TOPIC No.5-14 脳死/臓器移植

 
01 臓器移植 YAHOO! News
02 腎移植 Q&A
03 臓器提供に対する報償制度についての考察 北口景子
04 臓器移植法改正を考える
05 臓器移植法改正案関係の掲示板
06 脳死・臓器移植 byAceroのホームページ (「脳死」臓器移植は殺人的行為?)
07 日本臓器移植ネットワーク
08 Transplant Communicatiom(臓器移植の情報サイト)
09 国際移植者組織トリオ ジャパン(Trio Japan)
10 Yellow Hiro's Topic No.5-58 腎臓売買/臓器移植


病腎移植5例目実施へ 愛媛・宇和島徳洲会病院

2010.07.24 MSN産経新聞

 治療のために摘出した腎臓を修復し、ほかの腎臓病患者に移植する病腎(修復腎)移植で、徳洲会グループが24日に、臨床研究の5例目となる移植手術を実施することが23日、関係者への取材で分かった。第三者間の移植は昨年12月の臨床研究再開以降、4例目。移植手術は万波誠医師の執刀により、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で実施される。

 関係者によると、提供者(ドナー)は愛媛県内の腎がん患者の60代男性。移植を受ける患者(レシピエント)は同県内の50代の慢性腎不全患者の男性で、これまで2回腎移植手術を受けているという。

 厚生労働省は平成19年に病腎移植を原則禁止にしたが、臨床研究としての実施は認めている。

病腎移植、6日に3例目実施 愛媛・宇和島徳洲会病院

2010.04.05 MSN産経新聞

 治療のために摘出した腎臓を修復し、別の重度の腎臓病患者に移植する病腎(修復腎)移植で、徳洲会グループは6日に臨床研究3例目となる移植手術を実施すると明らかにした。万波誠医師(69)の執刀で愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で行われる。

 病院によると、愛媛県内に住む50歳代の腎がん患者の男性から、県内の50歳代の慢性腎不全患者の女性に移植される予定。病院は男性の腎がんが直径4センチ以下で、腎臓を修復すれば手術が可能と判断。男性と女性の双方が病腎移植に同意した。

愛媛県の宇和島徳洲会病院で病腎移植 2例目となる手術実施

2010.03.03 MSN産経新聞

 徳洲会グループは3日、愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で、腎臓がんの妻から摘出した腎臓を慢性腎不全の夫に移植する臨床研究2例目となる病腎(修復腎)移植手術を万波誠医師(69)の執刀で実施した。

 同病院によると、手術はこの日午前から始まり、妻から腎臓を摘出。がんを切除するなど腎臓を修復した後、夫へ移植した。手術時間は準備などを含め約7時間。がんが、血管が集中する部分にあったため時間がかかったという。

 親族間での初の移植となったが、夫婦の術後経過について万波医師は「いまのところうまくいっている」と話した。

 夫婦は福岡県内に住むいずれも50代。2月に妻の腎臓から直径約4センチ以下のがんが見つかり、夫が慢性腎不全で人工透析を受けていたことから、夫婦で病腎移植手術を希望した。

病気腎移植:愛媛・宇和島徳洲会病院で再開 万波医師ら執刀

2010年01月01日 毎日新聞 東京朝刊 毎日jp

 医療法人徳洲会は30日、愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で、がん治療などのために摘出した腎臓を別の患者に移植する病気腎(修復腎)移植を臨床研究として再開した。病気腎移植の実施は約3年半ぶり。徳洲会は2014年までに今回を含め5例を行う計画で、5例終了時点で手術の詳細を公表する。

 宇和島徳洲会病院で31日、執刀した万波誠医師(69)らが記者会見した。呉共済病院(広島県呉市)に入院しているドナー(臓器提供者)の50歳代の男性から30日に腎臓を摘出しがんの部分を切除、宇和島徳洲会病院で万波医師らが同日中に、慢性腎不全の40歳代のレシピエント(移植を受ける患者)の男性へ移植した。摘出した腎臓は直径4センチ以下の小径腎臓がんだった。術後の経過はドナー、レシピエント共に順調という。

 ドナーの男性は、27日に徳洲会の移植事務室にドナーの仮登録をした。協力関係にある呉共済病院の倫理委員会が28日にインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)に問題がないかなどを審査、承認したため本登録された。

 一方、徳洲会が進めていたレシピエント登録に登録していた26人から、移植事務室が候補者5人を選定。29日に外部の5人でつくる修復腎検討委員会が今回の男性を選んだ。その後、宇和島徳洲会病院の倫理委員会での手続きを経て手術を実施した。

 万波医師は「手術後すぐに尿も出て、経過に問題はない。修復腎移植は捨てる腎臓を再利用でき、非常にいい方法だと思っている」と話した。病気腎移植を支援するNPО法人「移植への理解を求める会」の向田陽二理事長は「再開を本当に喜んでいる。一人でも多くの患者を助けるには修復腎移植しかない」と歓迎している。【柳楽未来、川上展弘】

呉共済病院が病腎移植の取材に応じる

2010年01月01日 asahi.com

 医学的な妥当性をめぐって激しい批判を浴びた『病気腎移植』が3年ぶりに再開された。提供者の患者から腎臓を摘出した呉共済病院(呉市西中央2丁目)では31日、小野哲也院長と中山浩事務部長が、報道陣の取材に応じた。

 同病院によると、ドナーは腎腫瘍(しゅ・よう)を患った県外の50歳代の男性患者。26日に泌尿器科部長の光畑直喜医師が男性に研究計画を説明した。男性は27日から呉共済病院に入院。片方の腎臓の全摘出と移植に関する臨床研究に書面で正式に同意を得たうえで、院外の精神科医なども加わり、光畑医師からの説明に問題がなかったかを確認したという。

 28日には同病院内で倫理委員会を開き、ドナー適格基準に合致しているか、患者への説明は適切だったかなどを審査し、承認を得た。

 報道陣から、腫瘍は悪性だったか良性だったかを問われた小野院長は「がんの可能性は高いが断言できない。検査は今後する」などと述べた。

 摘出を受けた男性患者の容体は良好だという。小野院長は「腎臓を提供していただいた患者さまの善意を無駄にすることのないよう、引き続き今後の移植医療の発展に寄与していきたい」とコメントを読み上げた。(山下奈緒子)

病気腎移植:宇和島徳洲会病院が再開…「臨床研究として」

2009年12月31日 毎日新聞 毎日jp

 医療法人徳洲会は30日、愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で、がん治療などのために摘出した腎臓を別の患者に移植する病気腎(修復腎)移植を、臨床研究として再開した。病気腎移植の実施は約3年半ぶり。徳洲会は2014年までに今回を含め5例を行う計画で、5例終了時点で手術の詳細などを公表する。

 宇和島徳洲会病院で31日、執刀した万波誠医師(69)らが記者会見した。呉共済病院(広島県呉市)に入院しているドナー(臓器提供者)の50歳代の男性から30日に腎臓を摘出しがんの部分を切除、宇和島徳洲会病院で万波医師らが同日中、慢性腎不全の40歳代のレシピエント(移植を受ける患者)の男性へ移植した。摘出した腎臓は直径4センチ以下の小径腎臓がんだった。術後の経過はドナー、レシピエント共に順調という。

 ドナーの男性は、27日に徳洲会の移植事務室にドナーの仮登録をした。協力関係にある呉共済病院の倫理委員会が28日にインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)に問題がないかなどを審査、承認したため本登録された。一方、徳洲会が進めていたレシピエント登録に登録していた26人から、移植事務室が候補者5人を選定。29日に外部の5人でつくる修復腎検討委員会が今回の男性を選んだ。その後、宇和島徳洲会病院の倫理委員会での手続きを経て手術を実施した。

 万波医師は「手術後すぐに尿も出て、経過に問題はない。修復腎移植は捨てる腎臓を再利用でき、非常にいい方法だと思っている」と話した。病気腎移植を支援するNPО法人「移植への理解を求める会」の向田陽二理事長は「再開を本当に喜んでいる。一人でも多くの患者を助けるには修復腎移植しかない。捨てられる腎臓で苦しんでいる患者を助けてほしい」と歓迎している。

 万波医師らのグループは、91〜06年に42件の病気腎移植をしたが、07年に日本移植学会などが非難声明を発表して以後、中断していた。厚生労働省は07年7月、臓器移植法の運用指針を改正して臨床研究を除き病気腎移植を禁止し、臨床研究としては病気腎移植を制限しないことを09年1月に全国に通知している。【柳楽未来、川上展弘】

生体肝移植死:「縫合に問題」 東京医科大検証委が報告書

2009年12月22日 毎日新聞 毎日jp

 東京医科大八王子医療センター(東京都八王子市)で00年10月から6年半で生体肝移植手術を受けた患者52人のうち20人が死亡していた問題で、同大の検証委員会は21日、一部について手術時の縫合技術などに問題があったとする報告書をまとめた。センターは07年4月以降、生体肝移植を中止しており、報告書を受けた今後の対応を22日に発表する。

 検証委は5人の内部委員と法律家を含む7人の外部委員で構成し、死亡例の担当医らから聞き取り調査した。

 報告書は、移植チームが発足した初期の段階で20人中9人が死亡した点を挙げ、このように死亡率が高い場合については「移植を中断して再点検を検討すべきだ」と指摘。また手術に伴う出血や血管が詰まるなどの合併症で死亡したケースが多かったとして「技術的な原因だけではないが、血管を縫い合わせる操作や合併症への対応に問題があった」と結論付けた。

 移植手術の再開については、慎重な症例選択と、手術中・手術後の管理体制の改善を図ることが必要だと提言した。【清水健二】

臓器移植をめぐる現状

2009年12月23日 北日本放送

 今年、県内では、心臓の難病を抱える氷見市の男性がアメリカで心臓移植を受けたほか、富山市の6歳の女の子が移植手術に向けた準備を進めています。

 また来年には改正された臓器移植法が施行されます。

 臓器移植をめぐる現状をお伝えします。

 アメリカでの心臓移植手術を希望している池田悠里ちゃん6歳。

 悠里ちゃんは生後3か月で心臓の難病・拡張型心筋症と診断され、命を救うには心臓移植をする必要があります。

 しかし、現在日本国内では15歳未満からの臓器提供は禁止されているため、身体の小さい悠里ちゃんを救うには、海外での心臓移植しかありません。

 必要な費用は1億4千万円、悠里ちゃんの家族と救う会では募金活動を行いました。

 お父さん「本当に、集まるんかいなって。それこそ周りじゅうが思ってたことと同じこと、こんな時間ない中で、さあやれ、となった状況で、集まるわけはないって気持ちはありましたけど、やってくうちに、いろんな人のいろんな気持ちをわけてもらったというんでしょうか、いただいたというんでしょうか」

 雄山中学校生徒の募金活動「悠里ちゃんへの募金にご協力おねがいします!!」

 悠里ちゃんへの支援の輪は地域を越えて広がりを見せました。

 既に目標額を達成し、現在では2億円を超える募金が集まっています。

 悠里ちゃんが現在入院している富山大学附属病院では、小児科の種市尋宙医師をはじめ、医師4人、看護師2人のチームが、悠里ちゃんをアメリカまで送り届けます。

 種市隊長「病院内で普通に手に入るものが、機内では手に入らない。で、実際悠里ちゃんがどういう状態に陥るのかっていうのはまだわからない。」「みんなで悠里ちゃんを安全に運ぶんだということで頑張ってやっています」

 高額な費用が必要なうえ、リスクも伴う海外での移植、しかし、そこに望みを託さざるを得ない、日本の現状があります。

 小さな子どもへの移植は法的に不可能なうえ、大人であっても移植を受けることは困難です。

 日本では、現在156人が心臓移植を求めて国内の待機リストに登録していますが、これまでの10年間で日本国内で行われた心臓移植手術は66件、待機中に亡くなってしまう人も少なくありません。

 一方、年間2000件以上の心臓移植手術が行われているアメリカでは、年間移植数の5%に限って、外国人を受け入れています。

 富山からは氷見市の松原大樹さん(20)が悠里ちゃんと同じ拡張型心筋症を患い、今年4月、アメリカで心臓の移植手術を受けました。

 しかし、国際的に臓器が不足する中、WHO・世界保健機関は、来年にも、海外での移植の自粛を求める指針を決める予定です。

 こうした流れを受けて、今年7月、国会で臓器移植法が改正されました。

 これまでは、本人の書面による意思表示が無い場合、臓器は提供できませんでしたが、改正法では、本人の拒否の意思表示が無い限り、家族の同意で臓器を提供できるとしました。

 また、15歳未満からの臓器提供を認め、国内での子どもの移植が法的に可能になりました。

 施行されるのは来年7月です。

 厚生連高岡での講演「来年法律が通ってからの1年間っていうのが、脳死が81件、心停止が70件くらい今の状態でもありうるんじゃないかというふうに考えています。」

 今月4日、高岡市で医師や看護師などを対象に、移植医療に詳しい大阪大学の福嶌教偉准教授が講演しました。

 福島先生「この81件というのがどういう数字かといいますと、それまでの10年間に移植があった総数が丁度81です。だから簡単に言いますと、10年間分が一年間にやってくるという数字になっています」

 平成9年に、現在の臓器移植法が施行されて以来、富山県内での脳死からの臓器提供は、平成18年3月の1度だけです。

 現場からは不安の声もあがります。

 富山市民病院、宮本正郎医師「毎年どこかの病院があるんではないかとなると、」「経験がないのとマンパワーが少ないので、支援体制をなんとかならないかなということ、」

 また、県内で唯一の臓器移植コーディネーター、高橋絹代さんは、法的に可能になる子どもの臓器移植についても、まだまだ課題が残ると指摘します。

 高橋さん「その状況を受け入れるまでに親としてすごく時間が必要かと思いますし、それをどういうふうに、精神的なことも含めて、医療スタッフ側がケアしていくかってことも含めて、今後の課題になっていくと思うので、そこができないと提供っていうのはなかなか現実味を帯びていかないのかなという気はしているんですけど。」「アメリカでは、コーディネーターがしっかりと説明をするというシステムが出来ていて、看護婦さんとかお医者さんに負担をかけないような教育がされています。」「もっともっと、真剣に、具体的に考えていかないと進まない気がします。」

親族への臓器優先提供、自殺者からは認めず

2009年12月18日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 厚生労働省の臓器移植委員会は18日、来年1月17日に施行される改正臓器移植法の運用指針に、自殺者から親族への優先提供は認めないことを明記することを決めた。

 親族への優先提供が盛り込まれた改正法を巡って、厚労省は先月、優先提供できる親族の範囲を「親子(1親等)と配偶者」に絞るなどの運用指針案を公表した。しかし、優先提供を目的とした自殺を懸念する声が学会や国民から上がり、同委員会は指針に明記するか検討していた。

 運用指針には、自殺者からの親族への優先提供を見合わせることを明記するが、第三者への提供の是非は規定しない。移植医療普及の観点から家族が同意すれば、移植できる道を残した。親族の範囲については原案通りとすることを最終確認した。運用指針は、1月初旬にもまとめられる。

生体肝移植:4割近くが死亡 東京医科大センターで手術

2009年12月02日 毎日新聞 毎日jp

 東京医科大八王子医療センター(東京都八王子市)で00年10月〜07年4月に生体肝移植手術を受けた患者52人のうち、4割近い20人が退院できないまま死亡していたことが2日、分かった。同センターは「入院中に亡くなった場合、手術と死亡との因果関係が疑われる」として、07年4月以降、生体肝移植を中止している。学内の検証委員会などの報告を受けたうえで、原因や改善策などを数日中に発表するという。

 同センターによると、20人の死因の多くは敗血症で、うち8人は1カ月以内に死亡していた。執刀したのは同センターの医師2人で、高沢謙二センター長は「患者と提供者で血液型が異なるなど手術が難しいケースも少なくなかった」と話した。

 国内の肝臓移植医らで作る日本肝移植研究会がまとめた報告書によると、92年から05年末までに国内で行われた生体肝移植3783例のうち、移植を受けた患者の1年生存率は約82%で、全体の2割程度が移植後1年以内に死亡していた。【青木純、河内敏康】

徳洲会が病気腎臨床研究へ 厚労省通知受け、今年にも

2009年02月10日  中国新聞ニュース

 医療法人徳洲会は10日、がん患者などから摘出した腎臓を用いる病気腎移植の臨床研究を、今年中にも万波誠医師(68)が勤める宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)と、東京西徳洲会病院(東京都昭島市)の2カ所で始める方針を明らかにした。

 徳洲会によると、厚生労働省が1月27日付で都道府県などに出した通知がきっかけ。通知は病気腎移植の臨床研究について「対象疾患に制限を設けない。臨床研究指針を順守し実施する」よう求めている。

 2006年に万波医師らの病気腎移植が問題化した後、宇和島徳洲会病院での実施はストップしている。厚労省臓器移植対策室は「患者への説明や同意、倫理委員会の審査など、適正な形で実施してもらいたい」とコメントしている。

 厚労省や国内の学会は、転移の恐れがあるがん患者からの臓器移植は通常の医療としては認められないとの立場。ただ治療の可能性を探る臨床研究としての道は認めている。

脳死移植:臓器提供、80例目

2009年01月31日 毎日新聞 東京朝刊 Mainichi INTERACTIVE

 国立病院機構東京医療センターに脳出血で入院中の50代男性が30日、臓器移植法に基づき脳死と判定された。患者は脳死で臓器提供する意思を示すカードを持ち、家族が心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓(すいぞう)、小腸の提供を承諾した。同法に基づく脳死判定は81例目、臓器提供は80例目。

病気腎移植容認求め提訴へ 10月中にも、患者9人

2008年10月04日 中国新聞ニュース

 重度の腎臓病患者が4日、病気腎移植の禁止で治療を受ける権利を侵害されたとして、10月下旬にも国に移植の容認と損害賠償などを求める訴訟を松山地裁に起こすことを決めた。

 病気腎移植を手掛けた宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(67)を支援する「移植への理解を求める会」が4日、松山市で会見し、明らかにした。

 同会によると、現時点で訴訟を起こすことを決めた患者は9人。うち2人はすでに病気腎移植を受けている。

 患者は、国が昨年7月、臓器移植法の運用指針を改正し、病気腎移植を原則禁止したため、治療を受ける権利を侵害されたと主張。同移植の実施と保険の適用を認め、患者1人当たり約500万−約1000万円を支払うよう求めることにしている。

 また誤った情報に基づき、病気腎移植の医学的妥当性を否定したとして、日本移植学会幹部ら数人に対しても損害賠償を求め、提訴する方針。

移植法改正案の早期審議を 患者の遺族が訴え

2008年03月19日 中国新聞ニュース

 臓器移植を受けようと待っていたが、受けられずに死亡した患者の遺族らが19日、都内で記者会見し「このまま国会が臓器移植法改正案を審議せず、放置するのは許せない」などと、早く審議入りするよう訴えた。

 同法は1997年に施行。脳死での臓器提供には本人の事前の意思表示と家族の同意が必要などの条件があり、15歳未満の人は提供できない。これまで脳死での臓器提供は66件。提供範囲を広げる改正案が国会に提出されているが、審議は進んでいない。

 福岡県の石川祥行さん(35)は、海外での心臓移植を計画していた9歳の息子が2月に死亡。「国会では審議してもらえず土俵にも上がっていない状態。とにかく審議を」と怒りを込めて話した。

 11歳の息子が移植を受けるため渡航したドイツで死亡した大阪府の森本隆さん(45)は「今も大勢の患者がいるが、今のままでは何も変わらない」。夫が心臓移植を待ちながら死亡した千葉県の田和秀子さん(55)は「犠牲者を増やさないよう、国会議員は明日はわが身と考えてほしい」と、それぞれ訴えた。

病気腎大半を容認、適切 徳洲会調査委の最終報告

2008年01月12日 中国新聞ニュース

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(67)が行った病気腎移植11件について検討してきた院内の調査委員会は12日、松山市のホテルで記者会見し、大半を「容認できる」「適切」とする最終報告書を公表した。

 妥当性を否定した関係学会や、原則禁止とした厚生労働省の見解と食い違う内容。調査委は「患者の個別事情など医療現場の状況を加味した結論」と説明している。

 調査委は、同病院で摘出された6件について、ネフローゼ2件は問題ありとなしの「両論併記」とし、腎動脈瘤1件を「容認できる」、尿管狭窄3件を「適切」と評価。移植11件は、ネフローゼ2件が「問題あるが全否定できない」、腎がん2件を「容認できる」、腎動脈瘤など7件を「適切」とした。

22%が延命中止ドナー 腎移植、9年間に280件

2007/12/30 中国新聞ニュース

 死亡後に腎臓を提供する「献腎移植」のうち、心臓停止前に人工呼吸器を止めて延命治療を中止した提供者(ドナー)からの移植が、一九九五―二○○ 三年の約九年間に二百八十件あったことが、日本臓器移植ネットワーク(東京)の集計で三十日、分かった。同期間の心停止後腎移植全体の約22%を占める。 ○四年以降は未集計。

 終末期医療の現場で行われてきた呼吸器中止の実情の一端を示すデータとして注目される。個々のケースでどのような延命中止の判断があったかは明らかにされておらず、専門家は「移植のために延命中止を急ぐことがないか、妥当性の検証が必要」と指摘している。

 移植にかかわったコーディネーターが一件ごとにコンピューターに登録した症例情報を基に、移植ネット統計解析委員会が○四年に集計。それによると、九五年四月から○三年十二月にかけ、心停止後の腎移植は全国で千二百七十九件あった。

 呼吸器中止の二百八十件を含め、移植ネットの小中節子理事は「すべての移植例が、内部の評価委員会で『手続きに問題はない』と判断されている」と説明。その上で、原則論として「呼吸器を中止するかどうかは終末期医療の問題で、移植ネットがかかわるべきではないと考える」としている。

 移植に詳しい医療関係者は「終末期に呼吸器をつけたまま長い期間が経過すると、デメリットとして臓器が弱り移植できなくなる場合もある。提供意思があって呼吸器を中止する際、常識的には脳死の診断をしていると考えられるが、どこまで厳格な基準で診断しているかは施設によってばらつきもあるのでないか」と指摘している。

 移植ネットは集計結果を基に、呼吸器中止や摘出準備として行われる心停止前の管挿入などの要因と腎臓の生着率の関係を分析、呼吸器中止の有無は生着率に大きな影響はないとの結果だった。

[解説]臓器移植法10年 課題様々

2007年11月09日 読売新聞 Yomiuri On-Line

ドナーの人権保護急務 「特殊な医療」厳格な判断必要

 臓器移植法が施行されて先月で10年たったが、脳死者からの臓器提供は計62件にとどまっている。脳死移植が停滞する一方で増え続ける生体移植の問題点や、移植を待つ間に膨らむ医療費など、課題を探った。(医療情報部 坂上博 大阪科学部 阿利明美)

 脳死や心停止後の臓器移植と異なり、健康な家族らが協力する生体移植では、臓器提供者(ドナー)の心身に様々な影響が出る。

 移植を巡る本紙連載「命をつなぐ」(先月12〜20日)で、自らの意思に反する形で生体移植のドナーとなった女性の例を紹介したところ、「同様の体験をした」などの反響が寄せられた。

 東京都内の女性(38)は、父が劇症肝炎と診断されて入院した病院で、医師から生体肝移植を勧められた。医師は父と同じ血液型の姉ばかり見て話し、「肝臓を提供しないなんて非人間的と言わんばかり。『考えたい』というと、『検査もあるので、すぐ決めて』と言われた」と女性は振り返る。結局、女性らは「娘の体に傷をつけてまで生き延びたくない」という父の思いをくみ、断った。

 医療現場では、このように「患者の命優先」「救って当然」という発想になりがちで、臓器提供するよう家族に圧力がかかることも少なくない。

 そもそも体にメスを入れる行為は、医療でなければ傷害罪に問われる。医師が免責されるのは、〈1〉治療が目的〈2〉医療内容の妥当性〈3〉患者の同意――の3要件がそろって初めて違法性がなくなる、と考えられているからだ。

 「生体移植は健康体にメスを入れる特殊な医療で、臓器提供者の治療が目的ではないのだから、より厳格に考える必要がある」と中山研一・京都大名誉教授(刑法学)は指摘する。臓器提供には、本人の自発的な意思が不可欠の条件と言える。

 だが、臓器移植法では、生体移植の臓器提供者の権利を保護するルールがなかった。厚生労働省は、ようやく今年7月、同法の運用指針に生体移植の規定を盛り込み、「やむを得ない場合に例外として実施される」「提供意思は、適切に判断できる第三者が確認する」などを定めた。

 ただ、指針に強制力はないうえ、家族が「期待に応えないと」と不本意でも臓器提供する場合もある。日本移植学会は「精神科医らが意思確認を行う」としているが、本心を見抜くのは容易ではない。

 臓器提供した後の医療保障も問題だ。日本肝移植研究会の調査では、ドナーの30人に1人に、再手術が必要になるなど重い合併症が起きた。

 ドナーの合併症の治療費や検診費用、死亡や障害の補償などを誰が受け持つかあいまいで、ドナーが自ら負担することも多い。日本移植学会は、骨髄移植で導入済みの「ドナー傷害保険」を検討している。

 本人の意思尊重、医療の保障など、生体移植のドナーの人権を保護する制度を整えるべきだ。

 次に、移植医療の停滞がもたらす経済的な側面も見逃せない。

 重い腎臓病で、血液を浄化する人工透析を受けている患者は年約1万人ずつ増え、昨年末で約26万4000人に上る。透析医療費は1人あたり年500万円以上かかり、計1兆3000億円余と、医療費全体の4%を占める。これは医療費を圧迫する一因となっている。

 一方、腎臓移植は手術代を含めて移植1年目に555万円かかるが、2年目以降は免疫抑制剤の費用など年100万〜180万円で済む。

 週3回、数時間かけて行う人工透析に通うため、仕事を辞めざるを得ない患者も多い。寺岡慧(さとし)・東京女子医大教授は「腎臓移植を受けて職場復帰すれば、経済的にもプラスになる」と話す。

 心臓移植の場合も同様だ。臓器移植法で、臓器提供は脳死者、家族双方の同意が必要とされていることなどから、心臓提供者は極めて少なく、患者が移植を受けるまでの待機期間は平均2年に達する。その間、体外式の補助人工心臓を装着する場合も多く、費用は2年間で8000万円を超える。一方、心臓移植を受けた場合は1年目に1180万円、2年目以降は薬剤費などで300万円前後だ。

 医療費や患者の就労の面でも、移植の利点は大きい。だが、脳死移植の際に臓器提供の条件を緩和するなどの臓器移植法改正案は、国会でたなざらしのままだ。移植医療を適切に進めるため、論議を活発にする必要がある。

命をつなぐ 臓器移植法10年 (3)ドナーのケア 置き去り

2007年10月14日 読売新聞 Yomiuri On-Line

美談の陰で大きな犠牲

 「『手術は成功した』というセリフは、移植患者の容体だけでなく、ドナー(臓器提供者)の心身の状態も含めて言ってほしい」

 自宅のソファに、右腰をかばいながら座り、西日本に住む女性(42)は言った。シャツをまくり上げると、胸の間から両腰にかけ、縦20センチ、横50センチの大きな手術跡が残る。肝臓の6割を夫に提供した後、腹部にうみがたまり、2週間の予定だった入院は、転院先を含め3か月に及んだ。手術から約3年たった今も、傷が痛むという。

 確かに、手術同意書にサインはした。しかし、本当は望んで提供したわけではなかった。「人の命がかかっていた。本心は口に出せませんでした」

 夫とは、遺伝的な肝臓病で余命が短いことを知った上で結婚した。「おれは(生体移植は)いらんからな」と言われていた。食事制限に気を配り、休みのたびに子どもと3人で旅行して、思い出作りに努めた。

 夫の体調が急に悪化した結婚8年目の夏。脳死移植の待機登録のため、夫婦で大学病院へ行った。脳死移植が少ないことは十分知っており、最後の気休めのつもりだった。

 ところが、医師のひと言で状況は一変する。

 「余命は3か月。脳死を待ってたら間に合わない。生体間移植をしよう」

 死を受け入れていたかに見えた夫は、その日からドナー探しに躍起になった。

 いったん臓器提供を了承したおじは家族の反対で断念した。家族と医師の会議で、夫の両親と姉は「私は提供できません」と次々に席を立った。一人残った女性に、医師は告げた。

 「誰もいなければ、奥さん、あなたですよ」

 手術の前々日、女性は「怖い。手術したくない」と看護師に訴えたが、予定は動かなかった。

 健康な人が患者に臓器を提供する生体移植。脳死移植が進まない一方で増え、腎臓は昨年939例、肝臓505例に上る。「美談」と見られる陰で、ドナーのケアは後回しにされてきた。

 2003年5月、京都大病院で娘に肝臓を提供した40歳代の女性が死亡した。翌年、日本肝移植研究会はドナー経験者へのアンケートを初めて行い、約1500人から回答を得た。

 成人間の移植で「ドナーになることへの期待」を患者本人から感じた人は33%、他の家族からは31%、医師から感じた人も20%に達した。手術後、患者との関係が良くなった人が57%いる一方、悪化が16%、離婚・断絶も10%あった。

 傷の痛みなどの症状が残る人は5割。最新の調査で、全国3005人のうち105人(3・5%)は胆汁が漏れるなど重症だった。

 大きな犠牲を払うドナーの心と体をどう守るのか。愛媛県で昨秋発覚した臓器売買事件を踏まえ、厚生労働省は今年7月、〈1〉提供の任意性を家族、移植医療スタッフ以外の者が確認する〈2〉提供に伴う危険性も説明する――など、生体移植に関する規定を臓器移植法の運用指針に初めて盛り込んだ。だが、ドナーの後遺症の医療費負担など課題は多い。日本移植学会は、ドナーのための傷害・生命保険も検討している。

 手術の2か月後。女性よりひと月先に退院した夫は、病床の女性の携帯に電話をかけてきた。「離婚してくれ」。結局、手術の時以来、顔を合わせていない。

 女性は言う。「夫も医師も、私のことは見ていなかった。見ていたのは、私の肝臓だったんでしょう」

「日本で無理だった」比で腎移植に800万払った男性証言

2007年07月14日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【マニラ=遠藤富美子】フィリピンの臓器移植施設で腎臓提供者に謝礼を支払い、7月上旬に移植手術を受けた大阪府の40代の男性が、マニラ首都圏の療養先で本紙の取材に応じ、「国内での移植が無理だったため、海外へ出ざるを得なかった」と述べた。

 比政府は、ドナーへの謝礼を前提とした臓器売買を事実上公認する制度を検討しており、男性は「国内で移植ができないなら、海外で安心して移植を受けられる道筋を国がつけてほしい」と訴えた。

 男性は1年半前、腎不全で腹膜透析を始めたが、透析液の管理などで生活に支障が出たため、移植を決意。実母から腎臓提供を受ける話もあったが、医師に「母親も10年以内に透析が必要になる」と言われて断念したという。

 関係者によると、男性が比国内で支払ったのは約800万円。フィリピンでは近年、患者が支援団体を通じて、ドナーに生活支援金を渡す仕組みが広まっており、男性の場合も、紹介業者が契約したドナー支援団体経由で、提供者に生活支援費が届けられるという。日本の臓器移植法は、内外問わず臓器提供への「対価」の支払いを禁じているが、関係者は「臓器売買との認識で海外で移植する患者はいない」と反論している。

病気腎移植は原則禁止、厚労省が改正臓器移植法運用指針

2007年07月12日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 厚生労働省は12日、病気腎移植の原則禁止を盛り込んだ改正臓器移植法運用指針を、各都道府県や日本移植学会など6学会、日本医師会などに通知した。

 改正運用指針は、生体移植の規程を新たに設けたのが特徴で、病気腎移植は、「現時点では医学的に妥当性がないとされている」と明記し、原則禁止。 生体移植全般についても、 〈1〉患者と提供者の間で金銭の授受がないことを移植施設の倫理委員会で確認する 〈2〉臓器提供者に医師が手術の内容や危険性を説明し、書面で提供の同意を得る 〈3〉提供者が患者の親族の場合、公的証明書で本人であることを確認する 〈4〉親族以外の第三者からの提供の場合は、倫理委員会での承認を受ける ――ことなどを求めた。

臓器移植研究 病院・学会で二重審査

2007年07月02日 愛媛新聞社

 宇和島徳洲会病院を舞台にした臓器売買事件や同病院の万波誠医師(66)らによる病気腎移植問題で、日本移植学会の倫理委員会(委員長・加藤俊一東海大教授)は1日、東京で会合を開き、臓器移植の臨床研究に関する規定などを新たに加えた学会倫理指針改定案をまとめた。同規定では研究実施施設の倫理委だけでなく、学会でも研究の妥当性を審議し、その結果を病院など当該施設に伝える手続きを明示した。 

 指針改定案は理事会で協議後、正式決定されるが、対象は学会員に限定されており「非学会員についての対応は別途、話し合う」(加藤委員長)としている。

 新たに設けた同規定では、学会員が臓器移植に関する臨床研究を計画する場合、当該施設の倫理委の審査と施設長の承認を経た上で、日本移植学会の意見を求める。  学会は倫理委で、医療水準に照らして臨床研究が適切かを審議。研究内容に応じて倫理委に2、3人の臨時専門委員を加えて協議する。それを踏まえ、研究の是非についての意見を当該施設に報告。ただし、最終的な実施と決定の責任は当該施設にあるとしている。

移植待機者半減へ普及活動 献眼50年でアイバンク協会

2007年06月23日 中国新聞ニュース

 日本アイバンク協会(所敬理事長)はこのほど、アイバンクによる角膜移植開始50周年を期に、角膜の提供を増やして約5000人の待機患者を半減させることなどを目標とする3年間の普及活動を始めた。ポスター、パンフレットの配布や全国各地で開く説明会などを通じ、提供への理解を広げたいとしている。

 角膜は、いわゆる黒目の部分を覆う透明の組織で、病気やけがなどでひどく濁ったり変形したりすると視力が失われる。しかし、亡くなった人から提供される角膜を移植すれば視力が回復する。

 提供したい人は全国54カ所のアイバンクで献眼登録ができるほか、臓器移植意思表示カードにも記入欄がある。それらがなくても、死亡時に家族が書面で同意すれば、角膜の提供は可能だ。

病腎移植、豪で41例 がん患者から、再発なし

2007/06/16 The Sankei Shimbun

 オーストラリアの病院で、腎臓がん患者から摘出した腎臓の病変部分を切除し、第三者に移植する病腎移植を11年前から続け、既に計41例にのぼっていることが15日、分かった。早急に移植が必要な60歳以上などの腎不全患者のみを対象とし、これまで移植した腎臓からがんの再発が確認された例はなく、うち3人は他の病気で亡くなったという。担当医師は「移植せず透析を続ける場合より高い生存率で推移しており、臓器提供者(ドナー)不足が続く現状では有効な手段だ」とし、豪では他の2病院にも同じ試みが広がったという。

 日本で宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師らが行った腎臓がん患者からの病腎移植と同じ試み。海外ではこのほか、米国シンシナティ大学で少なくとも11例のがんの病腎移植が行われたことが明らかになっている。

 がんの病腎移植を続けているのは、豪ブリスベーンにあるクイーンズランド大学のデビッド・ニコル教授と同僚医師ら。

 ニコル教授が泌尿器科と腎移植の責任者を務めるプリンセス・アレクサンドラ病院で、1996年5月に1例目を行って以後、今年に入ってからも既に9例行うなど、現時点で計41例にのぼっている。近くもう1例行う予定という。

 このうち初期の3例は死体腎で、腎がんのあったドナー3人から死後に腎臓を摘出し、病変の切除後3人に移植した。他の38例はすべて生体腎で、1〜3・5センチ大の腎がんが見つかり、全摘を希望した患者の腎臓から病変を切除し、第三者38人に移植した。

 移植対象の患者(レシピエント)は、移植を待つ腎不全患者の中でも死亡率が比較的高い60歳以上の人や、合併症のため将来の移植が危ぶまれる患者などに限定し、リスクを説明した上で患者に選択を委ねるという。

 ニコル教授らは全患者の追跡調査を続けており、41人中3人が他の病気で死去したが、他の38人の移植した腎臓に機能廃絶はなく、これまでのところ、がんの再発を確認した例はない、としている。

 ニコル教授は産経新聞の取材に「数字を見てもらえば、がん再発のリスクが小さいことが分かる。国内の別の2病院でも同じ移植が昨年と今年に1例ずつ行われ、経過は良好と聞いている」などと語った。

 日本で同様の移植をしていた「瀬戸内グループ」の医師らはいずれも、豪の試みを「知らなかった」としている。

病は癒えても 移植の後で 臓器提供 思わぬ後遺症

2007年05月28日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 千葉市の会社社長、北原俊彦さん(68)は昨年春、人工透析を受ける長男(39)に左の腎臓を提供した。

 市内の病院の医師は「内視鏡手術なので、傷は6〜8センチで済む」と話していた。だが、麻酔から覚めると脇腹に30センチの傷があった。医師からは「腎臓が大きく、周りの脂肪も固かった」と開腹手術への移行理由の説明を受けた。

 退院後、日課のウオーキングを再開すると、右足の筋肉に激しい痛みが起こった。病気知らずだった北原さんが、不安を感じて受診すると、医師は「年のせい」と取り合わなかった。

 しかし、数か月たっても治らない。整形外科でも原因が分からず、再び病院を訪ねた。「手術と関係があるのでは。同様の症状が出た人はいませんか」。医師は答えられず、生体腎移植のドナー(臓器提供者)の追跡調査は、行っていないことがわかった。

 手術後、急に疲れやすくなった。腎機能をみる血液検査の数値も、手術を境に異常値が続く。

 北原さんは「移植医療のおかげで息子を助けることができた」と語るが、生体移植への疑問は膨らむ。「脳死や心停止後の移植が進まず、健康な人間が次々と腹を切る日本の現状は、尋常ではない」と思う。

 生体肝移植でも、ドナーに後遺症が出るケースがある。京都市のA子さん(60)は1999年3月、C型肝炎から肝臓がんになった夫に、肝臓の一部を提供した。だが、夫は3週間後に多臓器不全で死亡。57歳だった。

 悲しみにくれるA子さんを、手術の合併症が襲った。手術で傷ついた肝臓から胆汁が漏れる胆汁漏。同年暮れには、腸管がねじれる腸閉塞(へいそく)で開腹手術を受けた。

 A子さんは、後遺症に悩む仲間と「生体肝移植ドナー体験者の会」を結成。その働きかけで、日本肝移植研究会がドナー調査を行い、2005年に結果を発表した。手術から2、3年たったドナーの58%に、手術の傷のひきつれや感覚まひ、疲れやすさなどの「何らかの症状」があることが分かった。

 A子さんは昨年、手首の痛みを感じて受診した病院で膠原(こうげん)病と診断され、移植後に夫が服用したものと同じ免疫抑制剤を飲むようになった。膠原病は、強いストレスが発症のきっかけになる。A子さんが見た医学書には、誘因の一つとして「外科手術」とあった。

 生体からの臓器提供に頼らざるを得ない日本の移植医療。治療の後、様々な問題や思いを抱える患者や家族、ドナーの姿を追う。

 生体移植 腎臓移植は、2005年に994件行われた。このうち、生体腎移植が834件で約84%を占める。心停止後の腎移植は144件、脳死腎移植は16件にとどまる。生体肝移植はこれまでに、国内で年間約500件、累計で4000件以上行われ、世界で最も多い。一方、脳死肝移植は、国内では累計39件にとどまる。

がん疑いの腎臓移植 患者は承諾、術後「良性」 秋田大

2007/05/26 The Sankei Shimbun WEB-site

 秋田大学医学部付属病院(秋田市)で昨年9月、がんの疑いがある腫瘍(しゅよう)の見つかった母親(64)の腎臓を摘出し、腫瘍を切除した上で長男(39)に移植する生体腎移植を行っていたことが分かった。移植後の組織検査の結果、腫瘍は良性と判明したが、病院側は事前に、がんだった場合は転移の可能性がゼロではないことを文書で患者に説明し、同意を得て実施していた。病院は「がんであっても、形状などから転移のリスクは低いと判断した」としている。

              ◇

 昨年11月に表面化した宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)などの病腎移植例以外で、がんの疑いのある腎移植が表面化したのは国内では初めて。厚生労働省は、がんの病腎移植を一般医療で行うことを禁じる指針作りを進めている。

 大学によると、長男は平成17年、慢性腎炎が悪化して腎不全となり、18年4月には週3回の血液透析が必要となった。既婚で子供が3人いるが、働けない状態となり、移植による腎機能回復を強く望んだという。

 母親が提供に同意したが、CT検査の結果、左腎臓にがんの疑いがある直径約1センチの腫瘍があることが同年6月に判明。腫瘍のない右の腎臓を移植すれば、母親が腎不全に陥る恐れがあるため、病院側は左腎移植の可能性を模索した。米国の文献などを参考に、腫瘍の大きさや形状から、悪性度の低い「明細胞腺がん」か「乳頭状腺がん」であれば、部分切除で転移の可能性が低いと判断した。泌尿器科の羽渕友則教授が最終判断し、第三者による倫理審査などは行わなかったという。

 病院側は手術に先立ち、通常の生体腎移植の患者に対する説明・同意手続きのほかに、がん転移のリスクに関する追加説明文書を作成し、同意署名を得た。

 手術は昨年9月26日に実施。まず母親の左腎を摘出して腫瘍をくり抜き、顕微鏡による迅速病理診断を実施。その結果、悪性度の高い「紡錘(ぼうすい)細胞がん」ではないことが分かり、改めて長男に口頭で説明。同意を得た上で移植した。

 移植後の病理診断で、腫瘍はがんではなかったことが確定した。

 長男の腎機能は回復し、母親の経過も良好という。

 羽渕教授は、「腎がんにもいくつかの種類がある。指針には従うが、がんの病腎移植が一律に禁止されれば、こうしたケースの患者を救うことは非常に難しくなる」と話している。

病気腎でB型肝炎感染 市立宇和島病院で万波医師

2007/04/29 中国新聞ニュース

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)が、前任の市立宇和島病院で行った病気腎移植で、B型肝炎ウイルスに感染していた患者の腎臓を移植された男性がウイルスに感染、肝障害と重症膵炎で死亡していたことが分かり、同病院の調査委員会が二十九日、発表した。

 深尾立委員長は記者会見で「移植でウイルス感染したと考えるのが妥当で、死亡と移植についての因果関係はかなりあると考えている。医療行為とは言えない」と指摘した。

 移植された病気腎と患者の死亡の因果関係が指摘されたのは初。厚生労働省は病気腎移植を原則禁止する方向で作業を進めているが、現在でも死体腎移植の場合は感染者の腎臓移植は禁止されており、万波医師による移植の問題点があらためて浮き彫りになった。

 万波医師は取材に対し「感染しないと考えていた。患者の死因は重症膵炎で、肝障害は直接関係ない」と話した。

 調査委が公表した報告書などによると、万波医師は二〇〇〇年十二月、B型肝炎ウイルスが体内にいることを示す「HBs抗原」が陽性の女性のネフローゼ患者から両方の腎臓を摘出。女性は敗血症で、摘出前の検査で血液からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出されていた。

 腎臓は二人に移植され、うち一人の男性患者は約五カ月後、肝障害と重症膵炎で死亡した。男性は移植前はHBs抗原が陰性だったが、亡くなる直前の検査でHBs抗原と抗体がいずれも陽性だったという。もう一人は感染せず生存している。

 万波医師は同病院で二十五件の病気腎移植を実施。報告書は、医学的には尿管狭窄だけは容認できる可能性があるが、患者への説明が不十分で、臓器提供の意思を第三者が確認する体制がなく「患者の人格が尊重されていない」として、すべてが不適切と判断した。

 日本移植学会が病気腎移植の情報を把握できていなかったことを課題に挙げ、死体腎の提供が少ないという問題の改善が重要だと指摘した。

病気腎移植 国が禁止

2007年04月24日 読売新聞Yomiuri On-Line

研究目的は除外…運用指針改定案

 厚生労働省は23日、病気腎移植の原則禁止を盛り込んだ臓器移植法運用指針の改定案を公表した。宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師らによる病気腎移植を契機にまとめられた関連4学会の声明を受け、改定案には「現時点では医学的妥当性がない」と明記した。生体移植全般についても、提供者と患者の間で金銭の授受がないことを移植施設の倫理委員会で確認することなどを求めている。この夏にも運用を始め、病気腎移植と臓器売買事件の再発に一定の歯止めをかけたい考えだ。

 臓器移植法の臓器売買禁止規定には具体的な方法が示されておらず、運用指針にも病気腎を含む生体移植に関する規定がない。このため国は、同病院が舞台となった売買事件と病気腎移植問題を受けて、指針の改定方針を示していた。日本移植学会など関連4学会は3月末、病気腎移植を認めないとする声明を発表していた。

 公表された改定指針案ではまず、健常な提供者にメスを入れる生体移植を「やむを得ない場合に例外として実施する」と規定。家族や移植関係者以外による提供者の意思確認と、医師の十分な説明と書面による同意を必要とした。

 提供者が患者の親族の場合は、運転免許証などの公的証明書で本人であることを確認し、親族以外の第三者から臓器が提供される場合は、移植病院の倫理委員会の承認を求めた。

 その上で、生体移植の一つとして治療の目的で行われる病気腎移植は、「医学的な妥当性はない」と否定した。ただし、将来の臨床応用を視野に入れた研究については禁止せず、その際は、国の臨床研究倫理指針に沿って移植施設の倫理委の審査を求めた。

 禁止規定から研究目的の病気腎移植が除外された点について、同日開かれた国の厚生科学審議会臓器移植委員会では、「病気腎移植の容認と取られかねない」などと異論が出た。

臓器移植の新指針策定へ 渡航手術増加でWHO

2007年03月31日 中国新聞ニュース

 【ジュネーブ31日共同】世界保健機関(WHO)は30日、臓器移植に関する新しい指針を策定するための協議会設置を決めた。慢性的な移植臓器の不足を背景に、先進国の患者が発展途上国の提供者(ドナー)から移植を受けるなどの「渡航移植」が増加していることに対応する。

 渡航移植は1990年代から急増。WHOは世界98カ国を対象に実施した調査に基づき、2005年に世界中で6万6000件の腎臓移植手術が実施されたと推計。その10%が渡航移植だったとしている。

 渡航移植の実施例が多いのは中国、インド、パキスタン、フィリピン、エジプトなど途上国で、ドナーは仲介者を通じて腎臓など臓器を有償で提供する場合がほとんど。パキスタンでは住民の約半数が片方の腎臓を提供した村もあるという。

病腎移植の芽「残したい…」 病理医が「良心の手紙」

2007/03/31 The Sankei Shimbun WEB-site

 2月下旬、病腎移植の再開を求める活動をしている岡山市の弁護士(54)に1通の手紙が届いた。差出人は、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で行われた病腎移植について医学的検証を委嘱された病理医。万波誠医師(66)が行った一連の病腎移植に厳しい見解を示した専門委員会の一員だが、手紙では「病腎移植の芽をつぶしてはいけない」と本心を語り、厳しい見解への「違和感」もつづっている。医師が発した「良心の声」は、医学界の揺れる立場を映している。(石塚健司)

ゆがめられた報告書…「結論ありきだった」

 手紙を書いたのは、日本病理学会理事の堤寛(ゆたか)・藤田保健衛生大学医学部教授(55)。産経新聞の取材に「多くの患者さんのために、私が発言しなければならない」と語り、手紙の公表に承諾した。

 堤教授は、宇和島徳洲会病院の調査委員会が病腎移植症例の検証のため関係各学会などに派遣を受けた専門委員会(6人)に参加。昨年12月からカルテ閲覧や聞き取りなどの調査を進めてきた。

 専門委が2月18日、調査委に出した報告書は、「倫理的にも科学的にも許されない」(移植担当委員)、病腎の摘出も「移植目的の手術で全症例が不適切」(泌尿器科担当委員)など否定的なものだった。

 だが、堤教授が見た万波医師の実像は、調査前に持っていたイメージと違うものだったという。

■   ■

患者に向かう姿勢に深い共感

 「万波医師の患者に向かう姿勢に深い共感を持っております。『すごい人がいる』が私の実感です。彼は患者に寄り添っています。よほどの自信と信頼がなければできないことです」

 病腎移植を受けた患者の多くが、親族からの生体腎移植を受けた後に病気を再発し、しかも通常移植より高齢で、病腎以外にドナー(臓器提供者)を得られない身だったこと。都会の医療を受けられる経済状態ではなく、透析生活のつらさに耐えられず、移植を強く望んでいたこと。患者たちの生存率が、年齢や健康状態のわりには死体腎、生体腎に劣らないこと。それらの事実に心を動かされ、「患者さんの経済状態を考慮し、最小限の検査で診療したことも痛いほど分かりました」とも記している。

 ただ、万波医師は病腎移植にあたって倫理審査を行わず、カルテの記録もずさんで、患者やドナーへのインフォームド・コンセント(説明と同意)の手続きを文書化していなかった。これらは、新しい医療を行う上で致命的な誤りというしかなかった。

 「彼にもう少し欲があれば、科学的志向性が強ければ、まったく違う展開になったでしょう。残念です。でも、それがあの人の人となりなのでしょう」

■   ■

 堤教授は専門委の討議の場でも、こうした考えを力説した。だが、報告書には盛り込まれず、翌日の新聞では「全員一致で全症例が否定された」とゆがめて報じられた。

 「びっくりしました。一体どうなっているのでしょう。私の認識と随分違うからです。学会とは融通のきかないものですね。それに輪をかけてマスコミはひどい」

 関係学会による病腎移植「原則禁止」の統一見解に向けた根回しが進む中で、学会の会合が開かれるたび、「万波医師がB型肝炎感染者の腎臓を移植した」などと、事実と異なる情報が流布されたことに不快感を示している。

 専門委では、移植に使われた腎がんの腎臓の摘出3例について、「4センチ未満の腫瘍(しゅよう)は摘出しないのが常識」との理由から「移植ありきの不必要な手術」と断じられた。

 この「常識」を「現実離れしている」と感じた堤教授は今、各地の医師たちにメールを送り、腎がんの摘出例についてのデータを募っている。既に多くの病院から、4センチ未満でも大半が摘出されていることを示す報告が寄せられている。

 「初めから結論ありきという雰囲気の検証作業だった」と振り返る。

 万波医師は、手を尽くした末の最後の手段としてしか病腎の摘出を選択しなかったと堤教授は確信している。だが、専門委は万波医師に、質問に答える以外は発言を許さず、「教科書にない」「記録がない」などの理由で主張を退けた。

 万波医師は確かに日本の移植医療のルールを無視した。だが、「患者さんのためだけを思い、名誉欲などみじんもない医者をいじめてどうするのか」。学会に対する思いだ。

 日本移植学会などは31日、病腎移植に関する統一見解を取りまとめる。

 「基準を甘くしろとは言いません。でも、患者さんたちの声にもっと耳を傾けるべきではないでしょうか」

 堤教授はそう訴えている。

病気腎移植「残す道を」 広島県医師会が容認見解

2007/03/29 The Sankei Shimbun WEB-site

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師らによる病気腎移植について、広島県医師会は、「第三の移植として残す道を探りたい」と容認する見解をまとめた。

 見解は「日本移植学会に入らず、決められている移植ルールを無視した」としながらも「脳死移植が少なく生体移植に頼らざるを得ない日本の事情がある。患者の同意を取って実績を上げたことは称賛したい」との考えを示した。

 県医師会の高杉敬久副会長は「インフォームドコンセント(十分な説明と同意)をしっかりするなど課題はあるが、研究をやめるのは医学にとって不幸だ」と話している。

 広島県では、呉共済病院(呉市)の光畑直喜医師が「瀬戸内グループ」の一員として病気腎移植を実施した。

病腎問題 結論急ぎ…揺らぐ学会

2007/03/25 The Sankei Shimbun WEB-site

 病腎移植の有効性に関する論文発表をめぐり、日本移植学会が米国移植学会に「待った」をかけた背景には、3月末に関係学会と合同で病腎移植「原則禁止」の統一見解を出す方針を固めた日本側の学会の立場がうかがえる。関係学会や移植患者団体の内部では、病腎移植の「全否定」に反発する動きも出ており、結論を急ぐ動きの足下で揺らぎも見えている。

 ■言い分

 要請書を出したことについて日本移植学会関係者は「インフォームド・コンセント(患者に対する説明と同意)文書なしの臨床論文は認められないのが常識だから」と説明し、強硬な姿勢だ。

 一連の移植が倫理上の手続きを無視した行為だったことを米側が知らないまま、実績だけが脚光を浴びる事態を憂慮したとみられる。

 これに対し、「万波論文」の発表申請を取り次いだ米国在住の藤田士朗・フロリダ大助教授は「多くの患者のために病腎移植の可能性を論じる場が奪われたのは残念だ。日本の学会は万波医師らが病腎移植を公表しなかったと批判してきたが、発表の機会を取り上げるのは矛盾している」と批判した。

 徳洲会側は、倫理面に重大な手落ちがあったことには「批判を甘んじて受ける」としているが、論文発表にまで“横やり”が入ったことには驚きを隠さない。

 ■紛糾した学会

 学会内部のおひざ元では、現場の臨床医などから「病腎全否定」に異論も出ている。

 2月28日に石川県のホテルで開かれた日本臨床腎移植学会。病腎移植について調査した臼木豊・駒沢大学法学部教授が講演の中で、「患者が病腎移植を自発的に望む場合は否定できない」との見解を述べた後、質疑応答は紛糾。会場から「オープンにやれば認めていいのでは」などの意見が出され、論争になった。

 この学会には、米移植学会の前会長が米国の移植事情についての講演を申し入れていた。講演はいったん受け入れられたが、後日取り消された。米側に伝えられた説明は「学会が近く病腎移植について結論を出すため時期が悪い」だった。米国ではドナー(臓器提供者)を拡大する動きが進み、がんの病腎移植も報告されていることが背景にあるとみられる。

 学会の関係者は「統一見解を出す前に異論を封じようとする雰囲気を強く感じる」と語る。

 宇和島徳洲会病院の調査委員会では、各学会から派遣された専門委員のうち、日本病理学会の委員が会議の場で、「10年、20年先の医療のために、病腎移植の芽を摘むべきでない」と力説していた。だが、専門委員の最終報告書にこの意見は一行も盛り込まれていない。関係した医師の間では「初めから結論ありきの論議だった」などと批判するメールが飛び交っている。

米移植学会、万波医師の論文発表中止 日本学会の再考要請受け

2007/03/25 The Sankei Shimbun WEB-site

 病腎移植問題で、日本移植学会(田中紘一理事長)が米国移植学会に対し、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らが5月に米学会で行う予定だった論文発表について再考を求める内容の書簡を送っていたことが分かった。これを受けて米移植学会は論文発表を見送ることを決め、関係者に通知した。

 日本の学会が出した書簡は、「万波医師の論文発表についての要請」の表題で、一連の病腎移植が倫理審査を経ずに行われるなど問題点が多く、現在日本で調査が進められている経緯などを説明した内容。「論文は米移植学会にふさわしくないと考えている」と結んでいる。田中理事長名で13日付で送付された。

 これを受けて、米学会側から万波医師の関係者に23日深夜(日本時間)、「時期尚早と判断した」などと論文採用の取り消しが伝えられた。

 論文は、病腎移植を受けた患者の生存率などを検証し、有効性を訴える内容。2月末に米国から採用が伝えられ、5月に米サンフランシスコで開かれる米移植学会と米移植外科学会の合同総会で万波医師らが発表することになっていた。

 米国に要請書を出した理由について、日本移植学会の関係者は、一連の移植が(1)倫理審査を経ずに行われ、患者への説明・同意の手続きの文書化もほとんどされていない(2)日本で社会問題化している−ことを米国側に知らせる義務があると判断したと説明している。

 同学会は、「瀬戸内グループ」の別の医師が米国の医学誌に投稿した病腎移植に関する論文についても、医学誌の編集部に経緯説明の書面を送る方針という。

万波医師の「病気腎移植容認できず」 病院専門委が報告へ

2007/03/18 中国新聞ニュース

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)による病気腎移植を検証するため、万波医師が二〇〇四年三月まで勤務した市立宇和島病院が設置した専門委員会は十七日までに、同病院での移植二十五件と摘出二十件の大半は、医学的に認められないと大筋で合意した。

 調査委員会と合同で十八日に開く会議で報告する。調査委は、摘出に了解があったかなど患者の個別事情を考慮し、最終見解をまとめる見込み。

 徳洲会病院での十一件について、日本移植学会などから派遣された四人の専門委員は、摘出は必要なかったなどとする統一見解を示している。市立病院の専門委の検証結果によって、一九九〇年ごろから始まった万波医師の病気腎移植は医学的に問題があると明確になり、あらためて妥当性が問われそうだ。

 市立病院の専門委は外部の専門家らで構成。十分な内科治療をせず摘出したり、がんの腎臓を移植していることなどから、「摘出、移植ともに大半は認められない。移植患者の選択の公平性にも問題がある」「摘出はすべて認められない。(移植後の)結果が良ければ何をしてもいいというわけではない」など、厳しい意見が大勢を占める。

 B型肝炎のウイルス検査で陽性だった患者から摘出した腎臓を移植したケースには「B型肝炎は院内感染を気を付けるのに、移植に使うとは信じられない。研修医でも知っている基本的なことだ」との指摘もある。

 関係者によると、特にネフローゼの患者三人から両方の腎臓を摘出、六件の移植に使ったことへの批判が強いという。

 日本移植学会など関係学会は近く、万波医師が実施したような病気腎移植は適切ではないとの方向で見解をまとめるとみられる。

 徳洲会病院の調査委は院内で摘出された六件について「適切」一件、「容認できる」三件、問題ありと問題なしの「両論併記」二件と、専門委員と異なる結論を出した。移植については今後検討する予定。

病気腎移植、見解公表へ 宇和島徳洲会が調査委

2007年03月03日 中国新聞ニュース

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)は3日、万波誠医師(66)が実施した11件の病気腎移植の妥当性を検証する調査委員会を大阪市東淀川区のホテルで開いた。

 万波医師も出席。調査委は個々の患者が置かれていた状況について万波医師から事情を聴いた上で、病気腎移植に対する最終的な見解をまとめる。病院側は調査委の終了後、記者会見して見解を公表する予定。

 2月18日に大阪市で開いた前回の調査委では、主に外部の有識者で構成される専門委員会の委員らが、医学的な見地から11件のほとんどで腎臓摘出が不適切だったなどと報告。主に同病院や徳洲会の幹部でつくる調査委側から、患者の状況や治療歴も考慮するべきだとの意見が出ていた。

 万波医師は以前勤務していた市立宇和島病院(宇和島市)でも25件の病気腎移植を行っており、同病院も専門委などを設置して検証を続けている。

臓器移植 国内での費用は

2007年03月02日 読売新聞 Yomiuri On-Line
 海外での渡航移植や病気の腎臓移植など移植に関するニュースが話題になっています。日本国内で、移植を受ける場合、費用はどれぐらいかかるのでしょうか。

保険適用なら月10〜20万前後

 主な臓器移植には、腎臓、心臓、肝臓、肺などがあります。このうち、腎臓は、家族などからの生体移植のほか、心臓死した人からの死体腎移植や脳死移植も行われます。心臓移植は脳死の患者からのみ。また、肝臓と肺は、脳死移植のほか生体移植も行われています。

 腎臓移植と生体肝移植には、これまでも健康保険が適用されていました。昨年4月からは、心臓や肝臓、肺などの脳死移植に保険がきくようになりました。生体肺移植だけは、今のところ保険が適用されていません。

 たとえば心臓の脳死移植手術の保険での費用は104万1000円といったふうに定められています。前後の検査費なども含めた総額では、腎臓移植なら一般に300万〜400万円、肝臓移植では400万〜600万円かかるとされます。

 ただし保険では、高額療養費制度といい、ひと月当たりの自己負担額の上限が抑えられています。このため、実際の負担額は、月当たり10〜20万円前後に抑えられます。

 移植を受ける患者の病状によって、保険が適用にならない場合もあります。たとえば肝臓がんへの移植では、治療成績の良いとされる、がんが3センチ以下で3個以内か5センチ以下1個の患者への移植なら保険がききますが、それ以上なのに移植する場合は全額自費扱いです。病状の重さにより、700万から3000万円程度かかるとされます。

 一方、海外での臓器移植ですが、もちろん保険はきかないため、欧米では心臓移植で1億円前後かかるとされます。近年は、費用が数分の一という、フィリピンや中国といったアジアへの海外渡航移植も増えているとも言われますが、様々な問題も指摘されています。

腎移植の認定医制度創設へ 日本臨床腎移植学会

2007年03月01日 中国新聞ニュース

 腎臓移植の「認定医」制度をつくることを日本臨床腎移植学会が1日、決めた。宇和島徳洲会病院の万波誠医師らによる病気腎移植が発覚、論議を呼ぶ一方、昨年1年間に全国の腎移植が1000件を超え、体制整備が必要と判断した。

 今年中に制度を発足させる。

 石川県加賀市で同日開かれた総会で、高橋公太新潟大教授は「腎臓売買や病腎移植の問題が起きた社会の状況もあり、腎臓移植の質を上げていかなければならない」と説明。拍手で了承された。

 総会では、昨年1年間に生体腎移植は939件、脳死を含む死んだ人からの移植は197件だったと報告された。

 高橋教授は総会後、「移植件数が増えており、宇和島のような問題が起きると質が担保できなくなる。日本移植学会とも歩調を合わせたい」と話した。

万波医師ら、米学会に応募 病気腎移植の有効性主張

2007/02/22 中国新聞ニュース

 病気腎移植を行った宇和島徳洲会病院の万波誠医師(66)ら「瀬戸内グループ」の医師六人が、病気腎移植の分析結果を五月に開かれる米国移植外科学会で発表するため、論文を応募していることが二十二日分かった。

 共著の難波紘二広島大名誉教授(65)によると、生着率が死体腎移植と変わらないことなどを分析結果から証明。病気腎移植が日本の臓器提供者(ドナー)不足の現状を解決する有効な手段と結論付ける内容という。

 三月中に採否が判明する見込みで、採用されれば、万波医師が同学会で発表する可能性があるという。

病気腎移植推進を国に要望 支援者ら、6万人の署名

2007年02月19日 中国新聞ニュース

 病気の腎臓を移植した宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師の患者、家族ら同医師の支援者でつくる「移植への理解を求める会」(向田陽二代表)は19日、病気腎移植の推進を求める要望書と約6万1000人分の署名を厚生労働省に提出した。

 要望書は「中国四国の移植医療をけん引してきた先生方が今回の問題で医療活動をストップさせられることのないよう願うとともに、病気腎移植が第3の道として認められ、1人でも多くの腎不全患者が救われることを強く望む」としている。

 提出後に記者会見した向田さんは「病気腎移植は新しい分野。この移植を受けて健康で普通に生活をしている人がたくさんいる。否定する学会は患者の意見を無視している。もっと審議して、1つでも助かる命を助けてほしい」と訴えた。

フィリピンで2度の移植 救い「海外しかない」 熊本の腎臓病患者

2007年02月18日 西日本新聞朝刊 Gooヘルスケア

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の病気腎移植問題は、遅々として進まぬ日本の臓器移植の実態を浮き彫りにした。一方、高額な費用やリスクを顧みず海外に治療の道を求める患者や家族も少なくない。悪質な業者にだまされるなどの経験を乗り越え、フィリピンで2度の腎移植手術を受けた熊本県八代市の会社員稲葉洋一さん(39)の例を紹介する。

 小学5年で腎臓病が判明して以降、稲葉さんは塩分を控えるなど厳しい食事制限を強いられてきた。ところが1995年1月、高熱を発して病院に行くと「慢性腎不全です。すぐに透析を」との宣告を受ける。当時27歳だったが、仕事は続けられず、実家に戻るしかなかった。週3回、毎回5時間というつらい血液透析の日々にも病状は好転せず、やがて「もう腎移植しかない」と診断された。

 「助からない」と思いかけていた96年11月、「フィリピンでの臓器移植を無償で」と書かれた新聞広告に目がくぎ付けとなる。大阪の雑居ビルに駆け付けると、“仲介業者”の男から「無償の分は既に決まった。総額1850万円を用意できれば移植はできる」と言われた。

 親せき中に頼み込み、必死で費用を工面。ところが現地に行くと男は姿を見せなかった。帰国後に問いただしても「医師の都合が合わない」「ドナー(臓器提供者)が見つからない」。疑念を抱き始めるうち、男は行方不明になった。

 稲葉さんはあきらめなかった。現地で会った通訳や移植手術を受けた経験があるという牧師に連絡を取り、独力で移植を受けられないか相談。600万円の費用をかき集め、翌年9月にマニラへ。牧師に医者やドナー探しを手伝ってもらい、10月に手術にこぎ着けた。ドナーは29歳の男性。謝礼は35万ペソ(当時約70万円)だった。

 フィリピンに臓器売買を禁じる法律はなく、提供する側は貧困層や受刑者だ。少なくない報酬を前にして「なぜ売っていけない」という風潮さえあるという。事故などで人が病院で亡くなると移植医に連絡が入る。稲葉さんは2003年にも同国で再移植を受けたが、この時は交通事故の犠牲者から提供を受けた。

 フィリピンで移植手術を受ける人は年間600‐700人ともいわれる。移植専門医が自分のチームを抱え、病院などに事務所や窓口を開き、検査から手術、術後管理までを担当する。費用は病院や医師によって違うが、稲葉さんが2度目に受けた手術の場合、病院に160万‐180万円、主治医に約200万円を支払った。これに検査費や手術代、看護師らへの報酬など総額で約700万円掛かった。1000万円以上必要なケースもあるという。

 法外な額を要求する悪質なブローカーの暗躍は否定できない。稲葉さん自身も、実際に現地で仲介業者を名乗る日本人に声をかけられた。

 日本人の腎臓病患者にとって、海外で移植手術を受けられる国は限られる。米国では渡航費用など極めて高額が必要となり、中国は死刑囚の臓器利用を世界保健機関(WHO)から「非人道的」と指摘され、外国人への臓器提供に消極的な姿勢を見せ始めた。このため近年はフィリピンが注目されているという。

 臓器移植法成立から10年を前に、稲葉さんは話す。「国内で移植手術を受けたくてもドナーが見つからない現状では、海外に救いを求めるしかない。(フィリピン政府は)臓器取引を法で認めることも検討しているようだが、闇取引が横行するよりいいかもしれない」

病気腎移植、3月に見解 万波医師に反省促す

2007/02/18 中国新聞ニュース

  宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)は十八日、万波誠医師(66)が実施した十一件の病気腎移植を検証する専門委員会と調査委員会の合同会議を大阪市のホテルで開き、万波医師から事情を聴いた上で、三月初めにも病気腎移植についての見解をまとめることを決めた。

  病院によると、合同会議では専門委員側から十一件のほとんどで病気腎の摘出が医学的に不適切だったとする報告があった。調査委側も、患者への文書による説明がないなど万波医師のずさんなインフォームドコンセント(十分な説明と同意)を問題視し、反省を促すことで一致した。

  当初はこの日の会議で見解をまとめる予定だったが、万波医師の意見を聴く必要があるとの声が上がったという。

  万波医師は前任の市立宇和島病院でも二十五件の病気腎移植を実施しており、同病院も専門委員会などを設置して検証を進めている。

病気腎移植は不適切と専門委 宇和島徳洲会病院の11件

2007/02/18 中国新聞ニュース

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)が設置した、外部の医師らによる専門委員会は十七日までに、万波誠医師(66)が同病院で実施した十一件の病気腎移植のほとんどについて、腎臓の摘出は医学的に適切ではなく、別の患者への移植もするべきではなかったとの調査結果をまとめた。

 十八日に大阪市で開く同病院の調査委員会との合同会議で報告される。専門委員からは「『初めに移植ありき』の腎臓摘出と言われても仕方がない」との声も出ており、専門家による詳細な検討で、病気腎移植の問題点があらためて示された。

 同病院は腎臓内科や泌尿器科、病理など外部の専門家による委員会を設置し、腎臓の摘出や移植の医学的な妥当性について調査してきた。

 その結果、病気腎の摘出については「医学的には適切ではない」が七件、「適切でないか疑問」が三件、「不明」が一件だった。摘出腎の移植への使用については「移植すべきではなかった」が七件、「本人に戻すべきだった」が四件だった。

 十一件のうちの二件は、香川労災病院(香川県丸亀市)で腎がん患者から摘出した腎臓が使われたが、この摘出について同病院の調査委員会も「腎提供や移植を念頭に置いた手術方法と言わざるを得ない」としている。

 また徳洲会病院の専門委員は、倫理委員会を設置せず、患者へのインフォームドコンセント(十分な説明と同意)の記録を義務付けないなど、同病院の管理責任の欠如も厳しく指摘した。

 万波医師は前任地の市立宇和島病院で、B型肝炎ウイルス検査で陽性だった患者から摘出した腎臓を移植に使っていたことも分かった。

 B型肝炎は感染して慢性化すると、肝硬変や肝臓がんに進行する恐れがあり、移植医療の専門家は「移植では大量の免疫抑制剤を使うため、患者に感染する可能性が高まる。常識では考えられない」と指摘している。

 同病院の調査に対し、万波医師は「移植する際、感染症のことを(患者に)口頭で説明した」と話しているという。

「がん腎移植、再発なし」 光畑医師の論文掲載へ

2007/02/10 中国新聞ニュース

 病気腎移植を実施した「瀬戸内グループ」の一人、呉共済病院(広島県呉市)の光畑直喜医師(58)が、がんの腎臓を移植した四人の症例を論文にまとめ、近く米国の移植専門誌「トランスプランテーション」に掲載されることが九日、分かった。「がんを切除し移植したところ、再発せず元気に生活している」としている。

 光畑医師によると、日本国内のがんの腎移植に関する論文が発表されるのは初めて。

 論文では、腎臓がんや下部尿管がんで摘出された腎臓を一九九七年から二○○一年にかけて移植した四例を紹介。「比較的小さい腎臓がんや、下部尿管がんでは腎臓を摘出した場合、再利用して移植できるのではないか」と提起している。

 光畑医師は「世界的なドナー不足を解消する方法として一石を投じたい」と話している。

患者の死因は肺がん 尿管がん腎移植

2007/01/30 中国新聞ニュース

 ▽広島大の難波教授調査 移植とは無関係

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)らによる病気腎移植で、尿管がんの腎臓を移植された患者にがんが再発、その後死亡したケースは、尿管がんの転移でなく、別の肺がんが原因だったことが二十九日、難波紘二・広島大名誉教授の調査で判明した。

 この患者は一九九四年、万波医師の執刀で、尿管がんで摘出した腎臓の移植を受けた四十歳代の男性。九六年、尿管がんの再発が見つかり部分切除。九九年に肺がんで死亡した。難波教授が遺族から入手した死亡診断書によると、原発性肺がんの肝転移が死亡原因と記載されていた。

 難波名誉教授は「この結果、がんの腎臓を移植した患者十四人では、転移はなく、局所再発があった一例も、死因とは無関係だったことが明らかになった」としている。(編集委員・山内雅弥)

生存率5年70% 病腎移植36例 広島大教授調査「検討に値する」

2007/01/20 The Sankei Shimbun WEB-site

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師らによる病腎移植問題で、36例の病腎移植の対象患者34人が5年間生存した割合(生存率)が70%であることが、広島大学の難波紘二名誉教授(血液病理学)の調査で分かった。生体腎移植、死体腎移植を受けた患者の生存率(日本移植学会調べ)と比べると、やや低いが、生着率は死体腎に近く、難波教授は「病腎利用の可能性について今後検討するに値する結果だ」と評価している。

 病腎移植の成否を総体的に分析したデータが示されたのは初めて。20日に松山市で開かれるシンポジウムで発表される。

 難波教授は、病腎移植を行った3病院から病理診断データなどの提供を受け分析。担当医の聞き取りも行い、移植患者の生存率などを調べた。

 調査対象とした36例の内訳は、市立宇和島病院の19件▽宇和島徳洲会病院の11件▽呉共済病院(広島県呉市)の6件。市立宇和島病院は病腎移植件数をカルテが現存する14件と公表しているが、今回の調査は病理診断データなどをもとに19件を対象とした。病腎移植を2度受けた患者が2人含まれる。

 病腎の疾患別内訳は、腎臓がん8件、ネフローゼ症候群7件、尿管がん6件、腎動脈瘤6件、尿管狭窄5件、血管筋脂肪腫2件、海綿状血管腫1件、腎石灰化嚢胞1件。

 患者が初めて受ける移植に病腎が用いられたのは10件、2度目が16件、3度目7件、4度目2件、不明1件だった。

 初回移植患者の生存率を調べたところ、1年100%、5年66.6%、10年50%、15年33.3%。2度目以降を含めた病腎移植患者全体の生存率は、1年96.3%、5年70%、10年27.2%、15年11.1%。

 初回移植患者の移植腎生着率は、1年75%、5年60%、10年50%、15年33.3%で、死体腎の生着率とほぼ同じだった。

 腎がんの病腎を移植された8件のうち、がんが再発転移した例はなかったが、尿管がんで肺転移の可能性が否定しきれない症例が1例あった。

 長期の生存率では病腎移植患者の数値が劣るが、病腎移植患者は死体腎などに比べ、高齢であったり健康状態の悪い人が多かったという。難波名誉教授は「病腎を初めから移植した場合、死体腎移植と遜色(そんしょく)ないように思う。患者が摘出を望んだ病腎であれば、活用のための臨床試験を本格検討するべきだ」と話している。

新たな医療、価値検証を

 今回の調査結果は、病腎移植の症例数が生体腎や死体腎に比べてかなり少ないだけに、同列に比較するのは難しい面もある。だが、病腎移植患者の年齢や移植回数を考慮すれば、それなりの成績といえそうだ。

 病腎移植問題で是非が問われたのは、ドナーから摘出する必要があったかどうか▽移植された患者への影響▽移植機会の公平性−の3点だった。

 個々の移植の手続き面については、病院の調査委員会や厚生労働省の調査班が調査を進めている。だが、病腎移植を新たな医療ととらえ、その価値を検証する作業は行われていない。

 泌尿器科の医療現場では、部分切除で済むごく初期の腎臓がんなどの患者であっても「摘出してほしいという声が確かにある」と、複数の医師が証言している。ある医師は「年間1000個ぐらいは移植に使える病腎が出ている」と推計する。

 臓器移植は、患者以外の第三者の身体を必要とする特殊な医療だ。そのため、健康な人の身体を傷つける生体移植ではなく、亡くなった人の善意をもとにその臓器を生かす死体移植が基本であるべきだ。

 だが「病腎でも助かる人がいるなら」と、摘出後の提供を了承するドナーがいるなら、そのささやかな善意を無駄にしない努力も必要である。さらに医学的な検証を進めるべきだろう。(石毛紀行)

生体腎移植で「金銭授受」認める 市立宇和島病院

2007/01/19 中国新聞ニュース

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)が二○○四年三月まで勤務した市立宇和島病院の調査委員会は十九日、非親族間の生体腎移植で金銭授受が疑われるケースが一件あったことを明らかにした。

 記者会見した深尾立委員長(千葉労災病院院長)によると、臓器提供者(ドナー)や患者へのアンケートで、非親族間の生体腎移植を受けた患者の一人が「金銭授受があった」と回答した。一方、この移植のドナーは「授受はなかった」と回答したという。

 市立病院の市川幹郎院長は「この患者は、仲介者は存在しないとする一方で、金銭は仲介者にあげたと回答しており矛盾している」と話し、今後も調査を続けるという。

 調査委は、一九八二年から○六年までの腎移植のうち、カルテなどの記録が残る二百五十三件について手続き上の問題がないかを検証。この日は万波医師から聞き取り調査した。

 万波医師は「(病気腎移植に使った)腎がんは摘出する必要はなかったが、患者の意向で取った。ネフローゼ患者は高価な治療薬の負担が重いので摘出した」と説明。倫理委員会で審議を受けることは「知識がなく、思い付かなかった」と答えたという。

 深尾委員長は、病気腎移植の患者選定について「死体腎移植に準じてネットワークに報告し、全国から選ぶ方法もあったのでは」との見解を示す一方、「目の前に苦しむ患者がいたら、やむを得ない判断だったかもしれない」と理解を示した。

<連載>移植医療を問う (2) ドナー保護不十分

2006年12月14日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 京都市に住む女性(59)は今も納得がいかない。

 「『元に戻りますから』と、先生から確かに聞いた。手術前と同じ体に戻ると思い込んでいた」

 肝臓がんの夫に京都大病院で肝臓の右葉を提供したのは1999年3月。肝移植の第一人者、田中紘一教授(当時)の執刀だった。

 摘出後、体内に胆汁が漏れた。しかし病棟のベッドには全国から劇症肝炎などの急患が次々に運ばれてくる。ドナー(臓器提供者)は重視されず、1週間で転院を求められた。

 夫は移植の20日後、57歳で帰らぬ人となった。死に際はよく覚えていない。その1年後には腸閉塞(へいそく)と十二指腸潰瘍(かいよう)を併発した。

 「子どもからはもらえない」と長男の申し出を拒んだ夫。生きてほしい一心で提供した。「私の肝臓の血管が細かったから……」「移植が死期を早めたのかも……」と自分を責めることもある。同時に、こうも思う。

 「私がこうなるとわかっていたら、夫は手術すると言わなかったでしょう」

----------------------------------------------------------------------------

 肝臓は一部を切除しても再生する能力を持つ。この点に着目した生体部分肝移植は89年、島根医大(当時)で難病の1歳児に父が提供する形で始まった。最初は脳死移植が期待できない中での緊急避難だったが、京大を中心にどんどん進められ、90年代末には成人間の移植も急増して小児への移植を上回った。国内の累積移植件数は約4000例に達した。98年からは健康保険も適用されている。

 家族の提供で助かった命は数多い。ただ、その陰には、健康な肝臓を切り取られた同数のドナーがいる。

 肝臓の部位のうち、当初は小さい左葉を使っていたのが、大人への移植が増えるにつれ、3分の2を占める右葉の摘出が多くなり、合併症も増えたとされる。

 京大病院で女性は、腹部に胆汁を取り出す管をつけたドナーを何人も見た。廊下の手すりに頼って青い顔で転院していく人もいた。

 02年秋、驚く知らせを受けた。「京大病院で娘に肝臓提供した母親が、集中治療室に入っている」

 危機感を抱いた女性は、仲間と「生体肝移植ドナー体験者の会」を作った。

 重体の母親は肝移植を受けたものの翌年5月に亡くなった。肝臓の切除量が多すぎたのが主因とされた。

 その年の秋、日本移植学会は倫理指針を改定し、家族と血族に限っていた生体ドナーの範囲を「6親等内の血族と3親等内の姻族」に広げた。非親族や未成年でも倫理審査を通れば提供可能にした。健康な体を傷つける生体移植の拡大には学会内でも批判がある。

 日本肝移植研究会の04年のドナー調査(回答1480人)によると、4割が健康不安を訴え、離婚や人間関係の断絶を経験した人も1割いた。05年には群馬大でドナーの両足にマヒが残る医療事故が起きた。

-----------------------------------------------------------------------------

 ドナーがいて初めて成り立つ臓器移植。しかし日本には生体ドナーを守る法律がない。仮に手術や合併症で死亡しても生命保険はおりない。しかも医師らの目は移植患者に向きがちだ。

 「体験者の会」は今年11月、ドナー保護の法整備や継続的なケアを求める要望書を厚生労働省に出した。

 千葉県に住む同会の事務局担当、鈴木清子(すがこ)さん(49)も98年に京大で娘に肝臓を提供した。95年の父親の提供に続いて2回目の移植だった。娘は40日後に15歳で他界し、自分の体にも違和感が残るが、「悔いはない」と言い切る。ただ、移植に関係する人たちに伝えたいことがある。

 「患者とドナーが互いに思いやり、医療者が支える。そんな温かい関係が私にとっての移植の原風景。今は遠い所に来た気がします」

死体腎提供、年100人を突破 移植ネット発足後初めて

2006年12月04日 中国新聞ニュース

 日本臓器移植ネットワークは4日、今年の腎臓提供者が11月末現在で103人となり、1995年4月のネット発足以来、初めて年間100人を超えたと発表した。103人中脳死での提供は9人で、心停止後の提供は94人。

 これまでの最高は96年の98人だった。

 腎臓を心停止後に提供する場合には、本人の意思が不明でも家族の同意だけで摘出できる。日本移植学会などによると、90年ごろには年間百数十人程度の提供があったが、その後、臓器移植法案の議論が活発化し、提供条件が厳しい脳死移植と混同されるなどして、2002年には提供が64人まで減った。

 同ネットは「心停止後も腎臓が提供できるという普及啓発の結果が出始めたのかもしれない。病気腎移植問題の影響はまだ分からないが、少なくともマイナスにはなっていないようだ」と話す。

 ネットは95年、日本腎臓移植ネットワークとして発足。97年の臓器移植法施行で多臓器を扱う現在の組織になった。

中国で移植、肝炎感染

2006年11月28日 読売新聞 Yomiuri On-Line

5年間、490人中32人…韓国

 中国で肝臓移植を受けた韓国人の6・5%がB型またはC型肝炎ウイルスに感染していたことが、成均館(ソンギュングワン)大学(ソウル)移植外科のイ・ソック教授らの調査で明らかになった。

 中国で臓器提供者のウイルス検査が十分行われず、肝臓や輸血血液などに肝炎ウイルスが混入していた疑いがある。日本人で中国で移植を受ける患者は後を絶たないが、移植後のウイルス感染が広がっている可能性が出てきた。日本でも感染の実態調査を迫られそうだ。

 韓国では、中国に渡って臓器移植を受ける患者が急増しており、イ教授らは、中国で肝臓移植を受けた患者を診療している韓国の医療機関を対象に調査した。

 その結果、昨年までの5年間に490人が中国で移植を受け、その後32人がB型、C型肝炎に感染していた。今後、肝硬変や肝臓がんを発病する恐れがある。

 厚生労働省研究班が今年3月にまとめた調査によると、中国で移植を受けた日本人患者は、肝臓が14人、腎臓106人だった。把握できなかった患者も多く、移植後の患者の健康調査も行われなかった。しかし、中国で腎臓移植を受けた日本人が肝炎に感染したケースも既に明らかになっており、今回の韓国での調査により、日本でも肝炎ウイルス感染の拡大が懸念される。

 中国へ渡航しての移植が絶えない背景には、日本国内での脳死移植の停滞がある。移植を望んで日本臓器移植ネットワークに登録している患者は現在、肝臓で約130人、腎臓が約1万1700人いるが、脳死移植を受けたのは肝臓34人、腎臓でも56人に過ぎない。

愛知でも病気腎移植

2006/11/11 中日新聞

15年前に藤田保健衛生大で

 藤田保健衛生大(愛知県豊明市)で1991年12月、病気の患者から治療のため摘出した腎臓を、親族ではない別の患者に移植していたことが10日、分かった。腎臓の提供者、移植患者らの同意書もあり、執刀医の星長清隆教授は「愛知県の腎バンクなどと相談し、当時としては思いつく限りの手続きを踏んだ」と話している。

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師らがかかわった事例以外で、病気腎移植が確認されたのは初めて。

 星長教授によると、腎臓の提供者は当時30歳の男性。腎血管性高血圧症で、91年10月、腎臓を摘出、動脈瘤(りゅう)の治療をした。星長教授は患者に腎臓を戻すことを勧めたが、病気の再発などを恐れた患者が強く拒否。腎臓の提供を提案すると、同意したという。

 当時は日本臓器移植ネットワークがなく、星長教授は愛知県の腎バンクの責任者らと話し合い、約2カ月後、腎バンクの登録リストの男性患者に移植した。93年には日本腎移植臨床研究会で一連の経過を発表した。星長教授は「透明性確保に努めた。今から考えても選択に間違いはなかった」としている。同教授は万波医師らの問題で日本泌尿器科学会の調査委員会の委員となっていたが「万波医師が、私たちの学会発表を見て病気腎移植をしたという主張をしていると聞いた。迷惑をかけたくない」と委員を辞任したという。

 ◆大島伸一・日本移植学会副理事長の話 病気を治せば移植できる腎臓なら本人に戻すのが原則だが、例外はある。戻せないが移植には使えるという選択肢が出てこないわけではない。ただし(移植前に)オープンな議論をする必要がある。宇和島のように数が多いのは例外とは考えられない。

病気腎移植、91年に愛知の大学病院でも

2006年11月10日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 愛知県豊明市の藤田保健衛生大学病院で1991年、病気腎移植が1件行われていたことが10日、明らかになった。

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師らのグループがかかわった以外で、病気腎移植が判明したのは初めて。藤田保健衛生大学病院側は「臓器提供者や患者の同意もあり、医学的にも倫理的にも問題はなかった」としている。

 病院によると、執刀したのは同病院の星長清隆教授。腎血管性高血圧症で治療を受けていた30歳(当時)の男性に動脈瘤(りゅう)が見つかったことから腎臓を摘出。動脈瘤の手術後、戻そうとしたが、男性は再発を恐れて拒否した。他人への移植に同意を得たため、愛知県の腎臓バンクに連絡したうえで、登録されていた23歳(同)の男性患者に移植した。この患者は今も通院しているが、経過は良好という。この経緯は93年の学会で発表された。

 当時、日本臓器移植ネットワークがなく、厚生労働省臓器移植対策室は、「臓器移植法が出来る以前の話で、宇和島徳洲会病院のケースとは性質が異なる」と話している。

社保事務局、立ち入りへ…愛媛・宇和島徳洲会と市立宇和島病院

2006年11月10日 読売新聞 Yomiuri On-Line

診療請求要件調査

 病気腎移植問題で、愛媛社会保険事務局(松山市)と愛媛県は、こうした手術は診療報酬請求の要件を満たしていない可能性があるとして、移植が行われていた同県宇和島市の宇和島徳洲会と市立宇和島の両病院に対し、月内にも立ち入り調査をすることを決めた。適切でないと確認できれば、診療報酬の返還を求める。

 現在の診療報酬制度で想定されている臓器移植は、健康な臓器を使うことを前提としている。このため、病気腎移植は、保険が適用されない「自由診療」との見方もでき、同社保事務局と県はカルテや診療明細(レセプト)を精査する必要があると、判断した。

 立ち入り調査では、宇和島徳洲会病院の11件、市立宇和島病院の10〜15件のうち、カルテや関係書類の保存義務がある5年前の2001年以降のケースについて調査し、診療請求が妥当かどうかを調べる。

 生体腎移植の1件あたりの手術料は01〜03年度が74万8000円、04〜05年度が71万2000円、今年度以降が74万8000円で、現在は3割が患者の自己負担になっている。

 先月24日、同社保事務局と県は宇和島徳洲会病院で行われた生体腎移植について、患者との事前説明や同意の文書が残されていなかったことから、保険適用の要件が不足しているとして立ち入り調査をしている。

病気腎移植 呉共済病院、執刀医の処分検討

2006年11月10日 読売新聞 Yomiuri On-Line

「報告義務怠った」

 1991年から2003年にかけ、計6件の病気腎移植が行われていた呉共済病院(広島県呉市)の山木戸道郎院長は9日午後、記者会見。いずれの手術も院内の規定に反して倫理委員会に諮られなかったことを重視、執刀した泌尿器科部長、光畑直喜医師(58)に対し、解雇を含めた厳しい処分を検討することを明らかにした。

 山木戸院長は「病気腎移植は倫理面、医学的にも問題がある。報告義務を怠った光畑医師に責任がある」と、病院側の関与を否定。この日設置した調査委員会で、光畑医師個人が保管する86年以降のカルテなどを調査。その結果をもとに手術の是非や倫理面を、日本移植学会員らとともに協議し、処分を検討するとした。

 病気腎摘出が4件になった香川労災病院(香川県丸亀市)も同日、会見を開き、新たな2件はともに「尿管がん」とした。4件すべてが、がん患者からの摘出だった。執刀した西光雄医師(58)は件数が増えたことについて、「特殊な事例とは思わず、記憶があったが、定かでなく話さなかった。申し訳ない」と釈明。「ほかにはない」と断言した。

 2件の摘出があった三原赤十字病院(広島県三原市)の上川康明院長は同日、「当時、報告はなく、倫理委員会にも諮られていなかった」と述べ、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)の弟、廉介医師(60)も手術に加わったことを明らかにした。

万波部長 病腎移植したくて移籍?

2006/11/10 The Sankei Shimbun 大阪夕刊から

≪市立宇和島病院 最後の9カ月間中断≫

 宇和島徳洲会病院(愛媛県)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる病腎移植問題で、万波部長が前任の市立宇和島病院を辞める直前の約9カ月間、病腎など不自然な腎移植を中断、16年4月に徳洲会病院に移籍した後、すぐに病腎移植を再開していたことが10日、分かった。移籍の半年前に病腎移植に反対の立場をとる市川幹郎院長が就任。万波部長が自由に腎移植をできなくなったことが移籍の背景にあったとみられる。

 市立病院が今回の事件を受け、残っていた過去5年分の腎移植のカルテを調査したところ、ドナーの続柄欄が親族以外や空欄になっている不自然なものが、平成13年1月から15年6月までの約2年半で14件見つかった。

 いずれも万波部長が執刀しており、病腎移植が疑われるケースも含まれるという。ところが、それ以降は不自然な腎移植は行われていない。

 一方、市川院長の就任は、最後の不自然な腎移植から4カ月後の15年10月。市川院長は「私が院長になってから、病腎移植は絶対にしていない」と断言している。

 万波部長は16年3月に山口大学卒業後30年以上勤めた市立病院を辞め、4月に新設の宇和島徳洲会病院に移籍した。すぐに病腎や非親族間の腎移植を再開。病院側の調査では病腎移植だけで11件に上っており、徳洲会病院の貞島博通院長は2日の会見で、病腎移植を容認していたことを認めている。

 万波部長は昭和52年に初めて腎移植を手がけ、平成2年ごろから病腎移植を行っていた。関係者によると、市立病院では、54年に就任した近藤俊文・元院長が平成11年4月に退任するまで、万波部長の移植活動を全面的にバックアップしたという。

 しかし、後を継いだ柴田大法・前院長は万波部長の方針と対立。その後の市川院長も同様に批判的で、病院関係者は「柴田前院長らとは仲が悪かった」と証言している。

 万波部長は移籍の経緯について「ごく個人的なこと。もう年だし、給料が高いから辞めてくれと言うから辞めてやった」と取材に答えているが、市川院長は「辞表には『一身上の都合』と書かれてあったが詳しい理由は知らない」。徳洲会病院も「転院理由は把握していない」と話している。

病腎移植に理解を 支援組織結成

2006/11/10 The Sankei Shimbun

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる病腎移植問題で、万波部長らから腎移植を受けた患者らでつくる「えひめ移植者の会」(野村正良会長)は9日、万波部長らの移植医療を支援する「移植への理解を求める会」を結成。「破棄する病腎を再生できれば多くの腎臓病患者を救える」と、新たな移植方法としての病腎移植への理解を求めた。

 愛媛新聞社の編集委員室で部長を務める野村会長は、自らが平成12年8月に市立宇和島病院でネフローゼ患者からの腎提供を受けていたことを明かし、「病気腎の再生、再利用を前向きに考えてほしい」と訴えた。

 万波部長らの病腎移植をめぐり、手術の妥当性や病腎摘出の必要性などへの批判が高まる中、移植者の会は「患者不在の建前論が目立つ」とし、「患者の思いを正しく伝え、多大な実績を積み上げてきた万波先生を支援したい」と支援組織の設立を計画。役員の全員一致で結成を決めたという。

 今後、同会の会員を中心に、一般にも参加を呼びかけ、病気腎移植への理解や病気腎の利用の広がりを目指すという。

 一方、野村会長は12年8月に万波部長の執刀で受けた病腎移植についての経緯を告白した。

 野村会長は平成元年3月に死体腎移植を受けたあと、12年8月ごろに再び病状が悪化。妻からの腎臓提供で2回目の移植手術を受けたが適合せず、その数週間後に院内のネフローゼの男性患者から両腎摘出された腎臓の片方の移植を受けたという。

 移植前に「ドナー側の病状や手術の成功率などについての説明を口頭で受け、納得した上で手術を受けた」と話し、「移植手術を受けていなければ、今の私の生活はない。適正な病腎利用ができるシステムを作り、病腎移植が発展するように支援したい」と述べた。

移植病腎移植 指導及ばず“先行” 三原赤十字病院が会見

2006/11/10 The Sankei Shimbun

 病腎移植問題で新たな手術例が判明し、提供された腎臓を摘出した病院として名前のあがった三原赤十字病院(三原市東町)。病腎移植にかかわったのではないか、と内部から報告があったのは6日になってからといい、病院側が2件の提供を確認したのは8日夜。9日は急遽(きゅうきょ)、上川康明院長(60)らが記者会見を開くなど、対応に追われた。

 病腎移植にかかわったことについて院長らは、当時、泌尿器科部長だった西谷嘉夫医師(45)ら同科内の判断で実施したとし、「院長への相談や病院内の倫理委員会による議論のないまま行ったのは問題。病院としてのコンセンサスが必要との認識を徹底できなかったのは、指導が足りなかった」と陳謝した。

 院長らの説明によると、平成9年と15年の2件とも、西谷医師が、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)の弟の廉介医師(60)と交代で執刀。西谷医師は昨年3月末で退職し、現在は大阪市内で開業しているが、廉介医師らと同じ岡山大医学部出身だった。

 病腎移植を有効な治療法とする万波部長らの考えに賛同し、提供に協力したという。9年11月のケースでは、執刀助手として摘出手術にも参加した呉共済病院の光畑直喜・泌尿器科部長(58)が、腎臓を同病院に搬送し移植。15年2月の手術では、光畑部長が市立宇和島病院に搬送し、万波部長が移植手術を担当した。

 西谷医師は8日、上川院長からの電話に対して、摘出した病腎を移植に使うことを、2件の手術にあたって病院側に「説明したと思う」と回答。一方、9年当時の院長は「聞いた記憶がない」とし、15年当時からの上川院長も「(この場合の廉介医師のように)外部からの応援を受けるときは、院長への申請が必要で、通常なら1件1件の申請の内容まで覚えていないが、(病腎移植のような)エポックメーキングなことは忘れないはず」とした上で、「相談された覚えはない」と述べた。

病気腎移植 続々と発覚、計30件前後に

2006年11月09日 読売新聞 Yomiuri On-Line
医師、再三の虚偽説明 病院関係者ら困惑

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で11件の病気腎移植が発覚して9日で1週間。この日、三原赤十字病院(広島県三原市)で病気腎の1件の摘出が新たに判明、総計は30件前後、関係病院も10に拡大した。宇和島徳洲会病院の万波誠医師(66)を中心とする〈瀬戸内グループ〉の移植医たちは手術の正当性を主張しながら、手術数などについて虚偽の説明を繰り返しており、今後、総数はさらに増える可能性もある。病院関係者らからは「本当のことを話してほしい」と困惑の声が上がる。

 三原赤十字病院によると、新たに発覚したのは、2003年2月、尿管がんの腎臓の摘出手術。腎臓は市立宇和島病院に提供された。三原赤十字病院の摘出は2件になった。同意書はなく、倫理委員会にも諮られていなかった。

 同病院の当時の泌尿器科部長で、現在大阪市内で開業する医師(45)は9日朝、腎提供にかかわったことを認め、「尿管を摘出すると、同じ側の腎臓も摘出するしかない。提供の同意は患者から口頭で得てカルテに記載した。倫理委員会には申請しなかったが、院長には話したはずだ」と説明した。

 また、8日夜の会見でこれまで発表していた以外に新たに5件の病気腎移植を明らかにした呉共済病院(広島県呉市)は「今後の対応、再発防止策などは、まだ決まっていない」と述べるだけ。診察に訪れた無職男性は「患者の命を預かる病院がウソをついていたなんて」と不安な表情を浮かべた。

 香川労災病院(香川県丸亀市)では西光雄医師(58)が「2件しかない」と断言していたが、別に2件の摘出腎が判明。9日は早朝から、副院長らを中心に、カルテのチェックを始めるなど確認に追われた。冨田周次事務局長は「病院がウソをついたことになる。これ以上、信用を落とすことはできない」と険しい表情。

 〈瀬戸内グループ〉は、万波医師と、弟の廉介医師ら岡山大卒の3医師で互いに連絡を取り合い、協力しているとされる。1990年ごろから、病気腎移植に繰り返し取り組んでおり、「生体、死体に次ぐ、第3の移植」などと独自の倫理観を表明している。

 万波医師はこの日、午前9時前、紺色の上下スエット姿で自宅を出た。過去の移植などについて報道陣から問われると、「いちいち覚えていない。あなたも、昔の仕事を覚えているの」とうんざりしたような表情で聞き返し、マイカーに乗り込んだ。

 広島県は9日、1991〜2001年に計6件の病気腎移植が行われていたことがわかった呉共済病院に対し、医療法に基づき、来週にも立ち入り検査することを決めた。医療行為として妥当だったかどうかの検査で、執刀した泌尿器科部長の光畑直喜医師(58)らから事情を聞き、カルテや同意書の有無など、手術の記録を調べる。

2001年にも病気腎提供−丸亀・香川労災病院

2006/11/09 四国新聞

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)に病気腎を提供していた香川県丸亀市の香川労災病院(井上一院長)が、二〇〇一年にも広島県呉市の呉共済病院で行われた腎移植手術に下部尿管がんの患者から摘出した病気腎を二件、提供していたことが八日、分かった。香川労災病院の西光雄泌尿器科部長(58)は、四国新聞社の取材に対し、「病気腎提供は十年くらい前に協力を決めた」と話した。

 新たな病気腎移植は呉共済病院の光畑直喜医師(58)が同病院で会見し、明らかにした。光畑医師は一九九七―二〇〇一年にかけ、病気腎を親族以外の患者に移植する手術を五件行ったと話している。

 西部長と光畑医師は病気腎移植を死体腎、生体腎に続く「第三の道」と主張する宇和島徳洲会病院の万波誠医師(66)と同じ「瀬戸内グループ」。病気腎をグループ間で融通し合っていた構図が浮かび上がってきた。

 西部長による病気腎提供で、これまで発覚していた二件はいずれも今年になってから。取材に対し、協力を決めてからの空白期間について「(提供が)最近になったのはたまたま」と二件以外の協力を否定していた。

 香川労災病院の役割はこれまでのところ、病気腎の提供にとどまっている。この点について西部長は「病気腎(の移植)は難しい。万波氏でなければ」と説明。香川労災病院での移植手術はなかったとしている。

 西部長は、「十年ほど前」に万波医師への協力を決めた際、逡巡(しゅんじゅん)は「なかった」とし、「彼の信念に共感したというより、『本当にできるのか』『できるなら提供しよう』と思った。透析患者の悲惨さを知っていたので」と語っている。

 西部長は八日、香川労災病院を通じ、「記憶が定かではないが一、二件あったかもしれない」とコメントした。

 光畑医師によると、他の三件は、万波医師が当時勤めていた市立宇和島病院(愛媛県宇和島市)から〇一年に腎臓がん患者から摘出された一件、三原赤十字病院(広島県三原市)から九七年に下部尿管がん一件。いずれも「使える腎臓がある」と提供の申し出があったという。もう一件は、九七年に呉共済病院で大動脈瘤(りゅう)の腎臓を摘出し、別の患者に移植した。

 手術によっては、万波医師や西部長らが立ち会っていたという。

病腎移植 3人で“密室”手術 院長の中止勧告従わず

2006/11/09 The Sankei Shimbun 大阪夕刊から

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)による病腎移植問題で、万波部長が前任の市立宇和島病院に勤務していた平成15年に、当時の院長(73)から“密室的”な手術をやめるよう勧告されていたことが9日、分かった。

 万波部長は当時、腎移植があるたびに、弟の廉介医師(60)と呉共済病院(広島県呉市)の光畑直喜医師(58)を呼び、3人でほとんどの手術をしていた。万波部長は院長の勧告を聞き入れなかったという。

 「瀬戸内グループ」と呼ばれる万波部長らは病腎移植を生体腎、死体腎に次ぐ「第3の道」などと独自の考え方をしており、病腎移植もこうした状況の下で行われていたとみられる。

 当時の院長によると、15年初め、移植医療の後継者が育たないのを心配し、泌尿器科の科長だった万波部長に3人による閉鎖的な手術の中止や、患者の同意書の作成、日本移植学会への加入など、5項目を勧告したという。

 勧告後、同意をめぐる患者とのやりとりは若い医師が記録するようになり改善されたが、万波部長は、手術については「3人にしかできない」と言って従わず、学会にも加入しなかった。

 万波部長は16年3月、定年まで約2年を残して、30年以上勤めた同病院を辞め、翌月開業した宇和島徳洲会に移った。

 万波部長は「基本的に(派遣された)愛媛大の医師と手術をしていた。大きな手術のときは弟に応援を頼んだ」と閉鎖性を否定している。

 万波部長は市立宇和島病院で2年ごろから10〜15件の病腎移植を実施。宇和島徳洲会でも11件の病腎移植を行った。

病気腎移植「でも感謝」 万波医師患者「他に方法なし」

2006年11月09日 asahi.com

 病気の腎臓で生体腎移植を重ねていた宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)から「病気腎」の移植を受けた同県内の男性患者3人が、朝日新聞の取材に答え、現在の心境を吐露した。万波医師は「事情を十分説明した」と強調しているが、がん再発のリスクや臓器提供者(ドナー)の病名を聞かされていなかった患者もいた。ただ、それぞれが万波医師に感謝の意を示し、「自分の命を救ったために、先生が批判されるのはつらい」と口をそろえた。

 60代の男性はこの夏、腎臓病が悪化して人工透析を始めた。同病院に入院して2カ月近くたつころ、万波医師が病室を訪ねてきて、こう告げた。「腎臓が見つかった。でも、動脈瘤(りゅう)があるんや」

 万波医師は、動脈瘤がどんな病気かを詳しく説明。「処置をきちんとしてから移植するが、再発する可能性がないとはいえない。でも、僕が執刀した中で、そうなったケースはない」と話した。男性は移植を希望し、3日後、手術は成功に終わった。

 今では仕事にも復帰し、発病前の生活を取り戻しつつある。「万波先生には心から感謝している。学会が問題にするのなら、十分調べてからにしてほしい。患者のために先生ほど努力をしている人がいるだろうか」と訴える。

 50代の男性は今年5月、万波医師から病気腎の移植を打診された。「がんを切除すれば腎臓を体内に戻せると説明したが、摘出を希望する患者と家族が香川の病院にいる。宇和島まで運んでくるが、どうか」

 がんが再発する心配はないか、と計3回尋ねたが、万波医師は3回とも「大丈夫と思う」と答えただけで、再発の確率がどれくらいか、などの説明はなかった。それでも、信頼していたので移植を受けることを決めた。

 男性は、04年12月にも万波医師の執刀で病気腎の移植を受けている。その時は病状が重く、話が聞けなかったため、親族が代わって説明を受けたという。

 「死体腎移植が期待できない現状では、私のように遺伝性疾患があり、親族から生体移植ができない患者は、ほかに命をつなぐ希望はない。再発の確率が2、3割なら喜んで移植を選ぶ」と話した。

 「移植できそうな腎臓が出そうだが、手術しますか」。万波医師は今年2月にも、50代の別の男性にこう切り出した。

 男性は詳しい説明を求めることもなく、「お願いします」と頭を下げると、「取り出してみたら移植できない腎臓かもしれない。判断は私に任せてほしい」と言い残し、病室を後にした。手術は3日後だった。

 04年暮れ、母親から腎臓の提供を受けたが、別の手術をしたのを機に病状が悪化。人工透析の生活に戻り、全身のかゆみに悩まされていた。「どうしても再移植を受けたかった」

 今年10月、宇和島徳洲会病院を舞台にした臓器売買事件が発覚。県警の捜査員が参考人として事情を聴きに来た。その際、ドナーになったのが、同病院に入院中だった70代の男性と初めて聞かされた。

 「先生は25年以上にわたる主治医。人柄は分かっているし、信頼があれば説明はいらない。病気の腎臓と知った今も、その気持ちは変わらない」

移植患者「病気腎知らされず」、万波医師の会見と矛盾

2006年11月09日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波(まんなみ)誠医師(66)の執刀で病気だった腎臓の移植を受けた患者2人が8日、読売新聞の取材に応じた。

 ネフローゼを患った両方の腎臓を摘出した後に腎移植を受けた男性は「病気の患者からの提供とは聞かなかった」と話す。

 一方、腎臓がんの患者から提供を受けた男性は「がんとは聞いたが、説明は10分ぐらいだった」と明かした。

 ともに「移植に感謝している」と語ったが、「患者には十分に説明した」と話す万波医師の説明とは、矛盾する証言だ。

 宇和島市内の無職男性(53)がネフローゼの腎臓の摘出を受けたのは2004年9月。「腎臓があるからたんぱく質が漏れる」と万波医師から説明され、「取ってほしい」と希望。摘出腎を移植に使うことも了解した。人工透析を受け、12月に母親の腎臓を移植したが、1か月余りで機能しなくなり透析に戻った。

 「移植に使えそうな腎臓が出そうだ」。万波医師から、そう告げられたのは今年2月9日ごろ。同月13日に移植手術が行われた。

 手術前、万波医師は腎機能を示す血中クレアチニンの値について、「正常にはならないが、普通に生活できる。ただし腎臓の状態によって移植できない場合もある」と説明したが、どういう人が腎臓を提供するかは明かさなかったという。

 入院患者の間で「先生はどこから腎臓を探してくるのか」と不思議がる声も出ていた。しかし「私は腎臓の出元など聞く気はなかった。透析から離脱したい一心だった」と男性は言う。

 今年5月にがん患者から提供を受けた同県内の50代の無職男性は、2度目の病気腎移植だった。

 その1年半前の最初の移植では「腎臓を摘出しなければいけない人がいる。それでよければ、やらないか」と言われただけで、病気の種類などの説明はなかった。その腎臓が働かなくなり、透析に戻った後、万波医師から連絡があった。

 「がんの腎臓が出たが、どうするか。がんを完全に切り取って移植すれば機能する」。不安になって「再発や転移の心配はないか」と何度も尋ねたが、答えは「大丈夫だ」。その間、わずか10分程度。早く社会復帰したいと考えて同意し、翌日には移植が行われた。

 手術後にがんの検査を希望したが、万波医師に「心配せんでもええ」と言われ、特別な診察は受けていないという。「実験台のような気もするが、納得している。自分はそれで命を救われた。がんが再発しても、恨むつもりはない」と男性は話した。

 万波医師は7日の記者会見で「後から“ボロ腎臓”を植え付けられたと文句を言われるんじゃないかと考え、本人だけでなく家族にも十分説明している」と強調していた。

「病気腎移植に反対」臓器移植患者団体が声明

2006年11月09日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 宇和島徳洲会病院の万波誠医師らによる病気腎臓移植問題で、臓器移植患者団体連絡会(大久保通方代表幹事)は8日、ルールが整備されていない現時点での病気腎移植に反対し、厚生労働省に対し早急に調査を行い、今後の対策を示すように求める声明を出した。

 声明では、厚生労働省などに対し、万波医師らが移植に使用した腎臓は摘出する必要があったのか、移植患者は公正に選ばれたのか、などの点について、明らかにするように求めた。

 病気腎移植問題が移植医療の公明、公正、透明性に反する懸念があるため「国民の移植医療に対する信頼が大きく損なわれることを憂慮する」としている。

病気腎臓移植で患者団体が声明 透明性に疑問

2006/11/08 The Sankei Shimbun

 移植患者ら5団体12万人でつくる臓器移植患者団体連絡会は8日、宇和島徳洲会病院で行われていた病気の腎臓移植について、「移植医療の公明、公正、透明性に反する懸念」があるとし、国に対策を求めていく考えを明らかにした。

 今回明らかになった病気の腎臓移植について連絡会は、(1)腎臓をドナー側の患者から摘出する必要があったか(2)ドナー側の提供の同意を得たか(3)腎臓を受ける患者に経緯と術後のリスクを説明し、同意を得たか(4)腎臓を受ける患者は公正に選ばれたか−の4つの疑問点を指摘。これらの疑問を一日も早く明らかにし、国は対策を示すべきとしている。

病腎移植 「うしろめたかった」 摘出担当、岡山の医師

2006/11/08 The Sankei Shimbun 大阪夕刊から

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる病腎移植問題で、実弟の万波廉介医師(60)とともに、病腎の摘出手術を行った川崎医科大学付属川崎病院(岡山市)の担当医(42)が産経新聞の取材に「ずっとうしろめたい気持ちがあった」と証言した。病腎の摘出自体は適切だったが、移植には疑問を持っていたという。担当医は「腎臓がんだったら判断が違ったかもしれない。病院に報告しなかったのは軽率だった」と話した。

 担当医によると、今年5月、腎血管筋脂肪腫の50代の男性患者が「痛みがひどい」と来院。検査の結果、脂肪腫が腎臓(約15センチ)以上の20センチ近くの大きさになっていることが分かり、破裂の恐れがあるとして手術を決めた。

 難手術が予想されたため、以前から手術応援を頼んでいた廉介医師に依頼。数日後、廉介医師から「摘出しなければいけない場合は、移植のため腎臓をもらってもよいか、患者に聞いてほしい」と電話があった。

 「ええっ。病気の腎臓を使うのか」と思ったが、自身に移植の知識がなく、廉介医師は兄の万波部長とともに移植の経験が豊富と聞いていたことから、疑問を持ちつつも受け入れ、患者と家族に廉介医師の意向を伝えて承諾を得たという。

 手術は、廉介医師を中心に、宇和島徳洲会病院の医師を加えた3人で執刀。比較的症状が軽い左腎を部分切除したあと、脂肪腫が肥大した右腎を手術。廉介医師に意見を求めたところ、「残すこともできるが合併症の可能性がある」と指摘されたため、最終的に「全摘」を依頼。腎臓は廉介医師らが持ち帰った。

 「本当に使えるかと疑問を持ったが、持ち帰って万波部長と相談するのだろう」と思い、特に質問はしなかった。患者家族には手術後、写真を見せて「移植に使える状態ではないと思う」と伝えたが、1カ月以上経過し、廉介医師から「ええようにいった」と移植の成功を知らされたという。

【主張】病腎移植 医療にこそ透明性が必要

平成18(2006)年11月8日 The Sankei Shimbun

 生体腎臓移植をめぐって臓器売買事件が起きた愛媛県の宇和島徳洲会病院で、今度は病人の腎臓を摘出して別の患者に移植する「病腎移植」が発覚した。

 病腎移植は宇和島徳洲会病院の移植医、万波誠医師とその弟を中心に繰り返されていた。彼らは「瀬戸内グループ」と呼ばれ「移植を待つ患者を救うことが第一で、使える腎臓があれば移植する」と主張している。

 限られた数人の医師グループで病腎の摘出と移植を行っていたことや、インフォームド・コンセント(十分な説明と同意)の有無が問われている。

 万波医師は「病腎の摘出を望む患者がいる一方で、その病腎を必要とする患者がいた」と説明するが、摘出や移植についてどのように双方の患者に説明していたのか。患者を誘導することはなかったのか。

 「本当に使える腎臓ならその人の体に戻すべきだ」との指摘もある。とくに腎がんの場合、がんを完全に切除しない限り、移植を受けた患者ががんになる危険性は残る。ましてや、患者は拒絶反応を抑えるため、免疫抑制剤を投与され、がんに対する抵抗力が落ちている。最後は医師の良心やモラルにかかっている。

 問題が多ければ多いほど、オープンにし、学会などの第三者機関による検証や評価が求められる。それが人の命を預かる医療の基本である。しかしながら万波医師らは、日本移植学会にも所属せず、生体移植を親族間に限定する学会指針も順守していなかった。

 日本の移植医療は、臓器提供者(ドナー)の死の判定が大きな問題となった和田心臓移植(昭和43年)によって大幅に遅れた。その後、日本移植学会は、「公平・公正・公開」を掲げ、社会的信用を取り戻す努力を重ねてきた。再び、移植医療を凍結させてはならない。

 日本移植学会や厚生労働省も調査に乗り出した。生体移植に規制をかけるべきだとの意見もあるが、縛り過ぎると、医学の進歩が滞り、結局、困るのは患者である。

 病腎移植の背景には、深刻なドナー不足がある。臓器売買や死刑囚ドナーの問題と構図は同じだ。だからこそ、臓器移植法の改正で善意の脳死ドナーを増やすことが根本的解決になる。

「非常に異常」と厚労相 宇和島徳洲会病院を調査へ

2006年11月07日 asahi.com

 柳沢厚生労働相は7日、閣議後の記者会見で、愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で病気の患者から摘出された腎臓を移植していた問題について、「非常に異常じゃないかと思う」と感想を述べた。厚労省として愛媛県に職員を派遣して調査を進めるとともに、病気腎の移植にかかわった他県の調査も行う考えを示した。

独走医療 15年続く 万波医師 院内報告せず確執 技術に信念 型破り言動

2006/11/07 愛媛新聞社 Online

 死体腎、生体腎に続く「第三の道」として、病気で摘出した腎臓を移植していた宇和島徳洲会病院泌尿器科部長、万波誠医師(66)。腎移植に対する強烈な信念と、それを裏打ちする高度な技術に傾倒した弟やその友人らによって「瀬戸内グループ」が形成され、特異な道を歩んでいった。なぜ約十五年間もの間、問題視されないまま病気腎移植は続いたのか―。

 二〇〇四年三月まで勤務していた市立宇和島病院ではチームで腎移植に取り組んでいた。スタッフに手術内容を説明していたという万波医師。その中に「問題あり」と異議を唱える人は「おらん。どうしてゆうたら私が上やったから」(同医師)。

 腕まくりした白衣にスリッパ履き、両手をポケットに入れたまま歩く。「清貧を地でいく赤ひげ先生」が多くの患者の評判。だが、ひとたび移植手術が始まると変わる。「尿管、血管一つ切るのも的確で無駄な動きがない。そばで見るだけで勉強になった」。かつて万波医師の下で働いた県内の泌尿器科医は振り返る。手取り足取りの指導はしない。医者の卵には、強烈なインパクトが今も残る。

 ただ、独走と、病院内ではなくグループとの連携が目立った。「ドナー(臓器提供者)や移植患者の外来診療は万波医師が取り仕切り、触らせてもらったことがない」と別の元同僚医師。「手術には必ずグループ医師の誰かが立ち会っていた」とも。

 市立宇和島病院の前院長、柴田大法愛媛大名誉教授(73)が振り返る。万波医師は一時、所属していた日本移植学会も脱会。病院への手術報告は事前・事後とも行わず、泌尿器科内ですべて完結した。泌尿器科長に昇任しても、科長会議には一切顔を出さない。病院運営に関する月一回の会合も「出る必要はない」と拒否した。型破りな言動は病院上層部と確執を生んでいた。

 柴田前院長は「二〇〇三年に一度、勤務態度を改めるよう改善命令を出したことがあった」と打ち明ける。だが、万波医師は変わらなかった。翌〇四年四月開業した宇和島徳洲会病院へ定年を待たず転籍した。

 「病気の腎臓でも先生が大丈夫だと言えば信じる」と病気腎移植を受けた患者は言った。一方で「私は移植をしません、と断った途端に態度が冷たくなり、その後は一切話し掛けられることはなかった」とある透析患者が振り返る。

 宇和島徳洲会病院の貞島博通院長は、臓器売買事件発覚後、同意書を取らずに移植手術していたことが判明し、「腎移植はすべて万波医師に任せていましたから」と言葉少なに語った。万波医師の周囲には独特の空気がある。

 【「病気腎 移植受けた」 えひめ移植者の会会長 理解求める会結成へ】

 県内の腎移植患者らでつくる「えひめ移植者の会」(約百人)の野村正良会長は九日、県庁で記者会見し、病気腎移植が問題視されている宇和島徳洲会病院泌尿器科部長、万波誠医師(66)を支援するため「移植への理解を求める会」を結成すると発表した。

 求める会では、万波医師は患者を救うことを第一とし、感謝している▽病気腎の利用が広がることを願う―の二点を訴え、厚生労働省にも嘆願書を出したい考え。賛同者の意見を集約し、近く公表したいとしている。

 野村会長は、自らも三度目の腎移植となる二〇〇〇年八月、市立宇和島病院で万波医師の執刀で腎疾患(ネフローゼ症候群)の患者から摘出された両腎のうち、片方を移植したことを明かし「私も命を助けてもらった一人。使える腎臓が捨てられる状況は耐えられない」と強調、使える体制を整えるよう訴えた。

 手術時の同意書は「なかった」としたが、万波医師から「口頭で成功の確率や移植腎の状態などについて十分説明を受けた。病院長も知っているようだった」と話した。

 移植者の会会員のうち、腎移植患者は八十人余り。うち約四十人が万波医師による執刀で、病気腎移植は野村会長以外、把握できていないという。同会=電話089(978)5434。

病気腎移植、11例すべて他人から 宇和島徳洲会病院

2006/11/04 The Sankei Shimbun 大阪夕刊から

 愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院が病気治療のため摘出した腎臓を他人に移植していた問題で、同病院は4日記者会見を開き、執刀医の泌尿器科部長、万波誠医師(66)は臓器提供者と患者との関係が分かっていなかった11例について、すべて親族間以外の移植だったことを明らかにした。貞島博通院長も病人からの腎臓移植について、「ある程度認識していた」と述べた。

 また、11例のうち8例は臓器提供者から同意文書を取っていないことが判明。同意文書があったとされる1例では、摘出臓器の廃棄処分に関する承諾書が臓器提供者らの移植承諾書に流用されていたという。

 2日発表した同病院の内部調査結果によると、生体腎移植が実施された78例のうち、66例が夫婦や親子など親族間の通常の移植と推定。残る12例のうち、臓器売買事件となった1例を除く11例が、病気と診断された患者から摘出した腎臓を別の患者に移植されたケースとし、1例は親子間としていた。

 ところが、万波部長は「すべて親族間以外の移植だった」と断言した。

 万波部長によると、万波部長が病気で摘出した腎臓を移植に使ったのは平成16年9月、ネフローゼ患者から取り出した腎臓を移植したのが最初という。

 11例の摘出した腎臓は、尿管狭窄と腎がんが各3例、動脈瘤(りゅう)と良性腫瘍(しゅよう)が各2例、ネフローゼが1例。うち5例が他病院で摘出された。臓器提供者には「腎臓を摘出しなければいけない。もし使えるなら、透析で苦しんでいる人に使ってもいいか」、移植を受ける患者には「病気の腎臓だけど移植を希望するか」と口頭で説明、了承をとっているという。

 また、こうした万波部長の診療行為について、貞島院長は「ある程度認識していた」としたうえで、「臓器提供者には同意されたかどうかを弁護士を通じて聞き取り調査を行っている」と病院の対応を説明した。

 一方、摘出臓器の廃棄処分に関する承諾書が臓器提供者らの移植承諾書に流用されていたのは、万波部長の弟の廉介医師(60)が腎臓の摘出手術を行った病院の1つ、岡山市内の大学付属病院。その書類は執刀に立ち会った同病院の泌尿器科医が保管したままで、病院長には報告されていなかった。同病院は「想定外の書類使用」とする一方、「組織的にも文書管理に不備があった」としている。

病気腎臓、院長も認識 宇和島徳洲会病院

2006/11/04 The Sankei Shimbun 大阪夕刊から

 「こういう(手術の)方法があることを認識してほしい」。愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で4日開かれた会見で、貞島博通院長は、病気治療のため摘出した腎臓を他人に移植したことに理解を求めた。患者も手術を受けたことに「感謝しています」と語った。だが、臓器の廃棄処分承諾書が臓器提供者の同意書として流用されるなど、ずさんな管理態勢の中で、移植手術が進められていた一端が浮かび上がってきた。

 会見には貞島院長のほか、執刀医の泌尿器科部長、万波誠医師(66)、松原淳副院長、松田勝次事務次長が出席。万波部長は半袖の白衣のポケットに手を突っ込みながら笑顔で現れた。

 会見冒頭で貞島院長は「先日報告した通り、11例は腎臓摘出対象疾患患者から摘出されたもの。外部の先生を入れて専門委員会を開き、1例ごとに検討してもらうことにしている。臓器提供者には同意されたかどうかを弁護士を通じて聞き取り調査を行っている」と報告した。

 すべて親族外の移植だったとした11例の手術について、「病気で摘出した11例の腎臓が移植に耐えうるかどうかはわからん。ただ、1例以外は今もすべて機能している。臓器提供者と移植を受ける患者にもきちんと説明して了承をとっている」と話した。

 親族間に限定している日本移植学会から批判されていることに対し、万波部長は「4センチ以下の小さながんは摘出する必要がないとされるが、患者から『がんの腎臓はいやだから取ってくれ』といわれることがある。いったん取り出したものでも使えるものは戻すのは大原則だが、患者が望まないのなら、捨てることになるだけ。それなら人工透析で苦しんでいる人に移植してあげたいと思った」と説明する。

 こうした万波部長の診療行為について、貞島院長は「1例目については後からきいた。詳しくは知らないが、ある程度認識していた。大丈夫かなという気持ちはあった」と打ち明けた。

 ただ、「これまでのケースは全部成功している。こういう(手術の)方法があることを認識してほしい。しかし、今のままだと社会的に許されないのかもしれない。今後は専門委員会の結論が出るまで11例のような移植はしない」と話した。

 ■女性患者 「治る方にかけた」

 今年9月、腎臓がんの患者から摘出された腎臓を使った生体腎移植を受けた女性患者(69)は病院側の会見後、病院内で報道陣の取材に答えた。女性患者は人工透析治療を約3年間受けた後、万波部長から移植手術を持ちかけられ、二つ返事で「します」と返答したという。

 女性患者は移植について「不安はなかった。それよりも治る方にかけたかった」と答え、手術後の状態については「かなり楽になりました」と表情を緩ませた。万波部長に対する気持ちを聞かれると「うれしい。これで畑仕事もできる。感謝しています」と答えた。

 ■臓器移植承諾書

 臓器の廃棄処分承諾書が提供者の同意書として流用されていた岡山市内の大学付属病院によると、今年5月22日、岡山市内の50歳の男性から、15センチほどの腫瘤(しゅりゅう)ができた腎臓を摘出した。

 万波部長の弟で、この手術を行った万波廉介医師(60)を通じて、本人や家族から提出されていた「手術時摘出生体材料処理承諾書」の日付は手術の2日前。

 この承諾書は本来、摘出後に処分したり、研究標本に提供したりすることへの承諾を求める文書だが、今回のケースでは「摘出した臓器は病院にて適切な方法により、処理することを承諾致します」との項目のあとに、本来は焼却などの処分方法を記す欄へ「他の施設で腎移植に使用させていただきます」との文言が添えられていた。

 同病院は「文面だけみれば、なぜ院長が知らなかったのかと責められても仕方がない。組織的に不備があった」と認めている。

臓器売買でドナーの女に罰金100万円の略式命令

2006/10/27 The Sankei Shimbun 大阪夕刊から

 愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で行われた生体腎移植をめぐる臓器売買事件で、臓器移植法違反の罪で略式起訴された臓器提供者(ドナー)の貸しビル業の女(59)=松山市東石井=に対し、宇和島簡裁は27日、罰金100万円の略式命令を出した。また贈与を受けた現金30万円を追徴し、乗用車(150万円相当)も没収する。

 起訴状などによると、女は昨年8月ごろ、水産会社社長、松下知子被告(59)=同罪で起訴=と、松下被告の内縁の夫で重い腎臓病だった同社役員の山下鈴夫被告(59)=同=にドナーになるよう依頼され、同年9月28日、移植手術を受けて山下被告に腎臓を提供。謝礼として現金30万円と新車の乗用車を受け取った。

 松下、山下両被告は弁護士に「女性には謝礼として車の購入だけを約束した」と話しているのに対し、女は「松下容疑者に貸していた200万円に300万円を上乗せして返してもらう約束だった」と供述していた。

提供の腎臓、誤って廃棄 移植できず善意無駄に

2006/10/14 中国新聞ニュース

 名古屋市南区の社会保険中京病院で13日、心臓停止後の人から移植用に提供されクーラーボックスに保存していた腎臓2個を、誤って廃棄するミスがあったことが分かった。腎臓はその後回収されたが汚染されており、患者に移植できなくなったという。

 愛知県警は事実関係の調査に乗り出した。

 同病院などによると、腎臓は左右1つずつ、2個のクーラーボックスに入れて手術室に置いてあったが、看護助手が掃除のために外に運び出し、ごみと間違われて捨てられたらしい。摘出手術に立ち会った看護師が、内部を洗って干されていたクーラーボックスに気づき発覚した。

 日本臓器移植ネットワークは「臓器を誤って廃棄したケースは聞いたことがない」としており、厚生労働省も事実関係を把握している。

 日本移植学会によると、心臓停止後の腎臓移植は昨年は144件行われている。

保険証に臓器提供意思の欄 福岡市、政令市で初

2006/10/13 中国新聞ニュース

 福岡市は13日、市内の約45万人が加入する国民健康保険の健康保険証の裏面に、脳死や心臓停止の際、臓器を提供するかについて意思表示する欄を、12月1日から設けると発表した。

 日本臓器移植ネットワーク(東京都港区)や福岡市によると、滋賀県内のすべての市町と広島県呉市、福岡県岡垣町が保険証に同様の欄を設けているが、政令指定都市では初めて。

 臓器提供の意思表示手段はこれまでドナーカードが中心で、全国で1億枚以上配られたが、福岡市は「実際には所持していない人が多い」(保険年金課)として、市議会などからの要望も受け導入を決めた。

 臓器を提供をする場合、心臓、肺などの中から提供してもいい臓器名に丸をつける。保険証には臓器を提供しないという意思表示欄も設ける。また、何も記入しないのも被保険者の自由意思であることが明記される。

岐路に立つ脳死移植 生体ドナー 後遺症不安

2006年09月18日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 脳死者からの臓器移植が進まない日本では、患者の家族ら健康な人が肝臓や腎臓などを提供する「生体移植」が移植医療の“主役”だ。しかし、臓器提供者(ドナー)にとって危険と隣り合わせの医療でもある。

 2003年5月、京都大病院で娘に肝臓を提供した母親が死亡。今年7月には群馬大病院で夫に肝臓を提供した妻が両足まひになったことが明らかになった。

 「移植医療は、成功すれば劇的に患者を救命できる。けれども、その力の大きさゆえに、ドナーに十分な注意が払われないケースがあったのではないか」。重い肝臓病だった長女、統子(のりこ)さんに肝臓を提供した千葉県富津市の鈴木清子(すがこ)さん(48)は言う。

 統子さんは生後3か月で胆道閉鎖症と診断された。肝臓でできる消化液の胆汁は胆道を通って十二指腸に流れる。その胆道が詰まって胆汁が排出されず、肝臓の機能が悪化する病気だ。

 病状が進み、11歳だった1995年、東京都内の大学病院で、父、道男さん(52)から肝臓の提供を受けた。

 手術後、病状は回復したが、拒絶反応が激しく再び悪化。3年後の98年、関西の大学病院で、今度は清子さんが肝臓の約3分の2を提供、再移植を行った。だが、40日目の99年1月、15歳で亡くなった。

 夫婦は翌年、移植患者・家族らが電子メールで情報交換するメーリングリストを見て驚いた。「私の母が生体肝移植で父に肝臓を提供したが、手術後の合併症に苦しんでいる」という書き込みがあったからだ。

 鈴木さん夫婦は体調に問題はないが、将来の不安はある。清子さんは2002年秋、書き込みをした家族を含む提供者の仲間とともに「生体肝移植ドナー体験者の会」を設立。翌年、全国の提供者を対象とした調査を実施するよう厚生労働省に要望した。

 その声に押されて日本肝移植研究会が昨年3月にまとめた報告書によると、手術後2、3年たった提供者の58%は「何らかの症状がある」と回答。手術の傷のひきつれや感覚のまひ、疲れやすさ、腹部が張る膨満感・違和感などをあげた。だが、提供者の26%は手術後に定期的な診察を受けていなかった。

 特に移植患者が亡くなった場合、提供者は病院と縁が切れることが多い。患者の経過が良くないと、「私のあげた肝臓が悪かったのでは」と自責の念を持つ例もある。清子さんは「ドナーを継続的に支援する体制を作ってほしい」と話す。

 移植にかかわる患者、提供者、その家族が安心できる環境整備を急ぐ必要がある。それにも増して、健康な人を傷つけずに済む脳死移植の普及が望まれる。

 生体移植 生体肝移植は毎年約500件、累計で3800件以上行われ、世界で最も多い。一方、国内の脳死肝移植は累計32件にとどまる。腎臓、肺、小腸などでも生体移植は行われている。「生体肝移植ドナー体験者の会」への電子メールはliver-donor02@able.ocn.ne.jp

「海外で臓器移植」522人…厚労省把握分

2006年04月22日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 厚生労働省の研究班(主任研究者=小林英司・自治医科大教授)は21日、海外で臓器移植を受けた患者数についての調査結果を発表した。

 これまで少なくとも522人が渡航移植を受けたことが判明、1997年の臓器移植法施行後も渡航移植に歯止めがかかっていない実態が明らかになった。

 同法に基づいて国内で臓器移植を受けた患者は今年3月現在、心臓33人、肝臓31人、腎臓51人にとどまっている。このため、研究班は昨年12月から、日本移植学会の会員医師などに文書と電話で調査を行った。

 その結果、心臓移植では国内の医師が患者に同行する場合が多く、ほぼ全例が判明。84年〜2005年末に103人が渡航していたことが分かった。15年生存率も70%と良好な成績だった。渡航先は米国が85人と突出し、ほかは欧州とカナダの4か国だった。

 一方、肝臓と腎臓は自己判断で渡航した患者が多く、全体数や生存率は把握できなかった。このため研究班は「術後の治療で国内の病院に通院している患者」に限定して調査した。このうち肝臓は221人で、渡航先はオーストラリア、米国、中国など12か国。腎臓は198人で、中国やフィリピン、米国など9か国へ渡航していた。

世界2例目、中国で「顔面の移植」成功

2006/04/15 The Sankei Shimbun

 新京報など15日付の中国各紙によると、陝西省の西安第四軍医大学西京病院は13日、クマに襲われて顔面を損傷した雲南省の男性(30)に対しドナー(提供者)の顔面を移植する手術を実施、成功した。

 世界初となる顔面の一部移植手術は昨年フランスで行われており、中国各紙によると、今回が2例目。しかし移植範囲がフランスの例よりも広く、同病院は「難度は今回の方が高い」としている。

 同病院によると、男性は鼻と上唇を欠損し、顔面右側を中心に著しく損傷していたことから顔面移植が必要と判断。最初にドナーの軟骨、表情筋や皮下組織、後から表皮を移植し、術後の経過は順調としている。

 顔面移植を受けた男性が顔を自由に動かして感情を表せるようになるまでには、半年程度かかるという。(共同)

海外渡航の臓器移植実態調査、移植学会が新委員会設置

2006年04月08日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 日本移植学会(田中紘一理事長)は、日本人の海外渡航移植の実態を調査するため、今月21日にも「国際倫理問題対応委員会」を新設する。

 8日、同学会倫理委員会で報告された。

 臓器移植法改正案が、先月末、国会に提出されたのに合わせ、議論の基礎データを収集するのが狙い。

 国内の臓器移植は、臓器提供者(ドナー)の不足から、渡航移植に踏み切る患者が近年増えている。改正案は、こうした現状を踏まえ、国内の移植拡大を目指すものだが、渡航移植の術後の生存率など正確な情報はなく、学会として調査に乗り出すことにした。

 渡航移植の実態調査としては、厚生労働省の研究班が、移植学会会員を対象にしたアンケート調査がある。3月に発表された中間報告で、これまでに渡航移植を受けた人は、少なくとも453人(心臓103人、腎臓151人、肝臓199人)。21日までに最終報告がまとめられるが、同研究班の調査では、渡航した国ごとの手術成績など詳しい実態は不明。そのため、新設される委員会が調査を引き継ぐ形となる。

[解説]臓器移植法 二つの改正案

2006年04月07日 読売新聞 Yomiuri On-Line

死生観根源的議論の時 条件緩和巡り割れる意見

 臓器移植法をめぐって、二つの改正案が国会に提出された。脳死での臓器提供の条件をどこまで緩和するかで意見が割れ、一本化できなかった。(科学部 瀬畠義孝)

渡航するしか

 重い心臓病の一つ、拡張型心筋症に苦しむ東京・多摩市の石榑(いしぐれ)愛(まな)ちゃん(生後9か月)は13日、一家で渡米し、カリフォルニア州のロマリンダ大学病院に入院する。父親の光一さん(38)は医師から「余命は1年以内」と告げられ、渡航移植を決断した。

 光一さんは会社を休職し、駅頭で募金活動に専念した結果、1億3600万円が集まった。「子供が必死で生きようとする姿を見て、可能性がある限りあきらめてはいけないと感じた」と言う。

 愛ちゃんのような小児の心臓病患者は、国内で心臓移植が受けられない。現行法に、脳死による臓器提供は15歳以上という制限があるからだ。小児患者にサイズが合う臓器が提供される可能性はほとんどない。

 脳死移植の件数は、1997年の法施行から計44件(5日現在)。年間0〜9件と伸び悩んでいる。日本臓器移植ネットワークに登録した移植待ちの患者は3月末で心臓82人、肺117人などと、提供者より圧倒的に多い。移植を受けた患者よりも、待機中に死亡した患者の方が多いのが現状だ。

 残された道は、日本より臓器提供者が多い外国で手術する渡航移植しかない。

「移植禁止法」

 現行法が臓器提供を認めているのは、本人が脳死判定と臓器提供に同意する意思を書面で示し、さらに家族が同意した場合だけ。15歳未満の除外規定もあって、移植医らの推進派は「移植禁止法」と呼び、「脳死移植が普及しない一因」と主張している。

 与党の有志議員が提出した改正案は、こうした提供条件を緩和し、脳死移植の拡大を図る内容だ。しかし、改正案の一本化はできず、中山太郎衆院議員(自民)ら6議員が提出した“家族同意案”と、斉藤鉄夫衆院議員(公明)ら4議員による“年齢緩和案”の2案が国会に出された。

 家族同意案は「脳死は人の死」を原則とする。臓器提供に関する患者の意思が不明でも、家族が同意すれば脳死判定や臓器提供が可能となる。この方式は、世界保健機関(WHO)が91年に示した「臓器移植に関する指導指針」でも示されているほか、欧米でも主流となっている。

 もう一方の年齢緩和案は、脳死を死と考えない人に配慮して、移植の臓器提供に限り「脳死は人の死」とする。患者の意思表示を必要とする現行法の考えを受け継ぎ、提供の年齢制限を「15歳以上」から「12歳以上」に緩める内容となっている。

根強い慎重論

 日本人の脳死に対する考え方は様々だ。90年代初めに設置された「臨時脳死及び臓器移植調査会」(脳死臨調)では、激しい論議が繰り広げられた。97年の法案審議でも、意見対立を経て、「移植に限って脳死は死」という内容になった。

 脳死移植の拡大には慎重な意見もある。日本弁護士連合会は先月、意見書を国会などに提出した。「脳死は人の死」とする考えについて「社会的合意は成立していない」として、本人による意思表示と、現行より厳格な脳死判定を訴えている。一方、日本小児科学会は「小児患者の意思を親が代弁することは、子どもの人権尊重をうたう『児童の権利に関する条約』の精神に反するほか、児童虐待などのケースでは不適当」としている。

 二つの改正案の国会審議では、「脳死は人の死か」という死生観の根源的な問いに立ち戻って、議論が交わされるだろう。それに基づき、本人意思についても判断されることになる。現行法は「施行後3年をめどに内容を見直す」という付則を設けた。しかし、実際には8年半も放置されている。この間、議論らしい議論もなかったのは国会の怠慢ではないか。今度こそ脳死移植について徹底的に議論し、合意点を見いだしてほしい。

 脳死 事故での頭部外傷や脳卒中などの病気によって脳全体の機能が失われ、回復不可能な状態。人工呼吸器の普及によって一定期間は心肺機能の維持が可能だが、その後、心臓は停止し、蘇生(そせい)することはないとされる。人の死は長らく心臓停止、呼吸停止、瞳孔散大という三つの兆候で確認されてきた。脳死状態では、患者は一見すると眠っているような様子で、「見えない死」とも呼ばれる。脳機能が一部残り、自分で呼吸できる「植物状態」とは異なる。

臓器移植法改正に第3案 小児は親の意思で提供可能

2006/04/04 中国新聞

 臓器移植法改正で3月31日に国会提出された2案とは別の案の検討を、自民、公明両党の有志議員が始め4日、都内で勉強会を開いた。臓器提供する場合のみ脳死を人の死とする現行法の枠組みのまま、12歳以上は本人の意思で、6歳以上12歳未満は保護者の意思で臓器提供できるなどの内容を検討する。

 勉強会は、斉藤鉄夫衆院議員(公明)らとともに2案のうちの一つを提出した早川忠孝衆院議員(自民)らが呼び掛けた。

 提出された2法案は、脳死を人の死とし本人が拒否していない限り家族の同意で臓器提供が可能とする中山太郎衆院議員(自民)らの案と、現行法の枠組みのまま臓器提供の意思表示ができる年齢を15歳から12歳に引き下げる斉藤氏らの案。

男性に生体膵臓単独移植 腎移植併用なしは国内初

2006/02/08 The Sankei Shimbun

 国立病院機構千葉東病院(千葉市)は8日、東京都の30代男性に、50代の母親から膵臓(すいぞう)の一部を移植する国内6例目の生体膵臓移植手術を実施したと発表した。2人とも容体は良好という。

 病院によると、膵臓と腎臓の同時移植や、腎臓の後に膵臓を移植した例はあるが、腎臓の働きが良好な患者に膵臓だけ生体移植するのは国内初。

 男性は24歳で糖尿病を発症。インスリン治療を受けていたが、血糖のコントロールが難しく頻繁に低血糖発作を起こしていたという。(共同)

心臓など4臓器の脳死移植に保険適用・中医協が決定

2006/02/08 NIKKEI NET

 厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は8日、医療機関が受け取る診療報酬の2006年度改定を審議し、心臓、肺、肝臓、膵臓(すいぞう)の4臓器の脳死移植に保険適用を認めることを正式に了承した。

 脳死移植では入院費や検査費の3割負担に加え、約90万―約300万円の手術費が患者の負担だったが、健康保険の適用後は手術費が10万―20万円程度で済むようになる。これまでは臓器移植の保険対象は生体肝移植と腎臓、角膜だけだった。4月から実施する。

 外来患者の診察で医療機関が受け取る初・再診料は、病院と診療所の格差を是正することで合意した。最初の診察でかかる初診料は、病院(2550円、患者負担はこの3割)を引き上げる半面、診療所(2740円、同)を引き下げ、同一料金とする。

 2回目以降の診察でかかる再診料は病院(580円)、診療所(730円)をともに引き下げる。ただ診療所の下げ幅をより大きくして、現在、150円ある格差を縮小する。

日本移植学会:臓器移植の調査実施を承認 倫理委

2006年02月05日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 日本移植学会の倫理委員会は5日、国内外で実施された臓器移植の調査実施を承認した。これまで臓器別に分かれた学会などが調査していたが、移植医療普及のため情報の一本化が必要と判断した。今年から情報収集を始め、来年以降同学会の会誌やホームページ上で公開する予定。

 対象は国内での臓器移植と海外での心臓移植。国内の生体肝移植は臓器提供者も対象とする。しかし、最近増えている中国や東南アジアでの臓器移植は「把握が難しい」として対象外にした。

 調査は移植施設を通じ、患者の同意を得たうえで住所、氏名など個人情報を収集。プライバシーに配慮し、匿名化して手術後の臓器の生着状況や健康状態などを報告してもらう。収集した情報はそれぞれの臓器ごとに症例数や生着率、生存率などを年1回公表する。

脳死臓器提供、実現は6% カード所持死亡は1000件超す

2005/11/09 The Sankei Shimbun

 1997年の臓器移植法施行から今年9月末までに死亡した人で、脳死での臓器提供をカードやシールで意思表示し日本臓器移植ネットワークに連絡があったのは626人いたが、実際に脳死での提供に至ったのは6%(38人)にすぎないことが9日までに分かった。

 9月末にカードを所持して死亡した人が1001人に達したのを機に、同ネットが分析した。

 連絡が心停止後だったケースのほか、厳密な法的脳死判定ができる病院が少ないことも提供に至らない要因になっており、同ネットは「代替法を認めていない判定方法や提供施設の限定など厳しい基準によって、提供する意思を尊重しきれていない。改善をお願いしたい」としている。

 1001人の内訳は「脳死で提供」が626人、「心停止後の提供」は68人、「提供しない」は1人、記載に不備があったのが112人で、不明が194人だった。

 「脳死で提供」のうち、入院先が法的脳死判定と提供ができない病院だった人が半数強の318人。可能な病院だった308人でも、125人は心停止後に同ネットに連絡があった。心停止前に連絡があった183人の中で、143人は「鼓膜の損傷で判定できない」「家族の承諾が得られなかった」などの理由で脳死判定が行われなかった。

 判定されたのは40人。うち1人は医学的理由で、1人は脳死判定要件を満たさず、移植に至らなかった。(共同)

脳死で臓器提供、ネットや携帯で登録可能に

2005年08月23日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 厚生労働省は、脳死判定・臓器提供への意思表示がインターネットや携帯電話から登録できるシステムを来夏から始めることを決めた。

 登録すると、入力した内容が記載された意思表示カードが自宅に届く仕組みで、脳死移植の拡大につながると期待される。

 登録希望者は、臓器移植をあっせんする日本臓器移植ネットワークのホームページから登録画面を開き、<1>脳死または心停止後に臓器を提供するかどうか<2>提供したい臓器の種類――などを記入する。

 新制度は、意思表示カードが手に入りにくいとの批判があることに対応したもので、カードの単純な記入ミスから臓器提供の機会が失われることを防ぐうえでも効果があると見られる。

 ただ、現行の臓器移植法は、脳死での臓器提供は本人が事前に、カードなどの書面で提供意思を示していることが必要で、登録していてもカードが見つからない場合は、提供には結びつかない。

 同省臓器移植対策室は「カードが見つからない場合でも本人の意思がわかるため、家族の承諾だけで済む心停止後の腎臓、角膜の提供につながると期待される」と話している。

腎移植に新治療法 呉共済病院

2005/06/30 中国新聞地域ニュース

 ■血液型違っても拒絶反応抑制

 呉市の呉共済病院の泌尿器科部長光畑直喜医師(57)が、血液型が違う人同士でも拒絶反応を抑えて腎移植ができる新しい治療法を確立した。簡単で生着率がよく、日本をはじめ脳死ドナーが少ない国の慢性腎不全の患者にとって朗報。世界的に権威のある英国の移植専門誌「トランスプランテーション」にも、二十七日付で論文が載った。

 新治療法は、患者に移植手術の四週間前から免疫抑制剤ミコフェノール酸モフェチル(セルセプトカプセル)を一日二回、〇・五グラムずつ投与する。提供者との血液型が違っていても、危険が高い術後約十日間の拒絶率をゼロに抑え、生着率も100%に向上した。

 従来は数日前からの投与で、移植手術直後に移植腎を取り出さなければならないケースがあった。

 論文では、新治療法の患者十八人とそうでない患者の半年間のデータを比較。生着率が77・8%から100%になったことなどを報告している。

 光畑医師は、愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院の万波誠副院長(64)らと連携してこれまでに約八十件の血液型不適合移植をする中で、効果的な治療法を見つけ出した。

 三原市のO型の無職女性(48)は五月下旬、B型の母親から移植。「移植できると聞き、すぐしたいと思った。食事制限がなくなり、尿も出るようになった」と喜んでいる。

 光畑医師は「肝臓、肺、小腸、膵臓(すいぞう)の血液型不適合移植にも応用、拡大できるはず。今後も努力と臨床研究を重ねたい」と話している。

変異型ヤコブ病で臓器提供条件を緩和…厚労省

2005/04/25 読売新聞 Yomiuri On-Line

 厚生労働省は25日、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)対策として一部の欧州渡航者に実施してきた臓器提供制限を、移植を受ける患者が同意した場合に限り提供を可能とする緩和策をまとめた。

 移植医がvCJDの感染危険性を患者に十分に説明することが条件で、来月から日本臓器移植ネットワークに通知する。

 厚労省は血液については厳格な対策を決めており、来月からは「問題の時期に英国に1日以上滞在した人」などからの献血を禁止する。

 しかし臓器提供に関しては、<1>提供者が献血者に比べて少ない<2>移植を受ける患者は一刻も早い救命が必要――と判断、今回の措置を決めた。

家族に脳死判定拒否権…臓器移植法改正で与党検討会

2005/04/22 読売新聞 Yomiuri On-Line

 臓器移植法の改正を目指す与党有志議員の検討会は21日、今国会に提出を予定している改正案について、本人や家族の意思で、法的脳死判定を拒否できるとする修正を行うことで合意した。当初の改正案は、脳死を一律に「人の死」とする前提に立ち、医師の裁量で判定を行えるとしていたが、「脳死を死と認めない」との意見に配慮した。28日に再度検討会を開き、提出に向け最終調整を行う。

 現行法では、本人と家族の両方が臓器移植に同意した場合のみ、法律に基づく脳死判定が行われている。しかし、修正案では本人の意思が不明な場合にも、家族が拒否しなければ判定が行われる。「脳死と法的に判定されれば死」とする点は現行法と変わらず、脳死が確定した時点で死亡宣告が行われ、臓器提供も可能になる。

 本人や家族が拒否した場合には脳死判定自体が行われないため、「死」とはされない。その点が当初案と大きく変わった。

 検討会では、虐待で脳死になった小児を発見し、臓器提供されることを防ぐ方策について、政府に求める付則を追加することも合意された。

臓器提供「12歳以上」の意志表示を容認…小児科学会

2005/04/04 読売新聞 Yomiuri On-Line

 日本小児科学会は、脳死移植における臓器提供の意思表示に関し、中学に入学した12歳以上の子供の自己決定権を条件付きで容認する見解を示した。

 現行の臓器移植法は15歳未満の提供を認めておらず、海外で移植を受けるしかなく、見直しを求める声が出ている。

 見解は1日から学会ホームページに掲載。現行法が民法の遺言可能年齢に準じて自己決定を15歳以上としている点に関し「15歳未満でも『死』についての正確な理解がある」などとし、少なくとも中学に入学した生徒(12歳以上)が意見表明した場合、意思を尊重しなくてはならないとした。

 その要件として中・高等教育の中で、脳死移植に関する講習会を開くなど「教育システム」を整える一方、意思表示カードへの署名が自由意思によってなされた点を事前に確認する必要があるとしている。また虐待を受けた子供が提供者になるのを防ぐため、専門医を交えた第3者のチェック機関が不可欠だとした。

心臓移植患者が初の死亡 国立循環器病センター

2005/03/07 The Sankei Shimbun

 国立循環器病センター(大阪府吹田市)で2001年1月に心臓移植を受けた男性患者が7日午前11時53分、死亡した。

 臓器移植法に基づく心臓移植はこれまで25例行われたが、移植を受けた患者の死亡は初。

 男性は拡張型心筋症で、01年1月21日に、川崎市立川崎病院で脳死と判定された女性から提供された心臓の移植手術を受けた。だが、手術後に胸部の出血で集中治療室(ICU)に入り、その後一時退院したが、肺炎になり、再びICUで治療を受けるなどしていた。

 国立循環器病センターは1997年の同法施行時から心臓移植実施施設に指定され、これまで国内最多の13例の移植を行った。(共同)

臓器提供カード「×」ないのは同意…作業班検討

2004/12/17 読売新聞 Yomiuri On-Line
 移植医療にかかわる臓器提供意思表示カードが、記載ミスを起こしやすいと批判されているのを受け、厚生労働省は17日、法律家からなる作業班を開き、新型カードを作成する際の法的問題を検討した。

 現行カードは臓器提供する意思を示す場合、「脳死後に提供」「心停止後に提供」の文頭にある数字に「〇」をつけた上で、提供に同意する臓器に「〇」をする必要がある。

 作業班では、提供意思を示していれば列挙した臓器に「×」がない限り、すべての臓器の提供に同意したものとみなす厚労省案について、「法的な問題はない」とした。

 その上で、カードの表裏を活用するなど、いろいろな様式を作って、利用者に事前に使い勝手を調査するよう求めた。22日の臓器移植委員会に報告し、さらに議論する。

臓器提供カード記載不備、弾力化を了承…意見聴取へ

2004/10/15 読売新聞 Yomiuri On-Line
 臓器提供意思表示カードの記載不備問題で、厚生労働省の臓器移植委員会は15日、軽微な記載ミスがあっても本人の意思が明らかであれば有効とする方向でおおむね了承した。

 今月下旬から1か月間、厚労省のホームページを通じて国民の意見を聴取した上で、最終的に判断する。

 記載ミスについては、14日、同委員会の下に設置された法律家による作業班で個別事例を検討。<1>提供したい臓器に「〇」がしてあるものの、「脳死判定に従い臓器提供する」との文頭の数字に「〇」がない<2>逆に数字に「〇」があるが、臓器にしるしがない<3>署名の日付が書かれていなかったり、あり得ない日付になっている――例などは有効と認めた。

生体肝移植ドナーの半分、心身に不調 研究会調査で判明

2004/09/18 asahi.com
 生体肝移植で肝臓の一部を提供した人の半分近くが、傷口のまひや胃腸の痛み、気分の落ち込みなど心身に何らかの不調を感じながら生活していることが、専門医でつくる日本肝移植研究会のアンケートでわかった。提供者に直接後遺症の有無などを尋ねた全国調査は初めて。同研究会が17日発表した。

 アンケートは03年末までに提供者となった2676人を対象に今年6〜7月に実施。手術後の体の不調や臓器提供への家族からの期待感、家族関係の変化などを質問し、回答のあった1435人分を分析した。

 「何らかの症状がある」と答えた人は47%にのぼり、症状としては、傷口のひきつりやまひ(18%)、ケロイド(16%)、疲れやすさ(15%)などが多かった(複数回答あり)。約9割が現在、提供してよかったと感じているものの「(手術直後は)予想よりつらかった」と答えた人も15%いた。

 提供者になる際の医師からの説明で期待を感じた人は21%、家族や親族から期待を感じた人は28%いた。移植後の家族関係では、25%が「変化があった」と回答。家族のきずなが深まったという人がいた半面、配偶者との関係が悪化し離婚した事例もあった。

 研究会会長の門田守人・大阪大教授は「不安な気持ちを持ちながら生活している人が意外に多かった。結果を公開し、不安を抱える提供者に役立つ情報にしたい」と話している。

 同研究会が医師側に実施した調査では提供者の合併症は10%強と報告されていたが、実際の自覚症状とは開きがあった。

脳死提供者の年齢引き下げ案を保留 日本小児科学会

2004/09/13 asahi.com
 日本小児科学会の理事会が12日開かれ、脳死による臓器提供で、自己決定を認める年齢を現行の15歳以上から12歳程度以上まで引き下げることができるなどとする、同学会の検討委員会の見解案について協議。「現時点では学会の動向が社会に与える影響が大きい」(衛藤義勝会長)として承認を保留し、理事会で今後の方向性を議論することにした。

 国会の超党派の議員で臓器移植法について議論している「生命倫理研究議員連盟」(中山太郎会長)は今年6月、法改正論議にあたっては、「専門家集団の意見が大切」との考えを明らかにしており、学会の動向が注目されている。

米で小腸移植予定、7か月児に父親たちが募金訴え

2004/09/06 読売新聞 Yomiuri On-Line
 重度の腸閉そくで小腸と大腸の大半を失い、米国で小腸移植手術を予定している生後7か月の長男のためにとチリ在住の日本企業駐在員大橋之歩さん(39)と支援者が6日、厚生労働省内で記者会見を開き、渡航費や手術費の募金を呼びかけた。

 小腸は他の臓器に比べて移植後の管理が難しく、国内での移植実績はほとんどないという。大橋さんは「最後の手段で小さな命を救いたい」と訴えている。

 渡航手術を予定しているのは、大橋さんの長男、陽佑(ようすけ)ちゃん。生後約4か月で突然、腸ねん転による腸閉そくを起こし、6回の手術で小腸全体と大腸の大半が摘出された。

 会見に同席した星野健・慶応大講師(小児外科)によると、陽佑ちゃんは現在、心臓近くの静脈から栄養液を点滴する方法で栄養を摂取しているが、肝臓への負担が大きく、感染症にかかる危険も高い。救命のため、米国・マイアミ大の関連病院での移植手術が決まったが、費用は総額で約1億円かかるという。

 募金の振込先は「郵便振替口座00190―7―557208」で、口座名義は「陽佑ちゃんを救う会」。問い合わせは同会事務局(03・5907・5072)へ。

渡米治療支援へ救う会、募金開始 広島県海田

2004/09/01 中国新聞地域ニュース
 米国での心臓移植を望む広島県海田町の溝手善之さん(31)のため、友人や地域の住民が「善之くんを救う会」をつくり、三十一日、JR海田市駅前などで街頭募金を始めた。手術や渡航などに必要な八千万円を目標としている。

 溝手さんは十五歳で急性骨髄性白血病を発症。克服したものの、抗がん剤治療の副作用で二十二歳の時、拡張型心筋症になった。今は大阪府吹田市の国立循環器病センターで病と闘う。

 広島大病院の山本秀也循環器内科助手は「拡張型心筋症は心不全などにつながる。善之さんの症状は進行しており心臓移植しか残された道はない」とみる。

 ただ、国内の移植は待機者約七十人に対し実施は年間数例で、希望する米国カリフォルニア州の大学病院での移植には多額の費用がかかる。そのため地元の海田町寺迫自治会や友人約五十人が、「救う会」を結成した。

 街頭募金の初日は、海田市駅前と広島市南区の広島駅前に、両親を含む十八人が立った。父親の勲さん(62)と母親の悦子さん(60)は「息子を助けたい」と支援を訴えた。募金は五日まで毎日、その後は毎週土日曜に各地で行う。救う会TEL082(821)2727。

生体肝移植:京大病院で1000例目 世界最多

2004年06月07日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE
 京都大医学部付属病院(京都市左京区、田中紘一病院長)は7日、関東地方に住む肝硬変の50代の女性患者に、50代の妹の肝臓の一部を移植する同病院で1000例目の生体肝移植手術を実施した。重い肝臓病患者への移植は脳死ドナー(臓器提供者)が少ない日本では「生体」が中心でこれまで約2600例行われており、京大の実施数は一施設としては世界最多。【野上哲】

日本医大第二病院で脳死判定、心臓・肺など移植へ

2004/05/20 読売新聞 Yomiuri On-Line
 神奈川県川崎市の日本医大第二病院で20日、40代の男性が臓器移植法に基づき脳死と判定された。同法施行後、脳死と判定されたのは30例目。移植が行われれば29例目となる。

 日本臓器移植ネットワークによれば、心臓は国立循環器病センター、肺は東北大、肝臓は東京大、腎臓は北里大での移植が予定されている。もうひとつの腎臓と膵臓の同時移植は福島県立医大で予定されている。


米での移植目指し募金訴え 福島の8歳女児

2002年09月24日 The Sankei Shimbun
 先天性疾患の胆道閉鎖症のため、肝移植が必要とされる福島県富岡町の小学2年生、猪狩美貴ちゃん(8つ)の両親、支援者らが24日、福島県庁で記者会見し、米国マイアミ大で手術を受けるため費用の募金を呼び掛けた。

 美貴ちゃんは生後50日すぎに胆道閉鎖症と診断され、現在黄疸(おうだん)が急速に悪化しており、自宅療養中。栄養管理などで状態は安定しているが、移植手術以外で治る見込みはないという。両親は血液型が異なるため生体肝移植を断念した。

 母親の恭子さん(40)は「美貴は学校が大好きで『また学校に行ける』と手術への期待感は強い」と話していた。

 医療費、渡航費などで必要とみられる5000万円を募金の目標額としている。郵便振替は口座番号02270−1−98246。銀行振り込みはみずほ銀行いわき支店、普通預金8031876など。口座名はいずれも「みきちゃんを救う会」。問い合わせは救う会、電話0240(21)2788。

脳死:4病院で20例目の臓器移植手術

2002年08月30日 Mainichi INTERACTIVE
 青森県の八戸市立市民病院で臓器移植法に基づき脳死判定された30代の女性から、心臓や肺など計5臓器の摘出手術が30日行われた。臓器は大阪大病院など4病院に運ばれ、移植手術が行われている。同法施行後の脳死臓器移植は20例目。

 摘出された臓器のうち、心臓は同日夜、大阪大病院(大阪府吹田市)で心筋炎後心筋炎の30代女性に移植される。腎臓の一つは、同午後7時35分ごろ、鷹揚郷腎研究所弘前病院(青森県弘前市)に到着、同8時20分に腎硬化症の40代男性への手術が始まった。

 一方、肺と肝臓は京都大病院(京都市左京区)で、手術ミス・隠ぺい事件で問題になった東京女子医科大(東京都新宿区)でも同日深夜にすい臓と腎臓の同時移植が行われる予定。小腸は登録者がなく、移植は見送られた。 【臓器移植取材班】

12例目の脳死移植実施 心臓・肝臓・腎臓を提供

2001.02.26(22:21)asahi.com
 交通事故で脳や肺などを損傷し、日本医科大学病院(東京都文京区)に入院していた20代の女性が26日、臓器移植法にもとづいて脳死と判定された。心臓、肝臓、腎臓が摘出され、大阪大学病院などに運ばれた。肝臓は北海道大学病院で初めて移植される。法に基づく脳死判定は13例目、臓器提供は12例目になる。

 女性は23日に入院。臓器提供意思表示カードを持ち、家族も同意した。脳死判定は26日未明に1回目、同日朝に2回目を終えた。日本臓器移植ネットワーク(本部・東京)が移植を受ける患者たちを選んだ。

 心臓は阪大病院で肥大型心筋症の40代男性に、肝臓は北大病院の代謝性肝疾患の40代男性に移植される。肝臓移植はこれまで京都大学病院と信州大学病院だけで行われていた。昨年春の移植施設拡大で北大病院も加わった。

 カードには肺、腎臓、すい臓、小腸を提供する意思も示されていた。

 腎臓は東京女子医科大学病院で50代男性に、埼玉医科大学病院で60代男性に移植される。肺は損傷がひどく、すい臓は血液型などが合わなかった。小腸は登録患者がいなかった。

海外での心臓移植、子どもの割合が増加 平均15歳

2001.02.12(22:03)asahi.com
 臓器移植法の施行後も海外で心臓移植を受ける日本人は多く、とくに法律で脳死下の臓器提供が認められていない子どもの割合が増えている、と東京女子医大の小柳仁教授らがこのほど、山口県宇部市で開かれた日本心臓移植研究会で発表した。

 小柳教授らが調査を始めた1984年から2000年10月までに、海外で心臓移植を受けた日本人は55人。うち19人は、1997年10月に臓器移植法が施行されて以降に渡航して手術を受けた。法施行前の渡航者の平均年齢が25歳だったのに対し、施行後は15歳と若くなり、19人中12人が15歳以下だった。

 日本では、15歳未満の場合、脳死になっても臓器提供ができないため、子どもは国内で心臓移植を受けにくい。

 小柳教授によれば、海外の受け入れ先は、日本の担当医が個人的なつてを頼って探しているのが現状。子どもや大企業の組合員などが募金キャンペーンで費用を集めて渡航を実現する場合が目立つという側面もある。

 臓器移植法はまもなく見直しが始まる予定だが、子どもの臓器提供を認めるかどうかが、最大の争点になる見通しだ。

心臓などの移植ほぼ終わる、小腸は初 脳死の臓器移植

2001.01.21(17:33)asahi.com
 川崎市の市立川崎病院で脳死と判定された50代の女性から提供された心臓などの臓器の移植手術が21日朝から国立循環器病センター(大阪府吹田市)などで行われた。

 心臓は同センターで拡張型心筋症の50代男性に、肺は大阪大学病院(吹田市)で肺リンパ脈管筋腫(しゅ)症の30代女性に、小腸は京都大学病院(京都市)で短腸症候群の10歳未満の女児にそれぞれ移植された。各病院での手術はほぼ終えたという。小腸の移植は脳死では初めて。

 腎臓の1つとすい臓は東京女子医科大学病院(東京都新宿区)で糖尿病性腎不全の30代の男性に、もう1つの腎臓も同病院で逆流腎症の30代の女性に移植される。

 肝臓は信州大学病院で移植が検討されたが、医学的理由で見送られた。

 1997年10月に施行された移植法による脳死判定は12例目、臓器提供されたのは11例目になる。

川崎で50代女性に12例目の脳死判定

2001.01.20(21:12)asahi.com
 川崎市の市立川崎病院にくも膜下出血で入院していた50代の女性が20日、臓器移植法にもとづいて脳死と判定された。女性は臓器を提供する意思を示したカードを所持し、家族も脳死判定と臓器提供に同意した。日本臓器移植ネットワーク(本部・東京)は移植手術を受ける患者の選定を始めた。移植手術は21日になる見込み。

 脳死判定は、20日未明に1回目を、同日昼過ぎに2回目を終え、法的に女性の脳死が確定した。

 提供の意思を表していたのは、心臓、肺、肝臓、腎臓、すい臓、小腸など。小腸が移植されれば、脳死では初の小腸移植になる。

 1997年10月に施行された移植法による脳死判定は12例目。臓器が提供されると11例目になる。

 それぞれの移植は、国立循環器病センター(大阪府吹田市)など、待機患者がいる病院の医師らが判断するが、雪で臓器を運ぶのに影響が出る可能性もあり、摘出のタイミングを慎重に検討する。

脳死移植手術、無事に終了

2001.01.09 The Sankei Shimbun
 臓器移植法に基づく国内十例目の脳死移植は九日午前までに、五病院で行われた手術がすべて終了した。移植を受けた五人の患者の容体は、いずれも安定している。

 昭和大病院(東京都品川区)で、法的脳死と判定された三十代の男性から摘出された各臓器は八日夜、五病院に搬送された。

 このうち、東大医科研病院の腎臓移植は九日午前零時前、東北大病院の肺移植は午前零時四十分、国立循環器病センター(大阪府吹田市)の心臓移植は午前一時半すぎに相次いで終わった。

 京大病院の肝移植は十時ヤ以上に及んだが、午前六時前に終了。移植チームによると、移植した肝臓の機能は良好という。

 最後まで続けられていた大阪大病院の膵臓と腎臓の同時移植も午前十一時前に終わった。

10例目の脳死移植実施へ 30代くも膜下出血の男性

2001.01.08(19:48)asahi.com
 昭和大学病院(東京都品川区)にくも膜下出血で入院していた30代男性が8日朝、臓器移植法にもとづいて脳死と判定された。同日夕、心臓、肺、肝臓、すい臓、腎臓が摘出され、移植患者のいる大阪、京都などの病院に運ばれた。1997年10月の移植法施行以後、同法による脳死判定は11例目、臓器提供されたのは10例目になる。
 男性は提供臓器に丸のついた意思表示カードを持ち、家族の同意も得られたため、日本臓器移植ネットワーク(本部・東京)が移植を受ける患者を選んだ。

 心臓は国立循環器病センター(大阪府吹田市)で心筋炎の10代男性、右肺は東北大学病院で特発性間質性肺炎の40代男性、肝臓は京都大学病院で原発性胆汁性肝硬変の30代女性に移植される。すい臓と腎臓の一つは大阪大学病院で糖尿病性腎不全の30代男性に同時移植される。もう一つの腎臓は東京大学医科学研究所病院で慢性糸球体腎炎の60代男性に移植される。

 小腸は適合する患者がいないため、左肺は医学的理由で移植を断念した。

 男性は4日に仕事先で倒れ、救急車で昭和大病院に運ばれた。集中治療を受けていたが、7日、臨床的に脳死と診断された。8日午前6時ごろに脳死判定が終わった。

 脳死からの臓器提供は、昨年11月に北海道函館市の市立函館病院で60代女性から肝臓などが提供されて以来、約2カ月ぶりだ。

岡山大の生体肺移植が無事終了

2001.01.06(00:26)asahi.com
 岡山大学医学部付属病院で5日、関東地方に住む10代の女性に実施された国内6例目の生体部分肺移植は、移植後の左肺に肺水腫の症状が現れたため手術は長引き、午後11時50分、終了した。肺の一部を提供した50代の父親と母親の容体は安定しているという。

生体ドミノ肝移植を承認、熊本大倫理委 国内6例目

2000.11.25(11:37)asahi.com
 熊本大学医学部の倫理委員会(委員長・川村祥介医学部長)は24日、生体肝移植を受ける患者から取り出した肝臓を第三者の患者に移植する「生体ドミノ肝移植」を承認した。猪股裕紀洋・小児外科教授が申請していた。第三者の患者は学内や他大学、日本臓器移植ネットワークの待機患者から適合者を選ぶ。ドミノ移植が実現すれば国内6例目。

 倫理委によると、FAP(アミロイドポリニューロパシー)の男性患者(49)に、娘(19)の肝臓の一部を移植し、男性から摘出した肝臓を別の重い肝臓病患者に移植する。

 FAPは、肝臓がつくった異常なたんぱく質が体にたまって運動や感覚の障害が起きる難病だが、発症までには20―30年かかるとされる。ほかの肝機能は正常なため、国内では昨年7月の京都大を皮切りに、九州大などでもFAP患者の肝臓を使ったドミノ移植が実施されている。熊本大では昨年1月、医学部第1内科の教授が申請したが、インフォームド・コンセント(説明と同意)の不備などを理由に承認されなかった。

「平たんな脳波」医療現場に混乱

2000.11.25(14:55)asahi.com
 臓器移植法に基づく脳死判定の脳波検査について、現場の専門の技師たちの間で「平たんな脳波」の解釈にばらつきがあり、多くが「混入する雑音の除去が困難」と感じている。日本臨床衛生検査技師会のアンケートでわかった。同会は26日に会合を開き、手順の標準化など指針作りの検討を始める。

 アンケートは「脳死判定時の脳波検査は、だれが担当するか」や、判定に欠かせない「平たんな脳波」の解釈など32項目をたずねた。10月末までに、脳死から臓器提供ができる医療機関の7割にあたる268施設の検査担当者が回答した。

 集計によると、4分の3の施設では、脳波検査を専門の技師が担当することになっている。残りは医師や未定など。また、半数が「24時間の検査対応が可能」とし、3分の1は「いつでも複数の技師が対応できる」と答えた。

 しかし、「平たんな脳波」の解釈をめぐっては、1960年代に作られた分類に従っているところや、米国の学会が装置の性能向上を受けて、高感度の検査に対応するよう新たに作った基準を採用しているところなど、ばらつきがあった。

 さらに、自由回答方式で困難な点をたずねたところ、ほとんどが「心電図などの雑音が混入する」「ほかの機器を遠ざけるなど工夫しても、雑音をとり除けない」「雑音の原因がわからない」などをあげた。

 これまで10例の法的脳死判定のうち、少なくとも3例で脳波検査のやり直しやミスが見つかっている。

 アンケートをまとめた千葉県の市川市リハビリテーション病院臨床検査科の高橋修さんは、「医療機器が並ぶ集中治療室は雑音が多いうえ、脳死判定では高感度の検査が必要なため、影響が大きい。病院によって装置は違うし、技師の技量にも差がある。アンケート結果をくわしく分析し、専門医らと協力して、厚生省のマニュアルを補う技術指針を作りたい」と話している。

脳死肝移植の女性が死亡

2000.11.20(18:30)asahi.com
 脳死と判定された人から肝臓の提供を受け、移植手術を受けた女性患者が、入院先の京都大学付属病院で死亡した。脳死をした人から臓器移植を受けた患者が死亡したのは、臓器移植法が施行されてからは初めてのこと。

脳死判定の女性 肝・腎臓を摘出、移植へ 函館

2000.11.05(11:36)asahi.com
 北海道函館市の市立函館病院で、臓器移植法に基づいて脳死と判定された60代の女性から、5日午前、肝臓と腎臓が摘出され、それぞれ移植を待つ患者のいる病院に向かった。

 肝臓は京都大学病院で50代の女性に、腎臓は市立札幌病院で40代の女性に移植手術が行われる予定。手術は5日午後に始まり、同日深夜または6日未明までかかる見込み。提供が予定されていた心臓と肺は医学的な理由から移植は断念された。

 移植法に基づく脳死判定は、1997年10月の同法施行から10例目。臓器の提供は9例目になる。

60代女性を脳死と判定、移植受ける患者選定へ 函館

2000.11.05(02:11)asahi.com
 北海道函館市の市立函館病院に入院している60代の女性が4日、臓器移植法にもとづいて脳死と判定された。女性は臓器を提供する意思を示したカードを持ち、家族も同意したため、日本臓器移植ネットワーク(本部・東京)は移植手術を受ける患者の選定を始めた。移植法による脳死判定は1997年10月の同法施行後、10例目。臓器提供は9例目になる。臓器は5日に摘出される見込み。脳死判定は、今年7月に福岡県春日市の福岡徳洲会病院で10代の女性に実施され、心臓などが提供されて以来、約4カ月ぶり。

 女性は、くも膜下出血で入院し、治療を受けていた。3日夜までに、臨床的に脳死と診断された。

 意思表示カードに、脳死後、心臓、肺、肝臓、腎臓を提供する意思が示されていた。家族の同意を得て、病院側は、4日昼に1回目の脳死判定を、同日夜に2回目の脳死判定を終え、法的な脳死が確定した。

 移植が予定される病院などの医師が、臓器の摘出や移植の実施について判断する。

 脳死からの臓器提供は、昨年2月に高知市の高知赤十字病院で40代の女性から提供されて以来、今年7月までに計8例。32人の患者に心臓、肝臓、肺などの臓器や角膜が移植されている。移植を受けた患者の経過はおおむね順調で、社会復帰をした人もいる。

 しかし、脳死判定では混乱も少なくない。これまでに国の専門委員会や検証会議などによる検証作業が終わった6例のうち4例で脳波測定などにミスがあったことがわかっている。

 今年6月には愛知県豊明市の藤田保健衛生大病院で、治療に使った筋弛緩(しかん)剤の影響が残っていたために脳死判定を2度にわたって中断。7月の福岡徳洲会病院の場合でも、脳幹反射がみられたとして、脳死判定の前の臨床的脳死診断に戻ってやり直している。

岡山大の生体肺移植手術が無事終了

2000.10.18(22:25)asahi.com
 岡山大学医学部付属病院で高知県の20代の女性に対して実施された生体肺移植手術は18日夜、約9時間かかって無事終了した。患者の女性、肺の一部を提供した兄と母親とも、容体は安定しているという。

 手術後に会見した医師団は「移植した肺は予想以上にうまく機能している」と話した。今後は肺水腫や感染症などに気をつけ、順調にいけば1カ月ほどで退院できる見通しという。

6歳未満の子どもの脳死判定基準を発表 厚生省研究班

2000.10.07(00:52)asahi.com
 6歳未満の子どもの脳死を判定する基準を、厚生省の研究班(班長=竹内一夫・杏林大学名誉教授)が6日、発表した。判定は脳の働きを調べる検査を2回する。その間の観察時間を、6歳以上についての現行基準が「6時間」とするのに対し、「24時間」とした。ただし、生後12週未満は対象に含めなかった。

 現行基準は1985年につくられたものに基づく。当時検討した例が少なかったことなどから6歳未満は対象にしなかった。

 研究班は、昨春までの12年間に報告された子どもの脳死と思われる139例を分析。海外の例も参考にして報告書にまとめた。

 検査項目は、深い昏睡(こんすい)、瞳孔(どうこう)の固定、自発呼吸の消失など、6歳以上と同じ5項目。しかし、子どもの脳は回復力が強いことなどを考え、観察時間を長くした。

 臓器移植法は今月、施行3年になり、見直し論議が今後予想される。焦点は、今は認められていない子どもからの臓器提供。提供意思が有効なのは15歳以上と定められていることと、脳死判定の年齢制限が理由となっている。6歳未満の脳死については、今回の判定基準が論議のもとになりそうだ。

 一方、別の厚生省研究班は、現行の脳死判定に関して、目や耳の損傷で検査が一部できない時、現状では判定が困難とする報告書をまとめた。損傷が鼓膜だけで注意すれば検査ができる場合は可能とした。

「子どもの臓器移植認めて」死亡幼児の兄らが厚相に作文

2000.08.29(22:39)asahi.com
 今秋に予定される臓器移植法の見直しを前に、米国で昨春、心臓移植を待ちながら亡くなった東京都品川区の有村勇貴ちゃん(当時3つ)の兄ら小学生5人が29日、厚生省を訪ね、「15歳未満の子どもの移植ができるようにしてください」との願いを込めた津島雄二厚相への作文を読み上げ、大沢範恭・臓器移植対策室長に手渡した。

 5人は、勇貴ちゃんの兄で、双子の品川区立台場小5年の有村大知君(10)と龍馬君(10)、友達の米田一輝君(10)、佐々木仁一郎君(10)、横浜市の私立精華小5年の高木雅代さん(10)。

 「大人の意見だけで子どもの命を決めないでほしい」など、5人はそれぞれの思いを書き留めた。

 現行の移植法は、脳死での臓器提供には、文書による生前の本人の意思表示と家族の承諾が必要。本人の意思表示は、民法で遺言が認められる15歳以上で有効とされ、15歳未満は臓器を提供できない。

 移植法の見直しでは15歳未満での臓器提供が焦点になりそうだ。

臓器提供「家族の承諾も必要」が7割 総理府世論調査

2000.08.26(18:52)asahi.com
 総理府は26日付で、「臓器移植に関する世論調査」の結果を発表した。脳死と判定された人からの臓器移植が可能となったことを大半の人が知っており、移植の際は脳死した本人の生前の意思表示に加え、家族の承諾も必要だと考える人が7割に上ることが分かった。この秋に予定されている臓器移植法の見直しをめぐって、本人の意思が不明な場合、家族の承諾でも臓器提供を認めるべきだという意見もあるが、現状では、移植の前提条件を厳しくとらえる傾向が強いと言えそうだ。

 調査は20歳以上の男女3000人を対象として5月に実施し、71.9%から回答を得た。総理府の調査としては、臓器移植法の施行から1年後の1998年10月に次いで2回目。

 脳死と判定された人からの臓器移植が可能となったことについて、「知っていた」と答えた人は、前回を17.2ポイント上回り95%となった。調査時点ですでに7例の脳死移植が実施されていたことを反映しているようだ。

 移植の条件については、「本人の意思表示と家族の承諾」の双方を必要とする回答が69.9%にのぼり、「家族の承諾のみ」(2.1%)、「本人の意思表示のみ」(20.6%)を大きく上回った。

 自らが脳死と判定された後に臓器提供をする意思については、「提供したくない」が35.4%で前回より微減。「提供したい」は32.6%で微増し、前回より差が小さくなった。家族が脳死と判定され、臓器提供の意思表示をしていた場合、その意思を尊重するかどうかについては、「尊重する」が68.8%で前回より8.1ポイント増えた。

 一方、脳死からの臓器提供のかぎを握る意思表示カードを持っている人の割合も9.4%と、前回を6.8ポイント上回った。

臓器提供、家族の承諾で可能 厚生省研究班が報告書

2000.08.24(01:45)asahi.com
 今秋に予定されている臓器移植法の見直しに関連し、厚生省の「臓器移植の法的事項に関する研究」グループ(分担研究者=町野朔・上智大学教授)は、臓器提供者本人の意思が不明な場合、家族が書面で承諾すれば可能などとする移植法の改正案を盛り込んだ報告書をまとめた。現行法が提供を認めていない15歳未満を含めた未成年者については、とくに親権者の承諾を求めている。いずれの場合も本人が生前に提供を拒んでいる場合は提供できないとした。

 報告書は1つの研究グループがまとめたもので、改正案としてそのまま国会に提案されることはないものの、見直し論議のたたき台の一つにはなりそうだ。しかし、脳死移植に道をひらいた現行法成立のポイントである提供者本人の意思表示を不要とする考えは抜本改正につながり、反発は必至だ。

 報告書はほかに、本人が提供意思を示している時は、家族が拒まなければ提供できるとしている。

 現行法は、本人が脳死判定を受け入れ、脳死後の臓器提供を書面で表示し、家族も文書で同意した場合に提供を認めている。意思表示が有効なのは15歳以上で、15歳未満は提供できない。

臓器移植法改正反対で超党派議員の会結成へ

2000.08.10(21:08)asahi.com
 「脳死は人の死でない」とする国会議員7人が10日、衆院議員会館で会合を開き、臓器移植法の安易な改正に反対する超党派の会を結成する方針を決めた。賛同する議員に参加を呼びかけ、来月中に設立総会を開きたい考え。

 出席したのは、衆議院の金田誠一議員(民主党)、阿部知子議員(社民党)、参議院の竹村泰子議員(民主党)ら。

 移植法はこの秋、1997年10月の施行から3年になり、見直し時期を迎える。現行法が認めていない15歳未満の子供からの臓器提供がその焦点になるとみられている。

 会合では「脳死判定でミスが相次ぐなど脳死移植が定着したとはいえず、安易な改正はすべきではない」という意見で一致。これまでの脳死移植を検証するほか、皮膚などの組織移植や海外での移植も調査するという。

初めての血友病同士の生体肝移植始まる 岐阜の総合病院

2000.07.13(18:35)asahi.com
 血友病患者の男性(49)へ、男性の三女(20)から肝臓を移植する生体肝移植手術が13日午前、岐阜県笠松町の松波総合病院で始まった。女性は発症はしていないが、血友病の遺伝子を持っている保因者で、血友病保因者から血友病発症者への生体肝移植は世界で初めてという。

 血友病はすり傷などで出血したときに血液を固める作用を持つ「第8因子」がなくなり、出血が止まらなくなる病気。女性も血友病の遺伝子を持っているが、症状は出ておらず、「第8因子」を持っている。

 女性の肝臓の約3分の2を摘出して、父親に移植することで、「第8因子」を持つ血液がつくれるようになり、血友病の治療が必要なくなるという。

 手術は午前10時過ぎに始まり、終了は深夜になる見込みという。同病院での生体肝移植はこれで13回目。

福岡の脳死患者からの移植、京大での肝移植が終了

2000.07.09(12:24)(時事)asahi.com
 臓器移植法施行後国内8例目の脳死移植のうち、京都大学付属病院(京都市)で行われていた肝移植手術は9日午前10時前、無事終了した。残りは市立札幌病院(札幌市)での腎臓(じんぞう)移植だけとなった。また、同日未明までに終わった東北大加齢医学研究所病院(仙台市)の肺、国立循環器病センター(大阪府吹田市)の心臓、東京女子医大病院(東京都新宿区)のもう一つの腎臓の各移植を受けた患者は、いずれも術後の状態が良好という。

福岡の脳死患者から心臓、肺などを移植へ

2000.07.09(00:20)asahi.com
 福岡徳洲会病院(福岡県春日市)で脳死と判定された10代後半の女性から、8日夕、心臓、左の肺、肝臓、腎臓の臓器提供があった。心臓は国立循環器病センター(大阪府吹田市)、左の肺は東北大学加齢医学研究所付属病院、肝臓は京都大学病院、腎臓は市立札幌病院と東京女子医科大学病院で移植手術をする。

 提供者から臓器を摘出する手術は同日午後4時すぎに始まった。心臓と左の肺はチャーター機、肝臓は新幹線、腎臓は定期航空機を使って移植をする病院に運ばれた。

 心臓移植を受けるのは拡張型心筋症の40代の女性、左肺は呼吸困難などを起こす肺リンパ脈管筋腫症の40代の女性、肝臓は重い肝硬変の10代の女性、腎臓はいずれも慢性腎不全の50代の男性。

 岡山大も肺移植を予定していたが、加齢研病院の患者の方が待機日数などで優先順位が高かった。関係者によると、提供者の右肺は医学的にみて移植が難しい状態だったため、左肺のみが摘出されたという。

脳死判定で福岡徳洲会病院長が会見「うそはついてない」

2000.07.09(00:51)asahi.com
 臓器移植法に基づき、8日朝に10代後半の女性患者を脳死と判定した福岡徳洲会病院(福岡県春日市)の河野輝昭院長は同日夜、記者会見し、日本臓器移植ネットワーク(本部・東京)から「脳死判定手続きのやり直しがあったのではないか」と指摘された問題について、「3日の時点で判定して中止したのは事実」と、「脳死判定はなかった」としたこれまでの説明が事実と異なっていたことを認めた。その理由について、「患者のプライバシーを優先させたため」とし、「うそはついていない」と繰り返した。

 移植ネットの説明では、同病院は今月3日に患者を臨床的に脳死と判断、脳死判定と臓器摘出の承諾書をもらい、同日夜に法的脳死判定に入った。しかし、脳幹反射がみられたため、判定を中止したという。

 河野院長は、3日夜に法的脳死判定が行われていたのではないかとの記者の問いに、「法的脳死判定は、判定医2人の最終サインをされて初めて行われるものと……」。何度もこんなやり取りを繰り返した末、「(3日に)判定を始めたと認めるのですか」との質問に、小声で「認めます」と答えた。

 さらに、「承諾書を書いてもらったのか」と記者が尋ねても、河野院長はおし黙ったまま。報道陣が移植ネットの発表文を見せると、「訂正します。承諾書を取っております」と絞り出すような声で話した。

 また、最初の法的脳死判定を中止した理由について、「臨床的脳死判断のときにはなかった(脳幹反射)『せき反射』があった。気管に吸引チューブを入れて強い刺激を与えたらわずかに胸郭が動く反応だ。わずかでもあれば、やめた方がいいと考え、中断した」と述べた。

福岡の病院で9例目の脳死判定、判定やり直し後

2000.07.07(13:19)asahi.com
 福岡県春日市の福岡徳洲会病院に入院中の10代後半の女性が8日、臓器移植法にもとづいて脳死と判定された。女性は臓器提供の意思を示す意思表示カードを所持し、家族も同意したため、日本臓器移植ネットワーク(本部・東京)は移植手術を受ける患者の選定作業を進めている。脳死判定は1997年10月の移植法の施行後、9例目。移植ネットによると、同病院は3日に女性が臨床的に脳死状態になったと判断し、法的脳死判定に入ったが、中断した。脳幹反射が残っている可能性があったためで、臨床的脳死判断からやり直した。しかし病院側はこれまで、3日の手続きの経緯は認めていない。脳死判定手続きの透明性や適正さが改めて問われそうだ。

 移植ネットなどによると、女性は先月28日に頭を強く打って同病院に入院し、治療を受けていたが、3日に臨床的脳死と判断された。女性は昨年1月、脳死後に心臓、肺、肝臓などの臓器を提供する意思をカードに表示し、署名していた。同病院は移植ネットにコーディネーターの派遣を依頼した。

 コーディネーターの説明を受け、家族が脳死判定と臓器摘出を文書で承諾。同日午後6時47分から1回目の脳死判定に入った。しかし、脳幹反射の消失をみる検査の中に反応が残っている疑いが出たため、午後10時20分に中断した。

 同病院は、治療を続けていたが、7日に脳幹反射の消失が確認され、臨床的脳死と判断し、手続きを再開。同日夜、家族から再び承諾書を受け、同日午後7時23分から1回目の脳死判定を開始。8日午前5時48分に2回目が終了し、脳死が確定した。

 臓器提供を前提にした未成年者の脳死判定は初めて。

 心臓は国立循環器病センター(大阪府吹田市)、肺は岡山大学病院などでの移植が検討されそうだ。

 脳死判定の中止とやり直しについて、厚生省や移植ネットは「最終的に法的脳死判定がきちんと2回行われていれば問題はない。疑念が少しでもあれば、何度でもやり直すべきで、病院の判断は正しかった」としている。

 しかし一方で、病院はこれまで、判定をいったん中止していたことも認めておらず、情報の透明性に課題が残った。移植ネットの野本亀久雄・副理事長は、「移植医療について国民の理解を得ていくためには、中止ややり直しも含め、事実をきちんと公開していくべきだ」と話している。

 厚生省の朝浦幸男臓器移植対策室長は「(虚偽説明が事実なら)好ましくないこと」とし、病院側に経過を確認する方針を示した。

 法的脳死判定の中断ややり直しは、高知赤十字病院や藤田保健衛生大学病院(愛知県豊明市)などでもあった。

 移植が実施されれば、移植法が施行されてから8例目の脳死移植になる。


山口の4歳女児の心臓移植手術終了 -米ロマリンダ大-

2000.06.22【ロサンゼルス21日=鳥海美朗】The Sankei Shimbun
 心臓移植手術を受けるため渡米し、ドナー待機していた山口県防府市の辻大介さん(二九)の二女、あさとちゃん(四つ)への心臓移植手術が二十日夜、カリフォルニア州ロサンゼルス東郊のロマリンダ大学メディカルセンターで行われ、二十一日未明終了した。同病院によると、手術は成功したが、なお予断を許さない状態という。

国内初の脳死肺移植を受けた女性が仙台の病院を退院

2000.06.13(01:00)asahi.com
 
 国内初の脳死肺移植を3月末に東北大加齢医学研究所付属病院(仙台市青葉区)で受けた女性(39)が12日、退院した。

 移植チームの近藤丘(たかし)医局長らによると、経過は順調で、感染症や拒絶反応はほとんどなく、肺機能は手術前の2倍以上に回復したという。

 女性は十数年前から、肺リンパ脈管筋腫症という原因不明の難病にかかり、呼吸困難や胸にリンパ液がたまる症状で苦しんでいた。3月29日に、東京都内の病院で脳死と判定された患者から右肺の提供を受けていた。

 退院にあたって女性は「移植を通じて、人は1人で生きているのではなく、たくさんの人の力で生かされていると実感しました」といった手記をまとめ、ドナーや家族、医師らに感謝の気持ちを示した。

2度の中断後に脳死判定、移植へ

2000.06.07(23:19)asahi.com

 愛知県豊明市の藤田保健衛生大学病院に脳卒中で入院していた60代の女性が7日、臓器移植法にもとづいて脳死と判定され、法施行後、8例目の脳死移植の手続きが始まった。今回、同病院は法的脳死判定の途中、治療に使った筋弛緩(しかん)剤の影響が残っていることがわかったため、2度も判定を中断した。法的脳死判定マニュアルは、筋弛緩剤などの薬の影響がある場合を脳死判定の除外例としており、影響がないことを十分に確かめてから判定の作業に入るよう定めている。提供病院での脳死判定の手続きに大きな疑問が残った。

 日本臓器移植ネットワーク(移植ネット、本部・東京)によると、女性は、脳死後に心臓、肺、肝臓、すい臓、腎臓、小腸の提供意思を示す昨年4月署名の意思表示カードを持ち、家族も肺、肝臓、すい臓、腎臓の提供を承諾した。

 移植ネットは、肝臓を信州大学で30代男性に、すい臓と腎臓を九州大学で20代女性に、もう一つの腎臓を虎の門病院分院(川崎市)で40代男性に移植することを検討している。心臓は家族の希望で、肺は医学的な理由で提供が見送られた。

 同病院は5日朝いったん法的脳死判定の作業に入ったが、筋弛緩剤の影響が残っているとみて同日午後に中断。数時間おいて再開したが、再び薬の影響がみられ、夜にやめたという。

 同病院は、厚生省の指示で神経を刺激するなどの検査をし、薬の影響がないのを確かめた後、6日午後11時40分から3度目の脳死判定を開始。ここで初めて平たんな脳波、自発呼吸の消失など必要な5項目が確認された。7日午前11時12分に2回目が始まり、同日午後3時19分に脳死が確定した、という。

 マニュアルでは、鎮痛剤や筋弛緩剤などは血中濃度を測定したり時間を見計らったりして、影響がないと判断してから判定に入るのが望ましいとしている。

 同病院の対応について、厚生省は「最終的に2回の脳死判定は適正に行われたと判断している」と説明している。

 移植ネットの野本亀久雄・副理事長は「今後、こうしたケースに備え、移植ネットに薬学専門のコンサルタントをおくことを検討したい」と話している。

 同病院では昨年9月、10代後半の女性が臨床的に脳死状態になったが、片方の耳の鼓膜が損傷していたため、必要な検査の一部ができず、脳死判定が途中で中止されている。

 脳死での臓器提供は、4月25日に東京都三鷹市の杏林大学付属病院で50代女性から心臓、肝臓、すい臓、腎臓が提供され、4人に移植されて以来。

       ◇

 主治医である神野(かんの)哲夫・藤田保健衛生大学病院救命救急センター長は7日、記者会見で「脳死判定前に弛緩薬をやってはいけない。このまま気付かないで判定をしていたら、と思うと身震いする。順序が逆になったのは確か。この場合、判定に入ろうと思ったことすら間違い。それを病院内部のメンバーが指摘してくれたのでよかった」と話した。

脳死移植のための検査センターが24時間態勢へ 厚生省

2000.05.29 asahi.com

 厚生省の公衆衛生審議会臓器移植専門委員会(委員長・黒川清東海大医学部長)は29日、臓器移植法に基づく脳死下の臓器移植で、臓器提供者(ドナー)と移植患者の白血球の型(HLA)が適合するかどうかなどを24時間態勢で検査する「移植検査センター」(仮称)を整備する計画をまとめた。厚生省は関東甲信越、近畿など全国7ブロックごとに1、2カ所ずつ指定し、来年度から予算措置をする予定だ。

 検査は感染症の有無や、HLA適合性で拒絶反応の起きにくい患者を選ぶために必要。センターには移植を希望する待機患者の血清を、常時保存する機能も持たせる。

 これまでの脳死下の臓器移植では、夜間・休日で緊急に検査が必要な場合、日本臓器移植ネットワークが全国47カ所の検査機関の中から地理などを考慮してその都度、検査を依頼していた。また機関ごとに感染症検査の方法や待機患者の血清の保存体制が異なっているなどの問題点が指摘されていた。計画に基づくブロックごとの移植検査センターで集中管理することで、検査の迅速化や精度の向上を図る。

渡航移植支援でNPO設立

2000年05月22日 共同

 重い心臓病などで米国での移植を目指しながら亡くなった患者の両親らが、海外渡航移植を希望する患者の経済的支援などを行う民間非営利団体(NPO)「日本移植支援協会」(永井孝理事長)を設立し、22日、厚生省に15歳未満の臓器提供を可能にすることなどを求める要望書を提出した。

 同協会は、今月18日、移植医療関連では初めて国からNPOの認証を受けた。

脳死肝移植で7施設を追加

2000年05月22日 共同

 移植関係学会合同委員会(世話人、森亘・元東大学長)は22日、脳死肝移植の実施施設に北海道大、九州大など7施設を追加し、現在の2施設から9施設に拡大することを決めた。脳死移植の実施施設は心臓、肝臓、肺など臓器ごとに指定されているが、施設数を増やすのは肝臓が初めて。

 新たに実施施設となるのは北大、九大のほか、東北大、東大、名古屋大、大阪大、岡山大の各施設。

順調に生体肺移植

2000年5月10日 合同

 岡山大病院で行われた岡山県の20代の女性に弟と母親の肺の一部を移植する国内3例目の生体肺移植は10日午後4時前、提供者の弟と母親の手術が終了した。女性の手術も順調という。

 3人の容体は安定しており、予想外の出血などのトラブルはない。女性の左肺の剥離(はくり)に時間がかかったため、手術は当初の予定よりやや遅れた。

子供の移植に積極性求める

2000年05月08日 合同

 重い心臓病のため、米国での心臓移植を目指して募金活動を進めている千葉市の中学1年生吉井貴哉君(12)の母、毛利和代さん(32)らが8日、子供への心臓移植が国内で可能になるよう、臓器移植法の改正を求める要望書を厚生省に提出した。要望書は「どうして国は小児の移植が可能になるよう指導的役割を担ってくれないのか疑問を禁じ得なくなる」と訴え、国の積極姿勢を求めている。

故あかりちゃんの両親ら、募金で海外移植支援基金

May 08, 2000 asahi.com

 心肺同時移植を希望して渡米したものの、手術が受けられず2月に亡くなった札幌市の女児斉野朱里(あかり)ちゃん(当時1つ)の両親、亮介さん(26)と真由美さん(30)が8日、全国から集まった募金をもとに、海外での臓器移植手術を支援する「あかりちゃん基金」を創設することを明らかにした。募金のうち治療費、渡航費などにかかった残りの約6000万円を原資とする。運営は5月中に設立するNPO「日本移植支援協会」(本部・東京)に委託する。

 同協会は、東京都の会社役員有村英明さん(37)ら、海外での移植を希望しながら子どもを亡くした経験を持つ親たちが中心になって設立。亮介さんらも理事として参加する。

 渡航費用の貸し付けや助成を行うほか、日本人患者を受け入れる米国病院の紹介や家族の長期滞在のための情報提供、国内でも子どもの臓器移植を認めるよう法改正を働きかけるなどの活動をしていくという。

 亮介さんは「移植以外では助からない子どもたちはまだまだいる。できるだけ多くの子どもたちを救いたい」と話した。

 朱里ちゃん募金は昨年12月に呼びかけられ、総額約1億4270万円が集まった。治療費や渡航費、事務経費などで約5100万円が使われた。また、海外での移植を希望して募金活動をしている千葉県や高知県の子どもたち6人に計3000万円を寄付したほか、噴火が続く北海道・有珠山の被災者へ向けた日赤有珠山基金にも100万円を寄付したという。

東京で50代女性が脳死

2000年04月25日

 脳血管障害のため東京の杏林大病院に入院していた50代の女性が脳死状態に陥り、同病院は臓器移植法に基づく2回の脳死判定を実施、25日午前8時15分、脳死が確定した。女性は、心臓など6臓器の提供意思を示す意思表示シールを運転免許証に張っており、家族も臓器の提供を承諾。日本臓器移植ネットワークは、同法施行後初の膵臓、腎臓同時移植の対象として患者の選定を進めている。

高知の4歳女児、募金訴え

2000年04月24日

 重い心臓病と診断された宮久保阿未ちゃん(4っ)=高知県野市町=の父親の会社員元茂さん(41)と支援団体「阿未ちゃんを救う会」(代表・山本清二郎前野市町長)らが24日、高知県庁で記者会見し、阿未ちゃんが米国で移植手術を受けるための費用約6000万円の募金への協力を訴えた。6月までの渡米を目指す。

リハビリ順調、退院も間近

2000年04月19日

 大阪大病院(大阪府吹田市)は19日、国内2例目の生体肺移植を受け、リハビリに励んでいる富山県の男性(31)の近況を撮影した写真を公開した。男性は散歩を楽しむまでに回復、26日には退院の予定。気管支拡張症のため1月中旬、弟2人の肺の一部を移植した男性は、一時、移植した肺に空気漏れが見つかるなどしたが、現在は拒絶反応も見られず、極めて良好な状態という。

脳死診断された男児が11カ月生存、学会で発表へ

April 18, 2000

 杏林大学付属病院(東京都三鷹市)で、臨床的に脳死と診断された1歳の男児が人工呼吸器をつけて約11カ月生きて死亡した。心臓が止まる直前まで栄養が腸から吸収され、足に動きもみられた。厚生省の研究班は子どもの脳死判定基準を検討中。子どもは生命力が強く、慎重な対応が求められている。その実例として注目されそうだ。19日から和歌山市で開かれる日本法医学会で同大学の佐藤喜宣教授(法医学)のグループが発表する。

 男児は一昨年春、意識不明になって同病院に入院。3日目に自発呼吸がなくなり、瞳孔(どうこう)も光に反応せず、脳波も平たんになった。厚生省の研究班が暫定的にまとめた基準にてらして脳死と診断された。

 人工呼吸器などで治療を継続。入院348日目に心臓が停止した。死因は多臓器不全。大脳などは液状化していた。

 大人は脳死になると数日から数週間で心停止するとされるのに、子どもは数カ月生存する例がこれまでも報告されている。

 佐藤教授は「脳死状態に至った脳は不可逆的に変化し、壊死(えし)することがはっきりした。一方、脳死状態でも長く生存することは、子どもの自律神経系について大人と違う考え方をしなければならないことを示唆している」と話す。

 現行の脳死判定基準が対象外とする6歳未満の子どもの脳死判定について、厚生省の研究班は、検査項目は現行と同じだが、1回目と2回目は24時間以上あけるなどとする方針を固めている。

 研究班が、子どもの脳死について検討した約140例中、脳死状態が300日以上続いた2例のうちの1例で、具体的には明らかになっていなかった。

 男児は、泣きやまないことを怒った母親に、顔を踏みつけられたり、首を絞められたりして、意識を失ったらしい。

6例目の脳死移植は肝臓のみ実施 心臓、肺、腎臓は断念

April 17, 2000

 秋田県内の病院で脳死と判定された40代の女性からの臓器提供について、医師団は16日朝までに心臓、肺、腎臓の移植を断念した。肝臓は移植可能と判断され、同日午後から京都大付属病院で30代の女性に移植手術を実施、17日未明に終了した。これが国内6例目の脳死移植。

 摘出された肝臓は午後5時35分ごろ京都大学付属病院に到着、午後8時27分から移植手術が始まり、17日午前1時32分に手術を終えた。京都大によると、移植を受けたのは、東京都出身で胆道閉鎖症の30代女性。京都大の脳死からの肝臓移植はこれで、3例目。

 心臓移植を予定していた国立循環器病センター(大阪府吹田市)は、3月の提供に続いて今回も移植を見送った。同日、記者会見した中谷武嗣・心臓移植対策室長補佐は「提供者があっても移植が難しいことがある。たまたま2回続いたが、その時の状況で医学的に判断せざるを得ない。的確な判断が移植の定着にとって大事だと考えている」と説明した。

 岡山大は初の両肺移植を準備していた。しかし、医師団はレントゲン写真や気管支鏡検査などの結果から移植を断念した。

秋田県内の病院で臓器摘出準備、岡山大の肺は断念

April 16, 2000

 秋田県内の病院で臓器移植法に基づき脳死と判定された40代女性のドナー(臓器提供者)からの臓器摘出に向けた準備が16日午前、同病院で始まった。心臓は国立循環器病センター(大阪府吹田市)、肝臓は京都大学付属病院にそれぞれ搬送され、同日夕にも各病院で移植手術が始まる見通し。同法に基づく脳死移植は6例目。

 臓器提供を受ける京大などの摘出チームは16日朝、次々に到着した。各チームは同日午前、合同で臓器の状態をチェックした上で、移植の適否を含む摘出方法などについて協議。この結果、岡山大学付属病院が実施する予定だった肺移植は、肺の状態が悪いことから、見送られた。

 摘出される心臓と肝臓は、それぞれ拡張型心筋症にかかった40代女性、先天性肝・胆道疾患の30代女性に移植される。

 脳死移植は、高知赤十字病院(高知市)で昨年2月末に脳死と判定された40代女性から臓器提供が行われてから、今年3月末までに計5例実施。これまでに心臓4人、肺2人(片肺ずつ分割移植)、肝臓4人、腎臓(じんぞう)10人の計20人(角膜を除く)が移植を受けた。(時事)

秋田県内の病院で脳死判定、16日に移植手術へ

April 15, 2000

 秋田県内の病院に入院中の40代の女性患者が15日、臓器移植法にもとづいて脳死と判定された。脳死後に心臓、肺、肝臓、腎臓を提供する意思を示すカードを所持し、家族も承諾した。日本臓器移植ネットワーク(本部・東京)は移植を受ける患者の選定を進めている。移植が可能かどうかを判断したうえで、16日に臓器を摘出し、移植手術を実施する予定。同法施行後、脳死臓器提供は6例目になる。

 脳死と判定された患者は13日に入院し、くも膜下出血と脳内血腫の治療を受けていたが、臨床的に脳死の状態だと診断された。

 14日午後4時40分、この病院から連絡を受けた移植ネットは、コーディネーターを派遣。意思表示カードの確認や、患者の家族への説明をした。カードに家族の署名があり、その時期は昨年6月だった。15日午前1時すぎに脳死判定と臓器摘出の承諾書を家族から得た。

 脳死判定は、同日午前2時31分から同6時7分に1回目が、午後0時半から同3時3分に2回目が実施された。いずれも、脳波の平たんなど5項目の基準を満たし、法的に脳死と判定された。

 15日夜、肝臓は京都大学病院で30代の女性に移植されることが決まった。同大学病院の医師が秋田県の病院に向かった。

 心臓は国立循環器病センター(大阪府吹田市)の医師が、肺は岡山大学病院の医師が、移植できるかどうかの判断に出発した。

 しかし、腎臓は医学的理由で移植は見送られることになった。

 1997年10月の臓器移植法施行後、初の脳死臓器提供は昨年2月に高知県の病院で実施され、心臓などが移植された。同5月から6月に3例の脳死臓器提供が続いた。それからほぼ9カ月たった今年3月に東京都内の病院で5例目の提供があり、心臓と肝臓、肺、腎臓が移植されている。

臓器提供で公開質問状

2000年03月31日

 市民グループ「脳死・臓器移植による人権侵害監視委員会・大阪」(岡本隆吉代表)は31日、駿河台日大病院(東京都千代田区)で法的に脳死と判定され臓器を提供した患者について「救命治療が打ち切られた疑いがある」として、厚生省と同病院に対し、治療経過や脳死判定のデータを明らかにするよう、公開質問状を送った。

15歳未満でも脳死提供を

2000年2月28日

 臓器移植法に基づく初の脳死からの臓器提供から丸1年を迎えた28日、日本移植者協議会など移植関連の8患者団体が、15歳未満の小児についても脳死での臓器提供を可能にすることなど、移植医療の改革を厚生省に要望した。

 施行から3年たつ今年10月をめどに行われる同法見直しへ向けた運動の一環。

国内初、遠隔リレーでのドミノ肝移植始まる 慶大病院

February 21, 2000

 慶応大病院(東京都新宿区)で21日午前、アミロイドポリニューロパシー(FAP)という重い肝臓病の患者に肉親から生体肝移植をし、患者の体からとり出した肝臓を京都大病院(京都市)に運んで別の肝臓病患者2人に移植する「ドミノ・分割肝移植」が始まった。ドミノ肝移植は国内で3例目だが、患者から提供された肝臓を遠く離れた別の病院に運んで実施するのは初めて。新幹線やデジタル回線を駆使した遠隔リレーの移植となる。

 慶大病院で始まったのは、20代男性のFAP患者の肝臓をとり出し、60代の父親の肝臓の一部を移植する生体肝移植手術。午前8時半に父親が、同9時半すぎにFAP患者が、それぞれ手術室に入った。

 一方、FAP患者から提供される肝臓を新幹線で運ぶ京大病院の搬送チームが午前9時20分、同病院を出発、午後1時前、慶大病院に着いた。

 午後5時ごろまでにはFAP患者からの肝臓摘出を終え、肝臓は午後9時ごろに京大病院に到着。1、2時間かけて肝臓を2つに分割した後、福井県の高シュウ酸血症の30代男性、滋賀県の原発性硬化性胆管炎の30代男性にそれぞれ移植する。すべての手術が終わるのは、22日早朝になる予定だ。

 2つの病院はデジタル回線で手術の画像情報や音声などをやりとりし、手術を連携して進める。慶応大は「ドミノ移植は、同時にいくつもの医師チームが必要だが、2つの大学で進めれば負担が減り、患者にも利点がある」と説明している。

 FAPの肝臓は、運動や感覚の障害を引き起こす異常なたんぱく質をつくるが、これがほかの臓器にたまって発症するまでには20―30年かかる。この病気があっても肝臓は働いてくれる。このためFAP患者の肝臓を再利用するドミノ移植が実施されている。

15歳未満の臓器提供可能に

2000年02月18日

 厚生省の「臓器移植の法的事項に関する研究班」(分担研究者、町野朔・上智大法学部教授)は、脳死者が、提供拒否を意思表示していない場合は家族の同意で臓器提供できる、とする臓器移植法改正案の考え方をまとめ、18日開かれた臓器移植に関するシンポジウムで発表した。

 現行法で認められていない15歳未満の脳死者からの臓器提供を可能にする考え方。

心臓移植のため渡米へ

2000年02月11日 共同通信社

 難病の拘束型心筋症と診断された山口県防府市勝間の会社員、辻大介さん(29)の2女あさとちゃん(4っ)が,心臓移植のため22日にも渡米することになった。

 拘束型心筋症は、心臓の拡張機能の障害で、全身に血液を送り出すことが困難になる病気。移植しか根本的な治療法がなく、日本では15歳未満の臓器移植ができないため、大介さんらが米国での移植を決めた。

タイ女児へ生体肝移植手術

2000年02月12日 共同通信社

 重い胆道閉鎖症の治療のため、タイから来日した1歳半の女児カリタ・サムランちゃんの生体部分肝移植手術が12日、日本医大病院(東京都文京区)で行われた。

 午前7時55分、カリタちゃんは肝臓の一部を提供する母親ワンナさん(33)とともに手術室に入った。病院によると、手術は13日午前零時ごろ終了の予定という。

カリタちゃんを救おう

2000年02月07日 共同通信社

 日本で移植手術を受けるタイ女児に支援の手を―。胆道閉鎖症の一歳半の女児カリタ・サムランちゃんが、12日に日本医大病院(東京都文京区)で母ワンナさん(33)の肝臓の一部を移植する生体部分肝移植手術を受けることになり、日本の支援団体が募金を呼び掛けている。カリタちゃんは移植しか助かる道はないと診断され、タイで移植を待っていたが、容体が悪化した。

朱里ちゃん、移植中止も

2000年02月09日 【ロサンゼルス共同】

 心臓と肺の同時移植を受けるため、米カリフォルニア州のスタンフォード大付属病院に入院中の斉野朱里ちゃん(1っ)=札幌市=に、肝臓の異常があることから、担当医が手術は難しいとの見解を両親に伝えていたことが9日、分かった。しかし日本側の医療チームは、肝臓の異常があっても手術が可能との見方をしており、近く米側と相談して最終結論を出す予定。

肝臓移植も必要と診断

2000年02月06日 共同通信社

 心臓と肺の同時移植を受けるため渡米、スタンフォード大付属病院に入院中の斉野朱里ちゃん(1っ)=札幌市=は6日までの検査で、肝臓にも異常が見つかり、3臓器の同時移植が必要なことが分かった。両親と対応を話し合うため、「あかりちゃんを救う会」の野村英次代表(26)が6日、急きょ渡米した。3臓器の同時移植は子供では例がなく、朱里ちゃんの体力が持つかどうか懸念されるという。

男子学生、臓器提供できず

2000年01月26日 共同通信社

 岐阜県八幡町の病院で昨年12月、岐阜市の男子大学生=当時(19)=が交通事故で臨床的脳死の状態になり、父親が臓器提供の意思表示カードを基に提供の意思を示したが、病院が臓器提供施設に指定されておらず脳死での臓器提供が実現しなかったことが26日、分かった。

 学生は事故の翌日亡くなり、心停止後に腎臓(じんぞう)と角膜が摘出、移植された。

京都大で生体小腸移植

2000年01月21日 共同通信社

 小腸が短く十分な栄養が吸収できない短腸症候群の滋賀県の男児(3っ)に母親(28)の小腸の一部を,移植する国内3例目の生体小腸移植が21日、京都大病院で始まった。手術は移植外科の田中紘一教授らが執刀。午前9時52分に母親の手術が始まり正午前に小腸のうち約1.2メートルを周囲の血管ごと摘出した。ほぼ予定通り、午後零時39分には男児の手術も始まった。終了するのは同日夜になる見込み。

心臓移植架空募金で逮捕

2000年01月14日 共同通信社

 北海道在住の5歳女児が米国で心臓移植を受けるために多額の費用が必要だという架空の話をつくり、募金を呼び掛ける電子メールを不特定多数に送り、1人から5000円をだまし取ったとして、北海道警北見署は14日、詐欺の疑いで北見市末広町、無職尾崎美奈容疑者(25)を逮捕した。

国内2例目の生体肺移植患者の容体は安定、阪大病院

January 13, 2000

 大阪大学医学部付属病院(大阪府吹田市)で国内2例目の生体部分肺移植を受けた富山県内の30代男性の容体は13日午前も安定している。同日会見した医師団によると、右肺に水がたまる肺水腫の症状が見られるため人工呼吸器の設定を調整するなどして対応しているという。

 患者は鎮静剤を使っているため眠ったままだが、13日朝には医師の呼びかけに対して目を開くなどの反応を見せた。肺を提供した弟2人は意識を回復し、病室に戻っている。

 肺水腫は移植直後の合併症の一つ。一昨年、岡山大で生体部分肺移植を受けた患者にも一時見られた。三好新一郎助教授は「生体部分移植は移植肺が小さいので肺水腫になりやすい傾向がある。慎重に管理していきたい」と話した。

遅れ出るも、手術は順調

2000年1月12日 共同通信社

 大阪大病院(大阪府吹田市)で12日朝、始まった国内2例目の生体肺移植は同日午後になり、移植患者の富山県の男性(30)の肺の摘出作業に入った。当初の予定より進行に1時間ほど遅れが出ているが、全体としては、手術は順調に進んでいるという。

 手術は当初の予定では午後8時半ごろ終了の予定だったが、これによりずれ込む見込み。

米で心臓移植、無事終了

2000年01月08日 共同通信社

 重い心臓病で心臓移植が必要と診断され、米カリフォルニア大ロサンゼルス校で移植手術を受けるため渡米した養護学校教員、三好豊治さん(46)=高知県南国市=が同校で心臓の移植手術を受け無事終了したことが、三好さんの妻君枝さん(42)から8日、支援団体に入った連絡で分かった。三好さんの状態は良好で、早ければ3日ほどで集中治療室を出て一般病棟に戻れる見通し。

生体小腸移植の実施を申請

2000年01月06日 共同通信社

 京都大医学部移植免疫医学講座は6日までに、国内3例目となる生体小腸移植の実施を学内の倫理委員会に申請した。承認が得られれば、1月中旬から下旬に実施する方針。

 申請では、肉親から小腸の一部の移植を受けるのは3歳の男児。小腸で必要な栄養が吸収できない短腸症候群で、静脈からの栄養補給も感染症などのため難しくなっているという。

女児の心肺移植に募金を

1999年12月14日 共同通信社

 生まれつき重度の心臓病と肺病に苦しむ札幌市の会社員斉野亮介さん(25)の長女朱里(あかり)ちゃん(1っ)が、米国で心肺同時移植を受けられるようにするため、両親の友人が「あかりちゃんを救う会」をつくり14日から手術費用など2億円を目標に募金活動を始めた。心肺同時移植は実現すれば日本人では初めてという。

脳死の際の連絡の遅れ目立つ 臓器移植ネットが分析

December 13, 1999

 脳死になった時、臓器を提供する意思表示カードを持っていても、家族が知らなかったなどの理由で連絡が遅れた事例がかなり多いことが、日本臓器移植ネットワーク(本部・東京)が13日、厚生省の公衆衛生審議会臓器移植専門委員会に報告した調査結果で明らかになった。

 調査によると、臓器移植法が施行された1997年10月から今年10月までに、脳死で臓器提供する意思があり、カードを持つ89人の患者の情報が同ネットに入った。このうち大学病院など臓器提供できる病院からの連絡は40人だったが、心停止後に連絡されたのが16人、脳死を経ずに心停止したものが6人などで、実際に脳死から臓器が提供されたのはこれまでに4人だけだった。

 心停止後の連絡となった主な理由について、同ネットはカードを持っていることを家族や病院が知らなかったためとしている。

 また交通事故などで頭にけがをし、医学的には脳死だと判断できても、鼓膜が破れていたり、首の骨が折れていたりしていたため、同法にもとづく脳死判定ができなかった人が今年9月以降で4人いた。

阪大にヘリポートが完成

2000年02月10日 共同通信社

 心臓などの移植実施施設に指定されている大阪大病院(大阪府吹田市)が、臓器搬送や救急搬送に活用しようと整備を進めてきた屋上ヘリポートがこのほど完成。10日午後、実際にヘリを使った患者の搬送訓練が行われた。ヘリポートは昨年2月の心臓移植実施を機に急きょ設置が決まり、同11月から約5200万円をかけて連絡通路や照明装置などを整備してきた。国立大学病院での設置は全国初。

大阪大がヘリポート整備

1999年12月06日 共同通信社

 一刻を争う臓器搬送に役立てるため、心臓や肺などの移植実施施設に指定されている大阪大病院(大阪府吹田市)が、病棟屋上にヘリポートの整備を進めていることが6日、分かった。年内に工事を終え、年明けにも利用できるようにする。保存時間がとりわけ短い心臓と肺、肝臓の移植施設に指定されている全国7つの大学病院や国立病院でヘリポートが設置されるのは初めて。

解剖の子供から全臓器摘出

1999年12月04日【ロンドン・共同】

 英国のリバプール大学付属病院で、病理解剖した約850人の子供のすべての臓器を家族の同意なく摘出、研究用として保存していた疑いが強まり、同市の検視官が3日、調査を開始した。解剖に当たったのは同病院で小児病理学を担当していた教授で、専門は幼児の突然死。1987年から95年までの間、解剖した子供の心臓、肺、脳、腎臓などすべての臓器を摘出していた。

46万人の署名を国会に提出

1999年11月24日 共同通信社

 臓器移植を受けた患者や家族らの9団体で組織する臓器移植推進連絡会は24日、子供も大人同様に国内で脳死移植を受けられるよう、臓器移植法の見直しを求める請願書と46万人分の署名を衆参両院の63議員を通じて両院議長あてに提出した。

 厚生省と文部省にも25日に要望書を提出する。

脳死判定の間隔は6時間以上も可 臓器移植法運用見直し

11:11p.m. JST November 19, 1999

 厚生省は臓器移植法の運用指針を改正し、2回繰り返す法的脳死判定の間隔について制限を緩めた。19日、各都道府県などに通知した。これまでは間隔を原則として6時間としてきたが、今後は家族が立ち会う都合などによってそれ以上に延びてもやむを得ないとしている。

 臓器移植法にもとづく脳死判定は、検査を2回して状態に変化がないことを確かめる。これまでは特別な医学的理由がない限り、2回目は、1回目の終了時から6時間後に始めると決められていた。

 改正で、家族の立ち会いの都合、家族の心理状態など医学的な理由以外でも、間隔が6時間以上になることを認めた。

 ただし間隔が延びると、2回目の検査終了時である死亡時刻もずれるので、厚生省は「だれかが遺産相続で財産上の利益を得るために悪用したりしないよう、運用には注意したい」としている。

移植者のスポーツ大会開く

1999年10月10日 10時17分 共同通信社

 心臓や腎臓などの臓器提供を受けた人が、水泳や陸上競技などに参加する第9回全国移植者スポーツ大会が10日、福岡県春日市のクローバープラザで開かれた。

 臓器移植への理解促進を図ることなどが目的で、国内で臓器移植法施行後に脳死移植が実施されてからは初の大会。主催する日本移植者協議会は「移植者の元気な姿を実際に見て理解を深めてもらいたい」としている。

膵臓移植で初の患者登録

1999年10月4日 20時44分 共同通信社
 日本臓器移植ネットワークは4日、膵臓(すいぞう)移植を希望する患者5人を10月1日付で待機患者として登録したことを明らかにした。膵臓移植患者の登録は初めて。

  1日現在で心臓、肝臓、肺の待機患者計76人が移植ネットに登録されており、これで膵臓も脳死移植が可能になった。

米で心臓移植手術が無事終了 秋田県雄勝町の男児

5:52p.m. JST August 19, 1999
 心臓移植を受けるため渡米していた秋田県雄勝町の佐藤和輝ちゃん(5つ)の手術が日本時間の18日、米国ユタ州で行われた。「和輝くん支援の会」に19日、連絡があった。

 同会によると、経過は順調といい、父親の会社員、佐藤直行さん(39)は「チャンスを与えてくれたみなさんに、改めてお礼を申し上げたい」とのコメントを寄せた。和輝ちゃんは感染症などの治療を半年ほど続け、帰国する予定だ。

 「特発性拡張型心筋症」による重症心不全の和輝ちゃんは、心臓移植以外に助かる道がなく、ユタ大学プライマリー小児医療センターでドナーを待っていた。手術前日には感染症の傾向が現れ、危篤状態になったという。支援する会が募金活動をし、先月末までに全国から約9100万円が寄せられた。

ドミノ肝移植、40代女性への分割肝移植終わる

07:38a.m. JST July 10, 1999
 京都大学医学部付属病院で行われている、生体肝移植をスタートとする世界初の「ドミノ・分割肝移植」は10日早朝、分割された肝臓を重い肝臓病の秋田県の40代の女性に移植する手術が無事、終わった。もう一人、分割移植を受けている香川県の10代後半の女性の手術は肝臓の摘出を終え、肝臓の移植作業が続いているが、手術は遅くとも、10日昼ごろには終わる見通し。

 9日、行なわれた「ドミノ・分割肝移植」の「前段」となる、兄弟の間での生体肝移植は順調に行なわれた。兄の肝臓の一部の移植を受けた熊本県の50代のアミロイドニューロパシー(FAP)の患者の肝臓は、移植を受ける前に体内で2分割された後、摘出された。

 この分割肝移植を受けるため、2人の女性のうち、原発性肝汁性肝硬変の40代の女性は9日午後9時20分すぎに肝臓が摘出されたあと、ただちにFAP患者の肝臓の右部分を移植する手術が行なわれ、10日午前4時50分に終わった。
 一方、9日午後9時すぎに始まった、胆道閉鎖症の10代の女性の肝臓の摘出は10日午前3時36分に終わり、その後、FAP患者の肝臓の左部分を移植する作業が、行なわれている。

宮城県内で事故の男性に「脳死」判定

11:13p.m. JST June 13, 1999
 宮城県内の病院に事故で運ばれ、臨床的に脳死と診断された20歳代の患者が、臓器提供の意思を示す意思表示カードを持っており、家族も臓器摘出に同意したことから、13日午後、臓器移植法に基づく2回の脳死判定が実施され、脳死と判定された。臓器の状態を確認したうえで、心臓などの移植に入る可能性がある。2月には高知市内、5月には東京都内の病院で脳疾患の患者が脳死と判定され、心臓、腎臓などの脳死移植が実施されていた。同法に基づく脳死判定手続きは3例目だが、事故による患者への脳死判定は初めて。

 関係者によると、この患者は宮城県内で起きた事故で同県内の病院に運ばれた。脳波などの検査から主治医が11日、臨床的に脳死と診断したという。

 患者の臓器提供意思と家族の承諾があったことから、脳死に詳しい知識をもつ複数の医師が法律に基づく第1回の脳死判定を実施し、脳死と判定された。6時間の間隔をおいた第2回の判定でも脳死と判定され、法的に脳死が確定した。

 脳死からの心臓移植手術が実施される場合、東京女子医大、大阪大、国立循環器病センター(大阪府吹田市)の各指定施設のいずれかで行われる。

 臓器移植法に基づく初の脳死臓器移植は今年2月末、高知市の高知赤十字病院に入院していた40代の患者から心臓、肝臓などが提供され、大阪大学付属病院など5医療機関で実施された。同法の施行から1年4カ月が経過していた。この移植では、脳死判定の手順の一部に不手際があったほか、臓器提供者のプライバシーの保護など、情報公開のあり方を巡って、様々な課題も浮かびあがった。

 5月半ばには東京都新宿区の慶応大学病院に入院していた30代の男性患者から心臓と腎臓が提供され、大阪府吹田市の国立循環器病センターなどで移植手術が実施された。

HOME医療