TOPIC No.1-8 北極振動(ほっきょくしんどう、英語:Arctic Oscillation:AO)

No.
内     容
01. 異常気象をもたらす北極振動の謎 田中 博(地球フロンティア研究システム 国際北極圏研究センター研究員)
02. 北極振動(ほっきょくしんどう、英語:Arctic Oscillation:AO) byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
03. 北極振動(AO)
03. 気象研究ノート「北極振動」目次


異常気象をもたらす北極振動の謎

田中 博(地球フロンティア研究システム 国際北極圏研究センター研究員)

 北極振動 (Arctic Oscillation: AO)とは北極圏とそれを取り巻く中緯度帯の間の気圧場の南北の振動のことで、近年、異常気象をもたらす大気の長周期変動やテレコネクション、地球温暖化の研究において特に注目されています。

 北極振動(AO)は南方振動(SO)の対比で、米国ワシントン大学のトンプソン博士とウォーレス博士により1998年に命名されたものですが、古典的な東西指数 (Zoanl Index)の概念と重なるものがあります。これまで異常気象といえば低緯度のエルニーニョとの関係に研究の重点がおかれていましたが、2001年の寒冬や2002年の暖冬(桜の早期開花)、2003年の寒冬などは、北極振動が関係しているとされており、低緯度のエルニーニョと並んで重要な高緯度の現象とされています。熱帯のエルニーニョが海洋変動で最も卓越する現象として重要視されるように、大気変動で卓越する現象は北極振動であり、その物理的実態や力学的成因を解明することは、異常気象の研究において重要な課題とされています。

 異常気象をもたらす大気現象にブロッキング高気圧がありますが、最近の研究によると、このブロッキング高気圧も北極振動も、共に温帯低気圧などの大規模な大気の乱流現象により励起されると考えられています。日本における北極振動の第一線の研究者が集結し、異常気象をもたらす北極振動やブロッキング高気圧の実態と成因解明に向けて、今、活発な議論が繰り広げられています。

質問なるほドリ:南極振動もあるの?=回答・飯田和樹

2010年04月23日 毎日新聞 東京朝刊

 <NEWS NAVIGATOR> 

 ◆南極振動もあるの?

 ◇北極と同じメカニズム 95年の南米低温招く

 なるほドリ 4月も半ばになって東京に雪が降った原因の一つに北極振動が挙げられたけど、北極があるなら南極振動もあるの?

 記者 あります。北極振動は北半球で起こる大気の流れの一つです。北極圏で寒気の蓄積と放出が繰り返され、北半球の気候に影響を及ぼします。南半球でも同じように南極圏の寒気の蓄積と放出があります。南極周辺の気圧が平年より高く、中緯度帯の気圧が平年より低い場合は、南極地方の高気圧から中緯度の低気圧に向かって寒気が流れ込みやすくなります。

 Q 原理は同じなんだね。南極振動も気候に影響するのかな。

 A 09〜10年にかけての冬は、北極振動の影響でヨーロッパ、ロシア、東アジア北部、米国で30年に1回という異常低温に見舞われ、イギリスなどで記録的な大雪も観測されましたよね。過去のデータを分析すると、南半球でも95年にアルゼンチンなどが南極振動の影響と考えられる低温に見舞われています。南極振動が北半球の気候に目立った影響を及ぼすことはないので、日本ではあまりなじみがないのでしょう。

 Q 違いは北半球と南半球というだけなの?

 A 気圧配置の形がちょっと違います。南極振動の気圧配置はきれいな円形の場合が多いそうです。北極振動の気圧配置はいびつな形になりがちです。なぜ違いが出るのかちょっと考えてみてください。

 Q うーん。どうしてだろう。

 A 世界地図を思い浮かべてください。北半球には陸地が多く、中緯度帯にヒマラヤ山脈など高い山が多いですよね。反対に南半球の中緯度帯は海が多く陸地が少ない。北極振動も南極振動も、偏西風と高低気圧の相互作用により起こると考えられているのですが、北半球は高い山などで偏西風がねじ曲げられることが多いため、気圧配置もきれいな円形にならないんですよ。

 Q へえ、地形に左右されるんだ。でも、詳しいメカニズムはまだ解明されていないんだよね。研究は進んでるの?

 A 北極振動も南極振動もまだ言葉ができてから10年余りですが、気候に大きな影響を与えているので、エルニーニョ現象などと並ぶ気候研究の重要なテーマです。地球温暖化を考える上でも注目されているので、多くの研究者が研究しています。(社会部)


「冬将軍」西に偏り?猛威 北極振動とラニーニャ原因

2011/01/08 中国新聞ニュ−ス

 日本列島は今冬、各地で大雪に見舞われ、山陰などで被害が相次いだ。気象庁は、北極圏が冷気を周期的に放出する「北極振動」と、異常気象の原因となる「ラニーニャ現象」に伴う偏西風の蛇行で強い寒気が流れ込んだとみている。

 ラニーニャと北極振動は、全国で約150人が死亡した2005年12月〜06年2月の「平成18年豪雪」でも発生しているが「登場する役者は同じなのに、今冬の北陸などの雪は今のところ、平成18年豪雪ほどではない」と同庁担当者。今季は気圧配置などから寒気の流入が西に偏っているのも特徴だ。

 向こう1カ月の予報では、北日本の気温は平年並みとみられるが、東日本(関東甲信、北陸、東海)以西は平年より低い確率が60〜80%。日本海側の降雪量も西日本中心に多い可能性が高い。

 北極振動は、北極圏が周期的に寒気を蓄積・放出する。昨年12月中ごろから北極圏の広い範囲が高気圧に覆われ、寒気を日本列島など中緯度帯に放出する状態が続いている。12月30日夜には松江市上空約5千メートルで氷点下40・4度の「スーパー寒気」が西日本を覆った。

 ラニーニャは、太平洋赤道海域東側の南米ペルー沖で海面水温が低くなる現象。西側のインドネシア近海は逆に海面水温が上がり、大気の対流活動が活発化。そこから吹き出す空気が偏西風を日本付近で南に蛇行させ、寒気が南下しやすかったとみられる。

 さらに偏西風の蛇行で12月下旬、シベリア東部に「ブロッキング高気圧」と呼ばれる高気圧が発生、寒気の流れを西に押しやったとみられる。同高気圧は年明けに消滅したが、気象庁は「1月中旬に再び発生し、西日本に低温をもたらすかも」と警告している。

『北極振動』影響 来週も強い寒気

2010年04月10日 東京新聞 夕刊

 花冷え、花曇りが目立つ首都圏。春本番の陽気がなかなか続かない。気象庁によると、これから五月初めにかけても、寒暖の波はあるが平均気温はほぼ全国的に低めの見通し。春の歩みの遅さは、北極の寒気が放出と蓄積を繰り返す「北極振動」の影響だという。 (宇佐見昭彦)

 最近一週間の平均気温は、東京都心で平年を一・七度、横浜で一・三度、千葉で一・六度ほど下回っている。

 北極振動は、北極付近の気圧と、それを取り囲む北半球中緯度帯の気圧がシーソーのように「高−低」「低−高」を繰り返す現象。気圧が北極で低く中緯度で高いと、寒気は北極付近に蓄積し、中緯度に下りてこない。現在は、逆に気圧が北極で高く中緯度で低いため、北極の寒気が中緯度へ放出されやすい。

 気象庁のスーパーコンピューターがはじいた最新の予測では、今後一カ月もこの傾向が続きそう。

 特に来週半ばすぎには季節外れの寒気がやって来る見通しで、農作物は遅霜などに要警戒だという。

 北極振動はこの冬の天候も左右した。昨年十二月から今年一月にかけて寒気放出が強まり、欧州やシベリア、北米などでは異常低温に。日本でも、日本海側で大雪になるなど、一部影響を受けた。

 気象庁気候情報課では「この冬の北極振動は記録的で、三月に入っていったん収まっていた。来週半ばから、今ごろの時期としてはかなり強い寒気が流入するが、この春の北極振動は冬ほどの強さではない」と説明。「五月の気温が高めとの見方は変わっておらず、三〜五月の春全体で見れば、低温になるとは考えていない」としている。

◆青果も値上がり

 この春の寒暖の波は農作物の生育にも影響し、価格を引き上げているようだ。卸売大手の東京青果の担当者によると、最近の低い気温のため作物の生育に遅れが出ており、「市場では、青果が全般的に平年より2割高値で推移し、特にホウレンソウは例年より5割程度高い」と話す。

 都内の大手スーパーでも、青果物は値上がり傾向。担当者は「葉物野菜では特に顕著で、価格は昨年と比べてホウレンソウが約6割増し、キャベツが約2割増しになっている」と話す。

 産地ではこれから冬野菜から春野菜の出荷へと切り替わる時期を迎える。東京青果の担当者は「高値の傾向は今月中旬までは続くとみられる。値が落ち着くのは生育が遅れた野菜が出てくる今月下旬から5月にかけてではないか」とみている。

寒波は「北極振動」が原因 昭和54年以降で最強

2010.03.03 MSN産経新聞

 気象庁の異常気象分析検討会(会長・木本昌秀東大気候システム研究センター教授)は3日、今冬(昨年12月〜今年2月)北陸に大雪をもたらすなどした日本を含む北半球中緯度帯への顕著な寒波について「北極圏など高緯度で気圧が平年より高く、中緯度で低くなったことによる『北極振動』でもたらされた」とする見解をまとめた。

 検討会によると、今冬の北極振動による北半球中緯度帯への寒波南下は昭和54〜55年の冬以降最強で、木本会長は記者会見で「異常気象だった」と指摘した。

 ユーラシア大陸や北米大陸には強い寒気が南下。欧州からロシア、東アジア北部にかけてと米国では異常低温となった地域があり、米国や韓国などでは記録的な大雪も観測された。検討会は、偏西風の蛇行が非常に大きくなったことなどが、大規模な北極振動が発生した要因の可能性があると指摘した。

モンゴルで猛寒波、家畜200万匹が死亡

2010.02.12 MSN産経新聞

 国連児童基金(ユニセフ)報道官は12日、モンゴルが強い寒波による異常低温や豪雪に見舞われ、これまでに家畜200万匹以上が死亡したと語った。モンゴルの牧畜業者ら農業に従事する人は人口の4割程度に達し、今後、同国経済や社会に深刻な打撃となることが懸念される。

 ユニセフは他の国連機関と連携し、食料や燃料、毛布や衣服などの支援を開始した。

 寒波は4月ごろまで続く見通し。モンゴルは2001年にも深刻な寒波被害があったが、今回はそれを上回る被害という。(共同)

【ソロモンの頭巾】長辻象平 “氷河融解時代”の大寒波

2010.02.01 MSN産経新聞

 この冬は寒い。例年にない冷え込みだ。雪もよく降る。

 日本列島以上に、欧州諸国は凍えている。30年ぶりといわれる大寒波の襲来だ。

 米航空宇宙局(NASA)の観測衛星が宇宙から送ってきた画像には、真っ白に凍りついたグレートブリテン島の姿が映っている。英国が北極圏へ漂流したかのような雰囲気である。

 ノルウェーやスウェーデンでは、地方によってマイナス40度に達し、ドイツでも同10度を下回った。凍死者が続出した。米国の首都ワシントンも昨年12月後半に積雪記録を更新した。

 地球温暖化防止に、世界が取り組む中での厳冬だ。

                   ■

 昨年12月中旬からの異常低温の原因は「北極振動」と呼ばれる気象現象であるという。

 冬の北極には、低気圧が居座る。そこに寒気がたまっているのだが、極を取り巻く中緯度地方の気圧が低めだと寒気が周辺に流れ出し、寒波となる。お椀(わん)の底や縁の高さが変化して水がこぼれ出るイメージだ。

 北極の低気圧は年ごとに強弱の変化を繰り返す。その気圧の揺れが北極振動。北極には周囲を取り巻くジェット気流があって、その強さも気圧差の大小と連動するという。

 今冬の北極の気圧は、寒気を周辺に放出しやすい状態になっていて、しかもそれが長引いたため、北半球の各地が記録的な寒さに見舞われた。

 地球温暖化問題は適切にとらえることが難しい。長期傾向で地球の平均気温は上昇していても今冬のような寒さもある。

 さらには、温暖化の科学で主要な役割を果たしてきた「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」への信頼を揺るがす出来事も起きている。

 2007年にまとめられたIPCCの第4次報告書(最新)には「ヒマラヤの氷河は2035年までに消失する可能性が非常に高い」と書かれているのだが、根拠のない誤りであることが明らかになったのだ。IPCCもそれを認めた。10日ほど前のことである。

 環境情報に詳しい横浜国立大学大学院の伊藤公紀教授に尋ねると、報告書の取りまとめでのずさんな実態が目につくということだ。

 査読を経た論文ではない資料が、報告書に使われたのがそもそもの原因らしい。その資料は電話インタビューに基づくものという話や、本来の消失予測時期は「2350年」だったのが勘違いで「2035年」に変わったという話もある。氷河の専門家が指摘したが、無視されたという話も伝わる。

 ヒマラヤの氷河の早期消失を疑問視する記事は、米科学誌「サイエンス」の昨年11月13日号にも載っている。

 温室効果ガスの過剰排出と気候変動の進行は、人類にとっての大きな脅威だ。だが、切迫度を強調するあまり、報告書の誤りがIPCCで見過ごされたのだとしたら本末転倒だ。事実は科学の世界で何より重い。

氷河期?…「北極振動で温暖化が足踏み」(1)

2010.01.15 中央日報/Joins.com

この冬、地球の北半球を厳しい寒波と大雪が襲った。

ソウルは昨年12月下旬から今年1月13日までの平均気温が氷点下5.7度にとどまっている。平年(1971〜2000年の平均)より4度も低い気温が1カ月近く続いたわけだ。1984〜85年の氷点下5.8度以来、25年ぶりの酷寒である。

 米フロリダ州北西部地域は11日朝の気温が氷点下10度まで落ち込み、18年ぶりに過去最低を更新した。中国では大雪と寒波で100万人の被災者が発生し、インドでは寒波で約230人が凍死した。厳しい寒さが続くと、地球温暖化の代わりに氷河期が到来しているという見方まで広がっている。

 氷河期をめぐる議論はドイツ・ライプニッツ海洋科学研究所のモジブ・ラティフ教授が最近、英紙「デイリー・メール」とのインタビューで発言したことに端を発した。同教授は「今後の20〜30年間涼しい気候が続き、地球温暖化の傾向が足踏み状態になる」という見解を示した。同氏はこうした変化について「北極振動(Arctic Oscillation)」のためだとした。

北極振動は短くて数十日の単位、またはは数十年を周期に、北極と北半球中緯度地域(北緯45度)の気圧が減少または増える現象だ。

これによって、北半球の冬に寒さと温暖化が繰り返されているということだ。

 1980〜2000年は北極の気圧が低い「温暖モード」だったが、現在は「冷却モード」に変わり、今後の20〜30年間涼しい気候が続くという説明だ。1915〜40年は温暖モードが、40〜70年は冷却モードが優勢だったが、地球の気温もこうした傾向を見せたということだ。

 米ウィスコンシン大学の大気科学研究所のソニス教授も「太平洋と大西洋で、10年単位の振動が20〜30年の周期に変わり、最近、温暖モードから冷却モードに変わった」と述べた。一部の気象学者のこうした認識をもとに「超短期の氷河期論」が台頭しているのだ。

 しかし、大半の気象専門家は「氷河期うんぬんは根拠が足りない」とし「現在の酷寒も一時的現象にすぎない」と酷評する。国立気象研究所・権ウォン台(クォン・ウォンテ)気候研究課長は「温室効果ガスの濃度が高まった状況で自然的な周忌が変わり、温暖化モードが戻ってくれば、地球の温暖化は20世紀後半よりはるかに急速に進む」という認識を示した。

 ソウル大学許昌会教授(ホ・チャンフェ、地球環境科学部)は「今年、北極振動が例年に比べ長く、強まったが、まもなく回復するだろう」とした後「超短期の氷河期が来るという見方は先走りすぎた見解」と指摘した。

大雪の原因は「北極振動」 寒気、流れ込みやすく

2010年01月14日 asahi.com

 この冬の大雪は、北極付近から寒気が日本などに流れこみやすくなる「北極振動」という現象が長引いているのが原因、と気象庁はみている。

 同庁によると、昨年12月半ばから断続的に日本付近に寒気が入り、13日現在で東北から中国地方にかけて山沿いを中心に平年を大幅に上回る積雪が観測されている。

 気象庁によると、今冬は北極付近の気圧が高く、日本を含む中緯度地域の気圧が低い状態で、北極付近から放出された寒気が中緯度地域に流れこみやすくなっている。この気圧配置は普通2週間程度で変わるが、今冬はこれまで約1カ月間にわたって続いているという。同様の現象は05〜06年の冬にもみられ、日本海側の記録的な豪雪につながったという。

 欧州や米国、東アジアも今冬は30年に一度の記録的な寒さに見舞われており、ベルリンやワシントン、ソウルなどでは最低気温が平年を大幅に下回る日があった。

 同庁気候情報課によると、現在は北極付近の気圧が下がり始めており、今後は寒さが一段落するとしている。日本では19日ごろから各地で気温が平年を上回る日が続く見込みという。

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