TOPIC No.2-14c-2 イラン/アザデガン油田開発

01. イラン核開発問題 by YAHOO!ニュース
02. 第19回 日の丸油田開発の夢、またもや頓挫か?〜三度目の鬼門となったイラン石油開発プロジェクト〜 古森 義久 氏/国際問題評論家
03. アザデガン油田開発と「イラン・リビア制裁強化法」の行方 byInternational Highway
04. 国際石油、イラン油田の本格開発に来年着手(2005年12月28日) by浮世
05. イラン石油――戦略なき勇気  byNetアイ-プロの視点(NIKKEI NET)
06.油屋さんの次なる標的 (2003年06月29日)萬晩報通信員 園田義明
07. アザデガン油田 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
08. イラン・イスラム共和国 アザデガン油田(アザデガン石油開発株式会社)


中国、権益70%を獲得 イランのアザデガン油田

2009/08/01 中国新聞ニュース

 【テヘラン共同】イラン南西部にある中東最大級の油田で、イラン核問題を受けて日本が自主的に権益を縮小したアザデガン油田の70%の権益を中国の国有石油大手、中国石油天然ガス集団(CNPC)が獲得する見通しになった。イラン石油省が運営するシャナ通信が1日までに伝えた。

 日本は、核問題をめぐる状況が改善すれば当初の権益を回復することも視野に入れていたが、膨大な外貨準備を武器に世界各地でエネルギー権益確保に動く中国にさらわれた形。自主開発油田の確保を悲願とする日本には大きな打撃となる。

 現状では、国営イラン石油公社が90%、日本の国際石油開発が10%の権益を有するが、シャナ通信によると、CNPCが70%、イラン石油が20%の権益を取得するとの覚書がこのほど交わされた。日本の国際石油開発の権益10%に変動はないとみられる。

 中国が開発費用の9割を負担することでも合意したという。イラン石油は、日本側が30億ドル(約2800億円)を支援したが、「世界の経済状況の変化で、現状の枠組みで資金の手当てがつかなくなった」と説明した。

 アザデガン油田をめぐっては、国際石油開発が当初75%の権益を保有。核問題が深刻化した影響で米国に配慮し、2006年10月に権益を10%に大幅縮小。操業権もイラン側に返上した。

 オバマ米政権は今年3月、イランへの経済制裁を延長。日欧企業にイランでの新規事業を自粛するよう圧力がかかっており、日本は身動きが取れない状態が続いていた。

中国がイランの最大貿易相手国に 初めて日本抜く

2007/09/04 中国新聞ニュース

 【テヘラン4日共同】中国が昨年、日本を抜いて初めてイランの最大の貿易相手国になったことが四日、二○○六年の通関統計などで分かった。核開発問題をめぐって国連制裁下にあるイランへの新規投資に日本企業が二の足を踏む中、エネルギー需要が増大している中国は石油資源などを念頭に、イランとの経済関係をさらに緊密化させていることが浮き彫りになった。

 中国は国連安全保障理事会の常任理事国。イランの石油輸出などを禁じる本格的な経済制裁決議への拒否権を有していることも強気の背景にあるようだ。

 昨年のイランと中国の貿易総額は百四十四億五千万ドル(約一兆七千億円)で前年比43%増。日本との百二十二億九千五百万ドルを上回った。ドイツ、イタリア、トルコなどが続くとみられる。

 関係者によると、中国向けの石油や建築資材の輸出や、中国からの電子機器、自動車部品の輸入が大幅に増えた。一方、日本向けの石油輸出は伸びが鈍化し、日本からの機械輸入が減少した。

 昨年のイランからの輸出のみの集計では、中国向けは日本向けより十一億ドル下回っている。しかし、今年に入って対中輸出額は爆発的に伸びており、貿易総額は通年で百九十億ドルに届く勢い。輸出入ともに首位に浮上し、名実ともに「最大の経済パートナー」になる公算が大きくなっている。

 ウラン濃縮活動を続けるイランに対し、国連安全保障理事会は昨年十二月以来、二度にわたり制裁決議を採択。これに加え、強硬派の米国はイラン国営の銀行や企業を狙い撃ちにした金融制裁を強化しており、日欧企業はイランでの新規事業を自粛する傾向にある。

原油の円建て決済を要請 イラン、日本の石油業界に

2007/07/14 The Sankei Shimbun WEB-site

 国営イラン石油公社が、日本の石油業界に対し、ドル建てで決済している原油取引を円建てに変更するよう要請してきたことが14日、明らかになった。石油業界筋が明らかにした。

 核開発問題で米国との関係が悪化しているイランは、米政府による資産差し押さえなどを警戒。ドル以外の通貨による貿易決済を増やそうとしており、円建てへの切り替え要請はその一環とみられる。

 イラン側の要請に対し、石油元売り関係者は「今後の対応は未定だが、円建てにする利点は見いだせない」としている。

 石油業界筋によると、国内の石油元売り各社はイランとの原油取引の大半をドルで決済している。イラン石油公社からは11日に、円建てへの変更を求める書簡が届いた。商社を通じて要請を受けたケースもある。

 イラン側からは昨年11月ごろにも「原油の決済を円建てやユーロ建てに変更できないか」と打診があったという。

 日本が2006年にイランから輸入した原油量は約2800万キロリットルと、原油輸入量全体の約11%を占めている。

交渉次第で日本権益回復も アザデガンでイラン石油相

2006/10/08 中国新聞ニュース

 【テヘラン7日共同】イラン国営テレビが7日伝えたところによると、同国のバジリハマネ石油相は、南西部のアザデガン油田をめぐる日本の国際石油開発の権益を10%に大幅縮小することは最終決定していないとした上で、イランと日本の今後の交渉次第では、同社が契約締結時の権益75%を回復することはあり得ると述べた。

 国営イラン石油公社傘下で、同油田開発を担当する石油開発技術会社のバザールガン社長も7日、共同通信に対し「国際石油開発が国内問題を解決すれば、将来的には(75%の)権益やその一部を取り戻すことは可能だ」と語った。

 既にイランは、権益縮小により「国際石油開発は主要な事業者から排除された」(同公社のノーザリ総裁)と表明。国内企業による先行開発を主張しているが、依然として日本の資金や技術力への期待があるとみられる。

 社長は、国際石油開発が求めていた投資額上積みや地雷完全除去などの要求にイランは応じたと主張。その上で「国際石油開発は日本での金融機関などとの問題を解決できなかった」と指摘、イラン核問題が深刻化する中で、政府系の国際協力銀行などの融資が受けられなくなることを国際石油開発が懸念しているとの見方を示した。

 国際石油開発や日本政府には権益を10%にとどめることでイラン国内での新規事業に神経をとがらせる米国の批判をかわすことができるとの読みがある。

 権益縮小は「核問題のほとぼりが冷めるまでイランとの関係をつなぎ留める妥協案」(テヘランの外交筋)との見方があり、日本側も将来の権益見直しを視野に入れているもようだ。

日本の権益縮小歓迎 アザデガン油田で米

2006/10/07 中国新聞ニュース

 【ワシントン6日共同】日本の国際石油開発がイラン・アザデガン油田の権益を大幅縮小することについて、米国務省当局者は六日、記者団に「日本が(当初の計画を)続行しないと決めたのは前向きなことだ」と歓迎する意向を示した。

 ケーシー国務省副報道官は同日の記者会見で「それぞれの国が決めるべき問題」とした上で「今の状況を見れば、イランに多額の投資をするのに適切な時期でないことは明らかだ」と指摘した。

 国務省当局者は「われわれは数年間にわたって(この問題で)日本側と協議してきた」と言明。同時に「米国は誰に対しても撤退を促していない」と述べ、今回の決定はあくまで日本側の自主的な判断であることを強調した。

 また国際石油開発が依然持ち続ける10%の権益について、日本側に手放すよう求めるのかとの問いには「欲張らない方が良い」と述べ、当面は静観する考えを示した。

北畑経産次官「アザデガン油田交渉、長く続く」

2006/10/05 NIKKEI NET

 経済産業省の北畑隆生事務次官は5日の記者会見で、イランのアザデガン油田の開発問題で国際石油開発とイランの交渉が難航していることについて「交渉項目がたくさんあり相当長く続く」と述べた。イラン側が4日で交渉を打ち切ったとの現地報道については「5日も交渉が行われている」と否定した。

 イラン側は国際石油開発に対し9月末までに開発着手で合意するよう求めていたが、4日までの交渉で結論は出ていない。イラン側は契約破棄も示唆しているが、北畑次官は「日本だけでなくイランにとっても大事なプロジェクトであり(開発権が)取り消しになるとは認識していない」と強調した。

アザデガン油田 イラン「開発権益失効」 日本、撤退も視野

2006/10/05 北海道新聞

 中東最大級のイラン・アザデガン油田開発をめぐり、国営イラン石油公社総裁が日本の国際石油開発が持つ権益の失効に言及したことで、日本の自主開発油田、いわゆる「日の丸油田」の象徴とされるプロジェクトは、がけっぷちに立たされた。

 早期の開発着手を迫るイラン側の交渉姿勢に押され、日本の劣勢は明らか。日本側は交渉決裂回避に向けてイラン側と協議を続ける姿勢を崩していないが、決裂した場合の開発撤退も視野に入れ始めており、交渉は緊迫度を増している。イラン側が開発着手を日本に迫っているのは、度重なる交渉期限延長に対する自国内の批判をかわすためで、「イランが情報戦を仕掛けてきている」(日本政府高官)側面も強い。

 開発地帯の地雷除去が完了してないことを盾に交渉を先延ばししてきた日本は、イランの核兵器開発疑惑への国際的批判が高まる中で、早期着工には踏み切れない。今回の事態は、日本側の先延ばし戦術が限界に近づいたことを示す。

 たとえ日本側が開発権益をすべて失っても「アザデガン油田は開発前のプロジェクトなので、日本への原油供給に支障はない」(経済産業省資源エネルギー庁幹部)のも事実。

 ただ、「エネルギー安定供給の切り札」と期待の高い同油田の開発が頓挫した場合、原油の自主開発の比率を今の15%から二○三○年までに40%に引き上げる政府目標は達成困難になるのは必至。交渉決裂の事態に備え、資源外交の一段の強化が政府の重要課題に浮上する。サウジアラビアなど中東湾岸六カ国との間で先に着手した自由貿易協定(FTA)交渉の早期締結が、その第一歩となりそうだ。

米が新イラン制裁法 アザデガンは当面対象外

006年10月04日米国時間 US Frontline

 上下両院は3日までに、イランに投資する外国企業への制裁発動を定めた旧イラン・リビア制裁法の期限切れを受け、制裁発動に加え民主化勢力への財政支援も認める「イラン自由支援法案」の一本化で合意、ブッシュ大統領が署名し成立した。

 制裁はイランの石油関連事業に年間2000万ドル以上を投資する企業やイランの大量破壊兵器開発を支援する企業などが対象。

 新法は、米欧などがイランに「包括的見返り案」を示した6月以降に投資した企業が制裁対象となるが、イランに核放棄を促す国連決議に協力する国の企業は大統領が対象から外せる。

 アザデガン油田開発に関与する日本の国際石油開発について議会スタッフは、投資時期などから「現時点では制裁対象となる一線を越えていない」と言明。しかし今後投資を本格化し、事業を継続した場合は対象になると説明した。

 新法をめぐってはイランに強硬姿勢を示す下院が当初、制裁措置を強化する独自法案を可決。政権側が反対する中、先週末まで上下両院と政権側との間で妥協を目指した協議が続いていた。(共同)

甘利経産相「イラン油田交渉大詰めに」

2006/10/03 The Sankei Shimbun

 甘利明経済産業相は3日の閣議後の記者会見で、イランのアザデガン油田開発をめぐる日本の国際石油開発と国営イラン石油公社の協議について「かなり大詰めの段階に入っている」と述べ、交渉はヤマ場を迎えたことを明らかにした。

 経産相は「環境としては非常に厳しい中での交渉が続いている。政府としては交渉を見守っていく以上のことは現時点でできない」と強調。イランの核兵器開発疑惑に対する国際的な批判が高まる中で、日本側が早期の開発着手に踏み切るのは難しく、協議は難航しているとの見方を示した。

 経産相は「時間的猶予はない」とも話し、日本側が交渉期限として示したとされる10月末を待たずに、結論が出るとの見通しを示唆した。

 日本政府の対応に関しては「当事者同士の話し合いを超えて当方(政府)が何かすることはない」と語った。

 アザデガン油田の開発問題では、9月末が交渉期限とされていたが、その後も国際石油開発とイラン石油公社の間で交渉が続いている。

ホルムズ海峡封鎖を示唆 ハメネイ師が米に警告

2006/06/04 The Sankei Shimbun

 イランの最高指導者ハメネイ師は4日、イラン核問題をめぐり、米国が有志国による制裁などを検討している動きに対し「少しでも過ちを犯せば、地域のエネルギー輸送が深刻な危機に見舞われるだろう」と警告し、ペルシャ湾の石油輸送の要所ホルムズ海峡封鎖で対抗することを示唆した。

 テヘラン郊外で開かれたホメイニ師死去17年の追悼式典で述べた。(共同)

アザデガン油田開発 イラン側「日本以外の企業から打診」

2006/05/31 The Sankei Shimbun

 イランのアザデガン油田開発に当たる石油開発技術会社のバザールガン社長は30日、日本企業の開発着手の期限は「9月22日に切れる」とあらためて主張、日本企業撤退を想定して多くの外国企業から共同開発の打診があったことを明らかにした。国営イラン通信などが報じた。

 核問題で制裁に反対する中国との共同開発の可能性をちらつかせ、権益を持つ国際石油開発(東京)や日本政府に圧力をかける狙いがあるとみられる。

 バザールガン社長は、国際石油開発が期限までに開発に着手しなかった場合、「これらの企業のうちの1社と契約するだろう」と言明した。(共同)

イラン・アザデガン油田開発、従来通り推進したい=官房長官

2006年05月25日(ロイター)

 [東京 25日 ロイター] 安倍官房長官は午後の記者会見で、日本とイランが共同開発するイラン南西部のアザデガン油田開発について、「エネルギーの安定供給の観点から重要なプロジェクトなので、従来通り推進したい」と述べた。

 共同通信によると、国営イラン石油公社が日本側に対し、契約書を根拠に「今年9月までに開発着手の見通しが立たなければ、契約が自動的に破棄される」と警告していることが25日までに分かった。

9月にも契約破棄と警告 アザデガン油田でイラン

2006/05/25 The Sankei Shimbun

 日本とイランが共同開発する中東最大級のイラン南西部のアザデガン油田をめぐり、国営イラン石油公社が日本側に対し、契約書を根拠に「今年9月までに開発着手の見通しが立たなければ、契約が自動的に破棄される」と警告していることが25日までに分かった。日本企業との交渉に当たる公社傘下の石油開発技術会社のメヘディ・バザールガン社長が明らかにした。

 イラン核問題は、米国が欧州連合(EU)と日本を巻き込んだ「有志国」制裁の可能性を模索するなど契約締結時に比べ深刻化。イラン側の強硬姿勢には、核問題で米欧と共同歩調を取る日本に揺さぶりをかける狙いもありそうだ。

 一方、アザデガン油田の75%の権益を持つ日本の国際石油開発(東京)は「契約の内容は守秘義務があり、話すことはできない」としている。

 バザールガン社長は、2004年2月に交わされた契約書に開発着手の履行期限が「2年半」と書かれているとし、契約が発効したのは同年3月で、今年9月以降は契約が白紙になると主張。期限延長の可能性も否定した。(共同)

有志国でのイラン制裁も 核問題で米国務長官言明

2006/05/01 中国新聞ニュース

 【ワシントン30日共同】ライス米国務長官は三十日、イラン核問題で「国連安全保障理事会が迅速に行動しなければ、有志国が追加的な措置を検討することもできるし、そのつもりだ」と言明。中国やロシアの抵抗で今後の安保理協議が不調に終われば、欧州や日本など同盟国を中心とした制裁に動く可能性を示唆した。米CBSテレビとのインタビューで語った。

 ライス長官はまた、ABCテレビとのインタビューで、イランが安保理議長声明にもかかわらずウラン濃縮活動を拡大、継続させたことに対して「(三十日以内の濃縮停止活動を求めた三月末の安保理)議長声明をまた採択するわけにはいかない」と述べ、経済制裁などを規定した国連憲章七章に基づく決議の必要性を強調。

 さらに「国際社会が取れる多くの措置がある」とも述べ、経済制裁や資産凍結などが将来的な選択肢であることを指摘した。

 ▽「米に屈するな」油田開発で日本批判 イラン

 【テヘラン30日共同】イラン外務省のアセフィ報道官は三十日、テヘランで記者会見し、日本が権益を持つイランのアザデガン油田の開発で米国が暗に見直しを求めていることについて「日本は独立して判断すべきだ」と述べ、米国の圧力に屈せず国益に従って開発を堅持するよう求めた。

 報道官は、パキスタン、インド向けの天然ガスのパイプライン敷設計画が進められていることを例に挙げ「米国は計画を阻止しようとしているが、両国は国益に従って自ら判断した」と指摘。「日本は米国が一方的に世界を支配しないよう行動すべきだ」と主張した。

日本「アザデガン」窮地 油田投資に制裁 米下院法案可決

2006/04/29 The Sankei Shimbun

 【ワシントン=古森義久】米国下院本会議はイランの石油などエネルギー分野に二千万ドル以上の投資をした外国の機関や企業に米国政府が経済制裁を加えることを義務づけたイラン自由支援法案を二十六日、可決した。日本のイランのアザデガン油田開発の停止を目標とする同法案が法律となる見通しは強く、ブッシュ政権からの停止要請とともに、日本の同油田開発はイランの核兵器開発の動きとからんでさらに難しい状況に直面した。

 同法案はイランの核兵器開発や人権、自由の弾圧を阻止する目的でイランの石油、天然ガスなどエネルギー分野への外国からの投資を阻むことを主眼としている。具体的には、イランのエネルギー分野へ総額二千万ドル以上投資した外国の政府など諸機関や企業には、米国政府関連機関との取引を禁止するなどの制裁を科す、としている。

 同法案を促進する下院国際関係委員会のヘンリー・ハイド委員長(共和党)は、法案の主目標が日本であることを示唆しながら「日本が石油消費全体の15%をイランからの輸入に頼る現状では、イランとの石油のきずなを断つことが難しいのはわかるが、核開発阻止の国際連帯のために、イランへの圧力行使に協力してほしい」と述べている。

 米国政府はイランの核開発に対し、国連安保理主体の制裁で阻止をはかる姿勢だが、中国とロシアが難色を示すため、米国主導の「有志連合」による対処をも進めている。

 今回の議会の動きは、この米国主導の対応を補強する手段とされ、上院でもすでに同趣旨の法案が出され、可決される見通しが強いという。

 下院での同法案可決に関連しては、民主党有力議員のトム・ラントス議員が「日本のような同盟国にイランへの資金供与をやめることをとくに強く望む」と言明し、共和党側の同法案提案者の一人、イレナ・ロスレーティネン議員も「同盟国からの協力を基礎にイランに対しあらゆる政治的、経済的手段で核開発という無責任な行動への代償を払わせねばならない」と語り、いずれも日本のアザデガン油田開発を念頭においたような談話を発表した。

二階経産相、イラン油田開発「米から停止求められず」

2006/04/14 NIKKEI Net

 二階俊博経済産業相は14日の閣議後の記者会見で、イランのウラン濃縮問題に関連し、日本企業が開発権益を持つ同国のアザデガン油田への影響について、「現段階で米国から特別な意見や考えは伝えられていない」と述べ、開発中止要請などは来ていないと強調した。

 二階経産相はウラン濃縮活動についてイラン政府に「極めて遺憾であるとの考えを発信する必要がある」としたうえで、「核不拡散と同時に原油の安定供給は双方とも重要」と述べた。

米国:イラン・アザデガン油田、日本の投資に懸念

2006年03月25日 毎日新聞 東京朝刊 Mainichiu INTERAVCTIVE

 【ワシントン及川正也】マコーマック米国務省報道官は23日、イランに投資する外国企業への制裁圧力が米議会に強まっていることに関連し、日本のイランのアザデガン油田開発への投資について、「こうした投資は米国の法律や政策に反しており、その点を検討するよう要請してきた」と述べ、改めて懸念を示した。ただ、ゼーリック国務副長官らがアザデガン油田開発中断を日本に非公式に要請したとの一部報道については否定した。

古森義久:日の丸油田開発の夢、またもや頓挫か?

2006年03月24日 nikkei.bp

 イランの石油というのは日本にとっていつの時代でも鬼門のようだ。日本が官民一体で開発を始めたイランのアザデガン油田の事業の停止を求める圧力がアメリカからかけられてきたのだ。アメリカというよりも米欧諸国からの圧力と呼んだほうがよい。圧力の理由はイランの核兵器開発への動きである。

 日本は過去にもイランの石油がらみで手痛い目にあってきた。私自身もその一端を目撃した。

 ■イランへの利敵行為を絶対に赦さない米国

 1979年11月、イランでイスラム原理派の革命が進み、過激派学生が首都テヘランのアメリカ大使館を占拠して、アメリカ人外交官ら約50人を拘束してしまった。その外交官たちを人質にしてアメリカ政府に要求をつぎつぎに突きつけた。アメリカの時のカーター政権は必死で応じたものの、進展はない。カーター大統領はイランに対し石油をはじめ一切の物資を輸出入することを止める禁輸措置をとった。圧力をかけ、人質を解放させる目的だった。禁輸の結果、アメリカに売られるはずだったイラクの原油が大量に宙に浮いた。

 一方、アメリカ議会でもイランと経済取引をする外国の政府や企業にはアメリカとの取引を禁ずるという厳しい制裁措置をとる一連の法案がつぎつぎに出された。上下両院にイラン糾弾の声が広がり、まず国際的な連帯によりイランを経済面で締めつけようという意見が多数派となった。

 そんな状況下での禁輸で宙に浮いたイラン産原油を日本の商社など大手企業数社がさっと買ってしまったのだ。2000万バーレルという大量だった。本来はアメリカに輸出されるはずの原油をしかも正規の市場ではないスポット市場で買っていた。アメリカ側には日本の行動を利敵行為として非難する声が一気に広まった。

 私はそのころ毎日新聞の特派員としてワシントンに駐在していた。そしてそれまではわりによかったアメリカ側の対日態度が文字どおり一夜にして悪化する状況をまのあたりに目撃したのだった。

 「アメリカの敵を助ける背信行為」「「同盟国への裏切り」「イランのテロ勢力を支援する無神経」などなど、日本のこの商業行動を攻撃する声がアメリカ側の政府、議会だけでなくマスコミから一般世論まで一気に燃え上がったのである。その勢いには慄然とさせられた。日本にとっての石油の必要性への同情など皆無だった。日本の時の大平正芳政権はひたすら釈明と謝罪に出たが、いったん爆発した米側の反日感情はなかなかもとにもどらず、結局この事件で傷ついた日米関係の完全な修復にはその後、何年もかかることとなった。

アザデガン油田開発、米が日本に凍結要請 イラン核問題

2006/03/23 The Sankei Shimbun

 【ワシントン=古森義久】イランの核兵器開発の動きに対する国際的な反発が強まる中で、米国政府関係筋は、ブッシュ政権のゼーリック国務副長官やジョセフ国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)らが、日本政府に非公式な形でアザデガン油田の開発を少なくとも中断するよう要請したことを明らかにした。 米国議会でも同様の要請を行う動きが目立っている。米国側は日本側に対し、国連の対イラン経済制裁の成否にかかわらず、同油田開発停止を強く求めており、日本側の対応次第では、日米関係に深刻な摩擦を生むおそれが出ている。

アザデガン油田開発 米、日本に凍結要請 イラン核阻止へ障害

2006/03/23 YAHOO!ニュース(産経新聞)

 【ワシントン=古森義久】イランの核兵器開発の動きに対する国際的な反発が強まる中で、米国政府関係筋は、ブッシュ政権のゼーリック国務副長官やジョゼフ国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)らが、日本政府に非公式な形でアザデガン油田の開発を少なくとも中断するよう要請したことを明らかにした。米国議会でも同様の要請を行う動きが目立っている。米国側は日本側に対し、国連の対イラン経済制裁の成否にかかわらず、同油田開発停止を強く求めており、日本側の対応次第では、日米関係に深刻な摩擦を生むおそれが出ている。

 米側は、日本の官民が協力してイランで推進するアザデガン油田開発のプロジェクトは、イランの核兵器開発が明白となった現状では、核開発への動きを止めるうえで大きな障害になるとみている。

 米国の対日要請の根拠としては、日本のアザデガン油田開発の継続が (1)イランの財政収入に大きく寄与し、結果として核開発にも役立つ (2)独自の石油開発に苦労するイランの国力増強に通じ、結果として核兵器の政治的威力などを増大させる (3)イランの核開発阻止のための国連主体の国際連帯あるいは国際的な有志連合の団結を乱す (4)国連安保理でのイラン制裁案が成立すれば、実施が確実なイランの石油の禁輸や石油関連投資の禁止規定に直接、触れる−などの諸点があげられているという。

 ブッシュ政権が示した表面での動きとしては、ボルトン国連大使が三月上旬にイランの核問題と日本の油田開発の関連について公式に発言した。同大使は「日本のエネルギー事情も理解できるが、国際的な核拡散防止への日本の年来の強い政策からすれば、イランの核兵器保有阻止への協力の方が、より重要なはずだ」と述べ、日本側に対し、アザデガン油田開発の凍結を明確に呼びかけた。

 一方、米国議会でもイランの核武装への反対は広範だが、十五日には下院国際関係委員会がイランに投資する外国企業に制裁を科す「イラン自由支援法案」を可決し、改めてイランでの石油開発などへの外国からの投資に対する米国としての強い反対の構えを明確にした。この法案審議の過程で、国際関係委員会のハイド委員長(共和党)は、「日本が石油消費の15%をイランからの輸入に頼っている現状では、イランとの石油のきずなをすべて断つことが難しいのはわかるが」と述べながらも、イランの核開発阻止のための日本の協力を訴えた。

 同委員会の民主党有力メンバーのラントス議員も「アジアや欧州のすべての国の政府と企業にイランへの石油投資を即時、停止することを求める」と言明した。議会でもアザデガン油田開発の停止を日本に求める声は大多数となった。

 日本側は、二〇〇四年二月に「国際石油開発」が主体となってイラン側と同油田開発契約を結び、まず二十億ドルを投入した。当時も米国政府は反対を表明したが、日本側では「日本がおりれば、フランス企業がすぐ後を継ぐ」と主張して、それなりにブッシュ政権の一部の理解を得たとされる。

 今回も「日本が撤退すれば、中国が進出してくる」という主張が日本側の一部にあるが、米側には「アザデガン油田の開発に必要な高度技術は中国はまだ持っていない」(ブルッキングス研究所のイボ・ダールダー研究員)との反論もある。

     ◇

【用語解説】アザデガン油田

 推定埋蔵量260億バレルを持つ日本最大の自主開発油田。現在、国際石油開発が75%、イラン国営石油会社の子会社が25%の権益を保有している。当初は2005年中に開発作業に入り、08年から日量15万バレルで生産を始める予定だったが、イラン側の地雷除去作業などが遅れており、生産開始もずれ込む見通しとなっている。

イランへの油田開発投資 日本企業も制裁対象 米下院が法案可決へ

2006/03/18 西日本新聞社

 【ワシントン16日共同】総投資額が二十億ドル(約二千三百四十億円)を超えるイラン・アザデガン油田開発に投資する日本企業が、米下院で来月にも可決される見通しの「イラン自由支援法案」に基づく制裁措置発動の検討対象に想定されていることが十六日、分かった。複数の与党共和党議会筋が共同通信に語った。法案は日本を狙い撃ちしたものではないが、これまで大統領の裁量に任せてきた制裁を自動的に発動する規定を設けており、イランに投資する外国企業にとって厳しい内容となる。

 議会筋は「(アザデガンに投資する)日本企業は本来、現行法でも制裁適用が論理的に可能だ」と言明しており、イラン核問題が今後緊迫化すれば、イランに巨額投資を行う日本などへの議会の圧力が強まる恐れがある。

 アザデガン油田開発の権益を持っている国際石油開発は「何も聞いていない。コメントを差し控えたい」と話している。

 同様の法案が上院にも提出されており、同筋は「何らかの形で制裁強化策が立法化される可能性が高い」としている。

 法案が議会を通過した場合、外交上の権限が制約されることを嫌うブッシュ大統領が拒否権を発動する事態も排除できないが、米主要港の管理業務委託問題で議会と対立、譲歩を余儀なくされた大統領が、今秋の中間選挙を前に議会との対決姿勢を強める可能性は低い。

 議会筋はアザデガン油田関連事業について、法制定後九十日以内に制裁対象とするかどうかが決まると指摘した。その一方で、大統領には「国家安全保障上の利益」を理由に制裁を「免除」できる権限を付与する。

イラン核問題:制裁で新法案 エネルギー分野投資の外国企業対象−−米下院委

2006年3月16日 毎日新聞 東京夕刊 Mainichi INTERACTIVE

 ◇油田計画持つ日本は懸念

 【ワシントン笠原敏彦】米下院外交委員会は15日、核開発問題が国連安保理に付託されたイランのエネルギー分野に投資する外国企業に制裁を科す法案を賛成37、反対3で可決した。現行のイラン・リビア制裁強化法が今年8月に失効するのに合わせた動きで、米政府は対イラン包囲網の維持で協力が必要な同盟国などの反発を買うことを懸念して反対している。

 法案はイランの石油・ガス田分野に年間4000万ドル以上を投資した外国企業を対象に、米政府との取引禁止措置などの制裁を科す内容。米政府は96年に同様のイラン・リビア制裁強化法を制定したが、リビアが大量破壊兵器の廃棄を約束したため、今法案はイランに対象を絞っている。

 アザデガン油田開発計画を持つ日本には懸念される法案だが、同委員会のハイド委員長は今後の審議過程で修正される可能性に言及した。また、米政府は「対イランで協力が必要な国々との緊張を生み、焦点をイラン核開発から同盟国との立場の相違に移す結果を生む」と反対している。

 法案の議会通過には下院本会議のほか上院での審議が必要な上、大統領は拒否権を持つ。

アザデガン油田:日本に開発優先を要請 イラン前大統領

2006年02月28日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 イランのハタミ前大統領は27日、同国南西部で進めるアザデガン油田開発について「(日本は)他国に配慮するより、自国の長期的利益に配慮した方が良いとの分別があるはずだ」と述べ、米国などの圧力に屈せずに開発を優先するよう求めた。訪問先のカタールの首都ドーハで、共同通信と一部外国メディアの取材に答えた。

 前大統領は改革派で、核問題でも穏健な政策を取ってきたことで知られる。

 前大統領は、同油田の開発で「日本のエネルギー面の安全は長期にわたって保障され、イランも事業の利益を得られる」と強調。核問題を理由に事業実現を阻止しようとする米国の圧力があることを示唆しながら、日本がイランとの長期的な関係を重視することに期待を示した。

 また、米国について「世界情勢を悪化させ、世界を危険にしている」と批判。核問題でも未稼働のブシェール原発から放射性物質が広がったとのデマを流したとし、「さまざまな機会をとらえてわれわれを非難してきたが、後に誤りだと判明している」と主張した。(ドーハ共同)

アザデガン油田

2006年02月15日[東京朝刊]The Sankei Shimbun Newsな言葉
 

 平成11年に発見されたイラン南西部、イラクとの国境付近にある油田。中東最大級で、推定埋蔵量は約260億バレルにのぼる。12年にハタミ大統領(当時)が来日した際、日本企業に開発の優先交渉権を与えることで合意。米国がイランの核開発を理由に日本政府に交渉中止を求めたため、協議は一時、中断したが、16年2月に日本とイランの企業3社が契約に調印した。19年6月に日量5万バレルで生産開始の予定で、本格生産後は日量26万バレルになる。ただ、本格生産後に中国資本が参加する可能性も指摘されている。

日本の石油開発、水さす核問題 イラン・アザデガン油田

2006年01月23日 asahi.com

 日本企業がイラン南西部にある中東最大級のアザデガン油田の本格開発に着手するのを目前に、イランの核開発問題が大きな影を落としている。日本の自主開発原油が一気に増えると期待されるが、イランが強硬姿勢を貫くと、最悪の場合は権益を失いかねない。日本政府は欧米と歩調を合わせてイランに核開発中止を求めているが、イラン原油は日本のエネルギー戦略の中で大きな位置を占めるだけに、難しい対応を迫られる。

●「虎の子」、経産省は前向き 中国の動きを警戒

 推定埋蔵量が260億バレルと中東最大級を誇るアザデガン油田は、04年2月、日本の国際石油開発が権益の75%を獲得した。本格生産時には日量26万バレルを予定しており、日本が輸入する自主開発原油は現在の約1・6倍に増える見込みだ。

 00年に日本のアラビア石油がペルシャ湾のカフジ油田の権益を失ってから、新たな自主開発油田の確保が悲願だった経済産業省にとって、アザデガンはようやく手に入れた「虎の子」だ。

 現在はイラン・イラク戦争時に埋められた地雷の除去などが進められており、国際石油は今春以降、掘削作業など本格開発に着手する方針。リスクを軽減するため、仏石油会社のトタールに開発権益の一部を譲渡する交渉を進めている模様だ。

 国際石油が4月に帝国石油と経営統合をする最大の狙いも、開発能力に定評のある帝石の技術陣をアザデガン開発に投入することにあるようだ。

 本格開発が目前に迫ったところへ浮上したイランの核開発問題に対し、経産省では「欧米の主張通り核開発問題が国連安全保障理事会に付託されても、アザデガン開発の禁止や原油禁輸にはならないはず。今後も粛々と開発の準備を進めるべきだ」という意見が主流を占める。

 積極論の背景にちらつくのは中国の影だ。中国は近年、イラン西部のヤダバラン油田の権益を確保するなど、イランとの関係を強めつつある。経産省幹部は「日本がアザデガン開発を中止しても、中国が後を引き継ぐだけで、イランには何の痛手にもならない。核問題と油田開発は切り離して考えるべきだ」と主張する。

 だが、国際社会がイランへの包囲網を狭めつつある中、アザデガンへの影響は避けられないとの見方が広がっている。

 二階経産相は20日、「影響は極めて重大だ。国際的な立場で各国と協調しながら対応を図っていく」と強い懸念を表明した。

 別の幹部も「何としても開発したいが、唯一の被爆国として核兵器反対は日本の国是。アザデガンだけが何の影響も受けないというわけにはいかないだろう」と苦悩の表情を浮かべる。

 石油業界のなかにも「今回は欧米も本気。現状のままだと掘削に入るのは難しいのでは」との悲観論も出始めている。

●制裁なら輸入に影響大 強硬イランを説得

 「イランの対応が変わらない限り、国連安保理への報告以外に選択肢はない」。安倍官房長官は13日、日本政府として、欧米が主張する安保理付託の方針を支持する考えを表明した。

 日本政府は核不拡散問題で欧米と歩調を合わせるが、安保理でイランへの経済制裁の論議が具体化した場合、国際協調とエネルギー安全保障の板挟みになりかねない。

 麻生外相は18日夜、イランのモッタキ外相に電話をかけ、ウラン濃縮の関連活動について「国際社会の反発はイランが考えているよりも強い」として中止を求めた。だが、モッタキ外相は「研究開発であり、核燃料開発ではない」と応じず、平行線に終わった。

 国際原子力機関(IAEA)の緊急理事会が2月2日に開かれる。麻生外相は19日の日本記者クラブでの会見で「今のままなら国連安保理に行くのは確かなのに、(イランは)話が分かっているのか」と、イランの対応にいらだちを見せた。

 経済制裁の実施で不利益を被るのは日本だ。影響はアザデガン問題だけではない。日本の原油輸入量の15%をイラン産が占め、国別で3番目に多い大口輸入先。イラン原油の輸入禁止措置がとられたり、逆にイランが欧米の対応に反発して輸出停止に踏み切ったりすれば、日本への影響は計り知れない。

 このため外務省は「外交努力が必要」(麻生外相)と、今後もイラン側に粘り強く核開発の中止を働きかける構えだ。

 経済制裁については、米国が今のところ外交交渉で解決する姿勢を見せていることから、外務省幹部は「安保理がすぐに経済制裁発動に踏み切る可能性は低い」とみる。ただ、その場合でもアザデガンについては「米国が日本に開発をやめるように言ってくるかもしれない」と心配する。

イラン・アザデガン油田権益 国際石油、一部譲渡へ

2005/12/27(産経新聞)YAHOO!ニュース

 国際石油開発は二十六日、イラン・アザデガン油田の権益を外国石油会社に一部譲渡することを明らかにした。現在、75%の権益を保有しているが、このうちの一部を譲渡し、油田開発のリスクを分散するのが狙い。アザデガン油田は、日本が権益を持つ自主開発油田としては最大の埋蔵量を持ち、エネルギー安全保障の面でも期待されており、一部譲渡後も最大の権益は維持する。

 権益を譲渡する外国石油会社は一社。相手先は明らかにしていないが、これまでも共同で開発を手掛けることが多かった仏トタールなどが有力とみられ、すでに譲渡先との間では譲渡に向けた調整は終えているという。国際石油開発は資金面だけでなく、技術面でも実績が豊富な外国石油会社に権益を一部譲渡し、多額の費用が必要な油田開発のリスクを軽減したい意向だ。

 権益譲渡にはイラン側の承認が必要だが、これまでのところ、イラン側から権益の譲渡先に異議は出ていないという。イランは八月に就任したアフマディネジャド大統領が指名した石油相候補三人を国会が相次いで否認し、今月十一日にようやく決まったばかりだが、国際石油では新体制の下で手続きが円滑に進めば、譲渡が認められるまでにそれほど時間はかからないとみている。

 アザデガン油田の権益に関心を示している外国石油会社は多いとしており、今後、最大の権益を維持しながら、さらに他企業に権益譲渡を進める可能性もある。

 アザデガン油田は、推定埋蔵量が二百六十億バレルと、日本の自主開発油田としては最大。現在、国際石油が75%、イラン国営石油会社の子会社が25%の権益を保有している。当初は今年中に開発作業に入り、二〇〇八年から日量十五万バレルの生産を始める予定だったが、イラン側の地雷除去作業が遅れており、生産開始もずれ込む見通しとなっている。

日本の油田開発遅れる懸念 イラン石油相、3カ月空席

2005/11/29 The Sankei Shimbun

 世界第2位の原油確認埋蔵量を誇るイランで、アハマディネジャド政権の発足後、3カ月以上も石油相が空席のままで、開発プロジェクトの新規契約が滞るなど影響が出ている。日本の企業連合が権益を獲得したアザデガン油田の開発でも事業の遅れが懸念されている。

 アハマディネジャド大統領は石油利権をめぐる腐敗一掃を掲げ、側近や革命防衛隊出身の戦友らの石油相起用を画策。しかし、これまでに指名された3人は石油産業での経験不足を理由に国会の猛反発を招き、就任に至らなかった。

 政治的な混乱はアザデガン油田の開発事業にも影を落としている。資材費の値上がりに伴い、同油田の総投資額は昨年2月の契約締結時点の20億ドル(約2400億円)から30億―40億ドルに膨らむ見込み。日本側はイラン石油省に投資額を増やすよう求めているが、「石油省はトップ不在で政治的決断ができない状況」(油田開発関係者)だ。

 イラン側は、核開発問題の行方を日本が懸念して事業を遅らせていると批判。回答を先延ばしにしたままという。

 迷走する石油相人事に対し、国会では「石油輸出国機構(OPEC)でのイランの立場が弱まり、外資と協力する機会も減少する」と心配する声も出ている。(共同)

アザデガン油田

2005年05月13日(金) 東奥日報

 イラン南西部の中東最大級の油田。推定埋蔵量は約260億バレル。2000年のハタミ・イラン大統領訪日時に日本企業に開発の優先交渉権を与えることで合意。イランの核開発を理由に米国が日本に交渉中止を要請し協議は一時中断したが、04年2月に日本とイラン両国の企業三社が契約に調印した。07年6月に日量5万バレルで生産開始の予定。日本側が75%、イラン側が25%の権益を持つ。

小説「不毛地帯」の舞台(サルベスタン=イラン)

2005年02月14日 読売新聞 Yomiuri On-Line

サルベスタンの石油資源開発は長い間封印され、羊が放牧されていた 

“油田商戦”再び熱気

 イラン南部、油田!)!)その舞台設定から、乾いた大地を想像していたが、赤茶けた地面を泥の川が洗う寂りょうとした光景に迎えられた。前日から続いた雨は土砂降りになっていた。

 幹線道路を下り、未舗装のデコボコ道の果てにたどり着いた「油田」は、採掘現場をうかがわせるような施設は何ひとつ見当たらず、ただ羊が草をはむ牧歌的な場所だった。それもそのはずだ。「埋蔵量10億バレル以上」と小説に描かれた油田は、実は3本の井戸を試掘した後、封印され、商業採掘は行われていなかったのだから。

 石油情報会社の資料によると、サルベスタン油田の埋蔵量は約1億4000万バレル。日本が昨年、開発契約を結んだイラン南部のアザデガン油田の埋蔵量は260億バレルだから、サルベスタンはイランの油田の中でも小規模だ。

 この小説は、「国益」を背負い、戦後、商社マンとして国際商戦を生き抜いた元大本営参謀の物語だ。満州(現中国東北部)で終戦を迎え11年に及ぶ過酷なシベリア抑留から生還した主人公の壱岐正が、繊維相場や戦闘機の受注合戦の修羅場をくぐり、最後にかけた商戦の舞台がサルベスタン油田だった。

 古代ペルシャの都ペルセポリスから遠くないこの地で石油が発見されたのは1973年のこと。イスラム革命(1979年)前の親米王政期、シャー(国王)の号令のもと、各地で石油資源の探査が行われた。サルベスタンを探査したのも米国の石油会社だったと言われる。

 油田近くのナザラバド村で羊を放牧するアブドラレザ・タダヨンさん(54)は当時、試掘作業にかり出された。「ブルドーザーで地面を削ったり試掘用の井戸掘り作業を手伝った。近郷近在から男たちが60人ぐらい集められた」。本格採掘が始まれば寒村が発展するという期待が住民の間で高まったが、石油景気は到来しなかった。革命による体制転換、対イラク戦争、外国資本の撤退……。激動の中で開発は置き去りにされ、今では地元でも油田はほとんど忘れられた存在となった。

 だが、眠っていたサルベスタンの開発がようやく動き出そうとしている。「イラン中部石油会社」が昨年、英国企業の技術協力を得て原油採掘に向けて具体的な計画をまとめたのだ。

 同社で事業の指揮を執るマフムード・ジラクチアンザデ開発計画部長は、「4か月ほど後に開発権の入札を予定している。欧州やアジア、それに米国企業にだって入札の門戸は開かれている」と話す。原油をシーラーズの製油所まで運ぶ約120キロのパイプライン建設には日本企業が意欲を示しているという。

 小説の中で著者は、油田権益の獲得競争をその厳しさから「武器なき戦い、つまり謀略戦」と記した。小説が書かれた70年代、世界は2度の石油ショックに見舞われ、資源小国の日本はエネルギー安保の危機に直面した。今日では、石油は「戦略物資」から世界各地の市場で調達できる「市場商品」に変わったとの声も聞かれるが、昨年来の原油価格急騰は、エネルギー確保の重要性を改めて認識させた。

 サルベスタンで昨年行われた探査には、最近とみに資源開発に活発な動きを見せる中国の石油会社の技術者も参加したという。

 作品発表から約30年が過ぎ、「不毛地帯」は資源獲得競争の最前線に変わりつつある。(文と写真 緒方 賢一)

 「不毛地帯」

 山崎豊子氏が1970年代半ば、5年間にわたり「サンデー毎日」に連載した長編小説。「白い巨塔」や「華麗なる一族」などと並ぶ代表作。大本営参謀からシベリア抑留をへて商社マンに転じた主人公は、元伊藤忠商事特別顧問・会長の瀬島竜三氏がモデルと言われたが、著者は「これは架空の物語である。実在する人物、出来事と類似していても偶然に過ぎない」と記している。新潮文庫。

イラン油田開発の代わりにリビア投資を…米、日本に

2004/08/07 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【ワシントン=広瀬英治】ロイター通信は6日、日本が権益を獲得したイランのアザデガン油田開発計画を巡り、米政府が日本政府に対し、アザデガン油田の代わりにリビアの石油産業に投資するよう持ちかけていると報じた。

 米当局者の話として伝えたところによると、米政府は、核兵器開発疑惑があるイランへの日本の投資に反対している。一方で、エネルギーを輸入に頼る日本の事情も理解できるとして、アザデガンに代わる投資先として、昨年末に大量破壊兵器の開発放棄を宣言したリビアを強く推しているという。

仏メジャーなど参加の意向 イラン・アザデガン開発 2004年03月05日 The Sankei Shimbun
 イラン最大級のアザデガン油田の開発権益を獲得した国際石油開発(東京)は5日、メジャー(国際石油資本)のトタール(フランス)やマレーシア国営企業など5社から開発プロジェクトへの資本参加の申し出があったことを明らかにした。

 当初、参加予定だったメジャー、ロイヤル・ダッチ・シェル(英国・オランダ)が離脱の意向を表明したのを受け、国際石油開発は技術面、資金面で実績豊富な海外企業との提携を探っていた。

 アザデガン開発計画は、20億ドルと見込まれる総投資額の75%を日本側で組織する企業連合が出資する契約で合意。

 このうち、トタールを軸とする3社程度の海外勢が4割強を負担する方向。国際石油開発など日本企業連合で残る5割強を分担したい考え。企業連合の一角だったトーメンは、経営再建中を理由に「資本参加は見送り、資材調達のノウハウなど間接的な支援にとどまる」(交渉筋)見通し。

 現時点でシェルから正式な不参加の通知はないというが「保有油田の確認埋蔵量の下方修正をめぐって経営陣が混乱している」(同)ことから、参加困難と判断した。

 開発計画は、アザデガン油田のうち南部一帯の鉱区が対象。開発は2段階に分かれ、それぞれ最盛期で日量15万バレル、26万バレルを想定。第1段階の生産期間6年半が経過した時点で資金回収のめどをつけ第2段階に移行するか判断する。

日本の企業連合、イラン・アザデガン油田の開発権獲得

2004年02月19日 asahi.com

 イラン・アザデガン油田の開発権を、日本の企業連合が獲得することで、日本とイランが合意し、19日未明(現地時間18日夕)にテヘランで、契約を交わした。契約調印に先立ち、日本、イラン両政府はそれぞれ米国に合意成立を伝えた模様だ。00年2月末にアラビア石油のカフジ油田(サウジアラビア側)の権益を失って以降、日本最大級の自主開発油田の開発権の獲得となる。ただ、巨額の開発コストに加え、治安の不安などリスクも大きい、という懸念も指摘されている。

 契約書によると、総投資額は20億ドル(約2100億円)で、日本側が75%、イラン側が25%を負担する。08年夏までに日量15万バレルで生産を開始。12年には、昨年の日本の1日当たり原油輸入量の6.5%に当たる同26万バレルにまで拡大する計画だ。

 同油田について日本は00年4月から交渉を開始し、30億ドル(約3150億円)の原油代金前払いなどを提示して優先交渉権を獲得。石油公団傘下の国際石油開発と石油資源開発に、英・オランダ系の国際石油資本(メジャー)ロイヤル・ダッチ・シェルも加わって交渉を進めていた。

 しかし、投資費用の回収を重視する日本側とイラン側の間で、出資比率や開発期間など、開発条件の調整が難航した。また、イランに核開発疑惑が浮上してからは、米国から延期要請を受けるなど、一時は逆風も強かった。ただ、イランが昨年12月に国際原子力機関(IAEA)の核査察容認に転じたために、米国も軟化、交渉妥結の条件が整った。

日本のイラン油田開発に「深い懸念」 米国務省報道官

2004年02月19日 asahi.com

 バウチャー米国務省報道官は18日の記者会見で、日本の企業連合がイラン・アザデガン油田の開発権を獲得したことについて、「深く懸念している。こうした開発が進展することに失望している」と述べ、核開発計画を持つイランへの石油関連投資について米政府として引き続き反対する姿勢を示した。一方で、「この問題について日本政府は我々の見解を熟知している」とも語り、日米間で緊密な意見交換をしてきたことを強調した。

 バウチャー報道官は、イランに対する米政府の懸念として、核問題に加えて、中東和平の進展に反対するヒズボラやハマスなど過激派への支援、アルカイダなどテロ組織メンバーの国内受け入れを指摘し、こうした懸念から対イラン投資に反対する米政府の政策は変わっていないと説明。油田開発に関する見解の相違は残るものの、「日本側もこうした懸念については多くの点で共有している」と述べた。

 この問題について、加藤良三駐米大使も同日、「米国との間ではいろいろな意味で連絡をとっている」と述べたうえで、米政府の「懸念」については、「特に意外とは受け止めていない」と語った。

米、対イラン制裁を一時緩和 人道支援目的で

2004/01/03 asahi.com

 ブッシュ米大統領は1日、「被災者への人道支援物資が届くよう、イランへの規制を緩和した」と述べた。滞在先のテキサス州で記者団の質問に答えた。12月31日のホワイトハウス声明によると、米国の個人や非政府組織(NGO)が現地で活動する団体に送金することを一時的に認めるほか、輸出規制品目に指定されている衛星電話などの持ち込みも認める手続きを同日付でとった。

 2日付の米紙ワシントン・ポストは、米政府が米国赤十字社の社長経験があるエリザベス・ドール上院議員(共和)を代表とする高官レベルの人道使節団を近くイランに派遣すると報じた。使節団には、ブッシュ家のメンバーも含まれるという。

 米国は80年、テヘランの米大使館人質事件を機にイランとの国交を断絶。96年にはイラン・リビア制裁強化法が成立し、ブッシュ政権も01年に5年間延長を決めた。00年3月に、クリントン政権がじゅうたんや食品類の輸入を解禁したが、ブッシュ政権になってからは初めて。物資運搬に関する機材や衛星電話、無線、パソコンなどは「輸出規制品目」になっているが、これによって、国務省や米国際開発局、米NGOなどが現地に持ち込むことが可能となる。

 ブッシュ大統領は、今回の措置について、「米国民が心配している、ということをイラン国民に示すものだ」と述べる一方、イラン政府に対しては、民主化の促進▽イラン国内で拘束されている国際テロ組織アルカイダ・メンバーの本国送還▽核兵器開発計画の廃棄――を改めて求める考えを示した。

仏トタルなど2社が入札へ イランのアザデガン油田

2003年11月08日 The Sankei Shimbun

 国営イラン石油技術開発会社(MATN)幹部のアリアクバル・アルアカ氏は8日、国営イラン通信に対し、アザデガン油田開発の国際入札にフランスの石油大手トタルとノルウェーのスタトイルが参加の意向を示していることを明らかにした。

 同氏はまた、6月末で優先交渉権が切れた日本の企業連合とも引き続き交渉を進めることをあらためて確認した。

 同油田をめぐっては、イランの核兵器開発を懸念する米政府が、計画から撤退するよう日本に働き掛けており、イラン側は日本の優先交渉権が切れたことを理由に、他国企業にも入札への参加を要請していた。

 MATNは近く、トタルとスタトイルの2社に同油田のデータを提供する予定という。(共同)

アザデガン油田:イラン 日本の優先交渉権取り消す

2003年09月20日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE

 20日付のイラン紙レサーラトは、イランが日本に与えていたアザデガン油田開発の優先交渉権を取り消したと報じた。ザンギャネ石油相が明らかにした。

 イラン石油公社幹部は同紙に対し、イランは同油田の開発をめぐり限定的な国際入札を実施するが、日本の企業連合との交渉はこれまで通り続けると語った。

 イランはアジアや欧州の石油会社に入札参加を要請したと伝えられているが、これらの企業との話し合いは合意に達していないという。

 アザデガン油田の開発をめぐっては、日本の優先交渉権の期限は6月末で切れたが、ザンギャネ石油相によると、イランはこれまで日本の優先権を保留してきたという。

 イランの核兵器開発の可能性を指摘する米国は、日本に同油田開発交渉の中止を要請している。

 イランはハタミ大統領が00年に訪日した際、日本に対し同油田開発の優先交渉権を与えていた。(テヘラン共同)

日本と優先的に交渉継続 油田開発でイラン石油相

2003年08月04日 The Sankei Shimbun

 イランのザンギャネ石油相は2日、同国のアザデガン油田の開発をめぐり、日本の企業連合と優先的に交渉を継続していることを確認した。石油輸出国機構(OPEC)の会議のため、訪問先のウィーンで国営イラン通信に語った。

 しかし、石油相は交渉妥結の見通しについては言及しなかった。石油相は先月13日、交渉が妥結に向かっていると語ったと伝えられていた。

 6月末にアザデガン油田開発をめぐる日本側の優先交渉権の期限が切れた後も、日本の企業連合と優先的に交渉を継続している理由について、石油相は、日本がアジアの国であることを挙げた。

 イランの核兵器開発の可能性を懸念する米政府は日本に交渉の中止を要請。日本側は核問題とエネルギー政策は別問題との立場を示している。(共同)

イラン油田開発:米との同盟か国益か 板挟みの政府

2003年07月21日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE

 日本が自主開発の「日の丸油田」を目指すイラン・アザデガン油田開発計画が揺れている。イランの核開発疑惑を非難し契約の再考を迫る米国との「同盟関係」を重視するか、エネルギー小国として資源確保を優先するかという二つの「国益」の板ばさみにあっているためだ。日本政府はイランに核疑惑の解明を促す一方で、開発交渉を継続させる「2正面作戦」を描いているが、打開の道筋は見えない。【白戸圭一、藤好陽太郎】

 ◆アキレス腱

 「日本では油田の話が大きく報道されているが我々は静かな環境で協議をしたかった」

 今月12日、テヘランで開かれた日本とイランの軍縮不拡散協議。イラン側は唐突にアザデガン油田の話を持ち出した。日本側は「軍縮と油田の話は別」と受け流したが、日本のアキレス腱に触れたものだった。

 「核開発とテロ支援は許さない」とするブッシュ米政権はイラク戦争後の「標的」をイランに定め、核開発疑惑に神経をとがらせる。イランの油田開発に日本が巨額な投資をするのは容認できないとの姿勢で、米政府関係者から非公式に開発計画への強い懸念が伝えられてきている。

 これに対し、日本政府は「核疑惑解消と油田開発両方を追求する」のが基本方針だ。油田開発を放棄すれば米国追随との批判は免れず、かといって油田開発に突き進めば日米関係への影響は避けられない。双方の折り合いをつける方法を探ろうというものだが、米国の圧力に抗しきれるかどうかは不透明だ。

 ◆狙い不発

 日本は戦前から皇室と旧イラン王室が親交を持ち、現在は最大の政府開発援助(ODA)供与国でもある。「パイプを持たない米国とは違ってイランとは外交ができる」(外務省幹部)という自負もあった。イランとの軍縮協議を2年9カ月ぶりに再開させ、抜き打ち査察を認める国際原子力機関(IAEA)追加議定書への署名を求めたのも「日本への批判をかわし、油田開発を結実させる」(同省筋)というシナリオだった。

 しかし、軍縮協議でイランは議定書署名に「前向きに検討する」という姿勢を示したものの、時期など具体的な回答は示さず、日本側の狙いは不発に終わった。

 ある外務省幹部は「追加議定書署名は核兵器開発断念と同じだ。イランは高く売りつけるだろう。日本だけで事態を動かせるわけではない」と限界を指摘する。

 ◆したたか

 アザデガン油田開発の交渉に当たる政府系石油開発会社の国際石油開発とトーメンの首脳や経済産業省幹部は、このほどイラン入りし、大詰めの交渉に入った。

 同油田はイラク国境に近く地雷源があるなど開発環境は厳しい。だが、推定埋蔵量は260億バレルで中東最大級。日本はサウジアラビアのカフジ油田の権益失効以降、国際石油開発と経産省が一体となってイランに開発を働きかけ、00年11月のハタミ大統領来日の際、優先交渉権獲得にこぎつけた。いわば悲願の自主開発油田である。

 契約は、一定期間の開発・操業を海外企業に請け負わせ、対価を原油で支払うという内容。日本への支払い額を抑えたいイランは開発費用を値切っており、交渉が成立するかどうか、ギリギリの段階だという。

 イランのしたたかさは価格交渉に限らない。ザンギャネ石油相は13日、日本との交渉が妥結に向かっていると発言する一方で、中国やロシアにも開発参入の可能性があることを示唆した。「日本が撤退しても代わりはある」(経産省幹部)という意思表示だ。

 「米国の強圧で日本があっさり中止したら、中東全体の日本に対する目も厳しくなる」(畑中美樹・国際開発センターエネルギー室長)という声もあるが、日本政府はイランの核開発疑惑への対応で米国と一定の足並みをそろえる必要もあり、難しい決断を迫られることになりそうだ。

◇イランの石油

 イランの原油の可採埋蔵量は世界4位の746億バレルで、3位のイラクとほぼ同量。アザデガン油田は推定埋蔵量260億バレル(可採埋蔵量は3割程度)で中東最大級だ。イランの輸出先(01年)は日本が日量53万バレルでトップ、2位韓国(22万バレル)▽3位中国(21万バレル)▽4位イタリア(21万バレル)となっているが、中国が前年比で約5割増と急激な増加を示している。

イランで3つの大規模油田を発見

2003年07月15日 The Sankei Shimbun

 国営イラン石油公社傘下の石油開発技術会社のアブルハサン・ハムシ社長は14日付のイラン夕刊紙ケイハンで、同国ペルシャ湾岸のブシェール周辺で推定埋蔵量が計380億バレルを超える3つの大規模油田を発見したことを明らかにした。正確な埋蔵量を近く発表する予定。

 世界最大規模の未開発の油田となるが、ハムシ社長によると、この油田で生産を始めるには、特別な技術と多額の投資が必要になるという。

 同国で日本の企業連合が開発交渉中のアザデガン油田の埋蔵量は260億バレルとされる。(共同)

イラン核問題で特使検討 政府、油田確保に環境整備

2003年07月07日 The Sankei Shimbun

 政府は7日、イランの核開発問題で疑惑解消の取り組みを働き掛けるためイランへの特使派遣の検討に入った。

 米国が、核開発問題に絡めて日本の企業連合が進めているイラン・アザデガン油田開発計画の中止を求めていることから、疑惑解消への努力をイランに促すことで米国の理解を得て、自主開発油田獲得への道を探る狙いがある。

 特使とは別に、12日には天野之弥外務省軍備管理・科学審議官をイランに派遣し、軍縮・不拡散の定期協議で核疑惑への対応を求めるなど、「親日的」なイランとのパイプを使って事態打開を働き掛ける。これを踏まえて政府は、早ければ今月中にも特使を派遣したい、としている。

 米国は、イランに対して核問題だけでなくイスラム過激派支援なども問題視し強硬姿勢を強めており、日本としては、米側の理解をどう得るのか難しい交渉が続きそうだ。

 茂木敏充外務副大臣は3日の記者会見で「現時点で油田契約はできない。イランに対し核開発疑惑払しょくの働き掛けを強めたい」と強調。12日にテヘランで行われる軍縮・不拡散定期協議では核査察強化を目的とした国際原子力機関(IAEA)の追加議定書への署名をあらためて求める考えだ。

 ただ外務省首脳は「自主開発油田の確保は国益にかかわる重要問題だ。対米追随でやっているわけでなく、核疑惑の透明性が図れれば交渉を進めたい」と指摘。日本・イランの「独自のパイプを使っていく」(外務省幹部)方針。油田確保については「米国と認識が異なっても仕方がない」(同)との声も出ている。

 ■イランの核開発 イランはペルシャ湾岸ブシェールに軽水炉原発を建設中で、国内でウラン鉱石も採掘している。将来は核燃料製造、発電、再処理まで一貫した核燃料サイクルを目指しているとされる。中国から輸入したウラン鉱石1・8トンの未申告や西部アラクのプルトニウム製造が可能な実験用重水炉などが問題視され、国際原子力機関(IAEA)は今年6月、イランに対し査察を強化する追加議定書を「即時、無条件」で締結するよう求める議長総括を出した。

イラン油田:米、加藤駐米大使に開発中止を公式に要請

2003年07月02日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE

 【ワシントン竹川正記】日本の企業連合によるイラン最大級のアザデガン油田の開発計画について、米政府が「安全保障上の重大な懸念」を理由に、在米日本大使館を通じた公式の外交ルートで中止を要請していたことが1日、分かった。米政府に近い筋が明らかにした。先月、ライス大統領補佐官(国家安全保障問題担当)やアーミテージ国務副長官が加藤良三駐米大使を呼び、イランの核開発疑惑が米政府の安全保障政策の重大な懸念であることを強調した上で「同盟国の日本がイランに誤ったメッセージを伝えることを憂慮する」などと指摘し、事実上開発計画からの撤退を迫ったという。米政府の公式の中止要請で、日本の石油開発戦略は抜本的な見直しを迫られる可能性が出てきた。

 同油田開発問題をめぐっては、バウチャー米国務省報道官が30日、「この時期にイランの石油・ガス開発を進めるのは不適切」との見解を示したが、「特定国との外交交渉についてはコメントできない」としていた。同筋によると、米政府の開発中止要請は、小泉純一郎首相周辺や日本の関係省庁にも伝達された。6月末か7月初めにも予定されていたイラン政府との契約調印が急きょ延期されたのは、小泉政権が日米関係への悪影響を懸念したためという。

 日本政府は当面、米政府が求める核開発計画の開示や国際原子力機関(IAEA)による全面的な核査察にイランがどう対応するか見守る一方、同油田の開発計画は撤回せず、イラン側との交渉を続けたい意向だ。しかし、核開発問題は早期解決が見込めない上、国際石油業界筋によると、同油田開発には欧州石油資本も関心を寄せており、日本が日米同盟の足かせでもたつけば「イラン側が見切りをつける可能性もある」という。

 同油田は確認埋蔵量260億バレルで中東地域でも有数の規模。日本とイランの協力による開発計画は、01年7月に平沼赳夫経済産業相が中東地域を歴訪した際、テヘランでのハタミ大統領とのトップ会談で決定した事実上の国家プロジェクトだ。日本のアラビア石油がサウジアラビアに持っていたカフジ油田の採掘権が00年に失効したのを受け、官民あげて新たな石油の長期的な安定供給源となる「日の丸油田」として開発を目指したのがアザデガン油田で、順調に行けば、今夏に契約、04年中には商業生産を開始する予定だった。

日本のイラン投資を批判 「不適切」と米報道官

2003年07月01日 The Sankei Shimbun

 バウチャー米国務省報道官は30日、日本の企業連合によるイラン・アザデガン油田の開発計画に関連し、「この時期に新たな油田、ガス取引を進めるのは非常に不適切だ」と述べ、日本側の対応を厳しく批判した。しかし、名指しでの日本批判は避けた。

 報道官の発言は、米国が「悪の枢軸」の一角と位置付けるイランへの大型投資を模索する日本の動きを強くけん制したもので、今後の同計画の進展次第では、新たな日米間の外交問題に発展する恐れも出てきた。

 アザデガン油田開発をめぐっては、米政府が日本政府に対し、計画から撤退するよう圧力をかけていると英紙が報道。報道官は、圧力をかけたのかとの質問に答えた。

 報道官はイランの核開発疑惑とテロ支援の問題に触れた上で、イランに一定規模の投資を行う外国企業への制裁措置を定めた「イラン・リビア制裁強化法」の存在を指摘。「米国は長年、イランの石油部門への投資に反対する政策をとってきた」と米政府の基本姿勢を説明した。

 特に、最近発覚したイランの核開発疑惑の重大性を強調し、日本の動きを念頭に、疑惑表面化後の対イラン投資に強い懸念を示した。(共同)

米、日本にイラン油田開発撤退迫る 英紙報道

2003年06月27日 The Sankei Shimbun

 28日付英紙フィナンシャル・タイムズ(アジア版)は、日本の企業連合が交渉を進めているイランのアザデガン油田の開発計画で、米政府が日本に計画から撤退するよう圧力をかけていると報じた。

 米国がイランとの個別取引に直接介入するのは初めてとみられる。

 アザデガンは確認埋蔵量260億バレルのイラン最大級の油田地帯。介入はイランの核開発疑惑を問題視する米国による外交戦略の一環で、石油の安定供給源の確保を目指す日本は、厳しい選択を迫られそうだ。

 同紙が伝えた米政府筋らの話によると、パウエル米国務長官は川口順子外相にこの問題を指摘。ライス米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も日本政府高官と接触している。

 同紙によると、企業連合は国際石油開発(旧インドネシア石油)や石油資源開発、トーメンなど。関係者は数日内に契約をイラン側と結ぶためテヘランで待機している。

 日本側は米国の圧力に抵抗しているが、契約の署名手続きが今年9月以降に延期される可能性が出ている。

 米国務省当局者は、介入の目的についてイランの核疑惑が重要な局面を迎える中、「(油田開発契約で)イランに誤ったメッセージを送らないためだ」と説明している。(共同)

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 ■アザデガン油田 イラン南西部にある同国最大級の油田で、確認埋蔵量は約260億バレル。2001年7月、平沼赳夫経済産業相がテヘランでハタミ・イラン大統領と会談し、開発の早期契約に向けて努力することで合意。日本企業による契約が成立すれば、2000年に失効したサウジアラビアのカフジ油田に代わる日本の自主開発油田として期待が高い。(共同)

油田開発の優先交渉権、日本とイラン合意

2000.11.02(01:17)asahi.com

 平沼赳夫通産相と来日中のイランのザンガネ石油相は1日会談し、エネルギー分野の協力で正式に合意し、共同声明を発表した。イラン国営石油会社がイラン最大級油田の開発に関し、日本企業に優先交渉権を与えることが柱。ほかに、エネルギー政策対話の協議継続や、原油輸入代金の前払いとして2001年から3年間で計30億ドルをイラン側に供与することなども確認した。

イラン最大油田の優先交渉権問題が進展、1日合意へ

2000.10.31(22:31)asahi.com

 平沼赳夫通産相は、31日来日したイランのザンガネ石油相と会談した結果、イラン最大級のアザデガン油田の開発・操業について日本企業が優先的に交渉できる見通しとなった。日本側からは、イランへの輸出に総額600億円の貿易保険を適用することを表明、中小企業育成のための支援策も提案した。協議は大筋で一致し、11月1日の2回目の会談で合意する見通しだ。

 通産省によれば、アザデガン油田の開発・操業については、日本企業では、インドネシア石油と石油資源開発が関心を寄せている。また、ペルシャ湾の海底天然ガス田であるサウスパルスガス田には、欧企業などに次いで、日本企業が参加できるようにイラン政府が配慮する、としている。

 ザンガネ石油相は「イランには経済特別区もあり、日本企業に投資をして欲しい」と積極的な投資を呼びかけた。

 日本は、中小企業対策として、イランへの人材派遣や研修生の受け入れなども提案した。

イラン最大級の新油田、日本に優先交渉権 両政府合意へ

2000.10.30(20:18)asahi.com

 日本とイランの両政府が、イラン最大級の新油田の開発・操業に関して、日本企業が優先的に交渉する権利を取得するために最終的な詰めを行っていることが30日明らかになった。イランのハタミ大統領が31日に来日し、森喜朗首相と会談する際に、議題として取り上げられ、合意に向けて最終確認される見込みだ。日本は今年2月末に、アラビア石油がサウジアラビアでの採掘権を失っていたが、実現すれば新たな油田の自主開発に道を開くものとなる。

 対象となるのは、イラン政府が昨年、国内最大級であることを確認した、と発表した「アザデガン油田」。イラクとの国境に近いイラン南西部にある。イラン側の発表によれば、推定埋蔵量は260億バレル以上で、日量30万―40万バレルが見込まれる、とされている。

 イランから優先交渉権を獲得すれば、日本側の開発主体となる共同企業体が本交渉にのぞむ。共同企業体は、大手石油開発会社の「インドネシア石油」が中心となって、石油公団や商社、石油元売りも加わる案が検討されている模様だ。本交渉で利権期間や開発規模など契約内容を詰める。

 日本からイランへの直接投資は、湾岸戦争後、米国の封じ込め策の影響で途絶えていたが、ハタミ大統領の開放・自由化路線の広まりとともに、経済制裁も緩和ムードが高まっている。イランは今回の油田開発をきっかけに、日本企業の対イラン投資を促したい考えとみられる。一方、日本も、自主開発油田が採掘権の失効や事業の失敗で行き詰まり感が強いものの、「エネルギーの安全保障上の観点から輸入だけに頼れない」(資源エネルギー庁幹部)という立場で、両者の思惑が一致した、といえる。

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