TOPIC No.2-121 日台関係(台湾)



01. 台湾 YAHOO! NEWS 
02. 中華民国・台湾
03. まるごと台湾
04. 台湾 TAIWAN by外務省
05. 台湾週報
06. 台湾の歴史 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
07.台湾における対日世論調査(2009年04月22日) by(財)交流協会 台北事務所
07.台湾資料センター 紹介 by台北駐日経済文化代表処

「海洋資源で対日関係強化」 台湾・馬総統が邦人記者と会見

2008/09/22 FujiSankei Business i.

 【台北=長谷川周人】台湾の馬英九総統は21日までに、台北市内の迎賓館、台北賓館で在台日本人記者と会見し、尖閣諸島(中国語名・釣魚島)は「中華民国の領土である」と述べ、改めて領有権を主張した。しかし一方で馬総統は、尖閣周辺の海洋資源の共同開発を日本に呼びかけ、主権問題は棚上げとし、実務レベルでの日台関係の強化を目指す考えも強調した。

 日本領土である尖閣に対し台湾は中国と同様、領有権を主張するが、政権発足から1カ月に満たない6月上旬、尖閣沖で日本の巡視船に台湾の遊漁船が衝突して沈没する事故が発生。台湾側は巡視船9隻を尖閣周辺海域に派遣するなど、馬政権は対日強硬姿勢を貫き日本側に驚きを与えた。

 これを踏まえ総統は、日台間の懸案事項を現実的に解決するには、「主権問題を棚上げし、漁業協議で共通認識に達すれば、資源を共に享受する形で衝突が避けられる」と指摘。暗礁に乗り上げたままの尖閣海域での日台漁業交渉で台湾漁民の権益を守る立場から懸念を示し、「(日台が)誠意と善意をもって問題解決にあたれば、双方の利益にも符合する」と訴えた。

 馬総統は、日中両国が東シナ海ガス田の共同開発合意を引き合いに出し、「日本と中共(中国)ができるのなら台日も(主権)棚上げを成し遂げるべきだ」と指摘した。22日の自民党総裁選に関しては、2006年の訪日で馬氏が面談した麻生太郎幹事長(当時は外相)が、中台関係改善を目指す馬氏の考えに対し「基本的に肯定する見方を示した」とし、麻生政権が誕生すれば「台日関係にとりいいニュース」と述べた。

 馬総統はこの会見に馮寄台・新駐日代表(大使に相当)を同席させ、「彼は20年来の友人で、信任している」と評し、国際問題を担当してきた腹心の登用で日本側と密接な意思疎通を図り「特別なパートナー」である日台関係を強化したいという考えを強調した。

 尖閣沖での遊漁線沈没事故が引き金となって辞任した許世楷・前代表の後任となる馮代表は、「着任後に台日間の相互信頼をどう築くかが最も重要で、台湾は日本にとって最も友好的な国の一つであることを、日本政府と人民に理解してもらいたい」と、27日の赴任に向けた抱負を述べた。

日本企業団体、馬政権に初の要望書 日台経済多角化へ提言

2008/09/20 FujiSankei Business i.

 【台北=長谷川周人】台湾に進出する日系企業でつくる「台北市日本工商会」(坂井賢司理事長、会員企業数420社)は、日本企業との連携拡大を目指す馬英九政権に対する政策提言を行った。蕭万長副総統を招いて実現した提言交流会は、5月に発足した馬政権の呼びかけで実現したもので、工商会としては初の試み。企業展開のグローバル化が進む中、日台双方は新たな活動協力の枠組みを模索する認識で一致。今後、提言の政策反映による日台経済の多角化と深化が期待される。

 会員企業へのアンケートなどを元に作成された要望書(A4判88ページ)は、冒頭で「企業活動のグローバル化における日台協力の推進」を挙げた。これは中華圏のみならず、欧州や南米などにおける企業間協力を念頭に入れた要望で、背景には「将来的に(日台は)面でとらえた連携が重要になる」(坂井理事長)との認識がある。

 また、両岸和平の実現による地域の安定や台湾経済の安定的な運営といった経済環境を政治問題も含めて包括的にとらえた観点に立つ要望のほか、査証(ビザ)取得に絡む規制緩和や通関手続きの24時間化といった企業活動の現場の声を反映させた要望まで幅広く盛り込まれた。

 工商会はこれまで、知的財産権問題など個々に意見集約したケースはあったが、米系企業団体の台北米国商会や欧州系団体の欧州商会のように、企業の要望をとりまとめ、提言として台湾当局に提出するのは今回が初めてとなる。

 台湾進出の日系企業は製造業の場合、台湾市場で部品を調達し、中国で製品化する事業形態が多く、馬政権が準備を進める中台を結ぶ貨物直行便や海運の開放が実現すれば、日本の企業展開も大幅に選択肢が広がることになる。

 今回の提言は台湾の経済部(経済省)の提案で実現したが、良好な日台関係をさらに発展させるためにも、新政権との対話チャンネルの確保は極めて重要で、坂井理事長は「『ヒト、モノ、カネ』の自由な動きを確保するために今後、工商会を日本企業の固まりとして、より大きな声で要望を伝える組織に変えていきたい」と話している。

【山本勲の観察中国】(17)険悪化した日台関係

2008/06/24 FujiSankei Business i.

 ■漁業紛争の早急な解決必要

 台湾の馬英九政権発足から1カ月もたたぬうちに、日台関係が険悪化している。尖閣諸島(台湾名・釣魚台)近海で10日に起きた、日本の海上保安庁巡視船と台湾の遊漁船の衝突事故が発端となった。劉兆玄・行政院長(首相)が「(日本との)戦争も排除しない」と発言すれば、16日には台湾の巡視船が民間抗議船とともに日本の領海に侵入するなど、従来考えられなかった現象が起きている。馬氏の総統当選時から懸念されていた日台関係は、やはり好ましからぬ新時代を迎えたようだ。

 10日の事故では日本の領海に侵入した遊漁船「聯合号」が、追跡中の巡視船「こしき」と衝突して沈没した。乗員16人は全員救助されたものの、船長が身柄を拘束されたことなどに台湾側が強く反発した。

 馬政権は当初、「遺憾」の意を表明するだけの穏便な解決を図ろうとした。ところが漁民をはじめメディアや与党、国民党の反日勢力、野党の民進党などからも集中非難を浴びて大幅に方向転換した。

 劉行政院長は13日の立法院(国会)での答弁で、台湾が自国領と主張している尖閣諸島問題について「国家間の争議を解決する最後の手段として戦争も排除しない」と述べた。

 これは与党委員(議員)の、「馬総統はかつて(台北市長時代に)日本との一戦も辞さないと言ったが準備はできているのか?」との、多分に誘導尋問めいた質問への答えではあった。とはいえ、現役の行政院長がこうした発言をするのは尋常ではない。李登輝・陳水扁両政権時代の、20年にわたる良好な日台関係の時代には考えられなかったことだ。

 日本側は事故当時、巡視船を指揮する立場にあった第11管区海上保安本部(那覇市)が15日、「巡視船の接近の仕方などに過失があった」ことを認め、「遺憾」の意を表明した。

 しかし台湾側はさらに「公式謝罪」を要求、16日早朝には民間抗議船とその護衛を名目とした巡視船9隻が日本の領海に再侵入、「尖閣諸島から700メートルの海域まで接近した」(台湾の中国時報紙)。日本側巡視船とのにらみ合いの後、島への上陸をあきらめて引き返したが、まさに「一触即発の状況」(同紙)だったという。

 馬英九総統は17日の記者会見で「国際紛争は平和的に解決すべき」と強調して事態の沈静化に乗り出し、反日派の立法委員が主導する海軍艦船の尖閣派遣も中止になった。しかし馬総統は日本の公式謝罪と賠償を求め、「(尖閣諸島の)主権維持の決意に変わりはない」としており、今後もいつ何時緊張が再燃するか分からない。

 台湾メディアの連日の日本非難報道で台湾の反日感情が急速に高まっている。日本の在台湾代表機関、交流協会台北事務所は16日、「反日機運が日本人の安全を脅かす心配がある」との、在留邦人の注意を喚起する文書をホームページに掲載した。

 今回の事件は偶然にしても、あまりに象徴的な時期に起きている。約2週間前の5月28日には与党、国民党の呉伯雄主席が北京で胡錦濤・中国国家主席と会談、「中華民族の団結と互助」(胡主席)や「骨肉相連なる中華民族の感情」(呉主席)を称揚(しょうよう)し合った。

 事件の翌日から中国と台湾の交流団体協議が9年ぶりに再開、(1)中台直行チャーター便の7月からの運行開始(2)中国人観光客の台湾訪問解禁−−などの交流拡大策を決めた。

 馬英九政権は馬総統ら中国に融和的で日本に厳しい外省人(中国大陸出身者)を中心に構成している。4月はじめの本欄でも、馬政権が尖閣諸島をはじめとする領土・領海問題や歴史問題などで、中国と対日共同戦線を組む懸念を指摘した。

 中国外務省スポークスマンは17日、「日本船が中国領・釣魚島海域で中国・台湾の船を沈没させたことに重大な関心と強烈な不満」を表明した。尖閣諸島の中国領有権を主張する中国・香港の民間団体が台湾と連携して活動を強化する動きもみられる。

 それでも対日関係改善を重視する胡錦濤政権の対応は控えめで、18日の北京での対日抗議デモも当局の規制が効いた“ガス抜き”策といえた。

 日本政府はまず台湾との漁業紛争の解決に本格的に取り組む必要がある。領土・領海問題と台湾漁民の生活問題を分けて、後者の問題には柔軟に対応すべきだ。現状を放置すれば、日本の近隣では唯一、親日的な台湾の本省人(日本の植民地時代から台湾に住む漢族とその子孫)までを敵に回すことになりかねない。(産経新聞編集委員兼論説委員)

危機管理に課題 台湾・馬政権1カ月 支持率41%に下落

2008/06/23 FujiSankei Business i.

 台湾の馬英九政権が発足から1カ月を経過した。9年ぶりの中台対話実現など対中関係改善は順調だが、尖閣諸島(中国名・釣魚島)沖で起きた日本の巡視船と台湾の遊漁船との衝突事故をきっかけに対日関係が悪化。突然の石油価格値上げも住民の激しい反発を招くなど苦しい政権運営が続いている。

 与党国民党寄りのTVBSテレビが行った世論調査によると、政権発足直前に52%だった支持率は1カ月で41%に下落。陳水扁前政権が2000年の政権発足1カ月で77%を記録したのとは対照的だ。

 対中政策では6割が「満足」と答えたが、対日関係では45%が「不満」と回答。中南部で続いた豪雨の災害対策でも対応の遅れが指摘され、66%が馬政権は「準備不足」と指摘した。

 対中関係改善の動きは政権発足直後から活発化。国民党の呉伯雄主席や、対中交流窓口機関、海峡交流基金会トップの江丙坤理事長らが相次いで訪中し、週末直行チャーター便就航と中国人の台湾観光解禁について中国側との合意にこぎ着けた。

 日台関係の悪化を招いた衝突事故は、中台対話が行われた時期に重なった。当初は慎重姿勢だった馬政権は、国民党内部の一部強硬派にあおられるように、強硬姿勢に転換。沈没した遊漁船の賠償などの事故処理よりも尖閣諸島の領有権主張を優先させ、同諸島沖に向かった抗議船に巡視船9隻の同行を許した。

 馬総統に近い筋は「総統府と行政院(内閣)の連絡がうまくいかず、釣魚島の領有権を訴えてきた総統はナショナリストの動きを封じることができなかった」と打ち明け、危機管理に課題があると指摘した。(台北 共同)

台湾:馬政権1カ月 物価高騰や船舶事故対応で支持率下降

2008年06月20日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 【台北・庄司哲也】台湾の馬英九政権が発足から20日で1カ月を迎えた。中台交流の促進による経済浮揚の期待を背負った政権の船出だったが、台湾経済は石油価格など国際的な物価高騰の影響を受け、庶民の不満が高まっている。さらに尖閣諸島(台湾名・釣魚台)周辺海域での日本の巡視船と台湾の遊漁船の衝突事故の対応を巡り、政権の危機管理能力の不足も指摘され、厳しい出足となっている。

 台湾の対日交流窓口機関の台北駐日経済文化代表処の元代表、羅福全氏(73)は毎日新聞に対し、尖閣諸島での馬政権の対応について「総統府の安全保障政策を決定する機関、国家安全会議が機能した形跡がない。馬政権の準備と危機管理の不足だ」と指摘した。

 尖閣諸島の問題で、馬政権は与党・国民党内から起きた強硬意見に突き上げられ、政権発足前から「重視する」としていた対日関係を悪化させ、台湾外交部(外務省)の対日専門部署の日本事務会の廃止も決めてしまった。

 一方、馬政権の最大の公約である中台交流拡大では、9年ぶりの中台対話の再開にこぎつけ、週末チャーター便と台湾への中国人観光客の受け入れ拡大に合意。だが、実施される7月以降、観光客増加などによる経済的恩恵を一般庶民にまで広げられるかどうかは未知数だ。

 台湾では石油価格を中心に物価が高騰し、庶民が生活苦を訴え、政権への不満が募っている。台湾紙「聯合報」が20日に報じた馬政権発足1カ月の世論調査結果によると、先月20日の総統就任時に66%だった支持率は、50%に下降した。不満理由のトップは物価の安定で、61%が回答。また尖閣諸島での事故の対応では「満足」との回答は35%で、「不満」が43%と上回った。

 馬政権と同様に経済再生を掲げ、保守系政党が政権復帰を果たした韓国でも李明博(イ・ミョンバク)大統領の支持率が低迷。台湾では馬総統を李大統領になぞらえる声もあり、野党・民進党は「馬総統は、李大統領に似ている」と批判する。

 馬政権は中台交流による経済浮揚を第一に掲げており、これが実を結ぶかどうかが、今後の支持率アップの鍵となりそうだ。

日台の対立に政治決着 尖閣沖台湾漁船沈没事故

2008.06.20 MSN産経新聞

 【台北=長谷川周人】台湾の欧鴻錬外交部長(外相)は20日、日本の在台代表機関・交流協会台北事務所の池田維代表と会談し、尖閣諸島(中国語名・釣魚島)沖で違法操業していた台湾の遊漁船が日本の巡視船と衝突、沈没した事故で、欧部長は問題解決に向けた日本側の努力に謝意を示し、両者は「落着した」との認識で一致した。

 日本側はこの日、巡視船を指揮した第11管区海上保安本部長が本部長名で書いた「船長にあてた手紙」を船長に手渡した。日本政府は船長の負傷と遊漁船の沈没に関し、「遺憾」との表現で謝罪の意を伝えていたが、「手紙」では「改めて心からおわび申し上げます」と言い換え、台湾側の了解を得た。

 両者による政治決着を受けて日台は今後、遊漁船の違法行為や賠償問題などの交渉に入るが、欧部長はこれを機に2005年から中断中の漁業権交渉を再開させ、日本と漁業協定を結びたいとの意向を示した。

台湾駐日代表、辞職へ 衝突事故で「屈辱受けた」

2008年06月16日 中国新聞ニュ−ス

 【台北16日共同】日本の巡視船と台湾の遊漁船の衝突事故で、台湾の外交部(外務省)に召還された駐日代表である台北駐日経済文化代表処の許世楷代表(大使に相当)は16日、事故をめぐる説明で台湾の与党議員から「屈辱を受けた」として、欧鴻錬外交部長(外相)に即時辞職の届け出を提出した。

 許代表は台北で事故について日本と行った交渉などを説明。与党国民党の立法委員(国会議員)は、許代表は日本寄りで「台奸(台湾の敵)だ」と激しく非難し、許代表が激怒した。

 外交部は内規に従い、辞職を認めるとみられる。陳水扁前政権で代表に起用された許氏は、馬英九政権発足と同時に辞職届を出したが、慰留されていた。

 一方、尖閣諸島(中国名・釣魚島)付近の日本領海内に一時侵入した同諸島の領有権を主張する抗議船は、同日午後、台湾北部の港に戻った。

領海侵入は遺憾−町村氏 台湾船沈没は双方に問題

2008年06月16日 中国新聞ニュ−ス

 町村信孝官房長官は16日午前の記者会見で、尖閣諸島・魚釣島沖の日本領海に台湾の抗議船1隻と巡視船9隻が侵入したことについて「外交ルートで再三警告、申し入れを行ったにもかかわらず誠に遺憾だ。関係者が冷静に対応することが必要だ」と述べ、台湾側に強く自制を求めた。

 同時に、10日に台湾の遊漁船が日本の巡視船と衝突して沈没し、その後に日本の海上保安庁が巡視船側にも過失があったと認めたことに関し「双方に問題があった。台湾側と遊漁船の船長に遺憾の意を表明した」と述べ、既に台湾側へ謝罪したことを強調した。

 また町村氏は「尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的、国際法上も自明の理だ」とした上で、「今回の事態で近隣諸国、地域の平和が乱されることがあってはならない」と述べた。

台湾、駐日代表を召還 船長送検で強硬姿勢

2008年06月15日 中国新聞ニュ−ス

 【台北14日共同】台湾の欧鴻錬外交部長(外相)は14日、尖閣諸島・魚釣島沖の日本領海で台湾の遊漁船が警備中の海上保安部の巡視船と衝突し沈没した事故について記者会見し、遊漁船の船長が書類送検されたことに抗議し、台湾の駐日代表である台北駐日経済文化代表処の許世楷代表(大使に相当)を召還すると発表した。

 台湾では事故後、対日抗議を求める報道や意見が急増。国民党の馬英九政権は、台湾内の世論の硬化を背景に、日本への強硬姿勢を示したとみられる。

 欧氏は、石垣海上保安部が巡視船の船長とともに遊漁船の船長も書類送検したことを盛り込んだ調査報告を日本側から受け取ったと述べた上で、船長の送検は「受け入れられない」と強く抗議。謝罪と沈没した遊漁船の賠償を求める考えを示した。

 馬総統は総統選挙前の昨年11月に訪日した際、「釣魚島(尖閣諸島)は台湾の領土だ」と主張していた。

海保と台湾の船、双方を書類送検 尖閣事故

2008.06.14 MSN産経新聞

 尖閣諸島・魚釣島沖の日本領海内で10日未明、台湾の遊漁船が警備中の海保巡視船と衝突し沈没した事故で、第11管区海上保安本部は14日、業務上過失往来危険などの容疑で、両船の船長を那覇地検石垣支部に書類送検した。

 書類送検されたのは鹿児島海上保安部所属の巡視船「こしき」の堤信行船長(58)と台湾の遊漁船「連合号」の何鴻義船長(48)。

 調べでは、堤船長は船名確認のため台湾船に接近した際、衝突の危険が予測されるにもかかわらす、十分な距離を確保せず衝突を招いた疑い。

 また、台湾船も巡視船を確認後も自動操舵のまま回避行動をとらなかった疑い。何船長が負傷したため堤船長には業務上過失傷害の容疑も適用した。

同本部は当初、巡視船が船名確認のため接近したところ、台湾船がジクザグ航行をして接触・沈没したと発表していた。

台湾船、巡視船と衝突/尖閣・魚釣島沖

2008年06月11日 asahi.com

 10日午前3時20分ごろ、沖縄県の尖閣諸島・魚釣島から南南東約9キロの東シナ海で、第10管区海上保安本部(鹿児島市)の巡視船「こしき」(966トン、堤信行船長)と台湾の遊漁船「聯合号」が衝突、遊漁船が沈没した。遊漁船に乗っていた台湾人計16人は全員、巡視船に救助された。船長が顔に擦り傷を負った。巡視船の乗組員32人にけがはなかったという。

 第11管区海上保安本部(那覇市)によると、尖閣諸島周辺で警戒活動中の巡視船が、日本の領海内に侵入してきた不審な遊漁船を発見。国籍などを確認しようと近づくと、遊漁船はジグザグに航行して逃走した。巡視船が右後方を追跡していたところ、遊漁船が急に右旋回し、巡視船の左船首部分に衝突したという。

 遊漁船が浸水を始めたため、巡視船はゴムボートを出して、遊漁船に乗っていた16人を救助。遊漁船は衝突から約1時間15分後に沈没したという。

 遊漁船は20〜50トンで、乗っていた16人のうち乗組員が3人、客13人。船長らは「釣りをしていた」と話しているという。こしきは同日昼、沖縄・石垣島の石垣港に入港。同海保は16人の健康状態などを調べたうえで詳しい事情を聴く。

 こしきは数日前から、巡視船「もとぶ」とともに、尖閣諸島の周辺の領海警備にあたっていた。

台湾が官民挙げて人材招聘 求む日本人ビジネスマン 技術力ある経験者に照準

2008/06/10 FujiSankei Business i.

 台湾が官民挙げて日本での「人材確保」に動いている。生産拠点を相次ぎ中国に移した台湾企業が研究開発機能や経営管理の強化をめざす中、日本企業で勤務経験のある有能な人材起用が「早道」と判断。これまでも台湾当局は海外から2500人以上をリクルートしているというが、さらに半導体や液晶、バイオテクノロジー、医療、サービス業など9業種を中心に、研究者や技術者、経営ノウハウを持つ日本人の獲得に本腰を入れる。(坂本一之)

 台湾行政院(内閣)経済省はこのほど、台湾企業9社が参加する官民合同ミッションを東京と大阪に派遣し、人材誘致イベントを開催した。産業の高度化にむけて先進的なノウハウをもつ人材への需要が高まる台湾企業を、当局が海外で積極的に後押しした形だ。

 経済省が派遣した「ハイリクルート求人団」には運輸大手エバーグリーンやIT(情報技術)大手アドバンテックなどが参加。東京都千代田区の東京国際フォーラムで開かれた就職イベントに「台湾ブース」を出展。学生や現役のビジネスマンやエンジニア、退職した団塊世代など300人以上が同ブースを訪れた。

 台湾当局は2003年から「海外人材招聘(しょうへい)計画」を実施。これまでに2553人の人材確保に成功している。人口約2300万人の台湾で、域内の大卒者だけでは企業の雇用需要に対応できないとして、海外での人材確保を進めている。

 台湾で働いている海外からの専門技術者は07年に2万8956人で、このうち日本人は8181人で最も多く実績も上げている。このため日本企業での製品開発や工程管理など、技術力のある経験者採用に台湾企業が意欲を強めている。

 台湾企業は昨年、合計134人の日本人招聘に成功しており、今年もそれ以上の成果をめざしている。

外交工作費問題で台湾の高官3人辞任

2008/05/08 FujiSankei Business i.

 台湾がパプアニューギニアとの外交関係樹立を目指し、外交工作費として振り込んだという3000万ドルが回収不能となった問題で、陳水扁総統の側近である邱義仁・行政副院長(副首相)のほか、黄志芳・外交部長(外相)ら高官2人が6日、責任を取り辞任した。3人を事情聴取した検察は横領の疑いもあるとみて、邱氏の海外渡航を禁止して自宅を捜索。前代未聞の外交スキャンダルは政権ぐるみの汚職事件に発展する可能性があるが、総統府は同日、陳総統の事件関与を否定する声明を発表した。(台北 長谷川周人)

台湾外交「秘密資金」31億円、仲介者が持ち逃げ

2008年05月03日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【台北=石井利尚】南太平洋のパプアニューギニアとの外交関係樹立を目指して、台湾の外交部(外務省)が準備した秘密資金約3000万ドル(31億5000万円)が、仲介者に持ち逃げされ、回収不能となったことが、2日、明らかになった。

 黄志芳外交部長(外相)は同日、記者会見で謝罪した。2006年、陳水扁総統の懐刀、邱義仁・国家安全会議秘書長(当時)が「秘密プロジェクト」を推進、台湾人など仲介者2人の海外口座に資金を振り込んだ。だが、外交工作は失敗し、資金の行方もわからなくなってしまった。

 中国と台湾は、南太平洋や中米カリブ海地域の小国を対象に激しい外交合戦を展開している。

 黄外交部長は「3000万ドルは関係樹立後のパプアの農漁業、中小企業、インフラ整備のための協力金だった。金銭外交ではない」と釈明したが、巨額資金が水面下で動く「金銭外交」の一端が明るみに出た形だ。

総統就任式に都知事出席 台湾、勲章の申し出も

2008年05月02日 東京新聞

 東京都の石原慎太郎知事は2日の記者会見で、19日から21日まで台湾に出張し、20日の馬英九次期総統の就任式に招待を受けて出席することを明らかにした。陳水扁総統から勲章授与の申し出があり、調整しているという。

 知事就任後の訪台は7回目。中国政府から反発が予想されるのでは、との質問には「私は(中国、台湾の)両方とも友人のつもりでいます」と答えた。

 招待を受けている8月8日の北京五輪開会式には、都が2016年夏季五輪の招致に名乗りを上げていることを踏まえ「都合がついたら行きます。参考になるので行けたら行きたい」と述べた。(共同)

台湾マグロ漁船、大規模休漁検討・燃料高で、日本向け減少必至

2008/05/02 NIKKEI NeT

 キハダマグロやメバチマグロなどの冷凍マグロを主に日本に輸出している台湾の遠洋マグロはえ縄漁船が今夏、燃料重油の価格高騰を理由に大規模な休漁を検討していることが2日わかった。日本船も減っているため、今後、日本向けマグロの大幅な減少は避けられず、価格が上昇する可能性もある。食卓にも影響が及びそうだ。

 休漁を考えているのは台湾区遠洋鮪漁船魚類輸出業同業公会(台湾同業公会)。関係者によると、7月から10月までの4カ月程度、保有する約400隻のうち約70隻の休漁を前提に休漁補償の創設を要望中だ。休漁補償なしに自主的に休漁を考えるところもあり、150隻前後が休漁する可能性もある。

【若者たちよ 李登輝・台湾前総統】(1)

2008/04/15 FujiSankei Business i.

「第5回日台文化交流青少年スカラシップ」講演から

 ■指導者は現場を見ろ、日本人の一人として奮闘せよ

 日本の若者に台湾を通じて世界を見つめ直してもらう「日台文化交流 青少年スカラシップ」(フジサンケイ ビジネスアイ、産経新聞社主催、台湾行政院新聞局共催)は今年、第5回を迎えた。10〜20代の若者から作文など4部門で1101点の応募があり、このうち優秀賞の受賞者など17人が6日間の研修旅行を贈られ、台湾を先月訪れた。一行が訪問した李登輝前総統は、日本や台湾の将来、中国との関係などについて幅広く、流暢(りゅうちょう)な日本語で若者たちに語って聞かせた。(河崎真澄)

                ◇    ◇

 台湾の李登輝です。みなさんは(今回の研修旅行で1泊の)台湾家庭でのホームステイを経験したと聞いた。ホームステイは一番いい。自分と関係のない家に住み、その家の人たちに私とはこういう人間だと生活を通して話したり、場所によっては、今でもトイレや風呂もないような台湾の家庭を知ることができる。

 昨日(3月27日)、実は今回(3月22日)の選挙で総統に当選した(野党国民党の)馬英九氏が訪ねてきた。私が馬氏に敬服しているのは、彼が選挙前に(台湾の中部や南部で)99日間のホームステイをしたことだ。彼は(香港出身で)台湾生まれではないが台湾の総統になりたい。ならば台湾人の家に住み込んで「私はこういう人物だ」と了解してもらう必要がある。

 この考え方は間違えてはいない。まだまだ貧しい家庭も多く、苦しんでいることを知らねばならない。

 最近、「最高指導者の条件」(PHP研究所)という本を私は日本で出版したが、その中で「現場を見なさい」と書いた。馬氏にも話したが、自分とは異なる環境で、人々はどう生活しているのか見なければならない。自分の目で見ることが、台湾と日本を将来、強く結ぶにどうすべきか考えるために、欠かせない。

 指導者には何が求められるか。組織を作り上げるには、危機に対応する現場主義(が必要)。現場が分からないと。東京で法律つくって、これで正義をやってるというのは間違いだ。民主政治では国民の細かい事情を知らねばならない。

                ◇    ◇

 日本は戦後六十数年、非常に進歩した。私の最近の3回の訪日の感想だ。(終戦を迎えた)昭和20(1945)年8月15日に私は名古屋城にいた。(旧日本軍の)見習い士官だった。あれだけ爆撃を受け焦土と化した日本を見た。そこから立ち上がり、世界第2位の経済大国を作り上げた。

 民主的な平和な国として世界各国の尊敬を受けることができた。その間における人々の努力と指導者に敬意を表したい。同時に日本文化の優れた伝統が、進歩した社会の中で失われていなかった。私は田舎を回ってきた。岡山、倉敷、そして名古屋、金沢、石川、昨年は仙台から山形、秋田へと、奥の細道も歩いた。

 みなさんは気づかないだろうが、外国から来るとこんな田舎まで、ゴミひとつ落ちていない(ことは驚きだ)。長い間、伝統的に培われた日本人の考え方であり、国を愛すると同時に村を愛する、自然を愛するという精神に結びついた。

 旅館も、新幹線も、仕事に従事する日本人の真面目さ、細やかさをはっきりと感ずることができる。社会秩序はきちんと保たれている。精神的に高い日本文化を日本人はもっている。日本の精神は「武士道」に起源があると私は感じる。

                ◇    ◇

 だが、いまの日本に何かが欠けている。これを取り戻す必要がある。さもなくば国際的に日本は強い国になれない。まず第一に私がいう「私は誰だ?」という問題。私は人間だが、人間の生命には限りがある。

 みなさんは倉田百三の戯曲「出家とその弟子」を読みましたか。そこに出てくる考え方の基本は、死を迎える前に、生きている間に何をすべきかという問題がある。生きている間に自分の精神を高め、自分以外の公共のために努力しなければいけない。これが公(おおやけ)の精神だ。自分さえよければという考え方が若い人に広がっているが、日本人の一人として奮闘すべきだ。

 私は台湾のために奮闘している。私は「私(わたくし)」ではない私。公のために奮闘する私だ。日本の指導者にその精神が欠けていないか。

                   ◇

【プロフィル】李登輝

 り・とうき 旧制台北高等学校から京都帝国大農学部に学び、戦後、台湾大卒。米コーネル大で農業経済学博士号。台湾大教授時代に蒋経国元総統の求めに応じて政界入り。台北市長や台湾省長などを経て1984年に副総統。88年に蒋氏死去に伴い総統昇格。自ら導入した総統直接選で当選し2000年まで総統職にあった。一党支配時代の国民党の政治体制や社会構造を内側から変えた「台湾民主化の父」。85歳。台北生まれ。蒋

【若者たちよ 李登輝・台湾前総統】(2)

2008/04/16 FujiSankei Business i.

 □「第5回日台文化交流青少年スカラシップ」講演から

 ■日台で農業技術交流を 休閑地でサトウキビ量産

 日本の指導者、政治のリーダーたちはあまり将来を見通しておらず、肝っ玉が小さい。経済は伸びたが指導力が弱い。日本でも社会の一部はカネや権力に左右されているが、そんな問題から脱出するのは政治家の役割ではないか。小泉(純一郎)さんにもっと(首相職を)やらせたらよかったんだ。根回しで決めるのではなく公選(直接投票)で首相を選んだらどうか。

 日中関係ももっとはっきりさせればいい。(中国の胡錦濤国家主席が来月訪日する予定だが)中国の指導者が日本に来たら、「何か中国がお困りのことはありませんか。何か欲しいものはありませんか。助けて差し上げます」と、そういえばいいんだ。ただし、「その代わり中国は見返りとして日本に何をしてくれますか。『反日』活動をすぐにやめてくれますか」と付け加えなければいけない。

                   ◇

 最近、日本で「中国製ギョーザ中毒事件」が問題になった。だが台湾製ギョーザなら「毒」はない。台湾はもっと日本に食品を供給すべきで、日本と農業(や食品)でもっと助け合ったらいい。台湾なら残留農薬の問題は起こらないよ。

 台湾で1個数百円のマンゴーが日本では1万円もするものがあると聞いた。台湾はマグロの水揚げ量も多く、日本より安くトロが食べられる。台湾のみかんも大量にできるが、みかけの悪いものはジュースにして日本に輸出したらいい。

 日本人は「うまさ」が分かる。日本も台湾も世界貿易機関(WTO)の正式メンバーどうし。(農水産品や食品を)交換しあえるよう(努力すべき)。日本の若い人が台湾で大規模農業をするのもいい。ガソリンが高いのなら、台湾の休閑地で(バイオ燃料の原料となる)サトウキビを量産したらどうか。ジャガイモやニンジンを作ってもいい。

 土地は動かないようにみえて生産プロセスを工夫すれば“動く”んだ。日本と台湾は農業技術を交流する(余地がまだある)。

                   ◇

 経済政策ではこんなことも考える。(中国はなかなか人民元の大幅切り上げに応じないが)日本は1985年の「プラザ合意」でおとなしく円高をのんで、1ドル=240円前後から1年で約120円になった。

 86年に台湾元も1ドル=60元前後から25元前後に上昇したことがあった。当時私は副総統として、このままでは台湾は激しいインフレに襲われると考え、中央銀行に外貨集中させないため市中銀行にも外貨口座を開けるよう制度を改めた。

 その結果、外貨を台湾元に両替せず、外貨のまま銀行に預けること可能になって、(台湾元の大量流出を食い止めることで)インフレを防ぐことができた。

 一方、日本では円高の結果、(円建てでみれば安くなった)米国の資産をたくさん買った。国内ではインフレになり地価も高騰して結局、バブル経済が崩壊してしまった。その後の十数年にわたり日本経済が伸びなかった。米国でサブプライム(高金利型)住宅ローン問題からドル安になっており注意が必要だろう。

                   ◇

 ■「権力を『私用』しない」 農業経済学者の姿

 国家や国民の経済基盤として農業の重要性を強く意識していた李登輝氏。自ら京都帝国大に農業経済学の門を叩(たた)き、米コーネル大で農業経済博士号を取得。

 台湾に戻って農業経済の専門家として頭角を現したことが、当時の国民党政権から注目されるきっかけになった。蒋経国元総統時代に副総統に就任、蒋氏死去で1988年1月に総統昇格し、2000年5月まで12年間、総統を務めた。

 だが、李氏自身にそもそも政界への進出意欲や権力志向はなく、求められて政界に入った後には、農業経済学者としてのベースを応用し、国家経営や民主化推進に誠心誠意あたった。

 李氏はかねて、「権力は国のため人民のため必要なときだけ取り出して使えばよく、使い終わったらしまえばいい」と発言。権力を決して「私用」しなかった希有(けう)の政治家となった。

 京都学派の哲学を基本にして自己を確立した農業経済学者が、偶然にも“後天的に”政治の仕事を任されたと解釈すれば、その発言は理解しやすいかもしれない。国家と国民、農業と経済の行方がいまも気がかりなのは、政治家である前に、実践躬行(じっせんきゅうこう)をモットーとする農業経済学者が李登輝氏の真の姿だからだ。(河崎真澄)

【若者たちよ 李登輝・台湾前総統】(3)

2008/04/17 FujiSankei Business i.

「第5回日台文化交流青少年スカラシップ」講演から

「中華」とは異なる民主体制、台湾人アイデンティティー

 「中華」とは何か。定義が難しいが、中国は(世界の)中心にある「華」だといい、中国人は「大中華帝国」ととらえている。しかし、あの国(中華人民共和国)には人権がない。皇帝がすべて。中国は5000年の歴史と言うが、(現在も)古いしきたりにとらわれており、中国人の考え方にあまり変化はない。皇帝が権力を握って財を集めては周囲に脅威を与える。

 文字や歴史的な発明など独特の文化があり、自分の国が最も偉いと思っているのが「中華」の意味。台湾は清代に「化外(けがい)の地」と呼ばれていた。では私(李登輝氏)は何人か。(日本統治時代の台湾に生まれ)22歳まで日本国籍。京都帝国大学に進み、軍に入って陸軍少尉にまでなった。戦後はどうか。(台湾人としてのアイデンティティーに)まったく苦しんでいない。

                   ◇

 しかし台湾が歴史に登場して400年ほどしかない中で、長らく外来政権に治められてきた。被支配民はどのように主人になって国を作るか分からない。(3月22日の総統選挙で台湾本土派で落選した)民主進歩党の謝長廷氏の得票率は約41%。台湾で最近行われた調査で「私は台湾人だ」と答えた人が40%と、ほぼ一致した。私は「台湾人」だとの意識をもつ人が70%近いと思っていたが、実際は40%に落ちてしまった。私は悲しい気分になった。

 台湾人主体の体制。台湾のために奮闘する。民主化する。私は(中国大陸から戦後、台湾に移ってきた外来政権の)中国国民党の中にあって、主席、総統という立場で民主政府に変えてきた。自分たちで自分の国をどう作るか。台湾人はまだ大いに勉強しなければいけない。台湾人が自分なりの精神を持つまで時間がまだかかる。私の悩みだ。

 いかに早く台湾人が自主的な考え方、主体性をはっきりと持ち、民主化を深める努力をするか。「公(おおやけ)」のために一生懸命努力することが台湾人にも大切だ。

                   ◇

 台湾の状態も今年、変わった(3月の総統選挙で8年ぶりの政権交代が決まった)。国民党の馬英九氏が総統選挙で勝って、台湾は中国に統一されてしまうのではないか、と心配する人が日本にも大勢いる。だがその考え方は打ち消さなければいけないな。一部の考え方にだまされている。

 中国はいま、台湾を飲み込む計画も力もない。自分自身(中国)が大変だ。そういう中国の状態を知らないから(心配する)。産経新聞とフジサンケイビジネスアイが載せた(3月26日付「中台統一」加速はない、との内容の)私のインタビュー記事は大きな影響がある。内容に私が責任を取るよ。怒られるのは私だけだ。(中台の問題について)こわごわとせず、大きな気持ちでハッキリ発言なさいと、福田(康夫)首相には伝えてくださいよ。

                   ◇

 ■揺るぎない現実派 新時代の「台湾人」へ

 戦前から台湾に住む本省人(台湾籍)と中国大陸から戦後渡ってきた外省人(中国大陸籍)とに大きく分けられる群族(エスニック)はこれまで、総統選挙や立法委員(国会議員)選挙のたびに対立し、逆に溝を深める場面も生んできた。台湾世論が大きく2つに分かれる現象を、地元誌は「香港は『一国二制度』だが台湾は『一島二国』だ」と揶揄(やゆ)した。

 だが、李登輝前総統は2005年10月の訪米時、ワシントンでの講演で、台湾は台湾以外から渡ってきた時期や省籍(祖先からの出身地)の異なる群族が共存する社会だが、台湾に暮らして根を張る人すべてが「新時代の台湾人」になるべきだと述べた。一部の政治家や中国が、群族間対立や内部分裂を煽っていることに危機感を示し、台湾の人々に団結を求める主張だ。

 群族間の認識の違いや迫害を受けた負の記憶は簡単には埋められないだろう。李氏はそれを十分に承知しながらも、人口13億人の中国大陸から政治的にも軍事的にも脅威を受け国際政治面でも弱い立場にある台湾が、人口2300万人の中でアイデンティティーの混乱を続けることは得策ではなく、「分裂」は国際社会に誤ったシグナルを送ることになると考えた。まず「国家レベル」で優先すべきは「団結」である、と。

 中国などから「独立派」と指弾されてきた李氏が、今回の総統選で最終段階では台湾本土派の謝長廷氏(民主進歩党)支持を決めながら、中国国民党の馬英九氏(香港出身)が当選した後、インタビューで馬氏に「一党支配をもって民主化を進めるべきだ」と注文を付けたことなどに“姿勢の変化”を指摘する声もあった。しかし、群族対立に今度こそ終止符を打ち、台湾の置かれた状況を直視して将来を見つめ直すべきだという「現実派」の李氏の信念は揺るぎない。さまざまな批判を覚悟で李氏は現実路線を訴えた。(河崎真澄)

【若者たちよ 李登輝・台湾前総統】(4)

2008/04/18 FujiSankei Business i.

 □「第5回日台文化交流青少年スカラシップ」講演から

 ■公の人、後藤新平に学べ 日本人として奮闘せよ

 みなさんは後藤新平という人を知っていますか。(日本統治時代に)児玉源太郎が第4代台湾総督だった時、8年7カ月にわたって(1898〜1906年)民政長官として台湾総督府で仕事をした日本人だ。当時、台湾を(他の国とは近代化のペースで)1世紀違う国に築き上げた。

 台湾での功績は非常に大きかった。(日本統治が始まる1895年以前の)清朝時代の台湾は漢文を読んで暗記することが基本だったが、後藤新平は(台湾全土に学校を建設して教科書を作り教員を多数派遣する)教育政策を進めた。

 後藤新平は元は医者。岩手県水沢の人だ。医学校を出て当時の日本でも珍しい(先進的な考え方)。日清戦争(1894〜95年)からの帰還兵に検疫検査を行い、外地からの伝染病侵入を防いだ。また岐阜で遊説中に暴漢に刺された板垣退助を医師として救出して、命を救った。その後、台湾では衛生観念の向上やアヘン吸飲習慣の根絶など、実にさまざまな仕事をした。

 後藤新平の伝記を読んでほしい。公共につくす人。信仰をもっている。「私は何者だ?」との問いに、結論を出すにあたって(研究対象として)最もふさわしい人物だ。公(おおやけ)のため、日本のため、学校のためでもいい。日本人としてみなさんも奮闘してください。

                   ◇

 若い人たちに何を期待するか。指導者の条件として私はまず「信仰」をもちなさいいという。どんな宗教でもいいから、(物事の正否の判断に当たって)しっかりした考え方の基準が必要だ。次に「権力放棄」してほしい。自分が置かれた立場がもつ権力は自分のものじゃないんだ。すなわち「公と私(わたくし)の区別」。「私は私でない私」と言ったけれども、すなわち公のために尽くす私がいるのであって、私だけのために生きる私がいるのではないということだ。

 「人がいやがる仕事」を進んでやりなさい。私は中学生のころ、進んで便所掃除をやったよ。どれだけ自分が耐えられるか、自分で試したかった。最後に「カリスマのマネをしてはいけない」。新聞やテレビに登場するような人物ばかり(が実社会を構成しているの)じゃないんだ。

                   ◇

 昨年、東京から仙台、松島や山形、秋田を回って、芭蕉(ばしょう)の「奥の細道」を歩いた。だがまだ、芭蕉の旅は新潟から大垣まで残っている。できればもう一度、歩いて「奥の細道」の旅を終わらせたいと思っている。それ以外に、長いこと行っていない九州にもいってみたい。宮崎とかね。

 台湾の人が日本に行くにはもうビザ(査証)がいらないはずだが、どうも私は違うみたいなんだ。日本の外務省はちっとも変わっていない。福田(康夫)首相は(仮に)私が日本に旅行に行く、といったら(中国政府が)怖くて来させないかもしれないな。

 福田首相はこわごわとしないで、大きく座って(大きな気持ちでどっしりして)言うことはハッキリ言って。そう伝えてくださいよ。みなさんありがとうございました。

                   ◇

 ■台湾で交わる2人の精神性

 李登輝・台湾前総統は昨年の訪日時に「第1回後藤新平賞」を受賞し、6月1日に東京で記念講演を行った。後藤新平が民政長官として戦前の台湾で行った業績を挙げ、「今日の台湾は後藤新平が築いた基礎の上にある」とまで称(たた)えた。その中で、政治家には権力掌握を目的とする者と、仕事を目的とする者の2種類がある、と指摘。「後藤新平のもつ人間像には、今の日本の政治家にはみられないものがある」と語った。

 李氏は曽文恵夫人とともに敬虔(けいけん)なクリスチャンとして知られている。総統時代など苦しい決断を迫られたとき、政界やマスコミ、時には同僚たちや民衆からも激しい批判や非難を浴びたとき、夫妻で聖書を開き、そこに示されれた言葉に苦難を乗り越え、解決の道を見つけるすべを求めたという。

 その李氏からみて、「後藤新平はどのような宗教かは不明だが信仰をもっていたと十分に認められる」という。信仰は機械的な論理ではなく、人的感情の感覚や判断が大事だと話した。「後藤新平と私をつなぐ根本的な精神は強い信仰(異なった宗教でもかまわない)を持っていることで、後藤新平は私にとって偉大な精神的導師だ」とまで言い切っている。

 仕事のために権力をもち、その権力を台湾という「公」のためにすべて使い切ったという点において、仮に年代は異なっていても2人は、台湾という空間を共有し、精神的に交わっているといえる。(河崎真澄)

【若者たちよ 李登輝・台湾前総統】番外編 “老台北”蔡焜燦氏

2008/04/19 FujiSankei Business i.

【プロフィル】蔡焜燦 さい・こんさん 日本統治時代の台湾で台中州立彰化商業高校卒。志願していた岐阜陸軍航空整備学校奈良教育隊に1945年1月配属。そこで終戦を迎え翌年台湾に。体育教師を振り出しに航空貨物取り扱い業やウナギの養殖事業などで苦労し、IT(情報技術)ビジネスで成功。産経新聞の吉田信行・台北支局長(当時)の紹介で、93年から翌年にかけて3回にわたって台湾への取材旅行に訪れた司馬遼太郎夫妻の案内役も務めた。81歳。台中州清水(きよみず)生まれ。

 □「第5回日台文化交流青少年スカラシップ」

 ■人を残す人生こそが上 本来の「愛国心」取り戻せ

 第5回「日台文化交流 青少年スカラシップ」(フジサンケイビジネスアイ、産経新聞社主催、台湾行政院新聞局共催)で6日間の台湾研修旅行を贈られた若者17人は、李登輝前総統以外にも多くの日本語世代の台湾人から話を聞いた。なかでも司馬遼太郎氏の著書「台湾紀行」に博覧強記(はくらんきょうき)の “老台北(ラオタイペイ)”として登場する実業家の蔡焜燦(さい・こんさん)氏は、「自分の国を愛せない人が世界を愛することなどできるか」と話し、本来の「愛国心」を取り戻すよう訴えた。番外編として蔡氏の思いを伝える。(河崎真澄)

                   ◇

 台湾の蔡焜燦です。台湾人からみて、いまの日本人は幸福の中にいて幸福を知らないのではないか、と感じる。日本と日本人は好きだが、これは困った問題。「君が代」を歌っただけで、「愛国心」と言っただけで「あいつは右翼だ」と言われかねない時代の雰囲気が戦後続いている。

 日本とは異なり、台湾は歴史上、ずっと外来政権に支配され、自分たちの「国」をもてずにいる。いまも中国大陸と(政治的立場の論争で)戦っている(不安定な状態)といっていい。ただ、台湾人には「恨み」の文化がない。われわれ日本時代の教育を受けた世代は、子供のころ日本人として受けた教育が宝だ。

                 ◇   ◇

 「三種の神器」を言えますか? 「テレビ、冷蔵庫、洗濯機」じゃありませんよ。

 「八咫鏡(やたのかがみ)」「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」「八坂瓊曲玉(やさかにのまがたま)」だ。故郷の台中州、清水(きよみず)公学校(台湾子弟のための小学校)には当時の日本の版図のどこにもなかった校内有線放送設備や16ミリ映画の映写設備があり、「総合教育読本」を使って目と耳で幅広い教育を受けた。いまから70年以上も前のことだ。

 神話や歴史物語は(科学的でない部分も含め)古くからの日本人の考え方を今に伝えてくれる。自分の国の歴史を知ることが誇りを生む。堂々と胸を張って、自分は日本人だといえることが大切だ。

 現代の日本人にも読んでもらいたいと考えて、私は清水公学校の「総合教育読本」の復刻版を(自費で)作って数多く配布(すでに終了)したが、このところ少しずつ、日本の若者にも歯ごたえが出てきた。日台間の懸け橋になれる人が育ち始めたようだ。

                 ◇   ◇

 台湾の戦後教育は中国大陸から渡ってきた蒋介石政権が行った中国人主体のもの。

 反日教育を受けた私の息子の場合も、親父(蔡氏)の日本に対する言葉を快く聞いてくれなかった。だが1999年9月21日に起きた台湾中部のマグニチュード7・6の大地震の時、その日のうちに世界で一番乗りに駆けつけて不眠不休で救援活動に当たったのが日本の救援隊だった。その姿をみて息子は初めて「日本人を見直した。親父の言う通りだ」と話してくれた。

 蒋介石政権時代の台湾人への恐怖の弾圧で、われわれは中国人の考え方や手の内を思い知らされた。いまチベットで起きている僧侶や住民への弾圧は、戦後の台湾で起きた住民弾圧とそっくりだ。当時の台湾には国際的なメディアもなく、海外の人々にはほとんど知られることがなかっただけ。中国人は歴史を繰り返す。しかも4000年だ。

                 ◇   ◇

 中国製冷凍ギョーザ中毒事件が起きたとき、福田康夫首相は「(中国の対応は)非常に前向きだ」と言ったが、私にはとても考えられない一言だった。国を守るために、かくもお人好しでいいのか。結局、中国はすべて相手の責任にしようとしている。中国人に「反省しろ」「謝れ」ということは、彼らにすれば「死ね」と言われるに等しい。

 そこを理解した上で、日本人は中国に相対していかねばならない。そこで鍵を握るのは「愛国心」だ。自分の国を愛してこそ、隣の国も愛せるだろう。お人好しだけでは論外だが、恨みや怒りだけでも解決できない。(同じ価値観を共有する)日本と台湾が関係を築き直していく(と解決策も探せる)。福田首相や民主党の小沢一郎氏らに何を求めるか。何も求められまい。若い世代に託す以外にない。

 私は戦前、台湾総督府で民政長官を務めた後藤新平の言動を信条としている。すなわち「カネを残す人生は下。事業を残す人生は中。人を残す人生こそが上」だ。一人でも多くの日台の若者に、本当の意味の「愛国心」を取り戻してもらうのが生涯の夢だ。


にんじんからメタミドホス

2008.04.01 MSN産経新聞

 大阪府は1日、台湾産のにんじんから、基準値の2倍に当たる0・02ppmの有機リン系殺虫剤「メタミドホス」が検出されたとして、食品衛生法に基づき、輸入元の青果卸会社「浩栄」(大阪府摂津市)に回収を命じた。輸入量は2万4000キロ。体重50キロの人がこのにんじんを毎日10キロ食べ続けても影響はないとされる検出量で、健康被害の心配はないという。

 府によると、同社は3月21日、台湾からにんじん1200ケース(1ケース20キロ入り)を輸入。厚生労働省が抜き取り検査をしたところ、基準値を超えるメタミドホスが検出された。すでに約860ケースが東京や愛知などの卸問屋11社に販売されており、府は各自治体に連絡し、転売の中止を求めるとともに、流通状況を調査している。

台湾総統に馬英九氏 得票率58%で大勝

2008/03/23 中国新聞ニュース

 【台北22日共同=森保裕】台湾総統選が二十二日投開票され、対中融和路線の最大野党、国民党の馬英九ば・えいきゅう・前党主席(57)は過去最高の58・45%の得票率で対中独立志向の与党、民主進歩党(民進党)の謝長廷しゃ・ちょうてい・党主席代行(61)を大差で下し、初当選を果たした。馬氏は五月二十日に新総統に就任する。任期は四年。二〇〇〇年に初めて国民党から民進党に渡った政権は八年ぶりに再び国民党の手に戻る。

 馬氏は経済振興のほか、積極的な対中関係改善を公約に掲げており、民進党政権下で冷え込んだ中台関係は雪解けに向かう公算が大きい。

 馬氏は一月の立法院(国会)選で国民党が圧勝した勢いを維持。「台湾人意識の高まり」に対応して外省人(大陸出身者)ながら「台湾土着化」をアピールし、無党派層の幅広い支持を集めた。

 馬氏は「選挙結果は、台湾の人々が清廉さと経済発展、中台の平和を望んでいることを示した」と勝利宣言し、民進党に和解を呼び掛けた。

 中央選挙委員会によると、確定得票数は馬氏が七百六十五万八千七百二十四票、謝氏が五百四十四万五千二百三十九票(得票率41・55%)。投票率は76・33%で前回を約4ポイント下回った。

 馬氏は、対中経済面で(1)中台直行便の定期化(2)中国人観光客の訪台解禁―などを訴え、政治面では中台の「現状維持」を基礎に和平協定締結を目標に掲げた。ただ、チベット暴動鎮圧では北京五輪ボイコットの可能性も示すなど中国の非民主的な政治体制には厳しく、中台の政治関係の急速な改善は難しそうだ。

 副総統には馬氏とペアを組んだ蕭万長しょう・ばんちょう・元行政院長(元首相)が選ばれた。

 民進党が提案した「台湾名での国連加盟の賛否を問う住民投票」は国民党が投票をボイコット、投票率は50%に達せず、成立しなかった。

 謝氏は「台湾の主体性」堅持という民進党イデオロギーを軸に「馬氏は最終的な統一を目指す」などと批判。「国民党が総統ポストも握れば独裁化は必至だ」と有権者のバランス感覚に訴えたが、かなわなかった。

イデオロギーより経済振興 馬氏「外省人」の弱点克服

2008/03/23 中国新聞ニュース

 【台北22日共同=浜口健】八年ぶりの与野党政権交代が決まった二十二日の台湾総統選で、有権者は、民主進歩党(民進党)の謝長廷氏が訴えた「台湾の主体性」というイデオロギーより、中国との「共同市場」や直行航空便の定期化など、国民党の馬英九氏が経済振興策で描いた「実利」を選んだ。

 香港生まれの外省人(中国大陸出身者)である馬氏は選挙戦で台湾語を多用するなど近年高まる「台湾人意識」に訴えかけ、外省人としての弱点を克服。「ロングステイ」と呼ばれる地方行脚を積極的に行い、本省人(台湾出身者)にも受け入れられる姿の演出に成功した。

 馬氏の課題も多い。選挙戦で「中国人観光客を四年後には一日一万人に増やす」「一年以内に直行航空便を定期化する」などと具体的な時間表を示したが、成果を出せなければ、民進党の激しい批判を受けるのは確実。その手腕が試されるのはこれからだ。

 民進党は挙党態勢づくりに失敗したことが響いた。昨年五月の総統選候補を決める党員選で党内が分裂した上、今年一月の立法院(国会)選では「党創設以来、最大の惨敗」を喫した。党幹部の足並みの乱れが尾を引き、最後まで苦しい戦いを強いられた。謝氏は中国のチベット暴動鎮圧を好機ととらえ、中国寄りの馬氏を攻撃したが逆転には至らなかった。

 二〇〇〇年五月にさっそうと発足した陳水扁ちん・すいへん政権は、当初売りにしていた清廉イメージは度重なる汚職で損なわれ、有権者離れを招いた。また対中強硬路線を強めたことに、中国への進出拡大を狙う多くの有力台湾企業が反発、政権からの離反が相次いだ。

「医療観光」日本で紹介 台湾4社

2008/03/19 FujiSankei Business i.

 医療や美容を目的とした海外からの観光客誘致を狙う「メディカルツーリズム(医療観光)」構想を台湾が官民で打ち出した。横浜市西区のパシフィコ横浜で18日始まった「統合医療展」に、台湾の医療関連企業4社が出展。関係者に台湾の新たな“観光資源”をPRしている。

 台湾は医療技術や人間ドック、美容関係の施設などで国際的評価が高いといい、その費用も美容関係なら日本の3分の1程度と安く付くメリットがある。

 「今後3年以内に医療や美容目的で台湾を訪れる人を年間10万人にしたい」(台湾の対外貿易発展協会)と意気込む。今後は日本語に対応したインターネットのホームページを設けるなどしてPRに努め、医療や美容目的の日本からの観光客の増加をめざす。(西川博明)

台湾総統選大詰め 経済再生へ論争火花

2008年03月16日 東京新聞朝刊

 大詰めの台湾の総統選(二十二日投開票)は、対中姿勢とも密接にかかわる台湾の経済再生を焦点に、与党民進党の謝長廷候補(61)と野党国民党の馬英九候補(57)が対決。大規模な財政出動や開放政策に慎重な謝氏が限られた利益の分配方法を重視するのに対し、「台湾に楽観的」という馬氏は高度経済成長時代の再現を目指すとし、政策論争が白熱している。   (台北・野崎雅敏)

 国民党が圧勝した一月の立法委員(国会議員に相当)選に引き続き、馬氏は巨額の公共投資を経済再生の“カンフル剤”とするよう訴え、毎年十二万人の就業機会も提供できると主張。一方、謝氏は中国大陸に進出した台湾資本の回帰促進を強調する。台湾は大陸投資の進展により、産業空洞化の現状を招いたとの考えからだ。

 馬氏が対中協調による大幅な緩和・開放政策の経済効果も列挙するのに対しては、謝氏は慎重な条件をつけるなどして、より抑制的な緩和策を示す。

 両氏の討論会や政見発表会では、謝氏が「原油など原材料費の高騰による物価高が起きているのに、さらに巨額の公共投資をすればインフレを招き、子孫に借金も残す」と指摘すると、馬氏は「税収や個人の所得も上がるので問題はない」と反論。謝氏の「産業空洞化で苦しむ台湾の中南部、中低所得者、中小企業の“三中”を救う」という主張には、馬氏は「その状況を招いたのは民進党の無能」と返す。

 総統府も立法院も同じ国民党が主導する政治の安定性か、それとも立法院は国民党だが総統府は民進党というバランス確保か−という判断の図式に加えて、将来の台湾に有効な政策の選択を迫られた有権者。十日付の台湾各紙の世論調査では、両者の支持率の差はやや縮まったものの、引き続き馬氏が優勢と伝えられている。 『主体性』重視強める

 今回の総統選で、従来の「統一か独立か」の選択論以上に経済再生問題が大きな焦点になった背景には、景気の低迷感や社会格差の拡大感が有権者の間に広がっている事情がある。加えて、民進党だけでなく国民党も「台湾」を“本土”と意識、重視する姿勢を強調してきた経緯がある。

 香港生まれの馬英九氏は「台湾を主体にすることで人民の利益を計る」と明言し、集会では台湾語や客家(ハッカ)語を交えて演説。党関係者も「中華民国」より「台湾」を連呼する。呉伯雄・党主席は台湾北部の桃園県出身の客家人、副総統候補の蕭万長氏も台湾南部の嘉義市出身。こうした状況では民進党の “台湾人意識”に訴える得意の戦術も機能しにくい。

 国民党陣営が開放政策による台湾海峡両岸の「共同市場」化を掲げたのをとらえ、謝長廷氏は「中国に台湾が吸収されて一つになる“一中市場”化だ」と批判するなどして攻勢をかけるが、馬氏は「両岸共同市場は、台湾が中国だけでなく広く地球規模につながる一環だ」とかわしている。 (台北・野崎雅敏)

台湾名の国連加盟投票拒否 国民党決定、不成立の公算

2008年03月12日  中国新聞ニュース

 【台北12日共同】台湾の最大野党、国民党は12日の中央常務委員会で、与党、民主進歩党(民進党)側が提案し、22日の総統選と同時実施される「台湾名での国連加盟の賛否を問う住民投票」のボイコットを決めた。これにより、投票率は法定の50%に達せず、住民投票は不成立に終わる公算が大きくなった。

 住民投票は有権者の台湾人意識を盛り上げ、民進党の総統候補に有利な環境をつくろうと陳水扁総統が昨年から推進。中国は「独立へのステップ」と強く反対、米国や欧州なども台湾海峡情勢の不安定化を懸念し、中止を求めていた。

 ボイコットにより、民進党側は「台湾の主体性の放棄」「国際社会に誤ったシグナルを送る」と国民党の総統選候補、馬英九氏への非難を強めるのは必至で、総統選の行方にも影響しそうだ。

野党国民党が歴史的圧勝 台湾立法院選

2008年01月12日 中国新聞ニュース

 【台北12日共同】3月22日の台湾総統選の前哨戦となる立法院(国会、定数113)選挙の投開票が12日行われた。台湾中央選挙委員会によると、対中統一志向の最大野党、国民党が81議席を獲得、27議席にとどまった民主進歩党(民進党)を圧倒、歴史的圧勝が確実となった。

 立法院の3分の2を上回り、総統の罷免案採択も可能になった。

 陳水扁総統は記者会見で「民進党創設以来、最大の惨敗」と敗北宣言し、民進党主席を引責辞任すると表明した。

 2期8年にわたる陳政権に対し有権者の厳しい審判が下ったこととなり、民進党は大打撃。総統選でも厳しい戦いを強いられるのは必至で、党の立て直しが危急の課題だ。対中政策でも、陳総統の強硬姿勢見直しを求める声が党内から出てくる可能性もある。

 台湾の中央選挙委員会によると、小選挙区と先住民枠(定数計79)で、国民党が61議席、民進党が13議席を獲得した。比例区は、国民党が20議席、民進党が14議席だった。

ウナギ稚魚、台湾が対日禁輸 11月から

2007年10月29日 中国新聞ニュース

 【台北29日共同】台湾の経済部(日本の経済産業省に相当)当局者は29日、養殖に使われ世界的に激減するウナギの稚魚、シラスウナギの資源保護のため毎年11月1日から3月31日までの5カ月間、日本などへの輸出を禁止する措置を今年から実施するとの決定を明らかにした。近く正式に発表する。

 5カ月間は台湾でのシラスウナギの漁獲シーズンに当たり、事実上の全面禁輸。稚魚の1−2割を台湾産に頼ってきた日本の養殖業への打撃は必至で、ウナギの価格が高騰する恐れもある。

 台湾は2001年にシラスウナギ輸出を解禁し、05年に8・5トン、06年には2・5トンを日本に輸出。しかし、農業委員会漁業署(日本の水産庁に相当)当局者によると、シラスウナギ不足が続く中での輸出に台湾の養殖業者の反発が強く、禁輸に踏み切る。

 日本政府も資源保護のためシラスウナギの輸出は認めておらず、日本の対台湾窓口、交流協会台北事務所は「台湾だけに輸出を求めることはできず、禁輸もやむを得ない」と話した。

台湾与党、「独立」強調の決議文…総統選へ立場明確化

2007年09月30日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【台北=石井利尚】台湾の与党・民進党は30日、台北市内で党大会を開き、台湾名での国連加盟や、住民投票を実施して「台湾が主権独立国家」であることを示すとの目標を明記した基本文書「正常国家決議文」を採択した。

 対中独立色が鮮明な文書の採択は、来年3月の総統選での政権維持に向けて、党の基本的な立場を明確にし、支持基盤を固めるのが狙いだ。

 決議文は「『中華民国』の『国号』はもはや国際社会での使用が困難になった」と認定。〈1〉台湾名での国連や世界保健機関(WHO)などの国際組織加盟申請〈2〉台湾の正名(中華や中国の名称を台湾に正す)〈3〉新憲法制定――を目指し、「適当な時期に住民投票を実施し、台湾が主権独立国家であることを示す」と記した。

 民進党は1991年、「台湾共和国建設を目指す」とした党綱領を採択したが、99年、総統選対策のため独立色を穏健にした「台湾前途決議文」を採択して事実上修正。今回の決議文は、「台湾は中国とは違う」との台湾人意識の高まりを受け、再び、「独立色」を打ち出す形となった。

 決議文案をめぐっては、党主席辞任を表明した游錫こん(しゃくこん)氏派が「台湾の国名変更」を強く主張したのに対して、中台関係安定を求める中間層の支持を狙う党総統選候補の謝長廷・元行政院長(首相)が、米国などに配慮して穏当な表現を求めていた。(こんは「土」の上に「方」が二つ)

台湾・高雄に大型道産品店…将来は台北、中国市場にも

2007/8/31 FujiSankei Business i.

北海道百貨、ブームに乗って北の大地アピール

 【台北=長谷川周人】土産品「白い恋人」で賞味期限の改竄(かいざん)問題が発覚したものの、空前の「北海道ブーム」に沸く台湾では、北海道を訪れる観光客が年間40万人を突破する。ところが、北海道人気も域内経済の低迷などを背景に一服感がある。そこで道内業者が台湾南部の高雄で道産品ショップを大規模展開、台湾内部からブランド力の強化を図る試みが始まった。最終目標は中国市場に置き、台湾経由の中国攻略を目指す戦略だ。

 道産品ショップを手がけるのは、新千歳空港で飲食店運営などを行う耕人舎の子会社、北海道百貨。台湾の食品流通大手・統一企業グループと組み、東南アジア最大級の広さを誇る高雄市内のショッピングモール「夢時代」で、店舗面積約1000平方メートルの店舗を今月10日にオープンさせた。

 ≪ズラリ1200品≫

 取りそろえた商品は約1200アイテムに及び、店頭には毛ガニやチョコレート、乳製品などの道産の食品のほか、特産の革製品や香りを楽しむラベンダーを使ったグッズなどが並ぶ。また札幌ラーメンや海鮮丼などを用意する飲食コーナーや観光案内所を併設、台湾人に北海道の魅力を存分にアピールする。

 同社によれば、初年度の売り上げ目標は4億5000万円だが、オープン当初から「道産のみそやしょうゆは完売状態。納豆が欲しいといった日本通が多い台湾らしい要望まである」とうれしい悲鳴をあげる。当面は南部市場での定着による売り上げの安定が最優先となるが、「将来的には台北進出も果たし、多様な北海道商品を台湾全土に広げたい」と意気込む。

 ≪観光客も呼び込み≫

 台湾では、新千歳空港への定期便就航が引き金となり、南洋の台湾にはない雪や海産物などへの人気が急速に高まった。 これに比例して北海道を訪れる台湾人観光客が急増し、昨年、台湾から北海道に乗り入れた旅客機は、チャーター便を合わせると国際線の約4割を占める3165便。消費額も300億円超と試算され、今や道内経済を引っ張る原動力となった。

 しかし、原油価格の高騰や台湾元安ドル高のあおりを受け、今夏のツアー料金は1人当たり平均価格が昨年比1万元(35000円)高と急騰している。域内経済の低迷から市場の裾野も広がらず、旅行会社からは「座席確保が困難という事情も加わり、人数ベースでは失速感がある」との声も出ている。

 こうした状況を打開するためにも、道側は空港ターミナルの拡張など受け入れ態勢の整備に着手。9月には高橋はるみ道知事が渡航者呼び込みを図ろうと訪台を予定している。

 だが、北海道百貨では東アジア市場を台湾単体ではなく面に見立て、「台湾当局が弾く将来的な来台中国人観光客の潜在市場は年間5000万人。渡航解禁はまだ先だが、最終戦略は台湾を通じた中国への北海道の売り込みにある」と話している。

国連は台湾申請“門前払い”

2007/07/25 FujiSankei Business i.

 【台北=長谷川周人】台湾の中央通信は24日、国連事務局が陳水扁総統が潘基文事務総長あてで提出した「台湾」の名義による国連加盟申請書を受理せず、返却したとニューヨーク発で伝えた。

 中華人民共和国政府が国連の代表権を有すると確認した1971年10月の国連総会決議に基づく判断で、事務総長報道官が明らかにした。

 門前払いとなったことを受け、台湾外交部(外務省)は同日、遺憾の意を表明、同決議は国連における中華人民共和国の代表権は確定したが、「台湾の問題は未処理だ」と主張し、「台湾」名義による加盟申請を審議するよう訴えた。

 台湾は1993年以降、「正式国号」である「中華民国」としての国連復帰を総会討議するよう求めてきたが、中国などの反発で連続14回にわたり否決された。

 陳総統は、「台湾」名義での国連加盟の賛否を問う住民投票を、来年3月の次期総統選と同時実施する構えを崩していない。

台湾のハイテク44社、東京で商談会

2007/07/12 FujiSankei Business i.

 エレクトロニクスや新素材など高度な技術を持つ台湾企業44社が出展した商談会が11日、東京都港区の東京プリンスホテルで開かれ、約150社の日本企業から担当者らが訪れた。台湾の財団法人、台日経済貿易発展基金会が主体となって訪日ミッションを組織した。商談会は今回が28回目。日台企業間の商品貿易や技術提携、投資誘致などが目的だ。

 この日は、電子部品など商品サンプルを日台双方の企業が見せ合って商談を進めたり、中国やベトナムに日台共同で工場進出する案件の提案を行ったりして、活発な話し合いが行われた。台湾の精密鋳造品メーカーの担当者は、「何社もの日本企業が訪れ、当社の商品や技術力に興味をもってくれた」と話した。今回の商談会は同日のみ。

 同基金会の李上甲・常任特別顧問(79)は「とりわけ日台の中小企業は技術や資金、海外進出ノウハウなどで相互補完性が高い。今後はバイオテクノロジーや太陽電池など、成長性が高い新分野を双方で切り開く時期に来ている」という。同基金会は地方での訪日商談会も行っており、次回は11月に広島県で開く。(河崎真澄)

靖国参拝“私的”を強調 李登輝氏来日、中国は批判

2007年05月30日 中国新聞ニュース

 来日した台湾の李登輝前総統は30日、戦死した実兄が祭られている靖国神社を参拝したいとの意向を明らかにした。李氏は「兄に会いたい」という心情からの私的参拝であることを強調したが、実際に参拝すれば李氏来日で日本政府を批判する中国がさらに反発を強めそうだ。

 李氏は同日午後、都内で記者団に対し「中国が靖国問題(の批判の矛先)をわたしに持ってくるのはおかしい。全然事情が違う」と指摘。ひそかに参拝したい考えとみられるが、事前に公言することは日本政府も知らされていなかったもようで、日台関係筋は李氏の動向をさらに注視する姿勢を示した。

 中国政府の台湾事務弁公室は30日、李氏来日に関し「台湾独立勢力に活動の舞台を与えるべきでない」(李維一報道官)とあらためて日本を批判。しかし、李氏は今回の来日は「文化・学術交流と『奥の細道』探訪の旅」として政治目的はないことを強調し、「日本の政治家とは誰とも会わない」と述べた。(共同)

ウナギ稚魚の対日禁輸検討 台湾、今冬にも実施

2007年05月19日 中国新聞ニュース

 養殖に使うウナギの稚魚、シラスウナギを日本に輸出している台湾が、資源保護などを理由に対日輸出の禁止や規制を検討していることが、19日までに分かった。日本の水産庁に当たる台湾農業委員会漁業署の当局者が明らかにした。

 日本のシラスウナギは漁獲量が減り、近年、多くを台湾からの輸入に頼っている。早ければこの冬の漁獲分から規制が実施される可能性があるといい、ウナギの品薄や値上がりなどにつながって、日本の養殖業や食卓に大きな影響が出ることになる。

 台湾の漁業署によると、シラスウナギ不足に悩む日本の業者側からの要望もあって、2001年に日本向けの輸出を解禁。これまで年間5トン前後を輸出してきた。

WHO総会、台湾の加盟申請を拒否

2007年05月15日 北京週報日本語部(「cri」より)

 世界保健機関(WHO)の第60回総会が14日ジュネーブで開かれた。

 総会では、極一部の国が提出した台湾がWHO加盟申請問題が取り上げられ、総会前に開かれた総務委員会によるこの加盟申請問題却下という提案に対して投票が行われた結果、賛成多数で総会の議題として取り上げないことが決まった。世界保健機関が、台湾の加盟申請を拒否したのはこれで11回目だ。

 この総会に出席した中国代表団団長の高強衛生相はその発言で、「台湾当局はその政治上の必要から、極一部の国を説得して台湾の加盟問題をまたも出させたが、これは国際社会での台湾独立の実現を企むためであり、台湾島内にいる一部政治家の選挙の勝利にポイントを稼ぐためだ」と指摘した。

 高強衛生相はさらに、「台湾は中国領土の切り離すことのできないの一部であり、中国政府は、一貫して台湾同胞の健康状態に注目しており、あらゆる努力を払って台湾同胞の健康と権益を保護していく」と語った。

台湾加盟申請は却下か WHO総会開幕

2007年05月14日 東京新聞

 【ジュネーブ14日共同】感染拡大に歯止めがかからない鳥インフルエンザ対策などを協議する世界保健機関(WHO)の総会が14日、ジュネーブで開幕した。台湾が加盟を初めて申請したが、中国の反発で議題に取り上げられず、却下されるとみられる。

 23日までの10日間の会期中、世界193カ国の代表らが地球規模の保健衛生問題を話し合う。鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)については、新型インフルエンザへの変異が懸念される中、途上国が採取したウイルスの検体を使いワクチンを開発する先進国と、それを不公正だとして検体提供を拒否する途上国の対立も問題化している。

 また、台湾は1997年から昨年まで10年連続で、WHO総会へのオブザーバー参加を申請したが、「1つの中国」の原則を主張する中国の反対で実現していない。

 台湾の陳水扁総統は今年に入り、WHOのマーガレット・チャン事務局長に対し、正式な加盟申請を送付。

李登輝氏が訪日準備 中国の反発必至

2007年05月04日 中国新聞ニュース

 【台北3日共同】台湾の李登輝前総統(84)に近い筋は3日、前総統が5月末か6月初めに観光のため訪日する準備を進めていることを明らかにした。実現すれば、李氏を「台湾独立勢力の代表的な人物」とみる中国政府の反発は必至だ。

 日本の外交筋は「具体的に計画は聞いていないが、政治目的でなければ、反対する理由はない」としており、一般の台湾人観光客と同様に査証(ビザ)なしの渡航を認めるとみられる。高齢で心臓が悪い李氏の健康を懸念する声もある。

 李氏に近い筋によると、李氏の日程は10日間以上で、松尾芭蕉の「奥の細道」ゆかりの東北地方などを訪問するほか、初めて東京での講演を予定している。

 李氏は終戦前、京都帝大(現京大)で学んだ親日家で日本語が堪能。2001年、心臓病治療のため約16年ぶりに訪日。04年末に再訪日。昨年5月と9月にも訪日を計画したが、健康状態を理由に延期していた。

【シリコンバレー 頭脳移民】台湾勢の強さの秘密

2007/04/30 The Sankei Shimbun

 「シリコンバレー」という名前は1971年に生まれた。ジャーナリストのドン・ホフラー(1922〜86)がある業界紙で使ったのが始まりだったという。

 邱俊邦(65)がシリコンバレーにやってきたのも71年だった。「そのころ、ここらあたりは一面の果樹園だったよ」。今やハイテク企業のオフィスが立ち並ぶバレーの一角で、邱は懐かしそうに語った。

 60年に早稲田大理工学部に入学した邱は渡米し、オレゴン州立大で半導体研究へと進み、シリコンバレーにたどり着いた。68年にはインテルが創業しており、時代は半導体産業の隆盛に向かって突き進んでいた。

 邱は日本の計算機メーカーなどの勤務を経て、80年に会社を創業した。その半導体メーカー、IDTは急成長し、84年に株式上場に成功。88年にIDTを退職した後に起こした別の半導体企業をも株式上場に導いて、巨額の利益を得た。自己資金を基にスタートアップ(新興企業)に投資する「エンゼル」として、今も現役であり続けている。

 バレーの半導体史の生き証人のような邱は、台湾勢の強さの秘密をこう語る。

 「私が来たころは台湾に自由はなかった。台湾人はここで成功するほかなかった。それが、一番の理由だと思う」。台湾が自由と繁栄を手にするにつれ、バレーでの台湾の存在感は薄れてきているとも指摘した。

 だが、当時、背水の陣で米国に渡ってきた移民たちはほかにもいた。台湾人が特に目覚ましい成功を収めた理由が何かあるはずだ。自分自身を客観的に分析するのは難しいのだろう。邱は答えあぐねた後に、「そうだ」と、ひざを打って言った。「小里さんは台湾生まれだから、台湾人みたいな考え方をする。彼に台湾と日本の違いを聞いてみたら、面白いかもしれない」

 小里文宏(47)。シリコンバレーの日本人ハイテク企業経営者としてはただひとり、米ナスダック市場への株式上場にこぎ着け、現地日本人社会では一種、伝説的な人物である。

 小里が率いるビデオチップメーカー、テックウェルで会った御当人はしかし、「いやいや僕は完全な日本人。日本が好きだし、いずれ日本に帰ろうと思っている」と笑って手を振った。

 カリフォルニア大サンタバーバラ校に入学して数学科を卒業したことについても、「おやじに言われたので。で、米国で就職しようと思ったら、帰ってこいとおやじに言われて、はいはい、と。ほとんどいいなりだった」といった調子だ。

 訥々(とつとつ)としたその語り口も相まって、拍子抜けするほどの飾り気のなさなのだ。

 帰国した小里は、日本の電機メーカー駐在員となって、90年代初頭にシリコンバレーに飛び込み、半導体委託生産の受注を目指して得意先開拓に明け暮れた。

 工場を持たない研究・開発専門の小規模半導体企業を「ファブレス」といい、当時、その業界は台湾系の独壇場だった。中国語を操る小里が台湾系の社会にどっぷりと漬かっていったのは自然の成り行きだった。

 シリコンバレーのベンチャービジネスには、飛び抜けた技術が必要だと思われがちである。だが、小里は「私は技術屋ではない」と断ったうえで、「自分の発明とか技術ではなく、こういったものがほしいというアイデアの実現に向け相棒を探す。起業というのはそういうチームを作る作業なんだ」と説明する。その過程で台湾独特の起業の下地を感じた、と小里は言う。

 「いろいろ相談にいく。すると、面白そうな案件には、台湾人はすぐ『一枚かませろ』と言ってくる」。もうけに対する貪欲(どんよく)さの表れであり、それが結局、人助けにもつながっている。

 「日本は逆。うまくいきだすと結構、嫌われたりする」と、小里は苦笑した。

 「シリコンバレーには挑戦をよしとする気風があるなどと言うけれど、実際には外国人がコネもなしに来て何かを始めるのは非常に難しい。中国人、インド人などはまず出身地の社会を頼る。だからうまくいく」

 日本人ながら、台湾系社会のネットワークを最大のテコにのし上がった小里は起業を可能にするメカニズムを、こう分析している。

 日本で学び、日本人と共同で事業を行う機会も数多くあった邱はしかし、起業パートナーに日本人を選んだことはない。「日本人はものすごく自分の会社を大切にする。台湾人は自分のために働くのが好きだ」

 この点で、小里は日本的な部分を残してはいる。転職を繰り返してきたとはいえ、やはり自分の会社には執着がある。成功すると未練なく過去と縁を切り、新しい道に進んできた邱とは、どこか肌合いが違う。

 「やはり僕は日本人」。そう言って笑う小里の車のナンバーはナスダックでのテックウェルの略語、「TWLL」となっていた。

 日本から近くて遠い島、台湾。そこからの頭脳移民たちの物語は次回も続く。 =敬称略  (シリコンバレー 松尾理也)

伝説の地を訪ねて〜ゼロックスの不名誉な教訓

 米ゼロックス社が1970年にシリコンバレーのパロアルトに開設した「パロアルト研究所(PARC)」には、当時の最先端の技術者が集結して、自由な環境の下で次々と革新的な技術を生み出した。現在のパソコンの根本的要素であるマウスや、アイコンをクリックすることでコンピューターを操作する「グラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)」の仕組みは、PARCが作り上げたものだ。

 だが、複写機メーカーであるゼロックスは、これらの発明を商品化してパソコン時代を切り開くことなど、念頭になかった。代わりに、パイオニアの役割を果たしたのはPARCを見学した後、そのアイデアを模倣して商品化したアップルであり、マイクロソフトだった。PARCは、シリコンバレーで大企業病にかかることがいかに致命的であるかという、同社にとって不名誉な教訓としても、絶えず引用されることになったのである。

 【シリコンバレーと台湾】 米国への留学生派遣数において、今でこそインド、中国、韓国、日本、カナダに次いで6位にとどまっている台湾も、1982年から88年までは最大だった。これらの留学生組が、当時、政治的自由がなかった台湾には戻らず、米国に定着する道を選んだことがシリコンバレーでの台湾系活躍の素地となった。台湾政府もむしろ、留学生たちの米国進出を奨励して、その蓄積を利用する形で、新竹サイエンス・パーク(HSIP)や工業技術研究院(ITRI)といった施設を次々と建設し、「台湾のシリコンバレー」と称されるハイテク産業地域の創出に成功したのである。

「日本人よ胸を張れ!」“老台北”蔡焜燦氏語る

2007/04/24 The Sankei Shimbun WEB-site/center>

 司馬遼太郎著「台湾紀行」に博識の“老台北”として登場する著名な台湾の実業家、蔡焜燦(さいこんさん)氏(80)が23日、東京・大手町の産経新聞東京本社を夫人の李明霞さん(81)とともに訪れ、「心のふるさとは京都だ」などと、1時間あまりにわたって日本への思いを語った。

 戦前の台湾で教育を受けた日本語世代の一人で、自ら「愛日家」と称する蔡氏は、自信を失いかけた日本人に事あるごとに、「日本人よ胸を張れ!」と激励するなど、民間レベルで長年にわたって日台交流を実践してきた。

 こうした労苦に対し、日本人の有志を代表する形で産経新聞社とフジサンケイ ビジネスアイはこの日、蔡氏と夫人に感謝状と記念品を贈った。

 蔡氏と夫人は京都、大阪を経由して5月1日に台湾に戻る予定。

 ≪講演要旨≫

 「“愛日家”というのは私の造語だ。現在の私たちは元日本人としか言えないが、首から上は今でもニッポン的。おばあちゃん(蔡夫人)は寝言も日本語。にぎりずしが大好きで、昨夜も寝言で『小鰭(こはだ)』などと言っていた」

 「司馬遼太郎先生から以前、心のふるさとはあるかと聞かれたとき、京都と答えた。昭和20(1945)年、終戦後に京都府美山町(現南丹市)で2カ月ほど炭焼きをしていた。今も京都の黒瓦の建物や五重塔を見るだけで落ち着く。ふるさとに帰ってきたつもりだ」

 「(昭和8年に蔡氏が入学した台湾台中の母校の)清水(きよみず)公学校は、日本全国どこにもなかった校内有線放送設備や16ミリ映画の映写設備があった。その副読本だった『総合教育読本』を卒業生や日本の方々に読んでもらいたいと思い、復刻版を(自費で)出版した。日本の方々に、もっと自信を持ってもらいたいからだ」

 「これが植民地の学校だろうか。植民地、植民地といって(統治時代の問題など)でたらめなことをいう人がいるが、(副読本は)日本人が当時、こんなにも高い教育を台湾で行った事実の証明ではないか」

 「昨日(22日)に靖国神社の春季例大祭に初めて参加した。今年から4月29日は『昭和の日』になった。その日に私たちが日本にいることは、感慨深い」

川重・丸紅など、台北の地下鉄で570億円受注

2007/03/03 NIKKEI NeT

 川崎重工業は3日、丸紅などと共同で、台湾の台北市高速輸送局から地下鉄車両138両と信号システム、自動改札機などを一括受注したと発表した。受注総額は約570億円で、川重の受注分はうち約400億円。川重はこれまでに同局向けの地下鉄車両を約450両受注しているが、システムなども含めた一括受注は初めてとなる。

 車両やシステムは台北市内を東西に結ぶ市営の松山線(8.5キロメートル)と信義線(6.2キロメートル)に導入される。両線はいずれも新規路線で、松山線が2013年末、信義線は12年末に開業する。車両数は松山線が60両、信義線が78両。

 川重がプロジェクトの取りまとめや車両製造、信号システムを受け持ち、丸紅は工程管理や通信システム、自動改札機を担当する。台湾のエンジニアリング大手、CTCIが変電システムなどを手掛ける。 (19:09)

糟糠の妻に何が 台湾「車椅子のファーストレディー」被告人席へ

2006/11/24 The Sankei Shimbun

 台湾の陳水扁総統(55)とはおしどり夫婦で知られる呉淑珍夫人(54)が、横領罪で起訴され、被告人席に立たされる。総統を支え、政権発足の立役者でもある「車いすのファーストレディー」に何が起きたのか。真相は公判の場で明らかになるが、総統夫妻を取り巻く関係者の口は重く、ため息ばかりがもれてくる。(台北 長谷川周人)

 「家庭か総統かを選ぶなら私は家庭を選ぶ。総統職に未練はない」

 陳総統は今年8月、ある食卓を囲んだ内部会合でこう弱音を吐き、周囲をあぜんとさせた。「あなたは元首として踏ん張る義務がある」と諭されて辞任こそ思いとどまったが、陳総統はこの時、肩を落として「淑珍(夫人)がふびんだ」と繰り返したという。総統の心情について、陳一家とも親しいある財界重鎮はいう。「夫人を犠牲にしたざんげの思いからだ」。

 夫妻はともに台南出身で、学年こそ違うが同じ小中学校に通った。ただ、貧しさのどん底からはい上がった陳氏に対し、病院を経営する父親をもつ夫人は「居間でピアノを弾く箱入り娘で、お気に入りの車はジャガー、コートならバーバリーだったと聞く」(周辺関係者)。

 対照的な生い立ちの2人を結びつけたのは、大学時代の同窓会だった。陳氏の「彼女の心を射止めようと決心した」(自著「台湾之子」)との熱い思いに押され、両親の反対を押し切って1975年に結婚。以来、二人三脚で歩んできた。まさに糟糠の妻だ。

 政治の道に踏み出したきっかけは、弁護士の陳氏が国民党独裁政権下、民主派弾圧事件の裁判で弁護依頼を受けたこと。反体制派とみなされれば弁護士活動はおろか弾圧対象になる危険がある。陳氏は躊躇(ちゆうちよ)したが、夫人は「望むところよ」と背中を押した。

 陳氏はその後、81年の台北市議選でトップ当選。その後台南県長選に出馬し、ここで運命を分ける事件に遭遇する。85年11月、落選した陳氏の目前で夫人が車にひかれ、瀕(ひん)死(し)の重傷を負った。政治テロとみられるこの事故で、下半身不随となった夫人は「以来、用を足すにも苦痛に耐えながらたっぷり1時間はかかる。総統は、夫人が自分の政治活動の犠牲になったと、20年余、自責の念にかられてきた」(同関係者)。

 2000年5月の総統就任後、清廉で控えめなイメージを与える夫人は「民主台湾」の象徴となり、中国の圧力で外遊が制限される夫に代わって「ファーストレディー外交」も展開した。

 しかし、一方で「人事に口出し、民間との関係も深まった」と関係者は口をそろえる。体調不良から情緒不安定になり、「生来のブランド志向もあって身の回りも派手になった」ともいわれる。なぜか。前出の財界重鎮は実情をこう推し量る。

 「資産家出身の淑珍に法を犯して私腹を肥やす発想はない。が、苦痛に顔をゆがめる彼女を周囲が甘やかし、公私の区分が不明確になったのではないか」

 起訴状によれば、夫人は外交工作を名目に公費1480万元(約5300万円)を横領し、高価な指輪や時計を買った。陳総統は私的流用を全面否定するが外交工作の内容は「国家機密」のベールに包まれたままだ。夫人はどう身の潔白を証明するのか。12月15日に始まる公判の行方が注目される。

台湾総統夫人ら起訴 機密費横領容疑 陳政権、窮地に

2006/11/04 The Sankei Shimbun

 【台北=長谷川周人】台湾の検察当局は3日、総統府機密費を不正流用したとして、陳水扁総統の呉淑珍夫人と馬永成前総統府副秘書長ら4人を横領と文書偽造などの罪で起訴した。

 高等法院検察署(高検)は、陳総統の関与を認めたが、総統は憲法で不起訴特権があり起訴は免れた。しかし、検察側は退任後の起訴を検討しており、腐敗を理由に辞任を求められてきた陳総統はさらに窮地に追い込まれた。

 起訴を受け、蘇貞昌行政院長(首相)ら政権首脳はこの日、急きょ公務を取り消し、総統府で緊急会議を開催。与党・民進党も拡大中央執行委員会を開き、同日深夜、党としての立場を週明けにも説明すると発表した。

 検察当局によると、呉夫人は総統夫人の立場を利用し、他人名義の領収書を使って、2002年7月から今年3月までの間、機密費から1480万元(約5300万円)を私的流用したとされる。また、デパートの商品券購入にともなう1195万元(約4300万円)分の領収書にも、他人名義の領収書が含まれており、文書偽造の疑いをもたれている。

 検察当局は今年8月に続き、10月27日にも陳総統を事情聴取したと発表した。

“ひばり精神”日台の架け橋に 台湾のファン奔走

2006/10/27 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

■♪あぁ〜川の流れのように いつまでも

 【台北=長谷川周人】台湾で故美空ひばりさんのファン活動が本格化し、11月末に閉館する「美空ひばり館」(京都・嵐山)の部分誘致計画を進めている。来年は「千人針」の由来を説いて日本の庶民が抱く戦争への思いを紹介、戦後日本に夢を与えた『ひばり精神』を台湾の若者に伝え、日台の架け橋にしようと意気込んでいる。

 台湾では6月、ひばりさんの公式ファンクラブが設立された。活動の中心となっている兪秀桃(日本名・中山秀桃)さんは、日本統治時代を知るいわゆる日本語世代ではなく、日本人を夫に持つ戦後派のファン。毎朝5時に起きて日本舞踊の練習に励み、「和服が普段着」と言う本格的な親日派だ。

 その兪さんがファンクラブ結成を呼びかけたのは、「日本にあこがれる台湾芸能界も韓国ブームの波に押され気味」という危機感からだった。「(国民党独裁体制下で)日本の歌謡が禁じられた時代、ひそかに聞いたひばりさんの歌声に心がしびれた」といった周囲の声にも励まされて、会員は100人前後に膨らみ、近く台湾当局に民間団体としても認可される。

 閉館が決まった「美空ひばり館」から、ゆかりの品々を借り受ける交渉も進んでいるが、資金繰りなど新たな壁にもぶつかっている。

 「ひばりちゃんに教わったのは笑顔と平和を思う幸せ。もう戦争はいややて」。関西弁混じりでこう話す兪さんは今年、平和への祈りの気持ちを込めて、ひばりさんの歌詞を引用しながら、日本の「千人針」の意味を台湾の若い人々に伝えようと、3000人規模の講演会を企画した。

 だが、経費節減のために申し込んだ公共施設の抽選には当たらず、実現は来年に先送りされた。台北市内に借りた600平方メートル超の事務所の家賃は、年間約1万円の会費だけでまかなえず、メンバーが私費を投じて工面している。

 にもかかわらず、兪さんらが活動を続けるのは、政治の風向き次第で台湾の親日ムードもいつ吹き飛ぶか分からない危機感からだという。2008年総統選では政権交代も予想される今だからこそ、政治に関係なく若い台湾人に日本の心を刻んで日台を結び、「夢と希望をくれたことに感謝したい」としている。

「台湾」の名称で国連加盟申請 陳総統が正式表明

2006/09/14 The Sankei Shimbun

 【台北=長谷川周人】台湾の国連加盟案が14回連続で否決されたことを受け、陳水扁総統は13日深夜、米国の学者らとのテレビ会議で、「台湾」の名称で自ら加盟申請を行う方針を正式表明した。

 この中で陳総統は「世論調査によれば80%近い民衆が『台湾』の名称による加盟申請を支持している」と強調。「国号」という表現こそ避けたが、より独立色を鮮明にすることで民意に応え、失墜した信頼の回復を狙ったとみられる。

 台湾は1971年に、当時の蒋介石政権が「中華人民共和国」の加盟直前に国連から脱退。李登輝政権下の93年以降、脱退時の「中華民国」として「再加盟」を訴えてきたが、陳総統が目指す「台湾」としてのメンバー入りは、台湾の主権を国際的に認知する問題にも直結する。

「陳総統は辞任せよ」台北で座り込み8万人超

2006/09/09 The Sankei Shimbun

 【台北=長谷川周人】台湾の陳水扁総統の退陣を求める施明徳・元民主進歩党主席が呼びかけた大規模な座り込みが9日、台北市内の総統府前で始まった。集会は15日からデモ行進に発展する計画で、施氏は総統を辞任に追い込む構えを崩していない。陳総統は静観を保っているものの、今後、周辺にくすぶる不正疑惑が総統本人に向かう可能性もあり、綱渡りの政権維持を強いられそうだ。

 主催者側は集会に「30万人動員」を目指したが、警察当局発表によると参加者は「8万5000人」にとどまった。しかし、自由意志で集まった住民らは総統府前からあふれだすほどで、「阿扁下台(陳総統は辞任せよ)」と政権の失政を批判した。運動を先導する施氏は繰り返し政権腐敗を糾弾。合流した親民党の宋楚瑜主席ら野党有力者とともに「辞任まで抗争を続ける」と決意を表明した。

 陳総統は2000年の総統就任以降、目立った政治成果をあげられず、経済も停滞気味。支持率も低迷しているが、これに周辺の醜聞が追い打ちをかけ、野党は先月、総統自身による「国家機密費の流用疑惑」の追求を始めた。

 この日に始まった無期限の座り込みが今後、大きなうねりとなれば、「10月から政局は政界再編に動き出す」(野党関係者)とも指摘され、台湾内政が一気に流動化する可能性もある。

李登輝氏、訪日延期 肺結核療養のため

2006/08/26 The Sankei Shimbun

 台湾の李登輝前総統は25日、9月12日から予定していた訪日を「延期します」と述べた。延期理由は3月に患った肺結核の療養のためで、次回の訪日は「治ってから決めましょう」とした。李氏の事務所は19日、観光と文化交流を目的に9月12日から17日の日程で日本を訪問すると発表していた。李氏はこの日、自民党の若手国会議員でつくる訪台団の会合に出席、「日本の教育と私」をテーマに講演した。

台湾の陳水扁政権に身内から批判運動

2006/08/25 The Sankei Shimbun

 【台北=長谷川周人】台湾の民主化運動の闘士として知られる施明徳・元民主進歩党主席が、陳水扁総統に辞任を迫っている。支持者から「100万人署名」を集めた施氏は、9月上旬から総統府前で20万人規模の座り込みを計画。野党連合による罷免要求に続き、"陣営内"からも批判が噴き出した格好だが、陳総統は「意見の異なる政治主張を尊重する」と静観姿勢を保っている。

 強硬な独立論者である施氏は、国民党独裁政権下で投獄され、民進党結成にも参加した。1994年には党主席に就任したが、民進党が政権交代を実現した2000年、総統就任した陳氏と路線対立を起こして離党。党外勢力として独立を目指す政治パフォーマンスを展開していた。

 しかし、今年6月には野党連合が立法院(国会)に提出した総統罷免案にいち早く同調。スキャンダルに揺れる陳政権の腐敗と失政を批判して8月中旬、「百万人倒扁運動(陳総統を辞任に追い込む百万人運動)」を提唱、民主化運動の志を見失う陳総統を「戦友」として批判した。

中国国民党、純資産は981億円

2006/08/23 The Sankei Shimbun

 【台北=長谷川周人】台湾の最大野党、中国国民党は23日、初の資産公開を行い、負債を差し引いた純資産(今年7月段階)は277億台湾元(約981億円)と発表した。かつて「世界一の金持ち政党」といわれた同党だが、法人化以降は918億元(3252億円)をピークに資産は目減り。下野後に要した巨額選挙資金などに加え、昨年8月に就任した馬英九主席が、不良資産の処理やリストラなどを進めた結果、純資産は連戦前主席時代の34%にまで減った。馬氏は記者会見で「資産の透明化を進めた成果だ」と自賛した。

李登輝前総統、9月訪日へ 「観光、文化交流を目的」

2006/08/19 The Sankei Shimbun

 【台北=共同】台湾の李登輝前総統の事務所は19日、前総統が「純粋に観光、文化交流を目的」として9月12日から17日まで訪日すると発表した。李氏を「台湾独立勢力の代表的な人物」とみる中国の反発は必至だ。

 李氏は今年5月、日光や松島など松尾芭蕉の「奥の細道」ゆかりの地を約2週間訪問する計画だったが、3月と4月に肺結核で入院し、訪問を延期していた。

 今月13日の会見で、9月の訪日を希望し、長期の旅行は「身体的にきつい」として日程短縮の意向を示していた。

 李氏は2001年4月、心臓病治療のため約16年ぶりに訪日。04年末に再び日本を訪れ、名古屋、金沢、京都などを観光した。

陳総統の娘婿ら懲役8年と罰金、インサイダー取引など

2006年07月10日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【台北=吉田健一】台湾の陳水ヘン総統の娘婿らによる株不正取引疑惑で、台北地検は10日、娘婿で医師の趙建銘容疑者ら7人を証券取引法違反(インサイダー取引)などの罪で起訴した。(陳水ヘンのヘンは「編」の糸ヘンなし)

 同地検は即日、趙被告に懲役8年、罰金3000万台湾ドル(1台湾ドル=約3・5円)、父親の趙玉柱被告に懲役10年、罰金同など、7人全員に求刑した。

 台北地検などによると、建銘被告は2005年7月、台北にある不動産開発会社幹部らと会食した際、同社の株が値上がりするとの内部情報を入手して母親名義などで株を購入。株価上昇後に一部を売却して玉柱被告と合わせ約2950万台湾ドルの利益を不法に得た。今回の不正取引をめぐる事件関係者の不法利益は約1億500万台湾ドルに上るという。

台湾の馬英九・国民党主席が来日 政権奪還へ存在感アピール

2006/07/10 The Sankei Shimbun

 台湾の最大野党、国民党の馬英九主席(台北市長)は10日午後、日本訪問のため成田国際空港に到着した。昨年8月の主席就任後、来日は初めて。2008年総統選の最有力候補と目されており、15日までの滞在中、自民、民主などの政党幹部らと積極的に会談し、民主進歩党(民進党)からの政権奪還を目指すニューリーダーとして存在感をアピールする。

 馬氏は出発前に台北国際空港で、日本人記者団と懇談し、安倍晋三官房長官ら「次期首相候補」との会談について「実際に顔を合わせ、相互の理解を深めたい」と強い意欲を示したが、具体的な会談予定は明らかにしなかった。

 馬氏の同行筋は、会談が実現しても中国への配慮から「隠密会談」となる可能性が高いことを示唆した。

 馬氏は懇談で「日本に最も伝えたいメッセージ」として「日米安全保障条約は重要だが、台湾の安全を考えれば中国と和解することがより大切。中台関係の現状維持が日本にとっても有利だ」と強調した。

 馬氏は滞在中、日本と台湾の関係などをテーマに、都内の外国人記者クラブ、横浜市立大、同志社大で講演する。

 馬氏の同行筋によると、馬氏は10日夕、自民党本部で武部勤幹事長と会談し、北朝鮮のミサイル発射への非難や両党の青年部門を中心とした交流強化で一致した。

 馬氏はミサイル発射に関連し「朝鮮半島と台湾海峡は東アジアの二つの火薬庫だ。台湾は挑発するトラブルメーカーではなく、ピースメーカーになりたい」と対中関係改善の重要性を強調した。(共同)

台湾で陳水扁総統の罷免決議否決

2006/06/27 The Sankei Shimbun

 【台北支局】台湾の立法院(国会)で陳水扁総統の親族による不正疑惑をめぐり野党国民党などが提出していた総統罷免案が27日、与党側の反対で否決された。しかし、与野党の攻防は今後、激しさを増すとみられ、陳総統政権の弱体化は加速しそうだ。

 昨年発覚した総統府前副秘書長の汚職事件に始まり、総統夫人の百貨店金券疑惑、娘婿のインサイダー疑惑などスキャンダルが相次ぎ、野党は陳水扁総統辞任を要求。ロイター通信によると、国民党は集会や署名活動を展開し、26日までに、罷免に賛成する167万人の署名を集めるなど、攻勢を強めていた。

 罷免成立には、立法委員(国会議員)の3分の2以上と、住民投票で有権者の50%以上の賛成が必要だが、27日の立法院では立法委員の3分2以上の賛成は得られなかった。

 陳総統は20日、テレビの生中継で釈明し、続投に強い意欲を示していた。

台湾・国民党の馬主席、7月10日来日

2006/06/16 The Sankei Shimbun

 【台北=長谷川周人】台湾の政権関係者によると、最大野党、中国国民党の馬英九主席が7月に予定していた訪日は、10〜15日となることが決まった。

 馬氏の訪日は昨年8月の主席就任後初で、東京、横浜、大阪、京都を訪問し、都内の外国人記者クラブなどでの講演するほか、政財界要人や在日台湾人らとの交流を予定している。厚遇された今年初めの訪欧、訪米などに続く訪日で「外交得点」を稼ぐ一方、馬氏を「反日派」とみなす日本側の懸念を払拭(ふっしょく)する狙いがある。

アジア最長の道路トンネル、台湾で開通 関越上回り世界4位

2006/06/16 The Sankei Shimbun

 台湾の台北市と東部海岸沿いの宜蘭県蘇澳を結ぶ北宜高速道路で、道路トンネルとしてアジア最長の雪山トンネル(全長12.9キロメートル)が正式に開通し、16日、宜蘭県で北宜高速全線55キロメートルの完成を祝う式典が行われた。 雪山トンネルはこれまでアジア最長だった関越自動車道の関越トンネルより長く、世界4番目の長さ。(共同)

台湾にアジア最長の「雪山トンネル」 大台北圏に経済効果

2006/06/15 Iza!

 【台北=長谷川周人】台湾の台北市と東部の宜蘭(ぎらん)市を結ぶ「北宜高速道路」の雪山トンネル(全長12・9キロ)が16日、正式開通する。道路トンネルとしては関越自動車道の「関越トンネル(同上り11・1キロ)」を抜いてアジア最長。台湾北部の東西の経済圏を30分で結ぶ大動脈として今後、通勤圏や産業基地の拡大など、幅広い経済波及効果が期待されている。

 台北−宜蘭間はこれまで一般道で約2時間かかり、陸上輸送問題が台湾東部の産業発展の足かせだった。だが、1988年に総統に就任した李登輝氏の旗振りで高速道路の建設計画が始まり、91年に悲願の「雪山トンネル」に着工していた。

 ところが、硬い岩盤や地下水の湧出(ゆうしゅつ)に阻まれて工事は難航を極め、13回ものトンネルボーリングマシン(TBM=掘削装置)災害などトラブルが続出。外国人労働者を含む計25人が犠牲になるなど、99年の完成予定は遅れに遅れていた。

 ただ、IT(情報通信)バブル崩壊後の不況から立ち直った2004年ごろから状況は一転し、新たな台北の通勤圏として期待される宜蘭地区の不動産への投資が活発化。高速道路のインターチェンジ周辺では地価が数年間で平均20−30%上昇したほか、新興住宅地として有望視される地域は最大で50%も地価が急騰し、早期開通に関心が集まった。

 開通後の人口増加を見越して仏系大手スーパーの家楽福(カルフール)が宜蘭への年内進出を計画しているほか、産業界も物流拠点として注目し始めた。また宜蘭県当局は、高速道路近くにハイテク産業パークの建設も決めている。呂国華・宜蘭県長(知事)は「台湾北部経済の一体化が生む『大台北共同生活圏』を作りたい」と話すなど、期待は膨らむ一方だ。

 台湾当局では、今回の開通を契機に、台北から「雪トンネル」を抜けて東部の主要都市である花蓮、台東に連結させ、西部の屏東県を経由して台湾第2の都市、高雄につながる「台湾一周」の環状高速道路の建設に弾みをつけたい考えだ。

台湾野党、陳総統の退陣要求…娘婿による株不正取引で

2006年06月05日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【台北=石井利尚】台湾の陳水ヘン総統の娘婿による株の不正取引事件をめぐり、野党が、陳総統の退陣を求める動きを強めている。(陳水ヘンの「ヘン」は「編」のつくり)

 次期総統の呼び声が高い、馬英九・国民党主席は3日、「陳総統が自発的に辞職することを強く要求する」と述べ、早期辞任を訴えた。第2野党・親民党の宋楚瑜主席は、野党が多数を占める立法院(国会)での総統罷免案の成立を目指す考えを表明した。民進党と与党連合を組む「台湾団結連盟」の後ろ盾である李登輝前総統は3日、野党攻勢による台湾本土化後退への危機感から、「指導者が間違っていれば交代すればよい。(陳総統を指す)『台湾の子』は一人ではない」と述べ、陳総統を支えない姿勢を示した。

 陳総統は「政権刷新」を示し退陣圧力をかわす狙いと見られ、4日、外交と防衛を担当する2人の国家安全会議副秘書長の辞任が発表された。1日には総統府副秘書長ら2人のブレーンが辞任、総統は2日、アドバイザーの総統府資政と国策顧問を置かないと発表した。

中国国民党機関紙、中央日報が78年の歴史に幕

2006/05/26 The Sankei Shimbun

 【台北=長谷川周人】台湾の最大野党・中国国民党の党機関紙、中央日報は、同党から資金提供を打ち切られ、31日付の新聞発刊を最後に停刊する。2カ月以内に売却先が見つからなければ正式に撤退し、78年の歴史に幕を下ろす。

 中央日報は1928年、国民党政権下にあった中国大陸の上海で創刊。同党が49年に台湾に逃れた後も、中国大陸ニュースを中心とする台湾最大の日刊紙であり続けた。しかし、民主化の中で新聞発行が自由化された88年以降、厳しい販売競争にさらされて経営が行き詰まった。

 資金提供してきた国民党も、かつては「世界一の金持ち政党」とされたが、6年前の野党転落後に財政事情が悪化した。2兆円を超えた資産総額も今や20分の1程度。党職員1400人を半分に減らし、6月には台北の一等地にある党本部ビルを明け渡すなど、組織のスリム化を進めている。

 中央日報によると、同社は4月に債務超過に陥り、5月下旬に支援停止を決めた同党の馬英九主席は「つらいが切り捨てざるを得ない」と話している。

台湾総統の支持率、過去最低の17%に

2006/05/26 The Sankei Shimbun

 【台北=長谷川周人】台湾の陳水扁総統の娘婿が証券取引法違反(インサイダー取引)容疑で拘束されたことを受け、台湾紙・聯合報が拘束当日の25日に行った世論調査で、陳総統への支持率は過去最低の17%となった。

 最大野党、中国国民党などに総統罷免の動きもあるが、同調査では罷免賛成派は33%で、反対派の46%を下回った。ただ、総統官邸などへの家宅捜査を求めたのは43%と反対派の31%を上回り、相次ぐスキャンダルの徹底解明を望む世論が浮き彫りになった。

台湾総統、インドネシアにも立ち寄り リビア電撃訪問に続き

2006/05/10 The Sankei Shimbun

 【台北=長谷川周人】台湾の陳水扁総統は11日、中南米歴訪からの帰途、リビアへの電撃訪問に続き、予定を急遽(きゅうきょ)変更し、インドネシアのバタム島に立ち寄った。中国が外交関係を持ち、資源国として関係強化を進める両国への非公式訪問を果たしたことになるが、外交部(外務省)報道官は同日、インドネシアへの非公式訪問について「経済環境の視察が目的であり、特に政治的思慮はない」と強調した。

 しかし、インドネシアには現在、イランのアフマディネジャド大統領が滞在中で、陳総統の立ち寄りは核開発問題で関係が先鋭化する「米国へのさや当て」(民進党幹部)との見方も出ている。一行は同島に一泊し、12日に帰台するという。

 中央通信によると、陳総統はバタム島到着後、台湾企業による投資拡大を目指し、島内の工業地区を視察するなど、経済分野での結びつきを内外に印象づけた。また、同行している黄志芳外交部長(外相)は、復路でも米国への立ち寄りを見送ったことについて「米国には事前通告しており、台米関係には影響しない」と強調した。

台湾総統がリビアを電撃訪問 中国の反発必至

2006/05/11 The Sankei Shimbun

 中央通信によると、台湾の陳水扁総統は10日、中南米歴訪の帰途、外交関係のない中東のリビアを初めて訪問した。同国と国交を持つ中国の反発は必至だ。

 リビアの最高指導者カダフィ大佐の二男で実力者のセイフ・イスラム・カダフィ氏が陳総統を出迎えた。総統は約4時間滞在し、リビア側と代表事務所の相互設置や、経済・貿易、科学技術などの分野での関係強化について協議。

 総統に同行した黄志芳外交部長はリビアについて「主要な産油国であり、近年、国際社会とも和解した」と述べ、石油開発などでの協力強化の重要性を強調した。

 陳総統は今回の外遊で、サンフランシスコやニューヨークなどへの立ち寄りやレバノン初訪問も目指したが、中国側の工作などで実現しなかった。

 セイフ・イスラム・カダフィ氏は今年1月、台湾を訪問して陳総統と会談、総統のリビア訪問などについて協議した。(共同)

陳水扁総統、外遊帰途も米国通過を拒否

2006/05/10 The Sankei Shimbun

 【ワシントン=山本秀也】中米コスタリカを公式訪問中の台湾の陳水扁総統は、外遊の帰途、米国への立ち寄りを見送ることを決めた。一行は米政府の処遇に対する不満から、往路も中東経由に旅程を変更していた。往復とも米国経由を拒む異例の決定を踏まえ、陳水扁政権と米側とのミゾが深まることは避けられない情勢だ。

 コスタリカの首都サンホセ発の中央通信によると、台湾の黄志芳外交部長(外相)は8日、「陳総統が帰途も米国を通過しないことが確定した」と説明。総統府当局者は、アブダビ(アラブ首長国連邦)などを経由する往路とほぼ同じルートで、11日に台湾に戻ると語った。

 同行記者との懇談で、陳総統は通過見送りによる米台関係への影響を否定しながらも、「総統は国家を代表する主権の象徴だ」と語るなど、自らへの処遇は米側の対台湾姿勢を示すとの受け止め方を述べた。

 ワシントンの米台関係筋によれば、米側は往復ともアンカレジ(アラスカ州)での給油に限り立ち寄りを認める方針を台湾当局に伝えていた。

 国交のない米台間では、外遊経路の「トランジット(通過)」を利用した台湾首脳の非公式訪米が、1990年代からほぼ慣例化していた。

「抗日記念日」検討、台湾の与党が日本統治見直し

2006年05月08日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【台北=石井利尚】台湾の陳水ヘン総統の与党・民進党は8日、日本の植民統治時代に台湾住民が日本軍と戦った歴史に光をあてるため、「台湾人民抗日記念日」制定の検討を始めたことを表明した。(陳水ヘンの「ヘン」は編の右側)

 民進党は親日的な政党として知られ、反日色が残る野党・国民党と歴史認識が異なるが、台湾本省人(戦前からの台湾住民)の視点から、日本統治を見直す動きとして注目される。

 記念日としての候補は、下関条約で台湾割譲が決まった翌年の1896年、台湾各地で起きた対日ゲリラ戦のうち、中部彰化県で発生し犠牲者が最も多かったとされる8月28日の八卦山戦役。

 楊長鎮・民進党族群事務部主任は本紙に対し、「(1937年の)盧溝橋事件を抗日出発点とする従来の外省人(中国出身者)の視点ではなく、植民地時代の抗日運動は台湾人主体で行われた事実を示すためだ」と述べ、反日が目的ではない点を強調した。

 民進党は戦後60年の昨年、台湾人の視点から歴史認識を整理した内部文書「対日関係論述」をまとめ、日本の台湾統治の功罪を併記した。台湾では、中国の歴史認識と同じ親中派と、日本統治を美化する一部親日派の対立があり、政権政党として、バランスを取る必要に迫られている。

高砂義勇兵記念碑 撤去取り消し求め請願提出

2006/04/24 The Sankei Shimbun

 【台北=長谷川周人】台北郊外の烏来郷に移設された先住民出身「高砂義勇兵」の英霊記念碑を台北県政府が2月下旬、強制撤去した問題で、地元側は24日、内政部(内政省)に対し、県政府による撤去命令の取り消しを求める請願を提出した。

 強制撤去の段階で両者は、記念碑の移設方法を再検討する方針で合意。県は4月上旬、押収した石碑を返還する意向を地元に通知したが、再移設に向けて専門家を交えた地元との協議は行っていない。

 このため、地元・烏来郷高砂義勇隊記念協会の簡福原理事長は、「県政府は善意の回答を示していない」と反発。内政部の判断次第では行政訴訟に踏み切るという。

台湾与野党がトップ会談 中台問題は歩み寄りなし

2006/04/03 The Sankei Shimbun

 【台北=長谷川周人】台湾の陳水扁総統は3日、総統府内で最大野党、中国国民党の馬英九主席と会談し、「民進党は国民党の敵ではなく、国民党は民進党の敵ではない。共同の敵は対岸(中国大陸)にいる」と台湾の団結を呼びかけ、親中に傾く国民党の姿勢を牽制(けんせい)した。

 トップ会談は、国民党側の要請から実現したもので、馬氏が昨年8月の主席就任後初めて。会談のほとんどが中台問題に割かれ、60分だった会見予定時間は約130分に延長された。

 両者は会談冒頭に握手を交わし、終了時には陳総統が2人の記念写真にサインをして馬主席に手渡すなど、和やかなムードを演出した。しかし、争点の中台問題では、お互いが従来の主張を繰り返すにとどまった。

李登輝氏、5月10日来日か 台北郊外で記者団に明かす

2006/03/16 The Sankei Shimbun

 台湾の李登輝前総統は15日、台北郊外で記者団に対し、5月に予定している訪日について、10日から約2週間の日程で調整していることを明らかにした。

 李氏の側近によると、同行する曽文恵夫人と孫娘の都合もあり、日程は最終的に短縮される可能性もあるという。

 学生のころから好きだった松尾芭蕉の「奥の細道」ゆかりの地を訪ねるのが目的で、李氏は「仙台、松島、平泉、日光へ行きたい」と話した。(共同)

ナウル政府、台湾の援助で新旅客機購入へ

2006/03/10 The Sankei Shimbun

 財政危機のため、国営航空会社の唯一の旅客機を差し押さえられた南太平洋の島国ナウルが、外交関係のある台湾の援助で新しい旅客機を購入することになった。ナウル政府が10日、声明で明らかにした。

 台湾は中国との間で太平洋の島しょ国との外交関係の維持、拡大をめぐり争っており、援助はナウルとの関係維持が狙いとみられる。ナウルは2002年7月に中国と国交樹立、台湾と断交したが、05年5月には中国と断交、台湾と復交した。

 新しい旅客機はボーイング737で4月に運航開始の見通し。台湾の駐ナウル大使は2月、航空機購入のため、台湾が約1200万米ドル(約17億円)の資金援助を行うことを明らかにしていた。

 国営ナウル航空は1993年に米国輸出入銀行の融資を受けて唯一の航空機ボーイング737―400を購入。しかし財政危機でナウル政府による融資返済がストップしたため昨年12月に差し押さえられた。その後、同航空はチャーター便の運航でしのいできた。(共同)

「最大の責任者は蒋介石」 台湾「2・28事件」で研究書

2006/02/27 The Sankei Shimbun

 1947年2月に国民党軍が台湾住民を武力弾圧した2・28事件から59年に当たって「事件の最大の責任者は蒋介石」と結論付けた研究書がこのほど台湾で出版された。

 総統府国史館(国史研究所)の張炎憲館長が中心になってまとめ、国民党政権下でタブーとされた「蒋介石責任論」が民主進歩党(民進党)政権下で初めて認定された。

 事件は、大陸から渡ってきた国民党政権の圧政や腐敗に対する不満から抗議行動を起こした本省人(台湾出身者)が武力弾圧され、推計1万8000―2万8000人が殺害、処刑された。

 遺族らから「加害者があいまいなのはおかしい」との声が上がり、張館長らが3年前に研究に着手。事件当時、南京にいた国民党政府の蒋介石主席について(1)電報などで台湾の情勢を掌握(2)武力弾圧のため軍を大陸から派遣(3)弾圧を指揮した陳儀・台湾省行政長官を事件後、浙江省主席に昇進させるなど重用―などの根拠を挙げ「最大の責任者」と結論付けた。

 陳水扁総統は出版発表会で「独裁体制下で覆い隠されてきた歴史の真相を明らかにしていくことは、成熟した民主化への道だ」とあいさつした。(共同)

高砂義勇隊の慰霊碑除幕 日本の募金で再建

2006/02/08 The Sankei Shimbun

 日本統治下の台湾で、日本兵として南太平洋へ出征した先住民、高砂義勇隊の戦没者を追悼する新たな慰霊碑の除幕式が8日、台北郊外の烏来郷で行われた。

 1992年に、近くに慰霊碑が建立されたが、敷地権を持っていた会社の倒産で撤去を余儀なくされた。これを伝え聞いた日本人からの募金約3200万円で約1キロ離れた公園内に再建された。

 慰霊碑には李登輝前総統が揮毫(きごう)した「霊安故郷(霊は故郷に眠る)」の文字が刻まれ、除幕式には前総統のほか、義勇隊の遺族や日台の関係者ら約50人が出席した。

 遺族代表は「日本からの寄付で再建でき、心から感謝している。南太平洋に散った英霊たちも今ここに来ているでしょう」とあいさつした。(共同)

ターゲットは台湾の観光客 北東北3県、厄介者の雪を売り込み

2006/02/04 The Sankei Shimbun

 雪に悩まされる青森、岩手、秋田の北東北3県で、雪遊びや雪見温泉など、冬の厄介者を逆手にとって観光客を呼び込もうとする動きが活発化している。ターゲットは雪が降らない台湾からの観光客。チャーター便の大型化などの追い風を受け、自治体の営業活動は熱を帯びてきた。

 3県の担当者らで組織する「北東北国際観光テーマ地区推進協議会」は昨年12月中旬、雪景色など冬の魅力をPRしようと、台湾の旅行エージェント10人を招待。秋田県仙北市で「雪遊び」をコースに組み込んだところ、エージェントたちは雪に寝っ転がってはしゃいだという。

 今シーズンは記録的な大雪で市民生活に影響も出ているが、仙北市観光課は「あの時期にあれだけたくさんの雪が降るのは珍しく、かえって喜んでいただいた」と苦笑い。

 このほか、三陸鉄道(盛岡市)が運行する「こたつ列車」や青森県三沢市の古牧温泉で雪見風呂を体験してもらい、ホテルや土産業者と商談会の時間を設けた。秋田県観光課は「台湾の人たちにとっては雪そのものが魅力。すでに宿泊施設の照会があった」と手応えを感じたようだ。

 1月には仙台と台北を結ぶ定期便が週2便から週4便に増えたほか、青森や秋田と台北の間で運航されるチャーター便が3月から大型化されるなど、観光客増加に向けた環境は整いつつある。「国内の旅行市場が狭まる中、台湾はまだまだ伸びる余地がある。冬は北海道に取られるのでもっと力を入れないといけない」(岩手県観光協会)と期待している。(共同)

台湾・謝内閣が総辞職

平成18(2006)年01月23日 The Sankei Shimbun

 【台北=河崎真澄】台湾の謝長廷・行政院長(首相)は二十三日午前、臨時閣議を開き、総辞職を決めた。陳水扁総統は後任の行政院長として与党、民進党の主席を務めた蘇貞昌氏を指名しており、蘇氏を首班とする新内閣は、二十五日にも発足する見通しだ。

 蘇氏は、台北県長(知事)や総統府秘書長(官房長官)なども歴任。党務まで把握する調整型の人物。最大野党の中国国民党(馬英九主席)が対中協調路線を軸に勢力を盛り返している中、中台関係をどうコントロールしていくか注目される。

 蘇内閣が最重視する対中政策では、大陸委員会の主任委員(閣僚)を歴任した女性立法委員(国会議員)の蔡英文氏を副行政院長(副首相)に起用し、陣頭指揮にあたらせる。また外交部長(外相)には、総統府副秘書長(副官房長官)の黄志芳氏の抜擢(ばってき)が見込まれており、蘇内閣は実務型布陣を組むことになる。

台湾民進党主席に游氏 政権死守へ党勢立て直し

2006/01/15 The Sankei Shimbun

 台湾の与党、民主進歩党(民進党)の主席選の投開票が15日行われ、陳水扁総統の肝いりで出馬した有力政治家、游錫●(方を横に2つ並べ、下に土)(ゆう・しゃくこん)・前総統府秘書長(57)が記者会見で勝利宣言した。全民テレビは、同氏が有効投票総数の半分以上に当たる2万5260票を獲得したと報じた。

 2008年総統選の前哨戦とされた昨年12月の統一地方選で、最大野党、国民党に大敗した責任を取って蘇貞昌主席が辞任したことに伴う選挙で、民進党は游・新主席の下で政権死守のため党勢立て直しに全力を挙げる。

 主席選には游氏と、台湾独立志向の強い蔡同栄・立法委員(国会議員)(70)、翁金珠・前彰化県長(58)の計3人が出馬。投票権を持つ党員は約23万4000人だったが、投票率は19.8%と異例の低さだった。

 游氏は昨年1月まで行政院長(首相)を務め、蘇前主席や謝長廷・行政院長らと並ぶ総統選の有力候補の1人。

 民進党は元高官汚職事件のほか、対中関係改善の行き詰まりや景気対策への有権者の不満から地方選に大敗。今後は(1)台湾主体路線(2)民主改革(3)政治の清廉化―を進めて信頼回復に努め、今年末の台北・高雄市長選、07年末の立法委員選勝利につなげ、総統選で政権維持を図る方針だ。陳総統は近く行政院(内閣)の改造も行うとみられる。(共同)

台湾与党主席選、三つどもえ 陳体制どう評価 15日投票

2006/01/04 The Sankei Shimbun

 【台北=河崎真澄】台湾の与党、民主進歩党(民進党)は、昨年十二月の統一地方選の大敗で主席(党首)を引責辞任した蘇貞昌氏の後任を選ぶ主席選を十五日に行う。前総統府秘書長(官房長官)で陳水扁総統の側近の候補者と、陳総統の方針に批判的な候補者二人の三つどもえだ。党員約二十三万人に「陳体制」に対する信任を問う。主席選を受け、陳総統は行政院(内閣)改造を月内にも行う意向。野党からの行政院長(首相)起用も検討しているもようだ。

 最大野党、中国国民党では昨年の主席選で選出された馬英九・台北市長が、二〇〇八年総統選で候補者の座を確実にしている。これに対し民進党は、今期で退任する陳総統の後任の候補選びが進んでおらず、主席選の行方が注目されている。

 立候補したのは、前行政院長で出馬のため総統府秘書長を辞した游錫●氏(57)、「中国」「中華」が名称に残る組織などに「台湾」名に正すよう求める「正名運動」を進める立法委員の蔡同栄氏(70)、彰化県の前県長(知事)で女性の翁金珠氏(58)の三人だ。陳総統は游氏を推した。

 蔡氏は、「先の統一地方選の敗北は台湾主体意識を堅持しなかったことが原因」として、「台湾新憲法」制定の公約を守っていない陳総統の弱腰を批判。翁氏は、「政界以外から有能な人物を行政院長に選べ」と陳総統に迫っている林義雄・元党主席が担ぎ出した。

 統一地方選後に代理主席に就任した呂秀蓮副総統が、一時は処遇への不満から代理主席辞任を申し出るなど、幹部の思惑のズレが表面化しており、党内の不満も高まっている。主席選で游氏以外の二人の候補に多くの票が集まった場合、「任期を二年余り残した陳総統がリーダーシップを失う」(民進党関係者)との声も出始めている。

 一方、謝長廷・行政院長の更迭を示唆した陳総統は、与野党対立の解決策として国民党から行政院長を招くことも検討していると伝えられ、候補に立法院長(国会議長)の王金平氏が取りざたされている。陳政権は二〇〇〇年の発足時に国民党政権で国防部長(国防相)だった唐飛氏を行政院長に起用したが、五カ月で辞任した経緯がある。

 混迷が続いている陳政権と与党の民進党が、主席選と内閣改造でどこまで「一枚岩」になることができるか。次期総統選での民進党の「ポスト陳水扁」レースもからんで注目が集まっている。●=「埜」の「木」を「方」

台湾与党「日本と準戦略パートナーに」 関係強化目指す

2005/12/24 The Sankei Shimbun

 台湾の与党、民主進歩党(民進党)が戦後60年に当たり対日関係に関する内部文書を作成、日本の台湾植民統治や対中侵略戦争を批判する一方で日本への「恨み」は乗り越え、台頭する中国に対抗する「準戦略パートナー」として関係強化を目指す内容であることが24日までに分かった。

 同党が戦争に関する歴史認識や対日関係を詳細に検討、文書化したのは初めて。戦前から台湾に住む「本省人」と、大陸で抗日戦争を経験し戦後台湾に渡ってきた「外省人」らの対日意識をめぐる意見対立を解消し、未来志向の台日関係構築を図る動きとして注目される。

 「対日関係論述」と名付けられた文書は、日本の戦争責任について「深く反省すべきだが、恨みを持ち続けたり、強めたり、国際社会でより大きな責任を果たそうとする日本を妨げる要素としてはならない」と指摘。歴史問題で強硬姿勢を貫く中国の対日外交とは一線を画す立場を明確にした。

 一方、日本の「重要な政治指導者」の靖国神社参拝には反対し、台湾人の元従軍慰安婦や元日本兵に対して日本政府の「正式な謝罪と補償」を求めるなど、本省人の戦争被害者や外省人への配慮も示した。

 対日関係は「対米関係に次いで重要」とし「(日本は)日台関係と日中関係を切り離し、それぞれを並行して発展させるべきだ」と明記。今後の目標として(1)「自由、民主、人権」の価値観を共有する台日で東アジアの平和の枠組みを推進(2)1972年の台日断交後、政府間接触などが制限されている現状を見直し、交流レベルを格上げ―などを挙げた。(共同)

与党敗北、陳総統苦境に 台湾・統一地方選

2005/12/04 The Sankei Shimbun

 2008年総統選の「前哨戦」とされる台湾の統一地方選の投開票が3日行われ、最大野党、国民党が23の県・市長(任期4年)ポストのうち、6増の14ポストを獲得して大勝、馬英九主席が同日夜、記者会見して勝利宣言した。与党、民主進歩党(民進党)は4減の6ポストにとどまり大敗、昨年12月の立法委員(国会議員)選敗北に続く痛手となった。

 国民党が総統選での政権奪還に向け勢いづくのは確実。5年半の政権の実績に対する有権者の十分な支持を得られなかった陳水扁総統は苦境に追い込まれ、内政や対中政策で戦略の練り直しを迫られることになった。

 元総統府高官汚職事件などでこれまでのクリーンなイメージを失った民進党に対し、国民党は清廉な印象の若手指導者、馬主席の人気に乗って躍進。8月に主席に就任した馬氏は、総統選勝利に向け好調なスタートを切った形だ。

 民進党の蘇貞昌主席は3日夜の記者会見で「すべての責任を取り、辞任する」と辞意を表明した。

 中央選挙委員会によると、今回選出された23県・市長ポスト(台北、高雄両直轄市を除く)の政党別獲得数は、国民党14(現有8)、民進党6(10)、親民党1(1)、新党1(1)、無所属1(3)。投票率は66.22%で、政党別得票率は国民党50.96%、民進党41.95%など。

 民進党は県長(知事)ポストを16年間押さえてきた台湾最大の選挙区、台北県のほか、同党が伝統的に強い宜蘭県、嘉義市でも国民党に敗れた。

 元部下の汚職事件が発覚した謝長廷・行政院長(首相)も更迭される可能性が高い。

 陳総統は政治体制の「台湾化(自立化)」路線を進め、台湾の実情に合わせた大幅な憲法改正を公約に掲げているが、今回の敗北で政権の求心力はさらに失われ、公約実現の可能性は遠のいたようだ。(共同)

民主台湾の「顔」米国行脚 李登輝氏、中国一党独裁と対比

平成17(2005)年10月23日 The Sankei Shimbun

 【ワシントン=古森義久】台湾の李登輝前総統は二十三日に約二週間の米国訪問を終えるが、今回の訪米では首都ワシントンを含めた各主要都市での演説などで台湾の民主主義と中国の一党独裁を対比させて、台湾の自立を説くという訴えを繰り返し、台湾の「顔」としての存在感を強く印象づけた。

 李氏は二十二日、米国の最後の訪問地ロサンゼルスでの台米関係団体主催の昼食会で演説し、中国を奴隷国家と評し、「国家が労働者を奴隷扱いし、低賃金の労働をさせることで外国資本を引きつけている」と述べた。李氏は台湾の民主主義を強調する一方、「中国は国内で人権を抑圧し、周辺に対して脅威となっている点で冷戦時代のソ連と変わらない」と非難した。

 八十二歳の李前総統は曾文恵夫人とともに米国アラスカ州のフランク・マカウスキー知事の招待で、二〇〇一年以来四年ぶりに訪米した。十一日にアラスカに着いたあと、十四日からはニューヨークを訪れ、さらに米国の独立宣言の地のフィラデルフィアを経由して、十七日に首都ワシントンに入った。李氏はあくまで私人としての訪米で、首都を訪れるのは八八年の総統就任以来、初めてとなった。

 米国政府は私人である李氏とは接触しなかったが、米国議会では十九日、台湾議員連盟を中心に李氏の歓迎式典を開き、上下両院議員計二十五人が出席した。李氏は同式典の演説でも台湾の民主主義の定着を強調するとともに、「中国の軍国主義や膨張主義の危険」を訴え、米国が台湾への支援を揺るがさないことへの期待を述べた。議員側を代表する形でデーナ・ローラバッカー下院議員(共和党)は「李前総統は中国からトラブルメーカーと呼ばれるが、ジョージ・ワシントンもイギリス植民地軍からすればトラブルメーカーだった」という支援を送った。

 李氏は十九日夜は台湾系米人の集まりで演説し、「台湾人の自己認識の高まり」や「新しい台湾人の時代」を民主主義とからめて力説。台湾の呼称を現在の「中華民国」から将来は「台湾共和国」とする必要を説いた。

 李氏はまたワシントン・ポスト紙のインタビューに応じ、中国が台湾を射程に収めた中・短距離の弾道ミサイルを台湾海峡に近い福建省などに七百基以上も配備したことに関連して、台湾も将来は中国本土を直接に攻撃できる長距離弾道ミサイルの配備も必要になると述べた。

 この発言は米国が台湾に防衛用兵器の売却を許しているのに台湾側が野党の反対で同兵器購入の予算百億ドル分を立法院で否決されてしまったことを受けて、中国の攻撃を抑止するために台湾側も攻撃用ミサイルを保持すべきだという点に力を注いだ。

 米国政府は「一つの中国」の原則を認め、「台湾独立は支持しない」という姿勢を保っているが、李氏は首都のナショナルプレス・クラブの演説で「台湾は完全な民主主義国家になる目標に向かい、着実な道を進む」とか「台湾の事実上の独立と主権はもう明白だから、私は台湾独立を宣言したりはしない」などと述べて、米側との摩擦を避けながらも、台湾自立の方向は明示した。

 李氏の米国各地でのこうした言動は地味ながらも確実に米国民に伝えられ、台湾の民主主義の「顔」としてのイメージを広めたといえる。クリントン、ブッシュ両政権で中国専門の国家情報官だったボブ・サター・ジョージタウン大学教授は「李氏の訪米は米国政府の対中政策にどれほどインパクトを持つかは別として、中国政府も今回はもうほとんど抗議をせず、普通のことになったといえる」と論評した。

台湾・李前総統、新憲法制定と名称変更訴え

2005/10/21 The Sankei Shimbun

 訪米中の台湾の李登輝前総統は20日、ワシントンのナショナル・プレスクラブで記者会見し「民主的な権利の保護」と「国際社会からの認知」を獲得するため新憲法を制定し、現在の台湾の正式名称である「中華民国」を「台湾」に改名する必要性を訴えた。

 李氏が主張する新憲法制定と名称変更は、台湾独立色が一段と強い。李氏を「台湾独立派の代表」とみなす中国は、さらに批判を強めそうだ。

 1988年から12年間にわたり総統を務めた李氏は「中華民国の国際的認知を高めることに全力を尽くしたが、成功しなかった」と回想。

 背景として「中華民国が全体主義国家の中華人民共和国(中国)としばしば混同される」と述べ、この混同は「台湾の民主主義と人々を傷つけた」と指摘するなど、改名を求める理由を説明した。

 また「台湾をのみ込もうとする中国専制政権の野心」に対抗するため「完全な民主国家の実現」を主張した。

 李氏はこの日、総統就任以降、初の米首都訪問を終え、最終目的地のロサンゼルスに移動した。(共同)

地図の表記に台湾が抗議、米グーグルが変更

2005年10月13日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ロサンゼルス=古沢由紀子】米インターネット検索最大手グーグルが、地図サービスの中で、台湾の説明を「台湾、中国の省」と表記していたところ、台湾当局から抗議を受け、「台湾」との表記に修正していたことが13日までにわかった。

 米メディアによると、グーグルの地図上の表記をめぐっては、台湾当局が「台湾を中国の省の一つとして表記するのは誤りだ」として、抗議を申し入れていた。

 グーグルでは、表記は国際的な規定に合わせただけで、今回の修正は全体の見直し作業の一環と説明している。同社は、中国への進出を計画中。修正前の表記は中国政府への配慮ではないかとの観測もあり、政治問題化を避けたと見られている。

来春、台北で大都市総会 石原知事、馬市長が合意

2005/09/08 The Sankei Shimbun

 台湾を訪問中の石原慎太郎東京都知事は8日、馬英九・台北市長と会談し、アジアの主要都市で組織する「アジア大都市ネットワーク21」の次期総会を来年3月か4月に台北で開くことで合意した。

 知事によると、会談では、今年の総会開催地の北京が8月末に脱退したことを受け、来年の開催優先権を持つ台北での今年の開催を打診。馬市長は準備が間に合わないことなどから難色を示し、来秋に予定されていた台北での総会を半年繰り上げて開くことになった。

 双方は年内に事務レベルの臨時総会を東京で開くことでも一致。この会議で総会開催を正式決定する見通し。

 同組織は加盟都市が環境や保健衛生、災害対策などで連携する狙いで、石原知事の呼び掛けにより、東京、北京、台北、ソウル、バンコクなどアジア12都市で2001年に発足した。(共同)

台湾新幹線、開業を1年延期

2005年09月08日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 日本の新幹線システムを採用し、台北―高雄間(約345キロ)を1時間半で結ぶ台湾高速鉄道(新幹線)について、事業主体の台湾高速鉄路(台湾高鉄)は8日、今年10月末に予定されていた開業を1年延期すると発表した。

 新幹線技術の中心部分である機電システムの工事の遅れが主な原因。(時事)

台湾駐日代表「日台で安保対話の枠組みを」

2005/08/19 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 台湾の駐日大使にあたる許世楷・台北駐日経済文化代表処代表は18日、産経新聞と会見、日本と台湾はいずれも「中国の脅威」に直面していると指摘、日台間で安全保障をめぐる対話の枠組みを作るべきだと主張した。

 許代表は「台湾は常に中国から併合されるという恐怖にさらされている。例えば、イラクは戦争で米国に負けても国自体はなくならないが、台湾が(中国との)戦争に敗れたら、なくなってしまう」と危機感を表明した。

 そのうえで、「日本と米国の間には日米安全保障条約、台湾と米国の間には台湾関係法があるが、日本と台湾の間にはこのようなものがない。安保面で日本と台湾の関係は非常に弱い」と述べ、「いざというとき」に備え、日本と台湾が安保問題を話し合う必要性を強調した。

 台湾からの観光客に対する査証(ビザ)の発給を恒久的に免除する法律が今月、日本の国会で成立したことについては「台湾はすでに日本の観光客のビザを免除しており、これで互恵平等になった」とし、「日台関係がよくなっていることを具体的に示すものだ」と評価した。

 台湾の友好国はこのほど、来月開幕する国連総会に向け「国連に対する台湾海峡の平和維持要請」提案を提出した。これについて許代表は「台湾問題の平和解決に国連も関心を持つべきだ」という趣旨に沿ったものだと説明、「この提案を出すことによって誰がトラブルメーカーなのかはっきりしてくる」と述べ、国連の場で中国の対台湾武力行使を牽制(けんせい)する考えを示した。(辻田堅次郎)

中国けん制狙い、台湾で民主化アピールの大会始まる

2005年08月13日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【台北=石井利尚】台北で13日、民主主義や自由の価値観を共有する環太平洋諸国と連帯を深める交流組織「民主太平洋連盟」の設立大会が3日間の日程で始まった。

 戦後60周年に合わせ、呂秀蓮・副総統が各国に参加を呼びかけた。民主化した台湾を支持する国際世論を盛り上げ、共産党独裁の中国をけん制する狙いがあると見られる。

 新組織は、「政府間組織に準じ、台湾が21世紀に活躍する新たな舞台」(呂副総統)となる。台湾が外交関係を持つ中南米や太平洋諸国のほか、日本や米国など外交関係がない国の民間人を含め26か国・地域で構成。政治家や学者、非政府組織(NGO)関係者が、海洋資源の平和利用、経済発展や平和共存などをめぐり研究などをする。14日に設立式典が行われ、陳水扁総統が演説する予定だ。

 陳総統は11日の記者会見で、「自由で安定し、繁栄した太平洋の新たな世紀をともに作り上げよう」と呼びかけた。

「万博・リニモ」導入が台湾で浮上

2005年08月07日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【台北=石井利尚】台北市など台湾の自治体が、愛・地球博(愛知万博)会場への主要交通機関となっている「リニモ」が使用する常電導磁気浮上式リニアモーターカー(HSST)の導入を検討している。

 導入されれば、日本企業のリニア技術が海外に初めて輸出されるケースとなる。

 台北市が検討しているのは、新交通システムの郊外の一部区間(約1・2キロ・メートル)への導入。沿線住民から騒音対策を求める声が高まったことから、台北市は騒音、振動が少ないリニモに注目した。HSSTの鉄道輸送システムを海外に販売する日本企業との交渉がまとまった場合、早ければ2007年にも導入の可能性がある。台北市当局者は本紙に対し、「課題は導入コストがやや高いこと。(納税者の)市民の理解が得られるかが、導入できるかどうかのカギだ」と話している。

 さらに、台湾第3の都市、台中市も、11年開業を目指す新交通システム(全長約17キロ・メートル)で、台北県は、新交通システムの環状線(全長約30キロ・メートル)で、それぞれ導入の検討に入った。台湾では、愛知万博期間中の住民の訪日ビザが免除されていることもあってリニモの知名度が高まっており、リニモを視察する当局や自治体関係者は多い。

 HSSTをめぐっては、米カリフォルニア州オークランド市なども導入を検討している。

戦後60年 李登輝前台湾総統インタビュー

2005/08/06 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

≪「首相はきちっと靖国参拝すればよい」≫

 【台北=河崎真澄】60回目の終戦記念日を前に台湾前総統である李登輝氏(82)は産経新聞と会見し、「他国が靖国神社をうんぬんする資格はなく、小泉純一郎首相はきちっと時間通りにやればよい」と述べ、小泉首相による8月15日の靖国神社参拝を支持した。 

 李氏は靖国問題をめぐり「中韓の反日運動の高まりは、その目的がどこにあるかを考えるべきだ。中韓が靖国神社への批判を始めたのは中曽根康弘元首相の時代から。日本を追い抜きたいがための政治的な要求(圧力)だろう」と指摘。「小泉首相が参拝を取りやめても何の解決にもならず、中韓は別の問題を持ち出す。小泉首相はきちっと時間通りに(参拝を)やればよい。靖国神社を他国がうんぬんする資格などない。私の実兄も祭られており、東京に行く機会があれば参拝したいと思っている」と語った。

 李氏は日本統治時代の台湾で生まれ育ったが、日本の台湾統治について「日本統治は台湾にとって大きな転換期。日本が残した教育と人材は、戦後の台湾工業化の基礎になった」と高く評価した。

 その一方で、日本の後で台湾を統治した中国国民党政権の蒋介石元総統に言及、「日本人は蒋元総統の『以徳報怨(徳をもって怨みに報いる)』との言葉と戦後賠償の放棄に感謝するが、(国民党政権が戦後)台湾で接収した日本時代の資産は工業インフラや不動産など、賠償以上の価値があった」と冷静に評価すべきだとの考えを示した。

 米中関係や今後の日本の国際的な役割に関しては「米国は戦略的に中国包囲網を作っている。中国はいくら軍拡しても米国に勝てないことを知っており、米中戦争は起きない。米国は世界の石油を握っている。日本は世界戦略の中で態度をはっきりさせねばならず、日米同盟を基軸に民主主義と自由主義の陣営にあって政治的な役割を果たすべきだ」と指摘。日本が国連安全保障理事会の常任理事国になろうとしていることについても「当たり前のこと」と支持する姿勢を示した。

航空機の中国領空飛行許可 台湾行政院長

2005/08/04 The Sankei Shimbun

 台湾の謝長廷・行政院長(首相)は3日、原油価格の高騰を受けた燃料コスト削減などのために台湾の航空機が中国領空を飛行することを許可すると発表、中国にも同意するよう呼び掛けた。

 台湾から南アジアや中東、欧州行きの航空機はこれまで中国領空を迂回(うかい)して飛行していた。謝院長は「中国領空の飛行が実現すれば、コストや飛行時間を削減でき航空会社や旅客に大きなメリットがある」と述べた。

 謝院長は中台間の旅客、貨物の直行チャーター便の運航についても、中国が実現に向けて早期に協議に応じるよう求めた。(共同)

台湾人ビザ免除が衆院通過 特例法案で恒久化

2005/08/02 The Sankei Shimbun

 衆院は2日午後の本会議で、台湾からの観光客に対する査証(ビザ)免除措置を恒久化するための入管難民法の特例法案を可決した。同法案は、本会議に先立つ法務委員会に委員長提案で提出され可決。自民、公明、民主3党は、今国会中に成立させる方針だ。

 ビザ免除をめぐっては、自民党の議員立法により今年2月、外国人観光旅客来訪促進法が成立。政令で台湾を対象とすることが決まり、3月から9月までの愛知万博期間中の免除が実現した。

 しかし与党内で免除の恒久化を求める意見が強まったため、民主党を交えた3党で協議した結果、委員長提案の形で特例法案を提出することで合意した。(共同)

台湾総統府、公式HPに「台湾」付記

2005年07月30日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【台北=石井利尚】台湾の総統府は30日、公式ホームページ(HP)に、「台湾」の名称を中国語と英語で付記すると発表した。従来は「中華民国総統府」だったが、30日からは「中華民国(台湾)総統府」と表示された。

 英語では、「Republic of China(Taiwan)」。独立志向の陳水扁政権は、「台湾」の名前を使うことを奨励しており、総統府HPに「台湾」を入れたことで、「独立に向けた動き」と中国を刺激しそうだ。

 総統府は、「台湾(Taiwan)」を付記した理由について、「海外のネット利用者から、中国と(台湾の国号の)『中華民国』は混同しやすいとの指摘があった。中国と明確に区別するためだ」と説明している。陳政権は2003年秋から、台湾住民の旅券(パスポート)に、中国人と間違われないよう、英語で「TAIWAN」と付記、中国政府が反発した経緯がある。

台湾の国民党主席選挙、馬英九・台北市長が当確

2005年07月16日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【台北=関泰晴】台湾の最大野党・国民党の主席選挙は16日投開票され、同日午後7時半(日本時間同8時半)現在、馬英九・台北市長(55)が王金平・立法院長(国会議長)(64)に得票数で2倍以上の大差を付けており、当選を確実にした。

 王氏は同日夜に台北で記者会見し、「馬氏の当選を祝福する」と敗北宣言した。

 新主席となる馬氏は、与党・民進党の陳水扁総統が退任する2008年次期総統選の野党統一候補となる可能性が高く、同党は中国と協力関係を深めながら、政権奪回を目指す。

 ともに党副主席の両氏による一騎打ちとなった選挙戦で、若者や女性の人気を集める馬氏は「党改革」「腐敗一掃」を訴え、支持を拡大。香港生まれの外省人(中国出身者)である馬氏は、党員の7割を占める本省人(台湾出身者)の間にも浸透した。

 一方、台湾南部・高雄出身の本省人(台湾出身者)である王氏は組織票のテコ入れを図ったものの、馬氏の人気に及ばなかった。

 主席選挙は連戦氏(68)主席の引退に伴うもので、馬氏は8月の党大会で主席に就任する。党の前身を含め100年以上の歴史を持つ国民党トップが、党員の直接選挙で決まるのは初めて。選挙権を持つ党員は海外在住者を含め約104万人だった。

台湾総統との対話求める 米長官、関係改善に期待

2005/07/11 The Sankei Shimbun

 中国を訪問したライス米国務長官は10日の記者会見で「米国は、中国が選挙によって選ばれた台湾の政府と接触するよう希望する」と述べ、台湾の陳水扁総統との直接対話に乗り出すよう中国側に要請した。

 中国政府は、連戦・国民党主席ら台湾野党党首の訪中を相次いで受け入れているが、長官は中国が与党、民主進歩党とも対話することで中台関係の改善を図ることに期待を示した。

 長官はまた「台湾海峡の現状を(中台のいずれもが)一方的に変更することを希望しない」と指摘。中国の台湾への武力行使や、陳総統による「台湾独立」につながる動きをけん制した。

 米中関係については「両国の経済関係は極めて活発」と述べる一方、軍事面では「中国の軍備増強に懸念を持っている」と憂慮を表明した。

 長官は10日行われた胡錦濤国家主席ら中国指導部との会談で、人権や宗教の自由をめぐる問題も取り上げ、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世との直接対話を指導部に促したことを明らかにした。(共同)

 ライス米国務長官が10日行った記者会見での米中関係の発言要旨は次の通り。

 一、米中両国の経済関係は極めて活発。米国は中国の軍備増強に懸念を持っている。

 一、米国は、中国が選挙によって選ばれた台湾の政府と接触するよう希望する。

 一、台湾海峡の現状を(中台のいずれもが)一方的に変更することを希望しない。

 一、(チベット仏教の最高指導者)ダライ・ラマ14世は中国にとって脅威でない。(中国側との一連の会談で)ダライ・ラマに手を差し伸べるよう求めた。(共同)

自立化へ憲法改正審議 台湾国民大会が開幕

2005/05/31 The Sankei Shimbun

 台湾の実態に合わせた「政治体制の自立化」のための憲法改正案を審議、承認する非常設機関、国民大会が30日、台北・陽明山の中山楼で開幕した。

 改正案承認には大会代表300人の4分の3以上の賛成票が必要。14日の大会代表選では与党、民主進歩党(民進党)や最大野党、国民党など改正案に賛成の政党が249議席を獲得しており、承認は確実だ。

 改正案には、立法委員(国会議員)について(1)定数を225から113に半減(2)小選挙区制を導入(3)任期を3年から4年に延長−などのほか、今回で国民大会を廃止し、今後は憲法改正案を住民投票で承認することが盛り込まれている。

 国民大会の会期は最長1カ月。日程は31日に開く議長団会議で決めるが、民進党や国民党などは1週間以内に採決すべきだと主張しており、早期採択の可能性もある。

 独立派政党、台湾団結連盟(台連)や第2野党、親民党は、小選挙区制が少数政党に不利になることなどから改正案に反対。親民党は、住民投票による憲法改正は「台湾独立に道を開く」とも批判している。

 陳水扁総統は今回の憲法改正をばねに、任期中の2008年までに第2段階の大幅な憲法改正を実施し「政治体制の自立化」を推進したい意向。しかし、憲法改正案を固める立法院(国会)は野党側が過半数を占めており、曲折が予想される。(共同)

知られざる歴史 台湾民主国 あすで独立宣言から110年

2005/05/22 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

≪5カ月で「滅亡」 民主化の"起源"再評価≫

 日清戦争に勝利した日本が1895年4月17日の「下関条約」(馬関条約)で、大清帝国から台湾と遼東半島の割譲を受けたことは、あまりにも有名だ。だが、その割譲に台湾内部から反発する勢力が生まれ、直後の5月23日、「台湾民主国」として独立を宣言していたことは、台湾でもさほど知られていない。この「アジア初の共和国」は上陸した日本軍の攻撃により5カ月足らずで“滅亡”した。110年前に彗星(すいせい)のごとく現れて消えた「台湾民主国」が遅まきながら、台湾民主化運動の“起源”として再評価されている。(台北 河崎真澄)

 その「国旗」は、台北市内の台湾博物館の保管庫内で厳重に覆いをかけられ保存されていた。

 案内してくれた博物館の李子寧・人類学チームリーダーによると、「台湾民主国」の旗は縦二・六四メートル、幅三・三メートルで、当時三枚、作られた。台湾に一枚だけ残された実物は損傷が激しいために広げて見ることは許されておらず、李氏は一九五三年に作られた複製を見せてくれた。「黄虎旗」と呼ばれ、雲の上に浮かぶ若いトラが西空をにらんでいるように見える。

 残る二枚のうち一枚は当時、台北郊外の淡水に進駐していた英国の公館に寄贈され、現在もロンドンにほぼ原型のまま保存されているという。

 このため、台湾博物館では五百万台湾元(約千七百万円)の予算を付けて、損傷している台湾の一枚を来年、ロンドンに送り、修復を依頼する計画だ。李氏は「最後の一枚は日本軍が戦利品として持ち帰った」とみているが、所在は不明だ。

 国旗としては変わったデザインの意味合いについて、昭和大学の黄昭堂名誉教授(総統府前国策顧問)は「虎は中国の象徴である龍に対抗する存在で、台湾の西に位置する大陸の清をにらんでいる」とみる。抗日と解釈されている「台湾民主国」も清からの独立を狙った策略だったのか。

 ただ、この旗や「台湾民主国」の研究は最近まで台湾ではタブーで、国民党政権時代には「台湾独立」の象徴になるとして摘発の対象だった。

 そもそも十九世紀末の台湾社会で、なぜ「民主国」として独立するという発想が生まれたのか。

 台湾は一八八五年に清の一行政区の「台湾省」に昇格しており、九四年から唐景●が省を代表する「署巡撫代理」を務めていた。黄氏の研究によれば、唐は、淡水駐留の英国人に意見を求めたところ、下関条約で割譲となった台湾が「民主国」の形態で独立すれば清は日本からの法的非難を免れると示唆され、台湾独立を確立できるかもしれないと考えたという。

 かくて九五年五月二十三日、唐を総統とする「台湾民主国」の政府組織と閣僚名簿が作成され公印も作られた。「五月二十五日午前九時を期し台湾の紳民によりて上程す」として、「台湾民主国」独立が宣言された。

 だが、北白川宮能久親王率いる台湾征伐軍が五月二十九日、台湾東北部から上陸。六月六日には基隆が陥落した。翌七日には台北に無血入城を果たし、十七日に樺山資紀総督が始政式を行った。

 「台湾民主国」は、台南に政府を移して徹底抗戦し、独自の紙幣、「官銀票」や郵便切手も発行した。しかし、台湾防衛軍は清からの募兵と台湾住民の民兵を合わせた五万人足らずで、台湾総督府の公文書を研究している中京大学の檜山幸夫教授によれば、このうち一万人以上が戦死を遂げたとの記録がある。最後まで戦った大将軍の劉永福が十月十九日、形勢不利と見て大陸に逃れ、ここに「台湾民主国」は滅んだというのが定説だ。

 先の李氏によると、当時、台湾語で作られた「台湾民主歌」はその後、日本統治時代の五十年のみならず戦後の国民党時代をも通じて一世紀余もひそかに歌い継がれ今に伝えられている。

 今年三月二十六日に、中国による「反国家分裂法」制定に反対して台湾の百万人デモが行われた際、そこには「黄虎旗」をプリントしたTシャツを着た参加者もいた。過去の台湾史の中で一瞬、光彩を放った「台湾民主国」が現代の台湾民主化運動でよみがえったように思えた。

                  ◇

 下関条約 1894(明治27)年から翌年にかけて、朝鮮半島をめぐって日本と中国大陸の大清帝国が戦った日清戦争の結果、戦勝国となった日本の伊藤博文と陸奥宗光が山口県下関市で清の李鴻章と交わした講和条約。95年4月17日、清の朝鮮半島からの撤退や台湾、澎湖諸島、遼東半島の日本への割譲、軍費賠償金の支払いなどを取り決めて締結された。馬関条約または日清講和条約ともいう。 ●=「山」の下に「松」

台湾客のビザ免除延長を要請 日華議員懇

2005/05/23 The Sankei Shimbun

 親台湾派議員でつくる日華議員懇談会の平沼赳夫会長と草川昭三副会長が23日、町村信孝外相を外務省に訪れ、政府が9月までの愛知万博(愛・地球博)期間中に限って実施している台湾からの観光客に対する査証(ビザ)免除措置を、万博終了後も続けるよう要請した。

 政府は万博期間中の実績を踏まえ、治安上の問題がなければ延長する方針で、外相は「治安も大事だ。法務省なども絡むため、総合的に判断したい」と答えた。(共同)

日本も台湾関係法制定を 駐日代表が講演

2005/05/16 The Sankei Shimbun

 台湾の駐日代表である台北駐日経済文化代表処の許世楷代表は16日、都内で講演し、台湾に対する防衛支援をうたう米国の「台湾関係法」にならった法律を日本も制定すべきだとの考えを示した。

 許氏は、中国の反国家分裂法を念頭に「中国が『併合する』と言っているので、いつ台湾が消滅するか分からない」と危機感を強調。1972年の国交断絶により、日本と安全保障上の情報交換ができないことなどを指摘し「国交正常化が差し当たり難しければ、台湾関係法を考えてしかるべきではないか」と述べた。(共同)

「一つの中国」条件で覚書 台湾のWHO参加問題

2005/05/16 The Sankei Shimbun

 ジュネーブ発の台湾・中央通信によると、世界保健機関(WHO)の李鍾郁事務局長は15日、台湾のWHO活動参加を「一つの中国」の原則に基づく条件付きで認める覚書をWHOと中国が交わしたことを明らかにした。

 台湾側は覚書について「秘密合意であり、政治的な陰謀」と強く反発している。

 覚書には(1)台湾は「TAIWAN・CHINA(中国台湾)」の名称で中国代表団に参加(2)WHOの会議中、中国代表団の後ろに座る(3)中国の同意の下、WHOと台湾は技術協力と交流を進めることができる−などが盛り込まれたという。

 台湾は16日からのWHO総会にオブザーバー参加を申請しているが、こうした条件をそのまま認めることはあり得ず、参加は難しそうだ。(共同)

与党・民進党が勝利 台湾国民大会代表選挙

2005/05/14 The Sankei Shimbun

 台湾の政治制度を実態に合わせて改革する「政治体制の自立化」に向けた憲法改正案を承認する非常設機関、国民大会の代表選挙(定数300)の投開票が14日行われ、中央選挙委員会によると、与党、民主進歩党(民進党)が127議席を獲得し第一党となった。最大野党、国民党は117議席。両党など憲法改正に賛成の政党が8割以上の計249議席を確保、改正案の承認は確実となった。

 野党党首の相次ぐ訪中で独立志向の強い与党への逆風も予想されたが、有権者は中国の「内政干渉」をはね返し、陳水扁総統の台湾の自立化政策を信任した。

 昨年12月の立法委員(国会議員)選挙で野党に敗北した民進党は今回、雪辱を果たした。ただ、投票率は23.4%と台湾の選挙史上最低を記録した。

 昨年8月、立法院で可決された憲法改正案には、立法委員について(1)定数を225から113に半減(2)小選挙区制を導入(3)任期を3年から4年に延長−などのほか、今回で国民大会を廃止し、今後は住民投票で憲法改正案を承認することが盛り込まれた。

 選挙は比例代表制で、有権者は、憲法改正案への賛否を表明した12の政党・グループから一つを選択。小選挙区制が少数政党に不利になることなどから改正案に反対する独立派政党、台湾団結連盟(台連)は21、第2野党、親民党は18議席にとどまった。

 当選した代表300人は今月末から1カ月間、改正案を審議、採決するが、政党間の対立から改正案承認に必要な票数は決まっていない。低投票率の背景には、与野党の激しい対立を嫌う政治不信などがあるようだ。

 中央選挙委によると、政党別得票率は民進党42.5%、国民党38.9%、台連7.0%、親民党6.1%。有権者は約1675万人だった。(共同)

中国:台湾企業工場を市民が襲い略奪−−潮州

2005年4月18日 毎日新聞 東京夕刊

 【台北・庄司哲也】中国広東省潮州市で15日、台湾企業の工場が、暴徒化した数千人に及ぶ地元住民に包囲され、工場内の物を略奪される事件が発生した。工場側は住民制止のため、地元の市政府に警察の出動を要請したが、派遣されなかったという。台湾の中央通信が伝えた。

 被害に遭ったのは電池生産を行う台湾企業「美美電池」の工場で、工場廃水が養殖用の海水を汚染しているなどとして地元住民に包囲、略奪を受けた。しかし、工場の廃水は地元当局の基準に適応している上、海水汚染もなく、参加した住民も具体的な賠償の根拠を持っていなかった。このため、台湾系企業からは、特定組織が背後で住民を操っているのではないかとの見方も出ているという。

「恩讐超え平和求める場所」 台湾独立派政党が靖国参拝

2005/04/04 The Sankei Shimbun

 台湾の与党連合を形成する独立派政党、台湾団結連盟(台連)の蘇進強主席(党首)ら議員が4日、靖国神社を参拝した。台連によると、第二次大戦のA級戦犯合祀(ごうし)により日本の首相参拝などが政治問題化して以降、台湾の政党幹部が参拝したのは初めて。

 蘇主席は参拝の理由について「(台湾出身者を含め)戦争で亡くなられた英霊に敬意を表すためにきた。靖国神社は今までの恩讐(おんしゅう)を超えて平和を求めていく場所だ」と未来志向を強調した。

 中国が首相の靖国神社参拝に強く反対していることには「台湾の立場を代表していない。いつまでも恨みを持ち続けることは納得できない」と批判した。

 1945年まで日本統治下にあった台湾では、戦時中に軍人・軍属などとして約21万人が徴用され、靖国神社には戦死した台湾出身者約2万8000人が合祀されている。

 台湾では、台湾出身者の合祀取り下げを求める声や、首相の参拝に反発して日本で損害賠償請求訴訟を起こす動きもあり、靖国問題をめぐる立場は一様ではない。

 蘇進強主席らは台連の日本支部設立のため2日、来日した。(共同)

台湾、妊婦の喫煙禁止へ 「煙害」防止法改正案

2005/03/14 The Sankei Shimbun

 14日付台湾夕刊各紙によると、台湾の衛生署(衛生省)は同日、「煙害防止法」改正草案に妊婦の喫煙を禁止する規定を盛り込んだと発表した。

 妊婦の喫煙を発見した人が衛生当局に届け、妊婦の身元が特定された場合、1万台湾元(約3万4000円)以上5万元以下の罰金が科される。妊婦にたばこを販売したり、喫煙を勧めた場合も罰金対象になるという。

 衛生署は「妊婦が喫煙した場合、流産の確率や新生児の死亡率が高まる。胎児の健康を守るため、禁止規定を盛り込んだ」と説明している。(共同)

陳総統銃撃の実行犯自殺か 地元メディアが報じる

2005/03/07The Sankei Shimbun

 台湾のTVBSテレビは7日、台湾総統選挙前日の昨年3月19日に起きた陳水扁総統銃撃事件で、同月に南部の台南市で自殺した男が実行犯と分かったと報じた。

 検察当局の捜査の結果、判明したとしているが、詳しい内容は不明。検察当局が7日に記者会見し、説明するという。

 同テレビによると、陳義雄という男性で、事件後の昨年3月28日に台南市の港に飛び込んで自殺し、翌日、遺体が見つかった。自宅から「自分が銃撃事件の犯人。台湾の正副総統に不満だった」と書いた遺書が見つかった。

 台湾の警察当局は昨年12月、事件で使われた銃弾と特徴が一致する銃弾や口径8ミリの改造銃を密造、販売していた男を逮捕し、購入者の特定を急いでいた。(共同)

クリントン氏が訪台 米大統領経験者、99年以来

2005/02/27 The Sankei Shimbun

 米国のクリントン前大統領が自著「マイライフ」の売り込みを目的に27日、台湾を訪問、台北市内で「人類共通の価値」をテーマに講演した。陳水扁総統との夕食会にも出席する。

 クリントン氏はアーカンソー州知事時代に数回訪台したことがあるが、大統領を務めた後は初めて。米大統領経験者の訪台は1999年のカーター氏以来。同日付台湾紙、聯合報によると、国際社会での存在感を高めることを狙い台湾当局がクリントン氏を招請したという。

 安全保障分野などでの米台の協力関係強化を警戒している中国当局はクリントン氏の訪台を批判している。

 同氏は28日、台北市内で自著のサイン会を行った後、台湾を離れる。

 中国が96年3月、台湾近海でミサイル発射演習を実施した台湾海峡危機の際、大統領だった同氏は空母2隻を派遣し、中国をけん制した。(共同)

台湾「高砂義勇兵慰霊碑」再建立へ 県有地に移設で合意

2005/02/25 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 【烏来(台湾台北県)=河崎真澄】先の大戦で「日本兵」として出征した台湾先住民出身の「高砂(たかさご)義勇兵」戦没者を祭る台北郊外の英霊慰霊碑の撤去が求められていた問題で、撤去後の移設地として台北県が県有地およそ1000平方メートルを提供し、慰霊碑存続を支援する見通しとなった。関係者は11月までに慰霊碑移転と再建立を終え、戦後60周年を記念する「慰霊祭」を行う考え。

 慰霊碑は13年前に高砂義勇兵の遺族が台北県烏来郷に建立したが、無償で約1000平方メートルの土地を慰霊碑に提供してきた観光会社が、新型肺炎(SARS)流行による観光不況のあおりで昨年倒産。新たな地権者がホテル建設で慰霊碑の撤去を要求したため、遺族らで作る慰霊碑建立委員会などで対応策を練ってきた。

 同委代表で烏来郷の元郷長(町長)の簡福源氏によると、移設先の県有地は烏来風景特定区内の「瀑布公園」で、高さ約80メートルの「白糸の滝」と呼ばれる滝をのぞむ高台。台北県が約1000平方メートルの敷地提供に基本同意し、6月までに再建立の用地設計を行う。解体費用などは100万台湾元(約300万円)を限度に新たな地権者が負担する。

 同委では慰霊碑再建立と慰霊祭のほか、戦後60周年にちなむ事業として「高砂義勇兵」の記録を展示する記念館建設なども検討している。

 一方、「慰霊碑撤去の危機」を報じた昨年7月の産経新聞朝刊を見た読者から義援金が続々と寄せられた。昨年11月時点で、延べ3398件から寄せられた3201万2391円の義援金の目録が、同委に手渡されている。

 日本からの義援金は、台湾の財団法人「現代文化基金会」(黄昭堂理事長)に管理を委託して、簡氏らが慰霊碑保存のために今後、設立する社団法人の資金支援に充てられる。

 <高砂義勇兵> 日本統治時代の台湾で「高砂挺身報国隊」「陸軍特別志願兵」など日本兵として出征した「高砂族」と呼ばれたマレー・ポリネシア系の台湾先住民の総称。記録が残されていない兵も多く、総数は6000人とも8000人ともいわれる。半数以上は戦死したとされるが、生還しても戦後は日本国籍を失ったため、遺族を含め恩給や補償も満足に受け取ることができなかった。

観光目的なら容認も 台湾総統夫人の訪日で官房長官

2005/02/25 The Sankei Shimbun

 細田博之官房長官は25日午前の記者会見で、陳水扁・台湾総統が訪日を打診してきたことを否定した上で、呉淑珍夫人については「政府の対応は訪日の目的に応じて適切に判断する」と指摘した。

 細田氏は「(夫人は)2000年、01年、04年に観光目的で訪日した。訪日の手続きをとりたいと言われれば、日程などを確認する」と述べ、観光目的が明確な場合は訪日を認めることも示唆した。

 呉夫人の訪日目的は、2005年日本国際博覧会(愛知万博)の関連行事などへの出席とみられる。(共同)

台湾が陳総統の来日打診か 愛知万博にあわせ

2005/02/25 The Sankei Shimbun

 台湾の陳水扁総統が2005年日本国際博覧会(愛知万博)の関連行事などに出席するため、ことし5月にも来日することが可能か、日本政府や与党関係者に非公式な打診をしてきたことが24日、分かった。日台関係筋が明らかにした。

 日本側は、この時期に陳総統が来日すれば、中台問題に敏感な中国政府を刺激し、小泉純一郎首相の靖国参拝問題で冷え込んだ対中関係が決定的に悪化することを懸念、陳総統の来日は困難との判断を伝えたという。ただ、台湾側は呉淑珍夫人のみの来日が可能かどうかの検討を引き続き求めてきているとみられる。

 日台関係筋によると、打診があったのは今月初め。台湾側は、陳総統と呉夫人の夫妻が5月上旬から中旬にかけ5、6日程度の日程で、愛知県の万博会場や都内の大学、福祉施設などを見学する訪問案を提示したという。

 台湾要人に関しては、昨年末からことし初めにかけ、李登輝前総統が来日。日本政府は「一私人による観光目的の来日を断る理由はない」として容認したが、中国政府は「台湾独立派の動きを助長する」などとして激しく反発した経緯がある。今回、陳総統の来日は見送られる可能性が高いとみられるが、夫人だけの来日でも中国政府の反発は必至とみられ、日本政府は難しい判断を迫られている。(共同)

台湾、游内閣が総辞職 新行政院長に謝長廷・高雄市長

2005/01/24 The Sankei Shimbun

 台湾の游錫●(●=方を横に2つ並べ、下に土)・行政院長(首相)は24日午前、行政院(内閣)臨時院会(臨時閣議)を開き、游内閣は総辞職した。台湾各紙によると、陳水扁総統は同日中にも新行政院長に謝長廷・高雄市長を任命する意向を明らかにする見通し。

 游氏は総統府秘書長に転任する見込み。新内閣は2月1日に発足する。

 昨年12月の立法委員(国会議員)選挙で過半数を取れず敗北した与党、民主進歩党側には新内閣により人心を一新し、今年12月の県市長選挙での勝利につなげる狙いがありそうだ。

 各紙によると、新内閣では葉国興・行政院秘書長(官房長官)や陳定南・法務部長(法相)が閣外に去るが、陳唐山・外交部長(外相)、李傑・国防部長(国防相)ら主要閣僚は留任の見込み。

 留任する閣僚の一部は県市長選挙に出馬する予定で、候補者調整が済んだ段階でさらに改造が行われるという。

 游氏率いる内閣は2002年2月に発足。一部閣僚の交代を経て、昨年3月の総統選での陳氏再選を受け閣僚全員が辞表を提出したが、游氏は留任していた。(共同)

李登輝氏、司馬遼太郎氏の墓前であいさつ 日本訪問終える

2005/01/02 The Sankei Shimbun

 台湾の李登輝前総統(81)は2日午後、7日間の日本訪問を終え、関西空港から台北に向け出発した。

 李氏は「家族旅行」の締めくくりとして同日午前訪問した西本願寺大谷本廟(京都市東山区)にある小説家、故司馬遼太郎氏の墓前で、報道陣に「わたしの日本訪問はこれで終わります」などと日本語であいさつ文を読み上げ、日本政府の対応などに感謝の意を表した。

 さらに今回の旅行が「日台両国の静かで強いきずなになれば成功だと思う」と話し、「日本がますます国際的に、アジアで最も発展するような国になるよう祈っております」と締めくくった。

 今回の来日をめぐっては、中国政府が「言動を注意深く見守る」とけん制。李氏は日本側が入国査証(ビザ)発給の際に出した「記者会見しない」などの条件を守り、台湾メディアからは「沈黙の旅」とやゆされた。

 李氏の来日は治療目的で大阪、岡山を訪問した2001年4月以来3年8カ月ぶり。12月27日に名古屋から入国し、金沢、京都、滋賀を回り、兼六園や母校の京大などを訪れ、京大時代の恩師とも再会した。

(中略) ◇

 李登輝氏が2日読み上げたあいさつの要旨は次の通り。

 一、帰国するに当たりあらためて日本政府、および国民の皆さまが旅行中に与えてくれました親切なおもてなし、ご配慮に心から感謝の意を表します。

 一、短期間でしたが、日本の文化、国民の生活を実地に見ることができたこと、わたしにとってかなりの収穫が得られました。進歩の中に伝統が失われずに維持されているのを強く感じました。帰国してからゆっくり吟味し、勉強するつもりです。

 一、日台両国の静かな強いきずなになれたら、このたびの旅行は成功だと思います。日本がますます国際的に、またアジアでも最も発展するよう祈っています。さようなら。

              ◇

 台湾の李登輝前総統(81)は2日、中国の圧力に屈せず来日を認めた日本政府の「誠意」に応え、一切の政治活動を控えたまま1週間の来日日程を終えた。離日前「日台両国の静かな強いきずなになれば、今回の旅行は成功」と強調し、日台関係強化への決意を新たにした李氏。ただ、日本政府の対中配慮から、李氏が望む将来の「東京訪問のハードルは高い」(関係者)。今後も度々来日し「日台関係の春」(側近)を招き寄せることができるのか。李氏の「旅」はまだ始まったばかりといえそうだ。

 ▽台湾人意識

 「進歩の中で伝統を失っていない日本社会に強く何かを感じている。帰ってから、じっくり勉強する」「日本の秩序は優れており、台湾が新たな国家をつくる際に(モデルとして)大きな助けになる」。李氏は京都でのメディアとの短い懇談でこう語り、日本社会を高く評価し、「台湾国づくり」のモデルとする考えを示した。

 「単なるセンチメンタルジャーニーではなく、思索の旅だった」。敬愛する哲学者の西田幾多郎や鈴木大拙の出身地、石川県や母校の京大がある京都を訪ねた李氏の旅行を側近はこう表現した。「22歳まで日本人だった」という李氏は自らの思想形成の原点を訪ね、持論である「台湾のアイデンティティー確立」の重要さをあらためて認識したという。

 ある日本側関係者は「李氏は治療目的に限定された2001年の来日に比べ自由な旅で、青春時代を過ごした日本の良さも再認識した」とみる。

 ▽元首並みの警護

 台北から名古屋への機中、中国の王毅駐日大使の李氏に対する「戦争メーカー」発言について「中国は強国だから大きなことを言ってもいいと考えているが日本人や国際社会はあざ笑っている」と痛烈に批判したが、到着後は政治的発言を控え、台湾紙に「沈黙の旅」と酷評された。

 訪問先の各地で、台湾出身の在日華僑や留学生のほか、李氏を支持する日本人グループの歓迎を受けた李氏だが、日本政府の出した来日の条件(1)記者会見しない(2)講演しない(3)政治家と会わない−の「3つのノー」を固く守り続けた。

 日本側もまた、李氏をまるで「国家元首」のように手厚く警護、突撃取材を試みる台湾や日本のメディアをシャットアウトした。「滞在中の政治的活動を許さない」とくぎを刺した中国側が、派手な報道に反発し「2度と来日できなくなる事態を避ける」(関係者)ためだった。

 中国側は「滞在中の言動を注視する」と強くけん制していたが、李氏の慎重な対応から、対日報復措置はとれず、訪日批判も収束せざるを得ないだろう。

 ▽再来日に意欲

 小泉純一郎首相の靖国神社参拝への中国当局の非難などで"嫌中感情"を強める世論を背景に李氏を「対中けん制カード」にしようとの日本側の思惑もちらつく。国際社会での存在感向上を目指しながら、切り札に欠ける台湾にとっても、知名度が高い李氏の訪日を恒常化させ、日台関係強化につなげたいとの思いがある。

 李氏もそうした政治的効果を計算に入れているようで、離日を前に「日本がアジアで最も発展する国になるよう祈っている」とエールを送るとともに「近いうちに再訪日か」との記者団の質問に日本語で「そうね。できたら」と答え、次回の来日に意欲を示した。(共同)

「会えてよかった」李登輝氏、京都で恩師と61年ぶり再会

2004/12/31 The Sankei Shimbun

 来日中の台湾の李登輝前総統(81)は31日京都入りし、母校京大の恩師と再会した。

 日本の台湾統治時代、京大農学部に留学していた李氏は、当時助教授だった柏祐賢・京大名誉教授(97)と61年ぶりに再会。李氏は柏氏が「もういっぺん会えるとは思わなかった」と言葉をかけるとほほ笑んだ。会談後に「(京大時代の先生で)生きているのは柏先生だけ。会えてよかった」と話した。

 柏氏の家族によると、2人は李氏の学生時代のことや、同行している家族を紹介するなどして約30分間、談笑した。

 李氏はこの日朝、初めて新幹線に乗車。車窓から降雪のためすっかり雪化粧した風景を楽しんでいた。名古屋から京都に到着後、かつて通った京大農学部のキャンパスを見学。「みんな変わった」と感想を述べた。当初、京大本部にも訪れたいとしていたが、警備上の問題で断念した。

 その後、雪が降り積もる銀閣寺を訪問。2005年の抱負について「台湾のアイデンティティーを強化しなければならない。台湾の変化の時期ではないか」と話した。

 「学生の時も大きな男だと思っていたが、こんなに立派になって…」。雪の京都市で31日、台湾の李登輝前総統(81)と再会した恩師、柏祐賢・京大名誉教授(97)は、台湾で頂点に登り詰めた教え子をまぶしそうに見詰めた。

 京都入りした李氏は銀閣寺などを訪れた後、曽文恵夫人(78)らと、京都大時代に中国経済を教えられた柏氏の自宅を訪問。居間のソファに並んで座り、61年ぶりの再会を喜び合った。

 小柄な柏氏をいたわるように李氏が体を寄せ約30分間、笑顔で思い出などを語り続けた。

 柏氏は著作集を、李氏は陶器などを贈り、李氏は柏教授の孫が差し出した色紙には「誠実自然」とサインした。

 両家族で記念写真を撮った後、柏氏は「100年たっても師弟は師弟。いまだに先生と言ってくれるのはありがたい」と話した。(共同)

台湾の世界最高層ビル完工 101階建て、508m

2004/12/31 The Sankei Shimbun

 台湾の台北市にある世界最高層オフィスビル「TAIPEI 101」(101階建て、508メートル)が完工し31日、陳水扁総統や馬英九・台北市長らが出席して記念式典が開かれた。

 1998年1月の着工から約7年を要した。ロビーやスポーツジムが入る低層階は03年から使用されており、9−84階の事務所用スペースの使用もこのほど当局に認められた。日本企業を含む各テナントが今後、内装工事を始める。

 ビルの運営会社「台北金融大楼」によると、事務所用スペースの約4割の入居が決定。世界最速エレベーターが結ぶ89階の展望フロアの正式オープンは3月の予定だ。(共同)

厳しい取材規制、李登輝氏“沈黙”の日本行脚

2004/12/31 読売新聞 Yomiuri On-LIne
 

 27日から訪日中の李登輝・台湾前総統には、約50人の台湾メディアが“同行”。ほぼ同数の邦人記者、さらには数十人の警護が従い、移動はまるで大名行列だ。

 だが、記者たちの問いかけに李氏が立ち止まって応じることはほとんどない。訪問先の名古屋城や兼六園(金沢市)では、李氏の肉声を伝えようと近づく女性リポーターやカメラマンが警護に突き返され、もみ合いになる光景が幾度となく繰り広げられている。こうした厳しい取材規制に台湾紙記者は、「2001年の前回の訪日ではこれほど厳しくなかった」と不満を口にする。

 報道機関に取材自粛を要望した日本政府と同様に、台湾当局も報道対策に動いている。日台関係筋によると、台湾側の窓口機関である台北駐日経済文化代表処から、李氏側に報道機関に対し取材自粛を求めるよう要請があったという。

 李氏の訪日が許されたことで事実上の目標を果たした台湾にとっては、問題をこじらせない方が得策。そして、「台湾独立派の総代表」と見なす李氏の訪日に怒りを隠さない中国政府。ビザを発給したものの日中関係のこれ以上の悪化は避けたい日本――三者の思惑を背景に“李登輝台風”は2日まで静かに日本を回る。(国際部・槇野 健)

台湾高裁、総統選の無効求めた連戦氏の訴え棄却

2004/12/30 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【香港=関泰晴】台湾の中央通信によると、今年3月の台湾総統選挙で民進党の陳水扁総統に小差で敗れた野党の連戦・国民党主席などが中央選挙委員会を相手に「選挙無効」を求めた裁判で、台湾高等法院(高裁)は30日、選挙委に落ち度は無く、選挙の有効性は覆らないなどとして訴えを棄却した。

 連氏側は「陳総統銃撃事件の発生時に選挙委は投票延期を決定するべきだった」などと主張。高等法院は「選挙委の判断に違法性は認められない」と受け付けなかった。

台湾の李登輝前総統来日

2004/12/27 中国新聞ニュース
 台湾の李登輝前総統(81)は家族との観光旅行のため二十七日夜、名古屋空港に到着した。来年一月二日までの滞在中、名古屋や金沢のほか、学生時代を過ごした京都を訪問し、恩師などゆかりのある人と会う。李氏の来日は、治療目的で大阪、岡山を訪問した二○○ 一年四月以来、三年八カ月ぶり。

 名古屋空港では在日台湾同郷会などの呼び掛けで、在日華僑や留学生など多数が歓迎。

 中国政府は「台湾独立派」の李氏訪日に強く反発し、日本で政治活動を行うことを警戒しており、李氏の日本での言動を注視しながら、訪問を受け入れた日本に報復措置を取るかどうか検討するとみられる。

 李氏は京都帝国大(現京大)農学部に学び、学徒動員で陸軍に入隊後、名古屋で終戦を迎えた。名古屋訪問は戦後初めてで、京都は三十数年ぶり。京都では京大時代の恩師と再会予定。新幹線にも初めて乗車する。曽文恵夫人(78)、孫娘(23)のほか主治医、警護員が同行している。

 小泉純一郎首相の靖国神社参拝などにより日中関係がぎくしゃくする中、李氏が観光目的に逸脱する行動を取り、関係がさらに悪化するのを避けたい日本政府は、自民党議員に李氏との接触自粛を求め、報道各社にも取材自粛を要求している。

李登輝前総統、27日に来日 中国は反発、言動を注視

2004/12/26 The Sankei Shimbun
 台湾の李登輝前総統(81)は27日夜、家族との観光旅行のため名古屋空港から日本に入国する。李氏の来日は心臓病治療を目的に大阪と岡山を訪れた2001年4月以来、3年8カ月ぶり。

 中国は台湾独立派の李氏訪日に強く反発、李氏の政治活動を許さないよう日本に求めた。中国は滞在中の李氏の言動を注視しながら、対日報復措置をとるか検討するとみられる。

 李氏は名古屋、金沢、和倉温泉(石川県)、京都、琵琶湖(滋賀県)を観光し、1月2日に関西国際空港から台湾に戻る予定。曽文恵夫人(78)、孫娘(23)のほか主治医、警護員が同行する。

 李氏は京都帝大(現京大)農学部で農業経済学を学び学徒動員で陸軍に入隊、名古屋で終戦を迎えた。名古屋訪問は終戦時以来約59年ぶり。京都は1960年代後半に世界銀行の農業関係の会議に出席して以来で、京大時代の恩師と面会する予定だ。滞在中、初めて新幹線にも乗る。

 中国は、陳水扁総統の民主進歩党と与党連合を組む台湾団結連盟の指導者である李氏を「独立勢力の代表的人物」とみている。日本政府は21日、李氏に短期滞在の一次査証(15日間有効)を発給したが、反発した中国側は取り消しを要求。その後も「滞在中の政治的活動を許さない」(武大偉外務次官)とくぎを刺しており、京大に対して李氏を招かないよう圧力をかけているとの台湾紙の報道もある。

 日本政府は自民党議員に李氏との接触自粛を要求、報道各社にも取材自粛を求めている。(共同)

≪李登輝氏の略歴≫

 李 登輝氏(り・とうき)前台湾総統。政党台湾団結連盟の指導者。1923年1月15日、台北県生まれ。日本統治時代に京都帝大(現京大)で学び、終戦で台湾に戻り49年台湾大卒。68年米コーネル大で農業経済学博士を取得。71年に国民党に入党した。台北市長、台湾省政府主席などを歴任後、84年副総統。88年1月に蒋経国総統死去に伴い総統昇格。93年8月党主席に再選。96年3月、初の総統直接選で圧勝。2000年3月の総統選で国民党候補が大敗した責任を取り、党主席辞任、5月に総統を退任した。01年4月来日。(共同)

 <中台関係> 1949年10月、中国共産党により中華人民共和国が成立し、国民党政権は台湾に敗走。中国は「一つの中国」の原則を堅持、台湾統一を今世紀の3大任務の一つに掲げる。しかし台湾の民主化を推進した李登輝前総統は中台の「二国論」を提起。陳水扁総統も2002年、台湾と中国は「一辺一国(それぞれ一つの国)」と主張し、新憲法制定構想など台湾化路線を推進。中国は李前総統や陳総統を「独立勢力」と非難しており、中台の政治関係は悪化している。(共同)

民営化後の名称に「台湾」 台湾交通部が所管の機関

2004/12/22 The Sankei Shimbun
 22日付の台湾紙、聯合報によると、台湾の交通部(交通省)が所管し、公共工事の設計・企画を行う財団法人「中華顧問工程局」はこのほど開いた理事会で、民営化後の名称を「台湾工程公司」にする方針を決めた。

 陳水扁総統が提起した公営企業名の「台湾」への変更政策に沿った措置とみられる。理事会では、民営化を待たずに現行名称を「台湾顧問工程局」に改める案も出されたが否決された。

 行政院(内閣)は2カ月以内に具体的な公営企業名の変更方法を提起する予定で、中華電信や中華郵政などが検討対象になるという。

 与党連合は11日の立法委員(国会議員)選挙で、公営企業名変更など「台湾化」路線を強調したが敗北。游錫●・行政院長(首相)は選挙後「台湾の主体性を強調するため、公営企業名の変更政策を継続するが、民間企業については強制しない」と述べている。(共同)●=方を横に2つ並べ、下に土

李登輝氏のビザ発給取り消し要求 王毅中国大使

2004/12/21 The Sankei Shimbun
 王毅駐日中国大使は21日午後、都内で講演し、台湾の李登輝前総統への入国査証(ビザ)発給に関して「(李氏は)台湾独立勢力の代表的な人物。公職から退いたとはいえ分裂活動を進める急先鋒(せんぽう)だ。考え直していただきたい」と述べ、発給取り消しを求める考えを示した。

 王大使は、李氏来日について「トラブルメーカーが戦争メーカーになるかもしれない」との表現で、強くけん制した。(共同)

李登輝前総統にビザ発給

2004/12/21 中国新聞ニュース
 政府は二十一日午前、訪日を希望していた台湾の李登輝前総統に対して入国査証(ビザ)を発給した。日本の対台湾交流機関、交流協会台北事務所が発給した。ビザは短期滞在の一次査証で、滞在可能日数は十五日間。

 側近によると、李氏は家族や主治医らとともに二十七日に名古屋空港から入国。名古屋、金沢、母校の京大がある京都を訪れ、来年一月二日に帰国する予定。同氏の来日は心臓病治療を目的に大阪と岡山を訪れた二○○一年四月以来、三年八カ月ぶり。

 中国政府は日本に対してビザ発給の方針撤回を申し入れていた。実際にビザが発給されたことを受けて、さらに反発を強めそうだ。

 これに対し、小泉純一郎首相は二十一日昼、記者団に「一市民として日本を旅行したいということだから、断る理由がない」と強調した。

 李氏が前回来日した際、中国側は直後に予定していた李鵬・全国人民代表大会常務委員長(国会議長)の訪日を延期するなどの「対抗措置」を取った。今回も中国の程永華駐日公使が二十日、記者団との懇談で「日中関係にマイナスの影響が表れるのは間違いない」と強調し、何らかの報復措置を取ることを強く示唆している。

李登輝氏訪日で報復措置も 中国・駐日公使が示唆

2004/12/20 The Sankei Shimbun
 中国の程永華駐日公使は20日、記者団と懇談し、日本政府が李登輝・前台湾総統に査証(ビザ)を発給する方針であることについて「日中関係にマイナスの影響が表れるのは間違いない」と述べ、方針撤回をあらためて求めるとともに、日本政府の今後の対応によっては何らかの報復措置を取ることを強く示唆した。

 程公使は前総統が2001年4月に訪日した際、中国が李鵬・全国人民代表大会常務委員長(国会議長)=当時=の訪日を延期し「日中関係に大きな損害となった」と指摘。「戦後60年を迎える来年は、両国関係の未来を展望する重要で敏感な年だ」とし、訪日が実現した場合「新たな火種が加わる」と述べた。

 黄星原参事官も前総統訪日は「中国人の感情を害する」とし、日本政府に慎重な対応を求めた。

 日本政府が16日、前総統への査証発給方針を明らかにして以降、中国は王毅駐日大使が「(前総統は)中国を分裂する方向に狂奔している代表人物」などと指摘し、反発している。(共同)

時速60キロ、台北のビルに世界最速エレベーター

2004/12/16 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【台北=石井利尚】東芝エレベータ(本社・東京都品川区)は16日、台北市内にほぼ完成した世界一の超高層ビル「台北金融ビル(通称タイペイ101)」(高さ508メートル、地上101階)に、世界最高速のエレベーターを設置したと発表した。同日、ギネスブックに世界最速と認定されたという。

 24人乗り、時速60・6キロで、高さ382メートルにある89階まで39秒で到達する。同社によると、これまでの世界最速は、横浜のランドマークタワー(高さ296メートル)に1993年に設置された三菱電機製エレベーターの時速45キロだった。

 「タイペイ101」は、マレーシアのペトロナス・ツインタワー(高さ452メートル)を上回る高さで、今月中に完成する。エレベーターは来年1月に営業運転する。耳詰まりを起こさないよう、気圧を調整する装置を搭載した。下りは時速36キロで、48秒で1階に到着する。

李前総統、年内来日へ 政府、ビザ発給方針

2004/12/16 中国新聞ニュース
 政府は十六日、台湾の李登輝前総統(81)に対して年内に入国査証(ビザ)を発給する方針を決めた。細田博之官房長官が記者会見で明らかにした。日台関係筋によると、李氏は家族とともに今月二十七日に名古屋に入り、金沢、京都観光を楽しんだ後、三十一日に帰国の予定。李氏の来日は二○○一年四月以来。

 李氏を「台湾独立の策謀者」とみなす中国の強い反発は必至で、小泉純一郎首相の靖国神社参拝をきっかけに冷却化している日中関係はさらに大きく揺らぐことになりそうだ。

 細田氏は会見で「観光目的の家族旅行で、何ら政治的活動を行わないと理解し、政府としてビザを発給する方針だ」と表明。日中関係への影響について「大きな影響を与えるとは考えていない。台湾に対する立場に何の変更もなく、独立を支持しないことを明確にしておきたい」と強調した。

 外務省の藪中三十二アジア大洋州局長が十五日夕、中国の程永華駐日公使に政府方針を説明。程公使は「本国に伝える」と答えたという。外務省首脳は「(公使の反応が)いいはずがない」と述べており、中国側は不快感を示したもようだ。

 李氏は九月にも観光目的で来日したいとの意向を日本側に打診したが、政府は「十二月十一日の台湾立法委員(国会議員)選挙に影響する」として申請を思いとどまるよう説得。今回は「選挙も一段落ついて、ますます『私人』になった」(外務省幹部)として拒否の理由がないと判断した。

 李氏は前回来日時に五日間滞在したが、この時は心臓病治療が目的で「治療目的に限り政治活動は行わない」ことがビザ発給の条件だった。李氏はその後も何度か観光目的などで来日を希望したが、日中関係の悪化を懸念する日本政府から申請を見送るよう要請され、受け入れていた。

中国、ビザ発給方針の撤回要求 李登輝氏訪日に激しく反発

2004/12/16 The Sankei Shimbun
 中国外務省の劉建超副報道局長は16日の定例会見で、日本政府が台湾の李登輝前総統に入国査証(ビザ)を発給する方針を決めたことについて「中国の平和的統一に対する挑発だ」と激しく批判、中国政府が日本側にビザ発給方針を直ちに撤回するよう厳重な申し入れをしたことを明らかにした。

 2001年4月に李氏が訪日した際、中国は既に予定していた李鵬・全国人民代表大会常務委員長(国会議長)=当時=の訪日を延期。日中首脳の相互訪問が3年以上途絶えている中、李氏の再訪日が実現すると、中国が何らかの報復処置を取る可能性は極めて高い。

 劉副報道局長は李氏について「台湾独立勢力の頭目で、独立の外的条件をつくるという強い政治目的を持っているのは明白だ」と強調。ビザ発給は「独立派を支持し、(行動を)黙認する行為」として、日中関係に悪影響を及ぼさないために「直ちに決定を取り消すよう求める」と述べた。

 中国は台湾問題を小泉純一郎首相の靖国神社参拝以上に「中日関係における重大で敏感な問題」(中国外務省)と位置付けている。11月下旬に小泉首相と会談した胡錦涛国家主席と温家宝首相がいずれも「台湾独立反対」を強く主張した直後だけに、中国としてはメンツをつぶされた形だ。(共同)

野党連合が過半数、勝利宣言 台湾立法委選挙

2004/12/11 The Sankei Shimbun
 台湾立法委員(国会議員、定数225)選挙は11日投開票され、国民、親民両党などの野党連合が現有111議席から3議席増の114議席を獲得、過半数を制し、国民党の連戦主席は「中華民国の勝利」と勝利宣言した。民主進歩党(民進党)などの与党連合は現有92から101に議席数を伸ばしたが、目標の過半数には及ばず、陳水扁政権にとって大きな打撃となった。

 「独立化路線は中台関係を緊張させる」と陳氏への批判を強めた野党連合の勝利は、有権者の安定重視の表れといえ、2008年の新憲法施行など陳氏の進める政治体制の「台湾化」は見直しを迫られそうだ。

 陳氏が総統に就任した2000年以来の少数与党状態がさらに続くことになり、同氏は11日夜「責任を負う。(敗因を)深く検討する」と敗北を認め、民進党の張俊雄秘書長も敗北の責任を取って辞任した。

 陳氏を「独立派」とみて警戒する中国は、野党側が過半数を占めたことにひとまず安堵(あんど)しているとみられ、今後も米国などの圧力を利用し陳氏の「独立路線」へのけん制を強めると思われる。

 中央選挙委員会によると、政党別議席数は与党側が民進党89(改選前80)、李登輝・前総統の台湾団結連盟(台連)が12(同)。野党側は国民党79(同66)、宋楚瑜主席の親民党34(同45)、新党1(同0)。無所属・諸派は10(同14)。

 政党別得票率は、民進党35.7%、国民党32.8%、親民党13.9%、台湾団結連盟7.8%。有権者は約1650万人で、投票率は約59%と前回01年を7ポイント下回った。(共同)

 <台湾立法委員選挙> 台湾の国会議員に当たる立法委員(定数225)の選挙。内訳は選挙区168、先住民8と、華僑代表8を含む比例代表49。現有勢力のうち与党連合は、陳水扁総統が主席で党綱領に「台湾独立」を掲げる民主進歩党(民進党)80、李登輝前総統が率いる独立派の台湾団結連盟12の計92。野党連合は、連戦主席の国民党66、同党を離れた宋楚瑜氏が主席の親民党45の計111。2007年末予定の立法委選から定数を113にほぼ半減、任期を現在の3年から4年に延長する。(共同)

 <台湾の新憲> 国民党が中国大陸に拠点を置いていた1946年制定の「中華民国憲法」に代わる新憲法。中国大陸を領土に含む憲法条文のうち3分の2以上を実情に合わせて大幅改正し、内政改革に主眼を置く。陳水扁総統は中国に配慮し「国家主権や統一か独立かには触れない」と言明。立法院(国会)で可決した草案を2006年末に住民投票を通じ最終決定、陳総統が退任する08年5月20日に施行する方針。(共同)

台湾立法院選11日投開票、終盤まで与野党互角の激戦

2004/12/09 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【台北=石井利尚】台湾の立法委員(国会議員に相当、定数225)選挙は11日に投開票される。

 焦点は、3月に再選された陳水扁総統(53)率いる民進党など独立志向が強い与党連合(現有議席92)が過半数を制するかどうかだ。少数与党の立場を脱し、台湾自立化に向けた立法基盤を固めたい与党連合と、中台関係の安定を訴える野党連合(同111)は、終盤まで互角の激戦を続けている。

 選挙は、中選挙区と比例代表の併用で行われる。最新の世論調査では、2001年の前回選挙で第一党に躍り出た民進党(同80)が大幅に議席数を伸ばすと予想されている。李登輝前総統(81)が後ろ盾となり、民進党と連携する独立派政党「台湾団結連盟」(同12)も、議席増が見込まれている。ただ、両党で過半数に届くかは微妙。与党連合は、与党寄りの無所属委員を取り込み、「実質過半数」を実現することも視野に入れている。

 一方、野党連合は、国民党(同66)が議席を上積み、親民党(同45)は苦戦との見方が強い。両党の予測議席総数は、与党連合とほぼ並んでいる。大勢判明は11日夜の見通し。

国民党の連氏が上告 総統選の当選無効訴訟

2004/11/29 The Sankei Shimbun
 3月の台湾総統選で敗れた最大野党、国民党の連戦主席は29日、陳水扁総統の当選無効を求める訴えを棄却した台湾高等法院(高裁)の判決を不服として最高法院(最高裁)に上告した。

 連氏の弁護団は、総統選前日に起きた陳氏銃撃事件が「同情票を集めるための自作自演」だったことを証明するために提出した証拠を合理的な説明がなく排除したのは違法、などと高等法院の判決を批判した。

 連氏はこれまで、台湾総統選について「投開票作業に不正があった」などと訴えていた。(共同)

台湾野党、「日本文化擁護」と批判 李前総統の和装写真

2004/11/17 The Sankei Shimbun
 中央通信によると、親日派の李登輝前台湾総統が日本の人気格闘漫画の登場人物に扮装(ふんそう)した和服姿の写真を、自ら主宰する学校のウェブサイトに近く載せようとしたところ、野党の候補者から16日、「日本文化擁護だ」と批判の声が上がった。

 批判したのは、中国との統一に前向きな台湾野党、新党の立法委員(国会議員)選挙(12月投開票)候補者。

 李氏の政策集団「群策会」によると、李氏を支持する若者グループが李氏の「熱血校長」ぶりについて、台湾でも人気がある日本の格闘漫画の登場人物に似ているとして、宣伝用に紋付きはかま姿の李氏の写真をウェブサイトに掲載することを提案、李氏も承諾したという。

 これまで「日本の植民地主義を合理化している」などと李氏を批判してきた最大野党、国民党も今後、李氏の“コスプレ写真”に攻撃を仕掛ける可能性がありそうだ。(共同)

バヌアツが台湾との外交関係樹立を承認

2004/11/15 The Sankei Shimbun

 ニュージーランド放送などによると、南太平洋の島国バヌアツの首相報道官は15日、内閣が台湾との外交関係樹立を承認したと明らかにした。

 バヌアツはこれまで中国と国交を持ち「一つの中国」の原則を支持してきたが、報道官は「バヌアツは台湾、中国と関係を維持する最初の国になりたい」と表明した。

 中国は国交のある国には「一つの中国」の原則を求めており、バヌアツと台湾との外交関係が確認されれば、バヌアツと断交するとみられる。

 バヌアツのボール首相は今月3日、台湾で外交関係樹立文書に調印した。しかし、事前に内閣の承認を得ていなかったためほかの閣僚らが反発、説得工作を続けていた。(共同)

与党勝利なら「台湾」名義で国連復帰へ 陳総統

2004/11/15 The Sankei Shimbun
 15日付台湾各紙によると、台湾の陳水扁総統は14日、12月の立法委員(国会議員)選挙で、陳総統の民主進歩党を中心とする与党連合が過半数を獲得し勝利した場合、「中華民国」でなく「台湾」名義で国連復帰を目指すとの考えを示した。

 中国当局が「台湾独立の動き」とみて反発しそうだ。

 陳氏は、これまで中華民国名義で国連の中国代表の地位を中国と争ったが成功しなかったとした上で、台湾は主権国家であり、台湾名義で国連復帰を申請すべきだと主張した。

 陳氏は、2008年までの制定を目指す新憲法では「国家主権(の問題)や統一か独立かの問題には触れない」とする一方、中華民国の略称は台湾だなどと述べている。(共同)

李登輝氏、連戦氏を批判 「ケリー氏見習え」と

2004/11/07 The Sankei Shimbun
 【台北=河崎真澄】産経新聞の読者が前総統の李登輝氏らを台湾に訪ねる「第3回産経李登輝学校」(産経新聞主催)が開かれた。その中で李氏は5日、台北郊外のシンクタンク「群策会」で講義を行い、「(接戦だったケリー民主党候補が敗北宣言をした)米大統領選挙に比べると台湾は情けない」と話し、3月の総統選に小差で敗れた連戦・国民党主席が現在も敗北を認めず、訴訟や抗議活動を繰り返していることを批判。“良き敗者”のケリー氏を見習うよう連氏に求めた。

 連氏は、陳水扁総統に敗れた総統選を不服として高等法院(高裁)に「当選無効」を訴えたが4日に敗訴。しかし、今度は「判決は陳政権の政治力で曲げられた」などとして上告を決めた。連氏は、さらに中央選挙委員会を相手取った「選挙無効」の訴訟も起こしている。民主主義の基本である選挙や司法を軽視しかねない動きとして李氏は警戒感を示している。

 また李氏は、「(台湾の主権があいまいな現状では)中国の台湾への侵略が『国際法』の規制を受けない恐れがある」と述べ、「台湾新憲法」に基づく主権確立が、台湾防衛上も急務との認識を示した。

 さらに、「(『中華人民共和国』の加盟に反発して)1971年に蒋介石が国連脱退を決めたことが台湾の現在の問題の根元で、国際社会から『主権』を認められていない台湾が現状のまま国連加盟を果たすことは難しい」として「新憲法」が国連加盟のカギにもなると話した。

 日本各地から集まった産経新聞の読者33人は3日に台北入り。司馬遼太郎氏の著書「台湾紀行」に“老台北”として登場する実業家の蔡焜燦氏や、総統府国策顧問の黄昭堂氏、前駐日代表で亜東関係協会会長の羅福全氏、さらに台湾紙「自由時報」会長の呉阿明氏などから話を聞いた。

 また一行は4日に台北郊外の烏来郷を訪れ、太平洋戦争で戦没した台湾先住民を祭る「高砂義勇兵英霊慰霊碑」で慰霊祭を行ったほか、先住民の年配者を囲む座談会を開いて、李氏が「台湾アイデンティティー(帰属意識)の原点」とする先住民の意識や歴史などについて話を聞いた。一行は6日に帰国の途についた。

台湾は「主権独立国家」 陳総統、米国務長官に反発

2004/10/27 The Sankei Shimbun
 台湾の陳水扁総統は26日、台北市内の総統府で韓国の金泳三元大統領と会談した際、「台湾が中国に隷属していない主権独立国家だということはまぎれもない事実だ」と強調した。パウエル米国務長官が前日、香港のテレビとのインタビューで「(台湾は)国家としての主権を享受していない」と表明したことに反発した発言とみられる。

 また、台湾の陳唐山外交部長(外相)は、国務長官が25日のCNNテレビとのインタビューで中国と台湾の目指すべき方向として「再統一」との表現を使ったことなどに関して「(台湾に対する)米国のこれまでで最も厳しい言葉だ」と述べた。26日の立法院(国会)での発言として中央通信が伝えた。

 同通信によると、外交部の高英茂政務次長は同日、国務長官発言について外交部が米側に遺憾の意を伝えたことを明らかにした。(共同)

中国、上海万博への台湾参加を容認

2004/10/15 The Sankei Shimbun
 15日付の台湾紙、経済日報によると、中国共産党上海市委員会の陳良宇書記は14日、同市内で台湾の有力財界メンバーで構成する訪中団と会談した際、2010年の上海万博で台湾のパビリオンを設けることに同意するとともに、台湾企業の参加を呼び掛けた。

 台湾企業を取り込み、経済面での中台交流をより強化することで「独立志向」の強い陳水扁政権をけん制する狙いがありそうだ。

 同紙によると、訪中団側は陳書記の台湾訪問を招請。注目されている中台間の「三通」(通商、通航、通信の直接開放)実現やチャーター便運航をめぐる話し合いはなかったという。(共同)

NZ、台湾閣僚の入国拒否 中国とのFTA交渉に配慮

2004/09/01 The Sankei Shimbun
 ニュージーランド訪問を予定していた台湾の林義夫・行政院政務委員(無任所閣僚)に対し、ニュージーランド政府が入国査証の発行を拒否していたことが1日、明らかになった。

 ウェリントンからの報道によると、ニュージーランドのゴフ外相は同日、地元ラジオに対し「ニュージーランドは中国と自由貿易協定(FTA)に向けて交渉過程にある」などと説明、「この時期に台湾政府の代表を受け入れることはわれわれの利益にならない」と述べた。

 林政務委員はウェリントンで来週開催されることになっていた経済関係の民間会合に台湾代表として出席する予定だった。ニュージーランド通信によると会合の主催者は訪問拒否を受け、会合を延期した。(共同)

台湾総統銃撃「暗殺狙いではない」 米専門家が調査報告

2004/08/29 ashi.com

 今年3月の台湾総統選挙投票前日に発生した陳水扁(チェン・ショイピエン)総統らへの銃撃事件を調べていた米国の専門家が28日、調査報告書をまとめた。改造銃や手製の銃弾が使われたことを確認し、その威力が弱かったことから「政治的な暗殺を狙ったものではない」と結論づけた。

 台湾出身で米国の警察で長く科学捜査に携わった李昌●氏がまとめた。政治的に中立の立場の李氏が台湾当局の委嘱を受けて現場の状況や物証などを分析していた。陳総統陣営は「政治的な暗殺狙い」と主張していたが、ひとまず否定された形だ。

 台湾中央通信によれば、報告書は改造銃の形状も推定しており、台湾の警察などはこうした情報を基に銃密造工場などの捜査を進める。  ●は金へんに玉

立法院の定数半減など改憲案可決…台湾立法院

2004/08/23 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【台北=若山樹一郎】台湾の立法院(国会に相当)は23日、議席の半減や小選挙区制への移行などを盛り込んだ憲法改正案を可決した。

 陳水扁政権になって初の憲法改正で、国民党が大陸統治時代に定めた規定を改め、台湾の現状に即した内容にするのが目的。改正案は、今後、招集される非常設の国民大会で承認される見通し。

 改正案では、立法委員(国会議員)の任期を2007年の選挙より現行の3年から4年に延長し、定数を225議席から113議席に半減する。また、選出方法も、現在の「中選挙区比例代表制」から「小選挙区比例代表制」に改める。

 一方、少数与党の陳政権が今後、改憲を容易にするため提案していた、立法院抜きの住民投票による改憲の法制化は野党の反対で盛り込まれなかった。かわりに、立法院主導による改憲手続きは温存されるものの、非常設の憲法改正機関である国民大会は廃止され、改憲には住民投票による承認が必要とされることになった。

高砂義勇兵の慰霊碑 資金難で存続危機 台湾

2004/08/06 The Sankei Shimbun
 【台北=河崎真澄】太平洋戦争に「日本兵」として出征した台湾先住民出身の「高砂義勇兵」戦没者を祭る台北郊外の慰霊碑の存続をめぐる問題が難航。慰霊碑に土地を提供した観光会社の倒産に伴い、当初予定の7月末までに移転か現状維持かの結論が得られなかった。関係者は、9月までに結論を出したいとしている。

 慰霊碑の建立委員で先住民タイヤル族の邱克平(民族名マカイ・リムイ)氏によると、関係者は近く、「高砂義勇兵英霊慰霊碑を守る会」を財団法人格で設立する方針。邱氏は「慰霊碑を移転せざるを得ない場合には、広く資金支援を求めたい」という。

 慰霊碑は台北県烏来(ウライ)郷で1992年に建立されたが、土地を提供していた地元観光会社が新型肺炎(SARS)の影響で負債を抱え倒産。土地を更地にして借地権を転売することになり、慰霊碑移転問題が持ち上がっていた。

 産経新聞は台湾の「高砂義勇兵英霊慰霊碑」を守るための義援金を募ります。1口1000円で何口でもお受けします。

 【送り先】郵便振替で00100−2−463465、または銀行振込で「みずほ銀行」東京中央支店普通口座110−5662608「高砂義勇兵英霊慰霊碑を守る会」(タカサゴギユウヘイエイレイイレイヒヲマモルカイ)まで。TEL03−3275−8906。義援金に免税措置は受けられません。

台湾の渇望 少ない日本との防衛交流

2001年09月05日 The Chunichi Shimbun

 「イージス艦より、もっとよい台湾防衛のシステムがある」

 台北で最近、開かれた民間団体主催の講演会で、米バンダービルト大学のジェームズ・アワー教授が語ると、聴衆は身を乗り出した。

 アワー氏は米海軍、海上自衛隊に通じ、レーガン、ブッシュ政権と連続して国防総省の日本部長などを務めた知日派。同氏が「それは強力な日米同盟」と明かすと、聴衆から「なるほど」という声が漏れた。

  ×  ×  ×

 一九九六年、台湾初の総統直接選挙を前に、中国は演習と称して、台湾の基隆、高雄両港沖の公海に弾道ミサイルを撃ち込んだ。その意図はミサイルによる港湾封鎖能力を誇示し、台湾独立派に圧力をかけることだったとされる。

 これに対し、米クリントン政権は空母二隻を台湾海峡に派遣した。台湾ではミサイルに対抗するため、洋上防空能力に優れたイージス艦を求める声が高まった。聴衆を引き付けたアワー氏は、この事態に言及した。

 −クリントン政権は日本の艦船派遣までは求めなかった。だが、ブッシュ現政権下で同じ事態が発生すれば、日本に二隻の護衛艦派遣を求めると思う。台湾の背後に日米同盟があると中国に理解させれば、中国はうかつには動けない。日米同盟の目的は「アジア太平洋地域の安定」にある。台湾の不安定化は、周辺国全体の利益に反する−。

 同氏がそう述べて「小泉政権は派遣にイエスと言うだろう」と予言すると、会場に再び、うなずく声が漏れた。

 台湾はこれまで米国一辺倒で、自衛隊と台湾の安全保障を直接関連づけた議論は少なかった。日米安保は九七年の新ガイドライン(日米防衛協力のための指針)で、日本の周辺事態(周辺有事)まで軍事協力の対象とすることになった。だが、日本政府が「周辺」の定義をあいまいにしていることもあり、台湾の一般市民には日本と台湾のかかわりがピンと来ない。

 また、日本が中国を承認して「ひとつの中国政策」を堅持しているため、日台間では目に見える形の防衛交流も少ない。台湾の民間の安保政策研究者が日本の防衛庁の防衛研究所を訪れることさえ、容易ではない。

 民間シンクタンクの帥化民・元上将は「台湾と米国の軍事交流は質、量ともレベルアップが著しい。日本の防衛庁は保守的すぎる」と注文を付けている。 (「日米安保50年」取材班)

<周辺事態の範囲> 「周辺事態」は日本周辺地域で起き、日本の安全に重要な影響を与える事態。その対象範囲について、1997年の橋本政権時代、梶山官房長官が中台の紛争は周辺事態に入ると言明し、中国が反発した。以後、日本政府は特定地域を想定していないと強調。99年施行の周辺事態法も、地理的範囲を明示していない。

中国の対抗 「台湾周辺論」に警戒感

2001年09月05日 The Chunichi Shimbun

 「一、二、三、ニイハーオ!」

 八月上旬の中国福建省アモイ沖。台湾が支配する大担島に向け、観光船に乗った中国人客が手を振る。距離約二百メートル。台湾側の監視台の兵士も手を振って応じる。

 四十数年前、中台はここで海を挟み、砲撃を交えた。今、台湾海峡の現場には、一見のどかな光景が広がる。

 同じころ、約百キロ南の同省東山島で、中国人民解放軍が大演習を展開していた。陸海空の三軍十万人が参加した渡海・上陸訓練。想定は「台湾」で、米軍の介入も視野に入れた訓練とされた。

  ×  ×  ×

 現在でも、中国は「祖国統一に武力行使も辞さない」と公言する。「平和統一」か「武力解放」か。いずれにせよ、中国は台湾問題の解決には「米国が元凶」(範希周・アモイ大学台湾研究所長)とみる。

 米国は中国を合法政府として承認する一方、台湾への武器売却を認める台湾関係法を持つ。しかもその国防戦略は、中国を将来のライバルとみてアジア傾斜を強めており、中国の基本戦略は「米国のアジアにおける影響力排除に尽きる」(北京駐在の西側武官)。中国の地位は、米国に反比例するというのだ。

 日米安保条約の位置づけも同じ。中国には「米国の影響力拡大の一助になっている」との認識がある。中国は冷戦時代、旧ソ連との対抗上、日米安保を容認したが、今や北方の脅威は崩壊した。逆に、安保体制は日本の周辺有事まで軍事協力の対象に組み込む形で拡大され、台湾が「周辺」に含まれるという中国の警戒感を呼び起こした。

 中国共産党機関紙「人民日報」系の雑誌「環球時報」八月十日号は、自衛隊の防衛重点が九州、沖縄など「南」に移っていると指摘した。

 同誌はその理由に「石油の輸送ルートや、海底資源の争奪戦」「台湾情勢の潜在的な危険、つまり中国の武力行使への対応」を挙げ「米ミサイル防衛への参加など、日本の軍事大国化に、相応の対抗措置をとる必要がある」と強調している。

 中国の一部には「日本は経済の長期低迷で内向きになり、もはや対外拡張に出ることはない」(朱建栄・東洋学園大学教授)との声もある。

 とはいえ、中国の国防費は十三年連続、二けた増。長距離爆撃機やミサイル搭載の駆逐艦、潜水艦の配備を進め、着々と「戦」にも備える。中国は台湾のほか沖縄、自衛隊、在日米軍基地もにらんでいる。 (「日米安保50年」取材班)

<中国の国防費と日米安保認識> 中国の国防費は2001年度当初予算で約1400億元(約2兆1000億円)と、日本の約42%。このほか、別名目で多額の予算があるとされる。日米安保条約については、1972年の日中国交正常化の際、故周恩来首相が故田中角栄首相に対し「われわれは安保条約に不満を持っているが、そのまま続ければよい」と、容認する発言をしていたことが、最近公開された外務省記録で明らかになった。


日台印で中国包囲網を

1999年11月09日 【台北・共同】

 李登輝台湾総統が昨年、インドの核実験後、日本と台湾はインドとともに中国包囲網をつくるべきだとする趣旨の発言を日本の学者にしたと9日、台湾で一斉に報じられ波紋を広げている。総統府は発言自体を否定したが、中国との統一派「新党」は同日、「中国に対する軍事挑発で、両岸関係を緊張させる発言」と批判、総統に釈明を求めている。

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