TOPIC No.5-11 がん


01. がんに関する情報 by 国立がんセンター 
02. 月刊がん もっといい日』
03. が ん 情 報 紹 介 検 索 サ イ ト 癌 チ ラ
04. 『がん克服』総合リンク集
05. 乳がん  by HANA
06. 小児がんと生ること〜 小児がん患者として 小児科医として 〜
07. 肺がん治療ネット( TCP−net )
08. がん治療 みんなの闘病記 生還者から闘病者へ繋ぐ桜最前線

免疫細胞でがん死滅 林原生化研発表、臍帯血から作製

2010/09/15 中国新聞ニュース

 ヒトのへその緒にある臍帯血さいたいけつをもとに作製した免疫細胞が、がん細胞の中に入り込んで内部から細胞を死滅させたと林原生物化学研究所(岡山市)が15日発表した。

 こうした現象が確認されたのは世界で初めて。新たながん治療法の開発が期待されるという。

 この免疫細胞は2006年に同研究所が発見し「HOZOT(ホゾティ)」と名付けた。

 研究で、ヒトのがん細胞とHOZOTをまぜたところ、HOZOTががん細胞に近づき、侵入。

 その後、約2〜4時間で徐々にHOZOTが死滅し始め、同時にがん細胞の生存率も低下した。死滅したHOZOTから細胞を死に至らせる物質が漏れ、がん細胞の構造を壊すのが原因とみられる。正常な細胞には侵入しなかった。

 記者会見した同研究所の竹内誠人たけうち・まこと主任研究員は「がん患者の血液で、HOZOTと同様の働きを持つ細胞を作りだし、治療につなげたい」と話した。5〜6年後をめどに臨床研究を始めたいとしている。

 研究結果は22日から大阪市で開かれる日本癌がん学会で報告する。


カテキンの抗がん作用増強に成功 京大、酵素で安定化

2008年11月26日 中国新聞ニュース

 緑茶に含まれるカテキン成分を酵素の力で安定化し、がん細胞の増殖を抑える作用を強めることに成功したと、京都大の松村和明特任助教らのチームが26日、発表した。

 カテキン成分に抗がんや抗ウイルス作用があるのは知られているが、化学的に不安定なため体内で分解されやすく、医薬品としての応用に課題があった。

 正常な細胞に対する毒性がほとんどないのも確認。松村特任助教は「将来はカテキンを使って副作用が少ない抗がん剤ができるかもしれない」と話している。

 チームは、カテキンの主成分に酵素を使って脂肪酸をくっつけると、分解されにくく細胞内に取り込まれやすい構造になることを発見。がん細胞を移植したマウスにカテキン成分を投与して1カ月間観察すると、投与しない場合に比べ、がん組織の大きさが10分の1程度に抑えられるのを確かめた。

肝がんは西日本が中心 都道府県別の死因分析

2008/04/05 中国新聞ニュース

 脳血管疾患による死亡率は北日本が高く、肝がんは西日本が高い―。厚生労働省が四日、発表した生活習慣病に関する都道府県別の死因分析結果で、こんな傾向が明らかになった。

 同省は「地域によって差がある理由ははっきりしないが、地方自治体などで疾病の予防対策に役立ててほしい」(老人保健課)としている。

 調査は二○○六年の人口動態統計(厚労省)と推計人口(総務省)を基に、年齢や性別による人口構成の違いをなくすよう統計処理した上で、十一種類の疾病について都道府県別の死亡率を比較した。

 それによると、脳血管疾患による死亡率一―三位は男性が岩手、青森、秋田、女性が岩手、秋田、栃木で、北日本が目立った。肝がんによる死亡率は男性が福岡、佐賀、広島、女性が佐賀、福岡、大阪の順で高かった。

 乳がんによる女性の死亡率が最も高かったのは東京で、最も低かったのは三重だった。

胃粘膜破壊の仕組みを解明 ピロリ菌で北大教授ら

2007年05月17日 中国新聞ニュース

 北海道大遺伝子制御研究所の畠山昌則教授(分子腫瘍学)らの研究グループが、胃がんの原因とされるヘリコバクター・ピロリ菌による胃の粘膜破壊の仕組みを解明し、17日付の英科学誌ネイチャーに発表した。

 ピロリ菌は日本人の約半数が感染しているとされるが、同菌が作るタンパク質が、粘膜の細胞同士を結合させる酵素の働きを阻害すると判明。研究グループは胃がんなどを予防する新薬開発につながると説明している。

 畠山教授らの研究によると、健康な胃では、粘膜を構成する細胞がすき間なく並んでいる。「PAR1」と呼ばれる酵素が細胞同士を結び付ける役割を果たすためだが、ピロリ菌が作り出すタンパク質「CagA」は、PAR1と結合し、その機能を阻害する。

 そのため、菌が表面についた細胞は、周囲の細胞から切り離され、その結果生じた粘膜のすき間に胃酸が流れ込むと、胃炎や胃かいようが引き起こされるという。

がん組織だけ光らせる薬開発 東大など共同研究

2007/04/30 The Sankei Shimbun WEB-site

 スイッチを切り替えるように、がんのある場所でだけ光を発する蛍光薬剤の開発に、米国立がん研究所(NCI)の小林久隆主任研究員らのチームが29日までに成功した。肉眼では分からないごく小さながんを見ることができ、より的確な診断や手術の際の取り残し防止が期待できそうだ。

 東大大学院の浦野泰照准教授(薬学)との共同研究。研究チームは、特定のがん細胞と結合するタンパク質に、蛍光色素の分子3つを付けた薬剤を作成。この分子は互いにくっついていると光エネルギーを失う性質があり、そのままでは光らないが、がん細胞の内部に取り込まれ分解されることによって強く光る。

 マウスの腹膜にがんを点在させ、この薬剤を散布して観察したところ、0.8ミリ以上のがん組織の92%を確実に把握できた。0.1ミリ程度の小ささまで見ることが可能だという。

 研究チームはさらに、特定のがんを見分ける「抗体」を用いて、がん細胞の表面でだけスイッチがオンになる蛍光薬剤も開発した。抗体は細胞内に取り込まれず分解による方法は使えないが、さまざまながんで比較的容易に作成できるため応用範囲が広いという。

 見えないがんを可視化する方法としては、陽電子断層撮影装置(PET)などが実用化されているが、これらは造影剤ががんに集まる性質を利用したもので、がん以外の場所でもシグナルを発してしまう。蛍光薬剤の光は人体を透過しないため内視鏡などで直接観察する必要があるが、「がんでしか光らないので、小さながんを間違いなく診断できる」(小林研究員)としている。

砂糖取りすぎは高リスク 膵臓がん、8万人調査で

2006/11/09 The Sankei Shimbun WEB-site

 【ワシントン8日共同】ソフトドリンクなど砂糖をたくさん含む飲み物や食べ物を多く取る人は、そうでない人より膵臓がんを発症する危険性が最大約90%高いとする調査結果を、スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究チームが米医学誌に8日発表した。

 研究によると、糖尿病やがんにかかったことのない45歳以上の男女約8万人を対象に食習慣を調べた。このうち、131人が8年後までに膵臓がんを発症。発症要因を分析したところ、砂糖の摂取量が危険要因であることが分かった。

 例えば「砂糖を添加したソフトドリンク」を1日2回以上飲む人は飲まない人に比べて約90%、「砂糖を入れたコーヒーや紅茶」を1日に5回以上飲む人は飲まない人に比べ約70%、「クリームの付いたフルーツ」を1日に1回以上食べる人は食べない人に比べて約50%、発症の危険性が高かった。

 膵臓がんは治療が困難で死亡率が高い。研究チームは「血糖値を調整するインスリンを分泌する膵臓のがんと、砂糖の取りすぎによる高血糖とに関連があるのかもしれない」と指摘している。

30代がん罹患率、女性は2倍 乳、子宮での発症急増

2006/09/29 The Sankei Shimbun

 日本人女性は20代後半から乳がんや子宮がんの発症が急増し、30代のがん罹患率は同世代の男性の2倍以上とした分析結果を、厚生労働省研究班(主任研究者・祖父江友孝国立がんセンター情報研究部長)がまとめた。横浜市で開催中の日本癌(がん)学会で30日発表する。

 10代後半から30代のがんは比較的、治療成績が良いため死亡データなどから把握しにくく、詳しい罹患傾向が分かっていなかった。

 分析に当たった同センター情報研究部の丸亀知美研究員は「育児や働き盛りの世代の実態が明らかになったことで、社会的損失を減らすためのきめの細かいがん対策が可能になるのでは」と指摘している。

 研究班は、大阪府など15府県が平成5年から13年まで、地域がん登録で集めた約137万人の患者データを解析した。

 1年間に新たにがんと診断される人は、年齢が上がるとともに増加。男性では30代前半は人口10万人当たり27人、同後半は50人だったのに対し、女性は30代前半が67人、同後半が115人だった。これに伴い30代では女性の罹患率は男性の2.3〜2.5倍だった。

 乳がんや子宮がんが20代後半から急増しているためで、30代では女性がかかるすべてのがんのうち、乳がんと子宮がんが約60%を占めていた。

 45歳以降は、たばこや食生活などと関連が深い胃がんや肺がんが増加傾向となり、がん全体の罹患率は男性が上回った。

大腸がん増殖の“主犯”金沢大などが発見…新薬開発も

2006年06月15日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 大腸がんの進行に、たんぱく質の一種「CRD―BP」が主導的な役割を果たしていることを、金沢大など日米3大学の研究チームが突き止め、14日発表した。

 研究チームは、このたんぱく質の働きを抑える新薬や治療法の開発につながる可能性があるとしている。

 研究チームは2000年から共同研究を進め、シャーレを使った大腸がん細胞の培養実験で、「CRD―BP」が、前から大腸がんを進行させると分かっている「β―カテニン」など3種類のたんぱく質を結びつける役割を果たす仕組みを解明した。

 検証のため、遺伝子操作で「CRD―BP」の機能を破壊してみたところ、がん細胞の自然死率は、何も手を加えない場合の約2・5倍となり、増殖は約3分の1に抑えられた。

 さらに、複数の大腸がん患者の病巣と周辺の健康な部位を比較すると、病巣には「CRD―BP」の存在が多数認められ、がん進行への影響が裏付けられたという。

 研究チームの一員である金沢大がん研究所の源利成教授=分子腫瘍(しゅよう)学=によると、大腸がん患者のうち約5割は、「CRD―BP」が原因で進行しているとみられ、「特定のたんぱく質に的を絞ったがんの診断法や治療法の開発などが期待できる」と話している。

悪性脳腫瘍治療薬、年内承認へ

2006/04/17 The Sankei Shimbun

 厚生労働省が、がんの中で治療が困難とされる悪性脳腫瘍(しゅよう)の治療薬を年内に承認する見通しという。

 シェリング・プラウ(米ニュージャージー州)の「テモダール」という抗がん剤で、すでに80近い国で承認され、この病気ではほぼ標準治療薬になっている。日本国内での発売も年内になりそうだ。

 悪性脳腫瘍は多くの種類があるが、シェリング・プラウは日本でWHO(世界保健機関)が最も悪性度が高いと位置づける「神経膠芽腫(こうがしゅ)」などに使用する。

 シェリング・プラウの日本法人(大阪市)によると、テモダールは1999年1月に欧州連合(EU)で世界で初めて承認され、その後米国で承認を受け、現在は77カ国で承認されている。

アガリクス製品を販売停止 「発がん促進する疑い」

2006/02/13 The Sankei Shimbun【東京朝刊から】

 厚生労働省は13日、健康食品「アガリクス」の一部製品に発がんを促進する作用が認められたとして、「キリン細胞壁破砕アガリクス顆粒(かりゅう)」を販売しているキリンウェルフーズ(東京都江東区)に対し販売停止と自主回収を要請した。同時に食品安全委員会に販売停止の可否を諮問した。

 厚労省の要請を受け、キリンウェルフーズは同日、顆粒だけでなく、すべてのアガリクス商品の販売を中止すると発表した。

 また、厚労省はほかの2社のアガリクス製品についても同委員会に、安全性に関する意見を求めることを明らかにした。

 アガリクスはカワリハラタケと呼ばれるキノコの一種で、「がんの予防効果がある」などと言われ広く販売されている。

 アガリクス製品による明確な健康被害はこれまで報告されていない。しかし、厚労省は肝障害を引き起こす疑いが学術誌で報告されていることから、国立医薬品食品衛生研究所に依頼し3社の製品の毒性試験を実施。

 この結果、ラットを用いた試験で、キリンウェルフーズの製品に、ほかの発がん物質に働き掛けて発がんを促進する作用があるとの中間報告を受けた。

 ほかの2社の製品のうち、1製品は発がん促進作用は確認されていないが、最終結果はまだ出ていないという。

 同社はキリンビール100%出資の子会社。同社によると、顆粒は2002年7月から5万6000箱、錠剤は1999年から37万箱を販売した。

 <アガリクス> ハラタケ科に属するブラジル原産のキノコで、日本では人工栽培されている。キノコの全体や一部を原料にした粉末や顆粒(かりゅう)、錠剤などの製品が、「抗がん作用がある」「免疫力を高める」などとされ「健康食品」として販売されている。ほかのキノコと比べてタンパク質が多く、多糖類、ビタミン、マグネシウム、カリウムなども含む。日本名はカワリハラタケ、学名はアガリクス・ブラゼイ・ムリル。ヒメマツタケとも呼ばれる。(共同)

県立広島大が「水素10倍」整水に成功、がんにも効果

2006年01月29日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 水の中に従来技術の10倍の水素を溶かすことに、県立広島大生命科学科の三羽信比古教授らのチームが成功した。

 水に溶けた水素は、老化などを引き起こす活性酸素を消去する能力があり、研究チームは、実際にこの水が、がん細胞の増殖を抑える効果も確認したという。研究成果は3月に仙台市で開かれる日本薬学会で発表する。

 普通の水には水素はほとんど含まれない。水を電気分解して水素が含まれる水を作る整水器は市販されているが、高濃度の水素を含む水は作れなかった。三羽教授らは水素を吸着する活性炭フィルターを圧縮するなどの工夫で、水素が従来の3〜10倍多く溶けた水を作ることに成功した。

 研究チームは、人間の舌がんの細胞に、通常の水と水素の多い水を与えてそれぞれ培養した。通常の水では、がん細胞は増殖を続けたが、水素の多い水では、がん細胞が壊れ、増殖が約3分の1に抑制されることがわかった。三羽教授は「今後、動物実験で口腔(こうくう)がんへの抑制効果を確認したい」と話している。

がん登録制を全国整備へ 厚労省、検討会で推進

2006/01/03 中国新聞ニュース

 ▽病院ごと治療成績も集積

 厚生労働省は二日までに、がん患者が受けた診療内容や、その後の経過などの情報を全国的に集積する「がん登録制度」の整備に乗り出した。

 都道府県別のがん発生・死亡率や原因、医療機関ごとの治療成績の違いといった実態を把握し、がん対策に生かす狙い。患者が治療法や医療機関を選択する際の目安にもしてもらう。

 専門の検討会で今年春までに、標準の登録項目やデータ分析の体制を決め登録を促進する方針で、「全国どこでも質の高いがん医療を受けられるようにして、日本人の死因一位のがん減少につなげたい」としている。

 がん登録は、がん発見の経緯や治療内容、病状の経過などの情報を、医療機関や都道府県などが集め解析する。地域や年齢、がんの種類ごとに、罹患(りかん)率や生存率が分かり、さまざまな治療法や検診の有効性を判断する上でも役立つ。

 管内医療機関からのデータを都道府県が分析する地域がん登録は、厚労省研究班の登録項目などを用い、秋田県や京都府など三十四道府県一市(昨年四月時点)で実施されている。

 しかし登録様式の標準化が進まず比較できなかったり、項目が多く作業の負担から登録漏れが出たりする問題がある。一九九九年の罹患率の全国値は、精度が高い十二自治体のデータから推計したという。

乳がん発見の新手法 研究機構など開発 微小細胞、鮮明に撮影

2005/10/10 The Sankei Shimbun【東京朝刊から】

 発見が難しい初期の微小な乳がん細胞(直径0.1ミリ)でも鮮明に写し出せるエックス線撮影の新手法を、高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)と神戸大が9日までに共同開発した。同機構の放射光施設や大型放射光施設スプリング8(兵庫県佐用町)で作ったエックス線を利用する。装置の小型化が課題だが、臨床試験を経て実用化できれば、乳がんの効果的な検診方法になる可能性がある。 

 厚生労働省によると、国内で平成16年度に乳がんで死亡した女性は約1万人で、増加傾向にある。

 同機構の安藤正海教授によると、撮影対象の背後にフィルターのような働きをするシリコンの特殊な板を置き、直進性が高く拡散しにくいエックス線を照射。対象物を透過する際に屈折したエックス線だけを分離、画像にする。

 がん細胞に含まれるカルシウムはエックス線を屈折させやすいため、がん細胞だけを鮮明に写し出せるという。

 安藤教授らは、乳がん細胞がカルシウムを多く含むことに着目し、乳頭がんなどの病理標本を撮影した結果、直径約0.1ミリのがん細胞が、はっきりとらえられた。被曝(ひばく)量は、乳房エックス線撮影装置(マンモグラフィー)と同程度という。

 厚労省は「マンモグラフィーでは直径0.3ミリの石灰化した細胞が写るが、(検査に)慣れた人が見ないと判別しにくい」としている。

 実験に使った標本は2センチ四方で、安藤教授は「今後、15センチ四方程度の大きな範囲を撮影できるようにして、臨床診断に新しい道具を提供したい」と話している。

 乳がん検診 乳がんの診断には、乳房を触ってしこりがあるかどうかを調べる自己検診や、医師による視触診、乳房を上下や左右から板で挟みエックス線撮影するマンモグラフィー、超音波検査などがある。厚生労働省は、早期発見に有効とされるマンモグラフィーの都道府県への導入を進めているが、平成15年度の受診率の全国平均は2.7%で、欧米の約70%より大幅に低い。

薬事法違反アガリクス本 社長も違法性認識 監修の名誉教授ら書類送検

平成17(2005)年10月08日 The Sankei Shimbun

 医薬品でないアガリクスの健康食品を「末期がんに効く」と書籍で違法に広告した薬事法違反事件で、書籍を出版した史輝出版(東京都港区)の瀬川博美社長(52)が警視庁の聴取に、「書籍が違法広告にあたるとの認識はあった」と容疑を認める供述をしていることが七日、分かった。瀬川社長はがん治療のため入院中だが、警視庁は社長も立件する方針で、健康食品会社と組み、本の体験談などで効能をうたって商品を販売した違法な「タイアップ商法」の全容解明を急ぐ。

 また警視庁は同日、同法違反容疑で、書籍の監修者だった師岡孝次・東海大名誉教授(75)=東京都あきる野市=と、書籍で紹介したがん患者の体験談を捏造(ねつぞう)したフリーライターの男(44)=葛飾区=を書類送検。二人は容疑を認めているという。

 調べでは、師岡名誉教授は、医薬品でないアガリクスの効能をうたった史輝出版の「即効性アガリクスで末期ガン消滅!」など二冊の本を監修。ライターは、過去の出版物を参考にした架空の体験談で「末期がんに効く」と執筆した疑い。アガリクス商品を販売した健康食品販売会社「ミサワ化学」社長、三沢豊容疑者(58)がライターに直接指示したり、内容を校正することもあったという。

 師岡名誉教授は産経新聞の取材に「内容をきちんと確認せずに監修を引き受けた」などと違法性の認識はなかったとしていたが、調べには「書籍が違法広告にあたるという認識は多少あった。一冊あたり約二十万円の報酬があった」と供述したという。同名誉教授はテレビの健康番組でも知られ、監修した健康関連書籍も多数ある。

子宮頸がんワクチン、高い予防効果…国際臨床試験

2005年10月07日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ワシントン=笹沢教一】米メルク社は6日、子宮頸(けい)がんの原因ウイルスの感染を防ぐワクチンの国際臨床試験で、がんや前がん症状を防ぐ高い予防効果が確認されたと発表した。

 女性のがんの中で上位にあり、日本でも若い女性に増加の傾向がある子宮頸がんを抑える画期的な手法につながる可能性がある。

 同社によると、臨床試験は欧米やアジアなど13か国の約1万2000人の女性が対象で、その半数に約6か月間でワクチンを3回接種。子宮頸がんの原因の約7割を占める2種類のウイルスに対する効果を約2年間追跡した。

 その結果、この条件でワクチンを接種した女性で100%の予防効果が認められた。また、接種回数が少ないなど臨床試験の規定外だった被験者も1人しか発症せず、高い予防効果が確認された。

東京タワーがピンク色に 乳がん早期発見を訴え

2005/10/01 The Sankei Shimbun

 東京タワーが1日夜、ピンク色にライトアップされた。乳がん早期発見の大切さを訴える「ピンクリボンフェスティバル」の一環。午後6時に点灯後、ボランティアたちが東京都港区のタワーを訪れた女性たちにピンクのリボンと自己検診用のカードを配った。

 リボンは、世界的な運動のシンボルマーク。日本では毎年10月に患者支援団体らが、シンポジウムなどのイベントを展開している。

 東京タワーがピンクに染まった瞬間、周辺から「きれい」と歓声が。3年前から運動に参加しているという女性(55)は「乳がんは自分で発見できる。早く見つけるよう心掛けて」と話していた。(共同)

≪神戸タワーもピンク色に 1000万ドルの夜景に彩り≫

 神戸港のシンボル、神戸ポートタワーが1日夜、ピンク色にライトアップされた。近くの観覧車のネオンサインもピンク色に変わり、"1000万ドルの夜景"に彩りを加えた。

 乳がん早期検診、早期発見の大切さを訴えるキャンペーン「ピンクリボンフェスティバル」の一環で昨年に続き2回目。

 埠頭(ふとう)を挟んだショッピングモールで、友人と夜景を楽しんでいた神戸市灘区の大学生、山崎雅代(やまざき・まさよ)さん(21)は、いつもの赤いタワーとは違った雰囲気に「きれい」と驚いた様子。「ピンクリボンの意味は知らなかったけど、早期発見には日ごろからの心掛けが大切なんだと思う。家族や友人にも教えてあげたい」と話し、ピンク色に浮かび上がるタワーをカメラに収めていた。(共同)

「低線量でも発がんリスク」に波紋

2005/09/18 中国新聞地域ニュース

 <米科学アカデミー 15年ぶり報告>

 「どんなに低い線量の放射線でも発がんの危険性がある」。米科学アカデミーが六月にまとめた「電離放射線の生物学的影響に関する第七次報告書」(BEIR―7)が波紋を広げている。低線量被曝(ひばく)の健康影響をめぐっては専門家の間でも見解が分かれる。医療現場などで低線量の放射線を受ける機会は増えているだけに、市民も無関心では済まされない。(編集委員・山内雅弥)

 どんなに少ない線量の放射線でも、それに応じた健康への確率的影響(がんや遺伝的影響)があると仮定し、これ以下なら影響を与えないという安全な値(しきい値)は存在しない―という考え方は、「しきい値のない直線仮説」(LNT仮説)と呼ばれる。

 広島・長崎の原爆被爆者約八万六千人を対象にした放射線影響研究所(放影研)の疫学調査によって、被曝線量百二十五ミリシーベルト以上では線量に直線的に比例して、乳がんや肺がんなどのがん発生率・死亡率が高まることが判明。被爆者データでは統計的な差が認められていない低線量域についても、このモデルを延長したのがLNT仮説だ。

 これに対し、花粉症では、飛散する花粉の量がある値以下ならアレルギー症状が出ないように、「放射線も低線量なら無害」という説もある。しかし、影響が分からない部分については「安全側の仮定に立つ」との原則で、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告をはじめ、各国の放射線防護規制はLNT仮説を採用している。

 BEIR―7は一九九〇年以来十五年ぶりに、低線量放射線の健康への影響を再評価した。放影研が続けている広島・長崎の被爆者調査をベースに、がんの放射線治療を受けた患者や原子力産業労働者の調査結果、最新の実験研究成果も加えて、総合的にリスクを検討しているのが特徴だ。

 百ミリシーベルト以下の低線量被曝の人体影響については、「リスク自体は小さい」としながらも、「放射線被曝とがん発生の間には直線的な線量・反応関係がある」としてきた従来の考え方を支持。「LNT仮説は妥当」と結論づけた。

 100ミリシーベルトで1%増

 低線量放射線によるがん発生のリスクは、どのくらいと見積もっているのだろうか。もともと放射線以外の原因でがんになる割合は、百人に四十二人。百ミリシーベルトの放射線を一度に被曝したことにより、百人に一人ががんを発症する可能性があるという。百ミリシーベルトは、年間に受ける自然放射線の約四十倍。全身のコンピューター断層撮影(CT)で受ける線量の、およそ十回分に相当する。

 LNT仮説を支持する新たな根拠の一つとして米科学アカデミーが注目しているのが、国際がん研究機関を中心に各国が共同で進めている原子力産業従事者の疫学調査データ。比較的高い線量を短時間に浴びた広島・長崎の被爆者調査に基づく推定とは別に、低線量被曝の影響を直接調べることができるからだ。

 米国、英国、カナダ、日本などの原発や核施設で一年以上従事した計四十万七千人(累積個人平均線量は一九・四ミリシーベルト)を対象に、平均十三年間追跡調査した。原子力産業従事者の調査では過去最大規模。この結果、一シーベルト被曝した場合にがんで死亡するリスクは、被曝していない人と比較すると、白血病を除く全がんが一・九七倍、慢性リンパ性白血病を除く白血病が二・九三倍となった。

 職業被曝の五年間の線量限度でもある百ミリシーベルトの被曝により、白血病以外のがんで死亡するリスクは10%、白血病で死亡するリスクは19%増加すると計算。「原子力産業従事者が受ける典型的な低線量被曝でさえ、小さくとも、余分ながんリスクを背負うことを示唆している」と分析している。

 増える医療被曝

 日本の専門家はどう見ているのか。「一つの疫学情報といえる」と評価するのは、放影研の児玉和紀・疫学部長。広島・長崎の調査でも、しきい値が存在するというデータは出ていない。「今回の結果から、低線量放射線の影響が見いだされたと結論づけるのは早すぎるが、データを積み重ねることで早急な解明につなげたい」と期待する。

 大分県立看護科学大の草間朋子学長(放射線健康管理学)も「十五カ国の研究を統合した大規模な解析は初めて。疫学調査のもつ不確実性はあるにせよ、低線量被曝のLNT仮説を支持する根拠になる」と受け止める。

 ただ、BEIR―7とほぼ同時期に出たフランス医学・科学アカデミーの報告書は、「リスクの過大評価になる」として、LNT仮説を百ミリシーベルト以下でのリスク評価に用いることに疑問を提示。反対に、「過小評価」とする立場からの批判もある。さらには「微量の放射線は、生体の防御機能を強める効果がある」とする説も出されるなど、議論が続いている。

 結局のところ、低線量被曝によって、健康障害は生じるのか、生じないのか。「現時点でLNT仮説が科学的に証明されたとはいえず、推論の段階。だが、否定するだけの明確な材料も出ていない」。京都大放射線生物研究センターの丹羽太貫教授が指摘するように、“グレーゾーン”のままだ。

 低線量放射線は、原発など原子力施設の従事者だけの問題ではない。CTをはじめ放射線診断の普及は、がんなどの早期発見・治療という利益をもたらす半面、被曝線量が増える危険性も併せ持つ。とりわけ日本人の医療被曝線量は、欧米人の二〜四倍高いとされている。

 放射線防護基準の前提となっている放射線リスクをめぐる評価は、経済的コストにも直結する。国民的な合意づくりには、当事者でもある市民に分かりやすい議論と情報公開が欠かせない。

 <BEIR報告> 米環境保護庁の委託を受けて米科学アカデミーに設置された「電離放射線の生物学的影響に関する委員会」(BEIR委員会)が、放射線影響に関する最新の科学的情報を収集・評価した報告書。1972年の第1次報告以来、今回が7回目になる。内外の科学者が参加した権威ある報告として、米政府の放射線防護指針の策定に利用されてきた。ICRPの勧告や国連原子放射線影響科学委員会(UNSCEAR)の報告にも、大きな影響を与えている。

がん:患者の自己負担、年120万円 病院の過半数、説明なし

2005年9月11日 毎日新聞 東京朝刊 Mainichi INTERACTIVE

 がんにかかって入院すると、患者が自己負担する年間の医療費は約120万円にのぼり、病院の過半数は医療費の具体的な説明をしない−−。患者約3600人を対象にした厚生労働省研究班(班長・濃沼(こいぬま)信夫・東北大教授)の全国アンケートで、こうした実態が浮かんだ。14日から札幌市で開かれる日本癌(がん)学会で発表される。

 研究班は昨年9月から最近まで、国立がんセンター中央病院(東京都中央区)や、東北大病院など全国20カ所の主要病院を通じ、がんを告知された患者に質問用紙を配布。過去1年の、がん治療関連費用をたずね、3593人から回答を得た。

 入院した場合の自己負担額は、各種のがんの平均で年間123万円。うち入院・外来治療代は約64万円で約半分だった。ほかに民間療法や健康食品に約21万円、契約している民間の医療保険料に約25万円などさまざまな費用がかかっていた。

 がんの種別でみると、負担の最高は大腸がんで約180万円。肺がんの約159万円が続いた。 一方、経済的負担について病院から説明を受けたかとの問いには「説明はなかった」が55%と半数を超え「覚えていない」が16%。「十分な説明を受けた」は25%にとどまった。

 がんによる仕事や家計への影響を複数回答で聞くと「仕事をやめた、解雇された」が27%、「給料が減った」が17%など。自由記載欄には「困って消費者金融で借りた」などの声が寄せられた。【高木昭午】

前立腺がん:不規則勤務者、昼専業の3.5倍もなりやすく

2005年09月16日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 工場や鉄道、ホテルなど昼夜を問わず稼働する職場に交代制で勤務する男性は、主に昼間だけ働く男性に比べ、3.5倍も前立腺がんになりやすいことが、文部科学省大規模疫学研究班(運営委員長・玉腰暁子名古屋大助教授)の調べで分かった。札幌市内で開かれている日本癌(がん)学会で15日、発表した。

 調査は88〜97年にかけて全国45市町村(当時)の事業所に勤務する40〜79歳の男性約1万6000人を対象に、勤務時間帯と前立腺がんの発症の関係を調べた。内訳は主に昼間働く日勤グループが1万2756人、主に夜間働く夜勤グループが1184人、交代制勤務グループが1966人だった。

 追跡調査中に前立腺がんになったのは55人。日勤グループで38人、夜勤グループで6人、交代制勤務グループで11人。家族に前立腺がんの患者がいるかどうかや年齢、地域差などを考慮して比べたところ、交代制勤務グループは日勤グループに比べ3.5倍前立腺がんになりやすかった。

 日勤グループと夜勤グループの間では、前立腺がんのなりやすさに統計的な違いはなかった。夜勤のみの場合、夜型リズムに体が比較的順応しやすいためとみられる。

 これまでの研究によると、不規則な勤務で体内時計が乱れ、前立腺がん細胞の増殖を抑えるホルモンの一種、メラトニンの分泌量が落ちるとされている。

 同研究班で産業医科大の久保達彦医師(臨床疫学)は「交代制勤務がどうしても自分の体に合わないと感じたら、無理をせずに産業医に相談してほしい」と話している。【山本建】

がん転移“誘導”たんぱく質発見、抑制で治療の道も

2005年09月06日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 がん細胞が他の細胞に侵入したり、転移したりするのに重要な役割を果たす新しいたんぱく質を、名古屋大大学院医学系研究科の高橋雅英教授らの研究チームが発見した。

 このたんぱく質の働きを抑制することで、がんの進行を食い止める治療薬の開発に道を開く可能性がある。米科学誌「デベロップメンタル・セル」の5日号に発表する。

 がん細胞内には、「Akt/PKB」と呼ばれる酵素が多くあることが知られていた。しかし、この酵素が存在すると、なぜ、がん細胞が他の細胞の間に侵入(浸潤)し、広がっていくか謎だった。

 研究チームは、この酵素によって、リン酸化される未知のたんぱく質があることを発見。このたんぱく質によって、がん細胞が、他の細胞間に浸潤する能力が高まることを突き止めた。このたんぱく質は、他の細胞に浸潤していくがん細胞の先端部分に多く存在し、このたんぱく質が、がん細胞を“誘導”していると見られる。高橋教授は、このたんぱく質を「Girdin(ガーディン)」と命名した。

 がん細胞は、増殖と浸潤を繰り返すが、高橋教授は「他の細胞への浸潤を抑制できれば、がん進行を食い止めることができるかもしれない」としている。

食生活:満腹はがん招く? 緑茶・キャベツはよい効果

2005年9月4日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 満腹するまで食べる習慣のある男性は、がん化を抑える遺伝子の働きが弱まっている率が高く、逆に、キャベツやブロッコリーなどを多く食べたり緑茶を多く飲む男性ではこの率が低いことが、東京医科歯科大(東京都文京区)の湯浅保仁教授(分子腫瘍(しゅよう)医学)らの研究で分かった。14日から札幌市で開かれる日本癌(がん)学会で発表する。がんに関連した遺伝子の働きが食生活で変化することが分かったのは初めてという。

 湯浅教授らは、同大病院などで手術を受けた男性の胃がん患者58人にアンケートし、がんになる以前の食事の量や内容などを聞いた。一方で患者ごとに、手術で切り取ったがん細胞を多数分析し、がん化を抑えると考えられている遺伝子「CDX2」の働きを調べた。

 「満腹するまで食べていた」と答えた22人のうち10人(45%)では、細胞の一部でこの遺伝子が「メチル化」と呼ばれる化学変化を起こし、働かなくなっていた。これに対し「腹八分」または「意識的に食事の量を少なくしていた」とした35人では、メチル化が起きていたのは10人(29%)にとどまった。無回答が1人いた。

 ほうじ茶を含めた緑茶を飲む量では、日に6杯以下と答えた43人のうち17人(40%)にメチル化がみられた。7杯以上飲んでいた14人では2人(14%)と少なかった。無回答は1人。またキャベツ、ブロッコリー、カリフラワーのどれかを食べる回数でみると、週に2回以下とした32人中14人(44%)にメチル化があったのに対し、3回以上と答えた26人中では6人(23%)だった。

 メチル化は老化とともに増えるが、解消されて元に戻ることもある。緑茶が含む「カテキン」を細胞に注入すると、遺伝子の一部でメチル化が解消されたとの実験結果もある。ただ、多量の食事でメチル化が増える仕組みや、キャベツなどで減る仕組みは不明だ。

 湯浅教授は「研究が進めば、食生活の改善でメチル化を抑えたり、がん抑制遺伝子の働きを強めてがんを予防したりできるのではないか」と話している。【高木昭午】

前立腺がん治療に欧米との差、読売新聞調査で判明

2005年08月06日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 男性に急増している前立腺がんの治療で、欧米では推奨されていない早期がんへのホルモン治療が、日本では約4割の医療機関で「主な治療法」として実施されていることが、読売新聞が実施した全国調査で明らかになった。

 手術、放射線などの実施率も医療機関による格差が大きく、治療方針のばらつきが浮き彫りになった。ホルモン治療については、根治治療の遅れなどの弊害も指摘されている。

 調査は、前立腺がん治療を行う主な医療機関426施設が対象で、昨年1年間の治療実績を文書で質問し、333施設(78%)から回答を得た。

 転移のない前立腺がんの主な治療法を尋ねたところ、手術が41%で最も多く、ホルモン剤だけを使うホルモン単独治療が36%で続いた。放射線治療は19%、治療せず様子を見る「経過観察」が4%だった。

 実際の治療実施件数でも、手術が最も多かった施設は48%、放射線治療が多い施設10%、ホルモン単独治療が多い施設42%と、医療機関による傾向の違いが大きかった。

 ホルモン治療では、毎月または3か月に1回の注射を行い、男性ホルモンの作用を抑える。去勢と同じ状態になるため、のぼせ、活力低下など更年期症状の副作用がある。米国では、早期がんには手術または放射線治療、経過観察が主な方法とされ、ホルモン治療は治療指針に記載されておらず、患者の1割程度にとどまるとされる。

 前立腺がんでは一般に、手術は高齢患者には実施されない場合も多く、放射線治療は体への負担が少ない。進行が遅いため、経過観察する場合もある。

 赤座英之・筑波大病院泌尿器科教授は「治療の有効性を科学的に比較した日本の研究がほとんどないことが標準化を困難にしており、現在、比較研究を進めている」と話している。

 医療機関別の調査結果は、7日のくらし健康面で掲載の予定。

国立がんセンターに最新手術室…MRI、CTなど完備

2005年08月02日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 国立がんセンター中央病院(東京・築地)は、磁気共鳴画像(MRI)、コンピューター断層撮影法(CT)など三つの画像診断装置を駆使し、肉眼で見えにくかった部分を画面上で見ながら、安全で高度な外科手術が行える手術室(MRX手術室)を導入した。日本で初めて。

 こうした装置を術中に使うことで、医師個人の勘や経験に依存していた医療技術の発展に役立つと期待される。

 同病院によると、背中の深いところにできたがんでも、脊椎(せきつい)を傷つけずに除去したり、小さな肺がんでも、病変部だけを切除したりすることが可能になるという。脳腫瘍(しゅよう)、乳がんなど適応は幅広く、体をあまり傷つけずに手術できることから、術後の経過も改善される。

 MRX手術室の開発は、厚生労働省が進める産官共同プロジェクトの一環で、総事業費約5億2000万円の一部が使われた。同病院では、今秋からこの手術室で、週2、3例の割合で手術を始めたいとしている。

がん診療拠点指定へ 広島知事

2005/06/29 中国新聞地域ニュース

 広島県議会定例会は二十八日、栗原俊二氏(公明党議員団・広島安佐南)、杉西加代子氏(自民党議員会・呉)、岡崎哲夫氏(同・府中)が二日目の一般質問に立った。藤田雄山知事は、がん診療水準の向上を図るため、県内での地域がん診療拠点病院の指定を早急に進める考えを示した。

 地域がん診療拠点病院については、指定基準があいまいとの判断から、広島など全国七府県が国への推薦を見送っている。藤田知事は、厚生労働省が数値を示した新基準作りを進めているのを踏まえ、「方針が示されしだい、早急に指定し、拠点病院を中心にした医療情報の提供や医療機関の連携を進めたい」と述べた。

 厚労省は都道府県の推薦を受け、二次保健医療圏に一カ所を目指して拠点病院の指定を推進。県内では七カ所が想定される。指定を受けた病院は、地域の他の医療機関と連携し、質の高いがん診療を提供する役割を担う。二〇〇二年三月以降、全国で百三十五施設(今年一月現在)が指定を受けている。

野菜たくさん食べても大腸がんの危険性変わらず 厚労省発表

2005/05/09 The Sankei Shimbun

 野菜や果物をたくさん食べても大腸がんになる危険性は変わらないとする大規模疫学調査の結果を、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)が9日発表した。

 一方で、胃がん予防には野菜や果物の摂取が効果的との結果が既に出ており、研究班は「野菜や果物を食べることは奨励すべき生活習慣であることに変わりはない」としている。

 研究班は、秋田県、長野県、沖縄県など全国9地域で、40−69歳の男女約9万人を7−10年間にわたり追跡調査した。野菜と果物の摂取量により、「最も少ない」「2番目」「3番目」「最も多い」の4グループ(同人数)に分けて比較。全体で705人が大腸がんになったが、4グループとも大腸がんになる危険性は変わらなかった。

 野菜や果物摂取による大腸がん予防効果については、世界保健機関(WHO)や国際がん研究所なども2003年に「効果を示す証拠は限定的」などとする否定的な報告を発表している。(共同)

肥満男性は大腸がんリスク増 BMI27以上で1.4倍

2005年09月08日 asahi.com

 肥満の男性は大腸がんにかかるリスクが高くなるという結果が、厚生労働省研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の大規模な疫学調査で出た。8日発表した。肥満は心筋梗塞(しんきんこうそく)や脳卒中などの危険要因にもなるが、大腸がんとの関連も今回示された。

 岩手、秋田、新潟、茨城、長野、大阪、高知、長崎、沖縄各県の40〜60代の男女計約10万人に90〜93年、アンケート。その後、9〜12年間追跡調査した。

 男性は4万9158人中626人が大腸がんにかかっていた。肥満指数「BMI」(体重÷身長÷身長、単位はキログラムとメートル)によって分類。年齢や喫煙、飲酒などの影響を除いて分析した結果、BMIが25未満の群に比べ、27以上30未満の群は、大腸がんのリスクが1.4倍だった。30以上の群は、対象数がやや少ないものの、1.5倍になった。日本ではBMI25以上が肥満で、22が標準とされる。

 欧米の研究では、男性の場合、高身長でもリスクが高まるとされるが、日本人の男性では、身長による統計上の明確な差は出なかった。女性は、肥満指数、身長ともに関連が見られなかった。

 肥満だとインスリンが多く分泌され、がん細胞が増殖しやすい、と細胞レベルの実験で出ている。分析を担当した大谷哲也・同センター研究員は「BMIが27以上ならば、運動や食事で減量した方がいい」と話す。ただ、日本人は欧米に比べて肥満者の割合が低く、肥満だけで大腸がんが国内で大幅に増えている説明にはならず、「別の危険要因についても調べる必要がある」と言う。

昼夜交代勤務、前立腺がん3.5倍に 心疾患死亡も2.8倍

2005/05/02 The Sankei Shimbun

 24時間操業の工場や鉄道、ホテルなどの交代制職場で働く男性は、主に昼間働く日勤職場の男性に比べ、前立腺がんになる危険性が3・5倍、心筋梗塞(こうそく)などの虚血性心疾患で死亡する危険性が2・8倍高いことが、文部科学省が補助する大規模疫学研究(運営委員長・玉腰暁子名古屋大助教授)の分析で2日までに分かった。

 不規則な勤務による体内時計の乱れが関与していると考えられ、虚血性心疾患は血圧上昇やストレスも原因とみられる。

 厚生労働省の調査では、午後10時以降の深夜業に従事する労働者がいる事業所は2割に上り、うち半数が交代勤務を導入。研究者らは「前立腺がん検診の導入や、循環器病の危険因子を持っている人の適正配置など、労働管理の在り方を考えるべきだ」と話している。

 一般の人を追跡する大規模疫学調査で交代勤務の健康影響を示した研究は少なく、前立腺がんの報告は世界初という。

 1988年から99年にかけて健康状態を追跡した全国約11万人のデータを利用。産業医大臨床疫学教室の久保達彦医師らは、がん罹患(りかん)調査が行われた地域の男性労働者約1万6000人(40−79歳)を分析した。

 55人に前立腺がんが新たに見つかり、年齢などを統計的に調整した結果、交代勤務者は、日勤者に比べ前立腺がんになる危険性が3・5倍高いことが分かった。

 福岡労働衛生研究所の藤野善久医師が、40−59歳の男性約1万8000人を分析したところ、虚血性心疾患による死亡の危険性は2・8倍と判明。循環器病危険因子を持っている場合は危険性はさらに高まり、高血圧だと6・5倍、喫煙者は3・1倍、習慣的飲酒者は3・6倍、体格指数(BMI)が25以上の肥満では6・1倍だった。(共同)

 <体内時計と交代制勤務> 体内時計は、睡眠や血圧、体温の変動、ホルモン分泌など生理機能のリズムをつくり出し、生体内の朝、昼、夜をコントロールする。脳の中心部にある細胞が時計のように時を刻みリズムを管理。交代勤務などで深夜まで強い光を浴びると、体内時計は乱れると考えられ、不眠症やうつ、乳がんなどになる危険性を増やす要因になることが分かっている。(共同)

乳房温存療法に初のガイドライン 厚労省研究班

2005年05月01日 asahi.com

 乳がんの手術で乳房を残す「乳房温存療法」について、厚生労働省研究班は初の指針をまとめた。温存療法は現在、乳がん手術の第1位の選択肢だが、施設により実施率が大きく異なる、放射線治療医など専門医抜きで実施している施設がある、などの問題を抱える。指針の徹底で、施設間格差を縮め、全体の水準向上を目指す。

 乳がんは日本人女性が最も多くかかるがんで、毎年約3万5千人が新たに患者となっている。腫瘍(しゅよう)の周りを切りすぎると乳房の形が悪くなりQOL(生活の質)が下がるが、切除が不十分だと再発率が高くなる。日本乳癌(がん)学会によると、温存療法は80年代後半から広まり、03年に全摘手術を抜いた。

 指針では、切除後も乳房の形を大きく損なわないなら腫瘍の大きさが4センチまで温存療法が許されるとした。また腫瘍が複数あっても、近くに2つある場合で安全性が保てると判断されれば、温存の適応とした。

 温存療法の場合、切除後、残された乳房に放射線を当てて再発を防ぐ。指針では、日本放射線腫瘍学会に属する医師や技師が少なくとも1人、勤務していることを実施施設に求めた。手術前に抗がん剤を使い、腫瘍を縮小することも推奨した。

 温存療法に関しては、3センチまでの腫瘍を適応とするなどとした乳癌学会の99年の指針があるが、医療の進歩を反映するとともに、問題点の解消を狙った。

 新指針をまとめた霞富士雄・癌研有明病院乳腺科部長は「実際に温存療法の適応となるのは60%台だろう。指針は強制ではないが、科学的根拠に基づいた診療をして欲しい」と話す。指針は医師向けと患者向けがある。それぞれ各1部を乳癌学会の認定医に配り、近く出版もする予定だ。

イレッサ:副作用、死者数は607人に 参院厚労委

2005年4月29日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 肺がん治療薬「ゲフィチニブ」(商品名・イレッサ)について、間質性肺炎や急性肺障害の副作用があったとして国に報告された患者数は1555人、うち死者数は607人に上っていることが、28日の参院厚生労働委員会で明らかになった。副作用報告数が公表されたのは、同省が1月に開いた検討会以来で、死者数は19人増えた。

 厚労省医薬食品局の阿曽沼慎司局長が、小池晃委員(共産)に対する答弁で「4月22日までに報告された粗い集計」として明らかにした。

 小池委員はこのほか、販売元のアストラゼネカ社が先月、推定使用患者数を8万6800人から4万2000人へ大幅修正したことについて「厚労省も企業の言いなりに数字を報告した」と指摘したが、阿曽沼局長は「企業がもう少しきちんとすべきだとは思っているが、厚労省に責任問題が発生するとは思っていない」と答えた。

 また、イレッサの承認審査をした医薬品医療機器審査センター(当時)の審査部長だった人物が、現在は厚労省でイレッサの安全対策を行う部署の責任者となっている点について、阿曽沼局長は「安全対策に支障が出るということはない」と答えた。【須山勉】

40歳以上の末期がん患者、介護保険適用に 厚労相表明

2005年04月28日 asahi.com

 尾辻厚労相は28日の参院厚生労働委員会で、現在の介護保険制度の対象になっていない40〜64歳までの末期がん患者を保険給付の対象とするよう与党から申し入れを受けている問題について、「(若い年代に多い)乳がんも含め、専門家の意見を踏まえ前向きに検討したい」と述べた。公明党の浜四津敏子・代表代行の質問に答えた。

 介護保険制度では、サービスを受けられるのは原則として65歳以上の人で、保険料を払っている40歳から64歳の人の場合、若年性認知症(痴呆(ちほう)症)など、厚労省が指定する老化に伴う15種類の「特定疾病」が原因の場合に限られている。

 だが、在宅で療養する末期がん患者の中には手厚い介護を必要とする人も多く、社会保障審議会介護保険部会が昨年まとめた報告書で「早急に対応を検討するべきだ」と指摘していた。実現すれば年間約2000人が制度の対象になるとみられる。

「イレッサ」巡り、輸入販売元と国を提訴

2005/04/26 読売新聞 Yomiuri On-Line

 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)服用後に死亡した神戸市の会社員男性(当時48歳)の遺族2人が25日、輸入販売元の「アストラゼネカ」(大阪市)と輸入を承認した国に計3300万円の損害賠償を求め、大阪地裁に提訴した。

 同様の訴訟は、ほかに大阪地裁で2件、東京地裁でも1件起こされている。

「がんに効く」と無許可で飲料販売 社長ら5人逮捕

2005/04/26 The Sankei Shimbun

 「がんに効く」と効能をうたい医薬成分を含む飲料を無許可販売したとして、警視庁生活環境課は26日、薬事法違反(無許可販売)容疑で東京都渋谷区の化粧品販売会社「日本花ヴェール健康学センター」の女性社長(66)=世田谷区=ら3人を、同法違反(無許可製造)容疑で飲料水製造会社役員(77)=鹿児島県鹿屋市=ら2人を逮捕した。

 調べでは、社長ら3人は2002年5月から昨年8月にかけ、医薬品販売の許可を得ていないのに、医薬成分を含む清涼飲料水約3100本などを、千葉県の主婦(37)らに計約270万円で販売した疑い。

 役員ら2人は02年5月から昨年10月にかけ、無許可で、この清涼飲料水を約96万本製造した疑い。

 社長は清涼飲料水の効能について、自らの著書などで「がんが消えた」と宣伝していた。社長の会社は化粧品や健康食品、同容疑者の著書も販売している。(共同)

5年生存率20%アップを…がん対策本部、月内にも

2005/04/16 読売新聞

 厚生労働省は15日、日本人の死因第1位であるがんの対策を強化するため、尾辻厚労相を本部長とする「がん対策本部」を今月中にも設置する方針を固めた。

 欧米に比べて劣る医療水準や治療成績に危機感を強め、最優先課題の一つとして位置付けた。これまで縦割りで進めてきた対策を一本化するほか、患者の視点を政策に取り込む仕組みや情報を提供するシステムの構築、地域格差解消などに取り組み、政府目標である「5年生存率の20%改善」の実現を目指す。

 がん対策はこれまで、主管局の同省健康局が「生活習慣病」として扱うほか、医政局が診療指針の作成を主導、医薬食品局が抗がん剤を承認するなど部局ごとの対応だった。こうした中、指針で推奨された抗がん剤の多くが未承認だったり、指針に基づく治療を保険診療で行った病院が保険局の指導を受けたりと、チグハグな対応が目立っていた。

 同省は、例えば乳がんでは、欧米で90年代から死亡率が低下しているのに対し、日本では90年の9・4%が2002年には14・9%に上昇するなど、改善が見られないがんが多数あることを問題視。「現態勢では国民の関心と必要性の高さに釣り合わない。行政的な対応の優先度を上げる必要がある」(尾辻厚労相)と判断した。

 対策本部は、がん医療にかかわる省内各局の局長、審議官らを主要メンバーとし、発症予防から終末期ケアの充実まで、一貫性のある施策を推進する。さらに、患者や専門家の意見を政策に取り入れる仕組みの創設も検討する。

セックスレスの女性、子宮頸がんに注意を 筑波大調査

2005年04月11日 asahi.com

 セックスレスの女性は、子宮頸(けい)がんに気づいたときには進行している場合が多い――。そんな実態が、筑波大の調査で明らかになった。日本産科婦人科学会で発表した。初期の子宮頸がんは症状がなく、セックスによる出血などがきっかけで気づく場合が多いためらしい。セックスレスの人ほど、検診を受ける必要がありそうだ。

 01〜04年に筑波大病院で子宮頸がんと診断された女性患者206人(平均年齢44.5歳)を調べた。6カ月以上性交渉がない場合を「セックスレス」と定義した。

 セックスレスは全体の3分の1の68人。肉眼でもがんと分かるほど進行した患者はセックスレスではない人では52%だったが、セックスレスでは84%に上った。50歳以下の女性について、年齢などの影響を除いて比べると、セックスレスの人はそうでない人に比べ3.45倍高かった。

「東洋人に効果」イレッサ使用継続、厚労省が決定

2005/03/24 読売新聞 Yomiuri On-Line

 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)の延命効果を巡る問題で、厚生労働省の専門家検討会は24日、最終会合を開き、製造元のアストラゼネカ社が提出した「東洋人には効果が示唆された」との臨床試験結果について信頼性が認められるとの意見書を最終的にまとめた。

 これを受けて厚労省は、国内での使用継続を決定。ア社に対し、日本肺癌(がん)学会が作った新たなイレッサ使用指針を参考にする旨を医薬品の添付文書に記載するよう指示した。

 イレッサは2002年に国内で承認後、投与患者が副作用の間質性肺炎で死亡する例が頻発。だが、ア社は昨年末「東洋人では効果が示唆された」とする海外での臨床試験結果の概要版を公表した。検討会は、この解析結果を検証するために1月に発足した。ただ検討会は、日本人の延命効果を評価するには、新たな臨床試験が必要との見解も提示。厚労省とア社は今後、ア社が国内で進めている市販後の国内臨床試験を急ぐことを決めた。

 ア社はこの日、国内のイレッサの使用患者推定数を約8万7千人から約4万2千人に修正したため、検討会は、患者情報の把握と積極的な情報公開を求めた。

温熱針でがん治療、東北大がマウス実験成功

2005/03/23 読売新聞 Yomiuri On-Line

 東北大大学院工学研究科の松木英敏教授(生体電磁工学)と医学系研究科の相場節也教授(皮膚科)のグループが、設定した温度までしか高温にならない特殊な針を皮膚がんに埋め込み、がん細胞だけを壊死(えし)させる新たな温熱療法を開発した。

 マウスを使った実験では、直径約1センチのがんの大部分が壊死しており、5年以内に皮膚がん患者への応用を目指す。

 温熱療法は、がん細胞が42・5度以上の熱に弱い特性を利用したもの。ただ、電極を刺して加熱したりする従来の方法では、がん全体を十分温めることができず、がん細胞が残る恐れがあった。

 今回開発した針は、ニッケルや銅、亜鉛を混ぜた酸化鉄の合金に銅を巻いたもので、長さが2〜10ミリ、太さが0・4〜1ミリ。周囲に設置したコイルから磁場を発生させると針が発熱する。グループは開発にあたって、設定した温度に達すると針が磁場を遮断して、それ以上高温にならないよう工夫しており、周辺の正常な組織には影響はないという。

 松木教授は「将来は、体の深部にある膵臓(すいぞう)や肝臓などのがん治療にも応用したい」と話している。

イレッサ副作用死で提訴 大阪地裁、全国で3例目

2005/03/07 The Sankei Shimbun

 肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)を服用し死亡した三重県の男性=当時(77)=の妻子4人が7日、「副作用の危険性を認識しながら医療機関などへの警告を怠った」として、輸入を承認した国と販売会社「アストラゼネカ」(大阪市)に計3300万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。

 イレッサをめぐる同様の訴訟は全国で3例目。

 訴状によると、男性は2002年に肺がんと診断され、三重県内の病院で治療を開始。医師から「通院しながら服用でき、副作用もない」との説明を受け、同年9月にイレッサを服用したが間質性肺炎になり、約3カ月後に死亡した。

 会見した男性の長男(49)は「父は服用後にがんのなかった方の肺の不調を訴え、酸素マスクを手放せず苦しみながら死んだ。国の判断が正しかったのかどうかを判断してほしい」と話した。

 厚生労働省副作用被害対策室は「関係省庁とも協議し対応を検討したい」としている。

 イレッサによる副作用が疑われる国内の死者は600人近くとされるが、厚労省の検討会は今年1月「当面使用は制限しない」と判断した。(共同)

がん治療、連携の重要性訴え 広島市でシンポ

2005/02/28 中国新聞地域ニュース

 がん医療の総合的な支援の在り方を考えるシンポジウムが二十七日、広島市の中区地域福祉センターであった。患者団体や支援グループの代表者が討論。医師と患者、地域が一体となってがん医療の「すき間」を埋める活動が必要と提言した。

 市内の患者団体、ウィメンズ・キャンサー・サポートの馬庭恭子代表は「治療法や病院、医師についての情報が手に入りにくい」と現状を報告。在宅医療を支援している広島・ホスピスケアをすすめる会竹原支部の大石睦子代表は「かかりつけ医やボランティアなど地域の支援があれば、充実した在宅医療は可能」と連携の重要性を訴えた。

 シンポは、患者や家族の視点に立った情報提供を目指す特定非営利活動法人(NPO法人)「がん患者支援ネットワークひろしま」が主催した。

肺がん治療薬イレッサ「使用制限の必要なし」 厚労省検討会

2005/01/21 The Sankei Shimbun

 日本を含まない28カ国の大規模臨床試験で、延命効果が確認されなかった肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)について、厚生労働省の検討会(座長・松本和則国際医療福祉大教授)は20日の初会合で「現時点では使用を制限する必要はない」との見解をまとめた。

 東洋人を対象にした結果解析では生存期間の改善が示唆されていることが主な理由。

 検討会では、イレッサ投与との関連が疑われる国内の死亡者は、昨年12月28日現在で588人に上ることが報告された。

 こうした報告を基に検討会は、今回の解析結果を患者に説明し同意を得て使用することが重要とした上で、投与開始後4週間の入院や経験を積んだ医師の下での使用など、従来の安全対策の徹底を求めた。また、患者の遺伝子変異と効果、副作用の関連について研究を早急に進めるよう製造元のアストラゼネカに要求した。

 検討会終了後、「イレッサ薬害被害者の会」は厚労省で記者会見し「ここで立ち止まって臨床試験に戻すべきだ」などと見解を批判した。

 アストラゼネカが昨年12月発表した大規模臨床試験の初回の解析結果では、服用した患者と偽薬をのんだ患者とで、生存期間にはっきりした差は出なかった。

 イレッサは2002年7月、世界に先駆けて日本で輸入承認された。日本での使用患者は推定約8万6800人、世界では同約21万人。

 次回の検討会は、最終解析結果が厚労省に報告される3月ごろ開く。(共同)

広島大、発がん抑制研究 シトラスパークと連携

2005/01/19 中国新聞地域ニュース

 かんきつ活用 健康食品開発も

 広島県瀬戸田町が運営するかんきつテーマパーク「シトラスパーク瀬戸田」(同町荻)で、広島大が二月から、同パーク内にあるかんきつ類の成分を抽出し、発がん抑制物質や健康食品などの研究開発に本格的に取り組む。ミカンの成分の発がん抑制作用が最近、注目されており、約六百品種のかんきつ類を育てている同パークが選ばれた。

 同大が人材と費用を出し地域の課題を研究する「地域貢献研究」に町が応募。学内審査で約百六十万円の経費が認められた。大学院の理学研究科や生物圏科学研究科、医学部付属薬用植物園などの教官らが十月末まで研究に携わる。

 かんきつ類の成分については、既にミカンが多く含む色素成分「ベータクリプトキサンチン」に発がん抑制作用があることなどが分かっている。

 同大地域連携センターなどによると、教授や同町職員らが園内で抽出した成分や果実を同大に送り、有効化合物の構造解析や薬効などを調査。既に数品種の果皮をアルコールに漬けて成分を抽出する基礎研究を始めている。将来的には、研究資料や素材を医薬品会社などに提供する施設「シトラスライブラリー」(仮称)を園内に建設する方針。

 同パークは、ブラジルやインドなど世界各国から集めた六百品種を約〇・五ヘクタールの農地で栽培している。研究代表者の大学院理学研究科の平田敏文教授(生物化学)は「これほど多品種を集めた施設は国内でも例がない」と指摘。「日本では古くから、風邪防止でゆず湯の風習があるように、研究されていない品種を調べる価値は大きい」と期待する。

 同パークは入場者の減少で、苦しい経営が続いてきた。今回の研究は新しい利活用策を探る試みとしても期待される。

肺がん治療薬イレッサ、英製造元が承認申請を取り下げ

2005/01/05 読売新聞 Yomiuri On-Line

 肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)について、製造元のアストラゼネカ(本社、英国)は4日、欧州医薬品審査庁への承認申請を取り下げると発表した。

 日本を除く28か国約1700人を対象に実施した臨床試験で、非小細胞肺がんの患者に投与しても延命効果が見られないという結果が出たことを受けたもの。厚生労働省は、東洋人の非喫煙者で生存期間が延びる可能性を示すデータもあるため、詳細に検討して対応するとしている。

 この臨床試験の結果について、米食品医薬品局はデータを吟味したうえで、イレッサの販売中止または規制強化を検討する方針を表明している。


延命効果確認できず 肺がん治療薬イレッサ

2004/12/23 The Sankei Shimbun
 肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の比較臨床試験を日本を含まない28カ国で実施したところ、イレッサを服用した患者と偽薬をのんだ患者とで生存期間にはっきりした差はなかったとする解析結果を、輸入販売元のアストラゼネカ(大阪市)が23日までにまとめた。

 がんの縮小についてはイレッサ服用患者で改善がみられたという。最終的な結果は来年上半期に発表する。

 試験はロンドンのアストラゼネカが2003年7月から今年8月にかけ、210施設で実施。化学療法が効かない非小細胞肺がん患者を対象に、約1130人にイレッサ、約560人に偽薬を投与し、生存期間を比べた。

 イレッサ服用者は5・6カ月、偽薬では5・1カ月で、統計的に延命効果はみられなかった。

 ただ、マレーシア、タイなどの東洋人約370人の成績は、イレッサ服用者9・5カ月、偽薬5・5カ月と生存期間の改善が示唆された。喫煙歴のない患者でも延命効果が示唆されたという。

 同社は、厚生労働省に結果を報告し、医療機関への情報提供を始めた。(共同)

がん治療で腸に穴、患者が死亡

2004/12/22 The Sankei Shimbun
 大阪府立急性期・総合医療センター(大阪市住吉区、佐川史郎院長)で、8月にラジオ波を使いがん細胞を焼く治療を受けた60代の男性患者の腸に穴が開き、約3カ月後に死亡したことが22日、分かった。

 同センターによると、男性はラジオ波での治療翌日に強い腹痛を訴え、腸に穴が開いていると判明。緊急手術をし、一時は歩行できるまでに回復したが、11月14日、死亡したという。

 同センターは住吉署に届け出るとともに、事故調査委員会を設置し、詳しい原因を調べている。(共同)

茶、菓子にアクリルアミド 農水省調査、発がん性の恐れ

2004/12/16 The Sankei Shimbun
 農水省は16日、市販されているポテトスナックやお茶などの加工食品約150品から、動物実験で発がん性が指摘されている化学物質アクリルアミドを検出したことを明らかにした。

 アクリルアミドは高温で加工した食品に含まれ、厚生労働省の調査でもポテトチップスなどから検出されている。農水省はバランスの取れた食事を続ければ、これらの食品を食べても健康に影響はないとしている。

 国連食糧農業機関(FAO)などが来年、食品の安全性を評価することになっており、今回の検査データを提出する。

 検査は6−7月に財団法人日本食品分析センターが実施。ポテトスナック、コーンスナック、米菓、麦茶、ほうじ茶、インスタントめん計156品のうち、145品から検出した。

 1キログラム当たりの含有量は、ポテトスナックが30−4700マイクログラム(マイクロは100万分の1)などだった。(共同)

未承認抗がん剤などを容認 混合診療、無条件解禁せず

2004/12/15 The Sankei Shimbun
 政府は15日、保険診療と保険外診療の併用を認める混合診療について、無条件の解禁はせず、対象となる医療を国内未承認の抗がん剤などでも認めたり、手続きを簡素化するなど現行制度の抜本的な見直しで対応することを決めた。限定的に併用を可能としてきた現在の「特定療養費制度」は廃止する。

 厚生労働省は、現行制度の枠組みで対応できるものは来年夏までに実現し、名称も含めた法整備は2006年の通常国会に提出する医療保険制度改革関連法案に盛り込む。

 混合診療をめぐっては、年末に政府の規制改革・民間開放推進会議が答申する規制改革の最大の焦点となっていた。(共同)

受動喫煙で乳がんリスク2・6倍…厚労省調査

2004/12/04 読売新聞 Yomiuri On-Line
 喫煙習慣がないのに職場や家庭などでたばこの煙を吸ってしまう女性は、そうでない非喫煙女性に比べて2・6倍も乳がんになりやすいことが、厚生労働省研究班(班長・津金昌一郎国立がんセンター部長)の大規模調査で分かった。

 喫煙と乳がんの関係は、これまであまり明確でなかった。研究班は、1990年から10年間、岩手や長野など4県に住む40―50代の女性約2万人を対象に、生活習慣とがんなどの病気の関係を追跡調査した。

 その結果、閉経前の女性の場合、喫煙者が乳がんになる割合は、非喫煙者の3・6倍もあった。非喫煙者でも受動喫煙があると、乳がん発症率が2・6倍になった。閉経前は乳がん発生にかかわりが深い女性ホルモンの働きが活発で、たばこの影響が出やすいと考えられるという。閉経後の女性では、喫煙による差はみられなかった。

 研究班の花岡知之・国立がんセンター予防研究部室長は「喫煙や受動喫煙を避けることが、乳がん予防の一歩につながることを示す結果」と話している。

抗がん剤「タキソール」で副作用、6人死亡

2004/11/25 読売新聞 Yomiuri On-Line
 抗がん剤「タキソール」(一般名・パクリタキセル)を投与されたがん患者10人が、消化管壊死(えし)や腸管閉そくに陥り、うち6人が死亡していたことが25日、厚生労働省の調べで分かった。

 同省では、重大な副作用の可能性があることを使用上の注意に明記するよう、輸入元のブリストル製薬(東京)に指示した。

 同省によると死亡したのは、60歳代の男性1人と50―70歳代の女性5人。直接の死因は多臓器不全などで因果関係は明確ではないが、同省で全国の医療機関に注意を呼びかけている。同剤は1997年に販売が開始され、年間の推定使用患者数は約6万人。

肺がん治療薬イレッサの副作用死で遺族が提訴 東京地裁

2004/11/25 The Sankei Shimbun
 肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の副作用で死亡したさいたま市の女性=当時(31)=の遺族が「危険性を認識しながら医療機関への警告を怠った」として輸入販売会社アストラゼネカ(大阪市)と輸入を承認した国に計3850万円の損害賠償を求める訴訟を25日、東京地裁に起こした。

 イレッサの副作用による国内の死亡者は440人以上(厚生労働省調べ)とされ、7月に京都府の男性患者の遺族が同様の訴訟を大阪地裁に起こしている。

 訴状などによると、女性は2001年10月に肺がんと診断され、02年8月からイレッサを約50日間服用した後、副作用による間質性肺炎で死亡した。

 イレッサは英国のアストラゼネカ本社が開発し、日本では02年7月に承認、販売された。遺族側は「わずか半年弱の審査でスピード承認しており、海外の副作用例などを十分調査していない」と国の過失を主張。販売会社については「副作用の危険を承認後まで国に報告せず、医療機関への警告など被害防止を怠った」としている。(共同)

女性のがん専門医育成 06年から研修開始 婦人科腫瘍学会

2004/11/21 asahi.com
 産婦人科医が中心の日本婦人科腫瘍(しゅよう)学会が、女性特有の卵巣がんと子宮がんの専門医育成に乗り出す。来年1月に暫定指導医を認定、06年から研修を始める。高度な知識や先進技術を持つ医師が必要とされていることにこたえる。患者が医師を選ぶ目安になりそうだ。

 卵巣がんは食生活の欧米化で罹患(りかん)率や死亡率が上がりつつある。子宮がんは若い患者が増え、子宮温存を望む人の割合が高まっているという。

 また、子宮頸(けい)がんの治療では、同じ進行度3期でも、子宮内に放射線源を入れて治療する腔内(くうない)照射を受けた患者は5年生存率が64%、受けなかった患者は23%と大差が生じるとの厚生労働省研究班の調査結果があるが、腔内照射の設備を持つ施設、技術を持つ医師は、ともにまだ少ない。

 こうした状況に対応するため、当初は大学病院を中心に研修施設と暫定指導医の認定を始め、専門医をめざす医師らに認定施設で3〜5年の研修を積んでもらう。09年に第1陣の専門医が誕生する予定だ。

がん情報、患者の視点で ネットワークひろしま

2004/11/16 中国新聞地域ニュース
 ■HP充実 23日電話相談も

 患者とその家族の視点に立ったがん情報を提供する「がん患者支援ネットワークひろしま」が、広島の医師や看護師、患者らによって結成された。今月初め、特定非営利活動法人(NPO法人)の認証を取得。二十三日には電話相談「がん110番」を開く。

 理事十人が十月末、広島市中区で会合を持ち、活動方針や電話相談の方法などについて話し合った。「今やインターネットで病気の情報を集めるのは当たり前。ホームページ(HP)を充実させたい」などと、意見を交換した。

 ネットワークは、がん患者会を世話する西区の佐々木佐久子さんらが、順天堂大医学部の広川裕教授に医療への疑問を相談していたのがきっかけ。「より患者の視点に立った情報提供ができないか」と、がん医療や在宅医療に携わる医師らと意見交換し、四月から会合を重ねてきた。

 佐々木さんは四年前、大腸がんで手術を受けた。「三分診療と呼ばれる医療現場では、患者は医師に聞きたいことが聞けず、医師は説明する時間が足りない。ネットワークがそのすれ違いを埋める懸け橋になれば」と期待をかける。

 メンバーは約十五人。今年五月から「市民のためのがん講座」を三回開催した。情報提供のためのHPhttp://www.gan110.rgn.jp)も開設。今後は、自宅療養に欠かせない在宅医・訪問看護ステーションに関する情報提供や、治療の考えを主治医以外に聞くセカンドオピニオンの窓口も務めたいと計画している。

 活動を支える会員の募集も始めた。がんについての情報や協力医による医療アドバイスなどを盛り込んだ会報を配布し、理解の輪を広げる。

 理事長を務める広川教授は「がんと診断された時から、患者や家族はさまざまな選択を迫られ、自ら情報を集めなければならない。協力医を増やしてネットワークを充実させ、患者への情報不足を補うとともに、在宅医の紹介など地域医療のコーディネートにも力を入れたい」と語る。

 二十三日の電話相談は午前十時から午後三時まで。スタッフのほか、必要に応じて広川教授や外科、麻酔科、精神科など各分野の専門医が対応する。TEL090(6419)4595、090(6432)7424。

30代後半の乳がん検診、超音波導入の検討を 厚労省

2004/10/30 asahi.com
 乳がん検診について、厚生労働省の研究班(班長=大内憲明東北大教授)は「30代後半を対象にした超音波(エコー)診断の導入を検討すべきだ」とする見解をまとめた。市町村の実施する検診制度が今春から変わり、30代は乳房X線撮影(マンモグラフィー)の対象に入らず、視触診も廃止されたため、検診の対象外という状態が続いている。11月1日に大阪市である日本乳癌(がん)検診学会総会で発表される。

 研究班は、全県民を対象とした宮城県のがん登録(93〜97年)をもとに、女性の年代別の乳がん罹患(りかん)率を調べた。30〜34歳は1万人当たり1.63人だったが、35〜39歳は3.93人に急増。同じ35〜39歳の子宮頸(けい)がんの罹患率(同0.96人)に比べても大幅に高かった。

 一方、マンモグラフィーは乳腺密度が濃い30代には向かないとされる。米国の論文によると、マンモグラフィーの感度は、乳腺密度の濃い人では48%なのに対し、エコーは76%と優れており、「30代の検診で導入するならばエコーの方が有効」という意見が多い。

 研究を担当した岩手県立中央病院の大貫幸二乳腺外科長は「30代で早期にがんが発見できれば平均余命も長いため、検診の効率が高い。エコーの導入を検討すべきだろう」と話している。

 厚労省は、40代以上の乳がん検診に、2年に1回のマンモグラフィーと視触診の併用検診の導入を決めたが、30代については今後の検討課題とされていた。このため、従来は検診の対象だった30代を検診からはずした自治体も多い。

がん治療:八木田・元近畿大教授を処分 癌治療学会

2004年10月29日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE
 日本癌(がん)治療学会(北島政樹理事長)は28日、八木田旭邦・元近畿大教授が開発したとしている「新免疫療法」の治療成績データが、「患者に誤解を与える」として八木田氏を厳重注意処分にした。

 八木田氏は「11.5%の患者のがんが消え、3分の1の患者でがんが半減する」と著書などで効果をうたっていた。【鶴谷真】

がん放射線治療の精度向上 中枢神経近くも可能 放医研開発

2004/10/17 The Sankei Shimbun
 がん細胞を放射線で除去する放射線治療の際、照射停止の速度を大幅に短縮した世界最速の「高速ビーム遮断法」を文部科学省所管の独立行政法人、放射線医学総合研究所(千葉市)が開発した。照射の停止操作をしてから実際に停止されるまでの時差が解消されるため、正常組織を損なわずに悪性腫瘍(しゆよう)だけをより正確に狙い撃ちすることが可能になり、これまで照射を見合わせていた中枢神経近くの腫瘍にも適用できる見通しという。臨床実験などを通じて数年内の実用化を目指している。

 同研究所では平成6年から、シンクロトロンと呼ばれる円形の加速器を使って炭素線(放射線)を光速の約70%に加速した後、腫瘍に照射する治療を行ってきた。

 しかし、肺がんや肝臓がんの治療では、照射部位が患者の呼吸によって動くため炭素線を止めても現実の停止位置に誤差が生じ、わずかではあるが、正常細胞にまで照射し死滅させてしまう欠点があった。また、中枢神経近くにできた脊索腫や脳腫瘍については、周囲の組織を傷つける恐れがあるため、放射線治療を見送るケースが少なくなかった。

 今回の新手法は、同研究所重粒子医科学センターの山田聰・加速器物理工学部長らのグループが開発。炭素線の取り出しに使われる高周波電場と炭素線の加速・減速に使われる高周波電場を同時に停止することで、炭素線の停止開始から実際に止まるまでの時間を従来の約20分の1にあたる100万分の50秒にまで短縮した。

 「感覚的には手術に使うメスをレーザーメスに代えるぐらい飛躍的に精度が向上する。より精密な線量のコントロールによって、これまで足踏みしていた中枢神経近くの腫瘍には特に有効だ」(野田耕司・主任研究員)という。

 国内のがん治療は現在、放射線治療と抗がん剤投与、外科手術による摘出の3つに大別されるが、いずれも副作用や技術面で問題をかかえ、決定的な治療法は確立されていない。今回の高速ビーム遮断法は放射線がん治療分野で、世界的にも注目されている。

乳がん治療、乳房の行方は曜日次第?医局間で格差

2004/10/16 読売新聞 Yomiuri On-Line
 乳がん治療で、同じ大学病院内なのに「第1外科」「第2外科」など医局ごとにばらばらに手術が実施され、手術件数や乳房温存率にも差があることが、読売新聞社が全国の医療機関に実施したアンケートでわかった。

 これらの大学病院の多くは、曜日ごとに受け持ちの科を振り分けており、患者が最初に病院を訪れた曜日によって、その後の「運命」が左右されかねないのが実情だ。

 大学内で複数の医局が別々に乳がん治療に当たっていたのは、北海道大、東京医大、山梨大、高知大、九州大、福岡大、産業医大など17大学。受診した患者の重症度が違うため、単純に比較できないものの、手術件数や、乳房を残す温存手術の実施率に違いがあった。がんの転移防止のため、わきの下のリンパ節を切除するかどうかの判断基準など、治療成績や後遺症の有無につながる治療方針が、同じ病院内で異なる大学も二大学あった。

 医局ごとに別々に治療していても「定期的に会議を開いて患者の情報を共有する」(九州大)という大学がある一方、「同じ大学でも組織は別。治療実績などを一緒にしないでほしい」「連携が全くなく、相手の医局が何を考えているのかわからない」と答えた大学も複数あった。

 紹介状を持たない初診患者の振り分け方は、17大学中、12大学で曜日制だった。例えば東京医大では、月、木曜日に来た患者は第1外科が担当し、火、金曜日は第3外科で診る。これには学内にも「患者にとってルーレットゲームのようなもの」との批判があり、来年度から両科の乳がん担当医を集めた「乳腺外科」を発足させ、共同で治療に当たる計画だ。

 日大板橋病院でも、今春まで第1、第2、第3外科が別々に乳がんを診療し、同じ医師が胃、大腸、乳がんなどいろいろな手術を手がけてきた。これでは乳がん専門医でない医師も乳がん治療を行うことになるため、今年4月、各科の乳がん担当医8人による乳腺内分泌外科がスタートした。天野定雄・同科部長は「外来を訪れる患者さんも増えた」と話す。

 大学病院には第1、第2外科など「ナンバー外科」が林立し、腹部や胸部を開かない乳がん手術は、外科医の間で“初心者向き”とみなされ、各科で行われることが多かった。しかし、乳房温存手術など美容面が重視され、放射線や抗がん剤治療も必要になる乳がんは、専門医による治療が欠かせず、医局の縦割りの弊害が表面化している。

がん「兵糧攻め」たんぱく質を発見…血管形成を抑制

2004/10/03 読売新聞
 がん細胞に栄養や酸素を運ぶ血管の形成を抑制するたんぱく質を、東北大加齢医学研究所(仙台市)と塩野義製薬(本社・大阪市)の研究グループが発見した。がん細胞への栄養などの補給路を断ち、「兵糧攻め」にすることで、がんの進行や転移を阻止することが期待できるという。

 がんは、細胞から分泌する物質が、近くにある血管に働きかけて新しい血管を作り、栄養や酸素を取り込み増殖する。

 同研究所の佐藤靖史教授(血管生物学)らが発見したのは、血管を作っている血管内皮細胞にあるたんぱく質で、がん細胞から分泌される物質で新たな血管が過剰に作られないようにブレーキをかける役割をしていた。佐藤教授らは、このたんぱく質を「バソヒビン」と命名。マウスを使った実験では、バソヒビンを大量に作るよう遺伝子を改変した肺がん細胞の大きさを、通常の肺がん細胞に比べ、半月後、4分の1以下に抑えることに成功した。

 同グループは、バソヒビンをもとに、がん治療の新薬や新しい診断法の開発を進めることにしている。このたんぱく質の発見は、米医学雑誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」の10月号で発表される。

 がん細胞に栄養などを補給する血管ができるのを阻止するがん治療法は、最近注目されており、佐藤教授らの「バソヒビン」とは別の方法で、大腸がんを兵糧攻めにする治療薬が米国で今年2月に世界で初めて認可されている。

乳がん治療病院格差、乳房温存率5―94%…読売調査

2004/10/02 読売新聞 Yomiuri On-Line
 乳がんの治療で、従来の乳房全摘手術に代わり、乳房を残す温存手術が広がっているが、手術全体に占める温存手術の比率は、医療機関によって5%から94%まで大きなばらつきがあることが、読売新聞が実施した全国調査で明らかになった。

 同じ病状でも、受診先によって乳房の切除・温存が分かれる事態になり得るだけに、病院の治療実績などの情報公開が求められそうだ。

 調査は、乳がん治療の主要な502医療機関を対象に、昨年1年間の手術件数や温存率、放射線治療設備の有無などを文書で質問。412施設(82%)から回答を得た。

 手術の総件数は約3万2000件で、1病院当たりの実施件数は、癌(がん)研究会付属病院(東京)が785件で最多だったのに対し、最も少ない施設は10件だった。手術の技術水準を保つには、ある程度以上の実施件数が必要とされるが、大学病院でも十数件のところもあるなど、大規模な病院なら実績があるとは限らなかった。医療機関の平均的な温存手術実施率は48%で、40―60%台の施設が6割を占めた。一方、温存率が70%を超える施設と、逆に30%に満たない施設も、ともに1割以上あった。

 日本乳癌学会は1999年、温存療法の適用基準を「がんが3センチ以下で、放射線治療が可能」などとする指針を定めた。しかし、実際には各施設が個別に基準を設けており、温存率の開きにつながっているとみられる。

 乳房温存手術には、残った微細ながんをたたく放射線治療や、正確な病理、画像診断が欠かせない。ところが、回答した施設の23%には放射線治療設備がなかった。その多くは「設備のある施設と連携して治療している」としたが、「連携もしていない」と答えた8施設の平均温存率は29%と低かった。

 同学会長の園尾博司・川崎医大教授は「エックス線装置による検診で、温存が可能な早期の乳がんが増えているが、スタッフや設備が整わず、指針に基づく治療が難しい施設もある。治療水準の向上を図り、専門医のいる病院などの情報を積極的に公開する必要がある」と話している。  ◆乳房温存手術=がんとその周囲だけを切除し、乳房を残す手術。大部分の早期乳がんでは、乳房温存手術後に放射線治療をすれば、乳房全摘手術と生存率に差はない、とする欧米の臨床試験の結果が1980―90年代に次々に発表され、日本でも90年代から普及した。

中高年男性のがん、3割は喫煙が原因?…厚労省調査

2004/10/02 読売新聞 Yomiuri On-Line
 中高年男性のがんの3割は喫煙が原因となっている可能性の高いことが、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター部長)の大規模調査でわかった。

 研究班は、1990年から93年に40―69歳だった男女9万2790人について、がんにかかったかどうかを喫煙習慣とともに約9年間にわたり追跡調査した。

 調査が終わる2001年末までにがんになったのは約5000人。男性の52・2%、女性の5・6%が、調査終了時にたばこを吸っていた。

 調査開始から継続してたばこを吸っていた人ががんになった割合は、吸わない人に比べ男性で1・64倍、女性は1・46倍に達した。調査終了時に禁煙していても、男性は吸わない人より1・47倍がんになりやすく、過去の喫煙の影響がぬぐいきれないこともわかった。これらの数字をもとに、喫煙が原因でがんになった人の割合を推定すると、男性は29%、女性では2・8%となった。

 研究班は、「結果を日本人全体にあてはめると、喫煙習慣がなければ、9万人ががんにならないで済んだ可能性がある」と説明している。

がんのリンパ節転移、ネズミ使い抑制に成功…京大

2004/10/01 読売新聞 Yomiuri On-Line

 がん細胞は、自分でリンパ管を新しく作って「転移」するが、京都大大学院の久保肇・特任助教授らのグループが、「リンパ管新生」と呼ばれる、この現象を抑えて転移を防ぐことに世界で初めて成功し、福岡市で開会中の日本癌(がん)学会で報告した。

 がん細胞は、新しいリンパ管を通じて小さな細胞が運ばれ、リンパ管などが密集するリンパ節に転移する。この過程では、リンパ管を増やすVEGF―Cという特殊な物質を分泌する。

 研究チームは、リンパ管がこの物質を受け取って増殖しないようブロックする「抗体」を合成し、胃がんの細胞をネズミに移植して実験。抗体を使わなかったネズミでは16匹中12匹(75%)の高率でリンパ節に転移したのに対し、抗体を使ったネズミは16匹のうち3匹(19%)しか転移しなかった。

犬の鼻、がん患者の尿識別 英医学誌

2004/09/24 The Sankei Shimbun
 ぼうこうがんなどの患者の尿のにおいを、犬が高い確率で識別できるという研究結果を、英研究者らがまとめ、英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル最新号で発表した。AP通信が24日、報じた。

 犬は、患者の尿に含まれる異常なタンパク質をかぎ分けられるとみられる。研究者らは36人のがん患者を含む144人分の尿サンプルを使って、コッカースパニエルやラブラドルレトリバーなど6頭を7カ月以上にわたって訓練。

 その後、7つの尿サンプルの中から、がん患者のものを識別するテストを行ったところ、41%の確率で成功した。コッカースパニエルの成績は優秀で56%の成功率だったという。

 健康な人のものとして提供された尿を、全頭ががん患者としたため、提供者の精密検査を行い、右の腎臓に悪性腫瘍(しゅよう)が見つかったケースもあった。

 全頭がかぎ分けに成功した尿もあったが、全頭が失敗した尿もあり、病気の進行具合や患者により、尿に残る兆候が異なる可能性があるという。(共同)

市町村で実施率に大きな差 高精度乳がん検査で厚労省調査

2004/09/02 The Sankei Shimbun
 国が普及を目指している高精度な乳がん検査法の乳房エックス線撮影検査(マンモグラフィー)を、住民の健康診断で実施している市区町村の割合は、都道府県により100%から3・8%までの大きな差があることが、厚生労働省が2日、発表した昨年度の全国実態調査で明らかになった。

 マンモグラフィーは視触診に比べ、早期発見が望めるため、国は本年度から受診対象を従来の50歳以上から40歳以上に広げた上、来年度からは全市区町村で受診可能とするよう求めている。

 しかし、財政難などを理由に、市区町村の1割近くが「実施予定なし」と答えており、導入が進んでいない現状が明らかになった。

 調査は、全国3155市区町村の今年3月末現在の状況を、都道府県を通じ集約した。

 地方別の実施率では北海道が約79%と最高。ほかに東北と関東が約66%、中部約65%、近畿44%、四国約50%、九州・沖縄約58%で、最低は中国の約28%だった。

 都道府県別では、富山、石川両県が実施率100%。90%を超えたのは岩手、宮城、茨城、福井、和歌山、鹿児島など。最低は高知の3・8%で、続いて山口(5・7%)、秋田(7・2%)などとなった。

 マンモグラフィーが未実施の市区町村は1316。その約8割は来年度までに実施予定としたが、残る296は「実施予定なし」と答えた。その理由は「市町村合併を予定」が最も多かったが、「財政的に整備できない」も目立った。

 理由には医療技術者不足も考えられるため、同省はマンモグラフィー配備、担当者の研修などの補助金約82億円を、来年度予算の概算要求に盛り込んでいる。

 ≪しこりの前段階で早期発見≫

 エックス線撮影検査(マンモグラフィー)は、乳房を板で挟み、平らな状態にしてエックス線を当て、乳房内を鮮明に撮影する方法。がんによるしこりを医師の視触診で見つける方法と違い、しこりになる前の乳房内の変化をとらえようとするもので、この段階で早期発見できれば治療の成功率は大きく高まる。

 米英ではこの検診の受診率は既に70%程度に達するが、長年、視触診が中心という時代が続いた日本では、近年でも2%程度だった。

 厚生労働省の研究班は2001年末、視触診のみによる乳がん検診の効果には疑問があり、マンモグラフィーと視触診を組み合わせた方法が死亡率減少につながる「医学的根拠がある」とする報告をまとめた。

 乳がんは日本人女性のがんでは最も多く、全身にも転移しやすいことから、マンモグラフィー普及はがん対策の柱のひとつになるとして、同省は国内に装置を広く普及させる方針を決定。死亡率減少だけでなく、早期発見による乳房温存で生活の質の向上も期待できると強調している。

 <マンモグラフィー> 乳がん診断法の一つで、乳房を上下や左右から板で挟んでエックス線撮影する。乳房内部を鮮明に見ることができる。厚生労働省研究班の報告では、視触診単独の検診を受けた40代女性の0・09%にがんが見つかったのに対し、マンモグラフィーを併用すると0・2%に増え、被ばくリスクより、がん発見の利益の方が大きいと判明した。

乳がん対策、国がX線装置の半額補助 500台整備へ

2004/08/30 asahi.com
 女性がかかるがんで最も多い乳がんの対策として、厚生労働省は05年度に、検診用の乳房X線撮影装置(マンモグラフィー)を新たに全国の自治体に500台、整備する方針を固めた。自治体の購入費用の半分を国が補助することにし、啓発費用を含め82億円を05年度予算概算要求に盛り込んだ。同装置による検診の受診率を現状の約2%から50%以上に引き上げ、早期発見と死亡率の低減につなげたい考えだ。

 このところ、毎年約3万5000人が乳がんにかかり、約1万人が死亡している。同装置は、視触診では見つけにくい早期の微小ながんを見つけることができる。厚労省は昨年度、自治体の検診について、視触診のみの検診を廃止し、罹患(りかん)者が増える40代以上に絞って同装置と視触診の併用検診を行う方針を打ち出した。

 現在、同装置は医療機関など全国に約3000台あるが、厚労省の仕様基準を満たすものは半分に過ぎない。これでカバーできる受診者は二百数十万人とみられ、年間の検診対象者の約4分の1しか受診できない状況だ。装置は1台3000万円以上と高額で、検診に導入している市町村は約半数にとどまっていた。

転移がん発見にクラゲの発光遺伝子

2004/08/28 読売新聞 Yomiuri On-Line
 クラゲの発光遺伝子などを組み込んだ無害のウイルスを体内に注入し、特殊な光を当ててがん細胞を光らせる方法を、岡山大学助教授らが設立したベンチャー企業が開発した。

 死亡率の高い転移がんの発見に役立つ成果で、9月に発行される米国のがん学会専門誌に掲載される。

 開発したのは岡山大病院遺伝子・細胞治療センターの藤原俊義助教授らが取締役を務める医薬品開発会社「オンコリスバイオファーマ」(東京都港区)。

 転移がんの発見は現在、CT(コンピューター断層撮影)装置や、放射線を当てて、がんを映し出すPET(陽電子放射断層撮影)装置が使われている。しかし、CT画像では小さな腫瘍(しゅよう)が、がんかどうかを判別するのが難しく、PET画像も腎臓やぼうこうのがんは発見できない。

 藤原助教授らは、オワンクラゲの発光遺伝子と、がん細胞が増殖する原因とされる酵素「テロメラーゼ」に着目。無害化したかぜウイルスにクラゲの遺伝子の一部とテロメラーゼの一部を別々に組み込み、がん患部の周辺に注射器などで同時に注入する。

 テロメラーゼのウイルスはがん本体と転移した部分だけで増殖し、光る性質を持つクラゲのウイルスも同時に増える仕組み。キセノン光を当て特殊なフィルターを通せば、がん細胞が黄緑色に光って見える。

 マウスを使った実験では、複数の数ミリのがん細胞を光らせるのに成功、今後、厚生労働省の認可を得て臨床試験を積み重ねる。藤原助教授は「肉眼で見えるので確実にがん細胞を取り除くことができる。早期実用化を目指したい」と話している。

 石川冬木・京都大大学院生命科学研究科教授の話「がんの遺伝子治療が注目される中、幅広い応用が考えられる大きな成果と言える」

がん患者を緩和ケア 県立広島病院内にセンター開所

2004/08/26 中国新聞地域ニュース
 がん患者の体と心の痛みを和らげるケアに取り組む「広島県緩和ケア支援センター」の開所式が二十六日午前、広島市南区の県立広島病院内の同センターであった。九月一日に患者の受け入れを始める。

 医療関係者ら約百人が出席した開所式では、藤田雄山知事が「センターを中心に、地域での緩和ケアのネットワークを広げたい」とあいさつ。本家好文センター長が、家庭的な雰囲気の病室(二十床)、患者と家族らの語らいの場として設置した屋上庭園など、鉄筋三階建ての施設を案内して回った。

 厳しい財政事情を背景に県は二〇〇〇年、がんセンターの整備構想を凍結。外来と入院の「緩和ケア科」、相談や在宅ケア支援、人材育成に当たる「緩和ケア支援室」の二つの機能を組み合わせた全国初の総合施設の整備をした。

 スタッフは医師、看護師、心理療法士ら二十四人。緩和ケアの先進国である英国のホスピスで看護師を務めた阿部まゆみ緩和ケア支援室長らがケアに当たる。

イレッサ:発症・死亡率跳ね上がる 輸入販売会社発表

2004年8月25日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIV
 肺がん用の抗がん剤「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)の副作用で、間質性肺炎などが起き、多数の死者が出た問題で、輸入販売元のアストラゼネカ社(本社・大阪市)は25日、副作用による間質性肺炎の発症率は5.8%、死亡率は2.3%との調査結果を発表した。同社は昨年3月に「発症率1.9%、死亡率0.5%」との結果を発表したが、今回は数字が跳ね上がった。イレッサは、一度は別の抗がん剤で治療を受けた患者に使うのが原則だが、こうした患者の場合、危険性がさらに高まることも分かった。

 同社は昨年6月から全国の615病院に依頼。イレッサで治療を受ける患者3322人を、治療開始から今年7月末まで追跡調査した。

 その結果、5.8%にあたる193人が、イレッサが原因と疑われる間質性肺炎を発症。うち75人が死亡した。

 イレッサ以前に別の抗がん剤を使った経験のある患者、体力が衰えて家事などが出来ない患者、たばこを吸っていた患者らは、いずれもそれ以外の患者に比べ、発症率が2倍程度高くなることも分かった。それぞれの正確な発症率は「別の会社に分析を依頼しデータが手元にない」と明らかにしなかった。

 発症・死亡率が大きく増えたことについて同社は「昨年は使った医師から自発的に報告があった副作用だけを数えたが、今回は最初から全副作用を確認しているためではないか。また昨年は、発症率の分母となる、イレッサの使用者数を過大に見積もったかもしれない」と話している。

 同社によると、イレッサは02年7月の発売以来、国内で推定6万〜7万人の患者が使用しているという。【高木昭午】

がん細胞を制御、産業技術研が「RNA」を人工合成

2004/08/16 読売新聞 Yomiuri On-Line
 遺伝子の本体であるDNAの働きを助ける「リボ核酸(RNA)」という物質が、DNAが収納されている人間の細胞の核の中で、DNAからの遺伝情報読み取りをストップできることを、産業技術総合研究所ジーンファンクション研究センター(茨城県つくば市)が世界で初めて発見した。

 このRNAは研究チームが人工合成したもので、がんを発生させる遺伝子の働きを抑える遺伝子治療につながると期待される。16日、英科学誌ネイチャーの電子版に発表される。

 多比良和誠・同センター長らは、人間の乳がん細胞で、がんを発生させる遺伝子と、がんを抑制する遺伝子を、それぞれ読み取り段階で停止させるRNAを設計。人工合成して作った各RNAを細胞に入れたところ双方の遺伝子の読み取りが止まり、細胞の増殖を制御できることを確認した。

 RNAは種類が多く、遺伝情報を読み出したり、その情報に基づいてアミノ酸を運んだりするなど、様々な機能がある。

 ◆RNA=多くの生物では、親から子へ伝わる遺伝情報はDNAに書き込まれている。体の各種細胞は、この設計図から自らに必要な遺伝子だけを読み取って、細胞の材料となるたんぱく質を作り出す。RNAはこの読み取りを担うなど、細胞の形成と維持に欠かせない物質。

心臓障害などの副作用…抗がん剤「アバスチン」で警告

2004/08/15 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ワシントン支局】画期的な大腸がんの治療薬(抗がん剤)として米国で今年2月に承認された「アバスチン」に心臓障害などの副作用の危険性があるとして、米食品医薬品局(FDA)が警告を発表した。

 14日、AP通信が報じた。

 AP通信によると、承認後にアバスチンで治療を受けた患者のうち数人が心臓障害で死亡。胸痛、心臓発作、脳卒中など心臓・血管障害の発生頻度も高まった。製造元のジェネンテック社によると、この薬の臨床試験で1人が死亡したが、薬と心臓障害の明らかな因果関係は認められなかったという。同社ではFDAと共同で詳しい原因究明にあたるとともに、医師に注意を呼びかけている。

 アバスチンは日本では未承認だが、国内でも個人輸入で使っている患者もいるとみられる。

やせた男性、がんに注意 厚労省研究班調査

2004/08/11 The Sankei Shimbun
 日本人男性は、やせているほどがんになりやすく、標準かやや太めに比べ、がん発生率は14−29%高いことが、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)の大規模疫学調査で分かった。米国のがん専門誌に11日までに発表した。

 研究班は、40−60代の男女約9万人を1990年から約10年にわたって追跡し、がんの発生率や死亡率と体格指数(BMI)との関係を調べた。

 BMIは、体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割った値。標準は22で、25以上が肥満とされる。

 BMIが21−29・9の男性ではがんの発生率はほとんど変わらなかったが、やせとされる21未満で増加傾向が顕著だった。23−24・9の人の発生率と比較すると、19−20・9の人は14%、14−18・9の人は29%、それぞれ発生率が高かった。女性では、こうした傾向はみられなかった。

 研究開始から数年でがんになった人を除いて分析しても同様の結果となり、がんが原因でやせたとは考えにくいという。

 研究班の井上真奈美・同センター室長は「発生率でなく死亡率でみた場合、やせの影響はさらに顕著になる。やせすぎの人は、がんになった後の回復力も弱いのでは」と、やせすぎに注意するよう呼び掛けている。

重粒子線

:理化学研など小型装置開発 がん治療に効果2004年08月02日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE
 がんを狙い撃ちできるとして注目される放射線の一種「重粒子線」(炭素イオン線)を、従来の100倍多く、世界最高の強さで発生させる小型装置を、理化学研究所(埼玉県和光市)の岡村昌宏・先任研究員と東京工大のチームが開発した。重粒子線治療施設は建造に100億円以上がかかるが、成果を活用すれば施設が小型化でき、費用も少なくて済むという。6日に千葉県船橋市で開かれる日本加速器学会で発表する。

 重粒子線治療は、炭素のイオンを加速器で光速近くまで加速し、患部に照射してがんをたたく。従来の放射線治療よりがんの縮小効果が大きく副作用が少ない。

 真空中で炭素にレーザーを当てると、炭素原子が電子とイオンに分かれたプラズマ状態になる。現行の装置はプラズマからイオンだけを取り出して加速器まで運んでいるが、岡村さんらは、プラズマのまま加速器に入れることで、イオンの量や強さを100倍以上に保つことに成功した。

 これにより、20メートル四方程度の場所が必要だったイオン発生装置は40センチ角の箱型に収まった。イオンが加速しやすいため、加速距離も3分の2で済む。治療施設を造る場合、建造費が大幅に削減できるという。

 がんの重粒子線治療施設は現在、国内に2カ所ある。94年に完成した放射線医学総合研究所(千葉市)の設備は、長さ120メートル、幅60メートル、高さ20メートルで、建造費は327億円。費用がかかることから患者負担も300万円を超える。【元村有希子】

がん放射線治療の医療機関、専門医わずか3割…初調査

2004/07/22 読売新聞 Yomiuri On-Line
 がんの放射線治療を行う医療機関のうち、専任の放射線科医がいるのは3割に過ぎないことが、日本放射線腫瘍(しゅよう)学会が行った初の実態調査で明らかになった。

 放射線の過剰照射事故が相次いでいることから実施された調査で、高度な技術を要する治療が、専門医不在のまま行われている場合が少なくない実態が浮き彫りになった。関連学会で作る医学放射線物理連絡協議会は、事故防止を目指した治療指針を今秋作成する。

 切らずにがんを治す放射線治療は急速に広がっている一方、青森県の国立病院機構弘前病院で昨年10月、276人の患者に過剰照射し、1人が死亡したことが明るみに出るなど事故も続出している。調査は、治療を行う774施設すべてに行われ、601施設から回答があった。

 放射線治療は、専任の医師1人と診療放射線技師2人で行うことを同学会は求めている。ところが調査では、治療を専門に行う医師がいる医療機関は33%にとどまり、放射線診断と兼任で行う場合が多かった。

 放射線治療は、診断とは全く異なる業務で、同学会は治療専門医の認定制度を設けているが、全国で400人余と、治療を行う施設より少ないのが実情だ。

 さらに専任の診療放射線技師がいる施設も48%と、半数に満たなかった。治療計画の作成や機器の管理などを行う放射線物理学の専門家「医学物理士」が常勤している施設はわずか7%だった。

 学会は推奨する照射量計算の基準を定めているが、弘前病院では、医師と技師が別々の基準で計算し、両者のコミュニケーション不足が事故につながった。推奨されていない基準を用いる施設が6%あり、両者が「協議していない」との回答も12%にのぼった。

 放射線治療では、照射量を部位ごとに細かく定める計画図の作成が必要だが、23%の病院では必ずしも作っていなかった。この作業に不可欠なコンピューター断層撮影装置(CT)とコンピューターソフトを備えていない施設すらある。

 医学放射線物理連絡協議会議長の早淵尚文・久留米大放射線科教授は「医師や技師が足りない状態での治療は危険。照射線量のチェックなどの指針を作り、徹底したい」と話している。

予約続々!がん発見に新型画像装置「PET」

2004/07/11 読売新聞 Yomiuri On-Line
 小さながんでも発見率が高いとされるPET(ペット、陽電子放射断層撮影)装置を7台そろえた世界最大規模のPET検診・診断施設が今月、横浜市に開設された。

 普及する背景には、国民の健康志向と、高度な診断を目玉にしたい医療機関の思惑がある。

 JR新横浜駅そばにオープンした「新横浜イメージングセンター」は来年度に5台追加し12台のPETを置く。すでに約600件の受診予約が入る盛況ぶり。最大の特徴は横浜市大など近隣の5大学病院はじめ、神奈川県の100以上の医療機関が共同利用することだ。

 提携医療機関から依頼されるがんの転移などの精密検査と、一般の健康な人が受ける検診の両方に使われる。検診は保険がきかず、10万円前後の費用が必要になるが、半数弱が検診希望者だという。

 同県ではこれまで、PET施設は横浜市大など2か所だけ。その他の施設では、PET検査が必要と判断した場合、患者を同大などに紹介していた。「PETがないと患者が他の病院に流出してしまう」との不安も共同利用を後押しした。

 国内普及台数は約100台。撮影装置以外に、放射性物質を作る設備も必要で、1台だけでも初期投資は10億円以上かかる。検診は全額自己負担だが、2年前にPETによるがん患者の検査に保険が適用され、徐々に広まりつつある。

 普及を支える一因には、「検診好き」という日本人の健康志向もある。CT(コンピューター断層撮影)装置の人口当たり普及台数は世界一で、PETへの期待も大きい。

 そんな需要を取り込む動きも盛んで、PET検診と観光をセットにした旅行企画も盛んだ。福島県郡山市の総合南東北病院では今年4月、隣接地にPET5台を持つ診断治療センターを開設したのに合わせ、温泉も掘った。検査後は温泉にゆったりつかる、というサービスを今夏にも始める。

 ただし、膀胱(ぼうこう)や腎臓などのがんは見つけられない。誤ってがんと判定する場合も少なくない。

 PET検診が、がんによる死亡率を下げるのに有効とのデータも今のところない。効果を調べる研究を進める国立がんセンターがん予防・検診研究センターの祖父江友孝(そぶえともたか)部長は「患者側に過大な期待があるのではないか。PETは万能ではないことを知った上で利用すべきだ」と話している。

 ◆PET=がん細胞が糖分を多量に消費する特性を利用し、放射性物質と糖を含んだ薬剤を注射して放射線を当て、がんを映し出す画像診断装置。全身を1度に撮影し、他の画像装置では発見しにくい転移も発見できる。脳卒中や心臓病の検査にも使われる。

イレッサ副作用で輸入販売会社に賠償請求

2004/06/21 The Sankei Shimbun
 肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の副作用により多数の死者が出た問題で、亡くなった患者の遺族らでつくる「イレッサ薬害被害者の会」は21日、輸入販売会社「アストラゼネカ」(大阪市)に、謝罪や損害賠償を求める申し入れ書を提出した。

 同社から誠意ある回答がなければ、関西に住む1遺族4人が7月にも「副作用の危険性を認識しながら、医療機関などに対する警告を怠った」として、同社と輸入を承認した国に対し、損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こすとしている。

 申し入れ書で、遺族らは同社に対し(1)法的責任を認めて謝罪し適正な損害賠償金を支払う(2)副作用状況を追跡調査する(3)薬害防止措置を講じる−などを求めている。

 イレッサは英国の製薬会社が開発。日本では世界に先駆け約5カ月のスピード審査で2002年7月に承認、発売された。劇的な効果があるとされるが、間質性肺炎など急性肺障害の副作用が多発、厚生労働省はこれまでに医療機関などから約450人が死亡したとの報告を受けたという。

 この問題では、岐阜県の遺族が病院側に損害賠償を求め提訴したほか、市民団体が厚労相に承認審査資料の開示を求める訴訟を起こしている。

 急性肺障害で二女=当時(31)=を失ったさいたま市在住の被害者の会代表、近沢昭雄さん(60)は「現在、イレッサを服用している人のためにも副作用情報を開示し、服用に際してきちんとしたガイドラインを作ってほしい」と話している。

乳がん:超音波で焼き切る 傷つけずに乳房温存

毎日新聞 2004年5月20日 Mainichi INTERACTIVE
 乳房に傷をつけずがん細胞だけを超音波で焼き切る新治療法を宮崎市の「ブレストピアなんば病院」(難波清院長)が導入し、英国の施設などと共同で国際臨床試験を始めると、20日発表した。MRI(磁気共鳴画像化装置)で位置を確かめながら、超音波をがん細胞に集中して当てる方法で、治療効果や副作用を確認するという。

 この治療法は米ハーバード大のヨーレス教授らが開発した。数百本の超音波を虫眼鏡の原理で1点に集め、60〜80度の熱でがん細胞を焼く。エネルギーを集中させた部分以外は低温のため、乳房を傷つけることはないという。

 対象は2センチ以内の乳がん。患者はMRIと超音波照射装置が組み合わされたベッドの上にうつぶせになり照射を受ける。1カ所につき約20秒照射し、約90秒冷却する。これを30〜40回繰り返し、がん細胞を焼く。手術時間は約2時間半で、全身麻酔は必要ない。臨床試験では、焼き切れないがんが残るかどうかや、やけどなどの副作用がないかなどを確認する。

 同病院は4月、患者の同意を得て、通常の乳房温存手術でがんを摘出する前に新治療法を実施した。がんのあった部分を手術で取り出して検査したところ、がん細胞は見つからなかったという。

 難波院長は「保険診療の適用には5年以上必要かもしれない。自費であれば約150万円かかるが、今すぐにも実施できる」と話している。【吉川学】

乳がん検診を 広島で雨中の訴え

2004/05/17 中国新聞地域ニュース
 ピンクの列、5キロ歩く

 乳がん検診の大切さを訴える「2004ブレストケア ピンクリボンキャンペーン」が十六日、広島市中区の基町クレドふれあい広場などであった。ピンクのTシャツやタオルを身に着けた参加者約八百人は、雨天をついて市中心部を歩いて早期発見・早期治療を喚起した。

 「ブレストケア」は、乳房の健康について関心を持ち、適切な検診や治療を勧める啓発語。日本では、年間一万人が乳がんで命を落としている。視触診だけでは発見が難しく、マンモグラフィー(乳房エックス線撮影装置)の普及が課題となっている。

 学生からお年寄りまでの参加者は、ピンクの風船を携え県庁前をスタート。中区本通など五キロを歩いて、ピンクに込めた「乳がん予防」をアピールした。安佐北区の主婦上森厚子さん(62)は「友人を乳がんで亡くし、昨年初めてマンモグラフィーを受けた。多くの人に検診の大切さを伝えたい」と話していた。

 午後からは原爆資料館東館で講演会とシンポジウムを開いた。キャンペーンは、特定非営利活動法人(NPO法人)ひろしま女性NPOセンター未来が、広島県内では初めて企画。患者の会や医療関係者などが呼びかけに賛同し、実行委員会には十団体が名を連ねた。

肝臓がん再発率、1日たばこ10本で2倍に

2004/05/17 読売新聞 Yomiuri On-Line
 治療して肝臓がんの病巣が消えても、1日にたばこを10本以上吸う習慣があると、がん再発の危険性が約2倍に高まることが、北里大医学部の渋谷明隆講師の調査で分かった。

 同大病院で1991―2002年に肝臓がん治療を受け、見かけ上がん病巣が消えた131人を追跡調査。再発した73人について、性別、年齢、治療法、生活習慣など様々な角度から分析し、再発を招いた原因を探った。

 その結果、毎日10本以上の喫煙習慣がある人が肝臓がんを再発する確率は、そうでない人の1・8倍だった。最も強い関連があったのはC型肝炎ウイルス感染の有無で、感染者の再発率は非感染者の約3倍。肝臓に複数のがん病巣があった場合も、再発率は約2倍だった。それ以外に目立った差のある要因はなかった。

 渋谷講師は「3つの再発要因のうち、喫煙だけは自分の努力で解決できる。肝臓がんの治療をした人は、禁煙した方がいい」と話している。


抗がん剤:「イレッサ」実験データ開示求め提訴

2003年08月02日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 抗がん剤「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)を使った臨床試験や動物実験の詳細なデータを開示しないのは不当と主張して、「薬害オンブズパースン会議」(東京都新宿区、鈴木利広代表)など三つの市民団体が1日、坂口力厚生労働相を相手取り、不開示決定の取り消しを求める訴訟を東京地裁に起こした。

 データは、イレッサの承認申請の際に、輸入販売元のアストラゼネカ社(大阪市北区)が厚労省に提出したもの。3団体は今年4月に情報公開請求をしたが、同省は「開示すると(ア社の)利益を害するおそれがある」などの理由で、5月に不開示を決めた。【高木昭午】

イレッサ副作用:承認1カ月前に死亡例 厚労省報告せず

2003年03月23日 [毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 抗がん剤「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)の副作用問題で、承認より1カ月余り前の昨年5月に、国内でも間質性肺炎による死者が出ていたことが分かった。販売元のアストラゼネカ社(本社・大阪市)は厚生労働省に報告していたが、同省は昨年末の検討会で公表した資料に記載せず、承認前に国内で死者はなかったとしていた。厚労省は承認の可否を審議した薬事・食品衛生審議会薬事分科会にも報告しておらず、死亡例を軽視した対応が問われそうだ。

 亡くなっていたのは、肺がんのため、ア社の英国の親会社からイレッサの無償提供を受けていた73歳の男性。昨年5月16日に間質性肺炎を発症、同24日に死亡した。ア社は同27日、同省に男性の副作用死を報告した。

 ところが同省は、同6月12日に開催された薬事分科会でこの事実を報告しないまま承認の了承を得て、7月5日にイレッサを承認した。

 同省は昨年末に専門家を集めて開いた検討会で、承認前に報告のあった副作用例の一覧表を公表したが、一覧表に男性の例は掲載されていたものの、死亡していないことになっていた。

 厚労省はこれまで、承認前に副作用による間質性肺炎の疑いがあると判断した患者は国内外で計7人で、死者は海外の2人だけと説明。ア社に対し、薬の説明文書に致死的な危険性を示す警告欄を設けるよう指示しなかった理由を「海外からの報告は情報が少なく、データの取り寄せも難しい。イレッサと死亡は完全に関係ありと断定できなかった」としていた。

 また、同省自身が審査報告書で「国内と海外で効果や副作用の出方に差がある」と指摘しており、国内患者の副作用死データは重要だったとみられる。発売後も日本では海外より高い率で間質性肺炎が発生している。

 同省審査管理課は「国内で死亡例が1例出ても安全性に関する判断には影響しないと考え、分科会には報告しなかった。年末の検討会で公表した資料で死亡の事実を記載していなかったのは単純ミスで、隠したわけではない」と説明している。 【鯨岡秀紀、高木昭午】

抗がん剤:イレッサの副作用問題で、厚労省が調査始める

2003年03月16日 [毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 抗がん剤「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)の副作用問題で、販売元のアストラゼネカ社(本社・大阪市)が昨年9月の時点で、間質性肺炎などの重大な副作用の発症率が、発売前の臨床試験の倍以上に達していたのを知りながら、厚生労働省へ薬事法の期限内(15日以内)に報告していなかった疑いがあることが分かった。同省は薬事法違反の可能性もあるとみて調査する。

 同省の指示で大阪府が実施した立ち入り調査の結果によると、ア社には昨年7月の発売から9月11日までに、間質性肺炎13例(死亡7例)の報告があった。この時点でイレッサを使った患者は計千数百人で、発症率は患者の約1%に達していた。

 ア社は同日、社内で「管理責任者及び安全性情報担当責任者による会議」を開き、「(発売前の)臨床試験時(発生率約0・4%)に比べて発生傾向は変化している。今後の対策を検討する必要がある」と判断していた。さらに、医療機関からの問い合わせがあった場合の対応について、強く求められた場合のみ、発売後の副作用例の情報を提供するとの方針も決めていた。

 薬事法は、重要な副作用の発症率が過去のデータより高いと分かった場合は、情報入手から15日以内に厚労省に報告するように定めている。しかしア社は、いまだにこの事実を報告していない。

 ア社は昨年9月、間質性肺炎が発売前の臨床試験で発生していたことを医師に伝えるよう、医療機関を回る担当者に指示した。しかし、発売後に間質性肺炎が多発している事実を伝える指示は出さなかった。危険性が警告されないまま、投与患者数は同月末には約7000人に達した。

 ア社は「昨年9月の段階では、精査された情報とは言えず、この時点で出すのは正しくないと考えた」と釈明している。 【鯨岡秀紀、高木昭午】

<がん判定>日本製粉が新キット開発 大腸がんなど10分で確認

2003年03月11日(毎日新聞)YAHOO!News
 日本製粉(東京都渋谷区)は11日、がんを簡単に短時間で見つけられる判定キットを開発したと発表した。がんのときだけ体内で作られる特定の酵素を、尿や便でチェックする仕組み。妊娠判定用に市販されているようなキットで、大腸がん、前立腺がんを約10分で確認できるという。同社は04年11月以降の発売を目指し、「将来は家庭でのがんチェックも可能にしたい」と話している。

 同社と産業技術総合研究所の共同チームは、がん細胞が増殖するときに「ブラディオン」という酵素が出現するのを見つけた。がんがないときは作られないため、がん発見の「目印」になる。

 大腸がんは便に混じる血液、前立腺がんは血中のPSA(前立腺特異抗原)が増えると、がんの可能性が高まるため、がん診断の指標に使われる。ただ、痔(じ)や前立腺肥大などで陽性になるケースも多い。

 これに対し、ブラディオンは、がんのときにしか検出されず、早期のがんも発見可能。また量によってがんの進行度も確認できる特徴がある。産総研の田中真奈実・ブラディオン連携研究体長は「だれでも簡単にがんを確認できる。無駄な検査を減らし、しかも確実にがんを見つけることができる画期的な検査法だ」と話している。【永山悦子】

がん:早期発見へ新たな血液検査法 千葉大グループ

2003年03月03日 Mainichi INTERACTIVE
 千葉大大学院医学研究院先端応用外科の落合武徳教授と島田英昭講師の研究グループは3日、血液中の抗体たんぱく質を調べることで、がんかどうかを診断できる新しい血液検査法を開発したと発表した。まだ症状が出ていない人のがんを検知できた例もあり、早期発見法につながると期待される。米国がん学会機関誌「キャンサー」最新号に発表した。

 同グループが開発したのは「血清p53抗体」という血液検査法。がん細胞では「p53」という遺伝子が異常になることがある。今回の検査法は、p53遺伝子異常が生み出す異常なたんぱく質に反応するために血液中にできる抗体を検知する。

 全国1085人のがん患者を対象にこの方法で血液検査をしたところ、約20%の221人(20.4%)を陽性と判定できた。とくに頭頚部がん(32%)、食道がん(30%)、直腸がん(24%)、子宮がん(23%)などで、陽性と判定できる割合が高かった。一方、がんではない人を陽性と誤判定するケースは少なく、「血清p53抗体」を、信頼できる「腫瘍マーカー」にできることが分かった。

 研究グループは、厚生労働省にも保険医療の申請をしており、認可されれば、がん検診にも応用が可能という。 【曽田拓】

抗がん剤:イレッサの販売、使用中止を要望 NPOなどが

2003年03月01日 Mainichi INTERACTIVE
 抗がん剤イレッサ(一般名ゲフィニチブ)の副作用問題で、NPO「医薬ビジランスセンター」(浜六郎理事長)と「医薬品・治療研究会」(別府宏圀代表)、福島雅典・京都大教授(薬剤疫学)は28日、イレッサの販売や使用中止を求める要望書を坂口力厚生労働相と販売元のアストラゼネカ社(本社・大阪市)に送った。

 要望書は「安全性にきわめて重大な問題があり、危険の方が利益よりも大きいと推測される」と指摘。ア社がイレッサの肺毒性を示す動物実験結果を承認後まで厚労省に報告していなかったことなどから、「承認までの安全性に関する重要な情報が開示されず、むしろ秘匿されていると考えられる」などとして使用中止を求めた。

最新がん情報、HPで公開

2003年01月31日 The Sankei Shimbun
 先端医療振興財団(神戸市)は31日、米国立がん研究所がインターネット上で公開しているがんの最新情報を日本語に翻訳し、2月3日からホームページ(HP)で無料公開すると発表した。

 財団によると、公開するのは、がんの専門的な説明と標準的な治療法、関連文献などをまとめたデータベース。同研究所のHPでは英語で閲覧できるが、日本語に翻訳し公開することで、日本国内の医療関係者や患者、家族に最先端の知識の普及を図る。

 内容は随時更新され、4月以降は「臨床研究情報センター(仮称)」(神戸市)が引き継ぐ。

 翻訳を監修する福島雅典京都大探索医療センター教授は「患者が最新の標準的な治療方法を知ることができれば、医者の恣意(しい)的な治療も減り、医師と患者の関係も変わるだろう」と話している。

 2月3日から開設するHPのアドレスはhttp://www.ncijapan.com

抗がん剤「イレッサ」承認前投与は296人

2003年01月09日 Yomiuri On-Line
 副作用が問題になっている抗がん剤「ゲフィチニブ」(商品名イレッサ)が、厚生労働省の輸入承認を受ける前に、臨床試験の枠外で肺がん患者に投与され死者も出ていた問題で、輸入発売元のアストラゼネカ日本法人(大阪市北区)は9日、国内で試験外投与を受けた患者数は、当初の説明の286人より10人多い296人だったことを明らかにした。

「イレッサ、日本だけ外せぬ」試験外投与でメーカー

2003年01月09日 Yomiuri On-Line
 副作用が問題になっている抗がん剤「ゲフィチニブ」(商品名イレッサ)が厚生労働省の輸入承認を受ける前に、臨床試験の枠外で国内の肺がん患者286人に投与されていた問題で、輸入発売元のアストラゼネカ日本法人本社(大阪市北区)は9日、「(試験外の薬剤提供は)グローバルに展開しているプログラムなので、日本の患者だけを外すことはできない」とし、多国籍企業として世界規模で試験外提供を行ってきたことを強調した。

 同社の村本史子・広報部長は「現場の医師、患者からのニーズに対応して発足させたプログラムで、すべての国のすべての患者に均等に機会を与えるようにしている。患者なら誰にでも提供するわけではなく、きちんとした基準でやっている」と述べた。

がん標準治療法公開、学会が今春から

2003年01月01日 Yomiuri On-Line
 がん患者が最新、最適の治療法を選択できるようにするため、国内のがん関連24学会が進行度、悪性度ごとにきめ細かな標準治療法のデータベースを作り、今春からインターネットで公開する。がんの治療の選択は医師の経験が頼りで、病院によって治療成績に格差が出る原因と指摘されている。標準治療の公開で、患者が主体的にかかわった治療方針の選択が可能となり、治療の質向上にもつながると期待される。

 データベースは、日本がん治療学会の専門委員会(委員長=佐治重豊岐阜大教授)が中心となり、胃がんや肺がん、乳がんなどの専門学会のほか、緩和ケア、医薬品副作用情報にかかわる学会など計24学会が協力して作る。

 欧米などで新たに効果が証明された治療法や薬剤の情報に、日本人の体質を加味し、効果が判断される。患者がアクセスして、部位、進行度、転移の有無などを答えていくと、最も生存率が高い治療法の候補がわかる。根拠となった医学論文も見られるようにする。

 データベースは、まず情報がまとまった部分から医師に対して公開され、実用性をチェックした後、一般向けに公開される。

 現在、国内のがん治療は、病院ごとに治療法が異なり、治療成績にも大きな格差がある。同じ進行度の胃がん治療を、がん専門病院や大学病院などで治療を受けた場合でも「5年後の生存率は46―78%と大きな開きがある」との学会報告もある。このため、標準治療を学会が示すべきだとの指摘が、専門医の間からも出されていた。

「がん予防プロジェクト」に調査協力 広島県熊野町

2002/12/27 中国新聞地域ニュース
 食事など生活習慣と、がんとの関連を分子レベルで分析し、生活改善と予防に生かす全国に先駆けた取り組みが、来年度から広島県熊野町で始まる。町民の同意を得て四十歳以上の一万人を目標にデータを収集し、がんになる危険性の個人差やより適切な予防策を探る。

 文部科学省の助成を受けている「がんの疫学研究領域グループ」(代表・田島和雄愛知県がんセンター研究所疫学・予防部長)に、町が協力する形で実施する。人の移動が少ないこともあり、疫学研究の対象に向いているという。

 来年夏から、町や町内の事業所での健康診断に合わせて、受診者の同意を得た上で生活習慣を尋ねる質問票記入と採血をする。

 質問票では、食事内容や飲酒量、喫煙本数、運動内容、睡眠時間などを質問。血液はコレステロールや肝・じん臓機能など通常の検査に加え、血清成分などを分析する。

 将来的には本人の同意を得て遺伝子解析も実施し、がん予防のための生活習慣を助言する。五年後に再度検査を受けてもらい、効果を調べる。

 がんになるリスクが高い生活習慣の人にはさらに血液分析をして発症の可能性を調べ、早期発見、治療に役立てる。

 町は町民の協力を求めるため、二月と五月に、がんや健康づくりの専門家を招いて講演会やシンポジウムを開くよう計画している。

 町の人口は約二万六千人で、四十歳以上の町民は約一万四千人。町の調査によると、町民のがんの死亡率は県平均よりも高くなっている。平本芳之町長は「最新の研究成果により、町民の健康維持や医療費軽減、介護予防を進めたい」と期待している。


肺がん薬「ゲフィチニブ」、副作用死100人超す

2002年12月19日 Yomiuri On-Line
 世界に先駆けて日本がスピード承認した抗がん剤「ゲフィチニブ」(商品名・イレッサ)の投与で間質性肺炎などの急性肺障害を起こし副作用死した患者が、国内だけで100人に達していることが19日、厚生労働省の調査などで明らかになった。事態を重視した同省は、イレッサの使用を専門医に限定するなど、異例の使用規制に乗り出す方針を固めた。同省が専門家を集めて今月25日に開催する「ゲフィチニブ安全性問題検討会」で了承が得られ次第、早急に実施する。

 イレッサは、がん細胞を狙い撃ちにする新しいタイプの肺がん治療薬で、従来の抗がん剤のように白血球が減少するなどの重い副作用はほとんどないと期待されていた。しかし、承認前の臨床試験で発生頻度不明とされた間質性肺炎などの急性肺障害が、発売後に相次ぎ、問題となっている。

 厚労省や輸入販売元の「アストラゼネカ」(本社・大阪)によると、イレッサの副作用で死亡した患者は、10月15日の公表時点で13人、同26日時点で39人、今月4日時点で81人と次第に増加。19日までの集計(速報値)で約100人に上っていることがわかった。

 アストラゼネカ社が10月、医療機関に緊急安全性情報を出して慎重投与を呼びかけたにもかかわらず、副作用死が続いていることについて、同省は、医療現場で使用上の注意が徹底されていない可能性が高いと判断。イレッサの使用を、肺がんの化学療法に詳しい医師などに限定する方針。

 また、間質性肺炎などの副作用は、投与開始後2週間以内に発生するケースが多いことから、投与後数週間は患者を入院させ、十分な経過観察を行うことも使用条件として定めたい考えだ。

 これらの使用条件に対応できない医療機関には販売しないよう、アストラゼネカ社に指導する。

 イレッサの累積販売数は今年7月16日の販売開始以来、今月9日までで92万錠前後に上り、約4000の医療機関で計1万9000人余に投与された。過去の肺がん薬の登場時と比べ、10―20倍のペースで販売されているという。同省では、投与後の十分な経過観察など使用上の注意を徹底すれば、副作用死は大幅に減少するとみている。

肺がん治療薬、社外専門家が「有用性大」の見解

2002年12月06日 Yomiuri On-Line
 新しい肺がん治療薬「ゲフィチニブ」(商品名イレッサ)の投与を受けたがん患者81人が、間質性肺炎などの副作用によって死亡した問題で、同剤の輸入販売元である「アストラゼネカ」(本社・大阪)は5日、副作用死の原因究明と防止策などを策定するため、社外の医師ら8人による専門家会議(委員長=工藤翔二・日本医大教授)を設置した。

 同会議は同日、末期がん患者の一部にも有効という同剤の有用性は、重い副作用が起こる危険性を上回っているという見解を表明。内容の公平性について議論を呼ぶことになりそうだ。

肺がん治療薬「慎重に」被害者の父、会見で訴え

2002年12月05日 Yomiuri On-Line
 英国製肺がん治療薬「ゲフィチニブ」(商品名・イレッサ)の副作用で81人が死亡した問題で、同薬を投与された後に死亡した女性の父親が5日午前、厚生労働省内で記者会見し、「イレッサは使い方によっては毒になる。慎重に使ってほしい」と訴えた。

 会見したのは、さいたま市在住の自営業近沢昭雄さん(59)。二女の三津子さん(31)が昨年9月に肺がんと診断され、入退院を繰り返しながら、別の抗がん剤投与などの治療を受けていた。その後、昭雄さんがインターネットでイレッサのことを知り、今年8月に主治医と相談して使用を始めた。10月2日に肺炎の疑いがあると診断されて再入院し、その後、急速に悪化。約2週間後の10月17日に亡くなったという。

 昭雄さんは、「使い方によっては副作用を抑えることができるはずで、製薬会社も何らかの対策を取ってほしい」と訴えた。

         ◇

 薬害オンブズパースン会議などは、ゲフィチニブの副作用被害について実態調査を行うため、6日午前10時から、「イレッサ110番」を開設する。相談電話は同会議(電03・3350・0607)などへ。

肺がん薬「ゲフィチニブ」の副作用死、81人に

2002年12月05日 Yomiuri On-Line
 英国製の肺がん治療薬「ゲフィチニブ」(商品名・イレッサ)による副作用が相次いでいる問題で、同薬の販売開始から約5か月間に、副作用による間質性肺炎や急性肺障害で死亡した人が81人に上っていることが4日、厚生労働省の集計で分かった。同省によると、短期間にこれだけの副作用死が出たケースは過去に例がないという。ただし、同薬の使用者が多いことや、主に末期がん患者に使用されていることなどから、「現時点で、同薬が危険かどうかを評価することはできない」としている。

 同薬は、がん細胞を狙って効果を発揮する新しいタイプの抗がん剤で、世界に先駆けて今年7月5日に日本で承認された。しかし、同省は10月15日、同薬による副作用が相次いでいるとして、輸入販売元の「アストラゼネカ」(本社・大阪)に対し、医療機関に緊急安全性情報を配布するよう指示していた。

 同省によると、同薬は7月16日の販売開始から先月25日までに約1万7000人に投与され、291人が急性肺障害などの副作用を発症。このうち81人が死亡していた。

 副作用死が多発していることについて、同省は「死者の内訳を見ると、副作用を発症した日が不明の10人を除き、緊急安全性情報が出される10月15日以前に発症した患者は57人で、それ以降は14人。安全性情報による注意喚起で、死亡例は減ってきている」と話している。

肝臓がん再発危険性、ビタミンK2で3分の1に

2002年11月18日 Yomiuri On-Line
 肝臓がんを治療した患者に、安全な骨粗しょう症治療薬として普及しているビタミンK2剤を投与すると、がん再発の危険性を3分の1に抑えられることが、山本匡介・佐賀医科大助教授(内科)らによる臨床研究で明らかになった。これと別に東大などが行った臨床研究でも、転移の予防や生存率向上に効果があることを確認。研究者らは「今のところ副作用は全くない。肝臓がんの治療に広く使えるのではないか」と期待している。

 佐賀医大は、患部を電磁波で焼くなど様々な治療法によって「患部を完全に死滅または除去させた」と判断できた肝細胞がん患者32人に、「メナテトレノン」(商品名グラケー)を1日45ミリ・グラムずつ内服してもらい、内服しなかった29人と比較した。

 3―4か月ごとに再発の有無を調べた結果、グラケーを内服した患者、内服しなかった患者の再発率はそれぞれ、1年後が12・5%と51・7%、2年後が39・1%と84・5%、3年後が65・5%と92・2%。統計的に再発の危険性を計算すると、内服によって3分の1に減少することが分かった。特に、C型肝炎から進展したがんは、約4分の1となった。

 小俣政男・東大教授(消化器内科)らも、患部を焼くなどの治療を受けた患者60人に同量のグラケーを投与。転移につながる門脈へのがん細胞の広がりを、1年後は2%(内服しなかった60人は21%)に抑制でき、2年後の生存率は59%(同29%)に向上した。

高温調理食品に発がん物質

2002年10月31日 Yomiuri On-Line
 厚生労働省は31日までに、ポテトチップスなど高温で調理された炭水化物を含む食品に、発がん性が指摘される化学物質「アクリルアミド」が含まれることを確認した。

 スウェーデンなど欧米では食品からの検出が相次いで発表されており、国内で調査を急いでいた。

 厚労省は「ただちに健康被害が出るものではない」としたうえで<1>揚げ物や脂肪分の多い食品の過度な摂取は控え、バランスのいい食事を心がける<2>炭水化物の多い食品を焼いたり、揚げたりする場合、長時間、高温で調理しない――などを呼びかけている。

 この日の薬事・食品衛生審議会部会で報告された。

 アクリルアミドは、地下工事の土壌凝固材などに使われる化学物質。動物実験では発がん性を示すデータがあるが、人体への影響については十分な研究データがなく、食品中のアクリルアミドに規制を設けている国はない。
 厚労省が4月から国内の食品を分析した結果、ポテトチップスから1キロ・グラムあたり最大3544マイクロ(100万分の1)・グラム、平均で1571マイクロ・グラムのアクリルアミドが検出された。フライドポテト、コーンスナック、かりんとう、ほうじ茶(固形)などからも1キロ・グラムあたり最大500マイクロ・グラム以上が検出された。調理の過程でアクリルアミドが生成されるらしい。

 一方、ご飯、パン、マッシュポテト、せんべいなどからは検出されないか、ほとんど検出されなかった。

 ノルウェーや米国などでも同様の結果が報告されており、世界保健機関(WHO)と食糧農業機関(FAO)もバランスの良い食事を勧めている。

肺がん薬「ゲフィチニブ」で新たに死者26人

2002年10月26日 Yomiuri On-Line
 副作用が相次いでいる英国製の肺がん治療薬「ゲフィチニブ」(商品名・イレッサ)で、新たに26人が、副作用による間質性肺炎などの急性肺障害を起こし死亡していたことがわかった。輸入・販売元のアストラゼネカ(大阪市、マーティン・ライト社長)が26日、発表した。今年7月の販売開始後、同剤の副作用による肺障害発生は、これで計125人に上り、死亡は39人(うち男性31人、1人は性別情報なし)となった。

 一方、同社は、緊急安全性情報を出した今月15日までに、69人の副作用と27人の死亡の事実を把握していたにもかかわらず、厚生労働省には、副作用22人、死亡11人と過少報告していた。同省では、この報告に独自把握分を合わせ、同日、副作用26人、死亡13人と発表していた。

 これについて同社では、薬事法で義務づけられた同省への報告期限が30日以内と定められているとして、「報告期限の迫ったものだけを報告した。適切でなかった」としている。同省は「極めて遺憾」とし、報告の徹底などを同社に指示する方針。

 同剤は、がん細胞を狙って効果を発揮する新しいタイプの経口薬で、日本が世界に先駆けて承認した医薬品。主に末期がん患者に使用され、これまでに約1万4000人が投与を受けたという。

広島でがん予防国際シンポ始まる

2002/10/22 中国新聞 
 「がん予防国際シンポジウム―分子および細胞レベルから」が二十一日、広島市中区の広島国際会議場で始まった。放射線影響研究所(放影研、南区)の主催で、各国の研究者ら約百人が参加した。

 この日は日本、米国、ニュージーランドの九人が報告した。放影研の児玉和紀疫学部長は、喫煙する夫を持つ妻が肺がんになる危険性は、喫煙しない夫の妻の約二倍であることや、緑黄色野菜をほぼ毎日摂取する人は食べない人より危険度が低いことなど、生活習慣と発がんとの関係を紹介した。

 シンポは放影研が、原爆被爆者の調査を通じて蓄積してきた研究成果を分子・細胞レベルでの研究に生かそうと初めて企画した。二十二日は、日米八人の研究者が報告して閉会する。

アガリクス、プロポリス…民間療法に頼るがん患者

2002年10月19日 Yomiuri On-Line
 がんの病状が深刻化するほど、健康食品などの「民間療法」に頼る患者が増え、ホスピスの患者では6割を超すことが、厚生労働省研究班の調査でわかった。民間療法が効くかどうか科学的な情報は少なく、体験談を紹介する本などが出回っているが、全国の実態調査は初めて。

 国公立のがんセンターなどの専門病院やホスピスなど127施設の患者たちへのアンケートで行われ、3094人が回答した。

 民間療法を試みている患者は、全体では44・5%。がん専門病院では42・8%だったが、ホスピスなど末期患者の施設に限ると61・8%まで増加。根治が難しいホスピス患者は、症状の緩和を期待して民間療法を多く取り入れると研究班ではみている。

 療法の内容は、健康食品が89・6%で圧倒的。このうち多いのはアガリクス茸(たけ)(キノコの一種)59・5%、プロポリス(ハチが持つ粘着性物質)21・7%、AHCC(複数のキノコから作った物質)7・7%、サメ軟骨6・4%など。他はわずかだが漢方、気功、鍼(はり)などだった。費用は月平均で5万7000円。半数以上が4万円までだったが、20万円以上かける患者もいた。家族や友人の勧めで試みた人が77・7%で、症状の緩和など効果があったと答えた患者は24%だった。

 研究班長の兵頭一之介・国立四国がんセンター内科医長は「真偽の確かめようがない情報も多い中、患者に適切な情報をどう発信するか、実態調査はその第一歩」と話している。

スピード承認の肺がん治療新薬、副作用で13人死亡

2002年10月15日 Yomiuri On-Line
 今年7月に発売されたばかりの肺がん治療薬「ゲフィチニブ」(商品名イレッサ)を投与された末期がん患者13人が、副作用による急性肺障害などで死亡していたことがわかり、厚生労働省は15日午前、輸入販売元の「アストラゼネカ」(本社・大阪)に対し、緊急安全性情報を医療機関に配布するようよう指示した。英国で開発されたゲフィチニブは、既存の抗がん剤が効かない肺がん患者にも効果があるとして注目され、同省が世界に先駆けて輸入を承認していた。同剤の添付文書には、「重大な副作用」として間質性肺炎が記載されているが、同省では改めて医療機関や患者に細心の注意を払うよう呼びかけている。

 同剤は、がん細胞に多く現れる特定のたんぱく質を狙い撃ちするという、これまでの抗がん剤とは異なる効き目があり、治験段階では、既存の抗がん剤が効かない肺がん患者のうち、2割でがんが縮小する効果があったとされる。また、錠剤のため患者の負担が少なく、既存の抗がん剤に特有な白血球減少などの副作用も少ないとされていた。

 今年1月25日に承認申請が出され、7月5日に承認された。通常の審査期間が1年以上かかるのに比べると、「スピード承認」だった。同月16日の販売開始以来、3か月間で約7000人に投与されている。添付文書に記載された副作用については、患者に説明の上で、投与することになっている。

がんが免疫逃れる機構解明

2002年09月30日 The Sankei Shimbun
 がん細胞の多くは、細胞が共通して持つ特殊な物質を使って身内である正常な細胞を装い、免疫システムの攻撃を巧妙に逃れていることを、京都大医学研究科の湊長博教授(免疫学)と本庶佑教授(分子生物学)らのグループがマウスの実験で確かめた。

 現在のがんの免疫療法は、免疫の作用を強めてがん細胞の増殖を抑制する考え方が主流だが、この研究により、“偽装”の働きを止めることで通常の免疫システムにがん細胞を攻撃、破壊させる新しい治療法の開発が期待できそうだ。

 成果は米科学アカデミー紀要に発表した。

 この物質は、正常な細胞ががん化した後も細胞膜に持ち続ける「PDL1」というタンパク質の一種。

 湊教授らは、PDL1を持つがん細胞をマウスに移植した上で、10匹ずつ2群に分け、1群ではPDL1に特殊な抗体で“ふた”をした。すると、何もしなかった群は30〜40日で10匹すべてが死んだのに対し、ふたをした群では4匹が完治した。

 異物を認識する見張り役のリンパ球は、がん細胞表面のPDL1を見つけると身内と認識し、免疫システムに攻撃をしないよう指令を出す。リンパ球からこの見張りの機能を奪うと、がんを移植したマウスはすべて生き残り、指令が伝わっていないことも確かめられたという。

 湊教授は「抗体の(ふたをする)効率を高めることが今後の課題。PDL1を持つがん細胞なら、どの部位のがんでも応用できるはずだ」と話している。

食道がん治療効果、遺伝子診断で判定…研究チーム開発

2002年09月14日 Yomiuri On-Line
 食道がんの患者に対し、放射線照射と抗がん剤の併用治療が効くかどうか遺伝子診断で事前に判定する方法を、国立がんセンターの研究チームが開発した。効果の有無が90%近い確率で予測できるといい、来春から患者数百人を対象に大規模な臨床試験に入る。来月1日から東京都内で開かれる日本癌(がん)学会で発表する。

 研究チームは、食道がん患者のうち、放射線と抗がん剤を併用して再発せずに3年以上生存した14人と、治療効果がなく1年以内に死亡した11人のがん細胞について、遺伝子の働きの違いを分析。その結果、放射線や抗がん剤の効きやすさに関連する遺伝子178個を見つけだした。

 さらに、この遺伝子の働き具合を、別の食道がん患者で順次調べていったところ、放射線と抗がん剤の併用治療が効く患者と、まったく効かない患者とをほぼ9割の高率で事前に区別することができた。

ウイルスで乳がん治療へ

2002年09月13日 The Sankei Shimbun
 ヘルペスウイルスを用いた乳がん治療の臨床試験を名古屋大医学部第二外科の中尾昭公教授(病態制御外科学)らの研究グループが計画、学内の倫理委員会に申請したことが13日分かった。倫理委員会は来月、承認するかどうか審議する。

 中尾教授によると、乳がん再発患者を対象に、ウイルスを直接がん細胞に注射し、死滅させる。同様の治療法は米国や英国で脳腫瘍(しゅよう)などに対して試されているが、日本では初めて。

 利用するウイルスは、名古屋大で発見された「単純ヘルペスウイルスHF10」。口唇ヘルペスの原因となるウイルスが自然に変異した株で、正常細胞には働かず、がん細胞だけに感染して増殖する。毒性が弱く、副作用が少ないという。

 これまでの研究で、ヘルペスウイルスにがんを縮小させる作用があることは分かっていたが、治療に効果的に使える株の選定が難しかった。

 臨床試験では8人の患者に2〜3週間入院してもらい、この治療法を試す。HF10は、万が一ウイルスが正常細胞に増殖しても、抑制剤が開発されているため脳炎発症などの危険もないという。

 研究グループは約5年前からこの治療法をマウスで実験し、ウイルスに感染したマウスのほとんどで効果が確認された。

 中尾教授は「直接注射なので遺伝子治療のような手間もかからず、増殖のスピードも速い。またマウス実験では一度がんを克服したら免疫ができる可能性もあった。理想的な治療法だ」と話している。

がん破壊ウイルス開発/岡山大大学院

2002/09/07  中国新聞
 岡山大大学院医歯学総合研究科の藤原俊義助手(消化器・腫瘍(しゅよう)外科学)らのグループが、正常な細胞を傷つけずにがん細胞だけを破壊するウイルスを開発した。動物実験の基礎段階の成果で、今後、人体にも同様の効力が確かめられれば、進行がん患者の治療に効果が期待される。十月一日から東京で開かれる日本癌(がん)学会で発表する。

 開発したウイルスは、遺伝子治療に使われる風邪の原因となるアデノウイルスから、ウイルス増殖を促す「E1」という遺伝子を取り出し、遺伝子を動かすスイッチの役目を果たすプロモーター(指令役)部分を除き、代わりにがん細胞内でしか作用しないテロメナーゼ遺伝子のプロモーターを結合した。

 このウイルスをがん細胞に感染させると、内部で増殖してがん細胞を壊し、さらに周りのがん細胞にも感染して次々破壊する。実験では、注入したウイルスが三日間で十〜百万倍に増え、がん細胞を破壊。正常な細胞内では百倍程度の増殖にとどまり、細胞を損うことはなかったという。

 がんの遺伝子治療は現在、増殖しないアデノウイルスにがんを抑制するP53遺伝子を組み込んだものを使うのが主流。藤原助手は「開発したウイルスは八〜九割のがん治療に効果が期待できる。血液を通じて体中に行き渡るので、転移したがん細胞の破壊も可能で、その治療にも応用できるのではないか」と説明している。

 大阪府立成人病センター研究所の高橋克人病態生理学部門部長の話

 いろいろながんに応用できる画期的な成果。複製可能なウイルスベクターは米国での臨床試験で安全性の評価もほぼ固まり、がん遺伝子治療の切り札になる可能性がある。

ホルモン補充療法と発がん率の関係解明へ

2002年08月17日 Yomiuri On-Line
 乳がんなどの危険を高めるとして、先ごろ米国で大規模な臨床試験が中止されたホルモン補充療法(HRT)について、文部科学省のがん研究班(研究代表・林邦彦群馬大教授)は、看護師5万人の協力を得て、ホルモン剤の長期使用と、乳がんや子宮がんなどの発病率との関係を解明する追跡調査を来月にもスタートさせる。これほど大がかりな実態把握の試みは初めてで、国内におけるホルモン剤使用と健康に関するデータが得られることになる。

 閉経で女性ホルモンのエストロゲンの分泌が急速に減って更年期障害は起こるが、HRTはこれを補って症状を緩和しようという治療法。欧米では60年の実績があるが、日本は使用実績が少なく、HRTを受けているのは閉経後の女性の1%と言われているが詳しいデータはない。使用法も個々の医師の判断に委ねられており、日本産婦人科医会はHRTの指針を作っているが、専門家からは「根拠があいまい」と指摘されている。外国人と日本人では体質の違いもあるとみられ、国内での基礎データ集めが必要とされてきた。

 追跡調査は、日本看護協会を通じて公立・民間病院の看護師約5万人に協力を仰ぎ、ホルモン剤の使用歴と健康状況のほか、生活習慣も詳細に調べる計画だ。

リンパ球培養に献血使用 日赤が中止要請

2002年08月16日 The Sankei Shimbun
 「瀬田クリニック」(東京都世田谷区、代表・江川滉二医師)と系列のクリニックが、がんの免疫療法に使うリンパ球培養の目的で日赤から大量の献血の血液を取り寄せており、日赤は「目的外の使用は問題」として、中止を要請したことが16日、分かった。

 厚生労働省は「献血の使用に法的な制約があるわけではないが、免疫療法に使うのは適当ではない。ただ患者の利益を考えた場合、不正な使い方とは一概に言えない。今後、問題点を整理し対応を決めたい」としている。

 がんの免疫療法は、リンパ球などの免疫能力を高め、がん細胞の増殖を抑える治療法。江川医師は免疫療法の専門家で東大医科学研究所で基礎研究に取り組み、平成11年に瀬田クリニックを開設し治療を続けてきた。

 日赤本社によると、ことし7月、神奈川県川崎赤十字血液センターで管内の1カ月分の供給量に当たる「新鮮凍結血しょう」約60本(1本400cc)を、系列の「新横浜メディカルクリニック」(横浜市港北区)が取り寄せていることが判明。

 調査すると、免疫療法に使うリンパ球を培養するのに使っていたことが分かった。日赤側は、輸血など本来の目的以外に使うのは問題として、両クリニックに使用中止を要請、同時に血液供給を停止した。

 江川医師によると、瀬田クリニックを開設した際、日赤にリンパ球培養目的の使用を伝え、口頭で日赤から了解を得たという。

 江川医師は「血液使用については、ガイドラインで使用目的を限定していない。現在約300人の患者を抱えており、血液の供給が停止され、明日から患者は治療を受けられなくなる」と話しており、近く日赤側と話し合いを持ちたいとしている。

WHO:世界のがんの現況と対策指針をまとめた報告書を発表

2002年07月01日 Mainichi INTEARACTIVE
 【ジュネーブ大木俊治】世界保健機関(WHO)は1日、世界のがんの現況と対策指針をまとめた報告書「がん抑制国家計画――政策と管理の指針」を発表した。

 それによると、00年に発覚したがん患者は世界で約1000万人。がんによる死者は約600万人と全死者の約12%を占めた。患者の発生は年々増える傾向にあり、20年後のがんによる死者は年約980万人になると予測している。

 発覚したがんの部位は男性が(1)肺(90万人)(2)胃(55万人)(3)前立腺(54万人)の順。女性では(1)乳(105万人)(2)子宮(47万人)(3)結腸・直腸(44万人)だった。

 報告書では、がん治療の研究が注目される一方で、患者数を減らすためには予防対策や早期発見がより効果的だが、軽視されていると指摘。喫煙や飲酒の抑制、肥満防止などで「少なくとも新規患者の3分の1は予防が可能」として、こうした側面も視野に入れた総合的ながん抑制計画の必要性を訴えている。

 また、早期発見のための集団検診に関し、乳がんと子宮がんを除くがん検診は「費用対効果の観点からまだ有効とは立証されていない」と指摘。日本で行われている特殊なX線技術を使った胃がん検診は「高価なため日本でしか実施されていない」と述べている。

 今回の報告書は、91年に発表されたものを10年ぶりに改訂した。

肝臓がん引き起こす遺伝子発見、東大・中村教授ら

2002年06月26日 Yomiuri On-Line
 細胞の異常増殖にスイッチを入れ、肝臓がんを引き起こすと見られる遺伝子を、東京大学医科学研究所の中村祐輔教授らが発見し、27日から札幌市で始まった「がん分子標的治療研究会」で発表した。この遺伝子の働きを抑える物質を作れば、がん組織だけに効き、副作用の極めて少ない新世代の薬剤になると期待される。

 中村教授らは、12例の肝臓がんの組織を調べ、約2万3000個の遺伝子の働き具合を見た。この結果を正常な肝臓と比較したところ、ほとんどのがん組織で働きが強まっている遺伝子「ZNFN3A1」を見つけた。この遺伝子が、異常な細胞増殖をもたらす別の遺伝子に指令を出し、細胞のがん化のスイッチを入れているとみられる。

がん抑制:細胞のがん化抑える新遺伝子発見 滋賀医科大

2002年06月16日 Mainichi INTERACTIVE
 滋賀医科大の茶野徳宏助手(臨床遺伝学)らのグループは16日、細胞のがん化を抑える新しい遺伝子「RB1CC1」を発見したと発表した。既に知られているがん抑制遺伝子「RB1」の働きを高める作用を持っており、「がん組織中のRB1CC1が正常かどうかを調べることで、がん進行の速度などが診断できる」としている。米科学誌ネイチャー・ジェネティクス7月号に掲載される。


胃がん治療のガイドラインを公表 日本胃癌学会

2001.03.03(10:53)asahi.com
 病院によってばらつきがある胃がんの治療法について、日本胃癌(がん)学会はガイドラインをまとめ、3日、金沢市で開かれた総会で公表した。患者向け解説書の素案も示した。半年後をめどにまとめ、一般に販売する予定だ。

 胃がんには、胃の3分の2と周囲のリンパ節をまとめて切除する「定型手術」が広く行われてきた。しかし近年、切り取る範囲をできるだけ小さくする「縮小手術」や、ごく初期のがんを対象に口から内視鏡を入れて粘膜の病巣を切り取る方法が普及するなど、選択肢が広がっている。

 ガイドラインは病状に適した治療法を示すことで無駄な治療をなくし、医師と患者との相互理解を高めることをめざしている。

 また、評価が定まっていない「研究的治療」をする場合は、患者に内容をきちんと説明した上で同意書を取ることが望ましいとした。抗がん剤については、転移が進んで治療が困難な場合を除き、研究的治療に含めた。

 患者向け解説書は、ガイドラインを「Q&A」や図を使ってわかりやすく説明し、医師と相談する際に役立ててもらう。

「近所にラドン温泉あるならがん死亡率低い」効能検証へ

2000.09.29(12:00)asahi.com
 電力業界が出資する電力中央研究所は、微量の放射線ががんの抑制や免疫力向上などに役立つとする「放射線ホルミシス効果」を検証するため、10月1日に低線量放射線研究センターを東京都狛江市に設立する。この効果は20年ほど前に米国の科学者が提唱した。同センターはラドン温泉の効能など身近な放射線の影響なども確かめていく計画だ。

 国際放射線防護委員会(ICRP)は一般人の放射線の被ばく線量限度を1年間1ミリシーベルトと勧告しており、「安全」の尺度とされている。

 しかし、電中研によるネズミの実験では、被ばく線量が200ミリシーベルト以下の場合、リンパ球の働きが活性化して、免疫機能が高まった。がん抑制遺伝子の働きを活発にするケースや、老化を抑える効果もみられた。また、ラドン温泉の周辺地域の住民は、がん死亡率が低いという疫学調査もあるという。

 放射線の影響については安全最優先の視点から、科学的に立証されたことではないが、「どんなに少なくても人体に悪影響がある」という前提で論じられてきた。電中研は「低線量放射線の影響をくわしく調べ、効用があるなら医療への応用をはかりたい」と話す。

別の患者に抗がん剤注射 埼玉・深谷赤十字病院で

2000.10.27(13:23)asahi.com
 埼玉県深谷市の深谷赤十字病院(宮内好正院長)で、検査を受けるため25日に外来を訪れた男性(71)が、別の患者に打つはずの抗がん剤を誤って注射されていたことが27日までに分かった。いまのところ、男性の体調に異常はみられないという。

 県医療整備課などの調べによると、男性は尿検査のために内科から泌尿器科に回った。この際、看護婦が男性の診察券を印刷機から外し忘れたため、1人後の患者の受診伝票にも男性の名前が印刷され、後の患者のホルモン治療剤として注射するはずだった「酢酸ゴセレリン」3.6ミリグラムを誤って男性に注射したという。注射後に看護婦が気づいて医師と相談、院内にいた男性を呼んで事情を説明したという。

 酢酸ゴセレリンは、前立せんがんの治療などにも用いられ、健康な人に注射すると、顔面紅潮や男性機能減退などの副作用があるという。

 同病院の野沢繁事務部長は「患者に事情を説明し謝罪した。本来起こってはならない事故で、院内の医療事故防止対策委員会を開いて再発防止に努めたい」と話している。

がん告知76%が希望 延命治療77%望まず

2000.10.23(01:25)asahi.com
 朝日新聞社は先月下旬、全国世論調査(面接方式)を実施し、がんの告知や延命治療についての意識を探った。自分ががんにかかった場合、がんであることを「知らせてほしい」人は76%に達し、前回調査(1989年3月)の59%から大幅に増えた。

 家族のがんについても「本人に知らせると思う」が前回の2倍近い37%に増え、告知を望む声はこの10年で急速に高まってきている。

 また、病気の回復が見込まれず、最期が近づいたときに延命治療を受けるかどうかを聞くと「希望しない」が77%だった。

 「がんの告知」を巡る意識はこの10年あまりで大きく変わったようだ。自分ががんだったら「知らせてほしい」人は、80年と89年の調査ではいずれも6割前後とあまり変化がなかった。ところが今回は、4人に3人が「知らせてほしい」と答えている。

 逆に、告知を希望しない人は19%で、前回調査(34%)より減った。告知を希望する人は、20代では8割を超える。ただ60歳以上でも告知希望は7割を占め、前回の5割から大きく増えた。

 一般論としてのがん告知はどうか。医師が患者にがんであることを「知らせる方がよい」と答えた人は53%で、「そうは思わない」の24%を大きく上回った。

 がんは日本人の死因のトップだが、早期発見と治療の進歩により、必ずしも治らない病ではなくなってきた。治療法の選択肢も増え、「がん告知」を公言する病院も増えてきた。告知希望が高まった背景には、こうした医療現場の変化もあるとみられる。

 ただ、家族ががんにかかった場合、「本人に知らせると思う」は37%にとどまり「そうは思わない」が46%を占めた。「知らせる」人は89年調査の21%より増えているものの、家族への告知には、否定的な意見が依然多い。自分への告知を望む人でも、家族が患者の場合に「知らせる」と答えた人は5割に満たず、複雑な心情が浮き彫りになっている。

 終末医療のあり方が問われるなか、延命治療の問題に「関心がある」と答えた人は7割を超えた。

 自分自身の延命治療を「希望する」人はわずか17%にとどまり「希望しない」が8割近くを占めた。家族への延命治療については「希望する」が40%に増えるが、「希望しない」(47%)人の方が多い。

がん治療の臨床試験に登録医制度導入 日本癌治療学会

2000.10.21(21:46)asahi.com
 日本癌(がん)治療学会は、抗がん剤などの臨床試験にかかわる医師の治療経験や研究実績などを審査して登録する「臨床試験登録医制度」を設けることを、21日に仙台市で開いた理事会で決めた。これまで、新薬や複数の薬の組み合わせなどについての臨床試験で医師の質を定める明確な基準はなく、抗がん剤では副作用で患者が死亡するケースが相次いだ。来年1月から登録を受け付ける。

 同制度では、がん治療の経験が5年以上あること、がん治療に関して論文発表や学会発表が5件以上あることなどを登録条件としている。今後、同学会でがん治療に関する臨床試験の結果を報告するには、その試験に1人以上の登録医が加わっている必要がある。

 抗がん剤などの新薬は、市販に先立って有効性や安全性などを確かめる臨床試験が行われている。市販されてからも、複数の薬を組み合わせたり、放射線治療を併用したりして治療効果の向上を狙う臨床試験をすることが多い。

 しかし、抗がん剤の中には、試験中の副作用などで100人近くが死亡した薬もある。また、国内で有効性が認められた治療法でも、海外で無効とされた例もあるという。日本の臨床試験の評価は近年まで高くなかった。

 抗がん剤によるがん治療の専門医が少ないこともあり、必ずしも科学的な根拠に基づいた試験が実施されてこなかった。「エビデンス・ベースト・メディスン(根拠にもとづく医療)」の重要性が高まるなか、学会は登録医制の導入によって、的確な試験をする能力をもつ医師の養成に取り組み始めた。

日本癌学会が今年から禁煙に 医者の不養生を返上

2000.10.10(00:32)asahi.com
 日本癌(がん)学会が、横浜市のパシフィコ横浜で今月初めに開かれた学会から禁煙になった。同学会には毎年、国内外の医師や研究者ら5000人以上が参加する。これほど大規模な学会が禁煙に取り組むのはあまり例がないという。喫煙と肺がんなどの関連が強く示唆され、禁煙の重要性がいわれる中で、がん研究の総本山である同学会が率先して「手本」を示そうという意気込みだ。

 喫煙はがんの大きな要因の一つだ。喫煙者がこうとうがんで死亡するリスクは非喫煙者の約30倍、肺がんの場合でも約4.5倍に達するなどという研究データもあり、研究者らは「がん患者の減少には禁煙が不可欠」と強く訴えてきた。

 その一方で、学会という公の場で喫煙していたのでは、発言に説得力がなくなるし、「医者の不養生」と言われかねない。黒木登志夫・同学会会長の強い意向もあって禁煙が決まった。

 会場のパシフィコ横浜は、大小約60の会議室がある会議センターや、1万平方メートルの展示ホールなどからなる大規模会議場。ふだんはロビーや会議室内で喫煙できるが、期間中は研究発表が行われる会議室はもちろん、ロビーからも灰皿が撤去された。

 とはいえ、発表前の緊張をほぐすために一服したい人もいる。どうしても我慢できない人のために、ロビーの片隅やエレベーターホール内に喫煙コーナーを作った。が、灰皿は人通りの多い場所にあったり、周囲には禁煙啓発のポスターが張ってあったり。居心地はあまりよくないらしく、吸い終わるとそそくさと立ち去る人が多かった。

 黒木会長は「喫煙コーナーではなく、医者の禁煙教育コーナーです」と話す。しかし、屋外に出て堂々と一服したり、トイレでこっそり喫煙したりする不心得者もいて、そう簡単に「医者の不養生」返上とはなりそうになかった。

がん細胞の「顔つき」特定、予防に役立つ可能性

2000.10.02(03:10)asahi.com
 がん細胞と正常細胞で、細胞を形づくるたんぱく質の一部分の構造が違い、それががん特有の「顔つき」になっていることを兵庫県の民間研究所が見つけた。胃や大腸など多くのがんに共通するとみられ、幅広いがんに効くワクチンや治療法につながる可能性があるという。4日から横浜市で開かれる日本癌(がん)学会で発表される。

 発表するのは萩原健康科学研究所(兵庫県加西市)の萩原秀昭所長、青塚康幸主任研究員らで、研究について日米欧など約50カ国で特許を申請している。

 萩原さんは1982年、がん患者のリンパ球から、がん細胞だけを攻撃するヒト・モノクローナル抗体の免疫グロブリンGを開発。まず、脳腫よう治療薬として、臨床試験などにとりくんできた。

 米国の検査会社の協力も得た最近の研究で、モノクローナル抗体が攻撃の標的(抗原)にしているのは、ビメンチンという、網目状に広がって細胞の形を保っている骨格たんぱく質の一部とわかった。

 ビメンチンを構成するアミノ酸の配列は、正常な細胞もがん細胞も同じ。しかし、がん細胞ではアミノ酸のうち79個がつくる立体構造が異なり、これが細胞膜の表面にとげのように突き出ていた。

 正常細胞との「顔つき」の違いを見分けた抗体は、とげの部分にくっついて、がん細胞の働きを抑えるらしい。

 がん遺伝子などの働きで、正常細胞のビメンチンの立体構造が変化すると萩原さんらはみている。抗体の効き方から、脳腫ようだけでなく、胃や大腸、肺、乳、子宮、卵巣、前立せんのがんなどにも関連しているようだという。

 萩原さんは「がん抗原をあらかじめ注射してリンパ球に記憶させておけば、がん細胞ができた時にすぐに抗体を作って攻撃でき、予防ワクチンになる」と話している。

 =山岸久一・京都府立医大教授の話= 今回見つかった標的分子が、本当に複数のがんに共通するもので、かつ正常な細胞には存在しないということが証明されたなら、意義のある成果だと思う。どんな使い方をすれば有効なのかは今後詳しく検討する必要があるが、個々のがんに対してではなく、全般的ながん予防に役立つ可能性がある。

免疫力の強弱で発がんに差 NK活性を調査

2000.10.01 by Mainichi Interactive

緑茶愛飲、やっぱり長生き 埼玉県立がんセンター調査

2000.09.30(15:42)asahi.com
 緑茶をたくさん飲む人は少ししか飲まない人に比べ、80代半ばまで生きる確率が高い――。埼玉県立がんセンター研究所の8000人以上を対象にした調査で分かった。これまで緑茶のがんなどの予防効果についての報告はあったが、どれくらい「長生き」できるかを示したのは初めて。10月4日から横浜市で始まる日本癌(がん)学会で発表する。

 11年間にわたる大規模な追跡調査で、対象は埼玉県に住む40歳以上の男女8552人。1日に飲む緑茶の量によって、「3杯以下」「4―9杯」「10杯以上」の3グループに分けて比べた。

 長生きの目安を女性の平均寿命に近い「84歳」とした。各グループごとに年齢別の生存率を計算し、何%の人が84歳まで生存できるかを推定した。

 その結果、男性では、「10杯以上」の人の同年齢までの生存率は53%で、「3杯以下」の41%を12ポイントも上回った。女性も、「3杯以下」が59%なのに対し、「10杯以上」は69%で、10ポイントの差が出た。

 同研究所は、年齢や喫煙の有無など生活習慣の影響を補正した上で、1日の緑茶の摂取量と病気との関係も調べている。

 これまでに、10杯以上飲む人は、3杯以下の人に比べてがんになるリスクが約4割低いことが分かっている。新たに、心臓病で死亡するリスクを調べたところ、10杯以上の人は3杯以下の人に比べ、男性で約4割、女性で約2割低いことが分かった。

 緑茶はがんにも心臓病にも予防効果があるとみる同研究所の中地敬(なかちけい)研究員は、「この2つの病気は日本人の死因の半数近くを占めており、結果として長生きにつながっているようだ」と話す。

公共施設内を禁煙に 国際肺癌学会が「東京宣言」で要望

2000.09.14(22:03)asahi.com
 国際肺癌(がん)学会は14日、東京都内で開会中の世界肺がん会議で、世界的に増え続ける肺がんの撲滅をめざし、「禁煙に関する東京宣言」を採択した。肺がんの9割は喫煙や受動喫煙によるもので、禁煙が肺がんの予防につながるとして、公共施設や交通機関内の禁煙、禁煙のためのたばこ税増額などの対策を、各国政府に求めている。

 この会議は、世界各国の医師や研究者が参加して3年に1度開かれる。学会として各国政府に対策を求めるのは初めて。宣言ではほかに、公共広告による煙害の啓もうや、小中学校などでの禁煙教育の推進を求めた。また、産業界やメディアに対しても、たばこの広告や販売活動をやめるよう要請した。

 世界保健機関の報告では、1998年に世界中で400万人が喫煙にかかわる病気で命を落としており、禁煙対策をしなければ、2030年には年間の死亡者数が1000万人に達する。

 加藤治文・東京医科大学教授は「宣言するだけではなく、今後どう実行するかが問題だ。肺がん撲滅デーを設置するなどして継続的に呼びかけていきたい」と話している。

魚好きは肺がんになりにくい 愛知県がんセンター研発表

2000.09.02(20:56)asahi.com
 魚が好物の人は肺がんになりにくい――。がんの発生と食生活の関係について、名古屋市の愛知県がんセンター研究所がこんな研究結果を発表した。

 過去10年間の肺がんの患者1000人余りと、がん以外の病気の患者約4200人の食生活を調べた結果、さしみや焼き魚などを食べる回数が増えるにつれて、肺がんの一つ、腺(せん)がんになる危険率が下がった。

 腺がんは肺がんの半分ほどを占めるとみられ、最近増えている。日本より喫煙率が低い国よりも日本人の発生は少なく、「魚好きの食習慣が予防に関係しているのでは」と着目していた。

がんの遺伝子診断に指針 人権最優先にと専門家ら

2000.06.17(03:02)asahi.com
 将来、遺伝性のがんになるかどうかを調べる遺伝子診断について、がんの専門家らでつくる研究会が16日、実施の条件や手順を定めた初の実用的指針をまとめた。診断の対象を限定し、適切なカウンセリングを義務づけるなど、希望者と家族の人権を最優先に位置づけている。カウンセリングのないまま診断を請け負う医療機関があるなかで、安易な取り組みへの警鐘になりそうだ。

 指針をまとめたのは、家族性腫瘍(しゅよう)研究会で、遺伝学者や生命倫理の専門家、法学者、患者らが加わり検討してきた。その原案が、16日に札幌で開かれた総会で承認された。

 指針によると、遺伝子診断を実施する条件として、希望者にとって予防・治療法があるなどの利益が大きく、本人の自発的な同意があることをあげた。ただ、生命保険や結婚など社会的な差別を受けるなどの不利益が予想されることも事前に知らせ、診断を受けるかどうかの判断材料として提供する。

 遺伝子を調べると、結果によっては家族や親族もその病気になる可能性がわかることになる。その際は全員に知らせる手段を講じるべきことを、医師が事前に説明するよう求めた。予防法や治療法のあるがんについては、家族や親族にも知らせ、対策を講ずるべきだとの考え方からだ。

 最近では、予防・治療法が確立されていないがんについても、適切なカウンセリングがないまま発症する危険度を知らせる遺伝子ドックも出てきた。日本人類遺伝学会などは今年、「未解明部分も多く安易に行うべきでない」とする声明を発表している。

 指針は1996年に最初の案が出された後、6度の改訂を積み重ねて完成した。昨年、関係学会約30カ所に最終案を送り、遺伝子診療学会など半数から賛同を得ている。

 まとめ役の恒松由紀子・国立小児病院血液科医長は「倫理面を考えたことがなかった医師ら専門家も、何が大切なのかわかった。これが広まれば、いい加減な検査機関などによって人権が侵されることも防げると思う」と話している。

肝臓がんの遺伝子治療の申請取り下げ 東大医科研病院

2000.06.13(01:23)asahi.com
 
 肝臓がんの遺伝子治療の臨床研究を文部、厚生両省に申請していた東京大学医科学研究所付属病院(浅野茂隆病院長)は12日、申請の取り下げを決めた。背景には米国での遺伝子治療にからむ死亡事故がある。遺伝子治療の申請が国の審査中に取り下げられるのは初めて。

 同病院が計画していたのは、がんを抑制するp53遺伝子を、アデノウイルスを運び屋(ベクター)にして肝臓の動脈に入れる方法。ベクターを供給する米シェリング・プラウ社が、今年に入って供給取りやめを通知してきたことが、申請取り下げの直接の理由だ。

 しかし、背景には、昨年9月、米ペンシルベニア大学で代謝異常の遺伝子治療を受けた18歳の男性患者が急死した事故がある。

 山下直秀教授は「米国の死亡例は肝臓がんと異なるが、肝臓の動脈にウイルスを入れるという手法は共通している。安全性を再検討することが必要になった」と話す。

米政府機関の研究リポート、発がん性物質のリストを改定

00年5月16日 18時51分[ワシントン 15日 ロイター]
 米国立環境健康衛生学研究所(NIEHS)が2年ごとに発行している研究リポートの最新版で、発がん性物質のリストからサッカリンが外され、間接喫煙の煙など14種類の物質が新たに加わった。

 今回追加されたその他の物質は、アルコール飲料、日光、太陽灯、二酸化けい素の粉塵など。

 乳がんの薬タモキシフェンも発がん性物質に挙げられている。同リポートはがん治療に使われる薬品について、他のがんを誘発する可能性があるとした上で、危険性より利点のほうが上回ることが多いとしている。

喉頭がんにウイルス関係

2000年5月3日 16時09分【ワシントン共同】
 子宮頚がんを起こすことが知られているパピローマウイルスが、喉頭がんの発生にも関係していることが分かったと、米ジョンズ・ホプキンズ大の研究チームが3日付の米国立がん研究所雑誌に発表した。

 喉頭がんとパピローマウイルスの関連性は、日本の和歌山医大や聖マリアンナ医大の研究でも指摘されていたが、今回の研究は対象患者を増やして関係を明確にした

携帯電話の電磁波と脳腫ようの因果関係を調査へ 郵政省

2000.05. 2 Web posted at: 7:19 AM JST (2219 GMT) by Asahi.com
郵政省は、携帯電話から出る電磁波と脳腫ようとの因果関係が一部で指摘されているのを受け、そうした因果関係の有無を解明するための初の疫学調査を実施することを決めた。世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)が呼びかけ、フランス、ドイツ、スウェーデン、米国など13カ国が参加する国際調査にも加わる。

脳腫ようの患者と健康な人を東京と大阪で数千人選び、携帯電話の使用状況を調べる予定だ。携帯電話の電磁波障害に関する公的な調査は、国内では動物実験しかなく、人体への影響に踏み込んだ初の本格的調査になる。

調査は、郵政省の生体電磁環境研究推進委員会(委員長・上野照剛東大教授)が分科会を設け、国立がんセンターや脳外科の専門家をはじめ、電磁波に詳しい研究者、通信事業者らが参加して実施される。

東京、大阪の脳腫よう患者数100人と、その2、3倍の数の健康な人に協力を求め、携帯電話の使用状況や発病の様子、症状などを調べる方向で検討している。今年9月ごろから聞き取り調査に入る見込みだ。

調査期間は約2年。その後、IARCへの報告やデータの解析などが必要なため、因果関係についての最終的な結論は2004年ごろになる見通しだ。

携帯電話の電磁波による人体への影響について、郵政省は「現時点で有害という証拠はない」(電波環境課)としている。1990年に同省の審議会が「出力7ワット以下なら問題ない」との防護指針を答申。97年に国際的な基準に合わせて見直し、人体に吸収される電磁波の限度を体重1キロあたり2ワットと定める「局所吸収指針」を追加した。現在の携帯電話は最大出力の平均が0.27ワットで、いずれも問題ないという。

だが、電磁波の強さを示す出力だけでなく、マイクロ波と呼ばれる800―1500メガヘルツの高周波が脳細胞に与える影響などはっきりしない点もある。

海外では、細胞への影響を指摘した研究や、携帯電話が原因で脳腫ようになったとして患者がメーカーを訴えた例がある。

各国政府の対応は、国によって異なる。日本は一連の規制をガイドラインにとどめているが、米国は規制当局が法的に局所吸収を1.6ワット以下と定めるなど、厳しく規制している。

IARCの国際調査は、欧州を中心とする一部の国で始まり、米国や北欧の国々などに広がった。日本も99年夏ごろから参加の可能性を検討、14番目の参加国として名乗りをあげることにした。日本の携帯電話の普及率は主要先進国の中で高く、 PHS(簡易型携帯電話)を含む普及率は44.8%(今年3月末現在)に上っている。

電磁波に関する疫学調査としては、科学技術庁が現在、高圧線など低周波の影響を中心に3年計画で進めている。

酒に弱い人、毎日飲むと高確率でがん

(4月22日22:04)by Yomiuri On-Line
 生まれつき一部の酵素の働きが弱く、遺伝的に酒が弱い人は、毎日飲酒すると食道がんにかかる確率が高くなる――慶応大医学部の石井裕正教授(消化器内科)が、二十二日まで新潟市で開かれた日本消化器病学会でそんな研究結果を発表した。

 発表によると、飲酒で顔が赤くなったり気分が悪くなったりするのは、アルコールを体内で分解した後にできるアセトアルデヒドが原因。

 アセトアルデヒドは、ALDH2という酵素によって分解されて害がなくなるが、生まれつきこの酵素の働きが弱いALDH2欠損者が日本人に多く、約四割に上るという。

 石井教授らが、ほぼ毎日飲酒するアルコール依存症患者二千五百人について、欠損者とそうでない患者のがん発生率を調べたところ、欠損者は食道がんが十二・五倍、口腔(こうくう)咽(いん)頭(とう)がんが十一・一倍も多いことがわかった。

 このほか、日本酒を毎日約三合(約〇・五四リットル)飲む「常習飲酒者」でも、欠損者は食道がんが約十倍も多かった。欠損者でもアセトアルデヒドができにくいため「酒が強い」と勘違いしている人も多く、そうした人の危険性は高まるという。

 石井教授は「酒が強いと思っている人の中にも、実際はALDH2酵素が欠損して、がんになりやすい人がいる。酒をほぼ毎日飲めば、肝臓を傷めるだけでなく、食道など肝臓以外のがんにも影響することになるので、控えめにしてほしい」と警鐘を鳴らしている。

米喫煙訴訟、がん患者3人に計13億円の賠償認める

11:40a.m. JST April 08, 2000
 米フロリダ州の喫煙者がフィリップ・モリスなど大手たばこメーカー5社を訴えた集団訴訟で、州裁判所の陪審団は7日、「たばこのせいでがんになった」と訴えた3人に計1270万ドル(約13億3000万円)の損害賠償を認める評決をした。喫煙者本人が起こした全米初の本格的な集団訴訟で、たばこによる健康被害に対する賠償としては過去最高額となった。

 勝訴したのは、約40年間吸い続けて昨年亡くなった主婦(当時53)と喫煙歴29年の看護婦(44)、同34年の時計店主(60)。ほかの喫煙者6人とともに、「たばこのせいで深刻な病気にかかった」と提訴した。

 陪審団は昨夏の評決で、「たばこは欠陥商品。メーカーには製造販売した責任がある」と明確に指摘。今回の評決で、こうとうがんを患った時計店主に約6億円、肺がんで亡くなった主婦に約4億円、肺がん治療中の看護婦に約3億円の賠償を認めた。

 裁判は代表訴訟の形式をとっており、がんに限らず喫煙で健康を害したと訴える同州市民は今後、原告団に加わることができる。陪審団は引き続き懲罰的賠償額の算定に移るが、原告弁護団の試算によると、同州内の推定50万人の喫煙者が名乗り出て認定されれば、懲罰的賠償を含めたメーカーの支払い総額は3000億ドル(約31兆円)に達するという。

  懲罰的損害賠償は、英米法体系の国で採用されている制度。加害者に制裁を加え、かつ将来の同様の行為を抑止しようとするもので、日本の司法制度では刑事罰や行政罰にあたる。

全米50の州政府が起こした訴訟の和解金など各種の裁判に伴う支払いによって経営を圧迫されているメーカー側は、「裁判所が言い渡す賠償額は企業を破産させない水準以下とする」という州法を各州議会に制定させるようロビー活動に力を注いでいる。

妊娠中の喫煙、産まれる子の肺機能に悪影響=研究

00年3月21日 14時30分[ロンドン 21日 ロイター]
 
 米ロサンゼルスの南カリフォルニア大学の科学者グループは、妊娠中の女性の喫煙で、子供の肺活量が減少し、成人後に深刻な影響を与える危険性があるとの研究結果を明らかにした。

  同大学の研究グループは報告の中で、「これらの欠陥が成人後も残れば、慢性閉塞性肺患(COPD)や肺ガン、心臓血管病にかかるリスクが高まる可能性がある」と指摘した。

  同グループは、10歳から16歳までの子供3300人以上を対象に調査を実施。妊娠中に喫煙した母親の子供は、喫煙しなかった母親の子供に比べ、肺機能が劣っていることが分かったという。

嫌煙家らの敗訴確定 たばこの製造・販売禁止求める訴訟

8:28p.m. JST March 21, 2000
 たばこの煙に含まれる有害物質によって、がんや気管支炎にかかったり、ニコチン依存症になったりしたとして、愛知県内の喫煙者と嫌煙家ら4人が日本たばこ産業(東京都港区)を相手取り、たばこの製造・販売の禁止と原告1人あたり100万円の損害賠償などを求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(奥田昌道裁判長)は21日、嫌煙家ら4人の上告を棄却する決定をした。これにより、「たばこと健康被害の因果関係は十分に解明されていない」として請求を退けた二審・名古屋高裁判決が確定する。

南アの教授、乳がん治療でデータねつ造?日本へも影響か

11:43a.m. JST March 11, 2000
 南アフリカ共和国の大学教授が実施した乳がんの臨床試験にデータねつ造の疑いが濃いことが10日、わかった。日本でも、この臨床試験結果を参考に治療方法の研究をしている医師らがおり、影響は大きいとみられる。米国などの専門家チームが疑惑を調べ、調査結果が同日、英医学誌ランセットのホームページに掲載された。

 疑いがもたれているのは、ヨハネスブルクにあるウィットウオータースランド大学血液学・しゅよう学部門のウエルナー・ベズウォダ教授。

 同教授は昨年、重い乳がんの患者に対し、通常よりも多量の抗がん剤を使う大量化学療法と、血液のもとになる血液幹細胞の移植を組み合わせて治療すると、従来の標準的な治療よりも患者の死亡が少なく、良い治療効果をあげたと、米国臨床しゅよう学会で発表した。

 しかし、同教授以外の研究では有効性が確認できず、突出した結果だったため、米・マサチューセッツ大学などの専門家チームが現地調査した。その結果、同教授は154人の患者を調べたとしていたが、58人分の患者のデータしか見つからなかった。また、8人が死亡したと報告していたが、実際は15人だった。患者の署名が入った治療の同意書も見つからなかった。専門家チームはデータがねつ造された疑いが強いと結論づけた。

他人のたばこの煙で肺がんになる危険性、従来より低い=英研究チーム

00年2月11日 19時34分[ロンドン 11日 ロイター]
 
 非喫煙者が、喫煙者のたばこの煙を吸ったため、肺がんになる率は、これまで考えられていたより低い可能性があることが、英ワーウィック大学の研究で明らかになった。

これまでの研究では、こうした二次喫煙による肺がん発症率は、そうでない場合よりも約25%高いとされていたが、同大学の統計学専門家によると、この数字は誇張されたものである可能性があるという。 同チームのジョン・コーパス教授は、ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル誌に寄稿した報告で、「危険性が増す率は15%程度だ」としている。

がん死減少のたばこ開発

2000年1月23日 11時57分【ロンドン共同】
 23日付の英日曜紙サンデー・タイムズは、英最大手のたばこ会社、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)が喫煙者のがん死亡を3分の1減らすという「安全たばこ」を開発していると報じた。同紙によると、「安全たばこ」は特殊な環境でタバコを乾燥処理しマイクロ波で加熱、タバコに含まれている強力な発がん物質のニトロソアミンを除去した。

文部省の委員会、がんの遺伝子治療5件を条件付きで了承

8:44p.m. JST January 07, 2000
 名古屋大などが計画しているがんの遺伝子治療の臨床研究5件について、文部省の遺伝子治療臨床研究専門委員会(主査、豊島久真男・住友病院長)は7日、一部条件付きで実施を了承した。

 計画では、名古屋大が脳の腫ようである悪性グリオーマ、東京慈恵会医科大、東北大加齢医学研究所、東京医科大の3大学が肺がんの遺伝子治療をする。癌(がん)研究会付属病院の乳がんの遺伝子治療は、患者に十分説明したうえで治療の同意を得る「インフォームド・コンセント」用文書の表現を修正することを条件に了承した。

  厚生省の厚生科学審議会の先端医療技術評価部会は、すでに今回審議された5件全部を了承している。癌研病院は、手直しした文書を両省に提出する。

  今後、1月中にも厚相と文相が各病院に了承を通知する。各病院はその後に実施する。遺伝子治療の臨床研究は、北海道大、東京大医科学研究所、岡山大ですでに実施されている。

女性は喫煙にご注意

2000年1月5日 12時54分 【ワシントン共同】
  肺がん細胞を増殖させる遺伝子の発現が、男性に比べ女性の場合は特に活発と分かった、と米ピッツバーグ大の研究チームが5日付の米国立がん研究所雑誌に発表した。

  女性は男性に比べて、たばこが原因の肺がんになる危険が20%から70%高いことが別の研究で分かっていたが、男女差の理由がこの遺伝子の働きで説明できそうだ、という。

1日1回でがんの痛み抑制

1999年11月29日 17時53分 共同通信社
  大日本製薬(大阪市)は、29日、1日1回飲むだけでがん患者の痛みを抑えられる新薬を発売したと発表した。

  これまでの痛み止め薬は、1日2、3回、決められた時間に服用する必要があった。新薬だと1回で済み、患者や医療機関の負担が少なくなる。

高知の病院でがん治療用の放射線源が紛失

8:39p.m. JST November 25, 1999
  高知県立中央病院(高知市、高橋功院長)で、がんの治療に使う放射線源セシウム137が行方不明になっていることが25日分かった。直径2.3ミリ、長さ2.1センチの金属管で、推定放射能は約13億ベクレルとかなり高く、1メートルまで近づくと9時間で一般人の年間被ばく線量限度(1ミリシーベルト)を超える。

  科学技術庁が全国の病院や事業所に指示した総点検で明らかになったもので、同病院にある治療用のセシウム10個のうち1個が訓練用の模擬線源と入れ替わっていた。1979年から別の線源2個とともに樹脂に封入して使い、86年10月以降は貯蔵箱に保管していた。樹脂に封入した際に間違った可能性がある。

  国立国際医療センター(東京都新宿区)で1日、放射線源の紛失が判明、科技庁が総点検させていた。

米ぬかから発がん予防物質

1999年9月14日 18時13分 共同通信社
 和歌山県工業技術センターが14日、米ぬかに含まれるフェルラ酸から大腸がんの発がん予防物質「EGMP」の開発に成功したと発表した。天然物を原料とした大量生産が可能な発がん予防物質の開発は世界でも例がないという。

前立腺がんに新免疫療法

1999年9月5日 16時37分 共同通信社
 患者の体の免疫力を高めて、がんを治そうとする新しい免疫細胞療法の臨床試験を、国立がんセンター中央病院の高上洋一医長らが始めた。免疫リンパ球を活性化させる樹状細胞に合成がん抗原を加えて培養、患者に戻す方法で、がん細胞を効率よくやっつけるのが狙い。8月末から開始、2人の前立腺がん患者に試みた。安全性と効果を確認し、将来は胃がんや肝臓がんに新療法を広げたいという。

寒天のアガロオリゴ糖が、発ガン防止作用などを持つことを発見=宝酒造

99年7月7日 18時47分 [東京 7日 ロイター]
 宝酒造は、寒天に含まれる多糖類アガロースから生成される「アガロオリゴ糖」が発ガン防止作用のほか、関節炎などの炎症性疾患の予防・治療効果を持つことを発見した、と発表した。

同社は98年6月、アガロオリゴ糖がヒトのガン細胞株に対してアポトーシス作用を持つだけでなく、マウスに対しても経口投与でガン抑制作用を示すことを世界で初めて発見している。 

同社は、これらの発見を今年の日本ガン予防研究会(東京:7月16〜17日)、日本ガン学会(広島:9月29日〜10月1日)で発表する予定だという。

一方、同社は、既にアガロオリゴ糖入りの飲料水として「飲む寒天」「飲む寒天とうがらし」などを発売。工業的スケールでのアガロオリゴ糖の生産体制もほぼ整えており、今後は全世界に対して供給していく方針だとしている。 寒天パパのHPby 伊那食品工業

電磁波とがんの関係解明へ

1999年5月8日 8時54分 共同通信社
 送電線や家電製品から出る電磁波が子供の白血病や脳腫瘍の発生に関係しているかどうかを調べるため、科学技術庁は今年夏から国内では初めての本格的な疫学調査に乗り出す。

 がんを発病した子供が自宅で浴びている電磁波を実際に測定し、健康な子供と比較する計画。2001年度までの3年間で約6000人のデータ分析を目指している。欧米で『発がんの原因になり得る』との報告がある一方、否定的な見解もあって因果関係については決着していない。
健康を考える-電磁波防止by 日刊工業新聞
がんと電磁波by 旅からす 二上 次郎 の世界
電磁波シャワーby Kagoのホームページ

遺伝子治療、肺がんに効果

1999年5月6日 13時16分 共同通信社
 がん抑制遺伝子を使った遺伝子治療が、他の治療法が効かなかった肺がんに効果を上げたと米テキサス大のスティーブン・スイシャー博士らが5日、米国立がん研究所雑誌に発表した。

  博士らは、毒性をなくしたアデノウイルスにがん抑制遺伝子のp53を組み込み、他の治療にもかかわらず肺がんが進行していた患者28人に投与した。その結果、2人のがん組織が縮小。うち1人は遺伝子治療開始後2カ月で、がんが消え再発がなかったという。

緑色の光でがん細胞死滅

1999年4月17日 17時53分共同通信社
 白血病のがん細胞が、特殊な物質を加えた発光ダイオード(LED)の緑色の光を照射すると死滅することを香川大工学部の岡本研正教授(電子工学)と同大保健管理センターの鎌野寛・助教授(内科学)らが確認した。東京で開かれる日本血液学会総会で19日に発表する。

この方法で患者の骨髄液や血液のがん細胞を除去し、体内に戻す自家移植が確立すれば、骨髄の提供者不足や移植後の拒絶反応など現在の骨髄移植が抱える問題を解決でき期待を集めそうだ。

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