TOPIC No.5-21 遺伝子治療(Gene therapy)

01.遺伝子治療とは? by遺伝子治療と再生医療
02.遺伝子診断 を実施している医療機関 by 国立小児病院小児医療研究センター 先天異常研究部
03.遺伝病の遺伝子診断 ―とくに出生前診断との関連について― by 国立小児病院小児医療研究センター 先天異常研究部

厚労省、ゲノム利用薬で指針策定へ 年内にも治験の実態調査

2004/09/19 The Sankei Shimbun
 患者個人のゲノム(全遺伝情報)を利用し効果が高く副作用が少ない薬を作る「ゲノム創薬」で、厚生労働省は19日までに、遺伝情報の扱いや臨床試験(治験)の際の安全性に関する指針を策定することを決めた。

 ゲノム利用薬は、究極のプライバシーといわれる遺伝情報を基にしている上、ゲノムと薬効の関連が完全に解明されておらず、研究開発を推進する上で、倫理面や安全性への一層の配慮が必要となるため。

 同省は、来年度までに専門家らによる検討会の設置を計画。年内にも、こうした薬作りの治験の実態調査に乗り出す。

 薬の効き目や副作用は、遺伝子の違いで合成される代謝酵素やその他の結合タンパク質が異なるため、個人差がある。

 患者のゲノムを調べて新薬を作ったり、ゲノムの特徴をつかんだ上で処方したりすれば、効果がある人にだけ投薬して無駄な服薬を防げ、副作用も避けられる。

 医療費の抑制にも役立つと期待され、既に、特定の遺伝子がよく働いている人を対象にした抗がん剤も登場している。

 ただ、治験の進め方、有効性や安全性の評価法、ゲノム検体の扱い、患者へのインフォームドコンセント(十分な説明と同意)などは、各製薬会社の裁量に任されているのが現状。

 同省は「ゲノムと薬の安全性、有効性は関連が十分解明されていない事項も多い」として、承認申請時の基準なども含め指針を作る計画だ。

 同様の指針作りは、米国でも食品医薬品局(FDA)が進めている。

 <ヒトゲノムと薬> ヒトゲノムは1人の人間が持つ全遺伝情報。実体はDNAで、4種類の塩基の並びで情報が記録されている。ヒトゲノムの完全解読が2003年4月、国際チームにより発表され、薬剤開発への応用が加速、世界的にゲノムを利用した創薬が進行している。薬の開発効率が大幅に上がると期待されるが、遺伝情報判明による不利益や遺伝カウンセリングの必要性などの課題が指摘されている。

遺伝子調べて最適の減量方法…筑波大グループが開発へ

2004/08/28 読売新聞 Yomiuri On-Line
 遺伝子を調べて、その人に最適の減量方法を提示するオーダーメード減量プログラムの開発に、筑波大学人間総合科学研究科の田中喜代次教授らの研究グループが乗り出した。

 完成すれば、だれでも無理なく効果的に減量できるようになり、肥満が引き起こす生活習慣病の予防にもつながると期待される。

 研究グループは、これまでに肥満に悩む600人を対象に、食事制限と運動を組み合わせた減量プログラムを3か月間実施。運動は、ウオーキング、筋力トレーニング、ダンスなど数種類から一つだけ選んで取り組んでもらった。

 この結果、600人は平均約8キロ・グラムの減量に成功したが、同じ運動を選んだ人の中でも、減量効果に明らかに違いがあった。

 肥満の原因となる遺伝子は、脂肪代謝にかかわるものなど数十種類あることが知られているが、研究グループでは、この減量効果の個人差と遺伝子の関係を調べ、ある遺伝的要因を持つ人にはどの減量コースが最適かを突き止めていく。

 また性別や年齢、体脂肪率、閉経なども関連が深いと見て、3年がかりで研究をまとめる計画。目標は、3か月で最大12キロ・グラムの減量という。

 研究を進める中田由夫・筑波大学助手は「個人の体質に応じた運動や激しさを選べる自由で最適な減量プログラムを提示したい」と話している。

閉塞性動脈硬化症の遺伝子治療 広大病院など

2004/05/15 中国新聞地域ニュース
 足の血管が詰まる「閉塞(へいそく)性動脈硬化症」の遺伝子治療に、中国地方の広島大病院(広島市)、国立病院岩国医療センター(岩国市)など五施設が取り組むことが、十四日分かった。全国規模で行われる臨床試験の一環で、遺伝子治療薬の臨床試験としては国内初となる。

 閉塞性動脈硬化症は糖尿病や老化のため手足の血管が狭くなり、血流が悪くなる。内科治療やバイパス手術などで治療するが、悪化すると、組織が壊死(えし)して足の切断に至るケースも多い。

 臨床試験で使う遺伝子治療薬は、大阪大の研究者らでつくるベンチャー企業が開発。血管をつくる作用があるタンパク質「HGF」(肝細胞増殖因子)の遺伝子を組み込んだ治療薬を患部に注射すると、周囲に新しい血管が作られて血流が改善するという。大阪大での臨床研究では、約六割で痛みが和らぐなど症状が改善し、目立った副作用もなかったとしている。

 対象は四十〜八十五歳で、安静時にも痛みがあったり、潰瘍(かいよう)があって、他に治療法がない重症患者。がんや心臓、肝臓、腎臓に重い障害がある場合などは対象から除かれる。一カ月間隔で二回、足の筋肉に薬を直接注射。その後五カ月間は効果と安定性を調べる。臨床試験で患者の費用負担はない。

 広島大病院は既に実施を承認。岩国医療センターも二十日に開く院内の治験審査委員会の承認を経て、六月中にも治療を始める見通し。全国で、岡山大、川崎医大、鳥取大を含め約四十病院が実施する。


阪大教官らのバイオ企業、米での遺伝子治療を申請

2002年12月02日 Yomiuri On-Line
 大阪大医学系研究科の教官らが設立したバイオ企業「アンジェスMG」(本社・大阪府豊中市、山田英社長)は2日、日本企業として初めて、米国で遺伝子治療の臨床試験を実施する計画の認可を食品医薬品局(FDA)に申請したと発表した。

 米国の大学病院と共同で、糖尿病などが原因で足の血管が詰まる閉そく性動脈硬化症患者らに、血管新生効果のある肝細胞増殖因子(HGF)の遺伝子を投与し、血行回復をはかる。

 HGF遺伝子治療は、同社を設立した森下竜一・阪大助教授が中心となって2001年6月から阪大病院で実施され、これまで22人に投与、順調に成果を上げている。

 今年9月には、遺伝子治療や遺伝子組み換え技術の安全性や倫理問題を審査する米国の国立衛生研究所(NIH)の委員会で計画の審査を受け、承認を得ていた。米国での試験は、阪大病院での実績が認められた結果、安全性の確認試験は行われず、治療効果を調べる第2段階の試験からスタートする予定。同社では2007年ごろをめどに、米国でも治療薬として販売したいとしている。

実験的医療の拠点を京大と東大に整備 研究成果いかす

2001.02.25(11:04)asahi.com
 ヒトゲノム(人の遺伝情報全体)や再生医学など最新の基礎研究の成果を新しい治療法につなげるため、文部科学省は新年度から京都大と東京大に研究拠点を整備する。新薬になりそうな物質が見つかれば患者に役立つかどうかを臨床で確かめる、いわば「実験的な医療」。患者の安全を確保する必要があり、両大学は安全管理部門を別に設けて患者へのインフォームド・コンセント(十分な説明と同意)を徹底させる。

 基礎研究の成果を臨床にいかすのは開発型医療と呼ばれ、日本では体制づくりが遅れている。たとえば遺伝子治療では、米国で開発されて安全性のチェックもすんだものを「輸入」することが多かった。

 米国では大学やベンチャー企業、製薬会社が連携し、米国立保健研究所(NIH)が支援して開発型医療をどんどん進めている。今後、画期的な治療法が開発される可能性は高く、国際的な競争が激しくなる。

 今のままだと日本の研究成果も欧米で臨床に実用化されてからでしか日本で使えないという指摘もある。

 両大学は、研究拠点の整備によって開発型医療の定着をめざす。

 京大医学部に設けるのは探索医療センター。医師や研究者らスタッフは17人前後。研究や治療をする開発部と、安全面や倫理面の検討が専門の検証部をつくる。研究テーマは4月から公募する。

 東大医科学研究所では、組織を改革してゲノム診療部と医療安全管理部を設ける。京大と同様に開発と安全管理を分ける。患者の遺伝情報に応じて治療法を変える医療や、がんなどを対象にした独自の遺伝子治療をめざす。

 ヒトゲノム解読に伴ってがんなど様々な病気にかかわる遺伝子の研究が進み、病気の仕組みや診断法がわかってくる。多くの病気に関連する免疫や脳の働きも詳しく解明されてきた。こうした研究の成果を使い、細胞治療や再生医学などが考えられる。

 新薬を開発する場合、動物実験などをへたうえで臨床試験(治験)で使う量や方法が慎重に決められる。臨床試験は大規模で、新薬として有望という判断をした後でないと実施に踏み切れない。両大学で実施するのは治験よりも前の段階の試行的なものになる。

 本庶佑・京大教授(前医学部長)は「日本では基礎研究を応用につなげるシステムが欠けていた。これでは国際競争に太刀打ちできない。全国の研究者が利用できるシステムづくりを積極的に進めるべきだ」と話している。

<特報・パーキンソン病>遺伝子治療にサルで成功 自治医大G[毎日新聞] ( 2001-01-13-15:01 )

 遺伝子治療によって、手足が震えたり、体が硬直して動かなくなったりするパーキンソン病の症状を大幅に改善させることに、自治医大や国立感染症研究所筑波霊長類センターなどの研究グループが、サルを使った動物実験で成功した。この病気の主な治療法は投薬だが、投薬期間が長くなると効果が薄れるうえ、幻覚などの副作用が出ることがある。米国では中絶胎児の脳細胞を患者に移植する治療も行われているが、倫理的な問題が指摘されている。研究グループは、遺伝子治療ならこれらの問題を克服できるとしている。

 パーキンソン病は、神経伝達物質のドーパミンの量が減って、神経間にうまく信号が送られなくなることで起きる。日本では2000〜1000人に1人の患者がいるとみられている。

 研究グループは、麻薬に似た薬物をカニクイザル3頭に投与して、パーキンソン病の症状を起こさせた。その後、ドーパミンの生成に関係する3種類の酵素の遺伝子を、病原性のないウイルスに組み込み、脳に注射した。ウイルスが脳細胞に入り込めば、ドーパミンの生成が増える。

 実験の効果を確認するため、遺伝子の注入はサルの片側の脳だけに行った。右手は左脳、左手は右脳が指令を出しており、左右の手の動きの回復具合で効果を比較するためだ。

 サルにオリの中から片手を出させ、目の前に置いた餌を取るのにかかる時間を調べたところ、遺伝子を入れた側に対応する手の動きは、パーキンソン病を発症する前の状態にほぼ回復した。反対側の手はぎこちない動きが続いた。遺伝子の導入効果は1〜2週間後から表れた。実験開始から3カ月が経過したが、副作用は起きていないという。

 研究グループの小澤敬也・自治医大教授(遺伝子治療学)は「安全性を慎重に確認したうえで、臨床応用につなげたい。病気の進行を抑える遺伝子と組み合わせ、抜本的な治療を目指す」と話している。 【田中 泰義】

 パーキンソン病に詳しい水野美邦・順天堂大教授(神経内科)の話 投薬と比べて長期的な効果が期待でき、人への適用も十分可能な方法として評価したい。ただ、安全性確認のためには3〜5年はサルの経過を観察する必要がある。

ヒト遺伝子情報 データを暗号化/製薬協が倫理規定

2001.01.08 The Sankei Shimbun
 個人の体質に合った医薬品づくりを目指して、一千人の日本人のヒトゲノム(人間の全遺伝子情報)を収集してデータベース化を近く始める日本製薬工業協会は、提供者のプライバシーが含まれる遺伝子情報が外部に流出することを防ぐため、データを無作為に分離管理したり、提供者にも開示しないなどを定めた倫理規定を七日までに策定した。

 厚生労働省などが研究機関や企業を対象に倫理指針の策定を進めているが、新薬開発をめぐる国際競争が激化するなか、製薬協はいち早く開発に取り組む必要があると判断、独自に策定することにした。

 データベース化するのは、ヒトゲノムのうち個人個人で配列が異なり、病気の発症などで遺伝子の働きを知る手がかりとされる一塩基多型(SNP)。

 このデータベース化に先立って、(1)提供者の氏名など個人情報と遺伝子データを無作為に記号化したうえで、分離して管理する(2)提供者本人にも遺伝子データを開示しない(3)一定期間を過ぎれば個人情報は削除する−ことなどを盛り込んだ倫理規定を定めた

細胞再生薬、今春から臨床応用へ まず足の動脈硬化

2001.01.07(09:10)asahi.com
 細胞や臓器の再生物質として注目される肝細胞増殖因子(HGF)を使った治療が、今春にも始まる。臨床応用の第1号として、足の血管が詰まる閉そく性動脈硬化症の遺伝子治療が、国の審査で承認される見通しとなったためだ。動物実験では、今は有効な治療法がない重症の肝臓、腎臓、心臓、血管、神経の病気まで治すことがわかっている。心筋こうそくや肝硬変の遺伝子治療も計画されているほか、注射薬の開発も進む。日本で発見・開発中の物質が、21世紀の医療を一変させると期待されている。

 肝臓は7割切除されても元に戻る。HGFは肝臓の再生物質として、1984年、中村敏一・大阪大学大学院バイオメディカル教育研究センター教授(腫よう生化学)らが発見した。その後の研究で、肝臓に限らず、ほとんどの臓器細胞が壊死(えし)するのを防ぎ、修復・再生させることがわかってきた。

 動物に病気を作ってHGFを注射すると、急性肝炎や急性腎炎、急性心筋こうそく、脳こうそくなどでひん死の細胞が生き返るなどの劇的な変化が起きた。筋ジストロフィー症や筋委縮性側索硬化症、パーキンソン病などの難病も、進行が止まったり、症状が改善したりした。動物実験では、がん以外のほとんどの病気に有効だ。

 人にも有効となれば、慢性腎不全の透析がいらなくなったり、肝硬変や肝がんで年に4万人亡くなるのも減らせる。結果的に肝臓や腎臓移植の必要な患者が激減するなど、医療全体が根本的に変わる可能性も高い。

 臨床応用の第1号となる閉そく性動脈硬化症は、糖尿病から来て最後は足の切断に進む。患者は日本だけで約10万人。大阪大学大学院の森下竜一・助教授(加齢医学・遺伝子治療学)らは99年11月、人間のHGF遺伝子を足の血管周囲の筋肉4カ所に注射、新しい血管を作って治す遺伝子治療を国に申請した。HGF遺伝子の臨床応用は世界初とあって国の審議が長引いていた。

 HGFに似た血管内皮細胞増殖因子VEGFでは、米国タフツ大学のイズナー教授らが94年から、約300人の患者の足に遺伝子を注射し、7割の患者は切断を免れたと報告している。HGFは、VEGFより丈夫な血管を大量に作れ、「VEGF以上の効果は確実」と森下さんはいう。米国では心筋こうそく患者のVEGF遺伝子治療も始まっている。

 HGF遺伝子治療は、大阪大の別グループが心筋こうそく患者で、兵庫医大グループが肝硬変患者で計画中。一方、HGFの注射薬も国内で動物実験の最終段階だ。

 頭文字から「ハッピー・グロース・ファクター」(幸福増殖因子)と呼ぼうとの提案もある。

 中村さんは「HGFは欧米でも急速に関心が高まってきた。治療を待つ患者のため、国は1日も早く認めてほしい」と話している。

食道がんに遺伝子治療 千葉大病院/世界初 関東の60代男性に

2000.12.19 The Sankei Shimbun
 千葉大病院は十九日、食道がんが進行した関東地区在住の六十代の男性患者に対し、遺伝子治療を実施した。がんに対する遺伝子治療は、国内では腎(じん)がんや肺がんを対象に行われているが、同病院によると、食道がんを対象に実施されるのは世界でも初めてという。

 治療計画を進めている同大医学部第二外科によると、治療はがんを抑制する働きを持つp53遺伝子を、毒性をなくしたアデノウイルスのベクター(遺伝子の運び屋)に組み込み、内視鏡で患部に直接注入する方法。

 がん細胞の増殖を抑える効果があると期待されており、最初の注入から、二日後に再度注入。これを一サイクルとし、四週間おきに最大で六サイクルの治療を実施する。

 同病院の計画では、今後約二年間かけ、放射線治療や化学療法などが効かず、手術での切除も困難な最大三十九人の食道がん患者に、繰り返し遺伝子治療を行い効果を確認するという。

 同病院では今年五月に厚生省と文部省から正式に実施の承認を受けていた。

 計画の総括責任者の落合武徳・同医学部第二外科教授は「がん発生の根源に迫る遺伝子治療は、がん治療の新しい時代を開くと考えている」としている。

遺伝の悩みに応じます 臨床遺伝学会が名称変更

2000.12.16(23:15)asahi.com
 遺伝的な問題で悩む患者や家族のために情報提供と相談に応じる「遺伝カウンセリング」に関心が高まっていることから、日本臨床遺伝学会(青木菊麿会長)は来年1月から会の名称を「日本遺伝カウンセリング学会」に改めると、16日発表した。

 同学会は医師ら約450人で構成。会員はこれまでも遺伝カウンセリングに携わってきた。今後、研修会を充実させるとともに、遺伝カウンセラー制度の創設や啓もう活動などに取り組むという。

 ヒトゲノム(人の遺伝情報全体)の研究が進み、さまざまな病気の遺伝子が解明される見通しとなっているが、就職などの際に遺伝的な特徴で差別されるおそれも指摘されている。厚生省など四省庁が検討中のゲノム・遺伝子解析研究の倫理指針でも、カウンセリングの重要性が指摘されている。

オリンパスがゲノム医療に参入、欧州3社と提携

2000.12.12(19:22)asahi.com
 オリンパス光学工業は12日、がん患者の遺伝子検査などのゲノム(全遺伝情報)医療事業に本格参入すると発表した。欧州のベンチャー企業3社と提携して新たな遺伝子解析機器を開発し、来春から販売する方針。内視鏡や顕微鏡などの医療用機器を販売している実績を活用する考えだ。大手製薬会社が遺伝情報を利用してゲノム創薬を目指す一方で、医療用機器メーカーもゲノム時代に向けて動きだした。

 オリンパスは、50人規模のゲノム医療事業推進プロジェクトを社長直属組織として設置。提携したオランダのパム・ジーン社など3社と共同で、多数の遺伝子の働きを一挙に効率よく調べる「マイクロアレイ」などを開発する。パム・ジーン社の株式取得費約2億円を含めて初年度に約10億円を投資。2010年に1000億円の売り上げを目指す。

 内視鏡を使ってがんを診断・治療している医師の間では、がんの悪性度や抗がん剤の副作用を遺伝子情報から予想し、個々の患者に応じた治療方針を決めるオーダーメード医療に関心が集まっている。

遺伝子検査時の説明と同意、半数の機関が確認せず

2000.11.26(06:48)asahi.com
 遺伝子研究・検査に携わる製薬会社などの民間企業や検査機関の半数近くが、血液などの試料を集める際、患者や提供者に対するインフォームド・コンセント(説明と同意)の実施や確認をしていないことが通産省の調べでわかった。遺伝子は個人の体質や病気に深くかかわり、「究極の個人情報」と言われている。通産省は来年にも民間企業を対象にした倫理指針を作る検討を始めた。

 調査は、バイオテクノロジー(生物工学)関連の主な企業や検査機関などを対象に9―11月の間にアンケートした。

 遺伝子研究・検査に携わっていると答えた74機関のうち、血液などの試料を自ら集める27機関では、7機関がインフォームド・コンセントを実施していなかった。また、仲介会社に依頼して試料を集めたり、病院から検査を委託されたりしている47機関のうち28機関は、仲介会社や病院がインフォームド・コンセントを実施しているかどうかを確認していなかった。

 一方、遺伝子検査を国内や米国の検査会社などに外注している機関も22あった。

 通産省は「試料集めから遺伝子検査までの間で、個人の遺伝情報がしっかり管理されているとは言い難い」としている。遺伝子の研究については国が来春にインフォームド・コンセントの徹底などを盛り込んだ指針をつくる方針だが、遺伝子検査をビジネスにする企業への対応は遅れていた。

宝酒造が遺伝子治療薬開発

2000.11.14 The sankei Shimbun
 宝酒造は十四日、韓国の子会社「バイロメッド」(ソウル)が血管を再生する遺伝子治療薬を開発、韓国政府に臨床試験の許可を申請したと発表した。韓国で初の遺伝子治療薬として二○○二年に商品化を目指し、韓国の東亜製薬(同)と提携して生産する計画。

 新薬は、血管内皮新生因子の遺伝子を含み、病気で血管が断絶した患部に筋肉注射すれば血管の再生が図れるという。ソウル大の金善栄教授らと共同開発、商品化されれば宝酒造グループとしても初の遺伝子治療薬になる。

 対象症例は、糖尿病などのために足の血流が途絶え、最悪の場合は足の切断に至る「虚血性脚部疾患」。韓国などに三万−四万人、日本にも七万−十万人の患者がいるという。

世界初、筋ジストロフィー治療に合成DNA使用 神戸大

2000.10.31(01:34)asahi.com
 神戸大医学部付属医学研究国際交流センターの松尾雅文教授らは30日、筋肉の難病デュシャンヌ型筋ジストロフィーの男児(7つ)に合成DNAを使う治療を11月13日から始める、と発表した。昨年9月、同教授らが同大の医学倫理委員会に治療の実施を申請、今年3月に承認されていた。合成DNAは、塩基を人工的につなぎ合わせてつくったDNAで、筋ジストロフィーの治療に使うのは世界でも例がない。

 デュシャンヌ型筋ジストロフィーは、遺伝子の異常で筋肉を動かすのに必要なジストロフィンたんぱく質がつくれず、死に至ることもある重い病気。松尾教授らは、ある患者のジストロフィン遺伝子は、特定部分が欠けているために、ジストロフィンたんぱく質の合成を止める指令を出してしまうことに注目し、合成DNAを使って指令を妨害し、症状の悪化を遅くする方法を考えた。

 治療は合成DNAを患者の静脈に点滴で週に1回、計4回投与する。治療終了後、効果が出たかどうかを倫理委に報告する。

遺伝子治療用ベクター、宝酒造が生産・販売へ

2000.09.22(22:22)asahi.com
 宝酒造は22日、遺伝子治療に使うベクター(遺伝子の運び屋)を、来年4月にも生産・販売することを明らかにした。国内で遺伝子治療を手がける大学などからの依頼に応じ、臨床研究用に受託生産する。遺伝子治療用のベクターは現在、欧米企業からの輸入に頼っているが、国内メーカーが生産・販売に乗り出すのは同社が初めて。

 遺伝子治療は、無害化したウイルスなどのベクターに、遺伝子を組み込み、患者に投与する治療法。宝酒造は来年3月末までに、ベクターの生産設備を滋賀県草津市に新たに建設する。

重度障害の保険金支払い、遺伝子診断で拒否 生保を提訴

2000.07.30(03:33)asahi.com
 「遺伝子診断を受けなければ障害保険金がおりたはずなのに、受けたばかりに支払いを拒否されたのは不当」。関西地方に住む30代の男性が、そんな訴えを今春、神戸地裁に起こした。男性は、原因不明と言われていた病気が、加入後に受けた遺伝子診断で遺伝病とわかった。病名を伝えたところ、障害保険金の支払いを拒否された。生命保険会社は「契約前から発病していた」と主張する。遺伝子診断と保険をめぐる裁判は初めてというが、遺伝情報の解析が進み、原因不明の病気がわかったり、将来の病気が予測できたりする時代に、保険のあり方を問うきっかけになりそうだ。

 男性は1989年、第一生命保険の生命保険に加入した。重い障害を負った場合に、死亡保険金と同額の保険金が支払われる高度障害保険がついていた。

 小学生のころから足が悪かったが、日常生活に不便はなかった。契約当時は、まだ歩けた。市立病院に通っていたが、原因はわからない。

 契約にあたって健康状態を自己申告する保険ではなく、あえて保険会社の指定する医師に診断書を書いてもらうタイプを選んだ。

 大学病院に移ったが病名は判明しない。その後、病状は進行した。92年に両足の機能が失われ、身体障害者1級に認定された。

 主治医に遺伝子診断を持ちかけられたのは、95年ごろ。その結果、病名がわかった。日本では数少ない遺伝病で、今のところ治療法はない。

 昨年になって、高度障害保険金を申請するため、障害診断書を提出した。死後、生命保険を残すか、生前に保険金を受け取るか悩んだ結果だ。しかし、第一生命からの返事は、「支払えません」だった。

 裁判所に提出した答弁書で、第一生命はこう主張する。障害の原因は小児発症の病気であり、発病が契約前なので、「契約による責任開始期以後の疾病が原因で高度障害状態になった場合」と規定した約款に該当しない。「責任開始期における予見可能性は問題にする余地はない」ともいう。

 しかし男性は、「医学の進歩が加入者の不利に結びつくのは理不尽だ。遺伝子診断を受けず、原因不明のまま申請していればよかったことになる。最先端の医療を受けた人間だけが損をしてしまう」と話す。

 こういった遺伝子情報と保険の関係について、米国では、クリントン大統領が「遺伝情報で差別してはならない」などと繰り返し述べている。

 日本では、本格的な議論はまだ始まっていない。

 提訴に踏みきった理由について、男性は「遺伝子診断は、研究が先に走ってルールが取り残されている。そういう状況に警鐘を鳴らしたい」と話している。

薬の効き目なぜ個体差 遺伝子レベルで解明 -製薬約40社-

2000.06.24 The Sankei Shimbun
 製薬会社約四十社が、人によって薬品の効き目に差があるのはなぜかを遺伝子レベルで解明する共同研究に取り組むことになった。三年内をめどに研究結果をまとめ、これをもとに効果の高い薬品や副作用の少ない薬品の開発に役立てる。日本製薬工業協会の永山治会長が二十三日の記者会見で明らかにした。
 薬品の効き方には、薬品の成分を分解して効果を低下させる酵素や、細胞の壁で薬品の成分の浸透を防ぐ働きを持つたん白質などの「薬物動態」が影響する。しかし、どの遺伝子が薬物動態を生み出したり、コントロールするかはわかっていない。このため、たとえば高血圧症の患者に同じ降圧剤を投与しても、患者によっては効き目が薄かったり、副作用を起こす危険もある。

 共同研究では、約十億円をかけて日本人千人の血液の解析を外部機関に委託。遺伝子と薬物動態の関係をデータベース化する。

 このデータベースを利用すれば、将来的に患者の遺伝子の違いに応じた薬品を開発でき、効果的な薬品投与や、深刻な副作用の回避が可能になるという。

がんの遺伝子診断に指針 人権最優先にと専門家ら

2000.06.17(03:02)asahi.com
 将来、遺伝性のがんになるかどうかを調べる遺伝子診断について、がんの専門家らでつくる研究会が16日、実施の条件や手順を定めた初の実用的指針をまとめた。診断の対象を限定し、適切なカウンセリングを義務づけるなど、希望者と家族の人権を最優先に位置づけている。カウンセリングのないまま診断を請け負う医療機関があるなかで、安易な取り組みへの警鐘になりそうだ。

 指針をまとめたのは、家族性腫瘍(しゅよう)研究会で、遺伝学者や生命倫理の専門家、法学者、患者らが加わり検討してきた。その原案が、16日に札幌で開かれた総会で承認された。

 指針によると、遺伝子診断を実施する条件として、希望者にとって予防・治療法があるなどの利益が大きく、本人の自発的な同意があることをあげた。ただ、生命保険や結婚など社会的な差別を受けるなどの不利益が予想されることも事前に知らせ、診断を受けるかどうかの判断材料として提供する。

 遺伝子を調べると、結果によっては家族や親族もその病気になる可能性がわかることになる。その際は全員に知らせる手段を講じるべきことを、医師が事前に説明するよう求めた。予防法や治療法のあるがんについては、家族や親族にも知らせ、対策を講ずるべきだとの考え方からだ。

 最近では、予防・治療法が確立されていないがんについても、適切なカウンセリングがないまま発症する危険度を知らせる遺伝子ドックも出てきた。日本人類遺伝学会などは今年、「未解明部分も多く安易に行うべきでない」とする声明を発表している。

 指針は1996年に最初の案が出された後、6度の改訂を積み重ねて完成した。昨年、関係学会約30カ所に最終案を送り、遺伝子診療学会など半数から賛同を得ている。

 まとめ役の恒松由紀子・国立小児病院血液科医長は「倫理面を考えたことがなかった医師ら専門家も、何が大切なのかわかった。これが広まれば、いい加減な検査機関などによって人権が侵されることも防げると思う」と話している。

白血病の遺伝子診断の特許を取得 大塚製薬

2000.06.16(22:00)asahi.com
 大塚製薬は16日、白血病に関連するとされる「WT1遺伝子」を国内での遺伝子診断に使用する権利を米医薬メーカー、ジェンザイムから取得した、と発表した。今後、大塚製薬の臨床検査部門の大塚アッセイ研究所で遺伝子診断の実用化を目指す。WT1遺伝子の発現量を測定することで、従来よりも早く白血病を判定することができ、早期の発見や治療につながるとしている。

 

肝臓がんの遺伝子治療の申請取り下げ 東大医科研病院

2000.06.13(01:23)asahi.com
 
 肝臓がんの遺伝子治療の臨床研究を文部、厚生両省に申請していた東京大学医科学研究所付属病院(浅野茂隆病院長)は12日、申請の取り下げを決めた。背景には米国での遺伝子治療にからむ死亡事故がある。遺伝子治療の申請が国の審査中に取り下げられるのは初めて。

 同病院が計画していたのは、がんを抑制するp53遺伝子を、アデノウイルスを運び屋(ベクター)にして肝臓の動脈に入れる方法。ベクターを供給する米シェリング・プラウ社が、今年に入って供給取りやめを通知してきたことが、申請取り下げの直接の理由だ。

 しかし、背景には、昨年9月、米ペンシルベニア大学で代謝異常の遺伝子治療を受けた18歳の男性患者が急死した事故がある。

 山下直秀教授は「米国の死亡例は肝臓がんと異なるが、肝臓の動脈にウイルスを入れるという手法は共通している。安全性を再検討することが必要になった」と話す。

血友病の遺伝子治療に成功 函館出身の岩城教授ら

[北海道新聞 2000年6月3日]
 南カリフォルニア大学の岩城裕一教授=函館出身=ら米国の研究グループが実施した血友病の遺伝子治療が世界で初めて成功したことが二日、千葉県浦安市で開かれた日本動脈硬化学会で報告された。岩城教授によると「早ければ一年後には米食品医薬品局(FDA)に医薬品として認可される見込み」という。

 研究グループは、同大など米国の複数の大学とバイオベンチャー民間企業でつくる産学協同体。血液を凝固させる第九因子が欠乏した血友病Bの患者を対象に、七年前から研究を続けてきた。

 臨床試験は昨年五月から六人の成人男性に行い、治療には、遺伝子を細胞核にまで運ぶベクターとしてアデノ随伴ウイルス(AAV)を使用。同ウイルスに第九因子を作る遺伝子を組み込み、太ももに筋肉注射した。いずれのケースもウイルス投与から四週間後には、血液内の第九因子が健常男性の三%程度まで増えているのが確認された。

 患者のほとんどは、これまで予防を含め週に一、二回の血液製剤の使用が必要だったが、遺伝子治療によって年に一、二回の投与まで減らすことができ、副作用もなかったという。

 今後、安全性を検証するためさらに二十症例以上の臨床試験を重ねる予定。第八因子が欠乏している血友病Aについても、同様の技術を用いて、近く人への臨床試験に入る。岩城教授は「これまで効果が明確でなかった遺伝子治療の扉を開けることができた。次はパーキンソン病や肝炎の遺伝子治療も研究していきたい」と話している。

精神分裂病の関与遺伝子を特定

ワイアード (WIRED)2000年06月01日]
 スコットランドの研究チームが5月30日(米国時間)、精神分裂病発症の一因と見られる2つの遺伝子の特定に成功したことを明らかにした。

 エディンバラにある医学研究協議会ヒト遺伝学部門(Medical Research Council Human Genetics Unit)のデビッド・ポーチャス氏を中心とする研究チームは、長年精神分裂病やその他の精神病に苦しめられてきたあるスコットランド人一族を30年間に渡って調査した結果、この遺伝子を発見した。ポーチャス氏らの研究結果は、『ヒューマン・モレキュラー・ジェネティクス』誌の今月号に掲載されている。

 研究チームは、研究対象となった一族のほとんどが、23組あるヒトの染色体のうち第1染色体上に位置する遺伝子の2つに欠損を持つことを突き止めた。

 ポーチャス氏は、一族の中でこの欠損遺伝子を持つ人の半分が精神分裂病(schizophrenia)を発病していることから、問題の遺伝子を『DISC1』(Disrupted-in-Schizophrenia 1)および『DISC2』と名付けた。精神分裂病は重度の精神障害で、幻聴や幻覚、精神状態や行動の異常が特徴。

 数週間前には、カナダのトロント大学の研究者が、精神分裂病の原因と考えられるいくつかの遺伝子が存在する「だいたいの位置」を特定した(英文記事)と発表していた。

 この最新の発見は、将来に希望の光を点じるものとして期待を集めているが、精神分裂病についての遺伝子学的研究はまだ始まったばかりで、他の原因遺伝子を見つけるための努力は依然として続けられている。

 「今の段階では、その原因遺伝子が5、6個程度なのか、あるいは5、60個になるのか全く予測はつかない」とポーチャス氏は語る。

 精神分裂病は通常、思春期の後半もしくは成人後早い時期に症状が現れはじめる。専門家によると、アメリカとカナダでは人口の約1%がこの病気にかかっており、精神病としては鬱(うつ)病に次いで多い。[日本語版:藤原聡美/岩坂 彰]

遺伝子治療にエイズウイルスが有効 仏のグループ発表

10:48a.m. JST May 05, 2000 asahi.com
 エイズの原因となるエイズウイルス(HIV)が、がんやエイズなどに対する遺伝子治療に有効である可能性が高いとする研究結果が4日、パリで発表された。

 これを発表したのは、仏パスツール研究所のピエール・シャルノ博士を中心とするグループ。それによると、無力化させたHIVは、遺伝病治療に必要な遺伝子を細胞に送り込んだり、ワクチンをがん細胞に運ぶ「運搬役」として優れているという。こうした技術によって治療可能な疾患は数多く、同博士は、遺伝子の欠陥によって引き起こされる約8000の疾患に有効で、がんの場合も約30種の治療が可能になるとしている。(時事)

筋ジストロフィーの遺伝子治療、イヌで成功

2000年5月31日(水)by WIAED NEWS
 イヌを使った実験的な遺伝子治療により、筋ジストロフィーに欠けているタンパク質の機能を回復できることがわかった。

 『国立関節・筋骨格・皮膚病研究所』(NIAMS)の研究チームは、小児の筋ジストロフィーとしては最も多い、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのゴールデン・レトリーバーを使って、この遺伝子治療を試験した。

 研究を指揮したのは、NIAMSのリチャード・バートレット博士。研究結果は、今週号の『ネイチャー・バイオテクノロジー』誌に掲載された。

 筋ジストロフィー患者において変異している遺伝子は非常に大きいため、遺伝子治療は難しい。遺伝子治療で遺伝子を生体に送り込む際には、「ベクター」と呼ばれる運び手――部分的に改変したウイルスなど――を使って正常な遺伝子を運ばせることが多いが、遺伝子が大きければ大きいほど体内に送り込むのが難しくなり、拒絶反応を引き起こす可能性が高くなる。

 NIAMSの研究チームは、『遺伝子修復』と呼ばれる遺伝子治療を行なった。つまり、欠損のある遺伝子を正常なものに丸ごとそっくり取り替えるのでなく、遺伝子の変異部分とまったく同じ小さな分子(オリゴマー)を作り、欠損箇所だけを修正する方法だ。

筋ジストロフィーは、遺伝子の欠損により筋肉組織が衰える病気だ。

 デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、ジストロフィンというタンパク質の遺伝暗号を指定する遺伝子の欠損によって起こる。ジストロフィンは、筋肉細胞の他のタンパク質とくっついて、それらを結合組織に固着させる働きがある。筋ジストロフィー患者では、遺伝子の変異によってジストロフィンが十分に合成されない。

 バートレット博士らの研究チームは、修復酵素を活性化し、イヌの遺伝子塩基配列を修正できるオリゴマーを作り出した。

 実験ではジストロフィンを正常に機能させるのに成功した。

 これまで、筋ジストロフィーのマウスを使い、DNAを直接注入する方法や、ウイルスのベクターを介した遺伝子治療、筋肉細胞の移植など、多くの研究が行なわれてきたが、一時的でわずかな成果しか得られなかった。

 研究者らによると、この最新の研究結果は素晴らしいものだが、人体に応用できるようになるまでにはまだ長い道のりがあるという。[日本語版:矢倉美登里/岩坂 彰]

ガンに有望な遺伝子治療/Kristen Philipkoski

2000年5月23日 3:00am PDT by WIAED NEWS
 様々な種類のガンに対する遺伝子治療の臨床試験で、良好な結果が得られたという発表があった。早急に最終段階の臨床試験が開始される予定だ。

 米イントロジェン・セラピューティクス社と、仏アベンティス・ファーマシューティカルズ社は、ガン治療の副作用を軽減し、放射線療法や化学療法に代わる選択肢となりうる遺伝子治療について共同研究を行なっている。

 『p53』と呼ばれる腫瘍抑制遺伝子を使用することによって、肺ガンに関して非常に良好な結果が得られた。

 「最も注目すべきは、この治療を終えた15名の患者のうち、80%に生検でガン細胞が見られなかったことだ。これまで、放射線療法だけでは、ガン細胞が見られなくなる患者は20%未満だった」と、ヒューストンに本社を置くイントロジェン社のデビッド・ナンス社長兼最高経営責任者(CEO)は語った。

 この結果は21日(米国時間)、ニューオーリンズで開催された全米臨床ガン学会(American Society of Clinical Oncology)第36回年次総会で発表されたもの。イントロジェン社は、前立腺ガン、頭部・頚部ガンにおいても遺伝子治療の臨床試験結果が良好だったと報告した。

 治療の3週間後、15人の患者のうち9人は、遺伝子治療を受けた腫瘍箇所に、進行中のガン細胞がなくなっていた。5人の患者は、遺伝子治療を受けた最初の腫瘍から離れた場所にある腫瘍部に、ガン細胞の徴候が見られなかった。この結果は、この治療法が幅広い効果をもち得るという希望を研究者たちに与えた。

 カリフォルニア大学サンフランシスコ校のガンセンター責任者、フランク・マコーミック氏は、「多くの研究者は、さまざまな方法を組み合わせて試験する方法を選んでいるので、患者は、この新しい治療法を取るか、そうでなければまったく治療しないかという選択をする必要はない――こちらがダメなら、別の方法があるというわけだ」と語った。同氏は、イントロジェン社と同様の治療法を開発しているガン治療会社、米オニックス(Onyx)社の創立者でもある。

 ただし、結果が勇気づけられるものであったとしても、この治療法の有効性と安全性を確認するためにはさらに研究が必要だと同氏は述べた。

 「研究は初期の段階なので、なんらかの効果があるかどうかを評価することは難しい。被験者数が少ないので、勇気づけられるとも、失望させられるとも言いがたい」と、マコーミック氏。「追求する価値があるのは確かだ。しかし、試験の数はまだ十分なものではない」

 昨年9月にジェシー・ゲルジンガーくん(当時18歳)がペンシルベニア大学での遺伝子治療試験中に亡くなって以来、遺伝子治療は、米食品医薬品局(FDA)や米国立衛生研究所(NIH)、それに一般の人々の厳しい監督下に置かれるようになった。

 ゲルジンガーくんが死亡してからいくらもたたないうちに、国中の研究者たちが、今まで報告していなかった不都合な事例を1000件以上も認めた。FDAとNIHは、遺伝子治療の監督のために新たな規制を設けることを検討している。

 ゲルジンガーくんの試験で使われたベクター、つまり、治療効果のある遺伝子を体内に運び込む媒体は、アデノウイルスと呼ばれる変異ウイルスで、これが彼の死因として有力視されている。イントロジェン社の研究者たちも同じベクターを使用していたが、1998年から行なわれている同社の試験では重大な有害性は見られていないという。

 「いくらかの副作用はあるが、それは大概、発熱や風邪のような症状など、ごく軽いものだ」とナンス社長は言う。「非常に激しい副作用を伴う化学療法や放射線療法と比べてみてほしい。だからこそわれわれは、遺伝子治療に力を入れているのだ」

 「患者と研究者の双方が、これは今まで使ったどの薬と比べても安全で、耐えやすいと言ってくれる――患者さえもそう言うのだ。これが私には興味深い。なぜなら、たとえ遺伝子治療が、(化学療法や放射線療法と)同じ程度か、あるいはごくわずかに良い効果があるに過ぎないにしても、目的は、大きな副作用なしで患者を治療することなのだから」と、ナンス社長は語る。

 遺伝子治療の評判はあまり良くないが、ナンス社長は、今後5年以内にその価値が認められるようになると確信しているという。

 「遺伝子治療のイメージは、今後良くなっていくと思う。科学の進歩というものを見てみると、新しいタイプの技術の発展には、たくさんの希望や楽観主義が伴い、さらには実態が伴わない騒ぎになることもある。しかし、歴史が示すように、新技術が実際に臨床で用いられる製品になるまでには約10年かかる。われわれは製品開発の最後の数年間という段階に近づきつつあり、おそらくは今後数年で、製品が承認されるだろう」

 両社は今年中に、遺伝子治療臨床試験の第3段階に入る予定だ。


心筋梗塞などで遺伝子治療

2000年4月27日17時03分
 大阪大病院第一外科(松田暉教授)は、血管新生作用のある肝細胞増殖因子(HGF)を使った心筋梗塞(こうそく)や狭心症の遺伝子治療の実施を27日、院内の遺伝子治療臨床研究審査委員会に申請した。心臓疾患に対する遺伝子治療は国内で初めて。国で審査中の同病院の閉塞(へいそく)性動脈硬化症の治療とともに、生活習慣病を対象にした新しい遺伝子治療としても注目される。


悪性の脳腫瘍で遺伝子治療

2000年4月3日 13時02分
悪性の脳腫瘍(しゅよう)で入院中の女性患者に、名古屋大医学部脳神経外科の吉田純教授らのグループが3日午前、初めて純国産の技術を使った遺伝子治療を名古屋市昭和区の名古屋大病院で行った。患者は関西地方の30代の主婦で、腫瘍が脳の深い部分にまで広がり、切除することが難しいため、吉田教授らは遺伝子治療に踏み切った。

不正遺伝子診断検査

(2000.4.01) from Medical Topic by (株)ユニコン
仙台地検に脱税容疑で逮捕、起訴された美容外科医(33)=公判中=が代表を務める民間会社が遺伝子診断検査の受診者を募集していた問題で、実際の検査を宝酒造(京都市、大宮久社長)の遺伝子検査センター(滋賀県草津市)が請け負っていたことが3月30日、分かった。同社は軽率な行為だったと認め、検査の請け負いを取り止めた。同社はバイオ研究のトップメーカーとして知られており、生命倫理をめぐって企業の姿勢が問われそうだ。

この問題は、「脱税工作のためのペーパーカンパニー」(検察側冒頭陳述)とされた美容外科医の民間会社「エス・エイチ・アイ」(東京都渋谷区)が、タクシーの車内広告などで遺伝子検査の受診者を募集していたもので、遺伝子検査の郵送でのやり取りを認めるなど、検査に不可欠とされるカウンセリングを義務付けていなかった。  

宝酒造の説明によると、昨年秋ごろ、美容外科医から検査を依頼された。当初、同社の遺伝子検査センターは「検査の際にだれの遺伝子か確認ができない」などと説明したが、請け負いについて明文化された社内基準がなかったため、カウンセリング体制などの確認をしないまま、請け負うことを決めたという。  

美容外科医が昨年12月、約3億6000万円の脱税事件で逮捕、起訴されたことはセンター側も報道で承知していたが、「検査依頼とは別」と考えたという。しかし、毎日新聞の取材で、検査の募集元が医療機関ではない「ペーパーカンパニー」だったことが判明し、取引をストップした。  

宝酒造の中尾雅幸広報課長補佐は「私どもにいたらない点があったと再認識した。請け負い方に不備があったのは確かで、請け負いに関しての社内的な基準作りを進めたい」と話している。

宝酒造は1979年、日本で初めて遺伝子工学試薬の製造・販売を開始し、95年には遺伝子検査の受託などを専門に行うバイオメディカルセンターを設置した。遺伝子検査については現在、全国十数カ所の病院から年間十数件の委託を受けており、大学病院など研究者向けのものも含めれば、年間約3000件〜5000件で数千万円の売り上げがあるという。

<遺伝子検査>商業利用反対 人類遺伝学会(2000.4.01)

from Medical Topic by (株)ユニコン
 日本人類遺伝学会(理事長・松田一郎熊本大名誉教授)は30日、日本臨床遺伝学会と共同で緊急の倫理審議委員会(委員長・新川詔夫長崎大教授)を開いた。疾病の発症についての推定が不確実な「遺伝子診断検査」をビジネスとして一般を対象にやるべきではないとする「企業・医療施設による遺伝子検査に関する見解」をまとめた。  

 これは、仙台地検に脱税容疑で逮捕、起訴された美容外科医(33)=公判中=が代表を務める民間会社「エス・エイチ・アイ」がタクシーの車内広告などで遺伝子診断検査の受診者を募集し、バイオ研究トップメーカーの宝酒造が検査を請け負っていたことが明らかになったのを受けた対応だが、商業ベースの遺伝子検査をめぐる学会見解は初めて。4月にも遺伝子関連6学会で共同見解を出す方針だ。  

委員会終了後に会見した新川委員長は「生活習慣病などの発症は環境にも影響される。遺伝子検査をしてもリスクの推定は不確実なうえ、治療や予防が期待できるものはまれ。一般を対象にやるべきではない」と述べた。

また、業者名は伏せたものの捜査当局に「脱税工作のためのペーパーカンパニー」と認定された「エス・エイチ・アイ」の問題に言及。「実体のない会社が誇大に宣伝し、検査は別の国内の企業が担当しているが、遺伝学的問題が起きたときの責任体制が不明瞭だ。専門医による遺伝カウンセリングがないままビジネスとして普及すれば社会的混乱をきたす。適切な対応を取るよう警告する」と述べた。さらに、少なくとも三つの医療機関が、一般を対象に遺伝子検査を実施しており問題視していることも明らかにした。 

遺伝子検査:商業利用反対見解まとめる 人類遺伝学会

2000年3月31日by Mainichi Interactive
 日本人類遺伝学会(理事長・松田一郎熊本大名誉教授)は30日、日本臨床遺伝学会と共同で緊急の倫理審議委員会(委員長・新川詔夫長崎大教授)を開いた。疾病の発症についての推定が不確実な「遺伝子診断検査」をビジネスとして一般を対象にやるべきではないとする「企業・医療施設による遺伝子検査に関する見解」をまとめた。

 仙台地検に脱税容疑で逮捕、起訴された美容外科医(33)=公判中=が代表を務める民間会社「エス・エイチ・アイ」がタクシーの車内広告などで遺伝子診断検査の受診者を募集し、バイオ研究トップメーカーの宝酒造が検査を請け負っていたことが明らかになったのを受けた対応。商業ベースの遺伝子検査をめぐる学会見解は初めて。4月にも遺伝子関連6学会で共同見解を出す方針だ。

 委員会終了後に会見した新川委員長は「生活習慣病などの発症は環境にも影響される。遺伝子検査をしてもリスクの推定は不確実なうえ、治療や予防が期待できるものはまれ。一般を対象にやるべきではない」と述べた。

 また、業者名は伏せたものの捜査当局に「脱税工作のためのペーパーカンパニー」と認定された「エス・エイチ・アイ」の問題に言及。「実体のない会社が誇大に宣伝し、検査は別の国内の企業が担当しているが、遺伝学的問題が起きたときの責任体制が不明瞭だ。専門医による遺伝カウンセリングがないままビジネスとして普及すれば社会的混乱をきたす。適切な対応を取るよう警告する」と述べた。さらに、少なくとも三つの医療機関が、一般を対象に遺伝子検査を実施しており問題視していることも明らかにした。 【千代崎聖史】

特報・遺伝子診断検査:宝酒造が請け負う 美容外科医依頼で

毎日新聞 2000年3月30日
 仙台地検に脱税容疑で逮捕、起訴された美容外科医(33)=公判中=が代表を務める民間会社が遺伝子診断検査の受診者を募集していた問題で、実際の検査を宝酒造(京都市、大宮久社長)の遺伝子検査センター(滋賀県草津市)が請け負っていたことが30日、分かった。同社は軽率な行為だったと認め、検査の請け負いを取り止めた。同社はバイオ研究のトップメーカーとして知られており、生命倫理をめぐって企業の姿勢が問われそうだ。

 この問題は、「脱税工作のためのペーパーカンパニー」(検察側冒頭陳述)とされた美容外科医の民間会社「エス・エイチ・アイ」(東京都渋谷区)が、タクシーの車内広告などで遺伝子検査の受診者を募集していたもので、遺伝子検査の郵送でのやり取りを認めるなど、検査に不可欠とされるカウンセリングを義務付けていなかった。

 宝酒造の説明によると、昨年秋ごろ、美容外科医から検査を依頼された。当初、同社の遺伝子検査センターは「検査の際にだれの遺伝子か確認ができない」などと説明したが、請け負いについて明文化された社内基準がなかったため、カウンセリング体制などの確認をしないまま、請け負うことを決めたという。

 美容外科医が昨年12月、約3億6000万円の脱税事件で逮捕、起訴されたことはセンター側も報道で承知していたが、「検査依頼とは別」と考えたという。しかし、毎日新聞の取材で、検査の募集元が医療機関ではない「ペーパーカンパニー」だったことが判明し、取引をストップした。

 宝酒造の中尾雅幸広報課長補佐は「私どもにいたらない点があったと再認識した。請け負い方に不備があったのは確かで、請け負いに関しての社内的な基準作りを進めたい」と話している。

 宝酒造は1979年、日本で初めて遺伝子工学試薬の製造・販売を開始し、95年には遺伝子検査の受託などを専門に行うバイオメディカルセンターを設置した。

遺伝子検査については現在、全国十数カ所の病院から年間十数件の委託を受けており、大学病院など研究者向けのものも含めれば、年間約3000件〜5000件で数千万円の売り上げがあるという。(千代崎聖史)

心臓病の遺伝子治療停止

2000年3月2日 16時55分【ワシントン共同】
2日付の米紙ワシントン・ポストによると米食品医薬品局(FDA)は米タフツ大などが進めていた心臓病の遺伝子治療の臨床試験4件を停止処分にした。タフツ大が国立衛生試験所に対し、臨床試験中に患者2人が死亡したことを速やかに届けるのを怠ったため。FDAが遺伝子治療を停止させたのは、初の死亡例を出したペンシルベニア大のケースに続き2回目。

遺伝子治療に停止命令

2000年1月22日 19時40分【ワシントン共同】
 22日付の米紙ワシントン・ポストによると米食品医薬品局(FDA)は世界の遺伝子治療研究の先駆けとして知られるペンシルベニア大ヒト遺伝子治療研究所が危険性を患者に知らせないなどずさんな治療を行っていたとして、遺伝子治療の全面的停止処分を命じた。

遺伝子診断の検討委設置

1999年12月16日 19時50分 共同通信社
 東北大付属病院は16日、遺伝に由来する病気の予測に役立てる遺伝子診断や治療について、病院内で検討する「遺伝子診断・治療検討委員会」の設置を決めた。来年1月の診療科長会議で正式に発足する。遺伝子診断をめぐっては国が定める具体的なガイドラインは無いが、複数の専門家が客観的に診断の是非や方法、遺伝情報の評価について議論することで、適切な治療に結びつけるのが狙い。

新たに遺伝子治療5件了承

1999年12月13日 19時31分 共同通信社
厚生省の厚生科学審議会先端医療技術評価部会は13日、名古屋大病院、東北大加齢医学研究所病院など5つの医療機関が申請していた遺伝子治療の臨床研究について、科学的、倫理的に問題ないとして了承した。

了承されたのは、東北大加齢医学研究所病院、慈恵医大病院、東京医大病院の3病院が肺がん。癌研究会病院の乳がん、名古屋大病院の悪性脳腫瘍の遺伝子治療。

「ずさんな実験で死亡」

1999年12月8日 18時35分【ワシントン共同】
8日付の米紙ワシントン・ポストは、米ペンシルベニア大で遺伝子治療を受け死亡した男性患者(18)の肝機能数値が、実験を受けられる基準に達していなかったなど、ずさんな実験治療が行われていたことが分かった、と報じた。

 米国では今年初めまでに治療例が既に3000を超すなど、遺伝子治療が急速に広がっているが、死亡例も報告されるようになっている。

脳腫瘍の遺伝子治療を開発

1999年9月28日 18時11分 共同通信社
 悪性脳腫瘍の細胞に特殊な遺伝子を組み込み、投与した薬剤を活性化させて腫瘍を消滅させる遺伝子治療の動物実験に、大阪大医学部脳神経外科の清水恵司助教授らのグループが成功した。広島市で開かれる日本癌学会で29日に発表する。

 清水助教授らは「安全性を確認して臨床応用を目指したい」としている。

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