TOPIC No.5-44-1 人工血液

01. 代替血液 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
02. 日本血液代替物学会会誌「人工血液 Artificial Blood」
03. 早稲田大学 酸素輸液プロジェクト
04. Amrit不老不死研究所 カテゴリー「人工血液」
04. 人工血液 by a.g.studio "weblog"


米軍が開発する「血液製造工場」

2010年07月14日 Wired vision

 2008年、米国防総省の国防高等研究計画庁(DARPA)は『血液ファーミング』(Blood Pharming)というプログラムを立ち上げた。[pharmingは「pharmacy」(薬学)と「farming」(農業)を組み合わせた造語で、もともとは医薬品を入手する目的の「遺伝子組み換え農業」を指す]

 プログラムの目標は、誰にでも輸血できるRHマイナスO型の赤血球を、コンパクトな独立型システムを用いて大量に製造することだ。

 DARPAから195万ドルの資金を得て同プロジェクトを進めていたバイオテクノロジー企業米Arteriocyte社はこのほど、同社の血液製造プロセスについて米食品医薬品局(FDA)の評価を受けるために、第1号となる血液製剤をFDAに提出した。

 同社の血液は、臍帯血由来の造血幹細胞を用いて[培養する形で]製造される。[臍帯血(さいたいけつ)とは、胎児と母体を繋ぐ胎児側の組織であるへその緒(臍帯)の中に含まれる血液で、造血幹細胞が多量に含まれている。白血病や再生不良性貧血などの難治性血液疾患の根本的治療のひとつである造血幹細胞移植において、幹細胞の供給源として、骨髄および幹細胞動員末梢血とともに利用される]

 この手法自体は何年も前に開発されたものだが、軍事や医療目的に十分な量の血液を作ることは困難だった。しかし、Arteriocyte社の技術を用いれば、1単位の臍帯血から、20単位の濃厚赤血球を3日で製造できる。外傷治療で兵士1人に輸血される血液の量は、平均6単位だ。

 「要するに、骨髄が行なっていることを技術で模倣しているわけだ」と、Arteriocyte社の最高経営責任者(CEO)、Don Brown氏は取材に対して説明した。

 現在、戦場で用いられる血液のほとんどは、米国内で献血によって集められたものだ。通常、前線に到着するころには、採取から3週間ほど経過している。

 献血された血液の使用期限については、今なお意見が分かれている。赤十字社が、輸血用赤血球の使用期限を42日としているのに対し、一部の医療専門家は、新鮮な血液は28日で「期限切れ」になるとの見解を示しており、2週間を過ぎると感染症や臓器不全のリスクが高くなると主張している。

 複数単位の輸血を必要とする患者には、複数の提供者から採取した血液を用いることが多く、それゆえのリスクも伴うが、Arteriocyte社の技術は、1単位の臍帯血から多量の血液を作れるため、このリスクを最小限に抑えられるというメリットもある。

 ただし現時点では、Arteriocyte社が血液製剤を1単位作るのに5000ドルのコストがかかる。それでも、コストが1単位1000ドルを切るようになれば、献血で集めた血液を輸送、保管するよりもコスト面で安上がりになると、DARPAは見込んでいる。

 人間での臨床試験は2013年ころ、戦場での実際の利用は5年以内に開始される、と同社は見込んでいる。

 [ウシの血液が原料である人工血液『ヘモピュア』と、赤血球中のタンパク質、ヘモグロビンが原料である人工血液『ポリヘム』についての日本語版過去記事はこちら]  [日本語版:ガリレオ-高橋朋子]

改変ヘモグロビンの開発に成功、人工血液の時代はもうそこまで来ている

2010年01月19日 Gigajin

 映画「トワイライト」シリーズでは動物の血しか飲まない「ベジタリアン」な吸血鬼が登場し、アメリカの人気テレビシリーズ「True Blood」では日本の科学者が合成血液を開発したという設定になっているそうですが、現実の世界でも人工血液・血液代替物の探求は長い歴史を持ちます。

 エセックス大学の研究により、その人工血液の開発に転機が訪れたようです。もし吸血鬼が本当に居たとしても、人類と平和に共存できる時代はすぐそこまで来ているかもしれません。

 詳細は以下から。

 Search for an artificial blood substitute

 人工血液の開発はビッグ・ビジネスで、過去20年間に10億ポンド(約1500億円)以上の費用がつぎ込まれてきたそうです。現在世界中の病院で年間7500万パック以上の献血された血液が使用されていますが、その供給確保や安全性への懸念は年々高まっています。理想的な血液の代替物は、保管期限が長く、病院で保管する必要がなく、輸血が必要な患者の血液型にかかわらず使用でき、あらゆるウィルス汚染の心配がないものになるだろうとのことです。

 これまで血液代替物の開発素材として使われてきたものの中には、原子爆弾の製造に用いられる化学物質や、ウシの血液、バクテリアの中で培養された血液などが含まれます。しかしこうしたすべての試みは、ヒトの血液に代わる安全な人工血液の開発には至りませんでした。

 特殊なヘモグロビンの国際特許を最近出願したエセックス大学の研究者たちは、世界の人工血液開発競争を一歩リードする位置に立ったかもしれません。

 エセックス大学の生化学者Chris Cooper教授によると、これまでの人工血液が失敗してきた要因はヘモグロビンにあるとのこと。ヘモグロビンは体内で酸素を運ぶ役割を持つ赤血球中のタンパク質ですが、血球の外に出されると、ヘモグロビンは人体にとって毒となります。

 通常ヘモグロビンは体内で酸素を運ぶうちに鮮やかな赤色からボルドーワインのような赤紫色に変化します。しかし、ヘモグロビンが損傷を受けたときには鉄が酸化し、機能を果たさない緑色や茶色の物質(いわゆるサビ)となるそうです。

 Cooper教授らが特許出願中のヘモグロビンは、この毒性を低くすることに成功したものとのこと。

 「ヘモグロビンから遊離したフリーラジカルが、心臓や腎臓などを傷つけるのです」と語るCooper教授。「毒性が低く、かつ酸素を運ぶという重要な役目を果たすようヘモグロビンを改変することが、人工血液開発の鍵となります」

バイオ破綻 流出する知財 資金途絶えたベンチャー

2008年11月12日

ベンチャーキャピタル(VC)はIPO狙いがほとんどなので、金融市場が冷え込めばおのずと財布の紐は締まります。

 しかし、アメリカに大きく水を開けられているバイオ分野がこの金融不安でさらに距離が拡がるのは考えものです。

 政府の早急な対策を期待します。

 金融市場の冷え込みにより、ベンチャーキャピタル(VC)などからの資金調達が困難になり、破綻(はたん)するベンチャー企業が相次いでいる。特に深刻なのは、長期の研究開発期間と多額の資金を必要とするバイオベンチャーだ。公的資金を投入して開発したシーズが消失したり、技術が海外流出する事例も出てきた。このままでは技術立国の存立が揺らぎかねないと政府もベンチャー再生に官民ファンド活用も検討している。しかし、資金の出し手となる民間金融機関がリスクマネーを敬遠、ファンド構想も“絵に描いたもち”になる可能性も指摘されている。

 ≪支援ノウハウなく≫

 「県に(ベンチャー投資の)ノウハウが欠けていた。うまく化けていれば、お金が入ってくるかもしれなかったが…」

 9月末、金子原二郎長崎県知事は苦渋の表情を浮かべた。事の発端は、県費1億円を投じた新薬開発実験研究の受託事業を手がける長崎県立大発バイオベンチャー「バイオラボ」の破産だ。これを機に長崎県はベンチャー支援の廃止を決定した。同社は米国発金融危機のあおりで資金調達に失敗し、中国で計画していた研究施設の建設遅延により資金繰りが行き詰まり、破綻した。

 バイオラボをはじめとするバイオベンチャーの経営は瀬戸際に立たされている。

 今年6月、創薬ベンチャー「セルシグナルズ」が事業停止していたことが分かった。名古屋大教授が発見した情報伝達物質「ミッドカイン」を活用し、がんやリウマチ、多発性硬化症の治療薬開発が期待されていた。しかし、研究開発費の調達につまずき、事業停止に追い込まれた。しかも、培った技術は豪州企業に売却され、懸念されていた知財の海外流出が現実となった。

 聖マリアンナ医大発ベンチャーでリウマチ治療薬開発の「ロコモジェン」、早大発で人工赤血球開発の「オキシジェニクス」など、今年に入り有力バイオベンチャーが相次いで事業継続を断念している。

 経済産業省の大学発ベンチャー調査でも、前年度と比較した2007年度業績見込みを業種別にみると、IT(情報技術)などに比べてバイオ系の営業赤字幅が突出しており、バイオ系の営業赤字は9100万円から1億1500万円に拡大している。

 日本には約600社以上のバイオベンチャーがあるが、株式を上場したのは、大学発ベンチャーとして初の上場を果たしたアンジェスMGなど十数社にとどまる。小泉内閣が進めた「大学発ベンチャー1000社構想」の後押しもあり、「半ば政策誘導的」(経産省幹部)にベンチャーを設立。折しもゲノム解析がブームに乗り、バイオ関連というだけで株価が急騰した。

 ≪一過性のブーム≫

 しかし、ブームは一過性に終わった。長期の赤字が続くバイオベンチャーは、短期的な利益を求める投資家の理解を得ることは困難だった。「ITベンチャーに投資する感覚で、VCを含めてバイオに詳しい“目利き”が欠けていた」(VC関係者)と反省の弁も聞かれる。

 新薬開発はシーズ発見から製品化に至るまでの期間が9〜17年と長期にわたる。研究開発費の総額も数百億円にのぼるが、製品の安全性に問題があれば開発中止になるなどリスクも高い。金融危機を機に、VC自身が岐路に立たされ、ベンチャー投資に回す資金が急速に縮小、「バイオベンチャーの半数以上は数年内に力尽きる」(VC関係者)との悲観論さえ蔓延(まんえん)している。

 ■官民ファンド 再生へ知恵絞る

 経営環境が厳しさを増す中、バイオベンチャー再生に向けた“切り札”ともいえるプロジェクトが動き出しつつある。経済産業省が来年度設立に向けて進める総額2000億円の官民ファンド「イノベーション創造機構」だ。

 ダイエーやカネボウ再生に取り組んだ産業再生機構のベンチャー版ともいえる組織で、資金難に陥っているベンチャー企業に投資するほか、有望な特許を買い取り、事業化を目指す。バイオ関連への投資額は数百億円規模となる見通しで、公的資金を高リスクのベンチャー企業に投資することへの妥当性を説明するためにも、開発最終段階に入った有望ベンチャーに集中投資する方針だ。

 ただ、ここにきて金融危機がファンド構想の土台を揺るがせている。「現状では金融機関が拠出するマネーはないのではないか」(森下竜一アンジェスMG取締役)との懸念が現実味を帯び、「公的資金の拠出を先行すべきだ」との声が一部のバイオ関係者からあがる。経産省も対策の練り直しを急ぐ。

 バイオベンチャーの困窮は資金調達環境の悪化だけではない。「素人集団には投資しにくい」(金融関係者)という声もあり、人材育成や企業連携による経営基盤の強化も重要なテーマだが、その道も険しいのが現状。首都圏のバイオベンチャーで組織する「首都圏バイオネットワーク」が今春、企業連携や合併を議論する懇談会を設置したが、話し合いがまとまらず、懇談会は中断に追い込まれた。

 バイオベンチャーの経営環境がさらに悪化すれば、ライフサイエンスを中心とする新産業育成の停滞も招きかねない。技術流出を防止するためにも経営基盤強化のための再編は避けられないが、資金調達の環境整備や経営を担う人材育成が急務だ。

ES細胞から大量の赤血球を生成、輸血用血液の無限供給も可能か

2008年08月21日 AFP BB News 発信地:ワシントンD.C./米国

【8月21日 AFP】米マサチューセッツ(Massachusetts)州ウスター(Worcester)を拠点とする米企業、Advanced Cell Technology(ACT)の研究員らが専門誌「Blood」(電子版)で、ヒトの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)から大量の赤血球を生成することに成功したと発表した。今回の成功で、輸血用の血液を無限に供給できる可能性が出てきた。

 ACTのRobert Lanza氏は「血液の供給に制限があることは、大量の失血をしている患者にとって生命を落としてしまうことにつながりかねない」とした上で、「ES細胞は、治療に必要な赤血球を供給する細胞を無限に増殖させることができる新たな細胞源の役割を果たす」と語った。

 同氏は「われわれは現在、6ウェルプレートの培地1つで培養したES細胞から、10-1000億の赤血球を生成することができる」と述べるとともに、「幹細胞株を『Oマイナス』の血液型に合わせれば、どの血液型にも合致する『万能供血者』の血液を生成することができるだろう」と強調した。O型の血液は、どの血液型の人にも輸血することが可能な唯一の万能血液型だとされている。(c)AFP

オキシジェニクスが事業継続を断念、有力パートナーなく命運尽きる

2008年04月18日 日経バイオテク

 人工赤血球などの開発を主力事業としていたオキシジェニクス(東京・港、大村孝男社長)が、事業の継続を断念していたことが2008年4月17日までに分かった。

プラスチックから人工血液を製造

2007年06月03日 ヘルス・ビューティ

 英シェフィールドSheffield大学の研究グループが、プラスチック分子から人工血液を作り出したとBBCニュースが報じた。

 このプラスチック分子は中心部に鉄原子を有するもので、ヒト血液中のヘモグロビンとよく似た機能をもつという。ヘモグロビンには体内の組織に酸素を運搬する働きがある。

 緊急時に代用できる可能性をもつこの新しい血液は、冷蔵の必要がなく、本物の血液よりも長期間保存できるという。このため、救急車や軍隊でも多量に備えておくことが可能になると、同大学のLance Twyman博士は述べている。

 BBCニュースによると、研究グループは、生体での試験に向けた試作品を開発するための資金援助を求めている。

(プラスチックから人工血液を製造)

--------------------------------------------------------------------------------

 自己血以外の輸血として問題となるのは、感染症やGVHD、血液型によっては不足や1%以下という頻度の稀な血液型である「Bombay型(パラボンベイ)、para-Bombay型(パラボンベイ)、−D−(バーディバー)型、Rhnull(アールエッチナル)型、Rhmod(アールエッチモッド)型、Fy(a-)型、Di(b-)型、Jr(a-)型」といった方々への輸血も、量の問題も解決できるのではないでしょうか(代替血液は輸血を受ける人がどんな血液型でも使用できるため)。

 ですが、人工物は何らしらかの問題も起こってくる可能性があります。人工関節の場合は、術後の感染症や耐用年数があることといった問題や、心臓の人工弁も血栓を作りやすいために抗凝固薬を飲み続けなければならない、といった問題もあります。人工血液に関しては、まだ安全性や有用性の面で実用的なものは完成していません。

 アプローチとしては、"白い血液"として知られたパーフルオロケミカル(PFC)の乳剤のような非生物材料を用いるものと、ヘモグロビンを加工するものとにわけられ、現在のところ後者の方が実現性が高いとみられています。

 長期的な影響もどんなことになるのか、今後の研究が待たれます。

ニプロ、オキシジェニクスと提携し人工血液事業に参入

2006年05月27日 Garbagenews.com

 【NIKKEI NeT】によると医療メーカーの【ニプロ(8086)】は、現在人工血液を共同研究中のバイオベンチャー【オキシジェニクス】と業務提携し、手術などにおいて血液の代わりに輸血することができる人工血液の製造を受託する。臨床試験(治験)に使う高品質の人工血液を2008年から製造開始、段階的に量産化を進めるという。

 人工血液は直径200ナノ(ナノは10億分の1)メートルの微小カプセルに、約3週間の使用期限が切れた輸血用の血液から採取した有効成分を封入したもの。2年程度の長期保存が可能で、血液型も問わないため、災害などの緊急備蓄用に全国で需要が見込める。

 オキシジェニクスはその社名にもあるように、人工酸素運搬体Oxygen Carrierなどの研究開発を行い、人工血液の開発を目指している。この分野で早くからニプロとオキシジェニクスは開発面での提携を結んでおり、今回発表された人工血液だけでなく、さまざまな新薬への応用も期待できる。

 特に今回の人工血液については、保存用血液最大の難点である「長期間保存ができない」という点をある程度クリアし、慢性的な輸血不足解消に寄与することも考えられ、非常に期待が持てる。

Vol.10 人工赤血球開発への道

[2006年6月配信]バイオテクノロジージャ−ナル

 生物の生命維持活動において,「酸素運搬」という役割を担った血液の重要性はいうまでもない.

 善意での献血により採取される血液の保存期間は最長三週間.例えば大災害時には緊急輸血用の血液備蓄が困難であるというのが現状だ.少子高齢化による血液不足も懸念されている.さらに,輸血によるウイルス感染リスクも,ぬぐい切れていない.

 そのような状況下において,長期保存・血液型不問・ウィルス不活性化という絶対的命題をクリアするために,過去多くの企業が開発にトライし,断念を余儀なくされていた人工赤血球.

 しかし,実に二十年以上にわたる研究者の不断の努力により,世界で数社の企業によって,「人類の悲願」といっても過言ではない人工赤血球の実用化がいよいよ最終段階に入ってきている.オキシジェニクス社は,期限切れのヒト献血血液を利用して,上記絶対的命題をクリアした世界初のセル型人工赤血球「Oxygen Carrier」の開発を進めている.

 ●株式会社オキシジェニクスは,人工赤血球開発において来年より臨床試験を開始予定.実用化へ向けて邁進中です.

ニプロが人工血液事業に参入

2006年05月22日 医学処 -医学の総合案内所-

 ニプロ、人工血液事業に参入・バイオベンチャーと提携

  ニプロは人工血液事業に乗り出す。人工血液を共同研究中のバイオベンチャーのオキシジェニクス(東京・港)と業務提携し、手術などの際に血液の代わりに「輸血」できる人工血液の製造を受託する。臨床試験(治験)に使う高品質の人工血液を2008年から製造。臨床試験の進ちょく状況に応じ、段階的に量産化を進める。

 人工血液は直径200ナノ(ナノは10億分の1)メートルの微小カプセルに、約3週間の使用期限が切れた輸血用の血液から採取した有効成分を封入したもの。欧米で臨床試験が進んでいるが、まだ製品化には至っていない。2年程度の長期保存が可能で、血液型も問わないため、災害などの緊急備蓄用に全国で需要が見込めるという。

オキシジェニクス、シンガポール・バイオワンキャピタル社と契約締結 総額約6 億円の出資交付 アジア最大のバイオファンドによる日本への投資案件

2006/02/27 清水国際特許事務所

 人工血液やナノリポソームDDS(drug delivery system)製剤の開発を行う株式会社オキシジェニクス(本社:東京都港区虎ノ門4-4-1/資本金:1,796,299,000 円/代表取締役:高木智史)と、シンガポール政府関連の投資会社であるバイオワンキャピタル社(本社:20,Biopolis Way#09-01 CentrosSingapore 138668/CEO:Swee-Yeok CHU)は、2 月23 日総額約6 億円(599,400,000 円)の投資に関する契約を締結しました。

 ■アジア最大のバイオファンドによる日本への投資案件

 バイオワンキャピタル社は、アジア最大規模総額約800億円のバイオファンドを運営するシンガポール政府関連の投資会社です。世界中の製薬・バイオ関連企業の60 社以上に投資実績を持ちます。 日本への投資案件として、弊社の主力開発プロダクトである人工血液 「Oxygen Carrier」や、「タンパク質医薬内包リポソーム製剤」の研究開発に着目し、この度の契約締結に至りました。

 ■世界的ガイドラインに則した人工血液「Oxygen Carrier」の研究

 オキシジェニクスの人工血液「Oxygen Carrier」は、高い安全性、常温で2 年間保存可能という特性を持ち、世界的ガイドラインに則した製品化に向けて最終段階に入りました。人工酸素運搬体により運ばれた酸素濃度を、世界初の計測システムを用いて測定し、膨大かつ信頼性の高い実証データを日夜蓄積しています。

 20 年に渡る人工血液の研究過程で蓄積されたデータに基づいた、精緻で全く新しいキャリア体の設計・体内測定技術により、旧来のDDS(drug delivery system)とは異なる、血中滞留性、体内動態、臓器及び細胞のターゲティングを可能にしました。

 これは疾病によって個々に必要とされるタンパクや低分子を、理想的に設計できる「オーダーメイド・リポソーム」製剤の実現を意味します。 このテーマは、リポソーム製剤研究におけるすべての研究者にとって夢の実現であり、新しい医薬品開発の分野に向けて、大きな一歩を踏み出すことになります。

 製品化に向けて最終段階に入ったこの製剤設計システムを機械化、時間の短縮を図るべく、シンガポール政府の支援のもと、現地法人「オキシジェニクス・シンガポール」を、アジア最大級かつ最先端の研究施設「バイオポリス」内に設立します。 バイオポリスには、海外の大手製薬会社や研究所、バイオ企業などが入居しており、充実した研究インフラ・施設を最大限に有効活用することが可能となります。

 バイオポリスでは、シンガポールと日本との規制相違により、細胞を使った研究の大幅なスピードアップが図れるだけでなく、シンガポールおよびアジアの有能なバイオ研究者とのコラボレーションにより、「タンパク質医薬内包リポソーム製剤」の開発において新しい可能性を見出すことになります。

 このように、日本・オキシジェニクス社とシンガポール・バイオワンキャピタル社との契約締結は、多種多彩な「タンパク質医薬内包リポソーム製剤」の研究開発を大きく推進します。 さらに、今まで非常に困難であるとされている「核酸医薬」開発に必要な「リポソーム・ベクター」の研究開発基盤も確立していきます。

血液型に関係しない「人工血液」開発

2005.09.05 朴邦柱(パク・バンジュ)科学専門記者

 血液型にかかわらず応急輸血用として使うことができる「人工血液」が、在米韓国人医学者によって開発された。

 4日、国際細胞工学大会組織委員会によると米国ブラウン医大教授として在職中の在米韓国人、キム・ヘウォン博士は、有効期間が過ぎて廃棄される血液の赤血球を利用した応急患者用「酸素運搬体(HBOCs)」を開発し、動物実験をしている。

 キム教授は研究結果を6日の延世(ヨンセ)大学百周年記念館で開かれる第7回国際細胞工学大会で発表する予定だ。

 キム教授が学会に提出した論文によると酸素運搬体は血液型に関係なく輸血に利用できる。この血液は一般輸血用血液とは違い、酸素のみ供給するもので、営養分や老廃物収去などの機能はない。すなわち、患者に合う血液が確保されるまでに臨時的に使うことができる。これによってこの血液が実用化されれば輸血用血液を確保しにくい応急患者を助けるのに大きく寄与するものとみられている。

テルモ、人工血液の事業化に向けて開発進める

2004年09月08日 nikkei BP net

 テルモは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ナノカプセル型人工酸素運搬体製造プロジェクト」で進めている研究の進展状況を明らかにした。人工血液の事業化に向けた製造技術開発、人工血液の新しい医療用途開発、遺伝子組み換え技術を使ったヘモグロビンの生産などが研究のテーマだ。プロジェクト2年目となる04年度の、NEDOからの助成金額は3億5625万円。

米国の救急患者が人工血液テストの被験者に(上)

2004年04月08日 WIRED VISION

 Randy Dotinga 2004年04月08日

 カリフォルニア、テキサスをはじめとする米国の数州では、事故や暴力によって外傷を負った人たちが救急車で運ばれる最中、危険な賭けを背負い込むことになる。医療倫理の厳格なルールに、意外な抜け穴が開いているためだ。

 これらの州では今後、本人の同意がなくても、臨床試験の対象となる条件を満たした救急患者の半数に対して、救急医療士が人工血液を投与することになっている。あとの半分の患者には従来どおり、病院に到着するまで生理食塩水の輸液を行なう。

 この人工血液は『ポリヘム』(PolyHeme)という名称で、現在のところ一般使用は認可されていない。ところが、拒否の意思表示のできない意識不明の患者に対して、ポリヘムが静脈や動脈に注入されることになる。

 ワシントン大学で医療倫理を研究する、ケリー・フライアー=エドワーズ氏は、「緊急医療の研究では、総じて、一連の特殊状況が作り出される。場合によっては、対象患者を守る、インフォームド・コンセントを得るといった研究倫理に対する通常のアプローチが、まったく顧みられなくなってしまう」と述べている。血液研究に関する考え方をめぐって、全米の医療倫理の専門家の間で意見が別れている。

 問題となっているのは、救急医療と手術に革命をもたらす可能性を秘めた製品なのだ。

 献血による血液がしばしば供給不足になるのは、周知の事実だ。血液バンクは、競争や内部の権力争いで混乱することも多いが、繰り返し必死で献血を呼びかけている[参考:ダグラス・スター著『血液の物語』邦訳河出書房新社刊]。また、新鮮血が使える場合でも、救急隊員や外科医が出血多量の患者にすぐに輸血するというわけにはいかない。

 ポリヘムの試験を11年前から続けているデンバー保健医療センターの外傷外科部長、アーネスト・ムーア博士によると、輸血のためにはまず患者の血液型を調べなければならず、それに時間がかかるという。「ほとんどの病院が検査は20分で終わるというが、実際のところ30分は必要だ。40分から1時間かかるところは多い」

 「万能給血者」の血液と呼ばれるRhマイナスO型の血液は、すべての血液型の人に対して輸血が可能だ。しかし、RhマイナスO型の人は全体の7%しかいない。「どのような救急病院でも(RhマイナスのO型が)慢性的に不足している。救急車にまでくまなく配備することは不可能だ」とムーア博士は説明している。

 搬送中の患者が大量に出血している場合、救急隊員は出血分を生理食塩水で補おうと試みる。しかし、コンタクトレンズの洗浄にも使われている生理食塩水は、血液と違って体内に酸素を供給しない。失われた血液の量的な代替物の役割を果たすだけだ。

 そこで、現代の人工血液の登場となる。人工血液の開発が始められたのは1970年代だ。ポリヘムの製造メーカー、米ノースフィールド・ラボラトリーズ社(イリノイ州エバンストン)の会長兼最高経営責任者(CEO)スティーブン・A・グールド博士によると、人工血液の研究者たちは、血液と同じに酸素を運び、すべての人に適合し、長期保存が可能(血液の有効期限は献血から42日間)で、病気を伝染させない製品の開発に取り組んでいるという。

 研究の最終段階まで達している人工血液はポリヘムと、米バイオピュア社(マサチューセッツ州)の『ヘモピュア』の2つしかないとグールド博士は述べた。ヘモピュアは外科手術に使用されており、ウシの血液が原料となっている。ポリヘムは、赤血球中のタンパク質、ヘモグロビンが原料だ。ヘモグロビンは血液よりずっと長く保存できるのに加えて、どの血液型にも適合する。赤血球中に存在する抗原がヘモグロビンには含まれていないため、異なった血液型に対する免疫システムによる防御機能が作動しないのだ。

 また、ポリヘムは普通の血液に比べて薄いので、出血している患者に使用しやすい可能性もあるという。状況によっては本物の血液より適する場合もあり得るかもしれないと、グールド博士は語った。「個人的見解だが」[日本語版:米井香織/湯田賢司]

米国の救急患者が人工血液テストの被験者に(下)

2004年04月08日 WIRED VISION

Randy Dotinga 2004年04月09日

 またあまり注目されていないが、ポリヘムにはもう1つ別の利点がある。全米100万人にのぼる信者を抱える教団、『エホバの証人』では、血液を体内に入れることを聖書が禁じているとして、輸血に反対の立場をとっている。しかし同教団は、血液の主要成分が原料になっていない製品については、受け入れる余地を信者に与えているのだ(『クリスチャン・サイエンス』のような教団は、医学全般に反対しているため、人工血液が入手可能になってもその立場は変わらないとみられる)。

 これまでのところエホバの証人の信者、少なくとも1人がポリヘムの被験者になっているが、その際には事前承認を得たうえで試験投与が行なわれている。いっぽう、今年に入ってから開始された今回の研究の場合、患者の同意を得る義務はない。

 ノースフィールド・ラボラトリーズ社は1年間にわたる今回の研究で、20の病院から協力を得たいと考えている。被験者は720人にのぼる予定だ。同社は研究に参加している病院や参加を検討中の病院を公表していない。しかし複数の報道によると、デンバー保健医療センター、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)医療センター、テキサス大学ヒューストン校医学部、ロヨラ大学医療センター(イリノイ州メイウッド)、メイヨー・クリニック(ミネソタ州ロチェスター)、メンフィス地域医療センターが含まれているという。

 今回の研究では、交通事故や銃弾によって負傷した被害者を含む、出血多量の患者が対象となる。ただし、妊婦と頭部に重傷を負っている人は除外される。対象者が生理食塩水かポリヘムのどちらの投与を受けるかは、ランダムに決定される。

 研究に参加する各病院は地域集会を開き、住民に研究の内容を説明しなければならない。デンバーでは、住民が保健当局に申し込めば、この研究の対象者にはならないことを示すブレスレットを受けとることができる。AP通信によると、ロヨラ大学医療センターの付近で開かれた地域集会では、研究に反対した人は参加者57人中1人だけだったという。

 今回の研究は、1996年に米国議会によって生み出された抜け穴を利用している。つまり、緊急医療に関連する研究の場合、インフォームド・コンセントのルールをはずしてもかまわないとされたのだ。

 1998年には、米バクスター・ヘルスケア社という企業がこの抜け穴を利用し、血液代用剤の大がかりな研究を初めて実施した。報道によると、この研究は被験者52人の半数近くが死亡し、中止になったという。

 ボストン大学の医療倫理研究者、ジョージ・アナス氏はバクスター・ヘルスケア社の研究に批判的で、ポリヘムの関係者も同じ倫理的な過ちを犯しかけていると考えている。アナス氏は、「人間を、動物や実験動物のように扱うのは」間違っていると述べ、「人には研究対象になることを拒む権利がある」と指摘している。

 さらにアナス氏は、ブレスレットの着用で拒否を伝える権利だけでは不十分だとも述べたが、代案となるもっと優れたシステムを示そうとはしなかった。「研究を倫理にのっとって進める方法は、研究を支援する人間が考えるべきことだ。研究を批判する側が考えることではない」

 患者側の権利を擁護する中心的な人物として活躍しているベラ・ハスナー・シャラブ氏は、ブレスレットを着用するのはポリヘムの研究から外れたい人ではなく、研究に協力したい人にすべきだと主張する。ニューヨークに本部を持つ『被験者保護同盟』(AHRP)の会長で、設立者でもあるシャラブ氏によると、人工血液が安全だという証拠は何もないという。「したがって、拒否の意思表示ができない人を被験者にすべきではない」

 いっぽう、ワシントン大学の医療倫理学者、フライアー=エドワーズ氏の視点は、少し異なっている。外傷患者の研究の協力者として志願してくれる市民を見付けるのは、非常に困難かもしれないという。自分が事故に遭う可能性について考えたがる人などいないためだ。

 すべての人が自動的に参加する仕組みにすることによって、「責任は、対象から外れたいと考える人自身が負うことになる。これはこの人々のために設ける特別な協定なのだ。だが、この選択肢を提供することで、こういった人々の自主性が尊重されているのだ」とフライアー=エドワーズ氏は語った。[日本語版:米井香織/湯田賢司]

感染の危険ない人工血液 二年後実用化目指す 早・慶大などが開発 読売

2004年01月25日 阿修羅 投稿者 たくげん

 アルブミン使い早・慶大などが開発

 血液中に含まれるたんぱく質の一つ、アルブミンに酸素を運ぶ能力を持たせた「人工血液」を早稲田大、慶応大、熊本大などのグループが開発した。大量生産と長期保存が可能で、ウイルス感染や血液型不適合の心配のない安全な輸血に道を開くと期待されている。グループは動物実験で効果を確認しており、2年後の実用化を目指している。

 酸素は、赤血球に含まれるヘモグロビンというたんぱく質に結合し体内組織へ運ばれる。米国ではヘモグロビンを加工した人工血液が作られたが、血圧上昇などの副作用があり、人への使用は認可されていない。

 土田英俊・早大名誉教授らのグループは、血圧を維持し、様々な物質を体内に運ぶ役割を持つアルブミンに着目。ヘモグロビンと同様に、鉄を中心に持つヘムという分子を組み入れた「アルブミンヘム」を作り、肺で酸素を吸収し、体内の組織で放出する機能を持たせることに成功した。

 ラットでは血液と人工血液の交換や、出血ショック時の輸血など様々な実験で血液と同じ効果が得られ、毒性は見られなかった。

 赤血球よりはるかに小さいので、血栓のできた部分にも酸素を供給でき、脳梗塞や心筋梗塞などの治療に使える可能性もある。原料のアルブミンは、血液から抽出されているが、遺伝子組み換え法で製造する手法を日本の医薬品会社が開発し、臨床試験を終えている。アルブミンヘムの量産技術もめどが立っているという。

 人工血液が実用化すれば、どの血液型の人にも安全に輸血でき、ウイルスなどに感染する恐れもないなど大きな利点がある。研究グループの小林紘一・慶応大呼吸器外科教授は「室温で長く保存でき、いつでも使える。献血不足を解消できるだろう」と話している。(2004/1/25 読売新聞 朝刊)

HOME献血/血液BACK