TOPIC No.2-31I 中国の遺棄化学兵器

Index
01. 中国“遺棄化学兵器”問題 - 旧日本軍兵器引継書を読み解く by 正論 7月号
02. 遺棄化学兵器に新史実!? (フジサンケイ 2006/05/18)by桜魂
03.発見された中国への引継書:遺棄化学兵器(2006/05/29) byうっかり女のいいかげんにしてちょ!!   
04.中国遺棄化学兵器問題〜埋めたのは中国〜 by政治活動情報wiki
05.遺棄化学兵器問題 化学兵器は誰が「遺棄」したのか (2006年06月14日) by日本政策研究センター
06.高松内閣府遺棄化学兵器処理担当室長による中国メディアへのブリーフ (06.04.07)在中国日本国大使館
07. 日本に遺棄化学兵器の処理義務はあるのか 〜何故か同じ場所に遺棄されている支那やソ連の化学兵器〜(平成18年02月26日)
08. 中国での遺棄化学兵器の実態 〜村山政権が残した負の遺産の処理〜(2005年10月20日) byアジアの真実
09. パシコン・荒木民生代表の疑惑(19) 中国遺棄化学兵器処理利権が1兆円に拡大の可能性(2005.06.28) by情報紙「ストレイ・ドッグ」(山岡俊介取材メモ)
10. 誰が遺棄したのか「遺棄化学兵器」(03/09/30) by Oiso.net
11. 中国の遺棄化学兵器処理について by毒ガス島歴史研究所
12. 中国遺棄化学兵器処理 (外務省)
13. 遺棄化学兵器処理機構(英文略称:ACWDC)
14. 遺棄化学兵器調査 by NGP(日本物理探鉱株式会社)
15. 化学兵器==半世紀後の負の遺産==731部隊

中国の遺棄化学兵器

2006年04月16日(日) 東奥日報

 旧日本軍は1920年代から致死性のイペリットなどを使った化学兵器の研究開発を本格的に開始。その後中国に輸送したため、同国の兵たん基地周辺地域などに化学兵器が残されたとされる。戦後、建設現場などで作業員らが毒ガスにより死傷する事故が相次ぎ、中国政府が90年、日本政府に解決を要請。日本が95年、中国も97年にそれぞれ化学兵器禁止条約を批准したことで、これに基づき日本が中国の遺棄化学兵器を回収、処理する義務を負うことになった。

遺棄化学兵器

2005年12月07日(水) 東奥日報

 日中戦争の終結直後に旧日本軍が中国国内で遺棄した致死性のイペリットなどの毒ガス兵器。戦後、建設現場などで作業員らが毒ガスに触れ死傷する事故が相次いだ。中国側の通報を受け、1991年、処理に向けた政府間交渉を開始。97年発効の化学兵器禁止条約によって日本に廃棄処理が義務付けられた。日本政府はこれまで中国全土で約3万7千発を発掘回収。30―40万発が中国吉林省敦化市ハルバ嶺に集中して埋設されていると推定している。


遺棄毒ガス、国の責任否定 中国の被害者ら48人敗訴

2010/05/24 中国新聞ニュ−ス

 中国黒竜江省チチハル市で2003年、旧日本軍の遺棄したドラム缶から漏れた毒ガスに触れるなどして死傷した中国人被害者と遺族計48人が、日本政府に計約14億3千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で東京地裁は24日、「政府の法的責任は認めがたい」として請求を棄却した。

 原告側によると、他国に遺棄した化学兵器の廃棄を義務付け、日本も批准した化学兵器禁止条約の発効(1997年)以降、中国で起きた旧日本軍の毒ガス被害をめぐる初の司法判断。

 山田俊雄やまだ・としお裁判長は、まず、毒ガス兵器と事故の因果関係を認め「日本政府の担当者は事故発生までに、チチハル市内の旧日本軍の駐屯地や関連施設に残る毒ガス兵器が付近住民の生命、身体に危害を及ぼす可能性を予見できた」と指摘。

 その一方で「中国全土に遺棄された毒ガス兵器すべてを事故以前に調査するのは極めて困難で、チチハル市の現場調査を他の地域よりも優先すべきだったと認めることはできない」として、原告側が主張する日本政府の作為義務を否定した。

 原告は14〜61歳の男女43人と、死亡した男性作業員の遺族5人。判決によると、事故は2003年8月に市のマンション建設現場などで発生した。

 原告らは、日本政府が中国政府に支払った3億円から約9割の分配を受けたが、後遺症の恒久的医療支援の求めなどが実現していないとして07年1月に提訴した。

中国・旧日本軍の毒ガス流出:国家賠償訴訟 被害者、24日判決に「期待」 /東京

2010年05月22日 毎日新聞〔都内版〕

 中国・チチハル市で03年に起きた旧日本軍の遺棄毒ガスによる事故で、被害者ら48人が国に約14億円の賠償を求めた訴訟の判決が24日に東京地裁で言い渡される。原告2人が21日、都内で会見し、改めて「事故で人生が狂った」と訴え、「24日は希望の日でもある」と判決に期待を寄せた。

 毒ガス液に触れ、足の皮膚のただれが残っている原告団副団長の丁樹文さん(30)は「進学を断念したり、働き盛りの人は職を失った」と話し、事故後7年たった今も被害者たちが苦しんでいる現状を明かした。一方、馮佳縁さん(17)は事故で体力や記憶力が低下したといい、「日本政府は一刻も早く解決をしてもらいたい」と訴えた。

 遺棄毒ガス事故を巡る同種訴訟は過去2件あり、共に原告側の敗訴が確定している。【和田武士】

日本政府は防げた 中国遺棄毒ガス損害賠償訴訟 口頭弁論で弁護側

2010年01月19日(火)「しんぶん赤旗」

 中国吉林省敦化(とんか)市郊外で2004年7月、旧日本軍が終戦前後に遺棄した砲弾から漏れた毒ガスで被害に遭った少年2人が原告となり、日本政府に損害賠償を求めている裁判の口頭弁論が18日、東京地裁(本間健裕裁判長)で開かれました。

 原告側弁護団は国の責任を認めなかった二つの東京高裁判例の誤りを指摘。改めて国の責任を追及しました。

 判決はいずれも、終戦前後に毒ガス兵器を多量で広範囲に遺棄したために、特定できないので国の責任はないというもので、弁護団は「道理に反する判断」だと批判しました。

 その上で、1991年に日本政府が実施した遺棄化学兵器第1回調査に参加した中国人の証言などを紹介。弁護団によると、調査期間中の6月17日に日中双方が会談し、その際、本件被害地で被害に遭った男性から被害状況を聴き、傷跡の写真を撮ったといいます。

 弁護団は同調査に関する情報公開請求をしましたが、中国側参加者の名前が黒く塗りつぶされるなど、ほとんどが不開示でした。

 弁護団は事実を明らかにするよう求めると同時に「政府は91年の時点で(事故現場に)遺棄化学兵器があったことを知っていた」と指摘。調査をきちんと行っていれば事故は未然に防げたとし、速やかな調査と早急の賠償を求めました。


日中合同で毒ガス兵器回収 ハルバ嶺、旧日本軍が遺棄

2008/12/13 中国新聞ニュ−ス

 【北京13日共同】中国で旧日本軍により遺棄された毒ガス兵器が集中的に埋まっている吉林省敦化市ハルバ嶺で十三日午前、日中合同でガス弾の発掘・回収作業が始まった。兵器の種類や埋蔵状態などを調べるための試掘作業で、今回は来年一月十九日まで実施し、千発程度を回収する予定。

 化学兵器禁止条約に基づき、二〇〇〇年から南京市などで計四万五千発の兵器を回収しているが、ハルバ嶺での回収は初めて。

 発掘作業は埋設地の上をテントで覆い、毒ガスが漏出しても拡散しにくいよう低圧にした状態で行う。

 中国に遺棄された化学兵器は大部分がハルバ嶺に埋設されており、三十万〜四十万発と推定されている。試掘を三年行った後、ハルバ嶺で本格的な発掘や処理施設の建設を行う計画。

 条約による処理期限は当初〇七年で、延長され一二年となったが、それでも「期限内の完了は難しい」(北京の日本外交筋)状況だ。

2008年08月26日

【中国】旧日本軍の遺棄毒ガス、少年2人が被害で日本政府に賠償請求 「今も傷がかゆい」

2008/08/26(火) Livedoor(Record China)

 2008年8月26日、中国新聞網によれば、中国の少年2人が旧日本軍が遺棄した毒ガス兵器で被害を受けたとして、日本政府に損害賠償を求めていると、共同通信が伝えた。

 被害を受けたのは吉林省の周童(ジョウ・トン)くん(16歳)と劉浩(リウ・ハオ)くん(12歳)。

 2004年7月、家の近所で遊んでいた2人は小川の中に旧日本軍が遺棄した兵器を発見。 表面の泥を落とす際に、漏れたびらん性毒ガス「マスタードガス」の液体に触れ、皮膚がただれるなどの被害に遭い、その後も免疫力低下や呼吸障害などの後遺症が残った。2008年、2人は東京地裁に訴えを起こし、日本政府に損害賠償を求めた。8月25日、2人は東京地裁で意見陳述を行うとともに、記者会見を行い、メディアに向けて「事故が起こる前の体と生活を返してほしい」と訴えた。

 記者会見の席で、周童くんは「日本が中国に残した毒ガス弾を早く回収してほしい」と話し、劉浩くんは「今も傷がかゆい」と話した。意見陳述の際、劉くんの父親は子供の将来が心配だと話し、家は貧しい農家のため、多額の治療費を払うことができないと述べたという。(翻訳・編集/岡田)

チチハルの有毒ガス、旧日本軍の化学兵器でないと判明

2008年06月08日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【チチハル(中国黒竜江省)=末続哲也】中国黒竜江省チチハル市で5日に有毒ガスが漏れ、3人が死亡した事故について、新華社電は7日、チチハル市当局の話として、有毒ガスの発生源となったボンベが、旧日本軍の遺棄化学兵器である可能性は排除されたと伝えた。

 同電によると、中国軍の専門家がボンベについて分析した結果、軍用の毒ガス弾ではないと認定したという。

有毒物質漏出で3人死亡 中国、遺棄化学兵器か

2008年06月06日 中国新聞ニュ−ス

 【北京6日共同】新華社電は6日、中国黒竜江省チチハル市で5日、有毒化学物質が漏出し、3人が死亡したと伝えた。北京発のロシア通信によると、化学物質が入った砲弾のようなものを地元の農民らが見つけて市場に運ぶ途中、化学物質が漏れ始めたという。

 ロシア通信は、チチハル市の地元行政筋の話として、第2次大戦時に遺棄されていた化学兵器が爆発したとも報じているが、具体的な状況は不明。当局が調査に乗り出しているという。

 チチハル市では2003年8月、旧日本軍が遺棄したとみられる化学兵器の毒ガス弾が見つかり、漏れた溶剤で住民40人以上が中毒になり入院。少なくとも1人が死亡している。

PCI前社長ら4人起訴 詐欺罪、ODA工作も捜査

2008/06/03 中国新聞ニュ−ス

 東京地検特捜部は三日、中国での遺棄化学兵器処理事業をめぐり、大手建設コンサルタント「パシフィックコンサルタンツインターナショナル」(PCI)側が発注元の内閣府に人件費などを過大請求し計約一億四千百万円の不正利益を得たとして、詐欺の罪で前社長多賀正義たが・まさよし容疑者(62)ら四人を起訴した。

 PCIをめぐっては、政府開発援助(ODA)事業で便宜を図ってもらうため、外国政府高官への工作資金を香港の関連会社へ送金した疑惑も浮上。特捜部は不正に資金を捻出ねんしゅつし脱税した疑いがあるとして、法人税法違反容疑で詰めの捜査を進めている。

 ほかに起訴されたのはPCIの元役員栗原努くりはら・つとむ被告(56)、関連会社「遺棄化学兵器処理機構」元社長遠藤博之えんどう・ひろゆき被告(68)ら。一緒に逮捕された同機構の元役員(50)は処分保留で釈放した。

 起訴状によると、多賀被告らは共謀し、二〇〇四年度事業の一部を内閣府に無断で設計会社など四社に外注し、本来請求できない外注先技術者分の人件費などを不正に請求して利益を得た。

 特捜部は既に、不必要な事業費計約一億二千万円を支出したとして、特別背任の罪でPCI元社長の荒木民生あらき・たみお(71)、森田祥太もりた・しょうた(66)両被告をそれぞれ起訴している。

【やばいぞ日本】第2部 資源ウオーズ(7)「工作の成果」1兆円

2007/08/25 The Sankei Shimbun WEB-site

 中国にある旧日本軍の化学弾の処理をめぐり、日本政府が今年度予算を含め、投入する国費は累計約683億円に上る。さらに今後建設される発掘回収施設費は940億円。無害化処理施設の建設費は1000億円を超えるとみられる。

 現地での人件費や施設維持費などがかさみ、「日本の持ち出しは総額1兆円規模になる」と専門家は分析する。

 この遺棄したとされる化学兵器の処理問題ほど、重要な条件が不明なまま、中国の言い分を受け入れた例は類をみないと指摘されている。

 ある外務省OBは「中国にとって旧日本軍の化学兵器処理は戦後最大の対日政治工作の成果だ」と語る。

 1997年に発効した化学兵器禁止条約によれば、遺棄化学兵器とは「1925年以降、いずれかの国が、他の国の領域内に当該他の国の同意を得ないで遺棄した化学兵器」と明記されている。

 敗戦によって満州を含む中国大陸の旧日本軍は降伏し、すべての兵器、施設、財産は旧ソ連と中国に没収、接収され、所有権は両国に移転した。

 また、いったん包括的に没収したあと、中国に旧日本軍の化学弾を残したのはソ連である。

 ここから導き出されるのは二つの疑問である。

 一つは、武装解除や占領による没収は、当該国の同意を得たことにならないのか。もう一つはソ連に条約上の処理義務は生じないのか。

 こうした旧日本軍化学弾の所有権はどこにあるか、という問題こそ、日本政府は詰めなければならないはずだ。

 ところが、外務省は所有権が日中いずれにあるのかを精査した形跡はない。ロシア政府に対しても情報や資料の提供を求めていない。

 95年9月、この条約に批准した当時の村山富市首相は「遺棄した方の国にその処理の責任がある。誠実に実行するのは当然だ」と国会で答弁した。河野洋平外相は「外国が遺したものを含めて日本が責任をもって処理する」とまで言い切った。河野氏らは引き渡したことを証明した書類がないとして、中国に有利な化学兵器処理策を推進したのである。

 日中両国は99年7月、日本側が遺棄処理費の全額を負担することなどを盛り込んだ覚書を交わした。将来の事故まで日本が補償することとされた。初めから日本に責任ありきという結論があったがゆえに政府は所有権問題に背を向けてきたといわざるを得ない。

 だが、化学弾を引き渡したという証言が、外務省による遺棄化学兵器に関する旧日本軍兵士16人への聞き取り調査で明らかになった。

 2004年3月に受け取った報告書には「終戦時は黒龍江省牡丹江市付近に駐屯し、鏡泊湖付近の平地で(ソ連軍の)武装解除に応じ、他の鉄砲や弾薬とともに数千発の化学弾を引き渡した」という元軍曹、二本柳茂氏の証言が盛り込まれていたからだ。

 ただ外務省はこの報告書を公表していない。「ソ連軍と引き渡しの文書を交わしたという証言ではないからだ」(中国課)と説明する。

 遺棄化学兵器の処理は、国の名誉にかかわる問題だ。外務省が事実関係を明らかにしなければ、国益は損なわれていくだけだ。処理経費の一部が、中国軍の近代化に寄与する可能性もある。 対中迎合外交のつけを日本国民は子々孫々までたっぷり払わされることになるのだろうか。(高木桂一)

「日本製を夜間にころがした」

 8月14日、8人の陸上自衛官が中国吉林省ハルバ嶺近くの敦化(とんか)に飛んだ。自衛官たちは9月18日まで、埋められている旧日本軍の化学兵器の発掘、回収作業に汗を流す。

 一方で旧日本軍の化学弾が発掘された同じ場所から他国の砲弾がみつかっている。2004年9月に陸上自衛官が黒龍江省寧安(ねいあん)市内で行った発掘、回収作業では化学兵器、通常砲弾、地雷、小銃弾など2000発が混在して発見されたが、旧日本軍のものは89発にすぎなかった。

 中国に派遣されたことがある自衛官は「発掘した通常弾、化学弾の中には(弾には必ず巻かれている)銅帯が抜き取られた弾がいくつもあった」と振り返る。中国軍が日本から没収した化学弾から、カネになる銅だけを奪って地中に埋めたに違いないと、軍事専門家は解説する。

 処理作業に携わった政府関係者は「朝、発掘、回収予定地に着いたら、昨夜はなかった日本製の化学弾ひとつが現場にころがしてあった。どこかに保管されてあったものだ」とも語る。

 これらは、化学兵器禁止条約が問題にする「同意を得ずに遺棄された化学兵器」に当たらないことを示していよう。

 昨年春、山形県にある全国抑留者補償協議会(全抑協)のシベリア史料館に、中国で旧日本軍が武装解除の際に引き渡した武器・弾薬の詳細を記した「兵器引継書」約600冊が残っていることが明らかになった。

 90年代に故斎藤六郎・元全抑協会長がロシア各地の公文書館などから合法的に持ち帰ったものだ。引継書に記された兵器移交目録の「受者」には、「陸軍少将 李盛宗」「軍政部特派員 楊仲平」などと国民党軍の責任者の身分、署名、捺印(なついん)があった。

 これを受けて昨年5月12日の衆院内閣委員会で戸井田徹議員(自民党)が政府の対応をただした。安倍晋三官房長官(当時)は「この資料は精査すべき内容だ。政府としてもしかるべき調査をする」と答弁した。

 その直後、戸井田氏の議員会館の事務所に外務省の中国課長が飛び込んで、こう言い放った。

 「(引継書が)600冊出てきたところで全容は分かりませんよ」。

 戸井田氏は「あなたはどこの国の役人だ」といさめたという。

 外務省は結局、昨年10月、シベリア史料館の600冊の引継書の約3分の1を写真撮影し、民間の専門家に判読を委託することになった。

 また、今になって、中国の言い分がいかに科学的根拠を欠いているかがわかってきた。

 旧日本軍が遺棄したとされる化学兵器の総数について、中国が主張していたのは「200万発」。当初の日本政府説明は「70万発」。それが埋設地の吉林省ハルバ嶺で行った日本側による磁気調査の結果、30万−40万発にとどまることが後で判明した。

 日本がこれまで発掘、回収した旧日本軍の化学兵器は約3万8000発。推定埋蔵数の1割にすぎない。条約で義務付けられた処理期限は2012年4月までだ。それまでに処理作業が完了することは難しい。

 旧日本軍の化学弾の所有権を不明にしたまま、合意を急いだことが大きな禍根を残している。

毒ガス被害に逆転敗訴 中国遺棄兵器で東京高裁

2007/07/18 中国新聞ニュース

 旧日本軍が中国に遺棄した毒ガス兵器や砲弾で戦後に被害を受けたとして、中国人被害者と遺族計十三人が国に二億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は十八日、約一億九千万円の支払いを命じた一審判決を取り消し、原告逆転敗訴とした。

 小林克已裁判長は「日本政府が、遺棄兵器の情報を収集し、中国に提供したり、兵器の調査、回収を申し出ていたとしても、被害を防止できた高度の蓋然(がいぜん)性は認められない」と判断した。

 判決によると、被害を受けたのは計十人。黒竜江省で一九七四年と八二年、工事中に発見した毒ガス弾などの液体に触るなどした作業員七人が中毒になり、手足の機能障害などの後遺症を負い、うち一人は十七年後に死亡した。九五年には同省の工事現場で見つかった砲弾が爆発、二人が死亡、一人が重傷を負った。

 二○○三年九月の東京地裁判決は「中国に毒ガス兵器の配備状況などの情報を提供すれば、事故を回避できた可能性があった」として、国の不作為を違法と認定していた。

二審も被害賠償認めず 中国遺棄毒ガス兵器訴訟

2007/03/13 中国新聞ニュース

 旧日本軍が中国に遺棄し、戦後発見された毒ガス兵器や砲弾で健康被害を受けたとして、中国人五人(うち一人は提訴後に死亡)が国に計八千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は十三日、請求を棄却した一審東京地裁判決を支持、原告側の控訴を棄却した。

 大喜多啓光裁判長は判決理由で、毒ガス兵器を放置した国の違法性や危険性、被害が予想できた可能性を認定。しかし「国は中国の同意なく回収できず、具体的な放置場所も把握していなかった。また遺棄したことを情報提供したとしても被害は防げなかった」と判断した。

 判決によると、原告は一九五〇年から八七年にかけて、建設現場などで見つかった缶入りの毒ガスを吸ったり、漏れた液体を浴びて体が不自由になった。不発弾が爆発して負傷した人もいた。

 一審東京地裁判決も二〇〇三年五月、「遺棄は違法だが、主権の及ばない中国での回収は困難」として国の賠償責任を否定し、原告側が控訴した。

中国広東省で97発回収 旧日本軍の毒ガス弾

2007/02/07 The Sankei Shimbun WEB-site

 内閣府は7日、中国広東省広州市で実施した旧日本軍の遺棄化学兵器の発掘・回収事業で、旧日本軍の毒ガス弾とみられる砲弾97発を回収したと発表した。

 これらの砲弾は、密封され、中国内の臨時保管庫に保管される。

 旧日本軍の砲弾ではない364発も回収され、中国側に引き渡した。広州市での回収事業は平成17年に続いて2回目で、今回は昨年11月22日から2月6日まで行われた。

中国遺棄化学兵器問題 新資料発見か、政府が調査

2006/09/03 The Sankei Shimbun

≪結果次第では事業見直しも≫

 中国遺棄化学兵器問題で、「日本軍が中国に化学兵器を遺棄した」という中国側の主張を覆す可能性のある資料が見つかっています。この問題では、廃棄処理のために政府が負担する費用が数千億円規模に膨らみかねないことや、“遺棄兵器”の実態が不透明という指摘も出ています。政府首脳は詳しく調査、分析するとしています。(『正論』編集部 喜多由浩)

 この問題は、先の大戦で「旧日本軍が中国各地に化学兵器を遺棄した」として、平成2年に中国政府が日本政府に解決を要請してきたことが発端です。9年には、遺棄化学兵器の廃棄義務をうたった化学兵器禁止条約が発効し、日中両国が批准。11年には、日本側が廃棄処理費用を全額負担することなどを盛りこんだ覚書を交わしました。

 これに伴い日本政府が負担する総事業費は今後どれだけ膨らむか、見通しすら明確ではありません。

 中国側は、旧日本軍が遺棄した化学兵器が、吉林省のハルバ嶺などに約200万発残っている、と主張しています。しかし、その主張に疑問を持つ意見は当初から少なくありませんでした。終戦後、日本軍は旧満州(現・中国東北部)ではソ連軍(当時)によって、中国大陸部では主に中国国民党軍によって武装解除され、所持していた武器・弾薬は化学兵器も含めてソ連・中国軍に引き渡していた(遺棄したのではない)とされていたからです。

 しかし、日本政府は「中国、ソ連の同意の下に引き渡されたことを確実に裏付ける証拠、資料があるとは承知していない」などという消極的な理由で、中国側の主張をいわば“丸飲み”してきたのです。

 ところが最近になって中国側の主張を覆す可能性があるさまざまな資料が見つかりました。山形県のシベリア史料館には、中国で日本軍が武装解除の際に引き渡した武器・弾薬を詳細に記した「兵器引継書」が約600冊も残っていました。受け取った中国軍の責任者の署名・捺印(なついん)があり、化学兵器だけを除外した形跡も見られません。

 また、防衛庁の防衛研究所には、日中両政府が「遺棄化学兵器」として廃棄処理対象にしている『あか筒』『みどり筒』を台湾で中国軍に引き渡していたことを記した「引渡兵器目録」がありました。さらには、中国側が遺棄化学兵器が大量に残っていたと主張しているハルバ嶺近くの敦化で、化学兵器(毒ガス兵器)をソ連軍に引き渡したという元日本軍兵士の証言まで出てきたのです。

 安倍晋三官房長官は5月、衆院内閣委員会での答弁で「(シベリア史料館で見つかった資料などについて)政府としてしっかり調査したい」と述べました。政府は、新しい事実を示す資料などが見つかった場合、事業の「基本的な枠組みが変わってくる」としており、対応が注目されます。

中国“遺棄化学兵器”問題 スクープ第4弾

【正論9月号】喜多由浩

■ 政府が二年前に入手していた化学兵器引渡し文書

 中国“遺棄化学兵器”問題で、政府が『化学兵器』として処理の対象にしている「あか筒」「みどり筒」を、中国側に引き渡していたことを明記した引渡兵器目録が、防衛庁の防衛研究所に残されていることが分かった。しかも、この資料の存在は2年前に、政府側に伝えられていたのである。これまで政府側は、「日本軍が化学兵器を残置したことに、中国側が同意していたことを示す資料は見つかっていない」という趣旨の言い訳を繰り返してきた。さらに、そうした文書が見つかれば、「(処理の)基本的な枠組みが変わってくる」と国会答弁で明確にしている。早速、中国側と再協議し、支援の見直しを進めていただきたい。

●リストに明記された「あか筒」「みどり筒」

 この資料は、防衛研究所にある「陸軍・高雄(台湾)分廠考潭集積所・引渡兵器目録」。中華民国34年(昭和20年=1945年)12月18日の日付で、日本軍側が、中国・国民政府軍に引き渡した武器・弾薬の品目と数が約10ページにわたって、細かく記されている。受け取った中国側の責任者の署名・捺印(なついん)があり、間違いなく、引き渡しが行われた(所有権の移転)ことを示すものだ。この文書は極秘でも何でもない。防衛研究所に行けば、だれでも閲覧・複写ができる資料である。

 その引き渡しリストの中には、大あか筒 100▽小あか筒 2250▽みどり筒 点火具50▽催涙筒 1−などと日中両国が『化学兵器』として、日本側が処理する対象になっている兵器の名称がはっきり書かれているのだ。

 その意味は、内閣府の遺棄化学兵器処理担当室のホームページの資料を見るとよく分かる。「旧日本軍が保有していた化学兵器」の一覧表の中で、「有毒発煙筒」に分類されるものとして「あか筒」「みどり筒」が確かに入っている。そして、弾薬の化学剤として使われている「あか剤」はくしゃみ(嘔吐)剤、「みどり剤」は催涙剤であることが説明されているのだ。

 これらはいわゆる致死性の毒ガスではなく、本来、化学兵器禁止条約の対象にもなっていないのに、日中の「談合」によって、日本の責任で処理する『化学兵器』に含められてしまったことは、すでに『正論』で報じてきたところだ。

 台湾は終戦まで日本の領土だったため、日本軍は南京に司令部を置く支那派遣軍ではなく、台湾軍(後に第10方面軍)だが、武装解除を受けたのは、支那派遣軍と同じ、蒋介石総統の国府軍である。つまり、中国側が受け取っていることにはまったく変わりがない。

●公開されなかった報告

 今年2月、内閣府の高松明・遺棄化学兵器処理担当室長は、衆院内閣委員会において、「正式に中国やソ連に化学兵器が引き渡されたという文書が発見されれば基本的な枠組みが変わってくる」と答弁した。これは、明確な証拠となる文書があれば、総額で1兆円といわれる処理費用の支払い義務を、日本が背負う必要はない、ということだ。しかし、その同じ委員会の場で高松室長は、「政府として現在、中国、ソ連の同意の下に引き渡されたことを確実に裏付ける証拠、資料があるとは承知していない」という見解を示している。

 高松室長の答弁は、これまでの政府側の見解を踏襲したもので、つまりは、(1)中国は引き渡しに同意していないと主張している(2)日本側にそれをくつがえす資料や証拠はない−という極めて情けない論法である。さらに、「資料がない」と言い切っているのに、政府側に資料を探し出そうという意欲はほとんど感じられない。

 実はこの問題が日中間の懸案となり始めていたころ、防衛庁が防衛研究所に、この種の資料探しを非公式に命じたことがある。このときは、約2年間にわたって、担当者が研究所の資料を調べたが、あか筒などが明記された「高雄分廠考潭集積所・引渡兵器目録」についての報告はなかったという。元防衛研究所幹部は、「(高雄分廠考潭集積所・引渡兵器目録は)非常に意味のある文書だと思う」とした上で、「当時、なぜこの資料が見つからなかったのか、なぜ報告がなかったのかは、よく分からない」と話している。

 だが、この「高雄分廠考潭集積所・引渡兵器目録」は、その後に行われた別の調査で、発見されていたのだ。その内容は2年前の平成16年にまとめられた政府機関への報告にも盛りこまれていたが、その文書が公開されることはなかったのである。

●もはや言い逃れはできない

 本誌は6月号で、山形のシベリア史料館で約600冊の旧日本軍兵器引継書が発見されたスクープを報じて以来、3号にわたって、この問題の虚構性と中国の言いなりになっている媚中派の政治家、官僚の実態を再三にわたって、明らかにしてきた。シベリア史料館の兵器引継書は、化学弾とみられるものを含むすべての武器・弾薬を、中国側に整然と引き渡していた事実を証明する貴重な資料である。

 安倍晋三官房長官は国会で、「政府としてしっかり調査をしたい」と答弁し、内閣府や法務省の担当者が、作業を進めている、と伝えられているが、今回、明らかになった防衛研究所の資料についても、改めて精査することが必要だ。

 関係者によると、一部の政府関係者は、シベリア史料館の引継書についても、存在自体は知っていた、という。それなのに調べることさえしなかったのである。

 こうした兵器引継書が存在するのはシベリア史料館だけではない。復員時に、それこそ命がけで日本へ持ち帰った人たちは多数、いるのだ。実際、当編集部には、6月号以降、そうした人たちからのお便りがたくさん届いている。

 千葉県芝山町の伊藤正夫さん(54)からは、中国・青島の独立歩兵第18大隊の副官だった父・高夫さん(故人)が保管していた引継明細書が寄せられた。大隊長だった柏崎與三二氏(同)から託されたものだという。

 その引継書には、武器・兵器のほか、生活用品、食料、医薬品、軍馬、軍刀の由来に至るまで、39ページにわたり、事細かに書かれている。伊藤さんは、「まさに歯ブラシ1本、包帯1本まで細かくチェックして書いてある。日本軍は本当に生まじめだった。これを見れば、極めて整然と中国側にすべての兵器・物品を引き渡していたことがよく分かります」と話している。

 国民は中国の言い分しか聞こうとしない一部の政治家・官僚に怒り心頭なのだ。続々と編集部に届く、お便りがそれを示している。これだけの「証拠」が出てきたいま、もはや言い逃れはできないはずだ。一刻も早く、支援事業の見直しを行うべきである。

日本、吉林・敦化の遺棄化学兵器を回収へ

2006年08月19日 asahi.com

 日本の内閣府は18日、旧日本軍が吉林省敦化市に遺棄した化学兵器を、8月22日から9月26日にかけ、中国政府との協力により回収することを明らかにした。 新華社のウェブサイト「新華網」が伝えた。

 日本政府は去年10月から今年5月まで、土中から見つかった同市の遺棄化学兵器の回収を進めており、すでに化学弾605発が回収されている。

 同市では2004年7月23日、川で沐浴していた子供4人が遺棄化学弾1発を見つけ、化学弾から漏れ出した毒ガスに接触して2人が負傷する事故が起きた。負傷した子供には手足などの部位が赤くはれたり、ただれたりしている。日本の外務省報道官は後に談話を発表し、毒ガスによる傷害事故が、旧日本軍の遺棄した化学兵器によるものと認めている。

中国遺棄化学兵器の発掘・回収事業への自衛官の派遣について

平成18年08月18日 防衛庁・自衛隊

 内閣府遺棄化学兵器処理担当室からの依頼を受けて、本年8月22日(火)から9月25日(月)までの間に中国吉林省敦化(とんか)市(蓮花泡(れんかほう))で実施される予定の中国遺棄化学兵器の発掘・回収事業へ、防衛庁から陸上自衛官8名を派遣することとした。

 防衛庁は、これまでも内閣府の依頼を受けて、平成12年度に黒龍江省北安市(10名派遣)、平成14年度に黒龍江省孫呉(そんご)県(8名派遣)、平成15年度に河北省石家荘(せっかそう)市(8名派遣)、平成16年度に黒龍江省牡丹江(ぼたんこう)市(寧安(ねいあん))(8名派遣)及び平成17年度には本年度と同じ吉林省敦化(とんか)市(蓮花泡(れんかほう))(8名派遣)における遺棄化学兵器の発掘・回収事業にそれぞれ砲弾及び化学の専門家である陸上自衛官を派遣しており、今回で6回目の派遣となる。

 防衛庁から派遣される陸上自衛官の主な業務は、砲弾の識別、砲弾の汚染の有無の確認、作業員の安全管理等について、専門家として指導等を行うことにより、今回の発掘・回収事業が安全かつ効率的に遂行されるように協力を行うことである。

(注)上記派遣自衛官の数には、内閣府へ出向中の陸上自衛官2名を含む。

22日から遺棄化学兵器回収 中国吉林省で内閣府

2006/08/18 The Sankei Shimbun

 内閣府は18日、中国政府の協力を得て、22日から9月26日まで吉林省敦化市で旧日本軍の遺棄化学兵器の発掘、回収事業を実施すると発表した。

 敦化市での回収事業は、昨年10〜11月と今年5〜6月にも実施しており、今回が3回目。これまでに605発の化学砲弾を回収している。

黒竜江で発見の遺棄化学兵器、中日が回収に着手

2006年07月27日 人民網日本語版

中日両国の化学兵器専門家は26日、新たに発見された旧日本軍の遺棄化学兵器600数件の緊急回収作業を、哈爾濱(ハルビン)市の日本遺棄化学兵器管理庫で開始した。

中国を侵略した旧日本軍によるこれらの遺棄化学兵器は、6月27日から7月2日にかけて、黒竜江省綏化市望奎県の掘削工事現場で発見された。中国政府の要求に応じて、日本政府は化学兵器の鑑別・登録・密封などを行う専門家チームを派遣。一行は25日に哈爾濱に到着した。

中国側の関係者によると、今回の緊急回収作業は12日間の予定。鑑別を経て密封した化学兵器は、黒竜江省哈爾濱市東風鎮の日本遺棄化学兵器哈爾濱管理庫に保管され、後にまとめて処理する。

これに先立ち中日両国の専門家は10日にも、黒竜江省寧安市で6日間の遺棄化学兵器回収作業を終え、日本の遺棄化学弾および不明弾210発を回収、密封した。これらは密封されたまま、最終処理まで保管される。(編集NA)

最近発見の遺棄化学兵器600発 中日両国が緊急回収

2006/07/27 中華人民共和国駐日本国大使館

 中日両国の化学兵器の専門家が26日、日本遺棄化学兵器ハルビン保管庫で、最近発見された600発(点)余りの日本軍遺棄化学兵器の緊急回収作業を正式に開始した。

 この600発余りの侵華日軍(旧日本軍)遺棄化学兵器は、6月27日から7月2日までの間に、黒竜江省綏化市望奎県で発見されたもの。安全を確保するため、中国政府の要請に応じ日本政府が派遣した専門家がこれらの化学兵器を鑑別、登録、包装、保管する。日本内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室が派遣した専門家グループは25日、ハルビンに到着した。

 中国側関係者によると、今回の緊急回収作業は12日間の予定で、鑑別包装された化学兵器は黒竜江省ハルビン市東風鎮にある日本遺棄化学兵器ハルビン保管庫に保管され、それ以前に発見された化学兵器と共に後日廃棄される。

 中日両国の専門家が6日間の予定で行っていた黒竜江省寧安市の日本遺棄化学兵器の発掘と回収は7月10日までに完了しており、日本が遺棄した化学砲弾と不明砲弾210発が発見された。これらの砲弾は最終廃棄のため、包装保管された。 (ハルビン06年07月26日発新華社)

日本の専門家チーム、遺棄化学兵器処理でハルビン入り

2006/07/26 中華人民共和国駐日本国大使館

 日本の内閣府遺棄化学兵器処理担当室派遣専門家チームは25日、黒竜江省のハルビンに到着した。同省綏化市で最近見つかった侵華日軍(旧日本軍)の遺棄化学兵器600発(点)余りを処理する。

 先月27日から今月2日までに綏化市望奎県の工事現場で古い砲弾が600発余り見つかった。関係機関の鑑別で、初歩的に日本の遺棄化学砲弾であると判断された。雷管も含まれている。中国側はこれらの砲弾を発見地点から最寄りの安全な場所に運び、保管して、監視を行った。最近、安全に保管するため、中国側がこれらの化学兵器を綏化市からハルビンにある日本遺棄化学兵器保管庫に移した。

 日本の専門家チームは「ACW」(遺棄化学兵器)と書かれた機器・設備を持ってきている。これに先立ち、日本側の専門家は綏化市でサンプル検査を行い、これらの砲弾が日本の遺棄化学兵器であることを確認した。(ハルビン7月25日発新華社)

遺棄化学兵器、200発を確認 政府の中国現地調査

2006年07月11日 asahi.com

 旧日本軍が中国に遺棄した化学兵器を調べている日中両政府の調査団は10日までに、中国黒竜江省寧安市で約700発の砲弾を回収し、うち約200発が遺棄された化学兵器であることを確認した。日本政府関係者が明らかにした。

 関係者によると、5日から寧安市で本格的な発掘・回収作業を開始。9日現在で、当初見込みの200発を大幅に上回る695発を回収した。砲弾の種類を鑑定したところ、うち199発が旧日本軍の遺棄化学兵器で、11発も旧日本軍の遺棄化学兵器の可能性があるという。

 遺棄化学兵器は日本政府の責任で処理するが、残りの砲弾は通常弾とみられ、中国側が引き取る予定だ。

中国、日本に遺棄化学兵器処理の加速を要求

2006.07.07 中華人民共和国駐福岡領事館

中日両国の関連部門の専門家は5日、黒龍江省寧安市で発見された旧日本軍による遺棄化学兵器の除去回収作業を始めた。作業は4日間続く予定。これまでに砲弾31発が除去され、うち7発は化学弾だった。新華社が伝えた。

 「1997年に発効した『化学兵器禁止条約』(CWC)は、日本が中国に遺棄された化学兵器を2007年4月までに完全に撤去すると規定しているが、現状から見ると、明らかに期限内には終わらない」。旧日本軍の遺棄化学兵器問題を担当する、外交部・日本在華化学武器問題弁公室の劉毅仁主任はこう語る。

 CWCはさらに「遺棄国は他国に遺棄した化学兵器を廃棄処理するとともに、処理に必要な資金、技術、技術者、設備、その他の資源を提供する責任を負う」、「受け入れ国は適切な協力をする」と明確に定めている。

  中国ではこれまでに、14省・自治区の60カ所で旧日本軍が遺棄した化学兵器が見つかっている。なかでも吉林省の哈爾巴嶺では、中日両国の専門家の調査で、約40万発の毒ガス弾が埋まっていることが分かった。

 劉主任は「これまで発見・回収された化学兵器は、一つも廃棄処理されていない」と語る。

  今回の回収作業現場は地元の工業会社の敷地内にあり、周囲には危険を示す黄色い標識と警戒ラインが引いてある。現場の道を挟んだ南側には中学校があり、付近は住宅密集地だ。

 「それらの砲弾がいつか爆発したらどうするのか?」「まだ発見されていない化学兵器があるのでは?」――付近の住民や学生は、口々に強い不安を訴える。

 日本の軍国主義による中国侵略から61年が経った。しかし、旧日本軍が遺棄した化学兵器は、関係する地域の一般住民の生命や財産、生態環境にとって現実的な脅威となっている。

 2003年8月、黒龍江省斉斉哈爾(チチハル)市で旧日本軍の遺棄化学兵器による毒ガス漏洩事故が発生し、1人が死亡、43人が負傷した。04年7月には吉林省敦化市で子供2人が、05年には広州市番禺で住民3人が、同様に被害を受け負傷した。

 中日両国による政府交渉の結果、1999年に「中華人民共和国政府および日本国政府による、中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄に関する覚書」が調印された。同年、外交部に日本在華化学武器問題弁公室が設置された。

 劉主任は「中国は、日本側がCWCや「覚書」の規定を適切に履行し、できるだけ早く中国に遺棄された化学兵器を完全に処理し、中国の人民の生命、財産、生態環境への脅威と危険を取り除くよう望む」と語る。(編集ID) 「人民網日本語版」2006年7月6日

外務省高官、「遺棄化学兵器のこれまでの回収量はごく一部だ」

2006-07-06 CRI On-Line

 中国外務省の日本遺棄化学兵器処理問題弁公室の劉毅主任は5日、「中国は、遺棄された化学兵器約4万個を回収し処理したが、これは、日本侵略軍が当時中国に運び込んだ化学兵器のごく一部に過ぎない」と述べました。

 関連データによりますと、第二次世界大戦期中、日本は7000トンあまりの化学兵器を開発しており、そのうちの多くを中国に運びこんでいます。中日両国の専門家は、5日、東北地区黒竜江省の寧安市で日本軍が遺棄した化学兵器の回収作業を始めています。

 劉毅主任は回収現場で、「いま、中国側はこの回収作業の遅れに不満を抱いている。これら化学兵器による中国住民への危害をなくすため、日本側が出来るだけ早くこれら化学兵器を徹底的に処理するよう期待している」と述べました。

日本、遺棄化学兵器の処理の調査団

2006-07-05 CRI On-Line

 中日両国の専門家は5日、中国東北地方の黒竜江省寧安市で発見された日本の遺棄化学兵器の発掘、回収作業に入りました。作業は8日間続く見込みです。

 中日両国政府は1999年に、「日本が遺棄した中国領内の化学兵器の処理に関する覚書」に調印しました。日本は覚書の中で、中国で大量の化学兵器を遺棄したことを認め、関連の国際条約に基づいて処理の義務を履行する、と約束しています。

(7/4)政府、中国黒龍江省の遺棄化学兵器の発掘・回収を開始

2006/07/04 NIKKEI NET

 政府は7月4日、中国黒龍江省で旧日本軍による遺棄化学兵器の発掘・回収を始めたと発表した。10日までの予定。

中国で新たな遺棄化学兵器 旧日本軍か、近く調査団派遣

2006年06月14日 asahi.com

 安倍官房長官は14日の記者会見で、中国東北部の黒竜江省佳木斯市の松花江水域で旧日本軍によるとみられる遺棄化学兵器が見つかったことを明らかにした。中国政府が8日、日本に伝えたもので、調査団の派遣も求めている。

 安倍長官は「化学兵器禁止条約に基づき、我が国として適切な対応を行っていく。まず現地調査を行い、旧日本軍のものか、確認する必要がある」と述べ、近く調査団を送る考えを示した。

 関係者によると、中国側は100発前後の砲弾を確認したという。住民の被害は出ていない模様だ。

遺棄化学兵器による事故の被害者、東京で記者会見

2006年05月25日 asahi.com

 黒龍江省斉斉哈爾(チチハル)市で2003年8月4日に起きた、旧日本軍が中国侵略中に遺棄した化学兵器による死傷事故と、吉林省敦化市で2004年7月23日に起きた旧日本軍遺棄化学兵器による傷害事件の被害者が23日午後、東京で記者会見を開いた。被害者らは、生活や医療面の保障のほか、旧日本軍が中国各地に残した化学兵器を早急に除去し、同様の悲劇の再演を防ぐよう、日本政府に求めた。新華社が報じた。

 斉斉哈爾市の事故の被害者、丁樹文さんは「事件により身体に深い傷害を受け、心に多大な苦痛が残り、家族から幸せな生活が奪われた」と語り、旧日本軍が残した化学兵器を早急に除去し、自身の悲劇の再演を防ぐよう日本政府に求めた。また、被害者への生活や医療面の賠償を行うよう日本政府に求めた。

 被害者の代表団7人は19日に日本に到着した。9日間滞在する予定。来日後、代表団は、日本の市民団体の支援を受け、与党自民党の逢沢一郎・幹事長代理や内閣府「遺棄化学兵器処理担当室」の担当者と会見した。代表団は日本政府に対し、適切な措置を講じ、被害者に生活・医療保障を提供するよう求めた。

遺棄化学兵器に新史実!?

2006/05/18 FujiSankei Business i.

 史料精査し責任の所在明確に

 『正論』(産経新聞社)六月号が水間政憲氏の論文「“遺棄化学兵器”は中国に引き渡されていた−残っていた兵器引継書」を掲載した。

 水間氏は全国抑留者補償協議会(故斎藤六郎氏が代表をつとめたいわゆる「斎藤派・全抑協」)の「シベリア史料館」で、「全体で六百冊にも及ぶ膨大な量の『旧日本軍兵器引継書』が長年、段ボール二十四箱の中でほこりにまみれて眠っている」のを発見した。

 ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長がペレストロイカ(改革)政策に沿って、KGB(国家保安委員会)がシベリア抑留問題に関する史料を公開し、日本世論に「ソ連は変化した」との印象を植え付ける工作を展開した。この工作の責任者がキリチェンコ・ソ連科学アカデミー東洋学研究所国際学術協力部長だった。その下で、カタソノバ上級研究員がシベリア抑留者問題の公文書調査にあたった。

 キリチェンコ氏の表の顔は学者であるが、KGB第二総局(防諜(ぼうちょう))の大佐で、日本大使館担当課長をつとめていた。日本の外交官や、大使館に勤務する学者(専門調査員)の弱点をつかみ、協力者に仕立て上げたるのがキリチェンコ氏の仕事だった。後にキリチェンコ氏は自らがKGBの擬装職員であると告白した。

 斎藤六郎氏は日本政府に訴訟を起こしていた関係もあり、当時の日本大使館と「斎藤派・全抑協」との関係はほとんど没交渉であった。後に斎藤氏とキリチェンコ氏は決別したが、カタソノバ氏は斎藤氏への協力を続けた。ソ連(現ロシア)政府は、日本軍関係書類を日本政府に返還するのが筋だが、実際には日本政府が関知しないところで、ソ連から相当数の重要書類が斎藤氏に引き渡されたようである。

 今般、水間氏が発見した「旧日本軍兵器引継書」もそのような書類の一部と思われる。一九九九年七月三十日、北京で署名された「日本国政府及び中華人民共和国政府による中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄に関する覚書」は冒頭で以下のように定めている。

 <1・両国政府は、累次に亘る共同調査を経て、中華人民共和国国内に大量の旧日本軍の遺棄化学兵器が存在していることを確認した。旧日本軍のものであると既に確認され、及び今後確認される化学兵器の廃棄問題に対し、日本国政府は「化学兵器禁止条約」に従って遺棄締約国として負っている義務を誠実に履行する

 2・日本国政府は、「化学兵器禁止条約」に基づき、旧日本軍が中華人民共和国国内に遺棄した化学兵器の廃棄を行う。上記の廃棄を行うときは、日本国政府は化学兵器禁止条約検証附属書第4部(B)15の規定に従って、遺棄化学兵器の廃棄のため、すべての必要な資金、技術、専門家、施設及びその他の資源を提供する。中華人民共和国政府は廃棄に対し適切な協力を行う。>

 国際社会の「ゲームのルール」では、遺棄化学兵器について、それを遺棄した国家がカネや技術などをすべて提供して廃棄する義務を負う。当然、文明国家である日本もその義務を忠実に履行しなくてはならない。ただし、それは日本が遺棄した化学兵器に限られる。終戦時に日本軍を武装解除した中国軍やソ連軍に化学兵器が引き渡されている場合、日本に化学兵器を廃棄する義務はない。

 『正論』六月号のグラビアには「旧日本軍兵器引継書」の写真が掲載されているが、そこには「四年式十五榴弾砲台榴弾」「四一式山砲榴弾甲」など秘密兵器概説綴と照合すると化学兵器とみられる事項が記載されている。政府は、今般水間氏が発見した史料と日本政府がこれまでに廃棄した遺棄化学兵器のリストを早急に照合して、重複が発見されれば直ちに遺棄化学兵器廃棄事業を凍結し、データを精査すべきだ。同時に外交ルートを通じ、ロシア政府に対して、ロシアが保管する旧日本軍の兵器引継に関するすべてのデータの提供を要求すべきだ。

 仮に日本政府が廃棄する義務を負わない、旧日本軍が中国やソ連に対して引き渡した化学兵器が、国民の税金を用いて廃棄されている事実が後に明らかになれば、日中関係に取り返しのつかない悪影響を与えることは必死だ。

 データの精査が真の日中友好に貢献する。水間氏の史料が国益に与える重要性について、外務省もマスコミも感度が鈍いようだ。

超党派議員団、中国の「化学兵器埋設現場」視察

2006/04/30 The Sankei Shimbun

 【延吉(中国東北部)=田中靖人】超党派の国会議員でつくる「日中新世紀会」(遠藤乙彦会長)は30日、中国吉林省のハルバ嶺を訪れ、旧日本軍が中国に遺棄したとされる化学兵器の埋設現場を視察した。

 ハルバ嶺には遺棄化学兵器の大部分にあたる砲弾など推定30−40万発が埋められており、発掘・回収施設と爆破処理を行う処理施設を建設することで日中両政府が合意している。

 訪中したのは遠藤氏ら6人。中国側の担当者から説明を受けた後、処理施設の建設予定地や発掘した砲弾の仮保管庫を視察した。

 視察後、議員団と面会した現地の市長は「遺棄化学兵器は市民の生命に対する脅威だ。1日でも早く排除してほしい」と要請し、遠藤氏は「早期に処理が行われるよう全力を挙げる」と応じた。

 日本は化学兵器禁止条約に基づき遺棄化学兵器を処理することになっているが、莫大(ばくだい)な費用が予想されるにもかかわらず、積算根拠が不透明などの批判が日本国内から出ている。

5年延長を来週申請 中国の遺棄化学兵器処理

2006/04/16 中国新聞ニュース

 政府は十六日、旧日本軍が中国で遺棄した化学兵器の回収、処理事業について、化学兵器禁止条約が義務付けた期限の二○○七年四月までの完了が困難と判断し、来週中に中国と合同で五年間の延長を化学兵器禁止機関(OPCW)に申請する。一二年春までの処理を目指す。同条約は延長する場合に、期限切れ一年前までに申請するよう規定している。

 政府は二○○○年以降、中国各地に遺棄された化学兵器約四万発の処理を進めてきた。しかし、中国側が回収して吉林省敦化市ハルバ嶺に埋めたとされる推定三十万−四十万発は未処理のままで、残り一年となった期限内に処理を終えるのは不可能と判断。中国側と協議して、延長について合意を得た。

 ただハルバ嶺での処理をめぐっては、政府が大規模な発掘回収施設と処理施設の建設を計画しているのに対し、建設に必要な中国政府の事業承認が依然として取り付けられておらず、さらに処理が遅れる可能性もある。

 事業承認が得られない理由について、内閣府の遺棄化学兵器処理担当室は「かつてない事業で、中国政府内のどの行政機関が担当するかの調整が難航している」と説明している。

 化学兵器をめぐっては、一九九七年四月二十九日に化学兵器禁止条約が発効。同条約は締約国に対し、発効後十年以内に、他国に遺棄した化学兵器の廃棄を完了することを義務付けている。また日中両政府は、九九年七月に「遺棄化学兵器の廃棄に関する覚書」に署名、日本政府がすべての必要な資金、技術、施設を提供することで合意した。

遺棄兵器処理 中国、予定外の要求 大型変電所ヘリポート 軍事転用狙う?

2006/01/03 The Sankei Shimbun

 中国での旧日本軍遺棄化学兵器処理事業をめぐり、中国側が当初の予定になかった大規模変電所やヘリポートの建設を要求していることが二日、明らかになった。処理施設建設予定地の吉林省ハルバ嶺は、ロシアや北朝鮮国境に近い地政学上の要衝。与党からは事業終了後に中国側が施設解体に応じず、人民解放軍の弾薬保管やミサイル格納などに転用する可能性を指摘する声が出ており、今春、現地調査に乗り出す方針だ。

 与党関係者らによると、中国側は新たにヘリポート建設を要求してきたほか、五万−七万キロワットの処理能力を持つ変電所の建設を非公式に打診。三十万−四十万発の化学兵器処理に必要な変電所は数千キロワット規模とみられており、中国側の要求は大幅に上回っている。

 また、ハルバ嶺を訪れたことがある関係者らの調査で、処理施設建設予定地の周辺道路や施設内の道路は、すでに数十トン級の戦車や装甲車が通行できるほど頑丈に舗装されていることが判明した。

 これに対し、日本政府は「処理施設の基本設計が完成する今年度いっぱいまで、所要電力量は分からない」(内閣府遺棄化学兵器処理担当室)と説明するだけ。舗装道路についても、「軍用車両が通行できるかもしれないが、あくまで化学弾を運搬する車両のためのもので、軍用車両の通行は想定していない」としている。

 施設建設を含む処理事業は日本側の負担で、少なくとも二千億円程度に上るとされる。内閣府の高松明遺棄化学兵器処理担当室長は産経新聞に対し、「化学兵器処理の終了後は施設を解体する」と説明しているが、現時点では「中国側の同意を得たわけではない」(遺棄化学兵器処理担当室)といい、事業終了後の施設解体をめぐる中国側との協議は妥結していない。

 一九九九年七月に締結した遺棄化学兵器に関する日中覚書は、日本が処理費用をすべて負担するだけでなく、処理の過程で起きる事故も日本がすべて補償する内容。このため、日本側が事業終了後に施設の引き渡しと解体を求めても、中国側が新たな遺棄化学兵器の発見などを理由に応じない可能性がある。

 昨年十一月に自民、公明、民主の議員団による現地調査が中止され、処理事業の実態は不透明なまま。与党はこうした状況を問題視しており、自民党の閣僚経験者らが中心となって今月中に有志議員による調査団を募り、雪解け後の現地入りを目指す。

                   ◇

【用語解説】遺棄化学兵器

 旧日本軍が中国に遺棄したとされる毒ガス砲弾など。1997年4月に発効した化学兵器禁止条約で、日本が原則的に2007年4月まで(最大で5年延長可)に処理する義務を負う。中国側は遺棄砲弾数を約200万発と主張していたが、最近の調査では30万−40万発と推定される。約9割が埋められている吉林省ハルバ嶺で焼却処理する。

遺棄兵器12年までに処理 期限延長、中国と協議へ

2005/12/07 The Sankei Shimbun

 政府は7日、旧日本軍が中国で遺棄したとされる化学兵器を回収、処理するための日中共同事業について、2007年4月までの処理期限を5年間延長し、12年4月までとする方針を固めた。政府は近く中国政府との協議に入り、合意を得た上で来春までに化学兵器禁止機関(OPCW)に延長を申請する。

 政府は、遺棄兵器の大半が集中している中国吉林省敦化市ハルバ嶺に大規模処理施設を建設する計画だが、日中両国が新たに設立する「日中連合機構(仮称)」の人員構成などをめぐり協議が難航、施設着工が遅れている。このため処理期限の延長が必要と判断した。

 中国の武大偉外務次官も今月、超党派の国会議員による「日中新世紀会」の訪中団に、12年までに日本が責任をもって全面処理する必要があるとの考えを示していた。

 遺棄兵器をめぐっては、1997年4月、10年以内の化学兵器の全廃を目指す化学兵器禁止条約が発効。日中両政府は99年7月、日本政府が廃棄に必要な資金、技術、施設などを提供するとした「遺棄化学兵器の廃棄に関する覚書」に署名した。政府は2000年9月から小規模の発掘回収事業に着手し、これまでに約3万7000発を回収している。

 また、政府は吉林省ハルバ嶺の遺棄化学兵器について「約67万発」とOPCWに申告していたが、現地調査の結果から「30万―40万発」と下方修正する考え。(共同)

遺棄化学兵器 中国、処理進めず 「期限延長」内情は不透明

平成17(2005)年12月03日 The Sankei Shimbun

 中国での旧日本軍遺棄化学兵器処理事業の期限が、平成十九(二〇〇七)年から二十四(二〇一二)年に五年間延長される見通しとなった。化学兵器禁止条約の発効(一九九七年)から八年が経過し、日本政府はすでに計約四百八十五億円を投じている。だが、成果は計十カ所での小規模な発掘・回収事業だけで、遺棄化学兵器の九割が埋設される吉林省ハルバ嶺での事業は遅々として進まない。「日中間の信頼熟成の事業」(政府担当者)の前途は多難だ。

 「現状では二〇〇七年までの解決は無理だ。一二年までの解決を強く要請する」

 中国の武大偉外務次官は一日、北京を訪問した超党派議員団「日中新世紀会」(団長・遠藤乙彦衆院議員)にこう語り、日本側に対し、早期に化学兵器禁止機関(OPCW、本部・ハーグ)に廃棄期限の延長申請をするよう求めた。

 化学兵器禁止条約は、条約発効後、十年以内に廃棄を完了しなければならない、と規定している。これに基づき日本政府は、ハルバ嶺で、運搬用道路、保管施設、無害化のための焼却処理施設などの建設を計画。昨年四月には日本側の事業主体となる株式会社「遺棄化学兵器処理機構」を設立し、周辺道路の整備事業に着手した。十月中旬には内閣府の江利川毅事務次官が訪中して武氏と会談、早急に事業を開始することを確認した。本体事業はいつでも開始できる態勢にある。

 ところが、中国側は今も事業認可をしていない。内閣府の担当者は「中国政府内の手続きが手間取っているのではないか」と説明するが、真の理由は明らかではない。

 問題は、五年間の延長ですべての作業が終了するかどうか。条約は、五年以上のさらなる延長はいかなる場合も認めておらず、事態は深刻だ。造成や発掘回収に要する期間にめどが立たないうえ、焼却処理だけでも一年半近くかかるとされる。冬季は土も凍る寒冷地域だけに、作業は難航が予想される。「最終期限内に作業が終了しなければ、日本は国際的に非難される立場になりかねない」(政府高官)と危惧(きぐ)する声もあがる。  総費用もはっきりしない。内閣府は約二千億円と試算しているが、ハルバ嶺での発掘回収事業費はすでに、当初試算の七百八十億円から九百七十億円に上方修正されている。焼却施設建設費にも一千億円以上かかるとみられるうえ、事業運営費や施設解体費などがかさむことが予想される。試算通り事業が進む可能性は低い。(田中靖人)

遺棄化学兵器問題 訪中議員団の視察中止 中国要請、棚上げ狙う?

平成17(2005)年11月11日 The Sankei Shimbun

 自民、公明、民主三党の議員団が今月下旬に旧日本軍の遺棄化学兵器の埋設地である吉林省・ハルバ嶺の現地視察を計画していたが、中国側の要請で突然中止になったことが十日、分かった。曽慶紅国家副主席らとの会談は実現する予定だが、遺棄化学兵器問題は大きな議題にはならないとみられる。政府は、遺棄化学兵器の埋設状況や処理事業の実態検証をさらに徹底させる方向で検討を進めているが、中国側は問題の棚上げを狙ってくる可能性もある。

 現地視察を計画したのは、遠藤乙彦衆院議員(公明)が会長を務める「日中新世紀会」。

 関係者によると、当初の計画では、中国外務省と中日友好協会の招請で、今月二十八日に中国入りし、ハルバ嶺の埋設現場と処理施設建設予定地を視察。その後、吉林省延吉市で朝鮮族との対話集会などを実施し、北京で中国要人との会談を行う予定だった。中国側も了承して十月中旬には日程表もできあがっていたが、今月初め、中国側が突然「ハルバ嶺付近はすでに凍結しており、道路事情が悪い」として計画の変更を要請してきた。

 吉林省入り自体も中止になり、代わりに二十八日に福建省・厦門で中台経済協力の現状を視察することが決定。その後、北京入りし、曽慶紅氏や、黄菊筆頭副首相、唐家●国務委員らと会談し、来月三日に帰国することになったという。

 参加議員は、団長の遠藤氏のほか、松浪健四郎衆院議員(自民)、宇野治衆院議員(同)、沢雄二参院議員(公明)、古賀一成衆院議員(民主)。加えて伊藤達也前金融担当相(自民)、鴨下一郎衆院議員(同)、竹下亘環境政務官(同)が北京での日程のみ参加する予定だという。

 中国要人との会談では、台湾問題のほか、東シナ海のガス田開発など日中間の懸案事項について幅広く意見交換する予定。参加者の一人は「現地視察できないのは残念だが、中国要人との会談で遺棄化学兵器についても忌憚(きたん)のない意見を交わしたい」と話しているが、中国側はこの問題を議題とすることに消極的な姿勢だという。

 先月十九日の衆院内閣委員会で、政府側は、遺棄化学兵器の推定埋設量を当初説明していた七十万発から、三十万−四十万発に下方修正。約二百万発とする中国側の主張は誇大との見方が強まった。先月末の内閣改造では、対中強硬派の麻生太郎氏が外相に、安倍晋三氏が官房長官に就任。安倍氏はこの問題に詳しい山谷えり子参院議員を担当政務官に起用した。

 政府は来年度予算で約二百五十億円を計上する方向で検討しているが、中国側要求をそのままのめば最終的な日本側の拠出額は一兆円を超えるとの試算もあり、与野党からの反発も予想される。●=王へんに旋

遺棄化学兵器処理費 中国要求丸のみ巨額化

平成17(2005)年10月31日 The Sankei Shimbun

法外な森林伐採代償/プール付き宿舎

 中国に旧日本軍が遺棄したとされる化学兵器の廃棄処理問題で、中国側の要求を丸のみした結果、日本が拠出する処理費用が野放図に巨額化している実態が、内閣府の資料などからわかった。例えば施設建設に伴う森林伐採では、国際価格の数十倍という法外な代償を認め、要員宿舎はプール付きの豪華版としている。事業は今冬にも施設建設に入るが、費用の不透明性を残したまま見切り発車すれば、予算の垂れ流し、税金の無駄遣いにつながるのは必至だ。(長谷川周人)

 内閣府の予算関連資料によると、吉林省敦化市郊外のハルバ嶺で建設が予定される処理施設の「インフラ整備諸費」(共通施設分)に今年度、十八億五千万円近い予算が計上されている。

 避難路や要員宿舎の整備費用の一部に充当されるが、関係者によると、用地造成に伴う森林伐採で中国が要求した代償は「シラカバ一本百ドル」。しかし、シラカバは一般に製紙用以外に用途がなく「樹齢にもよるが二、三ドルが国際相場」(製紙業界関係者)とされ、日本は常識はずれの費用負担を強いられている。

 また、要員宿舎は「事業終了後の払い下げを見越し、地元当局から強い要望があった」(関係者)として、2LDKの豪華版で、プールなどのスポーツ施設が併設される予定だ。

 また、「環境関連諸費」(約千五百三十万円)の内訳をみると、「マクロ気象観測費」(約三百三十万円)と「ミクロ観測機器・機材整備費」(千二百万円)だが、気象観測といっても、中国軍の「気象専門員」が百葉箱を使い、気温や風向などを定時放送するというもの。日本側が「無意味に近い」と改善を要求したところ、中国側は「ならば地表温度なども計測しよう」と提案、新たな資材購入費として千二百万円を計上することになったという。

 このほか、中国はハルバ嶺に軍医療班を派遣しているが、絆創膏(ばんそうこう)一枚でも、日本人スタッフには「(解毒剤などが入った)段ボール三箱分の医薬品がセット売り」となる。しかも、なぜか産婦人科医を含む医師団は北京から送り込まれ、これら全経費が日本負担となっている。

 遺棄化学兵器の処理事業で、日本は今年度までに約九百七十億円を投入。処理方法を検討するなど準備を進めてきた。外務省によると、保管作業は昨年七月までに三万七千発分を終えた。

 今後は残る砲弾の回収と並行し、実処理を行う施設の建設に移るが、回収施設だけで九百七十三億円の建設費がかかることが判明している。このほか燃焼処理を行うメーンの前処理施設のほか、燃焼時に発生する汚染ガスの処理に環境対策費なども必要で、総事業費は「一兆円規模」との試算も出ている。

 しかし、遺棄砲弾数は二百万発と主張する中国は、その根拠すら示さず、情報開示を先送りしている。七十万発と主張してきた日本は独自調査に基づき三十万−四十万発と下方修正する方向だが、遺棄兵器の全容は見えていない。

 関係者からは「中国にとって処理事業は“金のなる木”。中国の機嫌ばかりを気遣う官僚の事なかれ主義を是正しなければ、いつまでも無駄な予算を垂れ流すことになる」と批判も出ている。

遺棄兵器処理事業 中国ペース不透明 政府 埋設数は下方修正へ

平成17(2005)年10月21日 The Sankei Shimbun

 政府は二十日、旧日本軍が中国に遺棄したとされる化学兵器の推定埋設数について、年内にも化学兵器禁止機関(OPCW、本部・ハーグ)に修正報告する方針を固めた。国会審議で問題化したためで、三年前の調査結果を踏まえ修正することにした。総額二千億円以上とされる中国での遺棄化学兵器処理事業は、財政事情が悪化する中、「中国ペースのどんぶり勘定」(自民党関係者)との批判がある。事業の透明性をいっそう高め、国民の理解を積極的に求めていく必要がありそうだ。(佐々木類、田中靖人)

 ◆業務に瑕疵

 「調査によってさまざまな状況も分かっているので、修正報告しようかと検討している」

 細田博之官房長官は二十日の記者会見で、化学兵器禁止条約(CWC)の履行を監視するOPCWに、約七十万発と申告していた化学兵器の推定埋設数を、三十万−四十万発と修正申告する考えを示した。

 「七十万発」という情報は、現在でも処理事業を統括する内閣府遺棄化学兵器処理担当室のホームページに掲載されている。担当室は産経新聞の取材に「更新しようと思っていたが、時間がなく直していなかった」と説明。細田長官がこの日、あっさり修正報告する考えを表明したことは、事実上、業務に瑕疵(かし)があったことを認めたものだ。

 外務省によると、CWCは遺棄された化学兵器を発見した場合、百八十日以内にOPCW事務局に申告するよう規定。中国では、六十七万発が埋められているとみられていた吉林省ハルバ嶺以外でも三万発以上が発見され、政府はその都度申告している。

 ◆ピンハネ疑惑

 「中国の作業者には平均で日当数十ドルを払っているが、本人に支払われるのは百三十円。中国側はきちんと説明していない」

 今年七月一日、参院外交防衛委員会で自民党の山谷えり子氏は、日本と共同で調査活動に携わる中国政府や人民解放軍関係者による“ピンハネ”疑惑を追及した。

 外務省は中国側に経費の透明性を求めているとしたが、中国側からピンハネ疑惑を払拭(ふっしょく)するだけの回答があったとは認めていない。町村信孝外相は「向こうからドンと請求があって、それを全部払うというようなことをやっているわけではない」と釈明している。

 そもそも遺棄化学兵器処理事業は、日本が平成七年九月に批准し、九年四月に発効したCWCに基づいて行われている。

 政府は平成三年から十四年にかけ、計二十一回の現地調査を行い、黒龍江省や吉林省など北東部や、江蘇省などの広範囲にわたって埋設されていることを確認。十五年四月の日中政府間協議では、遺棄化学兵器を燃焼処理することなどを決めた。

 一方、国内では、政府内部の資料によると、内閣府が十三−十五年度にかけ、都内の企業体などと化学処理実験費など数十億円規模の随意契約を締結。随意契約の理由を問う野党議員の質問主意書に対し、政府答弁書は「化学兵器処理には世界に前例のない知見・技術が必要。委託先の変更は困難」などとしている。

 ◆巨額の負担

 CWCは化学兵器の使用や開発、製造や貯蔵を禁止する条約だが、中国の強い希望で遺棄化学兵器の「廃棄条項」(第一条三項)を明記。中国で武装解除された旧日本軍の残留兵器以外は世界で遺棄の例はなく、事実上「日本専用条項」となっている。

 これに加えて、十一年七月三十日に締結した日中の「中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄に関する覚書」では、日本が処理費用をすべて負担するだけでなく、将来の事故も日本が補償するようにしてしまった。

 結果として、外交上のつけを巨額の財政負担という形で押し付けられるのは国民だけに、覚書については「中国の言い分をほとんど受け入れてしまった」(自民党筋)との酷評がつきまとう。

 CWCには、相手国の同意がないまま遺棄した場合、遺棄した国が化学兵器を処理する義務規定がある。だが、旧日本軍の場合は多くが武装解除とみられ、同意があったかないかは「中国側が立証すべき」(山谷氏)だという学問上の疑問点を指摘する声もある。

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 <化学兵器禁止条約> 化学兵器の開発、生産、保有を禁止し、米国やロシアなどが保有する化学兵器を原則10年(最長15年)以内に全廃することを定めた。1997年発効。締約国は167カ国(平成17年3月現在)。化学兵器禁止機関(OPCW)が条約の履行を監視。締約国は他国に遺棄した化学兵器の廃棄義務を負う(1条3項)。処理費用は遺棄国が負担する。

「遺棄兵器30−40万発」 政府修正答弁 中国主張の5分の1

平成17(2005)年10月20日 The Sankei Shimbun

 旧日本軍が中国に遺棄したとされる化学兵器が、政府が当初説明していた約七十万発ではなく、三十万−四十万発にとどまることが十九日、分かった。内閣府の高松明・遺棄化学兵器処理対策室長が衆院内閣委員会で答えた。約二百万発とする中国の主張が科学的根拠を欠く不当な主張であることが裏付けられただけでなく、処理事業の見直しも迫られそうだ。

 高松氏は泉健太氏(民主)への答弁で、遺棄化学兵器について「三十万発から四十万発と推定している」と述べた。高松氏の前に答弁した細田博之官房長官は「約七十万発あり、そのうち、六十七万発余りが吉林省のハルバ嶺にある」としていたが、泉氏の指摘を受け、「推定だが三十万−四十万発ではないか」と修正した。

 日本政府は平成八年、化学兵器禁止条約に基づき、中国における遺棄化学兵器を約七十万発と申告していたが、十四年十月から十一月にかけ、埋設範囲と数量を正確に把握するため磁気探査を実施。中国外交部と日本政府が委託した民間業者が探査にあたった。

 その結果、実際には申告の約半分である三十万−四十万発と推定されたという。三年前に判明していた数量を明らかにしてこなかったことについて、内閣府は産経新聞の取材に対し、「今春の国際会議では三十万−四十万発と発言している」と意図的に情報を秘匿したわけではないと説明している。

 遺棄化学兵器処理事業で日本政府は、来年度から四年間で九百七十三億円をかけ、ハルバ嶺に処理関連施設を建設することを決定。事業は有償、無償資金協力を合わせた十六年度の対中政府開発援助(ODA)の新規供与額(約九百億円)と同規模の巨大プロジェクトとなっている。

 ただ、外務省OBの一人は「本来、旧日本軍から武装解除で引き渡しを受けた中国、ソ連に管理責任がある。そういう議論をきちんとやらずに国民に大きな財政負担を強いようとしている」と批判。複数の場所に処理施設設置を求める中国側の言い分を受け入れた場合、最終的な拠出額は一兆円を超えるとの日本側試算もあり、遺棄化学兵器の数量が半減したことは処理事業をめぐる今後の日中交渉に影響しそうだ。

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 <遺棄化学兵器> 先の大戦中に旧日本軍が対ソ連戦に備えて中国に持ち込んだ化学兵器の未処理分。装填(そうてん)された化学剤は、糜爛(びらん)剤(マスタード)など6種。中国は1997年に化学兵器禁止条約を批准し、日本は2007年までに全面廃棄の義務を負った。

遺棄化学兵器の回収施設建設費 200億円膨らみ973億円 中国試算

平成17(2005)年10月17日 The Sankei Shimbun

 旧日本軍の遺棄化学兵器を処理するため日本が中国に建設する廃棄処理施設のうち、発掘回収施設の建設費用が、当初予算から約二百億円膨らみ九百七十三億円と試算されていることが十六日、分かった。今後も廃棄処理に関する予算は増大する可能性もある。

 内閣府によると、廃棄処理施設は遺棄砲弾の九割以上が埋設されている吉林省・ハルバ嶺に建設される。

 このうちの発掘回収施設は、遺棄された砲弾を爆発しないように安全に掘り出すための施設。平成十五年度に、日本政府が委託した日本の業者が「基本設計」を行い、総額七百八十億円と試算。二十年度までの国庫債務負担行為として、今年度に一部予算を計上した。

 ところが、その後の日中協議を経て、中国国内の建設基準などに基づく詳細な「初歩設計」を中国企業に委託したところ、総額が増加した。このため内閣府は、今年度予算を返上し、改めて来年度予算から建設費を計上する方針だ。

 廃棄処理施設の建設をめぐっては、関税の免除や建設許可に関する中国側の事務作業が遅れており、内閣府の江利川毅事務次官が十一日から十五日まで中国を訪れて、迅速化を要請している。

旧日本軍の遺棄化学兵器、すでに4万発を回収

2005年09月07日 人民網日本語版

 人民解放軍総参謀部防化指揮工程学院履約事務弁公室によると、旧日本軍が中国を侵略した際に中国に遺棄した化学兵器のうち、これまでに4万発余りが無事に回収された。

 旧日本軍は敗戦・降伏後、大量の化学兵器を付近の地中に埋め、あるいは河川に棄てるなどした。同弁公室の石建華主任は「中国は世界最大の『化学兵器遺棄場』」と指摘する。これまでに中国の十数省(直轄市)で日本の遺棄化学兵器が確認されているが、詳細な資料を欠くため、具体的な数や正確な遺棄地点を把握することはできない。これまでに見つかった遺棄兵器の大部分が、日常の生活・生産活動の中で偶然発見された。

 石主任によると、日本の遺棄化学兵器は種類・数量ともに多く、分布範囲も広い。長い間地中や水中にあったため腐食したものが多く、毒物が漏れる可能性が高いため、一般人民の生命や安全、環境への深刻な脅威になっている。

 同弁公室発表のデータによると、日本の遺棄化学兵器による事故はこれまでに約1千件発生しており、2千人以上が死傷している。2003年8月4日には黒竜江省斉斉哈爾(チチハル)市で日本の遺棄化学兵器から毒物(イペリットガス)が漏れる事故が発生し、43人が被害を受け、1人が死亡した。これは中華人民共和国の成立以来、最悪のイペリットガス事故となった。

 中日両国は現在、廃棄施設の建設に向けて、準備作業を急いでいる最中だ。

中日両国の遺棄兵器被害者、東京で交流会

2005年07月31日 人民網日本語版

旧日本軍遺棄化学兵器による中日両国の被害者の交流会が30日、日本・東京都で開かれた。黒竜江省斉斉哈爾(チチハル)市で2003年8月に起きた毒ガス事故の被害者による訪日代表団、日本茨城県鹿島郡神栖町の有機ヒ素化合物混入井戸水事件の被害者・青塚美幸さん一家、日本人弁護士、日中友好事業関係者などが交流会に出席した。

 青塚さんの話によると、旧日本軍の化学兵器による毒ガスが混入したとされる井戸水を自身の子供2人が飲み、子供はそれぞれ負傷した。間もなく4歳になる息子は知力に深刻な影響が生じ、今後の人生が心配される状態だという。斉斉哈爾市の毒ガス事故の被害者・丁樹文さんは事故での負傷後、1カ月間寝たきりになり、110日間入院した。傷口は今でも痛み、全身がだるく、普通に働くこともできないという。

 斉斉哈爾市の毒ガス事故の被害者による訪日代表団は29日東京に到着し、8月9日に帰国する予定。滞在期間には日本の民間友好団体や、原子爆弾や化学兵器による日本人被害者と幅広く交流を図る。また、日本政府に対して、被害者への謝罪と医療面や生活面の保証を求める請願書を提出する。中国側弁護士の蘇向祥氏は新華社の取材に対して、「この問題について日本政府と話し合い、日本政府が要求に応じない場合は法的手段に訴え、裁判所に提訴する」と話した。(編集SN)

遺棄化学兵器の被害者8人、賠償求め日本へ

2005年07月29日 人民網日本語版

黒竜江省斉斉哈爾(チチハル)市で2003年8月に起きた旧日本軍遺棄化学兵器の毒ガス事故の被害者8人が28日午後、日本への渡航に向けて北京に到着した。一行は29日午後2時の便で日本に向かう予定。日本政府に賠償を求めるとともに、旧日本軍が残した大量の遺棄兵器を徹底的に除去するよう求める。

同行する中国側代表弁護士の羅麗娟さんによると、一行は日本に10日間滞在する。記者会見、外国記者との会見、広島・長崎の原爆被害者との交流会などの活動が行われる予定。

遺棄化学兵器の保管施設集約へ 既存施設の増強も

2005/07/04 The Sankei Shimbun

 政府は中国で発掘、回収した旧日本軍による遺棄化学兵器の一時保管庫を集約させる方向で、4日までに中国側と調整に入った。本年度中に中国各地に点在する13カ所を8カ所に削減、既存施設の増強にも着手する。

 6月に広東省で遺棄化学兵器の毒ガス事故が発生するなど、今後も危険な兵器などが見つかる可能性があることから、施設の老朽化も踏まえ、保管体制の整備を進め管理リスクの軽減を図る。

 内閣府遺棄化学兵器処理担当室によると、政府が発掘事業に乗り出した2000年以降、回収済みの遺棄兵器は約3万7000発で、大半はびらん剤などを含む化学砲弾や砲身。いずれも金属製の容器に入れた状態で管理されているという。

 処理については、吉林省敦化市ハルバ嶺に建設予定の大規模施設への運搬や移動式施設の導入が検討されているが、日中両政府間の調整は進んでいない。保管庫の一部には、化学兵器の管理に適さない簡易な構造の建物や老朽化施設が含まれ、処理の遅れによる安全面での不安も指摘されていた。

 計画では、河北省唐山市や広東省広州市などにある5施設を廃止。河北省石家荘市と湖南省長沙市の既存施設には約7億円を投じ、周辺に保管設備を整えた倉庫を新設して増強、廃止施設からの兵器を受け入れる。

 兵器の輸送は中国側に依頼する方針だが、危険を伴うことから反発も予想される。政府は早期の管理体制の整備に向けて中国側の理解を求める考えだ。(共同)

旧日本軍遺棄化学兵器…処理施設着工、調整に手間取る

2005年06月27日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 政府は、中国広東省広州市の住民3人が旧日本軍の残した砲弾の毒ガスで負傷した事故を受け、中国国内での遺棄化学兵器処理施設の建設を急ぐ方針だ。

 ただ、中国側との調整が遅れ、着工のめどは立っていない。

 日中両政府は、吉林省ハルバ嶺に大規模処理施設を建設することで合意している。さらに、12か所ある遺棄化学兵器の保管庫の周辺にも、小規模な施設を新設する検討を進めている。

 ハルバ嶺の処理施設はもともと昨年度中に着工する予定だったが、両国の法体系の違いや中国の関係機関の多さなどで調整に手間取り、延期となった。今夏の着工を新たな目標に進めている協議も、日本から運び込む機材にかかる関税の扱いなどで折り合いがつかず、着地点が見えないのが現状だ。

 谷内正太郎外務次官は27日の記者会見で、「手続き的側面で手間取っている。戦争中の負の遺産を処理する話なので、誠意をもって迅速に解決したい」と強調した。外務省首脳は同日、「『早く処理しましょう』と言っているにもかかわらず、先方が非常に対応が遅い。今回のことで中国が日本のことを、そんなにああだこうだ(と非難を)言えるわけではない」と、中国側の対応に不満を表明した。

 日中両国は今後、小規模施設も含め、必要となる施設全体の規模や費用を協議する。「日本側の遺棄兵器の資料や情報は限られており、中国側は手の内を知られたくないのか、出してこない。相手の提示する施設や費用の根拠がわからず、交渉が進まないケースが出てくる」との指摘もあり、調整はさらに難航しそうだ。

遺棄化学兵器で3人被害 中国・広州市

2005/06/27 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 外務省は26日夜、中国広東省広州市で21日に住民3人が被害に遭う毒ガス事故があり、調査の結果、旧日本軍の遺棄化学兵器によるものと判明したと発表した。

 同省によると、23日に中国外務省から「21日夜に広州市内の川辺で砂を採取していた3人の住民が、砲弾からの毒ガスを吸い込み、病院で治療を受けた。旧日本軍の化学兵器であることはほぼ間違いない」と、北京の日本大使館に連絡があった。

 日本側は、中国側の要請に基づき、26日に専門家や政府関係者を現地に派遣。旧日本軍の化学兵器であることを確認した。(共同)

旧日本軍の遺棄化学兵器、中国各地に処理施設を検討

2005/05/15 読売新聞 Yomiuri On-Line

 日中両政府は、中国吉林省敦化市郊外のハルバ嶺に建設する旧日本軍の遺棄化学兵器の大規模処理施設とは別に、中国各地に複数の小規模処理施設を新設する方向で検討に入った。

 政府筋が14日、明らかにした。各地に点在する化学兵器を安全かつ効率的に処理するには、施設を分散する必要があると判断した。

 ハルバ嶺の施設については、今夏にも着工することを目指している。

 日中両政府は4月25〜28日に北京で専門家会合などを開き、チチハル、ハルビン、北京、南京など12か所の遺棄化学兵器の保管庫周辺に、複数の小規模処理施設の建設を検討することで一致した。

 遺棄化学兵器はこれまでに、中国東北部を中心に、約3万7千発が発掘・回収されている。当初は、北朝鮮国境近くのハルバ嶺の施設ですべて処理する予定だった。だが、化学兵器を長距離輸送する際の爆発や化学物質の漏えいの危険性を指摘する声が出たため、複数の施設で起爆装置の取り外しなどの事前処理をしたうえで、ハルバ嶺に運び、最終処理する案が有力になった。

 遺棄兵器の約9割が埋設されているとされるハルバ嶺には、回収施設や保管施設、化学兵器を種類別に無害化する燃焼処理施設、警備・消防施設、作業員宿舎などを建設する。費用は日本が全額負担し、当面、2008年度までに回収施設建設費など約780億円を計上する見通しだ。

 政府は当初、2004年度までに建設する方針だったが、日中の法体系の違いや、中国の関係機関が多く、調整が複雑なことが障害となり、着工が遅れていた。

 最近も新たな遺棄兵器が見つかり、一部には、「日中関係が悪い中で、新たな化学兵器の存在が明らかになれば、地元住民の反日感情をあおるのではないか」との懸念もある。しかし、政府は、「高度な技術と巨額の費用がかかる作業を日本がしっかり実行すれば、関係改善にも貢献できる」として、遺棄兵器の処理に前向きに取り組む考えだ。

 ◆遺棄化学兵器=旧日本軍が終戦時に中国国内に残した化学兵器。毒性の強いびらん剤(マスタードガス)や窒息剤(ホスゲン)などがある。日本側の推計で約70万発が残っているとされる。腐食が激しく、化学物質による土壌汚染も懸念される。1997年発効の化学兵器禁止条約で、日本政府がすべてを廃棄する義務を負っている。

遺棄化学兵器を回収 中国・黒竜江省

2004/09/23 asahi.com
 中国・黒竜江省寧安市の製鉄所で発見された旧日本軍の遺棄化学兵器の発掘・回収が今月上旬から始まり、22日、作業が報道陣に公開された。化学兵器禁止条約に基づき、日本の責任で行う発掘・回収作業は00年9月から始まり、今回が6度目となる。

 製鉄所にはくしゃみ剤やマスタードガスなどが入った約700発の砲弾などが埋められていると推定されている。日本側からは約40人、中国側からは約160人が参加。作業は6日から28日までで、期間中、周辺の住民は避難を余儀なくされている。

 自衛隊員が土中の砲弾などを手やスコップで掘り起こす。それを自衛隊OBらが、化学兵器かどうかの鑑定を行う。緊張を強いられる上に防護服での作業のため、大量の汗をかく厳しい作業だ。中国の若い軍人は「暑い」とつぶやいていた。

 21日までに111個の砲弾類が発掘された。26個が化学弾と判定され、保管のために仮梱包(こんぽう)された。化学弾かどうか不明の弾はエックス線鑑定に回され、通常弾は中国側が処分する。

旧日本軍化学兵器:中国人少女が被害を証言 都内で集会

2004年8月22日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE
 中国黒竜江省チチハル市で昨年8月、旧日本軍が遺棄した化学兵器で1人が死亡、40人以上が負傷した事故で被害に遭った中国人少女、馮佳縁さん(11)が22日、東京都内の集会に参加して深刻な被害を訴えた。馮さんは「走ることが大好きでしたが、今は走ることが出来ません。『病気がうつる』と言って、友達も遊んでくれない」と話した。

 被害調査をしている日本の弁護士グループの招きで、母親(39)と来日した。馮さんは近くの中学校の校庭で遊んだ後、足の痛みに見舞われた。建設現場から校庭に運ばれた黒土が、化学兵器に汚染されていたためで、2カ月間入院した。

 馮さんは集会後、「化学兵器と聞いて、怖かった。日本政府に謝罪してほしい」と話した。今も薬が欠かせず、後遺症で疲れやすいという。

 日本政府は事故後、中国政府に3億円を支払ったが、被害者たちは後遺症の懸念から恒久的な医療対策を求めている。【渡辺暖】

旧日本軍遺棄化学兵器事故、中国人少女が後遺症訴える

2004/08/20 読売新聞 Yomiuri On-Line
 中国黒竜江省チチハル市で昨年8月、旧日本軍の遺棄化学兵器で1人が死亡、40人以上が負傷した事故で、被害者の馮佳縁さん(11)と母親の白玉栄さん(39)が20日、東京都内で記者会見を開き、被害の深刻さを訴えた。

 この事故をめぐり、日本政府は、「兵器の処理費用」として中国側に3億円を支払ったが、被害者らは日本政府を相手取った民事訴訟も検討している。

 会見で、現在も両足の痛みなどの後遺症に悩まされているという馮さんは、「早く元通りになりたい」と訴え、白さんは「日本政府は謝罪し、補償してほしい」と語った。

チチハル毒ガス事故1周年、反日感情噴出の一端

2004/08/05(木) 中国情勢24
  黒龍江(こくりゅうこう)省・斉斉哈爾(チチハル)市で旧日本軍遺棄毒ガス事故が発生してから、4日で丸1年を迎えた。日中双方の弁護団は同日、チチハル市で日本政府に対して、戦時中の化学兵器の使用、ならびにその遺棄と隠匿で中国人民に多大な被害をもたらした罪状を認めるよう要求する旨の共同声明を発表した。5日付で中国新聞社が伝えた。

  弁護団は、日本政府に事件の被害者に対する謝罪と賠償、さらに現在も後遺症に苦しむ被害者への今後の医療方面での支援を含め、事件の一切の責任を負うことを要求。また、事件の国際訴訟に向けた準備作業として、被害者からの証拠収集などを行った。

  昨年の8月4日に起きた旧日本軍遺棄毒ガス事故により、市民44人が重軽傷を負い、このうち1人が死亡している。さらに、今年5月に同じくチチハル市で、先月7月には吉林(きつりん)省・敦化(とんか)市で、それぞれ遺棄毒ガス事故が相次いで発生。日中両国政府は共同で回収処理などを進めているが、完全な解決には至っていない。

  これら事件の発生と日本政府の対応が、現在開催中のアジアカップで表面化した中国サポーターによる反日感情の爆発と密接に関係しているともみられている。(編集担当:吉田雅史)

吉林:毒ガス事件原因は旧日本軍化学兵器と判明

2004/08/04(水) 中国情勢24
  吉林(きつりん)省・敦化(とんか)市で発生した毒ガス中毒事故に関して、日本の外務省は3日、専門チームによる調査の結果、事故の原因は旧日本軍の遺棄科学兵器であると正式に発表した。中国新聞社が伝えた。

  これを受けて、外務省の高嶋肇久・報道官は、「今回の事件の被害者に対し、大変申し訳ないと思う。日本政府は、『化学兵器禁止条約(CWC)』に基づき、遺留化学兵器の早急な処理を行っていく」とコメントした。

  この事件は7月27日、同市の川辺で遊んでいた4人の男児が砲弾を発見、そのうち2人が砲弾から流れ出た液体に触れ、負傷したというもの。この砲弾は、旧日本軍の遺棄化学兵器とみられ、専門チームによる調査が進められていた。

  また、決勝戦を間近に控えるサッカーのアジアカップでは、中国のサポーターによる日本チームへの激しいブーイングが、国内外で大きな反響を呼んでいる。これは、日中間の歴史的背景が要因であるとして、両国政府は、騒動の早期解決に向けた対応に追われている。(編集担当:田村まどか)

遺棄化学兵器:日本調査団、旧軍の砲弾と確認 中国吉林省

2004年08月03日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE
 【北京・大谷麻由美】中国吉林省敦化市で7月23日、旧日本軍の遺棄化学兵器とみられる砲弾で中国人の子供2人が負傷した問題で、現地入りした日本側調査団は3日までに、砲弾が旧日本軍の遺棄化学兵器であることを確認した。旧日本軍が使用していたものと砲弾の形などが同じであることが判明したという。今後も現地調査を継続し、中国側と砲弾の処理を協議する。

 一方、中国英字紙「チャイナ・デーリー」は3日、日本側調査団の乗った車が、抗議する地元住民らに取り囲まれ立ち往生したと報じた。

 日本側調査団のメンバー7人が2日、車で現地に入ると、住民らは負傷した子供に対する謝罪を求めて抗議し、旧日本軍の遺棄化学兵器に関する日本側の調査に対する不満を叫んでいたという。地元政府の説得で、住民らは約30分ほどで抗議をやめたため、日本側も調査を再開した。

 中国メディアによると、7月31日までに同現場から30発の砲弾が発見されたという。

中国吉林省で旧日本軍遺棄化学兵器発見 子供2人に被害

2004.08.03 EICネット
 中国の吉林省敦化市の小川で2004年7月に砲弾一発が4名の子供によって発見され、うち砲弾から流れ出た液体に触れた子供2名の手足やももに潰瘍ができた事件について、日本政府が中国外交部の申し入れを受けて調査を行った結果、中国外交部の指摘どおり、この砲弾が旧日本軍の化学兵器であることが2004年8月2日までに判明した。

 この結果を踏まえ、日本政府は翌3日に事故発生について遺憾の意を示すとともに、遺棄化学兵器をできるだけ早く処理できるよう、化学兵器禁止条約上の廃棄義務に則り適切に対応していくとの方針を改めて示した。【外務省】

吉林:遺棄化学兵器で男児負傷、日本に交渉要求

2004/07/28(水) 中国情勢24
  吉林(きつりん)省・敦化(とんか)市で、男児2人が旧日本軍遺棄化学兵器と見られる砲弾に触れ、負傷した事件について、中国外交部は27日、日本側に抗議を行うと同時に、交渉を求めている。複数メディアが伝えている。

  事故現場同市の川辺で遊んでいた4人の男児は23日、当地で砲弾を発見。そのうち2人の男児が興味本位で砲弾を転がしたところ、中から液体が流れ出たという。その後、時間が経つにつれ、液体に触れた2人の手や足には、赤くただれるなどの症状が現われ、不信に感じた両親が警察に通報したというもの。

  同市政府は、専門チームを派遣して現場の砲弾を処理。現在、詳しい状況を調査している。また、この砲弾は旧日本軍の遺棄化学兵器とみられており、中国側は在中日本大使館の職員を通じて、日本政府に早急な措置を講じるよう求めている。(編集担当:田村まどか)

旧軍遺棄兵器?で児童2人負傷、中国が日本に対応迫る

2004/07/27 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【北京=佐伯聡士】中国外務省は27日、北京の日本大使館に対して、東北地方の吉林省敦化市で旧日本軍の遺棄化学兵器とみられる砲弾により児童2人が負傷したとして、日本側の対応を求める申し入れを行った。

 日本側は、政府関係者らを現地に派遣する方向で調整に入った。

 中国側の説明によると、23日午後、同市内の小川で、児童4人が砲弾を発見し、このうち2人が砲弾から流れ出た液体に触れたところ、手足がただれるなどの傷を負った。児童の命に別状はないという。中国側は鑑定の結果、旧日本軍の遺棄した砲弾と確認した上で、安全な場所に保管する措置をとったという。

チチハル:回収された遺棄化学兵器は計542発

2004/06/25(金) 中国情勢24
 黒龍江(こくりゅうこう)省・チチハル市における旧日本軍遺棄化学兵器の発掘・回収作業において、中国と日本の専門家チームは24日、その全行程を終えた。今回の作業では、542件の化学兵器が回収されている。24日付で中国新聞社が伝えた。

 今回、この地域から発見された砲弾522発のうち、521発が化学兵器であった。この他、頭駅村付近に21発の遺棄化学兵器が散在していることもわかった。

 この回収作業は、2004年5月にチチハル市にある昴昴渓区楡樹屯鎮の頭駅村で、住民が数十発の砲弾を発見したことに端を発する。これらは敗戦後に旧日本軍が遺棄した化学兵器ということがわかり、6月16日から本格的な回収作業が実施されていた。

 回収された砲弾はすでに、チチハル市・富拉尓基区にある遺棄化学兵器の委託管理を行う倉庫に送られた。日中双方は4月に、吉林(きつりん)省に処理施設を建設することで合意しており、その完成を待って処理が行われる。また、中国でこれまでに発見された化学兵器は2007年までに処理を行うことが決定されている。(編集担当:中村彩)

チチハル:日中共同で毒ガスの回収作業を実施

2004/06/21(月) 中国情勢24
 黒龍江(こくりゅうこう)省・チチハル市で、2004年5月に入って旧日本軍の遺棄化学兵器が新たに発見された事件に関して、中国と日本は17日、共同で専門処理チームを結成。緊急の発掘・回収作業に乗り出した。19日付で中国新聞社が伝えた。

 作業開始してから17−18日の2日間で、3種類の毒ガスタンクが発見された。専門家は、現地には500発以上の砲弾が埋められている可能性が高いと判断し、現地住民に対し迅速に避難するよう呼びかけている。

 幸い今回の事件では、タンクに接触したとされる8人には中毒症状は見られず、事件発生当日には退院した。しかし、いつ訪れるかわからない恐怖に、周辺住民は眠れぬ夜を過ごしている。(編集担当:田村まどか) 

日本政府、旧軍化学兵器回収へ30人急派

2004/06/14 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【北京=佐伯聡士】日本政府は14日、中国黒竜江省チチハル市の頭站村で5月23日、砲弾52発が住民により発見され、このうち10発が旧日本軍の遺棄化学兵器であることが判明したと発表した。

 周辺住民の安全確保を図るため、16日に職員や専門家ら計約30人を現地に緊急派遣し、発掘・回収作業を行う。

チチハル毒ガス事件:日本に早急な処理求める

2004/06/03(木) 中国情勢24
 黒龍江(こくりゅうこう)省・チチハル市で、2004年5月に入って再度発見されたガス弾事件に関し、中国外交部は日本に対して早急に担当者を派遣し、遺棄化学兵器の処理を進めるよう求めた。2日付で中国新聞社が伝えた。

 昨年8月にチチハル市で旧日本軍による遺棄化学兵器が発見された際、現地では日本側と協力しての処理作業が行われた。当時は多数の被害者を出したが、今年5月23日、24日に発見された時には幸いにも被害者は出ていない。

 外交部の劉建超・報道官は、今回の事件について現地当局及び国の関連機関による指導のもと、迅速に対処したことで死傷者を出すことはなかったと説明。その一方で、日本に遺棄化学兵器の密封作業を行うため、早急に人員を派遣するよう求めるとともに、一連の作業を加速するよう強く要求した。

 黒龍江省社会科学院の歩平・副院長によれば、中国全土で発見された旧日本軍による遺棄化学兵器は200万発に上っているという。また、1999年7月に日中間で交わされた覚書には02年4月までにすべての処理作業を終えることで両国が合意に達しているが、近年は作業がやや遅れぎみであると批判している。(編集担当:緒方隆次)

チチハル毒ガス事件、「協力金」3億円が物語るもの

2004/05/26 中国情勢24
 今年8月に黒龍江(こくりゅうこう)省・チチハル市で起きた旧日本軍の遺棄化学兵器毒ガス事件は、日中間の懸案問題をまた大きく掘り起こした。

 日本政府は一貫して、1997年の「日中共同声明」の中で中国政府が賠償金の請求権を放棄し、両国が承認していることを主張する。

 政府間での賠償問題とは別に個人が求める日本政府への賠償、謝罪。そこに存在する大きな食い違いで、日本政府の取る対応には、戦後おろそかにしてきた戦争責任がそのままの形となって現れている。

 爆発の危険性が潜んでいるのは遺棄化学兵器だけではなく、国民感情である。2003年には広東省で日本人団体旅行客による集団買春疑惑なども浮上、こうした不祥事は、今後の日中関係を大きく揺さぶる問題である。それだけに、遺棄兵器の早急な回収とともに、日本政府の誠実な対応が今求められている。

外交部:チチハル毒ガス事件の早期解決に自信

2004/05/26(水) 中国情勢24
 黒龍江(こくりゅうこう)省・チチハル市で24日に起きた毒ガス事件に関し、中国外交部の劉建超・報道官は25日の定例記者会見で、中国政府はこの事件に深い関心を寄せており、原因究明のため、調査の早期実施を促していくと述べた。中国新聞社が伝えた。

 25日午前には、瀋陽軍区遺棄化学兵器処理班は、発見されたタンクが旧日本軍により遺棄された化学兵器であると確認。このタンクに接触したとされる8人については、12時間のメディカルチェックの結果、中毒症状はみられないと診断され、同日午後9時には退院している。

 劉・報道官は、黒龍江省の当局や専門家らが現場での調査を進めているが、現時点では確定できる情報を受け取っていないとしてコメントを避けた。しかし、昨年来、チチハル毒ガス事件に関しては調査体制も出来上がっており、原因の早期解明がなされると発言したことで、調査の進展に自信を示した形。(編集担当:緒方隆次)

チチハル:毒ガス事件発生、旧日本軍遺棄兵器か

2004/05/25(火) 中国情勢24
  黒龍江(こくりゅうこう)省・チチハル市で24日、ガス中毒事件が発生し、8−9人が現在、病院で治療を受けているもよう。現地の警察当局は旧日本軍の遺棄化学兵器によるものと見て調査を進めている。25日付で中国新聞社が伝えた。

  事件発生場所はチチハル市・富拉尓基地の付近で、住宅区の開発中、土中から丸いタンクが発見され、なかから異臭が漂ってきたという。同日午後6時頃に警察に通報が入り、当該地域を即刻封鎖。被害者を病院に搬送するなど対処した。

  タンクの中身は毒ガスであるマスタードガスとみられ、初動捜査では旧日本軍の遺棄化学兵器と判断。チチハル市政府、市委員会もこの事態を重視し、現場の調査及び安全の確保にあたるよう指示、主な指導者らも現場に赴いた。25日午前には瀋陽軍区の化学兵器専門家が現場に到着し、毒ガスの調査にあたっている。

  現地では2003年8月にも同様の毒ガス事件が発生しており、死者1人、被害者43人を出している。(編集担当:緒方隆次)

中国での旧日本軍遺棄化学兵器の処理で中国側と意見交換へ 4月22日

2004.04.20 EICネット
  中国での旧日本軍遺棄化学兵器問題に関する第8回日中共同作業グループ会合が2004年4月22日に、東京・霞が関の外務省内で開催されることになった。

 今回の会合では、中国に残された旧日本軍の遺棄化学兵器に対する処理技術の選定、処理施設の具体的な立地場所等について意見交換が行われる予定で、日本側からは泉・外務省アジア大洋州局中国課長を団長とする外務省・内閣府遺棄化学兵器処理担当室の関係者、中国からは何振良(か・しんりょう)外交部在華日本遺棄化学兵器問題弁公室副主任を団長とした外交部、国防部、国家環境保護総局関係者らが、それぞれ出席する見込み。【外務省】

旧日本軍化学兵器遺棄案件の化学兵器禁止条約対応状況を公表

2004.04.19 EICネット
  外務省は日本国内で旧日本軍の老朽化化学兵器が廃棄され、問題となっている件について、化学兵器禁止条約に基づいた対応状況をまとめ、平成16年4月19日に同省ホームページに掲載した。 

 掲載されているのは(1)2002年9月に、神奈川県寒川町のさがみ縦貫道工事現場(旧日本軍相模海軍工廠跡地)でびらん剤・マスタードと催涙剤・クロロアセトフェノン入りのビールびんが発見された件、

(2)2003年4月に、神奈川県平塚市の「平塚第2地方合同庁舎」工事現場(旧日本軍相模海軍工廠跡地)でシアン化水素入りガラスびんが発見された件、

(3)2000年11月から、2003年8月までに福岡県の苅田港(かんだこう)付近海底で、化学弾の可能性がある爆弾500発以上の存在が確認された件、

(4)1996年10月に、北海道屈斜路湖湖底から26発の化学兵器が発見された件、

(5)1999年3月に広島県竹原市大久野島(おおくのじま)の南側防空壕跡から、くしゃみ性の化学物質を充填した有毒発煙筒が発見された件、

(6)2003年3月に、茨城県神栖(かみす)町の井戸水から、くしゃみ剤に由来するとみられる有機ヒ素化合物・ジフェニルアルシン酸が検出され、住民の健康被害が確認された件−−の6件。

 屈斜路湖と大久野島の件は化学兵器禁止機関(注1)に届け出後、同機関が廃棄完了を確認ずみ、寒川町と平塚市の件は同機関に申告済み、苅田港と神栖町の件は化学弾の存在が特定されていないため、同機関にはまだ申告されていないという。 (注1)略称:OPCW。化学兵器禁止条約に基づき設置された国際機関で、化学兵器やその生産施設の廃棄進捗状況の査察や、毒性化学物質を扱う産業施設への査察を行っている。本部・オランダハーグ市。【外務省】

チチハル毒ガス事件の被害者が民事訴訟ヘ

2004/02/02(月) 中国情勢24
 『中新網』2日付報道によれば、黒龍江(こくりゅうこう)省・チチハル市の旧日本軍遺棄化学兵器による毒ガス事件の被害者35人が1日、日本政府に対して謝罪と賠償を求める民事訴訟を起こした。

 2003年8月4日に起きたこの毒ガス漏出事件による被害者は44人、うち1人が死亡している。この事件は、03年12月に日中政府間で日本側が3億円の「協力金」を支払うことで合意、また両国の専門チームによる遺棄化学兵器の処理作業も進められていた。

 しかし、チチハル市内で廃品回収に携わっていた丁樹文氏は、政府間での合意に対する不満を露わにする。丁氏は、今回の訴訟で日本政府に対し謝罪と賠償を求めるだけでなく、旧日本軍の遺棄化学兵器の処理、及び事件の再発防止まで徹底した要求を行うと語る。

 中国側弁護団の蘇向祥・弁護士は、政府間の合意後も中国人戦争被害賠償要求訴訟・日本弁護団の尾山宏・団長らと調整を進めてきた。蘇・弁護士は、今後できるだけ短期間で裁判に必要な証言を集める方針を明らかにしている。蘇・弁護士はすでに35人からの依頼を受け、2日にはチチハル市以外の被害者も訴訟に関する手続きを行う予定。(編集担当:中村彩)

チチハル毒ガス事件:「協力金」3億円の支払いへ

2003/12/26(金) 中国情勢24
  『中新網』25日付報道によれば、黒龍江(こくりゅうこう)省・チチハル市で起きた旧日本軍化学兵器遺棄にまつわる毒ガス事件で、日本側が「協力金」の名目で支払うことが決定した約3億円が間もなく支払われる見込みであるという。

  これは中国外交部の劉建超・報道官がこの日発表したもの。劉・報道官によれば、この3億円は事件の前後処理のため、日本政府が被害者などに支払うものであると指摘。

  また、劉・報道官は、中国政府が引き続き日本政府に対して、二国間合意事項や関連の国際公約の規定に基づいて、中国人民の生命や生態環境を脅かす遺棄された化学兵器の撤収を加速するよう求めていくとした。

第26回中国遺棄化学兵器現地調査団を中国に派遣へ

2003.12.09 EICネット
 日本政府は2003年12月10日から19日まで第26回中国遺棄化学兵器現地調査団を中国に派遣することにした。

 この調査団には、外務省、内閣府遺棄化学兵器処理担当室、日本国際問題研究所軍縮不拡散促進センター、民間の専門家12名が参加。

 中国外交部、国防部の全面的な協力の下、広東省広州市で発見された砲弾25発と砲弾破片1個について調査を行い、将来廃棄する際に必要な資料を収集する予定。【外務省】

チチハル:化学兵器処理6日目で10分の1終了

2003/11/15(土)中国情勢24
 『中新網』14日付報道によると、黒龍江(こくりゅうこう)省・チチハル市の富拉尓基地で現在進められている旧日本軍化学兵器の密封処理作業は、6日目でおよそ10分の1を終了したことが明らかになった。

 作業中は一部の毒ガス弾にわずかなガス漏れが発生したが、アクシデント対策が事前に立てられていたこともあり、迅速な処理が行われた結果、作業スタッフに被害は出ていないという。

 作業中のガス漏れ対策については、現場に設置されている化学分析室で即座に成分分析が行われ、必要な緊急措置を取る体制が敷かれている。

 瀋陽軍区・化学兵器処理事務室の馬印徳・副主任は、化学兵器処理作業においてある程度の危険性は伴うものだが、毒ガス漏れによる周囲への汚染や被害が起こらないよう、厳格な作業体制が整えられているので問題はないとコメントした。

 馬・副主任によれば、処理作業は今月28日までに完了の予定。

チチハル毒ガス事件、化学兵器の処理作業始まる

2003/11/06(木) 中国情勢24
 『中新網』6日付報道によると、黒龍江(こくりゅうこう)省・チチハル市で起きた旧日本軍化学兵器遺棄事件で、化学兵器処理のため日中双方の関係者は5日現地入りした。

 今回の処理活動では、未処理の爆弾のX線スキャン、爆弾種類の選別、密封処理が行われる。日中の政府関係者、軍事関係者、技術者などおよそ100人が参加し、日本側が主体となって処理作業に入ることになっている。作業は来月上旬までかかる見込み。

 問題の化学兵器は、同市富拉尓基地の旧日本軍化学兵器臨時保管庫に保存されているもの。長期の放置状態で一部の爆弾に腐食が生じ、毒ガス漏出の危険が高まっており、中国側からも早急な処理が要請されていた。

胡錦涛:事実受け止め、遺棄兵器処理の加速化を

2003/10/21(火) 中国情勢24

 『中新網』20日付報道によると、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議出席に合わせ、バンコク入りしていた中国の胡錦涛(こきんとう)・国家主席は同日、日本の小泉純一郎・首相と会談を開き、両国の問題について意見を交わした。

 胡・国家主席は、19日に日本側が3億円を支払うことで合意した旧日本軍遺棄化学兵器問題について、早期解決が両国関係の健全な発展につながるとの見解を示した。

 胡・国家主席はこの問題を、両国に横たわる歴史的問題であり、また早急に解決を要する現実的問題であると発言。戦争から60年経った今も、旧日本軍の遺棄化学兵器が中国人民の安全を脅かしていることに言及した。

 また胡・国家主席は、日本側に対して、この事実をしっかりと受け止め、できるだけ早い慰問を望んでいると語るとともに、これを機に遺棄兵器の処理を加速させることを要請した。

 小泉・首相は、日本政府は誠意をもってこの問題に対処していくとして、胡・国家主席の要請に応えていく姿勢を明らかにした。

チチハル毒ガス事件、弁護団の訴訟活動は継続

2003/10/21(火) 中国情勢24
 『中新網』20日付報道によると、黒龍江(こくりゅうこう)省チチハル市で起きた旧日本軍遺棄化学兵器毒ガス事件で、中国側弁護団の蘇向祥・弁護士は、今後も継続して訴訟を行っていく意向であることを明らかにした。蘇・弁護士は、中華全国律師協会の民間対日賠償指導グループ化学兵器委員会の代表。  

 蘇・弁護士は、日本政府が「協力金」の名目で3億円を支払うことですでに合意に至ったが、この協力金は両国の外交協議に基づくものであり、法律による拘束力がない点を強調。今後は、日本政府に対して法律による責任追及と賠償を追及し、全面解決を目指して訴訟活動を継続していくと語った。

 さらに蘇・弁護士は、民間訴訟は両国政府間の政治的解決と矛盾することはないと強調。訴訟を通じて当事者の立場から問題を解決していくことを重視するとした。

 中国人戦争被害賠償請求訴訟・日本弁護士団の尾山弘・団長は24日北京を訪問し、訴訟について交渉を進めていく。26−30日には、同団の小野寺利孝幹事長がチチハルに赴き、現地で調査を行い事件の詳細を明らかにしていく予定である。

チチハル毒ガス事件、協力金3億円支払いで合意

2003/10/18(土)中国情勢24

 『中新網』17日付報道によれば、黒龍江(こくりゅうこう)省チチハル市で起きた旧日本軍の遺棄化学兵器による毒ガス事件で、日本政府の関係者は、交渉の末、日本側が「協力金」の名目で約3億円の支払いを行うことで両国が最終的に同意したことを明らかにした。近日中にも正式に発表される模様。

 日本政府は、水面下で「慰問金」として1億円を支払うことを提出していたが、中国側がこれを拒否。交渉は難航を続けたが、最終的に「協力金」での3億円で双方が一致したという。

 中国政府は当初、日本政府に賠償金を請求していたが、日本政府は1972年の「日中共同声明」の中で、賠償金の請求権を放棄していることを双方が承認していることを引き合いに、この要求を拒んでいた。

チチハル毒ガス事件、日本政府が協力金支払いも

2003/10/17(金) 中国情勢24
 『中新網』16日付報道によれば、黒龍江(こくりゅうこう)省チチハル市で起きた旧日本軍の遺棄化学兵器による毒ガス事件について、日本政府は15日、中国側が要求する賠償金を「協力金」の名目で支払う可能性があることを発表した。

 日本政府は、当初1億円の支払いを予定していたが、中国側の要求を受け入れ数億円の支払いに応じる模様とされる。両国政府は15日までに3度の協議を行ったが未だ最終的な合意には至っていない。引き続き協議を行う予定だが、現在のところその日程は未定となっている。

 日本大使館によれば、両国政府は現在最終的な合意に向け、事故への応対、再発防止策及び全ての遺棄化学兵器の回収についても討議中であるという。

日本政府、チチハル毒ガス事件で医療チーム派遣

2003/10/15(水) 中国情勢24
 『中新網』14日付報道によると、日本政府は同日、黒龍江(こくりゅうこう)省・チチハル市で起きた旧日本軍遺棄化学兵器毒ガス事件の被害者に対して、中国に再度医療専門家チームを派遣し、日中両国が協力して被害者の治療にあたる方針を発表した。

 日本側は、今後に遺棄化学兵器の処理過程で同様の事件が起きることを想定して、今回の医療チームは「研究」の名目で中国へ派遣されることになる。また、処理にかかる費用は今年度予算に計上された旧日本軍遺棄化学兵器処理事業費307億円から支出する見通し。

  日本政府は被害者に対して見舞金や医療費などを支払いについて何度も議論を重ねてきたが、1972年日中共同声明で中国政府が日本に対する戦争賠償の請求を放棄していることから賠償の支払いには直接的に応じることはできないとの見解を示している。

  今年8月4日、チチハル市で発生した旧日本軍の遺棄化学兵器による毒ガス(マスタードガス)漏出事件で同日までに1人が死亡、42人が負傷と報告されている。被害者は日本政府に対して損害賠償の請求と謝罪を求め、提訴している。

  日本の小泉首相は今月8日インドネシアのバリ島で、温家宝(おんかほう)首相と会談を行い、チチハルでの毒ガス事件についても言及。日本政府は引き続き中国側と協力して解決に臨むこと、また日本としても誠意のある対応で早期解決を目指すことを表明している。(編集担当:田村まどか)

政府、毒ガス弾訴訟で控訴

2003/10/03 中国新聞ニュース
 政府は三日午後、旧日本軍が中国に残した毒ガス弾などで戦後に被害を受けた中国人や遺族への国家賠償を命じた先月二十九日の東京地裁判決を不服として、東京高裁に控訴した。

 与党の一部からは「控訴すべきではない」との声もあったが、今年五月の同様の訴訟では国が勝訴しており、外務、法務両省などで検討した結果、「同様訴訟で司法判断が分かれており、(敗訴判決は)承服しがたい」との結論になった。

 小泉純一郎首相は三日夕、記者団に対し「外務、法務両省がよく協議してこうしたいということで了承した」と説明。先月の判決で被害防止への不作為が指摘されたことに関しては「司法判断に任せたい」と控訴審を見守る考えを示した。

 中国外務省の孔泉報道局長は三日、控訴に不満を表明、東京地裁判決を「厳粛で公正」として日本政府の真剣な対応を求める談話を発表した。

 旧日本軍が中国に放置した毒ガス弾は推定七十万発。このうち政府が認定した毒ガス弾については化学兵器禁止条約に基づき、廃棄処理を進めることになっており、今後見込まれる数千億円の費用はすべて日本が負担する。

 しかし、八月に黒竜江省チチハル市で死者一人を含む四十人以上に被害が出た遺棄毒ガス漏出事故など、政府がこれまで把握していなかった毒ガス弾による被害も出ている。こうした補償のためには、新たな法整備などの措置が必要となるが、政府は「一九七二年の日中共同声明で中国側の賠償請求権は放棄された」として、補償を拒み続けてきた。

 裁判でも同様の主張を展開した政府に対し、先月の判決は「主権が及ばない中国であっても中国政府に回収を申し出るか、遺棄状況などの情報を提供して被害を防ぐ義務があった」と指摘。ほぼ請求通り約一億九千万円の支払いを命じた。

 一方、同様訴訟の今年五月の東京地裁判決では「主権の及ばない中国での回収は困難」として請求を棄却。原告側が控訴し東京高裁で審理が続いている。

日本に謝罪と補償請求へ 中国毒ガス事故で遺族

2003/10/03 中国新聞地域ニュース
 【北京3日共同】中国黒竜江省チチハル市で八月に起きた旧日本軍の遺棄毒ガス漏出事故で、死亡した中国人男性、李貴珍氏の妻、劉愛平さん=河南省在住=が三日、日本政府による公式の謝罪と正当な補償を求めて、日本の弁護団に交渉を委任した。

 今月末には訪日し、日本政府に直接、謝罪と補償を要求する予定で、日本政府が応じなければ損害賠償請求訴訟を起こす方針。

 遺棄毒ガス兵器の別の中国人被害者が提訴した賠償請求訴訟で東京地裁は九月二十九日、原告勝訴の判決を出しており、北京で記者会見した泉沢章弁護士は「すべての被害者への救済と謝罪を日本政府に要求していきたい」と指摘。同訴訟でも控訴しないよう政府への働き掛けを強めていく考えを明らかにした。

 中国側関係者によると、チチハルの事故で被害を受けたのは四十三人に上り、うち河南省から出稼ぎに来ていた李さんが死亡。他の被害者についても、補償などの請求を日本の弁護団に委任する意向があるかどうか早急に調査する予定。

 日本政府はチチハルでの事故被害者に対し「見舞金」などとして約一億円を支払う方針を固めているが、李さんのいとこの李長見さんは「日本政府から何の謝罪も反応もない」と語った。

外交部:旧日軍遺棄化兵器「看過してはならない」

2003/09/30(火) 中国情勢24

 『中新網』30日付報道によると、東京地方裁判所で行われた旧日軍遺棄化兵器訴訟の一審判決での原告側勝訴に関し、国務院外交部の孔泉・報道官は30日、記者インタビューに答え、日本政府はかつての戦争が残していった問題を看過するようなことがあってはならないと発言した。

 孔・報道官は、「第二次大戦中に旧日本軍は中国で生物化学兵器を幾度も使用し、中国人民に非道な罪状を重ねてきた、日本が敗戦濃厚になった大戦末期に中国各地に遺棄された化学兵器は、平和がもたらされた現在に至っても中国人民を脅かしている」と、遺棄問題の深刻さを強調。

 また孔・報道官は今回の判決に関し、中国側は非常に重視していたと語った。一審判決が言い渡されたこの日は1972年に「日中共同声明」が調印された日でもあり、東京地裁はこの点にも触れ、日本政府側が遺棄兵器の回収義務を怠っていたことを指摘、原告側の請求をほぼ認める判決を下した。

  奇しくも「共同声明」と同日に勝訴の判決が下されたことで、原告側は日中両国のさらなる関係改善の第一歩になるとの見方を示した。

  反面、黒龍江(こくりゅうこう)省・チチハル市の遺棄毒ガス事故で外交問題に発展している現状、日本政府の敗訴が今後の補償問題に与える影響を危惧する声が上がっており、双方の見解の不一致が如実に現れた形となった。

中国の毒ガス弾に回収義務 国に1億9千万賠償命令

2003/09/29 中国新聞ニュース
 旧日本軍が中国に残した毒ガス弾などで戦後被害を受け、死亡したり健康を損なったりしたとして、被害者の中国人や遺族計十三人が国に総額二億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は二十九日、ほぼ請求通り約一億九千万円の支払いを命じた。

 片山良広裁判長は「主権が及ばない中国であっても中国政府に回収を申し出るか、遺棄状況などの情報を提供して被害を防ぐ義務があった」と認定。「日中国交回復後も回収を怠り、放置した行為にはわずかの正当性もない」と国の不作為を違法とした。

 遺棄兵器による戦後の被害に、国の賠償責任を認めた判決は初めて。中国の被害者は二千人以上ともいわれ、今年八月にも黒竜江省で毒ガスによる死者が出たばかり。一貫して補償を拒んできた国は、新たな対応を迫られそうだ。

 片山裁判長は判決理由で、毒ガス兵器の遺棄について「国際的非難を避けるため、組織的に隠ぺい、隠匿を実行した」と日本軍の違法行為を認定した。

 その上で「軍関係者の話や資料を調べれば、遺棄状況を相当程度把握でき、住民らに重大な危険が及ぶことが予想できた」と国の予見可能性を認め「危険な状態をつくり出した国には解消する義務がある」と指摘。一九七二年の日中共同声明による国交回復で回収義務が履行可能になっても、責任を果たさなかったと結論付けた。

 国は「共同声明で中国側は戦争賠償請求権を放棄した」と主張したが、片山裁判長は「問題となっているのは、戦争中の行為ではなく共同声明以降の不作為」と退けた。

 一部の被害は、不法行為から二十年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」の扱いも争点となったが、片山裁判長は「正義、公平の理念に反する」と適用しなかった。

 判決によると、被害は三件で被害者は元作業員計十人。七四―九五年、黒竜江省内で工事中などに見つかったマスタードガスなどの毒ガス弾や通常砲弾で二人が死亡、八人がやけどや手足の機能障害などの後遺症で苦痛を強いられた。

 原告側は被害者一人当たり二千万円の賠償を請求。片山裁判長は砲弾事故による負傷者一人は一千万円とし、ほかは全額認めた。

 同様の訴訟では今年五月、東京地裁の別の裁判長が「主権の及ばない中国での回収は困難」として請求を棄却。原告側が控訴し東京高裁で審理が続いている。

中国:「九一八」に各地で哀悼、対日感情悪化も

2003/09/20(土) 中国情勢24

 『中新網』18日付報道によると、山東(さんとう)省・済南(さいなん)市では、多くの市民が小雨の降る中、「五三事件(済南事件)」の記念碑に訪れた。

 ちょうどこの日は満州事変が起きた「九一八」に当たり、中国各地で日中戦争の犠牲者に哀悼の意が捧げられた。今年8月には、黒龍江(こくりゅうこう)省・斉斉哈爾(チチハル)市で旧日本軍の遺棄化学兵器による毒ガス事故が発生。さらに北京−上海間の高速鉄道建設では、インターネット上に「日本の新幹線導入はやめよ」などの激しい反日感情がぶつけられている。(編集担当:吉田雅史)

遺棄化学兵器:賠償と全面回収求める署名100万人突破 中国

2003年09月16日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 【香港・成沢健一】16日付の中国系香港紙「文匯報」などによると、旧日本軍の遺棄化学兵器による中毒事故への賠償と兵器の全面回収を求める署名が中国のウェブサイト上で100万人分を超えた。サイトの主宰者らは、満州事変が起こって72周年となる18日に北京の日本大使館に署名を提出するほか、約50人で抗議デモを行う計画だったが、公安当局は「公共の安全と社会秩序を乱す」として不許可とした。

 先月に黒竜江省チチハル市で起きた中毒事件では、1人が死亡し、40人以上が被害を受けた。署名活動をしたのは、尖閣諸島(中国名・釣魚島)の中国の領有権を主張するとともに日本製品の不買運動を呼びかけている「愛国者同盟網」など六つのサイト。署名は、北京や上海など大都市の住民が大半を占めた。

 旧日本軍の遺棄化学兵器は、日本側の調査で砲弾約70万発(中国側は200万発と主張)と推計されている。99年に署名された日中覚書に基づき、00年から回収作業が始まっている。賠償について日本政府は、72年の日中共同声明により、日中戦争にかかわる請求権の問題は存在しないとの立場を取っている。

旧日本軍の遺棄化学兵器発掘作業、日中共同で始まる

2002年09月05日 Yomiuri On-Line
 【孫呉(中国黒竜江省北部)5日=杉山祐之】ロシア国境に近い中国黒竜江省北部・孫呉県の丘陵地帯で、5日午前、旧日本軍の遺棄化学兵器を地中から発掘、回収する日中共同作業が始まった。両国が協力して行う本格的な発掘回収は、2000年9月に同省北安市で初の作業が行われて以来、3回目。

中国での旧日本軍遺棄化学兵器事故について、日中協議開催へ

2003.09.03 EICネット
  中国黒龍江省チチハル市の建築現場から掘り出された旧日本軍の遺棄化学兵器が原因となり、現地の建築作業員らが頭痛・嘔吐などを訴え、うち1人が死亡した事件で、2003年9月3・4日に中国の北京で日中協議が開催される。

 この協議には日本から外務省と内閣府遺棄化学兵器処理担当室の関係者が、中国からは葛広彪(かつ・こうひょう)外交部処理日本遺棄在華化学兵器問題弁公室主任を団長とする外交部関係者が出席する予定。

 事故の原因となったドラム缶の処理を含む今回の事故への対応、同種の事故の再発防止策、旧日本軍の遺棄化学兵器処理事業全体の改善策について意見交換が行われる。【外務省】

旧日本軍遺棄の毒ガス事故に日本から見舞金

2003/09/02(火) 中国情報24
 『中新網』2日付報道は共同通信を引用し、黒龍江(こくりゅうこう)省チチハル市で起きた旧日本軍の遺棄化学兵器による毒ガス事故に対し、日本政府が同日、約1億円の「見舞金」を支払うことを報じている。

 中国側はこの事故に関して賠償金を要求したものの、日本側としては、日中国交回復時に中国は戦争関連の賠償請求の権利をすべて放棄しているとの理由から、賠償金の支払いには応じない姿勢。しかし今回は死者1人を含む40人以上の被害者が出ているという事態を鑑みて、「見舞金」という名目で対応するに到ったという。

  この見舞金は被害者の入院費、現地の医療機関への資金援助などとして使われることが現在検討されている。

中国:毒ガス事件で日本訪問の被害者1人を選抜

2003/08/24(日) 中国情報24
  『中新網』23日付報道によれば、旧日本軍が遺棄した化学兵器による毒ガス事故で、中華全国律師協会の民間対日賠償指導グループの化学兵器委員の蘇向祥氏は、弁護士団が22日に黒龍江(こくりゅうこう)省斉斉哈爾(チチハル)市に赴き、日本訪問のための被害者1人を選抜した。

  先日、被害者の1人が死亡したが、蘇氏によれば、それが訴訟に対して影響を及ぼすことはないとの見解を示し、既定の方針で訴訟活動を進めていくという。蘇氏は9月10日頃、被害者1人を伴い日本を訪問、日本の国会議員との面会や市民集会における講演を行う。被害者の声を伝えることで、訴訟のための準備をすすめるという。

  蘇氏によれば、今月末に日中両国の弁護士団がチチハル市で実地調査を行ない、レポートを作成、そのレポートを日本の国会に提出するという。そのレポートの中には死亡した李貴珍さんのことも報告され、日本側に対して、被害者に対する正式な謝罪、被害者に対する医療補助、物質的な賠償提供、再発防止のための方針制定を求めていく。(編集担当:鈴木義純)

遺棄化学兵器:中毒事故患者1人が死亡 中国が日本に伝える

2003年08月23日 [毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 【北京・浦松丈二】中国の王毅外務次官は22日、阿南惟茂・駐中国日本大使を北京の同省に呼び、黒竜江省チチハル市で今月4日に起きた旧日本軍の遺棄化学兵器による中毒事故の患者1人が21日夜、死亡したと伝えた。また、対応を協議するため、日本政府代表団の北京派遣を求めた。中国国内で遺棄化学兵器による死亡者を日中両政府が確認したのは初めて。

 王次官は遺族への賠償問題について、地元のチチハル市政府から日本政府に賠償要求が提出されていると指摘。中国政府としては「日本側が実際の行動で責任を果たすよう強く要求する」と述べた。中国政府は日本との戦争に関する賠償請求権を放棄していることから、日本側に自主的な対応を促したとみられる。

 これに対し、阿南大使は「誠意を持って対応したい」と応じた。日本政府は化学兵器禁止条約に基づき、中国国内に残した遺棄化学兵器を回収・無害化することを約束している。

 王次官や中国国内の報道によると、死亡したのは河南省から同市に出稼ぎに来ていた李貴珍さん(31)。李さんは遺棄化学兵器の「びらん剤」が漏れ出したドラム缶を含む5缶を200元(約3000円)で購入、廃品業者まで運んで売却した。その後、全身の95%にやけど症状が出たため、緊急治療を受けていた。

 李さんの遺族はチチハル市政府を通じ、日本政府に慰謝料や葬式費用など7項目の補償を要求した。要求総額は報道されていない。

旧日本軍遺棄毒ガス事故、政府関係者現地入り

2003/08/18(月) 中国情勢24
  『中新網』16日付報道によると、黒龍江(こくりゅうこう)省・チチハル市における旧日本軍の遺棄化学兵器による毒ガス事故の発生を受け、日本外務省・アジア大洋州局中国課の川上文博課長補佐と医療専門家チームは、16日にチチハル市入りした。

  外務省は中国遺棄化学兵器現地調査団(第21回)を今月1日−9日に派遣している。 同調査団は、川上文博中国課課長補佐を団長とし、外務省、内閣府遺棄化学兵器処理担当室、日本国際問題研究所軍縮不拡散促進センター、民間の専門家の一行17名で構成されている。

  調査内容は、黒龍江省・大慶(だいけい)市及び同省チチハル市において発見された砲弾について外観鑑定、計測等の調査を行い、将来の廃棄に必要な資料を収集するものだった。そして調査結果によると、これらドラム缶は旧日本軍の遺棄化学兵器であることが判明。

  続いて外務省は15日に、被害者の治療に関する助言・指導を行うことを目的として、新たに医療専門家チームを派遣した。さらに、現在簡易梱包されているドラム缶に対し更に密封性の高い梱包を実施するため、黒龍江省牡丹江(ぼだんこう)において、遺棄化学兵器の現地調査を行っていた日本政府関係者及び専門家等6名も、現地入りした。(編集担当:佐藤妙子)

旧日本軍毒ガス:日本政府に医療費など賠償請求

2003年08月17日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 旧日本軍の毒ガス事故で中国黒竜江省チチハル市の郭海洲・事故緊急救援指導グループ長は17日、被害者の医療費や事故処理費用など4項目の補償支払いを日本政府に正式に求めたことを明らかにした。

 要求したのは(1)汚染現場の消毒処理費用(2)被害者の医療費(3)被害者の障害補償(4)建設工事中断の損失補てん。既に日本政府の現地調査団に要求書を手渡した。戦争賠償について中国は請求権を放棄しており、日本政府は賠償請求には応じない立場だが、新たに発生した被害への「補償」にどう対応するか、難しい判断を迫られる。

 郭グループ長は今回の事故について、日本政府が旧日本軍の毒ガスと確認して調査団まで派遣した初のケースであり、「日本政府に責任がある」と強調。要求に被害者への賠償的性格のものが含まれていることについては「戦争賠償ではない。客観的な損失への補償である」と述べ「日本は責任ある態度で適当な解決方法を探してほしい」と訴えた。

 日中両国は99年、日本が遺棄化学兵器を処理する覚書に調印したが、戦後の毒ガス被害をどう処理するかについては触れていない。

 今年5月には中国人被害者5人が賠償を求めた裁判で東京地裁が請求棄却の判決を言い渡したが、いずれも被害は87年以前の古いケース。郭グループ長は新たな大量被害が起きた今回の事故について「裁判ではなく話し合いで解決したい」と話している。(チチハル(中国黒竜江省)共同)

旧日本軍毒ガス:事故被害者は43人に

2003年08月17日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 【北京・浦松丈二】新華社電によると、中国黒竜江省チチハル市で今月4日に発生した旧日本軍の遺棄化学兵器による中毒事故は17日までに、入院患者が2人増えて43人になった。うち1人が危篤、5人が重症に陥っているという。

 新たに入院した患者2人は中毒事故が起きた工事現場で整地作業を行っていた作業員と付近住民。現地病院によると、作業員の右足に赤い斑点が、付近住民は背中に水疱(すいほう)などの症状が確認された。2人とも病状は安定している。

 中毒の原因となった化学兵器は工事現場から掘り出されたドラム缶5缶の一つから漏れ出し、日本政府が派遣した専門家により、皮膚などに炎症を起こさせる「びらん剤」と確認されている。

中国の遺棄化学兵器事故の現場に医療専門家チームを派遣へ

2003.08.14 EICネット
  中国黒龍江省チチハル市の建築現場から掘り出された旧日本軍の遺棄化学兵器が原因となり、現地の建築作業員36人が入院した(注1)件で、日本政府は被害者の治療に関する助言・指導を行うことを目的として医療専門家チームを現地に派遣することを決めた。

 医療専門家チームの構成は医師3名、外務省、内閣府遺棄化学兵器処理担当室、国際問題研究所職員、通訳各1名−−の計7名で、派遣期間は2003年8月15日から20日まで。

 また医療専門家チームの派遣とは別に、現在簡易梱包されている遺棄化学兵器をより密封性の高いアルミラミネートで仮梱包するため、黒龍江省牡丹江で遺棄化学兵器の現地調査を行っていた日本政府関係者・専門家6名についても14日中に現地へ派遣する方針。

(注1)2003年8月13日時点での中国側報道による入院者数【外務省】

遺棄化学兵器:補償問題が日中間懸案に浮上する可能性が

2003年08月13日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 中国黒竜江省で発生した旧日本軍の遺棄化学兵器による中毒事故をめぐり、被害者への補償問題が、日中間の新たな懸案として浮上する可能性が出てきた。遺棄化学兵器の処理問題で日中協議が始まった90年代以降、中毒被害の発生が確認された例はなく、それ以前の被害者について日本政府は賠償に応じていない。福田康夫官房長官が先に訪中するなど、小泉純一郎首相の靖国神社参拝で途絶えた首脳相互訪問の再開を探る両国の動きが活発になってきた時期だけに、過去の歴史問題に深くかかわる事故の発生が中国の反日世論を刺激しないよう、外務省は対応に苦慮している。

 事故が起きたのは今月4日。同省チチハル市の建築現場で掘り出されたドラム缶5缶の一部から液体が漏れ、作業員ら29人が頭痛やおう吐などの症状を訴えて入院した。日本政府は同省牡丹江で遺棄化学兵器の調査に当たっていた調査団のうち4人を現地に派遣し、旧日本軍の「びらん剤」と確認。訪中していた福田長官は11日、北京での記者会見で「原因が旧軍の責任に帰することになれば、わが国政府としてそれなりの対応をする必要がある」と語った。

 しかし、72年の日中共同声明により、日中戦争にかかわる請求権の問題は存在しないというのが日本政府の立場。87年以前の被害者が賠償を求めて東京地裁に起こした訴訟では今年5月、請求棄却の判決が出た。今回の事故に関しても「戦後処理の一環として補償することはできない」(外務省中国課)と賠償請求には応じない構えだ。

 ただ、対応を誤れば日中関係改善の機運に水を差すだけでなく、新幹線技術の採用を働きかけている中国の高速鉄道計画にも影響しかねない。外務省は12日、「中国側と密接に協力し誠実に対応したい」との報道官談話を発表。中国側から賠償請求の意向は伝えられておらず、「被害者にどう誠意を見せるかが大事」(中国課)と賠償以外の対応を検討しており、治療費の負担が検討対象になる可能性もある。

 旧日本軍が中国に残した遺棄化学兵器は、日本側の調査で中国東北部を中心に砲弾約70万発と推計される(中国側は200万発と主張)。97年の化学兵器禁止条約発効を受け双方は99年に処理に関する日中覚書に署名。00年に回収作業が始まったが、これまでに回収できたのは約3万5000発。回収した化学兵器の処理施設はまだ建設場所も決まっていない。【平田崇浩】

 <化学兵器禁止条約> あらゆる化学兵器の開発、生産、保有、使用を禁止し、保有国に発効(97年4月)から10年以内の廃棄を義務付けた条約。他国領域に遺棄した化学兵器も廃棄義務の対象とされた。批准国は日本、米国、ロシアなど153カ国。

中国で旧日本軍遺棄化学兵器による中毒事故 日本政府は「誠実な対応」を表明

2003.08.12 EICネット
  2003年8月4日、中国黒龍江省チチハル市の建築現場で建築作業員が頭痛・嘔吐などを訴え、29人が入院、うち3人が重体となる事件があった。

 この建設現場から掘り出されたドラム缶から漏れ出た液体が原因とみられ、調査の結果、ドラム缶は旧日本軍の遺棄化学兵器であることが判明した。

 この件について外務省の外務報道官は8月12日に「日本政府として今回の事故発生は極めて遺憾。被害者の方々に心からお見舞い申し上げる」との談話を発表。さらに「中国側と協力しながら誠実に対応していきたい。また、危険な状態である遺棄化学兵器は化学兵器禁止条約上の廃棄義務にのっとり対処していきたい」との対応方針を示した。【外務省

遺棄化学兵器:中毒者発生で中国が日本に抗議申し入れ

2003年08月12日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 【北京・上村幸治】中国黒竜江省チチハル市で旧日本軍の遺棄化学兵器の有毒物質で多数の中毒者が出た問題で、王毅・中国外務次官は12日、阿南惟茂中国大使に「日本政府が相応の責任を負い、善後策を講じるよう求める」と申し入れた。阿南大使は「速やかに本国に報告する」と回答した上で、日本としても誠実に対応していきたいという姿勢を伝えた。

 王毅次官は「40人余りが中毒にかかり、36人が入院、10人が重症で、数人は生命の危機にある」と述べ、事故が「中国国民の強い憤りを引き起こしている」と指摘した。現地では、関係者が日本に損害賠償を求めるという報道も流れており、賠償問題が焦点の一つに浮上する可能性も出てきた。

中国:旧日本軍遺棄の毒ガス事故、重態10人に

2003/08/11(月) 中国情勢24
  『中新網』11日付報道によると、黒龍江(こくりゅうこう)省の斉斉哈爾(チチハル)市で起きた毒ガスによる事故に関して、中国の専門家グループと日本の代表団が調査を行った。この結果中国側は、原因がいずれも旧日本軍が遺棄した毒ガスによるものであると認定した。

  10日の時点で32人が入院して治療を受けており、うち10人が重態。ドラム缶のような形をした金属の容器から漏れだした溶剤を分析した結果、マスタードガス(イペリット)であるとの認定が出ている。

  中国国内ではこれをきっかけに、旧日本軍が遺棄した化学兵器に関する議論が沸き起こっており、マスコミを中心に日本政府への謝罪を求める声も上がっている。(編集担当:石井一三)

4日の毒ガス中毒事件、日本に賠償請求

2003年8月11日「人民網日本語版」
 日本の外務省は中国外交部の要請に基づき、、黒龍江省斉斉哈爾(チチハル)市で4日に発生した毒ガス漏洩と中毒事件調査のため、川上文博氏を団長とする4人の調査団を派遣、このほど事件現場に到着した。

 中国外交部は2日間にわたって、日本側と同事件に対する交渉を行っている。中国側はすでに現場の後片付け、医療費や人身傷害などについて日本側に対し損害賠償を請求している。

毒ガス被害:13日からホットライン 情報提供呼びかける

2003年08月11日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 毒ガス情報ホットライン 「中国人戦争被害者の要求を支える会」(運営委員長=井上久士・駿河台大教授)など、国内外の毒ガス問題に取り組んできた市民グループが13日から3日間、毒ガス情報ホットライン(電話03・5396・6067)を設ける。旧日本軍が遺棄した毒ガス兵器が原因とみられる健康被害が国内や中国で相次いでいるためで、遺棄した場所や被害情報の提供を呼びかける。

 環境省は、終戦時の国内での毒ガス兵器の保有状況などの調査を進めているが、ホットラインは中国での遺棄情報なども集める。開設は13〜15日の午前10時〜午後3時。毒ガス問題の専門家や弁護士ら6人が対応する。【足立旬子】


旧日本軍の遺棄化学兵器の処理始まる 中国・黒竜江省

2000.09.13(16:38)asahi.com
 旧日本軍が中国大陸に遺棄した化学兵器に対する日本政府の発掘回収作業が13日午前、黒竜江省北安市で始まった。日本はこれまでも遺棄化学兵器の調査を行ってきたが、主導的に廃棄処理に踏み込むのは今回が初めてだ。

 化学兵器禁止条約の遺棄締約国である日本は2007年春までに、推定で約70万発に上る遺棄化学兵器の全面廃棄を義務づけられている。約1500発の砲弾が埋まっているとされる北安市での処理は、今後の全面廃棄に向けた作業の行方を見極める意味も持つ。

 周辺住民約800人が避難した市街地内の発掘現場には直径16メートル、高さ9メートルの防護壁が設けられた。この中で、防護服、防毒マスクを身につけた日中両国の作業員たちが、地中数メートルの深さに埋まっている砲弾を1つ1つ慎重に掘り起こし始めた。

 13日午前の作業開始式で須田明夫・総理府遺棄化学兵器処理担当室長は「安全を第一に作業を」と訴えた。

 作業は約2週間ほどの予定で、発掘した砲弾を鑑定後、同省チチハル市の一時保管庫に輸送。日本側から自衛官8人を含む約75人の専門家が参加するほか、中国側からも人民解放軍関係者ら200人が加わる共同作業。事故を含めた事業責任は日本側がすべて負う。

 今後、北安市での作業結果をふまえて、旧日本軍の遺棄化学兵器の大半が埋められている吉林省敦化市のハルバ嶺地区で作業は本格化する見通しだ。実施初年度の今年度予算は36億円。最終的には「世界的に例がない規模の処理」(総理府遺棄化学兵器処理担当室)とされ、数千億円規模の大事業になると見られている。

「中国国内で廃棄」を明記 旧日本軍遺棄の化学兵器処理

July 30, 1999

 中両国政府は30日、旧日本軍が中国大陸に遺棄した化学兵器の廃棄処理の基本的枠組みについて定めた覚書に北京で調印した。中国政府は「中国国内で廃棄する」ことに同意し、日本政府は化学兵器禁止条約に基づき「すべて必要な資金、技術、専門家、施設を提供する」ことを確認し、覚書に明記した。これで日中間の懸案の一つが事業実施に向けて動き出すことになった。

 遺棄された旧日本軍の毒ガス弾など化学兵器は、1996年の日中共同調査で中国東北部を中心に70万発と推定される。化学兵器禁止条約で日本は遺棄締約国として2007年春までの全面廃棄が義務づけられている。事業全体の経費は膨大になると見込まれるが、政府は2000年度予算に初年度の処理経費を盛り込む方針だ。

 覚書は谷野作太郎駐中国大使と中国側の王毅外務次官補が調印した。8項目からなり、両国は「問題をできるだけ早く解決する緊迫性」を確認。中国側は当初日本への持ち帰りも求めていたが、最終的に「中国国内での処理」に同意した。

 日本側は条約の義務を「誠実に履行する」とし、中国側の求めに応じ、(1)中国の法律を順守(2)環境汚染の防止につとめる(3)事故が発生した場合は日本側が必要補償を行うこと、などに同意し、覚書に明記した。

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