TOPIC No.2-147 日豪関係

01.NICHIGOU PRESS
02.安全保障協力に関する日豪共同宣言(仮訳)平成19年3月13日 by外務省
03.安全保障協力に関する日豪共同宣言 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
04.日・豪共同記者会見 平成19年03月13日 by首相官邸
05.日豪首脳会談の概要 平成17年04月21日 by外務省
06.日豪経済連携協定の早期交渉開始を求める(2006年09月19日)/(社)日本経済団体連合会/日本商工会議所/(社)日本貿易会


豪、大幅な軍備増強計画 中国念頭の国防白書

2009年05月02日 中国新聞ニュース

 【シドニー2日共同】オーストラリアのラッド政権は2日、中国の軍備増強を念頭に、今後20年間で潜水艦隊を倍増し、F35戦闘機を100機導入するなど、第2次大戦後、最大となる軍備増強を計画した国防白書を発表した。

 白書は2030年以降、中国が他を大きく引き離す軍事大国となり、超大国としての米国の力が低下、アジア太平洋地域の大国間で軍備増強競争が起こると想定。空海軍を中心に装備の刷新・増強が必要としている。

 中国語が堪能なラッド首相は「親中派」とみられてきたこともあり、中国側が白書に強く反発することも予想される。

 白書によると、導入されるのは巡航ミサイルを搭載した新世代の潜水艦12隻や、フリゲート艦、駆逐艦、対潜ヘリコプターなど。陸軍も新型の装甲戦闘車の配備やヘリ部隊の増強を計画している。

 現在、約220億豪ドル(約1兆5900億円)の国防費について、18年まで年3%増、30年まで同2・2%増を予定している。

日本抜いて中国が豪州の最大貿易国に

2008/05/08 FujiSankei Business i.

 オーストラリア統計局が7日までに発表した2007年1〜12月の輸出入統計によると、中国が日本を抜き、初めてオーストラリアの最大の貿易相手国となった。オーストラリアと中国の輸出入総額は約580億豪ドル(約5兆8000億円)だったのに対し、日本との総額は546億豪ドルだった。ただ、オーストラリアから日本への輸出は346億豪ドルと、中国への輸出(278億豪ドル)を上回り、日本はオーストラリアにとって最大輸出相手国としての地位は保った。

 オーストラリアのクリーン貿易相は「対中貿易は一層の増大が予想され、進行中の中国との自由貿易協定(FTA)交渉を加速させたい」と話した。(シドニー 共同)

日豪の防衛交流を強化 軍事演習参加、覚書改定も

2007年06月05日 中国新聞ニュース

 久間章生防衛相は5日夕、防衛省でオーストラリアのネルソン国防相と会談し、国連平和維持活動(PKO)や海外活動に備えた共同訓練の拡充など防衛交流を強化することで一致した。

 今月下旬にオーストラリアで実施する米豪共同軍事演習に日本がオブザーバー参加することで合意。日豪が2003年に調印した防衛交流促進のための覚書を充実させる方向で改定することを決め、来年の防衛相会談で合意できるよう事務レベルでの協議を急ぐ方針を確認した。

 オーストラリアが主導している災害救援活動に日本が関与していくことや、シーレーン(海上交通路)の安全を確保するための情報交換をより緊密にすることも決めた。

外務・防衛担当相協議 日豪、来月開催へ

2007年05月10日 東京新聞 朝刊

 日豪両政府は九日、外務、防衛担当閣僚による日豪安全保障協議委員会(2プラス2)を来月、都内で開催する方向で最終調整に入った。日本が米国以外の国と2プラス2の枠組みを設置するのは初めて。両国は安保協力を強めることで、北朝鮮、中国などをけん制する狙いがある。

 2プラス2の設置は、安倍晋三首相が今年三月に来日したハワード・オーストラリア首相と会談した際に合意していた。

 初協議では、首脳会談で合意した(1)国連平和維持活動(PKO)を想定した自衛隊とオーストラリア軍の共同訓練(2)テロや大量破壊兵器拡散への共同対処―などに関する行動計画の策定が議題となる。また、日米で整備を進めるミサイル防衛(MD)システムについて、オーストラリアも整備を前向きに検討しており、MDシステムを含めた安全保障面での日米豪三カ国の連携強化についても協議する。

 日本側から麻生太郎外相、久間章生防衛相、オーストラリア側からダウナー外相、ネルソン国防相が参加する予定。

安保協力、豪印NATOと強化・日米の外務と防衛相確認

2007/05/02 NIKKEI NeT

 【ワシントン=島田学】日米両政府は1日午後(日本時間2日未明)に開いた外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で、豪州やインド、北大西洋条約機構(NATO)などとの協力を強化する方針を確認した。

 4閣僚は会議後、共同記者会見し、麻生太郎外相は北朝鮮情勢などに対応するため「日米と豪州、インドなどアジア太平洋地域の協力強化が重要だ」と指摘。ゲーツ国防長官は「日本とNATOとの広範な協力を実現する手段も模索していく」と述べた。

 ライス国務長官は北朝鮮の核問題について「忍耐は永遠ではない」としながらも「北朝鮮が2月の6カ国協議での合意を実行する意思があることを確認している」と語り、なお北朝鮮の対応を注視する考えを示した。

 ライス長官は「日本との安全保障上の約束遂行のため、あらゆる手段を行使する用意がある」と述べ、米国が核兵器を含めた抑止力を日本に提供し続けると表明。外相も「米国の日本防衛と抑止に対するコミットメント(約束)を再確認できた」と応じた。(

日本とオーストラリアが安全保障で協力する理由

2007.04.26 R25.jp

 この3月、日本とオーストラリア(豪州)は「安全保障協力に関する日豪共同宣言」を発表した。あまり話題になっていないが、日本が安全保障で協力関係を結ぶのは米国以外では初めてというから結構重要な話だろう。ところで、今なぜ豪州なのかが疑問だが…。

 そこで、安全保障論の専門家で、『朝まで生テレビ』などでもおなじみの拓殖大学国際学部教授・森本敏先生にこの共同宣言の背景、狙いを聞いてみた。

 「まず、第一にここ15年ぐらい、日豪は通商関係だけでなく、国際社会の平和と安定のために緊密に協力をしてきました。たとえば、イラクのサマワでは自衛隊が豪州軍によって守られていたし、東ティモールでは日豪が共同でPKO活動を行ってきました。スマトラ沖地震でも日豪が協力して救助活動を行っています。アジア太平洋地域で日本が価値観を共有でき、協力できる友好国というと、米国以外では豪州が一番。たとえば、日本と韓国、日本と中国は残念ながら歴史的なわだかまりがあって、なかなかそれができません」(森本先生)

 次に日豪は安全保障で協力できる分野が非常に多いという。豪州は米国のように武力を行使して…という考え方はあまりない国。そうではなく、災害救助、テロ対策、平和維持活動、核不拡散のための活動など、協力できることがいろいろあるのだ。

 「これは表立ってはいわれていませんが、米国にアジア太平洋地域へ関心をもたせておきたいという狙いもあるでしょう。将来的には日米豪3カ国の同盟関係に発展させ、さらにそこへほかの国が加わることも考えられる。そういう将来を展望したアジア太平洋地域での多国間安全保障協力の基礎となるものといえます」(同)

 ちなみに一部メディアはこの共同宣言が軍拡を進める中国への包囲網を意識したものではないかと指摘しているが、日豪の首相は会見でこれを否定している。

 とにかく、アジア太平洋地域がより安全になることを願うばかりだ。 (井口 稔)

日豪関係、新段階へ 自衛隊とADFが共同で軍事訓練

2007年04月NICHIGO PRESS 文=時事通信社シドニー支局:犬飼 優

−両政府が安保宣言−

 2007年3月13日は、日豪関係にとって、新たな歴史の1ページを刻む重要な日になるかもしれない。安倍晋三首相とハワード首相が、東京で「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に調印した。これは主に自衛隊と豪軍(ADF)の協力強化が目的で、軍事訓練や平和維持活動(PKO)、災害救援活動などが中心になる。日本が安全保障で協力関係を結ぶのは、米国を除き初めてだ。これまでエネルギー資源や農産物などの貿易といった「経済」でつながりの深い日豪関係は、「政治」ではそれほど親密ではなかった。今回の共同宣言を機に、両国関係は新たな段階に入ったと言える。

▼親密化する日豪政治▼

「日豪共同宣言は、お互いがいかに信頼しているか、その新たな証(あかし)だと思っている」−−。

  今年は日豪通商協定締結50年目の節目に当たる。ハワード首相は、当時の首相が安倍首相の祖父である岸信介氏であることを引き合いに出しながら、共同宣言調印後の記者会見で両国の強固な関係を強調した。

  第2次世界大戦で敵対した両国だが、戦後60年あまりが経過し、確かに関係は親密になった。それは貿易によるところが大きい。豪州から石炭や鉄鉱石といったエネルギー資源、牛肉や小麦、乳製品などの農産品が大量に輸出され、日本は豪州にとって最大の輸出先。もちろん、日本にとっても、これら豪州産品は国内で重要な位置を占め、供給がストップすれば大混乱が起こる。例えば牛肉は日本人の消費量の約半分、日本で使われる石炭と鉄鉱石の約6割は豪州産だ。

  その一方で、政治的なつながりは、経済に比べて弱かった。お互いをそれほど必要としていなかったうえ、国際社会における豪州自体の地位も低かったこともある。

  それが、急速に変わり始めたのは、つい最近。小泉政権が発足した2001年4月以後となる。同年9月に起こった米国同時多発テロを機にブッシュ、ハワード、小泉が対テロで結束を強めていく。06年3月には、外相レベルの「3国戦略対話」を初めて開催。アジア太平洋地域での協力の枠組み強化を確認した。

▼基本的価値観を共有▼

  そして、アジア太平洋を見渡し、日豪ともに米国を除けば、「自由と民主主義など基本的価値観を共有」(安倍首相)し、「最も信頼できる相手」(ハワード首相)となった。

  既に日米間には「日米安全保障条約」(1960年)、米豪間では「アンザス条約」(1951年)があるが、日豪間ではそのような安全保障的な取り決めはなかった。日米豪の3国での協力を進める上で、日豪が共同宣言の調印に踏み切ったのは「自然な流れだった」(日本政府関係者)と言える。

  また、自衛隊とADFとの間の軍レベルで実際の協力の積み重ねがあったことも大きい。カンボジアや東ティモールでの平和維持活動(PKO)、インドネシア・アチェの津波被害での救助活動、イラク南部での豪軍と自衛隊の連携だ。

  特にイラクでの協力(05年5月〜06年7月)は、日豪の親密化した関係を象徴した出来事だった。オランダ軍がイラクから撤収するため、自衛隊を警護する軍がいなくなる。そこで、小泉首相(当時)が豪州に陸上自衛隊の警護を要請。ハワード首相が快諾し、イラクにADFを増派した。同首相は今回の訪日中にわざわざ防衛省を訪れ、イラクに駐留した自衛隊員と対面している。

▼まずは南太平洋に派遣か▼

  では、自衛隊とADFとの間でどのような協力が行われるかは、これから具体的な行動計画が策定される。日米や米豪の両条約と性格が根本的に異なるのは、いずれかが攻撃された場合、助けに出向く防衛義務がないことだ。このため、名称も条約(treaty)ではなく、共同宣言(joint declaration)にとどまっている。

  協力項目は、

テロ対策

大量破壊兵器の不拡散

平和維持活動(PKO)

災害救援活動

軍事訓練

国境の安全

感染症大流行の対応

などだ。

  過去にも自衛隊と豪軍の共同訓練はあったが、本格的なものではなかった。今後は豪本土での大規模な共同演習も実施されるだろう。さらに、テロ活動を防ぐための情報交換も、一般的な情勢分析をはじめ具体的なテロ情報がやり取りされ、この分野での人的交流も盛んになるとみられる。

  豪軍の兵力は約5万1,000人と、自衛隊の5分の1程度。しかし、海外派兵はここ数年で急増。現在は約2,900人をイラクやアフガニスタンなどに派遣している。

  自衛隊は武器の使用が限られていることから、イラクでの自衛隊とADFの役割分担がモデルとなり、自衛隊の復興支援や救援活動にADFが警護に当たるケースも出てくるだろう。

  豪州は南太平洋の中でリーダー的な存在だが、近隣にあるのは、ニュージーランドを除き、フィジーやパプアニューギニアなど政治的にも経済的にも不安定な国が大半だ。実際、ソロモン諸島と東ティモールには治安維持部隊を出している。

  さらに、豪州の隣国インドネシアは地震の多発地域。同国で大きな地震があれば、豪州はいち早く救援に駆け付けている。このように豪州の周辺地域ではADFの出動の機会が多いが、それに自衛隊は積極的に参加していくことになりそうだ。

▼将来は条約に発展か▼

  一方、この共同宣言は、「軍備増強を進める中国に対抗するのが目的」との見方がある。これに対し、日豪政府ともに「中国を包囲するものではない」(安倍首相)、「ある国を想定したものでもない」(ハワード首相)と否定している。

  確かに自衛隊とADFの協力が自然災害での人道支援だけに限定されるならば、問題はないであろう。しかし、協力は軍事訓練におよぶ。当然ながら仮想敵国を想定した訓練も行われるだろう。また両軍の情報交換は、質と量において現在とは比べものにならないぐらいアップ。日米、豪米関係までとはいかないまでも、両軍の関係がかなり緊密化するのは確実だ。

  軍備費が年2けたで伸び続ける中国は米国や日本にとって大きな脅威だ。中国に対抗する意味で、将来、この共同宣言が「条約」に発展する可能性は多いにあるだろう。

三角体制構築に中国警戒 日豪安保宣言

2007/03/28 Iza

 安倍晋三首相とオーストラリアのハワード首相が13日、両国の安全保障協力に関する日豪共同宣言に署名した。日本が米国以外の国と、安保分野で共同宣言を出すのは初めてだ。日本と米国の間では日米安保条約が、米国と豪州の間ではニュージーランドも含めた相互安全保障条約(アンザス条約)が結ばれており、これにより太平洋地域で新たな安全保障のトライアングル(三角体制)が構築された形となる。

 16日付の豪紙、シドニー・モーニング・ヘラルドは≪豪日共同宣言は…2つの重要な潮流を示すものだ。豪州は近隣諸国だけでなく地域の安全保障の役割を担うことを受け入れた。一方、日本は米国との伝統的な関係を超え、新たな戦略的独立性の意味を主張しようとしている。米国がイラク問題で苦境に陥り、アジアでは中国が台頭する世界において、重要な展開である≫とする論文を掲載した。

 また15日付の米紙、ウォールストリート・ジャーナル・アジア版も≪民主主義国家の同盟を強調してきたブッシュ米大統領の構想が新たな生命を得た格好だ。共同宣言により、アジア太平洋地域でもっとも豊かな民主主義国家である2国の地域的影響力は強まるだろう≫と指摘した。

 日豪はすでにカンボジア、東ティモール、アフガニスタンで国家再建に向け緊密な協力関係を築いているほか、陸上自衛隊のイラク派遣では、豪軍が治安確保を担当。両国は大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)の下、合同で訓練もしている。

 しかし、日豪の接近に対し、特に中国の懐疑心は高まったようだ。

 14日付の香港の英字紙、サウスチャイナ・モーニング・ポストは≪これは50年にわたる日豪間の貿易関係を自然に拡張したものととらえることも可能だが、もし将来、日本と豪州が、日中間で危機が生じた場合に豪州が日本を支援する義務を負うことを規定した安全保障条約を締結したらどうなるのか≫と懸念を示したほか、21日付の中国紙、環球時報は≪(今回の宣言は)将来の中国の国家安全に対する最大の脅威を形成するアジア版NATO(北大西洋条約機構)ともいうものである。…中国は明らかにプレッシャーを感じている。…米国は公式には表明していないが…中国を牽制(けんせい)することは米政府と新保守主義者がこれまでにずっと持ち続けてきた構想である≫と指摘する論文を掲載した。

 安倍、ハワード両首相はともに、今回の共同宣言の署名にあたり「決して中国を包囲するものでも、中国を意識したものでもない」と強調している。しかし、英誌、エコノミスト17〜23日号は≪単なる良い友人なんですよ、本当に≫と皮肉な見出しをつけ、ずばりこう指摘している。≪両国(日豪)が否定すればするほど、今回の共同宣言のきっかけとなったものが明白になってくる。それは中国の勃興(ぼっこう)だ。…安倍首相は北朝鮮の挑発に対しミサイル防衛システムの早期装備を推し進めた。防衛庁を省へ格上げし、憲法第9条の改正を望んでいる。東南アジアと安保協力を進める一方、インドとの新しい連携を模索している。これはすべて中国の地政学的な影響とのバランスをとる戦略である≫

 今回の共同宣言の署名にあたっては、先月、訪日、訪豪したチェイニー米副大統領の後押しがあったとされる。15日付の豪紙、オーストラリアンは≪日本政府とチェイニー副大統領は、強化された日米豪安全保障対話に、経済的・軍事的に拡大するインドを加え、アジア太平洋地域における最強の民主主義国家をつなぎ合わせることに熱心だ≫と伝えた。安倍首相も13日の記者会見で、「日米豪、さらにインドとの対話も考えていきたい」と語っており、今後、同地域の新たな安全保障体制の構築がいっそう進みそうな気配だ。

 そうなれば中国が強い反発を示すのは必至だろう。しかしオーストラリアン(前出)は次のように強調している。≪豪州は(日米豪の)3カ国に加えて、インドを参画させることを支持すべきだ。…当然、中国はそれに不快感を覚えるであろう。しかし、それを理由に、われわれの民主主義の友邦との連携に臆病(おくびょう)になるようなことがあってはならない≫(宇都宮尚志)

【正論】京都大学教授・中西寛 日本外交の画期なす日豪安保宣言

2007/03/26 正論 The Sankei Shimbun WEB-site

 ■経済偏重から政治・安保含む関係へ

 ≪不幸な関係だった前半≫

 3月13日、来日中のハワード・オーストラリア首相と安倍首相は、安全保障協力に関する日豪共同宣言に署名した。この事実はメディアも報じているが、意義について踏み込んだ議論はなされていないようである。しかし今回の宣言は日本外交の一つの画期をなすものと考えてよい。

 歴史を振り返ると、赤道を挟んでほぼ対称的な場所にあり、人口は日本の約6分の1、面積は約20倍で農業や資源に恵まれたこの大陸国家との関係は、日本人が意識する以上に日本にとって大きな意味をもってきた。日豪関係が政治的な意味を持ち始めたのは20世紀に入ってからだが、特にその前半は不幸なものであった。

 連邦国家としての自立を模索し始めたオーストラリアは自らのアイデンティティーを白人国家として定義し、日本人を含めたアジアからの移民を排斥する白豪主義を標榜(ひょうぼう)した。日本もオーストラリアを含むイギリス帝国圏への進出を図り、強い相互不信感があった。日本と同盟関係にあったイギリス本国に対して対日警戒を強めるように要求し、また第一次世界大戦後のパリ講和会議で日本が提出した人種平等提案に強硬に反対したのはオーストラリアのヒューズ首相であった。逆に日本も第二次世界大戦の初期の段階で東南アジアからオーストラリアへと侵攻し、英連邦軍に含まれるオーストラリア人を捕虜とすると同時にオーストラリア社会を恐慌状態に陥れた。

 ≪対日通商差別から転換≫

 この経験の結果として日本の敗戦後、オーストラリアは極東軍事裁判などで最も厳しい対日懲罰政策を主張した。しかし日本が西側民主主義を採用する海洋国家として再出発し、オーストラリアもまたイギリスとの関係を薄め、アジア地域の一角にある国家としての自覚を深めると共に両国は関係の改善に相互利益を見いだすようになった。1957年、オーストラリアは日本と通商協定を結ぶ決断を行ったが、これはいまだ対日通商差別を残していたヨーロッパ諸国に先がけるものだった。オーストラリアの資源は日本の高度成長を支える柱となったのである。さらに70年代にはオーストラリアは白豪主義を完全に撤廃し、アジア諸国との関係強化を対外政策の主軸に掲げるに至った。

 この政策転換を象徴したのが76年の日豪友好協力基本条約の締結である。オーストラリアは伝統的に包括的な2国間条約を結ばない方針を維持していたが、その方針を転換させ、両国の経済関係を一層強める決意を示したのである。日豪協力関係は、その後、半官半民の太平洋経済協力会議(PECC)、さらに89年にアジア太平洋経済協力会議(APEC)へとつながっていった。PECCならびにAPECは、アジア太平洋を西側先進国とアジア途上国に分断せず、主に経済的互恵関係を通じて紐帯(ちゅうたい)を強めるという当時の日本外交を支える骨格となった。

 長々と歴史を振り返ったが、このような文脈で考えたときに、安保共同宣言の意義は大きい。今回の宣言は、両国が大量破壊兵器の拡散やテロといった脅威に協力して対抗し、また平和維持活動や人道支援活動でも協力を深めることをうたっている。こうした協力を担保するため、2国間の外交安保対話を強化し、また自衛隊とオーストラリア軍の協力を深めることとされている。オーストラリアは伝統的に、近隣のインドネシアとの関係を重視すると共に、東ティモールにも深く関与している。この点でオーストラリアとの関係は、東南アジア地域への日本の政治・安全保障面での関与を広げる一助となる。

 ≪対外政策広げる基礎に≫

 また、ハワード保守党政権は国内に強い反対がありながらも、イラクやアフガニスタンへの派兵を行ってきた。同国は、日本が今後ともインド洋周辺地域から中東、アフリカに関与する際に、重要なパートナーになりうるであろう。日豪関係は、インドやEU、アメリカ以外のNATO諸国と日本が政治・安保関係を強化する上でも基礎となるものなのである。

 何よりも、今回の安保宣言は、日本の全般的な対外政策の大きな転換を示唆するものである。すなわち、経済に偏した対外政策から、政治・安保面を含めた対外政策への転換である。それは、防衛省の発足、国家安全保障会議の設立に向けた動き、麻生外務大臣が主張する「自由と繁栄の弧」構想などとならんで、日本外交の新時代の一つの象徴としての意味をもってくるかもしれない。(なかにし ひろし)

日豪安保宣言/戦略的協力の関係樹立を歓迎

2007年03月16日 世界日報社 社説

 安倍首相は来日したオーストラリアのハワード首相との間で、両国の安全保障協力に関する共同宣言に調印した。わが国が米国以外の国と安保宣言を行うのは今回が初めてだ。

 その最大の意義は、自由と民主主義、基本的人権、法の支配という基本的価値を共有する両国が、北朝鮮問題やテロ対策などで包括的な戦略的協力関係を強化し、相互の安全保障と外交面での補完関係を確認し合ったことにある。

同盟国米国を側面支援

 二月に両国を訪れたチェイニー米副大統領も日豪の安保協力を支持している。今回の宣言は、対北政策での共同歩調とともに、不透明な軍拡を続ける中国を牽制(けんせい)するための日米豪の戦略的提携関係の強化にも役立つものとして歓迎したい。

 宣言によると、日豪の協力関係の強化は広範囲に及ぶ。北朝鮮問題については、核・ミサイル、拉致問題などの平和解決がうたわれた。テロの脅威への対応を含む国際社会での共通の戦略的利益にかかわる問題についての協力や、わが国の国連安保理常任理事国入りを含む国連改革に向けての協力も強調された。

 日米間には外務・防衛担当閣僚による定期協議(2プラス2)があるが、日豪間でも協力推進のための「2プラス2」の創設が決まった。自衛隊と豪軍との人的交流や共同訓練も行われる。国境を超える犯罪、テロ対策、大量破壊兵器およびその運搬手段の拡散阻止、戦略関連の情報交換、災害救援活動を含む人道支援活動、感染症の大流行の発生時の緊急対応計画など協力分野は多岐にわたる。

 わが国とオーストラリアとの安全保障面での協力関係は、イラクで実証済みだ。陸上自衛隊がサマワに派遣されていた時、現地の治安維持を担い、憲法の制約を受けた自衛隊の警護に当たったのは、豪州軍だった。日豪と米国との密接な関係を考えると、両国間に安保協力宣言がなかったこと自体が不自然だった。

 両国の安保関係の強化は、昨年夏来日したダウナー外相が小泉首相に打診したことから話が始まった。ハワード首相の率いるオーストラリア政権は、日本とともに米国の「有志連合」の有力な一員で、撤兵はテロリストを利することになるとブッシュ政権のイラク政策を全面的に支持してきた。対外政策はオーストラリア・ニュージーランド・米国相互安全保障条約(アンザス条約)を軸に、アフガニスタン、イラクに派兵しているほか、東ティモールやソロモン諸島にも国防軍を送っており、日本の協力にも期待していた。

 日豪関係強化のわが国にとってのメリットは、外交の裾野を広げるとともに、両国が米国が信頼を寄せる同盟国同士であり、中東問題で手一杯のためアジア・太平洋の安保問題が重荷となっている米国を側面から支援できることだ。

 安倍外交の特色は、米国による世界の一極化を批判するロシアと中国の台頭で米外交が困難に直面している中で、米国との同盟関係を側面から補完・強化するための努力をしていることだ。欧州歴訪で首相は、自由、人権、民主主義といった価値観の共有を強調し、日欧間の戦略的対話を深めることで、日米欧の協力関係を構築した。今回の日豪関係の強化も、同じ文脈からとらえることができる。

農業問題で難しい舵取りも

 問題は経済連携協定交渉の行方だ。農業大国のオーストラリアとの協定は、日本の農業に壊滅的打撃を与えるとの反対論もあり、首相は難しい舵取りを迫られよう。

安保協力で共同宣言 日豪首脳会談

2007/03/13 The Sankei Shimbun WEB-site

 安倍晋三首相とオーストラリアのハワード首相は13日、首相官邸で会談した。両首脳は、アジア太平洋地域の平和と安定に向けて両国の安全保障協力を強化させる日豪共同宣言に署名。新たに外務・防衛閣僚による日豪安全保障協議委員会(2プラス2)を設置し、対話を緊密化する。会談では、日豪経済連携協定(EPA)交渉を推進することも確認した。

 両国は、安保分野の協力と経済関係の拡大を2本柱に「包括的な戦略的関係」強化を目指している。日本が米国以外と安全保障分野で共同宣言を発表したのは極めて異例。

 宣言では、国際社会とアジア太平洋地域の「自由と繁栄」に向けて日豪両国が貢献することを表明。北朝鮮の核・ミサイル問題や拉致問題の平和的解決を含む「共通の戦略的利益」のため、(1)麻薬や武器密輸など国際犯罪対策(2)テロ対策(3)災害時の人道支援活動−などでの協力を明記した。

 これに先立ち、ハワード首相と会談した久間章生防衛相は、陸上自衛隊のイラク派遣時に治安維持にあたった豪軍への謝意を表明し、「基本的価値観を共有する日米豪3カ国は国際社会の諸問題で緊密に連携、協力を行っており、今後も協力を推進したい」と述べた。

日豪首脳、安全保障協力に関する共同宣言に署名

2007/03/14 世界日報社

 3月13日、日豪首脳は安全保障協力に関する日豪共同宣言に署名。安倍首相(右)は両国が包括的な戦略的関係の強化で一致したことを明らかに(2007年 ロイター) [拡大]

 【東京 13日 ロイター】 安倍晋三首相は13日午後、オーストラリアのハワード首相との会談後記者会見し、日豪両国は今後、安全保障協力などについて包括的に戦略的関係を強化していくことで一致したことを明らかにした。

 安倍首相は、安全保障協力に関する日豪共同宣言に署名したことについて「安全保障分野における日豪協力を飛躍させる包括的な枠組み」と説明した。そのうで「今後、この共同宣言をしっかりと実施させ、基本的かつ戦略的利益を共有する日豪が地域と世界の平和と安定にさらに貢献するようにしたいと考えている」と述べた。

 また、会談では、4月下旬に交渉がスタートする経済連携協定(EPA)についても議論した。安倍首相は「日豪EPAは両国の戦略的関係を強化するものだ」としながらも「相互のセンシティビティに十分に配慮し、日本にとっての農業との重要性を認識しながら相互の利益を実現させていきたい」との考えを示した。

 安倍首相はハワード首相に対し「日本の農業は産業としての側面だけでなく、環境や国土保全の観点もある。日本の文化、伝統など多面的な価値、機能がある」と伝えたという。

 一方、北朝鮮問題に関しては、北朝鮮の非核化が具体的に進むよう日豪が国際社会とともに働きかけていくことで一致。拉致問題について、ハワード首相から、日本の立場に理解と支持が示されたとの認識を示した。

日豪、安全保障協力に関する共同宣言に調印

2007-03-14 CRI online

 日本の安倍首相は13日夜首相官邸で、日本を訪問中のオーストラリアのハワード首相と日豪安全保障協力に関する共同宣言に調印しました。日本が安全保障の面で共同宣言を調印するのはアメリカ以外に初めてです。日豪安全保障協力に関する共同宣言は日米安全保障条約より弱いものですが、軍事分野における両国の協力を強化したものと言え、大きく注目されています。

 日本のマスメディアによりますと、共同宣言の主な内容は、日本とオーストラリアの安全保障協力行動計画の制定、また、両国外相間及び国防相間の対話の強化、そして、2プラス2・つまり外務、防衛担当閣僚が参加する安全保障会議の定期的な開催が含まれています。共同宣言に基づいて、両国は国連改革やテロ対策、救済活動、犯罪の取締りなどでの協力を強化すると共に、自衛隊とオーストラリア軍との協力を強化し、政治や安全保障、経済などの分野における協力を通じて全面的な戦略的パートナーシップを構築していくことに合意しました。双方はさらに、「共同宣言は日米安保条約のように防衛協力を核心としたものではなく、災害救助や国連平和維持での協力を主とする」と強調しています。

 世論は、「日本がこの共同宣言を差し迫って調印したのは、アジア地域で、軍事的な役割を果たす大義名分をもち、自衛隊が太平洋地域で思うままに活動できるよう、一日も早く「正常国」になりたいからだ。また、日米安保条約が防衛協力を中心に、防衛範囲を日本領土に限定していることも理由だ」と見ています。「周辺事態法」、「テロ対策特別法」では、アメリカに対する日本の軍事援助範囲がアジア太平洋地域及び全世界に広がりました。しかし、自衛隊の海外活動はアメリカの傘下から抜け出すことは出来ませんでした。日豪共同宣言によって、日本は自衛隊を派遣して、国際的な貢献を行なうことが出来るようになり、その行動範囲は日本国内に限定されなくなりました。

 オーストラリアが共同宣言に調印したのは、主に、経済面を考慮しているからです。日本はオーストラリアの最大貿易パートナーであり、2005年両国の貿易総額は316億オーストラリアドルに達しました。オーストラリアから日本への輸出量は全体の20%を占めています。オーストラリアは主に牛肉や鉄鉱石、石炭といった農産物や資源を提供しています。しかし、日本の農場主は貿易の障壁が排除されることに非常に敏感で、オーストラリアからの農産物輸入の増加に不安を感じています。日本政府はオーストラリアとの自由貿易協定の調印に積極的な態度を示さなかった一方、オーストラリア政府は日本市場の拡大を希望しています。これを受けて、日本とオーストラリアの第1回自由貿易協定についての交渉が4月23日と24日、キャンベラで行われることになりました。

 また、世論は「日本とオーストラリアの指導者は、軍事分野における協力の拡大は中国を意識したものではないとしているが、これを否定する専門家もいる」と見ています。

 中国外務省の秦剛報道官は13日の記者会見で、「関係国が安全保障協力を強化するに当たっては、地域の利益を考慮すべきである。諸国間の相互信頼や、平和と安定の促進にプラスになるよう希望する」と述べました。

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