TOPIC No.1-6 海


No.
内     容
01. 海水
02. 海水の組成 by地学教室
03. 海上保安庁海洋情報部(Hydrographic and Oceanographic Department)
04. 海水中の微量金属と生物生産(May 16, 2002)宗林 由樹 by水圏環境解析化学
05. NOAA人工衛星画像 データベース(海面水温分布図) by神奈川県水産技術センター
06. AMSR-Eが捉えた夏期の北半球高緯度域における海面水温の上昇(2006年08月29日) byJAXA
07. 瀬底海洋酸性化プロジェクト」(通称AICALプロジェクト)
08. 北極海が炭酸カルシウムの殻を持つ海洋生物にとって住みにくい海になっていることを初めて発見〜海洋酸性化と海氷融解の二重の影響〜(2009年11月20日)独立行政法人海洋研究開発機構
09. CO2増加→海が酸性化→貝が溶ける!(2005/09/29)
10. 海洋酸性化が生物に恩恵をもたらす?
11. 南極の氷がとけていく(2002年) byオンライン科学情報サイト

メキシコ湾原油流出 新規採掘凍結も 米大統領、原因究明を最優先

2010.05.01 MSN産経新聞

爆発・水没した石油採掘基地

 【ワシントン=犬塚陽介】米南部ルイジアナ州沖のメキシコ湾で4月20日に起きた石油採掘基地爆発事故の被害が深刻化している。AP通信によると、海底から1日約5千バレル(約80万リットル)の原油が流出しており、29日には沿岸まで約8キロの地点に達した。流出が長期化すれば、米史上最悪とされる1989年のアラスカ沖原油漏れ事故に迫るとの懸念も浮上している。オバマ政権高官は30日、約1カ月前に発表したばかりの新規油田採掘計画の凍結にも言及するなど、事故の影響は拡大する一方だ。

 30日朝にABCのテレビ番組に出演したオバマ米大統領の側近、アクセルロッド上級顧問は「何が起きたのかを突き止めるまで、新規の採掘は許可されない」と述べ、事故原因の究明と再発防止を最優先事項とする方針を示した。

 オバマ大統領も29日、被害対策に「あらゆる手だてを使って対処する」と表明し、米軍の出動を検討するほか、ナポリターノ国土安全保障長官らを現場に派遣する方針を示した。

 爆発があった現場はルイジアナ州南東の沖合約80キロにある「ディープウオーターホライズン基地」で、約130人の作業員のうち11人が死亡、基地は24日に水没している。油田は英メジャー(国際石油資本)BPが採掘権を保有しており、深さは約5486メートルにまで達するという。

 当初、被害は最小限に収まるとの楽観論が支配的だったが、海底からの原油流出などが次々と明らかになって状況が一転した。米政府高官はAP通信に対し、沿岸から約65キロの地点で1日5千バレルの原油が流出していると語った。

 現場海域に近いルイジアナ州などの沿岸部は、米国のリゾート地として名高いほか、エビやカキなど世界でも有数の魚介類の産地でもある。

 ルイジアナ州はハリケーン「カトリーナ」の甚大な被害を受け、後手に回った当時のブッシュ政権の対応が厳しい批判にさらされた地域でもある。

 深刻化する事態を受け、オバマ大統領は29日、採掘権を保有するBPに原油除去の基本的な責任があり、費用もBPが負担すべきだとの認識を鮮明に打ち出した。

 ただ、海底油田の新規採掘を承認した際には、「環境よりも国産原油増を優先した」との批判も噴出。事故では野鳥や海洋生物への影響も懸念されており、新規採掘計画への批判がさらに高まる可能性もある。

海の小生物、豊かな多様性 温暖化の影響懸念

2010/04/19 47News【共同通信】

 海にすむ動物プランクトンや微生物などの小さな生物の多様性は非常に豊かで、多くの未知の生物が存在するとの調査結果を、国連などが10年がかりで進める海の生物調査「海洋生物センサス(CoML)」のグループが18日、発表した。

 動物プランクトンは、既に約50種の新種が確認された。現在約7千種が知られているが、解析が進めば1万5千〜2万種に達するとみられるという。

 調査にかかわった米コネティカット大のアン・バックリン教授は「動物プランクトンなどの中には、大気中のCO2濃度の上昇によって起きる海水の酸性化で影響を受けるものが多い」と指摘。人間の活動が動物プランクトンに与える影響の調査と、CO2排出削減の重要性を強調した。

 調査は、04年から続いており、東京大大気海洋研究所の研究者らも参加。

 プランクトンより小さい海洋微生物の調査では、微生物の「属」の数が、考えられていたより100倍多い可能性を示唆する結果も得られたという。

 グループは「これらの小さい生物は、海の酸性化が進むと体を作る殻ができなくなるとの実験結果があり、影響が懸念される」としている。

白化する死のサンゴ礁の警告 Coral's Faltering Partnership すでに世界に生息する資源のおよそ3割は回復不可能な状態に

2010年03月11日(木)Newsweekマック・マーゴリス

[2006年11月15日号掲載]

 色とりどりの美しさと、そこにすむ生物の多様さから、サンゴ礁は「海の熱帯雨林」と呼ばれることが多い。「海の建築家」と呼んでもいい。小さなポリプ(サンゴ虫)の群れが、海水中から吸収した炭酸カルシウムをせっせと積み上げて壮大な建築物を作る。

 サンゴ礁は地球表面のわずか1%しか占めていないが、そこには海洋生物の25%がすむとみられる。まさに海中の大都会だ。

 この大都会の建築家が危機に直面している。気候変動の影響が海底にまで及ぶとは想像しにくいかもしれない。だが最近の調査で、地球温暖化がサンゴ礁を直撃していることが明らかになった。すでにサンゴ礁のおよそ30%は回復不可能な損傷を受けている。海面の水温上昇でサンゴが栄養を得にくくなったことが主な原因だ。

 セーシェル諸島のサンゴ礁は、98年のインド洋の異常高温で破壊され、今も回復していないという調査結果もある。そこでは10種の魚が絶滅あるいは絶滅寸前に追い込まれ、海洋生物の種類も半減した。サンゴ礁が死ねば、海も死ぬ。

大気中の二酸化炭素も影響

 サンゴは、動物の体内に植物が共生するという変わった「ペア」を組んで生きている。動物は小さなポリプ。植物はそれよりさらに小さな褐虫藻で、光合成でつくり出したエネルギーを宿主に分け与え、サンゴを鮮やかな色で彩る。

 この共生から生まれるエネルギーがサンゴ礁の建築に使われる。海水中の炭酸とカルシウムが化学反応で結合し、石灰質のサンゴの殻となる炭酸カルシウムがつくられる。しかし、水温が上がると共生関係は崩れる。褐虫藻がポリプの体から追い出され、サンゴは白化して死んでしまう。

 問題はそれだけではない。大気中の二酸化炭素の増加で海水の酸性化が進むことが、水温の上昇以上に海を脅かしていると、多くの専門家が警告する。

 大気中の二酸化炭素は、海水に溶けると炭酸に変わる。その炭酸がカルシウムと結びついて、サンゴ礁の建材となる。だが二酸化炭素の濃度が高すぎると、海水の酸性化が進み、サンゴの殻が溶けてしまう。今では工業化以前の時代と比べ、海水の酸性化が30%も進んでいる。

「健康診断で血圧がはね上がったようなものだ」と、H・ジョン・ハインツ科学経済環境研究所(ワシントン)のトーマス・ラブジョイ所長は言う。ラブジョイは海水の酸性化を「最も深刻な環境問題」と呼ぶ。

 皮肉な話だ。余分な熱や炭素を吸収する海は、温暖化の進行を食い止めると長い間考えられてきた。その頼みの綱である海でさえ、今や助けを求めている。

高級食材エゾアワビ、100年後絶滅?海の酸性化進めば

2010年02月01日 asahi.com

エゾアワビの成貝。アワビ類の中でも高級品とされる

エゾアワビの健康な稚貝。直径は約2ミリ(電子顕微鏡写真)=水産総合研究センター提供

 高級食材として知られるエゾアワビは、海の酸性化が続くと、100年後には大打撃を受ける恐れがある――。水産総合研究センターがそんな研究結果をまとめた。酸性度の高い水では、生まれて間もない稚貝に貝殻の奇形が発生することが実験で確認された。

 大気中の二酸化炭素(CO2)が増えると、海水にとけるCO2も多くなり、海水の酸性化が進む。産業革命以前に280ppm前後だった大気中のCO2濃度は、現在、380ppm前後にまで上昇。気象庁による海洋観測で、日本近海でも酸性化が進みつつあることが確認されている。

 研究チームは、エゾアワビの稚貝を約1カ月間、CO2の濃度を人工的に様々に変えた水槽で飼育し、電子顕微鏡で殻の形などを詳しく調べた。その結果、CO2濃度が1000ppm前後で、稚貝の殻に凹凸などの奇形が生じることが確認された。殻に穴があいた個体もあり、「成長して親になるのは難しいだろう」という。CO2濃度が500ppmまでなら、稚貝は正常に育つことも分かった。

 大気中のCO2濃度の上昇については様々な予測シナリオがあるが、人類によるCO2の排出削減が進まないと、100年後に1000ppm前後になるとの試算もある。

 エゾアワビは北日本を中心とした沿岸に分布。刺し身のほか、中華料理の高級食材としても使われる。実験した水産総合研究センター東北区水産研究所の高見秀輝・主任研究員は「エゾアワビは、昔に比べ資源量が少ない状態が続いている。酸性化の影響で子孫が残せなくなれば、将来、絶滅危惧(きぐ)種になる可能性がある」と話す。(山本智之)

酸性化する海 懸念される生態系への影響

2009年12月18日 ECO JAPAN 気象キャスター=岩谷 忠幸

COP15開催

 国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)。2013年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組み(ポスト京都議定書)を決める重要な会議と位置づけられたいた。2020年までに1990年比で25%削減することを表明した日本だけでなく、2007年に世界最大の排出国(国際エネルギー機関[IEA]2009年速報版による)となりながら削減義務を負っていない中国や、大量排出国でありながら京都議定書から離脱した米国、さらに急速に排出量が増加しているインドなど新興国の対応が最大の焦点だった。

 2006年時点での主要国のCO2排出量は、1位の米国(21.1%)と2位(2007年には1位)の中国(20.6%)がほぼ同じで、両国を合わせて世界全体の4割を占めた。次いでロシア(5.7%)、インド(4.6%)、日本(4.5%)と続き、日本は世界5位の排出国となっている。

温室効果ガス半減の必要性

 人間の活動によって排出されるCO2は世界で273億t(2006年)に達し、世界の温室効果ガス濃度は2008年に385.2ppmに達した(世界気象機関温室効果ガス年報第5号)。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次評価報告書によると、2000年〜2005年のCO2排出量平均値を炭素換算すると、72億tが人間活動によって大気中に排出され、そのうち、9億tが森林などの陸上に、22億tが海に吸収されているという。

 陸や海で吸収される分を差し引いても、41億tと半分以上が大気中に残り、CO2濃度は毎年2ppmずつ上昇しているのが現状である。地球温暖化の進行を止めるためには、CO2排出量が吸収量を下回るようにしなければならない。それも2050年までに半減させなければならないというのがIPCCの警告であり、これが世界のCO2排出量を2050年までに半減させるという目標の根拠になっているのだ。

 そのために、先進国は2020年までに2〜3割の削減、2050年には8割もの削減が求められている。

CO2を吸収する海

 海はCO2を吸収しているが、これを確かめる実験は簡単だ。水の入ったペットボトルにCO2を入れて、フタをしたあとに激しく振ると、ペットボトルはペチャンコにつぶれてしまう。CO2が水に溶け込み、炭酸飲料と同じ状態になったためである。

 しかし、CO2をたっぷり吸収した水に再びCO2ガスを入れて振ってもペットボトルはつぶれない。実は、水が吸収できるCO2の量には限界があるのだ。広大な海も、いつまでCO2を大量に吸収してくれるかわからない。

 海の吸収量が減少すれば、大気中に残るCO2が増え、排出量の増加以上に大気中のCO2濃度が上昇することも考えられる。

 また、温暖化が進み、海水の温度が上昇することも大気中のCO2濃度を増加させる要因になる。炭酸飲料を温めると、溶け込んでいたCO2が気泡となって外に出てしまうのと同じ原理で、海水温の上昇はCO2吸収量を減少させてしまう可能性がある。その結果、大気中のCO2濃度がさらに上昇し、温暖化を加速させることになりかねない。

酸性化する海

 問題はそれだけではない。海がCO2を吸収することで、海水の酸性化が進んでいるのだ。

 海水の水素イオン濃度指数(pH)は8程度とアルカリ性であるが、産業革命以降、現在までのpHは約0.1低下(IPCC第4次評価報告書)しており、アルカリ性の度合いがやや下がっている。すなわち、海水の酸性化が進んでいるのだ。

 さらに21世紀末には、現在からさらに0.14から0.35低下すると予想されており、ますます酸性化が進むという。pH値ではわずかな変化に思えるが、pH0.1の低下は水素イオン濃度が約30%増加することを意味する(pH0.3の低下では約200%の増加)。このため、将来は海洋の酸性化が進むことで生物への影響が出ることも懸念されている。

プランクトンへの影響

 殻を持つプランクトンの一種であるウキビシガイの飼育実験では、今世紀末に予想される海洋の酸性化の環境(大気中濃度約800ppmを想定)に置くと、2日間後に殻の結晶が剥がれてしまう。殻は炭酸カルシウムでできているため、海水の酸性化が殻の生成に悪影響を与えるのではないかと心配されている。

 流氷の天使といわれるクリオネも、幼生時は殻を持っているため、酸性化の進行で殻が生成できなくなり、結果的に生息できなくなる恐れがある。アサリやホタテなど比較的、大きな貝殻への直接的な影響はわかっておらず、すぐに影響が出るとは考えにくい。しかし、翼足類など殻を作るプランクトンはほかのプランクトンや魚の餌となっており、食物連鎖を通して生態系に影響が出ることが懸念されている。

 海の酸性化も見逃さず、監視していかなければならない問題である。

海水の酸性化、急速に進行 50年には今の2・5倍に

2009/12/14 47News【共同通信】

 【コペンハーゲン共同】大気中から海水に溶け込む二酸化炭素(CO2)の量が増えることによって、世界の海水の酸性度が急速に上昇しており、2050年には現在の2・5倍に達し、海の生態系に悪影響が出るとの報告書を、生物多様性条約の事務局がまとめ14日、気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)で発表した。

 酸性化が進めば漁業資源にも多大な悪影響を与える恐れがあり、生物多様性条約のジョグラフ事務局長は「緊急に大幅なCO2排出削減をすることによってのみ不可逆的な生態系への影響が防げる」として、COP15でもこの問題を議論するように求めている。

 報告書によると、海は地球上から排出されるCO2の25%を吸収している。だがその結果、近年、海水の酸性化が急速に進行。そのペースは最近2千万年の中で最も変化が激しかった時に比べても100倍に達し、生物が対応することが難しくなっている。

 酸性化が進むと、サンゴの骨格やエビや貝、プランクトンなどの殻の主成分である炭酸カルシウムの生成が妨げられ、殻がもろくなったり、サイズが小さくなったりして、海の食物連鎖全体に大きな影響を与える恐れがあるとしている。

IUCNが海の酸性化について警告

12月 13, 2009 by admin ダイビングと&海ニュ−ス

 「海洋生物の大規模な絶滅や海の酸性化を食い止めるには、迅速で大幅な温暖化ガス排出削減が必要」

 二酸化炭素排出量の増加により、海水の酸性化が進み生態系にも影響を与える。海水の二酸化炭素吸収能力が低下し、気候に与える影響も大きくなる。海の酸性化は海洋生物の絶滅につながり、さらに海の体力が低下し悪循環が続く。今の状況が続けば人間の生活を脅かすような多大な影響を与えることになるのは間違いない。

 海は魚介類などを通じて地球の自然資源の半分を人類に提供している。さらに25%の二酸化炭素を吸収し、人間が呼吸する酸素の50%を生産している。

 海の酸性化は250年前に始まった産業革命の頃に比べ30%進んでいる。二酸化炭素レベルが今後も上昇し続けると、海の酸性度は2060年までにさらに120%まで上昇し、過去2100万年の間で最高の二酸化炭素レベルになる。2100年までに、サンゴの70%は汚れた水にさらされることになる。

 二酸化炭素排出と酸性化の固定に時間差があるとすると、海の状態が回復するのには数万年の時間が必要になり、元通りになるにはさらに時間が必要。これが意味するものは、迅速かつ本格的な二酸化炭素排出の削減と、排出削減技術の開発である。

 「二酸化炭素削減は至急かつ徹底的な枠組みが必要だ。海がなければ地球で生きることは不可能。今こそ行動の時である。」とIUCNの幹部Lundin氏。

地球温暖化:小型貝危機 北極海の酸性化進む

2009年11月20日 毎日新聞 東京朝刊

 地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の増加で北極海の酸性化が進み、小型貝類などの生息が危ぶまれる水準に初めて達したことが、海洋研究開発機構とカナダ海洋科学研究所の研究で分かった。海の食物連鎖に影響を与えかねないと警鐘を鳴らしている。20日の米科学誌サイエンスで発表した。

 チームはカナダと米アラスカ州の北側にある北極海カナダ海盆海域で97年と08年、海面下20メートル以内の海水を採取して比較。海水中の炭酸イオン濃度の低下が判明した。大気中のCO2が増えて海に溶けると、海水が弱酸性になり、中和するため炭酸イオンが消費されたためとみられる。

 炭酸イオンは貝殻やサンゴの骨格などの炭酸カルシウム形成に不可欠で、不足すると貝殻が溶けるなどの影響が出かねない。この海域は現在、炭酸イオンの「未飽和状態」にあるという。【奥野敦史】

日本近海、酸性化進む CO2溶け込み生態系に影響も

2009年10月14日 asahi.com

酸性化の進行が確認された観測海域

紀伊半島沖北緯30度での海洋の酸性化

 海の生態系や漁業に将来、深刻な影響を与えると懸念されている「海洋酸性化」が、日本の近海でも進行していることが、気象庁の観測船を使った26年間の海水観測データで分かった。酸性化はハワイ沖やバミューダ諸島沖でも確認されているが、研究チームは「20年を超す連続観測で酸性化が加速しつつあることが裏付けられた」としている。

 海洋酸性化は、大気中の二酸化炭素(CO2)が溶け込み、海水の化学的なバランスが崩れて、酸性度が増す現象。海水はもともと弱アルカリ性のため、酸性度が増すと、より中性に近づく。酸性化の進み方は海域によって異なり、南極海などで最初に生態系に大きな影響が現れると予測されている。

 観測データを解析したのは、緑川貴・気象研究所地球化学研究部第2研究室長(海洋化学)、濱健夫・筑波大教授(生物地球化学)らの研究チーム。気象庁の海洋気象観測船が毎年行っている定期観測のうち、83年から08年までの海水(海表面)の化学データを使って、酸性度を表すpH値(水素イオン濃度指数)の変化を算出した。

 その結果、紀伊半島沖の北緯30度では、過去26年間に表面海水のpHが約0.04低下していることが分かった。観測は北緯34度から北緯3度にかけて連続的に行っているもので、赤道近くの海域でも同様にpHの低下がみられた。

 今回のデータは、ハワイ沖やバミューダ諸島沖とほぼ同レベルの変化で、産業革命以降の約200年におけるpHの低下が推定0.1とされるのに対して、この四半世紀にpH低下のペースが速まっていることが裏付けられた。

 研究チームは、この日本近海での観測データをもとに将来予測も行った。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」がまとめた大気中のCO2レベルの増加予測と組み合わせ、日本近海で今後、酸性化がどう進行するかをシミュレーションした。

 現在の海水はpHの値が約8.1だが、CO2排出量が中程度で推移してゆくシナリオの場合、今世紀末には今よりpHが0.2低下して7.9程度に、最悪のシナリオでは今より0.4低下して7.7にまで酸性化が進むことが分かった。

 海水のCO2濃度を調節する装置を使って人工的に酸性化させた海水で生物を飼育する実験では、今世紀末の海水では食用のウニや巻き貝などの成長率が2〜4割落ちるといったデータがある。

 研究チームは「海水のpHの低下が日本近海でも加速しつつあることが確認できた。いますぐに生物に影響が出るレベルではないが、100年後には日本の沿岸にすむ生物に何らかの影響が出ることになるだろう」としている。

             ◇

 〈海洋の酸性化〉 大気中のCO2が増えると海水のCO2濃度も上昇し、その影響で海水のpHの値が低下する。現在の海水はpHが約8.1の弱アルカリ性だが、酸性化が進むとpHの値が7(中性)に近づく。将来、貝類やサンゴなどの生物は殻や骨格を作りにくくなる恐れがある。人類が大気中に放出するCO2の3割は海が吸収するとされ、世界の150人を超す科学者は今年1月、海洋酸性化に伴う生態系の破壊を警告する宣言を発表した。(山本智之)

漁業資源に深刻な影響 酸化進むアラスカ沿岸海域=米国

2009年10月28日【大紀元日本】

 米アラスカ沿岸領域の海水が二酸化炭素(CO2)を大量に含み、熱帯水域を遥かに上回る速さで酸性化が進んでいる、これにより海洋生態と46億米ドルを超える漁業資源が危機に直面していることが最近の研究で明らかになった。

 AP社によると、アラスカ大学フェアバンクス分校の海洋化学者ジェレミー・マティス(Jeremy Mathis)教授がアラスカ周辺海域の海水の調査を行い、熱帯地区の海水よりも酸性度が高いことを発見した。これは冷水のほうが暖かい水よりも吸収した気体を発散しにくいためで、アラスカ沿岸の海水の酸性度が高いのは、この海域は広大な大陸棚の浅海域の為、海水は温度の低い深層海水と混ざりやすく、より多くの二酸化炭素を含有すると考えられる。

 別の要因として「Biological pump(生物間輸送)」が考えられる。アラスカ海洋の豊富な植物プランクトンが光合成を行うことにより二酸化炭素(CO2)を吸収し、酸素を放出する。これらの植物プランクトンが死んで海底に沈み、分解されると大量の二酸化炭素成分(CO2)が海水中に蓄えられ、アラスカ浅海域の海水の酸性化を加速させる。

 また二酸化炭素(CO2)は海水に溶け込む過程において炭酸を形成し、海水中の炭酸カルシウムを減少させる。この炭酸カルシウムは海洋生物が甲殻および骨格を形成するために必要なミネラル成分である。アラスカ湾のミネラル成分の含有量は非常に低く、カニやそのほかの有機体を含む有殻生物は堅い甲羅や殻を作ることができない。

 海水の酸性化は裸甲殻類(ハダカカメガイなど)にも影響を及ぼしている。これらは食物連鎖の基層に位置し、ベニザケの餌となる生き物の半分がこのハダカカメガイだという。ハダカカメガイの少ない年は成体ベニザケの体重が2割少なく、このことから海水の酸性化はアラスカ海域において重要な経済価値をもつ漁業資源に密接な影響があるといえるだろう。

 研究員はアラスカ漁業管理機構に対し海水における酸性化の研究論文を提出し、二酸化炭素(CO2)の排出量削減について早急に行動をとるべきと警告している。 (翻訳編集・坂本)

国内最大級ハマサンゴ発見/気候変動の解明に手掛かり

2009/06/17 四国新聞社

 鹿児島県・喜界島沖で発見された国内最大級のハマサンゴ=8日(横山祐典東京大准教授提供)

 海水温が成長の速さに影響を与えるといわれるサンゴから地球温暖化による気候変動を調べている東京大と産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の調査団が、鹿児島県・奄美諸島の喜界島の沖合で、直径約4メートル、高さ約5メートルの国内最大級のハマサンゴを発見した。

 メンバーが今月8日に確認。約400年前から成長を続けてきたとみられ、年輪のようになっている断面の各層を化学解析することで、過去400年間の水温や、海水の酸性化の度合いを示す水素イオン指数(pH)などの推移を月単位で解明できるという。

 調査団長の横山祐典准教授(39)は「温室効果ガスが増え始めた産業革命以前のデータを得ることで、西太平洋の長期の気候変動を解明でき、貴重だ」と話している。

 サンゴはドーム形で表面以外は既に死んでおり、上から垂直に直径約5センチ、長さ約4・5メートルの柱状サンプルを採取した。東大海洋研究所に運び、エックス線解析をする。解析には1年以上必要で、結果は論文にして科学誌に発表する予定。

イギリス 海洋酸性化に関する研究プログラムに1100万ポンド

2009.04.28 EICネット

 イギリス環境・食糧・農村地域省は、自然環境研究会議(NERC)と共同で、地球温暖化がイギリス周辺の海域に及ぼす影響について、5年間の研究に1100万ポンドを拠出すると発表した。

 この大型研究プログラムは「海洋の酸性化が食物連鎖に影響している」という科学者の警告を受けたもので、大西洋北東部と南極及び北極海を中心に、海水の酸性化が生物多様性や生息地、生物種に及ぼす影響と、より広範な社会経済への影響について研究する。

 最近の報告によれば、この200年で海洋の酸性度は30%上昇したが、これは過去6500万年で最高のスピードであり、海の生態系や気候に深刻な影響があるという。大気中のCO2を吸収して海水の酸性度が上昇すると、サンゴやプランクトン、貝類等、食物連鎖の重要な関係が危機に晒されることになる。

 なお、同時に発表された「海洋気候変動影響パートナーシップ(MCCIP)」の報告書では、気候変動による小さな影響が積み重なることで引き起こされる問題や、北極海などの遠い場所での異変が私たちの生活や環境、野生動物に与える影響について指摘している。【イギリス環境・食糧・農村地域省】

酸性の海で

2009年4月号 日経サイエンス

二酸化炭素による海水酸性化が予想以上のスピードで進んでいるようだ

 大気中の二酸化炭素(CO2)が増えすぎると水が酸性化することは,温暖化に比べるとあまり知られていない。海はもともと自然にCO2を吸収しており,人間活動で大気に放出されるCO2の約1/3が吸収される。CO2が水に溶けると炭酸ができる。炭酸飲料に見られるのと同じ物質だ。最近の研究によると,気候変動モデルの予測を超える速さで海水酸性化が進んでいる可能性がある。

 シカゴ大学の海洋生態学者ウートン(J. Timothy Wootton)らがワシントン州北西沖にあるタトゥーシュ島での海水の酸性度と塩分濃度,温度などの測定値を8年がかりで蓄積した結果,平均酸性度が気候モデルによる予測の10倍以上の速さで高まっていることがわかった。

 酸性度が上がると海洋生物に大きな害をもたらす恐れがある。例えば貝やサンゴ礁の炭酸カルシウムが溶け出す(S. C. ドニー「海洋酸性化の脅威」日経サイエンス2006年6月号)。ウートンらは米国科学アカデミー紀要12月2日号に掲載された論文で,生態系のバランスが変化したことを報告した。イガイやフジツボなど大きな殻を持つ動物の個体数が減り,殻の小さな種や非石灰質藻類(カルシウムを基本とした骨格のない種)が増えてきたのだ。ウッズホール海洋研究所の海洋学者ドニー(Scott C. Doney,同調査には直接参加していない)は,「これは将来発生しそうな現象の前触れだ」という。

 ウートンはこの変化が大気中CO2濃度の増加に関連していると指摘するが,酸性度アップの主因はCO2ではない可能性があるという。観測された酸性化は炭素が豊富な深海水が近くに湧き上がってきた結果かもしれず,その場合は今回の結果を海洋全体に当てはめるわけにはいかない。

 だが米国の太平洋沿岸とオランダでは海水の酸性度が高まりつつあり,「今回のパターンと一致しているようだ」とウートンはいう。海洋生物が海水の変化に対する緩衝装置となっていられる時間はあまりなさそうだ。

CO2でニモもピンチに? 海水酸性化、嗅覚損なう

2009/02/03 47News【共同通信】

 映画「ファインディング・ニモ」の主人公の熱帯魚「カクレクマノミ」に近いクマノミの一種の稚魚が、二酸化炭素(CO2)の濃度上昇によって海水の酸性化が進んだ条件下では、嗅覚による環境の識別ができなくなったとの研究結果を、オーストラリアなどの研究チームが2日付の米科学アカデミー紀要(電子版)に発表した。

 研究チームは「酸性化がこのまま続けば、感覚障害によって多くの生物の個体数が減少、海の生物多様性が失われるだろう」としている。

 チームは、酸性・アルカリ性の度合いを示す水素イオン指数(pH)を通常の8・15にした海水のほか、より酸性に近づけた7・8と7・6の海水でクマノミの一種の稚魚を飼育。

 その後、稚魚が本来好む熱帯雨林の葉を浸した水と、稚魚が敬遠する刺激臭のある葉を浸した水を流すと、通常の海水で育てた稚魚の集まり方に変化はなかったが、酸性に近づいたpH7・8では逆に刺激臭のある方に集まったり、より酸性化したpH7・6では、何の反応も示さなくなったりしたという。

CO2排出による海の酸性化が加速、人類にも影響 海洋科学者ら警告

2009年01月31日 AFP BBNews 発信地:ニース/フランス

【1月31日 AFP】地球の海洋生態系に対する酸性化の被害を防止するためには、二酸化炭素(CO2)排出を急激に減らす必要があると警告する「モナコ宣言(Monaco Declaration)」を、各国の海洋科学者ら150人以上が30日、フランス南部ニース(Nice)で発表した。

 前年10月にモナコで開かれた国際海洋シンポジウムの成果を政策立案者への提言としてまとめたもの。

 このなかで科学者らは、温室効果ガスがもたらした海水の酸性化は既にサンゴ礁の生態系に大打撃を与えており、人類にも大規模な影響を連鎖的にもたらすことになると警告。

 宣言文では、「海洋の化学的性質の近年の急激な変化と、それが数十年以内のうちに海洋生物や食物網、生物多様性、漁業などに与える深刻な影響」への深い懸念を示し、「海の酸性化は加速しており、深刻な被害が差し迫っている。この流れを食い止め、かつ反転させるための唯一の対策は、大気中の二酸化炭素量を減らすことだ」と述べている。

 さらに科学者らは、海の酸性化は人類社会にも非常に大きな影響があると警告する。海洋の食物網に影響し、漁業資源に大幅な変化をもたらし、数千万人分のタンパク質の供給や食料安全保障を脅かすことになるという。(c)AFP

日本海岸の漂着ゴミ削減協議へ 日韓実務者、2月に初会合

2009年01月19日 中国新聞ニュース

 日本海沿岸に大量に漂着して問題となっている韓国からの海洋ごみの削減策を話し合うため、日本と韓国の課長級による実務者協議が新設されることが19日、分かった。2月初旬、韓国で初会合を開催する予定。

 外務省によると、日本海沿岸への漂着ごみに含まれていたポリ容器は昨年、約4万3000個。このうち約1万8000個にはハングル表記があった。酸性の液体が入ったままの容器もあるといい、重大視した日本側が昨年4月の李明博大統領初来日以降、実務者協議を打診していた。

 当面、議題は海洋汚染対策に限定するが、日本政府としては、将来的に大気汚染や中国からの黄砂観測など幅広い環境保全協力に発展させたい考え。環境を実利重視の「日韓新時代」のシンボルと位置付ける方針だ。

 1回目の実務者協議には日本から外務、環境両省の担当者や民間の有識者ら合わせて10人程度が出席。ポリ容器が韓国のノリ養殖業者らが使用した可能性が高いことから、韓国側が使用状況や海洋への投棄規制について説明する見通しだ。

 また2回目以降の協議で、実際に海洋ごみ被害に悩む日本海沿岸の地方自治体から意見聴取する機会も設けたい考え。

ポリ容器漂着の悩みを訴えへ

2009/01/10  中国新聞地域ニュース

 日本海側に漂着する廃ポリ容器などの海洋ごみ問題で、島根県の担当者が2月に開かれる日韓の実務者協議に出席し実態を訴える。島根、山口、鳥取の3県では今冬も5日から漂着が確認されており、9日までに計約1700個に上っている。

 島根県によると、季節風の強まる冬季に漂着する海洋ごみの多くは18リットル入りのポリ容器で、2000年ごろから目立ち始めた。ハングルや過酸化水素を示す記号などが書かれたものが多い。強酸性の液体が入っているケースもあり、住民の健康や景観、漁業などへの影響が懸念されることから、毎年、自治体を悩ませている。

 日韓の政府実務者協議は韓国での開催を調整中。県は漂着個数や表記の具体例、液体の分析結果などの実態を示して、原因究明と対策を求める。

海の酸性化でサンゴが危機 大気中CO2が増加

2008年12月14日 中国新聞ニュ−ス

 産業革命以降に放出された大量の二酸化炭素(CO2)の影響で、本来弱アルカリ性の海水が酸性化する現象が起きており、これに歯止めがかからないと今世紀半ば以降、サンゴ礁など海の生態系に深刻な悪影響が出るとする報告書を、米環境保護団体「オシアナ」の研究グループが十三日までにまとめた。

 グループは「海水が酸性化すると、アルカリ性環境を好むサンゴの骨格や貝の殻ができにくくなる。カキや真珠の養殖業の崩壊や漁獲量減少など、人間の経済活動にも打撃になる」と指摘。各国に排出規制の強化を呼び掛けた。

 CO2が海水に溶けると酸性のイオンができ、溶け込む量が増えるほど海水の酸性化が進む。

 グループによると、海水の表層の酸性・アルカリ性の度合いを指数化した水素イオン指数(pH、中性は七・〇)は、一七五〇年には八・一九の弱アルカリ性だったが、二〇〇八年は八・〇九とやや酸性化し、このままのペースだと今世紀末には七・七八になるという。pHが一減ると酸性度は十倍になる。

 海水のアルカリ度とサンゴの生息状況に関する実験などから、大気中のCO2濃度が四五〇ppmに近づく二〇二〇年ごろにはサンゴが骨格をつくることが難しくなる。

 温暖化による海水温上昇の悪影響も加わり、今のペースで大気中の濃度が高まると、今世紀末までには熱帯や亜熱帯にかけてのサンゴはほとんど消滅するとみられる。

 海水酸性化は、サンゴだけでなくカキなどの貝や、カニやエビなどの甲殻類の成長を鈍化させることも判明。漁業や観光業なども深刻な影響を受けることになるという。

海の酸性化でサンゴが危機/米環境保護団体が報告書

2008/12/13 四国新聞社

 高水温が原因で白化したグアム島のサンゴ。海水の酸性化でサンゴの死滅が加速することが懸念されている(米海洋大気局提供)

 産業革命以降に放出された大量の二酸化炭素(CO2)の影響で、本来弱アルカリ性の海水が酸性化する現象が起きており、これに歯止めがかからないと今世紀半ば以降、サンゴ礁など海の生態系に深刻な悪影響が出るとする報告書を、米環境保護団体「オシアナ」の研究グループが13日までにまとめた。

 グループは「海水が酸性化すると、アルカリ性環境を好むサンゴの骨格や貝の殻ができにくくなる。カキや真珠の養殖業の崩壊や漁獲量減少など、人間の経済活動にも打撃になる」と指摘。各国に排出規制の強化を呼び掛けた。

 CO2が海水に溶けると酸性のイオンができ、溶け込む量が増えるほど海水の酸性化が進む。

 グループによると、海水の表層の酸性・アルカリ性の度合いを指数化した水素イオン指数(pH、中性は7・0)は、1750年には8・19の弱アルカリ性だったが、2008年は8・09とやや酸性化し、このままのペースだと今世紀末には7・78になるという。pHが1減ると酸性度は10倍になる。

 海水のアルカリ度とサンゴの生息状況に関する実験などから、大気中のCO2濃度が450ppmに近づく2020年ごろにはサンゴが骨格をつくることが難しくなる。

 温暖化による海水温上昇の悪影響も加わり、今のペースで大気中の濃度が高まると、今世紀末までには熱帯や亜熱帯にかけてのサンゴはほとんど消滅するとみられる。

研究報告:海洋の酸性化、予想の10倍以上の速さで進行

2008年12月04日 日刊温暖化新聞

(シカゴ大学より)

 海洋の酸性化はこれまでの予想の10倍以上の速さで進行し、その進行は、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の上昇と関連しているとする研究結果が、米国科学アカデミー紀要の電子版に11月24日発表された。この研究は、米国シカゴ大学のティモシー・ウートン教授らの研究チームが、ワシントン州沖のタトゥーシュ島で8年間にわたり調査したもの。温帯地域沿岸部の海水の酸性度を調べた初の詳細データとなっている。

 海水の酸性化が進むと、海洋生物に害が及び、また、海洋がCO2を吸収する能力も低下してしまう。これまで長い間、CO2の大気中濃度の上昇が海洋の酸性化を加速すると予測されていたが、実際の調査で立証できる証拠は少なかった。

 海洋は地球の炭素循環の中で重要な役割を果たしているが、大気中のCO2が海水に溶けると炭酸を生じ、海洋の酸性度を高めることになる。海洋には、酸により溶解する炭酸カルシウムの殻や骨格を持つ生物も多く、サンゴ礁の形成や甲殻類の漁獲資源に悪影響を及ぼすことが考えられる。

 「このような酸性化の進行は、海洋の食物網に深刻な影響を与えることになり、少なくとも一部の海域では、海洋酸性化がこれまで考えられていた以上に緊急の問題であることを示唆している」とウートン教授は述べている。

海の酸性化、予測以上に進行

November 24, 2008 Helen Scales for National Geographic News

 大気中の二酸化炭素量の増加によって、海洋の酸性度が従来の予想以上に上昇している可能性がある。その過程で生態系のバランスが崩れているとする新たな研究が発表された。

 アメリカのワシントン州沖にあるタトゥーシュ島周辺で、2000年以降の海水を観測した結果、気候モデルに基づく予測値の10倍の速さでの酸性度が上昇していることが明らかになった。

 海水が酸性に傾くとその腐食作用で沿岸部の生物に劇的な変化が生じ、貝や甲殻類などの漁獲資源が危機にさらされる恐れもあるという。

「研究の結果、予想では次世紀になると考えられていた程度にまで酸性化が進んでいた。海洋は人間の予想を超える速さで変化しているようだ」と、研究チームメンバーでシカゴ大学の海洋生物学者ティモシー・ウートン氏は警告する。

 人間が放出した二酸化炭素量の増加により、海洋の酸性度は過去200年間で30%上昇している。大気中に放出された二酸化炭素は海水に溶けると炭酸を生じ、海洋に生息する生物に悪影響を与える。

 実験では、海水の酸性化につれて、炭酸カルシウムでできた貝殻や、造礁サンゴ、ウニなど数多くの海洋生物の骨格に被害が及ぶことが確かめられている。

 ウートン氏らの研究チームは、タトゥーシュ島の岩浜に関与する種のフィールドデータに基づいて生態系モデルを作成した。作成されたモデルからは、酸性度の上昇に従って、炭酸カルシウムの貝殻を持つ生物すべてにひどい腐食被害が出るわけではないという驚くべき結果も示された。大型の二枚貝やフジツボが被害に遭う一方で、小型のフジツボや一部の炭酸カルシウムを主成分とする海草の生育は逆に良くなっているという変化が確認されたのだ。

「二枚貝は通常、岩の上で育つ別の種を駆逐してしまうほど繁栄しやすく、生態系を支配する側にいる。その二枚貝が減ると、これまで生育を妨げられていた別の種が繁栄することになる。ただ、沿岸部の生態系がこのように変化すると、貝や甲殻類の水揚げに頼る漁業関係者が大きな損害を被るかもしれない」とウートン氏は話す。

 カリフォルニア州にあるスクリップス海洋研究所の海洋生物学教授ナンシー・ナウルトン氏は、「生態系全体への海洋酸性化の影響を理解するには、“敵の敵は味方”という視点を持つことが重要だ」と指摘している。

 フィールド調査で二枚貝の全体的な減少が示された一方で、予測モデルとしては長期的な変化を把握できるものが求められることになった。「こうした海洋生物は寿命が長いので、生態系の変化も長い目で見なければ分からない。小さな変化も長期的には拡大する可能性がある」と前出のウートン氏は説明する。

 熱帯ではなく温帯の海域で酸性化のデータが得られたのは今回の研究が初めてだ。そのため、ほかの場所でもこのような急激な変化が生じているかどうかは分かっていない。

「この結果はタトゥーシュ島周辺に特有のメカニズムかもしれず、別の海域では異なる結果が得られるかもしれない。赤道から離れたほかの領域でさらにデータを収集し、生じているパターンを見極める必要がある」とウートン氏は語っている。

 一方、海洋生物学教授のナウルトン氏は、「気候変動に関する研究では予想以上に悪い結果が出ることがほとんどだ」と懸念しており、今後の研究からも目が離せない。

274の海洋生物新種発見 豪近海で科学者チーム

2008年10月18日 中国新聞ニュ−ス

 【シドニー18日共同】オーストラリアの連邦科学産業研究機構(CSIRO)の科学者チームは18日までに、同国タスマニア島南方約200キロの海洋保護区の海底で、ヒトデやカニなど274の新種の海洋生物を発見したと発表した。

 オーストラリア近海では最近、150を超えるサンゴの新種なども見つかっており、相次ぐ発見は同海域での生物の多様性をあらためて印象付けた。

 調査は2006年11月と07年4月の2回、水深1−2キロの海底で新型ソナーなどを使って行われた。見つかったのは新種のクモヒトデ、海綿動物のほか、エビ、カニなどの甲殻類。

 これまで知られていなかった145に上る海底の峡谷、80の海底死火山も確認。海底からの高さが500メートルに達する山もあった。

 科学者らは「生物にとってこうした岩場の多い環境はエサに富み、格好のすみかにもなる」と述べ、調査海域を広げればさらに新種が見つかる可能性を指摘している。

謎のクラゲ深海で多数確認 多様な生き物のすみかに

2008年10月17日 中国新聞ニュ−ス

 分布や生態がほとんど分かっておらず、希少種と考えられていた「アカチョウチンクラゲ」が、三陸沖など日本付近の深海に多数生息しているのを、海洋研究開発機構の研究チームが約10年にわたる観測で初めて確認し、17日発表した。

 かさにはヨコエビやウミグモの仲間などが付着、多様な生物のすみかにもなっていた。

 このクラゲは、今後進むとされる海水の酸性化で生存が危うくなると懸念されている。今回の発見で、クラゲに依存する生物が多いことが分かったため、チームのドゥーグル・リンジー技術研究主任は「これまで考えられていたより急速に海の生態系が壊れる恐れがある」と指摘している。

 チームは1997年から今年にかけ、三陸沖や相模湾などを有人潜水調査船「しんかい2000」やハイビジョンカメラを搭載した無人探査機「ハイパードルフィン」などで観測。撮影した高解像度の映像を分析した。

 その結果、かさの長さ10数センチのアカチョウチンクラゲが、三陸沖の水深450−900メートルを中心に60匹以上見つかった。かさには1センチほどの大きさのヨコエビやウミグモの仲間、他のクラゲの赤ちゃんなどが付着して生息しているのも確認した。

CO2で海の騒音増加、クジラにも影響

October 2, 2008 Richard A. Lovett for National Geographic News

 世界中の海で酸性化が進むにつれて水中の騒音が激しくなり、音に頼って生活しているクジラなどの海洋哺乳類を混乱させる可能性があるという。空気中の二酸化炭素が増加の一途をたどっている現在、その影響で海水の音の伝達力が大幅に高まると予測されているためだ。

 この変化は、広い範囲を遊泳する希少なクジラにとっては互いを見つけることや生殖が容易になる可能性もある。しかし、人間に例えると、人混みのなかで周囲の話し声に負けずに懸命に会話をするような状況になりかねないという。

 共同研究者でカリフォルニア州にあるモントレー湾水族館研究所の地球化学者ピーター・ブルーアー氏は、「これはつまり、波や船の雑音など海中の暗騒音レベルが上がるということだ」と言う。自然保護団体グリーンピースUSAの海洋キャンペーン・ディレクター、ジョン・ホッチェバール氏も「海洋生物にとっては災難だ」と同意する。

 研究チームのメンバーであるキース・ヘスター氏によると、海水中の音の伝達は各種のイオン(電荷を帯びた原子)の濃度に影響を受けるという。

 イオンは水の水素イオン指数(pH)に影響され、化石燃料の燃焼で発生した二酸化炭素を吸収するにつれて酸性が強くなり、その結果、炭酸(ソーダ水に含まれる酸)が生成される。海洋の酸性度は2050年までに0.3 pH増加すると予測されている。たいした数値ではないと思えるかもしれないが、この変化によって遠くの音の伝達効率が70%も増加するという。

 この影響について確かなことは分かっていないが、これまでの研究では、海軍の強力なソナー(音波探知器)が海洋生物に難聴などの障害を引き起こす恐れがあると指摘されている。動物への影響だけでなく、軍事用ソナーのオペレーターがかすかな信号と暗騒音を区別しにくくなる可能性もある。

 この新研究は「Geophysical Research Letters」誌に掲載されている。

 海洋生物学者たちは、海水の音の伝達力向上によって海洋生物にどのような影響があるのか予測するのは難しいと話している。ハワイ大学のリチャード・ジービー氏は、「生物学的な影響はいまのところ確かではない」とメールで回答を寄せた。

 しかし、この変化が化石燃料の燃焼による予想外の副作用であることは明らかだ。「人間が海に大きな変化をもたらしていることの一例だ。1時間当たり1億トンの二酸化炭素が海に吸収されており、そのためにさまざまな変化が起きている。われわれはまだその変化を解明している途中だ」とヘスター氏は述べている。

韓国の産廃海洋投棄、早急に中断せよ

2008/09/03 Jan Jan ENVIROASIA

 今、この瞬間にも、韓国で20ヵ所以上の主要な港から、海のゴミ捨て場に向かう廃棄物船舶がせわしなく行き交っている。「企業フレンドリー」を掲げる現韓国政府が、海洋投棄をしている企業ともフレンドリーに付き合うと言い出すのではないかと、気がかりだ。海をゴミ捨て場と勘違いしている国は、決して海洋強国になることはできない。

 ■海はゴミ捨て場じゃない! 海洋投棄を早急に中断せよ!

 1980年代後半から現在まで、東海(日本海)と西海(黄海)沖に漏れ出した廃棄物の量は1億tを超えた。1988年から投棄量の記録を取っているが、今年の6月までの海洋投棄の正確な累積量は、1億1,025万7,000tだった。2.5tトラックで4,410万台分の量だ。20年間で韓国国民一人当たり2.5tのゴミを海に捨てたことになる。

 今年だけでも、6月までの累計量は337万t、このうち下水処理場の汚泥が最も多く、次に排水処理場の汚泥、生ゴミ廃水、家畜糞尿、人糞などの順である。これらは政府がすべて許可し合法的に捨てられたゴミで、群山の西海岸沖・蔚山・浦項の東海岸沖など、定められた投棄海域は3ヵ所にある。

 環境団体は2005年に、この問題に対して集中的に騒ぎ立てたが、政府は海洋投棄量を増やし続けた。「海は未来の資源宝庫だ」という国土海洋部(旧海洋水産部)が海を汚染する海洋投棄を傍観し、「海を守る」という海洋警察も海洋投棄業者から手数料を受け取っていたという。環境保護をとなえる環境部は、陸地環境だけが我々の業務領域とばかりに、陸上にゴミ埋立地をつくるのは難しいという理由から、海洋投棄に進んで取り組んできた。

 海洋投棄が最も多い家畜糞尿を出してきた農林水産食品部(旧農林部)は、畜産農家の難しさをとやかく言いながらも、ドイツなどで既に商用化段階にあるバイオマスなど畜産糞尿の資源化に力を注いできた。各種重金属でごちゃまぜになっている工場排水処理場の汚泥がどのように処理されているのかを管轄する知識経済部(旧産業資源部)も見て見ぬ振りをしてきたのである。

 海洋投棄された様々なゴミの出どころと回収過程を管理している自治体は、海洋投棄問題を「中央省庁の方針だ」などと言いながら、目を背け責任逃避してきた。海がゴミ捨て場になってしまったのは、結果的に韓国の廃棄物行政に関連するすべての関係省庁の負の遺産である。

 地球の隅々まで探してみても、海にこんなに多量の廃棄物を捨てる国は韓国しかない。1980年代と90年代にグリーンピースなどの環境団体が、横行する海洋投棄を防ぐ運動を盛んに展開し、海洋投棄を禁止するロンドン協約を設けるに至った。1996年に、より具体的な国際協定の「96議定書」というものが作られ、事実上海洋投棄がほとんど禁止されているにもかかわらず、韓国はこれに加入していない。韓国は地球上でも自国の海にゴミを最もたくさん捨てる1級国家になった。遠洋漁業強国、南極の海で最もたくさんの漁獲高を上げ、関連国際機構に一番多額の負担金を支払っている国、韓国が隠している恥ずべき部分である。

 人々が海をゴミ捨て場だと感じた瞬間から、ゴミはブーメランのようにすぐに汚染という形で跳ね返ってくる。私たちの食卓にのぼる水産物の汚染が深刻な事態になったことは、ひとつも不思議なことではない。

 韓国の海はどうだろうか? 一言で「乱獲と汚染」といってもいいだろう。時が経つにつれ漁獲量が減少している中で、政府の水産政策はいかに漁船の数を減らすかということで頭がいっぱいだ。稚魚を放流する、禁漁期間をおく、しかし、1年で数百万トンごとに汚染がひどい液状廃棄物を捨てておきながら、一方で漁獲高が増えることを望むとなれば、まともな神経ではない。

 世界的な環境協約である「湿地保護のためのラムサール総会」(※)」を開催するといいながら、あちこち埋め立てに躍起になっている慶尚南道、「環境にやさしい」をモットーに掲げ、2012年の「世界博覧会」を誘致しておきながら、大っぴらに海洋投棄の先頭を走る全羅南道と麗水市。彼らの行動は理解に苦しむ。 ※:ラムサール条約締約国会議

 海洋汚染と漁獲量減少が世界的な現象だとはいっても、韓国にはそれをとやかく言う資格すらない。遠洋漁業、造船業や海運業などで事実上、一番多く地球上の海の恵みに浴している国が韓国なのだ。一番たくさん利用しながら、その場所をきれいにすることはおろか、あちこちに汚染物を捨てる行為は、誰からも歓迎されず、共同体の一員としても快く思われないだろう。

 今、この瞬間にも、全国20ヵ所以上の主要な港から、海のゴミ捨て場に向かう廃棄物船舶がせわしなく行き交っている。「企業フレンドリー」を掲げる現政府が、海洋投棄をしている企業ともフレンドリーに付き合うと言い出すのではないかと、気がかりだ。海をゴミ捨て場と勘違いしている国は、決して海洋強国になることはできない。 (チェ・イェヨン)

衛星で海水の塩分観測へ NASA、温暖化研究で

2008年07月25日 中国新聞ニュ−ス

 【リオデジャネイロ24日共同】人工衛星で海水の塩分の濃度を定期的に観測し、地球温暖化予測の精度向上を目指すプロジェクトがスタートし、アルゼンチンと米航空宇宙局(NASA)の専門家らが24日、ブエノスアイレスで会議を開いて衛星の設計を最終決定した。ロイター通信が報じた。

 専門家によると、温暖化の影響を知るには海流の変化と、それによる気象パターンの変化が重要となる。海流の変化は海水中の塩分濃度の変化によってもたらされ、塩分濃度は、氷河が解けたり、降水量が増えたりすることで海面近くの淡水量が増えることによって変わる。

 人工衛星は3年間にわたって毎月1回、世界各地の海水の塩分濃度を測定、海流の変化などの予測に役立てる。アルゼンチンがカメラやソーラーパネルを搭載した衛星を、NASAがマイクロ波放射計をそれぞれ設計し、同国で組み立てられる。

アフリカの汚染物質飛来でカリブのサンゴに危機

July 14, 2008 Brian Handwerk for National Geographic News

 科学者たちは、アフリカのサハラやサヘルの乾燥地域から大量のダストが飛来し、カリブ海やアメリカ南東部の海を汚染している可能性があると指摘している。ダストを含んだ雲が、金属や農薬、微生物などの汚染物質を運んでいるのだ。サンゴ礁や海洋生物は既に海水温度上昇のストレスを受けているが、こうした物質も破壊的な影響を及ぼしかねない。

 アメリカ地質調査所の生態学者、ヴァージニア・ガリソン氏は、フロリダ州フォートローダーデールで開催された「第11回 国際サンゴ礁シンポジウム」で、複数のサンプル採取地点の大気質データから得られた興味深い結果を発表した。例えば、アフリカからダストが飛来した時期のカリブ海の大気サンプルを調べると、同じ地点のほかの時期に比べて、バクテリアや菌類などの微生物が2倍から3倍多く含まれていた。

 フロリダでは、アフリカのダストの影響で大気が汚染され、アメリカの大気質基準を下回る場合もある。アフリカのマリ、カリブ海のアメリカ領バージン諸島、トリニダード・トバゴで大気質調査を行ったところ、DDTの分解産物であるDDEをはじめ、微量の農薬が見つかった。DDTは環境蓄積や発がん性の疑いから広く使用が規制されているが、一部のアフリカ諸国では現在でも殺虫剤として使われている。農薬は特にサンゴ礁にとって脅威となる。サンゴの生殖や受精、免疫システムを妨げる可能性があるからだ。

 オーストラリア海洋科学研究所のアンドリュー・ネグリ氏は、「アフリカのダストに関連する農薬は主に殺虫剤だ。殺虫剤は宿主であるサンゴに直接影響を与える可能性がある。調査で特定した殺虫剤のうちクロルピリホスとエンドスルファンの2種類は、ごくわずかな濃度でもサンゴの幼虫が海底へ定着するのを減少させる」と話す。

 ガリソン氏は、大気は世界中を移動しており、われわれは皆、1つの巨大な大気システムを経験しているという見方を示す。「ダストを含んだ気団がアフリカからカリブ海を通ってアメリカ東部に到達し、そこで急に勢力が弱まる。しかし、気団は一部のダストを含んだままアメリカ北東部に移動し、汚染された雲と混ざる。さらに北大西洋を越えてヨーロッパに渡り、ヨーロッパでも汚染雲を少し取り込んで、再びアフリカに戻る。つまり、ダストがそもそもどこから来たのかは、わからなくなる」。

 ガリソン氏は、アフリカの農薬のように特定の汚染物質が特定の地域に関連している場合もあるが、大気質の問題の責任を1つの地域にだけ負わせることはできないと言う。「私たち全員に責任がある。どんな物質を空気に放出しているのか皆で監視してゆく必要があるだろう」とガリソン氏は述べている。

造礁サンゴの3分の1が深刻な絶滅の危機に

July 10, 2008 Brian Handwerk for National Geographic News

 世界の主要な造礁サンゴのうち3分の1の種が絶滅の危機に瀕しているという調査報告書が発表された。すべての海洋生物のうち4分の1以上はサンゴ礁に生息しているため、この報告書の通りであれば、サンゴ礁の消滅は世界中の海の生物多様性に壊滅的な影響を与える可能性がある。

 研究責任者でバージニア州オールドドミニオン大学の動物学者、ケント・カーペンター氏は「サンゴそのものが絶滅の危機に瀕し、実際に絶滅が進んだ場合、連鎖的に影響が広がって、サンゴ礁に依存しているほかの無数の種も失われる可能性が高い」と話す。報告書で分類された704種のサンゴのうち、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに「危急」「絶滅危機」「絶滅寸前」の分類されている種は231に上ったが、10年前にはわずか13種にすぎなかった。

 国際的な調査の結果から、サンゴ礁の消滅は世界中に広がっていることが浮き彫りになった。その中でも特に状況の悪化した地域がある。「絶滅の危険度が高い重要な種の数の多さでは、カリブ海のサンゴ礁が筆頭に上がるだろう」とカーペンター氏は言う。

 一方、インドネシア、マレーシア、フィリピンの列島地域にあり、多様な海洋生物が生息する「コーラルトアライアングル」では、リストに掲載された数は多いものの、多くの種は低い水準のリスクにとどまっている。

 専門家によると、地球的な気候変動に関連して海面温度が上昇したことによって、過去数十年間でサンゴの白化現象や病気による大規模な消滅の発生頻度は高まっているという。海水温度の上昇はわずかでもその状態が一定期間続くと、サンゴと共生して食物を作り出している藻類が減少し、サンゴ礁の白化を招く。1998年にはエルニーニョ現象の影響で大規模な白化現象が発生し、サンゴ消滅の事例としてはこれまで確認された中で最悪となった。それ以降、同様の消滅が発生する回数は増えており、状況も深刻になっている。

 地域的な問題でサンゴが弱っている場合、病気や白化現象がもたらす影響はさらに深刻になる。例えば、魚が乱獲されている地域ではサンゴ礁を守っている種が漁業の標的になる場合もある。沿岸開発による堆積物や汚染などもサンゴの状態を悪化させる一因だ。

 サンゴにも白化やその他の破壊から回復する力は備わっている。しかし、全体的な減少傾向に歯止めをかけるには、多数のサンゴを絶滅の危機に追いやっている問題に人間が対処しなければならないと科学者チームは指摘している。

CO2増加で海洋酸性化が急激に進行中:「6500万年前の恐竜絶滅時のレベル」へ

2008年07月07日 WIRED VISION

 二酸化炭素の排出を速やかに削減しなければ、自然界でもっとも色鮮やかな構造物であるサンゴ礁が消滅し、回復には気の遠くなるような年月がかかるだろう。科学者たちが7月3日(米国時間)にこのような警告を発した。

 世界の海洋は、産業革命後に人間が排出した二酸化炭素の40%を吸収してきたが、これによって海洋の化学的性質が変化してきている。すでに、基本的に塩基性である海水の水素イオン指数(pH)は現在、産業革命以前と比べて約0.1(10%)酸性化しており、今世紀半ばまでには酸性化がさらに進む可能性がある。

 研究者らはまた、科学誌『Science』の論説の中で、二酸化炭素が気候に与える影響についてはモデルによって程度に差があるが、海水の酸性化はこれとは異なり、基礎化学に基づいているので、化石燃料を燃焼し続けるとほぼ確実に現実化し、海洋生物のなかには壊滅的なダメージを受けるものが出てくると指摘している。

 「われわれの今後10年間の行動次第では、今後200万年間にわたって、海洋にサンゴ礁が存在しなくなりかねない」と、スタンフォード大学の気象学者Ken Caldeira氏は語る。ワイアード誌では、Caldeira氏に関する特集記事(英文記事)を最近掲載している。

 二酸化炭素排出の影響に関しては、もっぱら、地球温暖化の原因である温室効果ガスの原因物質になりうる点に注目が集まっているが、二酸化炭素排出が世界の海洋にもたらす変化にも次第に関心が注がれるようになってきている。

 大気中の二酸化炭素が増えると、海面に溶け込む二酸化炭素の量も増える。こうした小さな化学変化が積み重なり、海洋生物学上の非常に大きな変化が生じうる。

 サンゴのように炭酸カルシウムから骨格を形成する海洋生物は、骨格が形成できなくなるおそれがある。今後10年間にわたって排出量が現在のペースで推移すれば、世界の海洋生物は、本質的に異質の海洋に棲むことを余儀なくされることになる。今世紀半ばまでには現実化すると予想される海洋の酸性化の度合というのは、人類が地球上に誕生するはるか以前にまでさかのぼらなければ、存在したことのないものだ。

 「21世紀に進行しているほどの極端な海洋酸性化の例を見つけるには、6500万年前の恐竜が絶滅した時代にまで戻る必要があると思う」とCaldeira氏は語る。

 このときの酸性化の際には、サンゴ礁が回復するまでに200万年かかった。Science誌に掲載された論文は、早急に二酸化炭素排出量の規制を厳しくするよう求めている。さもないと、グレートバリアリーフなどのサンゴ礁は死滅し、回復するまでに何百万年もかかると、Caldeira氏は警告している。

 「二酸化炭素の倍増は、気候の面から見たら[対応可能な]現実的ターゲットに思えるが、海洋化学の面から見ると、数千万年ぶりという変化を意味する」

 海洋の酸性化は、気候変動とは規模がまったく異なる問題だ。気候変動は、地球工学によって影響をある程度緩和できるとCaldeira氏は考えている。つまり、硫黄の粒子を大気に注入すれば、二酸化炭素によってもたらされる温室効果を緩和するのに絶大な効果を発揮する可能性があると、Caldeira氏は説明する。だが、海洋の酸性化と、その根底にある化学反応は、それとは根本的に異なる。

 「分子と分子の反応を食い止めることはできない。だから、対策をとるべき規模が大きいということは、結局、問題の規模が大きいことを意味する」とCaldeira氏。

 個々の珊瑚礁はさまざまな方法によって保存できるものもあるかもしれないが、全般的には地球工学では対応が難しい問題のように思われる。

 「海洋全体の規模で考えると、われわれのエネルギーシステム全体を変えるしか方法はないと思う」とCaldeira氏は結論付けている。

 『Science』誌の「海洋:CO2排出と酸性化」を参考にした。

 [日本語版:ガリレオ-矢倉美登里/小林理子]

CO2の大量吸収で酸性化の進んだ海水を、メキシコ・カナダ沖の大陸棚で発見

2008.05.22 海外環境ニュ−ス

 大気中のCO2を吸収し、酸性化した腐食性の海水が、北米西部の大陸棚で初めて発見された。これはアメリカ海洋大気庁(NOAA)太平洋海洋環境研究所のフィーリー博士及びザビーネ博士を初めとする国際研究チームによるもので、2008年5月22日付のオンライン誌「サイエンス・エクスプレス」に研究成果が掲載される。

 既に沖合の深海では酸性化した海水が発見されていたが、2007年夏にカナダからメキシコ沿岸で海水のサンプル調査を実施したところ、アメリカ西海岸から20マイル未満の大陸棚で酸性化した海水が発見された。

 研究者らは、春から夏の季節風で、CO2を多く含む海水が、深さ400〜600フィート(約1万2000〜1万8000m)の深海から大陸棚に上がってきたとしており、海洋の酸性化が大陸棚の海洋生物(サンゴ、貝類、軟体動物、プランクトン等)に及ぼす影響が懸念されている。NOAAのスピンラード長官補は、この研究は大量のCO2を含む大気の影響や海洋での循環を解明する上で不可欠だとしている。

海の酸性化で沿岸の生物の殻が溶ける?

May 22, 2008 John Roach for National Geographic News

 北米西海岸の海水の酸性化が大きく進んでいることが明らかになった。原因は大気中への炭酸ガス放出のためだ。これにより、経済的にきわめて重要な海洋生態系が大きく変化する恐れがあるという。

 太平洋海洋環境研究所の海洋化学者であるリチャード・フィーリー氏らは、北米西海岸のカナダ中央部からメキシコ北部にわたって海水の酸性度を測定した。その結果、深海部の海水は貝殻やサンゴ礁を侵食するほどの酸性度で、その水が毎年、春から夏にかけて大陸棚までわき上がってくることが分かった。

 海洋は巨大な炭素吸収源として古くから知られている。人間による二酸化炭素(CO2)放出量の3分の1から2分の1が海洋で吸収され、地球温暖化の影響を和らげているのだ。だが、「吸収された二酸化炭素で海水のpH(水素イオン指数)が低下し、海中の化学物質や生態系が変化してしまう」とフィーリー氏は話す。

 海水が酸性化すると、海洋生物は外骨格や殻を作るために必要な炭酸カルシウムを生成しにくくなる。「海草や浮遊性の植物、動物は身を守るために炭酸塩の殻を作るが、その能力が衰えてきていると指摘されている」(フィーリー氏)。こうした能力が低下した生物には例えば、翼足類という水中を泳ぐ軟体動物がいる。エビに似たオキアミからクジラに至るまでさまざまな生き物のエサとなる生物で、サケをはじめとする商業用の魚にとっては欠かせない食料だ。「海洋の酸性化は漁業やサンゴ礁の生態系に影響を及ぼし、アメリカだけでなく全世界の経済をも脅かす恐れがある」(同氏)。

 カリフォルニア州のワシントンカーネギー研究所で海洋の酸性化を研究する地球科学者のケン・カルダー氏は「炭酸カルシウムでできた殻が既に沿岸の海水で分解されているかもしれないとは驚きだし、恐ろしいことだ」。同氏によると「沿岸の海水が浸食作用を持つのは、世界的に見て北極・南極では今世紀半ば、カリフォルニア沿岸に至っては来世紀と予測されていた」という。また、「海洋の酸性化に適応し、これまで以上に殻を作る力を伸ばすような生物は、実験でも見つかっていない」と付け加えた。

死にゆく東海、ウニが大繁殖

2008/04/11 朝鮮日報/朝鮮日報JNS 朱完中(チュ・ワンジュン)記者

海藻類を食べ尽くしながら繁殖し生態系を破壊

 ウニが東海(日本海)を荒らしている。東海側の慶尚北道浦項地域から休戦ライン近くの江原道高城付近までの漁場が、ウニにより荒れ果てているのだ。

 海の底に生息するワカメや昆布などの海藻類をウニが片端から食べ尽くし、海中が砂漠のように白くなる白化現象が進んでいる。

 国立水産科学院東海水産研究所が10日に明らかにしたところによると、東海岸の漁村近くにある漁場の15%以上で白化現象が進んでおり、三陟市遠徳邑内にある三つの村近くの漁場では、白化が起こった面積が60%以上に達しているという。

 この付近一帯の漁場の海底にある岩の上は、海藻類が姿を消して黒いウニに覆われており、魚の姿もほとんど見られない。近くに住む漁師のキム・マンオクさんは、「白化が進んで漁獲量も以前の3分の1にまで減った。魚を取るのをあきらめることも考えなければならない。海女たちの収入源であるナマコやアワビもずいぶん数が少なくなった」と語る。

 東海水産研究所が高城郡近くの海域で海藻類の生息状況を調べたところ、2005年に天草、海苔、青海苔など20種以上あった海藻類が、昨年は11種へと急激に減少したことが分かった。

 問題がこのように大きくなったのは、03年から05年にかけて地方自治体や現地の住民らが、海草の分布状況も把握せずに62万匹のウニをこの海域に放流したからだ。成長したウニを日本に輸出する計画だったが、低価格の中国産に押されて販売が思うようにいかなったことから、漁師たちも獲らなくなった。

 またウニの天敵である石鯛も乱獲の影響で減少し、その上地球温暖化で冬の水温も上昇しているため、海藻類が繁殖しにくい環境になったのも原因の一つだ。

 韓国政府は06年からウニの放流を中断し、海中の海藻類を人工的に育てる事業を行っているが、今のところ成果は出ていない。

海の外来種、沿岸の84%に 米環境保護団体が調査

2008年03月22日 中国新聞ニュ−ス

 世界の232の沿岸域の少なくとも84%が有害な外来種の影響を受けており、国際航路の船舶のバラスト水や養殖業が拡大の主因になっているとの調査報告を、米国の環境保護団体、ザ・ネーチャー・コンサーバンシー(TNC)の研究グループが22日までにまとめた。日本沿岸でも、ほぼ全域で影響が深刻だという。

 バラスト水は、空荷の船を安定させるため積み込む海水などのことで、含まれていた生物が排水の際に広がったとみられる。研究グループは「海の外来種に関する初めての地球規模の調査で、問題の深刻さが明らかになった」と、各国に対策強化を求めている。

 研究グループは、世界各国の研究報告に自らの調査結果を加え、世界の沿岸を生態系によって232の海域に分け、外来種の有無を調べた。194海域で計329種類の外来種が確認されていた。

 カニなどの甲殻類や貝などの軟体動物、藻類や魚と多様で、オホーツク海や日本海、太平洋沿岸など日本周辺では16種の有害外来種が確認された。

中国・三峡ダム完成で韓国近海の生態系破壊(上)

2008/01/21 朝鮮日報/朝鮮日報JNS パク・ウンホ記者

 世界最大のダムとして中国・長江中流に建設が進んでいる三峡ダムが、韓国近海の環境に影響を与えるとの懸念が現実のものになりつつある。三峡ダムで長江がせき止められ、淡水の海への流入が減り、淡水に含まれるさまざまな栄養成分が海に供給されなくなった結果、海洋生態系が破壊されていることが、最近の研究で判明した。

 韓国海洋研究院は、昨年夏に長江の河口から約300キロ離れた済州島周辺の韓国南西部沿岸にある50カ所で三峡ダム建設による海洋環境の変化を調べた。その結果、植物プランクトンの炭素生産量が急激に低下していることが分かった。2006年には1立方メートル当たり561ミリグラムだったが、昨年は同456ミリグラムとなり、1年で20%も減少したことになる。

 同研究院の崔東林(チェ・ドンリム)博士は「(植物プランクトンの減少は)長江の淡水に含まれる窒素、リンなどさまざまな栄養成分が海に供給されなくなり、植物プランクトンのえさが急減したため」と説明した。植物プランクトンのえさとなる窒素化合物は、06年の海水1リットル当たり15マイクログラムだったが、昨年には0.4−0.7マイクログラムとなり、95%以上減少したことが実際に判明した。

中国・三峡ダム完成で韓国近海の生態系破壊(下)

2008/01/21 朝鮮日報/朝鮮日報JNS パク・ウンホ記者

 漢江水環境研究所の孔東寿(コン・ドンス)所長は「窒素化合物は陸地の上水源では汚染を引き起こす原因物質だが、海では生態系を維持するのに必要な栄養素だ。窒素化合物が急減すると、それをえさとする植物プランクトンが減り、それが動物プランクトン、魚類へと波及し、生態系の食物連鎖が連鎖的に影響を受けることになる」と警告した。このため魚の産卵減少と成長遅延などの影響は避けられず、韓国の水産業にも大きな打撃が予想される。

 国策研究機関のある海洋生態専門家は、「植物プランクトンの減少はこれまでバランスが取れていた西海・南海岸の海洋生態系が破壊されていることを示す深刻なシグナルだ。徹底的、継続的な環境への影響調査をはじめ、対策が急がれる」と指摘した。

 さらに今回の調査では、海洋生態系が急変を示す別の兆候も見られた。まず、海水の平均塩分濃度が急上昇した。済州島一帯の塩分濃度は長江の淡水が流入していた06年夏には海水1リットル当たり28グラムだったが、昨年夏には32グラムへと14%も上昇した。海洋研究院は、東シナ海と南海(韓国南部沖)に流入する淡水の80%を供給していた長江に三峡ダムが建設されたためだと分析している。崔博士は「長江から海に流入する堆積物も三峡ダム工事以前の 33%に減少した。今後、環境への影響に関する長期的な研究が必要だ」と述べた。

さんご礁育たぬ海ばかり 50年、温暖化と酸性化で

2008.01.05 MSN産経新聞

健全なさんご礁(上)と白化が深刻なさんご礁=グアム島(米海洋大気局提供)

 地球温暖化が今のペースで進むと、日本周辺を含め、現在さんご礁が存在する海の98%が2050年ごろにはサンゴが生育できない海になり、今世紀末にはほとんどのさんご礁が消失する可能性が高いとの予測結果をオーストラリア・クイーンズランド大や米、英などの国際研究チームが5日までにまとめた。

 温暖化による水温上昇の影響に、大気中の二酸化炭素(CO2)が溶け込んで起こる海水の「酸性化」が加わるためで、温暖化がさんご礁に与える影響は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価よりも大きいという。

 2008年は各国がさんご礁保護などに協力して取り組む「国際サンゴ礁年」。研究チームは「大幅なCO2の排出削減と同時に、世界のサンゴ保護対策を強化する必要がある」と指摘している。

 同チームによると、海水温が異常に高い状態が続くと、サンゴに共生する藻類が脱落する「白化」が発生。大気中のCO2濃度が高まると、海水に溶け込むCO2の量が増えて海水のアルカリ度が低下する「酸性化」が進み、サンゴが炭酸カルシウムの骨格を作って成長することが難しくなる。

 チームは、大気中のCO2濃度変化が、海水温度や海水中の炭酸イオン濃度に与える影響を予測するコンピューターモデルを開発。

 IPCCのシナリオに基づいて計算した結果、現在380ppm(ppmは100万分率)である大気中のCO2濃度が今世紀半ばに450−500ppmに達すると、サンゴの生息状況が悪化して、さんご礁にすむ生物種の数も減少すると予測された。

 500ppmを超えると、世界のほとんどの海域でサンゴが骨格をつくることができなくなるほどの酸性化が進み、海面上昇の影響もあって、大部分のさんご礁が消失するとの結果が出た。

“サケ” 日本沿岸から消える? 温暖化で漁場北上

2007.11.24 MSN産経新聞

 サケの遡上(そじょう)シーズンを迎えた北の海で異変が起きている。サケ漁全盛期に入ったにもかかわらず、青森、岩手両県の漁獲量が伸びないのだ。約20年前と比べると漁獲量は約半分。地球温暖化の影響とみられ、北海道北部では好調だが、今後さらに漁場が北上し、日本沿岸から遠ざかる恐れが指摘されている。

 青森県によると、同県内のサケの漁獲量は昨年の7割以下(11月10日現在)。特に県北部の津軽海峡周辺では昨年比65%、陸奥湾では昨年比40%にとどまっている。岩手県でも不漁が続き、漁獲量は昨年の8割程度しかない。

 両県のサケの水揚げ量はここ20年で半減。青森の漁獲量はピークだった平成2年に比べて半分以下、岩手の漁獲量も6割弱にまで落ち込んだ。

 これについて、サケの生態に詳しい北海道大水産科学研究院の帰山(かえりやま)雅秀教授は、青森、岩手沖の水温上昇と海流の変化を指摘する。「温暖化による水温上昇に加え、日本海を流れる対馬暖流が太平洋の岩手沿岸まで回り込んで水温を上げている。魚は水温に敏感だ」という。

 北海道では全体的には漁獲量が減少しているものの、オホーツク南部海域ではここ数年、漁獲量が向上。同海域の昨年の漁獲量は2000万匹を超え、20年間で3倍以上となった。

 帰山教授は「水温が上昇し、サケにとってオホーツク海の水温が適温になりつつあるのではないか。50年後には漁場がオホーツク北部に移り、日本沿岸でサケが取れなくなるかもしれない」と話している。

死の海を救え、中国・渤海湾浄化で運河構想

2007/11/23 朝鮮日報/朝鮮日報JNS 北京=李明振(イ・ミョンジン)特派員

 中国政府は、深刻な水質汚染で「死の海」となっている渤海湾の浄化を図るため、大規模運河の建設を計画している。

 渤海湾と西海(黄海)の間にある山東半島を南北に貫く運河を建設し、よどんでいる渤海湾の海水が西海の海水と混ざるようにすることで、渤海湾の水質を浄化するのが狙いだ。天津−上海間の航路も約300キロ短縮され、物流費用の節約も見込める。

 運河は渤海に面した莱州と西海側の青島郊外にある膠州を結び、長さが110−130キロ、幅200メートル、深さ10メートル規模。建設費は1000億元(約1兆4600億円)が見込まれる。

 中国政府は運河建設を含む「渤海湾環境保護計画」を第11次5カ年計画(2006−10年)の戦略プロジェクトに盛り込み、11の関係官庁のうち10官庁から建設に向けた同意を取り付けた。

 現在渤海湾には、毎年57億トンの汚水と216万トンの汚染物質が流入している。専門家は現在の状態が続けば、10年後には生物が生息できない「死の海」に変わると警告している。

 しかし、運河建設より渤海への汚染物質流入を遮断するほうが経済的で、運河を建設すれば西海までもが汚染されるとの反対論も根強い。運河が通過する地域では土壌が塩分による被害を受けることも考えられる。

北極海の氷どけ 北西航路開通

2007/09/18 The Sankei Shimbun WEB-site
 

 欧州宇宙機関(ESA)は先に、氷に閉ざされていたカナダやアラスカの北極海沿岸の氷が溶け、欧州とアジアを結ぶ北西航路を船が通れるようになったと発表したが、ロシア沖を通る北東航路も部分的に開通している。両航路が完全に通れるようになると、アジアと欧州、米東海岸を結ぶ航程は最大で半分になるという。

 ESAによると、2005〜06年には400万平方キロあった氷が300万平方キロまで縮小し、氷の溶解は加速しているというが、地球温暖化の進行による思わぬ“恩恵”といえそうだ。

 北極海を通る航路は太平洋と大西洋を結ぶ最短ルートとして、数々の探検家が挑戦。北西航路はノルウェーの探検家アムンゼンが1903年から3年がかりで横断。北東航路は1879年にフィンランドの探検家ノルデンショルドが横断に成功し、日本に到着した。

 日本は、治安が不安定な中東のスエズ運河や海賊事件が続発するマラッカ海峡を通る代替ルートとして、北極海の航路に注目してきた。

 海洋政策研究財団の北川弘光特別研究員は「温暖化で北極海にスケトウダラなどの水産資源も移動しつつある。エネルギー資源だけではなく、水産資源確保の道を開くため真剣に北極海航路について考える必要がある」と話している。(杉浦美香)

カキ使い東京港を浄化 都がお台場で実験

2007/09/05 The Sankei Shimbun WEB-site

 東京港の水質改善を目指し、東京都がお台場海浜公園(港区)でカキや海草を使った海水浄化実験に取り組んでいる。カキは赤潮の原因となる窒素やリンなどの有機物を吸収し「1個が1日約400リットルの海水を濾過(ろか)する」(都港湾局)とされており、3年をかけて効果を検証する。

 実験は、公園沖の水深約2メートルの場所に宮城県産のマガキ4万個をつるしたいかだを浮かべ、海中にはカキの排せつ物を食べるナマコを100匹放流。有機物を分解する微生物が付着できるよう大量のカキ殻を積み上げたり、アマモやアオサなど海草を植えて自然に近い環境をつくり、これらの生物が定着するかどうかも調べる。本年度の事業費は約1500万円。

 都港湾局によると、東京港は下水道の普及や汚泥の浚渫(しゅんせつ)により、海の汚れを示す化学的酸素要求量(COD)は環境基準を下回るようになったが、窒素やリンは基準を達成できず、慢性的に赤潮が発生している。

 都は「汚泥の浚渫は対症療法。自然の力で浄化できる方策を探りたい」としている。

中国の海洋汚染が深刻化

2007/08/03 The Sankei Shimbun WEB-site

 中国の通信社、中国新聞社によると、国家海洋局は3日、今年上半期の海洋環境調査結果を発表、陸から海に排出される汚染物質が前年同期比約7%増の1日平均9230トンに達し、中国近海の汚染が深刻化していると指摘した。

 また汚染物質を流す排水口が養殖、観光、自然保護地区に設置されているケースが全体の43%に上ることが判明、排水口の適切な配置が必要と強調した。(共同)

赤潮を9割駆除 水酸化マグネシウム使い

2007年07月28日 中国新聞ニュース

 赤潮対策として水酸化マグネシウムを使うと、養殖の魚介類への影響が小さく、赤潮の原因となる微生物を90分間で9割駆除できたとの結果を、前田広人三重大教授らが28日までにまとめた。

 効果的な方法になる可能性があり、今後、大規模な試験で効果を実証したいとしている。

 宇部マテリアルズ(山口県宇部市)、ニチモウ(東京)との共同研究。

 前田教授によると、水酸化マグネシウムは海底の泥を浄化する薬剤として使われており、赤潮への応用を考え実験。直径3マイクロメートル(マイクロは100万分の1)程度の微粒子にし、海中に長時間漂うようにした。赤潮の原因となる代表的な3種類のプランクトンがいる海水に、1リットル当たり0・2グラムを混ぜ効果を確認。瀬戸内海で赤潮が発生した海域を仕切り実験し、同様の効果があったという。

9割に問題、要精密検査 閉鎖性海域の“健康診断”

2007年06月12日 中国新聞ニュース

 海洋政策研究財団(東京)は12日、全国71の湾などの閉鎖性海域のうち、90%には赤潮や有害物質汚染など何らかの問題があり精密検査が必要だとする“健康診断結果”を公表した。

 財団は「過去に流入した有機物などの影響で、海は健康を取り戻せないでいる」としている。

 財団は、自治体のデータや独自の検査結果を基に「物質循環の円滑さ」と「生態系の安定性」の2分野について計13項目をA(良好)、B(要注意)、C(要精検)の3段階で評価。

 東京湾、三河湾、大阪湾などの健康度が低く、Cが1つもなかったのは宮古湾(岩手県)、万石浦(宮城県)、松川浦(福島県)、敦賀湾と矢代湾(福井県)、仙崎湾(山口県)、志度湾(香川県)の7カ所だった。

海水温、世界の3倍上昇 日本近海、過去100年で

2007/05/15 中国新聞ニュース

 ▽温暖化一因か、気象庁観測

 日本周辺海域の年平均海面水温は、過去百年で一・六―〇・七度上昇しており、一部海域を除き世界平均の最大三倍のペースで上がっていることが十五日、気象庁の観測で分かった。

 世界の年平均海面水温の上昇度は過去百年で〇・五度。日本近海はこの三・二―一・四倍に当たることになる。

 気象庁は「地球温暖化も一因とみられるが、はっきりした原因は分からない」として今後、分析を進める。専門家から漁業への深刻な影響を懸念する声も出ている。

 気象庁は、十九世紀末ごろから観測船や一般商船などが測定した約二千万件の海面水温(水深一、二メートル程度)データに基づき、日本周辺海域を十三区分し、過去百年間の上昇度を調べた。

 水温の上がり方が一・六度と最も大きかったのは日本海中部。黄海や東シナ海、東海―四国沖などほとんどの海域で、世界平均の二倍の一・〇度以上、上がっており、地球温暖化に伴う日本の地上気温の上昇度(百年で一・一度)と同程度という。

 一方、東北沖の太平洋や北海道・釧路沖、日本海北東部では、顕著な上昇はみられなかった。

 ユーラシア大陸の中・高緯度地域で地上気温の上昇が大きいため、日本近海はこの影響を受けた可能性があるが、海水温上昇には温暖化のほか親潮や黒潮のコースや潮位なども関係するという。

 同庁は「温暖化の影響がどのくらいあるのか、調べる必要がある」としている。

西海隣接した渤海湾の汚染が深刻

2007.03.14 中央日報 北京=チン・セグン特派員

昨年、中国の渤海湾に流入した有害性廃棄物が57億トンに達するものと推定された。

このうち15.8億トンは有毒性化学工業関連廃棄物だ。中国海洋局傘下の海洋発展戦略研究所(海発研)の推算だ。これとは別に20億トンの固体のごみが渤海湾に捨てられた。渤海湾が汚染しているという報道は何回も出されたが、具体的にどの程度ごみが捨てられているかは今回初めて明らかになった。こうした中、北京にある首都製鉄所が渤海湾に移転し、新首都製鉄所という名前に生まれ変わる。新たに建設される製鉄所は単一工場としては中国最大になる。工場移転で渤海湾汚染が広がるという指摘もある。

◆沿岸地域魚類はほとんど絶滅=高之国海発所長は12日、第10期5次全国人民代表大会(全人大)で渤海湾汚染問題を深刻に提起した。中国言メディアもこれを大きく報道した。高所長全人大環境委員会に出席し「有害ごみが大量流入され渤海湾近海の魚類とエビ、カニなど主要水資源が消えている」とし「漁民たちの生活は貧困な状態」と指摘した。高所長は「渤海湾汚染源は80%が生活下水と工場廃水、化学肥料など」とし「渤海湾が半ばふさがっているので汚染度は想像を超えている」と明らかにした。中国海国が発表した2005年渤海湾汚染状況によると「軽い汚染地域」「汚染地域」「深刻な汚染地域」が前年に比べそれぞれ190平方キロ、580平方キロ、3百平方キロ増えた。

◆ 取り締まり法令がない=中国の「水資源汚染防止法」は刑事処罰規定をもつが、海洋汚染はもたない。したがって海洋汚染は環境法と海洋環境保護法、清潔生産法などの規定を援用するほかない。しかしこうした法律は一般法なので、規制が弱い。法ごとに所管部処が違い、効果的な規制を妨げている。例えば海洋環境保護法は環境保護局、海洋事務局、漁業政策局、海事局など多くの組職にまたがっている。有害物質海洋放流は明白な不法行為だが、これを規制する効果的な手段がないといえる。

◆ 韓中間環境紛争可能性も=中国国家環境局は2001年「青い渤海作り計画」を樹立した。15年間555億元(約8255億円)を投入するという青写真だった。しかしこれまで特に効果をおさめることができていない。周辺の4工業地球で汚染物質をむやみに捨てているからだ。渤海湾汚染を放っておく場合、つながった西海(ソヘ、黄海)も悪影響を受けるほかない。専門家は韓中間の環境紛争が起きることもあると懸念している。高所長は「渤海環境保護法制定が至急だ」と話す。「中央政府で環境保護のための特別機構を設立し、これを通じて▽排出物質に対する先端監視システム導入▽周辺工業地域に対する規制と監督▽外国の成功事例収集−−など多角的な対策を用意しなければならない」と建議した。

温暖化で海水冷える、南極の氷が解けて流入

2006年09月23日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ワシントン=増満浩志】地球温暖化に伴って上昇し続けてきた海洋上層部の水温が、2003年から05年にかけて低下していたことが、米海洋大気局(NOAA)と米航空宇宙局(NASA)の調査で分かった。

 水は冷えると収縮して海面が下がるはずなのに、海面上昇は続いていることから、研究者は「南極やグリーンランドの氷が解けて海へ流入した影響が考えられる」と指摘している。

 両局は、世界の海洋に設置されているブイや船などによる観測データを解析。その結果、深さ750メートルまでの海水温は、03年までの10年間に0・09度上がったが、その後の2年で0・03度も下がったことが判明した。海水は過去半世紀の間、大気などから熱を吸収して温まってきたが、その熱の5分の1をわずか2年で失った計算になるという。

太平洋の海水、じわじわと酸性化…米研究者ら観測

2006年04月06日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ワシントン=増満浩志】広大な太平洋の海水がじわじわと酸性化していることが、米海洋大気局(NOAA)と全米科学財団(NSF)による観測で明らかになった。

 観測を率いる同局のリチャード・フィーリー博士は「大気中に増えた二酸化炭素を、海が吸収した結果」とみている。

 同博士らは、今年2〜3月、南半球のタヒチから米アラスカまで航海し、広範囲の海水を採取した。

 分析の結果、アルカリ度の指標となる水素イオン指数(pH)は、約15年前の観測値より平均約0・025低下し、酸性化を示した。また、二酸化炭素などの形で溶け込んでいる無機炭素量は、海表面の水1キロ・グラムあたり15マイクロ・モル(モルは分子数の単位)増えていた。同博士は「どちらも劇的な変化」としている。

 研究者らは、酸性化によって一部の生物の外骨格からカルシウムが溶け出すなど、生態系への影響を懸念している。

トヨダプロダクツ、携帯できる海水の浄水器を販売

2006/03/14 NIKKEIe

 事務機器メーカーのトヨダプロダクツ(群馬県桐生市、山口正夫社長)は、海水を飲用可能にする携帯型の浄水器を開発した。手動式で災害時などに手軽に水を確保できる。離島や海岸沿いにある自治体のほか家庭、船舶業者などからの需要を見込む。

 浄水器は高さ50センチ、幅29センチ、厚さ23センチのケース型。2004年末から販売している淡水用の浄水器と同じ大きさだが、質量は5キロ重い12キロとなる。販売価格は24万円前後。

 ケースを開き、手動のレバーを上下に動かしてケース下部にためた海水をくみ上げる。ケース上部の非常に小さな穴を持つ人工膜のフィルターでろ過し、細菌やウイルス、有害な化学物質などを除去。1分間で約100ミリリットルの飲用水が取り出せる。

 携帯型浄水器は地震など自然災害時に役立つほか、船に積んでおいて飲料水の確保が必要な場合にも力を発揮する。淡水用の浄水器は自治体や企業から注文が相次いでいるという。

 子会社のエイアンドエイティー(群馬県桐生市)を通じ販売している。

オホーツクの流氷異変、早くも海明け 観光船もキャンセル続き

2006/03/04 The Sankei Shimbun

 北海道のオホーツク沿岸に押し寄せる流氷が早くも沿岸から遠ざかり、船の航行が可能になる「海明け」になった。観光の目玉の流氷砕氷船はキャンセル続きで、業者らは困惑している。

 ことしの流氷は2月5日、根室市で接岸初日を観測。だが2月中旬に網走市などで岸から離れ始め、網走地方気象台は今月3日、海明けが2月15日だったと発表した。平年より約1カ月早い。

 例年は3月中旬ごろまで流氷で覆われるだけに、第一管区海上保安本部(小樽)は「この時期にこれほど(岸から)離れているのは記憶にない」と話す。

 札幌管区気象台によると、流氷がオホーツク沿岸に寄りにくい西風が、2月に吹いたことが主な原因とみられる。オホーツク海の流氷域面積も1月末時点で過去最低を記録。地球温暖化の影響も一部で指摘されるが「関係あるか分からない」(札幌管区気象台)という。

 巨大なローラーで流氷を砕きながら進む流氷砕氷船「ガリンコ号」は本来の馬力を観光客らに披露できない。運航するオホーツク・ガリンコタワー(紋別市)は「約200件のキャンセルが出た。流氷がないと、運賃も3割引きで、収益も出ない」と深刻な状況。知床半島ウトロ地区の大型ホテルは「今は個人客のキャンセルが数件出ている程度だが、これから増えないか心配だ」と話している。

増える冠水に“遺産”危機

2006年01月28日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 ◆対策立てても…

 海面から突きだした朱塗りの柱の塗装が、床から40センチ上まではがれていた。推古天皇時代の6世紀に創建された世界文化遺産、広島県・宮島の厳島神社。平清盛が1168年に造営した寝殿造り社殿は満潮時、床下まで海面が迫り、緑の原生林を背に、海に浮かび上がる。平舞台の上まで冠水すると、床板がはずれて海面に浮き、柱にぶつかる。そぎ落とされた塗装は、冠水が繰り返された証拠だ。

 「床板はクギで固定せず、冠水すれば自動的に外れて浮く構造。嵐の時は浮いた床板が強い波を打ち消して奥の社殿を守る。自然災害への知恵が生かされています」。同神社禰宜(ねぎ)の飯田楯明さん(66)が語るように、平安時代の設計は、冠水も織り込み済みだった。

 ところが、年数回だった冠水の回数が21世紀に入り、急速に増えた。神社の記録では01年は11回、04年は21回に達し、これ以上増えれば歴史的な防災設計も追いつかなくなる。

 広島港の潮位観測でこの半世紀、海面は約30センチ上昇。広島県文化財保護審議会の調査で、地盤沈下、黒潮接近、温暖化による海面上昇などが原因と指摘された。土台を継ぎ足す、沖に防潮堤を作る、コンクリート造りにする――などの対策が提案されたが、いずれも景観は台無しになる。

 もう一つの世界文化遺産、ベネチアも危機にある。アドリア海の宝石と言われる運河の街の起源は、フン族の騎馬隊が入り込めない干潟に水上都市を築いた5世紀にさかのぼる。

 海に面した表玄関のサンマルコ広場。冬の季節風が吹く満潮時に海面が上昇して海水が浸入、広場は池のようになる。このアックア・アルタ(高潮)は冬の風物詩でもあったが、その回数が増えている。ベネチア市の広報担当、マウリツィオ・カッリガロさん(51)は「20世紀初頭には目立った冠水は年数回だったのに、近年は年約40回に達します」と肩を落とす。

 この1世紀、ベネチアの地盤は約13センチ沈下、そのうえ海面は約10センチ上昇した。地下水くみ上げの禁止で地盤沈下は止まったが、海水面上昇はじわじわと進む。水上バスで巡ると、多くの木造建築が地面から数十センチまで海水で変色、朽ち始めている。

 同市はアドリア海とつながる3か所の水路に、可動式の水門を建設する「モーゼ」計画を進めるが、環境影響や効果への疑問で、賛否両論が戦わされている。

 ◆上昇する平均気温

 海は地球表面の7割を占め、気候に大きな役割を果たす。水深500メートルまでの海水温が1度上昇すれば水が膨張、世界の海面は10センチ上昇する。気象庁の「異常気象レポート2005」によると、海水温はこの1世紀、平均0・48度上昇、日本周辺の海面は毎年4・3ミリずつ上昇している。

 国連の気候変動政府間パネル(IPCC)は01年、第3次報告書で「地球の雪氷面積は縮小、平均気温は今後も上昇し続ける」と指摘した。これを裏づけるように異変は各地で顕在化し、私たちの生活や文化を変えようとしている。来年発表の第4次報告書では、さらに厳しい警告が盛り込まれるという。地球の使い方を、私たち自身が決めなければならない時代が迫っている。(おわり)

2℃が限界?! 地球温暖化の最新情報

2006-01-20 環境NGOのCASA

今地球の海で ―上がる海水温度―

 米ワシントン大学の研究グループは昨年9月に、世界の海面温度は1950年からの約50年間で約0.5℃上昇していると発表しました。また米海洋大気局(NOAA)は、この温度上昇をすべての海水温度に平均すると、約0.037℃の上昇になると計算しています。

みなさんはこの温度上昇の幅を小さな数字だと思われますか?一般に海水は空気に比べて約1000倍もの熱を蓄えることができると言われています。そこでこの海水温の上昇分を大気に戻した場合、 なんと大気中では約40℃もの温度上昇をもたらすことになります。すなわちこのわずかだと思われる0.037℃という温度上昇は、じつは膨大なエネルギーの吸収を意味しているのです。そしてこのエネルギーの一部が強い台風やハリケーンを多発させると考えられています。

 ところで国立環境研究所などの報告を見ると、日本でもこのまま温暖化が進めば2100年には日本海沿岸の海面水温が約3℃上昇すると予測されています。これによって自然災害の激発と共に生態系への影響が危惧されます。たとえば昨年10月、北海道大学大学院の山中康裕助教授は温暖化の影響で植物、動物プランクトンの減少により、今世紀末にはサンマが10センチくらいの大きさになってしまい、漁場も遠ざかるのではないかという研究結果を発表しました。

 しかし生態系への影響はかならずしも遠い将来のことではなく、2004年末に熱帯に生息するオニヒトデが紀伊半島南端で大発生して、テーブルサンゴなどへの食害が深刻化したこと、あるいは海水温上昇により沖縄のサンゴの白化が進んでいることなどをニュースなどで耳にしている方も多いのではないでしょうか。一方、昨年11月にはWWFが、このまま海水温度の上昇が続くと、米国やカナダの周辺海域では、比較的低温を好むタラやカレイ、スズキなどの魚の資源量が大幅に減少し、その分布も大きく変化するという報告書を出しています。このように私たちに身近な魚についても温暖化によると考えられる悪影響が憂慮されます。

津波の早期警戒で日本に協力を要望 インドネシアと初会合

2006/01/11 The Sankei Shimbun

 2004年12月のスマトラ沖地震を受け日本とインドネシアの防災担当相レベルで設置した共同委員会の初会合が11日、東京で開かれた。

 インドネシアは、津波の早期警戒システムの開発や地震などに対する建築物の安全基準の策定などで日本に協力を求めた。これを受け、国土交通省などは、建築物の耐震基準の制度、導入にかかるコストや利点などについて12日にインドネシア側と意見交換する。

 このほか11日の会合では、両国が、日本の協力で設置している地震計についてオンライン化することを確認した。

 委員会は今後、4月ごろに国交省などの専門家による調査団を派遣、土砂災害や津波などを監視するモニター設置などで日本の技術が生かせるかを調査し、7月にジャカルタで第2回会合を開く。

 05年6月の小泉純一郎首相とユドヨノ大統領との会談で、委員会の設置が決まっていた。(共同)

地球温暖化による海水酸性化で海洋生物が絶滅の危機に

2005年11月29日 オーストラリア ニュ−ス

 ブリスベン 29日- 連邦科学産業機関(CSIRO)の科学者によると、オーストラリアの海に住む軟体動物の甲殻が、地球温暖化によって酸性化が進む海水によって腐食され危険にさらされている。

 同機関は、海洋の食物連鎖系の一番下に位置する軟体動物が酸性化する海水に腐食され数が減少し、その影響で海の食物連鎖が崩壊の危機にさらされていると述べた。

 同機関の科学者アンソニー・リチャードソンによると、海水によって吸収された空気中の二酸化炭素が海水を酸性化し、炭酸カルシウムで出来た石灰質の甲殻を腐食させている。この影響は特にオーストラリアと南極の間の海で顕著に見られ、今世紀末にはこの地域の海洋に住む石灰質甲殻を持つ生物が絶滅する危険がある。

 石灰質の甲殻をもつ棘皮動物(ウニやヒトデなど)も同様に危機にさらされている。

CO2増加で海水酸性化、サンゴ溶解も 研究チーム予測

2005年09月29日 人民日報社 「asahi.com」

大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が現在のペースで増すと、海水の酸性度が上がって、50年後にはプランクトンやサンゴが溶け出し、生息海域が減り始めることを日米欧など8カ国の研究チームが予測した。29日発行の英科学誌ネイチャーに発表した。海の生態系全体に深刻な影響を与える恐れがあるという。

研究チームは、CO2の濃度分布について、各国の計算モデルのうち最も確かと思われる予測をもとに、海域ごとの酸性度の上がり具合を計算した。

現在の海水はpH(水素イオン濃度)が8程度の弱アルカリ性だが、水温が低くてもともとCO2が多く溶けている南極付近からアルカリ性の度合いが弱まり、50年後にはプランクトンの翼足類や、冷水サンゴの殻が溶ける海域が現れることがわかった。翼足類は世界中に分布する一般的な動物プランクトンで多くの魚種がエサにする。冷水サンゴは多くの魚種がすみかとする。これらが生息できない海域が100年後には南極海全体と北太平洋の一部に広がることがわかった。

実際に洋上で実験したところ、100年後の酸性度だと48時間以内に翼足類の殻が溶け始めることも確かめた。

研究に参加した海洋研究開発機構の山中康裕サブリーダーは「海洋生物への影響は気候変動よりはるかに短期間で起きるとわかった。その仕組みは明確で、予測の不確かさは気候変動より小さい。いずれ排出削減の議論に大きく影響するだろう」と話している。

スマトラ島西岸、津波4キロ内陸へ…半島没し「島」に

2005/01/28 読売新聞 Yomiuri On-Line

 インドネシア・スマトラ島沖地震による大津波が、震源のすぐ東側にあるスマトラ島北部の西岸では最大4キロ・メートル内陸まで到達し、森林などが根こそぎ流されていることが、国土地理院(茨城県つくば市)による人工衛星の画像解析などからわかった。

 同島北西部では、地震と同時に地盤が1―3メートル沈み込んだところに、巨大津波が襲った可能性が高く、半島の根元が1・2キロ・メートルにわたり水没し、先端が切り離されて島になってしまうという地形の激変も確認された。

 同院地理地殻活動研究センターの飛田幹男主任研究官らは、地震後の昨年末にカナダのレーダー衛星から撮影された画像と、昨年7月撮影のものをコンピューターで比較した。その結果、スマトラ島の北西部沿岸の広い範囲で海岸線が水没したり、森林などが流出し、更地になっていることがわかった。

 川沿いや標高が低いと考えられる地域では、特に津波が内陸の奥深くまで到達。約4キロ・メートル入った場所でも根こそぎ木々がなくなっていた。

 また地震を起こした断層の東端が同島西部沿岸に重なっている可能性が高く、断層がすべって地盤が3メートル近く沈下し、津波被害が大きくなったとみられる。

 飛田主任研究官は「同島西部の沿岸は森林地帯で、これまで実地調査できない地域だった。今後は、さらに標高なども分析して、津波の高さや地盤の沈下などを詳細に調べていきたい」としている。

 スマトラ島の北西部は今回のインド洋津波(スマトラ島沖地震)で最も被害の大きかった地域だ。

 全体の死者・行方不明者は29万人以上とされるが、インドネシアの死者・行方不明者は23万261人(27日現在、インドネシア保健省発表)。

 この大部分がスマトラ島北西部での犠牲者とみられている。

犠牲者総数23万4000人に インド洋大津波

2005/01/24 The Sankei Shimbun

 インドネシア保健省は23日、スマトラ沖地震と津波による同国の死者数が17万3981人になったと発表した。ロイター通信によると、これにより被災各国の死者総数は約23万4000人に達した。

 同保健省によると、インドネシアでは、最大被災地アチェ州で死者が7000人以上増加。北スマトラ州の死者数は240人で変わらなかった。

 行方不明者はアチェ州で7249人、北スマトラ州で25人。(共同)

広島原爆の5分の1に匹敵…タイの津波圧力

2005/01/10 読売新聞 Yomiuri On-Line

 スマトラ島沖地震でタイ南部のカオラックを襲った津波の圧力は、広島に投下された原子爆弾の爆風の約5分の1に匹敵することが、現地調査を行った松冨英夫・秋田大助教授らの分析で明らかになった。

 松冨助教授らは先月30日から今月3日まで現地へ入り、建物の外壁に残る水流の痕跡などを詳しく測量した。その結果、押し寄せた津波の高さは10・6―3・1メートル、スピードは秒速8―6メートルだったと判明。水流の圧力は、1平方メートル当たり6・7―3・7トンと算出された。

 広島の原爆の爆風は、爆心地付近で同35トンの圧力だったとされる。その5分の一に近い威力の激流によって、カオラックでは、海岸線から約200メートル内陸までのホテルやコテージが、ほぼ一面になぎ倒された。

 一方、カオラックから約50キロ南のプーケット島では、津波の圧力は同1・6―0・9トン。わずかな距離の違いで、津波の威力に4倍もの差がみられた。

 1993年の北海道南西沖地震で奥尻島を襲った津波は、高さが平均10メートルを超えたが、速度が最大でも秒速7・3メートルと、カオラックより小さかったため、最大圧力は1平方メートル当たり約5・4トンだった。

国際的警報システム開発を 国連の防災戦略最終案

2005/01/04 The Sankei Shimbun

 自然災害を減らすために、国際社会が2005年から10年間で取り組む課題を定めた国連の国際防災戦略「兵庫行動枠組」(仮称)の最終案が、4日までにまとまった。

 スマトラ沖地震による津波被害で必要性が指摘された国境を越えた災害への対応のため、国際的な警報システムの開発を盛り込んだ。阪神大震災から10年を機に神戸市で18日から開く国連防災世界会議で採択し、加盟各国に実現を求める。

 最終案は「無計画な都市化や環境の悪化、気候変動などで災害の脅威は増大する可能性がある」「災害リスクは地球規模に拡大し、リスクの管理や軽減は世界的な課題」と指摘している。

 その上で、具体的な行動として(1)危機にさらされた人々に分かりやすい「早期警報システム」の開発(2)防災の成功事例や教訓をインターネット上で共有する地球規模の「プラットホーム」の整備−などを盛り込んだ。警報システムは、警報が発せられた際の行動指針を含み、防災当局による効果的な運用を支援するとした。

 また、災害を減らすための計画作りには、文化的多様性や障害者、社会的に取り残された人々、発展途上国への配慮が必要とし、研究成果や教訓の共有を通じた国際協力強化も課題としている。

 防災世界会議は、1994年に採択された国際行動計画を具体化するために開催。警報システムの開発は、スマトラ沖地震を踏まえて緊急討議課題となる見通しだ。(共同)

インド洋津波:警告の電子メール、確認は地震翌日

2005年01月03日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 3日発売の米誌タイムはスマトラ沖地震の特集記事で、ホノルルの太平洋津波警報センター(PTWC)が昨年12月26日の地震発生後、津波の可能性を警告する電子メールをインドネシアやタイなど太平洋沿岸国に送付したが、インドネシアの津波警報機関の職員がメールを見たのは翌日だったと報じた。

 同誌によると、警報センターは地震の15分後「過去のデータによると(太平洋諸国には)破壊的津波の恐れはない」との情報を発信。地震の規模を拡大して推定した50分後の情報には「震源付近で津波の可能性がある」と付け加えた。

 タイではバンコクでも揺れが感じられたため、タイの地震監視統計センターは問い合わせへの対応に専念。当時、たまたま南東部海岸の保養地で朝食を食べていた同センターのスマレー・プラチュアブ所長は「わが国は過去に津波を経験していないため、津波警報を出すことなど考えもしなかった」と語り、観光産業への打撃を恐れて警報発令をためらったとの一部報道を強く否定した。(ニューヨーク共同)

地震波、地球を8周か? 北大が解析、スマトラ沖地震

2005/01/01 asahi.com

 スマトラ沖大地震の地震波が地球を少なくとも5周回っているのが、日本で観測されていた。北海道大の解析で31日、わかった。国内各地に防災科学技術研究所が設置する地震計でとらえた波形を、細かく調べた結果、6,7、8周目といえそうな波形まで読み取れた。気象庁が地球を3周した地震波の観測を12月27日に発表しているが、北大大学院理学研究科の吉沢和範助手は「5周以上の記録は過去の地震でも見たことがない」としている。

 北大の解析によると、26日午前9時58分ごろ(日本時間)に発生した本震の地震波は、震源から日本の方向に直接伝わったものと、反対方向の南半球を経由して達するものと2種類観測された。いずれも発生の約17時間後までに、5周したことがはっきり確認できた。

 さらに、発生の約28時間後まで詳細に解析すると6周目とみられる波形があり、7、8周目らしい形も記録されていた。吉沢助手によると、1960年のチリ地震(マグニチュード9.5)でも、米国が記録した地球3周にとどまるという。

TSUNAMIは世界共通語

2004/12/31 東京朝刊から The Sankei Shimbun

 インド洋大津波が自然災害では史上最大級となったことで、日本語を語源とする国際表記「TSUNAMI(ツナミ)」も世界の主要メディアに連日登場、知名度を高める結果となっている。

 「津波」がローマ字表記で知られるようになったのは、1946年4月にアラスカのアリューシャン列島で起きたマグニチュード(M)7.8の大地震に伴う津波がきっかけとされる。ハワイ到達時に高さ7.8メートルを記録したこの津波では、165人の島民が死亡、惨状を目にしたハワイの日系人が、「ツナミ」と口にしたのだという。

 その約2年後に、米政府が「ツナミ」のローマ字表記を使った「太平洋津波警報センター」をハワイに設立。63年に開かれた国際科学会議で「ツナミ」は国際用語として公式採用された。

 「津波」の語源をめぐっては、船着き場である「津」に異常な「波」が突然、押し寄せるという意味からだとする説や「つよなみ(強浪)」がなまったとの説がある。古くは「海嘯(かいしょう)」という漢語も使われてきたが、日本国内の新聞報道をみると、昭和に入ってからは現在と同じ「津波」の表記が定着している。

 今回の津波が発生した26日以降にローマ字の「ツナミ」の言葉を使用した海外の新聞記事を検索すると、米紙ニューヨーク・タイムズのウエブサイトで114件、英紙タイムズで150件、タイ英字紙バンコク・ポスト(27−29日)でも37件ヒットしており、「ツナミ」の席巻ぶりがよく分かる。

 ただ、「海嘯」という漢語を生んだ中国では、本家のメンツからか「津波」という和製漢語は専門家以外には知られていない。今回の災害でもなお「印度洋海嘯」(中国国営新華社通信)といった報道が続いている。(名村隆寛)

                  ◇

 フランスでも当初、「ラ・ド・マレ」という津波を意味する仏語を使っていた報道機関が途中から、ラジオ、テレビを中心に「ツナミ」の使用に切り替え始めている。

 日本の津波対策の先進性も紹介、仏紙ルモンドは気象庁が来年3月から近隣諸国にも津波情報を直ちに提供すると発表したとし、「津波警報制度で最先端を行く日本」の貢献を評価している。別の仏紙リベラシオンも、津波発生の恐れがある地震が発生した場合は日本全土に気象庁の6つの地方センターから即刻、警報が出され、ラジオ、テレビも市民に警報を流すと報じている。(パリ 山口昌子)

プーケット島の津波最大15m 海洋研究開発機構が解析

2004/12/30 asahi.com
 スマトラ沖大地震で発生したインド洋大津波の波高の推定分布が、海洋研究開発機構の解析でわかった。海岸での高さは、タイのプーケット島の北で最大15メートル、震源に近いスマトラ島西端では同20メートルに達した可能性がある。

 長さ約1300キロの断層が平均7メートルずれた場合と、南半分だけずれた場合にわけて、発生後4時間で起こる最大波高をシミュレーションした。

 同機構が、長さ約1300キロの断層が平均7メートルずれた場合と、南半分だけずれた場合にわけて、発生後4時間で起こる最大波高をシミュレーションした。

 大きくずれた場合、プーケット島の北やインド領アンダマン・ニコバル諸島付近で最大15メートル、スリランカ北端で10メートル、インド南部東岸で8メートルの津波が起きたという計算結果がでた。半分の場合は、これより低かった。

 いずれのケースでも、津波は東西に広がる傾向が強い一方、南北への広がりは比較的弱く、被害状況と一致している。

 同機構の平田賢治研究員は「プーケット島付近で波が高かったのは、弓なりになった震源域の焦点に位置したからではないか」と話す。

インド洋津波の地震波、地球表面を3周…強さを証明

2004/12/27 読売新聞 Yomiuri On-Line
 インド洋津波を引き起こした地震の揺れが、地球の表面を3周以上も伝わっていたことが、気象庁精密地震観測室(長野市)がとらえた波形データで分かった。

 過去100年間で4番目だったマグニチュード(M)9・0の地震の強さを示している。

 気象庁によると、地震波は伝わる途中で減衰するため、M8以下だと何周も回ることは少ない。今回は、北東方向に伝わった揺れは本震から約6時間で3周、南西方向では5時間で2周していた。さらに周回していた可能性もあるという。

 同観測室は、国際的な地震観測ネットワーク「IRIS」にデータを提供している世界約90か所の拠点の一つ。

震源域5万平方キロ、震源も浅く巨大津波の条件そろう

2004/12/27 読売新聞 Yomiuri On-Line
 インド洋沿岸諸国に大被害をもたらした今回の巨大地震は、プレート(岩板)どうしがぶつかり合う境界で起きた。

 インド・オーストラリアプレートが陸側のユーラシアプレートの下に潜り込むうちに、ひずみが蓄積され、ユーラシアプレートが一気に跳ね上がったと見られる。

 これに伴い、海底の大規模な変形が海面に伝わり、マレー半島だけでなく、震源から離れたインド南東岸やモルディブ諸島など四方に広がる大津波となった。今回動いた震源域は、四国の3倍近い約5万平方キロにも及ぶと見られ、海底の変動規模も巨大だったことが推測できる。

 震源は深さ10キロ程度と極めて浅く、規模もマグニチュード(M)9・0という過去最大クラスだった。多くの津波は、同80キロよりも浅い部分でM6・0以上の地震が起きると発生するとされ、巨大津波が起きる条件はそろっていた。

 津波は沿岸に近づくと、海が浅くなるため後から来た波が先行の波に追いつき、巨大な水の壁となって押し寄せる。特に奥が狭くなっている湾では波のエネルギーが集中するため、被害が大きくなりやすい。

 また、地震の規模が大きいと、遠く離れた地域にも津波の被害が出ることがある。日本では1960年5月、過去最大の地震と言われるチリ地震で、発生22時間後、震源から約1万7000キロ離れた三陸沿岸に高さ5、6メートルの津波が押し寄せ、死者・不明142人が出た。

 92年に死者2000人近くを出したインドネシア・フローレス島の地震(M7・5)で、現地調査を行った阿部勝征・東大地震研教授は「インドネシアでは5年に1度ぐらい、M7以上の地震が起きる多発地帯なのに、海岸沿いの低地にびっしりと家が並び、防潮堤もなかった。今回も地震対策が後手に回ってしまう途上国の悲劇が繰り返されたと言える」と話している。

北西太平洋では津波監視へ 気象庁がセンターを設置

2004/12/27 The Sankei Shimbun
 津波による被害軽減のため、気象庁は来年3月までに「北西太平洋津波情報センター」を同庁に設置、24時間体制でオホーツク海からインドネシア沿岸を監視し、地震発生時の津波情報提供を計画している。

 今回大きな被害を出したインド洋付近は、こうした津波警報網が整備されておらず、同庁は「警報システムがあれば、被害を抑えられたのではないか」としている。

 日本周辺海域で地震が発生した際、気象庁は地震の規模や震源の深さ、海底の地形などを基に、スーパーコンピューターを用いて津波の高さや到達時刻を予測する「量的津波予報」を1999年から開始。この技術を活用して各国に津波情報を提供する。

 津波は遠方まで被害を及ぼし、北海道・奥尻島で多くの犠牲者を出した93年の北海道南西沖地震ではロシアなどでも被害が発生。60年のチリ地震による津波は、太平洋を約1日かけて横断して日本に襲来した。

 チリ地震を契機に、太平洋沿岸国が加盟して津波警報に関する組織が設立され、米国に津波警報センターが設置された。気象庁の山本雅博地震津波監視課長は「南太平洋では、早期整備に向けて会議も行われているが、具体的に進んでいないようだ」と話している。(共同)

インドネシアでM8.9の地震 大津波で死者3800人

2004/12/26 The Sankei Shimbun
 インドネシアのスマトラ島沖を震源とする非常に強い地震が26日、相次いで発生し、最大で高さ10メートル級の津波がスリランカなどインド洋沿岸の少なくとも6カ国を襲った。津波はプーケット(タイ南部)など日本人に人気の国際リゾートも直撃。ロイター通信によると、スリランカで約1500人、インドで約1600人が死亡したほか、インドネシアとタイでも被害が拡大し、死者総数は少なくとも5カ国で約3800人に達した。

 各地で外国人を含む多数が行方不明になっており、死者数はさらに増える恐れが強い。津波の被害としては、1998年7月にパプアニューギニアで推定2500人が死亡したのを上回り、過去最悪の規模となった。

 米地質調査所によると、地震の規模は最大でマグニチュード(M)8.9を記録。1900年以降で5番目の強さで、最大は60年チリ地震のM9.5だった。

 同日午後7時(日本時間同9時)現在、日本人が巻き込まれたとの情報はないが、外務省は緊急連絡室を設置し情報収集を急いでいる。

 スリランカでは東岸沿いの漁村などに被害が集中し、インドでは南部タミルナド州など3州で多数の遺体を収容。インドネシアではアチェ州などで多数の子供を含む400人以上が死亡した。

 また、タイ政府当局者によると、プーケットを含むタイ南部などで約160人が死亡。マレーシアでもリゾートのペナンで7人が死亡した。

 モルディブでは首都マレで3分の2が冠水。空港が閉鎖された。

 フランス公共ラジオによると、タイ南部では外国人ダイバーら多数が一時行方不明になり、マレーシア人2人が死亡したが、約80人が無事救出された。

 米地質調査所は、M8.9の地震をスマトラ島西方で26日午前8時(日本時間午前10時)ごろ観測。震源の深さは約10キロ。その後も同島北方のインド洋アンダマン諸島などを震源とするM5−7級の地震が続発した。日本の気象庁によると、この地震で日本への津波の影響はないという。(共同)

東海沖で黒潮「大蛇行」の恐れ 漁業、船舶に注意呼び掛け

2004/05/08 The Sankei Shimbun
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 気象庁は11日、黒潮が岸から約100キロ離れた沖合を流れる「小蛇行」が高知県の室戸岬沖に出現しており、2、3カ月後には東海沖で「大蛇行」になる可能性が高いと発表した。

 大蛇行が発生すると、カツオやマグロの漁場が移動したり、船舶の航行に影響が出たりすることがあり、同庁は注意を呼び掛けている。

 黒潮は日本の南岸に沿って流れ、房総半島沖を過ぎて東に進む暖流。小蛇行は昨年末に九州東海域で出現した後、徐々に東方に移動しており、5月上旬の時点で、室戸岬沖に達している。気象庁が予測したところ、小蛇行は6月下旬に紀伊半島の南東に移動した後、東海沖で大蛇行になる可能性があることが判明したという。

 黒潮の大蛇行は1953年以降、東海沖で6回発生。1年以上続くこともあり、最近では89年12月から91年5月まで続いた。気象庁は「大蛇行の発生原因は謎とされ、短期的な潮位変化の可能性もあるため、注意深く監視を続けたい」としている。

海面水位100年で最高

2003年07月01日 The Sankei Shimbun

 気象庁は1日、日本沿岸の海面水位が1985年以降上昇を続け、昨年の平均水位は過去のピークだった1948年を上回り、この約100年間で最も高かったと発表した。

 同庁は「地球温暖化や黒潮の変化が関連している可能性がある。潮位が上がる夏から秋は浸水被害も出やすく注意してほしい」と呼び掛けた。

 気象庁気候・海洋気象部によると、石川県輪島市など5カ所の検潮所のデータを集計したところ、2002年の平均海面水位は過去100年間の平均を5・12センチ上回っていた。これまでの最高は1948年に記録したプラス5・07センチ。今年も高い状態が続いている。

 例年7−11月は主に水温上昇による海水の膨張で、多くの沿岸で最高潮位が冬から春より20−30センチ上昇。台風の影響でさらに潮位が高くなることがある。

 最近では暖水渦の接近など台風の影響以外による海面変動の「異常潮」も起きており、01年には沖縄本島沿岸で潮位が平常より25−30センチ上昇。西日本でも潮位が高くなり、広島県などで浸水被害が出た。

 気象庁は、各地の検潮所に精密水位計を設置し、メカニズムの解明を進める方針。

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