TOPIC No.5-57 高コレステロール

01. コレステロール(cholesterol) byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
02. コレストロールの重要性 by男のアンチエイジングどっとこむ
03. コレステロール報告書
04. りんごの栄養成分
05. コレストロールに関わる食事・食べ物 byAll about
06. 下がれコレステロール!
07. 脂質異常症/高脂血症 コレステロールを下げる食事・運動

コレステロールを低下させる「引き締った味 カテキン緑茶」

2008.4.10 MSN産経新聞

 緑茶の主要成分であるカテキンのうち、コレステロール値を下げる作用がある「ガレート型カテキン」を90%配合。継続飲用により血清コレステロールを低下させることが確認され、特定保健用食品の表示許可を得た。コレステロールが高めの人の食生活の改善に役立つ。価格は168円。販売中。

■伊藤園TEL0800・100・1100

動脈硬化の危険度 「悪玉÷善玉」で目安

2008.04.09 MSN産経新聞

 「『悪玉÷善玉』の値を自己点検し、動脈硬化の予防に役立ててほしい」と話す東京医科歯科大学生命倫理研究センターの吉田雅幸教授「『悪玉÷善玉』の値を自己点検し、動脈硬化の予防に役立ててほしい」と話す東京医科歯科大学生命倫理研究センターの吉田雅幸教授

 心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞を引き起こす動脈硬化。その予防に欠かせないコレステロール管理の目安として、「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロール値を「善玉」のHDLコレステロール値で割った数値が注目されている。LDLとHDLのバランスの善しあしを一目で把握できるのが利点で、専門医は「生活習慣の改善や医師の指導を受けるきっかけとして活用してほしい」と呼びかけている。(海老沢類、写真も)

 コレステロールは血液に含まれる脂質の一種。悪玉のLDLは体中の血管にコレステロールを運び、善玉のHDLは余分なコレステロールを回収する役目を担う。動脈硬化に詳しい東京医科歯科大学生命倫理研究センターの吉田雅幸教授は「両者とも体内の細胞膜に欠かせないものだが、LDLの量に比べてHDLが少なすぎると、コレステロールの供給過剰を招く。プラークと呼ばれる塊が血管に付着しやすくなり、動脈硬化の原因になります」と指摘。動脈硬化の予防には、悪玉のLDL値を下げるだけでなく、余剰分を回収してくれる善玉のHDL値を上げる必要があるという。

 日本動脈硬化学会は昨年4月、診断基準から従来の総コレステロール値を削除した。悪玉のLDL値「140以上」を「高LDLコレステロール血症」、善玉のHDL値「40未満」を「低HDLコレステロール血症」とし、動脈硬化性疾患を引き起こす危険性を指摘した。

 ただ、医師向けの診断基準をすべて覚えるのは大変だ。そこで手軽に危険度をチェックする目安として、吉田教授が紹介するのが「悪玉÷善玉」という数式。この値が「2・5以上」なら要注意で、健康な人なら「2・0以下」、糖尿病や高血圧といった危険因子を持っている人は「1・5以下」を目指すよう呼びかける。

 「悪玉のLDL値が同じ120でも、善玉のHDL値が60だったら『2・0』でほぼ標準だが、30なら『4・0』でリスクがより高いと判断できる。この値をできるだけ小さくするよう心がけてほしい」と吉田教授は説明する。

 吉田教授が掲げる指標の根拠は複数の研究データだ。軽症狭心症患者約100人を対象に実施した国内の臨床研究では、「悪玉÷善玉」の値が「2・5以上」になると、血管内のプラーク占拠率が目立って高くなった。また、昨年発表された米国での研究論文によると、この値が「2・0以下」になるとプラークの体積は縮小に向かい、「1・5以下」ではさらに小さくなったという。

 吉田教授は「さらに明確な基準を設定するにはより多くの臨床データが必要だが、この指標は一つの目安にはなる。動脈硬化は数十年単位の長い年月をかけて徐々に進行していく。手持ちの健診結果で誰もが計算できる数式なので、過去の健診結果もフォローしながら予防に役立ててほしい」と話している。

              ◇

 ■禁煙と適度な運動を

 動脈硬化の予防には、生活習慣の改善が必要だ。日本動脈硬化学会はガイドラインで、禁煙▽食生活の是正▽身体活動の増加▽適正体重の維持と内臓脂肪の減少−の4項目を対策の柱に掲げている。東京医科歯科大学の吉田雅幸教授は「禁煙の徹底はもちろん、肉類よりも魚類や海藻、野菜、キノコなどを積極的に食べ、過剰な脂質の摂取を抑えることが大事。20〜30分のウオーキングなど脂肪を燃焼させる運動も続けてほしい」とアドバイスする。

新コレステロール指標は高脂血症対策を変えるか

2008年04月08日 DIAMOND online竹内有三(医療ジャーナリスト)

 今回はコレステロール値の診断基準が5年ぶりに改訂された話題です。健康診断でもおなじみのコレステロール値の異常は、動脈硬化を進める主要なファクターです。

 改訂の1番のポイントは「総コレステロール」という診断項目がなくなる点です。従来は総コレステロールが220mg/dlを超えると高脂血症と呼んでいましたが、これは実情にそぐわない面も少なくありませんでした。『知って得!医学知識』などで知られる池谷敏郎先生(池谷医院院長)も次のような問題点を指摘しています。

「特に更年期を迎えた女性はホルモンの関係で総コレステロールは上昇しやすいが、これは一過性でやがて戻ることが多い。にも関わらず、高脂血症ということで薬を飲みつづける人も多いんです」

 実際、三井記念病院・総合検診センターの調査では健診で高脂血症と診断された人の25%が、新基準では「正常」になるとも報告しています。

 病気でもないのに薬を飲む愚を避けられる――。その意味でも、この改訂は評価できると池谷先生は言います。

 総コレステロールにかわって主要な診断基準となるのがLDLとHDLの2つです。前者は悪玉コレステロールとも呼ばれ、増えると血管の壁にたまって動脈硬化を促進させます。後者は善玉コレステロールとも呼ばれ、全身の細胞で余ったコレステロールを回収して肝臓に戻します。

 新しい予防基準ではLDLは140mg/dl以上、HDLは40mg/dlを下回ると脂質異常症(高脂血症にかわる新たな病名)と診断されます。更年期の場合でも、総コレステロールの増加よりもLDLとHDLの構成バランスをチェックすることが、より大切な予防指標となるわけです。

 血管は明日の健康を左右する大切な“ライフライン”。渋滞を起こしてこうした数値に赤信号が灯らないよう、日頃の生活習慣に気を配りたいものです。

【科学を食する】ソヤファーム「ハイ!調整豆乳」

2008.04.07 MSN産経新聞

 今月スタートした「特定健診・保健指導」では、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)値を診断項目に取り入れている。酸化されたLDLコレステロールは血管にたまりやすく、動脈硬化の要因になる危険な存在だ。

 豆腐など大豆のタンパク質には、LDLコレステロールを減らす効果がある。この商品は、豆乳の形で大豆タンパク質を手軽に取ろうと、不二製油が開発した特定保健用食品(販売はソヤファーム)。不二製油の津崎真一・蛋白開発研究所ソヤファーム開発部主事は「体内のコレステロールは胆汁酸として腸管内に分泌されて消化吸収に働き、再び体内に取り込まれるが、大豆タンパク質はこの再吸収を抑えるため、血液中の余分なコレステロールを減らすことになる」と話す。

 成人男性14人に1日1本ずつ4週間飲んでもらったところ、血清総コレステロール値は257mg/dlから243mg/dlに、LDLコレステロール値は170mg/dlから153mg/dlに低下。余分なコレステロールを回収するHDLコレステロール(善玉コレステロール)に有意な変化はみられなかった=グラフ。

 大豆特有の青臭さを高温処理で除き、飲みやすい豆乳を実現した。

               ◇

 1箱30本入り(4725円)で通信販売。問い合わせはソヤファームクラブ(フリーダイヤル0120・39・3009)。

ファイザーのリピトール特許、スペイン控訴裁が有効と判断(Pfizer)

2008/04/01 IPNEXT

  米製薬大手ファイザー(Pfizer)は31日、高コレステロール血症治療薬「リピトール」の有効成分「アトルバスタチンカルシウム」に関する特許訴訟について、スペインのバルセロナ控訴裁判所が地裁による判決を覆し、対象特許の有効性を認める判決を下したと発表した。2010年7月まで有効となっている。

 リピトールはコレステロールを下げる治療薬として世界中で販売されている。スペインにおける販売名は「Zarator」と「Cardyl」。後発医薬品メーカーであるLaboratorios Cinfa S.A.、Kern Pharma S.L.、Laboratorios Alter S.A. 、Laboratorios Belmac S.Aの4社がファイザー特許の無効性を訴えていた。4社はスペインの最高裁に控訴することができる。

日本製粉、コレステロール値抑制などで「特保」4品目

2008/03/30 NIKKEI NeT

 日本製粉は血中コレステロール値の抑制に効果があるとされるキトサンを配合した粉末飲料など特定保健用食品4品目を4月1日に発売する。特定保健用食品を販売するのは同社として初めてで、メタボリック(内臓脂肪)症候群の予防・改善を進める特定健診制度が4月に始まることなどに対応する。

 キトサン配合の粉末飲料は「キトサン明日葉青汁日和」で3150円。このほか高血圧の人向けの錠剤「ペプチドオブサーデン」(5250円)と、整腸作用や血圧抑制効果が期待できる難消化性デキストリンを配合した2品目の計4品目を全国のドラッグストア、百貨店のほか、通信販売で扱う。初年度計1億円の販売を目指す。

ドングリ肥育豚、あっさり味

2008/03/28 中国新聞地域ニュース

 庄原市の県立広島大の准教授たちがドングリで肥育実験している豚の試食会が26日、市内のホテルであった。あっさりした味が好評で今後、肉質や成分などを検査する。

 庄原商工会議所の議員総会で、ドングリ豚の開発プロジェクトを連携して進めている議員たち50人が試食。庄原グランドホテルのシェフが調理した豚しゃぶサラダやトンカツなど4品を味見した。ドングリで肥育する豚は、スペイン特産のイベリコ豚が有名。悪玉コレステロールを低下させる効果のあるオレイン酸の含有率が高まるという。

日清オイリオ、コレステロールを減らす「キトサン」入りの特保食品

2008年03月28日 nikkei TRENDY net

 日清オイリオグループは、ビスケットタイプの特定保健用食品「きちんとキトサンビスケット」を2008年4月21日発売する。コレステロールの体内吸収を防ぐ「キトサン」配合で、メタボリックシンドローム対策になるという。希望小売価格は、7袋入りが1155円、14袋入りが2100円、30袋入りが 4095円。

 「キトサン」は、カニやエビの甲殻などに含まれるキチンから作られた成分で、コレステロールを体内に吸収する胆汁酸を体外に排出する効果がある。その結果、胆汁酸が少なくなって体内に吸収されるコレステロールを減らせるという。

 きちんとキトサンビスケットは、カニ由来のキトサンを1袋(12.5g)あたり0.5g配合した。ビスケットタイプで手軽に摂取できる。1日の摂取目安量は1〜2袋。 (文/鴨沢浅葱=Infostand)

コレステロール低いと危険 富山大など、17万人分析

2008年03月28日 中国新聞ニュース

 富山大の浜崎智仁教授(脂質栄養学)らは、総コレステロール値があまり低いと死亡の危険がかえって高まるとする研究結果をまとめ、28日、東京都内で記者会見して発表した。

 一般に、総コレステロール値が高いのは良くないことだとして、下げるための治療が広く行われているが、浜崎教授は「総コレステロール値は栄養状態の指標と考えるべきだ。心筋梗塞や家族性高コレステロール血症以外の人は、無理にコレステロール値を下げる治療をしなくてもいいのではないか」と話した。

 日本人延べ約17万人のデータを含む複数の大規模研究を分析した。

 男女とも最も数が多かった血中総コレステロール値(160−199)を基準に死亡の危険を比較したところ、男性は160未満だと死亡の危険が1・6倍高く、200以上では0・8倍程度と、コレステロール値が高いほど危険が低くなるという結果だった。

 女性も160未満は1・4倍と死亡の危険が高かったが、160以上は、240を超えても差はなかった。

血中コレステロールを調節できる遺伝子発見 群大研究グループ

2008.03.21 MSN産経新聞

 群馬大生体調節研究所の原田彰宏教授(44)らの研究グループは20日、米国、台湾の大学との共同研究で、細胞がコレステロールを取り込む際に働く2つの遺伝子を発見したと発表した。研究成果は欧州学術専門誌「EMBO Journal」電子版に同日付で公開された。血中コレステロール量を調節する新薬開発などで活用できる可能性があるという。

 血中の悪玉コレステロール(LDL)が増えすぎると、高脂血症や動脈硬化など生活習慣病の原因になる。このため、研究グループは、体長約1ミリの線虫という生物(線形動物)の細胞を使って、人間の細胞がLDLを取り込む構造の解明を進めた。

 その結果、線虫と人間が共通して持っている遺伝子「RAB35」と「RME−4」を発見。細胞表面の「LDL受容体」というタンパク質がLDLをとらえ、細胞内に効率良くコレステロールを取り込み再利用することで、血中コレステロールを適切に保っていたことが分かった。

 原田教授らは「血中コレステロールを下げる展望ができた」と話しており、今後、血中コレステロールを調節する研究などに役立てていきたいとしている。

コレステロール新基準

2007年06月08日 読売新聞 Yomiuri On-Line

「悪玉」LDL値で診断

 心筋梗塞(こうそく)などを引き起こすとされる高コレステロールの診断基準が改定された。健康管理にどう生かすべきだろうか。(田中秀一)

 コレステロールは、脂質の一つで、血液中に増えすぎると、血管壁にたまって血管が詰まるなど動脈硬化の原因になる。日本動脈硬化学会が診療指針を改定した。

 ポイントは、従来の指標だった総コレステロール値を診断基準から外し、「悪玉コレステロール」とも呼ばれるLDLコレステロール値で診断することにした点だ。

 総コレステロール値は、LDLと、「善玉コレステロール」とも言われるHDLコレステロールなどを合わせた数値を言う。LDLが全身にコレステロールを運ぶのに対し、HDLは余分なコレステロールを血液中から回収し、動脈硬化を進みにくくする働きがある。

 診療指針作成委員長を務めた帝京大教授(内科)寺本民生さんは「日本人には、善玉のHDLが高いために総コレステロール値が高い人もいるので、総コレステロールではなく、LDLで判断した方が合理的」と改定の理由を説明する。

 HDLが低い場合も心筋梗塞につながるため、これまでの名称の「高脂血症」に代わり、「脂質異常症」と呼ぶことになった。

 従来の総コレステロールの基準値(220以上)には、「日本より数倍も心筋梗塞が多い米国の基準値(240以上)より、なぜ厳しい数値なのか」など、疑問視する専門家も少なくなかった。新基準から総コレステロール値を外すことで、こうした批判をかわす効用もある。

 もっとも、今回の基準値であるLDL140以上は、総コレステロールでは220程度以上に相当するので、新基準でも、数値の妥当性への疑問は引きずったままだ。

 寺本さんは「日本人は心筋梗塞が少ない国民のままであってほしいという願いを込めた基準値」と話すが、科学的根拠は乏しい。

 別の課題もある。循環器が専門の佐賀県・ニコークリニック院長、田中裕幸さんは「女性の心筋梗塞は男性の2分の1から3分の1と少ないのに、基準値が男女とも同じなのは不合理」と指摘する。

 男女別、年代別にコレステロール値と心筋梗塞など冠動脈疾患による死亡率を示したデータ(図)を見ると、確かに男性ではコレステロール値が高いほど心筋梗塞が増えている。だが、女性ではコレステロール値と心筋梗塞にあまり関係がみられない。

 こうした事情から、米国の診療指針では、女性の場合、血圧、血糖値などに問題がなければ、コレステロールが高めでも治療せず、LDLが190以上とかなり高い場合だけ治療する、としている。

 ところが日本の指針では、女性で55歳以上の場合、望ましいLDLの値(管理目標値)は140未満とされ、この数値以上の中高年女性は治療される可能性がある。米国なら「治療不要」とされる健康な女性たちに、過剰な治療が行われる恐れがあるのだ。

 田中さんは「女性の場合、コレステロールが高いだけなら、心臓病の危険はほとんどない。米国並みの基準値で十分」と言う。

 ただし、女性でも糖尿病、喫煙、高血圧などの要素がいくつも重なると心筋梗塞を起こしやすい。日本の診療指針も、これらの要素が多いほど治療の必要性は高いとしている。コレステロール値だけでなく、様々な要素を考えて対処することが大切だ。

コレステロール220は病人?

2006年12月15日 読売新聞 Yomiuri On-Line

コレステロール値などを測定する血液検査 コレステロール値が気になっている人は多い。数値が高いと心筋梗塞(こうそく)などになりやすいとされるためだ。

 高コレステロールの基準は、かつては総コレステロール値240(単位は1デシ・リットルあたりミリ・グラム)程度以上とされていたが、1987年に日本動脈硬化学会が「220以上」という数値を打ち出した。

 ただ、この基準値は根拠となるデータが乏しいと言われ、99年に見直しが始まった。日本で行われた大規模研究で、数値が240以上の場合に心筋梗塞が多いとの結果が出たことから、一度は「240以上」と改められる見通しになった。

 ところが、学会内で「いったん定着した数値を変えると混乱が起きる」などと反対があり、「220以上」のまま据え置かれた。

 基準値が低ければ、「病気」と判定される人は増える。コレステロール値「220以上」の人は「240以上」の人の2倍もいる。

 高血圧でも、基準値は引き下げられてきた。これらの数値改定は、欧米の診断基準値が下げられ、日本が追従したことにもよる。

 海外で診断基準値が下げられてきた背景に、診断基準を作成する医師と製薬企業の結びつきを指摘する声がある。基準値を下げるほど患者は増え、薬物療法の対象者も増えるからだ。

 製薬企業の販売戦略をリポートした「怖くて飲めない! 薬を売るために病気はつくられる」(レイ・モイニハンほか著、ヴィレッジブックス刊)によると、2004年に改定された米国のコレステロール診療指針では、指針を作成した委員9人のうち、8人が製薬企業から報酬を得て講演やコンサルティング、研究をしていた。米国の高血圧の診療指針でも、作成者11人中9人に製薬企業と同様の関係があった。

 フランスの医学誌「プレスクリル」編集委員で医師のクリストフ・コップさんは10月に来日、薬害問題を討議する医薬ビジランスセミナーで「製薬企業の影響は世界保健機関(WHO)にも及んでいる」と述べた。

 コップさんによると、WHOの高血圧診療指針での診断基準値は、心臓病の発症の恐れが高くない人の場合、臨床試験など厳密なデータに基づいたものではない。指針の作成担当者には、製薬企業との金銭的な関係のある人がいた。

 一般に、基準値の引き下げには、病気の見逃しを少なくする狙いがある。同時に、多数の健康な人を患者に仕立て、無用な治療や副作用被害を広げる恐れもあるが、そうした視点は置き去りにされがちだ。

 日本でも、診療指針を作成する医師が、製薬企業から講演料や研究費を受け取る例は少なくないとみられる。中立・公正な指針づくりが求められる。(田中秀一)

 [コレステロール] 脂質の一種で、細胞膜やホルモンの材料となる。多すぎると血管の壁にたまり、血管がもろくなったり詰まったりする動脈硬化を起こし、心筋梗塞につながるとされてきた。

高脂血症(上)

2006年12月09日 読売新聞 Yomiuri On-Line

県立中央病院循環器内科 宇野欣秀診療部長

注意すべき4つの状態

 コレステロールも中性脂肪も体内に存在する脂質の一つです。コレステロールは主に細胞膜やいくつかのホルモン・胆汁酸の材料として必要です。また、中性脂肪はエネルギー源として重要です。

 しかしともに過剰に存在すると動脈硬化の原因になります。

 コレステロールと中性脂肪は、血液の中ではタンパクと結合してリポ蛋白(たんぱく)と呼ばれる粒子の中に存在します。この粒子の性質により、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)やHDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)などに区分されます。

 採血検査を受けることで、血液中のコレステロールや中性脂肪の数値を簡単に知ることができます。

 皆さんのなかには「今回の検査の結果、コレステロールが高いので精密検査が必要です」という通知を受けて心配になった経験をお持ちの方も多いと思います。

 日本動脈硬化学会は、次の3つの状態を高脂血症と定義しています。

〈1〉血清1デシ・リットルあたりコレステロール値220ミリ・グラム以上

〈2〉同トリグリセリド値150ミリ・グラム以上

〈3〉同LDLコレステロール値140ミリ・グラム以上

 また、併せて注意しなければならない状態として、血清HDLコレステロール値40ミリ・グラム未満を低HDLコレステロール血症と呼んでいます。これらの4つの指標のどれかに当てはまれば異常ということになります。

 次回は、血液検査の数値からだけでは見えない要治療のケースなどについて説明します。

青柿がコレステロール抑制 高脂血症改善に効果期待

2006年11月29日 中国新聞ニュース

 岐阜県生物工学研究所などの研究グループが29日までに、成熟する前の青柿に血中コレステロールを抑制する効果があることを動物実験で発見した。高脂血症などの改善への活用が期待できるほか、成熟する前に間引くため捨てるしかなかった青柿の実の有効利用が可能になるという。

 研究グループが、高カロリーの餌に未成熟の柿の粉末を10%混ぜたものをマウスに与え、14週間後に柿の粉末を混ぜない高カロリー餌を与えたマウスと血液を比較したところ、血中のコレステロールが約23%少なかった。

 同グループは、青柿を与えたマウスの肝臓でコレステロールが分解されてできる「胆汁酸」の合成が活発化していることから、血中のコレステロールが取り込まれ、血中量が低下したと分析している。

 青柿は実の状態だと渋くて食べられないため、粉末化した。甘柿と渋柿の2種類で試したところ、どちらも同様の効果が得られたという。県は「特定保健用食品や薬品への実用化を目指したい」と話している。

08年新基準で判定なら…男98%女92%「不健康」

2006年10月18日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)などを防ぐために厚生労働省が2008年度から導入する健康診断・保健指導の基準では、受診者のうち何らかの異常を指摘される割合が男性の98%、女性でも92%に上る、との推計を大櫛(おおぐし)陽一・東海大教授(医学教育情報学)がまとめた。

 19日からの日本病院管理学会で発表する。大半の人が「不健康」とされる事態で、健康不安を広げる恐れもありそうだ。

 厚労省は、腹部に脂肪がたまる内臓脂肪症候群が、心臓病、脳卒中などの原因になるとして、健保組合など医療保険者に対し、40〜74歳の加入者に食生活や運動習慣を改善する保健指導を行うよう義務づける。

 基準値として空腹時血糖100、中性脂肪150、最高血圧130、悪玉コレステロールとも言われるLDLコレステロール120などを設定、これらの数値以上の場合が指導対象になる。異常の項目が多い人ほど積極的に指導する。

 大櫛教授が、日本総合健診医学会による40〜74歳の男女42万人の健診データを基に、これらの基準値以上となる人の割合を算出したところ、男性では、血糖値で50%に上るほか、血圧では43%、LDLコレステロールで54%となった。

 1項目でも基準値以上となる人は、男性の98%、女性でも92%に達する。基準値が医学会の診断基準より低いためとみられる。大櫛教授は「これでは本来は健康的な人まで『異常』と判定され、健康不安を助長する恐れがある。基準値の見直しが必要だ」と指摘する。

 厚労省は「糖尿病、高血圧などを25%減らすことが目標。基準値は学会の意見も参考にしたが、暫定的なものだ」と説明している。

気になるコレステロール値(中)

2006年07月29日 読売新聞 Yomiuri On-Line

金沢社会保険病院 内分泌代謝内科医長 中條 大輔

動脈硬化引き起こす危険

 コレステロール値が高い状態が続くと問題になるのは、動脈硬化を起こしやすくなるという事です。コレステロールには悪玉と善玉があり、前者は動脈硬化を引き起こし、後者は動脈硬化を予防する働きがあります。

 動脈硬化とは血液中の悪玉コレステロールが血管に沈着して、血管の中が狭くなったり、つまったりする病気の事です。心臓の血管がつまってしまうと心筋梗塞を、脳の血管がつまってしまうと脳梗塞を発症します。しかしこれらを発症するまでは、コレステロールが高いからといって特に自覚症状はありません。

 健康診断では血液中の脂質に関して〈1〉コレステロール、〈2〉中性脂肪、〈3〉HDL(善玉)コレステロールの3つを測定しています。

 悪玉コレステロールは直接測定していませんが、参考値を算出することができます。悪玉コレステロールが高く、善玉コレステロールが低いほど動脈硬化性疾患を引き起こしやすくなります。

 また中性脂肪の値が高い場合は、食事からの脂質だけではなく、炭水化物(糖質)の過剰摂取が原因の場合が多いですが、遺伝性で中性脂肪が高いという場合もあります。過剰な中性脂肪はやはり動脈硬化を促進します。

 つまり、中性脂肪が高く、善玉コレステロールが低い方は、動脈硬化の危険性が高くなります。

 また、このような方は、内臓脂肪の蓄積を基盤とし、高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症、高血糖、高血圧のうちいくつかを併せ持つ状態で、動脈硬化が生じる可能性が高まる「メタボリック症候群」に陥っている場合があります。

 次回は、コレステロール値が高い場合の治療法について紹介します。

検査の基準値 男女別・年齢別 登場

2006年06月18日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 垂直跳びや握力など体力測定の基準値は男女別、年齢別になっているのに、コレステロールや血糖値など検査の基準値が一律に決められているのはなぜ? こんな疑問から、男女差や年齢を考慮した新しい検査の基準値が提唱されている。(田中秀一)

 コレステロールなどの基準値は現在、各分野の医学会が定めているが、多くは男女、年齢を問わない一律の数値となっている。

 これに対し、東海大医学部教授の大櫛陽一さん(医学教育情報学)は「検査の適正値は、性別や年齢によって異なる。高齢者に若い人と同じ基準値を適用すると、異常と判定される人が増えるなど問題が大きい」と指摘し、新たな基準値を提唱した。

 全国で健康診断を受けた約70万人から健康な人のデータを抽出、男女別、年齢別に解析し、数値の高い人と低い人を除く約95%の人が収まる範囲を適正な数値とする、国際的な方法で基準値を算出した。

コレステロール

 既存の日本動脈硬化学会の基準では、総コレステロール値220以上で高コレステロール血症とされる。だが、大櫛さんは「高コレステロールは、若い人では心筋梗塞(こうそく)の要因になるが、年齢とともにその傾向は薄れ、70歳以上ではほとんど関係ない」と言う。

 そこで今回の基準では、20歳代前半こそ学会と同様220が正常の上限だが、50歳以上では男性が260、女性280程度とした。

 大櫛さんは、同様の大規模調査を行った三井記念病院(東京)総合健診センター所長の山門実さんらとともに、高コレステロールの薬物療法を行う目安となる数値を公表した。

血糖値

 今回の基準値は、男性は緩やかに、女性は厳しく設定されている。

 日本糖尿病学会の従来の診断基準では、正常な血糖値(空腹時)の上限は110未満とされている。ところが大櫛さんによると、これでは若い女性の糖尿病が見逃されるという。

 20〜39歳の女性160人を調べたところ、空腹時血糖値が100〜109と正常でも、ブドウ糖を摂取して2時間後に血糖値を測る負荷試験では、約6割に異常が見つかったからだ。空腹時血糖100未満では、負荷試験での異常は約2割にとどまった。大櫛さんは「若い女性の上限値は100未満に引き下げる必要がある」と話す。

肥満

 肥満は心筋梗塞や脳卒中の要因とされ、日本肥満学会は体重(キロ・グラム)を身長(メートル)の2乗で割ったBMI(体格指数)で25以上を肥満としている。だが、実際はやせている人ほど死亡率が高く、「中高年は、小太りの人が長生きできる」(大櫛さん)。ただ、若い男性は、BMIが25を超えると糖尿病になりやすい。

 そこで、「上限値」「目標値」の2種類の基準が設定された。上限値を超えた場合は精密検査を行い、目標値を超えたら定期的に経過を見る。中高年男性の上限はBMI28程度、目標値は25程度。

血圧

 高血圧の場合、「上限値」は、それを超えた場合に薬物療法を始める目安で、「目標値」を超えたら、運動や食事の改善を行う。

 今回の基準値については、大櫛さんの著書「検査値と病気 間違いだらけの診断基準」(太田出版)に詳しい。

「コレステロール療法で心臓病予防」

2006年03月19日 読売新聞 Yomiuri On-Line

「治療効率」に課題も 実際に“恩恵”は119人に1人

 コレステロール値を薬で低下させる治療で、心筋梗塞(こうそく)など心臓病を予防する効果があった、との国内の研究がまとまった。ただ、実際に何人の患者に効果が表れるかの「治療効率」は欧米に比べると低いなど、課題も浮かび上がった。(田中秀一)

 臨床試験

 心筋梗塞は、心臓の筋肉に栄養を送る血管が詰まって起き、血管にたまる脂質のコレステロールが一因とされる。欧米ではコレステロール低下療法の効果を示す研究が多数あるが、日本では従来、そうしたデータのないまま薬が多用されてきた。

 今回の研究は、総コレステロール値が220〜270と、高コレステロール血症(診断基準は220以上)の男女約8000人(うち女性68%)を対象とした臨床試験で、「MEGA(メガ)スタディ」と呼ばれる。食事療法だけを行うグループと、食事療法とコレステロール低下剤のプラバスタチンを併用するグループに分けて平均5年以上治療し、心筋梗塞などの発症率を比べた。厚生労働省がスタートさせ、メーカーの出資で続けられた。

 治療の結果、食事療法だけの場合に比べ、薬物療法を併用した場合、心臓病の発症率が33%低かった。

 試験を統括した防衛医大名誉教授の中村治雄さんは「日本でもコレステロールを低下させる治療で心臓病を抑える効果があることが明らかになった。薬でコレステロールを下げると、がんが増えるのではないかとの指摘もあったが、実際にはがんは増えず、安全性も高かった」と評価する。

 患者数では…

 ただ、「発症率が33%低下」というと効果が大きいようでも、実際に薬の恩恵を受ける患者の数で考えると、話は違ってくる。

 試験参加者に、心筋梗塞がどれくらい起きたかをみてみよう。1000人あたりの年間の発症率は、食事療法だけの場合に1・6人だったのに対し、薬物療法併用の場合は0・9人と、1000人につき0・7人少なかった。これは、約1400人が1年間、薬を飲み続けて、ようやく1人の心筋梗塞を予防できることを意味する。

 心筋梗塞に狭心症などを加えた心臓病全体を5年間でみると、119人が5年間、治療を続けると、1人の心臓病を予防できる、との結果だった。薬の評価に詳しい医師、名郷直樹さんは「欧米では40人ほどを治療すれば、心筋梗塞だけでも1人の発症を予防できるとの研究もある。それに比べ、心臓病の少ない日本人では治療効率が低い」と話す。

 男女差

 さらに男女別に分析すると、男性では薬物療法で心臓病が減少することが示されたが、女性では、心臓病が減る傾向はみられたものの統計的に意味のある差ではなかった。女性は男性に比べ心臓病が少なく、治療効果が表れにくいためだ。

 佐賀県・ニコークリニック院長の田中裕幸さん(循環器内科)は「同じコレステロール値でも、女性は男性より心臓病になりにくい。女性では、糖尿病、高血圧、善玉コレステロールのHDLコレステロールが低いなどの場合に治療することが重要」と指摘する。

「薬効の過大評価」指摘も

 今回の試験では方法の問題点も指摘されている。

 欧米の臨床試験では、薬物療法の効果を厳密に調べるため、外形は薬と同じだが薬効のないプラセボ(偽薬)を飲む場合と比較し、参加した患者や医師には、薬かプラセボか分からないようにするのが一般的だ。薬を飲んだことによる心理的効果や、治療に対する医師の先入観などを排除する狙いからだが、今回の試験ではプラセボとの比較は行われなかった。

 さらに試験に参加した医療機関は約1500か所、医師は約3000人と、通常の臨床試験に比べ極めて多かった。

 医薬品・治療研究会代表の医師、別府宏圀(ひろくに)さんは「これでは医師によって食事療法のやり方が不均一になるなど、公正な比較ができない恐れがある。試験の信頼性は低下し、薬の効果を過大評価する結果になりかねない」という。

総コレステロール値が高い

2006年02月28日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 健康診断で総コレステロール値が高めだと指摘されました。HDLコレステロールの値は正常なのですが、総コレステロールの値が高いとよくないのでしょうか。また健康診断結果を見ると、総コレステロール、HDLのほかにも、LDL、中性脂肪などさまざまな数値があります。正常値を超えているとどんな問題があるのでしょうか。検査値についても教えてください。

A 「善」「悪」バランス重要正常値はあくまで目安 (医療法人社団 半田内科医院 院長 小川 純)

 ご質問のあった検査項目は、すべて脂質関連項目です。したがって、正常値よりも高い場合は高脂血症、糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病やネフローゼ症候群、甲状腺機能低下が疑われます。低い場合は肝臓病、甲状腺機能亢進(こうしん)症が疑われます。

 はじめに各検査項目についてご説明しますと、総コレステロールは、血液中の重要な脂肪です。主な働きは、〈1〉細胞膜や血管壁を構成する、〈2〉ホルモンを合成する材料になる、〈3〉食物の消化・吸収を助ける胆汁酸の原料になる、などがあります。よって、多すぎても少なすぎても体内に悪い影響を与えます。

 中性脂肪は、エネルギー源であるブドウ糖が不足した場合、それを補うためのエネルギー源です。体内に取り込んだエネルギーが余ると、皮下脂肪として蓄えられます。人間の体にはなくてはならないものですが、増え過ぎれば脂肪肝や肥満につながります。

 脂質であるコレステロールは血液に溶けないため、特殊な蛋白質が付いた「リポ蛋白」という形で体内を巡っています。リポ蛋白は数種類ありますが、そのうちのHDLは血液中に余分なコレステロールが増えないように肝臓に運ぶ役割をしており、HDLコレステロールは「善玉コレステロール」とよばれています。一方、LDLはコレステロールを肝臓から血液中に運ぶ役割をしており、増え過ぎると血管にコレステロールが付着して、動脈硬化が進行してしまうのでLDLコレステロールは「悪玉コレステロール」と呼ばれています。HDLコレステロールとLDLコレステロールのバランスが重要です。

 総コレステロールが高めでもHDLコレステロールが高く、LDLコレステロールが低い場合なら問題はありません。逆の場合は冠動脈疾患を招く危険性が高いので注意しましょう。

 また、正常値というのは、各検査項目の検査値を判断する「目安」であり、この範囲から外れるとすぐになんらかの疾患があるというわけではありません。検査値についてはご自分で判断せず、かかりつけ医にご相談ください。

コレステロールやや高めが長生き?

2005年02月20日 読売新聞 Yomiuri On-Line

◆脳卒中など少なく低死亡率

 コレステロールが高いと心筋梗塞(こうそく)になりやすいとされ、数値を気にしている人は多い。だが、やや高めの方が脳卒中などが少なく、かえって長生きできることを示すデータも相次いでいる。

 大阪府守口市で、1997年度に健康診断を受けた住民約1万6000人を5年間にわたって調べたところ、男性の場合、コレステロール値の高い人の方が死亡率は低かった(グラフ1)。男女あわせると、糖尿病の患者や喫煙者は、そうでない人に比べ死亡率が高かった一方、高コレステロール血症の人は、かえって死亡の危険が小さかったのだ。

 調査をまとめた守口市民保健センター保健総長で循環器専門医の辻久子さんは「コレステロール値の高い人の場合、守口市では脳卒中が少なかったため、死亡率が低いと考えられる」と説明。「心筋梗塞の予防のためコレステロールを下げる治療は、既に心筋梗塞を起こして再発の恐れがあるなど発症の可能性が高い人に限定して行うべきだ」と指摘する。

 福井市や大阪府八尾市でも、コレステロールの高い人にがんが少なく、死亡率が低いとの調査がある。

心筋梗塞経験者は注意

 現在の基準値は、米国での調査で、コレステロール値220以上の場合に心筋梗塞が多かった、との結果が基になっている。だが、これは3、40歳代の男性のデータで、女性や50歳以上の男性では、心筋梗塞が増えるのは数値が280程度以上の場合だった。

 そこで大櫛さんは、全国の健診受診者約70万人のデータから、健康的な集団の95%の人が収まる範囲の上限値を算出した。これを高コレステロールの基準値とし、「中高年の場合、男性は260台、女性では280台とすることが妥当」だという。現行基準に比べ、かなり高めだ。逆に若い年代では、数値は低めが望ましい(グラフ2)。昨年、日本総合健診医学会で発表した。

 大櫛さんによると、治療が必要なのは▽遺伝的な要因でコレステロール値が高い家族性高コレステロール血症の患者▽心筋梗塞や脳梗塞の病歴がある人▽新たに算出した基準値に近い状態が数年続き、高血圧や糖尿病、喫煙などの要因を持つ人――だという。

総合判断伴う治療が大切

 日本動脈硬化学会は診療指針の改訂を進めている。改訂委員長の帝京大内科教授、寺本民生さんに聞いた。

 ――改訂のポイントは?

 現在の指針は英語に訳す時に日本語特有のあいまいさがあり、これをなくすことが目的。基準値の変更はしないと思う。

 ――日本より心筋梗塞の多い米国で、高コレステロールの基準値は240と高く設定されています。

 米国は国民の平均コレステロール値の低下によって心筋梗塞が減っている。日本は逆に数値が上昇傾向にあり、基準値を同一にする必要はない。

 ――中高年女性の半数以上が高コレステロールとされる点はどうですか。

 そこは問題で、基準値を男女で分けるべきだという議論もある。しかし、根拠となるデータが少ない。

 ――単にコレステロール値が高いからと薬を処方する医師もいます。

 残念ながら一部にそういう場合もあるようだ。高コレステロールに特に注意が必要なのは3、40歳代の男性で、心筋梗塞の要因とされる中性脂肪が高い人や、善玉コレステロールとも呼ばれるHDLコレステロールが低い人が多い。糖尿病、高血圧など様々な要素を総合判断して治療してほしい。

◇メモ◇コレステロールと健康についての最新データは「コレステロール常識 ウソ・ホント」(田中秀一著、講談社ブルーバックス)に詳しい。

コレステロール

 脂質の一種で、細胞膜やホルモンの材料として人体に欠かせない。多すぎると血管の壁にたまり、血管がもろくなったり詰まったりする動脈硬化を起こし心筋梗塞につながるとされてきた。逆に少ないと、がんや脳出血になりやすいと言われる。

高コレステロールの薬物療法 女性への効果に「?」

2004年06月20日 読売新聞 Yomiuri On-Line

◆心筋梗塞の予防 男女差の考慮を

 心筋梗塞(こうそく)の引き金になるとされる高コレステロール。薬で数値を低下させる治療が広く行われている。だが最近、女性の場合、心筋梗塞などの病歴がある人を除くと、薬物療法を行っても効果は乏しい、との報告がまとまった。高コレステロールをどう考えるべきだろうか。(田中 秀一)

 海外では、コレステロール低下療法の効果を調べる様々な臨床試験が行われ、男性では有効性が明らかになっている。だが、女性に関するデータは多くない。そこで、米国カリフォルニア大のグループが、過去の臨床試験の結果を総合し、女性での効果を解析した。

 心筋梗塞など冠動脈疾患の病歴のない女性が参加した試験は6件あり、計約1万1000人が対象だった。その結果、薬を飲んだ場合、冠動脈疾患の発症の危険度は、薬を使わない場合に比べ0・87倍、冠動脈疾患による死亡は1・07倍だった。また、がんなどすべての死因を含めた「総死亡」は0・95倍だった。いずれも統計的に意味のある差ではなく、薬物療法は有効とは言えなかった。

 一方、既に冠動脈疾患を起こしたことがある女性計約8000人のデータでは、薬物療法により、冠動脈疾患の再発や死亡の危険度は、それぞれ0・80倍、0・74倍と減少、「有効」と判定された。ただ、総死亡は減らなかった。

 研究グループは「心筋梗塞の病歴のない人では、死亡を減少させる効果がなかった。心筋梗塞の発症を減らす可能性はあるが、証明は不十分」としている。

 日本では、2000万人以上が高コレステロール(基準値は血液1デシ・リットル中220ミリ・グラム以上)とされ、約3000億円の薬が使われている。その3分の2程度が女性に使われているとみられる。

 今回の報告について、千葉大教授(内科)の斎藤康さんは「女性への治療効果を否定したわけではない。女性でも高コレステロールは心筋梗塞の要因で、治療の必要はある」と話す。

 一方、「もともと女性は心筋梗塞が少ない。単にコレステロールが高いという理由で女性に薬物療法を行う根拠は乏しいことが示された」(天野恵子・千葉県衛生研究所長)とみる専門家も少なくない。

 心筋梗塞による死亡率は、75歳までは女性は男性の半分に満たない。女性ホルモンのエストロゲンには、コレステロールの上昇を抑える、血管を拡張させる、といった作用があるためだ。

 ただ、天野さんによると、糖尿病や喫煙などがあると、女性ホルモンが動脈硬化を抑える作用は相殺され、心筋梗塞の恐れが高まる。「そうした危険の高い人への治療は必要」という。

 天野さんは「従来、男性のデータを基に女性の治療がされてきたが、見直す必要がある」と指摘する。

 海外では、男女差を考慮した治療指針が使われているが、日本の指針にはそうした視点が不足している。画一的な指針の問題点が浮き彫りになった形だ。

 コレステロールが高い女性に一律に治療を行うのではなく、心筋梗塞などの恐れが高い人を選んで治療することが大切だ。

◆喫煙、糖尿…高い発症リスク

 心筋梗塞になりやすいかどうかを判定する方法はあるだろうか。

 米国では、総コレステロール値のほか性別や年齢、「善玉コレステロール」と呼ばれるHDLコレステロール値、血圧、喫煙の有無を総合して心筋梗塞の発症率を予測するチャート(別表)がある。例えば60歳の女性で、総コレステロール値は280と高いが、血圧が正常、たばこを吸わず、HDLコレステロールが60なら、10年間の発症率は2%で、「低リスク」と判定され、強い治療は勧めない。これは心筋梗塞の多い米国人女性の発症率で、日本人女性はその数分の一と考えられる。

 北海道大循環器内科講師の佐久間一郎さんが、約700人の心筋梗塞患者のデータを基に、どのような場合に発症の危険が高いかを調べた結果、女性の場合、血圧が高いと、発症の恐れが5・8倍高まることがわかった。低HDLコレステロールでは3・4倍、糖尿病で2・4倍だった。「これらの危険因子を併せ持った女性の場合、治療の必要性が高い」としている。

  冠動脈疾患

 心臓の筋肉に栄養を送る血管である冠動脈が、詰まったり狭くなったりする病気。血管が詰まって心筋の一部が死ぬ場合が心筋梗塞、血管が狭まり血流が悪くなるのが狭心症。急性心筋梗塞による死亡率(年齢調整死亡率)は、2002年に男性で人口10万あたり27・9、女性12・8だった。

高コレステロール低年齢化 小5女児、8年で倍増

2004/06/09 Asahi.com

 小学5年でコレステロール値が高い女子が8年の間に倍増しているという調査結果を、関西医科大と浜松医科大が共同でまとめた。男女計約9000人を調べた結果で、大規模な調査は国内で珍しいという。男子でも増えていて、専門家は将来、心筋梗塞(こうそく)などの増加につながると予想している。今月出る日本疫学会の学会誌に発表する。

 甲田勝康・関西医科大講師(衛生学)らは静岡県内のある市で小学5年生男女の身長、体重、総コレステロール値(血清1デシリットル中ミリグラム)を調べた。93年から01年まで毎年1000人前後のデータを分析した。

 総コレステロール値が200以上の子どもの割合は、女子で93年に9%だったのが01年に19%と2倍以上に増えていた。男子でも同時期、11%から16%に増えた。値の平均も女子が166から175に、男子が168から174に増えた。米国で小児用に設けられた基準では200以上が「高い」とされている。

 肥満は体重(キロ)を身長(メートル)で2回割ったBMIという指標で比較した。女子で肥満(BMI20.3以上)は93年に10%だったのが01年に12%に、男子で肥満(同20.2以上)は13%から15%に増えた。成人ではBMI25以上が肥満とされるが、25に相当する小児の値として国際的に標準的な値を使った。

 研究チームは増加の理由について食生活の変化と運動不足によるとみている。甲田さんは「欧米並みの数字だ。日本の心筋梗塞などによる死亡率は米国の3分の1以下にとどまっているが、将来は増えると予測できる。子どもの食事や運動の指導など欧米のような対策が必要」と話している。

コレステロールは180―240が適正 臨床試験で判明

2000.12.27 asahi.com

 動脈硬化の原因となる総コレステロールの値は、血液100ミリリットルあたり180―240ミリグラムが適正で、それより高くても低くても死亡の危険性が高まる――。こんな結果が、総コレステロール値を下げる薬の大規模な臨床試験でわかったと27日、万有製薬が発表した。日本動脈硬化学会は高コレステロール血症の診断や治療のガイドラインを見直し中で、その有力データになりそうだ。

 対象は、高コレステロール血症と診断された35―70歳の約5万人。1992―99年の間に、シンバスタチンという治療薬を6年続けて飲んでもらい、心筋こうそくなどの発生率や死亡率を分析した。

 全体の死亡率は、180―280ミリグラムの間ではほとんど変わらなかった。しかし、180ミリグラム未満と280ミリグラム以上では、その間の2倍以上になっていた。また、心筋こうそくなどの危険は240ミリグラム以上で高かった。

 コレステロールを血管の壁に運んで動脈硬化を起こすLDL(悪玉)値は、80―160ミリグラムで死亡率が低く、値がそれ以上でも以下でも高まった。

 動脈硬化学会のいまのガイドラインによると、高コレステロール血症と診断されるのは、総コレステロール値でみた場合に220ミリグラム以上、LDL値では140ミリグラム以上などとされている。肥満などの危険因子がある場合の治療目標は、それらよりさらに低く設定されている。

「カベルネ・ソービニョン」の赤ワイン、健康な心臓の維持に効果

1999年04月27日 ロイター

  [ロンドン 27日 ロイター] ワイン愛好家の間で人気の仏ボルドー地方産の赤ワインの材料であるブドウの品種「カベルネ・ソービニョン」が、健康な心臓を維持するのに効果があることが分かった。仏南部ぺサックの病院の医師ジャンポール・ブルースト氏が英医療・健康誌「ハート」で発表した。 同医師によると、「カベルネ・ソービニョン」は、体内の善玉コレステロールを増やすとともに、動脈硬化を起こす悪玉コレステロールを抑制する効能がある。 過去にも英グラスゴー大学の研究グループが、「カベルネ・ソービニョン」で作ったチリ産の赤ワインが、健康促進の効用があるという研究結果を発表した例がある。

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