した。ロシアの金融危機はニューヨーク市場を揺るがせたこともある。

 これらの災厄はサブプライム危機に比べると、取るに足りないかもしれない。何しろ、米国が集め、再配分する資金の規模は10年前とは比べ物にならないほど膨張している。

 米国が必要とする外部資金は貿易など経常収支赤字の穴埋めだけではない。外に向かって投資する資金はもっと大きい。これらの外部資本必要合計額の国内総生産(GDP)比は95年に6%を突破、アジア通貨危機後には急上昇し、2000年には約10%、04年13%台、06年14%台、そして07年前半は実に19%近くまで跳ね上がった。

 外のマネーをひきつけてきた主役が住宅ブームであり、その波に乗ってきたのがサブプライムローンを証券化して組み込んだ金融商品である。つまり、米国は低所得者層や返済延滞常習者まで動員して国内ばかりでなく欧州、日本、中国の投資家や金融機関を取り込んだ。

 サブプライム危機の勃発(ぼっぱつ)で金融市場が動揺し外から資本が入ってこないから、米連邦準備制度理事会(FRB)はドル札を増刷して市場に流し込む。するとドルは暴落し、米金融市場が破綻すると一般には思われがちだが、米国はそんなにやわくはない。

 ドルには円など他通貨にはない強みがある。ヘッジファンドや産油国などの投資家がドル建ての証券を売ったあとの逃避先は、石油や金。いずれもドル建て市場である。これらの商品相場はドル安に伴うインフレ予想から値上がる。石油価格が急騰すると、石油消費国はますますドルを必要とする。米国に反逆するイランを除けば石油はドルでしか買えないからだ。

 ドルに対する需要がある限り、いくら刷ってもドルが紙切れになるはずはないと米通貨当局は安心できる。対照的に、円高のあおりで企業収益が減るという予想から日本企業株が真っ先に売られる。新興国市場もドル安によるマイナスの影響が出始めている。石油価格高騰ショックと重なると、打撃はもっと深刻になる。

 日本は中国、インド、ブラジルなど新興市場国と同じ船に乗り合わせている。新興国と協調し、ドル債を買う、つまり対米証券投資するのと引き換えに米国にドルの安定策を求めるべきだろう。(編集委員 田村秀男)

              ◇

 ■サブプライムローン 所得が低いか、多重債務、延滞など信用力の低い消費者に住宅購入資金を貸す米国特有の高金利ローンで、借り手は担保の住宅さえ差し出せば返済義務がないところがミソ。貸付機関は住宅担保ごとサブプライムローンを証券に換えて市場で売れば焦げ付きリスクを証券の買い手に転嫁し、現金にできる。

 証券化とはいわばババ抜きゲームを軸にしたギャンブル商法である。担保になる住宅価格が上昇していればサブプライム証券の買い手が殺到し、相場が急騰する。逆に下落に転じると、リスクが表面化し証券相場は急落する。買い手もつかなくなったのが現状でローン証券相場は日ごとに下がり、投資家の損失が膨らんでいる。

 サブプライム証券は一般の投資信託商品のように国債など他の低リスク証券と組み合わされリスクが隠されていた。同証券が日本や欧州、中国などの金融機関や投資家に幅広く買われていた一因である。サブプライム残高は米国国内総生産(GDP)の約1割の1兆3000億ドルにも上る。

サブプライム危機の「火薬庫」 連鎖する住宅差し押さえ

2007.11.18 MSN産経新聞

 ウォール街や国際市場を揺るがす低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題で、借り手が返済に行き詰まって持ち家を失う差し押さえの連鎖的な増加が深刻化している。住宅価格の下落が波及して新たな差し押さえを誘発する「サブプライムの火薬庫」は、底の見えない危機を象徴している。(メリーランド州ボルティモア 渡辺浩生)

 ●荒廃する街

 「30年。みんなで大勢の子供を育ててきたこの街に、空き家がどんどん増えるのは寂しいことだ」。米東部の工業都市ボルティモア郊外の閑静な住宅街。黒人のビル・ジェームズさん(65)は3人の子供が巣立った「マイホーム」の前で吐息を漏らした。

 「見てごらん。斜め向かいの黄色の家は、差し押さえられたばかりだ」

 ビルさん自身、差し押さえ一歩手前の危機に直面した。子供の教育費や家の修理のため持ち家を担保に2年前、約5万ドル(約550万円)の融資を住宅ローン会社から受けた。だが、2年後に固定金利(年8・25%)から変動金利に切り替わって急上昇するサブプライムローン特有の仕組みを、売り手の会社は説明しなかった。

 ローン返済に手いっぱいで固定資産税が払えず、「差し押さえを強要された」とも。ビルさんは、悪質なローンから借り手を救済する非営利団体「ACORN」(本部ニューオーリンズ)に依頼し、ローン会社と条件変更の“闘争”中だ。
●200万人が家を失う

 米全土では推計200万人という差し押さえの予備軍が控えている。

 ACORNのボルティモア支部に相談に訪れた公共機関勤務の白人女性は昨年8月、21万2800ドル(約2340万円)で持ち家を購入。毎月返済額は約2000ドル(約22万円)で月収の45%を占める。しかも、申込書類の収入の内訳は数字が微妙に改竄(かいざん)されていた。来年は金利上昇で月の返済額は7、800ドル増加する見通しで、「返済不能は時間の問題」だという。

 差し押さえは住宅市場の在庫を増やし、近隣の住宅の価値まで下落させる。住宅の担保価値が下がればローンの借り換えが困難となり、次なる差し押さえを誘発する。

 「差し押さえが従来の低所得層から中間層に広がりつつある。来年には平和な住宅街で一気に増える」。ACORNのスチュアート・カーゼンバーグ支部長は警告する。

 ●犯罪まで増える

 黒人居住者が集中するボルティモア北西部には、玄関に板が打ち付けられた空き家が並ぶ。犯罪集団がドラッグの密売所とし、ホームレスが占拠する家もあった。

 米紙ワシントン・ポストは、オハイオ州クリーブランドのスラブ系移民街が差し押さえ急増で「ゴーストタウン化」し、地元マフィアの銃撃の流れ弾で12歳の少女が犠牲になった、と痛ましい事故を報じている。

 米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は今月の議会証言で、差し押さえ急増に言及。「借り手と金融機関の協調」を訴えたが、ACORN住宅相談員のジョー・コックスさんは「金融機関はサブプライムの借り手を人間扱いしていない」と断言する。
 ビルさんは今も修理工として働き、休日は庭の芝刈りをする。「サブプライムの問題が日本まで飛び火したことは知ってるさ。でも、問題の根っこには、マイホームと子供の成長を夢に、汗水たらして働いてきた普通の米国民がいるんだよ」

               ◇

世界の金融市場を揺さぶるサブプライムローンの大量焦げ付き問題に出口が見えない背景には、返済に行き詰まり、持ち家を差し押さえられる借り手が後を絶たない状況がある。差し押さえ件数は7〜9月期に44万6726件で、前年同期から倍増。地域も西部、南部から東部へと広がる。

 持ち家の資産価値下落とローン金利の上昇が主な要因だ。非営利団体「ACORN」の報告書によると、住宅1棟が差し押さえられると、半径200メートルの近隣の住宅価値が0・9%下がる。

 低所得者地域での下げ幅は1・4%に拡大。差し押さえは犯罪も誘発する。100世帯で2・8件の差し押さえが発生すれば、犯罪率が約6・7%上昇する。税収減で公共サービスの質が低下し、コミュニティー全体の荒廃の危険がある。

 差し押さえの危機に直面する借り手は約200万人と推計。米議会合同経済委員会の有力民主党議員は先月、問題を放置すれば全米の住宅価格が10%下落し、総額2兆3000億ドル(約253兆円)の経済損失が出るとの報告書を公表した。

米経済打撃、投融資220兆円減 サブプライムで米証券試算

2007.11.17 MSN産経新聞

 米証券大手ゴールドマン・サックスは16日までに、米サブプライム住宅ローン問題による信用収縮で最大2兆ドル(約220兆円)の投融資が減り、米経済に大きな影響を与える可能性があるとの試算をまとめた。

 同証券エコノミストのリポートでは、同ローンの焦げ付きやローン関連の金融商品の価格下落などで、金融機関や投資ファンドなどの損失が最大4000億ドルに上ると予想。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が八日に示した1500億ドルの推計は「楽観的に見える」と指摘した。

 さらに、少額の自己資金で巨額投資を行う手法を用いている金融機関や投資ファンドなどが全体の損失の半額に当たる2000億ドルを損失計上したと仮定した場合、約2兆ドルの投融資が減少すると分析。これが1年間で起きると景気後退につながり、2〜4年間で起きると長期間の成長鈍化が続くとし、信用収縮は「重大なマクロ経済のリスクとなる」と指摘した。(共同)

サブプライム問題で中国政府が初の公式見解 高成長「転換点」

2007/11/17 FujiSankei Business i.

 ■対米輸出「甚大な影響」 国内の景気過熱加速も

 中国商務省は16日までに、米国のサブプライム(高金利型)住宅ローン問題の影響で高い成長を続けている中国経済が転換点を迎えるとのリポートをまとめた。対米輸出の減少とともに、信用収縮に対応した米国の利下げが中国の景気過熱を加速させることを理由に挙げた。サブプライム問題によるアジア経済への影響は欧米に比べ軽微とみられていたが、中国経済が減速すれば日本など周辺国への影響も避けられなくなる。

 中国政府がサブプライム問題の経済への影響について公式見解を示したのは初めて。

 国営紙、中国日報などによると、リポートは、サブプライム問題による影響で米国経済が減速し、中国の対米輸出は2008年にかけ「甚大な影響」を受けるとを占めている。

 すでに対米輸出額の前年同期比伸び率は、07年1〜3月期の20・4%から4〜6月期には15・6%に、サブプライム問題の影響が拡大した7〜9月期には、12・4%に低下しているが、08年にかけて一段の減少を予測している。

 中国の輸出は、2けたを続ける経済成長の寄与度で3分の1以上を占めているが、中国人民銀行(中央銀行)は、米国の国内総生産(GDP)が1ポイント低下するごとに、中国の輸出は6%減少すると試算している。

 リポートは、米連邦準備制度理事会(FRB)が、サブプライム問題に端を発した信用収縮への対応策として主要政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利を2回にわたり引き下げたことが対中投資の増加を招くと指摘。中国国内のインフレ圧力の高まりに対応して金融引き締めを強化せざるを得なくなり、対米輸出減少の影響と合わせ、中国の高い成長は「転換点を迎える」としている。

 リポートの予測が現実になれば、中国で事業を展開している日本企業などの業績にも大きな影響が及ぶことになる。

 ただ、四半期ごとの伸び率が鈍化しているとはいえ、今年10月の中国の対米輸出は、単月では過去最高の270億ドルに達するなどなお高水準だ。

 これに対し、米国は、12月に北京で予定されている米中経済戦略対話で、貿易不均衡是正に向けた人民元切り上げなどを強く求めている。中国側には、サブプライム問題により対米輸出が減少するとのリポートを示すことで、米国側の攻勢をやわらげようとする思惑もありそうだ。(佐藤健二)

日米欧で損失7兆円超 サブプライム問題で金融機関

2007/11/17 中国新聞ニュース

 【ニューヨーク17日共同=増田和則】米国の信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題に関連する金融機関の損失が、日米欧で計七兆円超に上る見通しとなった。当初「影響は限定的」としていた金融市場の見方を覆し、各社の損失拡大が目立っている。損失が最終的に二千億ドル(二十二兆二千億円)に達するとの推計もあり、世界経済の懸念要因として先行き不透明感を高めそうだ。

 日米欧の金融機関が十六日までに計上したり今後の発生見通しを公表した損失を、円換算でまとめた。

 大半を占めるのは、サブプライムローン問題の震源地の米国で計約五兆円。シティグループは最大二兆円近くに達する見込みのほか、メリルリンチも七―九月期だけで約九千二百億円を計上した。両社は巨額損失の責任を取る形でトップが辞任した。

 米金融機関は七―九月期(一部は六―八月期)決算の発表が終わっても、次の決算期の追加損失予想を公表せざるを得ない状況が続く。同ローン関連の金融商品の価格が暴落し、格下げも相次いでいるためで、損失拡大は底無しの様相だ。

 欧州では、ドイツ銀行やスイスのUBSが四千億円前後の損失となり、全体で一兆七千億円に迫る。英中堅銀行ノーザン・ロックは資金繰りが悪化して一時、取り付け騒ぎに発展したため、金融当局が緊急融資を実施して救済した。

 日本でも野村ホールディングスが千四百五十六億円の損失となるなど、影響が飛び火。中小金融機関を含めて計約四千三百四十億円と、欧米に比べ規模は小さいが、徐々に拡大している。みずほフィナンシャルグループの損失見通しは計千七百億円に達し、傘下のみずほ証券と新光証券の合併を延期した。

 「大手は公表を急いでいるが、来年にかけて規模の小さい金融機関などの損失が明らかになる」(米エコノミスト)状況で、国際通貨基金(IMF)は損失が最大で二千億ドルに上るとの試算を示している。

サブプライム影響は限定的…「東アジアの成長は好調」

2007/11/16 FujiSankei Business i.

世銀経済報告書 中国、ベトナムなど「投資や消費が活発化」

 世界銀行は14日にまとめた「東アジア大洋州地域の経済報告書」で、米低所得者向けサブプライム(高金利型)住宅ローン焦げ付き問題が、中国やベトナムなどの経済に与える影響は限定的と分析した。東アジアの米向け輸出に鈍化傾向がみられるものの、「中国を始めとする国々で投資活動と消費が活発化したため2007年の成長は好調に推移し加速さえ認められた」として、この地域で好調な経済成長の維持が見込まれるとした。(坂本一之)

 報告書で世銀は、中国の08年成長率の見通しは10・8%で地域を牽引(けんいん)するとともに、インドネシアの6・4%やフィリピンの6・2%など各国とも好調な経済が持続するとの見通しを示した。

 世銀は「米国のサブプライム問題と原油価格の高騰再燃で下振れのリスクが高まったことは明らか」としながらも、「域内の力強い成長の勢いは08年も続く」と、各国の金融機関で損失が表面化するサブプライム問題で受けるマイナス影響よりも、東アジア成長力の方が大きいと判断した。

 ≪原油高騰は警告≫

 ただ、08年の平均原油価格を1バレル当たり90ドルと推定した場合、東アジア域内総生産(GDP)の1・1%に相当する所得が失われると試算。石油高騰の影響で、「東アジアだけでなく世界の経済成長の堅実さが試されることになるだろう」と指摘。投機マネーの流入で高騰する原油による悪影響の拡大を警告した。

 こうした中、中国では企業経営者に経済成長に対する楽観的な意見が広がっている。中国紙、人民日報などによると、国家発展改革委員会の経済研究所は、「中国経済は周期的な絶頂期に達したか近づいている」と報告して、08年7月〜12月期か、09年に中国は穏やかな調整期に入るとの見方を明らかにしている。

 その理由として「消費の伸びが頂点に達したとき投資の伸びは鈍化し経済成長率も低下する」と説明。来年8月の北京五輪を機に、中国経済に鈍化の傾向が現れてくる可能性も指摘している。

 途上国に韓国、台湾やシンガポールなどの新興工業国・地域を含めた東アジアの新興経済国・地域は、このところ巨額の外貨準備高を積み上げており、域内の9大国・地域の外貨準備高合計は07年の9カ月で4510億ドルも増加して、2兆5000億ドルを突破した。

 なかでも中国は9月末時点で前年同月比45・1%増の1兆4336億ドルの外貨準備高を誇っており、東アジア経済に与える影響を強めている。

生保協会会長 「サブプライムの影響は限定的」

2007.11.16 MSN産経新聞

 生命保険協会の岡本国衛会長(日本生命保険社長)は16日の定例会見で、国内金融機関にも損失が拡大している米サブプライムローンの焦げ付き問題で、「日本生命ではサブプライムの直接投資はなく、下期も含め損は発生しない」と語り、生保業界の業績への影響は限定的だと強調した。今後は「サブプライム問題で株価や為替に影響が出れば、運用が厳しくなることもあり得る」と懸念を示した。ただ、「分散が進んでおり、資産運用に影響は出ないだろう」と影響が軽微に止まるとの考えを示した。

米国のサブプライムローンの影響が日本にも来る

2007年11月16日 asahi.com 阿部和義

 低所得者向けの高金利の住宅ローン「サブプライムローン」が米国で大問題になって景気の足を引っ張っている。この影響が日本に来るかどうか、経済界では話題になっている。すでに「野村証券」や「みずほ証券」などがサブプライムローンを取り込んだファンドや投資信託などの証券化商品で損をしている。しかし、日本経済にどのような影響が与えるかについてはいろいろな見方があり、正確なことはわからない。たくさんの人に意見を聞いて自らが判断するしかない。

 10月26日に日本不動産ジャーナリスト協会が金融庁の森田宗男・監督局証券課長に「金融商品取引法の施行に伴う不動産関連ファンドへの監督方針について」というテーマで話を聞いた。証券取引法に代わって出来た金融商品取引法が9月30日に全面施行されるのに合わせて不動産業界にどのような影響が出るか、を勉強しようというものである。森田課長によると、投資家保護と業界の繁栄とのバランスをどのように取って行くかが課題であるという。不動産業界はできるだけ規制が緩いほうが良い。不動産投資信託(J−RITE)や私募型不動産ファンドの市場規模は約33兆円に上っている。しかし、質の悪い商品が組み入れられたファンドが増えたり、帳簿が不備なこともあり、消費者保護が叫ばれている。そうした中で監督局としては業界を見ていかなくてはならず、森田課長は「できるだけ業界が繁栄するようにしていきたいので、なんでも相談してほしい」と述べていた。

 森田課長はIMF審議官から現職に異動した。そのため「今問題になっているサブプライムローンについて、これから日本にどのような影響がでてきますか?」という質問が出た。森田課長は「米国のローンの20%はサブプライムローンだ。このうち延滞率は15%と言われており、大変な問題だと思う。IMFとしても深刻に受け止めている」と述べた。

 住宅金融支援機構の島田精一理事長はこの問題について「サブプライムローンは2年の安い固定金利で、その後は高くなる。住宅価格が高くなっている時は払えなくなったら売ってしまえばよい。ところが今のように住宅価格が下がっていると、売るにも売れずに家から出される人が出ている。5人に1人がそういう状態だ」と事態の深刻さを話す。

 島田理事長は、日本は金利が低いので住宅ローンも短期の低金利で借りている人が多いが、金利が上がってきたときには日本でもサブプライムローンのような問題が出てくると予想している。高い金利を払わなくてはならなくなるからだ。

 住宅金融支援機構は35年の長期固定、フラット35を発売しているが、福田首相が200年住宅の実現を訴えていることから、50年の長期固定金利フラット50も検討している。これがサブプライムローン対策になる、と島田理事長は訴えている。

サブプライムで明暗 新規参入4銀行 2行が赤字、減益 9月中間

2007/11/17 FujiSankei Business i.

 新規参入4銀行の2007年9月中間決算が16日、出そろった。米国のサブプライム(高金利型)住宅ローン関連の損失でイーバンク銀行の最終赤字が前年同期の8倍以上に拡大したほか、セブン銀行も競争激化に備えたシステム投資で減益。一方、手数料収入などが好調だったジャパンネット銀行が黒字転換を果たし、ソニー銀行も大幅増益となり、明暗を分けた。

 インターネット専業のイーバンクはサブプライム関連の有価証券などの評価損に加え、株価下落や円安による運用環境の悪化が響き、最終赤字が52億円に膨らんだ。

 サブプライムローン関連の証券化商品の保有残高は約39億円あり、今後も損失処理が必要になる見込み。ネット預金で集まった資金を市場で運用していることが損失拡大を招いたが、松尾泰一社長は「当行はどうしても相場環境に左右される。今後はもう少しマイルドな運用に努めたい」と悔やんだ。

 現金自動預払機(ATM)主体のセブン銀行は、海外発行のキャッシュカードでも日本円を引き出せる新サービスなどのシステム開発費用が膨らみ、減益を余儀なくされた。

 これに対し、ジャパンネットは、手数料収入の増加と、サブプライムローン関連の金融商品への投資がなかったことが幸いし、中間期としては2期ぶりに最終損益が黒字に転換した。ソニー銀行も投資信託などの手数料収入が好調に推移し最終利益が前年同期の12倍に拡大。預かり資産も1兆円を突破した。

 新規参入銀行では、9月以降、住信SBIネット銀行とイオン銀行が開業し、“新顔”が相次いでおり、サービス競争の激化や投資の増大が収益を圧迫する懸念もある。

サブプライム融資の米ノバスター、破産懸念で株価50%超急落

2007年11月16日 ロイター[ニューヨーク 15日]
 

 15日のニューヨーク証券取引所では、米サブプライムローン(信用度の低い借り手への住宅融資)会社ノバスター・フィナンシャル(NFI.N: 株価, 企業情報, レポート)が一時63%急落した。第3・四半期決算で5億9800万ドルの赤字を計上し、破産を申請する可能性もあると発表したことが懸念された。

 終値は前日比2.52ドル(54.78%)安の2.08ドルで、安値は1.72ドル。年初の株価は106.60ドルだった。

 ノバスターは株式が上場廃止になる「可能性が高い」と予想している。

 同社は住宅ローンの貸し付けを中止しており、証券監督当局に14日提出した四半期報告で、「継続企業」として引き続き存続する保証はできないと表明した。

日米金融機関、サブプライム関連の評価損「2割前後」

2007/11/16 NIKKEI NET

 世界の金融機関で信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)に関連した損失が増えている。日米の銀行は最近公表した業績見通しなどで、関連資産額に対して2割前後の評価損を見込んだ。ただ、買い手がつきにくい関連商品の価格は今後も下がる恐れがある。サブプライムの評価損率をどのくらい見込むかが、業績や株価に大きな影響を与えそうだ。

 シティグループ15―20%、バンク・オブ・アメリカ18.5%、みずほフィナンシャルグループ25%――。日米の銀行がサブプライム関連の保有資産に対して、どれだけの評価損を見込むかの「評価損率」を計算すると2割前後に集中する。

サブプライムで脚光? 世界の金需要2割増

2007.11.15 MSN産経新聞

 国際的な金の業界団体であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC、本部ロンドン)が14日発表した統計によると、今年7−9月期の世界の金の総需要は前年同期比19%増の947トンに拡大、金相場は同9%上昇した。

 今夏以降、米サブプライム住宅ローン問題に伴う金融市場の混乱で、原油などとともに「安全資産」とみられている金が脚光を浴び、個人や年金基金の投資資金が流入したことが鮮明になった。

 WGCによると、同期は上場投資信託(ETF)などを通じた金への投資が138トン相当に増加。2004年10−12月期の113トンを上回り過去最高となった。宝飾用などの実需も前年同期比6%拡大。中国など新興国で伸びが続いたほか、日本でも7%増えた。

 14日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の金先物相場は、前日比15・70ドル高の1オンス=814・70ドルだった。(共同)

日銀決定会合、サブプライム警戒 現行金融政策は維持

2007.11.13 MSN産経新聞

 日銀は13日、政策委員会・金融政策決定会合の2日目の協議を行い、政策金利の無担保コール翌日物の誘導目標を0・5%とする現行の金融政策方針の据え置きを8対1の賛成多数で決めた。日銀は、今後の景気拡大のシナリオ自体は維持したが、同時に米国の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題への警戒も怠らない姿勢を強調した。

 13日に発表された7−9月期国内総生産(GDP)速報値に関連し、日銀の福井俊彦総裁は決定会合後の会見で、「日本経済が緩やかに拡大していることを再確認した」と評価。景気の先行きについても、「息の長い成長が続く」との認識を変えなかった。

 ただ、サブプライムローン問題をめぐり、福井総裁は「金融市場と海外経済に不確実性がある」とも指摘。具体的には(1)関連商品に関するリスクの再評価が終わっていない(2)欧米の金融機関の損失がまだ見通せていない−ことを挙げた。

 そのうえで、福井総裁は「全体の枠組みは私の頭の中の線に沿って進んでいるが、最終的なマグニチュードは判定できていない」と指摘。世界経済と日本経済の下振れリスクとして、今後もサブプライムローン問題を「注視していく」と強調した。

 ただ、日本の金融機関にもサブプライムローン関連の損失が拡大していることについて、福井総裁は「欧米と比べて(投資の)度合いが低く、金融システム上の不安はない」と断言。株式市場や為替市場の混乱も、「サブプライムローン問題に伴う調整過程の一つ」との見方を示した。

 減速懸念が高まる米経済についても、福井総裁は「われわれ(日銀)のシナリオにあらかた入っている」とし、軟着陸シナリオを維持したが、調整が予想以上に長引けば世界経済を下押しするリスクにも言及した。

 東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「日銀の景気認識に目立った変化は見られないが、しばらく様子見するしかないのが本音だろう」と分析する。

 一方、今後の金融政策について、福井総裁は「スケジュール感をもたず、指標を丹念に点検しながら判断していく」と述べるにとどまった。

北米2輪車販売軒並み減 住宅ローン問題が影響か

2007年11月05日 中国新聞ニュース

 国内2輪車大手4社の2007年度上半期(4−9月)の北米市場での販売台数が軒並み減少し、輸出台数も前年同期比で30%以上の大幅減となり、3年ぶりのマイナスとなった。

 北米市場の販売の中心は日本と違い排気量が大きいスポーツバイクなどで、2輪車はレジャー商品。スズキの鈴木修会長は「(販売は)景気に左右されやすい」と指摘する。2輪車業界では、金融市場の混乱をもたらした住宅ローン問題の影響が、米個人消費に本格的に波及してきたとの懸念を強めている。

 北米でのメーカー別の販売台数は日本からの輸出や現地生産分などを合わせ、ホンダが20万1000台と3万1000台減少したほか、スズキも1万5000台減。川崎重工業、ヤマハ発動機も前年水準を下回った。

サブプライムや原油高で世界経済に減速懸念 G7閉幕

2007/10/20 中国新聞ニュース

 【ワシントン19日共同=長尾寛】先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が十九日(日本時間二十日)開かれ、米サブプライム住宅ローン問題をきっかけとする金融市場の混乱、米住宅部門の弱さ、原油高によって世界経済が減速することに懸念を示した声明を採択、閉幕した。

 今回はサブプライム問題が深刻化してから初のG7で、同問題の世界経済への影響と、市場混乱の再発防止を中心に議論。声明は「経済全体の基礎的諸条件は引き続き強い」と強調し、成長を維持するため、G7各国が役割を果たしていくことを確認した。

 金融政策については「物価安定を維持するため引き続き注意深く運営する」と明記、インフレを警戒する姿勢を示した。

 為替に関しては「相場の過度の変動や無秩序な動きは望ましくない」との表現を踏襲。中国の人民元を名指しし「より速いペースで上昇する必要がある」と強調した。

 金融市場の「ばらつきのある状況」を注視する必要性を指摘。各国の金融当局で構成する金融安定化フォーラムに、混乱防止策について来年二月に東京で、四月にワシントンで、それぞれ開くG7で報告を求めた。

 原油高などを受けて規模が拡大している産油国などの政府系ファンドについては、透明性向上が重要とした。

 日本から額賀福志郎財務相と福井俊彦日銀総裁が出席。財務相はG7に先立ち、ポールソン米財務長官と会談した。

米景気懸念で367ドル急落 NY株、今年3番目の下げ

2007/10/20 中国新聞ニュース

 【ニューヨーク19日共同=美濃口正】十九日のニューヨーク株式市場のダウ工業株三十種平均は、サブプライム住宅ローン問題による米景気の減速懸念が強まったことから急落し、前日比三六六・九四ドル安の一万三五二二・〇二ドルで取引を終えた。今年三番目の下げ幅で五日続落。約一カ月ぶりの安値水準まで下げ、取引制限が一部発動された。

 十九日は、同市場で株価が史上最大の下落率を記録した一九八七年のブラックマンデーから二十年に当たる。

 ハイテク株主体のナスダック総合指数は七四・一五ポイント安の二七二五・一六。

 大手銀行がサブプライム住宅ローン問題の影響により軒並み巨額の損失を計上したことで、金融市場の混乱を招いた同問題の収束には時間がかかるとの見方が強まり、幅広い銘柄に売りが拡大。全面安の展開となった。

 格付け会社が住宅ローン関連の金融商品の格付けを引き下げたことも投資家心理を冷やしたほか、最高値水準で取引されている原油が企業業績を圧迫する、との懸念も売り材料となった。

 市場アナリストは「投資家は住宅ローン問題が米経済の成長を阻害するのではないかと心配し始めている」と指摘した。

野村、1450億円損失 1〜9月期 米国事業縮小へ

2007年10月15日 asahi.com

 野村ホールディングスは15日、米国の低所得者向け(サブプライム)を含む住宅ローンの証券化事業の損失が07年7〜9月期で約730億円になるとの見通しを発表した。同1〜6月期に726億円の損失を計上しており、サブプライム関連損失は累計約1450億円に膨らむ。損失拡大を受け、米国事業全体で、人員を3月末の約1300人から年度内に3割に当たる約400人削減するなど規模の縮小を進める。

 野村はサブプライム関連損失や米国事業の業務縮小にかかる費用などで、7〜9月期の連結決算(米国会計基準)の税引き前損益が400億〜600億円の赤字に転落する見通し。四半期決算が赤字になるのは株式相場が低迷していた03年1〜3月期以来。

 野村はサブプライムも含めた住宅ローン債権を金融機関から購入。証券化商品をつくり機関投資家に販売してきた。しかし、サブプライムローンの焦げ付きなどの影響でローン債権も証券化商品も価格が大きく下落し、多額の含み損を抱えた。今回の証券化商品の販売対象には個人投資家は含まれていないという。

 野村は1〜6月に726億円の損失を処理し、米国の住宅ローン証券化事業の縮小を進めてきた。6月末に2660億円だった関連資産を約140億円まで圧縮し、うちサブプライム関連は約1億円まで縮小。同事業から事実上、撤退した。

 今後、米国事業は機関投資家の取引を仲介する電子証券取引や投資信託などの資産運用部門などに絞り込む。

米シティ、57%大幅減益 サブプライムの影響で

2007年10月15日 中国新聞ニュース

 【ニューヨーク15日共同】米銀行最大手シティグループが15日に発表した2007年7−9月期決算は、純利益が前年同期比57%減の23億7800万ドル(約2800億円)となった。信用力の低い借り手を対象にした米サブプライム住宅ローン問題による損失が響いたため、大幅な減益に陥った。

 米証券大手メリルリンチがサブプライムローン関連資産の評価損約45億ドルの計上を見込むなどしており、世界的に株価が急落し、信用収縮懸念が広がった同期の金融機関の決算が注目されている。

 シティは、サブプライム関連などの金融商品の評価損が15億6000万ドルに上るなどとした。一般企業の売上高に当たる経常収益は6%増の226億6300万ドル。

 シティは今月1日に大幅減益になるとの見通しを発表していた。

4年3カ月ぶり利下げ公算 米、18日にFOMC

2007年09月15日 中国新聞ニュース

 【ワシントン15日共同】米連邦準備制度理事会(FRB)は金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)を18日に開く。市場を揺さぶるサブプライム住宅ローン問題が実体経済に打撃を与えかねないことから、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4年3カ月ぶりに引き下げる公算が大きい。

 一方、日銀は18、19の両日に金融政策決定会合を開くが、政策金利は8月に続いて据え置く見通し。今月上旬には欧州中央銀行(ECB)も当初示唆していた利上げを見送っており、世界経済の失速阻止へ金融当局が協調を深めている。

 最近のニューヨーク株式相場は利下げ期待から底堅く推移しており、関心は金利の下げ幅に移っている。FF金利の誘導目標は現在、年5・25%。0・25%でなく一気に0・5%の利下げを見込む声も少なくない。

150万世帯が返済不能か 米ローン対策不十分と批判

2007/09/10 中国新聞ニュース

 【ワシントン10日共同】金融市場を揺さぶる米住宅ローン問題をめぐり、返済焦げ付きや自宅の差し押さえ件数がこの先急増、事態が一段と深刻化するとの懸念が強まっている。来年末までに低所得層など百五十万世帯が新たに「返済危機」に陥るとみられ、ブッシュ米政権が打ち出した対策では不十分との批判も出そうだ。

 信用力の低い借り手を対象にしたサブプライム住宅ローンは当初の返済金利を低めに設定、一定期間後に金利が跳ね上がる仕組みが特徴。例えば「2/28」という商品は最初の二年が過ぎると金利が10%を超えることもある三十年物ローンだ。

 住宅ブーム末期に業界が競うように販売したため、「リセット」と呼ばれる金利変更時期はここ数年に集中。焦げ付き件数は今年三月時点で既に約五十万件に上っている。連邦預金保険公社は来年末までに計三千五百三十億ドル(約四十兆円)相当のローンがリセットを迎えるとみている。

 ブッシュ大統領は八月末、連邦住宅局によるローン保証制度の拡充を発表したが、○八年の保証対象は二十四万世帯にとどまる見込み。これに対し、次期大統領を目指すオバマ上院議員(民主党)らが低所得層支援へ政府による「住宅救済基金」の設立を主張するなど、対策強化を求める声が相次いでいる。

 ただ、「返済不能予備軍」の中には転売利益を狙って契約した投資家も多数含まれているとみられ、インターネット上でのある調査では「政府による支援に反対」との回答が八割に達している。

住宅ローン問題 米政府、借り換え支援

2007年09月01日 東京新聞朝刊

 【ニューヨーク=池尾伸一】米国の低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付きが金融混乱を招いている問題でブッシュ大統領は三十一日、ローンの借り手の一般消費者の救済策の概要を発表した。同大統領は「住宅ローン業界の融資姿勢に行き過ぎがあった。金融市場は移行期にあり影響が出尽くすまでしばらくかかるだろう」との認識を示した。

 それによると、住宅ローン返済を九十日以上延滞している低所得者、中所得者を対象に連邦住宅局が債務保証を実施、低金利ローンへの借り換えを行いやすいようにする。米国ではローンの焦げ付きにより、購入した家を差し押さえられる人が急増しているが、今回の措置により、家に住み続けられるよう支援するのが狙い。

 政府は一般の消費者救済であり、貸し手など金融機関の救済ではないとしているが、焦げ付きが減る効果が出れば、住宅ローン会社や住宅市場に投資した金融機関の救済効果もある。

 米国では家の差し押さえなどにより、懲罰的な課税措置が適用されるが、連邦政府が議会に対してこの措置を凍結するよう要請する。また、当初は低金利だが、三年目以降に金利が急騰するタイプのローンを借りた人の焦げ付きが、今後二年間で急増するといわれている問題についても、借り換え支援策を検討する方針が発表される見通しという。

公定歩合貸し付け返済期間、最大30日間に延長…FRB

2007年08月18日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ニューヨーク=山本正実】米連邦準備制度理事会(FRB)は17日、傘下の地区連銀が、民間の金融機関に公定歩合(年5・75%)で直接資金を貸し出す際の返済期間を延長すると発表した。

 通常は翌日返済だが、最大30日間まで借りられるようにする。

 FRBは同日、公定歩合を年6・25%から0・5%引き下げる緊急利下げを実施し、資金繰りが切迫している金融機関に資金供給する姿勢を明確にした。

 加えて、返済期間の延長で、金融機関が低利の資金をできるだけ長期間借りられるようにする。

 一方、FRBのドナルド・コーン副議長とニューヨーク連邦準備銀行のティモシー・ガイトナー総裁は17日、米大手銀行などの代表者らと電話会議を開き、利下げした公定歩合での借り入れを促した。

米、公定歩合を緊急利下げ 株安に対応、5.75%へ

2007/08/18 中国新聞ニュース

 【ワシントン17日共同】米連邦準備制度理事会(FRB)は十七日、株価急落をはじめとする金融市場の混乱に対処するため、市中銀行への貸出金利である公定歩合を年6・25%から5・75%へ緊急に0・5%引き下げる、と発表した。FRBは声明で「成長の下振れリスクがかなり増大してきた」との危機感を表明。「必要な対応を取る用意がある」として、追加措置も念頭にサブプライム住宅ローン問題に端を発した市場の混乱収拾に当たる決意を示した。

 同問題を引き金に十七日の東京市場で株価が八七○円超下落するなど株安が世界に連鎖していたが、FRBの発表を受けて欧米市場は急反発。ニューヨーク株式市場のダウ工業株平均は同日、前日比三○○ドル以上上昇して始まった。

 FRBは政策を実行するために短期金利の基準となるフェデラルファンド(FF)金利を使用しており、今月七日の連邦公開市場委員会(FOMC)では誘導目標を年5・25%に据え置いたばかり。依然として米国内のインフレ懸念がぬぐえないことから、融通のきく公定歩合の利下げで危機に対応したとみられる。次回FOMCは九月十八日に予定されている。

 公定歩合を改定するのは二○○六年六月に0・25%引き上げ6・25%として以来。

 声明はまた「信用逼迫(ひっぱく)と不透明さの増幅が今後の経済成長を抑制する可能性がある」と指摘。同時に「最近の統計は経済が緩やかな拡大を続けていることを示している」として、米景気は依然底堅い点を強調した。

米住宅ローン引き金 資金枯渇揺らぐ市場

2007年08月17日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 ニューヨーク株式市場のダウ平均株価(工業株30種)は15日まで5営業日連続で下落し、16日も値下がりして始まった。株価下落に歯止めがかからない原因となっているのが、「サブプライムローン」絡みの投資の失敗で、資金の引き出し停止や解散に追い込まれる投資ファンドが世界で相次いでいることだ。潤沢な資金を株式市場などにつぎ込んできたファンドの異変は、急速に市場心理を冷やし始めている。(ニューヨーク 山本正実)

 「信用市場は混とんとし、資金調達が難しくなっている」

 米大手投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の創設者、ジョージ・ロバーツ氏は15日、投資家向けの説明会で、現状をこう打ち明けた。

 KKR傘下の不動産取引会社は同日、住宅ローン担保証券の値下がりで、最大2億4000万ドル(約276億円)の損失が発生する可能性があると発表。ダウ平均が約4か月ぶりに1万3000ドル割れした一因となった。KKRなどが手がけた米電力大手TXUの買収では、総額約450億ドル(約5兆1750億円)に達する過去最大級の買収資金の調達ができなくなるとの観測が絶えない。TXUは13日、投資家に対し「買収が実現しなければ、会社を分割しなければならなくなる」と訴えた。

 相次ぐ巨額のM&A(企業の合併・買収)は、米株価を押し上げてきた大きな要因だ。その資金が枯渇し始めていることが、市場心理に与えた影響は大きい。

 欧州でも投資銀行傘下のファンドが清算などに追い込まれ、株式市場の急落を招く一因となった。日米欧の金融当局は金融機関が資金調達の場とする短期金融市場に資金供給して金融システムの動揺を抑え込んでいるが、株式市場の先行きに対する不安は根強い。

 米国の一般企業が資金調達の場とするコマーシャル・ペーパー(CP)市場では、CPの発行が難しくなるケースが生じるなど、動揺は株式市場を超えて広がっている。投資家は一斉に、投資を手控え、資金を手元に残しておく傾向を強めている。米金融市場の先行きに注目が集まっている。

再送:根深い米サブプライム問題、ドル地盤沈下が深刻

2007年07月23日 REUTERS

[東京 23日 ロイター] ユーロが円やドルに対して最高値圏にある。米サブプライムローン(信用力の低い個人向けの住宅ローン)問題でドルの信認が揺らぎ、その逃避先としてユーロが選ばれているからだ。

 米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は19日、サブプライム向けの高金利型住宅ローンの焦げ付きが金融機関に最大1000億ドルの損失をもたらすとの試算を明らかにしたが、サブプライム問題は米国の借金体質という、より根深い構造問題に端を発しており、その影響は米金融機関のみに限定されるものではない。  

 <米政府機関債の安全性> 

 米国の住宅ローンの供給は証券化を前提として実施されている。その仲介役として、米連邦住宅抵当公社(Fannie Mae)と米連邦住宅貸付抵当公社(Freddie Mac)などの政府支援企業(GSE)は、金融機関から住宅ローンを買い取り、パッケージ化して証券化する業務を手がけている。両公社が保証するMBS(住宅ローン担保証券)の残高は3兆ドル、自らが発行した債券残高は1.5兆ドルと巨額にのぼる。

 Fannie MaeとFreddie Macは、これまでマネージメント、システム、内部統制、経理面など広範な分野で問題を指摘されており、タイムリーなファイナンシャル・レポートの開示も怠ってきたが、業務は急ピッチで拡大してきた。

 その理由は、両公社が発行する債券に「暗黙の了解として米政府の保証が付いていると債券市場参加者が信じてきたためだ」と米連邦住宅公社監督局(OFHEO)のジェームズ・ロックハート局長は指摘する。だが実際は法律にも債券の券面にも、政府保証付ではないことが明記されている。

 両公社が発行する債券は米政府機関債(米エージェンシー債)として、日本を含む多くの海外機関投資かが購入している。1−5月の購入額は欧州勢が327億ドル、中国が384億ドル、日本が40億ドルだった。海外中銀の米エージェンシー債保有残高は、7月18日時点で7450億ドルにのぼる。

 ロックハート局長は、両公社を「巨漢」と称し「もし一方もしくは両方に、健全性の観点から著しい問題が生じた場合は、株主だけでなく、両公社の債券やMBS保有者に深刻な打撃が生じる」と警告する。  

 米議会では両公社が金融機関からのローンの買取りを拡大する過程で、買い取るサブプライムローンの種類を増やし、結果として金融機関のサブプライムローン供給に拍車をかけ、問題を一層深刻化させたとの批判があるうえ、両公社の財務の健全性も問題視されている。  

 <借金体質と住宅ローンの不良債権化>  

 米国民の借金体質や過剰消費は、政策面から後押しがあったことも見逃せない。

 「1995年からクリントン大統領は持ち家比率を大きく引き上げる政策を立案・実施し、それがサブプライムローンの増加をも伴って、持ち家比率を歴史的高水準へと引き上げた」と三國事務所・代表取締役の三國陽夫氏は語る。

 「米国では住宅投資の拡大が刺激となり、消費が伸び、輸入が増加する構造がある。しかし、2006年から住宅供給が過剰となり、歯車の逆転が始まり、大方の予想を裏切って本格的な住宅不況となった。住宅投資が底入れし、再び力強く増加に転ずるには数年かかるだろう」と三國氏は分析する。 

 米抵当銀行協会(MBA)によると、サブプライムローンに占める差し押さえ債権の割合は1−3月に2.43%と5年ぶりの高水準となり、同ローンの延滞比率は13.77%と4年半ぶりの高水準と発表した。なかでも、変動金利型ローンに占める差し押さえ率は3.23%、延滞は15.75%となり過去最高だ。

 米国では今年から来年にかけて約2万件の住宅ローンが金利据え置き期間終了を終えて変動金利に移行し、借り入れた人は、現状より高い金利を支払わなければならなくなる。

 バーナンキ議長は「最も信頼できる指標によると、住宅価格は全国的には下落しておらず、上昇ペースが減速しただけ」としたが、議長が信頼できるとするOFHEOのデータでは、第1・四半期の住宅平均価格指数は前年同期比で4.25%の上昇、上昇率は1997年第3・四半期以来9年半ぶりの低水準だった。

 同指数は2004年後半から2006年前半まで前年同期比10%を上回る上昇率を維持し、米経済の牽引役である旺盛な消費を支えてきた。しかし、逆回転は既に始まっている。

 消費者ローンの延滞率も6年ぶりの高水準だ。米銀行協会によると、2007年第1・四半期の延滞率は2.42%と2001年第2・四半期以来の高水準だ。住宅の値上がり分を担保に融資するホーム・エクィティ・ローンやオート・ローンなどで延滞が増えたことが背景だ。   

 <金融市場へのインパクト> 

 米投資銀行のエコノミストによれば「(米不動産)市況は年初から壊滅的な状況」という。サブプライムモーゲージを含むローン資産のプールを担保としたクレジット商品であるCDOの市場は「値崩れしすぎて、プライシングができない状況が続いている」(米債トレーダー)との指摘もある。また、サブプライム問題は、様々な市場でリスク回避の流れを作り出している。

 円資金市場では、サブプライム問題をきっかけに、欧米金融機関やヘッジファンドが円ファンディングを使った裁定取引のポジションを減らしたため、オーバーナイトの金利が安定的に推移している。

 ただし、円キャリートレードに本格的な巻き戻しは起きていない。巻き戻したくても、CDO市場の崩壊に関連して「売るに売れない」ポジションがあるとの推測もある。 キャリートレードのファイナンスニーズは、短期金融市場でも長めの円資金需要として現れ日銀による利上げ見通しや米長期金利の上昇ともあいまって、長めの金利の上昇につながっている。1年物LIBORは6月25日の0.87%から1.01%へ、6カ月物は同0.76%から0.87%へと上昇している。

 ユーロは対ドルで1999年のユーロ導入以来の最高値圏にあり、対円でも最高値近辺で推移している。

 「最近のドル/円の動きに目を奪われると全体を見誤るが、ドルは決定的に弱い。ドルを嫌う投資家のニーズを反映してユーロは今後より一層強くなるだろう」と米投資銀行の為替トレーダーは語る。 (ロイター日本語ニュース 森佳子)

サブプライムローン 米焦げ付き続発 ファンドに信用不安/「日本への影響限定的」

2007/07/12 FujiSankei Business i.

 米格付け会社が高金利型(サブプライム)住宅ローンを担保とした債券の格付けを引き下げると発表したことで10日のニューヨーク株式市場は大幅に下落しました。サブプライムローンの焦げ付き問題が再燃したことにより、関連の投資ファンドが経営危機に陥り解散を余儀なくされたり、金融当局が監視を強めているとの情報もあります。問題の根源はどこにあり、なぜ今再燃しているのでしょうか。

 サブプライムローンは、所得や信用力の低い人向けの消費者金融の一種で、自動車や住宅などを担保に年率20〜30%の高金利で貸し出すものです。米国では総世帯の約4割が年収2万5000ドル以下で、サブプライムの対象になるといわれ、市場が非常に大きいのは確かです。

 問題となっているのは住宅担保融資ですが、米国の失業率は歴史的な低水準にあり、景気も悪くないなかで、借り手が返済不能に陥るケースがそれほど多く発生するのは腑に落ちません。

 実は、サブプライムローンは、低所得者の住宅購入だけに使われているわけではありません。将来の値上がりを期待して、高級リゾートホテルや別荘を買いあさる個人投資家の利用も多いという実態があります。米国は住宅バブルが続き、こうしたリスクの高い投資に多くの個人が参入していたわけです。住宅価格の上昇率が鈍っただけで、これら“にわか投資家”が返済不能に陥っているのです。

 サブプライム問題は、実際どの程度の規模なのでしょうか。米国の住宅ローン残高は約10兆ドルで、このうちサブプライム向けは約10%とみられ、焦げ付きにつながる延滞率はその中の15%程度といわれています。金額的なリスク規模は意外に小さい可能性があります。また、住宅価格が下落したわけではなく、上昇率が鈍化した程度です。このため、3月には問題が沈静化していました。

 ここにきて再燃したのは、サブプライムローン債権を証券化した金融商品の購入先に対する不安からです。これら金融商品の格付けが大幅に引き下げられたこともあり、多くを購入しているヘッジファンドなどに信用不安が広がったわけです。ファンドには世界中の金融機関、投資家が資金を拠出しており、影響が国際的な広がりを見せる可能性もあります。

 日本にも波及するのでしょうか。大和総研の近藤智也エコノミストによると「サブプライムローン債権を1割程度組み込んだ金融商品を購入している機関投資家は一定数存在する」といいます。ただし、サブプライムローン債権だけで運用しているわけではなく、「日本への影響は限定的」とみています。(高山豊司)

【円・ドル・人民元 通貨で読む世界】世銀総裁退陣の真実

2007/06/24 The Sankei Shimbun WEB-site

 ワシントンに本部のある世界銀行のP・ウォルフォウィッツ総裁は6月29日に辞任し、代わりにR・ゼーリック前国務副長官が就任する。ウォルフォウィッツ氏が愛人の女性を法外な条件で厚遇したことが露見したことがきっかけだが、場所は何しろ世界政治の中心地ワシントンである。安っぽい醜聞などで米国が仕切る国際機関の首脳人事が左右されるはずはないと思い、現地に乗り込み、背景をさぐってみた。結論を言うと、真の意味はウォルフォウィッツ氏に代表される対中強硬路線の共和党新保守派(ネオコン)が退場し、親中派(ゼーリック)路線の復権である。

 ウォルフォウィッツ氏は民主主義イデオロギーの普及のためには武力行使をもいとわないネオコンの最高実力者である。2001年のブッシュ政権の発足時に国防副長官に就任し、同年9月11日の米中枢同時テロ後、彼がブッシュ政権の中心になって米軍のアフガニスタン・アルカーイダ攻撃の次のステップとしてイラク進攻とサダム・フセイン打倒を発案した。民主主義さえ植え付ければ、テロリストの温床になっているイスラム国家も安定し、テロを根絶できるという信念で、議会も説き伏せた。ところが、2003年3月の対イラク開戦後、イラク情勢は泥沼化し、おまけに翌年7月には、アメリカ上院情報特別委員会がブッシュ政権のイラク戦の根拠とした大量破壊兵器などの脅威が誇張されていたとの報告書を正式発表した。切れ者のウォルフォウィッツ氏は潮時と考えたのだろう。ブッシュ政権2期目の2005年3月末に世銀総裁に転身した。

 武力に代わって今度は、世銀という国際援助機関を動員して民主主義をアフリカ、中東などに広めよう。そのためにはまず世銀の改革が必要として、数人の側近を伴って世銀総裁室に乗り込んだ。

 真っ先に新総裁が手を付けたのは、世銀の事実上ナンバー2として絶大な影響力を持っていた章晟曼世銀専務理事の「追放」だった。「ウォルフォウィッツ総裁の筆頭補佐であるロビン・クリーブランド女史は章氏がいつものように総裁室に入ろうとしたら、立ちはだかり、約束がなければ駄目と阻止するようになり、約束を取り付けてもたった15分の時間制限を付けた」(世銀筋)。章氏はもともと中国財務省から世銀理事として派遣されたあと、クリントン前大統領に選ばれた親中派のウォルフェンソン前総裁に抜擢(ばってき)されていた中国人である。中国はスーダンなどアフリカの人権抑圧国やイランなど反米国に肩入れし、石油利権確保に奔走している。その北京代表を排除するのは世銀改革の第1弾だった。章氏は間もなく辞任し、中国市場でのシェア拡張を狙うシティ・グループのルービン会長の誘いでシティ入りした。 

 次期総裁のゼーリック氏はブッシュ政権2期目の国務副長官を務めたが、ネオコンから「パンダ抱き」と呼ばれる親中派で、その中国寄り路線がネオコン陣営に近いチェイニー副大統領の逆鱗(げきりん)に触れて副長官の座を降り、ウォール街入りしたのが今からほぼ1年前のことだった。この事件はネオコンの巻き返しを象徴していたが、今や昔。「中国重視」は結局、ワシントンが否定しようにも否定し切れない現実のようだ。(編集委員 田村秀男)

年5・25%に据え置きへ 米政策金利、7回連続

2007年05月09日 中国新聞ニュース

 【ワシントン9日共同】米連邦準備制度理事会(FRB)は9日、金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)を開いた。景気減速と物価上昇が予想以上に進むリスクが消えていないため、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年5・25%に据え置く公算が大きい。結果判明は日本時間10日未明の見通し。

 FRBは約2年間、利上げを続けた後、昨年8月から金利を据え置いており、今回も変更しないと7回連続になる。

 米経済は住宅市場の冷え込みをきっかけに成長が鈍化、1−3月期の実質成長率は年率換算で1・3%まで落ち込んだ。高水準で推移していた雇用情勢もやや動きが鈍っており、金融市場では「次の一手」を利下げと見込む声が依然優勢だ。

サブプライムローン 焦げ付き急増

2007年03月19日 読売新聞YOMIURI ON-LINE

米「土地神話」 崩壊の予兆か

景気に波及警戒

 米景気を牽引(けんいん)してきた住宅ブームの変調が、米景気全体に悪影響を及ぼしかねないとの懸念が強まっている。地価下落や金利上昇を受け、低所得者層を対象にした住宅融資「サブプライムローン」の焦げ付きが急増しているためだ。ローン会社の破たんをきっかけに米株価が急落するなど、金融市場は早くも神経質になっている。(ワシントン 矢田俊彦、ニューヨーク 山本正実)

急膨張

 「魔法のつえで住宅価格を10%上昇させられれば、この問題は解決する」

 米連邦準備制度理事会(FRB)のアラン・グリーンスパン前議長は15日、フロリダ州での講演で、サブプライムローン問題の本質は、住宅価格の下落にあると指摘した。

 このサブプライムは住宅投資ブームに乗ってここ数年で急膨張した。住宅ローン全体に占めるシェア(占有率)は、2000年は2・8%に過ぎなかったが、現在は13・6%に達し、融資残高は約1兆3000億ドルに上っている。

 急成長の背景には、住宅価格は値上がりし続けるという根強い「土地神話」がある。

 米住宅企業監督局によると、全米平均の住宅価格は00年〜03年まで前年比6〜7%の上昇率だったが、04年第3四半期から06年第2四半期まで、前年同期比10%を超える上昇を続けた。

 サブプライムの利用者には、値上がりを期待した転売目的で購入した人や、値上がりした自宅を担保に新たなローンを借りて、消費などに使った人も少なくない。

見込み外れ

 サブプライムは、当初の金利は年5〜6%と低いが、数年後に10%を超える高金利となる商品が多い。

 購入後に住宅が値上がりすれば、担保価値が高まって、サブプライムより金利の低い「プライムローン」に借り換えできる。

 ところが、米金融当局が金融の引き締めに転じて金利が上昇したこともあり、住宅価格の上昇にブレーキがかかった。06年10〜12月期は5・9%の上昇にとどまり、都市によってはマイナスに転じた。

 このため、高金利に切り替わる前にプライムに移ろうと考えていた利用者が借り換え出来ず、返済に行き詰まるケースが続出した。05年半ばまで10%台だったサブプライムの延滞率は、06年10〜12月期には13・3%に上昇した。

破たんの前兆

 ローンの焦げ付きが増えて、06年12月以降、サブプライムを手がけていた中小ローン会社約20社が経営破たんした。今月13日には取引銀行から融資打ち切りを通告された大手のニューセンチュリー・フィナンシャルがニューヨーク証券取引所で上場廃止になった。

 「さらに破たんする会社が出てくる」(JPモルガン・チェースのマイケル・フェロリ氏)との見方から、同日の株価は大幅に下落、世界同時株安の一因となった。

 市場が敏感に反応したのは、住宅低迷の影響はサブプライム問題にとどまらず、景気全体に波及しかねないと警戒しているためだ。

 日本では、土地バブル崩壊のあおりで1996年に起きた住宅金融専門会社(住専)の破たんは、デフレ不況の元凶となる銀行の不良債権問題や、大手銀行破たんの「前兆」となった。

 米市場では、サブプライム問題の影響は限られるとする楽観論の一方で、「住宅市場が一層冷え込み、回復が難しくなる」(米大手証券メリルリンチのデビッド・ローゼンバーグ氏)など弱気の見方も出ている。グリーンスパン氏も「小さな問題ではない」と警鐘を鳴らしている。

利用者保護や規制強化も

米議会で議論活発

 米議会では、サブプライムローンの利用者保護や規制強化の動きが活発になっている。

 クリストファー・ドッド上院銀行住宅都市委員長(民主党)は「(ローン利用者の)200万人が家を失うかもしれない状況を黙ってみているわけにはいかない」と述べ、公聴会を開き、利用者の支援を具体的に検討していく考えを表明した。また、バーニー・フランク下院金融サービス委員長(民主党)らも規制強化の法案を計画している。

 ただ、市場には「過度な規制はかえって市場を混乱させる」との意見も少なくない。

サブプライムローン

 「サブプライム」とは、最良(プライム=prime)の下(サブ=sub)という意味。銀行などの条件のいい住宅ローンを断られてしまうような信用度の低い個人が主な対象だ。融資の審査基準が甘い代わりに、返済金利は高い。

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