TOPIC No.2-14-d 天然ガスハイドレート(NGH:Natural Gas Hydrate)

01. ガスエネルギーの未来を変える天然ガスハイドレート(NGH)by三井造船
02. 海底に眠る燃える氷/天然ガスハイドレート(メタンハイドレート)by産業技術総合研究所(産総研)
03. 天然ガスハイドレート(NGH)の輸送に関する研究 by海上技術安全研究所
04. 天然ガス有効利用研究プロジェクトチームの概要 byJOGMEC(石油・天然ガス・金属鉱物資源機構)
05. 天然ガスのハイドレート化に関する北見工業大学との共同研究について(2006年03月27日)北海道ガス株式会社
06. 天然ガスハイドレート(NGH)の海上輸送技術に関する研究成果発表会 及び総合討論会を平成18年7月4日に開催します by鉄道・運輸機構
07. 構造Hハイドレートの製造方法及び装置(P06P003594)
08. TOPIC No.6-32 統合国際深海掘削計画(IODP)/メタンハイドレート

東海で大規模ガスハイドレート発見

2007/11/23 朝鮮日報/朝鮮日報JNS パク・スンウク記者

 韓国は東海(日本海)の鬱陵海盆海域で埋蔵量6億トンを超えると推定される大規模ガスハイドレート層(構造)を発見した。

 ガスハイドレートとは、石油・石炭といった化石燃料に替わる新しいクリーンエネルギー源で、燃焼時の二酸化炭素の排出量は従来の化石燃料の24%にすぎない。しかし世界的に見てもガスハイドレートの商業生産技術はまだ未開発で、実用化までには相当な期間が必要と考えられている。

 産業資源部は9月25日から54日間、水深1800メートル以上の東海鬱陵海盆海域3地点でガスハイドレートのボーリング作業を行ったところ、浦項から北東135キロ地点の海底層に厚さ130メートルという大規模なガスハイドレート層を発見した、と22日発表した。

 厚さ130メートルのガスハイドレートは韓国より前にボーリングに成功している日本・インド・中国の発見した物よりはるかに規模が大きい。また、この地点から北に9キロ離れた海域でも厚さ100メートル、南に42キロの地点でも厚さ1メートルのガスハイドレート層を発見しており、計3カ所でのボーリングに成功した。

 産業資源部の李載勲(イ・ジェフン)次官は「今回のボーリング成功で韓国は米国・日本・インド・中国に続き世界で5番目に深海底ガスハイドレートの存在を確認した国になった」と語った。

 政府は、この海域のガスハイドレート埋蔵量を6億トン以上と見込んでいる。6億トンを商用化すれば、韓国内のガス消費量(年間2000万トン)の30年分に当たる。政府は2015年ごろの商業生産をめどに、08年から始まる第2段階事業からは商業生産技術開発に力を入れ事業を推進する方針だ。

【やばいぞ日本】第2部 資源ウオーズ(9)「燃える氷」中韓、虎視眈々

2007/08/27 The Sankei Shimbun WEB-site

 深海底の地中にメタンガスが凍ってシャーベット状になって分布している。「燃える氷」メタンハイドレート(MH)である。日本近海だけでも日本の現在の天然ガス消費量の100年分はあると推定される。この新エネルギー源を日本よりも早く自国のものにしようと、中国と韓国が目の色を変えている。

 中国は今年5月1日、南シナ海北部でMHの採取に成功した。米、インド、日本に次いで4番目だ。「国家を総動員してのMH開発だ。中国は確実に日本に追い付いてきている」と経済産業省資源エネルギー庁幹部は驚きを隠さない。

 MHの存在が世界的に知られたのは1800年代。欧米諸国が1960年代から本格的な研究を始め、日本も1970年代に参入した。

 中国のMH開発の歴史は新しい。本格的研究が始まったのは1990年代後半だ。それが、わずか10年足らずで海底のMH採取に成功した。驚いたことに、中国は間髪を置かずに実用化に乗り出した。

 MH採取技術や機器を開発した専門家で、北京政府のMH政策指南役の王維煕・中国地質大学客員教授が言う。「海南省(島)の三亜市に大規模なガス精製施設のほか、香港まで海底を通るパイプラインの建設を計画している」。

 三亜から香港までは約800キロと、世界有数のパイプラインとなる。MHからメタンガスを分離抽出してパイプに流す。MH生産コストは高く、天然ガスに比べ経済性は圧倒的に不利だ。しかもパイプラインの建設費は膨大だというのに、採算性を度外視してまで中国は突っ走る。

 これは、中国が98年時点で「石油・天然ガスに代わる新たなエネルギー資源の開発は急務」(当時の朱鎔基首相)との危機感に基づく国家戦略があるためだ。

 2006年8月、中国の経済政策を立案する国家発展改革委員会が「中国の石油代替エネルギー発展概況」を発表し、10年で8億元(約120億円)のMH実用化への研究開発費を計上した。

 中国共産党の海南省委員会機関紙「海南日報」によると、中国石油化工、中国石油天然ガス、中国海洋石油という中国石油業界の3大国有企業の担当者はこのほど海南省を訪れ、パイプラインや精製施設などの建設候補地などを視察した。建設は3社合同プロジェクトとして総額で約100億元(約1500億円)に達するという。

 中国ばかりではない。韓国も今年6月24日、同国南東部、浦項の北東約135キロの日本海でMHの採取に成功した。韓国政府は2000年から4年間、日本海の全海域にわたって、資源探査のための広域探査を行った。

 その結果、同国のガス消費量の30年分に当たる約6億トンのMH埋蔵を予測した。韓国政府は2014年末までに計2257億ウォン(約300億円)を投入し、探査と商業生産技術を開発し15年から本格生産に入るという。

 日本は実用化に向け、経済産業省主導で、産学官一体の研究機関「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム」を結成し、16年の商業化を一応目指しているが、民間は「MHなんて夢のまた夢」(石油資源開発幹部)。投資リスクや商業化の困難さをみて経済産業省系の独立行政法人の行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)」まかせだ。「エネルギー資源への関心の高まりの中で、MHを予算獲りの口実にしているだけ」(元経産省幹部)というのが本音で、省益の延長でしかMH開発を見ていない。

 日本はMHという「豊穣(ほうじょう)の海」を有しながら、政府は縦割り、民間はバラバラ。何よりも国家戦略が不在だ。(相馬勝)

中国探査は軍艦の護衛付き

 「燃える氷」メタンハイドレート(MH)は、石油換算で約1000年分という膨大な量が世界の海底約10分の1に埋蔵されていると予測される。その争奪戦は、下手をすると石油以上の国家間の紛争の火種になりかねない。理由はMHの二つの利点にある。

 まず、成分は大半が天然ガスと同じメタンガスであるため、石油などと違い、燃やしても二酸化炭素の排出量は少なく、地球温暖化対策にもなる「クリーンエネルギー」であることだ。

 それに加え、MHが自国の周辺海域にあるため、「エネルギー安全保障」に資すると各国が考えるためだ。

 中国の場合、中東やアフリカに石油供給源を求めてもシーレーンに不安がつきまとう。それだけにMH開発への関心を高める。

 中国にとって南シナ海はベトナムやフィリピンなどとの領海をめぐる係争地帯でもある。在京中国筋は「中国地質調査局の調査船は中国人民解放軍の軍艦の護衛付きで、MHの探査を行っている」と語る。力の行使も辞さない構えのようだ。

 日本周辺では沖縄・南西諸島周辺海域にMH層が存在している。とりわけ大規模なMH層が、その海域の南西諸島海溝に存在していることが確認されている。

 南西諸島の西側には沖縄トラフという海底の窪みがある。中国は大陸から沖縄トラフまでを一つの大陸棚として、東シナ海大陸棚全域に対する主権的権利を主張し、日本にはその権利はないとしている。

 ところが最近の研究では、東シナ海大陸棚を形成する大陸性地殻は南西諸島を越えて、南西諸島海溝にまで延びている。東シナ海の大陸棚は中国が主張するように沖縄トラフでは終わっていない。日本が主張する日中の中間で大陸棚を二等分する中間線論の正しさが証明されているのだが、中国は中間線を一切認めようとしない。

 中国は現在、南シナ海を中心にMH層の開発をしているが、いずれ東シナ海に関心を向けるのは間違いないだろう。

 一方、韓国が現在、開発を急いでいるのは鬱陵島周辺だが、この東南方90キロには日本固有の領土で、韓国が占拠している竹島(韓国名・独島)がある。

 韓国政府の発表によると、韓国は年内に鬱陵島のほか、竹島など日本海の5つの海域で、MHの試掘を始めることにしている。韓国メディアの中には、「日本が独島(竹島)の領有権を執拗(しつよう)に主張する主な理由の一つはMHの存在である。鬱陵島や竹島の周辺海域に埋蔵されている6億トンのMHを確保するための戦略だ」(今年1月26日付「韓国経済新聞」電子版)と報じているところもある。

 竹島海域周辺には大規模な海底油田が存在しているともいわれる。

 海上保安庁幹部は「日本、中国、韓国のMH開発競争が本格化すれば、領土問題が激化する可能性が高い」と警戒するが、自国の海洋権益をいかに守るかという戦略をいまだに構築していない日本が後手に回るのは必至だ。

鬱陵島南海底  韓国ガスハイドレート採掘

2007年7月4日発行版 統一日報

石油に代わる次世代燃料  推定6億ドル30年分の消費量

 韓国政府のガスハイドレート開発事業団は先月19日、鬱陵島南方100キロメートルの海底からガスハイドレートの採掘に成功した。当該地域のガスハイドレートの推定埋蔵量は、韓国の年間ガス消費量30年分に相当する6億トンとされる。エネルギー自給率の大幅な改善が見込まれ、エネルギー源を外国に依存しないという青写真さえあるという。(ソウル・李民皓)

 ガスハイドレートはメタンが水と結合した固体で、ドライアイスのような形状だ。火をつければ燃えることから「燃える氷」と呼ばれる。そのため、19世紀が石炭、20世紀が石油の時代だとしたら、21世紀はガスハイドレートの時代という専門家もいる。

 ガスハイドレート1リットルを分解すると、164リットルのメタンを得ることができる。エネルギー効率は高い。ガスハイドレートからメタンだけ分離することができれば確かなエネルギー源になるに違いない。

 しかし商用化は、まだ先のようだ。メタンを大量に抜き出す技術が開発されていないからだ。

 80年代に採取に成功した米国と日本は、技術開発目標年度を2015年に定めている。産業資源部は今年九月から、東海上の5カ所で本格的な試掘を行う計画だ。

 2014年までに投入される財源は2257億ウォン。米国、日本のように2015年から本格的な生産に移行するという方針を立てた。

 商用化のための技術開発はこれから始まるのだが、韓国国内は、まるで莫大な量の石油を確保したように浮かれている。

 一方日本では昨年、新潟県の沖合30キロメートル付近で、ガスハイドレートが確認されている。

 ハイドレートとは水分子のつくるクラスター(かご構造)の中に、ガスの分子が取り込まれた状態にある物質。メタンハイドレートは、低温で高い圧力が加わる寒冷地帯の地下や、海底で発見される。米国、日本周辺から多く見つかっているが、どの国も商用化できる技術を確立していない。二酸化炭素の排出が少ないクリーンエネルギーの一つとして、実用化に期待がかかる。

[オピニオン]燃える氷

JUNE 25, 2007 東亜日報 鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com

◆幼い時、漫画の本を通じて、「バミューダ三角地帯のなぞ」について初めて知った。プエルトリコと米国のフロリダ州、マイアミ州をつなぐ三角型の模様をしているこの海に、1840年にはフランスの船舶が、1925年には日本の船舶などの数隻の船が跡形もなく消えたため、このように名づけられた。誰もその原因が分からず、何回も空想科学の映画や小説の題材にもなったこの謎が、ひょっとしたら解けるかもしれない。

◆海底探査の結果、同地域の海底には多量のメタンハイドレイトが埋蔵されていることが明らかになったからだ。どのような理由からかは分からないが、同地域の海水の温度が上昇すれば、膨大な量のメタンガスが発生して浮力を下げ、通りかかる船が吸い込まれたり、転覆する可能性があると科学者たちは説明する。実際にこの海で多量のメタンガスが放出されるのを、いくつの航空機がたまに目撃したこともあり、このような主張を裏付けるものだ。

◆メタンハイドレイトは、メタンが低温高圧の状態で水の分子に囲まれて作られている。ドライアイスと似たような氷の形をしているが、火花を近づければめらめらと燃え上がり、「燃える氷」とも呼ばれる。1立方メートルのメタンハイドレイトを分解すれば172立方メートルのメタンガスを得るほど、エネルギーの効率が高い。さらに、化石燃料である石炭や石油に比べて二酸化炭素の排出が少なく埋蔵量も豊富で、次世代エネルギーとなる可能性が高い。19世紀が石炭、20世紀が石油の時代ならば、21世紀はメタンハイドレイトの時代だという言葉すら出るほどだ。

◆米国や日本などはすでに特別法まで制定して、探査と採掘技術の開発に力を入れている。日本が独島(トクド=日本名では竹島)を自国の領土だと主張するのも、独島の周辺に豊富に埋蔵されていると知られているメタンハイドレイトと無縁ではない。韓国政府の開発事業団が先週、東海(=日本海)でメタンハイドレイトの採取に成功した。世界的に同物質の採取に成功したのは、米国や日本、インド、中国についで5番目だ。

しかし、採掘の過程でメタンが飛んでしまう特性のため、開発は容易ではない。商用化のための技術競争は、これからが本番だ。

石油に代わる次世代燃料「燃える氷」、東海で発見

2007/06/25 朝鮮日報/朝鮮日報JNS 方聖秀(パン・ソンス)記者

 東海(日本海)の深海で、次世代燃料として期待されている「ガスハイドレート」(ガス水化物)が発見された。

 ガスハイドレートとは、極地や深海の低温・高圧状態で天然ガスが水と結合してできる固体のことで、主な成分はメタンだ。形状はドライアイスに似ており、火を付ければ燃えるので「燃える氷」と呼ばれている。メタンが燃焼する際に発生する二酸化炭素の量はガソリンの70%程度であることから、「次世代クリーン燃料」として注目されている。

 産業資源部の李載勲(イ・ジェフン)第2次官(エネルギー担当)は24日、「政府開発事業団は19日、物理探査船を使い、浦項から東北135キロ、鬱陵島からは南100キロの海域でガスハイドレートの採取に成功した」と発表した。産業資源部は「ボーリング地点は韓国の排他的経済水域(EEZ)に属しており、外交摩擦が起きる可能性はない」としている。

 今回発見されたガスハイドレートは、水深2072メートルの海底を7.8メートル掘り採取された地質試料のうち上から6.5メートルの深さから点在していたが、最下層には約2センチの厚さで分布しているのが確認されたとのことだ。これで韓国は、米国・日本・インド・中国に続き、深海のガスハイドレート採取に成功した5番目の国となった。

 産業資源部は「ガスハイドレートは世界で埋蔵量が10兆トン程度と推定されているが、韓国の排他的経済水域内における埋蔵量は約6億トンとみられる」と述べた。これは韓国のガス消費量の30年分に匹敵する量。韓国は現在、天然ガスを年間2300万トン輸入しており、購入額は120億ドル(約1兆4900億円)に達する。

 李第2次官は「今年9月にボーリング候補地14カ所のうち、東海海域の5カ所で本格的なボーリング作業を行う予定。ボーリングが終われば、より具体的な埋蔵量が分かるだろう」と話している。

 韓国政府では2005年7月、韓国石油公社・ガス公社・地質資源研究院が「ガスハイドレート開発事業団」を結成、東海で探査を行ってきた。

 政府は2014年末までに2257億ウォン(約300億円)を投じ、深海探査や商業生産技術を開発した後、15年から本格的な生産を行う方針だ。

中国 南シナ海で“燃える氷”採取 埋蔵は石油100億トン分

2007/06/07 FujiSankei Business i.

 中国地質調査局は6日までに、新たなエネルギー源として注目されている「メタンハイドレート」のサンプルを南シナ海北部の海底で採取したと発表した。国家級の研究計画で採取に成功したのは米国、日本、インドに次いで4番目という。

 「メタンハイドレート」は、メタンガスが固形化したもので、火を付けると燃えるため「燃える氷」と呼ばれる。地質調査局は、初歩的な予測で埋蔵量は石油100億トンに相当するとしている。

 採取水域については「神狐海域」とするだけで、具体的な場所は公表しなかった。今回は5月1日と15日にサンプルを採取。第2陣が現在も同一水域で調査を続行しているという。

 中国はエネルギー消費の約7割を石炭に依存。石油の輸入依存度も50%近くに達しており、新たなエネルギー源の調査・開発を急いでいる。(北京 時事)

三井造船・三井物産▼天然ガスハイドレートによる天然ガス輸送事業を推進するための新会社設立

2007年04月23日 物流ニュースリリース

 三井造船・三井物産▼天然ガスハイドレートによる天然ガス輸送事業を推進するための新会社設立三井造船・三井物産による新会社「NGHジャパン株式会社」の設立 世界に先駆けて天然ガスハイドレート(NGH:Natural Gas Hydrate)の事業化を目指す

 三井造船株式会社(社長:元山登雄)(「三井造船」)と三井物産株式会社(社長:槍田松瑩)(「三井物産」)は、天然ガスハイドレートによる天然ガス輸送事業を推進するための新会社、「NGHジャパン株式会社」(出資比率:三井造船80%、三井物産20%)を4月13日に設立しました。

 NGHとは、天然ガスが水分子の中に取り込まれたシャーベット状の固体物質で、安全性が高く、経済的で、環境にも優しい新たな天然ガスの輸送・貯蔵媒体として期待されています。

 2006年5月に発表された「新・国家エネルギー戦略」にも掲げられるように、昨今、日本として海外エネルギー資源獲得能力を強化するための技術開発が重要となっています。

 三井造船および三井物産は、三井造船が持つNGH製造・貯蔵・ガス化プロセス技術と、三井物産がLNGで実績を保有する天然ガスバリューチェーンの構築力、事業展開力を融合、補完し、最大限の効果を発揮すべく、新会社を設立の上、日本発の技術で世界に先駆けてNGHの事業化を目指します。これにより日本の自主資源獲得能力を強化することで、日本の国益にも貢献できると考えています。

 今回の新会社設立を通じて、NGHの技術開発、事業開発を推進することで、これまで開発が困難と言われてきた中小ガス田の開発が可能となるとともに、ガス供給が困難な地域へも長期に亘り安価なガス供給が可能となり、安全且つ環境に優しい天然ガスの世界中の更なる普及に貢献します。将来的には、日本近海に埋蔵されるメタンハイドレート抽出・輸送技術への転用や二酸化炭素回収などの環境対策への転用も期待されます。

 三井造船および三井物産は2012年頃の事業化移行を目標に、新会社にてパイロットプラントによる実証実験も含めて技術開発並びに事業性調査を推進し、2020年から2030年に世界で年間1,000万トン(LNG換算)規模でのNGH供給を目指します。

 【 NGHジャパン株式会社 概要 】
 (1)当初事業目的 NGH技術開発および事業化推進
(2)設立時資本金 1千万円(順次増資予定)
(3)出資比率 三井造船80%、三井物産20%
(4)所在地 東京都中央区築地5−6−4(三井造船本社内)
(5)代表者 高沖 達也(三井造船)

三井造船と三井物産 天然ガスハイドレート 12年商業化へ新会社

2007/04/20 FujiSankei Business i.

 三井造船と三井物産は19日、天然ガスに水を加え、マイナス20度でシャーベット状の固体「天然ガスハイドレート(NGH)」にして輸送、貯蔵する新技術を事業化するための新会社を設立したと発表した。新会社はNGHジャパン(東京都中央区)で、資本金は1000万円。三井造船が80%、三井物産が20%を出資。

 今後は、順次増資した上で実証実験なども行い、2012年以降の商業化を目指す。

 同技術は三井造船が開発した。天然ガスをシャーベット状の固体にすることで、輸送や貯蔵を容易にしたのが特徴。

 マイナス162度で液化する液化天然ガス(LNG)よりも、製造、保管、輸送面で大幅なコカとダウンが見込める。同技術が実用化できれば、従来LNGでは採算にのらなかった中小ガス田の開発にも弾みがつく。NGHジャパンは、20〜30年をめどに全世界で約1000万トン(LNG換算)のNGH供給を目指す。

“燃える氷”事業化へ 三井造船と三井物産

2007/04/19 The Sankei Shimbun WEB-site

 三井物産と三井造船は19日、天然ガスを固形化して運搬や貯蔵をしやすくした天然ガスハイドレート(NGH)を、平成24年にも事業化すると発表した。計画通りなら世界初となる。両社は13日に天然ガスハイドレートの輸送事業を推進する合弁会社「NGHジャパン」を設立、実証実験や事業化調査を進める。

 NGHは天然ガスを低温でシャーベット状にしたもの。メタンハイドレートなどとともに“燃える氷”と呼ばれる。零下20度で保管できるため、零下162度で液化するLNGのような極低温設備は不要。製造から供給までの費用がLNGより「20〜25%抑制できる」(高沖達也NGHジャパン社長)のが特徴だ。

 一定の埋蔵量がないと採算が取れないLNGと比べ、1000万トンの埋蔵量でも採算にあうため、開発が中断した中小ガス田の有効活用にも期待が寄せられている。

 三井造船は平成13年ごろから製造、輸送、貯蔵技術の開発に着手、技術的なめどをつけた。すでに国内外から問い合わせがあり、「事業化後は大きな市場になる」(高沖社長)と見込む。

固体になって浅い海域まで 海底のメタンをビデオ撮影

2007年03月02日 東京新聞

 新潟県上越市沖の海底から噴き出したメタンガスが、噴出後すぐに固体のメタンハイドレートとなって、海の浅い部分まで浮上している様子を、東京大や海洋研究開発機構などの研究グループが初めてビデオで撮影、2日発表した。

 メタンは強力な温室効果ガスだが、これまで深海底からわき出したメタンは、まもなく海水に溶けるため、大気中のメタン濃度にほとんど影響を与えないと考えられていた。

 東大の松本良教授は「日本海のような冷たい海では、メタンはハイドレート化して海水に溶けずに浅い場所まで運ばれ、大気中のメタン濃度を上昇させている可能性がある」と話している。

 グループは、上越市の北北西沖約30キロ、深さ約1000メートルの海底から大量にメタンガスが噴き出している噴出孔を無人探査機で調査。噴出したメタンの気泡が、数10センチ上昇後に、メタンハイドレートの粒となり、粒のまま上昇して水深約270−280メートル付近で壊れ、メタンガスに戻っていくことが分かった。(共同)

「燃える氷」の粒、東大などが新潟沖で初の採取

2007年03月02日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 東京大学や海洋研究開発機構などの研究チームは2日、メタンガスと水でできた氷状の物質「メタンハイドレート」の粒を新潟県上越市沖の海中で採取することに成功したと発表した。

 「燃える氷」とも呼ばれるメタンハイドレートは新しい資源として期待され、世界で調査が進められているが、粒状になって見つかったのは世界初。この粒は海の表面まで上昇して、メタンガスとして大気中に放出されている可能性が高い。粒の採取法の研究などが進めば、有効な資源確保につながると期待される。

 研究チームは昨年9月、上越市沖の北西約30キロ・メートルの海域で、漏斗状の容器を取り付けた無人探査機を潜水させ、水深約300〜1000メートルの地点で、海中を上昇する粒(直径5〜10ミリ)を採取した。粒は、水温が急激に高くなる浅い所で、強い温室効果を持つメタンガスとなって大気中に飛散したとみられ、地球温暖化の原因の一つと考えられるという。

 研究チームの松本良・東大教授は「日本海のような海中の温度が低い海洋では、メタンは溶けずに上昇することがわかった。粒を見つけることで、大規模な海底掘削をしなくても、海底のメタンハイドレートを発見できるかもしれない」と話している。

国内30年間使用可能な燃料「燃える氷」開発の可能性

2007.01.18 中央日報 朴邦柱(パク・バンジュ)科学専門記者

海底に眠るガスハイドレートは‘燃える氷’と呼ばれる。 海底に大量に埋蔵されているため、未来のクリーンエネルギーとして開発される可能性が高い。

科学学術誌「ネイチャー」18日付は、カナダ国立研究院(NRCC)のジョン・リミスター博士チームがガスハイドレート3種類のうち人工でしかに作ることができなかった「構造−H」というガスハイドレートが自然状態でも存在することを確認した、と明らかにした。

リミスター博士チームはカナダ西部の海岸で採掘したガスハイドレートからこうした事実を明らかにした。 「構造−H」ガスハイドレートはその間、自然状態では存在しないと考えられてきた。

研究チームには、韓国エネルギー研究院のソ・ユテク博士と公州(コンジュ)大のイ・ジョンウォン教授が当時、NRCC研究員資格として参加した。 2人は各論文の第2、3著者として登載された。

「構造−H」形態のガスハイドレートは200−500メートルの浅い海底にも存在する可能性があるという。 これを受け、ガスハイドレート埋蔵の可能性がある領域がさらに広がった。

他の構造のガスハイドレートは水深1000メートル以下の深い海にのみ存在する構造だ。 このため今までの海底ガスハイドレート探査は、こうした深い海底だけを対象に進められてきた。 こうした研究結果が出てくるまでは、浅い海のカナダ西部で漁船の網に多量のガスハイドレートがかかることを説明するのが難しかった。

ガスハイドレートは1立法メートルの塊から170立法メートルのガスが得られるほどエネルギー活用の可能性が大きい。 東海(トンへ、日本名・日本海)には約6億トン程度(国内消費天然ガスの30年分)、全世界では約10兆トンが海底に眠っていると推定されている。 オホ―ツク海ではガスハイドレートがとけてできた高さ500メートルほどの‘ガス柱’が無数にある。

偶然に助けられた天然ガスハイドレート

2006年06月27日 科学・技術の『へ〜え』/まぐまぐID=0000120920

 メタンがシャーベット状になったメタンハイドレート。メタンというのは天然ガスの主要成分であり、きわめてクリーンなエネルギー源です。それが日本付近の太平洋海底に非常に多く、また新潟付近でも発見されるなど、エネルギー供給の切り札ととらえる人もいます。ただ、採掘が難しく、実用化はまだまだ未知数です。 そんな中で、海外で得られた天然ガスを人工的にシャーベット化し、船での運搬を簡単にする技術が注目されています。これをメタンハイドレートと区別して天然ガスハイドレートと呼んでいます。天然ガスを高密度化して運搬するためには液化天然ガス(LNG)技術が知られていますが、これはマイナス162℃に冷却する必要があります。天然ガスハイドレートは、得られる密度こそLNGの3割弱ですが、冷却はマイナス20℃ほどで済み、非常に効率的なのです。ちなみに天然ガスを室温程度で液体化するガス・ツー・リキッド(GTL)という技術もありますが、これはほかの物質に変えてしまうものです。

 天然ガスハイドレートの実用化ですが、ある意味で偶然に助けられている部分があります。一つにはその発見の経緯です。寒冷地の天然ガス・パイプラインの中で偶然発見され、最初はパイプラインを塞ぐ障害物として除去目的で注目されたのです。もう一つは物質としての性質。気化させないために本来はマイナス80℃ほどで輸送しなければならないのですが、なぜかマイナス20℃のあたりで気化速度が非常に落ちるというのです。 その理由は不明なんだとか。ちょっと結果オーライなのが気になりますが、いずれ解明 させるでしょう。でもこの特殊温度がもっと低かったら、実用性は一気にしぼんだかも しれないのです。もちろん室温レベルならもっと良かったのですが。---

三井造船と中国電力、天然ガスの新輸送方法を実験

2006年06月09日 NIKKEI NET

 三井造船は9日、中国電力と天然ガスの新しい輸送方法の実証実験を始めると発表した。天然ガスに水を加えて固体の天然ガスハイドレート(NGH)を製造し、パイプラインの未整備地域などにコンテナ輸送する世界で初めての取り組み。パイプライン敷設や液化天然ガス(LNG)に比べて輸送・貯蔵を低コストに抑えられるという。

 LNGの輸入基地がある中国電力の柳井発電所(山口県柳井市)に、日産五トンのNGH製造設備を建設。これをコンテナで家庭用ガスの消費地近くに陸上輸送し、再びガスと水に分離して使う。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの受託研究で、研究費は2008年度までの3年間に15億円。

 NGHは天然ガスと水で人工的に作るが、日本近海の海底には自然のままメタンハイドレートとして埋まっており、新たな資源として有力視されている。今回の実験をこうした資源の有効活用にも役立てる。 (21:40)

北海道ガス、天然ガス使い家庭用燃料電池の実証試験

2006年06月09日 NIKKEI NET

 北海道ガスは天然ガスを使った家庭用燃料電池の実証試験を拡大する。10―11月をめどに、冬の寒さが厳しい道内向けに屋内設置型にした独自機種を実際の住宅に10台設置する。装置の耐久性や経済性などを確認し、2008年度以降のできるだけ早い時期の市場投入をめざす。

 実証試験は昨年度も実施したが、東京ガスの室外設置型機種の実験に協力する形で、凍結防止のため住宅の庭先に建てた仮設施設の中に設置していた。設置台数も3台にとどまっていた。

 北ガスは現在、荏原、同社子会社の荏原バラード(東京・大田)と寒冷地向け機種の共同開発を進めており、今秋の実験に投入する。小型・軽量化が可能な固体高分子型と呼ばれるタイプの燃料電池で、室内設置にするためにFF(強制給排気)式を採用する。

 実証試験はいずれも札幌市内の住宅で実施する。新築物件に始めから燃料電池を組み込むケースもあるという。

東邦ガスの「ガスエネルギー館」へメタンハイドレートペレットを供給

2006年03月27日 三井造船株式会社

 三井造船株式会社(社長:元山 登雄)は、東邦ガス株式会社(名古屋市熱田区、社長:水野 耕太郎氏)が本日27日リニューアルオープンする「ガスエネルギー館」(愛知県東海市)へ当社製造のメタンハイドレートペレットを供給します。 東邦ガス「ガスエネルギー館」は、地球温暖化などの環境問題やそれを防止するための天然ガスエネルギーの利用、さらに未来のエネルギーに関する情報を子供にも分かり易く展示、紹介する常設館です。

 同館では、実験コーナーでメタンハイドレートの紹介と燃焼デモンストレーションを行う予定で、当社は、メタンハイドレートペレットを供給していきます。 メタンハイドレートの燃焼デモンストレーションは、昨年開催されました「愛・地球博」の「ガスパビリオン」においても行われ、来場者の人気を博しました。

 天然ガスハイドレート(NGH)は、その単位体積あたり約170倍の天然ガスを内蔵することができ、その輸送にあたってもガスを液化する液化天然ガス(LNG)方式に比べ、必要とするエネルギーが少なく、大気圧-20度Cの穏やかな条件で、取り扱いが可能となることから、LNG方式では採算の取りにくい中小ガス田の開発に適しています。 さらに近年、NGHは日本近海で発見されるなど「燃える氷」の名称で注目を集めています。

 当社では、天然ガスハイドレート(NGH)の工業的特性に早くから着目し、2001年3月に世界に先駆けてNGHを人工的に高速連続製造する設備を立上げ、その後2004年2月に日産600kgの高圧再ガス化実証プラントの連続運転に成功するなど、今後も積極的に開発に取り組んでいきます。

メタンハイドレートに微生物 新種348、生成に関与?

2006/02/07 The Sankei Shimbun【東京朝刊から】

 海底下に眠るエネルギー資源として注目されているメタンハイドレートがある地下層から、三百四十八種もの新種の微生物が発見された。海洋研究開発機構(神奈川県横須賀市)など日米欧の国際チームによる地下掘削探査の成果で、新種の微生物はメタンの生成や消費にかかわっている古細菌やバクテリアの仲間とみられる。米国科学アカデミー紀要電子版に七日、掲載される。

 メタンハイドレートは天然ガスの主成分であるメタンが低温・高圧下で水と結合したシャーベット状の物質で、次世代のエネルギー源として期待されている。海洋機構・極限環境生物圏研究センターの掘越弘毅センター長によると、メタンハイドレートの生成にかかわっている可能性がある微生物の発見は世界初。

 探査は平成十四年に東太平洋で実施。メタンハイドレートが存在する四カ所(水深八七〇−五、〇八八メートル)と存在しない二カ所(同四二七メートルと三、七六〇メートル)を数百メートル掘削し、試料を採取した。

 その結果、メタンハイドレートの地下からは、メタンの生成や消費に関与する遺伝子を持った新種の微生物が計三百四十八種見つかり、最も深いところでは海底下三百五十メートルで四十五種を確認した。メタンハイドレートのない所では、同様の微生物は見つからず、新種は見あたらなかった。

天然ガスを固体化して運搬、2010年めどに実用化

2005年03月25日(YOMIURI ON-LINE)by燃える氷:NGHより/Do you think for the future?

 三井造船は24日、石油に比べて二酸化炭素の排出量が少ないため、温室効果ガス対策として需要増が見込まれる天然ガスを固体化して運搬する事業に乗り出す方針を明らかにした。2010年をめどに、製造設備や運搬船を実用化する。

 現在天然ガスは、液化天然ガス(LNG)の形で輸入されているが、液化設備や輸送船などの建設・運用費用が高いのがネックだった。固体化できれば製造・運搬コストとも引き下げられるため、ガスの末端価格が下がる可能性もあるという。固体化技術は25日に開幕する「愛・地球博」(愛知万博)で「燃える氷」として披露される。

 天然ガスを水と混ぜて約マイナス20度まで冷やすと、固体状の水和物と呼ばれる物質になる性質を利用する。マイナス162度の低温で液化するLNGに比べ、固体化の場合は冷却する温度が高いため、比較的簡単な施設や船で製造・輸送できるのが長所。三井造船では、現在輸送船の基礎設計を行っている。2005年以降に模型船による実験や実証プラントの建設を行う計画だ。

世界初のNGH輸送事業化調査―三井造船―

2005年02月16日 ガス・エネルギー新聞

JETROの事業に採択

 三井造船のNGH海上輸送システム

 日本貿易振興機構(JETRO)は3日、経済産業省の委託を受けて毎年行っている「石油・天然ガス資源開発等支援およびエネルギー使用合理化調査事業」の提案公募結果を発表した。世界初となる三井造船の天然ガスハイドレート(NGH)輸送事業のほか、東北電力の随伴ガス有効利用事業、三菱商事のイラクガスバリューチェーン復興事業など合わせて6つの提案を採択した。近日中に各社と正式契約を結び、今年末までに調査報告書の提出を求める。

 三井造船(元山登雄社長)は、カタールで世界初となるNGH輸送の事業化調査を始める。

 カタールはロシア、イランに続く世界第3位の確認埋蔵量を持つ産ガス国で、米エクソンモービルや英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは同国産の安価な天然ガスを用いて、LNGだけでなく、ガス・ツー・リキッド(GTL)、ジメチルエーテル(DME)など新燃料の生産や実験も行っている。新燃料は開発コストが高く、安価な原料を利用しなければ採算がとれないからだ。実験段階のNGHも同様で、三井造船はカタールでの調査結果を弾みに商用化の早期実現を図りたい考えだ。

 三井造船のNGH技術は、天然ガスに含まれるメタン・エタン・プロパンなどの分子を、水分子の作るクラスター(かご構造)の中に取り込んだシャーベット状の水和物を人工的に製造するもの。マイナス20℃の環境条件で単位面積当たり170倍の天然ガスを包蔵することが可能で、マイナス162℃という極低温条件を必要とするLNGに比べ、大幅な開発コスト削減効果を期待できる。このため、商用化が実現すれば、将来的にはコストが高く開発が進まない中小ガス田の有効活用にもつながると言われている。

 調査は、政府系のカタール・ペトロリアム(QP)が生産する天然ガスを用いてNGHを製造するプラントを建設、三井造船が研究を進めてきたNGH船で6000km圏内の短・中距離を海上輸送し、受入基地で再ガス化するチェーン全体の事業性を検討する。

 販売先となる需要地の市場調査も合わせて行う予定で、三井造船は「インドやパキスタンなど天然ガス需要の大幅増が見込まれる発展途上国の独立発電事業者(IPP)、地方ガス会社、工場など大口需要家が対象となる」としている。

 三井造船は02年から千葉県市原市のプラントでNGH製造実験を続けており、昨年2月には製造からペレット(球状の塊)化、再ガス化までの連続運転に世界で初めて成功したほか、北海道北見市では、北見工業大学と共同で下水道汚泥から発生する消化ガスを利用してNGHを製造する実証試験にも成功している。

期待集まる燃料技術【中】天然ガスハイドレート

2004年12月13日 三井造船株式会社

 「直接手で触っても大丈夫ですよ」。そう言われて手渡されたのは、直径2センチメートル、重さ3グラムの白い球。触ると冷たいが表面はさらさらとしている。この物体こそ、三井造船が研究開発に力を注ぐ天然ガスハイドレート(NGH)だ。三井造船では産出した天然ガスをこの白い物体に加工し、需要地まで運ぶことを目指した研究開発を行っている。

   ― 輸送手軽 分散電源に最適 ―

■基本特許取得

 NGHは、低温もしくは高圧の状態で天然ガスと水を接触させることでできるシャーベット状の水和物。5・75個の水分子でできたかごの中に天然ガスが閉じ込められている。このかごの中に約160倍の天然ガスを取り込めることから、天然ガスの輸送手段の一つとして開発が進められている。

 三井造船がNGHの研究開発を始めたのは、97年。ハイドレートがマイナス20度で保存できることが学会の発表で明らかになり、ガスの製造・貯蔵に活用できると考えた。「ガスのマーケットに入りたかった」と三井造船天然ガス・ハイドレートプロジェクト室の神田肇課長は振り返る。

 液化天然ガス(LNG)の場合、製造技術、プラント、船の設計など、基本となる特許はすべて欧米メーカーが握っていて、参入できるのはLNG船の製造のみ。しかしNGHは、基本特許を三井造船が持つことができた。これで製造、貯蔵、輸送、再ガス化というバリューチェーンを1社で提供できる。

 また、今後予想される分散型電源の時代には、ガスを小口輸送する手段が必要となる。マイナス162度で製造、輸送する必要があるLNGでは、大規模設備が必要となる。開発には1兆円程度必要となり、大口需要にしか対応できない。一方、NGHはマイナス20度と比較的緩やかな温度環境で製造でき、設備も簡易化できる。開発コストはLNGに比べ約10分の1。このため独立系発電事業者(IPP)や特定規模電気事業者(PPS)などの小口需要に対応できる。

■初の一貫工程

 02年12月、千葉県市原市にある同社の千葉技術開発センターで、日産600キログラムのNGH製造プラントが稼働を開始した。輸送面での利便性を考え、シャーベット状のNGHをさらに天然ガスと反応させてパウダー状にし、その後、球形に固めてペレットにするという手法を用いている。

 稼働当初は「ハイドレートができたかと思うと反応が止まってしまう」(神田氏)というように、ハイドレート化のための温度や圧力の調整がうまくいかず、失敗することが多かった。だが失敗を繰り返すうち、温度や圧力、さらにパイプの大きさを調整することで、今年2月にはNGHの製造からペレット化、再ガス化まで一貫した連続運転に世界で初めて成功した。

 現在は、大型化に向け、運転状況とペレットの性質の関係について、データを集めている段階。07―08年には、日産100―200トンのパイロットプラントを建設し、2010年度にも商用化する考えだ。

■欧米をリード

 「欧米メーカーの目はまだ大ガス田に向かっている。中小ガス田については、相対的に関心が低い。今がチャンス」と神田氏は言う。もちろん欧米でもNGHの研究開発は行われているが、日本の数年前の状況という。三井造船では、10月にノルウェー重工業メーカーのアカー・カバナーのグループ会社ナチュラル・ガス・ハイドレートと天然ガスハイドレート(NGH)の製造に関する技術協力契約を締結。これにより、開発に弾みをつけ、早期商用化を目指す考えだ。

天然ガスは「固めて」運べ

2004年03月26日 Slasdot

 KAMUI 曰く、 "河北新報の記事に依ると三井造船が天然ガスを固体化して運搬する新技術について 3月 26日に都内で開催された『天然ガスハイドレート(NGH)ペレット輸送船』国際フォーラムで発表した。

 天然ガスハイドレート(NGH)は低温・高圧条件の元で,天然ガスと水がシャーベット状の固体として安定した物質。現在,天然ガスは液化天然ガス(LNG)の状態で輸送されているが「天然ガス液化プラント」に対する初期投資額が非常に大きく,コストを引き上げる要因の一つになっている。

 これに対して NGH 形態で輸送する事でLNGよりコストを削減出来るとして,三井造船は海上技術安全研究所や 大阪大学との共同研究により NGHをペレット状にしたものを工業的に製造する技術を開発。NGHは単位体積あたりで約 170倍の天然ガスを包蔵可能な事や,LNG製造に対してその製造エネルギーが 7割程度で済む事。更に氷点下162℃での貯蔵が必要なLNGに対して氷点下15℃前後で安定するなど運搬・貯蔵の管理にも利点が多いという。現在,次世代の NGH 輸送船を開発中で,LNG 輸送船を補完する形で2008年の実用化を目指す。

高速大容量NGH(天然ガス・ハイドレート)

2004年02月05日 三井造船株式会社

高圧再ガス化実証プラント連続運転に成功、事業化を加速

 三井造船株式会社(社長:元山 登雄)は、石油公団との共同研究事業として、独立行政法人産業技術総合研究所および大阪大学と共同で進めてきました、NGH(天然ガス・ハイドレート)の大容量ペレット化、搬送・貯蔵、高圧再ガス化プラントを完成しました。 同時に運転中のNGH製造プラントと統合し、大容量でのNGHの連続高圧再ガス化に成功しました。

 今回完成したシステムは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助を受けて昨年建設した日産600kg(NGH換算)のNGH製造プラントから常圧、マイナス20℃で供給されるNGHパウダーを、今回建設したプラント内で高速ペレット(球形)化し、常圧低温タンクに貯蔵したのち、高圧再ガス化槽でNGHを再度、高圧の天然ガスと水とに分解するものです。

 また今回の統合プラントでは、実際の天然ガスの成分を模した混合ガスでの運転も行っており、システムの安定運転に成功したことで、NGHが広範囲の天然ガスの輸送・貯蔵事業に適用できることを確認しました。 三井造船では、実用規模を想定した大型化、高効率化のための各種NGHシステムの開発にも着手しており、今回の成功を天然ガスの陸上および海上輸送の事業化へと繋げていきます。

 NGHは、燃焼時のCO2発生量が少なく地球環境に優しいことから世界的に需要が急増している天然ガスの低コスト輸送・貯蔵媒体として注目されており、特にLNG方式では不採算となる多数の中小ガス田開発に有効な手段として期待されています。

 三井造船では、すでに国土交通省の委託による大型NGH輸送船の概念設計にも着手しており、近く関係者と共同でNGHによる天然ガス海上輸送の事業化調査を実施するなど、天然ガス一貫輸送システムの事業化を加速していきます。

【世界初】画期的な方式による高効率の天然ガスハイドレート製造技術を開発

2002年12月12日 NKK[日本鋼管株式会社]

 当社は、画期的な方式により天然ガスハイドレートを高効率かつ連続的に製造する技術を開発いたしました。

 天然ガスハイドレート(NGH=Natural Gas Hydrate)は、水分子が構成する籠型構造の中に天然ガス分子が包蔵された物質で、1m3中に約170Nm3の天然ガスを蓄えることが可能です。自然界に存在する天然ガスハイドレート、いわゆるメタンハイドレートは新たな天然ガス資源として注目されています。一方、天然ガスハイドレートの優れたガス包蔵性および大気圧において−10〜−20℃での輸送・貯蔵が可能であるという特長に着目し、人工的にハイドレートを製造して天然ガスの輸送・貯蔵に利用する試みが、近年始められています。

 現在の代表的な天然ガス長距離輸送・貯蔵手段である液化天然ガス(LNG)は、−162℃での取扱いが必要となるため極低温に対応した設備が必要となります。そのため、東南アジア・オセアニア地域に多い中小規模ガス田には、LNG方式では経済性が確保できないことから未活用のものがあります。

 これに対し、天然ガスハイドレートはLNGよりはるかに常温に近い−10〜−20℃での輸送・貯蔵が可能であることから設備仕様の簡略化と冷却所要動力の低減が可能となるため、中小規模ガス田からの天然ガス輸送への応用が検討されています。当社が開発した天然ガスハイドレート製造技術を用いることにより、一層の経済性の向上が期待されます。

 天然ガスハイドレートは一般に低温、高圧の条件で生成し、例えば5℃、50気圧程度の圧力で天然ガスと水を接触させることによって製造されます。したがって、天然ガスと水との接触、およびハイドレート生成に伴う反応熱の除去とを効率良く行うことが、天然ガスハイドレートを工業的に大量製造するための課題となります。これらの課題を解決すべく当社が開発した天然ガスハイドレート製造技術は、以下の特徴を有する革新的なプロセスです。

管内を流れる水中に天然ガスの微細気泡を分散させることによって気液接触面積を大きくし、天然ガスと水との接触を飛躍的に促進する。 天然ガスが分散した水を通常の管式熱交換器と同様な冷却器で効率良く冷却して天然ガスハイドレートを製造する。

 模擬ガスとしてプロパンを使用した基礎実験の結果、当社が開発した方式は従来法と比較して飛躍的に高効率(高速・大量)かつ連続的にハイドレートを製造可能であり、また供給したガスが装置内を通過する間にハイドレート化する割合である転換率も極めて高くできることを確認しました。これらの優れた特性により、設備的には次のことが可能となります。

同規模の装置でも飛躍的に大量の製造が可能。 ハイドレート生成が管内で行われるため、従来方式で必要だった冷却装置付の高圧圧力容器が不要。 その結果、装置の簡略化・コンパクト化とそれに伴う設備費の削減が可能。

 なお、これらの優れた特徴が認められ、当社の天然ガスハイドレート製造技術に関する研究テーマはこのたび石油公団の提案公募研究に採択されました。今後、本研究ではベンチスケール実験設備を製作し、天然ガスの主成分であるメタンを用いて、実用化に向けた本格的実験を行う予定です。

 地球環境問題への対策が急がれる中、環境負荷の小さいクリーンエネルギーとして、今後、ますます天然ガスの需要は拡大していくと予想されます。当社は、天然ガスハイドレートによる天然ガス輸送・貯蔵システムを、LNGシステムを補完し未利用中小規模ガス田の経済的な開発のために重要な技術の一つと捉え、早期の実用化を目指して開発を推進してまいります。 以 上

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