TOPIC No.2-3 裁量労働制

01.裁量労働制下における休日・深夜労働の取り扱い(2004.10月HRIレポート)-みなし労働時間に該当しない休日労働や深夜労働について-
02.大学教員の裁量労働制に関する資料(文書整理)by札幌学院大学経済学部 片山一義
03.平成15年度改正労働基準法の詳細/ 裁量労働制に関する改正 -平成16年1月1日から施行-
04.裁量労働制/企画業務型裁量労働制 by 労働時間情報コーナー/労務安全情報センター
05.企画業務型裁量労働制 by厚生労働省労働基準局賃金時間課
06.営業部門の企画担当者や製造部門の技術者などに、裁量労働みなし労働時間制を適用することはできますか? by 社会経済生産性本部
07.第82回「過労自殺判決と新たな裁量労働制」 (2000/03/30) by団藤保晴の「インターネットで読み解く!」
08.NECの裁量労働制の拡大は職場に何をもたらすか? 2002年09月14日改定 NEC労働者懇談会 pdfファイル
09.裁量労働制と裁量企画手当制(三菱電機)との違いについて(98/05/01) by三菱電機伊丹党委員会の政策・見解の目次/日本共産党三菱電機伊丹委員会
10.裁量労働制 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
11.ホワイトカラーエグゼンプション byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
12.裁量労働制とプロフェッショナル by情報大工のひとりごと

裁量労働制

by一件落着
 裁量労働制が、研究開発型のSOHO企業に最も適した勤務体制かもしれません。裁量労働制では、残業時間の計算も有給休暇の確認も原則として必要ないのです。その代わり、与えられた業務をどこでどの時間に遂行するかは、従業員の自由という考え方です。

 コンピュータ技術者や新製品の開発者等、管理者の指揮監督になじまない職種の労働者を裁量労働者として雇用するわけです。この制度を導入している場合は、法定労働時間を越える場合でも固定的な賃金となるのが通例です。この裁量労働制を導入するには、労使協定を作成し、労働基準監督署に届け出る必要があります。(平成13年1月19日改定)


労働時間規制外し法案見送り 首相が表明

2007/01/10 中国新聞ニュース

 安倍晋三首相は十六日、労働時間規制を一部撤廃するホワイトカラー・エグゼンプション導入について「国民の理解が得られているとは思えない」と述べ、現時点では関連法案の通常国会提出は困難との見解を表明した。

対象は年収900万円以上 労働時間規制除外で厚労相

2007/01/10 中国新聞ニュース

 柳沢厚労相は10日、自民党の中川昭一、公明党の斉藤両政調会長ら与党幹部と個別に会談し、労働時間規制を一部除外するホワイトカラー・エグゼンプションに関し、対象者を年収900万円以上とする案を示した。

 同制度をめぐっては「残業代が支払われず、長時間労働を助長する」との批判が強いため、9日の与党幹部の会談でも通常国会への関連法案提出は困難との認識で一致した。これに対し柳沢氏は「管理職の年収の平均が約900万円だ」と説明。対象者が一定の高年収者に限られることを具体的に示して理解を求めた。

 これに関連して、塩崎官房長官は10日午後の記者会見で、関連法案について「与党や国民の理解を深めて(国会に)提出する必要がある」と指摘。同制度を「仕事と生活の調和を実現する一つの方策だ」と述べた。

通常国会提出は困難 残業代なし関連法案

2007/01/08 中国新聞ニュース

 自民党の中川秀直幹事長は七日のNHK番組で、労働時間規制を一部撤廃するホワイトカラー・エグゼンプション(適用除外)について、現時点での導入に慎重姿勢を示した。与党の公明党も同制度の導入には基本的に反対で、政府が目指していた夏の参院選前の関連法案提出は困難な情勢となった。

 同制度をめぐっては昨年末、厚生労働相の諮問機関「労働政策審議会分科会」が、労働者側委員の反対を押し切る形で導入を求める報告書を取りまとめた。これに対し、選挙戦でサラリーマン層からの支持に期待を掛ける与党内から、法案提出に慎重論が出ていた。

 安倍晋三首相も五日、「いろいろな観点から、与党と議論を深める必要がある」と情勢を見極める考えを表明していた。

 中川氏は七日、「名目成長率が実質成長率を安定的に上回る局面でやっていくのが一番ふさわしい」と述べ、デフレ脱却前の段階での制度導入は回避すべきだと強調。制度自体は「サラリーマンが家庭にいる時間が長くなり、本来はサラリーマンや家族から歓迎される」として、企業の生産性向上にもつながり、安倍政権が進める経済成長重視の「上げ潮政策」にかなうとの認識を示した。

 中川氏は長時間労働の助長などに懸念を示す労働界の反発を念頭に、「経営者側も政府も説明責任が十分ではない」と強調。「最低賃金や、時間外労働の賃金割増率引き上げなども併せて導入すべき制度かもしれない」として、労働法制の一体的な見直しを同時に進める中で導入を目指す考えを示した。

 厚労省などが想定するホワイトカラー・エグゼンプションは、年収八百万―九百万円以上を対象に、一日八時間、週四十時間の労働時間規制を適用しない制度。働く時間の自己裁量が広がる代わりに、残業代などが支払われない。

ホワイトカラーエグゼンプション 中川幹事長が慎重姿勢

2007/01/07 The SAnkei Shimbun Web site

 自民党の中川秀直幹事長は7日のNHK番組で、労働時間規制を一部撤廃する「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」について「デフレから脱却した局面で導入するのがふさわしいという感じがする」と述べ、現段階での導入に慎重姿勢を示した。公明党も同制度の導入に反対姿勢を示しており、通常国会への関連法案提出は困難な情勢となった。

 同制度は一定以上の年収がある事務系職員を対象に1日8時間、週40時間の労働時間規制を適用除外とするもの。厚労相の諮問機関「労働政策審議会分科会」が昨年末に導入を求める報告書をまとめ、厚労省はこれに基づき通常国会に法案を提出したい考えだ。

 中川氏は「サラリーマンが家庭にいる時間が長くなる。仕事の成果があがれば短時間労働でもいいという考え方は方向性として理解できる」と述べながらも、「長時間労働による過労死を招いたり、賃金抑制の手段に使われたりするのではないかという懸念がある。経営者側や政府による説明責任は十分ではない」と語った。

 同制度をめぐっては、公明党の太田昭宏代表が昨年末、「ただちに法制化を急ぐという拙速な対応であってはならない」と発言。自民党内にも、サラリーマン層の反発が強い同制度の導入を強行すれば、参院選に悪影響を与えかねないとの懸念が広がっていた。

労働時間規制は慎重検討 首相、政府・与党で調整

2007年01月05日 中国新聞ニュース

 安倍晋三首相は5日夜、労働時間規制を一部撤廃するホワイトカラー・エグゼンプション(適用除外)の導入について「いろいろな観点から、与党と議論を深める必要がある」と述べ、慎重に検討を進める姿勢を示した。

 柳沢伯夫厚生労働相が制度導入に向け通常国会への法案提出に意欲を示す一方で、自民党の丹羽雄哉総務会長や公明党の太田昭宏代表らから参院選を意識して慎重論が浮上していることを踏まえ、政府・与党間の調整を十分に行う必要があると判断したとみられる。

 首相は、日本人の労働実態について「家族と過ごす時間は少子化対策にとっても必要だ。ワークライフバランス(仕事と生活の調和)も見直していくべきだ。日本人は少し働きすぎではないかと思っている人も多い」と指摘。

 柳沢厚労相は5日の記者会見で「日本のホワイトカラーの生産性を高めるために必要」との認識を示している。

労働時間規制除外の法案、通常国会提出を強調・厚労相

2007/01/05 NIKKEI NET

 柳沢伯夫厚生労働相は5日の閣議後の記者会見で、一定条件を満たす会社員を労働時間規制から外す「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」制度について「通常国会に(労働基準法の改正)法案を提出する予定を変えるつもりはない」と述べた。 与党から「賃金を抑制し、長時間労働を正当化する」との慎重論が相次いでいることを踏まえ、改正案成立へ与党側の理解を求める考えも合わせて示した。(

ホワイトカラー・エグゼンプション

2006/12/29 FujiSankei Business i.

 労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)は27日、「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入などを中心とする報告書をまとめました。

 ホワイトカラー・エグゼンプション(White−collar Exemption)は、直訳すれば「ホワイトカラーの適用除外」で、ホワイトカラー労働者に対する労働時間規制を除外することです。

 具体的には、1日8時間、週40時間の労働時間規制を外し、残業代の支払い義務をなくすことです。働き方の多様化や成果主義の浸透を背景に、経済界が導入を要望していました。対象者は「(労働時間や休日の規制がない)管理監督者の一歩手前に位置する者」を想定し、(1)労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事(2)業務上の重要な権限や責任を相当程度伴う地位(3)年収が相当程度高い−などの条件を兼ね備える労働者です。

 サービス残業の合法化、過労死に対して企業の責任が問われなくなる、などの批判もあります。2004年8月に改正規則が施行された米国の制度を参考にして検討されてきました。

基準年収額は見送り ホワイトカラー残業代廃止制度 労働政策審が報告書

2006/12/28 FujiSankei Business i.

 労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)は27日、会合を開き、労働時間法制の見直しについての報告書をまとめた。一定の要件を満たすホワイトカラーを残業代の支払い対象から外す「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」制度の導入や一般労働者の長時間残業に対する割増賃金引き上げなどが柱。

 同制度は、1日8時間・週40時間の労働時間規制を外し、残業代の支払い義務をなくすもので、その対象者として(1)労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事(2)業務上の重要な権限や責任を相当程度伴う地位(3)年収が相当程度高い−などの4基準を設定した。

 このうち、年収については具体的な数字を示すことを断念。分科会で改めて論議し、厚労省が政省令で定める予定。制度の導入自体に反対する労働側や年収の低い中小企業に配慮する。また、週2日分以上の休日確保などを企業に義務づけ、違反した場合には罰則を科すとした。

 一方、対象とはならない労働者の長時間労働を抑えるため、残業代の割り増し引き上げも提言した。ただ、引き上げ率については明示せず、今後の議論に委ねる。

                   ◇

 【労働時間法制見直しのポイント】

 ◆労働時間法制(労働基準法改正)

 一、日本版ホワイトカラー・エグゼンプション制度を新設。対象者には「年収が相当程度高い」などの4要件を設定。週休2日(年間104日)以上の休日確保が義務。年次有給休暇も付与する

 一、一般労働者に対し、一定時間を超える残業代の割増率を引き上げる。引き上げ分は有給休日の付与による代替も可能

 一、5日分を上限に、時間単位での年休取得が可能

 一、中小企業について企画業務型裁量労働制の対象を拡大。専従でなくても、主として従事していれば適用

 ◆労働契約法

 一、原則として就業規則の労働条件が労働契約の内容となる

 一、不必要に短期の有期労働契約を反復更新しないよう配慮

 一、解雇の金銭解決、整理解雇を認める要件は今後の検討課題として見送り

一部事務系の残業代廃止を 規制改革会議最終答申

2006/12/28 FujiSankei Business i.

 政府の規制改革・民間開放推進会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)は25日の会合で、労働や教育など11分野の規制改革を盛り込んだ最終答申を決定し、安倍晋三首相に提出した。ホワイトカラーの一部を残業代の支払い対象から外す新労働時間制度「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入や、外国人研修生らの地位安定化などを求めている。

 首相は、草刈議長に対し、「しっかり受け止めてやりましょう」と表明。政府は26日の閣議で、答申を最大限尊重する方針を決定する。

 答申は、ビジネス環境の変化により「自律的な働き方を可能にする仕組みが強く求められている」と指摘。ホワイトカラーのうち、高年収で仕事に対する裁量や権限が大きい人の労働時間規制を外す制度を新設するため、労働関連法案の次期通常国会への提出を求めている。

 この新たな労働時間制導入をめぐっては、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の労働条件分科会で検討され、労使が激しく対立しているが、規制改革会議の答申は使用者側の主張を後押しした形だ。

 また、外国人研修・技能実習制度を利用する外国人が、企業から低賃金労働者として扱われている例があると指摘。研修生(在留期間1年以内)の手当が適切に支払われるよう法的保護を求めるとともに、技能実習生(同3年以内=研修期間含む)に新たな在留資格を設ける入管難民法改正案を2009年の通常国会までに提出するよう提言した。

 保育分野では、育児休業や短時間勤務の活用をサポートする仕組みの検討を要請。一方、教育分野では、答申原案で触れていた教育委員会制度の抜本的改革が削除され、地方自治体の教委設置義務の撤廃も見送りとなった。

 政府は、規制改革会議の3年間の設置期限が来年3月に切れるため、後継の機関を置き、引き続き草刈氏をトップに起用して規制改革を進める方針。

                    ◇

 ≪最終答申の要旨≫

 政府の規制改革・民間開放推進会議が25日まとめた最終答申の要旨は次の通り。

 【保育】保育料の保護者への直接補助方式を検討。保険料を財源とする育児保険の創設を検討(長期的に検討)▽民間企業や育児休業取得者らをサポートする仕組みを検討(2007年度結論)

 【労働】ホワイトカラー業務に関する労働時間規制の適用除外制度の新設に向けて検討(次期通常国会に法案提出)▽派遣労働者への事前面接の解禁と雇用契約申し込み義務の見直しを検討(07年度中に検討)

 【NHK】衛星放送3波を11年までに再編成

 【外国人】不法就労者の雇用主への厳格な対処に向け入管難民法を改正(遅くとも09年通常国会までに法案提出)▽研修生の手当が適切に支払われるよう法的保護に必要な措置を図る。入管難民法に技能実習生の在留資格を早急に整備(遅くとも09年通常国会までに法案提出)

 【医療】後発医薬品(ジェネリック)の使用促進策を検討(07年度中に結論)

 【教育】いじめ理由の就学校変更の容認を市町村教育委員会に周知徹底▽生徒・保護者による教員・学校評価を促す(以上06年度に措置)▽教員免許状を有しない者の採用選考を積極的に活用するよう周知(逐次措置)▽教育バウチャー(利用券)制度は積極的に研究・検討(07年度以降速やかに結論)▽教育委員会制度見直しについて、教育再生会議などの意見を踏まえ、地方教育行政法を改正(06年度措置)

事務職に裁量労働制導入/トヨタ、4月から

2006/12/26 SHIKOKU NEWS

 トヨタ自動車は26日、事務系企画職社員を対象に、実際に働いた時間と関係なく、仕事の成果に応じて賃金を支払う裁量労働制を来年4月から導入することを明らかにした。技術系に続く導入。松下電器産業、日立製作所なども導入しているが、国内有数の大企業であるトヨタの導入で、仕事を成果で評価する動きが加速しそうだ。

 同社が導入する裁量労働制は非管理職向けで、事業運営にかかわる仕事をする従業員が対象。当初は東京本社で自動車業界の情報を収集する渉外業務を担当する10人程度の社員を対象にする。メンタルヘルスや長時間労働が恒常化していないかなど問題がないことを確認し、対象職場を広げる。

 労使で決めた労働時間の枠内で働くのを前提とする裁量労働よりも規制が緩和されるため、労働者側は「過労死などがさらに増えかねない」と反発している。

残業代なくなる!? ホワイトカラー・エグゼンプション

2006/12/25 IZA

 ■広がる成果主義対応 人件費削減の“悪用”に組合反発

 労働時間の規制を受けない働き方を認める「ホワイトカラー・エグゼンプション」。厚生労働省は、来年の通常国会に労働基準法などの改正案を提出し早期導入を目指している。ただ、労働組合が導入に強く反対しているほか、多様な労働形態の実現を目指し導入を求めていた経済界でも、意見が分かれている。新制度の課題を探った。

 ホワイトカラー・エグゼンプションは、労働時間という概念をなくし、純粋に成果に応じて、賃金を支払う仕組み。対象となる社員は、労基法で定められた「1日8時間・週40時間」の法定労働時間を超えても、残業代はいっさい支払われなくなくなる。

 成果主義の賃金体系が広がるなか、日本経団連を中心とした経済界が、「いわゆるホワイトカラー(事務職)の仕事の成果は、労働時間では計れない」として導入を要望。厚労相の諮問機関である労働政策審議会の労働条件部会が、是非を検討してきた。

 最大の焦点は、制度が適用される労働者の条件。厚労省が部会に提示した報告書案では、 (1)労働時間では成果を適切に評価できない業務 (2)権限と責任を相当程度伴う地位 (3)仕事の進め方や時間配分に関して上司から指示されない (4)年収が相当程度高い −の4条件を満たす労働者に限定するとしている。

 また、長時間労働の助長を防ぐため、「週2日以上の休日確保」や「健康・福祉確保措置の実施」などの条件も明記している。

 制度導入をめぐっては、連合などの労組が、「残業代を払わなくてもいい制度。人件費を圧縮したい経営側の意図は明白」とし、導入そのものに反対している。

 一方、経済界では、経団連が、対象を「年収400万円以上」とし、幅広い労働者への適用を求める提言をまとめている。今回の厚労省の報告書案についても、「労使間で個別に条件を決めることを原則とすべき」とし、適用条件の厳格化を警戒している。

 ただ、経済界でも、経済同友会は、年収で線引きするのではなく、「仕事の質や種類で判断すべき」と指摘。その上で、「仕事の中身や量、スケジュールまで自分で裁量できる労働者は少ない」として、制度導入は時期尚早と主張している。

 労使の対立に加え、経済界や部会でも意見に相違があり、今後の調整が難航するのは必至だ。

 ただ、ホワイトカラーの労働効率や生産性の向上が重要な課題であることは確か。また、成果主義が広がるなか、「ダラダラと長時間働いている社員に比べ、短時間で仕事を終わらせる優秀な社員の方が不利になる」など、時間を基準とした現在の労働法制が時代遅れになってきているという側面もある。

 労組が懸念する単なる人件費削減の手段として、“悪用”されることを防ぎながら、どうやって多様な労働形態の道を開いていくのか。慎重な論議が求められているといえそうだ。

                   ◇

【用語解説】ホワイトカラー・エグゼンプション

 労働基準法に基づく労働の時間規制を外し、成果に応じて賃金を支払う制度。1938年に米国で導入された。一定の要件を満たした(1)管理職(2)運営職(プロジェクト・リーダーなど)(3)専門職(教師や法律家)の3つの職種が対象。当初は経営者に近い高所得者に限られた一種のステータスシンボルだったが、現在はファストフードの副店長クラスにまで適用が広がっている。

残業代11.6兆円が消失する?!

2006年12月01日 NB(Nikkei Business)online 西岡 隆彦

国民的議論にならないまま着々と進む労働法制の大改革

 「ホワイトカラー・エグゼンプション」という言葉をご存じだろうか。

 日本語では「自律的労働時間制度」と呼ばれるもので、今後の日本人の働き方を大きく左右するような新しい労働法制である。元々は米国で生まれた。

 エグゼンプションとは“免除”という意味で、労働基準法で定められている1日8時間、週40時間の労働時間規制を適用しないということ。いつ、どのように働くかという自由度が高まり、働いた時間ではなく仕事の成果によって賃金を決められるというのが賛成派である財界の主張だ。労働組合側は、労働強化と実質的な賃下げにつながるとして反対の立場。両者は導入の是非を巡り激しい議論の真っ最中にある。

重要な問題なのに大きなニュースにならない不思議

 しかし、そんな重大な議論が行われていることが、不思議なことに、さほど大きなニュースとして報じられていないのである。

 ホワイトカラー・エグゼンプションを巡る議論は、来年の通常国会への法案提出を念頭に、厚生労働省の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の労働条件分科会で、労働組合、使用者(経営側)、公益委員(学者)の3者を交えて、議論が重ねられている。

 議論が始まった当初は、「製造業の労働者は対象にしない」「年収要件は1000万円以上の管理職層」という条件付きだったが、審議会が開かれるごとに素案における適用基準は緩く、曖昧になっている。直近の11月28日の会合では、製造関係の労働者を外すとした文面はなくなり、年収要件は「400万円以上」にまで緩和すべきだという意見まで出た。

 この制度が適用されると、働く者にとってはどうなるのか。一面的ではあるけれども最も分かりやすいのは、「残業」という概念がなくなり、「残業代」も支払われなくなるということである。

 この制度の導入に反対の立場を取る労働運動総合研究所の試算によると、ホワイトカラー・エグゼンプションを年収400万円以上の労働者に適用すると、総額11兆6000億円、ホワイトカラー労働者1人当たり年114万円もの残業代が消え失せてしまうのだという。さらに、適用対象の労働者は、自分で労働時間を管理しなければいけないため、仮に、働き過ぎで過労死をしても会社に使用者責任を問うことはできなくなる。

思惑が交錯した末に“悪魔の取引”

 働く者からすれば「無謀」とも言えるこの制度が、法制化に向けて議論されている背景には、総人件費の一段の圧縮を図りたい財界の強い要望があった。財界は、「新商品やソフトウエア開発者、アナリストなど、従来の労働時間に縛られず自由で自律的な働き方をする人材を育てるために必要な制度だ」と主張するが、これは建前に過ぎない。アジア勢の台頭で日本のモノ作りの優位性が揺らいでいるうえ、株主重視の経営で利益を極大化するために人件費をギリギリまで切り詰めたいというのが本音だろう。

 不甲斐ないのは、厚労省と労働法学者である。本来なら、こうした労働時間規制の撤廃要求は全力で阻止するはずだ。「企業はこんなにひどい制度を導入しようとしている」とマスコミにリークして、世論の力を借りて粉砕してしまうのが常套手段である。

労働時間の規制撤廃 法制化へ、成果賃金に対応 厚労省

2006/11/24 The Sankei Shimbun

 厚生労働省が次期通常国会で法制化を目指す、労働時間の規制を受けない働き方(日本版ホワイトカラー・エグゼンプション)の素案が23日明らかになった。対象を一定以上の年収、業務、権限・責任をもつホワイトカラーに限定したうえで、制度導入が長時間労働を助長しないよう、週2日以上の休日確保や健康対策の実施などを条件にする。同制度は、多様な労働形態に対応した法制度の実現を求める経済界が、早期導入を強く求めていた。

 企画・立案などに携わる事務職が対象となる労働制度には、勤務実態にかかわらず一定時間働いたとみなす「みなし労働時間制」(裁量労働制)があるが、労働基準法が定める1日8時間・週40時間の労働時間規制をはずし、賃金の算出根拠から時間の概念をなくす制度は初めて。

 素案は、労働時間にとらわれない働き方を「自由度の高い働き方」とし、適用対象を(1)労働時間では成果を適切に評価できない業務(2)権限と責任を相当程度伴う地位(3)仕事の進め方や時間配分に関して上司から指示されない(4)年収が相当程度高い−の4要件を満たす労働者と規定している。

 さらに、過労防止のため「休日の確保」と「健康・福祉確保措置の実施」を明記。労基法による法定休日が週1日なのに対して、この制度の対象者は「1年間を通じて週休2日分の日数(104日)以上の休日を確実に確保できるようにする」と盛り込んだ。

 労働安全衛生法が残業月100時間以上の労働者に義務付けている「本人の申し出による医師の面接指導の義務」も、同80時間程度で義務付ける。

 厚労省は、こうした方針を盛り込んだ最終報告書案を12月上旬に開く労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の労働条件分科会に提示。労使の意見を踏まえ、次期通常国会に労基法などの関連法改正案を提出する方針だ。

 ただ、労組側は「残業代を払わなくてもいい制度」(連合)などと反対、既存の裁量労働制の適用拡大などで対応すべきとしている。

 一方、人件費の抑制という狙いもあるとみられる経済界は、対象者の決め方について「基本は労使自治にすべきだ」と主張して、法律による要件の厳格化を警戒。年収水準の適用要件についても「400万円以上」(日本経団連)などと訴え、対象範囲を広くすることを求めている。

 労使の考えには隔たりが大きく、今後の調整は難航が予想される。

                  ◇

【用語解説】ホワイトカラー・エグゼンプション

 労働基準法に基づく労働の時間規制をはずし、成果に応じて賃金を支払う制度。米国では1938年に導入され、一定要件を満たした(1)管理職(2)運営職(プロジェクト・リーダーなど)(3)専門職(教師や法律家)−に3分類される。当初は経営者に近い高所得者に限られた一種のステータスシンボルだったが、現在はファストフードの副店長クラスにまで適用可能とされる。

労働時間の規制撤廃、法制化へ 成果賃金に対応

2006/11/23 The Sankei Shimbun

 厚生労働省が次期通常国会で法制化を目指す、労働時間の規制を受けない働き方(日本版ホワイトカラー・エグゼンプション)の素案が23日明らかになった。対象を一定以上の年収、業務、権限・責任をもつホワイトカラーに限定したうえで、制度導入が長時間労働を助長しないよう、週2日以上の休日確保や健康対策の実施などを条件にする。同制度は、多様な労働形態に対応した法制度の実現を求める経済界が、早期導入を強く求めていた。

 企画・立案などに携わる事務職が対象となる労働制度には、勤務実態にかかわらず一定時間働いたとみなす「みなし労働時間制」(裁量労働制)があるが、労働基準法が定める1日8時間・週40時間の労働時間規制をはずし、賃金の算出根拠から時間の概念をなくす制度は初めて。

 素案は、労働時間にとらわれない働き方を「自由度の高い働き方」とし、適用対象を(1)労働時間では成果を適切に評価できない業務(2)権限と責任を相当程度伴う地位(3)仕事の進め方や時間配分に関して上司から指示されない(4)年収が相当程度高い−の4要件を満たす労働者と規定している。

 さらに、過労防止のため「休日の確保」と「健康・福祉確保措置の実施」を明記。労基法による法定休日が週1日なのに対して、この制度の対象者は「1年間を通じて週休2日分の日数(104日)以上の休日を確実に確保できるようにする」と盛り込んだ。

 労働安全衛生法が残業月100時間以上の労働者に義務付けている「本人の申し出による医師の面接指導の義務」も、同80時間程度で義務付ける。

 厚労省は、こうした方針を盛り込んだ最終報告書案を12月上旬に開く労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の労働条件分科会に提示。労使の意見を踏まえ、次期通常国会に労基法などの関連法改正案を提出する方針だ。

 ただ、労組側は「残業代を払わなくてもいい制度」(連合)などと反対、既存の裁量労働制の適用拡大などで対応すべきとしている。

 一方、人件費の抑制という狙いもあるとみられる経済界は、対象者の決め方について「基本は労使自治にすべきだ」と主張して、法律による要件の厳格化を警戒。年収水準の適用要件についても「400万円以上」(日本経団連)などと訴え、対象範囲を広くすることを求めている。

 労使の考えには隔たりが大きく、今後の調整は難航が予想される。

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 ≪視点 人件費抑制懸念も≫

 厚生労働省がまとめた、労働時間の規制を受けない働き方の素案は、おおむね日本経団連など経済界の要請に沿った内容となった。「製造業の現場とは違い、ホワイトカラー(事務職)の仕事は時間では成果が計れない」との主張に一定の理解を示した格好だ。ただ、運用次第では人件費抑制の方便になりうるだけに、その導入に当たっては慎重な対応が必要となる。

 厚労省によると、産業構造の転換により、昭和45年に全雇用者の43・7%だったホワイトカラーは、平成16年には55・2%に達した。事務職の仕事は必ずしも時間では計れず、短時間で仕事を終えられる有能な人にとって不利な側面も否定できない。経済界が主張する通りだ。

 しかし、30歳代の男性の4人に1人が週60時間以上の長時間労働に追われる現状では、「残業代を払わないことを合法化する制度」という連合の懸念はもっともだ。

 日本経団連が適用対象者の年収を400万円以上にすべきだと主張していることも、疑念に拍車をかける。国税庁の民間給与実態統計調査の平均給与(17年度437万円)などを念頭に置いたものだが、これは税、社会保険料などの控除前の収入だけに、手取り水準で考えればあまりに低い印象は免れない。

 時間では計れない「成果」の達成度合いを判断する基準についても、労使協議の上で企業側が決めることになるため、制度運用上の不透明感がつきまとい、「人件費削減が狙いではないか…」と勘ぐりたくもなる。

 景気回復を確かなものにするため個人消費の拡大が期待されるなか、賃金カットを連想させる制度導入は経済全体への悪影響が避けられない。「まずスケジュールありき」ではなく、議論を尽くす必要がある。(福島徳)

森永卓郎:残業代なしでただ働きを強制される時代の到来

2006年08月28日 Nikkei BP net/Safty Japan

〜ホワイトカラー・エグゼンプションって何?〜

 ホワイトカラーの労働時間ルールを変えようという動きが進んでいる。その名を「ホワイトカラー・エグゼンプション」という。

 エグゼンプションとは「除外」という意味。つまり、ホワイトカラーを労働基準法の労働時間規制から除外する制度である。

 これまで、管理職でない限り、工場労働者もオフィス労働者も定められた一定の勤務時間を超えたり、休日出勤などをした場合は会社側が割増賃金を支払わなければならなかった。

 現在の労働基準法では1日8時間・週40時間を超えた労働には、通常賃金の25%増、休日出勤では35%増の賃金を支払うことになっている。この規制対象から非管理職のホワイトカラーも除外してしまおうというのがホワイトカラー・エグゼンプションである。

 昨年6月、日本経団連が発表した「ホワイトカラー・エグゼンプションに関する提言」では、ホワイトカラーにおいて“労働時間”と“非労働時間”の境界があいまいになり、ホワイトカラーに適した労働時間制度の構築が必要であると述べられている。

 つまり、建前では、サービス産業化が進んだいま、サラリーマンの働きを時間だけではとらえきれないので、従来型の時間評価はやめて、成果評価でいこうということだ。

裁量労働制」と「フレックスタイム制」

日経ナビ 2004/11/28

勤務時間が自由。どこが違うの?

 労働者が個人の裁量によって労働時間を管理する制度です。仕事をきちんとしていれば、午前9時から午後6時というような決まった就業時間内に働く必要がないというもの。裏を返せば、仕事が大量にある場合には残業手当なしで働くことになる可能性もあります。成果主義制度が採用されている場合に、導入されていることが多いようです。

 裁量労働制には適用可能な業務とそうでない業務があり、適用できる業務は労働基準法により定められています。一言で言うと労働時間の長さとその業績が直接的に結びつけにくい業務が対象です。具体的には専門業務型と企画業務型の2種類があり、専門業務とは、開発や設計、編集、公認会計士、弁護士など(表参照)。一方、企画業務は2000年4月から適用の対象となり、「事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社等の中枢部門において企画、立案、調査及び分析を行う事務系労働者」(労働基準法)となっています。2004年1月の労働基準法改正により、企画業務型で、支社・支店でも裁量労働制が導入できるようになるなど、裁量労働制は利用しやすくなりました。

 企業にとっては、裁量労働制を導入することにより、ダラダラ仕事をしないで短時間で最大の能力を発揮すること、つまり仕事の効率を上げるという狙いがあるのです。しかし一方では、残業手当がつかないために、労働者にとってはただ働きをさせられる可能性も秘めているのです。

 裁量労働制と似た制度に、フレックスタイム制があります。フレックスタイム制とは1日の労働時間帯を必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)と、その時間帯であればいつでも出社、退社してもよい時間帯(フレキシブルタイム)とに分け、出社と退社の時間を労働者に委ねる制度です。しかも、全時間帯フレキシブルタイムでも制度的には問題はありません。

 では、裁量労働制とどこが違うのでしょうか。フレックスタイム制は1日の労働時間は自由ですが、1カ月以内の一定期間における総労働時間をあらかじめ決めておき、その時間内で各日の労働時間を調整するという点です。また、総労働時間より少なければ、賃金は減り、多ければその分支払われるのです。この2点が裁量労働制との違いです。みなさんはどちらがいいですか?

 《裁量労働制の対象となる業務》

 ■専門業務型 (1)新商品又は新技術の研究開発等の業務 (2)情報処理システムの分析または設計の業務 (3)記事の取材又は編集の業務 (4)デザイナーの業務 (5)プロデューサーまたはディレクターの業務 (6)コピーライターの業務 (7)システムコンサルタントの業務 (8)インテリアコーディネーターの業務 (9)ゲーム用ソフトウェアの創作の業務 (10)証券アナリストの業務 (11)金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務 (12)学校教育法に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る) (13)公認会計士の業務 (14)弁護士の業務 (15)建築士の業務 (16)不動産鑑定士の業務 (17)弁理士の業務 (18)税理士の業務 (19)中小企業診断士の業務

 ■企画業務型 事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社・支社・支店等における企画、立案、調査及び分析業務

岡山大学、秋から裁量労働制へ

2004年11月12日 全国国公私立大学の事件情報

by岡山大学職員組合-組合だより(76号)

秋から裁量労働制へ

岡山大学職員組合組織部

 かねてから検討されてきた裁量労働制が、10月から実施される見通しとなりました。裁量労働制は「業務の性質上、業務遂行の手段及び時間配分の決定等について本人の裁量に委ねるものとし、その決定に関し、具体的指示を与えないもの」です。「授業時間がおおむね5割に満たない」大学教員に適用が可能になり、岡山大学でも教員の労働実態により適合した制度として導入に向けて検討されてきました。

みなし労働時間8時間

 今回実施予定のものは,医療に携わる教員を除くすべての岡山大学常勤教員(教授、助教授、講師、助手)が適用対象になります。適用教員については

@実労働時間によらず「みなし労働時間」を8時間とする。したがって、8時間以上働いても時間外手当は出ない。

A休日と深夜(午後10時〜午前5時)は裁量労働制の適用外なので、時間外手当が出るが、そのためには部局長の許可が必要(許可がなければ時間外手当は出ない)。

B出勤する義務はあるので、出勤簿への押印は毎日しなければならない。

C健康と福祉の確保のため、適用教員は勤務時間と健康状態を「勤務状況報告書」に記録し、毎月部局長に提出しなくてはならない。

 @について,多くの教員が8時間以上働いている実態を考えると「みなし労働時間8時間」というのは不満がありますが、8時間以上を設定すると時間外手当が発生し大学の財政を圧迫すること、および従来から時間外手当は教員には支払われてこなかつたこと、を考慮して認められたものです。

 AとBは現行制度と変わりありません。

過重労働防止のための健康管理チェック

 @は裁量労働制の導入に伴って新たに加わった手間です。裁量労働制を悪用して超勤手当を払わずに長時間労働させる企業があり、過重労働をまねくおそれがあるため、厚生労働省・労働基準監督署は裁量労働制を適用する職場の従業員の健康管理を従来より厳しく使用者に要求しています。

 このため裁量労働制を採り入れる以上、Cは省略することができません。せっかく実情に合う制度を導入しても、教員にとって煩雑な手間のかかるものであっては何のための導入か分かりません。Cの趣旨を活かしつつ,いかに簡便で使い勝手のよいものにするかが問題でした。

勤務時間の厳密管理は趣旨でない

 ある大学では、出勤時刻・退勤時刻・勤務時間すべてを記入させる報告書が作られていますが、これでは面倒すぎます。勤務時間だけを記入する方式を採つている大学もあります。

 しかし、大学にとつて必要なのは過重労働による健康障害の防止であって、教員の勤務時間を厳密に管理することではないはずです。このような観点から岡山大学では、8時間を超える勤務をした日だけ勤務時間を記入する、別紙のような「勤務状況報告書」とすることになりました。

 労基法の制約の下で、大学教員の働き方に最も相応しい形を求めたものとして、評価したいと考えています。

教授にもタイムカード!? /国立大 裁量労働制の功罪

2004/04/06 東京新聞
 今月一日からすべての国立大学が法人化されたのに伴い、東京大学など過半 数の大学で教職員の「裁量労働制」が導入された。労働時間管理が厳密なこの制度に、東大教授らからは「学問の自由が侵される」という声もある。一方で同制度を採り入れた民間企業では長時間労働や過労死の問題が指摘されている。 国立大学に導入された影響は?。 (藤原正樹)

■東大も導入『社会に“お墨付き”』

 「合法的に長時間勤務させる制度で、労働災害を増加させている。(ブランド力が強い)東大が裁量労働制を採り入れると、社会全体にお墨付きを与える " 宣伝"になる」

 東大社会科学研究所の田端博邦教授(労働法)は制度導入が社会に与える影響についてこう危ぐする。

■みなし労働で賃金払われる

 裁量労働制は、実際に何時間働いたかは関係なく、労使で合意した時間を労働時間とみなし、賃金が支払われる仕組みだ。みなし労働時間が「八時間」の場合は、それ以上の実労働があったとしても割増賃金を支払う必要がなくなる。

 同制度は一九八七年の労基法改正で研究開発職や弁護士などの「専門業務」への導入が認められ、二〇〇〇年からは企画、立案、調査などの「企画業務」も加わり、ホワイトカラー分野全体に対象が広がった。

■サービス残業増える懸念

 導入目的について、厚労省は「創造性が求められる分野では、実際に働く時間ややり方は労働者が自分の裁量で決めた方が生産性が向上する」と説明するが、田端教授は「違法のサービス残業を合法化して、残業代を支払わず長時間勤務させたい企業側の意向に沿って対象範囲が広がった」と指摘する。

 実際、連合の調査(九九年)では、裁量制を導入した企業の八割で、実労働時間がみなし労働時間を上回っている。労働問題に詳しい弁護士(東京)は「長時間労働で過労死する例が増加している。裁量制の導入で実際の労働時間がわかりにくくなり、サービス残業の取り締まり自体が難しくなる」と懸念す る。

 裁量制の導入当初、労基署は「実労働時間が労働者に任されている」として労災適用は困難との判断を示したが、〇一年の認定基準見直しで過労死の認定を行うようになった。〇二年一月には、急性心不全で死亡した出版社編集者=当時(24)=が過労死の認定を受けている。

 大学教員の場合どうか。「論文執筆や研究が本人の裁量労働とみなされ、(労災が)認められにくい。裁量労働制導入で、より認定を受けにくくなる」(前出の弁護士)という。〇二年四月、脳出血を起こした札幌学院大学の法学部教授に「過労による労災」が認定されたが、「珍しいケース」(北海道労働局)だ。

■競争制導入で『過労死急増』

 全国大学高専教職員組合(全大教)担当者は「総合科学技術会議(議長・小泉純一郎首相)が昨年四月、競争的研究資金制度を打ち出してから、大学教員の精神疾患が増えている。同制度では、最先端研究の実績を書類提出しなければ資金を得られず、過労の一因になっている。国立大法人化で研究評価がより厳しくなり、自殺や過労死が急増する」と不安視する。

 実際の勤務時間がわかりにくい裁量制では、「健康確保措置」として出退勤時刻の厳密な管理が求められる。今春タイムカードを導入する大学はないが、東大教職員組合委員長の横山伊徳(よしのり)教授は「過労による死者が出た場合、使用者側は『勤務時間を管理していなかった』とは言えない。研究者の管理には不適当なタイムカードの導入はありうる」と懸念する。 実際、茨城大学人事課は導入に前向きだったが「タイムカードを設置する予算がなくて、裁量制を採用できなかった」。福島大人事課も「タイムカードは管理されるイメージが強く教員たちに受け入れられない。しかし、教員自身を過労から守る手段なので、タイムカードやICカードなどの導入もある」と予想する。

 さて、そもそもなぜ、大学教員が裁量労働制の対象になったのか。その経緯は不透明だ。

 国立大学協会(国大協)は昨年八月、大学教員への裁量労働制適用を求める要請書を厚労省に提出。従来「不適当」として、大学教員への適用を認めなかったが同省は同十月、大学教員を追加対象にする告示を出した。横山教授は「国大協は裁量制に関して議論せず、問答無用で厚労省に要請書を出した。厚労省も法人化に合わせて認めただけだ」と批判する。

 法人化で教授会の合議中心だった運営が、学長を中心としたトップダウン型に切り替わる。学長は民間のような経営手腕が求められ成果主義賃金や厳しい経費削減が実施される可能性が高い。

■『過労』危ぐ人件費は減

 福島大人事課は「裁量制はコスト削減が狙い。今まで以上の成果を上げなければ、教員の給与削減もありうる」と明言する。

 田端教授も「経費削減の第一対象は人件費で、年功序列賃金を抑えるために高齢教員の解雇が進む」と悲観する。

 裁量制と成果主義が導入されても、憲法二三条で保障された「学問の自由」は守られるのか。

 組合の立場から横山教授は「裁量制の問題点を十分に理解している教員が少なく、労使協定を締結せざるを得なかった。裁量制は、自己の労働時間管理に大幅な裁量が認められていた教育公務員特例法とまったく違う。教職員を『時間を売る』労働者に位置づけ、学問の中身がどう変わるかの議論を時間の問題にすり替えた。使用者の評価で教員の待遇・賃金が決まり、研究がゆがめられる可能性が高く、学問の自律性が侵される」と懸念する。

 全大教によると、ほとんどの大学で労使協定が締結済みだが、静岡大などは交渉中だ。労使協定がない状態で、八時間以上の勤務をさせると労基法違反になる。厚労省賃金時間課担当者は「裁量制や時間外労働を規定した労使協定がない状態で残業命令を出すと、刑事罰を科せられる。時間外労働があれば指導の対象になる」と目を光らせる。

 一部の大学とはいえ、学問の府が労基法上の違法状態に追い込まれた原因について、全大教担当者は国の責任を指摘する。

■大学も教員も『国の被害者』

 「三月三十一日に労使協定を締結した大学も多い。昨年七月に国立大法人法が成立してから、各大学当局は労使協定案づくりに着手したが、前例がなく手間取った。教職員側も十分議論する時間がなく、満足できない協約に判を押した例も多い。国の将来を決める"百年に一度"の大改革で、最低二年程度は準備期間が必要なのに、八カ月しかなかった。拙速な判断を迫られた大学当局、教職員とも"国の被害者"といえる」(『東京新聞』2004年4月5日付特報)

こちら特報部 国立大 裁量労働制の功罪(上) 教授にもタイムカード!? 東大も導入 『社会に“お墨付き”』

2004/04/05 東京新聞朝刊
 今月一日からすべての国立大学が法人化されたのに伴い、東京大学など過半数の大学で教職員の「裁量労働制」が導入された。労働時間管理が厳密なこの制度に、東大教授らからは「学問の自由が侵される」という声もある。一方で同制度を採り入れた民間企業では長時間労働や過労死の問題が指摘されている。国立大学に導入された影響は−。(藤原正樹)

みなし労働で賃金払われるサービス残業増える懸念

 「合法的に長時間勤務させる制度で、労働災害を増加させている。(ブランド力が強い)東大が裁量労働制を採り入れると、社会全体にお墨付きを与える“宣伝”になる」 東大社会科学研究所の田端博邦教授(労働法)は制度導入が社会に与える影響についてこう危ぐする。

 裁量労働制は、実際に何時間働いたかは関係なく、労使で合意した時間を労働時間とみなし、賃金が支払われる仕組みだ。みなし労働時間が「八時間」の場合は、それ以上の実労働があったとしても割増賃金を支払う必要がなくなる。

 同制度は一九八七年の労基法改正で研究開発職や弁護士などの「専門業務」への導入が認められ、二〇〇〇年からは企画、立案、調査などの「企画業務」も加わり、ホワイトカラー分野全体に対象が広がった。

 導入目的について、厚労省は「創造性が求められる分野では、実際に働く時間ややり方は労働者が自分の裁量で決めた方が生産性が向上する」と説明するが、田端教授は「違法のサービス残業を合法化して、残業代を支払わず長時間勤務させたい企業側の意向に沿って対象範囲が広がった」と指摘する。

 競争制導入で  『過労死急増』

 実際、連合の調査(九九年)では、裁量制を導入した企業の八割で、実労働時間がみなし労働時間を上回っている。労働問題に詳しい弁護士(東京)は「長時間労働で過労死する例が増加している。裁量制の導入で実際の労働時間がわかりにくくなり、サービス残業の取り締まり自体が難しくなる」と懸念する。

 裁量制の導入当初、労基署は「実労働時間が労働者に任されている」として労災適用は困難との判断を示したが、〇一年の認定基準見直しで過労死の認定を行うようになった。〇二年一月には、急性心不全で死亡した出版社編集者=当時(24)=が過労死の認定を受けている。

 大学教員の場合どうか。「論文執筆や研究が本人の裁量労働とみなされ、(労災が)認められにくい。裁量労働制導入で、より認定を受けにくくなる」(前出の弁護士)という。〇二年四月、脳出血を起こした札幌学院大学の法学部教授に「過労による労災」が認定されたが、「珍しいケース」(北海道労働局)だ。  全国大学高専教職員組合(全大教)担当者は「総合科学技術会議(議長・小泉純一郎首相)が昨年四月、競争的研究資金制度を打ち出してから、大学教員の精神疾患が増えている。同制度では、最先端研究の実績を書類提出しなければ資金を得られず、過労の一因になっている。国立大法人化で研究評価がより厳しくなり、自殺や過労死が急増する」と不安視する。

こちら特報部 国立大 裁量労働制の功罪(下) 『過労』危ぐ 人件費は減 成果主義拍車 『学問の自由侵される』 大改革 準備たった8カ月

2004/04/05 東京新聞朝刊
 実際の勤務時間がわかりにくい裁量制では、「健康確保措置」として出退勤時刻の厳密な管理が求められる。今春タイムカードを導入する大学はないが、東大教職員組合委員長の横山伊徳(よしのり)教授は「過労による死者が出た場合、使用者側は『勤務時間を管理していなかった』とは言えない。研究者の管理には不適当なタイムカードの導入はありうる」と懸念する。

 実際、茨城大学人事課は導入に前向きだったが「タイムカードを設置する予算がなくて、裁量制を採用できなかった」。福島大人事課も「タイムカードは管理されるイメージが強く教員たちに受け入れられない。しかし、教員自身を過労から守る手段なので、タイムカードやICカードなどの導入もある」と予想する。  さて、そもそもなぜ、大学教員が裁量労働制の対象になったのか。その経緯は不透明だ。

 国立大学協会(国大協)は昨年八月、大学教員への裁量労働制適用を求める要請書を厚労省に提出。従来「不適当」として、大学教員への適用を認めなかったが同省は同十月、大学教員を追加対象にする告示を出した。横山教授は「国大協は裁量制に関して議論せず、問答無用で厚労省に要請書を出した。厚労省も法人化に合わせて認めただけだ」と批判する。

 法人化で教授会の合議中心だった運営が、学長を中心としたトップダウン型に切り替わる。学長は民間のような経営手腕が求められ成果主義賃金や厳しい経費削減が実施される可能性が高い。

 福島大人事課は「裁量制はコスト削減が狙い。今まで以上の成果を上げなければ、教員の給与削減もありうる」と明言する。

 田端教授も「経費削減の第一対象は人件費で、年功序列賃金を抑えるために高齢教員の解雇が進む」と悲観する。

 大学も教員も『国の被害者』

 裁量制と成果主義が導入されても、憲法二三条で保障された「学問の自由」は守られるのか。

 組合の立場から横山教授は「裁量制の問題点を十分に理解している教員が少なく、労使協定を締結せざるを得なかった。裁量制は、自己の労働時間管理に大幅な裁量が認められていた教育公務員特例法とまったく違う。教職員を『時間を売る』労働者に位置づけ、学問の中身がどう変わるかの議論を時間の問題にすり替えた。使用者の評価で教員の待遇・賃金が決まり、研究がゆがめられる可能性が高く、学問の自律性が侵される」と懸念する。

 全大教によると、ほとんどの大学で労使協定が締結済みだが、静岡大などは交渉中だ。労使協定がない状態で、八時間以上の勤務をさせると労基法違反になる。厚労省賃金時間課担当者は「裁量制や時間外労働を規定した労使協定がない状態で残業命令を出すと、刑事罰を科せられる。時間外労働があれば指導の対象になる」と目を光らせる。

 一部の大学とはいえ、学問の府が労基法上の違法状態に追い込まれた原因について、全大教担当者は国の責任を指摘する。

 「三月三十一日に労使協定を締結した大学も多い。昨年七月に国立大法人法が成立してから、各大学当局は労使協定案づくりに着手したが、前例がなく手間取った。教職員側も十分議論する時間がなく、満足できない協約に判を押した例も多い。国の将来を決める“百年に一度”の大改革で、最低二年程度は準備期間が必要なのに、八カ月しかなかった。拙速な判断を迫られた大学当局、教職員とも“国の被害者”といえる」

     ◇

 デスクメモ

 「あいつの一行あたりの給与はおれの三倍だな」−。新聞社で原稿を書かない記者に対する陰口だ。同じ給料なら、書かない記者ほど記事単価が高いことに。貴重な特ダネを取ってくる記者にこのタイプが多い。ただ、このタイプは居場所が少なくなってしまった。組織が使い方を知らないからだろう。(長)

裁量労働制「HIワーク」の導入について

2004年3月31日HITACHI
日立製作所(執行役社長:庄山 悦彦)は、社員一人ひとりのやる気と能力を最大限に引き出し、経営ビジョンの実現に向けた人材の一層の活性化を図るため、総合職のうち主任相当レベルの約12,000人の社員を対象に、2004年4月1日から、労働基準法で定められた裁量労働制(*1)に基づいた「HIワーク(ハイワーク)」を導入します。

「HIワーク」は、社員個人が仕事を進める上での時間配分に関する裁量の幅を、従来の勤務制度よりも広げ、働き方の多様性を高めることで、自らの知識、技術を十分に活かし、より一層、生産性と創造性を向上させる制度です。

当社ではこれまで、社員個人の働く時間の自由度を広げるため、コアタイムのないフレックスタイム制である「Eワーク」を導入・運用してきました。今回、2004年1月に施行された労働基準法の改正により、裁量労働制の導入・運用に関する要件などが緩和されたことなどを踏まえ、仕事を進める上での時間配分に関する裁量の幅をより広げることを目的に、労働組合と協議の結果、今回、「Eワーク」を発展的に解消し、「HIワーク」を導入することにしました。

当社では、主任相当レベルである総合職6級(*2)以上の社員を対象に、本人の意思を確認した上で、「HIワーク」の適用についての認定を行います。「HIワーク」の適用を受けた社員は、所属上長などから業務遂行手段や時間配分の決定などに関して、具体的な指示を受けることなく、自らの裁量で業務を遂行します。なお、従来通り、在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務も可能です。

当社では、「HIワーク」を、労働基準法及び制度趣旨に沿って有効に活用することで、仕事を通じた「価値創造」に向けた社員一人ひとりのやる気と能力を最大限に引き出し、お客様により満足いただける製品・サービス等を提供してまいります。

(*1) 「専門業務型裁量労働制」及び「企画業務型裁量労働制」から成るものです。

(*2) 管理職相当職以上を除く。 以上

福島大、教員に裁量労働制 労使協定後、新年度導入へ=福島

2004/03/05 東京読売新聞 朝刊
 福島大は四日、独立行政法人となる新年度、教員に「裁量労働制」(みなし労働時間制)を導入する方針を固めた。県内の大学では初。実際に働く時間の長さや時間帯は、これまで以上に教員本人にゆだねられる。近く労使協定を交わし、正式に導入したい考えだ。

 裁量労働制は、実際に何時間働いたかとは関係なく、前もって労使で合意した時間帯を労働時間とみなす仕組み。一九八七年の労基法改正で設けられ、「専門業務型」と「企画業務型」に分かれる。大学教員については昨秋の厚労省告示で、「主として研究に従事するもの」に限り、専門業務型を導入できる業種に加えられた。

 この日の各学部の教授会で大学側が示した案によると、教授、助教授、講師を対象に、平日の午前八時三十分―午後九時三十分について「八時間働いた」と見なす。研究内容に応じて勤務時間を設定でき、「成果主義の仕事」(ある教授)にふさわしい制度とは言える。

 ただ大学側は、過労を防ぐため義務づけられている「健康・福祉確保措置」のためとして、出退勤時刻の記録を制度化することなども検討。これについては「管理強化につながる」と反発の声も出ているが、同大教職員組合は、条件付きで合意する考えを示している。

電機連合 裁量労働拡大を要求 定期大会方針提案 「成果主義」に対応

2003.07.03掲載 The Nishinippon Shimbun
 大手の電機メーカーなどの労組でつくる電機連合(古賀伸明委員長、約六十七万八千人)は三日、名古屋市内で定期大会を開き、仕事や時間配分を個人の裁量に任せる「裁量労働制」の大幅な拡大を求める方針を提案した。来年度中には最終報告を作り承認を得る。 ホワイトカラーを労働時間規制の対象外にした米国型の制度導入につながる可能性もあり、裁量労働制に批判的だった労組側からの提案は大きな論議を呼びそうだ。

 この提案は「新しい労働時間政策の確立に向けて」と題する中間報告として発表。電機業界は労働者の七割をホワイトカラーが占めている。成果主義が広まる中、現行の時間管理法では限界があり、働き方に合った環境を整えるには裁量労働制が望ましいとしている。

 現行では、研究開発など専門的な知識を必要とする専門業務型は個々の労使の自主的協定で導入できるケースが多い。これに対し、二〇〇〇年から裁量労働制の対象になった企画業務型は、企画、立案、調査、分析の業務に限られており、導入に当たっては労使委員会を設置して労働基準監督署に届けなければならない。

 このため報告は、企画業務型を専門業務型と同一要件にして、個々の労使の自主的な協定で導入できるよう簡素化することを求めている。

 裁量労働制は、無制限な長時間労働につながり過労死を引き起こす恐れがある。このため、休日出勤を極力させないことや残業時間は一カ月四十五時間、年三百六十時間以内に抑えることを労使で定めるよう求めている。

ワードBOX= 裁量労働制

 実際に働いた時間とは関係なく、あらかじめ結んだ労使協定などに基づいて一定時間働いたとみなし、会社はその成果に賃金を支払う。研究開発や取材・編集、デザイナーなどの専門的な職種、企画立案などを行うホワイトカラーが対象。今国会の労働基準法改正で、企画型は重要な決定をする本店などの事業所に限定せず、支社などにも拡大した。使用者側はホワイトカラーを時間規制の対象外にした米国型の制度導入を求めており、厚生労働省の審議会では「検討が適当」との報告をまとめている。

過労自殺:裁量労働制めぐり遺族が企業を初提訴 東京地裁

2003年07月01日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 99年12月に自殺した神奈川県の男性(当時34歳)の遺族が1日、「労働時間を自由に決められる裁量労働制で、過重労働を強いたのが原因」として、勤務先だった大手建設機械メーカー「小松製作所」(東京都港区)に1億8200万円余の賠償を求め、東京地裁に提訴した。原告の弁護士によると、裁量労働制をめぐる過労自殺訴訟は、初めてという。

 裁量労働は実際に働いた時間ではなく、事前に労使協定で定めた時間を勤務時間と見なすシステム。87年の労働基準法改正で新設された。職場によっては個人が自由に仕事時間を決められるメリットがある反面、長時間労働につながることもあると指摘されている。

 訴状によると、男性は98年9月、機械部門からレーザー部門に配置転換された。レーザー部門は裁量労働制で、「見なし労働時間」は8時間だったが、男性は連日11〜18時間勤務を強いられた。男性側は「会社が無理な納期、課題を設定し、適正な人員配置や健康管理などを怠った結果、うつ状態になって自殺した」と主張している。

 男性に対しては平塚労働基準監督署が昨年9月、「業務と自殺に因果関係がある」として労災認定している。【小林直】

 コマツ広報・IR部の話 (死亡は)会社としても大変残念で、労災認定を厳粛に受け止めている。提訴については訴状が届いておらず、コメントできない。

和解:裁量労働制で初の過労死 遺族と勤務先の光文社が

2003年03月07日 Mainichi INTERACTIVE
 勤務時間を本人の意思にゆだねる「裁量労働制」の職場で、初めて国から過労死と認められた雑誌編集者の遺族が、勤務先の「光文社」(東京都文京区)に1億6800万円の賠償を求めた訴訟は7日、会社側が7500万円を支払うことなどで双方が合意し、東京地裁(松本利幸裁判長)で和解が成立した。

 訴えていたのは、週刊誌「女性自身」の編集者だった脇山達(たつる)さん(当時24歳)の両親。脇山さんは月300時間前後の勤務を半年以上続け、97年に心不全で死亡した。中央労働基準監督署は当初、過労死と認めなかったが、02年1月、前年に緩和された労災基準に照らして、過労死と認めた。

 00年6月に提訴された光文社は一貫して「過労死ではない」と主張していたが、国が認定したことで、和解を受け入れたとみられる。

 研究者、編集者などの専門職に認められる裁量労働制には週40時間労働などの制約がなく、光文社は94年に導入していた。 【清水健二】

光文社・脇山さん過労死裁判を支える会ニュース第3号 by過労死裁判を支える会

サービス残業の温床 擬似裁量労働制とは?

2003年1月23日(木)「しんぶん赤旗」

 <問い> 擬似裁量労働制がサービス残業の温床になっているそうですが、どういうことですか。(東京・一読者)

 <答え> 裁量労働制とは、実際に何時間働いたかに関係なく、労使協定で定めた時間だけ働いたとみなす制度です。仕事の進め方などを「労働者の裁量」にゆだねる体裁をとりますが、所定労働時間ではできない仕事がおしつけられ、サービス残業を強いられます。

 裁量労働制は一日八時間労働の原則を崩すため、導入するには一定の要件が必要で、正式に導入している企業はまだ限られています。ところが多くの職場で法律要件を満たさない擬似裁量労働制が導入され、サービス残業の温床となっています。月二十時間程度の残業手当を一律支給し、労働時間の把握はせずに長時間労働させていたため、多くのニセ裁量労働制が労基署の是正指導を受けました。

 労働基準法は一九八七年と九八年に改悪され、「専門業務型」(第三八条の三)と「企業業務型」(第三八条の四)の裁量労働制が導入されました。しかし「専門業務型」裁量労働制を採用できるのは、研究開発など厚生労働省の省令で定める十八業種に限られます。ホワイトカラーを想定した「企画業務型」裁量労働制も、▽労使同数の労使委員会を設立▽対象業務・対象労働者・みなし労働時間などの決定は同委員会の全員一致が必要▽労働者本人の同意が必要―などの要件があるために、多くの職場では簡単に導入できません。国民と日本共産党の反対運動でもりこまれた「歯止め」です。

 他方、政府・財界は、こうした「歯止め」もとりはらい、ホワイトカラーを労働時間法制から除外することをねらっています。国民の監視と反対世論・運動の結集が必要です。

 なお、昨年二月の厚労省通達は、「裁量労働制対象労働者」の過重労働防止についても、事業者の責任を指摘しています。裁量労働制でも長時間労働の放置は許されません。 (博)

サービス残業代/ NEC 100人余に4500万円払わせた/労働者が告発/職場から「ありがとう」/ニセ裁量労働制ただす

(2002年12月11日 赤旗) by日本共産党諏訪地域青年支部支部
 通信機器の国内トップメーカー・NEC(東京都港区、西垣浩司社長)が、過去二年間のサービス残業(ただ働き)代を十一月末の賃金支払日に支払ったことがわかりました。規模は、本社・田町地区の百人を超える労働者に平均百五十時間分の割増賃金で、総額およそ四千五百万円。職場の労働者有志が労働基準監督署に是正を求めた成果です。(畠山かほる記者)

 「驚くほどうれしい。粘り強く訴えていけば大企業を動かせる、違法は正せると実感しています」。監督署に申告したNEC田町地区に勤務する橋場伸一さん(50)は、笑顔で語りました。

 同地区の技術者・菅和則さん(49)と山崎栄一さん(52)は「サービス残業の存在を認めずにきた会社が是正勧告を受け、未払い賃金を支払ったことは画期的」と喜びます。

 職場では「ありがとう」と労働者が声をかけてきたり、是正を知った他の事業場の何人もの労働者が「うちでも(監督署交渉を)やらないのか」とたずねるなど、反響が広がっています。

 日立、三菱、沖など大手電機メーカーで導入したニセ裁量労働制がサービス残業の温床となり、この間、労働者や家族、日本共産党組織の告発で是正されてきました。今回の是正は、この流れにそったものです。

 橋場さんら働きやすい職場をめざす労働者有志による「NEC労働者懇談会」メンバーは、昨年四月以降、十五回にわたって監督署を訪問。同時期に厚生労働省がだしたサービス残業根絶通達にもとづいて出退勤時間の把握と、職場のサービス残業の是正を訴え続けてきました。

 NECは九八年、主任クラスを対象にニセ裁量労働制「Vワーク」を導入。一日一時間分の残業代にあたる手当(当初は五万三千円の固定額)を支払うかわりに、違法なサービス残業を事実上労働者に強いるものです。この五年間のリストラで五人に一人強(単独で22%)を削減し、人手不足に拍車がかかり際限のない長時間労働が横行。精神疾患など病気になる労働者が増えていました。 告発を決意したのは…

 橋場伸一さんらはサービス残業をしていませんでしたが、「違法なただ働きをなくし、健康でいきいき働ける職場にしたい。会社にとってもプラスになるはずだ」との思いから告発を決意したのです。その職場実態は調査に入った監督官が「あなたの職場はひどいね、休んでいる人が多い」と、びっくりしたほどでした。

 サービス残業の温床となってきたニセ裁量労働制「Vワーク」は今年十月、法的な裁量労働制に移行しました。

 裁量労働制は、仕事の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があり、仕事の手段や時間配分の決定などについて、使用者が具体的な指示をしない業務であることが大前提です。つまり、勤務時間でいえば、出退勤時刻は労働者本人の自主的な決定に任せなければなりません。

 ところが、NECの裁量労働制「新Vワーク」は、「始業時刻である八時三十分以降に出社する場合は、前日までに行き先表示板等に出社予定時刻を明記すること」とし、「何の連絡もなく出社予定時刻に出社しない場合は、遅刻と同様、上司から厳しく指導する」と主張しています。「Vワーク適用を除外することも検討する」とも。Vワークを外されると、労働者の年収は五十万円前後も減額になります。

 こんな働き方に裁量性があるといえないことは明らかです。しかも、裁量労働制の対象労働者は八千人もいます。 是正は一部気ゆるめず

 「会社は、サービス残業を追及され逃れられないと観念したから、裁量労働制を導入したのだ」と菅和則さん。「ただ働きを職場から一掃する一歩を築いた。『Vワーク』を正していくことがこれからの課題だ」と橋場さんたちは指摘します。

 今回、サービス残業を払わせたのは、ほんの一部です。NECが管理職を除く本社・田町地区の社員全員に実施した、過去二年間の残業実態調査が不徹底だったからです。社員全員のはずなのに、この調査を知らない労働者が少なくありません。会社は社員に調査趣旨を文書で示さず部長に口頭で報告させ、部長によっては説明も報告もしないものもありました。

 橋場さんはいいます。「たたかいはまだまだ終わらない。気をゆるめずがんばろう」

裁量労働制、支社・支店も対象に

(日本経済新聞 2002年12月3日)労働衛生ニュース by瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)
  厚生労働省は3日の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)・労働条件分科会に、労働基準法改正の骨格となる「今後の労働条件にかかる制度のあり方」と題する報告書案を示した。労働時間ではなく、仕事の成果で評価を決める裁量労働制の対象を事務系職への拡大や導入手続きの簡素化などを盛り込んだ。

  厚労省は期限付きの労働契約の期間を現行の原則1年・特例3年から原則3年・特例5年に延ばしたり、「正当な理由のない解雇は無効」とする新たな解雇ルールなども労基法改正案に盛り込み、来年1月召集の通常国会に提出する。

裁量労働制とは、仕事のやり方や時間の配分などを働く人の裁量でできるようにする制度。裁量制のうち企画、立案、調査、分析といった事務系職向けの「企画業務型」は現在、対象を「重要な決定が行われる事業場」と事実上、本社に限っているが、支社・支店でも導入を認める。

裁量労働下の過労自殺を労災認定

2002年9月27日 「asahi.com」 人民日報社
労働時間を自由に決められる裁量労働制で働き、99年12月に自殺した神奈川県の会社員、諏訪達徳さん(当時34)について、平塚労働基準監督署は27日、「長時間労働でうつ状態になり自殺した」とする遺族の主張を認め、労災と認定した。労働時間の確定が難しい裁量労働制のもとで「過労自殺」が労災認定されるのは極めて珍しい。

平塚労基署は、会社の最終退出者名簿や元同僚からの聞き取り調査から「(労災と認定するに)相当な恒常的な長時間労働があったと推定できる」と判断した。

諏訪さんは神奈川県平塚市の大手建設機械メーカー、コマツに84年、研究員として入社。14年間は主に機械設計部門にいたが、98年9月にレーザー開発部門へ異動。ほぼ同時に「フリータイム制」と呼ばれる裁量労働制で働くようになった。

遺族側によると、諏訪さんは上司から厳しい納期を設定され、サービス残業を強いられる状態が続いた。亡くなる前の半年は、1日の勤務時間は10〜19時間に及んだ。研究開発以外にも、部品購入や営業を担当し、顧客からの苦情も受け付けていた。

99年12月16、17日は午前3時前後まで残業し、週末をはさみ、20日朝、出勤前に自殺した。

遺族は「上司が無理な納期を設定し、本業以外の仕事も多くさせられた。自分の裁量で仕事の時間配分を決めることはできなかった」として00年1月に労災を申請していた。

裁量労働制は、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ一定時間働いたとみなして、仕事の成果に基づいて給与を決める制度。厚生労働省は研究職など「専門業務」に限って適用していたこの制度を00年からは「企画業務」にも広げ、今後も拡大する方針だ。労働時間を自由に決められる半面、サービス残業が広がることへの懸念が指摘されている。弁護士らからは「長時間労働の証明がしづらく、過労死や過労自殺の認定が難しい」との声もある。

コマツ広報・IR部の話 社員の健康管理には十分留意してきたつもりだが、労基署の判断を厳粛に受け止めたい。ただ、裁量労働制は一定の経験を積んだ社員に同意の上で適用しており、押しつけているわけではない。

−新基準を適用− 「裁量労働制」での過労死を初めて認定 中央労基署

2002/03/01 花上事務所ニュース2002年03月号
 東京の大手出版社の男性社員が急死したのは過重な労働が原因であるとして、この男性の両親が労災の認定をしなかった中央労働基準監督署長に対して処分の取り消しを求めていた訴訟で、同監督署長は一転して処分を撤回、平成14年1月15日に労災と認定しました。

 週刊誌編集者として勤務していたこの男性は、入社から1年4ヵ月後の平成9年7月に自宅で急性心不全のため死亡(当時24歳)。

 男性は入社した年の9月頃からは「裁量労働制(勤務時間を労働者本人に任せる)」により昼頃出社、翌日の午前2〜3時まで勤務をしており、死亡前1年間の労働時間は1日平均12時間を超え、休日も仕事を自宅に持ち帰っていたということです。

 男性の両親は中央労働基準監督署長に対し、労災保険の遺族補償給付を請求しましたが、「裁量労働制」などを理由に、平成12年5月に不支給の決定が下され、この時点では労災と認められませんでした。

 しかし、昨年12月に厚生労働省が過労死の労災認定基準を大幅に緩和する通達を出したことにより、男性の死亡前半年間の時間外労働時間が月80時間の認定基準を超えていたことが判明したため、同監督署長は原処分を取り消し、遺族補償給付の支給を決定しました。

 新基準に改訂されて以降、不支給処分が取り消されて労災と認められたのは今回のケースで3例目、「裁量労働制」のもとでの過労死に関しては初めてだということです。

第11回「裁量労働制、3年有期雇用契約の対象者が拡大」

2002/02/28 (月刊「スタッフアドバイザー」編集部)NIKKEI NET
 2月13日から労働基準法施行規則が改正され、裁量労働制、3年有期雇用契約の対象者が拡大された。

裁量労働制の対象者の拡大

 裁量労働制とは、業務自体の性格上、その具体的なやり方や時間配分を大幅に労働者の判断に委ねる業務で使用者においても具体的な指示命令を行わないもの(労使協定の締結と労働基準監督署への届出が必要)を指す。専門業務型と企画業務型の2種類があるが、今回、専門業務型の対象業務の範囲が拡大されることとなった。

今回拡大された業務とは?

1. 事業運営において情報処理システム(労働基準法施行規則で規定されているもの)を活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)

2. 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)

3. ゲーム用ソフトウエアの創作の業務

4. 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)

5. 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務

6. 2級建築士又は木造建築士の業務

7. 税理士の業務

8. 中小企業診断士の業務

以上である。

 このうち、税理士の業務については、税理士法人の設立が認められる改正税理士法の施行日と同じ4月1日から適用となる。

3年の有期雇用契約の対象者が拡大

 労働契約は期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、1年を超える期間について締結してはならないが、(1)厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する人、(2)満60歳以上の労働者との間に締結されるものは、3年間認められることになっている(ここで注意したいのは「資格をもつ=3年契約が認められる」わけではないということ。細かい条件が労基法で規定されている)。

 今回の改正で、前者の”専門的知識等を有する人”の範囲が拡大され、税理士、中小企業診断士などが新たに追加されている。

 なお、改正の詳細は厚生労働省のホームページにも掲載されている。


裁量労働は「心に負担」 東邦大助手ら調査

03:04a.m. JST April 22, 2000
 働く時間の管理を本人に任せる「裁量労働制」を採り入れると、長い時間働いて、精神面の健康に障害を起こす人が増える可能性が高い。東邦大医学部助手の立道昌幸医師らのグループが、裁量労働で働く電機メーカーの研究開発職221人を対象に4年間、調査を続けたところ、そんな結果が出た。24日、北九州市で開かれる日本産業衛生学会で報告される。労働基準法の改定で、今月から裁量労働制の適用範囲が企画部門などにも拡大されたが、健康への影響についての具体的な研究例はほとんどなかった。

 裁量労働制は、働いた時間ではなく成果に対して賃金を支払う形をとるため、残業代の削減や生産性の向上などを期待して導入を検討する企業が多い。研究開発職など一部の専門職については、12年前からこの制度が解禁されている。

 立道医師らの調査では、昨年1年間にうつ病など心の不調で仕事ができなくなった人が7人(全体の3.1%)いた。同じ部門で裁量制をとらずに働く人だと2.0%(397人中、8人)。表れ方では裁量組が1.5倍になる。

 「裁量組」で不調になった7人に、1カ月以上の休みを与えてから通常勤務に戻し、上司が勤務時間を管理したところ、再び元気に働けるようになった。

 立道医師らは、裁量労働が心の不調の原因と推測できる、としている。

 不調になった人たちは全員が30―40代の独身男性。もともと上司の評価も高く、本人に不満は少なかった。ただ、時間に関係なく自宅でも仕事に打ち込んで休みをほとんど取らなくなり、不眠などを訴えるようになったという。

 裁量組の約半数は、時間を自由に使え、成果も上がるなど裁量労働制を肯定的に見ていた。その半面、自分で仕事をどんどん引き受けてしまい、破たんしそうな人も約5%いた。

 裁量組の労働時間を、同じ職種の非裁量組の同期入社の社員と比べると、4人に1人は月20時間以上長かった。非裁量組の労働時間が平均で月200時間なのに対し、裁量組は同220時間。このうちの約3%が月に280―310時間も働いていた。

 また、裁量組の15%は裁量労働になって朝食を取らなくなった。夜も働き続ける結果、朝起きるのが遅くなるらしい。

 4年間では、肥満度や肝機能など身体面では異常は見られなかった。だが、保健婦の面接で、約1割が疾病発生リスクが最も高いと判断され、非裁量組の10倍にのぼった。

東芝、「成果管理型」賃金導入へ

2000年1月30日 13時7分 時事通信社
 東芝は30日、仕事の成果を反映した賃金制度を4月から導入する計画であることを明らかにした。入社4、5年目以上の非管理職約3万人が対象で、実際には営業職や開発技術者などが中心になる見込み。すでに組合に提示し、2月中旬までの労使合意を目指す。

 新制度では現行の勤務時間を反映した「時間管理型」に加え、職場での拘束時間にかかわらず、仕事の成果を評価する「成果管理型」を導入する。本人が希望し会社側が認めた社員は、毎日1回(最低30分)出勤する以外、勤務時間は自由裁量。基本給は現行の2割増となるが、残業手当は出ない。また、年2回の賞与は成果に応じて上乗せされる。 

ホワイトカラーに幅広く適用 新裁量労働制の指針案答申

7:01p.m. JST December 08, 1999
 中央労働基準審議会(労相の諮問機関)は8日、働き方や時間配分などを労働者にまかせ、もっぱら仕事の実績で評価される新裁量労働制についての労働省令要綱と運営指針案を諮問通り答申した。あらたに対象となるのは本社や支社などで、経営企画、人事・労務、財務・経理、広報などに従事している労働者で、大卒の場合、入社してから3―5年以上の経験が必要とされ、ホワイトカラーに幅広く適用されることになる。

 裁量労働制はこれまで、研究開発、ソフトウエア開発など専門的な11業務に制限されていたが、来年4月から企画、立案、調査、分析などホワイトカラー業務に拡大されることになっていた。新裁量労働制の具体的な適用業務は労使委員会で決め、本人の同意が必要とされている。同意をしない場合、不利益な取り扱いを禁止している。

新・裁量労働制−企画業務型−従事労働者の労働条件確保のための指針by syarosi 's Links

国立大教官に裁量労働制を

1999年11月16日 17時58分 共同通信社
 国立大学教官の勤務時間の見直しを検討していた人事院事務総長の私的研究会は16日、勤務時間を教官が自由に割り振りし、研究や学外活動をしやすくする「裁量労働制」の導入などを提言する報告書を提出した。

 人事院は「文部省などと協議しできるだけ早い時期に勤務時間法を改正したい」としている。

労働省、労働基準審に新裁量労働制の指針を諮問

10:39p.m. JST November 09, 1999
 労働省は9日、働いた時間ではなく、仕事の成果を重視する新裁量労働制の運用指針案を中央労働基準審議会(労相の諮問機関)に諮問した。指針案によると、新裁量労働制は大卒入社後に3―5年以上の職務経験を持つ社員を対象にし、人事・労務、財務・経理、広報などホワイトカラーの多くの業務に適用する。同審議会は12月初めにも答申する。同省はこれを受けて指針を作成し、来年4月から施行する。

 現行の裁量労働制は研究開発、弁護士など専門的なな11業務に限定されていたが、労働基準法の改正によってホワイトカラー全般に幅広く適用されることになった。指針案は9月にまとめられた労働省の専門家研究会の報告をもとにしている。

裁量労働制

1999/9/7 Mainichi INTERACTIVE
 働いた時間時間ではなく、仕事の成果によって賃金を決める制度。労働基準法は、裁量労働制の対象をデザイナーや研究開発など11に限っていたが、昨年の改正で「企画(きかく)、立案、調査、分析(ぶんせき)」の仕事が追加され、専門的な分野だけでなく、ホワイトカラーにも対象が広がることになった。

 サラリーマンは、1日8時間制が賃金の基本で、それ以上働けば残業手当が支払われる。一方、裁量制では、やり遂(と)げた仕事の内容に応じて一定時間働いたとみなす。そこで成果をあげるため長時間労働、サービス残業につながる恐(おそ)れがあると労働組合が反発。「企画、立案、調査、分析」という表現があいまいなので、仕事全般(ぜんぱん)に広げられる可能性も指摘(してき)された。

 2000年春まで実施が延期された。

裁量労働制指針 ホワイトカラーの多くの仕事が対象

10:50p.m. JST September 02, 1999
 働いた時間でなく実績で仕事の成果を評価する「裁量労働制」が来年4月の労働基準法改正で幅広く導入される問題について、その指針を検討してきた専門家研究会(座長・今野浩一郎学習院大教授)は2日、研究報告を中央労働基準審議会(労相の諮問機関)に提出した。

 報告によると、同裁量労働制の対象は大卒入社後3―5年以上の経験を持つ程度の社員で、業務内容は経営企画、人事・労務、財務・経理、広報のほか、営業・生産部門の企画担当なども含み、ホワイトカラーのほとんどの仕事に適用されそうだ。労働省は同審議会での審議を経たうえで、年内に指針を作成する。

 企業内での具体的な業務は労使委員会で決めることになっているが、その指針を定めることが、国会の付帯決議などで求められていた。

 人事・労務、広報、営業などの業務でも人事記録の作成、給与計算、広報誌の校正、具体的な営業活動などは裁量労働制の対象から外している。

 対象となる事業所は、本社のほか、事業本部、地域本社、地域を統括する支社、支店なども含むが、その場合、役員が常駐していれば対象になるという。

 裁量労働制は、労働時間で管理されず、仕事の成果を中心に評価される働き方のため、事実上のサービス残業が増えることも懸念されている。このため、報告は、裁量労働制の適用に同意しない労働者への不利益取り扱いを禁止している。本人の同意を得る場合は、評価・賃金制度を示し、同意しない場合も、その後の配置、処遇を本人に明示すべきだとしている。

2000年から裁量労働制を拡大、改正労基法が成立

(1:55p.m. JST September 25, 1998)
 働いた時間ではなく仕事の実績を重視して給与や人事を決める「裁量労働制」の適用拡大などを盛り込んだ改正労働基準法が、25日の参院本会議で共産党を除く各会派の賛成で可決、成立した。裁量労働制に関する規定は2000年4月から施行される。働き方や賃金体系が大きく変わりそうだ。

 現行では弁護士など11業務に限って認められている裁量労働制が、企画・立案業務など一般企業のホワイトカラーにも適用されるようになる。対象者は、本人の同意を条件に、企業内に設ける労使双方による委員会で決めるとされている。しかし、評価の公正さをどう確保するか、サービス残業の増加を防ぐ手だてをいかに講じるかなどの課題が残っているため、施行3年後の見直し規定が盛り込まれた。

 このほか、

 (1)残業時間について労相が年間360時間以内の上限基準を設ける

 (2)就業場所や時間などの条件を契約時に書面化する

 (3)同法の女性保護規定の廃止に伴う激変緩和措置として、育児や介護をする女性の残業を現行通り年間150時間までとする移行期間を設ける――などの改正もした。

 これらの施行は来年4月から。

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