TOPIC No. 2-127 歴史教科書問題

01. Japan's Middle school History textbook byJE Kaleidoscope
02. 日韓歴史共同研究報告書 by日韓歴史共同研究委員会
03. 歴史教育アジアネットワーク
04. 戦後60周年 by外務省
05. 中学社会 新しい歴史教科書 (平成14〜17年度 使用版) by新しい歴史教科書をつくる会
06. 日本の歴史教科書問題 by人民網日文版(人民日報社)
07. 歴史教科書問題  by人民網日文版(人民日報社)
08. 日本歴史教科書問題−"「若手議員の会」中間報告" より−/「ここがすべての始まり!」
by安倍晋三官房副長官(1998年04月16日)
09. 教科書が教えない歴史 by自由主義史観研究会(代表藤岡信勝)のホームページ
10. 電脳教科書補間録 by「つくる会を勝手にサポートする国民ネット」
11. 教科書検定  YAHOO!ニュース
12. 教育  YAHOO!ニュース
13. 特集 教育を考える by産経新聞
14. 教科書問題資料室 by子どもと教科書全国ネット21(Childlen and textbooks Japan Network 21)
15. 韓国の歴史教科書を検証してみよう


日本の歴史教科書めぐり国際機関が是正勧告

2010/06/18 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 チョン・ビョンソン記者

 国連児童の権利に関する委員会(委員長:李亮喜〈イ・ヤンヒ〉成均館大法学部教授)は、日本の歴史教科書について、アジア・太平洋地域の過去の歴史に関する、バランスある視点が見られないとして、日本政府に対し是正を勧告した。

 同委員会は、16日に公開した報告書で、第54会期(5月24日−6月11日)中に実施した日本の「児童の権利に関する条約」履行状況の審議の結果、日本の歴史教科書は、アジア・太平洋地域の他国の生徒たちとの相互理解を強化し得ないだけでなく、歴史的事件を日本の観点からだけ記述していることを懸念する、と指摘した。

 また、「アジア・太平洋地域の歴史的事件に関してバランスある視点が見られるよう、教科書を公式に再検討することを政府に勧告する」と記した。さらに報告書は、華僑の学校や在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の学校などに対する支援が十分でなく、これらの学校を卒業しても、大学入学に必要な資格要件が認められないことにも注目し、日本政府が日系以外の学校に対する支援を増やし、大学入学などの面での差別を撤廃することを勧告した。

韓国併合:歴史学界「韓日政府は無効を明確にせよ」

2010/05/29 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 李漢洙(イ・ハンス)記者

 歴史学会・韓国史研究会など歴史学界34学会は28日、「日本による韓国併合100周年、光復65周年に際する歴史学界の共同声明書」を発表した。

 各学会は同日、高麗大で行われた全国歴史学大会を通じて発表した声明書の中で、 ▲韓日両国政府は1910年の日本による韓国併合が強制的なだけでなく、国際法的に無効だということを明確にすること ▲日本政府は植民地支配について心から反省し、責任を取る姿勢を示すこと ▲韓国政府は植民地支配と親日の真相を正確に究明し、反省するよう努めること −などを要求した。

日韓歴史共同研究:第2期報告書 対話の難しさ露呈 当初から感情的対立

2010年03月24日 毎日新聞 東京朝刊

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR 国際>

 23日公表された第2期「日韓歴史共同研究」の報告書は「次の100年」に向けて出発点になるはずだった。しかし、報告書の中に「『近くて近い』日韓関係の基礎をつくるのが委員の使命だが、『何でも解決できる』わけでもない」との文言が見られるなど、歴史対話の難しさを浮き彫りにして終わった。

 第2期研究は、保守色の強い安倍晋三政権の下で準備をスタートさせた。委員選考にあたって、日韓関係の中心にいた進歩派学者に代えて保守派を重用するなど、保守的な理念を先行。一方の韓国側も左派色の強い盧武鉉(ノムヒョン)政権下にあり、従来の主張を強弁した。2年半に及ぶ議論は「当初から感情的対立が生まれ、信頼関係の構築から程遠かった」(有識者)という。

 報告書について、岡田克也外相は23日の記者会見で「議論することで(共通理解が)増えていけば、相互の認識が近づく。共同研究は意味のあることだ」と指摘。アジア重視の姿勢を鮮明にする鳩山由紀夫首相に対し、韓国側は歴史対話を通じて教科書記述や戦後補償などで柔軟な対応を期待している。韓国側委員の多くが共同研究の継続を求めるのは、そのためだ。一方、日本側は歴史の溝を乗り越えた先に何を見据えるのか、明確な外交戦略に欠けている。

 現在の日韓は年間476万人(08年)が往来するなど、隣国関係は深まる一方だ。「近現代」の章で初めて触れられた「大衆文化」で、韓国側は「植民地の記憶と日本文化を統合せずに別々に認識する。文化交流で否定的要因を減少させることで、日韓関係はより安定的に維持される」と指摘している。

 以前と比べ、日韓関係は成熟期に入り、歴史問題でこじれても、即座に外交が閉ざされる環境にない。こうした状況下で、異なる歴史認識を互いに受容できるような粘り強い対話が求められている。【中澤雄大】

 ◇任那日本府を「否定」 韓国メディア「成果」と報道

 第2期研究報告書で韓国で、研究成果として報道されたのが任那(みまな)日本府の扱いだ。23日の発表を前に韓国メディアは一斉に「日本の学者も『任那日本府はなかった』(と認めた)」などと報じた。任那日本府は、6世紀までの日本による朝鮮支配の拠点とされ、韓国では植民地支配を正当化するものとして反発が強かったが、近年は日本でもその役割に疑問が持たれ始めている。

 韓国側委員から指摘を受けた日本側委員が「軍事的な性格や政治機関としての性格はほぼ否定されている」とし、「その用語も使わない方がいい」との意見に同意したことが「成果」として大きく報じられた。

 一方、近現代史では認識の差が目立った。竹島(韓国名・独島)の領有権など両国にとって敏感な問題は基本的に議論から外された。

 歴史教科書では、委員の発言や行動を巡り謝罪や辞職を求めるなど研究以外でのバトルもあった。「主題選定をめぐり論争を繰り返す過程で疲れ果て……」と、論文のコメント欄に記す韓国側委員もいたほどだ。

 それでもなお、韓国では「3期、4期と続けていくべきだ」(韓国政府関係者)との意見が強く、積極姿勢が目立っている。これほど強い意欲を見せるのは「歴史認識の差を埋める努力を続けていれば、何か問題が起きたときのクッションになりうる」(韓国紙記者)との考えのほか、合意事項を少しでも教科書に反映させたいと考えているからだ。韓国側委員長の趙〓(チョグァン)高麗大教授は23日、韓国外交通商省での会見で、「相互理解を増進させ、長期的な共通の歴史認識拡大に寄与することを期待する」と述べた。【ソウル西脇真一】

社説:日韓歴史研究 対立乗り越える努力を

2010年03月24日 毎日新聞

 23日公表された第2期日韓歴史共同研究の報告書は、歴史認識で相互理解を深めることの困難さを改めて認識させる。

 共同研究は両国首脳の合意を受けたもので、07年6月から2年半かけ双方の有識者34人が67回の会議を重ね、その成果を論文などの形式でまとめた。古代史、中近世史、近現代史の3分野と、今回新たに加えられた歴史教科書を研究対象にした。

 目的は「歴史認識について共通点を明らかにし、相違点を把握して相互理解を深める」ことだった。古代史などではいくつかの合意点を見いだすことができたが、近現代史や教科書の分野ではむしろ見解の相違が際だつ結果となった。

 一つの例として教科書小グループの報告書の中から対立ぶりの一端を紹介する。日本側のある委員は両国教科書の現代史の記述ぶりを分析し、韓国の教科書の問題点として「『日本人はすべて悪』とするナショナリズムを克服できない状況がある」「日本国民が戦争を反省し平和憲法を制定した事実に触れていない」「過去に対する反省と謝罪に関する天皇陛下の『お言葉』と『村山首相談話』を記述していない」などと指摘した。

 一方、韓国側委員は「韓国社会は日本の歴史教科書問題に対日過去清算の側面から接近するが、日本の歴史教科書にはこうした観点が非常に弱いか、初めから抜け落ちている場合が多い。侵略責任と戦争責任をまったく自覚できないでいるためだ」などと主張した。

 また、「複数の歴史認識の共存を認め合う社会の方がはるかに自由で魅力的だ」との日本側委員の意見に対しては、韓国側委員が「日本が過去の侵略と戦争、植民地支配をいかに認識しているかが核心だ」と反発するといった具合である。

 今回は竹島(韓国名・独島)や日韓併合の問題などについては本格的な議論は行われなかったという。それでもこれほど対立すること自体が歴史認識問題の難しさを物語っているといえる。

 同グループでは一時、合同会議を開催できない事態にも直面したという。そうした経緯もあり、関係者からは「共同研究はもう限界だ」との声も聞かれる。

 しかし、ここは冷静に考える必要がある。確かに、一向にかみ合わない論争には歯がゆさを感じざるをえないが、双方が率直に意見をぶつけ合うことの意義を否定することはできない。特に、教科書をめぐる問題を議論し報告書にまとめたのは初めてだ。共同研究を継続するなら議論が前向きに進む仕組みを工夫すべきだろう。

日韓歴史、一歩前進と意義強調 古代史「植民地史観放棄」

2010年03月23日 中国新聞ニュ−ス

 【ソウル共同】第2期日韓歴史共同研究委員会の韓国側委員長、趙グァン高麗大教授は23日、同研究報告書について、歴史認識の違いはあるものの「第1期に比べ、明確に一歩前進した部分がある」と意義を強調した。記者団に語った。

 趙教授は、4〜6世紀にかけ朝鮮半島南部に「任那日本府」があったとする説に関し「この用語を使わないことで意見が一致した」と成果を説明。韓国メディアも「日本が(古代史で)植民地史観に基づく記述を公式に放棄した」(朝鮮日報)と報じ、高い関心を示した。

 第2期で新設された教科書小グループについては「政府(が支援する)歴史共同委員会のレベルで初めて教科書の内容を公に検討した」と高く評価。将来の共通の歴史教科書づくりに向け「意見が一致する点と違う点を確認する過程に入った」と指摘した。

 一方、韓国人記者から、日韓併合に関する双方の理解に「相当な違いがある」と問われると、趙教授は「委員会は学者の集まりであり、意見が異なるのは当然。出発点だ」と繰り返した。

任那日本府説:韓半島侵略正当化の論理を日本自ら撤回

2010/03/23 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 兪碩在(ユ・ソクジェ)記者

 今回の第2期韓日歴史共同研究委員会で出た成果のうち最も注目されるのは「任那日本府説」の放棄だ。これまで植民史観の象徴のように思われており、日本による韓半島(朝鮮半島)侵略を正当化する役割を担っていたこの主張について、日本が自ら放棄したということは、歴史の論議で重要なターニングポイントになるだろうと評価されている。

 前回の2005年第1期報告書では、韓日の学者全員がこの説に否定的だったのに加え、今回「事実ではない」と確認したことで、この説は歴史問題から除外される運命となった。

 報告書で日本側は、「任那日本府を軍事的性格から見たり、政治機関と見なしたりする見解は否認されており、この用語を使わない方が良い」という意見を示した。

 また、「日本書紀の神功紀49年条の該当記録中の“倭(わ)国(日本)が伽耶7カ国を平定した”という内容は事実と見なすことはできない。広開土王の碑文で高句麗と戦争をしたと記録されている“倭軍”とは、倭が百済・伽耶と連合した軍隊であろう」と指摘している。

 14−15世紀、韓半島(朝鮮半島)を侵奪した倭寇(わこう)の正体が実は朝鮮人からなる「偽倭寇」であったという日本学界の一部の主張も否定された。日本側の委員は、「対馬・壱岐・松浦地域の海民(漁民)と領主が倭寇の中心だったというのが、各国史料の共通した認識だ」と話した。日本側は稲作や金属文化が韓半島から伝わったことも認めた。

■任那日本府説

 倭国が4−6世紀に韓半島南部の伽耶地域を征服、「任那日本府」といわれる統治機関を設置したという日本側の主張。韓国史が古代から外部勢力の干渉を受けたという、代表的な植民史観の産物。しかし、韓国側の史料にはまったく言及されておらず、考古学的な根拠もないため、韓国の学者は当時伽耶で軍事的活動を行っていたのは日本ではなく、百済だったとみている。日本でも最近、その実態は「倭の使節の駐在館」だったという主張が有力になっている。

「乙巳条約の主体は高宗」との主張を繰り返す日本(上)

2010/03/23 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 兪碩在(ユ・ソクジェ)記者

第2期韓日歴史共同研究委員会報告書

 23日に発表される第2期韓日歴史共同研究委員会の最終報告書は、古代史や中世史などの分野でいくつかの合意を見いだし、両国の歴史教科書に対する初めての共同研究に乗り出すなど、一部では成果が見られた。しかし、いくつかの懸案については議論さえ行われず、またこれまで問題となってきた部分でも、両国の認識の違いと先行きの不透明さが改めて浮き彫りになった。

■日本「高宗が乙巳条約の主体」

 とりわけ近現代史分野では、韓日両国の歴史認識の違いが際立っていた。何よりも「日本は韓半島(朝鮮半島)を一方的に侵略したわけではなく、韓国の主要な勢力もこれに同調した」という日本側の認識が、今も続いていることが分かった。

 日本側のある委員は、「高宗は乙巳条約に対して反対せず、むしろ条約の主体として反対運動を弾圧した」というとんでもない主張を展開した。これは韓国側の委員らが明らかにした。また日本側の別の委員は、日本が韓半島を支配していた時代、朝鮮での日本語使用問題について「近代化の実現」と関連付けるという無理な主張を展開した。また、「朝鮮人労働者に対する組織的な強制連行などは存在しない」と主張する委員もいた。

 今回の第2期歴史共同委員会では、両国の歴史教科書に対する共同研究も初めて行われた。しかし、この場でも認識の違いが明らかになった。ある韓国側の委員は、「自国中心の偏向した歴史観を持つ日本側の委員との摩擦により、本格的な議論は非常に低調だった」と説明する一方、「さまざまな見方が提議される検認定体制が確立されれば、接点を見いだすこともできるだろう」と述べた。

「乙巳条約の主体は高宗」との主張を繰り返す日本(下)

2010/03/23 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 兪碩在(ユ・ソクジェ)記者

第2期韓日歴史共同研究委員会報告書

■独島・慰安婦問題は議論さえ行われず

 独島(日本名:竹島)領有権問題や軍隊慰安婦問題、韓日強制併合の違法性など、両国の歴史問題の中で最も敏感な問題に関しては、今回の共同委員会では主要な議題から外された。共同委の関係者は、「独島は韓国側としては交渉の対象とはならないため、共同研究は最初から不可能だ」と説明した。

 韓日強制併合の違法性問題は、先回の共同委で韓国側が「乙巳条約などは、公式の批准手続自体が省略されているため無効」と主張したのに対し、日本側は「合法的に成立した」として平行線をたどったため、2期では議題から外されたとみられる。

 共同委の関係者は、「第1期が争点を確認する場であったとすれば、2期はその中から多くの部分で意見の歩み寄りがみられ、その点では意味があった。わずか数回の委員会を通じて、両国の歴史問題の懸案をすべて解決するというのは無理だ」と述べた。しかしある歴史学者は、「敏感な懸案をすべて議題から外してしまえば、韓日共同の歴史教科書を作ったとしても、何の意味があるのか」とコメントした。

■歪曲波紋から9年、先行きは不透明

 韓日歴史共同研究委員会が発足したのは2001年4月。日本の扶桑社による歴史教科書歪曲(わいきょく)問題がきっかけとなった。両国の歴史問題が懸案として浮上すると、当時の金大中(キム・デジュン)大統領と小泉純一郎首相は同年10月の首脳会談で、両国政府主導の下、歴史の共同研究を行うことで合意した。

 これに伴い、2002年3月に第1期の共同委員会が発足し、05年6月に最終報告書を発表したが、この報告書は両国の認識の隔たりを確認するだけの結果に終わった。その後、07年6月に2期共同委が発足し、両国の学者らで構成された34人の委員が研究を進めてきた。共同委員長には高麗大学のチョ・グァン教授と東京大学の鳥海靖名誉教授が就任し、24の共同研究テーマについて、67回にわたる会議が開催された。

 しかし、このように議論された内容が教科書にどれだけ反映されるのかは疑問だ。当初、韓国政府は共同委の研究結果を教科書に反映すべきと主張したが、日本側の反対により、「参考資料としての活用」レベルにとどまった。教科書執筆に対する勧告文も採択できず、第3期共同委を発足させるかどうかも今のところ決まっていない。

日韓歴史研究報告書の要旨

2010年03月23日 中国新聞ニュ−ス

 第2期日韓歴史共同研究の報告書要旨は次の通り。(委員以外の執筆者を含む)

 一、古代史

 【安羅倭臣館】

 ▽韓国側 任那日本府は「日本書紀」にあるが、倭の任那支配説は説得力を喪失。4〜5世紀は存在していない。6世紀にはあったが、当時の用語でもない。伽耶(かや)(任那)の一部だった安羅が倭人官僚を迎え入れた外務官署だ。間違った先入観を呼び起こすので「安羅倭臣館」という用語が適当だ。官僚は安羅にいた倭人で臣下だった。(金泰植・弘益大教授)

 ▽日本側 日本書紀は「在安羅諸倭臣」とも表現。任那日本府を使わない方が良いというのは同じだ。ただ、安羅にいる倭人が自立した活動をしていた場所で、安羅に隷属していなかった。(森公章・東洋大教授)

 二、中近世史

 【文禄・慶長の役】

 ▽韓国側 日本が明に挑戦し、北東アジアの覇権交代を目指した歴史的事件。長い間、朝鮮戦争などの影響で「国難克服史観」が反映されていたが、1990年代以降の冷戦終結やグローバル化により、より大きな枠で解釈しようという歴史認識が現れた。東アジアで発生した国際戦争との観点に立った研究が本格化している。(盧永九・韓国国防大大学院副教授)

 【元寇】

 ▽韓国側 元寇は、韓国では最初の海外派兵だとされる。日本は大陸からの野蛮な侵略とみなし、日本人が一致団結して撃退したという教育をしている。日韓両国とも自国史的立場という高い壁を克服していない。(李在範・京畿大副教授)

 三、近現代史

 【領土問題】

 ▽韓国側 日韓間で論争の独島(日本の竹島)のみならず、日本はロシアと北方領土、中国および台湾とは尖閣諸島をめぐり領土紛争の当事国だ。敗戦国日本の戦後処理は、日本固有の領土と帝国主義日本が侵奪した領土との区分が度外視された。米国は極度に寛大で、非懲罰的な態度を取った。日本人の戦争責任に対する無知は、米国政策の影響が大きく、日本の「歴史的記憶喪失」の一助となった。ポツダム宣言受諾を強調したのは、戦後日本の歴史的記憶喪失治癒に目的がある。(李碩祐・仁荷大大学院副教授)

 ▽日本側 根幹をなす用語や議論の背景説明が不足している。歴史的記憶喪失とは何を指すのか。日本が無条件降伏したポツダム宣言を引用し、何の目的でくどくど論じるのか。およそ理解できない。外交史的蓄積が不十分だ。(大西裕・神戸大大学院教授)

 【動員】

 ▽韓国側 1920年代初めから日本は朝鮮人の代表的な出稼ぎ地。30年代は「渡日減少方針」で渡航許可は得にくく、朝鮮人の一部は「割り当て募集」を許可獲得の機会と考えた。募集で集められた朝鮮人は日本の炭坑や南洋諸島、サハリンにも送られた。これらは国家権力の強制だった。(鄭恵瓊・「強制動員真相究明委員会」調査2課長)

 戦時期の日本本土居住朝鮮人は、自発的な「移住」と、強制動員の2形態があった。第1次大戦発生以降、移住者は日本経済の発展で際立ち始めた。縁故を頼って主に京都、大阪、神戸を含む関西地方に職を得た。36年末には約70万人となり、底辺の下層労働市場を支えた。だが、高い閉鎖性と移動性、独自のネットワークのため、本格的な動員は難しく、徴用は期待した効果が上がらなかった。日本も治安維持に重点を置いた。既存の研究は自発的移住と強制動員の区分がなおざりで、強制動員の究明に集中していた。(河棕文・韓神大教授)

 【強制連行】

 ▽韓国側 朝鮮人の動員については戦時労務動員、強制連行などさまざまな用語が使われる。これは労働だけでなく、軍や慰安婦なども含む。朝鮮総督府が大衆の抵抗を緩和しながら高度な方法で行った。学問的議論を深めるべきだ。(鄭氏)

 ▽日本側 戦時期の植民地統治に周到な計画や一貫した政策体系などなかった。(有馬学・九州大名誉教授)

 【日本語教育】

 ▽日本側 朝鮮人児童と日本人教師も一生懸命学び教えていた。近代的知識、技術を得るための道具として認識されていた。(山田寛人・広島大非常勤講師)

 ▽韓国側 強制的構造が存在した。我田引水の解釈だ。(柳承烈・江原大教授)

 【日清戦争】

 ▽日本側 日清戦争で日本が清に勝利して下関条約が結ばれた。この結果、朝鮮は名実ともに清から独立した。(原田環・県立広島大教授)

 ▽韓国側 下関条約は朝鮮を排除したまま締結された。日本が清から朝鮮を救援し、独立国として出発させたとの論理は、日本の侵略意志を塗り隠している。(朱鎮五・祥明大教授)

 【大衆文化】

 ▽韓国側 韓国は98年に制限していた日本文化流入を解禁したが、教科書、慰安婦、靖国などの問題が両国関係を悪化させ、日本の好感度は改善されていない。(李盛煥・啓明大教授)

 四、教科書

 【委員あいさつ】

 日韓関係の基礎をつくるのは、われわれの使命でもあった。ただし何でも解決できるわけでもないことも直視すべきだ。

 【教科書の理念】

 ▽韓国側 日本の教科書に近年、慰安婦の記述が減ったのは、日本政治と社会の保守化に関係がある。「韓国側は工場などに動員された『(女子)挺身隊』と混同している」と日本側は指摘するが、挺身隊動員に対する恐怖の糾明はしたのか。「従軍慰安婦」という用語は、どのような実証的資料に基づくのか。自発性の意味を含む「従軍」という言葉は使用をやめるべきだ。(鄭鎮星・ソウル大教授)

 【研究継続】

 ▽日本側 教科書検定制度における日本国内の多様な議論に目配りしていない。共同研究は不毛だった。歴史研究への姿勢が日韓では違いすぎる。(山室建徳・帝京大准教授)

 一方の歴史観のみを他方に押しつければ無用な紛争を引き起こす結果をもたらす。(木村幹・神戸大大学院教授)

 ▽韓国側 歴史認識を接近させなければ両国の未来を平和的につくっていけない。問題を根源から議論する必要がある。(金度亨・延世大教授)

 【教科書制度】

 ▽日本側 教科書は子どもに特定のイデオロギーをたたき込む手段ではない。共有する通念を次世代に伝達する手段として作成することが急務だ。(山室氏)

 韓国の「反日教育」は本来、日本のかつての帝国主義思想への「防日」が目的だった。(井手弘人・長崎大准教授)

 ▽韓国側 「防日」から「反日」へ移り変わったという論旨は、韓国を理解しようとする真摯な努力の一環だ。しかし、韓国で反日教育が行われてきたという不当な前提がある。(辛珠柏・延世大教授)

 教科書検定は、韓国では基準が細かく定められているが、内容については執筆者の自律性が認められ、編さん方法の改善を重視する。日本では基準は簡略化されているが、学習指導要領などの形を通して事実上国家が内容の統制を図っている。(李讃煕・韓国教育開発院碩座研究委員)

 【教科書の記述内容】

 ▽日本側 文禄・慶長の役について、最近の日本の教科書は平板なトーンで歴史的事実を記述。韓国も、以前は民族の優越性を強調する傾向があったが、今は比較的冷静な記述となっている。それぞれの立場から脱却した視点や、新たな呼称が必要だ。(太田秀春・鹿児島国際大准教授)

 韓国は日本の憲法9条、天皇や首相が謝罪と反省に努力した事実を記述してほしい。双方は「隣国の現代史」の教科書を作るべきだ。(重村智計・早大教授)

 韓国の教科書が朝鮮民族の始祖とされる檀君の神話をそのまま認めるような記述をしているのは、資料考証に基づく結論なのか疑問だ。(井上直樹・京都府立大准教授)

 ▽韓国側 日本の学界が豊臣秀吉を評価するほど、韓国が侵略への警戒心を抱くのは自然だ。戦乱の記憶は生々しく鮮明な傷跡として残っている。正当化する口実を学問的に批判できず、日本の教科書に記しているのは問題だ。戦争責任の重みを認識できない。(玄明☆(吉を横に二つ並べる)・京畿高校教諭)

 日本では近代史を強国に成長する華やかな歴史として記す一方、朝鮮半島や中国大陸を侵略し、多くの人々に被害を与えたことの記述は消極的だ。(金度亨氏)

 日本の教科書の韓国についての記述の改善は97年版が頂点で、その後悪化。中心には右翼の政治勢力と「新しい歴史教科書をつくる会」がある。(辛珠柏氏)

 日本の教科書で渡来人は、古代王権に包摂された存在として機能的な側面が強調された。日本民族の主要構成員であり、古代国家を建設した開拓者との観点が必要だ。(延敏洙・東北亜歴史財団研究委員)

教科書:日本が朝鮮の近代化を助けた!?

2009/05/13 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 キム・ギチョル記者

北東アジア歴史財団学術会議

 「自由社版の中学校歴史教科書は、天皇中心の史観・侵略主義史観・独善的な文化優越史観に満ちている」

 今年4月に日本の文部科学省による検定に合格した自由社の歴史教科書について、本格的に分析する初めての学術会議が12日、北東アジア歴史財団(キム・ヨンドク理事長)の主催で行われた。自由社版教科書は、2001年と05年に扶桑社から教科書を出版した日本の右派「新しい歴史教科書をつくる会」が内部分裂により扶桑社と決別、新たに執筆したものだ。ところが、「扶桑社版の盗作」という声が上がるほど、「扶桑社の歴史歪曲(わいきょく)をそのまま書き写しているようなもの」と批判されている。

 この学術会議で、ヨン・ミンス北東アジア歴史財団研究委員は「自由社の教科書が昨年の第1回検定で不合格になったのは、歴史観に関する内容が問題になったため」と述べた。自由社が申請した教科書は、近代史の部分で「朝鮮の近代化を助けた日本」というタイトルを掲げ、「日本は朝鮮の開国後、朝鮮の近代化を援助した」と記述していたというのだ。

 これに対し、文部科学省は「朝鮮の近代化に対し誤解する恐れがある表現」と指摘した。そのため、再申請の際にはタイトルを「朝鮮の近代化と日本」に、本文は「日本は朝鮮の開国後、近代化に努める朝鮮に対し軍制改革を援助した」へと変更した。ヨン研究委員は、「第1回申請時の内容は歴史歪曲があまりにひどく、再申請版も植民地近代化論が所々に残っている」と指摘している。

 ナム・サンギュ研究委員は「日本の文部科学省は“近隣諸国条項”を考慮し検定したと言っているが、具体的にどのように適用したのかは検証できない。日本政府が現在の検定方法を改めない限り、日本の教科書歪曲を解決するのは難しいだろう」と話している。日本政府は1982年の教科書検定時、「侵略戦争」を「進出」に修正するよう指示したが、これにより国際的に波紋が広がると、社会科教科書の検定基準に「近隣アジア諸国に関連する近現代史を記述する部分では、国際理解と国際協調の見地から必要な配慮をすべき」という条項を新たに設けた。

 ソ・ジョンジン研究委員は「1923年の関東大震災について、扶桑社版が本文に記述した内容を、自由社版では脚注に移し、朝鮮人虐殺に日本軍や警察が関与したという事実を巧みに隠ぺいしている」と話す。被害者の中で圧倒的多数を占めた朝鮮人の被害を縮小し、虐殺に日本軍が関与しなかったと強弁しているという意味だ。

 自由社版教科書の歴史歪曲も深刻だが、問題はほとんどの教科書が検定申請を行う2012年だ。ヨン研究委員は「新たに作られる教科書は現行本に比べ保守・右翼的傾向に流れる可能性が高い」とみている。06年に改正された教育基本法と、これにより08年に変わった新学習指導要領が、愛国心・公共精神・伝統尊重を強調しているためだ。

(12日、北東アジア歴史財団の主催で行われた学術会議。出席者らは日本の「新しい歴史教科書をつくる会」が執筆した自由社版の中学校用歴史教科書に関する問題点について討論した。)

歴史認識問題で日韓関係変化も 韓国大統領が指摘

2009/04/12 NIKKEI NeT

 【パタヤ=島田学】韓国の李明博大統領は11日の日韓首脳会談で、現在の日韓関係を「良好な状況にある」と評価したうえで「歴史認識の問題などで大きく変化する可能性があるので注意していきたい」と指摘した。麻生太郎首相は李大統領の早期訪日へ調整を続ける考えを示した。

極右派の歴史わい曲教科書、新たに検定合格/日本(1)

2009.04.10 中央日報 Joins.com

韓国侵略を正当化し植民支配を合理化する歪曲(わいきょく)された内容を盛り込んだ日本の教科書が2種類に増えることになった。

日本の文部科学省(文科省)は9日、教科書検定で、日本の極右勢力からなる「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)が自由社を通じ発行する中学社会科(歴史的分野)の教科書(写真)に対し、合格判定を下した。扶桑社版の教科書に続き2度目の「歴史を歪曲した中学校教科書」となる。

外交通商部(外交部)の文太暎(ムン・テヨン)スポークスマンは声明を出し「過ちを合理化、美化する誤った歴史観に基づく歴史教科書が、日本政府の検定を通過したことに対し、強力に抗議し、抜本的な是正を求める」と促した。外交部はまた、在韓日本大使館の高橋礼一郎公使を外交部に呼び、口頭で抗議した。

自由社版の歴史教科書は各自治体の教育委員会と国公私立の校長が採用するかどうかを判断、来年新学期から導入されることになる。「つくる会」は、これまで扶桑社を通じ教科書を作ってきた。しかし、著作権や筆陣の選定を含む運営方針の対立などから、一部メンバーが分かれ、自由社版の教科書を作った。残りのメンバーらは年内に、扶桑社版の検定承認を文科省に申請する予定だ。

自由社版は昨年12月の検定で、516カ所と多くの修正点が指摘され、不合格となったことがある。これによって、「旧日本軍が(第2次世界大戦)侵略地域で捕虜になった敵国の兵士と非武装の民間人に対し、不当な殺害と虐待を完璧に予防できなかった」という部分は「不当な殺害と虐待を起こし、大きな惨禍を残した」に修正された。

「日本が韓国の近代化を助けた」という記述も「誤解の恐れがある」と指摘され、「軍制改革を支援した」に修正された。しかし、侵略の歴史を縮小または歪曲した部分は、従来の扶桑社版とほぼ同じだ。

自由社版は、韓日両国の学界が否定する「日本府(大和朝廷が朝鮮南部を支配するために任那に置いたという官府)」を記述し、東アジアで日本だけが独自の年号を使ったとしている。また、19世紀の江華島(カンファド)事件を挑発した主体と目的・経緯を隠蔽し、日本が試みた韓国侵略の意図を故意に否定している。

極右派の歴史わい曲教科書、新たに検定合格/日本(2)

2009.04.10 中央日報 Joins.com

このほか、地政学的な観点に基づく「韓半島が脅威になる」という見方を強調し、日本の帝国主義による韓国侵略と支配を合理化しようとした。

旧日本軍従軍慰安婦に関する記述も扶桑社版と同じく省略された。朝日新聞は「自由社版は“つくる会”が出版社だけ変えて作ったものであることから、文章の詳細や表現まで扶桑社版とほぼ同じ」と報じた。

韓国の北東アジア歴史財団は「自由社版の教科書を分析したところ、扶桑社版の目次(82項目)に2つが追加されただけで、歴史歪曲で一貫する大同小異な内容」とし「文部科学省が扶桑社版をやや書き替えたレベルの教科書を審議対象にしたのは、常識的に理解しにくい。日本社会全般に広がる右傾化のレベルから注視すべき必要がある」という立場を表した。

01年4月から2回にわたり検定審査を通過した扶桑社版は、皇国史観に基づく日本の帝国主義を美化し、韓国侵略を正当化するなどの内容を盛り込んでいる。そのため、初めて検定を申請する段階から、韓国・中国はもちろん日本内でも大きな反発を買うなど物議をかもしていた。

現在、扶桑社版の教科書を採用している中学校は全体の0.4%だ。教科書検定は4年に1回ずつ行われる。


「軍強制」の教科書復活は困難 沖縄戦集団自決の記述

2009/01/08 中国新聞ニュース

 沖縄戦の集団自決をめぐる教科書検定問題で、一部執筆者らが目指していた「日本軍が県民に強制した」との記述の復活は、二〇〇九年度から使う高校日本史教科書では困難となったことが八日、分かった。

 集団自決に対する検定で、「軍が強制」との表現を退けられた教科書会社五社が、文部科学省に記述の訂正申請をしない方針を固めたためで、印刷日程からも今春の復活は不可能とみられる。

 執筆者らは交渉を続けているが、集団自決については「軍の関与で、自決に追い込まれた」との現在の記述が当面続くことになりそうだ。

 文科省は〇七年三月末、集団自決について、これまで認めてきた「軍が強制」との記述を退ける教科書検定審議会の検定意見を公表。教科書会社は意見を受け入れ、「強制」の記述を削除したり修正したりして検定合格した。

 しかし、沖縄で〇七年九月、これに抗議する大規模な県民大会が開かれた。文科省は反発を考慮し、教科書会社側を促す形で訂正申請を受け入れたが、強制という表現ではなく「軍が関与」との表現で同年十二月にいったん決着した。

 その後も沖縄の市民団体や執筆者らは記述復活を求めてきたが、会社側は「軍関与の記述が認められ一定の成果はあった。これ以上踏み込んだ記述は難しい」との考えを示すなどし、訂正申請の動きは途絶えたという。

 文科省幹部は「訂正を認めるには、現在の記述では学習に支障があるという根拠が必要。軍の関与という記述に問題はない」と述べ、訂正申請があっても、認められる可能性は低いとしている。

【主張】教科書検定 事後公開が信頼性高める

2008.12.6 MSN産経新聞

 教科書検定の過程を検定終了後に公表する改善案が文部科学省から示された。公表されるのは、教科書調査官の調査意見書や検定審議会の議事概要などだ。検定の透明性と信頼性を高めるためのおおむね妥当な改善内容である。

 これまでは検定前の記述と検定意見、検定後の記述だけが発表され、調査官がどんな意見を付け、それが審議会でどう議論されたかは詳しく分からなかった。

 このため、国民の知らないところで、中国や韓国の意向を受けた外務省サイドが検定に圧力を加えるケースがあった。いわゆる「新編日本史・外圧検定事件」(昭和61年)や元外交官の検定審議会委員による「検定不合格工作事件」(平成12年)である。

 これからは、事後ではあるが、検定経過が一定程度、公表されることにより、外務省もそのような干渉はしにくくなるはずだ。

 現行の検定済み教科書を開いてみると、学問的には破綻(はたん)した慰安婦“強制連行”説をあたかも真実であるかのように記述している例が、いくつも見られる。南京事件の犠牲者数について、中国当局発表の「30万人」をも上回る「40万人」とする記述が検定をパスしたこともある。

 検定経過が事後公開されるようになれば、教科書調査官や検定審議会委員は国民の目を意識し、より緊張感をもって検定業務や審議に臨むことが求められる。

 審議会の審議そのものを原則公開すべきだという意見もあるが、行き過ぎだろう。検定審議会の審議は、外部の意見や先入観にとらわれず、静かな環境で公正に行われるべきものだ。審議対象となる申請図書に出版社名や著者名が書かれず、「白表紙本」と呼ばれているのも、そのためである。やはり事後公開が望ましい。

 検定の中身がほとんど公開されていなかった当時、旧文部省記者クラブの各紙・各テレビ局の記者は膨大な量の教科書を分担して取材した。そのうちの一社の記者が得た、検定で日本の中国「侵略」が「進出」に変わったという誤った情報を全社が一斉に報じた。これが外交問題に発展した。

 昭和57年の教科書誤報事件である。検定の中身が少しずつ公開されるようになったのは、それからだ。文科省の検定担当者やマスコミは常に、この苦い経験を頭に入れておく必要があろう。

沖縄集団自決訴訟で請求棄却 「軍が深く関与」と大阪地裁

2008/03/28 中国新聞ニュース
 

 太平洋戦争末期の沖縄戦で軍指揮官が「集団自決」を命じたとする岩波新書「沖縄ノート」などの記述をめぐり、沖縄・慶良間諸島の当時の守備隊長らが、岩波書店と作家大江健三郎おおえ・けんざぶろうさん(73)に出版差し止めなどを求めた訴訟の判決で、大阪地裁は二十八日、請求を棄却した。元守備隊長らは控訴の方針。

 判決理由で深見敏正ふかみ・としまさ裁判長は「集団自決に軍が深く関与したのは認められる」と指摘。その上で「元守備隊長らが命令を出したとは断定できないとしても、大江さんらが命令があったと信じるに相当の理由があった」とした。

 この訴訟は軍の「強制」の記述削除を求めた教科書検定意見の根拠の一つともされたほか、ノーベル賞作家の大江さん本人が出廷し証言するなど司法判断が注目を集めていたが、判決は史実論争に一歩踏み込んだ形となった。

 判決は、軍が関与した理由として(1)兵士が自決用の手りゅう弾を配ったとする住民証言(2)軍が駐屯していなかった島では集団自決がなかった―を挙げた。

 その上で「守備隊長の関与は十分推認できる」としたが、命令の伝達経路がはっきりしないことから「本の記述通りの命令まで認定するのはためらいがある」とした。

 深見裁判長はさらに、沖縄ノートの記述について「かなり強い表現が使われているが、意見や論評の域は逸脱していない」と指摘。これまでの教科書検定の対応や、学説、文献の信用性などから「記載の事実には根拠があった」と結論づけた。

 座間味島の元守備隊長梅沢裕うめざわ・ゆたかさん(91)と、渡嘉敷島の元守備隊長の弟赤松秀一あかまつ・ひでかずさん(75)は二〇〇五年八月、大江さんの「沖縄ノート」、故家永三郎いえなが・さぶろうさんの「太平洋戦争」の集団自決に関する部分をめぐり「誤った記述で非道な人物と認識される」として提訴した。

南京虐殺や上奏文にも言及 日中の第3回歴史共同研究

2008年01月06日 中国新聞ニュース
 

 【北京6日共同】日中間の歴史問題の溝を埋める狙いで両国の有識者が進めている歴史共同研究の第3回会合が6日、2日間の日程を終えた。出席者によると、犠牲者数などで見解が分かれる「南京大虐殺」や、日本では偽書との見方が定着している「田中上奏文」についても言及があったが、事実認識を詰める議論にまでは至らなかった。

 会合後、共同記者会見した日本側座長の北岡伸一東大教授は「白熱した議論もあったが、議論は友好的で率直で学術的に行われた」と総括、6月末か7月上旬までの報告書完成に自信を示した。

 議論は両国をめぐる「古代・中近世史」「近現代史」について双方が論文を提出、意見交換する形で実施。

 6月の最終会合後に報告書をまとめるが、統一文書ではなく、双方がそれぞれ論文を提出し、見解が異なる部分について互いに意見を付けた形式になる。

「軍が関与」の記述で決着 事実上「強制」認める

2007年12月26日 中国新聞ニュース
 

 沖縄戦の集団自決をめぐる高校日本史教科書の検定問題で、教科書検定審議会は「日本軍により集団自決に追い込まれた」など、軍の関与があったことを示す記述で各教科書会社から出された訂正申請を「承認することが適当」と決定し26日午後、会長の杉山武彦一橋大学長が渡海紀三朗文部科学相に報告した。

 検定審は「軍に強制された」といった記述に「誤解のおそれがある」とした検定意見は撤回しなかったが、「住民の側から見れば、自決に追い込まれたとも考えられる」として、集団自決の背景事情などを書き加えることを条件に「強制」があったとの記述を事実上容認した。

 渡海文科相は同日、訂正申請を承認し各教科書会社に通知。今年3月末に検定結果が明らかになって以降、沖縄を中心に反発を招いた検定問題は一応の決着がついた。

沖縄研究者らに意見求める 教科書検定問題で文科省

2007/11/21 中国新聞ニュース

 沖縄戦の集団自決をめぐる高校日本史の教科書検定問題で、文部科学省が複数の沖縄研究者らに意見書の提出を求めていることが二十一日、分かった。集団自決で軍の強制を明記するなどした教科書会社六社からの訂正申請を受けた教科書検定審議会の審議の参考にするとみられる。

 意見書の提出を求められているのは、沖縄戦などを研究している関東学院大の林博史はやし・ひろふみ教授(現代史)ら。

 検定で文科省は、日本軍による集団自決強制の記述修正を求める検定意見の根拠の一つとして、林教授の著書「沖縄戦と民衆」を挙げていた。

 林教授は、これまでの共同通信の取材に対し「文科省は私の著書を恣意しい的に使っている。集団自決は、当日に部隊長が命令を出したかどうかにかかわらず、全体的に見れば軍の強制そのものだ」と話しており、こうした内容の意見書を提出するとみられる。

 この問題をめぐっては、教科書会社六社が訂正を申請。検定審の日本史小委員会は五日に開かれた会合で、沖縄研究者らの意見を聞くことを決めていた。

「日本軍は集団自害強制」 執筆者が訂正記述案を公表

2007年11月02日 中国新聞ニュース

 沖縄戦の集団自決をめぐる教科書検定問題で、高校日本史教科書の執筆者2人が2日、東京都内で記者会見し、文部科学省へ訂正申請する内容として「日本軍は、住民に手榴弾をくばって集団自害と殺しあいを強制した」などとする記述案を教科書会社に示したことを明らかにした。

 2人は「執筆者の個人的立場での公表」とした上で「教科書検定が密室で行われてきたことが問題の根源。風穴をあけるためにも、内容の公開が重要と考えた」話した。

 この教科書会社は当初の申請段階では「日本軍は、県民を壕から追い出し、スパイ容疑で殺害し、日本軍のくばった手榴弾で集団自害と殺しあいをさせ…」と記述。教科書検定審議会の検定意見を受け「日本軍のくばった手榴弾で集団自害と殺しあいがおこった」と軍による強制があいまいな表現に修正した。

 同社は2冊の教科書を発行しており、もう1冊についても同様に軍の強制を明確にした記述案を示したという。

教科書会社が訂正申請 沖縄の集団自決検定

2007/11/01 中国新聞ニュース

 沖縄戦の集団自決をめぐる高校日本史の教科書検定問題で、教科書検定審議会の検定意見を受けて日本軍の強制に関する記述を修正した教科書会社のうち一社が一日、文部科学省に訂正申請をした。関係者によると「軍の強制」を復活させる内容。一連の問題で訂正申請は初めて。

 ほかの教科書会社も近く訂正申請する方針で、文科省は申請が出そろい次第、教科書検定審議会に訂正を承認するかどうかを諮る方針。年内に結論が出る見通し。

 この問題をめぐっては、執筆者の高校教諭が自ら担当した教科書で「日本軍によって集団自決を強いられた」などの記述を盛り込んで訂正申請する考えを公表。ほかの執筆者も「強制」を明記する方針で一致している。

 二○○八年度から使用する高校教科書の検定で、検定審が五社七種類の教科書に対し、集団自決に軍の強制があったとする記述に修正を求める検定意見を付けた。各教科書会社は記述を削除するなどして合格。これに対し、沖縄県で検定意見の撤回を求める議会の意見書可決や県民大会が相次ぐなど、反発が強まっていた。

県民大会 超党派で/「集団自決」修正

2007年08月09日 沖縄タイムス朝刊 1・27面

県議会各派、全会一致

 高校歴史教科書で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を修正・削除した文部科学省の検定意見撤回を求める県民大会について、県議会(仲里利信議長)は八日午後、各派代表者会議を開き、超党派での参加を全会一致で決めた。大会実行委員会には仲里議長が出席する方針だ。仲井真弘多知事も「超党派で、要請があれば参加を検討する」(仲里全輝副知事)との姿勢で、県議会の参加決定によって、県民大会の開催が事実上決定した。時期などは実行委員会で協議される。

 代表者会議では、県議会が検定意見撤回を求める意見書を二度可決したことを踏まえ、「沖縄戦の実相を後世に正しく伝えるために超党派で参加すべきだ」との意見で一致した。

 文科省に対して、「撤回を求める沖縄側の要請にまったく配慮がない」との批判も出た。

 最大会派の自民は、六日の議員総会で意見がまとまっていなかったが、八日の代表者会議の休憩中、議員総会を開いて対応を協議。「軍命の有無を争う裁判の係争中で、司法や検定制度の政治介入になる」との反対意見もあったが、「意見書を二度可決した。軍関与は明らか。検定意見撤回のために大同団結し、文科省に要請すべきだ」という意見が大勢を占め、参加を決めた。

 代表者会議後、仲里議長は「全会一致で参加を決めたことは感慨深く、全県的な運動に広がることを期待したい。米兵暴行事件に抗議した一九九五年十月二十一日の県民大会並みの規模にしたい」と述べた。

 大会の在り方などは今後、実行委で協議するとしている。

 県民大会準備実行委員会メンバーで、県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「県民の代表である県議会が参加することで、大会の実現に向けて大きく前進した。これをきっかけに多くの団体が参加してくれるだろう」と歓迎。

 県や市長会、経済団体などに参加を呼び掛けるため、十日にも準備実行委員会を開き、今後の運営方法などを協議する考えを示した。

 教科書検定では、県議会が二度にわたり抗議の意見書を可決したが、文部科学省は「検定調査審議会の専門家が決めたもので撤回できない」との立場を崩していない。

     ◇     ◇     ◇     

知事も参加検討へ

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる日本軍関与の記述を修正・削除した高校歴史教科書の検定意見撤回を求める県民大会について仲里全輝副知事は八日、自民党県連の新垣哲司幹事長らと県庁で意見交換し、県の対応について「超党派であれば、要請があれば(仲井真弘多知事の)参加を検討する」との考えを示した。

 仲里副知事は意見交換後、沖縄タイムスの取材に対し「知事が出席するかどうかは日程の都合にもよるが、超党派であれば、出席と(大会での)発言を検討する」と説明。仲井真知事も同様の見解だとした。

 これまで仲井真知事が態度を保留していたことについては、「偏った政治的な集会であれば、参加できない。教科書検定問題というのは事実検証の問題であり、感情的、政治的問題ではない。集会そのものを知事が主催することはない」との認識を示した。また、同問題への別の対応として「専門家や学者などによる組織を立ち上げ、事実を検証することも方法の一つではないか」と提案した。

民の声 議会動かす/関係者、安堵と喜び

 「全会一致とはすごい」、「沖縄の底力を見せよう」。高校歴史教科書の沖縄戦に関する記述から「集団自決(強制集団死)」への軍関与が文部科学省の検定で削除された問題で、県議会が八日、全会一致で県民大会への参加を決めたことに、開催準備を進めてきた関係者は安堵し、喜んだ。検定撤回と記述の復活などを求める超党派の県民大会の動きが始まってから一カ月。粘り強い呼び掛けと、県民の怒りが再度、議会を動かした。

 県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長はこの日、県議会各派代表者会議の直後、仲里利信議長、具志孝助副議長から、県民大会への参加決定を知らされた。

 「県議会がまとまるか不安もあった。県民の怒りを受け止めて参加を決めたことは非常に影響が大きい。ほかの団体も積極的に参加を表明するきっかけになる」。仲里議長の手を握り、喜びで声を弾ませた。

 県PTA連合会の諸見里宏美会長は「超党派での参加はうれしい限り。沖縄戦を伝える『教育』として、さらに多くの人に参加を呼び掛ける」と意気込んだ。

 県が「超党派の要請があれば仲井真弘多知事の参加を検討する」としていることに、県婦人連合会の小渡ハル子会長は「大会では県民の代表として、ぜひ知事にあいさつしてもらいたい。県民が超党派で心を一つにして、歴史の改ざんをさせないよう安倍首相に訴えなければ」と強調した。

 「今度は、県民が県議会の決定に応える番だ」と力を込める青春を語る会の中山きく代表。「抗議と要請では終わらせず、教科書への記述復活を勝ち取るため、幅広く団結して県民の底力を見せつけなくては」と大会の成功を訴えた。

 県遺族連合会の仲宗根義尚会長は、近く「歴史的事実を後世に残したい」との思いを盛り込んだ独自メッセージを発表し、県民大会と連動して世論に訴えていく意向を示した。

 六月に教職員を中心に県民大会を開いた高嶋伸欣・琉球大教授。「中央政府と地方という力関係にひるまない、沖縄県民のゆるがない確信を感じる。主権在民のお手本で、『集団自決』への日本軍関与の記述復活とともに、記述復活のための県民の運動も教科書に掲載させたい」と、県民大会開催に向けた動きを評価した。

〈論調〉 日本政府のゆがんだ歴史観

2007.08.08 朝鮮新報

 現在、日本の反動層は自分らの犯罪で染められたこのような歴史的事実が次世代にそのまま知られるのを怖れている。日本軍国主義者の極悪な犯罪性と野蛮性が後世にそのまま伝えられる場合、日本の軍国化を志向する自分らの反動的な政策が国内外の抗議と糾弾を免れないのは火を見るよりも明らかだからである。

 日本反動層の歴史否定行為は、歴史教科書改正にのみ限られていない。

 地球上から朝鮮民族自体を抹殺するために行った「創氏改名」を朝鮮人の要請によるものとわい曲する愚か者がいる一方、世界最大の性奴隷制度であった日本軍「慰安婦」問題を被害者たちの自発的意思によるものであったと覆い隠そうとする者もいる。

 最近は、日本当局者自身が直接前面に出て日本軍「慰安婦」問題に関連して軍の関与と強制性を否定する妄言を吐き、国際社会の怒りを買っている。

 日本の過去の犯罪の清算問題を放置しておいては国際社会の正しい発展についても言えない。最近、国際社会が日本の歴史わい曲、過去の犯罪隠ぺい策動に鋭く反応する理由がまさにここにある。

 日本の同盟国である米国内ですらも日本の過去の犯罪行為を問題視する動きが強まっている事実は、この問題がどれほど深刻な政治的問題として国際社会に提起されているのかをそのまま実証している。

 歴史をわい曲し、過去の犯罪を隠ぺいすることで日本がその責任から逃れられると考えるのは、極めて愚かな妄想である。

 日本は過去の犯罪に関する歴史的責任から逃れようとあがいているが、それは逆に自国の政治的、道徳的破滅を早めるだけである。

 日本が再生できる道は、誠実な謝罪と十分な補償にある。(民主朝鮮7月29日付論評)

研究者団体 撤回決議へ/「集団自決」修正

2007年08月04日 沖縄タイムス朝刊 1・27面

会員3千人歴教協大会 検定問題討議も

 全国の小・中・高校・大学の歴史教育研究者らでつくる歴史教育者協議会(石山久男委員長)は四日午前、神戸市で第五十九回全国大会を開き、高校歴史教科書の沖縄戦の記述から「集団自決(強制集団死)」への軍の関与が削除・修正された文部科学省の検定意見撤回と記述回復を求める決議を採択する。

 同会は約三千人の会員で構成する国内最大規模の歴史教育者らの研究団体。一九八二年の教科書検定では沖縄戦の「住民虐殺」の記述が削除された際、同様の決議を行っている。

 実教出版「高校日本史B」で執筆した石山委員長は「沖縄県民や全国の歴史研究者が抗議しても文科省は態度をあらためようとしない。決議が沖縄の運動を支える一助になってほしい」と期待。その上で「文科省への申し入れや教科書会社、他の教科書執筆者に呼び掛け、記述の訂正を求めていきたい」と話した。

 県歴史教育者協議会の平良宗潤委員長は「決議は県民の怒りや抗議が正当なものであることを示している。全国の歴史教育研究者が支持してくれることは励ましになる」と語った。平良委員長ら五人が出席、平和分科会などで教科書検定問題について報告する。

 決議案は、今回の検定について「強制と誘導という事実をかくし、『集団自決』を住民の自発的なものであるかのように書き直させたことは、歴史研究を踏みにじり沖縄県民が体験し継承させてきた歴史の事実を抹殺する」と糾弾。「戦争と軍隊を美化し、海外で戦争する『日本軍』の復活を目指す憲法改悪につなげようとする意図から発したものだといわざるを得ない」と批判している。

     ◇     ◇     ◇     

「集団自決」授業法紹介/県教育者協が機関誌

 県歴史教育者協議会(平良宗潤委員長)はこのほど、高校歴史教科書の検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述から軍関与が削除・修正された問題について、研究者や教科書執筆者らの論文、授業法などをまとめた機関誌「歴史と実践」を緊急出版した。

 同書は七部構成で、県内外の沖縄戦研究者や教科書執筆者による座談会、論文を集録。軍関与が削除・修正された背景や記述の回復などについて論じている。

 軍関与が削除・修正された検定後の教科書や、六月に開かれた検定意見撤回を求める県民大会などを例に、子どもたちに今回の問題を考えてもらうための授業実践法や「集団自決」があった座間味村や渡嘉敷村のフィールドワークを紹介。県内各地で発生した「集団自決」に関する県史や市町村史の証言リストなどもまとめられている。

 三日、県庁記者クラブで会見した平良委員長らは「授業での実践や資料集として多くの人に活用してもらいたい」と話した。

 同書は千円、三千部を発行した。問い合わせは同協議会機関誌担当、ファクス098(834)5830。

「つくる会」の教科書を採択 都立中高一貫校5校で

2007年07月26日 asahi.com

 東京都教育委員会は26日、定例会を開き、都立の中高一貫校5校で来春から使う公民、歴史の教科書を、「新しい歴史教科書をつくる会」の主導で編集された扶桑社版にすることを決めた。

 扶桑社版が採択されたのは、立川市、武蔵野市に来春開校する都立中高一貫校の中学1年生が使う歴史教科書と、昨年度開校した小石川、両国、桜修館の中高一貫校3校で中学3年生が使う公民の教科書。委員会は公開で行われ、無記名投票の結果、6人の教育委員全員が同社の教科書を選んだ。

 「つくる会」の教科書をめぐっては、都立校の教員やOBらがつくる市民団体が「多くの研究者や教職員から問題点を指摘されている」として採択しないよう求める請願を都教委に出していた。

外交部、日本に歴史歪曲教科書検定の撤回を要求

2007/03/31 朝鮮日報/朝鮮日報JNS 李河遠(イ・ハウォン)記者

 外交通商部は30日、独島(日本名竹島)を日本領土と記述するなど、歪曲(わいきょく)された歴史認識に基づいて記述された日本の高校教科書が文部科学省の検定を通過したことに関し、報道官名義の声明を通じて検定撤回を要求した。

 外交通商部はこの声明で、「日本政府の検定を通過した高校教科書のうち、一部が依然として過去を直視せず、誤った歴史認識に基づいていることに対し、深い憂慮の念を表明する」とした。

 外交通商部の分析によれば、日本の高校教科書で独島の日本領有権主張を強化しようとする表現が計16カ所発見されたという。また、ある教科書は「1693年、朝鮮との間に竹島問題が発生」と記したが、この表現は誤解を招く可能性があるという理由で削除された。最近問題になっている日本軍慰安婦についても、強制動員という表現は使われていない。

 一方、宋旻淳(ソン・ミンスン)外交通商部長官は31日、済州島で麻生太郎外相と会談を開く。

 今回の会談は、安倍晋三首相による日本軍慰安婦関連発言の波紋が国際的な問題として拡散している状況で開かれるだけに、日本側がどのような見解を示すかが注目される。宋旻淳長官はこの会談で、北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議の進行過程に日本が積極的に参加するよう促す予定だ。なお日本は、拉致問題解決まで一切の対北支援に参加しないとの意向を表明している。

 また両国外相は、会談翌日の4月1日に「ノーネクタイ」で散策を楽しみ、韓日両国の協力のあり方について協議する予定だ。

旧日本軍「細菌戦研究」 米が機密文書公開

2007/01/18 The Sankei Shimbun Web site

 米国立公文書館(メリーランド州)は、旧日本軍が当時の満州(現中国東北部)で行った細菌戦研究などに関する米情報機関の対日機密文書10万ページ分を公開した。

石井中将 尋問記録も

 文書目録によれば、石井四郎軍医中将を含む731部隊(関東軍防疫給水部)関係者の個別尋問記録が、今回の公開分に含まれている。また、細菌戦研究の成果を米軍に引き渡したとされる石井中将が、米側に提出する文書を1947年(昭和22年)6月ごろ執筆していたことを裏付ける最高機密文書も今回明らかになった。(ワシントン 山本秀也)

戦争犯罪を立証

 今月12日に公開された機密文書は、ナチス・ドイツと日本の「戦争犯罪」を調査するため、クリントン政権当時の99年に米政府の関係機関で構成された記録作業部会(IWG)が、米中央情報局(CIA)や前身の戦略情報局(OSS)、日本を占領した連合国軍総司令部(GHQ)などの情報文書を分析し、機密解除分をまとめて公開した。

 IWGの座長を務めるアレン・ウェインステイン氏は、「新たな資料は学者らが日本の戦時行動を理解する上で光を当てる」と意義を強調するが、作業は「日本の戦争犯罪」を立証する視点で行われた。日本語資料の翻訳と分析には中国系の専門家も加わっている。

 細菌戦などに関する米側の情報文書は、これまでも研究者が個別に開示請求してきたものの、一度にこれだけ大量に公開された例は少ない。

 情報の一部は34年(昭和9年)にまでさかのぼるが、終戦の45年(同20年)前後4年分が大半を占めている。

 文書内容の大半は731部隊など細菌戦研究に関する内容だ。公開文書の概要によれば、37年12月の南京事件に関する文書が一部含まれる。IWGでは「慰安婦問題」を裏付ける文書も探したが、「目的を達せず、引き続き新たな文書の解析を図る」と述べるなど、調査では証拠が見つからなかったことは認めている。

日本の使用警戒

 細菌戦の研究競争が大戦下で進む中、米側は日本の細菌兵器使用を終戦まで警戒していたほか、奉天(現瀋陽)の収容施設で、連合軍の捕虜に細菌実験が行われた形跡がないかを戦後調べたことが判明した。同じく米本土に対しても、日本からの風船爆弾が細菌戦に使われないか、米海軍研究所が回収した現物を大戦末期に調べ、「細菌の散布装置がついていないことから、当面は細菌戦を想定していない」と結論づけた文書も公開された。

 細菌戦に関する米国の日本に対する関心は、44年ごろから終戦までは、細菌兵器の開発状況と731部隊の活動実態の解明に重点が置かれ、終戦から47年ごろまでは、同部隊関係者への尋問による研究成果の獲得へと、重点が移っている。

 米側が最も強い関心を抱いたのは、731部隊を指揮した石井中将だった。45年12月の情報報告には、千葉県の郷里で中将が死亡したことを装った偽の葬式が行われたことも記されているが、翌46年から47年には中将に関する報告や繰り返し行われた尋問の調書が残されている。

保身引き換えに

 石井中将は自らと部下の保身と引き換えに、細菌戦研究の成果を米側に引き渡したとされてきたが、47年6月20日付の米軍最高機密文書は、こうした説に沿う内容を含んでいる。

 「細菌兵器計画の主要人物である石井中将は、問題全体にかかわる協約を現在執筆中だ。文書には細菌兵器の戦略、戦術的な使用に関する彼の着想が含まれる。石井中将の約20年にわたる細菌兵器研究の骨格が示される見通しであり、7月15日には完成する」

 同じ文書には、「日本南部の山中」に隠されていた「細菌に侵された200人以上から採取された病理学上の標本スライド約8000枚」が、47年8月末までに米側に提供されることも付記されていた。

 米側では日本からの情報収集を急ぐ一方、冷戦でライバル関係となる旧ソ連に細菌戦に関する情報が渡ることを強く警戒していた。ハバロフスク裁判のため、旧ソ連が請求してきた細菌戦関連の証拠引き渡しを渋る一方、約30人の731部隊関係者が「モスクワ近郊で細菌兵器の研究プロジェクトに従事している」とする48年4月の情報報告も今回明らかにされた。

天皇機関説学者を個別攻撃 報復警告し、転向を強要

2006年12月16日 中国新聞ニュース

 【ワシントン16日共同】日本で軍部ファシズムの台頭につながった1935年の「天皇機関説事件」をめぐり、文部省思想局(当時、以下同)が憲法学者ら19人を「速急の処置が必要」など3段階に分類、機関説の修正に応じない場合は講義を担当させないなどの報復措置を警告し、学説の変更を強要していたことが16日、分かった。思想局の秘密文書が米議会図書館に保管されていた。

 事件から70年余。政府が学者を個別に攻撃、転向を迫る徹底した思想統制の過程が個人名や具体例とともに判明した。複数の専門家は、文部省による具体的な圧力の実態を記した文書が確認されたのは初めてだとしている。

 文書は、米国が終戦直後に日本で接収した「各大学における憲法学説調査に関する文書」で、計約450ページ。

米下院委員長、「遊就館」の展示内容見直し求める

2006年09月15日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ワシントン=五十嵐文】米下院国際関係委員会のヘンリー・ハイド委員長(共和党)は14日、日本と中韓両国など近隣諸国の関係に関する公聴会で、靖国神社に併設されている展示施設「遊就館」について、「ここで教えられている歴史は事実に基づいておらず、訂正されるべきだ」と述べ、展示内容の見直しを求めた。

 遊就館をめぐっては、旧日本軍の行為を正当化しているといった批判が日本国内でも出ているが、米議会有力者が公式に歴史観の見直しを求めるのは異例。

 ハイド委員長は「西洋の帝国主義からアジア、太平洋の人々を解放するために日本が戦争を始めたと若い世代に教えているのは困ったことだ。日本の植民地支配を受けた人々は、誰も日本を解放者とは見なしていない」と述べた。

 このほか、公聴会では、トム・ラントス議員(民主党)が日本の首相による靖国神社参拝について、「北東アジアの緊張を引き起こし、米国の安全保障上の利益を傷つけている」として、参拝中止を求めた。

日本で細菌攻撃検討か 731部隊長の直筆メモ

2006/07/21 中国新聞ニュース

 太平洋戦争中に中国旧満州で細菌兵器開発を進めた旧関東軍防疫給水部(七三一部隊)の石井四郎部隊長(陸軍軍医中将)が一九四五年八月の終戦直後、日本に進駐する米軍など連合国軍を標的に細菌攻撃を検討していたことが、同部隊長直筆のメモに記載されていることが二十一日分かった。七三一部隊が終戦直前に特攻隊による細菌攻撃を準備したことは分かっているが、終戦後も部隊長が攻撃の可能性に言及していたことが判明したのは初めて。

 メモの表記は断片的で攻撃計画がどこまで具体化していたかは不明。しかし、メモは軍幹部が「犬死(に)をやめよ」と部隊長に伝えたことを記すなど、当時のやりとりを生々しく伝えている。

 メモは、部隊長が終戦翌日の八月十六日から同二十六日までの動きを大学ノートにまとめた「1945−8−16 終戦当時メモ」。米在住のジャーナリスト、青木冨貴子さんが、部隊長に仕えた旧軍属から入手、同部隊の研究を長年続ける常石敬一神奈川大教授(生物・化学兵器)が解読作業を進めた。

 メモは部隊の終戦処理の方針や経緯を記載。「内地へ出来る限り多く輸送する方針 丸太−PXを先にす(する)」とあり、人体実験用の捕虜「マルタ」に加えて「PX」の暗号が意味するペスト菌に感染した「ペストノミ」を、日本に早期輸送する方針を決めていたことが分かる。

 また「(相模湾に)二十五日米兵上陸 全国にばらまく」「帰帆船ならば人員器材が輸送出来る見込(見込み)」と指摘し、細菌兵器攻撃の可能性に言及。米軍の進駐を前に、兵器関連の要員や器材の搬送を検討していた経緯を記している。

 しかし、米軍先遣隊の日本到着二日前の同二十六日には梅津美治郎陸軍参謀総長や河辺虎四郎参謀次長が「犬死(に)をやめよ」「静かに時を待て」と部隊長に指示。陸軍上層部からいさめられたことを示唆している。

「教科書採択に圧力」安倍氏と自民党を提訴

2006/09/15 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 安倍晋三官房長官が自民党の議員連盟の事務局長時代に政治的圧力を加えて扶桑社の教科書を採択させ、精神的苦痛を受けたとして、東京都杉並区や栃木、愛媛両県、韓国などに住む計193人が14日、自民党と安倍氏に計38万6000円の損害賠償と謝罪広告を求め東京地裁に提訴した。松山地裁にも275人が同様の訴訟を起こした。安倍氏の事務所は「提訴自体確認していないので、コメントは差し控える」としている。

官房長官、当時の政府対応を批判 昭和57年の教科書書き換え問題

2006/04/05 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 安倍晋三官房長官は5日の記者会見で、昭和57年の教科書書き換え問題に端を発した宮沢喜一官房長官(当時)の謝罪談話について「これまでの政府の立場と変わりない」としながらも、「誤報に端を発した問題なのに(中国などの抗議に)『間違いだった』としっかり反論しなかったのは明らかに間違いだった」と述べ、当時の政府の対応を批判した。

 その上で、「結果としてその後、日本は同様の問題が起きても反論しないということになってしまった」と述べ、歴代政権の対応にも疑問を呈した。また、宮沢談話に基づく近隣諸国条項についても「近隣諸国の意見などに配慮しながら、日本が主体的に判断するということだ」と述べた。

 安倍氏は2日、民放テレビ番組で、教科書問題について「中韓両国の抗議を受け、当時官房長官談話を出したが、書き換えの事実はなく、結果として大きな過ちを犯した」と発言した。これに対し、朝日新聞は4日付の社説で「歴史への反省を踏まえた当時の官房長官談話を否定するかのような現在の官房長官の発言は、政府の姿勢に疑念を抱かせかねない」と批判していた。

 安倍氏はこの社説についても「朝日新聞は社説で教科書報道について『ずさんな取材だった』と書いている。それならば誤報と同じスペースでしっかり報道すべきではないか。報道機関として素直に反省していただきたい。問題をすり替えて批判するのは間違っている」と強く批判した。

進む言論弾圧 中国内も疑問視 「冰点」停刊、編集長は徹底抗戦

2006/01/30 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 中国の有力紙「中国青年報」の付属週刊紙「冰点周刊」(水曜日発行)が停刊になり、波紋を呼んでいる。今月11日付同紙に掲載された中国の歴史教科書批判論文に対し、共産党中央宣伝部が「報道宣伝の規律違反」などとして、同紙に「死罪」を言い渡したが、同紙編集長の李大同氏は、処分は憲法違反と抗議、徹底抗戦の構えだ。党の報道規制が相次ぐ中、報道界や知識人の間で胡錦濤政権への疑問の声が高まっている。(北京 伊藤正)

 問題の論文は「現代化と歴史教科書」と題し、中国近代史研究の第一人者として知られる中山大学(広州市)の袁偉時教授が執筆した。教授は、(毛沢東時代の)反右派闘争、大躍進運動、文化大革命の3大災難を経た後、人びとは1970年代末になって「狼(おおかみ)の乳で育った」ことを知ったが、中学の歴史教科書を読み「今も青少年が狼の乳を飲み続けている」のに驚いたと書き出す。

 教授によると、「狼の乳」とは「誤った思想や文化、観点」を指し、●(●=都の者を登)力群元宣伝部長が79年の学術シンポジウムで使ったという。「狼の乳」の実例として、教授は1860年の英仏軍による円明園(北京郊外の清朝離宮)焼き討ち事件と、1900年の義和団事件に関する教科書の記述を指摘した。

 円明園事件について、教科書は「(59年、清朝と天津条約調印のため英仏公使が上陸しようとした際)天津・大沽砲台の将兵が侵略軍の艦船4隻を撃沈し、上陸を強行した900余人を撃退、数百人を死傷させた。一帯の人民も銃砲弾の雨をくぐって戦士を支援、高度の愛国の熱情を表した」(一部略)と記述。

 袁教授は、この翌年、英仏軍が再侵略、北京を占拠し莫大(ばくだい)な賠償金に加え、円明園焼き討ちを招いたのは、愚昧(ぐまい)な清朝皇帝らの大罪であり「愛国英雄の壮挙ではない」と断じた。

 同様に教科書が、8カ国連合軍の侵略に抵抗した愛国行動としている義和団事件についても、北京を中心に殺人、放火、略奪の限りを尽くした義和団を「非人道的、非文明的集団」とし、その結果、6年分の財政収入に相当する賠償金や列強による領土分割を招いたと述べた。

 袁教授は、日本の歴史教科書を批判しながら、中国の教科書も「西洋人は侵略者であり、中国人には何をやっても理があり、たたえねばならない」との「愛国主義(教育)の要求」に沿い、盲目的民族感情をあおっていると批判した。

 この批判は歴史の解釈権を握る共産党には許容できないものだった。李大同編集長によると、中国青年報編集長は論文を一部削除して掲載に同意したが、今月24日、宣伝部が「冰点」の停刊を命じた。宣伝部は「帝国主義列強の中国侵略を肯定、歴史の事実に反し、新聞宣伝の規律に違反、中国人民の感情を傷つけ社会に悪影響を与えた」と断じたという。

 李大同氏は公開状を発表して処分に反発。その中で、昨年も(1)5月25日付の台湾人記者による台湾の実情報道(2)6月1日付の平型関の戦いに関する記事(3)胡啓立元政治局常務委員による胡耀邦氏の回顧記−などを宣伝部が批判したと明らかにし、宣伝部の報道規制は「国民の権利の侵犯」と非難した。

 中国では近年、報道規制が強まり、最近も北京の新聞「新京報」で、編集長への圧力に抗議するストもあった。共産主義青年団の機関紙の中国青年報でも一昨年、デスクと記者の処分問題で同紙名物記者が公開状で、報道干渉に抗議した。

 報道規制は活字・放送メディアだけでなくネット情報にも及んでいる。当局は、報道は党と人民の「喉舌」、つまり宣伝道具と主張、党や指導部のイメージを損なったり、社会不安を招いたりの記事はご法度だ。

 その論理からすれば、従来の共産党の史観と宣伝に反した袁偉時教授の論文は“党への挑戦”ということになる。ただし教授によると、この論文を3年余り前に発表したときには、問題にされなかったという。客観性が基本の科学的発展観を唱える胡錦濤政権下で言論弾圧が進む現状に、保守派台頭の政治的背景を指摘する声も少なくない。

「日本だけ自国中心?」…韓中日歴史教科書比較

2006/01/30 朝鮮日報

 「近現代史とは、“自分の国”だけが唯一闘争し、業績を残した歴史なのか」

 韓中日3か国の歴史教科書の記述が相互交流の内容を記すよりは、むしろ徹底して「自国中心」の側に傾いているとの分析が出された。

 韓国教員大の金漢宗(キム・ハンジョン)教授ら7人の近現代史専攻者らが共同で出版した研究シリーズ「韓中日3か国の近代史認識と歴史教育」は、望ましい歴史認識の共有に向け3か国の近代史認識をすべて批判的に検討したもの。

 ソウル大の辛珠栢(シン・ジュベク)社会発展研究所責任研究員は論文『3国の植民地認識』で、まず日本の歴史教科書について言及した。

 日本では文部科学省の「学習指導要領」により、「帝国主義時代の韓国人と中国人の抵抗を民族運動という名で簡潔に言及するよう」定められているという。

 これは、日本が近隣国家や民族を侵略・支配していた歴史が近代史全体の中心的流れの1つだったにもかかわらず意図的に歴史的真実から目を背けようとしている、との説明だ。

 扶桑社と明成社の教科書は、植民地朝鮮での日本の「恵沢」を強調し、抑圧と収奪を否定する代表的な「植民地美化論」の立場を取っている。

 もちろん最も根本的な間違いを犯しているのは日本の教科書だ。しかし、他の国の教科書には全く問題がないのだろうか。

 韓国の第7回教育課程上の「韓国の近現代史」教科書の日帝時代について書かれた部分は、各時期の代表的な経済政策を通じ日本の経済侵略とそれに苦しむ韓国人の姿を記述している。

 ところが、日本が本国の資本と商品を「輸出」できる「市場」として植民地朝鮮を作ったという記述と、朝鮮の土地を「略奪」し米や資源を「収奪」したという内容が混在している。需要と供給による輸出入という資本主義的経済行為までもすべて「収奪」として画一化する矛盾を内包している、というわけだ。

 また、日本が台湾と満州をどのように支配したかに対する記述が全くなく、周辺の歴史を韓国との関連性の中で見ることができないようにしている、との指摘だ。

 中国は現代史を「中国人民が民族独立と社会進歩を勝ち取るため、反帝・反封建闘争を行った歴史」、すなわち侵略と抵抗の歴史として圧縮している。

 日本軍の占領地域での政策は「野蛮的経済的略奪」と「奴隷教育の実施」に圧縮記述され、収奪と民族抹殺を強調している点で韓国と似ている。

 民族運動に関する部分でも事情は似通っている。春川教育大の金正仁(キム・ジョンイン)教授は、『3か国の民族運動に関する歴史認識の分析』で韓国の教科書が右派と資本主義系列中心の民族運動史を追及し、中国は共産党中心の抗日戦争と社会主義的愛国主義を強調している、と分析する。

 一方、日本は被支配民族の抵抗歴史に対する記述そのものが簡略化されているため、教科書を読んだだけでは「日本は加害者」という明白な歴史的真実をつかみにくい。

 闘争の歴史に対する共有と交流に到達するためには、依然として長き道のりが残されているというわけだ。

◆韓中日3か国の歴史教科書〜近現代史に対する認識〜

@近代化運動に対する認識 韓国:開化派は内在的に形成され、東学運動は民衆改革運動だった。 中国:洋務運動は資本主義発展と外国勢力の拡張を阻止する役割を担った。 日本:明治維新など近代国家理念が周辺国に大きな影響を与えた。

A植民地に対する認識 韓国:日帝の“侵略と収奪”に対する“抵抗”の構図から叙述。 中国:日帝の収奪と民族抹殺に対抗する反帝・反封建闘争。 日本:隣接国に対する“侵略”を希釈し、日本の業績を強調。

B民族運動に対する認識 韓国:右派・資本主義系列中心の民族運動史。 中国:共産党中心の抗日戦争を強調。 日本:被支配民族の抵抗を簡潔に言及。

<資料:「韓中日3か国の近代史認識と歴史教育」>

日韓歴史共同研究、1月にも第2期開始 教科書問題も

2005/12/23 The Sankei Shimbun【東京朝刊から】

 政府は、日本と韓国の専門家による第2期歴史共同研究を来年1月にもスタートさせる方向で最終調整に入った。第2期研究では第1期の「古代」「中近世」「近現代」の3分科会に加え、両国の歴史教科書について研究する「教科書小グループ」(仮称)を設置する。

 政府は、共同研究を日韓関係改善の糸口にしたい考えだ。

 第2期共同研究については、10月の日韓外相会談で小此木政夫慶応大教授を日本側委員長として、年内にも初会合を開く方向で作業を進めることで一致していた。

 第1期共同研究は2002年5月から3年間、3分科会で議論を進め、双方の研究者の論文や討論記録、相手方への批評などを報告書にまとめた。第2期では3テーマの研究を継続するほか、新たに日韓の歴史教科書の(1)共通点(2)相違点(3)歴史事実への言及の有無や分量―などを分析する。

 6月の日韓首脳会談では、教科書研究で日韓が共通の認識に立った部分について教科書編集過程で参考にすることで合意。ただ今後は、研究成果を教科書に反映するよう求める韓国と、教科書検定の下で出版社が教科書を発行する制度の日本側との間で激論も予想される。(共同)

扶桑社教科書 国民参加へ意見募集 つくる会 次回検定に反映

2005/11/26 The Sankei Shimbun【東京朝刊から】

 新しい歴史教科書をつくる会(八木秀次会長)は、同会のメンバーらが執筆した中学歴史・公民教科書(扶桑社発行)の記述に対する一般の意見を募集、反映した上で次回の平成二十年度検定に申請する「国民の教科書」運動を始めた。「国民が作った教科書という性格を強く打ち出すことで内外の批判をはね返したい」としている。

 扶桑社の教科書は今年度行われた採択で、前回(平成十三年度)の約十倍に増えたものの歴史0・4%、公民0・2%と低迷。原因について、つくる会は(1)中国や韓国による外圧(2)過激派を含む国内の反対勢力による妨害(3)教育界と教科書会社の癒着−を挙げている。

 一方で、つくる会の考えに近い採択関係者からも「教材としての完成度があと一歩だ」「子供たちに考えさせる内容がもう少しあれば採択できた」といったアドバイスが寄せられた。採択を決める教育委員会の席上、些末(さまつ)な記述内容にこだわる教育委員もいた。

 このため、次回の二十年度検定、二十一年度採択、二十二年度使用開始の教科書は“開かれた執筆”“良識ある国民による検定”を目指すことになった。意見を反映した上で検定申請本の“たたき台”をホームページで公表したり、市販することも検討している。

 八木会長は「多くの国民が教科書作りに参加することで『自分たちの教科書』という意識が生まれる。中国や韓国の抗議にも『国民が作った教科書だ』と反論することができる」と話している。

 つくる会は特に教育関係者からの意見を重視する方針で、全日本教職員連盟、全国教育管理職員団体協議会、愛媛県教育研究協議会など非日教組・全教系教職員団体や私学経営者などから意見を聴く場も設けたいとしている。

 来春から使用される扶桑社教科書は書店で市販されており、つくる会はホームページ(http://www.tsukurukai.com)の問い合わせフォームやファクス(03・5804・8682)で意見を受け付けている。

韓国の大学入試問題 扶桑社教科書を批判 各国の記述比較

2005/11/26 The Sankei Shimbun【東京朝刊から】

 【ソウル=黒田勝弘】韓国で二十三日に実施された大学入試の全国共通国家試験で、日本の扶桑社版歴史教科書を批判する問題が出され話題になっている。入試や試験勉強を通じ、教育現場で生徒たちに日本の歴史教科書に対する批判を浸透させようというもので、韓国における“反日教育”の実情を物語るものだ。

 韓国の大学入試全国共通テストは「修能(修学能力試験)」といわれ、その中の選択科目である「韓国・近現代史」(二十問)で「歴史認識の差を克服するための方法は?」とする問題が出された。韓国、中国、日本の歴史教科書の記述を比較することで、日本を批判させる仕組みになっている。

 問題では、韓国と中国の教科書からは「日本の侵略戦争」を強調し、日本による「略奪」や「弾圧」の記述を引用。これに対し「日本の扶桑社教科書」から「日本の戦争目的はアジアを欧米の支配から解放し“大東亜共栄圏”を建設することにあると宣言した」などの部分を紹介し、歴史認識の違いを克服するため「適切でない方法」として「自国中心の歴史記述を奨励する」を正解として選ばせるようになっている。

 このほか、一九六五年の日韓国交正常化についても「(過去について)謝罪を勝ち取れなかった」とか「経済的な対日依存度が高まるきっかけになった」など否定的な評価が正解として挙げられ、経済発展への寄与など肯定的な評価は無視されている。

 一方、高校の「近現代史」教科書については最近、韓国内でも親北朝鮮的で左翼的偏向ぶりが問題になっているが、今回の入試問題でも、「(世界的な)社会主義体制崩壊に対する北朝鮮の対応は?」という問いで「北朝鮮の体制の優秀性を宣伝し制限的に経済開放を推進した」を正解として選ばせている。

 しかし、韓国現代史における最大の出来事である、北朝鮮が引き起こした「朝鮮戦争」に関する問題は見当たらない。

 韓国では入試問題でも一九四五年の解放以前の歴史についてはほとんどが反日的な内容で、解放後の現代史では労働問題を取り上げるなど近年の韓国の政治・社会状況を強く反映したものになっている。

扶桑社教科書、中学へ配布 「異なる見方」指導資料に

2005/10/13 The Sankei Shimbun【東京朝刊から】

≪福井県と浜松市≫

 福井県教委が来年度、新しい歴史教科書をつくる会のメンバーらが執筆した扶桑社の中学歴史教科書をすべての市町村立中に配布することが十二日分かった。同県内では扶桑社の教科書は採択されなかったが、生徒に異なる見方を提示するため教員の指導資料として配布を決めた。静岡県浜松市教委も扶桑社を含むすべての採択外教科書を全市立中に配布する。(教科書問題取材班)

 福井県内では今年度、五つの教科書採択地区のうち四地区で東京書籍、一地区で帝国書院の歴史教科書が選ばれたが、扶桑社の採択を強く主張する教育委員も多かった。

 県教委は、採択された教科書とされなかった教科書の記述を比較して生徒に幅広い視野で考えさせるため、平成十八年度予算案に指導資料購入費として八十万円を計上する方針だ。

 七十九校ある市町村立中に十冊余りずつ行き渡る計算で、教員が授業に臨む前の教材研究として使うほか、授業で(1)教員が読み上げる(2)生徒に回覧させる(3)スライドなどで映写する(4)プリントにして配る−などの方法で使用される。

 扶桑社教科書を教員に配布する方針は、西藤正治教育長が十一日に県議会総務教育委員会の委員に説明。与党会派が了承したため予算化は確実な情勢だ。

 同委員会の笹岡一彦委員長は「教育長から扶桑社教科書を教員用に配る方針を提示された。正しい歴史観で書かれた教科書を採択するよう求めてきた県議会の審議の趣旨を受け止めてくれたことに敬意を表したい」と話している。

 県教委義務教育課は「詳しいことは決まっていないが、教員が採択外の教科書で教材研究を行うことは意義があり、市町村教委に理解を求めていきたい」としている。

 一方、静岡県浜松市教委は、歴史だけではなく中学校のすべての科目について、採択されなかった全社の教科書を教員用として全市立中に配布する。

 市教委指導課は「採択された教科書が主教材であることに変わりはないが、採択外教科書についても教員の工夫でいろいろな使い方ができる」と説明している。

元日本兵の貢献、ベトナムで認知の動き 「封印の歴史」報道

2005/09/20 The Sankei Shimbun

 ベトナムで敗戦を迎えた元日本兵が、ホー・チ・ミン率いるベトナム独立同盟(ベトミン)に参加、独立を目指した抗仏戦争(第1次インドシナ戦争、1946―54年)を共に戦ったことを公に認知する動きがベトナム国内で出ている。元日本兵の存在はベトナムでは「封印された歴史」だったが、ハノイ大で昨年、研究会が2度開かれたほか、複数のベトナム紙も元日本兵の貢献を大きく報じた。

 8月7日付のベトナム紙ティエンフォンは「ホーおじさん(ホー・チ・ミン)の兵士になった日本兵」の見出しで日本兵が教官を務めたベトナム初の陸軍士官学校元幹部の手記を大きく掲載。「近代的な軍に変わろうとしていたベトミン軍には日本兵の支援が必要だった」などと指摘し、ベトミンに大量の武器を供与した井川省(いがわ・せい)少佐や陸軍士官学校教官の中原光信(なかはら・みつのぶ)少尉ら功績のあった元日本兵数人を実名で報じた。

 抗仏戦争で多くの元日本兵が死亡し、「革命烈士」の称号を贈られた人がいることも紹介した。

 40年にベトナムに進駐した旧日本軍をめぐっては、これまでは「侵略軍」として断罪されることが多かった。近年、両国の経済関係が緊密化する中で、大阪経済法科大の井川一久(いがわ・かずひさ)客員教授らが、残留日本兵の功績を認めるようベトナム政府に強く働き掛けてきたことなどが元日本兵認知の背景にある。

 井川教授によると、ベトミンに参加した元日本兵は約600人。(1)敗戦で日本の将来を悲観した(2)現地に恋人がいた(3)抗仏戦を決意したベトナム人への共感―などが理由という。

 元日本兵は「新ベトナム人」と呼ばれ、ベトミン軍に軍事訓練などを指導して共に戦い、約半数が戦病死したとみられている。54年のジュネーブ協定締結により抗仏戦争が終結した後、150人以上が日本に帰国した。

 井川教授は「抗仏戦を有利に展開する決定的な役割を日本兵が果たしたことを歴史として残さなければならない」と述べ、ベトナムに資料館をつくる活動を進めている。

 似たような戦後を生きた日本兵としては、対オランダ独立戦争に参加したインドネシア残留日本兵の存在が知られている。

 <ベトナムと旧日本軍> 1940年、フランス領のベトナムに進駐した日本軍は45年3月、フランスの植民地権力を解体しベトナムを形式的に独立させた。同年8月の日本の敗戦を機にベトナム独立同盟(ベトミン)の蜂起で8月革命が起き、9月にベトナム民主共和国が独立を宣言し、ホー・チ・ミンが初代大統領に就任。しかし、ベトナムの再植民地化を狙うフランスと衝突し、46年に抗仏戦争(第1次インドシナ戦争)が始まった。ベトナムにとどまった旧日本軍兵士がベトミン側に参加。ディエンビエンフーの戦いで敗れたフランスは54年7月にジュネーブ協定を締結、戦争は終結したが、ベトナムは南北に分断された。(共同)

 ベトナムには、1954年以降に帰還した元日本兵と現地女性の間に生まれた子供が暮らす。正確な人数は不明だが、数百人いるともいわれる。その大多数が父と再会することなく、身分を隠したり差別を受けながら苦難の人生を歩んだ。元日本兵の父を持つ北部タイビン省出身で、現在南部カントー市に住むレ・ヒエップ・チンさん(55)が自らの境遇を語った。

 母は女手一つで4人の子供を育て、大変な苦労をした。母は、貧困の中で父への恨みを言ったものだ。ベトナム戦争が終われば父が帰ってくるのではないかと待ち続けたが、音信はなかった。

 わたしはベトナムにも日本にも受け入れられない存在だった。つらかったのは「日本ファシストの子」とののしられ、あらゆる差別を受けたことだった。共産主義を信じたが、党員になることは認められなかった。ベトナム戦争にも志願したが、入隊は認められなかった。ベトナムがカンボジアに侵攻した後の1979年に入隊が認められ、ベトナム人としてようやく認知されたと感じた。

 90年に突然、父から手紙が来た。「苦労をかけた」と謝罪の言葉が続き、最後に「それぞれの人生を歩もう」と書かれていた。母は怒っていた。これが父からの最初で最後の手紙だった。

 98年に日本にいる息子という人から手紙が届き、その2年前に父が他界したと知った。「遺品を整理していてベトナムの家族の存在を知った」「どうか父を許してやってください」とつづられていた。姉が日本に行き、父の遺骨を分けてもらった。

 母は昨年11月に亡くなった。父を待ち続け、再婚することなく終えた83歳の生涯だった。2人の遺影は同じ祭壇に置いている。父は無責任だと思う。でも一目でいいから会いたかった。(共同)

公民の教科書 扶桑社を採択 武蔵野女子学院中

2005/09/02 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 東京都西東京市の武蔵野女子学院中が来春から使用する公民教科書として、新しい歴史教科書をつくる会のメンバーらが執筆した扶桑社の教科書を採択したことが1日、分かった。来年度に公民を学ぶ3年生は約200人。扶桑社の公民教科書は今年度、栃木県大田原市立中や東京都立ろう・養護学校、玉川学園中(東京都町田市)、日大三中(同)、清風中(大阪市天王寺区)などで採択された。

採択率0・4%どまり つくる会中学歴史教科書

2005/09/01 中国新聞ニュース

 来春から中学校で使われる歴史教科書のうち、「新しい歴史教科書をつくる会」主導の扶桑社版の採択率(シェア)は、現在の在籍者数を基にした試算で0・4%程度にとどまることが一日、共同通信社の集計で分かった。

 0・04%だった四年前の前回より増えたものの、同会が一貫して目標に掲げてきた「採択率10%」にはほど遠い結果に終わった。関係者からは「各地の教育委員会が外交問題などの騒ぎに巻き込まれるのを嫌った結果ではないか」との声も出ている。

 扶桑社版をめぐっては韓国や中国との間で外交問題に発展、国内でも市民グループなどが内容について批判していた。

 集計は各都道府県教委や採択地区などを通じて行った。

 市区町村で扶桑社版歴史教科書を採択したのは東京都杉並区と栃木県大田原市の二地区だけだった。これに東京都立と愛媛県立、滋賀県立の中高一貫校、養護学校などと私立中を合わせると、七十七校で来春から使用される。

 七十七校の在籍者数(来春開校の学校は入学予定者数)計約一万六千三百人を基に試算すると中学生全体の0・44%だった。公民は四十三校(約九千三百人)で、0・25%。

 私立校では、歴史、公民とも扶桑社版の採択が判明しているのは、今回新たに採択した玉川学園中(東京)と明徳義塾中(高知)のほか、常総学院中(茨城)や国学院栃木中(栃木)など九校。歴史のみが岡山理科大付属中(岡山)。公民のみは日大三中(東京)と清風中(大阪)の二校だった。

 来春からの教科書採択作業は、市区町村立の場合、全国に五百八十三ある採択地区ごとに八月三十一日までに行われた。

「中韓の発展、日本に感謝を」 米誌タイム・アジア特集

2005/08/18 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 【シンガポール=藤本欣也】米誌タイムは最新号で、「現代アジア」について特集、シンガポールの元外交官、キショール・マフバニ氏の論文「アジアの再生」を掲載した。同氏はアジアの世紀と呼ばれる今の発展をもたらしたのは自らの文化に対する自信であり、中国や韓国などアジア諸国はそれを提供した日本に感謝の意を表すべきだとの見解を明らかにしている。

 マフバニ氏はシンガポール国立大学のリー・クアンユー公共政策大学院学長。インド系で、国連や米国で長く外交官を務めた。

 同氏はまず、「文化に対する自信は発展の必要条件である」と指摘。英国の植民地だったインドをはじめアジア諸国では欧州の文化の優越性が民衆の心の底に刷り込まれていたとし、「日露戦争でロシアが日本に敗れて初めてインドの独立という考えが生まれた」とのインドのネール初代首相の言葉を引き、「20世紀初頭の日本の成功がなければアジアの発展はさらに遅れていただろう。日本がアジアの勃興(ぼっこう)を呼び起こした」と論じた。

 韓国の場合も、日本というモデルがなければこれほど早く発展できなかったと指摘。中国も、日本の影響で発展できた香港、台湾、シンガポールという存在がなければ、改革開放路線に踏み出さなかったとし、「日本がアジア・太平洋に投げ入れた小石の波紋は中国にも恩恵をもたらした」「(日本を歴史問題で批判する)中国でさえも日本に感謝すべきだ」などという見解を示した。

扶桑社教科書を日大三中も採択 公民「経済の記述充実」

2005/08/12 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 日本大学第3中(東京都町田市)が来春から使用する公民教科書として新しい歴史教科書をつくる会のメンバーらが執筆した扶桑社の教科書を採択したことが11日、分かった。来年度に公民を学ぶ3年生は約230人。

 同校によると、公民担当の3人の教員が各社の教科書を比較。「経済の記述が充実している」「日本のポリシーを中心に書かれている」との評価で一致し、扶桑社を選んだ。公民の科目主任教諭は「中高一貫教育なので、6年間の学習のバランスを重視した。扶桑社の教科書は批判されているようだが、普通の教科書を普通に選んだだけ」と話している。歴史は別の会社の教科書が選ばれた。

 扶桑社の公民教科書は私立では清風中(大阪市)など9校が現在使用しているほか、新たに玉川学園中学部(東京都町田市)が歴史とともに採択したことが明らかになっている。

「感情的」と差し止め却下 扶桑社教科書の採択めぐり

2005/08/11 The Sankei Shimbun

 「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーらが執筆した中学歴史、公民教科書(扶桑社版)を採択対象から外すよう、愛媛県の市民団体メンバーらが県や県教委を相手に申し立てた仮差し止めを、松山地裁は11日までに却下した。

 決定理由で沢野芳夫裁判長は「申し立ては感情的な憤慨の情、不快感、焦燥感によるもので、仮差し止めを行う緊急の必要はない」とした。

 申し立ては「扶桑社版の教科書を採択すれば、アジア地域の人々に耐え難い精神的苦痛と不信感を与え、愛媛県民に対する信頼と友好の回復は不可能」などとしていた。(共同)

扶桑社優勢で継続審議 杉並・教科書採択

2005/08/05 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 東京都杉並区教委は4日、区立中23校と区立済美養護学校中学部で来春から使用する教科書を選ぶ臨時教育委員会を開いた。歴史については新しい歴史教科書をつくる会のメンバーらが執筆した扶桑社の教科書を推す意見がやや優勢だったが結論は出ず、12日に改めて審議することになった。

≪抗議の中核派逮捕≫

 審議は国語、書写に続いて歴史が行われ、扶桑社の教科書について委員の1人が「バランス的に一番妥当。物語があり面白くて興味をひく。カラフルで読みやすい」と明確に支持。別の委員も高く評価した。

 「戦争に向かう教科書だ」と明確に反対したのは1人で、別の1人は「地域学習が少ない」とした。扶桑社を含む3社の教科書を決めあぐねる委員もおり、歴史、公民、地理、地図は継続審議となった。

 区役所には、過激派の中核派が支援する「『つくる会』の教科書採択に反対する杉並親の会」や、共産党と友好関係にある「杉並の教育を考えるみんなの会」のメンバーら反対派約600人(警視庁調べ)が詰め掛け、審議に圧力をかけた。傍聴人数を増やすよう求める反対派の抗議で審議開始は約30分遅れた。

 こうした中、警視庁公安部と杉並署は暴行の現行犯で、中核派活動家で政治団体「都政を革新する会」事務局長、北島邦彦容疑者(45)を逮捕した。調べでは、同日午前8時47分ごろ、区役所前でビデオ撮影をしていた都内の男性(39)に対し「何を撮っているんだ」などと因縁をつけ、バッグのひもを引っ張るなどした。

市民団体メンバーら、扶桑社版教科書の仮差し止め申請

2005/08/02 The Sankei Shimbun

 新しい歴史教科書をつくる会のメンバーらが執筆した中学歴史、公民教科書(扶桑社版)の採択をめぐり、公正が確保されていないとして、市民団体のメンバーら7人が2日、愛媛県などに対し、同教科書を採択の対象から除外することなどを求める仮差し止めを松山地裁に申請した。

 申立書によると、扶桑社は昨年7月以降、検定合格前の申請本を教員らに貸与したり閲覧させたりした。大量の配布は教科用図書検定規則実施細則に違反するとし、違法行為を行っている扶桑社版を県教委が採択対象から除外しないと、結果として優遇することになると主張している。

 先月22日には韓国人や中国人ら577人が、扶桑社版教科書の採択対象からの除外や1人当たり1000円の損害賠償を愛媛県に求める訴えを松山地裁に起こした。(共同)

韓国から新潟市に手紙100通 歴史教科書の採択で

2005/08/01 The Sankei Shimbun

 中学校の歴史教科書採択をめぐり、韓国の中学校教諭や生徒から新潟市の中学校長らにあてて「誤った歴史を覆い隠して美化することは正しいことなのでしょうか」などと、慎重な判断を求める手紙が約100通届いていたことが1日、分かった。

 新潟市教委は「新しい歴史教科書をつくる会」が主導した扶桑社版教科書を採択しないよう求める内容と受け止め「影響されることなく、採択は公正公平に進めたい」としている。

 市教委によると、手紙はハングルや日本語で書かれ、6月中旬から7月中旬にかけて市内の中学校などに届いたという。

 同様の手紙は佐賀、岩手両県の市町村教育長、教育委員らに届いたほか、関東地方各地の教育関係者らにも郵送された。(共同)

扶桑社教科書は町予算で使用へ 茨城・大洗町

2005/07/27 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

≪地区協が再否決≫

 新しい歴史教科書をつくる会のメンバーらが執筆した扶桑社の中学歴史教科書を選定した茨城県大洗町教委と同県第三採択地区協議会(大洗町や水戸市など14市町村で構成)の採択結果が食い違った問題で、同協議会は26日、再協議を行い、再び別の教科書の採択を決めた。同町教委は正式採択を断念。町予算で扶桑社教科書を使用する方針で、来年度の1年生は2冊の歴史教科書で学ぶことになる。

 この日記者会見した加藤一五教育長によると、再協議でも扶桑社を採択すべきだと主張したが、多数決で再び日本文教出版の教科書が選ばれた。これを受けて臨時教育委員会を開いた結果、「これ以上拒み続けると、国による無償配布を定めた無償措置法違反になる」として決定を承認した。

 大洗町は、無償配布で日本文教出版の教科書を受け取る一方で扶桑社教科書を購入する方針だ。法的には扶桑社は副教材となる。

 扶桑社によると、明徳義塾中(高知県)など私立中数校で同社の教科書を副教材として使用しているが、公立中での副教材は初めて。

沖縄戦集団自決「軍命令」…出版物・教科書で独り歩き

2005/07/24 The Sankei Shimbun

 集団自決が軍の命令だったとされてきた“歴史”が法廷で争われることになった。沖縄戦が住民を巻き込んだ悲惨な地上戦だったことは事実だが、軍の残虐性を示す“証拠”の発端は、島の長老と生存者による遺族のための悲しい口裏合わせだったという。最初に書かれた沖縄タイムス社の『鉄の暴風』の記述は大江健三郎氏の代表作『沖縄ノート』だけでなく、故家永三郎氏の『太平洋戦争』など多くの出版物や教科書で独り歩きしている。主なものを拾った。(教科書問題取材班)

 ◆鉄の暴風

 《恩納河原に避難中の住民に対して、思い掛けぬ自決命令が赤松からもたらされた》

 《住民には自決用として、三十二発の手榴(しゅりゅう)弾が渡されていたが、更にこのときのために、二十発増加された。手榴弾は、あちこちで爆発した。…阿鼻叫喚の光景が、くりひろげられた》

 《座間味島駐屯の将兵は約一千余、…隊長は梅沢少佐…。米軍上陸の前日、軍は忠魂碑前の広場に住民をあつめ、玉砕を命じた。…村長初め役場吏員、学校教員の一部やその家族は、ほとんど各自の壕で手榴弾を抱いて自決した》

 ◆沖縄ノート

 《慶良間の集団自決の責任者も、そのような自己欺瞞(ぎまん)と他者への瞞着(まんちゃく)の試みを、たえずくりかえしてきたことであろう》

 《那覇空港に降りたった、旧守備隊長は、沖縄の青年たちに難詰されたし、渡嘉敷島に渡ろうとする埠頭(ふとう)では、沖縄のフェリイ・ボートから乗船を拒まれた。かれはじつのところ、イスラエル法廷におけるアイヒマンのように、沖縄法廷で裁かれてしかるべきであったであろうが、永年にわたって怒りを持続しながらも、穏やかな表現しかそれにあたえぬ沖縄の人々は、かれを拉致しはしなかったのである》

 ◆太平洋戦争

 《沖縄の慶良間列島渡嘉敷島に陣地を置いた海上挺進隊の隊長赤松嘉次は、米軍に収容された女性や少年らの沖縄県民が投降勧告に来ると、これを処刑し、また島民の戦争協力者等を命令違反と称して殺した。島民三二九名が恩納河原でカミソリ・斧(おの)・鎌などを使い凄惨(せいさん)な集団自殺をとげたのも、軍隊が至近地に駐屯していたことと無関係とは考えられない。座間味島の梅沢隊長は、老人・こどもは村の忠魂碑の前で自決せよと命令し、生存した島民にも芋や野菜をつむことを禁じ、そむいたものは絶食か銃殺かということになり、このため三〇名が生命を失った》

 ◆教科書

 《日本軍にスパイ容疑で殺されたり、「集団自決」を強制されたりした人々もあった》《軍は民間人の降伏も許さず、手榴弾をくばるなどして集団的な自殺を強制した》(日本書籍新社の中学歴史)

 《日本軍によって集団自決を強いられた人々やスパイ容疑・命令不服従などを理由に殺された人々もおり…》(実教出版の高校世界史)

 《犠牲者のなかには、慶良間諸島の渡嘉敷島のように、日本軍によって「集団自決」を強要された住民や虐殺された住民も含まれており…》(桐原書店の高校日本史)

 《日本軍に「集団自決」を強いられたり、戦闘の邪魔になるとか、スパイ容疑をかけられて殺害された人も多く、沖縄戦は悲惨をきわめた》(三省堂の高校日本史)

 《戦陣訓によって投降することを禁じられていた日本軍では、一般住民にも集団自決が強いられたり、スパイ容疑や戦闘の邪魔になるとの理由による住民虐殺もおこった》(東京書籍の高校日本史)

沖縄守備隊長遺族、大江氏・岩波を提訴へ 「自決強制」記述誤り、名誉棄損

2005/07/24 The Sankei Shimbun

 先の大戦末期の沖縄戦で日本軍の命令で住民が集団自決を強いられたとする出版物の記述は誤りで、名誉を棄損されたとして、当時の守備隊長と遺族が著者でノーベル賞作家の大江健三郎氏と岩波書店を相手取り、損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こすことが二十三日分かった。

 訴えを起こすのは、沖縄戦で座間味島を守備した陸軍海上挺進隊第一戦隊長を務めた梅沢裕・元少佐(88)と、渡嘉敷島を守備した同第三戦隊長だった故赤松嘉次・元大尉の弟、赤松秀一氏(72)。

 訴えられるのは、『沖縄ノート』(岩波新書)の著者の大江氏と、他にも故家永三郎氏の『太平洋戦争』(岩波現代文庫)、故中野好夫氏らの『沖縄問題20年』(岩波新書)などを出している岩波書店。

 訴状などによると、米軍が沖縄の渡嘉敷島と座間味島に上陸した昭和二十年三月下旬、両島で起きた住民の集団自決について、大江氏らは、これらの島に駐屯していた旧日本軍の守備隊長の命令によるものだったと著書に書いているが、そのような軍命令はなく、守備隊長らの名誉を損ねたとしている。

 沖縄戦の集団自決をめぐっては、昭和二十五年に沖縄タイムス社から発刊された沖縄戦記『鉄の暴風』で、赤松大尉と梅沢少佐がそれぞれ、両島の住民に集団自決を命じたために起きたと書かれた。この記述は、沖縄県史や渡嘉敷島(渡嘉敷村)の村史など多くの沖縄戦記に引用されている。

 疑問を抱いた作家の曽野綾子さんは渡嘉敷島の集団自決を取材し『ある神話の風景』(昭和四十八年、文芸春秋)を出版。座間味島の集団自決についても、生存者の女性が「軍命令による自決なら遺族が遺族年金を受け取れると島の長老に説得され、偽証をした」と話したことを娘の宮城晴美さんが『母の遺したもの』(平成十三年、高文研)で明らかにした。

 その後も、昭和史研究所(代表・中村粲元独協大教授)や自由主義史観研究会(代表・藤岡信勝拓殖大教授)が曽野さんらの取材を補強する実証的研究を行っている。

盧大統領“過去離れ宣言” 教科書改訂が試金石に

2004/07/23 The Sankei Shimbun
 【ソウル=黒田勝弘】韓国・済州島での日韓首脳会談は22日、終わったが、韓国の盧武鉉大統領が日韓の過去問題について「両国の国民感情が異なる限りこの問題ではお互い合意することは難しいため、自分の任期中は(日韓間で)公式の議題や争点としては提起しないようにしたい」(共同記者会見)と述べ注目されている。

 盧大統領として、対日関係に関しある種の“過去離れ”を宣言したものだが、この姿勢が実行に移されるかどうかは「今後、首相の靖国神社参拝や教科書問題など具体的な問題に際し韓国政府がどう対応するかを見なければ何ともいえない」(ソウルの外交筋)というのが大方の見方だ。

 過去問題については、1998年10月の日韓首脳会談で「日韓共同宣言」が発表された際、金大中前大統領も「これで過去は清算された」「韓国政府として今後、外交的に取り上げることはない」と公式に述べている。

 しかしその後、周知のように韓国政府(金大中政権)は歴史教科書問題をめぐって日本を激しく非難し、外交問題として記述修正を要求するという強硬策に転じている。靖国神社参拝問題でも金大中、盧武鉉政権は公式に日本批判を続けてきた。いわゆる従軍慰安婦問題でも韓国政府は国連機関などで日本を非難し続けている。

 ただ盧大統領は、過去問題については韓国国民に依然、わだかまりがあることを指摘する一方で「日本政府および日本国民が持っている認識も重要だ。韓国政府が繰り返し(過去を)問題にした場合、日本国民は反感を感じるかもしれない。課題が残っていることは事実だが(過去問題で)政府が公式に(日本に)強要するのはプラスにならない」と述べ、日本への配慮も強調している。

 また盧大統領は歴史問題を含め「活発な民間交流を通じた認識の接近」の必要性を語っており、過去−歴史問題をできれば政治・外交問題からはずしたいとの考えがうかがわれる。

 その意味では来年の教科書改訂問題が1つの試金石になるが、盧武鉉政権には反日的な左派ないし革新勢力の影響力が強い。このため「盧政権としては支持勢力への配慮もあって対日免罪符とみられかねないすっきりした“過去離れ”は難しいだろう。揺り戻しは覚悟しておいた方がいい」(外交筋)という。

特定著書の廃棄 再発防止指導へ 中山文科相

2005/07/15 The Sankei Shimbun 大阪夕刊から

 栃木県大田原市教委が新しい歴史教科書をつくる会のメンバーらが執筆した扶桑社の歴史・公民教科書を市区町村で初めて採択したことについて、中山成彬文部科学相は15日の閣議後の記者会見で「採択権者である教育委員会の権限と責任において、適切かつ公平に行われたものと考えている」との認識を示した。

 また、千葉県船橋市立西図書館司書によるつくる会メンバーらの著書廃棄問題で最高裁が著者の利益侵害を認定したことについて「特定著書の廃棄は誠に遺憾だ」と司書の行為を批判。「判決の趣旨も踏まえ、今後このような事例が発生することがないよう、公立図書館資料の一層の適切な管理運営を指導していきたい」と再発防止を指導する意向を示した。

つくる会会長「歴史的な第一歩」 扶桑社教科書採択

2005/07/13 The Sankei Shimbun

 新しい歴史教科書をつくる会のメンバーらが執筆した中学歴史・公民教科書(扶桑社発行)を栃木県大田原市教委が採択したことを受け、同会は13日、記者会見し、八木秀次会長は「歴史教育を正道に戻す動きが軌道に乗り始めたことを示す歴史的な第一歩だ」と声明を読み上げた。

 続けて「一部勢力は韓国の反日機運をあおり、特定の教科書を採択させない働き掛けをしている。許すことのできない内政干渉だ」と批判した。(共同)

中韓英訳の歴史教科書、8月上旬から外務省HPで公表

2005年07月09日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 外務省は日本の中学校歴史教科書のうち、近現代史に関する記述を英語、中国語、韓国語に翻訳し、8月上旬からホームページ(HP)で公表する。

 主に、中国や韓国の人々を対象に、「戦前の軍事的な行動を賛美するような教科書は一つもない」(町村外相)ことを示す狙いがある。

 今春の教科書検定に合格した8社すべての教科書を対象とし、近く民間の翻訳会社に翻訳を委託する。

【論考 中韓の教科書】韓国編(5)対北、過去は忘れて和解

2005/07/06 The Sankei Shimbun

<「相手の立場に立ち理解しようという努力は南北関係を進展させる」>

 韓国は朝鮮戦争(1950−53年)から50周年の2000年6月、当時の金大中大統領が記念式演説で戦争責任は旧ソ連の指導者スターリンにあるとし、北朝鮮の侵略責任をついに“免罪”にしてしまった。戦争による韓国側の犠牲者は死傷者150万人(中学『国史』から)。「同族殺し合い」だったあの戦争の後遺症は、分断の悲劇として今に続く。

 ところが日本の「過去」についてはあれだけうるさく、エンドレスで「謝罪と反省」を要求し続けている韓国が、北朝鮮の「過去」は問おうとしない。しかも日本と違って北朝鮮は一度も「謝罪」や「反省」をしたことはなく、その国家体制にも基本的に変化はないというのに。

 国定の中学歴史教科書『国史』の朝鮮戦争の項では、これまでは「南侵する北韓共産軍」として北朝鮮軍の戦車が進撃する写真が大きく出ていた。

 ところが現行の教科書からは削除され、破壊された市街地や捕虜収容所など“おとなしい写真”にかわっている。記述の量も減っている。

 ただ幸いにも戦争の発端については「(北韓は)1950年6月25日未明、三八度線全域にわたって南侵を敢行した」と今のところ(?)北朝鮮による侵略を明記している。高校『国史』も同じだ。

 しかし選択科目の高校『韓国近・現代史』になると「北韓共産軍は国軍(韓国軍のこと)が北侵したとして、宣戦布告もせず攻めてきた」と記述し、北朝鮮支援の中国軍の介入についても「自国の安全を守るという名分で軍隊を派遣した」としている。

 つまり北朝鮮や中国側の主張を、それが韓国としては本来は認められない言い訳に過ぎなくても、そのまま両論併記的に紹介しているのだ。しかし相手が日本となるとこうはならない。日韓近代史で双方の主張を両論併記的に記述した日本の教科書は「歪曲(わいきょく)」といって非難してやまない。

 北朝鮮による被害については朝鮮戦争後のビルマ(現ミャンマー)での韓国大統領一行に対する爆弾テロ(1983年)や大韓航空機爆破事件(87年)をはじめ各種の国家テロなど教科書ではほとんど記述されていない。

 逆に「南北でそれぞれ独裁が強化され敵対感情が高まった」(『韓国近・現代史』)と韓国政治における「独裁」をわざわざ指摘し南北を等距離に見た「どっちもどっち」という記述になっている。

 この論法は結果的に北朝鮮の独裁状況やテロ体質など体制批判をやわらげ、北朝鮮の歴史と現実から目をそらす結果になっている。

 その代わり韓国の教科書が強調しているのが「北朝鮮の変化」や「南北統一への努力」であり北朝鮮との和解・協力の話だ。高校『国史』には2000年6月の南北首脳会談で金大中大統領と金正日総書記がにこやかに笑っているカラー写真も掲載されている。

 日本の「公民」にあたる教科書『道徳』ではとくに北朝鮮に対する融和的記述が目立つ。

 小学5年の『道徳』では「一つの心で平和統一を」という一章があり、過去の歴史抜きで国際スポーツ大会での南北統一チームや、平壌芸術団の公演の様子、食糧や肥料支援など明るい話で満ちている。

 章末には「心に刻もう」として「北韓住民の生活に関心を持つ/平和統一のための活動に関心を持つ/北韓住民が困っているときは助ける/平和的に統一すべきという信念を持つ」−ことが挙げられている。

 中学2年『道徳』の場合、最終章で南北統一の話が35ページにわたって記述されている。北朝鮮の宣伝誌に出てくる「明るく豊かで活気がある」ようなカラー写真がたくさん掲載されている。「北韓社会に対する理解」では教育や文化、集団生活など北朝鮮当局の説明をそのまま批判抜きで紹介し、さらに「そんな中でも北韓の人たちは温かい人情を持っている」とあくまで優しい。

 そして「今や北韓を敵対的な相手と認識したり北韓の否定的な面だけを強調する態度はあらためなければならない」「お互い理解し許す姿勢を持つべきだ」「相手の立場に立ち理解しようという努力は南北関係を進展させる」という。

 批判や問題点の指摘よりひたすら“理解”だというのだ。韓国の教科書の北朝鮮認識は国際的な常識から遠くなりつつある。(ソウル 黒田勝弘)

拉致詳述の教科書選択を 福井県議会が陳情を採択

2005/07/05 The Sankei Shimbun

 福井県議会は5日の本会議で、来年度から使用する中学校の公民教科書に、北朝鮮による拉致問題を詳しく記述したものを選ぶよう求める陳情を賛成多数で採択した。

 陳情書は同県小浜市の地村保志さん(50)の父、保さん(78)ら拉致被害者家族などが提出。採択の際、「県教育委員会を通じ、各市町村教育委員会に指導されたい」との記述は削除された。

 陳情採択を受け、県教委は「国の検定に合格したすべての教科書を適正かつ公正に検討するように市教委に指導している」と話している。(共同)

扶桑社版の不採択求め書簡届く 韓国から島根県に

2005/07/04 The Sankei Shimbun

 中学校の教科書採択をめぐり、島根県の「竹島の日」条例に対抗し「独島の月」条例を制定した韓国・慶尚北道の都升会教育監から4日、島根県の広沢卓嗣教育長あてに、「扶桑社の歴史教科書が採択されないように努力をお願いする」との書簡が届いた。

 書簡は日本語で書かれており、郵送で届いた。「歴史的考え方の違いはあり得ることだが、正確な事実を隠したり、歪曲(わいきょく)したりした場合、日本の学生たちの韓国に対する見方もゆがんでしまうのではないか」などとしている。

 県義務教育課は「要望として受け取るが、採択権限は市町村教育委員会にあるため返事はしない」としている。

 また島根県大田市にも6月29日、姉妹都市の韓国・大田市から扶桑社版の歴史教科書を採択しないよう求める手紙が届き、熊谷国彦市長は7月1日に「友好関係に影響を及ぼすことは、わたしも思うところではない。今後の動向を注視している」とする返信を発送したという。

 両市は「竹島の日」制定後も交流を続けており、28日から韓国側から中学生の交流団が訪れる予定。(共同)

【論考 中韓の教科書】韓国編(4)道徳の中心は愛国・愛族

2005/07/04 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

<「祖国と民族の無窮の栄光のため、身と心をささげ忠誠を尽くすことを誓います」>

 韓国の小中高校にはそれぞれ日本の「公民」にあたる「道徳」という科目がある。小学校(韓国では初等学校という)の教科書『道徳』では3年生から冒頭の第一ページには必ず国旗(“太極旗”という)が大きく出ていて「国旗に対する誓い」が書かれている。

 「私は誇るべき太極旗の前で、祖国と民族の無窮の栄光のため、身と心をささげ忠誠を尽くすことを、固く誓います」

 この「誓い」は学校行事だけではなく国旗掲揚や国歌の演奏、斉唱などが行われる際にはナレーションで必ずといっていいほど登場する。

 『道徳』では学年ごとに国旗理解のためにさまざまな説明が行われているが、5年生の教科書では「国旗掲揚の方法」を教えている。それによると外国の旗と一緒に掲げるとき、全体の旗の数が奇数の場合は韓国の国旗を一番真ん中に、旗の数が偶数の場合は一番左端に掲げる−といったことまで説明されている。

 国旗の保管の仕方などをイラストで教えているのもある。つまり国旗への尊敬心を繰り返し教えているのだが、現実の韓国は反日運動で日本の国旗がしょっちゅう焼かれるなど他国の国旗への尊敬心は弱い。

 さらに余談でいえば近年、北朝鮮への配慮のせいか反金正日デモで北朝鮮の国旗が焼かれそうになると、警備当局は必死になってやめさせるのに、日本の国旗だと知らん顔が多い。

 小学校の『道徳』では礼儀作法や約束、規則を守ること、助け合いなどいわゆる公衆道徳的な内容が多い。それでも5年生版では冒頭の口絵写真は「独立記念館」になっており「国の発展と私」といった章で愛国心を高める。

 それが中学の『道徳』になると「社会生活と道徳」と「望ましい国家・民族生活」からなり、国家・民族の話が全体の半分を占めている。

 前半部分でも「伝統道徳」が強調され、たとえば「外来文化の氾濫(はんらん)」という写真とともに次のような記述がある。

 「今日のような世界化、国際化時代にわれわれのものに対する理解がなければ中身のないうわべだけのものになる。“韓国的なものが最も世界的なものだ”という言葉があるように、われわれのものの大切さを知ってこそ望ましい世界市民として認められるだろう」

 このことは後半の「望ましい国家・民族生活」の次のような記述につながる。

 「(通信・情報革命やNGO=非政府組織=の発達などで)国家は過去の遺物として消え去るものと主張する人も出ているが、過去はもちろん未来もわれわれの安全と福祉の責任を負ってくれるのは国家しかないというのが支配的な見解だ。したがって国と民族を守ろうとするわれわれの意地と努力こそが、われわれを未来社会で人間らしく暮らせるようにしうるのだということをいつも忘れてはならない」

 中学『道徳』の後半には「正しい愛国・愛族の姿勢」という章がある。この章の冒頭にも抗日テロで知られる独立運動家・尹奉吉の胸像写真が掲載されているが、その中に最近も外交的に大騒ぎした「独島(日本名・竹島)」に関する話が写真とともに出てくる。

 「1953年4月20日、鬱陵(うつりょう)島住民の洪淳七が日本人の侵入から独島を守るため“独島義勇守備隊”を組織し、執拗(しつよう)な日本の野心を阻止する役割を担った」

 これが「愛国・愛族の姿勢」というわけだ。もちろん「日本と領有権を争っている」などという客観的な記述はない。そして探究課題として「われわれの歴史において独島はきわめて重要な意味を持っている。その中でわれわれの軍事的、経済的安保と関連し独島が持つ意味が何か書いてみよう」という。

 韓国では中学『道徳』に安保問題も出てくるのだ。しかしそこでは「日本の軍事大国化傾向と米国の新しい安保戦略の樹立による中国とロシアの反発で軍備競争が触発される可能性が出ており、われわれの軍事的安保の脅威要因になりつつある」となっている。

 中国ではなく日米に問題があるというのだ。教科書として果たしてこれでいいのだろうか。(ソウル 黒田勝弘)

【論考 中韓の教科書】韓国編(3)民族の“頑張った”記録

2005/07/03 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

<「独立戦争は、日帝が敗亡するまで絶え間なく展開された」>

 韓国の中学歴史教科書『国史』(国定で一種類)の近代史部分に「独立戦争の展開」という一章がある。日本統治時代に韓国が日本相手に「独立戦争」を展開したというのだ。そういえば、北朝鮮も日朝交渉に際して“過去清算”の一つとして、日本に対し戦時賠償を要求している。

 しかし日本は韓国(朝鮮)と戦争した覚えはない。日本統治時代の韓国は日本に併合されていたため、むしろ多くの韓国人たちが日本軍人として米国や中国など連合国と戦っている。

 したがって1945年、日本が連合国に敗戦し朝鮮半島から撤収を余儀なくされた後、韓国は戦勝国として連合国には加われなかったし、その後の対日講和条約(1951年)にも参加できなかった。これは歴史的事実である。

 なのに韓国の歴史教科書はなぜ日本と戦争したというのだろうか。中学『国史』には次のように記述されている。

 「三・一運動(1919年)以後、わが民族の独立運動はいくつかに分かれて展開された。その主な流れの一つは日帝の侵略に武力で立ち向かい戦った独立戦争と義挙だった。独立戦争は満州と中国本土を根拠に日帝が敗亡するときまで絶え間なく展開された。とくに大韓民国臨時政府は韓国光復軍を創設して日帝に宣戦布告し、連合軍とともに対日戦争に参戦した」

 つまり旧満州での抗日ゲリラ闘争や中国軍(蒋介石軍)指揮下に加わった韓国人など、海外での独立運動のことを指しているのだ。また教科書にいう「義挙」は抗日テロのことで、章の冒頭には1932年(昭和7年)、日本軍占領下の上海で日本人の天長節(天皇誕生日)記念式典に爆弾を投げた尹奉吉が「義士」として写真とともに紹介されている。

 中学『国史』は本文329ページのうち近代史が約100ページを占めている。そのうち日本統治時代にかかわる部分は「民族独立運動」という単元で約30ページある。

 しかし日本支配に伴う徴兵や慰安婦問題など、いわゆる被害については「民族の受難」として10ページ足らずで、残りの約20ページは「三・一運動」「独立戦争の展開」「国内の民族運動」とすべて「日本支配に対しわれわれがいかによく闘ったか」という輝かしい歴史の記述になっている。

 これはソウル南方の天安市にあって児童、生徒の歴史教育の場になっている「独立記念館」の展示も同じである。日本との歴史については日本にやられたという惨めな話より、日本をやっつけたという元気の出る輝かしい話が圧倒的に多いのである。

 韓国をはじめおそらくどこの国の歴史教科書も、自分たちの過去については「暗」より「明」をたくさん記述しているはずだ。日本の教科書だけが「暗」を多く詳しく記述しなければならないというのは通らない。

 韓国の歴史教科書における「対日独立戦争」というのは、韓国としてはそう考えたいということだろう。連合国−つまり国際的には「宣戦布告」をはじめ必ずしも「独立戦争」という評価はされていないが、民族としてよく頑張ったという“力づけ”のためにそう記述しているのだ。

 これに対し日本としては、北朝鮮のように「戦時賠償」という外交問題につなげてきた場合、その見方は拒否せざるをえない。ただ歴史教科書が韓国の見方としてそう記述するのは理解できる。国定の『国史』だからといって日本政府が記述修正を要求するなどということは必要ない。「独立戦争」だったのかどうか、あるいは「宣戦布告」の有効性などは学者、研究者たちが議論すればいい話だ。

 ところで日本の韓国支配を決定付けた1910年の日韓併合の合法、不法は、40年前の日韓国交正常化交渉での意見が対立し、今でも双方の学者が議論し対立している。日韓歴史共同研究委員会においても韓国の学者たちは不法・無効論を主張してやまなかった。

 しかし国際的には合法論が優勢なのだ。そのせいか高校『国史』には併合条約締結の“事実”は記述されていない。(ソウル 黒田勝弘)

【論考 中韓の教科書】韓国編(2)脱中国 好影響に触れず

2005/07/02 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

<「清日戦争で日本が勝利した後、さらに内政干渉を受けるようになった」>

 韓国の高校選択科目の教科書『韓国近・現代史』に「写真と絵で見る歴史」という部分がある。日本統治時代(1910−45年)の「民族文化守護運動」という項目に出ている。1920−30年代(日本でいえば大正末期から昭和の初め)に、韓国社会に登場した「新式女性」や新しい家庭生活のことなどを、当時の新聞の風刺マンガや写真などで紹介している。

 たとえば「革命は台所から」といった話や、家事そっちのけで外出する洋装の姑(しゅうとめ)の姿、ダンスホール開設を要求する女性たち、自ら自動車を運転し、さらにバスの車掌や観光ガイドなど新しい職業に進出する女性たち…。

 日本統治時代というと韓国の歴史教育では暗黒一辺倒で明るい話は一切無い。その代わり日本支配に対する抵抗が無数に記述され、それが教科書では「民族文化守護」などとして記述されてきた。その中で明るい“女性解放”を意味するこの「写真と絵で見る歴史」は異例だ。

 これは近年、韓国で各種の出版物などを通じ活発化しつつある“近代史見直し”の動きに対応する。国定教科書の『国史』をはじめ、これまで歴史教育が日本統治時代を「侵略・収奪とそれへの抵抗」だけで記述してきたのに対し、人びとの日常生活などを含めもっと多角的に見ようというわけだ。

 つまり日本統治下でもたらされた近代化も事実として認めるべきではないかというのだ。「新式女性」でいえば、日本の現代舞踊に目を開かれ世界的な舞踊家になった崔承喜もその1人だ。彼女は自叙伝で、舞踊が社会的にまともに評価されなかった「封建的な母国」のことを嘆いている。

 しかし『韓国近・現代史』は「新式女性の登場」について、日本の影響には触れず「19世紀末にはじまった女性教育で芽生えたわが国の女性解放運動が花咲きはじめたものだ」と説明している。韓国の教科書には日本統治が韓国社会に与えた良い影響は何も書かれていない。

 その一方で韓国が日本に与えた文化的影響については、高校『国史』が「日本に渡ったわが文化」の項を設けて古代文化の伝播(でんぱ)を2ページにわたって記述し、さらに江戸時代の対日使節団「朝鮮通信使」の文化的影響についても中高校『国史』がいずれも詳しく記述している。

 韓国の歴史教科書はいってみれば「良いことは自らの努力の成果で、悪いことはみんな日本のせい」あるいは「わが国は日本に良いことばかりしてきたのに、日本はわが国に悪いことばかりしてきた」ということになっているのだ。

 いわゆる「自国中心主義」ということでもあるが、歴史教科書は多かれ少なかれおそらくどこの国でもそうだろう。韓国は政府をはじめ日本の歴史教科書に対し「自国中心主義」とよく非難する。しかしその程度は韓国の方がはるかにそうだといっていい。

 日清戦争(1894−95年)についてもそうだ。この戦争は近代化の入り口にあった朝鮮半島に対する影響力をめぐる日本と中国(清)の覇権争いだったが、日本の勝利で結果的に韓国は中国の影響から脱する。韓国にとっては国の制度から、人びとの物の考え方、世界観、生活習慣…それに人の名前にいたるまで、長かった中国の“くびき”から逃れるきっかけになった。画期的なことである。

 しかし中学『国史』は「清日戦争で日本が勝利した後、朝鮮はさらに日本のひどい内政干渉を受けるようになった。この時から日本の朝鮮を支配しようとする野心は露骨にあらわれるようになった」とした後、「(国王の)高宗はこの間、落ちていた国の威信を高めるため国号を大韓帝国に、年号を光武と定め、皇帝即位式を挙行して自主国家の姿を備えた」と記述している。

 「帝国」や「皇帝」の呼称、さらには独自の年号は中国からの“独立”を意味する。したがって「自主国家」は、日清戦争の結果という意味で日本がもたらした良い影響といえる。しかし韓国としては後に日本に支配されたため、そうは思いたくない。歴史認識は違わざるをえない。(ソウル 黒田勝弘)

【論考 中韓の教科書】韓国編(1)国交正常化 成果は無視

2005/07/01 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

<「問題はおろそかにしたまま、韓日協定が締結されてしまった」>

 今年6月は日韓国交正常化40周年だった。韓国は1945年、日本の統治から解放された後、20年後の1965年にやっと日本と国交を回復した。韓国にとっては旧支配国と新たな協力関係を結び再出発した歴史的なできごとだった。韓国の歴史教科書は“宿敵”−日本との国交正常化をどう記述しているか。

 中学の国定教科書『国史』は朴正煕政権時代(1961−79年)のひとこまとして「長い間、宿題として残っていた日本との関係を改善し韓日協定を締結した」とだけ書かれている。歴史教科書であるにもかかわらず「1965年」という年がない。しかも「国交正常化」とか「国交回復」といった言葉もない。単に「協定締結」とあるだけだ。いかにもおざなりである。

 だから関連の写真などもないのだが、一方で1992年の中国との国交回復については両国外相が握手する写真が出ている。年も書かれ「中国と修交(国交)」と記述されている。

 こうした韓国の教科書の記述は、韓国が日本との国交正常化とその後の日韓協力関係をいかに軽視、あるいは無視しているかを物語るものだ。

 韓国では「日帝時代」といわれる日本統治時代(1910−45年)の“大過去”は、もちろん暗黒の時代として全否定されているが、1965年以降の日本との“小過去”についてもまともな評価はされていない。

 金大中大統領(1998−2003年在任)が1998年10月、日本の小渕恵三首相とともに発表した「日韓共同宣言」は「日韓両国が1965年の国交正常化以来、各分野で緊密な友好協力関係を発展させてきており、このような協力関係が相互の発展に寄与したことにつき認識を共にした」となっている。

 韓国の大統領としては初めて公式文書で国交正常化後の日本の協力を評価したものだが、歴史教科書には何も反映されていない。

 中学、高校の『国史』には経済発展の象徴として「京釜高速道路」や「浦項製鉄所」の写真がカラーで掲載されている。いずれも韓国が1965年の国交正常化で日本から提供された資金や技術を投入して完成したものだ。これまで学校教育の現場で「日本の協力」の事実が教科書や先生の口を通じて少しでも紹介されてきておれば、韓国国民の対日感情も少しは緩和されていたかもしれない。

 今後はどうだろう。日本との“大過去”にかかわる“暗”だけではなく“小過去”にかかわる“明”が教えられることはないのだろうか。

 韓国の学校の歴史教育では、必修の『国史』のほかに高校生の場合、選択科目で『韓国近・現代史』があり、教科書は国定ではなく検定になっている。保守派などからは「韓国に厳しく北朝鮮にはやさしい韓国版・自虐史観だ」と批判の声が上がっているものだが、日韓国交正常化については参考記述として次のように書かれている。

 「朴正煕政府は日本との修交を要求する米国の支持を得て、経済開発の資金をつくるため国交正常化を急いだ。そして日本の植民地支配謝罪、略奪文化財返還、軍隊慰安婦や強制徴用者、原爆被害者に対する補償、在日同胞の正当な法的地位や待遇などの問題はおろそかにしたまま、無償3億ドルと政府借款2億ドル、民間商業借款1億ドル以上(注・実際は3億ドル)を受け取る条件で韓日協定が締結されてしまった」

 明らかに否定的な記述だ。この教科書では「研究課題」として「韓日協定の問題点を今日の韓日関係を参考にして指摘してみよう」となっている。日韓国交正常化による成果は抜きに「問題点」だけを強調するかたちになっている。

 高校の選択教科書『韓国近・現代史』は韓国社会の現状を反映してかなり左派的だが、最後に「史料で見る歴史」があり、日本の宮崎駿監督のアニメ『風の谷のナウシカ』のポスターが登場している。「日本に対する貿易依存度が高い状況で日本文化が開放され、われわれの生活に深く浸透しつつある」と説明されているが、韓国の生徒たちは否定・批判の中で日本を理解するしかないようだ。(ソウル 黒田勝弘)

外務・文科省、欧米や中韓の歴史教科書を調査へ

2005/04/26 読売新聞 Yomiuri On-Line

 外務、文部科学両省は26日、欧米や豪州、中国、韓国などの歴史教科書について、第2次世界大戦や領土問題でどういう記述が行われているか、調査研究に入る方針を決めた。

 中国や韓国から日本の教科書検定問題について批判を受けていることから、各国の教科書の記述を比較検討することで、「世界の標準的な記述を探り、日本の教科書だけが変わった記述をしているわけではないことを証明したい」(外務省幹部)としている。

 中山文科相は26日の記者会見で、「文科省も世界の教科書、教育の実態調査に必要に応じて協力したい」と述べた。

 また、外務、文部科学両省は、日本の歴史教科書を中国語、韓国語に翻訳し、必要に応じて配布、公表することを検討している。

 中国、韓国では、日本の教科書を「軍国主義賛美」と批判するケースが目立つが、「具体的にどの記述が該当するか、指摘できる人はほとんどおらず、先入観や誤解に基づいて批判するケースが圧倒的に多い」(外務省幹部)ためだ。

 これに関連し、町村外相は26日の参院外交防衛委員会で、日本の教科書検定問題に関して、「検定制度そのものを理解していない国が多い。まず、中国や韓国の日本大使館のホームページで、検定制度を各国の言葉で説明する」との方針を明らかにした。

教科書の検定資料を公開 東京都の研究センター

2005/04/25 The Sankei Shimbun

 来春から使用が始まる中学校教科書の検定資料が25日、財団法人教科書研究センター(東京都江東区)で公開された。資料は検定に合格した教科書の見本や検定意見書などで、7月まで土、日、祝日を除き閲覧できる。

 東京以外では、6月1日からの静岡市など全国7カ所で公開される予定。教科書の見本は6−7月に全国約800カ所の教科書センターでも展示される。(共同)

歴史教科書問題、シンガポールが批判声明

2005/04/22 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ジャカルタ=花田吉雄】シンガポール外務省は22日、日本の歴史教科書問題について、「アジアでの太平洋戦争について、かなり変わった解釈をした教科書が日本の当局によって採択されたことは不幸だ」との声明を発表した。

 4月に文部科学省の検定を通過した中学歴史教科書をめぐり、中国、韓国などからの批判が高まって以来、シンガポール政府が公式に批判したのは初めて。声明では「日本と中国、韓国との関係が緊張することは、地域全体にとって利益にならない」としている。

「つくる会」敗訴見直しへ 蔵書廃棄で6月上告審弁論

2005/04/18 The Sankei Shimbun

 千葉県船橋市の図書館が著書などを大量廃棄したとして、「新しい歴史教科書をつくる会」と作家ら7人が慰謝料など2400万円の支払いを求めた訴訟で、最高裁第一小法廷(横尾和子裁判長)は18日、つくる会側の船橋市に対する上告を受理し、6月2日に弁論を開くことを決めた。

 弁論が開かれることから、つくる会側の請求を全面的に退けた一、二審判決が何らかの形で見直される公算が大きい。廃棄を行った司書にも連帯しての支払いを求めていたが、第一小法廷は上告を受理せず、この点についてはつくる会側の敗訴が事実上確定した。

 一、二審は「司書の廃棄処分は市に対する違法行為」としたが、「市や図書館の職員に(つくる会側の)書籍購入義務はなく、著者に対して、市民に閲覧させる義務を負うわけでもない」と判断し、違法性を否定した。

 つくる会側は上告受理申し立て理由書で「一、二審判決の判断では、全国一斉に特定書籍の廃棄が可能になる」「司書の行為を違法としながら、著者に損害はないという判断は誤りだ」などと主張している。

 一、二審判決によると、市立西図書館の司書は2001年8月、つくる会編集の書籍など107冊を廃棄基準に該当しないのに処分した。当時、つくる会主導で扶桑社が発行した教科書の採択をめぐり、各地で激しい論争が起きていた。(共同)

韓国KBS シンポ隠し撮り放映 つくる会「発言歪曲し報道」

2005/04/16 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 KBS(韓国放送公社)テレビが、10日に東京都内で開かれた新しい歴史教科書をつくる会のシンポジウムを隠し撮りした映像を放映したことが15日分かった。つくる会は「内容も、韓国の視聴者に誤解を与えるものになっている」として、法的措置も含めて対応策の検討に入った。

 隠し撮り映像を流したのは11日深夜の報道番組など。パネリストの1人が「韓国の学者が『元慰安婦の団体など韓国の反日運動の背後に北朝鮮がある』と発言した」と述べたことを批判的に紹介。これを受けた韓国の新聞が「つくる会が妄言」と報道している。

 つくる会は当日、無許可の撮影、録音を禁止。かばんの中にテレビカメラを隠し入場、2階席から隠し撮りしていた2組の韓国人取材クルーを発見し退場させたが、KBSの映像は1階席から撮られていた。

 教科書をめぐるKBSの取材は過熱しており、3月25日には、つくる会メンバーらが執筆した扶桑社の歴史教科書を採択した愛媛県立今治東中の前で「歴史をどう教わっているのか」「竹島問題をどう考えるか」などと生徒に取材。

 今月13日には東京・本郷のつくる会本部に取材クルー5人が無断で入り込み、退去させられた。

 つくる会は「隠し撮りとその放映、歪曲(わいきょく)は報道のモラルに反するだけでなく、建造物侵入罪や著作権法違反に問われる可能性があり、対応を急ぐ」としている。

 KBS東京支局の話「この問題はわれわれとつくる会の問題であり、報道機関にコメントできない」

扶桑社の教科書 つくる会HPに中国・韓国向け翻訳版掲載へ

2005/04/16 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 中国で大規模な反日デモが起きるなど歴史教科書に対する中韓両国の反発を沈静化するため、新しい歴史教科書をつくる会(八木秀次会長)は同会のメンバーらが執筆した扶桑社の歴史教科書の全文を中国語と韓国語に翻訳。来週中にもホームページ(HP)に掲載する。

 つくる会は「中韓では実物を読まないで『歴史の歪曲(わいきょく)』などと非難している。実物を読んでも批判されるかもしれないが、冷静で建設的な議論をするために全文の翻訳に踏み切った」としている。今春検定に合格した扶桑社の歴史教科書は現行版を大幅に改訂した上、中国や朝鮮半島をめぐる近現代史の部分で文部科学省からの検定意見を受けて修正している。

 一方、外交や教育問題のシンクタンク「日本政策研究センター」(伊藤哲夫所長)は15日、中国や韓国の歴史教科書記述を詳細に検証したパンフレット「ここがおかしい中国・韓国歴史教科書」を発行した。同センターは「中韓の教科書は反日宣伝にすぎず、両国政府は『日本が正しく歴史を認識すべきだ』という資格はない。日本の教科書と比較してほしい」としている。300円。問い合わせはTEL03・5211・5231。

歴史・公民、全社に「拉致」 中学教科書検定結果

2005/04/05 The Sankei Shimbun

 来春から使われる中学教科書の検定結果が5日、文部科学省から発表された。北朝鮮による拉致事件を取り上げたのは平成13年の前回決定発表時は公民の1社だけだったが、今回は歴史と公民の全社に登場した。歴史では、「慰安婦」という文言は本文から姿を消したものの慰安婦を意味する記述は残るなど、古代から近現代まで韓国など近隣諸国に配慮した自虐的傾向は変わっていない。また、「ゆとり教育」批判を受けて、数学で解の公式、理科で元素周期表が復活するなど“学力回帰"が鮮明に表れた。

 拉致事件をめぐる記述は歴史8社、公民8社のすべてに登場。特に、新しい歴史教科書をつくる会のメンバーらが執筆した扶桑社の公民教科書は巻頭グラビア、人権問題、防衛問題、課題学習の4カ所で取り上げた。

 一方、帝国書院は歴史、公民ともに年表だけで触れるなど記述量にはばらつきがある。扶桑社は5日、歴史でも拉致事件の記述を大幅に増やすため文科省に自主訂正を申請することを決めた。

 韓国が批判している竹島(島根県隠岐の島町)の記述については大阪書籍と扶桑社が公民で取り上げた。

 平成8年の検定発表時に歴史の全社に登場した「従軍慰安婦」「慰安婦」「慰安施設」の言葉は、本文では帝国書院の「慰安施設に送られた女性」だけになったものの関連記述は計4社に残った。豊臣秀吉の朝鮮出兵や先の大戦を「侵略」とする一方で、元寇を「遠征」、ソ連の対日参戦を「進出」と書くなど自虐的な二重基準や、史実に反した記述も是正されていない。

 前回の教科書採択で「内容が高度だ」と指摘を受けた扶桑社は、歴史の監修者に岡崎久彦元駐タイ大使を迎え入れ、公民の監修者に2人の元文部省教科書調査官を加えるなど執筆者を入れ替えた。

 現行のA5判からB4判に大きくし、文章を平易にして図版や資料をビジュアル化。神話の記述を減らして教育勅語全文を要約にするなど内容も整理した。同社は「教材としての学びやすさを重視した。学習指導要領に最も忠実な教科書という骨格はまったく変えていない」と説明している。

「日本政府が歴史わい曲にかかわる」在日韓国人3・4世が訪韓

2005/04/01 中央日報 ベック・イルヒョン記者 < keysme@joongang.co.kr >

日本の歴史教科書わい曲は「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)と日本政府の合作、だとの見方が出ている。

およそ3万人にのぼる在日韓国人3世・4世らが会員に所属している在日本大韓民国民団(民団)傘下の在日本大韓民国青年会のキム・ジョンス事業部長など10人は、1日、ソウル・プレスセンターで記者会見し「文部科学省と自民党幹事長・女性局長らが『つくる会』推進大会に参加するなど日本政府と『つくる会』が連係している」と強調した。

日本の教科書わい曲問題と関連し、在日韓国人3、4世が韓国で記者会見したのは今回が初めて。青年会は「最近、自民党議員が中心になり、歴史わい曲のための政治組織を再び結成し、『つくる会』教科書の採用を全面支援することを決めた」とし「日本政府の歴史政策を左右する文科省の各ポストに、『つくる会』支持者が相次いで任命されるのも問題」だと指摘した。

また「『つくる会』と地方議員、教育委員との連係も問題」とし「実際に、『つくる会』を支持する道知事、教育委員会、白鳳高校の顧問は昨年、白鳳高校が、極右教科書を採用する過程で、緊密に協力している」と主張した。青年会は、朝日ビールと三菱重工業などが『つくる会』の資金源になっており、歴史わい曲を支えている、と指摘した。

青年会側は「万が一、歴史わい曲教科書が採択されれば、日本人だけでなく日本学校に通っている在日韓国人生徒に誤った歴史観を与えるようになる」とし「同化政策と民族差別、不当な歴史教育のため、実名を放棄し、民族の歴史を学ぶ機会さえ奪われた在日韓国人としては、教科書問題を決して見すごせない」とした。

一方、青年会は「感情的な反日デモと交流中止は、韓国に好感を持っている日本人に『反韓感情』を与える」とし「わい曲教科書を進めている勢力と日本国民を区別し、対応する必要がある」と強調した。

従軍慰安婦の記述は不適 歴史教科書で文科政務官

2005/03/31 The Sankei Shimbun

 下村博文文部科学政務官は31日の参院文教科学委員会で、従軍慰安婦に関する教科書の記述について「子どもたちの成育、発達段階を考えると、中学生の歴史教科書に慰安婦という言葉を入れることは適切ではない」と述べ、中学校の教科書にはふさわしくないとの考えを示した。

 下村氏は、中山成彬文科相が昨年11月、「従軍慰安婦や強制連行という言葉が(教科書から)減ってきてよかった」と述べたことに関連、「慰安婦は当時存在し、それは否定しない」としつつも「強制連行や従軍慰安婦という言葉は当時、使われていない」と指摘。「使われていない言葉を教科書に使うことは適切でない。その意味で減ってきてよかったという視点から(ホームページなどで文科相発言を)支持した」と述べた。

 また、従軍慰安婦などの言葉について「マルクス・レーニン主義(者が使う)用語として、1960年代になって学説として出た」と強調した。民主党の神本美恵子氏への答弁。(共同)

中国の駐日大使、教科書検定に注文

2005/03/31 読売新聞 Yomiuri On-Line

 中国の王毅駐日大使は31日、民主党議員の会合で講演し、「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーらが執筆した扶桑社の中学社会科教科書について「日本政府が言っていることと、かなりかけ離れたことを書いている」と指摘した。

 「(検定に合格すれば)OKを出している日本政府の考え方と思われる。国際的に認められている認識の範囲でやることが必要ではないか」と日本政府に注文した。

中国「歴史問題で責任ある態度を」…日本をけん制

2005/03/24 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【北京=竹腰雅彦】中国外務省の劉建超・副報道局長は24日の定例会見で、日本の国連安保理常任理事国入り問題について、「日本が国際社会で更なる役割発揮を望むなら、歴史問題で正確かつ責任ある態度が必要だ」と述べた。

 中国の民間インターネットサイトは、日本の常任理事国入り反対を呼びかける活動を展開し、すでに40万人を超えるネット署名を集めている。これについて劉副局長は、「反日感情ではなく、日本に歴史問題で行動を求めるものだ」との見解を示した。

韓国議員数十人も提訴へ 愛媛のつくる会教科書選択

2005/03/24 The Sankei Shimbun 大阪夕刊から

 愛媛県教委が扶桑社版の歴史教科書を採択したことで「侵略を美化・合理化し、再び加害行為を与えるのではないかという恐怖感と精神的苦痛を与えた」などとして、国会議員を含む韓国人と中国人ら計200人以上が加戸守行知事らを相手取り、損害賠償を求めて30日、松山地裁に提訴することを、支援するグループが24日、明らかにした。

 参加する国会議員は数十人で、うち8人が提訴日に来日する予定。知事と教育長への面談を求めている。

 歴史教科書の採択をめぐっては、同グループや別の韓国人らが原告となって採択の無効確認などを求め、訴訟を起こしているが、裁判所は韓国人原告に1人5万円の供託金支払いを命じ、原告側は拒否。実質審理に入っていない。また、同県の現職教員ら2人も同様の訴訟を起こしている。

政府、国際機関で日本の教科書問題を提起へ

2005/03/23 朝鮮日報 権大烈(クォン・デヨル)記者 dykwon@chosun.com

 政府は日本の歪曲教科書問題を国際機関の会議などで積極的に提起し、広報することにした。

 政府は23日、 金永植(キム・ヨンシク)教育人的資源部次官の主宰で歴史教科書歪曲対策班・第2次会議を開き、こうした方針を骨子とする「日本・歪曲歴史教科書対応方策」をまとめた。政府当局者は「日本の歪曲教科書問題を議論するための適切な機会があれば、国際舞台で教科書問題を取り上げるといった立場を再確認した」とし、「国連教育科学文化機関(ユネスコ)会議などになるだろう」と述べた。

 政府はまた、4月5日の日本文部科学省の教科書検定結果が出るまでは、歴史教科書の歪曲された部分の是正に力を入れ、その後には両国の民間団体および国際社会と緊密に協力し、歪曲教科書の採択および拡散を阻止することにした。

日本の歴史教科書、韓国の「歪曲」対策チームが初会合

2005/03/15 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ソウル=浅野好春】韓国政府は、日本で検定中の中学社会科教科書への対応策を検討するために、青瓦台(大統領府)や関連省庁の局長クラスが参加する「日本の歴史教科書歪曲(わいきょく)汎(はん)政府対策チーム」を設置、15日、初会合を開いた。

 対策チームが特に問題視しているのは「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが執筆した扶桑社(本社・東京)の教科書。同教科書の採択率を最小限に食い止めるため、日韓の市民団体の連携による「採択阻止運動」を側面支援していくことを確認した。

 潘基文(パン・ギムン)外交通商相はこの問題に関連して15日の閣議で、今回の検定対象の歴史教科書が「4年前に発表された内容より後退してはならないと、外交ルートを通じて日本側に伝えた」と明らかにした。

韓国 教科書反日早くも攻勢 日本側知識人と“共闘”活発

2005/03/12 The Sankei Shimbun

 【ソウル=黒田勝弘】日本での四月の新教科書検定結果の発表を前に、韓国マスコミが早くも反日キャンペーンを始めている。背景には「新しい歴史教科書」(扶桑社版)に対する反対運動を進めている日本の日教組系団体や知識人による“共闘”の働きかけがあるほか、竹島をめぐる領土問題での韓国内の反日感情の盛り上がりがある。韓国マスコミの教科書批判は「歪曲(わいきょく)」と決めてかかったうえで、気に食わない部分を誇張した相変わらずのもので、居丈高な非難に終始している。

 十一日には日韓共闘団体の「アジア平和歴史教育連帯」がソウルで記者会見し、「日本の極右教科書」は「これまでよりはるかに改悪された内容だ」としたうえで、「日本は朝鮮の近代化を援助した」といった“事実”についても「植民地統治を露骨に美化している」などと非難した。

 新しい教科書の内容はまだ公表されていないが、韓国マスコミは日本側の入手情報などを基に非難を加えている。それによると、新版では日韓関係の記述は減る見通しだとされるが、これについては「過去の隠蔽(いんぺい)」などとしている。

 このところ日韓共闘の動きは活発で、各種のセミナーなどに日本の学者や活動家が招かれて、韓国側と一緒に扶桑社版教科書非難や日本政府批判をやっている。

 五日には韓国の歴史教育研究会や歴史学会などの主催で「日本歴史教科書に対する共同対応策」と題する共同セミナーが開かれ、日本からは君島和彦・東京学芸大教授や今野日出晴・愛媛大教授らが参加、新教科書に関する“情報”を紹介するとともに、日本の愛国心教育などを批判している。

 セミナーでは韓国の政府機関である「国史編纂(へんさん)委員会」の李万烈委員長(歴史学者)が基調演説し、「日本社会の歴史認識の反動化」や「右傾化に走る小泉政権」などと日本非難を述べていた。

 日本の「新しい教科書」反対勢力は、韓国の反日感情を利用して検定および採択に圧力をかける作戦で、前回以上に韓国側への“通報”が目立っている。

 また、歴史学関連の八団体からなる「韓国史研究団体協議会」などは検定後も日本の市民団体などと共同で新教科書採択阻止運動を計画しており、特に姉妹縁組の地方自治体を通じた日本の自治体への“不採択圧力”を展開する方針という。

扶桑社教科書 流出の検定申請本配布 教授ら内外報道陣に

2005/03/12 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 新しい歴史教科書をつくる会のメンバーらが執筆している扶桑社の中学校歴史・公民教科書を批判している高嶋伸欣琉球大教授らが11日、文部科学省が検定中の同社の白表紙本(検定申請本)が流出しているとして東京都内で記者会見し、入手した全文のコピーを「貸与」名目で報道陣に配布した。会見には中国や韓国のメディアも出席しており、内容は両国政府に伝わるとみられる。

 高嶋教授らは「研究者などから見せてほしいという要請があれば応じる」と公表を続ける意思を表明。入手先について「各地の教育委員会に流出しているものを手に入れた」とした。

 現在行われている教科書検定は来春から中学校で使われる教科書に対するもので、歴史と公民はそれぞれ扶桑社など8社が申請。作業は終盤を迎えており、今月下旬以降に結果が発表されるとみられる。

 公表について文科省幹部は「白表紙本が明らかにされたとすれば遺憾だ」と語った。

 扶桑社書籍編集部の話「検定中なのでコメントできない」

                  ◇

 ■外圧を促す政治活動

 検定申請された教科書は、教科書調査官や教科用図書検定調査審議会委員に予断を与えないため、どの会社の教科書か分からないように表紙を白くしていることから「白表紙本」と呼ばれている。

 教科用図書検定規則の実施細則が検定結果発表まで白表紙本の公表を関係者に禁じていることも、公正さを守るための措置だ。

 中学校教科書の検定をめぐっては、扶桑社が初めて参入した前回の平成12年度も同社の白表紙本を入手した朝日新聞と毎日新聞が内容を報道。中国と韓国が検定不合格を求める内政干渉を行った。今回も近現代史や拉致事件の記述をめぐり中韓や北朝鮮が白表紙本の内容に注目している。

 入手先を明らかにできない白表紙本の全文コピーを内外のメディアを集めて配るという乱暴な行為は、終盤で外圧導入を狙う検定妨害であり、わが国の教科書検定制度そのものを破壊しようとする危険な政治活動といえる。(教科書問題取材班)

「慰安婦」報道 朝日に訂正記事要求 有識者ら300人シンポ

2005/02/25 The Sankei Shimbun東京朝刊から

 戦時中の慰安婦をめぐるNHKの番組が政治家の圧力で改変されたと朝日新聞が報じた問題で、NHKと朝日双方の責任を問う有識者のシンポジウムが24日、東京・本郷の文京区民センターで開かれた。パネリストたちは「そもそも『慰安婦の強制連行』というこれまでの報道が誤報だ」として、朝日新聞に訂正記事の掲載を求める運動を行うことを確認した。

 約300人が参加。冒頭、藤岡信勝拓殖大教授は昭和天皇を「強姦(ごうかん)と性奴隷制」の罪で裁いた政治集会「女性国際戦犯法廷」の不当性を指摘。番組のビデオやカットされた部分を検証しながら、偏向した集会を取り上げたNHKを批判した。

 一方の朝日新聞も平成3年以降、「慰安婦は強制連行された」「強制性があった」との報道を続けてきた。同年8月、「女子挺身隊の名で連行された元慰安婦が重い口を開いた」とする記事を掲載したが、この女性が連行ではなく人身売買されたことが西岡力東京基督教大教授の指摘で判明。翌年1月には「朝鮮・済州島(現韓国)で『慰安婦狩り』が行われた」とする証言をコラムで紹介したが、作り話だったことが秦郁彦・元日大教授の現地調査で明らかになっている。朝日新聞はいずれも明確な訂正記事を掲載していない。

 シンポには、西岡、秦両氏のほか、元朝日新聞記者の評論家、稲垣武氏が出席。それぞれ「慰安婦問題ではなく朝日の誤報問題だ」「朝日の誤報がなければNHKも偏向した番組を制作しなかった」などと述べ、朝日新聞に訂正記事の掲載を求めていくことで一致した。

捕虜虐殺は「歴史の歪曲」 情報独り歩きに研究者憂慮

2005/02/24 The Sankei Shimbun

 第2次大戦末期、佐渡島の相川金山で、連合軍捕虜387人が虐殺されたとの情報を盛り込んだ英語本が海外で出版された。新潟国際情報大学のグレゴリー・ハドリー助教授は、佐渡には連合軍捕虜はおらず、情報は「歴史の歪曲(わいきょく)」と指摘。ねつ造された情報が独り歩きすることを憂慮している。

 この本は、既に死去したニュージーランドの作家、故ジェームズ・マカイ氏が1996年に出版した「上層部の裏切り」。

 同書は、ニュージーランド人戦犯調査官、ジェームズ・ゴドウィン氏が保管していた資料「ファイル125M」を基に、相川金山で1945年8月2日、捕虜387人を集めた鉱山を旧日本軍が爆破、生き埋めにしたなどと主張。

 これに対し、ハドリー助教授とオーストラリア在住の研究者は、佐渡の郷土史家やお年寄りらに対する聞き取り調査を実施。助教授らは調査の結果、佐渡には連合軍捕虜はいなかったとしている。

 また、ゴドウィン氏がオーストラリア政府に提出した公式の報告書と比較、分析してみたところ「ファイル125M」自体がマカイ氏のねつ造であること分かった、と助教授らは指摘している。

 旧日本軍による捕虜の扱いが不当だったとして、日本側に賠償を求めようとするオーストラリア元軍人らのため「虐殺」をねつ造し、旧日本軍の残虐性を示す狙いがあったのではないかと助教授はみている。(共同)

靖国参拝中止訴え決議案 韓国、与野党議員79人

2004/12/07 The Sankei Shimbun
 韓国与党、ウリ党の姜昌一議員ら与野党計79議員が7日、小泉純一郎首相や閣僚らによる靖国神社参拝の中止などを求める決議案を韓国国会に提出した。姜議員によると、靖国参拝中止を求める決議案の国会提出は初めて。

 決議案は小泉首相が靖国神社を毎年参拝し、今後も続ける意向を示していることに「深刻な憂慮」を表明。「村山富市元首相が過去の歴史への謝罪と反省を表明して以来、回復していた韓日関係が靖国参拝で傷つけられている」と訴えた。

 さらに靖国参拝は「両国関係の未来のためにも望ましくない」と強調。「不幸な過去の歴史清算と未来志向的な韓日関係」の構築を訴え「侵略戦争を美化する日本の歴史歪曲(わいきょく)」を非難している。

 野党ハンナラ党、民主労働党の議員も決議案提出に加わった。(共同)

中山文科相を「妄言」と強く批判 韓国メディア

2004/10/28 The Sankei Shimbun
 中山成彬文部科学相が歴史教科書の記述は「自虐的」とし「従軍慰安婦という言葉が減ってきたのは良かった」と述べたことについて韓国メディアは28日、重責のある閣僚が再び「妄言」を吐いたと強く批判した。

 通信社の聯合ニュースは東京発で「日本指導層が再び妄言」と詳しく報じるとともに解説や論説記事も配信。「文科相の不穏当発言は遺憾」とし「歴史的事実を歪曲(わいきょく)して侵略戦争を正当化する(日本の)極右団体の歴史認識と軌を一にしている」と批判した。

 29日付早版の有力紙、東亜日報やハンギョレ新聞も一面で「妄言」を大きく報道。KBSテレビは中山文科相の意向が日本の教科書検定に与える影響を憂慮し、SBSテレビは「日本社会の右傾化」も発言の背後にあると伝えた。

 韓国は金大中前政権以来、対日関係で「未来志向」を訴え、12月には鹿児島で日韓首脳会談も控えているが、韓国内の世論次第では発言の影響が尾を引きそうだ。(共同)

靖国神社を参拝 国会議員79人

2004/10/19 The Sankei Shimbun
 超党派の国会議員でつくる「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」(瓦力会長)は19日朝、秋季例大祭に合わせて靖国神社を参拝した。自民党の武部勤幹事長や民主党の羽田孜元首相ら自民、民主両党の衆参国会議員79人(ほかに代理81人)が参加した。閣僚本人の参拝はなかった。

 参拝後、武部幹事長は記者団に「休みにはよくお参りする。神社に参拝するのは自然な気持ちだ」と強調。小泉純一郎首相の靖国神社参拝の影響で日中両国の首脳相互訪問が途絶えていることについては「障害になることはどこの国(との関係)にもある。理解を求める最大限の努力をしなければいけないが、言われたからといってそれに従うのではなく、説得力のある対話をすべきだ」と指摘した。

A級戦犯合祀が問題 靖国参拝で王毅大使

2004/10/07 The Sankei Shimbun
 民主党の岡田克也代表は7日、中国の王毅駐日大使と党本部で会談した。

 王氏は、小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題に関連して「A級戦犯の問題が、靖国参拝ということよりも大きな本質的な問題だ」と述べ、A級戦犯の合祀(ごうし)が問題との認識を示した。

 これに対し岡田氏は「そういう中国側の基本的な認識に対する日本側の理解も深まってきたのではないか」と述べた。

 また王氏は、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議について「米大統領選後に動きが出てくる」と述べ、次回協議は11月の米大統領選後になるとの見通しを示した。その上で「(これまで)北朝鮮と辛抱強く対話を続けてきた。これからも対話を続けて朝鮮半島問題を解決したい」と協議を継続する考えを強調した。

 岡田氏は中台関係に関し「民主党は台湾の独立は認めない立場だが、中国の一方的な武力行使も認めない」と、冷静な対応を求めた。

「靖国問題」処理が急務と胡主席

2004/09/22 The Sankei Shimbun
 中国の胡錦涛国家主席は22日、訪中している河野洋平衆院議長と北京で会談、対日関係を重視する姿勢を強調しながらも「当面の急務は靖国神社参拝問題の妥当な処理だ」と述べ、小泉純一郎首相の靖国参拝に不満を示した。

 江沢民・共産党中央軍事委員会主席が完全引退して胡主席が党、政府、軍の3権を掌握して以来、日本の要人と会ったのは初めて。新指導体制として靖国参拝問題の解決が日中関係改善のスタートラインとなることを明確にしたものだ。

 胡主席は「『政冷経熱(政治が冷たく経済が熱い)』は目にしたくない」と言明。新指導部として「世界でも重要な日中関係を重視している」とし、「歴史を鑑(かがみ)として未来に向かう立場を堅持すれば困難を克服できる」と関係改善への意欲を示した。

 さらに「これまでも日中関係に注目し努力してきた。関係発展の良好な基礎と条件はある」と強調。両国関係の現状について、1972年の国交正常化時の困難と比べれば「現在の困難は比較すらできない」と述べ、当時より解決は容易との見方を示唆した。

 河野議長は靖国問題に関して「小泉首相は2度と戦ってはならないという信念を持っている」と応じ、日中関係については「世界平和と発展のために両国が協力して貢献するという信念を持ってもらいたい」と述べた。(共同)

「靖国参拝断固変えない」首相、財界人との会合で

2004/09/01 The Sankei Shimbun
 小泉純一郎首相は31日夜、都内のホテルで開いた財界人との会合で、中国が反発している靖国神社参拝について「わたしの政治信条であり、断固として変えない」と強調した。

 出席者からは「日中首脳会談ができる雰囲気にしてほしい」と参拝中止を求める声が出たが、首相は「靖国(と首脳会談)とは全然関係ない。日中友好を大事にしているということは向こう(中国)も分かっている。わたしは日中友好論者だが、それと靖国参拝は別だ」と繰り返した。

歴史認識問題などの対応要請、盧大統領が与党幹事長に

2004/09/01 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【ソウル=湯本浩司】韓国の盧武鉉大統領は1日、ソウル市内の青瓦台で、韓国訪問中の自民党の安倍幹事長、公明党の冬柴幹事長と会談し、「過去の問題や在日韓国人の処遇への対応が、両国の未来を建設するうえで、障害になるか、貢献することになるか、みていくことが重要だ」と述べ、歴史認識の問題や、永住外国人の地方選挙権付与法案の扱いで、日本側の前向きな対応を求めた。

 

北朝鮮、「つくる会」教科書採択を批判

2004/08/31 The Sankei Shimbun
 北朝鮮の朝鮮中央通信は30日、「新しい歴史教科書をつくる会」主導による歴史教科書(扶桑社発行)を東京都教育委員会が都立の中高一貫校で採用したことを初めて取り上げ「日本で極右保守勢力の歴史歪曲(わいきょく)の策動がいかに危険な段階に至っているかを明白に示している」と批判した。

 同通信は「この教科書は侵略戦争を美化したため、3年前の検定過程で大きな物議を醸した教科書だ」と紹介した。(共同)

「強烈な憤慨」と中国 歴史教科書で反発強める

2004/08/28 The Sankei Shimbun
 28日付の中国各紙によると、中国外務省の孔泉報道局長は27日、東京都教育委員会が「新しい歴史教科書をつくる会」主導の歴史教科書(扶桑社発行)を都立の中高一貫校向けに採用したことについて「強烈な不満と憤慨を表明する」と批判した。

 同局長は26日にも談話を発表したが、その時には「不満と憤慨」の部分がなく、中国国内の世論に配慮して差し替え、日本への反発を強めたとみられる。

 この教科書について同局長は「2001年の発表時に中国などアジアの隣国から反対に遭い、日本の大多数の国民からも唾棄(だき)されたもの」と指摘した。

 28日付の中国共産党機関紙、人民日報もこの問題をコラムで取り上げた。「正しく歴史を総括できるか否かは一国の品格にかかわり、必然的にその国の将来にも影響する」とし、「歴史を正視して初めて日本は世界から尊重される」と主張した。(共同)

韓国で反発広がる 扶桑社教科書採択で

2004/08/27 The Sankei Shimbun
 韓国の与党ウリ党の千正培院内代表は27日、東京都教育委員会が都立初の中高一貫教育校の中学校で使う歴史教科書に「新しい歴史教科書をつくる会」主導の教科書(扶桑社)を採択したことについて「遺憾だ」と強い不快感を示した。

 韓国では26日にも外交通商省が遺憾を表明。中央日報が「極右団体の教科書を採択」と報じたのをはじめ、韓国有力紙も27日付紙面で批判的に大きく伝えるなど採択への反発が強まっている。

 韓国メディアによると、千代表は同党の議員総会で「日本政府当局が責任を持って解決することを要求する」と強調した。(共同)

都の「つくる会」教科書採択は遺憾 韓国外交通商省

2004/08/27 The Sankei Shimbun
 韓国の外交通商省は26日、東京都教育委員会が都立初の中高一貫教育校の中学校で使う歴史教科書に「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーらが執筆した教科書(扶桑社発行)を採択したことへの遺憾を表明した。

 同省は「自国中心主義的な史観に立脚し、過去の誤りを合理化している扶桑社の教科書が採択されたことは遺憾」とし「若い世代に誤った歴史観を植え付ける可能性があり、過去の反省の上に本当の善隣友好関係を構築しようとする努力の支障になる」との憂慮を示した。

 同省はその一方で「日本の多くの父母や知識人、市民団体などが扶桑社の教科書採択の不当性を広く知らせ、日本の良識を守ろうと不断の努力を傾けたことを高く評価する」と採択反対運動を評価した。(共同)

都の「つくる会」教科書採択で中国外務省が見解

2004/08/27 The Sankei Shimbun
 中国外務省は26日、東京都教育委員会が都立初の中高一貫教育校の中学校で使う歴史教科書に「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーらが執筆した教科書(扶桑社発行)を採択したことについて「日本は正確な歴史観にのっとって若い世代を教育していくべきだ」との見解を表明した。

 同省は、歴史教科書問題は「日本が過去の侵略の歴史に対し、正確な認識を持って対応を出来るか否かの問題」と指摘し「今までの歴史問題での立場を履行すべきだ」と述べた。(共同)

国会議員58人、靖国神社に集団参拝

2004/08/15 The Sankei Shimbun
 超党派でつくる「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」(会長・瓦力元防衛庁長官)が15日午前、そろって東京・九段北の靖国神社を参拝した。

 自民党の古賀誠元幹事長、堀内光雄総務会長、片山虎之助参院幹事長、民主党の羽田孜元首相ら、自民、民主両党の衆参国会議員58人(ほかに代理99人)が参加した。

 参拝後に記者会見した瓦会長は、公明党が新たな戦没者追悼施設建設に向けた調査費を来年度予算の概算要求で計上するよう求める方針を決めたことについて「靖国神社以外にお参りするところはない。公明党の意見は意見としてお聞きしておく」と建設に反対する考えを強調した。

 同会は終戦記念日のほか、春秋の例大祭にも集団参拝している。

 このほか午後には自民党の安倍晋三幹事長、森喜朗前首相らが参拝した。

高句麗紛争が飛び火 韓国、日本の博物館展示に是正要請

2004/08/09 The Sankei Shimbun
 韓国の通信社、聯合ニュースが9日報じたところによると、日本の東京国立博物館(東京都台東区)が、高句麗の広開土王(好太王)碑の拓本などを中国のものかのように展示していると、在東京の韓国文化院が日本の文化庁に是正を要請した。

 中国東北地方の南部から朝鮮半島北部で栄えた古代国家・高句麗をめぐっては、中国が古代中国の地方政権と位置付けようとしているとして韓国が激しく反発している。一部韓国紙も10日付早版の1面トップでこのニュースを伝えるなど、韓中間の「歴史認識紛争」が日本にも飛び火した形になった。

 聯合ニュースによると、東京国立博物館は今月3日から高句麗関連の特別展示を行っているが、広開土王碑などを「中国の書」として紹介。同ニュースはまた、歴史的客観性がないとされる「任那日本府」説を裏付けるような展示も行われているとしている。(共同)

正しい歴史認識で発展を 韓国の新駐日大使、未来志向訴え 2004年03月17日 The Sankei Shimbun
 韓国の羅鍾一・新駐日大使が17日、赴任を前にソウルで日本の記者団と会見し、日韓関係について「正しい歴史認識が両国関係の根幹だ」としながら「未来志向」で発展させることが重要と強調、自由貿易協定(FTA)締結や北朝鮮の核問題解決などに向け関係緊密化に最善を尽くすと語った。

 羅新大使は小泉純一郎首相の靖国神社参拝や竹島(韓国名・独島)の領有権争いで摩擦も目立つ両国関係に関し「歴史問題が潜在的な不協和音の要因なのは事実」と指摘した上で、歴史問題が両国関係全般に影響を与えないよう「相互の努力が重要だ」と述べた。

 日韓国交正常化40周年に当たる2005年は政府間交渉が始まったFTAの締結目標の年にもなっているとし、日韓関係は「今後1、2年が極めて大切な時期」と述べ、FTAは「北東アジアの平和と繁栄の推進基盤にもなる」と語った。

 自衛隊イラク派遣や有事法制に対しては「理解する」としながらも周辺国国民の一部に憂慮があるとし「周辺国の理解と信頼を受けられるよう日本政府の不断の努力が必要だ」と注文を付けた。

 北朝鮮の核問題では、6カ国協議の枠組みを通じた平和解決を「楽観している」とし、作業部会が4月中にも開かれることに期待を表明。日韓が緊密に連携する一方、日朝対話も持続させて「拉致問題をはじめとする(日朝双方の)懸案が早期に解決し、関係正常化が成し遂げられることを期待する」とし、韓国政府も支援を惜しまないと述べた。(共同)

「歴史をかがみ」明記 日中与党協設置で合意文書 2004年03月16日 The Sankei Shimbun
 自民、公明両党と中国共産党は16日までに、日中間の諸課題について意見交換する「日中与党交流協議会」設置に関する合意文書をまとめた。目的として「『歴史をかがみとし、未来に向かう』との精神に基づき両国間の諸問題解決のため誠意をもって意見交換し、相互理解と友好発展を目指す」との文言が盛り込まれた。

 自民党は当初、中国側が小泉純一郎首相の靖国神社参拝に焦点を当てることを警戒、「歴史をかがみとし」の文言に難色を示したが、中国側の強い要望があり最終的に受け入れた。文書は先に来日した中国共産党対外連絡部の劉洪才副部長と自民党の額賀福志郎、公明党の北側一雄両政調会長の間で調整が進められていた。

 協議会は歴史や経済など幅広いテーマを取り扱うが、合意文書では1諸問題解決のための道筋と方法を探り、両国の政府、与党に提言する2両国間で深刻な問題が発生した場合、臨機応変の対応を図る−ことなどを確認した。初会合は今秋、北京で開催される見通しだ。

 座長には額賀、北側両氏、中国共産党対外連絡部の王家瑞部長が就任する。

小泉首相の靖国参拝を批判 中国首相が記者会見 2004年03月15日 The Sankei Shimbun
 中国の温家宝首相は14日、全国人民代表大会(全人代=国会)閉幕後の記者会見で、日中関係について「主要な問題は日本の指導者が靖国神社を何回も参拝し、中国とアジアの人々の心を深く傷つけたことだ」と小泉純一郎首相の参拝を強く批判、参拝を続ける限り、首脳相互訪問を再開する考えがないことを示唆した。

 温首相自身が態度の硬化を明確にしたことで、2001年10月の小泉首相の訪中以来途絶えている首脳相互訪問の再開はさらに遠のき、日中関係冷却の長期化は必至の情勢となった。

 20日の台湾総統選と同時に行われる住民投票については「民主に名を借りて独立を図る行為。世界が公認している『一つの中国』の原則を破壊するものだ」と反発、再選を目指す陳水扁総統を強くけん制した。

 温首相は日中関係について、経済交流や人的往来を例に挙げて「全般的には良好」と評価。

 しかし、靖国問題については「(日中戦争の)中国側の被害は死者2000万人以上。日本の指導者は二度と中国の人々の感情を傷つけたり、両国首脳の相互訪問に影響を与えることをすべきでない」と指摘、「日本の指導者が中日関係の大局に重きを置くよう切に願う」と述べた。

 中台関係では「三通(通商、通航、通信の直接開放)」の実現など経済や文化面での交流を促進、対話再開に努力する姿勢を示す一方「いかなる形式の台湾独立活動にも断固反対する」と原則的立場を強調した。(共同)

 ≪温家宝記者会見の要旨≫

 中国の温家宝首相が14日に行った記者会見の要旨は次の通り。

 ▽日中関係

 一、主要な問題は日本の指導者が靖国神社を何回も参拝し、中国とアジアの人々の心を深く傷つけたことだ。

 一、(日中戦争での)中国側の被害は死者2000万人以上。日本の指導者は二度と中国の人々の感情を傷つけたり、両国首脳の相互訪問に影響を与えるようなことをすべきでない。日本の指導者が中日関係の大局に重きを置くよう切に願う。

 ▽台湾問題

 一、住民投票は民主に名を借りて独立を図る行為。世界が公認している「一つの中国」の原則を破壊するものだ。

 一、台湾海峡の安定を守り、三通(通商、通航、通信の直接開放)を促進し「一つの中国」の原則下で対話の早期復活を図る。ただし、いかなる形式の台湾独立運動にも断固反対する。

 ▽経済運営

 一、最も重要なのは経済の安定的な高成長の維持で、最も困難な課題は農村問題だ。

 一、過剰投資やエネルギー不足、穀物生産の減少、物価上昇など新たな問題が生じており、適切に解決しなければならない。

 ▽政治改革

 一、政治体制改革が成功しなければ、経済体制改革も成功しない。科学的で民主的な政策決定メカニズムを確立し、法治行政を徹底させる。政府は各方面の監督を受け、人民の意見を聞かなければならない。(共同)

 <日中の首脳相互訪問> 日本の首相と中国の国家主席、首相が相互に相手国を訪問する首脳交流。1998年の日中共同宣言で「毎年いずれか一方の国の指導者が相手国を訪問する」と確認。以降、相互訪問が毎年、実施されてきたが、小泉純一郎首相が2002年4月に2年連続の靖国参拝を行ったことに中国側が強く反発して中断。00年10月の朱鎔基首相(当時)の訪日、01年10月の小泉首相訪中が最後となっている。中国政府は、第三国での国際会議などの場を利用した日中首脳会談は受け入れている。(共同)

首相、広島の企業視察 地方重視をアピール 2004年03月13日 The Sankei Shimbun
 小泉純一郎首相は13日午前、広島県を訪問し、東広島市の精米機製造会社など県内の中小企業を視察した。世界文化遺産の厳島神社や原爆ドームなども見学する。

 地方経済を重視する姿勢や、海外からの観光客を倍増させる「観光立国」に取り組む姿勢をアピールするのが狙い。

 視察する東広島市の精米機製造会社「サタケ」は、精米機の世界でのシェアの約9割を占めるほか、麦やトウモロコシの製粉機の製造も手掛けている。

 午後には、連絡船で宮島に渡り厳島神社を訪れるほか、秋葉忠利広島市長らの案内で原爆ドームを見学。さらに全国の筆生産の約8割を占めている熊野町を訪問。化粧筆の世界市場で6割のシェアを占めるメーカーなどを見学する。

「韓国国民におわび」表明 麻生政調会長

2003年06月02日 The Sankei Shimbun
 自民党の麻生太郎政調会長は2日夕、党本部で記者会見し、「創氏改名は朝鮮人の要望で始まった」との趣旨の自らの発言について「言葉が足りず、真意が伝わらず、残念で申し訳なく思っている。遺憾な発言で、韓国国民に率直におわび申し上げる」と謝罪した。

 麻生氏は「(6日からの)盧武鉉大統領の訪日を直前に控え、日韓関係の重要性が私の発言で齟齬(そご)をきたすのは申し訳ない」とも述べた。

 韓国では、麻生氏の発言に対し、外交通商省が謝罪を求めるなど批判が高まり、2日には李柱欽駐日韓国公使参事官が自民党本部を訪れ「大統領訪日で日韓関係が発展する時なので、素早い対応をしてほしい」と、早期の謝罪を求めた。

 会見で麻生氏は、過去の歴史認識について、1995年の村山富市首相談話と同じ考えを持つことを強調。創氏改名に関しても、翌年の日韓首脳会談で橋本龍太郎首相(当時)が述べた「いかに韓国の方々の心を傷つけたか想像に余りある」との発言と同じ認識であることを表明した。

 ただ、麻生氏は「歴史認識は双方にいろいろな認識がある。現在、双方で学者などが話を続けている」とも述べた。

麻生氏の「創氏改名」発言に韓国が「深い遺憾」表明

2003/06/01 読売新聞Yomiuri On-Line
 【ソウル=浅野好春】韓国外交通商省スポークスマンは1日、戦前の植民地時代に朝鮮半島の人々に日本式名前を強制した「創氏改名」に関して、自民党の麻生政調会長が「朝鮮の人たちが『名字』をくれといったのが始まり」と発言したことに対し、「非常に失望させられる、嘆かわしいことと言わざるをえない」と、「深い遺憾」を表明した。

 同スポークスマンは麻生会長に謝罪を求めるとともに、「我が政府は、正しい歴史認識なくして真の韓日両国関係の成立は難しいという点を改めて強調する」と述べた。

中国や韓国と「歴史認識の一致は無理」自民・麻生政調会長

2003年06月01日 The Sankei Shimbun
 自民党の麻生太郎政調会長は31日の東大・五月祭での講演で、中国や韓国から批判される歴史認識問題について「歴史認識を一緒にしようと言っても、隣の国と一緒になるわけがない」と述べ、根本的解決は困難との見方を示した。

 また、かつて韓国を訪問した時のエピソードとして「創氏改名は(朝鮮人が)名字をくれと言ったのがそもそもの始まりと言ってやりあったら、年寄りの韓国人があなたのおっしゃる通りだと言った」と紹介した。

 日本が統治時代に大学をつくったことなども指摘し「こちらも正しいことは歴史的事実として述べた方がいい。日本の戦後の外務省、政治家が怠ってきたことだ」と強調した。

創氏改名:「朝鮮の人たちが望んだ」 麻生自民党政調会長

2003年05月31日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 自民党の麻生太郎政調会長は31日、東京都内で講演し、日韓併合時代に日本政府が朝鮮の人々を日本名に変えさせた「創氏改名」について、「朝鮮の人たちが『名字をくれ』と言ったのがそもそもの始まりだ」などと語った。創氏改名に関しては、96年、自民党の橋本龍太郎首相(当時)も「多くの韓国の方々の心を傷つけた」と謝罪している。このため、国内外から批判を集める可能性がある。

 発言は、歴史認識に関する会場からの質問に答えたもの。麻生氏は「当時、朝鮮の人たちが日本人のパスポートをもらうと、名前の所に『金』とか(朝鮮名が)書いてあった。それを見た満州の人たちが『朝鮮人だな』と言って仕事がしにくかった。だから名字をくれ、と言ったのがそもそもの始まりだ」と発言。さらに、「ハングル文字は日本人が教えた。義務教育制度も日本がやった。正しいことは歴史的事実として認めた方がいい」とも語った。

 創氏改名は、朝鮮の皇民化政策の一環として実施された。しかし、日本との経済交流の中では、日本名を名乗った方が都合が良かったなどの理由から、強要されたものではなかったとの主張も従来ある。【鬼木浩文】


教科書:扶桑社の中学歴史教科書を採択 愛媛県教委

2002年08月15日 Mainichi INTERACTIVE
 愛媛県教委は15日、「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーらが執筆した扶桑社の中学歴史教科書を、中高一貫教育導入に伴って来春新設する県立中学3校で採択した。昨年、同県教委と東京都教委が養護学校などの一部で採択したが、一般の公立中では初めて。全国で今後設立が相次ぐ都道府県立の中高一貫校や、3年後の市町村立中学校での教科書採択に影響を与えそうだ。

 同日午後1時半から、定例会を開催。既設の県立高3校に併設する今治東、松山西、宇和島南の3中学校で使用する教科書を非公開で審議し、昨年と同じく、井関和彦委員長ら委員6人の全会一致で採択を決めた。

 この日は、来年度に新設される義務教育の公立学校で使う教科書の採択期限日。即日文部科学省に報告した。3校の1学年定員は各160人で、計480人が来春から同教科書で歴史を学ぶ。

 自国中心主義との指摘もある同教科書の採択をめぐっては賛成・反対両派が署名集めや申し入れなどの運動を展開。韓国の国会議員20人は、14日に同県に送った不採択要望書で「サッカーのワールドカップ共催で好転した両国関係に大きな障害になる」としており、再び外交問題に発展する可能性もある。

 公立校の教科書採択の権限は、学校を設置した各自治体教委にある。小中学校の採択は4年ごとで、全国的に昨年が採択の年だったが、今回は新設に伴う措置。文科省によると、小中学校の場合は、自治体や採択地区単位で教科ごとに一つだけ選ぶが、高校や中高一貫校の中学は、学校ごとに別の教科書にすることも出来る。 【沢木政輝】

韓国 日本語放送の早期解禁を

2002年08月10日 The Sankei Shimbun
 植民地時代に日本語を強制された経験などから、今もテレビ、ラジオでの日本語放送が禁じられている韓国で、38%が「今年中に全面解禁するのが良い」と考え、「来年から解禁」(22・7%)を合わせると、60%余りが早期解禁を求めていることが、韓国政府機関の韓国放送委員会がまとめた世論調査で分かった。

 韓国では、日本の歴史教科書問題への報復措置として昨年7月、日本大衆文化の全面開放への動きが凍結されたままだが、調査では61・6%が放送解禁と教科書問題は「別の問題」と回答。サッカー・ワールドカップ(W杯)で対日感情が好転した影響もあるとみられ、残り任期半年余りの金大中大統領が全面開放に踏み切るかどうか注目される。

 調査によると、日本語放送の解禁が韓国の放送業界や大衆文化に「肯定的影響を与える」と考える人が55%を突破。70%以上が、日韓がドラマなどを共同製作することを「望ましい」と考え、こうした番組に日本人俳優が出ても「拒否感を感じない」とした。

 韓国では日本の大衆文化流入が禁止されていたが、金大中政権下で段階的開放を実施。しかし、放送のほか日本語のCD販売も依然、禁止のままだ。

 調査は専門機関に委託、7月末に成人男女約1000人を対象に行われた。(共同)


韓国大統領が冷静対応を指示

2001年7月21日

韓国、歴史教科書問題に抗議する無料国際電話サービス

2001年5月30日Japan.internet.com
 韓国の電話会社が日本の歴史教科書問題に抗議するための無料国際電話サービスを開始する。

 国際電話サービス会社のインフォテルは5月28日、 ドリームウィズと共同で、日本の教科書出版社や右翼団体などに抗議するための無料国際電話サービスを提供すると発表した。

 このキャンペーンは6月10日まで行われ、参加希望者5000人を対象に、日本と6分間の通話ができる4200ウォン(約420円)相当の国際電話サービスが無料で提供される。参加希望者は、ドリームウィズのサイトから「歴史のわい曲を正そう」キャンペーンを選択し、自分のメールアドレスを入力すればよい。ドリームウィズに登録した会員に限り、無料通話カードが電子メールで送信される。

 電子メールには、無料通話カードと一緒に日本の文部科学省や「新しい歴史教科書をつくる会」、扶桑社、読売新聞社などの連絡先と「日本歴史わい曲教科書を正せ」といった日本語の発音が韓国語で書かれている。

 インフォテル社長のペクチョンフン氏は「日本の歴史教科書問題に対する私たちの主張を知ってもらうため、国際電話サービスを無料で提供することにした」と語っている。

朱総理、日本の歴史教科書問題について発言

2001年03月16日 人民網日本語版
 昨日開かれた全国人民代表大会の記者会見で、「日本は歴史教科書を一部修正したが、修正についてどのような考えをもっているか。また、教科書問題が日中両国の指導者の相互訪問に影響を与えるか」という、NHK記者の質問について、国務院の朱鎔基総理は以下のように答えた。

教科書問題は、中日両国間だけの問題ではなく、日本と、アジアの関係諸国・国民との間の問題である。日本の軍国主義者が侵略戦争を起こしたという歴史的事実が歪曲されることは、中国人民の感情を害するだけでなく、アジアのすべての人々の感情を害することになる。歴史教科書は日本政府と文部省によって検定されるのであるから、日本政府は歴史教科書の修正に対する責任を回避することはできない。観点や言論の自由を口実として責任を回避することはできない。歴史教科書が一部修正されたことは聞いているが、アジア各国の国民の反応を見ると、修正は十分ではない。この問題は、日本の内政に干渉しようというものでは決してなく、日本国民と、中国人民を含むアジア各国の人々が、何代にも渡って友好的な関係を保っていけるかどうかに関わるものであると考える。また日本国民の利益に関わる問題でもある。もちろん、この問題が、両国首脳の交流に影響を与えるとは思わない。森喜朗首相の年内の訪中を招請することを重ねて表明する。

「つくる会」教科書で大韓民国民団が適切な処置要望 (2001.03.04) asahi.com

「検定不合格」を中国が正式要請

2001.03.04【北京3日=山本秀也】 The Sankei Shimbun
特定歴史教科書名指し 代理大使呼び

 文部科学省で検定作業が進む「新しい歴史教科書をつくる会」(西尾幹二会長)のメンバーが執筆陣に加わった中学歴史教科書に中国、韓国が反発している問題で、中国の王毅(おう・き)外務次官は現地時間の二日夕、北京駐在の野本佳夫・臨時代理大使を中国外務省に呼び、この教科書の「阻止」を求める中国政府の意向を正式に伝えた。

 北京の日本大使館と中国国営の新華社通信が三日夜、それぞれ明らかにした。王次官は報道を引用するかたちで「つくる会」の名を挙げて、この教科書が「公然と皇国史観を述べ、侵略を美化している」と非難するなど、教科書問題に対する中国政府の「強い懸念」を表明した。

 そのうえで、教科書問題の本質は日本が「侵略の歴史」を正しく認識し、どう対処するかであると指摘した。王次官は、日中共同声明など両国間の基本文書の履行を求めるかたちで、この教科書の「阻止」を要求した。

 王次官は「歴史を鑑(かがみ)とし、未来に向かう」との表現を織り込んで対日関係を重視する中国政府の意向を伝える一方、「ごく少数の右翼による意図的な破壊」への注意を喚起するなど、この問題が日中関係全般に与える影響を警告した。これに対し、日本側は教科書検定制度について説明する一方、文部科学省の検定が「近隣諸国条項」を含む一定の基準に従って行われていると伝えた。日本大使館によると、新任の阿南惟茂・中国駐在大使は信任状の提出手続きが終わっていないため、野本代理大使が対応にあたった。

 中国外務省は先月二十二日、朱邦造報道局長が特定の歴史教科書について「阻止」を日本政府に求める見解を表明していた。これに続いて、中国国内では日本の教科書問題に関する報道が増えていた。

視点 外圧や政治介入、毅然として拒否を

2001.03.04 The Sankei Shimbun
 中国が公式ルートで、日本の特定教科書の不合格を求めてきたことは、明らかな内政干渉である。官邸と外務省は今度こそ、中国におもねらず、はっきり「ノー」と言うべきである。

 日本の教科書検定制度は中国の国定教科書と違い、基本的に自由な記述を認めながら、明らかな事実の誤りやバランスを失した記述に対しては、専門家や有識者らの検定によって学問的なチェックを行うシステムである。そこに、外国からの要求や政治的な圧力が入り込む余地はない。

 こうした検定制度の趣旨を繰り返し説明し、中国側に分かってもらわなければならない。

 中国が日本の教科書検定に抗議してきたことは、過去に二回あった。一度目は昭和五十七年夏の「侵略」「進出」誤報事件、二度目は同六十一年夏の「新編日本史」外圧検定事件である。いずれも内政干渉であったにもかかわらず、官邸と外務省は中国の要求を受け入れ、検定制度への政治介入を行った。

 教育を外圧の犠牲にする過ちを三たび繰り返してはならない。しかも、今回、中国が不合格を要求してきた教科書は、現在検定中の白表紙本(未公表)である。日本国民が知らないのに、なぜ中国政府が知っていたのか。その意味では検定後の教科書に対する抗議だった過去二回の教科書問題よりも深刻な事態といえる。

 韓国でも、同じような外交ルートを通じての動きが始まっている。

 中国の不合格要求は、朝日新聞の二月二十一日付「中韓懸念の『つくる会』教科書」「政府『政治介入せず』」「中韓など反発必至」という記事をきっかけにしたものとみられる。日本のマスコミ報道が外圧を誘導し、政府の政治介入によって教科書検定の根幹を揺るがすことは避けなければならない。

 町村信孝文部科学相は二日、「今月下旬にも検定結果を公表する」意向を示した。同省の教科書調査官や検定調査審議委員は外圧に左右されず、粛々と検定作業を行うべきである。(石川水穂)

検定教科書の流出、文科相「調査する」と答弁 (2001.03.03) asahi.com

南北朝鮮の歴史学者が批判声明 教科書問題で (2001.03.03) asahi.com

日韓閣僚懇談会、延期か 韓国政府が見通し (2001.03.03) asahi.com

「つくる会」の歴史教科書、中国が名指し批判 (2001.03.03) asahi.com

教科書検定 「主権侵害させぬ」/近隣諸国条項 衛藤外務副大臣が明言

2001.03.02 The Sankei Shimbun
 外務省の衛藤征士郎副大臣は二日の衆院予算委員会第三分科会(法務、外務、財務)で、近隣諸国への配慮をうたった教科書検定基準の「近隣諸国条項」について、質問者の西村真悟氏(自由党)が「国内規定に過ぎず、対外的な義務ではない」と指摘したのに対し「ご指摘の通りだ」と述べ、わが国が他国に何らかの義務を負う性格のものではないとの認識を示した。

 そのうえで、衛藤副大臣は教科書検定とわが国の主権とのかかわりについて「教科書の検定などにおいて、他国ゥらわが国の主権を侵害させるなどは論外。主権を侵害させることはない」と明言した。

 ただ、中国、韓国両政府が検定中の特定の中学歴史教科書の内容(未公表)に「懸念」を表明したり、「特別の配慮」を求めていることについては「関心、懸念、配慮要請の表明であり、現段階ではわが国の主権の領域には立ち入っているとは思わない」と述べ、内政干渉にはあたらないとの見解を示した。

教科書検定 月内にも結果公表/町村・文部科学相が意向

2001.03.02 The Sankei Shimbun
 現在検定中の教科書をめぐり、町村信孝文部科学相は二日午前、閣議後の会見で「(検定結果を)時間をおかずに公表したい」と述べ、早ければ今月下旬にも検定結果を公表する意向を示した。

 教科書検定の結果は従来、検定調査審議会の答申を受けて三月末ごろに合否が決定、修正された見本本の展示会が各地で開かれる六月末から七月にかけて公表されていたが、町村文部科学相は「合否の判定と同時、あるいはその後できるだけ早いタイミングをみて、原本(白表紙本)、検定意見、修正された本(見本本)の中身を公開しようと思っている」と話した。

 この問題をめぐっては、特定の中学歴史教科書の合格可能性が現在検定中にもかかわらず朝日新聞など一部マスコミで報じられ、その後、中国や韓国が反発を強めたため、森喜朗首相が「(事前の情報漏れなど)あってはならないこと」と不快感を示していた。

 特定の中学歴史教科書について、町村文部科学相は「現状はこれから審議が始まる段階で、合格うんぬんが事前に分かるはずがない」としながらも、「相当大幅な修正が行われているという報告を受けている」と話した。

中韓に理解要請 検定作業で外相

2001.03.02 The Sankei Shimbun
 河野洋平外相は二日の閣議後記者会見で、歴史教科書の検定作業に関連し、中国、韓国両政府が特定の教科書の内容(未公表)に「懸念」を示したり、「特別の配慮」を求めていることについて「わが国の教科書は、かなり長い間定着したルールに従って作られている。(ルールには)『近隣諸国条項』も入っているわけで、こうした視点も入れて、いい教科書が作られることを期待している」と述べ、中韓両国政府などに検定作業についての理解を求めたいとの考えを示した。

教科書検定、結果公表前倒し 4月中にも合否決定 (2001.03.01) asahi.com

森首相、「外に漏れたのが残念」 歴史教科書問題で答弁 (2001.03.01) asahi.com

「日本は正しい歴史認識を」 抗日記念日に金大中大統領 (2001.03.01) asahi.com

韓国外相、駐韓日本大使に憂慮伝達 教科書問題 (2001.02.28) asahi.com

教材に旧日本軍残虐表記 大分の小中学校/文部科学省が聴取

2001.02.26 The Sankei Shimbun
自虐的内容と疑わしい写真 県教委主事ら監修

 大分県内の公立小・中学校で使われている冬休み用の教材に、旧日本軍が中国の村民を皆殺しにした話や、信ぴょう性について議論が分かれる残虐な写真が使用されていることが二十五日、わかった。この教材は大分県教職員組合が編集し、大分県教委の指導主事らが監修している。教材を読んだ児童らからは「日本人がこんなに悪いことをするとは思わなかった」などの感想が寄せられていた。保護者からは「自虐的な教材作成に県教委が深くかかわるのは問題」との声が上がっており、文部科学省で事実関係を調べている。

 教材は大分県教組が冬休み中の家庭学習の手引書として、各学年ごとに毎年編集している小冊子で、小学生用は「冬の友」、中学生用は「冬の学習」。今年度は県内の三割以上の小・中学校で使用されていた。

 このうち小学四年生用の教材は、「あくまは長ぐつをはいてきた」という物語を掲載。旧日本軍の将兵が写真を撮ってあげると偽って中国の村民を広場に集め、老人から子供まで機関銃で皆殺しにするというストーリー。「なぜ、長ぐつをはいたあくま(旧日本軍)は、フウちゃん(主人公)たちを殺そうとしたのでしょう。みんなで話し合ってみましょう」との課題が与えられていた。

 また、中学二年生用では、「日本軍の中国侵略」と「加害をみつめて」をテーマに、南京事件、三光作戦などについて、被害者数を盛り込み詳細に説明。旧日本軍によって首を切られる寸前の中国人の写真や南京で生き埋めにされる中国人の写真も掲載していた。

 この二枚の写真は中国系米国人が書いて問題になった「ザ・レイプ・オブ・南京」にも掲載されているが、「軍人のポーズや服装、影の位置などが不自然」として、藤岡信勝・東大教授らが同書の検証本のなかで「ニセ写真」と指摘するなど、信ぴょう性について議論が分かれている。

 学校によっては教材に感想を書き込ませており、小学四年生の児童は「日本の兵隊の人は残酷」「日本人がわけもなく人を殺すとは思わなかった」などと記していた。これに対し保護者からは「あまりに自虐的な内容」「国を愛する心をもたせるという学習指導要領に反する」などの声が上がっている。

 教材の内容は毎年ほとんど同じで、作成には大分県教委もかかわり、学校教育課の指導主事二人と県教育センターの研究員二人が監修メンバーになっていた。

 県教委は産経新聞の取材に対し、「指導主事らが個人の立場で監修したもの」としているが、平成五年の県議会で教材の内容が問題ではないかとの質問が出された際には、「(県教委として)児童・生徒の発達段階や学習指導の内容などに照らして、ふさわしいかをチェックしている」などと答弁している。

 文部科学省教育課程課は「県教委であれば指導要領を踏まえた教材を作成するよう、指導するはず。この教材の内容が指導要領に反するかどうかは、今のところ何ともいえないが、県教委が教材作成にどうかかわり、学校現場でどう使われてきたのか、事情を聴いている」と話している。

 感性教育研究所長・高橋史朗明星大教授の話 「中学二年生用の教材に掲載されている残虐写真は、反日プロパガンダのためにつくられたニセ物と指摘されている。ほかにも三光作戦の記述など、議論の多い事柄が史実であるかのように扱われているのは問題。全体を通じて反戦に関する一面的な記述が目立ち、子供たちの感性に与える悪影響が懸念される。監修にたずさわった県教委の責任も問われるだろう」

大分の小中学生用教材 保護者も批判/「偏向的」子供たちに強い衝撃

2001.02.26 The Sankei Shimbun
県教委「直接かかわってない」

 「日本人がこんなに悪いことをするとは思わなかった」「日本の兵隊の人は残酷」−。大分県教組が編集し、大分県教委の指導主事らが監修した冬休み用の教材を読んだ、児童たちの感想だ。あまりに自虐的な内容に、県内の保護者や教育関係者からは「県教委の関与は明らか。きちんと責任を認め、教材の内容を早急に改善してほしい」とする声が上がっている。だが、県教委は、「編集に直接かかわっているわけではない」と、距離を置いた対応に終始している。

 「(沖縄の)くめ島では、具さんが日本兵にころされました。おくさんも五人のこどもも、ころされました。朝鮮のひとだから、スパイになりやすいというのでした。日本兵にきょうりょくしなかった島のひとたちも、おおぜいころされました」(小学二年生用)

 「あくま(旧日本軍)のわるぢえで、ひろばに集まった町の人たちは、かあさんと子どもたちと、老人ばかりでした。機関銃とあくまにかこまれ、手むかうことも、にげだすことも、できないのです。ただ、おそろしいさけび声をあげながら、おりかさなって、たおれていくだけでした」(小学四年生用)

 「平頂山という集落では、住民約三千人が一人残らず崖下に集められ、機関銃でうち殺され、生き残った者は銃剣や日本刀で殺されました。(中略)日本軍はこのように、中国各地で中国人を殺しているのです。中国の人々の首を切り、まるでほし柿のようにずらりとつるしたりもしています」(中学二年生用)

     ◇

 大分県内で広く使われている冬休み用の教材には、国語や算数など基本教科の演習問題と並んで「平和」の項目があり、旧日本軍に関する自虐的な記述がくりかえされている。

 県教組では教材の編集方針について「史実に基づいた編集を目指している。戦争における日本の加害行為を、子供たちにきちんと伝えることは必要だ。学習指導要領に反するとは思わない」としているが、保護者からは「ここまで自虐的である必要があるのか」(大分市の主婦)といった批判が強い。

 「新しい歴史教科書をつくる会」理事の藤岡信勝・東大教授も「教材の内容はあまりに偏向的で、強い憤りをおぼえる。教科書の偏向性が指摘されて久しいが、いくら教科書が改善されても、現場にこうした教材が出回っていたのでは、何にもならない」と話す。

 一方、県教委の立場は二転三転している。学校教育課の指導主事らが長年にわたり、監修として教材作成に加わっているが、「個人の立場で監修したもので、県教委は直接かかわっていない」と強調。教材の内容についても「県教委としてはコメントできない」としている。

 しかし、平成五年の県議会では教育長が、「児童・生徒の発達段階などに照らしてふさわしい内容であるかをチェックする必要から監修を行ってきた。今後とも何らかの形でのチェックは必要」と答弁して、直接関与を認めている。

 この点について県教委では「直接関与の方針を転換した経緯などについては、分からない」(学校教育課)と、あいまいな態度に終始している。

 こうした県教委の対応に批判を強める教育関係者も少なくない。県内の教育問題に取り組んできた元県議会議員の川添由紀子さんは「昔も今も、教材の編集方式は変わっておらず、直接関与を否定しはじめた県教委の姿勢には驚かされる。こんなことでは教材が改善される見込みはない。県教委は責任をきちんと受け止め、早急な改善に努めてほしい」と訴えている。

特定歴史教科書 中国、不合格を要求

2001.02.23【北京22日=山本秀也】 The Sankei Shimbun
 中国外務省の朱邦造報道局長は二十二日、定例記者会見で日本の教科書問題に言及し、現在検定中で内容が公表されていない特定の歴史教科書について、日本政府に「侵略を美化する教科書の登場阻止」を求めるとの公式見解を表明した。「新しい歴史教科書をつくる会」(西尾幹二会長)のメンバーが執筆陣に加わった中学歴史教科書を事実上指すものだが、日本の文部科学省が進める検定に対し、政治介入による不合格処分を要求したものにほかならない。

 中国政府は日本の社会科教科書の戦争、植民地問題に関する記述をめぐり、一九八二年にも「日本軍国主義による中国侵略の歴史を改ざん」として日本政府に抗議していた。

 朱局長は質疑のなかで、今回指摘を受けた教科書が検定に合格した場合の日中関係への影響に言及して「真剣にわれわれの声を聞いてほしい」と警告を加えるなど、教科書問題は再び日中間の外交問題として浮上した。

 定例会見の冒頭、国営中央テレビの記者が「日本の歴史教科書が修正後、文部(科学)省の批准を得て発行されようとしている」と論評を求めたのに対し、朱局長が見解を示した。

 朱局長は「日本の歴史教科書問題は、重大な政治原則の問題だ」と述べ、これが中国をふくむアジア諸国の国民感情のほか、日本自身の歴史認識にかかわるとの考えを示した。そのうえで、「日本の右翼団体が皇国史観を高く宣伝し、侵略の歴史を否定、美化する目的で教科書編さんにあたった」と述べ、検定段階での修正を経ても「反動的でデタラメな本質は変え難い」と語った。

 さらに、中国政府がすでにさまざまなルートでこの教科書に関する懸念を日本側に伝えたことを公表。日本政府が折衝過程で、日中共同声明の原則と戦争責任に言及した村山首相談話の堅持を回答したことを指摘しつつ、日本側に対して「いかなる侵略を美化した歴史教科書の登場をも阻止し、中日関係の大局を切実に守るよう希望する」と有効な措置を要求した。

 歴史教科書問題について、中国側要人や研究者らは昨年の段階から「つくる会」メンバーが執筆陣に加わった教科書に対し、日中間の会合や接触を通じて言及するなど関心を示してきた。

 二十二日には、ソウル発新華社電が、教科書問題に対する韓国政府、民間の反応を詳しく伝えたばかりだった。

「必要あれば中国に説明」 官房長官が歴史教科書問題で (2001.02.23) asahi.com

「歴史のわい曲狙うのは少人数」 教科書問題で人民日報 (2001.02.21) asahi.com

「処理誤れば友好関係に損傷」 教科書問題で韓国の外相 (2001.02.21) asahi.com

「教科書問題 誤って処理時、韓日友好に多大な損傷の恐れ」

Feb.21.2001中央日報 by 東京=呉デ泳(オ・デヨン)、李哲煕(イ・チョルヒ)記者
 李廷彬(イ・ジョンビン)外交通商部長官は今月21日、日本右派学者団体である『新しい歴史教科書をつくる会』の中学校歴史教科書問題と関連し、「同問題が誤って処理される場合、良好な韓日友好関係に大きな損傷を与える恐れがある」と話した。

 李長官は韓日協力委員会での演説で「この問題は正しい歴史認識を土台に、円満に解決されなければならない」とし、「政府は機会がある度に深い憂慮を伝え、日本政府の賢明かつ慎重な対応を強く促してきた」と明らかにした。

 一方、日本政府は同団体の中学校歴史教科書検定過程で、外交的配慮など政治的介入をしないことにしたと、朝日新聞が今月21日報道した。

 同紙は政府消息筋を引用してこのように明らかにし、「日本政府は、太平洋戦争前の日本外交政策を否定的に収録しない内容があっても、歴史的な事実関係に誤りがない限り、検定合格を承認する計画」と報道した。

日本の中学歴史教科書に憂慮や反発 韓国 (2001.02.20) asahi.com

「併合」正当化の日本の教科書に積極対応方針 韓国政府

2001.02.19(00:46)asahi.com
 韓国併合を正当化する内容の中学歴史教科書が検定申請されている問題で、韓国の通信社、聯合ニュースは18日、政府当局者の話として、韓国政府が今後、あらゆるチャンネルを通じ、この歴史教科書が検定を通過した場合、日韓間に重大な影響を与えることを日本に喚起していく方針を決めたと報じた。

 未来志向の日韓関係を唱える金大中政権はこれまで、政府レベルでの強い抗議などはしていないが、国会やメディアには教科書問題に対する反発が強まっており、方針変更を迫られていると見られる。

 報道によると、韓国政府当局者は「(韓国側が動けば)日本の右翼勢力の立場を強化すると判断し、穏便な解決方法を模索してきたが、今後は積極的に問題を提起する」と述べ、2001年の対日外交の主要懸案に据えることを明らかにした。また「(教科書検定は)一次的には日本の国内問題だが、特殊な性質上、国際問題でもあることを日本の外務省も十分認識している」と語った。

 韓国メディアは、この歴史教科書問題の編集を主導した「新しい歴史教科書をつくる会」を、「歴史わい曲団体」「極右団体」と紹介。有力紙、朝鮮日報も17日付で「日本の良心は生きているか」という社説を掲げ、「第2次世界大戦前の独善的な歴史教育への復活の道を遮断し、日本が国際的に孤立しないことを望む」と訴えた。また、韓国国会では金大統領を支える与党からも強い反発が出ており、検定の推移が注目されている。

【解説】右翼の教科書歪曲が深刻、中国も外交攻勢に出る方針

Feb.18.2001 中央日報 by 李哲煕(イ・チョルヒ)記者
 韓国政府が日本の中学校の歴史教科書問題に対して婉曲に対応するという基調を捨てて積極的に出ることにしたのは、事態が深刻な方向に流れていると判断したためだ。

 最近「新しい歴史教科書をつくる会」による、中学校歴史教科書の過去史わい曲問題は、以前とはかなり異なる様相で展開している。

 政府当局者は「過去とは異なり、最近、日本右翼らの後援が組織的に推進されている」とし、「このため同教科書の修正本が検定を通過する可能性が大きいと見ている」と述べた。

 同当局者は「80年代当時は、過去史わい曲教科書問題が外交問題に飛び火し、文部省の1次検定で修正指示が下されれば、その教科書を放棄するのが慣例であった」とし、「しかし今回は約200項目にのぼる修正指示があったものの、大部分は修正されず再検定を申請したと聞いている」と説明した。

 同当局者は「あまりにもひどくわい曲されているため、ごく一部だけを直しただけで、本質には変わりはない状態」だと話した。

 昨年10月に「近隣国家との関係を考慮しない教科書検定は問題がある」という意思を同僚検定委員らに伝達した文部省の検定委員が、自民党などから罷免圧力を受けて電撃更迭させられたことも、文部省が今までとは雰囲気が違うところを見せていると、政府当局者は伝えている。

 自民党地方組織などが中心となって同教科書採択請願運動を繰り広げ、日本15カ所の地方議会が受け入れたことも、過去とは違って同教科書が検定を通過する可能性が高いと見られる根拠だ。

 この場合、外交にかなり大きな影響を及ぼすだろうというのが関係者らの分析だ。

 同教科書が検定を通過した場合、金大中(キム・デジュン)大統領の就任以来静まっていた「反日感情」が水面上に浮上するなど韓日関係が冷え込むだろうというのが、政府当局者らの展望だ。   また、これまで積極的に日本に教科書検定基準である「近隣諸国条項(国際理解と国際協調次元で必要な配慮をする)」の遵守を要求してきた中国も、全面的外交攻勢に出る方針であることが知らされ、北東アジア外交地図に乱気流が形成される可能性が高いと見られている。   今回、中学校の教科書が通過された場合、今後、高校の教科書にも歴史わい曲が「無事通過」される可能性が高いという点も韓国政府を悩ませている。

駐日韓国大使、歴史教科書問題で懸念表明

2001.02.06(21:18)asahi.com
 韓国の崔相竜・駐日大使は6日、ソウルで日本人記者団と懇談し、検定申請された日本の2002年度版中学歴史教科書で旧日本軍の加害行為についての記述が現状より大幅に減っているなどの問題で、「これまでの流れから逆の方向へ退化してはいけないと思う。心配している」と懸念を表明した。

 崔大使は「検定結果が発表されてからの『事後対策』では意味があまりない。(検定中という)プロセスのなかで、退化・逆行しないよう願っている」と述べた。さらに「過去の事実は尊重してほしい。事実の解釈は人によって違うのは当然だが、事実を消したり曲げたりするのはどうかと思う」とした。

教科書検定審議会から野田元大使外れる/他の1人も 外務OB姿消す

2001.01.13 The Sankei Shimbun
 平成十四年度版の中学歴史教科書検定をめぐり、特定の教科書を不合格にするよう多数派工作を行っていた野田英二郎元駐インド大使が、文部科学省の教科用図書検定調査審議会の委員から外れたことが十二日、分かった。六日の中央省庁再編に伴い、五日に各省庁の審議会委員全員がいったん任期満了となった際、再任されなかったもの。また、もう一人の元外交官出身の検定審委員(公民担当)だった中平立元駐カナダ大使も再任されなかったことから、正委員・臨時委員あわせて百十九人の検定審委員中、外務省出身者はいなくなった。

 野田氏は平成十二年二月、元外交官だった前任者の推薦で検定審委員(歴史担当)となった。

 同年十月、「新しい歴史教科書をつくる会」(西尾幹二会長)のメンバーが執筆者に含まれる歴史教科書を不合格にするよう電話や手紙で他の委員に働きかけていたことが発覚。文部省(当時)は「審議の公正さを損ないかねない言動があった」として、「検定調査分科会」から「価格分科会」へと配置換えする形で事実上、更迭し、その後は会合に出席していなかった。

 文部科学省教科書課によると、省庁再編に伴う審議会改編のため、検定審の三分科会中、「検定調査」を除く「図書」と「価格」両分科会が廃止され、両分科会所属の六委員が再任されなかった。また、新たに「七十歳以上の高齢者は選任しない」という申し合わせを行ったため、七十一歳の中平氏も再任されなかった。ただ、七十歳を超えた委員でもポストによっては再任されたケースもあり、改編を機に外務省出身者を外す意図があったものとみられる。

 検定審には、昭和三十六年以降、外務省出身の委員選出が継続しており、事実上の“外務省枠”があった。当初は政治経済(公民)担当一人だったが、六十一年、高校歴史教科書「新編日本史」が中国、韓国などの批判で検定合格後に異例の再修正をさせられた「検定外圧事件」が起きた年に、当時の首相官邸の意向で歴史担当委員などに二人加わり三になった。

 外務省OBは平成九年六月に一人減って二人となっていたが、今回の措置でゼロとなった。再び元外交官を委員に選出する可能性について文部科学省では「今後も適任者、部会に必要な人を選んでいく」とするにとどめている。

検定介入の「窓口」失う

2001.01.13 The Sankei Shimbun
 野田英二郎元駐インド大使が、今年三月の教科書検定合否発表を前に、教科用図書検定調査審議会委員から外れたことで、特定教科書を不合格にしようとする動きに一応の幕が引かれた。今後、検定審委員に再び外務省OBが選ばれるかどうかは不明だが、文部科学省は、教科書検定問題で一定のけじめをつけたといえる。

 文部科学省としては、省庁再編による審議会改編のタイミングに合わせたことで、野田氏の出身官庁である外務省との余分な摩擦も回避した形だ。とはいえ、検定審に外務省出身者はゼロとなったことで、外務省は当面、検定に介入する直接の「窓口」を失った。

 外務省が検定に口をはさむのには、前例がある。

 昭和六十一年、中国や韓国が高校歴史教科書「新編日本史」を批判、当時の中曽根康弘首相が後藤田正晴官房長官に対応を指示した。外務省が圧力をかけた結果、「新編日本史」は検定合格後に四回も再修正をさせられたことがあった。

 この事件をきっかけに、同年夏から検定審の歴史担当委員などに「国際政治と国際関係に明るい」とされる外務省OB二人が新たに加わったが、事情に詳しい検定審OBは、「彼らは同じ教科書に対して同じ意見を述べていた」と証言する。当初から「外交的配慮」を強調していたともいえる。

 今回のケースは、退任した野田氏が特定教科書を不合格にするよう各委員に手紙や電話で積極的に多数派工作をしたため、表面化した。この教科書をめぐっては「外務省が首相官邸を通じてさらに文部科学省に圧力をかけている」(文部科学省関係者)ともいわれ、今後の展開は予断を許さない。(阿比留瑠比)

韓国外相、歴史教科書問題で河野外相に「慎重処理」要請

2001.01.06(00:37)asahi.com
 「韓国併合は必要だった」などと記述した社会科教科書が検定申請された問題で、韓国の李廷彬・外相は5日、河野洋平外相に新年のあいさつを兼ねた電話で「円満な問題解決のため、日本側が思慮深く慎重に対応することを期待する」と述べ、憂慮を伝えた。韓国外交筋が明らかにした。「新しい歴史教科書をつくる会」が主導したこの教科書の検定問題について、韓国では歴史学会が「改悪」として懸念を表明したほか、主要紙も特集記事を組むなど反発が強まりつつある。

 同筋によると、李外相は河野外相に「日本の歴史教科書問題が未来志向的な韓日関係発展の障害になってはいけない」と伝えた。


「教科書選択、教委の判断に」15府県で請願を採択 (2000.11.26) asahi.com

韓国外相、教科書問題に懸念示す 森首相との会談で

2000.11.06(20:41)asahi.com
 森喜朗首相は6日、来日している韓国の李廷彬・外交通商相と首相官邸で約20分間会談した。李氏が、韓国併合を正当化する内容の中学歴史教科書を日本の出版社が文部省に検定申請している問題について韓国側の懸念を伝えたのに対し、森首相は「文部省で検定基準に従って作業を粛々とやっている」と述べるにとどまった。一方で森首相は、金大中大統領のノーベル平和賞受賞の理由に日韓関係の改善が含まれていることに触れ、「大統領には先頭切ってやってもらったことに感謝している」と述べ、金大統領が2年前の来日で「過去の清算」に踏み切ったことに謝意を伝えた。

 教科書問題では、李氏は森首相との会談に先立って会った与党3党の幹事長にも、「歴史はそんなに書き換えられるものではない。日韓関係がより友好的な関係になりつつあるので、ぜひ十分配慮いただきたい」と要請。野中広務自民党幹事長は「文部省の教科書検定審査会で、そういうことを十分踏まえながら検定作業が行われるが、政治が過度に介入するものではない」と語った。

 また、森首相は李氏との会談で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と日本の国交正常化交渉について「なかなか難しい問題を抱えている。南北、米朝も問題があると思うが、それぞれの関係が前向きの影響を与えながら進むことが重要だ」と述べた。永住外国人に地方選挙権を与える法案については「韓国の大きな関心はよく承知している。ただ、選挙制度の根幹にかかわり、自民党内にもさまざまな意見がある。今国会の様子を注視していきたい」と慎重な姿勢を示した。

歴史教科書から「加害行為」削減を懸念 日韓文化シンポ

2000.11.04(22:12)asahi.com
 日本と韓国間の文化交流面での韓国政府の諮問機関、韓日文化交流政策諮問委員会(池明観委員長)が主催するシンポジウム「過去清算と21世紀の日韓関係」が4日、ソウルで開かれた。日本の文部省に検定申請された2002年度版の中学歴史教科書で、旧日本軍の加害行為に関する記述が現状より大幅に減っていることを懸念する意見が多く出された。

 特に「新しい歴史教科書をつくる会」提案の教科書に対し、「皇国史観への回帰であり、憂慮すべきだ」(鄭在貞・ソウル市立大教授)などといった批判が相次いだ。シンポジウムには、日韓両国の学者やジャーナリストらが参加した。

 鄭教授は、「韓日間の、特に民衆レベルの相互理解を高め、平和共存を進める方向で(教科書問題も)論議されなければならない」とも強調した。一方、加藤章・盛岡大学長は「日韓両国の市民や知識人に、この問題で無関心な面もあるのが懸念される。人と人の交流が重要だ」と述べた。

文部省が、歴史教科書検定委員を配置換え (2000.10.31) asahi.com

組織的関与の疑い強く 教科書検定工作

2000.10.30 The Sankei Shimbun
元外交官の不合格要請文書「外務省見解」と似る

 平成十四年度版の中学教科書検定をめぐり、元外交官の教科用図書検定調査審議会委員(歴史担当)が特定の歴史教科書を不合格にするよう多数派工作を行っていた問題で、この元外交官(元駐インド大使)が他の委員に送った手紙や文部省教科書課長に提出した文書の概要が二十九日、明らかになった。これらの文書は特定教科書について「不適切で不合格とすべきだ」と主張し、「ドイツのネオナチと同一視される」とした文書もある。また、外務省が元外交官委員の不合格工作を想定し、独自に見解をまとめていたことも新たに判明した。元外交官委員の文書は外務省見解と指摘個所が重なっており、外務省が組織的に関与していた疑いがますます強まった。

 元外交官が作成した手紙の内容は、受け取った委員によって若干異なるが、「新しい歴史教科書をつくる会」(西尾幹二会長)のメンバーが執筆者に含まれる歴史教科書を不合格にすべきだとする主張は共通している。

 その理由について(1)韓国併合の「必要性」に触れた記述は韓国を刺激する(2)日中戦争に「引きずり込まれていった」との記述は侵略の事実に反する(3)東京裁判を不当なものだとする記述は、日本が判決を受諾した事実に反している−などという意見を列挙している。

 一部には、「合格すればドイツのネオナチと同一視され、外交的に極めて憂慮される」という記述もあった。「ネオナチ」は、ドイツの一部で台頭しつつある人種差別思想や排外思想を持つネオナチズム運動のことだ。

 文書は文部省の教科書課長にも提出され、この事実を文部省は認めている。

 また、「旧日本軍の残虐行為」の記述を減らさないよう求める中国政府の意向を受けた外務省が、非公開となっている特定教科書の白表紙本をもとに、元外交官委員による他の委員への働きかけや審議会での発言を想定した独自の見解をまとめ、歴史担当と公民担当の元外交官委員に伝えていた。

 関係者の話によると、この外務省見解が指摘する個所は、元外交官委員の不合格工作文書が問題にした個所と多くの部分で重なっているという。

 例えば、韓国併合と日中戦争の記述について「植民地支配と侵略を謝罪した村山富市首相談話にそぐわない」と強調しているほか、東京裁判の記述についても「判決を受け入れている」と元外交官と同じ見解だという。

 今回の教科書不合格工作問題では、(1)中国政府が特定教科書に懸念を表明し、「旧日本軍の残虐行為」の記述を減らさないよう求める圧力を日本の政治家や政府高官にかけていた(2)九月十九日に歴史担当の元外交官委員と外務省の教科書問題担当課長、後藤田正晴元官房長官の三人が特定教科書への対応を協議した(3)外務省アジア局の教科書問題担当課長が別の元外交官委員(公民担当)に「問題のある教科書がある」と働きかけた−などの事実がすでに明らかになっている。

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