TOPIC No.5-30 肝炎

01. 薬害肝炎訴訟について
02 薬害問題 Yahoo!ニュース
03 肝炎
04. 大阪肝臓友の会
05.  日本肝臓病患者団体協議会
05. 薬害肝炎 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

最大4000万円の補償求める B型肝炎訴訟で原告主張

2010/09/16 中国新聞ニュース

 全国B型肝炎訴訟のうち北海道訴訟の第4回和解協議が15日、札幌地裁(石橋俊一いしばし・しゅんいち裁判長)であり、原告側は補償額について、症状に応じて1200万〜4千万円を支給する薬害肝炎救済法を基準とするよう主張した。

 国側が「民法の規定で賠償請求権が消滅した」とする未発症の無症候性キャリアーについても、薬害肝炎と同様に補償対象とするよう求めた。

 和解協議で原告側が具体的な補償額を示すのは初めて。先行した訴訟で1人当たり550万円(弁護士費用含む)の支払いを命じた2006年最高裁判決を基準とする国とは、補償対象、額のいずれも大きく隔たった。

 原告側によると、石橋裁判長は、次回までに具体的な金額を示すよう国側に要請し、国側は「持ち帰る」と答えた。協議後に記者会見した原告側は「年内の基本合意成立に向け裁判所が強い姿勢を示した」と評価した。

 和解協議で原告側は最高裁判決について「慢性肝炎患者と無症候性キャリアーに一律に支払われた慰謝料で、発症の損害を加えた補償額はより多くなる」と主張。

 無症候性キャリアーに関しては「絶えず発症の不安を抱え生活している。対策を怠った国が責任を否定するのは許されない」と反論した。  国側が母子手帳に代わる接種証明に挙げた注射痕については「残っていなくても対象外とすることは認められない」とした。  一連の訴訟の原告は全国10地裁で511人。症状に応じて1500万〜6千万円の損害賠償を求めて提訴した。


フィブリノゲン糊使用556カ所 厚労省が医療機関名を公表

2008/04/11 中国新聞ニュース

 薬害肝炎問題で厚生労働省は十一日、血液製剤フィブリノゲンをのり状に加工した「フィブリン糊のり」を、外科手術などで止血や縫合の際に使用した可能性がある医療機関が全国で計五百五十六カ所に上ると発表した。

 販売元のミドリ十字を引き継いだ「ウェルファイド社」(現在の田辺三菱製薬)が二〇〇一―〇二年にかけて実施した調査結果などを基に特定した。

 いずれも既にフィブリノゲン納入先として公表されている約七千の医療機関に含まれており、厚労省は同日、ホームページに掲載しているこれらの医療機関名の備考欄に「フィブリン糊として使用した可能性がある」との説明を付け加える形で公表した。

 同省はこれらの医療機関で外科手術などを受けたことがある人に対し「念のためウイルス検査をしてほしい」(血液対策課)と呼び掛けている。

 都道府県別の内訳は東京が最多の四十六カ所。次いで北海道四十三カ所、大阪三十九カ所。

 フィブリノゲンは主に出産時の止血剤として投与され、C型肝炎ウイルス感染の原因になった。一九八〇年以降、約二十八万人に投与され一万人以上が感染したとされる。このうちフィブリン糊については「約七万九千人に使用され、約千二百人が感染した」とする推計があるだけで、実際に扱った医療機関名は不明だった。

 東京都と静岡県の男性二人が昨年十一月、外科手術でフィブリン糊を使われたとして提訴し、今年三月に国と和解した。

 同省の問い合わせ先はフリーダイヤル、0120(509)002(土、日、祝日を除く午前九時半から午後六時)

◇   ◇

▽フィブリノゲン糊を使用した可能性がある医療機関(関係分)

【広島】

広島市民病院(広島市中区)/ 県立広島病院(広島市南区)

広島大学病院(広島市南区)/ 呉医療センター(呉市)

中国労災病院(呉市)/ 呉共済病院(呉市)/ 土肥病院(三原市)

福山第一病院(福山市)/ 北川病院(府中市)

難波病院(現・なんば診療所)(府中市)

【山口】

下関市立中央病院(下関市)/ 宇部興産中央病院(宇部市)

山口大学医学部付属病院(宇部市)/ 坂田外科(宇部市)

山口総合病院(山口市)/ 防府胃腸病院(防府市)

岩国みなみ病院(岩国市)/ 岩国医療センター(岩国市)

徳山中央病院(周南市)

【岡山】

榊原病院(岡山市)/ 岡山赤十字病院(岡山市)

岡山大学医学部・歯学部付属病院(現・岡山大学病院)(岡山市)

岡山医療センター(岡山市)/ 岡山労災病院(岡山市)

岡村一心堂病院(岡山市)/ 川崎医科大学付属病院(倉敷市)

倉敷中央病院(倉敷市)/ 前田病院(倉敷市)/ 倉敷成人病センター(倉敷市)

水島協同病院(倉敷市)/ 水島第一病院(倉敷市)/ 水島中央病院(倉敷市)

三菱水島病院(倉敷市)/ 玉島中央病院(倉敷市)/ 津山中央病院(津山市)

笠岡中央病院(笠岡市)/ 赤磐郡医師会病院(赤磐市)/ 中山病院(真庭市)

南岡山医療センター(早島町)

【島根】

松江生協病院(松江市)/ 松江赤十字病院(松江市)

島根大学医学部付属病院(出雲市)/ 益田赤十字病院(益田市)

【鳥取】

鳥取生協病院(鳥取市)/ 鳥取市立病院(鳥取市)/ 山陰労災病院(米子市)

提嶋外科クリニック(現・上福原内科クリニック)(米子市)

鳥取大学医学部付属病院(米子市)/ 谷口病院(倉吉市)/ 厚生病院(倉吉市)

野島病院(倉吉市)/ 清水病院(倉吉市)/ 三朝温泉病院(三朝町)

B型肝炎、新たに提訴 救済求め全国10地裁でも

2008/03/28 中国新聞ニュース

 注射器が使い回されていた乳幼児期の集団予防接種でB型肝炎に感染したとして、北海道内の患者五人が国に計約一億九千二百万円の損害賠償を求める訴訟を二十八日、札幌地裁に起こした。今後、他の十地裁でも集団提訴が予定されている。

 B型肝炎訴訟をめぐっては、二〇〇六年六月に最高裁が注射器の連続使用を放置した国の責任を認め、札幌市の患者ら原告五人の勝訴が確定した。しかし患者全体に対する具体的な支援や救済は進んでおらず、新たな提訴に踏み切った。

 原告は母子感染などの可能性がなく、幼少時に受けた集団予防接種でB型肝炎に感染したとみられる三十―五十五歳の男女五人。今後、追加提訴し、原告は数十人規模になる見通し。

 また、早ければ五月以降、仙台、東京、新潟、静岡、名古屋、大阪、鳥取、松江、広島、福岡の各地裁でも患者が順次訴訟を起こす予定。

 訴状によると、原告らが接種を受けた道内では、一九八〇年ごろまで注射器が連続使用された。遅くとも四八年には連続使用でウイルス感染の危険性があるとの医学的知見があったが、国は注射器の交換や消毒の徹底について自治体などに指導する義務を怠った。

フィブリノゲン投与は8900人に急増 薬害肝炎

2008/02/15 中国新聞ニュース

 薬害肝炎問題で厚生労働省は十五日、これまでに血液製剤フィブリノゲン投与の事実が確認された患者数は、全国で計八千八百九十六人に上ると発表した。このうち何人がC型肝炎に感染したかは不明で、医療機関から事実を伝えられた人は41%の三千六百三十二人にとどまる。

 昨年十一月から十二月にかけて実施した、フィブリノゲン納入先の六千六百九の医療機関を対象とした調査で分かった。

 千六百二十二の医療機関で、カルテや手術記録など投与の証明につながる可能性がある資料を保管していることも判明。カルテの有無だけに絞った二〇〇四年の前回調査より、約千百カ所増えた。

 薬害肝炎訴訟では被害者救済法に基づき、フィブリノゲンなどの投与を証明できる資料がある人で、C型肝炎感染との因果関係が確認できれば、給付金が支払われる。

 訴訟の原告団は前回調査結果に基づき、投与を証明できる人は最大千人程度と試算していたが、資料を保管していた医療機関が増えたことで、給付金の支給対象者が大幅に増える可能性が出てきた。

 前回調査では患者数まで確認しておらず、舛添要一厚労相は十五日の閣議後会見で「きちんと調べていれば、(前回調査時点で)患者数が分かったはずだ」と同省の対応の不十分さを指摘。今回判明した患者に対し、医療機関を通じ、ウイルス検査を呼び掛ける考えを明らかにした。

 調査結果によると、投与が確認されたにもかかわらず本人に伝えていない理由は「投与後に死亡」が千七百十一人(19%)、「連絡先不明」が千六百九十六人(19%)、「その他」が千八百五十七人(21%)だった。

 保存されていた資料の内訳(複数回答)は、手術記録や出産記録千二百八十八カ所、カルテ千二百十三カ所、処方せん百十六カ所などだった。

 二〇〇四年に実施した調査で、厚労省はカルテを保存している医療機関が全体の7%に当たる約四百七十カ所にとどまると発表。

 フィブリノゲンをめぐっては、一九八〇年以降、約二十八万人に投与され、うち約一万人がC型肝炎に感染したと製造元の旧ミドリ十字が推計している。

医薬品機構に電話相談窓口 薬害肝炎救済法施行で

2008年01月16日 中国新聞ニュース

 薬害肝炎救済法が16日施行され、給付金を支給する独立行政法人医薬品医療機器総合機構は同日、患者らの問い合わせに対応する専用の電話相談窓口を設置した。

 給付金を受けるには、特定の血液製剤でC型肝炎に感染したことを証明する資料をそろえて裁判所に提訴し、被害者の認定を受けた上で国と和解し、関係書類を同機構に提出する必要がある。同機構や厚生労働省は、こうした手続き方法をホームページに掲載、周知を図る。

 一方厚労省は、感染原因となった血液製剤が納入された約7500カ所の医療機関名や所在地を掲載した政府広報約3000万部を、17日付の新聞計73紙に折り込んで配布。投与を受けた心当たりのある人に、肝炎のウイルス検査を受けるよう呼び掛ける。

 機構への電話相談は、フリーダイヤル(0120)780400または03(3506)9508。平日の午前9時から午後6時まで。

薬害肝炎救済法が成立へ 15日に和解合意書締結

2008年01月10日 中国新聞ニュース

 薬害C型肝炎の患者を一律救済するための薬害肝炎被害者救済特別措置法案が10日午後、参院厚生労働委員会で全会一致で可決された。11日の参院本会議で可決、成立する。

 舛添要一厚生労働相は委員会答弁で「政府の責任を率直に認め、おわびをきちんとした形で表明し、2度と薬害を起こさない方策の検討を行いたい」として、法成立後に福田康夫首相が国の責任とおわびを談話の形で表明する方針を示した。

 原告・弁護団と政府は和解についての基本合意書を15日に締結する予定。全国で係争中の訴訟は順次、和解による解決に向かう。

 委員会では、東京HIV訴訟の元原告でC型肝炎感染者でもある川田龍平参院議員が「同じ薬を投与された先天性疾患の患者らが除外され、救済されないのは納得できない」と指摘。こうした意見を踏まえ、救済範囲の拡大などの検討を政府に求める委員会決議を行った。

薬害肝炎、全面解決へ 救済法案、1月9日にも成立

2007年12月29日 読売新聞 YOMIURI On-Line

 自民、公明両党の「与党肝炎対策プロジェクトチーム」(座長=川崎二郎・元厚生労働相)は28日、薬害C型肝炎の被害者を一律救済する法案骨子を正式決定した。

 薬害C型肝炎訴訟の原告側との協議での合意に基づくもので、野党各党も同法案に基本的に賛成する考えだ。今国会中の成立は確実で、同訴訟は全面解決に向かう。法案は1月9日にも成立する公算だ。政府と原告側が正式和解する際に交わす「基本合意書」骨子も決まり、厚労相が第三者機関を設置し、薬害肝炎問題の検証を行うことなどが盛り込まれた。

200億円基金 国が全額立て替え

 被害者への給付金に充てるため国と製薬会社2社が拠出してつくる200億円規模の基金は、独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」に設ける。製薬会社に拠出を強制できないことから、国が全額立て替えることとし、被害者の早期救済を優先した。基金の規模は給付対象者が約1000人との仮定から算出したが、「被害者の人数は推論に過ぎない」(川崎座長)ため、200億円を超える可能性もある。製薬会社の拠出割合を決めていないことから、厚生労働省と製薬会社の協議の難航も予想される。

 請求期限は法律施行から5年以内。給付金の受け取り後、症状が悪化した場合は、医師の診断書を提出することで追加給付が受けられるが、追加給付の期限は最初の給付から「10年以内」と区切った。

 一方、基本合意書の骨子では、血液製剤「フィブリノゲン」と「第9因子製剤」投与の事実確認をカルテ以外の記録でも証明できるとした。薬害肝炎問題の検証の第三者機関を設置するほか、再発防止対策を被害者と継続的に協議するとした。基本合意に基づき和解しようとする新規提訴者には、救済法施行後3年以内なら、国などは消滅時効の主張をしないとした。

[解説]「国の責任」玉虫色決着

 焦点となった「国の責任」について、救済法案の前文は「甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任」との表現を採用した。国に反省を促し、薬害の再発防止を図るには「薬害を発生させた責任」の明記が必要という原告側と、「薬に副作用はつきもの。薬害の発生責任を認めれば、副作用のある薬は承認できなくなる」とする厚生労働省。前文は、国の責任が生じた時期を明記しない「玉虫色」の書き方で、双方が納得できる形に落ち着いた。

 約200人が5地裁に提訴した訴訟は和解の道筋がついたが、製薬会社が応分負担をのめるかという難問は残る。「一律救済」が想定する患者は原告側推計で最大1000人程度。B型も含め350万人とされるウイルス性肝炎患者・感染者のごく一部に過ぎない。

 今後、別の血液製剤や輸血、集団予防接種の注射器使い回しによる感染者の救済が問題化する可能性もある。肝炎患者の多くは、何らかの医療行為がもとになった「医原病の被害者」という側面があるからだ。

 国は、高額のインターフェロン治療の医療費助成として来年度予算に129億円を計上するが、B型を中心に、それでは効果がない患者も多い。肝炎対策という巨大な課題は、まだ緒に就いたばかりだ。(社会部 高梨ゆき子)

薬害肝炎患者を一律救済 首相が表明

2007/12/23 中国新聞ニュース

 福田康夫首相は二十三日午前、薬害肝炎訴訟の和解協議をめぐり、自民、公明両党で全員一律救済に向けた議員立法を今臨時国会に提出することを明らかにした。官邸で記者団に語った。

 首相は「患者全員を救済する議員立法について自民党との相談の結果、決めた。公明党の了解を得ている」と表明。法案に関して「可及的速やかに通していただきたい」と強調した。野党にも協力を求める考えを示した。

一律救済で独自修正案 薬害肝炎原告側が18日に提出

2007/12/17 中国新聞ニュース

 薬害肝炎訴訟の原告・弁護団は十七日、未提訴の患者を含むすべての感染被害者に国と製薬企業が一律の金銭補償をすることを柱とした独自の和解案を公表した。金額は高裁に委ねるとしている。

 原告側は同案を十八日に大阪高裁に提出するとともに、福田康夫首相の政治決断を文書で官邸に要請する。

 和解案は、血液製剤の投与時期に基づき国などの責任範囲を限定した大阪高裁の和解骨子案に対する「修正案」。原告側はこれまでも全員一律救済を求めているが、書面にまとめたのは初めて。

 国は全員一律の救済に強い難色を示しており、合意の見通しは立っていない。

 一方、国が十五日に原告側に示した修正案は、責任範囲から外れる未提訴者のために総額五億円の「活動支援金」を支出する内容だったことが新たに判明した。原告側は「患者切り捨てにつながる」として拒否している。

 原告側の和解案によると、国と製薬企業はC型肝炎の感染被害を防止できなかったことについて責任を認め謝罪し、原告や未提訴の患者に対し、病状に応じた一律の和解金を支払うとしている。和解成立後に病状が進行した場合の補償は引き続き協議する。

 血液製剤の投与事実は主にカルテなどの記録で証明。和解成立から三年以内に限り、提訴時効(三年)や賠償請求権が消滅する期間(除斥期間)を適用しないとしている。

東京地裁基準なら和解拒否 薬害肝炎訴訟の原告ら決める

2007/12/09 中国新聞ニュース

 薬害肝炎訴訟の原告・弁護団は九日、都内で全国会議を開き、大阪高裁が十三日に予定している和解期日に東京地裁判決を基準にした和解骨子案を提示した場合、被害者全員の一律救済につながらないとして拒否する方針を決めた。

和解骨子案の拒否を正式決定 薬害肝炎原告団

2007.12.09 MSN産経新聞

 薬害C型肝炎訴訟で、13日に大阪高裁の和解骨子案が提示されることを受け、薬害肝炎全国原告団などは9日、東京都内で会議を開き、投与時期や製剤の種類などによって救済対象となる患者を線引きする内容が提示されれば、和解案には応じないことを正式決定した。

 会議には原告ら約80人が出席。弁護士から11月7日の大阪高裁による和解勧告後の国の主張や、交渉の経緯などの説明があったという。

 これまでの交渉で国側は、法的責任を認める期間を昭和62年から63年に限定したい意向を伝えている。和解後に薬害を訴えた人には、法的責任を認めた期間内に肝炎となった場合に限定して補償したい考え。だが、未提訴の患者の一部が救済されない恐れがあり、原告側は未提訴者を含めた被害者全員の「一律救済」を求めている。

 会議後の会見で、同原告団代表の山口美智子さんは患者の線引きの可能性がある骨子案について、「線引きは全員救済という理念に反する。国の主張は絶対に受けられない。同じ被害を受けた人は同じ救済を受けるのは当然」と強調した。

 大阪高裁は6日、当初は7日に公表するとしていた和解骨子案について、13日午後、正式に当事者に交付すると発表している。

「フィブリン糊」感染の2人が提訴 薬害肝炎訴訟

2007.12.07 MSN産経新聞

 薬害肝炎訴訟で11月に追加提訴した30人の原告の中に、汚染された血液製剤「フィブリノゲン」に別の薬など混ぜて作る「フィブリン糊」でC型肝炎に感染したとみられる男性患者2人が含まれていることが7日、分かった。フィブリン糊による患者の提訴は初めて。

 訴えたのは、静岡県内の40代男性と東京都内の70代男性。投与時期は40代男性が昭和62年8月、70代男性は59年11月。いずれも心臓手術を受けた際、旧ミドリ十字が発売したフィブリノゲン製剤で作られたフィブリン糊を使用され、その後、慢性肝炎と診断された。2人とも自ら病院に問い合わせ、手術記録で確認された。

 フィブリン糊は、フィブリノゲンにほかの薬剤を混ぜて糊状にしたもので、昭和56〜62年ごろまで、心臓外科や脳外科などの手術で血管縫合時の止血剤として使用されていた。

 フィブリン糊による感染者は三菱ウェルファーマ(現・田辺三菱製薬)が平成14年の調査で約50人を確認。しかし、フィブリン糊は全国で約7万9000人に使用されたとみられ、実際の感染者は約1200人にのぼるとみられる。感染率は1・5%でフィブリノゲンの点滴投与よりも危険性は低いとされている。

 薬害肝炎東京訴訟弁護団の福地直樹事務局長は「フィブリン糊は手術時に使用されるので、患者側に自覚が少なく、今まで被害調査が遅れていた。早急な調査と救済を進めてほしい」と話している。

薬害肝炎訴訟 大阪高裁が和解骨子案提示延期

2007.12.06 MSN産経新聞

 汚染された血液製剤でC型肝炎になったとして、患者が国と製薬会社に損害賠償を求めた薬害肝炎大阪訴訟の控訴審で、和解勧告をしている大阪高裁(横田勝年裁判長)は6日、今月7日ごろまでに提示する方針だった「和解骨子案」について、13日に延期することを明らかにした。薬害被害者の「全員救済」を求める原告側と国側の提案に隔たりがあり、高裁の調整が難航しているためとみられる。

 高裁は延期について、「諸般の事情を考慮の上」として詳細な理由は明らかにしなかった。すでに双方には和解骨子案の基本部分を口頭で伝えているが、13日には書面で正式に和解骨子案を提示する。

 大阪訴訟の弁護団は延期を受け「投与時期や製剤を問わず、シンプルな全員救済を求めている。高裁は努力してくれているが、現時点ではそうなっていない」と指摘。今月4日に舛添要一厚生労働相が原告らに初めて謝罪したことなどもふまえ、「近日中に政治判断がさらに進む可能性もある」として、原告・弁護団から延期の申し入れをしていた。

 国側の案は、汚染された血液製剤「フィブリノゲン」の投与に関して、国の責任を昭和62年4月(加熱製剤の承認)から63年6月(製薬会社が緊急安全情報発信)に限定して認めることが柱。国が敗訴した全国4訴訟の中で、国の責任を最も狭く認定した東京地裁判決の基準を踏襲したとみられる。

 そのうえで、国側はこの期間に投与を受けた原告に対して製薬会社と併せて解決金約22億円を支払い、期間外に投与を受けた原告やフィブリノゲン以外で感染した原告らには約8億円を支払い、合計約30億円の配分に関しては原告に一任する考えを示していた。

 しかし、現在の原告以外の患者については投与時期を限定する考えを提示。現時点では高裁もこうした案を盛り込んでいる可能性が高く、「薬害患者の全員救済」が前提の原告側が抵抗姿勢を見せていることから延期を決めたとみられる。

薬害肝炎 リスト患者が追加提訴

2007.12.05 MSN産経新聞

 汚染血液製剤「フィブリノゲン」でC型肝炎に感染した疑いが強い418人のリストが放置された問題で、リスト上にある2人の患者が5日、国を相手取り損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。薬害肝炎訴訟の原告は計203人となった。

 2人のうち、愛媛県西条市の加地智子さん(51)は同日午後、厚生労働省での記者会見で「今まで肝炎は輸血が原因と思っていた。(リストが作成された)平成14年に告知してくれれば、再び肝炎と向き合い、治療を再開できた」と、涙ながらに訴えた。

 加地さんは3年3月、出産時の大量出血で同剤を投与された。

 その後、急性症状を発症し、治療を始めたが身体的な負担から11年に治療を断念した。先月6日、投与の病院から呼び出され、自分が418人のリスト上にあることと肝炎は同剤が原因であることを告知された。

 原告団によると、加地さんへの投与時期は原告団で最も遅く、C型肝炎の検査方法が確立された後だった。

薬害肝炎で舛添厚労相が初めてのお詫び

2007.12.04 MSN産経新聞

 薬害C型肝炎訴訟をめぐり、舛添要一厚生労働相は4日、国会内で原告15人と面会し、「心からおわび申し上げたい」と初めて謝罪した。舛添厚労相が原告らに会って謝罪したのは初めて。

 舛添厚労相は面会時に、「長いこと皆様方にご苦労を心身ともにお掛けした。亡くなられた方がいるということで、本当に心からおわび申し上げたい」と着席したまま述べ、薬害肝炎問題の全面解決に向け努力する考えを改めて表明した。

 薬害肝炎訴訟では7日までに大阪高裁で和解勧告の骨子案が出る見込みだが、直前の謝罪に原告らは「心が1つになった」と前向きに受けとめる声がある一方で、「投与時期などで補償の線引きされる可能性がある」と警戒感を抱く声も出ている。

 面会は和解勧告が出た先月7日に続き2度目。

 面会後、記者会見した全国原告団代表、山口美智子さんは「(放置した)418人のリスト問題や国のこれまでの対応を含めたおわびと受けとめた」と話した。

 一方、鈴木利広弁護団代表は、国が和解交渉の中で、昭和62〜63年の範囲に限定して国の責任を認めた東京地裁判決(今年3月)を基準に患者救済を線引きする可能性を指摘。「国が東京地裁判決の基準で裁判所に対応しているのは、われわれも大阪高裁を通じて感じている」と述べた。

薬害肝炎、症例リスト418人中の死亡判明増え51人に

2007年12月04日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 血液製剤「フィブリノゲン」の投与でC型肝炎となった疑いが強い418人の症例リストが放置されていた問題で、リストの患者を特定し、告知を行っている田辺三菱製薬は4日、判明した死亡者数は先月30日現在で計51人になったと厚生労働省に報告した。1週間前の前回報告に比べ4人増えた。ほぼ特定できた患者は前回より15人増えて265人。5人に1人が死亡していたことになる。

 医療機関を通じて告知し、受診を勧奨したのは92人(前回比10人増)。

薬害肝炎 「クリスマシンも対象に」

2007年12月03日 読売新聞 Yomiuri On-Line

厚労相が救済明言

 大阪高裁で和解協議中の薬害C型肝炎訴訟について、舛添厚生労働相は3日、記者団に対し、血液製剤のうち「クリスマシン」などの第9因子製剤を投与された原告も救済対象とする方向で協議していることを明らかにした。

 舛添厚労相は「投与時期や製剤の種類も含め、できるだけ広く救済するよう詰める」と述べ、フィブリノゲン以外を投与された原告も救済する考えを強調した。

 実名を公表して全面解決を訴えている原告の福田衣里子さん(27)は、1980年の出生時、止血剤としてクリスマシンを投与され、C型肝炎に感染したが、自身は昨年8月の福岡地裁判決で敗訴。福岡高裁に控訴中だが、同高裁も先月12日、大阪高裁に続き和解勧告を出した。

 舛添厚労相は「福田さんも救済の対象になる」と明言。福田さんは、「真意はわからないが、私だけでなく、原告を全員救済するという思いで言ってくれているのであればうれしい」と話している。

 薬害C型肝炎訴訟は全国5か所で提起され、このうち大阪高裁が今月7日までに和解骨子案を提示する予定で原告と国、旧ミドリ十字が協議している。

生かせなかった薬害エイズの教訓 薬害肝炎調査チーム最終報告

2007.11.30 MSN産経新聞

 舛添要一厚労相が「洗いざらい調べる」と公言して設置した調査チームの最終報告の全体を貫くものは「反省すべきも責任はなし」というスタンスだ。薬害エイズで問題になった「行政の不作為」は問われないことになった。

 その理由を調査チームは「職員を処分するには法律上の根拠が必要」と説明した。薬事法は個々の患者への注意喚起は定められていない。418人のリスト作成の目的も、個々の患者を探して告知する目的ではなかったことから、責任は問えないという論理だ。

 本来は国民の生命や健康を守るべき薬事法が、官僚の体面を守るという皮肉な結果に終わった。

 調査チームは30日で解散したが、418人の病状がどのような経過をたどったかは今後、医療関係者らで組織された新たな検討会が解明する。

 フィブリノゲン製造元の田辺三菱製薬によると、死因は不明なものの、リスト掲載者のうち47人の死亡が確認されている。追跡調査は続いており、今後も死者の数が増える可能性が高い。死因が薬害であることが判明すれば、再度、厚労省の責任を問う声が高まることも考えられる。

 最終報告では、法的解釈は別にして、患者の視点に立って告知に動く官僚が皆無だったことを指摘。「患者に思いを致すべきという批判を、組織として重く受け止めるべき」と批判した。そこには、薬害エイズの教訓を生かせていない厚労省の体質が浮かび上がっている。(鎌田剛)

厚労省調査チームが薬害肝炎リスト放置を「反省」

2007.11.30 MSN産経新聞

 血液製剤「フィブリノゲン」の投与でC型肝炎に感染した疑いが強い患者418人分のリストを厚生労働省が放置していた問題で、同省の調査チームは30日、「国は患者の視点に立って、告知に関する配慮があってしかるべきであり反省すべきだ」と、患者への告知をしなかった国の落ち度を認める最終報告をまとめた。

 調査チームは、告知を怠った責任は、法的根拠がないことなどを理由に「国に責任があるとまではいいきれない」と指摘。一方、同省の地下倉庫のリストに関する実名資料や、患者の個人特定につながる資料の放置については「文書管理の大切さの意識が欠落していた」と、関係職員を近く処分するとしている。

 当時の厚労省の担当者らは全員、「告知について思い至らなかった」と証言したという。しかし、調査チームは「フィブリノゲン」以外の製剤を感染原因としたケースについて、13年に告知の体制が取られていたことを理由に「フィブリノゲンも告知をやろうと思えばできた」と判断。「苦しんでいる人々に何を行うべきかを考えよという批判を、組織全体として重く受け止めるべきだ」とした。

 放置された資料は14年に田辺三菱製薬(旧三菱ウェルファーマ)から提出されたが、16年に担当職員が机の周りを整理するために地下倉庫に移し、その後、引き継がれなかったという。

 調査チームは、地下倉庫から資料が見つかったことを受けて発足。約1カ月かけ、厚労省の職員47人や、肝炎治療の専門家、患者、製薬会社から聞き取りを実施。(1)リストが作られた14年当時の個人告知に関する認識(2)汚染血液製剤が使われた医療機関名を公表した16年当時の認識(3)厚労省の資料管理体制−などを検証してきた。

血液製剤の投与者全員に告知…厚労省

2007年11月17日 読売新聞 Yomiuri On-Line

フィブリノゲン以外も

 薬害C型肝炎の感染源となった血液製剤「フィブリノゲン」の投与患者約28万人について、投与の事実を告知する方針を決めている厚生労働省は16日、B・C型肝炎の感染源と疑われる第8、9因子製剤を含むすべての血液製剤について、加熱・非加熱を問わず投与患者への告知を行うと発表した。

 フィブリノゲン投与の告知は、投与が原因でC型肝炎に感染した疑いが強い418人の症例リストの患者情報を、同省や旧ミドリ十字(現田辺三菱製薬)が放置していた問題がきっかけで、舛添厚労相が先月、実施を表明した。

 しかし、フィブリノゲンは感染源の一部に過ぎず、他の血液製剤も対象にすべきだとの声が強まったため、同省は他の血液製剤についても、製薬会社に発売以来の副作用報告を再提出させて患者を特定、医療機関を通じて告知を促すことを決めた。

 同省によると、血友病以外の病気で、止血剤として血液製剤を投与された可能性が高いのは、〈1〉新生児出血症などの病気で「血が止まりにくい」と指摘された〈2〉大量の出血を伴う手術を受けた〈3〉肝硬変や劇症肝炎で入院し出血が多かった――などのケース。

 同省は「フィブリノゲンのほかの製剤では目立った副作用報告は出ていないが、念のために対象を広げた」としている。

薬害肝炎 福岡高裁も和解勧告

2007年11月13日 読売新聞 Yomiuri On-Line

原告団「流れ止められない」

 血液製剤でC型肝炎ウイルスに感染させられたとして、患者らが国と製薬会社に損害賠償を求めた「薬害肝炎九州訴訟」控訴審の口頭弁論が12日、福岡高裁で開かれた。

 丸山昌一裁判長は、大阪高裁の和解勧告に言及し、「早期に柔軟かつ妥当な解決を図るには和解が望ましいと考えている」と和解勧告した。

 原告団は10月15日、「早期全面解決のための和解勧告」を求める上申書を福岡高裁に提出していた。原告側は、同様の上申書を東京、名古屋、仙台の3高裁にも提出しており、福岡高裁も和解勧告したことで、全国の訴訟に影響を与えそうだ。大阪高裁は12月7日までに和解骨子案を出すとしており、弁護団によると、丸山裁判長は「12月7日以降、和解をどう進めるかについて関係当事者で集まりたい」と提案。国は「予期してなかったので持ち帰りたい」とし、次回の協議は12月12日に仮指定された。

 薬害肝炎訴訟は福岡、東京、大阪、名古屋、仙台の5地裁で提訴され、原告は全国で計171人。製薬会社と、副作用が判明した時点で規制を行わなかった国の責任の有無が争われ、仙台を除く4地裁が国の責任を認めた。九州訴訟の原告は50人。

                ◇

 閉廷後の記者会見で、全国原告団代表の山口美智子さん(51)(福岡市)は「大変うれしい。和解勧告の4文字がいかに重い言葉か」と涙ぐんだ。

 原告の出田(いでた)妙子さん(49)(熊本市)も「大きな後押しを裁判所から頂いた」、福田衣里子さん(27)(長崎市)は「この流れは誰にも止められない」と声を詰まらせた。

薬害肝炎で大阪高裁が和解勧告 1カ月以内に骨子案

2007/11/07 中国新聞ニュース

 汚染された血液製剤でC型肝炎になったとして、患者が国と製薬会社に損害賠償を求めた薬害肝炎大阪訴訟の控訴審で、大阪高裁(横田勝年よこた・かつとし裁判長)は七日、和解を勧告した。

 横田裁判長は「現段階では検討、調整すべき事項はかなりあるが、和解成立の可能性があるとの判断に達した」と述べ、遅くとも十二月七日ごろまでに和解の骨子案を提示する考えを示した。和解に対する高裁の「所見」は「時期尚早で控える」と述べた。

 既に全当事者が和解協議に応じる意向を表明しており、患者側と国側が対立している国の法的責任や救済の範囲が今後の焦点になる。

 一万人以上が発症したとされる大規模薬害をめぐる訴訟は、二〇〇二年の第一次提訴から五年を経て大きなヤマ場を迎えた。

 また、横田裁判長は「今後は代理人とだけでなく、当事者との面談の機会も持ちたい」として、原告の患者から被害の状況などを直接聴く意向も表明した。

 舛添要一厚生労働相は七日の衆院厚労委員会で「国として和解協議のテーブルに着き、一日も早い問題の解決に取り組みたい」と述べた。

 薬害肝炎訴訟は仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の五地裁に提訴され、仙台を除く四地裁が判決で製薬会社とともに国の責任を認定。患者らは九月、大阪高裁に和解勧告を求める上申書を提出し、高裁は「和解による解決を望む」として調整を進める意向を示した。

 患者側が国の謝罪や原告全員の救済を求める中、福田康夫首相が国の責任を認めたのに続いて、舛添厚労相は今月二日、謝罪と補償に応じる意向を明らかにしていた。

薬害肝炎、厚労相「謝罪、補償する」…月内和解を目指す

2007年11月03日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 血液製剤の投与でC型肝炎に感染したとして、患者が国や製薬会社を相手取って起こした薬害C型肝炎訴訟について、舛添厚生労働相は2日、横浜市で開かれた会合で講演し、「謝罪すべきは謝罪し、補償すべきは補償する」と述べ、国として原告側に謝罪し、救済する考えを表明した。

 訴訟を巡っては、福田首相が国の責任を認める発言をしているが、原告への謝罪について国側が直接言及するのは初めて。舛添厚労相は「肝炎問題は11月いっぱいで片づける」とも述べ、年内をめどとしていた解決時期を前倒しし、今月中に和解成立と救済策の具体化を目指す考えも明らかにした。

 東京、大阪、仙台、名古屋、福岡の5か所で起こされた集団訴訟は1審判決が出そろい、仙台以外で国の責任が一部または全部認められた。最も審理の進んでいる大阪訴訟で、大阪高裁が和解協議を打診。原告、国、製薬会社とも応じる意向を表明している。

 同高裁では7日に口頭弁論が開かれるが、舛添厚労相は「7日は(高裁が)和解勧告をすると期待しているし、その期待は裏切られないと確信している」とも語った。舛添厚労相は会合後、記者団に「仙台地裁では国の責任を認めない判決が出ているが、総理や私の発言は司法の判断と違う、極めて踏み込んだもの」と述べ、和解成立に強い意欲を示した。

7日に和解勧告へ…大阪高裁

 薬害肝炎大阪訴訟で、大阪高裁は7日に開かれる口頭弁論で、原告、被告双方に和解勧告する方針を固めた。9月の口頭弁論で双方に和解を打診し、「少しでも可能性があれば和解勧告する」と表明していた。

薬害肝炎 首相、国の責任認める

2007年11月01日 読売新聞 Yomiuri On-Line

製薬会社、和解協議へ…大阪訴訟

 薬害C型肝炎訴訟について、福田首相は31日、記者団に対し、「政府に責任がないというわけにはいかない」と述べ、国の責任を認めた。

 首相が同訴訟で国の責任に踏み込んで発言したのは初めて。同訴訟では現在、大阪高裁が和解を打診しており、原告、国に続いてこの日、田辺三菱製薬(旧三菱ウェルファーマ)も和解協議に応じる方針を同高裁に伝えた。国が責任を認めた上、訴訟の当事者が協議の場にそろったことで、和解協議は大きく動き出すことになった。

 薬害C型肝炎訴訟で原告側は、国が責任を認めて謝罪することを強く求めている。福田首相は同日夕、薬害C型肝炎訴訟について、記者団から「国の責任と謝罪を含めて全面的に解決する考えはあるか」と問われ、「いろいろな議論を踏まえて判断すべきだが、今までの経緯を見ていて、政府に責任がないというわけにはいかないと私は思っている」と述べた。

 大阪高裁による和解打診後、初めてとなる11月7日の口頭弁論で、高裁が和解勧告に踏み込むかどうかが当面の焦点になる。

 大阪訴訟は全国5か所の訴訟のうち最も審理が進んでおり、大阪高裁は9月14日に原告、被告に和解による解決を打診。「少しでも可能性があれば、和解勧告する」としていた。原告側は和解希望案を提出、国も和解の席につく意向を伝えたが、田辺三菱製薬は「10月1日に合併会社が発足したばかりで、回答は難しい」と回答を見送っていた。

 この日、記者会見した大阪訴訟の原告代理人の塩野隆史弁護士は「早期解決のため、大阪高裁は11月7日に和解勧告とともに、所見を表明してほしい」と述べた。

薬害肝炎、製薬会社197人実名把握 厚労省に報告 イニシャル170人も

2007年10月23日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 薬害肝炎の疑いが強い418人の症例リストを巡り、厚生労働省や製薬会社が患者本人を特定できる情報がありながら事実関係を告知していなかった問題で、田辺三菱製薬(旧三菱ウェルファーマ)は22日午後、資料を精査した結果、418人のうち197人については実名の記載が確認されたと厚労省に報告した。

 イニシャルがわかったケースも170人分あった。同省が過去に同社から報告を受けたとして、同日午前に公表した内容よりも多くの患者情報を把握していたのに、放置してきた形だ。

 同社がこの日、厚労省に提出した文書によると、実名が分かる197人のうち、40人は住所も記載されており、本人が特定できる可能性が極めて高い。残る157人のうち27人は市町村名などが、12人は都道府県名がわかっていた。

 また、イニシャルの170人についても、住所がわかる人が2人おり、本人にたどり着くことは可能と見られる。市町村などがわかっている人も13人、都道府県がわかる人も10人いた。

 418人のリストは、血液製剤「フィブリノゲン」を止血剤として投与され、C型肝炎に感染したと見られる患者の症例を匿名で並べた一覧で、旧ミドリ十字の事業を引き継いだ三菱ウェルファーマが2002年に厚労省に報告したもの。同省は、同社から提出された他の報告書と合わせると、2人については実名が、116人はイニシャルが判明したと22日午前に発表したばかりだった。これらの患者については、フィブリノゲンを投与されたことを知らない可能性があるほか、感染自体を認識していない可能性さえある。

 報告のため同省を訪れた田辺三菱製薬の小峰健嗣副社長は「本人への通知は、プライバシーに配慮しながら進めたい。04年の段階で、医療機関を公表して検査を呼びかけており、その時点では一番よい方策だったと認識している」などとして、これまでの対応に問題はなかったとの認識を示した。社内にプロジェクトチームを作って対応するという。

[解説]患者に告知せず 厚労省重い責任

 血液製剤「フィブリノゲン」を投与され、C型肝炎に感染した患者に対する告知が重要なのは、投与の事実を知らなかったり、治療の必要性を認識していなかったりする人が相当数に上ると見られるためだ。肝炎感染は知っていても、医師から一時的なものと説明されているケースも目立つ。

 薬害肝炎訴訟の弁護団によると、全国の原告約170人のうち、フィブリノゲンを投与された人は約140人。その大半が、訴訟に参加する直前まで、自分の感染原因が同製剤によるものだという認識を全く持っていなかったという。原告の中には、医師に感染原因は不明と言われて悩み続けた人もおり、告知がなかったことは、当事者を肉体的にも精神的にもむしばむ。

 製薬会社と厚労省は、患者の命にかかわる情報を手中にしながら眠らせていた。その責任の重さを自覚し、すぐに手をうつべきだ。(社会部 高梨ゆき子)

薬害肝炎 和解協議へ…大阪訴訟

2007年10月16日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 出産や手術などで大量出血した際に投与された血液製剤でC型肝炎ウイルスに感染したとして、患者らが国と製薬会社に損害賠償を求めた「薬害肝炎大阪訴訟」の控訴審で、原告側は15日、大阪高裁(横田勝年裁判長)に和解希望案を提出した。

 被告の国も同日、和解のための協議に応じると同高裁に回答し、全国5地裁に起こされた同種訴訟で初めて和解協議が始まる見通しになった。

 原告側は和解希望案の内容について「高裁の意向で明らかにできない」としているが、これまで国に法的責任を認めて謝罪するよう求めており、国が責任を認めない場合は和解協議が難航するとみられる。

 記者会見した原告側の山西美明弁護士は「和解希望案は全国の原告の総意。国が協議に応じる姿勢を見せたのは解決への第一歩だが、これからが勝負」と気を引き締め、原告代表の桑田智子さん(47)は「原告は全国で5人亡くなっており、一刻も待てない」と話した。

 被告の製薬会社、田辺三菱製薬(旧三菱ウェルファーマ)は「合併で新会社が発足したばかり」と同高裁への回答を見送っている。

薬害肝炎大阪訴訟 国、和解協議の席へ

2007年10月14日 読売新聞 Yomiuri On-Line

「責任」「謝罪」で隔たり

 出産や手術などで大量出血した際に投与された血液製剤でC型肝炎ウイルスに感染したとして、被害者が国と製薬会社を相手取り全国5か所で起こした薬害肝炎訴訟で、大阪高裁が和解を打診したことを受け、国は和解に向けた協議に応じる方針を決めた。15日に正式に同高裁に伝える。

 ただ、国の法的責任に踏み込まないことを前提とした協議を求めるとみられ、責任を認めた上での謝罪を求める原告側との隔たりは大きく、協議は難航も予想される。

 同高裁は先月、「和解による解決を望む」との意向を伝え、15日までに和解希望案を出すよう原告と被告に求めていた。国が和解に向けた協議に応じる姿勢を示すのは初めて。国は、同高裁が和解に向けた案を示した場合も、協議自体を拒否せず、その内容について検討するとの意向を伝える。

 ただ、回答の中では、法的責任など譲歩できない部分もあり、協議のテーブルにつくことが和解に直結するとは限らないことも示唆する見通しだ。

 一方、原告側は、従来、国の責任を認めたうえでの謝罪や、原告全員の救済などを求めており、こうした内容に沿った和解希望案を提出するとみられる。

 国はこれまで和解には否定的で、同高裁にも明確な回答は示さない方針だったが、今月10日に開かれた肝炎対策を検討する与党プロジェクトチームの会合で、協議自体を拒否することなく誠実に対応するよう求められたことなどもあり、軌道修正したとみられる。

 薬害肝炎訴訟は、東京、大阪、福岡、仙台、名古屋の5地裁に起こされ、1審判決では、仙台以外の4地裁が国の責任を認めた。原告は計約170人。

薬害肝炎、救済範囲を拡大 名古屋地裁判決

2007年07月31日 中国新聞ニュース

 汚染された血液製剤でC型肝炎ウイルス(HCV)に感染したとして、岐阜、静岡、愛知の3県の9人が国と製薬会社三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)など3社に、総額6億500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁の松並重雄裁判長は31日、9人のうち8人に対する賠償額を計1億3200万円とした。

 血液製剤の種類を問わず、1976年以降の投与による感染に対し、国と3社の賠償責任を認めた。フィブリノゲンについて、80年以降の投与を救済対象とした昨年8月の福岡地裁判決よりも範囲を大幅に拡大しており、原告側の完全勝訴といえそうだ。

 松並裁判長は、原告が投与されたフィブリノゲンと第9因子製剤のクリスマシン、PPSB−ニチヤクについて判断。

 国は「血液製剤は肝炎のリスクを考慮しても有効性があり、承認した当時の判断は妥当。集団肝炎の発生後に安全性情報を医療機関に通知するなど、対応に問題はなかった」と主張していた。

国の責任、3たび認める 薬害肝炎訴訟で東京地裁

2007年03月23日 中国新聞ニュース

 汚染された血液製剤を投与され、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した11府県計21人が国と三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)など製薬会社3社に計約13億5300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(永野裁判長)は23日、国や製薬会社の賠償責任を一部認め、原告のうち13人への計約2億5900万円の支払いを命じた。

 薬害肝炎訴訟は全国5地裁に計160人が提訴し、国と製薬会社の責任を認めた判決は昨年の大阪、福岡両地裁に続いて3件目。

 東京訴訟も各地の訴訟と同様、血液製剤の有用性と安全性や国の対応などが争点となり、原告側は「有用性がなく、危険な製剤にもかかわらず国は製造承認した上、副作用対策も怠った」などと主張した。

 国と製薬会社側は「有用性はあり、対応も適法だった。輸血感染かもしれず、請求権も除斥期間(権利の存続期間、20年)経過で消滅した」などと反論していた。

薬害肝炎、九州原告も全員控訴へ

2006/09/11 中国新聞ニュース

 汚染された血液製剤でC型肝炎に感染したとして、患者らが国と製薬企業に損害賠償を求めた薬害肝炎九州訴訟で、原告団と弁護団は十日、一部の原告について国と製薬企業の賠償責任を認めた福岡地裁判決を不服として、勝訴した十一人を含む原告十八人全員が十二日に控訴する方針を決めた。国は既に控訴している。

 原告の一人で全国原告団代表を務める山口美智子さん(50)は都内で開かれた会合後、「原告団は一枚岩。薬害肝炎問題の解決まで全員で闘う」と話した。

 弁護団は全国五カ所の同種訴訟で計百二十七人いる原告を二百人規模にするよう、十月下旬をめどに追加提訴する方針も明らかにした。

 福岡地裁は「国と企業は一九八○年十一月までに血液製剤フィブリノゲンの危険性を判断し、承認を限定できたのに怠った」として、原告十一人への賠償を命じた。

 同種訴訟の大阪地裁判決でも原告側が一部勝訴し、被告、原告双方が控訴した。

国が控訴 薬害C型肝炎訴訟

2006/09/08 The Sankei Shimbun

 国と企業に損害賠償を命じた8月30日の薬害C型肝炎訴訟の福岡地裁判決について、国側は8日、「判決内容は医薬行政の根幹に関わる問題。当時の認識とかけ離れている」などとして、判決を不服とし控訴した。

 厚生労働省は控訴理由を、「副作用などのリスクを上回る有効性が認められる場合、医薬品の承認は必要。当時、フィブリノゲン製剤は、大量出血した産婦の救命に必要だった」としている。

 判決は「国と企業は昭和55年11月までに投与対象や製造、承認を限定すべきだったのに怠った」と、国の責任を認めていた。

薬害肝炎九州訴訟、国は控訴の意向 川崎厚労相

2006/09/01 The Sankei Shimbun

 川崎二郎厚生労働相は1日の閣議後会見で、国と企業に損害賠償を命じた8月30日の薬害肝炎九州訴訟の福岡地裁判決について「この判決をそのまま受け入れるのはなかなか難しい。(6月に国が一部敗訴した)大阪の訴訟も控訴しており、そういう方向になると思う」と控訴の意向を明らかにした。

 会見で川崎厚労相は、肝炎感染の原因となった血液製剤フィブリノゲン製造を承認した国の責任が認定された時期について、大阪地裁判決は「昭和62年以降」、福岡地裁判決は「55年以降」と判断が分かれた点を「医薬品行政の根幹に触れる問題だ」と述べた。

薬害C型肝炎訴訟 国と製薬2社に賠償命令 大阪地裁

2006/06/21 The Sankei Shimbun大阪夕刊から

≪4人は棄却 9人に2億5630万円≫

 汚染された血液製剤「フィブリノゲン」などの投与でC型肝炎ウイルスに感染させられたとして、近畿、中四国地方の男女13人が国と製造元の三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)などに総額7億5900万円の損害賠償を求めた薬害肝炎訴訟の判決が21日午後、大阪地裁であった。中本敏嗣裁判長は、原告9人に対し計2億5630万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。9人のうち5人については国の責任も認定。残りの4人の請求は棄却した。

 全国5地裁で起こされた集団訴訟で初の判決。16日のB型肝炎訴訟の最高裁判決に続き、少なくとも1万人以上が感染したとされる薬害で、国の責任を明確に認定した司法判断が下されたことで、国は国民病とまで呼ばれるようになったウイルス性肝炎対策の抜本的見直しを迫られそうだ。

 中本裁判長は、昭和60年8月以降に投与を受けた原告の感染との因果関係を認めたうえで、「加熱製剤を承認するという結論ありきの方針のもとに、申請からわずか10日で安全性などを十分に確認せずに承認した」と述べ、昭和62年以降の製剤投与者については国の賠償責任も認定した。

 裁判では、フィブリノゲン製剤の医薬品としての有効性や、国と製薬会社がいつC型肝炎感染の危険性を認識したかなどのほか、原告の感染と製剤投与の因果関係が争点になった。

 原告側は、昭和39年の承認時以降、フィブリノゲンの有効性を認める科学的データは存在しないと指摘。さらにウイルス汚染の確率が高い売血が原料だったことなどをあげ、「製薬会社が製造販売することは許されず、国の承認も違法」と主張した。

 これに加え、米国で同種の製剤の承認が取り消されたことを把握した53年、青森県でフィブリノゲンによる肝炎集団感染が発生した62年に国は何の措置もとらず、規制権限を行使しなかったことは著しく合理性を欠くと訴えた。

 <薬害C型肝炎訴訟> C型肝炎患者96人が、血液製剤「フィブリノゲン」などの投与でC型肝炎に感染したとして、国と、旧ミドリ十字を合併した三菱ウェルファーマなどを相手取り、東京、大阪など全国5地裁に集団提訴した薬害訴訟。ウイルスの不活化処理が不十分だった平成6年ごろまでの間に投与された約28万人のうち1万人以上が感染したとされる。今回判決が言い渡されたのは、大阪訴訟の原告31人のうち審理が先行した13人で、40〜50代の女性12人と20代の男性1人。

アルコール性肝硬変、コーヒー1杯で8割に減少

2006年06月13日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ワシントン=増満浩志】飲酒量が同じの場合は、コーヒーを多く飲む人ほどアルコール性の肝硬変になりにくいことが、米カリフォルニア州での大規模な疫学調査で確認された。

 調査を実施した研究者は、1日1杯のコーヒーで発症の危険性は8割に減るとしながらも、予防には「お酒の飲み過ぎを避けるのが先決」と、くぎも刺している。米医学誌「内科学アーカイブズ」電子版に12日発表された。

 調査は、医療保険などを運営する「カイザー・パーマネンテ」研究部門のアーサー・クラツキー医師らが、保険加入者12万5580人を対象に実施。1978〜85年の時点で尋ねておいた各自の生活習慣と、その後の病気発症状況との関連を分析した。

 それによると、2001年までにアルコール性肝硬変を発症していたのは199人。喫煙など他の要因が影響しないように配慮して分析を試みたところ、明確に浮かび上がったのがコーヒー効果。飲まない人に比べ、1日に4杯以上飲む人の発症リスクは2割、1〜3杯の人でも6割にとどまった。

E型肝炎ウイルス、100年前に“土着化”…厚労省調査

2006年04月09日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 最近になって存在が確認され、ときおり集団感染を引き起こすE型肝炎ウイルスは、すでに約100年前には国内に侵入し、“土着化”していたことが、厚生労働省研究班(主任研究者・三代俊治東芝病院研究部長)の調査研究でわかった。

 富国強兵政策の一環で、軍人の体力をつけるため英国から輸入したブタによって持ち込まれ、肉食文化の普及で全国に拡大したらしい。

 E型肝炎ウイルスは遺伝子の特徴から1〜4型があることが知られ、時間の経過とともに変化していく。遺伝子の変化を調べることで、ウイルスの歴史、移動、系統関係などがわかる。

 同班の溝上雅史・名古屋市大教授らは、国内と世界各地で見つかったE型肝炎ウイルスの遺伝子を比較した。国内のウイルスは大きく分けて3型と4型の二つのグループが混在し、いずれも約100年前に、起源となるウイルスが国内に侵入したことがわかった。

 国内で主流の3型は、ヨーロッパや米国など、19世紀に英国と交易が盛んだった国々に多い。日本も1900年ごろに、軍人の体力強化のために英国からブタを大量に輸入した。ブタのE型肝炎ウイルス保有率は非常に高いことから、研究班は、ブタがウイルスを持ち込んだ可能性が高いと断定。肉食文化の普及で、ウイルスが土着したとみている。E型肝炎ウイルスの感染経路は、ブタやシカ、イノシシなどの肉の生食によるものと分かってきた。しかし数年前まで日本のE型肝炎のほとんどは、インドなど海外で感染したものと考えられていた。

薬害肝炎訴訟、初の結審 6月21日判決へ

2006/02/20 The Sankei Shimbun

 汚染された血液製剤でC型肝炎になったとして、近畿・中四国地方の感染者計29人が国や三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)などに損害賠償を求めた薬害肝炎訴訟の口頭弁論が20日、大阪地裁(中本敏嗣(なかもと・としつぐ)裁判長)で開かれ、原告のうち20―50代の男女計13人について結審した。

 判決は6月21日に言い渡される。

 弁護団によると、2002年10月以降、全国5地裁に提起された薬害肝炎訴訟で結審は初めて。20日、女性2人が新たに提訴し原告数は全国で計94人となった。

 13人のうち実名を公表した愛媛県の会社員、武田せい子(たけだ・せいこ)さん(55)、大阪府岸和田市の主婦、桑田智子(くわた・さとこ)さん(46)ら5人が最終意見陳述。桑田さんは「出産する女性に何ら有効性の確認されていない血液製剤を使い、肝炎に感染させたことは母性への冒涜(ぼうとく)と言わざるをえない」と主張。

 近畿地方の50代の女性は「訴訟でこの薬害は防げた、人災だったと思い知らされた。この薬害を許すことができない」と声を震わせ、武田さんは「私たちには時間がない。治療体制の整備が急務。救済の道筋を示す公正な判決を心より願っています」と訴えた。

 国側代理人は「感染リスクを考慮しても血液製剤に有用性があったことは明らかだ」と述べた。

 訴えによると、13人は1981―88年に出産や手術の際の止血剤などとして、旧ミドリ十字の血液製剤「フィブリノゲン」や「クリスマシン」を投与された。全員C型肝炎に感染し、10人が慢性肝炎になった。

 原告側は「製造承認時から製剤の危険性が予見できたのに、製薬会社は警告を怠って販売を続け、国は何ら規制せずに放置した」として、13人で計7億5900万円の賠償を請求。国や製薬会社側は「C型肝炎の病状は明らかでなかった。当時の知見に基づき必要な安全対策は行った」と反論している。(共同)

厚労相、C型肝炎で検査呼び掛け

2005/08/02 The Sankei Shimbun

 150万人以上がウイルスに持続感染していると推定されるC型肝炎について、尾辻秀久(おつじ・ひでひさ)厚生労働相は二日の閣議後の記者会見で「肝硬変、肝がんに進行する危険性を低下させられるので、ぜひ早期に感染の有無を確かめる検査を受けてほしい」と呼び掛けた。

 特に検査を受けてほしい対象者として、過去に大きな手術を受けた人や肝機能に異常がある人を挙げた。さらに「一人でも多くの感染者に治ってもらい、多くの方の不安を解消するのが重要な課題」とし、2006年度の概算要求に対策強化の費用を盛り込みたいとした。(共同)

組織接着剤でC型肝炎?厚労省が出荷見合わせ指示

2005/04/26 読売新聞 Yomiuri On-Line

 人間の血液を原料に作られた組織接着剤(商品名・タココンブ)を手術時に使った70代男性が、手術後の昨年5月に肝機能が悪化し、C型肝炎ウイルスに感染していたことが判明した。

 26日の厚生労働省血液事業部会で報告があった。

 原料は米国で集めた血液で、同じ接着剤が国内の他の医療機関にも出荷されているといい、製造販売会社から先月報告を受けた厚労省は、接着剤を使用した患者の感染・発症などを早急に調べ、同じ原料で作った接着剤など一部に限って、出荷を見合わせるよう指示した。

 タココンブは、人間の血液の中に含まれるフィブリノゲンなどを原料にした医薬品。手術時に組織から血液や体液のもれを防ぐために、接着剤として使う。

 厚労省によると、男性のウイルスは、国内ではまれで、欧米に多い「Ia」という遺伝子型だった。接着剤はウイルスの感染力をなくす化学処理がされており、同様の報告はこれまでになく、厚労省は「接着剤で感染した可能性は極めて低いが、念のため安全策をとった」としている。

B型肝炎、欧米型が急増 厚労省調査、成人で慢性化も

2005年04月10日 asahi.com

 国内で流行していなかったタイプのB型急性肝炎が急増していることが、厚生労働省研究班のウイルスの遺伝子型解析でわかった。この肝炎ウイルスは欧米など海外から持ち込まれたとみられる。B型肝炎はこれまで母子感染対策で感染者を減らし、「成人が感染しても慢性化しない」とされてきた。だが、欧米由来のウイルスによる急性肝炎は慢性化の恐れがあり、新たな肝炎対策が必要になる。

 研究班の主任研究者の八橋弘・国立病院機構長崎医療センター治療研究部長らが、全国22の国立病院で91年以降、B型急性肝炎にかかった患者340人についてウイルスの遺伝子型を調査した。欧米に多いAタイプ(欧米型)のウイルスに感染した患者は91〜00年が年0〜4人、01〜03年が年5〜6人だったが、04年に13人に急増し、B型急性肝炎患者の3割を占めていた。国内でB型急性肝炎を主に起こしてきたCタイプ(在来型)は増える兆候がなかった。

 B型急性肝炎の患者数は正確につかめてはいないが、年1万人前後がかかるとされ、うち欧米型は調査結果と同様な増加傾向にあるとみられる。

 一方、日本赤十字社が献血血液について実施している高感度の遺伝子検査でも、B型肝炎ウイルスに占める欧米型の割合は99〜02年の11%が、03〜04年には23%に倍増している。

 B型肝炎ウイルスは主に血液を通して感染する。欧米型が増えているのは、性感染が主な理由と考えられている。

 日本では、性行為などで成人がB型肝炎ウイルスに感染しても、症状が出ないか、一時的な急性肝炎にとどまり、慢性化して肝硬変や肝がんにつながることはないとされてきた。乳幼児期に感染すると、感染が持続し慢性化するため、B型肝炎予防対策は母子感染防止を軸に進められてきた。

 しかし、欧米の研究では、欧米型に感染すると成人でも1割程度が慢性化するとされる。また、B型肝炎予防のワクチンはあるが、日本では医療関係者ら限られた人が使っているのが現状だ。

 〈B型肝炎〉 B型肝炎ウイルスによって起きる肝臓の病気。急性肝炎は数カ月以内で回復するが、慢性肝炎になると肝がんなどに重症化することがある。抗ウイルス薬などで治療する。ウイルスの遺伝子はAからHまでのタイプがあり、日本ではCが多く、東北地方や沖縄県などではBも多い。A(欧米型)は欧州、北米、アフリカなどに分布している。

C型肝炎治療は新薬ペグイントロンが柱 厚労省が新指針

2005/03/05 asahi.com

 国内で100万〜200万人とされるC型肝炎ウイルス(HCV)感染者への治療について厚生労働省の研究班は、昨年10月に認可された新薬「ペグインターフェロン(商品名ペグイントロン)」を柱に据える指針をまとめた。5日の報告会で発表した。臨床試験の結果からは、2人に1人は完治が期待できるとされている。

 ペグイントロンはインターフェロンを改良して作られた。「B型及びC型肝炎治療の標準化に関する研究班」(班長=熊田博光・虎の門病院副院長)は新指針で、国内患者の大半を占める最も治療の難しいタイプのC型肝炎に対して、ペグイントロンと抗ウイルス薬リバビリンの投与を48週間続ける併用療法を第1選択とした。公的な医療保険が使える。

 発売元のシェリング・プラウが実施した国内での臨床試験成績によると、薬の効きにくい型のウイルスでその量も多い「1型高ウイルス量」の患者でも、治療開始から1年後にウイルスが体内で検出できなくなる完治率が約48%。従来のインターフェロンとリバビリンの併用療法の約19%を大きく上回った。発熱や頭痛、抑うつなどの副作用があるとされている。

 C型肝炎は国内の肝硬変・肝がんの最大原因で、不衛生な医療行為や輸血などで感染が広がった。厚労省は昨年、ウイルスの混入した血液製剤「フィブリノゲン」が過去に納入された可能性のある医療機関を公表して検査受診を呼びかける一方、すでに世界で始まっていたペグイントロン・リバビリン併用療法を8カ月のスピード審査で認可していた。

 C型肝炎のインターフェロン療法は92年に始まり、当初の完治率は約2%だった。今回の指針では、これまでの治療が効かなかった人への「再投与」も、ペグイントロン・リバビリン併用療法を第1選択とした。一度は完治をあきらめた多くの患者にとっても朗報になる。

      ◇      ◇

 〈キーワード・C型肝炎〉 C型肝炎ウイルス(HCV)による感染が原因で肝細胞が破壊される病気。年齢とともに発症リスクが高まり、感染から20〜30年で約3割の人が肝硬変になり、30〜35年で肝がんになるとされる。肝がん患者の8割はHCVに感染している。輸血や汚染血液を使った血液製剤を介して感染する。手術の際の大量出血を止めたりする際に使われた血液製剤フィブリノゲンを製造する際、94年まで、ウイルスの混入防止対策が十分にとられておらず、感染者が相次ぎ、薬害が問題化した。

 〈キーワード・ペグイントロン〉 インターフェロンにペグと呼ばれる合成高分子が結合させてある。発売元のシェリング・プラウによると、ペグの働きで体外に排出されにくくなり、治療効果が持続するという。注射回数が従来の3分の1の週1回ですむほか、治療中断に至るほどの副作用も減って、従来のインターフェロン・リバビリン併用療法の倍に当たる約1年の長期治療が可能になった。

入れ墨した少年、C型肝炎に 針を通じ感染か? 福岡

2005/03/05 asahi.com

 中学生らに入れ墨を入れたとして、彫り師の笹原博美容疑者(26)が福岡県青少年健全育成条例違反(18歳未満への入れ墨の禁止)の疑いで逮捕された事件で、入れ墨を入れた少年(16)と、少年を彫り師に紹介し、自分も入れた遊び仲間の男性が相次いでC型肝炎ウイルスに感染していたことが分かった。

 感染経路ははっきりしないが、ほぼ同時期に入れ墨を入れており、県警は、針を通して感染した可能性が高いとみている。専門家は「入れ墨やピアスなどのために安易に針を刺すのは控えるべきだ」と注意を呼びかけている。

 調べによると、少年は昨年11〜12月、福岡市城南区の笹原容疑者の自宅兼仕事場に計7回通い、背中に竜や牡丹(ぼたん)の絵柄を入れた。遊び仲間の男性は少年の約1週間前から通いだし、背中に入れ墨を入れたという。少年は遊び仲間の男性から「お前も男なら入れてみろ」などと勧められて応じたという。

 県警によると、遊び仲間の男性は1月下旬、黄疸(おうだん)や高熱などの症状が出て、C型肝炎と診断された。少年は2月下旬、仕事を終えて帰宅した自宅で突然、黄疸の症状が現れ、顔が見る見る黄色くなった。直後、家族の前で倒れ、救急車で病院へ運ばれた。劇症肝炎の恐れもあるとされたが、血液検査の結果、C型肝炎と診断され、現在入院中という。

 厚生労働省は、「ピアスなどをするときは、清潔な器具であることを必ず確かめる」よう呼びかけている。

79年以降、E型肝炎で12人死亡 「重症型」北海道に集中

2005/03/05 The Sankei Shimbun

 下痢や劇症肝炎を起こすE型肝炎ウイルス(HEV)感染で1979年以降、全国で少なくとも12人が死亡し、北海道に重症化しやすい型が広がっていることが5日、厚生労働省の研究班(主任・三代俊治東芝病院研究部長)の全国調査で分かった。

 謎の多いE型肝炎について、感染症法で報告対象となった99年度以前も含む長期間の症例を集めたのは初めて。ブタなどの肉や内臓を食べて感染した例が目立つが、全体の60%以上は感染ルートが不明で、三代部長は「ほかの食べ物や動物との接触、調理中の傷口からの感染なども考えられ、今後調べる必要がある」としている。

 研究班は2004年度に班員の医師らを通じて症例登録を呼び掛け、1979年から今年にかけて全国でHEV感染した193の症例を集めた。

 患者は男性(154人)が女性(39人)より圧倒的に多く、平均年齢は51歳。30代以上が91%で、中高年層が目立った。重症の急性肝炎や劇症肝炎になった人が32人おり、うち12人が死亡した。

 半数近い87人が北海道に集中し、東京都23人、岩手県15人が続き、西日本に多いC型肝炎と対照的に「西低東高」の傾向が見られた。

 ウイルス遺伝子の型を調べた結果、北海道は「IV型」、それ以外は「III型」が多く、IV型に重症例が多かった。北海道ではIV型が最近15年ほどで急速に広まった、と研究班はみている。

 感染ルートはブタやイノシシなどの肉や内臓を食べたのが原因とみられる「動物感染」が26%と最も多く、インドなど外国で感染したとみられる例が8%、輸血感染が2%。それ以外の64%は不明だった。原因不明の人の中には豚舎で働く人や魚介類を食べた人も含まれていたが、ルートの特定はできなかった。(共同)

血液製剤相談6400件超 中国5県

2005/02/08 中国新聞地域ニュース

 <納入先公表2ヵ月 1310人がC型肝炎検査>

 C型肝炎に感染する恐れのある血液製剤フィブリノゲンの納入先医療機関を厚生労働省が公表して、ほぼ二カ月。中国地方の五県と、保健所を設置する広島、呉、福山、下関、岡山、倉敷の六市の窓口には、一月末までに計六千四百二件の相談が寄せられた。一部の県や市はC型肝炎の検査体制の拡充も図り、千三百十人が検査を受けた。

 五県六市の集計によると、医療機関名が公表された昨年十二月九日から一月末までに住民や医療機関から寄せられた相談件数は、県別で広島が二千八百七十件▽山口が千四百三十六件▽岡山が千三百七十三件▽島根が二百七十六件▽鳥取が四百四十七件―だった。

 相談は、一人が複数の内容を持ち掛けたケースもあった。「C型肝炎の検査はどこで受けられるか」との内容が四千百七十四件で最も多く、全体の三分の二を占めた。

 フィブリノゲン製剤は出産や手術などで大量出血した場合に血液凝固剤として使われていた。そのため、「出産、手術をしたが大丈夫か」との相談が二千七百八十三件と二番目に多い。検査費用の問い合わせも二千百十件に上っている。

 相談を受けた各県・市の担当者は、一九九四年以前に投与された患者はそれ以降の投与患者よりC型肝炎感染の可能性が高いとされるため、早期検査を呼び掛けている。

 検査を受ける人も急増している。従来から保健所で検査を実施している山口、島根、鳥取県や広島、下関、岡山、倉敷の四市で検査を受けた人の合計は、例年の同じ時期の約十倍に当たる七百十七人に上った。

 公表後に新たに保健所での検査体制を敷いた広島、岡山県、福山、呉市の二県二市では、五百九十三人が検査を受けた。福山市は二月末まで、ほかの県や市は少なくとも三月末までは保健所での検査を実施する。

 広島県福祉保健部は「今回の医療機関名の公表でC型肝炎への関心が高まった。感染しても自覚症状のないまま進行してしまうケースもあり、不安な人は検査を受けてほしい」としている。

C型肝炎、検査拡充へ 広島県

2004/12/23 中国新聞地域ニュース
 厚生労働省が納入先を公表した血液製剤フィブリノゲン問題で、広島県は二十二日、県の保健所・分室計八カ所で、C型肝炎の検査を始める方針を決めた。同製剤で感染の恐れが指摘されるC型肝炎の検査ニーズが高まっており、緊急措置として二十七日から来年三月末まで実施する。広島県の検査拡充により、中国地方五県と保健所を設置する六市で、当面の公的検査体制が整った。

 県福祉保健部によると、検査は各保健所・分室で週一回行う。C型肝炎ウイルス(HCV)の抗体検査は千二百七十円。陽性の結果が出た人には、さらに詳しいHCV抗原検査を千四百三十円で受けてもらい、C型肝炎の感染の有無を調べる。感染が判明した場合は、専門医とかかりつけ医が連携して患者を支える県地域保健対策協議会の肝炎治療支援ネットワークを紹介する。

 検査の対象は、フィブリノゲンの化学処理が始まる一九九四年以前に、製剤を投与された人や投与の可能性がある人。同製剤は、妊娠中や出産時、手術で大量の出血をした時などに、止血剤として使われていた。

 中国地方では山口、島根、鳥取の三県と広島市など四市が、従来から年齢制限のない検査を実施していた。さらに岡山県と呉、福山市は今月九日の公表を受け、新たな検査体制を敷いた。そうした中で広島県だけが「潜伏期間が長く急を要しない」などと、検査体制の拡充を見送っていた。

 県にはしかし、公表以降、検査方法などを問う相談が千件以上も寄せられていた。市町による住民検診の一環のC型肝炎検査は、対象を四十歳以上に限定。県は県民の不安の高まりを踏まえ、年齢制限のない緊急措置に踏み切った。

◇ ◇ ◇

 「感染有無 検査を」 広島県医師会が公開講座

 C型肝炎について理解を深める、広島県医師会の公開講座が二十二日、広島市中区の広島厚生年金会館であった。C型肝炎ウイルスが混入していた血液製剤「フィブリノゲン」を使った医療機関の公表を受け、開いた。市民など約二百七十人が参加した。

 厚生労働省ウイルス肝炎疫学研究班長の吉澤浩司広島大大学院教授は「(血液製剤の改良などで)今後、感染する可能性はほとんどない」と説明。「自覚症状が無いまま肝がんになる前に一度、血液検査でウイルス感染の有無を調べてほしい」と強調した。

 広島逓信病院の井上純一副院長は「感染し、慢性肝炎になっても、現在は治療薬の進歩で約半分は悪化を防げる」と話した。会場からは「母子感染するのか」「検査はどこで受けられるのか」などの質問が相次いだ。

 県医師会は、肝炎治療の専門医を紹介している。TEL082(232)7211。

全国で相談4400件 フィブリノゲン納入先公表で

2004/12/17 The Sankei Shimbun
 薬害肝炎訴訟東京弁護団は17日、血液製剤フィブリノゲンの納入先医療機関リスト公表を受けて弁護団が全国5カ所で行った電話相談に、1週間で計約4400件の相談が寄せられた、と発表した。

 中には「大学病院から『カルテはあるが見せられない』と拒否された」などの相談もあるという。弁護団はこうした施設に対応改善を申し入れるほか、投与された可能性の高い相談者について確認調査を進める。

 発表によると、納入先公表翌日の10日から16日まで(一部は14日まで)の各地の相談件数は仙台458件、東京341件、名古屋911件、大阪約2000件、福岡705件。

 感染の不安や検査方法の質問が多く、肝炎患者から治療費の相談も寄せられるという。弁護団は「これだけ殺到するのは国の肝炎対策が不十分ということの表れ」と分析している。弁護団の相談受付は平日の午前10時−午後5時まで、電話03(3358)2110。

 一方、厚労省の相談窓口に17日午後5時までに寄せられた電話は8668件となった。同省は土日の18、19両日も午前8時半から午後8時まで対応する。電話は03(3595)2297。(共同)

E型肝炎の輸血感染、25年前も…保存血液で判明

2004/12/14 読売新聞 Yomiuri On-Line
 名古屋市内の医療機関に通院していた50代男性が、1979年に受けた輸血でE型肝炎ウイルスに感染していたことが13日わかった。

 自治医大の岡本宏明教授らが、長期保存していた患者の血液と輸血血液を調べ、感染を突き止めた。

 E型肝炎の輸血感染は、疑われる例も含め、最近3件が発覚したが、25年前の例が明るみに出たことで、輸血感染の予想外の広がりが懸念されてきた。

 岡本教授らは調査結果を英医学誌12月号に発表した。それによると、名古屋市の医療機関の通院患者400人余りを調査。通院開始時から2003年1月の間、継続的に保存されてきた各人の血液サンプルを分析した結果、50代の男性の血液から、ウイルス遺伝子や感染の証拠である免疫物質が検出され、感染時期が79年だと判明した。

 さらに、保管していた当時の輸血血液から、患者と同じ遺伝子構造のウイルスが見つかったことなどから輸血が原因と確認された。

 男性は幸い、ウイルス感染後も肝炎を発症しなかったため、感染に気付かず、現在も通院している。

 厚生労働省研究班は1990年以降、輸血後の急性肝炎で、B、C型肝炎ウイルスが検出されず、他の原因も当てはまらず「原因不明」とされるケースが約3割あると報告している。

 厚生労働省も、原因不明例の中にE型肝炎が潜在していたとみており、今回の研究成果を今後の輸血対策を検討する際の重要データとして注目している。

血液製剤不安、問い合わせ電話5000件超す

2004/12/13 The Sankei Shimbun
 C型肝炎ウイルスを拡大したとされる血液製剤フィブリノゲンの納入先医療機関名公表を受け、不安を感じる人などから厚生労働省への問い合わせ電話は土日も止まらず、公表当日の9日から13日までの5日間で5000件を超えた。

 厚労省血液対策課によると、公表直後の週末だった11、12両日は職員延べ100人以上が休日出勤して対応。

 電話の件数は公表翌日の10日が1892件と最も多かったが、土曜日の11日も1270件、12日は857件あった。総数は13日午後5時時点で5224件に上った。

 「検査はどこでできるのか」といった質問や「手術や出産で大出血した」と不安を訴える声が多いが「なんで今ごろ公表するのか」と同省の対応に怒りをぶつける人もいるという。

 厚労省の臨時電話は今後は平日の午前8時半から午後8時まで。番号は03(3595)2297。相談が多ければ週末対応も検討する。(共同)

E型肝炎、先進国も流行の可能性

2004/12/12 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【ワシントン=笹沢教一】米国立衛生研究所(NIH)はE型肝炎について、「アジアやアフリカの多発地域での流行以外に、日本や欧米で集団感染や輸血感染が報告され、先進国でも流行の潜在的な可能性がある」と指摘する報告をまとめた。

 E型肝炎は途上国に多発する病気とされ、先進国に対する警告は異例で、米医学誌に掲載された。

 過去にE型肝炎に感染したことを示す抗体の保有率は、多発地域で60%以上に達するが、日本や欧米は数%にとどまっている。しかし報告によると、米国の献血提供者を対象にした調査では抗体の保有率が約20%に達した地域があり、「非多発国の水準を上回る高い数値」と懸念を示した。

フィブリノゲン相談殺到 中国地方窓口

2004/12/11 中国新聞地域ニュース
 血液製剤フィブリノゲンの納入先医療機関を厚生労働省が公表したのに伴い、中国地方五県と保健所のある六市の窓口には十日、千四百件を超える相談、問い合わせが殺到した。「投与の有無を知りたい」「C型肝炎感染していないか」―。一日中ひっきりなしに電話が鳴り、不安の声が続いた。こうした状況を受けて、休日返上で土、日曜日の相談受け付けを決めた自治体もある。

 五県によると、同日夕までの相談、問い合わせは、広島県と広島、福山、呉市の窓口計三十カ所で五百七件▽山口県と下関市の十二カ所で四百十六件▽岡山県と岡山、倉敷市の十三カ所で四百三十一件▽島根県の二カ所で三十一件▽鳥取県の六カ所で九十七件―に上り、五県で計千四百八十二件に達した。

 フィブリノゲン製剤は、大量出血の場合に、血液凝固剤として使われていた。そのため、各窓口には、妊娠や出産で大量出血した経験のある女性たちの相談が多く寄せられた。広島県保健対策室は「製剤の化学処理が始まる一九九四年以前の投与の疑いのある人には、早期検査を勧めた」という。

 このほか、C型肝炎やフィブリノゲンそのものについての質問、「どこで検査が受けられるか」との問い合わせも多かった。また、「国や製薬会社に責任があり、検査や治療の費用を自己負担するのはおかしい」「もっと早く危険を知らせてほしかった」といった国への怒りや不満もあった。

 相談の殺到を受け、広島県薬務室と広島市保健医療課、福山市保健所▽山口県薬務課と健康増進課▽鳥取県医務薬事課と五保健所は、十一、十二日も窓口を開く。窓口の連絡先は、各県のホームページなどで紹介している。

フィブリノゲン納入先公表 6611医療機関、実名で

2004/12/09 中国新聞ニュース
 薬害肝炎問題に絡み、C型肝炎ウイルスの感染を広めたとされる血液製剤フィブリノゲンについて、厚生労働省は九日、販売元の三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)の提出資料を基に、一九八○年以降に納入されたとみられる全国の医療機関のリストを公表した。名称や所在地が確定できたのは六千六百十一施設。

 同社は、これらの施設で二十八万人余が投与され約一万人が肝炎を発症したと推計している。自覚症状が乏しく感染に気付かない人も多いとみられ、厚労省はリストをホームページに掲載し「九四年以前にこれらの施設に受診し、出産や手術で大出血した人などは肝炎検査を受けてほしい」と呼び掛けている。

 ウイルス感染の恐れがある血液製剤の取り扱い医療機関名の公表は、一九九六年の薬害エイズ問題(二千余)、二○○一年の肝炎問題(八百余)に次いで三回目。施設数は最も多く、国内の一般病院の約四割を占める。

 厚労省によると、公表したのは会社側に資料が残っている八○年から二○○一年二月までの納入先。総数は六千九百三十三カ所だが、名称不明のものなども含まれ、実質的な公表数は六千六百十一施設。このうち現存するのは五千三百九十八施設で、残りは廃院したりしている。

 リストには施設名と所在地、電話番号、使った診療科、カルテなど投与記録の有無のほか「納入したが使用していない」といった医療機関のコメントも掲載した。

 フィブリノゲンはかつて出産時の止血剤などとして多くの医療機関に常備され、使用した診療科は産婦人科を中心に外科、内科など四十九科。投与記録が残っているのは存続施設の7%だけで、大半の施設ではどの患者に使用したかを特定するのは困難だという。

 厚労省は納入先を開示しない方針だったが、参院議員家西悟さんの異議申し立てに対し、内閣府情報公開審査会が二月、「検査の端緒となるので開示すべきだ」と答申したため方針転換。会社にリスト提出を求め、確認できた情報を公表した。

東京でも輸血感染か E型肝炎ウイルス 確認なら本州は初

2004/12/08 The Sankei Shimbun
 
 東京都内の大学病院で11年から12年にかけて輸血を受けた20代の男性患者がE型肝炎ウイルス(HEV)に感染していたことが8日、分かった。輸血が原因と疑われている。輸血によるHEV感染は北海道で2例あったが、本州で確認されれば初めて。

 厚生労働省血液対策課によると、この男性患者は悪性リンパ腫の治療のため、62人分の献血血液の輸血を受けた。12年3月に肝炎を発症。その後、肝機能は改善したが、リンパ腫が原因で死亡した。

 病院側が肝臓の保存血液を調べた結果、HEVを検出した。日赤が保存していた献血者62人の検体検査でも1本からHEVを検出し、輸血感染が疑われるという。日赤は2つのHEVの遺伝子が一致するかどうかを調べている。

 HEVは輸血時検査の対象外だが、日赤は感染者の多い北海道で問診を強化するなど対策を始めている。(共同)

E型肝炎、身近な食品が感染源?…輸血患者調べ解明

2004/11/28 読売新聞 Yomiuri On-Line
 北海道北見市の焼き肉店で発覚したE型肝炎の集団感染は、豚の内臓という一般に流通する食品が感染源と強く疑われ、そこから輸血感染へと広がった初のケースとなった。

 人と動物に共通するこの感染症は、これまで野生動物の肉を生で食べた後の感染報告例はあったが、具体的な感染源はほとんど特定できていなかった。集団感染の判明を機に、ナゾだったE型肝炎の感染ルートが解き明かされそうだ。

 「父も劇症肝炎で亡くなりました」――E型肝炎の集団感染から輸血感染へと広がった事実を、日本赤十字社がつかんだのは、輸血感染を引き起こした血液を、善意で提供してくれた献血者一家への調査で聞いたこの言葉だった。

 日赤担当者は9月末に献血者の父親が死亡したのを聞き、感染者がほかにもいる可能性を厚生労働省に報告。厚労省のその後の調査で、北見市の焼き肉店が感染源と疑われるE型肝炎集団感染が発覚、献血者は感染した1人だったと判明した。

 初の輸血感染が昨年わかったのを受け、日赤は全国の献血者の保存血液のうち、肝機能障害を示すALTという酵素の値が高い血液を検索。さらに、高精度検査でE型肝炎ウイルスを検出した血液について、輸血されたか調査している。

 その過程で、今年度集めた血液のうちALT値が高く、ウイルスも検出された3本の血液が見つかった。うち1本の献血者は、ALT値が正常だった9月6日にも献血歴があり、その血液が9月9日に、リンパ腫(しゅ)の60代患者に輸血されていることがわかった。

 日赤は急きょ、患者の血液を10月1日、4日の2回にわたって調べ、いずれも保存献血と同じ遺伝子のウイルスが見つかった。患者は輸血前にはウイルスは見つからず、輸血での感染と確定。患者は肝炎を発症したが、早期発見と治療が奏功し、現在は安定している。

 輸血を受けた患者は先月末の厚労省の審議会で、国内2例目のE型肝炎輸血感染例として日本赤十字社から報告されていた。ただ、この時点で厚労省は感染源には言及しなかった。

 一方、日赤は今月から、E型肝炎感染者の多い北海道で、感染が疑われる献血をすべて検査するなど、安全対策を強化している。

豚の内臓食べ、6人E型肝炎1人死亡…北海道北見

2004/11/28 読売新聞 Yomiuri On-Line
 北海道北見市内の焼き肉店で今年8月、豚レバーなどを食べた6人がE型肝炎ウイルスに集団感染し、うち1人が劇症肝炎で死亡していたことが、厚生労働省などの調べで27日わかった。

 1人が感染を知らずに献血し、輸血感染も引き起こしていた。同ウイルスは生焼けの肉に残りやすいが、野生動物の肉でなく、一般に流通する食品が原因とみられるE型肝炎の集団感染は初めて。事態を重く見た同省と北海道庁は、食品衛生法などに基づき、来店客の健康調査や保管中の肉の分析などに乗り出した。

 厚労省などによると、6人は8月中旬、お盆で久々に集まった親類同士の計13人で焼き肉店を訪れ、牛肉や鶏肉などのほか、豚のレバーやホルモン焼きといった内臓肉を食べた。

 このうち60歳代の男性が9月下旬になって劇症肝炎を発症し、同市内の病院に入院。男性の血液からE型肝炎ウイルスが検出され、数日後に死亡した。

 一方、一緒に食事した男性の息子が献血し、それを輸血された患者が感染。報告を受けた厚労省が専門家と協力して、12人の血液を調べた結果、息子からウイルスの遺伝子が見つかったほか、感染後しばらくの間だけ体内に現れる特有の免疫物質(抗体)も、息子など5人から検出された。

 E型肝炎は潜伏期間が平均6週間もあり、感染源の食品を突き止めるのが極めて難しい。しかし、聞き取り調査の結果、感染した6人のほとんどが豚レバーと豚ホルモン焼きの両方を食べていた一方、感染しなかった7人はどちらにも手をつけなかったことが判明。同店での焼き肉は、この親類同士が一緒に食べた唯一の食事だったことから、同省は豚の内臓肉が感染源とほぼ断定した。

 厚労省と道庁によると、同店はバイキング形式で、客が選んだ肉を自分で焼いて食べる。豚の内臓肉は、生焼けを好む客が少なくないという。今のところ、別の来店客からの感染例は報告されていないが、店員も含めた健康状態と、店の衛生管理などについて調査を進めている。

 豚は、大半が若いうちにE型肝炎に感染するが、出荷期の生後6か月までに血中のウイルスが消滅し、通常の豚肉は安全。ただ、肝臓などにはウイルスが残存するといわれ、市販の豚レバーからも検出が報告されている。同省は生食を控えるよう呼びかけている。

野生イノシシからE型肝炎ウイルス

2004/11/23 読売新聞 Yomiuri On-Line
 厚生労働省研究班が、兵庫県など4県で捕獲したイノシシを調べたところ、肝臓などからE型肝炎ウイルスの遺伝子が検出された。

 遺伝子は型が、国内のE型肝炎患者から検出されたものとよく似ており、イノシシから人間に感染している可能性を強く示唆する結果となっている。厚労省は「ウイルスは加熱すれば死ぬ。よく調理して食べてほしい」と呼びかけている。

 分析したのは国立感染症研究所の宮村達男ウイルス第2部長と、東芝病院の三代俊治研究部長を班長とする2つの研究班。両研究班は昨年11月から今年4月にかけ、長野、愛知、和歌山、兵庫、長崎県で85頭の野生イノシシを捕獲。

 肝臓と血液を調べたところ、8頭(兵庫3、長崎3、愛知1、和歌山1)からE型肝炎ウイルスの遺伝子が検出された。このうち愛知、和歌山、兵庫の遺伝子は国内の患者から見つかったウイルスの遺伝子型とほぼ一致した。

 E型肝炎は昨年、長崎や鳥取で複数の感染患者が発生。いずれも患者がイノシシの肉や肝臓を食べており、これが原因と強く疑われたが、決定的な証拠は見つかっていない。イノシシの血液からウイルス遺伝子が見つかったことで三代部長は「感染するウイルスが肉にも含まれることがほぼ裏付けられた」としている。

 厚労省食品安全部は「野生イノシシの肉には、E型肝炎ウイルスだけでなく、ほかの病原体や寄生虫も含まれている可能性が高い。生や、生焼けを食べるのは避けて」としている。

 E型肝炎ウイルスに感染すると約6週間後、発熱や腹痛、黄だんなどの症状が出る。大半は安静にしていれば治るが、まれに劇症肝炎になる。発症者の死亡率は1―2%とされる。

C型肝炎 陽性でも86%治療せず 受診指導ない職場

2004/11/15 The Sankei Shimbun
 C型肝炎ウイルス検査が陽性でも医師にかかるよう指導しない職場の健診では、陽性と判定された人の約86%が受診しなかったとする調査結果を、愛知医大消化器内科(各務伸一教授)とJA愛知厚生連長久手農村健診センター(山田晴生所長)が15日までにまとめた。

 C型肝炎のウイルス感染者は、初期は無症状の場合が多いが、放置すると70歳までに4−5割が肝硬変や肝がんになるというデータもあり、早急に治療を始めたり、定期的に肝機能をチェックしたりすることが、生存率を伸ばすのに不可欠とされる。

 調査した福沢嘉孝助教授は「今のままでは肝がん撲滅は不可能。働き盛りの職員の健康を守るため、会社が受診勧奨を徹底するなどの対策が必要だ」と訴えている。

 福沢助教授らは昨年、愛知県内の団体で働く健康保険組合員と家族計約1万2000人を対象にした職域健診で、C型肝炎ウイルスの検査結果と、その後の受診行動を調査。「感染の可能性が極めて高い」と判定された118人のうち、受診した人は16人(13・6%)にすぎなかった。

 一方、同県内のある自治体が実施している国民健康保険加入者らを対象とした健診では、陽性者の受診率は54・5%だった。

 自治体健診では受診を促すパンフレットを送るなどの事後指導をしていたが、職域では結果を通知するだけだったため、検査を受けた人が肝がんのリスクを十分に理解できず、受診率に差が開いた可能性があるという。

 福沢助教授は「職域健診ではプライバシー保護が大きな壁になって、受診指導を行いづらくなっている。ほとんどの会社で実態は同様と考えられる」と分析している。

 <C型肝炎の治療> インターフェロンを使った抗ウイルス療法で感染者の3分の1はウイルスを排除でき、3分の1は肝炎の進行を遅らせることができるとされる。薬が効きにくい難治性にも効果的な新薬が承認されるなど、治療の選択の幅が広がってきた。抗炎症療法や生活習慣の改善で進行を遅らせる可能性があるとの報告があり、定期的な検査で肝がんを早期に発見、治療する技術も向上している。

輸血受けた60歳代男性、E型肝炎に感染…国内2例目

2004/10/28 読売新聞 Yomiuri On-Line
 E型肝炎ウイルス(HEV)の輸血感染が、今年9月に起きていたことが、日本赤十字社の調査で分かり、28日の厚生労働省の審議会に報告された。

 E型肝炎の輸血感染は、一昨年に北海道で起きており、国内で2例目。

 HEVは現在、献血の安全検査の項目に含まれておらず、日赤はE型肝炎患者の多い北海道で、感染が疑われる献血はすべて検査するなど、安全対策を強化する方針だ。

 感染したのは、リンパ腫(しゅ)を治療中の60歳代の男性患者。日赤で、保存血液を調べたところ、HEVの遺伝子が見つかり、男性患者から検出されたものと一致した。日赤は、男性患者が治療を受けた自治体名は明らかにしていない。

 この患者は9月9日に血小板の輸血を受け、10月の検査で感染が確認された。E型肝炎の潜伏期間は約6週間で、患者は今のところ、発症していない。

 事態を重く見た日赤は、北海道に限り、献血者が感染源となるシカや豚の生肉を食べたかどうかを問診し、疑いの強い献血はウイルスの遺伝子検出検査を行う。

 E型肝炎は、主に途上国で飲料水を通じて流行する急性肝炎。慢性化しないが、劇症化による死亡例が日本でもある。国内では、シカや豚の内臓などを不十分な加熱で食べるのが原因と疑われている。

薬害C型肝炎:血液製剤フィブリノゲンの納入先、「投与記録ない」が8割超

2004年9月27日 毎日新聞 東京夕刊 Mainichi INTERACTIVE
 三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)の血液製剤フィブリノゲンによるC型肝炎感染問題で、厚生労働省が納入先医療機関を対象に調査した結果、8割以上の医療機関がカルテなどの投与記録を保存していないと回答したことが分かった。厚労省は記録による患者の特定は難しいとして、年内に公表が予定されている納入先医療機関と協力し、可能性がある患者に広く肝炎検査の受診を呼びかける方針。

 厚労省は、ウェル社の調べで特定された納入先医療機関6518カ所(廃院、統廃合を含む)に対し、納入の事実や患者への通知、記録の有無などを文書で問い合わせ、9月21日現在、5221カ所から回答があった。投与記録を保存していない医療機関数について厚労省は「調査が途中」として具体的な数字は明らかにせず、「8割以上」とだけ示した。「投与した記憶はない」「使用したことはない」との答えもあったという。【玉木達也】

イラクでE型肝炎集団発生 215人感染、5人死亡

2004/09/26 The Sankei Shimbun
 バグダッド周辺で水道水の汚染によるとみられるE型肝炎が集団発生し、世界保健機関(WHO)は26日までに検査器具や浄水剤を送るなど対応に乗り出した。

 25日の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、報告されているだけで215人が感染し、5人が死亡した。

 感染地域は、バグダッド北東部のサドルシティーと、バグダッド南方のマフムーディーヤ近郊。いずれも反米武装勢力の拠点で米軍が掃討作戦を続行。上下水道が整備できる状態ではなく感染拡大が懸念されている。(共同)

薬害肝炎訴訟:5地裁で山場 迅速化に国の“壁”

2004/09/04 毎日新聞 Mainichi INTERACTIV
 汚染された血液製剤によるC型肝炎ウイルス(HCV)感染を巡り、国と製薬会社の責任を問う全国5地裁の薬害肝炎訴訟が山場を迎えている。1日、フィブリノゲン製剤の製造承認を早々と取り消した米食品医薬品局(FDA)の当時の責任者が東京地裁で証言台に立った。近年ではHIV(エイズウイルス)、ヤコブ病に続く薬害訴訟。原告側が「薬害を根絶する最後の裁判」と位置づける訴訟は、裁判迅速化や国の情報公開などの問題点も浮き彫りにしている。【江刺正嘉】

◇21年間もなぜ

 「76〜77年、再評価委員会を5回開いたが、症例データが不十分で『肝炎感染の重大な可能性』を否定できなかった」「有効性もほとんど確認できず、より安全な代替療法もあるとの認識で一致した」

 FDAで血液製剤の承認・規制を担当する部長だったルウェリス・F・バーカー氏は、フィブリノゲン製剤を巡る内部論議を東京地裁で証言した。FDAは77年、製造承認を取り消している。

 同製剤は2000〜2万人の供血をプールして作るため、一人でもHCV保有者の血液が混入すると全体が汚染される。国内では旧ミドリ十字(現三菱ウェルファーマ)が製造・販売していた。

 同製剤は、出血を止める血液成分が足りない先天性疾患への有効性は認知されているが、出産時の出血などへの有効性には争いがある。旧厚生省が先天性疾患に使途を正式に限定したのは98年。FDAの承認取り消しから21年もたっていた。

 国内のHCV感染者は推定200万人以上。多くは輸血や血液製剤が原因とみられ、フィブリノゲン製剤で少なくとも1万人が感染したとされる。同訴訟の原告は70年代後半以降、出産時に同製剤を投与された女性が大半を占めている。裁判は、(1)国内で製造承認された64年当時、肝炎が慢性化して肝臓がんなど重い症状に至る認識があったか(2)危険性を上回るほどの有効性が確認されていたか(3)FDAが承認を取り消した後の対応−−などが争点だ。

 日本肝臓学会は02年、「40年前には肝炎感染で重い症状に陥ることが推定されていた」との報告書をまとめた。その責任者だった飯野四郎氏は大阪地裁で「製造承認当時、血清肝炎(血液で感染する肝炎)が高い確率で起き、肝硬変に至るのは医学教育を受けた人なら知っていた。63年に血清肝炎研究班を設けた旧厚生省も同じ認識だったはず」と証言した。

 福岡地裁に出廷した原告側証人2人も、承認申請時の臨床データのずさんさから、有効性に疑問を投げかけた。国側は「承認当時はウイルス性肝炎の慢性化についての見解はほとんどなかった。承認時の資料で有効性も確認できていた」などと主張している。

◇原告「命の時間ない」

 証人は「A」「B」「C」。今年7月、福岡地裁で審理の進め方を原・被告が協議する非公開の席で、国側が出した立証計画書に、弁護団は目を疑った。証人申請する専門家3人の氏名が伏せられていたためだ。しかも、当初は「福岡、名古屋、仙台地裁のいずれかで1人」としていたのが、3人に増えていた。

 関係者によると、地裁は採否を判断できず、原告側は実名を求めたが、国側は「(実名を出すことに)本人の了解が得られていない」と繰り返した。原告の小林邦丘(くにたか)さん(32)が立ち上がり、訴えた。「裁判長、裁判が始まって1年もたつのに進んでいるんですか。死んでしまった原告もいる。私たちには命の時間がありません」

 裁判長の強い督促に国側はようやく「1週間後に明かす」と約束した。

 福岡地裁では、原告側の2証人は「5月に主尋問、7月に反対尋問」で合意していたが、国側は4月になって突然、担当裁判官の異動を理由に「争点が複雑なので、反対尋問は9月に延期したい」と申し出てもいた。

 昨年7月施行の裁判迅速化法は「1審は2年以内」を目標に掲げる。法務省は「迅速な訴訟対応に一層の協力を」と各省庁に通知してもいる。

 原告側は5地裁で主張を統一し、証人申請した6人の尋問も各地裁に分散させ、証言内容を援用し合う態勢を取る。審理を少しでも速めるためだ。福岡地裁の審理が最も進んでおり、弁護団は「国自ら裁判の引き延ばしをしている」と批判を強め今年5月、法務、厚生労働両省に抗議書を送った。法務省民事訟務課は「匿名での立証計画の提出は過去にも例がある。原告側主張に応じて国側証人を増やすのもやむを得ず、引き延ばしではない」と説明している。

◇情報公開遅れで大半被害知らず

 HCV感染者16人が02年10月、東京、大阪地裁に初めて起こした裁判は、仙台、名古屋、福岡の3地裁にも広がった。感染者1万人以上とされながら、原告は73人。フィブリノゲン製剤の納入記録がある約7000医療機関名の情報公開が遅れ、患者が被害を受けた事実さえ知らないためだ。

 HCVに感染しても自覚症状は少ない。肝硬変や肝がんになって初めて気づく例が多い。厚労省はまず5月、469の医療機関名を開示する予定だったが、一部医療機関の不服申し立てで延期。全医療機関名の公開も年末にずれ込む。

 HCVは接触や経口では感染しないが、就職を断られるなど社会の偏見は根強い。実名を公表している原告は山口美智子さん(48)ら8人だけだ。山口さんらは薬害根絶デーの8月24日、坂口力厚労相に「一斉開示を待たず、納入した医療機関から患者に直接知らせてほしい」と訴えた。厚労相は「努力する」とだけ答えた。

医療事故:発生時、患者側にカルテ提供 大阪の病院

2004年8月29日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE
 大阪府枚方市の市立枚方市民病院が、医療事故が起きた場合、病院長に報告すると同時にカルテのコピーを患者や家族に提供することを義務づけた医療事故対応マニュアルを作成、運用していることが28日、分かった。医療過誤訴訟では、患者側がカルテ改ざんを主張しても立証は難しいとされるが、事故後のカルテ改ざんを防ぐのが狙い。患者の権利を守るための先駆的な取り組みとして、全国的に注目されそうだ。

 カルテは医師法で5年間の保存を定めているが、改ざんを禁じる項目はない。弁護士グループの調査で、過去10年間に全国の医療過誤訴訟で改ざんが疑われるケースが109件あったことが判明している。

 同病院は昨年3月、「医療事故発生時における対応指針」を策定。「事故発生直後の対応」の項目に「改ざん防止のために」という項目を設け、「事故発生時に病院長に報告すると同時に、それまでの診療録の写しを患者・家族に提供する」と明記した。家族の範囲については、父母、配偶者、子ども、生前に患者が指定した人。マニュアルに従うと、院内の報告と患者側への説明が同時になるため、改ざんする余地がなくなる。さらに同病院は今年3月から電子カルテを導入。カルテを修正した場合は履歴として残ることになっている。

 森田眞照院長は「医療行為に伴うミスや不自然な死亡などがあった際、患者や家族の方に、きちんと説明するために項目を設けた」と説明している。現在までマニュアルに基づき、カルテを提供した事例はないという。

 改ざん防止マニュアルは、同病院で起きた医療過誤の反省から創設された医療事故等防止監察委員協議会のメンバーが作成を提言していた。同病院は昨年4月から、請求があれば、例外なくカルテを開示する取り組みも始めている。【今西拓人、宇城昇】

 ▽市民団体「医療情報の公開・開示を求める市民の会」の勝村久司事務局長の話 事故が起きた場合、院内でカルテを保全して改ざんを防ぐケースは聞くが、患者側への提供を明文化したのは画期的だ。カルテを開示しないために信頼関係を失い、訴訟せざるを得ない状況に追い込まれる患者は多い。カルテの開示で医療そのものの改善にもつながり、医療過誤訴訟が減るのではないか。

C型肝炎の「併用療法」年内にも保険適用の見通し

2004/08/17 読売新聞 Yomiuri On-Line
 国内で約150万人に上るとされるC型肝炎感染者の治療対策として、厚生労働省は17日、ウイルス除去に効果がある2つの薬を同時に投与する「併用療法」を、薬事承認する方針を決めた。年内にも保険適用となる見通し。

 2つの薬は「ペグインターフェロン」と「リバビリン」。ペグインターフェロンは、C型肝炎の治療薬としてすでに定着しているインターフェロンが効きにくい難治性の患者にも効果があるという。

 ペグインターフェロンもリバビリンも単独では承認されているが、併用する使い方はこれまで認められていなかった。

 しかし、臨床試験データなどから、2つの薬を併用すると、ペグインターフェロン単独で投与するよりもウイルス除去率が数倍上がるとされており、現場の医師や患者団体から早期承認を求める声が上がっていた。

 厚労省では19日に開かれる薬事・食品衛生審議会の部会で了承を受け、今年10月ごろ承認する予定。

C型肝炎:フィブリノゲン、民医連系では57病院に納入

毎日新聞 2004年5月15日 Mainichi INTERACTIVE
 薬害C型肝炎の感染源となった旧ミドリ十字(現三菱ウェルファーマ)の血液製剤フィブリノゲンについて、全日本民主医療機関連合会(民医連、本部・東京)などが独自調査し、納入が分かった計57の加盟病院が患者に事実を公表、検査を呼びかけるなどの活動を始めた。厚生労働省は13日に納入先の公表を予定していたが、一部医療機関の不服申し立てで先延ばししている。

 国などに損害賠償を求めている薬害肝炎訴訟原告・弁護団が昨年、医療関連6団体に、納入や投与記録の有無を各医療機関に調べてもらうよう要請。民医連と日本生活協同組合連合会(生協連)医療部会が応じた。

 両団体には約700の医療機関が加盟しており、個別に製造元に問い合わせるなどした結果、57病院に納入されていたことが判明。各病院は、カルテから投与が分かった人には直接連絡して検査を勧めるほか、過去に大量出血などで投与された可能性のある患者に向けて、院内に検査を勧める文書を掲示した。

 このうち80年に11本、87年に3本の納入が確認された福岡市博多区の千鳥橋病院は、院内の掲示板やホームページに納入実績があったことを伝える「緊急のお知らせ」を掲載。これまでに4件の問い合わせがあったが、いずれにも同製剤は使用されていなかった。同病院はすべてのカルテを保存しているため、今後、投与された患者の調査も進める。

 生協連医療部会の平沢民紀・事務局次長は「医療機関側の利益より人命を大切にするのは当然。厚労相の情報開示方針にクレームをつける病院があったのは、医療に携わるものとして恥ずかしい」と話している。

C型肝炎が糖尿病誘発、東大チームが実証

2004/05/09 NIKKEI NET
 C型肝炎になると糖尿病を誘発しやすいことを東大医学部の小池和彦教授(感染制御学)らが8日までに、動物実験で明らかにした。

 ウイルス感染で起きるC型肝炎と、肥満や過食が引き金になる2型糖尿病の関連性は疫学調査で報告されているが、因果関係を生体で確かめたのは世界で初めてという。

 人でも同じ現象が起きていると考えられ、同教授は「C型肝炎患者は肥満、食事などに特に注意を」と指摘している。

 2型糖尿病は、血糖値を下げるインスリンがうまく作用せず発症する。

 同教授らは、C型肝炎ウイルスが作るタンパク質が肝臓でできるように遺伝子を導入したマウスを作製。インスリンを注射して一時間後に調べると、正常なマウスの血糖値は注射前の30%に下がったが、遺伝子を導入したマウスは48%にしか低下しなかった。

 遺伝子導入マウスは高カロリー食を与えると肥満になり糖尿病を発症したが、正常なマウスは高カロリー食でも発症しなかった。 〔共同〕

不眠に悩む人は大都市に多い、製薬会社の調査で判明

2004/05/08 読売新聞 Yomiuri On-Line
 不眠に悩む人は「大都市」に多いことが、エスエス製薬の睡眠改善薬「ドリエル」の2003年度の全国都道府県別販売状況で明らかになった。

 エスエス製薬では「都市化や24時間化した生活習慣と現代人のストレスには密接な関係が伺える」と分析している。

 人口10万人あたりのドリエルの販売個数は全国平均で2200個だったが、2200個以上売れた都道府県は、東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏と大阪府、愛知県、兵庫県など大都市圏が中心だった。反対に1600個以下と少なかったのは福島、山形、秋田、長崎、佐賀などの東北、九州地区が多かった。

 ドリエルは「寝付けない」、「眠りが浅い」といった症状を改善する国内初の一般用医薬品(大衆薬)だ。昨年度の販売個数は240万個強で、年間の販売目標だった25億円を大幅にクリアする見通しだ。

米A型肝炎集団感染、メキシコ料理店のネギが原因

2003/11/22 読売新聞 Yomiuri ON-Line
 【ワシントン=笹沢教一】米疾病対策センター(CDC)は21日、ペンシルベニア州ピッツバーグ近郊で先月から今月にかけて発生したA型肝炎の集団感染について、ほとんどの患者が食べたメキシコ料理チェーン店のネギ類が感染源であることを明らかにした。

 集団感染の患者は同日現在で575人に達し、このうち3人が死亡している。同センターによると、問題のネギは米国で「スカリオン」「グリーンオニオン」の名で流通している細ネギ。同センターが調査した患者の98%は、加熱していないネギが含まれるサルサなどの料理を食べていた。

 肝炎ウイルスの遺伝子分析では、9月にジョージア州やテネシー州などで起きたネギによる集団感染のウイルスと遺伝子型が酷似しており、メキシコからの帰国者や同国との国境付近の住民から検出されるウイルスとも共通している。同センターは、どの段階でネギがウイルスに汚染されたか、特定を急いでいる。

 今回の集団感染では、食品医薬品局も消費者への警告を出し、加熱していないネギ類に対する注意を呼びかけるなど波紋を広げており、被害の出ていないワシントンなどの日本食レストランでも刻みネギを食材から外す動きが出ている。

米国でA型肝炎集団感染、3人死亡490人発症

2003/11/15 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【ワシントン=笹沢教一】米ペンシルベニア州の保健当局は14日、同州ピッツバーグ北西近郊にあるメキシコ料理のチェーン・レストラン「チチズ」で、野菜入りの料理を食べた客や店員が先月下旬から相次いでA型肝炎を発症し、これまでに3人が死亡、患者が490人に達したことを明らかにした。

 米史上最悪のA型肝炎の集団感染と見られ、州当局は最も重要度の高い緊急保健警告を発令、医師の診察や検査を呼びかけるとともに、連邦政府の疾病対策センター(CDC)が現地に専門家チームを派遣、感染ルートの特定を急いでいる。

 州当局の発表によると、患者の多くは先月初めからこの店を訪れた客で、店員も10人以上が早い時期から発病している。先月だけで、店では1万食以上が提供されたと推定され、すでに約9600人が感染の有無を調べる抗体検査などを受けた。州当局は、感染拡大を防ぐための緊急対策用として、8000人分以上の予防接種ワクチンを準備した。

 AP通信や地元テレビ局の報道によると、死亡した3人は50―30歳代で、うち1人は、緊急肝臓移植が準備されたが、臓器の待機中に死亡したという。

 A型肝炎はA型肝炎ウイルスに汚染された水や食品を介して感染する。料理に含まれた「スカリオン」(ワケギ)などのネギ類から感染した疑いが強く、「チチズ」を運営する会社は営業を中止するとともに、感染拡大を防ぐために全米100店舗のチェーン店の調理室からこの食材を処分した。

 A型肝炎は38度以上の発熱やけん怠感、嘔吐(おうと)を伴い、潜伏期間は2週間から6週間。適切な処置があれば2か月ほどで収まる。米国の専門家は、患者が手を洗わずに生野菜を扱うなどで感染を広げることがあると指摘している。

 ◆抗体持つ人、日本でも急減◆

 埼玉医科大第3内科の藤原研司教授によると、A型肝炎ウイルスは、日本でも戦前は身近に常在するウイルスだった。現在では衛生状態が向上し、日本を含む先進国で大規模な集団発生はほとんど見られなくなっている。

 20年前には40歳以上の日本人の8割が、過去にA型肝炎に感染したことを示す抗体を持っていたが、現在は、かかったことがない人が急増。今回の米国のケースのように汚染された食べ物によって不意打ちされると、同様の大規模な集団感染が起こる危険性がある。このため、専門家らが、汚染された食物による“輸入肝炎”の予防対策の必要性を指摘している。

 国立病院17施設の共同研究によると、1980年から20年間にこれらの病院を受診した急性A型肝炎患者数は1420人。生鮮食料品などによって小規模な集団感染がたまにあるほかは、海外旅行中に食事などで感染するケースがほとんどだという。症状が悪化する劇症A型肝炎を経て死亡する確率は、0・3%ほどと言われる。日本消化器病学会などの調査によると、最近4年間で国内の劇症A型肝炎発症者は34人報告されている。

血液製剤でC型肝炎感染、大阪の女性が実名で提訴

2003/11/21 読売新聞 Yomiuri On-Line
 血液製剤の投与でC型肝炎ウイルス(HCV)に感染したとして、患者らが国や製薬会社に損害賠償を求めた「薬害肝炎訴訟」で、大阪府岸和田市の団体職員桑田智子さん(43)が、6600万円の支払いを求める訴えを21日、大阪地裁に起こした。大阪訴訟としては第4次提訴に当たるが、13人の原告のうち実名を公表したのは桑田さんが初めて。

 訴えによると、桑田さんは1986年6月、大阪府内の病院で、長女を帝王切開で出産。その際、止血剤として旧ミドリ十字(現三菱ウェルファーマ)製の血液製剤「フィブリノゲン」を投与された。5年前に別の病気で血液検査を受け、HCV感染が判明。2年前に慢性肝炎と診断された。

 提訴後、会見した桑田さんは、長女が生後1か月で死亡したことを明かし、「娘が命を救ってくれたと思っていたのに、人生の折り返し点で肝炎にかかっていることを知り、ショックを受けた」と声を詰まらせ、実名公表について「薬害肝炎の残忍さをアピールし、病気で差別を受けている人のためにも勇気を持って闘いたいと思った。被害を放置してきた国や製薬会社に、早期救済を求めていきたい」と話していた。

 薬害肝炎訴訟の原告は、全国5地裁で計56人。福岡地裁の訴訟の原告2人が氏名を公表している。

 厚生労働省医薬食品局血液対策課の話「関係省庁と協議し対応を検討したい」

肝硬変新治療:注入した骨髄細胞が新細胞に変化

2003年11月18日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 山口大医学部(山口県宇部市)は18日、肝硬変の患者の肝臓に本人の骨髄細胞を注入し、働かなくなった細胞の代わりにする治療を開発したと発表した。大学の倫理委員会の承認を得て14日、60代の男性患者に初めて治療を実施した。術後は良好で、1カ月後に効果の有無が判明する。肝硬変は移植以外に有効な治療法はなく、新しい治療法として注目される。

 同大医学部の沖田極教授の研究。骨髄の「幹細胞」が多様な細胞に分化する能力を持ち、増殖することに着目。動物実験で、肝硬変のマウスの血管に骨髄の幹細胞を注入したところ、それが肝臓の病変部分に定着し、新しい細胞になることが分かった。注入したマウスの4カ月後の生存率は70%と、注入しない場合の2倍に伸びた。

 日本肝臓学会理事長を務める山口大医学部付属病院長の沖田教授は「自分の骨髄なので拒絶反応がない。効果が証明されれば、将来的には肝移植に代わる治療になるだろうと考えている」と話している。【銅崎順子】

薬害肝炎被害者支えよう 東京でシンポジウム

2003年11月16日 The Sankei Shimbun
 
 汚染された血液製剤でC型肝炎に感染したとされる薬害肝炎問題で、被害者の支援方法などを考えようと社会福祉学者らが主催したシンポジウムが16日、東京都国立市の一橋大で開かれた。

 シンポでは、牧野忠康日本福祉大教授が9月から進めている被害者の実態調査を中間報告。「病院で『もう駄目だ』と言われて傷つき、漢方薬代に1000万円以上使ったり、周囲に感染を話せず窮屈な生活をしたり、被害者は病気だけでなく心理的、社会的な痛みに苦しんでいる」と話した。

 牧野教授は仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の5地裁で国などに損害賠償を求めている原告(現在53人)全員に質問票を送り、来年5月ごろに調査結果をまとめる。

 また、長男出産時の止血剤に血液製剤フィブリノゲンを投与され、自分とその後生まれた二男がC型肝炎ウイルスに感染した40代の女性が「治療薬インターフェロンが効かず、打つ手がない。治療薬開発を急いで、せめて息子の治療に間に合ってほしい」と訴えた。

独の製薬企業がC型肝炎の新治療薬開発

2003/10/27 読売新聞 Yomiuri On-Line
 ドイツの製薬企業べーリンガーインゲルハイムが、肝臓がんの主な原因となっているC型肝炎の新治療薬を開発した。投与開始から1―2日で、患者の血液中のウイルス量が100―1000分の1に減少したという。研究成果は英科学誌ネイチャー(電子版)に発表される。

 「BILN2061」と呼ばれるこの治療薬を、既存のインターフェロンによる治療が効きにくいタイプの患者8人に対し、2日間に4回飲ませたところ、ほとんど全員のウイルス量が検出限界以下まで減少した。投与を中止すると、1―2週間で再び元のウイルス量に戻った。実用化には、副作用などを検証することが必要。

免疫抑制剤併用でC型肝炎に効果 難治型の治療にも

2003/10/26 asahi.com
 C型慢性肝炎の治療で、通常の治療薬インターフェロンにある種の免疫抑制剤を併用すると効果が大きく向上することが分かった。日本人に多い難治型のウイルスで肝炎になった人にも効果が高く、新治療法として期待できるという。この薬がウイルスの増殖を抑える仕組みも解明し、昭和大と京都大の研究者が27日から京都市で始まる日本ウイルス学会で発表する。

 この薬は移植臓器の拒絶反応防止などに使うシクロスポリン。昭和大藤が丘病院の与芝真教授や井上和明・助教授らは、C型慢性肝炎の患者44人にインターフェロンだけで、別の患者76人には免疫抑制剤も加えて、それぞれ半年間治療した。

 その半年後、C型肝炎ウイルス(HCV)が血液中から消えて効果を確認できた患者は、インターフェロン単独の場合32%、免疫抑制剤と併用の場合55%だった。インターフェロンが効きにくい難治型とされる「1b」タイプのHCVに感染した患者でウイルスが消えたのは単独治療で22%、併用治療で52%だった。

 併用で効果が上がった原因は京都大ウイルス研究所の下遠野邦忠所長や渡士幸一研究員らが解明した。人の肝細胞にHCVを感染させ、シクロスポリンや似た化学物質約100種類の働きを比較した。肝細胞内で作られたたんぱく質が立体的に本来の形になるのをシクロスポリンが妨げることで、HCVが増殖できなくなることが分かった。

 井上助教授は「日本のC型肝炎患者の約7割は1bタイプに感染しているだけにこの治療効果は朗報だ。ただしシクロスポリンは血圧が上がるなど副作用が強く、血中濃度の管理が大切だ」と話している。

C型肝炎:ラクトフェリンが症状改善に効果 がん学会に報告

2003年09月27日 [毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 ヒトの母乳や牛乳に含まれるたんぱく質「ラクトフェリン」が、慢性C型肝炎の症状改善に効果のあることが、国立がんセンター(東京都中央区)の研究グループによる臨床試験で分かった。特に、60歳以上の高齢者に効果がみられるという。また、動物実験では、大腸や肺などでの発がん予防効果も確認された。名古屋市で27日まで開かれた日本癌(がん)学会で報告された。

 ラクトフェリンは、母乳のほか、涙や精液などヒトの体液にも高い濃度で含まれる。同センター中央病院で、慢性C型肝炎患者44人に8週間、牛乳からとったラクトフェリンの錠剤を与えたところ、8人でウイルス量が半分以下に減った。8人とも60歳以上で、高齢者では3人に1人の割合で効果があった。下痢や悪寒などの軽い副作用はあったが、ヒトが体内に持つラクトフェリンが誘導されて増える効果も分かった。

 また、ラットなどへの投与実験では、大腸や肺、ぼうこうなどいろいろな臓器で発がん予防効果があり、がん転移の抑制や免疫細胞の増加なども確認された。

 ラクトフェリンは胃液で分解されるため、効果のメカニズムはまだ不明。また、市販の牛乳は加熱処理してあり、大量に飲んでも効果はないという。しかし一部のヨーグルトではラクトフェリンを加えた商品があるという。同センター研究所の飯郷正明・化学療法部室長は「高齢者に効果があるのは、年をとると血液中のラクトフェリンが減ることと関係があるかもしれない。現在、大腸がん患者にも投与実験中で、抗がん剤との併用なども考えられる」と話している。【山田大輔】

急性肝炎、治癒後に残存ウイルス B型患者で新データ

2003年08月17日 The Sankei Shimbun
 従来、慢性肝炎に比べてウイルスが体内に残りにくいとみられていた急性B型肝炎の患者で、治癒後も高率でウイルスが残っているとの新データを国立大阪病院の結城暢一消化器科医長(肝臓病学)らが17日、明らかにした。

 B型肝炎ウイルスは血液や体液を介して感染するが、治癒した急性肝炎患者でも残存している可能性が高まったことで、性感染防止のワクチン接種の適用範囲や方法などで再検討が必要となりそうだ。

 同医長らは、急性B型肝炎を発症し、治癒した患者の血清や肝臓組織を分析。

 その結果、発症後1・8−9・5年(平均4・2年)経過した14人中12人はウイルスに対する抗体ができていた。しかし、同意が得られた9人の肝臓組織を調べると全員にウイルスの存在が確認され、また、3人はわずかながら血清中にもウイルスがあった。

 14人中、当初の血清中のウイルスが多かった8人には肝臓の線維化や軽度の炎症が残っていたが、残存ウイルス量との関連は認められず、ウイルスが残っていても再発などには結び付かないとみられる。

 B型肝炎は血液や体液を通じて感染し、日常生活では感染しないとされる。日本では百数十万人の保有者(キャリア)がいると推定されているが、ワクチンの開発や母子感染の防止が進んで減りつつある。

輸血で肝炎感染し死亡 日赤、献血時検査すり抜け

2003年08月02日 The Sankei Shimbun
 献血時のウイルス検査をすり抜けたとみられる血液を輸血された女性患者がB型肝炎ウイルスによる劇症肝炎を発症し、その後死亡していたことが2日、分かった。

 日赤が追跡調査を怠り、女性に危険性を知らせなかったために治療が遅れた可能性がある。1999年の高感度検査導入後、輸血感染が疑われる例で死亡が明らかになったのは初めて。

 日赤が1月に主催したシンポジウムの資料などによると、女性は昨年1月、手術で輸血を受け、その後B型肝炎を発症して死亡。医療機関は日赤を通じ厚生労働省に「感染症報告」を出した。

 日赤は女性の肝炎発症前、この血液を献血した人から「B型肝炎に感染した」と電話連絡を受けていた。日赤は保管血液を再検査したが、ウイルスが検出されなかったため調査を打ち切り、女性には危険性を伝えていなかった。

 日赤はその後の調査で、この感染は輸血による可能性が高いと結論づけている。

日赤にウイルス死滅処理導入を 輸血製剤で厚労省

2003年07月30日 The Sankei Shimbun
 
 日赤の輸血用製剤に肝炎ウイルスなどが混入している恐れが出ている問題で、厚生労働省は30日、輸血用製剤の製造工程にウイルスを死滅させる「不活化」処理を導入するなど、抜本的な安全策を実施するよう日赤に通知した。

 製造業者に製剤の安全性向上への努力を義務付けた血液法が同日施行されたことを受けた初の措置。輸血用製剤の不活化処理は欧米の多くの国で既に実施されており、国内の対応が遅れていた。

 日赤は現在、献血血液を輸血用製剤と血液凝固剤などに使う「血しょう分画製剤」に利用している。血しょう分画製剤はウイルス不活化をしているが、輸血用製剤はしていなかった。

 通知はさらに、輸血用製剤のうち有効期間が長い血しょう製剤について、後にウイルス汚染が判明したら回収できるよう一定期間保存してから出荷するよう求めた。

 過去にウイルス汚染の恐れがある製剤を出荷した医療機関に危険性を知らせることや、輸血した患者の感染症が確認されたら厚労省に報告することも指示した。

 日赤は29日、肝炎ウイルスなどが混入した恐れのある製剤を年間6千本前後出荷していたことを発表した。

輸血製剤6千本汚染の疑い 日赤が過去13カ月間調査

2003年07月29日 The Sankei Shimbun
 
 日赤は29日、肝炎ウイルスなどに汚染されていた可能性があるのに、高感度検査に合格して出荷された輸血用製剤が、過去13カ月間に判明した分だけでも約6400本に上ると発表した。

 うち日赤が回収できたのは13本で大半は既に患者に使われた。厚生労働省血液対策課は「これらの製剤による感染リスクは低い」としているが、感染に気づいていない人がいる可能性もあるため、対象者に肝炎などの検査を呼び掛ける。

 日赤は今後、追跡可能な1995年までさかのぼり、調査する方針で対象者は延べで5万人近くになる見込み。

 日赤によると、昨年6月13日から今年7月21日までの献血でB、C型肝炎やエイズウイルス、梅毒が陽性だった人について直前の献血歴を追跡した。その結果、直前の献血は計6419本の製剤となり、出荷されていた。

 現在の検査技術では感染直後にウイルスを検出できない期間があり、これらの製剤はこの期間に検査をすり抜けた恐れがある。日赤はこれまで、陽性に転じた人の過去の献血歴を調べていなかった。

献血輸血:肝炎に感染した疑いのある患者が29人に 4〜6月

2003年07月15日 [毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 輸血によってC型肝炎ウイルス(HCV)やB型肝炎ウイルス(HBV)に感染した疑いのある患者が、4〜6月の3カ月で医療機関などから29人報告されていたことが、厚生労働省の調べで分かった。このうち28人分は、献血者の検体を高感度の方法で再検査しても、ウイルスが検出されない「陰性」だった。

 同省が医療機関などからの副作用報告をもとに集計したところ、輸血用血液製剤が原因と疑われる報告数はHCVが11人、HBVが18人いた。

 献血血液の検査では、献血者がウイルスに感染した直後で、抗体やウイルスが微量のために検査で陽性にならない空白期間(ウインドーピリオド)がある。このため、日赤は99年にウイルスの遺伝子を増幅して検出する核酸増幅検査(NAT)と呼ばれる手法を導入。29人の検体については再検査をしたが、1人分がHBV陽性と判明したものの、残り28人分は陰性のままだった。

 NATの導入で、ウインドーピリオドは大幅に短縮されたが、それでもHCVで約23日、HBVで約34日、エイズウイルス(HIV)で約11日あり、検査をすり抜ける可能性が指摘されてきた。HIVに感染した血液が検査をすり抜けた例は、まだ報告されていない。

 同省は「現在の検査は非常に精度が高いが、それでも限界がある。検査で陽性になった献血者については過去の献血歴を調べ、その血液を排除するよう努めたい」と話している。【須山勉】

薬害肝炎:原告団 薬品使用の医療機関名公表を要望

2003年06月24日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)の血液製剤フィブリノゲンによるC型肝炎感染問題で、国を相手取って賠償訴訟を起こしている薬害肝炎原告団(48原告)と弁護団(約120弁護士)が24日、フィブリノゲンを使用した医療機関の調査・公表を求める要請書を、厚生労働省や日本産婦人科医会など計15の関係機関に提出した。

 C型肝炎は放置すると肝硬変、肝がんに進行する恐れがあるが、自覚症状が出にくく、感染に気づいていない人も多いとされる。原告団・弁護団は「過去にフィブリノゲンを使用した医療機関を早急に公表し、受診者に検査するよう呼びかけるべきだ」と主張している。【須山勉】

1433人がC型肝炎感染 全国の刑務所と拘置所

2003年05月28日 The Sankei Shimbun
 全国の刑務所と拘置所の被収容者のうち、C型肝炎の感染者が昨年10月1日現在で全体の約2%に当たる1433人に上ることが28日の衆院法務委員会で明らかになった。

 民主党の山花郁夫氏が死亡帳に記載された病名などを基にただし、法務省の横田尤孝矯正局長が答えた。法務省が受刑者らのC型肝炎感染の実態を明らかにしたのは初めて。

 横田局長によると、感染者1433人の内訳は、受刑者1259人、被告174人。1993年から現在まで、インターフェロンによる治療は12例あるという。

 山花氏は「インターフェロン治療が母数に対しあまりに少ない」と追及。横田局長も「率直に言って非常に少ない。インターフェロンの使用について調査し、十分検討していきたい」と述べた。

 C型肝炎ウイルスは血液を介して感染し、自覚症状がほとんど出ないため、肝硬変や肝臓がんに進行する危険がある。厚労省研究班は国内の感染者を約150万人と推定している。治療にはインターフェロンや抗ウイルス薬を使う。

茨城でもE型肝炎の死者、国内で4人目に

2002年10月31日 Yomiuri On-Line
 国内での感染拡大が懸念されているE型肝炎による死者が茨城県でも発生していたことが、31日分かった。

 自治医大などの研究グループが、1998年に同県内の病院で死亡した劇症肝炎の男性患者(当時65歳)の保存血清から病原ウイルス(HEV)を検出し、同日発行の米医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」に発表した。すでに判明している北海道と岩手県の3人と合わせ、国内の死者は計4人になった。

 主に途上国で流行するE型肝炎は近年、先進工業国でも国内感染とみられる患者の発生が相次いでいるが、劇症化した例が国際的な専門誌に報告されたのは、今回が初めて。

B型肝炎に新たな免疫治療

2002年10月30日 The Sankei Shimbun
 免疫細胞に指令を出すある種の細胞にB型肝炎ウイルスの目印を付けて体内に戻し、感染したマウスのウイルスを攻撃させることに愛媛大の恩地森一教授(消化器病学)らが成功し、30日発表した。

 ヒトでの有効性を確認する研究計画を同大病院倫理委員会に提出した。

 B型肝炎の感染予防ワクチンは既に実用化し、感染を防ぐことが確かめられているが、この方法が実用化すれば、既に感染が慢性化し、従来の薬やワクチンで効果が上がらない患者にも有効な治療法として期待できそうだ。

 恩地教授らは、B型肝炎ウイルスに感染したマウスの体から、免疫の司令塔である「樹状細胞」を抽出。これを、免疫機構がウイルスを攻撃するときの目印となる抗原と一緒に培養し、抗原が付いた樹状細胞を感染マウスに注射した。

 すると、樹状細胞が免疫細胞に抗体を大量につくるよう促し、2週間後には13匹すべてでウイルスに対する抗体が確認され、血中のウイルスが大幅に減少した。その後16週間まで観察してもウイルスは増えなかったという。

 同教授らは、倫理委に認められれば、感染していない人で培養した樹状細胞が体内できちんと働き、抗体ができることを確認した上で、B型肝炎の患者に応用したいとしている。

薬害肝炎で国を提訴 血液製剤で感染の16人

2002/10/21 中国新聞 
 国や製薬会社が血液製剤の安全確保を怠ったためC型肝炎ウイルスに感染したとして、汚染された血液製剤の投与を受けた東北から九州までの感染者十六人が二十一日、国と三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字、大阪市)など三社に計九億二百万円の損害賠償を求める訴えを東京、大阪両地裁に起こした。薬害肝炎をめぐる提訴は初めて。

 原告側は「感染の危険などは早期に認識できた」として、被害拡大を防げなかった国などの無策を厳しく追及する構え。今後も各地で提訴が予定されており、薬害エイズ、クロイツフェルト・ヤコブ病に続き、行政と製薬会社の「複合過失」の責任が法廷で問われることになった。

 ほかに訴えられたのは、日本製薬(東京)と、三菱ウェルファーマの子会社ベネシス(大阪市)。

 訴状によると、十六人のうち十二人は一九八四―八八年に出産や手術の際の止血剤として旧ミドリ十字の「フィブリノゲン」を、四人は八〇〜八五年に旧ミドリ十字や日本製薬の第九因子製剤を投与された。十人は慢性肝炎や肝臓がんになったという。

 フィブリノゲンは六四年、第九因子製剤は七二年以降に輸入や製造が承認されており、原告側は「承認時に既に製剤の危険性を予見できた。その後の研究で、肝炎がより重い肝臓がんなどに進行することは一層明らかになっていった」と指摘。

 「血液が固まりにくい先天性の病気以外は代替治療法があったのに、国は使用を規制する権限を行使せず、製薬会社も医師への適切な情報提供を怠った」などと主張している。

 米国では七七年にフィブリノゲンと同種製剤の製造承認が取り消されたが、旧厚生省は八七年に青森県で集団感染が発覚するまで対応しなかった。厚生労働省は情報収集の不備は認めているが「肝炎発症例は少なく、治療の有効性の方が高く評価されていた」と行政責任を否定している。

 フィブリノゲンは八〇年以降だけでも約二十九万人に投与され、旧ミドリ十字の第九因子製剤は薬害エイズの一因にもなった。

薬害肝炎の賠償求める要望書、被害者会が厚労省に提出

2002年09月24日 Yomiuri On-Line
 血液製剤による薬害肝炎問題で、全国の被害者約20人で構成する「薬害肝炎被害者の会」は24日、厚生労働省に対し、法的責任を認めた上で損害賠償するよう求める要望書を提出した。また同日、同会の被害者が初めて記者会見を開き、被害実態を訴えた。

 要望書では、同省が先月末に公表した、薬害肝炎問題に関する調査報告書について「責任逃れに終始した内容で、きわめて不誠実」と批判。その上で、〈1〉薬害発生の真相究明〈2〉責任の明確化と謝罪〈3〉法的責任を前提にした損害賠償〈4〉治療体制の確立や生活保障の実施――などを求めた。

 また、会見では、1986年にフィブリノゲン製剤で感染した女性が「健康な体を奪われ、当時やっていた商売もやめざるを得なかった」と16年にわたる苦悩を訴えた。

 要望書を受け取った同省側は、「責任問題については、調査報告書にまとめた通り」とだけ回答。同会の弁護団は「誠意のない対応で、現在、訴訟を視野に入れて検討している」と怒りをあらわにした。

肝炎多発を国に報告せず 旧ミドリ十字

2002年07月17日 The Sankei Shimbun
 旧ミドリ十字(現三菱ウェルファーマ)の血液製剤フィブリノゲンによるC型肝炎ウイルス感染問題で、青森県で8人の集団感染が表面化した1987年4月の約7カ月前から同年3月にかけ、ミドリ十字が静岡県や広島県などで同製剤の投与を受けた14、5人の肝炎発症を把握しながら、旧厚生省(現厚生労働省)に報告していなかったことが17日、分かった。

 集団感染が表面化した直後の87年4月、ミドリ十字本社が各支店長に対し、都道府県から報告を求められた際は「青森県の発生例以外、肝炎は出ていない」と事実と異なる説明をするよう指示していたことも判明した。

 把握後すぐに報告した上で対策が取られていれば、以降の感染を減らせた可能性があり、厚生労働省は「なぜ国への発症報告が速やかにされなかったのか、さらに調査を進めたい」としている。

 ミドリ十字の社内報告書によると、ミドリ十字静岡支店は86年9月、静岡県の産婦人科医院でフィブリノゲンを投与された3人の肝炎発症を、広島支店も同年11月、広島県の産婦人科病院で2人の肝炎発症をそれぞれ本社に報告したが、本社は当時の厚生省に伝えなかった。

 ミドリ十字が87年2月以降、緊急調査をしたところ、名古屋支店から2人、広島支店からさらに5人、宇都宮支店から1人、仙台支店から1、2人の発症が報告された。

 静岡県の医院では、早期胎盤剥離(はくり)を起こした3人の女性にフィブリノゲンが使われ、医院側は「輸血は使っておらずフィブリノゲンが原因と思われる」とミドリ十字に伝えた。広島県の病院では86年9月下旬から同10月までに女性2人が発症した。

 ミドリ十字が87年4月末、厚生省に報告した際、青森県以外のケースは、どこのケースか分からないが副作用として「4人」と報告。その後、同年7月までに同社の全国調査の結果を厚生省に伝えた。

 厚労省は17日、三菱ウェルファーマから提出された関係資料を公表した。

E型肝炎、国内初の発生報告

2002年09月06日 Yomiuri On-Line
 発熱やおう吐などの急性症状を起こすE型肝炎に国内で感染した患者の発生が、初めて国に報告され、厚生労働省が近く発表する感染症発生動向調査に記載されることが明らかになった。E型肝炎は長く「日本には存在しない」とされ、医師もE型肝炎ウイルスの検査をしなかったため、これまでは海外で感染した患者しか報告されたことがなかった。

 この患者は、長野県で7月に急性肝炎を発病したが、通常行う血液検査では、原因が分からなかった。E型肝炎が流行する発展途上国へ最近旅行したこともなかったが、読売新聞などで「E型肝炎が国内に定着して死亡例も出ている」との研究成果が報道されたことから、主治医が念のため、E型肝炎の検査を行っている米国の機関へ血液を送付。その結果、E型肝炎感染直後に体内で作られる抗体が検出された。

 1999年施行の感染症法は、ウイルス性肝炎患者の発生を必ず保健所へ報告するよう医師に義務づけている。専門家らは「海外渡航歴のない患者でもE型肝炎を疑って検査すべきだ」と医師に注意喚起しており、国立感染症研究所にも7月下旬以降、各地の医療機関から検査依頼が相次いでいる。

薬害肝炎、感染者が「被害者の会」結成し集団提訴へ

2002年09月01日 Yomiuri On-Line
 血液製剤「フィブリノゲン」による薬害肝炎問題で、旧厚生省と旧ミドリ十字(現三菱ウェルファーマ)には薬害を引き起こした責任があるとして、同製剤などによる感染被害者約20人が31日、被害救済や補償問題を集団交渉する「薬害肝炎被害者の会」を結成した。約100人の弁護団が同会の活動を支援する。厚生労働省は同問題の最終調査報告書で、行政責任を事実上否定していることなどから、交渉は難航が予想されており、同省と三菱ウ社を相手取った集団訴訟に発展するのは必至の情勢だ。

 被害者の会には、東北から九州まで約20人が参加している。大半は、1980年から88年にかけて、出産時などに止血剤としてフィブリノゲン製剤を投与され、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した女性。また、80年から86年にかけて、新生児出血症などの止血剤として、同様の血液製剤の非加熱第九因子製剤を投与され、HCVに感染した男性数人も同会に加わっている。

 被害者の中には、慢性肝炎から肝硬変に進行している重症患者もいる。

 血液製剤をめぐっては、旧厚生省の研究班が78年、輸血後の非A非B型肝炎(現在のC型肝炎)感染の危険性を指摘しているとして、弁護団は「国と製薬会社は、遅くとも78年には血液製剤による肝炎感染の危険性を予見でき、対策をとるべきだった」と主張している。

E型肝炎、国内初の死亡3人

2002年07月21日 Yomiuri On-Line
衛生状態の悪い途上国の病気とみられていたE型肝炎が、日本にも上陸して広がり、北日本で3人の死者が出ていたことが、東芝病院(東京)などの調査で明らかになった。

E型は、主要なウイルス性肝炎の中で唯一、身近な動物や家畜が感染源となる「人畜共通感染症」であるため、動物を通じて感染が拡大する可能性が高い。妊婦がかかると死亡率が高いといわれ、欧米でも近年、問題化している。厚生労働省は国内の感染実態把握と感染ルートの解明に乗り出した。

 死者の1人は北海道の若い女性で、昨年発症した。入院から6日目に劇症肝炎と診断され、肝不全になったため、生体肝移植を行うなど治療を続けたが、3か月後に死亡した。患者の血液を三代俊治・東芝病院研究部長らが分析した結果、E型肝炎ウイルス(HEV)が検出された。

 別の研究グループも、90年代に原因不明の劇症肝炎で死亡した東北地方の高齢男性2人の血清から、HEVを検出した。E型肝炎の劇症化例が国内で確認されたのはこの3件が初めてで、いずれも先月、専門家の研究会で報告された。

 さらに三代部長らは、1996―2001年に東京、埼玉、北海道で原因不明の急性肝炎になった患者計7人分の血清からも、HEVを検出した。その遺伝子を分析した結果、3タイプのウイルスに分類できたが、いずれも海外で報告されているHEVとは遺伝子の配列が大きく異なっていた。三代部長は「過去に3ルートで海外から侵入したHEVが、それぞれ国内で増殖し、7人の患者に感染した」と判断している。

 これまで海外渡航者が帰国後、E型肝炎を発症したことはあったが、この7人も死亡した3人も流行地への渡航歴はなく、ウイルスがすでに国内に定着している可能性が高い。

 E型肝炎は、A型肝炎と同様、感染者の便などに含まれるウイルスが、水や食物を通じて経口感染する急性肝炎。流行地域での研究によると、A型より重症化しやすく、死亡率はA型の10倍に当たる1―2%。特に妊婦は約2割が劇症化して死亡する。日本では「上水道の整備されていない途上国の病気」として軽視され、HEVの検査薬も普及していないため、ほかの患者が見逃されているおそれもありそうだ。

 HEVは、「宿主」とよばれる動物の体内で重病を起こさずに増殖すると考えられており、海外ではブタやヤギ、ネズミなどが宿主として疑われている。

 ◆慎重に調査進める…疫学研究班長◆

 厚労省が設けたウイルス性肝炎の疫学研究班・吉沢浩司班長(広島大教授)の話「日本で発生する急性肝炎にHEVがどのくらいの頻度で関与しているのか、放置できないので、現在調査中だ。動物との関係も含め、今後、慎重に調査を進めたいと考えている」

 ◆E型肝炎 途上国でA型、B型に次いで多いとされるウイルス性肝炎。ウイルスに汚染された飲料水が主な感染経路となり、東南アジアなどの多雨地域では、洪水の後などに流行する。潜伏期間は約6週間。腹痛や食欲不振、気分の悪さなど、他の急性肝炎と同様の症状が現れる。発症せずに免疫ができて終わる人も少なくない。病原体のHEVは、球形の小型ウイルスで、直径は約30ナノ・メートル(ナノは10億分の1)。

C型肝炎の精密検診を助成 都が10月から

2002年06月26日 The Sankei Shimbun
 東京都は26日、血液製剤などによる感染が問題になっているC型肝炎対策として、老人保健法に基づく「基本健康診査」で感染の疑いが高いと判定された人を対象にした精密検診費用の自己負担分を、10月から助成すると発表した。

 都によると、C型肝炎対策について都道府県レベルで精密検診の費用を助成するのは初めてという。

基本健康診査のC型肝炎ウイルス抗体検査は今年4月から実施。国、都道府県、市町村がそれぞれ3分の1ずつ検査費用を負担している。

 都は、検査で感染の疑いが高いと判定された人の肝臓の炎症程度や症状を早めに把握することが病気の進行予防に欠かせないと判断。都が指定する肝炎治療の専門医療機関(100程度)で精密検診を勧めることにした。

 都健康局は「C型肝炎は発見しにくい病気なので、早期発見の対策を取ることにした」と話している。

フィブリノゲン薬害肝炎問題で厚労省が検証命令

2002年06月18日Yomiuri On-Line
 血液製剤「フィブリノゲン」による薬害肝炎問題で、厚生労働省は18日、製造元の三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)に対し、同製剤の肝炎ウイルス対策の効果について実験で明らかにするよう命令した。

 フィブリノゲン製剤については、1964年の販売開始以降、「紫外線照射」「βプロピオラクトン処理」「加熱処理」などの滅菌対策がとられた。同省では、これらの滅菌対策が肝炎ウイルスに、どの程度有効だったかを確認するため、対策がとられていた当時の製造工程と同じ条件を実験室内に再現し、検証するよう求めている。

ハンセン病入所者:26・6%がC型肝炎に感染 厚労省調査

2002年06月17日Mainichi INTERACTIVE
 全国13カ所の国立ハンセン病療養所の入所者の26・6%がC型肝炎ウイルスの感染歴があり、11・7%は現在も感染していることが17日、厚生労働省の調査で分かった。閉鎖的な環境下で、注射器の使い回しなど、不衛生な治療を受けてきたことが原因とみられる。

薬害肝炎で産科婦人科学会が血液製剤の使用実態調査へ

2002年06月15日Yomiuri On-Line
 血液製剤「フィブリノゲン」による薬害肝炎問題で、同製剤が出産時の止血剤として広く使われていたことを重視した日本産科婦人科学会は、全国285の医療機関を対象に、使用状況など実態調査に乗り出すことを決めた。同学会が15日開いた定例記者会見で明らかにした。この問題をめぐっては、厚生労働省と製造元の三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)がすでに内部調査を進めているが、学会が調査を行うのは初めて。

 調査対象は、全国の大規模総合病院や主要産科医院などで、フィブリノゲン製剤をどのような治療に、どのくらい使用していたかなどを調べる。また、C型肝炎ウイルス(HCV)感染の危険性について、どのように判断していたかについても、あわせて検証する

薬害肝炎

2002年03月21日 Yomiuri On-Line
 C型肝炎ウイルス(HCV)感染者は、国内に200万人以上いると言われ、大半は、輸血や、針を換えないで行われた連続注射などによって感染したとみられている。これに対し、汚染された非加熱血液製剤が血友病や大量出血した患者らに止血剤として使われ、HCVに感染したケースが薬害肝炎だ。

 非加熱製剤のうち、出産時の異常出血などに使われた「フィブリノゲン」では約1万600人が感染したと推計されている。

 また、主に血友病治療に使用された非加熱製剤「血液凝固第八、九因子製剤」でも肝炎に感染。血友病以外の治療だけでも投与された患者の52%がC型肝炎に感染していることが、最近の厚生労働省の調査でわかった。(腰)

フィブリノゲン製剤、米で77年に承認取り消し=厚労省、把握せず10年間放置

2002年3月21日 時事通信
 旧ミドリ十字(現三菱ウェルファーマ)が製造し、投与後のC型肝炎ウイルス感染が指摘されている非加熱血液製剤フィブリノゲンをめぐる問題で、厚生労働省は21日、感染の可能性があるとして旧厚生省が初めて実態調査を指示して自主回収が始まった1987年より10年前の77年に、アメリカ食品医薬品局(FDA)がフィブリノゲンの製造承認を取り消していたことを確認した。また、79年にはこうした事実が研究者によって指摘されていたことも分かり、薬害ヤコブ病などと同様に、国や企業の対応の遅れによる責任が問われそうだ。 

旧ミドリ十字の血液製剤、米で禁止後も10年販売

2002年3月21日 読売新聞
 非加熱血液製剤によるC型肝炎ウイルス感染(薬害肝炎)問題で、28万人以上に投与され1万人余が感染したとされる血液製剤「フィブリノゲン」を製造販売していた旧ミドリ十字(現三菱ウェルファーマ)が、米国で同製剤の製造承認が取り消された後も、約10年にわたって日本国内で販売を続けていたことが、20日までにわかった。

 現在の厚生労働省の担当者は、米国での承認取り消しの事実を把握していなかった。製薬会社や国の対応の遅れが被害を拡大させた疑いが浮上したことで、薬害エイズや薬害ヤコブ病などと同様、薬害肝炎も、製薬会社や国の責任問題に発展する可能性が出てきた。

 77年の承認取り消しを厚労省知らず

 フィブリノゲンは、米国の売血などで集められた血液などを原料に作られた血液製剤の一つで、1964年に当時のミドリ十字が旧厚生省の製造承認を受け、国内販売が始まった。主に出産時などの異常出血に対する止血剤として使われた。

 このフィブリノゲンについて、米食品医薬品局(FDA)は77年12月、「フィブリノゲンの投与によって肝炎に感染する危険性がある」として、製造承認を取り消した。さらに79年9月には、旧厚生省の試験研究機関である旧国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所)の当時の血液製剤部長が著書の中で、FDAによる製造承認取り消しの事実を報告、フィブリノゲンの危険性を指摘していた。

 しかし、旧ミドリ十字は、87年に青森県の産科医院でフィブリノゲンを投与された8人の患者の肝炎感染が発覚し、旧厚生省から実態調査の指示を受けて自主回収に乗り出すまで、製品の販売を継続。また、厚生労働省は、今月中旬に読売新聞社の取材を受けるまで、FDAの措置も国立予防衛生研究所部長の報告も、把握していなかった。

 FDAの製造承認取り消しを確認した時期や、確認後の対応などについて、三菱ウェルファーマ社(旧ミドリ十字)は「現在、事実関係を調査している」としている。

 厚生労働省では「25年前のことで、どうして米国の製造承認取り消しが把握できなかったのか確認できない。現在は情報収集の体制強化を進めている」(血液対策課)としている。

 旧ミドリ十字は87年から、加熱したフィブリノゲンの製造販売を開始したが、加熱製剤でも肝炎感染が起きることが明らかになり、94年からは、さらに安全性を高めた製剤に切り替えている。

天地人

2001年3月30日(金) [東奥日報]
 薬害エイズ裁判に思いを致していたら、今度は薬害肝炎の恐れあり、という報道だ。一体、この国の薬害対策はどうなっているのか。相も変わらぬ後手、後手のさま。昨今頻発している医療ミスばかりか、過去のツケが医療全般への不信を増しかねない。

 肝炎ウイルスに汚染された非加熱の血液製剤を、血友病以外の患者に投与した可能性がある。国がそう言って、医療機関を公表した。県内では十一の病院などが対象。一九七二年から八八年までに血液製剤を投与された患者が、C型やB型の肝炎ウイルスに感染したかもしれぬ。で、該当する人に検査を呼び掛けた。

 ウイルスによる肝炎は、国内の肝臓病の七割にも。口から入るA型は治りやすいが、B、C型は慢性化し一生付き合わねばならぬことも多い。時には肝硬変や肝臓がんに進行する厄介な病気。感染者は全国で三百万人とも。かつての結核に続く第二の国民病だ。

 輸血や予防接種で感染したとみられる人を、幾人か知っている。長い間、入退院を繰り返し、肝臓がんで亡くなった人。吐血して今、闘病中の人など。いつ発症するのか、不安を抱えている人も多いと思う。

 非加熱製剤が原因らしい肝炎感染は、十四年も前に三沢で報告されていた、と本紙にあった。当時の厚生省は、なしのつぶてだった。何とも腰の重い話。しかも感染経路のほんの一角。注射などによる感染が多いのだから、幅広い対策が必要なのに。今度の調査は、せいぜい始まりの半歩か。

C型肝炎の感染源か 40万人に投与の血液凝固製剤  (2001.02.24) asahi.com
 止血目的で使われる血液凝固製剤「フィブリノゲン」が、加熱処理を始める1987年までに、計40万人に投与され、C型肝炎ウイルスの感染源になった恐れがあるとして、坂口力厚生労働相は23日、対策に着手する方針を明らかにした。

非加熱製剤投与者の検査は公費 肝炎対策で厚生労働省 (2001.02.22) asahi.com
 厚生労働省の肝炎対策有識者会議は22日、1988年までに非加熱血液製剤を投与された可能性のある人らの肝炎ウイルス検査を公費で負担することなどを決めた。製剤を納入した約700病院の名前を公表し、追跡調査する。一方、まとめられた報告書骨子では、92年以前に輸血を受けた人らに対して重点的に情報提供することを盛り込んだにとどまった。感染の有無を確認するための検査料を公費負担するかについては触れておらず、非加熱製剤対策とは一線を画した格好で論議を呼びそうだ。

C型肝炎に牛乳成分効く? 来春から本格的に検証

2000.12.09(03:10)asahi.com
 C型肝炎の治療に、牛乳に含まれるたんぱく質「ラクトフェリン」が有効かどうかを確かめる本格的な臨床試験に、国立がんセンターなどが来春から取り組む。これまで45人の患者に食べてもらった研究では、2割の9人に効果がみられた。今度は250人の患者に協力を求め、ラクトフェリンと、成分が入っていない偽物を使い、比較して効果を分析する。

 臨床試験を計画しているのは、国立がんセンター中央病院内科の岡田周市医長、横浜市立大学市民総合医療センターの田中克明教授ら。全国で計7病院が参加する。

 計画によると、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染し、肝炎になった250人の患者の半数に、ラクトフェリンの粒を毎日食べてもらう。もう半数の患者には、成分が入っていない偽物を食べてもらう。

 これを12週間続け、その後、ウイルスの量などを測って効果を調べる。

 岡田医長らは昨春から、患者45人にラクトフェリンを8週間食べてもらって研究。9人でウイルスの量が半分以下になる効果がみとめられた。目立った副作用はなかった。

 ラクトフェリンは、人や牛などの母乳にわずかに含まれるたんぱく質。国立がんセンター研究所が人の肝細胞を使って実験した結果、HCVに感染しにくくなることがわかっている。動物実験では大腸がんの予防効果も報告されている。

 臨床試験に使うラクトフェリンは森永乳業が牛乳から精製。あめ玉状にして食べられるようにした。

 HCVの感染者は国内に約200万人いると推定されている。過去に輸血などで感染した人も多い。感染から数十年たって肝がんになる人もいる。治療はインターフェロンという薬の注射が一般的だが、効きにくい人もいて、ほかの治療法の実用化が求められている。

肝炎検査実施は10府県市のみ 対応遅れ、治療後手に

2000.11.27(03:21)asahi.com
 200万人ともいわれるC型肝炎ウイルス(HCV)感染者の多くが、感染に気づかないでいる。早く診察を受ける必要があるが、朝日新聞社が実施した全国調査では、HCV抗体検査の実施を市町村に指導していたのは8府県と2つの政令指定都市の計10自治体にとどまることがわかった。これ以外の自治体の多くは「厚生省の指示がない」などと回答している。HCV抗体検査が可能になって10年が過ぎ、厚生省は今月、ようやく対策の検討を始めた。これらの対応の遅れが、治療の遅れにつながる可能性がある。

 HCV感染は、過去に受けた輸血や、注射針の使い回しなどで広がった。肝がんの8割がHCV感染者と言われるように、数十年の潜伏期間を経て、肝硬変や肝がんになる人が多い。1989年には抗体検査が可能となり、92年に保険適用されたインターフェロンによって、C型慢性肝炎患者の3―4割の人のウイルスをやっつけられるようになった。治療の機会を失わないよう早期検査、早期治療が欠かせない。

 こういったことをふまえ、各都道府県と各政令指定都市の担当者に、住民健診などにHCV抗体検査を組み込むよう指導するなどの対策を実施したことがあるかどうかを尋ねた。

 対策を実施したことがあるのは、秋田、神奈川、三重、兵庫、京都、広島、鳥取、佐賀の府県と大阪市、広島市の10カ所だった。

 肝炎対策を実施していると答えた自治体のうち、秋田、神奈川、三重県を除く自治体は、こういった肝がんなどによる死亡率が全国平均を上回る自治体だ。

 最も早く検査を実施したのは広島県で、91年度から3年間にわたって県のモデル事業としてHCV検査を実施した。

 肝がん死亡率が1、2位を争うほど高い佐賀県は、93年度から抗体検査を導入し、全市町村の健診などで実施している。「肝疾患は深刻な問題なので、全国的にも先駆けて取り組んだ」と担当者。

 肝炎対策を実施していない39都道府県のうち、「厚生省の検討結果待ち」「厚生省の指示がなかったから」などの答えが十五自治体あった。「肝機能の検査で状態が悪い人には、肝炎ウイルスの検査を勧めるなどのスクリーニングでよいと考えているから」(山口県)と答える自治体も複数あった。

 中には、「対策は必要だが、どう進めてよいかわからない」(高知県)、「感染者が見つかっても、スタンダードな治療法がないためフォローができない」(岡山県)、「プライバシーの問題もある」(栃木県)など、戸惑いも見られる。

 また、県としては実施していないが、市町村単位で実施していると答えた県もある。山陰地方のある町では98年から3年間の予定で、60歳以下の希望者に検査を実施したほか、町内の小中学生全員を対象とした検査を実施した。肝炎が多発している町で、受けた人の4割が感染していた。ただし、住民への早期治療が可能になった。

血液製剤のC型肝炎感染問題で患者団体が対策を要望

2000.11.06(19:20)asahi.com
 1980年代に止血剤などとして輸入非加熱製剤を投与された患者がC型肝炎ウイルスに感染していた問題で、患者団体でつくる日本肝臓病患者団体協議会(東京都新宿区、約1万人)は6日、津島雄二厚相に対策を要望した。

 要望事項は、献血血液に精度の高いウイルス検査が導入された92年より前に輸血を受けた患者らに、検査を勧める▽血友病以外の治療で輸入非加熱製剤を投与された可能性のある患者について、実態調査する▽肝炎ウイルス感染者が適切な医療を受けられるよう体制を整備する――など。

 厚生省はこのほど、医療行為で肝炎ウイルスに感染した人への総合的な対策が必要として、プロジェクトチームを発足させたが、同協議会は同日、近く設置する専門家会議への患者団体の参加も併せて要望した。

C型肝炎の輸血感染対策に本腰 厚生省が専門チーム設置

2000.11.01(22:36)asahi.com
 1980年代前半に新生児治療のために輸入非加熱製剤を投与された静岡県内の病院の患者がC型肝炎ウイルスに感染していた問題などを受けて、厚生省は1日、当時は輸入非加熱製剤だけでなく、国内の献血による輸血を手術などで受けたことでC型肝炎ウイルスの感染が広がった可能性があるとして、省内にプロジェクトチームを設け、総合的な対策に乗り出した。献血に検査が導入された89年以前の輸血患者らに検査を呼びかけたり、発症の予防や治療法の研究を進めたりする方向で検討する。輸血などの医療行為による肝炎ウイルス感染は、以前から指摘されながら厚生省は十分な対策をとらずに事実上放置しており、その姿勢がようやく転換されることになった。

 省内のプロジェクトチームは今月中に肝炎の専門家らでつくる有識者会議を置き、年度内にも具体策の提言を受ける。

 C型肝炎ウイルスに感染すると、長い年月を経て肝硬変や肝がんになるケースが少なくない。肝硬変、肝がんといった重い肝疾患患者の8割が感染者という。肝がんによる死亡者は年間3万人を占め、さらに増えることが予想されている。インターフェロンの治療でウイルスがやっつけられるのは3―4割とされる。効果が高い治療法確立が課題となっていた。また重症化するまで自覚症状がない人も多い。

 国内の感染者は推定約200万人。血液を通して感染し、輸血のほか、注射針の使い回しなどで広がったとされる。原因が分かり、献血血液に対する検査が可能になったのは89年。日本赤十字社の研究班報告などでは、それ以前は輸血を受けた患者のうち9―16%が肝炎を発症している。売血を輸血用に使っていた60年代までは3―5割が発症したと推定されるという。

 89年以降は2%、さらに精度の高い検査方法が導入された92年以降は0.5%に下がった。99年には核酸増幅検査と呼ばれる最新の検査法が導入され、B、C型肝炎の危険性はほとんどない。

輸入非加熱製剤でC型肝炎に感染 80年代、浜松で

2000.10.30(13:56)asahi.com
 1980年代前半に、静岡県浜松市の聖隷浜松病院(堺常雄院長)で新生児治療のため輸入非加熱製剤を投与された患者のうち、少なくとも7人がC型肝炎ウイルス(HCV)に感染していたことが30日、分かった。当時の輸入非加熱製剤は肝炎ウイルスが混入している可能性が高いことから、同病院は同時期に製剤を投与した患者約50人に検査を呼びかける文書を送った。血友病以外の患者に止血剤などとして投与された人は96年の厚生省調査で2600人以上いることが分かっているが、厚生省は当時、エイズウイルスの検査しか指示しておらず、実態の解明を求める声が高まりそうだ。

 同病院によると、今年5月、男子大学生(20)が大学の健康診断などでC型肝炎ウイルスの感染が判明した。大学生は約20年前、新生児のころ同病院で腹部の手術を受けた際、輸入非加熱製剤を投与された。かつて同病院からの通知でエイズ検査を受けたため、同じ経緯で感染したと判断し7月に同病院で治療を受けた。

 病院が80年から85年までさかのぼってカルテを調べた結果、血友病患者以外の約50人に非加熱製剤を使っていた。うち6人がすでにC型肝炎の治療を受けていた。いずれも新生児治療で同じ製剤を使い、残る40数人にも感染の可能性があると判断。今月24日付で肝炎の検査をすすめる文書を送った。いまのところ1人から検査を受けたいとの通知がきたが、何人が検査を済ませたかは確認できていないという。

 同病院は「4年前、厚生省からの指示で10万人近いカルテを調べ、非加熱製剤を使った患者を割り出したが、エイズに集中したため肝炎までは頭が回らなかった」と説明している。

 血液製剤は本来は血友病の治療として使われるが、止血剤などとして血友病以外の治療にも使われた。

 厚生省研究班が全国の小児科にアンケートした結果では、新生児出血症などの治療に非加熱製剤が使われた人のうち、少なくとも11人がC型肝炎ウイルスに感染していることが分かっている。しかし調査時、抗体検査で肝炎をチェックする病院自体が少なく、実態は明らかでない。

 また血友病患者も、多くは肝炎ウイルスに感染しているとされるが実態は不明。

注射針による医療従事者のけが、年間40万件に近づく=米政府機関

00年3月8日 16時52分[アトランタ 7日 ロイター]
米国で医療に従事する人々の注射針によるけがは年間40万件に近づいており、こうした人々は肝炎やエイズといった、血液を媒介して感染するウイルスの脅威にさらされている。
院内感染に関する国際会議で、米政府機関である疾病予防センター(CDC)の研究者が明らかにした。
CDCは、国内60の大病院を対象とする調査の結果、注射針によるけがの件数を年間38万4000件と計算した。1995年の推定値(60万−80万件)を下回ったものの、その重大性は依然として懸念され、予防策の実施が急務であると強調している。

C型肝炎ウイルスまん延は、50年代の「ヒロポン」原因

09:46a.m. JST February 27, 2000
 国内に約200万人の感染者がいるとされるC型肝炎で、ウイルスが全国にまん延したきっかけは1950年代の「ヒロポン」と呼ばれた覚せい剤の注射とする説を、広島大医学部の吉澤浩司教授(衛生学)が26日、東京で開かれた厚生省肝炎研究連絡協議会の報告会で発表した。ウイルスの感染経路として過去の輸血や不適切な医療行為などが指摘されているが、全国に急速に広まった理由がよく分かっていなかった。現在の覚せい剤常用者にもC型肝炎ウイルス感染者が多いとみられ、覚せい剤対策が肝炎予防からも重要になる。

 国内の患者からとったウイルスの個人差を遺伝子レベルで調べると、45年ごろに枝分かれして全国に広まったことが、名古屋市立大などの研究で分かっている。吉澤教授は終戦直後、血液を通してまん延した要因を、「ヒロポン」として知られた覚せい剤注射と考えた。

 51年に法律で禁止されたころの常用者は約100万人ともいわれる。当時の20歳前後の若者に覚せい剤が広がり、この世代の一部に感染が起きた。50年代以降、輸血や消毒不十分な注射針という医療行為などで拡大した結果、現在、60歳以上で高い感染率を示していると分析した。

 C型肝炎は米国でも約400万人の感染者がいると予想される。40代前後に多く、ベトナム戦争期以降の薬物乱用が影響しているとみられる。吉澤教授らがウクライナのキエフで調べたところ、ピークが30代前後にあり近年の若者の薬物乱用を反映していた。

 また、西日本で現在の覚せい剤常用者を調べた結果では、約8割がウイルス抗体検査で陽性になり、現在も感染の危険をかかえていることを示していた。

 C型肝炎は肝硬変を経て、感染後何十年もたってから肝がんになる。ウイルスを含んだ血液を通して他人に感染する。現在は輸血用血液は検査が実施されていて、新たな感染はほとんどない。

慢性肝炎の漢方薬「小柴胡湯」副作用で8人死亡

10:37p.m. JST January 14, 2000
 慢性肝炎による肝機能障害などに使われる漢方薬「小柴胡湯(しょうさいこ・とう)」がもたらす副作用の疑いで、1998年から2年間に50人が間質性肺炎を起こし、うち8人が死亡していたことが、厚生省の調べでわかった。死亡者のうち5人は肝がんや肝硬変の患者だった。これらの患者は体力が低下したために肺炎の症状が重くなって回復できなくなったとみられ、厚生省は14日、肝がんと肝硬変の患者への使用を禁止し、「医薬品・医療用具等安全性情報」を全国の医療機関に配布して注意を呼びかけた。

 厚生省によると、「副作用の疑いがある」と報告された50人の患者は平均66.5歳。慢性肝炎や肝硬変、肝がんなどの患者で、小柴胡湯を服用した後に肺の胞壁が炎症を起こす間質性肺炎を発症し、せきや発熱、呼吸困難などの症状が出た。いずれも医師の処方で用いられる医療用の製品を服用していた。

 特に、肝がん患者は4人のうち3人が、肝硬変の患者は7人のうち2人が、小柴胡湯を使用した後に死亡していた。間質性肺炎は、適切な治療をすれば回復するといわれるが、肝がんや肝硬変の患者は体力が著しく衰えていることから死亡に至ったとみられる。

 小柴胡湯は91年に間質性肺炎を起こす副作用の疑いが指摘され、厚生省は92年11月に医師や薬剤師に注意を促した。その後も、インターフェロンとの併用による死亡例が報告されるなどしたため、2度にわたって文書を出し、注意喚起をしていた。しかし、今回、新たに肝がん、肝硬変の患者に使用されて死亡する例がみられたことから、改めて安全性情報を出すことにした。

 この薬をめぐっては、厚生省が把握しているだけで、94年以降に188人が副作用とみられる間質性肺炎を起こし、うち22人が死亡している。  

C型肝炎の新治療法を承認

2000年1月18日 18時36分 共同通信社
 岡山大病院の治験審査委員会は18日、第一内科(辻孝夫教授)が申請していた、血中の白血球を吸着、除去することでC型肝炎の症状改善を狙う世界初の治療法を承認した。同科によると、ウイルス感染で起きるC型慢性肝炎の患者は全国に約150万人。抗ウイルス剤のインターフェロン投与が有効とされるが、それでも約半分には効果がないという。今回の治療法は、それらの患者に福音となりそうだ。

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