TOPIC No.3-5 じん肺訴訟

01.  塵肺 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
02. トンネル塵肺訴訟byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
03. 筑豊じん肺訴訟最高裁判所判決
04. 西日本石炭じん肺訴訟(福岡第1陣)の判決について(2007/08/01)経済産業省


二審も日鉄鉱業の責任認定 西日本石炭じん肺訴訟

2008.3.17 MSN産経新聞

 福岡県や長崎県の炭鉱で働き、じん肺になった患者6人と死亡した8人の遺族が日鉄鉱業(東京)に損害賠償を求めた西日本石炭じん肺福岡第一次訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は17日、日鉄鉱業の責任を認めた一審福岡地裁判決をおおむね支持、計約2億5300万円の支払いを命じた。

 判決理由で西理裁判長は「じん肺防止対策は極めて不十分。十分な散水や噴霧を実施しておらず、違反の程度は著しい」と日鉄鉱業の安全配慮義務違反を認定。じん肺罹患(りかん)との因果関係を認めた上で、昨年8月の一審判決後に死亡した患者らについて賠償額を変更した。

 原告側弁護団は「日鉄鉱業は24回目の敗訴。ほかの企業はすべて謝罪し和解しており、上告は社会的に許されない」としている。

 判決によると、14人は1940年代から70年代にかけ、各地の炭鉱で採炭作業などに携わり、じん肺になった。

東日本石炭じん肺訴訟:新たに一人和解 /茨城

2008年03月13日 毎日新聞

 1940〜60年代に茨城、福島県内の炭鉱で働き、じん肺になった患者54人(うち17人死亡)が国に約5億9400万円の損害賠償を求めた「東日本石炭じん肺訴訟」で、新たに高萩市の男性(05年死亡、当時86歳)の和解が12日、水戸地裁(志田博文裁判長)で成立した。国は責任を認めて謝罪し、遺族に約917万円を支払う。

 これで計50人の和解が成立、残る原告患者は4人になった。【山崎理絵】

じん肺患者ら277人に和解金

2008年03月01日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 住友石炭鉱業(東京都港区)は29日の取締役会で、北海道の炭鉱で働き、じん肺になった患者ら277人に対し、訴訟外で総額11億5000万円の和解金を支払うことを決めた。

 同社によると、同社関連のじん肺訴訟はすべて終結しており、今回の和解金の支払いで、患者に対する賠償は終わるという。

新石炭じん肺訴訟で第1陣全員の和解成立

2008年02月08日 北海道新聞

 北海道内の炭鉱で働き、じん肺になった患者らが国に損害賠償を求めた北海道新石炭じん肺訴訟で、第1陣の原告のうち和解が成立していなかった患者7人(うち5人死亡)について8日、原告が札幌地裁(中山幾次郎裁判長)で国と和解した。これで第1陣の患者246人全員についての和解が成立した。

 弁護団によると、7人の和解金は1人当たり約920万−480万円で、総額約5800万円。第1陣の原告の和解金総額は約17億8900万円となった。

 訴えによると、患者らは1960−86年にかけて道内の炭鉱で働いて、じん肺となり、うち76人は肺炎や肺がんなどで死亡した。

 この訴訟では第2陣の477人(患者数)と、第3陣の296人(同)もそれぞれ提訴。企業側との和解交渉も進めている。


石炭じん肺訴訟:年金記録漏れで時効の恐れ…茨城の77歳

2007/09/17 Iza!

社会保険庁のミスで就労証明が得られなかったため、北茨城市の男性(77)が昨年4月、「東日本石炭じん肺訴訟」(水戸地裁)の1次提訴に参加できなかったことが分かった。年金記録漏れが社会問題化した後の照会で記録が見つかり、先月下旬に第4陣として提訴したが、時効の壁に阻まれる恐れがあるという。同市の炭鉱で働いてじん肺になり、通院生活を送る男性は「なぜ最初から真剣に照会に答えてくれなかったのか」と憤っている。

 炭鉱を経営した会社は既に倒産しているため、同訴訟では国が旧じん肺法で対策を定めた後も監督を怠ったことに対する賠償を求めており、原告団に加わるには同法が成立した60年4月以降、炭鉱で働いた証明として年金記録の提出が必要。

 男性は62年8月から8カ月間、北茨城市の炭鉱で働いており、訴訟への参加を希望した。しかし、社会保険事務所に86年までに3回記録を照会したが、窓口で「そのような会社は存在しないし、年金も納めていない」と突っぱねられた経験があり、一度はあきらめた。ところが、改めて照会したところ8月に記録が見つかり、約1100万円の賠償を求めて訴訟に加わった。

 しかし、国家賠償では民法の規定が適用され、請求権は3年で消滅。国の行政不作為による賠償責任を認めた04年4月の筑豊じん肺訴訟最高裁判決が国への請求が可能と認識できた起点とすると、今年4月で時効が成立したことになる。このため、原告側弁護団は「男性の提訴が遅れたのは年金記録の紛失のせいで、その責めは国が負うべきだ」と主張し、和解に応じるよう要求している。

 男性は89年にじん肺と診断されるまで入退院を繰り返し、現在は続発性気管支炎を併発して通院生活を送っている。「粉じんが舞う中であれだけ働いたのに。記録が抜け落ちていた説明もなかった」と話す。茨城社会保険事務局は「男性が照会した当時は記録が紙の時代で、現在のように(オンラインで)整備されていなかった。探せなかったことは申し訳ないと思うが、原因は何とも分からない」としている。【山崎理絵】

 【ことば】東日本石炭じん肺訴訟 茨城、福島両県の炭鉱で働き、じん肺にかかった患者52人(故人含む)が、1人あたり約1100万円の損害賠償を国に求めた訴訟。06年4月に水戸地裁に1次提訴。4次訴訟まで起こされ、国の責任を認めた筑豊じん肺訴訟最高裁判決(04年4月)に沿って、患者側の主張を認める方向で、14日までに患者22人との和解が成立している

福岡じん肺、国と和解

2007年08月10日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 福岡、佐賀、長崎県内の炭鉱で働き、じん肺になった元従業員と遺族計56人が、国と日鉄鉱業(東京)に総額約7億8000万円の損害賠償を求めた「西日本石炭じん肺福岡訴訟」の和解協議が9日、福岡地裁で開かれ、国と原告側の和解が成立した。

 国は、総額約4億円の賠償を命じた福岡地裁判決への控訴を断念し、患者らへ謝罪して35人に計約1億5000万円を支払う。判決の確定前に和解するのは異例。残りの21人は、同社から仮払金を受けたことなどを理由に、国に請求しなかった。

 炭鉱じん肺訴訟では熊本、水戸、札幌地裁で約900人が係争中。熊本、札幌地裁でも、除斥期間の起算点が争点となっているが、国は福岡地裁判決で示された起算点を基準として和解に応じる方針だ。

 同地裁では、国と日鉄鉱業など5社を相手取り、第1次363人、第2次47人が提訴。第1次では日鉄鉱業を除く4社と、除斥期間で争いがないケースについては国も和解に応じ、和解から漏れた56人が1日、判決を受けた。日鉄鉱業は2日に控訴している。

 和解後、福岡市内で報告集会が開かれ、原告団長の清藤稲雄さん(72)は「私たちは石炭とともに忘れられた存在だったが、団結第一でやってきた」と語った。和解について、経済産業省石炭保安室は「患者、遺族の方々が長年じん肺で苦しまれたことを第一に考慮した」とコメントした。

石炭じん肺「福岡」和解へ

2007年08月09日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 福岡、佐賀、長崎県内の炭鉱で働き、じん肺になった元従業員と遺族計56人が、国と日鉄鉱業(東京)に総額約7億8000万円の損害賠償を求めた「西日本石炭じん肺福岡訴訟」で、1日の福岡地裁で敗訴した国が、原告側に和解を打診していたことが分かった。

 20年たつと賠償請求権が消滅する「除斥期間」の起算点を巡って争われているが、福岡地裁は、国側が主張する「じん肺の認定時」ではなく、「(じん肺認定より後の)合併症の認定時」と、患者をより幅広く救済する判断を示した。国と原告は同地裁で9日、謝罪やじん肺根絶に向けた粉じん対策などの和解条項を協議する予定で、同日中にも国が控訴を断念し、和解が成立する見通し。

 炭鉱じん肺訴訟は、熊本、水戸、札幌地裁で約900人が係争中。熊本、札幌でも、国との間で除斥期間の起算点が争点となっており、影響を与えそうだ。

 2004年の筑豊じん肺訴訟・最高裁判決は「損害の全部、一部が発生した時が除斥期間の起算点」としたが、続発性気管支炎などの合併症がある場合、除斥期間をいつから起算するかが明確ではなかった。

 福岡地裁は判決で、「合併症の損害は、じん肺の損害と質的に異なる。除斥期間は合併症の認定時から進行する」とし、56人全員について、国と同社に総額約4億円の賠償を命じ、国の対応が注目されていた。

国と企業に4億円余の賠償命令 西日本石炭じん肺訴訟

2007年08月01日 asahi.com

 九州の炭鉱で働き、じん肺になった元従業員と遺族計56人が、国と日鉄鉱業(東京)に総額約7億8000万円の損害賠償を求めた「西日本石炭じん肺福岡訴訟」の判決が1日、福岡地裁であった。損害の発生から20年で賠償請求権が失われる「除斥期間」の始まりはいつかが主な争点となっていたが、岸和田羊一裁判長は「合併症にかかった時点とするのが相当」との判断を示し、原告側の訴えを認めて、国と同社に総額約4億1000万円の支払いを命じた。

 原告弁護団によると、除斥期間の始まりについては、トンネルじん肺訴訟では同様の判断がすでに示されているが、石炭じん肺訴訟で判断が出るのは初めてという。

 04年の筑豊じん肺訴訟最高裁判決は、除斥期間の始まりを「加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には、損害の全部または一部が発生したとき」と判断。原告はこれを「合併症にかかったという損害の発生時」と解釈したが、国は「合併症にかかった時が始まりとは明示されていない」と反論していた。

 判決は、じん肺を「肺内に粉じんが存在する限り進行する特異な疾患」と指摘。じん肺患者と認定された時点を除斥期間の始まりとするのは「じん肺という疾病の実態に反するもので是認し得ない」と述べた。日鉄鉱業についても安全配慮義務を果たしていないとして責任を認めた。

 経済産業省石炭保安室は「国の主張が退けられた極めて厳しい判決。判決内容を十分に検討し、関係省庁とも協議のうえ、今後の対応を考えたい」とコメントを出した。

 日鉄鉱業は「主張が認められず遺憾」としている。

トンネルじん肺 全訴訟和解へ…賠償請求権、患者側放棄

2007年6月13日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 国発注のトンネル工事現場で働き、じん肺にかかった患者ら約970人が、「じん肺になったのは国がじん肺防止対策を十分に行わなかったため」として、国に1人当たり330万円の損害賠償などを求めて全国11地裁に起こした集団訴訟で、国と原告側が一斉和解する見通しとなった。

 国が厚生労働省令を改正してじん肺対策に取り組む代わりに、原告側は賠償請求権を放棄するという内容。国と「全国トンネルじん肺根絶原告団」が近く和解に合意し、その後、全国の地裁や高裁に係属している各訴訟で正式に和解するとみられる。

 関係者によると、和解内容は、国が、粉じん対策を定めた省令である「粉じん障害防止規則(粉じん則)」を改正するなどし、

〈1〉公共工事での粉じん濃度測定の義務化

〈2〉掘削作業時の換気の義務付け

〈3〉コンクリート吹き付け作業時に粉じんを防ぐ電動ファンマスクを使用させる

――などの粉じん対策に取り組むほか、土木工事の労働時間の基準を変更し、短縮を促す。これに対し、原告側は賠償請求権を放棄する。放棄する賠償請求額は合計で約32億円に上るとみられる。

 原告側と国は近く和解に合意した上で、今月20日に東京高裁で口頭弁論が予定されている法廷で正式和解した後、全国の地裁、高裁でも順次和解を成立させていく方針という。

 トンネルじん肺訴訟を巡っては、昨年7月、東京地裁が初めて国の賠償責任を認め、国に対し原告44人に計6930万円を支払うよう命じた。その後、今年3月までに、熊本、仙台、徳島、松山の4地裁で原告勝訴の判決が下された。

 しかし、国の賠償責任の発生時期については、熊本、徳島両地裁が「(じん肺の検診などを義務付けた)旧じん肺法が施行された1960年以降」とする一方、東京、仙台、松山の3地裁は「粉じんを大量に発生させる新しいトンネル工法が普及した86年末以降」とし、判断が分かれていた。

 厚労省は、相次ぐ敗訴を受け、「じん肺予防策は十分に行っている」とする従来の姿勢を転換し、トンネル工事現場での粉じん濃度測定を義務化する検討を始めていた。

【解説】国側、敗訴相次ぎ方針転換

 トンネルじん肺訴訟で国が和解に踏み切ったのは、五つの地裁判決で、じん肺を防止するための規制権限を行使せずにきた「不作為」が認定され、これ以上、法廷闘争を続けても逆転の見込みは薄いという判断があった。最高裁は2004年、筑豊炭鉱じん肺訴訟の判決で、作業員の健康を守るという義務を果たさなかった国の不作為を初めて違法と認定。以来、トンネルじん肺訴訟の判決では、すべて同様の判断が踏襲されてきた。

 当初は「元請け企業の問題」と言い張った国も、繰り返される厳しい司法判断に、原告と向き合う姿勢に転換せざるを得なかった。

 もう一つの要因は、原告側が賠償に強くこだわらなかった点だ。元請け企業を相手取った訴訟で一定額の賠償は受けている背景もあり、国に対しては賠償よりもじん肺対策の実施を切実に求めた。和解に当たり多額の公費負担を伴わないことが、国が和解に応じる一因となったのも間違いない。

 今後の課題は、粉じん防止策の早期実現に移る。じん肺被害を一刻も早く根絶するためにも、国は防止策の期限を設定するなど、これまでの行政の遅れを取り戻す努力を行うべきだ。(足立大)

<メモ>トンネルじん肺訴訟  1950年代〜90年代にかけ、道路や鉄道、ダム建設に伴うトンネル工事に従事し、大量の粉じんを吸い込んで、じん肺になった患者らが、国や企業を相手に損害賠償を求めた訴訟。元請けのゼネコンを相手取った訴訟は2003年までに一部で和解が成立したが、患者らは02年11月以降、国の責任を追及し全国11地裁に提訴した。

東日本石炭じん肺訴訟、原告7人が和解…初めて国が賠償と謝罪

2007年01月18日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 茨城、福島両県にまたがる常磐炭田で働き、じん肺になったとして、患者や遺族計87人が国を相手取り、計約5億5000万円の損害賠償を求め、水戸地裁(志田博文裁判長)に起こした「東日本石炭じん肺訴訟」で17日、原告のうち7人について、国が計約4033万円の賠償金を支払い、謝罪することなどで和解が成立した。同訴訟では初の和解で、残る80人についても順次和解する見通し。

 和解条項には賠償金の支払い以外に、国が企業にじん肺被害防止策をとらせなかったことを違法と認定した2004年の「筑豊じん肺訴訟」最高裁判決を厳粛に受け止め、謝罪することや、じん肺対策に努めることなどが盛り込まれた。

 原告は、昭和40年代に相次いだ閉山で、訴える会社が消滅してしまった北茨城市や高萩市などの患者や遺族。

 7人は71〜94歳で、いずれも北茨城市に住む患者。炭鉱で就業し、じん肺にかかっているかなど、04年の最高裁判決が示した賠償基準を満たすことが早期に確認できたため、和解成立に至った。

 和解成立を受け、原告団は「提訴から1年を経過しないで和解が成立したのは、早期解決を目指した原告団の意向に沿うもの」と評価する声明を発表した。今回、和解が成立した1人も「ほっとしている。賠償金の支払いよりも、謝罪が盛り込まれたことがうれしい」と喜んでいた。

 ただ、原告団によると、訴訟開始から既に患者3人が死亡しており、団長の鈴木三郎さん(81)(茨城県北茨城市)は「私たちには時間がない。1日も早い全員の解決を」と願っていた。


トンネルじん肺、国が控訴

2006/10/19 中国新聞ニュース

 厚生労働省は十九日、規制権限を行使しなかったのは違法として国の責任を認め、計約二億七千万円の損害賠償を命じた十二日のトンネルじん肺の仙台地裁判決を不服として控訴した。

 トンネルじん肺をめぐっては、七月に東京、熊本両地裁でも国の責任を認める判決があり、厚労省はいずれも控訴した。

<じん肺訴訟>86人に2億7千万円支払い命令 仙台地裁

2006年10月12日 (毎日新聞) Livedoorニュース

 国発注のトンネル工事に従事し、じん肺になったとして東北6県などに住む元作業員と遺族計139人(うち患者128人)が、国を相手に1人当たり330万円、計4億5540万円の賠償を求めた「トンネルじん肺東北ブロック訴訟」で、仙台地裁(小野洋一裁判長)は12日、86年11月以降の国の責任を認定し、原告86人に計2億7060万円(患者1人当たり110万〜330万円)を支払うよう命じた。トンネルじん肺訴訟で国の責任を認めた判決は、東京、熊本両地裁に続き全国3例目。

 全国11の裁判で係争中のトンネルじん肺訴訟の全国原告・弁護団は判決を受けて同日会見し、国が謝罪し、じん肺根絶について原告側と具体策を協議する場を設けるなら、裁判をすべて取り下げる用意があることを明らかにした。

 判決は、国も加わった業界団体の組織が「地下工事における粉じん測定の指針」を出した86年11月の時点で、国は粉じん測定義務化の必要性を認識していたと指摘。また同月、石炭鉱山保安規則で湿式削岩機と防じんマスクの同時使用を義務付けたことから「トンネル工事でも同様の対策をとらせなければいけなかった」と省令制定義務違反を認めた。原告53人については、同月以前に離職しているとして請求を棄却した。

 全国弁護団の小野寺利孝団長は厚生労働省で会見し、国との具体的な協議事項として(1)粉じん測定と評価の義務付け(2)じん肺の所見がある人への超過勤務の禁止(3)被害補償基金の創設――を挙げた。船山友衛・全国原告団長も「私たちが求めるのは国の謝罪とその証しとしてのじん肺根絶策。国は控訴せず、早急に協議に応じてほしい」と話し、全面解決を強く迫った。

 トンネルじん肺訴訟は、全国11地裁で患者計964人が提訴。今年7月、東京地裁は86年末以降、粉じんが大量発生する工法が普及したことなどを理由に国の責任を認定。熊本地裁はじん肺法が施行された60年4月以降の責任を認めた。いずれも国側、原告側の双方が控訴している。

 東北訴訟は03年4月、全国で3番目に提訴。原告の内訳は青森37人、福島31人、宮城28人、岩手19人、秋田17人、山形6人、埼玉1人。【青木純、東海林智】

じん肺訴訟の判決要旨 仙台地裁

2006/10/12 中国新聞ニュース

 仙台地裁が12日、国発注トンネル工事で作業員がじん肺になった国の責任を認め賠償を命じた判決の要旨は次の通り。

 【規制権限の不行使】

 トンネル建設工事現場でのじん肺の発症は、新幹線や高速道路のトンネル建設工事が盛んになった1975年ごろから全産業の有症率を上回るようになり、社会的問題にもなって対策を講じる必要性が出ていた。

 粉じん発生防止の一般的な法規制はされていたが、実際の作業現場ではきめの細かい対策が取られないまま、患者の発生が継続していた。粉じん測定とその評価の方法について、遅くともゼネコンや国の担当者が参加する建設災害防止協会が86年11月に「地下工事における粉じん測定の指針」を出した時点では、国を含めた一応の合意をしうる程度のものができたといえる。それにもかかわらず国は、それに基づく何らの規制も行わなかった。

 粉じん暴露を防止する対策は、粉じん障害防止規則の制定で一応具体化されたが、湿式さく岩機を使用した場合には、防じんマスクの着用が除外されているなど十分ではなかった。86年11月には石炭鉱山保安規則が湿式さく岩機の使用と防じんマスクの重畳適用を義務付けたのだから、そのころには、トンネル建設工事現場でも、国は規制権限を行使して義務付けをするべきだった。

 これらの規制権限の不行使は、著しく合理性を欠き、国家賠償法1条1項の違法がある。

 【作業時間規制】

 粉じん作業では、労働者の暴露する粉じんの量がその健康に影響を及ぼすのであって、従事する時間の長さが直ちに健康に有害な影響を及ぼす関係にはない。作業時間規制をしなかったことが著しく不合理と解釈することはできない。

 【規制監督権限】

 散水や発破退避時間の確保、じん肺教育、内燃機関のばい煙除去装置の装着、エアラインマスクの着用については義務付けや規制をしなかったことが著しく不合理であるとか、規制権限を行使しなかったとはいえない。

 【監督義務違反など】

 労働基準行政で建設業を重点対策の一つとし、粉じん対策も重点対策の一つとして監督指導を行っており、違法とまでは解されない。時間規制についても行政指導をしていたことは認められる。

 【安全配慮義務違反】

 国発注工事では、実際の施工に当たっては国が工事内容を拘束している部分も大きい。安全配慮義務違反が認められるには、国自らが労働者の働く場を提供しているのと同視しうる程度の関与が必要。国は工期、費用、施工方法などについて積算基準や工事の監督などを通じて事実上影響を及ぼしているといえる。

 関与の程度を明らかにするには、個々のトンネル建設工事現場でどのような契約が締結され、どのように関与してきたのかを主張立証しなければならないが、原告らは国の組織過失を主張し、これらの主張立証をしない。注文者の責任についても、個々の現場での国の過失を主張立証すべきだが、これをしないので認めることはできない。

 【損害】

 じん肺は肺内の粉じん量に対応して進行する不治の疾患で、現代の医学では治療不可能。現場から離れても症状は憎悪し、じん肺死への恐怖や生活面でのさまざまな苦痛など肉体的精神的苦痛は大きい。ゼネコンから支払われた和解金を考慮しても、なお慰謝すべき損害がある。管理区分と合併症に応じて損害額を算出するのが合理的だ。

 【時効】

 時効の起算点は「損害および加害者を知ったとき」だが、国との関係で問題になっているのは規制監督権限の不行使。国との関係で損害を知ったといえるのは、規制監督権限不行使の違法性が争点となったところに共通性がある筑豊じん肺訴訟の福岡高裁判決が出された2001年7月19日。提訴はこれから3年を経過していないので時効の主張は理由がない。

トンネルじん肺訴訟:いえぬ病に耐えて 東北ブロック訴訟あす判決 /宮城

2006年10月11日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 ◇検査に行くたび、エックス線写真に黒い影がふえていった…−−患者・千坂稔さん(73)

 「みんな次々に亡くなっていく。これからじん肺になる人もいる。謝罪し、対策を講じるのが国のすべきことだと思う」。「トンネルじん肺東北ブロック訴訟」の判決が12日、仙台地裁(小野洋一裁判長)で言い渡される。じん肺患者は東北6県で少なくとも約800人、県内には約200人いるとされ、癒えることのない過酷な病に苦しんでいる。最重度のじん肺を抱え、証人として裁判に参加した大崎市田尻の千坂稔さん(73)は、国の責任を強く訴えている。【青木純】

 農家の四男として生まれた千坂さんが工事現場で働き始めたのは1952年ごろ、19歳の時だった。高度経済成長期を目前に控え、日本中で電力需要が高まっていた。山形県、北海道、九州の発電所の建設現場を約9年間、渡り歩いた。

 ダイナマイトで岩石を砕く。焼けた粉が飛び散り、粉じんで目の前の同僚の姿さえ見えなくなる。岩と同じ色に染まった防じんマスクは、何度洗ってもすぐに詰まった。年配の現場監督が、じん肺にかかっているといううわさを聞いた。「ずっとここにいたら、必ず体を壊す」。結婚を機に、粉じんが少ない現場を選んで働くようになった。

 すでに遅かった。73年、初めてじん肺と診断される。まだ症状は出ていなかったが、妻早苗さん(68)に「やっぱりじん肺だ。治んねえ病気なんだ」と伝えた。仲間もかかっていたはずだが、会社に知られると給料が下がるので皆黙っていた。こっそり検査に行くたびに、エックス線写真に肺の黒い影が増えていった。

 91年ごろには息が切れるようになった。97年、横浜の下水道工事を最後に退職した直前には、ほうきを持っただけで息が上がった。99年に労災認定を受けてからも症状は進み、階段を1段上るだけ、朝起きて布団をはぐだけで苦しくなり、一日中寝ている日もある。できるのは顔を伏せて目を閉じ、息苦しさが消えるのを待つことだけ。脳梗塞(こうそく)で倒れた早苗さんの看病ができない悔しさといったら、なかった。

 トンネルを掘っていたころ、役所の人間が現場に来る前には必ず仕事が止められ、辺りをピカピカに掃除させられたことを思い出す。会社と国が結託し、見て見ぬ振りをしていたのでは、という疑いは消えない。「いまだって、どれだけ防止策がとられているか。法律できちんと決めない限り、弱い者はいつまでも苦しめられる」

 裁判所は遠いので、12日の判決を直接聞くことはできない。「100%とは言わない。99%でいいから、国はじん肺をなくす努力をしなきゃいけない」。裁判所は自分たちの思いに応えてくれるはず。そう思っている。

 ◇トンネルじん肺訴訟

 トンネル工事で出た粉じんが原因で肺機能が低下する「じん肺」になったとして、全国11地裁で元作業員ら計964人が発注者の国を相手取り損害賠償と予防のための法整備を求めて起こした訴訟。「東北ブロック」は03年4月に仙台地裁に提訴し、東北6県と埼玉県に住む138人が原告となっている。東京、熊本の両地裁は今年7月、国の責任を認め原告側勝訴の判決を言い渡したが、国はいずれの判決も不服として控訴。原告側も控訴している。

新たに原告5人和解 西日本石炭じん肺訴訟

2006年10月05日 asahi.com

 天草地方などの炭鉱で働き、じん肺になったとして患者や遺族ら計62人が国を相手取り損害賠償を求めた西日本石炭じん肺訴訟で4日、新たに原告5人と国との和解が熊本地裁(石井浩裁判長)で成立した。国は患者1人当たり約477万〜660万円を支払う。これで和解が成立した原告は計25人となった。

 また、この日は7月に追加提訴した原告2人の第1回口頭弁論があり、原告側は和解ができない原告について判決も辞さない姿勢を示した。

 国側、原告側ともに争点とするのは、損害賠償の請求権を失う除斥期間の起算点。原告側は、じん肺により発生した法定合併症の認定日を起算点と主張してきた。一方の国側は、それ以前のじん肺患者としての管理区分の決定日と主張してきた。原告側代理人によると、国側は同日の和解協議で、患者単位での原告総数54人のうち、25人については除斥期間により和解ができないことを示したという。

 口頭弁論の意見陳述で、原告側は「国が和解拒否を続けるならば、国を厳しく断罪する判決を突きつけてほしい」と主張。患者の高齢化もあり、早期解決のために和解を求めてきたが、法的解釈の争点については、判決により同地裁の判決を仰ぐ構えだ。

道新石炭じん肺訴訟で新たに17人国と和解

2006年09月27日 Nikkan sports

 北海道内の炭鉱で働き、じん肺になった患者らが国に損害賠償を求めた北海道新石炭じん肺訴訟で、新たに17人が27日、札幌地裁(笠井勝彦裁判長)で国と和解した。

 和解条項によると、国は1人当たり約910万−470万円、総額約1億2500万円を支払う。

 札幌地裁では7月に原告121人が和解している。

北陸トンネルじん肺訴訟

2006年09月16日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 トンネル工事でじん肺になったとして、元作業員や遺族118人が国や建設会社59社を相手取り、損害賠償を求めた北陸トンネルじん肺訴訟で、原告のうち8人と建設会社との和解が15日、金沢地裁(倉田慎也裁判長)で成立した。これで建設会社分はすべて和解で決着し、今後は国だけを相手に訴訟が続行する。記者会見で県内の原告は「国も早く責任を認め、裁判を起こさなくても被害者が救済される仕組みを作ってほしい」と訴えた。

建設会社と決着「国も責任認めて」

 「今回和解が成立した原告は、石川1人、岐阜5人、愛知2人。建設会社側が原告1人につき1300万〜1800万円、計1億1600万円を支払い、謝罪とじん肺根絶に向けた努力を誓約することで合意した。これで建設会社を訴えていた原告34人全員の和解が成立し、建設会社側の支払額は計4億9133万円になる。

 和解協議後、原告団は金沢市兼六元町の北陸会館で記者会見し、今回和解が成立した珠洲市宝立町在住の原告小山義博さん(54)は「和解成立まで時間がかかり、苦しかったが、ここまで来たことはうれしい。早く金沢でも国相手の訴訟で勝訴判決がほしい」と訴えた。

 7月7日には東京地裁が「(粉じんを大量に発生させる新しいトンネル工法が普及した)1986年には、じん肺を防ぐための具体的な措置を講じる義務が生じていた」として、トンネルじん肺訴訟で初めて国の責任を認め、7月13日の熊本地裁判決では「旧じん肺法が施行された1960年以降、具体的な散水措置を義務づける省令制定などをしなかったことは、著しく合理性を欠く」と、踏み込んだ判断を示している。

 全国トンネルじん肺根絶北陸弁護団の飯森和彦事務局長は今後の国との裁判について「(国の責任を認めた)東京、熊本地裁での勝訴判決の流れに沿った勝訴判決を望む」と話した。

じん肺訴訟で一部が和解

2006/09/12 中国新聞地域ニュース

 トンネル工事でじん肺を患ったとして、島根、山口県内の元作業員らでつくる「トンネルじん肺根絶山陰原告団」が国とゼネコンに損害賠償を求めた訴訟は11日、松江地裁で、ゼネコン側37社が患者や遺族10人に総額約1億3393万円を支払うことで和解した。 和解条項は、訴えを起こした13人のうち、島根県内に住む元作業員7人と遺族3人に対し、1人当たり約1300万―2200万円を支払う内容になっている。

じん肺訴訟、国が控訴…東京、熊本地裁判決

2006年07月19日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 国発注のトンネル工事現場で働き、じん肺となった元建設作業員と遺族らが国に損害賠償を求めた「トンネルじん肺訴訟」で、国の責任を認めた東京、熊本両地裁の判決について、国は19日、東京、福岡両高裁に控訴した。これを受け、原告側も控訴する方針。

 厚生労働省は控訴理由として、 〈1〉トンネル掘削現場での粉じん測定は危険で、測定を義務づける省令制定は不合理 〈2〉1981年の305人をピークに、昨年は4人にまで新規患者数を減少させた防止策が評価されていない ――などと主張。

 原告側の全国トンネルじん肺根絶弁護団の小野寺利孝団長は記者会見し、「二つの敗訴判決にもかかわらず、患者、家族の声を一切聞かずに控訴を決めたことに強い怒りを感じる」と国の対応を批判した。

 同様の訴訟は全国11地裁で起こされており、10月には仙台地裁で判決が言い渡される。

じん肺訴訟 国が控訴/東京、熊本地裁判決

2006/07/19 南日本新聞ニュースピックアップ

「対策実施」と反論

 トンネルじん肺訴訟で国は19日、国に賠償を命じた東京、熊本両地裁の判決を不服として、いずれも控訴した。2つの判決は、国が粉じんによる被害を防止するために規制権限を行使しなかったと認定。これに対し、国側は防じんマスク使用義務付けや粉じん対策の指針策定など「その時代の科学的知見、技術水準に対応し、省令の制定など必要な対策を実施した」と反論。その結果、1979年には295人いた新規患者が昨年は4人になり、対策の効果が出ているとしている。

 ■「国は取り下げて」鹿県原告ら怒りと不安

 「生きているうちに解決したい。国は控訴を取り下げて」−。国に賠償を命じたトンネルじん肺訴訟で、国が控訴した19日、鹿児島県関係者らは一様に怒りをあらわにする一方、「いつまで続くのか」と不安を募らせた。

 鹿児島原告団長の森義春さん(77)=垂水市二川=は控訴の一報に「これで(判決は)最低あと1、2年かかる」と肩を落とした。「国の責任を認めた筑豊じん肺訴訟で、同種訴訟の流れは固定しつつある」と語る森さんは「国に勝ち目はない。原告の高齢化は進む。今後は裁判より、時間がハードルになる」と話した。

 遺族原告の隈元キイさん(70)=霧島市福山町福山=は「残念でならない」と一言。熊本地裁判決があった13日夜には、じん肺でなくなった夫の墓前に勝訴報告をしたばかり。「完全解決まで私も生きていられるか」

 全日本建設交運一般労働組合(建交労)など支援団体は、東京訴訟の控訴期限の21日まで、控訴断念の座り込みを続ける予定だった。建交労鹿児島県本部の井谷博一執行委員長は「19日からは抗議と控訴取り下げに切り替える。これ以上、じん肺防止対策を放置するのは許せない」と国の姿勢を批判した。

 「できればこのまま(一審判決に)従ってほしかった」と話すのは、鹿児島弁護団長の井之脇寿一弁護士。今後については、原告や全国弁護団と協議し、「原判決が維持されるよう力を合わせ闘っていきたい」と表情を引き締めた。

じん肺訴訟/明確に問われた国の責任

2006/07/14 神戸新聞

 高速道路などのトンネル工事で粉じんを吸い、じん肺になった元作業員や遺族が国に損害賠償を求めた裁判で、熊本地裁は国の責任を認め、総額二億六千万円の支払いを命じた。

 同様の訴訟は、全国十一地裁で起こされている。皮切りとなった七日の東京地裁判決では、防じんマスクの使用を事業者に求めるなど、適切な措置をとらなかった国の過失を認める判断が示された。

 一連の訴訟は、二〇〇一年七月に福岡高裁が、炭鉱労働者のじん肺に対する国の責任を認めたことがきっかけになった。

 国は、賠償請求権の時効消滅(三年)を主張している。しかし、先の東京地裁の判決は「国の責任を初めて認めた福岡高裁判決から起算するのが相当」とし、国の主張を退けた。

 今回の判決で、被害者救済の流れがいっそう明確になった。

 じん肺は、最も古い職業病の一つだ。肺に吸い込まれた粉じんにより激しいせきや呼吸困難を引き起こし、死を早めることもある。戦後の巡回検診で、トンネル工事に従事する人々の間に多くの患者がいることがわかった。

 一九六〇年代に入り、日本が高度成長を遂げるころから患者が急増する。高速道路や新幹線工事が急ピッチで進み、盛んにトンネルが掘られた。

 一連の裁判で裁判所の判断が注目されたのは、国がいつ、どのような対策を講じるべきだったか、という点だ。

 東京地裁は、粉じんが大量に発生する掘削法が普及した八六年を、じん肺防止策を講じる上での節目の年とした。

 今回の判決は、さらにさかのぼり、じん肺法が施行された六〇年四月を、その時期とした。その上で、事業者に散水措置や、マスクの使用を義務付けなかったことは権限の不行使であり、違法と断じた。

 司法が、より積極的に国の責任を問う姿勢を明瞭(めいりょう)にしたことは、評価できる。

 ただ今回、原告のうちの二十六人については、働いていた時期が六〇年以前だったのを理由に請求を退けた。じん肺は六〇年以前も国際的なテーマになり、国の担当者には原因や危険性への認識があったとされる。そうした点も考慮し、法施行以前の被害者救済も考える必要がある。同時に、埋もれた被害者の掘り起こしも急がれる。

 じん肺は決して過去の病気ではない。トンネル工事は、現在もさまざまな形で行われている。今の対策は足りているか。新たな被害者を生まない視点も欠かせない。

じん肺訴訟、熊本も国に賠償命令 地裁、責任認める

2006年07月13日 asahi.com

 国発注のトンネル建設工事現場で働き、じん肺になった九州・沖縄・山口の元労働者と遺族ら計196人が、「国が適切な粉じんの規制をしなかったため、じん肺になった」として、国に総額約5億1000万円の損害賠償を求めた集団訴訟の判決が13日、熊本地裁であった。永松健幹裁判長(石井浩裁判長代読)は「労働大臣が60年4月以降、具体的な粉じん吸引防止策を義務づけなかったのは違法だ」などとして国の責任を認め、原告160人(患者130人)に、1人あたり18万3266円〜330万円、総額約2億5930万円の賠償を命じた。

 同様の訴訟は全国11地裁で起こされ、東京地裁では7日、国の責任を認める判決が出た。この日の判決は国の責任について、「86年末ごろには適切な措置を講じるべきだった」とした東京地裁判決より踏み込んだ判断を示した。不作為責任を問う司法判断が相次いだことで、政府は具体的な対策を迫られそうだ。

 判決は、国は旧じん肺法が施行された60年4月ごろには、トンネル建設現場の労働者がじん肺を発症する危険性が高く、粉じん吸引防止措置をとる必要性が高いと認識できたと指摘。トンネル建設現場での防じん対策として、飛散防止のための散水▽衝撃式削岩機の湿式化と併せた防じんマスクの使用▽粉じんの許容濃度を設定し、事業者に定期的な粉じん測定――などを義務づける省令を制定しなかったのは、裁量の範囲を逸脱し、著しく合理性を欠き、違法だと判断した。

 国が主張していた時効については、原告らが労働大臣の不作為を知ったのは、「筑豊じん肺訴訟」の二審判決(01年)後に弁護士らの助言を受けた02年1月だとして、時効は成立しないと結論づけた。

 原告は03年に国とゼネコンなどの企業52社を相手に提訴し、企業とは和解が成立している。第2陣として、九州と広島県の患者や遺族56人が06年4月に提訴した。

 熊本地裁判決を受けて、厚生労働省の阿部重一労働衛生課長は「現時点では判決の具体的内容を十分確認したものではないので、具体的なコメントは差し控えたいが、今後の対応については判決内容を十分検討の上、関係省庁とも協議して決定することにしたい」とのコメントを発表した。

じん肺訴訟勝訴 鹿県原告ら「頑張ってよかった」

2006/07/13 南日本新聞ニュースピックアップ

「本当の闘いこれから」

 「東京地裁を上回る画期的判決だ」。13日に熊本地裁で言い渡されたトンネルじん肺九州訴訟は、7日の東京地裁判決に続き労働者の悲痛な訴えを認めた。同地裁の控訴期限が21日に迫る中、熊本地裁の判断は「今後を占う分水嶺(れい)」と位置づけられていただけに、原告団は「これでじん肺を根絶できる」と一様に笑顔を浮かべた。

 午前10時すぎ、約200人の原告や支援者が待つ地裁前に原告2人が駆け寄り、「勝訴」「再び国の責任を断罪」の垂れ幕を掲げると、一斉に拍手と歓声がわき起こった。鹿児島からは約40人が、バスを貸し切って駆けつけた。患者らはじん肺による息苦しさを我慢しながらも、勝訴に「やった」「頑張ってきてよかった」と声を振り絞り喜び合った。

 鹿児島原告団では2003年7月の提訴から亡くなった患者原告も。同市福山町福山の隈元キイさん(70)は、04年12月に夫春利さん=当時(71)=を亡くした。遺志を継いだ裁判の勝利に「胸がいっぱいです」と涙を流した。「夫も『この苦しい病気を後世に残してはならない』と繰り返していた。きょうは良い報告ができそうです」と話した。

 自宅療養が続く森義春鹿児島原告団長に代わり、判決後の記者会見に臨んだ霧島市国分敷根の川添和一さん(68)は「うれしかった。でも根絶を目指す本当の闘いはこれから。原告は高齢化している。早期解決を訴えていきたい」と表情を引き締めた。

法整備怠った国を断罪 トンネルじん肺判決

2006/07/08 中国新聞社説

 高度成長やバブル景気の繁栄の陰で、生命や健康をむしばむ劣悪な労働環境にさらされていた被害者がこんなに多数苦しんでいた―そんな状況を見逃していた私たち国民の責任をまず自覚したい。

 国が主に発注したトンネル工事に従事し、じん肺を患った元作業員らが国に損害賠償を求めた。東京地裁はきのうの判決で、国の賠償責任を認め、原告四十四人に総額六千九百三十万円を支払うよう命じた。東京をはじめ広島、松江など全国十一地裁に約九百六十人の元作業員らが、じん肺訴訟を起こしている。その初めての判決である。今後の裁判に大きく影響するとともに、国に抜本的な対策を強く促した判決だと言えよう。

 新幹線、高速道路…トンネル工事は全国にいくらでもあった。粉じんが工事現場の坑内に立ちこめて、一メートル先も見えない。多くの作業員はじん肺の怖さなど知らず、現場から現場へ渡り歩いた。一九七六年、大分県佐伯保健所長の調査でトンネル工事作業員にじん肺患者が多くいることが判明、報道された。マスク着用などの安全教育が始まったのは八〇年ごろという。厚生労働省の統計では、トンネル工事作業員のじん肺による要療養者は約九千人にもなる。

 判決は、八六年末ごろには粉じんの出にくい湿式削岩機と防じんマスク使用を義務化したり、粉じん濃度測定を義務付けるといった省令を制定すべきだったのに怠った、と国の規制権限行使義務違反を認めた。また国が主張した賠償請求権の時効消滅(三年)については「炭鉱労働者のじん肺に対する国の責任を初めて認めた、二〇〇一年の福岡高裁判決から起算するのが妥当」と否認した。

 安全配慮義務違反については「個々の工事ごとの判断が必要だが証拠がない」と原告の主張は認められなかった。また、原告五人については、坑内での作業は少なかった、と判断され、賠償は認められなかった。

 トンネルじん肺についての旧日本鉄道建設公団やゼネコンなどへの損害賠償を求めた訴訟は九七年に始まったが、順次和解が成立している。しかし、「国の責任が認められないと、じん肺被害はなくならない」と、〇二年に全国十一地裁に提訴した。

 原告らは国に対し「トンネル工事現場での粉じん測定義務」「作業時間短縮」「被害者への補償基金創設」などを訴えている。国は真剣に検討すべきである。

塵肺訴訟、国に賠償責任 トンネル元作業員で初認定

2006/07/07 IZA

 トンネル工事で塵肺(じんぱい)になったのは、国がゼネコンに粉塵(ふんじん)対策を講じさせるのを怠ったためだとして、元作業員とその遺族49人が国に1人あたり330万円、計約1億5000万円の損害賠償を求めた「トンネル塵肺訴訟」の判決が7日、東京地裁であった。芝田俊文裁判長は「規制権限を行使していれば塵肺被害の発生、拡大を相当防止できた」と指摘して国の責任を認め、44人に計約6930万円の支払いを命じた。

 塵肺患者約960人は全国11地裁に国の責任を問う訴訟を起こしている。東京地裁は初の判断となり、他地裁の訴訟にも影響を与えそうだ。

 原告は北海道から鹿児島まで19道県に住む57〜78歳の元作業員とその遺族。ゼネコンに損害賠償を求める訴訟も起こし、全員和解が成立している。塵肺は発症すると治療方法がなく、平成14年の提訴後、3人の原告が死亡している。

 訴訟の主な争点は(1)国に塵肺防止のための規制権限を行使しなかった責任があるか(2)トンネルの発注者である国には作業員の安全に配慮する義務があるか−だった。

 芝田裁判長は(1)について、コンクリートを吹き付ける現在の標準トンネル工法が普及した昭和61年末までに、工事現場の粉塵測定や、粉塵が飛び散らないような削岩機と防塵マスクの併用を義務付けなかったことを「国の持つ権限の性質に照らして合理性を著しく欠き国家賠償法上、違法といえる」と述べた。

 その上で「これらの安全対策をゼネコンに講じさせても、ゼネコンの負担は大きくなかった」と、国の安全対策の怠慢を認めた。

 (2)では「原告が工事に従事したトンネルごとに判断が必要になるが、個別具体的な主張がない」として訴えを退けた。

 原告のうち5人は61年末までにトンネル工事の現場を離れていたとして、賠償は認められなかった。

 トンネル掘削は火薬で岩盤を吹き飛ばしたり、大型ドリルで岩盤を削るなどの工法があるが、いずれも大量の粉塵(ふんじん)が発生する。原告は粉塵舞うトンネル内で1日10〜11時間働き、塵肺を発症した。国は「現場の散水を義務付けるなど、作業員の安全のために規則を制定していた」と主張していた。

トンネルじん肺訴訟で東京地裁が国の責任認める判決、長野原告団が会見

2006.07.07 NBS

 トンネルじん肺訴訟は、国が発注したトンネル工事で「じん肺」になったとして全国の元作業員が国と大手ゼネコンに損害賠償を求めているもので、東京地裁が7日、国の責任を認め損害賠償の支払いを命じた。

 長野地裁では、じん肺となった元作業員17人が提訴し、これまでにゼネコンに対しては和解が成立している。

 しかし国を相手取った裁判は現在も続いている。 長野トンネルじん肺根絶原告団と弁護団はこの判決をうけ県庁で会見し、「全面勝訴の判決を評価する長野地裁でも勝訴を勝ち取りたい」と述べた。

CT鑑定請求を却下 三菱じん肺訴訟で長崎地裁

2006/06/21 長崎新聞

 三菱重工長崎造船所で働き、じん肺になったとして元従業員や遺族ら六十人が三菱重工(本社東京)に総額約十三億七千万円の損害賠償を求めた「三菱長船じん肺第二陣訴訟」の口頭弁論が二十日、長崎地裁(田川直之裁判長)であった。三菱側が求めていたじん肺患者のCT(コンピューター断層撮影)鑑定について、田川裁判長は「必要性なし」として却下する判断を示した。

 三菱側は、現行のじん肺法が判別手段として認めている胸部単純エックス線写真診断ではなく、CT鑑定で罹患(りかん)の有無を正確に判断するよう請求していた。

 一方、原告側は「原告は全員じん肺と認定された患者。CT鑑定は、現行じん肺法で補助的に認められているにすぎず、被告の主張は現行制度そのものを否定するものだ」として、三菱側の請求の却下を求めていた。

 田川裁判長はCT鑑定却下の理由について「判決の中に盛り込む」とした。十月二日の次回公判で結審する見通し。

 原告団は六月下旬、三菱重工本社に「早期和解」を求め要請書を提出する予定。

じん肺原告34人が和解 福岡地裁の西日本石炭訴訟

2006年04月19日 西日本新聞

 福岡県筑豊地方などの炭鉱で働きじん肺になったとして、患者や遺族が国と企業5社に約26億円の損害賠償を求めた福岡地裁の西日本石炭じん肺訴訟は19日、原告287人のうち34人が国と和解した。

 原告代理人によると、和解したのは国だけに提訴した患者19人(うち5人死亡)分。国は賠償金として計約1億4450万円を支払う。

 金額は、じん肺問題で初めて国の賠償責任を認め確定した筑豊じん肺訴訟福岡高裁判決(2001年)を基準に、患者1人当たり476万?916万円。和解条項には、国が原告に謝罪し、じん肺の再発防止を誓うことが盛り込まれた。

 被告企業の三井松島産業(福岡市)など2社は原告17人と和解したが、ほかの3社は争っている。熊本地裁で係争していた原告3人も3月30日、国と和解した。

炭鉱会社側が30億支払い 福岡、じん肺3訴訟和解

2006年03月22日 宮崎日日新聞

 長崎県の池島炭鉱(2001年閉山)などで働き、じん肺になった元従業員らが、炭鉱を運営した松島炭鉱と親会社の三井松島産業(いずれも福岡市)に損害賠償を求めた福岡地裁と福岡高裁の訴訟計3件は20日、会社側が原告ら264人に解決金約30億1000万円を支払うことで和解した。

 和解に先立ち、多くの原告が住む長崎市で、会社側と原告側が「三井松島じん肺問題終結共同宣言」に調印。会社側は宣言で「経営した炭鉱で、じん肺患者が発生した事実を重く受け止める」と述べ、現在もじん肺に苦しむ患者原告への見舞いや、遺族への弔意を表明した。

 和解したのは福岡地裁、福岡高裁(1審は長崎地裁)の「三井松島じん肺訴訟」と、福岡地裁の「西日本石炭じん肺訴訟」のうち三井松島を訴えた原告17人分。解決金は患者1人当たり数百万円から約2500万円。

三井松島じん肺訴訟和解 苦しみは終わらない 調印式見守る遺影や原告

2006年03月21日 西日本新聞

 旧池島炭鉱(長崎市)と旧大島炭鉱(西海市)で働きじん肺になった元従業員と遺族が会社側を訴えた訴訟が和解した二十日、長崎市で「三井松島じん肺問題終結共同宣言」の調印式があり、原告約二百人が「全面的な終結」の瞬間を見守った。

 大島炭鉱は一九七〇年に、池島炭鉱は二〇〇一年に閉山したが、粉じんでじん肺を患った元従業員らの苦しみに終わりはない。会場最前列に並んだ十六枚の遺影と、つえを持った原告の姿が長い時間の経過を物語った。

 西海市大瀬戸町の立花敏恵さん(73)は昨年二月に亡くなった夫吉郎さん=当時(73)=の写真を抱いて出席。「裁判で福岡市に行った日に夫の病状が急変し、死に目に会えなかったのが無念でならない」と涙をぬぐった。

 同市大島町の山本勝右衛門さん(88)は「年を取るほどに、息をするのが苦しくなる。和解といってもピンと来ません」。別の原告は「裁判は終わっても、じん肺の苦しみは終わらない」と淡々と話した。

 調印式後、会見した三井松島産業(福岡市)の米澤祥一郎社長は「安全配慮にベストを尽くしたと信じているが、訴訟を長期化させるのは良くない。言い分もあるが、大局的に判断した」と和解を選んだ理由を述べた。

■原告団長・井上さん「尊厳かけた闘いだった」 「三井松島との闘いは終わったが、じん肺の苦しみは続く」。二十日の三井松島じん肺訴訟の全面和解の調印式に臨んだ原告団長の井上久男さん(74)=長崎市脇岬町=は、複雑な思いで「決着」を受け入れた。

 一九六四年から二十年間、旧池島炭鉱(長崎市)で働いた井上さんは、八三年にじん肺の認定を受けた。別の炭鉱で働いてじん肺になり、黒ずんだたんを吐いて五十一歳の若さで死んだ義兄の姿を思い出し「明日はわが身か」と震えたという。

 三菱造船長崎じん肺、三井三池じん肺、筑豊じん肺…。定年後、裁判を傍聴し、本や新聞で「じん肺訴訟」も勉強した。

 現役当時、井上さんは、採掘作業員にじん肺対策の指導を任された時期があった。だが、実態は形式的なもので、じん肺の恐ろしさを話そうとする井上さんを会社側は制止したという。

 「あの時、会社に負けなければ…」

 全国のじん肺患者の悲痛な訴えを聞くたびに、後悔の念が募り、六年前にかつての職場仲間七人で提訴を決意。池島・大島(西海市)両炭鉱で働いた作業員を半年かけて説得し、原告団結成にこぎ着けた。

 裁判の先頭に立ち続けた井上さんはこの日、調印式に臨み被告企業の社長とともに「終結共同宣言」にサイン。

 「人間の尊厳をかけた闘いだった。今日を新たな一歩としたい」

 調印後に開かれた報告集会で井上さんは、国と企業の責任を問い続けた日々を振り返り、今後もじん肺根絶にかかわっていく思いを語った。

三井松島じん肺訴訟「終結宣言」調印三十億円の和解金

2006/03/20 by日本共産党長崎県委員会

 長崎市の池島炭鉱(旧長崎県外海町、二〇〇一年閉山)などで働き、じん肺にかかった元従業員や遺族らが、三井松島産業と松島炭鉱を相手に、加害責任を明らかにし、謝罪と補償、じん肺根絶への取り組みを求めていた「三井松島じん肺訴訟」「西日本石炭じん肺訴訟」で二十日、それぞれ和解が成立。原告らは全体で二百六十四人、和解金は約三十億円余です。

 長崎市で「三井松島じん肺問題終結共同宣言」が両関係者によって調印されました。訴訟中に亡くなった十人以上の原告の遺影を最前列に約二百三十人の原告や支援者が見守りました。

 席上、三井松島産業の米澤祥一郎社長は「じん肺患者・ご遺族のみなさんに心から弔意とお見舞いを申し上げます。裁判で多大の負担をかけました」と、謝罪と遺憾の意を表し、今後のじん肺防止を誓約しました。

 三井松島じん肺訴訟弁護団の熊谷悟郎団長は、「(被告は)いったん和解を拒んだが、その後の長崎地裁判決(昨年十二月)を重く受けとめ和解を決断したことに敬意を表する」と評価、「『宣言』の誠実な履行」を求めました。  三井松島じん肺訴訟原告団と弁護団、全日本建設幸交運一般労組長崎県本部による「全面解決報告集会」で、井上久男団長は「人間の尊厳をかけたたたかいだった。勝利は多くの支援者や弁護団との力の結集によるもの」とあいさつ。いまもたたかわれているじん肺訴訟とじん肺根絶に取り組む「声明」が読み上げられました。

豊羽じん肺 勝利和解/会社側 原告17人に事実上謝罪

2005年12月29日 しんぶん赤旗

 札幌市の金属鉱山「豊羽(とよは)鉱山」で働き、じん肺になった労働者と遺族ら十七人が、雇い主である豊羽鉱山と親会社の新日鉱ホールディングスなどを相手取って加害責任と賠償を求めていた「豊羽鉱山じん肺訴訟」が二十八日、札幌地裁で和解しました。

 和解の内容は、被告は原告全員に対して総額二億一千万円を支払うとともに、原告らに対し弔意とお見舞いの意思を示し、じん肺被害を回避するためいっそうの努力を約束するというものです。

 六月に亡くなった原告の芳賀文夫さん=当時(71)=の遺影を抱いた妻・麗子さん(57)は「『麗子、最後、頼むな』が夫の最期の言葉でした。やっと悔いのない気持ちで報告できます」と笑顔で涙をぬぐいました。

 弁護団長の長野順一弁護士は和解について、全面勝利解決した北海道石炭じん肺訴訟などに準じた和解金額が支払われたこと、時効差別なく原告全員が救済されたこと、事実上「謝罪」し今後のじん肺被害の防止を誓約したことをあげ、「きわめて大きな意味を持つ和解だ」と強調しました。

 同訴訟は、二〇〇二年八月の提訴以来、約三年にわたる口頭弁論、証人尋問、豊羽鉱山の「実地検証」などを経て、今年七月に結審。札幌地裁の和解勧告にもとづき協議をしていました。

じん肺訴訟 被害救済に時効はない

2005/12/14 中国新聞社説

 胸の激痛に耐えながらの訴えだった。原告の願いが報われる道が開けた、と言える。炭鉱で働いた時に粉じんを吸い込んで「じん肺」になった、として長崎県の池島炭鉱などの元従業員と遺族計七十六人が、炭鉱会社側に損害賠償を求めた「三井松島じん肺訴訟」。長崎地裁は原告の訴えを認めて原告側に総額約九億四千万円を支払うよう会社に命じた。

 日本の経済成長を支える労働力の一端を担わせながら、従業員の健康を置き去りにした会社の責任を問うた訴訟である。今回の判決は「筑豊じん肺訴訟」の福岡高裁判決(二〇〇一年)を踏襲した判断で、じん肺訴訟での企業責任を認める司法判断は定着した、と言っていい。

 訴訟は、一九五〇年ごろから〇一年にかけて、旧池島炭鉱(長崎市)と旧大島炭鉱(西海市)で働いた元従業員らが〇二年に起こした。「じん肺になったのは、会社が防止策や健康管理を怠ったため」などとして、両炭鉱を経営していた松島炭鉱(福岡市)と親会社の三井松島産業(同)に総額約二十億円余りの損害賠償を求めた。

 最大の争点は、賠償請求権が消滅する時効(十年)の判断だったが、田川直之裁判長は時効が消滅するとした会社側の主張について「著しく正義に反し、権利の乱用で許されない」と厳しく指摘し、原告側の救済を認めた。もう一つの争点だった親会社の責任についても、「共同の安全配慮義務がある」とする原告側の主張を認めた形だ。

 原告の一人は「(炭鉱内の)環境は劣悪だった」と話している。坑道で岩盤を破砕すると粉じんが充満。マスクのすき間から吸い込まざるを得なかった、と言う。「金ほしさ」と指弾されながら、肺の一部切除の病身を押して支援署名を集めた。そのことを思えば、被害者救済の判断は当然でもあろう。

 今回の判決は会社責任についてだけだが、じん肺訴訟では既に昨年四月、「筑豊じん肺訴訟」で最高裁がじん肺発生の責任が国にもあると認めている。国は六〇年にじん肺法を制定し、病状に応じて企業労働者に対する健康保持義務を決めた。筑豊判決では、それ以降に「国が防止の規制権限を行使しなかったことは違法」と判断している。国の不作為が裁断されたわけだ。

 この筑豊じん肺訴訟では、国は裁判所の二度にわたる強い和解勧告を拒み、十八年も争ってきた経緯がある。しかし、筑豊や三井松島訴訟も含め、全国で争われているじん肺訴訟の原告は高齢になった。

 三井松島訴訟でも福岡地裁で元従業員らが同様の訴えを起こしている。北海道など各訴訟では和解が進んでいる現状もあるが、国や炭鉱会社はその瑕疵(かし)を率直に見つめ、被害者の早急な救済に尽くすべきだ。

 中国地方でも、五〇年代を中心に中国山地などのトンネル工事現場で働き、じん肺を患った元従業員らが国や建設会社を相手取って訴訟をしている。救済を求める切実な訴えは同じだ。

 炭鉱や道路建設にしても、国の基幹産業を下支えし、基盤づくりに貢献してきた。その従業員の苦難に、国や企業が応えない方が不当だ。

「三井松島じん肺訴訟」で賠償命令 長崎地裁

2005年12月13日 THE TOKUSHIMA SHIMBUN

 じん肺になった長崎県・池島炭鉱の元従業員らが会社側に損害賠償を求めた「三井松島じん肺訴訟」で、長崎地裁は13日、死亡した6人の遺族と患者原告56人全員に賠償金を支払うよう会社側に命じる判決を言い渡した。

トンネルじん肺訴訟のうち、ゼネコン28社と原告7人が和解

2005.11.04 NBS

 トンネルじん肺で、元作業員17人が、国や大手ゼネコンを相手取り損害賠償を求めていた裁判のうち、ゼネコン28社と原告7人の間で和解が成立した。 この裁判では国発注のトンネル工事で「じん肺」になったとして元作業員17人が提訴していた。このうち8人は国と大手ゼネコンを、9人は国を相手取って損害賠償を求めている。

 4日に和解が成立したのは、国とゼネコンを相手取った8人の原告のうち7人とゼネコンの間で、ゼネコン28社が7人に合わせて1億800万円を支払うことになった。

 また長野地方裁判所は、和解条項の前文で建設業者が十分なじん肺対策を取れるよう、発注者の国、地方公共団体、道路公団などに対し設計や積算などでの最大限の配慮を要望した。

石炭じん肺患者らが提訴 北海道、国に損害賠償請求

2005/10/05 The Sankei Shimbun

 北海道内の炭鉱で働き、じん肺になった患者109人(うち22人死亡)が5日、粉じん防止の規制権限を行使しなかったことは違法として、国に計約12億5000万円の損害賠償を求めて、札幌地裁に提訴した。

 原告側弁護団によると、11月にも約60人が国を相手に提訴する予定。また約370人が企業4社を相手に賠償交渉をしており、決裂した場合は集団提訴する方針。

 石炭じん肺訴訟では、福岡県の筑豊じん肺訴訟と北海道の別の訴訟で、最高裁が国の責任を認めている。ただ、国は裁判所の手続きを経ないと賠償に応じられないとしており、原告側は提訴に踏み切った。原告側は早期の解決を目指している。

 訴えによると、原告は1960―86年にかけて道内の炭鉱で働き、じん肺になった。22人は肺炎や肺がんなどで死亡した。(共同)

じん肺訴訟について

2005/07/12 住友重機械

 住友重機械工業株式会社(社長 日納 義郎)は、本日、横浜地方裁判所横須賀支部で係争中のじん肺訴訟に関して、裁判所から提示されていた和解案について、同意できない旨の見解を裁判所に伝えました。

 本件訴訟に関しては、安全配慮義務の履行状況、じん肺の原因、じん肺の管理区分の判定等の事実関係について争いがありますが、裁判所から示された和解案は、これらの点について配慮されたものと判断するに至らなかったため、残念ながら同意することはできませんでした。

 当社は昨日、石綿健康障害(中皮腫)の状況について発表いたしました。本件訴訟の原告(対象となる元従業員12名)の中には、中皮腫で死亡された元従業員1名のご遺族が含まれていますが、造船所におけるじん肺には溶接工肺もあり、当社としては原告全員が石綿肺であるとは認識しておりません。

 なお、和解案には、当社の現行じん肺労災補償規定について見直しの検討を促す内容が含まれておりましたが、当社としては本件訴訟と並行して、じん肺労災補償規定の見直しを独自に検討しております。

 また、当社では石綿対策の重要性を十分に認識するとともに、全般的な粉塵対策として、作業環境管理、作業管理、健康管理について、法令を遵守し、常に職場環境の向上に努めております。以上

豊羽鉱山じん肺訴訟が結審 判決は来年2月17日

2005/07/01 The Sankei Shimbun

 豊羽鉱山(札幌市)で働きじん肺になったのは会社が十分な安全対策を取らなかったためとして、元従業員や遺族17人が、同鉱山や親会社の新日鉱ホールディングス(東京都)など3社に対し、総額約5億5000万円の損害賠償を求めた訴訟が1日、札幌地裁(笠井勝彦(かさい・かつひこ)裁判長)で結審した。

 笠井裁判長は、来年2月17日を判決期日に指定後、和解を勧告した。

 豊羽鉱山は2006年3月に閉山する予定。

 訴状によると、原告の元従業員らは1951年11月から96年2月にかけ、豊羽鉱山で亜鉛や鉛の採掘作業などに従事した。いずれも、じん肺の症状の軽重を表す「管理区分」の2や3などに、国によって認定されている。原告側は豊羽鉱山などの安全保護義務違反を主張していた。(共同)

石炭じん肺、70人和解へ 北海道訴訟、提訴から18年

2004/12/12 The Sankei Shimbun
 北海道内の炭鉱で働き、じん肺になった患者ら79人(うち63人死亡)が国に損害賠償を求めた石炭じん肺訴訟で、原告側は12日、国が慰謝料支払いを表明した70人について和解する方針を固めた。同日、札幌市内で開かれた弁護団と原告との協議で合意した。13日、東京都内で支援団体の意見を聞いて正式決定する。

 15日の札幌高裁の和解協議で70人の和解が成立し、「除斥期間」を理由に国が賠償を拒否した9人については判決が言い渡される見込み。高裁は和解案に沿って慰謝料を命じる判決を言い渡すとみられる。

 石炭じん肺訴訟は福岡県の筑豊訴訟で国の敗訴が確定し、国の責任を追及して係争中なのは北海道訴訟だけ。提訴から18年で石炭じん肺問題は大きな節目を迎えた。

 和解協議では、損害の発生から20年で損害賠償請求の権利が消滅する民法の「除斥期間」をめぐり原告と国が対立。札幌高裁は11月、国が計約5億4000万円の慰謝料を支払った上、症状が重くなった場合はその時点を起算点にして、より多くの患者救済案を提示した。だが、国が患者のうち除斥期間を経過した9人は認められないと回答していた。

 双方は既に(1)筑豊訴訟最高裁判決の基準を踏まえた和解金を支払う(2)石炭じん肺を所管する経済産業相が謝罪する(3)トンネルじん肺を所管する厚生労働相も「じん肺防止に努力する」とする談話を発表する−ことで合意していた。

 北海道石炭じん肺訴訟は、1986−93年にかけて約230人が国や企業を相手に提訴。99年の札幌地裁判決は企業に賠償を命じたが、国の責任は認めなかった。(共同)

 <じん肺> 炭坑やトンネル工事などで粉じんを長期間、多量に吸い込んだことが原因で肺の細胞が変質、壊死(えし)し、呼吸機能が低下する進行性疾患。肺結核や気管支炎などの合併症を起こしやすい。じん肺の主な原因物質は二酸化ケイ素(シリカ)。じん肺法が労働者の健康管理に関して適切な対応をするように事業者に義務付けている。

 <除斥期間> 行使しないと権利が自動的に消滅してしまうとされる期間。不法行為による損害賠償請求では、不法行為の時から20年で適用される。最高裁は1998年、予防接種訴訟の判決で「正義、公平の理念に著しく反する場合には適用しない」と例外を認めた。(共同)

炭鉱じん肺、国の敗訴確定  上告棄却、日鉄鉱業も

2004年04月27日 IWATE NIPPO

 福岡県筑豊地方の炭鉱で働き、じん肺になった患者と遺族が国と日鉄鉱業(東京)に損害賠償を求めた「筑豊じん肺訴訟」の上告審判決で、最高裁第3小法廷(藤田宙靖裁判長)は27日、「国が1960年4月以降、粉じん防止の規制権限を行使しなかったことは違法」と述べ、じん肺発生の責任は国にもあると判断した。

 国と日鉄の上告を棄却し、両者の責任を認めた2審福岡高裁の賠償命令が確定した。最高裁が国の権限不行使で賠償責任を認めたのは初めて。炭鉱じん肺で国の敗訴確定も初めてとなった。4裁判官全員一致の結論。

 判決の対象は患者15人と死亡した42人の遺族の計200人。賠償総額は計約5億6500万円。うち国単独で患者42人分の約3億2900万円を負担。日鉄と連帯し患者8人分、約6300万円を支払う。

新たに計65人が国など損賠提訴 じん肺訴訟

2003年09月24日 The Sankei Shimbun
 国が発注したトンネル工事に従事し、じん肺になったとして、長野、徳島など9府県の元作業員計66人が24日、国などに総額約14億円の損害賠償を求める訴訟を長野、徳島、松山の3地裁に起こした。

 トンネルじん肺をめぐる一連の裁判は、大手ゼネコンなどに賠償を求めた訴訟の和解が各地で進み、昨年11月から国の責任を問う訴訟が東京、札幌、仙台、新潟、熊本各地裁に相次いで起こされた。29日には金沢地裁にも提訴の予定。

 全国の訴訟の事務局を担当する全日本建設交運一般労働組合(東京)によると、この日提訴の66人のうち、ゼネコン側と和解した26人は国に1人当たり330万円を請求。残りの40人は国とゼネコンに1人当たり3300万円の支払いを求めている。

 原告側は「国には発注者としての安全配慮義務があり、じん肺法などに基づく監督義務もある」と主張。訴訟の中で、じん肺政策の抜本的な見直しやじん肺補償基金の創設なども訴えていく。

じん肺訴訟:住友重機の元従業員らが損害賠償求める 横須賀

2003年07月08日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 住友重機械工業(本社・東京都)の元従業員ら14人が8日、「造船部門の作業で石綿(アスベスト)などを吸い、じん肺禍になった」として同社を相手取り、3億9600万円の損害賠償訴訟を横浜地裁横須賀支部に起こした。原告は67〜84歳の患者11人と遺族3人。

 訴状によると、原告患者らは同社追浜工場(神奈川県横須賀市)などの造船部門に、27〜40年間従事。断熱材に使われていた石綿などの粉じんを吸い込み、じん肺禍に陥った。会社は対策を怠り、健康被害を拡大させたとしている。

 88年に同社の元従業員8人による「住友じん肺訴訟」が同支部に提訴され、8年余り後に和解。今回は第2次集団訴訟。

 原告団は「昨年6月、三菱重工業はじん肺訴訟の原告との和解を決め、企業責任を明確化した。住友重機もこれにならい、高齢患者の早期救済を」と訴えた。

 住友重機側は「訴状を読んでいないのでコメントできない」としている。

 また、「じん肺ホットライン」(じん肺・アスベスト被災者救援基金など主催)が9、10の両日(いずれも午前9時〜午後5時、電話046・865・2960)に開設される。【網谷利一郎】

じん肺訴訟:原告側弁護団が上告 米海軍横須賀基地

2003年06月02日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 米海軍横須賀基地じん肺訴訟で、元従業員ら5人の原告側弁護団は2日、逆転敗訴となった東京高裁判決について「法令解釈に誤りがある」として上告した。

 東京高裁は5月27日、原告の元従業員らが重度の病状に認定されてから提訴まで10年以上経過し、時効が成立しているとして原告勝訴の1審判決を取り消し、国側の控訴を認めた。

 原告弁護団は「全国のじん肺訴訟の流れに反した控訴審判決を阻止するためにも、最高裁で受理し、審理してほしい」と話している。【網谷利一郎】

じん肺被害で滋賀、岐阜の元作業員が建設13社を提訴

2002年09月26日 Yomiuri On-Line
 全国でトンネル工事に従事し、じん肺患者に認定された滋賀、岐阜県内の元建設作業員11人と1遺族が26日、「健康被害や精神的苦痛を受けた」とし、元請けの大手建設会社「清水建設」(本社・東京都港区)など13社に計2億6400万円の損害賠償を求め、大津地裁に提訴した。

 訴えたのは、滋賀県長浜市、木之本、高月両町、岐阜県国府町内の55―73歳の11人と滋賀県高月町の1遺族4人。

 訴状によると、元作業員らは1950―79年にかけて、トンネル工事に携わって呼吸困難などになり、じん肺患者に認定された。「建設会社は作業員の安全や健康を保つ義務を怠った」と主張している。

国に2億3千万円賠償命令 横須賀基地じん肺訴訟

2002/10/07 中国新聞
 米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)で働き、じん肺になった日本人元従業員九人と死亡した三人の遺族が、雇用主の国に総額三億千三百五十万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、横浜地裁横須賀支部は七日、国に約二億三千百万円の賠償を命じた。

 須山幸夫裁判長は、米軍の石綿粉じん対策が不十分だったと認定。その上で国は、日米地位協定に基づき米軍が安全配慮義務(対策実施義務)を尽くしているかどうかを調査・監視し、必要な措置を講じるよう働き掛ける安全配慮義務(対策推進義務)を十分尽くしていなかったとした。

 在日米軍施設を舞台にしたじん肺訴訟の判決は初めて。日米地位協定などで国が雇用主、米軍が使用者となる米軍施設従業員への安全配慮義務について、新たな概念を示した。

 また賠償請求権が消滅する時効(十年)の起算点は、死亡時や合併症認定時などとし、元従業員十二人のうち三人(一人は故人)は既に時効が成立していると判断。

 その上で「被告(国)が賠償義務を免れることは著しく正義・公平・条理などに反する。消滅時効の援用は、権利の乱用として許されない」として原告全員への賠償を認めた。

 判決によると、元従業員らは艦船修理廠(しょう)などで四十三 ―十六年間勤務。かつて米軍用艦には、石綿が断熱材や防火材として使われており、修理の際は石綿をはがしたり、切断したりした。

 石綿粉じんの危険性は戦前から指摘され、日本では一九六〇年、健康診断などを定めたじん肺法が施行された。

 原告側は、横須賀基地では八〇年ごろまで、健康診断や防じんマスク着用徹底などの石綿粉じん対策が、ほとんど取られていなかったと主張していた。

 別の日本人元従業員二十二人は今年五月、国に約四億九千万円の損害賠償を求める第二次訴訟を起こしている。


じん肺4訴訟の和解大筋合意、三井2社が80億円?

2002年07月27日 Yomiuri On-Line
 九州や北海道の炭鉱じん肺患者と遺族が、国や企業に損害賠償を求め、長期裁判が続いている「筑豊じん肺訴訟」(最高裁)、「三井三池じん肺訴訟」(福岡高裁)、「北海道石炭じん肺訴訟1・2陣、3陣」(札幌高、地裁)の4訴訟で、原告代理人と被告の三井鉱山、三井石炭鉱業(ともに本社・東京)は27日、三井2社が和解金を支払うなどの和解条件について、大筋で合意した。

 原告団集会で了承されれば、8月1日にも原告、被告双方で訴訟終結の共同宣言を発表、和解が成立する見通し。炭鉱じん肺訴訟では、三井2社を相手取った原告が最も多い。成立すれば、残る被告の国と日鉄鉱業(本社・東京)など3社に影響を与えるのは必至だ。

 関係者によると、死者を含む和解協議の対象患者は、三池訴訟の149人全員と筑豊の66人、北海道の193人に加え、未提訴の約50人ら計約500人。和解金は、症状に応じて患者1人当たり1000万円―2500万円の水準で、総額80億円前後を軸に交渉、和解金の総額は明らかにされていないが、ほぼ合意に達したという。

 北海道1・2陣の控訴審で今年3月、和解を拒否してきた三井2社が、札幌高裁の和解勧告に応じる意向を表明。原告側は、1審判決で時効を理由に棄却された患者、未提訴患者の一部も含めた決着に向け、協議を重ねてきた。

 筑豊、三井三池両訴訟の馬奈木昭雄弁護団長は「現段階では、協議内容は明らかにできない。いろいろな手続きを踏んだ上で説明したい」とした。

 筑豊じん肺訴訟原告団の城利彦事務局長(福岡県穂波町)は「最終局面に来ており、集会では合意内容を聞き、原告の了承を得る場になると思う」と話した。

          ◇

 炭鉱じん肺4訴訟=筑豊は85年―87年、国と三井2社など6社を相手に提訴。福岡高裁は昨年7月、初めて国の責任を認め、国と三井2社を含む3社に約19億1200万円の賠償を命じた。国と3社が上告受理手続きをした。他3社とは和解済み。三池は93年―99年に提訴し、福岡地裁は昨年12月、三井2社に約15億9500万円の賠償を命じた。北海道1・2陣は86年提訴で、札幌地裁は三井2社に約18億9000万円の賠償を命じた。ともに双方が控訴している。北海道3陣は98年に提訴された。

三菱長船じん肺訴訟 12億8000万円で和解

2002年06月08日 長崎新聞

 三菱重工長崎造船所で働き、じん肺になった従業員や退職者、遺族ら百十七人が、三菱重工(本社東京)に総額約二十七億円の損害賠償を求めた「三菱長崎造船じん肺訴訟」の和解協議が七日、長崎地裁(川久保政徳裁判長)であり、会社側が和解金として総額十二億八千万円を支払うことで提訴以来約三年半ぶりに決着した。

 造船じん肺症の集団訴訟としては二例目の和解。最大手の三菱重工が「原告勝訴」といえる内容で和解に応じたことは、今後業界で働くじん肺患者の訴訟や補償などに大きな影響を与えそうだ。

 和解条項は先月八日に長崎地裁が提示した和解案に沿った内容。損害賠償請求権の消滅時効(十年)を適用せず、原告全員を救済対象とした。

 和解金は基準金額と解決金の総額で、明細は示さなかった。近年の司法判断は、一人当たりの慰謝料を症状に応じて九百万―二千二百万円とするのが通例。原告側は「こちらの主張に近い額で決着した。じん肺訴訟では過去最高水準」と評価している。

 和解条項は、三菱側が原告と遺族に弔意と謝罪を表明することや、今後じん肺患者の発生を防ぐために鋭意努力することも明記した。

 原告側弁護団の熊谷悟郎事務局長は「造船じん肺訴訟の司法解決水準をつくりあげた。造船最大手の企業が加害責任を認めて謝罪した意義は大きい」と話した。

三菱じん肺責任認める

2002年06月08日「しんぶん赤旗」

長崎造船訴訟和解

補償、謝罪、予防を約束

 三菱重工業長崎造船所(長崎市)の従業員や遺族ら百十七人(患者七十七人、うち十一人は現役、遺族四十人)が、じん肺になったのは同社が対策を怠ったためとして「謝罪と補償、根絶対策」を求めた三菱長崎造船じん肺訴訟は七日、長崎地裁(川久保政徳裁判長)で和解が成立しました。

 和解内容は、被告三菱重工が時効差別をせず「総額十二億八千万円の和解金」を支払い、「患者・遺族への弔意と見舞い」と「今後、患者発生を防ぐために鋭意努力」することを約束しています。造船労働者が集団で訴訟を起こし、企業側が発生責任を全面的に認めた和解は初めて。

 原告団と弁護団は、「(三つの解決内容は)大きな勝利。全国の造船所で働く労働者全体に影響をもつものであり、未提訴患者・遺族に対しても大きな励ましとなるもの」との声明を発表。三菱重工が約束した「防止・根絶対策」を実現してじん肺を根絶するため、現役労働者が対策の実行を求めてたたかいを発展させることへの期待を表明しました。

 同訴訟は提訴から三年五カ月、提訴後だけでも五人の原告患者が死亡。原告団は被告が加害責任を認め、和解による早期全面解決を図るよう求めてきました。

全国トンネルじん肺訴訟で和解成立 東京地裁分

2001.02.14(19:18)asahi.com
 トンネル工事に従事してじん肺になった元建設作業員ら1170人(うち155人が死亡)が、全国22地裁・1支部で建設会社計184社を相手に「防止対策を怠った」として損害賠償を求めている「全国トンネルじん肺訴訟」のうち、東京地裁(河辺義典裁判長)での訴訟の和解が15日、成立した。会社側が弔意や見舞いの気持ちを表明したうえで、1人あたり最高で2200万円の和解金を支払う。各地の訴訟も同様に解決するための統一的な和解内容で、原告側は今年中にもすべての解決が図られるとみている。

 東京地裁での訴訟は、原告側が「代表訴訟」と位置付けるもので、北海道から鹿児島県まで18道県に住む原告26人(1人は死亡)が鹿島や大成建設など大手ゼネコンを含む31社に賠償を求めていた。

 和解条項によると、症状に応じて2200万円―1300万円が支払われ、総額は3億9800万円余になる。条項には「会社としては被害の発生を防ぎ得なかった事実を厳粛に受け止め、亡くなられた原告に慎んで弔意を表するとともに、じん肺にかかった原告の方々に心よりお見舞いを申し上げる」と記された。

 各地の訴訟は、東京地裁が和解条項で示した基準に従って2200万円―900万円の支払いで合意していく見通し。条項には、全国で今後提訴する予定の約250人についても同様の解決を会社側が約束する内容が盛り込まれている。

 また、東京地裁は条項の中で、じん肺防止に向けた方策を提唱した。会社側に厚生労働省の示す粉じん対策のガイドラインを踏まえた一層の努力を求め、工事の発注者である国や自治体、道路公団などにも会社側が十分な対策を講じられるよう配慮を求めている。

 「全国トンネルじん肺訴訟」は1997年5月の一斉提訴以降、各地で審理が続いてきた。弁護団は「これまでのじん肺をめぐる訴訟で事実上の『謝罪』や防止策の提唱が盛り込まれた和解条項は初めてで画期的だ」と内容を評価している。

全国トンネルじん肺訴訟の和解成立へ 各地で同様に解決

2001.02.13(23:33)asahi.com
 トンネル工事に従事してじん肺になった元建設作業員ら1170人(うち155人が死亡)が、全国22地裁・1支部で建設会社計184社を相手に「防止対策を怠った」として損害賠償を求めている「全国トンネルじん肺訴訟」をめぐり、東京地裁(河辺義典裁判長)での訴訟の和解が15日に成立する見通しとなった。会社側が弔意や見舞いの気持ちを表明したうえで、1人あたり最高で2200万円の和解金を支払う。各地での訴訟も同様に解決するための統一的な和解内容で、原告側弁護団は今年中にもすべての解決が図られるとみている。

 東京地裁での訴訟は、原告側が「代表訴訟」と位置付けるもので、北海道から鹿児島県まで18道県に住む原告26人(1人は死亡)が飛島建設やハザマなど大手ゼネコンを含む31社に賠償を求めている。

 弁護団によると、症状に応じて2200万円―1300万円が支払われ、総額は3億9800万円余になる。和解条項には「会社としては被害の発生を防ぎ得なかった事実を厳粛に受け止め、亡くなられた原告に慎んで弔意を表するとともに、じん肺にかかった原告の方々に心よりお見舞いを申し上げる」と記される。

 各地の訴訟は、東京地裁が和解条項で示した基準に従って2200万円―900万円の支払いで合意していく見通し。条項には、全国で7月末までに提訴する予定の約250人についても同様の対応を会社側が約束する内容が盛り込まれている。

 東京地裁は和解条項の中で、じん肺防止に向けた方策も提唱する。厚生労働省の示す粉じん対策のガイドラインを踏まえた一層の努力を会社側に求めるほか、工事の発注者である国や自治体、道路公団などに対しても会社側が十分な対策を講じられるようコストの積算などでの配慮を要望する。

 「全国トンネルじん肺訴訟」は1997年5月の一斉提訴以降、各地で審理が続いてきた。弁護団は「弔意の表明など、これまでのじん肺をめぐる訴訟で事実上の『謝罪』が盛り込まれた和解条項は初めてだ」と内容を評価している。

全国トンネルじん肺訴訟で、東京地裁が統一的和解案示す

2000.12.01(01:01)asahi.com
 トンネル工事に従事してじん肺になったのは企業が防止策を怠ったためだとして、元建設作業員らが建設会社などを相手に損害賠償を求めている「全国トンネルじん肺訴訟」をめぐり、東京地裁(河辺義典裁判長)は30日、原告、被告双方に和解金の基準額を2200万―900万円などとする和解案を示した。同地裁は和解案を「統一的な解決指針」と位置づけており、これに基づいて全国の地裁・支部で続いている訴訟は和解に向けた動きが一気に加速しそうだ。トンネルじん肺訴訟で統一的な和解案が示されたのは初めて。

 トンネルじん肺訴訟は、1168人が全国23の地裁・支部で186社を相手に起こしたが、すでに115人が死亡。うち、東京地裁では26人が35社に1人3300万円の賠償を求めている。

 和解案では、和解金の基準額をじん肺で死亡した元作業員は2200万円とし、病状に応じて2200万―900万円に設定。また、提訴が遅れ、時効の問題が生じている原告についても「和解金額で差を設けない」とし、今後提訴する元作業員も同一の基準で救済を図るよう求めている。

 さらに、じん肺根絶のためには発注者や監督官庁の建設省、労働省などの適切な対策が必要として、この点を和解の前文で言及する意向を表明した。同地裁は2月中旬までに被告企業に受諾書の提出を求めており、まとまった段階で和解手続きに移りたいとしている。

 和解案で河辺裁判長は、じん肺訴訟について「全国統一的な和解案によって全体を一括して解決するのが望ましい」との見解を示し、他の訴訟も「すみやかに和解交渉に入るよう」呼びかけた。

全国トンネルじん肺訴訟で前橋地裁が被告30社に和解案

2000.09.22(21:51)asahi.com
 トンネル工事現場でじん肺になったのは企業が防止策を怠ったためだとして、元建設作業員らが建設会社などを相手取り、損害賠償を求めている「全国トンネルじん肺訴訟」のうちの群馬訴訟で、前橋地裁は22日、被告全30社を対象にした和解案を示した。東條宏裁判長は「戦後の発展とともに発生した被害は、今世紀中に解決の方向性が示されることが重要だ。和解案がその契機となることを願う」とした。

 じん肺訴訟は、約1300人が全国23の地裁で約190社を相手取り総額約430億円の損害賠償を求めている。今回の和解案は、昨年7月に仙台地裁で、原告と日本鉄道建設公団との間で初めて和解が成立して以来で、建設会社に対する和解案は初めて。前橋地裁は和解を拒否した場合、裁判を分離し、早期に判決を言い渡す方針を被告に伝えている。各地裁で原告が目指す「命あるうちの解決」に向けて、前橋地裁以外の裁判の展開にも影響を与えそうだ。

 和解案で、東條裁判長は「被告は十分な粉じん対策をしてきたとは言えない」と建設会社の責任を認めた。原告22人への見舞いや弔意、じん肺根絶への努力についても表明すべきだとした。和解金の基準額について、4段階の症状に応じて2200万円―1400万円とした。仙台地裁で和解した同じ内容となった。

 全国トンネルじん肺訴訟は、1997年5月に東京地裁などに第1陣が提訴。原告は和解による早期解決を求めながら、109人が死亡した。群馬トンネルじん肺補償請求団の細矢金蔵団長(64)は「私たちには時間の余裕がない。被告企業は和解に応じて欲しい」と話した。

企業に4790万賠償命令 じん肺訴訟/浦和地裁「安全対策が不十分」

2000.09.13 The Sankei Shimbun
 埼玉県荒川村の石灰製造業「三峰石灰産業」(本社・東京)の作業場で、石灰石の加工作業中に粉じんを吸い込みじん肺になって死亡したとして、元社員、大野栄太郎さん=当時(六六)=の妻ら遺族四人が約六千二百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が十三日、浦和地裁(佐藤康裁判長)であった。

 佐藤裁判長は「じん肺に対する安全対策は不十分で、大野さんのじん肺による死亡との因果関係がある」と原告の訴えを認め、三峰石灰産業に約四千七百九十万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決によると、大野さんは昭和二十四年から平成二年まで四十年以上、荒川村にある中川工場で石灰の粉砕、運搬などに従事。四年十一月、じん肺患者と認定された。

 佐藤裁判長は判決の中で「三峰石灰産業の安全配慮義務違反と、大野さんがじん肺に罹患(りかん)したことの因果関係が認められる」と認定した。同社側は「石灰石ではじん肺にはならない」などと反論していた。

じん肺肺がんで労災対象拡大の可能性 検討会を設置

2:18p.m. JST November 27, 1999
 世界的に権威のある「国際がん研究機関」(IARC)が、じん肺の主要な原因物質である二酸化ケイ素(シリカ)の発がん性をめぐる評価を格上げしたことを受けて、労働省が専門検討会を設置したことが分かった。同省はこれまで、じん肺と肺がんの因果関係は実証されていないとして、1978年の通達に基づき、じん肺患者の肺がんの一部だけを対象に労災補償してきたが、その方針を見直す可能性が出てきた。じん肺肺がんをめぐっては、遺族補償の支給を求める訴訟が各地で起きており、労働省の方針が変更されれば、裁判の行方にも影響が出そうだ。

 労働省によると、じん肺肺がんについて検討会を設置したのは、21年前に同省が通達を出して以来、初めて。学識経験者で構成し、来年度中に結論を出す。96年にIARCがシリカの評価を2A(おそらく発がん性がある)から1(発がん性がある)に改めたことを踏まえた。

 じん肺患者は、症状によって管理区分4から1の4段階に分けられる。最も重症の区分4と、次に重い区分3と2で続発性気管支炎など指定された5つの合併症があれば労災と認定され、療養補償が支給される。しかし、肺がんについては、区分4についてのみ「じん肺の影響でがんの発見、治療が遅れる」ことを理由に業務起因と見なされ労災補償の対象となっている。

 このため、区分4以外の患者が肺がんで死亡した場合には、遺族補償などが支給されていない。患者団体の全国じん肺患者同盟(本部・静岡県湖西市)は10年以上にわたり、労働省に通達を見直してすべての患者の肺がんを労災とするよう求めてきた。

 患者同盟によると、労災と認定されて補償年金などが支給されている患者は現在約1万8500人で、軽症の患者も含めれば数万人になるという。磯貝純事務局長は「長い間じん肺で苦しんだ患者をみとっても、死因が肺がんとなれば一銭の遺族年金もない。検討会ができたのなら、じん肺ががんの原因だと認めてほしい」と話している。

仙台のトンネルじん肺訴訟、残る13人も鉄建公団と和解

7:15p.m. JST July 29, 1999
 全国19地裁で争われている「トンネルじん肺訴訟」のうち、日本鉄道建設公団(鉄建公団)を相手取った仙台地裁(梅津和宏裁判長)の訴訟で、全国で初めて和解が成立した8人に続き、残りの原告13人も29日和解した。同地裁での鉄建公団との争いは終結し、今後、建設会社との訴訟の審理が本格化する。

 今回和解した原告は、青森県の10人と岩手県の3人。青函トンネルの工事などに携わりじん肺になったとして、鉄建公団や建設会社に一人当たり3300万円の支払いを求めていた。

 この日の和解協議では、鉄建公団側がじん肺の症状や職歴に応じて、原告一人当たり約630万―1600万円の和解金を支払うことで合意した。

青森・岩手のトンネルじん肺訴訟和解へ 全国で初

9:04p.m. JST July 08, 1999
 鉄道や道路などのトンネル工事現場で働いてじん肺になったとして、元労働者とその遺族らが、損害賠償を求めている「全国トンネルじん肺訴訟」のうち、青森、岩手両県の原告21人が仙台地裁(梅津和宏裁判長)で争っている訴訟で8日、遺族1人を含む5人の原告と鉄建公団が和解する見通しとなった。正式な和解は12日で、ほかの16人についても和解を目指すことを確認した。トンネルじん肺の全国訴訟で和解が成立するのは初めてで、今後、ほかの訴訟の展開にも影響しそうだ。

 和解協議をしている原告は、青函トンネル工事に携わった人やその遺族で、鉄建公団や大手を含む建設会社に対し、計6億9300万円(1人当たり3300万円)の支払いを求めている。この日、原告、被告双方の代理人の話し合いが、梅津裁判長も同席して開かれ、同地裁が示した和解案に沿った内容で基本的に合意したという。

 和解案では、和解金の基準額を、症状に応じて2200万円から900万円の6段階としている。原告側代理人によると、和解が成立する見通しとなった原告5人のうち、青函トンネルの現場だけで働きじん肺になった4人は1600万円、ほかの現場でも働いたことがあり、昨年8月に亡くなった1人が1400万円の区分とされた。

 また、公団が「工事の結果として被害を出したことを原告に謝罪し、今後、再発防止に努める」との趣旨のコメントを発表することでも合意したという。

秩父じん肺訴訟で賠償命令

1999年4月27日 15時50分 共同通信社
 埼玉県・秩父地方の鉱山で働いていたじん肺患者9人の本人や遺族が、経営会社のニッチツと菱光石灰工業の2社に計2億9700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、浦和地裁熊谷支部で言い渡された。石塚章夫裁判長は被告2社に損害賠償支払いを命じた。

 訴えによると、同県飯能市の真々田今朝生さん(63)ら9人は、同県大滝村のニッチツ秩父鉱山などの元作業員で、石灰石の採掘作業などに従事していた。

じん肺患者の勝訴が確定

1999年4月22日 13時18分共同通信社
 長崎県伊王島町の日鉄鉱業・旧伊王島炭鉱で働き、じん肺になった元炭鉱労働者と遺族が日鉄鉱業(東京)に計7億1500万円の損害賠償を求めた『長崎伊王島じん肺訴訟』の上告審で最高裁第1小法廷は22日、約4億6000万円の支払いを命じた2審の福岡高裁判決を支持、日鉄鉱業の上告を棄却した。原告勝訴が確定した。

 労災認定を受けていない中軽症のじん肺患者への賠償を命じる初の最高裁判決となった。

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