TOPIC No.3-10c-1 '99年09-10月東海村臨界事故


米大統領「全面協力惜しまず」 臨界事故で首相に電話

00:22a.m. JST October 02, 1999
 小渕恵三首相は1日夜、クリントン米大統領から電話を受け、茨城県東海村で発生した臨界事故について約10分間話した。大統領は「米国はスリーマイル島の大変残念な事故の経験があり、防護措置や対応策のノウハウがある。必要なら全面的な協力を惜しまない」と申し出た。首相は「丁重なお見舞いに感謝する。事態は終息に向かっている。今回の事故が原子力に対する国民の不安を大きくしたことは遺憾だ」と語った。

茨城県の退避解除決定、国より1時間半遅れ混乱

10:02p.m. JST October 01, 1999
 茨城県東海村の臨界事故で、30日夜から続いていた住民への「退避要請」を茨城県が1日に解除したのは、国の決定よりも1時間半遅れだったことがわかった。国からの事前連絡で県は1日午後5時ごろに解除する態勢を整えていた。しかし、実際は国が先行して午後3時すぎに解除を決定。県が国から連絡を受けたのは、野中広務官房長官の記者会見の15分前で、県の解除決定は午後4時半になった。国よりも大幅に遅れたことで、住民からの問い合わせが地元自治体に殺到するなど、情報の伝達の混乱に拍車をかけた。

 橋本昌県知事は、県が解除を発表した午後4時半からの記者会見で、「国との連携がうまく行かず、解除の決定が遅れたことは反省点にあげられる」と認めた。

 県が関係市町村に対して、ウラン加工施設から10キロ圏内の住民の退避を求めたのは30日午後10時半。県が先行する形で「退避」を決定したあと、県から国に報告し、国側もそれを追認したという。

 県によると、解除については、当初、国から「午後5時ごろに解除する」との連絡が県に入っていたという。県はこれを前提に、国と一緒に解除を発表するつもりで発表文書の準備などをするつもりだった。しかし、午後2時50分に突然、国から、「午後3時5分に解除する」との連絡が入った。

 国の解除発表をテレビで知った地元住民からは各市町村に問い合わせが相次いだ。県が決定していないものの、国の決定を受けて解除を独自に決める自治体も出た。東海村は午後3時過ぎに、那珂町も午後4時10分に災害対策本部を開き、待避の解除を決定した。

 しかし、県は、「国で発表しているのに県に何も資料が来ていない」として、すぐには解除の対応がとれず、結局、解除の決定は午後4時半の記者会見で発表することになった。

 東海村の村上達也村長は、「村はこれまで政府に判断をあおいできた。国の決定に従う」と話した。また隣の那珂町職員は「いつまでも解除を遅らせる理由もない。県の決定が遅いとは言わないが、国の決定から1時間以上もたっているのに、判断を示さないとは」と不満を漏らした。

原研原子炉が自動停止 放射能の外部影響はなし

10:03p.m. JST October 01, 1999
 日本原子力研究所は1日、茨城県大洗町の大洗研究所で出力上昇試験中の高温工学試験研究炉(HTTR)が同日午後1時31分、自動停止したと発表した。放射能による外部への影響は無いという。炉を冷却するヘリウムガスを循環させる装置の一部が故障したのが原因と見ている。HTTRは昨年11月に初臨界に達しているが、自動停止は初めて。

 HTTRは9月28日から出力上昇試験を始め、出力30キロワットで運転中だった。3系統ある「1次加圧水冷却器ヘリウム循環機」を制御するための電源周波数測定装置が故障し、ヘリウム流量が低下したため、自動停止したという。補助冷却装置で原子炉を冷却している。

臨界事故の東海村に災害救助法適用

9:15p.m. JST October 01, 1999
 厚生省は1日、ウラン加工施設の臨界事故が起きた茨城県東海村に災害救助法を適用した。事故で同法を適用するのは異例。過去には、1980年の静岡市の地下街のガス爆発で適用された例がある。

 通常は、当事者が責任をもつことになっているが、今回は多くの人の生命や健康に影響がある恐れがあることから、踏み切った。現場から350メートル以内の50世帯68人は近くのコミュニティセンターに避難中で、安全が確認できるまで避難が継続される見込みだ。

 同法が適用されると、避難所の設置や炊き出しなどの費用を国と県が負担することになる。

汚染検査に住民殺到、2000人の列 東海村核臨界事故

9:59p.m. JST October 01, 1999
 屋内退避が解除された1日午後、東海村船場の村中央公民館には同村以外からも放射能の汚染測定に訪れる住民らが殺到した。村によると、解除された午後3時以降に込みはじめたといい、午後5時半ごろには約2000人の長蛇の列ができ、3時間以上も待つ人もいたという。途中で待ちきれずに帰ったり、「いつまで待たせるのか」と声をあげたりする人もいたという。

 検査は午前8時50分から実施。午後3時までは1時間当たり、70―90人だった検査希望者は、解除後は、1時間当たり300人ほどに。午後6時からの1時間では最高の約500人を記録したという。

 村の災害対策本部は急きょ、17組だった放射線測定器を50、60組に、約70人だった検査人員を約250人に増やした。さらに同公民館の空いているすべての部屋を開放して会場にあてて対処したという。
水戸市元吉田町、会社員細谷和義さん(23)は「近くの大宮町で昨晩、仕事をしていたので心配になって来ました。問題はなかったので安心しました」と話していた。

 2日も同公民館で午前9時から午後6時まで、検査を実施する予定。

政府が10キロ以内の屋内退避を解除 東海村核臨界事故

8:45p.m. JST October 01, 1999
 野中広務官房長官は1日午後3時すぎ、首相官邸で記者会見し、茨城県東海村の民間ウラン加工施設で起きた臨界事故について「臨界は終息したことが確認され、住民が通常通りの生活を送ることに支障のない状態になったと判断した」と述べ、県が施設から半径10キロ以内にある9市町村の住民約31万人に出した屋内退避要請を解除すると発表した。一方、施設から350メートル以内の住民の避難措置については「さらに念入りに検査して判断する」として、当面継続する考えを示した。

 野中長官は「政府はこれまで緊急対処を重視してきたが、今後はしかるべき時期までに徹底した原因究明を行う」と述べ、専門家の参加を得て、原因の解明を急ぐ考えを強調。また「今回のような民間施設での事故は、想像を絶する事態だった。この種の施設がどのような状態にあるのか、徹底して検証することが必要だ」として、全国の類似施設の安全を一斉に点検する方針を明らかにした。

 野中長官はさらに、事故を契機に、組織管理や従業員の教育訓練のあり方などを検討する関係省庁連絡会議(議長・古川貞二郎官房副長官)を近く設置し、産業界にも安全管理の徹底を呼びかける考えを示した。

被ばく者容体、予断許さず

1999年10月1日 20時41分 共同通信社
 東海村の臨界事故で、被ばくした社員が入院している放射線医学総合研究所は1日夜、3人の全身状態は安定しているが、今後については予断を許さないと発表した。

製造部長ら事情聴取

1999年10月1日 13時40分 共同通信社
 茨城県警は、1日朝、事故を起こした核燃料加工会社ジェー・シー・オーの加藤裕正製造部長ら数人から事情聴取し、ウラン酸化物の加工工程など一連の操業内容の把握と事故原因の究明などに乗り出した。同社は「規則違反があった」として加工作業で一部の工程を省くなどミスがあったことを認めており、県警は業務上過失傷害や原子炉等規制法容疑などの刑事事件の立件も視野に入れている。

野中官房長官「認識が甘かった」 東海村の臨界事故

0:36p.m. JST October 01, 1999
 野中広務官房長官は1日午前の記者会見で、茨城県東海村の臨界事故について「30日の昼前後から夕方に至る取り扱いで、事故の深刻さの認識が甘かったのを率直に認めなければならない」と述べ、政府が事故の深刻さに気づくのが遅れ、対応に不備があったことを認めた。

 野中氏は「事故発生後の推移をみると、計測した(放射線量の)数値から事故拡大が見られなかったため、残念ながら対応が遅れた」と釈明した。

補償など問題山積 JOC親会社の住友金属鉱山

9:07p.m. JST October 01, 1999
「多大なご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」――JCOの親会社である住友金属鉱山の青柳守城社長は1日午前、東京・大手町の経団連会館で記者会見し、こう切り出した。親会社として作業を急ぐように指示したことはないとし、事故は「人為的ミスの疑いが強い」として事故への直接の関係は否定した。しかし、連結決算での業績への影響や補償問題など、今後さまざまな問題が振りかかってくるのは必至の情勢だ。

 この日の東京株式市場では、早くも同社株が急落した。青柳社長は、現時点では引責辞任は考えていないことを示唆し、「事故原因の解明や、地域への対応を第一に考える」と述べた。

  JCOは住友金属鉱山の100%子会社。昨年度の売上高は17億2300万円で、経常収支も黒字だったという。しかし、最近は海外メーカーとの競争にさらされていた。

 過度の合理化を図ろうとして事故が起きたのではないかとの質問に対し、青柳社長は「急激に人員を減らしたり、生産性の向上を求めたりはしていない」と否定。事故は「人為的ミスの疑いが濃いと思う」との見方を示した。

 施設から10キロ以内の屋内退避要請が解除されない状態が続いていた1日午前、東京株式市場では住友金属鉱山株の売り注文が膨らんだ。金相場上昇の追い風を受けて株価が急伸してきた最近の流れが一変。値幅制限いっぱいに当たる前日比100円安の427円まで急落し、午後の取引を終えた。

 市場では「人為的ミスなどが事故原因と指摘されており、住友金属鉱山に応分の費用負担が発生する公算が大きい」(大和総研アナリストの村田崇氏)との懸念が広がっている。地域の被害が広がるなかで、補償額の増大は避けられないものと見られる。

 JCOは賠償額10億円の原子力損害賠償保険に加入しているが、災害総額が10億円を超えれば、原則的に事業者が負担しなくてはならない。国家援助が行われることもあるが、「全面的な支援」(青柳社長)を表明している住友金属鉱山が多額の支出を迫られる可能性も出てきている。

 同社は「JCOの事業は存続させたい」としているが、国内最悪の事故が発生している現状では、再開のめどが立たないのが実情だ。

「安全基準の見直しも」 欧州委員会が臨界事故を懸念

10:03p.m. JST October 01, 1999
 茨城県東海村の臨界事故について、欧州委員会は1日、「日本のような技術先進国で、このような事故が起きた。世界中が原発の安全基準を見直さなければならない」と深い懸念を表明した。

 欧州は、日本のプルサマール用のプルトニウムとウランの混合燃料(MOX燃料)を、英国と、ベルギーで製造するなど、日本の原子力発電との関係が深く、各国のマスコミは事故を大きく報道している。

東海村の放射能漏れ事故で対策本部など設置

7:45p.m. JST September 30, 1999
 茨城県東海村のジェー・シー・オー東海事業所で起きた放射能漏れ事故を受けて、政府は30日午後、事故対策本部(本部長・有馬朗人科学技術庁長官)と、首相官邸連絡室を設置した。

 また、労働省は茨城労働基準局に災害対策本部を設置するとともに、本省の労働衛生専門官ら5人を現地に派遣した。安全管理に手落ちがなかったかなどについて調べる。
厚生省は現地の状況を把握するため、職員を2人派遣した。放射能の飛散の状況や周辺住民の被ばく状況についての情報を集め、住民への健康診断が必要かどうか見極めたいとしている。

核燃料工場で臨界事故か 茨城・東海村

7:31p.m. JST September 30, 1999
 茨城県に入った連絡によると、30日午前10時半ごろ、茨城県東海村石神外宿にある民間の核燃料加工会社「ジェー・シー・オー」(旧日本核燃料コンバージョン)東海事業所の転換試験棟で事故が発生し、施設周辺の空間線量率が通常の7―10倍の数値を示したという。このため、県は工場の敷地外を含む周囲200メートルを立ち入り禁止にした。少なくとも作業員3人が被ばくし、国立水戸病院に搬送された。同社からの連絡によると、臨界事故の可能性が高い、という。

 県によると、事故当時は核燃料の製造中だった。

 同社によると、六フッ化ウランを転換中に核分裂反応が起こり、制御できなくなって臨界に達した可能性があるという。

 同社は六フッ化ウランを二酸化ウラン粉末に転換し、成型加工メーカーに納入しており、事故当時は核燃料サイクル開発機構の高速炉・常陽の燃料などを製造していた。

 茨城県によると、事業所側が午前11時36分から50分にかけて、周辺の放射線量を測定したところ、事業所のすぐ外側の道路で通常値の1万6000倍に達したという。現場から2キロ離れた測定地点でも、数分間にわたって約10倍の値を示した。

 3人が運ばれた国立水戸病院によると、3人のうち1人は大量に放射線を浴びている模様で重症だという。3人はヘリコプターで千葉市にある放射線医学総合研究所に転送された。

 東海村は午後1時半、近くを流れる久慈川からの取水を停止した。
作業員の被ばく事故が起こったジェー・シー・オー(本社・東京都港区)は、原発の燃料製造の中間過程を請け負っている。濃縮された六フッ化ウランを二酸化ウランに転換する施設で、製造された二酸化ウランはその後、燃料製造会社で原発の燃料に加工される。こうした転換施設は同社を含めて国内に2社あるという。

 原子力関係者によると、扱っているウランは濃縮度が3%前後といい、ふつうなら臨界事故は考えにくいという見方もある。この関係者は「六フッ化ウランが漏れたのではないか」と話している。

 科学技術庁に入った連絡によると、転換試験棟では六フッ化ウランを二酸化ウランに転換する作業をしていたとみられる。空気などとの接触によるものではなく、ウラン化合物を溶かし込む溶液の濃度が濃くなったために、核分裂が自然に進む「臨界状態」が局所的に起こった可能性も考えられるという。

 ウラン工場の南西敷地境界では、1時間あたり0.84ミリシーベルトの空間放射線量が測定された。通常は約0.2マイクロシーベルトで、この約4000倍に当たるという。同庁は、管理官を現地に派遣して、原因などの調査を進めるとしている。

 高木仁三郎・前原子力資料情報室代表の話 臨界事故とは原子炉の中のように連鎖反応が起こってウラン燃料が燃え出すことで、通常は安全保障上からも起こり得ないよう、「臨界管理」としてさまざまなフェールセーフが講じられているはず。外部モニターの放射線量がこれだけ上がるということも、ふつう通常のウラン加工施設では考えにくい。可能性として、爆発的なことが起きていて、内部の放射線量も相当高くなっているのではないか。施設の臨界管理自体が問われる大問題だ。臨界事故とすれば、この規模のものは初めてだろう。それにしても発生から発表までが遅過ぎる。 <

 <臨界事故> 臨界とは、核分裂で中性子が放出され、核分裂反応が連鎖的に続いていく状態。ウランやプルトニウムが一定量以上集まると、核分裂が激しくなり、自然に核反応が進んでしまうのが臨界事故。爆発の危険性もある。

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