TOPIC No.5-60 メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)

01. メタボリックシンドローム byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
02. 知っ得? 納得!! メタボリックシンドローム
03. メタボリックシンドローム メタボリックシンドローム診断基準と予防
04. メタボ撃退! 食べながら内臓脂肪を減らす外食ガイド(2007/12/06) byマイコミジャ−ナル
04. 一流シェフの料理でダイエットに挑戦 - 医師・管理栄養士監修「プレミアムデリダイエット」(2007/12/05)byマイコミジャ−ナル
05. 器具を使わずに筋肉を増やし皮下脂肪を燃やす米国式ながらトレーニング
06. 筋肉トレーニング(筋トレ)方法−魅せる肉体改造
07. スロートレーニング - 低負荷で筋肉を刺激し成長ホルモンの分泌を促進するトレーニング法 -
08. スロートレーニングで確実ダイエット
09. メタボ健診が4月から始まるが……やせることが義務化する!?(2008-03-06)オ−マイニュ−ス


メタボ健診:腹囲基準根拠ゆらぐ 3万人データ解析で

2010年02月09日 毎日新聞

 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策として実施している特定健診・保健指導(メタボ健診)で使う腹囲の基準について、厚生労働省研究班は9日、国内3万人を超えるデータを解析した結果、「最適な値を決めることは困難」とする最終報告を発表した。腹囲が大きいほど発症者は増えたため、研究班は引き続き基準に使うことを提言したが、「線引き」の根拠が大きく揺らいだことで、制度の見直しを求める声が高まりそうだ。

 現在は腹囲が男性85センチ、女性90センチ以上で、血圧、血糖値、血中脂質の検査値のうち二つ以上基準を超えると、メタボと診断される。メタボは腹部に内臓脂肪がたまると、心血管疾患を発症しやすいという考え方に基づき、08年度から全国の健診に取り入れられた。

 研究班は、地域住民を対象に実施している全国の12の追跡調査を総合的に解析した。心血管疾患を発症する危険性が高い人を見分けるため、40〜74歳の男女約3万1000人の腹囲と心血管疾患の発症状況を分析したところ、男性は80センチ以上がそれ未満の1.48倍▽85センチ以上1.56倍▽90センチ以上1.70倍、女性は80センチ以上1.75倍▽85センチ以上1.79倍▽90センチ以上1.62倍と、いずれも腹囲が大きい方が発症割合も高かった。しかし、どの数値で区切っても発症者の割合はほぼ変わらず、危険性の高い集団を選び出すのに最適な数値は算出できなかった。

 門脇孝・東京大教授は「腹囲が増加するほど発症の危険性が高まっており、腹囲の重要性は示された。数値については、医療にかける予算や人材が豊富にあれば小さめに、限られていれば大きめに設定するなど、政策的に決める事項と考える」と話す。【永山悦子】

 ◇解説 抜本的見直しが必要

 メタボ対策を目的にした特定健診・保健指導(メタボ健診)が08年度に始まり、メタボ診断基準の腹囲の数値は、常に注目を集めてきた。だが、腹囲を診断基準の必須項目としているのは、日本だけだ。この分野で大きな影響力を持つ学術団体「米国コレステロール教育プログラム」と「国際糖尿病連合」は昨年10月、腹囲を必須項目とせず、他の血圧や血糖値などの検査項目と同列に扱う統一基準を発表した。

 今回の研究班の報告は、「発症の危険性が高い集団を絞り込む腹囲の数値は出せないが、腹囲検査は有用」という玉虫色の結論になった。腹囲にこだわる理由を研究班の門脇教授は「日本には、腹部の内臓脂肪がメタボの主因であるとする数多くの研究成果がある。診断基準を定めた内科8学会も、腹囲を必須とすることで合意している」と説明する。

 一方、大櫛陽一・東海大教授(医療統計学)は「腹囲の最適値が示せないとの結果は、病気の危険性のある人を見つけ出す項目として意味がないということだ」と指摘。「科学的に効果が判断できない施策を実施することは税金の無駄遣い、その健診結果に基づいて医療機関を利用することも無駄な医療といえる」と批判する。

 今回の結果を受け、関係学会は腹囲の基準値の再検討を始めるとみられる。腹囲を必須項目とする日本独自の基準の是非を含め、抜本的な見直し作業が求められる。【永山悦子】

女性メタボ基準は腹囲80センチ より厳しく、厚労省

2010年02月09日 中国新聞ニュ−ス

 内臓脂肪の蓄積で生活習慣病の危険性が高まる「メタボリック症候群」の診断基準の妥当性について検討していた厚生労働省研究班は9日、現在は「90センチ以上」としている女性の腹囲を「80センチ以上」に厳しくすれば、より多くの脳卒中や心疾患を予防できるとする研究結果をまとめた。

 メタボリック症候群は、日本肥満学会などが2005年に「腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上」などの診断基準をまとめ、特定健診にも採用されたが、女性の腹囲が男性より緩い点などに異論も出ていた。

 基準が変更されれば、保健指導にも影響を与えることになるが、厚労省生活習慣病対策室は「今回は妥当性判断の一つの材料。必要があれば検討会を設置する可能性もある」としている。

 研究班は、全国の40〜74歳の男女約3万6千人に、腹囲と、血圧や血糖値などの関係を調べた。メタボリック症候群は、内臓脂肪蓄積に加え脂質異常、高血圧、高血糖のうち2項目以上に該当する状態だが、男性で85センチ前後、女性で80センチ前後を上回ると、そうした状態になる可能性が3倍に高まり、心筋梗塞や脳卒中が起きるリスクが大幅に上昇することが分かった。

コーヒー飲用+運動はメタボリック症候群対策に有効

2009年09月10日 健康美容EXPOニュース

 (社)全日本コーヒー協会(東京都中央区)は2009年9月10日都内で「第13回コーヒーサイエンスセミナー」を開催した。同セミナーはコーヒーの普及啓蒙、消費拡大などに取り組む同協会がコーヒーの健康に関連する最新の研究成果をメディアへ発表する催しで、毎年10月1日の「コーヒーの日」を控えたこの時期に行われている。

 この日は、コーヒーの健康効果について2つの講演が行われた。東京自慈恵会医科大学臨床検査医学講座教授鈴木正登氏は「メタボリック症候群に及ぼす運動とコーヒー飲用の効果」について発表。ヒトを対象に一過性のコーヒー飲用後に中程度の運動を負荷するなどで脂質燃焼が亢進するか否かを確認した実験では、一杯のコーヒー(カフェイン4mg/KG)飲用によって、1時間後には血圧上昇、心拍数低下、エネルギー代謝が有意に上昇した。さらに飲用1時間後に中等強度のトレッドミル走を30分負荷した結果、運動後のエネルギー代謝の亢進の持続が確認された。

 併せて、コーヒー飲用と運動併用の繰り返し効果を検証するため、ヒト肥満・糖尿病モデルラットを用い、メタボリックシンドローム危険因子への影響も調査。その結果、運動およびカフェイン単独投与よりも、運動とカフェイン併用の方が体重減少が顕著で、筋肉重量が有意に多く、内臓脂肪重量の合計が最も低かった。こうした結果から鈴木教授は「メタボリック症候群の危険因子改善にはコーヒーの飲用と運動の併用が望ましい」との見解を示した。

 続いて東海大学医学部内科学系循環器内科学教授の後藤信哉氏が「一杯のコーヒーの不思議 ―心筋梗塞、脳梗塞などの血栓性疾患発症におよぼす効果―」と題し講演した。マウスの精巣の動脈を分離して、作った動脈血栓のモデルを用い、コーヒーと純水を飲用させた実験では、コーヒー飲用マウスで、血管が完全閉塞するまでの時間延長が認められた。血管が完全に詰まるまでの時間を比較した実験でもコーヒー飲用の場合、強力な抗血小板薬に匹敵する効果が確認された。

  一方で、血栓予防の有効成分として有力とされるカフェインによる効果を確認した実験では、コーヒーを飲用した場合がカフェインのみの飲用より有効な結果となった。こうしたことから後藤教授は、カフェイン入りコーヒーが心筋梗塞の発症を予防することは薬理学的に正しそう、としながら「コーヒーの閉塞血栓予防効果はカフェインの効果ではない、と考えざる得ない」と見解を述べ、「メカニズムの解明は今後の課題」として、講演を終幕した。

 全日本コーヒー協会は、コーヒーの需要増大に伴い、コーヒー業界が窓口を一本化して、業界内や行政との連絡調整ならびに国内外の関係機関との連携、さらには国民の豊かな食生活の実現に資する取り組み強化の必要性が生じたことなどから、既存のコーヒー団体を統一する新たな機関として1980年に設立された。

Tリンパ球が生活習慣病の原因

2009.07.28 MSN産経新聞

 生活習慣病につながるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)について、東京大学大学院医学研究科循環器内科の永井良三教授らの研究グループが、病気の原因になる内臓脂肪の炎症は免疫を担うリンパ球の一種「Tリンパ球」が脂肪組織に集まることがきっかけで起きていることをマウスの実験で明らかにした。動脈硬化、糖尿病などの治療にもつながる成果で、26日付の米医学誌ネーチャー・メディスン電子版に掲載された。

 永井教授と真鍋一郎特任准教授、西村智特任助教らは、マウスの生体内の脂肪組織を蛍光色素で染色し、光を当て観察できるようにする方法を開発。マウスに高脂肪の食事を与え、内臓脂肪とその周囲の細胞で炎症が起きる経過を調べた。

 この結果、肥満し膨らんだ脂肪組織では、Tリンパ球(CD8陽性Tリンパ球)が増加し、これが別の免疫細胞であるマクロファージなどを呼び寄せ、激しい炎症を引き起こした。

 Tリンパ球を減らしたり、なくしたりすると炎症が起こらないことも実証。炎症の結果として起きる糖代謝異常なども改善された。逆にTリンパ球を加えると炎症が発生した。

 炎症は感染などを防ぐが、長期間続くと組織の働きや構造を変え、動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病、がんの原因にもなる。研究グループは、今回の実証をもとに「Tリンパ球を標的にした新たな治療法も考えられる」としている。

肥満が米医療制度に与える負担は年14兆円=米研究

2009年07月28日 REUTERS

 [シカゴ 27日 ロイター] 肥満に関連する疾患によってかかる年間費用は、米国の医療費の約10%に相当する推計1470億ドル(約14兆円)に上る。医療専門誌「Health Affairs」で発表された研究で明らかになった。

 この研究の内容は米疾病対策予防センター(CDC)がワシントンで開催した会議でも発表され、CDCは同会議で肥満防止に向けて新たに24の提案をした。

 同研究によると、米国の肥満率は1998年から2006年の間に37%上昇。その結果、糖尿病や心臓疾患などの肥満関連の疾病を治療する費用は89%増加した。2006年の医療費を見ると、肥満の人はそうでない人に比べ、年間1429ドルもしくは42%多く支払っているという。

 CDCのディレクター、トーマス・フリーデン氏は発表資料で「米国が背負っている肥満の大きな負担を減らすための有効な手段を講じることは極めて重要である」と述べた。

メタボの原因は脂肪の炎症 薬で治療できるかも?

2009年07月27日 asahi.com

 メタボリック症候群は、肥満でたまった内臓脂肪に免疫細胞が集まって炎症状態を起こすことが原因であると、東京大の研究グループがマウスの実験で確かめた。糖尿病などの生活習慣病をまねくメタボを免疫を調整する薬で抑えられる可能性を示した成果で、26日付の米医学誌ネイチャーメディシン電子版に発表した。

 東京大の真鍋一郎特任准教授と西村智特任助教ら循環器内科のグループは、蛍光色素を注射して内臓の脂肪組織の細胞をそのまま観察できる方法を開発、高脂肪のエサを与えたマウスの内臓の状態を調べた。

 すると、マウスが太って脂肪細胞が大きくなるにつれ、病原体を攻撃する「CD8T細胞」というリンパ球の一種が出現し、さらに各種の免疫細胞が集まり、炎症状態になっていることが確認できた。

 CD8T細胞を働かなくしたり、なくしたりしたマウスでは、高脂肪のエサを与えても、内臓脂肪に免疫細胞が集まる炎症の状態は起こらなかった。さらに、CD8T細胞がないマウスに、この細胞を入れると、脂肪組織に炎症が起きた。

 また、脂肪組織の炎症が起きているマウスに、この細胞への抗体を与えると、インスリンが効きやすくなり、血糖値が下がった。

 肥満した人の脂肪組織でも同じようなことが起きているのかはまだ不明だが、グループの永井良三・東京大教授(循環器内科)は「CD8T細胞を抑える薬などでメタボリック症候群による生活習慣病を治療できる可能性が出てきた」としている。(本多昭彦)

メタボ健診、市町村国保は受診率28%

2009.07.22 MSN産経新聞

 国民健康保険中央会は22日、メタボリック症候群対策として平成20年4月から始まった特定健診(いわゆるメタボ健診)の受診率が、市区町村が運営する国民健康保険(国保)の全国平均で28・3%だったと発表した。

 国保には自営業者やその家族ら約3600万人が加入しており、メタボ健診の対象はそのうち40〜74歳の約2400万人。国は24年度までの国保の目標として受診率65%を掲げているが、初年度は平均で半分にも達しなかった。

 都道府県別に見ると、最も高いのは宮城の43・7%で唯一4割を超えた。次いで富山39・6%、東京38・8%となっている。

 一方、低いのは広島16・1%、和歌山16・3%、北海道19・6%の順だった。広島県医療保険課は「受診券の配布が8月にずれ込む国保もあり、初年度で準備が遅れた」と分析している。

メタボ「要指導」全国最悪 沖縄やっぱり「肥満県」/人口比21・3%

2009年07月20日 沖縄タイムス社

国保中央会調べ/医療関係者 早期発見で改善を

 生活習慣病の原因となるメタボリック症候群の早期発見を目指し、昨年4月に始まった「特定健診」を受けた人で、保健師らによる「保健指導」が必要な人が沖縄県は1万6048人、人口に占める割合が21・3%で、全国一高いことが国民健康保険中央会の調べで分かった。「肥満県」を裏付ける形で、「このままでは確実に短命県になる」と関係者は改めて危機感を募らせている。(高崎園子)

 昨年5月から今年3月までの処理状況をまとめたデータでは、沖縄県の特定検診の受診率は、全国平均の25・8%を若干上回る26%で全国23位だった。

 保健指導対象者はこのうち、お腹周りや体格指数(BMI)、血圧などが高く、生活改善のサポートが必要と判断された人。全国平均は15・3%で、20%台に上るのは沖縄県だけだった。

 特定健診の目標は、生活習慣病を減らすことにある。厚生労働省の調査で、沖縄県は、生活習慣病の要因となる肥満者の割合が男女とも全国1位、生活習慣病の代表である糖尿病による死亡率も1位。保健指導対象者の全国ワーストは、こうしたデータを裏付けるもので、長寿県の危機を改めて予見させる。

 生活習慣病は重症化するまで、自覚症状がないのが特徴。病気の端緒は健診でつかむしかない。

 保健師で、県国保団体連合会事業課課長補佐の新里成美さんは、「沖縄の糖尿病は、肥満からきている場合が多い。健診で早期発見し、肥満を改善すれば、数値が良くなる場合が多い。特定健診は、沖縄でこそ意味のある制度で、チャンスだ」と指摘する。

 県医師会理事の玉井修さんは「(結果は)やっぱりなという感じ。沖縄は、住民健診で『要医療』といわれたが医療機関で受診していない人の割合も全国一で、健診が医療に結びついていない現状もある。行動に移すことが重要だ」と話していた。

[ことば]

 特定健診・特定保健指導 対象は40〜74歳。生活習慣病の原因となる内臓脂肪型肥満に着目。腹囲や血液、尿などを検査し、ほっておくと生活習慣病になりかねない人を保健指導する。保健師らが3カ月以上にわたって指導する「積極的支援」、原則1回の「動機付け支援」がある。

食事 バランス良く

2009年07月19日 読売新聞 YOMIURI On-Line

医学部・中村教授「ほうとう高い栄養」

 山梨大学と読売新聞甲府支局が共催する連続市民講座「いのちの輝きに想(おも)いを寄せて」の第4回講義が18日、同大甲府東キャンパスで開かれた。医学部看護学科の中村美知子教授が「命を支える食育と健康」をテーマに講義した。食生活の乱れから糖尿病や「メタボ」に悩む人が増える中、郷土料理ほうとうが栄養に優れていることを示した分析結果を紹介し、「健康のためバランスの良い食事を」と呼びかけた。

 看護師の臨床経験もある中村教授は冒頭、ナイチンゲールの言葉を引用し、「規則正しい食事は病気の予防には欠かせない要素の一つ」と健康と食生活の結びつきの強さを語った。

 2007年度の厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、糖尿病患者やその可能性がある人は日本全体で約2210万人、およそ5人に1人に上るという。腹囲が一定基準以上になるなどのメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に当てはまる中高年も多い。

「健康で楽しい食生活を送るには、まずできるところから主体的に行うことが大事」と語る中村教授  中村教授は背景の一つとして、コンビニ弁当やカップラーメンなどのインスタント食品に頼りがちになった食生活の変化を挙げる。その上で、健康を保つためには、「たんぱく質や脂質、炭水化物をバランス良く食べることが重要」と強調した。

 さらに、肥満の原因となる中性脂肪や悪玉コレステロールの増加を防ぐ魚や、糖尿病予防に役立つ食物繊維やビタミン類が豊富な野菜を日頃から食べる効用を、研究データを示しながら説明した。

 バランスの良い食事の一例として、ほうとうを実際に作って栄養分析した結果を披露した。必要な栄養素が幅広くそろう一方、とりすぎると高血圧につながる塩分の多さが目立った。中村教授は「和食は栄養バランスがいいが、ほうとうに限らずみそやしょうゆで塩分が高くなる傾向がある」と注意点を示した。

 自分の食生活を点検する方法として、1日の食事を書き入れると適量が分かる厚労省の「食生活チェックブック」を紹介。「一人ひとりが主体的に考え、自己管理することが大切だ」と締めくくった。

 甲府市古府中町の主婦小沢静江さん(56)は「食事は好きなものを選びがち。今回を機に食生活を見直して、野菜をもっと食べたい」と話していた。

メタボ対策 「一無、二少、三多」の勧め 効果的に発症を減らす

2009.05.25 MSN産経新聞

 ■池田義雄氏の提唱する健康習慣

 日本人の健康習慣には、「一無(無煙)、二少(少食・少酒)、三多(多動・多休・多接)」が最適−。東京慈恵会医科大総合健診・予防医学センターの和田高士教授が7年間、人間ドックを受けた約9500人を追跡調査したところ、日本生活習慣病予防協会理事長、池田義雄氏の提唱する健康習慣が、従来の健康習慣と比べてメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の発症をより効果的に減らすことが分かった。調査結果は5月、日本内科学会の英文誌「INTERNAL MEDICINE」にも掲載された。(大串英明)

 ≪意外と古い健康習慣≫

 従来、重要視され国内でも広く紹介されてきた「7つの健康習慣」は、米国カリフォルニア大教授、レスター・ブレスロー氏が提唱した。1965年とかなり早い時期に生活習慣に着目し、よい生活習慣を送っている人ほど死亡率が低いことを発表、今でも厚生労働省のホームページで改変したものが記載されている。

 その後、昭和62年に大阪大大学院教授の森本兼曩(かねひさ)氏が日本人を対象にストレスを加えた新たな「8つの健康習慣」を、平成3年には池田氏が「一無・二少・三多」をそれぞれ提唱した。

 池田氏が提唱する健康習慣の「一無(無煙)」はたばこのない生活。「二少(少食・少酒)」は、食事量と飲酒量は少なめの腹8分。「三多(多動・多休・多接)」の多動は身体を「できるだけ動かす」ことで、多休は休息・睡眠を十分とり、心身ともにリフレッシュ。「睡眠時間」の規定はせず、休憩や仕事をしない休日を十分取る。多接は趣味などで多くの人や物と接し、ストレスを発散することだ。

 ≪実践数に比例≫

 和田教授らは、ブレスロー、森本、池田3氏の健康習慣がメタボ予防にどの程度の効果があるか検証した。主に人間ドックを行なう施設で平成12年から19年まで、男性6700人、女性2800人を対象に、3種類の健康習慣計21項目で調査。調査内容は健康習慣の実行数によって、「少実践」「中実践」「多実践」に分け、診断基準に沿ってメタボの発症率を探った。

 その結果、女性では3つの健康習慣で、いずれも多く実践しているほどメタボ発症の抑制がみられた。特に池田氏の習慣では、少実践群と多実践群での発症の差異が顕著だった。

 ところが、男性はブレスロー、森本両氏の健康習慣で、中実践群より多実践群のほうがメタボ発症率が高かった。両氏の健康習慣をより多く実践してもメタボ発症の抑制効果はなく、むしろ増加するという思いがけない結果となった。これに対し、池田氏の健康習慣だけが実践数に比例してメタボ発症の抑制が見られ、きれいな右肩下がりの下降線を描いた。

 ≪最少で最大の効果≫

 和田教授によると、ブレスロー氏の健康習慣で気になる点は「定期的に激しい運動をする」こと。激しくないと効果がないのか。また、「飲酒量は4本以下まで」としているが、日本人で4本はかなり多い。森本氏の健康習慣はブレスロー氏とよく似ており、ストレス項目も含まれ、より現代にマッチしている。しかし、「睡眠時間7〜8時間」という規定は必ずしも妥当ではない。

 一方、池田氏はストレスとは謳っていないが、「多接」で悩みを1人で抱え込まないことでメンタルトラブルの予防には有効といえそうだ。

 和田教授は「ブレスロー氏の健康習慣が日本人にとっても本当に有益なのか。多く実践しようがしまいが死亡率には影響がない」と指摘。その上で、今回の調査結果について、「一見よさそうな健康習慣もそれほど効果がなかった。現代人にとって、最少の内容で最大の効果を上げるという健康習慣が明確に提示できたのではないか」と話している。

酢で内臓脂肪が減少 ミツカンが研究発表

2009/05/14 中国新聞ニュ−ス

 ミツカングループ本社(愛知県半田市)は十四日、食酢を継続的に摂取すると内臓脂肪が減少することを臨床試験で初めて確認したとの研究結果を発表した。血中中性脂肪や体重を引き下げる効果も確認したとしており、酢がメタボリック症候群の予防に役立つ可能性があるとしている。

 臨床試験は同社中央研究所が実施し肥満気味の成人男女百五十五人が参加した。食酢入りドリンクを毎日飲む人と飲まない人に分け、十二週間後にコンピューター断層撮影(CT)で腹部の内臓脂肪面積を計測し、差が出るかどうかを検証した。

 その結果、一日当たり食酢十五ミリリットルを飲んだ人の場合、内臓脂肪の面積が平均五・四三平方センチ、三十ミリリットルの場合は同六・七二平方センチ減少したが、飲まなかった人は同二・七三平方センチ増加した。

 同研究所によると、食酢に含まれる酢酸に脂肪を減らす効果があるとみられる。酢酸は脂肪組織に含まれる中性脂肪の合成を抑える効果と燃焼を促進する効果があることが、動物実験で実証されているという。

生活習慣病とメタボ腹「関連強くない」…厚労省研究班

2009年03月01日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の診断基準は、腹囲が男性85センチ以上、女性で90センチ以上あることを必須条件としているのに対し、単に腹囲が大きいだけでは生活習慣病の危険要因としては不十分という調査結果を、下方浩史・国立長寿医療センター(愛知県大府市)研究所部長を班長とする厚生労働省研究班がまとめた。

 メタボ基準を巡っては、男性の腹囲が女性より厳しいことなどについて異論が続出しており、今回の結果も見直し論議に一石を投じそうだ。

 研究班では、無作為に選んだ愛知県内の40〜82歳の男女3253人について、内臓脂肪の断面積をコンピューター断層撮影法(CT)で計測。内臓脂肪面積が100平方センチ以上の肥満の人とそれ未満の人で、2000年から6年間、心臓病や脳卒中を引き起こす動脈硬化の進み具合を、心臓の冠動脈や脳血管の梗塞(こうそく)の有無など6項目で比較した。

 肥満の人は、そうでない人に比べ、動脈硬化のある人の割合が、心臓の冠動脈は女性では約1・2倍だが男性では差がみられず、脳内の細い血管は男性は約1・2倍だったが女性では差はあまりなかった。6項目すべてで差は1・5倍未満にとどまり、「全体として関連はそれほど強くない」(下方部長)と分析された。

 メタボの基準では内臓脂肪面積が100平方センチ以上の場合に危険が高まるとして、それに該当する腹囲(男性85センチ以上、女性90センチ以上)が定められた。今年度始まった「特定健診」(メタボ健診)では、腹囲が基準を超えていなければ、血圧、血糖値、脂質のすべてに異常があっても、指導の対象にならない。

目指せ!!1日1万歩 適度な運動でメタボ予防 筋肉と骨の維持にも有効

2009.02.04 MSN産経新聞

多様化する歩数計。携帯電話のようにデコレーションされたものも=大阪市北区のヨドバシカメラマルチメディア梅田

 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策の特定健診・保健指導(メタボ健診)が昨年4月に始まってから、歩数に注目が集まっている。一般的に生活習慣の改善として1日1万歩歩くのが望ましいとはよく言われるが、実際にどれくらい歩いているものなのか。また、歩くことは健康を維持するうえでどのような効果があるのだろうか。(青木勝洋)

 歩数に対する関心の高まりは、豊富になった歩数計の種類にも表れている。家電量販店「ヨドバシカメラマルチメディア梅田」(大阪市北区)には、歩数計がずらりと並ぶ売り場がある。売り場の担当者は「メタボ健診が始まってから売れ行きが良くなった。男性だけでなく、女性も買うようになったのが最近の傾向」と話す。

 ラジオや防犯ブザーといった付加機能を充実させたものだけでなく、携帯電話のようにデコレーションが施されたものもある。歩数計が性別や世代を超えて浸透しつつあることを実感させられる。

 実際に歩数計を身につけて約1週間、計測すると、1日平均9000歩前後だった。厚生労働省の平成19年国民健康・栄養調査結果によると、日常生活での歩数の平均値(20歳以上)は男性7321歩、女性6267歩。デスクワークが中心の仕事にもかかわらず平均値を上回ったのは、歩いて頻繁に往復しなければならない社内の別の部署まで比較的距離があることが要因かもしれない。この距離が短くなれば、歩数は確実に減るはずだ。

 ちなみに、「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」の目標値は、男性9200歩以上、女性8300歩以上。厚労省の調査結果では、男性の71・3%、女性の73・0%がこの目標値に達していない。

 では、なぜ1日1万歩が望ましいのだろうか。大阪体育大学(大阪府熊取町)の滝瀬定文教授(スポーツ医学)は「その人の体重にもよるが1万歩は300キロカロリーの消費に相当する。これぐらいを消費しなければ、基礎代謝量(生命を維持するのに必要な最小のエネルギー)は上がらないし、太ることになる」と説明する。

 滝瀬教授によると、基礎代謝量は、10代の1日平均を1300キロカロリーとすると、20代1209キロカロリー、30代1188キロカロリー、40代1162キロカロリー、50代1122キロカロリーと加齢とともに低下する。適度な運動をせずに食べる量が変わらなければ、体内に蓄積される脂肪が増えるのは当然だ。1万歩で消費する300キロカロリーという数字は、そうならないための妥当な数字といえる。

 一方で、ダイエットとまではいかなくても、食事量を制限することで体重管理ができるようにも思える。しかし、滝瀬教授は「筋肉は使わなければ弱くなる」と指摘する。また、骨密度の低下を防ぐためにも歩くことは有効。「食事で取ったカルシウムを生かすには、適度な運動で骨に負荷を加えることが必要」という。まったく歩かなければ、股(こ)関節が弱くなり、将来的には歩行が困難になるという事態も想定される。

 歩数を増やすために歩数計は効果的な道具。現状の歩数を把握することができ、目標を設定しやすく、数字が励みにもなるためだ。また、長時間歩くのであれば、自分の足に合ったウオーキングシューズを履きたい。

 「生涯にわたる健康づくりのため、まずは運動しようという気持ち、態度をもつこと。そして、続けることが大切です」と滝瀬教授はアドバイスしている。

“メタボ元年”でブームの兆し 杜仲茶鍋 多彩な楽しみ

2008.11.20 MSN産経新聞

ビュッフェ専門店「柿安三尺三寸箸」では杜仲茶鍋の提供を始めた。メタボリック対策と銘打ったポップで来店客にアピールする=東京都千代田区のヌーベル日比谷店

 朝晩の冷え込みがグッと厳しくなり、本格的な冬が近づいてきた。家族や友人で囲む鍋のぬくもりが恋しくなる季節だ。

 近年は、定番の寄せ鍋や水炊きに加えて、火鍋やカレー鍋など、新たな鍋がブームを巻き起こし、多彩な鍋を楽しむ人が増えているが、現在、ブームの兆しをみせているのが、杜仲茶(とちゅうちゃ)鍋だ。

 脂肪の消費促進や血圧の低下に効果があるといわれる杜仲茶を使用しており、4月から特定健康診査・特定保健指導が始まり“メタボ元年”といわれる今年、注目を集めそうだ。

 ビュッフェ専門店「柿安三尺三寸箸(はし)」は1日から、関東と関西の計4店舗で「杜仲茶ゆばチゲ豆腐」の提供を始めた。煮出した杜仲茶にだしをくわえ、九条ネギなど京野菜と豆腐を、韓国風の味付けで煮込んだ。

 料理を提供する鍋の前には「秋冬の健康・メタボ対策に」のポップを設置。東京・日比谷のヌーベル日比谷店では、ポップに目をとめた40、50代の女性客や男性会社員が手を伸ばしている。

 東京港区の居酒屋「馬乃骨」でも10日から「杜仲茶入り海鮮漁師鍋」メニューを始めるなど、杜仲茶鍋を提供する店舗が拡大している。

 ◆茶葉の味も改良

 杜仲茶の葉にはメタボリックシンドロームの診断基準である、内臓脂肪、血中脂質、血圧、血糖値の4要素に効果があるとされている。1993年にテレビ番組で紹介されブームを巻き起こすなど、以前から健康機能性の素材として知られているが、独特の酸味や甘み、漢方薬のようなにおいが強いというイメージで杜仲茶を敬遠する人が多いという。

 杜仲茶市場で50%以上のシェアを誇る小林製薬の研究開発カンパニー食品CVS開発グループの平田哲也係長は「現在は、渋みと苦みのバランスがとれた味に仕上がっている」と、胸を張る。葉の焙煎(ばいせん)方法や加工時期を工夫することで、味の改良に成功したのだ。

 ◆子供や妊婦も安心

 三尺三寸箸でも小林製薬の杜仲茶を使用。同業態を展開する、柿安本店レストラン事業部で和食メニューの作製に携わる、山田富雄料理マネジャーは「お客さまのなかには、杜仲茶を使っていることを気づかない人も多い」と話す。三尺三寸箸ヌーベル日比谷店では、杜仲茶鍋のほかに、杜仲茶を使ったデザートやスープも取り扱うが、どれも杜仲茶の存在は控えめだ。

 もちろん、家庭でも杜仲茶鍋を楽しむことが可能。市販の杜仲茶を煮出しして、だしや調味料を加えて、好みの鍋に仕上げる。肉の余分な脂肪が落ちて、サッパリと食べることができるという。

 杜仲茶には、細胞内でのコラーゲンの生産・合成を促進する働きもあるため、コラーゲンを多く含む鶏の手羽肉を具材にすれば、女性にもうれしい鍋に変身する。カフェインを含まないため、小さな子供や妊婦も安心だ。

 忘年会などでついつい食べ過ぎてしまう年末年始。友人や家族とのパーティーに杜仲茶鍋を楽しんでみては。

メタボ体質判定します 湧永製薬がキット発売

2008年04月01日 中国新聞ニュ−ス

 湧永製薬(大阪市)は1日、薬局の店頭で口内の粘膜を採取するだけで、メタボリック症候群になりやすい肥満体質かどうかが遺伝子レベルで分かり、食生活のアドバイスも受けられる「肥満関連遺伝子検査キット」を全国の薬局、薬店で売り出した。

 生活習慣の改善に関心の強い人は多く、内臓脂肪の蓄積で生じるメタボの予防に向けた特定健診が4月から始まったのに合わせて発売した。希望小売価格は8000円。

 ほおの内側を綿棒でこすり、取れた粘膜を薬局経由で湧永製薬に送る。同社は肥満に関係する遺伝子3種類を調べ、太りやすくもやせやすくもない「標準型」か、おなか周りに脂肪が付きやすいメタボの「りんご型」、下半身が太りやすい「洋なし型」、太りにくい「バナナ型」かを判定。

満腹感長持ちする素材 アサヒ、メタボ対策に応用

2008年03月24日 中国新聞ニュ−ス

 アサヒビールは24日、大豆から抽出したタンパク素材の一種に満腹感を長持ちさせる作用があることが分かり、「満腹たんぱく」と名付けたと発表した。

 メタボリック症候群への関心が高まる中、アサヒグループの健康飲料「スリムアップスリム」に配合、他商品への応用も検討する。研究結果は26日から名古屋市で開く日本農芸化学会で発表する。

 「満腹たんぱく」は、食品原料として以前から使われているタンパク素材の一種。食品に配合すると、胃から腸へと送られる速度が遅くなることをラットによる実験で確認。さらに人による実証試験でも、満腹感が長持ちすることが確かめられたという。

 アサヒの消費者調査では、ダイエットをやめたくなる理由として「空腹に耐えられない」と答えた人が半数以上を占めた。アサヒは「肥満はメタボリック症候群の大きな原因。満腹たんぱくが、空腹感を克服する助けになるだろう」と期待している。

爪でメタボ体質判定、女子栄養大の研究活用・PSS

2008/03/18 NIKKEI NeT

 バイオ研究機器開発のプレシジョン・システム・サイエンス(PSS)は爪(つめ)から内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)になりやすい体質を判定する器具を開発した。同社のDNA抽出精製装置と組み合わせて実用化する。今年4月に始まるメタボ対策の特定健診・保健指導の関連需要を開拓する。

 女子栄養大学の研究成果を活用し開発した。特定の4種類の遺伝子に変異があると、体内で脂肪を燃やす作用が正常でなかったり、高血圧になりやすいという。

メタボ対策の男性下着発売へ ワコール

2008年03月17日 中日スポ−ツ

 下着大手ワコールは、メタボリック症候群を気にする男性向けに、習慣的に着用して歩くとおなかを引き締める効果が期待できる下着を18日から順次発売する。百貨店向けブランド「ダムス」の商品を同日から、量販店向け「ブロス」は4月10日から売り出し、男性向け下着市場への攻勢を強める。

 腹部からひざ上まである商品は、編み方の工夫によって太ももの筋肉を軽く刺激。歩幅が広がって太ももの筋肉全体を使った歩き方になる。週に5日間着用し、1日に6000歩以上を長期間続けると、ワコールの実験では体脂肪率減少や、おなか回りが細くなる効果があったという。

 ダムスは2タイプあって5250円と4935円、ブロスも2タイプで3360円と3150円。初年度で計20万枚の販売を目指す。(共同)

断食でメタボ対策をどうぞ 西神オリエンタルホテル

2008/03/14 神戸新聞

 西神オリエンタルホテル(神戸市西区)は、断食プランの営業に力を入れている。四月からメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策の健診や指導が、健康保険組合や自治体に義務付けられ、生活習慣病予防への関心が高まっているため。ダイエット目的の女性に加え、自宅や職場を離れて健康管理を考えたい男性客の取り込みも図る。

 断食プランは二〇〇三年九月に開始。ホテルで取り入れているところは珍しいという。

 「ファスティング」と呼ばれる手法で、食事は野菜ジュースを中心にし、徐々に固形物に移す。ホテル内の開業医が事前に健康状態をチェック。糖尿病など医療行為としてカロリー制限が必要な人も受け入れている。

 〇七年の利用客は四百九十一人。うち男性は約15%だった。旅行代理店を通じて企業や自治体向けのPRを強化するほか、四月から断食プランのオプションメニューに整体も加える。標準料金は五泊六日(シングルルーム)で十四万二千五百円。二泊三日などのコースもある。(内田尚典)

「メタボ対策」本気で取り組め

2008年03月09日 宮崎日日新聞

 わが国では食生活の欧米化や社会環境の変化から、生活習慣病の増加が国民的な問題となっている。

 本県でも国民健康・栄養調査などから特に中高年の生活習慣病予備軍の増加が深刻な状況だ。

 県では健康づくりの基本指針となる「健康みやざき行動計画21」を策定しているが県民の意識はまだ低く、生活改善はあまり進んでいない。

 4月からはメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策として特定健診・保健指導もスタートする。

 今後より一層行動計画の浸透を図り、県民に「健康は自分でつくる」意識を広めていかなければならない。

■予防医療推進が急務■

 県の「健康みやざき行動計画21」は2001年2月に策定。国が進める国民健康づくり運動「健康日本21」の趣旨に沿う形で推進している。

 「健康日本21」では疾病の早期発見や治療にとどまらず、生活の質の改善を図り疾病を予防する「一次予防」の推進が急務としている。

 県の行動計画でも、自立して生活できる期間(健康寿命)を延ばす、健康長寿社会の実現を目指し、栄養・食生活、身体活動・運動、喫煙、アルコールなどの項目で目標値を設定し、その達成に向けて啓発を行っている。

 行動計画について県では05年度に中間評価・見直しを行っているが、それをみる限り、県民の健康づくりへの意識はあまり高くないようだ。

 健康維持のための指標となる多くの項目で、行動計画策定時の目標値に到達していないばかりでなく、当初の数値よりも直近値が悪化しているケースが目立っている。

 県民はこの実情を知り、日常生活をどう改善すれば疾病のリスクを減らせるか正しい知識を持つことが重要だ。

■日常の生活改善図れ■

 県健康増進課によると、メタボリックシンドロームに関する調査で本県の該当者の割合は全国平均は下回っているものの、一方で予備軍とされる人は男女とも上回っている。

 特に40代以上は割合が高く、「若いうちからの一次予防が重要」(同課)で、県は行動計画でも「メタボ対策」に着目し改定作業を進めている。

 ただ、健康づくりは行政が施策を打ち出しても県民一人一人が重要性を意識しなければ効果は表れない。このため県は、県民が日常手軽に取り組める生活改善策の普及に力を入れている。

 その一つが本年度作成した「みやざき県版食事バランスガイド」だ。

 厚労省・農水省が示した1日に何をどれだけ食べればいいかが一目でわかるイラスト表を県民が慣れ親しんでいる食材や料理に置き換え示している。

 もう一つ注目するのが、ウオーキングなどの運動や家事などの生活活動を一定時間行えば1エクササイズとして、一週間で23エクササイズ以上取り組むことを推奨する運動だ。

 どちらも県健康づくり推進センターのホームページで閲覧できる。

 県は県民の健康増進と併せ将来の医療費抑制も狙い、新年度も予防医療政策としていくつか予算計上している。

 マラソンランナーとしても知られる東国原知事にも今後一層、そのPR力を発揮してもらい、県民に「健康は自らつくる」意識を訴えてもらいたい。

 4年後に行う予定の行動計画最終評価時には、本県が「日本一の健康県」になれるよう目指したい。

メタボ対策商品:太る市場 百貨店に売り場続々、栄養士による接客も

2008年03月09日 毎日新聞 東京朝刊

 百貨店各社が、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策商品の品ぞろえを増やし始めた。この種の商品は、テレビの通販番組などが積極的に扱っていたが、百貨店はあまり熱心ではなかった。しかし、4月から40〜74歳を対象とした特定健診・保健指導(メタボ健診)が始まるのを機に、関心が高まると判断した。専門の販売員を置いたり、珍しい商品を仕入れたりして、百貨店ならではの売り場作りをしている。

 小田急百貨店新宿店(東京都新宿区)は年明けから「メタボリックコーナー」を設置した。運動器具から健康食品まで約120種類をそろえたうえ、栄養士などの資格を持つ販売員も常駐させた。顧客の「やせたいが激しい運動は嫌だ」といった求めにも、応じられるようにするのが目的だ。

 高島屋日本橋店(中央区)は1日、アフリカの半遊牧民の歩き方を参考にした靴「MBT」(マサイベアフットテクノロジー)の売り場を開設した。半円形の不安定な靴底で、歩くだけで背筋が鍛えられ、姿勢も正しくなるという。1足2万9400〜3万6750円。

 西武百貨店池袋本店(豊島区)は機能性下着の販売を強化。つぼを刺激しておなかを引き締める男性用パンツなど約20種類をそろえたところ、「前年比5割増の売れ行きだった」と説明している。【宮島寛】

来月開始の“メタボ健診”前に新商品の発売相次ぐ

2008/03/08 神戸新聞

 カロリーや糖質を抑えて健康志向を打ち出しつつ、味にもこだわる食品の発売が相次いでいる。内臓脂肪が起因とされる「メタボリックシンドローム」の該当者や予備軍を調べる特定健診・保健指導が4月から始まることも、関連食品の開発に拍車をかける。ただ、おいしくなければ消費者には選ばれないため、関西の食品メーカーなどが知恵を絞っている。(白倉麻子)

 「糖質ゼロ」「カロリーオフ」…。スーパーの売り場では、健康志向をアピールするアルコール飲料の新製品が並ぶ。

 サントリーは今春、糖質ゼロの発泡酒「ゼロナマ」を投入した。既存商品の発泡酒もパッケージを変更。総カロリー七十七キロカロリー(三百五十ミリリットル)を前面に打ち出した。「高まる健康意識に合わせ、カロリー訴求を強化した」という。

 しかし開発では、味に苦労した。ゼロナマは仕込み工程での温度、時間条件を最適化することで糖分解を大幅に促進。麦芽から糖質の少ない部分を分離し処理することで、糖質ゼロでも本格的な味わいを出せたという。

 キリンビールも百ミリリットル当たり十九キロカロリーの発泡酒を新発売した。「今年のキーワードの一つは糖質オフ商品」と言い切る。

 宝酒造は辛口チューハイ(甘味料不使用、糖が百ミリリットル当たり三グラム以下のチューハイ)の売れ行きが好調だ。「健康を気にする人らの甘さ離れの表れでは」とみる。

 ビール類の二〇〇七年の出荷量は前年比1%減で、過去最低を更新。清酒などの売れ行きも伸び悩む。人口減少やアルコール離れなどの逆風に押される中、メーカーはメタボ対策など健康志向に新たな活路を求める。

 健康志向はアルコール飲料以外にも広がる。スイーツ好きにとって気になるのがカロリーだが、最近はアイスクリームにも「健康系」が目立ってきた。

 森永乳業は、一般的なアイスの半分のカロリーという「エスキモー 真夜中の贅沢(ぜいたく)」を全国発売。夜中に食べたいという女性の願いに応えた。江崎グリコの「カロリーコントロールアイス」も八十キロカロリーと控えめ。「甘味料の使い方などを工夫して味も追求した」という。

 四月の特定健診・保健指導を前に、二十-五十代の主に働く男女ら千人に実施した小林製薬の調査によると、九割が同健診の実施に期待。またメタボ対策について七割強が今後対処すると答えた。

 人口減少で食の市場は縮小傾向にあるが、同社は「健康関連の食品は今後も増え、市場はより盛り上がる」とみている。

活動量計 メタボ対策に新兵器 日常生活の運動量測定

2008.03.07 MSN産経新聞

 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策として4月から始まる特定健診・保健指導を前に、掃除や洗濯など日常生活の運動量を正確に測定できる「活動量計」が発売され、話題を呼んでいる。従来の歩数計では測定できなかった活動強度や消費カロリーを把握することで、ダイエットや生活習慣の改善につながるとの期待が高まっている。(中曽根聖子)

 歯科医療関連の企画会社「エイチ・エムズコレクション」(東京・両国)の北原文子副社長は、オフィスでパソコンに向かうときも、自宅で家事をするときも腰につけた活動量計の数値が気になって仕方ない。同社は昨年、従業員の健康管理などを目的に松下電工の活動量計5台を購入。1週間身につけた結果、平日は1万歩以上を歩くのに総合的な運動量が足りないことがわかりショックを受けた。運動量を増やすため週末にランニングを開始したところ、体調の良さを実感している。

 北原さんは「自分が動いているときの活動強度や消費カロリーの数値がリアルタイムに確認できるのが面白い。運動だけでなく、食事や健康にも関心が高まり、生活習慣を変えるきっかけになった」と話す。

 松下電工が昨年11月に発売した活動量計「アクティマーカー」(2万790円)は、ゲーム機などに使われる3次元加速度センサーを内蔵し、上下、左右、前後といずれの方向の動きについても敏感に検知。腰につけておくだけでサッカーや野球など活発な運動から、掃除や洗濯など日常の軽度の動きまで、すべての身体活動を測定する。

 個々の行動は、身体活動の量を表すために厚生労働働省が新たに定めた「エクササイズ」(Ex)や、活動強度を表す「メッツ」(METs)という単位で表示され、1週間連続して装着すれば、生活習慣病予防の目安となる運動基準、週23エクササイズを超えたかどうかもわかる。

 オムロンヘルスケアも国立健康・栄養研究所と共同で活動量計を開発。すでに企業の健康保険組合や医療機関、自治体向けに販売を開始している。メタボ予防・改善を目的に始まる特定健診・保健指導の強力な指導ツールとして期待が高まっている。

                ◇

 医師や保健師、管理栄養士らが、効果的な指導を行うには精度の高いデータが必要になるが、自己申告や従来の歩数計では消費カロリーの推定が難しかった。オムロンヘルスケア広報渉外部の富田陽一主事は「新しい制度では、これまで健康診断を受ける機会が少なかった主婦も健診が義務化されるため、軽度の家事労働も正確に把握することで、ライフスタイルに応じたきめ細かい指導を実施できる」と説明する。

 アクティマーカーの場合、別売りの解析ソフトが個人のデータを分析して「活動不足」「もう一歩」などと判定。メタボのリスクを低減するため運動と食事の具体的な目標をはじき出すことも可能だ。

 厚生労働省によると、メタボ該当者と予備軍は約2000万人。松下電工は、将来的に個人向けの販売も検討しており、同社電器新事業開発センターの兼田英之さんは「健康管理や肥満予防には、食事と運動のバランスなど日頃の生活実態を知ることが大切」と話している。

メタボ対策:ヘッドホン型「カラダトレーナー」発売 有森裕子さんも息を切らしてPR

2008年02月26日 毎日新聞

 セガトイズは26日、ウオーキングなどの有酸素運動で最適なペースを教えてくれるヘッドホン型のトレーニング補助器具「カラダトレーナー」(5775円)を“メタボ元年”となる4月に発売することを明らかにした。

 「カラダトレーナー」は、有酸素運動をする際、センサーで心拍数を測定しながら、年齢に合わせた運動のペースをリズム音でガイド。心拍数によって、「もっと弱く」から「もっと強く」まで7段階の音声でアドバイスする。ウオーキングは最長60分、ジョギングは45分、エアロビクスは25分で、ウオーミングアップとクールダウンも設定。iPodなどの音楽プレーヤーと接続し、好きな音楽を流しながらトレーニングもできる。ホワイトとシルバーの2色が発売される。

 同社は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策として、40歳以上を対象に特定健診・保健指導の実施を企業や自治体に義務付けた「メタボ健診」が今年4月から実施されるのに合わせて開発。「個人差はあるが、120%の運動効果を得られる」とし、年間30万台の販売を目指している。

 発表会では、トレーニングアドバイザーを務めたバルセロナ五輪女子マラソン銀メダリストの有森裕子さん(41)がジョギングを実演。思わず息が上がってしまい、「運動不足ですね」とちょっぴり恥ずかしそうにつぶやき、「一人でトレーニングすることが多いので、音声でアドバイスしてくれる安心感がある。故障明けのトレーニングにも使える」とPRした。【立山夏行】

2兆円市場にアイデア商品が続々

2008年02月20日 NBonLine 永井 央紀

メタボ対策にも“見える化”

 忘年会、新年会シーズンが一段落。ふと気がつけば、お腹回りが一段と大きくなっている…。そんな指摘に耳の痛い人も少なくないだろう。今やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は予備軍も入れれば中高年男性の2人に1人が該当すると言われている。

 4月には企業の健康保険組合に対して、メタボに着目した特定健康診査が義務づけられる。該当すれば食事内容や運動の目標といった指導を受けなくてはならない。ただ、世にメタボ対策はあまたあるものの、いかに継続させるかが大きな課題。そこで今、日常生活の中で使える手軽なメタボ対策商品が注目を集めている。その特徴は、言わばカロリーの“見える化”だ。

 愛知県瀬戸市の食器メーカー、サンアートが開発した「カロリービアジョッキ」(希望小売価格945円)。一見すると、普通の細身のジョッキだが、いざ飲もうとすると表面に刻印された赤い文字が目に入る。「300ミリリットル―130キロカロリー」。ビールのカロリー量をそのまま目盛りにしているのだ。

 「せっかくのビールがまずくなる」とのボヤキも聞こえてきそうだが、実はそれも狙いの1つ。サンアートによると「自分用に買う人は少数派。女性が夫や父親に『あまり飲みすぎないでね』と贈るケースがほとんど。カロリー表示が気になって控えめに飲むようになる」とか。

 2007年6月から通信販売などで売り始め、多い月には1000個の注文が来るという。同様のジュース用グラスも販売しており、こちらはコーラ、ジュース、コーヒーなど種類別に複数のカロリー目盛りをつけている。

ライオン日用品もメタボ対策…油取りシート、ヘルシー前面

2008/02/19 FujiSankei Business i.

 キッチン用品もメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策に一役−。

 4月から特定検診・特定保健指導が始まるのを機に、メタボ予防・対策への関心が高まるのを見込み、食材や料理だけでなく、キッチン用品でもメタボを意識した製品開発が活発になりそうだ。ライオンは「ビタミンまもる。カロリーおさえる。」をうたい文句にクッキングぺーパーや油吸い取りシートなどを相次ぎ製品化、3月26日に一斉に発売する。

 ≪脱油量1・5倍≫

 1970年発売のクッキングペーパーを改良した「リード ヘルシークッキングペーパー」は電子レンジを使った調理に用いる=写真=ことで、食材の油を落としながらも栄養素を保つ。ふきん代わりや空揚げなどの敷紙に使うクッキングペーパーだが「ヘルシー」を前面に出すのは初めて。

 電子レンジで揚げ物など食材を加熱する際にリードを敷くことで食材の脱油量が1・5倍になることを確認。改良品は、天然パルプ素材を絡めた不織布の繊維量を増やして厚手にした。このため水分・油分の吸収量がアップしたという。

 ライオンの調べでは、トリの空揚げ(320グラム)の温め直しで140キロカロリーの減少となり、ブロッコリーのビタミンC残存量はゆでたときの約1・5倍。

 電子レンジ加熱用シート「リード チンして油を吸いとるシート」、ゆでた時1・5倍のビタミンが残る「同 チンして簡単温野菜パック」など一連のシリーズで“メタボ対策日用品”の拡販をねらう。

 ≪市場盛り上がり≫

 メタボ対策市場は食品、医薬品などでも盛り上がりをみせている。花王の特定保健用食品「エコナクッキングオイル」は「体に脂肪がつきにくい」油として浸透。主力製品となっている。体脂肪対策としてPRする「ヘルシア緑茶」もシリーズ化を図り健康系飲料として人気が定着している。

 薬局で買える大衆薬でもメタボ対策製品は好調。ロート製薬の漢方薬シリーズで、たまった脂肪を落とす「和漢箋」は2006年11月の発売から1年で目標の3倍にあたる30億円を突破した。小林製薬が同年3月に発売した「ナイシトール85」も初年度35億円。同社医薬品で過去最高を記録した。メタボ市場の勢いは続きそうだ。

サントリー・日清オイリオなど、メタボ対策食品を共同で販促

2008/02/18 NIKKEI NeT

 サントリー、日清オイリオグループなどは共同で、メタボリック(内臓脂肪)症候群など生活習慣病対策につながる食品の販売促進活動を始める。各社の健康志向商品を店頭に並べ、料理や飲み物の組み合わせを提案する。厚生労働省が2008年度から、企業の健康保険組合などに生活習慣病対策を義務付けるのをにらんだ取り組みだ。

 共同販促は日清製粉グループの日清フーズ(東京・千代田)を加えた3社が4月から、全国のスーパー2000店強で実施する。各社の商品を組み合わせて店頭陳列する「クロスマーチャンダイジング(MD)」と呼ぶ販促策で、サントリーは3月発売の糖質ゼロの発泡酒「ゼロナマ」、日清オイリオは脂肪が付きにくいなどの効果がある食用油「ヘルシーリセッタ」、日清フーズは「から揚げ粉」を対象にする。

どこでもピラティス

2008年01月25日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 ピラティスとは、ヨガなどを取り入れた最近人気の体操で、正しい姿勢と呼吸法が身につき、体の引き締めやこりの解消などに効果があるといわれている。

 このソフトは、初心者でも基礎からピラティスがわかるようになっており、体操の動きを再現する動画を見ながら、実際にピラティスをやってみることができる。プログラムはコナミスポーツクラブが監修した。

 特に使いやすいのは、「クイックピラティス」というメニュー。「きれいな姿勢」「ウエストの引き締め」「むくみ解消」「腰痛の予防」など様々な症状に合わせて、効果のあるピラティスができる。画面のモデルの動きはわかりやすく、「息を吸って、吐いて」と、呼吸のタイミングが指示されるのも親切だ。それぞれのレッスンに、10分〜20分で行うお薦めプログラムと、手軽にできる3分間プログラムがあるので、その時の都合で好きな方を選ぶといい。。

 操作はタッチペンだけで簡単にできて、レッスンに集中できる。実際のレッスンに通えなくても、自宅などでピラティスを試せるのがうれしい。(早乙女泰子)

対応機種 ニンテンドーDS/発売元 コナミデジタルエンタテインメント/希望小売価格 4189円(税込)

メタボリックシンドローム/ 男性ホルモン減少 生活習慣病や鬱病の危険

2007/12/05 MSN産経新聞

 ■ストレスでも減少、EDが指標に

 これまで男らしさの象徴のように考えられてきた男性ホルモンだが、最近の研究で、男性ホルモンの減少が生活習慣病や鬱病(うつびょう)のリスクを高めることが明らかになってきた。また、男性ホルモンはストレスで減少することも分かってきた。高齢男性の健康のカギを握るとして、世界中で男性ホルモンの研究に注目が集まっている。(平沢裕子)

                   ◇

 男性ホルモンは、男性を男性特有の体つきや思考回路に発育させるホルモン。たとえば、筋肉隆々の体つきや、地図を読むなど2次元を3次元に置き換える能力に男性ホルモンが関係していることはよく知られている。テストステロンやアンドロステネジオンなど数種類あるが、テストステロンが最も生理活性が強いとされる。

 以前から男性ホルモンについての研究はあったが、男性の健康維持と深いかかわりがあるとわかってきたのは最近のことだ。帝京大医学部附属病院の堀江重郎教授(泌尿器科)によると、男性ホルモンの減少は、50歳代の1割、60〜70歳代の3割にみられるという。「ただし、画家のピカソが67歳で子供をもうけたように、60代や70代でも20代より男性ホルモンが多い人もいる。個人差が大きいために、これまで研究対象になりにくかった」と話す。

 この10年ほどで男性にも更年期があることはよく知られるようになった。男性更年期障害は、疲労感が取れない、やる気がおきない、筋肉痛が続く、寝付きが悪いなどの症状がみられるが、こうした症状に男性ホルモンの減少がかかわっていることが分かっている。とくに男性更年期障害患者の9割にED(勃起障害)があることからも、男性ホルモンがかかわっていると考えられている。

                   ◇

 さらに男性ホルモンは、高血圧や動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病と密接な関係があることがわかってきた。

 たとえば、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は男性に多い。男性の方が内臓脂肪がつきやすいためだが、若い男性で腹が出ている人はそう多くない。40代、50代で腹が出てくるのは、食べ過ぎや運動不足のせいだけでなく、男性ホルモンが減ることで内臓脂肪がつきやすい体になっていることが関係しているという。

 また鬱病、排尿障害、認知障害のある高齢男性を調べたところ、やはり男性ホルモンが減少していたことから、これらの機能にも関係があると考えられるという。

 鬱病については、男性ホルモンが副交感神経の働きに影響していることから、男性ホルモンの減少で、心のゆとりと密接な関係にある副交感神経の働きが低下し、鬱病になるリスクが高まるのではないかと見られている。

                   ◇

 男性ホルモンは加齢とともに減少するが、ストレスによっても減少することが分かっている。ストレスを減らすには、適度な運動と適切な食事、リラックスすることが大事なのはいうまでもない。

 また、自分の男性ホルモンが減少しているかどうかは普通は気がつかないが、堀江教授はひとつの手がかりとしてEDをあげる。

 「ED患者はメタボや心血管疾患の発症率が高いことが分かっている。高血圧や糖尿病は検査しないとわからないが、EDは自覚できる。日本ではEDは『年だから』と気にしない人も多いが、将来の男性の健康の指標になる」と話す。

 日本泌尿器科学会や日本メンズヘルス医学会では、男性ホルモン低下による男性更年期障害やED、心身症などの診療マニュアルを現在作成中だ。

メタボ対策が負担激太り 来春から健保・市町村

2007/12/04 中国新聞ニュース

 ▽大企業 20億円増も

 社員や住民のメタボリック症候群対策に、企業の健康保険組合や国民健康保険を運営する市町村が頭を悩ませている。新たな健診費用に加え、改善が見られないと罰則が科せられ、大企業の健保組合などでは、負担増が二十億円になる場合もあるからだ。

 来年四月から四十―七十四歳を対象にした特定健診制度が導入され、腹囲、血圧、コレステロール値などからメタボリック症候群の該当者や予備軍を割り出し、健保組合などが指導することが義務付けられる。

 二〇一二年度の健診実施率や保健指導実施率、該当者・予備軍の減少率によって、七十五歳以上が加入する後期高齢者医療制度への支援金を本来より最大10%、加算したり減算する仕組みも導入。具体的な条件は今後決まる見通しだが、支援金が加算されれば保険料の値上げにもつながる。

 三菱電機健保組合の場合、対象者は家族も含め約九万七千人で、特定健診実施に伴い新たに十億円の費用がかかる。保健指導の効果が出ず、該当者が増えるなどして罰則を受けると、支援金が十億円増額させられる見通しだ。同健保の医療費は年二百七十億円程度で、少なくはない額だ。

 トヨタ自動車健保組合も新たに十億円を充て、対象者を国の基準より若い三十六歳以上とする方針。「この年齢から数値が悪くなる人も多く、早めに対応する必要がある」(小野政秀事務長)ためだ。国が示した受診勧奨者の基準を緩めて保健指導の対象者を増やし、診察を受ける前に悪化するのを食い止める工夫をするという。

 自治体の負担も大きい。川崎市の場合、対象者は二十三万人。自前の保健師では対応できないため、保健指導を外部に委託する予定で、委託費だけで五億円に上る見通し。健診費用に十六億円、郵送代などの事務費にも数千万円かかる。

 担当者は「六カ月の指導の後、また元に戻ってしまってはまた同じ人に費用を使うことになり、無駄になってしまう。生活習慣などをどうやって自分で改善していけるかが課題」と話す。

歯周病がメタボを招く!? 脂肪肝、動脈硬化とも大きな関わり

2007/12/03 FujiSankei Business i.

 「歯周病」は口だけの病気と軽く考えていたら大間違い。歯周病が動脈硬化など全身疾患と大きくかかわっていることが分かってきた。無関係に思えるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の主要因子の一つとしてもクローズアップされている。体の健康維持に歯周病予防の重要性は増しているようだ。

 歯周病は成人の約80%がかかっているという。虫歯と異なり、歯肉炎など歯を支える歯茎などに起きる炎症を指す。細菌が歯を支える組織を壊すことで炎症が起き、歯周病を引き起こす。この歯周病が、体の健康に影響を及ぼすことが明らかになってきた。

 「歯と歯茎の間にはわずかな溝があるが、歯周病になると細菌が繁殖し、溝が深くなる。これが歯周ポケットだが、ポケット内の細菌は歯の周囲から頻繁に血液中に入り込んでいる。通常は細菌と戦う白血球や免疫物質のおかげで、危険な状態になることはない。しかし戦う能力の低下した人は、血液中で細菌が増えて、さまざまな疾患を引き起こす原因となる」と東京歯科大の奥田克爾・口腔科学研究センター所長は説明する。

 例えば歯周ポケットから入り込んだ細菌が、心臓の弁膜にへばりつき細菌性心内膜炎を起こしたり、動脈が硬化して動脈瘤(りゅう)ができた部分にも歯周ポケット内に多い細菌が発見されるなど、多様な疾患との関連が明らかになっている。最近では肥満やメタボリックシンドロームとの関係も取りざたされている。今年7月、興味深い論文がフランスで発表された。

 歯周病を引き起こす細菌が持っている毒素を構成する「リポ多糖(LPS)」を4週間持続的にマウスの皮下に埋め込むと、肝臓と脂肪組織に脂肪の沈着が置き、重量が増して体重が増加し、肥満状態になったという。この状況は高脂肪食の摂取により増強されるが、無菌動物では高脂肪食のみを与えても体重の増加は起こらなかった。

 「歯周病になって細菌が血流中から頻繁に入ると、常に毒素と対抗する状態になり、その刺激によって、脂肪組織や肝臓に中性脂肪の蓄積が起こる。このため脂質と糖の代謝に大事な役割を果たす肝機能が低下し、肥満の一つの要因となっている可能性がある」と奥田所長は解説する。

 長崎大大学院医歯薬学総合研究科の斎藤俊行教授の研究でも、歯周病患者の血液検査と脂肪肝の検査結果は強い関連性があったという。斎藤教授は、メタボリックシンドロームとの関連も指摘している。98年に女性584人に行った調査では、「腹部肥満」など5項目の判定基準のうち該当する個数が多いほど、歯周病リスクが高まった。

 京都市山科区のラクトクリニック・ラクト健診センターの細田正則副院長は、歯周病と全身疾患との関係を内科医の立場から指摘する。専門は消化器内科だが、重度の歯周病患者には歯科治療を勧める。「医科と歯科の医師がともに患者を診療して議論できれば、歯周病と疾患との意外な関連性も分かるかもしれない」と医科と歯科の連携の重要性を強調する。

 肥満が主たる原因となって糖尿病に発展する可能性は高い。あまり食べないのに太りやすかったり肥満が気になる人は、歯周病の検診を受けた方がよさそうだ。(阿部賢一郎)

一般用漢方薬が好調 メタボ対策品が牽引

2007/12/01 FujiSankei Business i.

 大衆薬市場が縮小する中、一般用漢方薬が好調だ。牽引(けんいん)しているのはメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策に照準を合わせた商品。生活習慣病予防の分野では、効用を表示することができる特定保健用食品(トクホ)に押されぎみだったなか、東洋医薬として「2000年の歴史」を武器に巻き返しを図りたい考えだ。

 ロート製薬は30日、昨年11月に発売した漢方薬シリーズ「和漢箋」が発売1年で目標の3倍にあたる30億円を突破したと発表した。10億円の売り上げがあればヒットとされる大衆薬からすると、予想を上回る実績だ。

 乾燥肌の防止や憂鬱(ゆううつ)の改善など7種類で構成するシリーズ商品のうち、過剰な脂肪分を少なくするタイプが総販売高の8割近くを占めるという。

 11月からは脂肪のついた腹部の写真に、ウエストサイズが減少するなどの臨床データを添えた広告を展開。試験的に服用できる1週間分のパック販売だ。

 ロート製薬は「来年から特定健診・特定保健指導がスタートし、いっそう生活習慣病など予防・未病対策が重視される。漢方への先入観を変える戦略でニーズをつかみたい」と話す。

 同社の調べによると、一般用漢方薬は2003年から06年までに市場が35%拡大。大衆薬全体が同じ期間に2%減少しているのとは対照的だ。

 大衆薬市場が縮小している一因が、健康効用表示を背景に評価を高めたトクホの存在。富士経済の調べによるとトクホの出荷金額は06年で前年比1・3%増の3492億円。なかでも中性脂肪値改善関連は同24・1%増の687億円となった。

 メタボ対策の漢方薬で先陣を切ったのは小林製薬。同社が昨年3月に発売した「ナイシトール85」の初年度売上高は当初の予測の7倍以上に当たる35億円と、同社医薬品の売上高で最高を記録した。

 一般用漢方の最大手クラシエも25年前から発売している漢方薬「コッコアポ」からメタボ対策を意識したシリーズを6月に発売。「医薬品である漢方はトクホに比べて高い効果が期待できる。現代のニーズに合わせることで市場は拡大できる」(同社)と期待する。

エーザイが肥満症治療剤の製造販売申請

2007/11/30 CBニュ−ス

 肥満症やメタボリックシンドローム等の疾病管理の重要性が高まる中、エーザイ(東京都文京区、内藤晴夫社長)は11月30日までに、国内で開発を進めていた肥満症治療剤「KES524」(一般名:シブトラミン塩酸水和物)の製造販売承認の申請を行った。

 同剤は、セロトニン及びノルアドレナリン再取り込み阻害作用に基づく肥満症治療剤で、世界83カ国で承認。国内では、アボット社との契約により、エーザイが独占的な開発・販売権を有している。

 肥満症患者342人を対象にKES524投与群とプラゼボ投与群による52週間を治療期間とした試験を実施。その結果、主要評価項目となる体重変化量や体重変化率、その他の副次評価項目である内臓脂肪面積などで、KES524投与群はプラゼボ投与群と比較して有意な改善を示したという。

 主な副作用としては、便秘・口内乾燥・心拍数増加等が見られたが、ほとんどが軽度または中程度で、従来の国内外試験の結果と大きな差異はなかった。

 エーザイは「欧米と同様、日本でも肥満症や近年注目されているメタボリックシンドローム等における疾病管理の重要性が高まる中、肥満症の疾病管理に資する新たな治療剤を提供することで患者様のベネフィット向上に貢献していきたい」と話している。

“メタボ”がなんぼ?「腹囲85センチ以上」の独り歩きにご注意

2007/11/27 医療ジャーナリストの視点/ヘルスケア/ITPro

 「こんなファックスが編集部に来てるけど、日本の基準値は正しいって反論するんでしょうかね」。2007年10月17日夕刻、日本肥満学会から突然送られてきたFAXをひらひらさせながらS記者がやってきた。見れば、「日本肥満学会 緊急メッセージの発表のご案内」とあるではないか。

 FAXによれば、何でも、2005年に8学会合同でメタボリックシンドロームの診断基準を作成し、2年余りが経過したが、診断基準の作成の目的や経緯、各基準値設定の根拠などについて十分な理解が得られていないと思われるので、その趣旨を説明する機会を設けたのだそうだ。ちょうど東京で同学会が開催される日だ。学会に取材に行く予定はなかったけど、同じ会場で行われる緊急記者会見は何だか面白そうだったので、私ものぞいてみることにした。

 それにしても、メタボリックシンドローム(通称メタボ)とは何か、その定義や診断の意義についてちゃんと理解している人って、日本にはどれくらいいるのだろう。メタボリックシンドロームという言葉は本来医学用語なわけだが、いまや小学生でも知っているくらい、その名前は広く知れ渡っている。ただ、「メタボな人」と言えば、「太っている人」をイメージするように、どちらかというと肥満の代名詞のように使われていることが多いように思う。

 メタボに対する社会的関心が高いのは、生活習慣病の予防といった目的からみれば、喜ばしいことには違いない。しかし一方で、日本人のメタボへの関心は、もっぱら「腹部肥満」というか、「ウエストのサイズ」にばかり向いてしまっているように見えるのはいかがなものか。実際、記者会見の会場で出る質問はどれもこれも、診断基準の中でも、“男性に厳しく女性に甘い、日本の腹囲の基準値の妥当性”に集中していた。

 そもそもメタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積(腹部肥満)をベースに、脂質異常や高血糖、高血圧などが“複数重なった”状態と定義されている。複数重なることが問題なのは、それにより動脈硬化の進行が一気に加速するためだ。たとえ血圧や血糖といった個々の検査値の異常は軽度であっても、それらが複数重なればリスクは上昇する。つまり、メタボな状態を放置しておけば、脳梗塞や心筋梗塞などの心血管病へと進んでいく恐れが高いというわけだ。

 また、こうしたメタボにおけるリスクの重複は偶発的なものではなく、肥満、特に内臓脂肪の蓄積が源にあると考えられている。そこで、心血管病の予防という最終目標に向けて、内臓脂肪の蓄積がありリスクの高い人を効率よく拾うための診断基準をつくった。「そこのところをよく理解して欲しい」と学会は訴えた。内臓脂肪の蓄積には食事や運動などの生活習慣が関係しているので、それらを改善することで、内臓脂肪は減らせる。そうすれば、複数のリスクも効率よく改善できるし、ひいては心血管病のリスクも減る。だから、メタボな人は頑張って、少しでもウエストを減らすように努力してほしいというのだ。

 診断基準では、内臓脂肪の蓄積を評価する目安として、手軽で分かりやすいウエスト周囲径を用い、基準値を「男性85センチ以上、女性90センチ以上」としたことがメタボ論争を招いてしまった。確かに、「なんで日本だけ、女性の方が男性より基準値が大きいのか」「男性の85センチ以上は厳しすぎる」というのは率直な意見だろう。でも学会の説明によれば、これは現時点でのエビデンスに基づいた値であり、根拠となるデータはある。それに男性と女性では心血管病の発症リスクは年齢によっても違うし、肥満超大国の米国と日本の基準値を同じ土俵では語れないといった側面もある気がする。

 男性の基準値があと何センチゆるくなれば(あるいは女性の基準値が何センチ厳しくなれば)、みんなが納得するのか分からないけど、腹部肥満に気をつけなければならない理由にも、もっと目を向けてもいいのではないだろうか。来年4月からは、メタボリックシンドローム対策を柱にすえた特定健診・特定保健指導が40歳以上74歳までの約5400万人もの人を対象に始まる。受診者は、新たに加わった腹囲の測定も受けることになるわけだが、さてメタボ論争の行く先はどうなるのか…。見守りたいところだ。 瀬川 博子(せがわ ひろこ)

内臓脂肪肥満の抑制効果が期待されるサプリメント「ミドルナビ」

2007.11.26 MSN産経新聞

 内臓脂肪肥満の抑制効果が期待されるサプリメント「ミドルナビ」 内臓脂肪の肥満を抑える働きがあるというガルシニアや、善玉物質分泌促進にかかわるニームリーフ、さらにウコンなどを配合。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目したサプリメントで、価格は30日分(60袋)が3360円。携帯に便利な個包装。直営店舗および通信販売中。

 ■ファンケルTEL0120・750210

フジッコ、黒大豆アントシアニンの抗内蔵肥満作用から脂質代謝に関わる遺伝子の発現誘導を動物試験で確認

2007年11月20日 マイライフ手帳@ニュース

 フジッコは、静岡県立大学薬学部の石田均司講師と共同で行った黒大豆アントシアニンの抗内蔵肥満作用に関する研究成果の発表を第26回メディシナルケミストリーシンポジウムに実施する。

 高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病は、それぞれが独立した別の病気ではなく、肥満、とくに内臓脂肪型肥満が基になり発症する病気であることが明らかになってきた。そして、これらの症状が軽度であっても、重なり合うと相乗的に心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患の発生頻度を高めるため注意が必要だという。近年、社会的な問題となっている「メタボリックシンドローム」は、この内臓脂肪型肥満によって様々な病気が起こりやすくなった集積状態をいい、ハイリスク群として予防・治療の対象と捉えられつつあるとのこと。このような理由から、内臓脂肪型肥満を予防するライフスタイルは重要と考えられる。

 これまでに同社は、黒大豆が肥満モデルで内臓脂肪型肥満を抑え、その有効成分の一つが種皮に含まれるアントシアニン、シアニジン3−グルコシド(以下C3G)であることを報告してきた。なお、アントシアニンは花や果皮に含まれている色素成分で、ポリフェノール類に分類され、これまでに異なる化学構造のものが多数確認されているという。黒大豆の色素の特徴は、ワインやブルーベリーなどとは異なりC3Gが全アントシアニンの90%以上を占めていること。

 今回は、C3Gのメタボリックシンドロームと類似の症状、すなわち過食による肥満化にともなう内臓脂肪の蓄積と高血糖、高脂血症などを自然発症するKKAyマウスに対する作用を調べたという。具体的には、このモデル動物の肥満に対するC3Gの作用を改めて調べるとともに、その作用機序を明確化する目的で、脂肪と肝臓の両組織における脂質代謝に関連する因子についての遺伝子的な解析を行った。

 その結果、黒大豆の種皮から調製したC3G分画を摂取させたKKAyマウスでは、食べる餌の量は変わらずに、内臓脂肪の蓄積だけでなく体重の上昇(全身の肥満)も抑制されていたという。また、脂肪細胞が肥大化する(肥満になる)と脂肪組織からのアディポネクチンやレプチンなどのアディポサイトカインの分泌が異常となることが血液分析でわかったとのこと。今回、C3Gの摂取によってこれらの分泌が正常に保たれることも明らかになった。

 生体は脂肪と糖を使って、生命活動のためのエネルギーを得るという。その際に、脂肪の場合は「β酸化」と呼ばれる経路を介して脂肪が消費されるとのこと。β酸化には複数の酵素が関与しているが、肝臓組織を使って5種類のβ酸化関連遺伝子に対するC3Gの影響を調べたところ、投与群ではそのうちの4種の発現量の増加が認められたという。また、肝臓での脂肪の異常蓄積、いわゆる脂肪肝の抑制も確認された。これらのことから、C3Gは過食で肥満を形成するこのモデルにおいて、β酸化による脂質の代謝を促進させることで内臓脂肪型肥満となることを抑えたものと推定されたと分析する。なお、アントシアニン色素の中でこのような効果が確認されているのはC3Gのみとのこと。

 以上の結果から、アントシアニン色素の中でC3Gをとくに多く含む黒大豆食品を日常的に食べることで、脂肪の代謝を改善、促進させて気になるおなか周りの脂肪を減らし、健康的に肥満とメタボリックシンドロームを予防できることが期待されるという。

 なお、同研究成果は、第26回メディシナルケミストリーシンポジウム(会期:11月28日〜11月30日、会場:グリーンホール相模大野[相模原市文化会館])で発表する。

●研究結果の詳細[PDF

フジッコ=http://www.fujicco.co.jp/

ウエストの基準変えません メタボで日本肥満学会

2007年10月19日 中国新聞ニュース

 日本肥満学会(理事長・松沢佑次大阪大名誉教授)は19日、内臓に脂肪が蓄積して生活習慣病につながるメタボリック症候群の診断基準の一つで、専門家から数値に異論が相次いでいるウエストサイズ(腹囲)について「当面数値を変える予定はない」と発表した。

 学会が定めた数値は男性が85センチ以上、女性が90センチ以上。これを基準に、同症候群の発見と保健指導を目的とする特定健診制度が来年度からスタートする。

 しかし、男性の基準が欧米に比べて格段に厳しいことや、世界的にも例のない男女逆転の基準に対し、国内の研究者から「必要以上に厳しく、病気と診断されてしまう男性を増やす」との批判が出ていた。

 この日の会見で松沢理事長は「基準値は、日本人の内臓脂肪のデータを基に肥満と診断されるウエストサイズを算出しており、データのない欧米とは設定方法が違う」と説明した。

女性の腹囲は80センチを基準に メタボ診断、東北大発表

2007/10/19 中国新聞ニュース

 東北大大学院薬学研究科の今井潤いまい・ゆたか教授らのグループは十八日、メタボリック症候群の診断基準になっているウエストサイズ(腹囲)について「男性八七センチ、女性八〇センチが適切な基準値」と発表した。

 厚生労働省は腹囲が男性八五センチ以上、女性九〇センチ以上で、さらに高脂血、高血圧、高血糖の二つ以上に当てはまるかどうかを基準としている。女性の腹囲を男性よりも大きく設定していることには、異論も出ていた。研究グループは「女性の腹囲は引き下げが必要ではないか」と指摘。二十五日から沖縄県で開かれる日本高血圧学会で発表する予定。

 研究グループは、二〇〇〇―〇六年にかけて、岩手県花巻市大迫町の男女約四百人(平均六十三歳)に健康診断を実施。血圧などの健診データを分析し、メタボリック症候群に該当する人を見つける上での最適な腹囲の値を導き出した。

 現行の診断基準は、日本高血圧学会などが作成、〇五年に発表した。その後、国際糖尿病連盟が「男性九〇センチ、女性八〇センチ」を発表するなど諸説出ている。

「若返り」深呼吸で呼ぶ

2007年09月30日 読売新聞 Yomiuri On-Line

簡単が人気 チベット体操

 「チベット体操」というヨガに似た体操が話題になっています。基本の動きが5〜6種類しかなく、簡単なのも人気の理由。深い呼吸とゆったりとした動きが、心身の「若返り」につながるようです。どんな体操なのでしょうか。(森谷直子)

 先月下旬、東京都内で開かれたチベット体操の体験講座をのぞいた。参加者のほとんどは女性だが、中高年男性の姿もちらほら。

 講師は静岡県森町の松下信義さん(49)。4年前にチベット体操を始めてから徐々に体が引き締まり、当時70キロ近くあった体重が現在は約60キロに。ぜい肉が一切なく、確かに若々しい。ホームページ(http://www.tibetclub.jp/)で体操を紹介している。

 松下さんの指導で、5種類の動き=イラスト=を習う。この動きの時は吸う、この時は吐く――という呼吸の決まりが、少々難しそう。記者(39)もやってみた。腹式呼吸で鼻から時間をかけて少しずつ吸い、口から少しずつ吐く。一つの動きが終わる前に吸い終わったり吐き終わったりしてしまい、息が苦しくなる。日ごろいかに浅い呼吸をしていたかに気づかされた。

 ヒマラヤの奥地に伝わる体操を、20世紀前半に英国人が体得して持ち帰ったのが始まりとか。当時の解説書が1980年代以降、欧米で注目されベストセラーに。日本では「5つのチベット体操――若さの泉 決定版」(河出書房新社)として出版されている。今夏、芸能人がテレビで紹介し、一気に話題になった。

 講座に参加していた埼玉県狭山市の主婦福島和枝さん(56)も1年前から、1日1回、15分の体操を続けている。「50歳を過ぎて、体が重く疲れやすくなり、おなかも出てきた」のがきっかけ。体重は変わらないがフットワークが軽くなり、ひざと腰の痛みも楽になったそうだ。

生命エネルギー促す

 「魔法のチベット体操」(主婦の友社)の著書がある大阪市の針きゅう師、岡本羽加(うか)さんも、「はじめは各動きを3回ずつでいい」と指導している。深くゆっくりと呼吸しながら行うことで、少ない回数でも効率よく筋肉が鍛えられるという。

 岡本さんによると、東洋医学で健康とは、「気」などと表現される生命エネルギーが体内を滞りなく流れている状態。チベット体操は、筋肉を鍛えるだけでなく、深い呼吸をしながら体を伸ばしたりそらしたりすることで生命エネルギーの通り道を刺激する効果もあるという。

 いきなり激しい運動は無理、でも若返りたい――という中高年の注目を集める訳が分かる気がした。

【断 久坂部羊】メタボの基準は変わったが

2007/09/23 The Sankei Shimbun WEB-site

 メタボリック症候群(以下メタボ)の診断基準を見なおす動きが出ている。従来は、ウエストが男性は85センチ以上、女性は90センチ以上がメタボの条件だったが、新基準では、男性90センチ以上、女性80センチ以上に変更された。これで救われた男性も多いだろうし、不愉快になった女性も少なくないだろう。

 そもそもメタボの基準は、国や学会によって異なる。たとえば、アメリカでは男性は102センチ、女性は88センチまでOKだ。

 従来の基準は日本肥満学会など関連学会が決めたもので、男性より女性の基準が大きいのは、世界でも例がなかった。新基準は、国際糖尿病連合が日本独自の調査で決めたもので、アジアの基準と同じである。

 メタボは内臓脂肪を問題にしているので、特にウエストを重視しているが、身長を無視していることに、疑問を持つ人も多いのではないか。背が高ければ相対的にウエストも大きくなるし、小柄な人ならウエストが85センチでも内臓肥満の可能性はある。

 メタボに世間の関心が高いのは、健康で長生きを求める気持ちの表れだろう。みんなが頼りにしている基準が、学会によってまちまちでは困る。しかし、学会の決める“基準”や“正常値”は、もともとそういうものだと思っておいたほうがいい。いくら一所懸命に守っても、病気になる人はなるし、短命な人は短命だ。

 健康はありがたいが、病気でも短命でも、よい人生や充実した生涯はあり得るだろう。検査や数値にばかり気を取られていては、せっかくの人生が、「健康のための一生だった」ということになりかねない。(作家・医師、久坂部羊)

日常生活の運動量を正確に測定 松下電工

2007/08/27 The Sankei Shimbun WEB-site

 松下電工は27日、洗濯したり子どもと遊んだりといった日常生活での運動量を高い精度で測定できる身体活動量計を11月に発売すると発表した。

 健康保険組合などに対し来春から、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)予防の保健指導が義務化されるため、保健師ら指導者による利用を見込む。

 指導を受ける人のベルトなどに機器を装着すれば、センサーが縦横、前後の体の動きを検知し、動きの大きさや速さも計測できる。日常の運動量やパターンを分析し、きめ細かく指導できるという。価格は活動量計が2万790円、解析ソフトが6万3000円。

「メタボ」確認怖い…50代男性、6割自覚も実測は3割

2007/08/17 FujiSankei Business i.

 50代の男性の約6割が自分はメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)だと思っているが、ウエスト周囲を実際に測ったことのある人は3割強にとどまっていることが、医療機器メーカー、ジョンソン・エンド・ジョンソンの調査で明らかになった。

 調査対象の20代〜70代の男女合計でも自分はメタボリックシンドロームだとと思っている人は3割強にのぼるが、実際に計測した人は4人に1人で、メタボリックシンドロームであることを自分の目で確認することを恐れている人が多い実態が浮かび上がった。

 同社は、心臓病のリスクが高まるメタボリックシンドロームへの認識を把握するため、「心臓に関する意識調査」を毎年実施している。今年が3回目で、20代から70代の各年代で男女それぞれ100人、合計1200人を対象にインターネットを使い7月に実施した。

 自分がメタボリックシンドロームだと思っている人は、男性全体では38・0%。年代別では50代57・0%、30代43・0%、40代41・0%。女性全体は24・3%で、50代31・0%、60代28・0%、30代24・0%だった。メタボリックシンドロームを知らない人は全体の5・8%となっており、関心の高さをうかがわせた。

 その一方で、メタボリックシンドロームの診断基準の1つであるウエスト周囲を実際に計測した人は、男女全体で25・0%。男性全体が3人に1人(29・1%)だったのに対し、女性全体は5人に1人(21・0%)と少なかった。

 また、計測と家庭との関係では、女性は計測した人が既婚者21・4%、独身19・6%と差がないのに対し、男性は既婚者33・6%、独身17・4%と約2倍の差があり、妻が夫の健康を心配し、計測を促しているようだ。

 3大疾病(がん、心筋梗塞(こうそく)、脳卒中)のなかで関心のある疾病は、がん、心筋梗塞、脳卒中の順。がんは連続1位だが、心筋梗塞が初めて2位になった。

 心筋梗塞への関心は高まっているものの、約7割は「心臓に異常を感じた時に、検査に行かなかった」と答えている。その理由(複数回答)としては、約5割が「心臓病だと思わないから」、約4割が「病院に行くのが面倒」で、「検査費用がかかる」も2割近くあり、調査報告書は「心臓検査への抵抗感、または心臓病への危機感が、依然低いことがうかがえる」としている。

メタボ、家計も圧迫

2007年08月09日 京都新聞

京大経済研が試算 体重増で医療費かさむ

 日本人の平均的な体形から、男性で約20キロ、女性で約16キロ体重が増えると、糖尿病の医療費は2・5倍、高血圧の医療費は1・3倍に増えることが、京都大経済研究所の古川雅一研究員(医療経済学)などのグループの試算で分かった。肥満は健康に悪いだけではなく、家計にも大きな負担になるといえそうだ。

 古川研究員らは、肥満に特徴的な病気である糖尿病と高血圧を選び、厚生労働省の「国民医療費」「国民健康・栄養調査」(いずれも2001年)などを基に、20歳以上の血糖値5397人分、血圧4470人分のデータを経済学的手法で分析した。

 平均身長の男性(167・1センチ)、女性(153・7センチ)の場合、平均的な体重64・2キロ、54・3キロでは、糖尿病の1人当たりの年間医療費は9万1000円、高血圧は5万円だった。体重がそれぞれ肥満と判定される83・8キロ、70・9キロに増えると、医療費は22万7000円、6万5000円にそれぞれ跳ね上がることが分かった。

 古川研究員は「生活習慣を改善して体重を減らすことは、メタボリックシンドロームの予防だけでなく、家計のためにもなる。ダイエットに励む新たな動機付けになるのではないか」と話している。

ヤマハ発動機 / “アスタキサンチン”がメタボリックシンドロームを改善と学会発表

2007年07月26日 健康美容EXP

 ヤマハ発動機(株)ライフサイエンス研究所(静岡県袋井市)は、20〜21日に京都・国立京都国際会館で開催された「第7回日本抗加齢医学会総会」で、藻類由来の“アスタキサンチン”にメタボリックシンドロームの改善に効果がある可能性を、ヒト試験で初めて確認したと発表した。この研究は、医薬品開発コンサルティング、栄養代謝研究を手がける(株)アーテイジ 栄養代謝研究会と共同で行った。

 メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積とそれに起因したインスリン抵抗性(血糖値の低下に働くホルモンであるインスリンが効きにくい状態にあること)及び糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧が複数合併した状態をいう。

 試験は、3ヵ月間、22〜65歳でウエストサイズ・空腹時血糖値などが条件に当てはまる成人16名を対象に、ヤマハ発動機製の“アスタキサンチン”含有ヘマトコッカス藻抽出物を“アスタキサンチン”換算1日16mgを毎日摂取してもらい、摂取前後の自覚症状、他覚所見、臨床検査値の変動を観察した。試験期間中の食事制限及び運動による負荷は行っていない。

 その結果、HbAlc(過去1〜2ヵ月の平均血糖値を反映、糖尿病の診断に用いられる) 、TNF-α(インスリン抵抗性を引き起こす悪玉サイトカインの1種)が有意に減少し、アディポネクチン(インスリン感受性を高めて糖代謝を促進し、血管を拡張して血圧の上がり過ぎを抑える働きを持つ)の有意な増加が認められた。これらのことから、“アスタキサンチン”がインスリン抵抗性による糖尿病あるいはメタボリックシンドロームを改善する効果を期待できることが示唆された。なお、特に自覚症状、他覚所見は見られなかった。

オプティマム / りんご酢配合の健康食品「ふとら〜酢」を発売

2007年07月24日 健康美容EXPO

 オプティマム(株)(本社東京都国立市、遠藤光晴社長)は今月、健康食品「ふとら〜酢」を発売した。同製品は、体重の現状維持を目的とするもので、酢といってもドリンクタイプではなくタブレット状となっている。販売は代理店を通じて行う。

 主要成分は、長寿の里・米国バーモント地方で飲まれている伝統がある“りんご酢”。りんごは、老廃物排出を担い、神経組織の機能を正常化する“カリウム”を多く含有することから、“カリウム”不足で起こる神経性便秘やむくみ太りを防ぐことができ、全身に酸素を供給して代謝を高める。また、“ナトリウム”を排出させることで高血圧を防ぐことができる。酢には“クエン酸”サイクルにより糖を燃焼し血糖値を下げる働きと、中性脂肪とコレステロールを減少させることによる高脂血症を防ぐ働きがある。すなわち、“りんご酢”はダイエットだけでなくメタボリックシンドロームに効果があるといえる。

 その他配合された“生コーヒー豆エキス”が脂肪を減少させ、“黒豆エキス”が糖を減少させ、 “ナイアシン(ビタミンB3)”が血管を拡張し代謝を良くし、中性脂肪と糖を燃焼させる。

 税込み価格は約180粒入り・3990円。夕食後、1回・6〜8粒を摂取する。

【ヘルスハイライト】乳製品が男性の糖尿病や心疾患を予防

2007年07月23日 薬事日報

 牛乳などの乳製品を摂取する男性は、糖尿病や心疾患のリスクが低いことが、英国の研究で明らかになった。

 英BBCニュースによると、英カーディフCardiff大学の研究チームは、45〜59歳の男性2,375人を対象に、20年にわたり研究を実施。牛乳を1日に1パイント(約570cc)以上摂取している男性は、メタボリックシンドロームの発症リスクが62%低いことが明らかになった。

 高血糖、高脂血症、高血圧、腹部肥満(内臓脂肪型肥満)の2項目以上が該当する、メタボリックシンドロームの患者では、糖尿病や冠動脈疾患の罹患リスクが高いことが指摘されている。

 英国糖尿病協会(Diabetes UK )ケアアドバイザーのJemma Edwards氏は、乳製品の予防効果を認めつつも、全脂肪乳製品の多量摂取については注意を促しており、バランス食の一環として毎日2〜3杯分の低脂肪乳製品の摂取を勧めている。研究は、英医学誌「Journal of Epidemiology and Community Health」8月号に掲載されている。(HealthDay News 7月13日)

「教育入院」 病の実例見て危機感

2007年07月22日 読売新聞 Yomiuri On-Line

意識改革 メタボに勝て

 食べ過ぎ、飲み過ぎを避け、こまめに体を動かす――。それが健康にいいと分かっていても、なかなか実行できないのが人間の性(さが)です。2泊3日の徹底した講義と低カロリー食の体験で、生活習慣を変えるきっかけにしようという「メタボリック・シンドローム教育入院」を実践する病院を訪ねました。(館林牧子)

 「内臓に脂肪をためたままにしておくと、糖尿病や高血圧、高脂血症を起こしやすい。さらに放っておくと、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞で命を落とすこともあります」

 東京逓信病院(東京都千代田区)の「メタボリック・シンドローム教育入院」は、内科部長の宮崎滋さんによる、患者の実例を交えたこわ〜い講義から始まる。

 入院中の食事は、それぞれの人の年齢、体格にあわせて、無理なくやせられる低カロリー食に抑えられるが、厳しい運動などの“特訓”はなし。主眼は内面からの意識改革だ。腹部のCT(コンピューター断層撮影)を撮り、おなかの脂肪量を計算してもらい、栄養士から具体的な生活指導を受ける。

 1か月で1キロ体重を落とすには、各自が必要なエネルギーより1日240キロ・カロリー食事を減らす。「例えば50〜60歳代、身長165センチの男性で、座位中心の生活をしている人は1日約2050キロ・カロリー消費するので、食事は1800キロ・カロリーに抑えます」と栄養士の田中裕梨さん(26)が一人ひとりに必要なカロリーを説明する。

 続いて、そのためにどんな食事をしたら良いのか、食品のサンプルを手に、目安を示す。例えば、豚肉なら一食で薄切り3枚、サケの切り身なら3分の2切れだけ。「こんなに少ないの!」とため息が漏れた。

 埼玉県の中野尚さん(61)は、7か月前、この教育入院を体験した。今も現役の営業マンとして活躍する中野さんの昼食と夕食はほとんど外食。厳密なカロリー計算はできなかったが、退院後、周囲に宣言して、付き合いのお酒をウーロン茶に変える、間食はしない、などいくつかの決まり事を作って実践した。

 その成果で、半年間で5キロの減量に成功。ウエストは89センチから87センチに減り、高めだった中性脂肪の値が正常の範囲に戻った。「日ごろのちょっとした注意で、健康を取り戻せるとわかりました」と笑顔を見せる。

 宮崎さんによると、こうした教育入院を実施しているのは、全国でも数か所だけ。メタボリック・シンドロームと診断された人が対象で、保険がきく。「まずいかな?という気持ちが行動を変える。入院をきっかけにしてほしい」と話す。

               ◇

 記者(43)の腹囲は基準値を超えていた。腹部CTを受けたところ、皮の分厚い肉まんのように、みっちり皮下脂肪に覆われていた。自分の脂肪を見つめ直すのは恐ろしい。血液検査などは問題なく、メタボとは診断されなかったが、「このままだと、年をとってから体重が支えられなくて関節炎になりますよ」とくぎをさされた。

 メタボリック・シンドローム 日本の基準では、腹囲が、男性は85センチ、女性は90センチ以上で、血圧、血中脂質、血糖のうち2項目以上が基準値を上回ると診断される。

アークレイ、シイクワシャー果皮エキスの抗メタボリックシンドローム作用を確認

2007年07月19日 マイライフ手帳@ニュース

 アークレイは、沖縄で栽培されている柑橘(カンキツ)であるシイクワシャーの果皮エキスが内臓脂肪型肥満のヒト血中アディポネクチンを増加させ、メタボリックシンドロームや動脈硬化性疾患の予防に有用である可能性を見出したことを発表した。

 同社は、国内大手の臨床検査機器と体外診断薬のメーカーで、糖尿病患者が使用する血糖自己測定機では国内シェア60%を占めている。健康科学という独自の事業領域を設定し、2006年6月には機能性素材事業への参入を果たしているという。

 アークレイでは、これまで柑橘類に含まれる機能性成分について研究を進めてきたとのこと。とくに、沖縄で栽培されているシイクワシャーに多く含まれるノビレチンについて培養細胞およびマウスを用いた研究から、アディポネクチンの増加作用を確認していた。

 今回、内臓脂肪型肥満のヒトへのシイクワシャー果皮エキスの摂取試験(ダブルブラインド並行群間比較試験)を、京都大学大学院、生物系特定産業技術研究支援センター(生研センター)、京都市立病院との共同研究で実施したという。

 その結果、シイクワシャー果皮エキス摂取群では血中アディポネクチンが有意に増加することを確認したとのこと。この結果から、シイクワシャー果皮エキスは、メタボリックシンドロームや動脈硬化性疾患予防に有用である可能性を見出したという。

 今回の試験結果およびこれまでの基礎研究成果をもとに、シイクワシャー果皮エキスの量産商品化に向けて開発を進めていくとともに、その作用メカニズムについてもさらに研究していく予定だとしている。

シイクワシャー果皮エキス含有食品のヒト試験研究内容[PDF]

アークレイ=http://www.arkray.co.jp/

<松原英多>第1回 肥満の診断基準

2007/07/15 NIKKEI Net

 情報番組「午後は○○(まるまる) おもいッきりテレビ」(日本テレビ系)の出演でも知られる松原英多医師が内臓脂肪症候群に悩む人向けに『内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)にならない「これだけ健康法」』(一ツ橋書店刊)を書いた。いつも前向きの生活改善をアドバイスする松原医師に、内臓脂肪症候群を防ぐための生活改善方法を聞いた。

◇   ◇   ◇

 以前から使われている肥満の診断基準にBMI(ボディー・マス・インデックス)があります。これは体重をその人の身長で割って出す数値ですから、重さだけで判断する基準です。重さだけでは体の内部がどうなっているのか分かりません。そこでお腹のまわりを計測して測定する診断法が開発されました。

 その診断方法は大阪大学の松澤佑次教授が中心になって導き出したもので、CTスキャンでお腹の輪切を撮影し、腹腔(ふくこう)内の脂肪の蓄積の度合いを調べるというものです。おへその高さで腹囲を測り、男性で85センチメートル以上、女性で90センチメートル以上あれば、「内臓脂肪症候群の可能性あり」と診断されます。

 この数値を診断基準にすることに反対している医師も少なからずいますが、日本の動脈硬化学会、糖尿病学会など8学会では、とりあえずこの数値を認めています。まず警鐘を鳴らし、不備があったらその都度改めて考えようということで合意し、推進することにしたのです。

 この数値が正しいか正しくないかという問題より、外からは見えない内臓脂肪の怖さを知ってもらうことが、この診断法の骨子です。この簡単な診断法を素直に受け止めて、積極的に生活習慣を改めようと考えることが重要なのです。

医学、厨房に入る…「ドクターズレストラン」次々登場

2007/07/18 The Sankei Shimbun WEB-site

 医学的根拠に基づいて医師や専門家らがメニュー開発にかかわった「ドクターズレストラン」が各地に誕生している。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)改善、老化予防…。味や盛りつけにこだわったおいしい料理を食べながら、病気の予防や健康管理につながる新タイプのレストランだ。(中曽根聖子)

医師ら協力、健康メニュー

 7月にオープンしたばかりのイタリアンレストラン「ジャッジョーロ銀座」(東京)。世界最古の薬局として知られる「サンタ・マリア・ノヴェッラ」(イタリア・フィレンツェ)の協力で予防医学や自然治癒をコンセプトに、ハーブの薬効を生かした料理を提案する。

 この季節のお勧めは「骨付き仔羊の炭火焼き」。店を運営するティサネリア東京の山野エミールさんは、「食欲増進作用のあるタイムや血行促進作用があるとされるマジョラムを使用しているので、夏バテ気味の疲れた体にぴったり」と説明。「今後は医師のアドバイスも受けながらメニュー開発に取り組みたい」と話す。

糖尿病患者も安心 435キロカロリーのフルコース

 大阪市には昨年7月、全国初の糖尿病食専門レストラン「知食(ちしょく)旬菜ETSU」がオープンした。糖尿病患者は全国で約250万人、予備軍は数百万人ともいわれる。店を経営するガイアのオーナー自身が糖尿病で入院した経験から、食事制限が必要な患者にも「安心しておいしい食事を楽しんでほしい」と、カロリーや糖質、塩分を控えつつ味もボリュームも満足できるよう約20人の管理栄養士が工夫を凝らした。

 メニューは約100種類。ローストビーフやエビの天ぷら、血糖値を下げる働きがあるとされるゴーヤの土佐あえ、血圧を下げる働きがある小豆の煮物などを盛りつけた弁当(1344円)はわずか484キロカロリー。

 「当初は糖尿病患者が多かったが、ダイエット中の女性やメタボが気になる男性客にも好評」(ガイア)で、来店客は1日約200人に上る。今後は全国に50店舗を展開する予定だ。

 マタ、仙台市のフランス料理店「ラ・ペ」の夏用「ドクターズメニュー」は、前菜2皿と肉、魚、デザートのフルコース(5500円)が435キロカロリーと超低カロリー。

 これら各地に広がるドクターズレストランの先駆けとなったのが東京・秋葉原の「東京フードシアター5+1」だ。老化研究の第一人者、白澤卓二・順天堂大学大学院医学研究科教授らとシェフが共同で開発した、認知症や骨粗鬆(そしょう)症、メタボ予防のメニューが人気。生活習慣病予防を掲げる「ニンジン・リンゴ・クルミのサラダ」(950円)は抗酸化作用がある5色の野菜が色鮮やかな一品だ。

 医学的根拠や研究に基づいた体に優しくおいしい料理の数々。不摂生な生活や増え続ける体重が気になる現代人にとっては“救世主”ともいえる存在だ。同店はキッチンでシェフが調理法を教えるミニ料理教室も開いており、白澤教授は「レストランで食べるだけでなく、食材やレシピを参考に家庭での食事に生かしてほしい」と話している。

 同店を運営する新産業文化創出研究所では今後、大学病院やさまざまな分野の専門医と連携したメニューを開発、社員食堂や外食産業に提供していく考えだ。同社の桜美彰太さんは「いずれは一人一人の体調に応じたドクターズ料理を提供できるようデータを蓄積していきたい」と意気込んでいる。

【スリム社会への挑戦】第1部(1)5600万人の予防医療

2007/06/30 The Sankei Shimbun WEB-site

 さまざまな生活習慣病につながるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の大掃討作戦が、平成20年4月からスタートする。厚生労働省が進める特定健康診断・特定保健指導で、40歳から74歳までの5600万人が対象という世界でも例がない規模で実施。平成27年までに生活習慣病の有病者・予備群を25%減らすのが目標だ。医療費抑制のための壮大な予防医療の試みであり、スリム社会への挑戦でもある。

意識に応じたアプローチで効果

 メタボリックシンドロームは、内臓の周囲への脂肪の蓄積が原因で、高血圧、高血糖、高脂血などの症状が現れる。それぞれの症状が軽度であっても、重複すれば動脈硬化が起こり、心臓病など複数の生活習慣病につながる。

 原因から結果まで明解なので、メタボリックシンドローム該当者・予備群は納得しやすく生活改善に励める。食事・運動療法により内臓脂肪を減らせば、生活習慣病をひとまとめに予防できるという多大な利点も見込まれる。こうしたことから、メタボリックシンドロームの考え方を取り入れた特定健診・保健指導を行うことになった。

 さらに平成12年に10年計画で始まった国民運動「健康日本21」を推進するため、初めて明確な数値目標を打ち出し、成果主義を表明した。達成するには、意識の変化を行動に結びつけ、積極的に生活改善に取り組んでもらう「行動変容」を促進する的確な保健指導が不可欠のテーマになった。長年の生活習慣を改善するのは、並大抵の努力では成功しないからだ。

 「自分から考えて生活改善の行動を起こし、それを持続できるようになるまで、押し付けではなく、支援の形で対応するのが望ましいでしょう」。愛知県の健康づくり拠点施設「あいち健康の森健康科学総合センター」(東浦町)副センター長の津下一代医師は、実績を踏まえてこのように強調した。

 センターはトレーニング室など全国でも有数の設備が整った施設で、いち早くメタボリックシンドロームの考え方を取り入れた保健指導を行っている。これまでの成果のひとつが、メタボリックシンドロームの診断基準をオーバーする腹囲90センチ以上の女性62人を対象に行った保健指導。わずか3カ月でメタボ該当者は18人から4人に激減した。その4人も高血圧など危険因子が3つだけ残り、診断基準(2つ以上)以下に抑えるまであと一歩のところに到達した。

 成功の秘訣(ひけつ)は、意識の変化に応じてアプローチの仕方を変えたことだった。健康に興味を持ち始める「関心期」から行動に移す「実行期」、継続して改善に挑む「維持期」と行動変容に至るまでの過程でいくつかの転機の段階がある。そのさい、「まず1週間やってみて手応えを感じたら続けて」とハードルを低くしたり、検査データから10年後の血糖値の予測をはじきだして「10年後の自分にいま投資して、長く健康で生活しませんか」とやんわり背中を押したりして説得する。集団指導で、経験を語り合い「自分もメタボから脱することができる」という気持ちを起こさせることも重要という。

 このような優れた改善例を全国から集めて、標準的な健診・保健指導プログラムが組み立てられた。

 手順は、腹囲が基準値(男性85センチ、女性90センチ)を超え、高血圧などリスクがひとつでもあれば「動機づけ支援」、2つ以上なら「積極的支援」と優先順位を決める。指導は個別やグループで行うほか、電話やメールでも臨機応変に対応する。

 これだけの保健指導を行うには、膨大な人員と労力を費やすことが予想される。それに見合う持続的な効果を期待したい。(飽食社会取材班)

ゆる体操でリラックス

2007年04月15日 読売新聞 Yomiuri On-Line

頭痛や肩こり、不眠を解消

1回30分、全身の力抜きクネクネ

 体のこりや疲れは、不快なだけでなく、放っておけば大きな病気の原因にもなります。そんな状態を「ゆるめる」ことで改善するリラックス法が、ゆる体操。三重県熊野市を中心とした紀南地域など全国7の自治体が健康づくりに取り入れています。(鈴木敦秋)

 午後7時。熊野古道で知られる三重県熊野市の県民センターに、ゆったりした服装の地元の人たちが集まってくる。

 「気持ちよ〜く、気持ちよ〜く」

 「ゆる体操教室」の講師を務める県職員の山口貴之さんとかけ声を合わせ、道前(みちまえ)美重子さん(61)ら50歳代の後半から80歳代までの約20人が、ニコニコしながら動き出した。

 左肩を少し下げ、右手で左肩や周辺をいたわるようにさする。呪文(じゅもん)のような言葉を唱えながら、手足をさすり、腰や背中をクネクネさせる。

 肩こりなどに効くという「肩こりギュードサー体操」、頭痛や不眠などに効果があるという「背もたれ首モゾモゾ体操」……。激しい動きは何もないが、基本的なものだけで100種類はあり、そのうち8種類程度を行っていく。

 道前さんは、38年間小学校の教員を務め、昨年3月の退職と同時に、不眠、胃痛、肩が抜けるような痛みに苦しむようになった。

 「ゆる体操をすると、自分の体がどうこわばっているのかが分かります。何よりリラックスできる。学校では、子どもたちに『背筋を伸ばせ』『力を込めろ』と言ってきたのに」。全身の力をダラ〜ッと抜きながら、道前さんが笑った。

 この運動を考案した東京都で運動科学総合研究所を主宰する高岡英夫さん(58)は、「ストレス社会を生きてきた中高年の体は、自分が考える以上に痛んでいます。さびた自転車に乗っているようなもの。ゆるめることで、心身ともに本来の状態を取り戻すことができます」と説明する。

 実際、「坂道を上るのも苦にならなくなった」「不眠症が解消された」などの声は多い。仲間と一緒に楽しく楽に行えることも人気の理由だ。

 肥満の人を集め、2か月間ゆる体操を行った人と行わなかった人各30人のデータを岐阜大医学部で分析したところ、肥満の改善などの効果がみられた。

 いつでもどこでもできるが、1回に30分程度がよく、やりすぎは禁物。ゆる体操教室は、全国のカルチャーセンターなどでも開かれている。問い合わせは運動科学総合研究所コールセンター(03・3817・0390)へ。

【試行私考 日本人解剖】第2章 機能・体質 病気「小太りの秘密」

2007/03/19 MSN産経新聞

 ■内臓脂肪がもたらす危険

 飢餓に備えてエネルギーを効率よく体内に取り込む特有の倹約遺伝子が相次いで発見され、太りやすさの解明が進む日本人。今回は、糖尿病や高血圧など肥満が誘発する病気を発症しやすい体質に迫る。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は世界的に注目されているが、その予防が特に大切な民族の姿が浮かび上がってくる。(小島新一)

 ≪少ない善玉≫

 国内では、肥満の基準として日本肥満学会が平成12年に定めた「BMI(肥満指数)25以上」という数値が定着している。一方、世界保健機関 (WHO)の基準は「BMI30以上」。25以上は「Preobese」で、肥満「予備軍」に過ぎない(BMI=体重[kg]÷身長[m]の2乗)。

 なぜ日本人の基準は厳しいのか。日本肥満学会理事長の松澤佑次・住友病院院長(大阪大名誉教授)は「BMIでは男女とも最も病気になりにくい22 が日本人の標準体重ですが、25を超えると糖尿病をはじめさまざまな疾病を発症するリスクがグンと高まります。そこで数字として区切りのよい『25』を基準として、注意が必要な目安としました」と話す。

 いわば小太り肥満でも病気になりやすい体質の謎を解明する鍵として最近注目されているのが、脂肪細胞から血液中に分泌される「アディポネクチン」というタンパク質だ。平成8年、松澤院長が教授を務めていた大阪大医学部第2内科などが発見し、糖尿病や虚血性疾患、高血圧、脂肪肝などの発症や炎症を抑えることが次々と判明。その作用メカニズムも解明されつつある。脂肪が分泌する生理活性物質は「アディポカイトサイン」と総称され、「善玉」と「悪玉」に大別される。アディポネクチンは前者だ。

 「実は日本人は、この善玉タンパク質の分泌が欧米人より少ないのです」と松澤院長。

 ≪欧米人より蓄積≫

 「同じ腹部の肥満でも、皮下脂肪が多い欧米人に比べ、日本人、特に男性では内臓脂肪がより多く蓄積されることが分かってきました。そして不思議なことに、アディポネクチンは脂肪から分泌されるにもかかわらず、内臓脂肪が増えると分泌量が下がるのです」  その実証例が、滋賀医科大の上島弘嗣教授や門脇祟助手らが昨年、海外の医学誌に発表した日米共同調査だ。40代の日本人と米国の白人男性計416 人を腹囲によって4群に分けて内臓脂肪を比べたところ、どの群でも日本人の方が内臓脂肪の面積および対皮下脂肪面積比が大きいことが分かった。特に腹囲の細い2つの群では、内臓脂肪面積が皮下脂肪を上回った。

 また、日米の40代男性各約100人を腹囲で3群にわけてアディポネクチンの血中濃度を調べたところ、いずれの群の平均値も日本人は米国人より低く、60−49%しかなかった。

 「日本人が他の民族と比べても内臓脂肪の蓄積によるメタボリックシンドロームの危険性に注意すべきなのは明らか。アディポネクチンはその診断にも役立つと期待されます」と松澤院長はいう。

 ≪大太りしない?≫

 日本人は太りやすいと言っても、欧米人のように「巨体」レベルの人は少ない。欧米では人口の20−30%がBMI30以上なのに対し、日本では2−3%に過ぎない。

 上島教授は「日本人も欧米並みに太りうる」と警告を鳴らす。ハワイに移住した日本人の子孫である日系人のBMIを調べたところ、欧米人の平均に近い「27」だった。「日本人の遺伝的体質を持つ日系人でもそれだけ太る。日本人が小太りどまりなのは、アメリカほど車に依存せず、自ら動く環境が残っていることや食生活の影響と考えられます」。

 一方、前回紹介した「β3アドレナリン受容体」の遺伝子変異体をはじめとする日本人の倹約遺伝子とは逆に、欧米人が持つ倹約遺伝子が彼らを大きく肥満させていると考えるのは、京都大名誉教授の清野裕・関西電力病院院長。グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)と呼ばれるホルモンに関わる遺伝子がそれだ。

 GIPは栄養素、特に脂肪摂取が刺激となって十二指腸などから分泌され、糖と脂肪の脂肪細胞への取り込みを促進し肥満の引き金となる。肉食中心の欧米人はこのホルモンの分泌が盛んで、古来、穀物中心の食生活だった日本人はGIPの分泌が少ない。そのため日本人の肥満度は欧米人より低いのだという。

 清野院長は、血液中の糖分をコントロールするインスリン分泌量が日本人は欧米人の半分から4分の3程度しかないことを1970年代に突き止めた。インスリンが多く必要となる肉食中心の食生活になった戦後の日本人に糖尿病が急増しているのもこのためだが、GIPにはインスリンの分泌を促す作用もある。

 「日本も飢饉はあったがヨーロッパほどひどくはなく、稲作などで一定の食糧が確保できたという見方をすれば、倹約遺伝子が必要だったのは白人。日本人がどんどん肥満しているか、欧米人に比べて肥満の進行は少ないと考えるかによって、倹約遺伝子の意義付けも異なります」

 人の健康状態や病態を決定づける遺伝子や生活習慣との関連は、多様な角度から考える必要がありそうだ。

医師が監修 ドクターズレストラン

2007年03月18日 読売新聞 Yomiuri On-Line

抗酸化力七色の野菜盛り…、一流シェフが料理創作

 医師がメニューを企画し、健康への良さをうたった料理を提供するレストランが増えている。「ドクターズレストラン」と呼ばれ、老化防止や生活習慣病予防などを掲げた料理が特徴だ。(田村良彦)

 東京・秋葉原の「東京フードシアター5+1(ファイブプラスワン)」では1月から、通常のフレンチやイタリアン料理に加え、「白沢式アンチエイジング(抗加齢)・クッキングメニュー」が登場した。

 監修したのは、長寿者の遺伝子などを研究している東京都老人総合研究所部長の白沢卓二さん。長寿者の疫学調査や動物実験などから、〈1〉ポリフェノールなど何千種類もあるフィトケミカル(植物化学物質)を含む野菜や果物を多くとる〈2〉不飽和脂肪酸のDHAの多いサバやイワシなどの青魚を食べる〈3〉カロリーを取りすぎない――といった特徴がわかってきたという。

 アンチエイジング・クッキングメニュー(1コースのみ、6000円)では、白沢さん推薦の食材を使い、一流シェフが前菜、スープ、魚、肉、デザート、パンの6品の料理を創作した。

 1月下旬に試食会を開いたNPO「元気な120才を創(つく)る会」理事の佐々木道子さん(67)は、「頻繁に食べにくるのは難しくても、食材の知識が普段の生活に生かせれば」と話す。

 東京・四谷の医療施設「四谷メディカルキューブ」では、最上階(7階)に設けたレストラン「ミクニマンスール」で、三国清三シェフが創作し、医師がアドバイスしたアンチエイジング料理を提供。患者以外の一般人も利用できる。

 ランチプレート(2500円)は、月ごとに「抗酸化力」、「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)予防」、「デトックス(解毒)」といったテーマを設定。同施設の管理栄養士森由香子さんによると、骨粗鬆症予防では、骨を作るカルシウムやビタミンDが豊富な食材、体内の不要成分を排出するというデトックスでは、亜鉛などミネラルの多い食材を用いた料理を作った。

 3月の抗酸化力メニュー=図下=は、細胞を傷つけ動脈硬化や老化を招く酸化を防ぐ働きがあるという、七色の野菜を盛り込んだ。カロリーも一食500〜600キロ・カロリーと抑えめだ。

 糖尿病や肥満対策のため、低カロリー食を掲げたレストランもある。

 大阪市には昨年、糖尿病食専門レストラン「知食旬菜(しゅんさい)ETSU(えつ)」がオープン。管理栄養士による栄養指導室や、インスリン注射のための部屋などもある。また、大阪リーガロイヤルホテルのレストランでは、糖尿病患者らの要望に応え、360キロ・カロリーのフランス料理フルコースも登場。味気なくなりがちなカロリー制限食に楽しみを添えている。

 「ミクニマンスール」でランチプレートを食べてみた。肉も野菜もおいしかったが、色とりどりの温野菜は食べ応え十分。

 ふだんはコンビニ弁当か昼食抜きが多い記者にとって、「野菜たっぷり」の大切さを知らされた。

関節を痛めず「加圧トレーニング」

2007年03月11日 読売新聞 Yomiuri On-Line

週1回・10分で筋力強化

 関節を痛める心配が少ない軽い負荷の運動で、激しい筋トレに匹敵する効果が得られると、「加圧トレーニング」への関心が高まっている。介護予防への期待も大きく、東大病院などでも研究が進んでいる。(高橋圭史)

 「65歳を超えるとドライバーの飛距離が年10ヤードずつ落ちていくと言われるが、なんとか維持したくて……」。ゴルフが趣味という東京・府中の谷ヶ崎(やがさき)昇さん(70)が、5年前から始めたのが加圧トレーニングだ。近くのジムで週1回、10〜15分の運動を続け、今も250ヤードの飛距離を保つ。

 加圧トレーニングは、腕や足の付け根を専用のベルトで圧迫して、腕、足の曲げ伸ばし、軽いダンベル運動などを行う。トレーニングジムを経営する佐藤義昭さんが発明した方法で、1回のトレーニング時間は、腕なら5分、足なら15分。週2回程度が目安。

 通常、筋力強化には、最大発揮できる力の65%以上の高い負荷が必要とされるが、この方法は10〜30%でも効果が得られるという。東大大学院新領域創成科学研究科・客員教授の安部孝さん(健康スポーツ科学)によると、カギは「血流制限」。筋肉内の血流がうまく制限されると、実際の負荷以上に「きつい」と感じ、成長ホルモンなどの分泌が促進され、筋肉内のたんぱく合成が増幅されるという。

 負荷が軽いので、関節を痛めにくいだけでなく、筋肉痛も残らないのが特徴だ。

 谷ヶ崎さんも、腕と足の3点セットと、ウオーキングなどの軽い運動が基本だったが、「3か月ぐらいで足腰の強化が実感できた」。その後、ゴルフスイングなどのメニューも加え、腕回りは26センチから35センチに、太ももは46センチから53センチに太くなったという。

 安部さんらの実験では、歩くだけでも筋力強化が確認されている(グラフ参照)。

 ところで、血流を制限して体に悪くないのか――。東大病院22世紀医療センター助教授の中島敏明さん(加圧トレーニング・虚血循環生理学)らが、健康な人のべ1万5000人に行った調査では、一時的な皮下出血が1割程度にみられるものの、事故はないという。ただし、「過度の圧力を加えたり、長時間続けたりすれば、血栓が出来る恐れもある」という。

 記者(36)も試したところ、1か月で太ももが2センチ太くなった。マイベルトが欲しくなったが、腕と足両方を買うと約10万円。金額的にちょっと“勇気”がいるかも……。

指導者は570人

 佐藤さんによると、加圧トレーニング本部の資格認定を受けた指導者に圧力調節や使用法の指導を受けることが必要。5万円前後の専用ベルトを購入するか、指導者のいる施設に通う方法がある。全国に約570人いる指導者は、同本部のホームページ(http://www.kaatsu.com/list/out/map.html)で紹介している。

【試行私考 日本人解剖】第2章 機能・体質 運動能力「筋肉」

2007/02/12 MSN産経新聞

 ■加圧運動で筋力アップ

 体を引き締めて健康を維持しようと、スポーツクラブなどで体を鍛える人が日本でも増えている。メタボリックシンドローム(内臓肥満症候群)のように、じわじわと体をむしばむ脂肪と対照的に、筋肉と筋力は体力の基本。しかし、適度なトレーニングがなぜ健康によいのか、どうすればいいのか、そうしたメカニズムや方法は案外知られていない。(守田順一)

 ◆世界と互角

 筋肉美を競うボディービル。その本場、米ロサンゼルスに乗り込み、1994年、ワールドジムチャンピオンシップス世界大会ミドル級で優勝した安田強さんは、日本人の体が世界に通用することを印象づけた1人だ。現在はトップビルダーとしての経験を生かし、フィットネス関連商品を扱う会社「ストロング」(大阪市都島区)を経営している。

 「アメリカはジムやトレーナーのレベルだけでなく、気候から健康に対する意識まで、あらゆる面で環境が整っていた。自分の環境を自分でつくれるものが勝つ。世界大会で優勝し、人種の“壁”を超えたと思った」

 安田さんによると、ボディービルの世界では白人は全身の中で胴が太い▽黒人はふくらはぎが細い−などの“弱点”がある。アジア人は比較的胴が長いが、バランスよく体を鍛え、丸みのある体のラインを繊細に表現することでハンディも克服できるという。

 安田さんがトレーナーに選んだのは、肉体派スター、A・シュワルツェネッガーのライバルで、ヘビーデューティートレーニングの考案者、マイク・メンツァー氏。世界レベルで競うには当然、ハードなトレーニングも必要だが、そこで学んだのは、十分な休養と目的を持って取り組む精神面の大切さだった。安田さんは「体を鍛えることは、何をどう食べるか、どう体をコントロールするかという自分の肉体との対話であり、自分を内側から変えることなのです」と話す。

 ◆パワーアップ担う速筋

 筋力は、筋肉を収縮させたときに出せる力。筋肉の断面積1平方センチあたりの筋力は約6キログラムといわれ、個人差は少ない。速筋と遅筋、中間的な存在の中間筋とがあり、速筋は疲労しやすいが、瞬発的にパワーを発揮できる。遅筋はパワーは劣るものの、酸素がなくても糖を使って活動するため持久力がある。

 遅筋は太くならないため、筋力アップには速筋を活動させ、太くする必要があるが、最大筋力をかけないと発達しない。スポーツ選手がウエートトレーニングでパワーアップを図るのはそのためだ。

 速筋を太くしたい人にとって、「加圧トレーニング」は、日本で発明された最も画期的なトレーニング法だろう。手足の付け根を特殊なバンドで締め、筋肉の中を流れる血液を適度に制限して手足を動かしたり、加圧と除圧を繰り返したりして、成長ホルモンの分泌を促進。短い時間、しかも軽い運動で激しい運動以上の効果を得るものだ。

 「正座して足がしびれたときに筋肉が張る状態をヒント」に、ボディービルダーでもあるサトウスポーツプラザ(東京都)の佐藤義昭さんが、自らの体を使って約40年前に発明。東京大の石井直方教授(運動生理学)との共同研究では、平均60歳の女性20人が4カ月間で最大30%、上腕二頭筋が増大するなどの結果が得られた。プロゴルファーの杉原輝雄氏が実践していることでも知られる。

 ◆カギは成長ホルモン

 加圧トレーニングが効果を上げる仕組みはこうだ。

 血流を適度に制限して運動すると、遅筋の酸素が維持できず、速筋が活動する。同時に「疲れ」を感じさせる筋肉内に乳酸が蓄積されることで脳がだまされ、多量の成長ホルモンが分泌される。

 加圧運動後の成長ホルモン濃度は、通常運動の約10倍、安静時の約290倍に及ぶ。加圧後は末梢の毛細血管にまで血液が回るようになり、血行も加圧前に比べ約70%促進される。

 「成長ホルモンは脂肪を分解し、筋肉をつくり、骨密度の上昇やケガなどの回復に効果がある」と佐藤さん。加圧トレーニングは、筋ジストロフィーや脳出血患者らのリハビリなどにも用いている。また、平成16年からは東大医学部付属病院の「22世紀医療センター」プロジェクトの1つとして講座も設けられ、先進医療としての注目が集まる。さらに、筋力や骨量の減少が問題になる宇宙飛行士向けのトレーニングとしても本格的な研究がスタートしている。

 佐藤さんは「加圧トレーニングは東大などの協力でメカニズムが解明され、スポーツや医療、介護予防、ダイエットなどさまざまな分野に有効なことが分かってきた。ただし、安全かつ効果的にトレーニングするには加圧の有資格者から指導を受けてほしい」と話している。

(3)絞って緩めて体力アップ

2007年02月08日 読売新聞 Yomiuri On-Line

一見、奇妙な動きもある「ゆる体操」(三重県熊野市で) 「この年でも、到達できるんだ」

 東京都大田区の山崎郁郎さん(67)は昨年1月、アルゼンチンの南米大陸最高峰・アコンカグア(標高6959メートル)を極めた。現地入り17日目、時には馬で移動する厳しい行程だ。前年の欧州最高峰エルブルース(ロシア、5642メートル)登頂に続く挑戦だった。

 山崎さんは大手コンピューター会社に技術者として勤務。山は好きだったが、仕事は忙しく、休日登山さえ難しくなった。関連会社を経て、62歳で退職後、海外最高峰への夢がわいた。

 5、6000メートルの高地は酸素濃度が地上の約半分。頭痛や吐き気、意識レベルの低下などを招く高山病の危険がある。

 70歳でエベレスト登頂に成功し、75歳での再登頂を目指すプロスキーヤーの三浦雄一郎さん(74)は、低酸素の訓練施設を東京都内で運営する。「海外を目指す中高年は増えている」と三浦さん。施設は希望者に開放し、1日おきに10キロを歩く山崎さんも、利用して身体を慣らした。登山熱はより高い目標へと向かう。

 東京都老人総合研究所の調査では、76歳以上の歩行速度はその10年前の65歳以上のペースに若返り、握力などの数字も向上した。身体能力の向上が、中高年の挑戦を支える。

 昨年、国土交通省が首都圏の団塊の世代を対象に行った「暮らし方」に関する意識調査(複数回答)では、「健康の維持・増進に気をつけて暮らす」が64%で1位。気軽な運動への関心も高い。

 「負荷は軽く短時間で効果がある」と近年、注目を集めているのが「加圧トレーニング」だ。腕や足の付け根を専用のベルトで圧迫して、足の曲げ伸ばしやダンベル運動などをする。1回の時間が10分程度と短くてよいのが特徴。スポーツジムなどで行われている。

 東京大大学院新領域創成科学研究科の安部孝・客員教授(健康スポーツ科学)によると、筋肉内の血流が制限されると、体が実際の負荷以上に「きつい」と感じ、たんぱく合成が増幅され、筋力がアップするという。実践者は20万人と言われる。

 トレーニングと言えば、体に負荷を与えるものだが、逆に体を弛緩(しかん)させる体操が、世界遺産の熊野古道で知られる三重県熊野市を中心とした紀南地域(3市町)から広がっている。それが「ゆる体操」だ。

 「ぷらぷら〜、ぷらぷら〜」。動きに合わせた言葉を唱えながら、手足をさすり、腰や背中をクネクネさせる。激しい動きはなく、貧乏ゆすりのような一見奇妙な動きなど100近い種類がある。

 「筋肉をゆるめた楽な動きで、血行などが改善する」という考えで、東京都内の武道家高岡英夫さん(58)が考案。岐阜大医学部の分析では、肥満や心理状態に良い効果が認められた。紀南地域では1997年に市民の健康づくりに取り入れた。ほかにも、全国6の自治体が採用している。

 限界に挑む、あるいは気楽に、中高年の運動は多様に広がる。

リンゴに“メタボ”予防効果あり

2007年02月01日 東奥日報

 県主催の「りんごで健康づくりセミナー」が一日、弘前市の弘前商工会議所会館で開かれた。アサヒビール未来技術研究所の神田智正氏が「りんごポリフェノールの効用について」と題し講演。「リンゴを十二週間以上、継続的に摂取することで『メタボリックシンドローム』(内臓脂肪症候群)の予防と改善に効果がある」と述べた。

 セミナーには、保健師や栄養士、消費者ら約百五十人が参加した。

 同市のニッカウヰスキー弘前工場にも勤務経験のある神田氏は、リンゴの食品としての機能性を説明した上で、体に良い働きのあるリンゴポリフェノールの効用について、「内臓脂肪の低減や、脂質の代謝改善、血流の改善などといった抗メタボ作用がある」と説明。多角的な研究データを示しながら、リンゴの医学的効用を語った。

 講演後、新品種「星の金貨」や、「王林」など黄色品種のリンゴ試食会や、リンゴを使った料理の展示が行われ、参加者は味を確かめながら、リンゴの良さを感じ取っていた。

正月はメタボリックの危険大

2007年01月01日 オリコン YAHOOニュース

 忘年会にお正月、そして新年会・・・。この時期はついつい暴飲暴食をしがち。いくら酒豪で強靱な胃袋の持ち主といえども、「スーダラ節」の歌詞ではないが決して体にいいわけはない。

 それどころか暴飲暴食は命にかかわることもあるのだ。糖尿病で亡くなる人は1月がもっとも多いといわれている。そこで厚生労働省の人口動態統計月報(概数)を調べてみた。現在発表されている最新の月報は今年7月のもの。そこから過去1年分をさかのぼり、糖尿病で亡くなった人の数を調べてみると・・・。

2005年8月=936人、9月=879人、10月=949人、11月=1164人、12月=1383人、2006年1月=1522人、2月=1254人、3月=1269人、4月=1168人、5月=1100人、6月=978人、7月=962人

 1月の人数が突出しているのがわかる。これは毎年ほぼ変わらず、また東京都など各自治体の統計も似た傾向にある。

 最大の要因はすばり暴飲暴食だ。糖尿病患者の多くは年末年始に血糖値が上がり、1月は状態が悪くなるといわれている。

 暴飲暴食で血糖値が上がると、動脈硬化を進行させてしまう。心筋梗塞には胸の痛みという自覚症状があるが、糖尿病の人は痛みを感じにくく、発見が遅れがちというのも厄介だ。

 また要注意なのは糖尿病患者だけではない。暴飲暴食は健康な人でもインシュリンの分泌を狂いやすくしてしまう。糖尿病予備軍だった人がついに発症、ということも大いにありうるのだ。

 対策としては一にも二にもまず節制。たとえば鍋料理なら、野菜を中心に食べる。とくに食物繊維は血糖値の上昇を穏やかにしたり、血中コレステロールを下げる働きがあるので効果的。もちろん野菜だからといって、食べ過ぎは禁物。腹八分目よりもさらに抑えて6〜7分目を心掛けよう。

 また焼酎やウイスキーなどの蒸留酒なら血糖値は上がらないという人もいるが、それは間違い。アルコールそのものが高カロリーなので、実際には気休め程度でしかない。日本酒で1合程度が“適量"と考えよう。

 食以外の面では、心臓に負担をかけないよう運動を控えること。運動不足が気になるならウォーキング程度にとどめるのが理想的だ。

 日本には「一年の計は元旦にあり」ということわざがある。2007年を健康に過ごすためにも、お正月の暴飲暴食にはくれぐれもご注意を。

[探健くらぶ]メタボに打ち勝つには…

2006年12月24日 読売新聞 Yomiuri On-Line

ごちそう、でも低カロリー

 今年はメタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)が注目を集めました。おなか回りが気になる中高年にとって、ごちそうの並ぶ年末年始は悩み多い季節です。家族や友人と楽しく時を過ごしながら、メタボに打ち勝つにはどんな手が――。(森谷直子)

前菜は魚介の寒天寄せ メーンに80グラム鶏肉料理

「楽しく会話しながらゆっくり食べることも大切です」と島さん メタボリック・シンドロームの診断基準となる〈1〉肥満〈2〉高脂血症〈3〉高血圧〈4〉糖尿病――の数値を改善するには、やはり減量が第一。そうはいっても、年末年始にごちそうは欠かせない。どうしたものか考えていたら、「フランス料理を食べて糖尿病を克服した人がいる」との情報が。まさかぁ。

 しかし、本当だった。東京都日野市の料理研究家、島静代さん(63)は、20代で単身渡仏した女性シェフの草分け。48歳の時、糖尿病と診断され、58歳の時、左足指の糖尿病性壊疽(えそ)で緊急手術を余儀なくされた。

 3か月間の入院中、1日1200キロ・カロリーの徹底した食事制限で14キロ減量。230〜250もあった血糖値(正常は110未満)は100前後に。退院後は、コレステロールの多いバターや生クリームなど動物性脂肪は使わず、たっぷりの野菜や魚をオリーブ油で調理する南仏料理を食事の中心にすえた。現在も120前後の血糖値を保っている。

量に注意すればチョコもOK!

 島さんに、ごちそう作りの手ほどきを受けた。前菜はホタテやエビの寒天寄せ。アボカドが入った濃厚なお味で、ボリュームもある。メーンの肉料理は、同量の牛肉や豚肉より低カロリーの鶏肉を使う。1人前80グラムと小さめだが、タマネギの甘みがきいたソースをたっぷりかける。デザートは何とチョコレートムース。

 これで合計約500キロ・カロリー。アボカドやチョコレートも食べていいんですか。「量さえ気を付ければいいのよ。ただし、新鮮でおいしい素材を選んで」。お酒もそうだ。島さんは大のワイン好き。飲むと決めた日には、ワカメとエビのサラダなど低カロリーのおつまみをたっぷり作るという。

羽目を外すなら修復可能程度に

 それでもつい食べ過ぎてしまった時は――。「年末年始は、1週間単位で帳尻を合わせれば良しとしています」と言うのは、国立健康・栄養研究所理事長で医師の渡辺昌さん(65)。やはり糖尿病を食事と運動で克服した経験を持つ。

 年末には子どもや孫たちが集まり、すき焼きをすることが多い。楽しい席では、「やっぱり食べてしまうんですね」。そんな日は、食後に自転車こぎをしたり、翌日の食事を控え目にしたり。食後に30分ほど散歩をするだけで、血糖値は目に見えて下がるという。「正月だもの。多少は羽目を外してもいい。ただ、修復可能な程度にとどめておくことです」

 楽しい年末年始を過ごして、2007年もますます健康に!

「ウエスト85センチ」厳しすぎ?

2006年12月13日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 最近「メタボリック・シンドローム」が話題になっている。

 高血圧、高血糖などの異常(危険因子)がいくつか集まると、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞が起きやすい、という考え方から出てきた病気だ。腹部にたまる内臓脂肪が、これらの異常を引き起こすとの理由から、「内臓脂肪症候群」とも呼ばれる。

 この症候群は、ウエストサイズ(腹囲)が男性で85センチ以上、女性は90センチ以上の場合が診断基準の一つになっている。

 この数値に、ドキッとした中高年の男性は少なくないかもしれない。厚生労働省も、40〜74歳の人のうち940万人が該当し、予備軍を含めると中高年男性の半数が“危険水域”だとしている。

 腹囲の基準値は、画像診断による内臓脂肪の面積と、高血圧、高脂血症など危険因子の関係を調べた国内の調査を基に決められた。

 この調査について、東海大教授(医学教育情報学)の大櫛(おおぐし)陽一さんは、〈1〉調査対象が数百人で少なすぎる〈2〉危険因子を一つ持つ場合の内臓脂肪面積を算出しており、複数の危険因子を併せ持つこの症候群の基礎データとして不適切〈3〉データの統計処理にも誤りがある――と分析。「腹囲85センチ以上という数値には科学的根拠がない」と指摘する。

 米国では、腹囲の診断基準は男性102センチ超、女性では88センチ超となっており、「(男性の方が厳しい)日本の診断基準は奇妙」と指摘する海外の研究論文もある。

 薬害を監視する医薬ビジランスセンター理事長で医師の浜六郎さんは「腹囲85センチは日本人男性の平均的サイズ。『やや太り気味が最も長寿』というデータが多数あるのに、それを無視して少人数のデータで診断基準が決められた。新たな病気をつくり、いたずらに病人を増やす」と手厳しい。

 一方、診断基準をまとめた住友病院(大阪市)院長で大阪大名誉教授の松沢佑次さんは「腹囲だけで診断するのではなく、特定の腹囲を超えたら急に病気になりやすくなるわけでもない。数値は目安で、内臓脂肪を減らす重要性を強調した」と話す。

 そして「新たな病気をつくったのではなく、むしろ減らした」と言う。これまで高血圧、高脂血症などを別々の病気として、それぞれの治療薬が出されたりしたが、「元凶」の内臓脂肪に焦点を当てたからだ。

 松沢さんによると、腹囲100センチの人が3センチ減らすだけでも効果はある。おなかの出っ張りに注意を促した点で、診断基準に意義はあるとしても、85センチという数値にこだわる必要はないようだ。

 この症候群と診断された場合、どれくらい心臓病や脳卒中になりやすいか分かっていない点でも、現在の基準値は科学性に乏しい。データを集め、信頼できる診断基準づくりが求められる。

メタボリック症候群減らせ!

2006年08月18日 読売新聞 Yomiuri On-Line

健診時の指導強化 腹囲・血圧改善具体策を提案

 厚生労働省は18日、内臓脂肪症候群(メタボリック・シンドローム)の広がりを防ぐため、健康診断の際に実施される保健指導のあり方を見直す方針を固めた。

 保健師が健診結果を踏まえ、食事や運動習慣を改める具体的な目標を面接やメールで積極的に提供し、その後も継続的にチェックすることで、「相談型指導」から「介入型指導」への転換を図る。同省は2007年度に新たな指導方法の基準となるプログラムを策定し、08年度から実施させる考えだ。

 今年の医療制度改革では、40歳〜75歳への健診・保健指導の実施が、08年度から企業や健保組合などの医療保険者に義務付けられることになった。20歳以上で約6割にとどまっている健診の受診率上昇が見込まれる中、厚労省はこれに合わせ、保健指導を内臓脂肪症候群を減らす機会として活用することにした。

 新しい保健指導は、内臓脂肪症候群の指標となるウエスト周囲径(腹囲)や血圧、血糖値などの数値の改善を目標とする。健診結果を見て、〈1〉腹囲や血圧などに問題が多く、改善が不可欠な場合の「積極的支援」〈2〉一部に問題はあるが現状維持でもいい場合の「動機付け支援」――などを状況に応じて実施する。

 積極的支援では、個別面接などで対象者の仕事や食事の状況を把握したうえで、食生活の見直しや運動などの目標を立てる。その後、生活習慣の改善状況を、3〜6か月ごとの面接のほか必要に応じてメールも使って確認し、半年をめどに腹囲などの数値の変化を点検する。動機付け支援では、個別面接や詳細なアンケートで、対象者に自発的な生活習慣の改善を促す。厚労省は、新たな指導方法を徹底するため、プログラム策定に加え、保健師らを対象にした研修も行う方針だ。

 内臓脂肪症候群は、医療費の約3割を占める糖尿病や脳卒中、心筋梗塞(こうそく)などの生活習慣病の大きな原因とされ、厚労省は生活習慣病患者とその予備群を08〜15年度に25%減らす目標を掲げている。

 内臓脂肪症候群(メタボリック・シンドローム) 偏った食生活や運動不足などで、内臓の周りに脂肪がたまった状態を指す。腹囲が、男性は85センチ以上、女性は90センチ以上であることに加え、血圧、血中脂質、血糖のうち2項目以上が基準値を上回ると症候群と診断される。厚生労働省は5月、40〜74歳の中高年世代5700万人のうち、2000万人近くが内臓脂肪症候群とその予備群で、特に中高年男性では2人に1人が該当するという推計を発表した。

「腹囲」健診で測定 メタボリックシンドロームで20年度から

2006/05/27 The Sankei Shimbun

 平成20年度から40歳以上の人が受ける新しい健康診断の検査項目と判定基準が26日、固まった。内臓脂肪の蓄積に高血圧や高脂血、高血糖が重なり生活習慣病の危険性が高まる「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」の考え方を導入したのが特徴で、これまで実施していなかった腹囲(へそ回り)の測定を必須とする。

 健診の結果「要治療」とならなくても、生活習慣病の「危険度」に応じて受診者を3つのレベルに分類。生活習慣の改善などをきめ細かく指導する仕組みを取り入れる。

 新しい健康診断は、厚生労働省が20年度から、健康保険の運営者に対して、40歳以上の加入者への実施を義務付けるもの。検査項目や判定基準は26日、有識者でつくる検討会に示され、基本的に了承された。

 検査項目には従来と同様の身長や体重、血圧などに加え、腹囲や尿酸の測定を追加した。これらは「基本健診」として受診者全員に実施。一方で尿検査や心電図検査などは「精密健診」として医師が必要と判断した場合に実施することにした。

 内臓脂肪症候群は、腹囲が「男性85センチ、女性90センチ以上」で、さらに高血糖、高脂血、高血圧のうち2つ以上に当てはまる場合。それぞれが定められた数値以上に悪ければ治療のため医療機関の受診を勧めるが、数値が低くても内臓脂肪症候群の該当者や、生活習慣病の危険度が高いと判断した人は「積極的支援レベル」と判定し、3―6カ月間、生活改善や禁煙、運動などの保健指導をする。

 それに次ぐ危険度の人は「動機づけ支援」として生活改善などの指導を1回実施し、それ以外の受診者には生活習慣病に関する情報を提供する。

 厚労省は今秋以降いくつかの都道府県で準備事業を開始、20年4月から本格導入する予定だ。

内臓脂肪症候群(メタボリック・シンドローム) 診断基準は妥当?

2006年05月22日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 おなかに脂肪がたまる内臓脂肪症候群(メタボリック・シンドローム)の中高年が、予備軍も合わせ約2000万人に及ぶと厚生労働省が発表した。心筋梗塞(こうそく)や脳卒中を招くとされ、厚労省が対策に乗り出したが、診断基準の妥当性や治療のあり方を巡る課題も浮上した。(科学部 宮崎敦、医療情報部 田中秀一)

中高年男性の半数“危険水域” 定まらない医学的評価

 内臓脂肪は、皮下脂肪と異なり、内臓の周りにたまる脂肪だ。戦後、日本人の食生活が豊かになる一方、クルマ社会の浸透などによる運動不足で、内臓脂肪が増える肥満が問題になり、日本内科学会が関係学会と昨年4月に統一の診断基準=別表=を定めた。

 厚労省によると、内臓脂肪症候群は、40〜74歳の人のうち940万人、予備軍で1020万人にのぼる。この年齢層の男性は2人に1人、女性で5人に1人が“危険水域”に該当する。

 この症候群が注目されるのは、まず内臓脂肪が糖尿病、高血圧、高脂血症を引き起こすことがわかってきたためだ。

 第二に、肥満と高血圧、高血糖、高脂血症の4項目の組み合わせが、心臓病や脳卒中と密接にかかわっている点だ。2001年の厚労省研究班調査によると、心筋梗塞など心疾患を発症する割合は、これら4項目の危険因子がない人に比べ、2項目が該当する場合は5・8倍、3〜4項目があてはまる内臓脂肪症候群だと35・8倍に跳ね上がる。

 厚労省は、今国会で審議中の医療制度改革関連法案で、生活習慣病予防の柱として、同症候群の対策を前面に打ち出した。40歳以上の健診(健康診査)と保健師・管理栄養士らによる保健指導を強化し、15年度までに予備軍と合わせて「25%減」の数値目標も掲げた。

米は102センチ超

 心臓病などの予防に内臓脂肪症候群を重視するのは合理的と言えるが、「中高年男性の半数が危険水域」というのは本当だろうか。

 診断基準のうち、腹囲(ウエストサイズ)は、米国では男性で102センチ超となっているのに対し、日本人男性は85センチ以上と、かなり厳しく設定されている。女性の基準が、日本人は90センチ以上と米国人(88センチ超)より緩やかなのと対照的だ。

 その根拠は、画像診断による内臓脂肪の面積と、高血圧、高脂血症など危険因子の関係を調べた国内の調査だった。

 この調査について、大櫛陽一・東海大医学部教授は〈1〉調査対象が数百人で少なすぎる〈2〉危険因子を一つ持つ場合の内臓脂肪面積を算出しており、複数の危険因子を併せ持つこの症候群の診断基準データとして不適切――などとして、「腹囲85センチ以上という数値には科学的根拠がなく、不必要に患者を増やす恐れがある」と指摘する。

製薬業界高い関心 薬の過剰使用懸念

 薬の過剰使用につながる懸念もある。

 厚労省は「内臓脂肪を減らすのは、運動と食生活の改善が基本。薬を第一に勧めるものではない」と強調するが、この病気に対する製薬業界の関心は高い。

 血圧、血糖、脂質値が高くなるこの症候群では、降圧薬、血糖降下薬、高脂血症治療薬などを同時に使うこともできる。製薬会社にとって、これほどありがたい病気はない。

 予備軍を含め約2000万人も該当者がいると厚労省が認定し、業界にとって巨大な市場が出現したも同然だ。各種の医学会では、この症候群に関する製薬会社協賛のセミナーが相次ぎ開かれるなど、激しい販売競争が展開されている。

 この事情は、薬の処方を収入の柱の一つとする医療機関でも変わらない。通り一遍の生活習慣指導では、血圧などは容易には下がらないため、安易に薬を出す場合もあるとみられる。

減らない脂肪

 だが、いくら薬を飲んでも、肝心の内臓脂肪は減らない。東京逓信病院の宮崎滋・内科部長は「血圧や血糖値は、海面に出た氷山の一角。内臓脂肪という氷山の本体をそのままにしていては、根本的な治療にならない」と話す。

 内臓脂肪は、皮下脂肪に比べ、運動で減りやすい。松沢佑次・住友病院(大阪市)院長によると、100センチの腹囲を3センチ減らすだけでも、病気の危険は減るという。おなか回りが気になる人は、軽い運動から始めてみてはどうだろうか。

心臓病、脳卒中…医療費抑制へ予防に力点 厚労省

 厚労省が内臓脂肪症候群の対策に力を入れる背景には、2025年には現在の28兆円から56兆円に膨張すると予測される医療費の抑制に、死因の約3割を占める心臓病と脳卒中の予防が欠かせないことがある。

 厚労省は、老人保健法を改正し、2008年度から40歳以上の健診を大幅に見直す方針を打ち出している。

 新しい健診は、同症候群の発見を重視。予備軍の段階での保健指導を強化し、薬が必要になる前に、受診者の生活習慣を変えるよう促す。生活習慣病の治療費や薬剤費を2025年までに2兆円削減する目標だ。

 しかし、保健指導だけで生活習慣を変えるのは簡単ではない。保健師らに対する研修プログラムを今後、十分に検討することが必要となりそうだ。

 同症候群は各国で診断基準が異なるなど、医学的な評価が定まっていない面もある。保健指導を行えば本当に心筋梗塞などを予防できるかどうかのデータも少なく、検証が求められる。

メタボリック・シンドローム

 メタボリックは「代謝」を意味し、内臓脂肪が原因で体の代謝のバランスが崩れることを表す。1980年代に提唱された概念で、「シンドロームX」などの呼び名もあった。2001年に米国の診断基準が公表された。

生活習慣病 健診費用を税金で助成

2006/05/14 The Sankei Shimbun

≪3分の1、扶養家族対象≫

 平成20年度から健康保険(医療保険)の運営主体に義務付けられる40歳以上の加入者などへの生活習慣病向け健康診断費用について、厚生労働省は13日、組合健康保険や政府管掌健康保険、公務員共済組合などサラリーマン健保の負担分の「3分の1」を税で助成する方針を決めた。健診費用は原則として各健保の保険料で賄うことになっているが、規模の小さな企業の健保など、財政状況が厳しい健保も多い。このため、保険料引き上げを避けるには、3分の1程度の税負担はやむを得ないと判断した。

 政府は生活習慣病や、それにつながる動脈硬化を起こすメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予備軍、患者を把握し、早期に対応することで、将来的な医療費削減に結びつける方針を打ち出している。

 健診義務化はその一環で、国会審議中の医療制度改革関連法案に盛り込まれている。

 健保運営主体が義務付けられるのは40ー74歳の保険加入者および扶養家族(計5800万人)。内臓脂肪型肥満に着目したコレステロールや血糖値などを検査。健診後の保健指導も義務付け、「要治療」と診断された人には受診をすすめ、予備軍には生活習慣の改善を促す。

 法案ではさらに、国民健康保険については、国と都道府県が「3分の1」ずつ助成し、保険料負担は残る3分の1とする仕組みになっている。

 しかし、組合健保などサラリーマン向け各健保については法案で「国庫は費用の一部を補助することができる」と規定するにとどまった。このため、財政基盤が弱い健保を中心に財政への影響が厳しいとの懸念が広まり、厚労省は「制度の理解を得るには、国の支援は不可欠」(幹部)と判断した。

黒豆が内臓脂肪の蓄積抑制 メタボリックシンドロームに効果

2006/05/13 FujiSankei Business i.

≪静岡県立大講師ら発表≫

 静岡県立大学薬学部の石田均司(ひとし)講師(応用天然物学)らは20日、黒大豆(黒豆)の皮に含まれる成分が内臓脂肪の蓄積を抑え、高血圧や高脂血症、脳卒中などを引き起こすメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)のリスクを下げる効果があると発表した。黒大豆は、体に悪影響を及ぼす「活性酸素」の動きを抑える抗酸化作用があるとされるが、こうした効果を裏づけたといえそうだ。

 静岡市で開かれた「日本栄養・食糧学会」で報告した石田講師によると、ラット実験で効果を確認した物質は「シアニジン−3−グルコシド」で、花や果物の皮などに含まれる色素成分の一種。研究チームは、ラットに普通の餌▽高エネルギーの餌▽黒大豆から抽出したシアニジンを混ぜた高エネルギーの餌−を与えて30日間観察。

 内臓脂肪を調べた結果、高エネルギーの餌を食べたラットは、普通の餌を食べたラットよりも約1.5倍に増え、シアニジンを混ぜた餌のラットは1.1倍に抑えられたことが分かった。

 また、シアニジン入りの餌を食べたラットのフンには、コレステロールが多く含まれていた。石田講師は「体重の変化は少ないが、コレステロールの代謝が活性化されたことで、脂肪の蓄積だけが抑えられたのではないか」と分析している。

 今回の実験から、人が食事で摂取して効果が出る目安は1回につき納豆1パック分ぐらいだという。石田講師は「毎日摂取し続けることが理想だが、無理のない範囲で定期的に摂取してほしい。特に煮豆の場合は、できるだけ煮汁も残さないようとるのもポイント」と話している。

生活習慣病の恐れ、内臓脂肪症候群は1960万人

2006年05月09日 読売新聞 Yomiuri On-Line

40〜74歳/予備群含め、男性2人に1人…厚労省調査

 脳卒中や心筋梗塞(こうそく)など、重大な生活習慣病を引き起こす危険性が高い「内臓脂肪症候群」(メタボリック・シンドローム)とその予備群が、40〜74歳の中高年世代で2000万人近いことが、厚生労働省の調査で分かった。

 日本内科学会が昨年4月に策定した同症候群の診断基準を参考にして、40〜74歳の中高年約5700万人のうち、2004年に実施した国民健康・栄養調査で対象とした約3000人のデータから推計値をはじき出した。それによると、同症候群に該当する中高年は940万人、予備群は1020万人と推計された。男女別では、男性が2人に1人、女性で5人に1人が、同症候群か予備群に該当し、男性の方がその割合が極めて高いことが浮き彫りになった。

 日本内科学会の診断基準では、腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上で、これに加えて血圧・血中脂質・血糖の3項目のうち2項目の数値が高い場合、同症候群と認定され、1項目が高い場合は予備群とされる。

 現在の成人健診は、糖尿病や高血圧症など個別の病気の発見と予防を重視しているが、こうした症状と肥満が複合的に表れた場合、脳卒中や心疾患を発症する危険度が飛躍的に高まることから、厚労省では、2008年度をめどに、同症候群の予防を主眼とした健診と保健指導の改革を目指している。

 内臓脂肪症候群 高血圧や糖尿病など生活習慣病の引き金となるほど、内臓の周囲に脂肪が蓄積した状態で、偏った食生活と運動不足、ストレス、飲酒、喫煙など現代人特有の生活習慣が要因とされる。昨年4月に日本内科学会が診断基準を示したことで病気の概念として定着した。

1300万人が有病者 メタボリック症候群

2006/05/08 中国新聞ニュース

 内臓脂肪型の肥満に高脂血症や高血圧、高血糖の症状が重なると、それぞれは深刻でなくても心筋梗塞(こうそく)や脳卒中などに進行する危険性が高まる「メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)」について、成人の有病者は男性の23・0%、女性の8・9%を占め、約千三百万人と推計されることが八日、厚生労働省の二○○四年国民健康・栄養調査で分かった。

 有病者一歩手前の“予備軍”も約千四百万人で、両方合わせると約二千七百万人。中高年になるほど増加傾向を示し、四十〜七十四歳に限ると男性では二人に一人、女性では五人に一人が有病者か予備軍だった。

 メタボリック症候群の実態を国が調査したのは初めて。厚労省生活習慣病対策室は「重大な結果だ。原因となる不健康な生活習慣を改善するには適度な運動とバランスのよい食事、禁煙が大切だ」としている。

 メタボリック症候群の調査は○四年十一月、無作為抽出した二十歳以上の約三千九百人を対象に実施。腹囲(へそ周り)が「男性八五センチ、女性九○センチ」の基準値以上の人で(1)高脂血症(2)高血圧(3)高血糖−の二つ以上に該当する場合は有病者、一つに該当する場合は予備軍と定義した。

 男性全体の有病者は23・0%で、予備軍は22・6%。二十代と三十代の有病者はそれぞれ10%未満だが、四十代16・5%、五十代22・1%、六十代27・4%、七十歳以上34・4%と年代が高くなるほど増加。四十−七十四歳の中高年は有病者が25・7%、予備軍を含めると51・7%に上った。

 女性全体では有病者が8・9%、予備軍が7・8%。各年代とも男性より割合が小さく、有病者と予備軍の合計は四十代が12・6%。七十歳以上が30・3%と割合が最も大きく、四十〜七十四歳の合計は19・6%だった。二十代はゼロ、三十代は2・9%。

内臓脂肪から食欲抑制信号 東北大グループ、メカニズムを解明

2006/03/22 The Sankei Shimbun

メタボリックシンドローム 患者らに福音

 生活習慣病の原因になる「内臓脂肪」から出る神経信号が、食欲を抑制する機能を持っていることが、東北大学の研究グループの研究で分かった。肥満などは、体が本来持つ食欲調節の機能が低下することが原因とされているが、この神経信号を活性化することで食欲抑制ができれば、苦しい「食事制限」から解放される道も開ける。肥満だけでなく、糖尿病などの治療にも効果を発揮しそうだ。

 メカニズムを解き明かしたのは、東北大大学院医学系研究科の片桐秀樹教授、岡芳知教授(いずれも代謝学)らのグループ。実験では、太らせたマウスの内臓脂肪に、脂肪を燃やして代謝を向上させる遺伝子を導入したところ、脳内で食欲抑制ホルモン「レプチン」の働きが活発化して、マウスの食事量が半減した。

 遺伝子の働きがどのように脳に伝わったのかを検証するため、一方のマウスだけ、内臓脂肪と脳の視床下部を結ぶ神経を切断したところ、神経を切断したマウスの食欲は減らず、内臓脂肪から出される神経信号が脳に働き、レプチンの働きを活性化させていることをつかんだ。

 摂取した炭水化物や脂肪分は体内で余ると、中性脂肪として血液中に流れ、全身の脂肪細胞が吸収する。ある程度たまると、細胞は食欲を抑制するホルモン「レプチン」を血液中に分泌。これが脳の食欲中枢となる視床下部に届き、食欲を抑える。

 レプチンは一九九四年、米国の研究機関が発見したが、過食が続くと、レプチンは大量に分泌されているのに、食欲が抑制されなくなる現象があり、その原因は解明されていない。

 レプチンは血液を介して脳に作用するが、働きが悪くなったレプチンに神経信号が作用するとなれば、神経信号を活性化する物質を解明すれば「やせ薬」につながる可能性もある。

 片桐教授は「レプチン自体は大量に分泌されているので、薬や刺激によって神経を活性化し、視床下部の感受性を高めてやれば、やせる方にハンドルを切る可能性はある」と分析している。

 肥満や糖尿病にとって、最も苦しいのが「食事制限」。食欲抑制の神経信号の解明は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の患者らにとっては福音となりそうだ。 (奥村信哉)

高齢者こそマシン活用

2006年03月16日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 様々な専用の機器で筋力を鍛えるマシントレーニング。高齢者の利用が広がっているが、「元気な人が行う運動」と誤解されてはいないだろうか。

 「足腰が弱り、外出が困難になった高齢者にこそ、マシンが向いているのです」。札幌市健康づくり事業団の総務課指導係長で、健康運動指導士の資格を持つ佐竹恵治さんはそう強調する。

 市内に住む千葉雅子さん(71)は5年前、脳の血管が詰まる脳梗塞(こうそく)で入院、左半身にまひが残った。

 伝い歩きをするほど足が不自由になった。頻繁に転び、布団の上に立っただけでバランスを崩して転倒。左腕も動かしにくく、料理も難しくなった。

 2003年8月、同事業団が高齢者のために開く運動教室に参加した。1回の運動は、準備運動30分、座席に座った状態で足の筋力を鍛えるなどのマシントレーニング50分(下半身3種目、上半身1種目)、整理体操10分の計90分。3か月間で毎週2日、計24回のコースだ。

 筋力トレーニングには、立った状態でひざを曲げ伸ばしするなど自分の体重を利用したり、ダンベルを使ったりする方法もある。しかし、千葉さんのように極端に足の筋力が弱っている場合、運動中に転倒する危険性も高くなる。

 マシントレーニングの場合、座る、横になるなど安定した姿勢で運動でき、負荷も数キロ・グラム刻みで段階的に増やせる。安全性を保ちつつ、体の状態に適した負荷をかけることができるわけだ。

 同事業団が、介護保険の要支援、要介護1、2のどれかに判定されている60歳以上の市民111人を、マシンで筋トレを行う場合と、マシンを使わない筋トレの場合に分けて調べた研究では、マシンを使った場合の方が、脚の筋力とバランス能力が上回っていた。

 千葉さんは、運動を始めると徐々に転ぶ回数が減り、足が軽くなった。終了後も週1回はマシントレを続け、「要支援」だった介護保険の判定は、昨年5月に「自立」に。左腕も動きが良くなり、病気で断念していた大正琴の練習を、今年1月から再開した。

 「まだ料理や靴を履くのに時間はかかるけど、自分の力で何でもできることが、すごくうれしい」

 高齢者の筋力向上へのマシントレの有効性は、国内外の研究ではっきりしている。ただ、マシンが設置された施設は限られ、通うのに苦労する。

 佐竹さんは「理学療法士や運動指導の専門家が、体の状態をきちんと評価し、もともとある痛みなどに注意しながら、適切な方法を指導することが大切」と指摘している。

筋トレの注意点 運動後に感じる筋肉の疲労感は、筋肉が成長するうえで必要だが、「関節が曲げにくくなったり、痛みが30分以上続いたりすれば、運動量かやり方に問題がある」(東京都老人総合研究所介護予防緊急対策室長の大渕修一さん)。主治医に相談し、専門家の指導を受けたい。

「内臓脂肪症候群」予防に重点、健診抜本改革へ

2006年02月15日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 厚生労働省は15日、健診(健康診査)の抜本的な改革案を公表した。

 糖尿病や心臓病など生活習慣病全般の早期発見から、これらの危険因子となる「内臓脂肪症候群」の予防に重点を移し、保健指導を強化する。

 生活習慣病にかかる医療給付費の増大を抑制する狙いがあり、健診プログラムを全国で標準化し、2008年度から実施する方針だ。

 同省の試算では、現在約28兆円の医療給付費は放置すれば25年度に56兆円に倍増する。このため同省は、昨年10月の医療制度改革案を受けて、25年度の医療給付費を48兆円に抑制するよう、高齢者の負担引き上げや、医療給付費の約3分の1を占める生活習慣病の予防重点化などを表明していた。

 「内臓脂肪症候群」は、おなかの内臓の周りに脂肪が蓄積し、多くの生活習慣病に直結する危険因子とされる。

 同省が15日の専門家検討会で示した改革案では、高血圧や高脂血、高血糖など、同症候群の指標を重視した健診プログラムを作成。生活習慣病の早期発見・治療を進めるとともに、その「予備群」についても、運動や栄養指導を行い、危険度に応じた段階別の指導法を導入する。

 個人の健診結果を電子データで生涯記録し、検査数値の変化や病気予測に基づく指導も行う。また、これらの改革に伴い、健診の実施主体を市町村から健康保険組合など個別の医療保険者に移行する。同省は健診や保健指導の暫定プログラムを3月までにまとめ、来年度から一部地域で試行する方針だ。

肥満予防は子供から 厚労省、生活習慣病対策へ食育

2006/02/12 The Sankei Shimbun【東京朝刊から】

 生活習慣病の発症患者の増加が懸念されるため、厚生労働省は来年度から子供の肥満予防対策に乗り出す。生活習慣病の発症は、子供時代の乱れた食生活と生活習慣が影響しているとされ、増え続ける肥満児童の対策で、生活習慣病の発症を予防したい考えだ。

 厚労省の国民栄養調査によると、子供の肥満(標準体重の20%以上)は年々、増加傾向にある。中でも小学生の九−十一歳が顕著で、男児の肥満割合は昭和五十一−五十五年(平均)の8・4%から、二十年後の平成八年−十二年(同)には15・0%へ増加した。

 女児は思春期の十二−十四歳で鈍化傾向があるものの、九−十一歳では、7・5%から12・2%に増えている。

 子供の肥満が増えている背景を具体的に調べるために、厚労省は来年度、全国五つの都道府県で十地区を指定。小中学校の協力を得て、子供の体格(身長や体重)と肥満度、血中の総コレステロール値、中性脂肪値、血糖値など健康状態を調べるとともに、ファストフードの摂取量など、日ごろの食生活と運動習慣などをあわせて調査する。

 調査結果に基づいて、食生活改善に向けた講演会の開催や、飲食店に小冊子を配置するなど、地区内で食生活の改善運動などに取り組んでもらう。

 厚労省は、子供たちを生活習慣病予備軍にさせないために、早い時期での食育(食の教育)が重要とし、平成二十三年度までに肥満の小中学生を7%以下に減らす目標を設定し、対策に乗り出す。

 また、女児や女子生徒の中には「細身願望」から無理なダイエットに走るケースもみられるため、絶食など極端なダイエットも避けるよう指導していく方針だ。

 最近の研究で、肥満の男児(十二歳)には総コレステロール値と血圧の関係に異常が多いことが分かってきた。生活習慣病の予備軍化が懸念されている。

                  ◇

 ■生活習慣病に詳しい寺本民生・帝京大学医学部教授(内科)の話 「子供のころに身についた食事などの生活習慣は大人になっても変わらず、いったん身についた悪習慣の改善は難しいだけに、小中学生の時期のきちんとした食育が必要だ」

来年度「内臓脂肪症候群」12万人を調査

2006年02月09日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 〜厚労省が生活習慣病の予防に本腰

 糖尿病や心臓病、脳卒中などの生活習慣病を減らすため、厚生労働省は都道府県に対し、来年度の健康・栄養調査の中で「内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)」の実態を把握するよう指示した。

 国は医療制度改革の中で、国民運動として生活習慣病予防を進め、2015年までに患者を25%減らす目標を掲げている。そのため、食生活などの変化と共に急増している糖尿病、高脂血症など、腹部にたまる内臓脂肪が原因で起きる「内臓脂肪症候群」の予防策を重視。都道府県に対し、実際の患者や、将来患者になる“予備軍”の数を調べて傾向を分析し、具体的な対策目標を設定するよう求めている。

 調査では、内臓脂肪症候群の指標となるウエストのサイズ(男性85センチ以上、女性90センチ以上)や血圧、血中のコレステロール値などの検査を行い、分析する。対象は全国で約12万人に上る見込みだ。

 厚労省によると、全国の糖尿病患者は約740万人、高血圧症患者は約3100万人、高脂血症患者は約3000万人と推計されている。いずれか一つの病気のある人は国民の約47%で、三つの病気を併せ持つ人も5%いるとみられる。

ストップ生活習慣病 1日に1万歩/週60分自転車 厚労省、年度内に新指針

2006/01/20 The Sankei Shimbun

 厚生労働省は十九日、生活習慣病対策の一環として「健康づくりのための運動基準」の案をまとめた。日ごろから一日一万歩を目標に歩くことや一週間に三十五分程度のジョギングを楽しむことなど具体的な基準値を示した。有識者の検討会で引き続き論議し、年度内に新たな運動所要量・運動指針を策定する。

 運動基準案では、検討会が内外の文献を調査し、生活習慣病の発症リスクの抑制が期待できる基準値を明示した。

 日常的な歩行など「身体活動量」については、体重が約六〇キロの人の場合、週当たり約千四百五十キロカロリーのエネルギー消費に相当する一日に一時間、約一万歩の歩行を基準値にした。

 また、日常活動以外の「運動量」についても同様に週当たり約二百五十キロカロリーに相当する、早歩きで週に約一時間、ジョギングやテニスなどの運動なら週に約三十五分間を基準値に据えた。

 このほか、筋力が低いほど特に男性で死亡リスクが高まることや、骨粗鬆(こつそしょう)症予防のためにも一定の筋力維持が重要との考えから、日本人の各年代の平均値以上に筋力を保つことを一つの基準にした。

 こうした基準値に基づき、検討会では「歩こう、一日一万歩」との標語を明示した運動指針をまとめる方向。ただ、十九日に開かれた検討会では「運動のやり過ぎのリスクも同時に注意喚起したほうがよい」「『一日千歩から始めよう』としたほうが取っつきやすいのでは」などの意見も出され、引き続き検討する。

 厚労省は平成元年、心臓の冠状動脈が狭窄(きょうさく)したりする疾患を主な対象に「健康づくりのための運動所要量」をまとめた。だが、最近では糖尿病などの生活習慣病が問題化し、死因の約六割を占めるのが現状だ。また、伸び続ける医療費の抑制などのため、内臓脂肪型肥満を前提に高血糖、高血圧などが重なるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した生活習慣病対策に注力する。

 これにあわせ、生活習慣病対策の一環として、新たな運動所要量・運動指針を作るため、最新の科学的な研究成果も加味して、有識者の検討会で議論を続けている。

足の付け根圧迫、1日1キロ歩けば筋力アップ

2006年01月11日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 足の付け根をベルトで圧迫(加圧)し、1日わずか1キロ・メートルほど歩くだけで、3週間後には足腰の筋力が10%も上昇することが、首都大学東京の安部孝教授(身体運動科学)らの研究でわかった。

 高齢者の効率的なトレーニングとして期待できそう。米国応用生理学誌2月号に掲載される。

 加圧によるトレーニング法開発者の佐藤義昭氏らとの共同研究で、教授らは大学生18人を2グループに分けた。一方は、足の付け根を幅5センチほどのベルトで圧迫し血流を制限した状態で、もう一方は何も付けずに、休憩をはさみながら10分程度、毎日2回歩いた。歩行は大またで、時速約3キロ・メートルのゆっくりしたペース。3週間後、ベルトを締めたグループの太ももの周囲は2センチ増加。太ももの筋肉量、筋力はそれぞれ6%、10%増加した。

 血液を調べると、運動の強度に比例して増える成長ホルモン量が、血液1ミリ・リットル当たり1ナノ・グラムから13ナノ・グラムに上昇。激しいトレーニング後の成長ホルモン量の30ナノ・グラムと比較して極めて効率的であることが確認された。  安部教授は「50歳を超えると足の筋力は若者と比べ30%以上減る。筋力を維持するには、強い負荷をかけて鍛えるのが一般的だが、加圧トレーニングならその必要がない」と話している。

スローな筋トレ 意外にも効果

2005年09月26日 読売新聞 Yomiuri On-Line

心臓の負担を軽減/成長ホルモンの分泌促進

 秋の気配が漂い始めている。「食欲の秋」もいいけれど、ちょっぴり「スポーツの秋」も意識してみてはいかが。手軽に行える割には、筋力アップやダイエット効果も大きいと注目される「スロートレーニング」(スロトレ)を紹介しよう。(高橋圭史)

 ■やり方

 スロートレーニングは名前の通り、ゆっくり(英語でスロー)行う運動のこと。もちろん、ただ単にゆっくりなだけではない。

 例えば、ひざの屈伸運動スクワットの場合=イラスト=。ひざを曲げきったり、伸ばしきったりせず、運動の間中ずっと筋肉の緊張を保つ。これが重要なポイントだ。

 収縮した筋肉の圧力で血流が制限(血の流れをわざと悪くする)され続けると、実際にかけた負荷(重量)以上に、より高い効果が得られるという。

 スロトレは、器具を使った筋力トレーニングのほか、腕立て伏せや腹筋など様々な運動に応用できる。

 どのトレーニングを行う場合も、体や物を持ち上げる動作、下げる動作に、それぞれ約3秒かける。上げる動作では息を吐き、下げるときに息を吸う。

 一つの運動を5〜10回を目安に、無理のない範囲で行う。筋肉痛が引くのに合わせて、週2回ぐらい行えば、十分だという。

 ■メカニズム

 軽い負荷で効果を上げる秘密は――。東大教授の石井直方さん(身体運動科学)によると、カギを握るのは運動後に分泌される成長ホルモンだ。

 成長ホルモンは、子供が大人に成長するときに盛んに分泌されるが、大人になってからも筋肉の強化や脂肪分解などを促進する。

 石井さんらが22歳の男性に行った実験では、スロトレの要領で、いすに座ってひざを伸ばす運動を負荷65キロ(最大筋力の半分以下)で8回3セット行った場合、運動後の約30分間、血液1リットル中に30マイクロ・グラム前後の成長ホルモンが分泌され続けた。

 これは通常トレーニングで、倍の130キロの負荷をかけた場合と、ほぼ同じ。つまり、スロトレでは通常の方法より成長ホルモンの分泌が活発になり、最大筋力の半分の負荷で、最大筋力に近い負荷で行ったときと同程度の効果が得られるのだ。

 「筋肉内の血流を制限し続けると、比較的軽めの負荷でも乳酸などの運動に伴って生じる物質が大量にたまり、『激しい運動をした』と体は思いこむ。そして、その信号が脳に送られると、筋肉を修復しようと、成長ホルモンの分泌が活発になる」と石井さん。これは、腕や足の付け根をベルトで圧迫することで強制的に血流を制限する加圧トレーニングと同様の原理だ。

 スロトレの利点は第一に、従来の方法より、軽い重量でできるので、関節を痛めにくいこと。また、血圧の上昇が少ない分、脳や心臓に負担がかからず事故防止にもつながる。さらに成長ホルモンの効果で、新陳代謝が活発になり、長期的に行えば、肌つやにも効果が出てくるという。

 ■スロトレ→有酸素

 脂肪を燃やし、減量したいという人には、ウオーキングなどの有酸素運動との組み合わせが効果的だ。そのときのコツは先にスロトレを行うこと。分泌された成長ホルモンの効果で、脂肪分解が進み、その後、有酸素運動に移った際に脂肪燃焼効果が大きくなる。逆に同じメニューでも、有酸素運動から始めると、脂肪燃焼効果は「ほぼ半減」(石井さん)という。

 ■注意点

 様々な効果のあるスロトレだが、スポーツ選手の場合は、やや注意が必要だ。スロトレは、軽い負荷で筋肉を疲れさせるトレーニング法だけに、このクセがついたまま競技に臨むと、持てる力を100%競技に向けて発揮できない恐れがある。楽に動けるときも、筋肉を疲れさせるスロトレの動きをしてしまい、体力を無駄に使ってしまうからだ。

 ただし、競技に応じた筋肉の使い方を反復練習すれば、この心配はなくなるという。石井さんは「スロトレは筋力アップの効果はあるので、その力を効率よく発揮する練習をプラスすれば、競技力は上がるはず」と語る。

呼吸を助ける運動療法

2005年03月03日 読売新聞 Yomiuri On-Line

脚の曲げ伸ばしをする岩崎さん。呼吸リハビリで覚えた運動を自宅で実践する 東京都板橋区の岩崎英雄さん(72)は、毎日の筋力トレーニングと散歩を欠かさない。慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)の一つ「肺気腫(きしゅ)」によって低下した肺の働きを支え、体力を維持するために大切な運動療法だ。

 岩崎さんは2002年夏、風邪をこじらせ、急に強く息切れし自宅で倒れ、救急車で近くの病院に運ばれた。「肺気腫で、一生、酸素を吸入しないとだめです」と医師に言われ、チューブを鼻から通して酸素を吸う在宅酸素療法を始めた。

 別の病気で皮膚科に通っていた順天堂大病院(東京・御茶ノ水)で偶然、COPDのための呼吸リハビリテーション教室のお知らせを目にし、その足で呼吸器内科を受診。週2回、1か月半の教室に参加した。

 呼吸リハビリの中心は運動療法だ。理学療法士の指導で、まず約50分間、体を動かす。その後、看護師、栄養士らによる生活指導などを受ける。

 同大医療看護学部教授の植木純さんは「呼吸困難のうえ体力が落ちている人が多いため、正しい姿勢や呼吸の仕方などを身に着けて運動を始めることが大切です」と説明する。

 まず、肩が落ち、前かがみになった姿勢をまっすぐに正す。腕を伸ばしたり回したりして、硬くなった胸の筋肉を軟らかくほぐす。

 呼吸は、息をおなかに入れるつもりで鼻から吸い、吐く時は口をすぼめ、ゆっくり吐き出すのがポイント。COPDは空気の通り道が狭まっているため、急いで吐き出そうとすると、かえって苦しくなるためだ。

 運動療法は、持久力を高めるウオーキングに加え、足腰を鍛える筋力トレーニングが中心だ。あおむけに寝て、片方ずつ脚を上げてひざを曲げ伸ばししたり、いすからゆっくり立ち上がったり座ったりする。肺の病気には直接関係ないように見えるが、しっかりした足腰がウオーキングなどの日常の活動を支える。

 岩崎さんは、運動と吸入薬の効果が相まって息苦しさが改善。それまで体を動かす時に使っていた酸素がいらなくなった。

 今も毎日、早朝から妻と一緒に6500歩、散歩する。家では、脚の曲げ伸ばしなど約10種類の筋トレを10回ほどずつ繰り返す。食欲が増し、180センチで55キロとやせ気味だった体は62キロに。体力もついた気がしている。

 呼吸リハビリには、症状の急な悪化を防ぐ効果もある。日本呼吸管理学会などの指針も昨年まとまり、「徐々に普及しつつある」と植木さんは話す。

 ◆呼吸法のコツ

 〈1〉鼻から吸う。軽く口をすぼめ、吸う時の約2倍の時間をかけて吐き出す。

 〈2〉口をすぼめすぎて力まないように。ほおや肩の力を抜く。

 〈3〉歩く時は、2歩の間に息を吸い、4歩で息を吐くなど自分のリズムをつかむ。

筋トレでマラソン完走

2005年01月06日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 ハワイ・ホノルル市のアラモアナ公園を、早朝5時にスタートしてから6時間余り。埼玉県加須(かぞ)市の主婦保本悠紀代(やすもとゆきよ)さん(64)の目に、思いの外しっかりした足取りで笑顔で手を振る夫の忠彦さん(66)の姿が飛び込んできた。

 先月12日。夫婦で初めて参加したホノルルマラソン。夫はフルマラソン、妻は10キロウオーク部門に挑み、2人ともゴールインできた。「還暦を過ぎて元気でいられるのも、筋トレのおかげ」と声をそろえる。

 建設機械メーカーを58歳で退職した忠彦さん。健康づくりにウオーキングを始め、60歳を過ぎるとジョギングへと移行した。ところが、「いずれはマラソンを」と、無理をしたのが落とし穴に。腰を痛めてしまった。

 そんな一昨年10月、市が主催する60歳以上を対象にした筋力アップ教室に、悠紀代さんが誘って夫婦で参加することにした。

 悠紀代さんは10年ほど前、腰の骨がずれて痛む脊椎(せきつい)すべり症と診断され、「手術をしたくなければ、運動をするように」と、医師から勧められていた。

 歩くことが健康に良いのは知られているが、最近、筋力トレーニングが注目されている。骨を支える筋肉を強くすることで、全身で体を支え、関節などへの負担を軽減し、活動する能力を高める。高齢者では寝たきり予防の効果もある。

 同市の教室は、筋力の中でも、背骨と太ももの骨をつなぐ大腰筋(だいようきん)の強化を狙っている。腰の内部にあり、立ったり歩いたりする動作を支える重要な筋肉で、年齢と共に衰えやすく、歩くだけでは鍛えられない。

 筑波大学助教授の久野譜也(くのしんや)さんが開発したプログラムには、ひざを曲げて腰を落とすスクワットや、腰掛けたまま太ももを上げる運動などが盛り込まれ、その人の体力に合った回数を目標に設定する。3か月後、1年後と定期的に体力測定を行う。

 保本さん夫妻は、この教室に週1回、1年以上通ってきた。開始前は、年相応の60歳代の体力年齢だった2人は、10歳ほど“若返った”。

 ジョギングに筋トレを加えた忠彦さんの走りは、より快調になった。悠紀代さんも寝る前のちょっとした時間を利用して筋トレを心がけ、「おかげで腰の痛みを気にすることがなくなった」と喜ぶ。

 「夢だったフルマラソンは、最初で最後」という忠彦さんだが、これからも夫婦でゴルフやテニスなどを楽しみたいと考えている。(田村 良彦)

 大腰筋トレーニング 筑波大の久野譜也助教授は、60歳以上の高齢者の大腰筋の変化を1年間調べた。何も運動しなかったグループは大腰筋の面積が減少したのに対し、筋力トレーニングを週1回行ったグループは現状を維持。週2回のグループでは増加していた。高齢者でも運動により、筋肉がつくことがわかった。

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