TOPIC No.5-31 バルカン症候群/劣化ウラン弾被爆

01.劣化ウラン弾 被爆深刻 by中国新聞
02.劣化ウラン研究会
03.劣化ウラン弾 [ 1999/04/23 ]毎日新聞

ガン多発 「劣化ウラン弾」注目集めるイラク南部

2001.01.27The Sankei Shimbun
「ガン患者、10年で8倍」
WHO現地所長「統計資料信用できる」

 一九九一年の湾岸戦争から十年たち、米軍を中心とした多国籍軍の集中的な空爆を受けたイラク南部で白血病やガンが多発しているという。イラク政府は「米軍の使用した劣化ウラン弾が原因」と訴えてきたが、国際社会からは無視されてきた。だが、昨年、北大西洋条約機構(NATO)軍がバルカン半島で使用した劣化ウラン弾で帰還兵に白血病が多発している疑惑が広がり、世界で初めて劣化ウラン弾が本格的に投入されたイラクに、にわかに注目が集まっている。(イラク南部バスラ 村上大介)

 クウェート国境に近いイラク南部バスラ。「サダム教育病院」のジャワード・アルアリー医師は「湾岸戦争の四、五年後からイラク南部で白血病やガン、さらには原因不明の病気が顕著に増加した。医師として尋常ならざるものを感じた」と語る。同病院には、最近発症した少年患者ら十数人が入院しているが、同医師が医長を務める腫瘍(しゅよう)治療部門に通院する患者数は現在二千人にのぼるという。

 入院患者の一人、カリーム・サーリム君(一六)は昨年秋、腰に激しい痛みを覚え、診察を受けたところ、骨肉腫(にくしゅ)と診断され、十一月から入院している。カリーム君の家はバスラから北に約二十キロ離れた橋の近くにあり、この橋は多国籍軍の爆撃で破壊されたという。

 また、バスラ市内の子供病院にも幼児のガンや白血病患者がおり、白血病と診断されたムハンマド・ボーズちゃん(五つ)は七カ月前に入院した。母親が一年半前にやはり白血病で死亡したため、叔母に付き添われている。

 ガンの増加地帯は、バスラに限らずイラク南部全域に及んでいる。同国保健省は早い段階から、非伝染病であるガンの急増の原因として劣化ウラン弾を挙げ、九八年にはアナン国連事務総長に対して因果関係の調査を行うよう正式に要請した。

 ただ、国連の大量破壊兵器査察をめぐり米英を中心とした国際社会と対立を繰り返してきた独裁体制のイラクには分が悪く、これまでともすればイラク側の「宣伝」と受け止められてきたことも事実だ。

 しかし、湾岸戦争後のボスニア・ヘルツェゴビナ(九四−九五年)、コソボ(九九年)の両紛争でも劣化ウラン弾計四万発が使用され、欧州で「劣化ウラン弾疑惑」に火がついたことから、世界保健機関(WHO)の専門家が今月十九日、ガン患者のデータ分析などについてイラク当局と協議するため現地入りした。

 クウェートからのイラク軍追放のために徹底した空爆作戦を実施した米国中心の多国籍軍は、イラクの戦車部隊などに対して、バルカン半島とはけた違いに多い九十五万発、三百トン分の劣化ウラン弾を使用したとされ、WHOにとっても、劣化ウラン弾と健康被害の因果関係を究明するためにイラク側の資料分析は不可欠だ。

 イラク保健省がWHOに報告した統計によると、イラク全体で人口十万あたりのガン患者数は、八八年の百九十八人が、九九年には千五百七十五人にまで増えている。

 WHOのグラム・ポパル・バグダッド事務所長(アフガニスタン出身)は、「まだ劣化ウラン弾と健康被害の関連性があると決まったわけではない」としたうえで、「イラクは、湾岸戦争前まで中東で唯一、欧州の医療水準に近づいていた国だった。現在は経済制裁のためにコンピューターなどが不足し、原始的な手作業だが、医師の水準は高く、イラクの統計資料は専門家の目から見ても信用できる」としている。

≪米英は因果関係否定≫

 劣化ウラン弾とは、原発や核兵器製造工場で天然ウランを濃縮する過程で生じる劣化ウランを弾頭に使用した砲弾。鉄の約二・五倍の重さがある重金属で貫通性に優れており、対戦車攻撃などに使われる。米英は、「バルカン症候群」の場合は劣化ウランと健康被害との因果関係を否定している。

劣化ウラン弾、論議には慎重 EU理事会

2001.01.23(15:51)asahi.com
 22日の欧州連合(EU)外相理事会は、健康への影響が心配されている劣化ウラン弾の問題を初めて取り上げたが、米国批判につながる安全論議には深入りせず、関係機関の現地調査を見守ることにした。ブッシュ新政権との関係をこじらせたくないと配慮したようだ。

 EU議長国スウェーデンのリンド外相は、記者会見で「この問題では情報の透明性が重要だ。1カ月以内に公表される各種調査の結果を待って対応したい」と述べるにとどまった。ミシェル・ベルギー外相は「米欧対立をはやし立ててはならない」と記者団に語った。

原水協、米英などに劣化ウラン弾使用禁止を要求

2001.01.14(10:13)asahi.com
 原水爆禁止日本協議会(原水協、共産党系)は13日、北大西洋条約機構(NATO)軍のユーゴスラビア空爆で使用された劣化ウラン弾でコソボ自治州などで白血病が多発するなどの影響が出ているとされる問題で、劣化ウラン弾の使用禁止を求める文書を米国、英国、NATO本部、国連事務総長あてに送付した。日本政府には、在日米軍の劣化ウラン弾配備や演習での使用の実態の調査、公表などを求めた。

劣化ウラン弾 欧州の疑念・米国の困惑/英仏、派遣兵士を検査へ

2001.01.14【パリ13日=山口昌子】The Sankei Shimbun
 国連や北大西洋条約機構(NATO)の枠組みで旧ユーゴスラビア紛争に展開した欧州各国軍の帰還兵にがんが多発し、使用した劣化ウラン弾との関連が疑われている「バルカン症候群」問題は、少なくとも死者十八人を含む約五十例が報告されているが、その対応をめぐっては欧州各国に差異が広がりつつある。この問題は今後、共通外交・安全保障が緒についたばかりのEUの防衛、外交問題にも影響が出そうだ。

 NATOの十日の大使級理事会では、六人の死者が出ているイタリアの劣化ウラン弾凍結の主張はドイツなどに支持されたが、米英などの反対で拒否された。

 四人の白血病患者が出ているフランスのリシャール国防相も、「フランスは劣化ウラン弾は所持していないが、凍結には反対である」と明言しており、欧州内は対応をめぐって真っ二つに割れている。

 一方で英仏政府は、バルカン症候群感染の可能性のある派遣兵士の検査計画を発表するなど兵士の健康対策は進めており、軍事問題と人的影響のはざまで揺れるこの問題の複雑性をみせている。

 劣化ウラン弾凍結反対の表向きの理由は、劣化ウラン弾とバルカン症候群との関係の確証がないというものだが、実際は、装甲車などの破壊に効果抜群の強力な武器を手放したくないというのが本音だ。

 十二日付の仏有力紙ルモンドは、シェール県(仏中部)の仏軍技術研究所所長の「この十年間、一千四百から一千五百の劣化ウラン弾を射撃場で試射した」との証言を掲載。フランスが実質的に同弾を所持しているとの見方を示した。

 劣化ウラン弾については、約一万発が使用されたボスニア紛争後の一九九六年から九七年にかけて米軍当局に近い軍事雑誌「米陸軍化学・レビュー」と「軍装備マガジン」がそろって健康面への影響を指摘、以後、劣化ウラン弾へのこうした基本的対策や情報が米軍から同盟軍に伝えられたはずだが、三万一千発が使用された九九年のコソボ空爆で、現場の兵士にまでは徹底していなかったことは確かだ。

 パリでは十二日から旧ユーゴ和平「連絡調整グループ」(米露仏英独伊の六カ国)の外務省局長級が劣化ウラン弾問題に関する討議を開始した。また、NATOはさきの大使級理事会で設置を決めた劣化ウラン弾に関する特別委員会の初会合を十六日に開催する。

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感情のこじれ懸念 因果関係は一蹴

 【ワシントン13日=西田令一】旧ユーゴスラビアでの空爆作戦で米国が使用した劣化ウラン弾が欧州の旧ユーゴ帰還兵の間にがんや白血病を引き起こしているとの疑惑が欧州で噴き出したことに、当の米国は困惑を深めている。ブッシュ次期政権は旧ユーゴ派遣米軍の削減問題やミサイル防衛網構想に加え、「バルカン症候群」というさらなる米欧対立の火ダネを抱え込みそうな気配だ。

 劣化ウラン弾とこれらの病気との因果関係については、オルブライト米国務長官もコーエン国防長官も「科学的な証拠は全くない」と一蹴(いっしゅう)していて米国ではほとんど問題にされておらず、欧州で突然、渦巻き始めた不安に戸惑いを隠せない様子だ。

 十二日付の米紙、ロサンゼルス・タイムズは、(1)米国防総省によれば、劣化ウランの放射能は天然ウランより四〇%も弱い(2)米核軍縮学者グループは同様の「湾岸戦争症候群」の原因が劣化ウラン弾である可能性は薄いと結論づけている(3)世界保健機関(WHO)も因果関係を示す証拠はないとしている−など反証を並べ立て、「バルカン症候群は疑問」の見出しを付けた異例の社説を掲げた。

 フランクリン・クレーマー国防次官補(国際安全保障問題担当)は十一日の記者会見で、「劣化ウラン弾の放射能は戸外を歩いて陽光から受けるものより弱い」とまで言い、「本当の事実が知られ次第、論争はすぐに消えてなくなる」と強気の姿勢をのぞかせた。

 アントニー・ブリンケン米大統領特別補佐官兼上級部長(欧州問題担当)はしかし、同日の記者会見で、「過去二十年間にわたり研究されてきた結果、劣化ウラン弾と、心配されている病気を結び付ける科学的な証拠はない」とする一方、「これは深刻にとらえなければならない問題だ」と、感情問題の厄介さに懸念もにじませている。

 劣化ウラン弾の使用凍結を否決した十日の北大西洋条約機構(NATO)大使級理事会に、国防総省の専門家二人が派遣されて欧州諸国への説明に当たったのも、NATOが劣化ウラン弾に関する情報開示などの対応を打ち出したのも、米国が事態を重くみたからにほかならない。

 劣化ウラン弾をめぐる疑惑で欧州の対米感情がこじれてしまえば、ブッシュ次期政権の対欧姿勢は発足早々から冷めてしまい、この問題だけで米欧の溝が深まる危険性すら出ている。

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 【劣化ウラン弾】劣化ウランは天然ウランから核燃料になる濃縮ウランをつくる際にできる。戦車砲や戦闘機、軍艦の機関砲の弾として使用するとその燃焼発火効果で貫通力が増す。

NATO、劣化ウラン弾問題で16日に初会合

2001.01.13 【ブリュッセル12日=共同】The Sankei Shimbun
 北大西洋条約機構(NATO)は十二日、劣化ウラン弾に関する特別会合を開き、十日の大使級理事会で設置を決めた同弾に関する特別委員会の初会合を十六日に開催することを決めた。

 特別会合では、今後の特別委の在り方などを協議。ユーゴスラビア・コソボ自治州で独自の放射線測定などを実施しているポルトガルは、調査結果を特別委に報告する意向を表明したが、これまでのところは高レベルの放射線は測定されていないという。

 特別委にはNATO加盟国だけでなく、ボスニアに展開する平和安定化部隊(SFOR)や、ユーゴスラビアの国連コソボ暫定統治機構(UNMIK)などに参加している非加盟国も加わり、同弾に関する情報交換や調整を行う。

ウラン弾不安なら帰国容認

2001.01.13【ウィーン12日=共同】The Sankei Shimbun
 ユーゴスラビア・コソボ自治州からの報道によると、同州に展開する国際治安部隊のギリシャ部隊を訪問したツォハツォプロス・ギリシャ国防相は十二日、劣化ウラン弾の人体への影響を心配する兵士の帰国を認める考えを表明した。

 国防相は記者会見で「一人たりとも意思に反して駐留してほしくない。部隊を去りたい者がいれば、すぐに補充する」と述べた。

 ギリシャはコソボに千五百人近い兵士を駐留させている。

NATO理事会、劣化ウラン弾の使用凍結は見送り

2001.01.11(20:45)asahi.com
 バルカン半島で使った劣化ウラン弾による健康被害の懸念が広がっている問題で、対応策を協議していた北大西洋条約機構(NATO)の大使級理事会は10日、国連の現地調査への協力などを確認した。イタリアなどが求めていた劣化ウラン弾の使用凍結は、米英などの反対で見送った。

 ロバートソン事務総長は理事会後の会見で、「危険が最小限であることには自信を持っているが、懸念を真剣に受け止め、情報を開示する」と語った。

劣化ウラン弾、中国外交官にも「被害」か

2001.01.11(20:19)asahi.com
 北大西洋条約機構(NATO)がバルカン半島で使用した劣化ウラン弾による健康被害が懸念されている問題で、中国紙、北京青年報は11日、中国の駐ユーゴスラビアの外交官ら数十人にも「被害」が出ている、と伝えた。中国外務省の朱邦造報道局長は11日の定例会見で、NATOのユーゴスラビア空爆を改めて強く非難し、健康問題について「事態の推移を注視している」と述べた。

 同紙は、1991年の湾岸戦争当時にクウェートに駐在していた外交官のインタビュー記事を掲載。米軍の使用した劣化ウラン弾によって健康障害が出たとの主張を紹介した。また、ベオグラードの中国大使館の話として、館員の「2、30人」が呼吸器系統や泌尿器官に問題が出ているとも伝えた。

劣化ウラン弾の使用凍結は見送り NATO理事会

2001.01.10(23:12)asahi.com
 バルカン半島で使用した劣化ウラン弾による健康被害の懸念が広がっている問題で、北大西洋条約機構(NATO)は10日、大使級理事会で、国連の現地調査への協力などを確認した。イタリアなどが求めていた劣化ウラン弾の使用凍結は、米英などの反対で見送った。

 ロバートソン事務総長は理事会後の会見で、「危険が最小限であることには自信を持っているが、懸念を真剣に受け止め、情報を開示する」と語った。

 理事会は、これまで明らかにしていなかったボスニアでの使用場所を国連に伝えることや、NATOの軍医が人体への影響を検討し、早急に理事会に報告することなどを確認した。

 使用凍結については、ロバートソン事務総長は「重大な危険があるという証拠はなにもない」と、その必要性を否定した。

劣化ウランと白血病の因果関係を否定 世界保健機関

2001.01.09(16:00)asahi.com
 バルカン半島で北大西洋条約機構(NATO)軍が使った劣化ウラン弾に健康被害の疑念が出ていることについて、世界保健機関(WHO)の専門家は8日記者会見し「劣化ウランを含む粉じんを長期間吸引し続けると、肺がんの発生率が高くなる可能性は理論的にあるが、白血病との因果関係は確認できないし、ありえないと思う」と語り、白血病との関係に否定的な見解を示した。

 同専門家によると、劣化ウラン弾が目前で爆発した場合、最悪でも1回当たりの被ばく量は最大10ミリシーベルト(放射線被ばくの共通単位)程度で、原発作業員らの年間の許容量である20ミリシーベルトより低いという。WHOは2月末までに、劣化ウランが健康に及ぼす影響をめぐる報告書をまとめる予定。

 劣化ウラン弾の影響については、国連環境計画(UNEP)も調査を続けており、3月に最終報告を公表する。

NATO、劣化ウラン弾の危険性認識 内部文書で判明

2001.01.06(23:00)asahi.com
 バルカン半島で北大西洋条約機構(NATO)軍が使った劣化ウラン弾について、NATOが1999年夏に、劣化ウラン弾による健康被害の可能性を指摘していたとするドイツ国防省の内部文書がある、と8日付の独紙ベルリナーモルゲンポストが報じた。

 同紙が伝えた99年7月16日付の文書によると、NATOは同月初め、バルカン半島の作戦で使われた劣化ウラン弾に毒性がある可能性を指摘した上で、予防手段をとるよう奨励してきた。文書は国防次官名で出され、NATO側には同弾の「毒性」による汚染を除去する計画はない、とも指摘した。

 劣化ウラン弾による健康被害への懸念は、バルカン半島に派遣されたイタリア軍兵士らが白血病で死亡したことなどから問題化した。ドイツではユーゴスラビア空爆に参加したり、その後ユーゴのコソボ自治州に派遣された約6万人の連邦軍兵士のうち、これまで約120人を抽出して健康診断した結果、国防省が劣化ウラン弾による健康被害はないとした。しかし、99年夏に危険性を認識していたことが明るみに出て、シャーピング独国防相は世論の批判を浴びている。

NATOも危険性を認識 バルカン症候群

2001.01.08 【ベルリン8日=共同】The Sankei Shimbun
 八日付のドイツ紙ベルリナー・モルゲンポストは、北大西洋条約機構(NATO)軍の元兵士らにがんなどが多発し、米軍が使った劣化ウラン弾との因果関係が疑われている「バルカン症候群」問題で、NATOが一九九九年七月の段階で劣化ウラン弾の危険性を認識していたと報じた。

 同紙は九九年七月十六日付のドイツ国防省の内部文書を引用し、劣化ウラン弾に「毒性」があるとして、NATOが兵士や軍属らに「予防手段」を講じるよう呼び掛けていたと指摘。ドイツ国防省も、劣化ウラン弾の危険性についてNATOから連絡を受けたことを認めた。

バルカン症候群 欧との同盟の火種にも

2001.01.07【ブリュッセル6日=佐野領】The Sankei Shimbun
劣化ウラン代替タングステン 米、中国依存嫌う

 欧州各国のバルカン帰還兵に白血病やがんが発症し、北大西洋条約機構(NATO)の空爆で米軍が使用した劣化ウラン弾との関連性が疑われている「バルカン症候群」をめぐり、NATOは九日に大使級理事会を開き、対応を本格化させる。現地調査を実施した国連環境計画(UNEP)が「自然環境よりやや高い水準」の放射線を検出、欧州の一部からNATOを突き上げる動きが強まる一方、米軍は破壊力が強く資材調達が簡単な劣化ウラン弾を戦略的に重視しており、米欧同盟のやっかいな問題に発展してきた。

 バルカン症候群は、イタリアでユーゴ・コソボ自治州とボスニア・ヘルツェゴビナの平和維持部隊に参加した帰還兵六人が白血病で死亡していたことが報じられ、フランス、ベルギーなどでも帰還兵の死亡が確認され一気に注目を集めた。イタリア政府がNATOに調査を要請、フランス国防省も調査開始を決め、欧州連合(EU)も医療面の調査開始を検討する。

 焦点は、昨年のユーゴ空爆と一九九四−九五年のボスニア空爆で米軍が使用した劣化ウラン弾とバルカン症候群の因果関係だ。

 劣化ウラン弾は九一年の湾岸戦争で米軍が実戦に使用したところ、帰還兵が健康異常を訴える「湾岸戦争症候群」が発生。米退役兵組織は米兵四十万人が被ばくしたと主張したが、米国防総省は九八年に因果関係を否定する報告をまとめた。今回も米国防総省は「科学的な調査もなく、因果関係は見つかっていない」としており、英国、スペイン、ドイツなどの国防省も同じ立場をとっている。

 NATOによると、米軍はユーゴ空爆でコソボ自治州の百十二カ所に三万一千発、ボスニア空爆では一万発の劣化ウラン弾を使用した。

 これに対し、国連環境計画報道官は五日、昨年十一月にコソボ自治州の十一カ所で現地調査を行い、うち八カ所で通常よりも高い水準の放射線を検出したことを明らかにした。今年三月に正式の報告書をまとめる見通しという。

 こうした危険性の指摘にもかかわらず、米軍が劣化ウラン弾にこだわるのは、弾頭として比重が大きく貫通時に高熱を発するため、最新式の戦車にも十分な貫通力を持つ長所があるためだ。代替材料としてはドイツなどが使用しているタングステンが有力だが、劣化ウランがウランの濃縮過程で廃材として生産されるのに対し、タングステンの主要産出国は中国で、米軍は安全保障上の理由から切り替えを渋っている。

露軍兵士に放射能障害なし 「バルカン症候群」問題

2001.01.07【モスクワ7日=共同】The Sankei Shimbun
 タス通信によると、シュパク・ロシア空てい部隊司令官は六日、バルカン帰還兵にがんが多発し、米軍が使用した劣化ウラン弾との関連が疑われている「バルカン症候群」問題について、ボスニア・ヘルツェゴビナやユーゴスラビア・コソボ自治州に派遣されたロシア軍兵士に放射能障害の事例が起きていないと述べた。

 イタリア軍人らの間で白血病などのがんが多発、劣化ウラン弾が原因ではないかとの疑いから、他の欧州各国にも騒ぎが広がっている。

バルカン帰還兵、仏でも4人が白血病で入院中

2001.01.06(00:32)asahi.com
 フランス国防省は4日、旧ユーゴスラビア紛争に従軍したフランス軍帰還兵4人が白血病で入院していることを明らかにした。4人は劣化ウラン弾を使って攻撃した戦車の近くにいたとみられている。

 リシャール国防相は5日、「現状では白血病と劣化ウラン弾との関連は薄いと見ているが、今後も調査を継続する」と述べ、北大西洋条約機構内での協議にも参加する意向を示した。

劣化ウラン弾への懸念拡大 帰還兵の白血病で

2001.01.05(17:53)asahi.com
 バルカン半島で北大西洋条約機構(NATO)軍が使った劣化ウラン弾による健康被害への懸念が、兵士6人が白血病で死亡したイタリアが専門家による調査委員会を設置したことなどをきっかけに、欧州同盟国に広がっている。因果関係を否定しているNATOも、この問題を来週にも討議し、対応を協議する方針だ。

 劣化ウラン弾の供給国である米国でも、湾岸戦争後に「湾岸戦争症候群」と呼ばれる症状が将兵に多発し、健康への影響が疑われている。沖縄でも米軍の実弾訓練に使われ続け強い批判を浴びた兵器をめぐる問題が、米欧同盟にとって、やっかいな問題に浮かび上がった。

 イタリア政府は、国内の報道をきっかけに、劣化ウラン弾の使用と兵士の病死との因果関係を調査するための専門家委員会の設置や、NATOへの調査要求を決めた。さらに、イタリアの元首相でもあるプロディ欧州委員長が、健康被害がはっきりすれば劣化ウラン弾は廃棄されるべきだと表明したことから、問題の深刻さを印象づけた。

 バルカン半島に展開した兵士4人が白血病と診断されたフランスをはじめ、ベルギー、ポルトガル政府もこの疑惑に対する調査を求めてきた。

 劣化ウラン弾はきわめて重く、鉄板を貫く能力に優れていることから、対戦車兵器として使われてきた。米政府とNATO事務局は一貫して、健康被害とのかかわりを立証できないとしてきた。しかし今後、NATOの欧州同盟国からは因果関係の徹底した解明や、旧ユーゴスラビアの市民への影響調査などを求める要求が一段と強まりそうだ。

バルカン帰還の伊軍兵士に白血病死相次ぐ

2001.01.04(21:45)asahi.com
 バルカン半島の紛争に派遣されたイタリア軍兵士に白血病が相次ぎ、これまでに6人が死亡していることがわかり、問題となっている。イタリア各紙が4日までに伝えたもので、北大西洋条約機構(NATO)が使った劣化ウラン弾との因果関係が疑われている。国防省は死んだ6人について内部調査するための専門家による委員会を設置。野党からは国会にも特別調査委員会の設置を求める動きも出ている。アマート首相はNATOに公式な説明を求める方針だ。

 劣化ウラン弾は戦車攻撃などに用いられ、使用後の放射性物質による影響が心配されている。湾岸戦争でも問題となったが、人体への影響との因果関係はまだ解明されていない。NATOはボスニア・ヘルツェゴビナで1994―95年に約1万発、99年にはユーゴスラビア・コソボ自治州で3万発以上の劣化ウラン弾を使ったとされる。

 イタリア国防省のオスティリオ次官は、両紛争の前線で活動したすべての兵士の健康状態について保健省が把握しているかどうか確認を求めた。ボスニアに展開する和平安定化部隊からイタリア兵を撤退させるべきだ、との声も出ている。

 ポルトガルやベルギーなどからも調査を求める声が高まっている。イタリアのANSA通信によると、NATOの報道担当者が「イタリアが求める情報を提供するため必要な準備をする」と述べた。

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