TOPIC No.6-23 小惑星探査機「はやぶさ」

01.JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」
02.小惑星探査機「はやぶさ」by UNIVERSE
03.太陽系:惑星探査 by UNIVERSE
04.彗星・小惑星探査機の計画と成果

「はやぶさ」から大きめの微粒子 最大0・1ミリ、数百個

2010/11/29 中国新聞ニュ−ス

 宇宙航空研究開発機構は29日、小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰ったカプセル内の収納容器から新たに、最大0・1ミリ程度の微粒子が数百個見つかったと発表した。小惑星「イトカワ」の鉱物かどうかは、これから分析する。

 これまでに見つかっていた約1500個の微粒子は100分の1〜千分の1ミリ。大きな微粒子が見つかったことで、今後の分析が容易になると期待される。

 宇宙機構によると、これまで微粒子が見つかった区画の回収作業がほぼ終わったため、別区画に移る前に、容器をひっくり返して軽くたたいたところ、シャーレに多数の微粒子が落ちてきたという。

「はやぶさ」にプログラムミス 後継開発に教訓反映へ

2010/11/29 08:28 47News 共同通信

 探査機はやぶさの着陸想像図(池下章裕さん・小天体探査フォーラム・宇宙航空研究開発機構提供)

 探査機「はやぶさ」が2005年、小惑星「イトカワ」に着陸した際に岩石採取のための金属球を発射できなかったのは、地上から送ったコンピュータープログラムにミスがあったのが原因だったことが、29日までの宇宙航空研究開発機構の検証で分かった。

 はやぶさは結果としてイトカワの岩石の微粒子を持ち帰るのに成功したが、宇宙機構は14年度にも打ち上げる後継機「はやぶさ2」に教訓を反映させる方針。

 はやぶさは着陸と同時に金属球を発射して、砕いた岩石をカプセルに取り込む計画だった。着陸姿勢に入るとアンテナが横を向いて地球から指令を送れないため、着陸の2日前、指令なしで自律的に動くためのプログラムが送信された。

 だが、このプログラムには「着陸のために地表に水平な姿勢を取ったら、金属球の発射を止める安全装置を作動させる」という、誤った内容が含まれていた。

 安全装置は本来、機体に危険が及ぶ恐れがあるときに使うものだが、このミスにより作動してしまったため、着陸して発射の指令が出たのに球は発射されなかった。

事業仕分け:JAXA再仕分け 宇宙予算「維持」判定 はやぶさ快挙前に、追及鈍る?

2010年11月18日 毎日新聞 東京夕刊

JAXAに関する事業仕分けで枝野幸男幹事長代理(手前)の質問に耳を傾ける宇宙飛行士の山崎直子さん(奥左端)ら=東京都品川区で2010年11月18日、佐々木順一撮影

 政府の事業仕分け第3弾最終日の作業が18日午前、東京都内のビルで始まり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「運営費交付金」などが対象になった。13年までの資金計画で事業費が増え続けているのは問題だとして見直しを求め、来年度の予算要求は「今年度当初予算の水準を維持」と判定した。ただ、小惑星探査機「はやぶさ」後継機の「はやぶさ2」など個別プロジェクトの是非には踏み込まず、間接経費を中心に効率化を求め、宇宙予算に配慮する形になった。

 この日の議論では、10年度に1800億円の事業費が13年度に2660億円に膨らむJAXAの資金計画が中心に議論された。

 JAXA側の林久美子文部科学政務官は冒頭、「はやぶさなど多くの成果でJAXAは世界の科学技術の発展に大きな役割を果たしている」と強調。そのうえで「新規プロジェクトは、はやぶさ2を除いてすべて見送っている」とけん制した。説明者席には今年4月に国際宇宙ステーション(ISS)で作業をした宇宙飛行士の山崎直子さんを座らせるなどした。

 これに対し、仕分け人側の民主党の枝野幸男幹事長代理は「間接経費は徹底的に縮減してもらいたい」と研究開発以外の分野の縮減を求めたが、「宇宙開発の重要性は理解している」と繰り返した。財務省の担当主計官が「私も宇宙のロマンにあこがれを持ち、研究の人類社会への重要性を理解する一国民」と述べると会場内に笑いが広がった。

 山崎さんに発言の機会はなかったが、記者団に「宇宙開発の意義を(仕分け人も)共有していたのは、現場で働く者としてうれしい。削減の努力は継続するが、現場はギリギリのところで頑張っている」と理解を求めた。

 昨秋の仕分け第1弾では、はやぶさ2の開発費を含む予算に「縮減」判定を下し、中型ロケット「GX」計画も予算計上見送りと判断。次世代スーパーコンピューターの開発費用を縮減と判定したこともあいまって、「民主党は科学技術を切り捨てようとしている」との批判を招いていた。【青木純、倉田陶子】

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 ■ことば

 ◇はやぶさ2

 はやぶさが小惑星イトカワに到着した翌年(06年)に計画が始動し、14〜15年の打ち上げを目指す。有機物や水を含む鉱物に富むとみられる小惑星「1999JU3」(直径約900メートル)に探査ロボットを着陸させるほか、人工クレーターをつくって地下の物質を採取し、20年に地球に持ち帰る。開発・打ち上げ費用は約264億円。10年度予算の概算要求に開発費17億円を計上したが、政権交代で3000万円に減額。来年度に予算化されなければ、14年打ち上げは困難とみられている。

はやぶさ:今年最高のチームワーク最優秀賞に 「龍馬伝」は逃す

2010年11月17日 毎日新聞デジタル

 その年に話題になった優れたチームを表彰する「チームワーク・オブ・ザ・イヤー2010」の最優秀賞に小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトチーム(JAXA)が選ばれたことが17日、発表された。俳優の福山雅治さん主演の大河ドラマ「龍馬伝」(NHK)の制作チームも候補に選ばれていたが、受賞はならなかった。

 「チームワーク・オブ・ザ・イヤー」は08年にスタート。チームワークの重要性の認知向上と促進を目的とした団体「ロジカルチームワーク委員会」が主催している。今年は、09、10年に注目を集め、顕著な実績を残した商品・サービスを提供したチームの中から「はやぶさ」チーム、「龍馬伝」チームのほか、ビール風味の発泡飲料「キリンフリー」の商品開発チーム(キリンビール)、LED電球商品開発チーム(東芝ライテック)が「チームワーク・オブ・ザ・イヤー2010」を受賞。最優秀賞は、同賞の公式サイトから一般投票で決定され、全体で約4800件の投票があった。

 最優秀賞を受賞した「はやぶさ」プロジェクトチームへは、投票者から「目標を共有する環境を長期間維持し、万難を排してことをなし遂げた点において比類ないチームワークだと思う。運営手法も参考になることが多い」など賛辞の言葉が寄せられた。 

NEC、米大手と衛星エンジン開発へ はやぶさ技術ウリ

2010年11月16日22時39分 asahi.com

 NECは16日、人工衛星のエンジン製造で世界首位の米エアロジェットと提携し、新エンジンの共同開発に着手したことを明らかにした。小惑星「イトカワ」の微粒子を持ち帰ることに成功した探査機「はやぶさ」のエンジンを開発した技術力を武器に、海外市場の開拓をねらう。

 共同開発では、NECがはやぶさ用に開発した「イオンエンジン」を、ほかの人工衛星でも使えるように設計や仕様を一部見直すとともに、推進力も20%向上させる。衛星ビジネスは信頼性が重視され、実績が次の受注を大きく左右する。エアロジェットは米航空宇宙局へのエンジン納入で高い実績があり、両社は新エンジンの売り込みにも力を入れる。NECは、今年度からの3年間で累計20億円の売り上げをめざす方針だ。

はやぶさ7年ぶり地球帰還へ 太陽5周60億キロの旅

2010年06月13日 中国新聞ニュ−ス

 【ウーメラ(オーストラリア)共同】2003年5月に打ち上げられ、小惑星「イトカワ」への着陸を果たした宇宙航空研究開発機構の探査機「はやぶさ」が13日夜、オーストラリア南部ウーメラ付近の砂漠を目がけて大気圏に突入、7年ぶりに地球に帰還する。

 月以外の天体との往復は世界初の快挙。トラブル続きで当初予定から3年遅れの帰還となり、太陽の周りを約5周する、約60億キロの長旅となった。

 はやぶさは13日午後8時すぎ(日本時間同8時前)、探査機本体からイトカワの砂が入っている可能性のあるカプセルを分離し、同11時すぎ(同11時前)、大気が薄く存在する高度200キロに秒速約12キロで突入。本体は燃え尽き、耐熱加工したカプセルだけが落下し続け、高度約10キロでパラシュートを広げ、砂漠に落下。小惑星の物質が地上に回収できればこれも世界初で、太陽系の形成初期を理解する貴重な手掛かりになる。

 はやぶさは、将来の本格的な宇宙探査に向けた技術の実証機。先進的なイオンエンジンや、自律ロボットとしての小惑星への接近、着陸、岩石や砂の採取、地球への飛行、回収といったさまざまな技術を試した。

探査機はやぶさ13日夜帰還 7年ぶりの地球へ

2010年06月12日 中国新聞ニュ−ス

 探査機「はやぶさ」が地球に向けてカプセルを放出するときの想像図(宇宙機構、池下章裕さん提供)

 【ウーメラ(オーストラリア)共同】2003年5月に打ち上げられて小惑星「イトカワ」への着陸を果たした宇宙航空研究開発機構の探査機「はやぶさ」が13日深夜、大気圏に突入し、7年ぶりに地球に帰還する。

 宇宙機構の12日の発表によると、はやぶさは大気圏突入の約3時間前の13日午後8時21分(日本時間同7時51分)、イトカワの砂が入っている可能性のあるカプセルを分離。同11時21分(同10時51分)、本体とカプセルそれぞれが高度200キロの薄い大気に突入する。

 真空の宇宙空間から高速で突入し、大気と激しくぶつかる最後の難関。高熱を発するため、探査機本体は途中でばらばらになって燃え尽きる。耐熱加工したカプセルだけが落下を続け、高度約10キロでパラシュートを広げオーストラリア南部、ウーメラ近くの砂漠に落ちる見込み。

 米航空宇宙局(NASA)は、将来の宇宙船や探査機の耐熱設計などに役立てるため、光りながら落ちるはやぶさのカプセルを航空機から観測。インターネットでも中継する予定。ホームページは、http://airborne.seti.org/hayabusa/

小惑星探査機:「はやぶさ」カプセルは工夫満載

2010年06月09日 毎日新聞 東京朝刊

はやぶさのカプセル帰還の流れ。JAXAの資料をもとに作成

 地球に帰還する小惑星探査機「はやぶさ」は13日夜、最後の仕事に挑む。小惑星イトカワの岩石が入っているかもしれないカプセルを、無事に地表に届けることだ。人類が他天体の表面から物質を持ち帰るのは、米・旧ソ連の「月の石」以来で、小惑星からは初めて。過去最速級のスピードで大気圏に突入するカプセルには、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の創意工夫が詰まっている。

 はやぶさは13日午後8時ごろ(日本時間)、地球から4万キロでカプセルを分離する。カプセルは直径約40センチ、重さ約17キロで「ふたをした中華鍋」のような形。分離後、地球の引力で加速され、秒速12キロで大気圏(高度200キロ)に突入する。東京−新大阪間をわずか約45秒で移動できるスピードは、彗星(すいせい)のちりを持ち帰った米探査機「スターダスト」(06年)並みだ。

 大気圏突入時、カプセルは最高1万〜2万度の空気に包まれる。単位面積当たりの加熱効果は米スペースシャトルの地球帰還時の約30倍。カプセル開発に携わった山田哲哉JAXA准教授は「過酷な環境を克服するため選ばれたのが『自分を犠牲にして中身を守る』手法」と説明する。

 カプセル表面の材質は、高温と衝撃に強い炭素繊維強化プラスチック(厚さ平均3センチ)。高温になると内層が徐々に溶け、熱を奪いながらガスが発生し、外にもれ出してカプセルを包み込む。その結果、カプセル表面は最高約3000度、内部は50度以下に抑えられる。

 高度約10キロでパラシュートが開き、カプセルは秒速10メートルまで減速してオーストラリア南部ウーメラ砂漠に着地する。明るい流れ星のように夜空に描く光跡と、カプセルが発する電波を頼りに着地地点を推定し、捜索隊が夜明けとともに探索を始める。山田准教授は「残された使命を成功させ、カプセルを地球に無事に届けたい」と話す。【永山悦子】

はやぶさの贈り物:2010年宇宙の旅/1 仕事なく自暴自棄…「不死鳥」と出会い

2010年06月08日 毎日新聞 東京朝刊

 ◇「人生が変わった」

 小惑星探査機「はやぶさ」が、小惑星イトカワへの往復飛行を終え、13日に帰還する。数々のトラブルを乗り越える姿は「不死鳥」と呼ばれた。7年がかり、60億キロに及ぶはやぶさの旅が日本の宇宙開発、そして人々の心にもたらしたものを紹介する。

     ◇

 東京・多摩川の河川敷にある「府中市郷土の森博物館」。川崎市に住む田代菜央(なお)さん(38)は昨年9月以来、同館に何十回も足を運んだ。プラネタリウムで上映されている、はやぶさの活躍を描いた映画「HAYABUSA BACK TO THE EARTH」を見るためだ。「はやぶさに出会い、私の人生は変わった」。彼女は強くそう感じている。

 田代さんは昨年3月、派遣で働いていたIT(情報技術)関連会社を解雇された。不況が原因だった。その後、約100社に応募したが、すべて不採用。ようやくありついた警備員のパートも、仕事が回ってきたのは3カ月で10日もなかった。収入も減り「このままでもいいか」と自暴自棄になりかけた。

 そのころ、映画と出会った。「人類初」の挑戦を満載したはやぶさの冒険に圧倒された。興味がわき、講演会にも足を運んだ。重要な機器が故障しても通信が途絶えても、地球からの指令に応えるはやぶさがけなげに思えた。運用に携わる人々の奮闘ぶりが脳裏から離れなくなった。

 「こいつに負けてはいられない」。田代さんは「受かるまで続ける」と決め、就職活動を始めた。昨年11月、最初に受けた印刷会社の契約社員として採用された。競争率80倍の難関だった。「今は、毎日の仕事が充実している。立ち止まりかけた私だったけど、はやぶさを知ってからは簡単にあきらめちゃいけないと考えるようになった」

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運営するはやぶさの特設ホームページには、4月中旬の開設以来、約1000件のメッセージが寄せられている。JAXA対外協力室ウェブ担当の周東(しゅうとう)三和子さん(63)は、はやぶさへの熱い思いがこめられたメッセージに、胸が熱くなることもしばしばだ。「頑張れ」など激励が中心だった従来の衛星とは趣が違うという。

 「仕事に疲れたとき、家族と離れたとき、はやぶさを知って頑張ろうと思った」「閉塞(へいそく)感漂う昨今に、感動や勇気を与えてくれてありがとう」「日本人に生まれてよかったと思います」=つづく

はやぶさの贈り物:2010年宇宙の旅/2 かなたの小惑星で岩石採取

2010年06月09日 毎日新聞 東京朝刊

 ◇米うならせた難業

 06年1月23日、はやぶさと交信する大型アンテナがある長野・蓼科山ろくは雪が降りしきっていた。気温は氷点下11度。だが、冬にしては珍しく風が穏やかだった。

 「何か出ているぞ」。午後2時、相模原市の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の管制室で、西山和孝准教授(39)は大型アンテナの受信状況を伝える画面に目をこらした。それまで7週間あまり、ほとんど変化のなかったグラフに、くっきりと高いピークがあった。

はやぶさのイトカワへの1回目の着陸を前にあわただしい宇宙航空研究開発機能の管制室。奥左側がはやぶさからの電波を表示する画像。通信途絶時は、この画像の反応がなくなった=宇宙航空研究開発機構で2005年11月、代表撮影

 はやぶさは05年11月、小惑星イトカワへの着陸に2度成功した。だが、2度目の着陸直後に姿勢が崩れ、12月上旬、通信が途絶えた。それまでもトラブル続きだったが、この時は「とうとう我々の星を失った」と落ち込む研究者も出た。西山さんら運用チームは、それでも地道に指令を送り続けた。いつの日か応えてくれると信じた。

 その日は、予想より早く訪れた。西山さんは1月23日の日誌にこう記している。「周波数4・35キロヘルツ付近で信号を発見。探査機からと思われる電波が受信できるようになった」。送られてくる微弱な電波を頼りに復旧作業を進め、はやぶさは最大の危機を乗り越え、満身創痍(そうい)ながら地球帰還の途についた。

 ミッションは「順調に“不調”」と言われるほど綱渡りの連続だった。地球から遠く離れた小惑星の岩石採取は、航行時間が長く、採取・回収も難しい。米航空宇宙局(NASA)でさえ手を出さなかった難業に、宇宙探査の歴史では米国に遠く及ばない日本が挑んだ。あまりに野心的な内容で「(はやぶさが)本当に帰ってくるとは信じられない」と振り返る研究者も多い。

 地球を目前にしたはやぶさに、世界が注目している。各国の宇宙理工学者が集まる「国際宇宙航行アカデミー」は今年、創立50周年を記念して作ったロゴに、米アポロ計画などと並べて、イトカワに到着したはやぶさの写真を使った。「パイオニア」「ボイジャー」など著名な宇宙探査を手がけたNASAジェット推進研究所のチャールズ・エラチ所長は、毎日新聞に次のように答えた。

 「この探査は、非常にやりがいがあり刺激的な任務。JAXAは新しい領域を切り開いた。我々もはやぶさから学ぶことが多い。日本人は、この業績を偉大な誇りにすべきです」=つづく

はやぶさの贈り物:2010年宇宙の旅/3 トラブル連続、技術者の意地

2010年06月09日 毎日新聞 東京朝刊

 ◇解決の醍醐味知る

 「本当に着陸できるのか」

 小惑星イトカワを目前にした05年11月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の管制室は重苦しい空気に包まれた。計画では、はやぶさがカメラ画像で自分の位置を判断し、地球からの指令なしに着陸する段取り。だが、画像をうまく処理できないことが分かったのだ。

 はやぶさの姿勢制御を担当する白川健一・NECエキスパートエンジニア(45)が切り出した。「人が支援してはどうでしょう」。着陸は担当ではなかったが、管制室の仲間の苦労を見て、ひそかに情報を集めていた。

 白川さんは、管制室ではやぶさのおおまかな位置を推定できるプログラムを開発。着陸直前まで支援する方法を考案した。精密な自律制御を目指していた管制チームから「技術者らしい(荒っぽい)やり方」と言われたが、着陸は成功した。

 その後もはやぶさは、帰路の姿勢を保つエンジンすべてが故障するトラブルに見舞われた。白川さんは、太陽光の圧力を利用して姿勢を制御する方法を編み出し、難局を切り抜けた。

 太陽光は予測が難しいため、「はやぶさ中心の生活」が続く。白川さんは「まるで生き物を相手にしているようだった。はやぶさは困難を解決する醍醐味(だいごみ)を教えてくれた」と振り返る。

 「エンジンが止まった!」。旅も終盤に差し掛かった昨年11月、NECの堀内康男シニアマネジャー(45)に連絡が入った。4基中3基がダウンし、残る1基をフル稼働しても帰還できない状況。内心「今度は駄目かもしれない」と感じた。

 迷った末、エンジン担当の国中均・JAXA教授(50)に提案した。停止した2基のエンジンの正常な部品を回路でつなぎ、1基として使う。「地上で試していないので、逆に悪さをする可能性すらある」と念を押したが、国中さんは決断した。結果は成功だった。

 堀内さんは大学院時代、国中さんのもとではやぶさのエンジンを研究し、それを形にするためNECに就職した。20年来の同志が二人三脚で切り抜けたピンチ。「不死鳥」に例えられるはやぶさの旅を、技術者たちの意地と粘りが支えた。

 うれしいはずの帰還なのに、いま堀内さんの胸中は複雑だ。「終わったら寂しくなるでしょうね。毎日メールで届くはやぶさの報告が来なくなる」=つづく

250キロ軌道目指し「はやぶさ」エンジン噴射

2010年05月23日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 相次ぐ故障を乗り越え、地球帰還をめざす小惑星探査機「はやぶさ」は23日朝、地球の約250キロ・メートル上空を通る軌道に入るため、エンジン噴射を開始した。

 27日朝まで約100時間連続でエンジンを動かす。成功すれば、地球帰還の可能性はより高まる。

 はやぶさは現在、地球から約900万キロ・メートル離れた場所を飛行している。4基あるエンジンのうち3基は故障し、正常に働くエンジンは1基だけ。このエンジンは最後まで温存する方針で、この日は単体では動かない2基のエンジンを組み合わせて噴射を始めた。エンジンはいまのところ順調だという。

 連続運転がうまくいけば6月初旬、地上に落とすための軌道へと進み、同13日夜に豪州・ウーメラ砂漠に落下する予定。はやぶさは着陸した小惑星「イトカワ」の砂やちりを採取した可能性があり、帰還できれば太陽系の成り立ちなどの謎を解く手がかりになる

小惑星探査機:「はやぶさ」地球撮影 6月帰還、故郷目前

2010年05月18日 毎日新聞 東京朝刊

地球帰還を目指す小惑星探査機「はやぶさ」が撮影した地球(右)と月の画像。それぞれが非常に明るいため、上下に光の線が生じた=宇宙航空研究開発機構提供

 久しぶりに見えた故郷は、まばゆいほど明るかった−−。人類初となる小惑星の岩石採取に挑み、6月の地球帰還を目指す小惑星探査機「はやぶさ」が、地球の撮影に成功した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が17日、公表した。地球の左側には月も写る。ともに非常に明るいために上下に光の帯が生じたが、故郷が目前に迫った証拠といえる。

 星の位置から探査機の位置を確認するカメラを使い、地球帰還に向けた軌道修正後の12日に撮影した。地球からの距離は約1350万キロの地点で、地球の明るさはマイナス8.3等、月はマイナス4.6等だった。

 はやぶさは時速約1万8000キロで地球へ向かっている。計画では6月13日に大気圏に突入し、岩石が入っている可能性があるカプセルはオーストラリアの砂漠に落下する。

 プロジェクトを率いてきた川口淳一郎JAXA教授は「やっと地球が見えた。我々だけでなく、おそらくはやぶさにとっても非常にうれしい画像だ。いよいよ帰還が近づいた」と話す。【永山悦子】


「はやぶさ」のジェットに新たな障害…地球帰還は微妙

2005年11月29日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 宇宙航空研究開発機構は29日、探査機「はやぶさ」の小型ジェットに新たな障害が見つかったと発表した。

 原因の解明と復旧に時間がかかる見込みで、スケジュール通りの地球帰還は微妙な状況となっている。

 小型ジェットは姿勢制御と軌道修正に使われる装置で、6台ずつ2系統搭載されている。

 新たに確認されたのは、小型ジェットが十分に噴射せず、姿勢を制御できないという障害。同機構では、燃料弁が開かない状態になっているか、配管の凍結が原因と見ている。

 はやぶさは26日朝、小惑星イトカワへの再着陸、岩石採取後に、小型ジェットに燃料漏れが見つかったが、今回確認された障害は別系統だという。

 計画では、はやぶさが地球に帰還するのは2007年6月で、イトカワの岩石を収納したカプセルを地上に投下する。カプセル回収を確実にするためには、来月上旬にも地球へ向けた軌道に乗せる必要がある。

 同機構は原因の究明と対応に全力を挙げているが、リーダーの川口淳一郎教授は「復旧のめどは明言できない」としている。

“世界初”歓声上がる はやぶさ、岩石持ち帰り期待 JAXA

2005/11/26 The Sankei Shimbun【大阪夕刊から】

 二十六日朝、小惑星の岩石採取という世界初のミッションに成功したとみられる「はやぶさ」。打ち上げから二年半、この日を待ちわびた宇宙航空研究開発機構(JAXA)職員の間からは、大きな歓声が上がった。  岩石採取のための金属球が発射されたのが分かった午前八時四十分ごろ、JAXAの相模原キャンパス(神奈川県相模原市)の三階にある運用室では、はやぶさから送られてくるデータの解析作業が慎重に進められていた。

 JAXAの職員によると、金属球発射が確認された瞬間、職員からは「ワーッ」という歓声のような声が上がり、緊張した表情が崩れ、笑みがこぼれたという。

 続いて、プロジェクト責任者の川口淳一郎教授が「もう一度チャレンジできるぞ」と声を上げると、運用室は再び喜びの空気に包まれた。

 世界初の快挙に専門家からも喜びや称賛の声が相次いだ。

 中村栄三・岡山大地球物質科学研究センター長(分析地球・宇宙化学)は「本当にすごい。はやぶさのチームは問題が生じても学習し解決しながら確実に前に進んだ。『よくここまでやった』と言いたい」と話す。

 「岩石試料を地球に持ち帰るのも大丈夫だろう。これまでに撮影した画像からみて、小惑星イトカワは表面がごつごつしており、衝突を繰り返してできた可能性がある。岩石を分析すれば小惑星ができた原因や衝突の年代などさまざまなことが分かるだろう」

 また、東京大学大学院の中須賀真一教授(宇宙工学)は「世界に誇れる画期的な大成功と思う。いくつかの難しい技術がすべて成功しないと実現できなかった。限られた予算、人員の中で、イオン噴射エンジンの長期間推進とスイングバイとの組み合わせや画像を使った自律航法による小惑星への接近など、難しい技術をやり遂げた。岩石試料が地球に届き、科学的な成果が得られることを祈る」と話していた。

探査機「はやぶさ」岩石採取成功か 小惑星に再着陸

2005/11/26 The Sankei Shimbun

 宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)は26日、探査機「はやぶさ」が同日午前7時すぎに地球から約2億9000万キロ離れた小惑星イトカワに着陸し、岩石採取のための金属球を発射したことを確認したと発表した。

 事前の実験では金属球により舞い上がった岩石の破片は100%回収用カプセルに入っており、宇宙機構は「採取はほぼ確実」としている。小惑星から岩石試料を採取するのは世界でも初めての快挙。太陽の周りを2周、約20億キロを旅した後の着陸成功は、惑星探査技術の確かさを裏付ける、日本の宇宙開発史上、画期的な成果だ。

 はやぶさは降下から再上昇まで、一連の動作をほぼ予定通りに完了した。同日午前10時現在、小惑星から約5.2キロをさらに上昇。姿勢は安定し、地球との交信も確保され、着陸時のデータを順調に送信した。岩石がどの程度回収できたかは、はやぶさが2007年6月ごろに地球に近づき大気圏に投下するカプセルを開いて確認される。

 はやぶさを運用する神奈川県相模原市の宇宙機構宇宙研究本部の管制室では、午前7時半すぎ、モニター画面が金属球発射を知らせる表示に変わると、関係者らが笑顔を見せて拍手。「やった」と声が上がったという。

 はやぶさは同日午前6時すぎから、小惑星にレーザーを照射して高度を測り、20日に投下していた反射板付きボールをカメラでとらえて、姿勢を確かめながら降下。組み込まれたプログラムに沿って着陸した。下部に突き出た長さ1メートルで円すい形の試料採取装置の先が地表に着いた瞬間、直径約1センチの金属球を発射。岩石を採取後、約1秒後にはジェット噴射で上昇に転じたとみられる。

 今月20日の着陸ではトラブルが発生し、約30分間地表にとどまったが、金属球は発射されなかった。

はやぶさ着陸していた 試料採取できず、26日再挑戦へ

2005/11/23 The Sankei Shimbun

 宇宙航空研究開発機構は、20日に小惑星イトカワに着陸できないまま再上昇したとみられていた探査機「はやぶさ」が、実際は着陸していたことが分かったと23日発表した。はやぶさに記録されていたデータの分析で判明した。

 日本の機器が地球以外の天体に着陸したのは史上初。宇宙機構は、小惑星に着陸した後に離陸した探査機は世界で初めてとしている。

 一方、着陸の目標である岩石試料の採取はできなかったとみられる。機体に損傷はなく、26日に再着陸に挑戦する方針。

 宇宙機構によると、はやぶさは20日午前6時前、高度17メートルから重力に従って降下し、同6時10分ごろ目標点のほぼ30メートル以内に着陸したとみられる。表面で2度バウンドしながら、約30分間イトカワにとどまった。その後、地球からの指令に従ってジェットを噴射、離陸したという。

 当初計画では着陸は約1秒間で、この間に地表に金属球を撃ち込み、跳ね上がった岩石を回収して離陸するはずだった。しかし着陸を検知するセンサーが起動せず、金属球は発射されなかった。

 はやぶさは離陸時のジェット噴射の勢いで、いったん小惑星から約100キロ離れてしまい、現在再接近を試みている。宇宙機構は26日の再挑戦に間に合うかどうかは微妙だとしている。

 はやぶさは岩石試料をカプセルに回収して小惑星を離れ、2007年に地球に帰還。試料が入ったカプセルを大気圏に投下、地上での回収を目指している。

 <はやぶさ> 2003年5月にM5ロケットで打ち上げられた。地球から約2億9000万キロ離れた小惑星イトカワの岩石試料を採取、地球に持ち帰って分析し、太陽系の形成過程を探ることを目指す。小惑星への着陸は米航空宇宙局(NASA)の探査機ニアが01年に、小惑星エロスで達成。地球以外の天体からの試料持ち帰りは、米アポロ計画での「月の石」がある。(共同)

探査機「はやぶさ」着地できず?25日に再挑戦へ

2005年11月20日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 宇宙航空研究開発機構は20日、「探査機はやぶさは小惑星イトカワに着地しなかった可能性が高い」と発表した。

 はやぶさは同日朝、地球から3億キロ・メートル離れたイトカワへの着地と岩石採取に挑んだが、高度約10メートルまでしか降下できなかった。同機構は原因究明を急ぎ、25日の再挑戦を目指す。

 19日夜にイトカワへの接近を開始したはやぶさは、20日午前5時46分、高度40メートルから約88万人の名前を刻んだ金属球「ターゲットマーカー」を着陸の目印として投下。目標地点の「ミューゼス海」に着地させた。

 その後も降下を続けたが、上空10メートル付近から高度データが変化しなくなった。機体が地表に沿うように横滑りしたとみられる。故障した姿勢制御装置の役割を微調整のきかない小型ジェットに代用させているため、機体に予想外の力が加わった可能性があるという。

 機構は、緊急退避させるため上昇指令を送信、はやぶさ自身も自動制御装置により危険を検知して上昇を始めた。20日夜現在、イトカワから約100キロまで遠ざかっている。同機構は、軌道修正を試みるとともに、緊急退避に伴い休止した機器の復旧を急いでいる。

 想定外の低空飛行が長時間続き、イトカワ地表面の100度近い熱ではやぶさの機器が故障した可能性もある。

 川口淳一郎・同機構教授は「次回は強制的に降下させることも検討し、ぜひ成功させたい」と話している。

探査機「はやぶさ」、小惑星「イトカワ」へ接近開始

2005年11月20日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 地球から約3億キロ離れた小惑星「イトカワ」に到達した宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)の探査機「はやぶさ」は19日午後9時、世界初となる小惑星への着地と岩石採取に向けて、イトカワへの接近を始めた。

 採取した岩石は、2年後に、はやぶさが地球に届ける計画。ナゾに包まれた太陽系の起源に迫る世界的に貴重な試料になる。

 はやぶさはイトカワ上空990メートルから秒速3センチで接近。高度40メートル付近で、着地点の目印として、149か国88万人の名前を刻んだ金属球(直径10センチ)を投下する。

 着地は20日午前6時ごろの見込み。着地と同時に、メガホンのような形の装置で地表の岩石や砂ぼこりを集め、上昇する。

 これまでに地球以外の天体から持ち帰った試料は、米アポロ計画での「月の石」しかない。だが、惑星や月などは、重力の影響や地殻変動で、太陽系が誕生した約46億年前の姿をとどめていない。小惑星の岩石には、太陽系の起源に迫る当時の情報が化石のように保存されており、科学的な価値は高い。

「ミネルバ」投下失敗 宇宙に飛び去る画像届く

2005/11/14 The Sankei Shimbun

 宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)は13日夜、探査機はやぶさが12日に小惑星イトカワに向けて投下したが、その後行方が分からなかった小型観測ロボット「ミネルバ」について、宇宙を飛び去る姿を探査機本体のカメラがとらえていたと発表した。

 ミネルバが重力にとらえられて小惑星の周囲を回る可能性も低いとしており、投下失敗がほぼ裏付けられた。太陽からの光の力に押し戻され、イトカワに落ちる可能性が残されており、ミネルバとの通信は継続するという。

 はやぶさ本体の機能は正常で、宇宙機構は予定通り19日にイトカワへの着陸に挑戦。世界初の小惑星の岩石採取を試みる。

 宇宙機構によると、宇宙を漂うミネルバからは、はやぶさの太陽電池パネルの一部とみられる画像や、イトカワ表面が放つ熱のデータが送られてきた。川口淳一郎(かわぐち・じゅんいちろう)・同機構教授は「分離放出やデータ送信、画像取得などの機能は実証できた」とコメントした。

 ミネルバは本来、イトカワに着地後、表面をモーターの力で跳ね回りながら、小惑星の表面温度などを測定。近距離の立体画像と遠方の風景をカメラで撮影してデータを送ってくるはずだった。(共同)

探査機「はやぶさ」、観測ロボの投下失敗か

2005/11/12 The Sankei Shimbun

≪小惑星に着地できず≫

 宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)の探査機「はやぶさ」が12日、小型観測ロボット「ミネルバ」を小惑星イトカワに向けて投下したが、宇宙機構は同日夜、「着地できず、離れていったもようだ」と発表した。小惑星には届かず、投下は失敗した可能性が高い。

 探査機本体に異常はなく、宇宙機構は予定通り19日に着陸に挑戦。世界初の小惑星からの岩石採取を試みる。

 宇宙機構は12日午後3時すぎ、同機構相模原キャンパス(神奈川県相模原市)のはやぶさ運用室から探査機に指令を出し、同24分ごろ、ミネルバが投下された。地球から見て太陽の反対側、約2億9000万キロ離れたはやぶさに指令が届くのには約16分かかる。

 はやぶさは小惑星に衝突しないよう、上昇と下降を繰り返して降下したが、ちょうど上昇中に指令が届き、やや上向きに、予想を超える高度約200メートル近くでミネルバを放出したらしい。

 宇宙機構の川口淳一郎(かわぐち・じゅんいちろう)教授は記者会見で「最善を尽くしたが、高度を適切に管理しきれない面があった」と話した。

 ミネルバは温度計で小惑星の表面温度や岩石の比熱を測定。2台のカメラで、近距離の立体画像と遠方の風景を撮影し、データをはやぶさ経由で地球に送る予定だった。

 今月4日の降下でも異常を検知したため途中で断念し、機器を調整して再挑戦した。日本は、寿命を終えた衛星を月に衝突させたことはあるが、地球以外の天体に人工物を着地させる試みは初めてだった。

 はやぶさは2003年、宇宙科学研究所(当時)が打ち上げ。電気推進エンジンの力で航行してイトカワに到達し、表面の岩石試料を地球に持ち帰って太陽系の形成過程を探ることを目指している。順調に行けば07年に帰還する。(共同)

 川口淳一郎(かわぐち・じゅんいちろう)宇宙航空研究開発機構教授の話 地上から指令を送りながら投下のタイミングを計り最善を尽くしたが、高度を適切に管理しきれない面があった。うまくいかず非常に残念。特にミネルバの計画は、民間企業との共同研究で進めてきただけに、申し訳ない。小惑星についてさまざまなことが分かったので、データを検討し、はやぶさの着陸成功につなげていきたい。

 <はやぶさ> 宇宙探査に必要な新規技術の開発、実証を目的とした日本の工学実験探査機。2003年5月にM5ロケットで打ち上げられ、地球から約3億キロ離れた小惑星「イトカワ」から岩石試料を採取、地球に持ち帰って、小惑星に残された太陽系形成時の痕跡を探ることを目指す。帰還は2007年6月の予定。往復10億キロ、4年がかりの旅となる。地球以外の天体からの試料持ち帰りではこれまで、米アポロ計画による「月の石」採取がある。

 <イトカワ> 地球と火星の間の楕円(だえん)軌道で太陽の周りを回る、長さ約540メートル、幅約270メートル、高さ約210メートルのジャガイモのような形をした小惑星。過去に観測された小惑星のように砂に覆われておらず、一部で岩がむき出しになっている。1998年に米マサチューセッツ工科大の研究チームが発見。日本の探査機「はやぶさ」の打ち上げを機に、ペンシルロケットを発射した日本のロケットの父、故糸川英夫(いとかわ・ひでお)博士にちなんで名付けられた。(共同)

探査機「はやぶさ」、小惑星のサンプル採取へ

2005年10月27日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 宇宙航空研究開発機構は27日、姿勢制御装置の故障で、世界初の小惑星のサンプル採取計画が危ぶまれていた探査機「はやぶさ」が予定通りに採取を実施すると発表した。

 故障した姿勢制御装置の役割を、衛星の12個のエンジンの噴射で補って、採取や地球帰還なども可能であることがわかったためだ。

 はやぶさは来月12、25日の両日に接近し、地表面の砂や岩石のかけらを採取し、2007年6月に地球に帰還する予定。

地球衝突は100万年に1回 小惑星「イトカワ」

2005/10/05 The Sankei Shimbun

 探査機「はやぶさ」による表面物質の採取計画が進行中の小惑星「イトカワ」が、今後、地球に衝突するのは100万年に1回であるとの解析結果を、宇宙航空研究開発機構の吉川真(よしかわ・まこと)・助教授(天体力学)らのグループがまとめた。6日から札幌市で開かれる日本天文学会で発表する。

 イトカワは長さ約600メートル、幅約300メートルの細長い小惑星。現在の軌道には観測による誤差がある上、火星や地球と接近を繰り返すうちにその誤差が拡大するため、将来の軌道の確定は難しい。

 グループは、現在のイトカワから誤差の範囲内でわずかに位置をずらした約40個のイトカワを想定。今後、取る可能性がある軌道の統計的な分布を1億年先まで求め、それぞれの軌道ごとに惑星とぶつかる確率を計算。平均値を算出した。

 その結果、イトカワが地球に衝突するのは約100万年に1回。惑星の中では最も高く、金星は約3000万年、火星は約9億年、水星は約12億年に1回だった。土星や木星への衝突や、惑星に衝突せず生き残る確率はいずれも低いという。

 吉川助教授は「はやぶさによるイトカワの探査は、小惑星の起源を知るためだけでなく、今後地球にぶつかる可能性がある天体への対策を考える上でも意義がある」と話している。(共同)

2年4カ月、10億キロの旅…「はやぶさ」が小惑星到着

2005/09/12 The Sankei Shimbun

 宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)は12日、探査機「はやぶさ」が同日午前10時に、約3億2000万キロかなたの小惑星「イトカワ」に到着したと発表した。

 同機構によると、はやぶさは小惑星から見て太陽の方向約20キロで静止。太陽を周回する小惑星に“伴走”している。2003年5月の打ち上げから約2年4カ月、857日目での到着となった。地球からの航続距離は約10億キロに達した。

 宇宙機構は、はやぶさが到着の約1時間半前に撮影した小惑星の画像も公開した。岩石や起伏に富む部分と、比較的滑らかな部分がある様子をはっきりとらえている。

 この画像は小惑星の起源を解明する鍵になる可能性があり、今年秋の岩石採取のため着陸すべき場所を探す上でも重要なデータになるという。

 今後は約1カ月間、エックス線や赤外線で小惑星の成分や地形データを収集。その後約10キロまで接近して観測し、11月には着陸し、世界で初めて、小惑星からの岩石採取を2回試みた後、小惑星を離脱して、07年6月には地球に到着。宇宙機構は岩石試料の入ったカプセルを切り離して大気圏に突入させ、パラシュートで回収する予定。(共同)

探査機はやぶさ:12日にも小惑星「イトカワ」接近

2005年09月10日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 小惑星から岩石などを地球に持ち帰る世界初の試みを目指して宇宙を飛んでいる探査機「はやぶさ」が、12日にも、目標の小惑星「イトカワ」から約20キロに到達する。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機で、11月に「イトカワ」に着陸する予定だ。

 「はやぶさ」は03年5月に打ち上げられた。到達後しばらく「イトカワ」と並んで飛び、エックス線計測装置や赤外線観測装置などで表面を調べる。11月に第1回の着陸をする。着陸時間は約1秒間で、探査機から地表に金属球を撃ち込み、舞い上がった岩石の破片などを採取する。さらに2回目の着陸とサンプル採取をした後、地球を目指す。予定通りなら07年6月にも地球に帰還する。

 「イトカワ」を含めた小惑星の岩石は太陽系の形成当時からあまり変化していないとみられる。サンプルの分析で、太陽系の成り立ちなどを解明する貴重な手掛かりが得られると期待される。

 「イトカワ」は98年にアメリカの研究チームが発見した。日本側の依頼で、日本のロケットの生みの親、故糸川英夫博士にちなんだ名前が付けられた。長径500メートルのジャガイモのような形で、太陽の周囲を約1年半の周期で回る。軌道は地球と火星の間にある。

 JAXA宇宙科学研究本部の川口淳一郎・プロジェクトマネジャーは「類のない試みなので慎重に計画を進めたい」と話している。【佐藤岳幸】

宮崎市で宇宙国際シンポが開幕 6日まで

2004/05/30 The Sankei Shimbun
 
 宇宙開発分野の専門家らが交流する国内最大規模の国際会議「宇宙技術および科学の国際シンポジウム」が30日、宮崎市の会議場を主会場に開幕した。

 同シンポは隔年で開催され、今回が24回目。6月6日まで開かれ、約20カ国から700人の研究者らが参加する。

 30日は、宇宙飛行士、土井隆雄さんが講演。宇宙での船外活動の経験などについて語り、家族連れら約800人が熱心に聞き入った。

 小惑星探査機「はやぶさ」に搭載されたイオンエンジンの成果などが発表されるほか、研究者らは宇宙への有人飛行の将来や、宇宙ビジネスなどについて意見交換する。

 ロケットの模型や宇宙服のレプリカなどが展示される。宇宙の真空状態を再現する実験も行われ、一般の人も参加できる。

小惑星探査機「はやぶさ」が軌道変更に成功

2004/05/20 The Sankei Shimbun
 宇宙航空研究開発機構は20日、小惑星探査機「はやぶさ」が、地球の重力を利用して加速し針路を変更するスイングバイに無事成功し、地球から約3億キロ離れた小惑星イトカワに向かう軌道に乗ったと発表した。

 宇宙機構によると、はやぶさは日本時間19日午後3時22分、東太平洋上で高度約3700キロまで地球に接近し、重力を利用して針路を約90度変え、速度も秒速約30キロから約34キロに上がった。20日未明には衛星の姿勢変更にも成功、アンテナを地球に向け通信を確保した。

 はやぶさは今後、さらに電気で推進するイオンエンジンを噴射し、来年夏にイトカワに到着、岩石のかけらを収集して2007年6月に地球に帰還する。

 小惑星には太陽系ができたころの性質の痕跡が残っているとされ、得られた試料を詳しく分析することで惑星誕生の謎に迫る成果が期待されている。

イオンエンジン着火に成功 小惑星探査機「はやぶさ」

2003年05月28日 The Sankei Shimbun
 宇宙科学研究所は28日、M5ロケットで今月9日に打ち上げた小惑星探査機「はやぶさ」に搭載したイオンエンジンの着火試験に成功したと発表した。

 イオンエンジンは推進剤のキセノンにマイクロ波を当ててプラズマ状態にしたガスを噴出する。推力は小さいが省エネルギーなのが特徴で、惑星間航行に使われるのは、米航空宇宙局(NASA)の探査機に次いで2番目。

 宇宙研によると、27日午後9時40分ごろ、4基搭載されているイオンエンジンのうち1基で約20分間、正常にプラズマが生成されたことを確認した。29日以降、残り3基の試験と、高電圧をかけて実際に推力を発生させる試験を順次実施する。

 エンジンの本格運用は6月中旬を予定。はやぶさは現在、地球から約500万キロ離れた宇宙空間を航行している。

小惑星探査機、宇宙へ出発 「はやぶさ」と命名

2003/05/09 中国新聞ニュース
 小惑星から岩石のかけらを持ち帰る、世界初の試みを目指す探査機「ミューゼスC」を搭載した、文部科学省宇宙科学研究所のM5ロケット5号機が九日午後一時二十九分、鹿児島県内之浦町の鹿児島宇宙空間観測所から打ち上げられた。

 飛行は順調で、探査機は打ち上げから約十分後に分離され、計画通り惑星間軌道に乗った。正常に機能していることも確認され、打ち上げは成功。「はやぶさ」と命名され、往復約十億キロの小惑星への旅についた。帰還は四年後の予定。

 M5の打ち上げは前回の失敗から三年ぶり。十月の宇宙三機関統合を前に、日本の宇宙科学を引っ張ってきた宇宙研としても最後となるが、その宇宙探査の実力を再び示す機会を迎えた。

 はやぶさは三週間後、電気推進式のイオンエンジンを作動させ地球とほぼ並走する形で太陽を周回。一年後に地球の重力を利用して加速し、一年かけて地球から直線距離で三億キロ離れた小惑星に着陸する。さらに金属球を表面に発射し、砕け散った小惑星の破片を採取。二〇〇七年に地球に帰還し、破片を収めたカプセルを大気圏に突入させ、オーストラリアで回収する計画となっている。

 これまで人類が自力で持ち帰った天体の標本は月の石だけ。小惑星は惑星誕生時の姿をとどめた太陽系の化石≠ニされるだけに、標本が得られれば太陽系形成の謎の解明が期待される。

 科学衛星打ち上げ用のM5は、〇〇年二月、4号機の打ち上げに失敗した。一段目ロケットの噴射ノズル内側の耐熱材が破損したためで、今回は衝撃に強い新素材を用い、燃焼試験を繰り返して万全の体制で臨んだ。

 M5はこの後、新宇宙機関の下、〇五年度までに四回の打ち上げが決まっている。

小惑星探査機打ち上げ成功 3億キロ旅して標本採取へ

2003/05/09 中国新聞ニュース
 小惑星から岩石のかけらを持ち帰る世界初の小惑星探査機「ミューゼスC」を搭載した、文部科学省宇宙科学研究所のM5ロケット5号機が九日午後一時二十九分、鹿児島県内之浦町の鹿児島宇宙空間観測所から打ち上げられた。

 ロケットは順調に飛行、打ち上げから約十分後に探査機を分離。探査機が正常に機能していることも確認され、打ち上げは成功した。

 前回の4号機の失敗から三年。十月の宇宙三機関統合を前に、日本の宇宙科学を引っ張ってきた宇宙研としては最後の打ち上げとなる。

 M5は科学衛星打ち上げ用の固体燃料ロケットとして開発。九八年まで二回連続で打ち上げに成功したが、二〇〇〇年二月に打ち上げた4号機は制御不能になり、搭載したエックス線天文衛星の軌道投入に失敗した。

 一段目ロケットの噴射ノズル内側の耐熱材が破損したためで、今回は衝撃に強い新素材を用い、燃焼試験を繰り返して万全の体制で臨んだ。

 ミューゼスCは二年後、地球から約三億キロ離れた、大きさ約五百メートルの小惑星に着陸。金属球を表面に発射し、砕け散った破片を採取する。〇七年に地球に帰還し、破片を収めたカプセルを大気圏に突入させ、回収を目指す。

 これまで人類が自力で持ち帰った天体の標本は月の石だけ。現在、すい星の一部を回収する米国の探査機も飛行中だが、小惑星は惑星が生まれた際の姿をとどめた太陽系の化石≠ニされるだけに、標本が得られれば太陽系形成の謎の解明に役立つと期待される。

 M5はこの後、新宇宙機関の下、〇五年度までに四回の打ち上げが決まっているが、その後は未定。後継機はもとより、大規模改良などの新規開発も中止となっている。

 《M5ロケット》 大型の宇宙探査計画を担う目的で、文部科学省宇宙科学研究所が開発した世界最大級の固体燃料ロケット。全長 30・8メートル、直径2・5メートル、重量140トン。高度250キロの地球周回軌道に1・85トンの衛星を打ち上げる能力がある。1号機は1997年2月、電波望遠鏡衛星を打ち上げた。しかし、3回目の打ち上げとなった2000年2月の4号機で失敗し、その後改良を続けていた。

 《ミューゼスC》 文部科学省宇宙科学研究所がMロケットで打ち上げる工学実験探査機、ミューゼスシリーズの3番目。地球から約3億キロ離れた小惑星「1998SF36」から表面のサンプルを採取、地球に持ち帰ることを目指す。太陽系誕生時の様子を探るのが目的で、帰還は4年後の予定。他の天体からのサンプルリターンはこれまで、米アポロ計画による「月の石」採取以外、まだ例がない。

3億キロ離れた小惑星へ、探査機あす打ち上げ

2003/05/08 読売新聞 Yomiuri On-Line
 小惑星探査機「ミューゼスC」が9日午後1時29分、宇宙科学研究所の鹿児島宇宙空間観測所(鹿児島県内之浦町)から固体燃料ロケットM5型5号機で打ち上げられる。3億キロ離れた小惑星から岩石のかけらを採取し、地球に持ち帰る世界初の試み。

 探査機は縦2メートル、横1メートル、幅2メートル、重さ約500キロ・グラム。採取した岩石は直径40センチのカプセルに収納され、4年後にオーストラリアに“帰還”する。

小惑星探査機5月9日発射、87万人の名前が宇宙へ 

-2003/03/31-GIS NEXT EXPRESS -NEWS- (2003.03.26 asahi.com)
 世界で初めて小惑星の「砂」を持ち帰る文部科学省宇宙科学研究所の小惑星探査機「ミューゼスC」が5月9日に出発する。

 6日の宇宙開発委員会で了承された。日本の科学探査機・衛星打ち上げは00年2月のX線天文衛星「アストロE」の失敗以来。探査機には、世界149カ国、87万人余りの名前も乗っている。

 鹿児島県内之浦町の鹿児島宇宙空間観測所からM5ロケット5号機で打ち上げ、05年夏に地球から約3億km離れた直径500mほどの小惑星「1998SF36」に着陸する。表面の岩を砕いて1g弱のサンプルを採取し、07年夏に帰還する。

 人名は、目印として着陸直前に落とす直径10cmほどのボール内側のアルミ薄膜に刻まれている。1字が3/1000mm四方くらい。インターネットで公募し、87万7490人が応募した。米国人は最多の48万5543人。日本人は31万3455人で2位。

 小惑星は太陽系の初期の姿をとどめた化石のような天体で、地球誕生の様子を知る手がかりになる。

小惑星探査:MUSES―Cの打ち上げ来年5月に延期

2002年09月25日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 文部科学省宇宙科学研究所は25日、今年12月に予定されていたM5ロケットによる小惑星探査機「MUSES―C」の打ち上げを、来年5月に延期すると発表した。探査機の部品に誤った材質のものが使われていることが判明し、調査に時間を要したためという。

 宇宙研の説明では、今年4月、探査機の小型エンジンにある圧力調整弁の試験をしたところ、ゴム製のパッキン(Oリング)の一つが切れているのを発見した。このパッキンが、仕様書と異なる材質だったことも判明。他のパッキンの確認に3カ月余りかかった。

 MUSES―Cは、地球と火星の間にある小惑星の岩石のサンプルを持ち帰るのが目的。一般から募集した88万人分の名前を記した部品も搭載し、小惑星に届ける予定だ。 【金田健】

史上最多の「87万人」が宇宙旅行 小惑星探査機に名前

2002/08/01 asahi.com
 史上最多の宇宙旅行が実現しそうだ−−といっても公募で集める名前で、文部科学省宇宙科学研究所が1日、小惑星探査機MUSES−Cの積載物に名前を刻むキャンペーンに87万人余りの応募があった、と発表した。

 探査機は12月ごろ打ち上げられ、小惑星に着陸してサンプルを持ち帰る。太陽系の「化石」ともいえる小惑星を調べ、地球誕生の手がかりを探る世界初の試みだ。

 キャンペーンにはインターネットなどを通じて世界149カ国から応募があった。87万人余りの名前は、着陸の直前に落とすボール状の目印(直径約10センチ)を包むアルミはくに刻む。1人分は数十分の1ミリ程度。

 米航空宇宙局(NASA)の土星探査機カッシーニには61万人余り、宇宙研の火星探査機のぞみには27万人余りの名前が「搭乗」している。

 宇宙研の松尾弘毅所長は「惑星探査に対する高い関心の表れだ。我々への頑張れというメッセージでもあると受け止めている」と話す。

小惑星探査機に載せる100万人の名前公募 宇宙研

2002/05/10 asahi.com
 「小惑星旅行」に名前で参加しませんか−−文部科学省宇宙科学研究所は10日、年末に打ち上げる小惑星探査機「MUSES−C」に100万人の名前を公募して乗せると発表した。

 探査機は05年夏に小惑星に着陸してサンプルを持ち帰る。名前は、着陸直前に落とすボール状の目印を包むアルミはくに刻む。1人分は数十分の1ミリ程度だという。

 的川泰宣教授は「多くの方々と夢を共有しながら活動を盛り上げていきたい」と話している。

 現在火星に向けて飛行中の探査機「のぞみ」には、27万人余りの名前が記載されているが、着陸はしない。

 応募は日本惑星協会のホームページ(http://www.planetary.or.jp/muses-c/)から。往復はがきでもよい。問い合わせはキャンペーンセンター(電話0570・002299)。

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