TOPIC No.2-148 レアメタル備蓄

(ニッケル,クロム, タングステン, コバルト,モリブデン, マンガン,バナジウム,プラチナの国家備蓄)

01. 「宝の山を掘り当てろ!」〜レアメタル争奪の4000キロ〜 (日経スペシャル「ガイアの夜明け」2004年10月26日放送 第132回) by TV Tokyo
02. レアメタル byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
03. レアメタルって何ですか? byJOGMEC
04. レアメタルの価格推移 by JOGMEC
05. レアメタルの供給リスクと備蓄コストについて JTMIA
06. 私たちの生活を守る「鉱物資源政策」by資源エネルギー庁
07. 希少金属備蓄グループ /JOGMEC
08. レアメタル データーベース
09. 資源争奪戦の現状について
10. 微生物を利用するレアメタルの資源循環システム by大阪府立大学 化学工学科
11. レアメタル回収のための生分解性吸着分離材の創製に関する研究 

レアメタル:回収技術を特許出願 森下仁丹と大阪府立大

2010年11月04日 20時58分 毎日新聞

 森下仁丹と大阪府立大は4日、レアメタル(希少金属)を細菌入りのバイオカプセルで回収する新技術を開発、特許出願したと発表した。レアメタルは現在、鉱石などから抽出するが、複雑な化学反応による5回から8回の工程が必要。バイオカプセルを使えばほぼ1回の工程に短縮でき、約8割のコスト削減が見込めるという。2〜3年後の事業化を目指す。

 同社が健康食品に使っているカプセル技術を応用した。レアメタルを含んだ鉱石や廃棄家電を酸性の薬品で溶かした溶液中に、バイオカプセルを投入する。カプセルは球形で直径2ミリから1センチ、吸収したいレアメタルに応じた細菌を詰めて沈める。

 レアメタルの一種で、携帯電話の基板に欠かせないパラジウムの場合、溶液中で金属イオンとなった後、カプセルの膜を通って細菌が取り込む。回収はカプセルを取り出すだけでよく、高濃度のパラジウムを効率よく回収できる仕組み。

 レアメタルは中国などに産地が限られ、安定供給が課題となっていた。【植田憲尚】

レアアース輸出再開へ 中国当局が通関手続き

2010/09/30 中国新聞ニュ−ス

 中国から日本へのレアアース(希土類)輸出の手続きが滞っている問題で、商社筋は29日、通関手続きが同日までに再開されたことを明らかにした。別の商社関係者によると、中国の鉱山会社は輸出の申請を再開した。日本政府もこうした情報を把握しており、事実確認を急いでいる。

 沖縄県・尖閣諸島での中国漁船衝突事件で日中の対立が激化する中で発生した摩擦だったが、解消に向けて動きだした。

 日本政府はこれまで、レアアース禁輸は世界貿易機関(WTO)ルールに違反するとして改善を求めていたが、中国商務省は対日輸出の停止は指示していないと主張。このため経済産業省が28日からレアアースの輸入関連業者を対象にしたアンケートを実施して実態把握に努めるなど、中国に対する圧力を強めていた。

 レアアース輸出の通関手続きが再開されたことを受け、商社や自動車業界からは安堵あんどの声が漏れた。ただ「中国リスク」の顕在化で、中国からの輸出に9割を頼るレアアースの安定供給への懸念は一層強くなった。

 中国への依存度を低下させるため、産業界は調達先をカザフスタンやベトナムなどに広げたり、代替品を開発するなどの対策を急ぐ。

 商社はすでに中国以外の調達ルート確保に動きだしている。住友商事はカザフスタンの国営原子力公社とウラン残存物からレアアースを回収する事業を2011年末から開始する。

 豊田通商と双日は合弁会社を設立し、ベトナムでの権益確保に乗り出した。地元の化学公社と合弁会社を設立し、12年をめどにレアアース生産を開始する予定だ。

 自動車や電機業界などは、代替品の開発やレアアースの再利用の研究も加速させる。

NEDO、レアアース不要のモーター 次世代車開発 日本勢に弾み

2010.09.30 SankeiBiz

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と北海道大学の研究グループは29日、レアアース(希土類)を使わない新構造のハイブリッド車(HV)向け磁石モーターの開発に成功したと発表した。禁輸は解除されたが、中国に偏在していることで安定供給に懸念があるレアアースを使ったモーターの代替技術として期待がかかる。電気自動車(EV)にも応用可能で、次世代環境車の開発競争で日本の“武器”となる可能性がある。

 モーターの回転する円盤状の部分に、磁石と鉄を交互に配置し、コイルの中をこの円盤が回る構造により、強い電磁力を発生させて高出力を実現。トヨタ自動車のHV「プリウス」などに使われているモーターと同等の50キロワットの出力を可能にした。

 HVなどのモーターは、レアアースを使うことで出力を高めている。レアアースを不要とする高出力モーターは初めてではないが、新構造のモーターは回転が滑らかなうえ軽量で小さく、車両への搭載に適しているのが特徴だ。

 関係者によると、レアアースを使うモーターの場合、コストの3、4割をレアアースが占める。このため、レアアースを使わないモーターを量産すれば、コストを大幅に減らせる。会見した北大の竹本真紹准教授は「必要な出力に応じた設計をすれば、EVにも応用できる」としており、国内メーカーから打診があれば協力して実用化を目指す。NEDOはレアアースを使わないモーターの技術開発を助成する複数のプロジェクトを実施。竹本准教授らは2008年10月に本格的な研究開発を始め、今年8月に実車に使われるサイズの試作モーターで今回の開発に成功した。(高橋寛次)

西側諸国はわが国がレアアースを「武器化」することを恐れている

2010/09/29(水) Searchina

 中国網日本語版(チャイナネット)によると、米メディアが「中国の税関当局がレアアース(希土類)の対日輸出を禁止した」と報じた。中国政府は直ちに否定したが、西側諸国はこれを「中国のレアアース独占」への懸念を広める新たな機会と見なし、「中国はレアアース資源を武器化している」と報じた。『環球時報』は27日、「西側諸国は中国がレアアースを“武器化”することを恐れている」という文章を掲載した。文章の内容は以下の通り。

 「中国が日本へのレアアース輸出を停止している」といううわさや、「レアアースは日本を屈服させる切り札」という一部憶測は、西側諸国に「中国のレアアース独占」への懸念を広める新たな機会を与えた。彼らは中国にレアアースを乞うようになることを懸念するとともに、自分たちのF−22戦闘機が飛べなくなるのを心配しているのである。米国はいまなお先端技術の輸出禁止令によって中国を押さえ込み、EUはいまなお兵器販売禁止令の解除を条件に中国に対して受け入れがたい要求を出している。日中双方によってすでに否定されたうわさが中国に対する西側諸国の不平不満を引き起こし、「中国はレアアース資源を武器化している」とまで言わせているのだ。

 エネルギー専門サイト『中国能源網』の韓暁平首席情報官は26日、「レアアースは新エネルギー分野に応用できるだけでなく、最先端武器の製造にも広く用いられ、国家の安全領域にかかわる。中国は資源を武器にはしていないし、私たちの資源を他人の武器にしてもならない」と述べた。

 西側メディアは、レアアースの輸出規制から多元的に力を誇示する中国のやり方が見て取れるとしているが、これはかつて西側諸国がしょっちゅう用いていた方法である。米紙『ニューヨーク・タイムズ』は25日、「新しい中国の3つの顔」と題した記事を掲載し、「ここ何日かのトップニュースの中で中国が見せているエネルギー関連の姿勢に米国人は驚いている」と報じた…

 韓暁平氏は、日本はこれまでずっとモンゴルでの中国の土台をぐらつかせようとしてきたが、モンゴルとのレアアースの共同開発については機に乗じて言ってみたに過ぎないと話す。日本は大量のレアアースを備蓄しており、数十年は十分に使えるからだ。また、モンゴルにレアアースがあると外部が考えるのは当然であるが――中国内モンゴル自治区にレアアースがあるのだから、理論上はモンゴルにもあるはずである――、モンゴルに本当にレアアースがあるのか、どのくらいあるのかはまだはっきりしないと指摘する。

 江涌氏は、各国は自国の資源の処理についての権利を有しており、どのように輸出するかは自分たちで決定すればいいことで、いかなる外的圧力も受けないと話す。実際、多くの国が戦略的資源を駆け引きの道具にしている。レアアースは経済的資源であると同時に戦略的資源でもあり、こうした駆け引きは正常なことなのである。(編集担当:米原裕子)

レアアース、加速する「脱中国」

2010年09月29日 読売新聞Yomiuri On-Line

 中国が省エネ家電などの部品に不可欠なレアアース(希土類)の日本向け輸出を規制したことを受け、代替品の開発と、調達先を分散する動きが加速している。

 経済産業省所管の独立行政法人、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は29日、レアアースを使わないハイブリッド車(HV)向け高性能モーターを世界で初めて開発したと発表した。

 日本政府は、調達先の分散で、日本が世界をリードする分野の競争力が中国に影響されにくいようにする方針だ。

 HVモーターに使う永久磁石には、磁力を高めるためにレアアースの一種が加えられている。トヨタ自動車の「プリウス」のモーターには、1台あたり約1キロ・グラムのレアアースが使われているという。

 NEDOの高性能モーターは、北海道大学との共同開発だ。永久磁石にレアアースを加えない代わりにコイルの密度を増すなどした。最高出力は、プリウス用モーターと同じ50キロ・ワットを達成した。

対日経済圧力 中国リスク回避へ分散化図れ(9月29日付・読売社説)

2010年09月29日 読売新聞Yomiuri On-Line

 尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件を巡り、中国が経済問題で対日圧力を強めている。

 ハイブリッド車や省エネ家電などに不可欠なレアアース(希土類)の対日輸出を事実上制限しているほか、税関当局が通関手続きを厳しくするなどして、日本との輸出入業務が遅れる事態が生じている。

 中国政府は表向き、指示を否定している。だが、日本に揺さぶりをかけているのは明らかだ。国際的な経済ルールから見て、大いに問題がある。中国は、こうした報復的措置を直ちに撤回しなければならない。

 日本はレアアースの9割を中国から輸入しており、手続きが停滞していることに関連業界は不安を募らせている。

 中国側は日本に対し、「レアアースの輸出は禁止していない」と説明しているが、複数の日系商社は「輸出承諾書の発給は停止状態だ」と指摘する。

 中国が日本だけに輸出を禁止すれば、世界貿易機関(WTO)協定に違反するのは明白だ。日本政府は、早急に実態を調査し、手続きの遅れについて中国側に説明を求めるべきだ。

 同時に、レアアースの調達先の多様化や代替品の研究開発、リサイクルなどへの取り組みを急ぐ必要もあろう。

 日本企業は安価な労働力を当て込み、衣料品、自動車、電機メーカーなどを中心に、中国を生産拠点として活用してきた。

 13億人の人口を抱え、旺盛な購買力に支えられた中国の消費市場は、少子高齢化による内需低迷にあえぐ日本企業にとって、魅力的な存在でもある。

 しかし、今回の問題で中国が示した露骨な対応を見れば、過度な中国依存から脱することが、企業防衛上からも重要であることを再認識させられたのではないか。

 日本経済が「人質」となり、政府の外交・安全保障政策上の足かせになっては困る。

 日本企業は、生産や投資などを中国に集中させてきたビジネスモデルを再考し、中国以外の市場開拓に力を入れるなど、リスクの分散を図るきっかけにしなければならない。

 日本企業はエネルギーや環境などの分野で中国の技術開発を手助けしている。スーパーやコンビニエンスストア業界も進出するなど消費や雇用面で、中国の国民に恩恵を及ぼしている。

 中国政府は、こうした日本企業の貢献を評価すべきである。

新たな供給源の開発目指す レアアースで海江田経財相

2010.09.29 MSN産経新聞

 海江田万里経済財政担当相は、29日付の英紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、中国から日本へのレアアース(希土類)の輸出停滞について「不意打ちだった」と述べ、代替品や中国以外の供給源の開発に努める考えを強調した。

 海江田経財相は、世界生産量の9割以上を占める中国から引き続きレアアースを調達したい意向を示す一方、「代替品の開発に力を注ぐ必要がある」と指摘した。

 また、中国以外の供給国も視野に入れており、交渉する必要があるとした。最近の為替の円高は権益取得を容易にするとの見方も示唆した。(共同)

米国がレアアース確保に本腰、尖閣対立が契機

2010/09/28 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 ワシントン=李河遠(イ・ハウォン)特派員

 米国がハイテク製品の生産に不可欠なレアアース(希土類)の世界需要の90%以上を生産する中国への対応に苦慮している。日本と中国が尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐり対立したのを契機として、「パワー・チャイナ」の現実が確認された背景には、中国がハイブリッド車、戦略兵器などに使われるレアアースの対日輸出を中断するという脅迫があったからだった。

 米国はレアアースの禁輸といった事態が米中関係でも起き得るとみて、緊急対策を取りまとめている。27日付フィナンシャル・タイムズによると、米エネルギー省は近く、レアアースの生産を増やす一方、代替素材を確保する戦略を立てる方針だという。エネルギー省のサンダロー次官補は「最近の事件(日中対立)はレアアースのほか、重要資源の供給元を多角化することの重要性を示している」と指摘した。

 米議会でも警戒感が高まっている。民主党のダールケンパー下院議員は「もし米国がレアアースの適正な供給量を確保できない場合、米国の安全保障、経済が危険にさらされる可能性がある」とし、積極的な政策立案を求めた。同議員は、米国が5年以内にレアアースの自給化を目指すという内容の法案を提出した。

 米国は今回の事態を、中国との「資源戦争」における警報と受け止めている。オバマ政権発足以降、韓国海軍の哨戒艦「天安」の爆沈事件を含む各方面で米中関係が悪化する中、米国はいつでも中国発の脅威にさらされかねないとみている。

 米会計検査院(GAO)は、今年4月にレアアースに関する報告書をまとめ、そうした危険性を指摘している。報告書は、米国主導のレアアース供給網を再建するには15年もかかる上、外国企業が保有する特許の問題を解決しなければならないと指摘し、オバマ政権にレアアース問題に対する関心を持つよう促した。米国は最近になって、レアアースの生産が中国によって左右されている現実を悟り、内部で対応策の準備に入ったとされる。

 米国は中国が積極的に生産を始める以前の1980年代までは、レアアース生産を主導していた。しかし、レアアースは採取が困難で、採算性も悪いため、生産が減り始めた。特にレアアースを採取する過程で、環境汚染が懸念され、米国政府が積極的に取り組めなかった事情がある。

 こうした状況を見抜き、積極的に動いたのが中国だった。中国の改革開放を指導したトウ小平氏は、レアアースをサウジアラビアの石油に例え、国家の戦略産業として奨励した。中国は低価格でレアアース市場を掌握した上で、最近は輸出量を減らし、価格をつり上げる戦略を取っている。

 オバマ政権は2002年に閉鎖されたカリフォルニア州のマウンテンパス鉱山の採掘再開を含め、レアアース生産に積極的に取り組む方針だが、環境調査などの問題を解決するのが先決となる。このため、米国が中国との格差を縮めるにはかなり時間がかかる見通しだ。

安全保障は資源が左右、希少金属争奪戦が本格化(上)

2010/09/28 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

 世界各国が資源を「武器」として活用しつつある。これまでは石油や天然ガスなどエネルギー中心の対立が多かったが、現在はさまざまな鉱物資源に火種が拡大している。ハイテク産業に必要不可欠な希少資源をめぐり、各国の競争がエスカレートしている。

■「武器化」した希少金属

 尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる日本と中国の領有権争いが資源戦争に発展している。この地域に埋蔵された石油資源を狙う日中はこれまでも対立してきたが、今回は領有権争いから派生した事件を機に、中国がハイテク産業に使われるレアアース(希土類)の対日輸出を禁止すると圧力をかけてきた。日本が中国に事実上白旗を揚げたのは、レアアースの輸入に支障が出れば、日本の産業界への打撃が避けられないからだ。

 レアアースの生産量で世界の97%を占める中国は、以前にもレアアースの輸出を制限したことがある。このため、米国と欧州連合(EU)は昨年6月、中国を世界貿易機関(WTO)に提訴した。オーストラリア政府は、レアアース開発企業の経営権が自国企業から中国企業に相次いで渡った事態に苦慮した。

 米国防総省も最近、有事の兵器製造に必要となる原材料を直ちに確保できるよう、戦略物資備蓄システムを大規模に整備することを決めた。コバルト、亜鉛、スズなど戦略的素材の購入や、備蓄に対する国防総省の権限を拡大していく方向だ。

 これは、中国が戦略的資源の輸出を禁止することに備えたものだ。専門家は、エネルギー・資源関連の官庁ではない国防総省が資源確保をめぐる競争に加わったことについて、資源が「武器化」されている状況を端的に示す例だと指摘する。

安全保障は資源が左右、希少金属争奪戦が本格化(下)

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 金承範(キム・スンボム)記者/李性勲(イ・ソンフン)記者李性勲(イ・ソンフン)記者

■リチウム、天然ガス、原油でも競争

 米国防総省の関係者は最近、地質学研究チームとの共同作業によりアフガニスタンでリチウム、銅など1兆ドル(約84兆円)相当の鉱物資源を発見した。二次電池の主原料となるリチウムの発掘は、これまで世界最大の埋蔵地とされてきたボリビアを上回る規模とされる。この鉱物探査に参加したブリンクリー国防次官補は、「アフガニスタンは鉱物資源をまともに開発することはできないはずだ。アフガニスタン政府を支援する用意がある」と述べた。

 南米では、ボリビアが昨年、リチウム資源を国有化するなど「資源民族主義」がほかの地域よりも強く、資源問題がいつでも対立に発展する可能性をはらんでいる。

 こうした中、石油や天然ガスをめぐる対立が依然として繰り広げられている。英国とアルゼンチンが南大西洋のフォークランド諸島をめぐり、1982年の紛争から28年ぶりに衝突したのも、資源問題が導火線だった。今年初め、英国の石油会社が数十億バレルの原油埋蔵が見込まれる同海域で油田探査に乗り出す計画を明らかにしたのに対し、アルゼンチンは「すべての船舶は事前の運航許可が必要だ」とする大統領令を発令し、英国は潜水艦を追加配備するなど警戒を強化した。

 南シナ海では、南沙(スプラトリー)諸島周辺に300億トンもの原油が埋蔵されているという事実が明らかになり、中国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾などが領有権をめぐり対立している。LG経済研究院のイ・グァンウ選任研究員は、「韓国も主要資源の備蓄を急がなければ、新たな成長源と位置づける産業の育成に支障が及びかねない」と指摘した。

■希少金属と希土類

 希少金属は、需要量に対し埋蔵量が非常に少ない金属を指す。一般的にリチウム、クロム、モリブデン、タングステン、コバルトなど35種類の鉱物が希少金属に分類される。埋蔵地域や生産が一部の国に偏っており、円滑な供給が困難なことも特徴だ。

 レアアース(希土類)も希少金属の一種だ。文字通り「貴重な土」を指すレアアースは単一鉱物ではなく、ランタノイドに属する15元素(原子番号57−71)にスカンジウム、イットリウムを加えた17種類がある。これらを総称してレアアースと呼ぶ。

 レアアースに含まれる元素は、化学的に安定し、熱伝導性が高いという共通点がある。合金、触媒、永久磁石、レーザー素子などの生産に用いられ、いずれも電気自動車、風力発電モーター、液晶ディスプレーなどの重要部品となっている。このため、レアアースはしばしば「ハイテク産業のビタミン」とも呼ばれる。レアアースの生産量で世界の97%は中国が占めている。

経済ナビ:レアアース、輸出手続き停滞 「中国リスク」露呈 産業界「長期なら痛手」

2010年09月25日 毎日新聞

 日中関係の悪化に伴い、中国からの日本向けのレアアース(希土類)輸出手続きが滞った問題は、ハイブリッド車(HV)などハイテク製品を支える基幹原料の供給を中国に依存する日本の産業構造の脆弱(ぜいじゃく)さを浮き彫りにした。中国漁船の船長釈放で中国側の対応に変化も予想されるが、外交問題がこじれるたびに経済活動に影響が及ぶ「中国リスク」が露呈した格好。中国は今後も資源を「武器」にする姿勢を強めるとみられ、産業界は戸惑いを隠せない。【立山清也、宮崎泰宏、浜中慎哉】

 「中国政府は否定しているが、複数の商社から日本向けレアアースの新規契約や船積み手続きを止めるよう指示があったという情報が入っている」。大畠章宏経済産業相は24日の閣議後会見でこう指摘した。

 中国は7月、環境と資源の保護を理由にレアアースの輸出枠を対前年比で4割削減すると発表した。今回の手続き停滞は、7月からの輸出規制の影響なのか、事実上の禁輸措置なのかは明らかになっていないが、日本政府は「禁輸なら差別的措置を禁じた世界貿易機関(WTO)のルールに抵触する」と調査を継続する。

 中国の措置で影響を受けるのは化学メーカーや電子部品メーカー。7月からの輸出規制の影響は既に出ており、信越化学工業は、レアアースから作るエアコン用などの「高性能磁石」を10月から平均2割値上げする。さらに今回の手続き停滞で、「在庫は一定量確保しているが、長期になれば影響は大きい」(日立金属)と危機感を募らせる。

 HVや電気自動車(EV)にもレアアースは不可欠。ホンダや三菱自動車は、モーターの調達先となる部品メーカーへの確認を急いでいる。トヨタ自動車も「HVの普及が進むにつれ、レアアースの需給はさらに逼迫(ひっぱく)してくる」(幹部)と見通し、レアアースをできるだけ使わない製品への置き換えや、レアアースの再利用などを急ぐ方針だ。

 船長釈放で事態好転への期待感も出ているが、存在感を高める中国が、今後も「経済カード」で日本に揺さぶりをかけてくるリスクは消えない。ある経産省幹部は「日中関係が悪化するたびに日本製品の不買運動が繰り返されてきた。経済圧力で交渉を優位に運ぼうとする中国の常とう手段だ」と説明する。中国の資源外交に詳しい東京財団の平沼光研究員は「中国に対抗するには、レアアースの代替素材開発を急ぐなど、中国優位の状況に風穴を開ける戦略が必要だ」と指摘している。

 ◇ハイテク製品に不可欠

 レアアースは他の金属に混ぜると磁力が強くなったり、耐熱性が高まる特性があり、ハイテク製品の性能向上には不可欠で「産業のビタミン」とも呼ばれる。分離・精製が難しく、年間の生産量は鉄鉱石の17億トンなどを大きく下回る十数万トン程度と「まれ(レア)」な鉱物だ。世界生産の約97%は中国とほぼ独占している。

 代表的なレアアースの「ネオジム」は、ハイブリッド車(HV)やエアコン、冷蔵庫など家電製品のモーター用の磁石に使われている。HVなどに搭載されているニッケル水素電池には「イットリウム」、車の排ガスの浄化装置やレンズの研磨剤に「セリウム」が使われるなど、日本が競争力を持つ製品を陰で支えている。

 7月の中国による輸出規制を受け、ネオジムの価格は規制前の6月に比べほぼ2倍に高騰。日本はレアアース輸入の9割超を中国に頼るだけに危機感は強く、政府や商社は中国以外の調達先の開拓を進めている。また、日立製作所が磁石からレアアースをリサイクルする技術の開発に取り組むなど、各メーカーも対応を急いでいる。だが、こうした措置が効果を発揮するには時間がかかり、しばらくは「中国依存」を抜け出せそうにない。【弘田恭子】

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 ◆主なレアアースの種類と用途◆

ネオジム   家電やハイブリッド車のモーター

ランタン   デジタルカメラのレンズ

セリウム   レンズ研磨剤、排ガス浄化用触媒

ガドリニウム 原子炉制御材

テルビウム  光磁気ディスク

イットリウム 蛍光体、ニッケル水素電池

レアアース禁輸見越す 「影響は限定的」との見方

2010.09.25 MSN産経新聞

新規調達先の確保/リサイクル/代替技術

 中国によるハイテク機器の製造に欠かせないレアアース(希土類)の対日輸出の実質的な禁止が波紋を広げている。中国は7月に2010年の対日輸出枠を前年比4割減にする方針を決めたばかり。24日の中国人船長釈放の決定で対応に変化が起こる可能性も指摘されるが、このまま実質禁輸が続けば供給不安から、一段の価格高騰を引き起こす恐れがある。ただ、政府や産業界は輸出制限を強める中国からの調達が難しくなることを見越し、新たな調達先の確保や代替技術の開発などの手を打っており、「今後、中国の影響は小さくなる」との見方が強い。

 レアアースは自動車や家電製品、医療用機械など幅広く使われ、主要な素材に少量加えるだけで性能アップが図れるのが特徴。一般的なハイブリッド車の場合、1台当たりに約400グラム使われるとされる。世界の生産量は09年で約12万4千トンと推定され、生産の97%を中国が握る。

 当面、価格高騰が懸念されるが、「民間企業は在庫の積み増しや代替手段の確保に動いており、すぐに大きな影響は出ない」(経済産業省)見通し。大手商社によると「(民間企業は)1年程度は在庫を抱えている」もようだ。

 日本以外への輸出は継続しているため「当面は別の国を経由して輸入する方法もある」(政府関係者)。実際、大手精密機械メーカー幹部も「レアアースが物理的に日本に来なくても影響は大きくない」と話す。

 また生産量でこそ中国が97%を占めるが、埋蔵量は3割超にすぎない。このため日本政府は(1)新規調達先の確保(2)リサイクル(3)代替技術・材料の開発(4)備蓄−の対応を進めている。

 新規調達先では、ベトナムで豊田通商と双日が権益を獲得し、12年から生産を開始する。カザフスタンでは住友商事が現地の公社とウラン鉱石の残りかすからレアアースを回収する事業を11年にも始める。

 代替技術の開発も急ピッチだ。立命館大学の谷泰弘教授らは8日、レアアースのひとつで液晶テレビのガラス基板の研磨材に使われるセリウムの代替技術を開発した。谷教授は「1年以内の実用化を目指す。セリウムの国内使用の半分以上は代替技術に置き換えられる」と話している。

 今回の禁輸措置の原因とみられる尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で日本側が24日、中国船船長の釈放を決定したことで禁輸が解かれる可能性が出てきた。ただ、今後も中国が“外交カード”に使う可能性もあり、日本は影響を受けない体制の早期確立を目指す

レアアース:中国への過剰依存を露呈 輸出手続き停滞問題

2010年09月24日 毎日新聞

 日中関係の悪化に伴い、中国からの日本向けのレアアース(希土類)輸出手続きが滞った問題は、ハイブリッド車(HV)などハイテク製品を支える基幹原料の供給を中国に依存する日本の産業構造の脆弱(ぜいじゃく)さを浮き彫りにした。中国漁船の船長釈放で中国側の対応に変化も予想されるが、外交問題がこじれるたびに経済活動に影響が及ぶ「中国リスク」が露呈した格好。中国は今後も資源を「武器」にする姿勢を強めるとみられ、産業界は戸惑いを隠せない。【立山清也、宮崎泰宏、浜中慎哉】

 「中国政府は否定しているが、複数の商社から日本向けレアアースの新規契約や船積み手続きを止めるよう指示があったという情報が入っている」。大畠章宏経済産業相は24日の閣議後会見でこう指摘した。

 中国は7月、環境と資源の保護を理由にレアアースの輸出枠を対前年比で4割削減すると発表した。今回の手続き停滞は、7月からの輸出規制の影響なのか、事実上の禁輸措置なのかは明らかになっていないが、日本政府は「禁輸なら差別的措置を禁じた世界貿易機関(WTO)のルールに抵触する」と調査を継続する。

 中国の措置で影響を受けるのはレアアースを加工する化学メーカーや電子部品メーカー。7月からの輸出規制の影響は既に出ており、信越化学工業は、レアアースから作るエアコン用などの「高性能磁石」の価格を10月から平均2割値上げする。さらに今回の輸出手続き停滞について、「在庫は一定量確保しているが、長期になれば影響は大きい」(日立金属)と危機感を募らせている。

 HVや電気自動車(EV)にもレアアースは不可欠。ホンダや三菱自動車は、モーターの調達先となる部品メーカーへの確認を急いでいる。トヨタ自動車も「HVの普及が進むにつれ、レアアースの需給はさらに逼迫(ひっぱく)してくる」(幹部)と見通し、レアアースをできるだけ使わない製品への置き換えや、レアアースの再利用などを急ぐ方針だ。

 船長釈放で事態好転への期待感も出ているが、中国が、今後も「経済カード」で日本に揺さぶりをかけてくるリスクは消えない。ある経産省幹部は「日中関係が悪化するたびに日本製品の不買運動が繰り返されてきた。経済圧力で交渉を優位に運ぼうとする中国の常とう手段だ」と説明する。中国の資源外交に詳しい東京財団の平沼光研究員は「中国に対抗するには、レアアースの代替素材開発を急ぐなど、中国優位の状況に風穴を開ける戦略が必要だ」と指摘している。

 ◇「産業のビタミン」、ハイテク製品に不可欠

 レアアースは他の金属に混ぜると磁力が強くなったり、耐熱性が高まる特性があり、ハイテク製品の性能向上には不可欠で「産業のビタミン」とも呼ばれる。分離・精製が難しく、年間の生産量は鉄鉱石の17億トンなどを大きく下回る十数万トン程度と「まれ(レア)」な鉱物だ。世界生産の約97%は中国とほぼ独占している。

 代表的なレアアースの「ネオジム」は、ハイブリッド車(HV)やエアコン、冷蔵庫など家電製品のモーター用の磁石に使われている。HVなどに搭載されているニッケル水素電池には「イットリウム」、車の排ガスの浄化装置やレンズの研磨剤に「セリウム」が使われるなど、日本が競争力を持つ各種製品を陰で支えている。

 7月の中国による輸出規制を受け、ネオジムの価格は規制前の6月に比べほぼ2倍に高騰。日本はレアアース輸入の9割超を中国に頼るだけに危機感は強く、政府や商社は中国以外の調達先の開拓を進めている。また、日立製作所が磁石からレアアースをリサイクルする技術の開発に取り組むなど、各メーカーも対応を急いでいる。だが、こうした措置が効果を発揮するには時間がかかり、しばらくは「中国依存」を抜け出せそうにない。【弘田恭子】

レアアース:「中国が輸出承認書の発行停止」大畠経産相

2010年09月24日 毎日新聞

 大畠章宏経済産業相は24日の閣議後会見で、中国から日本へのレアアース(希土類)の輸出手続きが滞っている問題に絡んで「中国が輸出承認書の発行を停止している」との情報を複数の商社から入手していることを明らかにした。大畠経産相は「中国商務省はそういう事実はないと否定している」としたうえで、「(輸出停滞が)長期にわたれば(産業に)大きな影響が出る。(事務方に)事実関係の調査を指示した」と述べた。レアアースはハイブリッド車や携帯電話などハイテク製品の製造に不可欠な原料。

 また、中国が対日輸出を禁止している場合の対応について、大畠経産相は「世界貿易機関(WTO)では認められない。ルールにのっとって適正に対処する」と語った。【立山清也】

レアアース対日輸出禁止か 米紙報道 中国政府は否定

2010.09.24 SankeiBiz

 沖縄・尖閣諸島近海で起きた中国漁船衝突事件で日本が漁船船長を釈放していないことに対する新たな報復措置として、中国がレアアース(希土類)の対日輸出を禁止するとの懸念が浮上してきた。

 米紙ニューヨーク・タイムズは23日、業界関係者の話として、中国政府がレアアースの対日輸出を禁止したと報道した。これに対し、中国商務省の陳栄凱報道官は同日、ブルームバーグ・ニュースの電話インタビューに答え「中国はレアアースの日本向け輸出について禁輸措置を取っていない」と語り、報道の内容を否定した。

 温家宝首相は今週、日本側に逮捕された漁船船長の「即時かつ無条件」の釈放を要求し、日本が応じなければ一段の報復措置に出ると表明していた。

 日本のレアアース輸入業者の話として対日禁輸の情報をニューヨーク・タイムズに提供したレアアース・コンサルティング会社、豪インダストリアル・ミネラルズの取締役、ダドリー・キングスノース氏は23日、日中の政治的対立でレアアースの供給が滞れば、中国のレアアース独占に対する業界の懸念は増大する可能性があると指摘。「政治的な理由で(レアアースの供給)契約が実質的に打ち切られる事態は非常に嘆かわしい」と語った。

 レアアースは軍事用レーダーや永久磁石、パソコンのハードディスクドライブ(HDD)、風力タービン、またハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)向けモーターの材料として利用され、多くの場合は代替材料が見つかっていない。

 調査会社アドバンスド・リサーチ・ジャパンのシニアアナリスト遠藤功治氏は「トヨタはHVやEVの部品製造でレアアースを備蓄しており、禁輸措置の影響がすぐに出ることはない。だが1年以上禁輸措置が続けばトヨタはHVを生産できなくなる」と分析。それでも輸入を妨げる要素があればレアアースの相場は上昇し、トヨタの業績に影響する可能性があると述べた。(ブルームバーグ Liza lin、Jason Scott)

韓国のレアアース備蓄わずか3トン、対策急務

2010/09/24 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 イ・セヌリ朝鮮経済i記者

 中国が日本に対するレアアース(希土類)の輸出中止を宣言するなど、日中間の外交紛争が資源戦争にまで飛び火する中、韓国でもレアアースをはじめ、希少金属の確保が課題として浮上した。

 本紙が23日入手した企画財政部の内部報告書によると、レアアースの韓国での国内備蓄量は目標量のわずか0.3%にとどまっていることが分かった。昨年末現在でレアアースの備蓄目標量は1164トンだが、実際の備蓄量は3トンにすぎなかった。企画財政部は「価格急騰などの事態に備え、備蓄量を確保することが急がれる」と指摘した。現在韓国のレアアース保有量は、国内需要量の0.2日分にすぎない。

 レアアースだけでなく、他の希少金属の備蓄量も主要競争国(60日分備蓄)の半分程度にとどまっている。昨年末現在の希少金属備蓄量は、調達庁が管理する7種類の平均備蓄量が国内需要の30.3日分だったほか、韓国鉱物資源公社が管理する希少金属8種類の備蓄量は同6.8日分だけだった。韓国はレアアースや希少金属が生産できず、全量を輸入に頼っている。輸入量は2002年の3501トンから08年には4693トンと、毎年5%のペースで増えている。

 希少金属は国際的に需要が急増しており、価格が上昇を続けている。ノートパソコンのバッテリー用二次電池の原料となるマグネシウムは、過去5年で80%も急騰した。中国など主要生産国が生産、輸出を減らした場合、価格が急騰したり、品薄が生じたりする可能性があり、ハイテク製品の生産に支障が生じる恐れがある。

 レアアースの最大の生産国である中国は、既に昨年9月からクオータ制導入と関税による輸出規制に乗り出し、供給量の減少で価格が急騰している。レアアースをすべて輸入に頼る米国と欧州連合(EU)は、世界貿易機関(WTO)に中国を不公正貿易で提訴し、国際的な貿易摩擦へと発展している。

 韓国政府はレアアースと希少金属の備蓄量を遅くとも2016年までに主要国と同水準の60日分まで増やす方針を立てているが、輸出拡大に依存している部分があり、実現性を欠くとの指摘を受けている。政府関係者は「調達庁や韓国鉱物資源公社に一任していては困難だ。政府レベルで対策を立てるべきではないか」と話した。

レアアース密輸を摘発、日本向け4000トン…青島市

2010/09/17(金) Searchina

 山東省青島税関は、レアアース4000トンを1億500万元相当を日本に密輸した疑いで広東省珠海の会社経営者と青島市の夫婦らを摘発した。中国政府は環境保護などを理由にレアアースの輸出を厳しく規制している。新華網が伝えた。

 税関によると、会社経営者はレアアースの密輸を企図。日本の会社と売買契約を結んだ上、内モンゴル自治区で4100トンを購入した上、800万元の報酬を約束して輸送と通関を夫婦に依頼した。

 夫婦は、別の通関業者を通じてレアアースの酸化ランタン4000トンを酸化第二鉄と偽って申告。不審に思った税関の係官が倉庫を調べたところウソが発覚した。通関業者を追及したところ、背後に夫婦と経営者が浮上した。税関は、日本の会社の協力で大量の証拠を入手するなどして捜査を進めた。

 中国ではレアアースの大量採掘により、土壌流失などの環境問題が顕著になったとして、近年取引を規制している。一方で、2006年から008年に数万トンのレアアースが行方不明になっており、多くが密輸されたとみられる。税関は2008年以降の集中取り締まりでレアアース1万6千トン以上の密輸を摘発した。(編集担当:鈴木朋子)

NEDO、レアアース代替技術を開発

2010.09.17 SankeiBiz

 独立行政法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は16日、レアアース(希土類)の一種で液晶テレビのガラス基板研磨材に使われるセリウムの代替技術と使用量低減技術を開発したと発表した。レアアースをめぐっては産出国の中国が輸出を規制するなど、安定調達が大きな課題となっている。

 開発したのはNEDOの「希少金属代替材料開発プロジェクト」に参画する立命館大学、アドマテックス(愛知県みよし市)、クリスタル光学(滋賀県大津市)、九重(ここのえ)電気(神奈川県伊勢原市)の研究グループ。

 代替技術は、新しい研磨パッドを開発することで実現した。ガラス研磨は、研磨パッドの多孔質ポリウレタン樹脂と、砥粒(とりゅう=除去作用を行う硬質な粒子)の酸化したセリウムを分散した液体を組み合わせて行われる。

レアアースの代替技術を開発、NEDO 資源確保へ実用化に期待

2010.09.16 MSN産経新聞

 経済産業省所管の独立行政法人、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は16日、レアアース(希土類)の一種で液晶テレビのガラス基板の研磨材に使われるセリウムの代替技術と使用量低減技術を開発したと発表した。レアアースをめぐっては産出国の中国が輸出を規制するなど、安定調達が大きな課題になっており、新技術の早期の実用化が期待されそうだ。

 開発したのはNEDOの「希少金属代替材料開発プロジェクト」に参画する立命館大学、アドマテックス(愛知県みよし市)、クリスタル光学(滋賀県大津市)、九重(ここのえ)電気(神奈川県伊勢原市)の研究グループ。  代替技術は、研磨パッドを新たに開発することで実現した。ガラス研磨は、研磨パッドの多孔質ポリウレタン樹脂と、砥粒(とりゅう)(除去作用を行う硬質な粒子)の酸化したセリウムを分散した液体を組み合わせて行われる。

 研究グループでは、研磨パッドに多孔質エポキシ樹脂を使ったところ、従来の2倍超の研磨効率があることを突き止めた。このエポキシ樹脂とセリウム代替材料として価格が半分で入手しやすい酸化ジルコニウムを砥粒に使うと、セリウム研磨を大きく上回る研磨効率が確認できたという。

 一方、低減技術は砥粒を複合タイプにすることで達成した。有機物の表面に酸化セリウムを付着させた構造を採用した結果、研磨効率が50%高まり、その分使用量を削減できるとしている。

【社説】レアアース 資源確保に油断ないか

2010年09月16日 中日新聞

 日本に資源外交は存在するのか。政府、経済界の中国への「希土類乞(ご)い」はそんな疑問さえ抱かせる。粘り強い要請は欠かせぬが、技術協力などの得意技を生かす資源外交にも力を注ぐべきだ。

 二カ月前、日本の産業界に衝撃が走った。中国政府が前触れもなく「レアアース(希土類)の輸出量を二〇一〇年下期から削減」と通告してきたからだ。二万八千トンから八千トン、七割減はあまりにも大きい。

 ネオジムなどの希土類は、カメラレンズの研磨剤や省エネ家電、ハイブリッド車専用モーターの高性能磁石など、日本のモノづくりになくてはならない素材だ。

 張富士夫トヨタ自動車会長らが訪中し削減緩和を働きかけたが、薬物を使った鉱石採掘による土壌汚染を理由に「カナダなどからも輸入を」とかわされた。日中両政府の閣僚による経済対話も歩み寄りがないまま終わっている。

 中国の生産量は世界の九割、日本は大半が中国からの輸入だ。自動車向けは今年末、家電も十一月には在庫が底をつきかねない。希土類を使わない製品開発やベトナムからの分散調達も検討しているが、実現にはなお時間がかかる。

 中国の一方的ともいえる削減通告であり、もちろん翻意を促さなければならない。希土類の高値輸出をもくろむ中国の狙いも透けてくるとはいえ、資源小国・日本に危機管理の欠如や甘さはなかったか。それを総点検する好機ととらえ、今後の資源外交に生かすことも課題にすべきだろう。

 二十一世紀に入り、中国は資源浪費型成長モデルの限界に気づき、〇六年からの十一次五カ年計画を「環境重視」に転じた。

 内モンゴル自治区などは希土類の乱開発により土石流の危険にもさらされているという。日本は資源の多くを海外に頼っており、荒れた採掘地の原状回復を支援するなど、中国の戦略を先読みした資源外交こそが求められている。

 政府は昨年、海外資源の確保など希土類を含む「レアメタル(希少金属)戦略」を打ち出した。遅きに失した感は否めないが、中国が強く期待している日本の省エネ・環境分野の技術協力などをカードに、早急に安定確保の道を築くべきだ。

 日中関係は尖閣諸島付近で海上保安庁の巡視船と中国漁船が接触した事件で険悪さを増しているが、菅直人首相は自ら表明した「元気な日本の復活」を担う産業を窮地に追い込んではならない。

中国の輸出規制で希土類調達が危機、液晶用ガラスの生産綱渡りに

2010年09月15日 asahi.com

 [東京 15日 ロイター] 中国政府が今年7月、レアアース(希土類)の輸出に急ブレーキをかけたことで、液晶パネルやハードディスクドライブ(HDD)に使われるガラス製品の生産・出荷に支障が出るリスクが浮上している。

 希土類の生産は中国が世界で9割以上のシェアを握っているが、中国国内の需要拡大もあり、毎年更新される輸出許可枠が来年以降、かつての水準に戻るめどは立っていない。 

 <ガラス研磨剤、価格4倍に> 

 中国政府は今年7月、2010年の希土類の輸出許可枠を前年比4割減の約3万トンにすると決定した。10年下期(7─12月)の許可枠は約8000トンで、前年同期比7割の大幅削減となる。これにより必要量の調達が危ぶまれているのが、液晶パネルやHDDに組み込まれるガラス基板の生産過程で使われる、セリウム(希土類の一種)を原料とする研磨剤だ。希土類輸入で日本トップクラスの双日<2768.T>の担当者は「数量的に需要が大きいランタンやセリウムの供給は、かなりひっ迫している状況だ」と話す。

 セリウムの価格は8月に1キログラム当たり40─50ドルで、前年同月比で4─5倍に高騰。これを受けて、セリウム研磨剤の国内最大手、昭和電工<4004.T>は13日、11月出荷分から現行比4倍に値上げすると発表した。同社は「中国の輸出規制で量的な調達が厳しくなると同時に輸入価格も急騰しており、コストアップを転嫁しないと事業が成り立たなくなる」(広報担当者)と説明する。原料の必要量の調達については、「年内、来年の量の確保はある程度めどがたっているが、一部の顧客向けには多少、出荷量を削減する必要が出てくる」としている。 

 <在庫は底をつく懸念も> 

 セリウム研磨剤の国内の主要な需要家が、液晶パネル用のガラス基板を製造する旭硝子<5201.T>と、HDD用ガラス基板で70%の世界シェアを握るHOYA<7741.T>だ。旭硝子は液晶パネル用ガラス基板で世界シェア25%を有するが、競合する米コーニングや日本電気硝子<5214.T>は研磨剤を使用しない製法のため影響はない。旭硝子は「液晶用ガラス基板の生産を当面は続けられるだけの研磨剤の在庫はある」(広報担当者)と説明するが、「当面」の具体的な期間については明らかにしていない。

 旭硝子は、1)生産歩留まりの改善、2)ガラス1枚当たりに使う研磨剤の使用量を減らす──などの方法で供給ひっ迫に対応している。また、セリウムに代わる研磨剤の使用に関する検討も進めているという。HOYAも「HDDガラス基板の供給については必要量を確保できるよう努力している」(広報)と説明している。同社も効率的な利用による使用量の削減を進めるほか、代替品の利用を検討中としている。

 とはいえ、希土類の調達状況が改善する兆しはない。双日の担当者は「希土類の中国国外の需要量は約5万7000トン(年間、以下同)で、これに対する中国の輸出許可枠は2010年で3万トン。リサイクルや他国からの供給が1万トンとみており、世界で差し引き1万7000トンが不足する」との説明する。日本国内ではレアアースの需要としては研磨剤用が年間1万トンと最も多い用途となっており、世界的な供給不足の影響が続くのは必至とみられる。 

 <増大する中国内需、代替調達先の開発急務> 

 中国側の輸出規制に対して、日本政府と経済界はいまのところ「お手上げ」の状態だ。8月末、北京で日中両国政府による「日中ハイレベル経済対話」が開かれ、日本側は希土類の輸出枠拡大を求めたが、中国側は「資源や環境保護の観点から(輸出規制は)やむを得ない」と回答し、日本側の要望を事実上拒否した。9月には、日中経済協会(会長:張富士夫・トヨタ自動車<7203.T>会長)による「1975年以来、過去最大の人数」(同協会)による財界訪中ミッションがあり、日本側が輸出規制に対する懸念を表明して輸出枠拡大を促したが、中国側から輸出量拡大に向けた言質は得られなかった。

 希土類は、研磨剤だけでなく、ハイブリッド車や家電に使われるモーター用の磁石(ネオジム、ジスプロシウム)、自動車排気ガス浄化用触媒(セリウム、ネオジム、プラセオジム)、代表的な電子部品で携帯電話などに使われるセラミックコンデンサー(ネオジム)など幅広いハイテク製品に必要不可欠な資源だ。「すでに中国では希土類の需要が6万トン以上で、日本の倍以上」(双日)となっており、内需の急拡大に伴い国外に出せなくなっているという事情もある。

 旭硝子の子会社で、セリウム研磨剤を中国で合弁生産するAGCセイミケミカル(神奈川県茅ケ崎市)の永山俊男・中国研磨剤事業統括室長は「米アップルのアイフォーンのディスプレーの研摩も中国で行われていて、中国国内の研磨剤市場は非常にホットな状態になっている。中国政府にすれば、(希土類は)自国の需要だけで精一杯ということだ」と指摘する。

 経済産業省は今後の対策として、「海外の鉱山開発、代替材料の開発、リサイクルの促進」(製造産業局非鉄金属課)の必要性を挙げる。「オーストラリアや米カルフォルニア、ベトナムなどで生産再開や鉱山開発の計画がある。オーストラリアでは12年から、カリフォルニアは12年半ばから、ベトナムは13年といった時間軸で採掘が進むと思う」(双日)と、価格高騰により代替地の開発計画もここにきて具体化してきた。ただ、今年末から来年にかけて中国外の開発計画が供給不足の状況を打開するには至らず、希土類の調達は中国政府の方針次第という状況が続きそうだ。  (ロイター日本語ニュース、浜田健太郎)

欧米のレアアース埋蔵量が大きいが、生産量はゼロ−米国

2010/09/13(月) Searchina

 米エネルギー政策のアナリストであるMark Humphries氏は先週の金曜日、国会に「レアアースの世界供給チェーン(RareEarth Elements:The Global Supply Chain)」と題した報告書を提出した。報告書の中には「中国」という文字が度々出現するだけでなく、「中国の役割」や「中国の輸出政策との挑戦」というタイトルの章も存在し、2009年の中国のレアアース関連のデータまでもが事細かに記載されている。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。

 レアアースの輸入大国でしばしば囁かれている「世界のレアアースはすべて中国にある」などといううわさなどとは違い、この報告書の6ページ目にはそれをしっかりと裏付ける「09年の全世界のレアアース生産量と埋蔵量」という表が載っている。表から分かったことは、「中国のレアアース埋蔵量は3600万トンで全世界埋蔵量の36%を占め、生産量は12万トンで全世界生産量の97%を占める」ということだ。

 中国の状況とまるきり対照的なのは、アメリカとロシアである。両国のレアアースの埋蔵量はどちらも数千万トン以上で、それぞれ全世界埋蔵量のアメリカが13%、ロシアが19%を占めている。それにもかかわらず、生産量はゼロに等しい。一人当たりの埋蔵量で考えても、両国とも中国より多いが、アメリカもロシアも完全に輸入に頼っている。

 報告書によると、アメリカも一時期レアアースの採掘を行なっていたが、過去15年の間にすっかり採掘をやめていた。一部回収して再利用する以外には、アメリカのレアアース鉱石はほとんど輸入に頼っている。そのようなこともあって、中国の安価なレアアースは世界市場の恩恵を一身に受けることになったのである。

 中国科学院長春応用科学研究所学術委員会の洪広言副主任は長年、中国のレアアース研究に携わっており、「以前、中国のレアアースの価格はこれ以上ないほどに安かった。白菜よりも安いと言う時期さえあり、今にしてみれば、実にもったいないことをしていた。米国は、中国の安いレアアースを輸入して加工し、高い価格で再び中国に輸出していたのだった。アメリカはそうやって膨大な利益を得ているのだ」と主張した。(編集担当:米原裕子)

中国、レアアース企業を90社から20社に統合でスケールメリット狙う

2010/09/11(土)  Searchina

 中国のレアアース輸出制限策実施により、レアアース価格が大幅に上昇したが、中国はレアアースの発言権を握ることがまだできていない。国務院が『企業合併・再編促進に関する意見』を公布したことを受け、レアアース業の集中度は急速に高まる見通しだ。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。

 2009年から中国はレアアースを重視しつつあり、『意見』においてレアアースは初めて合併・再編促進産業のリストに加えられ、自動車、鉄鋼、セメントなどとともに政府が重点的に支援する産業集中度の低い6業種となった。

 包鋼稀土の張忠社長は、中国のレアアース業の発展方向について、合併・再編を通し、産業集中度を高め、企業間の無秩序な競争と低水準の重複建設をなくし、スケールメリットを引き出すべきだと考える。これは、レアアース産業の経済効率を全面的に高め、国際競争力を高める上で有利となる。

 『意見』ではレアアース業の統合に関する具体的な計画に触れていないが、『2009−2015年レアアース工業発展計画』の制定に参与した関係者は「第一財経日報」に対し、レアアース業の合併・再編はおもに分離企業の統合で、レアアース分離企業を2015年までに現在の約90社から約20社に統合する計画であることを漏らした。

 中国は合併、統合、再編などの方法で、数社の大企業集団を主導とするレアアース産業の構造を徐々に構築し、産業集中度を高め、集約化への道を歩むことを望んでいる。(編集担当:米原裕子)

経団連:訪中代表団が李副首相と会談 環境などで協力確認

2010年09月08日 毎日新聞

 【北京・成沢健一】日本経団連の米倉弘昌会長ら日中経済協会の訪中代表団は8日、北京の人民大会堂で李克強副首相と会談し、環境・省エネルギー分野で協力を強化することを確認した。

 中国政府がハイブリッド車や携帯電話の製造に不可欠なレアアース(希土類)の輸出を規制している問題では、訪中団側が懸念を表明したのに対して、李副首相は乱開発による環境汚染や資源の枯渇を防ぐための措置だと説明、規制の見直しは困難との考えを示唆した。そのうえで、訪中団の張富士夫団長(トヨタ自動車会長)が解決策として提案した土壌汚染の防止など日本の環境技術の移転には「価値がある」と受け入れに前向きな姿勢を示した。

 一方、経団連の米倉会長は会談で、中国政府が国家プロジェクトとして河北省唐山市で進めている、環境を重視した「曹妃甸(そうひでん)エコ工業区」の開発について、日本政府と対中協力に向けた検討を始めていると説明。李副首相は「省エネや環境保護で中国には大きな市場があり、日本には進んだ技術と豊かな経験がある」と日本の協力に期待感を示した。

中国が輸出割当量の大幅削減、企業はレアアースは売り渋り

2010/09/03(金)  Searchina

 「5万元、6万元、8万元、10万元…」このような一連の数字が示すものは、近頃、中国のレアアース貿易において、起きている価格の高騰である。今までは最低で数百元で取引できたが、今年の中国のレアアースはとりわけ貴重で、相場は今までの数倍に高騰していた。売りたくとも、売ることができない「有価無市」の状態が多くの人を悩ませている。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。

 「価格が安すぎるからではなく、国が割当てた量があまりにも少ないため、もったいなくて売ることができない」のだと多くの業界関係者は言う。いつもなら、取引市場は非常に盛り上がっているのだが、今年は静かだ。輸出割当をたった1トン手に入れることさえ、今は困難な状況にある。

 レアアース輸出割当量の削減という国の強烈な一撃により、中国国内の輸出企業は前代未聞の割当不足に直面している。商務部が発表した割当量の統計データによると、2010年のレアアースの割当量は09年の水準を40%下回り、これは、中国輸出史上いまだかつてないことである。

 それと同時に、現行の割当量が理にかなっているのか、科学的な判断に基づいているのかについての論争がますます激化している。近年のレアアースの大量輸出を招いた元凶は、中国がこれまで長年実施してきた割当制度にあるのだという見方もある。

 割当量と注文・生産能力がアンバランス

 数日前、記者が買主を偽って国内の何件かのレアアースを保有している製造業者に連絡を取ってみたところ、申し合わせたように同じ答えが返ってきた。10万元(約130万円)という法外な価格を付けてくるのは、実はただの口実で、もったいないので売りたくないというのが皆の本音であるようだ。

 「国が明確に禁止している事だが、ここ数年の割当の売買は、もはやレアアース業界の公然の秘密となっている。」自分たちの会社がたとえ輸出の資格を持っていなくとも、毎年必ずある程度の海外からの受注を手に入れる事はできる。受注があれば、割当を買い、資格のある企業と手を組み、どうにかこうにかして輸出する。また、資格を持っている企業同士での、割当の売買に至っては日常茶飯事のことである。

 割当制度の制限や偏りは、多くのレアアース生産企業が割当をもらえないという事態を招いている。一方、一部の非生産型の貿易企業は、さまざまなルートを利用して割当を手に入れている。このような事態は、実際の割当と注文、生産能力との不調和を生むことになる。「生産をしていない、あるいは注文が少ない貿易企業の割当量が多ければ、企業に生産品を買って輸出する。あるいは直接、割当をほかの企業に売る」このようなことは暗黙の了解であるのだと、包頭市のある大型レアアース企業の社員が匿名で教えてくれた。(編集担当:米原裕子)

日中経済協会:レアアース、協力要請…代表団が5日訪中

2010年09月03日 毎日新聞

 日本経団連の米倉弘昌会長らが参加する10年度の日中経済協会訪中代表団は、5日から7日間の日程で訪中する。中国側要人との会談を調整しており、日中連携などについて意見交換するほか、中国が規制しているレアアース(希土類)の輸出についても、日本の経済界として善処を求める。

 訪中団は同協会会長の張富士夫トヨタ自動車会長を団長に、経団連の今井敬名誉会長(新日本製鉄相談役名誉会長)ら約160人が参加。北京や河南省を訪れ、産業政策を担う政府関係者らとも環境、省エネ分野などで意見交換する。

 レアアースを巡っては中国が7月に輸出を昨年比で約4割削減すると発表。8月末に北京で開かれた主要閣僚による「日中ハイレベル経済対話」で日本側は輸出規制の緩和を求めたが、中国側は応じず、今後の検討対象になっている。

 レアアースは、ハイブリッド車のモーターに使用される磁石や、携帯電話の部品などに使用され、世界産出量の9割を中国産が占める。輸出規制が続けばレアアースの価格上昇を招き、日本の産業界に悪影響を及ぼすことが懸念されている。

 このほか、訪中団は日・中・韓の自由貿易協定(FTA)の締結や、日系企業の工場で発生した労働争議などについても日本側の意見を伝える方針だ。【米川直己】

「欧米にも大量のレアアース」、埋蔵量の真相−中国メディア(1)

2010/09/01(水) Searchina

 中国は2007年よりレアアース(希土類)の計画的生産を開始し、輸出枠を削減した。これは欧米や日本など西側諸国の強い反発を招き、各国は「中国は世界のレアアース埋蔵量のほとんどを保有している」として、中国にレアアースの輸出規制を取り消すよう求めている。

 しかし、米国が発表した報告書によると、「中国が世界のレアアースを支配している」という非難は作り話で、実際には中国のレアアース埋蔵量は世界の3分の1に過ぎず、欧米にも大量のレアアースが埋蔵していて、彼らはそれを隠しているという。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。

 ■各国が中国を非難

 このところ、レアアースの輸入大国は自分たちの利益のために盛んに「中国のレアアースは、埋蔵量、生産量、輸出量ともに世界一である」「世界のレアアースはすべて中国にある」「中国は世界のレアアース供給を独占している」といった発言をして、中国をレアアース埋蔵大国に仕立て上げ、引き続き安価で輸出し、輸出枠を拡大するよう求めている。中国が輸出規制を始めると、これまで長いこと「泥のような価格」で中国のレアアースを買い漁ってきた国は、自分の利益空間が圧縮され、いくつかの企みが頓挫してしまうために、さまざまなルートを通じて中国に抗議しているのだ。

 共同通信や産経新聞など日本メディアはこのほど、「第3回日中ハイレベル経済対話が北京で開かれ、日本側は中国に対してレアアース輸出規制の緩和を強く求めた」と報じたが、欧米でも同じような報道が見られる。

 今年3月には、米国のマイク・コフマン下院議員が中国は米国を服従させる市場支配力を持っていると発言。政府は中国に抗議し、なおかつレアアースの価格が高騰する前に、中国から今後5年分のレアアースを購入・貯蔵すべきだと主張した。6月にはEUが報告書を発表し、「レアアースのような原材料はEUの経済発展に重大な意義を持つため、中国のレアアース輸出枠激減によって関連産業にかかる圧力は絶えず拡大する」と指摘した。欧米はまた、中国が鋼鉄やその他の製品の生産に用いる各種レアアース材料の輸出を規制していることについて、WTOに訴えている。(つづく 編集担当:米原裕子)

「欧米にも大量のレアアース」、埋蔵量の真相−中国メディア(2)

2010/09/01(水) Searchina

 ■埋蔵量と輸出量の真相

 中国のレアアース埋蔵量は本当に各国が言うように絶対的優位にあるのだろうか。中国のレアアース輸出規制は国際市場を操作するねらいがあるのだろうか。これについて中国国内の各種データはいずれも「ノー」との答えを出しているが、各国には受け入れられていない。しかし米国の関係当局が先月発表した報告書にも、こうした抗議の声に反駁する内容が記載されている。

 米国のエネルギー政策アナリストのMarc Humphries氏は7月23日、「レアアース:世界のサプライチェーン」という報告書を国会に提出した。これにはレアアースの用途や世界のレアアース資源のサプライチェーン、米国のレアアースに関する法律が詳しく分析されており、「中国」という文字も頻繁に出てくる。「中国の役割」と「中国の輸出政策上の挑戦」の2つの章には、中国の09年のレアアースに関するデータが詳細に記載されている。

 そして9ページ目の「09年世界のレアアース生産量及び埋蔵量」の表を見ると、中国のレアアース埋蔵量は3600万トンで世界の埋蔵量の36%を占め、生産量は12万トンで世界の生産量の97%を占めていることが分かる。これに対し、米国は埋蔵量が1300万トンで世界の13%、生産量はゼロ、ロシアは埋蔵量が1900万トンで世界の19%、生産量はゼロ、オーストラリアは埋蔵量が540万トンで生産量はゼロ、インドは埋蔵量が310万トンで世界の3%、生産量は2700トンで世界の2%を占めている。

 また、カルフォルニア州に位置するマウンテンパス鉱山についても言及している。同鉱山のレアアースはかつて日産量2万トンに達していたが、中国の安価なレアアースの打撃を受けて封鎖、モリブデンの生産もほぼ停止状態にあるという。報告書は、中国が採鉱量を削減し、違法な採掘活動を取り締まり、割当額や輸出税によって輸出を規制する措置をとっていることで、中国のレアアース輸出量は09年の5万トンから10年には3万トンに減少し、世界は深刻なレアアース不足に直面すると指摘。中国の「信用を失う行動」に対応するために、各国は急いでほかのレアアースの輸入ルートを開拓しなければならないとしている。

 ■輸出規制は理にかなっている

 国民1人当たりのレアアース埋蔵量は、米国とロシアが中国を上回る。中国は産業の最終部分にあるために、世界の3分の1の埋蔵量で世界の97%を占めるレアアースを生産しているのであり、埋蔵量と生産量の関係はまったく対等とはいえない。一方、米国は世界のレアアース資源の13%を保有しているにもかかわらず、少しも外に出そうとせず、100%輸入に頼っている。つまり、中国の輸出規制によって一部の国はレアアースが不足するという言い方は正しくなく、彼らが不足するのはレアアースではなくて、中国が生産する安価なレアアースなのである。

 各国は相次いで中国の輸出規制を非難し、中国に圧力をかけているが、米国のこの報告書は事の真相を十分に説明している。報告書には、世界のレアアース供給構造の中で中国がいかに気まずい立場に立たされているか、中国の安価なレアアースを利用したいという日米の目論見が具体的に示されており、中国の輸出規制は賢明な措置であり、さまざまな抗議の声に反駁できることを証明している。(おわり 編集担当:米原裕子)

モンゴル“資源外交” 岡田外相訪問 隣国支配嫌い日本重視

2010.8.31 MSN産経新聞

 【北京=川越一】モンゴルの首都ウランバートルを30日に訪問した岡田克也外相が、同国首脳と相次いで会談した背景には、地下に眠る豊富な天然資源があるとみられる。

 岡田外相はザンダンシャタル外相との会談で、モンゴルの天然資源開発への参入、獲得に対する日本の積極姿勢を強調した。モンゴル側は日本企業の参入を支持し、ウランや石炭、レアアース(希土類)開発などでの協力促進に同意。両国関係を戦略的パートナーシップに格上げすることを提案するなど、日本重視の姿勢を示した。

 モンゴルでは2006年以降、国内総生産(GDP)における鉱工業の割合が30%近くで推移。タバン・トルゴイ鉱山の石炭埋蔵量が世界一といわれるほか、銅やウラン、金などの鉱床が点在している。

 現在、中国が最大の貿易相手国で、石油の輸入はロシアに依存するが、国境を接する両国の“支配”を嫌い、資源を武器に「第3の隣国」との関係強化を進める。2007年には当時のエンフバヤル大統領が日本、韓国、米国、フランスなどを訪問し、資源外交を展開している。

日中経済対話「日本と中国の経済地位の逆転を反映」−英紙

2010/08/31(火) Searchina

 第3回日中ハイレベル経済対話が28日に北京で開かれた。中国側からは王岐山国務院副総理と楊潔チ外交部部長、日本側からは岡田克也外相ら6閣僚と3副大臣が出席し、出席者数120人の過去最大規模の対話となり、双方は7項目の協力文書に調印した。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。

 今回の対話は中国の国内総生産(GDP)が初めて日本を超えた時期に開かれたことから、日本国内と西側での関心が高く、英BBCは29日、「日中経済対話:中国の自信、日本の焦り」と題した文章を掲載し、今回の対話は中国と日本の経済地位の逆転を反映しているとした。

 ■レアアースの輸出が焦点に

 レアアースの輸出は日中両国の話し合いの焦点である。中国側が日本の「レアアースの輸出規制緩和」に同意していないことについて、多くの日本メディアが日本への影響は非常に大きいと見ている。日本『毎日新聞』は29日、「レアアース進展なく『枯渇懸念』譲歩引き出せず」というタイトルで、日中両国は5分野で話し合い、7項目で合意に達したが、もっとも肝心なレアアース問題について中国側は日本側の要求に応じていないことを報じた。

 清華大学の学者、周世倹氏は29日に『環球時報』の取材に応じ、「海外メディアは中国の経済規模が日本を超えたことを報じた。中国はおだてられたいと思っていないが、日本も落ち着きをなくす必要はない。日中両国は経済関係の強化の重点を『ウィン・ウィン』に置き、中国は日本のハイテクや省エネ技術を取り入れ、日本は中国の巨大な需要に頼り経済を発展させるべき」と述べた。

 ■技術輸出の緩和で輸出拡大

 製造業を得意とする日本は省エネ・環境保護、グリーンエネルギー分野で優位に立ち、風力発電、電気自動車、ハイブリッドカー、太陽電池などの技術は世界でもトップを誇る。今回の対話で、中国側は日本側がこれら分野の技術の輸出規制を緩和することを提案した。

 「日本は産業チェーンの高位置を占めることを望んでおり、ハイテクの輸出においては保守的である。しかし対中輸出の需要が拡大することで、日本側のこの政策はやや緩和され始めるだろう」と、上海交通大学日本研究センターの王少普主任は見ている。

 今年に入り、「中日唐山曹妃甸生態工業園」、天津「日中合作低炭素経済モデル区」などの協力プロジェクトはいずれも順調に進んでいる。機会はすぐに過ぎ去ってしまい、欧米も同様に中国という巨大な省エネ・環境保護市場を獲得したいと思っている。日本はチャンスを掴むことができなければ、中国市場での主導権を失うことになるだろう。

 また、日中両国の経済貿易関係がじょじょに軌道に乗っていることも喜ばしいことだ。「日中の今後の戦略関係は密着で、現在の急務は双方の戦略を結びつけ、新たな成長点を把握すること。各自の優位を発揮してこそ、協力の中でウィン・ウィンを実現できる」と、王少普氏は話した。(編集担当:米原裕子)

日中ハイレベル対話:レアアース進展なく 譲歩引き出せず

2010年08月29日 毎日新聞

 日中両国の主要閣僚が経済課題を話し合う「第3回日中ハイレベル経済対話」が28日、北京で開かれ、環境・省エネなど5分野・7項目で協力関係を強化することで合意した。しかし、ハイブリッド車の性能向上などに不可欠なレアアース(希土類)輸出を中国が規制していることについては、年1回の次官級協議で検討対象とすることに合意したものの、中国側は日本側が求める規制の緩和には応じなかった。次回会合は来年、日本で開催される。【立山清也、北京・浦松丈二】

 日本からは、共同議長を務める岡田克也外相のほか、野田佳彦財務相、直嶋正行経済産業相ら6閣僚と3副大臣が、中国側は共同議長の王岐山副首相のほか閣僚級8人が出席した。岡田外相は終了後の記者会見で「双方が戦略的互恵関係をさらに深めることで合意した」と述べた。

 会合では、省エネ・環境協力や次官級会合の開催のほかに、中国国内の物流や流通環境の改善▽人材育成▽民間レベルでの食品安全に関する情報交換や交流活動の強化−−で合意した。また、世界貿易機関(WTO)ドーハ・ラウンドの推進や保護主義抑制、産官学による日中韓自由貿易協定(FTA)の共同研究を積極的に進めることでも一致。偽ブランドによる知的財産侵害問題でも取り組みをさらに強化することになった。

 一方、日本側が強く求めたレアアースの輸出規制の緩和については、中国側が「環境保護と資源枯渇の懸念」などを理由に規制は必要との認識を示し、結論は先送りされた。また、中国国内の日系企業で賃上げを求める労働争議が相次いだことから、日本側は法整備を要請したが、中国側は「国が発展する途上で労働争議が深刻化する時期はある」と応じるにとどまった。

 ◇日本企業「値上がり警戒」

 経済対話の主要テーマの一つは、中国のレアアース輸出規制だった。直嶋経産相は「輸出枠削減がレアアース不足をもたらし、世界の産業に重大な影響が出る」と懸念を表明。中国側が求める環境技術の移転などを提示して譲歩を引き出そうとしたが、中国側の姿勢は硬いままだった。

 レアアースは、磁石の原料となるネオジム、耐熱性を高めるジスプロシウムなどに代表される希少金属の総称。ハイブリッド車や携帯電話部品の性能向上、液晶のガラス基板の研磨剤などに不可欠で、中国が世界生産量の9割を占める。

 中国は7月上旬にレアアースの輸出を昨年比で約4割削減すると発表。輸出規制が続けば日本のハイテク関連企業に影響が出かねず、大手電機メーカーからは「価格が上がりつつある」と懸念の声が上がっている。

 しかし、中国側は対話の中で、採掘に必要な大規模開発の環境負荷が大きいことを挙げたほか、「資源保護と国の安全保障上、規制はやむを得ない」と強調した。「レアアースを求める外国のハイテク企業を中国に呼び寄せ、高い加工技術を移転させる」(外交筋)ことが真の狙いともいわれており、簡単に譲歩に応じる気配はない。

 一方、協力関係の強化で一致した模倣品による知的財産権の侵害問題については、中国製模倣品による日本企業の被害は年間約9兆円に達するともいわれているだけに、中国側の対応への期待感は強い。だが、「模倣品の工場が地方の雇用の受け皿となっているなど国内事情もあり、政府の掛け声だけで簡単に解決できる問題ではない」(日本政府関係者)という見方もあり、解決にはまだ時間がかかるとみられる。

 ◇ことば 日中ハイレベル経済対話

 両国の経済関係の閣僚級が一堂に会し、経済課題を協議する場。経済面での「戦略的互恵関係」を具体的に展開する狙いがある。主要課題を包括的に協議する場として設けられ、07年12月に北京で第1回、09年6月に東京で第2回が開かれた。背景には、小泉純一郎元首相の靖国神社参拝などで冷え込んだ日中関係を改善しようとする両国の意図もあった。

北朝鮮問題家を斬る:266 - レアアース問題

2010/08/29 Sunday North Korea Today

 90年代、世界第二のレアアース工場は上海にあった。2000年代へ入って揚子江河口部での放射能汚染が話題になったが、その原因を作った工場である。レアアースは選り分けに優れた技術が要求される。上海では台湾からの技術導入が工場を一新させた、と伺った。

 台湾のレアアース技術は、日本から廃家電を引き受け、其処からレアアースを回収させる過程で蓄積されている。その上海の工場から技術導入したのが、国際化学合弁・咸興工場であり、それを詳らかに調査したのが、山梨学院大学の宮塚利雄助教授であった。

 宮塚利雄教授は、助教授時代に良い「仕事」をしており、むろん玉城素先生の指導も適切であったろう。更に、賢夫人の存在を指摘する向きもある。今の豆満江左岸を歩き、人民軍兵士のパンツをはじめ、北朝鮮グッズの蒐集家と知られている姿とは違うようだ。それは、国際化学合弁が原子力工業に付いて言及した「資料」(91年4月)をいち早く蒐集し、JETROの報告書に発表した、事からも分かる。

 国際化学合弁では、モナザイトからレアアースを分離精製して対日輸出を図った。94、95年頃、通関統計に対日輸出の実績を見付けることができる。だが、モナザイトからレアアースを分離すれば、残された部分に大量のトリウム、それからウランが残る。つまり、イエローケーキが出来るのである。そのイエローケーキを購入して核開発の乗り出したのが、リビアのカダフィ大佐であった。

 朝鮮戦争が始まるや、米国議会は「バトル法」を成立させ、赤色支那(Red China)への禁輸、経済制裁を行った。バトル法に記載されているRed Chinaへの禁輸品目を眺めるとモナザイトが挙げられている。モナザイトを禁輸品目に見付けて、笑って仕舞った。北朝鮮に豊富に産出する品目を禁輸指定するなんて、米国はお目出度い国家だと感じたものである。だが、西鮮三道(平安北道、平安南道、黄海道)を巡る赤色支那派遣軍と米軍の死闘を知るにつけ、そうとばかりは言えなくなった。

 1950年10月19日の夜から12個歩兵師団、3個砲兵師団の兵員26万人が鴨緑江を渡り、25日に参戦している。その25日、米軍は博川、定州、宣川を越えて新義州目前の中江洞に迫っていた。平安北道鉄山郡は、この時点で米軍支配下にはいった。鉄山郡が米国に押さえられることは、核開発を目指す赤色支那の容認し難いことであったろう。

 モナザイトはレアアースとウラン、トリウムを豊富に含有する鉱石である。スターリンは朝鮮半島北部へ侵入し、鉄山郡から大量のモナザイトを運び出している。スターリンの核開発は帝国の技術の延長線上に築かれた。

 バトル法の制裁下、彭徳懐は二度とこの地を米軍の支配下に置かせかった。赤色支那派遣軍、人民義勇軍の司令官は統一より朝鮮半島北部の平安北道、平安南道、黄海道のモナザイト産出地域を死守した。朝鮮半島の統一を第一に考える金日成を押さえて、彭徳懐司令官はウラン含有鉱石を産出する西鮮三道の死守に賭けた。後に、彭徳懐は人民解放軍の近代化に使命感を抱き、結果として毛沢東と対立することとなる。

 『朝日新聞』紙に「中国、レアアース輸出削減」の記事が掲載されたのは、8月20日のことであった。直ちに、数人の知人へ電話、メールを入れた。一つは、モンゴルのレアアース鉱山を押さえる体制の確立である。あのハマコー先生張りの話だから、大丈夫か?と頭の中身を心配されたが、南牛にはハマコー先生に比して、カネ無く、力無く、人脈も無い、典型的な三無斉である。

 だが、ハマコー先生と異なるのは、モンゴルの鉱山開発が容易で無い、ことを知っている。ハマコー先生の資金力では無理な話なのだ。更に、北朝鮮に関わる数人へ興南の「鉱滓」を押さえられないか?と相談した。モナザイトからウランを分離することは容易だが、幾つかのレアアースの分離には技術力が必要となる。レアアース含有の鉱滓が興南に蓄積されていると推察したのだ。

 鉄山郡のモナザイトは朝鮮総督府施政下では日窒鉱業開発が採取し、興南へ送りセリウムを抽出していた。日窒鉱業開発はモナザイト中のランタノイドからセリウムを分離した分けだが、セリウムはランタノイド中に一番多く含有し、日本窒素は興南カーボン工場で炭素棒製造に用いた。セリウムを含有するアークカーボンは映画、青写真などに用途があった。

 今日、セリウムが工業的に重要なのはガラスの研磨剤に用いられるからである。だが、近年セリウムに自動車産業が注目し始めているのは、排気ガスを清浄化する白金触媒の量を低減できる、からである。

 そしてランタノイドとは、原子番号57のランタンから71番のルテチウムまでの15元素を指し、メンデレーエフの周期表で一つの枠に入っている。セリウムは58番目の元素だが、近年注目される一つに、60番のネオジムの存在がある。レアアースには、ランタノイド以外に21番のスカンジウム、39番のイットリウムを含める広義の使い方もあるが、狭義にはランタノイドを指して希土類(レアアース)という。

 そのレアアースは赤色支那が大半を供給している。2008年の生産量では全世界の97%を占めているといわれるが、統計に含まれて無い国もあり、実際のシェアは80%前後と見られている。レアアースの埋蔵量も赤色支那が85%を占めているといわれるが、モンゴルや北朝鮮が統計に含まれておらず、実際のシェアは50%を切るであろう。

  だが、赤色支那は強気である。それにはモンゴルが内陸国であり、鉱山開発には多大の投資を必要とする。一方の北朝鮮はウラン含有量の高いモナザイトを原料とする開発体制が、核疑惑から核開発へ向かわせ、結果として経済制裁を招いている。モンゴルと北朝鮮から、日本は容易にレアアースを確保出来まい、と踏んでいるのだ。

 レアアースでは国を守れないが、ウランは国を守る、と北朝鮮は判断している。サイパン陥落後の帝国もそう考えていたのだから、北朝鮮を批判できる「資格」は今の日本に無いのだが、今の日本はレアアースで強盛大国の建設が容易なことを北朝鮮へ教えるべきだ。むろん、教えなくても知っているだろうが、この場合の教えとは日本が資本と技術を持って北朝鮮へ入って行くということだ。

 20日の『朝日新聞』紙に戻ると、「中国、レアアース輸出削減」の副題が「日本のHVに影響も」とあり、記事の冒頭は以下のように書かれていた。

 「ハイブリッド車や省エネ家電の部品生産に使われるレアアースを巡り、世界生産の9割超を握る中国が7月、輸出枠を大幅に削減することを決め、日本の産業界が懸念を強めている。状況の打開のため、直嶋正行経済産業相は28日から北京で始まる日中ハイレベル経済対話で、中国政府に輸出枠を拡大するよう申しいれる」(『朝日新聞』8/20)

  輸出枠の削減を受けてレアアースの価格は急上昇しており、輸出枠の削減が今後も続けばハイブリッド車や省エネ家電の生産へ影響が出る。そして、その28日からはじまったハイレベル経済対話を受けて、29日の『朝日新聞』紙は「レアアース輸出枠 日中対話 中国側 ゼロ回答」という見出しで、北京から琴寄辰男、古谷浩一記者が伝えている。中見出しは「“戦略資源”高値化狙う」であった。

  赤色支那側は、開発に伴う環境破壊を防ぎたい、輸出価格が低すぎる、などという意見を押し出し、輸出枠削減の主張を引っ込めなかった、そうである。記事の中に、「液晶テレビのガラス基板の研磨剤などに使われるセリウムの価格が1Kgあたり40〜50ドルと、1年前の5〜6ドルから急騰」(『朝日新聞』8/29)とある。赤色支那側が「大根や白菜のような値段」と述べた、ともあったが、そうではなかろう、と反論したくなった。それは赤色支那のレアアース資源の開発に対する日本側の資本、技術の支援を忘れているからだ。赤色支那は井戸を掘った人の恩義を忘れない、などというが、あれは方便ということであろうか?

  赤色支那の狙いは価格だけでは無い。真の狙いはレアアースに基づく先端技術を「出せ」と、日本側に迫っているのだ。

  西岡力・救う会会長が、何処かで赤色支那との関わりを指摘されたが、そのように言われる筋合いは無いと主張していた。だが、レアアースに見る限り、西岡力救う会会長の主張・行動は赤色支那の対日工作に符合している、とも言える。

  率直に言いたい、横田滋さん、貴方は日銀のOBだ、日本経済の明日を考えれば貴方に出来ることが在る筈だ。それは直ちに平壌へ赴き、お孫さんを抱くことだ。当面、日本は赤色支那に替わるレアアース供給国として北朝鮮を確保するしか無いのだ。横田滋さん、貴方は日銀マンとして日本経済を心配しているならば、日銀総裁並みの力を発揮出来る場が、今、与えられているのだ。(8月29日 南牛 安部桂司)

焦点:レアアース資源独占の中国、環境技術開発競争で優位に

2010年08月16日 Reuters

  [香港 12日 ロイター] 環境技術の需要拡大を受けたハイブリッド車や風力タービンの生産競争で、中国には1つの明確な強みがある。世界最大のレアアース埋蔵量を持ち、生産をほぼ独占していることだ。

 アナリストによると、レアアースは需要の急増を受けて世界的に供給がひっ迫すると予想されている。レアアースの最大の消費企業には、中国の風力発電機器大手である新疆金風科技<002202.SZ>やハイブリッド車を開発する比亜迪(BYD)<1211.HK>が挙げられる。

 レアアースはこのほか、米アップルの「iPhone(アイフォーン)」から薄型テレビまで、幅広い電子機器に使用されており、世界で年間12万トンの限られた供給をめぐって獲得競争が展開されている。

 中国は世界のレアアース生産高の97%を占める。

 元大証券のアナリスト、ミン・リー氏は「中国にとってレアアースは、中東にとっての原油のようなものだ」と話す。

 豪レアアース鉱山会社アラフラ・リソーシズの関係者は、新たな大規模鉱山が開発されない限り、世界のレアアース供給は2012年まで、需要に比べ約3─5万トン不足するとの見方を示した。

 中国は2005年以降、輸出割当や関税を通じてレアアースの輸出を規制している。国内のクリーンエネルギーやハイテクセクターの発展を促すため多くの資源を確保することが目的で、今月11日には2010年の輸出割当量を前年比40%削減すると報じられた。

 CIMBのアナリスト、キース・リー氏は輸出規制により、中国の環境技術企業は海外の競合他社よりも優先的にレアアースを確保できると指摘。地理的に供給源に近いことも、より長期的、迅速かつ安価な資源確保につながる、との見方を示した。

 世界のレアアース供給を脅かす最大の要因は中国の国内消費だ。中国は世界の3分の1のレアアースを埋蔵し、6割を消費する。

 中国によるレアアース輸出割当量の削減について、貿易相手国は批判を強めているが、中国政府はレアアース市場での支配力を強める構えを変えていない。

 元大証券のミン・リー氏は「外国企業は中国に生産を移さなければ、レアアースの供給リスクに直面する可能性がある」と述べた。

 <資源確保しても成功は保証されず>しかし、アナリストは、中国が国内大手環境技術企業へのレアアース供給を確保したとしても、それだけではこうした企業の成功は保証されないとの見方で一致している。

 たとえば、レアアースを必要としない新技術が誕生し、中国の優位性を脅かす可能性がある。また、中国がレアアースの輸出規制を強化すれば政治的な圧力が強まり、海外への供給を維持せざるを得なくなることも考えられる。

 CIMBのキース・リー氏は「中国は優位性を最大限に利用するために、急いで技術を開発する必要がある。既存の技術が発展しなければ、この限られたチャンスを逃すことになる」と述べた。

 それでも、中国はしばらくの間、世界のレアアース市場での優位性を維持する公算だ。

 中国以外で開発中の鉱山は多数あるが、政府の補助金がなければ価格面で競争できるプロジェクトは少ない。低価格の中国産レアアースが原因で閉鎖を強いられた海外の鉱山は複数ある。緩い環境規制や安価な労働力も中国がレアアースを安く提供できる理由のひとつだ。

 また、レアアース鉱山の新規開発には10年かかる場合もある。

 中国国有メディアによると、レアアース大手の内蒙古包鋼稀土高科技<600111.SS>は江西銅業<0358.HK><600362.SS>とレアアースの統一価格制導入を計画している。

 中国の環境技術企業は供給ひっ迫に備え、自らレアアースを確保する戦略を進めている。

 BYDは、高性能電池の重要な材料で、レアアースと同様に供給ひっ迫の予想されるリチウムの新たな供給源を模索している。欧州委員会の調査によると、消費者の大半がガソリン車から新世代の自動車に乗り換えた場合、リチウムの供給は2050年までにひっ迫するとみられている。

 このほか、豊田通商<8015.T>はアルゼンチンでリチウム権益を取得。東芝<6502.T>はカザフスタン国営企業のカザトムプロムとレアメタル(希少金属)の販売合弁会社を設立する計画だ。

 アナリストによると、トヨタ自動車<7203.T>と日産自動車<7201.T>、米ゼネラル・モーターズ(GM)はレアアースの供給ひっ迫による影響を最も受けやすい。

 商品アナリストでレアメタル専門家のジャック・リフトン氏によると、トヨタのハイブリッド車「プリウス」のような車には1キログラムのネオジムが使われる。さらに、プリウスの電池には10─15キログラムのランタンが必要とされる。

 海上風力発電向けのタービン開発に投資している独シーメンスや米ゼネラル・エレクトリック(GE)も、レアアースの供給リスクに直面する可能性がある。 (Leonora Walet記者;翻訳 田中優賀子)

中国のレアアース、低価格で輸出

2010年06月10日 「人民網日本語版」

 8日に行われた院士大会において、レアアースの研究を50年間にわたって行ってきた中国科学院長春応用化学研究所の倪嘉纉氏が「レアアース、塩湖資源の総合利用における問題と対策」と題したスピーチを行った。倪氏はスピーチの中で、レアアースに関する研究を強め、ハイテクノロジーをできるだけ早く把握して「資源はあるが利益がない」というジレンマから脱出するべきだと呼びかけた。「科技日報」が10日に伝えた。

 大規模な採掘が行われる以前は、中国のレアアース埋蔵量は世界の埋蔵量の85%を占めていた。レアアースの戦略的意義および埋蔵量のメリットから、障ナ小平氏はかつて、「中東には石油があり、中国にはレアアースがある」と語った。しかし、数十年の発展を経た現在、中国はこの資源的メリットを経済的メリットに転換することがまだできていない。

 2005年と2006年、院士による国務院への2度にわたる上書と、温家宝総理の迅速な指示の結果、レアアースの生産が抑制された。しかし、中国科学院・徐光憲院士の推算によると、1995年から2005年までの10年間で、中国のレアアース輸出による損失は少なくとも数十億ドルに達したという。さらに深刻な教訓となったのは、日本や韓国がこの間に中国から安価で高品質のレアアースを20年間分購入・貯蔵し、国際的なレアアースの価格決定権を把握したことだ。

 倪嘉纉氏は、「政策的な原因だけでなく、ハイテクの不足も私たちの発言権がない原因となっている」と述べる。

 中国はレアアース資源大国ではあるが、レアアース・ハイテク製品の生産大国ではない。レアアースのハイテク製品と特許の多くは、国外の少数の企業が把握しており、彼らはこれらの技術を重要な機密としている。一方中国はレアアースのハイテク製品が少なく、長年にわたってレアアース鉱物、混合レアアースなどの低レベル製品を低価格で輸出し、高度加工されたレアアース製品を高価格で輸入してきた。


クリーンエネルギー開発に 中国、環境を犠牲にレアアース製造

2009年12月16日 大起元

 【大紀元日本12月16日】気候変動サミットで温室効果ガスの排気削減の政策が取られ、クリーンエネルギー技術に欠かせないレアアースの需要が今後も高まると予想される。例えば、現在、供給不足が危惧さる「ネオジム(Nd)」は、風力発電用のタービンやハイブリッド車のモーターに使用される強力・軽量の磁石合金の重要な素材だ。しかし、レアアースの生産工程で犠牲になっている中国人がいることを忘れてはならない。

 内モンゴル自治区の汚染

 6日付けの英紙、サンデータイムズでは、レアアース生産の背後に中国は環境を犠牲にしていると言及している。

 世界最大のレアアースの産地とされる内モンゴル自治区の包頭(ボート)市に、数百万ドルの資金を投入したレアアース工業区が建設中で、壁に赤いペントで、「世界レアアース工業のリーダーを目指せ」とスローガンが書かれている。

 包頭市に名もない湖がある。工場の煙突に囲まれ、冬は湖床が凍りつき、夏になると赤い粘り気のある軟泥になると言う。工場からの漏水が近辺の土地を汚染しているせいだ。土に水をやったら何も育たなくなった。地方当局が水質検査をし、人間も動物も飲むべきではなく、灌漑用水にも使用してはいけないという結論を出した。

 市の近くにある小さな工場では、労働者が保護服を着用せずに、化学薬品の入った大釜に有毒な液体や粉を流し込み、 電池や磁石合金に加工できるよう、レアアースの元素を化合物や酸化物へと反応させる。労働者は、煙や埃をそのまま吸い込み、手袋なしで薬品を扱う。

 包頭レアアース研究所の趙正其(音)氏は、「環境問題は、フッ素、硫黄などの有害物質の排棄、過度の酸性や放射性物質を含有する排水などに及ぶ」と語っている。

 江西省の汚染

 江西(ジャンシー)省のPitou県の丘には、 工場が点在する。酸性物質を土壌に注入しているのだ。9月に村人たちは、化学薬品を運び込むトラックを阻止し、地方当局の周囲を囲み、デモを行った。

 「もう、何も収穫できない。樹木は果実をつけない。魚は川で死んでいる。以前は、川で洗濯をしていると、魚がたくさん寄ってきていたのに、今はもう、一匹もいない。雑草まで枯れてしまった」と地元住民は語る。

 表向き、これらの工場は閉鎖されているが、 夜中に武器を持った見張り付きで稼働していると地元の人々は証言する。当地の共産党リーダーがマフィアと結託して、実入りのよいレアアース生産を続行させているという。

 世界市場をほぼ独占する中国

 先進国がCO2の削減を声高に主張し、クリーンエネルギーを主張することは、世界のレアアースへの需要が高まることを意味する。例えば、現在、供給不足が危惧される「ネオジム(Nd)」は、風力発電用のタービンやハイブリッド車のモーターに使用される強力・軽量の磁石合金の重要な素材だ。

 これまで20年にわたり、低賃金と作業環境規程の緩い中国に勝てる国はなかった。現在、中国はレアアース供給の95%以上を担う。世界でも唯一の様々な等級、品種のレアアース製品を大量供給する国でもある。

 来年の需要は14万トンと予測される。しかし、中国政府は、今後6年で、輸出を3万5千トンに制限すると発表し、市場を動揺させている。 包頭レアアース研究所の理事代理である張培成(音)氏は、「中国の国内需要が、輸出量を引き離していくことになるだろう」と語る。

 中国は、レアアースの輸出を制限することで、海外のレアアース生産者の工場を中国に移転させ、その技術も中国に譲るように望んでいる。(編集・鶴田)

東京理科大:レアアース使わないハイブリッド車用モーターを開発

2009/12/23(水) Searchina

 NEDOの次世代電気自動車向け研究開発プロジェクトの一環として、東京理科大学が世界で初めてレアアース(希土類元素)を使用しないハイブリッド車用モーターの小型化に成功した。

 現在、ハイブリッド車用モーターにはレアアースが使われているが、その大半は中国からの輸入に頼っている。更に、レアアースの価格は需要拡大に伴い2〜3倍に上昇していることから、安定供給と環境への配慮から磁石を使用しないモーター(SRM)への期待が高まっている。

 レアアースを用いたモーター(IPMSM)がロータ内部に永久磁石を埋め込んでいる同期モーターであるのに対し、SRMは永久磁石を用いず、磁気抵抗の差を利用して回転させる。構造がシンプルで耐熱性・耐久性に優れているが、トルクやエネルギー効率の面で劣っているため、ハイブリッド車用の性能を確保するには大型になり、車載できないことが課題となっていた。今回の開発では、モーター構造と材料の選定を検討し、組み合わせを最適化することで、ハイブリッド車にも搭載できる小型化と性能を実現した。(情報提供:環境ビジネス.jp)

NEDO・東京理科大学 レアアースを使わないハイブリッド車用モーターを開発

2009/12/17(木) Searchina

 NEDOの次世代電気自動車向け研究開発プロジェクトの一環として、東京理科大学が世界で初めてレアアース(希土類元素)を使用しないハイブリッド車用モーターの小型化に成功した。

 現在、ハイブリッド車用モーターにはレアアースが使われているが、その大半は中国からの輸入に頼っている。更に、レアアースの価格は需要拡大に伴い2〜3倍に上昇していることから、安定供給と環境への配慮から磁石を使用しないモーター(SRM)への期待が高まっている。レアアースを用いたモーター(IPMSM)がロータ内部に永久磁石を埋め込んでいる同期モーターであるのに対し、SRMは永久磁石を用いず、磁気抵抗の差を利用して回転させる。構造がシンプルで耐熱性・耐久性に優れているが、トルクやエネルギー効率の面で劣っているため、ハイブリッド車用の性能を確保するには大型になり、車載できないことが課題となっていた。今回の開発では、モーター構造と材料の選定を検討し、組み合わせを最適化することで、ハイブリッド車にも搭載できる小型化と性能を実現した。(情報提供:環境ビジネス.jp)

日立、レアアースのリサイクル技術開発へ

2009/12/15(火) Searchina

 日立製作所は14日、ハイブリッド車の駆動用モーターや風力発電機、パソコンなどのIT機器などに不可欠な材料となる希土類(レアアース)のリサイクル技術の開発を開始すると発表した。開発するのは、ネオジムやディスプロシウムなどのレアアースを用いて作られる永久磁石「レアアース磁石」で、使用済み製品から効率よく取り出し再生する技術を開発し、2013年の実用化を目指す。

 レアアース磁石は、鉄を約3分の2、レアアースを約3分の1含む合金で、低炭素社会を実現する製品に必要な材料として需要が高まっている。レアアースの産出量は中国が約97%を占めており、需要が増えると調達が困難になる可能性があることから、レアアースの安定供給のためには使用済み製品からのリサイクル技術の開発が期待されていた(情報提供:エクール)

「希少資源」争奪戦! エコカーの命運を握るレアアース

2009/11/24 東洋経済

 「普通なら自動車メーカーに取引を提案しても、なかなか相手にしてもらえない。だが、レアアースとなると話は別。逆にこちらが追いかけ回されている」。大手商社の担当者は苦笑いしてこう話す。これまでレアアース(希土類元素)を扱ってきたのは主に中小の専門商社だった。しかし、大手の総合商社が続々と参戦し、目の色を変えて調達ルート確保へと奔走している。

 10月下旬、住友商事はカザフスタンの国営原子力公社とレアアース事業に関する覚書を交わした。同国内には、旧ソ連時代に採掘したウラン鉱石の残渣(ざんさ)(残りかす)が大量にある。その中からレアアースを取り出し、2011年から日本へ輸入を開始する計画だ。双日と豊田通商は、ベトナム北西部のレアアース鉱床の開発に乗り出す。これは国営資源会社との共同事業で、11年に操業を開始する。さらに三菱商事も採掘を目的として、ブラジルの鉱山で事業化調査を進めている。

 レアアースとはレアメタル(希少金属)の一種で、ネオジム、ディスプロシウムなど17種類の元素の総称。埋蔵量は多くても技術的な理由などから取り出すことが難しいため、特に希少性が高い。他の金属素材の性質を変える特徴を持っており、金属にレアアースを混ぜると、強度や磁力、耐熱性が増す効果がある。「産業のビタミン」とも呼ばれ、永久磁石や2次電池、研磨剤などには必須の素材だ。

 だが、その市場規模は年間十数万トンしかない。ベースメタルの代表格である銅の世界生産量と比べると100分の1、金額ベースでも1000億円程度。金属資源ビジネスとしては極めてニッチである。にもかかわらず、大手商社がこぞって確保に走るのはなぜなのか。

 いちばんの理由は「日本のこれからの産業に不可欠」(双日の化学品・機能素材部門事業推進課課長、橋本紀行氏)だからだ。レアアースを混ぜた磁石などは、家電や産業用機器の省電力化に大きな役割を果たしてきた。さらに近年のエコカー市場拡大がニーズに拍車をかけた。ハイブリッド車や電気自動車の心臓部である駆動用モーターには、ネオジムやディスプロシウムを使った強力かつ耐熱性の高い高性能磁石が欠かせないのだ。省エネ社会実現に向けて、その重要性はがぜん高まっている。

 加えて、脆弱な調達態勢も背景にある。現在、レアアースは実質的に中国が唯一の生産国。かつて米国が最大の生産量を誇ったが、中国による安値輸出で他国は次々と生産中止を余儀なくされた。1990年代後半以降は中国が一手に世界供給を担い、日本も消費量のほぼ全量を中国からの輸入に依存している。

いびつな中国への依存 危機感高める自動車業界

 ところが、その中国がレアアースの輸出規制を年々強めている。外国企業によるレアアース鉱山の開発を禁止する一方、04年から国が輸出数量を管理・制限する制度も導入。輸出割当数量の削減が続き、今年の割当枠は05年の7割程度にまで減った。06年からは輸出に関税を課し、昨年は税率を一挙に従来から倍の20%台に引き上げた。今年夏には現地メディアが「中国政府は今後、レアアースの輸出を禁止する」と報道し、日本でも業界関係者を慌てさせ、経済産業省が中国政府へ事実確認に動く騒ぎに発展した。当局は輸出禁止を否定したが、さらなる輸出枠の削減が確実視されている。

 今や「世界の工場」となった中国は、レアアースの消費量も世界最大。急激な経済・産業発展に伴って、その消費量が激増しており、中国政府は輸出を削り国内産業に回したい。また、自国内で豊富に有するレアアース資源は産業戦略における強力な“武器”にもなる。ある業界関係者は「中国政府は、日本のハイテク加工産業の技術を欲しがっている。レアアース輸出禁止もちらつかせながら、自国内に有力企業を呼び込むつもりだろう」と解説する。

 こうした中国の動きを受けて、リスクの低減を図ろうと大手商社が調達ルート確立に動いているわけだ。一方、エコカーに未来を託す自動車業界はことさら危機感を強めており、中でも活発な動きが見られるのが、ハイブリッド車で先行するトヨタ自動車。昨年末、同社傘下の豊田通商は、インド産レアアースの販売権を持つ国内専門商社を買収。双日とのベトナム鉱床開発に加えて、インドネシアでもスズ残渣からの資源回収を検討している。他社も同様で、ある大手自動車メーカーは取引先に対し、「必要なレアアースが確保できるなら、山の一つや二つ買ってもいい」とさえ言い切っているほどだ。

 実は、中国は世界最大の埋蔵国であるにもかかわらず、さらなる資源確保を狙い、国外の権益確保にも動いている。これは中国がレアアースを「21世紀の戦略資源」と見据える証拠だろう。エコカーをはじめとする次世代産業で世界屈指の技術力を誇る日本。強みを最大限に発揮するうえで、希少資源の安定確保が大きなカギを握っている。 (渡辺清治 =週刊東洋経済)

レアアースを探し求めて内モンゴルに豊富にある資源

2009.10.16(Fri)Japan BusinessPRESS

(英エコノミスト誌 2009年10月10日号)

中国は、多くの製品に必要不可欠な一部の鉱物資源の市場を完全に押さえた。

スマート爆弾とユーロ紙幣とヘッドフォンに共通するものとは何か? 実はこれらはすべて、レアアース(希土類)を使用している。

 レアアースとは、あまり知られていない17種類の化学元素の総称で、年間売上高は合計しても20億ドルに満たない。しかし、レアアースがなければ、数兆ドルの規模がある産業が立ち往生してしまうのだ。

 レアアースのリン光性特質と磁性特質は、携帯電話や携帯音楽プレーヤー、プラズマテレビなどの電子ディスプレーに必要不可欠だ。レアアースは、風力タービンやエネルギー効率の高い照明器具、そして電気自動車のバッテリーなど、急増している環境対策商品の生産にも使われている。

 ほとんどのレアアースは実はそれほど希少ではないが、ウランに汚染されていないレアアースを採掘に値するほど集中した形で見つけることは困難だ。世界の供給量の約95%は中国が占めており、その生産は国営の内蒙古包頭鉄鋼稀土高科技が独占している。

レアアースは「中国の石油」

 「中国人は西側諸国より数十年も早く、レアアースの戦略的な重要性を認識していた」。オーストラリアのパースに本社を置くアラフラ・リソーシズのアリステア・スティーブンス氏は言う。ケ小平氏は、レアアースは中国にとっての石油になると断言し、1980年代半ばにレアアース採掘の積極展開を促した。

 すると価格が急激に下落、米国の既存のレアアース鉱山は価格競争に負けて廃業を余儀なくされた。

 中国の産業界は今、レアアースの生産量全体の約3分の2を消費している。アナリストらは、今後2〜3年内に中国の国内需要が国内の全生産量を使い果たすようになると予想している。中国政府は減りゆく余剰在庫を守るために、レアアースに課税し、輸出割り当て(クオータ)を過去最低水準まで引き下げるなどして、備蓄を積み上げている。

 今年、中国政府がまとめた報告書は、最も手に入りにくい一部レアアースについて、全面輸出禁止を検討することも示唆していた。トヨタ自動車と三菱商事は将来の供給に大きな懸念を抱き、新たなレアアースの鉱床を探すべく、カナダ企業と提携した。

 米国下院は、米軍のサプライチェーンにおけるレアアースの役割について報告書をまとめるよう指示を出した。

 こうした背景から、鉱業企業は一斉にオーストラリア、北米、南アフリカで新たな鉱床探しに動き出した。鉱業企業ライナス・コーポレーションは今月、中国以外で最大のレアアース埋蔵量を誇る西オーストラリアのマウント・ウェルドの鉱床開発に向け、4億5000万豪ドル(4億米ドル)の資金を調達した。

 今年、中国国営企業によるライナス買収計画は失敗に終わったが、中国は今後何年も、レアアース市場を牛耳ることになるだろう。マウント・ウェルドの操業開始は2011年以降で、その他数カ所の有望なレアアース鉱山の開発は、まだ計画段階にある。

 レアアース関連株にカネをつぎ込んでいる投資家は、こうした動きも一向に気にならないようだ。レアアース関連の鉱業企業12社で構成する株価指標は今年、600%以上も高騰してきた。ある会社の株価は4000%以上も暴騰している。

高騰を演じるレアアース関連株

 中でも大きな値上がりを示したのがカナダ企業で、アラスカとケベックで「中重希土」の埋蔵量が多い鉱床を所有する企業だ。

 中重希土は、もっと一般的な「軽希土」の30倍の価値がある。例えばジスプロシウム、またはテルビウムをほんの少量使うだけで、バッテリーは高温下での性能が向上する――電気自動車には必需品だ。

 こうしたレアアース熱について、少なくとも熱狂の一部はおよそ論理的とは言えないと、金属アナリストのメリル・マクヘンリー氏は考えている。レアアース熱は、中国によるさらなる輸出制限強化に対する懸念と同じ程度に環境技術の将来に賭けるものであり、いずれも確実なものではないと、カナダの鉱業企業のある役員は認めている。

 レアアース企業の動きを追跡するウェブサイト「カイザー・ボトム・フィッシュ」を運営するジョン・カイザー氏曰く、投機的な熱狂を煽っているのは、2大レアアース消費国である中国と日本以外の投資家だという。

 結局のところ、コモディティー(商品)バブルはさして希なことではないのである。

2009 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。

レアアースの輸出制限に懸念 各国が「脱中国」を図る

2009年10月04日 大紀元

 【大紀元日本10月4日】ハイブリッド自動車のバッテリー、風力発電機、光ファイバー通信、太陽光パネルなどを含む電気・電子機器に欠かせないレアアースは、世界産出量の95%以上が中国にある。レアアースの埋蔵量が世界一(約3600万トン)の中国は、今年4月「国内産業を保護」を理由に、レアアースの輸出量制限を実行した。将来供給不足を強く懸念する各国が相次ぎ自国でのレアアース開発プロジェクトを開始し、さらに輸入先を中国から他の国に移しつつある。

 レアアース埋蔵量が世界2位(約1600万トン)の米国では、衆参両議院が国防省に対して、米軍の一部の武器製造がほぼ中国産出のレアアースやレアメタルに依存している現状を再検討するよう求め、国防予算関連法案を修正している。

 米国に本社を置くレアアース採掘大手のモリコープ・ミネラルーズ(Molycopy Minerals)社は、カリフォルニア州にあるマウンテンパス鉱床のレアアース採掘を再開している。1990年代米国が中国から低価格でレアアースを大量輸入し、市場が供給過剰となったため、同鉱床は閉鎖された。報道によると、マウンテンパス鉱床のレアアース埋蔵量は430万トンに達する。

 一方、埋蔵量世界3位の豪州では、探鉱大手ライナス(Lynas )社とアラフラ・リソーシス(Arafura Resources)社がそれぞれ、すでに同国の西オーストラリア州中央部「マウント・ウェルドレアアースプロジェクト」と北部のノーザンテリトリー州「ノーランス・レアアース・プロジェクト」開発に着手している。両プロジェクトを合わせて、今後年間4万トンのレアアースが産出される見込み。

 豪州政府の外国投資審査委員会(FIRB)は9月24日、中国有色鉱業集団によるライナス社への買収申請について、中国有色に対して出資比率を50%以下に抑えるとともに、送りこむ取締役の人数を全体の半数以下にするよう求めた。これを受けて、中国有色はライナス社への買収を断念したという。中国有色は今年5月、ライナス社との間で、同社株式の51%を2億5200万オーストラリアドルで獲得することで合意していた。

 これまで、中国有色は豪州政府当局に対して、買収申請を3回も求めたが、審査結果公表の延期が繰り返されていた。関係者は、豪州政府は中国企業の買収案による世界レアアース生産構造への影響を強く警戒していると分析する。

 また、その他の主要レアアース産出国であるカナダ、インド、ロシアと南アフリカもそれぞれレアアース鉱山開発を行っている。

 日本では、人気のハイブリッド車「プリウス」を生産するトヨタ自動車グループ企業の豊田通商は9月上旬に、2010年後半からインドからレアアースを輸入する権利を獲得したという。また、新たな供給先として、豊田通商は昨年末にベトナムとの間で、鉱山開発に関する提携を結び、2011年から年間5000トンの供給が可能となる。また、住友商事は8月上旬に、カザフスタンの国営原子力公社のカザトムプロム社とウラン鉱石残渣からレアアースを回収することで合意したと発表した。

 AFP通信社によると、通産省資源エネルギー省は日本の先進技術産業の競争力を保護する目的で、20年間実施してきた金属資源保障政策を修正し、日本のレアアースを含むレアメタルの貯蓄量を拡大する方針で調整しているという。(報道・張哲)

カザフスタン・カザトムプロム社とレアアース回収プロジェクトに着手

2009年08月12日 住友商事株式会社

〜政府、「レアメタル確保戦略」に基づき集中的・戦略的に支援〜

 住友商事株式会社(取締役社長:加藤進、本社:東京都中央区、以下:住友商事)は、カザフスタンの国営原子力公社カザトムプロム社(社長:シュコルニク社長)とウラン鉱石残渣からレアアースを回収する事業に合意しました。両社が協力してカザフスタン国内に存在する残渣からの回収事業を独占的に行い、新たなレアアース資源ソースの確立に乗り出します。

 住友商事は、すでにカザトムプロム社と日本初のウラン鉱山開発事業を推進しており、同社との2件目の共同事業になります。

 このレアアースにはハイブリッド自動車や電気自動車のモーターに欠かせないディスプロシウムやネオジムが豊富に含まれており、今までほぼ全量を中国から輸入してきましたが、本件によりカザフスタンが新たな供給源となる可能性が出てきました。

 具体的には、2009年末までに合弁会社を設立し、カザトムプロム傘下のウルバ冶金工場の既存設備を活用して、ウラン鉱石残渣からのレアアース混合物の回収事業を立ち上げる予定です。

 まずは、2010年には年間3千トンのレアアース分離品の生産体制を確立し、将来的には現地でレアアースを使用した高付加価値品の一貫生産を行うことを目指します。

 カザフ国内には、かつて露天掘りで採掘されたウラン鉱石残渣が大量に存在しています。

 初期調査の結果、それらの残渣には、今後ハイブリッド自動車や電気自動車の普及により必要不可欠となり、需要の急増が見込まれるディスプロシウムやネオジム(注:強力なモーターに使用)が豊富に含まれていることが確認されています。

 今回の事業は、既存の残渣からレアアースを回収するため、新規に鉱山開発を行う場合と比較して、 (1)短期間での生産開始が可能、(2)環境負荷が低い、(3)開発コストが低減できるなど、数多くのメリットがあります。

 一方、レアアースを含むレアメタルの安定供給は、我が国製造業の国際競争力の維持・強化の観点から極めて重要です。政府は7月に「レアメタル確保戦略」を策定し、今後需要増が見込まれる新エネ・省エネ製品の動向などから必要とされる優先度の高い鉱種について、集中的・戦略的な取り組みを実施するための枠組みを整備しました。

 この観点から経済産業省資源エネルギー庁や石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、本件について、レアアースを回収する技術開発への支援を決定しました。今後も、融資など、本プロジェクト成功へ向けさらなる支援を検討することとしています。

世界が中国のレアアースを乱開発

2009年04月15日 「人民網日本語版」

 レアアース(希土類)の過度な開発問題について、全国人民代表大会(全人代)代表の氏が全人代に提出した「レアアース生産・輸出の厳格な規制を求める建議」が、社会各界から幅広い注目を集めている。「北京科技報」が伝えた。

 中国のレアアース生産量は2005年、世界の96%を占め、輸出量で世界一となった。中国で生産されるレアアースの60%は輸出され、中国は世界でも唯一様々な等級、品種のレアアース製品を大量供給する国でもある。中国はコストにこだわらずに開放的に世界にレアアースを供給しているといえる。国家発展改革委員会の報告によると、中国は世界の需要量の2倍以上に相当する年間20万トン以上のレアアースを生産している。

 周氏は、レアアースは世界の平和と国の安全に関わる戦略的金属だと指摘する。優れた光電磁などの物理的特性をもつため、他の素材とともに性能の異なる新素材を形成し、その他の製品の品質と性能を大幅に高めるという機能をもつ。例えば、戦車・航空機・ミサイルに使われる鋼材やアルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金の戦術的性能を大幅に向上させる。

 「しかし中国はレアアース大国であるにも関わらず、これまでずっと他国のために貢献してきた」と周氏は懸念する。製造業と電子工業によって発展してきた日本と韓国は資源に乏しいため、レアアースに依存していることは言うまでもない。毎年中国は50%以上のレアアースを日本と韓国に輸出している。

 レアアースの埋蔵量が世界第二の米国は早くから国内最大のレアアースが埋蔵するマウンテンパス鉱山を封鎖、モリブデンの生産も停止し、毎年中国から大量のレアアースを輸入している。西欧諸国の埋蔵量はもともと少ないため、中国の重要な顧客となっている。彼らは生産に必要な分以外にも、政府の割当枠を超過してまで購入し、各自の倉庫に保管している。こういったやり方は日米韓などで長年続けられている。各国は購入のほかに投資などの方法を通じて中国の法律をかいくぐり、レアアースの開発に参与している。

 いかにレアアース資源を守るかについて、周氏はレアアースの生産・販売・輸出入を専門に管理する国家機関を立ち上げ、統一の関連政策や法規を制定し、厳格な管理を実施しなければならないと指摘する。生産量、輸出量・輸出先を規制する政策を厳格に実施し、レアアース資源が戦争目的に利用されるのを防ぐ必要がある。特に核兵器やミサイル、軍用機、原子力潜水艦など軍事装備を有する国へのレアアースの輸出を制限することだ。

 周氏はまた、「レアアース業界を規範化し、中国での個人採掘に対する有力な対策を立て、閉鎖すべきところは閉鎖し、合併すべきところは合併し、無断での輸出行為を打撃しなければならない。3年以内に、レアアースの輸出量を現在の10万トン前後から2、3万トン前後に減らし、レアアース金属の高利潤と持続可能な発展維持に向け、中国は長期的なレアアースの価格決定権を確保しなければならない」と強調する。(編集KA)


レアメタル権益を確保せよ 商事・物産、譲れぬ安定供給

2008/11/24 FujiSankei Business-i

 総合商社がレアメタル(希少金属)確保に奔走している。技術立国日本にとって、レアメタルはハイブリッド自動車の駆動モーターや液晶パネルなどハイテク製品に欠かせない素材。世界的な景気後退で価格は下落傾向にあるが、将来的には新興国の需要拡大による需給逼迫(ひっぱく)の構図は変わらない。その多くが中国や南アフリカなど一部の資源国に偏在しているため、新興国の資源ナショナリズムの動きと相まって安定供給への危機感はぬぐえない。

 三菱商事は電気自動車(EV)のバッテリーに必要なリチウム確保に向けて南米のボリビアで権益確保に動く。三井物産はカナダや豪州でレアアース(希土類)鉱山の権益確保を目指し、調達先の多様化を進める。政府も石油や天然ガス同様に重要資源に位置づけ、民間の動きを支援する方針だ。

 ≪EV普及の“代償”≫

 「電気自動車のビジネスでバリューチェーン(川上から川下までの事業網)を構築するには、上流のリチウムの権益確保まで手がける必要がある」

 三菱商事の三島公人・自動車関連事業ユニット室長はこう力説する。同社は三菱重工業とともに大株主として、三菱自動車の再建を支援する。その切り札の一つが、2009年夏に市場投入するEV「i MiEV(アイミーヴ)」だ。初年度2000台、その後は年間1万台を販売する計画だ。

 この次世代EV車普及のカギを握るのが、ガソリンなどに代わる動力源に採用されたリチウムイオン電池の開発であり、その材料となるレアメタルのリチウムの安定確保だ。

 三菱商事の試算によると2015年ごろまではリチウムの供給能力は市場需要を若干上回って推移するが、20年代には技術革新や地球温暖化防止対策を理由に、世界の自動車の半数がガソリンからEVへシフトすると予想。そうなると原料の炭酸リチウムの需要は約40万トンと、現在の生産量の約4倍超に急拡大し、「現状の供給体制では到底追い付かない」ことから、権益確保に動いた。

 第1候補は南米のボリビアだ。リチウム資源の埋蔵量で世界の半分近くを占めるが、高地ということもあって生産面ではまだ手つかずの“宝箱”。ボリビア側もウユニ塩湖周辺でのリチウム生産を検討中で、三菱商事が事業参画を狙っている。

 ≪「脱中国」を模索≫

 「技術立国の日本としては必要な金属で、安定供給を目指し権益投資を進めたい」

 国益も見据えて権益確保を進めるのは、三井物産の佐藤洋一・レアメタル室長。中国などの資源囲い込みで価格が高騰した“レアメタル・パニック”により、取引先から「安定した価格で供給できないか」との要望を受け、07年8月に専門部署を立ち上げた。同社が最優先で調達先の確保を急ぐのは、レアアース、タングステン、プラチナなどを含む白金属の3鉱種。いずれも代替が困難で、生産や埋蔵量が一国に偏っている資源だ。

 特にレアアースのランタン、セリウムはトヨタ自動車の「プリウス」などハイブリッド車(HV)に使われるが、その生産・供給を牛耳るのが中国で、レアアースの市場占有率は98%。ダイヤモンドに次ぐ硬度を持ち、自動車部品などを削る超硬工具の素材に使われるタングステンも中国に大きく依存する。

 中国政府は国内需要を優先させようと、レアアースの事実上の輸出規制に動き、資源の国家管理を強化しており、三井物産は「脱中国」の可能性も探る。日本と貿易面で友好国のカナダや豪州に照準を合わせて、新たな供給先の開拓を進める。

               ◇

 ■VS資源メジャー 政府支援

 “資源小国”だけに、レアメタル確保には日本政府も総合商社の動きを支援する態勢を強化している。

 経済産業省は、南アフリカに資源が偏在し、自動車の排ガス用触媒として欠かせないプラチナ(白金)、液晶パネルに使われるインジウムなど17鉱種を重要で希少性の高い主要レアメタルとして定義。昨年11月には官民合同で南アフリカなどに調査団を派遣し、資源外交を展開した。

 独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)も、ボツワナなどアフリカ南部でのレアメタル権益確保に向け探査を進める。

 スケールメリットという規模を追求する大手商社は、従来は「レアメタルのように規模の小さい商売はなじまない」と権益取得には消極的だったが、レアメタルがハイテク製品の生命線を握り、供給安定に支障が出る事態も想定されることから、方針転換した経緯がある。

 ただ、権益獲得の道のりは険しい。マダガスカルに世界最大規模のニッケル権益を持つ住友商事は、今後の権益確保の見通しとして「すでに資源メジャーの寡占化・囲い込みが進み、今後の優良権益はカントリーリスクの高い国や地域になってくるだろう」と分析する。中国だけでなく、ボリビアも資源はビジネスになるとみて国家管理を進めている。

 その一方で、追い風もある。 米国発の金融危機により「投資ファンドなどが市場から撤退し、権益確保の面では適正評価による交渉が行える環境になってきた」(丸紅)とみる向きもある。

 「レアメタル・パニック」を過ぎて実勢価格に近づいてきた今こそ、権益確保の商機到来と読んでいる。日本が得意とする産業技術、そして技術立国を、素材調達の面では総合商社が支える役割を果たすことになりそうだ。(西川博明)

レアメタル争奪戦激化 廃棄PC、携帯電話は宝の山 “埋蔵大国”日本 資源戦略が鍵に

2008年10月12日 西日本新聞朝刊

 デジタル機器や自動車などの製造に欠かせないレアメタル(希少金属)やレアアース(希土類元素)の争奪戦が激しい。需要増と、最大産出国の中国の輸出規制で価格が高騰した。各国は、廃棄されたパソコンや携帯電話などの山「都市鉱山」からの回収に走る。ところが、世界有数の都市鉱山国・日本は他国に買いあさられるばかり。日本の資源戦略が問われる。 (東京報道部・吉武和彦)

 商社が動いた。三井物産は月内にも、欧米やオーストラリアの廃棄パソコンや携帯電話などから回収した「基板」を米国経由で輸入する。基板には、車の排ガス浄化の触媒に使うプラチナやパラジウム、集積回路(IC)に使う金や銀などが含まれる。同社はこうしたリサイクル原料の需要を「国内で2万トン以上」とみる。20‐40トンの試験輸入から始め、年間約6000トンに増やす意向だ。

 同社は8月、世界最大の総合リサイクル会社「シムスグループ」(本社・シドニー)の発行済み株式19.9%を取得、筆頭株主となった。シムスは世界に事業拠点235カ所を持ち、年間約5万トンの基板を回収。先進諸国に販売している。日本に振り向けるのはその一部だ。

■囲い込む中国

 レアメタルは全31種で多くは中国産。このうち蛍光灯やニッケル水素電池に使うレアアースは世界産出量の98%が中国。新興国の成長に伴い需要が増えると、中国は輸出を規制。2007年には価格が02年比2‐8倍に跳ね上がった。

 独立行政法人物質・材料研究機構の推計では、日本の都市鉱山の埋蔵量は、小型2次電池に使うリチウムが15万トンで世界年間消費量の7.1倍、液晶画面の電極に使うインジウムは1700トンで3.7倍、プラチナは2500トンで5.6倍と、まるで資源大国だ。

 ところが日本が活用策を講じる前に、中国や東南アジアの業者から買いあさられている。日本の都市鉱山に眠る金は、推定で6800トン。世界の天然鉱山埋蔵量の16.1%に当たる「宝の山」だ。

 廃棄物輸出はバーゼル条約で制限されており、業者は「中古家電」として海外に輸出する。その量は年間約600万トンで、半分が中国向けとみられている。輸入した業者は現地で基板から金を回収し金塊にして売却する。

■自治体が始動

 日本の資源戦略は不備が目立つ。テレビ、エアコン、洗濯機、冷凍・冷蔵庫の再利用は家電リサイクル法、パソコンや小型2次電池などの再資源化は資源有効利用促進法(3R法)で規定しているが、携帯電話機やゲーム機は一般廃棄物扱い。

 都市鉱山の有効活用に動きだした自治体や企業も少数ながらある。秋田県は今月、同県大館市が2年前に始めた小型電化製品の回収実験を全域に広げた。北九州市はソニーと提携し9月から実証実験を始めた。東京都は今月、携帯電話の回収に着手した。いずれも基板からレアメタルなどを取り出して事業化するまでにはなお時間を要する。

 年間3億本以上が廃棄される蛍光灯も、蛍光粉に含まれるレアアースの活用へ、回収する仕組みの確立が求められる。

 秋田県の実験を支援する白鳥寿一・東北大大学院教授は「国が都市鉱山の資源利用のシステムをつくることが重要だ」と指摘する。

原子力機構と群馬県産業支援機構 草津温泉からレアメタル回収

2008/10/11 Fujisankei business-i

 日本原子力研究開発機構と群馬県産業支援機構などの共同研究チームは、草津温泉(群馬県草津町)の温泉水から、燃料電池用の新素材としても注目されるレアメタル(希少金属)のスカンジウムを回収することに成功した。スカンジウムはこれまでほぼ全量を輸入に頼っていたが、新たな国産鉱物資源としても注目を集めそうだ。

 スカンジウムは室内外の照明や自動車ランプに使われるなど需要の伸びが著しく、最近では燃料電池の固体電解質材料として注目されている。草津温泉の温泉水には1トン当たり17ミリグラムのスカンジウムが溶け込んでおり、経済産業省の支援を受け、回収技術の開発が続けられてきた。

 酸やアルカリに強いポリエチレン不織布製の基材に放射線を照射し、金属に対して結合力の高い金属捕集布を作った。実験では、温泉水から95%以上のスカンジウム回収に成功。この装置を1000倍の大きさにすることで、国内年間使用量をカバーできる200キロのスカンジウムを獲得することができるという。金属捕集布の化学構造を変えることで、ウラン回収にも応用できる。今後、全国の温泉源で調査を進め、5年以内の実用化を目指す。

憂楽帳:「鉱山」の復活

2008年09月17日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 日鉱金属日立事業所(茨城県日立市)の一角で、貴金属やレアメタル(希少金属)を回収するプラントが動き始めた。今年度末に全施設が完成すればパソコン、携帯電話、家電の廃棄部品から金500キロ、白金200キロ、半導体材料のインジウム6トン、触媒として使われるパラジウム800キロ(いずれも年産)などを生産する予定だ。

 廃棄物を溶かしてまず銅を取り出し「残りカス」の粉末に含まれる貴金属などを、酸やアルカリで溶き、電気分解で回収する。各金属ごとの技術は目新しくないが、同プラントは実に16種類の金属を回収、工程の組み合わせは特許も取得している。「世界的にも例のない規模だろう」(同社)という。

 貴金属やレアメタルは半導体などの材料として欠かせない。国内産出量は限られ、世界では特定国に偏在しているものが多く、争奪戦が激化。リサイクルは国家戦略上も重要だ。

 同社は1905年、日立の小さな鉱山(銅鉱山)を買収して創業。それも81年に閉山した。現代技術で「鉱山」が復活したのは頼もしい。【岸井雄作】

“ごみ”からレアメタル 動き始めた小型家電リサイクル

2008年09月15日 中日新聞

 不用になったデジタルカメラやゲーム機、携帯電話などの電化製品に含まれるレアメタル(希少金属)を回収し、再利用を目指す試みが始まっている。鉛などの有害物質の除去や、ほかの金属の活用もできるとあって、国も推進していく方針だ。 (重村敦)

 秋田県大館市のスーパー「いとく片山店」。入り口付近の買い物かご置き場の横に小型電化製品の回収ボックスが設置されている。のぞき込むと、使用済みのゲーム機や電卓、携帯電話などが見える。買い物に訪れた主婦小林香織さん(37)は「以前、いらなくなったデジタルカメラと携帯電話とCDを入れました。いつでも処分できるので便利です」。

 大館市を中心に展開されている「こでんリサイクル」。こでんとは、小型電子・電気機器のこと。不用になったさまざまな電化製品を回収し、レアメタルを取り出す実験だ。東北大の中村崇教授らのグループ「RtoS(アール・トゥ・エス)研究会」の呼び掛けで二〇〇六年十二月に始まった。

 テレビなどの家電リサイクル四品目を除き、廃家電の多くは、埋め立てられるか、家庭でしまい込まれたままだ。他方、国際的にレアメタルの獲得競争が激化。こうした中、廃家電に含まれるレアメタルの活用が着目されるようになった。

 同時に電化製品に含まれる鉛、水銀などの有害物質の再利用と適切な処理、そして埋め立て量を減らす狙いも。かつて非鉄金属鉱山で栄えた大館市の羽生昇二環境課係長は「逼迫(ひっぱく)する最終処分場の延命とともに、産業創出による地域活性化にもつなげたい」と期待は大きい。

 本年度は県が主体となり、市内と県北部の六市町のスーパーや市役所など二十七カ所に回収ボックスを設置。市民から回収した電化製品は、家電リサイクル会社エコリサイクルの工場で分解し、レアメタルを取り出す。併せて鉄や銅などの金属、有用なプラスチックも回収し、再利用する。

 昨年度の回収実績は、市が粗大ごみの中から集めた電化製品も含め、約一万一千個、約十八トン。レアメタルを含まない製品も多く、あっても微量なため、集めたレアメタルは数キロ程度だが、種類を調べ、蓄積して活用する。十月から全県に取り組みが広がる。

 今後の課題は、回収費用の負担と、金属類を選別して取り出す技術の開発。行政などの支援がなければ採算は厳しい。エコリサイクルの山口潔実社長は「三百種類もある電化製品の選別・分解、レアメタルの回収と、今はどれも手作業。非常にコストがかかり、機械化が必要」と話す。

 家電リサイクル法のように制度化する方法もあるが、RtoS研究会の中村代表は「法律で規制する形ではなく、事業としてやっていける回収の仕組みをつくりたい」と力を込める。

              ◇

 小型電化製品からレアメタルを回収する動きは各地で広がっている。

 北九州市とソニーは今月から、デジカメやCDプレーヤーなどを対象に同様の実証実験をスタート。小学校の一部にも回収ボックスを設置している。

 環境省は二〇〇九年、電化製品の効率的な回収を検討するモデル事業に乗り出す。全国の自治体などを対象に公募。資源エネルギー庁と連携し、小型電化製品にどんな金属が含まれるかを分析し、レアメタルの回収システムの可能性を探る。

 <レアメタル> 地球上の量が少ない、産地が偏るなどにより入手が難しい金属。ニッケルやリチウムなど約30種類あり、携帯電話やパソコン、液晶パネル、ハイブリッド車などのハイテク機器や小型・高性能な電化製品に欠かせない。

レアメタルを共同開発 日本と南アが合意

2007年11月15日 中国新聞ニュース

 【ケープタウン(南アフリカ)15日共同】日本と南アフリカ両政府は15日、自動車や携帯電話などに使われるレアメタル(希少金属)の共同開発や、企業進出の環境整備を進めることで合意する。甘利明経済産業相と南アのムベキ大統領がケープタウンで会談し、協力を進めることで一致。

 希少金属は性能を高めたり小型・軽量化を実現できるなどハイテク製品に不可欠だが、アフリカや中国などに偏在し、日本は大半を輸入に依存している。中国の需要拡大で価格が高騰しており、安定調達が日本の資源外交にとって重要な課題となっている。

 経産相は南ア側と(1)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(経済産業省所管の独立行政法人)を通じ、南アの豊富なマンガン鉱床の中から未開拓のレアアース(希土類)を調査(2)バクテリアを使って、銅を効率的に抽出する技術を共同研究−などで合意。このほか、南アに原子力発電や省エネ技術などを提供し「周辺産業を育成しながら互恵的な関係構築」(甘利経産相)を目指す。

【やばいぞ日本】第2部 資源ウオーズ(2)揺らぐレアメタル超大国

2007/08/19 The Sankei Shimbun WEB-site

 「京都の金閣寺と銀閣寺の間に、21世紀のチタン閣寺を建立できないか」。東大生産技術研究所の岡部徹准教授は、熱い口調で提案する。

 銀灰色に輝くチタンは軽くて強く、さびにくいという、すぐれた性質を備えた金属だ。岡部氏は続ける。「白金やタンタル、ニオブなどで、記念コインをつくって発行するのはどうでしょう」「オールチタンのビッグなクリスマスツリーを建てれば、冬の観光名所ができあがる」

 いずれも新しい提案だ。しかし、岡部氏は観光振興や記念事業に力を入れようとしているのではない。レアメタル資源の効果的な備蓄策のアイデアを示しているのだ。

 レアメタルの日本語は「希少金属」。地上の資源量が少なかったり、精錬が難しい金属の総称だ。チタン、白金、タンタル、ニオブはいずれもレアメタルの仲間である。厳密な定義はないが、17種類の希土類元素を1鉱種として数え、全部で約30鉱種とされることが多い。

 どうして岡部氏は、レアメタルの重要性を叫ぶのか。

 「ハイテクの名で呼ばれる機器類は、ほとんどそのすべてに多種多様なレアメタルが使われているからです」

 液晶パネルの透明電極にはインジウムが、リチウムイオン電池にはコバルトが、パソコンのハードディスク用の小型精密モーターにはネオジムがそれぞれ使われている。

 これらは、ほんのわずかな一例。枚挙にいとまがないという表現がふさわしいのがレアメタルとハイテクの関係だ。

 「レアメタルなしに、現代文明社会は成り立ち得ません」

 そして日本は、世界のレアメタルの25%を使う世界一の消費国。同時にレアメタルの研究開発に関する超大国なのだ。

 電子技術情報産業をはじめ、発光ダイオードやディスプレーを生産する光産業、車の排ガスを触媒で処理する環境産業が今の日本経済を支える。

 だが、その日本の足元が揺らぎかけている。

 レアメタルの価格高騰と入手難が原因だ。レアメタルは、地球上に均等分布していない。産出地域は、中国やロシア、南アフリカなど一部の国に限られている。こうした資源国が、自国の需要を優先するとともにレアメタル輸出を控えだした。従来の輸出奨励策を打ち切り、昨年11月以降、逆に輸出税を増やし始めた中国がその代表だ。

 インジウムの価格は5年間で8倍を突破。高張力鋼に使うバナジウムは6倍を超えた。近年の高騰ぶりは、まさに新興国の経済発展と符合する。

 このため国内企業は必要量の確保に躍起になっている。安定入手のためには、独自技術の公開もいとわないという企業も現れているほどである。日本の製造業は中国などの一部の国に首根っこを押さえられかねない危機に直面している。

中国頼みの怖さ思い知る

 もしも、缶ビールが姿を消すと、日本の夏はどうなるだろう。

 そんな空想に現実感を添える出来事が、国内のアルミ缶の3割を生産している神戸製鋼所で起きた。今春のことである。アルミの強度増加に欠かせないマンガンの必要量を調達できない可能性が生じたのだ。

 神戸製鋼は長期契約によって南アフリカから使用するマンガンの半分の安定供給を受けてきた。残りを、中国からそのつど買っていたが、1トン約2000ドルであった年初の価格が、5、6月には7000ドルにまで急騰したのだ。

 マンガン価格はその後4000ドル程度にまで下がったが、中国頼みの怖さを思い知らされた同社は、南アとの長期契約を増やし、中国からの輸入を10%以下に抑える方向に転換し始めた。

 レアメタル確保のために、苦渋に満ちた決断を下した例もある。高性能磁石用合金を製造する昭和電工の場合である。

 高性能磁石に欠かせないレアメタルがネオジムだ。高性能磁石用合金の性能は、結晶の出来具合に左右される。その結晶の作り方にこそ、昭和電工の競争力の源泉があった。

 「だが、増大する需要をまかなうに足る資源確保のためには、ある程度の技術流出はやむを得ない」(海老沼彰電子材料事業部長)と判断した同社は、ネオジム鉱山を保有する中国企業と合弁会社を設立。2003年末、内モンゴル自治区に国内と同水準の工場を稼働させ、今年7月には中国に2カ所目の工場を設立した。

 「レアメタルの急騰には、国際的な投機筋も関与しています」

 レアメタル専門商社、アドバンスト・マテリアル・ジャパン(本社・東京都港区)の中村繁夫社長が舞台裏の一角を明かしてくれた。

 「石油に比べると市場規模が小さいので、一部の思惑で相場の操作が可能なのです」

 中村氏は資源国や投機筋に翻弄(ほんろう)されやすいレアメタル問題の解決に、資源外交の重要性を説く。

 世界のデジタル革命で日本が先導的な役割を果たし、真の平和維持に貢献する。そのうえで、資源国と同一経済圏を構築し、安定供給の道を開くという長期対策だ。

 「短期対策としては、レアメタル備蓄制度の拡充も必要でしょう」

 国は茨城県高萩市に敷地面積3万7000平方メートルの国家備蓄倉庫を備えている。備蓄の対象はニッケル、クロム、タングステン、コバルト、モリブデン、マンガン、バナジウムの7鉱種だ。

 国が備蓄している7鉱種は重要だが、金を出せば手に入る。その一方、インジウムなど、IT(情報技術)時代に不可欠な鉱種の備蓄がない。これらは現代の軍事技術にも不可欠だ。「元素政策の転換が必要です」と中村氏は語る。

 日本政府は6月からレアメタルの安定供給対策に乗り出した。従来の備蓄一辺倒から、リサイクルや代替材料の開発、鉱山開発への公的支援の強化策などを盛り込んだことは評価されている。

 しかし、代替材料の開発には時間がかかるうえ、実効性も不透明だ。

 中村氏は「直面しているのは、かつてのオイルショックのエネルギー危機と異なるレアメタル危機だ。日本人はデジタル時代の新たな危機を実感していない」と警鐘を鳴らしている。 (長辻象平、飯塚隆志)

希少金属 南アと開発 近く合意 政府、資源外交強化へ

2007年08月15日 東京新聞朝刊

 政府は十四日、家電製品などに不可欠な希少金属(レアメタル)や油田の開発を目指す資源外交を強化する方針を固めた。南アフリカと希少金属の共同開発や技術協力で近く合意する見通し。原油確保では中南米諸国に協力を打診する。

 日米欧の景気拡大や新興国の経済成長によって、希少金属や原油の需要は世界的に拡大。価格も上昇しており、資源の安定確保にはアフリカ、南米、中央アジアなどの資源国との関係強化が必要と判断した。

 中国がアフリカ諸国との首脳外交で原油などの資源確保を目指しているが、日本は技術力や産業基盤整備などをてこに対抗する考えだ。

 経済産業省や大手商社は九月にも南アフリカに代表団を派遣。希少金属の共同探査に合意し、開発の具体化に動きだす。南アフリカは、自動車部品などに使うプラチナでは世界生産量の八割を産出。特殊鋼などに欠かせないクロムやバナジウムも四割を占める。代表団はニッケル、コバルトを埋蔵しているマダガスカルの訪問も検討する。

 アフリカ諸国との資源外交で先行する中国は、希少金属の産出国でもあり、日本などに輸出もしてきた。だが、工業生産の拡大によって、中国国内での利用が増加。最近は希少金属の輸出を抑制しており、日本の産業界は危機感を強めている。

4種積み増し、3種売却要求へ レアメタル備蓄で経産省

2007/06/10 The Sankei Shimbun

 総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)の「レアメタル対策部会」の報告書案で、備蓄対象になっている7種の希少金属(レアメタル)のうち、タングステンなど4種については積み増し、ニッケルなど3種については売却するよう求めることが9日、わかった。また、7種以外についても状況に応じた備蓄を求める。11日の対策部会に提出される。不足気味のレアメタルの価格は高騰しているが、報告書は市場価格に影響を与える可能性がある。

 レアメタルは電子部品や鉄鋼生産などに欠かせない31種類の希少金属の総称。安定供給を確保するため日本では備蓄制度を定めており、7種について60日分の備蓄目標を掲げ、30〜40日分程度備蓄している。

 しかし、電子部品などの生産量の増加に伴いレアメタルの消費量が急増。この一方で、中国を始めとした産出国が輸出抑制策や課税強化に乗り出した結果、備蓄はおろか、供給不安のものも出始めており、ここ2、3年で価格が数倍に急騰しているものもあり、対策が必要となっていた。

日本磁力選鉱、非鉄金属の再生事業強化

2007/06/07 NIKKEI NeT

 リサイクル事業の日本磁力選鉱(北九州市、原田光久社長)は、北九州エコタウン(北九州市若松区)内にある非鉄金属リサイクル拠点「ひびき工場」の2期事業に着手する。6億5000万円を投資して新プラントを建設。廃家電や廃自動車から鉄やアルミ、銅などを回収する。2008年1月に操業を始める予定。

 新プラントは既存工場の隣接地に建てる。延べ床面積は2410平方メートルで、年間処理能力は7200トン。破砕した金属やプラスチックの混合物を比重選別したり渦電流選別したりする。電子基板からは鉄やアルミのほか希少金属を回収する。被覆銅線から銅を回収する設備も備える。

 ひびき工場は現在、主に家電のラジエーターから鉄や銅を回収している。廃家電や廃自動車は中国などアジアに流出するケースも目立つが、日本磁力選鉱は高性能のリサイクル技術で資源の国内循環を目指す。銅やアルミなどが高騰しているため、事業の採算性も十分あると判断した。

ここでも問題の“震源地”は中国〜書評「レアメタル資源争奪戦」

2007年05月31日 SAFETY JAPAN /L-Cruise/ BPnet Life Creative Site

 あなたは「レアメタル」という言葉を聞いて、具体的なイメージを思い浮かべることができるだろうか。レアは「まれ」、メタルは「金属」だから、その意味は「産出量の少ない金属」だろうと予想はつく。たぶん「合金ではない純粋な金属元素だろう」というところまでは推理できるだろう。

 では具体的にどんな金属がレアメタルなのか、すぐに名前を言えるだろうか。

 金属の名前を挙げろと言われれば、鉄、アルミニウム、そして金、銀、銅は誰でも言えるだろう。ではそれ以外は? 「ステンレス」は、鉄系の合金であり金属元素ではない。そして、今まで名前の挙がった金属は、すべてレアメタルではない。

 チタン、ニッケル、コバルト、リチウム、クロムあたりを思い浮かべることができたら、立派なものだ。これらはレアメタルである。しかし、レアメタルの種類は実はもっと多い。

 あなたが名前を思い浮かべることもできないようなレアメタルたちは、今や産業に欠かすことができない素材となっている。しかもそれらは産地や産出量が限られており、今や入手が加速度的に困難になりつつある。レアメタルを必要な量だけ確保できるかどうかが、日本の製造業の未来を左右しかねない事態になっているのだ。

製造業、省資源で世界に先行・金属高騰で生産改革

2007年05月22日 SNIKKEI NeT

 国内製造業が非鉄金属やレアメタル(希少金属)の価格高騰に対応、使用金属の見直しに乗り出した。トヨタ自動車は新型車の銅使用量を1割削減、JFEスチールなどはニッケルを使わないステンレス鋼を増産する。製造業は1970年代の石油危機を機に省エネ技術の開発を加速、競争力をいち早く高めた。新興国の成長を背景にした金属資源の需給ひっ迫を受け、「省資源」にも世界に先駆けて取り組み、国際競争力を維持・向上させる。

 製造業大国の日本は非鉄やレアメタルの消費大国で、世界需要に占める日本の消費量は電線などに使う銅で7%、ステンレス鋼の材料となるニッケルで14%、液晶テレビのパネルに使うインジウムで60%に達する。世界需要が拡大する中で銅の国際価格はこの1年あまりで6割上昇、ニッケルは3倍超になり、各種製品のコスト増要因になっている。


レアメタル新世紀/<1>中国が輸出規制強化 - 日本の資源確保困難に

2007/04/25 日刊産業新聞
 

 日本の基幹産業である鉄鋼、自動車、家電産業にとって「ビタミン」の役割を担うレアメタル。日本国内に採掘可能なレアメタル資源はなく、ほぼ全量を海外から輸入している。ただ、日本のレアメタル貿易は現在、大きな転換点に差し掛かっている。世界最大の供給国である中国の輸出規制強化を受け、資源確保が困難になっている。レアメタル消費国の日本は今後、需要拡大にどう対応していくのか。

  「レアメタルは日本にとっても世界全体の産業発展にとっても必要不可欠な資源」

  甘利明・経済産業大臣は今月12日、中国の温家宝首相と共に来日した馬凱・中国国家発展改革委員会主任と会談し、レアメタルの安定確保が重要な課題であることを強調した。

  馬主任もレアメタルの重要性を認め、今後は日中レアアース交流会議などを通じて、議論を深めていく方向性を確認した。

  温家宝首相の来日により雪解けが期待される日中関係。ただ、資源分野、とくにレアメタルに関しては一筋縄ではいかないようだ。

  日本は世界最大のレアメタル消費国だが、ほぼ全量を海外から輸入している。とくに希土類、タングステン、アンチモンは90%以上を中国から輸入している。バナジウム、モリブデン、インジウムなども中国への依存度が高い品種だ。

  これらのレアメタルは、製品の特性を向上させる目的で、鉄鋼や電子部品材料などに使われる。鉄鋼、自動車、家電など日本の基幹産業は、レアメタルに支えられているといっても過言ではない。

  中国のレアメタル輸出政策はここ数年、「促進」から「規制」へと大きく舵を切った。

  その一つが輸出増値税の還付撤廃。レアメタル輸出による外貨獲得を目的に設置された増値税の還付は、05年以降段階的に引き下げられ、昨年12月に完全撤廃された。

  還付撤廃は輸出業者にとって増税となるため、その分が国際価格に上乗せされた。アンチモンやタングステンの国際価格は05年以降2倍以上になった。輸出業者の便乗値上げも加わったことから、「中国政府の高値誘導策」との見方もあった。

  さらに、昨年10月の委託加工貿易の禁止や本年1月の輸出税導入。「規制強化の流れは止まらない」と、アドバンストマテリアルジャパン(AMJ、東京・港)の中村繁夫社長は指摘する。

  中国の生産シェアが80%以上の希土類、タングステン、アンチモンには毎年、輸出割当量(EL)が設定される。タングステンとアンチモンは今年も約3%削減が決まった。希土類も昨年に続き10%削減が濃厚で、「輸出禁止の動きもある」(AMJの中村社長)という。

  中国政府は3月9日、インジウムとモリブデン輸出を申告制にすることを正式に通達した。「今後はEL制が導入されるだろう」と、国内モリブデン生産者は警戒感を強める。

  EL制が導入されている希土類、タングステン、アンチモンは中国の寡占状態。それ以外に大きな供給元がないため、国際価格は中国の思惑次第で大きく変動する。

  たとえば希土類元素のネオジムは、永久磁石の材料で需要が急増している。電装化が進む自動車やハードディスク駆動装置の用途拡大が背景にある。

  中国の供給が減少傾向にあるため、国際価格は急騰。現在の酸化ネオジムはキロ25ドル(FOB)と05年比3・5倍になっている。

  インジウムやモリブデンの世界シェアも高いが、カナダ、韓国、チリなどの生産国があり、価格への影響はそれほど大きくない。

  「両高一資」。中国語でエネルギー消費や環境汚染の度合いが高く、資源に関係したものという意味だ。これが現在の中国の輸出規制のキーワードになっている。

  1年前は価格上昇を意図する側面もみられた中国の輸出政策。昨秋以降の政策では自国資源の「保護」をより鮮明に打ち出している。それは日本のレアメタル資源確保が、一段と難しくなることを意味している。(増田正則)

レアメタル新世紀/<2> 世界に広がる資源争奪戦 - 脱・中国めざし模索

2007/04/26 日刊産業新聞
 

 日本のレアメタル産業が注視すべき点は、中国の輸出規制強化だけではない。中国は今、急速な経済成長に伴う内需拡大を背景に、「供給国」から「消費国」へと変わりつつある。13億人分のレアメタルを確保するため、中央アジアや東南アジアなど周辺国の資源にも触手を伸ばし始めた。一方の日本も新たな供給国の開拓に乗り出している。かつて需要と供給の関係だった日本と中国。レアメタル資源争奪戦の舞台は世界に広がっている。

  中国南部の江西省がん州市。現在、ここでは昭和電工が現地企業と合弁で工場を建設している。モーターやハードディスク駆動装置などに使う希土類磁石合金を製造する。工場は8月に完成する予定。

  同社は03年にも、北部の内蒙古自治区で希土類磁石合金の合弁工場を設立した。需要の急増により年産能力1000トンの工場はフル生産している。

  合弁相手は両拠点とも中国の希土類生産者。磁石の主原料であるネオジムやジスプロシウム、テルビウムなどの確保が目的だ。

  中国企業との合弁により、レアメタル資源の安定確保をめざす動きは他にもある。

  超硬工具メーカーのタンガロイは昨年12月、中国のタングステン粉末メーカー南昌硬質合金有限責任公司への資本参加と技術供与を発表した。親会社の五鉱有色金属股フェン有限公司を通じて、原材料であるタングステンの安定供給が可能と考えた。

  ただ、中国政府の急速な輸出規制強化に危機感を抱く日本企業は、新たな供給国の開拓に乗り出している。

  レアメタル専門商社のアドバンストマテリアルジャパン(AMJ)は昨年、北南米地域に駐在事務所を開設した。

  中国、ロシア、中央アジアに特化したビジネスが売り物だったが、「今後の安定供給に支障を来す可能性が高い」(中村繁夫社長)として、供給基地の拡大を決めた。

  オーストラリア南部のニューサウス・ウェールズ州。下期から操業開始を計画しているヒルグローブ鉱山は、金とともにアンチモンも生産する。

  同鉱山のアンチモン年産量1万トンは、世界生産の推定10―15%。中国以外の有望な供給元として、三酸化アンチモンの国内最大手、日本精鉱などが関心を示している。

  「中国産を手当てできなければ金属ヒ素の供給は止まってしまう」。高純度金属ヒ素の世界最大手、古河電子の小長谷保平社長は危機感をにじませる。

  金属ヒ素は発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)のほか、携帯電話の電子デバイスなどに使うガリウム・ヒ素半導体の原材料だ。

  金属ヒ素の原料である亜ヒ酸を供給しているのは、中国雲南省近辺などに限定される。ただ、環境汚染を背景とする供給不安が強く、割高な欧州産の使用も検討中だ。

  日本の基幹産業を支えるレアメタルの確保は、今や国家レベルの関心事。独立行政法人・石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は昨年、タングステンなどの資源調査団をベトナムとカナダに派遣した。

  国際価格の急騰により、世界的にレアメタル資源開発の機運が高まっている。中国が世界シェア90%以上を占める希土類だが、米マウンテンパス鉱山、豪マウントウエルド鉱山などの操業開始が予定されている。

  JOGMECにはこうした開発案件を探し出し、「相手国と民間企業の橋渡し役になる」(馬場洋三・希少金属備蓄グループ担当審議役)ことが期待されている。

  ただ、世界のレアメタル資源に注目しているのは日本企業だけではない。

  AMJが輸入代理店を務めるロシア沿海州のプリモルスク鉱山には、中国企業がタングステン精鉱を買い付けに来る。すでに国内資源だけでは急増する需要に対応できなくなっているためだ。

  中国は犬猿の仲であるベトナムの資源にも手を伸ばしているほか、アフリカ諸国へも資源外交の輪を広げている。レアメタル資源を求めて世界に進出する中国。レアメタル資源の争奪戦が世界規模に広がる中、日本は中国以外の供給国の開拓と同時に、新たな道を模索する必要もある。(増田正則)

レアメタル新世紀/<3> リサイクルで資源確保 - 回収技術の開発進む

2007/04/27 日刊産業新聞
 

 世界に広がるレアメタル資源確保の動き。日本も中国に替わる新たな供給基地の開拓を進めているが、そこには大消費国へ転換した中国が国家を挙げて資源獲得に乗り出している。海外のレアメタル資源確保が一段と難しくなる中、日本は得意とするリサイクル技術により資源確保をめざしている。

  秋田県小坂町。DOWAホールディングスの製錬拠点である小坂製錬に、リサイクル原料用の新炉建設の槌音がこだまする。

  DOWAは秋田県内のグループ企業を中心に使用済み家電製品や廃触媒などから、貴金属を含めたレアメタルを回収している。銅、鉛、亜鉛などを含め回収元素は17種類。リサイクル新炉が来年春に稼働すると、回収元素は19種類に増える。

  白金系貴金属メーカーのフルヤ金属(東京・豊島)は、茨城県のつくば工場のルテニウム精製能力を倍増する予定だ。ルテニウムはハードディスク駆動装置向けの需要が急増している。ただ、年産量は25トンと少ないため、国際価格は過去1年間で10倍に急騰した。

  主に亜鉛製錬の副産物として生産されるインジウム。世界の地金生産量は年間約1000トンで、7割強がITO(インジウム・錫酸化物)スパッタリングターゲット材向けに消費される。

  ITOはフラットパネルディスプレー(FPD)の透明電極材料。需要は増加傾向にあるが、新地金の生産量はわずか500トン。最大の生産国である中国産地金の減少も加わり、国際価格は一時キロ1000ドルと03年初比で10倍になった。

  不足分を補うため、日本のターゲット材メーカーは使用済みITOなどからの回収を強化。地金のリサイクル原料比率は最近5年間で50%から70%に上昇した。

  日本が得意とする製錬技術を応用したリサイクル。海外資源の開発とともに、レアメタル資源確保のための重要な戦略として期待されている。

  ただ、現段階で積極的にリサイクルされているのは貴金属などの一部。インジウムはまれなケースで、中には回収の仕組み自体が存在しない場合もある。

  インジウム20トン、タンタル100トン、希土類1200トン、アンチモン900トン…。電子機器に含まれていながら、未回収のまま一般ゴミとして日本で廃棄されるレアメタルは予想以上に多い。

  「捨てないで!それも大切な資源です」。

  秋田県大館市で昨年12月から今年3月末まで行われた社会実験。携帯電話やゲーム機、ACアダプターなどの使用済み小型電子機器を回収するため、人口約8万人の大館市内に約3万5000部のビラが配布された。

  「携帯電話100グラムでは資源にならないが、1トン集めれば十分資源になる」と、この社会実験を主導する東北大学の白鳥寿一教授(DOWAエコシステム)は説明する。

  3カ月間で集まった小型電子機器は4トン。07年度も集荷対象地域を能代市などに広げ回収実験を継続する。最終目標はもちろん、廃棄処分されている電子機器からのレアメタル回収だ。

  レアメタルリサイクルの輪は徐々に広がっている。

  ハイブリッド自動車に使われるニッケル水素電池には、1台当り推定で水素吸蔵合金3・1キロ、ニッケル8・6キロ、コバルト1キロが含まれている。

  水素吸蔵合金の最大手である三井金属は、製造拠点の竹原製煉所(広島県)で使用済みニッケル水素電池から、これらのレアメタルを回収する仕組みを検討している。

  三菱マテリアルは子会社の日本新金属で、超硬合金からのタングステンリサイクルを行っている。

  「バーゼル条約は電気・電子機器廃棄物の国境移動を禁止するのではなく、積極的に行う必要がある」。

  DOWAホールディングスの吉川廣和会長は昨年11月、ケニアの首都ナイロビで開催されたバーゼル条約締結国会議に出席。途上国の廃電子機器は、「(リサイクル技術のある)われわれが有価で回収する」と強調した。

  たとえばインジウムの可採年数は10―20年といわれている。鉄鋼、自動車、家電といった日本の基幹産業が将来も成長するには、地中にある資源以外に、すでに加工された資源にも目を向ける必要がある。そのためには、すべてのレアメタルを回収できる枠組みや技術の確立が重要になる。(増田正則)

レアメタル新世紀/<最終回>重希土類の供給代替/世界埋蔵量評価が急務 - 鉱床求めて南ア実地調査回収技術の開発進む

2007/05/01 日刊産業新聞
 

産総研・鉱物資源研究グループ長 渡辺寧氏に聞く

 中国に替わる新たな供給国の開拓やリサイクル技術開発――日本のレアメタル資源確保の動きは「黎明期」を迎えている。ただ、資源が一部地域に偏在するレアメタルの特性を考えると、海外の資源開発は容易ではない。レアメタルの中でも中国依存度が特に高い希土類。永久磁石向けに需要が急増しているが、磁石の性能を高めるジスプロシウムなど重希土類の資源不足が懸念されている。重希土類資源を研究している産業技術総合研究所の渡辺寧・鉱物資源研究グループ長にインタビューした。

 ――研究内容から。

  「ジスプロシウムなどの重希土類元素が存在する地域や埋蔵量などを明らかにする研究をしている。希土類の資源量は、永久磁石の主成分であるネオジムやサマリウムなどの軽希土類も全て含めると、採掘可能なもので世界に推定8800万トン存在するといわれている。年間消費量は約13万トンだから、開発すれば数百年間分という十分な資源量がある」

  ――なぜ重希土類を研究するのか。

  「軽希土類は世界各地にあるカーボナタイト鉱床から生産されているが、重希土類の含有量は少ない。重希土類は主に中国の花こう岩が風化してできたイオン吸着型鉱床から生産されている、ただ、イオン吸着型鉱床は中国南部に偏在しており、規模はカーボナタイトの100分の1、1000分の1程度しか存在しないため、供給源は極めて脆弱(ぜいじゃく)だ。さらに輸出規制強化の動きから中国からの供給量が減少傾向にある」

  ――中国以外の希土類はどこにあるのか。

  「資源保有国はブラジル、ロシア、米国、オーストラリアだが、生産しているのはロシア、インド、マレーシアなどで、それぞれ年2000―3000トン程度しかない。中国の8万―10万トンと比較すると非常に小さい」

  「希土類価格の高騰により、米マウンテンパスや豪マウントウエルド鉱床が08年に操業を開始する予定だ。しかし、この2つは希土類の量は多いが、カーボナタイト鉱床のため重希土類は少ない。それぞれジスプロシウムの確定鉱量は1000トン弱とみられる。日本のジスプロシウム消費量は年700トン弱だから、2年分にも満たない資源量しかない」

  ――中国以外に重希土類を供給できる可能性はあるのか。

  「中国南部のイオン吸着型鉱床で起こるのと同じ現象が東南アジアで確認されている」

  ――同じ現象とは。

  「温暖で降水量が多い気候の下で、希土類を含む花こう岩の地表付近が風化して粘土層が形成される。粘土鉱物はマイナスイオンを帯びている。そして希土類元素はプラスイオンを帯びているため、電気的に結合し、粘土層に希土類が吸着されて濃縮される」

  「日本の足摺岬などにも希土類を含む花こう岩が確認されている。残念ながら、日本は地表面の粘土層が非常に薄いため、そこに希土類が濃縮しておらず、鉱床として開発できるものはない。中国では地表部の粘土層の厚さが20―40メートルある。これに相当する厚みがないと鉱床として開発できないだろう」

  ――重希土類が多い花こう岩の特徴は。

  「花こう岩の主成分であるシリカが70%以上の花こう岩に重希土類が多い。これらはマレーシア、タイ、ラオス、ベトナムで確認されている」

  ――重希土類の確保には何が必要か。

  「重希土類が多いイオン吸着型鉱床を開発することと、新しいソースを探す必要がある。私たちは後者に力を入れている。そのうちの一つが層状マンガン鉱床というものだ。層状マンガン鉱床の一部に希土類元素が多い鉄マンガン鉱床がある。重希土類の含有量もトン当たり1800グラムあり、現在マンガン鉱石を採掘している鉱山で副産物としてなら経済的にも回収できるだろう」

  「マンガン鉱床は南アフリカ共和国が多い。鉄マンガン鉱床もある。現在は南アフリカ産の鉱石に重希土類が含まれているか分析しているところだ。この結果を基に、調査地域を決めて実地調査を行いたい」

  ――今後の目標は。

  「世界の重希土類の埋蔵量評価と、個々の鉱床でどれくらい重希土類元素があるか見積もることが当面の目標だ。例えば亜鉛鉱石の副産物であるインジウムの埋蔵量は10年分程度といわれているが、しっかり分析すれば埋蔵量が増える可能性もある。日本は消費国として、しっかり資源評価をする責任がある」 (増田 正則)


非鉄金属、軒並み高騰・家電、転嫁の動きも

2007/04/24 NIKKEI NeT

 家電製品や建材に使う金属素材の価格が軒並み高騰している。非鉄では代表的な銅の国内価格が昨年5月の過去最高値に並んだ。ニッケルなども高い。国際市場で中国などの買いが再び活発化しているためだ。レアメタル(希少金属)も値上がりしており、これらを使う加工品や最終製品に値上げの動きも出てきた。

 エアコンなどに使う銅は、日鉱金属の販売価格(山元建値)が1トン100万円と過去最高値。国際指標であるロンドン金属取引所の相場が1トン8010ドルと再び騰勢を強めているほか、為替の円安・ドル高基調を映した。国際相場は2年で約2.5倍となった。

レアメタル国際相場高騰 ビスマス、年初比2倍/カドミも16年ぶり高値

2007/04/17 日刊産業新聞

 レアメタルの国際相場が最高値を突き進んでいる。鉛の代替材として需要が増えているビスマス、ニカド電池向けのカドミウムが先週末に高値を大幅更新。ビスマスは年初比2倍で過去最高値、カドミウムは16年ぶりの高値となった。ともに供給引き締めを背景に、欧州ディーラー筋の投機買いが入っているとみられる。

  現地13日の欧州非鉄金属価格によれば、ビスマス(純度99・99%)は高安値ともにポンド2・50ドル上昇し、13・50―14・00ドルと史上最高値を連続更新した。年初比約2倍の上げ幅はレアメタルの中で最も大きく、投機買いによる急騰とみられる。

  鉛の副産物であるビスマスは、鉛の二次精錬によるリサイクルが進み、鉱石からの一次製錬による生産が上向かず、大幅な増産は望めない。その一方で、欧州RoHS規制で使用が制限されている鉛の代替材として、快削鋼や快削黄銅棒の添加材としての実需が本格化。一時的な増加ではないため、今後の需要も高い水準が続くとみられる。

  国内の需給タイト感も増しており、供給サイドも「これ以上の注文は受け付けられない」(大手製錬メーカー)という状態。不足分は中国からの輸入に依存するしかないが、昨年から中国が輸出抑制姿勢を強めているため、まとまった量の手当ては難しい情勢だ。

  カドミウム(純度99・99%)も先週末、中値ベースで17%値上がりし、ポンド当たり2・70―2・80ドルを記録。1・70―1・80ドルだった年初と比べると中値ベースで約63%高となっている。

  カドミは長年の相場低迷により、欧州などで生産撤退が相次ぎ、供給元の製錬メーカーの数が減少している。一方の需要面においては、主用途のニカド電池はリチウムイオン電池へのシフトが進んでいるものの、インフラ整備が進む中国などで電動工具用の電池需要が根強い。また、夏場にかけて米国市場も上向くことから、先高を見越して買われているようだ。

  現在のビスマス、カドミの相場高騰は、これら需給要因に加え、欧州のディーラー筋による買い占めが拍車をかけているとみられる。また、カドミと同じ電池向けのコバルト(純度99・8%)も、前2品種ほどではないが投機買いが入っていると考えられ、現在ポンド当たり31・00―32・50ドルの最高値を付け、年初と比べて20%以上高い水準となっている。

  セレニウムも先週末、ポンド当たり22―24ドルから28―32ドルまで値上がりし、1年2カ月ぶりの水準を回復。従来用途である複写機の感光ドラムやガラス着色料などの需要は減っているが、快削棒の切削性を向上させる添加材としての実需が上向きつつあるようだ。

日中閣僚会談 レアメタル、重要性で認識一致 協力関係構築へ

2007/04/13 日刊産業新聞

 甘利明・経済産業大臣は12日、来日中の馬凱・中国国家発展改革委員会主任と会談し、レアメタルについて意見交換を行った。このなかで、両国はレアメタルの重要性で認識が一致し、今後協力関係の構築を図っていく。具体的な方策は今後詰めることにし、日中レアアース交流会議などで議論していく考えだ。

  今回の会談は、中国の温家宝首相が訪日したことに合わせ、日中エネルギー閣僚政策対話が実施されたことにより実現したもの。このうち、非鉄金属関連では、日本側がレアメタルを安定供給確保の観点から、テーマの一つに取り挙げた。今回は具体策に関する言及がなかったものの、原則年1回行われる日中レアアース交流会議などを通じ、議論を深めていく意向。

  同会議はこれまで、1988年以来実施し、98年にはレアアースに銅・鉛・亜鉛をテーマに加え、05年にアルミも会議の対象に追加。昨年は会議が開かれなかったが、本年は通例であれば今秋に日本で開催される。同会議でレアメタルを扱った実績はないが、中国に対する日本のレアメタル依存度は極めて高く、従来の情報共有化に関する取り組みに加え、両国の協力関係進展なども模索していくことになる見通しだ。

レアメタル代替品、官民で開発へ・価格高騰で対策

2007/03/29 NIKKEI NeT

 経済産業省はデジタル家電製品や強力な磁石を作るのに必要な希少金属(レアメタル)の代替材料の開発に乗り出す。7月にも非鉄金属メーカーなどと開発を始め、5年後の実用化を目指す。日本はレアメタルの大半を中国やロシアなどからの輸入に頼っているが、世界的な需要拡大で価格が急騰している。似た機能を持つ代替材料が必要と判断した。

 開発するのはレアメタルのうち、液晶テレビの材料に使われるインジウムや、超硬工具を作るタングステン、パソコンのハードディスクのモーターに使われるジスプロシウムなどの代替品。高性能コンピューターでレアメタルの原子配列を解析して似た材料を探したり、強度を増したセラミックスで代替を目指す。

エクストラータ、ライオンオアを買収 約4700億円で ニッケル年産15万トン超

2007/03/28 日刊産業新聞

 スイスの資源大手エクストラータは26日、カナダのニッケル生産大手ライオンオア・マイニング・インターナショナルを46億加ドル(約4700億円)で買収すると発表した。ライオンオア社側も同意しており、買収が実現すればニッケル年産15万トン以上という世界第4位のニッケル生産者となる。世界のニッケル市場はリオドセ(CVRD)、ノリルスク・ニッケル、BHPビリトン、エクストラータの4社で約60%を占めるようになり、寡占化が一段と進むことになる。

市場の寡占化進む 4社で60%

 エクストラータとライオンオア社は、ライオンオア社1株当り現金18・50加ドルの買収提案に同意した。これは、トロント証券取引所のライオンオア社株の23日終値17・49加ドルに5・8%のプレミアムがついている。過去30日間の平均株価に対しては16・5%のプレミアムとなっている。

 ライオンオア社の2006年営業利益は5億3330万米ドル(約630億円)、純利益は4億2850万ドルで過去最高益を記録した。オーストラリアやボツワナ、南アフリカなどでニッケル、金などを生産。07年のグループ全体のニッケル生産量は、前年比30%増の4万4300トンを見込んでいる。

 一方のエクストラータは昨年、加の亜鉛、ニッケル大手であるファルコンブリッジを買収。亜鉛ではテック・コミンコを抜き世界最大手に躍進したほか、ニッケルでも年産11万トン以上の世界第4位に浮上した。

 ライオンオア社の買収が実現した場合も生産規模の順位に変動はないが、05年生産15万2000トンのBHPビリトン(06年12月中間期の生産は9万2000トン)に肉薄する。さらにニッケルの権益も加、ニューカレドニアなどに加え、豪州とアフリカに広がることになる。

 ニッケル資源の上位4社の寡占率は05年の50%から07年には60%になる見通し。ニッケル生産者の勢力図も05年以降大きく変わった。加インコを昨年買収したCVRDが、ロシアのノリルスク・ニッケルを抜き世界最大手となった。BHPビリトンも豪WMCリソーシズを買収して世界第3位になった。

レアメタル回収効率化、廃家電も資源の宝庫――DOWA、三菱マテ=訂正あり

2007/03/23 NIKKEI NeT

レアメタル回収効率化、廃家電も資源の宝庫――DOWA、三菱マテ

2007/03/23 日経産業新聞 YAHOO!掲示板

DOWA、新型炉で19種抽出

三菱マテ、不純物から白金族

 世界的に金属需給が逼迫(ひっぱく)する中、使用済みのパソコンや家電などに含まれる希少金属(レアメタル)を回収する技術の開発が進んでいる。DOWAホールディングスや三菱マテリアルなどは分離が難しかったレアメタルを抽出したり、大規模な設備なしで取り出したりする技術を開発した。製錬に加え、再資源化を事業として確立することを目指す。

 DOWAホールディングスは秋田県の小坂製錬所を来春、世界最高水準の金属回収施設にする。廃家電などからニッケルやガリウム、白金など十九種のレアメタルを回収する新型リサイクル炉を世界で初めて建設する。従来は十六種類しか回収できなかった。

 イオンになりやすさ、蒸発のしやすさは金属ごとに異なり、温度などの条件を微妙に変えて溶かしたり電解したりすると分離する。DOWAは分離が難しいとされるすずやニッケルなども条件を工夫することで取り出す技術を確立した。

 三菱マテリアルは銅鉱に不純物として微量に混じっている白金やパラジウムを取り出す技術を開発した。この技術を活用し、二〇〇七年度からはフルヤ金属などと共同で、廃棄物から様々な白金族金属を回収する技術の開発に乗り出す。将来はハードディスク素材や触媒に使われるルテニウムなどのレアメタルを回収して販売する計画だ。

 東京大学生産技術研究所の岡部徹助教授らは炉を使わずに白金族金属を回収する基礎技術を開発した。マグネシウムやカルシウムなどの金属を蒸気にして廃棄された自動車の排ガス対策用の触媒などに吹き付け、白金表面を合金とする。合金処理を施したスクラップを王水(塩酸と硫酸の混合液)に漬けて白金を溶かし、回収する。

 未処理の白金は王水でもなかなか溶けない。合金処理をして取り出せるようになる。炉など大規模な施設を使わない新手法になると期待される。

 ▼ レアメタル 産業上利用価値が高いニッケル、ガリウム、セレン、インジウムなど三十一種の希少金属をいう。触媒や電池、合金添加剤、半導体、磁性材料などの製造に不可欠。日本は世界の約三割を使用しているといわれる。一般に銅や亜鉛などの主要金属を生産した際に発生する副産物を製錬して生産されることが多い。

非鉄大手の収益、ニッケル高で急拡大・今期

2007/03/17 NIKKEI NeT

 非鉄大手の収益が急拡大している。2007年3月期は住友金属鉱山の連結経常利益が1875億円と従来予想(1560億円)に比べ、300億円強上回る。三菱マテリアルの連結経常利益も前期比23%増の1000億円程度になる見通し。非鉄で経常利益が1000億円台に乗せるのは両社が初めて。中国など新興国の旺盛な需要を背景に、ニッケルや銅など国際商品価格が歴史的な高値圏にあることが、収益を押し上げる。

 住友鉱はニッケルが収益増をけん引する。下期のニッケル価格を1トン1万7600ドル強と想定しているが、現状の実勢価格は平均1トン3万3000ドル前後。ニッケル製錬事業の利益が大幅に増加する。積極的に銅や金などの海外鉱山の権益を取得していることも貢献する。下期の円相場が対ドルで平均117円程度と想定(110円)より約7円安いことも寄与する。

レアメタルが禁輸になる日 中国商務部ウェブサイトが掲載した“本音”

2007年02月14日 NBonline 小笠原 啓

中国商務部のウェブサイトに掲載された問題の記事。このままでは中国が金属資源小国に陥りかねないと強い論調で警告している

 「すべてのレアメタル(希少金属)及び圧倒的多数の製品を完全に輸出禁止商品に位置づけ、高付加価値製品の輸出品についても重税を課すなどしなければ、大量流出の事態を変えることはできない」

 昨年11月、中国商務部のウェブサイトにある記事が掲載された。発信元は中国国営通信社の新華社。「我が国のレアメタルの優位が崩れる─発展戦略の調整が焦眉の急」と題するこの記事では、中国は産出するレアメタルを自国の経済発展のために使うべきだと、強い言葉で訴えている。資源ナショナリズムが中国国内で高まっていることを感じさせる記事だ。冒頭の文章は、記事のエッセンスとも言える部分を日本語訳したものだ。

記事の示唆通りに進む現実

 この記事は中国国内でも業界紙など一部でしか報じられておらず、日本では全くと言っていいほど知られていない。しかし掲載から3カ月、事態は明らかにこの記事が示唆する方向に進み始めている。

 レアメタルは、世界的に生産量が少ない31種の金属鉱物の総称。消費量は鉄や銅に比べてごくわずかだが、ハイテク製品の性能向上に欠かせない素材として、近年注目度を高めている。

 戦後最長の景気拡大を牽引した自動車産業。花形とも言えるハイブリッド車の駆動モーターは、「レアアース(レアメタルのうち希土類17種の総称)」の一種である「ネオジム」を使った磁石なしには動かない。鋼材の切削に使う超硬工具は「タングステン」が原料。液晶テレビのガラス表面に透明電極を作るには、「インジウム」が必要になり、外枠樹脂には、難燃助剤として「アンチモニー」が添加される。

 これら4つの鉱物は、そのほとんどを中国からの輸入に頼っている。資源エネルギー庁によると、タングステンの87%、アンチモニーに至っては94%を中国に依存している。

 しかし中国政府は、昨年からレアメタルの輸出統制策を鮮明に打ち出し始めている。経済発展により、中国国内のレアメタル消費量が増加の一途をたどっているからだ。

 これまで中国は鉱物資源の輸出を奨励するため、付加価値税の一種「増値税」を輸出時に還付していた。しかし還付率は段階的に引き下げられ、昨年9月には還付を撤廃。さらに、11月にはレアアース鉱石など110品目に最大15%の輸出税を課すようになった。今年1月からは、タングステンの中間原料「APT(パラタングステン酸アンモニウム)」にも5%の輸出税をかけるなど、統制範囲を拡大しつつある。

 輸出数量も絞っている。2006年のタングステン輸出許可量は1万5800トンだったが、今年は3%削減する見込み。レアアースに関しても、今年の輸出量は10%程度減る見通しだ。

 価格も高騰の兆しを見せている。昨年後半じりじりと値を下げていたAPT価格は、「今年1月だけで5%以上値上がりした」(レアメタル商社・光正の山本智史・開発営業部リーダー)。

 こうした状況を受け、一部の企業は安定供給元の確保に乗り出した。超硬工具メーカーのタンガロイは昨年12月、江西省のタングステン粉メーカー「南昌硬質合金」への出資と技術供与を決めた。南昌硬質合金の筆頭株主である五鉱有色金属は、中国のタングステン製品輸出最大手。「資源確保力が決め手になった」(タンガロイ)。


レアアース:「安値で輸出するな」命令に

2006/12/20(水) Searchina

 国家発展・改革委員会(発改委)は内モンゴル自治区・包頭(パオトウ)市でこのほど開いた会議で、2007年からレアアースの過剰生産や安値での輸出に対する規制をこれまでより強化することを決めた。20日付で中国鉱業報が伝えた。

 発改委の担当者は「レアアースは世界にわずかしかない戦略物質だ。中国に多く埋蔵されているが、安値での輸出や過剰生産はレアアース産業の健全な発展にとってダメージとなる」と述べた。会議ではレアアースの規制をこれまでの「指導」から「命令」に強化することが決まった。(編集担当:菅原大輔)

天津:レアアースの輸出価格が高騰/h3>2006/11/30(木) Searchina

 天津税関によると、2006年1−10月に天津港から輸出されたレアアースは前年同期比3.8%減の2.7万トンになった。一方、輸出価格が1トン当たり平均で40.25%上昇し3504米ドルになったことから、輸出総額は34.9%増の9462万米ドルに膨らんだ。28日付で中国鉱業網が伝えた。

 中国鉱業網は輸出価格高騰の背景として、中国政府が違法鉱山を2007年末までに整頓する方針を示したことを指摘。また国家資源部が06年4月から新たな採掘許可証の発行を停止し、ネオジウム(Nd)やセリウム(Ce)などの軽稀土の採掘量を7.82万トン、それ以外の中重稀土の採掘量を0.832万トンにするよう定めたことも高騰につながった。国家資源部が示した採掘量は近年の実績より大幅に低い数値だ。(編集担当:菅原大輔)

JOGMEC、希少金属(レアメタル)備蓄物資「ニッケル」を一部売却

2006/11/30 NIKKEI NeT

(1)売却の決定

  独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、国家備蓄(注)を行っているニッケルの売却を決定しました。ニッケルを原料として生産活動を行っている事業者を対象とした一般競争入札により売却を行います。

(注)レアメタル備蓄制度:

  1983年(昭和58年)に創設され、国家備蓄および民間備蓄により構成されており、ニッケル、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、バナジウムの7鉱種を備蓄している。

(2)今回の種類および売却量

  フェロニッケル  総重量 約5,378トン  純分重量 約1,085トン

(3)売却スケジュール

  1)一般競争入札に関する公告 11月30日(木) (経済産業公報およびJOGMECホームページに掲載)

  2)入札説明会        12月11日(月) (於;JOGMEC会議室)

  3)一般競争入札       12月15日(金) (於;JOGMEC会議室)   (入札の参加者は、あらかじめ入札参加資格審査を受ける必要があります。)

( 参考 ) 最近の備蓄物資売却の概要   平成15年度 3回(モリブデン、バナジウム)   平成16年度 6回(マンガン、モリブデン、バナジウム、ニッケル)    平成17年度 1回(タングステン)   平成18年度 2回(ニッケル)

経産省、「資源戦略研究会報告書」を公表

2006年06月15日 nikkei BP net

 資源エネルギー庁長官の私的研究会として昨年12月に設置された資源戦略研究会は、レアメタルなどの非鉄金属資源の安定供給確保のための取り組みのあり方などを記した報告書をまとめた。

 レアメタルを含む非鉄金属は、過去数年間に国際受給のひっ迫や国際価格の高騰が起こっている。また、それらの消費量は世界的に拡大しており、中国では非鉄金属消費が急速に拡大。銅、ニッケルなどについては資源輸入国となり、日本との競合関係が生じる一方、レアメタルについては資源供給国として、重要性が増している。

 これらのことから、報告書では多様な非鉄金属の特性に応じて、資源セキュリティを確保するため、多面的、総合的なアプローチを戦略的に展開すべきとしている。具体策としては、(1)探鉱開発の推進、(2)リサイクルの推進、(3)代替材料の開発、(4)レアメタル備蓄、(5)その他の取り組み、が必要とした。

 探鉱開発の推進では、アフリカなどリスクの高い地域における探鉱開発に対する融資などを積極的に実施。また、偏在が著しいレアメタルの供給源多様化に向け、海外資源調査を推進するとした。

 また、代替材料の開発としては、タングステン、レアアース、インジウムの機能を代替する材料開発に向け、ナノテクの応用技術など、革新的基盤的研究開発への着手が必要とした。さらに、民間企業でも、性能向上や省使用化のための技術開発を推進することを求めている。(日経エコロジー)


レアアース:増値税の還付廃止で輸出減「環境汚染も」

2005/11/17(木) Searchina

 中国からの「レアアース」(希土類)輸出が減少している。2005年1−9月の輸出量は前年同期比3.6%減の5.04万トンだった。16日付で中国有色金属材料網が伝えた。

 レアアースは磁石や蛍光体などに用いられる一群の物質で、ハードディスクの部品にも使われるなどIT製品にも欠かせない。中国はレアアース資源に恵まれているが、中国政府は05年5月から、増値税(売上税)の還付を廃止。輸出量が減少し、取引価格も上昇している。さらに、加工貿易も禁止された。

 価格上昇には、大産地である内モンゴル自治区の包頭(パオトウ)市で、環境汚染により、一時的に生産停止に追い込まれた企業があることも影響しているという。

 05年1−9月におけるレアアースの主な輸出量は、北京市の企業によるものが18.4%、江蘇省の企業が18.3%、内モンゴル自治区の企業が12.7%となっている。(編集担当:菅原大輔・如月隼人)

レアアース:資源独占状態に異変、乱採掘も問題に

2005/10/27(木) Searchina

 中国では、1960年代には「レアアース」(希土類)の埋蔵量が、世界全体の90%を占めるともいわれたが、近年、資源の浪費や環境汚染などが問題になっており、資源の独占状態に異変が起きているという。26日付で中国有色金属報などが伝えた。

 レアアースは磁石や蛍光体などに用いられる一群の物質。中国はこのレアアースの資源に恵まれた。1989年に米国鉱山局が明らかにした資料では、中国の埋蔵量は3600万トンで、全世界の80%を占めていると紹介されていたという。

 ところが最近では、乱開発や資源の浪費などを指摘する声も強まっている。レアアースの資源利用率は国営鉱山で60%、民営鉱山で40%程度にとどまっている。

 採掘にともなう環境汚染も深刻で、業務に悪影響が及んでいるとの指摘もある。年産1000トンのレアアース原料を産出する鉱山では、20万−30万トンの廃土が出る。採掘にともない、大量の土が失われることで、保水力が低下したところでは、洪水などの被害も増加している。

 さらに、全世界のレアアースの埋蔵量に占める、中国内の埋蔵量の比率に関しても、「これまで言われていたほど、大きい数字ではないのではないか」という意見も出はじめた。中国以外の国における埋蔵量の調査が進んだこともあり、極端な例では、「中国の埋蔵量は全世界の15%程度」という計算も報告されている。

 故ケ小平氏は1992年の「南巡講和」の際に、「中東には石油があるが、中国にはレアアースがある」「戦略的な意味をもっている資源であり、豊富な埋蔵というメリットを活かすように」と発言していた。05年1−9月期に中国から日本へ輸出されたレアアースは中国における産出量全体の36%を占める。中国のレアアースをめぐる動向は、日本にとっても大きな影響を与える可能性がある。(編集担当:菅原大輔・如月隼人)

中国稀土:販売価格上昇、レアアース需要増で

2005/04/08(金) Searchina

 耐火材料製品の製造・販売を手がける中国稀土控股有限公司[香港上場、中国稀土(チャイナレアアース)、0769]の蒋泉龍・主席は、7日の大引け後に発表した2004年12月期本決算の記者会見で、中国におけるレアアースの需要増に伴い、04年の販売価格が大幅に上昇したことを明らかにした。6日付で香港・経済通が伝えた。

 また、耐火材や高温セラミック事業の販売も好調。この2つの要素を受け、全体の粗利益率は27%となった。

 05年の原材料価格について蒋・主席は、「引き続き上昇するだろうが、値上げ幅は04年ほどではないはず」と分析。このため、同社は成長を維持していくだろうと述べている。

 そのほか、同社は耐火材の上流部門への投資を検討しているもよう。ただし、具体的な投資額やタイムスケジュールについては明らかにしていない。(編集担当:黒川真吾)


日本で産出しない希少金属を海水から捕集

1998(平成10年)/05/26 日本原子力研究所

日本原子力研究所 (理事長: 吉川允二) は、海水中にわずかに含まれている有用金属を効率よく吸着して捕集する新材料(捕集材料)を開発し、バナジウム、ウラン等の希少金属を高収率で回収することに成功した。

日本原子力研究所高崎研究所 (所長: 萩原 幸) の材料開発部照射利用開発室須郷高信室長の機能材料研究グル−プはオイルフェンス等に使用しているポリエチレン繊維(不織布)に放射線を照射して、金属を選択的に捕集する機能を付与した材料を開発してきた。この材料(1〜2kg)を海水中に係留して海水中に溶存している希少金属を吸着捕集する試験を繰り返し行い、これを酸性液で分離したところ、粉末状の酸化バナジウム20グラムと酸化ウラン16グラムを回収できた。

海水には、バナジウム、コバルト、ウランなど日本ではほとんど産出しない希少金属が溶存している。これらは海水1トン当たり数ミリグラムという希薄な濃度であるため、これまで経済的な価格で捕集する技術がなかった。

高崎研究所の開発した捕集材は従来のものと全く違い、希少金属を選択的に吸着する能力が高く、海水中の濃度の 100万倍から1000万倍に濃縮でき、かつ、海水中でも安定であり繰り返し使用できる。従って、この捕集材を効率よく海水と接触させると、希少金属を経済的価格で得られる可能性がある。例えば、日本近海に黒潮で運ばれてくる希少金属の量は年間数千万トンという膨大な量であり、この黒潮の流れの中に捕集材を係留して、その極一部 (0.1%〜0.2%) を捕集したとしても国内での消費量を十分に賄うことが可能になる。

原研では、実用的な捕集システムの検討のため、工学的試験を行いたいと考えている。

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