TOPIC No.2-31d 朱鎔基・中国首相来日


「訪日は成功」と中国外務省 市民には「弱腰」評価も

2000.10.17(18:29)asahi.com
 中国外務省の朱邦造報道局長は17日の定例記者会見で、朱鎔基首相の訪日について「両国が政治的に理解と信頼を強め、経済的にはさらに協力を深めることで一致した。所期の目的を達し、円満に成功した」と評価した。

 一方、インターネット上の書き込みには、朱鎔基首相の日本での発言について、「新しい時代の中国の指導者のイメージを表した」といったものから「日本にそんなに遠慮することはない」「なぜ謝罪を要求しないのか」という反発もあった。

「中国の意向で動くことはない」 教科書検定で官房長官

2000.10.17(00:46)asahi.com
 中川秀直官房長官は16日の記者会見で、中学校の歴史教科書検定について、中国政府が旧日本軍による残虐行為に関する記述を減らさないよう日本政府などに要求したと一部で報じられたことに関して、「検定審議会において適切な審議が行われるものと考えている。中国の意を受けて政府が動くことではない」と述べた。

 教科書検定に対する中国政府の姿勢について、中川長官は中国外務省スポークスマンが談話を発表していることを紹介しつつ、「歴史の記述が薄まることがないように、という関心が表明されているものと承知している」と説明した。

「謝罪を求めることが目的ではない」 朱鎔基首相が会見

2000.10.16(20:13)asahi.com
 来日中の朱鎔基・中国首相は16日、東京都内の日本記者クラブで記者会見した。朱首相は14日のTBSの番組で、日本政府が「歴史認識」について、文書で謝罪していないと指摘したことについて、「中国側は一貫して1995年に当時の村山富市首相がアジアの人々に発表した談話を高く評価している。謝罪を求めることが私たちの目的ではない」と語り、文書による日本政府の謝罪について、柔軟な姿勢を示した。

 朱首相はこの中で、「歴史は隠すものではなく直視すべきで、教訓をくみ取ることで過ちを避けることができる」と述べた。その上で、「日本人も中国人民と同じように軍国主義の被害者であり、侵略戦争の責任を負わせるべきではない。私たちの目的は歴史を鑑(かがみ)とし、両国人民の未来の友好関係をつくりあげることだ」と語った。

 また、中国と台湾の関係について朱首相は「森喜朗首相との会談でも、もちろん台湾問題に言及した。中国は『一つの中国』の原則を堅持する」と述べ、改めて中国政府の姿勢を強調した。台湾の李登輝・前総統の訪日問題については、「彼は絶対に一般的な普通の人ではない。これらのことがあれば、結果については双方ともに十分に意識していると思う」と述べ、李氏の訪日を日本政府が認めることになれば、日中関係に悪影響を及ぼすとの認識を示した。

中国の朱鎔基首相、山梨でリニアを視察

2000.10.16(12:11)asahi.com
 中国の朱鎔基首相は16日午前、山梨県都留市を訪れ、JR東海のリニアモーターカー実験線を視察した。中国は北京―上海間に高速鉄道の建設を計画しており、車種の選定の参考にするのが狙い。

 視察には、森田一運輸相やJR東海の田中宏昌副社長が同行した。朱首相らは実験車両に試乗し、車内で技術的な説明を受けた。実験区間18キロを最高時速450キロで走った。

 朱首相は試乗前、高速鉄道の車種選定について記者団の質問に答え「日本にチャンスはあるが(ドイツなどとの)競争が必要だ」と述べた。

 中国は、ドイツのリニアの実験線を上海に設けることを決めている。朱首相は、日本のリニアについても「実験線を北京につくったらどうか」と提案しているが、日本側は「まだ実験中の技術だ」と否定的で、高速鉄道には新幹線を推している。

中国、教科書検定に圧力/南京事件や慰安婦問題

2000.10.16 The Sankei shimbun
文部省や与党議員に「記述減らすな」

 中国政府が日本政府や与党議員に対し、平成十四年度から新学習指導要領が施行されるのに合わせて文部省で検定中の特定の中学歴史教科書に懸念を表明、南京事件や慰安婦といった「旧日本軍による残虐行為」に関する記述を削減しないよう再三要求していたことが十五日、明らかになった。中国側は、日本の教科書検定基準でアジア諸国への配慮を求めた「近隣諸国条項」を順守するよう主張したものだが、日本政府などはこの事実を公表していない。文相の諮問機関「教科用図書検定調査審議会」委員の元外交官が特定の教科書を不合格とするよう他の委員に工作した事実も明らかになっており、自民党は関連性に注目している。

 中国政府からの申し入れは、九月二十二日に中国大使館の孫建明一等書記官(教育部)が文部省で井上正幸審議官と会談した際に行われた。孫書記官は検定中の歴史教科書について、中国側が三十万人以上と主張する南京事件の死者数を記載しなかったり、慰安婦問題を取り上げていないことを指摘。「近隣条項に基づき、旧日本軍が中国に与えた加害行為に関する記述を減らさないようにしてほしい」と要請した。同時に、執筆者に「新しい歴史教科書をつくる会」(西尾幹二会長)のメンバーが加わる教科書に対しても懸念を示したという。

 関係者によると、こうした申し入れは正式な外交ルートでも行われており、唐家●外相が九月十三日に米ニューヨークで河野洋平外相と会談した際にも「つくる会」メンバーが執筆者に含まれている教科書に思想上の理由を挙げて強い懸念を表明、日本政府として教科書検定に積極的に関与していくよう要求したとされるが、外務省はこの事実を公表していない。

 一方、与党議員らに対しては、王毅外務次官補が九月十九日に北京を訪問した超党派の日中友好議員連盟(林義郎会長)に対し、「教科書検定は日本の内政問題だが、中国に関する部分は発言する権利がある。従来の近隣条項を守るべきだ」と主張、検定作業に影響力を発揮するよう要望したが、議連はこのやりとりを公表しないことを申し合わせている。

 中国政府からの要請は、九月以降に訪中した国会議員の多くが何らかの形で受けており、自民党の野中広務幹事長も王次官補と九月二十六日に都内で会談した際、「歴史教科書で過去を風化させる動きがある」などと問題提起されている。

 外務省幹部は中国側の要求について「外交ルートではない」と説明しているが、教科用図書検定調査審議会委員の元外交官が不合格工作を活発化させたのは十月初旬からで、自民党の教育改革実施本部は時期が近接していることに注目している。

 なお、来日中の朱鎔基首相は、十三日の森喜朗首相との会談では、教科書問題については言及しなかったとされる。

 【近隣諸国条項】昭和五十七年に、文部省が検定で教科書の「華北への侵略」の記述を「進出」に書き換えさせたとマスコミが一斉に報道した。書き換えの事実はなく、誤報であることがわかったが、中国・韓国の強い反発に押されて当時の宮沢喜一官房長官は「政府の責任で教科書の記述を是正する」との談話を発表。教科書検定基準に「近隣のアジア諸国との間の近現代史の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」とする「近隣諸国条項」が追加された。

●=王へんに旋

「日本のハイテクすごい」 朱中国首相が先端工場視察

2000.10.15(19:39)asahi.com
 来日中の朱鎔基・中国首相は15日、山梨県忍野村にある国内最大の産業用ロボットメーカー、ファナックの工場を見学した。

 朱首相ら一行は、富士山のふもとに点在する工場群を車で次々と移動。同社の稲葉清右衛門名誉会長の説明を受けながら、産業用ロボットが電子機器を組み立てる自動製造ラインなどを熱心に見つめていた。記者団から感想を問われると「日本のハイテク技術の進歩はすごい」と答えた。

 首相は視察後、富士吉田市内のホテルで行われた天野建知事主催の夕食会に出席した。16日には、同県都留市にある山梨リニア実験線に試乗し、時速500キロを体感する予定だ。

「謝罪考えて欲しい」中国首相、テレビ番組で市民と対話

2000.10.15(23:22)asahi.com
 来日中の中国の朱鎔基首相は14日、TBS番組に出演し、日本の一般市民約100人と対話した。朱首相は日本の「歴史認識」について「1995年に(当時の)村山富市首相が概括的にアジアの人々に謝罪したが、日本はすべての公式文書の中で1度も中国に対し侵略戦争について謝罪していない」と指摘。さらに、「いつまでも日本に謝罪を求めないが、謝罪するかどうかは日本人自身の問題だ。考えて欲しいと思う」と述べ、日本側の歴史認識を問題視する中国側の立場を改めて鮮明にした。

 中国の首相が外国のテレビ番組でこうした試みをするのは初めて。クリントン米大統領が2年前の来日時にやはり出演しており、これを意識して日本国民へのアピールを狙ったようだ。

 歴史認識をめぐる発言は、「いつまで日本に謝罪を求め続けるのか」と質問されて答えた。朱首相は「今回の訪日では要求していない」と念を押し、それが中国国内で「軟弱だ」と批判の対象になっているとも語った。南京大虐殺についても、「触れたくないが、聞かれたので言う。あれは事実だ」と述べ、「否定できないし十分な証拠もある」と強調した。

 また、今春の石原慎太郎東京都知事の「三国人」発言について「中日関係の主流はいま良好だが、一部の言論が中国人の感情を傷つけている」と批判。「日本での外国人犯罪は中国人によるものが一番多い」との指摘には「初めて聞いた。両国で共同して対応していくしかない」と答えた。

 約1時間の対話では、「1人っ子政策」を問われて、「12億5000万人の国が無限に子どもを産み続けると、世界中が中国人だらけになる」と、ユーモアを交えた巧みな受け答えで会場を沸かせたほか、胡弓(こきゅう)演奏も披露するなど、中国のイメージアップに努めた。

核兵器問題など協議 朱首相が不破、土井両氏と会談

2000.10.15(19:14)asahi.com
 来日中の中国の朱鎔基首相は15日、東京・元赤坂の迎賓館で、共産党の不破哲三委員長、社民党の土井たか子党首と相次いで会談した。朱首相は土井氏との会談で、社民党が提唱する「北東アジア非核地帯構想」に関連し、「中国には、核兵器の全面禁止、先制不使用、非核保有国に対する不使用という3つの原則がある。そういう方向のすべての行動をサポートする」と述べ、賛意を示した。

 朱首相はまた、中国の海洋調査船による日本の排他的経済水域での航行について、不破氏が「中国政府の考え方を明らかにして誤解を解くことは意義がある」と述べたのに対し、「賛成だ」と応じた。

「謝罪考えてほしい」中国首相、テレビ番組で市民と対話

2000.10.14(21:38)asahi.com
 来日中の中国の朱鎔基首相は14日、TBS番組に出演し、日本の一般市民約100人と対話した。この中で朱首相は、日中間で絶えないあつれきになっている「歴史認識」について、「1995年に(当時の)村山富市首相が概括的にアジアの人々に謝罪したが、日本はすべての公式文書の中で1度も中国に対し侵略戦争について謝罪していない」と指摘。さらに、「いつまでも日本に謝罪を求めないが、謝罪するかどうかは日本人自身の問題だ。考えて欲しいと思う」と述べ、日本側の歴史認識を問題視する中国側の立場を改めて鮮明にした。

 中国の首相が、外国のテレビ番組でこうした試みをするのは初めてのこと。2年前にはクリントン米大統領が来日時にTBSに出演して市民とやりとりしており、中国側はこれを意識して日本国民へのアピールを狙ったようだ。

 歴史認識をめぐる発言は、参加者から「いつまで日本に謝罪を求め続けるのか」と質問されて答えた。朱首相は「今回の訪日では要求していない」と念を押し、それが中国国内で批判の対象になっているとも語った。南京大虐殺についても、「触れたくないが、聞かれたので言う。あれは事実だ」と述べ、「否定できないし十分な証拠もある」と強調した。

 また、今春の石原慎太郎東京都知事の「三国人」発言について「中日関係の主流はいま良好だが、一部の言論が中国人の感情を傷つけている」と批判。「日本での外国人犯罪は中国人によるものが一番多い」との指摘には「初めて聞いた。両国で共同して対応していくしかない」と答えた。

日本の新幹線方式を売り込み 中国首相と財界人が昼食会

2000.10.14(20:17)asahi.com
 来日中の中国の朱鎔基首相と財界人との昼食会が14日、東京都内のホテルであった。日本側は中国が計画している北京―上海間の高速鉄道向けに日本の新幹線方式を売り込むいい機会とみて、積極的に協力したい考えをアピールしたが、中国側は「西部(内陸部)大開発」への日本の支援を要請、経済協力の力点の置きどころで違いを見せた。

 経団連の今井敬会長は高速鉄道について、「21世紀初めの貴国の経済発展のシンボルとし、日中協力のモニュメントとしていただきたい」と積極的な姿勢を示したが、西部大開発については、「いかなる協力が可能か検討したい」と述べた。

 一方、朱首相はあいさつの中では、高速鉄道には触れず、内陸部の都市化や企業誘致など「西部大開発」をさらに推進していく方針を強調した。「日本側が環境保全の技術と経験の強みを生かして、環境整備に貢献できるように望んでいる」などと述べ、砂漠化防止や土砂流出対策、自然保護区の設置などで日本のノウハウを活用したい考えを示した。

 その後の懇談で、朱首相は「高速鉄道は必要と決定しているが、ルートやどのような技術を使うかは決まっていない。独仏日に調査団を出している。どこと組むのか慎重に検討して決めたい」などと語ったという。

中国首相、台湾問題で原則強調 与野党首脳と相次ぎ会談

2000.10.14(13:39)asahi.com
 来日中の中国の朱鎔基首相は14日午前、東京・元赤坂の迎賓館で、自民、公明、保守、民主の各党首脳と相次いで会談した。朱首相は台湾問題について「最大の慎重さをもって、平和的に解決したい。ただ、無制限に引き延ばすわけにもいかない」と述べ、中国政府の原則的な姿勢を改めて強調した。また、金大中・韓国大統領のノーベル平和賞受賞を歓迎すると語った。

 民主党の鳩山由紀夫代表との会談で、朱首相は「1つの中国」の原則を主張。東西ドイツの統一を例に挙げながら、「ポツダム宣言で台湾は中国の一部になった。ドイツは2つの国になった。基本的に違う」と述べた。

 さらに、この問題で「一部、民主党と意見を異にする部分がある」と指摘し、同党内に台湾と積極的に交流する動きがあることをけん制。鳩山氏は「根本的に違うとは思っていない。一方的に台湾が独立することに賛成していない。中国が武力行使をすることにも賛成しない」と反論した。

 公明党の神崎武法代表との会談では、金大統領のノーベル平和賞受賞を「大変うれしく思う。名実そろった受賞だ。朝鮮半島の緊張緩和、民族団結と和解に対する金大統領の貢献は大変大きい。朝鮮半島情勢が現在の勢いを維持して、最終的に平和的統一がなされることを期待している」と、たたえた。

 朱首相はこのほか、自民党の野中広務幹事長、保守党の扇千景党首と会談。15日には共産党の不破哲三委員長、社民党の土井たか子党首とも会談する。

鳩山民主党代表、年内にも訪中 朱首相との会談で一致

2000.10.14(18:22)asahi.com
 訪日中の中国の朱鎔基首相と民主党の鳩山由紀夫代表は14日、東京都内の迎賓館で会談し、鳩山氏が年内にも中国を訪問することで一致した。朱首相の訪中招請に対し、鳩山氏が「今年中に訪問する機会があればよい」と応じた。この後の記者会見で鳩山氏は「国会がどのような形で終わるかはっきりしないが、国会が終了した直後が一つの可能性だと思う」と述べ、会期延長がなければ12月1日に閉会する臨時国会のあとに訪問したい意向を示した。

「できることは何でもしたい」と朱首相 日朝関係改善で

2000.10.14(01:09)asahi.com
 森喜朗首相と中国の朱鎔基首相は13日夜の歓迎夕食会で、国際情勢について意見交換した。朝鮮半島情勢について森首相は「ここ数日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と米国のニュースも流れている。日本は北朝鮮への50万トンのコメ支援を決めた」と語った。これに対し、朱首相は「日本の決断は大変正しい。日朝関係の改善を歓迎する。できることがあれば何でもしたい」と表明した。

 また、イスラエルとパレスチナの緊張が高まっていることについて、両首脳は双方に自制を求めていくことで一致した。

中国の朱鎔基首相が来日 13日に森首相と会談

2000.10.13(00:51)asahi.com
 中国の朱鎔基首相が12日夜、特別機で来日した。13日午前に森喜朗首相と会談し、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)をめぐる情勢や、日本の対中経済協力など2国間問題について協議する。

 朱首相は到着時に声明を発表。「中日両国は一衣帯水の友好近隣で、ともに本地域における重要国家」としたうえで、「訪日の主な目的は歴史を鑑とし、未来に向かう精神に則って、両国関係を新しい世紀にまい進するようさらに推進する、政治的には相互理解と信頼を増進し、経済的には互恵協力を深めることにある」と呼びかけた。

 朱首相は17日まで滞在し、各党党首らとの会談や経済界との昼食会、テレビ番組出演などを予定。山梨県でリニアモーターカー実験線の視察をするほか、新幹線で兵庫県も訪れる。

「東シナ海」公式文書では「東海」/外務省が中国名使用 “弱腰外交”の象徴?/呼称でも中国に配慮

2000.10.12 The Sankei Shimbun
 「東シナ海」は「東海」? 外務省は公式文書などで南西諸島から中国東岸に至る海域について「東シナ海」を使わず、「東海」という中国と同じ呼称を使っている。十二日には朱鎔基首相が来日、政府は日中友好ムードを高めるのに躍起となっているが、対等の立場で臨むべき外交交渉の場でも、中国側の固有名に配慮をみせる姿勢に“対中弱腰外交”を指摘する意見もある。(近藤真史)

 「東海」は中国の海洋調査船の活動をめぐって進められている相互事前通報制度の枠組みづくりをめぐる日中協議でも一貫して使用されており、九月二十八日に北京で行われた日中協議後の記者会見で、外務省アジア局の佐藤重和参事官は「通常そう呼ぶことになっている」と説明した。

 外務省は「東海」について「戦前からの慣行」と説明、根拠の一つとして、昭和五十年に署名された日中漁業協定の文書に「東海」の呼称が使われたことを挙げる。平成九年十一月に署名、今年六月に発効した新たな日中漁業協定でも「東海」が使われているが、水産庁では「昭和五十年の表現をそのまま踏襲したもので、当時なぜ『東海』を使用したかについてはわからない」としている。

 海洋の名称は六十九カ国が加盟する国際水路機関(IHO)の刊行物が“基準”となっており、東シナ海については「EAST CHINA SEA(TUNG HAI)」とされている。国内では「水域の名称は運輸省、陸域の名称は建設省で決め、同一のものを使うようにしている」(建設省国土地理院)としており、国土地理院の地図や海上保安庁が作成する海図はすべてIHOに従って「東シナ海」で統一されている。

 市販されている地図帳の中ではごく一部に「東シナ海(東海)」としているものもあるが、大半は「東シナ海」のみ。一方で、朝鮮半島周辺の地図で韓国の表記に配慮したのか、「日本海(東海)」としたものもあり、「東海イコール東シナ海」という認識は混乱さえ生じかねない。

 しかし、外務省サイドは当面見直す考えはないとしており、今後の交渉などでも引き続き「東海」を使用する考えだ。

 こうした姿勢に対し、森本敏拓殖大教授は「外交交渉の場では地名などは自国で使っている呼称を使うのが普通だ。『東シナ海』は国際的にも認められた呼称であり、日本側が『東海』と呼んだのはちょっと理解できない」と指摘している。

中国の朱鎔基首相、12に来日 日中関係改善狙う

2000.10.11(07:45)asahi.com
 中国の朱鎔基首相が12日、来日する。日中関係は、2年前の江沢民国家主席の来日で、「歴史認識」をめぐって対立が深まって以降、最近も中国艦船の日本近海での航行が問題になるなど、冷え込んでいるのが実情だ。朱首相は今回の来日を前に、経済協力に期待しつつ、日本国内に強まっている中国への反発をぬぐおうとする姿勢を鮮明にしている。日本側としても、ぎくしゃくした関係を修復して「21世紀に向けて日中関係を飛躍させる契機としたい」(河野洋平外相)としている。

 朱首相は来日を直前に控えた8日、北京の日本人記者団に対し「中国側は歴史の問題で日本国民を刺激することはしない」と述べ、対日政策をめぐって柔軟な姿勢を示した。江主席の来日時には、中国側は共同宣言に過去の「おわび」を盛り込むように求め、日本側が拒否するなど、日中関係は「険悪なムード」(政府筋)になった。それだけにこの発言について、日本側は「関係改善を目指す明確なメッセージ」(外務省幹部)と好意的に受け止めている。

 一方で、発言の背景には、来年度からの中国に対する日本政府の途上国援助(ODA)の見直しや、「西部大開発」への日本側の経済投資の促進に向け、両国間の関係を改善しておく狙いがあると見ている。

 迎える日本政府は先週、自民党などの反発で遅れていた中国への172億円の特別円借款供与を閣議決定、10日には北京で交換公文に署名し、朱首相来日を前に一応の環境は整えられた。ただ、日中間では、日本の排他的経済水域での中国艦船の航行問題をめぐって、事前相互通報の枠組み作りが難航しており、今回の日中協議でも進展は難しい状況だ。

朱鎔基総理訪日の位置づけとねらい by 外務省

リニア、北京での実験線は無理 運輸相会見

2000.10.10(12:37)asahi.com
 森田一運輸相は10日の閣議後の記者会見で、中国の朱鎔基首相が日本のリニアモーターカーの実験線を「例えば北京につくったらどうか」と提案していることについて、「(山梨県での)日本の実験が終わって以降でないと、外国につくることは全く考えていない。北京に実験線をつくるのは無理ではないか」と述べ、否定的な考えを明らかにした。

 中国の北京―上海間の高速鉄道計画で、日本は新幹線を売り込もうとしている。一方、受注を争うドイツはすでにドイツ式のリニア実験線を上海に建設することを決めており、朱首相も今回の訪日で山梨県のリニア実験線を視察することにしている。森田運輸相は「新幹線について、中国側から提案があれば実務者で協議したい」とも述べ、日本として売り込むのはリニアではなく、あくまで新幹線であることを強調した。

中国・朱鎔基首相、来日中にテレビで市民と対話

2000.10.09(00:34)asahi.com
 12日から日本を公式訪問する中国の朱鎔基首相が、14日夜にTBS系で放送されるスペシャル番組で100人の日本人と直接対話する。

 TBSによると、朱首相がテレビで一般市民と話すのは、中国国内外を問わず、初めてのことという。同局では「礼を失した質問は避けてもらうようにするが、質問内容に制限はつけない」としている。司会はニュースキャスターの筑紫哲也氏。

 同局は1998年11月にクリントン米国大統領との市民対話を放送している。かねてから朱首相取材のアプローチをしてきたが、今回の来日に際して中国側から「クリントン対話と同じことがしたい」との返答があったという。

中国首相が穏健姿勢 歴史問題/公式路線と一線「日本国民を刺激すべきでない」

2000.10.09【北京8日=古森義久】
 中国の朱鎔基首相は十二日からの日本公式訪問を前に八日、北京駐在の日本人記者団と会見し、日中間の歴史問題について日本国民は対中戦争に対し当時も今も責任はなく、中国は日本国民を刺激すべきでないと述べ、従来の公式路線より穏健な姿勢を示した。朱首相は中国の海軍艦艇や海洋調査船の活動は自粛すると明言しながらも、今後も活動はありうると述べる一方、日本からの政府開発援助(ODA)については中国でのPRが不十分だったと認めた。

 朱首相は八日午後、北京・中南海での約一時間の会見で、歴史問題について「中国の一貫した態度は『歴史を鏡に未来に向かう』ことだが、日本軍国主義が対中戦争を引き起こした責任を、当時あるいは現在の日本国民が負うべきだとは毛頭、考えていない」と述べ、具体的な措置としては「中国側は歴史問題で日本国民を刺激するようなことをしないこと、日本側は(日中戦争の)歴史を忘れないことだ」と語った。

 朱首相は海洋調査船の活動については中国首脳部が活動自体を知らず、日本側の強い反発に驚いたと述べ、今後は事前通報のシステムづくりを進めるとしながらも、「日本側との排他的経済水域(EEZ)が画定できておらず、論議の対象となる海域での調査活動は日本国内で大問題となったため、今後、減らしてはいくが、活動自体は不適切ではない」と述べた。中国海軍艦艇の日本近海での活動についても「私は知らなかったが、日本に挑戦する気持ちでやってはいない。日本側が反発するならこれから減らしていく」と述べた。

 朱首相は日本の対中ODAについては「過去二十年、総額二百四十億ドルにのぼる日本の経済協力は中国の近代化に寄与した。この点を高く評価し、日本の政府と国民への感謝を述べたい。中国側ではこれまでODAの円借款に関するPRが不十分だったため、これから強化していく必要がある」と述べる一方、日本にとっての利益も強調し「もしODAがなければ日本も中国にとって第二の貿易パートナーになっていなかっただろう」と語った。

 朱首相はそのほか(1)日米安保は二国間の取り決めで、その範囲は二国間を超えるべきでない(2)日米戦域ミサイル防衛(TMD)計画は自衛の必要を超える動きとして断固、反対する(3)北京・上海間の高速鉄道建設は日本とフランスの車輪式(新幹線を含む)とドイツと日本のリニア式が候補だが、中国の具体的な状況や技術の成熟をみて決める−などと語った。

日本の円借款に感謝の式典 中国が野中幹事長らに

2000.10.08(19:29)asahi.com
 日本の円借款などの対中経済援助が20周年を迎えたことを記念する式典が8日、北京の人民大会堂で開かれた。中国訪問中の野中広務・自民党幹事長らが出席し、あいさつに立った呉儀国務委員は「日本の中国の経済建設への協力と支援に感謝する」と述べ、総額2兆4000億円に上った円借款の役割を評価し、謝意を表した。

 式典は中国政府の主催。このような式典を開いて日本への感謝が表明されたのは初めてだ。日本の一部で対中援助の見直し議論が出ていることで、これまで円借款に対し「高度の評価」との表現を使ってきた中国側にも「感謝」を示そうとの動きが出ている。また、12日からの朱鎔基首相の訪日を前に友好的な雰囲気を演出したいとの思惑もあったようだ。

 式典には日中関係者約300人が参加。呉氏はさらに「経済協力は両国に利益があり、政治関係の強化を促すことにも積極的な効果がある」。野中氏は「国民の支持と理解を形成するために両国のより一層の努力が必要だ」とこたえた。

「北京でリニア実験はどう?」朱首相が記者会見で提案

2000.10.08(20:47)asahi.com
 訪日を12日に控えた中国の朱鎔基首相は8日、北京常駐の日本人記者団と会見し、北京―上海間の高速鉄道計画を巡って「日本も興味があれば(リニアモーターカーの)実験線を、例えば北京につくったらどうか」と提案した。日本と受注を争うドイツが、すでに上海にリニア実験線の建設を決めているためだ。今回の訪日で、山梨県のリニア実験線も視察し、「この目で確かめたい」と述べた。

 日本側は高速鉄道を「日中友好の象徴的な事業に」と位置づけ、官民あげて受注活動を展開している。首相は「リニアか、(新幹線のような)車輪にするか決まっていないうちは、受注競争への参加を歓迎する。中国は広く、高速鉄道は北京―チベット間でも必要だ」と語った。

 日本の中国向け途上国援助(ODA)については「円借款、無償資金協力、技術協力は20年間で240億ドル近くになっている。中国の近代化に大きな役割を果たした。高く評価するとともに、日本政府、国民に感謝する」と強調した。日本国内に「感謝が足りない」との批判があるためだが、首相は「これまでPRが不十分だったが、強化する」と、首脳として初めて改善を明言した。

 中国の海洋調査船が日本の排他的経済水域を航行している問題に関しては、「両国の意見に食い違いがある海域で調査しているが、不適当とは思っていないし悪意もない」と釈明した。その上で「日本では大問題になった。だから行く回数を適当に減らすか、行かなければならないなら相互事前通報制度を使う」と述べた。

 いずれの問題も日中関係に横たわるきしみとして、日本側から提起されていた問題だが、この日の会見で中国側は、具体的な解決案を示した形となった。

HOME中国日中関係