TOPIC No.2-132-6 北朝鮮による日本人拉致事件(2004年度)


「拉致可能性」10人を公表 特定失踪者問題調査会

2004/12/27 The Sankei Shimbun

 北朝鮮による拉致被害者と家族を支援する「救う会」の関連団体「特定失踪(しっそう)者問題調査会」(荒木和博代表)は27日、「拉致された可能性を否定できない」として10人の氏名と失跡した経緯などを新たに公表した。

 調査会によると、10人は1956年から2002年にかけ、神奈川県や滋賀県、愛知県などで行方不明になった18−55歳(当時)の男性8人と女性2人。

 鹿児島県屋久町の羽生弘行さん=失跡当時(38)=は56年10月、屋久島を漁船で出発したまま失跡。島根県美保関町の野田福美さん=同(47)=は82年10月、北海道・礼文島沖でイカ漁の操業中に失跡した。

 女性2人はいずれも東京都在住で、1人は01年9月、もう1人は02年11月に行方が分からなくなった。

 現時点で調査会が拉致の可能性を否定できないとしている人は180人になり、ほかに33人を「拉致された疑いが濃厚」としている。(共同)

制裁の全面発動申し入れ 拉致議連、来年3月期限で

2004/12/27 The Sankei Shimbun
 超党派の拉致救出議員連盟(会長・平沼赳夫前経産相)は27日午後、国会内で役員会を開き、北朝鮮による拉致問題が来年3月までに進展しなかった場合、送金停止など経済制裁を全面的に発動するとした独自案を了承、平沼氏が細田博之官房長官らに申し入れた。

 北朝鮮による横田めぐみさんら安否不明の拉致被害者10人の再調査に関し、日本政府が「裏付けがない」との精査結果をまとめたことを受けた措置。細田長官は「北朝鮮の対応は非常に不明朗だ。(提案について)しっかり小泉純一郎首相に伝えたい」と述べた。

 役員会では、出席者から「国会本会議でも制裁発動に向けた決議を行うべきだ」「政府内に制裁について協議する場を設けるべきだ」などの意見が出た。

 記者会見で平沼氏は、制裁を行った場合に北朝鮮側が「宣戦布告とみなす」と表明したことについて「どう喝には絶対屈してはならない。どう喝があっても、やるべきことはきっちりやるべきだ」と強調した。

 同議連案は、北朝鮮が安否不明者10人の消息を明らかにするなど進展があれば、制裁を段階的に解除していくことも提案している。(共同) 

めぐみさん夫か断定できず 政府筋明かす

2004/12/15 The Sankei Shimbun

 政府筋は14日夜、横田めぐみさんの夫とされ「キム・チョルジュン」と名乗る人物について、めぐみさんの夫であるかどうか日本政府としては断定できないとの見通しを明らかにした。11月の日朝実務者協議の際に、この男性と面会した日本側出席者の印象から作成した似顔絵のほかに判断材料がないことをその理由に挙げた。

 同筋は調査結果を来週中に発表すると述べた。

めぐみさんと夫の散歩を目撃したと証言している蓮池薫さん夫妻に似顔絵を基にさらに確認を求めているもようだ。

 めぐみさんの「遺骨」とされた骨が鑑定で別人と判明したことを踏まえ、政府は「夫」の身元確認も進めている。これに関連し、細田博之官房長官は14日午後の記者会見で、この男性がめぐみさんの夫だったかどうかについて「間もなく分かる。分からないということも含めて結論を出す」と述べ、特定は困難との見方を示唆。ただ「(北朝鮮で)目撃している人たちがいるので、ある程度のことは分かると思う」とも述べた。

 細田氏は、北朝鮮が核開発をめぐる6カ国協議の再開に難色を示していることに関し「国際社会の中で国を運営していこうと思えば、国際的な対話が常に必要だ。そういうことが分かっているのか分かっていないのか、それが分からないということだ」と北朝鮮に強い不信感を表明した。(共同)

「日本に帰りたい」横田めぐみさん、盛んに訴える

2004/12/13 読売新聞 Yomiuri On-Line
 北朝鮮による拉致被害者で、安否不明の横田めぐみさんと田口八重子さんの拉致後の様子について、帰国した蓮池薫さん(47)や地村富貴恵さん(49)らが、「横田さんと田口さんは1984年から86年まで同居していた」「90年代に入り、横田さんは『日本に帰りたい』と盛んに周囲に訴えていた」などと証言していることが、13日わかった。

 関係者によると、こうした証言は直接、横田さんの父、滋さん(72)と母、早紀江さん(68)、田口さんの兄の飯塚繁雄さん(66)に伝えられたという。

 富貴恵さんの証言によると、独身だった横田さんと田口さんは、84年から86年まで平壌市郊外の同じ招待所で同居。田口さんは同年7月、他の招待所に移されたとみられる。この時期、富貴恵さんは夫の保志さん(49)とともに、横田さんらと同じ地区の招待所で生活していた。

 また、蓮池さんの証言などでは、横田さんは同年8月、元夫とされるキム・チョルジュン氏と結婚し、翌年、ヘギョンさん(17)を出産した。

 蓮池さんと祐木子さん(48)夫妻は、横田さんが結婚したころから94年ごろまで、同じ地区の招待所で暮らしており、夫妻は、「めぐみさんは、90年代に入ると、『日本に帰りたい』と漏らすようになった。招待所を無断で離れ、歩き出したところで連れ戻されたことがあった」などと証言しているという。

「骨は別人」の鑑定書提出 帝京大

2004/12/13 The Sankei Shimbun
 日朝実務者協議で北朝鮮から拉致被害者、横田めぐみさん=失跡当時(13)=の「遺骨」として提供された骨について、帝京大は13日、めぐみさんとは別人だったとする鑑定書をまとめ、拉致事件を捜査している新潟県警に正式に提出した。警察庁は同日、めぐみさんの両親に結果の概要を口頭で説明した。

 記者会見しためぐみさんの父、滋さん(72)によると、鑑定結果は、めぐみさんとは別の2人分のDNAが検出されたとの内容で、外務省が8日に説明したのと同じ。鑑定では、本検査と2回の再検査を実施し、いずれも同じ結果だった。

 鑑定書そのものは捜査資料のため、横田夫妻にも提示されない。滋さんは「正式な鑑定が出たことで交渉に有利になると喜んでいる」と話した。

 一方、松木薫さん=同(26)=の遺骨の可能性があるとして提供された骨について、警察庁は13日、松木さんとは別の5人分の骨だったとする鑑定結果を、松木さんの家族に伝えた。(共同)

「再回答なければ制裁」 北朝鮮拉致問題で安倍氏

2004/12/12 The Sankei Shimbun
 自民党の安倍晋三幹事長代理は12日午後、北海道帯広市内で講演し、北朝鮮による拉致事件について、横田めぐみさんら安否不明者10人の情報などに関して期限を区切って再回答を求め、納得が得られなければ直ちに経済制裁を発動すべきだとの考えを強調した。

 安倍氏は「北朝鮮にもう1回チャンス与えて、期限内に納得できる回答をよこさない場合は直ちに経済制裁を発動するよう強く政府に求めたい」と強調。再回答を求める項目については、めぐみさんの「遺骨」とされた骨が別人のものだった問題や、辛光洙容疑者ら拉致実行犯3人の身柄引き渡しに加え、「(不明者の)10人を生還させる約束を要求することもある」と指摘した。

 経済制裁すれば北朝鮮が軍事行動に踏み出すとの懸念に関しては「暴発は起こらない。破滅を覚悟して国ぐるみ暴発したことは古今東西ない。そんなことを恐れていては交渉そのものを行えない」と反論。「めぐみさんたちを助け出す大きな責任がある。鬼になるつもりで頑張ることが政治家の責任だ」と訴えた。

 午前のフジテレビやテレビ朝日の番組では、再回答に応じない場合の制裁について「(党がまとめた5段階の制裁で最も重い)レベル5(船舶の全面入港禁止)までいかざるを得ない」と指摘。「本物の骨を出せと言い続けると、生きているのに殺してしまう、指などを切ってその骨を出してくる(という)危険性もある。拉致被害者10人を出しなさいと要求を変えるべきだ」と強調した。

 町村信孝外相が来年2月に訪朝するとの一部報道については「外務省は全く検討していない、ということだった。こちらから会談を持ち掛けるのは愚策だ」と述べた。(共同)

拉致、首相が書簡で抗議へ…来春メド情報提供も要求

2004/12/12 読売新聞 Yomiuri On-Line
 北朝鮮が横田めぐみさんの遺骨として日本側に提供した骨が別人のものだったことを受け、政府は11日、小泉首相の書簡を北朝鮮の金正日総書記に送り、厳重に抗議するとともに、安否不明の拉致被害者10人に関する新たな情報提供を求める方向で検討に入った。

 情報提供は期限を区切る方針で、来春をメドとする案が浮上している。

 政府は今月中に、11月の第3回日朝実務協議で北朝鮮が提供した資料の分析を踏まえ、首相書簡の送付を含め、この問題の対処方針を決める予定だ。

 政府は、「遺骨」がめぐみさんとは別人と判明した12月8日、北京の北朝鮮大使館に電話で抗議した。その後、政府内で、「日本の強い抗議の意思を金総書記に直接伝えなければ、事態は進展しない」との意見が強まった。

 書簡は、今年5月の首相再訪朝の際、金総書記が10人の被害者について「白紙に戻して再調査する」と表明しながら、虚偽の資料が提供された点を指摘し、一定期間内に10人に関する新たな情報提供を求める。また、北朝鮮に対する日本国内の厳しい世論を伝え、期限内に情報提供がない場合、経済制裁の発動も視野に入れざるを得ないとの考えを伝えることも検討している。

 書簡を届ける方法としては、政府高官を首相特使として北朝鮮に派遣する案などが取りざたされている。

「強制連行」挙げ対日非難 北朝鮮団体、拉致問題で

2004/12/11 The Sankei Shimbun
 朝鮮中央通信によると、北朝鮮の「朝鮮人強制連行被害者・遺家族協会」は十一日の声明で「わが人民の間では、なぜ日本人拉致被害者問題に(北朝鮮政府が)誠意を示すのか、(一握りの)日本人拉致被害者とわが民族が被った被害を比較できるのか、との抗議と激憤が満ちている」と非難した。

 東京で開催の朝鮮半島出身の旧日本軍人、軍属らの追悼式に参加しようとした北朝鮮代表団の一部の入国を日本政府が不許可としたことを非難する声明の中で述べた。日本での対北朝鮮経済制裁発動論議の高まりをけん制する狙いがあるとみられる。

 入国不許可については「人間の初歩的な礼儀、道徳も知らない破廉恥な行い」と非難し、謝罪と遺骨返還を要求した。

 声明では、横田めぐみさん、松木薫さんの「遺骨」として渡された骨が別人だったことには触れなかった。(共同)

めぐみさん 工作員?に日本語指導 地村富貴恵さん証言

2004/12/11 The Sankei Shimbun
 帰国した拉致被害者、地村富貴恵さん(49)が、横田めぐみさん=拉致当時(13)=について、「『スクヒ』という女性に日本語を教えていた」と証言していたことが十日、分かった。「スクヒ」。北朝鮮の工作員のなかには同じ発音の女がおり、この「スクヒ」も工作員との見方が強まっている。また、周辺を探ると、「北」が隠す工作機関との接点も浮上する。

 関係者によると、地村さんは拉致被害者家族らと面会、「スクヒ」の名前を口にした。地村さんはこの女性の素性はよく知らないとみられる。

 地村さんは田口八重子さん=同(22)=についても「『オッカ』という女性に日本語を教えていた」と証言していることがすでに明らかになっている。

 「オッカ」は大韓航空機爆破事件の実行犯、金賢姫元死刑囚(42)の偽名「金玉花(オツカ)」と一致する。証言は「田口さんは金元死刑囚の日本人化教育係『李恩恵』に間違いない」との日本の捜査を裏付ける。

 一方、韓国当局の調べなどによると、金元死刑囚は工作員養成機関「金星政治軍事大学」(九二年に金正日政治軍事大学に改称)でもう一人の女工作員と一緒に一年間、訓練を受けた。その工作員が「金淑姫(スクヒ)」だ。

 金元死刑囚は自叙伝「いま、女として」(文芸春秋)で、この工作員のことをつづっている。

 《年は淑姫のほうが一つ下でしたが、非常に勉強好きで、プライドが高く、私たちは通ずるものがありました》

 めぐみさんについては「九五年ごろ、金正日総書記の子息の家庭教師をしていた」との亡命者情報もあるが、地村さん証言や金元死刑囚の話などを総合すると、工作員にも日本語を教えさせられていた可能性が高い。

 同大は「695部隊」の隠語で呼ばれ、原敕晁さん=同(43)=を拉致した実行犯、辛光洙容疑者(75)も訓練を受けた。「北」はその存在を認めていないが、元工作員の安明進氏(36)は同大で訓練を受けたとしている。

 めぐみさんを除く七人の「死亡報告書」を作製した「695病院」も同大の付属医療機関だ。工作員や工作機関と、被害者が置かれた状況も密接につながっている。

田口さんは金元工作員の教育係 地村さんが証言

2004/12/09 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者、地村富貴恵さん(49)が、安否不明の田口八重子さん=失跡当時(22)=について、大韓航空機爆破事件の実行犯、金賢姫元工作員の日本語教育係だったことを示唆する証言をしたことが9日、分かった。これを含め、拉致被害者家族会と救う会が、新たな8項目の疑問、矛盾点を発表した。

 両会によると、1978年から1年余り田口さんと一緒に生活した地村さんは今年6月、田口さんの兄、飯塚繁雄さん(66)に「田口さんが日本語を教えた工作員は『オッカ』という名前だった」と証言した。「オッカ」は金元工作員が名乗ったという偽名「金玉花(キム・オッカ)」と発音が一致するという。

 警察庁は、田口さんが金元工作員の日本語教育係「李恩恵」だと断定しているが、北朝鮮側は一貫して否定。両会は「警察の捜査結果を裏付ける証言」としている。

 増元るみ子さん=同(24)=については、蓮池祐木子さん(49)が「79年10月まで独身だった」と証言。「79年7月に市川修一さんと結婚した」との北朝鮮側の説明と矛盾する。

 横田めぐみさん=同(13)についても、蓮池薫さん(47)は「94年3月に義州の病院に入院した」と説明。しかし、北朝鮮側は「義州の病院に入院させることも検討したが、少し様子を見ようと四十九予防院に入院した」としている。

 11月の日朝実務者協議で示された再調査結果の疑問、矛盾点は計73項目に上り、飯塚さんは「北朝鮮のねつ造、でたらめに怒りは増すが、それ以上にあきれ返っている。交渉の仕方をがらっと変えないと、何の進展もないだろう」と話している。(共同)

横田滋さんが抗議声明 早紀江さん「絶対に生きている」

2004/12/08 The Sankei Shimbun
 北朝鮮が拉致被害者・横田めぐみさん=失跡当時(13)=の「遺骨」とした骨が別人のものと分かり、父親で拉致被害者家族会代表の横田滋さん(72)が8日、都内で記者会見。「全身の怒りをもって遺骨ねつ造に抗議する」と、経済制裁の即時実施を求める家族会、救う会の共同声明を読み上げた。

 会見には母親の早紀江さん(68)ら家族も同席。今回の鑑定結果に、滋さんは「(めぐみが)生存している望みの方が強いと、ほっとした感じを受けた」とし、早紀江さんは「(遺骨が本物だとは)最初から信じていなかった。あの子は絶対に生きている」と話した。

 滋さんによると、夫妻は内閣府の拉致被害者・家族支援室に呼ばれ、8日午後3時すぎから、外務省の薮中三十二アジア大洋州局長や警察庁の担当者らから説明を受けた。

 5つの骨のかけらに対する帝京大のDNA鑑定の結果、4つが同一人物のもので、1つは別人のものと判明。いずれもめぐみさんのDNAとは違っていた。遺骨の性別や年齢などは、骨相学的な調査の結果が出ておらず、分からないという。

 ■田口八重子さんの兄で家族会副代表、飯塚繁雄さんの話 怒りを通り越してあきれている。北朝鮮が言うこと、やることすべてがうそで信用ならない。まともな交渉や調査が通用しない相手だとはっきりした。経済制裁に慎重だった人も目が覚めたのではないか。

 ■有本恵子さんの母、嘉代子さん(78)の話 (松木薫さんのときに続き)2回も別人の遺骨を引き渡すなんて、北朝鮮のやることは子どもだましで、まったく理解できない。日本をなめているとしか思えない。政府はもっと怒りを表すべきだ。こんな対応が続くなら日本も毅然(きぜん)とした態度をとり、交渉の席を立っても構わない。政府は先月の交渉でもなぜそうしなかったのか。そうできない理由が何かあるのか。

 ■拉致被害者の地村保志さん(49)の父、保さん(77)の話 案の定だ。北朝鮮は日本の世論を抑える時間稼ぎのために見え透いたうそをついているんだろう。何回も日朝協議をして、そのたびにだまされている外務省にも腹が立つ。これを機会に「対話と圧力」ではなく、圧力をかけて北朝鮮に「困った」と言わせるようにしないと。

 ■市川修一さんの兄、健一さん(59)の話 遺骨は別人のものだと信じていた。北朝鮮はどういうつもりなのだろうか。「全員死亡」として幕引きを図り、経済協力を求めようとしているとしか思えない。ここまでねつ造からねつ造を重ねられ、ここで政府が怒らなければ、北朝鮮の言いなりになってるとしか言えない。国民の多くが経済制裁を望んでいるのだから、その声に応えるべきだ。政府は「粘り強く交渉する」というが、いつもこういう結果。人権侵害され続けているのだから、どこかで怒らなければいけない。

 ■拉致被害者の地村富貴恵さん(49)の兄、浜本雄幸さん(75)の話 こんなばかなことがあるのか。北朝鮮は拉致被害者5人の家族を帰したことで、国交正常化交渉が進むと高をくくっているんだ。家族会はずっと経済制裁を求めているんだから、問題は小泉首相が決断するかどうかだ。

 拉致被害者家族会と救う会が8日発表した抗議声明は次の通り。

 本日、北朝鮮金正日政権が横田めぐみさんの遺骨と称してわが国に提供した骨が、本人のものでないことが判明した。私たちは満腔(こう)の怒りを持って遺骨ねつ造に抗議する。

 金正日政権は松木薫さんの遺骨をねつ造し、死亡とされた8人全員の死亡診断書をねつ造していたことがこれまで分かっていたが、夫という男が持ってきた遺骨もねつ造であった。真実の力は悪に勝つということが証明された。ねつ造を暴いてくださった関係者の努力に感謝したい。

 わたしたちはすでに、現在のままの圧力抜きの交渉では拉致問題解決にはつながらない、経済制裁を発動して解決を絶対図るという国家の意思を示してほしいと求めてきた。今日の結果はこの私たちの主張が正しいことが証明された。経済制裁の即時実施を国民の怒りの声に合わせて、ここに強く求めるものだ。

 横田めぐみさん=失跡当時(13)=の父、滋さん(72)と母、早紀江さん(68)は8日、確信を深めた。「あの子は必ず生きている」。娘のものとされた「遺骨」はねつ造だった。「死亡」の説明、孫の存在、訪朝の誘い…。小泉純一郎首相の最初の訪朝から2年、北朝鮮にほんろうされ続けた憤りが噴出した。「ほかの拉致被害者も助けを求めている」。夫妻は「救出」への思いを新たにした。

 「やっぱり私が信じていた通りでしたね」。午後3時すぎ、内閣府の一室。政府から骨のDNA鑑定結果を聞いた早紀江さんの表情が、みるみる和らいだ。同時に怒りも。

 滋さんは一時、覚悟していた。「死亡していることが本当であれば仕方がない」。鑑定結果が出れば、受け入れるつもりだった。つらいことだが、その思いは2年前に北朝鮮が拉致を認めた時から変わらない。

 弟の拓也さん(36)も「長くつらい時間を私たち家族は過ごしてきた」と振り返った。

 家族には、あの日が忘れられない。2002年9月17日の日朝首脳会談。「元気な姿で娘に会える」。滋さんは期待を膨らませたが、北朝鮮の説明は「死亡」。絶望感が広がり、涙が止まらなかった。

 だが孫の存在が明らかに。娘の面影を残すキム・ヘギョンさん。「孫に会いたい」と滋さんの気持ちは揺れた。非政府組織(NGO)からも訪朝をひそかに打診された。

 しかし早紀江さんや拓也さんらは反対。「めぐみと一緒に帰ってくる日まで待とう。今、北朝鮮に行ったらめぐみの『死亡』が既成事実化してしまう。北の思うつぼだ」。激論を交わした末、訪朝を断念した。

 川崎市の自宅マンションの居間には、拉致される半年前に満開の桜の下でほほ笑むめぐみさんの写真と、ヘギョンさんの写真が並んで飾られている。用意したヘギョンさんのセーターも、北朝鮮から政府が持ち帰っためぐみさんのテニスラケットとともにしまったままだ。

 満月の夜を見上げるたびに早紀江さんはめぐみさんの姿を思い浮かべる。「娘も同じ月を見ながらきっと助けを待っている」。帰国を願い、全国を行脚する運動は続く。

≪理不尽な対応 理解できない≫

 北朝鮮が提供した骨が横田めぐみさんとは別人と判明したことについて、拉致被害者の蓮池薫さん(47)、祐木子さん(48)夫妻と曽我ひとみさん(45)、地村保志さん(49)、富貴恵さん夫妻(49)の5人は8日、連名で「北朝鮮の理不尽な対応はまったく理解できない」とするコメントを発表した。

 5人は「遺骨がめぐみさんのものではないと判明して、私どももうれしいですし、横田さんご夫妻もさぞ安心されたと思います」とめぐみさんの両親を思いやり「真相究明のため、私どもとしてもできる限りのことをやってまいります」と結んでいる。(共同)

田口八重子さん、「死亡」以降も目撃情報

2004/12/08 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者、田口八重子さん=失跡当時(22)=について、北朝鮮が死亡したと説明した1986年7月以降も目撃情報があることが、8日分かった。地村富貴恵さんが田口さんの兄、飯塚繁雄さん(66)らに11月、伝えた。

 飯塚さんによると、地村さんは「田口さんの運転手だった男性から、死亡したとされる時期の3カ月後に平壌のデパートで田口さんを見かけたと聞いた」と話したという。地村さんは田口さんと同じ招待所で数カ月間、一緒に生活した。(共同)

骨は横田さんとは別人 DNA鑑定で判明

2004/12/08 中国新聞ニュース
 新潟県警は八日、北朝鮮が横田めぐみさん=失跡当時(13)=の「遺骨」として提供した骨は、DNA鑑定の結果、めぐみさんとは関係のない別人のものであると発表した。政府は両親の横田滋さん夫妻に鑑定結果を伝えた。

 二○○二年の調査で松木薫さん=同(26)=のものとして提供された骨も別人のものと判明しており、北朝鮮側の対応に批判が強まり、対北朝鮮制裁論が高まるのは必至。政府は、鑑定結果を北朝鮮側に通告し、詳しく説明を求める方針だ。

 この骨は十一月の第三回日朝実務者協議の際、北朝鮮側から受け取った。DNA鑑定では、キム・ヘギョンさん(17)とめぐみさんの親子関係を調べた際にめぐみさんのへその緒などから検出したDNAと対照したが、型が一致しなかった。

 北朝鮮側はめぐみさん関連の物証として、骨のほか写真三枚、カルテ、自筆とみられるメモなどを提供。政府代表団はめぐみさんの担当医師と面談し、入院していたとされる病院などを視察、めぐみさんの元夫とされるキム・チョルジュン氏からも事情聴取した。

 北朝鮮側は「めぐみさんは入院中の病院で自殺した。遺体はいったん病院の裏山に土葬されたが、夫が二年半後に掘り返し火葬した」と説明。キム氏は「遺体を引き取って、道義的な形で自分がめぐみさんを弔いたい気持ちで火葬に付した」と話したという。

 

曽我さん一家、佐渡に帰郷 歓迎に笑顔で応え

2004/12/07 中国新聞ニュース
 拉致被害者の曽我ひとみさん(45)と夫チャールズ・ジェンキンスさん(64)、長女美花さん(21)、二女ブリンダさん(19)の一家四人は七日夕、新潟港からフェリーに乗り、新潟県佐渡市に到着した。ジェンキンスさんの佐渡入りは初めて。四人は佐渡市に定住する意向で、曽我さんの北朝鮮からの単身帰国から約二年二カ月ぶりに、願い続けた家族四人での生活が実現する。

 午後六時半すぎ、新潟市の両津港に到着した四人は待ち受けた市民から歓迎を受けた。一人ずつ大きな花束を受け取り、にこやかな笑顔を見せながらバスに乗り込み、曽我さんの父茂さん(72)を見舞いに病院に向かった。夜には市役所真野支所で四人そろって記者会見する。

 佐渡市内の三カ所には同日、歓迎の立て看板が設置された。市は佐渡で就職を希望しているジェンキンスさんを支援するほか、娘二人についても新潟大が受け入れを表明している。

 一家は午前八時すぎ、マイクロバスで在日米軍のキャンプ座間(神奈川県)を出発。脱走罪などに問われ、禁固三十日の判決を受けたジェンキンスさんは十一月二十七日に釈放され、基地内で「不名誉除隊」の手続きをしていた。キャンプには戻らないまま除隊手続きが終了する見通し。

「娘はスパイにされかけた」 ジェンキンスさん、米誌に語る

2004/12/6 中国新聞ニュース
 【ニューヨーク5日共同=福田泰教】北朝鮮の拉致被害者、曽我ひとみさん(45)の夫、チャールズ・ジェンキンスさん(64)は米誌タイムとのインタビューで、北朝鮮が二人の娘をスパイとして韓国に送り込もうと計画していたことを明らかにした。同誌(電子版)が五日報じた。

 平壌で暮らした日本の拉致被害者の家族が北朝鮮による身内の「工作員化計画」を証言したのは初めて。

 曽我さんとの結婚について、北朝鮮側が一九八○年、曽我さんを連れてきて英語を教えるよう指示したと回想。「出会って三十八日後に結婚したいと申し出て許可された。彼女と会って私の人生は大きく変わった。手を取り合って、うまくやっていけると思った」と涙ながらに同国での約四十年の歳月を振り返った。

 さらに、北朝鮮側は「私たちが子供をもうけるよう望んでいた。後で利用できると考えていたからだ」と指摘。長女美花さん(21)と二女ブリンダさん(19)を、工作員の訓練所ともいわれる平壌外国語大学に入学させたことについて「娘たちをスパイとして韓国に送り込むつもりだった。韓国には米兵と韓国女性の間に生まれた子供も多く、一瞬たりともスパイと疑われることはなかっただろう」と述べた。

 ジェンキンスさんは「人生で大きな過ちを犯したが、娘たちを北朝鮮国外に連れ出したのは正しい行いだった」と強調。北朝鮮を「遅れた国」と呼んで不信感をあらわにした。北朝鮮で暮らしていた時、ほかに三人の脱走米兵がおり、拉致されたルーマニア、レバノン、タイ人女性とそれぞれ結婚したとも語った。

 今年七月、インドネシア出国が決まった際には「曽我さんを連れて帰れば新しい車や家など、望むものは何でも金正日総書記から贈られると説得された」とも証言。母親ら肉親に会うため出身地の米ノースカロライナ州を訪れる意欲を示した。

外務省に働き掛け要望 寺越さん遺骨返還で

2004/12/06 The Sankei Shimbun
 日本海で1963年に失跡、その後北朝鮮で死亡したとされる寺越昭二さんの長男昭男さん(54)が6日、外務省で斎木昭隆アジア大洋州局審議官と面会、昭二さんの遺骨の返還を北朝鮮に働き掛けるよう文書で申し入れた。

 昭男さんによると、北朝鮮側は第3回日朝実務者協議で遺骨の返還について「反対はあるが、次回(の実務者協議)では頑張ってみる」と日本政府代表団に返答した。

 斎木審議官は今回の面会で昭男さんに「北京大使館などを通じて今後も北朝鮮に返還を働き掛けていく」と話したという。(共同)

経済制裁求める方針を確認 救う会が全国幹事会

2004/12/05 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者の支援団体「救う会」(佐藤勝巳会長)は5日、都内で全国幹事会を開き、今後も政府に北朝鮮への経済制裁発動を強く求めていく方針を確認し、そのための具体的な運動方法を決定した。

 運動方法は(1)食糧支援の残りの分(12万5000トン)の支援を政府が決定した場合には座り込み運動を起こす(2)国会議員に経済制裁への賛否を問うアンケートを実施する−など。また民間でもできる経済制裁に取り組むべきだとして「輸入が多いとされる北朝鮮産のあさりの不買運動を検討している」という。

 また、幹事会は幹事の兵本達吉氏を同日付で解任した。兵本氏は6月に記者会見し「同会への寄付金に使途不明金がある」と主張。救う会は7月の全国幹事会でこれを否定する監査報告を了承していた。解任理由について同会幹部は「憶測に基づく発言を繰り返したため」と説明した。(共同)

曽我さん一家、7日に帰郷

2004/12/03 The Sankei Shimbun
 新潟県佐渡市の拉致被害者支援室は3日、曽我ひとみさん(45)と夫、ジェンキンスさん(64)、長女、美花さん(21)、二女、ブリンダさん(19)の一家4人が、7日に佐渡市に戻ることが決まったと発表した。

 在日米軍によると、キャンプ座間(神奈川県座間市)で「不名誉除隊」の手続きを進めているジェンキンスさんの休暇許可が2日夕に下りた。ジェンキンスさんは米軍所属のまま佐渡を訪れ、キャンプ座間に戻らず除隊手続きが終わる見通し。

 一家は佐渡市に永住する意向を示しており、市などが受け入れ準備を進めている。

 一家は当初、3日に帰郷する予定だったが、ジェンキンスさんの休暇許可が遅れ延期されていた。(共同)

曽我さん一家の帰郷延期 米軍許可遅れ、来週以降に

2004/12/02 The Sankei Shimbun
 新潟県佐渡市は2日、拉致被害者、曽我ひとみさん(45)と夫、ジェンキンスさん(64)、長女、美花さん(21)、二女、ブリンダさん(19)の一家4人の帰郷が、3日から来週以降に延期されたと発表した。

 在日米軍キャンプ座間(神奈川県座間市)で「不名誉除隊」の手続きを進めているジェンキンスさんの休暇の許可が、米軍側の都合で遅れているためという。ジェンキンスさんは手続き完了前に、休暇を取って佐渡を訪れる予定だった。

 ジェンキンスさんは、軍法会議で禁固30日の判決を受けた後、11月27日に在日米海軍横須賀基地から釈放。曽我さんと娘2人が滞在するキャンプ座間に移った。

 ジェンキンスさんは米軍所属のまま休暇を取って佐渡を訪れ、キャンプ座間に戻らずに除隊手続きが終わる見通し。(共同)

安倍氏らを「右翼」と非難 朝鮮中央通信が論評

2004/10/30 The Sankei Shimbun
 北朝鮮の朝鮮中央通信は29日の論評で、日本人拉致問題は日朝平壌宣言を契機に「事実上、解決した問題」とあらためて主張した上で、経済制裁実施を要求する自民党の安倍晋三幹事長代理や拉致救出議員連盟の平沼赳夫会長らを「右翼強硬勢力」と表現、日朝関係を「意図的に悪化させている」と非難した。

 特に安倍氏に対しては、2002年9月の第1回日朝首脳会談に同席した経歴に言及、強い嫌悪感を表明した。

 また、論評は被害者家族の帰国実現や、第3回日朝実務者協議での安否不明の拉致被害者に関する資料提供は「すべてわれわれの誠意と努力の一環で、日本政府の公式関係者も認めている」と強調した。

 朝鮮労働党機関紙「労働新聞」も同日、安倍幹事長代理らの経済制裁主張を非難する論評を掲載しており、北朝鮮が制裁論議が実施につながることを強く警戒していることをうかがわせた。(共同)

経済制裁前向き検討を 北朝鮮問題で中川経産相

2004/10/30 The Sankei Shimbun
 中川昭一経済産業相は29日、札幌市内のホテルで講演し、北朝鮮への食糧支援の実態の不透明さやミサイル開発への懸念を表明した上で「議員立法で法律を作ったのだから、やるべきことはどんどんやっていく(べきだ)」と述べ、経済制裁の検討に前向きな考えを重ねて示した。

 中川経産相は、中国のインターネット上で日本への批判が書き込まれている「反日サイト」について「将来、子どもたちにどのような影響を与えるのか真剣に考えなければいけない。そういうものをなくしてもらわないと(困る)」と述べ、中国政府の対応を批判した。(共同)

「めぐみさん夫」の指紋採取 不鮮明、鑑定は困難か

2004/11/30 The Sankei Shimbun
 11月に開かれた第3回日朝実務者協議で、北朝鮮側が横田めぐみさん=失跡当時(13)=の夫としているキム・チョルジュン氏の指紋採取を、日本政府代表団が試みていたことが30日、関係者の話で分かった。

 代表団はキム氏から事情聴取しており、その際に写真などの資料を持たせたとみられる。鮮明な指紋からはDNA鑑定に必要な汗などの分泌物が採取できる場合があるが、今回は不鮮明で難しいという。

 警察当局はほかに、代表団メンバーの証言からキム氏のモンタージュ写真や似顔絵を作成。北朝鮮で生活していた際、横田さんの夫に会ったことがある拉致被害者の蓮池薫さん(47)夫妻らに確認を求める作業を進めている。

 日本側は事情聴取の際、身元確認のためのDNA鑑定をする試料としてキム氏に頭髪などの提出を求めたが、拒否された。(共同)

ジェンキンスさん釈放 「日本で暮らす」と発言

2004/11/27 中国新聞ニュース
 拉致被害者曽我ひとみさん(45)の夫で、脱走罪などに問われ軍法会議で禁固三十日の判決を受けたチャールズ・ジェンキンスさん (64)は二十七日朝、刑期短縮により、在日米海軍横須賀基地(神奈川県)の施設から釈放された。

 その後、ヘリコプターで在日米陸軍司令部のあるキャンプ座間(同)に移送され、滞在中の曽我さんら家族と再会。一週間程度かけた「不名誉除隊」の手続き後、来月上旬には一家で新潟県佐渡市に移り、家族水入らずの生活を始める。

 内閣府の拉致被害者・家族支援室には曽我さんから「夫は元気そうでした」と連絡があった。

 AP通信は、ジェンキンスさんがキャンプ座間到着後「受け入れてもらえるなら、日本にとどまるつもりだ。妻と、家族と一緒に日本で暮らす。米国にも帰りたいが、一度だけでいい」と話したと伝えた。

 ジェンキンスさんは在韓米軍軍曹だった一九六五年、北朝鮮へ脱走したとして訴追された。今年九月、キャンプ座間に出頭し、十一月三日の軍法会議に出廷。司法取引が成立していたため、禁固三十日と不名誉除隊の判決が言い渡され、キャンプ座間に収容施設がないため、横須賀基地に即日収監された。

 刑期満了の場合、釈放日は十二月三日だったが、軍法会議を招集した在日米陸軍司令官エルバート・パーキンス少将が、施設内での態度が優良だったことを考慮し、規定に基づき刑期短縮を決めたとみられる。

 軍法会議以降も、曽我さんと長女美花さん(21)、二女ブリンダさん(19)はキャンプ座間に滞在している。

北の再調査に約60の疑問・矛盾点 家族会など政府に文書提出

2004/11/25 The Sankei Shimbun

 拉致被害者家族会と救う会は25日、第3回日朝実務者協議で北朝鮮が示した横田めぐみさん=失跡当時(13)=ら拉致被害者10人の再調査結果に関する疑問点と矛盾点を文書にまとめ、内閣府の拉致被害者・家族支援室に提出した。

 両会はこの中で「疑問・矛盾点は約60点ある」とし「これ以上、協議を進めても真実は明らかにならない。今こそ経済制裁を発動するべきだ」と主張。

 その上で、北朝鮮側が2002年に日本側に提供した8人の死亡診断書について「慌てて作ったもので正確ではない」と説明したことを「悪意に満ちたねつ造だったことを自ら認めた」とした。

 めぐみさんについては、夫とされるキム・チョルジュン氏が本人確認のための血液、毛髪の採取や写真撮影を拒否したことを疑問点として挙げ、北朝鮮が提供しためぐみさんの写真3枚については「2枚は合成加工した痕跡がある」と指摘。

 大韓航空機爆破事件の実行犯金賢姫元工作員の教育係だったとされる田口八重子さん=同(22)=とめぐみさんが81−84年に一緒に生活していたとする北朝鮮の説明は、同時期に教育係と暮らしていたとする金元工作員の証言と矛盾するなどとした。

 また石岡亨さん=同(22)、松木薫さん=同(26)、有本恵子さん=同(23)=について北朝鮮はよど号グループの関与を否定したが、有本さん拉致を認めたグループメンバーの妻の警察当局に対する供述と食い違うと主張。

 北朝鮮で結婚したとされる市川修一さん=同(23)=と増元るみ子さん=同(24)=についても、2人とも「心臓まひ」とする死因などが不自然としている。

早期に経済制裁の発動を 家族会と救う会、会見で訴え

2004/11/25 The Sankei Shimbun
 日朝実務者協議で北朝鮮側が示した再調査結果に対する疑問・矛盾点を拉致被害者・家族支援室に提出した家族会と救う会は25日、都内で記者会見し「日本は毅然(きぜん)とした態度を」と経済制裁の早期発動を強く訴えた。

 会見で横田めぐみさん=失跡当時(13)=の父親で家族会代表の滋さん(72)は、北朝鮮が今回、日本に2002年に提供した8人の死亡診断書について「存在しないので作った」としたことに言及。「死亡診断書のねつ造が明らかになったことで、安否不明者が死亡している証拠は全くなくなった」と話した。

 妻の早紀江さん(68)は「(死亡診断書のねつ造とは)北朝鮮はなんということを平然とするのか。日本は北朝鮮になめられている」と訴えた。

 北朝鮮が「死亡」と説明する増元るみ子さん=同(24)=の弟で家族会事務局次長の照明さん(49)は「骨を出せないということは生存している可能性が高いということだ」と希望を述べた。

北提供の「遺骨」、帝京大などに鑑定依頼

2004/11/24 The Sankei Shimbun
 日朝実務者協議で北朝鮮側が横田めぐみさん=失跡当時(13)=の「遺骨」として提供した骨について、新潟県警は24日までに、警察庁科学警察研究所(科警研)と帝京大、橋本正次・東京歯科大助教授に鑑定を依頼した。

 めぐみさん拉致事件は拉致現場が新潟県内のため同県警が捜査しており、北朝鮮側説明の真偽を確認するため、証拠として骨を差し押さえていた。科警研と帝京大がDNA鑑定、橋本助教授が骨相学などに基づく鑑定を進める。

 科警研は1989年から、全国の警察本部の依頼を受けてDNA鑑定を実施、多くの犯罪捜査に活用されている。帝京大もDNA鑑定の分野で国内最高水準の技術を持つという。

 橋本助教授は法人類学者で、今回の実務者協議にも代表団の一員として同行。2002年の調査では北朝鮮側が松木薫さん=同(26)=の「遺骨」として提供した骨について、骨相学と解剖学による鑑定で「別人」との結論を出した。

「佐渡で仕事したい」とジェンキンスさん

2004/11/24 The Sankei Shimbun
 拉致被害者の曽我ひとみさん(45)の夫、チャールズ・ジェンキンスさん(64)が「佐渡で仕事をしたい」という意向を持っていることが、24日分かった。新潟県佐渡市の高野宏一郎市長が定例会見で明らかにした。

 高野市長は「戻ってきてから、どういう仕事がいいのか本人と話し合いたい」としている。

 また、曽我さんの長女、美花さん(21)、二女、リンダさん(19)の日本語教育について、高野市長は「新潟県を通じて新潟大学に協力を依頼した」と述べた。

 ジェンキンスさんは3日に開かれた米軍の軍法会議で、禁固30日と不名誉除隊を言い渡され、在日米海軍横須賀基地に拘留中。曽我さんはジェンキンスさんの釈放後「一家で佐渡に住みたい」と希望している。

めぐみさんの?遺骨、鑑定作業に時間必要 官房長官

2004/11/19 The Sankei Shimbun
 細田博之官房長官は19日午後の記者会見で、北朝鮮が拉致被害者の横田めぐみさんのものとする遺骨の鑑定結果が判明するまでにある程度の時間が必要との認識を示した。遺骨は日朝実務者協議に出席した政府代表団が15日、日本に持ち帰った。

 細田氏は警察庁から報告を受けたことを認めた上で「普通に状態の良い遺骨の場合は1週間ないし10日間でできるが、そういう状況から離れたケースもあるので、一概には言えないということだった」と述べた。

 また「内容について吟味を始めたわけではない。むしろ、どこでやるとか、証拠としての押収手続きとか法律手続きをしているようだ。従ってこれからということになる」として鑑定作業は今後本格化することを明らかにした。

「北にはだまされない」 救出まで戦う思い新たに

2004/11/16 The Sankei Shimbun
 「北朝鮮のやり方にはだまされない」。死亡時期の説明が1年余りずれた。“物証”は火葬によってDNA鑑定が困難な「遺骨」だった。横田めぐみさん=失跡当時(13)=が拉致されて15日でちょうど27年。北朝鮮から提供された写真の中の娘に、早紀江さん(68)は涙が止まらず、一家は救出まで戦う思いを新たにした。

 内閣府の一室。被害者家族に対する外務省の個別説明が行われた。テーブルの上には中学校の生徒手帳とめぐみさん自筆とみられるメモ、3枚の写真。一家は写真を手に取って順に見入った。中学生ごろと結婚前のものか。「かわいそうに」とつぶやく父親の滋さん(72)。早紀江さんと弟の哲也さん(36)は涙をこらえることができなかった。

 個別説明の後、早紀江さんは「(写真の)めぐみは少し背が高くなってスラッとしていた。私たちが知らない、向こうに行ってからのめぐみがいた」と一瞬ほおを緩めたが、すぐ「精神に異常を来したなんて信じられない。もともと、そんな性格じゃなかった」と厳しい顔つきに。

 滋さんは14日が誕生日。「いいニュースをプレゼントにと期待していたのに誠意のない回答で許せない」。もう一人の弟、拓也さん(36)は怒りをあらわにした。

 ほかに家族に示されたのは白い布に包まれた骨つぼと190ページからなるカルテの写し。「外を見せていただいただけで中を見ることはできなかった。早く鑑定の結果を知りたい」と滋さんは話した。

 1カ月前の朝。横田さん夫妻はJR東京駅前にいた。「拉致問題は解決していない。これからが本当の戦いです」。滋さんの声に出勤途中のサラリーマンらが足を止める。「(帰国した)5人についてはほぼ解決したが、残る10人について北朝鮮は不誠実な対応を続けているんです」とさらに訴えた。今もその気持ちは変わらない。

 早紀江さんも「めぐみたちは今も助けを待っている。拉致は国民全体に突き付けられた重要な課題」と声を振り絞った。

 横田さん一家にとってこの27年間は長かった。「めぐみさんが北朝鮮で生きている」との元工作員の証言を聞いた97年1月下旬からは、めぐみさんの生存を確信。この直後から夫妻の街頭活動は始まった。

「横田さんの遺骨」を搬送 北朝鮮、写真など提供

2004/11/15 中国新聞ニュース
 日朝実務者協議を終えた日本政府代表団(団長・藪中三十二外務省アジア大洋州局長)は十五日、全日空のチャーター機で平壌から羽田空港に帰国し、拉致被害者家族会に対し、協議内容や持ち帰った物証について説明した。

 それによると、北朝鮮側は安否不明の拉致被害者十人に関して二 ○○二年と同様に「八人死亡、二人未入国」と表明。物証の中には北朝鮮側が「横田めぐみさん=失跡当時(13)=の遺骨」と説明したものも含まれていた。横田さんの生徒手帳や自筆のメモなど、他の拉致被害者関係も含め資料や写真を多数受け取った。政府は提出された遺骨を早急に鑑定する方針で、その他の物証についても分析し、拉致問題解明につなげたい考えだ。

 家族会によると、北朝鮮側は横田さんについて「遺体はいったん入院先の病院の裏山に土葬されたが、夫が二年半後に掘り返し火葬した」と説明、骨つぼに入った骨を提供された。今回の協議の中で娘のキム・ヘギョンさん、夫とされるキム・チョルジュンさんの三人で写っている写真も見せられた。

 日本側はキム・チョルジュンさんが本当の夫か確認するため、血液などの提出を要求したが、特殊機関に勤めていることを理由に拒否された。

 このほか、交通事故で死亡したと説明している田口八重子さん=失跡当時(22)=、松木薫さん=同(26)=の事故調査資料、石岡亨さん=同(22)=や松木さんの写真などが渡された。また、拉致事件の責任者二人の裁判記録の写しも示された。

 協議は九日から十四日まで六日間に及び、日本側は、北朝鮮の調査委員会責任者を務める陳日宝・人民保安省局長から説明を受け、疑問点をただした。また、横田さんの夫とされるキム・チョルジュン氏や、拉致被害者が入居していたとされる「招待所」や病院の関係者らから事情を聴いた。

曽我さん、軍法会議後初めてジェンキンスさんと面会

2004/11/08 The Sankei Shimbun
 拉致被害者、曽我ひとみさん(45)が7日、米軍法会議で実刑判決を受けて米海軍横須賀基地(神奈川県)の拘置施設に収監中の夫チャールズ・ジェンキンスさん(64)と判決後初めて面会したことが8日、分かった。

 関係者によると、曽我さんと娘2人は7日正午すぎ、米軍関係者が運転する乗用車で基地を訪問。施設内で約3時間面会した後、午後4時すぎに基地を出たという。

 ジェンキンスさんは禁固30日の刑を受け、3日夜に収監された。独房での健康診断を終え、7日に集合房に移ったという。収容者は家族など近親者との面会が週1回認められている。

実務協議でめぐみさんの夫と面会求める…逢沢副大臣

2004/11/04 読売新聞 Yomiuri On-Line
 逢沢一郎外務副大臣は4日の記者会見で、9日から平壌で行われる日朝実務協議に関し、安否不明の拉致被害者10人の真相究明の一環として、横田めぐみさんの夫とされる北朝鮮人の男性との面会を北朝鮮に求める考えを示した。

 逢沢副大臣は、「(男性が)北朝鮮にいることは確実だろうから、直接、面会することも必要だ。拉致問題の解決のためには避けて通ることの出来ない一つのプロセスだ」と指摘した。

 また、北朝鮮が10月末、北京の日本大使館を通じ、横田さんのものと思われる病院のカルテなどを撮影したビデオテープを提出したことについては、「北朝鮮が(拉致問題に)積極的に対応しようとする姿勢の表れの一環だと、積極的に評価をしたい」と述べた。

「米国の配慮」と歓迎 ジェンキンスさん軍法会議で政府

2004/11/04 The Sankei Shimbun
 政府は3日、拉致被害者、曽我ひとみさんの夫、ジェンキンスさんの扱いが軍法会議で禁固30日と不名誉除隊と決まったことについて「米政府のこれまでの理解と配慮に謝意を表したい。速やかな決定となり、大変良かった」(細田博之官房長官)と歓迎した。

 小泉純一郎首相は5月に北朝鮮を訪問した際、ジェンキンスさんに日本永住を自ら働き掛け「最大限の努力」を約束。6月には、一家で日本に永住したいとの曽我さんの気持ちをブッシュ米大統領に伝え理解を求めた。米政府はイラク戦争で国際社会が二分される中、対米協調を貫く小泉政権の立場と日本の世論に配慮したようだ。

 細田氏は3日、都内で記者団に対し「米軍での手続きの後、曽我さんの家族が国内で一緒に暮らせるよう政府として引き続き必要な支援を実施していきたい」と述べ、曽我さん一家の日本での生活支援に全力を尽くす考えを表明した。

 政府関係者は「曽我さん一家のいろいろな背景を加味してくれた判決だと思う。米政府に感謝したい」と述べた。

北朝鮮、有本さんの旅券を返還 横田さんカルテ映像も

2004/11/02 The Sankei Shimbun
 町村信孝外相は2日午前の記者会見で、北朝鮮による拉致被害者の有本恵子さんが所持していたとみられる旅券と写真、ビデオ撮影された横田めぐみさんのカルテの映像などの資料が先月末、北朝鮮側から北京の大使館ルートを通じ提供されていたことを明らかにした。

 実物かどうか警察当局が現在調べており、政府は9日からの日朝実務者協議で詳しい説明を求める考えだ。

 9月の第2回日朝実務者協議で、北朝鮮側は有本さんについて「本人が所持していた旅券と写真1枚が残されている」としたが、実物を提示しなかったため、日本側が早急な返還を求めていた。写真の撮影時期や場所は不明という。

 横田さんのカルテについても、北朝鮮側の「入退院を繰り返していた」との説明に対して、根拠となる資料を示すよう求めていた。ただ提供された映像は「不鮮明で、判読が難しい」(外相)ため、9日からの協議で実物の提示を要求する。

 北朝鮮側が積極的に資料を提供するのは珍しく、外相は「必要な情報は事前に提示するよう求めている。彼らなりに誠意を示そうということではないか」と一定の評価をした。

 横田さんに関しては2002年9月の現地調査の際に、愛用のバドミントンラケットと写真が引き渡された。

 <「時間稼ぎの意図感じる」>

 拉致被害者の横田めぐみさん=失跡当時(13)=のカルテとみられるビデオ映像などが10月末、北朝鮮側から日本政府に提供されていたことが明らかになり、めぐみさんの弟、拓也さん(36)は2日「時間稼ぎの意図を感じる」と、安否不明の拉致被害者10人の再調査が進まないことにいら立ちを見せた。

 町村信孝外相は記者会見で「彼ら(北朝鮮)なりの誠意では」と一定の評価をしたが、拓也さんは「姉が今どうしているかが大事だ。そのことにつながらない以上、家族としてはとても評価などできない」と話した。

 <「恵子の現在、知りたい」>  北朝鮮が拉致被害者、有本恵子さん=失跡当時(23)=の旅券などを政府に提供したことについて、有本さんの母、嘉代子さん(78)は2日、「現在の恵子のことを知りたい。何十年も前のものを今更返してもらっても…。今のことをわたしたちは求めているのだから」と不満をあらわにした。

 嘉代子さんによると、2日午前10時ごろ、外務省の支援室から「恵子さんの旅券と写真を北朝鮮が返してきた」と電話で連絡があったという。

 9日から再開されることになった第3回日朝実務者協議について、嘉代子さんは「のらりくらりと北朝鮮がこれまでと同じ対応を続けるなら『そんなのでは日本国民は納得しない』と交渉の席を立ってもらっても構わない」と政府に注文を付けた。

千葉で「拉致」疑いの女性、写真鑑定結果が一致

2004/10/25 読売新聞 Yomiuri On-Line
 1962年に千葉県内で行方不明になり、北朝鮮に拉致された疑いが指摘されている加瀬テル子さん(当時17歳)について、加瀬さんの親族らが25日、東京都内で記者会見を開き、北朝鮮からの脱北者が持っていた写真の女性と「同一人物と考えて差し支えない」とする正式な鑑定結果が出たと発表した。

 鑑定を行ったのは、東京歯科大の橋本正次助教授(法人類学)。加瀬さんが行方不明になる前のスナップ写真4枚と、脱北者が持っていた写真1枚を比較検討した結果、輪郭や、目鼻や口などの位置が合致するうえ、右目の下に小さなあざのようなものがある特徴も一致した。

 会見した加瀬さんの親類の仲条富夫さん(56)は「正式な鑑定が出て、1日も早くテル子に会いたいという気持ちが強くなってきたというのが、家族たち全員の気持ち」と語った。

曽我さん、25日からキャンプ座間に滞在

2004/10/21 読売新聞 Yomiuri On-Line
 政府は21日、北朝鮮による拉致被害者で新潟県・佐渡島に帰省中の曽我ひとみさん(45)が、長女美花さん(21)、二女ブリンダさん(19)とともに、今月25日から再び在日米陸軍のキャンプ座間(神奈川県座間市)に滞在することを明らかにした。

 キャンプ座間では、米軍提供の宿舎で夫チャールズ・ジェンキンスさん(64)と一緒に生活し、来月3日から始まるジェンキンスさんの軍事法廷を見守る。

米で北朝鮮人権法、正式成立

2004/10/19 The Sankei Shimbun
 ブッシュ米大統領は18日、ホワイトハウスで北朝鮮人権法案に署名、日本人拉致問題の解決など北朝鮮の人権状況が改善しない限り人道支援以外の対北朝鮮援助を禁じる同法が正式に成立した。

 同法は北朝鮮と人権問題を協議する大統領特使の新設を規定。関係筋によると、候補者の絞り込み作業が進んでおり、大統領が近く任命する見通し。北朝鮮側は「米国による体制変更の企て」などと非難を繰り返しており、正式成立で対米批判をさらに強めるのは間違いない。

 人権法は、日本人と韓国人の拉致被害者に関する情報の全面開示と、被害者全員の帰国を認めるよう北朝鮮に要求。表現や信教の自由などと並び、拉致問題に「実質的な進展」がない限り、食糧など人道支援以外の援助を禁止している。

 しかし、米国は核問題の再燃後、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)を通じた北朝鮮への重油の提供を停止しており、実質的な影響はない。また、「国家安全保障上の利益」を理由に援助禁止措置を猶予できる除外規定も設けられており、大統領が必要と判断すれば、人道支援以外の援助も可能になる。

 同法は7月に下院で可決後、上院が特使新設などの修正条項を盛り込み、今月4日に議会を通過した。(共同)

 <家族会が人権法を歓迎>

 北朝鮮による拉致被害者家族会(横田滋代表)と「救う会」は19日、米国で北朝鮮人権法が成立したことについて「関係者の粘り強い並々ならぬ労苦に敬意を表する」と歓迎する声明を発表した。

 また「(拉致問題で)『ゼロ回答』を繰り返す相手にただ引き回された日本政府の姿勢を思うとき、怒りと情けなさを覚えざるをえない」と批判。日本でも同様の法律を制定するよう求めている。

拉致被害者の親を支援 増元さん同級生らが会結成

2004/10/16 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者、市川修一さん=失跡当時(23)=、増元るみ子さん=同(24)=の出身小中学校、高校の同級生らによる「卒業生救う会」が16日、鹿児島市で結成、初会合を開いた。会合には、増元さんの弟、照明さん(49)、市川さんの兄、健一さん(59)も参加した。

 市川さんの同級生で会長を務める花牟礼薫さん(49)は「拉致された子供を待っている高齢の両親のサポートが必要だ」とあいさつ。市川さんの親らを訪問、励ますなど支援活動をし、今月末には街頭署名活動も行うことを決めた。

 被害者家族の照明さんは「家族は拉致問題の幕引きを一番危ぐしている。地元から大きな声を上げていただきたい」と協力を要請。また健一さんは「身近な人の支援はありがたく心強い」と同会が心の支えになると話した。健一さんの妻、龍子さん(58)も「90歳近い両親に一刻も早く修一を抱かせてやりたい」と訴えた。

脱北者所持の写真2枚公開 加瀬テル子さんと同一の可能性

2004/10/16 The Sankei Shimbun
 特定失踪(しっそう)者問題調査会は16日、1962年に千葉県で行方不明になった加瀬テル子さん=失跡当時(17)=と同一人物の可能性が高いことが分かったカラー写真2枚を公開した。いずれも北朝鮮を脱出し、現在は韓国に住んでいる男性が所持していたとしている。

 2枚は刻印のようなものが押された顔写真と全身姿のスナップ写真で、撮影された年月日と場所は不明。全身の写真は夫とみられる男性が隣に立っているが、調査会は加瀬さんの部分だけを公開した。

 調査会によると、北朝鮮を脱出した男性は中国でこの写真を別の脱北者から受け取ったと証言、「(加瀬さんは)平壌市の中心部に住んでおり、拉致された日本人の男性と結婚したと聞いた」と話しているという。

 会見した叔母(81)は「1日も早く帰ってきてほしい。私たちもできる限りのことをしたい」と話した。

テロ支援リスト掲載に謝意 家族会、米国務副長官と面会

2004/10/13 The Sankei Shimbun
 拉致被害者家族会(横田滋代表)と支援する救う会のメンバーは13日、東京の米国大使館で、来日中のアーミテージ米国務副長官と面会し、米国が北朝鮮を制裁対象となる「テロ支援国家リスト」に掲載した理由として拉致問題を明記したことに謝意を伝えた。

 副長官は「拉致問題は職務としてはもちろん、人類の一人として解決しなければならない問題だ」と述べ、米国が引き続き協力する意向を表明したという。

 副長官はまた、横田めぐみさん=失跡当時(13)=に触れ「安否が分からないのは残酷なことだ。めぐみさんが生きて帰ってくることを望んでいる」と横田代表に話した。

 家族会などは、日本人拉致など人権状況の改善なしに人道支援以外の援助を禁じるとした「北朝鮮人権法」の米議会での成立が、拉致問題の解決に大きな力になると副長官に伝えた。

家族会があす外相と面会へ

2004/10/12 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者家族会(横田滋代表)は12日、町村信孝外相に13日に面会することを明らかにした。

 家族会が町村外相と会うのは初めてで家族会の方から要望した。午前中に外務省内で30分程度の面会が予定されており、横田代表は「新しい外相に家族の気持ちを伝え、拉致問題解決への尽力をお願いしたい」としている。

ジェンキンスさんの軍法会議、11月3日

2004/10/07 中国新聞ニュース
 東京発のロイター通信によると、米軍筋は七日、脱走罪などで訴追された曽我ひとみさん(45)の夫チャールズ・ジェンキンスさん (64)の軍法会議が十一月三日に開かれると語った。

 ジェンキンスさんは九月から、司法手続きのため、在日米陸軍司令部があるキャンプ座間(神奈川県)で生活しており、軍法会議も同基地内で行われるとみられる。

 ロイター通信は、ジェンキンスさんが司法取引で、減刑と引き換えに罪を一部認め、北朝鮮に関する情報を提供する公算が大きいと伝えている。

 ジェンキンスさんは(1)脱走(2)他の兵士への脱走教唆(3)利敵行為(4)軍への背任奨励―の四つの罪で訴追されている。

 ジェンキンスさんは北朝鮮で曽我さんと結婚。長女美花さん(21) と二女ブリンダさん(19)が生まれた。曽我さんは二○○二年十月、日本に帰国。ジェンキンスさんは今年七月、娘二人と帰国・来日した。(共同)

蓮池祐木子さんが職場復帰

2004/10/01 The Sankei Shimbun
 拉致被害者の蓮池祐木子さん(48)が1日、新潟県柏崎市の非常勤職員の仕事に復帰した。北朝鮮から子供2人が帰国する直前の5月中旬以来約4カ月半ぶりで、復帰前と同じく市立保育園で調理補助などの業務に当たる。

 市支援室によると、子供2人の日本語取得が順調に進み、日常生活にも慣れてきたことなどが理由という。

 祐木子さんの夫の薫さん(47)は8月から市役所市民活動支援課の職場に復帰している。

中山参与の辞任了承 首相と細田氏、慰留せず

2004/09/29 The Sankei Shimbun
 北朝鮮の拉致問題を担当してきた中山恭子内閣官房参与は29日午後、首相官邸で小泉純一郎首相、細田博之官房長官に会い、辞任の意向を伝えた。首相と細田氏は慰留せず了承した。

 この後、中山氏は記者団に「参与として指示された役割を既に果たしており、そろそろ辞めていい時期だと思った」と語った。拉致被害者5人とその家族全員の帰国・来日が実現、一区切り付いたと判断したようだ。

 中山氏は28日、共同通信社の取材に対し「川口順子前外相、山崎拓前自民党副総裁が首相補佐官となり、わたしがやらなければならないことはもうないのではないか」として、官邸スタッフの増強も理由に挙げていた。

 中山氏は、2002年9月、拉致問題をめぐる外務省の対応に被害者家族の不信が強まる中、当時の福田康夫官房長官の要請を受けて就任。政府の拉致被害者・家族支援室の実質的なトップとして被害者らとの「パイプ役」を果たしてきた。同10月には平壌を訪問、蓮池薫さんら被害者5人とともに帰国した。

 <拉致被害者家族会代表で横田めぐみさんの父、滋さんの話> 辞任は寝耳に水。常に拉致被害者や家族の立場に立って行動、発言していただいていただけに非常に残念だ。27日に話したときも、辞めるという話はかけらもなかった。本人から経緯をお聞きしたい。これまでのご尽力に感謝したい。

 <拉致被害者家族会副代表で田口八重子さんの兄、飯塚繁雄さんの話> どうしよう、困った。内閣改造の中で突然出てきた話なので、本意ではないと思う。中山恭子参与は政府とわれわれの貴重なつなぎ役だった。よりどころを失った感じ。今後、参与の代わりに拉致問題をしっかりやる担当大臣や、特別委員会の設置を要求したい。

青森の女性の親族が告発 北朝鮮拉致で

2004/09/29 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致問題を調査している特定失踪(しっそう)者問題調査会のメンバーや失踪者の親族が29日、青森県警八戸署を訪れ、同県八戸市出身の看護学校生木村かほるさんは「拉致された疑いが強い」として、容疑者不詳のまま、国外移送目的略取容疑の告発状を提出した。

 かほるさんは秋田市内で行方不明になった疑いが強いことから、八戸署は「内容を確認し、秋田県警と協議しながら受理するかどうか決める」としている。

 かほるさんの姉の天内みどりさん(71)は、告発状提出後に八戸市内で記者会見し「44年間捜した妹のために今日告発できた。(既に亡くなった)両親はどんなに喜んでいるか」と話した。

 24日から30日にかけて、15人の親族が一斉に警視庁や各府県警に告発状を提出するうちの1件。

食糧支援の先送り検討 次回日朝協議見極め判断

2004/09/29 中国新聞ニュース
 政府は二十九日、北朝鮮が次回の日朝実務者協議で安否不明の拉致被害者十人に関する具体的な再調査結果を示さない場合、日本が約束した二十五万トン食糧支援のうち、本年度後半を予定していた一二・五万トン分の拠出を先送りする方向で検討に入った。

 今月下旬の日朝協議で、北朝鮮側が十人の安否に関し具体的な証拠を明らかにしなかったことから、政府、与党内では北朝鮮に対する強硬論が急浮上している。

 細田博之官房長官は同日午前の記者会見で、第二弾の食糧支援について「先送りは固まっていない。いろいろな交渉を煮詰めていくことが最優先課題だ」と指摘したが、複数の政府筋は「次回協議での北朝鮮の態度次第では食糧支援の先送りに踏み切る可能性はある。世論は無視できない」と述べた。

 食糧支援は今年五月下旬の日朝首脳会談で、小泉純一郎首相が約束。これを受け、政府は八月に人道支援の第一弾として、国際機関を通じた十二万五千トン(約四千万ドル相当)の食糧支援と約七百万ドル分の医薬品の人道支援を決定した。

 政府は、二○○四年度後半を第二弾の拠出時期として想定していた。

日朝協議、平壌開催で調整 拉致問題打開へ方針転換

2004/09/28 The Sankei Shimbun
 政府は28日、安否不明の拉致被害者10人の再調査に関する第3回日朝実務者協議を平壌で開催する方向で本格的な調整に入った。

 細田博之官房長官が外務省の薮中三十二アジア大洋州局長らと協議した上で、小泉純一郎首相が薮中氏らを呼び「(拉致問題の)真相究明のため今後のやり方を含めて研究してほしい」と直接指示した。

 今月25、26両日に北京で開かれた第2回日朝実務者協議で、日本側は次回協議の平壌開催を求めた北朝鮮側に対し、相手ペースで交渉が進むことを懸念し「現時点でその必要はない」(外務省筋)と拒否した経緯がある。しかし、協議の進展を望む世論に配慮し「調査した人が出てきた方がまどろっこしくなくていい」(町村信孝外相)と方針を転換した。

 政府筋によると、平壌で開催した場合は再調査を実施しているとされる「調査委員会」のメンバーと面会し、調査状況を問いただしたい考えだ。併せて、拉致した日本人をとどめ置いたとされる清津(チョンジン)の関係機関などを視察する案も浮上している。

 政府筋の1人は28日夜、10月上旬にも日朝国交正常化に関する関係閣僚会議専門幹事会を開き、拉致問題解決に向け今後の対応を協議することを明らかにした。

北朝鮮へ制裁、排除しない 町村外相

2004/09/28 The Sankei Shimbun
 町村信孝外相は27日夜、外務省で就任後初めて記者会見し、拉致問題をめぐり北朝鮮への経済制裁論が出ていることについて「制裁を必ずすぐやるとも言えないし、排除することもない」と述べ、排除しない考えを強調した。

 具体的な対応については「最も早い機会に(北朝鮮側から)答えが出るような、最適な手段の組み合わせを模索する」と述べ、安否不明の拉致被害者10人に関する再調査の進展など、北朝鮮側の出方を見極める姿勢を示した。

 日中関係については「中国との政治的関係は決していい状態にない。中国も少々むきになりすぎている」として、外務政務次官や日中議連などを通じて築いた人脈も利用して、関係改善に取り組む意欲を表明した。

「先には進めない」10人の安否進展なしに官房長官

2004/09/28 The Sankei Shimbun
 細田博之官房長官は28日午前の記者会見で、北朝鮮が先の日朝実務者協議で拉致被害者10人の安否に関する具体的な再調査結果を出さなかったことに関し「10人の結果がはっきりしないと、その先には進めない」と述べ、北朝鮮が結果を明らかにしない限り、日朝国交正常化交渉の再開に応じられないとの考えを示した。

 北京での日朝実務者協議に触れ「細かい調査報告はあったが、(生死に関する)肝心なところがまったく分かっていない」と北朝鮮の報告に不満を表明。ただ、与党内から出ている経済制裁論に関しては「粘り強く真相の究明を求める必要がある」と述べ、引き続き交渉による解決を目指す方針を強調した。

中山参与が辞任の意向 2人の首相補佐官就任で

2004/09/28 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致問題を担当してきた中山恭子内閣官房参与は28日午後、共同通信社の取材に対し「川口順子前外相、山崎拓前自民党副総裁が首相補佐官となり、わたしがやらなければならないことはもうないのではないか」と述べ、辞任の意向を示した。

 ただ、小泉純一郎首相が慰留する可能性もあり、流動的要素もある。これに関連し、首相は同日夜、首相官邸で記者団に「聞いていない」と述べた。

 中山氏は、2002年9月、拉致問題をめぐる外務省の対応に被害者家族の不信が強まる中、当時の福田康夫官房長官の要請を受けて就任。政府の拉致被害者・家族支援室の実質的なトップとして被害者らとの「パイプ役」を果たしてきた。同10月には平壌を訪問、蓮池薫さんら被害者5人とともに帰国した。

 理由として中山氏は、川口氏ら官邸の外交スタッフ増強のほか、被害者5人とその家族全員の帰国・来日が実現、一区切り付いたことを挙げた。首相に自ら辞意を伝えるかどうかについては「どうなるか分からないが、そうなるかもしれない」と述べた。

「拉致濃厚」と一斉告発

2004/09/28 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致問題を調査している特定失踪(しっそう)者問題調査会(荒木和博代表)が「拉致の可能性が濃厚」と判断した藤田進さん=失跡当時(19)=や坂本とし子さん=同(22)=ら9人の家族らが28日、被疑者を不詳とした国外移送目的略取容疑の告発状を警視庁と埼玉、京都、静岡、兵庫、鹿児島の各府県警に提出した。兵庫県警に出す予定だった別の失踪者1人の告発状は、あらためて三重県警に提出する。

 調査会によると、10人は失跡当時19−53歳の男性6人と女性4人で、1965−82年に行方不明になった。

 このうち埼玉県川口市で76年に行方不明になった藤田さんは今年8月、北朝鮮を脱出した男性が所持していたとされる写真の人物と同一人物の可能性が極めて高いことが専門家の鑑定で判明。

 8月に行われた日朝実務者協議で、日本政府は藤田さんの安否を北朝鮮側に照会し、北朝鮮側は否定している。

 調査会はこれまでに、拉致の可能性が濃厚として失踪者33人の氏名や行方不明になった経緯などを公表。18人については既に家族らが告発状を提出している。

 <告発対象の失踪者10人>

 告発対象の失踪(しっそう)者10人は次の通り。住所、年齢は失跡当時。

 埼玉県、藤田進さん(19)▽東京都、遠山文子さん(21)▽同、坂本とし子さん(22)▽同、生島孝子さん(31)▽神奈川県、河嶋功一さん(23)▽三重県、辻与一さん(32)▽京都府、前上昌輝さん(20)▽兵庫県、清崎公正さん(41)▽鹿児島県、園田一さん(53)、敏子さん(42)夫妻

日朝実務者協議:経済制裁による交渉打開求める 家族会

2004年9月27日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE
 「経済制裁をしてから交渉が始まる。政府は方向転換してほしい」。27日、日朝実務者協議の報告を受けた拉致被害者の家族会メンバーは、東京都内で行った記者会見で、一向に進展しない北朝鮮の再調査に憤った。

 約1時間にわたった会見で、家族たちは終始硬い表情だった。横田めぐみさん(行方不明時13歳)の母早紀江さん(68)は「めぐみちゃんが入退院を繰り返していると(調査で)聞くと、どんなに大変かと思うが、北朝鮮がいい加減なことを言っていることも分かっている。私たちは惑わされない」と険しい顔。父で家族会代表の滋さん(71)は「(今回の報告で、めぐみさんの)生存が数カ月延びたが、現在のことが知りたい」と語った。

 有本恵子さん(同23歳)の父明弘さん(76)は「こんな交渉は何年続けていても無駄だ」と、経済制裁発動を強く訴えた。

 政府からの説明の場には、家族会に入っていない石岡亨さん(同22歳)の兄章さん(50)も出席した。章さんは27日夜、毎日新聞の取材に「こんな宙ぶらりんの状態がこれ以上続くのは、もう耐えられない」と話した。この日の説明内容に「信じる根拠は何もない。とても真に受けられない」と感じたといい、「経済制裁も圧力の一部にはなるだろうが、最終的なカードは日朝平壌宣言だ。こんな態度を続けるようであれば国交正常化はできないと、強く訴えるべきだ」と語った。【宍戸護、磯崎由美】

日朝実務者協議:拉致被害者の家族らに内容を説明

2004年9月27日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE
 北朝鮮の拉致問題などをめぐる第2回日朝実務者協議の内容について、政府は27日、拉致被害者家族らに説明した。家族らによると、北朝鮮側は、入院中の病院で93年3月に死亡したとしてきた横田めぐみさんが「93年10月まで入院していた」と伝えるなど3人の情報を提供した。また、よど号グループについて「調査の結果、拉致事件への関与は認められなかった」と説明したという。

 協議をした斎木昭隆外務省アジア大洋州局審議官が内閣府で説明した。新たな情報提供があったのは横田さんのほか、欧州で拉致された有本恵子さんと石岡亨さん。

 家族らによると、横田めぐみさんについて北朝鮮側は、93年3月以降、「93年4月29日〜6月3日」と「同年8月3日〜10月8日」に入院したとする病院の記録があったと説明。しかし、それ以降の状況や「死亡」時期は答えなかったという。

 88年11月4日に招待所で石炭ガス中毒死したとしてきた有本さんと石岡さんについては、平壌郊外から前日移動し事故に遭ったと説明。移動理由は、有本さんが「静かな場所に移してほしい」と要望したためと述べた。

 また、脱北者が持ち出した顔写真と同一人物の可能性が高く拉致の疑いが指摘される埼玉県川口市の藤田進さんについて、北朝鮮側は「拉致していない」などと述べたという。【西脇真一】

詳細な安否調査報告要求 日朝実務者協議2日目

2004/09/26 中国新聞ニュース
 【北京26日共同】北朝鮮の拉致問題などをめぐる日朝実務者協議は二十六日午前、北京市内の北朝鮮大使館で二日目の協議に入った。日本側は拉致問題と併せて、北朝鮮のミサイル基地周辺で兵員や車両の動きが活発化している問題もあらためて取り上げ、真意をただす考えだ。

 初日の協議で北朝鮮は、横田めぐみさんら安否不明の拉致被害者十人に関する再調査の「途中経過」を口頭で説明し、数人の北朝鮮入国後の動向について説明した。ただ安否に直結するものはなく、日本側は二日目の協議で、初日に取り上げられなかった安否不明者の分も含め詳細な説明を要求する。

 ミサイル問題では初日の協議で重大な懸念を表明したが、北朝鮮側の回答はなかったため、重ねて問題提起する必要があると判断した。北朝鮮が開催に難色を示している核問題に関する六カ国協議にも言及し、早期開催に応じるよう強く促す。

日朝協議 不明10人新たな安否情報なし 進展望めず見直し論も

2004/09/26 The Sankei Shimbun
北、「途中経過」に終始

 【北京=笠原健】北朝鮮による拉致被害者で、横田めぐみさんら安否不明の十人の再調査結果などを協議する第二回日朝実務者協議が二十五日午後、北京市内のホテルで行われた。北朝鮮側は、日本側が平成十四年十月に提示した百五十項目の質問項目に沿って再調査の内容を説明。何人かについては具体的な調査報告はあったというが、これまで八人が「死亡」、二人が「未入国」としてきた内容を覆す報告はなく、前回八月の協議と同様に事実上、途中経過の説明に終わった。

 日本側は初日の協議で、拉致事件に大部分の時間を費やし、八月以降の調査について説明を求めた。これに対し、北朝鮮側は用意した資料をもとに口頭で説明したが、「あくまでも途中経過だ」と前回同様、「中間報告」との位置付けを示した。

 日本側は二十六日午前から北朝鮮大使館で行われる協議でも、再調査結果について改めてただし、北朝鮮側の前向きな対応を促す考えだ。

 一方、日本側は協議の冒頭、北朝鮮内で弾道ミサイル「ノドン」の燃焼実験とみられる兆候があることについて「日本政府は重大な懸念を持っている」と指摘。ミサイル発射実験の凍結を約束した平成十四年九月の「日朝平壌宣言」を完全に履行するように求めた。

 これに対して、北朝鮮側は核やミサイル開発問題は六カ国協議などの場で協議すべき問題だとの姿勢を表明。具体的な言及を避けた。

 日本側から斎木昭隆・外務省アジア大洋州局審議官らが、北朝鮮側からは宋日昊外務省副局長らが出席。協議は二日間の予定だが、具体的な進展がない場合、日本側は二十七日まで延長したい考えだ。

                  ◇

 日朝平壌宣言 平成14年9月17日に平壌を訪問した小泉純一郎首相と北朝鮮の金正日総書記が署名した。日本は国交正常化後の経済協力を表明。日本人拉致問題は「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題」として、北朝鮮が再発防止を約束し、(1)核問題解決のため国際的合意を順守(2)核、ミサイルを含む安全保障上の問題解決(3)北朝鮮はミサイル発射凍結を15年以降も延長−を明記した。今年5月の日朝首脳会談では宣言の誠実な履行を確認。宣言を順守する限り、日本は北朝鮮への経済制裁措置を発動しないとしている。

蓮池薫さんが中央大に復学 以前と同じ学籍番号で

2004/09/24 The Sankei Shimbun
 中央大学法学部は24日、教授会を開き、3年在学時の1978年7月に北朝鮮に拉致された蓮池薫さん(46)=新潟県柏崎市=の学籍を同日付で回復することを決めた。

 蓮池さんは法学部法律学科3年に所属し、学籍番号は以前と同じ。またかつて履修した単位も卒業単位に算入される。中央大は専任の教員をアドバイザーに任命、今後の受講方法などについて、蓮池さんと相談しながら決める。

 蓮池さんは8月22日付の手紙で、中央大に復学の意思を表明していた。

 金井貴嗣法学部長は「勉学を再開されることを大変うれしく思う。これから相当の努力が必要になると思うが、蓮池さんの決意に応えてできる限りのサポートをする」としている。

日朝協議は北京で25、26日 北朝鮮が正式回答

2004/09/22 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致問題をめぐる第2回日朝実務者協議が25日から2日間、北京で開催されることが22日決まった。外務省は当初、29、30日を軸に調整を進めたが、北朝鮮側は北京の日本大使館を通じ25日が望ましいと正式に伝えた。政府筋が明らかにした。

 協議の焦点は、5月の日朝首脳会談で金正日総書記が実施を約束した、横田めぐみさんら安否不明の拉致被害者10人に関する再調査結果。8月の実務者協議で、北朝鮮側は「調査中」として安否情報については事実上、ゼロ回答だったため、日本側が再回答を求めていた。

 協議には、外務省の斎木昭隆アジア大洋州局審議官、北朝鮮外務省の宋日昊(ソン・イルホ)副局長らが出席する。外務省幹部は「北朝鮮も前回と同じ内容では日本側が納得しないということは理解している」と述べ、何らかの進展があることに期待を示した。

26日にも北京で協議入りへ 日朝実務者協議で細田氏

2004/09/21 The Sankei Shimbun
 細田博之官房長官は21日午前の記者会見で、安否不明の拉致被害者10人の再調査に関する日朝実務者協議の次回日程について、早ければ今月26日にも北京で開催される可能性があるとの見通しを示した。

 記者団が来週初めの26日か27日に開催される可能性をただしたのに対し、細田氏は「今月、北京でやりたいと(日本側から)提案している。間もなく返事があるのではないか」と述べた。

 その上で「北朝鮮にとって日朝協議の日程を引き伸ばすメリットはないと思う。日朝国交正常化交渉に進もうということで両政府は合意しているので、延期などはあり得ないと思う」と指摘した。

「拉致に関心持ち続けて」 家族会、救う会が街頭活動

2004/09/14 The Sankei Shimbun
 北朝鮮が拉致を認め謝罪した日朝首脳会談から2年がたつのに合わせ、拉致被害者家族会(横田滋代表)と支援団体の救う会(佐藤勝巳会長)は14日午後、東京のJR渋谷駅前で「拉致問題に引き続き関心を持ち続けてほしい」と訴えた。

 家族会と救う会は10日から28日にかけて、全国20カ所以上で緊急集会や署名活動を行う全国縦断行動を実施。17日には東京都千代田区で「経済制裁発動を求める国民緊急集会」を開く予定。

 JR渋谷駅前で横田代表は「安否不明者の再調査の回答が17日までになければ、経済制裁による圧力しかない」と訴えた。田口八重子さん=失跡当時(22)=の兄の飯塚繁雄さん(66)は「北朝鮮が恐れているのは国民の皆さまの怒りの声と政府の強い態度です」と支援を呼び掛けた。

 救う会の西岡力副会長は「被害者全員を取り戻すまで絶対にあきらめないという意思を表しましょう」と訴えた。

 家族会と救う会などは14日午前、東京都港区の米国大使館を訪れ、マイケル・マハラック臨時代理大使らに、北朝鮮をテロ支援国家リストに掲載したことが拉致問題解決につながる、との謝意を伝えた。

ジェンキンス氏、米軍の処遇に謝意伝える

2004/09/13 The Sankei Shimbun
 米軍キャンプ座間(神奈川県)の在日米陸軍司令部に出頭したチャールズ・ジェンキンスさん(64)は、基地での処遇について「プライバシーの確保や払われた敬意に感謝する」と米軍側に伝えた。司令部の広報担当者が13日、司法手続きに立ち会う独立法務官ジェームズ・カルプ大尉から聞いた話として述べた。

 広報担当者によると、曽我ひとみさん(45)ら家族も「予想以上によくしてもらっている」と謝意を示したという。

ジェンキンス氏の司法手続き開始 在日米陸軍司令部

2004/09/13 The Sankei Shimbun
 米軍キャンプ座間(神奈川県)の在日米陸軍司令部は13日、記者会見し、脱走罪などで訴追されている曽我ひとみさん(45)の夫、チャールズ・ジェンキンスさん(64)の司法手続きが始まったと説明した。具体的な内容については明らかにできないとしている。

 ジェンキンスさんは(1)脱走(2)他の兵士への脱走教唆(3)利敵行為(4)軍への背任奨励−の四つの罪で訴追されている。

 司法手続きでは今後、軍法会議にかけるかどうか判断するための予備審問などが行われるとみられ、十分な証拠があると判断されれば、重い罪を扱う高等軍法会議で審理される見通し。

 並行して司法取引の交渉も行われ、ジェンキンスさんは罪を認めた上で、北朝鮮に関する情報を提供し、「不名誉除隊」での決着を目指すとみられる。

司法取引での刑減免に期待 政府、米側の判断を注視

2004/09/11 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者、曽我ひとみさんの夫、ジェンキンスさんが「米軍キャンプ座間」(神奈川県)に出頭したことで、政府は「曽我さん一家の日本永住が決まれば、既に帰国・来日した拉致被害者家族の問題は解決する」(政府筋)と司法取引による刑の減免を期待、ジェンキンスさんに対する米側の判断を注視する構えだ。

 川口順子外相は11日、京都市内での記者会見で、在日米軍による司法手続きの見通しに触れ「ジェンキンスさん本人と米国とのことなので、何の予断を持つこともできない」と指摘。同時に「(米側の判断が)家族一緒に住みたいという曽我さんの希望につながることを望んでいる」と期待感を示した。

 細田博之官房長官も10日の記者会見で「ジェンキンスさんは『自己責任で対応したい』と言っている。私たちとしては見守りたい」と述べた。

 小泉純一郎首相は5月に北朝鮮を訪問した際、ジェンキンスさんに日本永住を自ら働き掛け「最大限の努力」を約束。6月の日米首脳会談でも、一家で日本に永住したいとの曽我さんの気持ちをブッシュ大統領に伝え理解を求めた。

 それだけに、ジェンキンスさんに重刑が科せられ、一家全員の日本永住に見通しが立たなくなる事態になれば「首相の力量が問われかねない」(外務省関係者)との懸念も政府内に残っている。

ジェンキンスさんの写真や動画をHPで公開

2004/09/11 The Sankei Shimbun
 曽我ひとみさん(45)の夫チャールズ・ジェンキンスさん(64)が出頭した在日米軍の「キャンプ座間」は11日、インターネットのホームページ(HP)に「ジェンキンス軍曹リターン」とするコーナーを設け、出頭や手続きの様子を撮影した写真や動画を公開する異例の措置を取った。

 動画は、ジェンキンスさんがワゴン車のハイヤーから降り、憲兵隊長に敬礼して、曽我さんらと憲兵隊事務所に入るまでを写している。

 また、軍曹の階級章が付いた軍服に着替えたジェンキンスさんが、軍務復帰の手続きをする様子も、動画と複数の写真で紹介している。

軍務復帰手続き、拘束せず ジェンキンスさん

2004/09/11 The Sankei Shimbun
 米軍キャンプ座間(神奈川県)の在日米陸軍司令部に出頭した曽我ひとみさん(45)の夫、チャールズ・ジェンキンスさん(64)は11日、軍務復帰の手続きをした。逮捕など身柄拘束はされず、司令部本部中隊の総務担当部署に所属する。

 司令部によると、軍法会議にかけるかどうかを判断するための予備審問など司法手続きが始まるのは週明け以降。予備審問はジェンキンスさん側が希望すれば省略でき、その場合は軍法会議が始まる。

 処分が決まるまでの期間は「ケース・バイ・ケース」(司令部国際法専門官)。軍法会議に1−3カ月、司令官の判決への署名にさらに2−3カ月かかることもある。

 ジェンキンスさんは当面、一般米兵が着任時に滞在する施設に、曽我さんや娘2人と一緒に宿泊。案内役の軍人が決まり、妻とともに一家の世話をする。ジェンキンスさんは基地内の移動は自由で、司令官の許可があれば外出できる。

 ジェンキンスさんは11日、階級章付きの軍服に着替え、独立法務官のジェームズ・カルプ大尉の立ち会いの下、身分証明書の作成やデータベースへの登録など事務手続きを進めた。部隊への着任手当も受け取った。

ジェンキンスさん出頭 米軍基地、司法手続きへ

2004/09/11 中国新聞ニュース
 拉致被害者曽我ひとみさん(45)の夫ジェンキンスさん(64)が十一日午前、東京女子医大病院(東京都新宿区)を退院し、米軍の司法手続きのため、在日米陸軍司令部がある「キャンプ座間」(神奈川県)に曽我さんら家族とともに出頭した。

 軍法会議にかけるかどうかを判断するための予備審問などが始まる。ジェンキンスさんは「司法取引」で実刑を回避したい考え。処分は一カ月以内に決まるとみられる。

 曽我さんは都内のホテルを出発する際「一日でも早く四人で佐渡(新潟県)に行って暮らしたい」と語った。ジェンキンスさんが収監を免れれば、新潟県佐渡市で一家四人の生活が始まる。

 ジェンキンスさんは在韓米軍の軍曹だった一九六五年、部隊を抜け出し北朝鮮に渡ったとして、脱走など四つの罪で訴追されている。

 出頭したジェンキンスさんは、応対した憲兵隊長のポール・ニガラ中佐に敬礼し「ジェンキンス軍曹です。出頭しました」と名乗り、ニガラ中佐は「あなたはこれから米陸軍の指揮下に置かれる。敬意を持って手続きが行われることを保証する」と述べた。

 基地内でジェンキンスさんは軍曹の階級章が着いた軍服を着用する。

 司法手続きには、弁護人に相当する在韓米軍所属の独立法務官、ジェームズ・カルプ大尉が立ち会う。ジェンキンスさんはこれまで病院でカルプ大尉と面会を重ね、「不名誉除隊」での決着を目指している。

 ジェンキンスさんは、北朝鮮で曽我さんと結婚し、長女美花さん (21)と二女ブリンダさん(19)が生まれた。曽我さんは二○○二年十月、日本に帰国。ジェンキンスさんと娘二人は今年七月、北朝鮮からインドネシアに出国し、家族が再会した。

 ジェンキンスさんは当初、訴追問題を理由に日本行きに難色を示したが、曽我さんの説得などにより来日。入院して検査や治療を続けていた。

 曽我さんと娘二人は当面、基地内に滞在するとみられる。

「拉致解決に経済制裁を」横田さんらが講演

2004/09/11 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者家族会の横田滋代表(71)は11日、東京都内で講演し、安否不明者10人の再調査に関し「9月17日までに北(朝鮮)から回答がない場合、経済制裁(を発動)するよう日本政府に要望する」と語った。

 横田代表は曽我ひとみさん(45)の夫、ジェンキンスさん(64)が11日、キャンプ座間に出頭したことに触れ「曽我さん家族の問題は間もなく解決する。これから拉致は第2段階に入って、未帰還者の問題になる」とした。

 その上で「8月の日朝実務者協議では実質的報告は何もなかった。回答がない場合、経済制裁を実施してほしい」と述べ、妻、早紀江さん(68)は「被害者救出には、日本中が心を1つにして怒らねば」と訴えた。

 支援団体「救う会」の佐藤勝巳会長も「北朝鮮には『対話と圧力』以外、拉致の解決は難しい」と語った。

ジェンキンスさん、11日午前に座間基地へ出頭

2004/09/10 読売新聞 Yomiuri On-Line
 北朝鮮による日本人拉致被害者の曽我ひとみさんの夫、チャールズ・ジェンキンスさんは11日午前、入院先の都内の病院を退院し、キャンプ座間(神奈川県座間市)の在日米陸軍司令部に出頭する。政府関係者が10日、明らかにした。

 ジェンキンスさんには、曽我さんと娘2人が同行する。米軍に対して脱走罪などを認めたうえで、北朝鮮や他の脱走米兵の情報を提供する代わりに量刑などを軽減する、司法取引を行うと見られる。

 ジェンキンスさんを担当する在韓米軍所属の独立法務官、ジェームズ・カルプ陸軍大尉は11日朝、病院でジェンキンスさんと最終的な打ち合わせをし、曽我さん一家とは別にキャンプ座間に向かう予定だ。

蓮池薫さん、24日に中大復学 28年前の学籍番号で

2004/09/09 The Sankei Shimbun
 母校中央大法学部への復学を希望している拉致被害者、蓮池薫さん(46)=新潟県柏崎市=について、金井貴嗣法学部長は9日、教授会で24日に復学を決定することを兄、透さん(49)に伝えた。同日付で復学が実現する。

 中大側は専任教員1人をアドバイザーに選任し、通学か通信制かなど単位の履修方法について薫さんの相談に乗る。また28年前の入学当時の学籍番号で復学させる方針。

 この日は、金井法学部長らが中大駿河台記念館(東京都千代田区)で透さんと面談した。

 透さんは「二十数年のブランクがあり、そうたやすいことではないが、本人は頑張ると言っている。よろしくお願いします」と話し、金井法学部長は「薫さんの復学を心より歓迎します。今後、どんなふうに勉強したいか要望を聞いた上で、環境を整えていきたい」と述べた。

 薫さんは中大法学部3年生で帰省中の78年7月、柏崎市の海岸で妻、祐木子さん(48)とともに拉致され、卒業に必要な六十数単位の履修を残しているという。

 法学部教授会は98年、薫さんの意思が表明されれば復学を認めると決定していた。

10人の安否で「北朝鮮が意図的情報」と中山参与

2004/09/08 The Sankei Shimbun
 中山恭子内閣官房参与は8日、長崎市内で講演し、北朝鮮による拉致被害者のうち安否不明者の10人に関し「北朝鮮は意図的に『全員死亡または入国していない』との話を流して、日本人が怒らないかどうか確かめたがっている。(十人は死亡・未入国とあらためて回答する)環境づくりを狙っていると考えた方が良い」との見方を示した。

 日本側が求めている10人に関する再調査の結果に回答がないことに触れ「金正日総書記が再調査するよう言っても以前ほど直ちに動かない状況が出てきているのか。あるいは金総書記が『実際には調査しなくていい』と言っているのかもしれない」とも指摘した。

 中山氏は拉致問題について「次の日朝実務者協議がいつ開かれるか決まっていないが、政府間の話し合いを通じて再調査の回答を求めていくのは当然だ。回答がないのに国交正常化交渉に入ることは考えられない」と強調した。

11日にも座間へ出頭 ジェンキンスさん

2004/09/08 中国新聞ニュース
 北朝鮮による拉致被害者曽我ひとみさんの夫のジェンキンスさんが十一日にも在日米陸軍司令部のある「キャンプ座間」(神奈川県)に出頭する見通しになった。複数の日米関係筋が八日、明らかにした。

 ジェンキンスさんは一九六五年に脱走罪など四つの罪で米軍に訴追されており、出頭後はまず予備審問が行われ、その報告を受けてキャンプ座間の司令官が軍法会議の開催を決める見通しだ。外務省筋は「予備審問から処分決定まで一カ月以内で終わるのではないか」とみている。

 日本政府関係者によると、ジェンキンスさんは実刑を回避するために米軍当局との司法取引で「不名誉除隊」による決着を希望している。司法取引は、弁護を務める在韓米軍所属の独立法務官、ジェームス・カルプ大尉が折衝する。出頭の際にはカルプ氏のほか、曽我さんと二人の娘も同行する見通しだ。

 ジェンキンスさんは入院している病院から東京都港区にある米陸軍施設「赤坂プレスセンター」のヘリポートへ車で移動。そこから米軍ヘリでキャンプ座間へ移送する方向で調整している。

 都内の病院に入院中のジェンキンスさんは今月一日、声明を発表し「間もなく退院しキャンプ座間に出頭できるまで健康状態が良くなると思う。わたしの置かれた法的位置付けについて決着をつける手続きに入るために自主的に出頭したい」との意思を示していた。

「希望を十分聴きたい」曽我さん支援で新潟県知事

2004/09/03 The Sankei Shimbun
 新潟県の平山征夫知事は3日の定例記者会見で、拉致被害者、曽我ひとみさん(45)の夫、ジェンキンスさん(64)が近く在日米軍のキャンプ座間(神奈川県)に出頭する意向を示したことについて「座間での生活が終わってから、曽我さんはおそらく一家で佐渡で暮らしたい意向がある。新潟に入ってからがわれわれとしては本番」と述べ、支援態勢をさらに固める考えを示した。

 平山知事は「佐渡島には大学がなく、日本語を覚えるために大学に入りたいとなれば、新潟大学が受け入れる可能性がある。その場合、4人で新潟市に住むのか(佐渡島と新潟市で)別々に暮らすのか、希望を十分聴いてかなえたい」と話した。

日本行きに北朝鮮が圧力 香港誌にジェンキンス氏

2004/09/02 The Sankei Shimbun
 北朝鮮の拉致被害者、曽我ひとみさんの夫、ジェンキンスさんは2日発売の香港英字誌ファーイースタン・エコノミック・レビューとの単独インタビューで、小泉純一郎首相が今年5月に訪朝した際、一緒に日本へ行くことを拒否するよう北朝鮮当局から圧力を受けたことを明らかにした。

 ジェンキンスさんはまた、北朝鮮に亡命してから曽我さんと結婚するまで、一緒に亡命した仲間の米兵から何度も殴られ、1966年に平壌のソ連大使館(当時)に亡命を申請し却下されたなどとも語った。

 ジェンキンスさんが北朝鮮を離れてからメディアのインタビューに応じたのは初めて。インタビューは東京女子医大病院の病室で行われた。同誌電子版が1日、記事全文を掲載した。

 それによると、5月に小泉首相と面会した時、首相は「ジェンキンス氏と2人の娘は出国してもよい」との金正日総書記のサイン入り書類を持参していた。だが首相と会う前、北朝鮮外務次官らが訪れ、日本に行かないよう圧力をかけてきた。首相と会った部屋は盗聴されていたという。外務次官の名前は明かさなかった。

 また、亡命直後の65年から72年にかけ他の3人の亡命米兵と一緒に生活したが、一部屋に入れられ、ベッドも水道もない暮らしだった。北朝鮮当局は4人をけん制し合うよう仕向け、当局の命令に背くと大男の米兵(現在も北朝鮮で生存)が殴ったという。

 80年に出会った曽我さんとの結婚が北朝鮮での「みじめな暮らし」からいかに救ってくれたかを時折、声を詰まらせながら語り、日本に来た時は米軍に出頭するつもりだったとし「娘2人を妻に会わせたかった」「自分の良心をすっきりさせたかった」などと述懐した。(共同)

ジェンキンス氏、近く出頭と声明 「自主的に」米軍基地へ

2004/09/01 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者、曽我ひとみさんの夫で元米兵のジェンキンスさんは1日午前、自らの訴追問題に関して、近く在日陸軍司令部のある「キャンプ座間」(神奈川県)に出頭し、米軍当局の事情聴取に応じるとの声明を政府の拉致被害者・家族支援室を通じて発表した。

 米軍は1965年にジェンキンスさんを脱走罪など4つの罪で訴追している。ジェンキンスさんの出頭後、予備審問を行った上で米軍司令官が軍法会議にかけるかどうか判断する見通しだ。

 都内の病院に入院しているジェンキンスさんは声明の中で「わたしは日々健康を回復しており、間もなく病院を退院して米軍座間基地に出頭できるまで健康状態が良くなると思う」と説明。その上で「わたしの置かれた法的位置付けについて決着をつける手続きに入るために自主的に出頭したい」との意思を示した。

 司法取引などをめぐって米軍当局と折衝している在韓米軍所属のカルプ独立法務官(大尉)と曽我さん、2人の娘とともに出頭する意向も表明。同時に「日本政府と日本のみなさま、とりわけ小泉純一郎首相に感謝する」と謝意を表した。

 ジェンキンスさんが軍法会議にかけられて司法取引を選択した場合、事件の政治的影響や年齢、健康状態などを総合的に判断した上で米軍が最終判断する見通しだが、実刑を回避したいジェンキンスさんは「不名誉除隊」での決着を目指すとみられる。

ジェンキンスさん、独立法務官と再度面会 実刑回避へ

2004/08/30 asahi.com
 北朝鮮による拉致被害者・曽我ひとみさんの夫ジェンキンスさんは30日夕、入院先の東京都内の病院で米軍の独立法務官(弁護士)と面会した。司法取引の条件について最終的な調整をしたとみられる。ジェンキンスさんは脱走など四つの罪に問われているが、実刑は回避できる見通しで、近く在日米軍基地へ出向いて司法取引に応じる方向だ。

 ジェンキンスさんと面会したのは在韓米軍所属のカルプ陸軍大尉。カルプ大尉は8月上旬にもジェンキンスさんと4度面会して罪状や軍法会議の手続きを説明したほか、北朝鮮の不明米兵に関する情報などを聴取したとみられる。

 司法取引の条件はすでに大尉からジェンキンスさんに非公式に伝えられた模様で、ジェンキンスさんも任意で在日米軍基地に出向くことに前向きという。出向く先は軍法会議のための設備が整っているキャンプ座間(神奈川県)が有力視されている。

曽我さんが佐渡に一時帰郷 父親の見舞い、娘2人と

2004/08/23 中国新聞ニュース
 拉致被害者の曽我ひとみさん(45)は二十三日、長女美花さん(2 1)、二女ブリンダさん(19)とともに東京を離れ、新潟市から高速船で新潟県佐渡市に到着した。入院中の父茂さん(72)を見舞うための一時帰郷で数日間の滞在後、東京に戻る予定。

 娘二人は七月に日本に来て以来、佐渡を訪れるのは初めて。これまでは父親のジェンキンスさん(64)が入院している病院がある東京都内に滞在していた。

 曽我さんらは佐渡島の両津港に午後一時すぎに到着。出迎えた同級生約十人が「お帰り」と声を掛けると、曽我さんは一人ひとりと握手を交わし、笑顔で「ただいま」と答えていた。美花さんとブリンダさんは恥ずかしそうな様子で、曽我さんとともにバスに乗り込み、茂さんのお見舞いに向かった。

 佐渡市によると、茂さんは体調不良を訴え、十九日に同市内の病院に入院。今後精密検査などを受けるという。

 高野宏一郎市長は「帰ってくること自体は喜ばしいが、さまざまな状況を考えると手放しでは喜べない面もある」と話している。ジェンキンスさんの訴追問題が未解決であることや茂さんの体調を考慮し、市は歓迎行事などは行わない予定。

ジェンキンスさん在日米軍に出頭へ、司法取引の公算

2004/08/21 読売新聞 Yomiuri On-Line
 北朝鮮による日本人拉致被害者、曽我ひとみさんの夫のチャールズ・ジェンキンスさんが、脱走罪などを認め、米軍との司法取引に応じるため、近く在日米軍に出頭する方向となった。

 政府関係者が21日、明らかにした。ジェンキンスさんは、近く再来日する在韓米軍所属の独立法務官ジェームズ・カルプ陸軍大尉と入院先の都内の病院で面会した後、在日米陸軍司令部のあるキャンプ座間(神奈川県)に出向くことで最終調整している。

 政府関係者は、「ジェンキンスさんが司法取引に応じるのは、軍法会議による判決が不名誉除隊などにとどまり、実刑を回避できる見通しとなったためだろう」との見方を示している。

 ジェンキンスさんは今月5日からカルプ大尉と計4回面会し、司法手続きの詳しい説明を受けた。

帰国3カ月、子供たちは「ひた向き」 蓮池薫さん会見

2004/08/21 The Sankei Shimbun
 拉致被害者の蓮池薫さん(46)は21日、長女、重代さん(22)と長男、克也さん(19)が北朝鮮から帰国して3カ月となる22日を前に新潟県柏崎市で記者会見し、2人の様子を「日本語を学ぶこと、目の前のやるべきことにひた向きに取り組んでいる」と語った。

 2人はテレビでアテネ五輪を観戦、北朝鮮の国民的ヒロインとなっている柔道選手に注目したり、メダルを次々に獲得する日本選手に「日本はこんなに強かったのか」と驚いたりしたという。

 拉致問題に対する子供たちの認識について、蓮池さんは「将来自分なりに重く受け止めて自分としての考え方を持ってもらいたいが、今強く意識させる必要はない」と静観する考え。日本永住の意思についても「そうなってほしいが、はっきりさせなきゃならない状況ではない。しばらくそっとする」と話した。

 また「横田めぐみさんや、ほかの安否不明者の情報は政府や家族に伝えてある。今後警察からの協力要請があればいつでも応じる」と述べる一方で「日朝間で厳しい交渉が続いており、情報を公開することはいい影響を与えないし、ご家族も望んでいない」とした。

曽我さんが23日に一時帰郷 娘2人連れ、父親の見舞い

2004/08/20 The Sankei Shimbun
 新潟県佐渡市の帰国家族支援室は20日、拉致被害者の曽我ひとみさん(45)と長女、美花さん(21)、二女、ブリンダさん(19)の3人が23日に佐渡に一時帰郷する、と発表した。数日間滞在するとみられる。

 佐渡市によると、曽我さんの父、茂さん(72)が体調を崩して入院しているため、見舞うのが目的という。

 娘2人は7月に日本に帰国後、佐渡に入るのは初めて。2人は帰国後、父親のジェンキンスさん(64)が入院している病院がある東京都内に滞在している。

 「曽我さん母娘を救う会」の臼木優事務局長は「会ったら、よく頑張った、と声を掛けてあげたい。希望通り佐渡で暮らせるまであと少しだ」と話していた。

地村さん、長男は大学3年編入を想定

2004/08/19 The Sankei Shimbun
 拉致被害者の地村保志さん(49)の地元、福井県小浜市の村上利夫市長は19日の記者会見で、地村さんが、来年4月から長男の保彦さん(21)を大学3年に、二男の清志さん(16)を高校1年にそれぞれ編入させるなど、3人の子供の進路について具体的に想定していることを明らかにした。

 村上市長によると、地村さんは「それぞれの希望に応じて就職や進学をさせたい」と話しており、長女の恵未さん(22)についても、就職か職業訓練の専門学校などへの入学を想定している。ただし、子供たちとはまだ直接は話し合っておらず、具体的な入学先などは未定という。

 市長はまた、6月下旬から3カ月の予定で開始した子供たちの日本語学習に関して、地村さんが「今の語学力では(学校などで)ついていけない」と心配しているとし、学習期間を延長する方針を示した。

横田さん「93年以降生存」と追及 斎木審議官が家族会に説明

2004/08/13 The Sankei Shimbun
 外務省の斎木昭隆アジア大洋州局審議官は13日、北京での日朝実務者協議の内容を細田博之官房長官に報告、拉致被害者家族会(横田滋代表)にも説明した。斎木氏は、北朝鮮が1993年3月に死亡したとする横田めぐみさん=失跡当時(13)=について、それ以降に生存していたとの情報があると追及し、徹底した再調査を求めたことを明らかにした。

 細田氏は報告を受けた後、記者団に対し、北朝鮮側が安否不明の拉致被害者10人に関する再調査の結果を提示しない限り、日朝国交正常化交渉の再開に応じない方針を示した。日朝実務者協議では、安否に直結する新たな情報提供がなかったため、日本側は9月中に次回協議を開催し、再回答するよう求めている。

 細田氏は「とにかくこの問題(安否再調査)を進めなければ(正常化交渉再開は)当然駄目だろう。北朝鮮の真剣な対応がどう出てくるか、もうちょっと待つ必要がある」と述べた。政府はこれまで、再調査の終了を待たず正常化交渉を再開することもあり得るとの見解を示していたが、国内世論を見極めつつ慎重に判断する姿勢に転じた。

 横田さんについて、北朝鮮側は、2002年9月の日朝首脳会談時の事務レベル協議やその後訪朝した政府調査団に対して「93年3月13日に平壌市内の病院で死亡」と説明していた。北朝鮮の主張の信ぴょう性に疑問を呈した日本側の指摘に対し、北朝鮮側から返答はなかったという。

 斎木氏はこのほか、家族会に今回の協議で北朝鮮側が明らかにした拉致被害者の入国経路や再調査の態勢も説明。安否不明者に関する150項目の質問事項をあらためて北朝鮮側に渡し、判明し次第、順次回答するよう要求したことなどを紹介した。

 ≪北朝鮮の説明概要≫

 外務省が拉致被害者家族会に説明した安否不明者に関する北朝鮮の再調査の経過報告概要は次の通り。

 【調査態勢】

 一、6月3日に新たに調査委員会を設置。

 一、人民保安機関(警察組織に相当)と人民政権機関(地方行政組織に相当)から計20人で構成し、局長クラスが責任者を務める。(北朝鮮)外務省が同委員会から報告を受けている。

 一、調査方法は(1)住民台帳の洗い直し(2)新たな証人探しの努力(3)関係地の実地調査−など。それぞれに担当を決め、今後、掘り下げた調査を実施。拉致被害者を一元的に管理していた特殊機関にも資料閲覧など協力を要請しているが、なかなか協力を得られない。

 【新たな判明事項】

 一、入国経路。松木薫さん=マドリード−ザグレブ−モスクワ−平壌▽石岡亨さん=松木さんと同じ▽有本恵子さん=英国−オランダ−モスクワ−平壌▽田口八重子さん、市川修一さん、増元るみ子さん、原敕晁さん=日本国内−海州市▽横田めぐみさん=日本国内−清津市。

日朝国交交渉再開に反対 家族会と救う会が声明

2004/08/10 The Sankei Shimbun
 拉致被害者家族会(横田滋代表)と救う会(佐藤勝巳会長)は10日、中国・北京で11日から開かれる日朝実務者協議を前に、安否不明者の再調査結果がないままに国交正常化交渉を再開することに反対する声明を発表した。

 声明は協議に出席する北朝鮮の宋日昊・外務省副局長が同日、「(調査は)続いている」と述べたことについて「調査結果を報告しないことを公然と示唆した」と批判。「調査結果が出ないまま交渉入りすれば、拉致問題が事実上棚上げにされてしまうことは明白だ」としている。

ジェンキンス氏、司法取引に応じる方向 月内に軍法会議も

2004/08/10 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者、曽我ひとみさんの夫で元米兵のジェンキンスさんは9日も入院中の都内の病院で、在韓米軍所属のジェームズ・カルプ独立法務官(大尉)と面会し、訴追問題に関する話し合いを終えた。ジェンキンスさんは基本的に司法取引を受け入れる意向を表明したもようだ。これを受け、早ければ月内にも軍法会議が開かれる可能性も出てきた。

 日米関係筋は「司法取引に向け、順調に話し合いが進んでいるのではないか」と述べ、ジェンキンスさんが脱走罪など訴追されている4つの罪のうち一部を認める代わりに、刑を軽減してもらう司法取引に応じる方向で決着が図られるとの見通しを示した。

 これに関連し、政府筋は「米国もこの問題にあまり時間をかけたくないはずだ。長引くと米国内でこの問題に気付く人が増えてくる」と述べ、米側も早期決着を目指す意向だとの見方を示した。

 ジェンキンスさんと同法務官の面会は5日から始まり、8日を除く4日間行われ、法務官は司法取引の手続きなどについて説明したとみられる。

藤田さんと同一人物 脱北者所持の写真鑑定

2004/08/09 The Sankei Shimbun
 1976年に埼玉県川口市で行方不明になった東京学芸大1年、藤田進さん=失跡当時(19)=と、北朝鮮を脱出した男性が所持していたとされる写真について、東京歯科大の橋本正次助教授(法人類学)は9日、同一人物の可能性が極めて高いとする鑑定結果を出し、藤田さんの家族に伝えた。

 拉致被害者と家族を支援する「救う会」の関連団体「特定失踪(しっそう)者問題調査会」が7月上旬、この写真を入手。両目の位置や口元などの特徴が酷似していたため北朝鮮に拉致された疑いが濃厚と公表、橋本助教授に写真鑑定を依頼していた。

 調査会によると、藤田さんは1976年2月7日、「新宿方面にアルバイトに行く」と言い、自宅を出たまま行方不明になったとされる。

ジェンキンスさん、前日に続き米独立法務官と面会

2004/08/06 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者、曽我ひとみさんの夫で元米兵のジェンキンスさんは6日、在韓米軍所属のジェームズ・カルプ独立法務官(大尉)と前日に続き病気療養中の東京都内の病院で面会した。

 米国から脱走罪など4つの罪で訴追を受けているジェンキンスさんに対し、同法務官は前日の説明を踏まえ、司法取引に向けたジェンキンスさんの意向の確認作業などをしているとみられる。

 これに関連して政府関係者は6日、ジェンキンスさんの訴追問題への対応について「司法取引以外の選択肢はない。それはジェンキンスさんも分かっているはずだ」と指摘した。

 話し合いの内容は明らかになっていないが、米政府高官は、ジェンキンスさんから北朝鮮で行方不明になっているほかの米兵に関する情報を得たいとの考えを示している。日本政府内では、これらの情報提供と引き換えに実刑とならないよう司法取引を行うのが現実的だとの見方が出ている。

ジェンキンスさん訴追問題 官房長官「短い方がいい」

2004/08/06 The Sankei Shimbun
 細田博之官房長官は6日午前の記者会見で、拉致被害者曽我ひとみさんの夫で元米兵のジェンキンスさんの訴追問題に関し「曽我さん一家のためにはあまり長くかかるよりは短い方がいい」と述べ、司法取引による早期の決着が望ましいとの認識を強調した。

 細田氏は、ジェンキンスさんと米軍所属の独立法務官との面会が6日も行われるとの見通しを示しながら「(脱走罪などによる訴追問題をめぐり)十分な話し合いは進むのではないか」と指摘。5日の独立法務官との面会内容については「承知していない」と述べた。

拉致被害者:捜査結果次第でさらに認定 政府

2004年08月05日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE
 政府は5日の閣議で、北朝鮮による拉致の可能性がある失跡者について「今後、拉致行為があったと確認するに足りる情報が整理された場合は、首相が関係機関の長と協議のうえ、拉致被害者と認定する」とし、これまでの15人以外でも捜査結果次第で拉致被害者と認定する答弁書を決定した。民主党の仙谷由人衆院議員の質問主意書に答えた。

 答弁書では「これまでに政府が拉致被害者と認定している15人以外にも、北朝鮮により拉致された可能性を排除できない失踪(しっそう)者の案件があるとみて、鋭意所要の捜査や調査を進めてきている」と指摘した。

北朝鮮・拉致問題:不明10人再調査 北朝鮮大使「調査に不備」−−平沢勝栄氏らに

2004年08月05日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE
 北朝鮮による日本人拉致問題で、北朝鮮当局者が02年9月に実施した安否不明の拉致被害者らの調査報告について、「難しい時期の調査活動で、でたらめな部分はあった」などと語っていたことが4日、分かった。毎日新聞が入手した昨年12月の鄭泰和(チョンテファ)・日朝交渉担当大使らと自民党の平沢勝栄衆院議員ら「拉致議連」議員との会談議事録で明らかになった。今月中旬に開かれる予定の日朝実務者協議で、日本政府は北朝鮮側のこうした発言を慎重に見極めながら、安否不明10人の再調査の進展状況をただす方針だ。

 会議録によると、鄭大使は「(調査)資料が不十分だったことは認める。うそをついて得をすることはない。なぜ疑うのか。(日本の)政府高官も理解している」と述べ、02年9月に北朝鮮が日本政府に示した調査報告の不備を認めた。

 会談は12月20、21両日に北京市内で行われた。【中澤雄大】

米法務官と面会 ジェンキンス氏が病院で

2004/08/05 中国新聞ニュース
 北朝鮮による拉致被害者曽我ひとみさんの夫で元米兵ジェンキンスさんは五日午後、入院先の東京都内の病院で、脱走罪などによる訴追問題をめぐり、来日した在韓米軍所属の独立法務官と面会した。

 ジェンキンスさんは、軍法会議の手続きや刑の軽減を図る司法取引の見通しについて、軍法会議で弁護業務などを行う同法務官から説明を受けたとみられる。日本政府は司法取引で事態を収拾させる方針を固めており、今後はジェンキンスさんが有罪を認め、司法取引での決着を最終的に決断するかが焦点になる。

 ジェンキンスさんは在韓米軍から脱走したとされる一九六五年に脱走罪など四つの罪で米国から訴追を受けた。米国はジェンキンスさんが入院中であることから身柄引き渡し請求を当面見送っているが、ベーカー駐日大使は川口順子外相に対し「日米地位協定により引き渡しを請求する権利を有し、今後適当な時期に行使する」との考えを伝えている。

 日本政府は身柄拘束を避けるため、米側に「人道的配慮」を求める一方で、ジェンキンスさんには司法取引に応じるよう打診。ジェンキンスさんも司法取引受け入れを念頭に独立法務官と面会する意向を政府関係者に伝えていた。

ジェンキンスさん、入院継続しリハビリ治療

2004/08/03 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者、曽我ひとみさん(45)の夫、ジェンキンスさん(64)の病状について、入院先の東京女子医大病院(東京都新宿区)は3日「緊急の手術などは必要ないが、入院を継続し心身両面のリハビリテーションや治療を実施、慎重に経過観察を続ける」と発表した。

 同医大広報室は「精密検査は一通り終了した。退院のめどはついていない」としている。

 発表によると、精密検査の結果、身体面では緊急に手術などの治療を要する事態ではないとの結論に至った。

 精神面は徐々に安定化しつつあるが、依然として強いストレスによる影響が懸念されるため、引き続き専門的な対応を続ける必要があると判断した、としている。

 ジェンキンスさんは、インドネシアで受けた健康診断の結果、北朝鮮での開腹手術の後遺症や内臓の病変が見つかったとされ、7月18日に曽我さんら家族3人とともに来日、同病院に入院した。同病院は同23日「現時点で再手術の必要はない」と発表、精密検査を続けていた。

 家族3人は当初、病室の隣室に宿泊していたが、現在は同病院近くのホテルから通って看病している。

「拉致濃厚」に1人追加 脱北者所持の写真に酷似

2004/08/02 The Sankei Shimbun
 拉致被害者と家族を支援している「救う会」の関連団体「特定失踪(しっそう)者問題調査会」は2日、埼玉県川口市で1976年に行方不明になった大学生について、北朝鮮に拉致された疑いが濃厚と発表した。

 北朝鮮を脱出した男性が所持していた写真が、大学生に酷似しているとしている。同会が拉致濃厚とする行方不明者は32人となった。

 調査会や親族によると、大学生は東京学芸大学1年、藤田進さん=当時(19)=で、76年2月7日に「新宿方面にガードマンのアルバイトに行ってくる」と言って自宅を出たまま行方不明になった。

再調査「誠実に進めてる」 北朝鮮の受け入れ団体

2004/08/02 The Sankei Shimbun
 訪朝中の「新潟NGO人道支援連絡会」の北朝鮮側受け入れ団体の関係者は1日、安否未確認の拉致被害者10人の再調査について「首脳会談で約束された調査は、政府が誠実に進めている」と語った。

 朝鮮赤十字会の李虎林副書記長は、7月30日「日本人に対する感情が悪化して地域住民から調査への協力が得られない」などと話していた。

 しかし、受け入れ団体関係者は、拉致被害者10人の再調査を北朝鮮政府が直接行っていると説明。「現段階で朝鮮赤十字会はタッチしていないと聞いている」と述べた。

 朝鮮赤十字会は、日本赤十字社からの依頼を受けて拉致被害者のほか北朝鮮に渡った元在日朝鮮人の消息不明者についても調査をしている。

 関係者は副書記長の発言について「朝鮮赤十字会での調査について語ったものだと思う」とした上で、拉致被害者10人の再調査は別枠で行っているとの認識を示した。

 北朝鮮側の受け入れ団体は、新潟NGO人道支援連絡会が食糧支援などをする際の窓口となっており、共同通信は同連絡会メンバーに同行取材している。(共同)

ジェンキンスさん:米法務官との面会、週明けに 官房長官

2004年7月31日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 細田博之官房長官は31日、松江市内で記者会見し、拉致被害者・曽我ひとみさんの夫ジェンキンスさんと米軍の独立法務官との面会時期について「週が明けると面会されるのではないか。ジェンキンスさんが段取りの相談を始められたのではないかと思っている」と述べ、週明けにも実現するとの見通しを明らかにした。同時に「病院の医師の判断もある」とも語り、ジェンキンスさんの病状によっては流動的な面があるとの考えも示した。

「拉致の疑い濃厚」新たに3人、計31人…調査会

2004/07/29 読売新聞 Yomiuri On-Line
 北朝鮮による拉致の疑いがある行方不明者を調べている「特定失踪(しっそう)者問題調査会」(荒木和博代表)は29日、既に名前を公表している不明者のうち、秋田市の木村かをる(通称・かほる)さん(失跡当時21歳)、東京都北区の坂本とし子さん(同22歳)、同渋谷区の生島孝子さん(同31歳)の3人を「拉致の疑いが濃厚」と発表した。

 これにより、同会が「拉致の疑いが濃厚」とした不明者は31人となった。

 同会は来月開かれるとみられる日朝実務協議までに、これらの不明者を拉致被害者として認定し、北朝鮮側に安否を確認するよう、日本政府に求める方針。

 また、同会は新たに2人を「拉致の疑いが否定できない」として公表した。

 同会が氏名を公表した特定失踪者は202人に上り、うち4人は国内で生存していることが判明している。

          ◇

 特定失踪者問題調査会が「拉致の疑いが濃厚」と発表した3人は以下の通り(氏名、失跡時の年齢と住所、失跡年の順。敬称略)。

 ▽木村かをる 21、秋田県、1960年

 ▽坂本とし子 22、東京都、65年

 ▽生島孝子 31、東京都、72年

 新たに公表された2人(同)。

 ▽上田英司 20、東京都、69年

 ▽松本重行 48、京都府、83年

在日米軍に18日移籍 ジェンキンス氏の所属

2004/07/28 The Sankei Shimbun
 細田博之官房長官は28日午前の記者会見で、米軍が拉致被害者曽我ひとみさんの夫で元米兵ジェンキンスさんの所属を、入院治療目的で来日した18日付で、在韓米軍から在日米軍に移籍させていたことを明らかにした。

 細田氏は「(米側が)引き渡し請求する前提として在日米軍の所属にしたのではと思う」と移籍理由を説明した。

 ジェンキンスさんの所属が在韓米軍のままでは、日米地位協定や犯罪人引き渡し条約に基づく日本政府への身柄引き渡し要請に支障があるため、法的問題をクリアする狙いがあるとみられる。

ジェンキンス氏、米法務官と面会の意思表明

2004/07/27 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者、曽我ひとみさんの夫で元米兵ジェンキンスさんは27日午前、都内の病院で日本政府関係者と会い、自らの訴追問題に関して軍法会議や司法取引などについて説明を受けるため、米軍に所属する独立法務官と面会する意思を伝えた。

 ジェンキンスさんが独立法務官との面会意思を明らかにしたのは初めて。外務省はジェンキンスさんの意向を受け、在日米軍などを通じ独立法務官との面会を早ければ週内にも実現できるよう調整を進める。

 独立法務官は弁護士資格を持ち、米軍から中立的立場を保証されており、軍法会議では弁護士を務めるケースもある。

 政府としては同法務官から、在韓米軍から脱走したとされる1965年に4つの罪で訴追を受けたジェンキンスさんの法的立場や、軍法会議などの手続き、司法取引の見通しなどに関して詳しく説明してもらい、ジェンキンスさんの司法取引についての最終判断を促したい考えだ。

北京で再会していたら…北朝鮮、曽我さん連れ戻しを計画か

2004/07/27 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者、曽我ひとみさん(45)の夫、ジェンキンスさん(64)がジャカルタ滞在中、日本政府関係者に「北京で妻と再会していたら、数日後に北朝鮮の航空機を使い、平壌へ連れ戻す予定になっていた」と話していたことが27日、分かった。

 関係者によると、北朝鮮当局はジェンキンスさんに対し、曽我さんを平壌に連れ戻すことができたら運転手付きの高級外車や食糧配給の増量など待遇を改善すると約束し、曽我さんを説得するよう強く求めたという。

 また、多数の北朝鮮当局者がジェンキンスさんに同行して北京入りする予定だったという。

 5月の日朝首脳会談の際、小泉純一郎首相がジェンキンスさんに来日を求めたが、拒否された。代わりに第三国で一家が再会する案が浮上し、北京が有力視されたが、曽我さんが北朝鮮の影響力が強いことを理由に難色を示し、インドネシアでの再会が決まった。

曽我さんらホテルに移る「全国の皆さまに感謝」

2004/07/26 The Sankei Shimbun
 拉致被害者、曽我ひとみさん(45)と長女、美花さん(21)、二女、ブリンダさん(19)が26日午後、夫、ジェンキンスさん(64)が入院している都内の病院からホテルへ宿舎を移した。曽我さんは「支援してくれた全国の皆さまに心から感謝しています」と謝意を表した。

 曽我さん一家は18日に帰国・来日。ジェンキンスさんは入院し、曽我さんと娘2人は病院に泊まり込んで付き添っていた。今後はホテルから病院に通う。

 曽我さんはジェンキンスさんについて「思ったより(病状が)悪くないと知り、ほっとしています。いろんな問題が解決したら、日本のいいところ、きれいなところを見せてあげたい」と話した。

 一家で帰国したときを振り返り「ほっとして、バスの中で涙がにじんだ。ありがとうの一言で言い尽くせない感動を感じた。家族が一緒にいるだけで幸せ」と語った。

 曽我ひとみさん(45)は26日、ジェンキンスさんの入院する病院からホテルに宿舎を移したのを踏まえ、「娘2人はまだ取材に慣れていない」として移動時や病院、ホテルでの取材自粛を文書で要望した。

 曽我さんは「家族3人で毎日お見舞いをしながら過ごすこととなり、娘2人には一日も早く日本での生活になじんでほしいと思っているので、電車やバスも使って病院に通うつもりです」とし、「ほかの方々にご迷惑となることを避けたい」と配慮を求めている。

週内にも米法務官と面会へ 曽我さん夫、司法取引で

2004/07/26 中国新聞ニュース
 拉致被害者曽我ひとみさんの夫で元米兵ジェンキンスさんが、訴追問題の司法取引による早期決着を念頭に、米軍に所属する法律専門家の「独立法務官」と近く面会する見通しとなった。政府筋が二十六日明らかにした。入院中のジェンキンスさんの意向を最終的に確認する必要があるが、同筋は「早ければ今週中にも面会する可能性がある」と指摘した。

 これに関連して、細田博之官房長官は二十六日午前の記者会見で、訴追問題の早期解決を視野に「しかるべき人から情報をもらわないといけない」と述べた。さらに、ジェンキンスさん自身が独立法務官と面会する意思を現時点で示していないとした上で、「そもそも本人が意向を決める必要がある。政府が先走ってこうしたらと話す段階でない」と強調した。

 細田氏はジェンキンスさんが一九六五年に既に訴追されていたことに関しては、米政府から説明を受けていることを認めた。曽我さんが娘二人とジェンキンスさんが入院する病院から二十六日午後に都内のホテルに移動することについては「(病院の部屋は)手狭で、本人たちの意向で移る」と述べた。

 一方、自民党の安倍晋三幹事長は党本部での講演で「弁護士を付け、今の現実をジェンキンス氏にも直視してもらい、米側の司法当局とうまく話し合いが行われれば一番いい」と強調、早期の解決を促した。

ジェンキンスさん、米「独立法務官」と面会へ

2004/07/24 読売新聞 Yomiuri On-Line
 北朝鮮による拉致被害者の曽我ひとみさん(45)の夫、チャールズ・ジェンキンスさん(64)が、米軍に所属する「独立法務官」と面会する意向を政府に伝えたことが24日、明らかになった。

 ジェンキンスさんは独立法務官から司法取引などについて詳しい説明を受けた後、司法取引に応じるかどうかを最終判断すると見られる。政府は、ジェンキンスさんの健康状態を見極めながら、8月中にも面会を実現する方向で調整している。

 政府関係者によると、ジェンキンスさんは現在、米国に身柄を拘束され厳しい処罰を受けることを恐れ、ベーカー駐日米大使が言及した司法取引に応じるかどうかは決断していない。ただ、専門家から司法取引を含む米軍の司法手続きについて詳しい説明を受けることを希望しているという。

 米側は、軍所属の法律専門家である独立法務官を、ジェンキンスさんの入院している都内の病院などに派遣する用意があることを日本側に伝えている。独立法務官は軍から中立的な立場を保証され、軍と容疑者の双方の主張を聴取し、軍が求刑する上限を設定するなどの司法取引を行う上で重要な役割を担っている。

 政府内では、ジェンキンスさんが北朝鮮滞在中に知った他の脱走米兵や北朝鮮当局などに関する情報を米軍に提供する見返りとして、刑の軽減を求める司法取引に応じるのが「最も現実的な解決策」(政府筋)との見方が強まっている。

 司法取引では、ジェンキンスさんの健康状態や高齢など人道上の問題を理由に、禁固や懲役を伴わない「不名誉除隊」などに処するよう米側に要請する案が浮上している。

 ただ、司法取引を実現するには、ジェンキンスさんが自らの有罪を認め、求刑の上限に納得することが前提条件となっている。司法取引は、ベーカー大使が今月16日に自民党の安倍幹事長らと会談した際、「個人的な意見」として「自ら出頭し、進んですべてを話し、司法取引すればいいのではないか」と言及した。

米軍「脱走」時点で始まっていた訴追手続き…米側説明

2004/07/24 読売新聞 Yomiuri On-Line
 チャールズ・ジェンキンスさんに対する米軍の訴追手続きが、ジェンキンスさんが在韓米軍から脱走したとされた1965年の時点で既に開始されていたことが24日、明らかになった。

 政府関係者によると、訴追手続きの開始は、今月行われた訴追問題に関する日米協議の中で、米側が説明した。ただ、ジェンキンスさんの事情聴取ができなかったため、手続きは事実上中断しているという。

 ジェンキンスさんは、本人の脱走、他の米兵への脱走教唆、利敵行為など4つの罪の容疑がかけられている。

軍法会議の方針変らず ジェンキンス氏問題で米高官

2004/07/24 The SAnkei Shimbun
 ローレス米国防副次官補は23日、拉致被害者曽我ひとみさんの夫で元米兵ジェンキンスさんの取り扱いについて「(書類上は)依然、現役の米軍人で、統一軍事裁判法に服さなくてはならない」と述べ、脱走罪などで軍法会議にかける方針をあらためて表明した。ワシントン市内で記者団の質問に答えた。

 副次官補は「誰も(司法)取引を提案していない」と述べ、ジェンキンスさんとの間で司法取引に関する話が進んでいるとの観測を否定した。また、訴追問題で米側が柔軟性を示す用意があるかについては「ない」と述べた。(共同)

司法取引を本人に打診 ジェンキンスさん訴追問題

2004/07/24 中国新聞ニュース
 政府が拉致被害者曽我ひとみさんの夫で元米兵ジェンキンスさんの訴追問題について、米国との「司法取引」で決着させるのが最も望ましいと判断、ジェンキンスさんに司法取引による「早期決着」を非公式に打診していたことが二十三日、分かった。複数の政府関係者が明らかにした。

 同関係者によると、ジェンキンスさん自身も、司法取引に応じることを念頭に対応する考えを示唆している。政府は、二十三日に入院先の東京女子医大が「体調は回復傾向にある」と発表したことから、早期決着に向けた作業を急ぐ方針。ジェンキンスさんが弁護士など専門家のアドバイスを聞く機会を設け、最終的な検査結果が出る来週以降に正式な意向を確認する考えだ。

 ジェンキンスさんが司法取引を決断した場合は、早期決着に向けて事態が動きだす可能性が出てきた。

 政府関係者によると、政府はジェンキンスさんが曽我さんとジャカルタで再会した九日以降、非公式に本人の意向を聴取。その結果 @自分が訴追されること自体はやむを得ないA何らかの方法で身柄拘束や収監を避け、家族と日本で暮らしたい―との希望を確認した。

 その上で、ジェンキンスさんに対し、司法取引を直接促す表現は避けながらも「退院する日は必ず来る。それまでに、自らの将来を自分自身で決断する必要がある」などと、早期決断の必要性を強調した。

 政府は脱走罪などの重罪に問われているジェンキンスさんが、家族との日本永住を実現するためには、司法取引によって減刑や刑の執行猶予を求めるのが得策と判断。「結論をたなざらしにしたまま入院生活を長引かせると、問題解決が一層難しくなる」(政府筋)としている。

英誌がジェンキンス氏訴追問題で社説 「米は寛容な対応を」

2004/07/23 The SAnkei Shimbun
 24日付の英誌エコノミスト最新号は、拉致被害者曽我ひとみさんの夫で元米兵のジェンキンスさんについて、米国は訴追問題で寛容な対応をとるべきだとする社説を掲載した。

 社説は、米国が訴追方針を示している脱走罪について「国家と国民の安全を直接危険にさらすものだ」として、訴追には強い理由があるとした。

 しかし、ジェンキンスさんの場合は(1)曽我さんと再会するため自主的に北朝鮮を離れた(2)多くの日本人がジェンキンスさんを犠牲者とみている(3)貧困で抑圧的な北朝鮮で40年近く暮らし、脱走が事実でも報いは受けた−などの事情を指摘。

 小泉純一郎首相が「特別の配慮」を求めていることも挙げ、米国の対テロ戦争を支持し、北朝鮮の脅威でも認識が一致する日本との関係を悪化させるのは軽率だ、と主張した。(共同)

ジェンキンス氏、再手術の必要なし 担当医が会見

2004/07/23 The SAnkei Shimbun

 拉致被害者、曽我ひとみさん(45)の夫、ジェンキンスさん(64)が入院している東京女子医大病院(東京都新宿区)の東間紘院長らが23日、記者会見し、ジェンキンスさんについて「全般的に体調は回復しつつある」と説明し、現時点で再手術の必要はないとの認識を示した。ただ、精神面で強いストレスを受けており、引き続き入院し、精密検査を受ける。

 東間院長らは同日、病院を訪れた米軍医師や在日米国大使館関係者に容体を説明したことを明らかにした。米政府はジェンキンスさんが入院中は脱走罪などでの訴追に向けた身柄引き渡しを要請しないとしており、病状を確認したとみられる。

 会見に同席した永井厚志副院長は「北朝鮮での前立腺手術の際、深刻な病態が存在する可能性を示唆されたというが、その可能性は極めて少ないと判断した」と述べた。

 永井副院長によると、ジェンキンスさんは4月に手術を受けた後、体重が10キロ近く減った。入院時は疲労感が強かったが、点滴などを受け少しずつ回復に向い、手術の傷口もほぼ完治した。

 移動にはまだ車いすを使い、食事の量は通常の3分の1ぐらい。ベッドから起き上がる際に腰の痛みを訴えている。

 ジェンキンスさんはインドネシアでの健康診断などで内臓の病変があるとされたが、永井副院長は「精密検査の結果が出ないと分からない。検査はあと1週間ぐらいで終えたい」と話した。

 精神的なストレスは、自身を取り巻くさまざまな問題に対処しなければならないことが原因で、直ちに日常生活に戻れる状態ではないという。

 ジェンキンスさんは病気治療のために18日、家族3人とともに来日して入院。20日から本格的な検査を受けていた。 (後略)

曽我さん、娘と初の外出 新宿御苑を並んで散策

2004/07/23 The SAnkei Shimbun
 拉致被害者、曽我ひとみさん(45)が23日午後、長女、美花さん(21)、二女、ブリンダさん(19)と東京都新宿区の新宿御苑を散策した。この日はブリンダさんの誕生日。夜には家族4人でケーキを食べて祝った。

 曽我さんと娘2人は18日に帰国・来日して以来、都内の病院に入院中のジェンキンスさん(64)に付き添って病院で過ごしており、一緒に外出したのは初めて。

 美花さんは白い半袖シャツに青いズボン、ブリンダさんはピンクの長袖シャツにグレーのズボン。3人とも胸には、拉致問題の解決を願うシンボルカラーの青色のバッジやブローチを着けていた。

 快晴で日差しもきつかったが、3人はリラックスした様子で約30分間、御苑内のイギリス風景式庭園や日本庭園などを楽しんだ。3人は横1列になって寄り添い、曽我さんが姉妹に話し掛けながら芝生の上をゆっくりと歩いた。

 内閣官房の拉致被害者・家族支援室によると、ケーキは曽我さんが用意、病院の部屋で食べた。曽我さんは「好きなものを買ってあげたいのですが、こういう状況なので、後でゆっくりと、と思います」と話していたという。

北朝鮮に中間報告要求も 安否不明者再調査で外相

2004/07/23 The SAnkei Shimbun
 川口順子外相は23日午前の記者会見で、安否不明の拉致被害者10人に関する北朝鮮の再調査について「早く(調査の)結果、過程を示してくれることが非常に大事だ」と述べ、再調査の中間報告などを早期に実施するよう北朝鮮側に求める考えを示した。

 また、小泉純一郎首相が1年以内の国交正常化も可能との認識を表明したことについては、首相が平壌宣言の履行を条件として挙げていたことを指摘し「(北朝鮮が)宣言に沿って行動していくことが重要だ」と強調、正常化交渉の再開時期についても「しかるべき時」と述べるにとどめた。

 拉致被害者曽我ひとみさんの夫ジェンキンスさんの訴追問題をめぐる17日のベーカー駐日米大使との協議については「早期決着を図りましょうと申し上げたことはない。先方からもそういうことはなかった。緊密に協議していきましょうと話した」と説明した。

拉致解決まで援助禁止 米下院が「北朝鮮人権法案」可決

2004/07/22 The Sankei Shimbun
 米下院は21日、日本人拉致問題の解決など北朝鮮の人権状況が改善しない限り、同国への人道支援以外の援助を禁じる「北朝鮮人権法案」を全会一致で可決した。

 米議会は北朝鮮の人権状況を非難する決議などを採択したことはあるが、日本人拉致問題を含めて状況改善を要求する法案が可決されたのは初めて。法案は上院に送付され、上院で可決後、大統領の署名を経て正式に成立する。

 法案は、日本人と韓国人の拉致被害者に関する情報の全面開示と、被害者全員の帰国を認めるよう北朝鮮に強く要求。表現や信教の自由などと並び、拉致問題に「実質的な進展」がない限り、北朝鮮政府に対し、食糧など人道支援以外の援助はできないと規定した。

 法案にはまた、北朝鮮の人権状況改善を目指す非政府組織(NGO)などの活動への支援を強化するため、2005会計年度から3年間、毎年200万ドルの拠出権限を大統領に与えることも盛り込まれた。

 米国は拉致問題などを理由に北朝鮮をテロ支援国家と認定、人道支援以外の援助はしない方針を既にとっている。(共同)

米高官、ジェンキンス氏訴追問題は「落としどころある」

2004/07/21 The SAnkei Shimbun
 米国家安全保障会議(NSC)のグリーン・アジア上級部長は20日、自民党の中川秀直国対委員長と会談し、拉致被害者、曽我ひとみさんの夫、ジェンキンスさんの訴追問題について「重要な日米問題になるとは考えていない。落としどころはある」と述べ、日米双方が納得する形で円満解決が図られるとの認識を表明した。

 同部長は「日米関係を考えながら、法的手続きの中で処理されていく」とも指摘。具体的な解決の道筋には言及しなかったが、司法取引や事情聴取への全面協力による刑の減免措置を念頭に置いた発言とみられる。

 日本側が求めている「特別な考慮」の一つである刑確定後の大統領恩赦に関しては「法的にも政治的にも困難」と否定した上で「日米関係や曽我さん一家の気持ちを考えていく。何とかなる問題だ」と強調した。

 またローレス米国防副次官補(アジア・太平洋担当)は中川氏との会談で、米国が脱走罪などでジェンキンスさんの身柄を拘束、訴追する権利があるとの立場を重ねて示した上で「措置を講じないのは、日本政府の要請を尊重しているからだ」と述べた。(共同)

ジェンキンス氏の検査開始 医師団結成し治療方針

2004/07/20 The SAnkei Shimbun
 東京都内の病院に入院している拉致被害者曽我ひとみさん(45)の夫ジェンキンスさん(64)に対する検査が20日、本格的に始まった。病院側は病状を詳しく検討し、複数の診療科による医師団を結成して治療方針を決定。ジェンキンスさんは当面、治療に専念する。

 曽我さんは同日、首相官邸と自民党本部を訪問したほかは、ジェンキンスさんの身の回りの世話をして過ごした。長女、美花さん(21)と二女、ブリンダさん(18)も念のため健診を受ける予定。

 ジェンキンスさんを脱走罪などで訴追する方針の米国政府は、治療中は身柄引き渡しは要請しないとしており、日本政府は処遇について米側との協議を続ける。

 ジェンキンスさんはインドネシア滞在中の健康診断で、北朝鮮で受けた開腹手術の後遺症や新たな内臓病変が見つかり、18日の来日直後に入院した。

曽我さん一家、病院で日本の生活始まる

2004/07/19 The SAnkei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者、曽我ひとみさん(45)一家4人は19日、帰国・来日から一夜明け、夫ジェンキンスさん(64)が入院する東京都内の病院で新たな生活を始めた。

 ジェンキンスさんの検査は20日から始まり、当分は治療に専念する。家族3人は隣の病室で寝泊まりし、看病する。長女、美花さん(21)と二女、ブリンダさん(18)もメディカルチェックを受ける予定。

 内閣官房の拉致被害者・家族支援室によると、ジェンキンスさんは18日夜、疲れた様子で、病院に到着してすぐにベッドで横になった。19日は医師による問診などもなく、一家は病室で静かに過ごした。

 ジェンキンスさんは個室に入院。隣の家族の部屋には、入院用ベッド3台とテレビ1台が置かれ、2つの病室は内部で行き来できる構造になっている。支援室の職員も病院に常駐しているという。

 ジェンキンスさんはインドネシアでの健康診断で、北朝鮮で受けた開腹手術の後遺症と内臓の病変が見つかり、病院側は検査結果をみて医師団を結成、治療方針を決める。支援室はジェンキンスさんの治療を最優先にして、一家の今後の生活については家族の要望を聞きながら対応するとしている。

ジェンキンスさん治療長引けば、家族の仮住まい確保も

2004/07/18 読売新聞 Yomiuri On-LIne
 政府は曽我さん一家の永住に向けて支援態勢に万全を期す方針だ。ジェンキンスさんが入院した病院では、長女美花さん、二女ブリンダさんの健康診断も予定されている。

 一家の新生活は病院内でスタートするが、ジェンキンスさんの治療が長期化した場合、病院近くに曽我さんと娘2人の仮住まいを確保する方向だ。政府は娘2人に対し、日本語や日本の生活習慣に慣れてもらうための支援プログラムを検討している。

 一方、経済援助には課題も残っている。曽我さんには現在、拉致被害者支援法に基づいて「滞在援助金」が月17万円支払われている。今後、一家が日本永住の意思を示せば、「拉致被害者等給付金」として4人に月計30万円が支給される。

 しかし、ジェンキンスさんの訴追問題が解決するまでは、一家が永住の意思を示すのは難しいと見られ、その間は差額の13万円は支払われない。

 帰国・来日の交通費や医療費、宿泊費なども「当面は政府が負担する」(拉致被害者・家族支援室)としている。ただし、拉致被害者支援法は日本永住を前提としているため、「法律の解釈も含めて、未確定の問題が多い」(同室)のが実情だ。

曽我さん一家が帰国・来日、ジェンキンスさん病院入院

2004/07/18 読売新聞 Yomiuri On-LIne
 ジャカルタで1年9か月ぶりに再会した拉致被害者の曽我ひとみさん(45)と家族3人は18日午後5時48分、政府のチャーター機で羽田空港に到着し、念願だった4人そろっての帰国・来日を果たした。

 夫のチャールズ・ジェンキンスさん(64)は、ただちに東京都内の病院に入院。曽我さんと、長女美花さん(21)、二女ブリンダさん(18)も病院に宿泊し、治療の経緯を見守る。一昨年10月に北朝鮮から戻った拉致被害者の3組5人は、これで全員が家族と日本で暮らすことになった。

 曽我さんの一家4人は同日午前8時半(日本時間午前10時半)過ぎ、インドネシアを出発。羽田に到着し、チャーター機から姿を見せたジェンキンスさんは、つえを付き、曽我さんから脇を支えられながらタラップを降りた。ジェンキンスさんと美花さん、ブリンダさんの胸には、ジャカルタでの再会時に付けていた北朝鮮国旗をかたどったバッジはなく、2人の娘は拉致被害者救出運動のシンボルの青いリボンを付けていた。

 曽我さんらは、報道関係者らの呼びかけに会釈を返しながらバスに乗車。そのまま都内の病院に直行し、午後7時前に到着した。

 政府は当初、4人が一定期間ジャカルタに滞在するうちに日本に永住できる環境を整えていくという予定で、準備を進めていた。しかし、ジェンキンスさんは、今年4月に北朝鮮で受けた腹部の手術の後遺症が悪化。さらにジャカルタでの検診で内臓に新たな病変が見つかったため、日本の医療施設で一刻も早く治療を受けさせるための「緊急の人道上の措置」として、早期の日本受け入れを決めた。政府は、ジェンキンスさんが治療に専念できるよう支援する。

 米国の軍当局は、在韓米軍に所属していたジェンキンスさんを「脱走兵」として軍法会議の訴追対象とする立場を崩していないが、ベーカー駐日大使は17日、川口外相との会談で、ジェンキンスさんの重い病状に配慮し、身柄引き渡し要求を当面見送る考えを表明した。訴追問題については引き続き日米で緊密に協議することで一致している。

 ジェンキンスさんの入院中は、米国への身柄引き渡しや訴追は免れる見通し。政府は今後も米国側に最大限の配慮を求め、日本永住に道筋を付けたい方針だ。

 ◆ブルーリボン=北朝鮮による拉致被害者全員の帰国を願うシンボル。北朝鮮と日本を隔てる日本海と、その上に広がる青い空をイメージしており、支援団体の呼びかけで広まった。小泉首相も、リボンをあしらったバッジを着けて、今年5月の2度目の日朝首脳会談に臨んだ。

ベーカー駐日大使「当面は引き渡し求めず」

2004/07/17 The Sankei Shimbun
 米国のベーカー駐日大使は17日午前、都内の外務省麻布台別館で川口順子外相と会談し、拉致被害者曽我ひとみさんの夫で18日に来日する元米兵のジェンキンスさんの処遇問題について協議した。

 ベーカー大使は、米国が今後、脱走罪などでジェンキンスさんの身柄引き渡しを求める方針に変わりがないことを指摘した上で、健康状態を考え、当面は引き渡し請求をしない意向を表明した。

 これに対し、外相は「ジェンキンスさんは入院が必要な状態」と説明し、人道的な配慮を要請した。両氏は引き続き処遇問題について協議していくことを確認した。

 会談には、在日米軍の関係者も同席した。

対日関係重視した米国、訴追問題で「最大限の配慮」

2004/07/17 読売新聞 Yomiuri On-Line
 拉致被害者の曽我ひとみさんの夫のチャールズ・ジェンキンスさん(64)の訴追問題は17日、米国が身柄引き渡し要求を当面先送りするという「最大級の譲歩」(外務省幹部)を示し、一応の決着を見た。訴追問題をめぐる日米両国の根本的な立場の違いは解消していないものの、日米間の対立は当面回避されることとなり、政府内には安堵(あんど)感も広がっている。

 政府は当初、ジェンキンスさんの病状が予想以上に重かったことなどを理由に、「来日しても、身柄引き渡し要求はしないでほしい」と、米側に人道的な配慮を働きかけていた。しかし、米国は「ジェンキンス軍曹がどの国に行こうと米国の立場は変わらない」(国防総省スポークスマン)として、米国の司法官管轄権の及ぶ場所に来れば、ただちに身柄引き渡し要求などの司法手続きを開始する姿勢を崩さなかった。

 政府内には、「結果的に、入院中は身柄引き渡しが避けられればよい」(首相周辺)として、引き渡し要求自体は避けられないとの見方も強まっていた。

 米国のベーカー駐日大使が川口外相との17日の会談で、引き渡し要求そのものを先送りすると明言したことについて、ある外務省幹部は、「大統領選を控えたブッシュ政権にとって、軍の規律上の問題で例外を作るのは難しい判断だったはずだ。日米関係を重視した、特段の配慮だろう」と解説する。

 ただ、米国は「将来の適当な時期」(ベーカー大使)に身柄引き渡しを要求するとしており、訴追問題が完全に解決したわけではない。17日には、外務省麻布台別館でのべーカー大使と川口外相との会談に同席していた外務省職員と米軍の法律専門家がそのまま残り、大使が言及した「司法取引」などを含む米国の法律的な仕組みについて協議を開始した。今後も、事態打開に向けて、日米間の実務者間で、緊密に協議を行うことにしている。

曽我さんの再会「手本に」 自国民保護で論評 インドネシア地元メディア

2004/07/17 The Sankei Shimbun
 【ジャカルタ=土井達士】十八日に日本へ向けてたつ曽我ひとみさん(四五)一家が滞在しているジャカルタ。曽我さんと夫のチャールズ・ジェンキンス氏(六四)や娘二人との再会シーンなどは大きな反響を呼んでおり、地元メディアからは、北朝鮮による日本人拉致問題とからめ、インドネシア政府による自国民保護の姿勢を問いかける論調も出ている。

 英字紙「ジャカルタ・ポスト」は十六日付のオピニオン面で、曽我さん一家の再会をテーマにした同紙の記者による論説記事を掲載。再会実現について、「日本人は、外国の犯罪行為から国民を守ることに自国政府が無力だったことを屈辱とし、小泉首相に対し、どのような犠牲を払っても再会を実現させるよう強い圧力をかけた」とし、日本国内の世論が大きな役割を果たしたとした。

 その一方、インドネシアでは、中東諸国へお手伝いさんとして出稼ぎに向かった少女が、雇い主から性的暴行を受けることが常態化したり、数十万人に及ぶマレーシアへの出稼ぎ者が近く強制退去させられる状況になったりしているのに、「政府は一切無視している」と批判している。

 記事は「曽我さんとジェンキンス氏の(再会時の)キスには深い意味が込められていた。インドネシア政府と国民の関係が二人のようになれば、われわれは誇りを持つことができるだろう」と結ばれ、曽我さんの例を“手本”に、インドネシアも自国民保護を重視することを強く求めるものとなっている。

ジェンキンス氏が来日受諾

2004/07/14 中国新聞ニュース
 拉致被害者曽我ひとみさんとジャカルタで再会した夫のジェンキンスさんが、日本政府関係者に対し「不安はあるが、小泉純一郎首相を信用したい」と述べ、政府の来日要請を受け入れる意向を示していることが分かった。複数の政府関係者が十四日明らかにした。

 政府は週明けの来日を想定しているが、チャーター機の手配ができ次第、曽我さん一家を早期に帰国・来日させる方針で準備を急いでいる。ただ、北朝鮮から一緒に来た娘二人が日本行きに消極的といわれ、政府は説得に全力を挙げる構え。

 ジェンキンスさんの発言の背景には、五月に再訪朝した首相が面会した際に「日本の許可なしに米側に身柄を引き渡さない」などと述べたことが念頭にあったと思われる。首相には「脱走罪」で訴追方針を示している米国との詰めの調整を急ぐことが求められる。

 政府は腹部の治療目的でジェンキンスさんを来日させれば、米国への身柄引き渡しを回避できると判断しているが、「絶対保証できるという状況ではない」(外務省筋)のが実情だ。

 しかし、ジェンキンスさんは小泉首相から「熱心な来日要請」(政府筋)を受けたことから、政府関係者に「小泉首相が自分の日本永住をきっと保証してくれる」「首相が私を助けてくれる」と語ったという。

 外務省幹部は、ジェンキンスさんの発言について、金正日総書記の独裁体制が続く北朝鮮と同様に「すべてトップの判断で決まると確信しているからではないか」と指摘、小泉首相の指導力発揮に期待しているとの見方を示した。

ジェンキンス氏、内臓にも病変 曽我さん「日本で治療を」

2004/07/14 The Sankei Shimbun
 拉致被害者、曽我ひとみさん(45)の夫、ジェンキンスさん(64)について、小熊博拉致被害者・家族支援室長は14日、ジャカルタで記者会見し、北朝鮮で受けた腹部手術の後遺症のほか、内臓にも病変が確認されていることを明らかにした。

 ジャカルタ近郊の病院で13日に受けた健康診断と同行医師のこれまでの診察で分かった。健診の結果は一部しか出ておらず、今週中にすべての結果が判明する予定。曽我さんは日本での治療を希望しているという。

 小熊室長は具体的な病状について「プライバシーにかかわる」として明らかにしなかったが、直ちに命にかかわる状況ではないとしている。

 医師は「病変がジェンキンスさんの心理状態にも影響を及ぼしている」と指摘。

 曽我さんは「現地で一番と言われる病院で健診を受けさせてもらい感謝している。必要な治療があれば日本でやってほしい」と話したという。

 小熊室長は「ジェンキンスさんは日本に適応できるのか不安も抱えているようだ。結果が判明次第、本人の意思を確認して必要な対応を検討したい」と述べた。

 曽我さん一家は14日、ジャカルタ中心部のホテルの部屋で、小熊室長ら日本政府のスタッフとトランプで「ババ抜き」をするなどして静かに過ごした。

 曽我さんの地元の佐渡を紹介するビデオで佐渡と新潟を結ぶ高速船を見た長女、美花さん(21)は「海がきれい。あの船に乗ってみたい」と話したという。(共同)

お盆までに一時帰国も 寺越さん母に北朝鮮

2004/07/14 The Sankei Shimbun
 1963年に日本海で出漁中に失跡し、現在は北朝鮮で暮らす寺越武志さん(54)の母、友枝さん(73)が13日、訪朝を終え帰国し、北朝鮮当局の幹部から「お盆までに(武志さんを)一時帰国させてもいい」と告げられたことを明らかにした。

 武志さんも前向きな意向を示しているといい、友枝さんは今後、日本での受け入れ態勢を整えるため関係機関に働きかける方針。

 友枝さんは6日から1週間にわたり平壌の武志さんの自宅に滞在。帰国後に金沢市の自宅で明らかにした。

 友枝さんによると、武志さんは元気な様子で、拉致被害者の曽我ひとみさん(45)と夫の元米兵、ジェンキンスさん(64)ら家族が再会したことも知っていたが、特に感想は述べなかったという。

よど号犯人ら帰しても、北朝鮮はテロ国家…米国務省

2004/07/13 読売新聞 Yomiuri On-LIne
 【ワシントン=菱沼隆雄】米国務省のバウチャー報道官は12日の記者会見で、北朝鮮が、日航機「よど号」を乗っ取り北朝鮮に亡命した元赤軍派メンバー4人の帰国に協力する姿勢を示していることについて、「特にテロとの関係を含め北朝鮮が取るべき措置は明確にしてきた」と述べ、4人の帰国がテロ支援国家指定解除のために必要な措置に当たるとの見解を示した。

 ただ、国務省は今年4月に発表したテロ報告で、よど号乗っ取り犯の北朝鮮滞在のほか、日本人拉致問題を理由に、北朝鮮をテロ支援国家に再指定しており、拉致問題の全面解決までテロ支援国家から外すことはないとの立場だ。

治療目的の来日打診 ジェンキンス氏に政府

2004/07/13 The Sankei Shimbun
 政府が、拉致被害者、曽我ひとみさんの夫で元米兵のジェンキンスさんに対し、日本の医療機関での入院治療を目的に来日するよう打診していることが分かった。複数の政府関係者が13日、明らかにした。

 政府は、ジェンキンスさんの同意が得られれば、来週にも実現させる方針だ。治療目的の来日であれば、「脱走罪」などでジェンキンスさんの訴追を求めている米軍への身柄引き渡しを「人道的配慮」を理由に回避できる可能性が高いと判断した。米政府に水面下で協力を要請している。

 ジェンキンスさんは「身柄を拘束しない」との米国の保証を日本が取り付けることを条件に、治療目的での来日に応じる考えを示しており、今後、米側との調整が焦点になりそうだ。

 曽我さんとジャカルタで再会したジェンキンスさんは滞在先のホテルで、日本人医師団による診察を連日受けている。「健康状態は思わしくなく、日本国内での治療が必要」(政府関係者)と診断されたという。

 病名は明らかになっていない。受け入れ先は、首都圏の医療機関を検討している。

 外務省によると、日米間で締結している犯罪人引き渡し条約や日米地位協定には、治療中の犯罪人の相手国引き渡しを制約する規定を設けていない。ただ、身柄を引き渡すかどうかは「現場の状況判断に委ねられるケースが多い」(同省日米地位協定室)ことから、外務省内には「米国の説得は十分に可能」との見方が出ている。

 一方で、ジェンキンスさんが条件にしている「不逮捕」の保証については「暗黙の了解」にとどまり、米側が明示するのは困難視する向きが多い。

ジェンキンスさん「家であまりバッジつけていない」

2004/07/12 読売新聞 Yomiuri On-Line
 小泉首相は12日、北朝鮮による拉致被害者の曽我ひとみさんに同行し、ジャカルタ入りしていた中山恭子内閣官房参与と首相官邸で会い、曽我さん一家のジャカルタでの暮らしぶりなどについて報告を受けた。

 曽我さんの夫チャールズ・ジェンキンスさんの来日問題について、中山参与は「今のところジェンキンスさんからはっきりとした要望は出されていない」と述べた。首相は「早く一緒に日本に帰れるようになればいい」と語った。

 中山参与は報告後、記者団に対し、ジェンキンスさんがジャカルタの日本大使公邸で11日に開かれた夕食会で、北朝鮮のバッジをつけていなかったことを明らかにした。ジェンキンスさんは「正装する時、儀式の時などはつけるが、北朝鮮でも家にいるときはあまりつけていない」と中山参与に説明したという。

 一方、政府関係者によると、日本大使公邸の夕食会の際、ジェンキンスさんは米国在住の親類と電話で話をした。日本大使館が親類からの電話を取り次いだ。

 ジェンキンスさんがこの親類と話をするのは約40年ぶりで、電話は約30分に及んだ。「ジェンキンスさんは『ビッグ・サプライズ』とすごく喜んでいた」という。

 また、ジェンキンスさんに同行してきた北朝鮮当局者は、ジェンキンスさんへの面会を試みているが、日本側が「そっとしておいて欲しい」と接触を控えるよう求めているという。

ラーメン食べたり、アニメを見たり…曽我さん一家

2004/07/12 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【ジャカルタ=堤辰佳、木下敦子】再会を果たして4日目を迎えた拉致被害者の曽我ひとみさん(45)の一家は12日も、滞在先のホテルの部屋で家族水入らずの静かな時間を過ごした。

 この日に曽我さんと面会した内閣府拉致被害者・家族支援室の小熊博室長によると、曽我さんは、二女ブリンダさん(18)の大好物のラーメンを昼食に作り、一家で食べたという。

 また、ブリンダさんと長女美花さん(21)は、午前中からアニメ「まんが日本昔ばなし」のビデオを曽我さんの通訳で見た後、ハングルの字幕がついた「ハリー・ポッター」の映画のビデオを楽しそうに鑑賞したという。

同行の3人、ジェンキンスさんとの面会要請

2004/07/12 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【ジャカルタ=黒瀬悦成、堤辰佳】北朝鮮による拉致被害者、曽我ひとみさんの夫、チャールズ・ジェンキンスさんと娘2人の「世話人」として平壌からジャカルタに同行している北朝鮮の政府関係者3人が、日本政府とインドネシア政府に対し、ジェンキンスさんと面会させるよう求めていることが12日明らかになった。

 内閣官房拉致被害者・家族支援室の小熊博室長によると、これまでに要請は複数回あったが、日本側は「家族が静かに話し合えるように協力してほしい」と北朝鮮側に求め、事実上、接触を拒否。曽我さん一家の部屋は外部からの電話が通じないようにされており、今のところ、北朝鮮側はジェンキンスさんと接触していないという。

 一方、インドネシア外務省当局者によると、同国への要請は在ジャカルタの北朝鮮大使を通じて行われており、12日朝、北朝鮮大使から同省の複数の部局に電話が入った。

 大使は「ジェンキンス氏は自国民なのに会えないのはおかしい」と主張。さらに、ジェンキンスさんら3人の旅券は、北朝鮮が政府職員らに発行するビザ不要の「公用旅券」であることを理由に、「形式的には政府に所属する彼らに、我々政府関係者が接触するのを妨害される理由はない」と訴えたという。

 これに対しインドネシア外務省は、一連の要請を日本側に伝えることを約束。インドネシアは面会要請に関して「日朝間の問題」としているが、北朝鮮とは数十年来の友好国であることから、面会実現に向け仲介に動く可能性もあるとみられる。

北から同行の3人、日本専門家や居住区の行政担当者

2004/07/12 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【ジャカルタ=中谷和義】ジャカルタ入りしている内閣官房の拉致被害者・家族支援室の小熊博室長は12日、北朝鮮から曽我ひとみさん(45)の家族に同行し、曽我さん一家と同じホテルに滞在している随行員3人が、北朝鮮外務省の姜東権(カン・ドングォン)研究員、キム・ソンジュン人民委員会課長、パク・キソク人民委員会指導員であることを明らかにした。

 日本の北朝鮮専門家によると、姜研究員は、2002年10月にクアラルンプールで開かれた日朝国交正常化交渉にも参加した対日関係の専門家。

 キム氏は、曽我さんの夫ジェンキンスさん(64)が平壌で住んでいた地域の行政を担当する人民委員会に所属しているとみられる。

「北」関係者、ジェンキンス氏との面会要求 日本側は拒否

2004/07/11 The Sankei Shimbun
 北朝鮮関係者が、ジャカルタで拉致被害者、曽我ひとみさんと再会した夫のジェンキンス氏との面会を日本政府関係者に求めていることが10日、分かった。

 日本側は「一家が静かに話し合う環境が損なわれる」として、この要求を拒否。しかし北朝鮮側は同氏との面会を求める姿勢を崩しておらず、日朝間で綱引きが続いている。日本政府筋が明らかにした。

 同筋によると、ジェンキンス氏への接触を求めているのは、平壌から同行してきた3人と、北朝鮮の在インドネシア大使館関係者。再会を果たした曽我さん家族がジャカルタ市内のホテルに到着した直後から訪問を試みているが、日本の依頼を受けたホテル側に阻止され、実現していない。

 ジェンキンス氏の北朝鮮側同行者は10日、記者団に「今回は国家間ではなく、家族の問題だ」と、同氏の来日問題に干渉しない姿勢を強調したが、日本側は「同行者らは執拗(しつよう)に面会を求めており、真意を見極める必要がある」と警戒感を示している。

 ジェンキンス氏の方からは面会の要望はないという。日本政府関係者は曽我さんらと同じフロアに滞在しており、一家とは随時接触できる。(共同)

曽我さん一家が再会 1年9カ月ぶり、インドネシアで

2004/07/10 中国新聞ニュース
 【ジャカルタ9日共同=石田和雄】北朝鮮による拉致被害者曽我ひとみさん(45)と夫ジェンキンスさん(64)、長女美花さん(21)、二女ブリンダさん(18)の一家四人は九日午後五時十分(日本時間同七時十分)、インドネシアで一年九カ月ぶりに再会した。

 ジェンキンスさんら三人は日本政府のチャーター機で同日午前、平壌を出発し午後五時(同七時)ごろ、曽我さんが出迎えるジャカルタ郊外のスカルノ・ハッタ国際空港に到着した。当分はジャカルタ市内のホテルで暮らし、曽我さんが希望する日本永住に向けて話し合う。

 元米兵のジェンキンスさんが来日すれば米国は脱走罪で訴追する方針で、長期滞在になる可能性が高い。日朝関係筋によると、北朝鮮政府は日本政府に三人を北朝鮮に戻さなくていいと伝えてきており、日本政府は米側との調整を急ぐ方針。

 空港に出迎えた曽我さんは、最初にタラップを下りたジェンキンスさんを抱き寄せてキスし日本語で「ごめん」とひと言。娘二人を抱き寄せ、美花さんには朝鮮語で「ごめん」と語り掛けた。ブリンダさんは朝鮮語で「おかあさん」と応じ、その後、無言で代わる代わる五分ほど抱き合った。

 三人とも胸に北朝鮮のバッジをつけていた。

 一家は同日夜、ジャカルタ市内のホテルに到着、ロビーで花束を受け取った。曽我さんは周囲に「ありがとう」と言って部屋に入った。

 八日に現地入りした曽我さんには中山恭子内閣官房参与らが、三人には外務省の斎木昭隆アジア大洋州局審議官らが付き添った。ジェンキンスさんの希望で北朝鮮の担当者三人も同行した。

 チャーター機は九日朝、羽田空港を出発し日本時間の午前九時前に平壌国際空港に到着。ジェンキンスさんらは北朝鮮関係者に見送られ、チャーター機に乗り込んだ。

 今年五月の日朝首脳会談で拉致被害者の蓮池薫さん(46)祐木子さん(48)、地村保志さん(49)富貴恵さん(49)両夫妻の子供五人の帰国が実現したが、ジェンキンスさんは来日を固辞。日朝両国の協議で、米国と犯罪人引き渡し条約を締結していないインドネシアでの再会が決まった。

北朝鮮「3人戻す必要ない」 日本政府に伝達

2004/07/10 中国新聞ニュース
 拉致被害者曽我ひとみさんとジャカルタで再会した夫のジェンキンスさんら三人の家族について、北朝鮮政府が日本政府に対し、北朝鮮に戻さなくていいと伝えてきていることが九日分かった。日朝関係筋が明らかにした。曽我さん一家四人がそろって日本で暮らすよう働き掛ける方針の日本側に配慮したとみられ、日朝国交正常化交渉の早期再開に向けて環境整備を進めようとの思惑もあるようだ。

 ただ、こうした北朝鮮政府の意向がジェンキンスさん本人に伝達されているかは不明で、日本政府としては、再会を果たした曽我さん一家の話し合いを慎重に見守る考え。同時に、元米兵で米側から訴追の恐れがあるジェンキンスさんが来日した場合の処遇をめぐり、米側と協議を本格化させる構えだ。

 日本政府は今回のジャカルタでの曽我さん一家再会で、ジェンキンスさんが「北朝鮮に戻りたい」と希望することを懸念しており、北朝鮮政府から「戻さなくていい」と伝えられていることも説得材料になるとみられる。

 金正日総書記は五月二十二日の小泉純一郎首相との首脳会談で、拉致被害者の家族について「離れ離れの状況を、人間として考えなければならない。行きたい人には行ってもらう」と表明。ジェンキンスさんに関しても「本人の意思に任せる」としていた。

 二○○二年十月に曽我さんを含む拉致被害者五人が帰国した際には、北朝鮮側は「短期滞在」で戻すよう要求していた。

安否不明者で北朝鮮「一生懸命調査している」

2004/07/09 The Sankei Shimbun
 外務省の斎木昭隆アジア大洋州局審議官は9日、平壌国際空港で北朝鮮外務省の宋日昊副局長と会談した際、拉致事件の安否不明者10人の再調査結果を早急に報告するよう求めた。外務省筋が明らかにした。

 これに対し宋氏は「(被害者が所在していた)地方も含めて今、一生懸命調査している」と説明した。

 両氏は日朝国交正常化交渉の再開を念頭に今後、外務省の事務レベルの連絡を緊密にしていくことを確認。斎木氏は「今度平壌に来るときは、もう少し長く滞在したい」と述べ、実務者協議を行いたいとの考えを示した。

 曽我さん一家の再会が実現したことについては「日朝双方がお互いに努力した結果だ」との認識を確認した。(共同)

拘束、厳罰の方針確認 ジェンキンスさん問題

2004/06/19 中国新聞ニュース
 【ワシントン19日共同】米政府高官は十八日、北朝鮮による拉致被害者曽我ひとみさんが再会を希望している夫の元米兵ジェンキンスさんの処遇について「(犯罪人引き渡し条約締結国など)法的に米政府が拘束できる場所に移動すれば拘束する」と言明、逃走米兵として厳重に処罰する方針を貫く考えを確認した。

 曽我さん一家の再会をめぐっては、日本政府は今月上旬の日米首脳会談などを通じ米政府に協力を要請しているが、同高官の発言は、ジェンキンスさんが日本などに入国すれば、身柄の引き渡しを求める米政府の姿勢に変更はないことを示したものだ。

 同高官は「ジェンキンス氏は四つの重い罪に問われている。同情はゼロだ」と述べ、ブッシュ大統領は恩赦など救済措置を一切検討していないことを表明。また、同高官によると、大統領は先の日米首脳会談で、家族と離れた曽我さんの状況に同情する意思を示したが「同情」という言葉は使わなかったという。

 ただ「違法には拘束できない」とも述べ、曽我さん一家が、米国と犯罪人引き渡し条約などを締結していない「第三国」で再会した場合、黙認せざるを得ないとの立場も同時に示した。

 日本政府が曽我さんとジェンキンスさんら家族の再会場所としてインドネシアを有力候補地として検討しているとされることについて同高官は「日本政府から公式の打診はない」と述べた。

家族4人で金魚すくい 蓮池薫さんが近況

2004/06/17 The Sankei Shimbun
 拉致被害者の蓮池薫さん(46)は17日、新潟県柏崎市で記者会見し、家族4人で16日夕に市内の祭りに出掛け、金魚すくいなどを楽しんだと近況を明らかにした。

 蓮池さんは「北朝鮮は公式行事の祭りはあるが、みんなが集まって楽しくわいわいやるものはないので、相当興味を持ったようだ」と子供2人の様子を話した。

 横田めぐみさんの娘キム・ヘギョンさんの来日問題では、横田さん家族の意向を尊重すべきだという考えを示し「めぐみさんの問題がないがしろにされることを恐れているように思われる」と横田さん家族の複雑な心情を思いやった。

 同県佐渡市の曽我ひとみさん(45)が15日に公表した手記については「曽我さんの今の気持ちは痛いほど分かる。娘さんの誕生日までには必ず(家族の再会を)やってほしい」と述べた。

バリ島念頭に北朝鮮と協議 曽我さん一家再会で政府

2004/06/17 中国新聞ニュース
 北朝鮮による拉致被害者曽我ひとみさんと夫で元米兵のジェンキンスさんら家族の再会場所について、政府がインドネシアを有力候補地として北朝鮮側に非公式に打診、協議していることが十七日分かった。リゾートとして知られるバリ島を念頭に置いているとみられ、外務省幹部もバリ島での再会について「いいと思う」と述べた。インドネシア政府には候補地に考えていることを既に伝えている。

 これに関連して細田博之官房長官は十七日午前の記者会見で「(候補地を)絞り込みながら北朝鮮側と話し合っている段階」と述べた。

 外務省は曽我さんの二女の誕生日である七月二十三日までの再会実現を目指しているが、政府筋によると、ジェンキンスさん側から受け入れ回答は来ていない。このためインドネシアでの再会が最終的に実現するか流動的な要素が残っている。

 外務省は当初、北京を含む中国国内での再会を目指していたが、自民党内で「平壌に近すぎる」などと異論が強く、曽我さんも難色を示した。ジェンキンスさんが脱走罪で米国から訴追される可能性があることから、米国と犯罪人引き渡し条約を締結していない国を対象にあらためて調整を進めた結果、インドネシアなど数カ国が浮上した。

 インドネシア側は曽我さん一家の再会について「支援する用意がある」(ハムザ副大統領)としているが、七月五日に大統領選があるため、同国政府との本格的交渉はそれ以降になる可能性がある。

曽我さん再会、来月の二女誕生日が期限

2004/06/16 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者、曽我ひとみさんと、夫で元米兵のジェンキンスさんら家族の再会問題について、外務省が二女の誕生日である7月23日までの実現を目指し、中国以外の第三国と具体的な交渉に入っていることが16日分かった。

 これに関連して、高島肇久外務報道官は16日午後の記者会見で「(北京を)候補地の一つとして検討したが、今は中国ではない場所を考えている」と述べ、外務省として北京を含む中国国内での再会を断念したことを明言した。

 また外務省幹部は同日、「既に特定の国と話し合いを始めている。曽我さんはお子さんが誕生日を迎える7月23日前の再会を希望しており、実現できればと思っている」と述べた。

 「特定国」は明らかになっていないが、ジェンキンスさんが脱走罪で米国から訴追される可能性があることから、米国と犯罪人引き渡し条約などを締結してない国とみられる。同幹部は「曽我さんとジェンキンスさんが落ち着いて話せる場所と言えば、おのずと絞られる」と指摘した。

 曽我さんが先に明らかにした手記でも、二女の誕生日を家族4人そろって祝いたいとの希望を示している。

ジェンキンスさんの訴追問題に高い壁 日米首脳会談

2004/06/09 The Sankei Shimbun
 8日の日米首脳会談で小泉純一郎首相は拉致被害者曽我ひとみさんの夫で元米兵、ジェンキンスさんの訴追問題について、首脳レベルで初めて取り上げ理解を求めた。ただ、ブッシュ米大統領は脱走兵だと指摘、訴追は避けられないとの認識を示し問題解決に向けハードルが高いことがあらためて浮き彫りになった。

 日本政府は曽我さんの意向を受け、当初想定された北京以外の場所で家族との再会を目指し調整中。ジェンキンスさんが来日の条件に挙げた訴追免除などの約束を事前に米側から取り付けるのは難しい情勢で、問題長期化も予想される。

 ただ、両首脳は取り扱いを継続協議することを確認した。政府関係者は大統領が「曽我さんの状況に同情する」と発言したことに「今言える最大限好意的な言葉だ」と日本側への配慮が示されたとの見方を示す。

 首相同行筋は首脳会談での議題化について「状況を説明したもので要請はしていない」と強調。会談前から「大統領が『寛大な措置』を言うのは無理」(官邸筋)と見ていたが、国内世論への配慮から言及しないわけにはいかず、大統領との間で問題の存在を確認することに意義があったとの立場だ。今後、再会場所を調整すると同時に、大統領の「同情」をテコに米側とどこまで事前調整できるかが課題だ。

 日本側には当初、親密な「小泉・ブッシュ」関係から「最後は首脳同士で政治決着できるのでは」(外務省幹部)との期待もあった。ただ脱走罪は戦時なら最高で死刑もある重罪で、「軍の根幹にかかわる問題」(政府筋)。開戦以後の米兵の死者数が800人を超えるなど混迷するイラク情勢も解決へ道を険しくしている。イラク人虐待事件で軍内部の規律の乱れも指摘され、「盟友コイズミ」の要請でも大統領に譲歩できる余地は極めて限られている。(共同)

田口八重子さんの情報聞く 飯塚さん、地村夫妻と面会

2004/06/07 The Sankei Shimbun
 北朝鮮に拉致され安否不明となっている田口八重子さん=失跡当時(22)=の兄で、家族会副代表の飯塚繁雄さん(65)は7日、拉致被害者の地村保志さん(49)、富貴恵さん(48)夫妻と福井県小浜市役所で面会し、家族会からの義援金を渡した。

 飯塚さんは面会後の記者会見で「これまで聞けなかったことを聞けた」と、田口さんについて新たな情報を得たことを明らかにしたが、「個々の内容は今は言えない」とし、北朝鮮に誠実な再調査を迫るため、蓮池薫さん(46)夫妻や曽我ひとみさん(45)から聞き取った話も含め、家族会で検証し、情報管理する考えを示した。

 面会には田口さんの長男の飯塚耕一郎さん(27)も同席。拉致直後の1978年9月から1年ほど、田口さんと一緒に生活していた富貴恵さんと初めて対面、「(日本に残した)子供を気遣っていた」など当時の様子を直接聞いた。

 耕一郎さんは「自分が思っていたよりも(生活状況などが)若干良い形でほっとした」としながら、「母親像はまだ描けない。聞いて良かったと思う部分と、逆の部分がある」と複雑な心境をのぞかせた。

 田口さんは大韓航空機爆破事件の実行犯、金賢姫(キム・ヒョンヒ)元工作員の日本語教育係「李恩恵(リ・ウネ)」とされている。北朝鮮は2002年9月の首相訪朝時に「86年7月に死亡した」と説明した。

 <田口八重子さん> 東京都内の飲食店に勤務していた1978年6月、子供2人をベビーホテルに預けたまま、22歳で失跡。87年の大韓航空機爆破事件で警察庁は91年、田口さんが実行犯の元北朝鮮工作員に日本語を教えた「李恩恵」だったと断定した。78年7月に北朝鮮に拉致された地村富貴恵さん(48)は帰国後、78年9月から約1年2カ月間、田口さんと一緒に北朝鮮の招待所で生活したと説明。北朝鮮は「田口さんは86年に交通事故で死亡した。李恩恵という日本人女性は存在しない」と発表した。

曽我さんの希望、実現を 杉浦官房副長官に地村夫妻

2004/06/05 The Sankei Shimbun
 拉致被害者の地村保志(49)さん、富貴恵さん(48)夫妻は5日、杉浦正健官房副長官と福井県小浜市役所で面会、曽我ひとみさん(45)の家族再会問題について「曽我さんが望む形で実現し、曽我さんとジェンキンスさんが日本で一緒に暮らせるよう、米国と交渉してほしい」と要望した。

 保志さんによると、杉浦氏は「できる限りのことをする。日米関係や米国の国内事情もあるのでちょっと時間がかかる」と答えたという。

子供たちがバッジ外し生活 地村さんの父が会見

2004/06/03 The Sankei Shimbun
 福井県小浜市の拉致被害者、地村保志さん(49)の父、保さん(77)は3日の記者会見で、帰国した3人の子供たちが北朝鮮のバッジを着けずに生活していることを明らかにした。

 保志さんは「最近は子供たちは(バッジを)意識していない」と話しているといい、保さんは「このまま北朝鮮のことを忘れてくれれば」と、子供たちの意識の変化に期待感を示した。

 子供たちは帰国直後はバッジを着けていたが、保志さんや妻、富貴恵さん(48)から指示されることもなく、自然と外すようになったという。

 また、保さんは2日夕に保志さん宅を訪れた際、長女恵未さん(22)が「いらっしゃい」と出迎えたことや、長男、保彦さん(20)と二男、清志さん(16)にデジタルカメラを渡すと、興味を示して何枚か撮影したことを披露。

 食事中に富貴恵さんから「おはし」や「お皿」などの単語を教わっており、子供たちは「最近は日本語をはっきりと発音するようになった」と満足そうに話した。

二男の記事で地村さんが新潮社に抗議文

2004/06/03 The Sankei Shimbun
 福井県小浜市の拉致被害者、地村保志さん(49)、富貴恵さん(48)夫妻は2日、同日に発売された新潮社発行の「週刊新潮(6月10日号)」に掲載されている「地村さんの二男(16)が喫煙していた」などとする記事について、「全くの事実無根」として同誌編集長あてに抗議文を送った。

 地村さん夫妻は抗議文の中で「純粋な未成年のイメージを故意的に濁らされた。何ら確証もなしに書かれている」などと批判。担当記者の事情説明と謝罪、記事の訂正を要求するとともに4日正午までに文書で回答することも求めている。

 この記事について保志さんは「子供たちは精神的ショックを受けており、謝罪と訂正を求めています。誤った報道で国民に広まった拉致被害者支援に影響を与えないか危ぐしています」とのコメントを出した。

曽我さん「今度は家族と別れたくない」

2004/06/01 The Sankei Shimbun
 拉致被害者の蓮池薫さん(46)は1日、新潟県柏崎市で記者会見し、同県佐渡市の曽我ひとみさん(45)が「北朝鮮には帰りたくない。今度家族に会ったら絶対に別れたくない」と話していたことを明らかにした。

 小泉純一郎首相の再訪朝後に連絡を取り合い、曽我さんは「(家族が日本に来るのが)多少長引いても一緒に住みたい」と話したという。

 曽我さんは、第三国で家族と再会する際は、一定期間その地で生活してでも(日本で暮らすよう)説得するなどとも話したという。

 蓮池さんは、曽我さんが北京での再会を望んでいないことについて「(北朝鮮の)近くは行きたくないというのは当然」「曽我さんの(家族への)説得がうまくいかなければ家族が別れても仕方がない、となるのを恐れている」などと話した。

 また、長女、重代さん(22)と長男、克也さん(19)は日朝両国の友好関係に役立つ人材になる意欲があるといい、進学については「地元か、東京へ行くか子どもの気持ち次第。具体的には半年、1年が目途になると思う」と語った。

 重代さんは福井県小浜市の地村保志さんの長女、恵未さん(22)と2、3回電話で話し、朝鮮語で「親せきがたくさんいてびっくりした」など、印象深かったことを語り合っていたという。

曽我さん再会場所、北京以外から選定 政府内で意思統一

2004/06/01 The Sankei Shimbun
 細田博之官房長官は1日午前、拉致被害者の曽我ひとみさんと家族との「第三国」での面会場所をめぐり杉浦正健官房副長官、中山恭子内閣官房参与らと首相官邸で対応を協議し、曽我さんの意向を尊重、北京以外の都市から候補地を選定し、北朝鮮側との調整を進めることを確認した。

 杉浦氏は5月30日に中山氏とともに曽我さんと面会後、「北京を否定しなかった」と説明したが、曽我さんは翌31日に「できれば北京以外で」とのコメントを発表。中山氏も「言外に北京以外を伝えようとしていた」と指摘していた。

 このため細田氏は杉浦、中山両氏や、面会に同席した外務省の斎木昭隆アジア大洋州局審議官から報告を受けて、曽我さんの真意に関して政府部内の意思統一を図った。

 協議後、中山氏は記者団に「北京以外も含めて検討することを確認した。(杉浦氏との)食い違いはない」と述べた。

 細田氏はこれに先立つ記者会見で「(再会の)場所、時期、期間を取りまとめて先方(北朝鮮側)に連絡したい。(夫の)ジェンキンスさんの意向を踏まえてまた返事があると思っている」と説明した。

 ただ候補地の結論を出すめどに関しては「十分に議論をしたうえで先方に伝えることになる。できるだけ早くしたい」と述べるにとどまった。

 川口順子外相は午前の記者会見で再会場所の選定について「いろいろな条件を満たすことが必要。それを絞っていく過程に若干、時間がかかるかもしれない」と述べた。

富貴恵さん、子供たちに拉致を説明

2004/05/31 The Sankei Shimbun
 拉致被害者の地村保志さん(48)、富貴恵さん(48)夫妻が31日、福井県小浜市役所で記者会見し、富貴恵さんは「(自分たちの拉致に関して)『アベック拉致事件があった』と言った。上の子2人は深刻な顔で、涙をためて聞いていた」と話し、拉致について子供たちと会話した時の様子を明らかにした。

 夫妻によると、27日の夕食後、富貴恵さんが子供たち3人に蓮池薫さん(46)らの拉致事件とともに自分たちが拉致被害者だと説明。富貴恵さんは「『本当かな』と半信半疑な様子」と3人の反応を明かした。

 保志さんは「僕らが帰国していなくなって、拉致という言葉が(北朝鮮で)よく出てくるので、何となく気にしだしたと思う。(両親が拉致被害者と)ちょっと疑いを持ったんじゃないか」と子供たちの認識を述べた。

 一方、自宅での子供たちとのやりとりについて、富貴恵さんは「(北朝鮮では)子供たちが自分で料理を作ったりして、おいしくなかったようですけど、『お母さんのおいしいね』と言ってくれました」とにこやかに語った。

「恵未」「保彦」「清志」 地村さん、子供の日本名を公表

2004/05/31 The Sankei Shimbun
 福井県小浜市の拉致被害者、地村保志さん(48)、富貴恵さん(48)夫妻は31日、市役所を訪れ、北朝鮮から帰国した子供3人の転入届を提出した。夫妻はその後、3人の日本名について、長女(22)は「恵未(えみ)」、長男(20)は「保彦(やすひこ)」、二男(16)は「清志(きよし)」と文書で明らかにした。

 同文書で夫妻は命名の理由を、長女は富貴恵さんの恵を取り、末永く恵まれるようにとの意味から、長男は祖父の保さんと富貴恵さんの実家の浜本家の屋号「彦宗」から、二男は富貴恵さんの父、清太郎さんと保志さんから、それぞれ1字ずつ取ったと説明している。

 夫妻は帰国後の2002年10月、市に婚姻届と子供の日本名での出生届を提出し、一家5人の戸籍は作成済み。市役所の窓口を訪れた夫妻は、職員に「こんにちは」と笑顔で話し掛けるなど、リラックスした様子で手続きを行った。

 書類について職員から届け出日の書き忘れを指摘される場面もあった。ほかに不備はなく受理され、3人は小浜市民として登録された。また、夫妻は5月中旬に市内で引っ越しをしたため、転居届も併せて出した。

 その後夫妻は村上利夫市長と面談。市長によると、保志さんは「子供が言葉を早く覚え、自然に学校で学びたいと思うようになり、友達ができるといい」などと話していたという。

地村さん一家支援で募金へ 福井県職員が庁内で呼び掛け

2004/05/31 The Sankei Shimbun
 福井県の西川一誠知事は31日の記者会見で、同県小浜市の拉致被害者、地村保志さん(48)一家の生活支援のため、近く県職員が募金活動を始めることを明らかにした。一般職員が中心となって、庁内で呼び掛けていくという。

 西川知事はまた、小浜市にある嶺南振興局で県職員として働く妻、富貴恵さん(48)について、引き続き雇用する考えを示した。子供たちの帰国後、県は「家族でゆっくり過ごす時間が必要」として、富貴恵さんに長期の休暇を与えている。

曽我さん、北京以外を希望 意向重視し再会場所調整へ

2004/05/31 中国新聞ニュース
 拉致被害者の曽我ひとみさんは(45)は三十一日、佐渡市支援室を通じ「できれば北京以外で再会したい」などとしたコメントを発表した。前日の杉浦正健官房副長官らとの面会で、曽我さんが北京での家族の再会に必ずしも難色を示さなかったと報じられたことを受けたもの。政府は曽我さんの意向を重視し、基本的に北京以外の都市を候補地として調整する方針だ。

 六月一日午前、細田博之官房長官が杉浦氏らと対応を協議する。政府は早期に北朝鮮側と折衝したい考えで、中国国内の他の都市やインドネシアなど東南アジアの国が検討対象に上っている。

 杉浦氏と中山参与は五月三十日、曽我さんと佐渡市役所真野支所で一時間以上面会した。杉浦氏はこの際、政府が検討している「第三国」の候補地を複数、曽我さんに提示。面会後、記者団に「意向は十分に聞いた。信頼関係ができたと信じている」と強調。「曽我さんは北京に難色を示しているのか」との報道陣の問いには「そんなことはない。かえって片言隻句が間違って伝わり、苦しんでいるようだ」と答えた。

 曽我さんのコメント発表に対し、杉浦氏は三十一日、新潟県柏崎市で記者団に「(面会で)私には北京は絶対駄目だとはおっしゃらなかった。どういうつもりでコメントを出されたのかよく聞いてみたい」と述べるとともに「曽我さんの意向を無視してやることはない」と強調した。

 細田氏は三十一日午後の記者会見で「(コメントが)曽我さんの真意であればその線に沿って(の調整)となる。重い発言だ」と述べたが、同時に「(北京以外の希望が)『絶対』なのかにもよる」とし、曽我さんの意向を確認する考えも示した。一方、中山内閣官房参与は柏崎市内で記者団に「曽我さんは言外に北京以外と伝えようとしていた」と指摘した。

「政府信じている」と一任 曽我さんに候補地複数提示

2004/05/30 中国新聞ニュース
 杉浦正健官房副長官は三十日午後、新潟県佐渡市で拉致被害者の曽我ひとみさん(45)と面会し、北朝鮮にいる夫で元米兵のジェンキンスさん(64)ら家族との再会場所について、政府で検討している「第三国」の複数の候補地を提示した。曽我さんは「政府が責任を持ってやっていただけると信じている」と述べ、政府に調整を任せる考えを示した。

 面会後、杉浦氏は記者団に「政府方針に対して理解していただいた。候補地の絞り込みはしていない」と述べ、今後曽我さんと連絡を取りながら北朝鮮側と折衝する考えを表明した。面会には中山恭子内閣官房参与、斎木昭隆外務省アジア大洋州局審議官らが同席した。

 曽我さんは「再会は一家四人が安心して話せるようにしてほしい。最後は日本で家族四人で暮らしたい」との希望を示した。杉浦氏によると、曽我さんは北京案に難色を示したとされることについて「感想を言ったのが伝わり迷惑をかけた」と述べ、必ずしも北京を否定しない考えを示した。

 杉浦氏は「曽我さん一家の早急な再会と家族の来日を目指す」との政府方針を伝達。政府の検討状況やジェンキンスさんの訴追に関する米国との法的関係などを説明し、「政府として責任を持って一家再会、帰国に向けて全力を挙げる」と強調した。政府は米国と犯罪人引き渡し条約を結んでいない国をリストアップしている。

 杉浦氏らは面会に先立ち、曽我さんが拉致された現場なども視察した。三十一日には、新潟県柏崎市で拉致被害者の蓮池薫さんとも面会し、帰国した子どもたちの支援策をめぐり要望を聞く。

「彼は現在も脱走兵」 ジェンキンス氏処遇で米国務長官

2004/05/29 The Sankei Shimbun
 
 パウエル米国務長官は28日、ワシントンで外国人記者団と会見し、北朝鮮による拉致被害者、曽我ひとみさんの夫ジェンキンス氏の処遇について「彼は現在も脱走兵だ」と述べ、来日すれば訴追する米政府の立場に変更がないと指摘した。

 長官は、曽我さんがジェンキンス氏、2人の娘とともに「別の場所で会えるように調整が進んでいると理解している」と述べ、中国など第三国での再会に米政府は反対しないとの立場を表明した。

 小泉純一郎首相の訪朝に関しては「北朝鮮の検証可能で後戻りできない完全核放棄を目指す6カ国協議への強い関与を日本が続けることを鮮明にし、満足している」と語った。(共同)

韓国語サイトにも関心 「あとは時間の問題」蓮池透さん

2004/05/29 The Sankei Shimbun
 拉致被害者の蓮池薫さん(46)の兄、透さん(49)が29日、新潟県柏崎市で記者会見し、蓮池さんの長女、重代さん(22)、長男、克也さん(19)について「順調な経過をたどっている。思考に柔軟性もあり、あとは時間の問題。日本で生活基盤を築く、と自発的に言ってくれると思う」と期待感を示した。

 透さんによると、帰国直後の2人に「ソウルに行きたいか」と尋ねた際は拒絶反応を示したが、韓国のテレビドラマ「冬のソナタ」を見てからは「行ってみたい」と興味を示すようになった。インターネットを覚え、韓国語のサイトで観光案内などを見ているという。

 重代さんの英語の発音は美しく、透さんが「(英語、朝鮮語、日本語の)3カ国語が話せれば日本で十分やっていける」話したが、重代さんは「ほかの技術は必要ないのか」と不思議そうに聞き返した。透さんによると、語学はできて当たり前と思っていたらしい。

 透さんは克也さんとサッカーをして汗を流したという。

 また安否未確認の拉致被害者10人の家族からの電話に応じると蓮池さんが表明したことについて、透さんは「何人かの情報はあるようだが『全体を網羅するような情報は持っていない。過大な期待をされても困る』と言っていた」と明らかにした。

地村さんの子ども教育支援、講師派遣・TV授業検討

2004/05/26 読売新聞 Yomiuri On-Line

 福井県小浜市の拉致被害者、地村保志さん(48)と富貴恵さん(48)夫妻の子ども3人に対する教育面での支援が動き出した。福井県立大は26日、長男(20)のため、「帰国家族教育等支援委員会」を設置、講師派遣やテレビ電話を使った授業などの態勢づくりの検討を始めた。福井県も小浜市内の出先機関の一室を3人の日本語習得のための「学習室」として整備する。

 保志さんは長男を「大学に編入させたい」としているが、長男が北朝鮮で学んでいた工学関係の専攻を生かせる福井大学や福井工業大学に通うには電車で2時間以上かかる。このため、小浜キャンパスがある県立大が、テレビ電話を利用した講義や同キャンパスへの講師派遣を検討。家族の希望によっては両大に協力を要請する。

 県立大には、日本語のできない留学生を学生が手助けするチューター制度もあり、この利用も考える。祖田修・県立大学長は、「同年代の学生との交流で日本になじんでほしい」と言う。

 一方、福井県は子どもたちの帰国により、小浜市内の出先である県嶺南振興局に設置した帰国家族自立支援室の隣室を近く3人の日本語学習用に整備する。教材などをそろえ、小浜市が日本語を教える担当者を委嘱する。

30日に曽我さんの希望確認 政府、家族との再会場所選定

2004/05/26 The Sankei Shimbun
 政府は26日、北朝鮮による拉致被害者曽我ひとみさんと家族の「第三国」での再会に向け、曽我さんの希望を直接確認するため、杉浦正健官房副長官と中山恭子内閣官房参与を30日に新潟県佐渡市へ派遣する日程で調整に入った。

 夫の元米兵ジェンキンスさんら家族3人との再会場所や時期、期間について複数の案を示し、曽我さんに選んでもらった上で、北朝鮮側と早急に協議する方針だ。

 これに関連して中山参与は26日夕、広島県尾道市での講演で、曽我さんが「第三国」について米国と犯罪人引き渡し条約を結んでいないことを挙げるとともに、(1)北京は北朝鮮と近すぎて怖い(2)家族は英語が話せるのでできれば英語が使える国が望ましい(3)北朝鮮から直接電話やファクスが入る面会場所は困る−と伝えてきていることを明らかにした。

 政府は、米国と犯罪人引き渡し条約を結んでいない国をリストアップするとともに、日朝双方からの交通の便なども考慮し中国の複数の都市などを候補地に検討しているが、「あくまで曽我さんの意向を最優先する」(政府筋)としている。

 細田博之官房長官は26日午後の記者会見で、「(ジェンキンス氏の米国への)引き渡し問題で各国との(法的な)関係を調べたり、交通の便、北朝鮮との国交などを調べ、どこならいいかという案をつくっている」と説明。再会時期については「できるだけ早く決めたい」と述べた。

 杉浦氏らは新潟県柏崎市の蓮池薫さんとも面会し、帰国した子どもたちの支援策で要望を聞く予定。福井県小浜市の地村保志さんとは別途面会の日程を調整する。

曽我さん「北朝鮮には絶対帰らない」

2004/05/26 The Sankei Shimbun
 新潟県佐渡市の拉致被害者、曽我ひとみさん(45)は26日、激励に訪れた「新潟救う会」の小島晴則会長らと佐渡市役所真野支所で面会し「北朝鮮には絶対帰らない。多少時間がかかっても、最終的には佐渡で家族4人で生活したい」と話した。

 小島会長によると、曽我さんは第3国での家族との面会に関し「日本政府には出国から帰国まで(自分と家族の)自由な発言と身の安全を保証してほしい」と要望。また場所について「北朝鮮と深いつながりのある場所での再会は心配だ」と話したという。

 さらに「場所だけ決められて、説得などすべてを1人に任されても…。(日本政府に)自分の希望をしっかり聞いてほしい」と訴えたという。救う会は、曽我さんの要望をまとめた直筆の手紙を、28日にも新潟県の平山征夫知事に届ける予定。

 また曽我さんが日本へ帰国する直前、夫で元米兵のジェンキンスさん(64)に「日本で生活できるといいね」と話すと、ジェンキンスさんは「そうだな」と言いながらも不安を示したという。

 曽我さんは小島会長に「米国との問題を日本政府が保証してくれなければ、夫の考えは変わらないだろう」と不安を口にした。

曽我さん再会問題「政府が責任持って」と蓮池さん

2004/05/25 The Sankei Shimbun
 拉致被害者の蓮池薫さんは25日、記者会見で曽我ひとみさんと家族との再会問題について触れ「話し合いは政府の責任の下で行い、4人が日本で住めるようお願いしたい」と訴えた。

 蓮池さんは曽我さんと電話で話したことを明らかにした上で「政府が曽我さん一人に託す形にしてほしくない。(本人たちの)話し合いが日本に来られなくなることで終わり『仕方がない』ということになるのをわれわれは大変恐れている」と述べた。

 蓮池さんは「ジェンキンスさんが心配している米国への引き渡し、生活面、言語の問題の保証をするのは政府」と指摘。話し合いが長期になる場合、場所は家族全員が話せる英語が公用語の国がいいと考えているという。

               ◇

 拉致被害者の蓮池薫さんが25日行った記者会見の発言要旨は次の通り。

 【安否不明者】

 横田めぐみさんと増元るみ子さんの情報は政府の人に接触するたびに話している。家族には大きな線では話している。会見での公表は今後の交渉に影響が出るかもしれないので控えたい。横田さんは1990年代前半、増元さんは70年代の情報で最近の情報ではない。

 【隔離生活】

 90年代後半から隔離され、ほかの人と遮断された状況で生活した。日本で拉致問題が97年ごろから高まったと聞いている。その時期と一致するのではないか。(隠そうとしたのではないかとの質問に)ということでしょうね。首相訪朝のちょっと前から社会生活が始まった。

 【曽我さん】

 今日、曽我ひとみさんと電話で話した。家族との再会問題を曽我さん1人に託すような形にしてほしくない。政府が責任を持って家族4人が日本で住めるようにするべきだ。夫のジェンキンスさんが心配している米国への引き渡しや生活面、言語の問題を保証するのは政府の役目だ。

 【子供の様子】

 帰ってきてすぐに日本人として行動するのにちょっと抵抗を感じていた。第2外国語が日本語で、あいさつぐらいできるはずなのに「知らない」と言っていた。しかし、祖母がズボンをプレゼントした時「(おばあさんは)日本語しか分からないから日本語で(お礼を)言えない?」と言うと「おばあさん、ありがとう」と日本語を使った。祖母は喜んでいた。

 「日本ではコネとか社会的背景ではなくて、実力があって機会をつかめば成功する」と子供たちに話した。下の子は学業の中断を悩んでいたが、日本で能力を備えたいと思い始めているようだ。

 【初めての外出】

 24日は家族4人で買い物に行った。ショッピングセンターで運動靴を買う時に「もっと小さいのはないの」と尋ねるなど結構慣れたように振る舞っていた。

 夜は冷めんを作って食べたが、母の味が懐かしかったんでしょう。2人とも一つ食べておかわりした。わたしももう一つ食べようとしたら無くなっていた。

北京での曽我さん家族再会に異論なし 米政府高官

2004/05/25 The Sankei Shimbun
 米政府高官は24日、曽我ひとみさんと夫ジェンキンスさんら家族の再会場所として北朝鮮側が提起した北京について「特段問題になるようなことはない」と述べ、中国での再会に米政府として異論はないとの認識を示した。共同通信などに語った。

 中国での再会は、脱走罪などで訴追される恐れがあるジェンキンスさんの身柄引き渡しなど法的問題が発生しないとの見解を示した発言。ただ北京については、平壌と近すぎることなどから、日本政府内から慎重論も出ている。

 バウチャー国務省報道官は同日の会見で、再会問題に関して「日本政府と接触している」と指摘、強い関心を抱いていることを示唆した。(共同)

曽我さん、週内にも再会へ ジュネーブで調整

2004/05/24 The Sankei Shimbun
 政府は二十四日、拉致被害者である曽我ひとみさん(四五)と、その夫で元米兵のジェンキンス氏(六四)ら家族が早ければ今週中にもスイス・ジュネーブで再会できるよう北朝鮮など関係国との日程調整に入った。超党派の国会議員でつくる拉致議連関係者が明らかにした。

 二十二日の日朝首脳会談を受けて、拉致被害者五人の家族のうち、地村保志さん夫妻と蓮池薫さん夫妻の子供五人が同夜、日本帰国を果たしたが、米軍から脱走したとされるジェンキンス氏は米国に身柄を引き渡されて訴追されることを恐れて日本行きを望まなかったため、同氏と長女(二〇)、二女(一八)の日本訪問は実現しなかった。

 ただ、日朝首脳会談直後の小泉純一郎首相と同氏の話し合いの結果、日本でも北朝鮮でもない第三国での家族再会を図ることでは一致。日本で連絡を受けた曽我さんも了承していた。

 当初、再会場所としては北京が想定されていたが、与党内では北朝鮮と近い関係にある中国では、「曽我さんが落ち着いた雰囲気になることができない」と懸念する声が上がっていた。このため、同じ中国内でも開放的な雰囲気のある香港のほか、米国での訴追を恐れる同氏の心境に配慮して、永世中立国のスイスが候補地に挙がった。与党幹部は「しばらく家族四人で(スイスで)暮らしてもらってもいい」としている。

 これに関連、細田博之官房長官は二十四日の記者会見で「(同氏が訴追を免除されるよう)今後も米国とよく話をしたい」としながらも、現時点での米国側の意向に関しては「まだ(米国から訴追免除するという)十分確証を得るには至っていない」と述べた。

子供に「拉致の事実話した」蓮池薫さん

2004/05/24 The Sankei Shimbun
 拉致被害者の蓮池薫さんは24日の記者会見で、自分たちが北朝鮮に拉致された事実を子供たちに話したことを明らかにした。薫さんによると、拉致の話を聞いた子供2人は衝撃を受けた様子だったという。

「再会が生きる目的」 曽我さん平成16(2004)年5月24日[月] The Sankei Shimbun

 北朝鮮に残された家族との再会が果たせず、一人新潟県佐渡市の自宅に戻った拉致被害者の曽我ひとみさん(四五)は、恩師がかけた電話に、「家族との再会が生きる目的」と胸の内を明かした。

 二十三日夜、高校時代の恩師、本間和城さん(五九)は帰郷したばかりの曽我さんを励まそうと電話した。「残念だったな」。そう切り出した本間さんに、受話器の向こうの曽我さんは「残念でした」と素直に答えた。

 一年七カ月間待ち望み、首脳会談前には「期待で仕事が手につかないほど」と希望を膨らませていた。願いはかなわず、大きな失望に変わった。しかし、「(第三国で)家族と会うのを楽しみに生活していく。生きる目的です」と話し、気持ちを切り替えようと努めている様子だった。

 少女時代から、けなげだった曽我さんを知る本間さんは「彼女は悲しみを人に見せない人。本当は悲しいんだと思う」と話した。

 高校時代からの親友たちも電話で相談し、「近いうちに食事に誘おう」と計画している。

首相が早急な再会指示 北京以外も検討

2004/05/23 The Sankei Shimbun
 小泉純一郎首相は22日、拉致被害者の曽我ひとみさんが夫ジェンキンスさんと早急に再会できるよう日程や場所の調整に入るよう外務省に指示した。

 これに関連して細田博之官房長官は同日夜、再会場所について「北京とは特定していない」と記者団に述べ、北京以外も対象に検討する意向を示した。

 自民党の安倍晋三幹事長も同夜、都内のホテルで小泉首相と会い「北京で会うのは妥当ではない。北朝鮮から離れた場所で自由な雰囲気の中でゆっくり話し合いをできる場所を見つけるべきだ」と指摘。首相は「ジェンキンスさんが北京とおっしゃっていた」と答えた。

 曽我さん本人は、小泉首相や安倍氏ら政府与党関係者と会った際に「北京で短時間だけ会うと、情にほだされて家族3人に説得されてしまう可能性がある」と北京での再会に懸念を示したという。

長女「重代」、長男「克也」 蓮池さんが子供の日本名公表

2004/05/23 The Sankei Shimbun
 拉致被害者の蓮池薫さん(46)が23日夜、家族とともに帰郷した新潟県柏崎市で記者会見し「北朝鮮で子供たちは日本人と聞かされたようだ。拉致事件と関係があるという話も知っていた」と明らかにした。その上で「わたしの口からはまだ話す状況ではない」と述べ、来日で周囲の環境が一変した子供たちを気遣った。

 蓮池さんは長女の名前を「重代」、長男は「克也」と明かし、それぞれの命名の意味合いを「重みのある人間になってほしい」「耐えて勝ち抜く、粘り強い人間になってほしい」と説明した。

 長女の名前は蓮池さんの母方の祖父、重栄さんから1字を取った。柏崎市に向かうバスの中で名前を知らされた子供たちは「あ、そう」と応じたという。蓮池さんは自らの「薫」という名前をひらがなで紙に書き、子供に発音させて伝えた。

 来日について子供たちは、北朝鮮側から1週間ほど前に「親がいる日本に行け。帰ってきたければ戻っていい」という言い方で告げられたという。

 蓮池さんは父、秀量さん(76)、妻、祐木子さん(48)の父、奥土一男さん(76)とともに会見。晴れやかな表情は見せなかったが、故郷に子供を連れ帰ったことで「市民の皆さんに心からお礼申し上げたい」と感謝した。

≪蓮池さん家族会見要旨≫

 新潟県柏崎市で23日、記者会見した蓮池薫さん、父秀量さん、妻祐木子さんの父奥土一男さんの発言要旨は次の通り。

 【薫さん】

 生まれたときに娘は「重代」、息子は「克也」と名付けた。娘は重みのある人になってほしい、息子は耐え忍んで勝ち抜く粘り強い人になってほしいとの願いからだ。拉致された日本人の家族であることが分かったときの試練も想像した。先ほど2人に伝えたが「そう」と答えただけ。

 子供は1週間ぐらい前に「親のいる日本に行け。帰ってきたければ帰ってきていい」と言われた。突然いなくなった感じだったらしく、友人らには大変すまないことをしたと気にしていた。

 私からは話してないが、向こうで自分が日本人だということは聞かされたと言っていた。拉致事件と関係があることも大体知っているようだ。

 増元るみ子さんと横田めぐみさんとは同じ場所に住んでいたことがある。具体的なことはこれまで家族に話せなかった。

 (子供と対面して)親がいないつらさ、寂しさがあったんだろうと思い何とも言えない気持ちになった。曽我ひとみさんが家族と対面できなかったことが胸を突いた。

 【秀量さん】

 孫に言葉が通じず、表情などから対応するしかない。1日も早く日本語を覚えてほしい。

 【奥土さん】

 ホテルで孫に会ったとき、すぐに分かった。元気そうだった。「孫に会いたい」と言っていた妻がもう少し生きていられれば良かった。

拉致問題全体の解決を要請へ 拉致議連

2004/05/18 The Sankei Shimbun
 超党派の拉致救出議員連盟(平沼赳夫会長)の幹部が18日午前、都内のホテルで会合を開き、日朝首脳会談を22日に控え、日本に戻った拉致被害者5人の家族の帰国だけでなく拉致問題全体の解決を小泉純一郎首相に求めることを決めた。平沼氏が19日、首相を官邸に訪れ要請する。

 会合では、安否不明の10人の被害者に関する日朝合同調査委員会の設置構想は問題の幕引きにつながるとの懸念のほか、特定船舶入港禁止法案の成立に向けた動きなど北朝鮮への圧力が首相訪朝で弱まらないようにすべきだとの意見が出た。会合に招かれた元北朝鮮工作員の安明進(アン・ミョンジン)氏は「合同調査委員会ができても拉致問題はうやむやになるだけだ」と述べた。

「米に配慮求める」安倍氏 曽我さん夫

2004/05/18 The Sankei Shimbun
 自民党の安倍晋三幹事長は18日午前の記者会見で、曽我ひとみさんの夫で元米兵のジェンキンス氏が日本に来た場合の訴追免除に国防総省が消極的とした米紙ロサンゼルス・タイムズ(電子版)報道に関連し「米国に対して特別な配慮を求めていかなくてはいけない」と述べた。

 同時に「国防総省はもともとそうした見解だ」と指摘。「米軍はイラク占領行政の混乱も抱えている」と述べ、イラクの治安悪化やイラク人虐待事件で米兵の規律順守が従来以上に重要になっている、との見方を示した。

「拉致の疑い」は400人 調査会が真相究明要請

2004/05/16 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致問題を調査している「特定失踪(しっそう)者問題調査会」(荒木和博代表)が「拉致の疑いを否定できない」としている行方不明者は16日現在、全国で約400人に上る。2002年9月の日朝首脳会談後、調査の申し出が殺到した。

 調査会は、うち約200人の氏名や顔写真などを公開、18人について「拉致の疑い濃厚」として重点的に調査しているが、一部には、その後生存が確認されたり、警察が国内で死亡したと発表したケースもある。

 22日の首相再訪朝を前に調査会は「政府が拉致被害者と認定した15人だけでなく、拉致の疑いが濃いケースも被害者と認定し、公式ルートで北朝鮮に問い合わせるべきだ」としている。

 02年の首脳会談で金正日総書記が日本人拉致を認めて以来、拉致被害者家族会を支援している「救う会」には、行方不明者の家族らから「北朝鮮による拉致ではないか」という問い合わせが相次いだ。救う会は独立した調査機関として調査会を設立、北朝鮮の元工作員らから情報収集するなど調査を始めた。

 調査会は今年1月、18人のうち1968−91年に失跡した13人について国外移送目的略取容疑で各地の警察に告発状を一斉に提出、一部が受理された。

 18人のほかに、警視庁が85年に摘発したスパイ事件「西新井事件」で北朝鮮工作員が成り済ましていたとされる北海道出身の小住健蔵さん(33年生まれ)と、78年に消息を絶った神戸市の元ラーメン店店員、田中実さん=当時(28)=の2人についても調査会は拉致の疑いが極めて強いとみている。

 田中さんのケースは、救う会の関連団体が02年10月、国外移送目的誘拐容疑でラーメン店経営者の告発状を兵庫県警に提出した。2人とも政府は拉致認定をしていないが、警察当局は慎重に捜査を進めている。

 18人のうち、警察が国内で死亡と発表したのは約20年前に行方不明になった甲府市の山本美保さん=当時(20)。山梨県警は「自殺の可能性も含め事件、事故の両面で捜査している」としたが、調査会はさらに徹底した捜査を求めている。

 荒木代表は「不明者家族らからの問い合わせは現在も続いている。その中で拉致が否定できないケースを慎重にリストに加えている」と話している。

首相訪朝時、ヘギョンさんの来日を要請へ

2004/05/15 読売新聞 Yomiuri On-LIne
 政府は、小泉首相が22日に北朝鮮を訪問する際、拉致被害者5人の家族8人の帰国・来日と合わせて、拉致被害者の横田めぐみさん(当時13歳)の娘、キム・ヘギョンさん(16)の日本訪問を北朝鮮側に求めることを検討している。

 政府筋が15日、明らかにした。また、将来的には、ヘギョンさんや祖父の横田滋さんら家族が北朝鮮と日本の間を自由に往来できるようにする案も浮上している。

 首相は訪朝し、金正日総書記と会談する際、2002年10月に帰国した拉致被害者の家族8人の帰国を求めることにしている。その後、日本で本人の意思を確認したうえ、拉致被害者とともに日本に永住させたい考えだ。

 これに対し、ヘギョンさんは、生まれ育ちが北朝鮮であるだけでなく、現在も北朝鮮人の父親と生活しているとされるため、日本に永住することには慎重と見られ、政府内でもヘギョンさんに永住を求めることには消極的な意見がある。このため、祖父で拉致被害者家族連絡会代表の横田さんらと十分意見交換し、横田さんらの希望などを踏まえたうえ、来日を要請することを検討している。

 一方、被害者の曽我ひとみさん(44)の夫のチャールズ・ジェンキンスさん(64)は、米兵時代に北朝鮮に入り、「脱走兵」扱いとなっている。このため、来日すると、米国が身柄引き渡しを要求し、訴追する可能性があり、来日を希望しないのではないかとの見方もある。

 その場合、政府は、ヘギョンさんと同様、日朝間の自由往来を可能にする案を含めて検討している。 

元米兵の扱いで調整本格化 拉致家族全員帰国へ政府

2004/5/15 中国新聞ニュース
 政府は十五日、小泉純一郎首相の北朝鮮再訪問が決まったことを受け、拉致被害者家族八人全員の帰国確定に全力を挙げる方針で、曽我ひとみさんの夫で元米兵ジェンキンスさんの身柄の取り扱いについて、恩赦など「特別な配慮」をするよう米側と本格的な調整に入った。

 ジェンキンスさんに関しては、脱走罪で米側から訴追される可能性があることから、本人が出国に難色を示すことも予想されるためだ。首相としては、金正日総書記と首脳会談後、政府専用機で八人を連れて帰国したい意向で、その環境整備≠ェ必要と判断した。

 北朝鮮側は、日本が五月初めの日朝政府間協議で首相による事実上の「平壌出迎え」案を提示したのに対し、前向きに検討する姿勢を示したとされる。

 首相は家族の帰国問題で「進展があると判断しない限り、こういう(再訪朝の)決断はしない」と強調したが、政府、与党内には、米国がジェンキンスさんに恩赦などの措置を取らなければ「八人全員がそろって帰国するのは困難ではないか」(自民党筋)との見方も出ている。

 既に日本政府は非公式に米国に対しジェンキンスさんの身柄取り扱いに関し「善処」を求めているものの、米側の最終的な判断は明らかになっていない。

 四月末に自民党の安倍晋三幹事長が米国防総省でラムズフェルド国防長官と会談した際も「それなりの対応をお願いしたい」と要請。ただ、国防長官は問題を認識していると述べるにとどまった。

「訪朝、心からうれしい」  首相の訪朝に地村保志さん

2004/05/14 The Sankei Shimbun
 小泉首相の再訪朝決定を受け、北朝鮮による拉致被害者、地村保志さん(48)は14日、福井県小浜市役所で記者会見し「私たちは小泉首相にもう一度訪朝してほしいと希望していたので心からうれしく思う」と話した。

 保志さんは小浜市の支援室から、首相の再訪朝決定の連絡を受け、すぐに妻の富貴恵さん(48)に電話し、一緒に喜んだことを明らかにしたが、「大きな期待を持たずに結果を見ようと話し合った」と、慎重な姿勢も見せた。

 その上で保志さんは「(子供たちの帰国が)まだ決まったわけでないが、帰国したら落ち着ける環境をつくってやりたい」と子供を思いやった。

 また、再訪朝への反対意見が「家族会」などの中にあることには、「拉致問題全体を話し合うための訪朝という細田官房長官の言葉を信じて、訪朝を支持してもらいたい」と強く訴えた。

首相が22日再訪朝 拉致被害者の家族帰国「進展あると判断」

2004/05/14 中国新聞ニュース
 小泉純一郎首相は十四日、北朝鮮の拉致、核、ミサイル問題の包括的解決による早期の日朝国交正常化を目指し、二十二日に日帰りで平壌を訪問、金正日総書記と再会談することを表明した。首相の訪朝は二〇〇二年九月以来、二回目。首相は拉致被害者家族の帰国問題について、官邸で記者団に「進展があると判断しない限り、こういう決断はしない」と実現への強い自信を強調。「日朝平壌宣言にのっとり拉致、核問題を包括的に議論したい。正常化交渉の停滞状況を打開する必要がある」として、包括的解決に道筋を付け、正常化交渉を再開させる意向を示した。

 また米国、韓国など関係国にも訪朝を伝達したと説明。訪朝までに「会談に備え(事務レベルで)やるべきことはある」と指摘し、近く外務省の田中均外務審議官らが北朝鮮側と詰めの協議を行うことを明らかにした。

 これに先立ち、細田博之官房長官は記者会見で、再訪朝を正式発表。「平壌宣言の履行を確認し日朝間の信頼関係を回復するのが目的だ。首相は北東アジアの平和と安定に資する形で正常化を実現したいと考えている」と述べた。

 日本側は今月初めの日朝協議で、首相による拉致被害者家族の「平壌出迎え」案を提示しており、家族八人全員を政府専用機に同乗させてそのまま帰国させることができるかが焦点。首相は、与党などに家族帰国で拉致問題の「幕引き」を警戒する声があることを踏まえ、「死亡・不明」とされた被害者十人やほかの失踪(しっそう)者について「日朝合同委員会」の設置などを通じて真相解明を図りたい考えだ。

 また核開発、ミサイルなど安全保障上の課題に関しても、金総書記に前向きな対応を要求。拉致被害者家族が帰国すれば、北朝鮮への人道支援を検討することも伝える。首脳会談では正常化交渉の再開などを明記した文書を共同発表する方向だ。

 首相は十四日午前、竹内行夫外務事務次官らと協議。午後には政府与党連絡会議などを官邸で開き再訪朝を説明、与党側の了承を得た。

「あと一押し」と細田長官 拉致問題で福井県知事に

2004/05/12 The Sankei Shimbun
 細田博之官房長官は12日午後、首相官邸で福井県の西川一誠知事から拉致問題解決への要望を受け「いろんな手だてを尽くしている。あと一押しかなと思っている。地元も引き続き努力してほしい」と述べた。日朝協議の具体的な時期や、小泉純一郎首相の再訪朝には触れなかった。

 西川知事は「次回の日朝政府間協議で家族帰国が具体的なものとなることを願っている。(同県小浜市の)拉致被害者の地村保志さん夫妻は、1年半以上の焦りと不安の日々を送っている」と要望した。杉浦正健官房副長官、中山恭子内閣官房参与らにも同様の要望を行った。

首相再訪朝は「大歓迎」 蓮池薫さんの父親が会見

2004/05/11 The Sankei Shimbun
 拉致被害者の蓮池薫さん(46)の父、秀量さん(76)は11日、新潟県柏崎市で記者会見し、拉致問題で小泉純一郎首相が再び北朝鮮を訪れることについて「5人が帰国して以来、全くのこう着状態で、首相の再訪朝が必要。十数回手紙を出してお願いしてきた。決断が下ればありがたい。大歓迎だ」と述べた。

 支援団体の「救う会」などから首相再訪朝に反対する意見が出ている点には「安否が未確認者の家族は、幕引きになることを心配していると思う。最終的には首相を信じて任せるしかない」とした。

 秀量さんによると、蓮池さんは新居への引っ越しを控えた先月、秀量さんに「(子供が帰国後)3カ月か6カ月か分からないが、おれが言葉も思想も徹底的にたたき込む。何とかなる」と話した。秀量さんは「すべておまえに任せる」と答えたという。

首相訪朝を本格調整 家族帰国、出迎え案提示

2004/05/09 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による日本人拉致事件をめぐり、23日を軸に小泉純一郎首相が北朝鮮を訪問、北朝鮮に残っている蓮池薫さんら拉致被害者の家族を出迎える方向で調整が進められていることが8日、分かった。政府関係者が明らかにした。今週中にも日朝政府間協議を再開して調整を行う。これに関連、日朝関係筋は4月初めに山崎拓自民党前副総裁が中国・大連で北朝鮮高官と会談した後、山崎氏周辺でひそかに国交正常化交渉再開の段取りなどを盛り込んだ日朝合意文書案の作成が行われていたことを明らかにした。

 小泉首相の訪朝が実現すれば一昨年9月以来2回目となる。

 今月4、5両日に行われた政府間協議では、拉致被害者家族の帰国方法や国交正常化交渉について「突っ込んだ意見交換」(藪中三十二外務省アジア大洋州局長)が行われ、話し合いを継続することで一致した。北朝鮮側は「早期に次回協議を開きたい」との意向を伝達してきているとされ、12日から北京で開かれる北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の作業部会と並行して政府間協議が行われるものとみられる。

 政府は竜川での列車爆発事故を受けて国際機関を通じた追加支援を行うことも検討しており、首相訪朝が実現すれば、それも議題になる見通しだ。ただ、拉致事件をめぐっては北朝鮮側が被害者家族8人全員の帰国には難色を示していることに加え、北朝鮮側が「死亡」「行方不明」としている拉致被害者10人やその他の拉致の疑いのある人たちの問題も残されており、これらへの北朝鮮の対応は不透明だ。

 北朝鮮の核兵器・弾道ミサイル開発問題の解決の見通しが立たない中、首相が一昨年9月に続いて再度訪朝することには「日本外交に汚点を残す」(自民党幹部)との慎重論も強い。また、北朝鮮に「人道」を名目にした支援を実施することにも「拉致という犯罪行為をした犯人に身代金を渡すようなもの」(政府高官)との異論が出ており、首相訪朝決定までにはなお曲折も予想される。

家族帰国なら人道支援 政府、拉致問題で北朝鮮に伝達

2004/05/09 asahi.com
 日本政府が、北朝鮮による拉致被害者家族8人の帰国が確約されれば、人道支援を再開する方針を固め、5日まで北京で開かれた政府間交渉で北朝鮮側に伝達していたことが明らかになった。北朝鮮側はこの提案を基本的に評価し、検討を約束して帰国した。日本政府は北朝鮮の回答を受け次第、次回政府間交渉の日程を調整するが、今週にも開かれる見通しだ。政府は8人の帰国の方法など詰めの協議に入りたい考えだ。

 日本政府の対北朝鮮人道支援は、北朝鮮に対する国内世論の悪化などを背景に00年に決めたコメ50万トンの支援を最後に途絶えていた。しかし、4月下旬に北朝鮮の竜川(リョンチョン)駅で起きた列車爆発事故を受けて、医薬品など10万ドル(約1100万円)相当の医療物資を支援した。5日まで北京で開かれた日朝政府間交渉の冒頭、北朝鮮側はこの支援について「大変感謝している」と強い謝意を表明したという。

 02年に小泉首相と金正日(キム・ジョンイル)総書記が署名した日朝平壌宣言では、無償資金協力や円借款など日本からの本格的な経済協力は、国交正常化後に行うことになっている。政府はまた、被害者5人の帰国後、拉致問題の解決にあたっては「北朝鮮側からの代償要求には一切応じない」という基本方針を決めている。

 一方で政府は、最優先課題である被害者家族8人の帰国実現のためには、北朝鮮に対する「呼び水」も必要と判断。平壌宣言が「相互の信頼関係に基づき、日朝間の諸問題に誠意をもって取り組む」とうたわれていることからも、経済協力と切り離した人道支援であれば、国内世論の理解も得られると判断している。

 5日までの日朝政府間交渉では、日本側が「8人の帰国は人道問題だ」と早期解決を求めたのに対し、北朝鮮側は8人を帰国させる意思を示したうえで、北朝鮮の人道問題への配慮を求めたという。こうしたやりとりは小泉首相に報告され、首相は交渉にあたった外務省の田中均外務審議官と薮中三十二アジア大洋州局長に「引き続き政府間で協議を進めてほしい」と指示した。

 政府は当面、国連が今月中旬に北朝鮮への人道支援の中間報告を発表するのにあわせ、竜川駅事故の被害者への追加支援を行うことを検討している。さらに、8人の帰国が実現すれば、国連の要請に応える形で医薬品や食糧支援など人道支援を継続的に実施する方針だ。

 こうした人道支援について、政府高官は「本格的な経済協力は国交正常化後という日本政府の基本方針は変更しない」と強調している。

胡錦濤・中国国家主席「拉致問題解決近い」と言明

2004/05/08 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【北京=佐伯聡士】中国の胡錦濤国家主席は8日北京で、高村正彦・日中友好議員連盟会長(元外相)らと会談し、拉致問題について、「解決が近づきつつあるような印象をもっている」と言明した。

 胡主席は、根拠については明らかにしなかったが、4月、北京で行われた北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記との首脳会談などを踏まえた発言と見られる。

 高村会長が拉致問題に対する中国の理解と協力に感謝を表明したところ、胡主席は、「日本国民の感情はよく理解している。日朝両国は対話によって問題を解決してほしい」との立場を改めて表明した。

 日中関係筋によると、金総書記は、先の訪中の際に行われた中国側との会談で、日朝関係に関して言及していたとされている。

拉致家族の無条件帰国否定 北朝鮮の日朝交渉大使 2004/04/22 中国新聞ニュース
 【平壌22日共同=磐村和哉】北朝鮮の鄭泰和(チョン・テファ)日朝正常化交渉担当大使は二十二日、平壌の人民文化宮殿で共同通信などと会見、四月初めの山崎拓・自民党前副総裁らとの接触で拉致被害者家族八人を無条件で帰す立場を示したとされることについて「事実ではない」と否定。拉致被害者五人を「政府間の約束通り(北朝鮮に)戻す」よう要求し「これ以外に解決方法はない」と言明した。ただ、家族の帰国問題は今後、日本政府と協議する意向を示し、協議再開時期は「いつとは特定できない。拉致問題だけの協議なら応じない」と述べた。

 鄭大使が日本マスコミの取材に応じたのは二〇〇二年十月末にクアラルンプールで行われた日朝国交正常化交渉以来。

 日朝間の懸案の拉致問題で原則的立場をあらためて示し、山崎氏との接触後に日本で広まった「柔軟姿勢」との感触を打ち消す一方、今後は日本政府の求める政府間協議で拉致問題を含めて交渉する用意があることを示す狙いがあるとみられる。

 鄭大使は「拉致問題も(日朝間の)数多い懸案の一つ。それなりの重みはある」としたが、日本の植民地支配を清算する必要性も強調。「日朝平壌宣言の履行問題を討議しようというのなら反対しない」と話し、日朝協議を再開する用意のあることを強調したが、四月中の再開説は「うそだ」と述べた。

 山崎氏との接触について「日本側からの申し入れだった」とし「日朝関係全般について深い議論をした。今後の関係改善に肯定的に作用すると信じる」と評価したが、具体的なやりとりについては「話す時期ではない」と言及を避けた。

 さらに、日本の改正外為法成立や特定船舶入港禁止法案の国会審議、有事関連法整備などに対し「日朝平壌宣言に日本が体系的、なし崩し的に違反している」と非難。「圧力に屈せず、制裁には強硬に対応する。対応の範囲には限界はない」と警告したが、具体的にどのような対応措置を検討しているかは明言しなかった。

後任は衛藤氏 拉致議連事務局長 2004年04月20日 The Sankei Shimbun
 超党派の拉致救出議員連盟(会長・平沼赳夫前経済産業相)は、事務局長を辞任した平沢勝栄氏の後任に自民党の衛藤晟一氏を内定した。同議連幹部が20日明らかにした。

 平沢氏は議連の意向を聞かずに自民党の山崎拓前副総裁とともに中国で北朝鮮側と会談したことで批判を受け、今月7日の議連総会で辞表が受理された。衛藤氏は現在、衆院厚生労働委員長を務めている。

北朝鮮高官との協議、首相が山崎氏から報告受ける2004/04/07 読売新聞 Yomiuri On-Line
 小泉首相は7日夜、都内のホテルで山崎拓・前自民党副総裁と会い、日本人拉致問題などをめぐって中国・大連で行われた山崎氏と北朝鮮高官との協議について報告を受けた。公明党の冬柴幹事長と旧保守新党の幹事長だった二階俊博元運輸相も同席した。

 山崎氏は北朝鮮との協議について、<1>拉致被害者の家族8人の帰国・来日問題や核開発問題が議題となった<2>日朝政府間の実務者協議の早期再開を求めたのに対し、北朝鮮側も前向きの姿勢を示した――などを報告した。

 会談で、山崎氏は「首相在任中に核、ミサイル、拉致などの懸案が解決して国交正常化が実現することが望ましい。平壌宣言が実現すればいい」と語った。

 これに先立ち、山崎氏は7日の自民党山崎派役員会で、「北朝鮮に政府間交渉を再開するよう求めた。必ず成果が上がると確信している。(2元外交と批判されないよう)交渉では慎重に言葉を選んだから大丈夫だ。政府にマイナスになるようなことは何も言っていない」と説明した。

 山崎氏は今月1―2日の両日、大連市内のホテルで、平沢勝栄・自民党衆院議員を交え、北朝鮮の鄭泰和(チョン・テファ)・日朝交渉担当大使、宋日昊(ソン・イルホ)外務省副局長と協議した。山崎氏は2日の協議終了後、首相に電話で概要を伝えている。

拉致議連:北朝鮮と接触の平沢議員を批判 総会で採択 毎日新聞 2004年4月7日Mainichi INTERACTIVE
 超党派の国会議員でつくる拉致議連(会長・平沼赳夫前経済産業相)は7日、国会内で総会を開き、自民党の山崎拓前副総裁に同行して中国・大連で北朝鮮政府高官と会談した平沢勝栄衆院議員を批判する声明を採択した。同時に、北朝鮮に対する経済制裁発動と衆参両院に拉致問題特別委員会の早期設置を求めることも決議し、今後、政府への働きかけを強めることで一致した。

 平沢氏については、昨年末に同氏が北京で北朝鮮側と接触して拉致被害者らが動揺したことから、議連が「政府間交渉の一元化」を決議していた。この日の声明では「非政府間での接触は混乱と不信をもたらす。自らの功名のために拉致問題を利用する背信的行為と判断せざるを得ない」などと厳しく指摘、平沢氏の辞表を受理することを決めた。

 総会に出席した外務省の斎木昭隆アジア大洋州局審議官は、山崎氏らの訪中に外務省が関与していないことを強調、「願わくは(政府間交渉に)マイナスの影響が出ないように祈りたい」と述べた。【中澤雄大】

政府間で拉致解決目指す 家族会に外務副大臣説明 2004年04月06日 The Sankei Shimbun
 外務省の逢沢一郎副大臣は5日夜、東京都内で拉致被害者家族会の横田滋代表や蓮池透事務局長らと会い、自民党の山崎拓前副総裁、平沢勝栄衆院議員と北朝鮮高官の会談などについて意見交換した。関係者によると、家族会側からは山崎氏らの行動に批判的な声が上がったという。

 これに対し逢沢氏は「2人が会談したからといって政府の方針が変わることはない」と述べ、政府間協議で拉致問題の解決に全力を挙げる考えを強調した。

 これに関連して外務省幹部は5日夜、山崎氏らから北朝鮮側とのやりとりについて説明を受ける考えを示した。

自民・平沢氏が辞表提出 拉致本部事務次官 2004年04月05日 The Sankei Shimbun
 自民党の平沢勝栄衆院議員は5日、北朝鮮高官と会談するため無断で訪中した責任を取るとして、党の「北朝鮮による拉致問題対策本部」事務次長の辞表を安倍晋三幹事長に提出した。安倍氏は辞表を預かった。

 今回の訪中をめぐって平沢氏は総務政務官を辞任したほか、超党派の拉致救出議員連盟事務局長の辞表も提出している

拉致問題:「首相に近い山崎さんだから会った」北朝鮮大使 2004年04月04日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 中国・大連で自民党の山崎拓前副総裁らと会談した北朝鮮の鄭泰和(チョンテファ)日朝国交正常化交渉担当大使が「小泉純一郎首相に近い山崎さんがお見えになるというから、来ました」と語っていたことが3日、分かった。日朝の政府間協議を先延ばしにしている北朝鮮がこの時期に日本側と接触したのは、小泉首相と盟友関係にある山崎氏を交渉相手にした方が有利と判断したためとみられる。

 山崎氏と鄭大使らとの会談は、1日から2日にかけて行われ、鄭大使は最初に山崎氏の立場に触れたという。山崎氏は2日に帰国した後、「日朝の実務者協議が近く開かれる」と今月中にも日朝協議が再開されるとの見通しを明らかにした。

 この見通しに関して、自民党の安倍晋三幹事長は3日、福井県武生市での講演で「もしそうなら、拉致問題解決へ大きく踏み出す交渉になってもらいたい」と期待感を語る一方、「北朝鮮はいろいろなルートを使って揺さぶってくるかもしれない。向こうの出方は分からない」と述べ、あくまで懐疑的な考えを示した。

 また、公明党の神崎武法代表は同日のさいたま市での記者会見で「日朝交渉が促進するなら評価してもいいが、あくまで交渉は政府間が中心。そのための環境づくりとしての動きはあり得ることだ」と語り、山崎氏らの行動は限定的であるべきだとけん制した。

「拉致問題解決が重要」 米、北のテロ支援国家指定解除に 2004年04月02日 The Sankei Shimbun
 米政府でテロ問題を担当するブラック大使は1日、米国が北朝鮮を「テロ支援国家」に指定していることに関連し「最も重要なのは日本からの人質の問題だ」と述べ、指定解除には日本人拉致事件解決に向けた進展が重要な要素になるとの考えをテロ対策の責任者として初めて示した。

 今月末に議会に提出される国務省の国際テロの年次報告にも拉致問題が何らかの形で明記される見通しが強まったが、「核凍結」の見返りに指定解除を求める北朝鮮の反発は必至。核問題をめぐる6カ国協議の行方にも影響を与えそうだ。

 ブラック大使は下院の国際テロ・不拡散・人権問題小委員会で証言。米政府高官は共同通信に対し、大使が言及した「人質」について日本からの拉致被害者のことを指すと言明した。

 高官は国際テロの年次報告への「拉致明記」については明言を避けたが、問題の重要性を米政府として強く認識していることを重ねて強調した。

 年次報告は、北朝鮮関連では「よど号」ハイジャック事件の容疑者保護や、弾道ミサイル技術のシリアやリビアへの拡散を明記してきたが、拉致事件には触れてこなかった。日本の拉致被害者の家族らは、先に来日したアーミテージ国務副長官に「拉致明記」を求めていた。

 米政府は、6カ国協議の場などで拉致事件解決の必要性を訴え、一部の政府当局者はこれまでも「拉致はテロ行為」との見解を示してきた。

 <テロ支援国家> 米国務省が毎年発表する国際テロ活動の年次報告書で指定。報告書は連邦法が上下両院に年1回提出するよう義務付けている。前年のテロ発生状況やテロ組織の動向を分析、対策などを示し、議会は政府の指定解除決定を拒否する権限を持つ。2002年の報告書では北朝鮮、イラン、シリア、リビア、スーダン、イラク、キューバの計7カ国を指定。イラクはフセイン政権崩壊で解除される見通し。指定により武器および関連品目の輸出禁止、経済援助禁止などの制裁が科される。(共同)

北朝鮮が誠意みせねば制裁も 拉致問題で中山参与 2004年03月23日 The Sankei Shimbun
 中山恭子内閣官房参与は23日午後、都内で外国の報道機関を対象に講演し、改正外為法に基づく北朝鮮への経済制裁について「北朝鮮が(拉致問題などで)誠意のない態度をとり続ければ、日本の中では厳しい措置を取るべきとの意見が強まるだろう」との見方を示した。

 拉致被害者家族の帰国問題に関しては「別離状態という異常な状況だけは解消して、すぐに日朝国交正常化交渉を再開しようと北朝鮮側にお願いしている」と指摘し、家族帰国が正常化交渉再開の前提条件との立場を強調。同時に「日朝交渉は大変難しい状況。関係国や国際機関の理解を得ることが大事」と訴えた。

「日本政府は弱腰」と批判 拉致問題で地村保さん 2004年03月23日 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者、地村保志さん(48)の父・保さん(77)が23日、福井県小浜市の自宅で記者会見し、「3月中に日朝協議が開かれて家族が帰るものと期待していた。北朝鮮から(開催の)返答がないのは、日本政府が弱腰だからだ」と話し、問題の進展がないことについて落胆の表情を見せた。

 保さんは「日本は北朝鮮に対し、(経済的圧力となる)改正外為法を使うなどの強い態度で臨み、船舶入港も拒否してほしい。圧力と要求の姿勢で、次回の6カ国協議までに1日も早く家族の帰国を実現させてほしい」と訴えた。

 福井と新潟の両県知事が22日に拉致問題解決を求めた共同アピールを日本政府に出したことについて「ありがたいこと」と感謝する姿勢を示した。

日朝、拉致問題で応酬 国連人権委員会 2004年03月17日 The Sankei Shimbun
 松宮勲外務政務官は16日、ジュネーブの国連欧州本部で開かれている国連人権委員会で演説し、北朝鮮による日本人拉致問題に言及し「拉致被害者が家族と離ればなれになっている非人道的状況の一刻も早い解消」と「残る被害者についての十分な真相究明」を強く北朝鮮に求めた。

 これに対し、人権委にオブザーバー参加している北朝鮮代表団は「日本政府の非難を断固拒否する」と反論。拉致問題は小泉純一郎首相と金正日総書記による日朝首脳会談で解決済みとの認識をあらためて表明した。

 さらに在ジュネーブ日本代表部の大島正太郎大使が「拉致被害者を北朝鮮に戻せなどという主張は不合理で非論理的」で受け入れられないと反論すると、北朝鮮側は再度抗弁権を行使するなど、拉致被害者の扱いをめぐり激しく応酬した。

 日本は今回の人権委で、昨年に引き続き北朝鮮非難決議案を欧州連合(EU)とともに提案する見通し。昨年は同決議が採択されている。(共同)

「拉致濃厚」 新たに2人 2004年03月10日 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致問題を調査している特定失踪(しっそう)者問題調査会は10日、公表した失跡者のうち昭和52年に行方不明となった京都市左京区の前上昌輝さん=失跡当時(20)=と27年に不明となった静岡県浜松市出身の河嶋功一さん=同(23)=について「北朝鮮による拉致の疑いが濃厚」と発表した。

 調査会が、拉致が疑われると判断したのは計18人。うち甲府市の山本美保さん=同(20)=は、山梨県警が国内での死亡を確認したと発表したが、調査会や山本さんの家族は「疑問がある」としている。調査会はまた、新たに失跡者7人の実名と写真も公表した。

 調査会によると、前上さんが北海道で消息を絶ったころ、北海道近海に北朝鮮の工作船とみられる不審船がいたという情報があり、河嶋さんは失跡前、友人に「北朝鮮に行く」と電話をしていたことが分かったという。

 新たに公表された失跡者7人は、35年から昨年9月にかけて行方不明になった男性7人。

「北で日本人20人以上見た」 韓国の拉致被害者が証言 2004年03月02日 The Sankei Shimbun
 北朝鮮に拉致、抑留され、脱出した韓国人3人が2日、衆院の北朝鮮拉致・核開発問題小委員会に参考人として出席、うち1人が「北朝鮮で20人以上の日本人を目撃した。拉致されたのではないか」と述べた。

 この証言をしたのは、1970年に乗っていた船が北朝鮮の警備船に拿捕(だほ)され、北朝鮮で30年暮らし、2000年に韓国へ脱出した李在根さん(65)。

 李さんによると、北朝鮮ではスパイを養成する政治学校に強制入学させられ、71−73年に3年連続、正月休暇で連れて行かれたホテルで、計約20人が日本語を話しながらビリヤードをしているのを見た。

 行動時間が自分たちと同じで、拉致され、政治学校に入学させられた日本人だと思ったという。

 72年に政治学校から車で移動する際にも、日本人のような男女5、6人を目撃したという。

韓国の拉致被害者が来日 国会に参考人出席へ 2004年03月01日 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致問題で、衆院外務委員会の北朝鮮拉致・核開発小委員会に参考人として出席し意見陳述する予定の李在根さん(65)ら韓国人拉致被害者3人が1日、成田空港に到着した。

 空港には民主党拉致問題対策本部長の鳩山由紀夫前代表らが出迎え、3人と握手。李さんは「北朝鮮で苦しんでいる拉致被害者のことを国会で話したい」と語った。

 滞在は7日まで。拉致被害者家族連絡会の横田滋代表らとの交流も予定している。

 李さんら3人は1967−73年、乗っていた漁船が北朝鮮に拿捕(だほ)され、約30年間抑留されていた。スパイ教育を受けたり、工場で働いたりしたという。98年以降に中国へ脱出した。

 2月上旬に訪韓した鳩山氏らが訪日を要請していた。

拉致:日朝協議再開、3月にも 2004年02月29日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 【北京・川上克己】6カ国協議に出席している日朝両国の代表団は28日、北京の釣魚台迎賓館で短時間会談し、日本人拉致問題に関する日朝協議の3月中の再開を目指すことで基本的に一致した。協議筋によると、日本代表の藪中三十二・外務省アジア大洋州局長が「拉致問題を一日も早く解決させるべきだ」と述べたのに対し、北朝鮮代表の金桂冠(キムゲグァン)外務次官は「外交ルートを通じ、できるだけ早く返事をする」と前向きに対応する考えを示した。

 日本政府関係者は28日、「北朝鮮はそう遠くない時期に回答すると思う」と説明した。日朝両国は3月中の協議再開を目指し、本格調整に入る見通しとなった。

 日本側の説明によると、藪中局長と金次官の折衝は28日午後、6カ国協議の全体会合の終了後に行われた。両氏とも立ったままで約10分間会談したという。

 日朝両国は6カ国協議初日の25日、約1時間20分にわたって拉致問題を中心に協議。28日までの協議開催中、連日接触し、核問題についても意見交換した。

日朝、拉致問題で溝埋まらず 交渉継続は一致 2004年02月25日 The Sankei Shimbun
 6カ国協議に参加している日本と北朝鮮両国は25日午後、北京市内の釣魚台迎賓館で、拉致問題などをめぐり1時間20分にわたって、政府間協議を行った。日本は(1)永住帰国した拉致被害者の家族8人の無条件帰国(2)安否不明者の真相究明とそのための合同調査委員会−をあらためて要求したが、北朝鮮が応じず溝は埋まらなかった。ただ、両国は協議を継続していくことを確認した。次回の日程は決まっていないが、日本としては6カ国協議中も接触を続け、3月中の開催にめどをつけたい考え。

 日朝両国からはともに6カ国協議で首席代表を務める外務省の薮中三十二アジア大洋州局長と金桂冠(キム・ゲグァン)外務次官らが出席した。

 日朝間の協議は、平壌で開かれた今月中旬以来。今回、北京でも話し合いに応じたことで、日本政府内には拉致被害者帰国に向け北朝鮮に軟化の兆しも出てきたとの見方もあるが、協議で北朝鮮側は「原則的立場を主張」(日本政府担当者)。日本の要求に対し「本国に伝達する」と述べるにとどまった。

 日本は拉致被害者家族の帰国などを求めた上で、拉致問題を解決して国交正常化すれば経済支援を行う用意があると伝えた。これに対し北朝鮮は前回同様に被害者5人を戻すことが先決で、家族の意思確認も必要、などと主張した。

 日朝協議に先立ち、薮中氏は25日の6カ国協議の基調演説で、拉致問題に言及した上で、核、ミサイル問題とともに「早期かつ包括的に解決されることを期待する」と表明した。(共同)

韓国人被害者3人を参考人招致 北朝鮮拉致問題 2004年02月24日 The Sankei Shimbun
 衆院外務委員会の北朝鮮拉致・核開発問題小委員会は24日、李在根さんら韓国人拉致被害者3人を3月2日午後に参考人招致することを内定した。

 李さんは1970年に、乗っていた漁船が北朝鮮の警備艇に拿捕(だほ)され、98年に中国へ脱出するまで抑留されていた。今月上旬に訪韓した民主党拉致問題対策本部長の鳩山由紀夫前代表らがソウル市内で会談し、訪日を要請。李さんは鳩山氏に対し、北朝鮮のホテルで71年末、72年末、73年末にそれぞれ日本人男性を目撃し、人数は延べ20人を超えるなどと証言したという。

 李さんらは3月1日に来日し5日間ほど滞在、日本人拉致被害者との交流も予定している。

 また民主党拉致問題対策本部は、同じくソウルで会談した黄長●(●=火へんに華)・元朝鮮労働党書記についても、訪日実現に向けて韓国政府と協議する方針。

「家族に日本帰国を説得」北朝鮮が拉致議連幹部に明言

2004/01/11 読売新聞Yomiuri On-Line
 北朝鮮による日本人拉致問題をめぐり、自民党の平沢勝栄衆院議員らと、鄭泰和(チョン・テファ)日朝交渉担当大使ら北朝鮮高官との間で、昨年末に中国・北京で行われた会談の概要が10日、明らかになった。

 北朝鮮側は「金正日総書記が拉致の事実を認めて謝罪した以上、拉致問題を解決する意思はある」と言明。そのうえで、拉致被害者5人を一度北朝鮮に戻すことを条件に、その家族を日本に帰国させる意思があるとし、「(家族から)北朝鮮に残ろうという発言が出ないようにする保証は、実務的にいろいろ考えられる。我々も説得する」と述べていることが分かった。ただ、「当局が家族に日本に行けと命令はできない」とも付け加えている。

 会談は昨年12月20、21両日に北京のホテルで3回にわたり行われた。読売新聞が入手した、日本側出席者がまとめた「日朝北京接触メモ」によると、日本側は平沢氏と民主党の松原仁衆院議員ら4人、北朝鮮側は5人が出席した。

 北朝鮮側は「日本側が5人(の拉致被害者)を2週間で北朝鮮に戻すという約束を破ったため、解決の動きが止まった」と日本政府を批判した。そのうえで、5人を1度北朝鮮に戻すべきだとし、「その際、(平沢氏が事務局長を務める超党派の)拉致議連議員やマスコミ同伴でもよく、『家族を迎えに行く』と発表してもよい」と述べた。

 拉致被害者5人の家族の帰国に関しては、「5人が家族と北朝鮮で会って意思を確認した後なら、5人と家族を日本に帰国させることは可能だ」と強調。「我々も(家族を)説得する」「命令は出来ない」などと言及し、家族の意思によっては、日本への帰国が実現しない可能性も示唆したという。

 ただ、平沢氏によると、北朝鮮側はその後「会談の最後に、『絶対家族を帰す』と確かに言った」と第三者を通じて伝えてきている。

 一方、会談で日本側は、拉致問題は政府間交渉で解決すべきだと主張し、このままでは経済制裁が現実化すると警告した。北朝鮮側は「我々は制裁が実施されようがされなかろうが、問題解決を目指す」と述べている。

 ◆拉致議連=日本人拉致問題解決を目指す超党派の議員連盟。正式名称は「北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟」。会長は自民党の平沼赳夫・前経済産業相で、自民、民主、公明各党などの議員が参加している。

 ◆「日朝北京接触メモ」の要旨◆

 平沢勝栄衆院議員らと北朝鮮高官との会談に関する「日朝北京接触メモ」の要旨は次の通り。

 【日本側の主張】

 ▽拉致問題の話し合いは政府間の外交レベルでなされるべきだ。このままでは経済制裁が現実化する。

 ▽〈1〉北朝鮮に残る拉致被害者の家族らを早期に帰国させる〈2〉死亡とされた被害者らの正確な情報を早く出し、帰国させる〈3〉拉致された疑いが濃厚な被害者を救出する――を要求する。

 ▽(北朝鮮に拉致被害者5人を戻すと日本が)約束したと誤解を与えたような点があったのなら、外相か官房長官が遺憾の意を表明すれば、北朝鮮の面目は立つのではないか。

 【北朝鮮側の主張】

 ▽金正日総書記が謝罪した以上、拉致問題を解決する意思はある。だが、日本側が5人の被害者を2週間で北朝鮮に戻すという約束を破ったため、解決の動きが止まった。

 ▽5人を1度北朝鮮に戻すべきだ。その際、拉致議連やマスコミ同伴でもよい。「家族を迎えに行く」と発表しても良い。

 ▽5人が家族と北朝鮮で会って意思を確認した後なら、5人と家族を日本に帰国させることは可能だ。5人の子供たちから親に、「日本に帰らず北朝鮮に残ろう」という発言が出ない保証は実務的にいろいろ考えられる。我々も説得する。北朝鮮は個人の意思を尊重する国だから、当局が家族に日本に行けと命令はできない。

 ▽(5人以外の拉致被害者らの)情報の細部には誤りがあり、継続して調査する準備がある。

 ▽日本の外務省は信用できないので、平沢議員らとの秘密接触を続けたい。我々は経済制裁が実施されようがされなかろうが、拉致問題解決を目指す。

家族帰国は120パーセント保証 北朝鮮、拉致議連に伝達

2004年01月08日 The Sankei Shimbun
 北朝鮮当局は8日までに拉致被害者家族の帰国問題で日本が拉致被害者の「平壌空港出迎え」提案に応じるなら、北朝鮮として家族の日本帰国を確約する意思があることを超党派の拉致救出議員連盟関係者らに伝えた。同議連事務局長の平沢勝栄衆院議員(自民党)が同日午前のテレビ朝日番組で明らかにした。

 昨年末に北京で行われた北朝鮮政府高官との会談後、北朝鮮側が議連に近い民間人を通じ、あらためて帰国問題に関する当局の意向を平沢氏に伝達。その中で北朝鮮側は「拉致被害者5人全員が出迎えに来れば、家族は120パーセント帰す」と強調した。

 平沢氏は、北朝鮮が拉致被害者の永住帰国を「約束違反」と反発していることについて、北京会談の席上、日本政府が「誤解を与えたとすれば遺憾」とする談話を表明する打開案を提案したことも明らかにした。

 その上で平沢氏は「5人を平壌に戻さなくてもこれで解決できるのであれば(望ましい)」との考えを示した。

北朝鮮の「出迎え案」を本格検討へ 帰国確約に政府

2004年01月07日 The Sankei Shimbun
 政府は7日、拉致被害者家族の帰国問題をめぐる北朝鮮提案について、受け入れが可能かどうか本格的な検討を始めた。

 被害者による「平壌空港出迎え」案については、政府内で帰国の確約を条件に容認する声も出ており、北朝鮮が外交ルートで打診してくるかどうかが焦点だ。

 ただ被害者の永住帰国を「約束違反」と主張する北朝鮮に対し、日本政府が「遺憾の意」を表明することには抵抗感が強く、北朝鮮があくまでも要求してきた場合、協議の難航は避けられない。

 福田康夫官房長官は7日の記者会見で、北朝鮮提案に関し「政府間で話を詰めなければならない」と述べ、政府間で協議する用意があるとの考えを示した。

 また、外務省筋は「平壌出迎え」案について「拉致被害者の同意があれば、検討に値する」と指摘。政府関係者も「とにかく被害者家族が帰国できるのなら、形式にはこだわらない」と述べた。

 一方で、政府が拉致被害者を北朝鮮に戻さなかったことについて「遺憾の意」を公式表明する案を受け入れると、北朝鮮に対し「一時帰国と約束したことはない」と反論してきただけに、政府の見解を撤回することになりかねない。

 もっとも北朝鮮の核開発をめぐる次回6カ国協議の日程見通しが立たない中、拉致問題に関する日朝協議が優先されるとの見方は政府内には少なく、外務省幹部は「6カ国協議のセットが先ではないか。2国間協議はその中で行うことになるだろう」と述べた。

横田さん、水面下の交渉に懸念表明

2004年01月07日 The Sankei Shimbun
 拉致被害者「家族会」の横田滋代表(71)は7日午後、北朝鮮側が中川昭一経済産業相や平沼赳夫前経産相との極秘会談を求めてきたことについて「政府間で話し合い、できるだけ早い(家族の)帰国を望む。(非公式に)やっていくのは本筋ではない」と述べ、水面下で交渉が進むことに懸念を表明した。都内で記者団の質問に答えた。

 北朝鮮が拉致議連事務局長の平沢勝栄衆院議員らに提案した「出迎え方式」による家族の帰国についても「すぐ家族が(提案に)乗るのは間違い。政府間の交渉に移すべきだ」と強調した。

 横田代表は、拉致被害者、地村保志さん(48)の父、保さん(76)が「日本政府は北朝鮮のメンツを立てて謝るべきだ」と発言したことにも触れ「今までの家族会の立場では、謝罪は好ましくない」と反対した。

 家族会のメンバーらは7日来日したサム・ブラウンバック米上院議員と懇談。国連安保理などで拉致問題が具体的に取り上げられるよう要望した。

北朝鮮が中川、平沼両氏との極秘会談要請

2004年01月07日 The Sankei Shimbun
 北朝鮮が昨年末、超党派の国会議員でつくる拉致議連の前会長で自民党の中川昭一経済産業相との極秘会談を関係者を通じて求めてきていたことが7日、分かった。北朝鮮は北京での会談を希望しているという。

 また北京で昨年12月、北朝鮮政府高官と会談した拉致議連事務局長の平沢勝栄衆院議員(自民)らに対し、北朝鮮側が現拉致議連会長の平沼赳夫前経産相との非公式協議を申し入れたことも判明。いずれも日朝関係者が明らかにした。

 昨年8月の北京での日朝協議以降、日本政府との話し合いに公式には応じていない北朝鮮が現職閣僚との会談を要請してきたことについて、政府関係者からは揺さぶりとの見方が出ている。

 北朝鮮側の要請に対し中川経産相は「一切聞いていない。北朝鮮がそういう考えを持っているとしたら笑止千万だ」とし、平沼前経産相は「被害者家族や政府と相談して決める」と話している。

 中川経産相は2002年10月から昨年9月まで拉致議連会長を務め、平沼前経産相が中川経産相の後任として会長に就任した。

 北朝鮮側は昨年12月20、21の両日、北京市内で計3回、平沢議員らと会談。鄭泰和・日朝国交正常化交渉担当大使らが、帰国した拉致被害者5人が北朝鮮に戻り、北朝鮮に残る家族と会って意思を確認すれば「帰国させることは可能」との姿勢を示した。

 平沢議員らは日本政府との話し合いを要請したが、北朝鮮側は「被害者を北朝鮮に戻す約束を破った日本政府は信用できず協議はできない」と繰り返し、その後関係者を通じ「有意義だった」として再会談を求めてきたという。

政府の柔軟な対応求める 拉致家族帰国で蓮池透さん

2004年01月03日 The Sankei Shimbun
 北朝鮮による拉致被害者、蓮池薫さん(46)の兄で家族会事務局長の透さん(49)が3日、新潟県柏崎市の実家で記者会見し、家族の帰国問題について「5人を返さなかったのが約束破りだというのであれば、(政府が)謝罪めいたことをすればいい。向こう(北朝鮮)のメンツを立てても構わないのではないか」と述べ、政府の柔軟な対応を求めた。

 北朝鮮は家族帰国の条件として日本政府の「遺憾の意」表明を求めることを検討しているとされるが、透さんは「原則論をぶつけ合って無用な時間を費やすのはこの期に及んで得策ではない。(政府は)柔軟な考え方でやってほしい」と語った。

 また拉致議連の平沢勝栄衆院議員らに北朝鮮側が示した「拉致被害者による平壌空港出迎え」について「行ってすぐ(家族を)飛行機に乗せてくれる100パーセントの確約があるとすれば、検討の余地はある」と述べた。

 その上で「向こう(北朝鮮)に相当焦りがみえる。5人の家族の取り扱いには苦慮しているという話がある。政府が外交ルートに乗せ早急に(帰国を)実現していただきたい」と語った。

 透さんは元日から帰省中。透さんによると、薫さんは「新年早々に子供たちを取り返して、新年度からは自分たちの力で家族4人で生活していきたい」と話していたという。

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