TOPIC No.5-52 スギヒラタケと急性脳症


01. 「スギヒラタケ」の食後に急性脳症続出
02. スギヒラタケと急性脳症について 岡崎市保健所
03. スギヒラタケ問題 YAHOO!News
04. スギヒラタケの摂取は、控えてください。

スギヒラタケに毒性 静岡大教授らマウスで確認

2005/11/29 asahi.com

 急性脳症を引き起こす可能性が問題になっている野生のキノコ「スギヒラタケ」について、静岡大の河岸洋和教授(天然物化学)らのグループが、マウスに対して致死性の毒性があることを確認した。物質は特定できていないが、「水に溶け、熱に強い高分子成分」というところまで突き止めた。29日に開かれる厚生労働省の「急性脳症の多発事例研究班」で報告する。

 実験は、いずれも通常摂取量の10倍以上を与えており、人間の脳症について明確な因果関係を突き止めたわけではない。しかし、脳症の原因を細菌やウイルスなどによる感染症とする可能性は低くなったといえる。

 河岸教授らは、甲信越地方の山間部で採取したスギヒラタケを使い、同大の森田達也助教授(食品栄養化学)の協力で、(1)すりつぶして水に溶かす(2)続いて100度で30分間煮沸する(3)さらに濾過(ろか)して高分子と低分子に分ける、という方法で得た成分を、それぞれマウスに与えた。

 (1)で6匹中5匹、(2)で3匹全部が死ぬことを確認。(3)では、高分子成分を与えると3匹全部死んだのに対し、低分子成分は3匹全部生き続けた。

 スギヒラタケは、主に東北、信越地方でみそ汁や天ぷら、いため物などにして食べられている。水に溶け、熱に強い成分が原因となると、煮たり、いためたりしても、毒性が失われないことになる。

 地元のキノコ採取家によると、今年のスギヒラタケの発生は、例年より数週間程度早かったという。環境の変化でキノコの微量成分が突然増える可能性は、専門家の中でも指摘されていた。過去にも単発例だが、急性脳症の発症例が確認されている。

 「気温の上昇といった外部ストレスなどで、スギヒラタケの毒性物質の量が、今年、急に増えた可能性がある」と河岸教授。物質の特定はかなり難しいが、「来シーズンまでに何とか突き止めたい」としている。

 研究班の一人で、脳症とスギヒラタケの関連を指摘してきた新潟大の下条文武教授は「患者の追跡調査で、みそ汁の具にしたり、いためたりして食べた人が多く発症していた。水に溶け、加熱処理に強い物質が原因だろうと疑っていただけにあり得る話だ。実験データを詳しく分析したい」と話している。

なぜ突然に毒性が?スギヒラタケ脳症の犯人は分子量3000から6000のたんぱく質?

2005-11-16 Biotechnology Japan

 2004年10月以降、摂食して急性脳症を引き起こす例が日本各地で相次ぎ、厚生労働省や自治体が摂食の自粛を呼びかけているスギヒラタケについて、原因を究明する研究の現状を紹介する公開シンポジウムが05年11月12日に高崎で開かれた。「毒性があるスギヒラタケにはヒメカバイロタケモドキが共生」「毒性物質は分子量3000から6000のたんぱく質とみられる」といった高崎健康福祉大学健康栄養学科の江口文陽教授の成果などが示された。

なぜ突然に毒性が、スギヒラタケ脳症の犯人はたんぱく質?

2005年11月16日 nikkeibp.jp

 2004年10月以降、摂食して急性脳症を引き起こす例が広い範囲で相次ぎ、厚生労働省や自治体が摂食の自粛を呼びかけているスギヒラタケについて、原因を究明する研究の現状を紹介する公開シンポジウムが05年11月12日に高崎で開かれた。

 「毒性があるスギヒラタケにはヒメカバイロタケモドキが共生」「毒性物質は分子量3000から6000のたんぱく質とみられる」といった高崎健康福祉大学健康栄養学科の江口文陽教授の成果などが示された。

スギヒラタケ:今年産も一部に毒性

2005/11/08 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 食用キノコのスギヒラタケを食べた腎不全の患者に昨秋、急性脳症が多発した問題で、高崎健康福祉大の江口文陽教授(栄養学)の研究グループは7日、今年のスギヒラタケの一部にも毒性があることを確認した。毒性の有無と、地域や採取時期、キノコの大きさなどに明確な関連はみられなかった。

 この結果は12日に同大と日本菌学会が共同で開催する講演会で公表する。

 江口教授は、東北−九州地方の25都府県で今年8〜11月上旬にスギヒラタケ71検体を採取。このうち、これまでに約40検体をマウスに投与したところ、約半数の検体でマウスが死に、毒性を確認した。

 さらに毒性のあるスギヒラタケについて、通常食べる量の約10倍を濃縮してラットに経口投与した結果、健康なラットは5匹中一匹も死ななかったが、腎機能を人工的に失わせたラットは5匹のうち4匹が死んだ。

 毒性物質が具体的に何かは特定できていない。

 スギヒラタケをめぐっては昨秋、新潟や山形、秋田各県など日本海側を中心に被害が続出。厚生労働省によると、このキノコを食べた腎障害の患者など計59人が急性脳症を発症し、19人が死亡した。今年は被害の報告はないが、同省は腎不全の患者以外もすべての人に食用を控えるよう呼び掛けている。江口教授によると、名前が似ているヒラタケは問題ない。

 江口教授によると、ほかのキノコと同じ場所で同時に生えた場合に毒性のある傾向があり、「解明の糸口になるかもしれない」と話している。【江口一】

別のキノコと「共生」で毒 死者相次いだスギヒラタケ

2005年11月07日 Gooニュース(KYODO NEWS)

 腎機能に障害のある人が食べて死亡するケースが相次いだスギヒラタケは、別の種類のキノコと共生している場合に毒性が出る割合が高いことが7日、高崎健康福祉大の江口文陽教授(キノコ学)の研究で分かった。12日に同大で開かれる講演会で発表する。

 江口教授は「ほかのキノコとの複合的な要因で毒性が生まれたのではないか。毒の有無は地域差というより、生え方が原因の可能性がある」と指摘している。

 研究では、8−11月にスギヒラタケを秋田、宮城、山形、富山、京都、和歌山、広島などで採取。31個のうち18個で毒性を確認した。毒のあったスギヒラタケの多くは、ほかのキノコと同じ木に共生しているか、以前に別のキノコが生えた跡があった。一方、研究室で純粋培養したものには毒性がなかった。

スギヒラタケから青酸検出 量は不明、浜松医大など

2005年08月27日(共同通信)楽天広場

 腎機能障害のある人が食べて急性脳症になり死者も出たスギヒラタケから、シアン化水素(青酸)を検出したとする研究結果を、浜松医大法医学教室(鈴木修教授)や滋賀大などのグループがまとめた。福岡市で27日から開催の日本法中毒学会で発表した。

 青酸をごく微量含むキノコとしてはエリンギやマイタケなどが知られている。実験グループの権守邦夫浜松医大助手は「スギヒラタケから青酸が検出されたのは初めてだが、含有量や急性脳症との因果関係は、まだ分からない」としている。

 グループは、スギヒラタケを加熱して気化させ質量分析計で調べたところ、青酸の存在を示すデータが表示された。実験に使った試料は採取から時間がたっていたため青酸の量は測っておらず、今秋に新しい試料で詳しく測定する予定。  マイタケに含まれる青酸は致死量の1000分の1以下で、食用として問題はないという。

 厚生労働省の集計によると、昨年、秋田や山形、新潟など9県でスギヒラタケを食べた59人が急性脳症を発症し、うち19人が死亡した。


食品の安全性 どう確保

2004/12/08 東奥日報

 大丈夫だと思って食べたキノコや、焼き肉などで重篤な病気になり死亡する人が増えている。日本の食品の安全性は大丈夫なのか。

 スギヒラタケ。本県など東北地方や北陸、中部地方で目にするキシメジ科のキノコで、スギなどの切り株や倒木に夏から秋にかけて自生するものを採取、食用としている。

 ところが、スギヒラタケを食べた後、原因不明の急性脳症で死亡するケースが相次いでいる。

 厚生労働省のまとめによると、このキノコとの関連が疑われる急性脳症の発症者は秋田、新潟など九県五十九人。このうち、十七人が死亡した。

 これまで腎機能が低下している人が同症になるケースが多かったが、十月、新潟県で亡くなった二十代の男性の場合、腎臓病の病歴を確認できなかった。

 これを重くみた厚労省は先月十九日、腎臓の病気の人はもちろん、健康な一般の人にもスギヒラタケを食べないよう各都道府県に通知した。

 患者はスギヒラタケを生で食べていたのではない。みそ汁の具にしたり、てんぷらやいためて食べていた。

 河岸洋和・静岡大教授らのグループが、マウスを使い実験したところ、物質の特定はできていないが、スギヒラタケに致死性の毒性があることを確認した。

 毒性のもとは「水に溶け熱に強い高分子」で、脳症の原因が細菌やウイルスによる感染症ではないことは確かなようだ。

 今年のスギヒラタケの発生は、例年より数週間早かったという。気温の上昇など環境の変化で、毒性物質の量が急に増えた可能性を指摘する専門家もいる。

 一方、今年八月、北海道北見市の焼き肉店で食事した客六人が、E型肝炎ウイルス(HEV)に集団感染し、このうち一人が劇症肝炎で死亡した。また、別の一人は感染を知らずに献血し、輸血感染も起きていた。

 北海道庁などは、豚のレバーなど生焼けの内臓肉が原因ではないかとみている。一般に流通する食品でHEVに集団感染したのは初めて。

 長崎県では昨年三月、野生のイノシシの肉をバーベキューで焼いて食べた十一人がE型肝炎に集団感染した。

 また、鳥取県でイノシシの生レバーを食べたハンター二人がE型肝炎に感染、今年四月に一人が死亡した。兵庫県でも昨年二月、シカの肉を生で食べた四人が感染している。

 研究者が北海道内の市販豚レバーを調べたところ、1.9%からHEVが検出された。

 E型肝炎は発症まで平均六週間かかる。病気になった時、その食品は既にない。感染者の記憶もあやふやで、原因の特定は困難だ。北見市の例のように、原因をほぼ特定できたのは珍しい。

 HEVは熱に弱いため十分加熱すれば、感染は防げる。動物の肉の生食は十分に注意すべきである。生食が触れたまな板、はしの取り扱いにも注意した方がよい。

 地球環境の悪化に伴うものか近年、食品の安全を脅かす要因が増えている。

 一九九六年、大規模食中毒を起こした腸管出血性大腸菌O157がある。毎年食中毒は起きているが二〇〇三年、日本の食中毒患者は二万九千三百四十一人に上り、死者が六人出た。

 また、牛海綿状脳症(BSE)や鳥インフルエンザなど新しい病気も出現している。

 個人が日ごろ食べる食品の安全に気を付けることはもちろんだが、国や関係機関も毒素、ウイルスや細菌など病原菌の情報を速やかに公開し、国民の健康と食品の安全性確立に努力してほしい。

急性脳症の原因を議論 スギヒラタケの研究班

2004/11/29 The Sankei Shimbun
 腎障害のある人がスギヒラタケを食べた後に急性脳炎・脳症になる事例が相次いだ問題で、関連分野の専門家が原因究明を進める厚生労働省研究班(主任・柳川洋埼玉県立大学長)の初会合が29日、東京・霞が関の同省で開かれた。

 研究班は感染症や中毒、腎臓病、神経内科、救急医学の専門家ら18人で構成。スギヒラタケの成分分析や、患者の持病と脳炎との関連などを調べ、本年度末に報告書をまとめる。

 成分分析は国立医薬品食品衛生研究所が担当。この秋各地で採取したスギヒラタケや患者の食べ残しに有害物質が含まれていないかを調べる。並行して、国立感染症研究所が患者の生活習慣や持病、服用薬などの疫学調査を進める。

 研究班メンバーの河岸洋和・静岡大農学部教授らが、マウスを使った実験でスギヒラタケ成分の毒性を確認したとの報告もあり、会合で議論。この実験で人体への影響や毒性物質が特定されたわけではないが、「水に溶け、熱に強い高分子」の成分が、マウスに対し致死性の強い毒性を持つとされた。

 厚労省の集計では、29日までの発症者は東北、北陸、中国地方など9県の計59人。うち死者は17人。(共同)

「スギヒラタケ」腎機能正常な人もご注意…厚労省通知

2004/11/19 読売新聞 Yomiuri On-Line
 腎機能に障害のある人が食べると急性脳症を起こす危険が疑われているスギヒラタケの問題で、新潟県内で新たに報告された死亡例では、腎機能の低下を確認できていないことが19日分かった。

 厚生労働省は同日、腎機能が正常な人でも、原因が明らかになるまではスギヒラタケを食べないよう呼びかける文書を各自治体に通知した。

 厚労省は今月末、専門家による研究班会議を開き、究明に向けた方策を検討する。厚労省によると、新たな死亡報告例は20歳代の男性で、先月下旬、スギヒラタケを食べた3日後に急性脳症で死亡。新潟県で通院歴などを追跡調査したが、腎機能障害の有無は不明だった。

 スギヒラタケが採れるのは9月から10月にかけてで、シーズンは過ぎているが、地域によっては塩蔵品などの加工品も販売されている。

スギヒラタケで急性脳症か 鳥取で死亡の70代男性

2004/11/11 The Sankei Shimbun
 鳥取県は11日、鳥取市内の病院に入院し死亡した兵庫県北部在住の70代の男性が、スギヒラタケを食べていたことから、急性脳症の疑いがあると発表した。

 県東部福祉保健局によると、男性は8月から下痢や腹痛の症状を訴え、9月28日に内臓疾患の疑いで入院したが、意識障害などが出て10月7日に死亡した。

 男性は入院の約1週間前、兵庫県北部の山でスギヒラタケを採取し、家族と一緒に食べた。家族に症状は出ていない。

 主治医は臨床症状などから、スギヒラタケによる急性脳症である可能性は低く、脳静脈血栓症が死因とみているという。男性は腎機能に異常はなかった。

 秋田、新潟、山形、福井各県など全国で急性脳症が原因とみられる死者が相次いでいるが、鳥取県が疑い例を発表したのは初めて。

新潟で5人に急性脳症の疑い スギヒラタケ食べる

2004/11/10 The Sankei Shimbun
 新潟県や秋田県で急性脳症の患者が相次いでいる問題で、新潟県は10日、新たに5人に急性脳症の疑いがあると発表した。

 県によると、患者は50代から80代フ男性3人と女性2人。手足の震えを訴えて入院したが、既に3人は退院した。いずれもスギヒラタケを食べており、4人に腎機能の低下が見られたという。

 同県では、同様の症状で4人が死亡している。

秋田県、急性脳症で究明チーム発足へ

2004/11/09 The Sankei Shimbun
 秋田県は9日、秋田、新潟両県などで発症者が相次いでいる急性脳症の原因を究明するためのプロジェクトチームを11月中旬に発足することを決めた。

 国立感染症研究所などと連携しながら、神経内科の専門家など10数人で構成、来年3月までに原因を解明したいとしている。

 プロジェクトチームは、治療に当たった医療機関と秋田大医学部などの専門家による症例検討会を開き、神経内科、泌尿器科、中毒学の専門家による検討を実施。スギヒラタケをどこで採り、いつ、どのようにして食べたかなどを、保健所職員が患者や死亡した患者の家族から詳細に聞き取り調査する。

 また、国立感染症研究所や県衛生科学研究所が患者の血清や髄液をウイルス、細菌検査するほか、国立医薬品食品衛生研究所ではスギヒラタケの成分や農薬などについても検査する。

 同チームは、新潟、山形両県など急性脳症患者が発生した他県とも情報交換を進める方針。

謎の急性脳症、昨年以前も2件

2004/11/05 The Sankei Shimbun
 腎機能障害のある人がスギヒラタケを食べ、原因不明の急性脳症になったケースが昨年以前にも2件あり、そのうち1人は死亡していたことが5日、日本腎臓学会の調査で分かった。

 スギヒラタケを食べた脳症例が会員から学会に計52例報告されており、そのうち死亡した人は15人。致死率は29%と高く、調査した新潟大医学部第2内科の下条文武教授は「発症原因は分からないが、腎機能障害のある人は摂取を避けるべきだ」とした。

 東京都内で同日開いた学術集会で発表された中間報告によると、昨年以前の発症者2人はいずれも、東北・北陸地方に住む60代の女性で、腎機能障害があった。

 1人は昨年9月、スギヒラタケを食べた数日後にふらつきなどの症状が出たが、数日後に回復。今年も9月に食べ、全身けいれんなど昨年より重い症状がみられた。

 もう1人は1997年10月にスギヒラタケを食べ、意識障害が悪化して死亡した。家族の詳細な日記があり、今年多発している急性脳症の経過とほぼ同じだった。

 症例報告は山形、秋田、新潟各県などから計57件寄せられ、下条教授らはそのうち52件がスギヒラタケ関連の脳症と結論付けた。発症者の平均年齢は68.5歳で、摂取して平均8日後に発症していた。

 一方、新潟県などの透析施設で計622人の患者にアンケートした結果、今年スギヒラタケを食べた人は290人おり、そのうち発症者は12人(4%)だった。

 下条教授は「食べた量と発症率はあまり関係ない。今年はスギヒラタケが豊作で採取時期が早かったが、なぜ今年多発したのかなどの研究はこれからだ」と話した。

秋田で新たに1人急性脳症 スギヒラタケ食べる

2004/11/05 The Sankei Shimbun
 秋田県に5日入った連絡によると、県内で新たに80代の女性1人が9月中旬、急性脳症を発症していたことが分かった。女性は腎機能の低下はなかったが、スギヒラタケを食べていた。

 同県健康対策課によると、女性はふらつきなどの症状を訴えて同県本荘市内の病院に入院したが、現在は回復しているという。県内の発症者は計23人となり、うち6人が死亡している。

 また県は同日、急性脳症の疫学調査のため、国立感染症研究所の専門家4人と県内の保健所職員ら約20人の会合を今月9日に秋田市内で開くことを決めた。2週間かけて発症状況やスギヒラタケを採った場所などを調べる予定。

スギヒラタケで死亡、「謎」解明に国が緊急研究班

2004/11/05 読売新聞 Yomiuri On-Line
 新潟、秋田県など8県で、スギヒラタケを食べた人を中心に原因不明の急性脳症が起き、死者が出ている問題で、厚生労働省は4日、スギヒラタケの成分分析と脳症の関連性を調べるために、緊急の研究班を設置することを決めた。

 同省では、感染症の可能性もあるとして、各県とともに患者や死者の血液、脳髄液を調べているが、これまでに、細菌やウイルスの存在を示す検査結果は出ていないという。このため同省は、スギヒラタケの成分に、急性脳症を起こす原因物質があるとの見方を強めている。

 研究班は近く、国立医薬品食品衛生研究所の米谷民雄食品部長をトップに、自然毒や中毒などの専門家を中心に結成される見通し。

 急性脳症は先月21日、新潟県に住む50―80歳代の男女11人の発症が報告された。その後、秋田県や山形県などの東北地方で相次ぎ確認され、今月2日現在で8県で46人、うち14人の死亡が確認されている。46人のうち43人が、食用キノコのスギヒラタケを食べ、腎機能に障害を持っていることが判明している。

スギヒラタケと急性脳症、謎の因果関係 「大半が腎臓病患者」「なぜ今年だけ」

2004/11/02(産経新聞朝刊)Sankei Econet

猛暑、長雨で成分変化?/毒素排出できず?

 キノコのスギヒラタケを食べ、急性脳症から意識障害や痙攣(けいれん)を起こすケースが相次いでいる。三十一日までに八県で四十八人(うち十三人が死亡)が発症。四十八人中四十五人が、透析治療などを受けている腎臓病患者だった。秋になると、毎年、食べているのに、どうして今年だけなのか。「スギヒラタケ・急性脳症・腎臓病」の謎の因果関係を追った。(将口泰浩)

 「秋田の人はみんな大好き。今年ももらって何度か食べたけど、もう怖くて食べられないね」

 人工透析を受け始めて三十一年がたつ秋田市の川尻真輝さん(55)は、みそ汁に入れて、毎年のように食べていたが、これまで異常があったことはない。

 調査に当たっている国立感染症研究所(東京)の谷口清州・感染症対策計画室長は「現在のところ、よくある感染症とは違う」と話す。別の専門家も「キノコ中毒とも異なる」と指摘する。キノコ中毒の多くは下痢や嘔吐(おうと)の症状を示すが、急性脳症は細菌やウイルスで脳がむくんで、意識障害を起こすからだ。

 発症した人のほとんどは腎臓に障害を持っている。腎臓の機能が低下すると、老廃物や毒素を体外に排出できず、死に至る。たとえば、健康な人では問題がないスギヒラタケの毒素が排出できず、脳に障害が出た可能性もある。

 福井大医学部の松木孝澄教授(法医学専攻)によると、スギヒラタケは血液を凝固させるタンパク質やレシチンが際立って多い。試験管内でキノコ抽出液が血液凝固検査に有効かという実験をしたところ、キノコ八百種類の中でもスギヒラタケは最高レベルだった。

 松木教授は「血液を凝固するレシチンなどが体外に排出されず、脳の血液が凝固し、障害が出たとも考えられる。今後、人体で同じことが起きるかどうかを調べてみる必要がある」と話す。

 しかし、もうひとつの疑問が残る。なぜ今年だけなのか。

 菌蕈(きんじん)研究所(鳥取市)の長沢栄史上席主任研究員は「キノコは育つ木の養分や気候条件によって毎年、成分が変わる。猛暑や長雨で何らかの変化があったかもしれない」と説明する。実際、今年は夏が猛暑で秋口から雨が多く、キノコの生育には最高の年で収穫も多い。

 長沢研究員は「キノコの成分だけ調べても分からない。動物実験をして、どの成分にどう反応するか調べないと最終的に判断できない」とも語る。

 感染研と並行して、国立医薬品食品衛生研究所(東京)でも今後、患者が食べ残したスギヒラタケとほかの場所で採取したものとの比較を通して、成分の違いを調査する。

 現在、透析を受けている患者は全国で約二十四万人。日本透析医学会では「原因が判明するまで、スギヒラタケを食べないで」と呼びかけている。

≪スギヒラタケ≫  真っ白で似たキノコがないため、見分けが付きやすく、東北や日本海側ではポピュラーなキノコ。クセがなく味もいい。みそ汁の具やいため物にして食べる。

≪急性脳症≫

 さまざまな原因で起きる脳障害の総称。突然、意識障害や痙攣、発熱を起こす。痙攣や精神運動障害などの後遺症が出ることも多い。

秋田でまた2人死亡 急性脳症死者12人に

2004/10/27 The Sankei Shimbun
 秋田県は27日、県内で女性2人が急性脳症の症状を訴え、死亡していたと発表した。2人ともスギヒラタケを食べており、腎臓を患っていた。これで県内の死者は計6人となり、山形、新潟での死亡者を合わせると計12人となった。

 県健康対策課によると、死亡したのは本荘市の病院で診察を受けた80代の腎不全患者と、能代市で診察を受けた60代の人工透析患者。2人とも9月下旬に意識障害などを起こした。

 また、新潟県も同日、新たに県内に住む50代の女性と70代の男性の2人が急性脳症の疑いで入院していると発表。県によると、2人はいずれも腎臓の疾患で治療を受けており、発症前にスギヒラタケを食べていた。

 秋田県で急性脳症を発症した人は計13人となり、うち4人が既に死亡している。

スギヒラタケ、国が分析へ 相次ぐ急性脳症で

2004/10/27 The Sankei Shimbun
 新潟、岐阜各県などで腎機能の低下した人がスギヒラタケを食べ、急性脳症を発症する事例が相次いでいるのを受け、厚生労働省は27日、患者が食べ残したスギヒラタケなどを集め、国立医薬品食品衛生研究所(東京)で成分分析に乗り出すことを決めた。

 同日、検体を集めて送付するよう全国の都道府県などに通知。林野庁を通じて、患者の発生した県を含む7県程度から野生のスギヒラタケを集め、成分や患者宅の検体との違いを調べる。

 一部の県では既に成分分析を実施しているが、原因不明のまま被害報告が増え続けており、厚労省はより専門的な立場で微量の化学物質などを調べる必要があると判断した。

石川県でも急性脳症 80歳代の女性

2004/10/26 The Sankei Shimbun
 石川県に26日までに入った連絡によると、同県内の80歳代の女性が急性脳症と診断された。女性は入院中で、発症前は毎日、スギヒラタケを食べていたという。

福島でもスギヒラタケで急性脳症 腎機能障害の女性

2004/10/25 Asahi.com
 福島県は25日、会津地方の70歳代の女性がスギヒラタケを食べた後、急性脳症と診断されたと発表した。現在は快方に向かっているという。女性は腎機能障害で治療中だった。

 県によると、女性は9月14日にスギヒラタケを食べた。同月27日から手の震えやけいれん、意識障害の症状が出たため、30日に医療機関を受診したところ、急性脳症と診断された。女性の家族も一緒にスギヒラタケを食べたが、症状は出ていないという。

急性脳症で新たに2人死亡 男女10人が発症 秋田

2004/10/25 The Sankei Shimbun
 秋田県は25日、県内で新たに男女10人が急性脳症の症状を訴え、うち2人が死亡していたと発表した。死亡した2人は人工透析を受け、スギヒラタケを食べていた。10人のうち8人がスギヒラタケを食べ、9人は以前から腎機能低下で人工透析を受けていた。

 秋田県での死者は4人、山形、新潟各県と合わせて急性脳症の死者は10人となった。福島県でも70代の女性が発症していたことが同日、分かった。

 県健康対策課によると、死亡したのは秋田市の病院で診察を受けた70代の女性と、本荘市の病院で診察を受けた60代の男性。2人とも9月下旬にけいれんなどの症状を訴えた。

 残る8人は秋田、能代、大曲の各市で診察を受けた50−90代の男女。9月下旬から10月中旬にかけて意識障害などを起こした。

 8人中6人は発症前の1、2週間のうちにスギヒラタケを食べていた。スギヒラタケを食べていない2人のうち1人に腎疾患はなかった。8人のうち退院したのは1人だけで、残り7人は現在も入院中。

 同課によると、これまで県内で発症した患者計16人から、急性脳症を引き起こすウイルスは検出されていない。県は厚生労働省を通じ、国立感染症研究所に専門家の派遣を要請するなどして原因を調べている。

急性脳症の死者8人に 新潟県で女性1人死亡

2004/10/24 The Sankei Shimbun
 新潟県は24日、急性脳症の疑いで県内の病院に入院していた70代の女性が同日死亡した、と発表した。同県の死者は4人となり、秋田、山形両県で死亡した4人と合わせ、急性脳症の死者は計8人となった。

 新潟県によると、女性は今月上旬に入院。スギヒラタケを食べていたという。新潟県では11人が急性脳症の症状を示し、うち4人が死亡。1人が症状が回復して転院したほかはいずれも入院中。

 新潟県には、これらの11人のほかに、県内の病院などから21日夜以降、腎臓に病気を持つ患者で手足のしびれなどの症状を訴えるなどの情報が計5件寄せられており、県は急性脳症かどうかを調べている。

スギヒラタケ摂取控えて 厚労省が全国に注意喚起

2004/10/23 The Sankei Shimbun
 腎臓疾患のある人がスギヒラタケを食べた後、急性脳症の症状を示す例が相次いだため、厚生労働省は22日、腎機能が低下している人は安全性が確認されるまでスギヒラタケの摂取を控えるよう注意喚起する通知を都道府県などに出した。

 スギヒラタケによる健康被害はこれまで報告されていないが、都道府県から住民向けに注意を呼び掛けてもらう。

 急性脳症は感染症法の届け出対象で、全国的な症例を把握するため発症者や疑い例を診察した医師はすぐに保健所に届け出るよう要請。届け出を受けた保健所は速やかに厚労省に報告することも求めた。

 腎臓病の患者団体「全国腎臓病協議会」や日本医師会にも会員への周知を要請した。

急性脳症 秋田でも2人死亡 厚労省、スギヒラタケ注意喚起

2004/10/23 The Sankei Shimbun
 新潟、山形両県で十三人の急性脳症疑い例が確認され、うち五人が死亡した問題で、新たに秋田県が二十二日、腎機能低下で人工透析を受けていた県内の男女四人が九月中旬から十月上旬にかけて急性脳症の症状を訴え、このうち二人が死亡したと発表した。死亡した一人と現在入院中の二人がスギヒラタケを食べていた。急性脳症とみられるのは大曲市と本荘市で診断を受けた四十−七十代の男女四人で、九月中旬から十月上旬にかけて、いずれも全身のけいれんや高熱、意識障害などの症状を訴えた。

 また、新潟県内の医療機関から、同様の症状を訴える情報提供がさらに三件、同県に寄せられたことが判明した。うち一件は死亡者を出した急性脳症の可能性が濃厚。

 一方、厚生労働省は二十二日、腎機能が低下している人は安全性が確認されるまでスギヒラタケの摂取を控えるよう注意喚起する通知を都道府県などに出した。スギヒラタケによる健康被害はこれまで報告されていないが、都道府県から住民向けに注意を呼び掛ける。急性脳症は感染症法の届け出対象で、全国的な症例を把握するため発症者や疑い例を診察した医師はすぐに保健所に届け出るよう要請。届け出を受けた保健所は速やかに厚労省に報告することを求めた。

秋田で急性脳症の2人死亡 腎臓病、3県で死者7人に

2004/10/22 The Sankei Shimbun
 秋田県は22日、腎機能低下で人工透析を受けていた男女4人が9月中旬から10月上旬にかけて急性脳症の症状を訴え、2人が死亡し、残りの2人は入院治療中と発表した。死亡した2人のうちの1人と入院中の2人は発症前にスギヒラタケを食べていたことが保健所の調査で判明。死亡したもう1人についてもスギヒラタケを食べたかどうか確認を急いでいる。

 新潟・山形両県でも9月下旬から10月中旬までの間に、腎臓疾患を持つ計13人がスギヒラタケを食べて急性脳症を発症。このうち5人が死亡しており、同様の死者は計7人となった。

 厚生労働省は同日、腎機能が低下している人はスギヒラタケを食べないよう注意喚起の通知を全国の自治体に出した。

 秋田県健康対策課によると、死亡したのは大曲市内の同じ医療機関で診療を受けた60代の男性と40代の女性。2人は9月中旬から下旬にかけて全身のけいれんや意識障害などの症状を訴え、急性脳症と診断された。男性は発症前の1、2週間にスギヒラタケを2、3回食べたという。

 このほかに大曲市と本荘市の医療機関で、それぞれ70代の女性と50代の女性が急性脳症を発症して入院した。

山形の男性もキノコ食べる 発症者全員の摂取が確定

2004/10/22 The Sankei Shimbun
 山形県で急性脳症とみられる症状で死亡した2人のうち、70代の男性も発症前に食用キノコ「スギヒラタケ」を食べていたことが22日、分かった。

 もう1人の60代の女性も食べていたことが分かっており、新潟・山形両県で9月下旬以降に死亡した5人を含む発症者13人全員がスギヒラタケを食べていたことが確定した。

 山形県は「スギヒラタケは毒性はないと言われ、原因と考えるのは困難」としているが、付着物などによる影響も否定できないと判断。県内の医療機関や市町村などに同日、腎機能の低下している人がスギヒラタケを食べないよう指導することを要請した。

 同県保健薬務課によると、庄内保健所が21日、同県庄内地方で10月上旬に発症、死亡した70代の男性の家族に電話で問い合わせたところ、男性が10月上旬にスギヒラタケを採り、食べていたとの回答があった。

 同保健所は近く男性の家族と会い、スギヒラタケを採った場所やどのようにして食べたかなどにさらに詳しい経緯を聞く。

原因不明の急性脳症多発 新潟で11人発症、3人死亡

2004/10/21 The Sankei Shimbun
 新潟県は21日、同県内で9月下旬から今月中旬にかけて、腎臓に持病を持つ中高年の男女11人が急性脳症とみられる症状を示し、うち3人が死亡したと発表した。

 県は「感染性によるものとは考えにくい」としており、患者が集中的に発生した原因は不明。新種の病気の可能性も視野に入れ、厚生労働省や大学など研究機関と連携し原因を調査している。

 県によると、患者は50代から80代の男女で全員が入院し、症状が回復した1人が退院。足に力が入らなくなったり、ふらつきを感じた後、数日で手足が震える症状が出て、その後数時間から1日の間にけいれんが止まらなくなったり、意識障害に陥ったりした。

 患者は9月28日から今月14日にかけて入院。それ以降の入院例はないという。

 11人は、発症前から人工透析を受けるなど腎臓に病気を持っており、入院前2週間以内にスギヒラタケを食べていたことが共通している。

 県は「キノコによる中毒では症状が説明できず、キノコ自体が原因とは考えられない。スギヒラタケを毒キノコと混同することも考えにくい」としている。

 一方で、スギヒラタケは患者間の数少ない共通項のため、スギヒラタケが生えている周辺の土壌なども調べる。また、ほかに共通する行動や食べ物がないか調査している。

 患者11人は死亡した3人を含む9人が朝日村から荒川町にかけての県北部、2人が県南部の広神村に住んでいた。山北町では同じ川沿いに4人の患者が集中しているが、同じ集落や家族内で複数の患者はいない。

 県によると、急性脳症とは中枢神経障害で原因が特定できないものの総称。県は「専門家によると、これだけまとまって患者が出たケースは過去にない」と説明している。

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